2013年10レズ・百合萌え702: ジャンプとかサンデーとかマガンジンなどで百合 (614) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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ジャンプとかサンデーとかマガンジンなどで百合


1 :2007/03/01 〜 最終レス :2011/07/15
ジャンプ「サンデーとかwww発行部数少な杉wwwwwwwザコスwwwwwwwwwwww」
サンデー「そ、そんな事いわないでよ・・・ぉ」
ジャンプ「うるせーよwwお前なんていらねwwww」
マガジン「お前またサンデーちゃんいじめてんじゃねーぞっ!」
ジャンプ「うはwwwwwマガジンきやがったwwwwwwww発行部数俺より少ないヤツは黙ってろよwwwwwwwwwwwwww」
マガジン「ほらサンデーちゃん、あっち行こう」
ジャンプ「聞こえねーのかwwww敬語使えよwwwwwwwwwwww」
マガジン「あっちにガンガンちゃんもいるから、一緒に遊ぼう」
サンデー「でも、ジャンプちゃんが・・・」
ジャンプ「おいwwww無視すんじゃねーよ」
マガジン「ほら、いいからいいから」
サンデー「あ、ちょっと・・・マガジンちゃん?」
ジャンプ「おいコラ待てよwwwwwwww無視すんなっつって・・・
マガジン「ウゼーんだよついてくんな!」
ジャンプ「・・・・・・無視、すんな・・・って、サンデーまで・・・」

2 :
ジャンプ「マジでいくなよ・・・」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャンプ「サンデーの、バカ・・・」
???「・・・ジャンプちゃん?」
ジャンプ「あぅ・・・・・・?」
サンデー「ジャンプちゃん、ジャンプちゃんも向こうで一緒に遊ぼ? マガジンちゃんもいいよっていってくれたから」
ジャンプ「な、なんだよいきなり・・・?」
サンデー「マガジンちゃんも、さっきはちょっと気が立ってただけみたいだから。私は全然ジャンプ君は悪くないと思うよ?」
ジャンプ「な、は・・・・・・あ、ありが・・・・・・」
サンデー「???」
ジャンプ「べっ別にマガジンなんかと遊びたくなんかないもんね」
ダッ
サンデー「・・・・・・そんな、走って逃げなくてもいいのに・・・」

3 :
マガジン「ジャンプは、いないのか・・・?」
サンデー「え・・・うん、なんか用事があるみたいで帰っちゃったんだ・・・ あはは・・・・・・」
ガンガン「あらあら、それは残念。」
サンデー「うん・・・(なんかあたしから逃げるみたいに・・・)」
マガジン「まあそれなら仕方ないな、なら私達だけで遊ぼうか それでいい、サンデーちゃん?」
サンデー「・・・うん、そうだね」

 ・・・・・・せっかくだから、ジャンプちゃんと一緒に遊びたかったのにな・・・



4 :
名前: 名無しさん@秘密の花園
E-mail:
内容:
次の日
サンデー「ジャンプちゃん、いるー?」
ガチャ
ジャンプ「・・・・あん? なんのようだよサンデー?」
サンデー「はらジャンプちゃん、昨日は先に帰ちゃったからさ 今日は一緒に遊ぼ、ね?」
ジャンプ「は? いきなり何言い出すかと思えば・・・(恥)」
サンデー「ね、いいでしょ?」
ジャンプ「うるせーなwwww仕方ねーからちょっと待・・・・・・
マガジン「ああサンデーちゃん、ここにいたんだ」
サンデー「え?マガジンちゃん!?」

5 :
マガンジンw

6 :
マガンジン?

7 :
スレタイに騙されたwwww

8 :
久々にワロタ
こういう基本をおさえたスレがどんどん立つのがこれからの百合板なんだよな
最近は見る人を選ぶスレばかりで困る

9 :
こういうのばかりの方がもっと困る
スレの細分化は当然のことだろうが

10 :
おもろいんだがジャンプちゃんが、ぜんぜん男の子なのがなぁ。
あといつも屋上にいるような感じで、チャンピオンちゃんもよろしく。

11 :
こんな職人芸的なスレはマジで久しぶりだぜw

12 :
wktk

13 :
百合なのか?

14 :
wktkさせてごめんなさい、こんな糞スレ立ててごめんなさい
本当はVIPに立てようと思ったのに間違えて18禁のこの場所でこんな糞スレ立てちゃいました
エロはないです
もうぬほど恥ずかしくていままでこのスレを覗く事ができませんでした
マジでごめんなさい、全世界に向ってごめんなさい
何方か好きなようにこのスレを活用してください、それだけが私の望みです

15 :
誰か書き込めよ
住人がいれば糞スレも良スレになるんだぜ?

16 :
糞スレは所詮糞スレ

17 :
くそスレあげ

18 :
正直、過疎りまくってる板でこういう突発スレはよくないよね
あげ

19 :
俺の中でのイメージ

サンデー→優しい、僕っ子だったらなお良し
マガジン→クールビューティー、男装麗人って感じ
チャンピオン→空気、いるのかいないのか分からない
ガンガン→ほんわかお姉さん、腹黒?
花とゆめ→お姉さま、美人
(女性向けのは他知らない)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

百合姫→いわゆる痛い女、一人称は俺
ジャンプ→DQN

誰かガチでレズなキャラが欲しい

20 :
せっかく俺が書き込んだのに人がいないのであげます

21 :

 クッキー =そこそこになんでも出来てそこそこにモテる普通の女の子だったが、
         あるときを境にヴィヴィアンウエストウッドとかミルクとかしか着ない
         個性的な子になってしまった。孤独。鋭敏。
         成績が悪いが、国語だけは優秀。意外なセンスのよさを感じさせる。
         童顔だが化粧は濃い。香水はアングロマニアでタバコはブラスト。
         かつて仲の良かったマーガレットからはガチで心配されている。
プリンセス=一見大人しいが、実は独自の世界観を持っている子。
        感受性が豊か、言語感覚が鋭い、世界史などの知識が豊富、
        反面現実味が乏しい。上っ面がやさしいので気づきにくいが、
        実はセカイ系カルチャーに染まりきっている。
LaLa、はなゆめ=ガーリーで夢見がち、恋に恋する仲良し女の子二人組み。
           ほわほわした言動から奇矯に思われがちだが、
           すこし夢見がちなだけで、センスじたいは一般的。
           ホストの物まねをやったり吸血鬼ごっこをしたりバイオリンを弾いたり
           ピアニストになりきったり妖精のまねっこをしたりと、
           いわゆる「ごっこ遊び」が好きなふたり。
           ツモリ、チャオパニ、ハウエル好き。好きな雑誌はsoupとspring。
あすか、ゼロサム=ボクっ子とオレっ子の二人組み。
             英国少年をイメージしたあすかとゴルチェ信者のゼロサム、
             双方受け攻め成り立っているが二人ともTSぶっている上に
             自己陶酔しきった破滅的な恋愛に走りたがるために
             ここの板の住人受けは悪いかもしれない。
             双方KERAっ子。たまにピンナップに載る。

22 :
糞みたいな妄想上げんなチンが
しかも百合姫が痛い子とは何事だカスが

23 :
落ち着いて百合子!
貴女は貴女の道を行けばいいのよ

24 :
百合姫なんて雑誌はどう考えても痛いだろ、BL系と同じようなもんだ

25 :
わざわざここで自虐ネタにもってく意味が分からん

26 :
百合子可愛いよ(;´Д`)ハァハァ

27 :
>>21
なんか納得できるキャラだ
きっと少コミはヤリマン

28 :
ヤリマンいいな、相手の性別によるけど

29 :
このスレ作った職人さんにまた来て欲しい
と、期待age
チャンピオンちゃんはきまオレの鮎川みたいなだといいな

30 :
コロコロ→小学生 ロリっ娘

31 :
コロコロちゃんはサンデーちゃんの妹?

32 :
ガンガンとゼロサムは仲の良い従姉妹
でもブレイドは…

33 :
>>31
そういや、お母さんが一緒だったねw

34 :
サンデーちゃんのようなお姉ちゃん、欲しいなあ…

35 :
りぼんとかマーガレットとか其処ら辺のも誰か性格付けして欲しい

36 :
電撃姉妹

37 :
一番ぶっ飛んだ性格っぽいなw>電撃姉妹達

38 :
正反対な性格のエースちゃんとASUKAちゃん

39 :
>>29
一度あんな発言しちゃったらくるに来れないだろうね
と思いつつあげてみる

40 :
なかよしちゃん、子供だ子供だと思ってたらいつの間にか大人になって…
昔はかわいかったのに、今時の子になってしまたよ…

41 :
なんなんだここは?

42 :
ジャンプちゃん「スーパージャンプ姉さん…ウルトラジャンプ姉さん…
ヤングジャンプ姉さんまで…」

43 :
正直エースちゃんは萌える気がする

44 :
ブレイドちゃんは皆の嫌われ者

45 :
ハイパーコロコロちゃんは存在を秘匿されたミステリアスっ娘

46 :
続きを期待age

47 :
そろそろこのスレでもっとも可愛らしいサンデーちゃんについて語ろうか

48 :
ボンボンちゃんが・・・

49 :
ボンボン=エロ

50 :
チャンピオンRED……なんとなく独特で周りから避けられてる感じ。だけど実際話すととてもいい子。故に仲のいい人とそうでない人との差が激しい。みたいな感じがする。
          口癖は「できる、できるのだ!」

51 :
ゴング「なーに見てんだよ!」

52 :
うふ〜ん

53 :
なんの雑誌だかわからないのがあるから困る

54 :
ブレイドちゃんはなんだかんだ言って可愛い気がする
つーか擬人化キャラで関連のニュースや事件なんかをやらせたら結構いいと思うんだが
誰か試しにやってみて

55 :
誰か書いて(´・ω・`)
ヤンマガとかヤンサンとかヤンジャンとかヤンアニとかヤンガンは?

56 :
ヤンガンの面白さは異常です

57 :
ジャンプとサンデーって家族なんでね?
上のやつ近親相姦じゃね?
萌えね?

58 :
そうなんだよ
従姉妹っつーかこのスレのせいで妄想ばっかりふくらんでどうにもならん。本家筋がどうとか二人の家の確執がうんちゃらかんちゃら・・・
住人にキバヤシさんはいないのか!

59 :
ボンボンに妹? ができるらしい

60 :
この秋登場のジャンプスクエアは、ジャンプちゃんの妹?
本家に確執ある異母姉妹とかでもいいな。・・・だれか性格付けよろ

61 :
一ツ橋グループ?ナニソレおいしいの?
な俺がヘタレながら日々の妄想をヘタレ小説風味にしたのを
ここに書き込んじゃったら住人さん的にはどうですか
スペック→
 ・一ツ橋グループ?ナニソレ(ry
 ・雑誌は三大少年誌以外あまり知りません。ごめんなさい
 ・本誌はジャンプを黄金期に一時期購入。現在は喫茶店にあったら読みます
  サンデーはほぼアニメ
  マガジンは喫茶店にあったら絶望とねぎまと時間あるときに新約。デスノートも読めたらもうけた気分

以上です。
すべてがこのスレの意見とウィキペディア頼りです。知識偏ってるから偏見に満ちてるかと思われます
お返事もらえたら幸いです

62 :
是非よろ。待ってる



63 :
期待age

64 :
お返事どうもありがとう。ageて下さった方も感謝です。
もうちょっと反応を見ていてから、反対意見が見受けられない時はお言葉に甘えさせてくださいね^^
それと、スレの立て主さんの文章をリスペクトとして組み込んじゃったんですがやっぱマズいスかね;
転載(?)って事になるのでしょうか?
でも・・・!でもこの3人娘の会話が俺の妄想のすべてのはじまりなんだあああっ
2ちゃんにレス以外載せるのはじめてで;
マズかったら指摘、罵倒、なんでもくださいまし〜;;;

65 :
正直スレタイに騙されてきただけのものですが、楽しみにしときます

66 :
まず最初に謝罪させてください
文章ってなんて難しいんでしょう
せめて他人が読んで分かるような文章をうんうん唸ってアレコレ試しましたが・・・
無理でした!
典型的な「例のアレ」しか出来ませんでした
スレ汚してしまってすいません
最後にスレの立て主さん、会話パクって申し訳ありません
スレタイまでをもパクリましたが、直した方がいいかと勝手に感じた部分だけ手を加えさせていただきました
もうスレを覗く事がありそうにないご様子でしたが、もしも目に入ってしまったには怒鳴りつけてください
トレース(?)された上に手を加えた!になるんでしょうか。ひたすらに申し訳ありません;;;

では。以下、例のアレがえんえんと続きます・・・

67 :
「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

昔、昔の物語。
日本にとある出版系列のグループがありました。
日本児童への教育に熱心な家の人達で築いたグループで、日本の子供達なら誰でも一度くらいはご本を読んだことあるかも?
たいそう、子供たちが大好きな一族でしたので。
教科書だってお医者さんの本だって、子供をよろこばせる雑誌だって作ります。
これはその最後の、雑誌を作っていた家柄に起こった、とある代のお話です・・・。

68 :
でも。本家筋の皆さんは集まって相談しあいました。
・・・この家ってこの先、生き残れるんだろうか?
あまりに心が優しすぎやしないか?
一族は相談を進める。
もしも。家系に競争相手がいるとしたら?
ここで一気に全員の議論は加速する。
そうだ。もう一つでいい、分家を作ったらどうだろう。
たしかあの家に弟妹がたくさんいたはずだ。
・・・一族は話し込む。
ちょうどおなじような家族構成の、弟妹からひとつ分家を出さないか?
こうして、小学館の家から似たような弟夫婦が別れてそれぞれ家を持つこととなりました。
分家のほうは集英と名乗る事で決まりました。

69 :
どちらにも娘達がいたので、一族の話し合いは娘たちへも・・・。
ちょうどおない年っていなかったか?確かどちらも娘だ。
都合がいい、安全だ。
うん、安全だ。安全に双方で競争しあう。お互いが磨きを掛け合って、しかもどちらも我々の家の庭の中で争ってるんだ。
これほど娘達を傷つけない争わせ方ってあるか?
どんどん深く、現実的に。
更に互いを同じ学校にさせるんだ。
千代田女学院はどうだろう?いいね、あそこならおなじ業種の女子が集まる。だとしたら別の会社の女子との社交技術まで磨かれる。
へー、まるでそれは将来への準備のようだ。
しかも他の空気も吸わず出版界の空気だけ吸う。それは素晴らしい。だとしたら育った娘達は・・・。
彼らはお互い笑顔で頷き合ったのです。

我々の庭で成長する、この世界しか知らない純正な娘達なんだ!

こうして仕上がった土台に、頷き合ったその笑顔はいわゆる会心の笑顔ってヤツでした。

70 :
そして、時代は現代へ!
「サンデーとかwww発行部数少な杉wwwwwwwザコスwwwwwwwwwwww」
「ジャ、ジャンプちゃん・・・そんな事いわないでよ・・・ぉ」
「うるせーよwwお前なんていらねwwww」
「お前またサンデーちゃんいじめてんじゃねーぞっ!」
「うはwwwwwマガジンきやがったwwwwwwww発行部数俺より少ないヤツは黙ってろよwwwwwwwwwwwwww」
「ほらサンデーちゃん、あっち行こう」
「聞こえねーのかwwww敬語使えよwwwwwwwwwwww」
「あっちにガンガンちゃんもいるから、一緒に遊ぼう」
「でも、ジャンプちゃんが・・・」
「おいwwwwお前ら無視すんじゃねーよ」
「ほら、いいからいいから」
「あ、ちょっと・・・マガジンちゃん?」
「おいコラ待てよwwwwwwww無視すんなっつって・・・
「ウゼーんだよついてくんな!」
「・・・・・・無視、すんな・・・って、サンデーまで・・・」

千代田女学院ではあんまり良家の子女とは言えない言葉が飛び交ってる。
まだ初等部を卒業したばかりとは言え、あまりに自由すぎる。
が、学校側も個性の尊重、と教育方針をうたっている。だから実質礼儀作法に関しては野放し状態だ。
締めてる所と言えばクラス分けぐらいか?
クラスはきっちり彼女たちの成績で上位順で分けられてはいる。
将来、彼女たちは自分の家の家業を継ぐのだ。
成績はさすがになにがしろには出来ない。

71 :
・・・それは学生たちも感じ取って、おのずとクラスでの立場も決まっていた。
一番最初の言葉はジャンプちゃん。
集英家の何番目かの娘だ。集英は新興の家柄とはいえ、ここ最近の業界ではかなりの出世頭だ。
中でもかなりの成績を誇る彼女は現在絶好中。
言葉も荒くなろうものか。
外見は悪くはないのだが・・・。
ちょっと勝気そうだが活気に満ちた瞳。表情がくるくる変わるポジティブさ。
それが場面が変わればドキッとするほど綺麗にも見えるから人を惹きつけて離さない。
自分でも分かってるのか、だからあまり自分を律するとか関心なさ気だ。
クラスでもやりたい放題で、しかも成績は残すから誰も何も言えないのが現状。
・・・ただ、マガジンちゃんを除いては、だが。

72 :
マガジンは割りとジャンプにもハキハキと物言いするから、大人しいサンデーを連れて避難させてやった。
ったくなんでオレがお子様たちの面倒見なきゃいけないんだか。
あー、もう本当ジャンプって子供だよ、おガキ様だよ!!
サンデーと言えば、マガジンの後を付いていきながら視線は落としたままだ。
足取りも・・・
「ん?疲れてる?」
マガジンがさっぱりとした口調で振り返った。
「え、あ、う、ううん!」
サンデーはすぐに顔を跳ね上げて優しい笑顔になった。
マガジンは内心は思うところあったが、口調を改めて、
「ごめん。サンデーちゃんはオレたちのグループでも無理してるんじゃない?」
マガジンがサンデーの顔を覗き込んで微笑んだ。
「オレら歩くのやたら速いしなあ。付いて来るのに精一杯ってカンジ!」
そして快活に笑い飛ばした。
マガジンちゃん。講談と言う古い出版社の家柄の、これまた何番目かの娘。
今こそはスカートも短くして可愛いしぐさで笑顔振りまいたり、と変化はあるものの実は昔はこの辺りでは相当のカオだったらしい。
美しい髪をさっそうとひるがえして喧嘩を買うどころか喧嘩を楽しむような姿は近所の記憶にも新しい。
・・・きっと昔もステキだったんだろうなあ・・・・。
小学館サンデーはぽーっとその笑顔を見た。
サバサバした雰囲気と頼りたくなるような可愛い・・・というよりも美人、って表現したいんだけどなぁ。
学校の外では男子が「可愛い可愛い」と騒いでるのが不思議だ。
マガジンは立ち振る舞いもきびきび潔くて美人・・あ、違う。麗人、って言うのかな、こういう場合・・・。

73 :
「どした?やっぱオレらに付いて来るの疲れちゃう?」
「え?う、ううん!だから私は本当にマガジンちゃん達といるの楽しいし・・・」
「あはは。でも無理してる感はあるな〜」
「そ、それは私がトロイし・・・その、みんなのノリを壊してるって言うか・・・」
あー、そうかもね。マガジンは言わんとすることが分かった。
この少女は心根が優しすぎる。あまりハメを外さない真面目さだ。
妹のコロコロちゃんなんかは外しまくりなのにね〜。マガジンは苦笑した。
妹って気楽!
「でも使用人はかなりスポーツ出来るのいるじゃん」
「え、うん・・・」
「甲子園、体操、メジャーリーガー、なんでも揃ってる?
さっすが一ツ橋グループは雇える使用人は違うわぁ〜」
またカラカラ笑うマガジンにサンデーはもっと視線を落とした。
「でも・・ジャンプちゃんの家の使用人はもっと・・・その、期待されてるし・・・・・」
そこまでで言葉は途切れる。

74 :
彼女たちは一流の名家なので、使用人も半端じゃない事も前もって添えさせて欲しい。
と、言うかおのおのの家の情熱が半端じゃない。
マガジンが言った通り、例えばスポーツ。
メジャーリーガー、Jリーガー、オリンピック選手は当たり前。
学問なら有名な探偵の子孫。医師なら珍しいのでは獣医までいる。
身を守るための格闘のプロですら選り取りみどり。
・・・・すべて彼女たちの成績の為に。
彼女たちが将来、家業を継ぐためにおのおのの家が必だ。
「無理しなくってもいいよ?だいたい、ジャンプとサンデーちゃん達ってさ。元々、えーと、その・・・」
今まで歯切れのよかったマガジンが言いよどんだ時。突然サンデーがさえぎった
「違う!!!」
マガジンは驚いて目を見開いた。
「違うよ!私は・・・ジャンプちゃんが好き!大好き!!仲良くしたい!お母様たちが許さなくたって・・・!」
後は唇をかみ締めた。

75 :
おっどろいたぁ。
マガジンは授業中、くるくるシャープペンを指で回しながら上の空だった。
だってガッコの教師、ヌルイしぃ。家に住み着きの家庭教師のがよっぽど使える。
暇なのでサンデーを盗み見る。
あーあ、真面目にノート取ってるわ。
マガジンは苦笑した。
真剣に黒板を見て、先生がポイント!なんて本当だかどうだかな事まで必にペンを動かしている。あの真面目さはほんっと賞賛に値する。
オレ、ダメ〜。
なので、観察する。
授業中にだけ掛けている眼鏡が似合ってるな。
柔らかい顔つきが授業中には真剣になるからかな?
ちょっと笑みをもらす。
本当はかなり優秀なはずなのに努力だけは怠らない。
表情からは学問を学べる事への楽しみしか見られない。それ以外の理由なんてないみたいに。はは、教科書にしたい位のムスメ!
・・・なんてゆーか、あの娘はガツガツしたトコよねえ。
・・・・・オレやジャンプなんて成績欲しさに割りとお行儀の宜しいコトしないのに。
そこでマガジンは視線を落とした。
なんだよねぇ・・・。
そこなんだよね。あの娘はおっとりとして優しい笑顔でいつも礼儀作法も正しい。
いっつも人の和ばっかに気を配ってる。
現在、クラスでボス風吹かせてるジャンプとはそこが違う。なんでだろ。
成績順位なんて興味すらナイってカンジ。こりゃオレらと人種違うわ。
上の空のマガジンを見すかしたようだ。
「マガジンさん!次を読んでください」
「あ、はい!」
マガジンは急に観察を中断されて立ち上がった。
まず。あれ?今ってなんの授業だっけ。

76 :
そして放課後。
ジャンプが
「イェーイ!サッカーグラウンド一番乗りぃー!」
スクールバックをかっさらうように教室を飛び出す。
サンデーは何かジャンプに言いたかったのか。
でもその隙もなかったらしく後姿だけを見送った。
「サンデーちゃん、もしかしてサッカーしたかったりして?」
その様子をガンガンちゃんがからかう。
クラスのちょっとしたお姉さん的存在のガンガンはさり気なく気が回せる。
無理を見せない様子が余裕を感じる。
長身なのだが、そのさり気なさで威圧感とかはまったく感じない。
その逆だ。理知的な空気とあわせてクラスメイトが頼りたがる美少女。
「う、ううん。私は読書、好きだし・・・」
学級文庫の小泉八雲をちょっとだけ持ち上げた。小泉八雲はサンデーの一番の愛読書だ。
「あら、でもスポーツだって得意じゃない」
「それはクラスのみんなだっておなじだよお」
苦笑いしてから、チラっとクラスメイト達を見回す。
白泉姉妹だってそうだ。スポーツ得意なはず。
サンデーの目が羨望の目つきになる。
でも姉妹そろっておなじような趣味だから持ち寄ったファッション雑誌や、最近は劇団にも興味があるらしい。仲よさそうに情報誌を覗きあって楽しそうだ。
・・・いいなあ。やっぱ双子だと趣味も合って仲がよくなるんだなあ。
他だってそうだ。
苦手科目に気づく事のがめったにないのに、それでも自分の趣味をあまり曲げない。全員がなにか特色がある。
これが個性尊重の教育なのかな。

77 :
「ふぅん。じゃ、今何考えてた?」
ガンガンはいたずらっぽく覗き込む。
「え!あ、ううん・・・。その、個性ってなんだろうなあって。
個性って誰かが誰かと仲良くなるのと関係あるの?」
ガンガンは「ん?」と首をかしげる事で説明を促す。
「だから・・・あ。
そっか。こう言った方がいいんだ。
ガンガンちゃんは誰かと楽しく話したいなあ、とか思うときって趣味が合う人と話す?
一緒に共有出来るって言うのかな、この人と仲良しになりたいなあって思う時ってどんな時?
反対に・・・・・その、この人とは一緒にいたくないなあ・・とか、好きじゃないかも?とか思う事は・・・」
最後がだんだんと声が小さくなっていったのでガンガンはさらっと遮った。
「そりゃあるけれど」
「うん!」
「言っちゃっていいのかな?他人の感想って悩んでる時には返って荷物になる事、あるゾ?」
サンデーは心の中を見透かされたようで顔が熱くなる想いがした。
「参考程度ならいくらでも言うけど」
「そ、それをお願い!」
「そおねえ・・・」
ガンガンは手元の自作品に視線を落とした。

78 :
ガンガンの趣味は工芸なので、今面白いと思ってる天然石ビーズアクセをもてあそぶ。
どうしよっかな。
サンデーちゃんの心をむやみに傷つけたくないけど。
「私は無関係の人との交友が好きよ」
サンデーの表情があからさまに曇った。
「日常に関係してくるのとまったく無縁の人とお付き合いするのが好き。
しがらみがない関係って奴ね。
もしかしたらクラスメイトともこれは表面上のお付き合いなのかもね。
学校の外の人といる方が好きなんだな。あ、これは感想だからね」
ガンガンはいっそうサンデーを覗き込んで困ったように笑う。
「お互い、イヤ〜な世界とか知ってるでしょ?
そういうの、いちいち背負ってまで友情を築きたいって思わない。
しょせんこの学校だって・・・まるで将来への準備体操だなぁって。
感じたりして。学生のうちから慣らしとけ、みたいに」
サンデーの表情はどんどん曇っていく。

79 :
ガンガンは、でもここで顔を上げた。
そして満面の笑みを浮かべる。
「で、こぉーんな本音言えちゃうのも学生ユエなんだな!」
「え・・・」
「将来、公の場でこんな事私が発言でもしてみたらどう?
ちょっと想像してみて?」
サンデーはちょっと驚いた顔をして、そしてすぐに声に出して笑った。
「あはは!」
「だから、この学校はスゴイ!」
「・・・え」
「と、私は思ってる。さっきはあんな返事したけど・・・。
もしもよ?
もしも・・・自分の辛さを理解しあっこ出来るからこその関係が・・・あったらステキだなあって。
ちょっと期待持ったりして」
「それは・・・」
「もしかしたら楽な人よりも、手軽な人よりも、一番に優先させるとっても深くて固い関係なんじゃないかって・・・私は、そう、感じてるの」
「だからこそ・・・」
「そう。
お互い、理解できるからこそ。嫌な事も辛い事も理解できて共有できるからこそ生まれる一番深い物。
サンデーちゃんには分かる?」
サンデーは上の空のような口調で、でも
「なんとなく・・・」
言いたいことが不思議と理解できた。
「甘いかもしれないんだけどねぇ。でもいいじゃない!
学生だもの、ちょっとくらい甘いくらいの希望とか夢とか持っちゃえ持っちゃえ!」
後は気持ちよく笑ってまた作業に戻る。
サンデーは読んでいた本を開いたままの状態で
「学生だから・・・」
ぼんやりとつぶやいた。

80 :
ここでまずお詫びを
ガンガンちゃんをはじめ、この後に続々と「名前は分かる」雑誌が出てきますが、すべてが勝手なイメージです。さーせん!
お好きな雑誌がほにゃららにされた方、特にJSMの三誌のファンの方、さーせん!!!

81 :
さてさて、こちらは女子サッカー部。
ジャンプを主将としてマガジン、チャンピオン・・・などなどを中心にかなりのいいチームに仕上がっている。
見学に来る女子ジュニアの初等部生たちの憧れの的だ。
今は集まったメンバーで、部活最初のミーティング。
「なんだよ、マガジンうぜーよ口出しすんじゃねーよ」
「そーゆー言い方止しなよ」
「お前、じゃあチャンピオンがジャッジのたんびに審判につっかかるのどうなのよ」
「ガキは黙ってな!不当なときは喧嘩売る覚悟くらいで上等さ」
「オレそーゆーのダメ〜。楽しくなきゃスポーツじゃないじゃん。
いいじゃん、じゃ、そん時さ、マガジンがパンツでもチラって見せたら?審判ジャッジ変えるんじゃねー?」
そこまで言ってジャンプはケタケタ笑い声を上げた。
全員が眉をひそめたが中でも苦虫を噛み潰したようなのがマガジンだ。
「しかもパンチラとパンモロでジャッジが変わってきたらさらに吹かね?
おまえらどこまで好きなんだよ〜って。笑えるー!」

82 :
チャンピオンちゃんはここでジャンプを一括したい気分になった。
ちょっと古風なくらいの和風美人のチャンピオンは正直、ジャンプとマガジンのここ最近に腹を据えかねていた。
中でもジャンプの態度は目に余る。自分の成績がいい事を盾に、言いたい放題・やりたい放題だ。
成績と品格を一度に求めるのはいけないことか?

「・・・やっぱ、おなじ穴の狢ってのは理解しあえるのか?」
チャンピオンが低く言った。
「あー?」
「あんたら、実はすっごいお互い理解しあってんじゃねえか?
同属?割と似てるよな」
「は・・・」
「どうせ自分達でも分かってるんでしょ?あー、なんか似てるなー、とかさ」
ジャンプの表情が固まった。
「あー、その点衝かれると痛いなー、とか。私たち競い合ってるんだし、分かるんじゃない?
お互い触れてほしくないトコロとか?」
「・・・!」

83 :
これに。
立ち上がったのはマガジンだった。
「・・・・チャンピオンちゃん?」
「・・・」
「言いたい事は痛いほど分かるわ・・・・・」
マガジンはそこまで言って、ふ、と肩の力を抜いた。
「・・・ただみんなの前だけはカンベン。
後でゆっくりジャンプと傷でも舐めあっとくよ。
でもきっかけはありがと!やっぱあんたはこの学校にいないと困るよねー!」
マガジンはチャンピオンの肩にがしっと手を回すと部室に向かって
「さーて!他メンバーは意見あるかなー?
そういや成人女子のサッカー試合、見た?オレたちのお姉さんたちの試合。将来、ああなりたいよねー!
・・・・・」
後はマガジンがその場をまとめだしてジャンプは呆然とそれを見ていた。
「・・・・・なんなんだよ・・」
ジャンプはしだい奥歯を食いしばった。
気に入らねー・・・!

84 :
「・・・おまえら一体なんなんだよ・・・」
ジャンプの目はミーティング以来、怒りで解けそうもない。
ここは校舎の屋上。
マガジンが手すりを背にしてジャンプを睨んでいる。
あの日以来、ヘンな緊張感が学院に流れている。
ので、マガジンはジャンプを呼び出した。
「あんたの我が物もしょーじきそろそろしんどいわ」
この場所を選んだのは、マガジンは今に至るまでは結構ここでサボってたからだ。
「だから今から、あんたにだけ本音ぶっちゃけトークしまーす。
おっと、逃げるな」
「逃げてなんか!!」
「聞きたくなくても、そろそろ現実を見据えなきゃいけなくない?
売り上げが〜、とかで誤魔化し効く?
オレは効かないけど。将来、どーすんの?だーれも聞いてくれないよ?
本音なんて言えるの?弱音吐けるの?
どこで?
誰に?
身に染みて分かってくれて共感してくれる存在と?」
「きょ、共感なんて、オレは・・・!」
「ストップ。
じゃ、まずオレの本音から。
それ、最後まで聞けたらあんたの普段の強さって奴も認めてあげる。
出来なかったらチキン。
どう?」
ジャンプは胸がドキドキするのが分かった。握った手が震える。

85 :
マガジンはそれを遠目から見守った。
・・・・・もしも誰かがこんな彼女を見たら信じるだろうか?
あの強気で勝気なジャンプが。
どんな逆境でもいつでも根性だけは失わなかった娘が。
「手短に。
媚?売るのが楽しい性格なんて買ってでもなりたいわあ〜」
ジャンプの表情が。悲痛にゆがんだ。
「や、止め・・・」
「そう?じゃ、明日からあんたのあだ名はチキン。
いいなら逃げな」
ジャンプは震えを抑えるように、でもなにか感じるところがあったようだ。
マガジンの口がまた開くのを待つような視線。
「おっけ!
あんたは媚び売るのって、楽しい?
返事はいいよ。オレはね。
ちっとも楽しいって思わないわ。
成績が伸びようと、本当は知ってるから。周りの人、みーんなオレが媚で成績伸ばしてるのを」
マガジンの視線はジャンプの目から一瞬も逸れない。
ジャンプはこんな時なのにまったく別の事を考えてた。
そういやこのオンナ、昔はめっちゃ喧嘩っぱやくって強かったんだ。
もちろん当時は髪型、洋服、まったく気遣ってなどなかった。けど・・・

86 :
「でもね。親が媚びろって言ったら、そう教育されたら媚びるわ。
本心はどうであれ・・・・・成績がなきゃ、オレ、即切られるしね。
切られて、どーせ分家の子供でも連れてきて、苗字だけ据えてその子供に継がせるのよ。
今は媚びないと安心もできないくらいよ。
あはは、アレってちょっと癖になるね。もしかして依存症かも」
なのにここ最近のマガジンは・・・彼女の言うとおり媚・・本当は単語ですら聞きたくないが・・・・・自分で認めてるくらいに、媚、が売りってくらいだ。
どんなに嘲笑われようが成績のために・・・なんでもしてる。
制服のスカートの丈は短くなる一方だ。そのくせ、クラスでは宝塚の男役みたいな振る舞いでクラスメイトに溶け込んだり・・・。
表での甘えた声との、その二面性にちょっと心配になるくらいだ。
でもそれは自分だって・・・
「あんたさ。今言った事、実は分かってない?」
ジャンプの肩が揺れた。
「・・・あんた、昔は良かったなぁ、とか思ってない?」
「う・・・」
「ありのままの自分を受け入れてもらえて。楽しくおおらかに」
「それは・・・・・」
「今じゃそんなあんた、誰が受け入れてくれるんだか。
ま、オレも一緒なんだけどねー。
だからあんたの気持ちがちょこっと分かったり・・・」

87 :

ここでジャンプの上体が跳ね上がった。
「分かるもんか!!!」
それまでは大人しくマガジンの話を聞いていたジャンプが怒声をあげた。
「あんたに分かるもんか!!!あんたにはいないじゃないか!
いないじゃない競争相手なんて、親族にいないじゃない!!!」
マガジンはちょっと気圧された。
「そ、そりゃいないけど・・・。
じゃ、じゃあ白泉姉妹なんてどうなるの?あの娘たちは・・・」
「あれは姉妹じゃない!オレは・・・オレはサンデーの為に用意された存在なんだ!!!」
マガジンは息を呑んだ。

88 :
「分かる?誰も分かるはずがない!!!
オレは、集英家はアイツらの為に用意された存在なんだ!
本家筋が守りたいのはあの家だけなんだ!オレ達は捨て駒なんだ!!!
媚がなんだって言うんだ!それくらいしなきゃ、成績残せなきゃオレ達は意味がないんだ!」
ジャンプの怒鳴り声は止まらない。
「・・・おまえとは違う、違うな、お前は挿げ替えが効くとか言ってるけどオレなんて捨て駒の挿げ替えだよ。
あはは、笑えよ、媚ぐらいいくらでも売ってやる!それで小学館家も本家筋も傷が付くことがないんだしね。興味すら持ってもらえねー。
あはははは。安心してやりたい放題出来るね。きったねぇ〜って方法だってなんだって使うよ、成績こそが唯一だね。
おまえに分かるか。これがオレ達のお仕事なんだよ!小学館サマがお上品にお商売をなさる、オレ達はその為のどぎたねー部分をするんだよ!小学館サマが良心的な安全なモノをご提供なさる、その為にオレ達はなんだってするよ。
なんだって・・・
なんだって・・・・・」
吐き出しながら、ジャンプは感情が高ぶってきたのか。・・・今までのことを思い出してしまったのか。
しだい、涙声になってきた。
最後は我慢しきれないのかしゃくりあげだす。それでも立ってるのはちょっとマガジンも認めたが。
マガジンがジャンプに歩み寄った。
気づかずに手放しで泣きじゃくってるジャンプを軽く胸に抱いてやった。
「・・・言っていいよ」
「ひくっ、う、うるせ・・・っ」
「誰もいないし、オレしかいないから。全部吐き出しちゃえ。
おなじじゃないけど、たぶん一番近い理解してあげられるだろうし」
ジャンプは泣きながら、歯を食いしばった。

89 :
「・・・・・・・羨ましかった・・っ」
「うん」
「いいな。いいな、サンデーは。
大事に大事に守られて。
あは、あの娘達はきっとオレがどうなろうと、関係ないんだよ。
きっと本家筋は最後の力を使ってでも守るんだ。
・・・・・オレとは大違いだ。妹のコロコロだってそう。
そういやおまえんとこのボンボンは?」
「・・・・・」
マガジンは奥歯をかみ締めただけで何も言わなかった。
「じゃ、分かるよな?
あはは・・なんかすっげー惨め。
もお惨め過ぎてどおでも良くなっちゃうよ。
・・・嫌いたければ嫌えよ。あはは、クラスメイト全員、オレの事嫌ってるの知ってる。
オレ、やり方汚ねえし。
でもおまえは・・・」
マガジンはただ頷いた。
「・・・やっぱ分かってくれるのおまえだけかもな。
ダメだ、オレ。・・・なんかもう時々疲れるんだ。しょーじきしんどい。
あはは、全力疾走してどんな手を使っても先頭にいなきゃいけないのに・・・サンデーはおっとりお上品に走ってても何にも言われないんだぜ?
あはは、きっと今まで出来なかった逆上がりが出来ただけで「お嬢様すごい!」なーんて拍手喝采なんだ。
・・オレは・・・出来て当たり前、みたいなのに。
出来なきゃいる意味すらねーっつーの。あははは。
すごい違いだ・・・・。すごい違い。
だからかなあ」
やっとジャンプがマガジンに視線を上げた。

90 :
「・・・・・憧れる」
マガジンは痛そうな表情をした。
「いいなあ。いいなあ。
あんなおっとりと・・・誰にでも優しい。
あれは飢えてないからなのか?
あのサンデーがガッツく事ってないのかなあ」
「・・・」
「誰かや何かを必で求めたり・・・
あいつは誰にでも優しいし、お友達に囲まれてるよね。
あはは、誰かを必要なんてしなくていいよね。
いいなあ。いいなあ。
おまえらはいいなあ。
なんの含みもなくサンデーと一緒に笑ってられていいなあ。
いいなあ。
いいなあ。
羨ましいなあ、オレだって、オレだってなんの含みもなくサンデーと・・・」

91 :

ここで。
「やったぁ!やっと見つけた。マ・・・」
突然、屋上の扉が開いた。
「ガ・・ジンちゃ・・・・・」
ジャンプとマガジンはとっさに離れた。
ジャンプは急いで制服のすそで目をぬぐう。
マガジンはさすがに落ち着いている。
「どうしたの?慌てて。
サンデーちゃんらしくもない」
空けた扉から手を離せないように、二人からも目が離せないらしい。
息せき切ってやって来たのかサンデーは呼吸ははずんでいた。
の癖に、ごくっと細い首が鳴った。
「あ・・・・」
ジャンプは必に目をこすっている。
「あの・・・国語の先生がマガジンちゃんを探して来いって・・・・・・・その、ごめんなさい、なんか私、いっつも間が悪いよね。
す、すぐ帰るから!」
後はまるできびすをかえすようだ。来たばかりの階段へとダッシュする。
「・・・!」
それにジャンプの体が揺れる。
でも、
「追っかけなくっていいの?」
マガジンに冷静に言われると、瞬間でカッと顔を赤くした。
「うるさい!やっぱりおまえ、大っ嫌いだ!ね!今すぐね!
喧嘩なら買ってやる、オレに傷でも付けたら世間が黙ってないぞ!」
そう言ったきり、歯を食いしばって拳を固くしたジャンプをマガジンは哀れむように見下ろした。

92 :
何がしたいんだ、これ・・・
18禁板だと言うのに。
バーバーパパですら百合百合に出来る神もいると言うのにバカバカバカ!

93 :

翌日。
きちんと始業前5分前にはいる、クラスメイトでも良心派で教室は賑わっていた。
サンデーはグループこそ違うが仲良くしている、白泉姉妹の熱心な話に嫌がらずにひとつひとつ頷いている。
あんまり熱くなりすぎて特定の役者に高い歓声があがるのにすら嫌な顔をしない。
そこへ
「・・・・・」
朝礼にも出なかったジャンプが無言で入ってきた。
ジャンプは成績がいいから教師も何も言わない。

94 :
サンデーが気付いて視線を上げるのと同時に、
「あーあ、教室にうっとーしー奴いるとほんっと空気悪っ」
サンデーに向かってものすごい足早に近づいた。
「え、ジャンプちゃ・・・」
周囲も驚く。
「教師に言ってクラス替えしてもらおっかなー」
「!」
ジャンプがサンデーの肩を小突き出した。
「イヤなオンナいると成績下がるんですけどー。とか。
教師、みんな私に逆らえないしぃー。
聞いてくれるよね。誰かさんを別のクラスにするくらいー」
「ジャ・・・」
「そもそも自分がイヤなオンナって気づいてないわけ?
あー、ヤダヤダ空気読めないってサイアクー。だからあんた嫌われてんのよ、あんたそうやって誰にでも笑っていいかげん・・・」
そこで。
教室全部に響くような一括があがった。
「サイアクは誰よ!!!」

95 :

全員が注目する。
仁王立ちになってマガジン。
すごい迫力だ。
クラスメイトは今更、彼女の過去を思い出す。そう言えばこの少女は・・・
「あんた、好かれてると思ってるわけ?
それこそサイアクだよ、うっとーしーのは、誰ですかッ?あ?!」
全員が恐ろしそうにマガジンを見守る。
「マガジン・・・」
「ああん?成績?
あんたからそれ取ったら何が残るわけ?」
ジャンプの肩が大きく揺れた。

96 :

「教えてよ。ほら、言ってごらんよ」
「あ・・・」
「成績悪くなったあんたを誰が振り返るわけ?
だーれも振り返らないわよ。あ、でも伝説になったりして?
みんなで笑うかもねぇ。
『そういや昔、ジャンプっていなかった?』」
「・・・や、止め・・・・・・・・・・」
「『アイツ、誰にでも媚び売りまくってさあ、そりゃみんな離れてくっつーの(笑)』」
ジャンプの足がガクガク震えだした。
よっぽど恐ろしいのか歯までカチカチ合わなくなりだす。
「『な、お前がジャンプ買わなくなったのいつからー?』
あっははー、伝説?その時も自慢したら?
日本で一番売れてるのは〜とか。あ、売れてた、の間違い?
あっははー。かぁーなしぃ〜」
「・・・・・・・・あ・・・あ・・・・・・・・・」
「さぁ〜びしぃ〜。ねえ?あっははーん」
ジャンプの震えがさらにひどくなる。
かぶりまで振る。聞きたくない、と言わんばかりに。
次くらいにとどめか。
演説のような独断場のマガジンがさらに口を開いたとき・・・・。

97 :

教室に大きな平手の音がはじけた。
こんどこそ教室が静かになる。
まさに水を打ったようだ。
全員が息を呑むのも出来ない。
「黙りなさい!!!」
平手の主はサンデーだった。
あの大人しいサンデー。冷静さを失ったところなんて誰が見たか。
ましてや・・・かなりの怒りなのか。
おだやかな瞳が、怒りで芯の強い彼女らしく固く強く光っている。
その足でジャンプへと戻ると彼女を腕に抱き込んだ。
「ジャンプちゃんの悪口いう人は例えマガジンちゃんだろうと許さない!!!
許さない、私の忍耐強さは周りの誰もが認めるわよ!一生許さない、ぬまで恨むわよ、絶対に後悔するわよ!
どこにいようとぬまで追って、ゆ・・・許すもんか!!!」

ジャンプは・・・。
それをサンデーの胸の中で聞いた。
・・・・・ひとつひとつ、最後まで。
振るえは止まっていた。
サンデーの胸は思ったとおりの優しさで、振るえどころか頭が理解をしてくれない。
まったく頭が回らない。

98 :
一方。ぶたれたマガジン。
頬を押さえてサンデーの様子に目を丸くしていたが・・・ふっと顔を緩めた。
気分よさ気に教室を見渡す。
教卓で一部始終を眺めていたガンガンに視線をとめる。
そうして「どう?」なんて、まるで自分の手腕の感想でも求めるように右肩をすくめた。
ガンガンは吐き出す大きな息と、笑顔が顔いっぱい満ちるのが自分でも分かった。
満足そうな笑顔。
あ、今ので返事になったかしら。
賞賛の笑顔。これには感嘆しかない。
やっぱりマガジンは基本が出来ている。底が深い。
あれだけ周りから含みある視線を向けられようと中々揺らがない。
そりゃあ・・・ガンガンは悟られないよう自嘲する。
誰だって媚なんて売りたくもない。私だって昔はもっともっと自由におおらかに・・・。
そこまで考えて、自分へもケリをつけるように

99 :

「ケンカはおしまい!」
手をぱん!と高く打つ
「サンデーちゃんは気持ちが高ぶってるみたいだからジャンプちゃんと一緒に一休みでもして来なさい。
サンデーちゃん図書委員?
図書室でも中庭でもどっか一息つけるところでジャンプちゃんと頭冷やして来ること!
さー、他のみんなは授業始まっちゃうぞ?
すーぐ先生来ちゃう。席にまず着こうよ」
言いながらパンパン手を打き続ける。
それが合図だったようだ。緊張で静まり返った教室がほっとほどける。
周囲同士で落ち着きの安堵しあったり、今驚いた自分を照れるように笑い流しながらおのおの席へと急ぎだす。
状況が分からないようなサンデーに向かってマガジンはその手拍子へ軽く顎をしゃくった。
「痴話げんかはヨソで、って?」と言葉を添えてからおどけた風にちょいっと首をすくめる。
後は自分の席へすたすた戻る。
サンデーとジャンプだけが教師が来るまでその場にへたり込んでいた・・・・・。

100 :

・・・生まれてこのかた、こんな幸せな事ってあったっけー・・・。
ジャンプはサンデーの胸の中でぼーっと考えた。
考えがまとまらないのに、幸福感だけはあふれそうだ。ああ、どうしよう。
あれからサンデーがほぼ何も出来ないジャンプの手を引いて、一番近い階段の踊り場まで連れてきてずーっと抱きしめている。
そういや入って来た教師にガンガンがなんか言って・・・ああ、ダメだ、なんか覚えてない・・・・・。
誰にも傷つけさせるもんか、とずっと胸にジャンプの頭を抱きしめている。
ああ、なんか考えなきゃ。
だけど、気持ちいいなあ。
こんなに気持ちいいのは生まれてからあったっけなあ。
ずっとこうしてたいなあ。
安心だ・・・。
ああ、なんでだろ。すごい安心・・・。こんな安心ははじめてだ。
幸福感で頭も飽和してる・・・ダメだ、考えがまとまらない・・・。
抱かれていた胸が、深呼吸するように上下した。
ジャンプはちょっとだけ我に返ったが、腕がほどかれないのでやはりそのままずっと頭を預ける。

101 :

「・・・ごめんね、ジャンプちゃん」
しばらくしてサンデーが小さく言った。
「あぅ?」
「マ、マガジンちゃんと・・・もしかしてケンカさせちゃったり・・・した?」
言いながら呼吸が早くなったり細くなったり、心臓がどきついたりしてるのまで分かる。
ああ・・・なんて幸せなんだろう。
「・・・ああー?」
「ご、ごめんね・・。ごめんね、嫌だよねこんなうざったい・・・・・
今日言われてやっと分かった!」
そうしてバッとジャンプを離す。
自分の真正面に置いて、今にも泣きそうだ。そんな笑顔を見せる。
「・・・・・ごめんね、私、ジャンプちゃんみたいに聡明って言うか・・・なりたいのに・・・ごめんね、でも・・・」
言いながら泣き出した。
あまり声を立てずに必に嗚咽をかみしている。
なんでだろう・・・。

102 :

「なんで我慢するの・・・?」
「っ、な、なんでっ、て・・・」
「あんた我慢なんてしなくてもいいんじゃない?大事に大事にされて・・・」
またあの激情だ。
この娘は忍耐強い分、高ぶるとジャンプですら身構える迫力を見せる。
「私には我慢しかないじゃない!
知ってるんでしょ?分かってるんでしょ?それで・・・いっつも私を笑って・・・バーカバーカって私を・・・・・」
泣き声で後は聞き取れない
ああ、考えなきゃ。今は考える時だ。
ジャンプはサンデーの右肩に手を置いた。
「それはどういう?」
ジャンプは考えろ、考えろ、と自分の頭に言い聞かせる。
サンデーのかみした嗚咽と遠くで授業の声が聞こえる。
サンデーは高ぶっていた物が納まったらしい。
「いいよ。・・・自分でも分かってるし」
ポツ、ポツと話し出す。
「私はジャンプちゃんの為にいるんだよね」

103 :
「はああああああああああああああ?!」
ジャンプの驚愕の叫びはほぼ始まりらへんで止められた。
自分の手で自分の口をふさぐ。
今、ここに誰かが来られたら・・・かなりイヤだ。
「いいよ。・・分かってるし・・・感じるから。
家にいたら、生まれた時から感じるよ。
私、ジャンプちゃんの為にいるんだよね」
そう言ってまた泣きそうな笑顔を見せた。
ちょっと待て、それ、反対だろぉ?!!
ジャンプの混乱をよそに、
「・・・ジャンプちゃんが自由に、好きになんでもやって成績収めて、凱旋するために私、いるんだよね。
いいなあ。いっつも憧れてた。 いいなあって。羨ましいなあ。
いいなあ、自由で」
「ちょ、ちょっと待って?」
「・・?」
いや、考えろ。質問を考えるんだ、オレ。
「それっていつ、どんな時に・・・は?生まれた時から?え?え?は?」
サンデーは優しく微笑んだ。
涙をぬぐって
「ジャンプちゃんはそんなの興味ない?」
それも反対では?
「・・・だよね。後ろ守ってる人はちゃんと役目さえ果たしていたら、興味なんて持つ暇も無いよね・・・
ジャンプちゃんは忙しいんだし。
ちゃんと飛び回って自由に・・なんでも成し遂げなきゃ駄目だもんね・・・
才能を思う存分使って」
それから最後に「あ、その希望を込めて命名されたのかな」と小さく笑った。
その目は自由に空を飛び回る鳥を憧れで見上げるような目。

104 :

ジャンプは詰めていた息を徐々に吐き出した。
「・・・・・分かってたんだけど。知ってたし・・感じるよ、それくらい。
私は守っていれさえすればいいんだ。
足元を固めてさえいればいいんだ。
それさえしてればいいんだ。
興味なんて持ってもらえやしない・・期待する理由も無い。
何したって、どうあがこうと・・・あはは、そんなの返って迷惑なのにね」
ジャンプが混乱で何も返事できないでいると。
涙をぬぐいぬぐいだったサンデーが
「ごめんね、私から先生に言うから」
そしてきっぱりと笑顔になる。
「は・・・?」
「クラス別に出来ませんか?って。
ジャンプちゃんはいいよ、ごめんね、気が利かなくて」

105 :

ジャンプは思わず、サンデーに抱きついた。
「あははー・・・、何言ってんの?あんた」
「え、あ、あの・・・」
サンデーは抱きつかれた事に相当動揺していたが、
「ごめんね、私・・・その、私からきちんと言えるから。
ジャンプちゃん、気持ちよく学校生活すごして?」
今度はジャンプが深呼吸した。
「だからさっきから言ってる意味が分かんないって言ってんのよ」
ジャンプは考えろ、考えろ、と自分に言い聞かせた。
まじまじとサンデーのつむじを見下ろす。
まず、質問しないと。
「あんたの家ってどんな話題が上がったりしてるわけ?」
コロコロとかお姉さんもいたな。
「え・・・。
ジャンプちゃん達が・・・・ど、どんな事に興味あるか、とか?気持ちよくいられてるかな、とか今度作ってくれる流行なにかな、とか・・・・」
「あ・・あはは・・・それってなんの為?」
「そ、そりゃ私たちはジャンプちゃん達が気持ちよく活躍できるように細心の注意を・・子供の頃から・・・
その為にいるんだし!
お、お行儀だってもちろん注意してるよ!ジャンプちゃん達の邪魔にならないように私達ね?もしも作法が崩れちゃったらいつもは優しいお母様ったら、ふふ・・・・・」
真剣に訴えるサンデーの瞳を見下ろして、ジャンプは全部の息を吐ききった。

106 :

なんて事。
なんて事だ、なんて事だったんだ。
ダメだ、これは。
オレらはいいようにされてる。本家筋の手のひらの上で、オレらは。

ジャンプは腕に力を込めた。
「・・・・・サンデーはオレの事、どう思ってる?」
サンデーはちょっと腕の中でびくっと体を震わせた後、
「あ、あの・・・これからは・・・・うっとうしくないように」
それからうつむいた。
「何が?」
「な、何が、って・・・・・」
言葉に困ってしまったようだ。
視線を落ち着かなくさまよわせて見てる方が可哀想になる。

107 :

ああ・・・オレ達はこれからどうすればいいんだろう。
いや、オレがだ。オレはどうすればこの娘と・・・・・。
ジャンプは考えた。

「あんた、私にいっつも気を使ってたの?」
「あ、そ、それは当然だし・・・」
「じゃ、あんたの言うこと、みんなあんたの本音じゃなかったんだ?」
サンデーは低い声で言われてちょっと震えた。
「あんたがオレに気を使ってご機嫌とるように言ってるって、これからも聞いとくわ。ま、当然だ。
今のも嘘。ぜーんぶ嘘」
サンデーが痛みにぎゅ、と顔をしかめた。

「だから。今から本音の時間はじめるよ」
「本音・・・」
「今だけだよ。後はないよ。後はみーんな嘘」
サンデーは驚いた。すがるように不安そうにジャンプを見る。
ジャンプは・・・。
はじめて飛んでもいいよ、と背中押された鳥ってこんなカンジに相手を見るのかな、と思った。

108 :

サンデーはちょっと迷って。
「・・・・・ごめんなさい、大好きです」
でもしっかりした強い口調で言って、歯を食いしばってうつむく。
「大好きです。ずっとずっと、憧れて、とっても素敵だって、いつだって気をとられて・・・
でも、うっとうしいほどなんて私・・・・・!」

ジャンプは目をつむった。
本音、か。
サンデーの言葉をかみ締めながら、心の隅っこになぜか屋上のフェンスを背にしたマガジンが浮かんだ。
まあ、今回くらいはあの女を認めてやってもいっか・・・。


109 :
「ね!サンデー」
サンデーを真正面に据えて明るく言った。
「オレ達、仲直りしよっか!」
「え?!」
サンデーの表情が真っ白になった。
「言っとくけど、まだ本音時間中だよ?
仲直りしたい?」
「う、うん、うん!」
「それはなんで?」
「あ、あの・・・。
ジャンプちゃんが大好きだからです!嫌われたらとっても辛いからです!!」
本音らしい。
こんなにサンデーがこんなにまっすぐ目を据えて、ハキハキ物を言うのは聞いた事無い。
いつだって思慮深く考えて物を言う。

ジャンプは幸福感にため息をついた。
「ね、仲直りにキスしよっか」
「キっ・・・・・・・・・・・」
サンデーの驚きの声はジャンプが遮った。
手でふさいで、しー、ともう一方の手で合図する。

110 :
 遠くで教師の声と、それに一斉に上がる笑い声が聞こえた。
「イヤ?言っとくけどまだ本音時間だよ?」
「・・・・イヤじゃないです・・・・。でも・・・・」
「でも?」
「キスは・・・あ、でもマガジンちゃんとは普段してたり・・・?」
「あはは、ファーストキス」
サンデーの首から一気に血が昇る。
「あ、あの、それって大切なんじゃ・・・」
「うん、だから。
オレ達は」
ここでジャンプは声を落とした。
「これからもっともっと仲良くしなきゃいけない」
「ジャンプちゃんと・・・」
「そ。これからもっともっともっともっと、分かり合って、仲良くして、信頼で結ばれるんだ。
しかも一生」
サンデーは幸福そうな、うっとりとした表情になった。
「いっしょう・・・」
「これから、一生、本音を言い合うようにだ」
「え・・・」
「ああ、無理はしなくっていいから。急にはいそうですか、ってならないのは分かるし。
だから、まず、キス。あんたはした事ある?」
サンデーはただ、うっとりとした表情でゆるい動作でかぶりを振った。
「じゃ、お互いはじめて同士!
一生の誓いってくらいの気構えでいるように・・・ね、仲直りのキス」
サンデーはただただ頷く。
「・・・一生だよ?
はい、目、つむって」
「・・・・・」

111 :

サンデーはどうすればいいのか分からないようにおどおどそのまま目をつむる。
ジャンプは可笑しいような愛しいような・・羨ましいような複雑な気持ちだった。
オレは昔から教育係がくどいくらいに教えてくれたから、知識ぐらいはある。
ジャンプはサンデーのほっぺたを手で包んで、キスしやすいように上向けて傾けさせた。
えーと、どうやるんだっけな。

112 :

 しーんとした廊下や階段に授業の音だけ響く。
ジャンプは最初はずれないように丁寧にゆっくり唇を寄せた。
サンデーが可笑しいくらいに息と一緒に体を上下するから、そんな場合じゃないのにちょっとだけ笑った。まるでしゃっくりじゃん。
そのうち、だんだんコツがつかめてきて、角度をちょっと変えたり軽く吸ったりした。
・・・サンデーはぼーっとしながらされるがまま・・・と言うかジャンプのやってる事にだんだん合わせだす。
舌、入れたら声上げられるかな?
 遠くでまだ授業の音が止まない。
どうしよ。びっくりして声あげられたらマズイな。
と、考えていたら、サンデーが手放しにしていた両手でジャンプに抱きついた。
薄目を開けると夢中になってるらしい。
あんなに自分を失わない彼女ののどが軽く、ん、とか甘えたような声を漏らす。
これはイケたりして・・・・・。

113 :

授業が終わると、開放されたように少女たちがおしゃべりに夢中になる。
その時、教室を追いやられたジャンプとサンデーが帰って来た。
緊張が一瞬だけ走ったが、クラスは間もなく興味を失ったように自分たちのおしゃべりに戻った。
帰ってきたジャンプとサンデーにとげとげしい空気はない。
どころか・・・そういえばジャンプちゃんが誰かと手をつないでた事ってあったっけ?ま、いいや。

「おねーさまはアレ見て、どう思いますかぁ〜」
そんなに仲がいいわけじゃないから、珍しい。
マガジンがガンガンの席に来て、机にもたれかかった。
「あら、たぶんマガジンちゃんとおなじよ?」
うふふ、と笑う。
でもちょっと見てる方は恥ずかしいかしら?
ゆったりと首をかしげる。
今までジャンプちゃんになんだか違和感を持っていたけど・・・そうか。彼女、いつもヘンに緊張してたんだ。
今はその身構えた様子がすっかりなくなって、サンデーの手を握って笑い声もとっても自然。
威嚇するみたいな声色でもなくなった。
あー、恥ずかしっ。
マガジンはガシガシ頭を掻き毟る。
あーあ、自分でやらかしちゃって後悔はしてないけど、アレはあからさますぎるわぁ。
ガンガンが教室から追いやってくれて、こりゃ正解だったよ。
サンデーは今まで自分をきちんとコントロール出来てこっちがもどかしい位だったのに。
どーも壊れちゃった?ジャンプをぽやんと見上げて、その視線も・・・。
「あーっ、もう見てらんない!」
八つ当たりするようにガンガンの机をだんっと叩く。
ガンガンは涼やかに笑って自作品を腕で覆う。
そこへ・・・

114 :

「あー、おねーちゃん、いーけないんだぁ!」
初等部からか?
サンデーの妹のコロコロちゃんがここだけ険悪な空気の先輩、二人のすぐ横の窓から頬杖を付いてる。
「あら?コロコロちゃん?」
「あ、ガンガン先輩!」
人懐っこい笑顔で悪びれもせずに窓枠にのしかかる。
「いーけないんだ!おねーちゃん達、いっつもボクにばっか叱ってるのに・・・」
ちょっと羨ましそうにジャンプとサンデーの二人を見てぷー、と膨れる。
「あははっお前はサンデーちゃんと違ってやんちゃ娘だからなー」
「言うな!暴力オンナ!」
「なーんだとぅ〜」
「おい、マガジン。
お前、おねーちゃん叱ってよ。おねーちゃん、いっつもボクばっか叱るんだよ?」
「先、輩、わぁ〜?」
「ひぇ、ひぇんぱひ〜」
ほっぺたを引っ張られるコロコロ達をガンガンは微笑ましく見ていた。
「で?」
「いっつも集英家の事じゃきびしーのにさ、学校じゃ自分だってあんな・・・」
そしてもう一度羨ましそうに姉と従姉を見る。
「へー。仲良くしちゃダメって法律出来た?それって天テレぇ〜?」
「うっぜーな!じゃなねーよ、ボク達の家族は・・・」

115 :

そこで。
ガンガンがコロコロの頭を優しくなでながら
「そうよ」
と自然に遮った。
「学校だったら仲良くしていいの。だから今のは見ない振り。ね?」
しぃ、と自分の唇に人差し指を立てるのに、コロコロはハーっと感心のため息をついた。
「やっぱガンガンおねーちゃん、あったまいー!」
マガジンはその口調に何か感じ取ってコロコロから視線をはずして前に向き直った。ちぇっ。
「じゃあさ、ボンボンとももっと仲良くしていい?下ネタとか言っていい?
あ、 そだ。マガジンー・・せ、先輩。
マガジン先輩、ボンボン知らない?あのコ、最近ガッコ来ないんだぁ」
マガジンはそのまま痛そうな顔をした。
コロコロはそんなに頭の悪い娘じゃない。
何かを感じたのか、マガジンにはもう話しかけない。

116 :


「ねー、ねー、ガンガン先輩はボクが中等部になる頃にはおねーちゃん達のお説教、減ると思う?」
「さあ・・・」
ちょっと辛そうにサンデーを見やる。
でもそこにあるのは心底幸せそうな二人の従姉妹同士の笑顔。
「でも希望は持ってもいいと思うわ!
私は持ってもいいって、今日、確信した!うん!!
そうだ。コロコロちゃん、おねーちゃんとお友達になってくれない?」
「わー!なるなる!絶対になる!」
「うふふ」
「うへ、酔狂〜」
「うるせー、マガジン、それよりパンツ見せろよぉ」
「・・・・・ハハハ、チビのくせにに急ぎかぁ?」
「うわ、暴力サイテー!」
「あらあらぁ」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

          THE END ォオ!!

