2013年10レズ・百合萌え199: みつどもえで百合 【2卵性】 (405) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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みつどもえで百合 【2卵性】


1 :2011/05/17 〜 最終レス :2013/09/14

@ここはみつどもえの百合カップリングについてあれこれ語るスレです
ASSや画像大歓迎します
B煽り、罵倒は禁止です
楽しくいきましょう


2 :
前スレ
みつどもえで百合
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1242653978/

3 :
>>1
もしかしてvipのスレ立て代行の人?

4 :
>>3
代行の人
毎日23:00〜01:00に受け付けてます

5 :
>>1

6 :
>>1
だが、まとめサイトをテンプレに入れる話どこ言ったんだよ
SSまとめ
http://www43.atwiki.jp/mitudomoe_eroparo/

7 :
IDが0TZだぜ!
誤字ったのはそのせいか0TZ

8 :
>>1
乙です
このスレでも松ひとに幸あれ

9 :
>>6
そういやそうだったな

10 :
スレ立て乙

11 :
揉めば揉むほど
感じちゃうのね
おっぱいよ
いやんばか〜んうふ〜ん、そこーはおチチなのぉあは〜ん♪
いやんばか〜んうふ〜ん、乳首舐めちゃダメぇあふ〜ん♪
あっあダメダメダメぇ〜そこーはダメなのよんんふ〜ん
いやんばか〜んうふ〜ん…

12 :
>>1
書き溜めできたらVIP以来するわ

13 :
おがみつブームが来ますようになむなむ

14 :
冬場は姉にぴったりくっついてるのこのシスコン
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1647830.jpg

15 :
ふふふ

16 :
>>14
どんだけみっちゃん好きなんだよ三女さんは

17 :
みっちゃんモテるなぁ、ひとはもだが。

18 :
へへへ

19 :
ほほほ

20 :
ははは

21 :
そうですか

22 :
そしてのけものにされるふたばであった…
ふたばって誰と妄想すりゃ良いんだ?

23 :
まじきち

24 :
>>16
みっちゃんのキャラ弁作るくらい……どう考えてもみっちゃんの嫁だわ
>>22
ふたばはみっちゃんかひとはが王道
敢えて伊藤さんとのカップルなんてのも面白いんじゃない?
まぁ、夫がいるふたばじゃ妄想し難いよね

25 :
pixivとかだと姉→と一緒の絵を時々見かける

26 :
ふm

27 :
それもそうだ

28 :
         v――.、
      /  !     \
       /   ,イ      ヽ
     /  _,,,ノ !)ノリハ    i
    i  jr三ミ__r;三ミ_   ヽ
    l  ,iヾ二ノ ヽ二 ハ   ノ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ヽ、.l  ,.r、_,っ、  !_,    <  >>1 糞スレ立てんな、蛆虫氏ね。
       !  rrrrrrrァi! L.     \__________________
       ゝ、^'ー=~''"' ;,∧入
   ,r‐‐'"/ >、__,r‐ツ./   ヽ_
  /  /  i" i, ..:  /  /  ヽ-、
 ./  ヽ> l    /   i     \

29 :
vipでもここでもどっちでもいいから誰か書いてくれよ
>>4
あんたって代行毎日受け付けてるの?

30 :
ニコニコでネタ見つけてきた
魔法少女 ほむ☆どもえ!
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm14517633

31 :
松岡さんと三女さんがイチャコラしてる妄想で1週間乗り切れるな

32 :
虎から届いた杉みつ同人がすばらしすぎてほんほんしちまう

33 :
>>32
タイトルおせーて

34 :
vipになんか前と全く同じものが投下されてるな
百合安価の人を待とうか

35 :
>>33
まるすぎ

36 :
だれかなんかかいてよう

37 :
松ひとで書いてるんだけど進まない…

38 :
>>37
頑張れ
マジで頑張れ

39 :
>>36
前スレでひとみつ書くって予告してたけど
鈍筆なのでもうしばらくお待ち下さい。
今月中に投下を目標にしてますが……怪しいです(今8割くらい?)

40 :
中学生になった設定です
みつば「今日はあそこ行きましょうよ、駅前の喫茶店」
杉崎「先週行ったでしょうが」
みつば「あら、そうだったかしら…じゃああそこの寿司屋は?」
杉崎「そこも先々週に行ったわよ」
みつば「ふーむ…じゃああそこでいいわ。あのナポリタンの店」
杉崎「まあ、あんたが良いならいいけど。今度は少しくらい出しなさいよ」
みつば「さあ、どうかしら」
杉崎「何でいつも私が奢らなきゃいけないのよ」
みつば「わ、私だって奢ったことあるじゃないほら、あそこのクレープとか」
杉崎「何ヶ月前の話よ!はあ、まあいいわ。じゃあいつもの場所で待ち合わせね」
みつば「ええ、遅れんじゃないわよ」
杉崎「あんたもね」

宮下「お前ら仲良いな

41 :
学校では…
体育
先生「じゃあ二人一組になって柔軟してくださーい」
みつば「今日は私からやるわ」
杉崎「はいはい」
みつば「ちょっと痛い痛い」
杉崎「先週の仕返しよ」
みつば「くっ…」
美術
先生「二人ペアになって互いの顔を描きましょう」
みつば「綺麗に書きなさいよ」
杉崎「あんたこそね」
みつば「…豚なんて描いたらただじゃおかn」
杉崎「駄目だった?」
みつば「杉崎いいいいいいい」

宮下「やっぱ仲良いなお前ら」

42 :
以上、俺の妄想でしたー
読みづらかったらスイマセン

43 :
ほのぼのでとてもいい

44 :
続き書いて

45 :
松岡さんが丸井家に泊まった時にあっただろう妄想
松岡「おはようー三女さん」
三女「おはよう…って何してるの?」
松岡「朝ごはん作ってるの、泊めてもらってるんだしこれくらいしないとね」
三女(結構気が利くんだな…)
松岡「味見てくれるかな?」
三女「ズズッ…うん、おいしい」
松岡「良かった〜三女さんのお口にあって」
三女「ただもう少し具は細かく刻んだ方がいいかな、それから…」
松岡「さすが三女さん、勉強になるな〜」
三女「あ、ありがと」

ふたば「仲良いっすね!二人とも」

46 :
お風呂では
三女(松岡さんが泊まり続けてはや10日…一体いつになったら出t)
松岡「入るよー三女さん」ガララッ
三女「べ、別々じゃなかったの?」
松岡「毎日霊と戦ってる三女さんの為に背中を流そうと思って」
三女「それは…ありがと」

松岡「どう三女さん気持良い?」ゴシゴシ
三女「うん、丁度いいよ」
松岡「じゃあ流すよー」ザバーッ
三女「ありがとう、松岡さん。じゃあ次は私が」
松岡「わあ、ありがとう三女さん」

ふたば「二人は仲良しっすね!」

47 :
IN ベッド
松岡「三女さって寝る時は髪ほどくんだー」
三女「当然だよ」
松岡「なんか新鮮だなー」
三女「そうかな?」
松岡「うん、とっても可愛いよ」
三女「…っ…あ、ありがとぅ…」
松岡(三女さんもこんな表情するんだ)

みつば「電気消して良い?」

48 :
少しでもこのスレが活性化しますように
このカプが一番好きです^^

49 :
乙です!素晴らしい自然で微笑ましい絵だ・・・

50 :
乙!
いい百合だった

51 :
素晴らしい
こんな短編でいいから皆でもっと松ひと妄想垂れ流そうぜ

52 :
松ひとの流れで申し分けないが今更ながら、ひとみつ・バレンタイン書けました。
いつもの如く非常に長い(テキスト34KBほど)ので事前告知。
確実に規制に引っかかるのでまとめて投下出来ない恐れ有り。
また、いつものようにひとみつ以外にもいろんな成分含まれてます。
今日のリアル夕飯終わり次第投下予定です。

53 :
期待age

54 :
>>53
ちょ、上げるとか公開処刑じゃないか!
と言うわけで投下という名の処刑。
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:バレンタインに如何して嫉妬?
〜 約束(ひとは視点) 〜
“ひとは! あんた私にバレンタインチョコ寄越しなさいよ!”
<トントントン>
2月13日。今はみんなが寝静まった夜。
<トントントン>
板チョコを細かく包丁で切り、湯煎で溶け易いようにする。
ひとは「はぁー」
大きく嘆息する私。
みっちゃんに言われてチョコレートを作るなんて馬鹿みたいだ。

55 :
どうして私が……それに私にチョコレートを作らせる理由が酷いのだ。
女が男にチョコレートを上げるイベントって言うことが気に食わないらしい。
用は自分が食べたいのにもらえないって言うのが嫌ってことだ。
そんなの知ったことじゃない。
…………。
ひとは「はぁー」
もう一度、大きく嘆息する。
知ったことじゃない……はずなのに、今作ってるのは紛れもないみっちゃん用のチョコレート……。
実際のところ、言われたときに断ったのだから作る必要なんて無いし、作らないつもりだった。
でも、断ったときに文句を言いながらも一瞬見せた悲しそうな表情が目に焼きついてしまって……。

56 :
私にチョコレートをもらえない事じゃなく、食べられないことに悲しんだ可能性もあるけど。
って言うか後者に決まってる! 何を期待……い、いや、期待なんて最初からしてない!
そんなことに期待するなんて無意味だし不必要だ!
頭を横に振り、意味不明な考えを否定している時、湯煎用のお湯が沸いた。
それと同時に思考が中断されチョコレートを作っている現実に戻る。
細かく刻んだチョコレートをボウルに入れ湯煎を始める。
ひとは「はぁー」
……さっきから何度目になるだろうか?
そんな自分に呆れて心の中でまた嘆息していた。
私は解けていくチョコレートを見ながら、また、なんとなしに考え事をする。

57 :
こんなことしてるからみっちゃんは太るんだ。……間食が多いのも原因だと思うけど。
甘やかしすぎなのだろう。いつも口では憎まれ口をたたいてはいるが、実際夕飯抜きとか滅多なことじゃしないし。
もっと厳しくしないといけないのかも知れない。このチョコレートだって――
――いや、そんなことよりも考えなければいけない事があるんだ。
明日、絶対悩む。確実に悩む。今考えたところで結局は悩むだろうけど。
作っているチョコレート菓子を見ながら呟く。
ひとは「コレ、どうやって渡せばいいんだろう……」
そう言ってまた嘆息する私だった。

58 :
〜〜〜以上本編〜〜〜
ちょ、ちょっと待ってくれ……忍法帳…いつ完全適応されたの?
最近色々あって忍法帳今日作ったばかりなのに……
800文字ずつ程度しか投下出来ないって……最悪じゃないか。
ここまで書いてアレだけど、このまま細々続けるか、Lv上げ直すべきか……迷ってます。
どうしたらいいでしょう? orz

59 :
質問しておいてなんですが、とりあえず、次のキリのいいところまで続けようかと思います。
〜〜〜以下本編〜〜〜
〜 学校(みつば視点) 〜
みつば「ふー…何とか…間に合った…わね! ふたばが…いなかったら…危なかったわ」
私は息を切らしながら、授業開始の5分前に昇降口にたどりついたことに安堵し呟く。
ひとは「ふたばがいると…事故率は…上がるけどね」
同じく息を切らしているひとは。文句を言いつつ、自分の腕に出来た擦り傷から出た血をポケットティッシュで拭き取っている。
さっきのひとはの意見には正直、同意できる。でも、今回は遅刻しそうになった原因がわかっている。
呼吸も整ってきたので、唾を飲み込んでから言葉を出す。

60 :
みつば「っていうか、あんたが寝坊したからこんな事になってるのよ! あんたもちょっとは反省しなさいよ!」
言ったとおり、珍しくひとはが寝坊して……結果、皆起きれずに急いで学校に走ってきたと言うわけ。
もちろん朝御飯も食べれずに出てきたから私の機嫌は最悪――――腹の虫の機嫌も悪いのは言うまでもないわね――――なのだ。
だからと言って、ひとはだって好きで寝坊したわけじゃないし、怪我している相手に言うことでもないのだけど……。
ひとははそんな私に一瞬怒ったような表情と悲しんだような表情が混ざったような微妙な顔を向けた。
その表情を見て、先ほど言った台詞が言い過ぎた様な気がして後悔していると、ひとはは呆れた表情に変えて嘆息した後言葉を続けた。
ひとは「……みっちゃんも足から血が出てるよ」
そう言われ足を見ると確かに少し膝から血が出ていた。

61 :
ふたば「二人ともごめんッス! 小生が近道のために生垣を突き抜けたからいけなかったんッス!」
そう、ふたばがいることで間に合った代償として、どこの家か分からないが生垣を貫通してきたのだ。
私とひとはは手を繋がれ引っ張られていたので共に擦り傷を負ったというわけだ。
漫画みたいな話だが事実。正直フィクションであってほしかったんだけど。
ひとは「うん、擦り傷で済んで奇跡だよ」
私とひとはは擦り傷だが、ふたばが無傷なのは納得いかない。まったく不公平な世の中よ!

62 :
とりあえず教室に行かないと遅刻になってしまう。それだと“生垣を貫通”損なので、私は血を拭かず校舎に足を踏み入れたのだが――
栗山「っ! 怪我人! 『ヒーリング・ローリング』!」
――その選択は間違いであること知らせる、後ろからの栗山っちの声。
時既に遅し……授業間に合わないだろう。
そう諦めていたのだけど――
宮下「お、三女じゃな、っ!」
――突然の鬱陶しい介入により救われた。
私めがけて飛んできていた包帯は宮下の顔、腕、足――全身に巻きつき一瞬にして身動きを封じた。
宮下「むぅ! ううぅ〜〜!」
包帯で身動きを取れなくなった宮下が芋虫の如く暴れている。
口にも巻きついているため、うまく声も出せないようだ。
それが、少し前の私の未来だった状況だ……鳥肌ものだ。

63 :
栗山「外した!?」
っ!
安心してたけどよく考えたら、まだ私は怪我人だった。
追撃が私に来るかと思ったが、いつの間にかひとはが音も無く栗山先生に近づいていた。
そして廊下に放置されていた箒の柄を使いメガネを頭の上にずらした。
ひとは「大丈夫ですよ先生。命中してます。早く保健室へ」
栗山「え? あ、そうね急いで保健室で治療しないと!」
そういうと、宮下を引きずり保健室があるほうに走っていった。
流石はひとは……。
助けて貰えたことへの感謝と同時に、さっきひとはに酷い言葉を掛けてしまったことに罪悪感を感じる。
ひとは「……宮ローリングさん。たまには鬱陶しさが役に立つね」
みつば「せめて人間らしい苗字で呼んであげなさいよ」
前言撤回。
一応感謝はしておくが罪悪感を感じるほどこいつはいい奴じゃない!

64 :
教室に入ると微かだが美味しそうな香りがすることに気が付いた。
嗅覚に全身系を集中させる。……これは、甘い……香り……!
チョコレートの香りだ!
でもなんでチョコレート?
ひとは「みっちゃん、どうかした?」
教室を入ったところで立ち止まっている私を気にしたのかひとはが話しかけてくる。
みつば「何だかチョコレートの香りがするのよ」
私の感じた事実を言ってやると、ひとははスンスンと鼻で空気を吸い込む。
ひとは「……全然そんな香りしないんだけど……」
みつば「するわよ! 私をなめないでね!」
胸を張って言ってやる。
ひとは「舐めると塩キャラメルの味がするらしいね」
そういうと“すぃ〜”と音も無く自分の席へ向かっていく。
悔しいが、否定できないので反論できない。とりあえず、適当な悪態をつくことにした。

65 :
みつば「ぱっとお手軽にね!」<キーンコーンカーン……>
私の台詞とチャイムが重なり、同時に背後の教室の扉が開く。
矢部っち「はい、皆席についてー。今日はバレンタインだけどチョコ貰った男子は廊下に立たせるからそのつもりでね」
あ!
なるほど、今日は2月14日。バレンタインデーだった。通りでチョコレートの香りがするわけだ。
…………。
結局ひとはは私にチョコを作ってくれなかった見たいね。
ま、まぁ別にいいんだけど。
もともと期待薄で頼んだことだし、断られたし作ってくれるわけ無いんだけど。
朝御飯が食べれなかったことに加え、この香りでお腹が空いて仕方が無い。
次の休み時間にでも杉崎が持ってきているであろう高級チョコでも奪おう。
ホワイトデー何か返さないといけないのは少し面倒だが背に腹はかえれない。


66 :
〜〜〜以上本編〜〜〜
とりあえず、もう1LV上げないと厳しいので今日はここまで。許してください。
あと、作品途中だからってレス、SS投下を自重しないでくださいね。過疎だし……

67 :
長編投下乙です
面白かった

68 :
乙!
忍法帖とかマジでいらない

69 :
>>66
いつもながら素晴らしい乙&期待

70 :
>>67-69
感想とか色々ありがとう御座います。
お礼のついでにLv確認……したかったんだけどなぜかさっき忍法帖作成って言われた……
Cookie消してないのにorz
そういうことなので沢山レス使うことになると思うけどLv1で頑張ってみるよ!

71 :
あれ? Lvあがってる???
意味がわからないが……結果オーライってことで
〜〜〜以下本編〜〜〜
〜 悪戯(杉崎視点) 〜
一限目と二限目の間の休み時間。
朝はみつばが来るのが遅かったし、宮下もいなかったので用意してきた友チョコ――――1個千円する高級チョコよ!――――
を皆に食べてもらうことができなかったが、今は全員いるみたいだ。
声を掛けて皆を集めようかと思っていると――
みつば「杉崎ー、あんたチョコ持ってきてるわよね! 私に献上しなさい!」
――みつばのほうから催促しに来た。
なんて図々しい奴だろう。
……まぁ、対みつば悪戯用チョコレートがあるし今回は目をつぶっておこう。
吉岡「杉ちゃん、今年もチョコ持ってきたの?」
私がみつばに言葉を返す前に吉岡がやつれた宮下をつれて私のところまで来た。
なぜ宮下がやつれているのか……敢えて聞かないことにする。
杉崎「ええ、もちろん持ってきたわよ。皆で食べましょう」
そういってチョコレートの入った箱を取り出し、蓋を開け机の上に置いた。
みつば「さすがね、変体金持ち女!」
早速手を伸ばす雌豚。だけどコレはみつばのためのものじゃない。
さっきも言ったように対みつば用チョコレートを用意したのだ。
それを食べてもらわないと話にならない。

72 :
杉崎「コレは、あんたのじゃないわ!」<バシッ>
みつばの手を叩きチョコの強奪を阻止する。
みつば「さ、さっきのは、嘘。変体“お”金持ち女」
宮下「たいして変わってないぞ……」
みつばの発言に徐々にイライラしつつも、作戦実行のため今は我慢しておく。
杉崎「そうじゃなくて、あんたにはこっちを食べてもらうわ」
そう言って私は、バックの中から大き目の箱を取り出しみつばに渡す。
みつば「な、なによこれ?」
怪訝な顔をこちらに向け聞いてくる。あからさまに怪しまれているわね。
うまい誤魔化し方が浮かばないのでとりあえず大事な部分だけ隠して事実を言っておく。
杉崎「なにって、あんた用のチョコレートよ!」
みつば「……え?」
宮下「お、おい杉崎それって……」
あれ? 何だか空気が変わった。
杉崎「え? なに? 私へんなこと言った?」
私の問いには答えず皆別々の反応を見せる。
吉岡は悶え、宮下はありえないものを見るような目で私を見る。
そして、みつばは真っ赤な顔で箱を眺めている。
私は言った内容を思い出そうと思っているとみつばが口を開いた。
みつば「と、と、とりあえず、あけるわよ!」
そう言いながら箱に手を伸ばして――
<パーン!>
みつば「――っ!」
渇いた破裂音と共にみつばが後ろにこけて尻餅をつく。
対みつばびっくり箱作戦は見事成功!
何だか混乱していた様だったけど……まぁ作戦は成功したし結果オーライって事で。

73 :
<ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ ピロリロリン♪>
すぐさま携帯を取り出し、捲れあがったスカートの中を映すために連続でシャッターを切る。
ここで注意しなければいけないのは、子供パンツのズーム写真を撮ることはもちろん、
みつばの驚いている顔を撮ること、またその全体像を撮るこ――
みつば「な、何なのよ……っ! ちょっと何撮ってんのよ!」
<ピロリロリン♪>
もちろん、今の子供パンツを隠すためにスカートを押さえて、真っ赤な顔をしているところも逃してはいけない。
吉岡「ああ! 杉ちゃんが千葉くんとの三角関係を有利に進めるためにみっちゃんの弱みを――」><
宮下「いや、どう考えても違うだろ……」
さらにもう一枚写真を撮ろうとした時、みつばが立ち上がった。
みつば「いいかげんに……って、チョコ入ってるじゃない!」
怒りを爆発させるのかと思ったが、びっくり箱の中のチョコに気がついたようだ。
杉崎「せっかくだし入れておいてあげたわ。高級チョコを溶かして雌豚の型を取ったチョコよ、有難く頂きなさい」
私は満面の笑みで、かつ威圧的な態度で言う。みつばのことだ、チョコが食べたくて食べたくてどうしようもないだろう。
こんな嫌がらせをしても食べてくれるだろうと言う算段だ。どんな顔をして食べてくれるのか楽しみで仕方が無い。
まぁ、食べないなら食べないでも構わない……少し残念ではあるけど……作戦自体は成功したわけだし。
それに、うまくみつばの注意がチョコに向いたおかげで携帯を奪われることもないのだ。
みつば「くっ……わざわざ雌豚型にするなんて……」
文句を出しているが、涎も出している。さぁ、何て言って食べるの?

74 :
〜 嫉妬(ひとは視点) 〜
杉崎「なにって、あんた用のチョコレートよ!」
!?
ちょ、え? なに???
何がどうなっていきなりそんな展開に?
急な出来事で状況がうまく理解できない。
さっきまで遠目で見ていたが、杉ちゃんが友チョコを皆に上げようとしていただけのはずだった。
それが一転してこの状況。意味不明だ。
みつば「と、と、とりあえず、あけるわよ!」
動揺しすぎ……って言うか、受け取っちゃうの?
受け取るって事は……あれだよね、両思――
<パーン!>
――……混乱してるところにこの破裂音は心臓に悪い。
だけど、何とか状況が理解できた。
<ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ ピロリロリン♪>
杉ちゃんが尻餅をついたみっちゃんを激写……つまり、悪戯ってこと。
ひとは「はぁー」
安心した。……何に?
そんなことより、朝、寝坊したおかげで忘れていたがみっちゃんに上げるチョコを持ってきていない。
渡すとしたら帰ってからってことになる。
結局どうやって渡すか決まらなかったし、今のうちにシミュレーションしておくのもいいだろう。
えっと――
みつば「いいかげんに……って、チョコ入ってるじゃない!」
杉崎「せっかくだし入れておいてあげたわ。高級チョコを溶かして雌豚の型を取ったチョコよ、有難く頂きなさい」
みつば「くっ……わざわざ雌豚型にするなんて……」
――とりあえずシミュレーションは後回しだね。
……杉ちゃんそれって一応手作りチョコって事だけど気がついてる?
みっちゃんも馬鹿だから理解出来てないみたいだけど……。

75 :
みつば「し、仕方が無いわね、貰ってあげるわ!」
杉崎「え? 何その上からの態度。上げないわよ?」
杉ちゃん随分楽しそうだ。手作りって自覚がないとあそこまで自然に振舞えてしまうのか。
みっちゃんもみっちゃんだ。何普通に貰おうとしてるの? こういう時こそプライドってものをもう少しもって欲しい。
……そこまで考えてから気がついた。今日遅刻しそうだったから朝御飯食べてないんだ。
だとすると、プライドを捨ててまで腹を満たしたいと……。
朝抜くだけで倒れるくらいなのに朝から走ってきたのだ。昼間で何も食べないのはみっちゃんには無理な話だろう。
みつば「っ……その…チョコレート私に…下…さい」
杉崎「ふふふ、いいわよ、この躾のなってない雌豚にくれてあげるわ」
と言うわけで杉ちゃんの完全勝利。そしてみっちゃんは悔しそうな顔をしてチョコを食べる。
そして、二口目からは満面の笑みでおいしそうに食べ始めた。……とんでもない雌豚だよ。
何だか見るのが辛くて……私は視線をみっちゃん達から外す。
あー、色々と失敗したな……チョコなんて作ってたから寝坊して迷惑掛けて、それに……杉ちゃんのチョコだって……。
松岡「三女さん? どうしたの元気なさそうだけど」
ひとは「……別に普通だよ」
そういうと、納得してなさそうな顔をしならが「そう?」と呟く。
何もリアクションなしに返事したけどもう少し存在感を出してから登場して欲しい。
しばらく沈黙が続いてしまう。これ以上沈黙が続くとあちらから詮索される気がしたので私から話しかけることにした。
ひとは「松岡さんは杉ちゃんにチョコ貰いに行かないの?」
松岡「んー、まだお腹空いてないしね。食べないのに貰いに行くのって失礼かなって」

76 :
視線をみっちゃんたちのほうに向けながらさらに続ける。
松岡「まぁ、お昼のデザートとして貰いに行くよ」
松岡さんなりにちゃんと考えてるんだ。失礼な言い方になるけど意外にまともだった。
でもチョコレートはお菓子でありデザートにはならないと思うんだけど……まぁ、気にしないでおこう。
そして松岡さんの視線の先を私も辿ると、みっちゃんと杉ちゃんが馬鹿やってる姿が写る。
それを見たまま、松岡さんがなんでもないように呟く。
松岡「それにしても、あの二人仲いいよね」
ひとは「だね……」
私も正直にそう思う。だけど……松岡さんの言葉がなぜか心を重くした。
松岡「…………もしかして、みっちゃんと杉ちゃんが仲良くしてるのが面白くない?」
ひとは「ゴッ、ゴホゴホッ!」
完全に不意打ちだ。予想外の台詞に、咳き込んだ。
そうやって咳き込んでいると、松岡さんが「大丈夫?」と心配そうに覗き込んでくる。
ひとは「ど、どうしてそう思ったの?」
否定すればいいものを、何でこんな答え方……。
どうやら私は、動揺しすぎてうまく頭が回ってないらしい。
松岡「えっとね……私も三女さんが他の人と仲良くしてたら…少しくらい嫉妬しちゃうしね」
照れ隠しをするように頬をかいて、私が何も喋れないでいると続けて喋る。
松岡「何となく気持ちは分かるって言うか……」
…………。
まぁ、いいや。否定しようと思ったが止めた。
別に茶化したりするつもりもなさそうだし。

77 :
ひとは「嫉妬…なのかな……」
頬杖を付いて考える。確かにあの二人見てて面白くない。
それじゃ、宮下さんと吉岡さんを見てると……違う意味で面白く無いか。何というか鬱陶しそうだ。
他の人に例えるのは難しいので止めよう。
二人を見てて面白くないって、いつもそんな風に思ってるわけじゃない。
今日が顕著にそう感じるだけで……それは今日がバレンタインデーだから?
私もみっちゃんにチョコを作った。なのに杉ちゃんに先に渡された。
そして、みっちゃんは貰ったチョコをすごくおいしそうに食べていて……何だか杉ちゃんに負けた気がして。
だから、面白くない。コレが嫉妬と言うものなのだろうか。
私は嫉妬するほどみっちゃんを好いているのだろうか?
隣から「ねぇ?」と松岡さんが言葉を挟み、私は思考を中断することにした。
松岡「さ、三女さん……その腕の怪我!」
頬杖していたので朝出来た腕の傷が見えたらしい。
ひとは「あ、コレは朝ふたばが――」
松岡「霊との激戦があったのね!」
…………。
今までまともに会話できてただけあっていきなりの変貌にイラっと来た。
ひとは「そうだよ、怪我をした状態で保健室に行くとその霊に会えるよ! さぁ松岡さんも早く怪我をして保健室へ!」
松岡「やだなー三女さん。怪我をした状態で保健室だなんて、会えるのは暴走した栗山っちだけだよ〜」
…………。
もうやだこの人……。


78 :
〜 下校(みつば視点) 〜
みつば「はぁ、……今年もまた杉崎に何か返さないといけないわけね……」
下校時間、校門前でお手洗いに行っている杉崎を待ってるときに一緒にいるふたば、宮下、吉岡に言う。
宮下「まぁ、いいんじゃないか? それなりに旨かったし。またみんなでクッキー作ってやろうぜ?」
吉岡「そうだね、それがいいよー」
ふたばは……一人で走り回っていたためか聞いていなかったようだ。
まぁ、クッキー作りのときに役に立つのはふたばじゃなくひとはだし問題ないけど。
――そこまで考えて気がつく。宮下の奴、ひとはと料理したいだけじゃない?
いつも何かとひとはに粘着してるし……。
あれ? そういえば……ひとはは?
杉崎「お待たせ。……あれ? 三女っていなかったんだっけ?」
杉崎が戻ってきて、丁度私が疑問に思ったことを言ってくれた。
ふたば「何か用事があるから先に帰るって言ってたっスよ」
用事ね……買い物でもしにいったのだろうか?
特にそんな話聞いてないし、わからないものはわからない。考えるのを止めようと思ったが――
ふたば「今日のひと、元気なかったっスけどだいじょうぶっスかねー」
――ふたばの言葉に少しだけ考えることにした。
確かに元気なかったかも……朝はそんなに引っ掛かっていなかったのだが、午後あたりは無口になったというか、不機嫌というか。
何度か憎まれ口を叩かれたのだが、とにかく少し違和感を感じていた。

79 :
宮下「そんなことなかったろ? 私にはいつもと一緒に見えたぞ」
まぁ、ひとはも気が付かれないように取り繕ってたみたいだし、正直私も言われるまで気に留めてなかった。
みつば「まぁ、空気読めない宮下じゃわからなくて当然ね」
宮下「なんだと! だったら何が原因で元気なかったんだよ!」
みつば「しっ…知らないわよそんなこと! あんたに何かされたんじゃないの! 前科もあるし!」
宮下「何もしてねーって! ていうか、朝迷惑掛けられたの私のほうだし! あと前科とか言うな、完全に誤解だ!」
吉岡「だ、大丈夫だよ宮ちゃん! 私達、前科があっても友達だよ!」><
宮下「だぁー、吉岡おまえもフォローになってないんだよ!」
ふたば「突如理由無くキレる若者……かっこいいっスね!」
宮下「理由、ありすぎて困るくらいだ!」
杉崎「……」プイ
宮下「ちょ! なんで視線逸らしたんだよ!」
あ、宮下のやつ、泣きそうになってるし。皆、流石に言いすぎ……って私から言ったんだっけ?
まぁ、杉崎はフォローしてあげようと思ったがフォローする言葉が見当たらなかったってところだろう。
……ある意味一番ひどいかもしれないけど。
杉崎「そういえば、三女に友チョコ渡して無かったわね……」
話題を逸らすように杉崎が言い、カバンの中から残っていた高級チョコを取り出す。
杉崎「みつばあんたに渡して置くから……いや、ふたばのほうが――」
みつば「べ、別に食べないわよ! 私が渡すわ!」バシッ
そういってふたばに渡そうとしたチョコを奪ってやった。

80 :
…………。
杉崎のチョコを眺めていて思いついた。
みつば「ちょっと、用事思い出したわ。ふたば、先に帰ってなさい」
杉崎「え、ちょ、どこ行くのよ?」
みつば「別に何処だっていいでしょ!」
ふたば「みっちゃん! 小生もいくっスよ!」
みつば「あんた、ばかなの? ひとは元気なかったと思うんだったらさっさと帰ってあげなさいよ!」
ふたば「あ、そっか〜、了解したっス!」
そういって私は皆から別れ、デパートに向かった。

〜〜〜以上本編〜〜〜
そろそろ何かしらの規制くるかと思うので、夕飯の後に後編投下します。
あと後編は長いです。今が丁度折り返しくらいです。

81 :
再開します。
〜〜〜以下本編〜〜〜
〜 買物(松岡視点) 〜
松岡「んー、姉妹でも嫉妬ってしちゃうものなんだ……」
学校で三女さんが嫉妬してたのを見て思った。
いつも一緒に居る事の出来る家族であってもそういう感情ってあるんだと。
松岡「みっちゃんって意外に慕われてるいい姉なのかな……」
そう考えてみたが――
松岡「いや、あんな性格なのにいい姉って事はないよね」
???「ちょっと! なに私の陰口言ってるのよ!」
突然後ろから声を掛けられる。驚いて振り向くと――
松岡「あっ! みっ…みっちゃん! き、聞いてた?」
――みっちゃんだ。しまった三女さんが嫉妬してるって事、一番知られたくない相手だったんじゃないかな……。
みつば「聞こえたわよ! 『あんな性格でいい姉なんて事はない』ですって、悪かったわね!」
松岡「そ、そこだけ?」
みつば「へ……あ、あんた、それ以外も陰口言ってたわけ!?」
松岡「そ、そういう意味じゃなくて……」
どうやら途中から聞いてたみたいだ。危うく三女さんを辱めてしまうところだった。
とりあえず、話題を逸らそう。
松岡「そ、それでみっちゃん何しにデパートまで来たの?」
たしか杉ちゃんたちと一緒に帰ってたような気がしたんだけど。
みつば「えっと…、ちょっと買い物を……ってあんたに関係ないし!」
何このあからさまな動揺。何か隠してるみたい。だったら……。
松岡「そうなんだ。私はもう買い物終わったから先に帰るね」
みつば「そ、そう? それじゃ、また明日」

