2013年10エロパロ245: 俺の屍を越えてゆけでエロパロ (358) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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俺の屍を越えてゆけでエロパロ


1 :2011/11/14 〜 最終レス :2013/09/22
祝リメイクということで

2 :
重複してるけどどっち使えばいい?

3 :
よし、じゃあこっち使おうか

4 :
こっちで

5 :
まずはあっちのスレ>>1とこっちのスレ>>1の両家で結魂するSSからですね…

6 :
うちの家では交神の時に恥をかかないように、元服した男子はみんなイツ花が筆下ろししてくれてるよ

7 :
>>6
お宅の子になります

8 :
新神様期待

9 :
完成する前に落ちたらどうしようかと…
新神様と言えば新神様と一族娘のお話
バーローと交神できるようになったと聞いてどんな娘なら奴に負けないか妄想したらこうなった。今は反省している
特殊めな娘設定なので注意。細かい事を色々と投げ捨ててるシリアス度に欠けたエロコメ風味

10 :
種絶と短命、二つの呪いをかけられたとある一族がいた。
神と交わる事により力を増し、彼らはただ一人の怨敵を討つが為に戦い続ける。怨敵の名は――朱点童子。
地獄の奥のそのまた奥深くで待ち受ける朱点童子と、呪われし一族は近々本当の決着を付けよう、付けられるだけの力はついたと判断を下した。
地獄巡り・修羅の塔討伐に彼らが出るまで、あと数日。
その数日の合間にできたある時、一族の一人が京の都の屋敷から姿を消した。逐電したのではない。『散歩』である。
その者は都の復興投資も全て済ませ有り余る家の金を持ち出し、こうして合間合間にどこかへ遊びに出て行ってしまうという一族きっての問題児だった。
問題児の正体は、見た目で言えば年端も行かぬ娘である。この世に生を受けてからまだ六か月、短命の呪いに侵された一族にとっての元服も迎えていないような歳だ。
しかし、家の者達はそんな娘を咎めはすれど抑え込む事はしなかった。
非常に強い『風』の気質を心に持つ娘は好奇心があまりにも旺盛すぎ、また最上位の男神を父に持つが故に生後六カ月にして凄まじい力を持っていたからである。
呪われし一族最大の問題児にして最強の弓使い、気質をそのまま現した緑色の瞳を持つその娘の名は氷奈莉(ひなり)。
その名を見れば、彼女がどの神の娘であるか分かる事だろう。
『散歩』に出た氷奈莉の本日の遊び場。それは、京の都から少しばかり離れた川の側だった。
小さな体を丸めてしゃがみこみ、じーっとじーっと川を見つめ続ける。
「やあ、どうしたんだいこんな処に一人で。入水自?折角短くしてやった命なんだ、手間をかけてぬ必要もないだろうにねぇ」
そんな氷奈莉の後ろ姿に、唐突かつ底意地の悪い溌剌とした声が届いた。
それでもぴくりとも動かず、氷奈莉の背中は声のする方向を向いたまま。
「無視するなよ、それとももうんでる?」
そこまで言われて、ようやく氷奈莉は体ごと動いてジトっとした眠そうな目をそちらへと向ける。
「ああ、生きてた。こ・ん・ち・わ、っと!初めましてだっけ?君の敵だよ」
声の主は赤い髪、顔に刻まれた緑の痣の少年。
氷奈莉が口を開き、間延びした舌っ足らずな声でぼんやりとその名を呼ぶ。
「あー…………きいろかわひとだ」
「きつとだよ。この期に及んでボクの名前読み間違える奴初めて見たよ」
彼こそが朱点童子、本名を黄川人という鬼の首領である。
「べんきょうするとはきけがするからかんじはにがて」
「ああ、そう…それよりいいのかい、一人で遊び呆けて。君達の張り合いがあまりにも無いもんだから外に出たら、これだもんなぁ」
氷奈莉が生まれる前の事、呪われし一族は一度黄川人に敗北している。
最後の『髪』を打倒した途端に本気を出した、真の朱い鬼の前に敗走を余儀なくされたのだ。
霊体ではなく生身で現れたのは、絶対の自信をそのまま示していると言えよう。
「いつものことだからべつに。きょうはあゆをみにきた」
「なるほど、囮の鮎に引っかかった娘が一人…と。どうする、ここで戦るかい?先代の恨みを晴らしてみろよ」
皮肉を口にしつつ酷薄な笑みを浮かべてみせるが、氷奈莉の表情はぼんやりとしたまま変わらない。
ここで一人捻りすだけでもつまらない、寿命が三カ月は縮む程度の恐怖を与えてやるか。
黄川人が戯れにそう考え、掌に稲妻を収束させる。
すると、氷奈莉ははっと何かを考え付いたような顔をしてから視線を黄川人の目にやってきた。
「そうだ、こうせんじん」
「きつとだよ。話聞いてたかい?」
「かわをつってよむのはなっとくできない。それはどうでもいいけど、このさいあんたでいいや」
次の瞬間、黄川人はこの娘にちょっかいを出した事を心底後悔する羽目になる。
「おねがいするけど、あたしとこづくりごっこして?」

11 :
「……………………は?」
稲妻がぷしゅん、と間抜けな音を立てて消滅する。そのくらい茫然としてしまった。
何しろ、長い時間をかけてし合ってきた仲である自分が呪った一族の娘の口からあろう事か「子作りして」というような言葉が飛び出したのだから。
「えーと、ちょっと待て。君、ボクが誰だか分かってる?」
「しゅてんどーじのへんななまえ」
「変な名前は余計だよ。で、朱点童子は君達の何?いやまあ君達も朱点童子だけどさ」
「ころすあいて」
「されないけど…それは分かってるんだろ?じゃあ天界の神ならまだしも、今の台詞は間違ってもボクに言うべき事じゃないよね?」
「なんで?」
駄目だこいつ。
ここまでのやり取りで、黄川人は瞬時にそれを理解した。
氷奈莉が問題児であるのは、旺盛すぎる好奇心に基づいた放浪癖のみが理由ではない。
心の風が誰よりも高い彼女は、常人とは相当ずれた思考を持つ所謂変人だったのだ。
思いついた目的も一瞬忘れて頭痛を覚える黄川人を余所に、氷奈莉は信じられないような言葉をぽんぽんと出していく。
「えっとね、らいげつになったらあたしたちあんたをころしにいくんだけど」
「す事前提で話を進めようとするなよ。ボクがどれだけ強いかくらいは流石に理解してるだろうに」
「うん、でもあたしとみんなつよいし。あ、でもいまたたかうのはさすがにむり。ひとりだから」
「四人ならせるって断言するんだ…」
「しゅてんどーじをころしたら、もうあたしたちのやくめはおわりでしょ?ひるこがつぶしにくるってあんたもいってたってきいた。ふつーにかんがえればじゃまだもんね」
幼児みたいな喋り方の割に、物事の大局を見る目は持っているらしい。
その代わり、何かと致命的な部分が欠けているようだが。
「そしたら、もうこうしんできないじゃん。ずるい。あたしもこづくりやってみたい」
「意味分かってて言ってるんだろうな」
「あたりまえじゃん、なにいってんの?じょうみょうに、ほうげに、ともだちみんなからなにするかはきいたの。だからあたしだけできないのはずるい」
浄妙太夫に放下太夫と言えば、京の都で有名な芸者の名である。
家に来てすぐに家の蔵の美人画を見て「本物が見たい」と思った氷奈莉は金を持って屋敷を飛び出し、以来画に描かれていた太夫達と対面して親しくなっていた。
元はと言えばそれが放浪癖の始まりだ。何人もの芸者達と何度も会って話を聞いていれば、耳年増になるのはある意味必然。
それと旺盛すぎる好奇心とが合わされば、どんな願望を抱くかは推して知るべし。
――ただ、それを「この際いいや」ととんでもない相手に提案するのが彼女の変人ぶりを示しているのだが。

12 :
「きいろかわひと、はんぶんはにんげんなんでしょ?だからだいじょうぶだよ、あたしげんぷくしてないし」
「そこは問題じゃないからね!?」
思わず声を荒げれば、じゃあ何が問題なんだとでも言いたげに眠そうな視線を返してくる。
半分は人間でももう半分は神なんだから、『大丈夫』と言い切れはしないんじゃないか。
自分でかけた種絶の呪いではあるが、まさか呪われた子孫が自分とそんな事をしようと言い出すとは思ってなかったので確信が持てない。
「ごっこだからいいじゃん、やったことないわけないでしょ?ごせんぞさまにおにやまものをうませてるって」
その言葉に、ぐっと僅かに黄川人が言葉を詰まらせる。
確かに無数の鬼や魔物は修羅の塔に捕えているお輪に産ませているのだが、いちいち自分が仕込んでいる訳ではない。
この一族が百も千も斬って捨てている分また産ませる必要があるのだから、そんな事をしていたら幾らなんでも時間がかかりすぎるし体が持たない。
恨みを持って漂う悪霊や各地から噴き出る邪気を素にして大量に産ませている、というのが正直な話だ。
つまり。
「…しゅてんどーじはあっちもどうじだった?」
反応を目ざとく感じ取った氷奈莉の指摘通り、そういう事なのである。
「……君には関係ないだろ」
「えーマジどーてい?キモーイどーていがゆるされるのはくんれんちゅうまでだよねーキャハハハってにしきてんじんがいってた」
「嘘つけっ!」
駄目だ。どうもこいつには話のノリを持っていかれる。
気力が削がれてきたのでここは無視して帰るか、とまで考えた黄川人の着物を氷奈莉がくいくいと引いてきた。
「だからこづくりごっこしようってー。どーていのままころされたいの?いっしょーどーていでおわるよ?」
「どっちかと言えば今君をしたい気分だけど、馬鹿馬鹿しいからもう帰るよ。来月君達の屍を踏み越えるのが楽しみだね」
「…………そう」
やっと諦めてくれたのか、くるりと背を向ける。
そして、ぼそっと一言。
「じゃあいますぐうちときょうのみやこじゅうに『しゅてんどーじはあっちもどうじだった』っていいふらしてこなきゃ…」

13 :
人間、勢いで動くと取り返しのつかない事態になるのはよくある。生憎ながら、ここにいる二人はどちらも人間ではないが。
「こんな事して、タダで済むと思ってるのかい」
なぜ地べたに腰を下ろした自分の目の前で呪われし一族の娘が着物を崩しているのか、黄川人はあまり思い出したくはなかった。
自分の母親もそうだったが、人間も鬼も神も半人半神も勢いで動けばロクな事になったもんじゃない。
「バレたらいいかげんおいだされるかも。へたにあつかってていこうされたらめんどうだって、まえはなしてるのぬすみぎきしたし」
尤も、この少女は勢いでしか動いてないんじゃないかとしか思えないのだが。だからロクな育ち方をしていないんじゃないだろうか。
「そっちもバレたらこけんとかにかかわりそうだよね。だからきょーはん」
「共犯関係ってのは同意の上で成り立つもんだと思ってたよ」
何度見ても何を考えているのかさっぱり分からない、ジトっとした目つきのままで氷奈莉は帯をぱさっと落とした。
「べつにいいじゃん、ここはおにもにんげんもかみさまもいないし。ないしょのはなしだから、なにもなかったもどうぜんじゃないの?」
抑える物が無くなりはだけた着物の隙間から、透けるような色の肌がそのまま現れる。
「もめばおおきくなるんだって。ほんと?」
両手で襟を引っ張り、露わな胸を突き出してきた。全く無い訳でもないが、見た目の年齢に吊り合った小振りな膨らみである。
仇敵相手にやっているとは思えない無防備すぎる行為だが、まさか本気で双方の同意が成立していると思っているのだろうか。
「ああ、何も無かった事になるよ。だからこれは、単なる馬鹿馬鹿しい遊びさ」
しかし、したらしたで「いっしょーどーてい」などと言うためだけに化けて出てきて非常に鬱陶しい事この上なさそうな気がするのでここは暇ついでに付き合ってやる事にした。
それだけだ、と頭の中で反芻しながら黄川人の手が膨らみへと伸びる。
ふに、とした手触りだ。見た目の割には柔らかい。
「おばさんのとくらべてたりしたら、ちょっとへんたいせーへきだとおもうよ」
「比べてないから黙っててくれるかい」
片手でふにふにとやる気のない手つきで少し遊んでから、両手で掴む。
「……ん」
幼さが残っている割には低い体温が、じわりと高まってきた。掌が熱くなっていく。
強めに揉むと、氷奈莉の身体がぴくりと震えた。
「くすぐったい」
掌に伝わる感触で、小さな両の乳首が固く勃ち上がっていくのが分かる。
ぐにぐにとより強くすれば、「うー」と呻かれた。
「痛いの?」
「さきのほうが、つぶされてる」
鬼と日常的にし合っていても、そういう痛みは感じるようだ。
一旦手を離すと、膨らみは両方とも赤く染まっていた。そこに、二つの尖りがぴんと自己主張している。
指先でそれを摘まむと、固いのに柔らかい奇妙な感触がした。
「…もっとくすぐったい」
顔を見れば、若干顔色が赤くなっているくらいで先程と同じような表情だ。
それが何となく気に入らなくなり、黄川人はやり方を変えてみる事にした。

14 :
どんな因果があればこんな状況になるんだろう。自問すれど、答えなんか返ってこない。
草の上に無造作に広げられた二人分の着物の更に上に座る、一糸纏わぬ男女が一組。
それは大して珍しくもない光景だっただろう。男が京全土への復讐を誓う鬼の頭領で、女がそれをす為に生まれた鬼斬りの一族の娘でさえなければ。
「おおー……」
しかも娘は対面した『男』をまじまじと見つめている。どんな割り切り方をすればこんな行動に出られるんだ。
「あのさ、そんなに食い入るように見るの止めてくれる?」
「なんで?すきなんでしょ、ぜんらになるの」
「あれは好きでやってた訳じゃないからな!」
身内のくらい見た事があるだろうにと思っていたら、氷奈莉曰く「おとーさんはおふろはいるととけるからみてない」らしい。
「こづくりするときはここがたつんだよね」
あれだけで勃つほど女に餓えてはいなかった為、朱点童子のあっちの童子は平常時のままだ。
「たたせかたもきいたから、だいじょうぶ」
言うが早いが、氷奈莉は両手の指をぺろぺろと舐めてからモノに手を伸ばして触れた。
「おもってたよりあついね」
関心したように言いながら、あまり遠慮なく撫でたり握ったりする。
暫くすると、「そうだ」と何かを思い出したような声を上げた。
「うらすじとあたまのとこがいいってきいたけど、うらすじってこれ?」
これ?と言う割には的確に、細い指が性器の裏筋を擦り上げる。弓を引いて出来たタコがそこに当たり、変わった感触を生み出す。
「くっ……」
「かたくなってきたー」
適当に触っているようにしか見えない癖に、氷奈莉の手付きは男の本能をそれなりに上手に擽っていた。
手の中で勃ち上がりゆく性器を観察するように、裏筋や脈打つ血管をなぞり程よく汗ばんだ手で色の濃い頭を撫でる。
やがてぐちぐちと水音が立ち始めたのに気付き、そっと手を離すと透明な汁が糸を引いた。
「これが、こだね?」
「…違うよ。それより先に出てくるもので、先走りって奴だ」
「へー…もっとでるかな」
初めて見る物の連続で楽しいのか、手の中で悪戯っぽく溢れてくる先走りをかき混ぜる。
それによって滑りがよくなり、氷奈莉の手はぬるぬると性器を這い回った。
「へんなにおい…きいろかわひと、きもちよくなってる?」
「…人の事より自分を気にしろよ。命を投げ出してるも同然の事してるんだからさ」
「んー、それはべつにいいんだけど」
もじ、と氷奈莉の脚が動く。それから、急に顔を上げてきた。
「なんか、へんなかんじがする」
色の薄い肌に分かりやすく熱の赤みが差し、眠そうな目つきがとろりとしたものに変化している。
か細く荒い呼気からまた青い女の匂いがして、黄川人は反射的に息を飲んだ。
同時に、悪戯心のような感情が湧き起こってくる。元々、悪意の籠った悪戯は得意中の得意な人物だ。
しかしこの悪戯心にはそれほど悪意が交じってはいない。単に、面白そうだと思ったのだ。
この訳の分からない生意気な娘に、『そういう』意味でひと泡吹かせてみるのが。
「それなら、いい事を思い付いたんだけど――」

15 :
どうせ馬鹿馬鹿しい秘め事ならば、この際とことんやってしまえばいい。

「ほら、この体勢ならボクと君が互いに口なり手なりで出来るだろ」

黄川人が提案してきたのは、氷奈莉が彼に覆い被さり二人の頭を互い違いにするという体勢だった。目と鼻の先に相手の性器がある為、好きに弄り合う事が出来る。

「うん、はじめてこうせんじんがあたまいいとおもった」
「褒める気ないだろ、それ」

下から生えているかのような形でしっかり勃ち上がった雄に、氷奈莉の指が再び触れた。
先程の感触が気に入ったのか、先走りを出す亀頭をぬるぬると撫でて遊んでいる。
そうされている側はと言えば、目の前を覆う少女の秘所を眺めていた。
毛も薄くしか生えていないそこはいかにも未成熟だったが、赤く充血している。
たら、と蜜が糸を引いて落ちてきた。やはり氷奈莉も興奮していたのだ。
両手の親指で引っ張り、閉じているそこを開く。露わにされた性器は処女特有の鮭の肉のような綺麗な色をしていて、それがやけに新鮮に見えた。
開かれると更に蜜が滲み出てくる。『何か』して貰うのを待っているかのように。
つぷ、と人差し指がそこへ侵入してきた。当然のように門は狭く、一本挿れただけでも熱い肉が締め付けてくる。

「んー……なんか、いれてるの?」
「指をね。こんなんじゃそれくらいしか入りそうにないや」
「ゆび…そっか、こういうのなんだ…」
にちゅ、と膣壁の中で指を動かすと頭上の腰が小さく震えた。そのままかき回すと、拒むように締め付けられていたのが柔らかくなっていく。
もう一本指を挿れて、狭い孔を拡げるように動かす。幾度も幾度も、蜜がその指を伝って滴り落ちてきた。
一度抜いて、濡れた二本の指で張り詰めた淫核を摘まむ。

「ひぁっ!」

泣き声のような喘ぎを漏らし、氷奈莉の身体がびくんと跳ねた。

「あ…わか、った、あたし……『かんじて』るんだよね」
「ああ、浅ましくも怨敵相手にね。ところで、そっちはいいのかい?手が止まってるようだけど」

やっと会話も愛撫も主導権がこちらに移った、と黄川人はほくそ笑む。
すると、氷奈莉は「あさましく……んふっ」と何故か嬉しそうに呟いた。
「じゃあ、さ。どっちもくちでやらない?くちどりっていうの、やってみたい」
まだまだ大人しくなるつもりはないようだ。見えなくても、あの目付きのままわくわくした顔をしているのが分かる。
「いいよ、好きなだけ馬鹿やるといいサ。ほんの少しだけ早い冥土の土産って奴だよ」
「うん、そうだね。いっかげつはやいめいどのみやげ、あげる」
交わした皮肉が、合図の代わりになった。
「ん…………あむー」
先に、氷奈莉が躊躇なく性器を咥え込む。彼女は命よりも好奇心を優先しているのかも知れない。
歯を立てないように、と芸者達から教わったのだろう。不慣れながらも、そうできるように口の中でねろねろと舐める。
「ふむ…ぅっ、ふはぁ」
息継ぎに口を離して、今度はは手の動きも加えて竿や亀頭の境目をちろちろと舐め始めた。
どこまで習ってきたのか、それとも本能でやっているのか。初めてとは思えない熱烈な口淫に、雄はより昂っていく。
そして、氷奈莉の秘所にも舌がぬるりと挿し入れられた。少し拡がった膣壁を器用に蹂躙し、零れる蜜が舐め取られる。

16 :
「ひぅ、っん……っはぁ、むっ」
熱い吐息を吹きかけて、氷奈莉はまた亀頭を咥えより深く口内に収めだした。
えずくぎりぎりの深さまで咥えると言っても、口そのものが小さいので全て入り切るとまではいかない。
それでも、唾液の音を立てながら舌を口じゅうに動き回らせていた。
最初から今まで、この場には二人を除いて誰も何も居はしない。人と神の血が交わり生み出す神を超えた力を畏れているのか、鳥獣や鬼さえも近寄る気配がない。
川の流れ以外に雑音を発するものはなく、ただただ互いの性器を刺激し合う微かな水音のみが響く。それが余計に異様だった。
「ここから…んっ、でるんだよね…」
ちゅぽん、と氷奈莉が性器から口を離す。代わりに、興味深そうに爪先で鈴口を引っ掻いた。
――すると。
「わっ」
ぴしゃ、と胸に何がかかる。先走りではない。白く濁った、本物の精液だった。
「こんどこそ、こだねだ……」
熱に浮かされたような表情で、指で掬ったそれを見つめてから舐める。
「まずっ。これ、ほんとにこどもになるの?」
「ああ、残念ながら君達には縁の無い話だった筈なんだけどね……それより」
言動からこの娘の状態を察するのは、中々骨が折れる。
それでも、黄川人は掴んでいた。氷奈莉もまた、そろそろ限界なのだと。
「ボクにだって男の矜持って奴があるんでね。――仕返しだゼ」
秘所から舌を抜き、間髪入れずに淫核へ吸い付いて軽く歯を立てる。
女子の急所にとって、それはあまりにも耐えられぬ仕打ちだった。
「ひ、ぁ、あ、ぁ、あぁあぁぁっ!」
喘ぎ声であろうとどこか飄々とした余裕が混じっていた氷奈莉の口から、初めてそれが消え失せた嬌声が発せられる。
がくがくと幼さの残る肢体が震え、秘所から堰を切ったように蜜が溢れて降り注いだ。
「ああ…分かってたけど、別に味とかはしないんだよね」
黄川人がそれを口で受け止め、見えはしなくても意地悪く笑ってみせる。
少し間を置いて落ち着いたようで、氷奈莉は何度も深呼吸をして動きを止めた。
「ふぅ…わかった、『いく』ってこーいうのなんだ……」
「いい加減満足したかい?君と会話してると疲れるから、今なら見逃してやるよ」
「え?なにいってんの?くんれんはほとんど、じっせんとおなじなんだよ」
急にまた最初のような雰囲気になって、体勢を崩し寝転がる相手のすぐ横に正座する。
「ちゃんと、さいごまでやろーよ」
その緑の目は変わらず眠たげであったが、例え今すぐにされたとしても全く諦めないのではないかと思えるほどに爛々と輝いていた。

17 :
広げた着物の上に、ころんと氷奈莉が仰向けに転がる。
無造作に流れる縹色の髪と透けるような肌、そしてそれに乗る欲情の赤みが性的かつ非現実的な美しさを醸し出していた。
「あ、ぜんしんいれるのはだめだよ。ちゃんとしたこづくりごっこなんだから」
口を開けば一気に気が抜けはするのだが。
「君だったら頼まれても嫌だから安心しなよ」
先程までとは逆に氷奈莉にのし掛かる体勢となった黄川人の肩を、白い指が掴んでいる。
「ボクの肩に穴を開ける気かい?痛いんだけど、地味に」
「あくりょくにはじしんがある」
今まさに性交に移ろうとしている瞬間なのに、色気もへったくれもない言葉が交わされる。
結局氷奈莉の思う壺に入ってしまっているのを再確認して、黄川人は軽く溜め息を吐いた。
「はいりそうに、みえる?」
「…さあね」
また閉じてしまった『入り口』を、指で押し拡げる。
絶頂を迎えたばかりのそこは、何もせずに挿れるよりは大分楽に出来そうに見えた。
不本意ながら、有り余る体力に氷奈莉の好奇心を原動力にした愛撫と間近で見た媚態が手伝い、一度射精しても性器が萎える事はなかった。
「う…………っ」
挿れるよ、とわざわざ言う義理もないなと思いくちゅりと触れ合わせてそのまま侵入を始める。
これまた不本意ながら最初の実体験が成人にもなり切っていない処女だったのは、幸か不幸か。
指や舌の比ではない規模の異物を、蕩けたように見えた秘所は強く拒んだ。
十二分に濡れているにも関わらずぎちりと締め付けてくる。
「わりと、いた…い」
氷奈莉に伝わった感覚も、快楽よりは苦痛の方が強いようだ。
「これぐらい我慢しろよ。いつももっと痛い目に遭ってるんだろ」
「ん…なぐられたりきられたりは、べつにいいけど…こっちのがいたいかも」
とは言え、流石に痛みへの耐性は相当なもの。
ぼそぼそとそう言っただけで泣きも叫びもせず、氷奈莉はただじっと結合部を見ようとしていた。
そのまま、無理に奥まで押し入られる。
「いぎっ――」
静かに迎えた、少女の破瓜。繋がった先から、蜜の代わりに血が滴る。
雄の全てを胎内に収められたまま、氷奈莉は荒く息をついた。

18 :
「っはぁ、はぁ……これで、ぜんぶ?」
「ああ。痛いかい、胎を貫き裂かれるのは」
「いばらきたいしょうになぐられるよりは…いたくないかな…」
ぼんやりと虚空に視線を彷徨わせ、それから黄川人の顔を見る。
肩を掴む指の力を緩め、急かすようにぺしぺしと叩いた。
「うごかしてー」
「…痛いって言ったばかりじゃないか、つくづく分からないな君は」
「いたいのをきにしたこと、あんまりない。そんなんじゃころされるよっていわれるんだけど」
「反省しないからこんな事してるんだね」
「まーね。それより、うごかしたらまたかんじるかきになるの」
これ以上問答をしても無駄だろうと、希望通り黄川人がまた動き始める。
入る時は拒んだ癖に、出る時は逃がすまいと膣壁がぎゅっとうねった。
その狭苦しさが、欲望を煽る。
「…なれてきた、よ。ふっ、ん」
もうこの状態に適応したらしく、氷奈莉は痛みからさっきまで感じていた快楽を拾い出すように短く息を吐いた。
汗に濡れた小さな身体の感触が、全身へ伝わってくる。
「ぁ…きた、はぁっ、ぁ、っ」
ぎゅっ、と再び肩を掴む指に力が篭められた。本気で掴めば人の骨くらい砕けるんじゃないかという強さで。
だが、その時だけ黄川人はそれに関して言及しなかった。
そうしている内に、より律動が円滑になっていく。
「ふぅっ……んんっ、っは、あたま、ぼーっとしてくる…」
氷奈莉の静かな喘ぎ声と、性器同士の触れ合いのみが川のせせらぎに混じって響く。
それが、この馬鹿馬鹿しい秘め事に最も似合っているように黄川人には聞こえた。
しかし、それがいつまでも続く訳もなく。
「手、離して」
「え?――――あっ」
気が抜けてきたからか、一瞬手を離してしまう。
一拍置いて、氷奈莉の腹にぼたぼたと白濁した液体が降りかかった。
「…もういいだろ、これで。流石にもう疲れたよ、主に精神面で」
はぁ、とわざとらしい溜息を吐かれる。
そんな黄川人を無視するように、氷奈莉は精液を指に絡めて弄くりながら。
「だいじょうぶだから、なかにだしてもよかったのに」
不満そうな声色で、そう呟いたのだった。

19 :
結局、囮の鮎に釣られたのは自分だったのだろうか。
そんな事を考えながら神通力で着替えた黄川人は、ぼんやりとそこらの岩の上で頬杖を突きながら川を眺めていた。
氷奈莉はと言うと、何の躊躇もなくあのまま川に入って身体を清めている。傍から見ていれば全裸で泳いで遊んでいるようにしか見えないが。
「おとこのにおいをぷんぷんさせてかえってくるとしゅらばになる」などと言っていた。それ以前の問題にも程がある、と指摘する気力ももうない。
所詮は馬鹿馬鹿しい内緒話だ。さっさと忘れて、復讐の続きでもした方が余程精神衛生上いい。
ここまで流れた思考が、川から上がった自分をす為に生まれた娘のぺたぺたという足音で途切れる。
「かえらないの?」
落ちたままだった着物を着直しながら、何気ない口調で話しかけてきた。
「君が消えてくれれば帰るよ。どうせ来月までの命だ、生かしといてあげるからさっさとお家に戻りな」
「うん、じゃあらいげつみんなでころしにいくからもっかいおばさんにはいってまっててね」
明日また遊びに行くからね、のような口調でそんな返答をしてくる。
さっきまで色めいた声を出していた癖に、これだ。
黄川人が本日何度めかの溜息を吐くと、何処かへ行こうとしていた氷奈莉がくるりと振り返ってきた。
「またねー」
そう言い残してから手を振って駈け出した少女の姿は、『速瀬』を使っていたのかあっという間に見えなくなってしまう。
最初から最後まで、頭の中がいまいち読めない目つきのままだったが。
少なくともここまでのやり取りの中で、一番の笑顔が別れ際に見えた。
「………はいはい、またね」
やる気のない手つきでひよひよと振り返し、黄川人の姿もその場からぱっと消える。
これで、一抹の出来事を知る者は誰一人としていなくなった。

20 :
――その数ヶ月後の事。
朱い鬼との闘を経たにも関わらず、あの呪われた一族はまだ戦っていた。
ただし、今の彼らの相手は『二人目の』朱点童子ではない。
ある意味気の抜けた結末に納得出来なかった一族は、全てを計画した天界の最高神に挑戦状を叩きつけた。
鏡の中の大江山でその溜まりに溜まった鬱憤をぶつけられるだけの簡単な仕事が忙しく、彼女は今天界にはいられない。
その代わり、実質上の最高神として天界に位置しているのが。
「えーっと、はじめまして……だっけ?」
件の結末の結果一度の転生を経て神としてここに住む事が許された、黄川人こと朱点童子改め朱星ノ皇子である。
天界の神であれば一族の申し出により交神の儀を行う義務がある。
賜った無駄に広い朱色の神殿の入り口まで彼が出てきたのも、その用件があるからだった。
そして、この新たな最高位の男神との交神を希望した娘は……
「きいろかわひと、わかボケ?あたまつかわないからそうなるんだよ」
間延びした、舌っ足らずで相変わらず幼児のような口調。その割に話す内容自体は思いの外辛辣。
持ち主が手入れに興味がないに違いない縹色の髪、透けるような色の肌、ジトっとした眠そうな緑色の両目。
一切見間違う余地もなく、無事元服を迎えた氷奈莉その人だった。
「はじめまして、であって欲しかったんだよ!他人の空似でさえあれば!」
ほんの少し前に血みどろの戦いを繰り広げた間柄とは言え、いっそ驚く程に緊張感も敬意も感じられない第一声に『朱星ノ皇子』は口調を乱した。
「君も少しは驚きなよ、これでもボクだって今の状況には驚いてるんだぜ」
「そう?あたしはこうなるだろうなーっておもってたよ。おえらいさんとこのボンボンは、わるいことしてもうやむやになってけっきょくしゅっせするってきいたから」
「ああ、そう…心の底から失礼な予想をありがとう。で、いったい何が望みなんだい?」
早くも疲れた表情をしてみせる相手に、氷奈莉がお前は何を言っているんだとでも言うように首を傾げる。
「こーしんなんだからこづくりにきまってるじゃん」
「それは分かってるよ。何でわざわざボクなのさ、正直な話君の家の人たちは全く信用してないだろボクの事」
「うん、みんなからはんたいされたけどむりやりイツかにおくってもらってきた」
どれだけの騒動があの家に起きたのか、想像するだけでも頭が痛くなりそうだった。
そんな交神相手の様子を気にする素振りも見せず、氷奈莉は言葉を続ける。
「はじめてあげたからには、あたしは『きつと』いがいとはこーしんするきはないよ?」
初めてをあげたからって、元々お前でいいやみたいなノリで言ってなかったか。
その前に、やっぱり名前を読み間違えていたのはわざとだったのか。
突っ込み所が多すぎて、返す言葉が途切れてしまう。
それでも、風よりも掴み処のない心を持つ呪われた娘は楽しげな様子で彼に手を差し出してきたのだった。
「だからさ。ほんとのこづくり、しよーよ」
そう言って、にんまりと笑いかける。
それはあの川原で見せた時と、地獄の奥底で阿朱羅に最大級まで威力を高めた奥義を叩き込む間に一瞬見せた時と同じ一番の笑顔だった。

長々と失礼しました。まったく、えっちな事に興味津々なロリは最高だぜ!!
きいろかわひとさんのキャラが違うのは仕様
ほんとのこづくり編も書くかどうかはコーンコーンチキ…ってね

21 :
>>9
GJ! GJ!バーローの声がめっちゃ脳内再生された
「あっちもどうじ」に禿げワロタwwww
二人からはすごい良い子ができそうだ
ぜひ童子を立派なオトコにする編待ってるんだぜ!

22 :
>>9
さりげなく義妹モノとは!GJ!
皇子もかわいい息子になら娘を嫁に出すなwww

23 :
すいません>>13>>14の間が抜けていました
場面が飛んでて不自然になってしまうので貼り直し

もう一度乳肉に手を当て、母乳を搾り出すように乳首の方へと動かしながら揉んでいく。
薄くしか付いていない癖にその肉はどこまでも柔らかく、ふにふにとした頼りない感触と共に指に合わせて形を変える。
「……………あっ」
ぷっくり膨らんだ乳輪をぷにぷにと捏ねると、ここで始めて氷奈莉の息が少しだけ乱れた。
乳の出る筈もない胸が、まるでそれを促されるかのように触れられる。
それをもう一度繰り返してから、指先は張り詰めた乳首に触れた。
今度は捏ねるのではなく、しごくように愛撫してみる。軽く汗ばんでしっとりとしてきた。
「こーいう、かんじ、なんだ…」
氷奈莉は不思議そうに、初めて実際に見る手付きで触られる自分の胸を見つめている。
身体の熱がここに集まり、更に先端へと集中していく感覚。未知のそれに興味津々といった様子だ。
摘まんで捏ねて、搾ってしごいて。乳輪と乳首に愛撫が集中してくる。
そうしている黄川人は、息遣いや体温以外にある点での変化がこの娘に起きている事に気付いていた。
匂いがする。『水』の術力を示す縹色の髪から、胸を中心に赤く染まっていく柔肌から、だんだんと不規則になってきた吐息から。
それは紛れもなく、『女』の匂いだった。お輪や真名姫といった彼の知る女性よりも未成熟ではあるが、はっきりと分かる。
真っ当な人間に換算してもなお自分よりガキだろうに、生意気にもそんな風だったから自然と指先に力が篭る。
「ふ、うっ――ぴりぴり、してる。おおきくなるから?」
吐いた息が、さっきより色めいていた。眠そうな目が更に細くなる。
「本当、理解に苦しむよ。女って生き物はサ」
「りかいできるほどみてないだけじゃないの?どーていほどしったようなくちをきくんだって」
まだ口が減らないのか。元服もしていない生娘に言われたくはない。
そう口に出すのをぐっと堪え、黄川人はいつもの調子でこんな挑発をしてみた。
「君の方こそ、男なんか本当に知っちゃいないだろ?肝心な処を目の当たりにすれば、たちまち怖じ気づくんじゃないのかい」
すると。
氷奈莉の目がみるみる内に輝きだし、弾んだ声でこう答えてきたのだ。
「もうみせてくれる?みたいみたい、そっちもはやくぬいで!あたしいまぜんぶぬぐから」

24 :
>>9
GJ!面白かった!
溶けるから風呂に一緒に入れない父にワロタw

25 :
エロパロって言ってもニッチなジャンルは投下していいのかな
いつかきつと+昼子の3pとか

26 :
>>25
和姦だったら是非読みたい

27 :
強姦でもいいのよ

28 :
そういやPSP版で別人設定採用されたからイツ花&昼子ものできるんだな
これは何と言えばいいんだろう…同一人物丼?本体と残りカス丼?

29 :
いいじゃんいいじゃん
イツ花と昼子が自分を完璧な存在にするため合神することに
自慰見せあいから貝合わせして張り型で息を合わせるとまあびっくり

30 :
国産みだな

31 :
氷ノ皇子が拾った赤子に乳をやろうとしたが出なかったので
六つ花さんにお願いするっていう小説はここでいいんでしょうか

32 :
六ツ花に頼めとは自分も思ったけど
女でも子を産まないと乳出ないとか、氷ノ皇子は知らないだろうな

33 :
御前は皇子好きっぽいけど、ショタコンだったよな
案外きつとの良い継母になってくれたかもしれない
まぁゴズマルにでも分けてもらえばいいんじゃないかな。ミルクは
それに男でもミルクでるからそれでどうにか

34 :
昼子はぜってえ使わねえ、って思ってたけど誘惑に負けた・・・

35 :
寝太郎は本体がリスで下半身は木だと思ってたのに
4段階目で普通に話しかけるらしくて驚いた
神様の全身図があればなあ…

36 :
虹板の方にはスレ立たんかな。昔はエロ同人誌もいっぱいあったようなぁ・・・

37 :
ゲーパロ専用さんのSSが好きだった

38 :
あげ

39 :
>>37
俺も俺も
お銀は完全にあのイメージだわ

40 :
天狗のご立派な鼻にドハマリしてしまう女当主のSSとか読みたいな…

41 :
>>40
なんかヤプー思い出すな、体勢的に
あと>>9激しくGJ
マナ姫あたりであっちの童子wwは捨ててる気がするけどイイヨイイヨー
嘗彦と娘のぬるぬる百合(?)プレイとか読みたい

42 :
嘗彦さんが実娘にご奉仕しますだなんて
読みたい

43 :
風評:床上手の息子や娘は天界で女神や男神に仕込まれているかと思うと胸熱

44 :
かつて人に禁じられた技術を与えた二柱の神を封じたという九重楼の周囲には常に暗雲が立ちこめ、
朝から雷雨を呼んでいた。
九重楼に巣くう鬼達と戦う四人の人影を激しい稲光が照らし出す。
初陣の弓使いを襲おうとした一ツ目入道を飛鳥の如き素早さで斬り伏せたのは、小柄な身体を
甲冑に包んだ剣士だった。
鋭い太刀筋に似合わぬ優しい顔立ちで、一見すると元服前の美童のように見えるが、この一族きっての
剣の使い手はまぎれもなく年頃の乙女であった。
「助かったぞ! 灯代」
灯代と呼ばれた乙女は微笑み返したが、その眼は油断なく左右に動き新手の鬼の姿がないか確認している。
戦闘が終わり一息つく四人の前で、先程倒した一ツ目入道の骸から眩しい光が放たれた。
「これは……!」
朱点童子のかけた呪いの『朱の首輪』が外れ、鬼に封じられていた神の一柱が解放されたのだった。
灯代は一瞬だけ、その光が隻眼の男神の姿を形作るのを見た。
赤銅色の肌に古代の装束を纏った男神は、灯代の手に握られた刀『天目一刀』を懐かしいもののように
見つめ、すぐに光の中に溶けるように消えた。
九重楼の討伐より一月が経ったある日、灯代は儀式のために湯浴みをしていた。
兜を取ると燃えるように赤い短髪が露わになり、まるで印象が変わる。
女の命とも言える髪を戦闘の妨げになるからと自ら小刀で切り揃えていても、日毎鎧の下で成長する
柔らかな膨らみは女である事をしっかり主張していた。
炎のように激しい闘志を持つ一方で、常に仲間の事を気にかける、火と水の性質が同居する灯代の性格は
討伐隊長として適任であり、その資質と年齢からいって、次期当主に任命されるとしたら彼女であろうと誰もが考えていた。
鬼達に対抗するため、より強い力を一族の血の中に欲した現当主により、元服して間もない齢九ヶ月の
灯代は今月初めて『交神の儀』に臨む事になった。
先日、当主である父とイツ花に呼ばれ、交神について聞かされる灯代はいつも通り背筋を伸ばし凛とした風情だったが、
「相手の希望はあるか? 今の奉納点で選べる神には限りがあるが、できるだけお前の望みに沿うてやるつもりだ」
「そう、ですね……もう天界に戻られたのでしたら、先月の討伐の時に一度だけお顔を拝見した、あの方に」
その男神の名を口にした時だけは、年頃の娘らしくはにかんだ笑みを見せた。
物心ついた時から鬼ばかり斬り続けて男女の事に疎い灯代だったが、自覚なく恋慕の情が目覚めつつあったのかもしれない。

45 :
神聖な儀式のため結界が張られた室内に、清められた白い襦袢姿の灯代は正座して待っていた。
(イツ花は『神様だって男と女なんだから大丈夫ですよ』と笑って言ってたけど、やっぱり緊張する……)
そもそも、自分に子供ができる事だってまだ実感がない。
やがて襖を開けて室内に入ってきたのは、火と鉄の技を司る鍛冶の神、タタラ陣内だった。
光の中に見た姿と同様、みずら結いと呼ばれる古い形に髪を結っている。
容貌は無骨だが、灯代を見る左目は穏やかだった。
「タタラ陣内様、此度の交神の儀、何とぞ宜しくお願い致します」
「畏まらなくていい。 お前だったな、九重楼で俺を朱の首輪から解き放ってくれたのは」
この方も自分の事を覚えていて下さった、と灯代は嬉しさに顔を輝かせた。
「あの時お前が持っていた、刀の銘」
斬られる瞬間『天目一刀』と刀身に刻まれた銘を見て、名前と神格を奪われ朱点の支配下にあったタタラ陣内は、
自分が何者であったか思い出せたのだという。
「あれは、俺のもう一つの名を取ったものだったのだ。それを見て『名』を取り戻す事で呪いが解けた」
「そうだったのですか」
「お前の名は灯(ともしび)の代わりと読むのだな、良い名だ」
「はい、父様が付けて下さいました」
「父様、か……俺もこれが終わればそう呼ばれるようになるのだろうな」
それを聞いて、この方との間に子を授かるという事は、やはり世間でいう夫婦になるのと同じ事なのだと灯代は思った。
相手が神であっても真っ直ぐに顔を上げて相手の目を見ていたが、これからするべき事を思い出した途端に
目を合わせられなくなってしまった。
耳朶を染めて俯く灯代の様子に、まだ男を知らないとタタラ陣内は直感した。
横には寝具が二つ並べて敷かれており、知らないなりに何をするか察しているだろうとは思ったが
陣内は念のため聞いてみた。
「『交神の儀』については、どの程度知っているんだ」
「はい、あの……二人で夜を共にするとだけ聞いておりますが……」
「だが、床を並べて共寝するだけで子が授かると思っているわけじゃなかろう?」
「…………」
言葉を失ってまた赤い顔で俯く灯代を見て、さてどうしたものかと陣内は思った。
乏しい知識で床入りを性的な事と知ってはいるが、具体的に何を成すべきかはさっぱりらしい。
とはいえ、タタラ陣内は自分を鬼の身から解放したこの人間の娘を好ましく思っていた。
灯代を形作る要素に、自分の属性である『火』が多分に入っている相性のせいもあるが、何よりも気に入ったのは
その気性を示す玉鋼のような力強い光を持つ瞳であった。
それに、イツ花が言うとおり神と人間の差はあれど男と女である。
戦場であれほど勇ましく戦っていた女剣士に、契りの具体的な内容も知らないようなうぶな素顔を見せられては、
男として何とか導いてやりたくなる。
人間の営みに極めて近しい神であるゆえに、男女の房事にも通じている陣内は、顔を上げられずにいる
灯代に囁いた。
「俺に任せておけばいい……まずは 溶かしてやろう」

46 :
火の男神は気性が激しい反面情が深く、一度惚れ込んだ相手には身も心も焼き尽くすほどの熱情を注ぐ。
念入りに湯浴みをしてきたというのに、灯代の身体は熱を持って早くも汗ばんでいた。
強張っていた手足が芯をなくして本当に溶けていくような気がする。
いかにも男らしいがっしりとした、鍛冶の神の手が灯代を愛撫していた。
愛撫と言っても、初めから無遠慮に身体をまさぐるのではなく、いたわるように優しい手つきで
赤い髪に、丸い肩に、薄い背中に触れて灯代を溶かしていく。
暖かい掌に触れられているだけで心地よく、居心地のいい囲炉裏のそばで丸くなる子猫のように、
灯代はすっかり緊張を解いて陣内の腕に身を任せていた。
無意識なのか、陣内の手を自分から握って指を絡めてくる。
灯代の手は鍛えられた武人のそれではあるが、剣を取るよりも花を摘む方が似合うであろう、
ほっそりした綺麗な指先を持ち上げた陣内は、桜色の小さな爪までも愛でるように口付けた。
「暖かくて、気持ちいい……」と灯代が吐息混じりに呟くと、陣内は片目を細めて少し笑った。
「まだ、これからだぞ?」
「え……?」
「お前に火を付けてやる」
その言葉の意味を生娘の灯代は理解できなかったが、瞼をふさぐように唇が落とされ、その熱に微かに震えた。
何が始まるのかと灯代は少し怯え、陣内の広い肩を突き放そうとしたが、抵抗するつもりの手には
力が全く入らず、結局逃れる事はできなかった。
今夜のため初めて紅を差した灯代の唇に、陣内の唇が静かに重ねられた。
その相手の唇が、指先や瞼に口付けられた時よりもっと熱く感じられ、灯代は頭の芯が白熱するようだった。
陣内は唇を合わせても性急に貪る事はせず、少しして離れ、もう一度口付ける。
次は灯代が自分から口付けるように仕向け、それを何度か繰り返して慣れた頃、ようやく唇の隙間へと舌を忍ばせた。
「……んん!」
直接的な粘膜の接触に灯代は驚いたが、さすがに舌を噛んでまで拒みはしなかった。
もっと先が知りたい一心で、灯代は陣内の背に腕を回し、必でしがみつきながら応える。
互いの舌を絡めるという初めての行為にぞくぞくと快い感覚を呼び覚まされ、灯代はいっそう身体を熱くした。
「ずいぶんと覚えが早いじゃねえか」
唇を離した陣内には、灯代の吐息までもが火のようになっているのが分かり、
まだ着物のあわせさえ乱れていないというのにここまで陶酔している灯代が余計に愛しくなった。
上気した肌が白い襦袢に透けそうで、匂い立つほどの色香を醸している。
その襦袢の胸元に陣内の手がかかり、灯代は慌てて身を引いた。

47 :
「嫌か」
「……嫌ではありません……けれど……」
拒むそぶりを見せて相手が気を悪くしなかったか不安で、灯代は恥ずかしそうに言葉を濁した。
今は肌にまとわりつく布一枚でさえもどかしくてたまらないが、かといって全て脱ぎ捨ててしまうのも
躊躇いがあった。
「そうだな、まあ、このままでも出来ん事はないだろう」
無垢な灯代を包むあまりにも薄い最後の砦を陣内はそのままにし、決して急かさずに準備を整えていく。
おかしな事に、そうされるとかえって当てが外れたような機を逸したような気持ちになり、いっそ脱がせて
頂きたかったと灯代は思ってしまった。
襦袢の胸に悩ましく浮き出ている両の先端を巧みな指先に捕らえられ、薄布越しに愛でられると唇から
熱い吐息が漏れた。
この熱い掌でじかに素肌に触れてほしい……
本能ではもっと生々しい事を望んでいると自分で理解しているだけに、その願望を口に出すのはとても勇気が要った。
「陣内……さま……」
「何だ?」
「灯代は、あなたに何も隠しませんから……どうか、あなたに似た強き子をお授け下さい」
それだけ言うのが精一杯だったが、襦袢の上から腰の稜線を確かめるようになぞる掌を止め、タタラ陣内は
決心した灯代を見つめた。
自ら白い襦袢をはだけて脱ぎ捨て、白足袋を除けば生まれたままの姿になった灯代は、自分の裸身が
相手にどう見えるか気になって仕方なかったが、剣士らしくしなやかで無駄のない、
それでいて女らしい曲線で形作られた肢体はどんな名工でも真似できない見事な造形美だった。
「可愛い事をするのはいいが、裸になったまんま固まっている奴があるか。 風邪引くぞ」
そう窘められて男神の膝の上に座らされ、後ろから抱き締められた。
タタラ陣内も身を包んでいた古代の装束を脱ぎ、赤銅色の逞しい身体を晒した。
何も身に着けず男と抱き合っている状況に灯代はすっかりどぎまぎして、陣内の肌からじかに伝わる熱に
いずれ全身を包まれて燃え上がらされるのだと予感した。
「感じたままに声を上げろ。 その方が俺も昂ぶる」
そう囁かれながら唇で耳朶を嬲られ、灯代は情欲の炎に炙られるような気持ちだった。
自分がとてもはしたない女になってしまったような気がしたが、それが嫌ではなくむしろ開放感に似たものがあった。
そこかしこを触れられるたびに勝手に色めいた声が出てしまうのは恥ずかしく、ずっと口を押さえて
いたいほどだったが、
陣内の望むとおりに我慢せず素直に声を上げていると、相手もそれに煽られて一層愛撫に
熱が入ってくるように感じられた。
「そんなに、おっぱいばっかり、弄られたら……ん、んふっ……もう、先っちょ、ひっぱらないでぇ……
あぁ……おかしくなっちゃいますっ……」
掌に収まる程良い乳房をさんざん弄んだ陣内の手は、子を宿す器官がおさまっているあたりを
慈しむように撫で下ろし、腿の間の楚々とした翳りにたどり着き、今はそこを指先で優しく梳いている。
自ら指で慰めた事もないではないが、この方の指ならどうなってしまうのかと思う灯代は無意識に
腰をくねらせて指戯を催促していた。
陣内がこぢんまりした割れ目へと無骨な指を忍ばせると、もうそこは歓喜の蜜でたっぷり満たされ、
女体の中心に泉が湧いたようになっていた。
よく溢れて零れずにいたものだと思いながら、生娘も熟した女も等しく快く感じる一点に狙いを絞り、
花びらの間に隠れた小さな蕾を濡れた指先でくすぐると、灯代の腰が跳ねた。

48 :
「あ! あぁ、そこっ」
「ここが好きか」
焦らして可愛い反応を見たかったが、少し強く擦ってやっただけで灯代は呆気なく気をやってしまった。
眼に涙を浮かべ、ふいごのような息をつく灯代の奥からより多くの蜜が染み出てきて、いつでも
受け入れられるように体を整えていく。
思ったよりも早く繋がれるかもしれない、と陣内は灯代の体を褥に横たえ、片膝を立てさせて露わにさせた
女の部分へとゆっくりと指を沈めていった。
「ん……!」
一本とはいえ男の太い指を挿入されてはいたが、灯代は全く嫌悪も苦痛も感じず、むしろそこに初めて
受け入れたものをもっと感じたくて、加減も分からないまま陣内の指を柔らかな襞々できゅうっと喰い締めた。
「おい、今からそんなに欲しがられてはこっちが保たんぞ」
苦笑したタタラ陣内はもう片手で灯代の手を取り、次に灯代の器へ収めるべきものへと導いた。
灼けた鉄にでも触れたように灯代は驚いて手を引っ込めたが、好奇心が勝ったのかまたおずおずと
その形を確かめようとする。
大きな杭のようなものは触れてみると熱く火照っていて、どくどくと血が巡っているのが感じられ、
とても硬いが確かに肉体の一部なのだと分かる。
(……これで……?)
灯代はこんな大変なものが自分に収まるとはとても信じられなかったが、例えこれで身を裂かれても、
この方を自分の最も深い所で知りたいと思った。
まだ未通の中を慣らそうと指を遊ばせている陣内に、灯代は瞳を潤ませて訴えた。
「お願いです……どうか今すぐに、灯代に陣内様のお情けをくださいっ……」
生娘にここまで言われては、さすがに神の端くれといえど辛抱が出来るはずもなかった。
陣内は灯代の両脚を持ち上げて腰を上向かせ、受け入れる格好をさせた。
何もかもさらけ出した姿なのに、白い足袋だけ履いたままなのが余計に淫猥だったが、今更わざわざ
脱がしている余裕はなかった。
蜜に濡れて剥き出しになった花びらの中心に熱い切っ先があてがわれ、灯代の身体がかすかに震えた。
「辛かったら、いくら引っ掻いても噛みついても構わないからな」
「はい…… っ!うぅ……!」
灼けた杭のような男根が、誰も立ち入った事のない泉の中へと沈み込んでいく。
十分に潤ってはいるが狭い道筋を強引にこじ開けられ、灯代は体験した事のない痛みに歯を食いしばった。
破瓜の苦悶を堪える桜色の爪が赤銅色の背中に食い込み、いくつも艶めかしい痕を残した。
「よく堪えたな」
「はぁっ……ふぅ……」
灯代は眼に涙を浮かべて息も絶え絶えの様子だったが、その表情はどこか満足げだった。
男神と一つになったところが力強く脈打っていて、命そのものを受け入れている気がする。

49 :
「陣内様の……とっても熱くて、はちきれそうになっています……」
「お前のここも、火処(ほと)とはよく言ったものだな、俺の方が溶かされちまいそうだ」
「ほ……そ、そんな恥ずかしい事、言わないでっ……」
秘め処を指すあからさまな言葉に、初心な女剣士は顔を覆わんばかりに恥じらったが、陣内は正直な
気持ちでの発言だった。
灯代のあどけない顔が艶めかしく紅潮し、すっかり『女』の表情になっているのに、本人はまだ気付いていないだろう。
脚を高く上げた体位のため、薄く破瓜の血が滲む初花を男根が割り開いているのがよく見える。
見るからに痛々しいが、これで灯代が女になったのだと思うと、それにも増して欲情をそそる眺めだった。
陣内が少し身じろぎすると、胎内で起きたかすかな変化に反応して灯代が眉を寄せた。
「うぅんっ……」
「きついか」
「まだ少し……でも、それほど痛くありませんから……」
陣内はこのまま温かい襞肉に隙間なく包まれていたかったが、一旦腰を引き、自分の太さに慣らすように
浅いところを往復させる。
その動きが伝わり、灯代が小さく声を上げたが苦痛からくるものではなかった。
「はっ……はぁ……ああっ」
ゆっくりした律動を続けるにつれ、断続的な吐息混じりの声は徐々に艶を帯びていき、ますます潤って
滑りがよくなった内部は催促するように肉杭を締め付け出した。
負担をかけないよう浅く抜き差しを繰り返していた陣内だったが、その反応に頃合いと判断して再び奥を目指した。
改めて、灯代の火処に根本までを収めた時、最奥の一部が粒立った感じになっているのに気付いた。
そこにちょうど先端が擦れて、いい具合にもてなしてくる。
「何も隠しませんと言っておきながら、一番奥にこんな上等なものを隠していたか」
「そんなつもりはっ……ひあぁっ!」
灯代自身でさえ自分の内側がこんなふうになっているとは今まで知らなかったが、そこを刺激されると
思わず声を漏らしそうな切ない心地になり、戸惑いながらも未知の感覚に溺れていった。
灯代の思わぬ歓待に陣内にも火がついたらしく、そこに叩き付けるようにリズムを変えて深く腰を使う。
露にまみれた花びらがめくれ返ってしまうほど激しく突き込まれ、灯代は濡れた声を上げ続けた。
「陣内、さまっ! 灯代は、もう……!」
「構わん、イッてみせろ!」
白足袋の中で灯代の足指がきゅうっと縮こまったのと同時に、蕩けるような襞肉も一際きつく締まった。
本能で精を搾り取ろうとする艶かしい動きに急かされ、陣内の奥底からも熱い澱みがこみ上げてくる。

50 :
「く……出すぞ! 灯代!」
「あ、熱いぃ……っ!」
限界を迎えた陣内は灯代の細腰をぐっと掴み寄せ、熔鉄のような子種を命の坩堝へありったけ注ぎ込んだ。
灯代も陣内の逞しい腰に脚を絡ませ、とめどなく迸る精を最後の一滴まで女の器に受け止めた。
命までも一つに溶け合うような絶頂の中で、交神の儀は完成した。
吐精を終え、息を整えた陣内は灯代の上から退こうとしたが、灯代は縋りつくように腕を回し、
離れようとしなかった。
「陣内様……もう少し、このままで……」
今し方まで情を交わしていた相手を、用は済んだとあっさり突き放すほど無情な男ではない。
いじらしい願いを聞いてやり、陣内はまだ余韻に浸っている灯代の赤い髪を撫でてやる。
気付けば、二人とも全身から湯気が立つほど汗みどろになっていた。
「どうだ、ひとっ風呂浴びてまた交合わないか」
「でも、まだ……」
「離れたくないなら、このままの格好で連れていってやろうか?」
「あっ、あ、駄目っ!!」
繋がったまま褥から抱き上げられそうになり、悪い冗談を本気にした灯代は真っ赤になって暴れた。
(続く)

51 :
gj!やはり解放した神×一族ネタはよいものだ
しかも続くとは…wktk

52 :
(続く)とな…これはバーンとォ!全裸になるしかない

53 :
これの保管庫なかったけ?