        出版界の女子たちへの応援のお便りは最下記のあて先まで。
               日本の出版界を担えるのは彼女達だけ!!

117 :
短くまとめる才能がなくって長々とすいませんでした
しかも、偏見部分ばかりがダラダラ続くだけで申し訳ありませんでした
集英社と小学館の関係が一番ヒドイですね
勝手に「こうだったら萌えるな〜」を捏造しました。ごめんなさい
すべての知識もあやふやだし、これは我ながらヒドイ
俺の「例のアレ」を踏み台にしてぞくぞくと職人さんがスレへ集る事だけを祈りまして

「このスレにキミが好きな雑誌の応援妄想をぶつけよう!
       妄想が書き込めるのはこのスレだけ!!」
と、締めさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした。

118 :
悶絶した(*´д`)
あげとく

119 :
>>65
どれ宛てか迷ったけど、お詫びはしとく立場でしたね
来た早々、アレな代物晒し、申し訳ありませんでした;
このスレ、色々楽しめそうな気がします
個人的にはちゃおちゃんと少女コミックちゃんの話なんて読んでみたいなあ、とウィキペディア読みながら思ったのですが
>>39
亀ですが
来られないでしょうかね。もしかして、とVIPへも探しに行ったんだけどなぁ

120 :
>>61お疲れ様
途中解読出来ない部分が有ったが、ちょっと一瞬ホロリと来た

121 :
>>120
いえいえ、こちらこそお疲れ様でした
解読の部分は、もしかして一番はあの部分かな・・・ひとつ分、投稿がすっぽ抜けちゃったんです;そこかも?挙げだすとキリがないのですが
なのに読んでくださってありがとう!お声も掛けてくれてとっても嬉しかったです

122 :
わっふるわっふる

123 :
わっふるわっふる

124 :
シリーズ読みたい

125 :
一緒にわっふるわっふる
思えば立て主さんが設定してない事までアレコレしちゃってさーせん!
つたない玄関マットでさーせん!でも踏みつけてくれ、わっふるわっふる

126 :
ここのスレ主は過疎板で立て逃げしたクズだから無視するべき

127 :
各漫画雑誌を百合でイメージすると・・・みたいなレスだけじゃダメかなあ

128 :
>>127
お願いします

129 :
>>128
どうもありがとう
SSも嬉しいんだけど、議論(?)みたいなのも楽しいなって
当方、競争しあって反目してるんだ、ってみんなが思ってるけど
実はみんなが見えない所でこっそり手をつないでいる間柄は萌える。秘密の関係
これって、なかよしちゃんやりぼんちゃん当たりかな?

130 :
少女コミックちゃんとちゃおちゃんの関係に萌えたんだけど、
読んだ事ないからサッパリ
詳しい人、この2誌で語ってくれないかなあ・・・

131 :
このスレにまだ住人はいますでしょうか?
ウィキペディア読んでいたら、少コミちゃんとちゃおちゃんに萌えてしまいました
SS書き込んでしまったら住人さん的にいかがなものかお聞かせくださると嬉しいです

132 :
がんばれー

133 :
>>132
お返事どうもありがとう。まだ住人さんがいてくださったんだ、嬉しいです
今回も気狂いしか書けませんが、ミスだけはしないようがんばりたいです^^

134 :
まず謝罪からはじめさせてください
前回は気狂いを書き込んでしまって申し訳ありませんでした
彼女たちがおなじ学校ともクラスとも設定されていませんでしたね
でも「そうなんだ」と思い込んでしまっていたのでああなってしまいました
反省しています
そして今回の話にもマガジンちゃん・他がいてくれないと厳しいです
もうこのお話は61の続きって事にしといてください
2人きりではお話を回せないスペックの低さをお詫びさせてください

そして前回よりも謝罪したいのは2誌を読んだ事がないのに萌えてしまった事です
なのでまたウィキペディアとこちらのレス頼りの妄想です

少女コミック→読んだ事ありません、ごめんなさい
       でもすごい雑誌だったんですね。サイボーグ009、大好きでした
ちゃお→この間、親戚の子のを奪って読みました
    面白いですね。さすが小学館です

こんな有様なので、前回よりもヒドイかと思われます
でも妄想がふくらんでしまいました。書き込ませてください!

135 :
「少女コミックとかちゃおなどで百合」

ここを開いてくれたお友達!元気かなー?
・・・・・はぁーい。お返事ありがとう。
ご本の市場は厳しいらしいけど、みんなの元気なお声で、出版不況も降参、降参って逃げちゃいそうだね。

さて、前回したお話は覚えてるかな。
ジャンプちゃんとサンデーちゃんのお話です。最後まで読んでくれたお友達、ありがとう。
でもね、それぞれのお家にはたくさんの娘がいます。
小学館サンデーちゃんにもたくさんいたよね。
今回は、その小学館家の末の方の娘、少女コミックちゃんとちゃおちゃんのお話です。

136 :
前回のお話は知らないよおってお友達もいるだろうし、一緒になってもう一回だけ聞いてね。
小学館家は日本のとある出版系列ってことはお話ししましたね。
日本児童、とりわけ教育に熱心な家の人達なんです。本屋さんでご本を見つけたお友達はいるかな。
血族、全員で一生懸命本を作ってるみたい。
貴方の家は教科書。貴方の家は小説。貴方の家は経済、貴方は医療、貴方は保育・・・
すごいねえ。
中でもサンデーちゃんのお家、小学館さんは子供向けの雑誌を作ってる家柄でしたね。
このお家もみんなを喜ばすのを仕事にするのに、これまた最適と言うくらいに穏やかで他人を思いやる優しい人達ばかりなんだよ。
しかも血筋なのか、子供たちがするむずかしい疑問だって、忍耐強く理解させるのもニコニコと嫌がりません。どころか楽しく理解できるようにみんなで工夫を凝らすのだって嬉しそう。
お手本にしたいような、教科書通りのお家。

・・・・・そんなお家に、今、どんな想像をしましたか?
今日のお話の、少女コミックちゃんとちゃおちゃんのお家だよ・・・・・

137 :

これって軽いイジメじゃん。
少女コミックは長い髪をおおげさにかき上げながらついでに舌打ちをした。慣れてるから誰にも聞こえない程度に。
ここは千代田女学院。
日本の出版界の女子が集まるのにしっくりと来る学校だ。
古い校舎に創立当事の制服。ただようクラッシックさ。
ただ少女たちの話し声は華やかだが。
あちこちで上がる笑い声。
高くて、華々しい。高等部らしく子供と言うより、少女らしい声。
髪型やソックスも色を添えているか?自由な部分で自分をアピールしようと、一生懸命でまるで競いあう花のよう。

おどおどともう一度呼ぶのは級長のマーガレットちゃんだ。
「少コミちゃん?」
少女コミックだと長いので、大抵の人間は簡単にそう呼ぶ。
・・・教室の中、少女コミックちゃんは香りまでアピールしていたが。
ジバンシーのトワレ。ソックスのポイントはプレイボーイ。・・・ちょっと周りからは浮いている。
「少コミちゃん、修学旅行、どうする?」
呼ばれた少コミちゃんはイライラ、イライラ我慢した。
あーあ、ほんっとヤんなる。梅毒みたく扱わないでよ。
「・・・・・」
「あのさ、来年は受験だよね?だからこれが最後のみんなで行く旅行なんだけど・・・」
はは、梅毒と行っちゃ、伝染るんじゃない?
「特にプリンセスちゃんは国公立クラスになるんだしさ!もうみんなが揃う事なんて・・・・・」
そこまでだ。
少コミは立ち上がった。
スクールバックを持って、ただ無言で相手をにらむ。
マーガレットはびくっとおびえて声も出ない。
それを確認してから少コミは教室を出た。・・・・・背中で聞こえる華やかな笑い声が怒りを後押しする。
あーあ、もう全員ね!

138 :
言いたいならハッキリ言えっつの。
少コミは足早に学院を後にした。
足音の荒さが聞こえてきそうだ。このムスメ、なかなか威勢がいい。
クラスのヤツら、みんなキライ!!

迎えは来ない。
学区内に家はある。しかも学区内は都内でも治安がいい住宅街だ。
特に少コミちゃんのお家の小学館家は、誰であろうと公共機関を使うようきつく指導してある。

クラスのヤツら、みんな大っキライ!
全員の笑顔が浮かんで歯噛みをした。
アイツ等、ぜーいんね!ねばいい!!
華やかな笑い声が腹立つ。
そうですか、あたしはいかにもエスカレーター組ですか。
・・・あんたら、あたしに勝てないクセに。初等部からもらってきたトロフィー、校門にあるの見えないんですかー。

少コミは緑が多い住宅街を足早に自宅へ向かう。
ちょっとだけ、行きつけのクラブと迷ったが・・・。
こんな日はあのガキに限る。
なんで教師もあたしに眉ひそめるみたいな扱いなの?いたら困る、みたいな。
あたし小学館家の娘よ?
成績だって上位なの!・・・・・ほぼ、一位なの。
その辺の公立の娘と違うの!!

139 :

自宅までの都バスに乗る。
みんなが注目する。名門女学院の制服の飛びっ切りの美少女。
年に一度登校すればいいだけのお台場にある通信制の学校と比べてごらんなさいよ。あはは、一目瞭然。あそこの学生、小学館家の敷居もまたげるのお?
・・・ただ、あまり品格とかは感じないが。
バスも老人が立っている中、無言で携帯いじって降りる足取りも荒々しい。


140 :
少コミは無言のまま自宅へ向かう。
重厚な門扉。使用人たちが少コミに気付いたがすぐに関心が失せたようだ。

それすらもカンに触る。
なので子供部屋へと向かう。
叩きあけるように開けたドアは・・・
「ちゃお!」
自分の部屋じゃない。
「ちゃお、いないの?!」
チッ、と今度は人を気にせずに舌打ち。
いないなら部屋で待ってればいいか?初等部は帰るの早いはず。コロコロとでも遊んでるの?

そんな少コミにおずおずとした声が掛けられた。
「お姉ちゃん・・・」
少コミが振り返ると、いつものおびえる様な上目遣い。
「ご、ごめんね、えーと、今、教育係り長さんがお洋服をね・・・」
捨てられるのをおびえる様な、媚びるような上目遣い。
うっわー、最高に苛立たせてくれるわぁ。やっぱ腹立ってるときには、これが最強だわあ。

141 :

「お忙しい?」
険を含んだ言い方にちゃおはおびえる。
「あたしとオベンキョする時間ないくらい?」
ちゃおの顔がすぐに晴れる。
「ううん!忙しくないよ!」
なんつー操作しやすいガキだ。
ちゃおには言い含めてある。
 勉強、と言ったらそのままの意味の「勉強」。
 オベンキョ、と表現したら・・・。

妹が後ろ手で自分の部屋を閉める。鍵も。あはは、このオンナ馬鹿だ。
そしてまた命令を待つ犬みたいな目つき。
「教えて?」
後押しするように少コミにせがむ。
少コミが目線で指すと、すぐにベットに腰掛けた。
「どうすんの」
「・・・」
「こないだどうしたの?」
ちゃおはもう疑う事ないみたいにベットに右かかとを掛けてから・・・
「ちょっと待って」
カーテンを自分で閉める。躾にソツ無しだ。

142 :

「面倒だから自分で脱ぐ」
ちゃおは迷ってからまず下から脱いだ。
綿素材のおぱんちゅとでも表現したいような幼児下着。うっわ、なにもかもが腹立つわあ。
なのに・・・。

ばっさりと上着を脱ぐ、頬は血が昇ってほんのり赤い。
息もすでにあがっている。
で、見上げてくる目は潤んでいる。
「早くぅ」
教えろ、とせがむその目は信頼しきって疑いがない。
あっははー。外の連中はこのムスメのこんな部分、誰が知ってるのやら。

143 :

小学館ちゃおは、正直、スゴイ。
まだ初等部なのにその成績は学院で知らない者はいない。
しかも最近はモデルじみた事までしている。
ちゃおちゃんの着ている服だと同い年に飛ぶように売れる。
一種のブランドだ。
おない年の女の子はみんな右ならえ状態。
ちゃおが着ている今年の新作、次の日、完売。ちゃおの付けてるアクセは問い合わせ到。ちゃおの持ってる文具はみんなが揃える。

そんなちゃおに態度を改めない人物は、当然いない。
世間はもちろん、学校だろうが、教師、書生、教育係り・・・・・家族まで。
・・・そこが少コミの我慢がならないところだ。
・・・・・昔は・・・。
少コミは視線をわずかに落とした。
それこそ、あたしが主流を作り出す、みたいに活躍していたのに。
誰もあたしを知らないヤツなんていなかった。認めない人なんていなかった。学院にあるたくさんのトロフィーは・・賞状は・・・
・・・なのに・・
・・・・・なのに最近のあたしは・・・・・

144 :

「おねえちゃぁーん」
ちゃおが上ずる様な声を上げて、少コミは我に返った。
「もうらめぇ・・・・・」
シーツをぎゅっと握り締めている、小さいぷくぷくした指よりも少コミはもっと強く握り締めた。
みんなみんなこのオンナが持ってったんだ・・・!
少コミは更に手に力を込める。
だからだから、あたしは、このオンナから搾りとれるだけを取り上げてやる。
大事なものはみんな取り上げてやる。
我が家が抱えてる書生たちの態度まであからさまだ。みんなして、ちゃお様、ちゃお様ってコイツ付きになりたがって・・・。
まだ毛も生え揃ってないつるつるさが憎らしい。

今日も確認の為にちょっとだけ・・・。
ちゃぷ、と音と一緒に
「・・・あんっ」
・・・・・やっぱきれいなまんま。だーれも中に入った跡がない。
だれもこの子を汚してない。

145 :

「だめだよぉ」
あはは、でもほんっとーに汚されてはないかなぁ?
「ど、どうしよう、早くぅ」
「こっから先は自分で」
少コミはそこでちゃおを突き放した。
少コミも息が上がっていたが、あえて腕を組む事で押さえつけた。
ちゃおを見下ろす。
「・・・え」
ちゃおはもじもじと太ももを閉じてこすり付けた。
「前、教えたでしょ?出来ないの?」
「で、出来なくは・・・」
更に顔を赤くしてもじもじしはじめて少コミは内心爆笑だ。
あはは〜、もう覚えたか。
「『復習』したんだ?」
「・・・・・」
声は聞き取れないが、頭はこくん、と頷く。
「何回?」
ちゃおは今度ははっきり顔を赤くした。
「、は、な、何回って・・・」
「一週間は経った?天下のちゃお様はあれから何回、復習したのかなぁ〜?」
「お、お姉ちゃ・・・」
「言えない?言えないよねえ、雑誌見てるファンに見せられないしねえ。誰かに知られたらどうしよ?」
「・・・・・」
「パパは?ママは?書生は、教育係り長は知ってるかなあ?」
「・・・・・〜〜〜」
「・・・お姉ちゃんにも言えない?」

146 :

そこでちゃおははっきりと顔を上げた。
「お姉ちゃんなら言えるよ!」
それから意気込むように
「3回!3回だよ、一回目はね、教えてくれた次の夜。次の日、お姉ちゃん帰りが遅かったでしょ?だから帰ってくる前に寝たんだよ。
その時。明かり消してからもう誰も起こしに来ないだろうなって30分かな。
待ってからまず触ったんだけど上手くいかなくって、でも触りながら太ももも使うと上手に出来る事分かったんだよ。それでなんとかお姉ちゃんが教えてくれた通りに・・
・・・やっぱりお姉ちゃんはすごいね、私、何度もいじったんだけど・・・」
あんまりに立て板に水、ってくらいに言われて少コミは気圧された。
「わ、分かった分かった」
両方の手のひらで制する。
「お姉ちゃんは・・・なんでも知ってるよね」
あー、さっき躾にソツなし、なんて言ったけど・・・。
「やっぱりすごいなあ。お姉ちゃんはすごいなあ」
こういうのを・・・調教は万全って言うのかあ?
自分を熱心に見上げてため息をつく妹に少コミは思った。
ま、いっか。困る事はないでしょ。なんでも使える物が多いに越したことはない。


147 :
ちゃおは鼻歌まじりでスクールバックから教科書と文具を一緒に取り出した。
初等部の教室はヒヨコの飼育箱をひっくり返したようだ。
あっちできゃあきゃあ、こっちできゃわきゃわ忙しい。
これ、好きなんだよなあ。
ちゃおはシャープペンを目の前にかざしてうふ、と笑った。
教育係がなんでも揃えてくれてほんと嬉しい。
しかも私の好みも知ってるみたい。かわいいピンクと水色の取り合わせ。

「うっわ、またお前、そんなおこちゃま文具持ってぇ〜」
仲のいいコロコロがさっそくつつきに来た。
ちゃおは実は微笑ましい気持ちだった。
「えへ。おこちゃまじみてるかな?」
「決まってんじゃん、アンタはボクよりもお・こ・ちゃ・ま!」
この二人の成績は初等部では肩を並べるようだし、おなじ家柄なので性格は似てはいないが仲はいい。
ちょっとだけ血は薄いがほとんど姉妹のように育った。お互いの実家だって、囲いがあるんだか、ないんだか。

148 :
「こーんなおこちゃまグッズ、いいかげん恥ずかしくて持てないよ。
えーっと、なんだっけな、ほら、クール!とかカッコイイ!とかそんなカンジ?」
「うんうん」
「そーゆー大人っぽいのがやっぱね!
そうゆうの目指して、フリルなんて卒業、卒業。
幼年部のコたちに任せとけばいーの!ってゆーかさぁ、ちゃおってそーゆーのばっかじゃん。ボクは恥ずかしくって買えないよ、そんな服、お店も入れなぁ〜い」
「あはは」
ちゃおは和むような気持ちでコロコロに相槌を打つ。それから
「コロコロちゃんはオトナっぽいよねー」
言葉も添える。声色に不自然さはない。
「大人に決まってるよー。ちゃおって妹みたい、ちっこいし!」
ケタケタ笑うコロコロは知らない。
悔しそうにふくれたちゃおが、いろんな余裕からそれを出来ている事を。
「・・・ちゃおさぁ、知らないでしょ」
コロコロは声を落として、ちゃおの目に視線を据えた。
「大人になったらそんな服着れないよ」
「へぇ」
「着れるの、ボクら・・いや、ちゃおくらいだね。
大人になったら胸おっきくなるんだぞ。
お母さんみたいなの」
「へぇ」
「信じれる?なんでだと思う?
ちゅーするためなんだよ?
恋人はちゅーばっかするんだよ?それって気持ちいいからなんだよ?信じられないよねー!手をつないでるだけでもすごいのに、誰もいないとちゅーするんだよ。ドラマみたいな。でさ・・・・・」
身振り手振りで熱心だったのにコロコロははっ、と
「べ、別に興味あるとかそーゆーんじゃないぞ。今のは大人の知識のひとつだよ」
「う、うん・・・」
「アンタだけ特別ね。他にはシィー、だからね」
それにちゃおは優しくうなずく。
コロコロちゃんって可愛いなあ。

149 :

そのコロコロはちゃおの事をじーっと見た。
「ボクのおねーちゃん、アンタの事、好きそ〜」
発見したように言う。
「・・・え」
「きっとおねーちゃんアンタの事、気に入るよ。
あ、おねーちゃんっていっこ上のサンデーお姉ちゃんね。
サンデーお姉ちゃん、ボクにいっちばんお作法とか道徳とかお行儀とかうんぬんうんぬん、だぁーい好きなんだもん。
サンデーお姉ちゃん、お前みたいな素直でお説教はきちんと守る子って好きそ。
ヤっだな〜。中等部に上がって、あからさまにボクよりヒイキされたらボク、ちゃおの事なんて・・・」
そこでちゃおはやんわりと遮った。
「・・・・・べつに私、ヒイキとか興味ないし」
ちょっと声は低かったが。
「コロコロちゃんのお姉ちゃんも取ったりしないよ。べつに。
コロコロちゃんはヒイキとか興味あるの?」
「あるに決まってる!」
コロコロはぶー、とふくれる。
「先生だってヒイキの生徒には優しいし、かわいがるもん。特別扱い?ヒイキされた方がトクに決まってんじゃん、ヘンなの興味ないとか・・・。
あ。またまた発見!サンデーお姉ちゃんは絶対、ちゃおのそーゆー発言、大好きなんだよ?でさぁ・・・・・」
コロコロがきゃわきゃわ、きゃわきゃわ話し込むのにちゃおは笑ってあげられなかった。
それって好きって意味かな?
私、好かれてるのかな?そういえば・・・・・


150 :

・・・ちゃおの下校の足取りは遅かった。
そういえば私、お姉ちゃんから好きって言ってもらった事ってあったっけ?
・・・私はお姉ちゃんの事しか見てないのに。お姉ちゃんの事ばっかりいっつも考えてるのに。
今朝も早く目が覚めたからちょっとだけ『復習』したんだ。
ちゃおはスクールバックを前に持ちかえて、ちょっと顔が熱くなるのが分かった。
・・・やっぱお姉ちゃんみたいに上手に出来ないけど。すごいな、お姉ちゃんは何でも知ってて。

「あら、今帰り?」
歩いていると、横から声がした。
「サンデーさん・・・」
「コロコロと遊んでいかなかったの?
いつも相手してくれてありがとう。あの娘、元気すぎるでしょ?」

151 :

優しく顔を覗いてくれるのは、コロコロの姉のサンデーだった。
帰り道がほとんどおなじだから一緒になったんだ。
ちゃおはこのお姉さんは嫌いじゃない。むしろ・・・
「ううん、コロコロちゃんのそういう所、大好きです」
「やだ、無理しなくっていいのに」
くすくす、笑うのを見上げて思う。
好ましく慕っていたし、しかも最近、急に大人っぽくなって・・・
あれ?違うな。落ち着いた?って言いたいんだけど・・・でもこの言葉って合ってたっけ?

このちゃおの感想は、実は的を得ていた。
中等部の制服が浮いていたようなこの間までとは違った。
地に足の着いている、肝の据わった様子。しっとりとした空気も生んで、元から清潔そうな彼女をより美しくて好ましい先輩に思わせた。
・・・理由はちゃおには分からなかったが。

152 :

「あの娘から元気、ぶん取ってくれない?
そうだ!ちゃおちゃんがやっちゃって。こう、えいやっ、って。元気すぎて家でもみんな手を焼くのよぉ?」
「そんなあ」
明るく笑ったちゃおに、
「・・・今、元気、要らない?あのコは余りすぎ!引き取ってよ〜」
と、心配りをされて好意は確定になる。
そういえば歩調もずいぶんゆっくりにしてくれてる。コロコロちゃんが無条件でなつくのもうなずけちゃう。
「サンデーさんは部活は・・・そっか、入ってないんですね?」
「そうね。図書室の当番と・・
付属図書館は来た事ある?本の入れ替えの時は結構、遅くまでかかるのよ?」
「わあ、すごいんですね!」
「うん。将来、司書の資格だけでも取りたいの」
きっと資格だけになっちゃうだろうけどね、と付け加えた。

153 :

緑が深い住宅街の午後は時間もゆっくりだ。
二人の歩調のように。風向きだけがちょっとだけ変わったが。
「どうしてですか?サンデーさんならきっと・・・」
「ううーん。お父様やお母様が許してくれないわよぉ」
苦笑して首をすくめる。
「その代わり、出来るだけ素敵な、我が家を思いやってくれるお方を選んでくれると嬉しいかな。信用できる家柄の」
言葉の外に何かを感じてちゃおは聞き流すだろう事にあえて食いついた。
「・・・・・サンデーさんのパパとママが?」
「うん。きっとお父様とお母様に任せれば大丈夫だけれど」
ちゃおはサンデーが不安なさそうに笑ってるのに、余計に不安が抑えられなかった。
「す、好きとか・・・」
「?」
「好きとか関係なく、ですか?」
胸がどきどきするのがちゃおにも分かった。
「サ、サンデーさんの気持ちは?その、だって、こ、恋とか・・・・・」
サンデーは珍しく言葉に詰まった。
困ってしまったようだ。
気まずい空気も流れくる。歩きながら、言葉をあれこれ選んでいるような間も。

154 :
「誰かにお話できない?」
しばらく歩いてから、ちゃおの背丈に大げさに合わせるようかがみこんだ。
「私たち、せっかくおなじような環境だもの。ちゃおちゃん、学院にお友達がたくさんいるんだし・・・。
そうだ!コロコロと一緒の学年さんだから、ちゃおちゃん、いい相談相手になってあげてくれないかな。
一緒の学院で、一緒の学年さんなんだから・・・きっと、あの娘とは、話が合うと思う。
ナイショの事だってどんどん喋ってくれていいのよ。あの娘、物覚え悪いから次の日には忘れちゃうわ。ふふっ」
ちゃおは明るく話すサンデーにため息を隠せなかった。
ダメよ。
コロコロちゃんはちっともオトナじゃないもの。あの娘からオトナの匂いなんてちっともして来やしない。


155 :
ちゃおが家に帰ったら教育係り頭が待ち構えていた。
「ちゃお様、新しいデザインのお洋服が届いております」
「・・・・・」
ちゃおは元気なくうなずく。
それにおかまいなく、
「新作をそろそろ雑誌で発表しないと。メーカー側も待っておいでです。
文具もそろそろ、入れ替えお願いしたいのですが」

「え?」
ちゃおはそこでやっと返事を返した。
「あれ・・気に入って・・・」
「ですが、我が家と提携している企業からの要請です。
新しいキャラクター文具を展開したいそうです。
きっとちゃお様もお気に召すと思いますよ?ちゃお様のお年頃の女の子の好みをチームを組んで研究を重ねてですね?
・・・・・」
ちゃおはなんだか思うところがあったようだ。
「・・・今日は疲れちゃったんだけどな」
明るく顔を上げて教育係りたちに詫びるように、
「学院でね?・・・そう!今日の体育、徒競走だったの。もうコロコロちゃん、足速すぎ〜私、手をひっぱられちゃって・・・・・
・・・」
ちゃおの言い訳に、全員があまり隠そうともせずに失望の表情になった。
言い訳内容にもあまり興味なさそうだ。ただ不満そうに、
「・・・・・そうですか。では、ご気分がよろしい時にでも」
「うん!お願いね!みんなの用意してくれるお洋服も文具も大好き!」
明るい笑顔を作り続ける。
なんだかこれ・・疲れるなあ・・・・・。

156 :

子供部屋の、自分の部屋に入る。
扉を閉めて、ふぅ、とため息をつく。
「あーら、お疲れ?」
聞きなれた声
「お姉ちゃん!」
ちゃおの顔が晴れた。
「そんなわけ、ないっか。ちゃお様はみんながちやほや、面倒みてさしあげてるしねーぇ?」
ちゃおは本当は言いたい事があったけど、我慢した。
それよりもお姉ちゃんに捨てられるほうがよっぽど怖い。・・・こんなすごいお姉ちゃんに。
「オベンキョ出来ないくらいお疲れ?」
「まさか!」
スクールバックを勉強机に放り出して、ちゃおは姉だけを仰ぎ見つつ・・・

157 :

「・・・・・あんたさあ」
「?」
少コミは以前から思っていた疑問を口に出した。
「あたしの言うなりになって、それで人生おしまい、でオッケーなんだ?」
飽きれたように腕を組んでちゃおを見下ろす。
窓からの逆光にちゃおは目を細めた。
「オッケーだよお」
えへ、と笑う。
「私、お姉ちゃんの言いつけはきちんと守るもん」

うわ、キモ。
少コミは思わないでもなかった。
・・・自分が仕込んだにもかかわらず。
「一生?」
「うん!一生!」
「でもさ」
少コミはちゃおに近づいた。
「あんた、あたしが外でオトコと遊んでるの知ってるでしょ?」
遊んでる、に力を込めて少コミは言った。
「で。あんたはあたしの言うなりで、あたしに染められて、それで一生終わってもいいって訳ね」
「もちろん!」

158 :
「一生をお姉ちゃんが染めてぇ」
そう言うちゃおは千切れんばかりに尻尾を振ってご主人様を見上げる子犬のようだ。
この時・・・。
少コミの総毛は最高潮に達した。
隠さずに「キモッ」って叫んでから突き離そうとして・・・

「あっそ」
あまりの事に峠を越してしまった。
もうちょっと遊ぼ。
「それで、途中で私があんたに飽きたらどうすんの?」
ちゃおの表情が固まった。
「え・・・」

159 :
「あんたに一生、かかりっきりになると思ってるのお?
あはは、あたしにたっくさんオトコいるの知ってるんでしょ?その内、気に入ったオトコが本命になるんだろうねぇ〜」
ちゃおまで歩いたらそのまま顔を覗き込んだ。
「そしたらあんた、邪魔だし、もういいや」
ちゃおは制服のスカートをぎゅっと握った。飲み込んだ息は短い。
「は・・・・・」
「途中で放り出されたちゃお様はどおするのかなあ〜?」
「・・・・・」
「途方にくれる?
あ、ちょろちょろあたしに付きまとうのよしてねえ?あたしはあたしで忙しいしぃ」
まるでいたぶるのを楽しむように目を細めてにっこり笑う。
ちゃおの握った手が震えて・・・・しかも震えがしだいに全身に回ってきたようだ。止まらない震え。
そんな。そんな・・・。
「さ、オベンキョしましょ。あんたで遊ぶの楽しいし。ストレス解消には最高だわあ」
ちゃおの肩を抱いてベットに連れて行く。
いつもは喜んで足取りも軽いのに・・・・・ちゃおはまるで連行される、と言ってあげたいくらいだ。おぼつかない足取り。
魂が抜けたような、とはこんな状態を言うのか・・・・・。

160 :

・・・その日以来、ちゃおは自分でも何をして何を言ったかさっぱり記憶がない。
教育係り達があれこれと着せ替え人形みたいに着せたり替えたり、文具いじったり写真撮ったり愛玩犬連れてきて抱かせたり・・・・・
・・・ダメ。覚えてない。
あれから数日かは経っているはずだが。

今日もフラフラ、フラフラと学院を歩いていた。
「よお、ちゃおちゃん、裏口にどした?」
ちゃおははっと顔を上げた。
学院に併設してる資料室の、裏口に自分がいるのをやっと気付いた。
教えてくれたのは中等部の先輩だ。
「マガジン先輩・・・」
講談マガジンだ。裏口への階段に座り込んで雑誌を読んでいる。
資料室は学院併設だから、大学院生から幼年部まで誰でも利用する。
普段なら会わないだろう先輩にも会えて、人気の学生に熱をあげてるコなんかは実は重宝してる。
マガジンは横に置いてあったポカリを差し出して
「飲む?
もしかして睡眠不足?なんだっけ、飲んだら寝起きの俳優もシャキーンってなるヤツ。あれみたくなったりして」
そう言って、カラカラ笑う。
ちゃおはそれどころじゃない。

161 :

あ。・・・でも。
マガジンをじぃーっと見る。
そういやこの先輩は・・・
「マガジン先輩って、恋愛にお詳しいですよね」
マガジンはおや、とちゃおを見た。
初等部だっけ。
ちゃおの制服を確認。興味持つお年頃?
ちゃおはマガジンににじり寄るように
「マガジン先輩、今、お時間ありますか?」
「あるにはあるけど・・・」
「私の相談、聞いてくれますか?」
「ん?いいけど?」
マガジンは急に隣に座ったちゃおを見下ろして、ちょっとワクワクした。
なんだか面白そなニオイじゃん。

162 :


「マガジン先輩はとっても恋愛経験豊富ですよね」
あからさまに言われると、かえって爽やかだ。
「まあね〜」
「それって、おいくつ位からですか?」
「覚えてないなあ」
マガジンはすっとぼけてから
「ちゃおちゃんにはお姉さんたくさんいるんだし、オレに聞かなくってもお姉さん達に聞けば?」
軽く誘導。
「・・・・・それじゃ、意味ないです」
ちゃおは視線を落とした。
「ソトですませなきゃ。そういう事は」
マガジンは可笑しさに口元が緩んでしょうがない。
この学院、もしかしてすげぇ面白いんだ?
「で?」
マガジンは
「なんでおソトで済ませなきゃいけないの?お家の事情?」
「・・・・・そんなカンジです」
そっか。やっぱあの家はお堅いのか。

163 :

「それで・・マガジン先輩は・・・・・男の人と・・・キスとかした事ありますか?」
ちゃおの質問が、興味というよりも真剣さが感じられて、
「ん?なんで?」
「・・・・・男の人とのキスって気持ちいいのかなあって」
本当は更にその先が知りたいちゃおは、でも一生懸命に押さえる。
「あはは。ドラマとかで見て?」
「・・・・・それもそんなカンジです」
「知らなくっていいんじゃね?
その内にあんたに安心・安全・身元確かな殿方を当てが・・・
連れてくるんじゃ?おとーサマとおかーサマが」

164 :

「それじゃ意味ないんですっ!」
やっぱり真剣さが消えなくて、マガジンはミョーに後輩を持て余す。
「だから、自分で知らないと!ソトで!」
「う、う〜ん、でも知らない方が、値打ちあるって、たくさんこの世になくない?」
ポカリを一口飲んで、
「ファーストキスとか、ほら。知らないからこそ値打ちある、みたいな」
しょうがないから突っ込んだ事も言ってやる。
「需要と供給ぅ〜。
欲しい側は知ってるコよりも知らないコにお値段を高く吊り上げる。
ちゃおちゃんなんかは、まさに、ソレ。
なんにも知らないコ。まっさらなコ。だからみんなが高い値段を付ける。
このまま高い値段付けられっぱなしのがトクじゃぁ〜ん」
ケラケラ笑ったマガジンはこの時、ちゃおを軽く見ていた。
当たり前だけれど、理解できないだろうなあ、と。
なので意味を噛み砕いて教えてあげようとしたマガジンより先に・・・・・。

165 :

「・・・・・知って、そこで終わるんだったら私、それっぽっちですよ」
ちゃおの目はずっとマガジンに据えられたままで、そして声も真剣なままなので
「は・・・」
「きっと、そうなんですよ。
私、ちっとも魅力なんて感じない。
マガジンさんの言ってる通りに、周りが望むようになんにも知らされずにされるがまま、与えられるまんま・・・」
「・・・・・」
「それで一生を乗り切れたら、まだ、マシかもしれません。
まだマシ、程度ですけど。
もっとサイアクは途中でお仕着せしてくれる人達が私を放り出しちゃったら?
目も当てられなくないですか?
それこそ私、途方にくれちゃいます。なんにも知らないのに放り出されて。一人で。
それなら、知ったほうが残る物、まだあるんじゃないかって。
知ってしまって、後悔しちゃったぁ〜、とか、じゃあどうすればまた這い上がれるのかな?とかの、その・・知恵と言うか、工夫と言うか。
まだ私には残るんじゃないかって。比べてみて」

166 :

マガジンはちゃおを改めて見るような気持ちになった。

これが小学館クオリティー!
もう一度ペットボトルに手を伸ばしたのは唾ごと飲み込みたかったからだ。
このムスメも頭悪くねぇ〜。
悪くない、考えてる。初等部だし方向があやふやなだけで、考えようとしてる。
考える力を持っている。
一ツ橋グループ血筋、恐るべし。

マガジンはヒヨコがピヨピヨ鳴いてるの見てる気持ちをまず止めた。
ちゃおに向き直る。

167 :
「知りたい?」
「はい!」
「じゃ、お姉ちゃんと試してみよっか」
「え・・・」
「平気、平気。女の子同士のキスならファーストキスにカウントされないって。
だから、オレ、男の人役をやったげる。
ドラマとかで雰囲気分かるよね?」
ちゃおは途中でちょっと顔が曇ったが、後は真剣にうなずく。
「オレは男がどーやるか大体分かるから、それ、したげる。
それでまず、納得してみれば?
親族、同性、ノーカン、ノーカン」
「・・・・・」
「初級からやったげるから、ちゃおちゃんはそれで納得して、ステップアップ。オッケ?」
ちゃおは説得にいろいろ不満そうな表情をしていたが、マガジンはほぼ気にならなかった。
ま、初等部だし考え中か。
「・・・・・分かりました。それでお願いします」
「じゃー、まずは目をつむる」
ちゃおは素直に目をつむって、マガジンに顔を寄せる。
おお!なんだか気合を感じる。
笑いをかみしてマガジンはちゃおの肩辺りを持って唇を寄せて・・・・・。


168 :
けど、ちょと、待たぁぁぁぁーーーーーーー!!!
キスのはじまりから途中、最中、ずーっと、マガジンはツッコミ続けた。
体がきちんと続けてはくれるが・・・・
『知りたい』ぃ〜〜〜〜〜?!
「ん・・・・・」
知りたいって事は、それは知識がないっつ事だよね?!
ちょ、おま・・・!
その設定、無理あるだろッ。
そんなレベルじゃなくって、慣れている、とかじゃなくって・・・

「せんぱぁーい・・・」
うわ、舐めんなーーー!!おま、ちょ、舐めんな、そもそも舌出すな、おま、おま、ちょ・・・・・!

169 :

・・・・・一通りツッこむと、マガジンは冷静になった。
ああ、なるほど。
「んー・・・」
ちゃおをリード出来るほど冷静になった。
なあ〜んだ。つまりそーゆう意味か。
こりゃ、びっくり。つか、結論から頼むわ。

・・・ヒヨコにはヒヨコ語しか通じないって事?
じゃ。
マガジンは好奇心がじわじわ沸いてくる。
『誰と』はこちらで焙り出しますか!
マガジンはワクワクする気持ちを抑えられない。
訊ねても答えるかどうかは、さっきの会話のあやふやさで疑問なのは分かった。
じゃー、焙り出しましょ。
面白そうなニオイ、やっぱ、ビンゴ。

170 :

一通りを済ませてから、ちゅっと音を立ててマガジンはキスを終了した。
「ど?」
ちゃおに笑顔を向ける。
完璧に頼れる先輩、の笑顔。
「・・・はい・・」
ちゃおは納得がいかなそうな表情だ。
「今のは初級。ちゃおちゃん、ナカナカ筋がいいゾ!」
マガジンが適当に請合うと、ちゃおの表情が明るくなった。
「はい!」
「じゃ、初級編、ちょこっと豆知識〜」
ちゃおのぷくぷくした手をとる。さて、どうしよ。
「きゃ!」
ちゃおの指を口に含んで、丁寧に舐めてあげる。
小さい爪と指の際も、どんどん口に含んであげて丁寧に・・・
マガジンは上目遣いで訊いた。
「これは知ってた?」
「なんなく・・・」
ちゃおはぼんやりと答えた
「初級のキスの常識だぞ?」
「常識・・なんですか・・・?」
「そ。これで初級編、ステップアップ?」
やっぱりいい加減な事を言う。
まだぼんやりしてるちゃおに
「納得行かない?」
「いえ・・・」
「ん?」
「足の指じゃないんだなあって・・・・・」
この時のマガジンの心の中の可笑しさったら。

171 :

・・・と、言うわけでここ最近の、マガジンちゃんのご機嫌はいい。
鼻歌まじりに購買でポカリを買ってからそのまま資料室へと向かう。
足取りは軽い。
資料室なんて寄り付きもしなかった彼女が。どころか最近の常連。
何故かと言うと一番自由が利く、と見当をつけたからだ。
学院生なら大学院から幼年部までが出入り自由。
融通の利き、いいね。
しかも裏口を自分の縄張りにもする。
ここなら絵本目当ての幼年部もわらわら来ないし、たいがい一人になれる。
オレにご用事の方はこちらまで、と設定して・・・。

「・・・珍しいわね、あんたが勉学なんて」
舞台は作った。撒き餌もまいた・・・。
で、役者到着。
この時のマガジンの内心は、イタズラ成功!とやり遂げた感が一番だった。が、そ知らぬ振りで雑誌をめくり続ける。
「オトモダチも不思議よお?
従妹なんかは「もしかして読書に目覚めたんじゃ!」なーんて大喜びだけどねえ。そーりゃ結びたくっても結びつけれないわあ」
マガジンは、
「そっスかあ?」
相手をちらっと見てからすっとぼけた。
「!先輩に対して、立ち上がらないのって失礼じゃない?」

172 :

ま、妥当かぁ。
マガジンは高等部の制服を見て一人ごつ。
噛み付かんばかりににらみ付ける少女コミック。
マガジンはこの先輩についての記憶をさぐる。
わりと昔はスゴかったんだよね。
でも最近は・・・
「あんた見てるとムカつくわあ」
「そっスかあ?」
なるほど。このヒトなら初等部のちゃおちゃんなんて赤子の手をひねるよりも簡単かも。
「先輩を先輩と敬わないのがムカつくわあ。
そもそも、あんた達、最近、暴れすぎなのよ。ちょっとは大人しくすれば?暴れすぎなせい?その人を小バカにした態度。
あんたなんてパンツ見せてればいいのよ。
立ち上がりなさいよ!立ち上がって今日のパンツ開帳しなさいよ。
目覚ましテレビのコーナーみたいよねー!『きょうのパンツぅ〜』」
マガジンは意外に熱くなってる相手にかえってヒいた。
「はあ・・先輩が座ったらいかがスか?」

173 :

少女コミックはマガジンを前に怒りで腹わたが煮えくり返りそうだった。
学院の全員、家の全員もみーんなムカつくけど、このオンナまでムカつく!!
朝になるのももどかしい気持ちで、朝一に従妹のサンデーに問い詰めた。
サンデーは素直に教えてくれた。
あのコはいいのよ。
昔っから素直ってか従順っつか、あたしならキレるだろう事にニコニコしてる。
・・・なんでこんなオンナと仲がいいのか理解できないわあ。
先輩を前に平然と挨拶もしない。雑誌を閉じもしない。
少コミは駆けつけて来て、説明なしでまず殴ってやろうと思ったけどさすがに自分を抑えた。マガジンの喧嘩の強さは中々に有名だ。
殴れない、態度が気に入らない、いろんな事が少コミのイラ立ちを加速させる。
「あはは、なーにが初級編のキス、よ」
「はあ?」
マガジンは雑誌をめくり続ける。
「なに言ってんスか?」
「すっとぼけないでよ!!あんた性格悪いわよ、あんた・・・あんた人の家の妹に一体なに教えてんのよ?!」
「だからあ。イミ分かんないスよ」 

少コミは怒りで目の前が真っ赤になるかと思ったが、とりあえず一呼吸おいた。
目の前の後輩は一筋縄で行かないと悟ったのだ。
少コミもそんなに頭も悪くなければ場数も踏んでいる。
なので、一呼吸置く。
「あっははー、最近、あんたらご機嫌ねえ」
・・・・・でも出てきたその言葉から察するに、あんまり冷静になり切ってないが。

174 :

昨夜、久しぶりに妹と「遊んで」あげて、それが発覚した。
最初から様子は違っていた。
いつもの頼るべきはご主人様のみ!みたいな様子がなかった。
ちょっとだけ目つきが違う?と言うか。
「お姉ちゃぁん」
「なにぃ?」
少コミは面倒そうにキスの合間に返事する。
「初級編のキスはもういいよぉ」
はあ?どうしたのこのムスメ、頭イカれた?
しょきゅーへん?ピアノのバイエルの話?
ちゃおはそのまま少コミの手をとる。
舐め始めた。忠実な犬のようだ。
だが・・・。
そこで見上げた目が、いつもと違う。
「上手?」

175 :

犬は意思を持たない。
命令だけを聞く。
人形もだ。されるがままで、遊び飽きて、ほおっておいても文句も言わない。
ちゃおの目は、いっつもそんな目だった。
意思が感じ取れない、そんな目。
でも今は・・・。
「ねえ、上手?ったらぁ〜」
「はあ?あんたさっきから何を・・・」
「えへ、私、これからもっとオベンキョするんだぁ」
意思でキラキラ光っていた。

176 :
「お姉ちゃんに近づけるように!初級編をマスターしたばっかだけど、私、筋いいって。もう今のでステップアップしていいってオーケーでたよ〜」
見たことがない目つきだ。
まさか・・・。
あはは、まさか。
このコは我が家でも特別、大事に守ってきて・・・教え込むのもあたしだけなはず。
少コミは舐められてる指が、震えてくるのが自分でも分かった。
「は、ははは・・・オ、オベンキョって・・・・・」
「?まだヘタかな。でもその内、お姉ちゃんくらいには上手になるよ。すぐなるよ、だって筋、いいって」
「ははは・・」
「初回でそう言ってもらえたって事はさ、きっと私も結構、中々だと思うんだ。
だよねぇ、だって私、お姉ちゃんの妹なんだしさ、素質が元々・・・・・」
少コミはそこで立ち上がった
「ちょっと!!どういう事?!!筋?!
なんで教えてない事まで知っ・・・しょ、初級って、あんた・・・・・!!!

177 :
少コミは思い出すだけで腹の中が煮えくり返りそうだったが、なんども呼吸を整える。それを何回か繰り返してから、
「そうだ。
あんた、中等部でも特に、男需要当て込んでるわよね。あはは、伝授して欲しいくらいだわあ。後輩なのに」
「はあ」
「秘訣ってスカートの丈かしらぁ。上着もあんた、短くしてない?」
マガジンはおおまか分かったので、お座なりになりだす。
「はは、校門出ると、もっと短くするんスよぉ」
スカートのウエストを折り上げる手付きをする。
「あ、あははは・・・」
「でも先輩には適わないっスよお」
手をぶんぶん振って、横に置いてあるポカリに手を伸ばす。

「あはは、あんた何かと小ずるいわよねえ」
「えぇー?」
「学院のウチとソトを使い分けてさ。恥ずかしくってあたし、出来ないわあ」
「はぁ、キャラっスか?」
あっさり言って、ポカリに口付けた。
「簡単っスよ。
メリハリ付けるだけですし」
やはり手をぶんぶん振って、カラカラ笑う。

178 :

少コミの頭から落ち着きとかはとうに消え失せていた。
固くした拳が痛いくらいだ、と言う事に気付けないほど。
「あははは、メリハリなんて。一種の芸当よお。凡人には真似できな〜い。
簡単なんて謙遜はいいわよお〜。あんたが謙遜なんて、聞いてる方が鳥肌だわあ」
まるで反比例だ。マガジンの気持ちはどんどん冷める。
「『べっ、別に私、先輩の為に謙遜したわけじゃないからね?!』」
少コミは怒りで握った拳が震えるのを止めることが出来なかった。
「みたいスかね?」

マガジンがお座なりさを止めないから、少コミの冷静さは更になくなっていく。
「あんたさ、多重人格なんじゃない?!」
「『ふみゅう。イジメないでぇ』」
くすん、と付け足し。
「!あんたみたいな精神異常、妹に近づいて欲しくないッ」
「『お前が言うかにょ(笑)』」
「だから・・・!先輩に対して礼儀とか知りなさいよ、恥も知らないわけ?!」
「『ワタクシがまたドジを?』」
雑誌から目を離さない返事が終わらないので、少コミは声が荒くなる一方だ。
もう怒りでなにがなんだか分からない。
どうにもこうにもならなくって、出せるだけの大声でマガジンに怒鳴りつけた。
「だから近づかないで!!
あのコにも、私にも、一切、近づくな!!
つーかあんたね!ね!今すぐね、んだほうがよっぽど地球に優しいわよ!!!」

・・・マガジンも。
面倒、からうっとうしい、に達した。
このオンナ、しつけぇ。
この学院の歴史の授業聞いてて、もっとイカス人物かと思ったのに・・・。
ガッカリじゃん。マガジンは雑誌を閉じた。

179 :
勢いを付けて立ち上がって、少コミの真向かいに視線を合わす。
きょとん、と真っ白であどけない表情を作って小首をかしげる。
「お姉ちゃんが心配なら、私、もうマガジン先輩には近づかないっ!」
ちゃんと声まで作って、まっすぐな視線で言い聞かせる。
それから先輩のすぐ横を通り過ぎた。
今ので納得してくれるかな〜。
そのまま中等部に走りながらマガジンは胸のうちで勘定した。
また絡んできたらどーしよ。あ、予鈴だ。
もっと速度を上げてからマガジンはちらっと振り返った。
案の定、少コミが追っかけてこなかった。立ちっ放しだ。なので深く息を出す。やれやれ。

180 :

こちら、初等部。
教室では、コロコロちゃんがそわそわしっぱなしだった。
「ねえ、ちゃお、具合悪いのぉ?」
「うん・・・」
「はあ?!ダメじゃん、具合悪かったら保健室、行こ?ガッコ休めるよ?」
「・・・うん・・・・・」
友達のちゃおの様子が・・・おかしい。
いや、それを通り越している。
朝からだ。
いっつもはツツけばすぐに反応を返してくれる。そんな愛くるしい、カワイイ妹分が何を言ってもかえってくるのが生返事だけなんて。
ど、どーしよ・・・。
コロコロは姉貴分としてはここでなんとか面目躍如したい気分だ。
サ、サンデーおねーちゃんに頼って・・・・・。
ううん、ダメダメ!あのおねーちゃんはきっとお小言しか言わないよ。
そうだよ、ボクのがずーっと大人だし成績だって悪くないのに。子ども扱いばっか。

181 :
・・・・・ちゃおにだってするかもしんない。
ちゃおの様子はそれどころじゃない。
コロコロははらはらと妹分を見守る。
深刻そうな表情で、ヘタにツツいたら、これ、泣いちゃうよ?
それくらい、コロコロにも分かる。肌で感じる。
サンデーおねーちゃんじゃ、これ、きっとダメだ・・・。ボクが、ボクが、ボクが、なんとかしないと、ボクが・・・・・。

「!」
ちゃおが今日、何回目か分からないため息をついた時にコロコロがひらめいた。
「!そうだ!相談しよ!」
「うん・・・・・」
「ボクと、それとガンガンおねーちゃんに相談しようよ!」
ガンガン、と名前が出たところではじめてちゃおが顔を上げた。

182 :
「え・・・」
「えっへへー、ボク、ガンガンおねーちゃんとお友達なんだゾオ〜?」
得意そうなコロコロは、予想した返事が返ってきて余計に得意さが増す。
「まさかぁ。ガンガン先輩みたいな方がコロコロちゃんなんて・・・」
「だ・か・ら!アンタとボクは違うの!アンタよりずーっと大人!大人のお付き合い出来るの!」
ちゃおの視線がずっと自分から離れなくてコロコロの得意さときたら。
「しかもガンガンおねーちゃん、こないだボクの事、親友って言ってくれたんだよ?」
「まさか!」
「信じられない?じゃ、今から会わせたげよっかあ〜?」
コロコロの得意さは、ちゃおの視線がいつもの自分を見る気色からどんどん変わったからだ。明らかに同級生にはしない目。
・・・・・なので親友、の前に「ちいさな」と、その後に「さん!」とあやすような笑顔で付け加えられたのは黙っておく。うぅ〜。あれはキズ付くよぉ〜。
「うん!会いたい!会わせて?
・・・・・」

183 :

と、言うわけで連れ立って中等部の中庭に入る。
ヒヨコ2匹でピヨピヨ転がってるようだ。片方のヒヨコがきょろきょろして・・・
「ガンガンおねーちゃん!」
目当ての相手を見つけてすっかり馴染んだように駆け寄る。
ほ、本当だったんだ・・・。
「あら、コロコロちゃん?」
編み物をしていたようだ。
緩やかな動作で顔を上げて、編み棒ごと膝に置く。
「何編んでるの〜?」
「セーター。冬のためにね」
「天然石ビーズ止めちゃったの?」
「うふ、ちゃんとポイントに編みこむわよ」
「ハー!やっぱ器用〜」
「でも編みすぎちゃって。これはどなたかに差し上げるんだろうし、じゃあ網目にも悩んじゃうしで、もう。どうしよう・・・」

184 :

やり取りが日常をうかがわせた。
「ねえ、ねえ、じゃあさ一緒にひと休みしようよぉ」
「?」
「・・・だ・・だ、だ、だって、ガンガンおねーちゃんはボクと遊びたくってしょうがないんだもん!
ね?ね??」
「うふ、そうよ。その通りね」
「だ・・だってさぁ、ボクら・・・親友だもんね!
ね!ね!!」
「そうね。
今日はお友達も一緒?」
優しく視線を向けられてちゃおは頬に血が昇る気がした。
「やったー!今の聞いた?ねえ、ちゃおったら!・・・・・」
信じられないよ、こんな大人っぽい先輩がコロコロちゃんを相手にするなんて・・・。
コロコロが横でぴーちくぴーちく興奮したように何か言ってるがちゃおには届かない。
ゆったりとした動作が安心感を持たせてくれる。
長身な方なのかな。でもちっとも怖いなんて思わない。反対だわ。
優しいまなざしのその背後には裏付けられた物を感じさせる。例えば、理性、とか分別、教養とか?そんな雰囲気の?
「あ、あの!は、はじめまして!」
ちゃおはあせってお辞儀をする。
「こちらこそはじめまして。
嬉しいわ、コロコロちゃんがお友達連れてくるなんて」
「このコがガンガンおねーちゃんに会いたいって言ったんだよ」
「あら。それは光栄ねえ」
「このコね、ボクの妹分なんだよ。
で、ガンガンおねーちゃんの親友のボクとしてはほっとけなくって」
「まあ、可愛らしい事」
「はにゃぁ〜〜〜ん〜〜」
懐くコロコロを膝に撫でながら丁寧にお辞儀を返してくれる、しぐさも自分に向けられる優しい視線も、何もかもが安心感を誘う。

185 :

「でも元気なさそうねえ」
ガンガンちゃんは表情をくもらせる。
「うわ。そのとーり」
「あら」
「それが今朝からこのコ、元気ないんだよぅ〜。
なので本日はボクとガンガンおねーちゃんで、ちゃおの悩み秘密会議を開こう!ってのが課題で〜す」
えへへ、と笑うコロコロは置いておいて。
ガンガンはちょっと考えた。
ちゃおちゃんの表情。
じっと見つめる。これは深刻だわ。

「ねえ、コロコロちゃん」
ガンガンは顔を上げた。
「何、何ぃ〜?」
「さすがコロコロちゃん。
とってもいい思いつき!
でも・・困ったな。冷えてきちゃったのに・・・カーディガン、教室に置いてきちゃった」
「えぇー?」
「コロコロちゃんならハヤテのごとく!に持ってきてくれるわよね。
だって足速いんだもの。・・・私のロッカー、開けてくれていいのよ。これ、キー」
渡されて、コロコロの表情は驚きに晴れた。
「中等部の教室に、一人では不安?」
コロコロはすくっと立ち上がった。
「まさか!すごい、一人で入って勝手に開けて?」
「もちろん。だって親友だもの」
「え、えへへ、もお、しょうがないなあ〜。ガンガンおねーちゃん、世話焼かせるんだからぁ〜。
・・・・・」
言葉の割りに得意満面のコロコロは簡単にすっ飛んで行った。

186 :
で、ガンガンはちゃおに向き直る。
「コロコロちゃんが持ってきてくれるまで、お話してくれない?」
「え・・・」
「私がまだ知らない事。二人はもう話し合ったこと。ちょうどいいわ。教えて?」
ちゃおは・・・むしろ都合がいいのに驚きだ。
うわあ。もしかして私って運がいいのかな。
「あっ、あの・・・その、それが・・れ、恋愛の悩みで・・・・・」
ガンガンはうなずく。
「まあ」
「だから実はコロコロちゃんがいない方が・・・」
「あら・・じゃ、カーディガンは?」
「はい!なんだかラッキーです。帰ってくるまで、聞いてくれますか?」
「もちろんよ。私でよければ」
・・・こうしてまんまとヒヨコがもう一匹ガンガンの手の内に落ちてきた。

187 :
「ガンガン先輩は、れ、恋愛で悩んだりしますか?」
ガンガンはゆったりと
「どうして?」
「え、えっと・・・その、恋愛って難しいなあって誰かに話したくって・・・・・」
「そうよねえ。私もそうよ。人に話さなきゃ不安になっちゃったりして」
「そう、そうなんです!私だけかな?って」
「ね。他の人も一緒、って分かるだけでも安心したりして」
「おなじです、おなじ!」
二人で笑いあいながらちゃおは驚いていた。
さっきからずっとモヤモヤしていた物がすぐに言葉になった。
どころかするすると出てくる。
それがガンガン相手だから、と気付いたのはかなり後になってからだ。

188 :

どんどん身振り、手振りになるほど熱心になってしまった。
「恋愛って・・・難しいですよね。
抑えられない気持ちとかあふれちゃうし、あふれちゃうと・・・えーと、行動・・そう!行動とか抑えられないし・・・・」
「そうねぇ」
「どうやったら相手を独り占め出来るのかな、とか。自分に振り返って欲しいな、とか。胸がいっぱいになっちゃって・・・しかも、胸がいっぱいになっちゃうせいで相手に嫌われたり、嫌がられたり、避けられたり
・・・・・怒らせたり」
「そうなの・・・」
ガンガンはちゃおにあっさりと請合った。
「それは問題ないわよ」
ガンガンは自然な笑顔のままで、即答した。
「へ・・・」
「それは恋愛の初期症状ね。まったく問題ないわ」

189 :
「しかもちゃおちゃん、ナカナカ筋がいいゾ!」
「は?」
「はしかは小さい頃にかかっておけって、ちゃおちゃんは聞いたことがない?」
「あります!あります、それ」
「それとまったく一緒なの。
風邪って言ってもいろんな風邪があるじゃない?
流行風邪、インフルエンザ、スペイン風邪・・・。
特に恋には一生治らない熱病だってあるのに。ちゃおちゃんの筋は羨ましいくらいよ。素質があるのかな?」
だんだん雲行きは怪しくなる。
「ほ、本当ですか?!」
「本当、本当〜。
ちいさい頃にかかったら、じゃあどうすれば乗り越えられるのかな?とかの、その・・知恵と言うか、工夫と言うか。
ちゃおちゃんの身に付くと思わない?」
「すっごく分かります、それ、すっごく!!」
この時・・・。
ちゃおがもうちょっと大人なら。
ガンガンが安心させるような、頼りがいのある笑顔でいながら・・・実は目は笑ってなかったのに悟れたかもしれない。
その目は、こう表現するしかない。

面白くって、しょうがない。
いい化学反応を起こしそうな理科実験の対象を見るような・・・。

190 :

「どうして私の考えてる事が・・・」
「うふ、じゃあおねーちゃんが魔法の鏡になってあげよっか?」
「は?」
「ほら、鏡さん、鏡さん、教えて?っておとぎ話に出てくるわよね」
「鏡・・・」
「で、質問した事を鏡が教えてくれるの。
おねーちゃんがちゃおちゃんの、魔法の鏡役をしてあげる」
「・・・・・」
「それでちゃおちゃんの解決方法を出来る限りに鏡さんが答える、なんてどう?
あ、いっくら魔法でも・・・隠し事されちゃったら全部は映されないゾ?」

ちゃおは・・・まるで魔法を聞いているようだった。
目の前のガンガンを見上げた。
鏡?魔法の鏡?
映す?
そっか。鏡に向かって訊ねて、それで鏡からお返事が返ってくるおとぎ話のアレね。
おしばいなら・・・・・
「・・・・・ねえ、鏡さん」
「はい?」
ちゃおはちょっとだけためらったが、向けられる笑顔は優しいままだ。
なのでぐっと歯を食いしばった。
解決しなきゃ・・・。自分で、自分で・・・・・!