82 :
なんてね。
そういって別れて、私は気が付かれないようにみっちゃんの後をつけることにした。
別れた後、みっちゃんは周囲を気にしながら、食品店売り場に向かった。
松岡「なーんだ、お菓子か何かかな……」
言ってるそばからチョコレート菓子を……ってあれ、バレンタイン用に包装されたチョコじゃない!
え、何? 誰かに上げるの? ま、まさか自分で食べるように綺麗に包装されたものなんて買わないわよね?
でももう夕方だし、上げるとしても親しい友達か家族とかしか――もしかして三女さんに?
あ、二つ持った。財布見ながら迷ってたみたいだけど、どうやらふたばちゃんの分だと思われるチョコも買うようだ。
なんだかんだ言って易しい良い姉なのかもしれない。
……うん。面白そうだし声掛けよう!
松岡「みっちゃん!」
みつば「!! まっ…松岡! あんた帰ったんじゃ……」
松岡「みっちゃんが何買うのか知りたくて……で、そのチョコは三女さんとふたばちゃんに?」
みつば「ち、違うわよ! 私のよ! 私用のチョコよ!」
松岡「包装してあるチョコなんて自分用に買わないと思うけど」
ニヤニヤしながらみっちゃんを攻める。
コレ意外に楽しい。三女さんや杉ちゃんがみっちゃんを虐めてる理由、ちょっとわかる気がする。
みっちゃんは「ぐぬぬ……」といいながら観念したのか嘆息した後続けた。
みつば「そうよ……ひとはの奴が元気なかった気がしたから相談にのってやろうかと思って」
松岡「相談? チョコいらなくない?」
みつば「……チョコは布石。コレがないと相談持ちかけたとき、はぐらかされると思うから」

83 :
えっとどういう意味だろう? チョコがあるとはぐらかされない?
私が理解できていないのがわかったのかみっちゃんが面倒臭そうに説明を始めた。
みつば「もし仮に、私がひとはに『悩みでもあるなら相談してみなさい』って言うとするわよ?
ひとはが返す言葉はむかつくけどたぶん『た、大変! 頭まで脂肪にやられ始めてる!』ってな具合になるのよ。
それを防ぐには、あらかじめ嫌味を言いにくい空気を作る必要があって……」
松岡「あ、なるほど。感謝させてからその台詞を言えば、嫌味を言われないって事ね」
みつば「そういうこと」
意外に頭使ってるんだ。杉ちゃんのチョコのおかげで頭に糖分が回ってるんだろうか?
ちょっと単純に考えすぎだとも思う――――チョコ渡した時点で嫌味を言われることを想定していない点とか――――けど、何とかなるだろう。
私は三女さんが元気の無い理由を知っている。だからその作戦がきっと成功することもわかる。
でも、頭を使って考えてる割にみっちゃんの顔は若干不安な顔をしていて……きっと成功する自信は余り無いのだろう。
だから、私は――
松岡「うん、みっちゃんその作戦絶対成功すると思うよ」
――励ました。三女さんに元気になってもらうため、もちろんみっちゃんにも……。
みつば「何であんたにわかるのよ? また霊の仕――」
松岡「違うわよ、私がそう思うの!」
みっちゃんが言い切る前に言ってやった。これは紛れもない私の意志だったから。

84 :
みつば「へ? そ、そう…一応、その……ありが…と」
松岡「う、うそ! みっちゃんがお礼だなんて……これは霊――」
みつば「ちょ! 私がお礼しちゃいけないわけ! っていうかあんた――……」
みっちゃんがベラベラ喋りだした。ああ、コレいつものみっちゃんだ。幽霊の仕業だと思ったのに残念。

デパートの出口に向かっているとき、買ったチョコを片手にブラブラさせながら、みっちゃんが話しかけてきた。
みつば「そーいや、あんたと二人で買い物なんて、ブラ買ったとき以来ね」
そういえばそうかも。というより私基本ひとりで行動してるから、みっちゃんに限らず複数人で買い物なんてことが珍しい。
っていうかチョコを“ブラブラ”させてたから“ブラ”の件思い出したとか? そんなわけないか。
松岡「あ、あの時のブラ、結局私が貰っちゃったんだっけ? ……今から買いに行く?」
みつば「いいわね! ――と思ったけど、お金がもう無いから今回は諦めるわ。バレンタインデーのチョコってあんなに高いだなんて驚きよ」
たしかに、綺麗に包装されたチョコだったのでそこそこ値が張ってたようだ。改めて思うとやっぱり良い姉だ。
みつば「じゃ、私帰るけどあんたは?」
松岡「んー、……もうちょっとデパートにいるかな」
みつば「ふーん、じゃ先に帰るわね」
松岡「うん、また明日ー」
そういって別れた後、私はみっちゃんが買っていたバレンタインチョコ売り場に来ていた。
松岡「う〜ん。今年はもう無理だけど……来年は友チョコとか学校に持っていこうかな……」

85 :
〜 本命?(ひとは視点) 〜
……遅い。
いったいどこほっつき歩いてるんだか……。
ふたば「ひと! 悩みごとっスか! 小生が相談に乗ってあげるっスよ!」
ふたばは、さっきからこの調子だ。
悩みがあるって知られた以上は話したほうがいいかと思ったんだけど……。
ふたばは口が軽い……って訳じゃないけど、なんと言うか純粋すぎると言うべきか。
学校の皆には、みっちゃんにチョコを用意したなんてこと知られたくない。
だから、知られてしまうリスクは出来る限り減らしたい。
ひとは「なんでも無いから。勘違いだよ」
何度目になるかわからない誤魔化し。酷く良心が痛む。
みっちゃん、早く帰ってきて…………帰ってきたところで解決するかどうかわからないし、チョコだってどう渡すか決まってない。
いっその事もう渡さないで置こうか?
……うん。だったら悩まなくて……済むしね。
もともと作らないつもりだったんだし……。
ふたば「ひと! 勘違いじゃないっス! 元気ないっス! 今だって辛そうな顔してたっス!」
ふたばが炬燵から乗り出して、対面にいる私に言う。
辛そうな顔? 私が?
その時、玄関から物音がした。

86 :
みつば「ただいまー……ってふたば何やってんのよ?」
……良いタイミングだ。正直、ふたばへの返答に困っていたから。
ふたば「みっちゃん! ひとが悩みを相談してくれないんっスよ」
ひとは「べ、別に、悩みなんて無いよ」
そっけなく言ったつもりだが、悩みの元凶であるみっちゃんがいる前ではうまくいかない。
コレじゃ、二人から攻めたれるかも……。
みっちゃんとは目を合わせず視界の隅だけで反応を確認する。
みっちゃんは私を一瞥した後、少し考えるような素振りをしてから口を開いた。
みつば「……あ、そういえばパパがまた職質で交番に連れてかれたらしいのよ、ふたば悪いけど迎えにいってくれる?」
……あからさまに嘘だ。職質されたなんて電話着てないし、携帯持ってないみっちゃんがそれを知るには家で電話を取る必要がある。
でも、どうして?
ふたば「ホントっスか! あ、でもひとが……」
みつば「ひとはは私に任しておきなさい! それに悩みなんて後でも聞けるでしょ?」
ふたば「! みっちゃん……かたじけないっス!」
みっちゃんの嘘を信じたふたばが家から出て行く。みっちゃんはそれを見て軽く嘆息した。
ひとは「…………みっちゃん、どういうつもり?」
みつば「何がよ?」
しらばくれるつもりだろうか?
なんだか、みっちゃんを見てると腹が立ってきた。
……惚けたのも理由のひとつだろうけど、今日の休み時間のアレと同じ……。
ひとは「あんな嘘ついて……みっちゃんも私に何か言いたいの?」

87 :
動揺を隠すため可能な限り冷たく言い放つ。
ついでにこれ以上追求されなければ言うことないんだけど――
みつば「……え、ええ、ふたばがいるよりやり易いしね」
――そううまくはいかない。若干怯みはしたものの、引き下がる気は無いらしい。
みつば「……はい」
みっちゃんがポケットから何かを取り出して炬燵の上に置いた。
ひとは「え、チョコレート?」
……まさかバレンタインだから?
みつば「杉崎からの友チョコよ、ちゃんと貰いなさいよね」
き、期待なんてしてなかったけどね!
みつば「……こ、これも、受け取りなさい」
そういって手に持っていた袋から綺麗に包装されたチョコレートを取り出し炬燵の上に置いた。
……これは誰からのチョコレートだろう?
考えても答えは出てこない。みっちゃんもなぜか黙ってしまったので仕方なく聞き返すことにした。
ひとは「こっちは、誰からの?」
みつば「……私…からのよ」
ひとは「ふーん……みっちゃんから………………え゛?」
みっちゃんから?
みつば「な、何よその反応……」
ひとは「いやいや、なんでさ!? むしろ自分が欲しいって言ってなかった?」
言った。確かに言ってた。だから、私はチョコレート作ったんだし……。

88 :
みつば「い、言ってたけど……べ、別にそれであんたにチョコ上げない理由はならないじゃない」
それはそうなんだけど……。
ひとは「だ、だけど――」
みつば「いいから、受け取んなさいよ!」
私は納得できず言葉を続けようとしたが、チョコを胸元押し付けられた。
みつば「か、勘違いしないでよね! べ、別に深い意味なんて無いわよ!」
よく見るとみっちゃんの顔は真っ赤で……視線を胸元に移すと、チョコを貰ったって実感が沸いてきて……。
ひとは「……あ…ありがと……」
結果、私も恥ずかしくなって……きっと私の顔も真っ赤なのだろう。
みつば「そ、それで、ふたばも言ってたけど悩みって何よ?」
仕切り直すように、しかし視線は私から外したまま話しかけてくる。
ひとは「あ……えっと……」
チョコ買って来たのは私が元気なさそうに見えたからだろうか?
どういうつもりでチョコをくれたのかと思ったがそういうことか。
……冷静に考えてみれば、みっちゃんがチョコを渡すなんて発想しないだろう。
私の態度に違和感を感じ、みっちゃんなりに気を使ってくれたのかも知れない。

89 :
…………。
ひとは「……ちょっと待って」
私は立ち上がって、冷蔵庫を開ける。
渡さないでおこうと思っていたが、ふたばに心配掛けて、みっちゃんに心配掛けて、そしてチョコまで渡され……。
このまま、白を切り通すなんて選択肢、ありえない。
みっちゃんもチョコを渡してきたんだし、この勢いで渡してしまおう。
冷蔵庫の奥に隠すようにおかれた目当てのものを取り出す。
ひとは「こ、これ……」
みつば「へ? なによコレ?」
炬燵の上に置いたのは白い箱。昨日の夜私が作ったチョコが入った箱。
ひとは「……チョコレート…トリュフ…何だけど……」
みつば「えっと……いつ買ってきたの?」
ひとは「買ったんじゃなくて……作ったん…だけど」
みつば「……私に?」
ひとは「っ! ……う、うん」
みつば「……なんで私に?」
……キレていいかな?
ひとは「な、なんでって……チョコ寄越しなさいって言ってたよ!」
みつば「そういう意味じゃなくて! ……って言うか、あんたそんとき、すぐ断ったじゃない!」
ひとは「そ、そうだけど……」
みつば「それにコレが悩みと何の関係があるのよ?」
ひとは「だ、だから……断ったのに作ったから……なんて言って渡せばいいのか…わからなくて」
みつば「……」
ひとは「……」
ああ、なにこれ……気不味い。
やっぱり渡すのやめた方が良かったのかな……。

90 :
みつば「ああぁあ! もういいや!」
何だか知らないが、頭を掻き毟って炬燵に突っ伏した。
意味がわからない。
みつば「……ねぇ、コレ、今から食べていい?」
炬燵に突っ伏したまま問いかけるみっちゃん。何その上目遣い……。
ひとは「あ……うん」
みつば「そっ、それじゃ、いただ……貰ってあげる!」
いや、言い直さなくても……それにしてもみっちゃん、一気に機嫌が良くなった……さすが雌豚ってところだろうか。
そんなことより、みっちゃんがチョコ食べてくれた。
ひとは「ど、どう? す、杉崎さんのより美味しい?」
つい、感想が聞きたくなり、しかも杉ちゃんと比べて聞いた。
どんだけ嫉妬してるんだろ……私。
みつば「え? 杉崎? ……」
みっちゃんがなにやら考え込んでいる。……やはり市販のチョコじゃ高級チョコに勝てなかったのだろうか……。
みつば「……あんたのが…美味しい…………と思う」
……えっと?
ひとは「今、気を使った?」
みつば「使ってないわよ!」
ひとは「目、逸らしていったよ?」
みつば「そ、それは……」
ひとは「杉崎さんのチョコのが美味しかったんでしょ?」
みつば「ち、違うわよ! 杉崎のも美味しかったけど高級過ぎて口に合わなかったのよ!」

91 :
ひとは「……」
私が納得のいかない顔で見つめてやると、しょうがなくといった具合に続ける。
みつば「きょ、去年食べたのと、違う種類みたいで香りが強いというか何というか――」
ひとは「庶民であるみっちゃんには美味しさがわからない味って事?」
みつば「くっ、悔しいけど、そういうことよ! ……まぁそれなりには美味しかったけど」
ひとは「その台詞、杉崎さんに言って上げればとてつもなく喜んだと思うよ」
みつば「だから、杉崎に言わないでおいたって……あれ? ひとはって杉崎のこと杉ちゃんって呼んでなかったっけ?」
! 本当だ。杉崎さんって呼んでた。
えっと、やっぱりコレって嫉妬……が原因だよね。
とりあえず誤魔化さないと……。
ひとは「……杉崎さんの“崎”が丁度思い出せたんだよ」
コレはひどい。
杉ちゃんって呼んでる所を宮下さんに指摘されたときと同じ様な返しをしてしまった。
みつば「……よくわかんないけど、喧嘩してるんなら仲直りしておきなさいよ」
えー……みっちゃんにそんなこと言われる日が来るなんて……。
でも、まぁ、杉ちゃんには何だか悪い気がするし、恐らくホワイトデーのお返しを皆ですることになるだろう。
その時は嫉妬とか置いといて、しっかりしないと。
みつば「……そういや、コレふたばの分は? まだ冷蔵庫の中?」
ひとは「え? みっちゃんの分だけ…だけど……」
……途中まで言って気がついたが、そっか。ふたばの分も一緒に作っておくべきだった。
そうしたら、こんな悩まずに済んだだろうし……それにこれじゃ、ふたばがかわいそうな気もしてきた。
みつば「……知らぬが仏ね。さっさと食べて証拠隠滅。まぁ、私がふたばのチョコ買ってきてあるし……」

92 :
あ……そうなんだ。
いや、まぁ、それが普通……だよね。
…………。
不意に嫌な汗が流れる。
みっちゃんにだけに……チョコを作ったんだ……私。
杉ちゃんは友チョコとしてたくさんの人に上げたのに。
みっちゃんだって姉として妹二人にチョコ用意してるのに。
だったら、私のチョコは?
たった一人のために作った……たった一人に渡すチョコ。
……本命?
いやいやいや! 違う、断じて違う!
みっちゃんにチョコを寄こせって言われたからで……。
確かにその通りなのだけど……でも……断ったし、作る必要なんて……無かったのに。
みっちゃんの台詞は、ただの切っ掛けに過ぎないってことで……。
結局は私の意志で……みっちゃんにだけチョコを作った……。
顔が熱い。しかも思考がうまく纏まらない。
みつば「……――ひと…? ……ひとは!」
ひとは「え! あ、な、なに?」
みっちゃんの言葉が聞こえ現実に戻される。
みつば「何じゃないわよ! いきなり呆けちゃって……熱でもあるの?」
ひとは「だ、大丈夫だよ。気にしないで」
みつば「本当でしょうね? ……まぁいいわ。とりあえず、えっと…チョコ……ありがと」
ひとは「あ…わ、私夕飯の準備しないと……」
……動揺しすぎ私……照れ隠しの下手さにも程がある。

93 :
まぁ、でもとりあえず夕飯の準備だ。時間的にも間違ってないし、顔を隠すのには丁度いい。
……視線を感じる……。いや、気のせいかもしれないけど。
えっと、結局私は何でみっちゃんにだけチョコを作ったのか……。
さっきも考えたが、切っ掛けはみっちゃんの一言だった……だけど。
……認めたくないけど私は、私の作ったチョコをみっちゃんに食べて貰いたかった。
私のチョコを貰って美味しいって……笑顔で答え、満足してもらいたかった。
……。
だけど……本命チョコじゃない。絶対に。そんなつもりで作ったんじゃない。
自分の中で出した答えは、“本命じゃないチョコ”。
だけど、その答えを何故だがひどく空しく感じた。
私がみっちゃんのために一生懸命に作ったチョコが、ありもしない本命チョコに劣っている気がして……。
自分の考えてることがわからなくなる。
私はみっちゃんが嫌いだ。わがままで、ドSで、雌豚だし、ガチレン馬鹿にする……。
でも、違う。……この想いは矛盾しているのだろうか?
嫌いなはずなのに……私はみっちゃんが好きなのだと思う。
……意味がわからない。
しかもその“好き”が姉としてなのか、家族愛なのか、それとも――
――そこまで考えて、考えるのをやめた。
きっと答えなんて出ない……出さない方がいいのかも知れない。
答えが出ていない方が……みっちゃんとの関係を自然に感じることが出来る気がして。

94 :
気持ちの整理は完全ではないが、頭は回るようになってきた気がする。
ふっと沈黙が続いていたのが今更気になり、夕飯の準備をしながらみっちゃんに声を掛けた。
ひとは「ねぇ……みっちゃん?」
みつば「な、なによ?」
ひとは「ホワイトデーのお返しは……くれるの?」
普通、見返りは求めないものだとは思う。でも私達のよくわからない関係性だからこそいえる言葉。
みつば「……いいわよ、上げるわ。その代わりあんたも私に寄こしなさいよね」
断るかと思ったが、自分もお返しがもらえるチャンスだとでも思ったのか、条件付で了承してくれた。
そっちがそのつもりなら、こっちも条件をさらにつけ加えてやる。
ひとは「私が作り方教えるから……今度は手作りね」
みつば「はぁ? 何よそれ! あんたに教わってあんたに渡すって変じゃない?」
ひとは「……気にしすぎだよ」
<バタン>
玄関が開いた音。ふたばか、お父さんか……
ふたば「ただいまっス!」
草次郎「ただいま……なぁ、連絡してないのにどうしてパパが交番に居るってわかったんだ?」
……へー、本当に職質されてたんだ。そんなオチだと思ったよ。

さて、ホワイトデーは何作って、何作らそうか考えておこう。
おわり

95 :
〜〜〜以上本編〜〜〜
此処まで読んでくれた人居ますか?
毎度長くてすいません。
ちなみにホワイトデー編ですが……今のところ予定しておりません。
要望があれば時間は掛かるかとは思いますが、作れるかと思います(読みたい人いるか怪しいですが)。
その時は、もう少し松岡さんを輝かせたいなーとか思ってます。
感想とか書いていただけると助かります。

96 :
乙!

97 :
>>95
毎度良いSSだな〜
ホワイトデー編も楽しみにしとりますよ

98 :
マジ長すぎて見る気が起きない
もっとコンパクトに纏めろよ

99 :
>>98
だまれよ能無し

100 :
>>95
ひとはの心の動きにドキドキしました
そして松岡さんがいい味出してますw

101 :
ひとみつ補給させていただきました
松岡さんが地味にいい味出してたねw
松岡さんの巻き返し期待だなw
はやくみつどもえ再開してー

102 :
>>99
少しでも否定的な意見があるとキレルお前が能無し
俺は率直な感想を述べただけ

103 :
>>96-102
沢山の感想ありがとうございます。
ホワイトデー編製作に取り掛かります。
今回まともな松岡さんを上手く、みっちゃん、ひとはに絡ませたかったので……
松岡さんが好評なようで良かったです。
>>98,102
長すぎてすいませんorz
どうも書き出すと書きたいことが一杯で……今後も長くなってしまいそうです。
感想求めておいてなんですがスレが荒れちゃうのは不本意なので
今後は読まずに、書き込まずスルーしちゃって下さいね。
>>99
こちらの方もフォローしていただいて感謝しています。
ただ、もう少し穏便に……もしくはスルーして感想など書いていただけると嬉しいです。
>はやくみつどもえ再開してー
超絶同意!

104 :
>>103乙おつー
ひとはがすごく可愛かった!
長編SSならうpろだを使ってあげるのもアリだよ
字数制限かからないしね

105 :
アニメの三期がやれば連載再開するかなー

106 :
>>104
感想、提案ありがとうございます。
うpろだに上げる弊害として、
検索に引っかからない、気軽に冒頭だけ読んで続きを読むか決める時面倒、
携帯で見えない、などがあります。
今のところうpろだよりこちらの方が良いかなっと。
こちらの負担(規制対策とか)なんて知れてますしね。

107 :
>>106
なるほど、いろいろ考えてるんだな
読む側としても直接投下してくれた方が手軽に読めるもんな
って訳で続編も期待してるよー

108 :
個人的にはスレに直接投下してくれた方が嬉しい
どうせ過疎だし問題なかろうよ

109 :
>>106
次回も期待しておりますm(−−)m
空気読まずに松ひと妄想垂れ流します

中学生になったという設定でお願いします
昼休み
宮下「三女はいつも読書ばっかだな」
三女「ほっといてよ」
宮下「たまには体を動かそう!バスケでもやろう」
三女(こういうとこは小学校から変わってないな…)
宮下「ほら、行くぞ!」グイッ
三女「だから別に私は…」

松岡(何か知らないけど…腹立つな…)

110 :
松岡「おはよー三女さん」
三女「おはよう」
松岡「昨日ね携帯買ってもらったんだ〜♪」
三女「良かったね」
松岡「うん、それでね、三女さんの番号教えて欲しいの」
三女「わ、私の、番号?」
松岡「うん、携帯買ったら三女さんの番号を一番に登録したいと思ってたの」
三女「わ、私のでいいなら…良いよ」
松岡「ありがとう三女さん!!じゃあ赤外線でry」
三女「赤外線?」

宮下「三女、私とも番号を交換しようじゃないか」
三女「やだ」

111 :
昼休み
クラスメート「丸井さんと松岡さんってホント仲良いよね〜」
三女「いや、別にそういう訳じゃ…」←照れ隠し
松岡「やっぱりそう見える?」←得意げ
三女「松岡さんとは小学校からの付き合いで、その」
松岡「そうそう私達小学校からの付き合いなんだよねー」
クラスメート「そうなんだ」
松岡「うん、私と三女さんはね…」
三女(ゴクッ)
松岡「仲の良い友達なの♪」

三女(私は何で少し残念がってるんだろう…)

112 :
中学生になってもこの二人は仲良しだと思うんだ
そして松岡さんは霊関係のことは少し自重するようになってると思うんだ

113 :
乙です
宮鹿さんは安定してるなぁ

114 :
>>112
乙!
いいねー、私も松岡とひとはは、仲良しのままだと思うよ
宮下さんの場合誰からか携帯番号入手して、いきなり掛けてくると予想
そして着拒されるという流れ
細かいことだが、松岡って既に携帯もってなかったけ?
記憶が確かなら携帯の回でチーム杉崎内で宮下以外が携帯持ってたはず

115 :
「赤外線?使い方わからない」

116 :
>>112
GJ
三女さんにほっこりしつつ報われないM下さんにもキュンときた

117 :
またまた妄想垂れ流しますー
例によって中学生と言う設定です、すみません

放課後
松岡「三女さん一緒に帰ろう」
三女「ゴメン私今日は委員会あるから、先に帰ってていいよ」
松岡「じゃあ終わるまで待ってるよ」
三女「…結構かかるかもしれないよ?」
松岡「大丈夫大丈夫、待ってるよ」ニコッ
三女「…じゃあ、後でね」
松岡「うん、頑張ってね〜」

三女(どうしてあそこで”ありがとう”って言えないんだろう…)


118 :
放課後
みつば「さあ、さっさっと帰るわよ」
杉崎「あー、私今日委員会あるから、先に帰ってて」
みつば「…仕方ないわね、待っててやるわよ。待ってて欲しいんでしょ?」
杉崎「な…だ、誰があんたなんかにっ!!あ、あんたこそ私と帰りたいだけじゃないの?」
みつば「はあああ!?わ、私はアンタと帰れば何か奢ってもらえるかもしれないから待つだけで別にry」

三女「委員会始まるんだけど」

119 :
放課後
吉岡「宮ちゃん帰ろう」
宮下「悪い、今日は委員会あるから先に帰っててくれ」
吉岡「じゃあ待つよ」
宮下「いつ終わるか分からないぞ?」
吉岡「大丈夫だよ、だって私宮ちゃんと一緒に帰りたいもん」
宮下「しょ、しょうがないな、コイツめコイツ」こつこつ
吉岡「もう宮ちゃんったら〜」

三女「こんなのばっか」

120 :
まあ、こんな感じで皆イチャコラしてれば良いと思うよ
読んでくれた人ありがとー

121 :
乙です
三者三様でニヤニヤしますw

122 :
GJです。
宮藤さん報われてるじゃないか!

123 :
いいなぁ、中学生編いいなぁ!

124 :
中学もいいな

125 :
このまま高校生に突入してもアリ

126 :
むふぅ
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1695100.jpg

127 :
おっぱいって姉妹間でもさわりあうものなのか・・・

128 :
ひとみつだー!
>>127
他人なら宮野さんみたいに犯罪になる

129 :
>>128
女であの発想ができるのりおは凄まじいと思う

130 :
みっちゃんは三女さんの乳揉まないの?

131 :
>>130
そりゃおめぇ無いものは揉めねえだr
お?誰か来たようだ

132 :
>>131
宮森「おい! 事実だったとしても三女の悪口言うなよな!」そよっ☆

133 :
ボフッ
すい〜

134 :
なんか妄想しかすることないこの頃
例によって中学生設定でお願いしますm(−−)m
4月×日
今日は中学校の入学式でした。
みっちゃん達とクラスが別だったのでとても緊張しました。
でも、松岡さんと同じクラスだったので(しかも前の席)少し安心しました。
彼女は私と同じクラスだったことに驚きつつも喜んでいました。
なんとか中学でもやっていけそうです。

4月×日
今日は中学の入学式で、少し緊張しました。
杉ちゃん達とはクラスが別だったので残念だったけど三女さんと同じクラスに
なれたのでとても嬉しかったです。
三女さんは「…よろしく」と素っ気無かったけど三女さんらしいと思いました。
明日が楽しみです♪

135 :
5月○日
今日は松岡さんに携帯の番号を聞かれました。
何でも故障してたのが直ったみたいでとても喜んでいました。
誰かに聞かれるなんてことは初めてだったので戸惑っていると松岡さんが
赤外通信?とかで送ってくれました。アドレスはとても彼女らしいものでした。
私も送るととても喜んでいました。

5月○日
今日は故障中だった携帯が直ったので早速三女さんに番号を聞いちゃいました!
始めは戸惑ってたけど、「わ、私ので良ければ…」と了承してくれました。
その時に顔が少し赤くなっていてとても可愛いかったです。
三女さんのアドレスにはtikubiという単語が入っていました。
お互いに番号交換が出来てとても嬉しかったです♪

136 :
6月×日
今日はさっちゃんの家に招待されました。
誰かの家へ正式に招待されるのは初めてだったので少し緊張しました。
さっちゃんの部屋は私の予想とは反しとても女の子らしく可愛い部屋でした。
それからしばらく雑談して18時には帰りました。
まあまあ楽しかったです。

6月×日
今日は三女さんがうちに遊びにきました!
なんだか最初は緊張してたみたいでぎこちなかったです。
私の部屋に入るや否や「わあ…以外だね」と言われちゃいましたorz酷いよ三女さん!
それから色々な話をして18時くらいには帰っちゃいました。
とても楽しかったです!!!また誘いたいです。

137 :
以上…両者日記より抜粋でした。
この二人はもっといちゃいちゃするべきですよね!
読んでくださった方々ありがとです。

138 :
乙ですー!
もう結婚しちゃえばいいのに

139 :
途中からさっちゃんになってるね。素晴らしい。

140 :
ゴミばっか

141 :
過疎だなあ…
やっぱ連載してくれないとネタがないよな

142 :
酔った勢いで書いた…今は反省してますorz
中学生設定でお願いいたしますm(−−)m
昼休み
みつば(ひとははうまくやってるかしら…べ、別に心配ってわけじゃry)

三女「そういえば松岡さんって口寄せ出来るんだよね、ちょっとやってみて」
松岡「勘弁してよ三女さーん」←涙目
三女「あれ?小学校の時出来るって言ってなかった?」
松岡「あれは、その…わ、若さゆえの過ちというか…」
三女「フフッ何それ」
松岡「あ!三女さん今笑った!!」
三女「わ、笑ってないよ、気のせいだよ気のせい…」←真っ赤
松岡「へえ〜何か得しちゃったかも♪」
三女「だから笑ってなんかry」

みつば(ひとはのあんな笑顔初めて見るわね…嬉しいけど…何か…)

143 :
松ひとと見せかけてのみつひとでした
うまく言えませんが何かこういうの良いですよね!
読んで頂ければ幸いでございますm(−−)m

144 :
GJ

145 :
俺の中では松ひとだなGJ
ひとみつも好きだけどねw

146 :
乙です
最近は松ひとが熱いな

147 :
>>143
俺得だわーGJ!
どんどんお酒飲んで書いてください

148 :
なんでひとはの日記はみっちゃんのことばかり書いてあるの?

149 :
それはね

150 :
>>148
言わせんな恥ずかしい

151 :
杉みつは公式だな!
とかよく言われるが
ひとみつも公式だよねー

152 :
ふと思いついたので妄想垂れ流します
中学設定でお願いします
放課後
松岡「三女さん一緒に帰ろう!」
三女「ゴメン、今日は委員会があるk」
松岡「じゃあ終わるまで待ってるね」
三女「…うん、じゃ後で」
松岡「頑張ってね〜♪」
待つこと10分
宮下「あれ、松岡?」
松岡「宮ちゃん、どうしたの?」
宮下「ああ、委員会の様子を見にきたんだ。」
松岡「どうして?」
宮下「一緒に帰りたい奴が委員会に参加しててな、それでry」
松岡(まさか…三女さんじゃ…)

153 :
宮下「お前も誰か待ってるのか?」
松岡「う、うん…まあ、そんなとこかな…ハハッ」
宮下(まさか…吉岡じゃないよな…)
松岡「ねえ宮ちゃんが待ってるのって…」
少女説明中
松岡「宮ちゃんが待ってたのってゆきちゃんだったんだ」
宮下「お前が待ってたのは三女だったのか」
松岡&宮下(良かった〜)
吉岡「どうしたの二人とも?」
三女「あ、宮坂さんだ」
宮下「宮下だよ!相変わらずだなお前は…」
松岡「三女さんおつかれ〜帰ろう」
吉岡「どうせだし皆で帰ろうよ」
松岡&宮下「!!!!!!」
三女「まあ…いいけど」
松岡&宮下(そ、そんな…)

154 :
きっとこんなやり取りをやっているに違いない!!!
読んでくれた人ありがとです

155 :
乙!
宮下は浮気癖なくなったのかな?
嫁(吉岡)一本とは丸くなったね。
それにしても過疎如何にかならないかな……。
ホワイトデーの話書いてる者何だけど、投下にはもうしばらく掛かりそうです。

156 :
乙です!あとで二人っきりでいちゃいちゃすればいいじゃない!

157 :
過疎ですね。
SSとその感想しかない何て……
近々投下予定なのでLV確認しておきます。

158 :
スレ位置確認のため挙げさせていただきます

159 :
規制も解けたので小ネタを少し投下させていただきます
例によって中学生編で・・・
三女「次はこの調味料を入れて、うん次はry」
宮下「にしても三女はホント料理上手だな!」
三女「・・・どうも」
宮下「三女は将来いい嫁になるぞ、私のな」
三女「な、なに言ってるのさ・・・」
宮下「冗談だよ冗談、ハハハ」

杉崎「どうしたのよ松岡?」
松岡「ちょっと藁人形買ってくる」

160 :
みつば「麦茶おかわりいる?」
杉崎「じゃあお願い」
みつば「ちょっと待ってなさい」

杉崎(みつばの飲みかけ・・・)

みつば「おまたせ」
杉崎「ありがと」
みつば(私の麦茶こんな少なかったかしら・・・)

161 :
にしても過疎ですね
みつどもえの連載が復帰するのを願うばかりです
今回はサラッとしたネタになっております
読んでくれた人ありがとです

162 :
>>161
俺にはお前が英雄に見えるよ


163 :
>>161
乙!