54 :
伏丸、花蓮、諏訪、お夏のためにちょっと「ハルカ」を読んでみようかな…

55 :
初めての事で足腰がフラつくので、灯代は陣内に横抱きにされて湯殿まで連れて行かれた。
夜遅いのに風呂の用意がされており、イツ花が気を利かせてやってくれたのだろうが、
こうなる事を彼女に知られていたようで、明日どんな顔をして会えばいいんだろう……と思い悩みながらも、
灯代は温かいお湯で汗と破瓜の血をきれいに流した。
陣内は湯には浸からず、むしろ全身の熱を冷まそうと冷水を汲んでざっと頭から浴びた。
背中を流し合って夫婦の真似事でもするか、と冗談半分で言う陣内の背中にさっき自分がつけた生々しい傷を見つけ、
灯代が申し訳なさそうにしているのが可笑しかった。
久々に人と交わったせいか、体中に生気が満ちているのが分かる。
「またこんな気分になれるとは、九重楼にいた頃は考えられなかったな」
そう独語した陣内の広い背中を、傷を避けて洗いながら灯代は訊ねた。
「あの……陣内様は、どうして鬼にされてしまったのですか?」
「何だ、いきなり」
「私もイツ花から聞いただけなんですが……天界から姿を消された神様の多くは、
朱点童子に心の闇につけ込まれて鬼に変えられたと聞きました。
でも、陣内様のようなお優しい方がどうして……」
解放されて天界に復帰した以上もう済んだ事だったが、この娘には経緯を打ち明けたい気もした。
「九重楼のてっぺんにおわす、二柱の神の事は知っているか」
「太刀風五郎様と、雷電五郎様ですね。 一度お会いした事があります」
実際はただ会うだけでは済まなかったが。
黄川人より聞いていた話では、人間に火と風を御する方法を教えた彼らはその咎で九重楼に幽閉されたという。
そこまでして救おうとした人間が、自分たちの与えた技術でし合いを始め、
二柱の神はいたく悔やんで絶望したという下りまで聞かされた。
神にとっては恩をあだで返されたようなもので、全ての人間を憎み怨んでもおかしくないはずなのに、
最上階にいた雷神と風神は、手のかかる我が子に対するような朗らかな口調で一族に相対したのだった。
激しい戦いの末、二柱の神を辛うじて退けたが、降参降参と軽口を叩く相手が十分手加減しており、
小指の先ほども力を出していなかったのは灯代にもよく分かった。
「私達に恨みつらみをぶつけてくるとばかり思っていました……意外でした」
「そうか……お二方は、まだ人間を見捨ててはいなかったか」
「はい、私は少なくともそう感じました」
「……俺は、あのお二方が人間に火と風を与えた後に生まれた神だ」

56 :
二柱の神が人間に与えた火を熾す術と風を御する技から、鍛冶とそれを司る神であるタタラ陣内は生まれた。
仕事熱心で誇りある鍛冶神として人の営みを見守り続けてきたが、自分の技術で生み出されたさまざまな道具で人の暮らしが豊かになる一方、
同じく鍛冶によって作られた武器をし合いに使われ、技術が進歩するたびに戦の規模が大きくなるにつれて、
タタラ陣内は複雑な気持ちを抱えていた。
自分が良かれと思ってやっている事は、あのお二方を余計に悲しませるだけなのではないか……?
いくら鍛冶の技術を洗練させても、愚かな人間は結局それをし合いに利用していずれは自滅するのではないか……?
自らの生業を負い目に思うその心を朱点につけ込まれ、呪いを受けて鬼と化したタタラ陣内は
太刀風・雷電五郎共々九重楼に閉じ込められていた。
灯代たち呪われた一族がやって来るまで。
「……そうだったのですか」
灯代は背中を流す手を止めて陣内の話に聞き入っていた。
相手が鬼とはいえ、剣を振るう自分自身も『愚かな人間』の例外ではないと思い灯代は目を伏せた。
「辛気くさい事を話しちまったな」
「いえ…… 陣内様は今でも、人間の事を……」
「人間が皆どうしようもない奴だと思ってるなら、お前とこうやって交わったりはしねえよ。
 それに、あのお二方がまだ人間を信じているなら、俺も信じようと思う」
「陣内様……わたしは……」
限りなく暖かい言葉に、自分の事を覚えていてくれた時よりも、身も心も結ばれた時よりも
灯代は胸がいっぱいになり、思わず陣内の広い背中に抱きついていた。
「あなたと出会えたせめてものご恩返しに、今の私には無理でも、私の子孫が……
いつかきっとあの方たちを解放します、だから……ずっと、見守っていて下さい」
二年も生きられないちっぽけな人間が口にした言葉だったが、戯れでも勢い任せでもなく、
陣内は真摯な誓いの言葉として受け止めた。
「それなら、尚のこと丈夫な子をこしらえんとな。『俺達の』子孫に強き血を受け継がせるために」

57 :
もう夜も更けていたが、閨に戻った二人の熱は高まるばかりだった。
帯を解くのももどかしく抱き合い、再戦の合図の接吻は灯代からだった。
唇をついばみ合う微かな音さえも互いの情欲を煽るようだったが、唇以外の柔らかさも味わいたくなった陣内は、
今度はほっそりした首すじに口付けた。
鎖骨、乳房、臍の周りと女体を下降する唇は、柔肌の中に次々と火種を埋め込んでいく。
湯上がりの匂いに混じる甘い女の匂いに酔いながら、陣内は灯代の全身を愛した。
このままひっくり返して欲望のままに突き入れるのもいいが、初心な娘に床の作法を教えてみたいという
悪戯心がふと起こった。
「試しに、さっきと別の仕方もやってみるか?」
「別の……?」
「色々な仕方があるんだが、そうだな……俺の腰の上に跨ってみろ」
仮にも神様を尻に敷いていいものかと思ったが、灯代は勧められるままに陣内の腰を跨いだ。
指で具合をみられ、十分潤っているのを確認した陣内に
「ゆっくりでいいから、自分の力だけで俺のを受け入れられるか?」と訊かれ、灯代はこくりと唾を飲んだ。
先程灯代を女にしたものが、身体の真下で精気を漲らせている。
自ら身体を開いてこれを迎え入れると思っただけで、奥底が疼くようだった。
痛い思いをしただけに少し躊躇ったが、一度は入ったのだし……と意を決して腰を落としてみた。
「あっ……」
灯代のそこはまだ陣内の形を覚えており、押し当てられると思ったよりも抵抗なく花びらをほころばせた。
自分の指で花びらを拡げてみたり、直立した幹に手を添えたりして少しでもうまく受け入れられるよう工夫する。
一気に貫いてしまいたいのを我慢しながら、陣内は灯代の形のいい尻を両手で支え、
慣れない仕事を手伝ってやった。
「あぁ……陣内様、そんなにじっと見ないでっ……んんっ……」
「おいおい、こんないいもの、見るなという方が無理だろうが」
浅ましい姿を陣内に見られるのを恥じらって身を捩る灯代だったが、目と鼻の先で自分の逸物が
桃源郷にくわえ込まれていく様が嫌でもよく見えるのだから仕方ない。
やがて、息を詰める灯代の火処に肉杭が根本まで填まり込んだ。
亀頭が奥に突き当たる感触に、灯代の腰から背中にかけて甘美な震えが走った。
「いいぞ、そのままお前が悦いように動いてみろ」
「こう、でしょうか……? あ、んあぁっ!」
恐る恐る腰を上下させると、肉杭が初めて交わった時とは違う所に擦れて灯代に新たな快感を教えた。
陣内に見られているのが恥ずかしく、せめて視線を合わすまいと目を瞑った灯代は意識せず大胆になり、
相手を貪ろうと不器用に腰を使い出した。
浅く深く、腰を浮かしてはまた沈めるのを繰り返す。
性技ともいえない未熟なものだったが、陣内の目にはなんとも初々しく可愛らしく映った。

58 :
「陣内さまっ、この仕方、すごくいいです……っ」
腰がすっかり蕩けて体を支えられず、華奢な上半身が前のめりになったせいで、
陣内の固い下生えに蕾が擦れるのがまた堪らないらしく、灯代は今にも気をやりそうなあけすけな声を上げている。
ついさっきまで生娘だったとは信じられないほどの乱れようだったが、何も知らなかった灯代を
こんなにしたのが誰でもない自分なのだと思うと、陣内の情欲は一層燃え上がった。
「俺も愉しませてもらうぞ」
陣内も強靱な腰で下から突き上げ、まだこなれておらず窮屈な道筋を遠慮なく掻き回した。
逃げようとする灯代の腰を両手でしっかりと捕まえ、最奥の粒立った天井を堪能する。
激しい猛攻に灯代は立て続けに気をやり、灼けた杭で臓腑まで貫かれたように背中を仰け反らせた。
「あぅっ、どうか、もう、子種をっ……」
「分かっている……このまま一番奥にぶちまけてやる」
理性が薄れつつある陣内から卑猥な言葉を聞いてももう灯代は恥じらわず、子種を待ち望むように
自分から腰を密着させて肉杭をより深くに受け入れた。
やがて力強い脈動と共に、奥の奥まで染めようとする勢いで精が噴き出される。
狭い胎内に収まりきらなかった分が結合部からどぷっ、と溢れだす感覚に、灯代は身体を震わせた。
陣内の胸にもたれ、女からもうすっかり母親になったような顔で宣言する。
「陣内様……灯代はきっと、あなたが誇りに思うような良い子を産んでみせます」
「俺とお前が精魂込めて造ったんだ、間違いないだろうよ」
「交神のお相手が陣内様で良かったです、一晩だけでも夫婦になれて、嬉しかった……」
「……その事なんだがな、灯代」
本当のところ、交神の儀は一月の中で一度交われば事足りるのだが、天界一仕事熱心なタタラ陣内は
その程度のやっつけ仕事で済ませるつもりはなかった。
一月の間、この娘と夫婦として過ごす勤めは始まったばかりだった。

59 :
授かった男児には、父神の名から音だけ取って、迅(じん)と名付けた。
迅が家に来たのと前後して先代当主が逝去し、娘の灯代がその後を継いでからは慌ただしい毎日だが、
不安や重圧に負けずやっていけるのもあの幸せな日々があったからだろう。
「実戦では鬼は四方八方から襲ってきます、目の前の敵を倒したと思っても気を抜かず、
不意を突かれぬよう周りに気を配ること」
「はい、母様!」
この子に自分が教えられる事の全てを伝えようと思う灯代は、今日も息子に剣の稽古をつけていた。
体も出来てきて、力だけなら大人に負けないほどだ。このぶんだと来月には実戦部隊に入れるだろう。
復興されつつある京の都に、伝説の刀鍛冶が戻ってきたという噂を灯代がイツ花から聞いたのはそんな時だった。
訪ねた工房の絵看板そのままの、閻魔大王さながらの髭面の中で鋭い眼を光らせる刀匠・剣福に、
灯代は気後れもせず話しかけた。
「この子に刀を打って頂けませんか?」
愛しい我が子をこれから地に遣るのだから、せめてもの親心のつもりだった。
それから一月経って、完成した刀を受け取りに行った灯代は剣福からこんな話を聞いた。
……昨日の夕方のこと、確かに台の上に置いていたはずの注文の刀がどこにも見当たらない。
弟子に訊ねても触った者はおらず、盗人の仕業だとしても刀一本だけ持っていくのはおかしい。
明日一番で使いを出して改めて打ち直す旨を伝えようと思い、工房の奥の間で床に就いた剣福は不思議な夢を見た。
真夜中の工房で、古代の装束を着た隻眼の男が一人、なくなった注文の刀を打ち直していた。
「熱ぅなれ! 強ぅなれ!」
ふいごの風で真っ赤に熾った竈の火が両手を炙っても、男は意に介さず鉄槌から火花を散らして刀身を鍛え続けていた。
やがて夜が明けて、仕事を終えた男は元通りに刀を台の上に置き、赤々とした暁光の中に消えていった。
剣福が起きて見てみると、まさにその刀が夢と同じ所に置かれていたという。
なにせ夢の中の出来事だったので、はじめ剣福は自分の勘違いかと思ったが、鞘から抜かれた刀身には
燃え上がる炎のような美しい刃紋が浮かび上がっていた。
鍛冶を司る神の名にあやかり、灯代が『紅蓮踏鞴(ぐれんだたら)』と命銘したその剣は、
一族の家宝として代々の当主と剣士に受け継がれ、数え切れないほどの鬼を屠ってきた。
時は流れ、九重楼に幽閉された二柱の神をついに解放した十数代目の当主の手にはその剣が握られていたという。
(完)

60 :
おおおお激しく乙
エロい上に物語としてもすげー面白かった。才能あるな。
最後の部分とかジーンとくるものがあるわ
ちょっと陣内さんと交神してくる

61 :
やはり陣内さんにうちでその時一番強かった美人娘を任せたのは正解だったか…
刀のくだりも胸に来るものがあるしエロいしでいい話でした

62 :
おおおお激しくGJ
同じ事言って申し訳ないが本当にエロイし面白かった!
こんど新しく始める時にはタタラ陣内の子は剣士にするわ

63 :
激しくGJっす!
面白かったし才能あるなぁ…
また書く機会があればお見かけ出来るのを期待してます!

64 :
一族娘と男神との話で被って申し訳ないが、大江ノ捨丸と剣士娘のSS落としてきます
多少無理矢理っぽいのと、捨丸の下半身考えてたら微妙にグロくなったので苦手な方注意

*****

「今日からこの刀はお前のものだ。風の性の宿る刀だから、術を覚える手助けをしてくれる
だろう。大事におし」
 一人の剣士が刀を受けた。
 それが全ての始まりだった。
「ただし」
「この刀を身につけ戦場に出てはいけないよ」
「どうして?」
「狂うからサ」
「狂う」
「この刀は呪われているのサ。こうしていると唯の刀だが、戦場の熱気に当てられ心を
ちょいとでも乱したが最後、何もかも分からなくなっちまう。分からなくなって、最後
には──鬼も、はらからも、構わず斬っちまうようになる」
「どうして」
「どうして?」
「どうして、呪われたの」
「そいつはね」
「鬼の、呪いだよ」
「呪いをかけた鬼を倒すまで、ずうっと、ずううっと続く、鬼の呪いだよ──」

 そこは骨で造られた城だった。
 その。夏の間だけ出現する鬼の棲処は、白骨城と呼ばれていた。
 白骨城最上階には、山と積み上げられたされこうべ。されこうべの玉座には、巨大で歪
な三つの顔持つ異形のされこうべ。
 白骨城の鬼は、自分を倒しに来た人間相手にケタケタ笑う。笑いながら骨を吐く。肋骨、
大腿骨、胸骨、指骨。何人分かと問われれば数知れずと答えるしかない骨の山を嵐の如く
吹きつける。

65 :
 たった四人で攻めてきた連中はなすすべもなく耐えていた。
 されこうべは笑う。笑う。
 笑っている内に、気づく。
 ──四人の一人。あの、女剣士。
 ──嵐の中、頑迷に立ち、兜の下よりこちらをじっと睨むオンナに。
 ──見覚えが、ある。
 あれは。あれはそう、一年前にも此処に来た、
「……鳳招来(オウショウライ)の併せから、」
 女が──動いた。
「一手で詰み──!」
 女の言葉は骨の嵐を切り裂き届く。同時に骨の嵐を真っ赤な波が押し戻す。天高く飛ぶ
鳥の声にも似た甲高い叫びを上げ、炎は鬼を炙り、溶かし、薙ぎ倒した。
 赤い塊のきれぎれから刀を構える女剣士の姿が見えて。
 鬼は、自分が何度目かの敗北を期したことを。
 んだはずの自分を繋いでいた朱の首輪が外れ、“あの女”の言う通り、自分にも天界
の門が開かれたのを、知った。
 女剣士が。快哉を叫ぶように、刀を大きく振り上げる。その輝きが灼きついた。

 神とは何者なのか。
 寝具の上でくぴりと杯を煽る女は、そんなことを考えている。
 凛とした印象の美しい女だ。艶やかな紅の髪は肩を越えて伸ばされ、ゆるやかに波打って
いる。真っ白な、卸したての夜着。寝所には不似合いな、大拵えの刀。額に輝く碧の玉。
飾り気のない女を彩るのは、それが全て。
 ──とある鬼が語るところによると、神の多くはかつてはヒトであったものらしい。
遠いとおい昔、永遠の命を得た人々が、滅びゆく肉体を捨て天界に昇ったものが“神”で
ある、と。
 また、唯の人間が神になる場合もある。いわゆる“崇り神”だ。
 兄に陥れられた弟。
 夫に裏切られ、首をくくった妻。
 そして。鬼朱点にされ、後も鬼となり利用され続けたもののふ。
 かつては人、次に鬼となった大江ノ捨丸が“神”として天界に上がったのも、そう無い
ことでもないのであった。
 そしてくだんの“神”に、人間との間に子が成せぬ呪われた血の持ち主が、交神の儀
つまり子作りを願い出るのも別におかしくはないではないか。

66 :

 おかしくはない。
 女の一族と大江ノ捨丸との間に浅からぬ因縁があることを除けば、交神の儀に──次の
赤子の父親にかの神を選ぶことには、全く何の障害もない。
 “因縁”が問題だ、と言われればそれまでだが。
 この鬼が人であった頃、のちに朱点童子となる存在──当時はまだいたいけな童子で
あった──少なくともそう思われていた──の目の前でその父をし、その母を辱め、
朱点童子を生みだす一因となり、ひいては一族が呪われる要因となった。
 というのは、余り関係がない。
 少なくとも赤毛の女剣士はそこを因縁と捉えていない。
 何しろ十年単位で昔の話だ。呪いをかけた張本人である朱点童子ならともかく、原因と
なったらしいとはいえそんな大昔のことまで気を回していられない。
 女はどちらかというと目の前の事象に集中するタチで、加えて言えば大局的なものの見方
が苦手な方だった。
 女の考える大江ノ捨丸との因縁とは、もっと簡単なものだ。
 つまり、何代か前、彼女が生まれるより前の一族が大江ノ捨丸に挑み、反魂の儀で一命
を取り留めた一人以外は亡の大惨敗を期した、という。
 敗北の後白骨城は一族にとっての鬼門となり、夏にしか入れないという条件も重なって
長らく足すら踏み入れてはこなかった。また、彼女が生まれた頃には実際に大江ノ捨丸と
対峙した人間は既にみまかっていたこともあり、彼女にとって大江ノ捨丸と鬼朱点は同じ
位置にあった。憎いもの、憎むべきもの、けれど遠いもの、倒すべきもの。
 目指すもの。
 女は静かに愛刀を撫でる。どうしてもと押し切り寝所にまで持ち込んで、イツ花を呆れ
させた。
 女が生まれるずっと前に打たれた、特別な刀だ。女が継承した今では女しか扱えない。
女がんだ後には、次の剣士に受け継がれるだろう。女がそうであったように。
 女は刀を愛おしげに撫ぜ、杯を干す。燃えるような温かさが食道から胃に落ちてゆく。
ぬくみが五臓六腑に沁み渡るのを感じ、女は溜息をついた。
「──」
 衣ずれの音を、女の耳が捉える。
 軋るような甲高い笑い声に、女は杯を床に置いた。
「ウヘヘ、お主も物好きよなあ」
 男にしては高い声。さらさらと鳴る布と、焚きしめた香の匂い。香でも隠せぬ血と汗と
反吐の臭い。そのものと女は過去に二度ほどまみえたが、こんな近くにまで寄るのは初めて
だ。

67 :
 燈明の届かぬ薄暗がりから現れたのは、骨、だった。
 僧の装束を纏ってはいるが、頭巾の下から覗くのは何処からどう見てもされこうべ、顔
にも数珠を握る手にも皮の一枚、肉のひとかけらも残っていない。だのにかちかち鳴る歯
の間からは声が洩れ、頭蓋骨の奥では眼球もないのに炯々と光る目が浮かび上がる。
 人のかたちをそっくり組み残したままで、僧形の白骨はカタカタ笑った。
 普通の娘ならば悲鳴を上げるか腰を抜かす異貌だ。しかし寝具にはべる女は平然として
正座を崩しもしない。異形に相対するものとしても、これからまぐわる相手に対するもの
としても、豪胆に過ぎる態度だった。
「……つまらん女よなあ」
 笑うのを止めた骨──大江ノ捨丸の、それが女に対する第一評価であった。
「そうか」
 女は表情を動かさず呟く。「そんなにか」
「泣きも怯えもしやがらねえ」不意に伸びた骨ばかりの手が、女の顎を掴む。「戦場にいる
のとおんなじ顔だ」
 顎を掴まれ、異形と無理矢理に向かい合う体勢になった女は、
「痛いぞ」
 恐い、でも、止めて、でもなく、柔肌に食い込む剥き出しの骨の苦痛だけを訴えた。
「この程度、慣れてると思ってたがなあ」
 殴っても骨をぶつけても怯まなかった女の文句に、捨丸は揶揄とも呆れともつかない声
を洩らす。
「慣れても痛いものは痛い」
「そうかい」
 ニタリと。捨丸が表情筋に頼らぬ卑しい笑みを作る。「それじゃあ、少しは楽しめそう
だなァ」
 行動は一瞬。効果は劇的。
 女のしなやかな肢体が真っ白な布団へ突き倒され、仰向けに転がる。同じく白い夜着が
乱れ、思いの外やわらかそうな胸元が露わになり、立て膝で崩れた裾からはほどよく肉の
ついた足が覗けた。
「交神の前に、聞きたいことがある」
 かたちばかりの気遣いもお義理程度の愛の言葉もなしに覆い被さる骨に、押し倒される
格好の女は声を掛ける。真直ぐな刀のように、真直ぐな声だった。
「なんだァ? 今さら怖気づいたのか?」
「いや、恐くはないが」
 呪われし一族の女と、天界に上がったばかりの新しい神・大江ノ捨丸との交神の儀は、
彼女のこんな台詞で始まった。
「どうやってするのだ?」
 骨の身に僧の装束を纏う異形の神は、舌も声帯もないのにケケと笑う。
「鬼切りの娘には、閨での技を覚えるヒマなんざなかって、ってコトか」

68 :
「あ、いや、全然知らない、というわけではないのだが」
 女は布団の上仰向けになりそこだけは可愛らしく小首を傾げ、
「大江ノ捨丸──貴方は、ついているのか?」
「──」
「ついていないなら、どうやって行うのだ?」
「──」
 ナニをして“ついてる”“ついてない”などと言っているのかは、女の視線を辿れば
一目瞭然だった。捨丸の深緑の僧衣の下、人間でいえば股間の辺りを女は観察している。
 神と人とは違う。神は神である。神はヒトの基準では測り知れぬモノである。例え人から
転じた神であろうが、人の姿に似ていようが、半ば人半ば神の一族との間に子をもうける
役目を背負っていようが、それは動かしようのない事実である。それこそ肉体的な交わり
もなく子を成せる技も、神によっては持っているのだ。
 もしや骨ばかりで子種を造るための臓物も女に注ぐための器官も朽ち果てているような
捨丸もそのクチかと予測していたのだが、普通の男がやるように女を押し倒してきたところ
をみると、そうではなかったらしい。とはいえどうなっているのかは厚い布地に隠されて
窺い知ることは出来ないのだが、
「……ヒヒ」
 笑い声に、女は眉をひそめる。
「そんなに知りたいなら、直に見るがいいさ」
「見る」
 女呟きは単なる繰り返しであり、意識はするするとほどける僧衣に注がれている。
 衣に焚きしめた香に混じり。血と、泥と、反吐と、腥い肉の臭いがした。
「──」
 さすがの女も言葉を失う。捨丸の下卑た嘲笑だけが空気を揺らす。
 僧衣のはだけた先には、捨丸の身体があった。一度ばらばらになったのを無理矢理繋いだ
かのような、ところどころが捻じくれた背骨。数の足りない肋骨。それが大江ノ捨丸の
胴体。ここまでは予想内。
 しかし。そこに、普通ならば皮膚に守られているはずの臓物がなまなましい色合いで
絡みつき、僅かな肉で骨と繋がっている──というのは、なかなか怖気を誘う有様だった。
 更に、その下。下腹にあたる部分には、まだ肉が残っている。肉は垂れ下がる臓物を
申し訳程度に隠し、ヒトらしい外見を作る。
 臓物も、肉も、とろりと湿っていた。汗。否。それらを覆う液汁には微かに色がつき、
僅かながら腐臭を漂わせている。腐れた肉から染みでる汁。否。にしては濁りが少ない。
つまり何なのか女には分からなかった。
 ああ、それはいい。
 そんなことは今はどうでも──よくはないが、優先度は低い。
 それよりも。下腹で、まばらに残る陰毛を押しのけ勃起する赤黒い肉の塊が重要物件で
あり。先程の女の問いへの答えであった。

69 :
「……」
 女の口から洩れたのは、吐息か呆けた呟きか。
 肉は、太い。筋肉そのものの色に赤黒い。纏わりついた皮も、腐れたようにどす黒い。
びくびくと震えている。鈴口にあたる部分からは透明な液がつうっと滴る。歪な、肉を
こねあわせて作ったような、元々あった肉が半端に爛れて崩れてしまったかのような、
されこうべに相応しい異形の男根。
「……」
 女が捨丸を見上げる。
 女の眼に初めて驚愕の色を見出し、「ヒヒ」──白骨城の鬼は哂った。
 骨の手が女の手首を掴む。乙女のたおやかさと剣士の筋張りを併せ持つ部分に、硬い
指骨が強く鬱血するまでに食い込んだ。両腕の自由を奪われた女は、ようやっと初夜を
迎える処女らしい反応を見せる。「い……ッ!」男に組み敷かれたまま、もがく。
 哄笑が響く。
「なァに喚いているんだよォ。お前は、コレをしに来たんだろう」
 ずるずると。乱れた衣の合間を縫い剛直が擦りつけられる。女の柔肌に粘りつく筋が
生まれる。
「神様との間にガキを作るために、鬼どもをブッして、かき集めた鬼の血と肉を供えて
まぐわいを願い出たんだろォ?」
「……ッ」
 滑らかな皮膚と肉、女の蒼褪めた顔は、男に久しく忘れていた感触を思い起こさせる。
持ち主の興奮を反映し剛直がびくりと震える。擦りつけられた女の太腿もつられて跳ねる。
 抵抗、ではない。
 女は喘ぎをし、じっと捨丸を見つめる。火の術に秀でるを示す深紅の瞳が、陰の下
鈍く輝いていた。恐怖は無い。探るような、見透かすような色だけがある。
 気に入らない──喉元まで出かけた言葉を、しかし捨丸は放り捨てる。何しろ、意志では
抑えきれぬ震えが女の身体を覆っているのが分かったもので。喘ぐ息遣いも、しかし悲鳴
を零すまいと無言を通す女の姿勢も、征服欲と劣情とを煽りたてる。
 何より、生きた肉がある。
 捨丸が失った、温かい血と、肉と、痛みを感じる肉がある。
 乳房をわし掴めば痛みにわななき、男根を擦りつけ汚せば産毛を逆立てる、生きたオンナ
の感触だ。
「やっぱ、女は生身に限るぜ」
 剛直が女の秘部に触れた。細い身体がびくりと強張る。
 そこは閉じて、綻んですらいなかった。快楽に全く遠い身体はんだ魚の如き硬直ぶり
を晒している。
「いぎ──ッ」
 無様な悲鳴。
 開いてすらいない裂け目に先端がめり込む。痛みから逃げようとする身体を、骨の手が
阻んだ。
「通らねえなあ。小娘でも、もうちっとはオトコを迎えるもんだぜ?」

70 :
 ぎりぎり進もうとする剛直は閉じ切った外側の柔肉までをも巻き込んで女のナカへ侵入
を試みる。肉を引きずられる苦痛に、さすがの女も呻いた。
「痛いか?」
 女の目は相変わらず捨丸に向いている。紅玉のような瞳が涙で曇っているのを見、腹の
底から笑いがこみ上げた。
「羨ましいなァ。痛みを感じられて、お前らはいいよなァ」
 ぎち、と、重なる部位が軋んだ。同時に粘る液体で肉と肉とが滑り力の方向が逸れる。
剛直から滲む体液は女の肌を汚し、女を壊すことをぎりぎりで避けた。
「──助けてやろうか」
 女が喘ぐ。
 筋のような閉じた秘裂の上、濡れた肉を行き来させる。裏筋を強く擦りつけ体液をなすり
つける。ぐちゃぐちゃ泡立つ音がする。勿論愛液ではない。先走りですらない。皮はこそげ
肉は腐る、おぞましい男根から分泌される体液だ。
 それでも楽になったことはなったのか、女の目に生気が戻る。
「なにを、」
 そうして女の口から洩れたのは──「何を、すればいい」──それはそれは健気な響き
を伴う言葉だった。
「濡らしな」
 対する男の台詞は不誠実という他ない。
「ぬらす」
「そうよ。お前の手で、お前のそそを濡らして、俺が通りやすくするのよ」
「でも、どう、やって」
「おいおい、そんな卑しいコトを“神様”に言わせるのかァ?」
 自分で考えろ、と言う間にも、性器と性器を擦り合わせるのは止めない。
 女は頬を赤らめ捨丸をじっと見つめて、「……手を、放して欲しい」
「逃げはしない」
「だろうよ」
 下卑た笑いが臥所に零れる。
「お前が逃げられるわけが無えのよ」
 縛めの解かれた手首には赤い筋がくっきりと残っていた。女は仰向けのまま着物の裾を
そっと直し、剣ダコで硬くなった指を自らの口へ持ってゆく。見た目にも柔らかそうな舌
が女の指に絡む。だっぷりと唾液を塗りつけられた指は、あえかな灯明を反射しとろりと
光った。
「……ん」
 どうやら、女は自分の唾液で自分の秘所を湿らせる方法を思いついたらしかった。
 異形の陰で女が自らの裾を割る。白い夜着は一部が汚れ異臭すら放つようだったが、女
は文句ひとつつけない。どころか男が犯しやすいよう準備まで始める有様だ。
 衣に隠れた場所で指が動きだす。控えめな動作で、秘裂の外側をなぞっているのだと
知れる。唾液よりも重い、粘着質な音は、捨丸のなすりつけた体液だろう。
 女の頬が赤みを増すのは、羞恥か、興奮からか。

71 :
「足りないだろ?」
 そこまでやっても掛けられるのは無情な言葉だ。
「お前の中にブチ込むってえのによォ、そんなお上品にいじってるだけじゃあ意味がない
だろ?」
「あ……!」
 折角直した裾をめくり、骨の指が女の秘部に触れる。女の指は予測通り外側で止まって
いた。
 女の指が骨の指に絡め取られ、「い゛……ッ?!」女のナカに突き入れられる。
「しっかりかき回せよ。ココに入るんだからなァ」
 自らの大事な場所を、自分の指を使って、他人に嬲られ。女の顔が歪む。
 しかし。
 ──くちゃり、と、水音。
 如何なる理由か、もしくは単なる肉体的な反応か、閉じ切っていたはずの秘裂は綻び、
僅かながらも体液を滲ませていた。
 挿入される指の数が増える。今度は肉のついた、体温を持つ指ではない。乾ききった骨
の指、捨丸の指だ。遠慮会釈なく根元まで入ってきた指は、狭い孔を容赦なく行き来する。
今までよりも激しく内側を刺激され、女の顎が仰け反った。
「あ、あ、」
 女のナカで指と指とが絡む。節がぐねりと襞を擦り、捨丸を見る紅い瞳から涙が零れた。
 女の身体が濡れてゆく。頬を伝うのは涙、じっとりと滲む汗、着物を汚す男の体液。
くちゃくちゃと音を立てる、二種の指で拡げられた秘所。
 指が抜かれる。透明な汁が糸を引いて、落ちた。
「──ほうら」鬼が囁く。「肉の身も、一皮剥けば皆同じよ」
 ──たとえ、意に沿わぬ相手でも。
 ──子を成す目的だけの、契でも。
「始まっちまえば受けるしかねェのよ」
「……ッ、私、は──っく、あ、ッあ──!」
 女の言葉は途中で途切れた。
 大きく割り開かれた脚の間、僧衣を纏ったままの身体が沈んでゆく。赤黒い剛直は、
今度はほぐれた秘裂に先端を呑ませることに成功した。
 狭い場所だ。なまなかなことでは進まない。「ひぐうっ、うっ」女がぼろぼろと涙を
流す。食い縛る歯がかちかちと鳴る。逃げようにも、脚を抱え込まれた状況では逃げよう
がない。
 だが。みしみしと痛ましい悲鳴をあげながらも、女のそこは剛直を受け入れる。硬く
重なる襞は傷つくまいと自ら広がる。
 そうして亀頭を呑み込んでしまえば──あとはラクなものだった。主に、挿入する側の
話ではあるが。

72 :
 ずるずるにちゃにちゃ音を立て太い幹が肉に沈む。女の蜜が足りずとも、この男根は
人外のもの。膿にも似た体液をまとわりつかせ女の中を滑らかに進む。乾きはなく、よって
摩擦による痛みも少ない。女の痛みは狭い場所を貫かれ押し広げられる痛みだけだ。今の
ところ。
 剛直が無遠慮に奥を打ち上げた瞬間、女は身を引き攣らせ、縋るように目の前の異形へ
しがみついた。僧衣の下、骨のかたちがくっきりと浮かび上がる。
「頼、む……、いき、整えさせ、て……っ」
 かたかた震える身体は根元までを受け入れていた。狭かったのも道理、結合部からは女
の髪と同じ、瞳と同じ、赤い血が滴っている。
 対する返答は、
「お前は何をしに来たんだったかなあ」
 嘲弄すれすれの無情なものだった。
「孕みに来たんだろう? 俺の子種を、胎に受けに来たんだろうよォ」
 悲鳴。
 急に引かれた剛直が勢いをつけ叩きつけられる。女の腰が跳ねる。肉は硬い。腐れた
外見に不釣り合いに硬い。肉は熱い。腐れる肉に相応しく熱い。硬くて熱くて歪な肉で
他人を受け入れたばかりの肉を抉られ貫かれ、女の理性は削がれてゆく。
「あ、ふあっ、あ──」
 艶が声に混じり出す。捨丸の肉は、腐れて、歪んでいた。腐れているが故にどろりと
溶けておんなのナカの滑りを良くし、歪んでいるが故にヒトでは叶わぬ部位にまで届く。
 臍のすぐ裏側を擦ると、女の腰が大きく跳ねた。狭い場所がますます狭まり剛直を締め
つける。ぐじゅりと音がして剛直の表面が潰れる。潰れた部分が襞と襞との薄紙程度の
隙間に這入り込み震わせる。刺激したところを今度は引かれ、襞は無理矢理ひらかれる。
 内襞と崩れた肉とがかみ合い女の肉を温め、動かされる毎に逆撫でし悪寒と紙一重の
快楽を与えてゆく。
 女はもう喘ぐばかりだ。
 腰が動くのも、乱暴に扱う男に身を寄せるのも、自分ではままならぬのだろう。奥に
当たれば苦しげに眉をしかめる癖に、身体の方は男を咥えて離さず、むしろ最奥の硬い
場所に当てるように蠢く有様。
 翻って。
 女をそんな風に鳴かせる捨丸は──苛立っていた。
 鳴かせるのは、いい。女が自分の手で翻弄されるのは、戦場で自分を散々殴り倒してきた
女に床の上とはいえ意趣返しを行えるのは、非常に胸のすくことだ。そのはず、だった。
それが。
 ──この女。

73 :

 女は、どんな時でも、どれだけ責められても、どれだけ鳴いても、捨丸から視線を外そう
とはしなかった。
 その目。
 流す血よりも尚赤い、捨丸を焼いた火よりも尚澄んだ紅い瞳には、恐怖がない。嫌悪も
ない。これだけされているのに拒否の気配が微塵もない。
 唯、捨丸を射抜く真直ぐな色がある。
 何かを探るような、見透かすような。そんな目だ。
 その目が、障るのだ。
 女の身体が、快楽ではなく驚愕に跳ねる。「なに、を、今、貴方、何を」──捨丸は
答えない。女の目が濁り焦点を結ばなくなるのを見──笑うだけだ。
「なァに。唯の“光無し”さ」
「光無し、どうして今……っく、ひゃ、あ!」
 乱れた袷から無遠慮に手を差し込まれ乳房を掴まれ、女の抗議は嬌声に変わる。
 捨丸が使ったのは“光無し”の術。一時的に認識能力を低下させる技だ。特に痛みや傷
をもたらすものではないが、使うところで使えば相手を圧倒することが出来る。今のよう
に。
「待って、」
 細い。哀願するような響きに崩れた皮膚がぞくりと粟立つ。
「見え、な、い、これじゃ、貴方が、見え」
 声が消える。意味を持っていたはずの言葉が、喉から出る前に喘ぎになる。
 両の脚に骨ばかりの手が掛かり、大きく持ち上げたからだろう。もしくは床に寝転がる
姿勢から、脚を広げ尻を高く上げるものに変わったせいで、身体を穿つ肉がより深くまで
食い込んだからか。
「俺にゃあ見えてるぜ」
「……ッ! う、あ、」
 女の肌が熱を増す。口を開閉しはするものの、艶やかな唇から言葉は出てこない。
 もうひとつの口は雄弁だが。
 男を咥え込んだそこは上と同じく震えてはいるが、たっぷりと湛えられた蜜が音を立て、
動く度にとぷんと零れる。引けば切なげに絡みつき、押し入ればひったりと寄り添って
くる。捻じくれた異形の男根にも、隙間を生み出すまいとするかに蜜と肉とを合わせる。
まるで愛しい男に対する女のように。
 冷たい指先が陰核を押し潰すと一際高い声が上がり内側もきゅうっと締まる。どろりと
吐き出された蜜が奥に溜まり、抉る男根を粘りつきながら受け止める。
 野晒しの白骨の手が、白い夜着を掻き分け紅潮する肌を這う。
「いやだ、や、だ……っ」
 怯えたような喘ぎを洩らす女が、縋る場所を求めてもがく。
 手は。虚しく宙をかく。

74 :
 女を貫く男はケタケタ笑うばかり、男根を奥深くまで押し込んでいちばん狭い箇所を
抉るばかり。視界を濁らせ何をされるのか分からず混乱する女の手を取ろうともしない。
 下腹。乳房。乳首。鎖骨。細い首に手が掛かった刹那、さしもの女を目を瞑り「ひうっ」
と短い呼気を吐いた。
 その度。女が必要以上に身を竦ませる毎に咥え込んだ場所は窄まり男根へと縋りつく。
そこを引いて、大きく叩きつける。傷口を擦られる痛みと最奥を突かれる痛み、それらを
上回る快楽に乱れに乱れる。
「う、あ、あ、」
 女がびくびくと身を跳ねさせる。内側が収縮を始める。子宮口を押し潰す剛直を、むしろ
呑み込むかのようにやわらかく、つよく絡め取る。歪な剛直がそれと分かるほど膨張し、
襞を限界まで拡げ、
「っふ、あ──!」
 最奥を穿たれ熱い精を注がれる、その感触に。女は果てた。

「──これでお役御免ってわけか?」
 男にしては高い声に、女はうっそりと目を開ける。視力は大分戻っていた。
 着物の袷ははだけ、下半身はどろどろに汚れたままの姿で、女は静かに答える。
「……子が成せれば終わりだと聞いている」
「へえ」捨丸の恰好は現れたときと同じ、厚い僧衣に腐れた身体を隠すもの。「ソイツは
誰が決めるんだ?」
「……」
 女は紅の瞳を捨丸に向け、
「神には、成せたか成せなかったかが分かる、と聞いたが」
 そもそも呪われし一族の子は、母親の腹から生まれてくるのではない。一族と神とが
交神の儀を行ったのち、相手の神が連れてくるのだ。
「そうかい」
 下卑た気配が暗い寝所を揺らす。
「それじゃあ、俺が“出来た”と言うまでは、儀式は終わらないんだな」
 髑髏の奥炯々と光る目が、女を嘲う。
「天界はぬほど退屈だ。もう少し楽しませてもらうとするさァ」
 女は無言。唯、紅い目だけが捨丸を見ている。
 否。
「いいさ」
 赤い唇が承諾を吐き出す。
「私から申し出たこと。望むところよ」
 捨丸の醸す空気が変わる。「ケッ」──不快、困惑、疑惑──「おかしな女よ」──
興味。
 捨丸が姿を消したのを確認し、女は気怠げに身を起こし、もそもそ部屋の角へと這って
ゆく。寝所の片隅には大ぶりの徳利が転がしてあり、女はそれを手にすると杯も使わず直
に口をつけた。不思議なぬくみを持つ液体が胃の腑に滑り落ち、女は人心地ついたとばかり
に息を吐く。

75 :

 女が次に手にしたのは、愛用の刀だった。
 畳の上正座し、静かに鞘から刃を抜く。
「──」
 沈黙。凝視。黙考──「──は」──溜息。
 涼やかな鍔鳴りと共に刀が鞘へと戻される。
 女が生まれるずっと前に打たれた、特別な刀。
 鬼であった頃の大江ノ捨丸と戦い、された剣士が持っていた刀。その剣士の無念宿り、
呪われた刀。
 剣士である女が継承した、女にしか扱えない、特別な呪い刀。
 女は、その刀の呪いを解いた。
 大江ノ捨丸を倒し、呪いを解き、この刀を本来あるべき姿へと戻した。
 ──だのに。
 ──何故だろう。
 女はそっと目を閉じる。その吐息は、甘やかに熱い。
 ──この刀を手にすると。
 ──胸の動悸が収まらない。また。まだ。
 白骨城の鬼・大江ノ捨丸の話を聞く度、胸が苦しくなった。恐いもの、恐ろしいもの、
憎むべきもの、倒さねばならぬ者。刀を手にすればされた剣士の恐怖と憎悪が柄を通し
伝わってくるようで、女は目の前が真っ暗になり何も分からなくなるような気がしたもの
だった。
 鬼さえ倒せば、終わるのだと思った。
 だから自らを鍛えた。
 刀を常に傍らに置き、寝ても覚めても“宿敵”のことばかりを考えた。
 “宿敵”を倒すため、それだけを考えて剣を振るってきた。朱点童子よりも、多くの鬼
の語る“この計画の首謀者”とやらよりも、もっとずっと近しい“敵”だった。
 ──倒せば終わると思っていたのに。
 終わらなかった。
 大江ノ捨丸を倒し、呪いは解けたのに、女の胸の高鳴りは止まなかった。むしろ初めて
相対したときの熱は身体に残ったまま、女を内側から焦がした。
 倒しても治まらない。
 刀の呪いを解いても治まらない。
 朱の首輪を外し、天界に送っても治まらない。

76 :

 思案尽きた女が最後に思いついたのは、交神の儀を願い出ることだった。
 交われば、剣を交わすだけでは消えないこの熱も治まると期待したから。
 ──結果は惨憺たるものだったが。
 女はそっと腹を撫ぜる。
 動悸は相変わらず治まらない。かの鬼──いや神──のことを思うと胸が苦しくいても
たってもいられなくなる。身体の熱も相変わらず。胎を満たす精と同じに、熱い。
 手の下にとぷんと揺れる他人の名残りを感じ、女は。
 微笑む。
「もう、一月」
「まだ、次が」
 手ごたえはあった。まだ自分でも遥とは掴めぬものではあるが、今の熱は過去の熱とは
異なる気がする。
 きっと、この熱と動悸の理由は分かる。
 きっと、かの鬼の呪いは解ける。
 きっと、
「私は貴様に勝つ」
 女は。乙女が恋を囁くように、密やかに宣言する。
 頬を染める血潮よりも尚紅い目が、薄闇を射抜いていた。

77 :
>>64
捨丸のアレはクレヨンしんちゃんに「ヒコーキの車輪みたいなもん」ってネタがあったから
そんな感じかと思ってたけどそういうのもあるのか!残り一月に妄想が膨らみます

78 :
>>44
エロいし最後は泣けるしで素晴らしかったす!GJ!
>>64
さすが捨丸様容赦ないですなあ!
たまらんたまらん!GJ!!!