191 :
「私ね・・・お姉ちゃんが好きなの」
本当に魔法の鏡に訴えかけるようにちゃおは漏らした。
「・・・・・」
「お姉ちゃんしか見てないのよ?お姉ちゃんさえいればいいの、他になんにもいらないの。
だって他に何にも魅力をかんじなくない?
染めてくれていいの!染めて、お姉ちゃんが使い勝手いいように染めていいって、最初から言ってるんだよ?!」
ちゃおは興奮してきて、だんだん叫ぶような口調になってきた。
「・・・・・だってお姉ちゃんは、知ってるんだもん。
大人が味わってるヒミツの味も」
「・・・・・」
「それを知ったら不利なんだよね?
マガジン先輩が言ってたの、なんとなく分かるの。知らないほうが有利。知ったら不利。
でも、なんどもなんども立ち上がってる。
いつも、最後は立ち上がってる。それはお姉ちゃんが、持って生まれた物かもしれない。それとも生きている間に備わった物?
どっちでもいいよ。
それもみんなひっくるめて、欲しいの。
それごと、お姉ちゃんが欲しいの。
目の前にいる、立ち上がったすごいお姉ちゃんを。
お姉ちゃんを自分の物にして、全部を知っちゃいたいの。
自分の物にしちゃって、頭の先から、指の先まで、全部、あのお姉ちゃんを知りつくして、味わいつくしちゃいたい」
「なるほど、なるほど?」
「・・・・・我がままって分かってるの。身勝手だって。
でも、私のもの、みんなあげたよ!全部、全部、あげた!
鏡さんは知ってるでしょ?お姉ちゃんのためなら、成績なんて興味持たない、お姉ちゃんの都合のいいように使って。私の成績なんてみんなお姉ちゃんの為に使ってくれたらいい。
みんな使ってくれていいのに・・・。
・・・・・分からないよぉ。どうすればいいの、鏡さん、教えて、教えて他にどうすればお姉ちゃんの心を私の物に出来る方法があるの?!
どんな手も使っちゃって、もお私、方法も道具もなんにもないよお、もしもトランプなら手詰まりだよお、私、私はお姉ちゃんしか好きじゃないのに、なのに私にはもおなんにも残ってないよお・・・・・」

192 :

・・・実はこの時、ちゃおが反対に魔法にかけられていた。
過激と言っていい発言にもまったく動じない先輩の笑顔に。
あらあ、そうなのぉ。
しかも探りをいれる手腕がこの先輩、マガジンよりもさらに素早い。
へえ、あそこの姉妹はそうだったのねえ。
成績のご公称はお家の事情かと思ったけど、こんな裏の裏事情まであるなんて。

そして。ガンガンは悟られないように笑顔を深くして思案した。
・・・・・どうしたらもっと面白くなるかしらぁ?
好ましい理科の実験対象を見る目つき。


193 :
「だいたい、分かりました」
本当にお告げを聞いた者が、その結果を伝える口調だ。
こほん。咳払い。こ、この先輩・・・。
「はい!」
「安心して。まだ、ちゃおちゃんには方法が残ってます」
「え・・・」
「押してだめなら引いてみろ、って言葉は知ってる?」
「し、知ってます!知ってます」
「恋愛における、この基本力学をマスターしちゃいましょ。
しかもちゃおちゃんの力は強いわ。初等部じゃもったいないくらい」
「そ、そんなぁ・・・」
「その力で、前に引いて、後ろに引いて、右に引いて、左にも引いて・・・力のサジ加減はそれこそレッスン、レッスン。
ぐるんぐるん引いちゃいましょ。
あ、引くのはいろんな物を引いてみてもステキよ。周りの誰でも物でも親でも教師でも使えるものは使っちゃうといいわ」
「はぁ」
本当に。本当にちゃおの年端もいかない幼さが悔やまれる。
この時のガンガンの目がまばたきも惜しい、ってくらいに輝いているのを気付けない幼さが。
「なんなら学院、ぜんぶをぐるんぐるん引っ張っちゃう勢いでね。
自分のお家だってステキなお道具!ちゃおちゃんのお家ならいい人材、いるんじゃない?」
「そ、それは・・・」
「・・・・・・・お相手が欲しいのよね?」
低い声にちゃおはこくっとのどが鳴った。
でも力強く。
「はい・・・!」
「じゃあどーんと行っちゃえ!
どんなテを使ってでもいいのよ?周りも巻き込んで、迷惑なんて気にしない気にしない。
だって・・・私たちの、乙女の恋だもの!!
乙女の恋は正義!何よりも優先させていいの!」
うふ、と笑ってから「でも違法かな、って迷っちゃうテは成人まで我慢ね?」と優しく付け加えた。

194 :

ちゃおは・・・感心のため息を吐ききった。
コロコロちゃんがお友達にしてもらえたのが心底不思議。
目の前の笑顔は、頼れて、しかも理知にあふれている。
自分を優しく諭す口調は落ち着いた声色で、応援する部分では明るく笑いをまじえてくれる。
諭してくれる内容も、最初から最後までちっとも乱れもない。

ちゃおは突然、立ち上がった。
「分かりました!」
興奮気味に返事をする。
それからあわてて
「あ、そ、相談にのってくださって、ありがとうございます!
・・・ガンガン先輩は本当にすごいんですねえ・・・頭もいいし、冷静で余裕があって、大人びてて・・・・・」
「うふ。可愛らしい事言っちゃって」
「コロコロちゃん・・いいなあ」
羨ましそうにほぅ、と息を吐く。
「?」
「だってこんなすごい先輩と仲良しなんて・・・」
「あら」
やはりちゃおは気付かない。
「ちゃおちゃんとも仲良くしたいんだけどなぁ」
「え・・・」
「だってちゃおちゃん・・・素直ないいコなんだもの。
またお話し、しましょ?」
「は、はい!こ、こちらこそ、そんな事言っていただけるなんて・・・!」
ちゃおはぴんっと背筋を正して答えた。
そして疑問もなくきびすを返して
「私、家に帰ります!」
今来た道を走っていく。

195 :

あ〜あ。せめて・・・。
この場にマガジンちゃんあたりがいてくれたら、即、声を上げてくれたのに。
あの目を見ろ!
きっと指差して一喝してくれる。
ちゃおの肩を揺さぶって、
『こんな香ばしい素材、逃がすもんか』、なんてねちっこい目!
しかも話が首尾一貫とか、頼れるとか・・・そもそも、お前、今、秘密をゲロられたんだぞ、あのオンナに大事な大事な秘密なんだろ?!
・・・・・残念な事にしばらくして帰ってきたのは・・さっぱり使えない、コロコロだったが。
「あれ?ちゃおはあ?」
「すっかり元気になって帰って行っちゃったの」
「はあ?」
「うふふ、あんまりに元気でコロコロちゃんの事まで忘れちゃったのね。まるで別人みたい」
嘘は言っていない。そのまま編み物に戻るガンガンを見る、コロコロの目は尊敬一色に染まる。ため息も。
「へぇ〜。・・・あ。でも・・・カーディガンだけどさ、その・・・ロッカー中探したけど・・・・・・」
コロコロを優しく撫でながら、
「ん?やだ、もしかして私、家に忘れてきちゃった?」
「!やっぱね!もー、ガンガンおねーちゃん、ボクがいないとぜんっぜんダメなんだからぁ」
「ねえ。まったくダメねえ」
「あははー!
・・・」
愛おしむような目で見つめてもらいながら、まったく別のことに悩んでいる事に気づけないコロコロなのが残念としか言いようがない。
ガンガンの興味はすぐに二人の訪問前に戻った。
セーターの胸元の網目を真剣に悩みだす。天然石で自然に北斗七星を編み込みたいらしい。兆星、込み。
懸命にぴーちくぴーちく訴えるコロコロなんて心地いいBGMぐらいだろう。
あ〜あ、本っ当、残念。
・・・・・。
・・・。

196 :

・・・・・少女コミックの足取りは遅かった。
今日、後輩を問い詰めた、その時・・・。いや、その前からだ。
頭に血が昇って、もう何がなんだか分からない。いつからだっけ?イヤな思い出だらけで思い出したくもない。
心配?は?誰が誰を?
こんなの、あたしじゃない。
いつにない足取りの少コミは考える。
あたしはもっと、冷静なはず。きちんと物を考えれる。
馬鹿にするヤツは馬鹿にすればいい。あたしにはきちんと土台があるはず。あたしを作ってきた、土台が。歴史が。
・・・・・そうだ。あたしは、そこら辺のムスメとは違う。
そうなんだ。違うはずだ。

気付いたら家にもう着いていた。
ヤだな。どうしたんだろ、さっきからぽーっとしてる。
屋敷内、騒がしい。
どうしたんだろ・・・。

197 :

「・・・どうしたの?」
気だるく少コミは一人を捕まえて訊ねる。
「少女コミック様!」
捕まった者は興奮して少コミの元気が無いのも気付かないような様子だ。
「その、教育係りの一人が使える人材を見つけたようです!」
「・・・・・」
「お台場にある通信制の学校はご存知ですか?」
「は・・・」
「その学生の中で非常に未来有望な人材がいたようです。
嬉しい事ですね。もしかして教育係長は書生の一人として小学館家に迎えるかもしれません」
「あ、あはは・・・」
「お台場の通信制の学校は現在、他家様も注目されているんですよ?人材発掘にも熱心で、特に講談家の方々などは・・・・・」

足元が崩れていくような、とはこんなカンジかな〜、と少コミはぼんやり考えた。
あー、もう、あたしは・・・・・・
そのまま、フラフラ自分の部屋に向かう。
子供部屋だけがちょっと離れているので、人もあまりいない。
誰も会わずにすむ。ちょっと自分の部屋のベットに・・・・・

198 :

と、思っていたら今、一番会いたくない相手が自分の行く手を遮っていた。
遮る、と言う表現がぴったりだ。
ちいさな体で、これ以上行かせるもんか、なんて気迫たっぷりだ。
・・・あー、このムスメがこんな自分の意思、みたいな目つきするの生意気ぃ〜。

「お姉ちゃん」
生意気っつか、そこから調子狂いっぱなしなんだ・・・・・。
ああ、このオンナに狂わされっぱなし。ヤだな、このオンナはあたしの思い通りになってりゃいーのよ。
「お姉ちゃんの成績、いーくつだ!」
しかも挑戦するような目つき。
なんだ、ヘンなモノでも食べたか?
「はあ?」
「あたしの成績、いーくつだ!
お姉ちゃんはウソ付いてませんか!ウソ付いて、自分が一等賞、みたいに世間にウソ付いちゃってまーせんか!」

199 :
少コミは面倒そうに
「それが?」
「・・・!え、えーっと・・私が本当の事を言い出したらお姉ちゃんは困らないかなぁ〜。
どうしよ。私、なーんだか本当の事、無性に言いたい気分〜」
挑むような目つき。
少コミはぴーちくぴーちく何か言ってるなあ、と聞いていた。
「・・・・・アンタはいくつ?」
「へ?」
「6年生だっけ?
アンタはいーくつだ」
面倒そうに相手する。
「!12歳だよ!でも・・・
5年後はお姉ちゃんとおない年だよ!私がおない年なんだよ、怖いでしょ、心配でしょ。どうする?!」
目つきが変わらないのに、なんだか少コミは可笑しいような気分になってきた。
「そ。アンタが17の時、あたし22。
さて、どうしよう」
ちゃおの据えられていた目が揺れた。
あぁ・・・ヤバイな。
なんだか落ち着く。
可笑しくなって、自分でも苦笑が抑えられない。

200 :
「!だ、だってすごい17歳になってるもん!
合コンだって行ったり、香水つけたり、スーパー17歳だもん!」
くすくす、少コミは笑い声まで漏れてきた。
「22に敵うような?」
「な、なってるもん!お姉ちゃんみたいなのになってるもん!すごい17歳だもん」
「その5年間、あたしが何にもしないと?」
「・・・ぅ」
「きっちり成長してるわよ?アンタが言う、そのお姉ちゃんが22。
さて、どうしよ」

なんだか・・・落ち着く。
この娘を相手してると。
この関係が。
これはペットみたいな物?お人形?あは、癒しってヤツ?

「ま、また5年経ったら22だもん!
・・・・・また・・追いつくもん」
気付いてるんだろうなあ。いつまで経っても追いつくはずないの。
ちょっと口を尖らせて言ってる、そのカンタンさが可笑しい。
でもペットは・・・・・喋らないよね。
人形も。少コミはちゃおを見下ろしながら、くすくす、くすくすと笑いが抑えられない。
ちょろちょろ、ちょろちょろ、おなじ学校なんて通わないし。

201 :
こんな面白いものまでくれない。
さっきまで威勢良く挑むような目つきだったのに、今は落ち着きなく視線をうろうろさせている。
だって・・・会話できないもんねぇ。
会話できる相手には、イヤな気持ちにもなる。不快な気分もするだろうに・・・・
なのに・・・なんだか落ち着く。なんだろうなあ・・・・・・本当、なんだろうね、この気持ちは。
「オベンキョして?」
「!う、うん。オベンキョして!」
「昨日、お姉ちゃんが、叱ったのに?」
「・・・・・あ、あれから他の人とはしてないもん。
約束は、やぶってないもん」
「なのにお姉ちゃんに並ぼうとしてるんだ?」
「な、なるもん!
!そう!本とか読むもん!お姉ちゃんが教えてくれるのとは別にね!だったら他の人とのオベンキョとは違うもん!」

ダメだ。笑いが止まらない。
ちゃおは会話しながら一生懸命、何事か呪文のように必につぶやいている。暗示掛てんのか?応援の呪文?
でも、それに気付かれてるって分かってないらしい。
なんつーカンタンなガキだよ。

202 :

あんまりに可笑しくて、少コミは目の端をぬぐった。
「ね!今日はあたしの部屋入れてあげよっか」
「う、うそっ」
ちゃおの顔がすぐさま晴れた。
姉の部屋には入れてもらったことがないからだ。
姉は誰も部屋に入れない。入ってきたらこのムスメは烈火のごとくに怒る。思春期の少女らしく。
「本当、本当」
ちゃおはまた何か口の中でつぶやいたようだったが、それは何だったのか後で訊くことにして、
「あたしの部屋でオベンキョは?」
「・・・・・」
ぽかん、と口を開けているちゃおの手をとった。
「イヤ?」
「う、ううん。だって・・・」
「だって?」
「だって・・・そんな、さっきの今に・・・・・」
「はあ?さっきの今ぁ?」
ちゃおの手をつないでだとドアを開けられないので少コミはスクールバックを床に置いた。
「う、うん・・だって、そんなにすぐに効果が・・・」
ちゃおの信じられない、と言うような声色の続きは少コミはスルーした。それも併せて、訊けばいい。

203 :

「・・・・・あんたさあ、ファーストキスって知ってる?」
「!も、もちろん!」
ちょっとちゃおはすねたように口を尖らせた。
この間、先輩が言っていた事を思い出す。同性、親族、ノーカウントだっけ。
「じゃー、更に処女は?」
「と、当然だよ、もちろん、それも・・?知ってるよ」
「へえ。何、ソレ。お姉ちゃんに教えて?」
「はじめて、って事だよ?はじめて。価値あるんだよ」
ちゃおの頭は忙しくマガジンの言っていた事を思い出そうと記憶がめぐる。
「へえ。じゃ、もしもお姉ちゃんがそれまで取り上げたら、アンタどうする?」
「!!
嬉しいに決まってるよ!なんでもあげるよ、価値あるもの、なんでもお姉ちゃんにあげるに決まってる!!!」
即答されて、少コミはさすがに事の重大さに唾を飲む。
そこから更に今まで自分のやって来た事にも。
妹を改めたように見る。あたしは・・・・・あたしは・・・・・・・

・・・もう一度、考えなきゃ。
自分を取り戻して、で、もう一度考えよう。
もう一度だ。改めて、もう一度、何もかもを。

204 :
このコ相手にじっくり会話して。
どうやらこの妹は特別らしい。
少コミは気付いていた。実はさっきから。
あたし、ペース、取り戻せてるじゃん。
自分の手を握り返すちいさめの手をから妹に目線を変えた。
自分を見上げる、嬉しそうな目。

なにもかもの意味を含めて少コミは明るく言った。
「よっしゃ、もっかいスタート!」
そのまま、妹の手を引いて自分の部屋に招き入れる。
「あたしの知ってる知識、アンタに言って聞かせてあげる。
アンタはアンタの秘密にしてる事、ちゃっちゃと吐く!
で、またスタート!」
「うんうん!」
「あたしはやってきた事の意味もなんもかも、みーんな教えたげる。
思ってることもみんなアンタに話してあげる。
それ聞いたら、アンタもみんなあたしに話す。
どう?」
「うん、うんうん!!」
「話す、答える、話す、答える。
お互いで。
これ、会話って言うんだよ?知ってた?」
ちゃおは嬉しそうにうなずきっぱなしだ。
「・・・・・教えて?あんたの気持ち」

205 :
ドアを閉めてからある事に気付いて、少コミはこんどは爆笑、と言うくらいに大笑いした。
はじめて、って・・・
「お、お姉ちゃん・・・?」
あたしこそ、女相手なんてはじめてじゃん!
女相手だって!バッカじゃね?サイアクじゃん、あたし、女相手ってあんた・・・!
・・・バカだ、あたし、バカだ、これじゃ中等部の後輩なんかに舐められた態度取られるのも無理ないわ。
「なんでもない、ない。
アンタ、聞いてくれるんでしょ?」
「もちろん!話して?」
「で、今日は誰とどんな話したの?コロコロ?」

206 :
「違うよ、今日はすごいんだよ!」
「へー」
「びっくりなんだから。
コロコロちゃんってばすごい先輩と仲良しでね?・・・・・
・・・・・
・・・」
少コミがはじめてちゃおを入れてから、部屋の扉を閉める。
ダメ押しのように鍵がかかる音。

日本有数の出版社の大きな大きなお家。知らない人はいないくらいに大きなお家。
なのに、なんて小さな小さな可愛らしい音。
こっそりと・・・大きなお家で交わす、小さな娘、二人だけの合図みたいに。


 

                                      
                             
 
                      長い間、ご愛読ありがとうございました!
            今後の少コミちゃんとちゃおちゃんの未来にご期待ください!!

207 :

毎回の事ながら・・・なにがしたいんだ、これ(笑)
再び、短くまとめられなくて長々としてすみません
2誌のファンの方には萌えられてる事すら苦痛でしょうに、まことに申し訳ない気持ちいっぱいです
知識のない気狂いが踊ってるだけですので
でもマガジンちゃんとガンガンちゃん、余っちゃいました
ついでとばかりにくっつけさせちゃってください
二人の間に接点もないのに、もうサイアクだ・・・
これで打ち止めなのでもうちょっとだけ我慢してくれませんか?

208 :

「マガジンやガンガンなどでも百合」

ここ最近の、マガジンちゃんのご機嫌はいい。

209 :

「・・・本当はね、すっごく嬉しかったの」
集英ジャンプは胸がどきどきしっぱなしだった。
現在、二人きり。
誰も来ない。音もしない。・・・ちょっと薄暗い。明り取り窓があるから、そこからの明かりでなんとかなる程度だ。
サンデーと和解・・・というか和解した勢いでキス、告白、イイ仲、恋人・・・で、密会。
現在、この地点。
和解してからの自分たち仲のスピードときたらない。

・・・・・密会できる場所については、ジャンプちゃんは散々、迷った。
家は、絶対に、ダメだ。
サンデーと話し合って分かった。
自分たちの手綱を握ってる大元に、なんにも知らされずお互いがお互い相手にあがき合ってのを。
サンデーが話してくれることは、ジャンプには驚きの連続で声もない。
自分たちのために、お行儀を絶対に崩さなかった事。
厳しい躾も。下ネタ言っただけの書生のために教育係りたちが集まって会議?しかも下ネタの基準まで作るってオカシイだろよ、それ。ゲロまでは良くってそれ食ったらダメ?はあ?別に良いだろ、ゲロ食ったって。
でも、みんなのお手本になるよう、道だけは踏み外しちゃいけないらしい。
我が家、全員の動きが楽なようにも。
お留守番はしっかりと・・とでも表現すればいいのか。
だからうらやましかった、と笑顔で言われた時は正直、自分たちに押し付けられた物に寒気がしたくらいだ。
みんなが期待に仰いで、なんでもやっていいよ、って・・・誰もが従う、すべての自由を許された特別な存在なんだ、決して届かない存在なんだ、って憧れるしかなかったの。
そう打ち明ける笑顔が痛みをしてるような気配を感じたからだ。・・・・・この少女は本当に我慢強くて、そんな気持ちなんて知りもしなかった。もしかしたら・・その関係が一生続いていたのかも知れかなったのだ。寒気も覚えるってもんだ。

210 :
・・・今はなんでも分かるけど。
「ジャンプちゃんの隣になれた時ね、本当はすっごく嬉しかったの」
「・・・・・」
「本当に幸運な週の、そこから更に幸運が起こらないとそんな幸せなかったんだけれど」
ジャンプの胸はさっきからどきどきしっぱなしだった。
明り取りからの光に視線を置くことでなんとか分からないように出来るくらいで・・・あ、映る木陰も目線で追うのに便利だな。

密会するのに、これは実家は絶対にダメ、と分かった。
しかも自分たちの実家はモロお隣同士、ってほどだ。
実家の近所もダメ、かと言って学院の近所もダメ。
誰に見られるんだか!
部室?ダメダメ、そんな所にサンデーがいるのが不自然だ、見つかりでもしたら質問の嵐だよ。じゃ、用具室?そっちのが不自然だろ。どうしよう。
・・・・・どこか、どこか二人きりになれるところ・・・。
そういうわけで今、二人はここにいる。
密会に絶好の場所。教えてくれたのはサンデー。
現在、なんでも分かる仲なのは、なんでも話し合える仲だからだ。
・・・まだぎこちない所は多々あるが。素直にサンデーに相談すると、
「それなら・・」
と、連れてきてもらった。
図書館の地下。
ジャンプはちらっと目を上げた。
廃棄に決まった本をプールされる場所とのこと。
本館のすぐ下にずらーっと並ぶ本棚。
薄暗くて上を見たら天井近くに明り取り窓があって、夜には電灯をつけないと作業できなさそうなそんな場所。
「もちろん来るのは私ぐらいよ。でも・・・お別れにもう一度、って」
はにかんだように笑ったサンデーは話してくれた。
誰も来ないし、音もしないからついつい読みふけってしまうそうだ。時間も忘れて。
サンデーの内面をまた知ることが出来てジャンプは嬉しい。
最高の密会場所ゲットだぜ!という気持ちと一緒に。

211 :

「ジャンプちゃんは気にもしなかっただろうけどね。私が隣なんて気付きもしなかったんじゃない?」
くすくす笑われて、ジャンプは木陰を目で追う。
ううん、それ、身に覚えあるんですけど。声が心地いい上に、サンデーのする告白の内容にジャンプの胸はどきどきしっぱなしだ。
しかもなんだか頭までじんじんして来た。
「ジャンプちゃんは朝のホームルームで司会役じゃない?・・・月曜の朝礼なんて全校生徒代表の挨拶もするし」
うわ、どうしよ。分かるよぉ。

212 :
「でもね、水曜は図書委員からみんなに連絡があるの。ホームルームで。
・・・・・本当に時々なんだけどね、隣同士になれる時があったの」
どきどき、どきどき。
ああ、頭がじんじんする。嬉しくてじんじんする。
「担任の先生がジャンプちゃんを自分の席に着きなさい、って帰しちゃうとダメなんだけど。
・・・そこから更にマガジンちゃんも。マガジンちゃんの報告も水曜なの。体育委員だしね。
先生はね、マガジンちゃんの方が成績いいから必ずマガジンちゃんをジャンプちゃんの隣に並べるの。私は・・・3番目。
しょ、しょうがないんだけれど・・・・
でもね!でもすっごく、すっごくラッキーな週があるの!先生が並ばせる順番に気を付けるの、面倒なのかな。毎週だものね、毎回、毎回は注意できないよね」
ああ・・・どうしよう。頭がじんじん、じんじんする・・・・・!
じんじんするのが全身にまで回ってきた。ああ、指先にまで来る。
「すっごくラッキーだと、ジャンプちゃんの隣に並べる週があったの。
水曜日に。
・・・すっごく、すっごく嬉しかったの。ジャンプちゃんはそんな小さい事、気にするわけないって、知ってるのにどきどき、どきどきしちゃっていっつもうつむいてたの。
隣にジャンプちゃんがいるってだけで、あんなに届かないって思ってる存在が隣なんて、もう袖とか触れちゃったりしたら・・・んじゃうくらい。
こんなのじゃ分かっちゃう、ってみんなにも分かっちゃったらいけない、って一生懸命うつむいてたの。
あんまりどきどきしちゃって、心臓がどうにかなっちゃうんじゃないかって・・・・・本当に、本当にラッキーな週しかダメなんだけれど」

213 :

ああっ、もう、ダメ・・・!
ジャンプはサンデーの手をひったくった。
このじんじんしてるのが伝わればいいのに、と思ったからだ。
サンデーがこっちに顔を上げるのが分かる。
音がしないから、衣擦れや驚いた息までも分かる。
全部の気配が分かる。
ああ、何もかもが分かる。

ジャンプはどうにも収まらなくて、部屋の一番奥の角までサンデーを引っ張ってきた。
薄暗さがぐんと増す。
ジャンプはサンデーのほっぺたを手で包んで、自分に向けさせて、上も向けさせて唇をつけた。
背はどっちのが上だっけ?でも自分のが行動的だし。
「ん・・・・・」
サンデーは突然なのでびっくりしたようだが、すぐに順応する。
ジャンプが自分の背中をぎゅっと抱いて、ちょっとまさぐるように動くのにもすぐに。
本当に、このムスメは従順で我慢強い。

突然の上に何にも言わずにキスされても、すぐにジャンプの背に腕を回し返す。
しばらく、ジャンプはサンデーの唇を吸ったり舐めたり、もう夢中だ。
サンデーもおなじ。
もう、何度もキスを重ねてきたから二人の息がぴったりだ。
初回のぎこちないキスが可笑しいくらい。

214 :

ジャンプは気持ちの遣りどころがない。
「ね・・サンデー・・・・・」
「・・・・んぅ・・?・・・」
サンデーが漏らしていた声の最後をちょっと上げる。
「んっ・・・は、え・・・えっちな場所、さわっていい・・・・?」
サンデーがキスの邪魔にならないくらいにかすかにうなずく。

うわ、どうしよう。
頭がじんじん、じんじんする。
この娘も一緒だったら良いのに。

二人はすでにそこまでの関係になっていた。
ジャンプは大好きなサンデーの胸をまずさわった。
・・・・・抱きしめられた時の、嬉しさとか心地よさ、なにもかもが再び、頭へ波のように押し返す。
サンデーは「オラオラ!」ってタイプじゃないから、あまり気付かれないがけっこう豊かな胸をしている。
ああ・・・・・。
ジャンプはキスをしながら自分に不思議だ。
「・・・・ぅーん・・・・ジャンプちゃぁ・・ん・・・・・・・」
胸なんて自分だってある。
サンデーより控えめかもしれないが。母親だって、この学校の生徒だって。
「ぁ・・・・・・・・んう、やぁ・・・・・・・・・・・」
なのに、サンデーの胸を触ってると頭がじんじんする。嬉しくて、なんだか頭がヘンになりそうだ。
「やぁ・・・・・やあ・・ジャンプちゃぁ・・・・・・・・・・・ぁん」
しかもサンデーの声がどんどん艶っぽくなる。
これ、オレだからだよね?
他の誰かにおんなじ事されても・・・こんなにはならないんだよね?
ああ、どうしよう。どうしよう。

215 :

しばらくジャンプは夢中にまさぐっていたら、サンデーはあがる息の合間に言った。
「・・・・・わ、私も・・・・・・・・・・・ジャンプちゃん・・・の・・っ」
「・・・・ん?はっ・・・・」
「え、・・・・・えっちな所・・・・・んっ、触りた・・・・・ぃ・・よぉ・・・・・」
さあ、この二人、盛り上がって参りました!
ジャンプが軽くうなずくと・・・・・・・

「!」
サンデーの手が背中から離れてするっと、ジャンプのスカートの中に入った。
「・・・?!」
そのまま、太ももの内側をなでる。
この気持ちの優しい少女らしく、優しく、そっと、柔らかく。
しかも・・・

216 :
「ちょっと・・っ、待た・・、・・・・・・・!」
ジャンプは正直、かなり息が上がっていたがなんとか叫んだ。なかなかに積極的な手付きじゃん。いくら人がいないとはいえ、これ以上はマズい。
サンデーを引き離して、目を見据える。
サンデーを真正面に据えて、呼吸を整えて・・・。
「・・・っ、・・・・・?」
サンデーの息も上がって、相当、夢中になってるらしい。
潤んでいる目で不思議そうにジャンプを見る。
なので、自分が落ち着かなきゃな。
「ここ、・・・っ、どーこだ!」
「・・・・・ん、学校?」
「っは、そ、そー。
ま、お互い、落ち着こう」
そう言って、サンデーの肩を落ち着かせるよう、叩いた。撫でるように、ぽん、ぽん。

「こ、こないださあ?人、来なかった?」
「・・・・・ん、はぁ、うん、来たね」
「あん時さあ?どうした?」
サンデーの目の色が尊敬に染まる。
「ジャ、ジャンプちゃんが・・・っ
・・・・機転を利かせて、本棚と柱の間に隠れたんだよ」
そしてうっとりとジャンプを見る。
「私・・・。
私、どうしたらいいのか分からなかったのに・・・・。
声も、息の音もしないように、私ごと抱きこんで丸くなったの」
尊敬の目でジャンプを見つめる。
そしてため息混じりに
「やっぱり・・ジャンプちゃんはすごいよねぇ。
聡明で、判断が早くて・・・・私とは頭のめぐりが違うのね」

217 :

・・・・・ジャンプは・・・。
しょーじき、この目がたまらなく好きだ。
サンデーのしぐさの内、どれが好き、と訊ねられたら即答するくらいに。
自分に向けられる、尊敬の目つき。
ほうっ、とため息もまじるとタマらない気持ちは最高潮に達する。
自分を信じきって、頼りきっている目。
すべてを任せる、みたいな。
「・・・こほん。
じゃ、これ以上はマズいのは分かるよね」
「でも・・・」
ジャンプはこの目が見たくて、ちょっと背伸びもする。
「うん、オレならなんとか出来る、って今、そう、思ったでしょ。
その疑問に、こっちから質問。それ、ここじゃなくても大丈夫だよな」
「え・・・・・」

218 :
「あんた、週末に京都に家族旅行するでしょ?」
「う、うん・・・」
「オレもヤンジャン姉ちゃんと京都旅行するんだ。ヤンジャンお姉ちゃん、京都の友達に会いに行くんだって。じゃ、社会見学を兼ねてこのコも連れて行くわ〜、って二人して」
「え・・・」
「・・・・・って、事にしておいて?って頼んだ。
姉ちゃんに」
サンデーはおろおろと、
「それって・・・」
「あんたは、なんか理由を付ける。こないだ京都現代美術館がうんちゃらかんちゃらって一生懸命聞かせてくれなかった?今調子いい?画家?のうんちゃらかんちゃら」
「うん」
「それ、一人で行くってみんなには言う」
「うん、うん」
「ゆっくり鑑賞したいしぃ〜、でもなんでもいいよ。理由をつけて」
「うんうん」
「・・・・・で、現代美術館には行かない。あんたの行き先は・・・」
サンデーの顔がこれ以上ないってくらいに晴れた。
「まさか!」
「そのまさか!
あ、その時だけあんたは集英って名乗ってな。フロントには姉ちゃんの名前で。
計画一通りはオレが立ててあるから、細かい事を二人で打ち合わせしよ?」
「うん、うん!」
「だから、ここではココまで。
ホテルの防音なんてばっちり!
カーテン閉めたら、どんな格好だろうがどんなコトしようが誰にも見えない、分からない!
・・・オーケー?」
サンデーのこの時の尊敬の眼差しも最高潮に達した。
「さすが、さすがジャンプちゃん・・・!」
ジャンプを見る目は蕩けんばかりだ。
・・・お医者様でも草津の湯でも、宗教だってこうはいかない。
相手を信じきって、疑いもせず相手の言いつけを守ることしか考えてない、そんな目つき。

219 :

で、週末。
ジャンプはお姉さんが手配してくれた部屋に、先に着いてそわそわしっぱなしだ。
ああ、どうしよう。
何をしゃべろう。ううん、部屋なら手をつないだって誰にも見られない。キスだって、なんだって・・・。
ジャンプはそこで思わず赤面する。
え、えーと、サンデーは夕ご飯、食べてくるんだよね。

周りの何もかもが安心できないから、メルアドだけは交換してあるがメールの交換はしてない。
サンデーの話だと、家に帰ったら携帯を取り上げられるそうだ。
うわ、サイアク。
携帯に電話すら出来ないじゃん。
パソコンは家のパソコンで自習用に使う程度。
インターネットの接続すらされてないらしい。
学校よりも厳しいだろ、それ。

・・・・・まあ、ヘンな知識入れない方がこっちとしても有難いんだけど。

でもオレも似たようなのはかなりマズい。
お、女同士ってどうやって・・・?
あー!教育係はキスまでしか教えてくんない。
それ以上のえっちな事は書生達が個人でコソコソやってる。そういや、こないだみんなが集まって乳首の影が・・・とかなんとか騒いでたな。

220 :

いいだろ、んくらい!
こっちはそれどころじゃねぇ!
近所の書店・コンビニは絶対に目立つ。
なのでさっき現地のコンビニにてちょこっと立ち読みした。
ああ、でも、どれ読んだらいいんだよ!
それらしき雑誌を読んだら、あんまりにすごい内容でジャンプは読み終えるのにすら苦労した。
あ、いやいや、違う。今、この現状のオレには過激なんだ。
落ち着け、オレ。落ち着け、オレが慌ててどうする。
あー・・でも、そっかぁ。他の女の子ってあんなコトしてんだぁ・・・・・?

その時、部屋の電話の呼び出し音が鳴ってジャンプは飛び上がるほどびっくりした。
おおげさな表現じゃない。飛びつくように電話に出る。
「はい!」
「フロントでございます。76ろ・・・」
「そうです、そうです!766だよ、オレだよ!」
「お、お姉さまがご到着されました。キーカードを今、お渡ししたのですが・・・」
「で?!」
「あの、一応、入っていいか集英様にお伺いして欲しいと・・・・・」
「もう、いいから、いいから!!」
ああっ、あの娘はこんな時までなんで心配りを欠かさないんだよっ!
ジャンプはもどかしい気持ちで受話器にわめいた。
怒鳴りつけられるように返事された、受話器の先はちょっとかわいそうだったが。

221 :

何を話そうか、とか二人っきりなんだ、手もつなげる、うんぬん・・・・・
・・・とかはすぐにジャンプの頭から消えた。
「んぅ〜・・・・・・」
「っは、サンデぇー・・・・・・」

サンデーが入ってきた瞬間から、もう抱きついて、そのまま二人で床に座り込んでお互いの唇をむさぼった。
ああ、どうしよう。
ああ、どうしよう。胸がいっぱいで、頭がじんじんする。
じんじんするのが全身に回りきってる。
サンデーが切なそうに漏らす声は、はじめて聞く声だ。
当たり前か。
今までお互い、慎重に慎重に密会を重ねて、キスも触るのも本当に・・・。もしかしたらあれが世に言う寸止め?

「ジャンプちゃぁ・・・・・・・・・・んー・・・・んっ、はっ」
すご・・・・。
ジャンプはサンデーをまた理解できた気持ちだ。
このコは本当に我慢強い。
その代わりに我慢しなくってもいい時は・・・こんなになるんだ。
そういや図書館の地下でもなんどもあった。
積極的にジャンプの唇をむさぼって。いつもはあんなに固い自制心で、どんな急ぎの用事にも誰に対しても・・・。
なのに・・・・・。

222 :

あ。
でもまだ抑えてるかも。
「サン・・・デぇー・・・・・・・」
「はっ、・・・ぅ、・何ぃ〜・・・・・・・・大好きぃー・・・・・」
「こ、ここ、・・・・んっ、誰も来ない・・・・・・・よぉ・・・」
サンデーの手が、何かが切れたようにジャンプをまさぐる力も速度もあがる。
「声もね・・・・ぇ?いっくら・・・・・ん、上げても、大丈夫・・・・だから・・・・」

ああ、どうしよう。
サンデーがこんな声をそれこそ人目も気にせずに上げたら、オレ、どうしよう。
それだけでもう、どうしよう。

それがスタートの合図のようだ。
また何かがプツっと切れたように、サンデーの手が下の方に移動する。
「!」
ジャンプのジーンズの空いてる背中から手をちょっと入れてから、太ももを摩る。
もう際ぐらいまで。
な、なんか積極的だな、この娘・・・。
図書館地下でも持て余したっけ・・・この積極さ。
普段から想像も付かない。
じれたようにジャンプの太もも際をなんどもなんども摩る。
「それ・・・っ、ん・・・・・・・て・・・」
「・・・ん・・・?・・・」
「・・・・・・・ふ、・ジャンプ・・・ちゃんもぉ・・・・?」
もどかしいように、指でジーンズの寄った際をはじく。

223 :

「・・・・・?・・」
「ジャンプ・・ちゃんも・・・?
ジャ、ジャンプちゃん・・・も、・・ふっ、すっごい声を上げても・・・・ん、いいって・・・・・・・・?」
「!!」
サンデーが唇を離してジャンプの顔を手でつつむ。
前髪の生え際辺りに唇を這わせて、そのまま耳をペロペロ舐める。
「ジャンプちゃ・・・も上げていいの・・・?」
ジャンプの胸のどきどきが違う意味を込めてきた。
は・・・。
「ジャ・・んっ、・プちゃ、が、泣いちゃうくら・・・・・?・・んっ」
「!!!」
「ジャンプちゃあ・・・・・・ぁん。早く、ジーンズ・・・・んっ、上も・・・・脱いでよぉ・・・・・・・・」
自分を見上げるサンデーの目はもう潤みきって、
「早くぅ・・・・・やだよお・・・こんなのぉ・・・・・・」
ジャンプは・・・盛り上がってる気持ちから、一気に現実にかえった。
自分を見る目。
すごい、欲情に染まりきってる。
潤みきって・・・。
こ、この恋人は、この恋人は・・・・・・・

ジャンプはすぐに提案した。
「ま、待って!」
本当に、待て、をされた犬のように素直にジャンプの言葉を待つ。
「・・・・・?」
「そ、そう・・そう、まず、風呂!お風呂に入ろう!」
「・・・なんでぇ・・・・?私、ジャンプちゃんの体なら・・・・・・」
「いや、まず、風呂だよ。そうだ!一緒に入ろう!それならオーケー?」
サンデーの目が喜びと、また例の目付きになった。
尊敬の、相手を信じきって、疑いもしない目つき。

224 :

ジャンプはサンデーの手を引きながら、自分に言い聞かせた。
・・・考えろ、オレ。
何度目かもしれないが、ジャンプちゃんは決して頭が悪くない。
勤勉、とかじゃなく・・・センスが抜群なのだ。
天才肌、と言うのかもしれない。なんでもセンスで理解できる。
なので、今、現在の違和感が分かった。
おいおい、これってオレが夢見てた甘っちょろいモンなんかじゃなくって・・・

サンデーをちょっとだけ振り返る。
自分を信頼しきってる目。

225 :

・・・・この娘は、普段めちゃめちゃ我慢強い。
オーケー。それは周りの誰もが認める。自分で言っちゃってたな。言われ慣れているんだろう。
で、今・・・・
これ・・メーター振り切れて・・・?
サンデーのとろっとろに蕩けきった目。
ん?バーサク状態?
しかも、オレにみんな任せてる目。
なーんにも考えてないみたいな・・・・・。
オレの言葉を待つような視線。なにもかもをオレに任せてて・・・。
今、このコの自制心も頼れるのか?
ジャンプは自分で自分の頭を引っ叩きたい勢いで考えた。
考えろ、考えるんだ、落ち着け、オレ、オレ・・・。
そもそも・・・前フリなくえっちぃ事とか、どんだけ無謀なんだよ!泣きたくなった。
こ、この娘の普段の我慢強さ・・・・
で、今、振り切れたバーサク。
ジャンプの頭の中がぐるぐる回った。

もしかしてこれ、ものすっごくヤバい状態だぁ・・・。
ジャンプは今さらのように自分たちのピンチを悟った。
あ、あはは・・・オレら、現在、大ピンチ?
あはは、本当、大爆笑したいくらいのピンチっぷりだよ、この現状。

226 :

しかもあまりジャンプちゃんは冷静になってないらしい。
あはは、ピンク度、上がってるし。
密室、その中の更に声が反響するユニットバス。の、脱衣カゴ、バスローブ、その他もろもろ。何?このいちご100%。
サンデーが当然、期待するような目でジャンプを見る。
「・・・・・・ぬ、脱がっこ?」
しかもさっきから豊かな胸が上下しっぱなしてる。

ジャンプはまずは振り返って、考え付いた事をサンデーに叫んだ。
「あんたさあ、タチとネコって分かる?!」
ジャンプも実はそんなに知識があるわけじゃない。
が、このさい、なんでもいいので知ってる事すべてにすがる事にした。所々、声が裏返ったのはご愛嬌。
ここでオレがなんとかしないと二人はヤバイんだ!頑張れ、オレ!
「・・・・・タチ・・・?」
だからサンデーが不思議そうに自分を見て言葉尻が疑問調に上がるのに内心、泣きたくなるほどだった。

227 :

ここでジャンプちゃん、リバースカードオープン!
バーサーカーソウル。はじかれたようにまくしたて出す。
「知らない?知らないでしょ。
あっははー、やっぱね。あんた、本ばっか読んでるけど、知識無いのよ。
うん、ナイ、ナイ。
そもそもあんた、女の子同士ってどうやってえっちな事するか知ってんの?」
「さ・・・触りあっこ・・・・・?」
せわしない息の合間に、サンデー。
「あ、あはは・・・だからさっきから・・・。
で、でもさ、どこをどうやって触ればいいか、あんた、分かんの?」
サンデーは血が昇っている頬から、更に首まで染めた。
「・・・・・わ、私・・・自分が触って気持ちいい所を・・ジャンプちゃんにおんなじ気持ちになって欲しくて・・・」
ああ、もう分からん。このムスメが分からん。
「あ、あははは・・・」
「あ!で、でもジャンプちゃんの事は想像しないよ!
本当だよ、そんな・・・絶対にしちゃだめだよ、テレビで見た・・・・モデルのコとかを切り貼りしたような・・・?なんだかね、ぎ、擬似恋愛なのかな、作り上げて・・・・・」
「あ、あははは・・・・・」
タイヘンに清純そうに言われたが、彼女のしているその想像、とやらは、なんとなく聞かない方がいい、とジャンプのセブン・センシズが告げている。
「・・・・・想いを告白しあうまでは」

228 :

やっぱねー!これ以上はこのムスメにしゃべらすな!
バーサーカーソウル、発動しろ!!
頼むからオレのターン、オレのターン、ずっとずっとオレのターン!このムスメにターンを回すな!!
「あっはは〜。
あんた、タチとネコも知らないでしょ?」
サンデーがうなずく。
「女の子同士の恋愛の用語なんだぞ?
こんな基本も知らないとはなぁ〜。じゃあ・・触りあっこ?とかの順序とか分かるわけもないっかぁ〜」
ジャンプも似たようなものだけど、とにかくまくしたてた。
「・・・?」
「女の子同士の恋愛だから、一般の恋愛と違うのは分かるよね?」
「・・・う、うん。同性愛?って言うの?」
ジャンプは深くうなずいた。
「そ。
だから、タチとネコって存在するの。
恋愛になにかと順序、決まりはあるよねえ〜。
タチは男役。
オーケー?で、ネコは女役。こーやって恋愛しあうの」
サンデーは不思議そうに聞いていたが・・・

229 :

「・・・・・共同参画なのに?」
ああっ。誰か助けてくれ!
「男女が共に貢献する社会なのに?
そりゃあ・・子供を産む能力は女性しか持ってないわ。だからこのお仕事だけは女性が分担するとして・・・でも同性なのに?なんで?」
分からん!
確かに字面だけ聞いてりゃ、冷静で知性あふれる言葉デスネ。
でも・・・それを言ってる本人の目はさっきから潤みっぱなし。
息はせわしなくて、ヒートダウンしてくれない。
しかも・・・時々、可愛らしいワンピから見える左足が隣の足にぴったりくっついてそわそわ、くるくるとじれたように・・・・・
ああっこの恋人がサッパリ分からん!

「あ、いや。それは正論だねぇ〜?うん、正論。
正論・・・。あ、そうだ、あんた、歌舞伎好きでしょ?由緒正しき世界」
「う、うん・・・」
「歌舞伎には様式美がある。
違う?」
「うん・・・」
「勧進帳で大見得切らない歌舞伎?あっははー、ナニソレ、喜劇?
どう?これも正論。歴史が築いた古くからある正論。様式美、型」
学校の体育館で見せられた歌舞伎の演目を一生懸命思い出してジャンプは続ける。
ほとんど寝ていたので、知ってるのは名前だけだが。
なんでもいい、それらしい事をこの場さえ・・・・・

230 :

「ね?劇にもある形式っつーの?形式なの、形式・・・・・
そう!宝塚も!
そうだよ、そうそう、宝塚って女だけの劇だよね?!」
ここで天啓が味方。
「宝塚だよ、宝塚を連想してみ!ほらほら。
あれって男役と娘役?がある。
違う?」
「うん・・・」
「それはなんで?簡単すぎて幼稚園児でも分かるよなぁ〜。
女しかいないからだ。
それが、今現在のオレたちの関係。分かる?」
ジャンプの頭は忙しく回転する。
サンデーがうなずいたので、
「で、さ。
男役、女役が分かれなきゃ、色々、問題なわけ。ワルツだってそう。男パートがあって、女パートがある。
オーケー?様式美。形式。型。なきゃ、なーにも出来ない、はじまらない」
サンデーが考え、考え、うなずく。
「男役が、リードする。女役はリードされる。
タチがリードする。ネコはリードされる。
ほら!理屈、完成ー!
合ってる!やっぱオレ・理論に狂いなし。理論通り」
「・・・うん!」
ここでサンデー、ジャンプを尊敬の目つき。

231 :

「で、オレがタチ」
「え・・・」
案の定、サンデーの目が不満に曇った。
「当たり前じゃん〜。
タチってなんだった?」
「男役・・・?」
「そ。リードする側。で、あんたはリードされる側」
自分とジャンプを交互に指す、ジャンプの指先からサンデーは目を上げて・・・
「おーっと。
みなまで言わない。オーケィ。分かる。
目を見れば分かる。
質問したいんだな。なんで?って。
じゃあこちらが問いたい。あんた、タチ、ネコ、知ってた?」
サンデーが残念そうにかぶりを振る。
「はは、そりゃ、話になんねーな。
じゃ、当然、オレがリードしなきゃヤバいだろ?
マズいだろ、この、場合!!
ラジオ体操、第一〜、ってオレが号令をかけてはじめる。オレ、リード。で、あんたはオレの号令に合わせて体を動かす。リードされる。
オレのをマネして、オレの号令通りにすればいーから。
それ以上はするな。
いい?するな。
オレがリードする側だからだ。オレのリードにまかせろ。それ以上はするな。
絶対にするな、フライングもなし」
サンデーはちょっと残念そうに口を尖らせた。

232 :

ジャンプは説得されろ〜されろ〜、とサンデーを見守る。
さっきとは打って変わったどきどきなのが、もう泣きたい気持ちだ。
ああ、ピンチな時ほどその人物が評価されるって言うけどさ・・・・
なんかオレ、すごくね?
すっげえピンチの乗り切りっぷりくね?さすがオレ。オレ、ブラボー。

サンデーは・・・しばらく考えていたようだ。
大分考えた後に・・・・・こくん、とうなずいた。
ジャンプは安心に涙が出るかと思った。よっしゃあああ!これでターンエンド!!!
なので、やっと抱き寄せたサンデーが、すねたような声色で言葉を添えた時は、ジャンプはいろんな物がない交ぜでなにがなんだか、もう。
「その役割って・・・いつまで?」

233 :


で、ここで話の先頭に戻る。
ここ最近の、マガジンちゃんのご機嫌はいい。
最近の自分のツキの良さは上々だね。実に悪くない。
この間、ちょっとツツいたらジャンプがゲロった。
その後の二人を聞いてないが、あの様子じゃあヨロシクやってる。
それに続いて、放っておいてもちゃおちゃんがやって来た。高等部の少女コミック付きで。
だからみんなの頼れる相談役のポジションの美味しさに気付いた。
何もしてなくても、あっちからやってくる。
大変に美味なヒミツを持って。
あー・・・でも。
置いてあるポカリに口をつけてマガジンは雑誌をめくった。
あれから少コミもちゃおも来てないな。
ま、仕方ないっか。オレがうっとーしくなって突き放したし。あれだけ厨房に手痛い扱いされたら、そりゃ近寄りたくもないわ。
しまったな。惜しかったか?
ま、いっか。素材は欠くことないでしょ。
・・・と、思っていたら、今日も素材がやって来た。
悩める子羊ちゃん。

234 :

このコは子羊ちゃんって言ってあげてもなんら差し支えないわあ。
小学館サンデーは、マガジンの前に来て深々とため息をついた。
可愛げ純度、100%。このムスメのほとんどが可愛げで出来ております、大人しい、素直、性格もいい。
「えっと・・・今、忙しい?」
「ん?なんで?」
マガジンは簡単に返事。
「マガジンちゃんに相談したいことがあるの。・・・マガジンちゃんはとっても頼れるし・・とっても大人だし」
「どーぞ。なんのおかまいも出来ないけど」
腰掛けている、その横を譲った。
と、言うわけでマガジンの横にサンデーちゃんが座った。

座ってからずいぶん経ったのに、ため息しか吐かない。
でもマガジンは辛抱強く待った。雑誌があるし、たいくつはしない。ポカリあるから、のどもかわかない。
「・・・・・あ、あのね?」
ようよう、サンデーは顔を上げた。
「あのね、恋愛の悩みなんだけど・・・いいかな」
マガジンは可笑しみをかみしながら
「ん?いいよー」
「・・・・・はぁ・・・」
サンデーはまた深々とため息を吐いた。
おっもしれ〜。

235 :

「あ、あのね、あのさ、マガジンちゃん・・・恋愛の事で悩んだりする?」
「あはは、しょっちゅうじゃない?」
軽く言って、サンデーの顔を覗き込んで「ね?」と首をかしげる。
「だって年頃の女の子だし?」
「!」
サンデーの目が、まるで光臨した天使を見るようになった。

「じゃ、じゃあ、聞いてくれない?
あ、でも・・・
でも、これは私の友達の悩みなのよ?
お友達に相談されて、でも私、知識そんなにないからどう答えたらいいのか・・・
お友達よ?お友達の悩み」
「うんうん、お友達、ね」
それから、またサンデーはあれこれ言葉を選んでいるようだ。
さっきからの指を組んだり、離したり、はっきりしない態度に戻る。
なのでマガジンも自分の爪を点検する。

236 :

「あ、あのね・・・
あのね、友達、悩んでるの」
「へぇ」
目だけサンデーに移す。
「・・・すごく、すごく・・・・悩んでいるの。
あのね!マガジンちゃん!」
「はいはい?」
サンデーは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてきゅ、と目をつむった。
「あのね!
キスって・・・あの・・・・、いっつもあっちから・・・・えっと・・・あちら側・・殿方・・・・・
そ、そう!殿方の方から女の子にするものかな?女の子側からしちゃ・・ルール違反かなっ?」

この時、マガジンは爆笑した気持ちだった。
分かる!言わんとする事は分かる!
サンデーの、必のすがるような目を見ながらマガジンは拍手してあげたい気持ちだった。
なんとか肝心な事はボカして・・・で、質問してる、必な目。
あははー、でもこれ、なんてギャルゲ?
しかもカワイイ目でオレを見上げちゃって。必で頼るような。カっワイイわぁ〜。
可笑しすぎて、爆笑をこらえるのにこっちが苦労する!
マガジンはサンデーの検討に答えるべく、サンデーの必の質問に答えようとして・・・

237 :

「だって・・・・・
友達は、お相手のことを最高に気持ちよくしたいの!」
「・・・・」
「・・・・・気持ちよくしてあげたいの、会ってる間は、会える時間だけ、もしも・・・一緒に一晩中いられたら、夜中じゅう・・・
もう、これ以上、無理ってくらいに気持ちよくしてあげたいの!」
「!!」
「悲鳴上げるくらい。なんべんも、なんべんも・・・もう、勘弁して、ってくらいに何べんも天国に連れて行ってあげたいの!
一緒に行きたいの!
泣き出しちゃって、子供みたいに、子供時代みたいにバカバカってぶって返すくらいに、もう忘れられない、ってくらいに気持ちよくしてあげたいの!
・・・・・気絶しちゃうくらい」
「サ、サン・・・・・」
「一晩一緒にいられる時なら・・・気絶しても大丈夫よね。何度だって。
なんべんだって気を失うくらい。そりゃあ・・気絶されちゃったらお話も、気持ちいい事も出来ないけど・・・。
アレコレ触っていたら、もしかしたら目を覚ますかもしれないじゃない?」
「〜〜〜」
「しかも・・・その、気持ちよくって気を失っちゃった所をデジカメで撮れちゃうのよ?・・・えっと、その、どどど、どんな?角度?からでも・・・。
気持ちよくなっちゃって気を失っちゃう顔なんて撮れたら、いっつもいっつもは会えない相手でも、家に帰ってもそれを見て、うふふ、って嬉しいじゃない?
その時の事を思い出したり・・・で、その、あの、えっと、えーっと・・ここからはとってもとっても言いにくい事なんだけれどね、えーと、その撮ったす、すが、姿・・・・・・。
!やだ、マガジンちゃん、そんな顔しないで・・・ダメなの?恋愛のお作法から外れているの?お願い、お願い助けて!!」
「〜〜〜〜〜!!」

238 :

マガジンは・・・。
今、過去最高のピンチが目の前で起こっているのが分かった。
サンデーの悲痛そうな訴えの途中から・・・冷や汗が背中をなんども伝っていくが分かる。

こ、これは・・・・・
「ス、ストップーーー!!!」
「・・・?」
自分でも可笑しいくらいに自分が動揺してるのが分かった。
サンデーはいつもの清潔感あふれる様子で、すがる様な目で自分を見ている。
なんで遮られたか分からないような・・・
「あの・・・違うのよ?」
「だ、だから・・・」
「声までは・・・・だ、だって!そんな誰に聞かれるか・・・」
「だから!ストップってば!」
あまりのピンチっぷりに呼吸が整わなくなる。
なので自分をも落ち着かすよう、
「オーケー。
まずは落ち着こうじゃないか、マイ・フレンド」
「・・・」

相変わらず、自分を頼るようにじっと見つめる目。
マイ・フレンドなんて今言ってしまったが・・・
〜〜〜このムスメ、訳分からない!
なに、コレ?なにこのイキモノ。
はい〜?これギャルゲじゃなくって・・

239 :

「ま、まずは質問させて?」
「うん!」
「言葉から察するに・・・恋人とは・・あ、サンデーちゃんのお友達のね?
お友達と恋人はけっこう深い関係?」
消え入りたいくらいに恥ずかしいのか。
肩をきゅ、と狭くしてから・・・こく、とサンデーはうなずいた。伏せた顔は見なくても真っ赤と分かる。
あははは・・・。
おいおい。そんな設定、エロゲだけにしてくれよ。
このムスメが分からない。
過激なコト言いながら、なに?その恥ずかしくてにそう、みたいな。おいおい。エロゲと現実の区別くらい付けろよ〜。

マガジンは自分を落ち着かせるためにもゆっくりとした口調でまた訊ねた。
「えーっと・・・サンデーちゃんは雑誌とか読む?」
「・・?」
「ティーンズ向けって言うの?ちょうどオレらの、それこそその手の悩み相談室、みたいな記事のある」
サンデーはもじもじと手を組んだり、離したりしながら
「・・・い、今並んでる雑誌は過激だから・・・・読むなって、家の人に・・・・・・」
あはは。あんたトコの娘さんの方がよっぽど過激では?
「じゃ、じゃあさ、どうやって知識を・・・う〜んと、友達の相談にのってあげられるような?」

240 :

サンデーは嬉しそうに顔を上げた。
「私もね!あれから・・・
あ、相談されてからね、図書館中の本を読んだの!」
「あー、なるほど、二次元ドリーム文庫みたいな?」
「?」
「ん?フランス書院文庫?いやあ、まっさかあ〜フランス書院文庫は置かないかあ」
「・・?
マガジンちゃんの言っている文庫はうかがった事が・・・。
ごめんね、今はもうなくなってしまった文庫で名作、たくさんあるのにね。手に入らない作品はどちらかの文庫で再版して欲しいくらい」
「あ、あははは・・・・」
「あ・・あのね?芥川賞を受賞されるような作家の方でも、その・・・
私たちには刺激が強すぎる内容を発表される先生もいらっしゃるじゃない?」
そっちかーっ!!
「・・・・旧かなづかいや古典なら・・・リアリティ無い気がして・・・・いいかな?って思っちゃう事もあるんだけど・・・・
やっぱりいけないよね、いつもは飛ばしちゃうの。
でもね!友達から相談受けてから・・・やっぱり読もう!っていけないコトなんだけれど・・・・・。
・・・け、軽蔑する?」
頼むから、もじもじ指を組んだり真っ赤になってうつむいたり・・・
「・・・・・・・・・・・・・どんなに過激だろうと。例えば・・・・そうだ。マガジンちゃんはマルキド・サドってお方、聞いたことある?」
ひぃぃぃーーーっ!!
「ち、違うの、違うのよ、人名なのよ?・・・俗語の・・え、えっちな言葉とは違うの、どうやらとってもお詳しそうな作品を・・・」

241 :

ダメだーーー!!
この時点で、マガジンちゃんのライフポイント、ゼロ。
ダメだ、このムスメ相手は、オレにはキツすぎる、ダメっす、ムリっす!!!
逃げたい。
今、マガジンちゃんの心がその一心に染まった。逃げたい、逃げたい。

「オーケィー・・・」
・・・・・逃げよう。
マガジンの頭がこの瞬間からフル回転する。
この場を逃げ切るために。
「そうだよねえ、誰もが悩むよねえ」
「!そうなの!!」
「オーケィ。
それはね、誰もが、なの」
「・・・」
「うん、アダムとイブの時代から。
愛の神秘に魅せられて・・エゴとエゴとでシーソーする。野獣と化すの」
「・・・・・」
「・・・・・だって世界中の誰もが業の深い生命体」
知ってる単語がどんどん出てきて、サンデーの表情は不安に曇る。
・・・マガジンが歌うような口調になってる事も気付かずに。

242 :

「・・・過ちを繰り返す。
そこに富裕層なんてないの。貧困層?信仰している宗教?
みんな、一緒。
みーんなが上を見上げれば・・・ほら、空しかないの。
違いなんて、そこに、ない。
・・・おっと。今、オレを夢想家なんて思ったかい?」
サンデーはかぶりを振った。
不安そうな、すがるような目つきで。

マガジンは逃げ切るためにどんな手でも使う算段だ。
自分が何を言ってるのか自分でも分からないのは承知だ。覚えてるセリフ、みんな使ったれ。
己の可笑しさ承知で大げさにため息を吐いて、かぶりを大きく振った。
「そう・・・世界中の誰もが恋愛には野獣な生命体。
それに違いなんて、ない。誰もが一緒。カンタンなコトさ。
だから・・・CHA-LA」

243 :

マガジンは人差し指を立てて、チチチ、と振る。
「チャラ・・・?」
「HEAD- CHA-LA」
へっちゃら・・・と口の中でつぶやいて、サンデーの顔がだんだん晴れる。

244 :

「みんなが一緒。世界人類、みなが思考回路はショート寸前。
サンデーちゃん・・・のお友達だけが特別じゃないの。
そして、その苦しみを一緒に分かち合って、さらには解決してくれる世界唯一の相手がいるの」
「相手・・・・・」
「・・・例えば・・・・サンデーちゃんはひとりぼっち?」

「私・・・ひとりぼっちなの・・・・・?」
「イメージして下さい」
歌うように言いながら、大きく手を広げる。
「・・・」
「いい?イメージして下さい
目を閉じて。」
マガジンは自分でも何を言ってるのかサッパリで大声で笑い飛ばしたかった。
自分を。なあ、誰か笑ってくれよ。
「誰の姿が見える?
誰の声が聞こえる?」

245 :

サンデーは目をつむってから、すぐにマガジンに顔を上げた。
「・・・今、姿が見えたのね」
サンデーはうん、うん、と強くうなずいた。
「おぼえていますか?
目と目が会った時を。おぼえていますか?手と手が触れ合った時・・・
・・・・・もうひとりぼっちじゃない」
「ひとりぼっちじゃない!」
「そう!サンデーちゃん・・
・・・の、お友達にはお相手がいる!
ほぉーら、カンタンな事だった!
よくよく考えて。
すべて悲しみはそこから始まって、すべての愛しさがそこに帰らない?」
サンデーはうんうんうん、とうなずく。
「だからCHA-LA!ひとりぼっちじゃない、HEAD- CHA-LA!」
「うん、うん!」
「いいぞお〜。何が起きても気分は?」
「へのへのかっぱなんだわ・・・!」
元気良くあいの手入れてもらえて、この時のマガジンちゃんの気持ちは・・・単勝のマキバオー。
逃げ切れたーーーっ。

246 :

「だからお友達にはこう言ってね?」
サンデーは今頃、はっ、と気付いたように居住まいを正した。
きちんと手を膝に組む。ちょっと気まずそうだ。そわそわとスカートの乱れを直す。
マガジンはその様子を見て、満足そうにうなずいた。
「オレに相談してる場合か?」
「・・・・・」
サンデーは真っ赤になってきょときょと視線をうろつかせた。
「あんたには相手がいるんでしょ?相手にまず、相談。
で、オレはその恋人とやらが目の前にいたら、まず怒鳴りつけるね。
あんた、自分のカノとえっちしたんでしょ。
じゃあ、ほっとくな!
お前が一番知ってるんだろが。
カノの事、一番知ってるんでしょ。じゃあ、ほっておくのか、と。
ほっといてエライこっちゃになるのは一番あんたが知ってんでしょ?
もしかしたら不安なカノは周りに相談するかもしれない。
相談された相手は吹聴しまわるかもしれない。
どれだけ被害が及ぶかを想定しているのか!どれだけ、どれだけ、どれだけ!おまいらは苦境に立たされるかを想像もしてみてくださいよ、何?オレ、難しい事、言ってる?言ってるの?!」

247 :

サンデーがおろおろしたように立ち上がった。
「ち、違うの!お相手は・・・その、お友達のお相手は悪くないの!」
あせった様に手のひらを見せて振る。
「私が・・いけないの、相談なんてしちゃって・・・」
マガジンは柄にもなく取り乱したのに、我に返った。
大きくかぶりを振る。落ち着け、オレ。
「私が悪いの、その・・・・大事な秘密を・・・・・。
マガジンちゃん」
「・・・・・」
「お願い!
・・・・・一生のお願い、この事は・・・」
オーケー。
考えるな、オレ。
今、サンデーちゃんから受けた相談も、内容も忘れたいのは・・・
「こちらの方こそ。
この事は誰にも言わないわ」
サンデーを見る。

248 :

このお話はノン・フィクションです・・・、か。
実在の人物が目の前にいるよ、おなじクラスだよ、親しいよ、ああ、もう泣きたいよ、しかも二人ともね、トホホホホ。
「マガジンちゃん・・・!」
しかもこのコ、感動したように声詰まらせたよ。
もうこのムスメ、なにがなんだかサッパリ・・・・・
「・・・・・だからサンデーちゃんも誰にも言っちゃダメ」
・・・だけど、野放しにしてはいけない事だけは分かる。
なので強く言い聞かす。
「うん!」
「周囲には漏らさないで?
・・・と、お友達に伝言お願い」
「うん、うん!」
「お相手にだけよ?もう誰にも言っちゃダメよ」
「うん、ありがとう!」
「じゃ、お互い、この事は墓場まで、って事で・・・」
「ありがとう!」
サンデーはすっかり元気になってマガジンの手を取った。
「これからも友達でいてね!
私はいつでもマガジンちゃんの味方よ!」
ぶんぶん振られても、マガジンはされるがままにしておいた。
あー・・・どうしよ。明日からどーゆー面下げて登校しろってのよ・・・・・。

249 :

と、マガジンちゃんがユカイな目にあっている間。
こちらは初等部。
あいも変わらずにピヨピヨ、ピヨピヨとヒヨコの飼育箱をひっくりかえしたようなにぎやかさ。
・・・の、中でコロコロちゃんは納得が行かない。
「うっふふふ〜♪」
この間。つい、この間のことだ。
親友のスクウェア・ガンガン・エニックス・・・そうそう、ボク、本名、やっと全部言えるようになったんだよね。この並びで良かったっけ?なんだか不思議な響き。どこが苗字なんだろ?
その、年上の親友にちゃおを紹介してから、ちゃおのご機嫌がいい事この上ない。
そりゃあ・・・元気ないより、ずっといいケドさ。
なーんか違うんだよね。
コロコロちゃんはちゃおちゃんをじーっと見る。
様子が、って言うか・・・上手く言えないけど。

250 :

だからツツきに行った。
コロコロは家でも末の方の妹だし、幼さが抜けきってないのか。あまり考えずにちゃおに近づく。
「ねー、ねー、ちゃお〜」
「ん?なに?」
うわ。この目付きもヤ〜なんだよね。
なんだかボクをカワイイ妹を見るような・・・アンタのがおこちゃまじゃん!
「ねーねー、ちゃお〜。なーんか最近、ご機嫌だよね」
「うふ」
その笑顔がなんだか腹が立った。
あ、待ってよ?なんかこの笑顔、見覚えが・・・。
「なーんかさ、ボクのおねーちゃんも最近、様子ヘンなんだよね」
「?」
首をかしげるしぐさも・・・
「なんて言うのかな、なんか・・・なんか。
なーんか、前と違うんだよね。
ボクと喋ってても、なーんか。なーんかが、なーんか、ヘンなんだよ・・・」
「あは、可笑しい、コロコロちゃんったら」
「あ!もしかして!」

コロコロが顔をぐいっと近づけた。
「もしかしてちゃおがそれを知ってるんじゃな〜い?」
「?」
「ボクに隠れてなーんかコソコソさ・・・
そうだ!きっとそうだよ、なんかちゃお、オカシイもん!ぜーったいオカシイもん!」
大げさに自分を覗き込んだ友達にちゃおはうふ、と笑った。

251 :
「恋でもしたんじゃない?」
軽く返事する。本当、相手にされてないような・・・。
「!するもんか!・・・あーんな世話の焼ける、なんでも手を引っ張ってあげなきゃいけないおねーちゃん、ボクが面倒見てあげなきゃ、一体どうするのさ!」
「・・・・・」
「ボクのがずーっと大人だし!でしょ?」

ちゃおちゃんはその様子を見て、ちょっと考えて
「でもね、女の子はね、恋をすると変わるのよ?」
そう、これ!
この目つき!この目つきがイヤ!最近、このコこんな目つきばっか。
「・・・・・」
「魔法みたい!
コロコロちゃんも恋をしたらとっても変わるよ、きっと」
「・・・!」
「そしたら見てみたいな」
楽しそうに笑うちゃおに・・・

252 :

「するもんか!」
コロコロは勢いつけて立ち上がった。
「こ、恋なんてしないもんね、そんなの、フケツだもんね!
ぜーったいにしない!しないもん、なんだよ、ちゃおそんなコトばっか考えてるの?」
やっぱり微笑ましい物を見るような目つきが終わらなくって、
「!
なんだよ、恋、恋ってさっきから・・・
分かった!アンタさ、だからフリルとかいっぱいの洋服着てるんでしょ!『あなた〜ご飯にする?お風呂にする?』みたいなコト、したくって!」
コロコロは言いながら、ちゃおの目つきが変わらなくって、嫌がらせに
「あは〜ん、うふ〜ん、みたいにするんだ!
フッケツ〜!!」
声まで作って言ってやったが、ちゃおの目つきは変わらない。
どころか、

「あ、今日は高等部と終業時間が一緒だ」
腕時計に目を落とす。
「やった!お姉ちゃんと一緒に帰れる。
?もしかして、コロコロちゃんったら、サンデーさんと一緒に帰りたいの?
もー、あんまりお姉さん困らせちゃダメだよぉ?手の付けられないやんちゃっ子!ってサンデーさんまで降参しちゃったら、それは相当に度が過ぎちゃってるワガママって事だよ〜」
くすくす、困ったように笑う友人に、コロコロはなにをどうすればいいか分からず・・・
「〜〜〜〜〜」
怒りでその場で荒々しく地団太踏みたいくらいだ。
もお、ちゃお、知んない!ガンガンおねーちゃんに言いつけてやる!

