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2013年10エロパロ711: 腹黒女が純真な男に惚れてしまうSS 第2章 (120) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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腹黒女が純真な男に惚れてしまうSS 第2章


1 :2010/08/06 〜 最終レス :2013/06/09

ビッチ系総合 まとめ
http://www40.atwiki.jp/bitchgirls/

前スレ
腹黒女が純真な男に惚れてしまうSS
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1211651251/

2 :
541です
スレ立てありがとうございます
続きです

3 :
 
「……っ」
「…」
 お互いに、何も喋らなかった。
 僕と襟沢は、秋桜の花壇を掘り返していた。
 こうなって来ると、むしろこの豪雨は好都合だった。
 水を含んだ土は、いとも容易く襟沢の細腕に攫われていく。
 確信があった。
 所詮女の手で掘れる深さだ。
 見つかる。
 まるで狂ったように僕は墓を暴いていく。
 掘るんだ、今は掘ることだけを考えろ
 全部後から考えればいい
 僕は何よりも見たい
 追い求めてきたものを、目に入れたいんだ
 ザクッ!
「―ッ」
 僕は、青柳の体が見たい。
 ゴツ、とシャベルに鈍い手応えが伝わった。
 あった?
「…!…!!」
 一瞬にして頭に血が上り、興奮状態に陥った僕は、
何度も何度も何度も何度もその場にシャベルを打ち付けた。
 ガン!
 ここだ。
 ガン!
 ここだ!
 ガン!
 ここだ!!
「先生!先生!下ろして!止めて!!」
「襟沢ここだ!ここなんだよ!」
「もう見えてる!!」
「え?」
 僕は、漸く手を止め、まじまじと土塊を見つめた。
 そこには、青柳先生と見られる体が掘り起こされていた。
 僕は頸部にシャベルの先を叩き付けていたようで、
青柳先生の首はパックリと切り取られてしまっていた。


4 :
かなり中途半端なんですが
とりあえず今日は以上です
スレ立てしてくれた人本当にありがとう
毎回長文で申し訳ない…
あと2回で多分終わるので、あと少しよろしくお願いします
では

5 :
ミステリーとして凄絶な展開になってきたな
上原先生、ほんと命拾いしたなあ……

6 :
18
 およそ3ヶ月。
 土中に埋められた青柳洋介の体。
 一部は白骨化していたものの、桜井先生と比べればまだ、肉付きは良い方だった。
「ウッ」
 襟沢が口を押さえて、その場にうずくまる。
「吐け、吐いたら楽になる」
 僕はぼんやりと屍を見つめながら、呟いた。
 背後で嗚咽と、ビシャリビシャリと何かが飛び散る水濁音が聞こえてきた。
 終わったのか?
 僕は呆然と、自問していた。
 青柳洋介の遺体が出た。
 犯人は間違い無く中島歩美だ。
 まるで揺るぎのない真実に、実感がわかない。
 いや、実感なんて後回しでいい。
 今は襟沢を支えてやらねば。
 そして警察に通報して……

「おや、どうなさったんですか?」

 その声は、これだけの土砂降りにも関わらず、やけにハッキリと聞こえてきた。
「―――」
 振り返ると。
 5m程先に、青いレインコートを来た平塚先生が立っていた。

 青いレインコートは暗闇の中浮き上がり、奇妙な存在感を示していた。
 何故かシャベルを手にした平塚先生は、不思議そうに僕らを眺めている。
 僕は慌てて平塚先生に駆け寄った。
「平塚先生!何故こんな時間に!」
「いややはり花壇が気になりましてね。学校中の植物に防護ネットを張っていたんですよ」
 それで用具倉庫が開いていたのか。
「先生こそどうしたんですか、こんな夜更けに。それに…」
 平塚先生は僕の背後の花壇に目を移し、悲しそうに目を細めた。
「その花壇の有様はどういう事です?」
「あっ平塚先生これは…。聞いて下さい実はっ」
「上原先生ッ!!!」
 僕が喋り出す瞬間、悲鳴の様な襟沢の絶叫が言葉を掻き消した。


7 :
 
「そいつは駄目!」
 襟沢は。
 青柳洋介の体を見た時よりも、青ざめた顔を晒していた。

「…襟沢?」
「わたし、分かった…」
 白い白い、能面の様な面で、襟沢は囁く。
 胃液を口の端に垂らしながら、必で言葉を紡ごうとする。
「そいつなの。先生ッ!そいつなの!」
「何の話だ?襟沢何を」
「ごめんなさい先生!嘘吐いてごめんなさい!」
「嘘?」
「先生にずっと学校に居て欲しかったの!」
 襟沢は泣いていた。
 この豪雨の中、涙が判別出来る程に顔を歪め、泣いていた。
 襟沢は叫ぶ。
 この雨に、風に、嵐に負けないくらいの大声で、襟沢は叫んだ。
「コイツが犯人なんだ!!」
「何を」
「私をレイプしたのは平塚なの!!」
「その花は、折角良い場所に生えていたのに」
 平塚雅夫は。
 相変わらず、柔和な微笑みを浮かべていた。

 平塚先生が襟沢を犯した?
「何だって…?」
 俄には信じがたい襟沢の主張に、僕は平塚先生の顔を見やる。
 どういう事だ。
 平塚先生は一度だって、僕達に、青柳洋介に、中島歩美に関わる事は無かった筈だ。
 何処でどう関わる事が出来ると言うのだ。
「襟沢…それは確かなのか?」
「襟沢さん、君は何か勘違いしているんじゃないのかい? レイプなんてそんな恐ろしい…」
 平塚先生は、本心から困惑した様子で襟沢と僕を交互に見やる。
「本当だよ!コイツにヤられたの!」
 襟沢は必に僕に訴える。
「コイツの花壇に青柳が埋まっているなんておかしいよ!
平塚が青柳を埋めたんだ!平塚が青柳をしたんだ!平塚が!」
 襟沢は完全にパニックを起こし、平塚!平塚!と絶叫している。
「上原先生…襟沢さんは大丈夫なんでしょうか?」
 一方平塚先生は、オロオロと状況に戸惑いつつも、教師として襟沢を心から案じている。
「襟沢……」
 この期に及んで、僕は選択を迫られていた。
「……僕は」
 そして僕は、いつか藤本に言った言葉を思い出していた。


8 :
 