79 :
>>64
GJ!わしの鼻もビンビンです
こう言っちゃなんだが、捨丸って全く改心しないタイプのゲス悪党なのに
なんか憎めないと思うのは自分だけだろうか…

80 :
童子を立派なオトコにする編を待っていると言われては書かざるを得なかった、今は(ry[
と言う訳で>>9-20(>>23)の続編です
相変わらず特殊めな娘とクリア後特典のエロラブコメ

81 :
「きつとー」
人として生まれ、鬼として生き、して神となる。
半人半神の血により送ってきたこれまでの過去を鑑みても、この着地点はあまりにも予想しえないものではないだれうか。
「ねー、きつとー」
出来る事なら今からでも復讐を完遂させたいものだが、前よりもそれは困難になってしまった。
手元に転がり込んできた最高神の地位は、実の所ただの足枷だ。
後見だの業務補佐だのと何柱もの神がこちらへ接触してくるが、その殆どは姉の息がかかった監視役。そうではない自分の関係者だって、妙な責任感でもう暴れないようにと『見守って』いる。
「きーつーとー」
封印されている間呪われた一族に接触した時すらだんまりだった癖に、今は『本物の』下界に足を付ける事さえ理由を付けて止められるのがその証拠だ。
力づくで振り払えばそれを体のいい理由として、鏡の中の京から目を光らせている姉がすぐさまより力づくでの鎮圧に来るだろう。
実にままならない。
「このはねほんもの?」
「だから、引っ張るなよ!しかももぎ取る気で力籠めてるだろ!」
――という朱星ノ皇子の思考は、背中に付いた翼に走る激痛と間延びした舌っ足らずな声により中断してしまった。
と言うより、ここまで彼が現在の自分を振り返っていたのは半分以上この状況からの現実逃避が目的である。
「このはねとふくってどこでうってるの?なにきどり?なんのえいきょう?」
「売ってるとかそう言うんじゃないんだよ、神の形なんだから!」
こうしている間にも、普通の鳥のものならあっさり引きちぎれそうな力で朱星ノ皇子の翼が引っ張られている。
引っ張っているのは彼との交神を希望して天界へ来ている、呪われた一族の娘。
数ヵ月前、まだ朱点童子をやっていた朱星ノ皇子――黄川人にとんでもない話を持ちかけてきた少女である。とは言え、元服したのだからあの時より成長した筈だが。
「君さ…あれから一切変わってないんじゃないかい?普通君達は数ヵ月も間が空けば、肉体と共に中身も成長するようになってるんだけど」
「あ、そーいえばなまえいってなかった。あたしはひなりで、きいろかわひとはきつと」
本当に成人したのか疑わしくなる程、この氷奈莉という娘はあの時のままに見える。
幼児のような口調も、小さい背丈も幼げのある顔立ちも、何よりジトっとした眠そうな目付きもそのままだ。
「あと、あたしわりとかわったよ?おとこはおんなのへんかにきづかないってこいがいってたのはほんとなんだね」
「どうせ髪が少し伸びたとかそんなのだろ。それよりさ、あんまりボクを黄川人黄川人呼ぶのは控えてくれ。まだ朱点気分が抜けてないと判断されたら余計面倒なんだよ、神さまってのも楽じゃないんだゼ」
「ぬけるもなにも、きつとはぜんぜんはんせいのいろもこーせいのきざしもみえないよね?なにがチャラなの?」
それは言わないでおいて欲しい。そう言う気力も抜けるのを感じ、朱星ノ皇子はわざとらしい溜め息をついてやる。
「本ッ当にさぁ、君って話してる相手を疲れさせる天才なの?だから二度と会いたくなかったんだよ」
「でもあたしはきつといがいとこーしんするのやだよ」
「…そんなに何か思う処があったのかい、あの時の事は」
「うん。おもしろかった」
「よし、帰れ」
心からの言葉を口にすれど、天界側から交神を断って追い返す事は最高神でさえ許されない。
それに、そんな事をして数ヵ月前の出来事が明るみに出たら更に天界での居心地が悪くなる。
「まだげんぷくもしていないきむすめのじゅんけつをうばっておいて、そーいうたいどはないとおもう」
「元を正せば誰が言い出した事だよ、誰が!」
そう、確かにこの二人は数ヵ月前にそうしたコトに及んでいた。氷奈莉が一方的に頼んで押し切ったからとは言え、忌々しいが本当の話だ。
「ところで、いつまでこーしてるの?ほんとのこづくり、はやくやってみたい」
やはり氷奈莉を前にすると調子がおかしくなる。
ここはあの時同様、望み通りにしてやるしかないだろう。それで本当にこの話は終わりだ。

82 :
「…分かってるよ。じゃあ、閨まで送るからここに入りな」
そう言って朱星ノ皇子がぱちんと指を鳴らすと、朱点童子の頃に使っていた転移の印が現れた。
しかし、氷奈莉はそれにふいとそっぽを向く。
「おもしろそうだからこことーばつするー」
そう言うが早いが『速瀬』を使い、目の前の朱い神殿に入っていってしまった。
「あ、こら、勝手に入るなっての!大体討伐って、いないよ倒すようなものは!」
「ここに」
「否定はしないけどボクに指を差すなよ」
仕方なく、朱星ノ皇子は翼を広げて高速で走る氷奈莉の後を追う。
再会してしまったからには、やはり一筋縄には行かないようだ。
朱星ノ皇子の神殿は、外観は朱点閣を元にしつつ更に広大な造りをしている。
姉にこの建物を最初に見せられた時はもう一度殴りかかってやろうかと思った程皮肉を感じたが、実際に使ってみるとますます皮肉を感じた。
神殿全域に微弱な結界が張られており、それが崩れると神殿も壊れていくようになっていたのだ。
つまりここを使えというのは常に力を抑えていろという遠回しな命令であり、この大きさの神殿が壊れればすぐに分かるぞという圧力でもある。
神殿そのものが巨大な竹籠であり、鳴子の役割も果たしているのだ。
信用出来ないなら出来ないと言えばいいのに、あの腹黒女。
「あはははは、まだまだいけるー!」
「行くなよ!止めてくれっての、本当頼むからサぁ!」
…といつも思っていたのだが、この時ばかりはそんな余裕などなかった。
氷奈莉が隠し持っていたらしい矢を長い長い廊下の壁に刺し、そのまま走って傷を付けて遊び始めたのだ。
がりがりと壁を削る鏃は、いつ結界に触れて破壊してしまうか知れたものではない。万一の事があれば交神相手のやった事として自分も責を負わされる。
割と容赦なく『雷獅子』など放って行く手を阻むと、漸く氷奈莉は立ち止まった。
「あのさ、やっぱり今君をしていいかい?」
「やったらひるこはみのがさないとおもうよ?ずいぶんボンボンらしいすまいだから、きずくらいつけたほうがきぶんいいかなーとおもった」
「余計な世話だよ」
「うん、ごめん。つかまったから、これあずかってて」
意外と素直に頭を下げ、氷奈莉は朱星ノ皇子に弓矢の一式を差し出した。
地獄でしか手に入らない最強の弓、『古弓あさひ』だ。遊び道具として持ってくるような代物ではない。
「あたしがきつととこーしんするっていったとき、みんなはんたいしたっていったじゃん」
真一文字に付いた壁の傷を指でなぞりながら、氷奈莉がぼんやりとした表情で言葉を続ける。
「だから、あたしみんなにうそついてきたの。こーしんするふりして、ころせなくてもふかでくらいはおわせてくるって。こづくりするときってこっそりころすのにむいてるでしょ?」
確かに、閨は暗に非常に適した場だ。
渡された弓矢を見ると、力任せに壁に刺して動かされた矢の一本はぽっきりと折れていた。
「でも、いまきつとにとめられたからころすのはしっぱい。そのやをみせればしょうこになるし、こどもはおこったしゅてんがむりやりやったからできちゃったっていえばだましきれるとおもう」
あの無意味な遊びにしか見えない奇行には、そんな意味があった。今弓矢を完全に破壊されれば、余計に筋書きに説得力が付く。
信じがたい事に、氷奈莉はそうまでして『黄川人』との交神に拘りたかったらしい。
「…正気の沙汰とは思えないね。家の人達を欺いてでも、一度戯れただけの相手を選ぶ意味なんてないんじゃないのかい」
「んー、そうなんだろうね。でも…それはあとでせつめーするから、ねやにつれてって」

83 :
初めから交神を想定して造ったのだろう、この神殿の閨は徹底的に快適であるようになっている。特に、女性側から見て。
しかし迎えられた張本人は大して興味がないようで、朱い柱の塗装を爪で剥ごうとしたくらいしか反応はなかった。
「さっさと始めるよ。君のせいで早くも疲れてきてるからね」
「ちょっとどーていそつぎょうしたからって、もうてなれてるかのようなかおしてる?」
ちなみにそう毒を吐く氷奈莉も、一度処女を散らして以来一切未経験だった筈である。
そんな彼女は豪華な閨よりも朱星ノ皇子に興味が集中しているようで、緑色の目を光らせて側に寄ってきた。
「きつときつと、それどうやってぬぐの?はねじゃまにならない?」
「だから、神名で呼んでくれって。万一ボクが見逃した監視の目があれば、君とこんな馴れ馴れしい会話してるのは問題になるんだよ」
「えー…なんだっけ、しゅせいのおーじ…ちがった?じゃあしゃせ」
「あけぼし!!」
真顔で下ネタを言いかけた氷奈莉の口を本気で塞ぎつつ、ぱちんと指を鳴らす。すると、朱星ノ皇子の姿は黄川人のそれに変わった。
「おー」
「残念だったね、これで君の疑問は水泡に帰したよ。ほらじろじろ見てないで床に着く」
珍しく大人しく従い、氷奈莉が静かに最高級かつ明らかに一人で寝るには大きすぎる布団の上に正座する。
緑色の眼がじーっとじーっと見てくるので、思わず黄川人もそれに向かい合って腰を下ろした。
「じゃあ、せつめーするね。てんかいにいるあいだでいいから、きつとおむこさんになってくれない?」
「君の話は何で常に唐突なんだ」
「んーと、あたしもなんでこうおもったのかよくわかんないんだけど…たぶん、あのとききつとがさいごまでつきあってくれたからだとおもう」
口調の割に淀みなく、氷奈莉は淡々と言葉を続ける。
地上に降りてから駆け回って様々な事を試してきたが、今まで『やりたい事』に最後まで付き合った相手はいなかったのだという。
それが嬉しかったので、全てが終わろうとしたあの時お輪の抱く赤子をそうとした一族の者を止めた。家族が抱いて当然の不満を押さえ付けたと知りながら、このまま天に昇らせておいてまた会いたかった。
「こーしんのまえ、よめいりぎょうれつをみたの。あたしもなってみたいなっておもった。あたしがあいたいのはきつとで、こーしんもきつととするつもりだからなるならきつとのだなって」
――と、締め括った。相変わらずぼんやりした目付きだったが、一瞬たりとも黄川人から視線を離さずに。
「とうぜんそっちのとくはよういしてるよ。おもてむきだけでもうちのはばつときつとのはばつがどーめいをくんだってことにできれば、はんたいはのかみさまたちはだいぶだまらせられるとおもう」
呪われし一族に与する神々、そして彼らが天界へ昇らせた氏神の一派は最早立派な勢力の一つと言える。そちらとしては、それを利用した形だけの政略結婚で構わない。そう言いたいらしい。
返答を聞く前に、氷奈莉はぎこちない動きで三つ指をつきぺこりと頭を下げてみせた。
「だから、あたしをおよめさんにしやがれください」
「…ボクが言うのも何だけどさ、もっとよく考えて生きなよ。いいかい、昨日の敵は今日の友。明日はどうかな?」
「おっと?」
「君にまともな返答を期待したボクが間違ってたよ」
軽口を交わしてみたところで、この時点で既に分かり切っていた。忌々しいが、氷奈莉は至って本気なのだと。
口調こそ軽くとも、反対する家族を欺いてでも、邪魔な連中を黙らせる人身御供になってでも、一切の嘘を交えずにそう願っているのだ。
虚勢を張る者を心底見下しているからこそ、黄川人は相手が本当の事を言っているかどうかには誰よりも聡い。きっと、あの時と同じようにこの場でされたとしてもこの娘が変心する事は決してあるまい。
本日何度目かの溜息を吐いて、黄川人が求愛と呼ぶにはあまりに拙い求婚への返答を口にする。
「ああ、もう。分かったよ、ここにいる間だけ君はボクの妻だ。そういう事にしておけばいいんだろ」
「きつとは、うそつかないんだったよね」
今まで聞いた中で、最も小さな呟きが氷奈莉の唇から漏れた。それから、にーっと笑う。と思えば、すぐに真顔になる。
「およめさんだから、ほんとにちゃんとこづくりしないと」
ほんの少しの間だけ俯いて、成り行き上の花嫁はぽふんと布団へと仰向けに倒れ込み――意外なくらいか細い声で、こう言った。
「…………まかせる」

84 :
一言発して、それから身じろぎ一つしない。本当に何から何まで『任せる』という事なのだろう。
「いいのかい、そんな事言っちゃってさ。君の命さえもボクに任せるって意味にも取れるゼ」
想像通りに軽い身体を抱き起こして、しゅるしゅると帯を解く。全く抵抗されない。
「うん、そっちもまかせる。なんか、いまここでころされてもべつにいいかなってきぶんだから。あたしをすきにしてー」
「そんな棒読みで言われてたら、母さんは普通にされてたよ」
着物と帯を取られた状態で手を離されて、氷奈莉がまた布団に倒れ込んだ。目付きは平常のままだが、口元は笑みの形になっている。
されるがままの彼女から、そのまま身に着けていた物を全て剥がした。
そこで、黄川人は初めて気付く。先程彼女が言及していた、『変わった』点に。
自分が破壊し尽くした京の都を全て復興した名家の出の割に安物の着物に包まれていた時は、その見た目はあの時と殆ど変わっていないように見えた。
しかし、こうして裸身を露わにしてみればはっきりと違う。体つきが確かに大人びた、『女』のそれに変化していた。
目の前で自分を待つ『女』の身体の美しさ。本能的に、雪のように白い柔肌に手が伸びる。
「ああ、確かに――少しは変わったんだね」
あの時触れた氷奈莉の乳房は見た目の年齢相応に薄く、ふにふにとした頼りない手触りだった。
だが今のその大きさは掌の中にぴったりと収まる程度にまで成長しており、指を動かすとむにりというしっかりとした感触がある。
かつてしたように乳を搾るように揉むと、氷奈莉がふるふると肩を震わせた。
「ん……もんだから、おおきくなったでしょ……?」
そこはかとなく嬉しそうな声色が耳に届く。柔らかな肌から、微かに甘い匂いがした。
「あ、そうだ。これ、おぼえてる?」
胸を任せている最中に、氷奈莉はふと自らの右胸を指差す。
そこには、掌程の大きさの傷痕が広がっていた。
「忘れてたよ。君のせいで思い出した」
この問いかけで、黄川人はその傷痕にまつわる記憶を思い起こす事になる。
それはほんの少し前、彼と氷奈莉ら呪われし一族が最後の闘を繰り広げていた時のものだった。
後衛で『弱点』すら何の躊躇もなく弓で狙い、そこらの鬼なら一撃で頭を吹き飛ばされているような威力の矢を機械的に撃ち続ける氷奈莉。
前衛の者達の守りが一瞬手薄になった時、阿朱羅が狙ったのは彼女だった。
弓を引き絞って放つ動作を必要とする分、通常弓使いは瞬時に距離を詰められれば対処し辛くなる。
阿朱羅の爪はいっそあっけない程に氷奈莉に接近し、防具ごと心臓を貫いた――筈だった。
『つかまえた』
みしみしと音を立て、本気中の本気の力で朱い鬼の腕が掴まれる。
氷奈莉はぎりぎりの瀬戸際で爪の当たる位置をずらし、わざと自分の体に爪を突き刺させる事で阿朱羅を捕えたのだ。
『石猿』で守りの力を高めていたとは言え、あまりに危険な賭け。命を対価にそれを張り紙一重の処で勝った時も、血にまみれた彼女の表情はひと月前に見たそれと同じだった。
そして、氷奈莉は片腕に握っていた矢を深々と阿朱羅の腕に突き立て――

85 :
「…やめだ。あれはあれで結構悔しかったんだぜ、ボクだってサ」
「んー、でもつぎやられたらあたしたぶんふつーにしぬよ?しんぞうをはずしたっていっても、あとちょっとずれてたらあたってたし」
言っている内容にそぐわない口振りでそう宣う。常人ならば一生残る程度には深い傷だったが、ほぼ神そのものと言える血を持つ氷奈莉の治癒力はもう薄い皮膚の痕を残す程度にまでそれを塞いでいた。
「で、この傷がどうしたの」
「なめてほしいなって。からだじゅうのきずをなめて、うみをすって、それから……だめか、あたしないたことないから。じゃあ、なめるとこだけあたしにもやってくれる?」
誰からそんな話を聞いたのか。もしや、本人か。
彼女が黄川人に求めてきたのは、かつて彼が体中の殆どの肉を喰われた哀れな人魚にしてやった行為。
その欲求が所謂『焼き餅』から来たのかどうかは、恐らく氷奈莉本人にも分からないだろう。
「まッ、そのくらいならしてやらなくもないよ。大人しくしてな」
軽く答えて、黄川人は傷に舌を近づける。
触れて舐め上げると、伝わってくる低めの体温が上がったような感覚がした。
「あ……ぞくって、する……」
皮膚が薄いだけ、感覚も鋭敏になっているのか。
ぺちゃぺちゃと何度も何度も傷を舐めれば、小さく声を洩らしながら氷奈莉が震える。
不意に、黄川人の頭の横で何かが触れてくる感触が生じた。朱星ノ皇子の時から唯一耳に着けていたままにしていた、氷と狐火の意匠のある耳飾り。
氷奈莉はそれにちょんちょんと指先で触っていたのだ。
「これ、おとーさんのだよね。はんぶんは、だけど」
「――ああ、彼だったのかい。君の父親は」
「うん。ひなりのひは、えいきゅうひむろのひ」
氷ノ皇子。それが黄川人が朱星ノ皇子としてこの地位に収まるまで最高位であった男神であり、氷奈莉の父である神の名である。
この耳飾りは、彼ともう一柱『黄川人』の養母であった元人間の神が共同で創り与えた物だった。
「だから、あたしときつとってきょーだいにあたったりするんだよね。ちはつながってないけど」
氷ノ皇子は黄川人の養父であり朱星ノ皇子の後見かつ前述の通り氷奈莉の実父である為、確かにこの二人は義理の兄妹に当たる。
「何でそんな事を今言うかねぇ…」
「ぎりなんだからどうでもいいじゃん。ちのつながらないいもうとにおにーちゃんとかよばれたほうがこうふんするせーへきとかあるの?」
「ないから黙ってろっての」
忌々しくも、いい加減氷奈莉をあしらうのに慣れてきてしまった。答えて間髪入れずに傷痕を吸うと、耳飾りから手が離れる。
「ん…きもちいい、でいいよね。これって…」
楽しげな声がした。そこにはやはり、飄々とした余裕は残っている。
あの時一度それが出来たように、黄川人はこの余裕を消してやりたくなった。

86 :
傷痕から離れ、うっすらと色づく双丘の真ん中に顔をうずめる。
肌から立ち上る香を思うままに感じ取ってから、こう呟いてみせた。
「母さんと同じ匂いがするね」
ジトっとした視線を向けて、氷奈莉がすかさず言葉を返す。
「きつと、こーいうときにおかーさんのはなしするのってふつーにきもちわるいか、ら……っ!」
言いかけた息を止め、氷奈莉は身体をびくりと跳ねさせる。この場で見せた中でも最も大きな反応だ。
その理由は単純明快。彼女の意識が身体から離れた隙に、黄川人はその乳房に吸い付いたのだ。
天界に昇った際に元の外見まで自力で成長した期間も含め、彼が赤子でいた時期は常人よりも相当長い。
故に胸先から乳を指先から血を吸った経験も自慢ではないが豊富であり、手で愛撫するより効果があると考えての行動。
こう言えば氷奈莉は話し方以外に可愛げの無い口を利いてくると予想した上で、隙を突いて実行に移した。思った通り、反応が大きい。
――それが出来たと言う事は、即ち黄川人が氷奈莉の思考を理解出来るようになってきている事を意味する。
自覚をすれば、忌々しい事実なのだろうが。
「あ、ぅ……んっ、でないよ……?おっぱい…」
知ってるよ。
声に出さずに胸の内で答えて、口の中で胸を弄くる。
舌先で乳輪を強く押し、乳首を吸いながら擽るように舐め、ちゅっちゅっと小刻みに啄む。
「ふぁ、あ、うっ!や、ぁ、あぁっ……くぅんっ、ぅあっ」
破りそうな勢いでぎゅうと布団を掴み、氷奈莉は意外な程分かりやすく乱れていた。
初めて男―この場合は黄川人本人である―に触れられた処だからか、どうやら胸が比較的弱いようだ。
思い起こせば、確かにあの時からそこに与えられる感覚への反応は早かった。
数ヶ月越しに漸く氷奈莉の弱点を見出だせて気分が良くなり、元来嗜虐的な性格の黄川人の責めは激しさを増していく。
わざと音を立てて乳首を強く吸い、口を離せば乳肉に噛みつくように舐め上げてやる。
乳輪を執拗に舌でなぞり、何度も何度も両の乳房を口だけで嬲りに嬲る。
「ん……ん、くぅぅ……っ、はぁ、っあ」
耳に届く啜り泣くような喘ぎ声が、心地よく感じられた。
その時氷奈莉が赤い髪へ手を伸ばそうとしていたが、触れる寸前に躊躇うようにぱたりと下げてしまった為気付かれる事はなく。
あの時淫核に会心の一撃を喰らわせてやったように、黄川人は含んだ乳首にかりっとあくまで軽く歯を立てた。
「ひぁっ、ぁ、んぁあぁあぁっ!」
絶頂の瞬間は、そのまま絶命の瞬間に似ている。
一度びぐんと大きく跳ねて、氷奈莉の身体が力なく仰向けに倒れ込んだ。

87 :
勝った。
意外と子供じみた思考だが、この瞬間確かに黄川人はそう思っていた。
相互に性器を弄り合っていたあの時とは違い、完全に一方的に責め立てた上で相手が絶頂する。
それが命の取り合いでも口先でも勝てたとは言いにくい相手なので、尚更勝ち誇る思いで意地の悪い笑みが出てきた。
さて、彼奴はどんな顔をしているだろうか。主導権を完全に奪われて悔しがっているか、はたまた屈服を感じているか。
ある意味わくわくした気分で、顔を上げて氷奈莉の顔を覗き込む。
「……びっくりした。むねだけされても…いくんだ……」
瞬間、息が止まった。
目の前の顔は悔しそうでも屈服もしていなかったが、驚いたらしくぱちぱちと瞬きをしている。
その際、数秒の僅かな間だけいつも眠そうに半分閉じていた緑の両目が『ぱっちりと』開いた。
髪の手入れもロクにしなければ上等な着物も身に着けず、常に半目でぼんやりして子供のような口調で妙に心の隙を突いた物言いをする生意気な変人。
そんな先入観がずっと在り続けていたから、文字通り神憑り的な頭を持つ黄川人もこんな切っ掛けがあるまで全く気付かなかった。
この娘は、あまりにも可憐で美しい。それこそ、目が釘付けになるどころか凍りついてしまう程。
冷静になってみれば、氷奈莉はあの天界一の美丈夫と謳われた男神の実の娘なのだ。その上彼の神の称号通り、本来なら『姫』を名乗るべき血筋の生まれにある。
真面目に身嗜みを整えて少し着飾れば、それこそ何処かの高貴な姫君にしか見えなくなるだろう。
天界屈指の美貌で男神らの熱烈な支持を受ける真名姫にも、決して引けを取らない筈だ。
「君さ…いつもそうやってちゃんと目、開けてる事は出来ないの?」
「えー、やだ。めだまがさける」
そう言って、またジトっとした目付きに戻ってしまう。
そんなだから、二度も肌を重ねている相手に気付かれるのさえ偶然だったんだ。
そう思うと一瞬でも心を奪われて損をした気分になり、やけに悔しくなった。
悔しさついでに、黄川人は一つ悪戯を思いつく。本気で驚けば目を開けるなら、もう一度驚かせてやる。目玉が裂けようが知った事か。
しかし、心臓のすぐ側を貫かれた時さえ平然としていた氷奈莉は何をすればそんなに驚くのか。
ほんの少しだけ考えて、彼は朱点童子としても朱星ノ皇子としても黄川人自身としてもやりそうにない事をしてみた。
「――――え」
氷奈莉の目がまたぱっちりと開く。それも、さっきよりもっと近くにその顔がある。
何しろ、何の前振りもなく口を吸ってやったのだから。
何でもないような軽いものではあったが、驚いたようだから成功だ。
奇妙な満足感に浸っていると、氷奈莉の様子がおかしい事に気付く。
常にこちらを見ていた緑の視線が逸れて、俯いている。透けるような肌は耳まで赤い。
「き、つと…なんで、したの……?くちすいって、……なひとにするんだって、あたし、きいた、のに……」
震える声でそう言われた時、黄川人の脳裏に一つの仮説が浮かんだ。
氷奈莉の思考が常人のそれとずれている事は、嫌と言う程分かる。なら、恥じらいの感じ方も違うのではないか。
例えば肌を晒してまぐわう事より、軽い口吸いをされた事に照れてしまうような。
そして、あの時から身体だけでなく心も僅かに変化していたら――例えば男をまともに意識して、途端にしおらしくなるような。
「あたしはいいけど……きつとは、そういうのじゃないって、わかってたし……だから、やったらだめだって……」
傍目から見ればこれまでもっと恥ずかしい状況になっていたにも関わらず、その時とは別人かと思うような弱弱しさで赤い頬を押さえている。
本当に、不覚だった。朱点童子としても朱星ノ皇子としても、当然黄川人自身としても生涯最高に近い程の失態だ。
何しろ、例え少しでも。忌々しいが本当に。
そんな氷奈莉が、可愛らしいと思ってしまったのだから。

88 :
「…馬鹿だねぇ、こんなの何の他意もないに決まってるじゃないか。君の驚いた顔を見たかっただけで」
「そーだろうけど……こじんてきにはずかしいから、やだ……」
仇敵相手に好奇心で性交を求めてきた娘にも、こんな感情があったのか。いや、この数ヶ月で育ったのかと言うべきか。
もしかしなくても氷奈莉のこうした面を晒け出せたのは自分のみに違いないと思うと、不思議と優越感からくる笑みが湧いて仕方がない。
そうしている内に落ち着いたようで、氷奈莉がまた半目で黄川人の顔を見上げてきた。
「きつとがとくいげなかおしてるとみててうっとーしいから、あたしもなんかやっていい?」
「いくら仮でも、夫に対する口の利き方じゃないと思うんだけどね…で、何をしようって言うんだい」
「くるまえにともだちからならってきたしんおーぎ!やってみたいからぬいで、ちょっとたって」
殆どいつもの様子に戻ったその口振りがやけに嬉しそうで、同時に断っても無駄になる気配がありありとする。
それも分かっていたので、黄川人はあっさりと指を鳴らして着物を消し宙に腰掛ける形で浮いてやった。
「ちゃんと、よだれたらさないといたいから…」
たらり、と氷奈莉が胸のそう深くはない谷間に唾液を垂らす。
それから手で双丘を目一杯開き、押し付けるように目の前の雄を挟んだ。
既にそちらの準備も出来ている。あれだけ自分によって悦び恥じらう女の様を見せつけられれば、興奮しない男などいないというものだ。
「もみじあわせ、っていうんだって。やったらきゃくがよろこぶってはちまんがいってた」
唾液に濡れた両の乳肉が、ぬるぬると擦りついてくる。
挟めるか挟めないかぎりぎりの大きさの胸を手で動かしているので、度々乳首がちりちりぶつかってきた。
すっぽり性器を胸の中に収められるとは行かなかったので、氷奈莉は少し不満げな表情をする。
「ん…むねがおおきくなるのろいとか、ない?」
「無いよ、そんなもん」
とは言え、この感触は確かに性感を男に与えてくるものだ。
している方も弱い乳首が何度も擦れるので、落ち着いた頬を薄く染め直して前髪を震わせる。
「ちゃんとみててね……んむっ、ふ」
上目遣いで見つめつつ、氷奈莉は舌を出して双丘の間から頭を出すモノをちろちろと舐め始めた。
柔らかい乳肉の感触に、小刻みに動く舌の刺激が加わる。
更に紅葉合わせには、ほんの少し視線を下にやれば奉仕する様がありありと見える視覚的な効果まであるのだ。
平静を装えども、黄川人の欲望は確実に高まっていた。
「ん、く……っは、ぁ……ふぅ、んっ……きもち、いい?」
『水』の男神の血を引くだけの事はあり、『風』の気質が強すぎる心の中のどこかにも献身的な部分があったのか。
コツを掴んできたらしく、舌と双丘を自分と相手双方が悦くなるように懸命に動かしていく。
その緑色の目は、やはり嬉しそうにぴかぴかと光っていた。
頭を舌で、竿を柔らかな肉と固い尖りで。
聞きかじりの知識だけで行っているが故に稚拙だが、それには確かに何かしらの心が籠っていて。
「――口、離しなよ」
「?…………あ」
ぼそりと言われた言葉に素直に従い顔を上げた氷奈莉の胸の中で、白濁が爆ぜる。飛沫が少し、顔にもかかった。
「うー…やっぱまずそう。かみさまなんだから、もっとあまいのとかでないの?」
「出る訳ないだろ。君は神を何だと思ってるんだよ、ただの肉体を棄てた古代のタワケ者だぜ」
「そのタワケもののおかげでわるいことしてもボンボンせーかつできてるんだから、ちょっとくらいかんしゃしなきゃだめだよ」
ぐしぐしと顔を擦って軽口を交わしながら、にちゅにちゅと精液と体液で濡れた柔肉で雄を少し撫でる。若き最強の鬼兼男神の分身は、まだまだこの程度ではといった様子だった。
それを肌で感じて、氷奈莉がどこか慈しむように微笑み持ち主へと囁きかける。
「こだね、まだでるよね。こんどはちゃんと、なかにだしてくれる?」

89 :
天界は変化を拒絶したすこぶる退屈な世界だが、申し訳程度の昼夜なら存在している。
徐々に暗くなっていた朱い閨がそろそろ灯りなしでは目の前さえも見えなくなってきた事で、閨の主は夜が来たのだと気付いた。
ちょいと指を動かすと、枕元に置かれた行灯がひとりでに点る。
いつもならばこれに照らされるのは、ただ豪華な寝床があるだけの天界そのもの同様欠伸も出ない程退屈な光景。
しかし、この夜だけはそれと違う存在を橙色の灯りが照らし出していた。
「おとーさんのうちにもあったよ、かってにつくあかり。かみさまはみんなもってるのかな」
赤みの乗った白い裸身。布団の上で無造作に流れる縹色の髪。そして、眠そうに細められた緑色の瞳。
あの時日の下と草の上で見たそれよりも尚、これから行われる契りを待つ氷奈莉の身体には色めいた美しさがあった。
「一度裂かれてるんだ、あまり面倒をかけないように頼むよ」
「ん、だいじょうぶ」
あくまで素っ気ない相手の言葉を寧ろ楽しげに受け取り、弓のタコがついた細い指を下肢へと伸ばす。
「……もう、じゅうぶんだとおもうし」
ぬちゃり、と卑猥な水音を立ててその指が閉じている秘所を開いた。薄い色ながら赤く充血したそこは、既に瑞々しく蜜を垂らしている。
一度絶頂した上で、更に性的に昂ったのだ。布団もいくらか濡らした事だろう。
「ああ、…話が早くて助かるよ」
軽口の調子が一瞬乱れたのは、決して偶然ではあるまい。
とすり、と黄川人が氷奈莉に覆い被さる。
「挿れるよ」
性器同士をくっ付けながら短くそう言ってやったのはどうしてか、彼自身も考えていなかった。
「うん。ちゃんと、ぜんぶ…………っ!」
十二分に濡れているとは言え、まだ一度しか受け入れていない雄の再度の来訪はそうすんなりと許されない。
「ふ……はぁっ、ぁ」
狭いままの胎内が主へ静かな痛覚をもたらす。それでも、侵入は止まらずに進む。
雄が膣壁に絶え間なくきつく絞られる。目的上いつ射精してしまっても構わないが、こんな早い内からそうなると男として矜持に関わる。
最奥に到達した処で、きゅっと仰向けの乳首を捻れば「はぅっ」と小さく呻かれた。
「いいよ、さわって……まかせるから、うごいて、えぐって、いっぱいおくに…!」
そのまま無言で始まった愛撫混じりの抽送に、荒く息を吐きながら氷奈莉は精一杯答えた。
まだまだぎこちない動きながらも腰を震わせ、収縮する膣壁を胎内の雄へ擦り付けようとする。
その手が黄川人の肩にかかる事はなく、頭の横に置かれた彼の手の側で迷うように小さく動いていた。
「どうしたのさ…あの時は特に躊躇もなく、ボクの肩を掴んでたんじゃなかったっけ?」
「ん……はっ、ぅ、なんか……いまは、きつとがやだかなっておもったら、やりたく……くぅ」
胸を鷲掴みにされながら問われて、氷奈莉は目を更に細めながらふるふると首を振る。
それ以上は、やがて精液を胎内に吐き出されるまで何も答えなかった。
それが何故か気に入らなくて、白く濁った先走りを引く雄を引き抜いて強引に抱き起こす。
「仕切り直しだ。君にいきなり遠慮されると気持ち悪いんだよ、乗る興も乗りやしない。任せなくていいから、君のやりたいようにやりな」
「ん……じゃあ、さ」
ぎゅーって、していい?
殆ど声にならない声でそう言って、氷奈莉がふわりと黄川人に抱き着いてきた。

90 :
「ふーふせーかつのよしあしは、ななわりがふとんのうえできまるってとくさがいってた」
「馬鹿馬鹿しいよ。ただの口約束だってのに」
「やくそくはやくそくじゃん?」
ぬる、と蜜の湧く膣が雄に絡み付く。汗の珠が浮いた呪いの珠の貼りつく額を、氷奈莉は目と鼻の先にある肩にぴたりと押し付けた。
舌っ足らずで間延びした話し方に子供のような口調が相俟って分かりにくいが、彼女は精神的にも子供である訳ではない。
でなければ、顔を上げて薄く笑ってみせた時の艶っぽさは出せるものではないだろう。
一度気付けば、氷奈莉のそんな一面が次々と掴めてくる。その事実がまた忌々しくなり、黄川人は軽く眉間に皺を寄せた。
「生意気なんだよ、君は」
「あくっ……!」
胸の傷痕から首筋にかけてぞろりと舐め上げ、細い腰を掴み無理矢理動かす。
そんな風にされても身を引くどころか、寧ろもっと応えたいとばかりに余計身体と身体の隙間を無くすように寄ってきた。
それに合わせて雄を包み込む膣壁が動き淫核が肌に擦れ、互いの性感をもっともっとと煽り立てる。
閨に入る前は幼げのあった顔は、いつしか完全に『女』のそれへとなっていた。
「はぁ、んんっ……やらなくても、あたしがうごくよ。だからこのまま、つかまらせて」
控え目な動きで首に手を回しながら、躊躇わずに氷奈莉は動いてくる。激しく淫靡な水音が立つと、満足げな色を金と交差する緑の視線に交えた。
「――ちッ」
不意に、ばさりと閨に羽音が響く。消されていた黄川人の、朱星ノ皇子の翼が再びその背から展開されたのだ。
「…掴まりたいなら、好きにしなよ」
「っん、ひぅっ……そうする、ふくぅっ!」
どこか頼りないとさえ感じる力で、大きな翼にきゅうと掴まる。
その手から伝わる熱に突き動かされるかのように、朱星ノ皇子は氷奈莉の胸元を食みながら最大の勢いで雄を突き挿れた。
「あ、ぁ、――っくぅ、はぁあぁっ!」
翼にしがみついたまま、氷奈莉がその腕の中で弓なりに身体を反らし喉の奥から絶頂の嬌声を上げる。
同時に胎内全体が目一杯収縮し、中にいる雄を道連れにするようにぎゅっと搾った。
「っ……!」
一度か二度程瞬きする間に、叩きつけんばかりの勢いで精液が最奥へ出される。二人の絶頂は、殆ど同調していた。
「っふ、ぅ…………はぁ、ん…………」
どくどくという子種の感触を一滴分も逃すまいとするように、やがて母親となる娘は弱く身体を震わせながら目を閉じる。
「これで、にかいめ…もっとだしたら、なんにんもこどもできるかな」
「普通は二人までだったと思うけど。と言うか、出しただけ出来るってもんじゃないだろ」
「ん、じゃあそれでもいい。もっとしたいのはあたしだから――きつと、またさいごまであたしのやりたいことさせてくれる?」
小首を傾げながら懇願してくる目を見るほどに、原因不明の心の昂りが止まらない。
まだ足りないのはこちらの方だと言わんばかりに、氷奈莉の胎内で射精したばかりの雄が質量を取り戻していった。
「忌々しいけど、ここまで付き合っちゃったのは事実だしね。……気が済むまでしてあげるよ、だから君もボクの気が済むまでついて来な」
繋がったままで律動を再開すると、また翼にきゅっと絶頂の瞬間抜けた力が籠る。
途中からはどちらが求めていたのかも分からないまま、その後口約束の夫婦は何度も何度も情欲を交わし合った。

91 :
今は真夜中か、それとももう明け方か。
散々続いた情交は、流石に疲れ果てたらしい氷奈莉が眠ってしまった事でひとまずの終わりを告げた。
朱星ノ皇子もまたし合いとは別の方向で体力が消費される行為に疲労していたので、少しばかりの間眠りに就いている。
ぐしゃぐしゃになった最上質の布団。当然一組しか閨にはなく、枕は当たり前のように二つあった。
と言う訳で、必然的に隣り合って眠る形になる。
邪魔になる翼を消して黄川人に戻った彼が、ちろりと目を開けて傍らを見やった。
「……………ふすー………」
小さな寝息を立てて、氷奈莉はやけに落ち着いてぐっすり眠っている。
性交の最中に寝てしまったので、様々な体液で身体中をどろどろにしたまま何かを着るどころか湯浴みもしていない。
横で寝てるのは仇敵だってのに、図太いんだか何も考えてないんだか。
そんな事を考えながら、暫く寝顔を観察していた。
瞼が閉じて目付きが隠れている分、起きている時より隠れた美貌が分かりやすいかもしれない。
「…思いっきり涎垂らして寝てなきゃねェ」
人んちの布団なんだからさ、と一人ごちる。
とりあえず、ここまで熟睡しているならもう暫くは目覚めないだろう。
なら先に湯浴みをするか、と黄川人が体を動かした瞬間。
「……き、つと……」
うっすらと目を開けて、布団の中で氷奈莉の指が隣の手を掴んできた。
それから小さな、小さな声を唇の隙間から洩れさせる。
「……………………いかないで」
この至近距離でなければ聞こえないような声で囁き、また目を閉じて寝息を立て始めた。
手を掴む指は、持ち前の握力を発揮するどころか添えているだけのような感触しかしない。
それなのに、何故かどうにもこれ以上起こしかけた体が動かない。
もう何度目か数えるのも面倒になった溜息を、聞いていないだろう相手に当てつけがましく吐いてやる。
「――言われなくても、どこにも行く用事なんかありゃしないよ」
言い訳のような口調で呟いて、黄川人はまた布団の中へ潜っていった。

92 :
交神の儀は一度でも行為を行えば果たされた事になるのだが、希望するなら一月の間は天界に滞在していてもいい事にされている。
当然氷奈莉があれだけで地上に帰ろうとする筈もなく、朱星ノ皇子は半人半神生で最も長い一カ月を過ごす羽目になった。
何しろ、一か月のおよそ半分を持ち前の放浪癖を遺憾なく発揮して失踪を繰り返す氷奈莉を捕まえるのに費やされたのだ。
生まれて一月父と共に過ごしただけでは、彼女の旺盛すぎる好奇心は全く満足していなかったらしい。
一度呪を込めた髪の毛で雁字搦めに縛りつけた上で地獄巡りばりの罠を張り巡らせた神殿の奥に放置してみたが、全身ぼろぼろになってまで脱走された辺りで遊ばれていると思わざるを得なかった。
かと思えば、ふらりと戻ってきて何かと付き纏って最上位術と弓の奥義が飛び交う軽い喧嘩に発展したり交わりを求めたりしてくる。
一度氷奈莉の父親の下へ直接出向いて文句を言ってみたが、「あの子がそんなに楽しんでいるとは、余程懐かれているのじゃろうな」の一言で済まされた。
天界に昇ってからずっと退屈で仕方がない生活をさせられていた彼だが、この時ばかりは退屈だと思う暇もなく。
恐ろしく長かったはずなのに過ぎてみると短く感じられた嵐のような一月が経ち、やっと氷奈莉の地上へ帰る日が訪れた。
「ああ、これで随分ここも静かになるよ。何しろ大好きな君がようやく帰ってしまうんだからねぇ、嘘なもんか」
「きつとはうそつかないもんね、じじつをすごくしゅかんてきないいかたでおしえてごかいをさそうだけで」
この程度の皮肉の応酬もすっかり日常茶飯事だ。
しかしそれもこれで終わりかと思うと、突発的に少し揺さぶりをかけてみたい衝動に襲われる。
「一つ聞こうか。例の呪いをかけたのは、ボクじゃない…そう言ったらどうする?」
そう問いかけてから、わざと額の珠に目をやった。
それでもやはり、氷奈莉はいつものようにジトっとした眠そうな目つきを変えないままで暢気に「んー」などと呟き。
「ふつーにかんがえられることだとおもうよ。あたしたちがきつとよりてんかいにはむかおうとおもってもできないように、かみさまのがわにつくしかないじょうきょうにおいこむのはこーりつてきなてだし」
「…そこまで考えられるのに、何で君は常識的な思考には頭が回らないかねェ」
「だけど、いまきつとはどうする?っていっただけでそうだっていわなかったからじゅっちゅーはっくいつものやりくちだよね。だんなのいうことはさんわりまでしかまにうけるなって、ともだちもいってた」
「旦那ねぇ、それも今日までだってのは分かってるだろ」
「うん、てんかいにいるあいだっていったからね。ちゃんとげんしつもとったし、おごうおかーさんとおこんおかーさんにいいっていってもらってきたからそとぼりもちゃんとうめれたよ」
どうも、失踪を繰り返していたのは『黄川人』の関係者一同への接触も目的だったらしい。
思考はある程度理解出来るようになっても、結局氷奈莉がどこまで考えて行動しているのかは把握し切れずじまいだった。
「あ、おとーさんはさいしょからさんせいしてたからだいじょうぶ。こうしんするってみんなにいうまえななひかりのみたまできいたら、すごくよろこんでたし」
「前から思ってたけど、実はあの神(ひと)馬鹿なんじゃないのかってちょっと思うよ」
ここにはいない養父に毒づきつつ、ジトっとした視線で見つめ返してやる。

93 :
「とにかく、これで最後だ。せいぜい母になる喜びと苦しみ、味わうといいサ。曲がりなりにも君とボクの子だ、どこまで強くなるか楽しみだね」
「いわれなくてもわかってるよ。きつともおとーさんになるよろこびとくるしみ、ちゃんとあじわってね。おかーさんたちやおとーさんにおしつけていくじほーきしたり、ぎゃくたいしたらだめだよ」
「君さ、ボクの事信用してるのか全く信用してないのかどっちなの」
「しんようしたうえでやりかねないとおもってる。…あ、そうだ。あやうくわすれるとこだった」
全部本気で言っているのだからタチが悪い。しかしこの時、朱星ノ皇子は瞬時に見抜いたその眼に一匙ほどの敬意を示してやりたくなった。
「じゃあ、ここからは本当の事を言ってあげるよ。ボクが一度んだ時点で、呪いそのものは解く事が出来るようになっている。未だに解けないのは、君達が連綿と紡いできた『朱点童子』への怨念が子孫の魂までもを縛っているからだ」
呪われた一族を鍵のかかった部屋に閉じ込められている者とすれば、今生きている者達は鍵の開いた扉の前で拘束されて動けない状態にある。
呪いをかけた本人の口からこの仕組みを説明されたのは、地上にも天界にも氷奈莉一人しかいない。
「一人目の朱点童子である姉さんが君達の相手をしているのは、その怨念を受け止めて浄化しようとしているからだよ。先祖代々の怨念を捨てて水に流せば呪いは解ける。まッ……そんな事で君達が抱くボクと姉さんへの恨み辛みが晴れるなんて、ボクは思っちゃいないけどね」
自嘲的とも取れるような仕方、二人目の朱点童子は三人目の朱点童子の遠い子孫へ笑ってみせた。
「あたしはべつに、さいしょからのろいもしゅてんもどうでもいいなっておもってたけど。でもみんなはそうじゃないから……んー、とりあえずこどもみんながいきてるあいだにやれるようにうごかないと」
眠そうな目によく見なければ決して分からない思慮深さを覗かせて、唐突に思い出したように氷奈莉は懐から一枚の紙を出して朱星ノ皇子に渡してくる。あまり上手くはない字で、何かがしたためられていた。
「なまえ、かんがえといたたから。おんなのこだったらきなこで、おとこのこだったらきつね」
「…勉強すると吐き気がするから、漢字は苦手なんじゃなかったのかい」
「それもおかーさんになるよろこびとくるしみでしょ?…おごうおかーさんにちゃんときいてきたの。へんななまえっていって、ごめんね?」
ひどく珍しくバツの悪そうな表情を見せて、くるりと『古弓あさひ』を背負った背を向けてしまう。
「ちゃんとくるしんで、よろこんで、おかーさんになるから。だから――またね」
その一言を残し、ひゅんと風を切って母となる姿が消えた。
一瞬だけ振り返り、父となる相手にあの一番の笑顔を見せてから。

94 :
屋敷に戻ってからの氷奈莉は、明らかにそれまでより変化していた。
何しろ金を持ち出して何処かに行く事もなく、それまで完全に感覚で全てを賄い手を付けようともしなかった巻物や指南書に記される基礎を猛烈な勢いで学びだしたのだから家の誰もが驚いた。
あまつさえ執事の娘に家事まで習い出し、「氷奈莉様、何か悪い物でも拾って食べたンじゃないでしょうね…?」と困惑までさせて。
理由を聞かれれば「しゅてんにくるしみをあじわえっていわれてきたからくるしんでがまんしてる」の一点張りなので、性格が反転する呪いでもかけられてきたのではないかと思われた程だ。
討伐に出てもそうだ。それまでは一つ一つの戦いごとに命を投げ出しているかのような無謀なやり方ばかりしていたのが、意識して自分の命を守っていたのだから。
そうして家の者達の目を丸くしたまま一月を過ごし、氷奈莉の下に二人の子供が連れられてきた。
姉と弟の男女の双子。何の迷いもなく母は子供たちの名を皆に告げる。
女の子は、桔奈子(きなこ)。
男の子は、桔音(きつね)。
キツは桔の花。五つの花弁が開く桔梗。
その由来は家の者達にさえ教えられる事はなかったが、聞かれるたびに氷奈莉は笑って「ないしょ」と答えた。
まだまだ戦場に赴く事の出来る歳である母が討伐を断固拒否してまで行った二カ月に渡る特訓により、双子の姉弟は将来を否が応にも期待させる強さで初陣を飾る事になる。
その間の氷奈莉は訓練こそ実戦ばりに容赦をしなかったが、それが終われば三人で遊びに行ったり手習いをしたりととてもよく可愛がっていた。
少なくとも、代わりに討伐に出た家の者達が見れば事前にされた「すんでの処で暗に失敗し、敢え無く朱点に好きにされてしまった」という説明を間違いなく疑っていただろうくらいには。
母の弓技を継いだ桔奈子と槍使いになった桔音の加わった討伐隊は、二人の叔母に当たる最高神との戦いを通じての連綿と繋がった呪いの鎖の禊をどんどんと進めていって。
ついには見事全てを水に流し、呪われし一族を呪いから解放したのだと風の噂に伝わっている。

ところで。
その噂が風に乗るほんの少し前の事、当時まだ呪われていた一族から一柱の新たなる氏神が天界に昇っていた。
彼の女神は一族の擁する氏神の中で最も強く、最も何をするか予測出来ないと謳われる事になる。
彼女が天界でまず何をしたのかと言うと、与えられた社を突っ撥ねてとある男神の神殿に棲みついてしまったのだという。
それからその神殿には時折雷が落ち、時折半壊にまで至り周りの神には何が起きているのかと訝しまれはしたが。
程なくして、「あの夫婦にはこの天界においてすら暇だと思う暇さえあるまい」と笑い話の種になったのだそうな。

これにて完結
笑うなよ…俺、今度はエロい幼な妻といちゃいちゃ子作りできるように生まれ変わろうと思うんだ…

95 :
>>80-94
GJ! 寒い中全裸で正座して待ってたかいがあった!
うん、なんというかアレだ。「やったねきつとくん、かぞく(苦労の種)がふえるよ!」(マテ
何はともあれ、投下乙でした。次回の作品もまた全裸で正座待機してます(ェ

PS:七光りの御玉をそんな風に使う人って、あとにも先にもひなりんくらいだと思うw
しかもそれで普通に出て来る皇子も凄い親バカw

96 :
>>94
きなこ・きつねで適当な名前つけやがってwと思ったら最後でやられた
いい話でした。幼妻といちゃいちゃ出来るといいな!

97 :
GJ!

98 :
>>81
ひなりたん破天荒でかわゆすなぁ 黄川人翻弄されまくりや
それにしても双子たんの名前に泣いちまっただろ!!!GJ
親バカ皇子を想像してほほえま〜

99 :
>>64-76の続き置いてきます
・エロは最初と最後だけ
・汚い描写あり。ゲロとか
・一族娘や捨丸の性格がアレな感じですが、それも世界の選択です。

100 :
 人間との間に子を成せぬ“種絶の呪い”をかけられたかの一族は、人ならぬ神との間に
子をもうけることで血を繋いできた。
 鬼の首級を捧げ──実際に首を積むわけではないが──呪いつきの一族が神と同じ御座
に上がる儀式を“交神の儀”と呼ぶ。
 ひとくくりに交神と呼べど、その実態は様々である。ヒトのように交わるもの、獣の
ように交わるもの、肉体的な交わりを必要としないもの。神御自ら下界にくだることも
あれば、地上の一族を天界の住居へ呼び寄せることもある。交神の儀には一月という時間
が用意されるが、一度きり交わればそれで良しと別れる神と一族もあったし、一ヶ月間を
夫婦として睦まじく過ごす神と一族もあった。
 しかし。交神の儀は処々様々とはいえ、今度の場合は規格外に過ぎるようだった。
 一度の交わりで充分なはずの儀式で、“子が成せたかどうか不明だから”とうそぶき
普通の人間に換算してもうら若い娘を夜な夜な弄ぶ、というのは。退屈を紛らわせるため
には割と何でもしかねない神々はともかくとして、かの一族に肩入れする神からすれば
噴飯ものの所業であったし、そもそも凌辱される娘の血族の耳に入ろうものなら交神の儀
の中断という前代未聞の事態に発展しかねない代物であった。
 幸か不幸か、儀式の場となった一族所有の離れは結界により外界と遮断され、三度の食事
や風呂の用意をする世話役の娘とて直接“中”の様子を窺い知ることは出来ず、犯す側は
とりあえずしたり取り返しのつかない傷をつけたりといった誤魔化しの効かない行為は
避けており、犯される側も“外”に対して沈黙を通したため、この件が発覚することは、
もうしばらくはなさそうだった。

 これは。交神の儀終了まではまだ間のある、そんな時期の話。

 あえかな燈明灯る寝所では、男と女がまぐわっている。
 うつ伏せで息を切らし、腰を上げる体勢を強要される女と、女の尻を抱えて腰を打ち
つける男との交合は、小さな灯りの生みだす陰影に縁取られ此岸とは思えぬ様相を呈して
いた。
 女が、赤髪紅目の、人と神との間に生まれた呪われし一族だからか。男が、野晒しの骨
と僅かばかりの肉と臓物とで形づくられた異相の神であるからか。
 それでも。見た目がどうであれ、臥所で行われるのはごくありふれた行為でしかない。
 喘ぎ声。女のもの。粘りつく水の音。肉と肉とが擦れる音。女の、男を咥える場所から
聞こえる音。衣擦れ。これは男の纏う僧衣から。女からはしない。女の乱れた夜着は汗で
肌に貼りついていたから。

101 :
 女を濡らすのは汗だけではない。
 唇が乾くのか幾度も舌先で舐めるのだが、その都度口の端から唾液が伝う。唾液は乱れて
露わになった胸元へと落ちるのだが、豊かな乳房は既に黄土色の体液で汚されている。
ぐじゅぐじゅ濡れそぼつ場所より溢れる体液と、同じ色合いだった。
「──ん、」
 剛直が引かれ内壁を削られる感触に、女が声を上げる。結合部に微かな緊張が生まれた
のは、そのままエラの張りだす部位までを引き抜かれると警戒してのことだった。
 つい先日まで処女だった女の性器は、太いものをくぐらせること、奥を突いてくる亀頭
を受け止めること、二人分の体液を襞と襞、襞と男根との合間に満たし双方へ絡めること
は覚えても、いちばん外側の薄い肉が拡げられる痛みには未だ慣れぬようだった。
 震える女の背が、仰け反る。
 抜かれる寸前まで退いた男根が天井を抉りながら再度侵入してきたからだ。
 粟立つ内壁を愉しむように、ず、ず、と、緩やかに肉は進む。腐れて崩れた男の肉は
見かけよりもずっと硬度を保っていて、力の抜けた細腰をいとも容易く持ち上げてしまう。
 女の口から啜り込むような喘ぎが洩れる。握り締めた拳の中、敷布がよじれた。
 汗ばむ肌に、男の身につける僧衣がぞろりと触れる。厚い、乾き冷えた生地の感触に女
は身を竦ませる。きゅ、と締まった内側を、ねじれた男根が掻き回す。
 貫かれる部位が泡立ち、零れる様子は、僧衣に覆い隠され見えない。
 それでも女の耳には男の嬲るような哂い声と粘り気のある気泡がぷちぷち弾ける音が
同じように届いたし。どろりとした性臭は自分の流す汗と衣に焚きしめられた香と反吐と
臓物の臭いとで渾然一体となり、女をぐらつかせた。
「あ、ん、っく、ッ、あ、んん──ッ」
 冷たい骨の手で尻をわし掴まれ女の喘ぎが一瞬高くなる。
 引き寄せる動きで女の肉と男の腐れた肉が密着しぐずぐずと擦れ合う。冷たい骸骨の
身体の中で、触れ合う肉と貫く肉だけが熱い。但し、後者の熱は女の内側と同程度で、
どちらが熱いのか分からなくなってしまう。突かれ、引かれ、そこに他人が在るのだと
いやが応にも認識させられてしまうのに、体温だけは同じとは。
 ごつごつ最奥を打ちつける衝撃に女は身を揺らし、必で耐える。
 耐えて、そろりと腰を浮かす。男がより動きやすい位置に、女自身がより深く男を咥え
込める場所に、自らを持ってゆく。
 尻に喰い込む指がみしりと鳴る。痛みすら走るが、膣壁が激しく擦られる感触の方が、
ひと呼吸の間にも何度も奥を抉ってくる感触の方が。拡がるエラが、硬く膨れあがった
幹が、女の“感じる”部分ぜんぶを巻き込み女のなかで昇り詰めていくその快楽が、他の
全てを砕いてゆく。
「っ、っ、っく、あ──!」
 みっちりと押し込まれ、ひろげられ、脈打つ剛直から熱い迸りを受けて。女は白い喉を
晒して喘いだ。

 お前も随分と楽しむようになった、と言われ。女は紅玉色の目をしばたかせる。

102 :
「貴方に誉められたのは初めてだな」
「どこをどうひねればそうなるんだよ」
「楽しむだけの余裕が出来た、という意味だと解釈したが」
 男は呆れた様子で鼻を鳴らし──されこうべがどうやって“鼻を鳴らす”のかは傍目
からは不明だが──女から身を離す。まだ萎え切ってはいないものが玉門をくぐる感触に
女は身震いし、「ところで」塞ぐものを失くしてどろりと中身を零す秘所を自らの手で
拭いつつ、今度はこちらから訊ねる。
「子は、成せただろうか」
 男の返答は、ここ数日と全く同じ。「さァなァ」
「根を上げたんなら、ここで終わるか?」
「……いや、止めておく」
 呪われた一族に子を授けるが約定の神は、女の返答を聞きケタケタ哂い、閉じた襖の
向こうへと消える。床は共にしても、枕は共にしない。それが一人と一柱の在り方だった。
 ひとりきりになった女はぽすりと横になり、傍らの徳利を引き寄せる。
 就寝前に、中身を一口。それが女の、ここでの習慣。
「……汚れたな」男の体液でべたつく肌をさすり、「風呂、入らないと」ひとりごちて、
結局疲れを理由に行かないのも習慣になりつつある。悪習だ。
 “日常”というものは何処にでも出来上がる。女が男に夜な夜な身を任せることや、それ
でいて眠りを共にしないことや、その他もろもろ。
 眠る直前の女が物思いに耽るのもそのひとつ。
 ──かの神。
 ──あの、男。
 ──何故だろう。
 女を貫く肉は熱い。女に触れる、男の身体にかろうじて残った肉や臓物も熱い。女自身
の身体も、胎に受ける精液も熱い。
 けれど。
 最も熱いのが、女の胸でせわしなく脈打つ心の臓だという事実は、何故か常に女を困惑
させるのだった。
 大江ノ捨丸との交神の儀に臨む女の、それはささやかな疑問であった。

