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2013年10レズ・百合萌え394: もう百合好きなんてやめてやる……! (197) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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もう百合好きなんてやめてやる……!


1 :2009/07/07 〜 最終レス :2013/06/23
やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
こんなスレタイでやってくるなんて穏やかじゃないね。
でも、はじめて百合を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って
このスレを立てたんだ。

じゃあ、注文を聞こうか。



※百合について愚痴ったり惚気たりしながらまったりするスレです。
注文を書いておくとマスターがこっそりおいておくかもしれません。

2 :
似たようなスレって無かったか?

3 :
マスター、40代の熟女に遊ばれる少女(15〜20)という百合をくれ
100歳の幼女とかいう設定は無しで頼む

4 :
 明日は祝日で休みになっている火曜。
学校も休みになっている佳奈は、親に友達の家に泊まると連絡を入れた。
バイト先の葉子のお店は、明日が休日ということもあって客足は多かった。
午後9時にバイトが終わり、店の二階にある葉子の自宅で遅い夕飯の支度を済ます。
閉店時刻を三十分まわった零時に、高校の制服のままお店に降りてくると、ちょうど葉子が片付けを終えたところだった。
「ごはん作っておきました」
「あら、ありがと」
 葉子はやんわり微笑んで、グラスを出すと「飲む?」と佳奈の耳元で優しく呟いた。
佳奈はいつものように少しだけお酒を飲みながら、葉子とカウンター席に並んで他愛もないことを話す。
僅かに酔いがまわって体が火照った頃に、会話が途切れて一瞬の静寂が落ちる。
不意に葉子が佳奈の顎をすっと捉えて、無理矢理に唇を奪った。
啄むようなキスを、自然と受け入れる。葉子にふっと距離をあけられると、佳奈はとろんとした表情で葉子を見つめた。
グラスを煽った葉子は再度佳奈にキスをした。
口に含んだアルコールを、親鳥が雛に与えるように少しずつ飲ませていく。
あどけない少女の下を絡め取りながら、きつめのアルコールが舌を痺れさせる感触を楽しむ。
佳奈の口内をたっぷりと嬲り、その未成熟な体を上品に撫で回す。
慣れた手付きで制服のボタンを二つ外して、胸元に手を入れた。
胸を優しく揉んで、その頂点を摘むと、佳奈の口から小さな喘ぎが漏れた。
「……ぁう……やだ、葉子さん」
「感じる?」
「……うん」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに答える佳奈を見て、葉子は満足そうに微笑んだ。
「じゃ、今日はここまで」
「え?」
とたんに佳奈の顔に落胆の色が表れる。
「続きしてほしいの?」
「…………」
「ん?」
 佳奈が黙ったまま頷く。
「ふふ、やだ」
「なんでですか……?」
「快楽に欲求不満を感じてる佳奈ちゃんが可愛から。週末までおあずけ?」
 佳奈の体弄んだ後、あっさりと立ち上がって「さーて今日のご飯は何かなぁ?」と上機嫌で去っていく葉子。
「なんでそうやって意地悪するんですか?」
 佳奈は口を尖らせて葉子に抗議した。けれどその声はどこか甘えた調子だった。
「佳奈ちゃんが可愛いから」
 完全に玩具扱いされて、内心すこしへこむ佳奈。
そんな気持ちをしってか知らずか、「今度たくさん愛してあげるから」と葉子は妖艶に笑うのだった。


注文ってそういう意味じゃないよー、ふつうのバーのオーダーだよー、などと思いつつもとりあえず挑戦してみた。
ちなみに続かない。
きっとお気に召すことはないのだろうが、努力はしたんだ……許してほしいorz

5 :
マスター…!

6 :
これはいいマスター

7 :
良スレあげ

8 :
それは百合ではなくてレズだし
バカレズね

9 :
マスター良い人すぎる

10 :
>>5-7
>>9
つ「ネバダ」
心あるレスありがとう。
そんなあなたたちに、夏の暑さを乗り切るこのカクテルを。
ライトラムにライム、グレープフルーツジュース、さらに一雫のアンゴスチュラ・ビターズを加えてシェークしたショートカクテルだ。
疲れているなら、砂糖を一つまみ入れておくれ。
柑橘類とよくあうラムの味わい、酸味の中に香るグレープフルーツのほろ苦さを堪能してもらえれば僥倖だ(´・ω・`)

>>9
つ「ホワイトレディ」
上のような品のない語りがお好みではなかったようなので(´・ω・`)
1919年にロンドンで生まれたこのカクテルは、そのベースをジンに変更してから貴婦人に大人気となったショートカクテルだ。
コアントローとレモンジュースは、ジンなどのスピリッツと抜群の相性で、その爽やかで清楚、上品な味わい感じていただけたらうれしい。

11 :
「ネバダ」いただきます

12 :
マスター、カクテルの選び方がすばらしいです。
ひょっとして五十鈴のカウンターという百合漫画に出演されてませんか?

13 :
うああ間違えた。
>12は>9ですorz

14 :
>>12
玄鉄絢先生のお話になんてとてもとても出れません(´・ω・`)

15 :
マスター、大人と子供の中間くらいで戯れる百合をくれ
エロ成分はなしで頼む。

16 :
 夕暮れの美術室で二人っきり。たったそれだけのことで、一葉の胸は痛いくらいどきどきしていた。
夕日を背景にする梓の姿が信じられないくらい魅力的だったからだ。
 黒髪のショートがよく似合うなんて、本当に顔立ちの整った女の子だけなのに……。
内心そんなことを考えながら、画用紙に陰影をつけていく。
艶の黒髪から、まだ少し幼さの残る横顔が覗く。
柔らかそうな唇はうっすらと濡れて、伏せた視線が、どことなく艶めかしい。
まだ十六にも満たない少女だというのに、人を惹きつけ、危ういくらいに魅了する何かがあった。
それは男女問わず無作為に人を誘惑する色気のような何かが。
「一葉?」
 手が止まっていたせいか、梓が不思議そうに訊ねる。
「あ、いや、ごめん。なんか見取れてた」
「っぷ。なにがあったのさ?」
 同姓である一葉が見取れていたと言ったのが面白かったのだろう。
くすくす笑って一葉を視線の上に置く。
凛とした瞳にまっすぐ射抜かれて、一葉は逃げるように描きかけの紙に視線を移した。
胸の高鳴りのせいで、とても直視などできなかった。
「いや、梓はすごい美人だから」
「ん? 私に惚れたか? 一目惚れか?」
 冗談めかして梓は聞くから、
「うん、やばい。もうメロメロだよ」
 同じく冗談のように笑って返す。
けれど、心のそこからは笑えない。一葉が一目惚れしているのは事実だった。
ただそれは幾分か前のことではあったが。
それからクラスの違う彼女知り合うきっかけになったのは、共通の友人が仲を取り持ってくれたからだった。
美術部でモデルを探しているという口実を作って、なんとか二人っきりになったのだ。
いろいろ話をしたかったが、いざとなると何をしゃべって良いか分からなかった。
「どうしよう、彼女が出来そうだ」
 なんてけらけら笑う。黙っていると妙に色っぽいのに、話しだせば嘘みたいに少年のような無邪気さを見せる。
そのギャップに一葉すっかり心を奪われてしまったのだ。
彼女になれれば良いのに。なんて空想をふくらませようとして――やめた。
 一葉はこの関係がひとたび彼女に口付けるだけで壊れてしまうものだと知っていた。
この想いは決して実を結ぶことなく、また告げられることもない。
そこにあって、そして何もない空虚と同義。
 だから一葉は「梓はオオカミだから怖いな」と虚ろに、けれど幸せそうに笑ってみせた。
傍で一緒に笑っていられるならそれで幸せだと、自らに言い聞かせるように。
 虚ろな幸せ、哀しくて、優しい気持ち。
そんな感情を全て飲み込んで、一葉はもう一度微笑んだ。

……無理だって、書けないって(´・ω・`)

17 :
マスター……!