253 :

ここでもう一回、中等部に戻る。
・・・講談マガジンは自信が無くなってきた。
これってほんっとーうに美味しいポジションなのか?
頼れる相談役。
あ、いや。でも自分内成績を勘定してみたら今のところ楽しかった目の方が多い。
・・・・・精神的重圧は辛かったけれど。
ああっ、頼むからサンデーちゃん、もう来ないで!

ふかーく悩んでたら、
「・・・・・よぉ」
ふてくされたような声。
「お前さあ、なんつーか、相談?とか聞くの上手いじゃん?
経験も豊富だしさ。
オレのもちょっとさ、聞いてよ」
あー・・・今、一番会いたくない相手が来た・・・・・。

集英ジャンプが、返事も聞かずに隣に腰を下ろした。
こ、このオンナと・・・・・。
横を向いて、ふてくされたように遠くを見て考え込んでいる相手を見た。
こ、このオンナとサンデーちゃんは・・・いや、考えるな、オレ!
「なんだよ、イヤなのぉ?」
「い、いえ、別に・・・?」

254 :

マガジンは視線をそらした。遠くを見る。
「なんだよ、お前、こっちを見ろよ」
「あ、あはは、うん・・・」
見られねーんだよ!
「ちっ!分かった、あれだろ、ツンデレとかクーデレとかそんなだろ」
「はは・・ははは・・・」
「んな事やってる暇あるなら天才魔法先生のセリフなんとかしろよ、あれきらりんちゃんより棒だろ、ドラマのお前、なんだろよ」
が、ジャンプはちっとも空気を読んでくれなかった。
どっかりと腰を下ろして、帰ってくれそうにもない。こちとら、あんたの顔も見たくないのよ!
どころかやたらつっかかってくる。このオンナ、性格、サイアクだな。
あ、いや・・・。
ジャンプを観察する。
それだけせっぱ詰まってるとか?

255 :

「なに?あんたヘンじゃん」
本当に苦しい笑顔をジャンプに向ける。
目はあわせられない。サンデーの言っていた事は、考えないように、考えないように・・と念じながら・・・
「あ?」
「ん?相談?悩んでる人っぽくないじゃない。むしろ元気?」
ジャンプは怒ったように顔を下向けてた。

「・・・オレだって八つ当たりしたい時もあるよ」
ビンゴか。
サンデーとヨロシクなってからなーんか攻撃的なのが収まった、やれやれって思っていたら・・・・・。
「へえ、すっごい悩んでるとか?」
そら、悩むわ。
思い出したくない事を思い出しそうになってマガジンは頭をぶんぶん振った。
「?」
相変わらず、目だけはあわさずに
「き、聞かないでも・・・?ないよ?」
ああ、でも聞きたくない!
「本当か!」
ジャンプの顔が晴れた。
「恋愛の悩みだぞ?!お前、得意だろ!」
ああ〜、悪い、今、それ、一番聞きたく話題な件について。

256 :

「あのさ!
え、えーとぉー・・・
そう!オレの友達な?友達の悩みだぞ?」
「へ、へぇ〜」
ああ・・・もう爆笑したいわ、今のオレを。
「友達から相談受けてさ・・・・・
その・・・オレ、そんなに経験あるわけじゃないじゃん?
一番に、お前が浮かんだわけ。なんつーかあの手この手が使えそうなお前を」
その表現、止めれ・・・。
「・・・・・あ、あのさぁ・・・友達、恋人に対して悩んでるわけ」
聞きたくねえぇ〜。
でも相談モードに入ったらしい。
深刻そうに俯いて、ふぅ、とため息を吐く。
まあ、いい。このオンナは全部が早い。
手堅く、とか辛抱強く、とかは無縁のオンナだ。
すべてがスピーディー。とっとと帰すぞお。
「あのさあ、相手が・・・その、エロすぎて持て余したら、お前ならどうする?」

257 :

ああっ、いきなり核心っ!
「あはは・・・・」
「その・・・ほら!男ってみーんなすけべな生き物じゃん?ちらっとパンチラでもしたら食いつく、みたいな。
お前知ってるだろ?
そんなカンジ。うん」
「あ、あはは・・・」
「・・・・・ふぅ。
オレの友達の恋人、すげーの!もう手に負えないんだよ!もう・・・今までがさ、抑えすぎ?っての?
いったん手綱とかなくなったらさ・・馬なら暴れ馬って言うじゃん。
ズバリそれだよ。あれは暴走だ。手綱がプツっと・・・・・切れたよ。
普段大人しいヤツがキレるとえらい事になる、って言うけど・・・もう・・・・・もうどーしたらいいのかほとほと困ってるんだよ・・・・・・」
ああ、言ってる内容をおぼろげに理解できるオレが悲しい件。
「へ、へぇー・・・」
「はぁ・・・・・・。どーすりゃいいんだよ。お前、コントロールの仕方とか分かるんじゃね?そういう相手にはこの手でいけ!いいや、この手!みたいに」
ふぅ・・・とふかーくため息を吐いたジャンプに、実はマガジンはちょっと救われた気がした。
あの手この手って、そっちの「手」か。

258 :

マガジンはさり気なく進言した。
「その友達はさ・・・言えばいいじゃん?
『これ以上はダメ!』とか」
言ってから、あわてて付け足す。
「今日は危険日なの!とか」
なんと言う自然さ。ピンチの時ほど評価が問われる、と良く聞くが・・・・サンデーちゃんと言い、今と言い、オレ、そんなに振り回されてない。オーケィ。さすがオレ。
「・・・・・違うんだ」
ますます俯く。
「・・・・・・・嫌われたくないんだ」
「・・・」

・・・マガジンは少しだけ改まった気持ちになった。ジャンプのこんな落ち込んだ声は・・・・そういやサンデーちゃんに殴られた日以来だ。
「もしも・・・もしもだぞ?相手の希望通りに出来なくってさあ・・・それで、嫌われるのがイヤなんだよね・・・・・」
「・・・・・」
「初恋だしさ、今までこんなに誰かを好きにな・・・」
言いながら、はっと気付いたように
「って、友達にすっげー深刻に相談されたわけ!
初恋で、すっごくすっごく好きで、嫌われたくないって。だからどうしよう、って」
もしかしてこれ・・・サンデーちゃんよりもくみし易しだったりして。
「で、お前は恋愛の達人じゃん!だからお前に相談してみようって」

259 :

「へえー」
マガジンは次を促す。
「で?」
「は?」
「悩みはそれだけ?その友達の悩み」
ジャンプはうん・・と元気なくうなずいた。

・・・・・あまり、嘘をついている表情ではない。
このオンナは嘘とか大嫌いだし、そもそもオレが他人の嘘を見逃す方でもない。そこは割りと自信がある。
それで、これだ。
洗いざらい吐き出して、で、これ。
これは・・・・
かな〜りサンデーちゃんよりもくみし易し、だ。つかサンデーちゃんが異常だよ!

まとめてこのオンナになんとかしてもらおう。
マガジンはジャンプを観察してから、がしっ、と両肩を持った。
ジャンプが目を上がる。救いを求めるように見上げる両目。
そのまま目を据えた。
マガジンちゃんは言い聞かせるようにゆっくりと言った。

260 :

「オレならその友達に、こうアドバイスするね」
「うん!」
「『オレに相談してる場合か?』」
ジャンプの目が見開かれる。ごくっと唾を飲み込む。

「それって・・・!」
「オレに相談してる場合か?
今、この時にだって・・・その恋人は、誰ぞに相談してるかもしれない」
「!」
後はサンデーに吐き出した気持ち、そのまま、
「あんたは不安。
その不安が恋人に伝わらないわけがない。
で、その恋人も不安になる。不安な恋人は誰かに相談する」
「あ・・・!」
「相談する。
相談された人は「おいおい、こりゃいいネタだぜ〜」って吹聴して回るかもしれない。
恋人は超・エロいんだよね?」
ジャンプはかぶりを振る。
「そーんな面白おかしい話題に、周囲が食いつかないわけがない。
さあ、周りは二人の話題で持ちきり。
そりゃ、誰だって恋愛話、大好きだもん。しかも、知ってる人。目の前にいる人。
知ってる人を肴にして、みんなで思う存分、噂話で楽しむ。わいわい、きゃっきゃっ。みーんなが大好きな恋のお話で。
ほおーら、出来上がり!二人にとって最高の苦境、第一段階出来上がり!」

261 :

「あ・・・あ・・・・・」
「嫌われる?ははっ、それ以前の問題になるね。
周囲がもう二人のいられない場になるね。だよね、みんながヒソヒソコソコソ二人の話題で楽しむ。誰だってそんな楽しいの、ほっておかない。
と、なるときっと両家のご両親だって黙っちゃいない。
嫌われる以前の問題だね。親に引き裂かれる。
もしかしたらもう一生会えないってくらい。
さあーて、その苦境はジャンプ的に何段階目?
言っとくけどこれで終わりじゃないわよ。芸能雑誌・・・が取り上げるかはその友達の知名度によるけど、ま、エロ雑誌読者欄には投稿されたりして。
面白おかしく尾ひれつき、今ってネットも怖いよね。ブログなんか付けてるコは書いたりして。しかも複数。こりゃ二人は一生その話題から逃げられないな〜、更には・・・
と、フルコースってほどオレには苦境は考え付くけど?
どこまで話そう?」
ジャンプは聞きたくない、と言うように耳をふさいで顔を伏せた。

そのジャンプの肩に手を置く。
「だから、言え。
友達には言え。オレに相談してる場合か?と。
まず、恋人に相談だろ、と」

262 :
ジャンプがすがりつくような目で見る。
マガジンは満足そうな笑顔でうなずく。よし、乗り切れる!
「恋人に相談だろ?
恋人の悩みも、聞いてあげてね」
マガジンは言いようもないモノがこみ上げるが、なんとか抑える。
「恋人の悩みをよおーく、聞いてあげる。いちからじゅうまで聞いてあげな。
あんたが聞かずに、誰が聞いてあげるの?
で、二人で相談し込みな。心行くまで。
それともあんたらは隠し事しあっこしてる間柄?」

ジャンプは急に立ち上がった。
「違う!なんでも話し合って・・・」
「なら、無問題!
自分たちで解決しろ。じゃなきゃ、被害がそりゃあ、もう」
特にこのオレがな。

263 :

「サンキュ!」
きびすを返そうとして、気付いたようにマガジンに請合った。
「最上級に感謝!
お礼にあんたに将来、なにがあっても卒業文集だけは人に見せない!」
そうとうに気分が明るくなったらしい。
大声で笑いながら、もどかしいってほどに早口だ。
「あっははー、お前、ほんっとバカだったよな〜。
何書いたっけ?
『先生!卒業したいです・・・!』?『お前はもう卒業してる』?あっははー!もう、ほんっとお前、バカ!」
手を振りながらマガジンは思った。
バカはおまいだ。
「ま、小学生なんてみんなバカばっかだけどな〜。
これがお礼!一生、オレ、卒業文集だけは秘密!家の奥、ふかぁ〜くに眠らせとくから!感謝しろよぉ〜」
相変わらず笑顔で手を振っていたマガジンを置いてジャンプはきびすを返した。
来た道を飛ぶように駆けていく。

最初から最後まで笑顔で手を振りながらマガジンは思った。
バカはおまいだ。昨今、卒文に恐ろしい事、書けるか。オレは無難に書いたよ。
『講談マガジンは千代田女子学院を愛しています。世界中の誰よりも。』
句読点もきちんと付いてて、さらにあまりの愛校心に教師の誰もが感嘆してた。

264 :

ふぅ。
マガジンちゃんも立ち上がる。
少しだけ振り返った。
美味しいポジションかと思っていたけど・・・。
ふっ、と自嘲するように笑った。
オレには荷が重いわ。手放そ、相談役。
・・・・・ゆっくりとした歩調で、なじみの場所を後にした。疲れたように。


265 :

が、ここにその相談役をがっちり握って手放さない人物がいた。
スクウェア・ガンガン・エニックス。どこが苗字でどこが名前なのかはあまり知る者はいない。並びがこれで正しいのかも。まあ出版界の女子の名前がユニークで種類豊富なのは面白いが。

「でっさー、ほんっと腹立つんだよ!」
コロコロがガンガンの膝に頬杖をつく。
ガンガンちゃんは優しく髪を撫でた。
「ふぅん。ちゃおちゃんが?」
「そ!あのコなんてさ、ボクよりチビなのに。こないだしゅーんってしてた時に力になってあげたの、誰だよ、ってカンジぃ」
「そうねえ。
そうそう、あの時はコロコロちゃん、大活躍だったわね!」
「え?えへへ・・・?」
「驚いちゃった。さすがコロコロちゃんは頼りになる。
おねーちゃん、コロコロちゃんがいなかったらきっと途方にくれてたわ」
「はぁ〜〜〜〜にぁあああああ〜〜〜ん〜〜」
「あ、ピンキー食べる?メロンソーダ味」
「はぁふぅ〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜ふぅにゃぁぁぁ〜ん〜〜〜」
コロコロはガンガンに懐きっぱなしだ。
もう疑うことないように指から直にピンキーを舐め取って、ゴロゴロ喉を鳴らさん勢い。
膝に頬をこすりつける。

266 :

そんなコロコロを眺めながら、ガンガンはふふっと笑った。
そおなのぉ。
ちょっと考える。
ちゃおちゃん、どっちが先かしら?
実技?
将来計画?
どっちを先に進めてるのかしら?

この間ちゃおが中等部にやって来て、やはりまんまとこの先輩に発表会をはじめた。
「私ね、一番の正念場が適齢期だと思うんです!」
勢い込んでキラキラ輝く目でガンガンに熱い口調の報告。
「・・・あ。その手前に思春期があるんですけれど。
これはまた別です。それは勝負のための大事な準備期間だし。
で、適齢期が一番の正念場だ、ってずーっと考えて思ったんです」
「そう?」
それを聞いてくれる、安心する優しい眼差しがいつも変わらない。
なのでちゃおはスルスル自分の考えを出してしまう。・・・目の前の相手がどんな人物かも分からずに。
「だって・・・私が17歳の時にお姉ちゃんは22歳なんですよね」
「そうね」
「で。やっと私が成人したら・・・お姉ちゃんは25歳。
ここらへん、一番、危険な時です」
「そうなるわねえ」
返事しながら、ガンガンは考えた。
あら?この姉妹って何歳と何歳だったかしら?

267 :

「この、一番危険な時期。
・・・先輩、私、勝負かけますよ?」
「そうなの?」
挑戦的な目で言われても、ガンガンは動じない。声色も変わらない。
「それまで、私、成長します。
どんどん、どんどん、成長します。お勉強だってしっかりします!オ、オベンキョは・・・その、お姉ちゃんが他の人とはしちゃダメって強く叱るからしないけど」
ガンガンの目の笑みが深くなる。
「思春期も危険だけど。でも私、思うんですよ。成人するまではここが私にとっては・・・我慢時です。
成人すれば、身長はほぼ一定」
ガンガンがうなずく。
「知識?えーっと・・・学力?もですよね。
調べました。成人までが人の成長。
全部の成長がそこまでで決まるんですよね。
じゃ、成人した時は、もう今みたいな差はないもん。なんでこんなカンタンな事に気付かなかったか不思議なくらいです」
ガンガンはただ、ただ聞いていた。
なんて可愛らしい宣言かしら。ぴーちく、ぴーちく、耳にも心地いい。
「違法かな?って迷ったときは成人まで待つ、って先輩の言葉も理解できました」
「まあ」
「成人するまでは、判断しちゃダメですよね」
「そうよ」
「いろいろ、いろいろ、成長して、世間を見て!」
「そうね、法律には要注意ね」
ガンガンは優しくちゃおを撫でながら思案した。
小学館家が雇える顧問弁護士なんてすごい先生方に決まってる。
まあ版権には強い先生だろう。いい先生、版権・・・きっと他はろくに扱わずに今に至れただろう。と、言う事は・・・
今気付いて、笑みがこぼれた。びっくり。私、嘘は言ってないじゃない。

268 :

コロコロちゃんはしばらくガンガンの膝に頬をこすりつけていた。
「・・・?」
何にも言わない。
なにかを考えてるような表情。あらま、可愛らしいお顔。
しばらく頬をこすりつけていたコロコロは、ようよう不満そうな声色で
「・・・・・おねーちゃん・・・恋とか・・・してるのかなあ」
考え、考え言う。
こすりつけるのは、もうぐりぐりと押し付けるぐらいにまでなってきた。
相当、考え込んでいるらしい。しかもちょっとふくれたような顔つき。
「それは・・・ちゃおもなのかなあ・・・・・。
・・・・・まるで・・すごく、すごく」
「?」
「甘くて、甘くて、美味しい・・・」
ガンガンは撫で続ける。

コロコロがやっと顔を上げた。
「美味しいお菓子を、こっそり食べてるみたい!
二人とも、そう!そんなカンジ!
ボクが食べたら、もったいない、隠れて食べちゃえ、みたいなそんなカンジ!」
「・・・・・」
「教えでもしたら取られちゃう、みたいな。そんな・・・いやしんぼだよ、教えてくれてもいいじゃん、食べちゃったって事すら教えてくんないなんて、どんだけいやしんぼなんだよ」

269 :

「隠れて食べるくらいなら、相当、美味しいんだよ、きっとお父さんとお母さんも禁止するくらいだね」
ガンガンちゃんはクスっと笑った。やっぱり賢いのね。
「ズルイ、ズルイよ、そんなに美味しいもの、自分たちだけで食べちゃうなんて。
ボクにも分けてくれてもいいじゃん!」
「ふふ。
そんなに食べてみたい?」
「え・・・」
「じゃあ、ガンガンおねーちゃんと・・・」

そこまで言って、ガンガンは止めた。
「・・?」
自分を不思議そうに見上げる、幼い目を見る。

270 :

・・・ダメだわ。
ちょっと惜しそうに、一度止めた手をまたコロコロを撫でるのに戻る。
もしも、ここでコロコロちゃんをつまみ食いしちゃったら・・・。
すると、当然、コロコロちゃんはサンデーちゃんには黙っていられない。
口止めしたって、このコがバレないように振舞えるはずがないもの。サンデーちゃんには確実に発覚するわ。
つまみ食いなんてはしたない事、バレちゃうだけでもヤなのに・・・。
・・・もしかしたら、サンデーちゃんの恋路の邪魔になるかもしれない。
やだ、そんな野暮な事、絶対にしたくない!
野暮な事、一番に嫌いよ。だってそんなスマートじゃない事、んでもしたくない。

なのでコロコロに優しく話を続けた。
「・・・ガンガンおねーちゃんと、将来、誰かがそのお菓子、食べちゃた時はコロコロちゃんは祝福してね?」

271 :

「・・・えぇー?」
コロコロがすねたように、
「ガンガンおねーちゃん、取られるのぉ?ボク、祝福なんて・・・」
「その代わり、コロコロちゃんがどなたかと食べたら、おねーちゃん、断然、応援するわ」
「え・・・」
「誰が反対したってね!
だって親友だもの」
コロコロの顔が一気に晴れた。
「うん、親友!」
「親友だから、おねーちゃん、食べたらコロコロちゃんに必ず報告するわ」
「・・・え・・」
「どんな方とご一緒にいただいて、どんな味だったか、とか・・・感想をコロコロちゃんに教えるわ」
「う・・・うそ・・・そんな・・大事な・・・・」
「だって親友同士だもの!」
「うん、うん!」
「だからコロコロちゃんも教えるのよ?どなたかと味わったら」
コロコロの目が尊敬と信頼とに染まりきる。
「うん・・・!絶対に・・・!」
「必ずね。
・・・コロコロちゃんはどんな方と食べるのかしら。楽しみねえ」
ハーッとコロコロが幸せのため息をついた。やっぱりガンガンの膝にほっぺたを預けきって、さっきは不満そうだったのに今は満腹した子猫のようだ。うっとりと膝に頬を摺り寄せる。

なんとも軽やかな親友宣言に、もうおなか一杯、と言うように。

272 :

「はぁ・・・ガンガンおねーちゃん、どんなヒトと食べるのかなあ・・・」
胸がいっぱい、と言うようなため息と一緒にコロコロはつぶやいた。すりすりと膝に頬を摺り寄せながら。
「ガンガンおねーちゃんは・・・すごいおねーちゃんだもんねぇ・・・・。そんじょそこらのヤツじゃダメだよねえ・・・・・」
「?」
「そんなのボクだって許さない!すっごく、すっごくスゴイ人じゃなきゃ、ダメだよねえ」
語彙の可愛らしさにガンガンはついクスクス笑った。
「困ったな」
クスクス、笑いながら
「私、そんなに理想が高い方じゃないのよ?」
「えぇー?まさかあ」
すりすりと、頬ずりと一緒に幸せそうに、コロコロもくすくす笑う。
「本当。ちょこっと・・・理想が狭いかもしれないけれど」
「えへへ。狭いぃ〜?」
コロコロが視線を上げる。
「ええ。だから理想が高い、よりももっと難しいのかもしれない。
狭いの。理想が」
「どゆいう意味〜?」
「うーん。高くは無いつもりだけれど・・・・・」

恋愛話にわくわくしたような目のコロコロに、ガンガンは困ったように笑いながら・・・、

273 :

「(足手まといになったらそれは困っちゃう。それだけは避けて私に付いて来ることが出来るだけの力をかねそなえた)
おなじ歩調で歩いてくれる、でも、
(手のひらでころころ転がせないと、ちっとも楽しくもない。出る杭を叩きながら、じゃコスト悪いもの。持て余すくらいにキレるのはやっぱり避けて)
あんまり歩調の早いお方には付いていけないわ。
(私の歩調に付いて来れる、でもちょっとだけ、本当にちょっとだけ。難しいサジ加減ね。私よりもキレの冴えがすこしだけ控えめな)
ちょっとくらい、私の後ろを歩いてくださるようなヤサシイお方。それでね、
(一緒にこの世の頂上ってくらいに高い場所で下々をはるか見下ろしながらケケケって笑いあえる、そんな神経を持っていないとこれも困りモノ。下々を見下ろすのが大好きな、)
天国へも喜んでご一緒してくれて・・・でもね?
(歩調が付いて来ることが出来ても、慈善活動、だーい好き、なんて持っての他。寒気しちゃう!
地上にいる人間どもを、いかに引き釣り下ろすかその算段にやっぱりケケケって笑ってお付き合いしてくれなきゃダメダメ。
そんな趣味を持った、かつ、血の池をすすってでも生き延びてくれるような強靭な精神、体力をかねそなえた)
・・・・・地獄だろうと・・ずっと、ずっと・・・隣にいてくださる。
そんなお方。そんなお方と、一生を、共にしたいの・・・・・」
最後はささやき声ほどになった。優しく、優しくコロコロちゃんに語って聞かせて・・・最後にガンガンは小さな困ったような笑顔で、首をかしげた。「困るでしょ?」と共感を求めるように。
自分を見上げる、幼い透き通った目に。

274 :

コロコロはぽわ〜っとガンガンを見上げ続けた。
息をするのも忘れてるらしい。
大きく、はぁーっとため息を吐いたのはずいぶん時間が経ってからだ。
すっかり感心しきった様子。
「すごー・・・やっぱガンガンおねーちゃん・・・」
「?」
「もう理想が決まって・・・やっぱ、大人の女性〜、ってカンジぃ」
「あらら、困ったな」
ガンガンは本当に困ってしまったようだ。
「理想が高いよりも難しそうじゃない?」
「えぇー?」
「高いよりも、もっともっと・・・それこそ狭き門だわ」
ほとほと困ってしまったように笑う。
その様子は自分でも手を焼いているのがうかがえた。お手上げ、というような苦笑。

すりすりと幸せそうにガンガンの膝に頬を擦り付けながら、
「なんで〜?
反対っぽいよぉ〜」
「・・・?」
「そんだけ決まってたら、もう後はぴったり合う人を探すだけじゃん〜」
自分に擦り寄る後輩をあやしながら・・・・・ガンガンは自分の目つきが真剣になるのが自分ですらも分かった。

「ぴったり合う人・・・」
つぶやく。コロコロを撫でる手にも力がこもる。
視線は手元の後輩にあるが、別の所を見てるような・・・。
とても、真剣に。

275 :

「でしょでしょ〜?
イメージは固まってるんでしょ〜?
後は、その理想に合う人を探すだけだよお〜」
「・・・・・」
「ね!ぴったりを探すだけ!
しかも明日からでも出来るんだもん。やっぱすごいよ〜」
ガンガンは目が離せない、と言うくらいに視点を据える。
考え込む目つき。
「・・・・・そうね・・」
「いいなあ〜。やっぱガンガンおねーちゃんはウチのおねーちゃんなんかよりもずーっと大人だぁ!」
「・・・ぴったりを・・・・」
「おねーちゃん・・・あ、いっこ上のサンデーおねーちゃんね。ちゃおったら、ほんっと腹立つんだよ?サンデーおねーちゃんなんてさ、ボクよりも手がかかるのにさ、サンデーさんを困らせちゃダメだよー?なーんて・・・・
・・・・・
・・・」

276 :

コロコロを改めて見るように、ガンガンは見下ろす。
なんだかぴーちくぴーちく言ってるけれど、それはさて置き。
コロコロちゃん、ジー・ジェイ。
驚きの目が押さえられない。
こんな可愛らしいコに教えられるとは。子供の視点が大事って、本当なんだわ。
その通りだわ。
その通りだったわ、私、恋愛なんて一生ムリって思っちゃった。
でも、コロコロちゃんの言うとおり。
ぴったりを探すだけだったんだわ。
かなり、狭い。相当狭い、この理想。
針の穴よりも、まつげの先よりも狭いと思っていた。
それに気をとられすぎて・・・。

「コロコロちゃん!」
「ぴゃ?!」
ガンガンはコロコロをぎゅ、と抱きしめて力を込めた。
あぁ・・・なんて抱き心地のいい。きっと美味だろうに、サンデーちゃんの妹なだけが惜しい件!!
「ありがとう!
救われた気持ちよ。味わったらきっと、きっと感想は教えるわ!」
先ほどのように、色々伏せつつ、単語の変換も隠しつつ。
「お礼に何か作ってあげましょ。何がいい?なんでもリクエストして?」
「うわ、本当?」
「本当、本当。あ、ピンキー食べる?もうお口に残ってないでしょ」
「わーい!」

277 :

「・・・・・と、言う事なの」
「・・・・・・」
「きっとマガジンちゃんには残念な結果だろうけれど」
「〜〜〜〜〜」
で、中等部、教室。
華やかな笑い声があがる、昼放課。
そんな中、本当に残念な報告のように深くため息を吐くガンガン。
さぞかしご心痛だろう、とマガジンをいたわしそうに見つめる。
なんだ?!オレ、厄日がフィーバー中?!
さもイヤそうに相手を見上げる。
視線が合うと、相手は嬉しそうににこっと笑った。

マガジンは相談役は荷が重い、と悟った。
ので、現在、教室に隠居している。
もう、誰とも会話も交わしたくなくて、「オレに触れたら怪我するゼぇ!」と言わんばかりにやぶ睨みし続ける。
サンデーが一度だけ心配そうに、「辛い事があったら、私はいつでもマガジンちゃんの味方よ・・」とだけそっと距離を置いて伝えてくれた。ごめん、あんたとも話したくないんだわ。つか、あんたが一番、話したくない。
・・・でも、まさかそれ以上に心臓に悪い、上に不快で耳をふさぎたくなるような事をつらつら、つらつら言う生き物がいようとは。しかも、顔色・声色、一切変えずに。

278 :

・・・・・どこまでオレ、アンラッキー?もう、誰か笑ってくれよ、笑い飛ばしてくれよ・・・。
自力で笑う事すら出来ない。ので、不愉快そうな低い声でぼそっと言った。
「・・・・・・日本語でおk」
それが体力の限界だ。

「やだ。一世一代の愛の告白なのに」
困ったようにころころと笑う。困らせるな、子猫ちゃんメ!と言わんばかり。
「じゃ、もう一回。
最近、学院は発情しっぱなしじゃない?」
「わーーーーー!!!」
言葉の途中でマガジンは立ち上がる。
いきなりの大声で教室中が驚いて注目するが、教室中の誰もが一目置いてるお姉さん的存在のガンガンが一緒なので、すぐに安心したようにおしゃべりに戻った。
「だから、当てられっぱなしで、もう辛抱タマラン!って今日この頃なの。
それでコロコロちゃんと会話しつつ、私、気付いたのよ」
「・・・・・」
「私、理想が狭い・・・もう、これ以上、ないってくらいに狭いけど・・・。
探せばいいって!」
「・・・・・・」
「本当、簡単な事だったのね。
で、ここの所、吟味に吟味を重ねたのよね。
私の理想にぴったりな方」
「・・・・・・はは」
「で、特定したのが、この目の前のカワイコちゃん!」
「あ、あはははは・・・・・」
「めでたく当選いたしました!カラン、カラン、カラ〜ン!!」
町内会の抽選のアタリが出た時の様子を手でまねる。鐘を鳴らす手付き。

279 :

・・・・・もお。カンベンしてちょうだいよお〜。
ライフポイント・ゼロ、ってほど疲弊しきってるのに。何、この仕打ち。
もうマガジンちゃんに運も福本もなかった。
一呼吸、飲み込んで腰を据えた。自力で処理だ。

「・・・・あはは」
「うふふ」
「ごめ〜ん。私、宇宙人語、解読できないのよねえ〜」
お手上げ、と言うように両の手のひらを天井に向ける。
「あらぁ」
「うん、あんたの言ってる事、さーっぱり分からないわ。これっぽっちも分かんない。
意思の疎通が出来ないって辛いわよねぇ」
このオンナ、中々見下ろせないのも嫌いなんだわ。オレ、人を見下すのがだぁ〜い好きなんよ。
「うん、お互い、不幸。
だから、他、当たってくんない?ワタクシにはアタナは過ぎた存在。一生をすれ違い続けるのですわ」
皮肉たっぷり込めた声で言って、目を合わせて、どうだ!と目に力を込める。

280 :

ガンガンちゃんは残念そうに表情を曇らせた。
残念そうな・・・ちょっとスネたような顔付きで黙ってから・・・。
顔を晴らした。
「そうだ!じゃ、お昼の時間の放送で、今のを放送しましょ!」
ぱんっ、と手を合わせる。
ご機嫌な様子で

「全校生徒に聞いてもらうの!
それで、最後には皆さんにお願いするのよ。
『ですがこの告白は想い人にどうしても伝わりません。どうか翻訳くださる方は、この想いを彼女に伝えてください』
・・・みたいに。それがいいわ!」

ひぃぃぃぃぃーーー〜〜〜〜〜。
「こんなに人がいるんだもの、一人くらい言語を理解してくれる子はいるわ。
よかった!放送委員で!
BGMはなんにしましょ、迷うなあ、甘くショパンなんて最高かしら」

281 :

きびすを返さん勢いのガンガンを押しとどめたのは、一番それをしたくない彼女。
「オーケィ!!」
再び、席に着いて、ガンガンの腕をぽんぽん叩く。
「オーケィ、落ち着け、マイ・クラスメイト」
「マイ・ステディじゃなくってぇ?」
「あはは、うん、アンタ、地球語のマイ・ステディを誤訳してるわあ〜」
スネたような口振りと口を尖らせる、その動作にかわいげが見当たらない!誰か助けて!!
「・・・言語の違いって確かに辛いわねえ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「でもボディ・ランゲージはどんな生命体でも共通言語だと思わない?」

教室中が一瞬だけ、注目する。なんだろ、立ったり座ったり・・・?
が、また自分たちのおしゃべりに戻った。
声の調子に荒さ、ないし。

「良かったあ。最近マガジンちゃん、元気なかったのに・・・さすがねぇ」
おしゃべりに戻った、一番最後がサンデーだった。
最後までマガジンを見た後に、ジャンプに感心したようにため息をついた。
「ガンガンちゃんに任せておけばどんな相手だって元気出ちゃう」
「う、うん・・・」
「将来、セラピストとか向いていそうよね。
私たちもいつまでも仲良くしたいわよね、一生の友達でいられるかな?」
ジャンプは・・・なんとなくサンデーの言葉に違和感を感じといた方がいいか?と迷ったが。
ま、いいや、恋人の笑顔の方が嬉しいし。
談笑に戻る。

282 :

マガジンは口が利けたら抗議をまくし立てただろうけど、それどころじゃなかった。
オレよりも豊かじゃね?そんな胸にぎゅーぎゅー頭を抱きつかれて息するのも苦労、だ。
・・・・・・・・・・もう・・・これ、なんてエロゲ?いや、鬱ゲ?
ミョーなバットエンド混じらすの止して、お願い、ナイス・ボートが世にあふれるよ視聴者的にソレどーよぉ・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

                                                   


          出版界の女子の勇気が出版不況を救うと信じて・・・!
                    ご愛読ありがとうございました!

283 :
本当にヒドイ内容を書き込んで申し訳ありませんでした
でもこれで打ち止めです
書いている本人はきちんと分かっているんです
各誌へのイメージ、絶対に間違ってますよね
なので
「ジャンプちゃんはそうじゃねーよ!」
とか
「ガンガンちゃんはこんなだよ、素人め!」
とかが必ずあると思うんです
だからスレの活性化の意味も込めまして
「サンデーちゃんはそうじゃなくてね?」
「未読者、乙。少コミちゃんの正しい歴史は俺が語るぜ!」
とかスレを導いていただけたら幸いです
もっと別の世界を妄想されていた方には本当に申し訳ないことをしたと思っています
設定もされてない事までアレコレと・・・なんとかしたくて女学院って(笑)
でも「おなじ学校でおなじクラスなんだ」と思い込んでしまって、なんとかそれを消化したくてやってしまいました
勘違いしていました
それらしくしたかっただけの代物です
これで打ち止めなので、正しく妄想願えれば嬉しいです

最後となりますが、
こんな楽しい妄想材料を与えてくれたスレの立て主さん、どうもありがとう
知ってる材料を使えるだけ使っての妄想は楽しくて日々のうるおいでした
ジャンプを本屋で見つけただけでニヤニヤしていました
痛々しいのですがウィキペディアすら萌えもえしながら読んでいました
スレを立ててくださったことを感謝しております

284 :
>>283
謙遜しすぎだろー!
なんだよあんた神か?萌えまくりだぞ俺
ニヤケ止まらなくて周りから痛々しい目でみられたぞw
エロモードのサンデーちゃん最高だよ(*´д`)ハアハア
マガジンも良いキャラだしコロコロ可愛いし
ただエロを中途半端にしないでくれ!右手準備してた俺がアレな感じになったからorz
是非続きが読みたい!
 
とりあえずスレが活性化するのを祈り上げさせてもらう

285 :
>>284
イミフを理解してくれただけでも嬉しいのに萌えてくださるとは
あなたこそ読解力の神ですか(笑)
エロは入れたかったのですが、誌面のイメージ以上をどうにか出来る力がありませんでした
立て主さんの会話、それとスレの意見を参考にやり繰りしましたがすべてがおぼろげ〜です
外見も髪型も背も、どんな雰囲気なんでしょうね
ほにゃららながら、各誌のファンの方にはあちこちに違和感あるのは分かってるんです
そこは申し訳ない気持ちです
知識のない者の勝手なイメージですので、主張、文句、注文、なんでも語りのきっかけにしていただけたら
続きとまで言ってくださってありがとうございます^^
活性化、して欲しいですよね。一人で踊り狂ってる俺も十分アレな感じですよね・・・ (´▽`)

286 :
>>285
いや、本気で続き読みたい
後あんま過剰な謙遜や自分を卑下する言い方はやめてくれ、貴方は文才あるし笑いも入れられる
イメージなんて誰だって違う違って当たり前なんだから謝る必要無い
逆に自分と違いイメージの書き方がそんなのもあるんだと教えてくれるんだから。
できたらエロまで完成させて下さい(´・ω・`)

287 :
>>286
アドバイス、どうもありがとう^^
過剰でした?擬人化世界は未知なのでどこまで許されるか心配です;
ただ知識が半端なのは正直に謝罪します
もっとニュース、ウィキペディアで知識拾ってきてまた続き書かせてくださいね
違って当たり前とは嬉しい言葉です
実は書いてる本人は各誌の乳のでかさまでイメージ出来ちゃってました(笑)
ジャンプSQももちろん本屋でニヤニヤしてましたし、スレの意見を読むだけで萌えもえなんです
スレが活性化するといいですよね

288 :
>>287
このスレの活性化の為にも頑張ってください。
そして続きwktkして待ってる。
 
 
 
全裸で

289 :
前回に打ち止めです、と締めくくりましたが、
エロ希望とのお声がありましたのでジャンプちゃんとサンデーちゃんのエロを完成させておきます

前回ので限界ギリギリだったのを前もって
今回もインチキくさい部分が多いのですが、これでも知識を拾ってきたのです
再び長くなってしまった事もお詫びします
それと書いてる人はただの百合萌えなだけです
百合小説はWeb小説かこちらの板でしか読んだ事ありません
百合雑誌、今、たくさん出ていますね。今度読んでおきます
なのでたくさんの矛盾点があるかと思うのですが、
とんでもエロゲしてるとでも思ってください
ギリギリでやり繰りしてますので、生暖かい目をお願いできれば

サンデーちゃんが変態ちっくなのは書いている本人が変態だからです
まさかこんなムスメになるとは。サンデーファンの方、ごめんなさい

290 :
「ジャンプとかサンデーなどで百合」

サンデーちゃんは自室で読書中、そわそわしていた。
もう夜も遅い。
そわそわ、そわそわ時計を見る。
・・・・・隣の部屋はコロコロだ。でも、あの娘、落ち着きないから眠っちゃったらすぐ分かる。漫画でも読みながら寝ちゃったのかな。大声で笑っていたのが、無音になってきてからもうずいぶん経つ。
ち、違うんだよ?もしもベットに入ってなかったら、あのコお腹出して寝るかもしれないし、確認なんだよ・・・?
サンデーは自分に言い訳をしてから読んでいた本を机に置いた。
自分の部屋を出て隣のドアを小さくノックする。
「・・・寝たの?」
返事はない。
もう一度ノックして
「ちゃんとお布団に入りなさいよ?また床に転がってる、なんてお姉ちゃんはやだからね?」
と小さな声でドアに注意して、サンデーはよし、と頷く。
根回しはオーケー。後は・・・

サンデーのこんな行動は妹思いな心遣いとして家族・書生・みんなの信頼を得ている。
・・・・・が、実はそれの正反対なのは誰も知らない。
知ってるとしたらジャンプちゃんだけか?
自分の部屋に戻って、ふう、と扉を閉める。
自分もベットに入って・・・やだな、私、やっぱり落ち着ききってないよ。さっきまでかけていた眼鏡をサイドテーブルに置く。
スタンドを消して・・・・・・

291 :

・・・もぞ、と動く。
ジャ、ジャンプちゃんすごかったな・・・・
きゅ、と目をつむる。シーツを頭までしっかりかぶる。根回しも十分なのに。
この娘の性格だろう。
ジャンプちゃんがあんなになる所なんて・・・私だけしか見てないよね。だって・・・・キ、キスだって・・初めて、って、言ってたし。

ファーストコンタクトの後。
サンデーはきつく念を押された。約束させられる。
「オレが、タチ。で、あんたネコ。
リードする側が号令かける。あんたは」
そこで切って、あの時、えもいわれぬ、みたいな表情された。
「はっきりと言っとく。
あんたは危ない。危険だよ、あんた自分をコントロール出来ない、だから、とーうぶん、もう一生ってくらいにあんたがリードされる側。オレがみんな、号令もなにもかもをかける。で、あんたはそれに合わせる。
ラジオ体操、第一〜、ってオレが号令をかけるから。
その号令どおりに動く。
それ以上はしない。フライングでもしたらなお更、これ、確定だから。
分かる?
何故ならあんたは自分をコントロール出来ないからだ。だからオレ、号令係り」
・・・・・私、自分をコントロール出来てないかな。
割と自信あったのにな。
なんだかショック。

でも美味しい果実はきちんと食べられたからサンデー的にはそう望まない。
そもそも両思いになれて・・・・・サンデーはそこで頬が熱くなるのが自分でも分かった。え、えっちな事を二人で出来たんだし・・・・・
なので、毎晩のおかずもずいぶんと豪華なメニューが揃った。
もそもそ、と下腹に手を這わす。
す、すごかったな・・・ジャンプちゃん・・・・・

292 :

二人は大変な素人なので、自分たちルールでえっちな事に及んだ。
これがストレート同士の恋人ならまだしも、更には二人ともほとんど知識もない。なので
    「・・・・・うぅー・・・・・ん、んーー〜〜・・・・」
    ユニットバス内で声が反響。サンデーは達してから荒い息を一生懸命に手のひらで抑えた。
    何度目かもしれないが、このムスメは大変に我慢強い。
    「・・・っ、はい、じゃ、じゃあサンデーの番」
    代わりばんこに体を触りあっこ、に落ち着いた。
    二人同時に気持ちしあえる、なんてどれだけ先になるのやら。
    でも二人としては一生懸命だ。二人で一緒に頑張る。
    「ん、・・・・わ、私の・・・番、ね?・・・・」
    ジャンプが落ち着きを失って口走ったお風呂だが、そんなに都合悪い流れでもなかった。
    むしろ好都合? 二人で一緒に入って、洗いあっこしてそれから・・・・・
サンデーはその時も思った。
タチっていいな。
    さっきジャンプの耳を舐めたら・・・すごい気持ちよくなる声を上げられた。
    なのでもう一回サンデーは舐める。
    「ふあっ」
    手のひらは自分が触っていて気持ち良かった所を撫でだす。
    太ももの内側から、そーっと上の方へ手を・・・・
いいな、タチって。
 
    「ふぁ、サンっ、・・・・デぇー・・・・・・・・・」
    こんな声とか顔とか見た後にえっちな所触ってもらったら・・
    ・・・気持ちいいに決まってる。サンデーは声だけでぽーっとなった。
    目の前のジャンプの表情だけで・・・・・触られてなくても

293 :

「んっ、・・・・ジャ・・・ぁ・・・・・」
現在の自分と同じになった。自分の部屋で思い出しながら触るだけで、その時みたいに・・・・・ぬるっとしてくる。
ああ・・これが・・・・・。サンデーは更に顔を染める。これが・・・・えーと、その、あれだよね、うん、あの気持ちいいよ、って状態。

   「・・・・・・サン、っ・・・・・・・・・」
   「ふぁー・・・ジャンプちゃ・・・・ぁん、気持ちいいよお・・・・・」

サンデーは思い出し、思い出しで現在進行で指を動かす。

   「やだ・・・よぉ・・・・・・・・・」
サンデーちゃん、布団に丸まってそろそろクライマックスになってきたが・・・・・・・。

   「こ、これっ・・・・・ダメ、ダメ、もう・・・」
   「・・んぅ〜・・・・・?」
   「ここ・・・はっ、・まで・・・っ・・・・・・・・・・・・」
   「んうぅ〜」
   「約束だろ?」

294 :

・・・でも現実ではめいっぱい駄目だしを出された。
そりゃあもう、たくさん。
なのでサンデーは一人で布団の中で編集しだす。
「・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・・んぅ・・・・〜・・・」
一番好物のおかずに繋げる。

「・・・はっ・・・ぅん、んう、ジャンプ、ちゃ・・・ぁ・・・〜・・・・・・・・」
サンデーちゃんはあの日、そりゃあたくさんおかずを手に入れたが・・・・・・・・・・・・・・・・でも更なるとっときの『ごちそう』があった。
もぞもぞ動きながら、サンデーはもっともっと記憶をたぐる。
昔からお世話になったおかず。
そりゃあもう、覚えたての頃からずっと。
毎回、最高潮に達しそうな時に使うおかず。
・・・それは幼少期にさかのぼる。

295 :

ジャンプちゃんとサンデーちゃんはほぼ時を同じくして授かった娘だ。
両家は幸い、とばかりに二人を引き合わせた。
里帰りしたら、ジャンプはサンデーと遊ぶ。まるで託児所。子供同士で遊んで、大人は大人で談笑でもしながらお茶、とか段取りにまでなっていた。
その頃から二人の関係は奇妙で、サンデーよりもすべての優先順序が外孫のジャンプだった。
一族、ジャンプの家はもちろんの事、サンデーの家だろうとジャンプの方が上座だ。サンデーはその次。
サンデーの家であってもジャンプは王女さまのように扱われた。

296 :

・・・・・・・・・・・分かってるんだけど。
サンデーちゃんは察しの良い娘なので、なんで又従姉妹がそんな手あつい待遇を受けるか理解できていた。
ジャンプちゃんは・・私とは違うもんね。
成績はそこ頃からもう周りの誰をも凌いでいた。・・・・・この間、アメリカにまで進出する、なんて聞かされてもサンデーにとって何度目の駄目押しか分からないほどだ。駄目押しなんて、生まれてこの方、何度も何度も味わっているし家族内ですらそれは常識だ。
・・・分かってるんだけど。
それよりもこんなにすごい少女が自分の血縁という事の方が誇らしいかもしれない。
隣の少女を見た。
元気いっぱいの瞳と、自信に満ちた笑い声。
こんなすごい少女。輝かしい、おおらかに駆け回って、なんでも成し遂げて、世間の誰もが認める少女。今じゃアメリカまで。そっか・・もう世界レベルなんだ。
・・・自負がないでもないが。あの活躍に、自分だって担っている。ジャンプちゃんがあんなに活躍できるのは、この私だって頑張ってるからなんだよ!私もあの活躍の一端なんだよ!
みんなに胸を張って宣言したいくらいだけれど・・・それも、きつく止められている。厳しく、あの人は競争相手なんだよ、と。
だけど、集英家の邪魔だけはするな。
実に奇妙。邪魔さえしなけりゃいいんだから。あんたは邪魔にならないようにテキトーに頑張ってたらいーよ、それよりもジャンプちゃんだよねぇ〜。・・・・・

297 :

だから、実家にジャンプ達が遊びに来るのはサンデーは楽しみでしょうがなかった。
あんなにすごい又従姉妹をひとりじめちゃう!
・・・いつから二人に溝が出来たのかな。サンデーにとっては肩を落とすしかない。
だからあれが・・・最後に遊べた記憶かも?
サンデーの大事なおかずの思い出。
 「これはね、タイアップしてる企業がくれたんだよ」
 二人に知育おもちゃが与えられるのは頻繁だ。
 それはもしかして二人だけで遊んだ最後かもしれない。
 「わー、新しいゲームだあ」
 ジャンプが嬉しそうだ。
 「ジャンプちゃんの好きなカードゲームっぽいのくれればいいのにねぇ〜。
 新作の人生ゲームなんだって。いろんな職業を体験できる」
 サンデーは盤をのぞいてなんとなく納得だ。
 ウチの書生さんのイラストじゃない。これなら無難。
 知育おもちゃは数え切れないほど遊んできた。ジャンプと一緒に。
 サンデーは・・・実はその時の匂いまで思い出せる。
 ・・・大事な大事なおかずなので。

 わくわくしたようなジャンプに向かって、父親がご機嫌をうかがう家臣の様だ。
 「二人だけで遊べるかなぁー?」
 「もっちろん!」
 で、ジャンプが銀行役をやってくれて、二人で遊びだした。

298 :

 リビングは大人の声がうるさいよ、とジャンプはサンデーの手を引いてきょろきょろうろついてサンルームに目星を付けた。
 ジャンプはここが我が家のように、どこだろうが好きに行き来する。
 物心ついた頃から、それはもう約束事だ。
 で、これも物心ついてからの約束事だが・・・。
 どんな知育おもちゃに付き合った時もジャンプには負けてあげる。
 そう小学館家内のルールがあった。
 ・・・本当に奇妙な関係だ。

・・・・・・・・・・・・あの時も。本当は負けなきゃいけなかったんだよね・・・・・・・・。
「もう・・・ジャぁ〜・・・・・・・んぅ・・ふっ・・・・」
サンデーの指がだんだん絶頂のために奥の方の、感じる部分を擦り付けるってほどになる。くちゅっ、と立った音も漏れないように更にシーツをもそもそ被る。

 最後の二人きりで遊んだ記憶の、そのゲーム。
 途中で、私が有利になって来たんだよね。
 マズイ!サンデーは、負けなきゃ、とジャンプの顔をちらっと見上げた。

299 :

「・・・・・・・・・・・ふぁ・・・・、やん・・ジャンプ・・ちゃ・ぁ・・・・・・」
サンデーの目がどんどん蕩けてきた。
絶頂に向かう事、一心のために。

 ・・・・・・・思い出の中で・・・ジャンプは、明らかに面白くなさそうな顔をしていた。
 当たり前だ。負けた記憶があまりないんだろう。
 サンデーは、その時に、表現のしようがないものがこみ上げた。
 どきどき。心臓が早くなる。小さな心臓。
 
 ・・・まだ、性にも目覚めてないだろう、幼女からようやく少女になる頃。

 幼いサンデーは気付かないフリをして顔を伏せた。
 たぶん、これ、私、勝っちゃうよ?
 気付かないフリをして、ゲームを続けた。
 「つ、次、ジャンプ・・・・・ちゃん・・・ダイス、振る番・・・・・・・・」
 ジャンプはひったくるようにサイコロを取った。
 明らかに不機嫌に放り投げる。
 「・・・・・」
 「・・・・・ぅ、ツ、ツイてないね・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 どきどきどき。サンデーはまたジャンプをそっと見た。
 うわ、更に不機嫌。どうしよ、そろそろ負けてあげないと・・・・・・。
 自分の駒を進めるのを忘れた振りをするだとか。ジャンプの駒を有利な位置に間違えてあげる・・・
 ・・・・・とかが、その時のサンデーの頭からなくなってきた。

300 :
 「ジャ、ジャンプ・・ちゃん・・・・・・・・一回休み?・・・」
 ど、どうしよう・・・。
 どきどきどきどき。
 こ、これ、私が勝ったら・・・ ジャンプちゃんはどうなるのかな。
 そう思ったら、サンデーはいつもの自分の役目も忘れた。
 サンデーには分かっていた。どうすれば、これ大差で勝てるかも。
 もしも・・・大差で私が勝っちゃったらジャンプちゃんはどんな顔するんだろう。
 ちらちら、ちらちら様子をうかがう。その度に高揚する胸。
 たかがゲーム。しかも二人きりでやってる程度だ。
 子供同士のお遊び。
 でもサンデーの胸は早くなる一方だった。
 そして大人が見たら、様子がおかしいのも分かるだろう。
 サンデーの頬は高潮して、時々、もじもじと足を動かす。
 ああ。どうしよう、どうしよう。
 負けなきゃ、負けなきゃ。
 でもどんどん差が付いてくる。
 当然、ジャンプは面白くない。不機嫌さが増してくる。
 実家に来た時でもここが我が家、ってほどに大声で走り回る彼女。
 うんともすんとも言わない。
 で。そわそわ、そわそわしながら続けながら終了してみたら・・・・・
 「あ、あは・・・今日、私、ラッキー・・・・・?」
 ・・・ジャンプの不機嫌さは、これ以上ないってほどになっていた。

「・・ふぁん・・・ふあ〜・・・・ん、すご、すごいよお・・・・・ジャ・・・ぁ、んっ、んっ・・・っ」
現在のサンデーもベットの中でどんどんクライマックスへ。

301 :

 幼いサンデーはどきどきとそれを見ていた。
 どうしよう・・・・・今、すっごい気持ちいいよお・・・・・・・・・・。
 なんだかふわふわしてる気持ち。こんなの初めて。
 ・・・ちょっといけないことしてるみたい。当たり前かな。負けなきゃいけないのに、私・・・・・・。
 ジャンプはむすっと盤から顔を上げずに、無言だ。
「ふあ、ふぁっ、んっ、ぅんっ、ジャ・・ん、プちゃ、ジャ・・・っ」
 後、一押しなのに・・・っ!
 まだ性にも目覚めてないのに、サンデーはこのむずむずをどうすれば最高!って場所まで押し上げるか本能で悟った。
 ジャンプちゃん、もっと、もっと・・・・・・・
 なので自ら一押しする。
 「あ、あのさ!私、ジャンプちゃんが大好きだから、この財産、みんなあげるよ!」
 う、うわ・・・!きゅ、と自分のソックスを握る。
 ジャンプちゃんの顔がゆがむ。怒った目が、更にうるんできて・・・
    ・・・・・サンデーちゃんの、幼少期からの一番のごちそう。
 ジャンプちゃん、もっと、もっともっともっと・・・・・・・・・・・・・・・・っ
 「で、さ!私、ジャンプちゃんが大好きだから連帯保証人にももちろんなるよ!
 当然だよ!だったら私、みんな借金を肩代わりなんだよ。
 すごい、ね、ジャンプちゃん、見て!
 ジャンプちゃんがいっぱいお金持ちなのに、私、借金だらけぇ〜。
 すごい、これってジャンプちゃんがさ・・・・・・・・・・・」
 やった!泣きそうな・・・・・!