 『襟沢以外に大切なものなどない』
 襟沢が笑いさえすれば、それ以外に大切な事など存在しないのだと。
 それはそれで、そのままの事だ。
 真実で、真理だ。
 平塚先生の言葉は理屈が通っていて、冷静で、非の打ち所がない。
 しかしそれでは、襟沢由梨が笑ってくれない。
 そう。
 僕もいつの間にか、狂ってしまっていたのだ。
「平塚先生…お話を聞かせていただけますか?」
 僕はシャベルの切っ先を平塚先生に突き付けた。
「上原先生、君…」
 平塚先生は驚いた様な顔で僕を見つめ
 ゴリッ
「何をやってるんだね」
 僕の左膝を思い切りシャベルで殴りつけた。
「ッア」
 頭が一瞬にして真っ白になる。
 次いで激痛が足から頭へ駆け巡り、口から得体の知れない言葉が飛び出す。
「う、あアアあああああアあぁあっ!!!」
「先生!?」
 足を押さえ、僕はその場に崩れ落ちた。
 襟沢が顔を引きつらせ、僕に駆け寄る。
「先生大丈夫!?先生!!」
「襟沢近寄るな!」
「上原先生も厄介事に巻き込まれてしまいましたねぇー…」
 騒然とする現場に反し、平塚雅夫は至って呑気に呟く。
「平塚先生!何故こんな…」
「そうですね」
 青いレインフードの影で、平塚先生の目がキョロリと蠢く。
「確かに青柳先生をしたのも埋めたのも私です」
 平塚先生は、いとも簡単に僕らの前で自供した。


9 :
 
「何故…貴方は何の関係も無い筈だ」
 僕の問い掛けに、平塚先生はいつもの優しい微笑みを浮かべ。
「上原先生、私はね。ここの生徒を何人も強姦してるんですよ」
 僕の頭を思い切り蹴り飛ばした。
「グッ」
「先生!」
「趣味でねぇ、もう止められないんですよ」
 左足は、完全に折れているようだった。
 殴られた衝撃で意識が混濁する。
 強姦、襟沢、生徒……。
「あ…」
 視界が歪む。
「だから僕も、叩けば埃が出る身なんですよね。
あの現場を見た時は、本当びっくりしましたよ」
 じり、と平塚先生が僕達に歩み寄ると、襟沢が吠える。
「先生に触るな!」
 襟沢は倒れている僕を庇いながら、平塚をキッと睨み付ける。
 何とか逃げ切れないか、裏をかけないか、襟沢は考えてる。
 しかしその手は震え、膝がカクカクと笑っていた。
「バカ襟沢…」
「……」
 逃げろと呻いても、襟沢は意固地に僕から離れようとしない。
「もう言い訳出来ない位の瀕状態でね。
何とか外に出すのを引き留めて、とりあえず首を絞めてして」
 平塚先生は襟沢の罵声を意にも介さず、無頓着に話を続ける。
 今にも意識を失いそうだというのに、
耳だけが食い入るように平塚雅夫の話を聞き入っている。
 そうだ藤本が出て行った後、歩美先生が来た後、
平塚先生が来たのだ。
「私も警察は勘弁でねぇ。聞けば襟沢さん絡みだっていうじゃないですか」
 芋づる式に私まで挙げられたら大変でしょ?
 だから正門を閉めてから、二人で青柳先生を埋めに行ったんです。
「……」
 つまり。
 結局全ての事柄は、襟沢を中心に繋がっていたのだ。


10 :
 
 襟沢に対する、平塚雅夫の欲望が、青柳洋介の思惑が、
藤本の忠誠が、中島歩美の嫉妬が、お互いの運命を交差させる事となった。
 襟沢は自覚無く人を結び付け、罪の上に罪を重ねさせた。
 襟沢由梨のその美しさは、人を狂わせる。
「中島先生も嬉しそうでね。『これでずっと洋介さんと一緒に居られる』って。
なのに上原先生が来た途端乗り換えるなんて、とんだ売女ですよねぇ」
 執拗に花壇の手入れに腐心していた平塚雅夫。
 謎は全て解けた。
「ところで、どうして私が親切に全て話してあげたか分かりますか?」
 しかし。
「ぬ前に心残りがあると、申し訳ないでしょう?」
「――」
 そして僕達は、驚く程簡単に命を奪われようとしていた。

「襟沢!」
「……」
 僕は力を振り絞って襟沢の名を叫んだ。
 しかし襟沢は逃げようとしない。
「襟沢さんも腰が抜けてるみたいで、楽で良かった」
 平塚先生は、まるでいつもの調子で呟きながら近付いてくる。
「うーん…二人いっぺんには流石に隠蔽出来ないですし、『痴情のもつれ』とかで良いですか?」
 状況は最悪だ。
 僕は動く事が出来ない。助からない。
 襟沢は逃げられるのに、僕を庇って動こうとしない。
「逃げろよ襟沢!何で逃げないんだよ!」
 半ば逆ギレのように叫んだ僕に対して、初めて襟沢は言葉を返した。
「上原先生」
「私ね、平塚に犯される前からずっと、幸せなんかじゃなかったんだ」
 襟沢の言葉は、この状況において異様な程静かだった。
「襟沢…?」
「でも先生に会って、ちょっとだけ幸せになれた。だからもう、いい」
 襟沢はキッパリとした口調で、一縷の望みを絶った。
「先生を見捨てて逃げる位なら、もういいよ」
「先生と一緒にされるなら、それでいいや」
「じゃあまずは元気な方から」
 平塚雅夫がシャベルを振り上げる。
 綺麗な綺麗な襟沢由梨の顔に向かって。
 ゴン、と鈍い打撲音が聞こえた。


11 :
 
 そして。
「え?」
 襟沢が思わず言葉を漏らした。
 僕も驚き、目を見張る。
「……ッ」
 倒れたのは、平塚雅夫の方だった。
 崩れ落ちる体の背後から、見覚えのある顔が現れる。
「私の隆さんに何するんですか♪」
 頭からダクダクと出血した中島歩美が、
金属バッドを構えて立っていた。

 んだか気絶したか知らないが、
僕達をそうとしていた平塚雅夫が意識を失った。
 が、僕達は全く助かってなどいなかった。
「♪」
 第二の脅威は楽しそうに、バットをブンブンと振り回している。
「皆歩美に全然気が付かないんだもん!本当びっくりしちゃった☆」
「歩美先生…何で」
 何で中島歩美がここに?
 藤本はどうなってるんだ?
「あ、歩美先生どうやって此処に」
「たーかしさんっ♪」
 ドッ!
 歩美先生は金属バットを地に打ち付け、僕の顔を覗き込んだ。
「可哀相に…襟沢のせいで怪我しちゃったんですね」
「襟沢のせいじゃありません!」
 マズい。矛先が襟沢に行っている。
 襟沢は息をして様子を伺っている。
「生徒だからって庇う事ないんですよ、隆さん」
「違いますよ!本当に」
「……」
 今度ばかりは襟沢も、ジリ、ジリと僕達から距離を置き始めていた。
 今度のターゲットに、僕は含まれない。
「ふふ、妬けちゃうなぁ」
 歩美先生の顔は、もう笑ってなどいなかった。
「歩美がちゃんとぶっしてあげますからね」
「ッ!」
 悲鳴が上がった。