 女の離れでの一日は沐浴から始まる。イツ花が昨日沸かしてくれた湯の残りを使い身を
清め、さっぱりしたところで朝餉を摂る。普段の、家族揃っての賑やかな食卓とは違い
愛刀を横に添えての一人きりの席だ。
 交神の儀の最中ゆえ余人の姿はない。一族が交神にのみ集中できるよう日々の世話を
焼いてくれるイツ花とすら、顔を合わせる機会はない。彼女は女の知らぬ内に風呂を沸かし
食事を持ってきて、静かに帰ってゆく。何時もはどたばたと賑やかな少女なのだが、こんな
風にも動けるらしい。

103 :
(でもやっぱり普段のイツ花がいいな)
 大根の味噌汁をすすりながら女はしみじみ思う。端然とした外見の割に、静かなのが
苦手な性質だった。
 女の前にはもうひとつ膳が置かれている。箸をつける者もなく冷えた食事は、大江ノ捨丸
のため用意されたものだ。ほぼ儀礼的なものとはいえ、放置されていると些か勿体ない。
 此処に話相手として座ればいいのに、と、沢庵をぱりぱり齧りながら考えたりもするの
だが、いざ同席したら同席したで何の話をすればいいのかそもそも自分と相手とで会話が
成り立つのか。問題は山積みである。
(……ああ、でも)
 ──知りたい。
 どんな風にして膳の前に腰を下ろすのか。どんなことを考えているのか。日中は、この
広くもない結界の何処で何をしているのか。交神の儀をどう見ているか。自分のことをどう
思っているか。
「ん、頃合だな」
 “敵を知り、己れを知れば、百戦危うべからず”──うん、良い言葉だ。
 最後に杯を干し、女は「ごちそうさま」を言って空茶碗を片付ける。
 今までは夜に翻弄されるばかりだったが、ここからだ。ここから反撃の糸口を掴む。
「近頃は責められても持つようになったしな! よしいけるな!」
 片手に刀、片手に膳を持ちうきうきとそんな台詞を口にする女は、ちょっとばかり、否、
かなり浮かれた様子であった。

 さて。
 己が心を捉えて離さぬ大江ノ捨丸、かの神を倒さんと勇み交神の儀へ臨んだ女であった
が、事を急ぐことはしなかった。
 まず交合は根本的な問題解決に結びつかぬとの最終判断を下し、それから昼の行動に
移る。
 とはいえ相手の姿を求め離れを探し回るような、そんな子どもじみた真似はしない。
なにしろ相手は腐っても神、歴戦の剣士である女にも生半には気配を悟らせぬ。足を棒に
するだけ無駄というものだ。
 そこで女が取ったのは。普段通りに過ごす、という行動だった。
 食事をし、掃除や洗濯をし、縁側で茶など啜ってみたりもする。
 相も変わらず捨丸の姿は見えないが、──ごく稀に、視線を感じた。今だけではない。
昨日も、一昨日も。女が捨丸のことを昼となく夜となく考えるには及ばずとも、捨丸も女
に興味を持ち始めている。
 女は素知らぬ顔で湯呑みを下ろし庭に出る。たおやかな手には大拵えの刀が収まり、簡素
な袴姿によく合っていた。
 帯と下緒を結び刀を固定して、女はふと息を吐き、吸い、吐いた。
 鞘を左手で、柄を右手でもって把り腰を僅かに落とす。裸の足裏がさりりと土を鳴らし、
「──」

104 :
 小気味好い風切り音。
 抜かれた刃は水平に弧を描き、真直ぐ伸ばした腕の延長線上にてひたりと止まる。
 そのままの、右腕右足を前に出し腰を落とした体勢で一拍、二拍。
「──」
 刃が戻される。鯉口が涼やかな音色を立てた。
 もう一度。女は同じ動作を繰り返す。呼吸。抜刀。静止。戻し。もう一度繰り返す。足
の裏が土にまみれる。もう一度。滑らかな肌を汗の玉が伝い落ちる。もう一度。肘が刀の
重さに張り詰める。もう一度。同じ型を、もう一度。
 視線を感じた。
「──」
 女が紅玉の瞳を僅かにずらす。
 縁側に胡坐をかく僧形があった。がらんどうの眼窩から底光りする金の眼が此方を見て
いる。
 陽の下で見るのは初めてだったので気にはなったが、女はじろじろ見るような不躾な
態度は取らなかった。
 言葉を交わすでもなく剣の修練に戻る。
 但し。気づかなかったのでも無視したわけでもないのは、女の剣筋から分かったはずだ。
大江ノ捨丸も、鬼に変じる以前は帝直々に鬼討伐を命じられる程の豪傑であったのだから。
「──」
「──」
 刀を振るう女と。衣擦れの音ひとつ立てない神との無言の逢瀬は半刻ほど続いたろうか。
 汗だくになり剣を下ろした女に、「その刀、」初めて。捨丸が呼びかけた。
「見覚えがあるなあ」
「だろうな」
 女は鞘に収めた刀を腰より外し、縁側、捨丸から人ふたり分程度を空けた場所に座る。
流れるように自然な動作を咎める者はいなかった。
「俺を斬りやがった刀だ」
「貴方がした剣士の刀でもある」
「見せてみろよ」
 女は揃えた膝の上に刀を載せ、寝かせたまま静かに鯉口を切る。
「渡しはしねえのか」
「そこまでは望まないで頂きたいものだな」
「ヒヒ、疑り深いオンナよ……美しいなァ」
 意外なまでに素直な称賛が発される。刀身の三分の二ほどは鞘に収まったままで、その
姿を完全には晒していない。しかし風に舞う桜花の如き刃文の美しさは充分に知れた。
「お前の前に来た剣士は、ここまでの鍛えじゃなかった。一体何匹鬼の血を吸わせりゃあ
こんな刀が出来上がるんだ? 千か? 二千か?」

105 :
 斬られた鬼の、千分の一か二千分の一であるところの神は酷く抉るような笑い方をした。
女は抜いたときと同様滑らかに刀身を戻し、
「貴方が呪いをかけなければもっと多くの鬼が斬れただろうな」
 さらりと返す。
「鬼を斬るために俺を二度も斬り捨てたのか。恐ろしい女よなァ」
「──ふふ」
 嘲るような捨丸の言葉に、女は短い笑いを返答にする。
「一度で良かったはずなのだが」
「……何だって?」
「剣の呪いを解くだけなら一度で良かったはずなのだがな」女が流し目をくれる。艶、と
呼ぶには凄絶な色がある。
「一度では、足りなかったらしい」
 女の手が大拵えの鞘を撫ぜる。恋人を慈しむかのような手つきだった。
 ふたつの視線が絡み。
「天界はそんなに退屈なのか」
 脈絡のない問いでほどける。
「ぬほど退屈よ」
「そんなにか」
「あそこじゃ毎日が一切変わりゃしねえ。暇潰しにニンゲンにちょっかいかける気持ちが
分かるってモンよ。あんな泥みたいな澱みを楽しめるのは、仙人か坊主だけだろうよ」
 なるほど、と女は呟く。
 しかしながら。朱点童子に鬼にされたり自分達の骨で作った城にぬことも許されぬまま
繋がれたり其処にやってきた連中をしたりされたりされたのにまた生き返ったり
その内しに来る一族と戦ってそいつらが充分強くなるまでされ続けたら天界に上げて
神にしてあげましょうなんて言われてしてされる──そんな地獄からようやっと解放
された大江ノ捨丸をして“ぬほど退屈”と言わしめるのだから、余程なのだろう。
「なるほど」
 女は意味もなく繰り返し、土で汚れた足をぷらつかせる。
「ここも似たようなモンだがな」
「そう、なのか?」
 くつくつと笑う音。
「お前を抱いて、お前を抱いて、ガキが出来るまでお前に突っ込む。これを一月繰り返し。
変わり映えしないにも程があるというものよ」
 女の目がふと伏せられて、「──飽きたのか」
「残念だながなァ」返る言葉に瞬きする。
「生身の女は、まだ楽しみようがあるんでなあ」
「そうか」
 相槌は早い。「そんなに退屈なら、」そして。提案はごくさりげなかった。

106 :
「食事でも一緒に如何か。気は紛れるだろう」
「要らんな」
 間髪入れぬ。一考だにしない回答だった。
 女は手元の刀に視線を落とす。今度の「そうか」は小さなものだった。
「神は人間の食事を必要としないのだったな」
「詰まらん話よ。第一、酒がねえェのが話にならねえ」
「……酒?」
 女が顔を上げる。捨丸は、肉の削げたされこうべの顔で可能な限りの不平っ面にて女を
睨む。
「酒も無しに“もてなし”だァ? どこのガキだよ」釣瓶火にも似た目がじとりとした視線
を投げてくる。「しかも、お前は一人で空けてやがる。俺に呑ませる酒はないってか?」
「いや、あれは」
 女は。慌てているようであり──少し嬉しそうでもあった。
「酒が要るのだな。家の者に頼んで、夕餉につけて貰おう。貴方も来るといい」
 刀を手に早速立ち上がる女を、
「おい」
 捨丸が呼び止める。「お前、随分と楽しそうだなあ?」
 何か企んでいるのか。地べたと血の池を這いずって来たであろう男の目は疑り深く光って
いた。
 女とてその色が読めぬわけではないのだろうが、「──そうだな、」
「貴方の望むものが分かったのは、嬉しいな」
「何?」
「ん。言っていなかったが、」
 女の。鮮やかに紅い目が、真直ぐに男へと向けられる。
「私は貴様のことを出来得る限り全て知りたいのだよ」
 きらめく紅い目はそれはそれは、彼女の手にする刀に劣らず美しく。
 獲物の喉笛を狙う肉食獣か、恋い焦がれる乙女、或いはその両者の目だった。
 神たる大江ノ捨丸が“貴様”呼ばわりに反応しなかったのは女の言葉と意味するところ
を理解しようとしてしきれなかったからか、女の目に須臾の間とはいえ魅入られたか。
或いは、その両方か。
 どちらにせよ、昼の部はここで仕舞い。続きは夜に持ち越される運びとなった。
 高く澄んだ秋空を、トンビが力強く横切っていった。

 結界内での酒宴は本当にとり行われた。一人と一柱のささやかなものとはいえ、寝所の
襖を開けはなし庭が見えるように設え、イツ花こころづくしの肴を並べればそれなりに
格好がつく。

107 :
 主賓であるところの神は礼を述べるでもなくかなりの速度で手酌を重ね、対する女も
酒と肴を交互に口にするだけの、会話もロクにない席であろうとも、宴には違いない。
「……」
「ふふふふふふ」
「気色悪りいな」
「そうか? ん、そうか」
 “ロクにない”と“全くない”は同等ではなく、加えて“会話がない”と“喋らない”
も同義ではない。
 対話と相互理解が成り立っているかはともかく、場はそれなりに盛り上がっていた。
 女はにこにこにこにこ笑って捨丸を眺め、捨丸はまとわりつく紅い視線を鬱陶しげに
振り払いつつ杯を傾ける。女のやわらかな頬に赤みが差しているのが妙に腹立たしい。
 酒は申し分ない。
 京の復興に一区切りつき、幾許かの余裕が出てきた一族が用意した酒だ。神前に供える
に充分以上の代物だった。値も相応だろう。
 それを一杯一文の安酒と同じ扱いで腹に流し込んでゆく。正に酔うための呑みぶり、
酒師が見れば泣くか嘆くかするのではないか。
 無論。捨丸の側にも言い分はある。
 何しろ舌がない。舌がないせいでどんな美酒も味わえない。何しろ喉もない。喉がない
せいで酒精が食道を落ちる涼やかさも感じられない。天界にとて常にほろ酔い加減の神も
いるというのに何たる不公平か。捨丸を神に引き上げた“あの女”、実は恨み真髄なのでは
なかろうか。
 とはいえはらわたに流し込めば胃の腑を焼く快い熱は感じられるし、善い酒特有のふわり
とした酩酊も十二分にやってくる。
「ぷふふふふふ」
「……」
 同じ酒を舐めるように口にする女が、相対する捨丸へと笑いかける──というか意味も
なく笑っている。ほとんど呑んでいないくせに既に出来上がっているらしく上機嫌だ。
結わずに流した赤髪が華奢な肩と一緒に揺れる。
「……ケッ」
 むかっ腹の立つ眺めだった。
 ──生身の女が。
 ──捨丸の喪った肉を持つ女が。
「酌」
 ぐいと突き出した空杯を、女は従順に受け取る。その腕が何の躊躇いもなく捨丸の方へ
伸ばされるのを見て、また苛立った。
 ──捨丸の足を幾度となく叩き潰し、

108 :
 ──両の腕(かいな)を数え切れぬ程もぎとり、
 ──捨丸自身をも斬った一族の女が。
 
 そいつが手を伸ばせば縊りせる近さで呑気に酒をかっくらっている。“貴様のことを
出来得る限り全て知りたい”などとほざいてくる──今思い返せば“貴様”呼ばわり。
気に喰わない──、引き裂いて貫いて泣かせて鳴かせても、あの紅い目で捨丸を見ること
を止めない女が、捨丸の眼前で、無防備を晒している。それが、それがどうにも、
「あ」
 女の手元が狂う。ぱちゃん。零れた酒が深緑の僧衣に落ちて布の色を変えた。
 それでまた腹立たしいことに気づいてしまう。
 女は。大江ノ捨丸の間合いに入ってしまっていて。
 女は。大江ノ捨丸の懐に潜り込んでいた。
 蹴られた膳がけたたましい悲鳴と共にひっくり返る。肴がぶち撒けられて畳と女の膝を
汚す。
 しかし女は粗相を咎めなかった。何しろ口を塞がれていたもので。
 袷を掴んで口と口とを合わせる。接吻、ではないだろう。ふるりとした唇は女にしか
なく、女の濡れた口腔をまさぐり酒の残り香を味わう舌もない。
「痛たた」
 剥き出しの歯をぶつけられ唇を切った女が、指先で傷を確かめている。薄く滲むその血
の味も、仕掛けた側には伝わらない。
 切り傷を舐める舌先は、血の色を透かして赤かった。
「──濡らしてしまったな」
 女の視線が何処に向いているのかと思ったら、変色した僧衣の袖を。袖から突き出る骨
ばかりの手を見ていた。
 酒に濡れた手を女の唇に押しつけたのは如何なる情動に駆られてか。語るものは誰一人
いない。
 無言のまま視線は絡み。
「──ん」
 冷たく濡れた硬い骨に、熱く濡れたやわらかい肉が絡む。
 ぺちゃぺちゃ舌を鳴らして男をしゃぶる女の目は、くららでも掛かっているのかと疑う
程に茫としている。
 女は、肉削げ枯れ枝めいて細い指を躊躇いなく横咥えにし、舌と唇とでねぶる。指先
から始まる愛撫は付け根にまで至った。指を二本も含む口内では舌が蠢き、指の股をつつき
回す。咥えられた指を少しばかり押し込むと「げえ」と酷い声がして吐き出されたが、酒
の代わりに唾液がとろとろ糸を引くのはいい眺めで、女の白い喉がひくつく様は興奮を
煽って釣りが来た。

109 :
 女が。上目遣いに男を見る。
 絶妙の角度は紅い瞳の鋭さを隠し、頼りなげな色気を醸していた。
 そうなればやることはひとつ。
 女の頭がわし掴まれ体勢が崩れる。肘と膝をつき四つん這いになった女にはしかし文句
もつけられない。
 女の目の前に。鼻先に。はだけた衣から覗く半ば勃ちかけた男根があった。歪にねじくれ
崩れた肉の塊を、女はまじまじと見つめる。
「ああ、うん」
 女の吐息がかかる。ぴくりと震える肉を濡れた呼吸が温める。「初めて見た、気がする」
 ここ毎晩のように胎を抉り、先日なぞ乳房を汚しまでした肉だというのに。女は不思議
そうな面持ちでにおいを嗅ぐ。途端、端整な眉がしかめられた。骸めいて爛れた肉は、
“本物”ほどではなくとも異臭を放っている。今までは伽羅と汗のにおいとで隠れていた
のだろう。
 その先端を。
 女は、男の望む通り、口に含む。亀頭をまるごと咥え張り出した部位とその直下を唇で
もって扱き、舌先を鈴口を起点に激しく動かす。唾液の跳ねるくぐもった水音が立つ。
 命じられるまでもなかった。連夜の交情は、女に相手の機微を読む程度の洞察力を与えて
いる。
「……っ、は……」
 硬度を増す男根を吐き出し、女は息をつく。口の端から涎ともその他体液ともつかぬ
粘液が垂れ落ちる。
 唯の小休止だ。その証拠に、女は一、二度呼吸を整えただけで再度咥える。今回は先端
を越えて半ば近くまでも呑み込んだ。
 舌を唾液ごと絡め頬まで使って締める。口の中で膨れあがってゆく男根に、整った顔が
歪む。大きく開けた顎は歯を立てまいと震えていた。頭をぐいと押しつけ深く抉れば、女
は肩を跳ねさせ不器用に喘ぐ。細めた目からは涙が零れる。それでも女は奉仕を続ける。
瘤と瘡蓋とぶよぶよした肉とも呼べない肉塊を浮かせる剛直を優しさすら感じさせる力で
包む。
 不意に抜かれたとき。どろどろに蕩かされたソレは不満を訴え破裂する寸前だった。
「──くっ、ふ」
 押さえつけ咥え込ませようとした手を、女の手がするりと払う。
 女は大江ノ捨丸を二度した剣士である──そのことを思い出させる挙措だった。
 顎から喉へと伝う雫もそのままに、女は捨丸を見上げ。
 微笑む。
 今度は油断しなかった。もがく女の頭を押さえ口へと突き入れる。開き方が足りなかった
せいか歯が爛れた肉を些か削ってしまうが、新たに露出した部分へと触れるぬめりが快楽を
生む。

110 :
 乱れる髪を掴んで固定して、喉の奥へ叩きつける。女の頭が不明瞭な悲鳴と共に揺れる。
細い背中が仰け反り痙攣する。男根でいっぱいの中は狭く濡れて絡む。やわらかい奥から
硬い上顎の肉にかけてを行き来させ、波打つ上壁に擦りつける。
「んっ?! っぐ、ん、ん──!」
 膨れあがる気配を直に味わい悶える女に、放った。
 吐精の毎に咥えたままの女の身体が引き攣れる。無意識にだろう、外へと送り出すよう
に蠢く口内からは透明な唾液と濁った精液が混ざり洩れ落ちた。
「っか、ふ、あ──」
 ようやっと解放され咳込む女。顔から胸元からぐちゃぐちゃに汚れ酷い有様だった。
「いい格好だなあ?」
 捨丸の言葉に、女は虚ろに目線を上げ、
「ん」
 見せつけるように。口を開け。こびりついた体液を晒し。
 喉を鳴らして飲み下した。
「──」
「──」
 何が起こったのか。女の気持ち好いほどに紅い目を前に大江ノ捨丸は人の身であれば顎
を落としたであろう驚愕に固まり、
「ふ、ふふっ、ぷふふふふふ!」
 笑いだす女を名状しがたいものを見る心地で眺める。
「そうか、これは、貴様でも、驚くか、っぷ、なるほど、なるほど!」
 ……よく分からないが馬鹿にされている気がした。とりあえず罵声のひとつも返して
やろうと女の肩を掴んだところで、
「失礼」
「──お前何しやがるッ?!」
 僧衣を手拭い代わりに使われそこら辺が全部ぶっとぶ。神の着衣は無残にも涎と精液で
べったべたになった。
「なに、必要なら明日洗濯してやるさ」
「なァに上から抜かしてやがる!」
「それで」
 身を起こした女は、捨丸を真直ぐに見る。
 ──この目だ。
「どうだった」
 ──この、迷いのない目が、気に喰わない。
 罵倒。侮辱。嘲弄。拒絶。どれが返答として相応しいだろうと考えどれもしっくりこない
ことに苛立っていると、
「……」
「……なんだァ」

111 :
 女が不意に真剣な表情を作る。
「大江ノ捨丸」
 驚く。女がこの神の名を呼んだのは、もしかしたら初めてのことかもしれなかった。
 唯の名前が、こんなにも快く響くとは。
 女は捨丸の袖に縋り──縋り、というか捕まえ? ──「すまん。必ず洗濯する」
 蒼白で切羽詰まった表情と痙攣する背の意味を知る頃には、全てが手遅れだった。
 ──とりあえず。描写するのも憚られる惨状が繰り広げられた、とだけ記す。

 よく晴れた日だった。洗濯日和とはこういう天気を指すのだろう。
 秋空を二羽のトンビが飛んでゆく。つがいか、きょうだいだろうか。仲睦まじいことだ。
「いい日だな」
 赤毛の女は目を眇め、物干し竿に翻る深緑の衣を、ぱん、と叩いた。
 達成感に浸る背に、声が掛けられる。
「おい、そこのゲロ女」
「どうした、骨と腐肉と臓物男」
 しばしの沈黙。
「……猫を被るにも程があるだろうよ」
「皮を剥いだのは貴方だろう」
「これだからオンナは恐いのよ」大江ノ捨丸は小馬鹿にするように笑い、「それで」
「カミサマに反吐を引っ掛けた気分はどうだァ?」
「ふむ」
 女は真剣な面持ちで考え、
「腹の中身まで見せ合った仲、か……話に聞く“古女房”になった心地だ。悪くない」
 割と本気で投げつけられた石ツブテを、ひょいと頭を動かし避ける。
「全く……おかしな女よ!」
 ぎりぎりと歯を軋らせる気配に、女は「諦めろ」と言い放ち。
「交神の儀が終わるまで付き合っていかねばならんのだ。貴方も、私もな。
 とりあえず、乾くまでそこから動かぬことを勧めるぞ。そうしていると貴様、ホネ武者
と区別がつかんしな?」
 罵声と前後して術が飛んでくる気配を察知し、女はいち早く退避する。
 涼やかな笑い声が快晴の空に響き渡った。

 交神の儀がもう数日で折り返しに入る。そんな日だった。

『お身体の方は、大丈夫ですか?』
 結界向こうからの心配げな声に、女は「大丈夫だ」鷹揚に答える。襖越しなので相手の
姿は見えない。

112 :
『お食事のあと、日に三度。ちゃんと忘れず飲んでますか?』
「うん。食事のあと、日に三度。それから、夜。疲れたときにも。忘れていないよ」
『……ホンットの、ホントウに、ですね?』
「うん。むしろ調子はいいくらいだ。房中術で精力回復というのはあながち嘘じゃないな
アイタッ」
 襖の隙間から着替えを投げつけられて、女は鼻頭をさする。
『全く。マッ、神様っていっても男と女。一緒にいれば情も生まれるし、やるコトやって
りゃ仲良くなれるってモンですよ』
「何時もながらイツ花の言うことは参考になるな。──そういうわけだ。私は元気だから、
心配しないで欲しい。皆にもそう伝えてくれ」
 女はやわらかな口調で、イツ花の隣で息を潜める親族の名を呼ぶ。突然のことに動揺
する気配に、女は口許を綻ばせた。来てはならない場所にいることについては不問とする。
「今月の訓練は当主につけて頂いているのか?」
『は……はい……』
「当主は君と同じく舞いをよくする。しっかり学ぶように」
『はい、先生』
 女は優しげに微笑む。女と、この実戦にすら出ていない若い親族は血筋的には遠く職業
も剣士と踊り屋とで異なっているのだが、家に来たばかりの親族に最初に稽古をつけたのが
女だったこともあり、彼女を先生と慕って懐いていた。
『先生』
 一族の中で、女と大江ノ捨丸との交神に最後まで反対したのもこの親族だった。
「どうした」
『──本当に、大事ないのですね』
「──」女の手が、白い着物の下の腹と、傍らの刀の間で迷う。「大丈夫。何も問題ない」
『……良かった。先生が仰るなら、安心できます』
「さ。もう、下がりなさい。本当は来てはいけないのだから」
『はい。ごめんなさい、先生』
「当主に怒られたら、ちゃんと謝るのだよ」
『う……はい……』
 やがて。廊下の向こうに足音は消えて。
 女はそっと息を吐く。
「大丈夫、大丈夫、か」
 手が自らの腹をさする。帯と腰巻とに守られた、何ものも孕むことのない胎を。
「──大丈夫、のはずだ」
 一抹の不安と寂寥を含む声を聞く者は、誰ひとりとして居なかった。

113 :
>>99
激しくGJです
女剣士ちゃんのキャラが好みすぎる…

114 :
>>99
GJGJ!
いいねぇ、お互い喰らい合うような激しさ!でも漂う切なさ!!!

115 :
連投で申し訳ないが、>>100-112の続き置いてきます
・女剣士と大江ノ捨丸の話。エロは7くらいから
・前回に輪をかけて登場人物の頭がアレなことになってます。特に女剣士
・たぶん純愛

116 :
 呪われし一族の娘と大江ノ捨丸との交神の儀は続いていた。
 夜を数える毎に女の身体は慣れてゆく。その肉は異形の男を受け入れ包み精を吐かせる
に適したものへと変わってゆく。
 日を重ねる毎に、神は女に馴れてゆく。滑らかな肌に手を這わす機会が多くなる。酒を
酌み交わすようになる。紅い瞳に見つめられるのが当たり前になる。
 褥を共にする毎に、一人と一柱は成れてゆく。二人交わることが“日常”になる。
 そこまでなっても。
 この交神の儀は、まだ、子を生そうとはしていない。

 敷布の上、女はぼんやりと身を横たえていた。薄い夜着は乱れ、割れた裾からは力なく
脚が伸びている。淡く色づく内股には濁った体液がいく筋もの糸を引いていた。濡れている
のは脚だけでなく、脚の先、着物に隠れた秘め所も一緒だ。むしろ最も蜜の発生源は其処
だろう。痺れてひくつく内側は、からっぽになった今でも貫くもののカタチを残している。
 女は重い目蓋を上げ、寝転がったまま頭を巡らし、
「……ん。どうした」
 つい先刻まで番っていた相手が隣にいることへ不審の声を洩らす。
 捨丸は剥き出しの歯を鳴らし、馬鹿にしたように答える。
「見てたのよ」
「らしいな」
「……お前がへばって涎垂らして転がるのを、見物してたのよ」
「珍しいな」
「……」
「……」
「……ケッ。張り合いのない」
 吐き捨てる言葉に、すまん、と小さな呟きが返る。目は常と同じく捨丸に向いてはいた
が、いまいち力がない。
 捨丸としては、そう手酷く扱った覚えはない。
 硬い骨の手で胸乳を捏ね乳首を千切れない程度にひねりあげるのも、喘ぎ上下するソコ
に男根を擦りつけてやわらかさを愉しむのも、膨張しきった男根を潤みの足りない部位に
無理矢理突き入れて動かすのも、滲み出る愛液と自らの流す体液とを潤滑油に狭道を掻き
回すのも、熱を帯びて締めつけてくる襞を巻き込み奥まで呑み込ませて尿道を駆け上がる
熱い体液をブチ撒けて仰け反る華奢な背中を押さえつけるのも、何度も何度も繰り返された
ことだった。
 女は、ふ、と息を吐き、枕元の徳利を手にする。気怠げな手つきで盃に中身を移すと
一気に呷った。
「ん。もう大丈夫だ」
 捨丸としては別に心配なぞこれっぽっちもしていなかったのだが、女の頬に赤みが戻って
くるのを見ると、そろそろ場を離れる気になった。
「壊れるんじゃねえぞ。まだ、終わっちゃいないんだからなァ」

117 :
「分かっているさ」
 女は枕に顔を押しつけぷらぷら手を振る。「おやすみ」
「また、明日」
 囁くような別れの挨拶が虚空に消える。
 言うだけ言って姿を消した薄情者に、女は少しだけ笑い。目を閉じた。

 次の日女は布団の中冷たくなっていた──ということも特になく、何時もより少しばかり
遅く起きて、少しばかり朝餉を残して、少しばかり多めに徳利の中身を飲んだだけで常通り
に庭に出て剣の鍛錬を始めた。
 一通りの型をこなす内に、女の身体が温まってゆく。
 数多の鬼を斬ってきた刃が翻り、鞘に戻される。完成された型は神楽舞のように美しい。
 額に汗を浮かべ、素裸の足裏を土に汚す女が、ふと横に視線を流す。
 縁側。秋の穏やかな陽から身を隠す位置に、異形の影はあった。豪奢な染めの頭巾に
深緑の僧衣を身につける骸骨、という、御伽草子に出てくる強欲坊主の成れの果てそのもの
な容姿の神に、女は不敬なくらい明るく声をかけた。
「退屈か」
「お前の知ったことかよ」
 カケラほどの愛想もない返答は、しかし確かに女に向けてのものだった。女はほんのり
笑んだかと思うと、大拵えの鞘で、ぽん、と自分の肩を叩き、
「宜しければ、神よ。一手ご教授願いたい」
 またまたわけの分からないことを言ってきた。
 そんな。
 馬鹿な誘いに乗ったということは、己れも相当に“見るだけ”に飽いていたのだろう。
捨丸はそんな風に考える。好奇心は猫をすというが、退屈は神をもす。
 女は何処からか木刀を二本持ってきて一本を捨丸へと渡す。真剣ほどではなくとも、樫
で拵えた木刀はしっくりと重い。骨ばかりの指で握ると、やはり遠い記憶──まだ、人で
あった頃。肉の身を持っていた頃とは異なる感触が伝わってきた。
 女が。捨丸を呼ぶ。
「こちらも」
 放り渡されたのは手拭いを裂いたと思しき布だった。木刀の柄に巻きつけ、その上から
握る。大分マシな心地になった。
 同じく木刀を構え相対する女が、微かに口元を綻ばせる。
 ──三度目、と思う。
 一度目は一年以上も前。他の人間に守られるようにして、必で剣を振るう鎧姿。
 二度目はほんの数ヶ月前。巨大な鬼にも怯むことなく傲然と立ち、他の人間を指揮し
叱咤し轟々たる炎を操る姿。その手には刀があった。捨丸がした剣士の刀。捨丸をす
剣士の刀。

118 :
 そして、三度目。
 分厚い鎧ではなく袴姿の、鬼斬りの剣ではなく木刀を持つ、気ではなく清廉な闘気を
まとわせた女が。目の前にいる。
 変わらないのは唯ひとつ。
 捨丸を射抜く、炎よりも、流した血よりも紅い瞳だけだ。
 女の紅唇が囁く。
「──いざ」
 ──“始め”、の合図。
 女の技量は知れていた。
 大江ノ捨丸が白骨城の主としてかの地に縛られていた、最後の月。捨丸の足を奥義や術
を使うでもなく淡々と斬り捨て。右と左の腕(かいな)からの攻撃を顔色ひとつ変えずに
捌き、返す刀で叩き伏せたのは。誰あろうこの女だったのだから。
 女の剣には容赦がない。
 神相手、情交の相手だというのに躊躇いがない。
 気は無論ないが、“す気で打つわけではない”という程度でしか、ない。
 捨丸は。案外円滑に動く自身を全力で行使し、女と剣を合わせる。
 心地好い衝撃。高揚。紅い目。ヒトではないような、血の色に近し過ぎる、色。
 女は。強かった。
 数ヶ月前。大江ノ捨丸を一撃で屠るほどに強かった。
 だから。捨丸が女の須臾の隙をついて小手打ちを放ったとき──確かに、例えばヒトの
形をしていない鬼を、例えば痛みを感じない鬼を相手取って来た女には、馴染みの薄い技
だったかもしれない。鬼になる前、時の帝に命ぜられ鬼を斬る以前には人間を斬ってきた
捨丸だからこその技、と言えたかもしれない。その差からの結果、と言えるかも知れない。
けれど──、
 捨丸の一撃が、女の手首を正確に捉え、砕いた瞬間。
 驚愕に。動揺に。流れてもいない血が引くのを一瞬だけ感じた。

「……ん」
 剣ダコだらけの指がゆっくりと動く。親指から始まり、小指まで順々に。最後に手首を
くるくる回し、縁側に腰を下ろす女は「うん」と頷いた。
「“円子”でなく“お雫”でも足りたのだが、ありがとう。助かった」
「生憎と、俺の使える術には限りがあってなァ。何処ぞの神肝煎りの一族とは違うのよ」
 皮肉げな口調ではあったが、女の砕けた手首を治したのは捨丸だ。砕いたのも同じ人間
もとい神とはいえ破格の気遣いと言っていいだろう。

119 :
「ああ、駄目だな」
 女はやや落ち込んだ調子で呟く。「来ると、分かっていたのに」
「歳を取ると身体が気持ちについていかなくなる。出来るつもりのことが出来なくなる。
悲しいことだ」
「悟ったようなこと、」
 言いやがって、とまで口にしかけて。捨丸は女が短命の一族であったことを思い出す。
外見は妙齢の娘でも、二年足らずでんでしまう人と神との“合いの子”なのだ。数ヶ月。
たったそれっぽっちの時間が、女を“”に近づける。
 押し黙る捨丸に、女は愛らしく小首を傾げてみせて、
「膝枕でもしてくれるのか」
「なんでだよ」
「詫びに」
「するかよ」
「そうか」
 言って、その目を捨丸から秋空へと移す。空は青い。高い。
「子はな、丈夫な子がいい」
 この女の言葉は偶によくある話だが、唐突だ。
「鬼に負けない、病にかからない、強い子がいいな──いや」
 五体満足で生まれてきて──。
 鬼から我が身と家族を守れる程度に、強いのであれば──。
「それでもう充分だな」
 鬼の下りさえ除けば、世の母親とひとつも変わらぬ物言いだった。
「どんなガキでもか」
「うん。健やかに、出来れば長生きして、ちょっとでも幸せに生きてくれたなら、嬉しい」
 やわらかくて。優しい口ぶりだった。
「……ケッ」
 ──どうせ、と、思う。
 どうせ女も女の一族もころころ生まれてころころんでゆくのに、
 それなのに。白い手首から目を離せないのは、何故だったのか。
「“どんなガキでも”ねェ」捨丸は吐き出すように笑う。笑って、「ンなこと言ってよォ。
ガキに、角でも生えてたら、どうするつもりだァ?」
 捨丸の問いに、女は目を瞬かせ、
「角、か」
 にこりと。笑う。
「いいな。妹分が喜ぶ」
 本心からの笑顔だった。
「妹分──ああ、これはおかしいな。何しろ私はあの子の親よりも年上だから──まあ、
とにかく。家族に、角のある子がいてな。角はその子ひとりだから、私の子に角があったら
きっと喜んでくれる。“お揃い!”と、な」
 女の笑みが、ほんの少し、苦笑に。恥ずかしがるものへと傾く。

120 :
「下らない、と思うだろうが。一族の中で、赤髪紅目は、私だけで。角があるのも、その子
だけで。だから“ひとりだけ”の寂しさは分かっているつもりだ。不幸ではなかったつもり
だけれど、“ひとりだけ”は、さみしかったから──角か、うん、悪くない」
 何故か。女の表情を見た刹那。
 大江ノ捨丸は、目の前の女の衿元引っ掴んで喚き散らし。その呑気なツラを窒息する
まで自分の胸に押しつけてやって。その、鬼であった時分の記憶にあるよりも薄く頼りない
身体を、折れるまで両の腕で締めてやりたいと。そう、思った。
 思っただけだ。
 行動に移すより先に、女が身体をぶるりと震わせたから。
「冷えてきたな」
 外気の冷たさというより内側からの悪寒に震える様子だったくせに、女はそんなことを
呟いた。
「悪いが、少し休む」
 答えを待たず、愛刀を片手に立ち上がる。その影は薄い。秋の日は、弱いから。「──
今夜は、」
「駄目かもしれない。済まない」
 女は呟く。
「──また、明日」

 女は。それから二日、起きてこなかった。

 女が目を覚ますと、部屋の中はもう真っ暗だった。障子越しの月明かりだけが仄かに
室内を照らす。
 ずきずき疼くこめかみを押さえ、女は布団から上体を起こす。喉が酷く渇いた。枕元に
目を凝らすと、何時置いていったのか水差しと素焼きの椀が並べてある。おそらくはイツ花
だろう。小さな水差しを取り、直に口をつけて、
「──ッ?! っえ、けほ──っ!」
 むせて、吐き出す。
 唯の水が押さえる指の間からぼたぼたと滴る。渇ききって痙攣する喉を必で押さえ、
女は浅い呼吸を繰り返す。
 ゆっくり。ゆっくりと、息を整える。
「大丈夫」
 嗄れた声が乾いた唇から洩れる。もう一度、繰り返される。「大丈夫」
 女は、今度は慎重に、水差しの水を口に含む。噛み砕くように舌に口内に馴染ませて、
静かに呑み込む。手間を掛けた甲斐あって、水は大人しく胃の腑に落ちて全身へと沁み
渡っていった。

121 :
 そんなこんなで身体を落ち着かせ、女はようやっと椀と匙を手にする。フタを取ると、
中には葛湯が入っていた。女は嬉しげに目を細める。ほんのり甘いとろとろの葛湯は女の
好物だ。
 ゆっくり。ゆっくり。からっぽの胃を宥めすかしながら流し入れる。鈍い吐き気は空腹
が満たされるにつれて消えた。
 最後に。何時も通り、徳利を持って。何時も通り、盃に中身をあけて苦みをなるべく舌
に乗せないよう一気に呷る。漢方医に処方された薬湯が身体を巡りじんわりとした熱を
もたらす。
 女はふと息を吐き、食器を部屋の隅へと片付けた。それから口をかるく漱ぎ、髪に櫛を
通し、夜着の袂を整えて。
「お待たせした。今宵も交神の儀を御願い奉る」
 薄暗がりへと、凛とした声で宣言した。
 沈黙が返答であろうとも、女は其処に神がいると気配で悟っていた。だからこそ猫の目
を持たぬ女でも、確信を持って暗闇を、闇に沈む男を見据えることが出来るのだ。
「…………たわけ者がよ」
 長い沈黙ののち。甲高く軋るような罵倒が、女に届いた。
「戯けてはいない。交神の儀は、子を成すまで続けねばならん」
 最初の夜。“お前は逃げられない”と、神は言った。
 幾度目かの昼。“自分たちは、終わりまで付き合わねばならない”と、女は言った。
 つまり、そういうことだ。
 け、と吐き捨てる声が聞こえる。
「黙れよ、反吐女。最中に戻されちゃあたまったモンじゃねえのよ」
「あれは酒が入っていたからだ。今は酒精ひとしずくも入れていない。その証拠に、あれ
から何度か口取りをしたが一度も粗相しなかっただろう」──それに。女は続ける。「今
は戻すものもない」
 なれど心配ならば口取りは避けよう、という親切心からの申し出に、何故か手酷い面罵
が返る。女にはわけが分からない。
「そんな、」
 舌も声帯も失った神から、ざらけた声が吐き出される。
「そんな弱った身体の女を抱いたところで愉しめるものかよ。丸太にゃあ、興味はねえよ」
 女は目を見張り。きゅ、と夜着の裾を握りしめ、
「出来る」反論する。
「出来ねえよ」否定が返る。
「出来る」
「出来ねえ」
「出来るから見ていろ」
「出来──何だって?」

122 :
 布団の上正座していた女が足を崩す。足を揃えての横座り、という程度の崩しである
にも関わらず、妙なしどけなさが生まれる。
「出来ると証明するから、見ていろ」
 女は自らの胸元に両手を遣り──震えているのに気づいて内心首を傾げる。矢張り熱が
あるのだろうか。これからに支障がなければいいのだけれど──そっと。袷をはだける。
 白い喉元と鎖骨が露わになり。それ以上開かず、女は今度こそ実際に首を傾げる。何故
だろう──落ち着いて考えればどうということはない。帯を締めているせいではだけるにも
限界があっただけだ。
 女は帯を緩める。中途半端に脱げた袖が引っ掛かり、我ながら手順が悪いと苦笑する。
したつもりになる。
 とにかく。当初の目的通り露わになった胸乳を、冷えた手でまさぐる。
「……」
 そうして、困る。
 あまり気持ち好くない。
 柔らかなかたまりを下から掴んで持ち上げたり揉んでみたり軽く揺らしてみたり寄せて
あげてみたりもするのだが、全然ちっとも興奮してこない。
 自らの乳房をふにふに弄びながら、女は脳味噌総動員して打開策を探す。
 ──大江ノ捨丸との同衾では此処でもそれなりに“感じて”いたはずなのだが。何が
悪いのだろう。何が足りないのだろう。確か、かの神は、こうして、
「ん……ッ」
 記憶をなぞり、乳首を抓む。ぴりりと痛むくらい、強く。ついでに爪を立て白い肌と
淡く色づく部分のあわいを引っ掻く。指を忙しなく動かしながら、もう一度乳房を持ち
上げる。気持ち好いかはまだ不明だが、洩れる吐息には熱がこもっていた。
 そっと。正面の薄闇を透かし見る。
 僧形の神の姿は、見えない。そこにいて、其方からは女の姿も見えているはずなのに、
気配が動かない。もしやまた“光無し”かと思いこっそり“仙酔酒”を唱えてみたが、
霞んだ視界は回復しなかった。
 仕方がない。
 続けるしかない。
 乳房に置く手を左手のみにし、右手を、ゆるゆると。着物の裾を割り、脚の付け根へと
這わせる。
 さりりとした下の毛の感触があって。「──、っ、あ」自分でも狼狽えるくらいに熱い
肉へと辿り着く。
 零れるほど、滑らかに男を受け入れるに足るほど、とまではいかずとも、其処は静かに
潤んでいた。おそるおそる秘裂に合わせて指を滑らせると、少しずつ熱が高まる。下腹の
奥ではもどかしい疼きが生まれていた。
 震える腿と腿とに挟まれるせいで、指は入り口以上には進めない。女はしばし逡巡し。

123 :
「ん、っと」片膝を立てる。夜着の裾がめくれ形の良い足首が、引き締まったふくらはぎ
が、震える膝頭が透き通るような脂をのせた内腿が覗け。その先も。手に覆われた、秘す
べき場所までをも、晒す。
 女は。荒くなる呼吸に、戸惑っていた。
 一人遊びの経験も、ないではない。しかし、こんな風に乱れるものだったろうか。こんな
風に色めいた声が洩れるものだったろうか。こんな風に、
「ひ、う」
 自分の身体は何時から指をこんなにも容易く呑み込むようになったのだろう?
 浅い場所を掻き回しながら、女は身体を震わせる。まだ貫かれると痛む場所だ。そこを
探る。粘る音が聞こえる。蜜を内壁に擦りつける。合わせて乳房を強く掴む。痺れるような
甘い痛みが走った。上下どちらかからなのか。分からない。快楽が腹の奥で混ざり合って
熱を持つ。そこまで貫けと騒いでいる。女は指で入り口を、入り口だけを嬲る。届かない、
指ではどうやったって届かない、自分ひとりでは最後までは為せない。
 眼前に。されこうべがあった。
 快楽に霞んでいた女の目が、焦点を結ぶ。
 それこそ吐息がかかるくらいの近場に、交神相手の姿があった。
 発情したおんなの匂いを嗅ぎとれるくらいの近さで、大江ノ捨丸は告げた。
「続けなァ」
 女の身体が強張る。ほぼ全身、熱く蜜を零す秘所と秘所に這わせる指以外、動けなくなる。
「あ、あ──」
 恥ずかしい。いやらしい。一人快楽に耽るこの身体、厭らしい。掻き回す指が止まらない。
気持ち好いところを見つけてしまったのだ。体液に塗れた指を何度も何度も行き来させる。
恥ずかしい。見られたくない。胎がひくつくのが分かる。知っている。終わりの。絶頂の
前触れだ。一人で。自分、ひとりで。
 目を閉じる。
 直ぐに開ける。
 切なげな息を洩らし、目に涙を溜めて、ぐちゃぐちゃ音立て自分で自分を慰めて。女は
捨丸を、見る。
 女は。浅ましい自分を見られなくなかった。浅ましい自分を見る男を見たくなかった。
 女は。浅ましい自分を見せなければならなかった。こんなにも浅ましい自分なのだから
交神の儀は十二分に執り行えるのだと、男に示さなければならなかった。
 ──彼女は。
 見たかった。
 昇り詰める自分を、畜生にも劣る痴態を見せてまで求める自分を、かの神が、どう見る
のか。

124 :
 かの神の、全てが。
 女は知りたかった。
「──ッ、っく、う、ん、あ、あ──!」
 絶頂の瞬間も。女はずっと、男を見ていた。

 覆い被さる男に、女は微笑む。
「ほら、な。大丈夫、だろう?」
 無言で押し入ってくる剛直は、一度達してからの挿入のせいか、そのかたちも質量も常
よりはっきりと伝わる。
 己が身体を裂く熱に、女は大きく喘ぎ──「──どう、した」浅い部分で止まるのに
疑問を呈する。
「……」
「──っ、っく、あ」
 その位置で腰を動かされ、女の顔が痛みに歪む。女の入り口は弱く、痛みばかりが先行
する。
 止まる。
 痛めつけるのが目的かと思ったので、これは意外だった。
「どこだよ」
 ぼそっとした囁きも、予測の範囲外だった。
「どこ、とは」
「……お前がさっきみたいに犬か猫みたいに騒ぐのはどこか、と聞いているのよ」
 頬が熱くなる。これは大した辱めであった。しかし女は気丈にも唇を湿らせ、答える。
「あ、うん、その、な、そこじゃない、んだ」
 声は擦れて裏返り吃音も酷いが、両者の距離はほぼ零なので意志の疎通に問題はなかった。
「嘘つけ」
「つつッ?! いや、本当に」
 傷つきやすい場所を拡げられて、女は涙目になって捨丸に言い募る。
「そこ、指、だから、気持ち好くてっ。貴様の、だと、おっきい、し、いた、痛たたたッ!
 動くな頼むから動くなっ!」
 べしべし引っぱたいて動くのを止めさせ、女はやっと一息つく。腹の中、先端を埋めた
ものが、熱い。
 息を吸う。吐く。胎がつられて前後する。もっと深く呑み込もうとする。
 女はこれ以上ないほどの羞恥に頬を染め。
「……貴様の、だったら、もっと、……お、奥、の、上の、方が、ちょっと気持ち好──」
 一気に貫き“好いところ”を探ってくる感触に、声にならない悲鳴を上げた。
 骨の肩にしがみつく。「あ、あ、やだ、やだ」快楽の高まりに殆ど怯えたようになる。
相手の吐精に無理矢理引きずられるものではなく、愛撫めいた、女を“感じさせる”動き
に反応してのものだった。

125 :
「あ、あ、──っ、あ──!」
 咥え込んだ身体が大きく跳ねる。剛直は吐き出していない。女だけが達した。
 弱いところがとうとう見つけられたのだと。女は震えながら思い知る。
 これからどうなるか。決まっている。分かっている。
 ゆっくりと引かれる感触。体液に濡れた先端が僅かに移動し、止まり、──先と同じ
場所を抉られて、女は先よりも激しく悶える。
 これが続くのだ。捨丸が飽きるまで。女が限界を迎えるまで。
 出来れば、と、女は思う。
 抱く男が精を放つまで、身体も意識も保ってくれればいい、と。
 ──女は。大江ノ捨丸の全部を、知りたいので。

 襖を開けて欲しい、と。女は頼んだ。
「自分で開けろよ」
 捨丸は一度はそう言い捨てたものの、交情の相手が陸に打ち上げられた魚めいてぐったり
しているのを見、流石に骨を折ってやる。
「月、綺麗だな」
 夜空に浮かぶ秋の月を眺め、女はぽつりと呟いた。
「風流なことよ」
「別にそういうわけでも──そうか。長く、共寝していたと思ったのに。月は、まだ、
あんなところにあるのだな」
 中天にも昇らぬ月を見上げ、女は「短いな」とだけ言う。紅い目が夜を映して光って
いた。
「なあ」
「何だよ」
「昨日か、一昨日か。“子はどんな子でもいい”と言ったけれど」女の言葉は何時だって
唐突で。時に、捨丸の何処かを揺らすことがある。「──叶うなら。赤毛でも、赤眼でも
ない方がいいな」
 赤髪紅目の女はぼんやり月を見上げて、
「ひとりでも、不幸ではないけれど。ひとりだと、寂しいから──皆と同じ髪の色、目の
色が、いいな」
 ひとりごとめいて囁く。
「私はもう余り長くは生きられないから」
 欠け月が仲秋の空に浮かぶ。
 交神の儀が始まって、月の満ち欠けは一巡りしようとしていた。

126 :
うおおまさかまだ続きがあるのか…!?
ニヤニヤしすぎて寿命が縮む

127 :
GJ!
強いけど脆いところもあって閨では可愛らしい女剣士のキャラ好きだわー

128 :
静かな冬の森に、月が昇る。
冴え冴えとした銀の光が降り注ぎ、暗い森の中にいっそう深い影が落とされる。
この神域を統べる狼神・十六夜伏丸はねぐらの中でぴくりと鼻先を動かした。
澄んだ冬の大気に白い呼気が溶ける。
かすかな懐かしい匂いがこちらへ向かっているのを感じ、伏丸はまんじりともせず、来訪者を待っていた。
やがて訪れたのは、鬱蒼とした森の景色には場違いな美しく着飾った女だった。
それは弓使いの着る衣服だが、女の繊手には弓も矢筒もなく、帽子には色鮮やかな飾り布が垂らされ、
単衣には一面に花の刺繍が施されてまるで花嫁衣装のようだ。
季節外れの花のような華美な盛装に負けぬ、整った顔立ちの中で何よりも目を引くのはその切れ長の眼だった。
「朔夜」
伏丸の口から出たその声を他の者が聞けば驚いたに違いない。
直立した狼のような恐ろしげな容貌からは想像もつかない、低く静かな、
恋人の名を呼ぶような優しい熱の籠もった声だった。
「お久し振りです、伏丸様」
朔夜と呼ばれた女は、かつて、といっても人でいう数ヶ月前に『交神の儀』によって
十六夜伏丸との間に一子を設けた女だった。
永劫の時を生きる神の身からすれば百年の月日も一瞬のうちに過ぎ去るが、朔夜が再び
自分の元に来ると知ってから今まで、伏丸はこれほど時が経つのを待ち遠しく感じた事はなかった。
最後に見た時と同じく朔夜は美しく、その匂いも変わっていなかった。
伊吹の宮静という女神を母に持つ朔夜は甘い春の匂いがして、その匂いにあてられたのか
朔夜を一目見た途端、己でも分からないほど情欲を持て余してしまい、血のたぎりを鎮めるのに苦労したものだった。
……ずっと昔、伏丸がまだ人界にいた頃、住んでいた山の近くの村から生け贄を差し出された事があった。
喰うつもりなどなく、まして手籠めにしようなど思ってもいなかった伏丸は丁重に追い返そうとしたが、
生け贄の娘は伏丸の姿を見て物も言えないほど怯えていた。
結局、人里に返したその娘がどうなったかは知らないが、自分のもとに交神の申し出が来た時、
伏丸はその事を思い出してやや気が重かった。
今更人間と関わり合いになるのも面倒だし、まして若い娘と交わるなど相手の方も嫌がるだろうと思っていた。
それなのに、一目見ただけでこの朔夜という女の全てが欲しくてたまらなくなった。
まるで本能がつがいとなる相手を求めるように。
朔夜が一族の血を絶やさぬために、義務感だけで伏丸のもとに寄越されたならいくら取り繕うとも
嘘の匂いで分かっただろうが、朔夜は恐れもせず伏丸を受け入れた。
濃密な一時が過ぎ、春の匂いに包まれながら、伏丸は夢の中にいる心地だった。
『お前は……俺を怖がらないんだな』
『どうして怖がる事がございますか?』
『取って食われるとは思わなかったのか』
『伏丸様は鬼ではございません、人を食べるなどなさるはずがありません』
そう言う朔夜の温もりに、伏丸の中でずっとわだかまっていた何かが溶けていった。
真円の月が欠けていき、また満ちてゆくその間中、飽きる事なく朔夜と睦み合った。
二人で過ごした最後の夜に、「月を見る度、どうか私の事を思い出して下さい。
私も伏丸様と同じ月を見ていると思えば寂しくありませんから」と言った朔夜の姿も鮮明に覚えている。

129 :
「そうか、あの時の子は丈夫に育ったか、名はなんと付けた?」
「望(のぞみ)と名付けました、先の見えない暗い道でもみなを照らせるように」
望とは満月の事をいう。
両親の朔夜と十六夜という名に掛けた命名なのだろう。
神々に課せられたのは奉納点と引き替えに子を授ける事だけで、それ以降の手助けは我が子であっても
人間への干渉と見なされ許されない。
伏丸が我が子の名を知ったのも今が初めてだったが、達者で暮らしている事が何よりも嬉しかった。
「あなたの子は立派に成長しました、ただ少しませた所があって」
「…………」
「弟か妹が欲しいと、ねだってくるので……またこちらに伺う事になったというわけです」
朔夜の長い睫毛に縁取られた切れ長の眼が、笑みを含んで伏丸を見上げている。
空気まで凍てつくような冬のさなかだというのに、春の匂いがした。
初めて見た朔夜は清楚な白い襦袢姿だったが、咲き誇る花のように盛装した朔夜も美しいと
改めて思いながら、伏丸は一晩かけてこの花を散らす事にした。