で、毎回、サンデーはこの辺りで・・・・。
最高のご馳走を頭に思い浮かべながら
「・・・やん、やっ、・・やっ、んっ、んっジャ・・ンプちゃ・・、ジャンっ、プちゃ、ジャ、ちゃぁ・・・・・・っ」
シーツをぎゅ、と握り締めた。

302 :

 思い出の中でジャンプはいきなり立ち上がった。
 「いらないもん!」
 差し出した札束を手で払う。おもちゃなのに。
 目の端からにじむ涙。
 ・・・・・・・・・・実は・・・この瞬間の幼いサンデーは・・・・・
 息を驚きで飲んだんじゃなかった。その反対の
 「いるもんか、なんだい、いらないもん、バカ!!!」
 「きゃ!」
 サンデーに殴りかかる。
 ジャンプは叱る者がいないので、やりたい放題で感情のままに殴りかかる。
 小さな拳で、ぽかぽかと。泣きながらなので力がこもらないのか・・・・
 「バカ!バカ!バカ!!!あ、あんたなんていっつもオレよりも下なくせに、なんだい、いっつも、いっつもオレよりも成績悪いくせに!駄目なくせに、オレよりもぜんっぜん駄目なくせに・・・・・!」
 ちっとも痛くない拳。
 「う、うん、うん・・・」
 ぼろぼろ、ぼろぼろジャンプの目から涙がこぼれる。どきどきどき・・・
 「バカバカバカ!!!あんたなんて大嫌い!いっつも一緒に遊んであげてたのに、なにさ、あんたなんて大嫌い、もう遊んであげないもん、あんたなんてもう知らないもんね!!!」
 そう怒鳴って、後はわんわん泣き出してしまって、大人達が駆けつけてきた・・・・・。
 後で家の大人、全員に「なんでもっとジャンプちゃんが気持ちよく遊べるように出来なかったんだ!」と叱られたが、サンデーはちっとも後悔なんてしていなかった。
 どころかぽーっとしっぱなしで耳にも通らない。・・・はぁ。すご・・・すごお・・・・・。
 わんわん泣いちゃった時も・・よかったなあ。気持ちよさが満足〜って感じでぽわーんってなっちゃったな。ふわふわ〜って・・・・・・・

303 :
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・ん〜・・・ふ、んぅ、んぅ〜〜・・・・・」
ふぅ〜、と現在のサンデーも一緒に満足そうにため息をついた。
ずっとずっと子供の頃からお世話になっているおかずだ。
幸せにうっとりとした目でご馳走への舌鼓のように、ほぅっ、ともう一度、ため息をついた。
しばらく陶酔したような目で息を整えた。
はっ、と気付いて指をどうしようかな、とサイドベットのティッシュで指をぬぐっておく。
後で、お手洗いに流しておこ。
満足そうにシーツに丸まって、サンデーは今夜の眠りに付くことにした。
大事な、大切なおかずに浸って。
これからもお世話になるんだろうな、という思いと一緒に。

304 :

・・・・・でも、これって十分に異常だよね。
「おーっす、サンデー」
「あ、おはよう、チャンピオンちゃん・・・」
サンデーは自分が正常ではない事は割りと自覚している。
女の子同士って事はもうその前段階なので、あのご馳走についてを特に。
コントロール出来ないってこんな感じかな?
この間、本で読んだ事が頭をよぎる。
へ、変態性欲・・・ってのだったらどうしよう・・・・・・・
「?」
頭をぶんぶん振ったサンデーにチャンピオンちゃんはいぶかしげだ。
「どうした?サンデー」
「え?!は、はい!なんでもだよっ?!」
「・・・?」
どうしよ、どうしよ、チャンピオンちゃんも今、私をヘンなものを見るみたいな目だ・・・どうしよ、どうしよう・・・・・もう、他人には相談できない。
・・・・・あの時も、私を異常者を見るような目だった。
マガジンちゃんに相談した時を思い出す。ぎょっとした顔してた。当たり前だよ、当たり前だよ!
サンデーは泣きたい気持ちだった。
でも私、放火して興奮、とかじゃないよ!・・・い、言えないような事で興奮?とかないもん。どこまでが正常なの?盗癖もないよ、どうしよう、どうすればいいんだろう・・・・・・・・

305 :

なのでジャンプから切り出してくれたのは、渡りに船ってタイミングだった。
図書館の地下でジャンプが開口一番に
「あ・・・あんたさあ、オレに隠してる事ない?」
「・・・」
「こ、こないだ一緒にえ・・・・・・えっちな事したじゃん?」
「!」
サンデーは
「その時もさあ?・・・・・・・・・・・・・・・・ガッカリ・・・みたいな表情してなかった?」

サンデーはあまりの幸運さにびっくりした。なんて好都合!
なのでサンデーはジャンプちゃんに打ち明けだした。
「ガッカリなわけないよ!あのね・・・・・
・・・・・」
マガジンちゃんに相談した内容をそのまま。
途中からジャンプの表情がどんどん変わっていくが・・・。
どうしよう。でもこの人なんだよ、解決してくれるは!マガジンの言っていたことを思い出す。すべての悲しみがこの人からはじまってこの人に帰る、かあ。すっごく分かる、それ。

306 :

「・・・・・・ははは」
ジャンプちゃんは、驚いた。驚いたって、そらもう驚いた。
「あ、あんたさ・・・」
サンデーが不安そうに表情を曇らせたので
「あ、うん、まあ、そんな事を?」
サンデーはこく、とうなずく。
「その・・・まさか前言ったおかずって・・・」
サンデーが不思議そうな顔をするのでもう誰かに泣き付きたい。
「・・おかず・・・?」
ああっ、もう嫌!!
「あ、うん、まあ・・その、その擬似恋愛?とか言ってた・・・」
サンデーは瞬間で真っ赤になってすぐにうつむいた。
ああー〜〜!もうなにこのムスメ!!
・・・マガジンにまず相談しておいてよかった〜。
こんなの誰ぞに聞かれでもしたらマジ、嫌われる以前の問題だったよ、やっぱあのオンナは使えるわ。うん、あんま縁切れないようにしとこ。
「あ、あのさ・・・?まず質問」
「・・?」
「あんた、ほら、泣くまで・・・とか」
ジャンプは錯乱しそうなのを必に抑えながら、
「泣くってそれは辛いって事じゃん!オレまず嫌だろ常識的に、そんな、あんた・・・!」

「うん」
サンデーはここで顔を輝かせて、更に複雑になる。
ただでさえ、複雑な関係が更に・・・

307 :

「だから、本を読んだの」
サンデーはいきいきと答えた。
「ジャンプちゃんは当然、暴れちゃうよね。じゃ、手足を捕縛すれば・・・って」
驚きにジャンプの喉が鳴ったが、サンデーは違う意味として受け取ったらしい。
あわてて、
「ち、違うよ、だってジャンプちゃんを傷つけでもしたら大変だもの!暴れて、傷つけたら大変だもの、あ、方法だけど武道の中でも柔術は警察も熱心だものね。
ずいぶん詳しく知れたわ。だよねえ。せっかく泥棒さん捕まえても、逃がしちゃったら大変だし、かと言って犯罪者だろうが健康を損なっちゃても大変。
血流が止まらないように長時間捕捉しておける方法は警察が一番熱心だよねえ。だから安心して?安全な方法で、痛くないよう頑張るよ?」
「・・・・・」
ジャンプはあまりの事に口をぱくぱくさせた。
「ジャンプちゃんを傷つけでもしたら大変だもん・・・・・・・・・あんまり熱心になって、拷問史まで読んじゃったぁ」
「・・・・・・・!」
「歴史の本もさすがこの学校は豊富。地域の図書館なんてくらべものにならないよねえ」

308 :

くすくす笑うサンデーは、ジャンプの表情を見てはっ、と
「!ち、違うよ、違うんだよ、やだ、私、また言葉が・・・ご、拷問って・・・・・・・
拷問はもちろん良くないよ!」
「は・・ははは・・・」
「当然よ、自白は強制なんて改宗だって・・あってはならない事だし私、その、あの・・・・・・拷問・・・ご、拷も・・・・・」
慌てたように必になって
「そう!「もう、これって拷問だよ〜」って笑われちゃうほど、気持ちよくしてあげたいな、ってそれだけなの」

ジャンプの歯の根があわなくなりだす。
「・・・ひ・・」
「その、あんまり気持ちいいと・・・・・・・・・・・・・・お、お小水?を粗相・・・・・・し、しちゃう方もみえるんだよね」
だよね、って同意を求められても。
初耳デシタヨ、あ、あわわわわ・・・・・
ジャンプの動揺と平行してる。
「それじゃ、拷問だよ〜って笑って叱られちゃうのも当然だよねぇ。ふふ。
それくらい、って意味だよ?ね?お・・・驚いてる・・?」
サンデーの目も必。

309 :

お互いが、必。
どっちも必の中、ジャンプはいくぶん冷静さを保とう、とそっちにも必になった。
不安そうにこっちを見つめるサンデーを前にジャンプは悟った。
ホテルでもピンチだと思ったが・・・・・・・・
「あ、あんた・・・・・その、いっつもそんな?」
サンデーがびく、とおびえてから視線がきょろきょろと落ち着かなくなる。
おいおいおいー!!
否定してよ、お願い、お願いだから・・・・・
「そ、それがフツウだとあんたはさあ?」
更にサンデーはぎゅ、と顔をしかめた。
「・・・・・・・ふ・・普通じゃないかな・・・・?」
あはは、それをフツウと言う人を拝みたいよ。
大人になったらイヤと言うほど拝めるが・・・・・二人は中等科の、各出版社の秘蔵っ娘。特に二人はクラス内でも幼い方。
「あ、あはは・・・あ、うん、怒ってるとかじゃないよ?」
「・・・・・」
良かったー!アドバイスもらっておいて良かった、マガジン、今度なんかおごる!
「叱ってもないしそんなに落ち込むことじゃ・・・あはは、そんなしょぼんって」

310 :

「・・・・・・・・・・・嫌っては?」
おそるおそる、と消え入りそうな声でたずねられて、
「私のこと・・・嫌いになっては・・・?」
「う、ううん・・・・・」
ジャンプは今日の密会でやっと美味しい恋の味を味わえた。
こほん、と咳払いして
「嫌いになったりはしないね。オレ、そんな器の小さい人間じゃねーしさ」
「ジャンプちゃん・・・!」

ああ〜、分からん。ほんっと、何度目か分からないほど分からん、この恋人が分からない!
また例の目つきになった。尊敬と信頼の目。
ああ・・・もう、誰か助けて!
「・・・・・・で、あんたはそんな危険思想を図書館で仕入れたんだ?」
サンデーが真っ赤になってうなずいた。
意外な危険地帯っ!ジャンプは泣きたい気持ちだ。
「本読むの禁止!!!」
ジャンプは言ってから、サンデーの表情を見て、
「あ、いや、また落ち込まない。
あんたは読書大好きっ子だしね。じゃあ、その知識を仕入れる目的の本読むの禁止!
読むな!そのほ・・・・・ほ・・・」
「・・・・・捕縛・・?」
「ああっ、もうお願いだから危険思想の本、読まないで!読むな、オレがリードする側だから言いつけておく!
読むな、一切!オレがリードすりゃいいんだから、あんたは知識入れなくっていーの!知識は一切、入れるな、もう禁止だから!」
サンデーは・・・しゅん、と肩を落とした。

311 :

・・・・・家に帰っても、ジャンプは落ち着かなく部屋をうろうろした。
激マズっ。
部活は休んだ。「今日は気分が・・」とコーチに言ったら、疑う様子もなかった。
・・・相当、オレ、弱ってたのか。
でもあれで弱らずに、どこで弱れと?!
ジャンプちゃんは初のえっち後、これではマズい、と帰りの新幹線に乗る前に知識を仕入れる本を買いあさった。ヤンジャンに「あんた、何買ったの〜?」とニヤニヤして訊ねられたがジャンプはそれどころじゃない。
ああ・・自分の家の本買っちゃったよ、だってエロい本だけだと店員にそれ目的ってバレバレじゃんフェイクに、ほら、さ?店員、ニヤついてた気がする、もう泣きたい・・・。
でも、どうやら事態はそれ以上にシャレにならないらしい。
ヤバイよお〜・・・。
なに?あのイキモノ。なに?なに?この世のイキモノ?つかあれが・・・・・
ジャンプは赤面したい気持ちになった。
あれが長年オレが・・・・・その、まあ、ねえ?
あの娘がひ、ひとりえっち?も、まあ、その、オレ以上ではないだろ〜、とかそりゃあタカをくくって・・・
でも、ちょマズ!!これはマズイ、このまま放置しておけば大事になる。必ずなる。

「あ、そだ」
ヤンジャン姉ちゃん、エロい本持ってたりして。

312 :

こっそりと姉の部屋に入り込んだ。
姉はオープンな性格なくせにソツを出さない。ちっ、あのオンナいつひとりえっちしてんだよっ!
自分の事を子供と思い込んでいるのか、部屋に無断で入ってもなんにも言わない。
・・・・・ジャンプは家でもたいがいの事は許されたが。
なので、こっそり入り込んでエロ本捜索。
本棚、本棚・・・・・。
見える場所に置いてあるわけもないのでジャンプは自分の隠し場所をさぐった。
並んでる本の裏側に手を入れて・・・
ビンゴ!
並んでる本の後ろに空白を見つける。
「〜♪あのオンナが見るエロ本は〜♪」
ここで机、クローゼット、ベット下・・等々を点検しないところがこの少女の性格だ。卑怯な事、大嫌いな。

・・・・・・・・見つけたエロ雑誌を開いて、ジャンプはごくっと唾を飲んだ。
す、すげー・・・。
うそ、だってあの姉ちゃん、オレとそんなに変わるかあ〜?
すご・・・大人の世界ってこんなんなんだ?
ど、読者の体験コーナーとかないかな?
雑誌をめくる。
す、すげー・・・こんなすげー事してんだ。
すごいけど・・・
でもこれってされて気持ちよかった事なんだよね?オレ達の場合はどうすりゃ・・・ああ、そっか。
気持ちよかった事なんだから・・・これをサンデーにしたらいいのか。そしたらサンデーはこんな風な・・・・・
ジャンプはこくっ、と唾を飲みこんだ。
す、すげー・・・。
むずむず、もぞもぞと足が動く。
あんまりに夢中になっていたのか。
そわそわと手が浮いた辺りで・・・・・・・・・

313 :

「『ふっふっふっ、ジャンプたん、お兄ちゃんのえっちな本でおにゃにぃかな?』」
耳の後ろでささやかれて、ジャンプはびくぅっ!と飛び上がった。
わたわたと雑誌をかたづけだす妹の首根っこを捕まえて、ひとつ上の姉はそのままずるずると
「『おっ、お兄たま!』
 『勝手に部屋に入ってイケナイ子だなあ〜』
 『お、お兄たまぁ、だってだってジャンプ、興味がぁ』
 『じゃあおにゃにい出来るかジャンプたんの身体検査をしてあげよう』」
妹を部屋の外までひきずっていって、蹴りだした。
「・・・と、エロゲならこんな展開じゃぁ!!!
色気づいてるんじゃないわよ、このマセガキぁ!!」
怒鳴られついでに、ばたん、と扉を閉められる。
「私の部屋は出入り禁止!あんたは乳首の影の有無にハアハアしてるくらいがお似合いよ、このエロムスメ!!」
荒々しく鍵までかける音が続く。
うわ、最悪・・・
ジャンプは放り出された廊下にうなだれた。一番の味方、失った・・・・・。

314 :
サンデーは図書館のカウンターまでとぼとぼ歩いていた。
どうしよう。
ジャンプちゃん・・・驚いた顔してた。
やっぱり・・・・・私、異常・・なのかなぁ・・・・・・・・・。
マガジンちゃんもぎょっとした顔してた。
大人なマガジンちゃんの事だから・・・あれって、なにかを感じ取った表情だよね。
重くため息をつく。
感じ取った上で、アドバイスしてくれた。やっぱり、頼りになる友人だな。
「・・・・・悲しみはそこからはじまって、愛しさがそこに帰る、かあ・・・」
サンデーはちょっと頬を赤らめて笑みがこぼれた。
しかもなんだか詩的!
すごいな。相談に乗りながら詩的で叙情あふれる言葉を創作できるなんて。マガジンちゃんは将来、アナウンサーだってこなせそう。
なのに・・・・・言えなかった。
それを考えるとサンデーは泣きたい気持ちだ。
ひとりでえっちな事してる時に想像してるあれ・・・あれだって、異常だよね。
ううん、きっと・・・一番に異常。
どうしよう。
ジャンプちゃんが気持ちをうきうきさせたり、こんな悲しい気持ちにさせたり。・・・本当、ジャンプちゃんから全部はじまって、ジャンプちゃんに帰ってく。

315 :

とぼとぼ歩いてるのには、気分と併せて理由もある。
返却する本の中に、一冊お気に入りのシーンの本があって手放したくないのだ。
おかず本。
す、すごいな・・・あんな事をもしジャンプちゃんに出来たら・・・・・。
サンデーは内容を自分とジャンプに当てはめた。
うわ、すご、過激だよお。もしもジャンプちゃんにあんな過激な事出来たらどうしよう。
もう一週間借りちゃっていいよね?シーンが好きなだけで、知識のためじゃないもん。
・・・家でも買ってくれないんだよね、これ。過激だからかな?
カウンターまで歩いて真剣勝負、ってほどの目つきで司書さんに目を据える。
「こ、こちらの本はもう一週間借りられますか?」
サンデーは本をしっかりと離さずに言った。
「ふふ、やっぱサンデーちゃんは勉強熱心になるわよねぇ」
もう一番目ってくらいに常連の中等科の制服を見て、司書の口調はくだける。パソコンの画面を見ながら
「江戸川乱歩借りるコはほとんど文庫だもの。空き状況なんて私たちよりも詳しいんじゃない?」
くすくす笑いながら言う司書にサンデーは真っ赤になった。
い、いつもならお話、たくさんしたいけど・・・・・
「もちろんいいわよ。でもこれ、お家にないの?サンデーちゃんのお家なら・・・」
笑って雑談に入ろうとする司書にサンデーは姿勢を正して、
「こっ、今度はコナン・ドイルだって借ります!」
「?」
「ほ、本当です、べ、勉強です、勉強なんです、読みきれなかったんです、家に持って帰って読みたいんです!!」
真っ赤になりながら司書に向かって早口で言って「ありがとうございますっ」と頭を下げた。
本を奪うようにしてきびすを返す。
司書さんの意地悪ー!サンデーは恥ずかしさに顔が上げられない。バレだらどうしよう、か、顔から火が出るよー!

316 :

・・・・・と、なんともユカイに、二人がそれぞれに試行錯誤していたが。
そんな中、解決にはまず課題があるのだ・・・密会の、方法。
ジャンプは腕を組んでほとほとため息をついた。
二人きりになれて・・・ほんのちょこっとのえっちな事が出来る場所は確保できた。
でも・・もう、それだけじゃ、足りないよなぁ。
つか、もっと、歩み寄りが必要だし。
ジャンプはちょっと怒ったように頬を染めた。主に、えっち部分で。これは二人のこれからに非常に重要な課題だ。
ああーっ、もう、あのムスメわけ分からん!
ただ放置しとけば取り返しのつかないことになる!それだけは避けなきゃ!ヒミツの関係をこれからもずーっと続けなきゃいけないんだよ!
この間の方法を、2度目3度目と繰り返すのは危険だよな?
どーーーう考えても怪しまれる。あれは本当、皆さん、記憶の彼方にやっちゃって!
じゃ、どーすりゃいいんだよ!

317 :

ジャンプが頭を抱えていたら。意外な所から手をさし伸ばされた。
「・・・親睦会?」
「そうよ。クラスの皆さんで観劇でもしましょって。趣旨の親睦の催し」
目の前で微笑んでいるのは、ガンガンちゃん。
「私達ってこれから将来までお付き合いしなきゃいけない間柄よね」
言いながらプリントを手渡す。
「じゃ、皆さんで親睦会を開きましょ!って思いついたのよ」
幹事は不肖、わたくしスクゥエア・ガンガン・エニックス。副幹事はマガジンちゃんよ、と付け加えられた。
親睦会・・・。
ジャンプがプリントに目を落とした。
刮目する。こ、これ・・・
「一応、候補は帝国だったかしら?オークラ?お披露目がある・・・えーっと歌舞伎座でどこぞの何代目の襲名かな?
それのお披露目。
・・・・・で、おおまかなスケジュールは観劇後、お食事して一泊して、親睦を深めようって」
なんつー、ナイスタイミン!ジャンプはすぐに食いつきたかったが・・・

318 :

「・・へ、へぇー・・・」
「好みの演目とか・・・オペラのがいいのかしら?希望があったら教えてくれる?」
目の前の笑顔を見て、ジャンプは違和感を感じないでもなかったが・・・まあ、親睦が主だから中身はどうでもいいって?
「プランも一通り調べたから希望があったら併せて教えて?・・・・・オークラはマズイ。いや、帝国はもっとマズイ、実家とツーカーだしぃ〜、とか?」
ガンガンが何か言ってるが、ジャンプの耳に入らない。
い、一泊・・・。しかもクラスのみんなが参加。親睦を深める。まっっったく不自然じゃねー!願ってもないシュチュエーションだ。
ジャンプはガンガンに目を上げた。
このオンナ、使える!もう拝みたいくらいだ、グッタイミン!!
「当然・・・!」
そこまで言いかけて・・・
「ま、まあ?みんなが参加するってなら参加しないわけにはいかないかな〜」
そして一番聞き出したいことも・・・
「で、それはサ・・いや、そ、その・・・クラス全員?」
「うふ。今から全員にお話しに行くのよ」
グッタイミン!!あー、もうお前、グッジョブだよ、この手があった!横の繋がりを利用とは。

319 :

「・・・・・私たちはね、親睦を深める必要があると思うの」
プリントに釘付けになってるジャンプに、言って聞かせる声色もトーンも一定で優しい。
「だって、将来、私たちは助け合わなきゃ。だから」
ジャンプも笑顔を返そうとして・・・・・
「だから、ジャンプちゃんはマガジンちゃんの前でヒロ君のお話はしない。声高にはしない。
ね?私もジャンプちゃんのお家が抱えてるゴスロリがお好きなの?お方についてはなんにも言わないの」
目の前の笑顔の、笑みも声色も変わらない。一定だ。でも笑顔のその目だけは・・・・・
「マガジンちゃんもチャンピオンちゃんのエイケン?花右京?については言及しない。こうやって相互に助け合うのよ」
でも笑顔なのに安心できない。反対だ。目の色が穏やか、とかではなくって・・・・・
「私には・・・見えるよう。
マガジンちゃんがジャンプちゃんにありがとね、って頭を下げる将来が。
イノタケ追い出してくれてありがとうね。おかげで大助かり〜。
ジャンプちゃんもマガジンちゃんにごめんね、って謝るの。
表紙に小畑使ってごめんね、文庫界でズルイよね、ごめんね、って。
・・・・お互いに握手してるのよ。見えるようだわ、そんな未来・・ステキよね!」
うふふ、と笑う、その笑顔の目が・・・安心出来る、とは正反対だ。

「じゃ、クラスのみんなに配らなきゃ。検討、お願いね〜」
笑って手を振るガンガンにジャンプは冷や汗ものだ。
あのオンナ・・・な、なんか底が知れねー・・・!

320 :

・・・・・でも、まあ、過程が怪しげ、とかは恋人同士にとってはどうでもいい。
ついでに観劇だか、お食事うんぬん・・とかもいい。
個室だー!密室でーす!携帯の電源を切った理由までが自然でーす!なにもかもが自然なのでーす!!

二回目のえっち・・・
なので、だいぶん、二人にぎこちなさはない。
「・・・・・っ、ど?・・・・・・ふっ・・・・」
流れ的に、お風呂に入って寝る準備して、で、そわそわとみんなが落ち着くのを待って、サンデーがジャンプの部屋に寝る前のおしゃべりに来る・・・と、設定。
これって不自然じゃないよね?二人で確認しあった。
子供の頃は、お泊りのしあっこもしていたし。
「・・・・んっ、・・・・・・・・ふぅ〜・・・・んぅー・・・・・・・・・・・うん、気持ちよかったぁー・・・・」
・・・と、サンデーはうなずいたが・・・
「・・・・・・・・・・・・ガッカリ?」

321 :

ちょっと・・・不安そうに訊かれて、サンデーは不思議だ。
ヘンだな。気持ちよかった、って言ったし・・・あ、そっか。あ、あの言葉言わなきゃ駄目なのかな・・・
「・・・・・・・そ、その・・・」
「・・・・んっ、なに・・っ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・い、い、い・・・・・・・・・・」
「・・・・?・・・っ・・・」
「い・・・・・いっちゃ・・・・」
恥ずかしくて、真っ赤になりながら小さな声になったが伝えた。
・・・それでもジャンプの表情が晴れない。なんでだろ。
「ねえ・・・・」
サンデーも我慢強いとは言え、さすがにじれてきた。
催促する。
「・・・・んっ。おっけ。次・・・は、サンデー・・・・の番・・・・・っ」
パジャマは脱いでくれてたが、下着だけはまだ付けていた。

322 :

なので、サンデーはしかたなく、まずキスをしてからちょっと触った。
・・・うわ、か、感触で分かるけどこれって・・・・・・・。
自分の唇を舐めた。よ、様子見たいな・・・・・・・・。
どうしよ。ストップかけられても嫌だな。
でもジャンプちゃんがした事までさせてくれなきゃズルイ。
サンデーは自然さを心がけて、キスしながら出来るだけナチュラルにかがんだ。
濡れてぺとっと張り付いた下着にどきどきした。
うわぁ・・・すご・・・・・。
改めて、サンデーは思った。
タチっていいな。
これ、え、えーと、その、うん、あのえっちな気持ちだよ、って状態。
ぺとっと張り付いた下着を指先で撫でながらサンデーは思った。
いいなあ。早く役、換わってくれないかな?
下着をつけたままなので、仕方なく、舌も下着越しに。
「・・・・・・・・ふぁん、やだ・・・っ、やだ、サン・・・デぇ・・・〜〜」
すごいよお・・・。
すごいよお、なんかひくって動いた。これってあれだよね。うん、気持ちいいって合図
だよね、わ、私だって・・・・・・・・・・・・その・・なるよ?
「ふぅ・・・・・ん・・・・・・・・ジャぁ〜・・・・んっ、プちゃあ〜・・・・・」
「ふぁん、んっ、んっ、やだ、やだ・・・・・・・っ」

323 :

あ、ここ・・わ、私も触ると気持ちいい・・・・・・うん、その、えっと・・・・ちっさい、あれ。
ここ、いっぱい舐めたらどうなるかな?
すごいな。下着越しなのに分かる。
「・・・・・・・・・・・やぁ、やあ、やだったらぁ・・・・・・・」
ためしに指でいじってみてから、大丈夫そうなので・・・・・・ちょっとやってみよう、と舌先で舐めてみる。うまく出来なかったので、舌を固くして、軽く唇も使って・・・・・・・

「ひゃ・・・・っ・・・・・!」
予想しなかったほどだ。びくんっ、とジャンプの体が跳ね上がる、って言っていいほどの反応。
声もすごくて・・・・サンデーはもう我慢できない。

「ふぁ〜ん・・・・・んん〜・・・・・・サンデぇ・・・―・・・・も、もう交たい・・・・・」
「なんでぇ・・・?」
「・・・・・っ?・・・」
「ずるいよお、ジャンプちゃん、脱いでくれないのに・・・・・・」
「あ・・・・・」
ジャンプはそうか、という顔をしてから下着をよいしょ、と足元に引き下ろした。
・・・・・なんともビギナー。

324 :

す、すごー・・・・・!
サンデーの胸がどきん、と鳴った。
下着からぬとーっ、ってあれ・・・あれ・・・・・・!
ごくんっ、と唾と息を一緒に飲み込んだ。
あれ、うん、あれなんだよ、すご・・・・・・・・・・・・・・・!

「じゃ、じゃあ・・・・・・・・ジャンプちゃんがやったとこ・・・・・まで、ね・・・・・・・?」
 サンデーのどきどきが止まらなくなってきた。
 あれ?なんだかこれ・・覚えあるな?
 なにか甘いものがこみ上げそうで、サンデーはこの甘い気持ちなんだっけ?と頭のすみで思った。なんか覚えがある。
サンデーはさっきすごい声をあげてくれた、あの声をもう一度ききたくて、今度は直にした。
「ふ、ふぁ、ふぁ、やだ、やだ・・・・やめ・・・ろ・・・っ、たら、サン・・・・・・・・っ」
す、すご・・・・・・・・・
すごい、ジャンプちゃん、なんだか・・・・・・

325 :

舌でなんとか転がして一生懸命なのはサンデーは・・・試したかったからだ。
吸ったらどうなるのかな?サンデーは思案した。ひとりえっちしていたときに指を舐めたりするみたいな・・・・・・

サンデーは思案ながら舐めて、なんとか吸える、ってほどになったので・・・軽く・・・・・・・・・・・・
「ひぁあああーーーーーーっん・・・・・・・・・・・・・・っ」
す、すご・・・・・・・・・!
ジャンプちゃんのこんな声、初めてだよ!

326 :

「・・・・・・さ、サンデ・・・・・・ぇ・・・・・・・・・っ」
何かを言われそうなので、サンデーはその前に言ってしまう。
「つ、次、指入れるね、ジャンプちゃんの・・・・・やったとこまで・・・・・だ、よ・・ね・・・っ?」
「ふあ、だめ、だめ・・・・・・・・・っ」
「ジャ、ジャンプちゃんの・・・・通りね?ね?・・・・・・・・・・・・」
振り払うみたいな手付きするけど、そんなのズルイ。
タチってだけでズルイのに、サンデーはジャンプのした所まではきちんとさせてもらうつもりだ。
出来れば、声、もっとあげてもらって。
 そして思い出した。
 そっか。あの時と似てる。
 どきどきしながら、思い出す。
 とっときのおかず。

327 :

サンデーは指を入れた。
うわ・・・・・すご、今、きゅっ、て指を締め付けられたよお。
それと思った。この体勢、好き。
ジャンプにキスしながら、サンデーは指を動かす。向き合いながら、って一番好き。
そしてそのまま感じてくれるように一生懸命に撫でたり探ったりする。
このムスメは気持ちが優しいので中々手付きがいい。
・・・・・しかも勤勉。
自分が感じて、気持ちいいところ・・・・・。
・・・・・本を読んじゃ駄目、と駄目だしを出されたので、もう自分で試すしかない。
自分の体のあちこちを触って・・・・・中でも一番に熱心に研究したのだ。
「ふあっ、ふあ、・・・・・・もう・・・・やだ・・・・・っ、てば・・・・・!」
「ふぅ〜・・・・ん・・・・・・・・・・ジャンプちゃぁ〜・・・・・・ん・・ん〜・・・・・・・」
自分を押し返そうとするけど、力が入ってないみたいだ。
子供のときもそうだったな。泣いていたから、殴る力も入ってなくって・・・・・・

328 :

更に。
「・・・・・・・・・・・・・・やらぁ・・・・・やだったらぁ・・・・サン・・っ、も、やぁ、駄目ぇ・・・・」
「!」
泣きそうになりながら、力なく自分の背中を叩く。
うわぁ・・・・
サンデーは止まるわけがない。
「ジャン・・・プちゃぁ・・・・・・・・・いいよお〜・・・・・・・・・・」
「だめ・・・っ、・・・・・だめら、っ・・たら・・・やら、だめ、だめ、らめ・・・・・・・・・・・」
だんだんろれつが回らなくなってくる。
しかも、これ、あれが・・・うん、あの一番気持ちいいの。近くなってきた。
ジャンプの殴る力が、ぽこぽこってほどに弱まった。
きゅーきゅー締め付けるし、ジャンプちゃんの呼吸だって・・・・・・・・

「ふぁっ、ふぁ、ふあん、だめ、だめ、もう、や、もう、も・・・・・・・・・・・・・・!」
サンデーも・・・・・・・・・・実は、もうとろとろだった。
だからある意味、『同時に気持ちよくなれる』は達成していたかもしれない・・・・・・・・・

329 :

荒い息のジャンプを前にサンデーはちっとも収まらない。
気持ちの盛り上がり、最高潮。
なのにジャンプ、更に燃料投下。・・・よせばいいのに。
「ジャ、ジャンプちゃん・・・・」
「っひ、ひっく、ふ、、ひくっ・・・・・」
しゃくりあげだす。
サンデーのどきどきは・・・・・もう無理かと思ったのに・・・・・・まだヒートアップする・・・・・・・さっきから緩んでたブレーキも・・・・・・・・・・・・
「バカバカバカ!!」
「ご、ごめ・・・・・」
ジャンプがぽかぽかサンデーの肩を殴る。
ど、どうしよ、ストップかけられた所でやっぱり止まるべきだったんじゃ・・・・・・・
「バカぁ!あんたなんて、あんたなんて・・・・・・!」
う、うわ、どうしよう・・・・・む、胸がどきどきするよう・・・・・・・・
自分の胸に顔を埋めて、ぽかぽか殴る。力が入らないのか、ちっとも痛くない。
どうすれば・・・・・・
「ご、ごめんね、嫌だった・・・?」
「ふ、ふぁー、ふあ〜ん、やだ、やだ、やだぁ〜」

・・・・・子供の時と違うのは、自分に抱きついてぎゅーぎゅーしがみついてくる事だ。
き、嫌われたりはしてないのかな・・・?
「ごめんね、もうしないから、しないから、痛かった・・・?」
ジャンプがかぶりを振る。
「い、言っていいよ。嫌だった?ごめんね、ど、どこが嫌だった?お願い、教え・・・・・」

330 :

ジャンプは・・・まるで子供帰りだった。
むずかるようにかぶりを振り続ける。

「やだよお〜」
サンデーにしがみ付いてしゃくりあげ続ける。
「やだよお〜。やだよぉ、サンデーを取られたくないよお〜」
子供のように、手放しでしゃくりあげだした。
サンデーはごくっと唾を飲み込んだ。どきどきどき。

331 :

「いやだよお、サンデーは性格いいし、誰にでも好かれるよお。・・・本当は優秀なんて知ってたよお、誰だって欲しがるよお」
泣き付くジャンプの肩を受け止めるサンデーの手に力がぎゅ、とこもる。
「・・・・・」
どきどきどき。
この開放的な少女はあまり我慢とかしない。
吐き出したくなったんだろう。泣き喚きだす。そして長い付き合いのサンデーには推測できた。・・・・・これはおそらく、ジャンプちゃんの心のひだに、触れちゃったんだ。
止めた方がいい、と賢い娘だから分かる。
でも、サンデーの・・・・・胸のどきどきが更に・・・・・・甘さまでともなってきた。どきどきが甘くなってきて・・・・・・・・・ジャンプを止めることが出来なかった。
うわ、すご、すごい、これ・・・・・・・・・・!

「やだよお、サンデーを取られたくないよお、初恋だもん、初恋でお互いが好きなんて・・・・・そんなの取り上げられて我慢なんて無理だよお。
オレさぁ、オレ、全力疾走するよお」
「・・・・・・・・」
「全力疾走するもん、どんな手を使ってでも一番でいるもん、家でもトップでいるよお、誰も文句なんて付けられないようにするよお。
希望通りを収め続けるよお、だからやだよお、オレの事も、サンデーの事だって自由に出来る奴らに自由にされたくないよお。一番でいるからやだよぉ。無理だって一杯するよお、やだやだやだ〜。
サンデーだって・・・オレ、目いっぱい頑張るよお、だからオレ以外を見な・・・・・・・」

332 :

ジャンプは涙で曇る目を上げて・・・息を呑んだ。
驚きの息。
・・・もっと早く気付けば鎮火できたのに。
「!!!」
「へへ・・・・・」
「・・・・!・・・!!」
「すごお〜・・・・・」
・・・・・・でも結果は・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャンプが顔を上げて・・・合った目は、見たことがなかった。
人間でも、動物でも。
「えへへ、すごお、ジャンプちゃ・・・ぁ・・・・」

なので、ジャンプは見たこともない動物を表現に借りることにした。
酔っ払った、ジャコウネコ。
ジャコウネコを見たことないけど、クラスの昼放課に誰かが教えてくれてみんなでゲラゲラ笑った。
ジャコウ科っつー動物がいて・・・そういやネコ役って語源とかあるのか?
でもこの娘は現在、役割がネコなのでジャコウネコ。
ジャコウ科は発情期になると、エロい香りでお互いに交尾に誘うらしい。媚薬にも使われたとかで「どんだけエロい動物だよ〜」ってみんなで笑っていた。が・・・・・

「ふぁ〜・・・・・・・ジャンプひゃん〜・・・・・・・」
「ひ!」
「すごお〜・・・・・・・・すご、やっぱジャンプひゃんは・・すごいよぉ・・・・・・・・・」
しかもこれは・・・・・・・・あれだ、酔っ払ってる。猫も酔っ払うと・・・猫はマタタビか。薬がキマると・・・・・・・・こんな感じだ。だらしなく・・・・・

333 :

ジャンプの発言はもうおしまい、と判断したのか。
くて、とサンデーがジャンプの肩にのしかかって来た。
あ、あんな自制心の固いムスメが、これ・・・・・・・・・・・・・・・・
「ひぃ!」
首をぺろぺろ舐められる。かかる息が・・熱くて・・・・・
「・・やっぱジャンプひゃんはすごいよお・・・・・・・・・こんらの初めれ、すご、やっぱ・・・・・・・・・・・・・
ね〜え〜」
あわわわわ。
そんなジャンプの右手を取った。
「見れ〜。すっごい・・・・・わたひ、今ので・・・・・・・・・・・・・・・・」
「!!!」
くちゅ、と押し付けられて・・・・・ジャンプは恐ろしさに歯の根が合わなくなってきた。
押し付けられた・・・そこは熱くて、ひく、ひく、ってこ、こんな、こんな、これっておもらしとかじゃないよね?だって、ぬるっと・・・・・・・・・・・・・・
改めてサンデーを見た。
目がとろんとろんで・・・酔っ払った、としか表現のしようもない。
驚きを付け加えたいので、少々大げさに。
あのエロいって大笑いしてた・・・見たことないけどジャコウネコ!発情するとエロくなる猫!
ジャコウネコが酔っ払った!
「・・あ、あわ・・・」
「ねへぇ〜・・・もっかいさあ、えっちな事、しようよお〜」
「あわわ、あわわわわ・・・・・・」
「もっろもっろしよおよお〜ねへ?うふふぅ〜」

334 :

こ、これは・・・・・・
「ラジオ体操第一ぃ〜〜〜ッ!!!」
ジャンプはわめく、ってほどに号令を叫んだ。
サンデーがちょっとだけはっ、と我に返ったように背筋を正す。
相変わらず上下しっぱなしの胸で「なんで?」って問うような目だが。なんで止めるの?と。
「・・・・・って号令かけたら、はじめだよね?」

ジャンプは・・・なんでオレ、えっち場面で違う意味のどきどきばっかなわけ?!と泣きたい気持ちはあったが。
とりあえず、乗り切らなきゃいけない。
「って約束だったよな?違うか?違うのか?」
サンデーがスネたように口を尖らせて・・・こく、とうなずく。
「だから、どう、どう、どう」
落ち着かせるように、サンデーの肩をぽん、ぽん、と叩く。撫でるように、優しく。
「どう、どう、どう〜」

335 :

「んぅ〜」
「あんた、さっき、なにした?」
サンデーが更に残念そうに口を尖らす。
「オレのリードではじめる、って約束だよな?」
「・・・・・」
「じゃあ、きちんと号令に合わせる!
今の、これ、なーんだ!」
押し付けられて、べとべとの手のひらを見せる。
「・・・・・・・」
「・・・・・はは」
「・・・・・・・・・」
「こ、こりゃさ、更に当分はオレが号令役だよなあ〜」
「・・・・・・・・・でもぉ・・」
「でも、じゃねー!あんたフライング、一回!」
もう一度、ジャンプは指を突きつけて心を込めてサンデーに怒鳴りつけた。
「もう一生ってくらいにえっち場面ではオレがリードしなきゃ・・・
ヤバイだろ、この、場合・・・・・!!!」

336 :

さて。翌日。
これも最初に設定してあったが、サンデーはジャンプと話し込むうちに眠くなりました、と言う設定の下、二人で朝食のために部屋を出た。
えーっと、一階のカフェでバイキングなんだよね。
エレベーターに一緒に乗りながら、昨夜の事を思い出す。
ちょっと振り返る。実は・・・おそるおそる。
「?」
サンデーは・・・いつもの清潔感あふれる、知的な少女、そのままで優しい笑顔で首をかしげる。
昨夜の事なんて、頭にないみたいに。
これは・・たぶん今、オレに預けきってる状態だな。
ああ・・・ジャンプは泣きたいような気持ちになった。ああ、なんか相手の事が色々分かってきたけどさ、泣きたい気持ちだよ。どうにかこのコはコントロールしなきゃいけないよ、オレがしなくって誰がするんだよ、この暴れムスメを誰が、誰が、誰が!!

まあでも・・・ちょっとふくれたように顔を頬を赤くしてジャンプは前に向き直る。
このコがバーサクになるきっかけもその収集も・・・今のところ、オレ?
うん、助言以外は全部オレだ。
昨夜は不安になって泣き喚いちゃったけどさ・・・
もしかして、これってあんま心配無さ気なカンジ?
困るんだか・・・ジャンプは目をつむる。・・・・・・・嬉しいんだか。

337 :

サンデーちゃんはそんな様子のジャンプちゃんを見てにこにこと嬉しそうだ。
だんだん、だんだん相手のことが分かってきた。
私、すごくない方がいいみたい。
あんまり頑張ると・・・この少女が不安定になるのが分かった。
ジャンプちゃんの方がすごい、が一番いいバランスなんだよ。私はちょっと駄目、くらいで。・・・・・思う所がないでもないが。
でも。サンデーは、堅実なムスメだ。
名よりも、実。そうだよ!実!
実・・・・・・・・・・
そこで顔が熱くなる思いだった。・・・・・おかず、かあ。そっか、うん、なんだか理解できる。言葉を作った方はお上手ね。
ご飯だけじゃあ食べられない。
じゃあ・・・・・ちょっと口を尖らせてジャンプの背中を恨みがましく見た。
・・・・・もうちょっと、くれてもいいのに。その、おかず。

338 :

カフェに入って、一番にオムレツを注文するジャンプと、カップをふたつ持ってジャンプを待つサンデー。
二人の少女を眺めながら、ふぅ、と夜明けのエスプレッソを傾けるのはガンガンちゃん。朝の一服、と大変に満足そうだ。
「・・・・・他人の春は、大変に美味よねえ」
傍らのマガジンちゃんに話しかける。
「やっぱりなによりもの美味だわ。他人の春」
「・・・・・・その言い方、止めれ」
朝起きて、何事もなかったように身支度をすませて、何事も無かったように身奇麗に座っている。
しかもベットから起きようとしないマガジンを立たせて、最初から着付けてあげて髪の毛もといて顔もぬぐって・・・も、すべて彼女なので、マガジンにも乱れはない。
されるがままのマガジンは・・少しぐったりしてるのと・・・目のふちがちょこっと赤いぐらいか。
こちらの設定は、幹事の相談してたら、だそう。

「じゃ、なによりもの媚薬?ドラッグ、かいしゅ・・・・・」
「わあーーーーー!!!」
やっぱりマガジンの体力は半端ない。途中から腹に力を込めて叫ぶ。
カフェ中の人が注目したが、どっちも文句の付けようのないお嬢様二人なのですぐに関心を失う。
「他人の春を見せ付けられると、なんだか、こう、やっぱりね」
「・・・・・」
「他人の春あっての我が充実!」
「〜〜あんた、いくつよ」
「永遠の17歳?」
「はは・・中等科で、デスカ・・・」

339 :

・・・ガンガンちゃんは満足そうにジャンプちゃんとサンデーちゃんを見やって、やはり満足そうに大きくため息をついた。
テーブルで向かい合わせの従姉妹同士。仲良さそうに笑いあう二人に目を細める。
「・・・・・いいわねえ」
心からのように
「可愛らしい・・・二人。心が洗われるよう」
「・・・・・・・」
「本当に。心が洗われるみたいな・・・」
言いながら微笑ましいような・・・表現できないような目をさらに細めてから・・・・・

でも、マガジンに振り返ってすぐに明るい声に戻った。
「ね。思わない?我々にはない爛れのない春ぅ〜」
ひとくくりにしないで・・・なに、それ何故にオレ、爛れ側?!

340 :

「あら、メール」
ぴろぴろり〜ん♪
携帯に目を走らせてから、ガンガンはおしとやかに
「やだあ。初等部さんがおマセなんだからあ〜」
ころんころん笑う。
「おマセさんな質問の回答は恥ずかしいなぁ」
ああ、なんとなく誰からで、内容も分かるオレが悲しい件。
「・・・・・」
「グ、グ、れ、カ、ス・・・・・」
「!!!」
いきなり立ち上がったマガジンは
「なんちて、なぁ〜」
うふふっ、と活きの良さを笑ってもらえて、現在、目の前のお姉さまにお客様満足度、ナンバーワン!
・・・・・気持ちのやりどころも失って・・マガジンは力なくはは、と笑った。
あれ?4大少年誌のもうひとりのチャンピオンは?なに?なんで世間はスルーしてるの?軽いイジメだよ?イジメ、かっこ悪い!声高に語ろうよ、チャンピオン信者、高く拳を振り上げて叫ぼうよ、チャンピオンかっけー!ってさぁ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・


                              

     各雑誌女子への応援メッセージを巻末アンケートにぶつけよう!
               キミの熱い語り、お待ちしております!!

341 :
各誌ファンの方、申し訳ありませんでした
ジャンプもサンデーもマガジンもこんなじゃないんですよね?
本人はちゃんと分かってるので安心してください
これでもこの間サンデー、立ち読みしたんです。連載陣が変わってないことに萌えを感じてしまって末期だ、と思いました
毎回ねちねちと長くて申し訳ありません。変態はしつこくて困りますね
実際の集英社と小学館は行った事もないので2社の関係は知りません
お嬢様の世界も分からないのでインチキくさくてごめんなさい
人生ゲームって(笑)

変態レベルもこのスレで上がりました
本屋さんでもふーふー興奮しています。最近はコミックスの並び見ても興奮できます
こ、これが擬人化の世界・・・
ウィキペディアで知りましたがスクエニにはそんな歴史が。なるほど、なんとも香ばしい
だからこのスレが活性化することを願っております
活性化を祈りまして

342 :
とにかく乙。
良いものを見せてもらったよ。
しかしここは過疎だな。

343 :
過疎ですねえ
性格付けとか擬人化ニュースとか萌えが投下されないかな

344 :
>>341
GJ!
激しく萌えた(*´д`)ハアハア
できればジャンプSQちゃんも登場希望w

345 :
>>341
今更だけど乙
ただ読むのが大変だった、できれば少しずつ小出しにしてくれた方が読みやすかったかも

346 :
>>344
感想をどうもありがとうございます^^
ジャンプSQちゃんは想像がかき立てられますよね
まだ読んでないので登場は無理ですが
だからSQ読者の方がなにか投下されないかなー、とか期待してます
「本家に確執ある異母姉妹」の設定に未だ萌えもえしてるんだけどなぁ
>>345
こちらこそ乙です
つたない投稿ですのに読んでくださって感謝です
なるほど、小出しですか!アドバイスもありがとうございます
投稿がもっと整頓されますよね。投稿する前のおのれに教えてあげたいです

347 :
>>346
貴方の作品が好きなので是非頑張って下さい。

348 :
>>347
ありがとうございます、嬉しいです^^
また萌えが止まらなくなった時には頑張らせてくださいね

誰か何か投下されないかなー
サンデー・マガジンによるデスノパクリ騒動はスレ的なアンテナが働いたんだけれど俺だけか・・・

349 :
サンデーとマガジンで対応が違ったところがみそ

350 :
やはり同じポイントをwおかげでサンデーちゃんの方は生き残れたのは良かったけど
そしてジャンサンが揃う水曜が震えるほど嬉しい
恥ずかしそうにしょぼんとしてるおにゃのこが目に浮かぶようだ。雑誌なのに

351 :
>>348
全裸が寒いです。

352 :
>>351
お風邪でも引いたら大変です。どうか服を着て暖かくして下さい;

353 :
>>352
全裸待機はやりはじめたら投下がくるまでやらなきゃいけないとゆう鉄の掟があるのです。

354 :
>>353
ですよね、そんな意味合いなんですよね。勘違いして的外れなお返事してしまいました;
非力な自分ではありますが頑張りたいです
SQちゃんが異母姉妹との設定いただいちゃってかまいませんか?駄目な場合はご意見くださいね

355 :
>>354
読めればなんでも良いよ、寒いし

356 :
(´・ω・`)マダカナマダカナ

357 :
>>355
心強いお言葉ありがとう!
SQは読んだ事が無いのでSQちゃんに関しては特に広い心を持っていただけたら
>>356
せっかくお声掛けてくださったのにやる事遅くて申し訳ないです;

358 :
>>357
急ぐとどんな良作も駄作になりさがるから気軽に待つよ。
後、個人的にSQたんは新人アイドル的なのが良いと思う。

359 :
>>358
優しいお言葉ありがとうございます^^
SQたんのイメージを伝えていただいたのに恐縮ですがSQはあまり関係してこないお話だと思います;
分かる雑誌でしか話を回せないスペックの低さが自分でも悔しいです
後日SQ読んでおきます。ちらっとしか出てこないのですがこれはおそらくイメージではありませんよね・・・
なので信者の方は「いや、そうじゃない」「SQたんはきっとこんな性格だ」と議論のきっかけにしていただけたら幸いです


読みやすく出来れば・・と、いろいろ試みましたが読みにくくなっていたらごめんなさい
月ジャンは昔、立ち読みしていました
SQは読んだ事がないので読みたいです
※エロはありません

360 :

「サンデーの胸の内で百合」

・・・期待していた反応とまんま逆だったな。
サンデーちゃんは泣きたいような気持ちだった。わくわくして登校したのに。「ジャンプちゃんみた〜い!」「すごーい、素敵だよ〜」なんて歓声の的だよ、とわくわく、わくわくして、元気良く教室に飛び込んだのに・・・・

・・・しかし反応は期待と真逆だった。
クラスメイト達は・・現れたサンデーの姿に罰が悪そうにお互い顔を見合わせた。
期待に教室をきょろきょろ見渡すサンデー。なのに誰も視線を合わせてくれない。話題以前の問題。
仲良くしてくれている白泉姉妹だけは励ましてくれたが。
「でもさっすがサンデーちゃん。勉強にはなる内容だよ〜」
「うんうん、催眠なんて斬新だし。楽しみながら学習出来ちゃう」
「しかも・・現実にある方法だしさ?」
「リアリティ?があるかも?・・・・・神さんより」

361 :
双子だから、左右をはさまれるとステレオを聴いてる気分だ。よくよく注意すると二人のささやかな違いに気付くが。
「それに感心したよ。作画までまるでトレースなんだもん〜」
さっきから懸命になってくれているのは白泉ララちゃん。
ほわほわと春の陽気を思わせる白泉姉妹でも、のんびりと人のいい様子が妹らしい。
「構図までそっくり!原作の方々、とってもファンなんだってよく伝わるよぉ」
「ちょっと?ララ・・・」
おなじほわほわでも軽やかさを持つ花ゆめちゃん。妹にはない察しの速さで
「・・・あ・・」
マガジンちゃんを視線で示す。
ララの声もあわてて小さくなる。
「・・・ご、ごめんなさ・・」
「ん?いーよ、ジャンプに謝罪なんて慣れてるしぃ〜」
マガジンは気にした風もなくケタケタ笑い飛ばす。
当のジャンプも複雑そうな表情で何も言わない。
サンデーは泣きたいぐらいだ。・・・びっくりさせようと秘密にしておいたのに。
ジャンプちゃんみたいで素敵だと思ったのに!まるで、まるでジャンプちゃんの素敵な活躍みたいって絶賛の嵐だろうなって・・・!

誰かが言ってあげれば気も付くだろうか?
「みたい」とか言ってる時点で駄目なんだよ。他人から真似されるくらいでなきゃ。

362 :
・・・また自分が盛大に外した、と悟ったサンデー。とぼとぼと図書館に向かう。
いつも利用していた椅子には座らない。
ここ最近のサンデーは書棚の前に立って読んでいる。
誰にも読んでいる本を覗かれないように。今の悲しい気持ちにぴったりで、胸がきゅんとするお気に入りでも読もう。
サンデーちゃんは悲しい気持ちで本の背を目で追う。
女の子同士なんて中々見ないので困るが。フツウのラブストーリーなら選り取りみどりなのにな。
その内、一冊に目を留めた。どきどきしながら本をとる。周りに誰もいないのを確認してから開く。
えーっと、あのくだり、胸がきゅんとしたな・・・・・。

しばらくサンデーは本の内容に没頭する。
ヒロインに同調して、現在の心を慰める。うんうん、ちっぽけな自分とは違う、輝かしい同級生への描写がすてき。なのに2人は固く結びついて。うらやましいくらい!
あんまり熱心になっていたからか?傍に人がいたのに気付かなかった。
「重くない?」
「ひゃ、ひゃい!!」
ささやくような声だったが、あんまりに驚いてその場で背筋を伸ばす。
振り向くと、
「あ・・・お姉さん・・・・」
集英月ジャンがきょとんとしていた。

363 :
集英月ジャンは、ジャンプちゃんとおなじ名前をもらってはいるが、ジャンプよりお姉さんになる。
なので区別を付けるためにも簡単に月ジャンなんて呼ばれている。
今、高等科かな?集英の血筋らしく気丈な少女だが、サンデー達よりもお姉さんなせいか。ちょっとした瞬間にコケティッシュさものぞけて、それがまたえもいわれぬ魅力。
面差しがジャンプちゃんに似てるかも。サンデーは思わず見とれた。
ジャンプちゃんが成長したらこんな綺麗な・・う、ううん、今はそんな事、考えちゃ駄目だめ!
でも・・姉妹なんだし。将来はこんな雰囲気になるかも・・・。

サンデーの様子に困ったように微笑んだ。
「びっくりさせちゃった?」
相変わらず小声でくすくす笑う。サンデーもあわせて声を落とす。
「い、いえ・・・」
「それ、文庫は?重くないのかなって」
視線で示されて、本はさり気ない風を装って閉じられた。
「ええ。この質感がいいなあって・・・」
そしてサンデーはどきどきしながら用意しておいた返事を暗唱する。
「確かにハードカバーは雰囲気あるわよね」
月ジャンはタイトルをちらっと見た。
「意外だわ。もっと牧歌的な小説が好みかと思ったけれど」
「え、えーっと、この作家さんって空気が乱歩に似てません?」
「そうね。あら?それって探偵さんは出てきたかしら?」
「・・そういえば・・・・・」
「短編が好きなの?乱歩でも短編集に熱心よね」
サンデーはなんで私の読んでいる本まで把握してるのかな?と疑問だったが。

364 :

「乱歩もですが長さも、あと探偵の有無も気にしてません。トリックらしいトリックがなくても平気です。だって推理物のように緊迫感があるもの。不思議ですよね。
だから勉強になるんじゃ?なんて。トリックであっと言わされるのも楽しいけれど、そこに至るまでの雰囲気づくりもあったら楽しめませんか?」
立石に水、だ。本の事となるといつもは聞き役になりがちのサンデーも熱心に話しこむ。
他の利用者に邪魔にならないような小声が、館内でこそこそ耳をくすぐるよう。

しばらく月ジャンは微笑みながら熱心なサンデーに相槌を打っていたが。
「あ、そうだ。月ジャンさんのお家でも乱歩生誕の記念に探偵団の作品発表されていた先生いらっしゃいませんでした?」
・・・月ジャンは返事をせずに、そっと視線をサンデーから外す。
「素敵な画風でしたねぇ。そう言えば雰囲気がある画風の先生が多くないです?個性的で素敵!」
熱心に話しこむサンデーに月ジャンはしばらく黙っていたが、
「・・・私はもう引退したから」
さすがにはっと口をつぐむサンデーに・・
「妹が現在、先生方をまとめてくれているわ。
?そんな顔しないで?今の生活も楽しいの。時間がある分、充実してるしジャンプや姉さん達や・・・・・SQちゃんも。見ていられるしね」
月ジャンが明るく言ってくれたが、気まずい空気は隠しようもなかった・・・。

365 :

しばらくは沈黙が降りた。
月ジャンが思いついたように話題を変えた。
「そうだ。サンデーちゃん、読書が好きよね」
「え?は、はい。大好きです」
サンデーはほっとしたように顔を上げた。
「・・・私も物語を書いてみようかな」
「へえ!」
サンデーは顔を輝かせた。
「素敵ですね!」
「うふ。引退してね、時間が出来ちゃった。
我が家の本を読んでいたら、中々面白いわね。私も書けるかな」
「書けますよ、書物を愛していたら、愛の分だけ」
「・・・もしも書いたら、サンデーちゃん読んでくれない?」
「はい、是非!」
「うふふ、サンデーちゃんは読書家だし一番に読んで欲しかったのよ」
「月ジャンさんなら素晴らしい読書体験がおありなんでしょうね。うわあ、楽しみ!」
嬉しそうなサンデーに、うなずく笑顔に一点のくもりもなかった。
もしもあってもサンデーに見抜けるはずもなかろうが。中等科の中でも、さらに幼い少女に。

366 :

と、言うわけで今、サンデーの学習机の上には一冊の本がある。
私服に着替えて一番にスクールバックから取り出したのだ。あんまり楽しみで学校で読みたかったぐらいだったけれど「恥ずかしいから家で読んで?」と念を押された。
わあ、可愛らしい表紙。
ファンシーグッズコーナーに置いてあるような、女の子向け日記帳だろう。明るいグリーンで四葉のクローバーがあしらってある。ハードカバーが好きなんて言っちゃったけど、無理はさせちゃってないかな?厚手の冊子。

まだ、題名は考えてないの。
月ジャンが手渡しながらサンデーに気持ちを伝えた。
・・・まだ完成していないし。ほんの導入しか思いつかなくって。
そしてサンデーを真っ直ぐに見て言った。
それでね。続きを一緒に考えてくれないかな。
・・・見る人が見たら、何かを含んだ表情と気付いただろうが、まだ幼いサンデーには分からない。
不思議そうなサンデーに、そのまま月ジャンは続けた。
読書家のサンデーちゃんならきっと素敵な感想くれるわ。サンデーちゃんの意見を聞いて、それから続きを書く。ね?力を貸してくれない?