12 :
 
「襟沢さん♪」
「ヒッ!?」
 カラン!
 中島歩美は金属バットを投げ捨て、一直線に素手で襟沢につかみかかった。
 不意を突かれた襟沢は、なすすべも無く地面に叩き付けられる。
「逃げんなよ♪」
「やっ!離れ…ッ」
 バシャン!
 歩美先生と襟沢は、もつれ合って泥水の中に倒れ込んだ。
「早くんでね、襟沢さんは生きてるだけで隆さんに迷惑なんだから☆」
 襟沢は手足をばたつかせて必の抵抗を試みるが、
歩美先生の体はびくともしない。
「クソッ!」
 ジャリ、ジャリ
 僕は自由の利かない体を腕の力だけで動かし、
痛みに耐えながら二人の背後に近づいていく。
 近くに金属バットがある。あれで殴ればせる!
 最早害虫か何かのような気持ちで、中島歩美に向かっていく。
「アッ!グ」
 襟沢が首を掴まれた。
 首を絞められている。
「ぬ?ぬ?やっとぬ?」
 中島歩美は嬉しそうにブツブツと語り掛ける。
 襟沢は苦しそうに喘ぐ。
 このままだと襟沢がぬ。
「 」
 襟沢が、ぬ?
 頭が真っ白になる。
 ジャリ!ジャリ!
 僕の歩みは余りにも遅い。
 間に合わない。
「グ…」
 微かに襟沢の呻き声が聞こえる。
 遠い。余りにも遠い。
 襟沢が、襟沢が。
 その時、僕の目の前に影が指した。


13 :
 
「お…」
 いつの間に追い付いたのか。
 怪我は大丈夫なのか。
 聞くべき質問は言葉にならずに。
「お前……」
 僕は目の前のソレを、呆然と見つめる。
 彼が手に持つ凶器を見つめる。
「おい、お前は駄目だ」
 何故か僕は、彼を止めた。
「駄目だ」
 止めても意味がないと分かっていた筈なのに。

 ザクリ
「ヒグッ」
 肺が裏返ったような、奇妙な声が漏れた。
 藤本圭はナイフで、中島歩美の背中を突き刺していた。
 
 ザアアアアアッ…
 雨粒の中に、鮮血が混じる。
 赤は土に混じり、黒く濁った。
「ア」
 中島歩美の動きがピタリと止まる。
「今が人生捨てる時だろ…」
 藤本が声を震わせて呟いた。
「……」
 饒舌な中島歩美が、ものも言わずにその場に崩れ落ちた。


14 :
 
「先生!!」
 中島歩美の体を押しのけ、喉を押さえながら一目散に襟沢が僕に駆け寄る。
 良かった、目立った怪我はないようだ。
「ハハ…」
 一方の僕は情けない事に、足を折られ、
頭からは血がトクトクと流れ続けるような満身創痍だった。
「先生なないで!」
 襟沢が僕の頭の傷にハンカチを押さえつける。
 バカだな、それ位で血が止まるわけがない。
 バカだな、これ位でぬ訳もないだろう?
 そう言ってやりたかったが、雨に長時間晒され疲弊した体
からは、何の言葉も発する事が出来なかった。
「先生、先生、私だけこんな所に置いてかないで!」
 襟沢は涙に濡れた声で僕に呼び掛ける。
「先生が私を連れて行ってよ…私を…!」
 遠くから、救急車の音が聞こえてきた。
 雨粒に混じって、温かな水滴が頬を滑った。

 うん、襟沢。
 君が望むなら、何処にでも連れて行くよ。
 ああそうだ、襟沢は東京に行きたいんだった。
 東京じゃなくたっていい、二人でこんな街から出て行くんだ。
 そんで東京に着いたら、君が行きたいって行っていた109に行こう。
 僕は服の事は分からないけれど、近くに行きつけの美味い店があるんだ。
 君さえ良ければ、そこで昼飯をご馳走するよ。
 君と一緒なら、デザートにも挑戦出来るかもしれない。
 考えれば何もかも、手に届く事ばかりだ。
 なのに何故君も僕も、動こうとしなかったのだろう。
 まだ間に合うだろうか。
 願えば届くのだろうか。
 ならば僕は
「   」
 そして僕は目を覚ました。


15 :
今回も長々とすみません
次で最終回です

16 :
>>15
超おもれ!GJだ!
しかし歩美ちんんじゃったのか…中々好きだったんだが。

17 :
>>15 GJ
まさかこんな展開とは・・・

18 :
なんとも凄い展開だ
みんな臑に傷持つ犯罪者

19 :
確かに前スレ見ると、微妙に平塚先生もおかしいこと言ってるな…

20 :
前スレはあのまま放置でdat落ちさせる方向?

21 :
500KBいってなかったか?

22 :
まだ容量が40KB以上残ってるし、このまま放置しても圧縮が起きない限りdat落ちもしないね

23 :
541です
スレの事に疎くて500KB行ったら落ちちゃうのかと思って
次スレに行ったんですがまだ40KBもありましたか…すいません
もし良かったら昔書いた短編(一応エロあり)があるので
それ投下しときましょうか?

24 :
>>23
よろしくお願いします
スレはレス数が1000を超えると一日で落ちるけど、容量の場合500KBを超えて一週間または480KBを
超えて一週間書き込みがないときにdat落ちする仕様
あと最終回も楽しみにしてます

25 :
すごい話だ・・・。
神だよ・・・。
これ十分映画化できるくね?