164 :
乙!松岡さんのヤンデレとか新たな可能性だなww
まぁ既にだいぶヤンデレ入ってるがw

どんなに過疎っても少しでもSSが投下されると即座に感想
やっぱ皆チェックしてんのなw
やっぱ連載再開されるまで自家発電するしかないよなぁ…

165 :
杉崎「みつばってホント素直じゃないのよね〜」
松岡(それは杉ちゃんも・・・)
杉崎「でも二人になると結構甘えてくるのよ」
松岡「三女さんもそうだよ」
杉崎「さすが姉妹、やっぱり似てる部分もあるのね」
松岡「だね♪」
杉崎「まあ・・・みつばのが可愛いけど」
松岡「」

166 :
杉崎「どうしたのよ?」
松岡「べ、別に何でもないよ」ニコッ
杉崎(なんか悪寒が・・・)
松岡「三女さんてとっても料理上手なんだよ」
杉崎「知ってるわ」
松岡「みっちゃんじゃ料理できないよね?」
杉崎「・・・でしょうね」
松岡「成績もクラスでトップだし」
杉崎「グヌヌ・・・」
松岡「それに・・・髪下ろした三女さんはとっても可愛いの!」
杉崎「でも三女って背低いわよね」
松岡「!!」

167 :
杉崎「それに運動はできないし」
松岡「」
杉崎「みつば程社交性もないみたいだし」
松岡「わ、私が三女さんの友達100人分だから問題ないよ!」
杉崎「へえ〜凄いわね〜」
松岡「グヌヌ・・・絶対わたしの三女さんのが可愛いよ!」
杉崎「みつばに決まってるわよ!」

三女「・・・なんか入りづらいね」
みつば「そうね・・・」

168 :
こんな形の百合もありだと思い突発的に書いてしまいました・・・
反省はまったくしておりません。
読んでいただければ幸いです。

169 :
乙です!
相変わらず素晴らしい百合だわ……見ててニヤニヤが止まらず3回読んだよ(ぁ
さて最近まで作品投下なかったからまさか被るとは……。
というわけで前回のバレンタイン編の続きのホワイトデー編投下しようかと思います。
今回、纏まった時間が取れずに書いたのでどこか変なところあるかも?(読み返し回数も少ないです。スイマセン)

170 :
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:青天白日の贈り物
〜 調理(ひとは視点) 〜
今日は3月13日。所謂ホワイトデー前日だ。
日曜だし私達三姉妹の家で杉ちゃんを呼ばずクッキー作りをする事となった。
もちろん、杉ちゃんを呼ばないのは友チョコのお返しをする当人だし、どうせならサプライズのが良いだろうと言う事だ。
メンバーはみっちゃん、ふたば、松岡さん、吉岡さん、宮下さん、そして私の6人。
私達の狭い家じゃ結構辛い。台所も2,3人までしか立てないし、テーブルも活用して作業を行うこととなる。
っていうか、6人も要らない……宮下さんあたりが要らないかな? ……帰れとまでは言わないけど。
クッキー作りの発案者は宮下さん。実に鬱陶しい。……いや、まぁ、本当に鬱陶しいわけじゃなく言ったみたかっただけだけど。
でも、言い出しっぺの法則って奴だ、材料費は全て宮下さん持ちとなった。
何とかさん達「「「ごめんくださーい」」」
とか考えてると皆が家に着いたようだ。
みつば「ふたばー、玄関開けて来なさい」
ふたば「了解っス!」
寝っ転がりながらふたばに指示を出す。なんて雌豚だ。昼食食べたばかりなのにポテチまで抓んでる……そんな事してるから太るんだよ。
みつば「……ねぇ、ひとは。私達の分はいつ作るのよ!」
そのままの姿勢で、でも、視線は私に合わせずに聞いてくる。
……ふたばに行かせたのはそれを言うためだったのか。
ひとは「み、皆が帰ってからでいいんじゃない? ふたばにはみっちゃんへのお返し作らせればいいし」
みつば「そ、そうね」
何だか微妙な空気だが、別に嫌じゃない。何というか……こう…………と、とりあえず、よくわからないけど嫌じゃない。
言い忘れていたけど、お父さんには出かけてもらった。皆が来るから出かけてって言ったら泣きながら出て行った。
宮下「まったく、何で私が材料買い込まなきゃいけないんだよ……」
愚痴を溢しながら家に上がる宮下さん。うん、清々しいくらい鬱陶しいが今回は大目に見てもいいかな。
吉岡「まぁまぁ、コレも全部杉ちゃんラブラブ大作戦の為だから」><
そして変な妄想をしてるのが後に続いて家に上がる。……ラブラブ大作戦って杉ちゃんと誰をくっ付けるつもりだろう?
松岡「宮ちゃんだけに買わすのは流石にかわいそうだと思ったから、清めの塩は私が用意したわ!」
……いや、塩とかそんな大量に使わないから……家にある分で十分だし。……でもまぁ、頂いておこう。

171 :
みつば「んじゃ、さっさと初めて終わらせるわよ! ったく何で私まで杉崎なんかに……」
みっちゃん……杉ちゃんの唯一の手作りチョコを食べておいてそれは言えないよ。
しかも、高級チョコを6つ分くらい使ってた大きさだったよ!
……なんだか考えてみると、杉ちゃんのみっちゃんへの愛――――愛と書いて執念って読んでもいいかも――――を凄まじく感じる。
ひとは「じゃあ、お父さんと同じようにしばらく家から出て行けばいいよ」
吉岡「さ、三女さん? みっちゃんも一緒に作らないと駄目だよ」><
いや、うん、わかってるんだけどつい……。
言ってしまったことを後悔しつつみっちゃんを横目で見る。
みつば「……」
バツの悪そうな顔をして私から視線を逸らす。
……いやいや、なんでみっちゃんがそんな顔してるの?
みっちゃんはいつもの様に反応しただけ出し……それがまぁ、ちょっとだけ気に障ったんだけど。
でも、まぁ普段なら私だって気にしないはずだったし、今回は流石に私が悪い気がする。
ひとは「……みっちゃん、宮村さんからバターと砂糖貰ってボールで混ぜておいてくれる?」
まぁ、素直に謝ったり出来ないので、とりあえず指示を出しておく。
……本当、みっちゃんに引けを取らないくらい、私も素直じゃないかも……。
横で宮下さんが「宮下だからな!」と言っているが無視しておく。
みつば「わ、わかったわ……分量はどうするのよ?」
ひとは「えっと、テーブルの上にメモ置いてあるからそれに書いてあるよ」
吉岡「あ、みっちゃん、私も手伝うよ」
松岡「それじゃ私は三女さんと――」宮下「それじゃ私は三女と――」
松岡&宮下「え?」
ひとは「……ふたば私の手伝いお願い」
ふたば「了解っス!」
そんな感じでクッキー作りを開始した。


172 :
〜 完成(みつば視点) 〜
吉岡「わー、すごいよー。おいしそー」><
ふたば「ホントっスね!」
目の前のテーブルには焼きたての様々な形をしたクッキーが沢山ある。
みつば「こんなに杉崎に上げる必要ないし、皆で1個……2個ずつ食べるわよ」
ひとは「1個だよ! 2個ずつ食べたら、杉ちゃんの分3個しか残らないよ!」
やっぱり2個は欲張りすぎか。
宮下「まぁ1個だよな。厭くまでお返しのクッキー何だし」
わかってるわよ! 被せて来るなんて流石宮下ってところね。
ひとは「ちょっとまって、紅茶入れ――」
松岡「三女さん手伝うわ!」
脅威の反応速度。宮下は私に忠告しているから出遅れたようだ。
隣で「しまった!」とか言ってるし……。
しばらくすると、ひとはと松岡が紅茶を持ってきた。
松岡「お待たせー…って私は運んだだけなんだけどね」
そして、皆に紅茶が行き渡り、クッキーを食べながら適当な話をした。
怪談話や恋愛話が始まったのは言うまでもない。

吉岡「それじゃ。明日、クッキーみっちゃんが持ってくるって事で」
みつば「くっ、なんで私が……」
松岡「まぁ、ジャンケンで勝ったんだしね」
みつば「普通、負けた人じゃないの!」
宮下「おいおい、負けた人が持って行くって杉崎に失礼じゃないか!」
確かにそうなんだけど……負けた人だったら宮下の奴が一人負けだったのに……。
カバンの中に入れられるようにカバンを後で整理しておかないと。
とりあえず、嵩張るスナック菓子は持っていけないわね。

173 :
吉岡「じゃ、そろそろ私達帰るよ」
宮下「じゃ、また明日な」
松岡「また明日ー」
<ガチャ>
皆が家から出て行く。
ひとは「それじゃ、私達の分も作ろうか」
ふたば「私達っスか?」
みつば「私があんたらにチョコ上げた――」
……あれ? コレって私がひとはに返すこと出来ないんじゃないの?
みつば「(ちょっとひとは! 私はどうするのよ!)」
ひとは「(……考えて無かったよ)」
みつば「(……作らなくてもいい?)」
ひとは「……」
無言で表情一つ変えずこちらに視線を向け続けられた。
怒ってる? どうしろってのよ……。
しばらくすると、ひとはは視線をふたばに向け声を掛けた。
ひとは「それじゃ、ふたば、クッキー作るから手伝って」
ふたば「了解っス!」
…………。
二人は私のために作ってくれているのに……。
それでも何だか意地と言うか何というか……私も作るとは言い出せない。
ひとは「あ……夕飯の材料買いに行くの忘れてた」
みつば「……私が買いに行ってくるわ……何が必要なのか言いなさいよ」
この場に何もせずに居る方が居心地が悪くて、夕飯の買出し役を買って出ることにした。


174 :
〜 相談(松岡視点) 〜
家に帰った私は自分のベットに仰向けになり、ポケットから1枚の紙を取り出す。
松岡「はぁー、持ってきたのはいいけど……これどうしようかな……」
大きく嘆息して独り言。
三女さんはきっとあの後みっちゃんに何か作ったんだろうな。バレンタインにチョコ貰ったはずだし……。
あ、でもふたばちゃんも貰ってるから一緒に作ってるのかな?
腕を上げて持っていた紙を、腕ごと<パタン>と横に下ろす。
……本当はそんなことで悩んでるんじゃない。私が悩んでるのはこれからどうするか。
別のことを考えたのは、答えを出すのを先延ばしにするため……だと思う。
でも、やっぱり実際実行するとなると……なんて言って渡せばいいのかわからない。
だって私はバレンタインで、三女さんからチョコなんて貰っていないのだから……。
……とりあえずだ! 行動しないと始まらない。
後のことは後で考えられるんだし、今しなければいけないことしなくちゃ!
起き上がりもう一度紙を見る。紙に記された“クッキーのレシピ”……三女さんが書いたであろう丁寧な文字だ。
その紙に書かれた通りのものを準備するため私はデパートに向かうことにした。

松岡「えっと……後はコレと…コレかな?」
材料を買い物籠に入れていく。
バターひとつでも無塩バターとかケーキ用バターとかあってよくわからないので、一番普通そうで安い奴を入れておく。
……安いのを買う理由は、先月オカルトグッツとか墓地に張るテント――――親に没収されたのよ!――――を買ってしまったのでお金が無いから。
上げるものだし、本当はもう少しお金掛けたかったんだけど、仕方が無い。
???「あ、松岡じゃない? 何してんのよ」
背後から声を掛けられ振り返ると、そこにはみっちゃんが……何だか先月も同じようなことがあった気がする。
松岡「え、あ、みっちゃん? 別にただの買い物だけど……」
みつば「……その紙ってクッキーのレシピが書いてあった奴じゃないの?」
あ! しまった!
みつば「籠の中もクッキーの材料っぽいわね……誰かに作るの?」
松岡「そ、そんなの……誰だって……。そ、そんなことよりみっちゃん、三女さんからバレンタインのお返し貰えた?」
誤魔化すための無理な返し。だけど、言ってみてから気がついたが動揺もさせられるし、最高の返しかも。
そして、案の定、動揺してくれた。

175 :
みつば「! ど、どうして知ってるのよ!」
松岡「どうしてもなにも、みっちゃんが三女さんにチョコ渡したの私知ってるし」
みつば「……そうだったわね、……明日貰えるんじゃないかしら?」
視線を逸らし不機嫌そうに言う。
うん、不機嫌にはなっちゃったけどうまく話を逸らせ――
みつば「で、話し戻すけど、それ誰に作るのよ!」
――なかったみたい。むしろイライラした口調で食いついてきた。
みつば「私の妹のレシピ勝手に盗んでおいてダンマリなんて許さないわよ!」
嘘だ。さっきまで全然怒ってる感じじゃなかったのに……どうやら私の質問が相当気に食わなかったのだろう……。

それから、余りにしつこく聞いてくるので教えてしまった。
みつば「ふーん、ひとはにクッキーを渡すって事は、あんたもチョコ貰ってたのね」
松岡「え、いや……それなんだけど私は貰って…ない……あれ? 『あんたも』?」
みつば「……あ」
さっきから私達なんで秘密の暴露大会開いてるんだろう。さっきのみっちゃんに到っては自爆だし。
松岡「なるほど、みっちゃんは三女さんからチョコ貰ったんだね」
みつば「う、うっさいわね! 姉妹なんだし別にいいでしょ!」
別に悪いなんて言ってないんだけど……。
みつば「それであんた、何でチョコ貰ってないのにクッキー渡すのよ?」
松岡「えっと、三女さんにはいつもお世話になってるし……なにかお返しがしたいと思って
それで、杉ちゃんの友チョコや、みっちゃんが三女さんやふたばちゃんにチョコ買ってるの見て
私もチョコ渡しておけばよかったなって後悔してて……」
みつば「それで、ホワイトデーにクッキーって訳ね」
みっちゃんは馬鹿にする訳でもなく、ただ普通に納得してくれた。
ちょっと……相談……してみようかな。
松岡「でね……やっぱりチョコ貰ってないのにクッキー渡すのって変かな……」
私の台詞を聞いてるのか無視してるのかわからないが、みっちゃんは何も喋ってくれない。
それでも私は構わず続けた。
松岡「作ってみようと思ったのはいいんだけど……なんて言って渡せばいいのかわからなくて……」

176 :
どうしてみっちゃんに相談なんて発想になったのだろう……。
私はこの時、何だかみっちゃんが頼れる存在に見えていたのかも知れない。
そして、その選択は間違っていなかった。
みつば「……変かもしれないけど……正直な気持ちを言えばちゃんと受け取ってくれるわよ」
正直な気持ち……。
さらにみっちゃんは視線を逸らしながら続けた。
みつば「ど、どーせ、ひとはなんてそんな状況になれば断る勇気なんてありゃしないわよ!」
コレはさっきのまともなアドバイスの照れ隠しだろう。
みつば「それじゃ、借りは返したわよ!」
松岡「え、借り?」
みつば「バレンタインの時の借りよ! あの時は正直あんたの言葉は……その……ちょっとだけ…励みになったというか……」
松岡「あぁ、あの時のこと……。別に大したこと言ってないよ?」
みつば「そんなこと…あっ、そうだった、ひとはに買い物頼まれてたのにこんなことしてる場合じゃなかったわ!」
そう言ったみっちゃんのカゴの中を覗いてみると、野菜やお肉がいくつか入っている。
昼間のことを考えると忙しくて、買い物しなくちゃいけないこと忘れていたのだろう。
松岡「あ、ごめん邪魔しちゃったみたい?」
みつば「本当よ! まったく!」
松岡「そういえば、みっちゃんは三女さんにお返し作った?」
みつば「っ! ……悪かったわね、作ってなくて」
松岡「駄目だよ! 杉ちゃんには作って、三女さんには作らないなんて三女さんが可哀想だよ!」
みつば「わ、わかってるわよ……あ!」
松岡「へ? なに?」
みつば「明日はひとはの奴帰りにデパートに寄るはずなのよ。そしてふたばも変態パンツと川辺でサッカー……コレしかないわ」
松岡「え? どういうこと??」
みつば「いいから、あんたは明日学校終わったらその材料持って急いで家に来なさい!」


177 :
〜 晴天(ひとは視点) 〜
今日の天気は私の心と違って晴天だ。
今は学校の給食中。私は誰の席に移動するわけでもなく一人黙々と食べていた。
いつもなら松岡さんとか来るんだけど……今日は来ない様だ。
昨日は失敗した。
意地を張らずに一緒に作って貰うよう誘えばみっちゃんだって……。
結構楽しみにしてたのに……。
それどころか、昨日みっちゃんが帰ってきてからまともに話すらしてない。
定型的な挨拶とかはしたんだけど、本当にそれだけだ。
そのまま給食が終わり、昼休みに入りみっちゃんがこっちに来た。
みつば「ちょっとひとは、皆で杉崎にクッキー渡すんだからこっち来なさいよ」
ひとは「あ、うん」
あれから初めてのまともな会話だが、内容が内容だけに素直に喜べない。
でも、一人で、しかも憂鬱な時間が少しでも減ることは関しては有難い。
杉崎「な、なによ? みんな集まってきて……」
杉ちゃんの席の周りに不自然に皆が集まったことで何だか警戒された。
吉岡「杉ちゃんに渡したいものがあるの」
ふたば「受け取って貰いたいっス」
杉崎「???」
何がなにやらわかってない様子。以前にもホワイトデーのお返ししたんだから察することも出来そうなものだけど……。
まぁ、杉ちゃんもこういうところで地味に鈍感だから仕方がないのかも知れない。
みつば「……はい、有難く受け取りなさい……そ、そして私を敬うことね!」
そういいって後ろ手に隠していたクッキーの入った袋を渡す。
宮下「余計な台詞付け足すなよ」
まったくだ。でも、みっちゃんらしいかな。
杉崎「えっ……と? もしかしてホワイトデーのクッキー?」

178 :
みつば「勘違いしないでよ! 宮下が皆で作ろうって言ったから作っただけよ!」
なにその反応。俗に言うツン……なんだっけ? まぁいいや。
隣で宮下が「ぷっ、どこをどう勘違いなんだろうな」とか言ってニヤニヤしてる。気持ち悪い。
と言うかいつの間に隣に居たんだろう。
松岡「レシピは三女さんが用意してくれたの」
宮下「ざ、材料費は私負担なんだぞ!」
宮下さんの地味なアピール。さっきから鬱陶しいね。
杉崎「み、みんな……ありがとう。どうせみつばは沢山つまみ食いしてただろうけど――」
みつば「失礼ね! 1個だけよ!」
杉崎「結局は食べたのね、1個」
呆れた顔で突っ込みを入れる杉崎。
流石にアレなのでフォロー入れておく。
ひとは「杉ちゃん、皆で1個ずつ食べたから、みっちゃんだけじゃないよ」
杉崎「へ? そ、そうなの?」
みつば「……ふん!」
ふたば「杉ちゃん酷いっス! みっちゃんが拗ねちゃったっス」
杉崎「え…何、私が悪いの?」
みつば「あんたが悪いに決まってるでしょーが! こぉの、勘違い女〜!」
指で杉ちゃんの髪の毛のバネを弄るみっちゃん。全然拗ねてないし。
杉崎「な! も、元はと言えばあんたがいつも勘違いするようなことしてるのが悪いのよ!」
バネを弄る手を払いのけて言う。いつものように仲良く喧嘩。
ちなみに私は杉ちゃんと同じくみっちゃんが悪いと思う。
狼少年じゃないが、日頃の行いが悪いからこういうことになる。
反省して欲しいところなんだけど。それどころか他人の間違いに調子に乗る。
私の姉はこんな姉なのだ……。


179 :
〜 白日(みつば視点) 〜
佐藤「おーい、ふたば、今日は川原でサッカーするぞ。覚えてるか?」
ふたば「覚えてるっスよ!」
ひとは「私もデパートに寄ってくから先に行くよ」
下校時間になり予定通り、ふたばはサッカーへ、ひとははデパートに向かった。
二人が教室から出て行ったのを確認して松岡に声を掛けようかと思ったが、どうやらいつの間にか帰っていたようだ。
まぁ、昨日の今日だし覚えているだろう。
みつば「私もちょっと用事あるから先に帰るわ」
私も早く帰ろう。そうしないとひとはが帰ってくるまで間に合わないかもしれない。
そして、そういうときに限って声を掛けてくる奴。
杉崎「途中まで一緒なんだし、先に帰る必要ないじゃない」
みつば「うっさいわね! 急いで帰るのよ、一緒に走って付いて来るって言うの?」
流石に此処まで言えば付いてこないだろう。
杉崎「みつばの走る速度なんて、精々私達の早足くらいじゃない」
自分がクラスでも足が速いほうだからって……まったくイライラする!
吉岡「え〜、わ、私、みっちゃんより走るの遅いよ〜」><
ナイスよ、吉岡! 忘れてたけど吉岡はクラスでもひとはと争えるくらい足が遅かったんだ。
杉崎「……まぁ、いいわ。急いでるんでしょ? さっさと行きなさいよ」
なんだかいきなりキレ気味に言われる。意味がわからない。引き止められてイライラしてるのは私なのに!
口に出してるとさらに遅くなる恐れもあるしここは我慢しておく。
みつば「……」
無言で睨み付けてから教室を出る。今出来る精一杯の抵抗だ。
でも、その時の杉崎の目は少し残念そうに見えたけど……気のせいかな?

急いで家に帰ると誰も居なかった。当たり前だそういう計画なのだから、そうでなければ困る。
帰ってきてすぐ、玄関のチャイムが鳴った。
玄関を開けて開口一番。
みつば「やっと来たわね!」

180 :
松岡「さっき家に入るとこ見えたのに、やっとってことはないよ」
みつば「こ、言葉の誤よ!」
ぐぬぬ……急いで帰ったのに、一度家に帰った松岡とほぼ同時に着くなんて……全部杉崎が悪いのよ!
松岡「それで……クッキー作るんだよね?」
みつば「ええ、そうよ。ひとりで作るのなんて簡単だけど、せっかくだから松岡の分も手伝ってあげるって言ってんのよ」
実際のところ一人じゃ作れる気がしない。昨日皆で作ったけど……作業分担してたし松岡がレシピ持って――
松岡「よかったー、材料は持ってきたけどレシピ忘れたからどうしようかと思ってたのよ」
――ないし!
みつば「ちょ、ちょっとレシピ無いってマジなの!?」
松岡「え…うん、忘れたよ」
みつば「……」
松岡「……?」
……終った。少なくともおいしいクッキー作れないだろう。
でも……今更どうこうする時間もないし……。
みつば「と、とりあえず、作るわよ! 」
確か最初は……。
“宮村さんからバターと砂糖貰ってボールで混ぜておいてくれる”
ひとはの言った台詞が脳裏に蘇る。
そうだ、バターと砂糖だ。
みつば「バターと砂糖よ! ボールで混ぜなさい!」
松岡「うん、えっと分量は?」

181 :
……。
みつば「……適量よ」
無理だ……そんなことまで覚えてない。
松岡「適量って……みっちゃんまさか……」
みつば「っ! 作り方なんて知らないわよ! レシピないんだから適当に作るしかないじゃない!」
………………。
…………。
……。

みつば「出来……た?」
松岡「う、うん……出来たんじゃない…かな?」
とりあえずお互いに“出来た”と言うが……。
明らかに昨日の物とは違う何かが出来てしまった。
見た目としては……えっと、ホットケーキとクッキーの間のような感じ。
味はまだ確認していない。
何となく食べるべきじゃないと、頭の中で誰かが警告してる気がして……。
松岡「これを、三女さんに渡すん……だよね?」
みつば「え、えぇ、そうなるんじゃない?」
……味見すべきだ…そのままひとはに渡すとか酷すぎる。
判ってるんだけど……うん。無理だ。
それは松岡も同じだったようで何も言わない。
でも……やっぱり……流石に……。
うん、だめだ。
みつば「……捨てようか?」

182 :
ひとは「何を捨てるの?」
松岡「何って、このクッキーを作ったつもりの何か――」
松岡の台詞が途中で途切れる。なに? どうしたのよ?
ふと、となりを見ると、ひとはが居た。
そう、ひとは。
……。
みつば「な、な何であんたっ! …っ!?」
後半は声にならない声を上げて、口をパクパクって感じで驚いた。
いや、だって、玄関開くような音聞こえなかったし、今一番着て欲しくないタイミングで現れるから。
ひとは「……クッキー? どれが?」
ひどい! いや、私から見てもクッキーみたいな何かだけど。
松岡「えっと、ね? 三女さんコレは、その……」
松岡も言い淀む……。
…………。
ひとは「これ、もしかして――」
みつば「わ、私からのホワイトデーのお返しと、松岡からの気持ちよ!」
勢いに任せてとりあえず言ったはいいがコレを食べさすのは酷だし……私はさらに付け加えて言った。
みつば「こ、今回は失敗したから後日改めて作り直すわ! わっ、わかったわね!」
ひとは「べ、別にいいよ……コレで」


183 :
〜 正直(松岡視点) 〜
松岡「で、でもそれ美味しくないと思うし……」
ひとは「というか松岡さんはどうしてここに居るの?」
……当然の疑問だろうが正直凹んだ。
隣でみっちゃんが「(正直なあんたの気持ちを言えばいいのよ!)」と囁く。
ありがとう。みっちゃん。
勇気を出して、私は一歩三女さんの前に近づく。
すると半歩下がられた。またしてもちょっと凹んだ……でも!
松岡「三女さん、私ね! その……いつも幽霊関連で助けられて……学ぶことばかりですごく感謝してて……」
何を言うかなんて全然準備してなかった。思いついた言葉を正直に、詰まりながらも紡いでいく。
松岡「だ、だけどそれだけじゃなくて……普通に…普通の友達としてもずっと居られたらって……だから!
三女さんにバレンタインデーの時チョコレート渡さなかったこと後悔してて、それで……今日! ホワイトデーのクッキー作ったの!
だから……感謝の印と、友達の証として……」
顔が熱い。どうしてか判らないけど……すごく恥ずかしい。そして最後に……。
松岡「…あ、あんな失敗作でも受け取ってくれないかな?」
三女さんを見るとあからさまに同様してる……当たり前だよね。いきなり意味不明な事いって意味不明なもの渡そうとしてるんだから。
ひとは「え、えっと、……あ、ありがとう。受け…取るよ」
う、受け取ってくれた……。
へ、変に思われなかったかな?
いや、みっちゃんが言ってた通り変には思われたんだろうな…。
でも、良かった。
ひとは「……ら、来年のバレンタインデーの時お返しとして、私からもチョコ……渡すよ」
松岡「! 本当! 三女さんのチョコ食べれるのね! みっちゃんが羨ましかったのよね!」
ひとは「……ちょっと待って、さっきから気になってるけど……みっちゃん、なんで松岡さんは私がみっちゃんにチョコ渡したこと知ってるの?」
そういえば、内緒にしてたんだっけ? 口を滑らしちゃった?
口を押さえてそんなこと思ってると三女さんにフォローを入れられた。
ひとは「さっきの台詞の前から気が付いてるよ。まず二人でクッキー作ってる点とか、
みっちゃんの“ホワイトデーのお返し”って台詞に何も反応しなかった松岡さんとか……」
そういいながらみっちゃんを睨む三女さん。……なんか黒いオーラ出てるし……これが三女さんの力なのね!

184 :
みつば「ちょ、違うのよ! ワザとじゃないのよ! っていうか別にいいじゃないそのくらい!」
ひとは「っ! そ、そのくら……いいよ! 来年は松岡さんの分だけ作るから!」
みつば「え……あ、いいわよ別に! あんたなんかにチョコなんて貰わないわないし、受け取らないわよ!」
……あれ? 何だか喧嘩しちゃった?
そしてさっきまで重要な役回りだった気がする私が蚊帳の外になってないかな?

それから私が何も喋れないまま数分、二人は喧嘩してた。
いや、ちょっとは「喧嘩やめよ?」とか言ったけど悉くスルーされた。今日はやたらと凹む日だな。
それでも……それ以上に良いこと合ったと思う。
喧嘩の後半になってからはちょっとした取っ組み合いが始まったので流石に止めに入ったんだけど収まらない。
ふたば「ただいまー、あ、プロレスごっこっスね!」
ひとは&みつば「してない! してない!」
ああ、この二人も……いや、三人かな? 本当仲良いな……。

みつば「それじゃあまた明日」
ひとは「松岡さんまた明日」
ふたば「バイバイーっス!」
皆が見送ってくれた。
そのまま分かれようかと思ったけど、危うく忘れるところだった。

185 :
玄関を閉めようとしてるみっちゃんを呼び止める。
みつば「? なに?」
鞄からお菓子売り場で買ったクッキーのお菓子を取り出す。
松岡「これ。昨日と今日のお礼にって思って」
みつば「え……私に?」
松岡「クッキー作るの、私のせいで失敗しちゃったしお詫びとしてになっちゃったけどね」
みつば「ま、まぁそういうことなら、って言うかあんな失敗作よりこっちをひとはに渡せばよかったんじゃないの?」
みっちゃんの言うことは尤もかもしれない。でも。
松岡「コレはみっちゃんにって買ったものなの! それを三女さんに渡すのは二人に失礼だよ!」
みつば「……そう。わかったわよ。有難く貰って置いてあげる」
そういって、私の差し出したクッキーを受け取ってくれた。
松岡「それじゃ、今度こそまた明日」
みつば「はいはい、また明日」
そうして私は帰路に着く。
何となくふたばちゃんが帰ってきたときのことを思い出す。
あの時、みっちゃんが注意を引き付けてる間に三女さんがクッキー(?)を隠していた。
ちょっと前まで喧嘩してたのに、あの完璧な連携プレーには驚いた。
やっぱり、チョコの件だけでなく、三女さんのことを良くわかっているみっちゃんが羨ましく思う。
その後、三女さんとふたばちゃんもみっちゃんにクッキーを渡してた。
三女さんはさっきまで喧嘩してたこともあって、若干渡すのに抵抗があったようだし、みっちゃんはみっちゃんで受け取る側にも抵抗があるようだった。
でも、まぁ、ふたばちゃんの手前、喧嘩再開するのもアレだしで、とりあえず何事もなく事は済んだ。

……そういえば三女さんに渡したクッキー(?)は結局のところ、食べれるのだろうか?
ちょっと心配になったけど、明日みっちゃんに聞いてみようかな。


186 :
〜 蛇足(ひとは視点) 〜
お父さんとふたばが風呂に入ってる今しかない。
隠してあったクッキーらしきものを取り出して、一口食べてみる。
ひとは「ぶっ!」
……塩辛い。絶対清めの塩だよ、コレ……。
みつば「ああ、松岡が砂糖足してるのかと思ってたけど、アレ、塩だったのね」
おわり
〜〜〜以上本編〜〜〜
言い忘れてました。長くてすいませんorz
それとコレ、何がメインなんでしょう? ひとみつ? 松ひと? まさかの松みつ?
書いた私も良くわかりません。
そして、今になって松岡さんっぽさに些か問題ありな気がしてきましたが……細かいことは(ry
こんな駄文ですが感想とか書いていただけると助かります。

187 :
何このSSラッシュ久々にみつどもえ成分が補給されてテカテカなんですけど

188 :
>>168
なんという嫁自慢wwwwwwwwww
可愛いすぎるだろこの二人wwwwwww
乙でした
>>186
いつもながら長い・・・・だが、それがいい!
駄文なんてとんでもない!
いままででないパターンで面白かったです
乙でした

189 :
ホワイトデーSSキテター?
毎度乙です!

190 :
2作とも最高だ


191 :
最近アニメ化したゆるゆりの櫻子と向日葵のツンツンカップルは杉みつに通じる所がある
あの二人の喧嘩ップルっぷりを見てると杉みつを思い出すよ…

192 :
一気に過疎ったな

193 :
>過疎
悲しいけどいつもの事ですね。
186です。感想ありがとう御座います。
まとめwiki編集者様にお願いなのですが、どこかに
「バレンタインに如何して嫉妬?」の続き的な記述書いていただけると助かります。
ところで、ショートショートくらいの書いてみたんだけど
誰得のメグみつ、メグちゃん視点で未来話です。
需要あれば投下しますが……みつどもえっぽさが薄いです。百合も薄いです。
需要ありますか?