柔らかな毛皮が敷かれた褥に豪奢な衣装のまま寝かされ、朔夜は狼の巨体にのしかかられていた。
黒に近い灰色の毛並みの下で、強靱な筋肉がうねっているのが分かる。
「ふふっ……くすぐったいです、伏丸様」
獲物を念入りに味見する伏丸の舌は、せっかく差してきた紅を残らず舐め取ってしまった。
素の唇の味を思う存分堪能した伏丸は、朔夜の身を幾重にも包む花びらを剥ぎ取りにかかった。
所々は朔夜が自ら脱いで手伝ったが、色鮮やかな衣を一枚一枚剥ぐごとに朔夜の肌の匂いが甘くこぼれ出し、
ますます伏丸を猛らせた。
「今宵はずっと、私を離さないで下さい……」
脱ぎ捨てられた華麗な衣装の中に雌鹿のような肢体を横たえて、朔夜は潤んだ瞳で伏丸を見つめていた。
この瞳を、この声を、この匂いをどれほど恋しく思ったか、伝える言葉が見つからない。
「朔夜、これは本当に夢ではないんだな……お前はここにいるんだな」
「私も同じ気持ちです……また伏丸様とこうして過ごせる機が巡ってくるなんて、
夢にも思っておりませんでした……」
二年も生きられない呪われた人間と、永遠の時を生きる神が互いを一日千秋の思いで待ちわびていた。
離れていた時間を埋めるように、二人は身体を重ねた。

130 :
「はぁ……あぁ……」
恍惚に浸る朔夜の声が途切れ途切れに響く。
毛繕いでもするように、伏丸は朔夜の裸身をくまなく舐め回していた。
荒い息遣いと濡れた舌で全身を嬲られ、脇の下や臍のくぼみまでも執拗に舐め上げられ、
久しぶりに味わう濃厚な舌戯に朔夜は早くも雌の部分を疼かせていた。
鋭い爪や牙で傷つけないようにと、初夜の床での伏丸なりの気遣いだったが、その甲斐あって
朔夜はこうされるのがすっかり病み付きになってしまった。
さんざんいたぶられた両の乳首は熟れた野苺のようにぷっくりと勃ち上がり、触れられるどころか
息を吹きかけられただけでも声を上げてしまうほど敏感になっていた。
「伏丸様の舌……とてもお優しい……」
蕩けた声でそう言われ、もっと歓ばせようといっそう愛撫に熱が入る。
白い腿を開かせ、柔らかな草むらのあわいまでも暴いた。
全身すべすべした朔夜の体の中で、ここだけはふんわりと毛が生い茂っていて特にお気に入りだった。
「あぁっ!」
「相変わらず、美味そうだな」
鴇色の花園からは、濃厚な雌の匂いが立ち上っていた。
たっぷりと露を含んだ襞を長い舌で舐め上げると、朔夜の背中が弓なりに強張った。
「くぅ……んっ」
「匂いも、前と変わらない……他の雄がお前に手出ししていたら、そいつを喰いすかもしれん」
こうして秘め処をあからさまに見られ、匂いを嗅がれ、滴る雫まで舐められるのは、何度目でも慣れない。
朔夜の全てを知っている舌に花びらの間までも丁寧に清められ、小さな蕾を味わうように転がされる。
後ろの不浄な箇所にまで舌が伸び、そこさえも愛しくて堪らないように水音を立てて愛撫するのが余計に羞恥を煽った。
「伏丸さまっ……もう、いけません……んっ、んうぅっ!」
構わない、というように舌の動きがさらに激しくなる。
いくらもしないうちに気をやり、うち震える朔夜を、これだけでは足りないとでも言うように
伏丸が舌なめずりしながら見下ろしている。
朔夜は弾む息もそのままに、褥にうつぶせて腰を高く上げた。
白樺の幹のような背中が月光を浴び、ぬめるように淡く光っている。
獣が交合うのと同じ姿態で、突き入れられるのを待っている朔夜の姿は途方もなく淫靡だったが、
発情しているはずの伏丸はすぐに美しい獲物にのしかかる事はせず、自分の肩越しに後ろをうかがう朔夜にこう囁いた。
「いい格好だな、お前の顔を見ながら種付けしようと思っていたが……」
「あ…… ですが、あの……この格好が、伏丸様を一番奥で感じられるので……」
本来は奔放なたちではなく、むしろ慎ましい性格の朔夜が耳まで赤くなりながら、伏丸恋しさのあまり
自ら獣になろうとする様は実に興をそそった。
「何せ久し振りだからな……手加減できんかも知れんぞ」
「はい…… どうか、可愛がって下さいませ」
自分を後ろから抱く熱い体温と豊かな毛並みを背中に感じ、朔夜はうっとりとため息をついた。
腰を突き出して、伏丸のためだけの箇処へと雄を迎え入れる。
獣道のように細く狭い道だったが、何度も通い慣れたそこに迷わず伏丸は突き進んでいった。
捕食される獲物のように組み敷かれた女体が強張り、甘い声で鳴いた。

131 :
「あはぁっ……もう奥まで、伏丸様でいっぱい……っ」
朔夜の丸い尻と、伏丸の下腹とが隙間なく密着した。
身体の下の朔夜の表情は伏丸には見えないが、紅潮した耳も小さく震える肩も、
たまらない圧迫感と湧き上がる熱を堪えているのを示していた。
(俺の片手に収まりそうなこんな華奢な腰に、全部入っているのか)
改めてそう思っただけで頭の芯が熱くなる。
朔夜のなかは熟れた果実のようで、少しでも身動きすると粘膜が甘く絡み付いてきて、
それだけで理性も何も吹き飛んで滅茶苦茶にしてしまいそうだった。
「朔夜……!」
望みを遂げようと動き出す獣の荒い息がうなじを撫でる。
野性そのままの激しさで後ろから貪られ、今にも壊されてしまいそうだったが、
朔夜のしなやかな身体は伏丸の訪れを歓待し、温かな粘膜で包み込んだ。
「んんっ……! っう……っ」
決して逃げられない力で後ろから腰を掴まれてはいるが、伏丸が脆い人間の身体を傷つけないよう
気を付けているのが分かる。
そうでなければ朔夜の柔肌は爪と牙でずたずたになっているだろう。
褥に敷かれた毛皮を掴んで、奥を突き破られそうなほど力強い抽挿に耐える朔夜は、苦痛ではなく
一突きごとに腰が蕩けていくような快感に身悶えていた。
本能に駆られてはいても、伏丸は自らが快楽を追うだけではなく、朔夜が悦ぶ所を狙って突いていた。
最愛の相手を自分と同じだけ悦ばせたい、という伏丸の思いを身をもって感じ、朔夜は多幸感に
全身を包まれるような心地だった。
「あんっ! あぁ! すっ、すごいぃっ……!」
「ぐうぅ……!」
伏丸を発情させる、春を思わす匂いが朔夜の肌からより濃く立ちこめる。
衝動のまま丸い尻に何度も腰を打ち付け、やがて限界を迎えた伏丸の唸り声と共に、
吐き出された多量の精が胎内を満たした。
長く続く吐精の脈動を感じながらくったり脱力していると、激しい情交に染まったうなじを舐め上げられ、
朔夜は身震いした。
「……きゃあっ!?」
いきなり身体を反転されて逞しい腕で抱き上げられ、驚いて朔夜は悲鳴を上げた。
まだ猛ったまま突き立てられているものに中を抉られ、たまらず伏丸の胸に縋りつく。

132 :
「しっかり掴まっていろ」
朔夜を貫いたまま直立した伏丸は、両腕の力だけで女体を抱えて上下に揺さぶりだした。
身体がずり落ちそうになり、両脚を伏丸の腰に絡めて朔夜は全身で相手にしがみついたが、
女一人の重みなど苦にもせず、狼神はなおも交合を続ける。
根本までぬらぬらと濡れ光る雄が繰り返し女芯に突き立てられている様が、餅のように柔らかな尻の谷間から見え隠れする。
「やっ、あぁっ……! こんなに、深く……」
獰猛な力でずんずんと子壷まで突き上げられる衝撃に、朔夜は我を忘れて雄を喰い締める。
先程放ったばかりにもかかわらず、疲れを知らないようにいきり勃ったものは、胎内から精が溢れるのも構わず荒々しく、
力の限り朔夜を責め立てた。
さっきよりもずっと緊密な交わりに、剛直に擦り立てられたところから粘膜が灼けてしまいそうだった。
「伏丸様ぁっ、このまま果てるまでっ、私を離さないで下さい……!」
朔夜の中に残った最後の理性までも突き崩そうと暴れる獣に懇願する。
伏丸は言葉で答える代わりに、朔夜の肢体が軋むほど強く抱き締めた。
白い背中に玉の汗を浮かべながら、朔夜も伏丸の胸に身体を預けて全てを受け入れた。
なおも深く貫かれ、ひときわ高い声を上げる。
「あ、あぁ! いいっ……! ふあぁあ!」
「朔夜、俺の子を孕め……!」
生まれ変わっても忘れられないほどに、魂の奥底にまで愛した痕跡を残してやりたい。
獣の本能に支配された伏丸の声はもはや狼の唸りにしかならず、朔夜の子宮へと命の奔流を惜しげもなく放った。
「また、また来ちゃうぅ……! もっと、あぁ……!」
愛欲と肉欲がもつれあう交合の中、人間の女から雌と化した朔夜はそれを最後の一滴まで奥底に受け止めた。
何度果ててもなお天高く突き上げられるような法悦の中で、いつしか朔夜は気を失っていた。

133 :
淡い朝の光で目覚めた時、朔夜は一糸まとわぬ裸身のままだったが、ずっと自分を守るように寄り添っていた
伏丸のあたたかな毛皮のおかげで、寒さはまるで感じなかった。
豊かな毛並みに頬擦りして心地よい感触をしばらく楽しんだ後、愛しい狼の穏やかな寝顔を見つめながら、
少し湿った鼻先をちょんちょんと突ついて悪戯をする。
……本当は、怖くないわけではなかった。
初めての交神でこのねぐらに通されるまで、何をされるか不安で足が震えていた。
『……お前か、俺と契ろうという娘は』
威圧感に満ちた低い声に身体がすくんだが、獲物を品定めするようにこちらを見据える
狼神の背後にあるものを発見し、朔夜は目を丸くした。
ぱたぱた、ぱたぱたと箒のように大きな尻尾が左右に振られていた。
狼の強面な容貌とは裏腹な、最大限の喜びを表す尻尾。
抑えようとして無意識に表れたその仕草がとても可愛らしく、朔夜が抱えていた恐れも不安も
それでいっぺんに吹き飛んでしまったのだった……
眠ったふりをする伏丸は、もう朔夜にあまり時間がない事を悟っていた。
二年も生きれば大往生という短命の呪いを受けた身体では、授かった次の子が戦えるようになるまで
保つかどうかといった所だ。
朔夜自身もそれを承知の上で、伏丸に再び交神を願ったのだろう。
これが最後の逢瀬になると、互いに知っていた。
だが、その残酷な宿命を呪うよりも、今だけは命の交歓に耽り忘れさせてやりたい。
伏丸は眼を開け、自分の鼻をつつく悪戯な指を舐めてやった。
「……朝から目の前に美味そうな獲物がいるな」
「ゆうべあんなに召し上がったのに、まだ足りませんか?」
「ずっとお預けをくっていたんだ、飢えて飢えてとても足りん」
「もうっ……」
でも嬉しゅうございます、と伏丸の腕の中で恥ずかしそうに微笑む朔夜は、咲き誇る花のように美しかった。

季節が巡り、花盛りの春のさなかに朔夜は逝った。
伏丸から授かった第二子の弦(げん)に訓練を授け、初陣に送り出した直後の事だった。
春の香が匂う夜空には、彼女の最期を見守るように十六夜の月が昇っていたという。
(完)

134 :
>>128
しっぽぱたぱたしてる伏丸様想像したら和んだ
後背位エロいです

135 :
おつーす
いやーいいね

136 :
血のたぎる伏丸さんGJ!
今度弓使いの娘が産まれたら伏丸さんに嫁にやる

137 :
天空の邪馬台国にでちゅ口調で話す伏丸が出てくるとは夢にも思うまい…
いや、しかし、俺屍でも子育てはでちゅ口調だとしたら…

138 :
>>116-125の続き置いてきます。
女剣士と大江ノ捨丸の話。これでお終い

139 :
 彼女が“自分たちの寿命の短さ”について初めて考えたのは、家に来て一ヶ月目。当時
の当主を務め、彼女の指南役でもあった、彼女の母親がんだ日のことだった。
 つい先日まで元気にしていて、来月には初陣に立つ娘のため装備品を手ずから選んで
いた母。それが少しばかり疲れを見せたかと思うとあれよあれよという間に弱り、すとん
といけなくなってしまった。
 最期の日。
 娘である彼女や、他の親族や、世話役のイツ花が枕元に集まると、母は薄っすら目を
開けて、言った。
“みんな、黙りこんじゃってさ、まるであたしがもうすぐぬみたいじゃないか”
 笑おうとする唇は、かさつき、痛々しかった。イツ花が水を染み込ませた綿でそっと
拭い、湿らせる。その仕草が悲しいくらい優しかった。
“バカ言っちゃいけないよ……あたしには”
 母の手を、少女だった彼女は取る。握る力の弱々しさに泣きたくなる。
“あたしには、やりたいことが山ほどあるんだ……”
 不明瞭になる声に、細くなる呼吸に。もう、何も為せなくなる人の体温に、泣きたく
なる。
“心配めされるな”
 次の当主が、力強く告げる。
“思い、願い、我らが継ごう。我らが悲願、きっと果たそう。だから、だから安心して、”
 頼もしい声を横で聞きながら、少女も同調しようとして。
 喉で、言葉が固まる。
 母は──諦めたような顔で、微笑んで。
 逝ってしまった。
 少女は、考えた。
 何故、母があのような笑い方をしたのかと、考えた。
 考えて、考えて。紅蓮の祠での初陣から帰った後にも、考えて。
 ──ね、イツ花。貴方のつけている、記録を見せて。
 イツ花から一族史を借り受け、読み込み。ようやっと疑問は氷解した。
 ──ああ、そうか。
 ──かかさまは、朱点童子を倒したかったけれど。
 ──呪いから解放されるその日を、待ち望んでいたけれど。
 ──ダメなんだ。
 一族の怨敵・朱点童子は京の各地に自らの“髪”を残していった。その数、七つ。全て
を倒さねば朱点の素っ首に刃をつきつけることすら叶わない。

140 :
 そして今現在切った髪は、たかだか二本。それも相当の犠牲を払ってのものだった、と
記録は伝えている。
 大江山で朱点と相まみえてから最初の“髪”を斬るまでに、八年、かかった。
 残り全てを斬るのに、さて何年かかるだろう?
 “髪”を斬って。朱点を斬るのに、さてあと何年かかるだろう?
 ──“私たち”では、朱点を倒すことも、呪いから解放されることも、叶わないんだ。
 ならば。少女たち世代のやるべきことは決まっていた。強い武具を集める。新しい術を
集める。より強い神と交神し、一族の血をより強くする。次の世代のために。次の次の
世代のために。そうすれば次の次の次の世代は、もっと強い鬼とも渡り合えるようになる
だろう。
 そうして。鬼をして強くなって。最後には忌わしい“種絶”と“短命”の呪いより
解放されるのだ。
 ──今の“私たち”ではないけれど。
 その夜。少女は眠れなかった。布団にくるまり、一人震えた。“虚しい”とはどういう
ことかを知った。少なくとも一族の、次に生まれてくる血族たちの助けにはなれるのに、
それを“虚しい”と思ってしまう自分の卑小さを知った。自分の心の弱さを思い知った。
 こんなに自分勝手で薄汚いのは一族でも自分だけだろうと思い、独りの嫌いな彼女は
泣いた。
 赤い髪と瞳の少女は刀を抱く。大拵えの、一族に代々受け継がれてきた刀。少女のもの
となり、少女にしか使えない刀。けれど今は使うことの出来ない刀。
 刀には、白骨城の鬼にされた剣士の無念が宿っていた。呪いの宿る刀を戦場で振るう
ことは固く戒められていた。
 少女は強く刀を抱く。冷たい──野晒しの骨めいて冷えた温度が、少女を噛む。
 ──私たちの命は短い。
 ──朱点を斬るにも、朱点以外の鬼も斬るにも、一族の呪いを解くにも。
 やりたいことを全てやるには、この命は短過ぎる。
 だから、と、少女は呟く。ひりつくような冷たい刀に身を寄せて、ぎゅっと目を瞑る。
 だから私は“やりたいこと”をひとつだけやろう。一族のためにか、自分のためにかは
分からないけれど。ひとつだけ、短い人生を全部掛けて、やり抜こう。
「私は、刀の呪いを解く」
「白骨城の鬼にかけられた呪いを、私が、解く」

141 :
 大江ノ捨丸をこの手で倒す。刀に宿る呪いを解く。かつての剣士の無念を晴らす。かつて
一族をした鬼も、代を重ねた今ならばせるのだと証明してみせる。
「私は。大江ノ捨丸に、勝つ」
 この身を苛む痛みから、自分自身を解放してみせる。少女はそう誓った。
 だから少女は剣を振るった。人一倍鍛錬に励み、戦いにおいても技量を磨いた。成人する
前には念願叶い、大江ノ捨丸を倒し刀の呪いを解くことに成功した。停滞していた一族の、
それは前進だった。
 それでも彼女は戦い続けた。一族のため、というのとは少し違っていた。剣の呪いが
解けても、気づけば彼女は大江ノ捨丸のことばかり考えていた。剣は解放されたが、彼女
は囚われていた。
 かの鬼を朱の首輪より解放した──完全に倒したわけではないからだろうか、と、少女
でなくなった彼女は考えた。
 だから女はより一層剣を振るった。強くなるために。かの鬼を完璧に屠るために。呪い
の解けた刀は彼女の力となった。数多の鬼の血肉に磨き上げられた刃はますますその鋭さ
を増した。
 そうやって女剣士は強くなった。
 大江ノ捨丸を解放した後も、思うのを止められなかったからまた剣を振るった。けれど
今度は倒す対象がいなくて、女は非常に困った。“神”となった大江ノ捨丸を斬ることは
ならない。ならばどうすればいい。朱点を倒すことを諦め、一族の呪いを解くことを諦めた
女は、今度は大江ノ捨丸までも諦めなくてはならないのか。
 そんなこと出来るわけがない。
 それが。女が大江ノ捨丸との“交神の儀”に臨んだ理由。女が此処にいる理由。
 唯ひたすらに鬼を斬り続けてきた彼女の、最後の望み。
 ──かの鬼に、勝つ。
 ──そのためにまず、かの神を、知る。
 そうして。その次に。そうすれば。

 そうすれば──「どう、なるんだろう」

 女は呟く。呟いたつもりだったが、声には出せていなかったかもしれない。男に抱えられ
下肢に咥え込む状態は、独り言には向かない。
 ぎちゅ、と、濡れて軋む音が腰から伝わってきて、女は腹を大きく波打たせた。
 仰向けになり、夜着の前を大きくはだけて、膝を割る男──神、大江ノ捨丸に腰を抱え
込まれた格好だ。捨丸が上体を起こしているせいで、ほぐれた秘裂が剛直を呑み込むのが、
硬く膨れる剛直が行き来する度白く泡立つ体液がかき出され零れるのが。重なる薄い夜着
と厚い僧衣の下で繰り広げられる痴態が、女の側からもよく見える。

142 :
(あ、また)
 白と深緑の衣が重なり、擦れ、僅かな隙間を生み出す。その合間から赤黒い肉がやわらか
な肉を割り裂き沈むさまが、見えた。
「く、あ──」
 半瞬遅れて。狭い場所をみちみち押し広げる質量に、女は背を反らして喘いだ。蒼白い
乳房が震え、その奥にある心の臓はもっと激しく脈打った。
 敷布に爪を立て耐えるはものの、細かい痙攣が止まらない。蕩けて敏感な襞を削るように
ゆっくり進んでくる、熱い肉の感触に持っていかれそうになる。腹側の天井をぐっと押し
上げる力は強く、自然と腰が浮いてしまう。
 女はすすり泣いていた。目尻からは涙が零れ、何度も何度も洟をすする。
 剛直の先端が押しつけられ、体重を掛けられたのは。女が最も“感じる”場所だった。
激しく突かれれば気をやり、探られる度に新しく蜜を溢れさせる。そんな場所だが、熱と
加重のみが与えられる今の状態は女に鈍痛と言い知れぬ肉の動きだけをもたらして、一種
拷問めいた様相を呈していた。
 それも、ひととき。
 微かに。粘る水音がする。
 カタカタと哂う声。捨丸は動いていない。動くのは女。女の肉。“感じるはず”の場所
へ熱を与えられているのに、高みに往けない。そのもどかしさが女の身体を揺り動かす。
「ひっ、く、っふ、う」
 肌を興奮と羞恥とで赤く染め、女はぎゅっと身を縮こまらせる。男根を包む肉も連動
して固く締まる。自らの動きを止める、貫く男を止める目的であったかもしれない。が、
己れのナカにある他人のかたちをより鮮明に感じる結果にしかならなかった。
 女は。おずおずと。「ん──んう──」貪欲に、腰をゆらめかす。
 蕩けた襞をねじれた男根に絡める。克明に伝わる他人の肉の輪郭に、女の鼓動は異様な
までに速くなる。それは自分を追い詰めるもので、悦楽を鼻先にぶら提げても与えては
くれないもので。
 そんなものへ。愛しげに、舐めるように身を寄せる。
 硬い部分が“感じる”部分を掠めていって。女はびくんと跳ねて──絶頂を、堪えた。
 息を荒げ身体を揺らす。貫く肉がナカを移動するように、蜜に濡れた肉の温かさを全て
の場所で伝えられるように。何度も同じものを受け入れてきた身体なれば可能な技だった。
 快楽を求めて震えていたはずの女は、生み出す快楽を拒否してまで、相手に与えようと
躍起になっていた。
 その姿が何処かの糸を切ったらしい。
「っ?! ちょ、や、待っ──っ!」
 脚を抱えられ、大きく開かされる。繋がった部位が一瞬だが完全に露わになり、頬を
赤らめるいとまもあらばこそ、「──っ、っぐ、あ」圧し掛かられ、覆い被さられ、より
深いところまで貫かれて。女は抗議も身動きもとれなくなる。

143 :
 それだけではない。
 敷布を握り締めていた拳が、ぎゅうっと固くなり。不意に、ほどける。男を咥えた場所
も同じく。前触れもなく雁口で荒々しく引っ掻きながら最奥に押し入ってくる無法者を、
濡れた襞はむしろ悦んで通した。硬い剛直に隙間なく寄り添い、奥へ奥へと誘うように
締め上げて。喰らいつくような強さにまで男を包んで──くたりと。力が抜ける。緩み
ひくつく結合部から、とぷんと体液が零れた。
 荒い呼吸。
 絶頂だった。
「早いなァ」
 耳元で嘲弄を囁かれ、女はきゅっと唇を噛む。悔しさからか、精を溜めたままの剛直が
敏感な狭道をぐちぐちと掻き回したからか。
「貴様、がっ、いつまで、も、放た、ない、から……っ!? やだ、動か、激し──ッ!」
 ぐずぐずに濡れきった孔は、もはや元の形も本来の主も忘れたらしい。女が途切れ途切れ
の嬌声と共に拒絶の言葉を吐くのに、散々貫かれ拡げられる肉は熱を持ち再び高まって
ゆく。
 何時の間にか。女の手は、掴む対象を敷布から深緑の僧衣へと替えていた。ままならない
身体。高まり、緩み、突かれるまま昇らされる、熱く濡れて絡む肉。
「やだ、やだ、」
 うわごとめいた呟きと。情欲に曇る瞳、男を離すまいと絡みついてくる肉は、いかにも
ちぐはぐだった。
「嘘吐け。こんなに締めやがってよォ」
 奥を突かれ女が仰け反る。その華奢な喉から声が洩れる。「だっ、て」
「ちから、抜けたら……貴方の、が、零れる」
 同時に、ぎゅうと。絶頂に依らず、意志の力で剛直を包む肉。
 女の言葉は唐突だが、本人の中では常に繋がっていた。
 ぎり、と歯を軋らせる音が聞こえて。「ふ──やああっ! ひうっ、あっ!」狭まる
場所を激しく擦られ髪を振り乱す。骨まで響く快楽に女は容易く息を切らし、抱く相手に
しがみつくことしか出来なくなる。それすら激しく揺すぶられて、勢い余って離れてしまう
のではないか、と。朦朧とした頭で心配する。
 不安は杞憂に過ぎないが。
 女の腰を抱え、いちばん深くまで男根を埋め込む捨丸が、今更の離別を許すものか。
「──戯けがよ」
 吐き出す声。
「ここに、注いでも。子なんか孕むかよ」
(ああ、うん)──熱い迸りを胎の奥で受けながら、女はぼんやり頷く──(その通り、
だな)──その通りだと、笑う。

144 :
 笑うと、精を呑み込み震える身体とは別に、胸の辺りがきりきり痛んだ。

 きりきり。きりきり。
 心の臓が痛む。
 “交神の儀”とは人と神との交歓である、らしい。呪われし一族と、乞われた神とが
心を合わせ新しい命を生み出す儀。肉の交合は両者の心を重ねる手段であり、重要だが
絶対必要なものではない。らしい。
 きりきり。ぎりぎり。
 腐れた心の臓が軋む。
 ならば。子が成せないのは、互いの心が通じていないから、ということになるのだろう
か。人と神、どちらかが。或いは両方が。約定を違えてまで相手を拒絶しているのか。
 ぎりぎり。ぎりぎり。
 軋む。痛む。もう時間がないのだと叫んでいる。
 ──それとも。
 何処かに誰かに子を成すに致命的な不具がある、ということだろうか。
 きりきり。きりきり。
 時間がもうない。

 事を終え、女は限界まで酷使した身体を横たえぐったりしていた。敷布に顔を埋め息を
つく。帯と袷については一応整えはしたが、脚の間を汚す体液はそのままだ。放っておくと
とんでもない惨状を引き起こすので後始末はつけねば。枕元の花紙に手を伸ばす。と。
「え」
 手首が掴まれ、敷布に押しつけられる。覆い被さる身体の重みにもがく。
「え、え」
 夜着の裾を荒々しく尻までめくられて混乱する。“常夜見”か。大江ノ捨丸の得意技か。
それともそんなもの必要ないくらいに女の心が乱れているのか。たかだか、自分と他人の
体液でどろどろに汚れた秘所を晒した程度で、羞恥と動揺で動けなくなるほどに。
「う、え──ひゃあっ?!」
 素っ頓狂な声は、尻にまだ柔らかい男根が擦りつけられる内に甘く変わる。身体のどこ
もかしこも限界を訴えているのに、無意識に腰が上がり男を迎え入れる体勢を取る。
「無理、だ」濡れた性器が肌を滑ってゆく感触に、深緑の衣がさらさらと肌を撫ぜてゆく
感触に、びくともしない拘束に。女は、震えて喘ぐ。「もう、これ以上は──いッ?!」
 裂かれる衝撃に、女が悲鳴を洩らした。
 摩擦と快楽で厚ぼったく腫れた襞は、休止を置いて乾き始めていた。そこを貫かれる。
粘液による滑らかさを失った狭道は、痛みも重さも衝撃も丸ごと女に叩きこむ。
 奥まで一気に貫かれ。乱暴に引かれ、また突かれて。女は唯鳴いた。痛みがある。内臓
ごと持ち上げるような衝撃がある。掴まれた手首が軋む。骨の指の痕が鮮やかに赤く肌に
滲む。

145 :
 女の身体ががくがく揺れる。翻弄されるままの動き。男に合わせることも、自分の身を
守ることもない、受け止めるだけの動き。
「子がよォ、要るんだろ」
 失神寸前の耳に届く声にも、答える術を持たない。
「抱かれて。ブチ込まれて。孕みもしないのに、精を呑んで」
 女の腰が大きく跳ねる。激痛。新しい血のにおい。傷口を容赦なく抉る、歪な男根。
(あ。やだ、な)
 女は虚ろな目で思う。一突きごとに衝撃に跳ね、意識が削り落とされる。膨らんだ男根
に内側から削られる。
「疑わなかったのか? お前、」
(なか、の、零れる──)
「オレが嘘を吐いてるとよ、考えなかったのか」
 声は。耳に届いてはいたが、頭までは届かなかった。胎に注がれる精も、真新しい傷を
抉っても、快楽にまでは届かなかった。
 意識を失った女の身体がくたりと落ちた。

 何故、を問われた覚えがある。
 何故、交神の相手に大江ノ捨丸を選んだのか、と。
 ──だって──女は答える──だって、知りたかったから。大江ノ捨丸のことを知って、
勝ちたかったから。
 そのために?
 ──そのために。
 女は刀を握る。大拵えの継承刀。風に舞う桜花を透かす、彼女の刀。
 そのために、交神相手を選んだんだ。
 そのために。自分のために、交神相手を選んだんだ。
 女は刀を握る。冷たい刃文、冷たい柄。肉を纏わぬ、かの神の手を思わせる、温みの
ないモノ。
 ととさまは、あんなに優しかったのに。

146 :
 かかさまは、あんなに貴方のことを案じてくれたのに。
 一族の皆はあんなに頑張っているのに次の子どもらのために次の次の子どもらのために
次の次の次の子どもらのために叶いもしない“打倒朱点”の悲願を掲げているのに貴方は
“自分のため”に生きるんだ。
「貴方は」
 声。刀を握る手を、そっと撫でてゆく温かな手。冷えた手には毒になるほど柔らかい。
「悲願に背を向け、自分の望みだけを追う“私”は、一族の、鬼子だよ」

 腹を冷たい手が掠めるように撫でていった。

 女が目を覚ます。
 暗い天井が見える。襖の隙間より、星の瞬く空が垣間見える。夜の色から真夜中を少し
回った時刻と見当をつけた。
 傍らの。伽羅と、血と泥と腐れた肉を混ぜ込んだにおいに目を向ける。胡坐をかく異形
の神は、馬鹿にしたように歯を鳴らして、
「“お雫”でも足りたかよ?」
「いや、どちらかというと“壱与姫”が欲しい」
「贅沢抜かしてんじゃねえよ。お前だって使えねえくせによォ」
 にべもない物言いに女は笑い、「ありがとう」と言って上体を起こす。“円子”のお蔭
で傷は癒え、体力もだいぶ回復したようだ。身体の芯に残る気怠さは、まあ、これは老い
から来るものだ。仕方がない。
「……」
「……」
 沈黙。
 残り少ない時間を費やし、一人と一柱は互いの出方を探り合い。
「嘘、とは」口火を切ったのは女の方だった。「何のことだ」
 捨丸がけたりと哂う。「簡単なことよ」
「“交神の儀”は唯一度でガキを作るんだろォ? ……オレだけが例外だと、どうして
考えた? どうしてオレの言葉を疑わなかった? オレが言わないだけで、ガキはとっくに
出来てるとは考えなかったのか?」
 女は。ぱちぱちと瞬きし。
「……何故そのような戯言を言うのか、理解しかねる」
「ケッ。人様の言葉を冗談扱いとはなァ」
「冗談も何も。そんな嘘を並べ立てられても、困る」
 尚も捨丸は言葉を継ごうとし。相対する女の目が本気で困惑していることに気づき、
続きを飲み込む。ゆっくりと考えをまとめる。まさか。
「──ガキが出来たかどうか、人間のお前にも分かるのかよ」

147 :
「分かるさ」
 事も無げな返答だった。「そもそも子は男と女、二人で作るものだ。片方にだけ分かる
ということがあるものか」
「普通はそうなんだよ!」
 思わず声を荒げてしまう。しかし女の一族は“普通”ではないのだし、“普通”も分かる
のは母親になる側だけで種付けした方には分かりっこないし──それはどうでもいい。
「お前がそんな態度ってことは……子は、出来ちゃいねえんだな」
「は?」
 なんだ。今の声。
「まさか」
 あの、見透かす目で、捨丸を見る女は──「子、を、」
「下さる、つもりだったのか」
 ──全く以って予想外のところからブン投げてきた。
 女は目に見えて狼狽しだしていた。
「いや、済まん。てっきり気にしていないと。子を、渡す気はないのだと思って。え、
あれ、じゃあ貴様、今まで、えっと、何時から? 本気で? え、本当に?」
 なんぞこれ。
 そもそも子を願ったのは女の一族で、捨丸は要請に応えるかたちで勧請されたのでは
なかったか。
「お前……俺が何しにココに来たと思ってるんだァ?」
「退屈凌ぎと聞いた」
 言った。
 まさか額面通りに取るとは思わなかった。
 ──では。この女、この一月の間何を考えて“退屈凌ぎ”に付き合っていたのだ?
「お前の」
 赤い髪の。紅い目の女。偶に意図が読めないものの言動自体は素直なようでいて、その実
何度抱いても心の底を見せない女──そうだ、“女”とは元来そういうものだった。
「お前の目的は何だよ」
 この“交神の儀”の目的は。
「……」
 女は黙る。黙って言葉を探し。
「……子を、得ること、だ」
「嘘つきやがれ」
 考えた末の答えとは思えぬ矛盾しきりの返事を吐いてきた。
「嘘ではない」
「嘘じゃなけりゃあどうしようもない阿呆よ」

148 :
 子が欲しいのに子を作る気のない男と同衾する。こんな馬鹿げた話があるものか。
「……っ! 今は、嘘じゃない!」
 意外なものを、見た。
 女がこんな風に激高するのは──誤解されたくないと必になって叫ぶのは、実は初めて
ではなかったか。
「さっ、最初は、確かに違ったが、」
 最初。“交神の儀”に臨むと決めた、その理由。
「貴方に、会いたかった」
 震える声。熱に浮かされるような囁き。
 それを恋の告白と考えるほど捨丸も耄碌してはいない。第一、女の瞳は、血よりも、火
よりも紅かったから。
「二度もしただけじゃあ足りなかったのかァ?」
「うん。足りなかった」
 訊ねた側も絶句する即答だった。
「して、刀の呪いを解いて、して、天界に送って、でも、足りなかった」
 赤い。
「ずっと忘れられなかった」
 紅い。
「“交神の儀”は、“種絶”の呪いにより人との間に子を成せぬ我らが“次”を残す唯一
の手段で。“次”を残すのは、“短命”の呪いのかかる我らには大事なことで。だから
“交神の儀”は一族にとって重要なことで。でも」
 こんな“赤”を、捨丸は人間だった頃も鬼だった頃も見た覚えがない。
「私が此処に来たのは、一族のためではない──自分のためだ。それだけだった。だった、
のに」
 女の手が自らの下腹部を掴む。夜着の下、肉の下の、捨丸の精を溜めた部位ごと握り
締める。
「ふたつは、私には──貴様を知ること。子を得ること。“どちらも”は、我侭が過ぎる」
 だから、諦めたと。
 最初の夜。一度きりで好いはずの交神の儀で子を成せなかった時点で。
 大江ノ捨丸との間に子を成すことは、諦めたと。
「ンなこと知るかよ」
「……そう言われるだろうから黙っていたのだ。貴様も、交神の結果までは興味を持って
いないと思っていたし」
 話し終えた女はほうと息を吐き、指先で目尻を拭う。興奮したせいで涙が滲んだらしい。
「で」
「……ん」
「どうするのよ」
「……」女は沈黙を続ける──否。急に俯いて視線を泳がせ指でのの字を書き、「う、ん」

149 :
「なァに突然女ぶってやがるよ。気色悪い」
 ひたり。女はのの字を書くのを止めて顔を上げ視線を捨丸へ固定する。鮮やかな変わり身
の早さであった。自分でも柄ではないと悟ったのだろう。
「元はと言えば、貴様に気がなかったのも悪い」女が唇を尖らせる。仕草が妙に愛らしい。
コイツの癖に。「最初の一発でこしらえていれば、ここまで話がもつれることもなかった
ものを」
 挙げ句の果てに責任転嫁である。この女、実は頭だけでなく性格も悪かったか。
「けれど──もし、叶うのであれば」
 おずおずとした声が響く。
「まだ、私に子を授けてくれる気があるのであれば。今この時より、交神の儀、お願い
したい」
「なくなってたら?」
「無くなったのか」
 頭が痛くなる程度には真直ぐな問い返しだった。急に何もかもがじれったくなり眼前の
身体を突き倒す。ころんっ、と、女の身体は面白いように敷布に倒れた。
「痛いぞ」
「先ほどじゃねえだろ──ふざけた女よ。さっきまで無理だの痛いだの喚いてたくせに」
「そうだな」
 そっと。女の手が、自らの腹を撫ぜる。「治して頂いたゆえ」
 その。甘やかな仕草が、傷つけ癒やした張本人を苛立たせることを。おそらく女は知らぬ
のだろう。
「……礼よ。生身の女をさんざ喰らわせて貰った見返りに、お前に子をくれてやろうと
思ったのよ」
 お蔭で聞かれてもない言い訳を口にする破目になった──言い訳ではなく本心のはずなの
だが、これは一体全体どうしたわけか。
「そうか。案外義理堅い性なのだな」
 疑いもしない女の態度にも腹の立つことしきりなのだが、
「大江ノ捨丸殿」
 名を呼ぶ女の声の真摯さに、呑まれる。
「誠に勝手ながら、御身との子が、欲しくなりました」
 紅い目から視線を外せなくなる。
「願わくば、この老骨めが御身よりの精を受けて保つ内に。交神の儀、御願い奉る」
 ──時間がないのを。思い出した。

 ひとつ。望みがあるのだと、女が言った。「触りたい」
「貴様のに、触れたい──いや勘違いするなそちらではない。そちらなら誰がわざわざ頼む
ものか」

150 :
「ならどこだよ」面倒臭い女よ──ぼやく捨丸に、女は。恥ずかしげに。
「心の臓」
「──」
 無茶を言ってきた。
 抵抗はしたのだ。
「こンの……阿呆が!」
「な、何も怒鳴ることではないだろう」
 幾ら捨丸の肉が腐れ落ちて臓物が剥き出しになってそれでも神威持ち“生きる”のに
何ら支障はない、とはいえ、うかうかと他人に触れさせるような場所ではない。
「だって仕方ないだろう。見ても、聞いても、貴様を知ること叶わなかったのだ。こう
なれば後は触ったり嗅いだり舐めたりするしかないではないか」
「全部お前の都合だろうよ!」
 ──抵抗は、したのだ。
 ──最終的に折れた理由なぞもう考えたくもない。
 女が、捨丸の肋骨の隙間に指を伸ばす。爪の先が微かに震えている。
「動いて、いるのだな」
 吐息が近い。それこそ、舐めるような近さだ。「舐めても、構わないだろうか」──そら
見たことか。
「齧るなよ」
「…………無論」
 嫌な間があった。指摘するのも億劫になり、代わりに女の袂へ手を突っ込む。「ひゃっ」
と素っ頓狂な悲鳴が上がったが、女は直ぐに硬直を解いた。
「貫くなよ」
 捨丸は答えない。せいぜい心の臓の真上を突かれ不安がればいいのだ。
 女の肉と捨丸の骨とが触れている。その下には、女の心臓。とくとく。脈動が伝わる。
捨丸の心臓に女の唇が触れる。微か。触れるか触れないかのところで、女は異形の身体を
慈しむ。
 傷つけばぬところを。互いに預け。互いに感じ。
「あのな」
 女の囁きを、命に最も近しい場所で聞いた。
「子の、ことだが。角が生えていても、皆、大事にしてくれるから。だから。
 髪が、赤くても。
 目が、紅くても。
 貴方を二度もした女の、──私、の、子だけど」
 どうか、と、女は囁く。
「ととさまと呼ばせてあげてな?」
 他に望むべくはもう無い、と。

151 :
 身を──心の臓ごと、命ごと預けてくる女を。“神”たる大江ノ捨丸はそれはそれは
手酷く扱った。やわらかな乳房は痛々しくも指の痕と歯型で赤く染め上げられ、乳房以外
も内からの熱で赤くなった。陰核は貫かれる前も貫かれた後も散々に嬲られ、女の何処
よりも色付いた。
 秘裂は。男と繋がる部位は、最も酷い有様だった。狭い筈の場所はぐずぐずに蕩けて
乱暴に叩きつけてくる剛直を迎え入れた。みっしりとした甘い肉はヒトとは異なるかたち
にも易々と絡みつき隙間を埋める。埋めきれなかった分には蜜を垂らす。肉と蜜と熱。
腐れた身を更にとかす、甘ったるい女の肉。女の弱い場所を突くと、引き攣るように締め
つける。奥を探れば、吐精を促すようにぞわりと絞る。中に残っていたものを掻き出した
ときだけ嫌々と啼いたはものの、新しく注がれるとあっという間に蕩けてしまった。
 そんな最中。
 吐いても収まらぬ猛りを、肩で息する女に押し込んだとき。それは、起こった。
 先端が女の奥を突き。こりこりと固い──固かった窄まりを、押し上げた瞬間。
「ふあっ?!」
 とろんと目を霞ませていた女が、大きく跳ねる。紅い目は限界まで開かれていた。
「今、なに、今の」
「……女ってのはよォ」
 内側からの異様な感触に混乱し細かく痙攣する女とは裏腹に、捨丸は落ち着きすら感じ
られる調子で呟く。
「恐ろしいなァ。子袋でまで、男を咥えやがる」
「……!」
 剛直の先の方は、解れた子宮口を抜けて、子を宿す器官にめり込んでいた。雁口のところ
が引っかかったので前後すると、うねるような肉の動きが返ってきた。女の口からこれまで
以上の嬌声が迸る。
 奥の、奥まで蹂躙し尽くしたと思っていても。
 その底を。その先の姿を、隠している。
 ──大江ノ捨丸が抱くのは、まごうことなく“女”であった。
「子袋、だって?」
 切れ切れの声。絶頂にわななく女の声。
「子を、孕み、も、しないのに……っ、はは、っふ、あ、はは! 私にも、そんなものが
……!」
 女は、泣いていた。笑いながら、鳴きながら、泣いていた。
 とうとう底を晒した女の肉は狂ったように蠕動を繰り返し男に快い悦楽を、女に苦痛に
等しい悦楽を一瞬の間も置かず与えてくる。
「ひぐうっ!」

152 :
 暴れる女の身体を、捨丸がかき抱く。これ以上は望めぬまでに深く貫く。
 ここが底。
 これが最後。
 真っ当な意識があるかも定かではない女に、呟く。
「ガキが出来なかったらよ」
 ぴくん、と女が反応する。紅い目が捨丸を見ている。
「二人で、何処ぞへ逃げるか」
 ──逃げる。女の唇が、動いた。
 この交神の儀が成功するか甚だ疑問であった。
 普通ならば一度で充分なものが、一度では成せなかった。一度では成せなかったのみ
ならず、何度繰り返しても成せなかった。何度繰り返しても成せなかったことが、最後の
一度で成せるのか。
 子が出来ねば、どうなるだろう。
 例えば。捨丸は子を与えられなかったとして、不具の神の烙印を押される。
 例えば。女は子を授かれなかった唯一の一族として、他と完全に違ったものになって
しまう。
 ──それは、きっと。
 ──辛い。
「逃げ、る。逃げ、たって」
「そうさァ」
 短命の呪いを背負う女は、一月と持たずにぬだろう。
 天界に背いた神である捨丸には、追っ手がかかるだろう。もしかしたら討伐に来るのは
女の一族かもしれない。
 だから、どうした。
 一族の倉から持てるだけの金品と女の寿命を誤魔化す薬をくすねて、二人で逃げる。
 復興なった京の街を歩くのもいい。
 きらびやかな着物や美味い酒、人生の楽しみというものを片端から味わい尽くせばいい。
肉の身を持つ女ならばそれも叶う。
 いっそ京から出たっていいのだ。京の街も御所も大江山も相翼院も九重楼も鳥居千万宮
も白骨城も紅蓮の祠も親王鎮魂墓も忘我流水道もまだ見ぬ朱点の居城も何もかも見えなく
なるまで遠くに行ってしまえばいい。
 ──いっそ。

153 :
 ──何も、なくていい。
 金もない。薬もない。行くあてもないし生きる術もない。
 別に。それで問題があろうか。
 女はどうせすぐにぬ。
 捨丸はどうせすぐに捕らわれる。
 女の寿命が尽きるまで、捨丸が封印されるか滅ぼされるまで。短い時を二人で二人きり
で生きればいいではないか。
 大江ノ捨丸が言うのは、そういうこと。
 閨で男が語るに相応しい、夢物語だった。
「ああ──それは、いいな──」
 唯の、戯言に過ぎなかったから。
 女が擦れた息の下呟いたとき、捨丸は思い切り嘲笑ってやった。
「馬鹿がよ」
 肉を押し込む。悲鳴を上げて絡みついてくる肉に、剛直を叩きつける。絡みついて抱き
寄せようとする腕を振り落とし、やわらかな身体をきつく揺さぶる。
「こんな話、信じたのか? オレがお前と手に手を取って──なんてのを」
 ──女が、捨丸の手を取る、のを。
「本気にする馬鹿がどこにいるよ──!」
 空っぽの身体が揺れる。子を宿せぬ胎が、ぬくもりを持たぬ骸の身が、互いを求めて
ぶつかりあう。
「うん。信じた」
 その。女の声が余りにも澄んで。伸ばされる手は、余りにも優しげだったもので。捨丸
も今度は振り払えなかった。
「騙された──な」
 女の目は快楽に壊れる寸前で。最後の理性を、全て、捨丸へ向けて。
「一生かけたのに」
 この上なく幸せそうに笑った。
「あなたのこと、また、追わないと」
 意味のある会話はそこまで。後はもう吐き出すため、受け止めるために動くだけ。
 男が吐精するまでの間に女は幾度となく達し、男もまた持てる全てを吐き出したのだが。
不思議なことに回された腕は片時も相手を離そうとはしなかった。
 分かったことが、ひとつだけ。

154 :
 一族の悲願を諦めた、鬼子の女でも。鬼から神に転じたばかりの、元人間でも。子の
成せた際の──名状しがたい、ぎゅうとした気持ちは、確かに生まれるものだ。

「お疲れ様でした」
 “交神の儀”より戻った女を、イツ花は笑顔で出迎えてくれた。
「長のおつとめ、御苦労さまでした」
「うん。一ヶ月、長かったな」
 短命の一族には充分以上に長い時間だった。女は少し疲れた様子で、しかし晴れやかに
微笑む。イツ花も頷いて、
「貴方の願いは果たされましたか」
 女はまじまじとイツ花を見つめる。その穏やかな表情は“全部分かってますよ”とでも
言いたげで、女は思わず吹き出してしまった。
「あのな」
 くすくす笑いながら女が答える。
「勝てなかった」
「そうなんですか?」
「うん。悔しいが──寂しくはない。何でかな。それが、嬉しい」
「そうですか。それは、良かったですね」
「ん」
 女は片手に刀、片手に空の徳利を抱え、照れくさそうに言う。
「あのな。交神の儀が終わったら、もう生きる意味もなくなるだろうし、何だかぬような
気がしていたんだが……恥ずかしながらもうちょっと生きて、子どもの顔を見たくなった」
 でも子が来るまでの間何をしようかな──首をひねる女に、イツ花がぽんと手を叩く。
「そうだ! 生まれてくるお子様の、初陣装束を縫うのは如何でしょう?」
「針仕事か。余り経験がないが、大丈夫かな」
「平気ですって! イツ花が指導致しますし、いっちょ大船に乗ったつもりでバーンとォ!
 作っちゃってください」
 イツ花の勢いに乗せられて、女もその気になってくる。
「よし、頑張るとするか」
「その意気、その意気。さっそく始めましょッ」
 先に立つイツ花を追い。女は晴れ晴れとした面持ちで刀を抱いて、囁いた。
「剣の呪いは解けたから、こいつは“次”に残して。
 ──貴方の呪いだけ、私の最期に付き合ってもらおうか」
 ほんとうに聞かせたい相手には届かない言葉だけれど、万が一届いたとすればどの面
見せてくれただろう──答えの出ない問いに、女はそれ以上何も言わず目を細めた。
 そうして冬を待たずに女は逝った。
 彼女の子が家に来るより前のことだった。

155 :


 呪われし一族の家では、一年に何人もの子が生まれ何人もの人がんでゆく。
 けれど。一族にずっと仕えてくれているイツ花は言う。
 ──初代当主様のご遺言です。
 ──例え何人目の、何十人目の、何百人目の子でも、
 ──この家に来た日はトクベツな日だから、家族みんなでバーンとォ! 祝え、と!
 最初も、大江山の朱点童子を倒したあとも、白骨城の鬼に討伐隊をされ広い屋敷に
子どもと年寄りだけが残ったあの日も、神となった大江ノ捨丸より新しい子を授かる今日
の日も。新しい“家族”を迎えるこのときだけは、一族のハレの日だった。
 踊り屋の少女はわくわくしながら新しい“家族”を待っていた。一族総出の席は温かく、
どこか華やいでいる。
 少女はこの日が楽しみでならなかった。一族で最も年下だった自分にも、とうとう弟分
か妹分ができるのだ。幼少時には訓練、長じてからは鬼討伐と、休む暇もない戦いづくし
の一族の人生ではあるが、年長者を敬い年少者を慈しむ心は、普通の人間と何ら変わる
ところはない。
(新しい子が来たら、庭の掃き掃除を手伝わせて。あ、廊下のぞうきんがけは全部やらせ
ちゃおうかなっ)
 子分扱いの目論見を立てるのも同様である。
 それはともかく。
 少女は新しい家族の来訪を心から喜んでいた。
 やがて。
「当主様! かの神より新しいご家族を預かって参りました!」
 人の年で言えば十かそこらの少年が、イツ花に手を引かれやってくる。
「お喜び下さい。元気のいい、男のお子様です」イツ花はそこで意地悪っぽく少年の背中
を叩き、「さっそく私のお尻を触ったのでぶってやりました!」
 からりと笑う様子に、当主はじめ大人たちは「なんと」と大笑する。
「来て早々、イツ花の尻をか! 顔に似ず剛毅なことよの!」
「もうッ。ヒドい言い草ですね」
 早々に悪事をバラされた少年は、大勢の人間の前で些かならず緊張しているようで、
さかんに足踏みを繰り返している。
 三ヶ月の歳の差のある少年を、少女は興味深く観察した。
 日を透かして緑に濡れる髪、翡翠の色の瞳。“水”と“土”の属性に秀でた一族には
滅多に見られない色だ。落ち着きのない様子からも、この子が奔放な“風”の気質が強く、
また“風”を抑えるだけの他の心が育っていないことが知れた。

156 :
「して、当主よ。名前は、もうお考えになりましたか?」
 親族からの問いかけに、「うむ、ぬかりなく」当主は重々しく頷き、懐から折り畳んだ
紙を取り出す。広げると太い筆跡で名前が書いてある。三日三晩考えた力作であった。
 その力の入りようたるや、細かいことを気にしないイツ花が顔を引きつらせ、横から
覗き込む面々も絶句する、それはそれは筆舌に尽くし難い代物だった。
「と、当主……本当に、こちらを……?」
「うむ、よい名であろう」
「え、ええっとォ、ちょっと画数が多過ぎるかなー、なんて……」
 重々しく頷く当主と、何とか方向修正を試みるその他とをさておき、少女は少年の様子
を窺う。少年は紙に書かれた自分の名前(仮)を見、思いっきり吹き出していた。あまり
楽しそうではない。
 自分でなくて良かった。少女はしみじみ思う。
 少女の時は、当時の最年長者が当主の出してくる名前候補に容赦なくダメ出しをし、
最終的に今の真っ当なものに収まったのだ。ああ自分の時は“先生”がいてくれて本当に
良かった──紛糾する命名の席に着き、少女は自らの幸運を噛みしめた。
「これでは埒があかんな」
 頭を掻きつつ呟いたのは槍使いの男で、少女の父親だった。
「お前、」彼は娘を呼び、命じる。「ちょっとな、その子を連れて、母御に会わせてやり
なさい。こっちは何時まで続くか分からないから」
「はーい。……行こ」
 戸惑う少年の手を引き、裏庭へ向かう。
「かかさまに、会えるの?」
「ううん。キミのかあさまは亡くなったから、お墓に行くの」
「……なんだ。そっか」
 少年の声に混じる色に、少女は気づかないフリをする。代わりにぐいぐい引っ張る。
「いたい」
「ごめん、ごめん」
「……かかさまは、ぼくが行ったら、よろこんでくれるの」
「喜ぶよ」
「んだのに?」
「喜ぶよ。ぬ前に、あたし、聞いたよ。一遍でいいからお墓に来て、元気な顔を見せて
くれたら嬉しいって言ってた」
 家の庭は広い。広いだけで特に整えられているわけではないが、とにかく広い。
 その広い庭の東側に。一族の墓は、あった。
 盛り土に卒塔婆を立てるだけの簡素なものではあったが、ひとつひとつ丁寧に清められ、
春には花が咲くこともあった。今はさすがに時期が遅いが。
 中でも真新しい卒塔婆の前で、少女は足を止める。「かかさま?」と訊ねる少年に肯定
を返し、少女はしゃがみ、そっと手を合わせた。少年も神妙な面持ちで真似をする。

157 :
「ん、っと」
 と思ったら懐をごそごそ探り出し、何かを取り出した。
「何?」
「花」
「花?」
「うん。かかさまにさしあげる花」
 少年の取りだしたのは、野の花を何本か束ねたものだった。懐に仕舞っていたせいで少し
潰れて花弁が散っている。何処で摘んだものなのか、伽羅に似たにおいがふわりと漂った。
「きれいだね」
 少女が誉めると少年は照れてもじもじする。その仕草は幼い。これから二ヶ月後には
血と泥にまみれ鬼たちとのし合いをしなければならぬとは信じ難い程に。
「おねーちゃん」
 少年が、不意に少女を見る。
「おねーちゃんの、つの」
 少女も少年を見る。丸くかたちのいい、呪いの印がある以外はすべらかな額を。
「かっこいいね」
 少女は目をぱちぱち瞬かせ、自分のこめかみ上から生えた二本の角を指でなぞる。少年
の目には一点の曇りも虚飾もない。
 唐突で、脈絡がなくて。ひとの心を揺らす言葉。
 光の加減か。翡翠の瞳に、柘榴石めいた紅が差す。母親を思い出させる、赤の色。
「ととさまも、つの、あるんだ」
 にひー、と少年は笑う。「かっこいいね、つの」
 にひひ、と少女も笑った。「かっこいいでしょ」
 複数の足音と話し声が近づく。少年の名前がようやっと決まったのだろう。
 あまりヘンなやつじゃないといいけど、と、少女は思う。少女はこの少年が割と気に入り
始めていた。
 当主に付き従うイツ花が、大事そうに細長い包みを抱えている。紫の布から見え隠れする
のは、大拵えの、伝家の宝刀。そうか。
「──キミ、キミのかあさまと同じ、剣士になるんだね」
 少女の囁きに少年は目をぱちくりさせ、どうして分かったの? と真剣に訊いてきた。
少女は笑ってイツ花の方を手で示し、一歩下がる。少女の位置に当主が入る。少年は緊張
した様子で直立不動の姿勢を取る。
 足元を吹く風が小さな花束を揺らし、伽羅の香りを運んできた。

 そうして。
 一人の女の遺した刀が、彼女の子へと受け継がれる。

 女の話はこれでおしまい。
 ここからは、新しい誰かの物語。

158 :
>>137
mjd!?
ハルカ読んでないのでわからんが、子供もとい子犬時代の伏丸でもでてくるんか?
それとも、それが素の状態なの?