18 :
なんてこった、マスターがまたやってくれたぜ

19 :
「マスターが一晩でやってくれました」

20 :
マスターならやってくれると思ってました
病弱お嬢様とメイドさんとか期待してもいいのかな

21 :
>>17-19
つトム・コリンズ
そういわれると拙いものでも書いたかいがあったと思う。
トムコリンズはジンとレモンジュースに適当な甘さを与え、ソーダ割りにしたロングカクテルだ。
熱帯夜に酸味と炭酸の為す爽やかさを楽しんでくれ。

>>20
つブルームーン
ドライジンにバイオレットリキュール、レモンジュースを加えてシェークしたやや甘めのショートカクテルだ。
ブルームーンとはいえ、スミレの色素を含むリキュールなので、実のところの色は青に近い紫。
ちなみにこれには「できない相談」という意味があるんだ。

22 :
お嬢様の体調のことをご考慮してくださったお母上様が、厚手の布団を用意して下さったのだが、
その厚手の掛け布団が気にいらなかったのか、お嬢様は少々ご機嫌斜めだった。
「いけません、お嬢様、今夜は冷えますから」
「でもこれじゃ暑すぎて寝られないわ」
「しかしせっかく律子様が用意してくださったのですし……」
「いくら私の体が心配だからって、睡眠不足で体調崩してもしょうがないでしょう?」
「それもそうですが……。わかりました、そこまで仰るなら。
けれどいつもの布団ではやはりお寒いでしょうから、代わりになるものを探して参ります」
「あら、必要ないわ。小夜が一緒に寝てくれれば暖かいじゃない」
「いえ、そんな畏れ多いことはできませんよ」
「構わないわ。温度も調整しやすいし」
「しかし」
「なに私と一緒に寝るのが嫌なの?」
「いえ、決してそういうわけでは」
 お嬢様はお綺麗で、良い匂いがして、女の私でも傍にいるだけで目を奪われてしまうことがある。
そんなお人と一緒にベッドに入っても、緊張してしまって眠れそうにないのだ。
明日のお勤めに支障を来す訳にもいかない。
「むぅ」
「申し訳ありません、やはりちょっと……」
「ん〜」
 断って出て行こうとしたら、袖を掴まれた。
不満そうな、どこか甘える表情で見つめられる。
「…………」
「…………」
「……分かりました」
 そのお顔を見たら心が折れた。反則だ。容姿が並ならぬ人の甘えた表情は。
「支度をして参りますので、少々お待ち下さい」
「うん」
 一変してご機嫌な様子。どうもしてやられたかもしれないな、と思いつつも無邪気な笑顔を見せられると何も言えなくなる。
やれやれだな、とため息をついて私は一度部屋を後にした。
「わぁ!」
 部屋に入るなり、お嬢様の歓声があがった。またひどくお喜びの様子だ。
「だって小夜が仕事着を着てない!」
「業務中ではありませんからね」
「へぇー、小夜可愛い〜! なんかパジャマ着てるとすっごい女の子らしいね」
「そ、そうでしょうか?」

23 :
「うん! ほら、早くおいで」
 お嬢様がベッドの上で布団をぱたぱたはためかせて催促している。
ベッドに入ってお嬢様の隣に横になると、どこからともなく良い匂いがした。
ご機嫌なお嬢様が私の体に抱きつく。
「ふふ、あったかい」
「それはなによりです」
 私もお嬢様を柔らかく抱いた。
腕の中に収めると、お嬢様の体の華奢さがより感じられた。
病を患い、人並みの運動も出来ず、やせ細った体。
強く抱きしめれば壊れてしまいそうなガラス細工のようで、なぜだか心が切なくなった。
小さな頃、何で私はみんなと一緒に遊べないの、と泣きじゃくるお嬢様を思い出した。
今だってご病気のことで様々な障害がある。
どうして他人に当たり前に与えられた健全な体がないのだろうと、お嬢様は強いからそんな弱音はもう言葉にしない。
けれどその不条理は常に痛感しているに違いない。
無邪気な笑顔の裏側に秘められた昏い澱み。
その幾らかでも、お嬢様に尽くすことで取り除くことが出来るのだろうか。
少しだけぎゅっと抱きしめる。
私に抱きついていたお嬢様が顔を上げる。下からのぞき込まれるように見つめられたので、気恥ずかしくて思わず視線を逸らした。
「小夜の体って抱き心地が良くて好きよ」
「そう……なのですか?」
「ええ、無駄な脂肪も付いていないし、女の子らしさもあるしね」
 と、言ってお嬢様が私の胸に顔をうずめた。
幸せそうに目を細める。
ずっとこんな幸福な時間が続いて欲しかった。
「おやすみ、小夜」
「おやすみなさいませ」
 お嬢様は私から離れることつもりはないらしい。
私にくっついたまま目を閉じてすっかり眠る姿勢だ。
証明を消すと、お嬢様の息づかいが聞こえた。
私は愛しい人にするように、お嬢様の頭を優しく撫でてゆっくり目を閉じた。
 幸せはいつまでも続かない。お嬢様の時間も永遠ではない。
だからこそ今は、この温もりと幸福を噛みしめよう。

どういうつもりで書いたかはもう注文した人にカクテルで伝えたつもりだ(´・ω・`)

24 :
マスター
ちょっと生意気な後輩と意地っ張りの先輩がけんかしちゃうけど結局仲直りモノを頼む。

25 :
マスター……!

26 :
マスター、いいものを貰ったよ
儚くも美しく、残酷でいて優しい…

27 :
マスターありがとう、今夜の酒は最高に美味いぜ

28 :
>>24
つブルームーン
断る(´・ω・`)
>>25-27
つドライマティーニ
そう言ってもらえると幸いだ(´・ω・`)
あなたたちのレスのおかげで毎回書く気力が起きる。

29 :
一応念をお押すけどここは小説スレではないんだ(´・ω・`)
今は単に趣味で書いてるけど、別に絶対書かれるとかそういうわけではないから了承しておいてくれ。
気に入らないときはそっとスレを閉じてくれ。以後開かない方が良いだろう。
それでも見てくれる人がいるのはうれしいことだ。
今のところはかけているが、今後注文が増えたらどうなるかわからないしね。
まったりまってくれると幸いだ。
バー的な注文はいつでも歓迎だ。
なにか言葉を添えてくれれば、適当に選んだカクテルをだせるかもしれない。
それじゃあ、ゆっくりしていってくれ。

30 :
 その日、茜珍しく朝から機嫌が悪かった。原因は登校中の美由紀との些細な喧嘩である。
別段拘ることでもないのだが、いつの間にかお互いに意地になって口調がきつくなっていた。
美由紀と親しい仲とはいえ、相手は部活の先輩、それを思うと罪悪感がこみ上げてくる。
あまりに生意気がすぎたのではないかと省みる。払うべき敬意は払っておくべきだった、と自らの軽率さを呪った。
しかし実際のところ敬意などはどうでも良かったのである。
美由紀に大人ぶって悟ったようなことを言われたのが、どうにも気に食わなかったなかったのだ。
美由紀の方が年上とは分かっていても、なんだか子供扱いされたようで茜はへそを曲げた。それで言い合いにでもなれば、あるいは良かったのかもしれない。
けれどそうなることもなく、ただ険悪な空気と沈黙が続いたまま、学校前まで着いてしまった。
学年が異なるので「じゃあ」と短い挨拶だけして別れ、教室に来た。
当然胸のもやもやは晴れぬままである。
 それは授業中にまで波及し、茜はふて腐れながらぼーっと授業を聞いていた。
その気持ちを代弁するかのように、今朝晴れていた天気は、いつ雨が降ってもおかしくないような空模様になった。
傘を持ってきていない茜はその様子をみてさらに気持ちが沈んだ。
不思議と悪いことは重なるものだ、と心のなかで毒づいた。
 授業が終わった頃にはまだまばらだった雨は、部活を終える時間になると勢いを増していた。
ざあざあと音を立てて降る夜の雨を眺めて、茜はさらに陰鬱な気分になった。
悪いことは重なる。こんな時に限って顧問に雑用を頼まれ、一緒に帰る人は誰もいなかった。
部室を覗いてももう人の気配はない。
同学年の女子と美由紀と帰るのを日によって変えていたのが災いして、どちらも待ってはくれなかったようだった。
体育館を出たところで、誰かが待っていてくれるかもしれないと期待したが、誰一人いなかった。
普段よりも遅い時間ということもあって、人影一つ見あたらない。
どこかに美由紀の姿を探している自分に気がついて、さらに気持ちが沈んだ。
今朝あんな別れ方をしたのだ。待っていてくれるはずがない。
急に孤独感に襲われた。自分以外だれもいないのだ。
どれくらい降っているかと手を出すと、落ちてくる雨粒が、夏だというのにひどく冷たく感じられた。
本当なら職員室までいけば傘を貸してもらえるかもしれないが、そんな気力はなかった。
惨めに雨にうたれてびしょ濡れになってしまいたかった。
一歩踏み出すと、不愉快なリズムで頭を雨に打たれる。
それは想像していたよりもずっと惨めな気分だった。