194 :
無いワケが無いだろ
さぁどうぞ

195 :
メグちゃんって誰だ?って思ったら下級生の娘なのね

196 :
反応早すぎるw
とりあえず注意事項まとめ
・誰得カップリング、メグみつ
・メグちゃんがキャラ変わりすぎ
・7年くらい未来の話
・地の文多めで、台本書き部分を今回に限り撤廃
・みつどもえ成分補給には不向き
・百合スレなのに百合濃度が低い
・軽い鬱展開から始まる
ひとつでも不快感あるようならスルーしちゃって下さいね!
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:憧れる少女
“気品ただよう高貴な身分のことよ!! 私みたいにね!!”
ん……もう朝だ。
まだ覚醒できずに目を寝巻きの袖で擦る。
今のは……みつば先輩の夢――
痴女の意味を中学上がるまであの台詞通りの意味だと思ってた私はきっと馬鹿なのだろう。
みつば先輩にあの時厳しく突き放された意味を理解してから、私は自分の馬鹿さ加減に呆れも通り越してしまっている。
一度ベットから体を起こした私だったのだが、そのまま<バタン>とベットに倒れる。
あの言葉は、私達を思っての言葉だった。私達が嫌いになったわけではなかった。
私達を避けるためではなかった。……みつば先輩の優しさ…だった。
今は大学生、もしくは社会人だろうか?
行動力のない私は何も知らない。
小学校の時から一緒だった杉崎君には確か姉が居て、みつば先輩と仲が良かったのを覚えているが、
杉崎君の連絡先は愚か、小学高学年あたりからまともに会話することもなくなった。
今更、話掛けることなんて出来るわけがなかった。
そんな自分が嫌いだ。自己嫌悪して、そして自己嫌悪してる自分にも嫌悪感があって……憂鬱なのだ。
今は梅雨時であり空気はジメジメしていて……元気に振舞うって言うのが無理な話なのかもしれない。
違う……それはただの言い訳でしかない。

197 :
……。
……。
綺麗な金髪……元気が良くて…大胆で……とってもお洒落で……。
……。
「ん……あれ?」
いつの間にか二度寝してしまっていた様だ。
蘇ってきたみつば先輩の姿。
私の憧れだった。私は彼女のようになりたかった。
時計を見る。短い針は10を指している。
今日は日曜日――なのだが、友達と近所のデパートで待ち合わせしていたのを思い出した。
約束の時間は10時半……そう思い出した時にはベットから跳ね起きて着替え始めていた。

「ごめん! 待った?」
「遅いよメグ! 3分遅刻!」
30分で着替えから用意まですべて終わらせてここまで来るのに3分しか遅れなかったことを褒めてくれてもいいのに……。
そんなこと相手は理解してくれない。当たり前だ。私から言わなきゃそんな事伝わらないに決まってる。
でも、説明しようにも、ただの寝坊と言うべきか、本当のことを言うべきか。
当然、夢の内容とか考えてたこととか言えるわけが無い。
結果、ただの寝坊として「ごめん、ごめん」とだけ言って置く。
「そんじゃ、服買いにに行こうよ」
「うん」
彼女は中学で出来た友達。今のところ一番の仲良しなのだが、彼女には沢山友達が居て、私より仲の良い人だって居るだろう。
それでも一応、ちょっとした憂鬱な人生を歩んでる私が今一番楽しんで過ごせる友達だ。

デパートの洋服売り場に移動している時だった。

198 :
……。
今、綺麗な金髪の、お洒落な人とすれ違った。
そして、聞き覚えのある声……今日も夢で聞いたことのある声だった。
振り向くとそこには昔と変わらない私の憧れの人の後姿があった。
「み、みつば先輩!」
振り向いた金髪の女性は驚いていた。でも、驚いたのは彼女だけでなく、私の友達も、そして私も驚いた。
行動力なんてない私が……考えるよりも早く行動していた。
そして私の声で振り向いたことで金髪の女性が本当にみつば先輩であることがわかった。
でも、先輩は私のことを憶えていない……そんな顔をしていた。
「え、ちょっとメグ? 知り合い?」
友達が話しかけてくる。でもその言葉は右耳を通り左耳から抜けていく。私は初めて彼女の言葉を無視した。
今の私の居場所よりも、大切なものに出会ってしまったから。
「メグ? ……もしかして、杉崎弟と同じクラスだった……」

憶えていないと思っていた。私のことなんてもう、記憶の彼方にすら残っていないと思っていた。
でも、名前を聞いて、たったそれだけで、数日間しかまともに言葉を交わさなかった私を覚えていてくれた。
「……わ、私は今でも、貴方に憧れて居ます! あんな突き放され方されたけど……アレが優しさだったって知ってから、もっと…もっと憧れました」
もう、こんなチャンスはないかも知れない。そう思ったら口が勝手に動いてた。
「こ、これからも憧れ続けます! 先輩! 貴方を目標にしてもいいですか?」
しばらく呆気に取られていたのだろうけど――
「いいわよ! 気品ただよう高貴な身分に惹かれるのは当然よ!」
そういって、まぶしい笑顔を見せてくれた。
すぐに隣に居た黒髪を後頭部あたりで束ねている子に脛を蹴られて引っ張っていかれたけど……。
今まで憂鬱な感情が光が差した。
ただ、一言、言葉を交わしただけなのに……蟠りと言うのだろうか? それが消えて行くのが感じられた。
私の心は梅雨時だというのに雲ひとつ無い快晴になれた。
違う……これからは嵐が来ても雲なんて作らない。そうなれる、信じる目標に再開できたから。
おわり。
〜〜〜以上本編〜〜〜
続きません。
仕事の気晴らしに、思いついたこと書き殴った物なので微妙かと思います。
色々破綻してるかも。脳内行間補間推薦です。スイマセンorz

199 :
>>198
乙!
ちじょ回の子か〜。これからも何か思い付いたら書き込んでくれよ!宮下さんとの約束だぞ☆

200 :
>>199
感想ありがとー。私の短編は大抵宮野さんの扱い酷いですが、みつどもえには無くてはならない存在です。
キャラ単体としては結構好きなほうに入ります。
これからも弄らせてもらうからな☆
それと、基本的に思いついたネタは長いのにに入れちゃってます。今回のようなケースは除きますけどね。
まとめwiki編集者様、いつもながら早い反応感謝です。先の件有難う御座います。

201 :
いつもの小ネタ垂れ流しです
放課後 教室
松岡「三女さーん」ガラッ
三女「スースー」
松岡「なんだ寝てるんだ」
三女「スースー」
松岡「・・・・・・三女さん」
松岡(教室には私と三女さんだけ・・・か)
松岡「フフ、可愛い寝顔だなあ」
三女「・・・・スースー」
松岡「って何言ってるんだろ私、起こしちゃ悪いしry」

みつば「ひとはー帰るわよー」ガラッ
三女「ああ、みっちゃん」
みつば「あれ、何でアンタそんなに顔赤いのよ」

202 :
以上、私の妄想でしたー
読んでいただければ幸いです
>>200
いつもながら素晴らしい、乙です!
あなたのその文才が妬ましい

203 :
>>200->>201
どちらも乙です!ニヤニヤさせて頂きました

204 :
ひとはと杉ちゃんはみっちゃん好きすぎだろう
特にひとはがw

205 :
>>204
判ってるじゃないか!
杉ちゃんの大胆な行動で騙されがちだが
ひとはのみっちゃんへの愛は後戻り出来ないところまできてるよなw

206 :
杉ちゃん・・・・みっちゃんの盗撮写真多数所持
ひとは・・・・・夏休みの日記はほぼみっちゃんのこと、みっちゃん型弁当を作るetc
愛されすぎだろう・・・・
ふたばが可愛そうだな

207 :
げきも

208 :
初期頃からみっちゃんの監視を何度もしてたひとは……
適当な理由つけて、みっちゃんの傍に居たかっただけってことだよね?
ひとははみっちゃんを愛しすぎだわ

209 :
密かにカロリーゼロのアイス買ってきてたりな

210 :
やっぱり過疎が続きますね……原作休載中ですし仕方がないといえばそうなんですが……。
200です。
出来れば今月中に、遅くても来月中に投下予定です。
前作終わってから、行き詰って途中で投げた作品が2つもあるけど
今書いてるのは何とかなりそうです。
>>202-203
読んで頂き、ありがとうございます。文才あるように見えますか?
まさか……絶対気のせいですよw
一人称視点だと割りと書き易いと思いますし
「登場キャラが低年齢なのであまり難しい言い回しを使わないほういい」
ってところに助けられてばかりですよ

211 :
お〜新作書いてるのか
楽しみに待っとりますね〜
それにしてものりおちゃん復活はまだなのか〜

212 :
待ってる

213 :
>>210
もはやこのスレの唯一の希望

214 :
結局杉みつ同人でお前らのベストって何よ
ぬ気で探しに行くから

215 :
ゆるゆりにハマってからみつどもえ成分がだいぶ弱ってるわ…
早く原作再開してくれ
もちろん杉みつ度満載でな

216 :
>>215
同意。
杉みつ好きなお前らの事だ。どうせひまさくのツンツンカップルに萌えてんだろ?

217 :
過疎だからってあんまり脱線せんようにな

218 :
悪かった。つい動きがあったもんで嬉しくてね
お詫びに中学生になった松ひとの妄想晒す

松岡「三女さーん!」
ひとは「…どうしたの」
松岡「この学校オカルト研究部がないよー!泣」
ひとは「それは残念だったね」
松岡「うー…中学生になったら部活で霊的な物の探検とか増えると思ったのにー」
ひとは「相変わらずだね松岡さんは…」
松岡「はぁ…どうする三女さん?当てが外れちゃったね」
ひとは「え、ちょっと待って何で私も一緒に入る事になってるの?」
松岡「え?だって三女さんが一緒じゃないと意味がないよ」
ひとは「なっ!?さっちゃん…そ、それって…」
松岡「やっぱり美少女霊媒師の三女さんがいないと面白くないし!霊媒師さんは霊を引き寄せるって言うしね!」
ひとは「……はぁ…そうだね。で、どうするの?部活は」
松岡「うーんそうだね…何でもいいよ!三女さんと一緒なら!」
ひとは「…やっぱりそこは私も一緒なんだ…」
松岡「何だかんだ言ってこんな事に付き合ってくれるの三女さんだけだもんね。ずっと友達でいてね!三女さん!」
ひとは「う…うん…///」

219 :
乙!
松岡「私、最近三女さんとずっと一緒だな〜」
松岡「はっ! もしかして私既にんでて、三女さんに憑いちゃってるじゃ……」
こんな光景が浮かんだ

220 :
松岡「おっ!おじさんのオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してえええぇぇええ////」 グッポ!グッポ!
おれ「さっちゃん!なかに出すぞ!」 

      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ

221 :
>>218
GJ
松ひとはいいものだな

222 :
ひとは「せっ!先生のオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してください////」 グッポ!グッポ!
矢部 「ひとはちゃん!なかに出すよ!」 

      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ

223 :
伊藤「おっ!おじさんのオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してえええぇぇええ////」 グッポ!グッポ!
おれ「詩織ちゃん!なかに出すぞ!」 

      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ

224 :
最終書き込みから一ヶ月経つのを阻止!
210です。
一応書けました。ひとみつ、百合濃度低。遅くなってスイマセン。
書けたけど……ちょっとまって下さい。
いつもgdgdなんだが今回特にgdgdなんです(汗
今更全体的な流れを書き直す気は無いけど、細かい点だけでも修正して置きたいので……
と言うわけで投下は「遅くても9月中」って言っちゃってるので9月末日までには投下します。
gdgdで長くて百合濃度低くても問題ないって人居たら読んでください。
っと言うか、スレ住民まだ居るんでしょうか?
早く原作再開して〜、みつどもえ分が足りない!

225 :
ここにいるぞー

226 :
俺もいるぞ〜
期待して待ってます!

227 :
ぐぴっw フヒョほほwww レズ萌へ〜www 百合最高にゃんりしwwww
オワコンみつどもえはボクリンたちがゆりゆり妄想を炸裂させ真・みつどもえとして新たに築きあげるのでぷよwwwwwwwww ブッヒイィィィィィイイィィィィ!!!!!!!!!!!
ぶひゃw

228 :
9月末日ギリギリになったが一応ちょこちょこ修正完了。
注意事項まとめ
・百合濃度低
・長い
・gdgd
数分〜十数分後に本編投下開始予定です。

229 :
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:長女三女の事情
〜 喧嘩(みつば視点) 〜
ひとは「……もういいよ! 二度と話しかけないで!」
みつば「――っ!」
私は言い返そうとして口を閉じた。
上等よ! 絶対話しかけてやらない!
……そうやって意地を張ったが、この時は「明日になればいつも通り」……そう思っていた。

――取っ組み合いにまでは発展しなかった何時もの喧嘩。
でも何かが少し違った。
喧嘩をしたのは昨日の夜。喧嘩の理由は些細なこと……だったと思う。
と言うのも何が原因か良くわからない状態から喧嘩がヒートアップして行って、関係ない不満とか色々ぶつけ合ったからであって。
そして、最後は内容の無い悪口の言い合い――――今思えば言い過ぎなところも多々あったがお互い様よ!――――だった。
で、ひとはのあの台詞で締められた訳だ。
何時もの喧嘩と違うと感じたのは……そう、今も尚、あの台詞通り会話をしていないから。
後を引く喧嘩なんて滅多にしないのに……。

今は学校の給食時。
私は杉崎たちと一緒に給食を食べている。
ふと、ひとはに視線を向けると自分の席で松岡と一緒に給食を食べていた。
……正直安心した。松岡には心の中だけで感謝しておいた。
でも……雲で覆われた私の心は、さらに酷くなっただけ……。つい先日梅雨明けしたはずなのに……。
松岡と給食を食べるひとはの背中を見ながら、喧嘩をしたことを後悔する気持ちと私と喧嘩しているというのに松岡と会話するひとはの姿が憎くも見えた。
そんな矛盾した感情が頭の中に溢れ返っていると、会話に参加していなかった私に話しかけてくる物好きな盗撮女が居た。

230 :
杉崎「なに、変な顔して……給食前に拾い食いでもしたの?」<ピロリロリーン♪>
いつもならその喧嘩買ってあげるんだけど……昨日のこと…いや現在進行中の喧嘩のことがあってそんな気分にはなれなかった。
無視して給食を食べることにした。――って言うか撮るな!
宮下「なんだ? いつもの長女らしくないな」
……長女らしくない……私は不意に“私らしくない”と言う意味でなくそのままの、言葉通りの意味で捉えていた。
確かにその通りだろう。意地になって馬鹿みたいだ。長女なら長女らしくすべきだ。私から仲直りを持ちかけるべきだ。
そう思ってはいても、私にはそれが素直に出来ない。
意地になってる……というのはもちろん、私から折れたら、ひとはと会話がしたくて仕方がないみたいじゃない。
吉岡「ど……どうしたのかな? みっちゃん……」
宮下の言葉も無視してしまったため、吉岡を初めとして杉崎、宮下も本格的に困惑し始めてしまった。
みつば「別に……なんでもないわよ」
仕方が無く場の収束を図るために出した声は、実に素っ気無い答えだった。

松岡「! 三女さんはどこ!?」
放課後、ひとははどうやら先に帰ったらしい。松岡はひとはがいつの間にか居なくなってるのに気が付き、周りを見渡した後は意気消沈していた。
私も杉崎たちと帰っても碌に会話もしないだろうし……そう思って一人で帰ろうとしていると、またしても杉崎が話しかけてきた。
杉崎「ちょっと、みつば! 何一人で帰ろうとしてるのよ!」
……正直、一緒に帰ることに誘ってもらえて嬉しくはある。
でも、ひとはは一人で帰ったのだと知ってしまっては、杉崎たちと帰ることが何となく後ろめたく感じてしまう。
断ってでも一人で帰ろうと思っていると――
吉岡「咲ちゃんも、一緒に帰ろうよ。ちょっと三女さんの話聞きたいし」
みつば「……へ?」
どうして、いきなりひとはの話? それに何で松岡に訊くのかが理解できない。

231 :
宮下「ふたばだよ。三女と喧嘩したんだって聞いたぞ。口も聞いて無いそうじゃないか」
不思議そうな顔をしていたであろう私に宮下が答える。
そして、私が宮下の言葉の意味を理解するより早く杉崎がさらに追加で説明する。
杉崎「そういうことだから、給食が三女と一緒だった松岡を交えて作戦会議よ! それで、さっさと仲直りしなさいよ!」
え…っと?
つまり、仲直りに協力してくれるってことなのだろうか?
そう考えて、確かめるべく口を開こうとした時、慌てたように杉崎が割り込んできた。
杉崎「か、勘違いしないでよ! あんたが元気無いと張り合いが無くて詰まらないからで……」
腕を組んで私に対して横を向いた杉崎はなぜかムスッとした顔で私をチラ見する。
杉崎「で、何があって喧嘩になったのよ」
みつば「あ、あんたらには関係ないでしょ!」
私の口から出た台詞は、杉崎を突っぱねる言葉。
作戦や相談なんて必要ない。
私がひとはに謝れば済むだけのことなのだから。
杉崎「っ! か、関係ないって……そ、そうかもしれないけど……」
宮下「おい! そんな言い方は無いだろ! 私も杉崎も心配して言ってるんだ!」
余計なお世話だ……。
それに杉崎は心配なんてしていない。その証拠に今現在、宮下に向かって「は、張り合いが無いだけよ! 別に心配なんてしてないんだから!」と言ってる。
自分に都合の良い私に戻れ……そう言ってるのだ。
宮下もきっと、心配してるように言ってるだけで、自分が良い格好したいだけで――
……そこまで考えて自己嫌悪した。
そんなわけ無いってわかってるのに。……最低だ。
私、イライラしてる。きっと……ひとはと仲直り出来てないから。
それで皆に八つ当たりして――
松岡「みっちゃん……三女さん今日元気なかったよ」
不意に松岡からの台詞。
ひとはが元気が無い……私と喧嘩してるから?

232 :
……。
私だけの問題じゃない。ひとはもこんな関係、望んで言った訳じゃないはず。
改めて杉崎の顔を見る。すぐ視線を逸らされたが、心配してくれてるのが丸判り。
他の皆も心配してくれてるようだった。この場にはいないが、きっとふたばも……。
みつば「明日には……仲直りできてるわよ! だから心配する必要なんてないわよ!」
そう言って私は皆を置いて先頭を歩く。
やっぱり、ちゃんと私から謝ろう。帰ったらすぐに謝ろう。
杉崎「ち、ちょっと! 心配なんてしてないって言ってるじゃない!」
宮下「面倒くさい姉妹だよな」
杉崎「(あんたも十分面倒くさいと思うけどね……)」
宮下「え? ちょ…聞こえてるぞ! 私が何したって言うんだよ!?」
一番離れてる私にも聞こえるほど杉崎の小声は大きかった……ワザと聞こえるように言ったわね。
宮下も聞こえなかったことにしてスルーして置けばいいのに。
吉岡「もぉう! 違うよ杉ちゃん! 宮ちゃんはちょっと空気が読めなくて鬱陶しいだけだよ!」><
宮下「吉岡……フォローになってないぞ」

233 :
〜 失敗(ひとは視点) 〜
ひとは「はぁー」
今日は一人で下校。
別に仲間外れにされたとかじゃなく私が故意に行なった事。
……って言うか、一人で下校することなんて珍しいことじゃないし!
ひとは「みっちゃん……本当に話しかけてこないのかな……」
そんな訳ない。みっちゃんは優しいから……きっと……。
……本当は待ってる事なんてない。私から話しかければ済む話。
じゃあ、如何して私から話しかけないのだろう?
……。
私も頑固なところがある。意地になってるから……それだけが理由なのだと思っていたのだけど……。
本当はこれ以外にも理由がある事に気が付いてる。
……きっと……みっちゃんから話しかけてくるのを待ってる。それはつまり、勇気が無い私のみっちゃんへの甘えだと思う。

“ちょっと私のお洒落な服、洗濯し忘れるとかどういうことよ! あんたらしくもないミスしないでよね!”
喧嘩の発端となったみっちゃんの何気ない台詞。
忘れた私が悪い。でも、私らしく無いミス……この言葉に何だか苛立ってしまった。
私だって、ミスすることだってある。完璧な人間なんかじゃない。
なのに……私はミスが許されない。そう言われてる気がして。
その後、口喧嘩になってあんなこと言って……。
確り者の私以外も……私なのだと認めて欲しかったのかも知れない。
……。
本当、ただの被害妄想だよ。
みっちゃんから話しかけて来たら、私も謝らないと。
意地になってた事や酷いことを言った――――何言ったか覚えてないけど――――事を。
そして、私から謝らなかったことを。


234 :
ひとは「ただい…ま……」
みっちゃんと会話しないことになってるのを一瞬忘れてた。
幸い、まだ家には誰も居なかった。いや、むしろ居てくれた方が早く解決できたかもしれない。
まぁ、でもみっちゃんがいないのは当たり前。私のが早く学校出たんだから。
でも、ふたばまで居ない。私より早く――――出た時間は一緒くらいだったけど圧倒的に足が速かった――――学校を出て行ったのに。
どこかで道草か、しんちゃんと遊んでいるのかも知れない。
さて、どうしよう。夕飯の支度には少し早いし……。
ふと、外を見ると雨が降り出していた。
私が帰ってくるまで雨なんて降ってなかったから今降り出したのだろう。
梅雨明けだと言うのにまったく――!
ひとは「っ! 洗濯物しまわないと」
私は慌てて外に出た。
昨夜洗った洗濯物以外にも、朝急いで洗ったみっちゃんの服も干してある。
雨で濡らしてしまっては、私の責任ではないにしろ、より気まずくなる原因になる気がした。
でも。そう思って急いで洗濯物を取り込もうとしたのがいけなかった。
<ビリッ>
ひとは「あ……」
洗濯物が物干台の竿を引っ掛ける部分に……。
そして、破れたのは……みっちゃんの服だった。
最悪も最悪だ……なんて言えば許してもらえるんだろう。
この服は本当にみっちゃんが気に入ってた服だったのに。
みつば「た、ただいま……ひとは帰ってる?」
っ――!
み、みっちゃん!
みつば「あ、洗濯物取り込んで……え?」
ひとは「え、あ……」
見つかった。もとより黙ってるつもりは無かった……けど、タイミングってものがある。
最悪のタイミングといってもいいかも知れない。

235 :
みつば「……」
みっちゃんは何も言わなかった。
そしてそのまま背を向けて二階へ行ってしまった。
私はと言うと、気まずくて視線を向けられずにいた為、みっちゃんの表情を見ることが出来なかった。
……怒ってるよね。ただでさえ喧嘩中――
そこまで考えて、みっちゃんが話掛けて来ていたことに気が付いた。
きっと仲直りするつもりで……。
そして、このタイミングでの私の失敗……みっちゃんはどんな気持ちだったのだろう……。
部屋に戻りテーブルに突っ伏す。
あのタイミングで失敗した自分を恨んだ。

時間にして数分くらいだと思う。
とりあえず、顔を上げ破れた服を手に取り見てみる。
ひとは「……この破れ方は……直すの難しいかな……」
そして嘆息。でも、時間は掛かるかも知れないけど何とか着れる程度には直せそうだ。
“善は急げ”と言うが、そろそろ夕飯を作らなければいけない。
そうしなければより一層みっちゃんの機嫌を損ねるかも知れない。
だからここは、“急がば回れ”こっちの言葉に従っておくことにして、夕飯の準備をはじめた。

236 :
〜 次女(みつば視点) 〜
逃げ出した。
せっかく謝るつもりだったのに……。
今は私達姉妹の部屋に入って扉に凭れ掛かるように座り込んでいる。
一階で見た光景……それは私のお気に入りの服の見るも無残な姿。
ひとはの奴、このタイミングであんなことをやらかしてくるなんて……。
……判ってる。ひとははワザとそんなことしないって。
視線を私に向けようとしないひとはの態度、何かの事故でこういうことになってしまったのだと理解は出来た。
実際怒ってるわけじゃない。
服の一つや二つ……いいじゃないの……。
ひとはと仲直りできないことの方が私には問題だから。
でも、とっさのことで謝ることを忘れて唖然となったし、完全に頭の中真っ白になったわけで……。
唯でさえどう謝ろうか、考えて、考えて……若干混乱気味だったし……。
みつば「すー、はぁー」
深呼吸して気持ちを入れ替える。
さっきのこと許してやって、それで私から謝ってコレで解決だ!
そう思って立ち上がる。そして、扉を開け――
<ガチャ>
みつば「え…ちょ!」
<ゴンッ>
開けようとした扉が開いて額にクリティカルヒット! ……超痛い。
みつば「っ……!」
額を押さえてしゃがみ込む。

237 :
ふたば「みっ、みっちゃん! 大丈夫っスか?」
みつば「ふ、ふたば? 痛っ……」
これで、ふたばじゃなくてひとはだったらどうしようかと思ったわよ!
ふたば「ち、血が出てるっスよ! みっちゃんがんじゃうっス!」
え? 血? 本当で?
みつば「ちょ! あんた、どんな勢いで扉開けたのよ!」
ふたば「意外と元気そうっスね、よかったっス」
みつば「良くないわよ!」
あぁ、頭に響く……。大きな声出すんじゃなかった。
って言うか、さっきから血が止まらない。額切ると大量に血出るらしいけど大丈夫なんだろうか?
まぁ、クリスマスにひとはがサンタ役した時――――アレは額ではなかったけど――――は今の私の比じゃなかった気がするし大丈夫……たぶん。
みつば「とりあえず、タオル持ってきなさいよ!」
ふたば「わかったっス!」とてちてとてちて
そういえば、ふたば先に帰ってると思ったんだけど……今帰ってきたのかしら?
よくよく思い出せば、服も若干濡れてたし、どこかで変体パンツとでも遊んでたのかも知れない。
そんなことを考えて座り込んだまま額を押さえて下を向いている、扉を開けてすぐのところに紙袋が二つあるのが視界の端に入った。
何かしら? ――と疑問に思うまもなく、階段を上がる音が聞こえてきて、すぐに――
ふたば「タオルもって来たっス!」
――と、ふたばの声が――
ひとは「み、みっちゃん……氷、持ってきたから……冷やして」
! ひとはまで来るなんて予想外……いや、ふたばが大げさに言えば来る可能性の方が高いはず。
予想していなかった方がどうかしてる。
ひとは「……大丈夫?」
恐る恐るって感じで聞いてくる。
きっと私が怒ってるものだと思ってるに違いないだろう。
下を向いたままだった私は視線を上げる。心配そうに覗き込む二人の姿が写る。
みつば「あ、ありがと」

238 :
ひとは「……ま、まったく、世話掛けないで。……私料理中だから戻るよ」
そう言って背を向けて部屋から出て行く。
……精一杯普段通りを演じているように……そんな感じに見えた。
って言うかひとはから会話してきたってことは……。
みつば「ちょ! ひとは!」
そう考えた時、私は部屋を出てひとはを呼び止めた。
みつば「昨日……私、その…悪かったわ……だから――」
ひとは「ちょっとまって! みっちゃん、昨日私が何に腹立てたかわかる?」
みつば「え……」
意外な返しに戸惑った。……そして、ひとはの問の答えもすぐには出てこなかった。
ただ、ひとはの機嫌を損ねる何かを言ったのだから謝るのは当然……そう思って言ったのだけど……。
理由もわからずに謝ってしまったことはやっぱり失敗だったのだろうか……そう感じ始めたときひとはが口をあけた。
ひとは「はぁ……別にいいけど」
呆れたように嘆息する。
結局理由は判らず仕舞い。気にはなるが、触れないほうがうまく治まる気がしたので触れないで置く。
ひとは「それより謝るのは私のほうだよ。……今日のことも、昨日“話しかけないで”って言ったことも……」
視線は私に向けていない。だけど、その声はいつもより一回り弱々しいもので印象深かった。
ひとは「それに……謝るのが遅くなったことも、……意地になっててごめん」
なんというか、素直に謝られてちょっと居心地が悪い……。
ふたば「仲直りっスね!」
ふたばが間に割って入る。この自由な行動が居心地の悪さを壊してくれて助かる。
……って、あれ? これってさっき部屋で見た紙袋?
ふたば「これ! 二人に買って来たっス! 本当は仲直り出来るようかったんスけど……
仲直りしちゃったっスから、そのお祝いっス!」
私達に袋を差し出してきたので反射的に受け取った。
えっと、中身は……服?

239 :
<バサッ>
前を見るとひとはが袋から服を出し広げていた。
ひとは「え、何これ……」
何これって服だろう。いや……言いたいことは判る。
なんというか、服のデザインが……つまり、おばあちゃん級のセンスなのだ。
そして、嫌な予感を感じつつ私も紙袋から服を取り出し広げた。
みつば「げ……」
ひとは「……ペ…ペアルック」
ふたば「どうっスか! どうっスか!」
満面の笑みを浮かべ私達に感想を聞く。
ひとは「どうって……いらな――」
みつば「わ、わー可愛いじゃない! ふ、ふたば気が効くわね。ありがとね!」
ひとはが本音を言いそうだったのでフォローした。
っていうか、ひとはってそういうとこ気が効かなすぎよ!
ふたば「ほんとっスか! じゃ明日、二人ともそれを着て登校っス!」
みつば&ひとは「「え゛……」」
衝撃の一言。
このダサい服を着て……しかもひとはとペアルック?
ふたばは私達にねと言ってるのだろうか?
ふたば「ほへ? なんか問題あるっスか?」
私達の反応に不安げな顔を見せる……こんなのって反則じゃない!?
ひとは「問題って……こんな服着れる訳――」
みつば「(ちょっと! ふたばがわざわざ、私らのために買って着てくれたのよ!)」
ひとはがまた気を効かす気ゼロなので慌てて制止に掛かる。

240 :
ひとは「(じゃあ、着るの?)」
みつば「(……)」
ひとは「(あの服を……しかも、ペ、ペアルックで登校って人類に出来るの? 雌豚なら出来るの?)」
私は、何も答えずふたばに少しだけ視線を向ける。
まだ先ほどと変わらない不安げな顔。
みつば「(ひとは……人を捨てる時が来たようね)」
ひとは「(ちょ! みっちゃん! 早まらないで、私が何とかするから!)」
そう言うと、ひとははふたばの前に立ち「コホン」と咳払いをして口を開いた。
ひとは「この服、ふたばのお金で買ったの?」
え! そこなの!? いや、確かに気にはなってたけど、そこから明日、着ない方向に?
ふたば「ん、箪笥の中でお札を小生が見つけたっス!」
ひとは「っ! それ今月分の食費だよ!」
衝撃の事実! その後有耶無耶になったお陰で助かった。


……。
……気になる。ひとはの怒った理由。
ふたばの服の件で喧嘩の発端となった言葉は思い出せた。
“ちょっと私のお洒落な服、洗濯し忘れるとかどういうことよ! あんたらしくもないミスしないでよね!”
何気なく言ったこの台詞から機嫌が悪くなったのは確かだった……やっぱりこの台詞がいけなかったのだろう。

241 :
杉崎「そんなの、あんたが三女を過大評価してるから、へそ曲げたんじゃないの?」
みつば「へ?」
杉崎「だって、“あんたらしくもないミスしないでよね”って言ってから怒ってたんでしょ?
その台詞が理由っていうなら、怒る要素ってそれくらいじゃない?」
みつば「???」
杉崎「何? 意味わかってないの? あんな言い方だと三女が失敗しない完璧超人みたいって言ってるのよ!」
仲直りを経て、ペアルックを着ずに済んだ翌日の事。
気になりすぎて、つい杉崎に聞いてみた。まともな答えなんて返ってこないと思っていた結果がこれ。
なるほど……たしかにそうかも知れない。
私はひとはのことを運動と社交性以外は完璧な妹だと思っていたかも知れない。
宮下「そういうの、変にプレッシャーになっちゃんだよな」
空気を読まずに宮下が登場。……盗み聞きとは性格悪い奴!
と、思ったが、実際そうなのかも知れない。
ひとはは、家事を当たり前のようにしていて、私達はそれに甘えていたのかも……。
ひとはは何でも出来て当たり前……そんな空気を作ってしまっていたのかもしれない。
宮下「それより、三女が完璧超人? 何言ってるんだ! 三女ほど私の助けが必要な奴なんていないぞ!」
……ひとは、本当苦労してるわね……。
私のこと言われてる訳じゃないけどじゃないけど、張り倒してやりたい。
杉崎「そ、それより……ぷっ、何その額?」<ピロリロリーン>
あからさまな話題転換は有り難いのだけど……。
私の額にはでっかい絆創膏。それを見て吹き出す杉崎。だ、か、ら! 撮るな!
額を手で隠してもなお鳴り止まないシャッター音。最悪……。

242 :
〜 愚妹(ひとは視点) 〜
なんとか、みっちゃんと仲直りは出来た。
でも、流石にみっちゃんの服をあのままにして置いて良いわけが無い。
出来れば直して、喜んでもらいたい。
家に帰ったら修繕しないと。
松岡「ねぇねぇ三女さん、みっちゃんと仲直りできた?」
ひとは「っ! な、何でそのこと……」
みっちゃん? いやふたばだろうか?
松岡「あ! こっくりさんが……えっと“て”……に濁点に……“き”…“た”……“よ”! 仲直りできたのね!」
何これ怖い。
ひとは「だ、誰に聞いたかしらないけど……大した喧嘩じゃなかったし」
松岡「でも昨日は随分落ち込んでたよね」
え……わ、私そんな風に見えてたの?
……ここはこっくりさんの力で乗り切ろう!
そう思って指先に力を入れて“そんなことない”って動か――って動かないし!
松岡「昨日ずっと上の空だったし、いつのまにか先に帰っちゃうし――」
うう……恥ずかしい、顔が熱いし真っ赤なのだろう。
そして十円が全然動かない! ダメだ、とりあえずこの場から逃げよう! そう思って指を離そうとした時――
松岡「ダメよ! 指を離せば祟りがあるわ!」
逃げれないし……何この拷問。もうしばらく松岡さんとはこっくりさんはしないで置こう。

243 :
みつば「ただいまー…ひとは? あんたなんで先に帰――? 何やってんの?」
家に帰ってから修繕作業に四苦八苦していた時、みっちゃんが帰ってきた。
本当はみっちゃんが帰ってくる前に何とかして置きたかったんだけど、やっぱり十分足らずじゃ無謀だったかな?
まだ、全然掛かりそうだ。
ひとは「……昨日の服の修繕」
みっちゃんの問いに私は端的に答える。
みつば「え……わざわざ直してくれてるの? べ、別にいいわよそんなの捨てちゃいなさいよ」
……気を使ってるんだろう。本当、なんで日頃は鬱陶しい行動が目立つのに、こんなにも優しい所があるんだろう?
だからってお言葉に甘えて、服をゴミ箱に捨てるなんて酷いことしないけど。
ひとは「……新しいの買えばお金掛かるし……それに私がしたくてやってるだけだから」
当たり障りの無い適当な理由と、小さな声で私の本音を言って作業を続ける。
みつば「そ、そう?」
態度から見るに本音の方も聞こえたかな……別にいいけどね。
ひとは「ちょっと変な破れ方だから、上手く直らないかもしれないし、着たくないなら捨てちゃって」
みつば「せっかくあんたが直したもの捨てないわよ!」
……。
あー、もう。なんでこう素直じゃない癖に良くわからないタイミングで……。
不意打ち気味にそういう事言うの止めて欲しい。
私は作業の手を止め、みっちゃんに言ってやる。
ひとは「じゃあ、雌豚の刺繍も付けてあげるよ」
みつば「余計なもの付けなくていいわよ!」
「まったく……」と言いながら私の座る炬燵テーブル――――別に炬燵を付けてるわけじゃないけど――――を挟んだ向かい側に座る。
何か話でもあるのだろうか?
作業を再開せずにみっちゃんのほうを見ていると、落ち着きが無いというか、何か躊躇っているような様子。言っちゃ悪いが気持ち悪い。
しばらくして、急に覚悟を決めた様に顔を上げ、意外な事を言ってきた。