159 :
趣味にまかせて書いてたら長くなったよごめんね! レスくれた人有難う。
実は半分くらい実話。捨丸殴りに行ったら討伐隊壊滅させられたとか、そこで剣士されて継承刀に呪いついたとか、
そのあと鍛えまくって殴りに行って呪いを解いた&解放した女剣士と勢い余って交神しちまったとか。
捨丸はクズだけどブレないクズだから好きだわー。

160 :
大作乙でした!
いいよーめっちゃいいよー!
下種な自分から目を背けず、ある意味真っ向から認めている捨丸が
他のどの神にもない強烈な魅力を放ってました。

161 :
>>158
フセマルは普段は俺屍のとおりの口調だが子供好き
赤ん坊の壹与ちんをあやす時はでちゅでしゃべる

162 :
>>159
すごく良かった。もちろん性的な意味でも。
実際のプレイからこういうストーリーが生まれるってすごいな…萌えるわぁ

163 :
>>159
乙であります。
上の人も書いてるけどどちらの意味でも非常に読み応えがありました。

164 :
あけましておめでとうございます。辰年ということで、上諏訪竜穂と下諏訪竜実の百合話置いてきますね。

*****

「むー」
「……」
「うぎー」
「……」
「うぎぎぎー」
「……いい加減にしなさい」
「だって! だって!」
 此処は天界、神々の住まう場所。布団の上でじたじたと駄々をこねる少女も神ならば、
彼女を前に困った様子で眉をしかめる女性も神であった。
 年嵩の方は、どこもかしこも華奢で繊細なつくりをしている。複雑な意匠の頭飾りと薄衣
を幾重にも重ねた衣装が彼女のたおやかさを引き立てていた。
 少女の方は、美しさよりも愛らしさの方がまだ際立つ年齢に見えるが、ゆったりとした
衣の下では子どもから娘へと移りゆく伸びやかな肢体が息づいているのが分かる。
 共に翡翠の髪を持ち、よく似通った目鼻立ちの二人は姉妹である。
 姉の名を上諏訪竜穂、妹の名を下諏訪竜実という。その名の示す通り水に縁深い竜の化身
であり、今でも水神として崇められる存在であった。
 天上におわす神が下界に──人間に干渉しないと決めてから久しいが、その影響は厳然
として残っていた。おそらく、駄々っ子な妹神を見たら幻滅する人間も出てくるであろう
程度には。
 その妹神はむーむー言いながら布団の上でごろごろし敷布を乱すことに終始している。
姉神は、はあ、と溜息をついた。
「ほら、止めなさい。もうそろそろ来るんだから」
 竜穂の言葉に、竜実がひたりと動きを止める。
 しかし納得してのことではないのは、そのジト目から察せられた。
「……竜穂姉ちゃん、ずるい」
「ずるいとかそういう問題じゃないでしょう」
 竜穂は、ぱん、と敷布の端を掴んで引っ張る。上に載っていた竜実がころんと転がり
落ちた。
「ずるいもん。……彼と会えて、竜穂姉ちゃんはずるい」
 妹の恨み事を、竜穂は聞かないフリをした。
 “彼”が誰を指すのか、竜穂も分かっている。

165 :
 人との間に子の成せぬ、故に神との間に子を成す呪い付きの一族。その内の一人の男。
今を遡ること三月前、下諏訪竜実と交神の儀を執り行った半神半人の男。
 そして今宵、上諏訪竜穂に交神の儀を願い出た男。
 “交神の儀”は、神と人、打倒朱点の悲願の元なされる儀。とはいえ、子をもうける行為
となればいくばくかの情も執着も生まれるというものか。
 姉に──たった一夜限りの、とはいえ──想い人を取られる格好となった竜実を、竜穂
も哀れに思わないではない。しかし、どうしようもないことなのだ。竜穂も竜実も“神”
である限り。かの男が“人”である限り。
「……ね、混ざっちゃ」
「駄目。無理」
 しかしどれだけ哀れに思っても初床が妹との3Pなんて絶対に嫌な竜穂であった。
「でも、絶対そっちの方がいいと思うな、あたし!」
「あのね、奉納点を献じられたのは、私だけなの。交神の儀を行えるのは私だけ。そういう
決まりなの。分かる?」
 噛んで含める姉の言葉に、竜実はむうと唇を尖らせて、
「子どもは……ガマンするから」
「そういう問題じゃないわよ」
「……絶対、ぜーったい、あたしが一緒の方がいいと思うなー」
 ひどく思わせぶりなことを言った。
「……何か、あるの」
「あのね」
 思わず訊ねてしまった姉に、一足先に“女”になった妹は、そっと囁いた。
「──多分ね。一人だと。竜穂姉ちゃん、大変だよ」
 くらり、と。来る、ような、色めいた声だった。
「彼、ね、んっとね──大変、だから」
 こくり。喉を鳴らす音。それが自分のものだと竜穂が気づくのにはしばし時間を要した。
「そ、そんなに……その、激しいの」
「ううん」竜実はふるふる首を横に振る。「とっても優しいよ。ただね、ちょっと、多い、
かな」
 ぼかしつつも際どいことを口にする、竜実の丸みを残した頬は桜色に染まっていた。
「何回も、何回もね、欲しいって、言ってくれるから。すごく大変だけど、竜穂姉ちゃん
も頑張っちゃうだろうから……一人だと大変だよ」
 あたしも全部は出来なかったの──ぜんぶ、受け止めてあげたかったのに──前回の
交神の儀にて一人で男を相手にした竜実は、寂しそうに。うっとりとした風情で、囁く。
「あ、あと、強い、かも。ほら、身体おっきいから。でもすごく優しいんだけどね」

166 :
「……そう、なの」
 竜穂の唇から当人も意識しない言葉が滑り出る。
「どんな風に」
 竜実が、微笑む。
 竜実の小さな手が竜穂に伸びる。ほっそりした指が魚のヒレに似た耳朶をくすぐり、
そっと顔を挟みこむ。ゆっくりと近づく唇は、触れる瞬間はやわらかくていい匂いがする
だけだったのに、舌が潜り込むと途端熱くなった。
 ちろちろ舌先が口内を撫ぜ、唾液をかき混ぜる。竜実の舌遣いは優しい。竜穂のなかを
丹念に解きほぐし、蕩かせる。唇と唇が擦れ合うごとにちゅっちゅっと可愛らしい音が
立つ。同時に唾液と唾液が混ざるじゅるじゅるという下品すれすれの音も立つ。
「……こんな感じ、かな」
「そ、う、なの」
 竜穂は抗えない。
「あ、でも。……口吸いは、もっと、優しくて、気持ち好いよ……?」
「……」
 すっかり“女”の顔で蕩ける妹に、姉は、呑まれていた。薄い布を割り侵入してくる手も
ごく自然に受け入れる。乳房に触れてくる指が冷たいのだけが気になった。
「竜穂姉ちゃん?」
「ちょっと、冷たい」
「あ」ごめんね。妹の声は甘い。手を引き抜いた竜実は、何を思ったか衣の裾を大きく
まくり太腿と太腿の間へと手を挟む。
「こうしてるとね、あったかくなるんだって。待っててね」
 姉への気遣いに溢れた行為なのに、ほんのり紅潮する肌や荒くなる吐息、手の冷たさに
もぞもぞする様子からは、自らを慰めているようにも見えた。
 竜実は手を温める間にも接吻を繰り返す。唇を重ねるだけのものから、深く舌を絡める
ものまで。巧拙の程は不明だが、丁寧な、いじらしいものだった。竜穂がそっと絡め返す
と、少しばかり目を見開いて。嬉しそうに笑った。
「気持ち好かった?」
「……どうして、そんなこと聞くの?」
「あたしも、気持ち好くなって、返してあげたいなって思って、頑張ったから」
 彼が喜んでくれた気持ちが分かった──竜実の笑顔は心からのものだった。
「手、あったまったから。続けるね」
 温まった手が竜穂の乳房を包む。包んで、やわやわと揉む。
 頭の後ろ辺りに小さな火が灯ったような。不思議な感覚が竜穂に生まれる。刺激を受けて
いるのは唇や口内や乳房なのに、脳からわき上がる感覚は温かなお湯のように静かに身体
を伝い全身に拡がってゆく。
 竜穂の手が下がる。腿と腿との間に挟まれる。温めるため、相手に触れても冷たくない
よう。
「えへへ」竜実が嬉しげに笑ってくれる。それが、竜穂にも嬉しい。

167 :

 何時の間にか互いの衣装は乱れ、乳房と脚の大半を露出するあられもない格好になって
いた。その姿で、整えられた布団の上絡み合う。竜穂が下で、竜実が上。竜実は軽いので
華奢な竜穂でも充分支えきれるし、擦りつけられる乳房の肌ざわりを感じる余裕もある。
 慎ましくもかたちの良い胸と、少女のこの時でしか有り得ない絶妙の曲線を描く胸が、
互いに押し合い潰される。ぐにぐにと形を変えて、互いを埋める。
 身体の熱は、今や御し難いものとなっていた。
 妹のため温めていたはずの指先が、いつしか熱を帯び始めていた女陰をまさぐり出した
のは、そういう理由なのだろう。
「竜穂姉ちゃん……気持ち好いんだ……」
 うっとりした様子の竜実に、今度は竜穂からくちづける。唾液がとろりと垂れて口の端
を濡らすのにまた陶然となる。
「あたし、やってあげるね」
 潤む場所に細い指が触れる。そこに比べると温度は低いが、冷たくは、ない。
 ゆっくり。ゆっくり。解きほぐすように、前後させる。
「あのね」
 腰を揺らめかせる竜穂に竜実が囁く。
「ゆっくり、するね。恐かったり、痛かったりするの、絶対にしないからね」
 ──きっと。竜実も同じことを言われ、同じことをされたのだろう。
 ──胸が、ざわりと波立つ。
 先に“女”になった妹への嫉妬か──妹を“女”にした男への嫉妬か──自分の“女”を
掘り起こされる、恐怖と期待と興奮か。
 もう。そんなつまらないもの、関係なくて。
 唯々もっと深いところまで、蜜を滲ませる柔襞まで探って欲しいだけなのか。
 割り開き、這入ってくる指に、そんな疑問どうしてもよくなる。
「ふっ……あ!」
 中指が挿入され、くにくに動かされる。襞を指先でちょんとつつかれ、腰が跳ねた。
動かされる度に刺激は大きく、感覚は鋭くなる。それだけではない。竜実の親指が外側を
なぞり、敏感な秘芯を探し当てる。触れるか触れないかのところで撫ぜる。
「ひあっ! あっ! ああっ!」
「竜穂姉ちゃんは、ココ、最初から気持ちいいんだ」
 いいなあ──竜実が唇を尖らせる。
「あたしは時間かかっちゃったのに……そんなイヤラシイお姉ちゃんは、こうだっ」
「──!!!」
 かり、と。爪を、立てられる。
 痛みが股間から背骨までを走る。痛み。痛みのはずだ。痛いのだ。けれど痛みを受け
取ったはずの脳はそれを快楽と受け止め、全身へと波及させた。腰が浮き、中の指を激しく
締めつける。

168 :
「わ、わ」
 驚く竜実の手に蜜を吹き零し。竜穂は、最初の絶頂を迎えた。
「えっと……竜穂姉ちゃん、大丈夫?」
「……だい、じょう、ぶ」
 交神の儀で次席が上がったとはいえ神格ではまだまだ目下の妹にイカされた以外は別に
どうということもない。
「んー」くだんの妹神は何やら真剣な面持ちで悩み。「……こんなのでネを上げるんだった
ら、やっぱりあたしが一緒じゃないと難しいよね」
「だから駄目だって」
「えー。でも」
 どうにかこうにか姉の威厳を示そうとする努力を、妹は無邪気にブチ壊す。「彼の、
おっきいよ。指なんかより、ずっとずっと太くて長いよ? 大丈夫?」
「だ、大丈夫よ」
「本当に?」
「貴女にだって出来たのよ。私にだって出来るわよ」
「あー! まーたお姉ちゃんぶってるー!」
 姉なのだから当然である。
 しかし恋する乙女というか欲情した女に道理が通じないのは古今東西津々浦々神も人も
同様のこと。
「ほんとうに……?」
 上に乗った竜実が、上体を起こし、腰を竜穂へ擦りつける。竜実の女陰も姉と同じく
濡れていた。そこを、蜜を零す襞を、硬くなった秘芯を、擦りつけ、絡ませる。先程の
鋭く一瞬の刺激とは違う、重く長く続く愛撫に、竜穂は喉を反らして喘いだ。
 上になった竜実は竜穂の手を取る。その華奢な指を立てさせ、口に、含む。人差し指、
中指、同時にねぶる。
「……こんなんじゃ、全然ないよ」
 揃えた指を男根に見立てているのだ──気づいた竜穂の頬がかっと熱くなるが、朦朧と
した熱の中に簡単に混ざってしまう。
 あむ、と、薬指までが含まれる。喉にくるものがあるのか、竜実は少し苦しそうだ。
 こんなものが──自分の、ナカに──指をねぶられながら、竜穂は自分が男根をねぶって
いるような気持ちになる。こんなものが、入ったのだ。妹に。こんなものが、入るのだ。
自分に。
「……んー。まだ、まだかな」
 そう考えていたのだから。竜実が小指までを咥えて苦しげに舌を絡めてきたときには、
本当に驚いてしまった。

169 :
 ぺちゃぺちゃと舐める音。指と指との間を伝う、温かな唾液。絡みつく舌。上の口だけ
ではなく、下の口でも似たようなことが起こっている。竜実の上の口を犯すのは竜穂で、
竜穂の下の口を犯すのは竜実。違いと言えばそれだけ。犯し犯される。異様な状況が身体
を昂ぶらせる。
「ん……っぷ、は」
 指が、抜かれる。
 竜実と、目が、合う。
 妹の目も潤んで揺らめいていた。
「竜穂姉ちゃあん……」
「……竜実……」
 唾液で濡れた手が、ぐちゅぐちゅ粘り重なる場所へと導かれる。重なり絡み合う襞と襞
との間に指が潜り込み、硬い刺激が胎を貫いた。
「ああ……竜穂姉ちゃん、もっと、もっと動かしてえ……!」
 秘芯を秘芯で擦りたてながらの竜実の懇願が、竜穂の指を突き動かす。
 柔らかい太腿にそれよりもやわらかい肉に挟まれた手はもうどう動いているか自身でも
見当がつかない。ぬるぬるとした姉妹の間を動いているのか、どちらかの肉の合間に潜り
こんで熱い体内をかき回しているのか。肌も指先も熱くなり過ぎて蕩けてしまって何も
分からない。
 気持ち好いのだけは分かる。不自由ながらも動かせば、妹が腰を前後させ悦ぶのだけが。
蜜を飛び散らせての摩擦がより強い快感を生み出すのだけが。互いの限界が近いのだけが、
はっきりと分かること。
「あ……っ、はあ……! 竜実……! 竜実ぃ……!」
「竜穂姉ちゃん……いっしょ、にい……!」
 ふたつの秘芯を互いに押し潰し、解けきった女陰から迸る体液を互いに浴びせ。姉妹は
同時に果て、ぐったりと布団の上に倒れた。
 顔を見合わせ。先に笑ったのは、どちらだったろう。
「ね、竜穂姉ちゃん。交神の儀、一緒にしようよ」
 竜実の提案に竜穂は頷く。
 今以上の快楽を与えてくるという、未だ見ぬ男の相手は確かに自分一人では務めきれぬ
と観念したのか。
 単にこの女同士の快楽に耽りたいからなのか。
 ただ、この妹が愛しくて他のことも考えられぬだけなのか──。
 答えはきっと。今から訪れる男と、あどけなくも淫蕩に笑う妹が教えてくれるだろう。

*****

投下終了。今年もこのスレが賑わいますように!

170 :
DLC含めて3Pしてそうな神様が二組もいるし
姉妹で来てもらっても全く問題ないな…ないな!!

171 :
諏訪姉妹の百合とはなんという俺得

172 :
おほ

173 :
はぁ…奉納点は二人分出すから諏訪姉妹と同時に交神したい

174 :
逆鱗とは性感帯である

175 :
>>164
新年から良いものを読ませて頂きました
妹さんがどんな交わりをしたのか激しく気になりますw

176 :
>>164
GJ!
竜実ちゃん失神してしまうほど愛されちゃったんですねわかります。
別にこの前後の話も書いてもいいんじゃよ?

177 :
 ──もしも。その部屋に、誰かが入ったとしたら。
 最初に感じるのはきっと、におい。甘いような酸っぱいような、刈ったばかりの青草にも
似た饐えたにおい。男の汗と、女の汗と、肌になすりつけられ蒸発した唾液と、男の先走り
と女の愛液の醸す性臭。
 次に捉えるのは、音。ちゅぷ、くちゅ、と、静かに粘る音。偶に肉と肉とを打ち合わせる
ぱしん、という音も混じる。
 にゃあ、と。
 組み敷かれる女が甘く鳴いた。
「ゆっくり……するんだね、アンタ……」
 獣の姿勢で男を受け入れ。うなじから背中、尻付近までを覆う“本物”ほどには濃くない
柔毛を逆立てて、赤猫お夏が切れ切れに囁いた。
「嫌いか?」
 細い腰を抱えた男が、ぐるんと円を描く動きをする。途端甘ったるい嬌声と共に真っ白
な尻尾と髪の色と同じ真っ赤な猫の耳がぴいんと立ち、くたくた崩れた。
 停滞は一瞬。
 くすくす。真っ白な敷布に爪を立て、お夏は男と同じようにゆっくり腰を振る。繋がる
場所は奥へ奥へと蠢いて男を猛らせた。
「イヤなら…とうに…引っ掻いてるサ……」
 だからサ──押しつけてくる膣肉の動きに、咥え込まれた男根も大きく震える。
 射精、ではない。堪えたのかこの程度では足りぬとせせら笑ったのか。
 お夏は首を後ろにねじ曲げ、ぺろりと舌舐めずりしてみせる。
 笑う。
「もっと火をつけてみなよ……アンタも、火遊びは、好きだろう?」
 挑発に、男の手に力が篭り、「どうかな」短いはぐらかしののち、腰が引かれる。浅い
位置を張ったえらで掻き回される感触に、お夏は再び声を上げた。入り口付近にて灯される
火は温度が低い。とろとろと肉を炙り、焦がし焼き尽くすでもなくしかし長く留まり続ける。
たっぷり味わおうと腰を上げ男に寄せ左右に振りたくる。慎みのない行為だが、恥じる
必要はない。お夏は“神”で、“猫”で、しかも発情した雌猫だ。
 お夏は笑う。くすくす。喘ぎ、笑う。小ぶりでそこだけ毛の薄い乳房を掴まれ、親指と
人差し指で固い頂きを抓まれ尻尾を立てる。膨れた尻尾が男の腹を、胸板を叩いた。
 くすぐったかったのか男も笑う。くつくつ。てのひら全体でやわらかく張り詰めた肉を
楽しみ、つられて締まる結合部を軽く行き来させる。先端しか埋めていないせいで、筋を
浮かせ膨張する男根が視覚でも確認できた。零れる体液が糸を引いた。
 早く入らせろと持ち主に訴えるソレが、早くと誘う秘裂へ、殊更にゆっくり挿入される。
押し広げられる感触に、胸への痛覚ぎりぎりの刺激に、お夏が長く高く鳴いた。
 男によってつけられた火は、赤猫お夏をして蕩かせるものだった。
 内側のやわらかい肉を抉る、小刻みな動きが心地好い。締めつけるとぴく、ぴくと動いて
跳ね返してくるのが小憎らしくも快い。脚と尻尾を開いてのあからさまな誘いに幹を太くし
突いてくる、その愚かしさが愛らしい。
 そう。思えたのも、最初のこと。

178 :
 緩慢に過ぎる男の動きにじれて自ら腰を使い、男根の太さと硬さと熱とを愉しめたのは
余裕のあった内のこと。奥まで呑み込み締めつけたまま引き、今度は緩めて呑み込む──
濡れた花弁と陰嚢がくっつくまでに深く挿入させ、咥えたまま揺らす──ずんと突いてくる
瞬間を見計らい腰を上げ内側のざらつく場所で先端を受け止める──男に快楽を叩き込む
ための、男に吐き出させるための動きが出来たのは、この長い交合の初手だけのこと。
 身体のなかを他者が移動する感覚に、お夏が、にゃあ、と。
 仔猫のようにかぼそく鳴いた。
 四つん這いの獣の姿勢。震える尻を押さえゆっくりと剛直を引きぬいていく男は膝立ち
の、女を見下ろす姿勢。
 屈辱であった。“女”としても“神”としても、見下ろされ、翻弄されるのは不快で
あるはずだった。
 それでもお夏は男に爪のひとつ、牙の一本も立てられない。
 蕩けていたから。
 お夏の肉は、心は、男によってぐずぐずに蕩かされていたから。火を性とする女神は、
男の与える熱に呑み込まれていたから。
「ニャ──ア、あ、ぁ──」
 硬く膨れたものが蜜と熱とを含んでやわらかく膨れた膣内をかきわけ進んでくる。お夏
は大きな目を見開き喘ぐ。ちらりと覗く鋭い八重歯も、獣めいて真っ赤な舌も、だらだら
垂れる涎に塗れている。そこから、身体を貫く太い快楽に押し出されるようにして唾液と
嬌声とが洩れる。
 ゆっくり。静かに。剛直はお夏を貫き。
 最奥に至る寸前に、止まる。
 動かない。絡みつき締めつける柔襞の感触を愉しむかのように、其処を激しく突くこと
で得られる快楽も知らぬ風に、男は侵入を止め──また、引く。息とは別の部位を、エラ
で擦りながら。お夏を快楽に慣らさぬよう細心の注意を払いながら。
 お夏は鳴いた。今度の声には、恨みが混じっていた。
 お夏の肉を炙り嬲り焦らす男への。
 男に炙られ嬲られ絶頂の近くまで来て放り出されるの繰り返しに焦らされ、挙げ句自分
で体勢を変え望む場所に押し当てるだけの体力も残っていない自身への。
 再度の挿入。
 腹側の壁を擦る肉が、重い。熱い。幾ら蜜を溢れさせても摩擦の熱が和らがない。至極
当然。お夏の望むのは安寧ではない。激しい熱、胎を貫く衝撃、焦れて狂わんばかりの肉
と心を壊しかねない男の存在だから。
 熱が、止まる。
 低温の炎で炙られるちりちりとした焦燥が全身へと拡散する。朱の首輪の比ではない
煩悶がお夏を襲う。
 ぐい、と。上体を抱え込まれる。繋がったまま持ち上げられる。少しの期待。外れる。
剛直はお夏の中から僅かに引いて、奥から逃げる。お夏の肉も熱も留め置かれる。
 耳に。赤い髪から伸びる獣の耳に、囁き。
「──解放しようか」
 ──その声は、何かを限界ぎりぎりまで堪えたものであることに。男の身体が汗に濡れ、
男の表情が茨木大将を前にしたときと遜色ない研ぎ澄まされたものであることに、お夏は
気づけなかった。男の言葉の意味だけを嗅ぎ取り、気づこうともしなかった。

179 :
 首肯。
 受諾。
 懇願。
 哀訴──「はやく、」──前身の柔毛を逆立てて、瞳孔をひらいて──「はやく、で、
ない、と、狂っちまう! 神なのに! アタシ、おかしくなる──!」
 男の腕に力が篭る。
 お夏の視界が回る。何が起こったのか分からぬまま今までとは異なる衝撃が腰を砕いて。
胡坐をかく男の胸に抱きとめられて、繋がったまま半回転させられたのだと知る。しとど
に溢れる体液が潤滑油となり、行為はいとも容易く行われた、らしい。
 お夏の知ったことか。
 お夏に重要なのは、男に抱えられていたこと、男のお夏を支える手が外れたこと、お夏
の自重で身体が沈んでゆくこと、膨れた柔襞の合間を剛直が滑らかに縫い至極あっさりと
先端を最奥に届かせたこと──刹那。息の詰まる。身体の跳ねる。肺の空気全部を押し
出して全身の血を頭に心臓に昇らせてまだ足りぬ衝撃が、快楽が、性器から脳までを真直ぐ
貫いたこと。望んでいたものが望んでいた以上に与えられたこと。別人のように下から
荒々しく突き上げる男は“これ以上”を与えようとしていること。それだけ。
「ニャ! ァ、ッ、ア、あアアァ──ッ?!」
 男の両の手がお夏の膝裏に回され、持ちあがる。お夏の足が開く。男を咥える部位を軸
に、姿勢が不安定になる。
 不安定なくらいは構わなかった。お夏は猫だから。けれど男を離すのが嫌だった。お夏
は“女”であったから。
 お夏が男に縋りつく。手を肩に回し、爪を立てる。鋭い切っ先が皮膚を割り肉に食い込む。
ぶつり。筋肉と血管が千切れる。血が流れる。血が匂う。
 嗅いだ瞬間、男の呻き声を聞いた瞬間。
 興奮した。
 どくどく。血が回るのが分かる。感覚が鋭敏になる。最奥まで潜ったと思っていた剛直
が支えを失ったお夏の加重で更に沈む。臓物を押し上げて、形を歪ませ、限界を越えて
犯してくる。
 奥へと叩きつけられてお夏はますます爪を深く立てた。男は競うようにお夏を抱き、
何度も絶頂を迎える肉を貫きまた押し上げる。
 お夏が男の肩へむしゃぶりつく。血の味。舐める。癒やされ傷口が塞がる。お夏の爪を
残したまま。また、動かす。抉る。血が流れる。男の肉を、猫が犯す。
 剛直がナカをぎちぎち拡げる。太くなる。硬くなる。動く度にお夏の身体はびりびり
痺れ、朦朧とするなか男の肉に牙を立てる。血の味。血のにおい。肉の熱。男の味。
 脊椎を不快の塊が駆け抜けていった。
「ニ゛ャア゛ア゛ァアッッ!!!」
 牙を抜き、背を反らし、男に貫かれたまま絶叫する。引き攣る膣内を剛直が掻き毟る
抉り抜く。
 男の手が。お夏の尻尾を掴んでいる。根元を掴んで、しごいている。男根にするように
強く刺激を与えてくる。尻尾は興奮した男根のように膨れて屹立ししかし精を吐き出す
機能を持たぬが故に終わりは来ない。

180 :
 不快、不快、尻尾は弱いところ、猫同士では余程のことがない限り触れぬ場所。ソコを
責められ指で押し潰される。猫でもない神でもないヒトですらない半神半人の男にいいよう
に弄られる。
 不快、不快、──嬲られる、悦楽。
 尻尾から胎を震わす不快感、胎を埋める貫く快感。男の肉、男の熱、男の血、男の味。
膨れあがり動きが小さく激しくなる男の肉。
「子を、」
 男の声。上擦る、苦しむ、懇願する男の声。
「子を──我が一族に──!」
 猫の目が光る。
 嬲られる女が嬲る男を哂う。胎内を限界まで侵され一番奥を開いた鈴口で押し上げられ、
お夏は、吼える。
「くれてやるサ──! アンタに、子で、も、なんでもっ、くれてやるよ──だから!
 だから、アタシも! アンタを喰うのサァ──!」
 深い。今までで最大の衝撃が、お夏の意識を砕く。刺し貫く質量が全身を瘧にかけ胎内
を強く収縮させる。
 狭まる肉のナカで熱が爆ぜる。剛直が激しく脈打つ。熱い粘液がお夏のナカに飛沫く。
 零れる。溢れる。男と女、繋がる場所から。肉と柔襞の合間から。肉に突き立つ爪の間
から。
 交神の儀は此処に成った。
 交神の儀に恋慕は必要ない。但し好意もしくは使命感は必要かもしれない。
 同衾相手の傷口を舐める赤猫お夏には、相手への恋慕も、打倒朱点の使命感もない。
唯、好意はあるかもしれない──閨で生まれた刹那の炎ではあるが、男には。男の一族
には充分であろう。
 呪いつきの一族が必要とするのは、お夏の“火”に秀でた“血”だ。お夏の身体でもなく、
心でもなく。
「構わないサ」──男の肉をぺろりと舐めて、お夏はくすくす笑う。
 男がお夏に灯した炎は旧い火の女神を十二分に満足させた。稲荷ではないが、供物には
御利益を。
「アンタには良い子をくれてやるよ。ソイツで、鬼をたくさん斬るといいサ」
 “神”たる赤猫お夏は目を細め、甘く囁いた。

181 :
猫娘はいいものだ
お夏ちゃんエロいよお夏ちゃん

182 :
GJ!
お夏の尻尾!お夏の尻尾!

183 :
ねちっこくて激しくて非常にエロいお夏ですねけしからんもっとやれ

184 :
良SSだらけなのにちょっとさびしい…

185 :
今さらだが捨丸と女剣士、超GJ !!!
捨丸が逃げようって言ったとこで号泣しました、マジ。
魂で捨丸と会えないかな〜と想像してます

186 :
この流れで誰か黒鉄右京と女剣士プリーズと言ってみる

187 :
捨丸、竜実竜穂、お夏の話を書いてくれたのは同じ人ですかね
本当にありがとうございます!

188 :
>>186
女剣士人気だな。やはり継承刀にはロマンがあるな

189 :
承知!!と言いたいけど書いてた話が全然違う話だった
ホームコメディを書きたくてやってしまった>>80-94のそのまた続編です
あまりエロくないけど子供が帰ってくるまで…っていいよねという話

190 :
呪われし一族の為だけに創られた鏡の中の世界、裏京都。
本物のそれより常に薄暗く一族に関わる者以外の全ての人間が亡霊に置き換わっているような地だが、こんな所も季節は存在している。
一月。朱点童子を討って尚短命の呪いに縛られる一族だが、余程の事が無い限りは誰でも一度は一年の始まりを見られる。
大雪の積もる一族の屋敷の庭園に、そんな彼らの中の一人の姿があった。
真っ白な地面の上で、縹色の髪をした『彼女』はごろごろと雪玉を転がしている。時折立ち止まっては、雪玉の大きさやら形やらを眠そうに半分閉じた目付きで確かめながら。
ただし、その見た目は常人で言うなら十を数えるかどうかと言った処の童女である。そして、ジトっとした半目は『火』の性質を示す紅色を湛えていた。
丁度人の頭程の大きさになった雪玉を軽々と持ち上げ、少女はとてとてと歩いていく。
やがて大きな縁側の一角に辿り着いた。一族の者が一人そこに座り、また一人うず高く積もった雪の上にぼんやり立っている。
「いやはや、玉一つを満足行く形にするのもなかなかどうして大変なものです。作ることとは壊すより余程むずかしい」
生後1ヶ月の癖に小役人か何かのような口調で、少女は縁側に座る者に語りかけた。
「その割にはちょっといびつだと思う…」
ちょこんと座りそう答えたのは、少女と同じくらいに見える緑の染料を顔に付けた赤い髪の少年だった。『水』の気質を示す少し細められた青い双眸が、困ったように少女を見ている。
「ははは、目のさっかくという奴でしょう。今からそのようだと私は姉として心配ですよ、桔音」
「僕は桔奈子の方がお姉さんだって未だに信じにくいんだけど…」
二人が口にしたように、少女と少年は姉弟の関係にあった。それも双子の姉弟である。
「母さん、できました。桔音はこれをいびつなどと言うのですよ、全くわが弟ながら困ったものです」
「お母さん、親子の間に気づかいってあまり必要ないと思うんだけど…」
二人の声を背に受けて、雪を弄っていた最後の一人が振り返る。
縹色の髪を垂らした、二人より十かそこらか程は上に見える『彼女』は少女と同じ目付きで緑色の視線を子供達に向けた。
「できた?じゃあきなこ、もってきて。きつねもいっしょにこっちきて」
生まれつき舌っ足らずな間延びした声で、子供達の母がそう口にする。
双子の姉は、桔奈子。弟は、桔音。
そして双子の母は、名を氷奈莉と言った。

191 :
氷奈莉の背後には、巨大な雪玉が鎮座している。人の背丈の数倍はあるだろう。しかも真っ赤に色を付けられていた。
桔奈子から受け取った人の頭程の雪玉を抱え、ひょいとそれに登りてっぺんに小さい方の真っ白な雪玉をくっ付ける。
雪達磨の頭と胴にしては異様に釣り合いが取れていないように見えるが、どうやら氷奈莉にとってこれが正しいらしい。
「お母さん、松葉…」
すたんとまた飛び降りた母に、桔音が青々とした松葉を渡す。どうやら飾りのようだが、氷奈莉は何かに納得いかない様子だ。
「んー……どうだったっけ、なんかちがう……うろおぼえ」
しきりに雪達磨の頭に松葉をかざし、首を捻って考え込む。そんな母に桔奈子が声をかけた。
「母さん、やはりきおくのみを頼りにするのはむずかしいでしょうか?」
「うん。よくかんがえたら、ここにちゅーもくしたことないからかたちおぼえてなかった」
「ふむ……急用を思い出したのでしばしお待ちを。桔音はそのまま母さんを手伝うように」
言うが早いが、桔奈子はすたこらと倉の方向へと走り出した。
「また桔奈子は僕に丸投げする…」
隙あらば家を飛び出す放浪癖のある母親譲りか、彼女は思い立つとすぐに行動に移す。双子の弟に言わせれば、単に落ち着きがないという話だが。
「お母さん、これ」
「ありがと」
ちょっと恨み言を言いながらも、きちんと黄色い小石やら紅の染め粉やらを縁側から持ってくるよく出来た息子の桔音であった。
雪達磨の巨大さを感じさせない軽やかさでひょいとまた登り、氷奈莉は黄色い小石を頭の目の部分に埋め込み紅を髪に当たるような位置に塗る。
ただ、まだ松葉は付けられないままだ。
「ただ今もどりました。時に母さん、少しくんれんをしませんか」
後ろ手に分かりやすく何かを隠しながら、桔奈子が戻ってきた。
「桔奈子はいつも思いつきで動くんだから…」
「いーよ。ゆきがっせん?」
「ええ、母さんと桔音が組になってください」
聞いただけなら微笑ましい会話だが、この親子が言う雪合戦とは文字通り合戦であり訓練だ。
元はと言えば先月屋敷に来たばかりの子供達を相手に氷奈莉が思い付いた訓練であり、その勝敗は『先に意識を失った者から負け』という単純かつ容赦ない基準で決まる。
「でも、きなこだけでだいじょうぶ?ひとりあいてのてかげんはまだやったことないけど…」
そう言いながら氷奈莉は雪を拾い、きゅっと可愛らしい手つきで握る。開いた掌の上に乗っていたのは、雪玉ではなく氷で出来た凶器だった。
横の息子の顔が固まるが、訓練と実戦をほぼ同一視する母は何の遠慮も容赦もなくそれを娘目掛けて投げ始める。
雪達磨だけを避けてそこかしこに刺さりめり込む氷の塊の雨を避ける一方の姉に、自分の投げる余地すらない桔音が心配そうに呼びかけた。
「桔奈子……むりだよ、いつも僕と二人がかりでやってお母さんに一度も勝てないのに」
「いえいえ、桔音――たしかに私一人では正直もう耐えられませんが、この桔奈子には心強い助っ人がいらっしゃるのですよ」
戦いの時は殆ど無言になる氷奈莉が十数個纏めて投げた、弱い鬼ならこれだけで仕留められるだろう威力の雪の鏃。
桔奈子の全身を強かに打つと思われたそれらは、なんと彼女の目の前で全て砕け霧消する。
「あんまりしつこく呼ぶもんだから来てやったらさぁ…やっぱり無視すればよかったよ」
氷塊を砕いたのは、小さな桔奈子の眼前を覆う雪よりも尚白い翼だった。
「はっはっは。いや実にご足労いたみいります、父さん」
やや大袈裟な仕種付きで桔奈子にそう呼ばれた翼の持ち主は、言葉通り彼女と桔音の実父。
かつて黄川人と名付けられた半人半神であり朱点童子と呼ばれた鬼の頭領であり、今は朱星ノ皇子と呼ばれる神である。

192 :
「あのさ、桔奈子。あれは戦いの時に親神を呼ぶ物だろ?こんな遊びに呼ばれても…」
呆れたような顔で、半目のまま得意そうにしている娘を諭す朱星ノ皇子。…に、単発式大筒の弾程の大きさの雪玉が投げつけられた。
唸りを上げて標的の頭を狙うそれは、常人が喰らえば昏倒必だろう。
朱星ノ皇子が目元を引きつらせて唱えた『花連火』により空中で蒸発した雪の弾を眺めて、やっと無言で攻撃を続けていた氷奈莉の動きが止まる。
「あー…きつとだ」
「今の挨拶は君もこうなりたいと言う意思表示って事でいいかい?」
子供達の両親のする会話にしてはこの家において尚異質だが、当事者達にしては慣れたものだ。
「まあいいではありませんか、どうせ戦いで父さんの力を借りることなどないでしょうし。くらで塩漬けにされるよりは七光のみたまもほんもうでしょう、と母さんも前におっしゃってました」
「うん。どうせきつとひまでしょ?そのへんでおとなしくしてるのがしごとみたいな」
「これでも君よりは責任ある立場にさせられてるんだよ。ったく、案の定変な子供に育ててンだから…元からだったかな」
と、ここで双子の姉である桔奈子がずっと黙っている桔音の様子のおかしい事に気付く。顔を伏せたまま、ぷるぷると小刻みに震え。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁおとぉぉぉさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「わっ」
空気をびりびりと振動させる大声と共に、『お父さん』こと朱星ノ皇子目掛けて突進してきた。勢い余って鳩尾に頭突きが入る。
そのまま父にぴったりとくっつき、ぐすぐすと嗚咽を漏らし始めた。
「桔音、君は静かな時と泣いてる時の差が激しすぎるんだよ。…また顔に落書きして」
「おと……おとうさっ、お父さんが……」
「…そんなに泣くなってばサ、ボクはお世辞にもこういうのが似合う相手じゃ」
「すだれハゲじゃなかった……」
「君は何を桔音に吹き込んだのか今すぐ教えてくれるかい、痛くないようにしたげるから」
冷静な口調で冷静ではない視線を送られたのは、当然ながら氷奈莉だ。
桔音は普段大人しいが、常人にはいまいち理解し難い理由で鼓膜が破れそうな声で泣くという困った癖がある。
「んー、ここにいるかみのけもきつとがだしてるんでしょ?だからあたしたちがいっぱいころしたらそのうちきつとハゲるんじゃないかなっていったら、きなこがみっかくらいおもいだしわらいしてきつねがしんじてうたがわなくなった」
「アハハ、君は本ッ当に面白い発想をするよね。お陰で今度は外さず心臓に当てられそうだよ」
「うぁぁぁぁ、お父さんが分かりやすい失敗の前振りするー――!!」
口だけで笑いながら剣を手元に呼び出す父とそれを表情一つ変えずに白羽取りする母、また失礼な理由で大泣きする双子の弟。
そんな傍目には伐としているように見える家族の間に、桔奈子がはいはいちょっとすみませんと割り込んできた。
「時に母さん、これならさいごの仕上げもとどこおりなく出来るのでは?本物がここにいるのですし」
「……あ、そっか。きつと、ちょっとうごかないで」
眠そうな目付きの娘の言葉に同じ目付きで感心したような表情をして、氷奈莉は説明もなく朱星ノ皇子を置いてあの雪達磨の方へ駆け出す。
「できた」
頭に松葉を貼り付けて、漸く納得出来たと言うような様子で飛び降りた。
そんな何度頭を痛めたか知れない腐れ縁の相手の奇行を眺めて、朱星ノ皇子にも彼女は何をしたかったのか合点が行く。
人の背丈の数倍あるやけに大きな雪達磨。体は朱く、頭は赤と緑で髪と頬に当たる部分を飾られている。
実はこの雪達磨、それ以外にもう一つ頭があった。体の中心にもう一つ人の頭の大きさの雪玉が埋め込まれ、石の目玉が嵌まった物だ。
「あざのかたちがうろおぼえだったから、ほんものみてくっつければいいってことだよね。ありがと、きなこ」
「はは、礼には及びませんよ。それにしてもこれがかのお姿ですか、なるほどつよそうです」
「お母さん、桔奈子…それはいいけど、お父さんの目がんでる…」
なない方がおかしい、と言う気力も彼から無くなっていく。
それ程この雪達磨の姿には見覚えがありすぎた。と言うかこれ、自分(と他一名)だ。
要するに、氷奈莉は阿朱羅の雪達磨を作っていたのである。

193 :
取り敢えず『七天爆』を唱え始めたら、いつ用意したかも知れない雪玉と言う名の凶器を投げつけられて阻止された。
「だーめー、せっかくうまくできたんだからー」
「ああ、物を作る時は気持ちを込めると上手く出来るって言うね。確かに悪意が籠ってるのを感じるよ」
「こめてないよ、きつとのためでもなんでもなくつくったんだし」
泣き止んだ桔音も控え目にギスギスとした会話に入ってくる。
「お母さんは……僕たちのために作ってくれたから……」
「ええ、母さんから父さんと戦ったお話をききましてね。その時の父さんがどのようだったのか桔音が知りたがりまして」
「雪だるまで見せてって言ったのは桔奈子だったよね…?」
「…つまり、ボクが『雪達磨の出来が気に入らないから』って史上最もどうでもいい理由で呼び出されたのは間違いないんだね」
「いーじゃんべつに、どーでもいいりゆうででてくるのすきでしょ?」
そう言う氷奈莉にも、嫁入りの相談目的で父神を呼び出した事があった。
頭痛がするので無言で帰ろうとする朱星ノ皇子に、子供達が纏わりついてくる。
「それにしても、父さんと母さんがききしにまさる仲の良さで私は娘としてはなが高いですよ」
「そうかい桔奈子、ボクは娘の目が節穴に育って仮にも父親として残念だよ」
「お父さん……お父さんの頭がうすくなってな……ひくっ」
「泣くなよ、桔音。それと、常識の著しく欠けた人間になりたくなかったら君の母親の言う事はこれ以上信じちゃ駄目だ」
自然に発言に皮肉を交えながらその応対をしていると、二人の母親が彼をじっと見ているのに気付いた。
横目で見てやると、いつも眠そうな目がぱっちりと開いている。普段隠れきった可憐な美貌が露わになるこの表情は、氷奈莉が余程驚いた時にしかしないものだと不本意ながら分かっていた。
「……何だよ」
「きつとが、おとーさんっぽい…」
「何処かの誰かが、ボクの身内全員にちゃんと父親をやるか見張るよう根回ししてくれたからね。お陰で一月心底居心地の悪い思いをしたよ」
「ねんにはねんをいれたほうがいいでしょ?ふたつのろいかけてもしっぱいするくらいだし」
「久々に本気で殴っていいかい?」
無遠慮にも程がある会話を交わす両親を眺め、双子の姉弟は顔を見合わせて目で会話する。
それから、まず桔音がちょこちょことまだ皮肉の応酬をしている二人に寄ってきた。
「……お母さん、僕たちお祭りを見に行きたいんだ」
亡霊彷徨う鏡の中の都でも、祭りは何故か行われている。一月の祭りは『餅と白雪祭り』だ。
「母さんは一しごと終えてお疲れでしょう、イツ花を連れていきますからるすばんを頼みたいのです」
京の都を独力で復興させた一族の屋敷は大きい。
故に家の仕事をしている執事の娘の姿は辺りに見えず、色々な意味でここにいるのが不自然な朱星ノ皇子の存在も気付かれていない。
「えっと…お母さんだけだとちょっと心配だから、お父さんもいてあげてほしいんだけど、だめ…かな…」
「ああ泣かないで下さい桔音、このままではいたいけな少年が泣いてしまうどうしましょうー」
下手な小芝居をしつつ、特に父親に向けて必で懇願する。こういう面でのしぶとさは二人揃って母譲りだ。
「――今回だけだよ、退屈なのは確かだしさ」
「…ありがとう、お父さん」
「はは、さすがは我々の父さんですね。それではごゆっくり、二人きりで宜しくおねがいしますよ」
「ん、いってきて。イツかにここのことバレないようにしてね」
それを知ってか案外あっさり折れてくれた父に声を合わせて礼を言い、何だかんだで仲のいい姉弟は早速屋敷の奥へと走って行った。
「…………ふたりきり」
ぽつり、と聞こえないような声で氷奈莉が呟く。その目付きは相変わらずぼんやりしていたが、口元は少し緩んでいた。

194 :
留守番を頼まれたにも関わらず落ち着きなくうろうろする氷奈莉の首根っこを掴んで、取り敢えず縁側に座らせる。
すかさず大きな翼を触ろうとしてくる彼女の頭をぺしんとはたき、朱星ノ皇子は嫌味たっぷりと言ったような視線を向けてやった。
「君の危機管理と子育ての能力は本当に優秀だよね。よりによってボクをこの家に呼び出して留守番までさせる辺り、桔奈子は順調に君と似たような思考をするようになってるみたいだ」
「そう?きなこはおとーさんにだとおもうけど。じぶんでもいってるし」
「まずこんな寝てるんだか寝呆けてるんだか分からない目付き、遺伝させた覚えはないよ」
「きつねはあたしにだよね。だからきつね、おとーさんにもにたいっていってかおにみどりのつけてるの。なくとすぐとれるけど」
「話聞いてる?」
防寒には全くならなさそうな、子供達の分より安物なのだろう着物から出た足を氷奈莉がぶらぶらと揺らしている。白い肌が雪に溶け込んで見えた。
「…寒くないのかい、それ。もう少しくらいはいい物着ても良さそうなもんだけど」
「あそぶときいつもやぶけるから、これでいい。こどもはかぜのこっていうし」
「まあ、君はいかにも風邪なんて引かなさそうだよね」
そんな話をしていると、視界に白いものが映ってくる。どうやら雪が降ってきたようだ。
すると、急に氷奈莉が立ち上がり両手をいっぱいに広げた。次々と雪が落ちてくるのを見て、口元を笑みの形にする。
「ゆきは、すき。おとーさんのうちにいっぱいあったから。ふゆもすき。あたし、ふゆにうまれたの」
その神威だけで辺り一帯を融けぬ氷室に変えられる神の娘であるが故か。そう言う彼女の息は、白くさえならない。
「きなこときつねも、うちにきたのはせんげつだからふゆだよね。きつとはいつうまれ?」
「…生憎、生まれた季節を覚えてられるような生い立ちじゃないんでね。大江山にしろ永久氷室にしろ、雪と氷の記憶はあるけどサ」
「とつげきー!」
「聞けっての」
庭を埋め尽くす雪に顔面から飛び込み、氷奈莉はごろごろ転がり始めた。見ているだけで寒々しいが、楽しいらしい。
転がりながら、あの雪達磨に辿り着く。寝転がった視点で見上げて、そのまま朱星ノ皇子に話しかけてきた。
「あたしがつくって、きなこときつねがてつだったゆきだるまだから、これってかぞくのがっさくだよねー」
「否定したい部分しかないんだけど」
「うれしくない?まえにおとーさんのゆきだるまつくったら、おとーさんすごくよろこんでくれたのに」
交神の時から薄々感じてはいたが、どうも氷奈莉は『黄川人』と『阿朱羅』と『朱星ノ皇子』の区別を全くしていないらしい。
仮に三つの姿を同時に見せても、全部同じだと大真面目に言いそうだ。
そのずれた物の見方が、腫れ物扱いの自分には気が楽だ――と思いかけ、朱星ノ皇子は顔を引きつらせて首を軽く振った。
(なーに血迷ってンだか…)
幾ら何でもそれはないと考えていると、氷奈莉がいつの間にか立ってこちらに向かって来ている。
薄い草履を脱いで縁側から中に上がる彼女に目をやると、思わず吹き出してしまった。当然、悪い意味で。
「…前、前!本ッ当君ってはしたないとかそう言う常識が無いよな、仇相手にあんな事頼んでくるし!」
「きつとがじょーしきをとくのってなんかまちがってるとおもう」
つまり、雪の上で転がって遊んでいたせいで氷奈莉の着物が豪快に乱れていたのだ。朱星ノ皇子の視点からだと、透けるような肌色の胸に桜色の飾りまで見えてしまっている。
見ていられず強引に着物の前を合わせてやっていると、氷奈莉が彼の顔をじっと見上げていた。「何?」と声をかけるとジトっとした視線が揺れる。
「きつと、……せ、のびた?」
確かに朱星ノ皇子の外見は、一度成長し直した際に勢い余って朱点童子をやっていた頃より若干成熟していた。交神の月には、特にそれを言及されなかったが…
「今更気付いたのかい?一応一月はうちに置いてやってたろ、半分くらいどこかに行かれてたけどさ」
「ないめんにぜんぜんせいちょーがみうけられなかったから、めがいかなかった」
つくづく可愛げの無い口振りだが、いつもは間延びした話し方が少し早口になっている。顔もうっすらと赤い。もしかしてこいつ、照れてるのか。
そこを意識すると、まだ少し崩れている着物や伏せた睫毛やらから妙な色気が出ているように思えてくる。平常時との差が、あの時や交神の時よりも大きい。
小さい唇の隙間から、「あ」と微かな声が漏れてももう遅い。
何せ、その時にはもう朱星ノ皇子が氷奈莉を畳の上に押し倒してしまっていたのだから。