26 :
>>25
若者たちの鬱屈した感情と、それを凌ぐまでに壊れた大人たちの展開するホラー風ミステリーだもんな。
改稿して新人賞にでも投じたらどうかってほど。
内容はむしろヤンデレスレ風になっているが、この際、気にせずこのスレで行って欲しい

27 :
>>26
映画化したら俺的に中島先生は怨み屋本舗やってた木下あゆ美ちゃんで平塚はスラムダンクの安西先生なんだがwwwww

28 :
ああ俺もなんでか平塚は安西先生のイメージだったわ
「(証拠隠滅を)あきらめたら人生終了ですよ」
とか言いながらスコップで穴を掘る平塚

29 :
デレた由梨も可愛いけど、初期の悪魔的な由梨の方が可愛いな…
あと、何気に藤本に萌える(笑)

30 :
>>28
おまいなら分かってくれると思ってたよ・・・。wwwww
「安西先生・・・。俺実写版が見たいです・・・。」

31 :
541です
や…やっと書き終わりました
遅くなってすみません
かなり長くなったんですが
今更分けて出すのもアレなんで
今からゆっくり出していきます
よろしくです

32 :
19
 桜には早いが、梅が綻び始めていた。
 年に一度の式に、校内は盛り上がりを見せている。
 別れを惜しむ先生や生徒達を振り払い、
目的の場所に着いた僕は、教室に彼女が来るのを待っていた。
 暫くすると扉が開き、目当ての人物が顔を出す。
 僕は彼女に声を掛けた。
「卒業おめでとう」
「…はい?」
 教室に入るなり掛けられた言葉に、
高坂みるりは可愛らしく首を傾げた。

 ひとしきり困惑の素振りを見せた後、
高坂は恐る恐ると言った感で僕に問いかけた。
「な…何でみるりにそんな言葉を」
「高坂にだけじゃないだろ。皆に言ってるよ」
「いやいや上原先生!卒業!教室!呼び出し!教師&生徒!
どう考えても『卒業→みるりにプロポーズ』プラグだよ!」
「ハハハ違う違う」
「ていうか先生、由梨ちゃんというものが
ありながらみるりに手を出そうなんて…!」
 相変わらず絶好調なテンパり具合に、思わず苦笑してしまう。
「うん、まあ話というかさ。確認というか」
 僕は高坂みるりの瞳を見つめ、切り出した。
「去年のあの事件について、聞きたい事があるんだ」

「去年の…」
 事件という言葉に、さっと高坂の顔が強張る。
「そ。幾つか高坂に聞きたい事があるんだよ」
「何で今更…折角みるり、やっと忘れられそうになってたのに」
 高坂は既に涙目になりながら、唇を尖らせている。
「ごめんな、ちょっと聞いてくれてるだけでいいんだ」
 自己満足みたいなものだから、と僕は優しく言い添える。
「う…うにゃああ…」
 高坂はオドオドと怯える様子を見せるも
「……」
 元来のお人好し気質が勝ってしまったようで、不承不承コクリと首を縦に振った。
「ありがとう」
 僕はそんな様子に目を細めながら、話を始めた。


33 :
 
 最初に「あれ?」と思ったのはさ、最後の最後だったんだ。
 その時点でも、相当事態は訳の分からない状態に陥っていた。
 何故中島歩美に逃げられたのか。
 何故『警察』が来なかったのか。
 何故あのタイミングで彼らが現れたのか。
 あの嵐の日だけでも、これだけの疑問がある。
「それは確かにみるりのせいだよ…」
 高坂は眉尻を下げて、床を見やる。
「みるりパニクって騒いで電話どころじゃなくて…
圭君に宥めてもらってる隙に、歩美ちゃん先生がロープを解いてて」
「そうだな、その話は藤本とも一致している」
「歩美ちゃん先生と圭君が、何分も揉み合って殴り合って…みるり怖かった」
「そうか」
 でも高坂、結局お前ちゃんと通報出来たよな。
「え?」
「最後だよ、学校にパトカーと救急車が来た時。あれはお前が呼んだろ」
「うん。圭君が『学校だ!』って言って追い掛けていったから…その時に学校に行くよう、連絡したの」
「110番と119番、どちらにも連絡したんだな」
 高坂はコクリと頷く。
「よく判断出来たな。『救急車と警察どちらも必要だ』って」
「いや、あれは」
「あとで警察の人に聞いたよ。
『凄く冷静で、119番の後に110番もして、話もしっかりしていた』って」
「あ、うん」
「何で119番を先にしたんだ?」
 高坂みるりの口元が、ピクリと引きつった。

 高坂は当時を思い出すように、視線を空にやった。
「藤本君は殴られて怪我してて…それが目に焼き付いちゃって。
『んだらどうしよう』と思って119番の方を押しちゃったの」
「確かに混乱してたんだから、仕方ないよな」
 僕はあっさりと高坂の回答に同意し、話を続ける。


34 :
 
「高坂が救急車を呼んでくれたお陰で、僕は助かった」
 僕、意外と危なかったらしいしね。
「加えて中島歩美も平塚雅夫も、重傷は負ったけどにはしなかった」
 二人とも人と体遺棄、平塚雅夫の方は婦女暴行も加えて、
もう社会に出て来ることは無いだろう。
「歩美ちゃん先生は精神鑑定やってるって聞いたけど…」
「精神病院入り、なんて可能性も大だ」
 つまり、この学校の、少なくとも襟沢の周りの膿は全て駆逐された訳だ。
「うん…色々傷は残ったけど、それは本当に由梨ちゃんの為に良かったと思う」
「ああ。僕達はもう1つの犯罪について一切触れなかったからな」
「もう一つ?」
「襟沢の、教師への脅迫。十分犯罪行為だ」
「!」
 高坂の顔が、目に見えて曇る。
「だって…言える訳ないよ!」
 そうだな。お前も藤本も僕も、襟沢が不利になる事を証言する筈がない。
 平塚雅夫は脅迫の事までは知らなかったようだし。
 中島歩美の証言は、もとより信用されていない。
 平塚と中島が消えた。自身の犯罪も止められた。
 つまり、襟沢はこの事件において唯一得をするようになっているんだ。

「なっ!」
 高坂が語調を荒げ、僕に突っかかってくる。
「何その言い方!まるで由梨ちゃんが仕組んだみたいな…」
「ああ、気分を悪くしてしまってごめん。じゃあ話を変えよう」
 僕は両手を上げて、高坂の気持ちの高ぶりを静める。
「君の話に戻ろうか」


35 :
 
 窓から春風が吹き込み、赤い花弁が教室に舞い散る。
「襟沢に話を聞いたんだけど、僕が高坂に質問した時の事を襟沢に報告したんだってな」
「それが何か…」
「襟沢は報告を聞いて、『上原は私をまだ疑っていない』
と思って再び僕に接触したと言った」
「…?」
 高坂みるりは全く話が読めないとばかりに、ハテナ?と首を傾げている。
 僕は笑みを崩さずに続ける。
「それっておかしくないか。僕は『今まで居た教師』について聞いたんだぞ?」
 襟沢のボイスレコーダーを持ち帰った翌週の、僕のその言動。
「事情を知っている人間からすれば、僕の態度からして
明らかに感付かれた事が分かる質問だ」
「だって先生、歩美ちゃんに反応してたじゃん!てっきり私」
「だとしても。襟沢の話を聞く限り、君の話しぶりや断定は変に不用意だ」
「……」
 意図の分からない追求に高坂は表情を強ばらせ、僕を睨み付ける。
「…なんなの?先生、みるりを何かの犯人にでもしたい訳?」
 僕はその問いにも、穏やかに答える。
「いや、君は何の犯人でもないと思うよ」
 まして犯罪なんて、犯してもいない。
「だったら!」
 ただ僕は思ってるんだよ。
「高坂。もしかして君が、この結末に仕向けたんじゃないのか?」
「…え」