31 :
 そうして歩いていれば、誰かが――その具体的な容姿を描きそうになって掻き消す――助けてくれるような気がしていた。
けれど雨の中、手を差しのばしてくれる人はどこにもいなかった。
それは孤独という言葉を少女に十分に理解させた。
無慈悲で冷たい雨が、さして寒くもないのに体を震わせる。
校門まで来たところで、茜は泣き出した。
あまりに自分が惨めすぎた。
あの人が、美由紀が、どこかで絶対に私を支えてくれると思っていた。
こんなふうに雨に濡れて惨めな自分を演出して、ただ優しくして欲しかっただけなのだ。
そんな自分が浅ましく思えて、ますます惨めな気持ちになった。
だいたい美由紀がいつも自分の思うように振る舞ってくれるはずなどないのだ。
実際にはただ年が一つ上なだけの、一人の女の子。
聖人のような心を持っているわけではない、一人の人間。
喧嘩したその日の帰りに、もしかしたら今日は気持ちを静めるために一緒に帰りたくなかったかもしれない。
あるいは用事があったかもしれない。
けれどわけもなく美由紀がもう傍にはいてくれなくなるような気がして、その不安にまた涙が零れた。
 茜は嗚咽を押しすように泣いていたから、その足音には気が付かなかった。
不意に茜に降り落ちる雨が途絶えた。
振り返ると美由紀が心配そうな、起こったような表情で見つめていた。
「待ってたんだけど、ちょうど私がお手洗いに行ったときにすれ違いになったみたい」
「……先輩」
「けど雨に濡れながら帰るのは感心しないぞ。職員室で借りられるの、知ってるでしょ?」
 茜は小さく頷いた。
美由紀がその頭を優しく撫でながら言う。
「風邪なんか引いて余計な心配かけさせないでよ」
「……はい」
「ん。じゃあ帰ろうか。相合傘だね」
 茜が泣いているのを気づいていないはずがないのに、あえてそれには触れなかった。
それも一つの優しさなんだと、茜は思った。
「あ、今朝はごめんなさい。生意気言っちゃって」
「ううん、私も意地になちゃってたし。おあいこだね。でもこれで仲直りできた」
「……うん」
 雨が傘を叩いては落ちていく。美由紀と触れている茜の腕が温もりを感じる。
息づかいも聞こえそうな程の距離が、優しくて暖かい。
「先輩……好きです」
 なぜか、そんな言葉零れた。自然と。口に出した瞬間、一気に頬が紅潮した。
美由紀が驚いて茜を見つめた。そして小さく吹き出すように笑った。
「私もよ」
 そっと耳元で囁かれた言葉は、雨に溶けるように消えた。
茜はさらに顔を赤らめた。

32 :
マスターの小説はどの出版社もしくはウェブページで読めますか?
情緒と余韻があってとても好きなんですけど。

33 :
久し振りにレベルが高いマスターに出会えた

34 :
マスター……!

35 :
マスターありがとう
明日もいい日になりそうだ

36 :
ねぇマスター
親友に恋をしてしまったら、もう友達には戻れないんだね。
親友を失う覚悟が出来たら、無理矢理キスでもして
その人が抜けてポッカリ空いた穴を、思い出としてふさがずにとっておくつもりなんだ
、、、私に合うものをお願い。

37 :
>>32-35
つネバダ
やぁ、どうも(´・ω・`)
うれしいんだ、あまりはしゃがせないでくれよ。
>>32
もしかしたら今書いてる中編を仕上げたら、ブログをたてるかもしれない。

>>36
つThe Last Kiss
ホワイトラムの逸品の一つ、ポルフィディオのラム・シルバーの辛さを抑えることなく、ほんのわずかなレモン果汁とブランデーが上品に味を締めるショートカクテル。
ほとんどがラムだというのに、ストレートからは想像もできない深みのある味。
人生に一度はあるつらい別れに(´・ω・`)

私はおしゃべりだからついまったく関係ない話をしてしまうのだけど。
ある日バーに二人組のお姉さん達がやってきてね。
しばらくしてから、ラストキスを一つ頼まれた。
珍しいことだと思ってね。男女のペアが一つずつか、お一人さんに頼まれることが多いから。
カウンター席に座っていらっしゃったから、二人のことはよく観察できた。
最初に頼んだお姉さんが半分くらい飲んで、別のお姉さんに渡してた。
渡されたお姉さんは「飲まないの?」みたいなことを聞いた。
「飲んで欲しいの」って渡したほうのお姉さんが言っていた。
ちょっと不思議そうにしながら、結局そのお姉さんは渡されたカクテルを飲んだ。
これは私の妄想だけど、あれはきっとラストキスで間接キスしたんじゃないかな、と思ってる。
本当にキスしたら、元の関係に戻れないかもしれない。
だからそれは、その人への想いと、その人を想っていた自分へさよならを告げる最後の口付けだったんじゃないかな。
その人への最後のキスは、気付かれないもしないささやかなキスで、沈黙の間にいろんなものにお別れした。
ラストキスでお別れするのは、何も「誰か」に対してじゃなくも良いんだって気づかされたよ。
あの人は結局キスしなかったんだろうな。
そこで終わりにしなければ、ずっと想いは形を変えながら残っていくから。
この世に変わらないものなんて何一つないと思う。
どんなに変わって欲しくない気持ちだって、時が経てば、美化されて、色あせていく。
でもあの二人は今でも時々お店に顔を出して、時々おしゃべりしながら帰っていく。
そういう想いの残し方もあるんだね。
どうも私は口が緩くて困る。

ねぇ、こんな所で飲んでないでどこかのバーに行ってきなよ。
ラストキスで何にお別れするかはあなた次第だけど、
何かにお別れするならその前に絶対飲んでおくべきなんだ。
ラストキスは、全く同じに創っても味が変わる魔法が込められてるんだよ。
一回目を知らないと、二回目を味わえないんだ。

38 :
マスター……!
あんた……
良すぎるよ!!!!!
注文の昇華し方が半端ない

39 :
マスター、ありがとう
実はお酒飲めなくて、酔ってみたいという軽い気持ちで注文したんだ
バーなんて行ったことなかったけど、ラストキス飲んでくるわ
まずは、だらしなく他人や酒に甘えた自分にサヨナラしてくる!
本当にありがとうm(__)m
マスターのラストキス、私の心に染み渡りました


40 :
よくわからん

41 :
まだ終わらんよ!

42 :
やぁ(´・ω・`)
24日までしばらく忙しくなりそうなんだ。だからしばらくは書けないし、レスもまばらになると思うけど許してほしい。

43 :
貴女なら許せる(T_T)

44 :
>>43
許してほしいならオレ様のチンポくわえなよ

45 :
 明菜は困っていた。
礼と付き合い始めてからもう二週間が過ぎようとしているのに、何もそれらしいことが出来ていないのだ。
それは詰まるところ、手をつなぐだとか、キスだとか、そういったことだ。
礼に想いを告げたのは、明菜。年上なのも明菜。
リードしないわけにはいかない。
けれどどうにも出来ないのだ。というより、どんなタイミングでなんと言ってすればいいのか分からない。
本当はタイミングやそのときの言葉を考えている時点で、もう遠回りの第一歩を踏み出しているのだが、
当の本人の明菜はそれに気づくはずもなかった。
彼女には恋愛ということ自体が初めてのことだった。
 だから放課後意図せず教室で二人きりになった時、明菜は随分困惑した。
「あ、明菜先輩〜」
 教室の扉からちょいっと頭を出して礼が声を掛けた。
どこか小動物を思わせる愛らしい仕草が、少し幼い小さな顔に似合っている。
日直の仕事をつけて一人残っていた明菜が、驚いて見上げると、
他には誰もいないことを確認した礼が意気揚々と教室に侵入していた。
「礼。どうしたの?」
「偶然明菜先輩の姿を見かけたので。お邪魔でしたか?」
「ううん、今終わったところだから」
 礼がちょこんと明菜の隣の机に座る。
上品に短くされたスカートから伸びて揺れるしなやかな脚が、明菜にはひどく誘惑的に見えた。
「へへー、ベストタイミングですね、私」
 無邪気に誇らしそうに笑う礼。そんな様子が明菜にはいつにもまして愛おしく感じられた。
けれど同時に、そんな礼が妙に蠱惑的にも感じられた。
何でもない話をしいる間、言葉が零れていく柔らかそうな唇に何度も視線を奪われた。
抱きしめれば壊れてしまいそうな華奢な体躯に、未成熟な色気を感じてしまう。
「……明菜先輩?」
「……ほぇ?」
 見取れていて何も聞いていなかった明菜から、思わず間抜けな声が漏れた。
礼がぷっと吹き出す。
「やだ。明菜先輩今とっても間の抜けた顔してました」
「……そうかも」
「かなわないなー、もう! 
普段の凛々しいお姉さんみたいな顔からは想像も出来ないくらい可愛い顔するんだから」
 礼が明菜を抱きしめる。
椅子に座ったまま覆い被さるように抱きつかれた明菜は、首に回された手をゆっくり外した。