367 :
「私専用のお話かあ・・・」
ぺらぺらとページをめくってうふ、とサンデーは嬉しそうだ。
月ジャンは言葉を続けた。
意見が欲しくてサンデーちゃんの図書カードも見たしね。
サンデーちゃんが好きそうな作風にしてみたし、主人公も同い年くらいの女の子にしたのよ。ね?一緒に考えて?
だから、表紙も無題。一緒に考えて欲しいから無題なまま。

あまりの力の入れようにサンデーの心は躍る。
うふふ、アンケート結果によってお話が変わる、とかそんな形式みたい。
なんだか心躍るな。私の図書カードまで検討に入れてくれて、私にだけなんて!
サンデーはわくわくとページをめくった。
「えーっと。
『あなたは放課後の校庭を横切っていました』・・・」
サンデーは文章の冒頭だけ音読する。後は字に目を走らせる・・・・・
・・・・・

『あなたは放課後の校庭を横切っていました。
もう日が傾く頃です。あなたの影があなたの足元から伸びます』

なるほど、これは二人称のお話ね。
一人称でも三人称でもない形に嬉しそうにサンデーに笑みがこぼれる。
いかにも自分の為に書いてくれた!って雰囲気。

368 :

「ふむ、ふむ・・」
また字に目を落とす。

   『校舎裏へと急ぐあなたの長い影。
   校舎裏には学校が管理している温室があります。
   今日はそこで待ち合わせ。
   あなたは待ち合わせをしている人を思い浮かべました。
   お相手は短気ですよね?待つのが苦手。
   だからあなたは次第に駆け足になりました。
   ・・・あなたにとって大事なその人を怒らせたくないから』

サンデーはページをめくった。
ふぅーん。なんだか私の性格まで把握されちゃってるみたい。漏れた笑みが深くなる。

369 :
ありがとう!やっと服が着れるよ。

370 :
これはwktkせざるおえない

371 :

  『息を整えるのももどかしくて、すぐにガラス戸を開けます。
   「ごめんね、待った?」
   あなたがドアを開けると、相手が視線を上げました。
   あなたはちょっと相手に見とれました。
   夕焼けが右頬に当たってとても綺麗です。
   あなたが大好きな、いきいきとした瞳。ちょっと勝気なくらいな。
   その瞳にそっとまつげの影が落ちました。
   「・・・もしかして・・・・・オレの為に?」
   あなたの息がはずんでいるからでしょうか。伏せ目がちに訊ねてきます。
   あなたは当然、
   「当たり前じゃない。私達、恋人でしょ?」
   相手はその言葉に顔を赤らめてうつむきました。』

なるほど、私がヒロインの恋愛ストーリーなのね。
サンデーは困ったように笑った。好きな人がいるのにラブストーリーなんて読んじゃっていいのかな。

372 :

  『「・・べ、別にいいのに・・・」
   「え?」
   あなたが不思議そうに首をかしげると
   「・・・だって・・・オレ・・・・・」 
   彼女はすこし口ごもってから、小さい声で続けました。
   「だって、オレ、あんたの事待つの・・嫌いじゃないし・・・」
   あなたはうっとりと彼女の唇にみとれました。』

・・・?彼女?
サンデーは意外な気持ちで字に目を走らせた。
オレって言ってるし男の子かと思った。それに・・・・・

373 :

  『あなたは二人っきりで会う時の彼女が大好きです。
   普段は見ることが出来ない彼女が見られるので。
   普段の彼女は、後ろ暗いところなんてないように胸を張っていますよね?
   彼女は正義感が強くて、うっとりするぐらい覇気のある少女。
   明朗活発って言葉がなんて似合うんでしょう。
   でも、二人っきりで会う時だけは違う部分が次々と見えます。
   今、見せているような血の昇った唇。目に落ちるまつ毛の影。
   あなたは知っていますね?その表情は・・・・・』

「こ、恋の味を分けあう者同士・・だけ・・・・・」
サンデーはかすれた声で読み上げて、後は続かなかった。
すぐに本をぱたん、と閉じる。

374 :

どきどきどき。
こ、これはどういう・・・う、ううん、落ち着いて!落ち着け、私!
サンデーはぶんぶん、と頭を振った。
ま、待って。え?どういう事だろう。こ、これは物語で、月ジャンさんが読んで欲しいって書いた物で、私とはまったく無関係で、そもそもなんで私がどきどきしてるの?おかしいじゃない、私がどきどきする理由なんてないはず!
そうだよ、だって私に恋人なんていない!
・・・と、表向きはなっている。ジャ、ジャンプちゃんに言われたとおりに、慎重に、慎重に。慎重に振舞ってきた。うん、みんなにもバレてないし。
相談だってマガジンちゃんだけだよね。しかも友達の話だよって念を押した上にマガジンちゃんは他人に言わないって。うん、漏れるはずは絶対にない。

サンデーは、呼吸を整えた。
これはきっとこういうストーリーなんだよ。
疑問な点がないでもないが。・・あれ?でも女の子との恋愛物語なら主人公は男の子の方が都合いいんじゃ・・・あ、そうか。私に合わせる、って言ってたな。じゃ、温めてあったストーリーの主人公を私に変えただけ。うん、そうそう。
じゃ、平気。
そもそも月ジャンさんはわざわざ私を指定してくれたんだよ?読まないのは失礼!
・・・なんとか言い訳を作るのに一生懸命なのは。サンデーは、続きを読みたかったのだ。だって、このお話のヒロインと恋人って・・・・・

375 :

  『あなたの胸はどきどきしています。
   あなたは、そんな様子の恋人を見るだけでもぽーっとしちゃうくらいです。
   あなたは彼女が大好きで、彼女が世界の中心。
   ・・・あんまり一所にじっとしてくれる中心ではありませんがね。
   でもあなたは満足です。
   彼女が恋人ってだけで心臓が壊れないのが不思議。夢見ている心地。
   「あ、あんたさあ、もっとオレに我が侭言っていいんだよ?」
   でも今日の彼女はちょっといつもと違いました。
   おや、とあなたは思いました。
   なにか奥歯に物が挟まったよう。いつもの明朗さがありません。
   「やだぁ。どうしたの?」
   くすくすとあなたは笑いました。
   「平気。私、我慢は得意だし」
   彼女はそれをこころよし、と言った表情ではありません。
   「・・・それはオレにも?」
   「え?」
   「こ、恋人同士になれたのにさあ、あんた・・・オレにまで?」
   あなたが首をかしげると、
   「・・・・・あんた、いっつも我慢ばっかりじゃん?
   オレにまで?」

376 :
   
  『あなたは不思議な気持ちでした。
   「オレには我がまま・・・言っていいんだよ?」
   どきん。予期した事無い言葉にあなたの胸が大きく鳴りました。
   まさか、こんな台詞を、よりによって私になんて・・・。
   我慢しない彼女。自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こす彼女。
   ・・・他人の都合なんて気にした事もないだろう彼女なのに。
   もちろんあなたは信じられませんよね?
   「ど、どうしたの?」
   「・・・オレさ、不安なんだよね」
   「?」
   「オレ、あんたの望みが叶えられなくって・・・。
   ・・・・・あんたが離れていくのがヤなんだよ」』

377 :
  『「オ、オレはさ?・・・あんたの事が好きだから・・・取られたくないな・・・・・」
   彼女は本当、思い立ったら即行動、な性格ですね。
   隠すつもりもないみたいです。次々と吐き出します。
   「あんたを取られないためなら・・・なんでもするよ」
   ああ、あなたにはなんてとっておきの言葉でしょう。
   なのに彼女の表情であなたの心臓は更にどきどきと壊れそうです。
   ・・・あなたが知る彼女の中でも一番目ってほど。
   「我慢とかしないで、なんでも言って?・・・なんでも」
   あなたは確認を取りました。あなたの性格どおり、慎重に。
   「で、でも怒らないの?
   ほら、昔からちょっとでも自分の気に触らないとすぐに・・・」
   あなたは笑ってはいましたが、胸がはやるのを押さえられません。
   なんでも。その言葉がぐるぐる頭を回ります。
   なんて美味しそうな匂いのする言葉!
   彼女は目を上げてあなたをじっと見ました。
   「・・・いいよ。あんたを取られるくらいなら、オレ、なんでも出来るし」』

サンデーちゃんはどきどき、どきどきとページをめくった。
な、なんて私好み!ジャスト、私サイズ!!
すっかり胸もはずんで、文字を追うのももどかしい。
・・・当然、ヒロインとその恋人は自分たちに変換されている。

378 :

  『あなたは我が身を振り返って、とまどいました。
   なんでも、って・・・。で、でも、私って常識からはちょっと・・・・・
   「なんでも言って・・・?なんでも叶えたいんだよ・・・好きだもん」
   あなたは、慌てました。良く見たら、彼女の唇は震えてます。
   ・・・驚きですね。少しそむけられた顔は泣き出しそう。
   「あんたを失いたくないんだもん、大好きなんだもん」
   彼女はぎゅ、と目をつむりました。
   「恋ってさ、好きになった方が負けって言うじゃん?
   だから、オレはあんたに無条件で投降する!!
   ・・・あんたを失わないためなら、なんだって出来る。
   希望通りにしてあげたいんだよ、希望通り。
   だからなんでも言って?」』

な、なんて都合がいいの・・・!
こんなの現実にあるわけない、ううん、でもあったら素敵だな。こ、恋人にこんなこと言ってもらえるなんて・・・私なら・・・・・

379 :

  『あなたは信じることが出来ませんでした。
   なので試しに少しだけ言ってみました。
   「じゃ、じゃあ・・・」』

「『め、命令みたいになっちゃうじゃない・・・』・・・・・」
サンデーはかすれる声で読み上げた。


380 :
 
  『一番彼女が嫌いそうな言葉を選んだのに。
   彼女は・・・こくん、とうなずきました。
   頼りない様子が、あなたを更にどきどき、どきどきさせます。
   「あ、じゃ、じゃあ・・・例えば・・・
   えーっと・・・・に、24時間・・ひとつの部屋から出ちゃ駄目?
   なんて言ったら?さすがに・・・」
   あなたはあわてて、
   「あ、食事とかお手洗いだとか、生理的な物は私がするけど。
   ・・・その、それでも?」
   彼女がうなずいたのであなたは信じられないような気持ちでした。
   なので更に
   「そ、その・・・私に?
   我慢できなくなる毎に・・お、お願いてくれたら、その・・・・・」
   彼女はやはりうなずきました。こ、これは本当なんだ!!
   「え、えーっと・・・・・でもさ、長時間じゃ飽きちゃうかもしれないじゃない?」
   身振り手振りで説明しました。
   「あ、飽きちゃうよ、きっと!
   飽きて、すぐ帰るぅ〜とか帰っちゃう。
   だから・・・そう!まず服!
   服着てなかったら飽きちゃったからって外に飛び出しちゃえないよね。
   た、助けとかも・・・よ、呼ばれちゃったら心配だよ。うん、心配。 
   だから、その、あのね、あの、例えだと思って聞いてね?
   た、例えばの話だから、怒らないでね・・・・・?」
   あなたは思い切って、自分の希望を彼女に伝えました。』

381 :
支援

382 :

なんて心おどる展開!!
すごい、すごいよ、月ジャンさんは天才だよ、すごい!!
あ、でもこれ、相手はうなずくのかな?どんなお願いでも?この流れだと絶対にうなずくよ!・・・私ならどんなお願いしよう。
ううん、め、命令だよ!だって恋人が命令でいいって言うんだもん・・・!
私なら、どんなめ、めめめめ・・命令?うん、なんてしよう!
だが・・・・・

「・・・・・は・・・」
そこでお話は途切れていた。
サンデーは張り詰めていた息を吐き出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・そんなぁ・・・・・・・・」
ここまでぇ?ページの次がなくってサンデーは肩すかしを食った気持ちだ。
息と一緒に、全身の力を抜く。
す、すごいな、この内容。

383 :

どきどき、どきどきと鼓動が胸をうるさいほど叩く。月ジャンさんは天才だよ!
私専用のお話を書いてくれたって言っていたけれど、まさに自分好み。
それから、息を整えて。
ど、どうしよう、下着、きっと・・・。そわそわと確認に椅子の上でもぞもぞ動く。
や、やっぱり・・・。机の下に手を伸ばして指でも確認する。
・・・どうしよう・・・・・拭く?
でもお手洗いに行くまで誰かに会うかもしれない。!そうだ、この下着は捨てちゃおう!そうだよ、元がなんなのか、分からないようにはさみで丁寧に切っちゃえば家の人だって・・・。
それから、ちらっと寝室のドアを見た。
時計も見る。・・・まだ5時。
普段なら、こんな大胆な行動は取らない。夜寝る前以外なんて。
でも。サンデーは目をきゅっとつむった。
どうしよう。ふとももをこすり合わせるほどになる。自分で自分の体を抱いて切なく息を吐く。
ちょっとだけ。ちょっとだけ、気持ちを落ち着けるだけなんだよ?ちょっとだけ・・・。
そして、自分の部屋なのに、誰もいないのにきょろきょろしてから寝室にさも用事です、とそしらぬ表情を振舞ってそろそろ、きょろきょろと近づく。
・・・・・まったく、可笑しなムスメだ。

384 :

さて、こちら集英家。
末の方の娘で家で一番・・・いや、日本でも一番手の娘、ジャンプがよろよろしながら帰ってきた。
日曜まで部活ってどゆことよ。
声も出ないので心の中で毒づいた。全国でも目指してんの?スポーツで食ってく予定もないし。監督だけが盛り上がってる状況、ダサっ。
ああ・・・ジャンプは人恋しい気持ちでぐすん、と鼻を鳴らした。
特定すると一人に。あーあ、こんな時にサンデーが抱きしめてくれたら気持ちいいんだろうなあ。
・・・あの心地いい胸で抱いてくれて、よしよし、って撫でてくれないかなあ。よしよし、やっぱりジャンプちゃんはすごいよねぇ、って。あのコ我慢強いから、きっとオレがもういいよ〜って止めるまで撫でてくれるんだよ。いつまでも。

「あ!チャンバも走るエースストライカーだ」
ぎくぅ!とジャンプは足を凍らせた。

385 :

「・・・・・」
「せいぜい宣伝効果しか見込めないのに感心、感心。『集英家のご息女、オリンピック出場!』ぐらいだろ、ははは」
・・・・・さすが、おんなじ事考えてるな。
目を上げると、そこには仲がいい姉のヤンジャンがいた。このオンナも確か初等部から女子サッカー部だ。
すっかり大学生が板についている。
フェミニンよりもカッコイイ女風が好きな姉。タイトなミニにうっわ、いけ好かな。胸元に下がってるの、なんか見覚えあるロゴだよ?名前知らないけどさ。

「ねえ、エースストライカー、お姉ちゃん悩みあんのよぉ。聞いてくんない?」
前置きだけすると、後は余分な説明も無くストレートだ。
「中等科にいる私の妹が最近、色気づいてきたんスけどね?」
「っ」
「姉としては、これがハラハラしっぱなしなの。
だって妹の様子がさぁ、まんま欲しいおもちゃが手に入った子供そのもの。
浮かれっぱなし。あのコ、敵が多いのに大丈夫ですかね」
「・・・・・」
「日本中が虎視眈々と狙う地位でしょうに。競争相手どころか・・・・その家業のレースから脱落した人達も眼中にないご様子。お姉ちゃん、心配で心配で」

386 :

はい?
ジャンプの表情に素が入る。た、確かに・・・オレは浮かれてたけど・・・。
かもしんないけど、このオンナ、一体何が・・・・・
サンデーなら大丈夫だよ、だってオレ以外にバーサクになんないもん!
サンデーは誰にでも好かれそう。
しかも本当は優秀。・・・・・前の親睦会で・・分かってしまった。顔が熱くなりそうだ。あのコは止せってほどに優秀・・・なムスメなんだ。
でもそれもオレ限定って分かったんだし・・それ以外、一体何を・・・
ぐるぐる頭を回転させる妹に、ヤンジャンの表情は・・実は最初から真剣で真摯だった事に・・・ジャンプが気付いたのはかなり後だ。
「志村ー!後ろ、後ろー!
・・・なあんて日本一の妹に怒鳴りたい気分なんスよお。どう?集英ジャンプさん?」

387 :

翌日。
サンデーは1限目の放課から図書館に足を運んだ。
月ジャンさんいないかな、と思ったからだ。
そわそわ、そわそわ図書館中を本も見ずに探し回った。くるくる、きょろきょろと本棚の間を歩き回る。
なので、放課後にやっと捕まえた時にはサンデーにいつもの落ち着きはない。
「月ジャンさん・・・!」
興奮気味に袖を捕まえる。
「あら、サンデーちゃん」
月ジャンはちょっとだけ・・・複雑そうな目でサンデーを見てからすぐ笑顔になる。
「もしかして、それ・・・?」
視線をやったのはサンデーの胸にしっかと抱かれた害がなさそうなファンシー文具。
「読んでくれたんだ」
「もちろんですよ。もちろん、なんて素敵なおか・・・・・・」
そこまで言って、サンデーははっ、と言葉を止める。
駄目!おかず、って言葉はイコール・・・・じ、自慰行為?につながっちゃうよ。
「も、もちろん熟読しましたよ?」

388 :

サイドテーブル、とかも単語としてNGかな?・・・うん。話題は慎重に選ばなきゃ。
「え、えーっと・・・その・・・・・
そうだ。私の図書カードのどの辺りを参考にされたのですか?」
月ジャンはそんなサンデーを観察するようだ。
じっと表情を見つめてから、
「・・・・・そうね。猟奇的な作品が多いかなって」
「それは・・・!だ、だって我が家には乱歩に熱心な先生が・・・」
「?どうしたの?困ったみたいに」
あせる様子も、否定の言葉もなにもかもを観察しているような目。
「だって・・・その、今って猟奇事件多いし・・・・・・」
「?」
「良くありませんよ。誤解・・されちゃう・・・」
「うふ。本のお話なのに」
「!」
「本の中では自由。そう思ってたのにな」
本の中では自由。
魅惑的なフレーズがサンデーの警戒心を溶かしだす。

389 :

「・・・・・で、このお話の続きなんだけれどね。サンデーちゃんの意見を取り入れたいってお話したよね」
ページをぺらぺらとめくる月ジャンにサンデーはごくんと唾を飲み込んだ。
「サンデーちゃんなら、きっとステキなアイデアくれそう」
しょ、小説の話・・・。
「一緒に作って?」
サンデーは何度か呼吸を繰り返す。
「・・・・・・あ、あの・・・こうなったら素敵かな?ってぐらいなら・・・」
「へえ?」
「でも月ジャンさんが予定しているプロットとかありますよね?」
「?ないわよ?」
月ジャンに当たり前のように微笑んでもらって
「サンデーちゃんのアイデアが欲しいな。続きが思いつかなくって」
「!じゃ、じゃあ・・・一読者としてなら・・・・・」
「うふ。教えて?」
重ね重ね、ってほど慎重だ。確認を取ってサンデーは呼吸を飲み込んだ。ごくん。

390 :

「まずは私ね、手足の自由と五感を奪ってから放って置かれるとすっごく不安で泣き叫んじゃうほどだよ、って本で読んだ事あるんです。あ、解説だけですよ?
どうせならあのくだりから最終的にはそこまで展開させたら素敵じゃないです?
是非、その展開にするべきですよ!」
顔を上げたサンデーは、もう止まる事はない。

「・・・」
「まず、導入はあのままで行きましょう。物語の本文への、自然な素敵な導入。
問題はヒロインと恋人だけの24時間ですね?物語の一番の山場になれる、素晴らしい発想ですね!・・・私、才能に感心しちゃった。
この発想は最大限、有効に使いたいですよね。
起承転結で言うなら承と転の部分でこの二人きりの時間を消化させましょう」
サンデーは自分の生徒手帳の空白ページをやぶって図を書き込む。
「ここで、さっきの感覚の話に戻ります。
導入部分の発想を土台にして、どうせならもっと恋人を自分に縛りつけちゃった方が盛り上がりますよ?
だから私なら承の段階でこう盛り込みます。
ひとつだけの感覚だけで私を感じて?って」

391 :

サンデーは嬉しそうに
「ね、ね!素敵だと思いませんか?たったひとつですよ?
自由な行動ができない、食事も・・・・・お、お手洗い?も。
なのに更に決定的に主人公しか頼る人がいなくなっちゃう。
24時間も自分に引き止めて置けるだけでも素敵なのに。そこまで相手を自分の物に出来ちゃったら!
で。触覚は・・・まあ、ねえ?除外として、口も現在、確定。ヒロインが助けを呼ばれる点を心配する部分はいい前置きでしたね。
じゃあ、残りは目か耳です。私なら見えないようにしますが・・・でも後者も魅力的なんだよなあ。24時間、恋人に必に眼で追われるってのも捨てがたいんだよなあ。どっちでも恋人は自分に釘付けなんですけれどね。
月ジャンさんだって迷いますよねぇ。
だから前者の場合なら気配をしてうふふ、って楽しむパターンでしょうけど、後者は放って置いて目の前で日常生活、ですね。あ、いたんだ?ぐらいに。これは精神的に参っちゃいますよお!
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・」

392 :

ジャンプちゃんは放課になりしだい
「あ、サンデー!」
誰もが褒めるスピーディーさでサンデーを引き止めた。
ここの所、サンデーは忙しそうで教室に落ち着いてもない。そーいやろくに話していなかったな。
「ね、今日さ・・と、図書館付き合ってくんない?」
図書館に行く、は二人の間では厳密には図書館の地下に、だ。
二人っきりになろう?の合図。
ジャンプはまぁうなずくだろう、と確信してたのでその先から心配する。
そういや密会する日もなにもかもオレが決定っつのも不便なものだよねえ。あ、いや。でもオレがタチなんだし。タチがリード側だしそんな物か。
姉に言われた事をサンデーと二人で照らし合わせて話し合うつもりだ。
二人で会議とでも言えばいいのか。サンデーだってオレと同じ状態なはず。だったら・・・こほ、と小さくせきばらい。オレが先導してあげなきゃね。

393 :

しかしサンデーはジャンプの言葉にうなずかなかった。
「と・・図書館・・・・・」
つぶやいたサンデーはすぐに真っ赤になる。
「?」
「そ、その・・・今は図書館は駄目!」
「・・・は?」
「う、うーんと・・今は駄目なの!その、今ね・・・
そう!新入生のための図書カード作らなきゃいけないの!」
「・・・・・そうなんだ・・・・?」
「そ、それに私、今日待ち合わせしてる人もいるの。どうしよう、せっかく時間作っていただいているのに・・・どうしよう困ったな・・・・・」
腕時計を確認するサンデーに。ジャンプの肌が違和感を伝える。
「・・・・・別に・・今日じゃなくてもいいんだけど・・・」
サンデーはほっとしたように微笑んだ。
「そう?良かった。あ、待ち合わせの相手にこれからは図書館以外にしてくれませんか?ってお願いしておくから。・・ああ、もっと早くにお願いして置けば良かったなぁ・・・。次は必ず図書館に安心して行けるよ?すぐに伝えてくるね」
そして急ぎ足で教室を出て行く。
なに?今のなに?なにこの違和感。なにかオカシイ。あのコ・・・・・

394 :

「ってわけでさあ、あんた、そのぉ〜・・・ちょっとあのコの話?でも聞いてあげてくんない?」
「・・・・・」
もーカンベンして。なんでオレ?
マガジンちゃんは頬を預けていた机から視線だけを上げる。
「・・・・・」
「サンデーの様子、あれ絶対にヘンだろ、オカシイじゃん、言葉的に!!
ヤバイ、あれ、なんか隠し事してる!オレに隠し事なんてそんなはず・・・・・」
「・・・・・」
「!あ、べ、別に隠し事してもいーんだけどさ?でも・・・ほら、その、従姉妹としては心配なわけ。悩みとかあるかもしれない」
「・・・・・」
「・・・・・うん。悩み。あのコ、どうもオカシイ。だからあんたもサンデーと仲いいでしょ?それとなく聞いてくれない?」
気楽そうにわめいているジャンプにマガジンは最後まで無言で、ただうなずいた。
これは・・・困ったよ・・・・・。

395 :

なにゆえ困るかと言うと。
「ふぅーん・・サンデーちゃんがねえ」
ああ・・・なに?この関係。なに、この関係性?
ジャンプの相談はマガジンちゃんから、自動的にガンガンちゃんへと筒抜ける。
ガンガンがマガジンの異変を見逃すはずもないし、白状させないはずもない。

ああ・・・困る。ほんっと困る。
困る。どっちも嫌いじゃないから困る。
新しい世界を夢見がちに拓きつづけてる元気ムスメ、ジャンプ。
忍耐強く教科書どおりを守りつづける真面目っ娘、サンデー。
どっちも嫌いじゃないから、ひっじょーに困る!
「・・・・・ここでマガジンちゃんの人徳を損なうのは我々にとって不利よね?
相談事すらしてくれなくなっちゃう!うん、私がサンデーちゃんにお話しましょ。
あらあら?難しい表情しちゃって。他人にかまうとすぐスネるんだからぁ。このツンデレさんメ〜」
マガジンちゃんの頬をぷに、とつついてガンガンはころんころんと嬉しそう。
・・・どうしよう。あんまオレに頼るな!ってジャンプに固く言い渡さないと・・・・・。

396 :

・・・・・月ジャンは自分の部屋に帰ってくるとふぅ、とため息を吐いた。
案外、重いな。
視線を落とす。他人の秘密って案外重い物だわ。

「・・・・・24時間って時間制限も素晴らしいですよね。作品にメリハリが付きます。
1日の終わりに恋人から5感すべてを捧げると申し出てもらえる、ハッピーエンド」
・・・・・意外、の他に表現が思い浮かばずに月ジャンは返事を忘れた。
「起承転結の流れは、書き出すとこうなります。
恋人が泣きだすのは外せませんよね。転、辺りではもう涙が出ないよ〜ってくらい参らないと。結びのインパクトのためにも、2人の恋心の描写にも必要ですよ。
ああ、恋人同士が二人きりでなんて心行くまでな一日。まさに小説の中でしか出来ない、誰もが焦がれる一日ですね!!
あ、い・・色っぽいシーン・・・は・・・・・その、もちろん私は気にしないで下さい?
分かってますって!これだけの舞台と条件。誰だって自分で温めたいもの!!」
熱心に話して聞かせるサンデーの頬は血が昇って、目もキラキラ輝いていた。
・・・・・あ、あんな娘なんて。いつも友人達の後ろで控えめに微笑んでいる姿から予想もしていなかった。

397 :

「月ジャンさんなら素敵に描き出せますよ!私、応援してます!」
ちく、と胸が痛まないでもなかったが。
サンデーの、やっぱり毒っ気も無縁の笑顔。・・・大事に、大事に育てられたんだろうな。無邪気なお嬢さんのような・・・・・
でも月ジャンはふるふる、とかぶりを振った。苦そうに笑ってつぶやく。
「・・・仏心なんて今更だわ・・・・・」
そのお嬢さんのお家ほど、我が家は甘くない。
その時。こんこん。
重い身体を預けるほどにもたれかかっていた扉がノックされて、月ジャンは飛び上がるくらいに
「は、はい・・・!」
あわてて扉を開く。

398 :

「・・・・・」
立っていたのは
「な、なんだ・・・SQちゃん」
ほっ、と微笑んだ。微笑んだついでに自分でも可笑しくなった。ヘンじゃない。一緒に育った家族の方に、私、緊張してない?

「・・・すみません、驚かせましたか?」
この娘は、あまり感情を表に出さない。
「ううん?なあに?」
「引継ぎの先生について質問したい事があったのですが・・・」
月ジャンの様子をちらっと見て
「急いでないので、後にしましょうか?」
「いいよお〜」
月ジャンは大きな仕草で手のひらを見せた。
「なんでも聞いてちょうだい?もっちろん全力で支援するよ?」
相手の表情をほどけさせるようにわざと肩口をこつんとこづく。スキンシップ。
「・・・・・」
SQは月ジャンの努力に関心なさ気だ。
「じゃあ、お言葉に甘えます」
事務的に持ってきたプリントに目を落とす。

399 :

月ジャンは自分の後任の少女を見た。
そりゃあ全力にもなるわよ。
この娘の成功、イコール私の地位の確定だもの。前身としての。あはは、皮肉ね。
中々打ち解けてくれないけれど。なに考えてるのかしら。
SQは温度をかんじさせない美少女だった。
感情を表に出さないし、なんだか事務的。・・・そういやこの家に連れられてきた時からだわ。我が家は助かってるようだけど。情の部分ではかかわらず、貢献だけはする。

あれは月ジャンがまだ中等科の頃か。
成績の冴えない日常に、突然引き合わされたのが彼女だ。
「今日からお前の妹だ」
・・・この家はソトから誰かが連れて来られたり連れて行かれたりで、慣れっこな風景だったが。あれはさすがにショックだった。
「もしもお前がこのままならこの娘は役に立ってくれる。仲良くしなさい」
本家筋の一人が宣告する。みんなおなじような顔付きで、それが誰だったのか覚えもない。ただその時にうっすらと「ああ、私、切られるのかな」と予感がした。
自分を見る目。私に特別な感情を持ってない事が感じ取れる目。私はどんな目つきだったかな。まあいっか。お互い様でしょ?

400 :

それから、今日のサンデーにも思いを巡らせた。
図書館で小学館家の娘を良く見るのでちょうどいいから声を掛けた。
もう引退したし。掛けれる保険は掛けておきたかった。
方便に話題にした物語とやらだったけど、あんなに食いつかれるとは。小説が本当に好きなのね。私の言ってること疑う気配も無かった。
文章なんて書くの嫌いだし、意欲出れば・・と妹を攻撃対象みたいにしてみた。

やはり中等科の制服の妹。・・・おなじ名前をもらった妹。
あの調子に乗りに乗って独走状態の妹。・・・あの妹だけはこの家で不動なんだろうな。特別扱いだしね。
そうしたらぞろぞろと自分にとっての有利な性格しか明かされなくって驚きだ。
かえって心配になるくらいだ。駒だとしたら割りといい位置だけれどね。・・・えらく攻撃的じゃない。
持っていた明るいグリーンの冊子に視線をやる。
妹みたいなムスメ、嫌いなんだ。なんだか使えそう、この意外な事実。

401 :

それから目の前の少女へ目を移す。
この娘にも今日のこと教えてあげたらどんな顔するかな。驚いた顔?・・・感謝されたりして。だよねえ、生き残りたいのは誰だっておなじだよねえ。

「・・・・・お姉さん」
考え込んでいた月ジャンは、目の前の少女に急に呼ばれて、なによりもまず背筋に寒気が走った。
「って、呼んだ方がいいんでしょうかね」
SQの声色がそうさせた。温度を感じさせない声色。自分をまっすぐに見つめる目は、笑ってはいたが身体は自然と震えてくる。
「なんだかこの家、人が多くて覚えるのが大変ですよね。突然家族が増えたり減ったり。混乱しませんか?」
冷静な少女の声色に月ジャンは改めて思った。
この家、異常だわ。

402 :
支援

403 :

ここはいつでもお花畑でなによりです。
中等科。の、中でも業界の精鋭を集めた教室なはず。
だがそれが反対にいいのか。微妙にバランスを取り合いながら、今日もお花畑です。
おだかやじゃないムスメもいるが。
昼放課を告げる鐘が鳴ると同時に、サンデーちゃんは立ち上がった。
ここ最近のサンデーは声を掛けるのをためらわせた。
目が、据わってる。
クラスメイト達はそれとなく察してサンデーに当たりも触りもしない。

そんな時に教室中が頼よりにするのはこの少女だ。
「サンデーちゃ〜ん、お昼をご一緒しない?」
スクゥエア・ガンガン・エニックスがそんな皆の複雑さを微塵にも見せない、のんびりと朗らかな声でサンデーを呼び止める。
「・・?でも私・・・」
まったくいつでもヘンな落ち着き払いようだ。声色に動じた様子もない。
「うふ。そんな怖い顔しないで?
お昼の放送で日本文学の朗読、なんて企画してみようかなって。初回は漱石なもの?鴎外?ほら、順番がデリケートすぎてこれはサンデーちゃんにしか頼れない!」
サンデーが食いつく単語をぞろぞろと並べる。

404 :

・・・・・・で、中庭にて。
「へー」
「ね?ね?すごいでしょ?月ジャンさんは将来、小説家になれると思うの!」
ほとんどを聞き出される。
なるほどねえ。ガンガンは考え込む。
無邪気に勢い込むサンデーの笑顔を観察する。なるほど、小説を介在してとは。考えたわね。
・・・強敵、現る。ガンガンは目をつむる。
こんな香ばしい人畜無害カポーそりゃ魅力的でしょう。獲られてなるものですか!
「うん、素敵だわ!」
考えた末にガンガンちゃんは、ぽん、と手のひら同士を合わせた。
「でもサンデーちゃんの、その助言も素敵!うらやましいくらい」
「・・え?そんな事は・・・」

後はずっとガンガンちゃんのターンになる。
「うらやましいわよお。私もね、月ジャンさんと同じなの。
うん、そうそう。私も物語書いてみたいなあ、って。いいなあ、月ジャンさん、サンデーちゃんみたいな素晴らしい読者を・・・
え?私のも読んでくれるの?嬉しい!
助言も?うわあ、頑張る、もちろん頑張る!・・・・・・・」

405 :

数日後。月ジャンがサンデーちゃん、最近来ないなぁ、と思ってたら。
渡り廊下で会った。しかも通りすがりだ。以前の彼女なら熱心に探してくれたのに。
「ご、ごめんなさい、最近、忙しくって!本当、ごめんなさい、すっごく読まなきゃいけない・・・その、読まなきゃいけない物があって!!」
申し訳なさそうな、でもいきいきとしたサンデー。
「え・・?あ、うん・・・」
「その本を返却しなきゃ!今から貸してくれた人に会うんですよ?そのお話を読むまで待ってくれませんか?」
そわそわと浮き足立ってすぐにでも飛んで行きたそう。答えも待たずに一礼する。
サンデーが大事そうにぼろぼろのコクヨキャンパスノートを抱えていた。が、制服にそれはあまりにさり気なさ過ぎて月ジャンの気がつくはずもない。

・・・・・どういう事?
月ジャンはキツネに化かされた気分だった。
ぽけ、とサンデーの背中を見送っていたが。ふいに頭の隅に浮かぶ少女。温度を感じさせない、心を覗かせない義妹。
ああ・・・これってあの娘にとってもチャンスを逃したって事かな・・・・・。

406 :


マガジンは『サンデーちゃんは熱狂的な支持を集める作家の愛好家サバトに参加していました』と報告をジャンプに朗読した。本当に朗読なのだ、教え込まれた通り。
拍子抜けしたようなジャンプは・・・最後にはうなずいた。時折サンデーが熱に浮かされたように愛読の作家を語りだす様は知っている。聞いてもないのに。

納得したジャンプは
「あ、解決ついでにもひとつ相談」
サバトって表現が絶妙だな、と妙に感心しつつ言葉を続けた。
「あんたガンガンと仲いいよね」
マガジンがびくぅ!と毛を逆立てる。
「あのさあ、あのおねーさま、ミョーなんだわ。この間の移動教室で向かい合わせになったの。
で、おねーさま授業中、ずっとノートも取らないでオレの事じーっと見てんのよ。・・・・・・・・・・・・・・・そんで最後に一言だけつぶやくの」
思い出したのか、ジャンプはぶるっと身震いした。深刻そうに声を潜める。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『キンバクニクニンギョウ・・・』って!!!」

407 :

ひ、ひぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
「なにがしたいのよ?どういうこと?なんか響きが怖いんですけど?!
気味悪いよ!!すぐに抗議したんだけど、可笑しそうにだよねえってしきりに一人で納得してんの。一体なんなの、じゃあなにがしたいんだっつーのよ!」
マガジンちゃんの背中をだらだら、だらだら汗がつたう。
「それだけでも気味悪いのに根掘り葉掘り訊いて来んの!
サッカーで負う怪我って何?とか場所は?包帯は?痛くないような看病は?歩けない時にご家族は?
なんなの、なんなの?!もー、気味悪い通り越してこえーよ、あのオンナ!!」
マガジンはあわててジャンプにもう一切相談事するな!と言いつけた。
「なんで?あんた秘密守るじゃん」
「言いたくなくっても言わされる、とかこの世にあるでしょ?自分が可愛かったら、もう一切、オレに相談は禁止・・・!」

408 :
ガンガンちゃんは返却されたぼろぼろのコクヨキャンパスノートを前に感心したようにうっとりとつぶやく。
「サンデーちゃんのリクエストが香ばしい件」
ほぅ、とため息を吐く。
「全力で応えたいけど・・・現実世界じゃ制約あるしエロ入れるのって難しいのねえ。
念とか使っちゃったりして?チャクラ?パクティオー?錬金術・・・?」
しばらく考え込んでいたが。すぐに照れ笑い。
「いやあね、それこそ催眠術じゃな〜い!」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・


               >>359からのお詫びとお知らせ
     貴スレ「ジャンプとかサンデーとかマガンジンなどで百合」において上作品に
     出てくる雑誌名が事実とは違うと各漫画雑誌信者はご不快とお察しいたします。
     >>359は今回の事態を重く受け止め、深く自戒し、住人や各誌信者の方々に
     ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
     今後は二度とこのようなことが起こらぬよう、信者の方々は指導の形でもって
     将来の貴スレを担う若いレスを育てていただけたら、と願ってます。

409 :

SQたんはこれはイメージとは違いますよね?薄幸系を狙ったつもりでしたが、よく考えたらそれは新人アイドルとは相性悪いでしょうかね
ちらっと出したかっただけですし上のは無視してください
出来ればSQ読者の方がなにか投下されればいいのに、とか甘えた事を考えています

>>369,370
こちらこそお知らせくださってありがとう^^
wktkさせちゃったみたいですが、ご期待に添えられてなかったらごめんなさい
>>381,402
投下してる間、力強い気持ちをいただいてとっても嬉しかったです。お礼を言わせてくださいね


↓以下、蛇足として付け加えさせてください

410 :

 「サンデーの胸の内の百合を育てるガンガン」

サバト、と言う表現は実は的を得ていた。
「はい、サンデーちゃん、悪いけど目を通しておいてくれる?」
「わあ、いっぱい感想書くよ!」
「うふふ、サンデーちゃんの意見は重宝してるのよ」
ノートの交換しあうガンガンちゃんとサンデーちゃんの姿は、ここ最近は頻繁だ。
手渡されたのは表紙に『お昼の放送・企画No.3』と銘打ってある、ブルーのコクヨキャンパスノート。学校内では誰の目にも留まらない自然さだが・・・

411 :

「サンデーちゃんのオーダーによりお手製しました、かぎりなく実話本に近いこちらのスイーツ(笑)ですが」
内容は題名とは違う。そんなフェイクをしてまで秘密裏にやり取りしているからには
「おかずとして絶賛ご愛顧いただいているようで〜す。3冊目って所がエロ本に飢えてる様が手に取るよう。甘酸っぱくって←キャ?ワ!イイv」

相手の頬をぷにぷに、ぷにぷにと突付きながらガンガンは上機嫌だ。
されるがままのマガジンちゃんは・・・もう泣き出したい。
なんでオレに逐一報告してくるの?オレまで罪悪感持っちゃうよ?人のデリケートな秘密を面白半分で探るの、良くないよ?サンデーちゃん、信じてるのよ、おねーさまの事・・・。
「さらにこのお姉様は太っ腹だ!」
「・・・・・」
「マガジンちゃんにも貸し出しちゃうゾ?」
だからなんでオレ?!
「読んだらサンデーちゃんの性嗜好が分かるわよ〜。マガジンちゃんのように察するに早いコなら特にね」
だから!止めて、そんな悪趣味、オレにはないしね?!

412 :

無言で顔をそむけ続けるマガジンに
「あら・・いらないんだ」
「・・・・・・」
「意外。私なら隣人の性嗜好なんて是が非でもチェックしたいけど」
ガンガンちゃんはページをぺらぺらとめくる。
「氏でもわいてたら嫌だもの。是が非でもだけどなあ」
あひぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
マガジンは椅子を蹴った押して立ち上がった。
「おねーさま、貸してください!!!11111111!!!!!!!」
「うふ、これが第一話〜」

マガジンちゃんはどきどきしながら渡されたコクヨキャンパスノートを抱きしめた。
ああ・・なに?この関係。なにこの関係性。なんでオレ?なにが巡りめぐってオレがサンデーちゃんの監督役?
そもそも、あのコの性幻想なんて恐ろしくて知りたくないんですけど。更にどーやって軌道修正したらいいの?本人達にも、クラスメイトもご実家の方々も気付かないようにそれとなく?
真剣に混乱状態に陥るマガジンは知らない。そんな自分だからしなくてもいい苦労までしなきゃいけないのだ。
人情深くて、世話焼きなお人よし。そんな苦労症が苦労背負う。

413 :
急展開の予感。

414 :
ジャンプ亡フラグキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
http://www.nhk.or.jp/news/2008/02/27/d20080227000132.html

415 :
サンデーちゃんとマガジンちゃん・・・(笑)
この二人でフラグが立つ日が来ようとは

416 :
>>412
GJ!
サンデーちゃんの壊れてるとことか笑いましたw
後蛇足なのに全然余分じゃなくて面白かったです。
前にも言ったけどイメージなんて人それぞれなんで全く問題無いですよ?
それよりも早く自分を卑下するような発言をやめて欲しいです。貴方は十分に良作を書けてますよ?なのにそんな自虐的な事言われたら、むしろ迷惑です。
 
私は貴方の作品が好きです。だからこれからも頑張って下さい。

417 :
星ゅ

418 :
>>416
感想どうもありがとう^^
サンデーちゃんはサンデーへの勝手なイメージですのでそう言ってもらえると嬉しいです
蛇足への反応もありがとう
あれフラグになればって付け足したので反応もらえると嬉しいです
まだ卑下と自虐が入ってましたか
各誌愛読者には悪いな〜って毎度思ってるんですよ。すべてが勝手なイメージなので
だから問題無いって言っていただけて心を軽くしてもらってます
思えばマガジン謝罪文も選択ミスだったと後悔
今ならサンデーアンケ文使ってます、しまった!

いつも丁寧な感想くださって感謝です
お心遣いもとっても嬉しかったです

419 :
そもそも謝罪する必要が無い。
各雑誌読者を怒らせるような駄作書いた場合ならまだしも貴方のはまぎれもない良作、これからは謝らなくて良いです。
そんなことより続きを心待ちにしてます。
 
後、ライバルちゃんはどんなキャラになるんかなw
マガジンとサンデーが協力して生まれるんだから浮気ネタとかw
無理っぽいけどw

420 :
あげ

421 :
ライバルちゃんの登場で、シリウスちゃんとZちゃんは益々影が薄くなるw

422 :
>>421
二人で背景ガールズでも組めば良いんじゃね?w

423 :
ライバルちゃんはサンデーちゃんとマガジンたんが教育することになってその時サンデーがマガジンにちょっと浮気みたいな感じ希望

424 :
>>423
浮気とゆうか勘違い→焼きもち→マガジンたんとケンカ→ガンガンお姉さまあたりが仲直りさせる→サンデーちゃんとマガジンたんに謝る→サンデーちゃんと仲直りの印にベッドで(ry

425 :
続きが来るまで全裸に靴下で待つぜ

426 :
SS書いてる者ですが>>423−424のアイデアいただいちゃいますね
完璧にその通りに仕上げる事は無理なので申し訳ないのですが;カポーの焼きもちはたまりませんな

427 :
>>426
wktkして待ってます。

428 :
>>427
どうもありがとう^^。萌えのかぎりに頑張りたいです

以下は前回のフラグ解消分です
>>423-424の、いただくアイデアは次回によろしくできれば
出てくる地名・路線は一度も行った事がありませんので生暖かい目をお願いします
エロはありません

429 :

 「育てられたサンデーの百合とジャンプが遭遇」

古色ただよう学び舎に、花もほころぶ少女達の笑い声。
こちら千代田女学院。日本の雑誌界の息女の女学校です。
生徒の実家は、歴史ある家柄から新興の出版社まで種類もさまざまだ。
ただクラス分けが成績順なので、教室は自然と見知った顔ばかりになる。

「春だもんねえ、うんうん、春、春」
うつらうつらしていた白泉姉妹が、お互いの額をぶつけて我に返る。あわてて前髪を押さえて言い訳するがこれがマナカナもびっくりなユニゾンなのだ。
クラスメイト達が可笑しそうなのは、次の二人の反応まで分かるから。
姉妹はほわ?とお互い顔を見合わせる。姉の花ゆめが右に、妹のララが左に。同時に首を傾げてから、後はほわほわ、ほわほわと照れ笑いしあう。
「「やだぁ〜。また重なっちゃった〜」」
二人の声に教室中に咲く笑い声。なんともいいお花畑っぷり。

430 :

そんなお花畑っぷりの中、講談マガジンは具合が悪そうだ。
机に頬を預けたまま、笑い声もただひたすら聞いてるだけ。
調子が悪い、ではなくて具合が悪い。
めったな物を食べても平気だろう、と自信があったのに。
だって泥をかぶっても全然平気。なんならすすりもしますが?それで生き残れるなら上等じゃん。生命力には自信がある。
・・・そのオレがこれ程ダメージ受けるとは。
「サンデーちゃんご愛用おかずぅ〜」
手渡されたノートをすみからすみまで読んで・・・あまりの事態に頭を抱えざるをえない。
マガジンちゃんはお花畑教室に向かって教えてあげたいくらいだ。
検閲官ってすごいんだぜ?!
クラスメイト一人一人を見渡して。おなじ業種の少女ばかりだから検閲、なんて単語だけでも眉をひそめるだろうが。声高に諭したい。
検閲官って偉大な人物達なのよ、知りたくも無かったけどね!「無料でエロゲ出来ていいな〜」なんて思ってたら罰当たるんだよ、エロ幻想は闇よ、幻想だけに果ても無いしね、それを現実社会に照らし合わせてつぶさにチェックよ?
・・・しかも。マガジンちゃんは涙を飲んだ。対象がクラスメイトなんだよ、はは、どっちも仲いいんだぜ?

431 :

こんな時にはジャンプに丸投げだ。マガジンちゃんは部室でジャンプと二人きりになった。これはチャンス、と相手をうかがいつつ間合いを計る。
「ねぇねぇ、ジャンプってさあ」
「んー」
「エロ本、どこに隠してる?」
今まで気楽そうに靴の中の芝生をたたき出していた同級生は
「はあ?!」
裏返った声を上げた。よし!掴みはオッケー!!

「な、な、な・・・っ」
真っ赤になって泡を食っている。よーし、話題の穂は掴んだぜ。
「エ・・・エロ本〜?!」
「うん。見つかったらイヤじゃん?隠し場所、どこ?」
ジャンプちゃんはしばらく口をぱくぱくさせていたが。
「エ・・エロ本なんて・・・読むわけないじゃん!」
それから目をきょろきょろさせる。
「オンナがエロ本なんて読むわけないじゃん?なんだよ、ガキかよ」
あはは、無駄に抵抗すんじゃないわよ。
「ははっ。だよね〜」

432 :

悪いと思いつつ、マガジンちゃんも後がない。手荒く畳み掛けだす。
「ニュースってさあ、必ずエロ本晒しが付いてくるじゃん。あーゆーの見てるとマジかよ〜って思わない?」
ジャンプの手が一瞬止まったのが見えたが、さり気ない会話を続ける。
「こっちは勉強になるんだけどさあ。晒された人達ってヒサンだよねぇ。周りにマジかよ〜って思われてさあ。生きて行けねーよ、ははっ」
ジャンプの返事の勢いがだんだんなくなる。考え考えなのか、
「ま、まあ・・・」
「でもオレらにエロ本は無縁。・・・それにあんたは小説読まないし。大丈夫かぁ」
うん、うん、と頷くと。欲しい質問が返ってくる。
「オレは・・・って?」
「?小説って言ったらサンデーちゃんに決まってるじゃない?」
ジャンプの表情に緊張が見える。う〜ん、自然な流れだネ!

「サンデーちゃんの悩み聞いて、ってこの間頼まれたじゃん?
で、その時に出た作家の名前聞いてさ。世間的に大丈夫かな〜って」
「・・・どういう事?」
「愛好家の集会、隠れて開いてるって話したでしょ?あー、なるほど、って」
ジャンプがうんうん、とさっきから視線を外さない。
「カルト的な作家って聞いたことあって」

433 :

ジャンプは・・・マガジンに頷きながら、この時、肝が冷える思いがしていた。
ジャンプはマガジンの事を決して軽んじてはいない。実力も知ってるし、その性格も本当は悪くない事も知っている。
そのオンナが、これ、すっごい複雑そうなカオしてない?
「あ、いや。そんな表情しなくって大丈夫よ?だってあのサンデーちゃんだも〜ん!
え、えーっと・・・その、内容はフツウなの。えーと・・直木賞っぽい?カンジ?」
はっきりしない語調とあれこれ言葉を選んでるみたいな間合いが気になるが。
「だけどそのぉ・・・そう!本文以外。ほら、参考文献だよ。分かる?最後のページに題名がずらーっと並んでるヤツ」
「・・・参考文献・・」
「本文ではないんだけど・・・そのぉ、そう、題名だけだよ?でも・・・・・
・・・・・人類黒歴史的な?ほら魔女?とか奴隷貿易?みたいな・・・ねえ?」

だがジャンプは血の気が引く思いでマガジンから視線を外せない。
身に覚えがあったからだ。そういやあのコ、直接的にえらい過激な本の題名、言ってなかった?まあ読書自体は褒められるコトだし、と気にならなかったけど。
最後に名前が並んでるだけでも問題なら、もしかしたら結構マズイんじゃ・・・。
「単語だけでもちょっと・・・ねえ?あんた心配にならない?
そんなわけ。?あれ?なんか本題から外れたわね〜。で、あんたエロ本どこ隠す?」
ケタケタ笑いながらマガジンはくるりと背を向けてぐっと拳を握りあげた。
丸投げ成功!
背を向ける間際のジャンプは、困惑と焦りで部活どころじゃなさそうだった。

434 :
GJ!
白泉姉妹良いなw
なんか設定借りて姉妹でなにか書きたくなったw
 
マガジンたんもジャンプちゃんなんか可愛そうwwwww 
 
 
続きが楽しみw

435 :

「ね、ね。ジャンプちゃん」
移動教室で廊下を歩きながら、サンデーがそっと声を掛けてきた。
「図書館・・・仕事はもう終了したよ?いつでも、その、案内出来るから。ね?」
そんなサンデーの笑顔を見ながら、ジャンプの心中は複雑だった。
主に昨日マガジンに言われた内容で。と、図書館かぁ。あそこは確かにいい場所だけど。
「へ、へぇ〜」
でも今回は避けたい。なんつーかアウェイで戦う気分になる。
「それもいいけどさ。うーんと・・・そう!あんた、そろそろ記念日じゃん?」
「うん?」
「ジュビロ帰ってくんでしょ?じゃ、あんたとこの先生、縁の名所めぐりなんてどうよ」
「!」
「オレも勉強になるから案内頼むわーって実家に言えるしさ」
サンデーの表情がこれ以上ない、って程に輝いた。

サンデーの喜びようが予想外なほどだったが。まあいいや。それどころじゃない。
「ジャンプちゃんが?!嬉しい!
ああ、どこが・・・縁?縁の地?秋葉原?ううん、私たちは目立つかも。甲子園も遠いしメジャーリーグなんてもっと無理。どうしよう・・・」
サンデーはもどかしいように考え込んでいたが。
「うん!私の家の先生方は民俗学に熱心だもの。没後の先生のお墓参りや設立された施設めぐりなんてどうかな?私はよく行くから。案内できるよ、まかせて!」
はは・・やっぱソレになるわけね。でもちょっとはマシかも。ジャンプは力なく頷いた。

436 :

当日はジャンプの心と正反対ってほどの晴天だった。
春先の風がさわやかだ。ジャンプの鼻先をかすめては去っていく。
待ち合わせの場には、すでにサンデーが立っていた。
そういやあのコに待たされたコトあったっけ?駅前に白い帽子と同色のワンピース姿を見つけたジャンプは、嬉しさよりも緊張に拳を握り締めた。うわ。汗かいてるし。手のひらの湿りに気付いて、あわててローライズのジーンズで拭く。

「まずは小泉八雲のお墓参りね。遠方の先生のお墓は中々行けなくて悔しいよねぇ。でも雑司ヶ谷はたくさんの先生が眠る場所だもの。ジャンプちゃんだって絶対に楽しいでしょ?」
サンデーが熱心に説明している。
どうやらとても嬉しいらしい。頬がばら色に輝いている。舞い上がってるような口調。
・・・ジャンプの方は、それどころじゃないが。
頭の中は今日の計画で忙しく回っている。どうせチンプンカンプンだし、放っておいてもいつまでも語ってるだろう。上の空だ。
最初の目的地は都電ということで、言われるままに乗り込む。
乗り込むと同時に、列車はゆったりと出発した。
ごとごと、ごとごとと揺れる。申し分ないって程の少女達も、揺られるままでなんとも絵になる。・・・恐らく二人の心中は正反対だろうが。

437 :

春の光が優しい。隣を歩くサンデーの声もあわせるように明るい。
「どなたにも参りたいよねぇ。ジャンプちゃんも手を合わせたい方がいたら教えてね。喜んで一緒に参るよ?」
適当にうなずきながら・・・ジャンプはさすがにちょっと目を細めた。
穏やかな日差しの中で帽子と一緒に花束を手に下げる恋人。
白色も麻の布地も、みんな清潔感ある彼女に似合っている。花まで。決まりすぎてるくらいだ。
ああ、これが本当に二人の、デ、デート・・だったらな。二人のデートで・・・こうして春の日差しを歩いてるんだったら・・・・・。

墓地は想定外だったけどね!!

ジャンプは出鼻をくじかれたようで爪でも噛みたい。
マガジンの話を聞いてから、どうやって切り出すか考えてたのに。
タイミングも。いつ切り出そうかな〜。周囲を見回した。早くケリ付けたいんだけどな〜、オレ、そんなに気が長くもないし。
長くないと言うか、なんでも即決のジャンプではあるが。
でも・・・墓かあ。さすがに墓はちょっとなあ。
初等部からの体育会系のおかげで上下関係には敏感だ。周囲の墓の大きさから、一角の家柄・人物の墓地なのを悟って、脱いだキャップでカットソーのロゴも隠す。

438 :

あ、いや待て。
ジャンプは薄い胸元にキャップを押し付けて考える。
もしかしたら・・・ここ、絶好の場所?
ここってサンデーの尊敬する本?のヒトの墓があるんだよね。
尊敬してるとかいうヤツの墓前で嘘は言わないだろう。
いいじゃん!これは巡りあわせかも。うん、サンデーの日ごろの行いのよさだよ。
思えば雰囲気も悪いわけではない。人気もうかがう。入り口辺りが一番に混雑している。へー、親族多いんだ。

尊敬する作家とやらの墓前に献花するサンデー。
ジャンプもそれを真似しながら盗み見る
よし、これは速攻だしオレペースだね。イケる。んだヤツら、今を生きるオレ達に貢献しろ。名前も知んなくて悪いけど、役立ってもらうぜ。
「あのさあ、サンデー」
手を合わせて。そしてゆっくりと顔を上げたサンデー。穏やかな瞳で、穏やかに首をかしげる。
「ひとりえっちしてる時に読んでるおかず、教えてよ」
「!」
その目が見開かれる。

439 :

穏やかな春の風が、ふんわりと二人の頬を撫でた。
「ひ、ひ、ひ・・・っ?」
ジャンプはどう切り出すか、ここ数日、考えに考えた。
で、これが結果だ。
ストレートで行くぜ。オレは正攻法が一番だしね。周りをうかがいつつ、サンデーに聴こえるぐらいの低い声でつづける。
「うん。ひとりえっちの時のおかず」
「ひっ、ひっ、ひとり・・・っ、」
サンデーは声を裏返していたが、おなじく大声で話す事じゃないと我に返ったらしい。周囲をおろおろ見る。
最後にちら、と後ろめたいように墓石を見てからジャンプに視線を合わせる。
向き直るようだ。不安気な目線で、声を落として
「そ、それはじっ、じっ、自慰行為のこと・・・っ?」
言いにくそうに答える。
自慰行為って。あ〜、ソレなんか響きが逆に新鮮だわ。
「そ。ひとりえっちの時のおかず。まあ・・えっちな内容の本とか・・・読んでおかずにするよね。
なに読んでる?」

440 :

今日のサンデーちゃんは、それはそれは舞い上がっていた。
いや、約束をしたその時から。ジャンプちゃんと二人きりで休日、一日中を過ごせる。しかも私の記念日のためだって。昨日は眠れなくていつまでも布団の中を寝返りばかりを打っていた。あ、藤田先生は私も大好き。またご活躍して欲しいな。
布団の中で何度もため息を付く。
話が上手すぎと思わないでもなかったが。大勢に仰ぎ見られているジャンプちゃん。みなが注目して、一挙一足に周りの人すべてがそわそわするジャンプちゃん。
一日、独占できて、関心までが一日中、私なんだ。
手を合わせた時などはお礼の報告までしてしまったぐらいだ。一読者のサンデーちゃんだが彼女にとっては神霊感覚なんだろう。

その、浮き立つ気持ちから血を一気に足元に落とされた気分。それまでが幸せの絶頂だったので、サンデーちゃんはその落差の方にまず付いていけない。
「・・・おっ、おかっ、おかっ?・・・・・・」
「ん。おかず」
自分の声が裏返ってるのに気付けないほど動揺した。
・・・・・・そして昨夜の昨夜まで使い倒した内容を振り返る。
「?」

441 :

思い出したとたん。すぐにジャンプから目を逸らした。目の前の相手をまともに見られない。きゅ、と目をつむる。
ここ最近、私がいただいていたおかずってもしかしたら相当にい、逸脱して・・・。
質問の理不尽さが置き去りになってるのはジャンプの作戦勝ちだろう。サンデーは疑問も持たずに、素直に質問の返事を吟味する。
しかも、じ、じ、人権・・・・も、もしかしてあれは人としての尊厳を奪うような・・・・・・
でも、あれは文学で!

「!」
ここでサンデーちゃんは更に重大な事に気付く。
その使ってる当の内容はガンガンちゃんが書いた物。わ、私ったら友人の書いた物をそれ目的でなんて。
 ガンガンちゃんのほんわかとした笑顔が思い浮かぶ。
ガンガンちゃんほど文学に対して真摯で誠実な人物にもなんて事を・・・。
一度、サンデーちゃんは質問した事があるのだ。「なんで自作品をスイーツって呼ぶの?」。ガンガンが時折ノートの事をスイーツと呼ぶので疑問だったのだ。そうしたら「口当たりまろやかやな子供騙しだからよ」と、ころんころん笑ってた。
これにはサンデーは感心のため息しかない。これほど熱心に読みふけった作品はここ何年もないのに。それを子供騙しだなんて。自作品にも厳しく当たる姿が同世代だろうと文士と呼びたいくらい。
そんな感動を覚えた、しかも創作したのは友人だよ?今更ながらに、ガンガンにも顔向けできない事をしてしまったと気付いて顔も上げられなくなる。

442 :

ジャンプはそんなサンデーの表情を観察しながら・・胃が重くなる思いだ。
恋人の表情の変化は目まぐるしかった。驚いて小さく息を飲んで、それから一気に顔を赤くする。いや、ここまではまったく普通だろうけどさ。
「あ、あの、おっ、おかず、な、なんで・・・っ?」
視線がきょろきょろ落ち着かなくなる。唇は小さく震えてる。
その様子が叱られる前の子犬のよう。あー、やっぱヤバイ状態なんだ、オレ達っ。
「あ、うん。言いたくない気持ちは分かるよ」
「・・・・・じゃ・・じゃっなんで・・・っ」
サンデーの体も震え出す。
「でも、オレ達はなんでも本当の事を話し合う仲だよね?」
お墓の前で手首を握ったのは、嘘を吐かせないためだ。読んだ事ないのにごめん。力、借りるよ。
「で、オレってあんたのなに?」
「・・・」
「オレ達の関係ってなに?」
サンデーがもう一度息を飲んだ。うつむいた顔に、かすかに嬉しそうな色が混じったのがジャンプにとってせめてもの救いだ。
「・・・・・・・・・・・・・あ、あの・・こ、恋び・・・」

443 :

小さくなる語尾に、ジャンプは強くうなずいた。
「そう、恋人関係。
で、オレがタチであんたがネコ」
「・・・でも、なんで、なんで・・」
かすかに抵抗するような声色に、ジャンプは強く相手を見据えて声色を落としてゆっくりと言う。
「いいでしょ、オレがリード役だもん。オレの気分だよ」

この少女は勝負どころがセンスで分かるのだろう。
業界のトップを譲ろうとしない強さも手伝う。有無を言わさない強い口調。

「リードされ役のあんたに指示するよ?おかずになに使ってる?
ね?題名言ってみなよ。小説?漫画?」
「そ・・そんな・・・そんな、あの・・・・・」
「なに?あんたオレの言いつけ守れないの?
タチのリードには従うのがルールだよ?それ守れないのって、恋愛関係が成り立たなくなるって事になるけど。どう?」
サンデーが震えるようにかぶりを振った。

444 :
支援
 
 
 
二人とも可愛いすぐるw

445 :
支援あげ

446 :

見る人が見たら「どんだけマニアックなプレイだよ〜」と、腹を抱えて笑ったかもしれない。
日本を代表する文豪達が眠る霊園で。
わが国有数の出版社の娘達が。
しかし、幼い二人は真剣そのものだ。
まだ幼い顔付きながら、ジャンプの視線は真剣に相手に据えられている。
サンデーは真剣にその視線に震えている。

二人の間を春風がなでるよう。ふんわりと去っていく。

サンデーは・・・ぶるぶる、ぶるぶる震えていたが。
「ね?話してみなよ、怒らないし」
ジャンプが心配になって肩に手を置いたとたんに
「・・・・・っ・・」
肩を跳ね上げた。
あわてて顔を覗き込むと、サンデーの唇はわなないている。うわ、これは泣き出されるかも?!

447 :

マズイな。ちょっとパニック状態にさせちゃったかな。
ちょっとどころか、褒められるくらいにいいプレイっぷりだが、ジャンプの視線は忙しくめぐる。
周囲を警戒する。ヤバイな、人いるし、話聞かれたら事だ。
いいロケーションだけど、でも手放さなきゃ。
嗚咽が止まらないようなサンデーの手を引っ張って、きょろきょろする。

そして霊園の端の空白に目を付ける。ちょっと公園っぽいのあるじゃん。連れられた子供達が遊ぶのか、小さめだ。さり気なさもナイス!
入り口と反対なのもいいな。入り口の人気をうかがってから、ジャンプはひとつ頷く。
墓参りのヒト達、このコは故人に泣き出してなぐさめに退場させられた、とか思っといて!親族だったら分かるだろ?
ジャンプはしゃくりあげているサンデーをなだめるように、しばらく抱きとめて背中を撫でる。でもその背中も、おびえるようだ。がくがく震えている。
ずいぶん動揺してるようなので、ジャンプはかき口説きだす。
「オレでも駄目なの?」
「・・・だっ、だって・・・・・」
「恋人だよ?恋人に隠し事?しかもオレがタチだよ?だったらタチの言う事聞かなきゃ」

448 :

マニアックプレイ、絶好調。
いったん退いた公園で、ジャンプはベンチの先っぽに背を預けた。そのまま地面に座り込む。サンデーはジャンプに倣うようだ。一緒に地面に直に座り込んで
「オレの事信じてないの?」
サンデーは顔を上げて、まさか、という様にかぶりを振った。
ワンピースの白い裾も、とても気を配る事どころじゃないらしい。懸命な目。
ジャンプはその様子に痛ましい気持ちはあったが、
「じゃ、言えってば!言うんだよ、あんたはリードされ役。じゃあ、オレの言う事に従う!」
サンデーは、そのままかぶりを振り続ける。
「・・・・それともオレのリードを・・拒むっつーか拒否るっつーか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ち、ちが・・・・・・・・・っ」
サンデーはジャンプの表情に更に震えて、かぶりを振り続けた。
「・・・・・・・ち、ちがっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・い、言えないだけで・・・・・・」
「?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・だって・・嫌われちゃう・・・」
嗚咽の合間、切れ切れにサンデー。
「・・・・・・・そっ、そんな・・・・・・・・・・・・そんな、だって・・・・・・・・・・・お、おか・・・おかっ・・・・そ、そんなはしたない・・・・・・・・・・っ」
言葉だけはいつでも正論なのが、この二人の複雑なところだ。

ジャンプだけを見つめて、懸命な声で
「そんなはしたない事、い、言うなんて・・・・・・・・・・・・・きっ、嫌われる、わ、私、ジャンプちゃんに嫌われたら・・・・・も、もう生きていけないよ・・・・・」

449 :

ジャンプちゃんは。そんな場合じゃないのに、うわー、とこみ上げてきた。
違うんだってば!今日の目的、そっちじゃないんだって!
サンデーは、自分の胸の中でなんどもかぶりを振る。
「・・・し、んじゃうよ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そんな恥ずかしいだけじゃないのに・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・」
「そ、そんな、おっ、おかずなんて・・・・・き、嫌われちゃうよ、わ、私、ジャンプちゃん失ったら・・・んじゃう、きっとんじゃう・・・・・」
でもジャンプは聡明な少女だから、教えられなくても肌で理解する。
うわー、サンデーが言ってるの、なんだか熱烈な告白ちっくじゃん。うわ、ヤバ、それどころじゃないのに・・・
こみ上げる甘さに、身震いしたい気持ち。今日の目標、そっちじゃないじゃんっ。
でもサンデーの嗚咽を抱きとめながら、ジャンプちゃんの鼓動は早くなるばかり。
うわー、今キスしたいな。
胸元の震えるまつげを見ながら思った。
あー、すっごい盛り上がった気持ち。サンデー泣いてる。今は無理かなー・・・。
ジャンプはきょろきょろと周りを見回した。

450 :
wktk

451 :

なんども前髪ごしに唇の感触がして、サンデーはそろそろと顔を上げた。
い、一体どうすれば・・・。いただいているおかずをジャンプちゃんに?
それを思うとサンデーの心臓は震えあがる。
嫌われる!おかずをいただいてる事実だけでも大問題なのに。あ、あんな勝手に。一個の人間の言動を、好き勝手に想像するだけでも不道徳なのに。
さらに友人の書いた物をだなんて!!
ああ・・・そうか。ジャンプちゃんは・・・・・。
サンデーは観念し出した。気付いていたのかも。聡明なジャンプちゃんの事だもの。自分に向けられた身勝手さも。友情を裏切ってるのも全部悟って、眉をひそめて。
ああ、どうしよう。サンデーは眠る故人達に祈りたい。
がくがく震える。う、嘘を・・・?駄目、わ、私は恋人・・・うん、ジャンプちゃんの恋人なんだもん!!
どうしよう、い、言ったら嫌われる。それだけじゃない。もしかしたら汚いもの見るみたいな目に・・・?
サンデーは気が遠くなりそうだ。
たくさんの魅力的な、人にも物にも囲まれてるジャンプちゃんだもん。それでなくてもすぐに他に興味が移って、私なんて振り返りもしなくなるかもしれないのに。
そんな、んじゃう、漱石先生、他先生、どうか、どうか!!