「何それ…」
 困惑しきりといった様子で高坂は呟く。
「みるりの勘違いの発言だけで、そこまで話がブッ飛んでるの…?」
「ああ、君が平塚雅夫と中島歩美を陥れたと思ってる」
「そんな」
 僕の身も蓋もない言葉に、弾かれたように高坂が反論を始める。
「上原先生、頭おかしいんじゃない!?」
 だってみるりが嘘発言をして、先生と由梨ちゃんを近付ける事に成功したとしても
それから青柳のルートにどうやって乗せる気だった訳?
 それに中島歩美の家に行くなんて展開、完全に偶然以外の何者でもない。
 ましてやそこで体を見つけて、花壇の前で平塚に対峙するなんて。


36 :
 
「有り得ない。人の手を離れてるよ」
「確かに僕からも、そう見えるよ」
「ほら!」
「ああ、結局僕には情報が少なすぎる。どれが作為的で、どれが偶然かなんて断定は出来ない」
「見なさいよ!どの口が推測と妄想だけでほざいて」
「僕が確信しているのは大きく三つ。
一つ、君の言葉は襟沢と僕を近付けた。
二つ、君は怪我人が出る事を知っていた。
三つ、君が通報した時刻が余りにも遅いことだ」
「…!」
「藤本に聞いたよ」
 藤本は言った。
 逃げた中島が部屋で暴れまくって揉み合いになって、
頭をぶつけて気絶した所を逃げられた。
 起きるとみるりが『外に出て行った』と言うから、追い掛けていった。
「……」
 中島歩美が暴れても、藤本が気絶しても。
「君はただ、見ていただけなんだ」
 暗がりの中、罵声と血だまりの中、高坂みるりの瞳が右往左往する。
 惨劇に瞳は輝き、体は動きを停止した。

 僕と襟沢が中島歩美の家を出たのは9時前。
 最終的に学校に救急車と警察が来たのは、10時15分頃。
 という事は、君が通報したのは、豪雨で車が遅れたのを考慮しても10時過ぎの事だ。
 僕達が出て行っても、藤本が意識を失っても、
家に誰も居なくなっても、君は何一つ動かなかった。

「救急車も警察も、遅過ぎた。既に全員が満身創痍の状態だったんだ」
 藤本が体中に傷を負い、僕は足と頭をやられ、
平塚雅夫はバットで殴られ、中島歩美が背中を刺された後、漸く救急車が来た。
「だが逆に言えば、全員が揃っていた。そして尚且つ、襟沢由梨のみが無事な状態だった」
 高坂、君は歩美先生の家を出て、学校の近くに居たそうだね。
「もしかして僕らの様子を見ていたんじゃないのか?」
 僕達がし合って、いがみ合う様を君はつぶさに眺めて、
しかるべき時に、通報をした。


37 :
 
「僕に分かるのはこれだけだ、少なくとも君があの状況を作り上げたと考えている」
 高坂、そういやさっき君『藤本が家を出てから通報した』って言ったよな。
 学校に直接行くように連絡したなら、9時台に車は到着していた筈だ。

「嘘を吐いたね」
「――」

「これが僕が、君達の卒業まで考えて辿り着いた答えだ」


「…先生」
 高坂みるりが口を開く。
「先生、さっきから全然証拠がないね。机上の空論もいい加減にしなよ」
 冷たく僕の言葉を突き放す。
「大体よく『影で操っていた』なんて発想が浮かぶね。
普通は『動揺して通報が遅れた』で終わるんじゃない?」
 高坂はいつの間にか、いつもの舌足らずな喋り方を止めていた。
 それが彼女の、元の喋り方だったのだろうか。
 そして僕は、高坂の問いに答える。
「…僕は疑ったんだ」
 そう、僕は初めて人を、悪意を持って疑ってかかった。
 これまでの僕ならば、通報の時間がおかしかろうが、
高坂の言葉に違和感を感じようが、そもそも君が現れた事自体に疑問なんて抱かなかった。
 この妙に出来の良い勧善懲悪に、脳天気なハッピーエンドを描くだけだった。
「だけど現実は僕の期待するような世界じゃない、やっと気が付いたんだ」
 おかしいと思うなら、それは確かにおかしい事なのだ。
 独善的なフィルターで綺麗なものばかりを見つめ、
その『おかしさ』に目を背け続けていた。
 僕は自らを痛めつけるように、言葉を放った。
「純粋は無知で、悪だ」
「……」
 高坂の眉が顰められた。


38 :
 
「…私が様子を見て通報した?圭君の後に家を出たのに間に合う訳がないじゃん」
 高坂は、僕の述懐を嘲笑うように言葉を紡ぐ。
「……」
 僕は、何も反論する事が出来ない。
 高坂の言う通りなのだ。
 この推論は、高坂が自白しなければ成り立つ事はない。
 そもそもが圧倒的に不利な状況だ。
 だが、この期に及んで僕はどこかで期待をしていたのだ。
 高坂みるりは微笑む。

「まあ確かに、自転車使って、別の道から歩美ちゃんに追い付いたけどね」
 高坂は、僕にだけは喋ってくれるのではないかと。

「高坂……」
「はは」
 高坂みるりは穏やかに笑った。
 それはあの無邪気な笑顔でなく、目の奥に澱みを抱えた乾いた笑みだった。

「高坂…やっぱり」
「先生、もしかしてアレもおかしいと思ってた?
歩美ちゃんの部屋に青柳の資料があったの」
「!」
 僕が思わず表情を変えると、高坂はペロリと舌を出す。
「だよね。あの歩美ちゃんが、資料の隠蔽なんて思い付く訳なし…よく考えれば意味の無い事だもんね」
「…高坂があの部屋に置いたのか?」
「うん。歩美ちゃんの部屋に青柳の体や証拠がないのは分かってたから。
調査を打ち切られでもしたらいけないと思って」
 一応桜井の体はあったけど、あれが青柳だと勘違いされたら大変だから
、屍体探ってネームプレート見つけるの大変だったんだよ?
 高坂は涼しい顔で、とんでもない事を言う。
 つまり高坂は、あの蛆這う体を素手で物色し、腐った屍肉の中からネームプレートを見つけ出したのだ。
 高坂の侵入から悲鳴が上がるまでの、妙なタイムラグ。
 それは、こういう事だったのか。

「中に侵入する事は分かってたけど…まさか小窓からなんて。
資料を服の下に隠し持ってたから、中に入るの大変だったよ」
「えっじゃあ、あのブラジャーは」
「只のカモフラージュだよ。『みるり』の貧乳を舐めないでくれるかな?」
 …変な所で叱られた。