46 :
「暑いよ、礼」
 もう一度抱きつかれないようにその手首を握って腿の上に置いた。
必然、目線を上げると、屈んだ礼の顔がすぐ近くにあった。
一瞬、互いに驚いて見つめ合う。
「礼、目を閉じて」
 明菜の中では何故かそれは自動的に行われた。
目を閉じて、僅かに震える息づかいを感じながら、ゆっくりと口付けた。
レモンの味もしない、ほんのり甘くもない、ただ、唇に柔らかいものが触れて、暖かかった。
啄むような浅いキス。束の間、時間が止まったように明菜には感じられた。
目を開けると、少し頬を紅潮させた礼が、幸せそうに微笑んでいた。
「明菜先輩の唇、なんか甘い……」
 囁かれた言葉が耳をくすぐる。
何も認識出来ないのに、明菜はとても幸福な気分だった。
しばらく呆然と礼を見つめていた明菜が、ふっと笑った。
「キスしちゃった」
 えへへと明菜はいたずらっぽく照れてみた。
照れることで照れ隠しをするなんて、自分はなんてプライドが高いんだろう。
お姉さんぶっていたいのだ。この可愛い子のせいで。
そう想いながらも、明菜は表情には出さなかった。
本当はもう思いっきり顔を背けたくなるくらい無意味に恥ずかしいのだが、見た目は涼やかなものである。
「キスされちゃいました」
 代わりに礼が視線を外して照れていた。
それが見たいためだけに、明菜はかなり無理をしている。
想いの人が照れているのを見るのは、どうしようもなく好きなのだ。
 本当は礼にも私のそういう顔をみせてあげてもいいんだけど、それは礼がもうちょっと積極的になる時までおあずけだね。
 なんて内心いたずらっぽく微笑んで。
「帰ろうか」
 どうにか自分が恥ずかしがっていることをばれないように席を立つと、礼が手をだしてきた。
「……あの、手、つないで帰りませんか?」
 思ったよりもその顔は早く見られてしまいそうだと、明菜は苦笑した。
「いいよ」
 その手をちょっと強く握り返してみた。

はぁ……忙しい時に限って筆が進む(´・ω・`)

47 :
>>45,46
GJ!
キュンとしました。

48 :
マスター! 待ってたよ!
そしてGJ!

49 :
wktk

50 :
マスターのせいで電車内で2828する犯罪者になりかけたッ!!
だがGJ過ぎる

51 :
>>47-50
つブラッディ・メアリー
レスをありがとう。このレス一つ一つが次の話の糧になるよ。
ブラッディメアリーは、血濡れの女王とも呼ばれる有名なカクテルの一つだ。
ウォッカをベースに、適量のトマトジュース、ひとすくいのレモン果汁、スパイスに一滴のウスターソースを加えてシェイクしたロングカクテルだ。
添えたスライスレモンは好みで搾ってくれ。
このカクテルは歴史が長い分、その飲み方も多くある。
特にスパイスは他に例を見ないほど多くの種類がある。今回はコクと味を引き締めるためにウスターソースを加えさせてもらった。
ではゆっくりしていってくれ(´・ω・`)

52 :
おかえりマスター
待ってたよ
早速なんだが、親友から恋人への家庭をほのぼのした感じで

おねがいしますm(__)m

53 :
思ったよりも長くなるかも、悪いがもう少し時間がほしい(´・ω・`)

54 :
なんか下手糞自演SSスレになっちゃったね

55 :
>>52
これはいいリクエスト
期待

56 :
この板で久しぶりに良作に出会った気がする

57 :
下手糞SSしか書いちゃだめなの?
ワシの下手糞SSも投下しちゃおうかな?
NOならNOって言ってくれ。言わないなら書いちゃうぞ。

58 :
NO

59 :
NO PROBLEM

60 :
荒らしはお呼びでない

61 :
ではホモジジイを呼んでるの?

62 :
ホモジジイ=>>61

63 :
>>57
早く書けよホモ野郎

64 :
荒らしに構うなドアホ

65 :
>>63
「書いてくださいませ女王陛下」と言え
夏厨の分際で生意気な
ぷんぷん

66 :
百合スレなのに最近ホモジジイという単語をよく聞くようになった
どうなってんだよこの板は、ちくしょう!!

67 :
荒らしにかまってる奴はけいおん律厨
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1248598726/266

68 :
缶ビール飲んで待ってるよマスター
帰ってきたら一杯頼むわ

69 :
いっぱいほしいのか?
この淫乱ばばあめw

70 :
炭酸が苦手な俺は梅酒だな。
なぁマスター。
酔った女の子ってのは良いもんだと思わないか……

71 :
梅干ババアが梅酒が苦手だってw
そりゃ共食いになるもんなw

72 :
>>70俺も彼と同じのをもらおうか

73 :
>>55-56
>>66
つパナシェ
ビールと硬水のソーダを5:5で注ぎ、レモンを絞ったカクテルだ。
本当に爽やかな喉越しで、食事も進むと思う。
またまだあつい夏、少しでも快適に過ごしてくれることを願う(´・ω・`)

>>68
つザ・プレミアム・モルツ
言わずとしれた日本ビールの最高峰。
ゆっくりしていってくれ(´・ω・`)
>>70
>>72
つ加賀梅酒
全日空のファーストクラスで採用されている梅酒だ。
梅酒独特の甘みがしっかり引き締まっていて、さらに香りも良い。
是非味わってもらいたい梅酒の一つだ(´・ω・`)

長いことレス出来なくてすまなかった(´・ω・`)
本当に申し訳ない。
途中何度も筆が止まったけど、最後まで書けたのはここで待っててくれた人のおかげだ。
ありがとう、礼を言う。
おそらく一気にやると規制にかかるので、前後半分けるが、ご理解いただきたい。

74 :
 その日、高校からの友人の夏希が家に来るというので、春菜は部屋の掃除をしなければならなかった。
普段から別段汚くしているわけではないのだが、何年来の友人となっても、客として迎える礼儀を怠りたくなかったのだ。
 故郷よりも都会じみているこの街の大学に来てから、もう早四ヶ月が過ぎようとしていた。
一人暮らしにも大学生活にも慣れ、期末試験も無事乗り切った。
サークルの合宿が始まるまでの中途半歩な期間だったので、時間の都合はすぐに付いた。
とはいえ、元から二人ともそう忙しい身ではなかったのだが。
 学部こそ異なるものの、同じ高校、同じサークルの彼女たちは、大学から知り合った友人よりもずっと仲が良かった。
夏希から今日は泊まるとの連絡を受けていたので、ベッドの下にある布団を干しておこうとベランダへ出ると、
夏の高い陽の光が優しく春菜を灼いた。
 互いにテストで忙しく、その期間はサークルもなかったので、しばらく会っていない。
今日の夕飯は何を作ろうか、夏希の好きなものは……、と考えて、
これじゃあまるで彼氏を待つ乙女のようだと、春菜は一人苦笑した。
**************************************************
 夏の空が鮮やかな緋から紫へと染まり、宵を迎えようとする頃、真新しい学生用のマンションに一人の女性が訪れていた。
短く切りそろえられた髪は、上品な暗赤色に染められいて、
爛々とした瞳が印象的な整った顔立ちは、どこか野性味のある美しさがある。
しなやかな肢体を薄いTシャツとホットパンツに包んで、健康的な色気を漂わせていた。
女性にしては高めの身長もあって、凛とした雰囲気を持つ彼女は、一目見ただけでも人を惹きつける魅力に富んでいた。
 彼女がその長い指でロビーのインターホンを押すと、「いらっしゃい」と若い女の声が響いて、ロビーのロックされた自動ドアが開いた。
エレベーターで十四階まで上がって、部屋のインターホンを鳴らさずにドアに手を掛けた。
開けようとした扉から、がちゃんっと音がして、ドアが鍵の存在を彼女に告げた。
「む、反抗的なドアだな」
 小さく毒づくと、解錠するする音が聞こえて、開かれたドアから髪の長い女性が現れた。
 少女と爛熟した女の間くらいの、まだどこかあどけなさが残るような印象の娘だ。
「もーまた夏希は。部屋のインターホン押してっていつも言ってるのに」
 来訪者に苦笑いしながら不満を言う。
家主の艶やかな黒の長髪はポニーテールにまとめられて、動く度にふわりと揺れた。
色白の肌にぱっちりした瞳、線の細い華奢な体つき、清楚な雰囲気が大和撫子のイメージを喚ぶかもしれない。