244 :
みつば「きょ、今日は私が夕飯作るわ!」
……。
ひとは「何言ってんの?」
みつば「だから、今日の夕飯は――」
ひとは「もう献立決まってるから、邪魔しないで」
みつば「邪魔って何――」
ひとは「邪魔は邪魔だよ」
みつば「……」
黙ってしまった。
何がしたいのか良くわからないが、ふたばの買ってきた服の件で今月の食費は厳しいのだ。
みっちゃんに自由に料理させるわけには行かない。
みつば「じゃあ…………夕飯の準備手伝うわ」
ひとは「それは、助かるけど……いったい何が狙い?」
みつば「……」
またも、黙ってしまった。意味がわからない。
私は何も言わずに修繕作業を再開した。
言いたくないなら別に言わなくていい。
それに、せっかく手伝ってくれるのに、下手に言及して手伝わないとか言われたら勿体無いし……。
……も、勿体無いって言うのは別にみっちゃんと料理できるとかそういうことじゃなくて……えっと、
そ、そう、人手が減ったら勿体無いって意味だ。うん、それ以外に無い……絶対に無い。
そんな無駄な考えに自分で無駄な突っ込みを心の中で入れるという、無意味だし不必要な思考をしている時、
みっちゃんが、頬杖して横を向きながら、少し言いにくそうに口を開いた。
みつば「あ、あんたに甘えすぎてたかな……ってちょっと思ったから今日だけ特別に手伝って上げようかと思っただけよ」
私に甘える……?
少し疑問に思ったが、すぐ、料理や、洗濯、家事全般を私が担当している事を言ってるのだと気が付いた。
確かに、そうかも知れないけど、今更な気がする。
その疑問が顔に現れて居たかどうか判らないが、みっちゃんはその答えに近いのかどうなのか良くわからない答えを口にする。
みつば「あんたも、人間。一昨日や昨日で、あんたもミスするんだって判ったわ」
そして、その台詞は、私が聞きたかった言葉でもあった。
みつば「そ、そうそう! あんたは完璧な“丸井ひとは”じゃなくて優秀な私の愚妹ってことよね!」
その後続けたみっちゃんの言葉は、一言多くて台無しだ。
でも――
ひとは「ありがと……」
――私の口から自然に出た言葉は、自分でも驚く素直な感謝の言葉だった。

245 :
〜 蛇足(みつば視点) 〜
みつば「ちょ! なんで雌豚の刺繍入れたのよ!」
ひとは「名前入れておかないと、誰のか判らなくなると思って」
みつば「そうそう、この、雌豚のマークが“私の”ってひと目で判る……ってだったら“みつば様”って入れなさいよ!」
ひとは「のり突っ込み下手だね。あ、“みつば様”って入れるから貸して」
みつば「……やっぱり恥ずかしいから名前は入れないでくださいひとは様」
ひとは「だが、断る」
本当、こんなにひとはと馬鹿みたいなやり取りするのが楽しいのに、会話をしてなかったのが勿体無い。
と言っても、実際一日くらい会話しなかっただけなんだけど……私、どんだけひとはとの会話が好きなのよ……。
夕飯の準備の時も楽しかった。あれなら毎日……いや、それは何だがひとはと料理するのが楽しみにしてる様で恥ずかしい。
ひとは「ねぇ、みっちゃん。結局上手く直ってないし、雌豚と入れちゃったしいらなかったら本当にすてちゃっていいよ?」
さっき渡した服を広げながら、結局は刺繍をし直さずに聞いて来た。
みつば「す、捨てないわよ! 外に着てくのはアレだけど、ちゃんと部屋着として使ってあげるわよ!」
そういって広げていた服を取り返す。
捨てるわけ無い。その服は破れる前の時よりも、大事なお気に入りの服だから。
……絶対外じゃ着ないけど。
おわり
〜〜〜以上本編〜〜〜
毎度長い文章読んで頂きありがとうございます。
本当は前半で終了予定でもう少しふたばを絡ませる予定でした
タイトルの「事情」=「次女」を指してたんだけど、全然そんなこと無かったorz
前半部分で納得できず後半部分の流れに方向転換(全体的にも多少修正)した為
いつにも増してgdgdです……。
感想などあればお願い致します。

246 :
GJ!
みつばより杉崎より,だれよりひとはがツンデレという罠

247 :
乙乙

248 :
乙です。力作ですねー。世話焼きなサブキャラ達がいい
杉崎×ひとはって需要あるかな。プール迷子回とか乳パッド回とか見るに
何かと気の合う良いパートナーっぽい感じがする。喧嘩とかしないだろうし。

249 :
みつどもえ分補給完了…っと
正直もうカラカラです

250 :
>>228
乙!よかったよ
>>248
俺的にストライク。書いてくれ

251 :
245です
>>246-250
感想ありがとう御座います!
>>248
猫の名前付ける回なんてのも良かったなー

252 :
うわぁ・・・

253 :
上質の杉みつ急募

254 :
>>253
上質+急募には答えられないけど、最近ひとみつばかり書いてるから
杉みつを書いてみようと思ってたところだった。
処女作の別視点(色々ひどいので少々修正予定)と新作を何か考えてみる。
あと、私の書いてるひとみつに杉みつが入ってくるように、杉みつにもひとみつが、きっと入ってしまうので
そこのところは多めに見て下さい。
一応今年までに書き上げる予定……予定は未定。

255 :
>>254に期待

256 :
俺も期待

257 :
じゃ俺も

258 :
254です。
期待ありがとー頑張ります。
そういえば
杉崎「みつば、アンタ熱でもあるんじゃないの?」
って言う杉みつSSがあったみたいだけど皆さん読みました?
ちょっとエロいけど、私が書いてる奴より良作なので杉みつ好きの方必見かと思いますよ。
みつどもえSSもっと増えるんだ!

259 :
258です
こんなに期間開いてるのに連投になっちゃうのか……
今月中に新作の方は投下出来そうです。
ところで、もう終わってるけど、アニメイトチャンピオンフェア、クリアしおりシートにみつどもえ絵描き下ろしだったそうで
のりお氏元気なようで何よりです。

260 :
のりおちゃんの連載再開、このスレ唯一の希望>>259さんの新作
どちらも期待して待ってます

261 :
期待せざるを得ない

262 :
259です。忍法帖確認。
忍法帖に問題なければもうすぐ投下します。

263 :
待ってたぞ

264 :
期待

265 :
ageちゃうのか!
お待たせして申し訳ないです。
主成分は予定通り杉みつです。
いつもの注意事項。長い、百合濃度低い。
長いので前半後半で分けます。
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:これはデートですか?
〜 発端(杉崎視点) 〜
杉崎「な、もう一度言ってみなさいよ!」
みつば「金に物を言わせただけの、センスの無い女って言ったのよ!」
一度ならず二度までも……って私が言わせた様なものだけど。
でも! だけど! だからって酷すぎる! 私は私なりに可愛くて綺麗な服を選んでいるのだ。
素材が良い物や有名ブランド品から選んではいるが、見た目だってちゃんと気にしてるし、着こなしだって悪くないはずだ。
杉崎「あんたのセンスこそどうかしてるわよ! そんな雌豚体系でよくミニが履けるわね! 極めつけは下着よ、し・た・ぎ!」
口が勝手に動いていた。
……でもこの言葉は…本心ではない。
みつば「なっ! す、杉崎ぃ〜!」
杉崎「…な、なによ? 全部事実を言ったまでの事じゃない?」
流石に今のは言い過ぎた……そうは思っても引くに引けない。
吉岡「ふ、ふたりとも、いつもすごくお洒落だと思うなぁ」><
杉崎&みつば「「あんたは黙ってなさい!」」

266 :
……と言いつつも、正直感謝してる。吉岡に限らず、私達の喧嘩にはストッパーは必要だと思う。
二人だけで喧嘩してたら一日中怒鳴ってばかりで、喉が痛くなること間違いなしだ。
吉岡の台詞はみつばにも届いたみたいで、大きく嘆息して、今までの怒ったトーンの声は出さずに提案してきた。
みつば「それじゃ、今からデパートで私の服のセンスを見せてあげるわ」
杉崎「臨むところよ! 私のコーディネート力に恐れ戦く事ね」
私への挑戦と受け取った私は間髪入れずに受けてたった。
周りから見た時、きっと私とみつばの間には火花が散っているのだろう。
ちなみに今は下校中。
松岡に三女が拉致されたことでいつもの面子より少ない。
と、いっても松岡がいない時なんて珍しくもなく、三女もいない時良くある話だ。
ふたばだってそうだ。私達と違って、佐藤君や千葉君と一緒に帰ることや遊ぶことも多い。
だから今の状況は然程珍しくはないのだが……次の宮下の台詞で珍しい事態となる。
宮下「あ、悪い……今日さ吉岡と明日提出の宿題やろうと思っててさ……」
どうやら宿題が終わってないらしい。私は既に終わってる。
勝負は中止かな? この流れならみつばだって終わって――
みつば「ああ、アレね、昨日ひとはの写したし問題ないわね」
――いた様だけど……ひどい話だ。勝手に鞄とか漁られたに違いない。
みつば「ほら、杉崎、どうせあんたも終わってるんでしょ!? さっさと服見に行くわよ!」
杉崎「わかったわよ」
そういうわけで、さらに面子が少なくなり――

267 :
――あれ?
みつばに返事を返して宮下たちと別れ、しばらく歩いてから気が付いた。
これって……もしかして、みつばと二人で行くことになるの?
杉崎「っ!」
もしかしなくても、ここにいるのは私とみつばだけなんだから当たり前のことだ。
……珍しい。みつばといることは然程珍しいことではないけど……二人っきりって状況は今までに数える程しか無かった。
変に緊張してきた……なんでみつば相手に緊張なんて……。
二人っきりって言っても……ただ二人で服を見に行くだけで……二人で服を……二人……。
みつば「杉崎? なによ変な顔して」
いつの間にかみつばの少し後ろを歩いていた私。
それを心配したのか遅くてイライラしたのかわからないが、みつばは声を掛けてきた。
なぜだか二人と言う言葉が頭から外れずにいた私は考えが纏まらずに口を開いた訳だけど……。
杉崎「へ? あ……み、みつばと二人だけって、状況、あんまり無かったなって……思って」
……失敗した。なに正直な感想言ってるのよ!
私が変に意識してるみたいじゃない! ……してるけど。
みつばは、私の台詞から少しの間を置いてから、口を開いた。
みつば「だ、だからなんなのよ! ……さっさといくわよ!」
そう言って、なんでもないように前を向き歩き出す。
意識してるのは私だけ?
……若干さっきのみつばの反応に違和感を感じはしたが、それが何なのか判断できるほど大きな仕草とかはなかった。
っというより、さっきの混乱してた私が気が付ける訳がない。
結果、みつばの真意はどうであれ、私は出来る限り平静を装っていつもの反応を心掛けることにした。



268 :
〜 美服(みつば視点) 〜
宮下たちと別れてから、杉崎とデパートに向かって歩いていた時だった。
杉崎がいつの間にか隣ではなく、少し遅れた後方にいることに気が付いた。
振り向いて杉崎を見ると何か考え込むような……いや、緊張している時のような、硬い顔をしていた。
みつば「杉崎? なによ変な顔して」
とりあえず聞いてみる。
私には心当たりがない。もしかしたら、なにか大事な用事でも思い出したのかも知れない。
だとすると、この勝負はお預けかな……ちょっと残念だけど仕方がない。
なんて思っていたんだけど。
杉崎「へ? あ……み、みつばと二人だけって、状況、あんまり無かったなって……思って」
……え?
帰った来たのは全然想定外で物で、そして理解するのに少し時間がかかった。
えっと、二人っきり? 誰が? だって私たちは……えっと、私と、杉崎と……あれ?
うん。二人だ。…………ちょ、ちょっと二人だけじゃない!
馬鹿なの私! 今までなぜ気が付いてなかったのよ!
……。
いやいや、冷静になろう。二人っきりだからと言って何も問題はない。
喧嘩を止める面子がいないだけだ。だったら喧嘩がエスカレートしないように注意していればそれも心配する必要はない。
みつば「だ、だからなんなのよ! ……さっさといくわよ!」
私は杉崎から視線を外し、再び前を向いて歩き出す。
……問題なんて無いはずだ。

みつば「さ、さぁ! 着いたわよ!」
杉崎「そ、そうね! 庶民の貴方に私のコーディネイトを見せてあげるわ」
ほら! いつもの会話じゃない!
二人っきりだからて気にすることじゃないわよ!
――と“表面だけ”いつも通りの会話を交わして気にしないようにした。
……なんで杉崎相手にこんな気を使わないといけないのよ……馬鹿馬鹿しい。

269 :
そう思ってしまったのがいけなかったのだろう。
ついつい悪態が出てしまう。
みつば「あんたこそ、覚悟してなさい! あなたは今日その庶民に完全なる敗北をして私の下僕に成り下がるんだからね」
杉崎「な! げ、下僕ですって! 庶民風情が生意気よ!」
と、言われても貴方の母親である変態ドMは既に私の下僕になってる訳だけど……まぁ、出来ればアレに下僕になってほしくはなかった。
そんな杉崎を無視して“いい感じな服”を探すことにする。
その様子を見た杉崎も、服を探しにその場から移動したようだ。
それにしても、服のセンス……ねぇ…。
正直そこそこ自信はある。下級生にもお洒落なんていわれたこともあるわけだし。
……けど、杉崎に勝ててるかどうかなんて……悔しいけど庶民の私では、杉崎の着てる服がどれくらいお洒落なのか良くわからない。
きっと、普通の小学生なんてまったく知らないブランド物の服とか選んでるんだろうしね。
すると、私が言えるのは見た目での勝負で勝てるかどうかって話。
杉崎はどういう基準なのかは知らないけど。
と、言うかそもそも誰が勝者を決める?
当事者二人だけじゃ勝負がつかないのは目に見えてるし……。

270 :
杉崎「み、みつば! これが今年のトレンドよ!」
服を探し始めて十分と経たないうちに着替えて登場した杉崎は、手を腰に当て、控えめに胸を張ってポーズを取っている。
正直最初に浮かんだ印象は“高そうな服”だけど、まぁ良く見れば杉崎らしいと言うかなんと言うか、可愛い系の服だ。
まず私には似合わない、そういった感じの服。
杉崎「なに? 私に見惚れて声も出ないわけ? だったらこの勝負私の勝ちのようね!」
しばらく何も言わずに眺めていたためか杉崎が調子に乗りだす。
みつば「だ、誰が! 見惚れるわけないわよ! バァーカ!」
ってなに動揺してるのよ! これじゃ図星突かれた見たいじゃない。
誤魔化すために話を進めることにした。
みつば「トレンドとかに影響されないで、自分で納得いく服を選ぶのが本物なのよ!」
杉崎「それは、みつばがトレンドに疎いだけでしょ!」
みつば「っ! 待ってなさい! 今私がセンスの塊であることを証明してあげる!」
そういって私は服選びを再開した。
……そういえば意外にいつも通り、会話出来てる。
気にしすぎだったかな。



271 :
〜 緊張(杉崎視点) 〜
服を選びに私の前からいなくなったみつば。
杉崎「はぁー」
大きく嘆息して緊張を解く。
よくまぁ、アレだけ饒舌に挑発できたものだ。
……みつば相手にこんなに緊張して馬鹿みたい……。
それにしても、なにやらさっきから視線を感じる。
……いや、女二人で買い物なんて良くあることだ。
きっと、気にしすぎなのだろう。
話の流れで、二人だけのお洒落対決をする展開となったが、正直勝敗を決することはないだろう。
みつばも判っていそうなものだけど……。
ふと、目の前に鏡があることに気が付く。
杉崎「……」
私はみつばが来るまでの間、自分の服を鏡で見て悩む。
大きな口を叩いたが、実際これどうなんだろう?
私はそれなりにお洒落だと思うしトレンドにも沿ってはいるけど……。
……問題はみつばがどう感じたか……なのよね。
しばらく眺めていたから「見惚れてた」とか挑発したけど、本当はどう感じていたのだろう。
再び鏡の前で軽くポーズを取ったりスカートを少し吊り上げたりしてみる。
杉崎「……はぁー」
何やってるんだろ、私。
別にみつばに気に入られたいとか、何か言われたいとかそんなことないはずなのに……。
そうなはずなのに……こんなにも気にしてる。

272 :
みつば「杉崎!」
っ!
いきなりの声に心臓吐き出しそうになった。
……絶対、寿命が縮んだわ……。
一息ついて振り向くと自信たっぷりにポーズを決め、ありもしない胸を張ってみつばが立っていた。
みつば「この勝負、私の勝ちよ! トレンドなんかに私は惑わされないのよ!」
みつばは、そう高らかに宣言した。
感想から言って、いつものみつばの強化バージョンと言えばいいのだろうか?
ただし普通のミニスカートではなくデニムスカートになっていたりして、少し大人っぽさもある。
ブランドものではないが、上手く着こなしてるわね……普通に可愛いしお洒落だ。
みつば「……あんたも見惚れてるわけ?」
しまった! つい服を見るのに夢中で……あ、とりあえず写真撮らないと。<ピロリロリーン♪>
みつば「っていきなり写真撮るってなんなのよ!」
いや、だってみつばが新しい服を着てるんだがら撮るのは当たり前だ。
と、思いつつみつばを無視して話を進める。
杉崎「ま、まぁまぁね。でも私達だけじゃ勝敗決めれないし買って帰って、明日学校で決めましょう」
みつば「え……」
? なんだか不服……というより「それは無理」みたいな反応。
杉崎「……さては、自信ないのね?」
違うと思うがとりあえず挑発ついでに言っておく。
みつば「え、いや……無いのはお金なんだけど」
……ああ、そりゃそうよね。
私も手持ち無かった。
杉ママ「あら? 二人とも可愛い格好してるのね」
杉崎&みつば「「っ!」」
なんてタイミングのよさ! ママはやっぱり凄いわ!
杉ママ「みつば様もいつにもましてお洒落ね。買い物? ……鞭や蝋燭は……そうよね、なくても大丈夫だったのよね」
ママ……お願いだから、みつばの前では喋らないでください。
とりあえず、くだらない話に割り込むように事情を話すことにした。

273 :

――
杉ママ「なるほどね、どっちがお洒落か勝負してたのね。二人とも可愛くて私じゃ判断できないし……良いわよ二人とも買ってあげるわ」
みつば「さすが、変態財布ドM女!」
杉ママ「〜〜っ! もっと罵倒していいのよぉ!」
みつばもママに話しかけないであげて……。
みつば「……」
みつばは喜んでいるものの若干複雑な顔をしているのが目にとまった。
理由は何となく判った。ママは残念ならが悶えていたので放って置いて、私はみつばに問いかけた。
杉崎「何? あんたらしくもない。買って貰える事気にしてるの? まったく口だけよねぇ」
そう、それにみつばのパパだって、気を使ってしまうだろう。
みつば「! ち、違――」
杉崎「(出世払いよみつば! これは貸したんだからね。あんたのパパにもそう言っておいたらどう?)」
みつば「え、あ……」
杉崎「……って言ってもみつばは出世魚のように脂が乗るだけでしょうね」
そう言って私はみつばから距離を取る
みつば「な! あんたねぇ〜! 待ちなさい!」
杉ママ「あらあら、仲いいのね二人とも」
杉崎&みつば「「よくないわよ!」」
杉ママ「ふふふ」



274 :
〜 視線(ひとは視点) 〜
松岡「なになに? やっぱりあの二人に悪霊が憑いてるのね♪」
そう言って上機嫌に私の後ろから肩を持ち、そして私の視線の先……みっちゃんと杉ちゃんを見る松岡さん。
ひとは「そうだよ、危険な霊だと思うから絶対に二人に気付かれちゃダメだから」
そういって、突入しそうな松岡さんを宥める。
当たり前なことだけど別に霊が憑いてるわけじゃない。
松岡さんの突入を止めているのは、もしみっちゃん達と合流してしまえば私達が隠れて付いて来てたことがバレてしまうから。
杉ちゃんじゃあるまいし、こんな事すべきじゃないと思ったが、デパートに“二人だけ”で向かうみっちゃん達を見て、
そして、偶然にも松岡さんが「二人だけで? 妙ね……は! もしかして霊の仕業!」とか言い出すものだから私も
「そうかも知れないね……後を付けよう」なんて口走ったせいだ。
それにしても……なんとかさん達と一緒に帰ってたと思ったのに、いつの間に二人に?
なんとかさん達には帰ってもらって、二人で買い物なんて…………ど、どっちから誘ったんだろう?
う〜ん、遠くて会話が聞こえない。杉ちゃんが試着した服をみっちゃんの前で自慢してるのはわかるんだけど……。
みつば「〜! 〜〜〜〜〜〜! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
えっと、何叫んで――ってこっち来た!
ひとは「松岡さん! こっち!」
そういって松岡さんの手を引いて隠れる。
松岡「あ、ちょ、三女さん!?」
ひとは「(いいから静かにして)」
松岡さんに小声で話す。
それと同時にみっちゃんが先ほどまで私達が居た場所あたりに移動した。
……危なかった。雌豚の癖に急に走ってくるから驚いたよ!

275 :
みつば「――ったく、誰が見惚れたりなんか……まぁ、でも可愛い服が似合うってのは羨ましいわね……」
なるほど……試着して自慢大会か何かしてるのだろう。服を探してるところを見るに、今度はみっちゃんのターンと言うわけか。
服選びなんて見てて面白くなさそうなので、みっちゃんが可愛いと評した、杉ちゃんの服をもう一度見に行こう。
少し移動して杉ちゃんが見える位置から監視をする。
松岡「(さ、三女さん? もう手、離してもいいんじゃないかな……)」
ひとは「(あ……、ごめん)」
そのまま手を握ったままだった。……失敗した、恥ずかしい。
若干気まずい空気になったが、松岡さんは場の空気を変えるためなのか、すぐに言葉を発した。
松岡「(……なるほどね、みっちゃんが言ってた服、確かに可愛いし杉ちゃんに似合ってるね……)」
私もそう思う。みっちゃんに言わせたことだけはある。
みっちゃんもたまにはあんな格好したらいいのに。
でも、やっぱり二人だけでこんなことしてるなんて、……デ、デートしてるみたいな感じだ。
本人達に自覚があるのかどうかは、知らない……いや、杉ちゃんはなんだかありそうだ……。
そう思ったのは、杉ちゃんが鏡の前で先ほどみっちゃんに自慢してた服を不安そうに何度も見直していたからだ。
……周りからみるとポーズを一人で取ったりしてちょっと滑稽だけど口にはしないで置こう。
松岡「杉ちゃん……あんなに気にして可笑しいよね」
口にしないでおこうよ! 松岡さん。
みつば「んー、これでいいわね」
! 後ろから声! 不味い! ここ更衣室前だ!
そして近くに隠れるところ――更衣室しかない!
松岡さんを押して二人で二つあるうち一つの更衣室に飛び込む。
間一髪! 危ないところだった。杉ちゃんに気を取られすぎた。
状況を飲み込めていない松岡さんの口を押さえて喋らない様に……ってなんで私松岡さん押し倒してるの!
布擦れの音が隣の更衣室から聞こえる。
私は松岡さんが暴れないようにアイコンタクトで会話を試みる。
すると、状況を理解できたようで頷いて返してきた。
その後、しばらくするとみっちゃんは出て行った。
二人して息をして、どうにかその場をやり過ごすことに成功。
ひとは「ま、松岡さん、その……ごめん」
松岡「え、あ、……さっきのはしょうがないと思う。うん」
オカルトモード解除の随分しおらしい松岡さん……いつもこんな感じでいて欲しい。

276 :
気まずいので更衣室のカーテンを少し開けて、再び二人の監視をする。
うーん、やっぱり遠くて会話までは聞き取れない。
さっきとは違いみっちゃんが杉ちゃんに服の自慢をしてるだけだとは思うけど。
松岡「……えっと、三女さん……帰らない?」
ひとは「え?」
突然、松岡さんが問いかける。
松岡「二人とも普通に買い物っぽいし、なんかストーカーみたいで悪いよ」
ス、ストーカー!?
……薄々気が付いてたけど実際言われることになるとは……。
そして、さっきまでオカルトモードだった松岡さんが、急に普通に戻ったことになんだか腹が立ってきた。
ひとは「ま、松岡さんも共犯だよね?」
松岡さんの方には向かずに言う。
松岡「わ、私も!?」
何を今更、当たり前だ。
さて、口止めしておかないとね。
ひとは「共犯者としてこのことは他言無用ということで……」
松岡「……二人だけの秘密って…ことね?」
ひとは「そう、二人だけの……」
……なんだか言い方が引っかかるが気にしないでおこう。
仕方がない、ストーカーみたいと言われてまで付いて回るのも嫌だし……帰ろう。
更衣室から出て、見つからないようにデパートを後にする……はずだった。



277 :
〜〜〜以上本編〜〜〜
とりあえず前編終了。
何か規制来るかもなので続きは夕飯後

278 :
再開します。
〜〜〜以下本編〜〜〜
〜 相互(みつば視点) 〜
みつば「……」
杉崎「……」
どうしてこうなったのよ!
折角ドMが来て二人っきりじゃなくなったって言うのに、またすぐに二人っきりだなんて……。
ドMの奴なにが「ちょっとママ、デパートに寄る所があるの、みくちゃんちょっと待ってて」よ!
というか、さっきまで二人で普通に話しできてたのに……あー、もういいや!
みつば「わ、私もう帰るわね!」
そう言って私はさっさと帰ることにする。
もとより私がドMを待つ理由なんてないわけだし。
それにもう5時半を過ぎだ。季節は秋、外はもう夕方とは言い辛い暗さ。
杉崎「え……あ、そう…ね」
そう杉崎が曖昧な反応を返す。
ちょっとは普通に反応してきなさいよ、まったく……。
そして私は帰るために足を踏み出した時。
杉崎「み、みつば、きょ、今日は楽しかったわね!」
みつば「ば、ばかじゃないの! デ、デート終わった後みたいな台詞いわないでよ!」
言葉の選択肢どう考えても間違ってるじゃない!
そんなこと急に言ったら、間違いでも恥ずかしいし、周りが勘違いしたらどうするのよ!
杉崎「あ……」
杉崎は自分の台詞を思い出してか下を向いた。

279 :
みつば「あんたは……楽しかったのね」
空気を変えようと、挑発しようと思って言うはずだったが、なんだか言うのが恥ずかしくて声のトーンを落としすぎた。
でも、挑発だと解釈できたのか、恥ずかしく思っただけなのか杉崎は反論してきた。
杉崎「っ! 楽しい訳ないでしょ! あんたと二人っきりだなんて疲れるだけよ!」
けど――
杉崎「さっきのは、言葉の誤なんだから本気にしないでよ!」
――そういわれるとなんだか腹が立つし……寂しかった。
みつば「そう……そんじゃ帰るわね」
特に反論する気もなく帰るために後ろを向く。
杉崎「っ! ま、待って!」<ガシッ>
そういって私をまた引き止める。そして杉崎の手は私の腕を掴んでいた。
振り向くと、そこには下を向いた杉崎。そのまますぐに口を開いた。
杉崎「嘘よ……確かに疲れはしたけど……それ以上に楽しかったわ」
みつば「す、杉崎?」
私は急な杉崎の言葉に混乱する。
杉崎は、バッと顔を上げて私を見て言った。
杉崎「私は楽しかったわ! ……あんたは! あんたは楽しかったの!?」
デパートの光で照らされた杉崎の顔は真っ赤で、そして真剣な顔だった。
杉崎「どうなのよ!」
私は言い淀む。実際どうなんだろう。
楽しかった? 楽しくなかった? 疲れた?
沢山の答えが浮かんだが、判らなかった。
適当なことをいうのは簡単だけど……でも、真剣にされた質問には、真剣に答えたかった。
最初は楽しみだった。皆でわいわい騒いでどっちがセンスがいいのか決めて、勝敗なんて関係なく楽しめる、そう思っていた。
でも、結局、勝負の当事者二人だけでデパートに行き、気を使いながら、無駄に緊張をしながら――
杉崎「……楽しくなかったのね……あんたは」

280 :
私が答えを整理し終わる前に口を挟む。
みつば「あ、ちょっ……」
杉崎は私の腕を乱暴に放して、私が何か言う暇を与えずに携帯で電話を掛けた。
杉崎「あ、ママ、私先にかえる…………うん、大丈夫……それじゃ」<ピッ>
みつば「ちょっと! 杉崎!」
電話を終えた杉崎に、そう呼びかけてもまるで聞こえてないように立ち止まることもせず去っていった。

……。
???「今のはみっちゃんが悪いわね」
っ! だ、誰!? 振り向くとそこには――
松岡「すぐ追いかけるべきだよ……ね、三女さん!」
ひとは「なんで、急に飛び出すかな……松岡さん」
――ま、松岡とひとは!?
ひとは「っていうか、手、放して!」
松岡「あ、ごめん。でも共犯だから出頭した時も一緒じゃないとね!」

281 :
みつば「なんで、あんた達……っていうか共犯ってなによ?」
松岡「それは私達が――むぐぅ」
ひとは「ちょ! 他言無用って言ったよ!」
そういって松岡の口を押さえながらひとはは言った。
良くわからないが二人の秘密らしい……仲いいわね。
ひとはが松岡の口を押さえたままで続けて言う。
ひとは「みっちゃん……追いかけなくていいの? 杉ちゃん、きっと悲しんでるよ?」
みつば「な、なんでそんなこと判るのよ!」
そう答えると、ひとはは大きく嘆息してから答えた。
ひとは「みっちゃんも杉ちゃんに楽しくないって否定された時、悲しくなかった?」
……わかってる。わかってるわよそんなこと。
私からも言わなくちゃいけないって、そうしないときっと、私が悲しんだように杉崎も悲しむって。
杉崎も私がそう感じたからこそ、引き止めて、恥ずかしいのを我慢して本音で言ってくれた。
ひとは「杉ちゃんも、きっと一緒だよ」
そう、一緒なのだ。自惚れかも知れない。そう思ってた時もあったし、私自身杉崎なんて嫌いなはずだと思い込んでいたこともあった。
でも、一緒に下校するようになってから……いや…もっと前から、杉崎を案じてる私が居て……私を案じてくれてる杉崎が居た。
今日だって、私が洋服代を気にしてるとき気を使ってくれてた。
だったら、追うしかないじゃない!
みつば「……ひとは、私の分の夕飯ちゃんと残しておきなさいよ!」
そういって私は二人を置いて走った。
まだ答えなんて見つかっていないが、今からでも…会ってからでも考えればいい。



282 :
〜 電話(杉崎視点) 〜
私は、デパート出てまっすぐ帰らずに、誰も居ない脇道に入ってしゃがみこんでいた。
馬鹿だな……私。
急にあんなこといって……。
みつばは何だかんだ言っても、私のこと心配してくれたりするけど……その優しさは、私にだけ向けられてるわけじゃない。
あんな性格だけど皆に優しい。別に勘違いしてたわけでもなくわかっていた事。
それなのに……。
今日は一人で舞い上がってたのかな……私。
全然そんなつもりなかったのに。
実際、みつばに言った通り気を張りっぱなしで疲れはしたけど、本当に……本当に楽しかった。
いつも皆と一緒の時も楽しいけど……それとは違う、なにか新鮮味のある特別な時間だった。
携帯を取り出し、今日撮ったデニムスカート姿のみつばの写真を見る。
今日のことを思い出し唇が軽くつり上がるのが判った。でも――
杉崎「私は……楽しかったのに……どうして? ううぅ……――」
――それは同時に悲しいことだった。
そして、悔しかった。……私だけが楽しんでたということがどうしようもなく、悔しかった。
私は声を必に押しして……それでも目から溢れる涙は止められなかった。

283 :

しばらく泣いて落ち着いた。
あー……なんでみつばの為にこんなにも辛い思いしなきゃいけないのよ……。
って言うか、みつばから言い出した勝負よ!
私はそれに付き合っただけじゃない! なんで私のほうがこんな辛い目に会わなきゃいけないのよ……。
……この感情が開き直りってことは自覚してる。
人間の本能と言うか性質というか……そういうのには本当に驚かされる。
開き直りってこんなにも便利なものか。
開いたままだった携帯を操作してバックライトをつける。液晶に現れた数字は18:55、もうすぐ7時……どんだけ泣いてるのよ私。
メールが一通来ていた。差出人はママ。内容は少し遅くなるというものだった。
まだ、私がこんなところに居るなんて思っても見ないだろう。
とりあえず帰るために立ち上がる。
長い間しゃがみ込んでいたためか膝が少し痛かった。
杉崎「っと……はぁ…さっさと帰って寝ようかしら」
なにも悩むことない。明日からいつも通りにしていればいい。
それが私の望む形であり、みつばの望む形のはずだから……。
脇道から本来通る道に戻った。
外はいつの間にか完全に夜となっていて、風も肌寒い。
私は俯いたまま、帰路に着く。
足取りは重くて……荷物は多くて嫌になる。
そう思ってしまうのはやっぱり無理してるってことなのだろう……。
あんなことさえなければ、こんな気持ちで帰ることもなかったはずだから。

284 :
<♪〜〜>
携帯の着信音……ママだろうか?
携帯を取り出して確認すると……丸井家……。
十中八九みつばだろう。……応答すべきだろうか?
私は迷った挙句、約10秒着信が続いた時に応答した。
杉崎「もしも――」
みつば『ちょっと! あんた今どこに居るわけ!』
あまりの大声に携帯を耳から離す。
まったく、いったいなんなのよ……。
杉崎「別に……どこだっていいでしょ?」
みつば『よくないわよ! 家に行ってもドMもあんたも帰ってないって言うし、どこほっつき歩いてんのよ!』
だからそういうことじゃなくて。
杉崎「なんで、みつばにどこにいるか言わなきゃならないのかって言ってるのよ、この雌豚!」
みつば『っ! なんです――』ひとは『(ちょっとみっちゃん、冷静に話すって言ってたでしょ? って言うかさっきからうるさい)』
私の悪態に反応したが、途中で受話器の向こう側からひとはの声で制止が掛かったようだ。
みつば『ど、怒鳴って悪かったわね……とりあえず、あんたと直接会って話がしたい訳よ。どこにいるか教えてくれない?』
あまりに急すぎる態度の変化に笑いそうになる。なに? 私に気でも使ってるのだろうか?
でも……やっぱりみつばと話すのは、本当楽しいわね。
杉崎「別に電話でも話くらいできるじゃないの?」
みつば『そ、それはそうだけど……』
言い淀むみつば。
はぁ……。直接会って話したいこと……か。