39 :
 
「やはり君は…青柳先生害の犯人が歩美先生と平塚先生だと、知っていたんだね」
「うん。だって由梨ちゃんを家に連れて行った後、
もう一回学校に戻って、2人が青柳を埋める現場を見たから」
 当たり前と言えば当たり前の答えを高坂は返す。
「戻ったって…、藤本に聞いたのか?」
「聞かなくても、何かとんでもない事が起こったのは分かるよ」
 だって由梨ちゃんが気絶して、圭君に運ばれてるんだよ?
「臆病でお人好しな圭君は家で震えてる事しか出来なかったみたいだけど、私は違う」
 学校に戻って、私は見た。
 平塚と中島が何かを埋めてる所を。
「翌日何を埋めたのか、青柳の欠席が証明してくれた」
 だから私は、あの証拠を使って復讐しようと思った。
「中島を、平塚を追いつめて罪を償わせよう。由梨ちゃんの仇を討とうって」
 高坂みるりは冷たい声音で、告白を始めた。


「これってさ」
 不意に高坂は、教室の黒板に目を向けた。
「え?」
 黒板には卒業式当日らしく、中央には白チョークで大きく『夢』と書かれ、
周りは生徒たちのメッセージで埋められていた。
『大学で彼氏つくりたい』
『絶対幼稚園の先生になる!』
『3−B最高!ずっと友達』
 たわいもないけれど、将来への希望に溢れた寄せ書き。
「これってさ」
「ホント、気持ち悪いよね」
 ガリ、ガリ!
 高坂は赤いチョークを手に取り、『夢』の字の上に、大きく×を描いた。
「高坂…?」
「ぬくぬく何不自由なく育って、
幸福が約束されているのが当たり前に未来を語って」
 高坂みるりは親指に付いた粉を、真っ赤な舌で舐めとった。


40 :
wktk

41 :
 
「由梨ちゃんにも私にも、親は居ない」
 私達はすぐに似た者同士だって気が付いて、すぐに仲良くなった。
 周りは辛い事や嫌な事ばかりで、私達は泣いてばかりだった。
「由梨ちゃんはあんなに頭がいいのに、
先生に会うまでは大学進学すら諦めてたんだよ」
 高坂は静かに語り続ける。
「それでも私達、それなりに楽しく暮らしてたの」
 あの番組が面白いとか、あの子が気になるとか、下らない事で笑いあって。
 些細だけどちゃんと幸せだった。
 それなのに、ある日平塚がその幸せを壊した。
「……」
「由梨ちゃんは心を壊されて、暴走してしまった」
 許せなかった。私達の幸せを壊した平塚が。
「だけど平塚を訴えれば、由梨ちゃんの犯罪も露見してしまう」
 だから私は、平塚に制裁を与えられる機会を待った。
 そうしていると、青柳の事件が起きて、チャンスだと思った。
 動かぬ証拠が埋まってるのだから、後はいかに平塚達を陥れるか。
「そしたら、お人好し全開で扱いやすそうな、上原先生が赴任してきて」
「酷い言いようだな」
「だってそうじゃない。人を疑わない、真面目で誠実、これ程利用出来る物件はなかった」
 案の定由梨ちゃんも先生に目を付けて、うまくこの事件に巻き込む事が出来た。
 私が何もしなくても先生は由梨ちゃんの真意に気付き、
私の情報や、資料隠蔽の撒き餌で、先生は青柳洋介に辿り着いた。
「圭君も期待どおりのお節介を焼いてくれて、ますます事態は都合の良い方向に動いていた」
「…歩美先生の事はどうするつもりだったんだ?」
「中島も予想通り、いつもの病気を出して先生に接近してきた」
 元々、攻めるなら中島歩美からだと思ってた。
 平塚は慎重で立ち回りが上手くて、なかなか尻尾を見せない。
 だけどあの中島なら、男が話に持ち込めば
頭のネジを外す事が出来ると思った。


42 :
 
 家に行くのは予想外だったけど、思わぬ所で桜井の体も見つけられた。
「案の定先生に尋ねられたら、中島は喜々として青柳の居場所を吐いて」
 先生は、私が誘導するまでもなく平塚が待つ花壇へと向かった。
「待て、なぜ平塚が花壇に居る事を知っていたんだ?」
「神経質な平塚が、花壇が荒れる嵐の日に居ない訳がないし。それに」
 アイツ、殆ど毎晩花壇を植え込みから見張ってるの。
「――」
「異常だよね」
 情景が浮かぶ。
 深夜、人一人居ない中庭で一人、シャベルを握り締める平塚雅夫。
血走った目が爛々と輝き、花壇を一心不乱に見つめ続ける。
 それは血の気が引くような。
「本当なら、由梨ちゃんをあんな危険な目に合わせる予定じゃなかった」
 でも由梨ちゃんが自分から行くって言い出した時、気付いたの。
「今が生まれ変わる時だ、って」
「生まれ変わる?」
「上原先生言ったんでしょ?『この事件を解決出来たら、きっと君は変わる事が出来る』って」
「それは」
「その通りだよ。幾ら由梨ちゃんを社会的に救っても、
由梨ちゃんの心が救われないままなら意味がない」
 だから危険を承知で、先に2人を行かせた。
 リスクがあっても、由梨ちゃんの中で事件を終わらせるチャンスだった。
 心を溶かす最後のチャンスだと思ったから。
「それに上原先生ならきっと」
「由梨ちゃんを庇ってんでくれたでしょ?」
「――」
 つまり高坂みるりは1人、人よりも一段上の視点から物事を見ていたのだ。
 確かに殆どの情報を手にしていれば、人間を動かす事が簡単なのかもしれない。
 しかし。

「要は、いかに由梨ちゃんの犯罪がバレないように2人を陥れるか。だった」
「……」
「だから、平塚と中島を圧倒的な加害者にする必要があった。
由梨ちゃんを庇う人間も複数居ないと駄目だった。
由梨ちゃんを只の『可哀想な被害者』に仕立て上げなければならなかった」
 しかし彼女が行った事は常人では到底不可能な…
頭も精神力も尋常でなく働かせなければ、成功出来ない事だ。


43 :
 
 柔らかな日差しが、教室に淡い陰影を生む。
「………」
「ねぇ先生。聞きたいならまだまだ教えてあげるけど、
先生はそんな事を聞きたいんじゃないでしょう?」
 高坂みるりのふわふわした髪が、春風になびいた。
 茶けた瞳が揺れ、睫毛が光を受けてキラキラと輝く。
 高坂みるりは幼いけれど、とても美しい少女だった。