75 :
綺麗と可愛いという印象のちょうど間くらいの印象を与える容姿は、文句なしに美人の部類だった。
 彼女たちが並んで立つと、周囲の空気までが華やぐようだ。
「いやー、鍵を掛けられてると妻に家を追い出された夫の気分になるね」
「誰が妻よ? ていうかここは私の家なんだけど」
「え?」
「いやいやいや! 心底不思議そうな顔で首をかしげないで!」
「まぁ細かいことは気にしない、気にしない」
 彼女を適当に宥めてやり過ごし、夏希は部屋に入った。
黙っていれば耽美的な絵画のような画なのに、二人がしゃべり出すととたんにその雰囲気は崩れてしまうようだった。
「ただいまー」
 陽気な彼女の声が部屋に響く。
「やぁ夏希君? 先ほども申し上げたように、ここは君の家じゃないわけですが、Do you understand?」
「ノー、アイ アム ア ペン。それより春菜、今日のご飯なに?」
「ねぇねぇ夏希、ちょっとは私の話を聞いてくれないかな?」
「えー、英語に付き合ってあげたじゃん。わがままだなぁ春菜は」
「付き合いきれてなかったよ! めちゃめちゃ適当な返事だったよ!」
「わぁ! クリームシチュー!? すごいおいしそう!」
「人の話を聞け!」
 春菜の言葉を完全に無視して、台所の鍋のふたを開けた夏希は、中を見て歓喜の声を上げた。
一方完全にペースを握られている春菜はやや不満顔である。
けれど心の底からうれしそうな夏希の笑顔を見て、どうしても頬が緩んでしまうのだった。
「いやーさすが春菜、一人暮らし始めてからまた一段と料理の腕を上げたね。もういつでも嫁に行ける」
「ありがとう、もっとも嫁ぐ男がいないけどね」
「まぁどうしようもなくなったら私の嫁なりなよ」
「ならないよ。ていうか夏希も誰かの嫁になれそうにないよね」
「私は春菜の夫を目指してるから大丈夫」
「現実逃避するのはやめようか?」
「いや、私は本気だよ。私が幸せにしてやるから、私のものになれ」
「え……くやしいけどちょっと格好いい」
「うっかり惚れそうになるでしょ?」
「んなことはないよ」
 ぱしりと軽く夏希の頭をはたいた春菜は、彼女を台所から追い出した。
まだ他に作るものがあるので、普段料理をしない夏希がいるとかえって手間取るのだ。
「お皿とかだしておいて」
「ん、了解」

76 :
 夏希の短い返事を背にして、やりかけだった調理を再開する。
手早くパスタとサラダを仕上げてリビングに持って行くと、夏希が食器の配膳を済ませたところだった。
「おほー」
 春菜の運んできた料理を見て再び夏希が顔を輝かせた。
「うはー、ミートソースのパスタだ! レトルトじゃないのは何ヶ月ぶりかな」
「夏希もちょっとは自炊すれば良いのに」
「やだ、めんどくさいもん」
 夏希はささっと各自のさらに取り分けると、両手を合わせて着席した。
春菜と向かい合うように座って、もういつでも食べ始められる姿勢だ。
「ん、食べようか」
「いただきまーす!」
 夏希はその言葉遣いとは裏腹に、食事は実に礼儀正しく上品に食べる。
「うまー」なんて呟きながら、幸せそうに頬張る夏希を見ていると、春菜までその幸福が伝染しそうだった。
夏希があっという間に平らげる。
作ったものをおいしそうに残さず笑顔で食べてくれると、不思議と作った本人までうれしくなる。
春菜が夏希とご飯と食べるのが好きな理由はまさにそれだった。
「飲み物もらって良い?」
「ん、冷蔵庫から好きなのをどうぞ」
「春菜何にする?」
「んー……じゃあウーロン茶」
「りょーかい、私もそれにしよう」
 夏希が戻ってきてウーロン茶の入ったグラスを二つ並べた。
「ありがと」
「ところで春菜、冷蔵庫の中にプリンを発見したんだ」
「……あげないよ」
「わかった半分こしよう」
「え? 私が買ったものなのに、決定権は夏希にあるの?」
「うん」
「ねぇ、理不尽だと思うんだ」
「人生ってのはそういうものなのだよ、世界は不条理で出来ている!」
「……ああ、もう好きにすれば良いよ」
「やったぜ!」
 どこかの少年漫画の主人公みたいな喜び方で、うきうきとプリンを取ってくる夏希。
春菜はあきれ顔で苦々しく笑っている。
意気揚々と戻ってきて、今度は春菜の隣に座る。
「うん、おいし」
「私にもちょうだい」

77 :
 夏希が二口ほど食べたところで、春菜が自分の食事を終えてプリンをねだった。
「はい、あ〜ん」
「いやいやいや」
 スプーンの上にのせたプリンを口元まで運ばれ、春菜は冷静に夏希に制止をかけた。
「なんでふつうにスプーンを渡さないの?」
「え、なんか春菜に餌付けしてるみたいで楽しいもん」
「私は雛か何かかな?」
「いや、もっと可愛い」
 真顔でそう言われて、春菜はなんと返すべきか迷った。
「断じて現状一つしかないスプーンを渡したら、このプリン争奪戦の主導権を握られるとか考えてないよ!」
「そこまでプリンが欲しいか!」
「こんな微妙に計算高い自分が嫌いじゃないんだ」
「……もう一つスプーンを持ってこよう」
「あ! ずるい!」
「どっちが!?」
「春菜が」
「そんなことないよ。仮に私がずるいとしても人生は不条理だからしょうがないんでしょ?」
「細かいことはキニスンナ。私は春菜にあ〜んしたいんだよ」
「……もう、しょうがないなぁ」
 しばしの逡巡の後、春菜は差し出されたプリンにパクついた。
柔らかに蕩けて、上品な甘さが口に広がる。
「おいしい?」
「うん。ていうか私がおいしいって噂を聞きつけて、わざわざ買いに行ったのだし」
 なぜか気恥ずかしくなった春菜は、夏希から視線を逸らして拗ねるように呟いた。
「うまー。はいあ〜ん」
「ん」
 再びプリンにパクつく。
しばらくあもあもと二人でプリンを堪能していると、不意に夏希が呟いた。
「……春菜可愛いなぁ」
「はい? なんで突然?」
「いや改めてね。近くでみてもやっぱり美人だなぁって思うよ」
「え、なんかよく分からないけどありがとう」
「大学とかでモテモテなんじゃないの?」
「いや、全然だよ? っていうか男の子苦手だから、あんまり近づいて欲しくないオーラ出してる。
夏希のほうこそ声掛けられるでしょ?」
「うーん……、下半身のことしか考えてなさそうなカスになら」
「あらら、ばっさり」