285 :
杉崎「……デパートを出てすぐの通りよ」
大体何を話しに来るかなんて想像は付いてる。
みつば『あんた、なんでまだそんな所にいるわけ?』
杉崎「さぁーね。忘れたわそんなこと」
みつば『何によそれ……とりあえずそこで待ってなさい今から行くから!』
杉崎「嫌よ。帰ってる途中なんだから」
みつば『っ! い、いいわよ! あんたの家の方からそっちに向かうから! 絶対回り道とかするんじゃないわよ!』<ガチャ!>
そういって、私の返答を待たずに切られた。
……私に答えを返すつもりよね?
だとしたら、答えは「私も楽しかった」だろう。
誰にでも気を使えるみつばだ。この答えで決まりだ。
それは私の求めていた答え。でも……気を使ってのその答えは、惨めなだけだ。
杉崎「まぁ……別にいいけど」
もう、惨めでもなんでもいい。
さっさとこんなこと忘れて、いつも通りに話がしたい。
とりあえず今はどんな顔して聞けばいいか考えておこう。


みつば「こっ、今度、もう一度二人でどこか行くわよ!」
杉崎「……へ?」



286 :
〜 返答(みつば視点) 〜
私の非常に恥ずかしい台詞を聞いて、杉崎は予想外の答えに驚いてるようだった。
あー、私、顔から火が出てるんじゃないかしら?
湯気くらいなら当然出てるだろう。
――って、自分のことで精一杯で気が付いてなかったが杉崎の目元……赤くない?
みつば「あ、ちょっと、今の話は置いといて――」
杉崎「え? な、なんで置いておくのよ!」
いや、そんな身を乗り出してまで突っ込み入れなくても……。
みつば「そんなことより、あんた……泣いてたの?」
杉崎「ふぇっ!」
私がそう言うと、杉崎は間抜けな声を上げた後、私から距離を取って――――というより私を突き放して――――顔を隠すため慌てて後ろを向いた。
今更隠したところで意味ないわよ……。
みつば「……なにかあったの?」
杉崎「な、なんでもないわよ!!」
そのことに触れるなと言わんばかりの態度。
なんだか知らないが勢いに圧倒された。
……まぁ、見た所暴力とかされたようにも見えないし、此処まで嫌がってるんだから追求はしない方がいいかも知れない。
なんたって態々質問に答えに来た理由の半分以上は、杉崎のご機嫌を取りに来たようなものだし……何してるんだろ私。
でも、べつに杉崎が喜びそうな答えを選んできたわけじゃない。
杉崎「それより、……置いておいた話に戻しなさいよ」
後ろを向いたまま杉崎が言う。
その言葉に私は考え事を中断した。
……杉崎が後ろ向いてるっていうのは、正直私もやり易い。
それでも恥ずかしいけど……仕方がない。

287 :
みつば「も、もう一度言うわよ? 今度もう一度二人でどこか行かない?」
杉崎「……」
みつば「……」
訂正。全然やり易くない……。
みつば「……な、何か言いなさいよ! あんたの問いに対して考えた答えなのよ!」
杉崎「どういう、考え方すれば、そんな答えになるのよ! っていうか答えになってないじゃない!」
な! ちゃんと真剣に考えた答えを……答えになってないですって!
……。
問い:楽しかったですか?
答え:もう一度二人でどこか行きませんか?
……なってなかった。
って違う!
みつば「だから! 私は楽しかったかどうか良くわからなかったのよ!」
そう、だから考えた答えが――
みつば「もう一度二人でどこか行くことで、ハッキリさせたかったのよ!」
杉崎に答える暇を与えず、私はさらに続ける。
みつば「あんたが真剣にしてきた質問でしょ! ……た、たまにはちゃんと考えて答えてあげようって思ったのよ……」

288 :
杉崎「……へ、へー、そう…なの……」
みつば「……」
杉崎「……」
なんでまた沈黙なのよ……。
超が付くほど恥ずかしいのに!
しびれを切らして私は声を発する。
みつば「……さ、さっさと質問に答えなさいよ! まったく使えないわね!」
でもその声は、恥ずかしさを紛らわすために一言余計な事まで付け足してしまった。
杉崎「な! ……わかった、答えてあげるわ……行かないわよ!」
みつば「はぁ!? なんでよ、あんた楽しかったんでしょ? だったら――」
杉崎「ええ、そうよ! でも行かない!」
きっぱりとそう告げられる。
そして、私が切り返す前に更に付け加える。
杉崎「あんたなんか今日楽しかったのか、楽しくなかったのか一生悩んでればいいのよ!」
こ、この女〜〜〜!
私に蟠りが残るのと、自分が楽しめるのを天秤にかけてその答えに行き着くとか……最低ね!
……と行っても私が余計な一言つけたからこんな事になったのかも知れないけど。
だから杉崎が怒るのは当然。
そして、私も――
みつば「どうしても行かないって訳ね。この性悪女……意地だけは一人前なんだから……」
――一言どころか二言も多い発言……やっぱりこうなる。
わかってはいるのに、口が勝手に動いてしまうから。

289 :
杉崎「! あんたに言われたくないわよ! 体重だけは二人前の癖に!」
みつば「そ、そんなに重くないわよ! パッとボロ雑巾のように捻じ切れてしまえ!」
まぁ、こうやって喧嘩するのも悪くないと思ってるのが一番の原因な気がする。
いや、むしろこれが自然体と言うべきだ。
……でも二人だけだと、この喧嘩終わらないだろうな。

いや……これならいける!
そう思いついたのは、杉崎も私も息切れを起こし始めた時。
一息ついたタイミングを見計らって提案する。
みつば「なら、これでどう? 明日のお洒落勝負、私が勝ったらどこか行くわよ!」
杉崎「ふん! 臨むところよ! 庶民の選んだ服なんかに私が負けるわけないわ!」
もう、私も杉崎も恥ずかしいとか無くなって、いつもの喧嘩だ。
いやまぁ、よくよく考えればきっと恥ずかしいこと言ってるんだけど、よくよく考えてないので大丈夫だ。
勝負の約束を再度取り付けたところで、丁度杉崎の家……今更ながら付いてき過ぎた、これじゃ少し遠回りだ。
そんなことを考えていると、杉崎が突然、突拍子もないことを言う。
杉崎「みつば……ありがと」



290 :
〜 二人(杉崎視点) 〜
そう、それは些細な問題でしかなかった。
私がみつばの気持ちに、一喜一憂しなければならないことなんてない。
だって、私はこうやってみつばと会話――――と言うより喧嘩なんだけど――――しているだけでこんなにも楽しいのだ。
少し前までなら、無理してるって言える発言だと思う。
今も気にしてないわけじゃない。でも……あの時の自分に言ってやりたい、「みつばが楽しくないなんて、喜ばしいことでしょ!」って。
雰囲気に流されただけだ。いつもならそんなに落ち込むようなことじゃない。
杉崎「みつば……ありがと」
私は自分の家を目の前にして、みつばを見ずに呟く。
みつばに、無性に発したかった言葉。
――それは、態々私に真剣に答えを言いに来てくれたみつばに言いたかった言葉。
――それは、私達の関係になんら変化がないってことを教えてくれたみつばに伝えたかった言葉。
――それは、……傍にいてくれて嬉しかった私からの気持ちだった。
みつば「な、何よいきなり……何に対しての感謝なのよ!」
杉崎「……さぁ? その空っぽの……いえ、脂肪の詰まった重い頭で考えて見たらどう?」
後ろを向いていても、みつばの悔しがる顔が容易に想像が付く。
そのまま家に中に入っても良かったのだが、その顔見たさに私は振り向く。
物のついでに此処まで付いてきてくれたみつばに、“みつばに取って大事なこと”を教えてあげることにした。
杉崎「あんたも、さっさと家に帰りなさいよ……“夕飯”、まだなんでしょ?」
悔しがっている表情を一変させる。
流石みつばね。期待を裏切らない反応。それっ! <ピロリロリーン♪>
そんな、みつばの表情の変化を、私は携帯に閉じ込める。

291 :
これも同じだ、私だけ楽しんで、みつばは楽しんでなどいない。
でも、問題ないじゃない。それが辛いだなんて思ったこともない。
逆もそうだ。みつばが楽しんでる状況があったとしても、私も共に楽しめるとは限らない。
つまり、お互い様って事。
私達二人は、お互い捻くれ者同士なのだ。
だからこそ、私はみつばの誘いを一度突っ撥ねた訳だし。
でもね……明日の勝負に貴方が勝った時の約束……二人でどこかに行く時は、貴方にも楽しんでもらうんだから。
もし貴方の出した答えが“楽しくない”だとしてもどこか一点でも楽しんでもらうわ。
そして、私は貴方が悔しがるほどに楽しんでやるから。
みつばは私に文句を言いたそうな顔をしながらも、私から背を向けた。
はぁー、まったく……私への文句より夕飯のが大事とは妬ける(?)話だ。
そう思いながらも私は笑っていた。
おわり
〜〜〜以上本編〜〜〜
長々とお付き合い頂いた方ありがとうございます。
続きは……書く可能性はありますが、皆さんの想像してる続きとは違う物になりそうです。
書かずに終わる可能性も十分ありますが。
さて、どうでしょう……今回時間はそれなりに取れたのですが
最近、最初考えてた話からズレちゃうんです。
プロットが甘いのかな?
途中から会話の流れで展開を決めちゃってます(汗
とりあえず次作は処女作別視点リメイク、現在鋭意製作、修正中です。
……が、最近忙しくなってきてるので時間がorz
感想あれば書き込みお願います。

292 :
面白かった!乙です!
なんだか前回より文章が上手くなってる気が…
次回はリメイクということでそちらも楽しみに待っていますね
それと今回の続きも書いてくれると嬉しいな…

293 :
乙!いつもの人来てたのか!くぅ…レスが遅れたぜ…
やはり杉みつはいいものですねぇ…そしてなんとも破壊力のある松ひとまでねじ込むとは恐れ入った…
しかも弱冠ひとみつ要素が入っている
これだけ詰め込めてしっかりとまとまり、ちゃんとオチている
いつもの人着実にレベルが上がってきているな…w

294 :
DLSiteのみつどもえ同人まとめ
http://doujinlist.info/mitsudomoe

295 :
杉みつってやたら濃厚でハードな絡みが多いよな

296 :
明けましておめでとう御座います。
今年もこのスレでよろしくしたいと思ってます。
>>292-293
感想ありがとうございます。
今回の続きは一応書く予定となりました。
まだ書き始めても居ないのでいつになるかわからないですが、さすがに新年度までには……
それと……上達してますか?
自分だと全然わからないものですね……。
こういう自分じゃわからない事の感想とか非常にありがたいです。

突然だが、お年玉SSだ! 有難く受け取るんだ!
……スイマセン新年早々調子乗りました。
前回の予告の処女作リメイク別視点版まだ調整不足です。
平行してて書いてたショートショートの方が先に出来たのでこちらを投下させていただきます。
以下注意事項まとめ
・今回SSなので短いです。
・主にひとみつ、杉みつですが肝心のみつばは出てきません。
・登場人物が少ないので地の文多めで、台本書き部分を今回に限り撤廃
・百合濃度低いのは相変わらず。
・元旦投稿だけど作中の時期は一切関係ないです。

297 :
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:コレクター・みく
これが杉ちゃんのパソコンにある、みっちゃんコレクションか……。
みっちゃんの下着姿、着替え中、などなど酷いものを見た。
ここは杉ちゃんの家。
非常に珍しいことに部屋には私と杉ちゃんしかいない。
「ちょっと、これ……すごいわね! いくら払えば私にくれるの?」
杉ちゃんが興奮気味に私に話しかける。
私はみっちゃんの生着替え動画――――動画まであるとはほんとただの犯罪者だよ――――を見ながら杉ちゃんの方に振り向きもせずに答える。
「見てもいいって言ったけど、売るなんていってないんだけど」
そう言い終わるタイミングで生着替え動画も終わる。さて、次はフォルダー“みつばパンツコレクション”を開いてみようかな。
「うぅ、欲しいわ〜」
あぁ、うるさいな。
後ろからねだるように杉ちゃんの声が非常に耳障りだった。
「みっちゃんの写真を2度と取らないって覚悟があるならタダであ――」
「見るだけにしておくわね!」
そんな約束してもらってもあげるつもりなんて無いが、狙い通り静かになった。
ちなみに杉ちゃんが見てるのは、私の日記、別名『雌豚飼育日記』だ。
少し前に家に来た時に日記の存在に気が付かれてしまったので、この際見せてあげる代わりに、杉ちゃんのコレクションを見せて貰っているわけだけど。
うん、どれもこれも酷い。そんな日記売らなくても、訴えて賠償金請求するだけで家族全員遊んで暮らせるくらいには酷い。
「それにしても、ほんとみつばのことばっかりね……」
日記を見ながら杉ちゃんが言う。
そっくりそのまま台詞を返してやりたいが、きっとそれは蝸牛角上の争い。
その言葉を自分の中に留めておいて、普通に質問に返す。
「……みっちゃんにもそれ言われた…それからはところどころ私のこと書いてあるはずだけど?」
そう、過去の日記は8割くらいみっちゃんのことばっかりだった気がする。
「まぁ、そうだけど……それでも7割くらはみつばこのことじゃない?」
え……そうだったっけ?
せめて5割くらいじゃないの?
日記を奪ってざっと見る。……7割から8割くらいだった。
なんてことだろう、みっちゃんに指摘されてから然程変わっていなかったとは……。

298 :
「う、うるさいな……みっちゃんが一番面白いネタになるんだから仕方が無いんだよ」
そう言って日記を杉ちゃんに返す。
実際そうだ。トラブル持ってくるのは大抵みっちゃんであり当事者もみっちゃん。
みっちゃん以外書くことが無いからこうなってるだけだ。……たぶん。
それから日記を一通り読み終わった杉ちゃんが私に質問を投げかける。
「で、私のコレクションの方はどう? “凄い”でしょ?」
「うん、とっても“凄い”変態画像集だね」
「でしょー……って変態って何よ!」
「私今“凄い”引いてるよ」
「そこなの!? “凄い”をつける所!」
「杉ちゃんって“凄い”よね、いろんな意味で」
「さっきの台詞聞いてからだと悪意たっぷりにしか聞こえないわよ!」
「え? “凄い”悪意たっぷりだよ?」
「っ! いいわよ、もう見せないから!」
怒らせてしまった。どうやらからかい過ぎたようだ。
杉ちゃんもみっちゃんに似てる部分があるからついついからかってしまう。
それにしても、盗撮しておいて、独り占めとは……。
みっちゃんを独り占めしてるようで、妙に腹立たしい。
ということで――
「別に下着姿も大抵家で見えるし。……お風呂も水道代節約で一緒に入ってるし」
――杉ちゃんが羨ましがるようなことを言ってみる。
……正直、言ってから気が付いたが、私も結構恥ずかしい。
すると私の台詞を聞いて、案の定悔しがる表情を見せてから噛み付いてくる。
「っ! なんであんた、コレクション見たいだなんて言ったのよ!」
「今の杉ちゃんの変態っぷりを調査するためだけど……私“凄い”引いてるよ」
「もう“凄い”はいいわよ!」
ああ、しまった。またからかってしまった。
その会話が終わると杉ちゃんはまた私の日記を開いて読み始めた。
私も杉ちゃんのコレクションの続きでも調査しよう。
と言ってもさっき言ったとおり大抵は家でも見れる光景が多い。
……それなのに、なぜだろう? 私は調査という名目の割りに楽しんでいる気がする。
みっちゃんの走っているところ、食べてるところ、頑張ってるところ、高笑いしてるところ……何気ない一枚一枚なのにだ。
家でも、学校でもいつでも会えるのにどうしてだろう……。
私は別段珍しくも無い画像を見て自然と口元が緩む。
「なによ、興味津々じゃない?」

299 :
「っ!」
いつの間にか後ろに居た杉ちゃん……趣味悪い――のはこのパソコンを見ればわかりきった事か。
「なになに? 何に興味示してたの?」
「え、ぁ……えっと」
私は顔が熱くなるのを感じた。
口篭る私。興味ない振りしてて一生懸命みっちゃんの画像を眺めてるところを見られたからって言うのもある。
でも、それを抜いても私は答えをすぐに言い出せなかっただろう。
どうして私は、何時も見てるはずのみっちゃんを見て楽しめていたのだろう?
「ちょっと、なに黙ってるのよ。教えなさいよ!」
そう杉ちゃんに言われて、とりあえず今開いているフォルダーの中で、なんとなく一番気に入った一枚を指差すことにした。
「んー? あぁ、これね。いい顔――じゃなかった、面白い顔してるでしょ? これはね――……」
杉ちゃんが写真の説明を饒舌にし始める。
私はと言うと、聞いてなかった。それはただ単に興味が無いとかじゃなく疑問が解消され、説明が耳に届いていなかったから。
杉ちゃんの言ったように、今パソコンに写っている画像には、いい表情の――何かに胸を躍らされているような……そんな表情のみっちゃんがいた。
そう……私はみっちゃんの表情を見てたんだ。
時折見せる悲しい表情、失敗してばつが悪そうな表情、本気で心配してる時の表情。
このパソコンの中には沢山のみっちゃんの感情があった。
それは、普段一瞬しか見せない表情も沢山あって……見ようと思っても見えないものであって。
だから私は、見てて楽しかったんだ。

300 :
「――ってわけなのよ。ほんとみつばって、馬鹿よねー♪」
杉ちゃんが満面の笑みで嬉しそうに、まるで自分の出来事を自慢するかように話を終え、同意を求めてくる。
「え、あ、うん、そうだね」
とりあえず、適当に相槌をしておく。
そして、杉ちゃんの説明が終わり一息ついたとき私が話しかける。
「杉ちゃん、何となくわかったよ。杉ちゃんのコレクションの“凄さ”」
沢山の表情を閉じ込めてる杉ちゃんのみっちゃんへの愛……と言うより執念。
正直、かなわないと思った。
一番近くに居るはずの家族である私ですら、こんなに沢山の表情を知らなかった。
「また“凄さ”って、それはもいいって言ったじゃない……」
「違うよ、本当の真面目な意味で“凄い”って思ったんだよ」
そういうと「そ、そう?」と照れながら顔を背けた。
褒めて欲しかった、もしくは自慢したかったはずなのにいざ褒めるとこれだ。
本当、どこぞの雌豚にそっくりなところ。
すると「こ、これなんてどう! 私の一番のお気に入りなんだから!」
そう言って“お気に入りのみつば”のフォルダーを開いてみせる……フォルダー名には突っ込まないでおこう。
私は、今度はどんな表情のみっちゃんがいるか期待していた。
……あ、うん、期待して“いた”。過去形。
そこには卑猥な画像ばかり……物によっては顔も写ってないものもあった。
……やっぱりただの変質者だったよこの人。
「さて、松岡さん呼んで供養しようか」
「ど、どうしてそうなるのよ!」
その後、松岡さんが来て供養を全力で阻止しようとする杉ちゃんを見て今更ながら思う。
みっちゃん……大変だな……。
おわり
〜〜〜以下本編〜〜〜
お付き合い頂いた方ありがとうございます。
今後も鈍筆ではありますが暇を見つけては書いていくので今年もよろしくお願いします。
感想とかあればお願いします。

301 :
スイマセン。
最後の
>〜〜〜以下本編〜〜〜
は、
〜〜〜以上本編〜〜〜
の間違いです。
書き込みボタン押した瞬間に気が付くとか……厄年かなorz


302 :
これはまた素敵なお年玉をありがとうございますw
みっちゃん愛されてるな〜w
次作も楽しみに待ってますよ〜

303 :
流石に再開がないとヤバイね過疎りっぷりが…寂しいなぁ

304 :
俺はここにいるぞ

305 :
俺もいるぞ
のりおちゃんまだか!復活はまだなのか!

306 :
みっちゃんとおがちんの絡みが好きなんだ

307 :
みつおが・・・いやおがみつ? 違うなやっぱりみつおがか?
205卵生の二人三脚回は良かったが掘り下げるとなると難しいな
素直にSMプレイさせるのが無難だろうけど、おがちんがみっちゃんLoveにはならんだろうな
俺は松みつが大好きだ……松岡さんもっと家出して丸井家に泊まるんだ!

308 :
>>300
乙。
やっぱこの二人は一緒に何かしてる時の息の合いっぷりが異常だな

309 :
>>307
松みつとは盲点だったな。言われてみれは松みつはお互い普通に友達をしてる仲だな
何気にみっちゃんが松岡さんを普通に認めてるってのがいい

310 :
おがちんにみっちゃんのファーストキス奪われればよかったのに・・・

311 :
忍法帖確認テスト〜
301です。
忍法帖に異常なければ近いうちに「これは、デートですか?」の続編投下予定
リメイクの方は……モチベが続かずやめにしました! スイマセン!
前回が正月投稿とか……私、半年もサボってたんですね(汗
それとまだここにスレ住民います? 居なかったら寂しいですね……一応投下はしますけど

312 :
ちゃんとチェックしてるぜ
ここの住人を甘く見ない方がいい

313 :
いるに決まってるだろ

314 :
誰も居ない

315 :
連載再開の噂があるのにここは盛り上がらんのかね

316 :
そんな噂始めて聞いたんですが

317 :
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1340456797/

ほい

318 :
ホント静かだな…
連載再開してからの盛り上がりに期待するしかないね

319 :
35号より連載再開祝い!
初回2本立てなようです。ソースは34号。
さて311です。前回あんなこと言っておきながら、早一カ月
何をしてるんでしょうね私orz
まぁ、みつどもえ再開に合わせたということにしておいて頂けると幸いです。
そういうわけで「これはデートですか?」の続編の修正も終わったのでこれから投下しますが
注意事項まとめておきます。
・「これはデートですか?」の続編です、読んでいなくても何とか――ならないかもしれない。
・百合濃度低めです
・長いです。とても長い
・主成分ですが……ちょっと変則で、杉みつ←ひとは←松岡の関係性が主軸です
・まだ続くと思う(ぉぃ
・Q.修正足りないんじゃ……A.そんな気がしますが仕様です、すいません

320 :
〜〜〜以下本編〜〜〜
タイトル:はい、どう見てもストーカーです。
〜 発見(ひとは視点) 〜
ひとは「……で、松岡さん、私達どこに向かってるの?」
松岡「とりあえずは……墓地ね!」
私は大きく嘆息する。
嘆息した理由は二つ。
ひとつは、松岡さんと墓地……嫌な思い出はあっても、言い思い出なんてひとつもない。
もうひとつは、今の状況。どうしては私は松岡さんと行きたくもない墓地に行くために、みっちゃん達とは別行動しているのだろう……と言う呆れから。
松岡さんの急な行動には、いつも調子を狂わされる。
主たる原因は私が天才美少女霊媒師である――と誤解されていることなのだけど、この誤解を解こうと思ったところでいつも失敗に終わるのだ。
まぁ、その誤解のおかげで、有意義と感じることもあるわけだけど……。
それでもそれは、一万円で五円チョコを買うようなもので、迷惑という名となった大量のお釣りが帰ってきてしまう。
そのため有意義な経験は、有効桁数の遥か下に位置する端数に過ぎない。
つまり実質迷惑の一言で片付けてしまっても良いくらいだ。
松岡「今年も墓地で張り込んでみようかな? どう思う三女さん!」
そんなこと、私に聞く事じゃない。それとも、私が随伴することは決定事項だったりする?
ひとは「……そうだね、私は張り込まないし、どうだっていいよ」
私は冷たく言い放つ。
いつものような失敗をしないためにも、今日はハッキリと主張してみた。これなら墓地で一夜を明かすなんて過ちを犯すことにはならないだろう。
松岡「わかったわ! 幽霊が確認できたら電話で呼ぶね!」
……いや、呼ばなくいいから。別に幽霊が出るまでの時間が勿体無いとか暇とか思ってるわけじゃない。
でも……電話ならいいか。状況によっては暇つぶしの話し相手になるかもしれないし、様は誘いに乗らなきゃいいわけだし。
最悪受話器を上げておけば良いだけの話だ。
そんなことを考えてる時だった。
松岡「あれ? あそこに居るのって……杉ちゃんと、みっちゃん?」

321 :
ひとは「え?」
松岡さんの言葉から予想していない意外な人物の名前二人が上がり、私は彼女の指差す方向に視線を向ける。
そこには本当にみっちゃんと杉ちゃんが居て驚いた。
いや、それじゃ言葉が足らない。驚いたのは“二人を見た”からではなく、“二人だけで居るところを見た”からだ。
確か、私が松岡さんに拉致される前に二人を見たときは、なんとかさん達も一緒だったはず。
その時、遠くから聞こえた会話も、一緒に帰るであろうことを想定しての会話だった気もする。
それがどうして?
更に思考をめぐらそうと考えていた時――
松岡「二人だけで? 妙ね……は! もしかして霊の仕業!」
――松岡さんはそういって目を輝かせる。
私はそんな松岡さんを見て思った。
……今の松岡さんなら変な誤解されずに上手く誘導できる。
私は、松岡さんが二人に視線を向けているところの隣に行き、囁く様に呟く。
ひとは「そうかも知れないね……後を付けよう」
松岡「っ! そ、そうね! 二人が心配だしね」
二人の動向が妙に気になった私は、松岡さんを焚き付け、後を付けることにした。


322 :
〜 尾行(松岡視点) 〜
ひとは「この方向は……恐らくデパートだね」
松岡「そっ、そんな人通りの多いところにいって一体如何するつもりなの!」
私は一般市民の心配をしながらもテンションを上げていた。
三女さんのお墨付きの幽霊。そんな幽霊に出会えるなんて今日は非常についてる――いや、憑いてる!
それに三女さんが一緒にいるっていうのも嬉しいことだ。
幽霊は杉ちゃんかみっちゃん、もしくは両方に憑依してるようだけど心配要らない。
だって、三女さんが一緒にいるんだ。これ以上心強い助っ人など居ない。
ひとは「(松岡さん身を乗り出しちゃダメ! ……とりあえず、今は見つからないように尾行しよう)」
ええぇ!? 三女さんですら手に負えないくらい危ない霊なの!
前言撤回。私は一抹の不安を覚える。でもそういう展開も有りだと思う私もいた。
三女さんと力を合わせて難敵を打ち破る。良い展開だと思う。
しばらく後を着けていくと三女さんの予想通り、二人はデパートの中に入っていく。
そんな二人を三女さんは不安そうに見ていた。
そりゃそうだよね……なんたって実の姉が憑かれてる可能性があるんだから。
私は少し複雑な気持ちになる。
憑かれた二人を見て運がいいとか羨ましいとか思っているからだ。
二人を心配する人だっている。私だって二人に何かあったら嫌だ。
それが三女さんのように実の姉が……という立場ならもっと辛いはずだ。
二人がデパートに入って直ぐ、三女さんもデパートに向かい、私もそれに続く。
そうやって見つからないように後を着けると着いた先は洋服売り場。
三女さんは衣装ラックの影から二人を覗き見て「ったく……二人して何やって――」っと独り言を呟いていた。
幽霊が洋服売り場に来るということに、本当に幽霊がついてるかどうか、私は若干の違和感を感じた。
でも二人に鋭い視線を向け、黒いオーラを出しながら何か小声で呟く――――呪術かもしれないわ!――――三女さんを見るとやはり何かある?
今の私の位置からは二人を見ることができないので、後ろから三女さんの肩を掴み、声を掛けながら覗き見た。
松岡「なになに? やっぱりあの二人に悪霊が憑いてるのね♪」
そう言って私も覗いて見ると……えっと、服選び? 三女さんが鋭い眼光を向けていた二人は、特に目立った悪行をしているわけではないようだ。
私がそんな肩透かしを食らっている時、三女さんが視線だけ私の方に向け声を掛ける。
ひとは「そうだよ、危険な霊だと思うから絶対に二人に気付かれちゃダメだから」
三女さんはそう言って視線を二人に戻す。
危険か……そうは見えないけど、三女さんにはなにか思うところがあるのかもしれない。

323 :
私は二人に視線を向けず三女さんの方を見てそんなことを考えていた。
すると急に三女さんが驚いた顔つきになる。
私がその理由を理解する前に三女さんが動く。
ひとは「松岡さん! こっち!」
そう言って私の手を握り、別の衣装ラックの陰に隠れた。
私は混乱しながら声を出す。
松岡「あ、ちょ、三女さん!?」
ひとは「(いいから静かにして)」
三女さんは私の手を握っている方とは違う方の手で、人差し指を口の前に立てながら答える。
私が状況を把握出来ないで居るとさっき居た辺りから声が聞こえてきた。
みつば「――ったく、誰が見惚れたりなんか……まぁ、でも可愛い服が似合うってのは羨ましいわね……」
みっちゃんの声だ。
そっか、みっちゃんが移動してきたから身を隠したわけか。
それにしてもいつも通りのみっちゃんの喋り方……もしかして私達勘違いしてる?
ん? 三女さんがジェスチャーで指差す。
えーと、杉ちゃんの居る方……とりあえずあっちの様子も探るってことかな?
そして私は三女さんに手を引かれなが――ってまだ手を引かれたままだった!
杉ちゃんの見える位置まで移動してからタイミングを見計らって三女さんに小声で尋ねる。
松岡「(さ、三女さん? もう手、離してもいいんじゃないかな……)」
ひとは「(あ……、ごめん)」
今気が付いた様だった……三女さんも結構抜けてるところあるんだな……。
三女さんが気まずく視線を逸らして黙ってしまったため、私から声を掛けることにした。
松岡「(……なるほどね、みっちゃんが言ってた服、確かに可愛いし杉ちゃんに似合ってるね……)」
三女さんは何も答えなかったが、聞こえてはいるようだった。
それにしても、杉ちゃんも普通だな……憑依されてるようには見えない。ただ――
松岡「杉ちゃん……あんなに気にして可笑しいよね」
私は、杉ちゃんが鏡の前で色んなポーズを決めて居るのを見て軽く笑ってしまう。
杉ちゃんは本当、みっちゃんの事となると色々本気になる。それが周りの皆には気持ちが悪いくらい面白いわけだけど。
それはある意味幽霊より厄介なものに憑りつかれているのかもしれない。

324 :
みつば「んー、これでいいわね」
っ! みっちゃん!?
背後からの突然の声……振り向くとみっちゃんの姿が確認できた。
持ってる服を見ているためか、まだこちらに気が付いていないがそれも時間の問題――
<ドンッ!>
突然、強い衝撃を受けバランスを失い倒れる。
えっとなに? 何が起きたの?
私は衝撃で一時的に瞑っていた目を恐る恐る開く。
……。
えっと? なんか三女さんが私の上に乗ってるんだけど?
……。
えぇぇぇーーーー!!!
私はあまりのことに叫ぼうとしたが口は三女さんの手によって塞がれていた。
なに!? 何この状況!?
と、完全にパニックに陥ってる私だったのだが、左手の方の壁の向こう側から布擦れの音が聞こえてきた。
すると三女さんは音のするほうに視線を一瞬だけ向けた後、直ぐに私の方へ戻し何かを訴えかけるようにしてきた。
その意味深な動作がパニックになっていた私の精神状態をどうにか戻してくれて、今の状況が少しずつ理解できてきた。
私の居る空間……一方はカーテン、その正面の壁には鏡、両サイドは服をかけるフックの着いた壁……更衣室だ。
だとすると、隣で聞こえた布擦れの音は、恐らくみっちゃんが着替える音……つまり、三女さんは私を押し倒して更衣室に一緒に隠れた。そういうことだろう。
私は三女さんに視線を合わして状況を理解したことを伝えるため、軽く頷く。
その行動で私が伝えたいことは上手く伝わったようで、口を押さえていた手をゆっくりと放す。
ただ、隣からの布擦れの音は未だに聞こえているため、下手に音を立てることが出来ず、体勢はそのまま……。
な、なんか私ドキドキしてる? 見つかりそうだから?
私はなんだか良くわからない緊張を覚えて、口から湧き出た生唾飲み込んだ。
状況からして、みっちゃんに見つかりそうだからドキドキしてるって言うのは、きっと正しい。
でも、それだけじゃない……それだけじゃこの顔の火照りは説明できない……。
更衣室の証明は上に付いており、私の上に覆いかぶさるように三女さんが居るのだから当然、私の赤面しているであろう顔を影になっている。
それに加えて、三女さんの状態。視線自体はこっちに向いているが、私の顔を正しく視覚的情報として認識してるかと言えば、そうでもない。
この状況により身動きとれずに固まっている三女さんは、ただ、こちらに視線を向けているだけのはずだ。
そのお陰で私の真っ赤になっているであろう顔を認識されていないとは思う。
それでも私はその視線がどうとか関係なく、三女さんの顔を見ていられなくなり顔ごと視線を逸らす。
こんな状況じゃなかったら三女さんを跳ね除けて、近くの穴に飛び込みたいくらいの気持ちだった。
っていうか、隣でみっちゃんが着替えてるなら、今のうちに出ていけるんじゃ……。
そう考え至った矢先、隣でカーテンの開く音がして、足音が遠くに移動するのが伺えた。
みっちゃんが出て行って数秒の間があった後、そのままの姿勢で三女さんが口を開く。
ひとは「ま、松岡さん、その……ごめん」
松岡「え、あ、……さっきのはしょうがないと思う。うん」
私も顔を逸らしたままではあるがそう答えた。