452 :

次は唇だな、としぐさで察してサンデーはもっと顔を上げる。従順なムスメだ。
「・・・・んー・・・」
深く重ねて、お互いに
「んぅ〜・・・・・」
舌もそっと入ってきたので、サンデーがあわせて軽く唇を開ける。ジャンプの動きを邪魔しないように
「・・・ぅんっ、・・・・・」

お互い、舌と舌をからめあう。ちゅっ、と唾液が音を立てた。

「・・・?」
サンデーに身体を硬くされて、ジャンプが薄目を開ける。
「・・・ん〜・・・」
・・・ちょっと苦しそうな表情。身体は固くてほどけない。
?どうしたんだろ。抱きしめていた力を緩めると、サンデーは逆に抱きついてくる。
?。何かオレ、苦しい思いさせてるのかな。
力を緩めたり、努めて口で呼吸する回数を増やしていたが・・・サンデーの緊張がほどけない。
その内に・・・ごくっ、とサンデーの喉が鳴った。

453 :

身体のこわばりが最高になって
「・・・・・っ、・・ふっ、・・・」
「!、ど、どうしたの?!」
同時に、とうとうサンデーがしゃくりあげ出した。ジャンプはおろおろする。
や、やっぱ泣いてる途中でキスし出したの、良くなかったのかな。いくら我慢強いサンデーだって・・・
「・・・・・っ、わ、私、おかしいの・・・・・・・・・っ・・・」
「・・・・・・」
サンデーが、涙声で切れぎれにかぶりを振る。
「お、おかしいの、ジャ、ジャンプちゃん・・・・わ、私、異常だよ・・・・・っ」
「・・あはは・・・」

うん、薄々、それ知ってんのよ。
ジャンプちゃんは苦笑いしたい気持ちだ。
「・・・うん。大丈夫、話してごらん?」
「ジャ、ジャンプちゃんの・・・っ、つ・・・・・・・・・・・・・・・・・唾・・・」
「?」
「つ、唾を飲んでうれしいなんて思っちゃうの!!」

454 :

間が空いた。ジャンプちゃんの口も、ぽけ、と開く。
「・・・・・」
「ど、どうしよう、わ、私、異常なんだよ・・・っ、あ、あんまりジャンプちゃんが好きすぎて、こんな、こんな常軌を逸した・・・!」
「・・・・・・・」
「気持ち悪いでしょ・・・っ?非常時でもないのに、他人に唾液だなんて。
人命救助でもないんだよ?!いつでも水道水、飲めるじゃない、なのにそれを飲めたら嬉しいとか・・・・・もう、もうどこまで私、異常なの?」
「・・・人命救助?」
「そうだよ・・・っ。清潔な真水が手に入らないから、とかそんな非常時に脱水症状で、とかなら・・・なのに私、個人を特定してまでなんて・・・
異常だよ!!
・・・・・もう私、私、実家にだっていられない、どうしよう、こんなの人に知られたら・・・!」
ジャンプは・・・思わず噴出した。

「ははっ、それ、マジぃ〜?」
ジャンプちゃんは笑いながら、改めて恋人を抱きしめた。
「ねえ、マジで言ってるの?それって異常なの?」
「・・・」
「だったらヤバイよ。オレもだもん」
サンデーが驚いたようにジャンプを見る。
「嬉しいに決まってるよ。サンデーの唾飲むのって、それだけふかーくキスした、って事じゃん?フツーにしてたらそんな事態、起こんないもん。むしろ生理的に受け付けないって、言われる方がよっぽどショックだよ」

455 :
支援

456 :

サンデーがああ・・と気が抜けたようにつぶやいて、身体をほどかせていく。
ジャンプの身体からも一緒に力が抜ける。
こちらは可笑しさで。悪いと思いつつ声に出して笑ってしまった。やっぱこのコ、幼いよ〜。
ジャンプは自分を棚に上げて、笑い続ける。どんどん力も抜けて行く。知識ばっかが充実してるわ先行するわで、おかげで心配してるの、とんでもない方向だよ。人命救助って!
そして一拍置く。よし、この勢い、利用しないテはない。
「ははは、おっかし〜。ね?だから話すべきなんだよ。
自分達だけで悩んでても、お互いトンチンカンな事ばっかになっちゃうもん」
「・・・」
「言うべきだよ、恋人になれたのも何もかもさ、」
サンデーの目の色が、だんだん変わってくる。
今までが卒倒しそうだったので、ジャンプはサンデーの手も握りなおしてあげる。ぐったりと力が入ってなくて、すんなりと握れた。
お互いの指と指も深く交差させてぎゅっと。よし、イケる!
「オレ達が今こうしてるのも、本音を打ち明け合った時からだよ」
ジャンプはサンデーの目に真剣に目線を据える。
「この関係をずーっと続けて行くんだよ?じゃあオレのリードに合わせるべきだ。オレのリードって危ない?信じれない?」
サンデーが呆けたようにジャンプを見ていたが、
「ずーっと・・・?」
つぶやいて、握られた手にゆるゆる指が絡められる。

457 :

「あ、あの本当に・・・軽蔑しない?そ、そのフィクションをおかずにいただいちゃうんだよ?」
ごめん、それがフツウなのよ。固くうなずく。
「そ・・それと・・・その、誰にも言わない?」
語尾がさらに震えて聴こえないくらいだったが、
「言うわけないよ。だってオレ達の関係を誰かに言うわけないもん。二人でずーっと守って行くんでしょ?」
サンデーの頬に徐々に血の気が戻る。
「小説なんだ?」
サンデーがこくん、とうなずく。やっぱね。この本の虫少女め。

で。それってオレ、知ってる本かな?
顔が熱くなりそうでごにょごにょ自分に言い訳する。
ほら、どんなデート希望かなー?とか?その・・・どんな?風に・・・ねえ?したら喜ぶかなー、とか?知りたい気持ちするじゃん?下調べっつーの?したいじゃん?
「題名は?」
サンデーは・・・ずいぶん迷っていたようだ。だがジャンプが握る手に力を込めると。背中を押されたみたいだ。小さくか細い声で
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お・・・『おねがい☆パイレーツ』・・・」

458 :

ジャンプちゃんの語尾が上がったのは、今度は意外さからだった。
「はい〜?パイレーツぅ?」
「・・う、うん。私は簡単におねぱぁって呼んでるけれど・・・」
はい?この「教科書に載ってる本以外は読みません」みたいな真面目っ娘にしては漫画みたいな題名だな。あ、そっか。
「そっか、ラノベみたいヤツ?」
もしかしてそれ、オレも読めるかも。違うんだよ?ほら、恋の予習だから!
だがサンデーはちょっと困惑するような表情をした。
「それはライト・ノベルの事?ごめんなさい、ライト・ノベルは、その、読んだ事はあるけれど面白さが私には・・・」
言いにくそうに言ってから、後はかぶりを振る。

〜〜〜?確かに。サンデーが挿絵付きの本を読むところも想像できない。
「でもね!でも、とっても面白いの!小説なのに私個人の心に重く響くの。
万人に向けて書かれただろうに。倫理と己のエゴのはざまで苦悩するヒロインのゆらぎは、私個人へのメッセージのよう。そう、我が事みたいな読後感なんだよ?この才能は軽視出来ないな、きっと将来の文壇は・・・・・・・・・・」
語りに突入されて、ジャンプは両の手のひらを見せた。
「あー、うん、分かった、分かった。なんつーかマジメな本なのね」
オレ、絶対に読みたくないわ。絵が付いてないヤツね。

459 :

でもこれ、マガジンの言ってたのと符合する。熱狂的になる作家なんだよね?
「あー、その作家って魔女とか奴隷貿易とか出てくるでしょ」
試しにカマをかけたら、サンデーがあまりに分かりやすく赤面してくれた。
「なっ、なんでそれを・・・っち、違うの、文学なんだよ?文学的題材として・・・っ」
慌てふためいた返事にひとつ頷く。よし、確定。
「オレからあんたに指示出すよ。その本はもう読むな」
サンデーの表情が
「〜〜〜」
ジャーキーを取り上げられた子犬のようで、胸が痛まないわけでもなかったが。
「オレよりもおかずのが魅力的なら仕方ないけど」
サンデーが顔をはね上げた。
「そんなわけ・・・!」
「じゃ、言う事聞けるね?」
ジャンプは声色をやわらげない。サンデーの両手を固く握る。
「オレ達はこれからもずっと、ずっとこの関係なんだもん。
秘密だって二人で守って、二人で解決して行くんでしょ?」
「・・・ずっと・・」
「ならオレのリードに付いてくるべきだよ。ね?オレ、間違ったリードしたコトある?」
質問されて。サンデーの両手もジャンプを力なくだが握り返した来た。そして
「・・・・・読みません、決して読みません」
何度も何度も頷いて、うわ言のように繰り返した。

460 :

勝った・・・
サンデーの返事と様子を確認して、やっとジャンプも最後の緊張をほどく。
どうよ。このソツのないリード。さすがにジャンプちゃんは自分を褒めずにいられなかった。
しかもデートコースも解消してんのよ?やっぱすげー、オレ。業界をリードして行く存在だよ。
そして背中に何かが当たっているのにも、やっと気付けた。ああ・・・さっきから抱きつかれて押され気味だったからだな。ちょっと苦笑する。背中にベンチの端が痛いくらいだ。
後々、いい思い出になってくれないかな。

ジャンプはずっと恋人の背中を撫で続けていたが、落ち着いたみたいなので髪の毛も撫でる。サンデーはされるがままにじっと撫でられている。
その目の色がどんどん、どんどん大好きな目付きになる。
ジャンプのことだけを仰いで、ジャンプの言いつけだけを守る事しか考えてない目。変化の急激さに疑問がなくもなかったが。
オレの真剣さが伝染したとか。
そうかも。自分に自信がなきゃ、恋人だって・・・うん、まあ、ねえ?安心て付いて来れないもんね。ところでおねがいなんとかって・・・一体どんな小説よ?完全、ラノベのタイトルだろ。
両手はお互い二人で握り合って、しばらくはお互いだけを見詰め合ってじっとしていた。その目は信頼の目。
・・・・・一番、肝心な部分は置き去りにして。 

461 :

しばらくしてから、ジャンプがサンデーを立たせる。二人で春の小道をゆっくり歩いた。
また都電に乗る。
がたごとがたごとと、揺れる列車。街の谷間を縫うようだ。
ジャンプは訊こうかどうか迷ってから、
「なに?」
視線に気付いてはいた。が、一応顔を覗き込んでたずねてあげる。サンデーはうっとりとジャンプを見つめて、視線が離れる事がない。
「・・・・・ううん・・・・・・やっぱりジャンプちゃんはすごいなぁ・・って・・・・・」
ジャンプは思わず顔を逸らした。まともに向き合うには心臓に悪すぎる。

がたごと、がたごと揺れる。
サンデーはじーっと自分を見てるだけで、なにも言わない。うっとり尊敬するみたいな。こ、これはさすがに照れるっつーか・・こそばゆいっつーか。
「・・・・・また・・来たいな・・・」
つぶやかれてジャンプの心臓がぴょこんと飛び跳ねる。
「・・また・・・先生方に手を合わせに来たいな・・・・・・・・」
うっわー、オレ、さっきおんなじ事考えてた。ジャンプはちょっと顔を赤くしながら
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
こほ、と小さくせきばらいした。
「また一緒に来ようよ」
サンデーの顔が嬉しさに輝いた。

462 :
支援
 
やっぱり面白い(*´∀`)
ってか個人的にジャンプちゃんはネコが良い、せめてベッドの中で
その方が萌えるw

463 :

サンデーはふわふわ、雲の上を歩いてる心地のまま自分の家に帰った。
ちょっと放心しているような表情。今日一日に、まだ理解が追いついてないのだろう。
不思議な一日だったぁ。
ジェットコースターよりもどきどきした一日だった。天国にいたのを急に地獄につき落とされちゃって、また天国に連れて行ってもらえたみたいな気分。思わずくすくす笑ってしまう。本当、私ってジャンプちゃんに右往左往してる。おろおろしちゃって。
「おねーちゃんお帰り〜。お土産はぁ?」
ぼーっとしっぱなしでコロコロちゃんの声も耳に入らない。
ああ、胸がいっぱい。
何日も前から幸せな気持ちで、今日、突然ジェットコースターに乗せられたみたいだったな。ぐるんぐるん回されちゃった気分。安堵と幸せの終点なのも一緒だけれど。
一体なにに、そんなに気持ちが急降下したり急上昇したんだっけ?一日だけで。
そうだ。ジャンプちゃんに今日、突然に質問されたんだよ。
ほぅ、とため息をつきながらソファに沈み込む。腰にノートが当たる。あれ?なんの教科かな。復習するのにこんな所まで持ってきたんだ。
問いただされて、やっと気が付くなんて。それまで楽しみ倒していた自分の迂闊さが信じられないよ。さすがジャンプちゃんだなあ、お見通しなんだ。
しかも今日は大告白した気分。宣言しちゃった。ジャンプちゃんを取るって。あんなに魅力的なおかずなのに・・・・・おかず・・おかず・・・・・・・・・。
ブルーのコクヨキャンパスノートを手にとって。ぼろぼろの表紙と題名を確認してサンデーちゃんの顔色が変わる。
「!!」

464 :

ノートを手にしたとたん。
克明によみがえったのだ。ガンガンから預かる時の胸の高揚も。今までさんざ使ってきた内容。導入で使うくだりもクライマックスに使う好物も、なにもかもが。

「・・!・・・!」
焼けた物を触るようだ。ノートを手放して、手まで引っ込める。ぱさ、と落ちるノート。
なんで私・・・!なんて私、恐ろしい、こんな、こんな犯罪まがいを恋人に対して!
がたがたと震える。な、なんて私は恐ろしい・・・。ガンガンちゃんの才能は疑いもないんだけれど。リアルすぎて、下敷きにした恋人達がいたのかも、なんて史実読み漁っちゃった。魔女審判も奴隷制度も、むごたらしいだけって分かりきってるじゃない。
あんまりおびえていたからか。さっきからドアが叩かれてるのも気付けなかった。
「おねーちゃんったらあ、どうしたの?開けてよォ」
コロコロだ。がたがた身体の震えが止まらないが、なんとかノブを回す。
「おねーちゃん?!」
コロコロちゃんがびっくりした声を上げた。
「ど、どーしたの・・・!」
相当のおびえようだったのだろう、あわてたように幼い体が姉に抱きつく。ぎゅ。高い体温。
「・・・コ、コロコロ・・」
がくがく震えながら、サンデーはブルーのコクヨキャンパスノートを指差した。
「・・ご、ごめんね、あのノート・・・お、お姉ちゃんのスクールバックに入れて・・・?」
自分が触れてはいけない気がする。普段お小言ばかり言ってる妹相手に、震える声で頼む。

465 :

「!」
コロコロの顔が輝いた。ちゃおと言い、この少女と言い、アナタ達は十分ですってほどの力の持ち主なのに。年上に頼られるのが嬉しくてしょうがないらしい。
「どれ?どれどれ?」
嬉々として部屋に入り込む。またゴキブリでも出たのかな?
指されたノートを見て思わずぷ、と噴出した。
ごくごく変わったところのない、コクヨキャンパスノート。
「な、中身・・・開いちゃ駄目!」
昆虫でも勉強したんだ。という事は理科のノート?あはは、ぼろぼろ。このおねーちゃんはマジメで困るね。学校以外で勉強とか、ボク、理解できない。
指されたノートを持ち上げて、恐ろしげに見守る姉の目の前にぶら下げる。
「・・もー、どっちが妹?」
コロコロはやっぱり、と得意さも上昇。虫をしてあげたってこんな様子だよね〜。見せないでっ、て。もうんでるってのにきゃーきゃー逃げ回ってさ。

あんまりイジメても可哀想だね、とスクールバックに入れてあげる。
「虫もせぬ、なんて。もう中等科なんでしょ。ボクが心配しちゃうゾ?」
説教するみたいな口調なのに、姉は涙目で、うんうん、頷いている。
姉の様子にコロコロちゃんの得意さが絶頂になった。
えー?どうしよう、最近のボクの株って上がりっぱなしじゃない?ガンガンおねーちゃんに親友にしてもらえたり。サンデーおねーちゃんまでボクに参りました〜みたいだよ!

466 :

春、うららかな日差しです。
千代田女学院、中等科。初等部からあがったばかりの、少女らしさも混ざり出す笑い声。なんともいいお花畑教室。
「・・・・・」
講談マガジンは、あいかわらず自分の机に頬を預けながらそれを聞きいている。
やっぱ関係あるのかなー?おねーさまが渡してくるノート、新作が途切れてる。
ちらっと仲のいい従姉妹二人に目を上げる。
元気ムスメのジャンプがますます絶好調だわ〜。あのコは元気無いくらいでちょうどいいのよ。そもそも何?全てを自分だけで解決しましたー、みたいな。おまいはジャイ子か。
真面目っ娘のサンデーちゃんも、いつもよりしっとりとした落ち着きだ。あの娘、ほんと分かりやすいわ、相変わらずジャンプをうっとりと尊敬の目つき。横暴なワンマン娘相手にこっちが感心よ。
二人の間に健やかな空気しか見られない。新作もない。これは・・・安心していいって事?
「・・・・・・」
それから、傍らでレース編みの編み棒を動かすガンガンちゃんに目を移す。
あんまり考えたくない関係図・・と言うか循環図?が思い浮かびそうで、あわてて打ち消す。いや、流されるな、オレ。
ガンガンはマガジンちゃんの視線に気付いたのか。目を上げて、にこっと微笑む。
「・・だぁーい好き」
ささやかれた声をマガジンは聴こえない振りした。流されるな、流されるなオレ。

467 :

マガジンちゃんはあまり考えたくないので、力なく立ち上がる。だ、誰かと会話しないと・・・。
ジャンプが白泉姉妹につかまった瞬間を見つける。いつもの輪に入るぜ!

「長年のギャグ、完成〜」
マガジンは気分を変えたくて、相手の首にまでがしっと抱きついた。
「オレと二人で『マンデー』ってさんざ言われたもんね!サンデーちゃんも胸すいた?だってコンビニにも並ぶんだぜぇ〜」
サンデーの顔も覗き込んでケタケタ笑う。
「このさいだから、発売日まで往年のギャグ通りにしよっか。
月曜発売。ジャンプにぶつけるの。ね、二人がかりならなんとかなったりして!」
マガジンにいたずらっぽく笑われて、サンデーは気まずい気持ちでジャンプに振り返る。だがジャンプちゃんは・・・
「あ、いーよ、気にすんなって」
あっさりと言われて、サンデーちゃんは嬉しい気持ちはしなかった。その表情は・・・
「大変だよな〜。オレは応援してるし」
どこか同情するような・・・・・・・・・・・・・・・・・・哀れむような?
「ちぇ。あのオンナ、ピンでも自分は安泰だしー、って?余裕だよねぇ、むっかつくわあ〜」
サンデーちゃんの胸の端にじりっ、と焦げ付くような痛みが走った。?なんだろう。嫌だな、こんな気持ち・・・。

468 :

更に
「ねーねー、ジャンプちゃんのお家が雇われる役者さんの話だけど」
白泉姉妹の声が、後押しする。
「ん?どれ?」
劇団の雑誌を持って白泉姉妹がジャンプの左右をはさむ。
「すごいよね、最近のジャンプちゃんの実写作品」
「ねー!映画もヒットばかりだし。ミュージカルだって」
「いいなぁ。劇団とかと縁故できちゃうんだ?」
「まーね」
ジャンプちゃんの返事に、白泉姉妹が高い声がかぶさる。

「サンデーちゃん?」
呼ばれてはっ、と
「え?うん」
「?」
マガジンは心配そうに見ているが・・・胸の焦げ付きが止まらない。
ちらちら、ジャンプを見る。白泉姉妹にも両方から歓声を上げらている。あんなにみんなに囲まれて。その内・・・私なんてもういーや、って言うかも。魅力的な人や物に関心が移って。
・・・デート以来、すっかりとなりを潜めた部分が、じりっ、じりっと焙り出されていくような感覚。
ジャンプちゃんを独り占め出来ちゃったらどんなに楽しいだろう、と。ううん、あんまり考えちゃ駄目!

469 :

ガンガンちゃんが、のんびりとそんなクラスメイト達の表情を眺める。
「あらあら」
この理知ある教室のお姉さん的存在。マガジンちゃんが考えないように努める関係図を、的確に想像しつつじっくりと吟味する。
「これじゃいつまで経っても図が完成しないじゃない。無限ループ?」
困ったようにころんころん笑う。
声の割に楽しそうだ。
関係図どころか図の先も思い描きだす。どうせなら面白くしたいわよねぇ。その楽しそうな様子には、さっき愛をささやいた表情はない。まったく。何を考えてるのか、底知れないガンガンちゃんの笑顔・・・


                  雑誌界の女子の関係図は完成しないまま・・・
                   次回、ガンガンお姉様が描く未来図とは?!

470 :

サンデーちゃんと言えば妖怪漫画なのは勝手なイメージですが、場がでたらめなのはごめんなさい
東京だとちゅーとか目立つんだろうな
各誌へはあちこちに愛情の裏返しがあると自分でも気付いてます
愛してなかったら「今のジャンプは読むもの少なくなったな〜」とか考えもしませんもん
ジャンプちゃんがネコ。いただくアイデアのくだりで、なんとか希望に添えられればいいのですが;

>>434
書いてくださいよ!
都合でアレコレ設定しちゃったので、使える物は使ってやってくださるととても救われます
なにかする事ありますか?投下の時間を決めておくとか、やる事あったら教えてくださると嬉しいです

471 :
>>470
GJ!
いや、本当マガジンたん良いなw
ライバルちゃんの出番とかその他楽しみですw
 
 
 
書きたいけど自分エロパロ板で活動しててまだ完成させてないSSがあるんで今のライバルちゃん編が終わってから何か書いてみようと思います。

472 :
揚星ゅ

473 :
ほしゅげ

474 :
続きまだかな(´・ω・`)
この時期全裸は寒いんだか寒くないんだかわからない中途半端な感じなんだよ

475 :
>>434
了解しました。なにかする事があったら教えてくださいね
エロパロ板はレベル高いですよね。頑張ってください

以下はいただいたアイデアです
ライバルちゃんは読んだ事ないので登場が無理でした。その通りに仕上げられなくてごめんなさい。創刊のチラシで連載陣は見ましたが、これまたお姉ちゃんにべったりな妹っぽいですな〜(笑)
エロなし・エロありで分けてあります
前半分はエロなしです。エロが入る部分からは、注意書きもはさみます

476 :
  
  「ジャンプとサンデーの百合の、半分は周囲の優しさでできています」

ここ最近のサンデーちゃんの表情は優れない。

のは、人に悟られるためしはあまりない。
感情表現がおおらかな従姉妹とは違って、いつでも皆の後ろで微笑んでいる。我慢強い少女なので、自分自身ですら気付いてないのかもしれない。
「ねー、ねー、サンデー。ひょっとして悩み事?」
「え?」
さすがに気付くジャンプちゃんが、心配そうに顔をのぞき込む。
「ううん、ちょっと寝不足・・かな・・・」
しかしこの地点でも露見はしない。
優れない理由が、誰にも内緒、とくに恋人には一番知られたくないヒミツだから。
困ったな。寝る前に読んでたガンガンちゃんの創作作品、禁止されたからかなぁ。ああ、新作読みたいな。でもおかずの為に本人を失うなんて本末転倒!
なのでサンデーちゃんは、そこは意識的に取り繕う。一生懸命、必に。
「それだけだよ、元気、元気」
「そ?無理しないでオレには言うんだよ?」
優れないのもその理由も、これで誰の手も届かない場所に押し込められる。
恋人も、本人も届かない場所。こじらせそうで、これは心配、心配。

477 :

でも大丈夫、二人には心強いお友達たちがいますので。
表情が優れない、その原因すら知ってしまえる人物がこの教室には2名いる。
クラスメイトとして。当人とその恋人さえ分からない事実を知ってしまえる、その内の一人とは・・・

「・・・・・」
こちらのお姉様。
スクゥエア・ガンガン・エニックスが、目の前で本を開いているサンデーの表情をまじまじと見つめる。まったく底の知れない少女だ。香ばしい匂いがする場所には必ずいる。
その目が次に、本の題名に移る。最後にもう一度サンデーちゃんの顔に戻った。
ふーん、と納得。
先日の事だ。サンデーちゃんが申し訳なさそうに自分に小さな声を掛けてきた。
「あ、あのね、その・・その、ガンガンちゃんが書いた作品への感想は・・・その、も、もう・・・。えーっと、えーっとね・・・」
ノートを持つ手が震えているのを眺めながら、ガンガンちゃんは気にした風もなく笑う。
「あら、そお?私もそろそろ面ど・・・忙しくなってきたし。しばらくはお休みしようと思ってたの。ちょうど良かったわ」
と、ずいぶんご愛顧いただいたノートの交換も止んだ。
休みを伝えたえ後も「私は読めないけど執筆は止めるべきじゃない。実家にガンガンちゃんの才能を紹介するよ、そうしよう、絶対にそうしよう!」と、えらく熱心に食い付かれたがガンガンちゃんは断った。フランス書院の切り貼りだし、それはちょっと。


478 :

ノートをねだられなくなったので、最近のガンガンちゃんの定位置はサンデーの真ん前になった。読書するサンデーちゃんの目の前で、編み棒をこきゅこきゅ上下させている。
だって、サンデーちゃんを観察したいんだもの。
ガンガンちゃんは興味深げにクラスメイトを眺める。おかずを絶たれたサンデーちゃんの、その後を観察したいもの。これほどの好素材、そうそうないじゃない?

向かいの机で学級文庫を広げているサンデーちゃん。
彼女の最近愛読してる本の題名は、すでにチェック済だ。
チェックした題名を頭の中で並べてみる。記憶しているサンデーの性嗜好とはほぼ無関係だろう、とガンガンの判断。一番怪しい本の題名が若草物語だったしね。ギリギリで勘ぐれない事はないけど。あれで興奮できたらサンデーちゃん、真性になっちゃう。
しかもさっきから目線はページに落ちてるのに、瞳に動きは無い。ぼんやりと見開かれているだけで、何事か考え込んでるのか?時折、ぷるぷる、とかぶりを振る。
察するに、行き詰ってる。
うふふ、と目を細めた。
そういやあれから、親睦会も催してない。新しいおかずもない、恋人とえっちも出来ない。悶々としてるのね。可愛らしいわあ。


479 :

サンデーが視線を本に落としっぱなしなので、ガンガンはちょっかいを出す事にした。そっとつぶやく。
「その作家さんはどうやって打開したのかしらねえ」

小説の話、と分かるとサンデーちゃんは目を上げた。
そこにはガンガンちゃんの笑顔。
サンデーも頼りに思っている、クラスのお姉さん的存在。いつでも腰が据わっていて、その動じない様子がうらやましいくらいだ。優しく自分を見つめる目。
一昔前に、ご実家がずいぶん荒れた事があったそうだ。業界でも一時期、浮き足立った。まだ幼かったサンデーも覚えている。
それでもこうして、私たちの教室で柔らかく笑っている。人間修養も、相当重ねたんだろうな。ひとりだけ別世界から私たちを見守ってくれているような。やだ、自分の子供っぽさが恥ずかしくなっちゃうよ。
「打開策?」
当然、サンデーもなんの疑問も持たない。
「私ね、物語を書いてる時に困る事があったの」
「何に?」
「ストーリーって、起承転結よね?物事が起こるのも、転じるのも結末あってこそ」
サンデーはうんうん、と頷く。
「で、その肝心の結末が、書いている時に一番にやっかいだったのよね」
「へえ・・・なんで?」
「次に困るの。
乗り越える物がなくなると、今度は何したらいいのか分からなくなっちゃうのね。目標がなくなっちゃうって言うのかしら」
ガンガンちゃんは、困ったように肩をすくめた。

480 :

「ちょうどいいから、今サンデーちゃんが読んでるグリム童話のシンデレラを例にしましょ。作者違うのね、読み比べ?」
自然な笑顔でガンガン。サンデーちゃんはうん、うん、と耳を傾ける。
「シンデレラのラストは王子様とお姫様は結ばれました、めでたしめでたし、よね。
でも現実はそれでは終われない」
「現実・・・?」
サンデーにいったん理性が戻るが、
「理想どおりじゃないって事。ディズニーが理想。でも現実は藤田先生」
やはり笑顔で、すらすらと疑問に解答をくれる。サンデーはすっかり感心したようだ。なるほど、と再びうなずく。

「そういう時には、私、第三者を使うの」
自然な笑顔のまま、ガンガンちゃんは続ける。

「例えるなら・・そうねえ、私達がお互い知ってる人物だと・・・」
教室をぐるっと見渡して、
「マガジンちゃん辺りかな?」
サンデーちゃんに指し示す。


481 :

ガンガンちゃんが、もっぱらサンデーちゃん観察に熱心だからか。
ずいぶんと気分が楽そうだ。雑誌をめくりながら、時折ソイジョイをかじっている。長くてきれいな足が、机の下でふらふらとお行儀悪い。

「マガジンちゃん?」
まるで授業に質問する生徒のようだ。素直にサンデーは問い返す。
「そう。人間が厚く出来ていて、場数も踏んでる安全な駒って言うの?
完結して安定した関係に持ってくるのよ」
それに頷くガンガンちゃんは、相も変わらず何について話しているかみじんも見せない笑顔。口調も自然でよどみない。
「そうすると停滞した空気が活性化するの。
業界で言う、テコ入れね。新鮮味がなくなった関係でもこれでずいぶん新しい味が楽しめるのよ?」
サンデーはその言葉に深く考え込んでいたようだ。ずいぶんと考えてから、ようよう返事。
「・・でも・・・それって一生懸命、めでたしめでたし、になれたのに冒険じゃない?」
サンデーちゃんの方も、だんだんと自分が何について話しているのか区別がつかなくなってるのか。目の色に真剣味が混じってくる。
自分に食いつく視線に、満足そうにガンガンは笑顔で頷く。
「あらあ。現実のめでたしめでたし、は一過性じゃな〜い」
ころんころん笑われて、サンデーはごくっと唾を飲み込む。

482 :

勤勉な努力家気質のサンデーだからだろう。
「そ、それはどういう・・・」
熱心な声色で、視線はガンガンから離れない。教われば、砂が水を吸うような。・・・それがどれだけ目の前の人物を喜ばせているかも知らずに。
「安定の次段階はいかが?って事よ。安定にメンテナンスは入れたくならない?
もしかしたら相手に飽きられるかもしれない」
サンデーが顔色を失う。
「もしかしたら、他の恋敵がアプローチ仕掛けるかも。その時、自分に成就前ほどの魅力があるのかしら。それだけじゃない、きっとお相手には面白おかしい出来事が起こり続けるはず。おやおや。いつまで二人の間には蜜月の甘さがあるのかしら?」
サンデーの顔色がどんどんなくなっていく。
「だからこそ、ここらで第三者、投入よ」
ガンガンは声をひそめた。
「せっかく掴んだ幸せだもの。
維持させるべきだわ。あの手この手で、新鮮な恋の味をお相手にお届け。
飽きる?暇すら作らせません!さらにこのテには、目新しさだけでなく恋人の注目を一気に奪えるオマケ付き〜」
サンデーが感心したような、大きなため息と一緒にうなずく。
「推奨人物は前出の通り。安全な第三者で、軽い緊張感をご賞味あれ」

サンデーの目の色はすっかり変わってしまった。
話を聞き終わった目が、真剣味一色になった。うふふ、真に受けてるわあ。
「と、言うわけ。あら?なんの話してたかしら。そうそう。童話の話だっけ」
サンデーは、はっ、と我に返った。気まずいようだ。しきりにえへん、えへん、とせきばらいをする。
ただ、ここしばらく失っていた瞳の生気は戻っていたが・・・。

483 :

華やかなざわめきの中、マガジンちゃんはポッキーの箱を差し出した。
「あはは、一歩って事実には毎回目が覚めるようだわ」
そしてサンデーに手をひらひらさせる。
「そういや看板だったよ。コナン君の読者層、知ってんのかしらね〜」
「そ、そんなぁ。親子で読んでる方はきっと喜んで・・・」
「いいね〜、安定した看板って。ウチは一歩が看板です、ってのが一番平穏だよ、ジョージには長生きしてもらわないと」
後は笑って、椅子の背に大きく体重を乗せる。ついでにスカートの裾を払って足を組んだ。校則ぎりぎりの丈だが、むしろ潔く見えてしまうのは彼女の持つ人徳だろうか。
中等科の教室で、この二人が一緒なのは最近はよく見る姿だ。
コラボ企画以来か?簡単な連絡や、お互いの予定を交換し合っている。業界の息女の集まる校風の、面目躍如も出来ようもの。今も放課を使うのは、その話題ばかりになっている。

・・・ただ、今日付けでサンデーちゃんの考えてる事が、がらりと違う物になってしまったが。
マガジンちゃんかあ。
ガンガンちゃんの読みどおり、サンデーはすっかり真に受けていた。
箱から一本ポッキーを受け取って、目の前の人物をじぃっと観察する。
そういえば一緒に行動する機会、増えたな。あれ?その部分までいい位置関係?マガジンちゃんに、あいづちを打ちながら考える。
マガジンちゃんは、人間が出来ている。
古い付き合いだから、そこはよく知っている。
昔から彼女の度量は広い。私たちと水が合わない先生方も、その後の便りをマガジンちゃんのお家で聞く。ご縁がなくなってしまった先生も、快く面倒を見て差し上げるのは昔から。
だから自然と人が集まるんだよね。ジャンプちゃんなんかは「逃げ場があるとワガママになって困るよ」って嫌がってるけれど。

484 :

学校の外ではいつでも男の子達の輪の中心、みたいだったのに。近頃、外出もあまりしていないみたい。
だよね。新企画だって目白押しだもん。いくらマガジンちゃんだって体力続かないよね。
サンデーは観察しながら、胸の内で算段する。
ここで私がマガジンちゃんとすっごく仲良くなっちゃっても・・・。困る事は無いよね。サンデーは頷く。うん、学校内だもん、友達同士だし、問題は無い。

それから、ちらっ、とジャンプちゃんを見た。
・・・全然、気にもなってない様子。あい変わらず白泉姉妹に左右を挟まれて。いつもと同じだ。周りの注目を一身にあびて。
ジャンプちゃんは・・新しい物ばかりを毎日見ているだろう。
いつでも話題の中心。何もしなくても、周囲が放って置かない。海外さえ。流行を作り出すジャンプちゃんに、誰もが注目して舞台は目まぐるしく変わって、それを囲む群衆はみんな気を引きたがって。
ガンガンちゃんの言っていた言葉を思い出す。
めでたしめでたし、は一過性。
それ、なんとなく分かるな。机の上できゅっと拳をそろえる。次問題は、関係の維持。
それから目の前でポッキーをかじっているマガジンを見る。
安定した仲に、第三者を入れる。
胸の内で復唱する。
そして第三者は人間が厚く出来ている安全な人物を選ぶ。例えばマガジンちゃんみたいな。
緊張感。目新しさ。新鮮な恋の味。
ごくん。サンデーは唾を飲み込んだ。

485 :

「そ、そうだね。また・・・揃えられるかもしれないし。また、水曜にせーの、でマガジンちゃんと一緒できたらいいなぁ」

マガジンちゃんは、おや、と思った。
なんだか今日のサンデーちゃん、落ち着きなくね?箱から受け取ったポッキーも、指で持て余してるみたいに。おっかしーなー?
「あははー。嬉しい事言ってくれるわね〜」
「ほ、本当だよ?だって・・・今回の企画ですっかりマガジンちゃんに・・感心しちゃったもの」
「?」
「だってマガジンちゃんと一緒だと・・心強いんだも〜ん。コラボの相手がマガジンちゃんで良かったぁ」
〜〜〜?。どうしたんだろ。様子がヘン。おかしいじゃん。あの「私の信仰心はジャンプちゃんだけの物です!!」ってぐらいにワガママムスメだけを仰いでうっとりしてる娘が。風邪でも引いたのかな。
マガジンちゃんは、磨かれたきれいな爪で髪先をくるくる巻く。
ま、サンデーちゃんに関してはあのオンナのが詳しいか?
マガジンはひょいっとジャンプに振り返った。
でもマガジンと一緒で、不思議そうな顔でサンデーの顔を見ていた。?どゆ事?オレ、なんか不自然なコトしちゃったのかな〜。
マガジンちゃんは返事にも困ってポッキーをかじる。

486 :

「ほら私、・・せ、性格もマガジンちゃんみたいに活発でもないし・・・CMが一番、感心しちゃった!やっぱり頼れるな〜」
視線が落ち着かない。
「・・・」
「また・・一緒に企画できたらいいな・・・マガジンちゃんだと、いいなぁ」
「・・・・・」

マガジンは黙ってポッキーをもぐもぐかじる。参ったな。あからさまにサンデーの扱いに困りだした。どーゆー返事すればいいわけ?
そんなマガジンを前に、サンデーちゃんは空気の変化にも気付かないらしい。
いつもは聞き役な彼女なのに、あれやこれやと一生懸命だ。
「な、並んだ時なんてすっごいどきどきしちゃったぁ!」
「・・・・・・」
「昔から知ってる、あのすごいクラスメイト。私なんてもちろん敵わない・・・」
空回りしてんのに。ナニ?この現状。どうしたんだろ。一番このコと正反対じゃない?地に足着いてないようなサンデーちゃんに、マガジンは返事どころか違和感に態度にすら困った。

そしてサンデーは、ずいぶんそれに努力が要ったらしい。
何度も、何度もなんども深呼吸を繰り返してから
「ト、トトト、トップを取ったことある女の子なんだもん〜・・・っ!!」
まるで言葉にするのも恐ろしい、と言うような。目をきゅっとつむってから、聞いてる方がびっくりするほどの早口で一気に言い切る。
そして言い終えた後・・・おそるおそるのように開いた目がちらっ、とジャンプを見る。

487 :

あー・・・なるほどね。
「あっははー」
なあんだ、そゆコト。マガジンはなによりも、サンデーちゃんの一生懸命さにくすっと笑った。可っ愛らしいなー。
「それ、サンデーちゃんが言っちゃダメでしょ〜」
「?」
「ジャンプに悪いじゃん〜」
ケタケタと笑う。
可愛らしいわぁ〜。これじゃ、猫ぱんちにもなりゃしない。オレがやられたら、媚にしか受け取れないね。何?このファンシーな気持ち。
しかもどうやら、これは真剣にやってるらしい。まだごっこ遊びの白泉姉妹のほうが演技力あるじゃん。おっもしれ〜。

あんまりに拙いので、思わずマガジンは手を貸してあげる事にした。
どうやらサンデーちゃんの努力も、そこそこ報われてるようだし?
背中で聞こえてる会話に、急にジャンプの口数が減ったのを確認しつつマガジンはニヤ付きを抑えるのに苦労する。あはは、これは手助けしてあげないわけにはいかないじゃない。
「オレ褒めちゃダメじゃん。どしたの?」
「・・・べ、別にジャ・・ジャンプちゃ・・・・・・・・・・・・な、なんでわ、悪い・・・・・とか・・・・・」
ずいぶんぎくしゃくした口調。おいおい、頑張れ、声小さいぞ〜。
「ええー?だって従姉妹じゃ〜ん?」
マガジンは笑いをこらえながら、困ってるようなサンデーちゃんに何度も助け舟。
「そ、それは・・・それは・・・」
「自信持っちゃうよ〜。まるで従姉妹より優先〜、みたいじゃな〜い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆ、優先とか・・・そ、それは・・・その・・」


488 :
投下キタ――(゚∀゚)―――――――
 
 
頑張るサンデーちゃんが可愛いとですw

489 :

サンデーちゃん、だから、パンチ弱えーっ!
マガジンちゃんは許されるなら机をだんだん、叩いて大笑いしたかった。
なに?この子猫にじゃれつかれてる感。腹を抱えて笑い転がりたいよ、なにこのファンシーさ、腹筋壊す気か、カフェオレ吹くぞ。
あーあ。でも、こりゃ、残念だったね。
マガジンはサンデーちゃんの頭を撫でてあげたい気分だった。
いくらなんでも、今ので気付かれちゃったでしょ。
でも、ま、サンデーちゃんにしてはよく頑張ったんじゃね?そもそも思い立った辺りで充分だよ。ジャンプにうっとりして盲目状態、みたいなコが。
同情心でさらにファンシーになりつつ。ジャンプを振り返って・・・。

「っ」
しかし、あわてて前に向き直った。
・・・・・マジか。マガジンは声もない。ジャンプは最初こそは一緒に、不思議そうな心配そうな顔をしていたが・・・
え?今、尖るような視線向けられちゃったよ?
何?何、この二人。幼いよ。分かってはいたけど、一ツ橋グループ、幼すぎだろ常考。
でも。それが自分でも悪い癖だとは分かっているが。
マガジンは、だんだんと面白くなってきた。
おっもしれ〜。どの辺りで気付くか、とかどの辺でボロが出るか、とか試してやれ。
マガジンちゃんは内心でほくそ笑んだ。
ぐっ、と身を乗り出してサンデーの顔を覗き込む。
「なーんだ、じゃ、オレ達、おんなじ気持ちだったんだ?」
「!」

490 :

白泉姉妹と話してる最中なのに、ジャンプちゃんの背中の神経は尖っていた。
ど、どーしたんだろ、サンデー・・・。
姉妹の会話が、だんだんとどうでもよくなってくる。
え?なんか今日、オカシくない?
様子、変じゃね?
あのコは自己管理も抜群で、今まで風邪引いたのなんて見たことないよ。もちろんズルだってしない。
皆勤賞はとって当たり前のコだ。昔から比べられて、笑いのタネにされたもん。別にいいじゃん、宿題なんて提出日に仕上がってたら殴り書きでもさ。

「オレさぁ、サンデーちゃんと一生を共にする人っていいな〜って思ってたの」
はあ?!ちょっと待てよ!
なに?それ、なんか言葉的にヘンだろ!
「えっ、えっ、えっ?」
サンデーは声を裏返している。ちょ、なんだよなんだよ、なんか嬉しそうじゃん、その声!
会話そっちのけになった。注意すべてが、背中から聞こえる声になる。
「うん、どーせ長い一生だしさ。今から考えても別にいーじゃん?」
なんかヘンー!!ジャンプは地団太踏みたくなってきた。
サンデー、ガツンと怒鳴り返せ!ジャンプちゃんは歯噛みする。つかあんた、誰にでも優しすぎ、マガジンなんて本一筋のオレらよかフラフラしすぎなんだよ、名作に対しても愛があんのかよ、オレにはカケラも見えねーよ!
そもそも今日のあんた達が、何かヘン!ヘンなモンを二人して食ったみたいな!!
ジャンプは神経がとがったり、気持ちがイライラと忙しかったが・・・
「サンデーちゃん、付き合いやすいもん。性格いいし」

491 :

・・・・・常日頃分かっていた言葉に、ジャンプの考えが止まる。
「なんて言うか安心できるのよねー。
オレ、デキるオンナ!ってタイプよりも一歩下がって付いてきてくれるぐらいの方が絶対に居心地いいわあ」
マガジンの言葉がずきん、と突き刺さった。

みぞおち辺りが冷やっとした気がした。
イライラ固めていた拳の力をほどく。
左右で白泉姉妹が何か言ってるのに、マガジンの声だけを聞いてしまう。頭にするする入ってしまって。
「うん、オレ攻撃型だし。サンデーちゃんみたいなコがいつでも付き従ってくれるの。文句も言わずに付いてきてくれそうだよねー。
サンデーちゃん、温厚なんだもん。ちびっこから、お年寄りにまで優しいしな〜。
そうそう。守りもガッツリ任せらるね。
弱った時も安心して弱れるよ、サンデーちゃん相手なら」
「・・・!」
ジャンプちゃんとしては神経を尖らせたいのに。
マガジンの言葉のひとつひとつが、頭の回転が止めた。
恋人が褒められてるのも、普段なら嬉しかったり誇らしかったりなのに・・・
・・・・・胸のずきずきに、考えが回らなくなった。
白泉姉妹の声も、だんだんと聞こえなくなってくる。教室の声も。

492 :

オレだけじゃないんだ・・・・・。
やっぱ・・・他の人でも思うんだ?・・・つかオレが思うくらいだから、誰かがおんなじ感想持ってもおかしくないのかな・・・?
ジャンプの思考が完全停止した。その場から一歩も進めない。
・・・他のヤツも思うのか?
え?え?でもなんで、今、マガジン相手にこんなこと考えてるわけ?必要ないじゃん、まだ先の話しだし、そもそもマガジンはクラスメイトだし。
落ち着け、落ち着け、オレ。
いや、心配以前の問題だし!
サンデー、オレしか見てないもん。後ろ振り向いたらいつでも、ジャンプちゃんはすごいねぇ、って尊敬こめて言ってくれるもん、そうだよ、いつもオレの後ろを付いてきてくれて・・・・・
・・・・・・・・オレ、ちょっと我がままかもしんないけど。
違うじゃん!違うんだよ、それって愛の証拠じゃない?いっつもちょっとくらいの無茶なら聞いてくれるし!待ち合わせに遅れてもいつまでも待っててくれるし、べ、別にそれに・・・甘えるとか安心してとか・・・・・そんな、別に・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別にサンデーは嫌がってないんだし・・・い、いいじゃん・・・・・。

だからその後の会話も聞こえてない。
「え?はっ?いっ、いっいっ?とっ、共、って・・・え?なんっ、なんっ・・・っ」
泡を食ってるサンデーにマガジンが
「へ?だから今、ビジネスの話してるんでしょ?
ビジネスパートナーとしてサンデーちゃんを評価してるんじゃ〜ん?」
とケタケタ笑ったのはもちろん耳に入っていない。

493 :
(*´∀`)ニヤニヤwktk

494 :

・・・・・と、言うわけでここ最近のジャンプちゃんにも、精彩がなくなった。
白泉姉妹が左右でなにか言ってる。が、ほとんど聞いていないのは自分でも分かってた。
サンデーとマガジンの話に聞き耳立てるのは、あれからはしなくなった。
と、言うか聞きたくない。一緒にいるところすら、見たくもない。
二人の声がもしも聴こえても、理解するのを拒否する。理解するな、と自分に念じる。
さっきから白泉姉妹がほわほわ、ほわほわ笑い声を上げてる。
あれ・・・?最近、サンデーとまともに会話したっけ。
日常会話じゃなくって、二人きりで。縁の地めぐりしたのが最後?
ジャンプはなにがどうなってあれからの今現在なのか、さっぱり掴めない。なんであのらぶらぶ状態から、今のこれ?
なに、コレ?なに、この理不尽さ。

人生においてこれほど理不尽な目にあったのってあったっけ。
ジャンプちゃんは自分の過去を思い出す。生まれはどうしようもないからノーカウントとして。オレ、人生においてこんな理不尽な思いってしたっけ。
時代が変わるごとの路線変更に・・?でも、結果は付いてきたんだし。結果さえ出せば、周囲は絶対にオレを粗末に扱わない。大事にする。イーブンじゃん、分かってる。
結果を出してきたオレに、みんなは居心地いいように計らってくれる。思い通りにならない事って、そうはない。
ジャンプちゃんは自分でも知らず、ため息を付いた。
一緒に視線も落として。

495 :

「第二回、親睦会の企画がやっと出来上がったの〜」
なのでガンガンちゃんがプリントを差し出していても、受け取る手が、まず伸びなかった。プリントをまじまじ見る。
そういや、そんなのあったっけ。のんびり考える。この話聞いた時、すっごい喜んだんだよなあ。懐かしさに、少しだけ笑顔が戻った。

・・・だから手も出さない自分を、相手にじっくり観察されているのは気付かない。
幼い上に、突然の理不尽に振り回されてるジャンプが気付けるはずもない。
ガンガンちゃんはそんなジャンプちゃんをじっくりと鑑賞して、まったりと味わった。うーん、芳しいわあ。
「クラスメイトだけでお泊りって楽しいわよねぇ。学校だけじゃ見られない姿も見れるし」
これほどの好物件がクラスメイトとは。
運命も粋よね。そうそう。卒業までには仕込みも済ませたいもの。あらやだ、忙しさに嬉しい悲鳴?
当然、ジャンプちゃんは聞いてない。プリントをじっと見ている。
「修学旅行みたい!私、分かるのよ?チャンピオンちゃんだって普段は口数少ないけどね、ほんのちょっぴり嬉しそうなの。ほんのちょっとだけ口数増えるのよ。チャンピオンちゃん、本当はみんなと仲良くしたいのね。私だってそう、クラスのお友達と仲良くしたいの」
ガンガンちゃんの楽しそうな声は、ジャンプの耳を素通りしてく。
「サンデーちゃんだって。すごく嬉しそうだもの」

496 :

ここで視線がやっと上がった。
「・・・サンデー?」
「サンデーちゃんには気配りしてもらって、お世話するこっちが助かってるの。
反対に気疲れさせてるんじゃないかな、って心配になっちゃう。
ジャンプちゃんなら分かるでしょ?」
見せた食いつきにガンガンの目は更に細まる。
ジャンプの視線が、その先を早く言え、と如実にせがんでいる。それにどうでもいい話をしてるのはわざとだ。
「プリント渡した時、とっても喜んでくれたもの」
「!」
「サンデーちゃんならたくさんご旅行だって連れて行ってもらってるでしょうに。
あんなに喜んでくれると、こっちも企画しがいもあるわぁ・・・
・・」

ジャンプはやっとプリントに手を伸ばした。
サンデーが?
久しぶりにサンデーの声を背中に感じた。そのまま振り向く。
あ、もしかして、ちょっと元気ない?
気分さえ向けば、後はジャンプちゃんは察しも早い。
マガジンちゃんの向かいに座ったサンデーの、瞳に力がなくて視線も落ちがちなのを見て取る。
「でっさー、正直ユニクロ、どうよ〜。客が素通りだったら、泣くよ?オレ」
ケタケタ笑ってるマガジンにも、うなずくだけで表情に明るさがない。
ちょっと疲れてるような・・・?
サンデーは箱入りなんだよ、そこの元ヤン、あんま暑苦しくすんなっ。

497 :

そっか。サンデー、コラボ企画で忙しいもんね。そりゃ疲れてるし、オレと・・・・・
嬉しさと一緒に、胸にも温かい甘さが戻る。
企画話に忙しくて、オレとも会話どころか二人きりにだってなってない!

ジャンプは顔が熱くなりそうで、あわててプリントに手を伸ばした。もしかして・・・
「サ、サンキュ!」
顔を扇ぐように受け取った。
もしかしなくても、オレ一人で勝手にぃ〜〜〜?
ジャンプはあまりの事に、その場から逃げ出したいくらいだ。うわ、恥ずかしくて顔から火がでるーっ。
ふんわりと浮く前髪で、なんとかごまかしごまかし
「オレさ、あのコの従姉妹だし。それとなくフォローするよ」
ありもしない事にオレ一人でオロオロしてたとかぁ?
ガンガンに晴れやかな笑顔を向けた。
そういやあのコの表情が冴えないのに、気付いてたのに、ナニ?この失態。
マガジンの言葉的におかしいのだって、あのオンナらしいよ。オトコ受けばっか考えてるからそーゆー視点の発言が出たんだよ。サンデーのオトコ受けしそうな部分を観察してたんだ。お前が今頃清楚ぶっても遅いっての、バーカバーカ。
ええー?オレ一人が勝手に解釈して、勝手に疑って、勝手に落ち込んで?
プリントでふわふわ、顔を扇ぎつづける。
椅子の背に、ひじも置いて。その自信に満ちた様子がいつものジャンプちゃんだ。
そうじゃん、コラボ企画前はオレ達、ら・・らぶらぶ?うわ、照れる言葉〜。あはは、らぶらぶだったのにオカシイじゃん。
えぇー?喜んでたって!しかもガンガンを喜ばす位だって、久々にオレと二人っきりになれて・・嬉しいってコト?
うっわ良かった〜、自分内で解決出来て。こんなの誰にもに聞かせられないじゃん、恥ずかしー!
表情がすっかり晴れた。にこにこ、にこにことガンガンを見るジャンプ。
それをにこやかに、楽しそうに(?)眺めるガンガン。

498 :

「・・・マガジンちゃん?」
確かに精彩が失せたのは、ジャンプだけではない。
サンデーちゃんもだんだん、だんだんと元気がなくなっていったのは、ジャンプちゃんの察しどおりだ。
会話していても、手ごたえが無いのが従姉妹とまるでお揃い。今だって、会話の途中でよそ向いた相手に、声を掛けたのはずいぶん経ってからだ。
しかも熱のこもらない声。

「・・・」
マガジンちゃんは・・・
そんなサンデーの声を聞きながら、ガンガンとジャンプの様子も黙って眺めている。
眺めながら考えているような。

でもすぐに、くるっと向き直った。
「ごめ、ごめ〜。どこまで話したっけ?」
「・・・ん。えーっと・・・どこまでだっけなぁ」
いつでも自分を保ってるサンデーちゃんらしくない。
ぼんやりしているようだ。自分の前髪に指を差し入れて、やはりぼんやりとたずね返す。
「そーだよ、オレらのユニクロTシャツの話じゃ〜ん。ね?」
マガジンは明るく言いながら、まったく別の事を考えていた。
あー、ちくしょ。
どうしよ、なんか今、いろんな意味で頭抱えたい気分になった。

499 :

親睦会のジャンプちゃんの元気さときたら。
いつでも明るく健康、元気なのがジャンプなのだが、この日は特に機嫌もよかった。

「「飛べ!えちっぜ〜んっ♪」」
今日は劇団四季の観劇と言う事もあって、白泉姉妹までがいつもよりも元気いい。
ホテルのレストラン、貸切の部屋で皆の前に出て歌いだす。
歌声も寸分たがわずだが。それからとる行動まで寸分たがわずだ。
「「ずる〜い、跡部様役は私だよ〜」」
おなじ立ち居地とアクション。
お気に入りの役柄をめぐって花ゆめが右手、ララが左手の拳を振り回すまでに至っては、クラスメイト達にいっそう華やかな笑い声を咲かせた。
「あはは、おっかしー、な、サンデー」
自社作品をまねっこされても、機嫌よく笑っている。
「・・・」
サンデーはそんなクラスメイト達にちらっと目線を上げて。
ただ、頷いた。あまり浮かない表情。
?どうしたんだろ?
・・・・・早く二人っきりになりたいとか。
ジャンプちゃんは顔が熱くなりそうで、あわてて手元のウーロン茶に視線を落とす。
冷たいグラスをしきりに撫でながら、ガンガンちゃんをちらちら見た。もー、オレら学校でも毎日会ってんじゃん!そのほわほわ姉妹がミョーなのも知ってるよ、そろそろさぁ・・・?
と、焦れていたら、まるでその思いが通じたようだ。

500 :

「うふふ、可笑しい。今夜の夢までお揃いだったりして!」
言葉と一緒に、幹事のガンガンちゃんが立ち上がった。
「二人を見てると時間忘れちゃうわあ。でもみんな、時計も見て?
こんな遅くまで引き止めたら、お預かりしてる私が怒られちゃう。
今夜はもうお休みしない?花ゆめちゃんとララちゃんの夢、明日みんなで聞かせてもらいましょうよ」
クラスメイト、一人ひとりを見ながら言うのに姉妹が同時に頷いた。
「「振りつきで教えちゃうー!」」
また咲く笑い声。

やったー!
じりじり待っていたジャンプちゃんは、粉砕・玉砕・大喝采。すぐにでも立ち上がりたかった。
が、ここは我慢だよ。
テーブルクロスの上で、拳を固めた。あんま派手な行動しちゃダメだよ、悟られないよう、悟られないよう。
隣と雑談しながら、ばらばらとクラスメイト達が立ち上がりだす。
ジャンプはそろそろいいかも?と、落ち着かなく隣のサンデーに、
「サ、サンデー?」
さっきから視線を落としているサンデーがやっとこっちを見た。
「あ、あのさあ、こ、今夜さあ、オレの部屋来ない?寝るまでまた、喋ろうよ〜」
ジャンプは悟られないよう、と周囲に目を配る。
サンデーちゃんは・・・考え込んでいるようだ。そんなジャンプちゃんの横顔を見ている。
視線を据えて。

501 :

「こっ、今夜は駄目!」
サンデーが、ひとつ息を飲んでいきなり立ち上がった。
ジャンプちゃんを見下ろす。
はい?間が抜けたようなジャンプに、サンデーちゃんは半ば自暴自棄だ。
わめくような早口で
「こっ、今夜はマガジンちゃんとお話したいの!・・・・・・・・・・ユっ、ユニクロの商品配置・・とか?」
隣にいるマガジンちゃんの腕を取った。

部屋に帰ろうとしたマガジンちゃん。
おっとと、と引き止められる。二人を見てから、自分の腕も見る。自分の裾を握ってる指は、細かく震えていた。
「・・・」
「ね・・ね?いい?マガジンちゃん」
「はあ・・・別にかまわないけど」
「わあ、ありがと、やっぱりマガジンちゃんって・・・・・・・・頼りたくなるよねっ」
やはり恐ろしい発言のように、サンデーちゃんは早口で言う。
おいおーい。
「・・・・・」
そろそろ気付いてくれませんかねえ。
しかし、ジャンプに目を移しても・・・。
信じられない物を見ているよう。驚きにまん丸な目も、自分達二人を見ているようで見ていない。口も閉じられないようだ。
マガジンちゃんは目だけで天井を見た。
おいおーい、これじゃ、ゴールも見えてこないじゃない。
いつまでもボロ出しつづけて、で、いつまでも気付けない。
しかもタチが悪い事に、どうやら二人はどこまでも真剣だ。真剣に仕掛けてるし、真剣にそれに気付けてない。

502 :

「じゃっ、じゃ、行こう?どっちの部屋にする?」
「はあ」
マガジンちゃんには分かっていた。自分の背中を押すみたいに両手当たってるけど。
サンデーちゃん、ちっとも力入ってない。小刻みに震えてるし。
「マガジンちゃんの部屋行っていい?マ、マガジンちゃん、綺麗なんだもん。どんな洗顔石鹸使ってるか知りたいな」
洗顔石鹸って。ジャンプはあいかわらずこっちに目を丸くして言葉も出ない様子。
「パ・・・パジャマもお洒落なんだろうなー!わ・・・私の見たら笑われちゃうよー」
「・・・」
いつまでもいつまでも、サンデーはちらちらとジャンプを見ながら、ジャンプにも聞こえるよう・・・いや、聞かせるみたいな?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むっ、胸も大きいしっ。くっ、比べっこなんて・・・っ」
声も震えだしたので。

「そだね」
「!」
マガジンちゃんが反対にサンデーちゃんの手首を取った。
「行こ、行こー。
ジャンプも早く寝なよ。また明日ね」
いつまでも椅子から立ち上がらずに、自分たちをぼーっと見ているジャンプにも一声掛けてあげる。
あー、ダメだ。こっちは完全停止してるよ。
「マっ、マガジンちゃんっ」
いつまでもジャンプに振り返っていたサンデーが、必に呼び止めている。
が、マガジンは無視した。
ほっといたら朝来るよ。ヒミツの仲なんでしょ?危機感、持ちなよ。

503 :

マガジンちゃんが急かしたが、ジャンプはぼんやりと去っていく二人を見送った。
椅子からも立ち上がれない。
誰かがぼーっとしている自分を立たせて、ホテルマンに託したのは覚えてる。大人びた立ち振る舞いだったような。つことは、幹事のガンガン・・・?

ジャンプちゃんは、ぼーっと自分の部屋のベットに座っていた。
時計はそろそろ、夜更けを告げる。
ぼんやりと壁紙の柄を見ている。
・・・・・どういう事?
頭が回らなくて、さっきからそればかりを繰り返している。
どういう事?・・・・・・・・・・・・サンデーがオレの言う事を聞かずにマガジンと・・・?
え?今日が嬉しかったのってオレだけ?え?でもサンデーもすごく喜んでたって・・・。
何故かふいに・・・自分の元を去っていった人々の後ろ姿がジャンプちゃんの頭に思い浮かぶ。
自分に愛想付かして、我が家を出て行く人々の後ろ姿。
あの時、「行くならどーぞ?」って態度だったかも。
相変わらず回らない頭で懐かしむ。
イノタケは別格としてさ。基本が去る者追わずっぽかったかも。だって他に戦力たくさんいるしぃ。これからもオレんトコ群がるし?オレって不自由してないよね〜。過去の遺産食い潰して生きていけばぁ?
で、その人たちがどうなったかと言うと・・・・・。
あの、オンナだ。
マガジンの気持ち良く笑ってる姿が思い浮かんだ。
あのオンナ、外では上目遣いでくねくねしてんのに、内と外が激しすぎっつーの!