78 :
「だってなんかさー」
 プリンを食べ終えて、食器を片付けに春菜が席をたった。
「私も気持ちは分かるけどね」
 少し遅れて夏希も食器を運ぶ。
洗うのは夏希の担当なので、春菜は台所の壁にもたれるように立って話を続けた。
「春菜って誰かと付き合ったことあるんだっけ?」
「一回だけね、中学生の頃」
「その人は大丈夫だったんでしょ?」
「うーん、ていうかそれがきっかけで苦手になったというか。
やっぱりほら、年頃の男の子だからいろいろヤリたいでしょ?」
「え!? じゃあ春菜って経験済み!?」
 微妙に加えられた言葉のニュアンスをくみ取った夏希は、驚いて振り返った。
「いや、求められて、どうしてもそういうのが受け入れられなくてね。
その後のごたごたもあって男の子は苦手なんだ」
「そっか。私は最初から男と付き合うのが考えられないからな」
 安心するようにそう呟くと、再び食器洗いに戻る。
「だから今まで一回も付き合ったことないんだ。あんなに告白されてるのに」
「友達としてなら大丈夫なんだけどねー。それ以上は考えられないな」
「ほぇー、なんか高校時代十八人斬りの猛者がいうと重みが違うね」
「いや、そんなに告白されてないよ。せいぜい七、八回くらい」
「それでも多いけどね」
「いや、でも男の中だと春菜はすごい人気だったらしいよ」
「うそ。私せいぜい二回位しかコクられてないよ?」
「それは君が男を遠ざけてたからでしょ」
「ああ、そうかも」
 春菜がぽんっと手を打って納得した。
大体の食器を片付けた夏希が、食器を丁寧に拭いては整理して食器棚へ戻していく。
「ねぇ夏希、話は変わるんだけどさ」
「うん?」
「もしかして好きな人とか出来た?」
「っえ!? なんで?」
「いや、もう三年以上付き合ってるのに今まで全然恋愛の話とかしなかったのに、今日突然話題に出したから、もしかしてと思って。
大学の男の子ってなんかほら、積極的でしょ?
夏希の学部は男の子も多いし。だから夏希が好きになる人がいてもおかしくはないじゃん?」
「好きな人ねぇ……いや、うん……」
「夏希にしては珍しく煮え切らない返事ね」
「一応ね、そういう人はいるんだよ」
「え? ええええ! 誰!?」

79 :
「秘密」
「えー。けち」
「それにその人と関係がどうこうなることはないだろうし」
「え? なんで?」
「そういう人ってことだよ」
 全ての洗い物を終えて、手を濯いだ夏希は春菜に向き直った。
「ご飯のお礼に梅酒を持ってきたんだ。飲まない?」
「良いねー! 飲む飲む」
「あ、でもその前にお風呂に入っておこうかな」
「そうだね、先に夏希入る?」
「ん、じゃあお先に頂こうかな」
 そう言うと夏希は、荷物から衣類とタオルを取り出して風呂場へ向かった。
 しゅるりしゅるりと衣擦れの音が小さく響く部屋で、春菜はぼんやりと椅子に座って虚空を見つめていた。
頭の中で、先ほど聞き流した言葉が残響していた。
「……そうか、もういるのか……」
 虚ろな囁きが、春菜の知らない間にこぼれ落ちた。
目を伏せると、いつもと変わらない冷たい床が映った。
ざあっと水が流れる音が微かに聞こえる。
いつもの静寂に、紛れる異質。
夏希との距離が無意味に遠く感じた。
**************************************************
 一通り体を洗い終えた夏希は、湯船に身を沈めて物思いに耽っていた。
目を閉じると、いつも思い浮かべる彼女の姿が浮かび上がる。
今日は今まで会っていたので、その姿は普段にもましてより鮮明に描かれた。
 春菜のことが好きだった。
どうしようもないくらい好きだった。
初めて出会ったときの印象を未だに夏希は忘れていない。
可憐という言葉はきっとこの子ような人間のためにあるのだと、心の底からそう思った。
それは妬ましさをたやすく通り越し、憧れに変わっていった。
スポーツをやっていることもあって、短い髪に筋肉質な体つき、男勝りな性格の夏希とは真反対の存在。
自分の中にある理想の女の子像。
それはまさしく一ノ瀬春菜の姿をしていた。


80 :
 二人の関係が始まったのは、特に部活動が一緒になってからだった。
夏希は選手で、春菜はマネージャーだった。
共にする時間が増えていくに連れ、春菜への憧れは加速度的に募っていった。
春菜の魅力は、うっかりしていれば気付かないようなささやかな気遣いや、包み込むようなふわりとした優しさだった。
見落としてしまいそうな自然なその振る舞いに気付いた時、夏希の想いは憧憬から徐々に色を変えていた。
 春菜に魅了されたのは、なにも夏希だけではなかった。
もちろんそれが恋愛感情になった者は少なかっただろうが、チームメイトや、クラスの女の子も多くの人が惹かれていた。
容姿だけに惹かれた男子も多くいたが、男子に好意を向けることのない春菜の魅力としては、
それはほんの表面的なものでしかなく、本質的に惹かれていた訳ではなかった。
だからそんな男子達は春菜を囲む女子に疎まれ、物理的にも近づくことはほとんど出来なかった。
夏希もそんな男を軽蔑する側であり、ある時はその筆頭ですらあった。
ある時とはつまり、かねてからの想いが恋だと気付いた時だった。
それはちょうど高校の夏休みを終えた頃だった。
 けれど、その想いは長くは続かなかった。
二人は同性だった。たったそれだけのことが、その想いを変質させたのだ。
好きだと言えるはずがないと夏希は唇を噛んだ。
恋愛感情など持って良いはずがないと。
 いままで禄に恋愛経験などしたことのない夏希は、最初自分のその気持ちが恋だと気付かなかった。
あるいは気付かないふりをしていたのかもしれないと、今は思っている。
けれどそれが恋愛感情だと気付いてしまった瞬間、それは別のものになった。
友達、もしくはそれ以上の間柄で積み重ねてきた時間を、一瞬で無に返すかもしれない。
想いを告げることは男女の中ですらそうなのだ。
まして女の子同士、夏希にはそんなことをする勇気などなかった。
ただ好きだという気持ちは出口のない暗闇を彷徨い、やがてどろどろした何かになった。
 今までの気持ちの軌跡をたどり返して、夏希はため息をついた。
そのまま口までお湯につけると、唇からぶくぶくと泡沫があがっては消えていった。
刹那の内に繰り返される無意味な生成と消失は、夏希の想いに似ていた。
好きという気持ちは思い出すように現れ、そして留まることを許されずに消えていく。
静かな水面にさざ波だけを残して。
そんな僅かな心の揺れが、どうしようもなく夏希を切なくさせるのだった。


81 :
 好きな人はいるの、と聞かれた時、夏希の心は揺れた。
一瞬全てを洗いざらい吐いてしまいたくなった。
春菜のことが好きだと。ずっと好きだったと。
けれどその衝動を数瞬の後に押さえ込んで、夏希は取り繕った。
どうせ実らない想いなら、散らせることもなく眺めていたい。
生きることをやめてなおその姿を崩さぬ、標本や剥製のように。
それは生きている姿とはまるで遠く、完全なる別物なのに、ひどく美しいのだ。
屍は薄汚く汚れ、朽ちていく。
けれどそれならばいつまでも綺麗なままで眺めていられるではないか。
だから夏希はその綺麗な徒花を、剥製にすることを選んだのだ。
それはもはや本質的には花ではないと知りながら。
 けれど、時折恐ろしくなる。
いつかはそれも崩れてしまうことを知っているから。
今はまだ、春菜が想いを寄せる人はいない。
けれど、それがいつまでも続く保証などどこにもないのだ。
まして彼女は、一度は男に気を奪われたことがあるのだから。
もしもその時が来た時、自分がどうなってしまうのか、夏希は想像も出来ずに焦燥した。
それほどまでに好きだというのに、それを自覚しながらなお、やはり口に出すことは出来なかった。
受け入れられなかったとき、あまりにも失うものが多すぎる。
 思考がループしていることに気が付いて、夏希は湯船からあがった。
今まで何度も考えてきたことに、また行き着いてしまった。
考える度にこんな不毛なことはやめようと思うのに。
そう思って、ふと夏希はふと動きを止めた。
不毛など言うなら、春菜への想いを持つことこそがまさしくそうなのだ。
けれどその不毛な行いをやめることを、夏希はやめられない。
やめる気すらない。
揺れる湯船の水面を見つめ、夏希は力なく笑った。
**************************************************
 部屋のテーブルの上には、空になった梅酒の瓶と、いくつかのリキュールが置かれていた。
 比較的早いペースでアルコールを煽っていた春菜は顔はすっかり上気し、とろんとした瞳でベッドに座っていた。
風呂上がりのせいか、微かに乱れたパジャマのせいか、酔いのせいか、その姿はどことなく艶めいていた。