325 :
私の答えを聞いてすぐ、三女さんは私の上から退いて更衣室のカーテンを少しだけ開ける。
どうやら外の二人を確認しているようだ。
私はその隙を突いて、何度か深呼吸して落ち着きを取り戻す。
そして、私は三女さんに提案を持ちかける。
松岡「……えっと、三女さん……帰らない?」
ひとは「え?」
私の提案が意外だったのか三女さんは軽く驚いた表情で疑問符をあげた。
私は更に続けた。
松岡「二人とも普通に買い物っぽいし、なんかストーカーみたいで悪いよ」
そう、悪霊が憑いてるようには見えない。
二人で居ることは珍しいことだけど、流石にそれだけで「悪霊が!」っていうのは飛躍しすぎだった。
三女さんは私の問いに更なる驚愕を受けていたようだが、直ぐにいつもの冷静な顔に戻り、視線をカーテンの外に移しながら答えた。
ひとは「ま、松岡さんも共犯だよね?」
……え?
松岡「わ、私も!?」
あ、いや、確かにそうなんだけどね。
急に共犯とか言われるとそんな反応してしまうのは仕方がないことだ。
それにしても、こうもあっさり悪霊でないことを認めてしまうところを見るに、三女さん最初から知ってたんじゃないかと思う。
だとするとその本意は……。
ひとは「共犯者としてこのことは他言無用ということで……」
そう言う三女さんを見て私は答える。
松岡「……二人だけの秘密って…ことね?」
それはストーカーの様な行動をした事……共犯者としてでなく、三女さんがどういう理由であの二人の後を追いかけてきたか……。
それを秘密にしてあげるという意味で発した。
ひとは「そう、二人だけの……」
三女さんは私の言葉を真似るように途中まで続けて、その言い回しの違和感に気が付いたようだった。
私の考えが読まれたかな――と思ったがなにやら見当はずれなことを考えていたのかわからないが、
特に気にすることもなく考えるのを止めたようだった。
それからすぐ、三女さんは二人に見つからないように更衣室から出て、私もそれに続いた。

326 :
〜 遭遇(ひとは視点) 〜
ストーカーみたいと言われてまで付いて回るのも嫌だし……帰ろう。
更衣室から出て、見つからないようにデパートを後にする……はずだった。
もちろん、あの二人には細心の注意を払っていたのだから見つかることはなかった。
でも、別の予想していない人物がまったく別方向から来てることに気が付いていなかった。
???「あら、三女さんに、松岡さんじゃない! どうしたのこんなところで?」
そう、私達が気がつけない角度から声を掛けてきたのは――杉ちゃんのお母さんだった。
……不味い。このままだとみっちゃんと杉ちゃんに見つかる。
そう感じた私はすぐさま杉ちゃんのお母さん――――呼び名が長くて面倒なので以下麻里奈さんって呼ぶことにするよ――――に声を掛けた。
ひとは「え、えっとですね、立ち話もなんですし少し場所を――」
杉ママ「――あら? あっちに居るのはみくちゃんと、それにみつば様ね!」
ダメだった。一足遅かった。
二人に見つかる前に逃げる? ――だめだ、結局麻里奈さんの口から私たちのことが知られる。
どうしようもない……そう思って諦めかけていた時――
松岡「ちょっと、待ってください! 先に話だけこっちで聞いてください」
――松岡さんがそう言って麻里奈さんに声を掛け、手を引いて店の衣装ラックの影に移動する。
幽霊関係以外では余り強引ではない方だと思っていただけに、私には意外な行動に見えた。
私は少し遅れて二人に付いて行く。
杉ママ「あらあら、なにかしら?」
松岡「えっと、私達に出会ったことはあの二人には黙っていて欲しいんです……」
杉ママ「えぇ? どうして?」
当然の疑問だ。
私は隣で松岡さんがどう説明するか黙って聞いた居た。
松岡「ふ、二人が幽霊に憑かれてるんだと思って後を付けてきたんだけど、どうやら勘違いだったみたいで」
杉ママ「そうなの? それで?」
松岡「え、あ……」
それだけじゃ私達がここに居る理由にしかならない、本来説明すべき点とは若干ずれが生じる。
松岡さんは私に、目配せをした。つまり言っていいものか私に気を使っているのだろう。
私はそれを見て、自分から口を開くことにした。
ひとは「つまり、結果から見ればただストーカーしていたようなものです……嫌じゃないですか、そんな風に思われるの」
正直、自分のことをストーカーに見えるとか言いたくなかったんだけど、この際仕方がない。
例え、幽霊が憑いてると思ったと説明しても、私を霊媒師と認識している松岡さん意外に通じる訳がない。
だから、松岡さんから「三女さんも憑いてるって言っていた」なんてことを口にされる前に、私も松岡さんに巻き込まれた被害者なのだと錯覚してもらう必要があった。
私には万人を納得させるだけの、二人の後を付けて来た、都合の良い言い訳が存在しないのだ。
そうなると私が後をつけた本来の意図に気が付く人もいるかもしれない。
だったら本人達に知られるよりは此処で少し嫌な思いするくらい気にするに値しない。
私から話すことで松岡さんもこれ以上詳しく麻里奈さんに話すことはない。つまり本来の意図が周りにばれる可能性も、限りなくゼロに近づく。

327 :
私の言葉を聞いた麻里奈さんが不思議そうな顔をして言った。
杉ママ「私は嫌じゃないわよ? 軽蔑されるような視線もいいものよ?」
疑問に感じたところ、そこですか! そしてそれは貴方だけです!
杉ママ「それに、みつば様たちがそういう態度したとしても、本当に軽蔑したりなんかしないとおもうわ」
……かもしれない。
杉ちゃんに至っては人のことをいえる立場にないわけだし、軽蔑までされることはまずない、と言うより出来ないはずだ。
でも、例えそうであっても、私が困るのだから仕方がない。
杉ママ「ふふ、二人とも純粋でいいわね」
それだけ言うと杉ちゃんのお母さんは、衣装ラックの影から出て行き、みっちゃん達のほうに向かおうとする。
ひとは「あ、ちょっと――」
杉ママ「大丈夫よー、黙っておくわね。それと、二人とも少しそこで待っててもらえるかしら?」
麻里奈さんは、私の呼び止める声に先回りして答えたあと、意図の読めない台詞を言う。
ひとは「えっと……わかりました」
意図は読めなかったが、断る理由も特になく、更に言えば秘密にして貰えたわけだし恩もある。
とりあえず了承しておくことにした。

松岡「ここで待っててって言ってたけど……なにかな?」
ひとは「さぁ……あの人の考えることは常識を遥かに逸してるときがあるからね」
そう言って思い出されたのが腹痛プレイと言う非常に高次元の変態プレイ。
そんなことを考えていると、何をされるか若干不安になるけど仕方がないか。
私が「はぁー」っと軽く嘆息したとき待ち人が現れる。
杉ママ「お待たせ、それじゃ行きましょう♪」
松岡「え? 行くってどこに?」
私も松岡さんと同じ疑問を抱いた。
そして、麻里奈さんは驚愕の返答を返す。
杉ママ「どこって、あの二人をストーカーするに決まってるでしょ♪」
……。
全然決まってません!
杉ママ「二人にはデパートの出口で待ってるように言ってあるわ。気が付かれないようにいきましょう♪」
そういって麻里奈さんは先頭を歩き出し、私達は今の異常な状況に混乱しながらも後に続いた。

328 :
しばらく歩いてデパートの出口付近まで来ると、ちょうど出入口のところにみっちゃんと杉ちゃんの姿があった。
二人は微妙に距離を置いて、視線は二人とも同じ方向――つまり視線を合わせず外に向けられている。
松岡「や、やっぱり二人に悪いんじゃないかな……」
……松岡さんには悪いがやっぱりあの二人少々気になる。
杉ママ「もう少し近づいてみようかしら」
そう言うと上手く隠れられ、会話も聞き取れる位置を見つけたらしくそそくさと移動する。
私もそれに続くと、松岡さんも「(ちょっと三女さん!?)」と言いながらも付いてきた。
みつば「……」
杉崎「……」
無言だな……全然会話がない。
まぁ、あの二人が二人っきりって言うのは無理がある。
仲は良いが、犬猿の仲なのも事実。言葉だけ聞けば矛盾しているようだけど、あの二人の場合は上手く混在できている。
でも、やっぱりそれは安定的な関係ではなく、不安定であり、いつもと違う状況下、ましてや、二人っきりなんて状況には対応できない。
それ故にどうして二人で行くことになったのか気になる。
あの二人だってこんな状況に陥ることは容易に想像できたはずだ。
そして、その状況に耐え切れず一人が根を上げた。
みつば「わ、私もう帰るわね!」
杉崎「え……あ、そう…ね」
みっちゃんだった。
まったく、雌豚の癖に心はチキンだからね。
そう思いながらも正直に言えば私はホッとしていた。
……やっぱり私はあの二人がデートらしきことをしてるところを見るのが嫌だったらしい。
みっちゃんは私の姉だ。杉ちゃんや他の誰でもない私とふたばだけの大切な姉だ。
ひとは「はぁー」
自分に呆れて嘆息する。
……みっちゃんからしたら私って嫌な妹なんだろうな。
そんなことを考えてた時だった。
杉崎「み、みつば、きょ、今日は楽しかったわね!」
ひとは・松岡・杉ママ「「「!?」」」
杉ちゃんの発言に私を含めたみんなが驚く。
みつば「ば、ばかじゃないの! デ、デート終わった後みたいな台詞いわないでよ!」
その後みっちゃんの慌てた声が聞こえてきた。

329 :
杉崎「あ……」
杉ママ「(あらあら、みくちゃん……セリフ選択、間違えちゃったのね)」
……杉ちゃんは馬鹿なの? 天然なの?
いったいどれだけ混乱していればそんな間違い方できるのか……。
何か言わなくちゃいけない、で思いついたのがドラマとかであるデートで別れた後のセリフというわけだろうか?
つまり杉ちゃんの中ではやはり、この買い物は無意識なのか知らないがデート認識だったということ。
逆に言えば本来デートではなかった……まぁ、当たり前の事な気もするけど。
みつば「あんたは……楽しかったのね」
確認とも挑発とも取れるセリフをみっちゃんが言う。
杉崎「っ! 楽しい訳ないでしょ! あんたと二人っきりだなんて疲れるだけよ! さっきのは、言葉の誤なんだから本気にしないでよ!」
杉ちゃんらしい反応だね。でも――
みつば「そう……そんじゃ帰るわね」
――みっちゃんはそうじゃなかった。
私も麻里奈さんも、松岡さんでさえ黙って今の状況を見守る。
私は……何となく嫌な予感を感じていた。
それは周りにとっては、期待や好奇心となりうる展開。
そしてみっちゃんが杉ちゃんに背を向けた時だった。
杉崎「っ! ま、待って!」<ガシッ>
杉ちゃんがみっちゃんの腕を掴み引き止める。
杉崎「嘘よ……確かに疲れはしたけど……それ以上に楽しかったわ」
っ……!
杉ママ「(みくちゃん……そんな大胆に……)」
みつば「す、杉崎?」
杉崎「私は楽しかったわ! ……あんたは! あんたは楽しかったの!? どうなのよ!」
私の隣で麻里奈さんと松岡さんは興味津々といった具合で覗き見ている。
そんな中、私だけが違っていた。覗き見ることをやめ、私は複雑な気持ちでいた。
杉ちゃんの正直な気持ち……楽しかった。
私から見ても今日の杉ちゃんはどこか楽しそうに見えた。
つまり杉ちゃんは今日のことをデート認識していて、そして楽しめたということ。
それがどういう意味なのか、分かってるみっちゃん?
そして、その気持ちになんて答えるの?

330 :
しばらくの沈黙の後、声が聞こえてきた。
でも、口を開いたのはみっちゃんではなかった。
杉崎「……楽しくなかったのね……あんたは」
杉ちゃんが沈黙に耐えかねて先に答えた。
みつば「あ、ちょっ……」
<〜〜♪>
杉ママ「ぁ! (もしもし?)」
急に麻里奈さんの携帯が鳴り慌てて小声で応答する。
杉ママ「(え、ひとりで大丈夫? ……そう気を付けてね)」
松岡「(……杉ちゃんからだよね)」
松岡さんが私に確認するようにそう言う。
杉ちゃんから……さっきのやり取りから推察するに、先に帰るんだと察することができた。
杉ちゃんは、きっとみっちゃんが今日のこと楽しめてないと思ってる。
本当はどうなのかわからない。けど、少なくともみっちゃんは杉ちゃんのこと嫌ってはいないはずなのに。
みつば「ちょっと! 杉崎!」
私も覗き見る。
杉ちゃんはみっちゃんに背を向けて逃げるように帰っていく。
半分は私が危惧していたことにはならなかった……でもこれじゃ――
松岡「……三女さん、行こ!」

331 :
ひとは「え? ちょ!」
松岡さんはどういうわけか私の手を掴んでみっちゃんの方に歩みを進める。
そして、杉ちゃんが消えていった方向を見つめていたみっちゃんの背後に立って口を開いた。
松岡「今のはみっちゃんが悪いわね」
その言葉にみっちゃんは振り返る。あーぁ、見つかっちゃったよ……。
松岡「すぐ追いかけるべきだよ……ね、三女さん!」
ひとは「なんで、急に飛び出すかな……松岡さん……っていうか、手、放して!」
私は呆れながら答え、手をつないでるところをみっちゃんに見られるのがなんとなく嫌で、手を振りほどく。
松岡「あ、ごめん。でも共犯だから出頭した時も一緒じゃないとね!」
っ! 何言ってるの松岡さん!
みつば「なんで、あんた達……っていうか共犯ってなによ?」
松岡「それは私達が――むぐぅ」
ひとは「ちょ! 他言無用って言ったよ!」
私はこれ以上余計なことを言わないように後ろから手で口をふさいでやる。
……松岡さん地味に背が高いからやりにくい……。
その行動を見ていたみっちゃんは怪訝な顔をしていたが、深く突っ込んでは来なかった。
そして私はこの状態を長く続けたくないこともあって、みっちゃんに伝えるべきことをさっさと口にすることにした。
ひとは「みっちゃん……追いかけなくていいの? 杉ちゃん、きっと悲しんでるよ?」
それはきっと松岡さんも伝えたかった言葉。
みつば「な、なんでそんなこと判るのよ!」
わかるに決まってる。私だったら――……でもそうは口にしない。だからみっちゃんが身を以て体験したであろうことを口にした。
ひとは「みっちゃんも杉ちゃんに楽しくないって否定された時、悲しくなかった? 杉ちゃんも、きっと一緒だよ」
みっちゃんはその言葉を聞き終わると下を向いてしまい、デパートの光の影で表情が見えなくなった。
時間にして3、4秒した後、みっちゃんは口を開く。
みつば「……ひとは」
私の名前を呼び終わると同時にみっちゃんは勢いよく顔を上げた。
その顔はいつもの――周りの人を巻き込んで突き進んでいく、みっちゃんの表情だった。

332 :
みつば「私の分の夕飯ちゃんと残しておきなさいよ!」
みっちゃんは私を指さしながらそう言ったかと思うとすぐに背を向けて駆け出して行った。
お世辞にもその歩みは早くない――――私も人のこと言えないけど――――……
でも、あんな走りなのになんでも手に入れてしまいそうな、そんな走りにも見えた。
松岡「ぷはぁ! 三女さん口蓋し過ぎ! 超苦しかったわ!」
松岡さんが私の手から抜け出す。
どうやら、私はみっちゃんが走っていく姿をみて無意識に手の力を緩めていたみたようだ。
ひとは「あ、ごめん」
私は反射的に謝ったが心の中では自業自得だと思っていた。
秘密って約束したはずなのにサラっと言おうとするなんてひどい話だ。
杉ママ「ふふ、松岡さんも三女さんも意外にお節介焼きなのね」
隠れたまま様子を伺ってたであろう麻里奈さんが現れてそう言う。
別に好きで焼いたわけじゃない。松岡さんに連れられさえしなければ――。
そう考えたが、もし、松岡さんが飛び出さなかったら私はどうしていたのか……。
あのまま立ち尽くすみっちゃん、……そのみっちゃんとすれ違ってしまった杉ちゃん。
松岡さんの判断は正しい。
私は――
杉ママ「さーて、私はみくちゃんの様子確認してくるわね♪」
そう言って携帯を何やら操作し始める。
杉ママ「あらあら、道草してるみたいね」
……なるほど。
どうやら携帯のGPS機能を使用しているみたいだ。
杉ママ「三女さんたちも一緒に……あ、夕飯の準備しないとだめなのね、残念」
別に夕飯の準備とかなくても、もうストーカーする気なんてない。
それにしても杉ちゃんが道草……か。
みっちゃん見つけられるといいんだけど……。


333 :
〜〜〜以上本編〜〜〜
さるさん的に一時休憩……と書こうと思ったらさるさんだった件!
とりあえず前編終了
後編は前編ほど綺麗に纏まってないので……期待ダメ、ゼッタイ!
〜〜〜以下本編〜〜〜

334 :
〜 同行(松岡視点) 〜
ひとは「はぁ、それじゃ、私は家に帰るよ」
三女さんは余程疲れていたのか、小さく嘆息した後、私と杉ちゃんのお母さんに別れの言葉を発して帰路に付こうとする。
松岡「三女さん待って! 共犯者同士一緒にかえりましょう!」
するとこっちに顔だけで振り返り、私にわかるように大きく嘆息する。
正直ちょっとショック。でも――
ひとは「いいよ、どうせ途中まで一緒だしね」
――一緒に帰ってくれるようだった。

松岡「ねぇ? 三女さん」
しばらく沈黙が続いたので私から話を振ってみるため、声をかける。
三女さんは私の少し前を歩きながら、こっちを見ずに「なに?」っと無機質な声で答えた。
松岡「あ、えっと……三女さんは“あれ”でよかったの?」
私の言った“あれ”とは少し前にみっちゃんの背中を押してあげたこと。
元々、私から飛び出して声をかけたことなので少し蟠りがあった。
もちろん私の選択が間違っていたとは思わないけど。
ひとは「……言ってる意味がよくわからないんだけど?」
少し思案の間があり、少し強い口調で返された。
わかってるはずなのに……。
松岡「わかるように言ったら怒らない?」
ひとは「……怒ると思うから話しかけないで」
つまり三女さんは、“あれ”で良くなかったということなのだろうか?
それにしても、折角一緒に帰ってるのに「話しかけないで」と言われるなんて嘆息されるより遥かに辛い。
そして今更だが、三女さんの台詞は、「このことについては触れないで」という意味だったことに気が付き、私の言い方が悪かったと反省した。
松岡「ごめん……」
ひとは「……」
私の言葉に三女さんは反応してくれなかった。

335 :
松岡「はぁー」
私は重い嘆息を吐き、肩を落とす。これなら、さっきまでの沈黙の方がまだ良かった。
ひとは「別に……松岡さんの行動はよかったと思うけど……」
私の嘆息が聞こえて気を使ってくれたのだろうか……。
三女さんがポツリと台詞を零す。
私はその言葉に「でも――」とだけ言って、その後に言葉は続けられなかった。
ひとは「あのまま杉ちゃんとみっちゃんをすれ違わせたままにするなんて良いわけない」
私もそう思う。だから飛び出した。
でも、私が言いたいのは三女さんのことで……三女さんも私が言いよどんだ意味が伝わっているはずだと思う。
ひとは「私は飛び出せなかったんだから……むしろ感謝してるよ」
三女さんは自嘲気味な態度でそういったあとさらに続けた。
ひとは「私はみっちゃんに取って本当は嫌な妹だから」
松岡「そ、そんなことないわ!」
私は声を張り上げて三女さんに言った。でも――
ひとは「あるよ」
――三女さんは振り返りもせず、ただ、冷たく否定した。
その態度を見て、私はほのかな苛立ちを覚えた。
私が怒る理由なんてないはずなのに。
でも、私はなぜだか三女さんの背中に、睨むような視線を向けて口を開いた。
松岡「私が少し早かっただけ! 三女さんだって絶対飛び出してた! でなきゃ私が手を引いたときあんなすんなり一緒に出て行けるわけないわ!」
背を向けたままだった三女さんが振り返り、私の台詞――――それと視線もかな?――――にたじろいでいるようだった。
私がなぜこんなにも怒っているのかわからない……そんな表情。
私は二人が羨ましいんだ。だから私はこんなにも……。
松岡「三女さんはすっごく姉思いだよ! みっちゃんだけじゃない、ふたばちゃんにも!」
私の口は、脳とは別の意思を持っているかのように、言葉を紡ぐ。
松岡「優しいよ! 私、三女さんと友達だから! ……だから、いつも見てるから知ってる! ……三女さんの言葉だったからこそ、みっちゃんは前に進めたんだよ!」
そう言い終わったとき、私は息が上がるほど勢いよく話していたことに気が付く。
そんな私見て三女さんは困惑しつつ口を開く。

336 :
ひとは「あ……え、その、松岡さん声大きい……」
だ、だよね……。
松岡「……ごめん」
我に返ってみると、色々失敗したと思う。
……励ましたかったのに、なんだか叱りつけるように言っちゃったし。
私はただ、納得いかない気持ちを三女さんぶつけただけだ。
そして「いつも見てるから知ってる」……これは――。
無意識とはいえ、こんな台詞を言ってしまったのは誤算もいいところ。
しかも大声だし。
しばらく視線を合わせずに向き合っていると、三女さんの方から沈黙を破る。
ひとは「……ねぇ…迷惑じゃなかったらでいいんだけど……家で夕飯食べてく?」
松岡「ふぇ?」
その意外な言葉に私は、間抜けな声を出して面を食らった。
すぐに言葉の意味を理解したが私は当惑するだけで言葉が続かない。
ひとは「その、色々、迷惑かけた……気がするから…お礼しないと」
迷惑? 三女さんが私にお礼?
松岡「えっと?」
ひとは「っ……いいからっ! 夕飯食べるの食べないの!?」
松岡「あ、えっと、うん……食べたい……かな?」
私は三女さんの勢いに飲まれてそう答えた。

<ガチャ>
そう音を立てて、三女さんが玄関を開く。
ふたば「おお、さっちゃんっス! こんばんはっス!」
松岡「こ、こんばんは、ふたばちゃん」
ひとは「ねぇ、ふたば、お父さんは?」
ふたば「今日は遅くなるってさっき電話あったっスよ」
ひとは「そう、だったら私たちだけで先に夕飯にするよ」

337 :
……。
どうして私、三女さんたちの家に呼ばれたんだろう?
家出してきた時と違って、明確な意思もなく、そして帰路の途中でのやり取りを踏まえると、話しかけやすい雰囲気とはお世辞にも言えなかった。
それを差し引いたとしても、普段だったらもっと普通にしていられるのに、今日はダメだ。
ふたばちゃんとも特に話せる話題もないので、若干手持ち無沙汰になってしまう。
ふたば「そういえば、みっちゃんも帰ってきてないっスよ?」
ひとは「……みっちゃんはちょっと遅くなるって言ってたよ」
ふたば「ふーん、珍しいっスね! ひとの料理おいしいから遅くなるなんてことほとんどないっスのに」
何気ない二人の会話からみっちゃんと三女さんの関係がわかる。
やっぱり、二人が羨ましい。
それにしても姉妹同士だけで話し出すとか、私、ベストオブ場違いね!
……そんな居心地の悪さを感じていた時だった。
ひとは「松岡さん」
松岡「はいっ! あ……なに三女さん?」
急に声をかけられて驚いた。
なにやってるんだろ私。
ひとは「そっち……座ってて。すぐ夕飯にするから」
松岡「あ、うん、手伝うこととか――」
ひとは「別にないから座ってて」
そう言われて私は一言「わ、わかったわ……」と答えて炬燵の中に足を入れるしかなかった。
するとふたばちゃんは、三女さんが料理を始めて相手にされないと知るや否やこっちに来た。……猫や犬みたい。
ふたば「さっちゃん! どうして家にきたっスか?」
どうしてだろう?
三女さんの意図が読めない。
いや、三女さん自身が言ってた言葉を信じるなら迷惑をかけたから、もしくはお礼がしたかったからなんだけど。
松岡「えっと、三女さんに誘われてきたんだけど……詳しい理由はよくわからないわ」
ひとは「お礼って言ったよ」
っ! ……聞こえてたんだ。
ふたば「何のお礼っスか?」
ひとは「それは……私が馬鹿なこと言ってるところを怒ってくれたから……だよ」
三女さんは台所の方を向いてそう答えた。
怒ってくれた……三女さんが「嫌な妹」と自分を責めていた時のことが思い出される。
あの時三女さんは確実に落ち込んでいた。それが私の言葉で立ちなおれた。そういうことだろうか?
……それは勘違いだ。私は私の都合で言葉を発していた。
あれは、三女さんのことを思って言った言葉じゃなく、私のための言葉だった。



338 :
ひとは「はい、夕飯できたよ」
松岡「す、すごい! おいしそう……」
調理が終わり、炬燵の上に料理が並べられた。
おいしそうなんだけど、毎日は食べたくないかな……。
理由? もちろん太るから。
みっちゃんが太るのも頷けるけど、あの程度で済んでるって言うのもすごい事な気もする。
それは、みっちゃんの努力? 不幸体質でいつも大変そうな場面に立たされているせいで消費エネルギーが多いから?
それもあるかもしれないけど、三女さんもこっそりみっちゃんが太らない様に手を貸してるのだと思う。
三女さんの合図で夕飯を口に運びだした直後で、みっちゃんのぽっちゃり体系で済んでいる理由を考えていた時――
<ガチャ>
みつば「……ただいま」
噂をすればなんとやら……噂と言っても、私が考えていただけで、食卓の話題になっていたわけではないけど。
ふたば「みっちゃんっス! おかえりなさいっス!」
ふたばちゃんがうれしそうにみっちゃんのところに駆け寄る。
本当、みっちゃんって凄く好かれてると思う。
でも、正直な態度のふたばちゃんと違って、三女さん言葉は厳しかった。
ひとは「雌豚が夕飯のにおいを嗅ぎ付けて――」
みつば「偶然よ! ……って言うかなんで松岡までいるのよ?」
三女さんの悪態を受け流しながら、私の存在に気が付いたようで声をかけてくる。
松岡「あ、お邪魔してるわ」
みつば「……ほんと、邪魔ね」
酷い……。
いや、本気じゃないことわかってるんだけどね。
私はみっちゃんや杉ちゃんと違って、弄られ耐性が付いていないので、早々に話を切り替える。
松岡「どう? 仲直りできた?」
口に出してから、もう少し言い方があったのでは?
っと思ったけど、それは、私が今一番心配していることで、きっと三女さんも一番聞きたかったこと。
でも、みっちゃんは私の問いを聞いていながら、三女さんに視線を向ける。
みつば「……ひとは、ちょっと電話使うからその二人静かにさせといてよ」
その答えは私の問いに対する答えではなかったけど、どういう意味か容易に想像がつくものだった。
ひとは「わかったけど、みっちゃんも冷静に電話しなよ」
三女さんも、すぐに察してみっちゃんに助言していた。
みっちゃんは三女さんに「わかってるわよ……」と自分を落ち着かせるように静かに答えて電話をかける。
ふたば「ほへ? なんっスか?」
状況がわからないふたばちゃんに、三女さんが説明する。
そして、その間にみっちゃんの電話がつながった。

339 :
みつば「ちょっと! あんた今どこに居るわけ!」
さっそく大声をあげる。せっかく三女さんが「冷静に」っていてあげてたのに。
それと、みっちゃんの「どこに居るわけ」って台詞から、私たちの予想は当たったと考えてよさそうだ。
つまり、杉ちゃんを追いかけて行ったみっちゃんだったが、肝心の杉ちゃんは道草をしていたので、杉ちゃんの家に付くまでに会えなかった。
そうして当人は家にも居なかったと。
当然ながら杉ちゃんの様子を伺っている杉ちゃんのお母さんも、まだ帰っていなかったのだろう。
それで途方に暮れることとなったみっちゃんは、仕方がなく一度家に帰ることにした。
もちろん杉ちゃんの携帯へ電話をかけるためにだ。
携帯があると便利なんだけど、まぁ、経済的な問題もあるし仕方がない。
みつば「よくないわよ! 家に行ってもドMもあんたも帰ってないって言うし、どこほっつき歩いてんのよ!」
あぁ、私の名推理がみっちゃんの台詞により、あっさり回答が出されるなんて……別にいいけど。
杉崎『――、――――、――!』
うーん、受話器の向こうから声はするが、何言ってるかまでは聞こえない。
みつば「っ! なんです――」
みっちゃんがまた大声を上げた時だった。
ひとは「ちょっとみっちゃん、冷静に話すって言ってたでしょ? って言うかさっきからうるさい」
みっちゃんの言葉に被せるように三女さんは言った。
その言葉を聞いたみっちゃんは、こっちを見て仕方がないと言った表情をし、視線を三女さんから外して電話の続きを始めた。
みつば「ど、怒鳴って悪かったわね……とりあえず、あんたと直接会って話がしたい訳よ。どこにいるか教えてくれない?」
おお……みっちゃんが杉ちゃん相手にあんなに下手に出るなんて……。
怒鳴ったところを三女さんに止められたのもあるだろうけど、相当杉ちゃんのこと気にかけてなきゃあり得ない態度だと思う。
ふと、三女さんの方に視線を向けると、少し不機嫌そうな顔をしながらご飯を口に運んでいた。
複雑な心境なんだと思う。仲直りして欲しくはあるけど、必要以上に仲良くされるのも妹として――――だよね?――――寂しいというか。
そんな顔をずっと見ているのもなんだか悪い気がして、料理を口に運びながら、みっちゃんの方に耳を傾けた。

340 :
杉崎『――――?』
みつば「そ、それはそうだけど……」
杉崎『……――――』
みつば「あんた、なんでまだそんな所にいるわけ?」
杉崎『―――。――――』
みつば『何によそれ……とりあえずそこで待ってなさい今から行くから!』
んー、杉ちゃんが何言ってるかよくわからないけど、杉ちゃんの所在はわかったのかな?
杉崎『――。―――――』
みつば「っ! い、いいわよ! あんたの家の方からそっちに向かうから! 絶対回り道とかするんじゃないわよ!」<ガチャ!>
結局最後は冷静さを失い、受話器を叩きつけるようにして電話を切る。
そんなことしたら、三女さんが――
ひとは「はぁー、受話器壊れたらどうするの?」
――……静かな物言いだけど、案の定怒ってる。
みつば「壊れなかったからいいじゃない! それよりちょっと出かけてくるから……夕飯置いときなさいよね!」
ひとは「っ……わかったから、さっさと行って」
……それにしても、本当、三女さん不機嫌だな。


341 :
〜 帰宅(ひとは視点) 〜
みつば「壊れなかったからいいじゃない! それよりちょっと出かけてくるから……夕飯置いときなさいよね!」
ひとは「っ……わかったから、さっさと行って」
そういうとみっちゃんは玄関の方に歩みを進めた。
無性にイライラする。
私の料理なんてどうせ後回しだよ。
……冷静に考えれば、私の夕飯を後回しにするのは当たり前だし、気にするようなことでもない。
むしろ、私の料理を優先すると言っても、私が追い出すと思う。
頭ではそう思っていても、なぜか負けたような、悔しいような、そんな思いがこみ上げてくる。
そんなことを考えているとき、ふと、視線を感じる。
私はそちらに視線を向けずに意識だけ集中させた。
みつば「……」
それは、みっちゃんの視線。一度玄関の方に歩みを進めたはずのみっちゃんの――だ。
ひとは「なに? 先に夕飯食べてくなんて言わないよね?」
みつば「……なんでもないわ、行ってくる」
そう一言だけ残して玄関を開け、外へ出ていく。
<ガチャンッ>
……不可解な行動。
一体どういうつもりだったのか。少し思考を巡らしたが、考えても判る事とは到底思えないのですぐにやめた。
私はみっちゃんが玄関から出て行ったのを脇目で確認してから、味噌汁を啜って軽く嘆息した。
松岡「三女さん、これおいしいわ!」
松岡さんはなぜだかワザとらしく大きな声で料理の感想を言う。
ひとは「それ、今日一番手抜きだよ」
松岡「へ……あ、そうなんだ」
……。
八つ当たりもいいところだ。
折角、家に呼んでおいてこの態度は酷い。

342 :
ふと、時計に目を向けると……7時か
松岡「あ、もうこんな時間なんだ……」
私の視線の先を自然と追ったのか、松岡さんも私と同じように時計を見ていた。
ふたば「ほへ? もう帰っちゃうっスか?」
ふたばがそう言うと「そうね……」と答える松岡さん。
実際みっちゃんが電話している間に、私たちの食事は殆ど片付いてしまっていたので、そう答えるとは思っていた。
結局お礼らしいお礼――――それとお詫びもかな?――――もできていない気がするけど……いや、料理はご馳走してあげたし
その前にもちゃんとお礼のつもりで呼んだとも言った。
……相手が理解してるかどうかは知らないけど、私はお礼をした――はず。
松岡さんが席を立つ気配を感じたので、私も同じタイミングで立つ。
ひとは「ふたば、玄関まで見送りに行くよ」
まぁ、せめて見送りぐらいはキチンとして置こう。
でなきゃ、やっぱり少し申し訳ないと思う。
ふたば「わかったっス!」
私たち二人は、玄関を開けて松岡さんを見送る。
ひとは「それじゃ、また明日学校で……」
ふたば「おやすみーっス!」
私たちがそう言ったのだが、松岡さんはしばらく無言でその場に立っていた。