「ああ。言ったろ?これはただの『確認』だ」
「最後にスッキリさせたかったの?」
「いや、君に伝えたい事があったんだ」
「?」
 その言葉に、高坂は愛らしく小首を傾げる。
 僕は高坂の肩にそっと手を触れる。
「ん」
 高坂はくすぐったそうに目を細めた。
 僕は屈んで、彼女の背に目線を合わせ。
「高坂、君は襟沢の友達なだけでなくて、僕の大切な生徒だ」
「偉そうな事を言うかもしれないけど、僕は君が心配だ」
「心配…?」
「君は強いから、きっと大丈夫なんだろう。だけど知っていて欲しかったんだ」
「何を」
「君は1人じゃないって事をさ」
 いいか、君は1人じゃない。
 襟沢も居るし、藤本も居るし、僕も居る。
 誰にも言えなくても、僕だけは君の秘密をちゃんと知っている。
「だから僕達が居なくなっても、1人で抱え込むな」
 困った事があったらすぐに連絡しろ。
 辛い事があったら相談に乗る。
 寂しかったら襟沢と駆けつけてやる。
「だから、安心して卒業するんだ」
「……」
 僕の言葉に高坂は。
「まだだよ」
 何かを堪えるように、奥歯を噛みしめて僕を見上げた。
「先生、まだ私誰にも言ってない事があるよ」

 高坂は小さな子供のようにしゃくりを上げ、瞳から大粒の涙を零した。
「私も平塚に抗議しに行った時に、アイツにヤられちゃった。凄く、怖かった……嫌だった…」

 高坂は俯き、僕の服の裾を握り締めた。
 それはきっと、高坂の精一杯の甘えだった。


44 :
 
 暫くして、高坂は照れくさそうに僕に言った。
「やっぱり上原先生は純粋な、良い人だね」
「え?」
「上原先生、『純粋は悪だ』なんて言っちゃ駄目だよ」
「何で…」
「上原先生が純粋だったから、由梨ちゃんは恋をしたんだよ?」
 皆にないものを持ってる上原先生は、とっても眩しくて、私は憧れる。
「由梨ちゃんがまた性格悪い事考えてたら、
先生の純真オーラで浄化してあげてね」
「おい何だよ純真オーラって」
「ははは」
 僕の憤慨ぶりに高坂は楽しそうに笑う。
 まるで出会った頃に戻ったかのような、無邪気な微笑みが目に焼き付いた。

 彼女は教壇を降り、僕に向き直った。
「行きなよ先生、由梨ちゃんが待ってるよ」
「ああ」
「私なら大丈夫。圭君とおんなじ大学だし、1人じゃないよ」
「…ああ」
 高坂は考えるように一瞬目を伏せ、また僕を見つめた。
「こういうのを『おめでとう』っていうのか分からないけど」
「え?」
「退職おめでとう、上原先生」
 ガラリ。
 高坂みるりは、とびきりの笑顔で別れを告げ、教室を後にした。
 そして教室には、清々するほど大きな×が付けられた
『夢』と、間抜けな僕だけが残された。

 高坂みるりが立ち去った教室で。
 感慨を持って、僕は彼女の凛とした後ろ姿を思い返す。
 最後の役者が舞台を後にしたのだ。
 そして……。
 今は…
 で、そういえば
「……ん?」
 今、何時だ?
「ああああ!?」
 時計の時刻を見て、僕は絶叫した。


45 :
 
「あっ上原先生!一緒に写真撮って〜!」
「上っち何で学校辞めちゃうのー?」
「ちょっと逃げないでよ!!」
「ゴメン、本当ゴメン!急いでるんだ!」
 生徒で溢れかえる廊下を必でかいくぐり、僕は全力疾走で職員室に向かう。
 あと何分だ!?
 ガラッ
「あっ上原先生」
「お疲れ様です!今までありがとうございました!」
 僕は殆ど叫びながら、机の側に放置していたキャリーバッグを引き、職員室を飛び出す。

 そして。
 ガラガラガラガラ!
「あああもう!」
 学校を出て僅か3分。
 キャリーバッグの動きの鈍さに痺れを切らし、バッグを小脇に抱えて僕は走り出していた。
 数分程走り続けると、漸く最寄りの駅に辿り着き、タクシー乗り場に直行する。
 適当なタクシーを捕まえ、運転手に行き先を口早に叫んだ。
「東北空港まで!」


『…空港経由の便は、2時14分より…』
 滑舌のよいアナウンスが耳をすり抜け、僕は床を見つめていた。
「うっ…はあ、はあ…はあっ」
「遅い」
「げほっ」
「一体何やってたの?」
「いっ色々と…」
 閑散とした空港の椅子に座る襟沢由梨は、少し怒った顔で僕を見上げていた。
 襟沢はすっかり制服を着替え、真っ白なワンピースを着ていた。
 荷物は殆ど送ってしまっているのか、膝には小さな鞄が一つ、チョコンと乗っているだけだった。
「ほら、もう行かないと。言い訳は後で聞くよ」
「あっうん」
 息を付かせるまもなく襟沢は、僕の手とバッグを引き、
ずんずんとゲートに向かい出す。
 僕は慌ててキャリーバッグを掴み、自分で転がしていく。
「ごめんな襟沢、遅れて」
「間に合ったからいいよ」
 襟沢は先程までの仏頂面が嘘のように、優しい微笑みを浮かべていた。
 スカートの裾が揺れる。


46 :
 
 僕は誰にともなく呟いた。
「何だかおかしいな。東京から逃げ出した筈の僕が、
帰るのを心から楽しみにしてるなんて」
「私と一緒だからでしょ?」
 襟沢の悪戯っぽい微笑みに、僕も思わず笑みを零す。
「ああ、襟沢が東京の大学に受かったおかげだ」
「先生も、次の学校が決まって良かったね」
 東京に行けば、また排気ガスと人混みと現実にまみれた、灰色の生活が始まる。
 だけどこれからは襟沢が、僕の側に居る。
「…変なの。あんなに遠いと思ってた場所に、数時間で行けちゃうなんて」
 チケットに目を落としながら、襟沢は呟く。
「遠いなんて思うから、行けなかったんだよ」
 手を伸ばせば届くなら、それは掴めるものなのだ。
 現実逃避の幻想を見るのは止めた。
 でも自分を、人を、希望を諦める事は出来ない。
 これが馬鹿で、間抜けな僕の出した結論なのだ。
 キャスターがガラガラと回る。
 同じ歩幅で僕達は目的地に向かう。
 手を伸ばせば届く距離に、襟沢の白い手があった。
 僕はその手を握り、囁いた。
「由梨」
 襟沢由梨は少し瞳を見開き。
「うん」
 はにかんだ笑みを浮かべて僕の手を握り返した。