82 :
夏希は思わず見入ってしまいそうになって視線を外した。
比較的ゆっくりとしたペースで飲んでいた夏希は、理性がしっかりと残っていた。
もっとも春菜と飲むときにはいつもその量をセーブしている。
春菜への気持ちがうっかり零れてしまうことへの恐怖が、夏希に強い自制をかけていた。
「夏希ー、カシスと炭酸とって」
「もうダメ。春菜だいぶ飲んでるでしょ?」
「だって今日はなんか酔いたい気分なんだもん。テストも終わったしさ」
「明日頭いたくなるよ」
「うー」
 子供っぽく反抗のうなりを上げて、春菜はぽてんと倒れるようにベッドに身を横にした。
夏希が水の入ったコップをもって、春菜の隣に座る。
「はい、お水」
「ありがと」
 くいっ春菜が身を起こすと、夏希と横に並ぶ形になる。
渡されたコップを少し危なげな手付きで受け取ると、一気に飲み干した。
「春菜すごい酔ってない?」
「うん、ちょっと」
 春菜はゆるりとした笑いを浮かべて、夏希に寄りかかった。
春菜より十センチ以上背の高い夏希の肩に頭を乗せる。
右半身に感じる春菜の体温と独特の良い匂いが、夏希の鼓動を早めていく。
「春菜暑い」
「夏だからね」
「離れる気はないんだね」
「うん、夏希の体って寄りかかりやすくって好きだよ」
「うん……なんか微妙な褒め言葉ありがとう」
「へへー、どういたしまして」
 何故か誇らしげに胸を張る春菜。
一瞬肩から浮いた頭が今度は夏希の膝に着地する。
春菜の甘えるような仕草に、夏希は困惑しながらも、柔らかくその頭を撫でた。
絹のような手を滑るさわり心地の髪を梳くと、春菜への愛しさが募っていくようだった。
「夏希ー」
「ん?」
「さっき言ってた好きな人って誰?」
「またその話?」
「だって気になるもん」
「なんで?」
「だってあんなに男に恋愛感情抱かないって公言してた夏希の心を奪った男だよ? 気にもなるよ」
「ああ、なるほどね」

83 :
「教えてよー。いいじゃん、三年以上の付き合いがあるんだからさ」
「んー……いや、やだ」
 夏希がいたずらっぽく笑った。
「なーんーでー」
 夏希の膝の上で春菜が抗議するようにじたばたする。
「そちには教えてやらん!」
「ぬぅ、そなたワシに逆らう気か!」
 夏希が芝居がかった口調でしゃべると、自然に春菜が応じた。
和やかな空気を自然に作る流れが、重ねてきた時間の長さを物語るようだ。
 夏希の膝の上でくるりと向きを変えると、まっすぐ春菜は夏希と向き合った。
「もしさ」
「ん?」
「もしも、夏希の好きな人が好きって言ってきたらどうするの?」
「それはないよ」
「だから、もしもの話」
「んー……考えられないけど……、そうだなぁ。うれしいかな」
「うれしいだけ? それでもどうにもならないの?」
 夏希が上に向けた視線の外で、春菜の表情に期待が滲む。
「どうにもって?」
「付き合ったりとかはしないの?」
「いや、相手が好きだったら付き合いたいよ」
「……そっか。そうだよね」
 僅かに垣間見えた落胆の色を読み取って、夏希は訝しげに春菜を見下ろした。
「春菜?」
「ん? なに?」
「なんか残念そうな顔しなかった?」
「違うよ。ちょっと感慨深いっていうか。だって夏希と恋愛ってなんか繋がらなくて」
「ひどいな。どうせ私は色気のない女だよ」
「そういうことじゃなくて。なんて言うんだろうなー。
男の子と付き合ってる夏希を想像できなかったっていうか。
しかもなんかその状況悔しいし」
「悔しい?」
「うん。夏希を取られたみたいっていうか」
 春菜が言い淀んで、目を伏せる。
夏希はふっと小さく息を吐いた。
さっきから何度春菜が好きと口に出そうと思ったか分からない。
けれど、それは出来ないのだった。
本当は好きなのは男なんかじゃなく、女なんどけどね、と冗談っぽく言ってやりたかった。
そうしたらあるいは春菜は自分の気持ちに気が付くかもしれない。
けれど、逆にそれは遠ざけることにもなりかねない。

84 :
同性愛者なんて一般の人にはそう簡単に受け入れられるものではないはずだ。
もしそれを言ってしまったら、あるいは春菜との距離が遠くなってしまうかもしれない。
そんなことで変わらないかもしれない。
だけど、言わなければ二人はずっと今までの仲でいられる。
そう思うと、やはり女の子が好きだとは口に出せないかった。
そして同時に、そんな自分が臆病で、弱くて、キライだった。
 夏希は膝の上に感じる暖かさを慈しむように、そっと春菜の頭を撫でた。
酔いが回って眠ってしまったのか、春菜は目を閉じて静かに呼吸している。
すーすーという穏やかな旋律が、夏希を優しく包んだ。
夜の帳に静けさが融けて、夏希を心地よい微睡みに誘う。
気付けば春菜に覆い被さるように夏希も寝入ってしまっていた。
**************************************************
 夏希が目を開けると目の前には春菜の顔があった。
いつでも口付けられそうな近さに、思わず顔を上げて距離を置く。
春菜を膝の上にしたまま寝てしまった状況を思い出すと、少しずつ頭の整理がついてきた。
「ありゃ、起きちゃった」
 夏希よりも早く起きていたらしい春菜が柔らかく微笑んだ。
「今何時?」
「午前二時くらい」
「ってことは三時間近く寝てたのか」
「そだね。可愛い寝顔だったよ」
 なんと返して良いか分からなくなって、夏希は困惑した。
春菜がむくりと起き上がると、脚の感覚が戻ってきて痺れを感じる。
「あぅ」
「どうしたの?」
「春菜が乗ってたところが今更痺れてきた」
「あ、ごめん」
「いいよ」
 愛しい時間だったしね、という言葉は飲み込んだ。
それがなぜだか少し切なくなって、春菜に気付かれないように顔を背けた。
 それを知ってか知らずか、夏希の角で、痺れている脚をツンっと押した。
「に”ゃっ!」
「あははは、にゃって言った。にゃって」
「ちょっとぉ」
「えい!」
「んんっ!」
 再び脚を押されて、押しした声があがる。

85 :
「どうしよう、夏希が面白い」
「いい加減にしろ」
 面白がっている春菜の頭に夏希が加減をつけてチョップをすると、「いてっ」と陽気な声が返ってきた。
「ごめん、なんか面白かったからうっかり」
「もー」
「ていうかちゃっかり」
「ちゃっかりか! 反省しろ」
「はーい」
 春菜はひとしきりころころ笑うと、夏希に寄りかかった。
「ねぇ夏希」
「ん?」
「私こういう時間好きだよ」
「……うん、私も」
「なんか夏希といると安心するんだ。居場所があるって感じで。
大学からの友達じゃ、こんな時間ないからさ」
「うん」
「…………」
「……ん?」
 春菜が何か小さく呟いた気がしたので、夏希は耳を澄まして続きを促そうとした。
「……夏希、一つわがままを聞いてほしいの」
「ほう。どんな?」
 春菜がわがままなんて珍しいと思いながら、夏希は好奇心に任せて耳を傾けた。
「今から話すことね、後で、忘れてって言ったら、全部忘れてほしい」
「うん、わかった」
 急に春菜の声のトーンが変わった。
言葉の端々から、どこか追い込まれたような真剣さが滲んでいて、夏希は知らずに身構えた。
「こんなことずるいって分かってるんだけどね。
今から話すことを言うべきなのか、夏希が寝てる間ずっと考えてたんだ。
本当は話さない方が良いのかもしれない。だから、もしも受け入れられないことだったら忘れてほしい」
 夏希にはさっぱり話が見えないのだが、春菜の声があまりに真剣だったので口をはさめずに黙って聞いていた。
「さっき好きな人がいるって言ってたじゃん。
その人がどんな人か私は知らないけど、でももし好きって言われたら付き合うんだよね?」
「……うん、多分」
「それを聞いて私はすごく焦ったんだよ」
 ふわりと沈黙が降りた。夏希は言葉を失い、寄りかかっている春菜はわずかに逡巡していた。