343 :
ひとは「えっと、どうかしたの?」
私はその様子を不審に思って尋ねる。
すると松岡さんは真剣な顔つきを私の足元あたりに落し、そして口を開いた。
松岡「その……私、何かあるなら相談に乗るわ」
私は急にそんなことを言われたものだから、良くわからずに沈黙を作ってしまった。
そんな一瞬の間が松岡さんには長く感じたのか、すぐに言葉を発するために口を開く。
松岡「私でいいなら、いつでも相談してきていいから!」
それでも、私はすぐに反応できなかった。
松岡「……なんてっ! 私なんかじゃ力になれないかもしれないけどね、……それじゃ、また明日!」
松岡さんはそう言って踵を返し、駆け足で帰路に付いた。
ふたば「相談……なんのことっスかね?」
そうふたばが私に投げかける。
ひとは「……さぁ、なんのことだろうね」<ガチャンッ>
私はふたばの問いに答えながら玄関を閉める。
……最後の台詞よく聞くありきたいな台詞だった。
でも、あんなこと言われて相談しないわけにはいかない。
もしかしたら、私がそういう発想になるって判って言ったのかもしれないけど、万が一でも、狙って言った訳じゃないのだとしたら、無視するわけにはいかない。
それにしても相談か。
みっちゃんのことだよね……。
態度に出ないようにして、気が付かれないようにしていたつもりたけど、仕方がない。
松岡さんとの帰り道、あんなことを口走ったわけだから、気に掛けられていたのかもしれない。
でも、ふたばの前で言うのはやめてほしかった。一応誤魔化しの言葉を掛けたが、若干不審に思っているみたいだし。
その時電話が鳴った。
なんとなく予想はつく。こんな予想はちょっと酷いかもしれないけど、きっと当たっている。お父さんが職質で捕まったのだろう。
ふたばの意識がそっちの方に向いてくれるのは助かるけど、迎えに行くのは面倒だな……。


344 :
〜 謝罪(松岡視点) 〜
私の目の前には携帯電話がある。
私はジッとそれを見つめる。
何時着信があっても取れるように。
……最後の台詞は三女さんに相談してもらうために言った言葉だった。
三女さんが私の台詞に違和感を持っていたとしても、絶対に相談してくるはず。
少し卑怯だと思ったけど、許してほしい。
“今度”こそはちゃんとした気持ちで、三女さんを助けたい。
あの時の私の言葉は気持ちだけの空回りで、助けたいという気持ちがかけていたと思う。
でも、こんな姑息な作戦で三女さんから相談の電話を待つこと自体、私の自己満足なのかもしれない。
だから、相談に乗った後はその卑怯な方法を使ったことを詫びるつもりだ。
三女さんに後ろめたい気持ちなんて残したくないから。
〜〜〜♪
っ!
私は慌てて携帯を取り、待ち受けを見ると相手は「丸井家」。
正直電話が来る確証なんてなかった。
今日相談しなくても明日学校で会えるわけだし……。
私は一度深呼吸をしてから応答した。
松岡「も、もしもし?」
ひとは『あ、松岡さん、えっと――』
松岡「ごめんなさい!」
ひとは『え?』
松岡「……あ」
――やってしまった。初めは相談に乗る予定だったのに……なに最初から謝ってるの私!
ひとは『えっと、松岡さん?』
私の言葉を待つ三女さんの声。
こうなってしまえば洗いざらい言ってしまうほかない。
松岡「あ、うん、その……ごめん三女さん」
ひとは『いや、何に対して謝ってるのかよくわからないんだけど……』
だよね……。
ちゃんと説明しないと判るはずもない。

345 :
松岡「それは…デパートからの帰り道のこと、なんだけど」
ひとは『あ……え?』
三女さんは、どの事を言っているのかは理解できたけど、なぜそれについて謝るのか――それが理解できない、そういった反応をした。
松岡「三女さんは、“怒ってくれた”って言ってくれたけど、あれは私が暴走した結果の言葉であって、三女さんを励ますための言葉じゃなかったの」
ひとは『……』
反応はない。電話でのやり取りだと表情が見えないので、三点リーダーはただの記号。
それでも私は不安を紛らわすように続ける。
松岡「私が個人的に納得いかない事があって、それで少しきつい言い方になっちゃって……だから――ごめん。お礼してもらう事なんて本当はなか――」
ひとは『そ、そんなことない』
私の言葉に被せるように三女さんの声が携帯電話から聞こえた。
私は、三女さんの言葉に少し面を食らい、その隙に言葉を続けてくる。
ひとは『例え暴走した結果で出た言葉であっても、私は救われたから』
松岡「三女さん――」
救われた……私の言葉に。
三女さんはそう言ってくれた。
そっか……救われていたなら“あれ”でもよかったのかな。
それはきっと、自分を正当化したいから出た発想だと思う。
“結果論”それは臆病者と卑怯者の逃げ道だから……。
どうせ私は、その二つのどちらにも当てはまると思う。
だから、卑怯者な私は“終わりよければ全てよし”……その言葉に逃げることにした。
ひとは『そ、それに……』
松岡「?」
若干言い難そうに言葉に詰まる三女さん。
私は不審に思いつつも黙って続きの言葉を待った。
ひとは『と、友達って……見ててくれてるって言ってくれたし……』
前言撤回。“あれ”じゃ良くなかった。
全然終わりよくない!
松岡「っ! あ、いや、あれは……つい勢いでっ! わ、忘れて!」
ひとは『やだよ、忘れない』
三女さんがみっちゃんを弄る時の様な、少し余裕のある、それでいて意地悪な声で言う。
松岡「ど、どうして!?」
でも、次の台詞は短い沈黙の後、少し恥ずかしそうに答えた。

346 :
ひとは『……嬉しかったから』
松岡「っ! ぁ……ぇっと」
私は言葉にならない声を発した後黙ってしまう。
三女さんも言ってから、恥ずかしい発言に気が付いたのか、私同様に黙ったまま。
とはいえ、このまま黙ったままなのもあっちからの電話なわけだし、悪い気がする。
もとはといえば私が電話するように誘導したわけだし。
そう思い至り、私は意を決して口を開く。
松岡「ねぇ!」ひとは『あの……』
……思いっきり被った。
さらに、私の口からと、携帯電話の向こう側から同じタイミングで「あ……」と言う声が漏れた。
ひとは『そ、そっちからでいいよ』
譲ってくれる三女さん。でも――
松岡「私からっていうか……三女さんが電話かけてきたのって相談の件……だよね?」
ひとは『あ、それなんだけど……――相談はしない。そう断るつもりで電話したんだよ』
松岡「え?」
ひとは『別に、松岡さんと相談したくないとかじゃなくて……保留にしておくのも悪くないと思ったから』
松岡「保留?」
ひとは『うん……詳しくは言わないけど、信じてみようかなって』
そっか、みっちゃんなら誰かを悲しませるような選択、絶対にしない。
だったらその選択は悪くないかもしれない。

347 :
結局、私なんかが相談相手になるまでもなく、三女さんは答えを見つけた。
みっちゃんを誰よりも知ってるから、当たり前といえば当たり前。
私がしてやれることなんて、本当に少しのことなんだと思う。
私は安心ともう一つ複雑な気持ちを抱きながら、携帯電話の向こう側に聞こえないように小さく嘆息する。
結局三女さんに電話をさせるために言ったあの言葉の通り――あ……そうだった。
松岡「三女さん! 最後にもう一つ謝らせて」
ひとは『?』
松岡「三女さんに電話を掛けさせるように誘導してごめんね」
ひとは『あ、うん……やっぱりワザとだったんだ』
やっぱり気が付かれていた。
三女さんは『はぁ』っとワザとこっちにも聞こえるように呆れたように嘆息して見せた。
ひとは『それについては、きっとどこかで埋め合わせしてもらおうかな』
松岡「お、お手柔らかに――」
ひとは『善処しないよ』
酷っ!
そうして、私たちは、別れの言葉を交わして電話を切った。


348 :
〜 予感(ひとは視点) 〜
――――
ひとは「――ん?」
目を開くと私たちの部屋の天井が見えた。
夢を見ていた――違うあれは先週の木曜日の出来事だ。
そして今は週初め、日曜日の夜明け前。
眠い目を擦りながら視線を窓の外に向けると、外はまだ薄暗かった。
私はベットで座った体制のまま、状況を整理する。
あの後、みっちゃんが帰ってきて聞いた話だけど、杉ちゃんには本心を伝えたと聞いた。
てっきり「私も楽しかった」とでも言ったのかと思ったら「わからない」と言ってやったそうだ。
それから「明日勝負で買ったら日曜に杉崎と出かけるから!」とかなんとかとも言っていた。
勝負に関しては妙な展開――――そのうち語れるかもしれないね――――になってしまったけど
一応勝利を収めて、日曜日――つまり今日、二人で出かけることになったらしい。
えっと、本格的なデート……なのだろうか?
みっちゃん曰く、「わからないことを確かめるために行く」とか言ってたけど、よくわからない。
話を聞いてるとみっちゃん自身はデートって感じで出かけるわけじゃなく、ただ遊びに行く……みたいな感じだけど。
というかデートと遊びに行くのって何が違うのかよくわからない。
恋人同士で遊びに行くのがデート? だったら違うのか? いや――、……やっぱりよくわからない。
こんなこと考えるだけ無意味だし不必要だ。
私は眠っているふたりを起こさないように静かにベットから降りて、部屋を後にする。
そのまま、朝食を作る準備をするため階段を下りた。
たしか……「8時に起こしてよね!」とか言ってたっけ?
だったら起こした時に朝食を食べれるように今の内から準備をしておけばいいだろう。
元々こんなに早く起きるつもりはなかったが、折角だし少しは手の込んだ朝食でも作って上げてもいいだろう。
ついでにみっちゃんと杉ちゃんのお弁当も作って置こうかな。
私は片手鍋に水を注ぎ入れて、コンロに火をつけた。

349 :
……。
あの日の夜、私は松岡さんに電話をかけた。
ふたばとお父さんがお風呂に入っているときで且つ、みっちゃんが部屋にいるときに。
松岡さんはすぐに電話に出た。
電話の内容は相談――ではなく、謝罪だった。しかも松岡さんからのだ。
謝る必要なんてない、感謝してもし足りないくらい今回ばかりは助けられた気がするし迷惑もかけた。
だから、本当は謝るべきは私だったのかもしれない。
結局私の悩みは保留という形で胸にしまってある。
多少の整理はしたけど。
私はみっちゃんに依存している……気がする。
そのみっちゃんが別の誰かと必要以上に仲良くされるのが嫌……なんだと思う。
でも、みっちゃんを信じることで、悩みの解決はみっちゃんに委ねることにした。
自分勝手で無責任だと私は思う。でも、私たち姉妹はそれで良いんだとも思う。
自分たちの身勝手さをお互いにぶつけ合って、それで姉妹で解決していく。
例えそれで良くない方向に転んだとしても、私はみっちゃんを恨んだりしない。
――っと、お湯が沸いた。私はだし入り味噌をお玉の上で溶かしていく。
……。
それでも先週のことを夢で見ているのだから、完全に吹っ切れたわけじゃないのだとも思う。
きっと、また悩むこともある。
その時は「いつでも相談してきていい」といった松岡さんに相談してみよう。
あの時のことを思い出すと、松岡さんは優しくて……ただのオカルトマニアじゃないのだと見直した。
意外に頼りになるのかもしれない。
味噌が解けた片手鍋の中に、豆腐、ワカメを入れる。
とりあえず具も少なく、簡単な味噌汁だけど完成。
あとは何を作ってあげようか……。そう考えていると――
<〜〜♪>
――電話? ……こんな時間にいったい誰だろう?
不審に思いながらも電話に出る。

350 :
ひとは「もしも――」松岡『三女さん! やっぱり起きてたわね!』
私は突然の大声に受話器耳から離して、受話器を睨みつける。
睨みつけたからって相手には伝わるわけないけど。
松岡『今日、杉ちゃんとみっちゃんが二人で出かける日でしょ?』
……嫌な予感がする。
そんな私を余所に松岡さんが言った。
松岡『一緒にあと付けてみない?』
おわり
〜〜〜以上本編〜〜〜
毎度読んでくださっている方
貴方はライトノベル一冊分程度読んでいます。
……スイマセンでした全部私が悪いです。
長々とお付き合い頂いた方ありがとうございます。
鈍筆の癖に1回の量が多くて申し訳ないです。
そして今回変化球でした。消える魔球程度には変化してたんじゃないかと……そんなことないですね
では、つっこみなど感想とかあれば是非お願いします。
そして、連載再開で、また賑わうことを信じて。

351 :
>>350
てめぇこのやろ今頃どのツラ下げて戻って来やがったんだホントありがとうございます愛しております。
そしてSS乙!!杉みつひと松スキーには堪らなかったわ
あんたはこのスレの希望だよ
連載再開されてまた賑わうといいな

352 :
連載復活age

353 :
350です
>>351
感想ありがとうございます
またそのうち書き始めると思います……せめて今年中に1本くらい(汗
それまでに他お方も書いて、もしくは描いてくれると嬉しいですけどね
さて、みつどもえ最新情報
他所でも騒がれているようですが今週号である36号で連載誌変更のお知らせが……
私ご用達のフライング販売してる店の36号を見る限りでは、39までは今まで通り週チャンなようです
それ以降は別チャンつまり月刊となるようですorz
っていうか産休噂を信じるのであれば、ごく自然な流れですけどね

……ところで詩織さんって怖可愛いよね!

354 :
>>350
ありがとう乙

355 :
連載再開したのに静かだな…
ひと松のバーゲンセールなのにもっと賑わって欲しいね

356 :
あげ

357 :
12巻読んだ
ひとはのさっちゃん呼びは良かった
あと地味にみっちゃんとおがちんの身長差にも萌えた

358 :
定期的に長編書くやつ気持ち悪いよ。
作品にはケチつけないけど、後書きの自分を罵倒しつつの謙遜とか、煽りに対して荒れるの嫌だから読まないでねとか言っちゃったり。
ss後書きのコピぺを体現したような奴じゃないか。実際こいついなきゃこのスレまわんないんだけどね。

359 :
普通に丁寧にレスもしてくれて好印象なんだけど
SSも文句無いし、ていうかVIPじゃないんだから
そんなとこに噛み付くなよw

360 :
最後微妙にデレたのにワロタww

361 :
月刊誌に移動してから空気だな…
息継ぎあげ

362 :
単行本待ちだからなぁ

363 :
新年の挨拶に

364 :
みっちゃんかわいい

365 :
353です。あまりに巻き込み規制が長いので別回線からご報告
一応書いてます、投下できませんけどねorz
去年夏からの規制がここまで続くとは正直思いませんでした
規制解除されれば投下しますが、ちょっとどうなるかわかりませんね
期待せずにお待ちください。
>>358
ありがとうと言うべきなんだろうか?
とりあえず読んでもらってるようで何よりです

366 :
おお、新作待ってますよ

367 :
楽しみです

368 :
365です。規制が終わらないので別回線から
以前の投下からもうすぐ1年……経たせません!
待ってて貰ってるようなので、レベル上げようにストックしてあるSSを3本だけ
●注意事項
・基本一本完結で10行厳守の台本形式
・百合濃度は無〜中くらい?
・私の他作のおまけ的なもの数本ありますが、こっちだけでも大丈夫だと思います
結構作品の方向性が違うので新規住人がひとりでも増えてくれると良いなー
もちろん原住民にも楽しんで読んでもらえればうれしいですね
というわけでしばらく後、投下します

369 :
ひとは「……」
みつば「……ちょっと何か喋りなさいよ!」
ひとは「ちょ! 騒がないで! ご、ゴンドラが落ちる……」
みつば「落ちないわよ! っていうかあんたが観覧車に乗るって言ったんでしょ!」
ひとは「仕方がないよ……ガチレングッツをもらう為のスタンプラリーのコースなんだから」
みつば「ったく……やっぱあんたと来るんじゃなかったわ」
ひとは「……」
みつば「う……あぁもう! 隣に座ってもいいわよね!」
ひとは「バ、バランス悪くなるからこないで!」
みつば「……」

370 :
松岡「早くそのパソコンを渡して!」
杉崎「ちょっと! これにはみつばの写真が入ってるの!」
松岡「だめ! 三女さんが言うからには間違いないわ!」
杉崎「ちょ、馬鹿! そんな勢いでお払い棒ぶつけられたら壊れるじゃない!」
松岡「大丈夫、壊してからちゃんと供養するから!」
杉崎「そんな心配してないわよ!」
松岡「さぁ杉ちゃん、観念して渡して方が身のためよ(霊的に)」
杉崎「せ、せめてバックアップだけでも取らせて」
松岡「! 呪いのビデオ的なアレね!」
杉崎「ち、ちが――、三女! お茶なんか飲んでないでなんとかしなさいよ〜!」

371 :
吉岡「みて、あの二人! 二人で並んで歩いてるなんて……付き合ってるのかな!?」><
宮下「いや、女同士だし仲いいだけじゃないのか?」
吉岡「あ! 後ろの人はもしかして……さ、三角関係!?」><
宮下「――二人の連れだろ……」
吉岡「あ、さらに後ろ! まさか……ストーカー!?」><
宮下「他人にしかみえないんだが……」
吉岡「休日は恋がいっぱいだね!」><
宮下「だっ…だったら、休日、特に理由もなく二人で出かけてる私たちはどうなんだよ」
吉岡「え? それは――親友だよね!」
宮下「だよなっ!」

372 :
今日はこれで終わりです
時間を見つけ次第、不定期連載していくつもりです
感想とかあればお願いします
……規制解除まだかなー

373 :
定期投下です
それと補足で留意事項をひとつ。
・「○と○」の○には掛け合いする人の名前、攻めと受けだったり、攻めと避わしだったり、ボケと突っ込みだったりしますが
特に前後で関係ないものも含まれ、また厭くまで掛け合いであり、カップリングではありません。ご注意を。

374 :
緒方「ちょっと、邪魔よ!」
ふたば「あ、ごめんなさいっス」
緒方「おかげで佐藤君のシュートが見えなかったじゃない!」
ふたば「……小生謝ったっスよ?」
緒方「謝って済む問題じゃないの!」
ふたば「そんなにしんちゃんのシュートが見たかったら、今度川原のサッカーに誘ってあげるっス」
緒方「!? ホント!」
ふたば「いいっスよ、そのときは小生と勝負っス!(サッカーの勝負)」
緒方「望むところよ! 絶対負けないわ!(佐藤との恋の勝負)」
ふたば「小生相手にこの自信……楽しみっス!」

375 :
伊藤「おがちん……どうやら佐藤君とサッカー行くみたいね」
加藤「みたいだね……」
伊藤「もちろん、私たちも行っていいのよね?」
加藤「というか、いつも試合には参加して無いけどよく観戦しに行くんだけどね」
伊藤「そうね、でも、おがちんが試合参加となるとあなたも大変ね」
加藤「え?」
伊藤「あら? 気が付いてないの? おがちん……パンツ履いてないじゃない」
加藤「っ! そうだった!」
伊藤「ふふ、真由美ちゃんはいい子ね。私は応援席であなたの分までしっかり観察してるわね」
加藤「うん……私の分までお願い」

376 :
みつば「これ、どう思う?」
松岡「んー、ちょっと地味かな?」
みつば「……確かにちょっと地味かも」
松岡「みっちゃんにはもう少しお洒落なブラのがいいんじゃない?」
みつば「お洒落ね……あんたは今どんなのつけてるのよ?」
松岡「ぇ! あ、なんて言えばいいのかな、えっと――」
みつば「もう! じれったいわね、更衣室で見せればいいじゃない!」
松岡「えぇ!? まって、引っ張らないで!」
みつば「減るもんじゃないし良いじゃない♪」
松岡「私の何かが確実に減るから!」

377 :
みつば「はい、捲り上げなさい」
松岡「絶対おかしいよねこれ///」ピラ
みつば「結構可愛いの付けてるのね……」
松岡「み、みっちゃん近くで見すぎ……もういいでしょ?」
みつば「もうっ、杉崎に色々撮られてる私より数段マシじゃない!」
松岡「色々――それは杉ちゃんとみっちゃんが、おかしいだけだと思う」
みつば「そうなの? まぁいいわ、参考になったし」
松岡「はぁ〜」
みつば「……えっと、ありがとね。あんたくらいしかこういうの頼めないし」
松岡「あ、うん(変態行為じゃなくてブラの買い物に付き合う相手のこと……だよね?)」

378 :
今日はこれで終了
書き貯めが減っていく……
またそのうち投下します

379 :
乙だぜ
月刊誌になってコミック化待ちなんだ

380 :
>>379
住人発見!
誰もいないんじゃないかって少し不安になってたので安心しました
定期投下です、今回も4本だけです

381 :
杉崎「コレが今話題の最新胸パッドよ!」
ひとは「そんな大声で宣言するようなものでもないよ」
杉崎「そんなこと言うと、試着させてあげないわよ」
ひとは「む、それは困る……」
杉崎「それじゃ、……はい、最新パッド――とテープ」
ひとは「えっと、こうやって――」ゴソゴソペタペタ
杉崎「! あの絶壁がここまで」
ひとは「絶壁とか言わない!」
杉崎「えっと、物は相談なんだけど、みつばにそれ付けさせて登校させてもらえる? 写真撮りたいから」
ひとは「どう話を切り出せば説得できると思ってるの!? 無理だよ!」

382 :
緒方「ついに川原でのサッカーは明日ね」
伊藤「応援しに行くわね」
緒方「なに言ってるのよ、もう選手として詩織も入れてもらえるように頼んだわよ」
伊藤「え……」
緒方「だって私たち抜け駆けなんてしないSSS隊の仲間じゃない!」
伊藤「……」ニコニコ
緒方「みんなで協力してふたばを倒し、佐藤君に私たちの魅力を見せ付けるのよ!」
伊藤「……」ニコニコ
緒方「どうしたのそんなニコニコして?」
伊藤「……なんでもないわよ?」ニコニコ

383 :
緒方「とう!」
加藤「!」
緒方「やぁ!」
加藤「!!」
緒方「せいゃ!」
加藤「!!!」
緒方「ふぅー」
加藤「はぁ、はぁ、はぁ」
緒方「! いくわよ、オーバーヘッドキーック!」
加藤「っ! おがちんもうやめて〜!」

384 :
ふたば「ゆきちゃんってさっちゃんと仲良いっスね!」
吉岡「えぇ!? そ、そうかな〜ただの親友だよ」><
ふたば「でも、ひともさっちゃんと仲良いっスね」
吉岡「ぐぬぬ……」
ふたば「さっちゃん、ひとをとっても慕ってるみたいっス」
吉岡「う……」
ふたば「最近じゃひともさっちゃんのこと――」
吉岡「友情は時には恋を超えるんだから!」><
ふたま「ど、どうしたっスか!?」
吉岡「あ、あはは、気にしないで……」

385 :
以上です
もう、短編除いた半分以上書き貯めが……
原作の吉松(ゆきさき?ゆき松?)に進展あったので
今まで付き合いが長く松岡と仲の良い相手って認識がちょっと変わりましたね
うーん、不定期更新あと3回程度終了しそうな勢いです
今忙しいけど、追加で何か作って行こうかな……

386 :
定期投下、今日は5本です

387 :
ひとは「なんで森下さんとこんなことに……」
宮下「それは、定員オーバーで次のエレベーターに私たちが乗ることになったからだろ……それと宮下だからな」
ひとは「で、坂下さん、なんでこのエレベーター止まっちゃってるのかな?」
宮下「そ、それは、私が急ぐが余りボタンを連打したから……かも……宮下だからな」
ひとは「つまり、すべての原因は寺下さんにあると」
宮下「う……いや、偶然だって! そんな軟なつくりのエレベーターなんてシ○ド○ー製しかありえないって! ……宮下です、はい」
ひとは「エレベーターのせいにするなんて、最低なことだよね、杉下さん」
宮下「うぅ、そんな大層な苗字じゃない……」
ひとは「話がずれて来てるよ、上下さん」
宮下「珍しい苗字を……はい、私のせいです」

388 :
ひとは「さて、どうしようか」
宮下「とりあえず緊急用の通話ボタンは押して連絡したし、待つしかないんじゃないか?」
ひとは「宮下さんが気合で扉を開けるとか?」
宮下「無理だよ子供の力で開くわ――え? 今、宮下って……」
ひとは「っ! い、いや、今のは間違おうとして偶然に正解を引けただけであって///」
宮下「このっ照れるな照れるな!」
ひとは「う、鬱陶しい……」
宮下「そっか、そっか、“宮下さん”かー、うーん良い響きだな!」
ひとは「復唱やめて……お願いだから……」
宮下「“宮下さん”♪“宮下さん”♪」

389 :
松岡「さ、三女さん!」
ひとは「っ! ま、松岡さん?」
松岡「みっちゃんから風邪貰ったって聞いてそれで……」
ひとは「あ、うん……うつるかもかも知れないから気をつけ――どうしたのボーとして?」
松岡「……風邪引いてると三女さんって可愛いよね……」
ひとは「……それ褒めてないよね?」
松岡「あ、いや、いつもよりもっと可愛いって意味だよ。それにほら、天才“美”少女霊媒師っていつも言ってるじゃない」
ひとは「お世辞でしょ?」
松岡「そんなこと無い! 料理も出来て、家事もできるし、見た目だって可愛いわ!」
ひとは「あ、う……その、ありがと……」

390 :
吉岡「お見舞いに来たよー」
松岡「ゆきちゃん! 傷の経過報告みてくれてる?」
吉岡「う、うん……見てるよ」
松岡「そっかー、ありがと、また送るわね。はぁ……三女さんとゆきちゃんだけだよ〜見てくれるの」
吉岡「え、三女さんも?」
松岡「うん、携帯持って無いから直接ね」
吉岡「ぐぬぬ……」
松岡「どうしたのハンカチなんて噛み締めて?」
吉岡「気にしないで、恋なんて一時、友情は一生だから!」><
松岡「んーよくわからないけど、なんか、頑張ってね」

391 :
杉崎「……なんであんたとなんか……」<ピロリロリーン♪>
みつば「煩いわね……別に私も一緒に居たくなんか無いわよ」
杉崎「……私が寝込んでるからって…言いたい放題…言って…くれるじゃない……」<ピロリロリーン♪>
みつば「ば、馬鹿! 息切れするほど喋んなくていいわよ!」
杉崎「……うん」<ピロリロリーン♪>
みつば「――ねぇ?」
杉崎「なに?」<ピロリロリーン♪>
みつば「撮影やめたら?」
杉崎「いやよ! あんたの…看病姿なんて滅多に…撮れないじゃないっ!」<ピロリロリーン♪>
みつば「……馬鹿でしょあんた……」

392 :
以上です
またそのうち投下します

393 :
今回4本です

394 :
吉岡「みっちゃん、杉ちゃん心配してたよ?」
みつば「ふんっ、杉崎が私の心配なんてするわけないじゃない!」
吉岡「そんなことないよ……みっちゃんがあんな事言わなきゃ絶対お見舞い来たはずだよ?」
みつば「た、確かに言い過ぎたと思うけど……」
吉岡「もうっ、杉ちゃんも素直じゃないから、みっちゃんもそんなんじゃだめだよ」><
みつば「……」
吉岡「……皆、下でお粥作ってるし、今の内に杉ちゃんに電話掛ける?」
みつば「っ! い、いやよ! なに言えばいいかわかんないしっ!」
吉岡「そ、そうだよね……明日学校で声かけてみるね」
みつば「……悪いわね……」

395 :
みつば「……悪かったわね、まさか本当に腐るなんて思わなかったのよ……」
緒方「もう、いいわよ……ところで、えっと…ありがと」
みつば「……なにがよ?」
緒方「さっき栗山先生に聞いたけど、保健室まで運んでくれたんでしょ?」
みつば「そ、そうだけど」
緒方「真由美も詩織風邪で今日は寝込んでるらしいし……その、すごく助かった」
みつば「別にいいわよ、もともと私の悪戯が原因な訳だし、恨んでもいいけど感謝されることなんて無いわよ!」
緒方「……あんたって実は優しいの?」
みつば「っ! そんなこと無いわよ!///」
緒方「別に照れなくても……」

396 :
宮下「くそ……三女がいつの間にかいない」
杉崎「あれ? みつばがいない……折角盗撮写真で釣ろうと思ったのに」
宮下「そりゃ杉崎の場合、常識的に考えて逃げられもするだろ」
杉崎「はぁ!? あんたこそ三女に逃げられて当たり前でしょ?」
宮下「何言ってるんだ? むしろ感謝されるだろ私の場合」
杉崎「感謝できる要素皆無じゃない」
宮下「なんでだよ! あんなに三女がクラスに馴染めるようにだな――」
杉崎「あぁ、もう! やめなさいよ! そういう相手に気を配れないところが嫌われる理由なのよ!」
宮下「超気配り上手だろ私!? っていうか盗撮してる奴が気配りとか言えないだろ!」
杉崎「盗撮は……ほら、日課だし問題ないのよ、たぶん」

397 :
吉岡「あれ? 宮ちゃんもさっちゃんもいない><」
杉崎「また、みつばに逃げられた……高級ブランド品自慢しようと思ったのに」
吉岡「あ、コレ新作の……いいな><」
杉崎「……吉岡に自慢しても詰まらないわね」
吉岡「ぇ、酷いよ><」
杉崎「ところで、最近みつばが私を避けてるようなきがするんだけど……なにか知らない?」
吉岡「そうなの? えーと、と、盗撮のしすぎとか?」
杉崎「え? ……今日は23枚だし、いつもより少し少なめなような」
吉岡「そ、それで少ないの><」
杉崎「ええ! 多い時は50枚は軽いわね!」

398 :
以上です
まだこのシリーズの書き貯めは多少あるのですが
諸事情によりここまでです。
約一ヶ月の間の不定期連載でした。
お読み下さった方ありがとうございました。
感想とかあればお願いします。
合わせて、何か執筆要望があれば気軽にどうぞ。
規制により返答、投下は何時になるかわかりませんが
そして、読みはしますが、要望通り書くかは私のやる気しだいです(ぉぃ
そしてあまりの過疎に泣けたので、最後にageておきます

399 :
乙です、まさかこんな過疎スレでSSを見れるとは
要望ですが、濃厚な松岡さん×ひとはをお願いいたします

400 :
いつの間にか規制解除きてる?
398です
なんだかんだで、規制中にサボってたので>>350の続きがまだ8割くらいしか出来てませんorz
他作品のも同時に書いてるのも影響してるけど、どう考えても鈍筆なのは言うまでもないです
定期的にレベル上げも兼ねて○と○シリーズの方は投下するかもしれません 
>>399
今書いてるの終わり次第、松ひと考えて見ます
が、相当前にも何度か言ってますが濃厚はあまり得意ではないので無理かもしれませんので予めご了承ください
後勝手にひと松方向に話を持っていく可能性も……

401 :
杉崎「うぅ、またみつばがいないじゃない……」
ふたば「ほへ? なにか用事っスか?」
杉崎「どうもこうもないわよ……折角だから一緒に帰るの、しょうがなく、仕方な〜く誘ってやろうと思ったのに」
ふたば「仕方がなく誘うだったら、別に誘わなくてもいいんじゃないっスか?」
杉崎「う……そ、それはそうなんだけど……」
ふたば「そういえば、最近みっちゃん杉ちゃん避けてるような感じっスね」
杉崎「うぐぅ……やっぱり勘違いじゃなかったのね。でもどうしてなの?」
ふたば「盗撮しすぎたんじゃないんっスか?」
杉崎「え? それっていけないことなの?」
ふたば「……」(哀れみの目線)

402 :
ひとは「……杉ちゃんと何かあった?」
みつば「っ! べ、別になにもないわよ?」
ひとは「嘘だね――とりあえず、なにがあったのか言ってみなよ? やっぱ盗撮関連?」
みつば「盗撮? そんなのどうでもいいわよ」
ひとは「ぇ……みっちゃん相当毒されてるんだね」
みつば「えっと、この前松岡と買ったブラ、最近付けてるんだけど……それを杉崎に自慢しようかと思ったのよ」
ひとは「ああ、そういや付けてるみたいだね。でも、自慢するなら避ける必要ないんじゃない?」
みつば「いや、よくよく考えたら、杉崎のが高級なのを付けてることに気が付いて、ブラ付けてるのバレないようにしてたのよ」
ひとは「なるほど……うん、負けるね」
みつば「でしょ! 折角可愛いの買ったのに……誰に自慢すればいいのよ!」

403 :
ふたば「牛肉ー、ジャガイモー、にんじんー、こんにゃくー、今日は肉じゃがっスね〜」
みつば「あれ? ひとははどこ行ったのよ?」
ふたば「あ、あそこっス! アイス売り場っス!」
みつば「なかなか気が利くわね。私のためにアイスを買ってくれるなんて――」
ふたば「あ、カロリーオフのアイスを手に取ってるっス!」
みつば「え! あ……そ、そうみたいね」
ふたば「みっちゃんのこと思って、ちゃんと考えてるんっスね!」
みつば「そんなに考えてくれてるなんて――なんか照れるわね……///」
ふたば「あ、商品戻したっスよ! 食べないに越したことないっスもんね!」
みつば「……」

404 :
少し見てない間にだいぶSS投下されてるみたいですね。
暇ができたらぼちぼちまとめます

405 :2013/09/14
一応最新までまとめましたけど見づらい気がする
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