195 :
折角合わせた着物の前をまた開き、氷奈莉の右胸がむにりと掴まれる。交神の儀の時から大きさは変わっていないようだ。
と言うより、呪われし一族の者にしては珍しくあれからそう彼女の外見は変わっていない。童顔で背の低い、じきに娘より年下に見られそうな外観は体質なのだろう。
しかし、交神から三月程度しか経っていないと言うのに氷奈莉は不意に強い色香を出すようになったと思えた。
普段はそんな物欠片も無いのはそのままだ。それなのに、今自分は確かにこの女に欲情している。
下手に天才児の生まれ故に冷静にその事実を認識してしまい、朱星ノ皇子の口から舌打ちの音が漏れた。
「…きつとからこうされるの、はじめて」
目をしばたたかせて、氷奈莉が静かに呟く。そう言えば、最初の時も交神の為天界にいた時も交わりを求めたのは全て彼女からだった。
「ん、ぁ」
乳首をきゅっと捻ると、ぴくんと震えた。ここだけで達せるくらいには氷奈莉は胸が弱いとよく知っているので、責めを重ねる。
低い体温が上がり、温まりつつある肉が掌に吸い付いてくる感触も、朱星ノ皇子は不本意ながらしっかりと覚えていた。
「随分盛り上がるのが早いようだけど…君、弱くなってないかい」
両手で両の乳房を弄りながら掛けられた彼らしい意地の悪い声に、氷奈莉はジトっとした視線を向けつつ「さっしてない」と不機嫌そうな声色で呟く。
それでもそんな乙女心らしきものを見せたのは一瞬で、後は素直に快楽を享受していた。
「くふ……っ!んん、はぁ、あ…」
心臓のすぐ上に食い付かれ、目を細めて身を捩らせる。やけにそそる仕種だったが、ずっとそんな調子でもいられないのが氷奈莉と言う呪われた娘だった。
「ふふ、たべられてるっぽくみえる…たべちゃう?こんどはよけられないようにきをつけてね」
「…貫くならまだしも、食べるのは御免だよ。君の心臓なんていかにも不味そうじゃないか、絶対毛とか生えてるだろ」
「りょーやくくちににがしっていうじゃん?」
耳飾りを触りながら変な事を言ってくる短い腐れ縁の相手に、朱星ノ皇子は口を離して軽口を返してやる。
手を下腹部に滑り込ませて臍の辺りを焦らすように撫でれば、氷奈莉が唾液に濡れた胸の上で右手をきゅっと握った。
「君に遠慮されると気持ち悪いって前に言わなかったっけ?」
その思考を読む事にも不本意ながら馴れてきた朱星ノ皇子の言葉に反応して、彼の衣の傍で彷徨う白い左手が小さくそれを掴んでくる。
処女の身で性交に興味津々なれど抵抗は無かった氷奈莉だが、こうした変な点で初々しい反応をする。
「ん、ひくっ……ぅ、そこばっかり」
露骨に焦れったがってぐいぐい衣を引く手付きには、確かな期待が籠っていた。
それが直に感じ取れるだけで、目の前の身体に余計惹き付けられるのはどういう訳か。
「どうすれば君を黙らせられるか、考えてたからね」
結論を出したくないから、望み通りにしてやる。鎖骨に噛み付きながら指を伸ばしたそこは、少しだが滑りを持っていた。
身体の中で一番熱いのはここだ。膣圧と血を集わせた体温でそれを歓待しながら、氷奈莉は眠そうな目に潤みを含ませる。それは紛れもなく女の目だ。
雪の降り積もる音と衣擦れの音だけが立つ静かな空間に、やがて微かで淫らな水音も立ちだした。
「ゆびだけでいいの?」
挑発の意も感じられない本当に独り言のようなその言葉に、朱星ノ皇子は小さく鼻を鳴らして指を引き抜き淫核を爪弾く事で答える。
「分かって言ってる癖にねェ。本当、君の言う事は一々癇に障るよ」
「あふ……っ、はっ、おたがいさま…じゃん?」
中途半端に着ている状態の着物を自ら只の敷物にして見せた氷奈莉が、くっくっと喉奥で笑っていた。

196 :
亡霊行き交う京の都。様々な雪像の間を縫うように駆け回る二人の子供から目を離さぬよう、執事の娘が付いて歩く。
「お二人とも、あんまり遠くまで行ったらメッですよー?」
「…桔奈子、だから落ちついてって僕は言ってるのに」
「おっと面目ない、ついついはしゃぎすぎてしまったようで。しかしイツ花、君もよくついて来るものですね。そこらの大人ならふり切る自信はあるのですが」
「はぁ、はぁ…お二人のお母様に比べれば可愛いモンですよ。氷奈莉様はちょっと時間が出来ればあの手この手でいなくなって、随分手を焼きましたからネ。それがお子を持ってあんなに大人しくなられて」
一族全員の母代わりのような彼女から見れば、双子の母はあれでも相当丸くなった方と言えた。何しろ、元は一族きっての問題児だ――その変化の理由までは知らないのだが。
やはり母親になれば変わるものですねとしみじみしているイツ花を背に、桔音が桔奈子にそっと耳打ちをする。
「…で、桔奈子。今のところ上手くいってるけれど、いつまでこうしてるつもりなの?」
「おお、楽しいのであやうく目的を忘れるところでした。そうですね、うわさに聞く『ふうふ水入らず』の時には子供は空気をよんで日がくれるまで遊びに行くものだそうです」
「そう…お父さんとお母さん、何してるかな。家がこわれてなければいいんだけど」
「やれやれ、そんなことも分からないので?わが弟ながら子供ですねぇ桔音は――雪がっせんと来たら次はまくら投げに決まっているでしょう。母さんの投げるまくらは、くんれん疲れの我々にようしゃなくおそいかかりますからね」
「…それはお母さんが僕たちに油断しないようにって教えるためにやってることだから、お父さんにはいらないんじゃないかな…」
生後1ヶ月にして家庭内の空気を読む姉弟が、そんな話をしながら祭を楽しんでいた頃。
「っはぁ、はあっ……ぜんぶはいった」
枕はおろか布団も敷かれていない畳の上で、件の二人は深くまで身体を繋げていた。
己に入り込む男の腕をぎゅっと掴み、昂る裸身がその柔肌を汗を始めとした体液で濡らしていく。
解れた胎内がぴったりと寄り添う雄の形は、交神の際にしっかりと身体に覚えさせた。他に何かを覚えるつもりもない。
あの感情を知ってから、氷奈莉は拒まれるのもやむなしと認識した上でそう決めている。一方通行の感情だろうけど、と過度に冷静に考えながら。
我が子らを孕んでいない胎をぐちゃぐちゃと掻き回されて、背筋から這い上がる感覚に従いぶるるっと震える。
「んぁあっ、はっ、ふ、はぅっ!くふぅ、ぁ……っ、きなこときつねがいまかえってきたら、たいへんなことになるよね…?」
「…分かってるよ、そんな事!」
まだ月は半分も過ぎていないから、討伐に出た他の家の者らが戻ってくる心配はあまりない。朱星ノ皇子が黄川人だった頃の庭、地獄で力を蓄えに蓄えている筈だ。
それを差し引いても、執事を連れて遊びに行った子供達が帰って来れば色々な意味で言い訳が出来ない。
…のだが、今の氷奈莉の口振りはどう聞いてもその可能性を恐れていると言うよりは寧ろ面白がっていた。実際には、日が暮れるまで帰って来ないのだが。
「ったく、これだから母親って生き物は…」
「んふー…ははおやにしたちょーほんにんがいっても、いまいちせっとくりょくにかけるよね?」
「なりたくてなったのかと言われれば本気で否定してやるよ」
最中でも交わされる色気の乏しい会話が当たり前になりつつある気がするのが、朱星ノ皇子は妙に腹立たしく感じている。
それを口で示す代わりにがっと乳房を掴むと、氷奈莉が熱い吐息を漏らして翼に手を回してきた。
その動きに伴って腰がうねり、元から体同様小さい胎内がきゅぅぅと締まってくる。接近戦も心得る弓使いの身体は、拓かれても決して開きすぎる具合にはならなかった。
だから、そろそろ相手も堪えられなくなる。
「――く、っ」
「あ……きつと、でる?いいよ」
小さな声でそう言って、氷奈莉は両脚で朱星ノ皇子の体を挟んできた。そのまま最奥で精を受け止める。
紅潮した頬に手を当て、ゆっくりと瞬き一つ。
「ふぅっ……もうちょっと、していい?まだだいじょうぶだとおもう」
絡めた脚を放し、熱の籠った視線を金の瞳に送ってきた。
その表情に何かを突き動かされ、朱星ノ皇子が軽く息を吐く。
「あと一回でよけりゃ、聞いてやってもいいよ」
「あ、いまのちょっとかみさまっぽかった」
冬の日は落ちるのが早いが、今はまだ余裕がありそうだった。

197 :
「ここのぼーれいとはなしするのっておもしろいよ。しんでるだけあってじんせーけいけんがほうふだから」
「ああ、そう…で、それとこの体勢に何の関係があるのさ」
いつの間にか雪が止んでいたが、寒いのは一緒だ。
それで全裸でいると言うのに、氷奈莉は寒がる素振りも見せない。氷雪針地獄に比べれば何でもないと言えばそうだが。
「もう少し」と求めてきた彼女は今、先程と逆の形―朱星ノ皇子にのし掛かる体勢―になっていた。
「ん、あたしまえからぎおんにあそびにいってたんだけどね。こっちのきょうのみやこにもあったからいってみたら、ゆーかくのひとのぼーれいがいっぱいいたの」
生まれた時から余命僅かであるからかはたまたそんな事を気にも留めていないからか、氷奈莉は少しでも暇が出来ればあらゆる手段で『散歩』に行き家の者の眉をひそめさせてきている。
祇園と言えば京一番の花街だ。都が朱点童子の破壊から復興しきった時に生まれた彼女は、好奇心の赴くままに金を持って主にあまり教育上よろしくない知識を得ていた。
幾ら見た目や話し方が子供っぽかろうと、呪われし一族の人間をどうこうしたがる命知らずはいない。よって遊びは滞りなく達成され、そのせいか氷奈莉の言動は可愛げに欠ける。
鏡の中の都に住む場所が変わった程度では、そん彼女の行動原理は変わらなかった。とは言え、交神を経てからはかなりそれもなりを潜めていたのだが。
「そのぼーれいにおしえてもらったんだけど、やりかたっていっぱいあるんだね。これがよんじゅーはちのひとつで、しぐれちゃうすっていうの」
「友達は選んだ方がいいと思うよ」
目的のブツのすぐ傍で、秘裂を開いて見せる。その指を伝って止めどなく蜜が滴っていた。
「…いれるよ。だから、すきにしてね――ぅっ」
囁くように言いながら勝手に腰を沈め始めるので、それが気に入らなかった朱星ノ皇子は掴んで一気に挿れさせる。
「これで主導権を握った気なら、そいつは浅はかな考えだゼ」
柔らかくなった胎内の襞が、この体勢でも押し入ってくる硬いモノを包むように迎える。それに対応する動きで身体を縦に揺らす氷奈莉の表情は、満足げだった。
「うん、これでいいの…っ、ふはぁ、まかせてるから……!」
時雨茶臼と言う体位は一見女性優位のようであるが、その実己の上でがら空きになった身体を男性が『好きに出来る』体位でもある。
「ひぁうっ、んふぁっ!あ、ぁ」
それにすぐ気付いた朱星ノ皇子が、氷奈莉に動かせながら上半身を責めてきた。狙いはやはり胸だ。
掌に丁度収まる大きさの肉に指を強く食い込ませ、がちがちになった乳首を潰すように摘まむと喘ぎ声から飄々とした余裕が消えていく。
彼はこの境目が気に入っていた。仇敵を目の前にしようがの一歩手前まで追い詰められようが揺らがぬ精神の、まるでそこらの人間のように揺らぐ瞬間が。
「――っ、くはぁぁっ!」
びくびくと全身を痙攣させて、氷奈莉が動きを止めた。ずっぽりと雄を収めた結合部から、だらだらと体液が零れる。
しかし、絶頂した直後だと言うのに一度深呼吸してからまた動き出す。息もつかないその奉仕活動の為に、胎内は絶え間無く収縮を繰り返した。
「随分、浅ましくがっつくじゃないか…!」
憎まれ口を叩きながらも、相手も止まる事など出来ない。交神の儀の最初の夜、この二人は片方が疲れ果てるまでまぐわい続けている。それは決して氷奈莉のみの意向ではない。
「ふぅ、んくぅぅっ、……だって、せっかくきつとからしかけてきたんだから。あたし、うれしかったんだよ」
思わず息を飲む。喘ぐ最中にぽつりと言った際の氷奈莉の微笑みが平常と別人のように淫らで――それ以上に、美しかったから。
どうしてこんな、外見も口振りも二児の母らしからぬ生意気な女にこうも意識を奪われるのか。朱星ノ皇子は、わざとそれを考えずに。
ぐちゅぐちゅと血よりは大分水に近い液体の奏でる音を聞き届けながら、腰を突き上げ充血しきっていた淫核を指でくっと押した。
それが、この奇妙な会瀬への止めとなる。
「ぁ、また…いっしょに、きて、ふぁっ、ひ、ぁ、あぁああぁっ……!」
弓なりに背を反らし、氷奈莉は再び達する。一呼吸置いて注ぎ込まれた精液を、結合部から溢れさせて。

198 :
「あれ、まだいたの?」
わしわしと雑に手拭いで頭を拭きながら、氷奈莉が縁側で例の雪達磨を鬱陶しそうに眺める背にそう声をかけてきた。水と火の術で即席の湯浴みをしてきたようだ。
「帰りたいのは山々だけど、子供に留守番頼まれてる最中にやるだけやって帰るなんてそこらの下劣な人間じゃあるまいしと思ってね」
「わー、じつのおかーさんとそだてのおかーさんおとーさんをおににしておばさんをかんきんしたひとがなんかいってるー」
成人しても舌っ足らずが直らなかった幼児のような口調を最大限に活かした毒を吐きつつ、その隣にぽすんと腰かける。
「そういえばさ、ぜんぶなかにだしたけどよかったの?」
「君の発言は常に順番がおかしいよな」
面倒臭そうな視線を向け、それでも朱星ノ皇子はその直接的な疑問に答えてやった。
「種絶の呪いは『人の営みを断つ』呪いなんでね。相手が神で、それも地上ではなく天界でコトを行うなんて搦め手を使ってどうにか誤魔化せてるもんなのサ」
つまり、相手が完全な神であっても地上で交わる以上人の営みとして無効化されてしまうらしい。そもそも交神で子孫を残させるなど、本当にやると想定していなかった『えげつない』手だ。
「へー…だからなかにだしほうだいだっておもった?」
「もっと別の呪いを使ってればこんな奴が出て来なかったのにな、って思ったんだよ」
そんな言葉を交わしながら、氷奈莉が手に握っていた髪結い紐で前に出した長めの髪を二つに結い始める。
「君でもそんな事するんだねェ」
「おとーさんがさいしょにこうやってゆってくれたから、とーばつのときとかやる。ふだんはめんどくさいからやんないけど」
地獄で戦った時も結っていただろうか。し合いの相手の髪型など気に留めないから、記憶には無かったが。
結った縹色の髪の房をぽふぽふと触りながら、氷奈莉は相変わらずの目付きで朱星ノ皇子の顔を覗き込んだ。
「…きつとはたとえば、きなこがかみゆったらいいっておもう?」
「え?…まあ、君みたいに興味もなさそうになるよりはいいんじゃないかい」
「そっか。はなしはかわるけど、こくしむそーきゅうとこきゅうあさひだったらきつとはどっちのほうがさきにしぬ?」
「色々言いたい事はあるけど好きにしなよ、桔奈子に持たせる弓の話なんだろ」
「うん、きつねのやりはきまってるけどあたしはこきゅうあさひのがすきだからどうしようかなーって」
ぶらぶらと脚を揺らし、矢やら爪やら色々と刺したり挿されたりした仲の相手にそのまま続ける。
「いっかいたたかったけど、ひるこすごいつよかったし。きなこもきつねも、きつとのひとりやふたりくらいならさくっとやれるくらいじゃなきゃね。えものもくんれんもぬかっちゃだめなの」
この鏡の中の京は、呪われし一族が天界の最高神と戦う為に作られた場だ。
ここに誘った朱星ノ皇子――黄川人は「ビンタの一つもくれてやりたいと思わないか」と言って唆したのだが、その最高神の真の目的は一族を縛る怨念を受け止め浄化する事にある。
…と言う話を聞いて知っているのは、氷奈莉と彼女がそれを教えた二人の子だけだ。
「その物言いはともかく、勝手にしろよ。どうせ今のボクは半分くらい蚊帳の外なんだ、姉さんも本当は只の暇潰しかも知れないし…他にする事ないのかよとも思うけど」
「しゅみとじつえきをかねてるんじゃん?これいじょうてんかいでうちのはばつをおおきくされてもじゃまだろうし、のろいさえとけばあとでいくらでもつごーのいいはなしができるもの。きなこたちのしそんとかにおんをうっててごまにするとかねー」
からかうような声色で、大江山にて絶賛くつろぎ中の最高神に対する見解を述べてみせた。氷奈莉は利用される事に頓着しない。したいようにするだけだ。
「君は長生きするよ。憎まれっ子世にはばかるって言うし」
「あたしのいきてるうちにはとけないとおもうよ?きなこときつねと、ほかのこたちにはまにあわせるけど」
あっさりとそう言って、隣にいる翼から目にも止まらぬ速さで何枚かの真っ白な羽根を引き抜いて笑う。
「これもらっていい?きなこときつねにあげる。もうすぐかえってくるから」
「抜いた後で言うなよ。…もうそんな時間か、じゃあそろそろ消えようかな。ボクがここにいる事より間違ってる事なんか早々ないからね」
その言葉を皮切りに、朱星ノ皇子は雪の上へ出現させた転移の印の中へと消えて行ってしまった。
ぼんやりとそれを見送って、氷奈莉がぽそりと何かを呟く。それから、立ち上がって家の門へと走って行った。
(ほんとは、べつにまちがってないんだけど)

199 :
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁおかぁぁぁさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
門の前で待っていた母に、桔音が大音量で泣きながら突進して来る。
頭突きが鳩尾に入りかけるのを上手く食い止められた。まだ子供ながら、槍使い向きの突進力だ。
「よしよし、きつねどうしたの?」
「いえいえ、大したことではないのですよ母さん。祭りでもちをもらったのですが、亡霊のついたもちが思いの外ふつうの味だったと桔音が泣きまして」
「只今戻りましたよ、氷奈莉様。どっさり貰って来たから暫くはお餅で食費が浮きます!」
続いて、桔奈子とイツ花も門をくぐって来る。
「イツか、ごはんできたらよんで。それまでにわでくんれんするから」
「かしこまりました、今日は早速このお餅でお雑煮を作りますネ」
餅でいっぱいになった風呂敷を持って、イツ花が屋敷へと引っ込んで行った。それを見計らい、桔奈子は母に胸を張ってみせる。
「どうです母さん、我々の作戦かちでしょう。ふうふ水入らずとやらはたんのうできましたか?」
「ん、まあできたっていえばできたのかなーってかんじだけど…」
「おっと皆まで言わなくてもこの桔奈子は分かっていますよ。父さんが相手なら枕なげもはくねつしたでしょう?どうですこの父ゆずりの朱色の脳細胞のすいり力は」
「ひっく……僕は桔奈子のその自信がどこから来てるのか、ぜんぜん分からないよ」
子供達のそうした様子を見て、氷奈莉は薄く笑い二色の髪を両手でくりくりと撫でる。された二人も揃って笑顔になった。
「そう言えば母さん、かみを結っているので?初めて見ましたが」
「うん。きなこにもやってあげるからね、くんれんのまえに」
「…お母さん、その羽根は?」
「イツかにおねがいして、あとできなこときつねのえものにつけてもらうの。のこりは…あたしがもらって」
髪結い紐を片方外し、髪と羽根と一緒に結わえ付ける。大きく真っ白な羽根は、普段飾り気の無い氷奈莉にも不思議とよく似合うように見えた。
「…お母さん、それ、いいと思う」
「ありがと。じゃ、くんれんはじめるよ。ちょっとはやいけど、じごくをみてもらおうとおもう」
「はは、母さんが言うと一切しゃれになってませんよ……家族割引とかききませんかね?」
「ふふ、むり。かぞくだけど、ね」
二人の子供にその母親、一人だけこの場にいない『家族』が屋敷の庭へとまた向かう。
「ういじんのまえになったら、おかーさんがごはんつくってあげようか?ちょっとじょーたつしたよ、イツかがあんまりなみだめにならなくなったし」
「…ありえないほど手を切っても気にしないの、直した?楽しみにするからがんばって、お母さん」
「母さんは我々が来る前にいえのことをならいだしたそうですね、やはりイツ花の言うようにしんきょうの変化があったので?」
「ん、あれだよ。はなよめしゅぎょう…いまからやっといたほうがいいかなーって。げんしつはとったからだいじょうぶ」

この日から何ヵ月も後、全てが終わる本当に直前に氷奈莉は逝った。討伐に出ない時もずっと結うようになった、白い羽根と髪を束ねる髪結い紐と一緒に。
成長した双子はその瞬間に泣いていない。
悲しむには母の表情があまりに幸せそうで、何よりこれが母の本望なのだとこの頃にはすっかり理解していたから。
同時に、天界は呪われし一族最後にして最強の氏神を迎える事になる。
その後呪いの禊が見事完了し、終戦を遂げ各々の道を歩む一族の者達を氏神や親神が見守るようになっていた。
相変わらず一緒の双子の姉弟はと言えば、しょっちゅう天界を抜け出して降りてくる女神と時たま現れる男神に護られ好きなように生きたのだそうだ。

ロリ母親というワードにもう爆発寸前だ…行くぞ!と脳内が盛り上がった結果
幼な妻に下手な愛情表現されたい

200 :
うひょーいいよいいよー

201 :
ひなりんの可愛らしさが増し増しに
GJ!

202 :
俺の脈動がわかるか?
ありがとう本当にありがとう愛してるぜ
げんしちが「言質」だと気付くのに時間がかかった俺涙目w
げんちと読んでたw

203 :
GJ
朱星一家が可愛すぎて色々マッハ

204 :
下諏訪竜実の「手をつないでいい?」という台詞が、実は彼女は目が見えなくて
「あなたのいいとこ見つけてあげる」という台詞は、頭の両側についてる龍眼のような玉で、目が見えない代わりに本質を見抜く事ができるということだったら…
諏訪の甲賀三郎伝説にいたく感動しただけで、キモい発想だな俺って事はわかってる

205 :
>>204
竜実ちゃんの交神台詞は段階踏んで妄想できるからな。色々広がっても仕方がない

206 :
常夜見お風が相手のやつ見たい

207 :
お風さんは割りと淡々としたタイプかと思ってたので
4段階目の交神台詞は結構驚いた

208 :
堪えてきたのが八回目で爆発するって感じで好きだな>常夜見お風
台詞変化はホント良リメイクだったと思う

209 :
エロ無しの俺屍創作で結構見かけるのが
「大江山クリア直後の一族が、御所の人々、選考試合の参加者や民衆から憎しみをぶつけられる」
鬼朱点を倒したことによって、さらに状況が悪化(鬼の強化、ダンジョン追加)して
関わった一族が処刑されたり、村八分にされたり、京から追放されたり…。
脅されたりして泣く泣く身を捧げる…って展開が見たいが、俺には文章にする能力が無いort

210 :
>>186
右京さんの交神台詞はリアルで仕事に疲れた女の心を掴むような包容力に溢れている
ずっと無理して強がっていた女当主が黒鉄右京の前でだけ素を見せてしまうとかいいんでないの

211 :
イツ花の事が好きだけど手を出せない一族の男が昼子にイツ花コスさせて交神、元は同じ存在だったのに自分には見向きもしない交神相手に屈辱感とイツ花に嫉妬する昼子、何も気付かずのほほんと茶を啜るイツ花
何となくそんなのが読みたくなった

212 :
好きな神様晒そうぜ
とりあえず万珠院紅子様はいただいた
デザインが全女神で一番好きなんだ

213 :
僕は魂寄せお蛍ちゃん!!

214 :
清楚に見えて実は…なくららさんはもらっていきますね

215 :
常夜見お風様のおでこペロペロしたい

216 :
松葉のお甲好きだけど、少数派?

217 :
>>216
最後の交神台詞でときめいた。ギューしてって奴w
でもアルビノ可愛い白虫お真由様

218 :
リメイク版は能力微妙になったけど、やっぱり木曽ノ春菜が1番だな

219 :
うむ

220 :
夕子さんの装飾品ひとつひとつ外していって女の顔させたい

221 :
>>220
すごく…いい発想じゃないか…
いっぱい着てたらそれだけ脱がす楽しみもあるってことか

222 :
蓮実さんの頭ナデナデしたい

223 :
連レスごめん
蓮実じゃなく蓮美だった
罰として、四人併せの七天爆くらってくる

224 :
蓮美様はツンから徐々にデレて素直に心開いてく所が見たくなる

225 :
雲を突く高さの九重楼、その最上階の風雷の間で、塔を揺るがすほどの激闘が繰り広げられていた。
はるか昔この塔に幽閉された二柱の神・太刀風五郎と雷電五郎と、四人の人間。
いずれも傷を負っていない者はおらず、剣戟は雷鳴の如く閃き、怒号は嵐と化して九重楼に響いた。
戦いを始めてもう何手目か、太刀風五郎が繰り出した鎌鼬が大槌を構える壊し屋の娘を襲った。
真空の刃で全身をなます切りにされ、血に染まって倒れるかと思ったが、壊し屋は逆に前へ駆け出すような体勢をとった。
後列に控えていた踊り屋の娘が一歩前に踏み出し、舞うような動作で扇を一振りする。
軽くあおいだだけに見えたが、扇が起こした風が気流の壁と化して鎌鼬を相するや否や、太刀風五郎に生じた隙を見逃さず
壊し屋の娘が飛び出す。
速鳥の術のせいもあるが、重装のわりには恐ろしく素早い身のこなしで娘は大槌を振りかぶる。
振り上げる時は羽根よりも軽くなり、振り下ろす時は鋼鉄の重さと化す天ノ羽槌がうなりを上げて風神を襲った。
風よりも速い連打をまともに横面に喰らった太刀風五郎は、常人なら頭が砕けているはずの打撃にも「やるじゃねえか」と笑った。
「次はこっちの番だ!」
太刀風五郎が肩の風袋を開くと、九重楼ごと吹き飛ばされそうな竜巻が四人を襲う。
容赦ない風圧に全身を打たれながらも、踊り屋の娘は指で印を組み雷の術の詠唱を始めた。
残る三人がそれに続く。
術の併せが狙いと気付いた雷電五郎の落雷が踊り屋を撃つ寸前、四人は同時に詠唱を終え、雷術の併せが発動した。
かの神の名を取った術『雷電』の四人併せで威力を最大に増した雷光が迸り、二柱の神は攻撃の手を止めた。
「こりゃ参った、降参、降参!」
さっきまで闘を繰り広げていたとは思えないさっぱりした口調で、風神と雷神はなおも得物を構える二人の娘を制止した。
「もうお稽古は終わり? せっかく面白くなってきたのにー」
「今日こそ八手で詰みにする、と言ったのは乱でしょう、槌を振るい出すと我を忘れるんだから」
白綱のたすき掛けも凛々しい妹を、肌もあらわな舞装束の姉がたしなめる。
踊り屋のお絶(たえ)と、壊し屋のお乱(らん)。
響きとは裏腹に物々しい字の名前を持つ彼女らは、顔立ちも気質もまるで違っていたが、同じ日に生まれた双子の姉妹だった。
「強くなってくお前等を見るのは結構楽しかったぜ!」
「あたしも五郎様たちと戦うの、結構楽しかったよ」
一族にとって、五郎達は倒すべき敵と言うよりは、ある意味で自分を鍛える師のような存在だった。
生まれながらの壊し屋と言ってもいい素質を持ち、その通り初陣から前線で槌を振るい続けてきたお乱には、
この二柱に認められたい思いこそが強くなる原動力であった。
五郎達を九重楼に縛り付ける『朱の首輪』の呪いは一族と二柱が戦いを重ねるたびに薄れてゆき、そして今、
『一族の力が彼らを超える』条件が満たされ、五郎達は朱の首輪からついに解放された。

226 :
「これでようやく、お二人とも天界にお帰りになれるんだな」
「うん」
「良かったね、太刀風様、雷電様……」
世代を越えて戦い続けていた相手だけに感慨深く、やりとげたという思いが四人の胸を満たした。
激しい戦いで華麗な衣装は破れ、肌は傷だらけにもかかわらず、大輪の牡丹が花開くような満面の笑顔でお絶が声をかけた。
「それでは、雷電五郎様、私達との約束覚えていらっしゃいますよね?」
「……約束?」
「私と乱が初陣の時に『わしの名と同じ術で勝ったらお前を嫁さんにしてやる』って仰ったじゃありませんか」
今まで手に入れた術の巻物の中で、あらゆる敵を葬る『七天爆』や、同じ雷の術でもより強力な『印虎姫』といった術を
使えるにも関わらず、あえて『雷電』にこだわった理由だった。
「あ、あれはだなぁ、物のはずみで……」
「ひどいっ」
口ごもる雷電五郎に、お絶が悲痛な声を上げた。
さっきまでの鬼を欺く武者ぶりが嘘のようなしおらしい仕草で、顔を手で覆ってよよよと泣き崩れる。
「ええ、確かに私達は取るに足らないちっぽけな人間の娘です……でも、五郎様たちがそんないい加減な気持ちで女心を弄ぶ方だなんて
思いたくなかった……ううっ」
「五郎様、そーいうわけなので天界に戻られたら、『あなたの娘達は不実な男神とは生涯交神しません』と母上の印虎ひかる様に伝えて下さいね」
「か、勝手に話を飛躍させんな!何なんだバカヤロウ!」
『風』の能力に長けた双子姉妹の母神・印虎ひかるは物静かながら苛烈な性格で知られており、敵に回すもの全てを滅ぼしかねない破壊の女神だ。
さしもの風神雷神といえど、天界に復帰して早々彼女に睨まれるのはぞっとしない。
「まあまあ、交神の話は来月でもできるだろ」
「それに神様の方に拒否権はないしな」
一連のやりとりをニヤニヤしながら見ていた剣士と槍使いがようやく仲裁に入った。
お絶は泣き真似をやめてけろりとした笑顔に戻る。
「では、私と乱の事、よろしくお願いしますね」
「よろしくねっ!」
「……女って怖えぇなぁ」
顔を見合わせてウフフと笑う姉妹に、五郎達も顔を見合わせてため息をついが、別に彼女らが嫌なわけではない。
初陣の頃から知っているだけにまだほんの子供という印象が強く、姿は一人前でも交わって子を成すという事に今一つ実感がわかないのだ。
「……それにしても、こんな短い間にむやみに強くなりやがんなあ」
太刀風五郎は剣士が手にした火の力を纏う継承刀に目をやり「まっ、あいつの手助けもあったみたいだが……」と一人ごちた。
「わしらはここでお役御免だな、あとはてめェで何とかしな。じゃあな、人間!」
「あばよ、人間! あまり仲間うちでケンカすると上からカミナリ落とすゼ!
 それと……寝る前には 歯ァみがけ! ほンじゃ、達者でな!」
「雷電様、太刀風様、お元気で!」
どこまでも人のいい台詞を残し、二柱の神は天に帰って行った。
いつの間にか雷雨は止み、風が雨雲を払った後には輝くばかりの見事な虹が青空に架かっていた。

227 :
神々は天界においてそれぞれ神域と呼ばれる住処を持ち、その神域の様子は支配する神の性格ごとに違う。
春の女神の神域は常春で一面に花が咲き乱れ、また、高位の神にもかかわらず質素な茅葺きの家に住んでいる者もいる。
太刀風五郎と雷電五郎が数千年ぶりに自らの神域に戻った時、二柱は愕然とした。
天界において全てのものは永久不変のはずであるが、この神域では数千年にわたり主が不在だったせいで神の力が弱まっていたのか、
かつて荘厳な屋敷だったはずの建物は目も当てられぬほどに朽ち果て、くしゃみをすればその衝撃で倒壊してしまいそうな有様だった。
「ダメだこりゃ」
「すぐにでもあいつら交神に来るのに、こんなんじゃ通せねえな……」
朽ちた屋敷の前で二柱が話し合っているところに、隻眼の男神が訪れた。
「お久しゅうございます、お二方」
深々と頭を下げたのは、製鉄と鍛冶の神・タタラ陣内だった。
天界に復帰した五郎達に挨拶に来たのだという。
普段はくだけた物言いの彼が改まった言葉遣いになっているのは、火と風が欠かせない自分の生業のもとになった五郎達への敬意のためだろう。
「おお、陣内、お前もあいつらに解放されたんだったよな」
「はい、こうして天界でお会いできて何よりです」
「そういや、わしらを解放した剣士が持ってたあの刀、あれお前が造ったやつだろ」
「思い切った事しやがったな、バレたらわしらと同じようになってたぞ」
刀匠・剣福の渾身の特注刀にさらなる力を与えたのがこの鍛冶神であると、五郎達は見抜いていた。
神々の技術を下界に伝える事は、かつて五郎達がしたように人間への過度な干渉と見なされ、場合によっては天界を追放されかねない
危険な行為だったが、タタラ陣内はあえてその禁忌を侵した理由については語らなかった。
(……俺とあいつの子孫は『約束』を果たしたんだな)
わずかな感傷が陣内の左目に滲んだが、すぐにそれを抑え、気概ある職人の顔に戻る。
「大照天様よりお知らせを頂いてこちらに参りました。 このタタラ陣内にお任せ下さい、一夜でお住居を建て直させて頂きます」
「ほぉ、そりゃ有り難い! よろしくな」
「後輩のお手並み拝見といくか!」
陣内の言葉に喜色を浮かべた太刀風五郎は、突風を起こして屋敷の残骸を跡形もなく吹き飛ばした。
天界でも一二を争う匠の手によって、どんな屋敷が建つか今から楽しみだ。
「あっ、そういえば六ツ花御前がお前の事探してたけど、何かあったのか? 隅に置けねぇなオイ」
「……その事はどうか蒸し返さないで頂きたい」
六ツ花御前の美童趣味をひょんな事から知ってしまい血も凍るような思いを味わって以来、その名を耳にしただけで寒気が走る陣内は、
屋敷を完成させたら即座に自分の神域に戻ろうと思った。

228 :
双子とはいえ同時に交神する事はできないので、姉であるお絶が先に雷電五郎との交神に臨むことになった。
タタラ陣内が腕を振るって建てた新築の屋敷は、まさに天人が住むに相応しい立派な出来栄えで、来訪したお絶は眼を見張った。
派手ではないが全てが洗練された作りで、広い庭園も手入れが行き届いており枯れ葉一つ落ちていない。
その屋敷の中にある檜の香りが漂う湯殿で、雷電五郎は交神のため身を清めていた。
「極楽極楽、い〜い湯っだっな〜♪」
数千年ぶりかの風呂は歌でもひとつ歌いたくなるほど気持ち良い。
温かい湯に浸かって心身共に癒される心地よさは神も人も同じで、すっかりくつろいでいる雷電五郎の不意を突くように
脱衣所から声がかけられた。
「雷電様、ご一緒してもよろしいですか?」
新婚の若妻のように羞じらった表情で、お絶が湯殿に入ってきた。
露出の多い踊り屋の衣装でも目のやり場に困るほどだが、乳も尻も人並み以上によく育った肢体は手拭い一枚だけで
隠しきれるものではなかった。
「おいおい……何と言うか、積極的だな、お前」
あっけにとられる雷電五郎に、ふふ、と悪戯っぽく笑ったお絶はふざけて手拭いの端を捲る。
「ちょっとだけよ〜♪ ……なんて」
「い、今から見せなくていいっ! そういうのは閨での楽しみに取っとくもんだろうが!」
一度に十人は入れそうな広い浴槽の中で、お絶はわざわざそばに寄って柔らかい身体を密着させてくる。
いっそここでおっ始めてしまっても……という思いつきを雷電五郎は何とか押しした。
「あぁ、いい湯加減……」
飽きるほど長い天界での暮らしに加え、数千年も幽閉されていたのだから、色欲などとっくに枯れていると
自分自身では思っていたが、お絶の上気した頬の艶めかしさにどうしても目を奪われてしまう。
こんなに色っぽいくせにまだ生娘で、しかもそれが自分に捧げられる事を改めて思い、久しく感じたことのない昴りが
雷電五郎の内に甦りつつあった。
「せっかくだからお背中流して差し上げましょうか、あなた♪」
「あ、あなたって……まいったな、おい」
「お嫁に貰って下さるんでしょう? 雷電様をこうお呼びしてはいけませんか?」
さらに大胆な事を言い出すお絶に、雷電五郎は内心たじたじであった。
まだほんの少女だった初陣の時から知っているだけに、こんなに情熱的に迫られるとなると何とも面映ゆい。
「あら、お風呂に入る時まで太鼓の撥(ばち)を持って来られて……やっぱり大事な物だから肌身離さないんですね」
腰に巻いた手拭いを押し上げている硬直したものに、お絶の繊細な指が伸びる。
「うおぉい! それは違うッ! 嫁入り前の娘が触るもんじゃねえっ!」
「雷電様? お顔の色が優れませんけど湯あたりされたんですか?」
「もともとこういう顔色だーっ!」
傍目から見れば微笑ましいじゃれ合いだったが、お絶の猛攻に雷電五郎は肝心の交神前からかなり精神力を消耗したという。

229 :
湯浴みの後、身繕いを済ませたお絶は閨で契りの相手を待っていた。
そわそわと落ち着かない気持ちでいたが、それは雷電五郎の方も同じで、いかに自然な挙動で閨に入ろうかと襖一枚隔てた廊下で試行錯誤していた。
やがて決心し、おもむろに襖を開けた雷電五郎は、そこに待ち受けているお絶の姿を見て、脳天に金タライが落ちてきたような衝撃に絶句した。
「雷電様、お待ちしておりました」
「お前、何て格好してんだ……」
お絶が身に着けているのは、透けるほど薄い絹織りの夜着一枚きりだった。
張り出した胸もくびれた腰の稜線も、閉じ合わされた腿の間の翳りも仄かな灯りに照らされて浮かび上がっている。
湯殿で見た手拭い一枚の姿よりもはるかに淫靡で、雷電五郎は思わず生唾を飲んだ。
「いつもこれを着て寝ているんですの」
(いつも……だと……!?)
お絶にとっては何気ない一言だったが、聞かされた雷電五郎の方はいやおうなしにお絶の寝乱れた姿を想像してしまう。
神聖な交神の儀で鼻血を出すという、高位の神にあるまじき醜態を晒しかねなかったが、気を取り直して夜具の上に腰を下ろし、お絶に向き直る。
「お絶」
「はい、あなた」
「……その『あなた』ってのはどうも尻の辺りが痒くなってかなわねぇな」
照れ隠しに頭を掻く雷電五郎を見て、お絶はくすりと笑う。
薄く紅を引いた口元から白い歯がこぼれる様は明眸皓歯という美人の形容の通りで、歯磨きを欠かさないお絶の真珠のようなまばゆい歯並びは、
初陣の折りの雷電五郎の指導の賜物だった。
「だって嬉しいんですもの、ようやく五郎様達が許されて天に帰られて、私が生きているうちにこうやって子まで授かる事ができて……」
幽閉された五郎達の解放は、何代も前の当主とある男神とが契りの際に交わした約束だったという。
十数年後の今、約束が果たされ二柱が帰天したのは天界と一族にとってたいへんな慶事であったが、初陣の頃から五郎達を慕っていた
お絶とお乱の姉妹にはそれにも増して喜ばしい事だった。
大照天昼子から一族を鍛える事を条件に恩赦を出された五郎達だったが、彼らが二柱を超えるほど強くなれなければ今でも九重楼の中だったろう。
顔を合わせる度に強く、美しく成長する姉妹の挑戦がいつしか五郎達も楽しみになっていた。
「お前みたいな別嬪と床入りなんて物凄く久しぶりだけどよ、ダメだこりゃ……とは言わせねぇさ」
お絶は長い睫毛を伏せ、ただ小さく頷いた。
大胆に色香を振りまく反面で、こんなふうに恥じらう仕草は生娘らしく、雷電五郎は早くも逸物に血が集まり出すのを感じた。
まずは接吻から始めたくて顔を近づけた時、それを察したお絶は思わせぶりに唇に指を当ててみせた。
「ちゃんと歯磨きしてるか、確かめてご覧になります?」
「言いやがったな、こいつめ」
雷電五郎は笑いながら、可愛らしく挑発するお絶の小憎い唇を奪った。

230 :
「本当に、脱がすのが勿体ねえような格好だぜこりゃ」
いつまでも見ていたいような艶めかしい夜着姿だが、この餅肌にじかに手で触れたいと思い、雷電五郎は薄絹の夜着をはだけさせて
華奢な肩から豊かな胸にかけて露出させた。
背中も太腿もあらわにしながら、両腕だけは袖に通したままの淫靡な格好で、お絶は褥に横たえられる。
「腕前だけでなくて、こっちの方もよく育ったもんだ」
「あっ……!」
雷電五郎は純粋に感心している顔で、掌に余るほど育った乳房を掬い上げる。
つきたての餅のように温かく弾み、触れた指の跡が残りそうなほど柔らかい手触りだった。
淡紅色のその先端はもう熟れてふくらみ、弄られるのを待っている。
一族きっての美人姉妹は京の都では多くの男に懸想されており、付け文を送られたり男が夜這いに来る事も珍しくなかったが、五郎達に操立てする姉妹が
男に肌を許した事は一度もなかった。
初めて受ける愛撫に、お絶は頬を染めて形ばかりいやいやをする。
「はぁん……」
好いた男の手で触れられるのはこんなに心地良いと知り、お絶はとろけそうな吐息を漏らした。
高まる官能に、柔肌ばかりでなく吐息までもが色づいたようだった。
お絶が気分を出してきたと察した雷電五郎は、いい匂いのする首すじに口付けた。
「ん……ふぅっ、変な声、出そう……」
「今はおまえと二人きりだ、どんな声出しても笑わねぇよ」
笑うどころか、お絶の声の甘さときたらどんな男神でも虜になりそうな響きだった。
花の上に優しく降り注ぐ雨のような愛撫に、絹の肌が汗ばみ、熱を帯びていく。
こう見えて九重楼に幽閉される数千年前までは、女神を相手にぶいぶい言わせていた……というのは本人の弁で事実かは分からないが、今、雷電五郎が
お絶をあしらう手並みからすると満更嘘でもなさそうだった。
「あ、ん……あふぅっ……」
温かい掌で優しくこね回され、熱が移って桜餅のような色に染まったふたつの美乳が熱い息をつくたびに揺れる。
つんと勃ったままの乳首は初めての愛撫にどれほど感じたかを示しており、お絶は濡れた眼で虚空を見上げていた。
首すじや鎖骨には、肌を吸われ甘咬みされた痕がいくつも散らばって、これでは胸元が開いた舞装束はとても着られないだろう。
「わしの前で可愛いヘソ丸出しにしやがって、取って食っちまうぞ」
「ひっ……あぁん! だめっ」
くびれた腰や小さな臍もあらわな踊り屋の格好は、舞う身体の動きをよく見せるためで別に露出癖はないお絶だが、そう言う雷電五郎の舌が
臍に伸びると小さく息を呑んだ。
もちろん食うなどせず、形のいい臍までも愛しくてならないように舐め、浅い窪みを舌先で責める。
何にも例えられない初めての感覚に、夜具の上で艶めかしく腰をうねらせ、お絶は声を詰まらせて喘いだ。
「もう、そんな所悪戯されたら、変になっちゃうっ……」
涙混じりの訴えが含むのは、嫌悪でも苦痛でもなく、堪らないもどかしさだった。
もっと焦らしてお絶自身の口から求めさせたいが、雷電五郎の方もそこまで辛抱できそうになかった。
しっとり汗をかいた内腿を開かせると、されるがままだったお絶はいきなり身を強張らせ、見ないでと消え入りそうな声で訴えてきた。
「大丈夫だ、いきなり痛い思いはさせねぇよ」
身体は成熟していてもやはり生娘ゆえの怯えがあるのだろうと雷電五郎は思い、安心させるように恥丘を覆う柔らかな茂みを指先で撫でてやる。
戦闘時には相手を斬り裂く武器となる鋭い爪も、今は丁寧にヤスリをかけられ、いざ事に及ぶ時のために短く整えられていた。
外見こそ鬼と見分けがつかない位に厳ついが、思いやりを司る『心の水』が強く、こんな所にまで気を配る雷電五郎は、さすがに水の属性を持つ数少ない男神だった。
その指が無垢な割れ目をゆっくりと上下になぞり、徐々にお絶の緊張がほぐれてきた頃合いを見計らって、ちゅぷっと濡れた音を立てて内側へと潜り込んだ。

231 :
「あぁんっ!」
「おおっ、よく濡れてんな、嬉しいぜ」
お絶の花園は滴りそうなほどの蜜を湛え、雷電五郎の努力の成果を示していた。
首尾は上々、と笑みを浮かべて狭い粘膜の間で指を蠢かせる。
ふっくらした肉厚の花びらに埋もれた蕾を雷電五郎の指先がかすめると、お絶の肢体が感電したように震えた。
「んんっ……!」
そこから全身が蕩けてしまいそうな感覚に思わず腰をよじる。
お絶のいい所を一つでも多く見つけたい一心で、雷電五郎は指にねっとりと絡み付く襞の間を探った。
慈しむような指使いに、お絶は堪らず夜具に髪を乱し、腰を踊らせた。
「あぁ、あ……!」
蜜にまみれた蕾を可愛がられながら、はだけた胸につんと勃ったままの乳首を口に含まれて吸い上げられる二カ所責めに、
お絶はついに官能の極みを迎えた。
きゅっと瞑った瞼の内側に火花が飛び、頭の中が白熱する。
生娘のお絶には他人の指で昇り詰める初めての体験はあまりに鮮烈で、布団を掴む指先まで痺れるようだった。
弾む息を何とか抑え、とろりと潤む眼で満足げな雷電五郎を見上げる。
「私……雷電様の指で、気を……」
そこまで口に出して、お絶は紅潮した美貌を手で覆った。
ずっとこうされたいと思っていたのを知られていたように思えて、もう相手の顔をまともに見られなかった。
「何言ってんだ、一回気をやったぐらいでそんなに恥ずかしがってどうする」
一回や二回では済まないという意味を暗に含ませ、雷電五郎はくしゃくしゃとお絶の頭を撫でて笑った。
互いに交神の準備が全て整った事が言わずとも感じられ、今度はお絶も抵抗せず、抱き寄せる優しい手に全てを委ねる。
「雷電様、絶を……女にして下さいませ」
身震いするほど悩ましい囁きに、覚悟を決めてそう言った当人のお絶よりも雷電五郎の方が顔から火が出るようだった。
お絶の媚態のせいで痛いほどに勃ち上がった肉根を割れ目にあてがい、少しでも楽に進めるよう溢れ出る蜜を馴染ませる。
割れ目を男の先端でぬるぬると擦られる、もどかしい刺激にお絶は思わず腰を浮かせてしまった。
張りのある白い太腿を抱え上げいよいよ腰を進めると、お絶の指が回らないほどの太さを誇る自前の撥(ばち)が、滑らかではあるが
とても窮屈な秘め処に潜り込んでいった。
ゆっくりと肉体を押し拡げられるお絶の喉から、切なくも苦しげな声が漏れた。

232 :
「そぉら、もう入ったぞ」
「はぁ……あ……ぁっ……」
脈打つ昂りが、温かな襞々の中に根本まで填まり込んだのをはっきり感じ、破瓜の痛み以上に結ばれた事が嬉しいのか、お絶は目尻に涙を光らせながらも
満たされた表情をしていた。
彼女の操の全てを手に入れたというのに、雷電五郎はなおもお絶の身体を労り、すぐに腰を使う真似はせずに初心な花芯が自分の太さに慣れるの
をしばらく待っていた。
傷口が開かないか確かめるように、お絶の方が恐る恐る身動きすると、剛直を包み込む濡れ襞がぬちゅ、といやらしい音を立てた。
ぴりっと走る微かな痛み以上に生々しい、粘膜の摩擦がもたらすぞくぞくする感覚にお絶は吐息を漏らし、相手の肩にしがみついた。
「さ、こっからはもう気持ち良くなるだけだ」
裸体に薄絹を羽織っただけのお絶を両腕で包むようにして、雷電五郎は優しく言葉をかける。
無防備そのものの姿で、奥の襞までいっぱいに開かれた割れ目に逸物を根本まで受け入れている様は大層淫猥な眺めだった。
それをゆっくりと引き出せば白い喉を反らし、深く腰を入れると息を詰めて入り口を締め付けてくる。
抽挿されるたびにお絶の唇から漏れるかすかな声に苦痛はなく、早くも艶を帯びていた。
見事な腰つきで舞う優れた踊り手だけに、お絶の秘め処はとても居心地が良く、ずっとこうして繋がっていたいと思うほどだった。
「あ、あぅ……うぅん……」
男を悦ばせるための襞々を男根でくまなく摩擦され、元々感度の良いお絶はどんどん身体の芯が熱くなっていく。
仰向けになった身体の上で、突かれるのに合わせて美乳がぷるぷると揺れ雷電五郎の目を愉しませた。
お絶はよがりながらも、相手の優しさに応えたくて自分からも柔らかな身体を擦り付けてくる。
「ごめんなさいっ……私ばっかり、き、気持ちよくなって……ひあぁ!」
「こんな具合のいいモン持ってるくせに、そんな事言う悪い口はこれかぁ?」
しおらしい事を口にするお絶に、彼女自身の蜜で濡れ光る指を戯れに咥えさせる。
艶を増した唇は拒まず指を受け入れ、命じられてもいないのに自分を弄んでいたその指をしゃぶり出した。
何やら口淫の真似事をさせているようで、お絶の舌が生温かくまとわりつく感触に一層情欲を燃え立たせた雷電五郎は、我を忘れて激しく突き込んでしまう。
暴れる雄根に最奥を突き抉られ、お絶は悶えながらも唇と舌の奉仕を止めなかった。

233 :
いつしか、屋敷の外では小雨がぱらぱらと雨音を立てて降り始め、やがてそれは閨で二人が睦み合う秘めやかな音をかき消すような土砂降りとなった。
情交はますます激しさを増し、閨の空気は二人の体温でむせ返りそうに熱くなる。
お絶の火照る肌から立ち上る甘い匂いに酔った雷電五郎は、白桃のように豊満な尻を掴んで腰を上向かせ、より深くへと突き入れていた。
「お絶……!」
「いいっ、雷電様、いいのっ」
口付けと指舐めに紅が落ちてもなお肉感的なお絶の唇は、喘ぎと共に何度も雷電五郎の名を呼び続けていた。
霧雨を浴びたように柔肌を濡らす汗が玉になって滑り落ちる。
粘ついた蜜の音に絶えず耳を犯されても、こんなに濡らして恥ずかしいと思う余裕ももうなく、女の部分をくまなく暴かれて
お絶は追い上げられていった。
「んはあぁぁっ!」
この上なく力強い最後の一突きにしなやかな腰が跳ね、内部の器も一際きつく締まった。
嬌声を張り上げ、極楽往生を遂げたお絶の胎内へ鉄砲水のように勢い良く精が放たれる。
あまりに多量で結合部から溢れてしまい、互いの体液にまみれた会陰をつたい流れるものの熱を感じてお絶は切なげな溜息をついた。
(今ので赤ちゃんができたのかしら……)
自分の腹を痛めて産む事はないと知りながら、お絶はそっと下腹部に手をやっていた。
苦悶と紙一重の悦楽の極みを過ぎ、穏やかな表情で情交の余韻にたゆたうお絶は天女にも劣らない麗しさで、精を吐き出したばかりだというのに
雷電五郎の下腹はまた熱を持ち始めた。

それから何刻経ったのか、外ではまだ雨音が止まず、閨の中でも雲雨の交わりは続いていた。
雷電五郎は満開に咲き誇る華のようなお絶を離し難く、久々の交合に色情を掻き立てられたせいもあり、どれほど交合っても足りないほどだった。
「あ、ああっ、またいっちゃう、もうだめっ……!」
駄目と言いながら、お絶の細腕は雷電五郎の背に回って離そうとせず、それどころか自分から腰を使って相手を求めていた。
「へへ、お絶は好きもんだなァ、わしと似た者同士だ」
「やぁん……だって、気持ち良すぎるのっ……」
お絶の淫蕩さを口ではからかっても、こんなに夢中で求められて嬉しくないはずがない。
雷電五郎は柔らかな女体を抱きすくめ、なおも子種を仕込もうと、ひくひくと疼く子壷をめがけて突き上げる。
一突きごとに腕の中でお絶が仰け反り、官能に濡れた声を上げた。
「はぁあ……もう、堪忍してぇっ……」
可愛い新妻の嬌態に目尻を下げる雷電五郎は、この後お絶に精根尽きるまで搾り取られ、仕舞いには同じ台詞を吐く羽目になるとは
夢にも思っていなかった。