504 :

あのオンナの所を頼って行った。
・・あのオンナ、人間は出来てるもんね・・・。あのオンナの家で化けたのもいるし。
オレ、ちょっとワガママだしなあ。ジャンプちゃんは視線を落とす。
ちょっと・・・いや、大分、かも。
深いため息が彼女らしくもなかった。考えたくない、と必だったのに。
去っていった人たちの中に、同じ制服の少女の姿が打ち消しても打ち消しても・・・。

違う!違うもん、サンデーはオレのコト、愛してくれてるから、だからなんでもワガママ聞いてくれてるんだよ!
あ、あのコは・・・生粋のお嬢で。いや、オレもお嬢様の内だろうけどさ。
あのコは掛け値なしなんだよ!本家筋の姓を名乗る、オレの家だって・・・ほぼ、あのコの家の物みたいなもんじゃん。なのにあんなに尽くしてくれるなんて、フツーありえないよ。オレみたいな分家のムスメになんでそこまでしなきゃいけないんだよ、おかしいじゃん!
・・・・・そう育てられたから?違う、違うもん!
マガジンは人間が出来ている。人情も深い。人も集まる。・・オレよか・・・一緒にいて楽しいかも。
ジャンプの胸のもやもやがぐるぐる、ぐるぐる、終わらない。
・・・・・・ゲームぐらいさせてやればいいじゃん、とか。もしかして思われてるのかな。
弱気が弱気を呼ぶ。小畑もだよ。取られたらどうしよう。キバヤシに小畑?ぞっとしない。
ジャンプちゃんは、自分がどんどん、どんどんと泥沼に足を取られてるのに気付けない・・・・・・

505 :
支援

506 :

「ラインナップに改蔵Tシャツ、入ってたっけ」
マガジンは明るく言って、後はケラケラ笑う。
「改蔵君が絶望した!!なんて叫んだら、それだけでコラボ完成じゃーん。ね?」
「・・・あはは・・」
当のサンデーちゃんは力なく一緒に笑って・・・また、ちらっと時計を見る。

寝るに寝れないし、サンデーちゃんいるからお行儀悪い事も出来ないし。
マガジンちゃんはしょうがないのでさっきから雑談ばかりしている。
あーあ。マガジンちゃんはクラスメイトを観察しながら内心、同情する。
慣れない事したら、そりゃ疲れるし袋小路にもハマるわよね。
なんでまた、こんなコトしようと思ったのかね。
そのテに器用なはずもないムスメが。そもそもジャンプに完全追従しきってるのに、無理に決まってるじゃん。
性格的にも心情的にも無理。傍から見ててすら、分かりきってるよ。
1分も経ってないのに、また時計に目をやる。帰るそぶりも見せない。
マガジンちゃんはほとほと困った。何故にこんな世話焼けるのが、揃いも揃ってオレばっか回ってくるか。
末にそっとつぶやく。
「・・・サンデーちゃんとしてはさ。これからどんな展開になって欲しいわけ?」
サンデーちゃんはマガジンに向き直った。
ちょっと声色が変わった?
付き合ってもらってるマガジンちゃんに悪いよ、と姿勢が改まる。
「な、なにが?」
「この後、どーして欲しいの?」


507 :

「・・この後・・・?」
「読みきりのラブコメって、何本もあるじゃん」
「あ、う、うん。仕事の話ね」
膝を正すサンデーちゃんに
「あれさあ、主人公とヒロインのこの後、とか・・・あったら、どーなりたいわけ?
サンデーちゃんならどんな展開希望?どーなりたい?どーして欲しい?」
マガジンに向き直っていながら、でも、サンデーはちっとも話に身が入ってない。
自分で一杯いっぱいのようだ。ぽろっとこぼす。

「・・・泣いてすがられたい・・・?・・」
「・・・」
マガジンちゃんは聞かないフリしてあげた。
「泣いて・・・泣いて、行かないで、って。
あんたしか好きじゃない。オレにはあんただけだって。
だから行かないで、って。お願いされたい・・・かな。すっごく」
「・・・・・」
「もう・・・どうでも良くなっちゃったのかな・・・だからなんにも言わないで・・・・・」
サンデーを観察しながら、マガジンちゃんは思った。
泣いてすがるって。サンデーちゃん、アナタが泣きそうよ?

その時だ。
部屋の電話が鳴った。
サンデーちゃんは我に返ったようだ。えへん、えへん、としきりに咳き込むのも、マガジンちゃんは聞かないフリしてあげた。
電話に這い寄りながら
「?なんか連絡かなー」
受話器に手を伸ばす。

508 :

『フロントですが。集英様のお電話を繋いでもよろしいでしょうか?』
「へ?ああ〜。はいはい、お願いします」
やれやれ、やっとか。
マガジンちゃんは肩の荷が下りた気分でほっとした。
電話が切り替わって
「オレ、オレ〜」
『・・・マガジン?』
「あはは、寝れないか〜。今、変わ・・・」
返事を待たずに、受話器から大きな怒鳴り声が返ってきた。
『おっ、お前!なんかヘンだと思ったんだよ、オカシイじゃん、そもそもなんでユニクロなんだよ!』
うわ、うるせ。
マガジンちゃんは耳から受話器を離す。
「・・・?」
心配そうなサンデーに笑顔で頷く。これは相当のお怒りね。
『圧倒的にサンデーに有利だろうよ、お前の読者はアニメイトが顧客だろうよっ。オレの目は誤魔化せないからな、あんた、サンデーに取り入りたいんでしょ、サンデー有利の場でご機嫌取ってんでしょ、そうでしょ、おかしいよ、あんた』
しかも、これ、怒りで錯乱してるよ。
うぜ。どうにかして落ち着けないと。
『何が目的だよ、この無節操オンナ、吐けよ、吐け!!』

「!」
受話器を眺めながら、マガジンはひらめいた。
妙案に意地悪くしのび笑い。
ここってスピーカーホンとか無いのかな?
おっと、発見。泳がせていた指が、ひとつに止まる。
ははっ、悪いコトは出来ないネっ。
八つ当たりする子にはおしおきだべ〜。
ぽちっとな。

509 :
改蔵とか懐かしいwww全巻持ってるくらい好きだったのに終わったんだもん(´・ω・`)
なんで終わったんだろ

510 :

『あっ、あんた、なんでサンデーに取り入りたいんだよ、あ、分かった、子供向けコンテンツ狙いだろ、お前、ガキ苦手だもんなーっ、必要なのは大きいお友達って?ははっ』

ジャンプちゃんっ?!
サンデーは瞬間で顔を上げた。
部屋に響いた怒鳴り声。
そのままマガジンちゃんを見たら、こっちに向かって肩をすくめてる。
こ、これは一体・・・・・。

『なんだよ、なんだよ、あんたなんてサンデーにちっとも似合わない!!』

しかも・・・どうしよう、泣いてる?
怒鳴り声はだんだんと、興奮したような涙声も混じりだす。サンデーは胸元をぎゅ、と握った。
『そうだよっ、おっ、お前みたいな泥くさいオンナっ、清潔なサンデーにちっとも似合わない、似合いっこない!!
そもそもお前なんかまったくダメだね!オレなんて・・・っ。オレなんて、身一つでここまで来たんだぞ?!分かってんだろ、レコード会社もテレビ局もなにひとつねーよ、そんでここだぞ、むしろオレが我が家、背負ってんじゃん!!
あっ、あんた、オレの場所まで・・・来れないクセに!そっ、そんだけバックがありながら・・・っ、一度だけじゃん、一度だけで・・・・・それっぽっちなんて、それっぽっちなんて・・・オレのがっオレのが・・・・・っ』

511 :

サンデーちゃんが飛んできた。
「ジャンプちゃん?!」
奪うように受話器を取る。
おっと。素早く身を引く、マガジンちゃん。
このコ、乱心すると怖いんだよね。
サンデーちゃんの様子には、いつもの穏やかさも、優しげな落ち着きも無い。
『・・へ・・・?』
「ジャンプちゃん?!どうしたの?泣いてるの?泣いてるの、どうしたの?!」

・・・ものすごい間が空いた。



512 :

「な、は、サ、サンデ・・・・」
こちら、ジャンプちゃんのお部屋。悶々、悶々、と考え込むうちに・・・。
頭が熱くなってきた。
今現在の、この怒りもしょげてんのも、そういやみーんなあのオンナが悪いんじゃん!
そうだ、あのオンナだ。あの元ヤンがみんな悪い。
そもそも、なんでも横からかっさらうマネばっかしやがって、いつでもあのオンナはそうだよ。育てて来たものを、横からかっさらって。そんなのばっか上手くって、あったま来た!!
じっとなんてしてられない。
すぐに受話器を掴んでフロントにダイアルして繋いでもらった。本当、我慢しないコだ。
そうしたら・・・

『どうしたの?!なにがあったの?!』
怒りをわめき散らしていた相手が、急に変わった。
『どうしたの?どこか痛いの?困ったの?』
「・・・・・なっ、なっ、なっ」
『部屋に備品足りてないの?今すぐ行―――』
受話器から聴こえてきた声に、顔にもかーっと血が昇る。
思わず受話器を置く。
がしゃん。え?え?な、なんでサンデーが・・・。

513 :

「!」
サンデーちゃんは反射的に受話器を見た。
通話は切れていた。ツー、ツー、ツー。
どうしよう。で、電話をもう一度・・・?ううん。携帯で・・・あ、でも携帯は・・・・・。
ちょん、ちょん、と肩を突付かれて。
サンデーは、もどかしい思いで振り返る。
そこにはマガジンちゃん。ど、どうしよ、今、それどころじゃ・・・。

「行ってあげたら?」
気にした風もないマガジンちゃんの笑顔。
なにも訊かないし、なんでもない事のように軽く言う。
「・・・え?」
サンデーが迷うと。
「ジャンプ一人勝ちで余裕かよー、って嫌味に思ってたけど。
ははっ、カワイイとこあるじゃん。ほんとはオレらのコラボ企画、不安だったんだ?」
言葉を添えられて、しかもその言葉は
「・・・不安?」
「えー?そんな様子じゃね?
内心、びくびくみたいに。あはは、行ってあげなよ。身内から気休めでも言ってあげたら?」
マガジンちゃんの言葉は、ごくごく自然な反応。
疑われてもない。そうだよね女の子同士で恋なんて、いくらマガジンちゃんだって思いも寄らないだろうし。従姉妹が従姉妹に・・・?うん、ちっとも不自然じゃない!
サンデーは、安心の笑顔でおおきく頷いた。
「うん!!」

514 :

その後のことは、普段の彼女を知る人が見たら、ちょっと驚きだ。
いつでも慎重で品行方正、取り乱す姿を見れる事が難しい少女なのに。
「ごっ、ごめんね、ごめんね、明日謝るからねっ」
いや、謝ってるじゃん。マガジンが笑いを堪えて見守る中、自分の手荷物を目にも留まらぬ勢いでまとめる。
最後にほとんど残ってる爽健美茶の缶をトレイに戻して、
「ごめんね、また明日ね!」
バタン、と勢いよくドアを閉めて出て行った。
ドアの向こうで、遠くなっていくスリッパの音。ぱたぱたと廊下を叩く・・・・・

マガジンちゃんはそれが消えるのを待った。
音が聞こえなくなってから。
はぁー、とやっとベットに転がった。ごろんと大の字になる。
あー、もう、あの二人は!
今度は声に出して笑った。どこまで面倒かけるんだよ!
頭の下で腕を組む。
・・・本当に。迷惑ばっかかけて。
昔っからそうよ。こっちの都合もお構いなしだもん。
あのオンナは好き勝手な活躍ばっかして。
海賊漫画、流行らすなら流行らすって言えよ。神も、忍者も、バスケもなんだって好き勝手に。人の都合も考えないで、自由奔放なジャンプとの思い出に悪態。
去っていったサンデーにも苦笑い。
っとに、アナタが皆勤賞総ナメだと身につまされますよ。欠席も遅刻も、宿題の提出だって漏れがないんだもん。あはは、オレなんて、周りが知ってるわよ?ある程度休まなかったら、そろそろかなーって。ええ、そうですよ、ズル休みですとも、それが何か?
ああ、もう本当に。
あの二人は、本当に昔から振り回してくれるし・・・・・でもどっちも憎めないしで、ほんっともう・・・。

515 :

でもこれが世に言う、相互扶助関係?
久々の開放感に、マガジンちゃんは大の字ついでにのび〜、と伸びをする。
最近、夜遊びもしてない。遊び友達のメルアドみんな消去されたし、そういやスカート丈計るの、教師の仕事だろよ、お酒も禁止された。
なのに1ペリカも寄越さないのよ、あのおねーさまは!
嬉しそうに跳ね起きる。本当、体力のあるムスメだ。サンデーちゃんが分かりやすく部屋に来てくれて助かったわあ。サンデーちゃんが模範生なのは定評だしね〜。
久々に欲望へのダイブのために、冷蔵庫をあれこれ物色するマガジンちゃん。
携帯が鳴ったので、あわてて枕元まで引き戻された。なんだろ、サンデーちゃん、まだ困ってるのかな?
『ああ、マガジンちゃん?私よ、私』
「・・・・・」
電話の向こうの声は
『ユア・スイート・ハート。サンデーちゃん、そろそろ帰ったかなあって。どう?今そっち行っても大丈夫かしら?』
講談マガジン、確保っ・・・!無念・・・!あまりに、無念っ・・・!






       雑誌界の女子は大好きな読者と共に新しい未来(シナリオ)を描いてゆく
                 エロシナリオは次号掲載予定。ご期待ください!!

516 :
チャンピオンちゃんだって移籍多いですのにね

↓※ここからはエロありです

517 :

   「エロの半分は、ガンガンです」

あくる日の行動なんて、ある程度は予想してたのよ。
ほら、オレ達って短い付き合いでもないじゃない?
中でもあのオンナの行動は明快すぎよね〜。
「おはよ、サンデーちゃん」
吹き抜けのカフェに、朝のざわめきが響く。
その入り口にクラスメイトの姿を見つけて、講談マガジンは立ち上がった。

518 :

「あ、マガジンちゃん」
朝食が用意されたホテルのカフェには、見知った顔が集まり出す。
観劇にもご馳走にも満足したクラスメイト達は、いっそう華やかな声をカフェ中に咲かせていた。
さすが雑誌界でも名の通った少女達。その姿は店内の客の目を喜ばせるばかり。
そんな中、眠そうに目をこすりながら案内されていたのは見ないフリした。
「昨夜は災難だったよね〜。あのオンナずいぶん荒れてるんだもん」
そのまま、入り口に目を向ける。
「あはは、で、当のジャンプは起きてこないか〜。
フテ寝?さすがにテレくさいとか。オレ、気にしてないのにぃ」
困ったような笑顔であいまいにうなずくサンデーちゃん。
マガジンはその背の後ろに影も見えないので、一緒に困ったように笑ってあげる。
明日ガン無視されたりして、とは思ってはいたのだ。
合わせる顔がないとかで、最悪、ばっくれるかも。あのオンナならやりかねない。ワガママだし。
でもその通りにされるとは。分かっていたことだけど、呆れるよ。
「どうしよ。なんかオレ、手伝える事ある?」
「いいよ、用事があったら・・・メールか電話くれるだろうし」

そして、そんな二人を眺めながらガンガンちゃん。
甘いわよ。
夜明けのエスプレッソを片手に、軽く鼻で笑う。
さんざ愛をささやいた相手だろうに。甘いわよ、マガジンちゃん。
カップの淵ごしにサンデーちゃんを観察して。
あれ、えっちしてないわよ。可哀想に。
隣のテーブルにいる秋田チャンピオンに、挨拶と一緒に座るサンデー。
向かいは空席だ。ちらっとその空席に目を上げてから、サンデーちゃんは疲れたようにため息。

519 :

そして二人の見解の内、当たってるのはガンガンちゃんの方だった。

「〜〜〜」
集英ジャンプは、目が覚めてしばらく呆然とした。
なんでオレ一人・・・?ベットの上でぼーぜんと朝の光を見る。
昨夜、マガジンの部屋にほとんど怒鳴るように電話をかけた。
だって頭にきたんだもん、あのオンナ、絶対に小学館に取り入りたいんだよ、低年齢層が苦手だからってなんでもかんでも横からかっさらうマネばっかすんじゃねーよ!
『どうしたの?!ジャンプちゃん、どこか痛いの?!』
そしたら急に電話の向こうがサンデーに代わって、ジャンプはすぐさま受話器を置いた。
そのままシーツを頭からかぶる。ええー?!何?どゆこと、なんでサンデーが・・・?!
それからの、何がすごいってサンデーちゃんの忍耐強さだ。
この少女は本当に待つ事に対しての感覚を持っているのか。チャイムが鳴らされて、ノックと一緒に「ジャンプちゃん?・・・」のジャ、までは言えた。
でもドアにまくらが叩きつけられたら、もう音はしなくなった。
それからジャンプはシーツの中で耳をふさいで、身悶える事、言葉どおりに七転八倒。
うわー、ぬー!恥ずかしさでぬー!じたんばたんと転げまわる。
「・・・」
だからドアが開けられたのは、一体、どれほどの時間の後なのか。
時間が経っても、物音もしなくなっても、疑問もなく開けたのはジャンプは知っていたからだ。
ドアの向こうには、心配そうにサンデーが待っているのを。

520 :

で、それからはえんえんと愚痴だった。
「大体さ?なんでオレを後回し?オレが寂しいとか思わないと思ったわけ?のど渇いたなーって思った時もあったんだよ?あんたいなかったでしょ。あんたいなかったらどうすんだよ、誰がオレにスポーツドリンク渡してくれるのよ」
ベットでサンデーに抱きついて、えんえん、えんえん。
スネたり、ふてくされたり、へそ曲げたり・・・言い訳、誤魔化しも入ってたかも?
えんえん、えんえん。
「うんうん、ごめんね、ごめんね、ジャンプちゃん」
でもサンデーは、ジャンプの頭を抱きしめてずーっと撫で続けていた。
最後までそれだけを繰り返して・・・。
気付いたら朝とは。
どこまでオレ、バカなんだよ!せっかくの泊まりなのに、二人きりになれるのにっ。私服のままだしっ。
あ、でもジーンズは脱げてる・・・?上着も。
きょろきょろ見回したら、ベットの上にきれいに畳んで掛けてあった。
サイドテーブルを見るとサンデーの字で書置き。
   『ジャンプちゃんが寝ちゃったようなので、部屋に帰ります。
    用事があったら連絡ください』
その後に携帯番号とメルアドまで書いてある。ほんと丁寧だよ、あのコは。
  
ジャンプちゃんはさすがに呆れた。呆れ果てておのれをののしろうとして
「〜〜〜ォ゛レ゛のバ・・・!」
喉の異常にも気付く。
「・・・?・・」
あ゛ー、あ゛ーと確認。
とほほ。喉まで枯れてるし。
オレ、さんざ愚痴ったしな。文句言いながら寝るとか、もう呆れ果てて言葉もねーよ。オレのバカバカ!
ごそごそと自分の携帯に手を伸ばす。
声も出ないし。残るけどメールしよ。

521 :

ぴろぴろりん♪
「あらま、メール?」
でもそのメールの届いた相手は・・・

スクゥエア・ガンガン・エニックスは自分のバックに手を入れた。
音からしてサンデーちゃんの携帯かしら?びっくり。ちょうど今、同情してた最中だったのよ。測ったようじゃない。
ごっそりと携帯が入ったバックだ。
その数と種類の揃ってない具合から、バハラの違法叩き売りをイメージしてしまうのは人徳みたいな物だろうか。
あながち間違いではないが。
たくさんの携帯から淡い水色のドコモを取り出す。点滅するランプにやっぱり、と頷く。

   送信者:集英ジャンプ
    件名:re:
    本文:喉痛い来て

「へー、ジャンプちゃんから?珍しい」
ずいぶんとサンデーちゃんの携帯の内容に詳しい感想。
本当に詳しいのだ。
別に盗んだんじゃないのよ?ガンガンちゃんは誰ともなしに前置きをした。
返却するのが前提だもの。ちょっと借りて、いろいろ設定いじれないかなあっ、って。
昨日借りちゃったの。なにか面白い設定出来たりして。
・・・さっそく面白いコト、出来そう。
サンデーちゃんに目を上げる。
一人テーブルで、朝食を取るクラスメイト。
ガンガンちゃんの目が細くなった。
うふ、えっちも出来ないなんて幹事としては身につまされちゃう。当方の企画では皆さんがお楽しみいただかないと。

522 :

ぱらぱらりん♪
「え?メール?」
サンデーちゃんは携帯に手を伸ばした。
ああ、良かった。昨日携帯、失くしちゃったんだよね。どこで失くしちゃったのかな?荷物をフロントに預けた時には、確かにバックに入ってたのにな。
でもガンガンちゃんが貸してくれて助かったぁ。
本当、幹事は適任だよね。
「あらら、携帯、失くしちゃったの?急場で良かったら、これ、貸しましょうか?」
機種変更しようと思ってたら、お家で働いてる方のを試しに持たせてもらえたんだって。
エニックス社の社員の方なら安心だね。帰って解約するまで借りておこう。
ジャンプちゃんに携帯番号とメルアド、書置きしておいて良かったぁ。
サンデーちゃんはほっとしつつ携帯に目を走らせる。
でも直接じゃなくてメールってどうしたんだろ。メールじゃないと駄目な事かな。

   件名:素直になりたい。。。

「?」
サンデーちゃんは本文に目を通す。

   本文:誰にもナイショにしてるヒミツ。。メールなら話せそう。。。


523 :

「!」
動揺したサンデーは、テーブルの皿にカップをぶつけた。
響いた食器の音に
「?どうした?サンデー?」
孤高のイメージの強いチャンピオンちゃんだが、近年は打ち解けた感がある。
最近の彼女の業界への妥協だってめざましい。気遣うようにサンデーちゃんに眉をくもらせる。
「う、ううん、なんにもだよ?」
「?」
サンデーちゃんはごくん、と唾を飲んだ。ど、どうしたんだろうジャンプちゃん。え?ジャ、ジャンプちゃんの秘密?へ、返信したほうが・・・。
ぱらぴろりん♪
しかし間もおかずにサンデーの元へと第二通が届く

   件名:素直になりたい。。。
   本文:クラスメイトも知らないホントウの姿。。。
      えっちな内容だから二人だけのヒミツ

サンデーちゃんはがたん、と立ち上がった。
いぶかし気に見ている隣のチャンピオンちゃんに、一言だけ言い置く。
「あ、ちょ、ちょっとお手洗い行ってくるね」
「?ああ」
そのまま、廊下に出る。
廊下に置いてある人気のないチェアに座って、続きを待った。
以後サンデーちゃんに届いたメールの件名はすべて一緒なので、内容だけを引用させてもらう。
ちなみにその間のサンデーちゃんは携帯画面にすっかり釘付けになっている。メールも間をおかずに次々届く。返信どころかただただ、画面に息をひそめる。

524 :

   『フツーの女子●生のアタシ。都内のどこにでもいる女の子』
?変換ミス?サンデーは文字を目で追いながら・・・・。
自分に頷く。ああ、ジャンプちゃん、動揺してるの?だよね、私にだけの打ち明け話だものね。しっ、しかもプライベートな。どっ、動揺もするよね、いくらジャンプちゃんでも。
自分自身が平静を失ってるのを、サンデーちゃんはまったく分かってない。
メールの口調が、いつもの恋人と違うのすら、気付けないぐらい。
   『でも親もセンセぇも知らないの。
    いっつもえっちなコト考えてる制服の下の1●歳の早熟ボディを。。。』
   『いつもは「オナニー?してる子いるのかな〜?」なーんてとぼけるけど』
   『援●交際してる子の体験談で。。毎日しちゃう。。。』
   『放課だって。
    机のカドでオンナノコのえっちな部分を押し付けて欲情してるの』
え?机?机?机・・・携帯をただただ握り締めて、画面を見つめるサンデーちゃんは
「え、ええーーー?!」
声をひっくり返した。そう言えばジャンプちゃん、よく机につっぷして眠っちゃってる。
放課よりも授業中の方が多いな。それでも勉強出来ちゃうのは不思議。
え、え、えっちな部分・・・?ええー?あ、あれってむ、む、胸・・・む、胸をーっ?
うん、それしか考えれないよね。机に当たるえっちな部分だもん。む、胸だね。
わ、私も机に伏せるときには胸が当たるから乗せたり工夫するけれど。
えええー?!え、えっちな意味でそれをしてるって事ー?!嘘、嘘ジャンプちゃん、だっ、だってジャンプちゃんはじゅっ、授業中も・・・そ、それってすっごく・・・・・
   『こんなえっちなアタシのアソコはいつでもぐちょんぐちょんに』
「ぬ、濡・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
サンデーちゃんはぼんやりとつぶやく。

525 :

それからしばらくぴろぱろ、ぱろんぱろん、携帯は鳴っていたが。
サンデーは・・・すっくと立ち上がった。
「あ、いたいたサンデー」
あんまりトイレが長いからか?様子もちょっとヘンだったしな。
チャンピオンが探しに来る。
「〜?」
呼ばれたクラスメイトは
「な〜に?」
やけに緩慢な動作で振り返った・・・・・・
・・・・・

「???」
カフェに帰ってきたチャンピオンちゃんにガンガンちゃんが声を掛ける。
「どうしたの?」
「あ、ガンガン。
サンデーがさ、なんかジャンプの具合悪いかもってさ。様子見てくるから、誰も来なくっていいよって。でも・・・」
サンデーちゃんの様子がおかしいのにチャンピオンちゃんは首を傾げるが。
「へえ。サンデーちゃんなら安心ね」
言われてチャンピオンちゃんは納得。
あのサンデーの事だ、そこらの看護士なんかよりもずっと有能だろう。
・・・そしてガンガンちゃんはたくさん持ってた携帯のうちの、一つをそっと折りたたんだ。
これで仕込みは万全ね。後はたーんとお楽しみあれ。

526 :
仕込みやがったwwwww 
てかジャンプちゃんが可愛いすぎて嫁にしたいんだけどwww
↑こんな感じの事を聞いたサンデーってネタになりそうwww

527 :
>>516
きっとライクさんは講談社に移籍すりと思う

528 :

チャイムが鳴って、ジャンプちゃんはほっとした。
さっき「今行きます、サンデーより」とメールが入ったので、確認もせずにドアを開ける。
無言で手招きしながら、きびすを返した。

それから現実問題に足を止める。どーやって会話すれば?筆談?
サンデー、なんか考えておいててくれてるかな。ジャンプちゃんは後ろに目をやる。
しかしふら〜っと入ってきたサンデーちゃんはそのまま
「?」
ユニットバスに向かった。?トイレ?
すぐに蛇口開く音がしてから、ふわっと湯気。お湯?なんかいい匂いも・・・花とか植物系?
キィ、と扉が開いて、思ったとおりに湯気といい香りがして、一緒にサンデーも出てくる。
そしてやはりふらぁ〜っと窓に向かうと
「〜〜〜?サ゛ンデぇ?」
カーテンをやけにゆっくりとした動作で全部締め出したので、ジャンプはたまらず呼び止めた。
サンデーは相変わらずのろーっとした動作で
「ん〜?」
ジャンプちゃんに振り返る。

529 :

ジャンプはあまり声を上げたくないので黙って湯気を指差すと、サンデーは相変わらずゆっくりとしたしぐさのままにこぉっと笑った。
「ああ、あれ?良かったぁ。こんな事もあろうかと持ってたの。
あれねえ、アロマオイルだよ」
ミョーにゆっくりな仕草と口調が気なったが。昨夜、無理させたかな・・・?
「ジャンプちゃんに必要な事があるかもー、って持ってたの。マッサージや・・・
スポーツ後のマッサージや、抗ウィルス、抗真菌、えーっと、他にはなんだっけなあ、効用の各種。
今、香ってるのは婦人病にも使うから地肌にも、粘膜だってもちろん平気なんだよ〜」
あらかじめ自分で試したし、と付け加えられてジャンプちゃんは感動に胸が詰まった。
ああ、やっぱこのコ、そんなにオレの事を・・・。
スポーツ後のマッサージって。一体、どこまでオレの心配を。
サンデーはふら〜っと自分にやってきてテキパキ服を脱がせた。
されるがまま任せるジャンプちゃん。幸せかも、と目をつむる。
こんなに気持ちの優しい、自分に尽くしてくれるコが恋人なんて。
しかも準備もいい。裁縫セットだとか、そういやこまごま持ってる。コナン君かよ〜ってぐらい。あ、ある意味、正しいか。

サンデーちゃんはテキパキ腕時計も外してあげる。
テキパキ電話の受話器を外して、テキパキ相手の手首を引いて浴室へ連れてって、テキパキはさみを置いてテキパキとジャンプをバスタブに入れる。

530 :

そのままテキパキ自分も服を脱ぎだして、両の手首をそっと後ろ手にされてタオルで結わえだした辺りで、やっとジャンプちゃんの声が上がった。
「・・・ちょっ、サ、サん゛デっ」
そのジャンプに
「・・・?」
サンデーが目を上げた。
「ち゛ょっ、なんっ・・?待、・・・っ」
バスタブの手すりに向けて右足を持ち上げられたので、もがいたジャンプに
「ああ、そっか」
サンデーは納得したような笑顔でうなずいた。
「喉が痛いんだね?良かったぁ、昨日、眠る前・・ううん、寝言でも叱ってくれたしね」
「んぐーっ」
「大丈夫だよ、喉をつぶしたら大変だもんね」
「もがっ、んーっ」
「大事なジャンプちゃんに、そんなの問題外!
ごめんねえ、ちゃんと専門用具を用意できればいいんだけれど・・・その、そんなの取り寄せたら家の人が卒倒するよね。
代用品ばかりでごめんね?」
テキパキとタオルをジャンプに噛ませる。

「えへへ、これで大丈夫だよお。クラスメイトも来ないし。怪我の心配もないね。
あ、皮膚温確認は必ずするよ。
危険ならタオルの切断ができるようにはさみも借りてきた。
良かったあ。もしもの時に気管支炎にも効くアロマも用意しておいて。いい香りする?タオルの端にちょっぴり付けておくね。呼吸の苦しさ、まぎれるかな?」
・・・当然ながら、その感想はサンデーちゃんに返ることがなかった。

531 :

「えへへへへ・・・・・」
サンデーちゃんは、持ってきた小瓶からとろーっと中身を垂らす。
ああ・・なんだっけ。本物のお道具・・・ローション?用意できたらいいのにな。
でも疑われたら困っちゃうよ。
ガンガンちゃんが書いた物語、本当、為になる内容だったあ。
代用品がこんなにさり気ない日常品だなんて。
「えへへ、素直な気持ち教えてくれて嬉しいなあ〜」
サンデーちゃんはぬらーっとジャンプの全身に小瓶を傾ける。
「自分のすべてをあげるだとか、めちゃめちゃにされたいとか、好きにしてだとか、もー、今日のジャンプちゃん、別人みた〜い」
サンデーはジャンプちゃんの身体が程よくぬとぬとしてきたので、次は自分の手もぬとーっと肌に滑らせた。
はあ・・いい気持ちー・・・。やっぱり自分で試した時と比べ物にならないね。
「えへへぇ。ジャンプちゃんのえっちぃ〜」
サンデーちゃんはそのまま、ジャンプちゃんの胸に手を滑らす。先も軽く指ではじく。
「ん゛ふぅ〜」
ころころはじくと、ジャンプはちょっと顔をしかめた。
「授業中、何考えてたのぉ〜?私の事〜?だったら嬉しいな・・・えへへ、あのジャンプちゃんが・・・」
ぬちゅぬちゅまさぐりながら、熱い息を首筋に近づけた。
耳の付け根まで、舌でぬとーっと撫で上げる。
「自分で・・授業中だなんて。
うふぅ。明るくて活発なジャンプちゃんにだーれも想像しないよ〜」
胸を撫でながら、力を強めたり緩めたりサンデーは一生懸命だ。
机の角なんかよりもずーっと気持ちよくなれるよう頑張るんだ。
ずーっと、ずーっと私の方が気持ちいいって。あは。なんだか抵抗が減ってきたみたい。

532 :

ジャンプの抵抗がないのは本当だ。
サンデーちゃんは恋人の両足の間に納まった。
ジャンプの両足はさっきテキパキバスタブの手すりに預けたので、すんなり収まる。
足首を持って右膝は右手すり、左膝は左手すり。ゆわえられて、手首は後ろ。
ああん、即席だと完璧は無理だね。ジャンプちゃんの気分の変わりは早すぎだよ。
でも、サンデーは満足だ。ねちょねちょ、ねちょねちょ撫で回す。
抵抗以前だよねぇ。授業中も我慢出来ないってくらいに、か・・感じる場所だもんね。
「ん゛ぅっ。ん゛っ、ふぅ〜」
「ふぅ〜ん〜〜〜」
あ、ちょっとにゅ・・乳頭?が固くなってきた。
えへへ。感じてくれてるのかな?
手のひらと一緒に、唇をつーっもひたべったい腹へと降ろす。
「ああ、幸せぇ。ジャンプちゃんの素顔を・・・ああん、私にだけぇ?」
サンデーはすべるようにどんどん、どんどん下へ降りていく。
メールの内容を確認するために、視線も降りる。
「打ち明けてくれて嬉しいな。ぐちょぐちょで濡れぬれだなん・・・・・・・・・」
開いた足の付け根を覗き込んで、サンデーは・・・・

「?」
思わずジャンプの顔を見上げた。
「ふぅ〜、ん゛んーっ」
恋人は自分にかぶりを振っている。
・・・?どういう事?いつでも濡れ・・・ねえ?ほら、えっちな気分だよ、って状態なの教えてくれたのに。
覗き込んだそこは、ほぐれてもいない。果実にたとえるなら・・・まだ青い?
考え込んだサンデーは、しかしすぐに表情を明るくした。
「大丈夫、舐めてあげるから」
そっか。拭いたとか。ジャンプちゃんは気まぐれだもん。気分が変わったんだね。
「また潤うまで、私に任せて。ジャンプちゃんなら何時間だって平気ぃ〜」
サンデーの笑顔は、やはりだらしないとしか表現しようもなかった。

533 :

で、それが本当に出来るからすごい。
 ぴちゃぴちゃ。
さっきから水音が止まない。
・・あ、あれからどれくらい・・・・・
サンデーの努力家気質を、一番分かっていたジャンプちゃんが根を上げだす。
うあ、やば。そ、そろそろなんか理性が・・今、ひくっ、って・・・・・
「・・・んっ」
「えへへ〜」
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。

でもなにがすごいって、一番はこのミラクルかもしれないが。
「ふぁ〜ぅうぅ〜ん〜・・・気持ちいいねぇ〜。ジャンプちゃん〜・・・はっ、んぅ〜、大好きぃ〜」
さっきから鼻にかかった声が上がりっぱなし。
子犬が甘えてるような。ユニットに響く。
まるみのおびたお尻が、ジャンプの目の前辺りでぴょこぴょこ上下している。
どうにかして自分も一緒に気持ちよくなりたいらしく、押し揉むように太ももを交差させている。
その足には、いく筋もぬとーっと甘酸っぱい匂い。・・・確認できる者もいないが。
「はぅん〜・・んん〜はっ、ぅ〜ん、気持ちいいねぇ〜・・・ジャンプちゃんも気持い〜い〜〜〜?
どうひよ、わたひ、すごい気持ちいいよぉ〜・・・・・・」

うう、き、気持ちイイかも・・・。
恋人の一生懸命な奉仕と甘え声に、ジャンプちゃんの背筋に、ゾクゾク甘い痺れ。
こくこく頷いた。
それに視線を上げて、喜びにさらに潤むサンデーの目。
・・・・・・・完全にトんでる目。
ここまで、ノー・ドラッグ。薬物無しでも、その目はうっとりと霞がかかったよう。

534 :

き、気持ちいいけど・・・・。
ジャンプちゃんは、またひく、と動いたのにぎゅ、と目をつむった。
気持ちいいけど、なんでさっきからおんなじトコしかいじんないんだよっ。
あーやば、だめだ。頭がぼーっとしてくる・・・・・
サンデーちゃんは上がりっぱなしの息の合間に、ジャンプちゃんの花芯を舌先をかたくして舐めたり、平らな部分で転がしたり一生懸命だ。
でも、それだけ。それ以上は、なにもしない。

ジャンプはこの間、俗語を使わないサンデーにあからさまな苦笑いをしたが。
心配はいらない。恋人のスペックは、ちゃんと斜め上ぐらい。
えへへ・・ガンガンちゃんの創作物にあったみたいな事しちゃお。
どきどきと唇をなめる。
い、隠語・・・言わせちゃえ。
いいよね、好きにして、ってメールで言ってくれたし。あん、幸せぇ。
「ふぅ〜ん〜・・・ジャンプちゃん、ここ、なんへ言うか知ってる〜?」
ジャンプはこくこく、こくこく頷く。
「ここねえ、陰核って言うんだよ〜。小学館版でね」
ああ、あのくだり、なんどもいただいたよお。
もう暗記もできてる。ガンガンちゃんは天才だよね。
「い、隠語だとねえ・・・・・クっ・・・・・・・・・・・・クリちゃんっ、な、なんて・・・言うんだよぉ。
英名を略した上にちゃん付けなんだよ!すごいよねぇ」
ジャンプはこく、こく頷く。
「覚えた?ああ、ジャンプちゃん、大分気持ちよくなってきたみたい〜うふぅ〜大好きぃ〜」
こく、こく。

535 :

こくこく、頷きながらジャンプの方はほとんど聞いてない。
気持ちよくなる、と言うか、ジャンプは軽く何度かイってた。
あ、やぱ。今太ももから、ぴくんって踵まで・・・ちょ、嘘、なんでこんな・・部活だって、こんなけいれん・・・

「えへへ〜。じゃあねえ、もっと気持ちよくして欲しかったら、クリちゃん気持ちいい、って言ってみて〜」
普段のサンデーちゃんなら、口にする前に顔色なくして気絶している。
しかし彼女の戦闘値はとっくにマックス。
目はとろーんと、ジャンプが映っているのやら。

言えって、どうやって?
基本の疑問にも、誰も答えようもない。ジャンプがただかぶりを振るのに
「あぅん、言わないと、いつまでも続けちゃうよ〜」

だめだ、き、気持ちいい・・・。
ジャンプちゃんはまともな思考が出来なくなってくる。や、やば・・・あ、頭がもーろーとしてきた。やば、オレがしっかりしないと・・・
なのに、ジャンプは、ヘンな事を、きちんとした文章で考えた。
あれ?オレって起きてからトイレ行ったっけ?

536 :
わっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふ(ry

537 :

サンデーちゃんはやっぱり素直になるのは難しいかなー、とぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ舐め続ける。
ああー・・・気持ちひぃ〜・・・。
ちょっと舌入れたりしたら素直になれるかな?
入り口あたりでストップして、それを繰り返したり。
サンデーちゃんはやっとメールでの告白通り、更にはひくひく、けいれんまで繰り返しだしたので準備万端だろう、とまず入り口周辺をぐるっと舌を這わせた。
「っ!」
ジャンプの身体が跳ね上がる。
同時に鼻にかかったサンデーちゃんのため息。
ジャンプちゃんの表情を見るともう半泣きだ。も、もうすぐ素直になりそうな・・・。
「あ、そっか」
表情を観察してサンデーはやっと気付く。
返事って。出来る訳ないよ。タオルで喉、保護されてるのに。
なのでサンデーはちょっとハードルを下げる。
「ごめんれ、訂正、訂正。
じゃ、今回は頷いてね〜。その通りだったら頷くんだよお?」
ああ、もっとすごい事したいのにな。
でもいいや。ジャンプちゃんの本音は分かったんだもの。
また次の機会にはさせてもらお。
ジャンプはこくこく、頷く。

538 :

・・ふぁん、幸せぇ・・・。
「クリちゃん、気持ちいいって思ってるう〜?」
ジャンプは涙目でこくこく、頷く。
「じゃ・・・じゃあ、にょ、女いっ・・陰部・・・・・・・・・・・・ここ、なんて言うか知ってるぅ〜?」
こくこく。
あはっ、さすがジャンプちゃん。
「おっ・・・・おっ、おっおおおおおおお・・・・・・・・・・・・・・おっ、・・・・・・・・・・・・おっ・・・
あぁんっ、し、知ってるならそれ!ね?触って欲しいって思ってるぅ?ね?ねぇ〜?」
ジャンプはこくこく頷く。
返事を聞いたサンデーが、それだけでイってしまったように「くんっ」と鼻で鳴く。
長いため息が、ややしてから続いた。ああ・・おかずよりもやっぱり本物が一番興奮するう・・・。
よひ、いっぱい気持ちよくしよ。舌より指を使ったほうがいいかなー・・・?
「ん゛ーっ、んぅっ、んぅーーっ」
ジャンプちゃんの気持ちいい、前回の記憶どおりの腹側を丁寧に撫でこする。
すごい反応。くるんって回すとぐちょって音まで。あん、きゅーきゅー締め付けるの、大好き。気持ちいいよ、って言ってもらってるみたい。
ピンク色のもやのかかる頭で、サンデーちゃんの思案はつづく。
そうだ、ジャンプちゃん、舐めてあげる前よりもぷっくりしたし。
サンデーはまた自分の唇をしめらす。クっ・・・クリちゃんなんて隠語にまで頷かされたのに。
一緒に舐めてあげたら、もっと泣き出すかも。
ためしに舌先で撫でてみたら、すごい反応を返された。
「んぅっ、ん゛ーっ、んぅーっ」
しかも全身が跳ね返るみたいな。うわー!すっごく気持ちいいんだ!
サンデーのブレーキはもう機能しなくなる。
指は一生懸命、ぐちゅぐちゅ掻き回す。
が、その間、口はお留守なので使ってみることにした。
記憶どおり、唇でまずやわやわ揉む。吸ったらジャンプちゃん、ものすごい声あげたんだよね。
なのでちゅっ、と・・・・・・・

539 :

「んぁ・・・っ!!」

ジャンプちゃんの頭の中が真っ白になった。

それと、魚が跳ね上がるようなバウンドする身体。

何かがぴちゃっ、とサンデーにひっかけられるのも。

どれが一番最初かは分からないが、サンデーちゃんは
「ん゛ぁ〜・・・・んあっふぁ・・・・・・・・・・・・・・〜っ・・」
「・・?」
何が起こったのか分からないようにきょとん、とした。
かかった物を手でぬぐった。やはり、きょとん、と手のひらをまじまじ見る。
「んあぁ、ぅん゛〜、んうぅ〜〜・・・」

そして納得が行ったように、顔が輝いた。嬉しそうに。
ジャンプの体にしなだれかる。
「なあんだ!なあんだ、あのね、平気だよう。だって私が自・・ひとりえっちでいただくおかず、」
「・・・っぃい!!!」
猫がのびをするような。
ついでのように、さんざ舐めたあげく吸われて、でも手加減はない。
だってバーサクだもの。きゅうっとつままれて、ジャンプの目の前がまた白くはじける。
「いっつもジャンプちゃんが気持ちよくなっちゃって失禁しちゃう所なんらよ〜。
気持ち良かった?良かった?ジャンプちゃんなら掛けられても全然平気だよう〜好きぃー」

540 :

イったばかりのこの仕打ちに、もうジャンプからは完全に応答はない。
最初から通じてないが。しゃくりあげて、目の光も怪しい。

サンデーちゃんはぐちょん、とジャンプちゃんの足をまたぐように落ち着いた。
「んっ、はあ、あん、あん、んぅー・・・気持ちいいねへぇ〜大好きぃ〜・・・・」
ジャンプちゃんの太ももにも、とろーっと筋を作る。
「あ、そうら、ジャンプちゃんさあ、『貝あわせ』って知ってるぅ?」
反応すらないが、サンデーはかまわないらしい。
ろれつもそろそろあきらめた方がいいのか。さっきからひくひく足先跳ね上げてるジャンプの太ももをよいしょ、と引っ張る。
「えへへ、ジャンプひゃんの気持ちいい所と私の気持ちいいところをくっつけちゃうの。考えた人すごいよねぇ、天才らよねえ〜。
ふぅ〜ん。一緒に気持ちよくなれるんらよ?やろうよ、いいよね」
相変わらず、無反応。だがサンデーは気にならないらしい。
よいしょ、よいしょ、となんとかジャンプの足の付け根にまたいで、一生懸命押し付ける。
「気持ちいいよねへぇ〜・・・ああん、幸せらぉお。今日はいっぱい、いっぱひ気持ちよくなろうれへぇ〜・・・」
「・・・・・」
頬も手で包んで、れろれろちゅっちゅ、唇を這わす。
「なんべんもなんべんも天国行こうれぇ、ジャンプちゃん、大好き大好き、んっ、誰よりも大好きだよぉ〜」


へんじがない
まるでサンデーのターンをつげるようだ

541 :

ジャンプちゃんは、自分がベットで天井を見ているのに気付いた。
・・・気付けるまでぼーっとしてるとはな。体もだるくて腕も上がらないし。
頭を窓側に倒して、カーテンが半開きになってるのを見た。
ベット側を残して、向こうは光が差してる。
それからベットの上を見た。オレの服、きちんと畳まれて置いてある。
隣がサンデー?なんとなく浴室も見なくても分かる気がした。きちんと流してあって、バスローブまで畳んであるんだよ。この教科書通りムスメは。
それから、自分の喉を確かめた。
「あ、あ〜」
・・・本当に治ってる。声はすべるように出るし、喉の痛みもなくなった。

そして自分の横で丸くなってる恋人を見る。
ジャンプちゃんは・・・わなわなと自分が震えてるのが分かった。
満腹した子猫みたいな。ミルクを平らげて満足して丸くなる子猫みたいな・・・。
「あ、ジャンプちゃん」
身じろぎや声に気付いたのか。サンデーが顔を上げた。
ジャンプちゃんの感想、そのままだ。
幸せそうな、胸もなにもかもすべてがいっぱいです、と言わんばかりの笑顔。
「目が覚めた?
ああ、気持ちよかったねえ。私、すっごい幸せ。また一緒にいっぱいいっぱい気持ちよくなろうね」
しなだれかかる恋人にも・・・ジャンプの震えは止まらなかった。

542 :
ガンガンちゃんは腕時計を見た。
思ったよりも遅いなあ。チェックアウトの時間、過ぎちゃう。

「ちょっと!ガンガン!」
心配していたら。
当の二人が来てくれたので、ガンガンちゃんは安心したように笑顔になった。
「あら、ジャンプちゃん。サンデーちゃんもちょうど良かっ・・・」
「良かねぇーっ!!」
予想はしていたけど、投げつけられるとは。
ガンガンちゃんはジャンプに叩きつけられた携帯をキャッチした。意外な運動神経。
「あっ、あんた・・・っ、あんた、どーゆう事だよ、どーゆう事ですか?!どーゆう事ですか、ご説明お願いできませんかっ!!」

あらら、相当、怒ってるわね。仕方ないけど。
あらかじめ返事は用意してあったのだが、それでもガンガンはきちんと携帯に目を走らせるしぐさをした。
「やだ〜。業者さんメールの事?」
「はあ?!」
噛み付くジャンプ。
「出会い系サイトって知ってるでしょ?」
「う・・・まあ・・」
「宣伝メールに怒ってるの?何通か届いて、で、最後のメールに・・・」
ガンガンはころんころん笑いながら最後のメールを二人に見せた。
「興味を持ったらこのサイトにアクセスしてね、でおしまい。
ご存知の手口。で、これの何に怒ってるの?」

543 :

ジャンプは口をぱくぱくさせていた。な、納得が行かねぇーっ!
「!な、なんでサンデーに?!サンデーが貰うわけないだろ、近づくわけも・・・!」
「やあね。我が家の社員のメルアド、どこで漏れたのかしら。業者は無差別で嫌ねぇ」
ガンガンはまったく動じない。ころんころん笑い続ける。
そしてさっきから、もう身の置き場もない、というくらいに小さくなってるサンデー。
ジャンプの後ろで縮こまってるサンデーちゃんにいたずらっぽく笑いかけた。
「なるほど、びっくりしちゃったサンデーちゃんは従姉妹に泣きついた、ってとこ?」
びくっ、とサンデーの目線が上がる。
「サンデーちゃんに免疫あるわけないものね。
ジャンプちゃんに泣きついちゃったんだ。かえって悪い事しちゃったかしら」
のぞきこんだ目が、おびえるように視線をうろつかせたが・・・
「そうだよ!!」
ジャンプがサンデーの手首をひっ掴む。
「携帯はオレが探してあげるし!もうお返しします、今後、一切!ご親切は結構です!!」
怒鳴ってから、そのままサンデーの手首を掴んで、きびすを返した。
・・・今、プライドが微妙にくすぐられた。
あー、もうあのおねーさま、なんかやりにくいよ、つかみ所がねーんだよ!!

「・・・・・こじれたら、どうするつもりだったんスか?」
最初から最後まで、はたで無言でそれを聞いていたマガジン。ガンガンにぼそっと質問。
訊ねられると、ガンガンちゃんは大げさに相手を覗き込んだ。
「そしたら、この子猫ちゃんがなんとかしてくれるんでしょ?」
鼻をつまみながら笑う。
つままれた鼻を押さえて、マガジンは改めて思った。
ダメだ、やっぱヘンな悪循環にハマってる。

544 :

ジャンプちゃんはサンデーの手首を掴んで、後ろ足で砂蹴りたいくらいだった。
あー、なんか納得行かない、なんか、なんか!!
「・・・」
でも引っ張ってる相手の足取りが・・・
「・・・別にあんたには怒ってないから」
この世から消え入りそうだった。
最初から泣き顔だったけど、このコ、泣かれても分からないんだよね。
声押しすし。
サンデーは小刻みに肩を震わせている。
喉が時々、しゃくりあげるように上下するが。
苦しくないのか?上下させるだけで声も上げない。
ジャンプは立ち止まった。
「ごっ、ごめんなさ・・・っ、ごめんなさい・・・・・・っ」
サンデーはかぶりを振って、謝罪しか声にしなかった。
「ごっ、ごめんなさ・・・・っ、し、叱っ・・・・・お、怒って、叱って、お願い、なっ、なんでも言う通りするか・・・・っ」
「・・・・・」
「ごっ、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・き、嫌わないで、お願い、嫌わないで・・・・」
うつむいて、ずっとそればかりを繰り返している。
ジャンプちゃんは荒れている胸中を、堪えるよう低く唸る。

「怒ってないから!」
ジャンプは両手を握ってから、続けて訊ねた。
「でもさぁ・・・あんた、ちょーっとオカシくない?
そもそも、泣くまで、とか暴れた場合の保護として、とかどーしてそこまで至るよ?
その部分、なーんか自分でも矛盾してるなーって?思った事は?」
はっきりさせておいた方がいい部分は外さない。
聡明な子だ。握る手に力を込める。

545 :

朝に人ごみがあふれるロビーで、二人の少女。
高い天井に談笑が響く。
サンデーちゃんは握る手に力をこめられて、震える声の合間あいま声を絞り出す。
消え入りそうだったサンデーちゃんにとっての、それが精一杯のようだ。
声は震えているが、切実な声色。
訴えるような。

「わっ、私、私、きっとジャンプちゃんの事、好きすぎるんだ・・・・・・・・・・・・・・・っ」
「・・・」
「・・・それがいけないんだ、わっ、私・・・、いっつも私がジャンプちゃんを一番に気持ちよく・・・・・・っ」
サンデーはかぶりをずっと振りながら、か細い声を振り絞る。
「・・・・良くだって、なんでも、なんだって一番、私がジャンプちゃんに・・・っ、
なんでも私が一番美味しいものを、一番に綺麗な、一番に駆けつけて一番、一番不自由がないように・・・・・・・・・」
「・・・・」
「私が、私が一番・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・世界で一番、ジャンプちゃんを幸せに・・・
いつも、いつもそればっかり・・・・・・・・・・・・だから、だからきっと駄目なんだ、わっ、私は、私はきっと・・・・・・・・・・・・・」
つづく言葉は、泣き声にもみくちゃにされる。

546 :

切れぎれに、それでもなんども私が、とか世界で一番、と聞こえるが。
「・・・・・」
ジャンプちゃんの肩が・・・・・・・ゆっくり大きく上下した。
ため息と一緒に。
そうして、苦笑いする。困ったような。
心底、参った、と言うように。
どうにも解けない難問の前に、途方に暮れるような。
腰に手を当てて、天井を仰いで。

がしがし頭をかいてから、相手の手首を柔らかく握りなおす。
「ま、まあ・・今、話すことでもないっか」
勢いをつけるように、自分に引き寄せる。
「ごっ、ごめ、ごめ・・・・・っ」
「ほら、泣かない、泣かない。まずは失くした携帯だよ。それが先だった。
またこんなの起きたら、困るしな〜」
「ジャンプちゃ・・・」
「つか、オレが困る。・・・・・・・・・・ずーっと続けるんだもんな。オレ達、この関係」
「!!」
「ね?オレが一緒に探してあげるから。あんたも一緒に探す」
「ジャ・・・・っ」
「オレのリードに着いて来れない?オレのリード、嫌?不安?」
ジャンプの笑顔に、サンデーがさっきまでとは違う意味で喉を詰まらせた。
「つっ・・・・・・・・・・・・・・着いて行きますっ」
何度も、何度も頷いて。
「行かせてください!!どこでも行きます、どこだって平気です!!」

547 :

・・・さて、ガンガンちゃん。
ノリノリだった気分が萎えてきた。なーんだか、面倒な風向き?
去って行ったジャンプの様子を思い出す。
ジャンプちゃん、すっごく怒ってた。
ついでにサンデーの携帯も取り出す。
面倒な事になってきちゃった。火の粉が飛んできたら、すっごく面倒。
どっか誰かに丸投げできないかしら。
ちらっと目を上げたら、オレンジのナイキのスポーツバック。
ジャンプちゃんのバックじゃない。置いていったのかしら?
ジャンプとサンデーを視線で探すと、玄関ホールのひとごみにまぎれている。

 「家に連絡は?」
 ジャンプはサンデーに質問。
 「まだホテルにあるって・・・」
 「あー、あんたキッズ携帯だもんね。場所が分かるってヤツ?
  あはは、もう中等科だろよ〜。
  よし、じゃ、オレがあんたの携帯にかけてあげるよ」
 「・・・ジャンプちゃん・・」
 「大丈夫、ずーっと鳴ってたら、誰かが気付くかも。
  どっか奥の方にあっても、何度も鳴らしてたらさすがに気付いてくれるよ。
  だいじょーぶ!そんな泣きそうな顔すんなって」

面倒になったガンガンちゃんは、取り出した水色のドコモをぽいっと放る。
放った先は、ナイキのスポーツバック。

 「そんな顔、しない!
 意外と近くで鳴ったら吹かね?すっごい近く。
 えー?あんだけ騒がせて、こんな近くかよ〜って。な?ほら、元気出して!」
 ジャンプちゃんはアドレスからサンデーちゃんの名前を選ぶ。

548 :

見ていられなくなったマガジンちゃんが、とうとう目をつむった。
勘弁して、ループイクナイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






          悪循環、上等!!彼女達はようやくのぼりはじめたばかりだからな
                     このはてしなく遠い漫画雑誌坂をよ・・・

549 :
いただいたアイデアを、その通りに出来なくってごめんなさい
ジャンプちゃんがネコに関しては、ジャンサンへの勝手なイメージでこれ以上が無理でした
サンデーちゃんはジャンプに完全追従と言うか、お前ジャンプちゃんの事好きすぎだろ、と勝手なイメージがあります

>>434
投下終わりました。色々と不慣れでお世話かけます
花ゆめとララは学生時代に読んでいたので、wktkして待ってます

550 :
>>549
ふぅ…
GJ!すごい良かったですw
てかジャンプちゃんが総受けにしか見えなくなってきたwwwww
 
ライバルちゃんも読める機会があったら読んで下さいwそして小説に出して下さいw
もしライバルちゃんを出す事になったら
サンデー&マガジンで面倒見てたライバルちゃんがマガジンたんに惚れてガンガン姉さんをライバル視する感じで
 
 
 
ぶっちゃけ花ゆめとララを読んだことが無いんで書けないorz
キャラ的によさそうな感じだから書いてみたいとか言っちゃっただけですwktkさせてごめんなさい。
代わりに今度小ネタでチャンピオンちゃんの書いてみようと思います。

551 :
>>550
読んだ事がないと書けないのはとてもよく分かります
ライバルちゃんは読んだ事ないので無理です

チャンピオンちゃんktkr
この間チャンピオンを読んだ時、何故か安心感と言うか変わりのない幼なじみに会った思いがした。タマラン・・・

552 :
>>551
好敵手「本屋寄った時とかに読みなさい!ξ///)ξ」

ライバルちゃんはツンデレだと思うんだ(´・ω・`)

553 :
うたい文句のキャラ付けの素晴らしさには泣きそうになった

554 :
よっこらせっくす

555 :
あー少年誌総合スレが立ってる・・・みつどもえの百合ネタでも振ろうかなと思ったら
なんかぜんぜん違うスレだった

556 :
ほっしゅ

557 :
>>555
よう俺

558 :
>>555
やあ俺

559 :
>>555>>557-558
おっす俺
その後すっかりこのスレに住み着いたがな。

560 :
ほし

561 :
チャンピオンちゃんを想像で書いてみた。





「はぁ……」

教室の窓際で校庭をながめながら一人でため息をついている娘が居た。
彼女の名前は週刊少年チャンピオン、名家である秋田書店の娘である。もっとも今では落ちぶれてしまっていて他の名家である集英社、小学館、講談社に比べて勢いが無い状態である。

「ジャンプ達は良いな……楽しそうで」

さっきから彼女が眺めていたのは、体育の授業で、クラスの女子達が2チームに別れてのドッジボールだった。何故彼女が教室に居るのかと言うと、体育が始まる時に体調が悪いと先生に言って自習にさせてもらったからである。

「やっぱり混ざればよかったかな……でも今のジャンプに私なんか歯が立たないしなぁ……」

彼女は基本的にいつも一人だ。しかし本心では寂しいのである。

「小さい頃はジャンプとよく張り合ってたのに今じゃこんなんで一人ぼっち、影が薄いと言われるし」

「はぁ……」

何故寂しいのに自分で壁を作り、一人になってしまうのかわからない、本当はあの集団に入りたいのに。

「なんで私、こんな風になっちゃったんだろ……」

それは誰にもわからない、自分でさえわからないのだから。

562 :
なんか色々違う気がするなぁ……
とりあえず自分の中のチャンピオンちゃんはこんな感じです。

563 :
>>562
しっとり雰囲気GJ!!
もろい一面がぽろり的なのがタマランのだが、見せる相手がいるとしたら誰がいいんだろ?
お姉さん?ダメだ知識が足りん……

564 :
ガッシュ思い出した

565 :
実際レズはわざわざ推薦される事じゃない。レズとして社会に何を残したの?子供産まない確率高いし、やたらリベラルぶるし、なんでもかんでも差別だ差別だとかほざくし。まずは自分がレズでこの日本で何を差別されたか言ってみろよ。優遇されないのは差別じゃねーからな

566 :
>>563
やっぱりガンガンお姉さまじゃないかな?遊ばれそうだけどw
 
マガジンたんでも良いかもしんない

567 :
ガンガンお姉さま×マガジンたん(エロいの)見たいのは俺だけ?

568 :
いんや。ワシも見たい。見ながらチンポしごきたいぜ。

569 :
きらら×ぱれっとは出来ないかな?

570 :
近代麻雀×LO

571 :
スレイブ・ヒロイン×闘姫陵辱
レモンピープル×ペンギンクラブ
すみません、漫画雑誌で知ってるのこんなばっか……

572 :
なかよし×りぼんも忘れないでください

573 :
ちゃおは??

574 :
イラストに擬人化するのは無理そうな

575 :
まあそういわずにウンコも擬人化しちゃえよ

576 :
なぜかファミ通登場w

577 :
>>573
3Pですねわかります。
 
 
 
>>574
誰か絵師こないかな(´・ω・`)

578 :
>>576
カップリングするなら誰だろ?
週刊×月刊みたいな姉妹CPとか良さげw

579 :
またサンデーちゃん達の話が読みたい(´・ω・`)

580 :
誰か書いて

581 :
作者様へ
 
作品が素晴らしいのでモバゲーのクリエーターにまとめても良いですか?
もちろん転載と書きますしハンネを言ってくだされば書きます。

582 :
>>581
名前欄に61、131、287、それと各話のタイトルが入ってるSSを書いた者です。>>70の中に立て主さんの文章を組み込ませていただいた部分があるので、そちら以外ではありますが
年齢制限ある場所ならどこでも好きに転載しちゃってください。光栄です
モバゲーってやった事ないんですが18禁もおkなんですか?
HNは特にありません。必要な場合には「一住人」でお願いします

583 :
>>582
ありがとうございます。
文章なら過激じゃなければある程度大丈夫なんですよ。
画像だとすぐ消されますけど。
 
 
後、時間がある時にで良いのでガンガンお姉さま×マガジンたんをお願いします。

584 :


585 :
ほしゅ

586 :
ほし

587 :
ほす

588 :
週刊サンデーの44号読んだ人いる?
井上和郎の「スイートサンデー」って漫画

589 :
ほし

590 :
週刊少年誌に連載してる漫画で百合があったら語るスレ
というのが欲しい

591 :
>>590
ジャンプなら既にある
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1150167088/
他雑誌のスレが必要ならその雑誌名でスレ立てればよい
ここは擬人化系スレ

592 :
ただまあこのスレタイ的に擬人化スレだと判断し難いけどw
あと擬人化総合スレってあったと思う

593 :
ほし

594 :
保守

595 :
>>サンデーとジャンプで百合の作者様
ガンガンお姉さま×マガジンたんが読みたいであります。

596 :
>>595
ご希望どうもありがとう。ですがガンガンは読んだ事がないので無理であります
読んだ事ないながらガンガンちゃんへ(雑誌的に)なにくれとなく錬金してくれた連載が終わった後の彼女が心配です
ガンガンちゃんはコミックブレイド姉妹たちに愛憎の感情を抱いてもいい気がしました

597 :
ガンガンスクエアエニックス姉さんとマガジンたんのコンビ好きなんだけどなぁ(´・ω・`)
 
とりあえずカップリングとかはお任せするんで甘々な話が読みたいです。
もちろん暇な時にでいいんで。

598 :
>596
つゼロサムちゃん

599 :
ゼロサムちゃんも絶縁した妹でしたかw
複雑なお家事情だな、ガンガンちゃん

600 :
600

601 :


602 :
>>599
一応友好的に別れてるのでそこまでは

603 :
ほし

604 :
ほしゅ

605 :
あげほ

606 :
age

607 :
age

608 :


609 :
http://adultbody.info/ に別タイトルの同動画があって困ってるんだけど。正しいのどっち?

610 :
少年誌の擬人化で百合とかww
その発想はなかったww

611 :
結界師のまほら様×時音に萌えて、このスレに来たが
予想したのと全然違うスレだったw

612 :


613 :


614 :2011/07/15
まだあったんだこのスレw

新しい職人かここで書いてた人こないかなぁ
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