86 :
「……私は夏希のこと好きだから」
「……は?」
「うん、ごめん。気持ち悪いよね。女同士なのに。
本当はずっと好きだった。けど言えなくて。
でも夏希には好きな人なんていないと思ってたから、いつか言おうと思ったまま、ずっとそのままで。
断れるのが怖かったし。夏希は好きだけど、大事な友達でもあるし。
でも言わないまま、夏希を誰かに取られるのは嫌だから、」
「ちょ、ちょっと待って……!」
「うん」
「……えっと……? 私のことが好き?」
「うん」
「いつから?」
「いつからかはわかんない。最初から格好良い子だなとは思ってたけど。
いつのまにか。だって夏希って頭良いし運動も出来るし、美人だし優しいし」
「美人でもないし、そう優しくもないと思うけど。
え……? 私のことを好き? 春菜が? 好きって……そのつまり、そういう意味で?」
「そうだよ。
好きな人がいるって分かった途端、こんなこと言うなんて最低だって自分でも分かってる。
夏希の好きな男の子がどんな人かも知らないけど、でも黙ってまま取られちゃったら絶対後悔するし。
それで、もしも少しでも可能性があるなら、ゆっくり考えてくれたらって思って。
ダメなら……虫の良すぎる話だけど、全部忘れて……」
 春菜に真剣な瞳で見つめられる。
思考回路がショートしているようで、夏希はしばらく何も考えられなかった。
黙って見つめる春菜の表情に徐々に失意の色が濃くなり始めた時、
ようやく夏希は自分の頭がまともに動き始めているのを感じた。
「春菜……」
「うん」
「あの、なんか頭が混乱してて、言いたいことがいっぱいあるのにさっぱり伝えられないんだけど。
私も春菜のこと好きだよ。
……うん、その、友達としてだけじゃなくて。ちゃんと好き」
「本当に?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「……本当に?」
「うん。しつこいわ」
 夏希は再び春菜の頭を軽くチョップした。「いたっ」と戸惑ったように、すこしだけ陽気な声があがる。

87 :
「だって! 信じられない……」
「私もだよ」
「……でも良いの? 夏希の好きな人は」
「それ君」
「……嘘」
「本当」
「いつから?」
「ずっと前から」
「……もっと早く言えば良かった」
「だね。私もだ」
「どうしよう。うれしすぎてどう喜んだらいいのかわかんない」
 目の前で真剣に困っている春菜の様子が可笑しくて、夏希は思わず笑ってしまった。
手をとって春菜の身を寄せ、不意をつくように抱きしめた。
「私もうれしいから抱いてみた」
「……夏希、あったかい。安心する」
「そう?」
「うん」
 春菜の心の底からうれしそうな顔を間近で見せられ、なぜだか恥ずかしくなって視線を逸らした。
春菜の吐息が、首筋を撫でる。
「夏希、こっち向いて」
 耳元で囁かれた言葉に、ゾクゾクする何かを感じて夏希は小さく身を震わせた。
向き直ると、さっきよりも春菜が近かった。
「目、閉じて」
 言われるままに目を閉じた瞬間、唇に柔らかな感触。
濡れていて、少しだけひんやりしていた。
唇が再び外気に触れて目を開けると、春菜が満足そうに微笑んでいた。
「夏希、私と付き合って」
 どこか緊張したような声音に、ふっと夏希は笑った。
「……なんだか今更って感じ。そんなのOKに決まってる」
 口では冷静に言っていても、すこし恥ずかしくて、頬がちょっとだけ熱を持った。
「やったぁ!」
「うわっ」
 春菜に抱きつかれてベッドに押し倒された。
そのままきつく抱きしめられる。
「春菜、少し苦しいよ」
「だってうれしいんだもん」
 ゆっくり抱きしめた腕を離して、春菜は夏希の上に覆い被さるように上に乗る。

88 :
押し倒された形の夏希が見上げると、春菜が僅かに嗜虐的な笑みを浮かべていた。
そのまま、春菜に口付けられる。
今度は自然に目を閉じた。
二、三度、啄むようにキスをされて、夏希の鼓動が早まっていく。
春菜の長い髪が、くすぐるようにうなじのあたりを擦る。
再び口付け、今度は長く。
緊張して閉じた唇をほぐすように、生暖かい舌が入れられた。
驚いて目を開きそうになる。
おっかなびっくり舌を出すと、春菜の舌に絡め取られた。
舌を吸われて、春菜の口内で弄ばれる。
喘ぐような声がかすかに漏れた。
舌を自由にされると、夏希の口内に春菜の舌が侵入した。
歯茎や、舌の裏側を丹念に愛撫されても、どうして良いか分からずにただ困惑したまま受け入れた。
ようやく解放されると、艶めいた吐息が零れる。
「ごめんね、ちょっと苦しかった?」
「ううん、平気」
「夏希、大好きだよ」
「……うん」
 面と向かって言われると照れた。悔しくなって意地悪なことを聞いてみる。
「こんなキスをしてたの?」
「男の子と? まさか。もう回数でも時間でも夏希とした方が多いよ」
「え、それはちょっと付き合ってた彼かわいそう」
「もー! 今はそんな話いいの!」
「ごめん、でもそれが聞けてちょっとうれしいかも。
あ、そういえばじゃああんなキスは初めてなんだ」
「うん、本能に任せてやりました」
 にやりと春菜が笑う。つられて夏希も笑ってしまった。
「これで夏希は私のものだ」
 あまりに春菜が充足した表情で微笑むので、なぜだか悔しくてすこし勢いをつけてチョップした。
いつものように「いてっ」と陽気な声が返ってくる。
「ねぇ春菜」
「ん〜?」
「大好きだよ」
 春菜の頬が紅潮する。さっきのキスのお返しだと、夏希はいたずらっぽく笑った。


89 :
時間的に前後半に分けたけど見た目は変わらなかった……

長くなったわりにこんな出来で重ねて申し訳ない(´・ω・`)
酔った女性はよりかわいらしいと思う。

90 :
おかえりマスター。そしてGJ!
うまい酒が飲めそうだ。こりゃモルツで乾杯だな。

ブログ立ち上げたら教えてくれよ。

91 :
マスター、あんた最高だよ。

92 :
マスター…!おかえり、そしてGJ!
しばらく見なかったからどうしたのかと思った

93 :

濃厚な糸引き
http://w11.mocovideo.jp/movie_detail.php?KEY=T8YOWdWxqpM
http://w10.mocovideo.jp/search.php?KEY=%91%C1&MODE=TAG&KIND=ALL&x=0&y=0

94 :
マスター、初めから全部読んだけどすごすぎ!
これからも読まして頂くのでよろしくです(´∀`)

95 :
>>92>>94
つ「ネバダ」
やぁどうもありがとう(´・ω・`)
ゆるりとすごしてくれ
宵の口を迎えた街をあるいていると、夏のとは思えないくらい涼やかな風を感じる。
今年は冷夏だし、秋の足音が例年より早聞こえてきそうだ。
みなさんも明け方の冷え込みには注意してくれ。

96 :
お互いよく思ってなかったライバル?同士がある出来事をきっかけにひかれあうってのは…

97 :
急に夏が終わってしまいましたね。
季節の変わり目、インフルエンザも流行っていますので、マスターをはじめ皆さんご自愛を。

98 :
ノンケってやっぱり残酷だね。散々思わせ振りな事言っておいて、実は彼氏がいました、なんて。
だから恋愛は暫くお休み。これからはただ自分の夢を追いかけて生きるんだ。誰にも頼らないでも生きていけるように。
ねぇ、マスター。
明日からちゃんと未来へ進むために、今日だけは酔いたい気分なんだ。
何か作って頂けますか?

99 :
>>97
つ緑茶梅酒
京都の宇治茶の葉をつけ込んだ梅酒だ。
もしかしたら菌効果もあるかも?(´・ω・`)
優しいあなたもご自愛を。
>>98
つアイアン&スチール
アンプル状に小分けされた苦味酒《ウンダーベルグ》とドルンカートを使った健胃効果の高いカクテルだ。
 北海に臨むノルデンの街、そこに本社を置くドルンカート社の看板商品、ドルンカートは二度の蒸留を行い、
さらにその後にジェニパー・ベリー(ヒノキ科の常緑樹の果実)で風味付けされるジンの一つ。
 ウンダーベルクは1846年にフーベルトウンダーベルクによって創造された薬草酒で、
43カ国から50種近くのハーブとスパイスを取り寄せ、高濃度のアルコールで抽出、熟成させている。

 なにやらつらいことがあったようだね(´・ω・`)
このカクテルはウンダーベルクを用いている通り、薬酒の一つとも言える。
食事の前に一気に飲み干して欲しい。アルコールはきついから良く酔えると思う。
もしかしたら食事がのどを通らないかも知れないけど、食べないとダメだ。
 自分の夢を追いかけて、誰にも頼らずに孤独に頑張れ。
そうして頑張って頑張って走り続けていれば、いつか自分がいろんな人に支えられていることに気が付くと思う。
だけど今は誰にも頼らない気概で頑張れ。私は応援している。
またいつでもおいでよ。

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