 飛行機が地上を離れる頃、僕は彼女に聞く。
「やっと、109に行けるな」
「……実はね、109って、私の着るような服があるお店じゃないんだ」
「へ?」
 ポカンとした僕を見て、襟沢由梨は幸せそうに笑う。
「だから、まずは先生の好きなご飯屋さんに連れて行ってね」

 デザートをつつく2人の姿が、脳裏に浮かんだ。


〈終〉


47 :
541です
何とか終わらせる事ができました…
今までお付き合いいただいて本当にありがとうございました
元々、今度こそエロをちゃんと書こうwというのと
スレが少しでも盛り上がればという気持ちで書き始めたんですが
結局趣味に走ってしまって申し訳ない…
色々ボロも出てますが、許してくださいw
最後まで読んでいただいてありがとうございました
ではでは


48 :
>>47
お疲れ様、楽しく読ませてもらったよ
みるりの話は予想してなかったから驚いちゃったぜ

49 :
>>47
完結お疲れ様でした。
最後にみるりが絡んでくるとは…

50 :
>>47
すごく良かったです
みるりも黒い子か・・・
先生以外ホント真っ黒だ

51 :
>>49

あんたミステリ作家になった方が良いw

52 :
安価ミスった
>>49>>47

53 :
>>47
見事だった。
一見弱者の脇役が真の事実を握っていたところなんか、見事としか言いようがない。
書き改めて新人賞に出してくれ。

54 :
>>47乙です!
ずっとROMってたけど、本当に面白かったぜ!GJ!

55 :
>>47乙です。面白かったけど、これだけは言わせてくれ
やっぱりみるり腹黒い子じゃないですかー!!
友達思いだけど

56 :
乙&GJ!
みるりは腹黒いことやってるけど、賢くて強くて友達思いの健気な子だよな
最後に上原先生に「気付かれた」ことで、ちょっとは救われたんだと思いたい
みるりにも幸せになってほしいぜ…

57 :
感想ありがとうございます
>>53
賞出してみたいけど…
確かネットで発表したら既発表作品になって
応募できないんじゃなかったっけ
>>55
ほんとゴメンww
あの時は色々迷ってた時期で
犯罪はしてないからとりあえず
悪い子ではないって言っちゃったw

58 :
>>57
賞出さないなんてもったいなお〜〜〜。・゚・(ノД`)・゚・。 うえええん

59 :
>>58
じゃあとにかく改稿してどっかに出してみる
ありがとうね
今後もスレが盛り上がる事を期待しています
では

60 :
保守

61 :
保守

62 :
ほしゅ

63 :
ほしゅ

64 :
hosyu

65 :
保守

66 :
保守

67 :
そしてこの保守ラッシュ

68 :


69 :
保志

70 :
突然すみません
前スレを埋めてる者です
最後のオチだけ入らなかったので、こっちに投下させていただきます
ごめんなさい


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「なっ!!!??」
「早速自分の正しさに正直になって、嫌がらせしてみました。これで本当の犯罪者ですね」
コロコロと笑いながら、カナコは駆けていく。
「ちょ、待っ」
「さよなら長沢さん!また必ず会いましょうね!カナコをお嫁さんにして下さいね」
「君!」
とんでもない発言を繰り出しながら、カナコは一瞬で森林の中へ姿を消した。
ちょっと何処へ行くんだ!
このままだと僕は犯罪者に!君!
カナコ…カナコちゃん…かな…

ガバッ
「カナコちゃん!」
「はい」
目が覚めると、其処はいつもの薄汚れた研究室の天井。
慌てて振り返ると、待ち構えていたかのように香奈子嬢が冷えたアイスティーを僕に差し出していた。
「よく眠られていましたね。この学会が迫っているクソ忙しい中、流石教授ですわ」
「ああ…昔の夢を見ていたようだ」
遥か昔の出来事。
夢の中ではあんなに鮮明な情景だったのに、こうして目覚めてみると、あの少女の名前さえも思い出せない自分が居た。
「何て名前だっけな…確かカ行なイメージだったんだが」
「夢で何方かに会われたのですか?」
「ああ、昔会った綺麗な女の子でね…名前が…カ…キ…」
「あら、そうなんですか」
「ケ…ケイコ…?そう本当に綺麗な子で…あ!勿論香奈子嬢の美しさには到底及ばないがね」
「綺麗な女の子って…教授、ロリコンですね」
「だから僕はロリコン変質者じゃない!…ってあれ…これも昔何処かで」
すると深刻に悩み始めた僕が余程おかしかったのか、
香奈子嬢は堪えきれないといったように笑い出してしまった。


71 :
以上です
長々とありがとうございました

72 :
>>71
GJです
まさかこう繋がってくるとはw
できれば続き希望します

73 :
保守

74 :
保守

75 :
>>71
自分も続編希望!
香奈子嬢視点の話がいいなーw

76 :
保守

77 :
あけおめ保守

78 :
ほしゅ

79 :
ほす

80 :
ほしゅ

81 :
ここのスレって腹黒女が純真な男に惚れる過程を描いた方が良いのかい?
それとも純真男を落としていく過程を描いてもええの?

82 :
どっちもカモーン

83 :
ほしゅ

84 :
ほしゅー

85 :
保守ります

86 :
腹黒アイドル

87 :
今日は嘘つきの日

88 :
久しぶりに来たけどまだあってほっとした
また時間が出来たら書きに来ます

89 :
待ってます

90 :
保守

91 :
ほしゅ

92 :
腹黒かわいい

93 :
腹黒イイわ。

94 :
香奈子嬢視点の話がみたいな

95 :
続編待ってます。

96 :
悪政を強いていた王が倒された。
討ったのは近頃勇者として名を馳せていた純朴な若者だった。
しかし、王が絶命したその瞬間、駆け寄ってきた
王の娘により、勇者は真実を知った。
王はかの悪名高き魔女に操られていたという。
外道なる魔女に怒りを燃やす勇者は、
同じく父の仇を討ちたいという姫とともに旅に出た。
というのは建前で、王は操っていたのは
魔女の才覚を持つ姫だった。勇者を利用し、
有名な魔女を倒してその秘技を奪おうと企てたのだ。
だが、勇者と旅をし、本当に魔女に操られた領主が
治める土地の民を目にし、勇者の心に触れ、
姫の心に変化が訪れた。
そして、いざ魔女との決戦において、姫は勇者を
身を呈して庇ったのであった。
魔女は、まあ勇者が怒りの力とかで倒した。
おわり
腹黒な子が、男の影響で自分でも思いもかけない
行動をしてしまうのがいい。

97 :
 

98 :


99 :


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