234 :
明け方に雷雨は上がり、洗われたようなまっさらな青空が広がっていた。
雷電五郎が大きく伸びをしながら布団から身体を起こすと、寄り添って眠っていたお絶がその動きで眼を覚ました。
「すまん、起こしちまったか」
「ん……、おはようございます、あなた」
昨夜の連戦で頑張り過ぎたせいで腰が痛いが、寝起きのお絶の甘くかすれた声に現金にもまた欲情しそうになる。
生娘だったお絶は自分よりも疲れ果ててぐったりしているかと思ったが、それどころか一段と肌艶が良くなり生気に満ちた様子だった。
布団から出ようとしたお絶がまだ一糸纏わぬ裸身でいるのに気付き、誰に見られるわけでもないが雷電五郎は慌てた。
「おい、ヘソ隠せ! 風邪引くぞ」
自分もいつも虎皮の腰巻ぐらいしか身に着けていないのに、とお絶は可笑しくなってそれこそ腹が痛くなるほど笑ってしまった。
お絶につられて雷電五郎も笑い出し、二人の幸せな笑い声が神域の青空に響いた。

後、お乱と共に姉妹で氏神となり天に上ったお絶は、雷電五郎と仲睦まじく暮らした。
雷神が雨を降らせた後には彼女の扇が雲を払い、天女となったお絶が青空を渡る時には虹の橋が架かるのだと
京の都ではまことしやかに語られたという。
(終)

235 :
>>225
これって>>44のその後かー
裔も良い感じでほっこりする

236 :
>>225
五郎さん達はやっぱりいい人だわ…人?
いちゃいちゃエロはいいものだ

237 :
女神だとお雫、男神だと鳴神にはよく世話になってる

238 :
>>225
エロはもちろんなんだけど
それ以外の部分の五郎さんの描写いいなw

239 :
保守

240 :
朱点童子に呪われし、種絶短命の一族。
あまりに儚い命を燃やし鬼を狩り続ける彼らの中に、一人の女性がいた。
帯で潔く上に纏めた土色の髪。その生え際には二本突き出た鬼の角。
職業は剣士。青く鋭い眼差しで立ちはだかる鬼共を見据え、愛刀『凪』をその手に切り伏せる。
「…にしてもあの子も懲りねェな、ついこないだ弟に噛みつかれた傷も治ってねェだろうによ。これが人間の業ってヤツかい、それとも新しい血の為せる技かい、おっそろしいねェ」
強く凛々しいと言う形容がぴったり合うように思える彼女は今、他の者らと共に九重楼最上階におわす二柱の神々と対峙していた。
幽閉されたまま鬼と化した彼らと、四人の神の血を継ぐ子らが睨み合う。
その間に流れる空気はまさしく鎌鼬の如く鋭く、雷の如く痺れをもたらすもの。
「ところでよォ」
二柱の片割れ、太刀風五郎がぽつりと話しかけてきた。女剣士の柄を握る手にぐっと力が籠る。
それから、太刀風は相棒の雷電五郎と顔を見合わせ同時に口を開いた。
「「……そっちの嬢ちゃん、本当に大丈夫かい?」」
そっちの嬢ちゃん、とは女剣士の事だ。そして彼女は今、力を籠めた手にびっしりと脂汗をかきつつ首を人体の限界まで後ろに曲げている。
「………………………」
そして一言も喋らない。
それどころか、自分を話に出されて顔を青ざめさせていた。
ただ、決して彼女は強大な相手との戦いに臆している訳ではない。寧ろ普段の彼女は隊長を立てて堅実かつ勇敢に動く。
ここで、女剣士の横にいた拳法家の男が頭を掻き掻き口を挟んできた。
「あー、気にせんでええ。文目の姉御は男とまともに話せんだけの事よ」
堅実かつ勇敢、剣を振るいて数多の鬼を斬り続ける有角の女剣士。その名は文目(あやめ)。
戦場では高潔、日常では清潔な掃除好きの彼女には一つだけ弱点がある。
「…………かかって来られるなら、出来うる限り無言でお願いします…………」
文目は、極度の男性恐怖症だったのだ。

241 :
文目の父は石猿伝衛門、任侠者の猿神だ。口下手だが情の深い彼の神は、自分がいいと訪れてくれた文目の母と文目へ一心に愛情を手向けた。
それはいいのだが可愛がるあまり天界に子を置ける一月の間随分箱入りに育てたようで、屋敷に降りて来た時には父以外の異性をロクに見ていない状態となっている。
更に呪われし一族の初代当主は女性であり、その名と共に家督を末の娘に託して以来代々当主は女性が継いできた。所謂女系の家柄なのである。
よって自然と一族の者の男女比は女性に傾き、今家にいるのは先の拳法家一人を除き全員女性という状況に。
それ故に元は異性に慣れていない程度だった苦手意識は余計強まり、元服する頃にはすっかり恐怖症と呼べる度合いにまで悪化してしまっている。
家の外で異性を相手に話すとなれば、無意識に十歩は離れてしまう。
人語を介さない鬼共は斬るだけなのでいいが、会話するだけの理性を持つ神の変じた鬼だともう駄目だ。
無言で斬り合う分には性別を意識せず戦えるのだから、喋らないでさっさと向かって来て欲しい。それが文目の切実な願いだった。
「ほれ、連れてきたぞ」
「ありがとう夜那岐(やなぎ)兄。ほら、文目姉!気持ちはかなり分かるけど観念して!」
「文目様、当主様はこれ以上時期を延ばせないと考えておいでです。酷な話をするとは承知の上ですけどォ……今日中に交神する神様を決めて頂かないと」
よって、文目の人生における最大の障害は朱点童子ではない。交神の儀に他ならなかった。
「…………分かって、るの……当主に迷惑をかける訳には、行かないって……」
屋敷の当主の部屋まで家で唯一の男手に引きずられて、文目は討伐の時の勇ましさとは結び付かない蚊の鳴くような声を出した。
この家には不文律が一つある。それは、いかなる場合でも交神相手の最終決定は交神する本人が行うというものだ。
自分の子の親くらい自分で決められるだけの責任感と判断力が無ければ困る、と言う意識によるある意味厳しい掟である。
よって当主と執事のイツ花を交えた三人での話し合いはすれど、余程の事が無ければ反対される事はない。
それでも文目にしては男と話すのも困難なのにいきなり最終段階に突入するのだから、そういう生まれだと分かっていても考えただけで脂汗が出る。
「私も、いい大人だから…こ、心の準備が出来たら来ようと思ってたの。男の人にも、最近は五歩まで近付けるようになったし…」
まだ少女と言っていい年頃の当主が心配そうに眉を下げた。イツ花を除けばこの家で一番の年長者は一歳を過ぎた文目であり、頭でなら自分のすべき事を理解出来ている。
だから部屋に籠っていたのは心の準備の為であり、夜那岐に見つかって引きずられて来たのは決して恐れをなした訳では…と文目は無理矢理自分を納得させていた。
「取り敢えず、候補になる神様はこの辺かなって…一応、参考にね?」
若いながら懸命に当主の勤めを果たす少女が、男神らの姿絵を十枚程広げて見せる。
「大丈夫ですよ、皆さん悪いようにはしませんって。男女間の事柄なんて大体勢いで何とかなっちゃうモンですから!」
それを真剣に確認していく文目の顔が青ざめているのを見て、イツ花はわざと明るい言葉をかけてやった。
「私のお父様は優しい神様だったし、文目姉もお父様に凄く可愛がられたんでしょ?お母様達がそうしてちゃんとした神様を選べたんだから、私達にもきっと出来るよ」
「ええ、父上はとても私を大事にして下さった、から……大丈夫、大丈夫なの」
そう自分に言い聞かせるように呟きながら、姿絵を一枚一枚手に取る。彼女にとっては、どんな恐ろしい鬼を目の当たりにするより辛い所業だ。
そうしていると、ある一枚を見た処でその動きが止まった。
「イツ花、その……この方、男の人なのよね?神様だけど…」
「あ、その方ですか?そうですそうです、お姿と神性から誤解されがちですけどれっきとした『水』の男神様ですよ!」
「こ、この方、なら……まだ、怖くならない、かも知れない…と思う」
震える声で何とかそう絞り出すと、当主とイツ花がここぞとばかりにダメ押しをしてくる。
「確かに、この方なら殿方が苦手な文目様でもあんまり意識しないで済みそうですネ。私も賛成しますよ当主様!」
「うん、文目姉は『水』の力がちょっと低いし優しそうな男の神(ひと)?だし…私もこの神様がいいと思うよ文目姉!寧ろ文目姉にはこの神しかいないって!」
「ぅ、じ、じゃあ……」
姿絵の表を当主とイツ花に見せて、文目は彼女の中で一世一代の勇気ある発言をした。
「この方と、交神するから……イツ花、明日に出発をお願い」

242 :
さたさたとその場だけに小雨が降っている。小さな林には、水滴に濡れた沢山の花が咲いていた。
「綺麗な所…」
イツ花によって天界に送られた文目は、交神相手の住むというそんな風景を目にして少しだけ緊張を解く。
額から突き出た角を伝って鼻先へ落ちてくる雨水を袖で拭いはしたが、木々のお陰でずぶ濡れになるような事は無かった。
やがて、目的の庵が見えてくる。かつて朱点童子討伐にも参加したという高位の神の持ち物である割には、小ぢんまりとしたものだった。
庵の周りはよく手入れされており、水仙や紫陽花など一際多くの花が植えられている。
何度も何度も深呼吸をしながらそれを眺めると、花たちの葉の上では何匹も彼の神の眷族が這っていた。
「わ、私、大丈夫だと思う……?他の男の神様よりは、大丈夫だと思うんだけれど…」
思わず屈んでそれらに話しかけてしまう。
腹を決めたつもりではあるが、やはり文目はまだ見知らぬ異性に会うのが不安でいた。
立ち上がっても庵に入ろうああでも怖いと顔に書きながらうろうろして、何度も背を向ける。
「すみません」
「はひっ!?」
そこに声をかけられて、変な声を出しつつびくりと跳ねてしまった。
「貴方が、交神にいらした方でしょうか?」
柔らかく優しい声だが、やはり男性の声だ。身がすくむ思いをしつつ、失礼をしてはならないとかたかた動きながらその主へと振り向いた。
そして、文目はようやく自分の交神相手を実際に目の当たりにする。
紫陽花と若草の色をした薄衣に身を包んだ、青色の混じる長い銀髪の青年だ。
背が高めの文目と彼の目線は殆ど同じ位置にあるが、目線を少し上に逸らしてしまう。
そこにあったのは、文目と同じ額から生えた二本の角

ただし、文目の鬼の角とは違いそれは柔らかそうな見た目をしていた。彼の眷族、蛞蝓や蝸牛と同じものだ。
顔だけ見ればまるで美女のような彼になら、男性恐怖症の文目でも比較的怯えずに挨拶する事が出来る。
「あ、文目と申します。その……よ、宜しくお願いします、嘗祭り……露彦様」
「はい。こちらこそ至らない処も多いでしょうが…どうかお手柔らかに、優しくしてくださいね」
掠れたような声で詰まりながら口に出した言葉へ丁寧に頭を下げられて、文目は弾かれたように礼を返した。

243 :
「粗末な処ですみません。家にはあまり気をかけないもので」
静かな雨音の満ちる居間で、庵の主がついと茶を畳の上で向かい合う文目に差し出す。
「そ、そんな事は……大丈夫です」
ただし、その文目は露彦から歩いて五歩は離れた所に座っていた。居間が小さいので殆ど土壁を背にしている。
茶まで出してくれた交神相手を前にこれではいけないと頭では分かっているので、額に汗を浮かべつつにじにじと近寄って湯呑みを手に取った。
渋すぎず熱すぎず相手を労って淹れてくれたのだと分かるそれをずずと啜り、文目は深呼吸してから口を開く。男性に自分から話しかけるだけでも彼女にしては一苦労だ。
「あの、申し訳、ありま…ありません。私、その、失礼なのですが……男の人が、得意じゃなくて」
「――いえ、構いませんよ。僕も女性は、ちょっと苦手ですから」
そう言って苦笑してみせる露彦の表情はやはり美しく、「え、あ、その」と変な声を出して目を白黒させてしまう。それでも、また五歩離れる事もなくそこに留まる事は出来た。
「気を悪くされたのなら、謝らせて下さい。このような時に嘘を言うのはよくないと思ったもので」
「に、苦手だって気持ちは分かるつもり、ですから…こちらこそ、重ね重ね申し訳ないと……」
「ありがとうございます。…僕のような者の下へいらして下さったのですから、文目さんにはあまり無理をさせたくないと思うのです。だから、何かあればすぐに言って下さいね」
天界にも数える程しか存在しない『水』の男神。その一柱である露彦は、下手な女神よりも奥ゆかしいとからかい半分に言われるような気質の持ち主である。
故に文目が男性を恐れている事にもすぐに気付き、自身も異性が得意な身ではないのに彼女を労しく思っていた。
文目も気を遣われていると分かっていたので、鬼の角を頭ごと畳に向けてどのように彼の優しさに報いるべきかしきりに考え込んでいる。
「露彦、様……………その、ええと」
「はい」
ちらり、と文目が縁側から見える紫陽花に目をやりながら小さく声を出した。
「花が、お好きなのですか?」
やっと詰まらずに物を言えた。そう安堵する彼女に、露彦は薄く笑いかけてみせる。
「はい。僕も僕の眷族も花が好きなのですが…女性の方にはあまり気持ちのいい事ではないでしょう?蛞蝓は花に惹かれて、ついそのあまり食べてしまう生き物ですから。見た目も、そう好かれるようなものではありませんよね」
「それで…女の人が?」
「ええ、一因ではあります」
確かに、蛞蝓は蝸牛程女性に受け入れて貰えない事が多い。文目は男性以外に苦手なものが特に無かったので、花に付く彼らを見ても嫌悪感はなかったが。
「文目さんの御両親も、花が好きだったのでしょうか?菖蒲も、清らかで綺麗な花ですし」
「はぅっ……そ、そうですね。文を目で見るという字は物事の分別が付くよう、それに花の菖蒲も…掛かっているのだと思います、父上も母上もあの花を私に見せてくれましたから」
私はあれのように綺麗じゃないけど、と口から出そうになった言葉をぐっと飲み込む。それを緊張しているのだと受け取ってくれたのか、露彦がすっと立ち上がった。
「……何も、今日来たばかりで儀を行えなどと言う事もないでしょう。お嫌でさえなければ、有余は一月もあるのですから落ち着くまでゆっくりして下さい」
「いいのですか?迷惑では…」
「いいえ。元より、無体を強いているのはこちらです」
文目の為に細々とした用意をするのだろう、会釈をしてから居間を出ていこうとする。
「あ、あの」
その背中に、文目は慌てて声をかけた。
「置いて頂けるのでしたら、掃除くらいは致します。…しても、いいでしょうか?」
その申し出は頷きによって受け入れられ、結局この日は儀を行わずに二人過ごす事となった。

244 :
掃除をしていると心が落ち着く。
文目が家で精神を統一する時は、いつでもどこかしらの掃除をしていた。趣味であるとも言える。
変化なき天界に位置する神の住処は、家主が綺麗好きな『水』の神である事もあり掃除の必要は感じられなかった。
それでも男性恐怖症である文目の気持ちを汲み、露彦は彼女に好きに掃除をさせてくれた。その気遣いが有り難くもあり、申し訳なくもある。
そんな調子で文目が天界へ訪れてからもう二日が過ぎた。一族の者でもない男の家でそれだけ生活出来たのだから、彼女自身も驚いていた。
大切な交神の儀を遅らせてしまっているのに、相手は不満を言うどころか同じ異性が得意でない者としてあれこれ気を回してくれている。
三日目の暮れ頃。文目は、いつまでもそんな優しい男(ひと)にいつまでも甘えてはいられないと決意をした。
「あ、あの。露彦様」
「はい、文目さん」
「その、何と、言いましょうか……ええと」
少しは慣れたが、やはり話題が話題なので切り出しにくい。直接的になど余計言えない。
それでも大切な儀を行う前に。大切な儀をこの神(ひと)と行うからこそ。どうしても。
「新嘗祭、という祭の話を聞いた事があるのですが…あれは、露彦様の関わる神事なのですか?」
優しい彼の事を、もう少しでいいから知りたいのだと気付く。遠ざけたい対象であった男性に対し、それは初めて抱いた感情だった。
「そうです。僭越ながら、雨と草木の生い立ちを見守る者としてかの祭で人と通じていましたが――文目さんが生まれた時にはもう、蘇っていたのですね」
「と、仰いますと?」
「人の都が一度破壊され尽くし、何年もの間あらゆる祭が耐えていたと伝え聞いています。…僕の力が、及ばなかったせいで」
ここまで聞いて、文目は露彦が朱点討伐に参加し封じ込められた神の一柱である事を改めて思い出す。
「僕は位こそ高くとも、争いに向く神ではありません。神の勝手で鬼と変じた朱点(かれ)を神が屠る事も道理に適っているとは思いません。
 それでも、止めたかった。だって、止めなければ罪無き人も大勢ぬ。生き残っても、ほんの小さな祭の中で笑う事さえ出来なくなる」
「――――!」
その苦痛がありありと伝わる声と表情で、分かってしまった。露彦はただ、人とその営みが好きだっただけなのだと。
そんな彼が天界最大級の争いに加担したのは、災禍に苦しみ滅びてゆく人を見る事に堪えられなくなったからなのだろう。
「けど、結局何も解決しなかったでしょう。それどころか、貴方がた一族のような天界の勝手で苦しみ続けるような人々を生み出してしまった。
 文目さんに嫌な事をさせてしまうのも僕達神の責任なのに…それでも昼子様に逆らう事も自分で全て終わらせる事も出来ないのだから、情けない話です」
正座した膝の上で、白い手が強く握られる。それを目に写すと、自分まで苦しくなった。その理由を落ち着いて考えて、文目は露彦と目を合わせ直す。
「少し、違うと思います」
「それは……どういう」
「私達が天界に…悪く言えばいいように使われている事は誰に言われるでもなく少しは分かっているつもりです。けど、私達は無理矢理嫌な事をさせられていると思って交神に来ていないんです。みんな、自分の命と意志を繋いで貰う子の親になる方は自分で決めて」
落ち着けば、惑わずに心を伝える事が出来た。
「多分みんな、交神相手の方々から思い出を頂くのだと思います。たった一月でも、私達にしてみれば貴重な時間だから…思い出も一生の物です。露彦様も、悔やむばかりじゃなくていいと思うんです」
文目が来てから、小さな庵の片隅に菖蒲の花が生けられている事を彼女は知っている。
「祭の事を聞いたのは、露彦様の事を知りたかったからです。知りたかったのは、私をこんなに気遣って頂けたのが嬉しかったからです」
花の葉に這う蛞蝓のように決して強く自己主張はしないけれど、それは確かに優しい気持ちだと思った。
「私は…見ての通り、背が大きくて目付きも鋭いし角まであるしで自分の見た目に自信がありません。それを気にされるのが怖くて、気付いたら男の人そのものが怖くなっていました」
当然、今でも少しは怖いけれど。
「それでも、露彦様の下に来てよかったと思っています。この方にならお任せ出来ると、今やっと確信する事が出来ました」
儚い己の思いの丈を静かに真摯に聞き届けてくれた相手に、呪われし有角の娘は心を込めて一礼する。
「上手くは、言えないのですが……宜しくお願いします」

245 :
男性恐怖症の生娘が交わりに臨む。
自ら覚悟を決めたとは言え、それはどれ程恐るべき事なのか。
寝室に移った文目は、俯き加減になりながら角の先まで顔を赤くしてその唇を割った。
「あの、何を、するかは分かっているつもり、なのですが……まずは、着物をぬ、脱ぐべき…ですよね」
襟を開く手が、どうしても震える。それを労しげな目で見つめていた露彦が、手の届く位置まで近付いてきた。
「文目さん」
「は……はい、露彦様」
「怖いですか」
「嘘を、吐いてはいけないのでしたら…怖い、です」
「――そうでしょうね。僕は、貴方に極力嫌な思いをさせたくありません。だからその為に、人とは違うやり方をしようと考えたのですが…付いて、来てくれますか」
神がそう言うからには、本当に人間の常識では想像も付かないような『やり方』なのだろう。
けれど、それは間違いなく自分を思ってしてくれた提案だ。
「はい。私は、逃げません」
だから、精一杯応えようと思う。
「ありがとう。では」
「え、ぇ、きゃっ!?」
文目が青い双眸を白黒させた。急に、露彦に抱き締められたからだ。だが、驚くべき事はこれだけでない。
「ご奉仕いたします」
耳元でそう囁かれた瞬間、少し崩した着物の隙間に何かが入ってくる。生暖かい、水のようなものだ。
「露彦様、これは……ぅっ」
質問しようとしている間に、それはもう肌にまで到達していた。直に触れると、ぬるぬるした感触があると気付く。
「粘液です。気持ち悪いかも知れませんが、肌を晒し合うよりは文目さんの心に負担が無いかと」
蛞蝓の神性を持つ彼だからこそ出来る芸当なのだろう。確かに、端から見ればただ抱き合っているかのようだ。
しかし、着物の中では明らかに性の臭いのする行為が行われていた。
「ん、…………んっ」
神の一部である粘液がゆっくりと肌を覆い、まずはぬるま湯に浸っているような感覚を与える。
強く刺激を与える部位には触れない。その代わり、腹から背まで全身を包み込んでいく。意志を持った粘液でなければ出来ない、人間には実現不可能な愛撫だ。
臍の中に粘液が入っていき、内臓に近い皮膚を擽る。そのようにされると、文目は体温が上がっていくのを感じた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。不思議な、感じがします」
緊張と異性への恐れはあれど嫌悪の色を見せない彼女の表情に、露彦は安堵したように微笑む。
すると、粘液が着物の襟や裾からはみ出てきてそのまま首や足にまで這ってきた。耳の裏、足の指の間にまでぬるぬるした液体は丁寧に絡み付いてくる。
それが文目に背筋からぞくぞくと脳天へ上がってくる感覚――性感をゆっくりと与えていた。
着物の上からふらつきそうな自分を支える腕と、全身を包みゆく粘液。その全てが露彦の慈しみなのだと思うと、胸の内が熱くなっていく。
両手の掌と指一本一本とを粘液に包まれると、優しく手を握られたような感じがする。
いつもなら男にそんな事をされると気を失いかねないのに、何故か落ち着いていられた。

246 :
ここまで来るともう全身を粘液に飲み込まれたと言ってもいいような状態だが、未だ特に敏感な位置は避けられている。
肌の上を這う粘液は時折動き撫でてくるので、余計にもどかしい感覚がある。上がった体温は粘液に移り、首筋へとまた伝わり直して頭をぼうっとさせてくる。
「ふぅ、んっ……はぁ……」
文目の吐く息にも艶かしい熱が現れてきた。露彦の腕の中の肩が動き、最初よりも着物が崩れてくる。
彼女に自覚は無かったが、それは頃合いが来たという合図だった。
「少し、動きます」
「ひゃあっ――!?」
急に文目の身体が大きく跳ねる。端から見れば大して変化があった風に見えないが、着物の中は大変だった。
腋の中にまで入り込む粘液が、顔を除いた上半身で唯一避けていた胸まで這ってきたのだ。
手で直接触られるような強い感触はないが、乳房がぬるぬるするという状態は何だかやけにいやらしい。
「あ、ぁ、これっ……はぅ、んっ」
次第に粘液は乳輪まで上がっていき、液体特有の流動性を活かしてぬるぬるくるくると素早く這い回る。
かなりゆっくりと時間をかけて焦らされた身体は、男を知らずとも強く反応する。
直にその光景を目の当たりにするのと着物の中で見えない愛撫が行われるのではどちらがより恥ずかしいのか、彼女に分かる術もなく。
ぬるりと両の乳首へ同時に粘液が這い上がっていき、浸食する。
強烈な勢いはないが、その分じわじわと確実に身体を昂らせる。
それは文目に与える精神的な負担を減らしつつ、子作りに臨む彼女にその為の用意をさせるには実に効果的だった。
「…………!………………っ!」
これ程大量の粘液が中に入り込んでいるにも関わらず、着物自体は全く濡れる様子がない。
交神の為に身に付けてきたそれなりに上等な絹が粘液の覆っていない肌に触れると、それすらも背筋を震えさせるような感覚を生む。
「ふ、ぁっ」
固くなりじんじんと熱を持ってきた乳首が、蠢く粘液に擦られる。
顔を上げられずに角を震わせている文目を、未だその背に回している手で直接触れていない露彦がじっと見つめていた。
「もう少しばかり、辛抱して下さい。せめて、痛くはないようにしたいのです」
言葉通り、粘液は一切の苦痛を文目に与える事なくその身体を刺激し続けている。
「は、いっ……痛くは、ないです、ぅんっ」
言葉を交わす間にも粘液は汗を丹念に拭い、乳首の先の窪みに入り込む。
人間多しと言えど、ここまで全身粘液まみれになっているのも自分くらいのものだろう。
粘液同様生暖かい頭の中で、文目はふとそんな事を思った。
その隙に感じる地点へ粘液が多く集まり、粘度を増したそれがずるずると這いずって強めに刺激してくる。
「あうぅっ、や、私っ、変に、なりそうで…!」
更に傷付き傷を塞ぎ薄くなった皮膚を、ねっとりと優しく擦る。
身をよじらせながら薄く目を開け、文目は不意に顔を上げた。目が合う。
心配そうにしている彼の表情に自然と微笑みが出ると、驚くように目を見開かれた。
「僕が、嫌ではありませんか?」
「んっ、その……どうしてでしょうか。男の方とこんなに近くて、恥ずかしい、筈なのに…露彦様の顔を見ると、安心するようになってきました」
素直な気持ちを告げる。すると、ここに来て初めて背に回されている手にぎゅっと力が入った。
身体の隅々まで覆い尽くしている粘液の感触の中で、それが一際強く感じられる。
ただ、最も重要な部位だけは不可侵のままだ。
臍を撫でていた粘液がゆっくりゆっくり下腹部へと降りていき、漸くその禁が破られようとしていた。

247 :
ぬるぬるとした粘液が垂れるように滑り降りていく。
髪と同じく土色の陰毛一本一本に絡み付きながら、それは入り込むべき隙間を目指していく。
「ひ、んっ」
そして、毛の中に隠れた固く閉じている秘裂へ粘液が触れる。
液体であるが故に無理に抉じ開ける事なく、鍵穴を通る針金のような柔軟さで文目の秘所へずるずると入っていく。
先程胸を覆った時と同様に、粘液は入口へと集まってその粘度を高め門の開き具合を少しずつ大きくしていく。
無心に粘度を操るのではこのような事が出来ない。相手の状態をよく見て、焦らずにやる繊細な作業だ。
粘液には絶え間無く別の水気も混じっていた。
ここまで時間をかけてじっくり施した粘液の愛撫は、しっかりとその功を労している。
「は、入って、きて……ぁ、あ」
粘液は内部の襞一つ一つに絡んでいき、少しずつ少しずつ胎内を満たしていく。粘膜を粘膜そのもののみで舐め上げるような動き。
膣壁を覆っているか弱い粘膜を裂かずに、弱いが確実に積み重なっていく刺激のみを与える事で散々避けられた秘所に熱を持たせる。
「っ、んぁっ!?」
溢れる程に詰まった粘液の一部がはみ出て、ぬちゅりと陰核を包む。
舌で直に舐めるよりも感触は柔らかいが、受ける衝撃は強烈だ。
ぐちぐちと充血するそれを捏ねる。粘液には余計に水気が混じるが、その分また動かして粘度を維持する。
ぱくぱくと口を開閉しながら全身をがくがく震わせる文目は、やはり傍目にはただ露彦の腕の中にいるように見える。
その外見と内情の不釣り合いさが不思議な艶かしさを生んでいた。
文字通り目と鼻の先でそんな彼女を見る目が、ふっと細められる。
自分の女性らしさに自信がないあまりに男性を恐れるようになったと言っていたが、それは勿体無い事だと思う。
「――改めて、貴方に剣を持たせた事を詫びたい気持ちでいます」
ただの、一人の女性なのに。
鬼の骸よりは花の方が余程相応しい、生娘の未知に震えるような人だと言うのに。
「悲しい顔は、なさらないで下さい」
その文目が、粘液に包まれて脱力していた身体に少し力を戻して露彦の胸に手を当ててきた。
「上手く言えませんが……私は大丈夫です」
ずるずると粘液が胎内を出る。また入る。
角の先まで真っ赤になる程の快楽が走るが、伏せがちにしていた顔を上げ続けて示す。
負い目を覚える事はないと。
この時、文目は確かに恐怖を忘れる事が出来ていた。
じっくりと時間をかける粘液の刺激に押し流されたと言うより、もっと自然な形で。
「あ、の」
おずおずと、自分から言うには恥ずかしい台詞を口にしてみる。
「もう……してしまっても、いいかと思います」
身体の殆どを粘液に任せてしまったとは言え、あくまでこれは下準備だ。
本当に子作りが行われるのは、これから。

248 :
意識は大分朦朧としていたが、もののふとしての精神力のお陰でここまで気をやらずにいられた。
正座からすっかり崩れた文目の脚の間からは半透明の粘液が零れ、花弁がひくひくと震えている。
絶頂までゆっくりと、ゆっくりと導かれ直前で止められた処女の身体。
それに、漸く止めが刺されようとしていた。
「…月並みで申し訳ないのですが、天井の染みを数えていれば気が楽になるかと」
顔を手で覆っている文目に、そう囁きかける声。
出来るだけ下を見ないようにしながら少し指を開き、文目はその間から両目を覗かせた。
「その、そうとはイツ花から聞いて来たのですが。ここは、綺麗にしてあるから…染みがなくて…」
小さい声で「でも、付いて行きますから」と付け加える。
交神相手を決める前に部屋に籠っていた時は、このような会話が出来るとは夢にも思わなかった。
「――く、っ」
敢えて声をかけずにいてくれたのだろう、音を立てずに異物感が胎内へ侵入してくる。
丹念に粘液が拓いたそこは、意外なほどすんなりと相手を受け入れた。
まだ中にあった粘液が押し出され、淡い紅色を付けて出てくる。破瓜の痛みは最小限に抑えられていた。
「痛くは?」
「ない、です…ふぁっ、あ、ぁ」
一呼吸置くとずくんと胸に血が集まる。液体ではなく本物の『男』がある感覚。目眩さえ覚える。
「ひゃあんっ!」
動きますよ、と言われるがままに頷くとそれが余計に強くなった。
大量の粘液が出入りした影響で文目の胎内はとろとろと濡れそぼり、それでいて直前まであくまでも処女であったが故に収縮が激しい。
強烈な快感を与え与えられるにはもってこいの状態となっていた。
ゆっくりと奥まで入ったモノが、それよりも早く引く。と思えばまた押し入る。また引く。
「ひ、く、んあぁっ、っは、あ、んんぅっ!う、ううー…あうっ!」
結合部から粘液と愛液が激しく泡立ち、ぐちゅぐちゅと音を立てる。ずっと降り続ける雨の音が遠くなる。
背筋から脳天へとびりびりした刺激が走る。ぞくぞくと全身が震える。
「……ぁ、ひあぁああぁっ………!!」
瞬間、文目の中の何かがぷつんと切れた気がした。それが絶頂である事を彼女は知らず、ただがくがくと頭を上下させる。
ふと、頬に何かが触れる感触があった。ぎゅっと閉じてしまった目を開くと、それは露彦の白い両手だった。
「大丈夫です。このまま、僕に任せてくれますか」
鬼の角に蛞蝓の角を合わせて、優しい声音で落ち着かせようとしてくる。
文目がそんな彼に返した表情は、混乱の中で崩れてはいたが確かに微笑みだった。
二度三度の深呼吸。体中の血がどくどくと鳴り続けてはいるけれど、何とか落ち着いてくる。
「んっ、ふ、あく……っ!」
それを待って、再び抽送が始まる。何度も何度も、ぬめった膣壁が擦られる。
粘液に濡れた胸に手を押し当てると、『火』の術で焼かれたかのように熱かった。

249 :
気をやるかやらないかの瀬戸際で何とか耐えていた、その時。
胎内にまた液体が入ってくる感覚があった。奥に撃ちつけられるような、そんな感覚が。
粘液ではない。子種だ。
文目の頬から肩に手を移していた露彦が、長く息を吐く。
「あの、文目さん」
「は、はい?」
「本当はこれで終わりでもいいんですが…もう暫く、いいでしょうか?」
「えっ、ひゃっ、あっ!?」
大抵の人間は知らない事であるのだが、蛞蝓の交合は非常に長い。
文目の初夜は、まだまだ続きそうであった。

「ふ、普通の人たちも…こんなに長くしているものなのでしょうか」
「済みません、つい…」
三日目の暮れ頃から事は始まり、今は四日目の明け方と思っていいのだろうか。
すっかりへとへとになった文目は今、布団の中で横たわっていた。
傍らに正座してそんな彼女を見守る露彦は、流石に体力を司る『水』の神と言った処か。
「儀はこれで終わりです。…体を休めて、それからどうするかは文目さんの決める事」
「あの、その事、なんですが」
首をまだ見ぬ我が子の父の方へ向けて、文目がまた顔を赤くしてぼそぼそと言葉を紡ぎ出す。
「その……露彦様と、出来るだけ長くご一緒したいなと、思うのです。掃除くらいしか出来ませんが…まだもう少し、思い出を私に下さいますか?」
自分で言って自分で恥ずかしくなったようで、うぅと呻いて布団に潜ってしまう。
するとすぐに、それが持ち上げられてしまった。
「勿論、構いませんよ。僕などには勿体無い程、文目さんは素敵な方だと思いますから」
そんな事を言って角に手を置かれ、照れ臭そうに笑われたものだから。
「………………はうっ」
色々と堪え切れなくなり、文目は今度こそ本当に寝込んでしまったのだった。

250 :
文目が心優しい蛞蝓の神と共に暮らす短くもかけがえのない一月の中、そのある日にこんな会話が交わされている。
「露彦様、子供が男の子か女の子かどうかって解るものなのでしょうか?」
庭の掃き掃除をしながら、殆どつっかえずに話せるようになってきた文目が縁側で彼女を見守る露彦にそう問いかけた。
「僕はまだ知りませんが…子が命を持つと一月こちらで育てる事になりますから、解るのは文目さんよりも早いですね」
「でしたら、名前が分からないと不便ですよね……どうしよう、女の子だったら」
「男の子だったら、もう決めているんですか?」
「はい、男の子ならいいなと思って。お、女の子でも嬉しいですよ?でも、男の子の名前の方が先に思い付いたもので」
「聞かせて、貰えますか」
しゃかしゃかと箒を動かす手を早めつつ、文目は照れたように答える。
「祭に、都と書きます。露彦様の字から一文字頂いたのと――その子にも、見て欲しいのです。私達がこれまで、これからも立て直していく京の都とその祭を」
それは人の生い立ちを、その中の喜びである祭を愛する子の父への敬意と精一杯の愛情を込めた名。
「露彦様のように、その子も優しい人になれたら私は幸せだと思います」
たった二年足らずでも。戦いばかりの人生でも。
少しでも多く嬉しい事を嬉しいと感じ、幸せな思い出を持って欲しい。
「祭に都、ですね。覚えておきます、貴方の事と一緒に」
「……宜しく、お願いします」
小雨が止み、薄く虹のかかる庵の上の空。
そこから降り注ぐ光を浴びて、露に濡れた菖蒲の花が優しく煌めいていた。

それから時は経ち、二人の間に授かった子は母の技を継いで立派な剣士となる。
その名は祭都(さいと)。凛々しい男の若武者である。
常に前列で当主を守り刀を振るう彼は、堅実かつ勇敢に動く姿が文目によく似ていた。
反面、戦場を離れると大きな祭から小さな催し事までをこよなく愛し、四季の花を持って一つ一つを祝う穏やかな青年として都の人間にも知られたという。

鬼娘顔の子が男苦手だったりするとギャップ萌えでいいんじゃないかと思った
疑似スライム責めと純愛を両立できる露彦様マジ溶けてしまいそう

251 :
GJでござりまする。
粘液責め最高

252 :
やだなめまくりさんマジイケメン

253 :
ギャップ萌えGJ!

254 :
人物造形が見事の一言に尽きる。
今まで嘗祭様はノーチェックだったけど、これ読んで好きになったので
二周目プレイではぜひ娘を嫁がそうと思う。

255 :
同じく。
むしろ、なよっちくて好感度低かったのにw

256 :
ほしゅ

257 :
ショタヌキとの交神シーン切り取り。3P、ショタ攻め注意。

*****

「ねえ」
 ころころと。鈴を転がすような愛らしい声がする。右の耳をくすぐる、少年とも少女とも
つかぬ、幼い声。
「なにして遊ぶ?」
 ころころと、笑う声。
「ねえ」
 先程と同じ声であるのに、聞こえる先は別の場所。左の耳をゆるゆると食む、声と、ぬるい
舌先と。
「三人で、何して遊ぶ──?」
 問われた娘は、しかし答えない。答えられない。
 壊れかけのふいごの如く荒い息を吐き、汗まみれの乳房を上下させ、光ひとすじも差さぬ
天井を虚ろに見上げるばかり。異様に紅潮した裸身には、疲労の影とどろりとした体液とが
くまなく纏わりついている。
 唯人にはあらざる肌と髪と瞳の色をした素裸の娘を真ん中に、声の主は毬の跳ねるような
笑い声を上げた。
「壊れたの?」
「まさか。だって“あの”一族だもの」
「“あの”、鬼切りの一族だものねえ」
「朱点の──」
「しっ。昼子様に怒られるよう」
「怒られるねえ」
 頭越しに交わされる会話には天界の神がひたかくしにする秘密事も含まれていたのだが、
娘の耳にまでは届いていなかった。それを知ってか知らずか、声の主たち──二柱で一柱
の“神”は平然として笑い合い、娘へと甘えるように擦り寄る。
 娘の身体が弱々しく跳ねる。
 逃げるそぶりにも見えたのだが、左右から完璧な呼吸で絡みつく細い腕に脚に絡め取られ
分厚い布団の上縫いつけられる。
 “神”が、娘の顔を覗き込む。
 娘の目に映ったのはふたつの同じ顔だった。其処だけ色味の異なるつぶらな瞳と、眉の
上で切り揃えた黒髪、そして頭の両脇より生える獣めいた耳すら愛らしい、二人の稚児。
 これが神。“種絶”と“短命”の呪いを掛けられた一族の娘が、その血を残すため勧請
した神──紅梅童子と白梅童子であった。
 交神の儀に臨んで早数日。

258 :
 休む間も与えられず彼らの“遊び”に“使われた”娘の疲労は、そろそろ限界に達しつつ
あった。
 “遊び”、と。
 紅梅白梅童子が“交神の儀”についてそう称しても、娘には既に立腹する気力もない。
 そんなもの。
 とっくに、“神”に削ぎ落されてしまった。
 神と人は対等ではない──少なくとも、この場では。
「三人で何して遊ぶ?」
「そうだねえ」
 だから。娘は、如何なる理不尽も受け続けなければならないのだ。子を、成すまで。
「当て鬼しようよう」
「当て鬼、しようしよう」
 二柱だけで決めごとを交わした神が、娘に覆い被さる。華奢な身体は重さを感じぬ程に
軽く、冷やりとした肌が熱の篭る身体をさます。
「ね」
「当て鬼、しよう」
 もがく娘の目をどこからともなく現れた布がふわりと覆う。そっと掛けられただけにも
見える布切れは、しかし娘の視界を奪うとそれきり離れなくなる。娘は無理に首をねじまげ
顔を布団に擦りつけ、目隠しをはがそうとするが、儚い抵抗であった。
「紅梅か」
「白梅か」
 娘の醜態を咎めるでも嘲笑うでもなく、二柱は取り決めを伝える。
「当てるんだよ」
「当てたら、ごほうびあげる」
「外れたら、もう一回あげる」
「当たるまで、やっていいよ」
 するり、と。娘の身体から、他者の気配が消える。視覚を失った世界に娘はひとり置き
捨てられる。
 それも、ひととき。
 束の間の休息は、正にほんの瞬きする間だけ。
 ぐいと膝を割る感触に娘は力の入らぬ身を捩り。抵抗を無造作に踏みにじり充血しきった
肉を割って這入ってくる男根の質量に、喉を震わせ喘いだ。
 男根の大きさ自体はごく平均的、成人男性のそれと変わりはない。しかしそんな一物と
少女と見紛うばかりの稚児の姿は全く不釣り合いだった。
「どっちだ」
「今、入ったの。どっちだ」
 声に促されるように、娘の、丸くやわらかな尻が持ち上がる。他人を咥え込んだまま
悶える様は。逃げようとするようでもあり、ねだるようでもあった。

259 :
 ころころ。笑い声。二重に聞こえる、神の声。
「奥まで、入れたら」
「ちゃんと分かる?」
 華奢な指が女の花弁を這う。男根により口を開けた場所を探り、くちくちと刺激する。
同時に稚児のほっそりした腰が揺らめき、男根を強く押し込んだ。
 娘が腹を晒し、大きく仰け反る。
 咥え込んだ部位がびくびくと収縮し、貫く神は心地好さげに耳と尻尾をひくつかせた。
貫いてはいない神も気持ち好さげに耳としっぽをぱたつかせた。
「奥?」
「うん、奥」
「じゃあ分かるよね」
「きっと分かるよねえ」
 娘は。
 答えなかった。
「あれえ」
「どうしてかなあ」
 こつこつ奥を叩かれ髪を振り乱し悶える娘には、答える術がなかった。
「あ」
「そうだね」
 神はそこでようやっと気づく。
「どっちが紅梅で」
「どっちが白梅か」
「知らないものね」
「知らないものは、答えられないものね」
 この数日を娘で“遊ぶ”ことだけに費やし名乗りも上げなかった神は、己が失敗にくすくす
笑った。
 ずるり、と。男根が引き抜かれる。
 娘の体液と先に注がれた白濁とを絡みつかせた肉が、娘のなかから出ていく。娘の呼吸
は荒いまま、ぽっかり開けた口から体液をたらたらと零している。
「それじゃあ」
「やりなおし」
 その。娘の身体がくるりとひっくり返される。目を塞がれた娘は真っ暗闇の中感覚だけ
が狂い混乱し身を固くする。
「こっちが、紅梅」
 娘の予見は正しかった。再度、抜かれたばかりの場所を割り裂く熱に、娘は諦念の喘ぎ
を落とした。
「それでね、」
 しかし。耳元での囁きまでは予想できず、更に言えば口に他者の肉がねじ込まれるのも
予想外であった。
「こっちが、白梅」

260 :
 喉近くまで圧迫され悲鳴をくぐもらせる娘に構わず、神は娘を犯す。ねっとりとした舌
に、厚く濡れた口腔内に自らのかたちを覚え込ませるように揺すりたて、擦り上げる。
「こっちが、紅梅──」
 胎を抉り、抜き差しし、膨れあがるする肉。
「こっちが、白梅──」
 喉を圧迫し、抉り、膨れあがる肉。
「紅梅」「白梅」「紅梅」「白梅」
「覚えた?」
「覚えた──?」
 突き込まれ、爆ぜるようにして熱い体液を注がれて。女はぼろぼろと涙を流し、引き
抜かれると同時に白濁液を吐き戻した。咳込む口からも、ひくつく花弁からも、泡立つ
白濁が溢れて落ちる。
「覚えたよね」
「じゃあ、遊ぼうね」
 声が少しだけ遠くなり、重なり、また、別々の場所から響く。
「どっちだ」
「紅梅か」
「白梅か」
「どっちだ──?」
 びくつく場所に、吐いた直後だというのに硬度も質量も衰えを見せぬ男根が進入する。
娘の腰が弱々しく震える。
「駄目だよう」
「ちゃんと締めないと」
「分からないよ」
「かたちが分からないよ」
 疲れと男根での拡張で僅かに緩んだ内壁を、つるりとした亀頭がくちくち突き上げる。
それでも娘は無理だとでも言いだけに頭を振り続ける。
「駄目だよう」
「休んだら、分からなくなるよ」
「すぐにやった方が、覚えているよ」
「ちゃんと遊ばないと」
「駄目だよ」
「駄目だよ」
 するり──と。娘と繋がっていない方の神が、結合部へと指を伸ばす。びくりと震える
肌を爪でなぞり、体液まみれの柔毛をかきわける。目指すのは、肉のあわい。痛々しく
色づく陰核だった。
 膨れたそこに。かり、と、爪が立てられる。
 効果は劇的だった。女の尻から頭の天辺までが電流で打たれたように激しくひきつり、
海老反りになる。貫かれる肉もきゅうっと収縮する。貫く肉に絡みつき、締めつける。神
はしてやったりと笑い、娘の奥を強く突き上げた。

261 :
 獣じみた嬌声が迸る。ぎゅうぎゅうに狭まるなかを何度も何度も擦られ内臓ごと突かれ、
娘は恥も外聞もなく乱れるばかり。
「どっち」
「どっち」
「「ねえ、どっち──?」」
 娘は。叫ぶように。途切れ途切れの息の下、答えた。
 神は、笑った。
 神も、笑った。
「外れ」
「外れ」
 腹の内側を刻むように突かれ、陰核を押し潰され、娘の身体がぴいんと突っ張り。崩れる。
「外れても、いいよ」
 精を溜めたままの男根を引き抜き、神は笑う。
「もう一回するから、いいよ」
 体液を絡め取った指を舐め、神は笑う。
「今度はもっと簡単にするから、大丈夫だよ」
「今度は“前”を当てればいいだけだから、大丈夫だよ」
 その時には神の言葉は理解できずとも、続く行為は娘に状況を把握させるには充分で
あった。
 横倒しにされた娘の身体を、二柱の神が挟む。ふわふわとした乳房に顔を埋めるように、
すべすべとした背中に前身を擦りつけるようにして──どろどろに爆ぜた秘裂と、白濁の
残る後孔とに男根を捻じ入れてゆく。娘ががくがくと震える。身体を裂く質量に身動きも
出来ぬまま、薄い肉壁を巻き込んで擦れ合う熱に唯々焼かれる。
 びくん、と。娘の肉が震える。軋む悲鳴を上げ、絶頂を迎える。瞬間、狭まる肉に二柱
の動きも止まり──僅かに緩むと同時に再度、むしろ強さを増した責めに転じる。弛緩
したはずの肉が高みに昇り始める。間は、短い。快楽から降り切っていない身体は当人の
意志を焼き切る勢いでいちばん上へと駆け上がる。
「どっち?」
 押し上げ、子宮を歪ませ、奥へ奥へと引き攣る内に快楽を与える肉。
「比べてみて」
 腸を歪ませ、引き抜いて押し込んで排泄に似た快楽を与える肉。
「比べたら、分かるよ」
「きっと、分かるよ」

262 :
 違いなぞ寸毫もない、ひとつの生き物のように責めたてるふたつの男根に、娘は腹の奥
と奥とを突かれ肉を緩めることを忘れ。塞がれた視界が真っ白に染まる直前──ひとつの
御名を絶叫する。
 神は、笑った。
 神も、笑った。
「当たりィ──」
「大当たりィ──」
 冷やりとした華奢な身体に挟まれ、前後の穴を貫かれ、朦朧とした意識のなか娘は“神”
の言葉を聞く。
「当たったヒトには──」
「ごほうびをあげなくちゃ──」
 断末魔の獣じみた呼吸が、聞こえる。
 紅梅童子に抱きつかれ、白梅童子に脚を絡め取られ、娘の背はしなり内腿がびくびくと
引き攣る。後ろに倒れかけ、前へのめる。身を抉るふたつの男根が激しく行き来するに
連れて娘の身体は二柱の間を跳ねまわる。毬のように。あっちへ、こっちへ。ぽんぽん。
ぶちぶちと気泡を弾けさせ、ふたつの孔は二柱の肉に歓喜を上げて絡みつく。あちらにも、
こちらにも。
 跳ねる毬が──娘の身体が、伸ばされ繋がれた二組の腕の間で、固定される。
 動けなくなった娘の中を、奥を、大きな熱い塊がふたつ、叩く。
 突き破られた、と娘は思った。肉に、内側を焼き尽くし溢れかえる奔流に。
「“次”が、二人も要るんだものね──」
「いっぱい頑張ろうね──」
「いっぱい注ごうね──」
「まだまだ、“遊ぼう”ね──」
 ──或いは。
 破られたのは、この、毬の跳ねるように蠢く肉の。肉の持ち主である彼女の心、だった
のかもしれない。

*****

双子誕生100%ってことはものっそいブチ込んでるんでしょうね。おお恐い恐い。

263 :
ショタに攻められハァハァ!
GJ!

264 :
実にエロいなァ…
けしからんもっとやれ<●><●>ギンギン

265 :
これが双子確定神の実力か…狸のアレは八畳敷とも言うからな

266 :
この前童子に差し出した娘はこんなことされてたんか…ゴクリ

267 :
保守

268 :
アコマウンコマがどんな交神してるのかが気になってきた

269 :
阿狛吽狛はどっちが男でどっちが女なのか、もしくはどっちにも両方ついているのかとか、
男で交神したらダブルフェラしてくれるのかとか、気になるよな

270 :
アがあたしで、ウンが僕
でも調べたかぎりではアがオスでウンがメスだってさ

271 :
>>270
つまり男の娘とボクっ子ということか

272 :
ほしゅ
神様同士のまぐわい話はありなん?

273 :
>>272
全然アリだと思うよ

274 :
鳴神小太郎の交神はどんな感じなんだろ?
蛇はちんこが2つあるみたいだけど

275 :
蛇の交尾は何日間も繋がりっぱなしってところも注目したい

276 :
小太郎は絶倫っぽい

277 :
絶倫つーなら、虚空坊も凄そう
逆に寝太郎とか幻八は淡泊そう

278 :
確かに、幻八好きだったけど淡白そうでエロ妄想に繋がりづらかったw

279 :
どっかで娘が言葉攻めで調教されて戻ってきそうで交神させたくないって書き込み見たよ

280 :
ワロタwww

281 :
お茶とかなら平気だけど、いざ交神の儀に選ばれた途端狼狽する鳳さんという電波を受信した

282 :
鳳さんはセイントさんみたいなキャラだと思ってた

283 :
セイントさんはモデルがモデルなので子供大好きそう
ツンデレ娘と相性がいいだろう、別にあんな人好きじゃないですし!…見た目と言動よりはいい人ですけど みたいな

284 :
>>274-276を受けて小太郎と一族娘の話を書いてみた
燃え尽きよさんうるせえwwwwな感じの喋り方なのは仕様
一人称で進行します

285 :
幸那(ゆきな)さんが生まれて、早いもので一年は経ちました。
その間に家督を継いだので、本当は当主としての名前が別にあります。
けど、当主の名を継ぐ事と親から貰った名前を蔑ろにする事は違いますよね。
ですから幸那さん、この名前を忘れないように自分を自分の名前で呼んでいます。
何より、幸那さんはこの名前を気に入ってますからね。
幸那さんのお父さんは七天斎八起という神様で、お父さんを象った人形は縁起物として親しまれています。
ですので、幸那さんのお母さんは幸運で幸せな子に育つだろうとお父さんと一緒にこの名前を考えてくれたそうです。
年上好みのひとでした。幸那さん達から見れば世の中の人は大体皆年上ですが。
ただ…そのまんま名が体を表すって訳にはどうも行かないですね。
幸那さん、自分で言うのも何ですがえらく運が悪いです。どんなに注意してもしょっちゅう何かにぶつかったり躓きます。
買い物に行くと大抵財布は掏られるか落とします。その都度ツケたり人に無心するので、借金小町とか呼ばれてます。…全部後で返してますよ。
御神籤を引くと大吉でも大凶でもなく、末吉とか微妙なのばかり出ます。
以前なんてにっくき朱点がご高説を垂れ流してる真っ最中にずっこけました。敵に見て見ぬ振りをされるのがどんなに屈辱か分かるでしょうか。
とにかく、幸那さんは今まで短い人生をそんな風に過ごしてきました。
まだ見ぬ幸那さんの子供にもこの運の悪さが遺伝しなければいいんですけど…ちょっと心配です。
あ、言い忘れてました。幸那さんは今、交神の為に天界へ来ています。うちの決まり事なので相手は自分で選びました。
幸那さんは当主ですし、薙刀士として研鑽している内に『幸那猛毒刃』なんて奥義も創れました。
当然子供にもこの技を継いで貰うので、強い子に生まれてきて欲しいです。
なのでお父さんになってくれる方も能力の高い神様がいいと思いまして、能力を見比べて目に止まった神様にしました。
神様を能力で選り好みするなんて、それ以前に自分の相手をそんなにあっさりと決めるなんてけしからんと言われそうですが仕方ないんですよ。
幸那さん男性の選び方とか知りませんし(買い物先のおばさんは金持ちを狙えと言っていましたが、神様にそういうのは関係ないでしょう)、お母さんみたいに髭のおじ様が好きとか特にないですし。
イツ花は男女の間柄なんて大体勢いで何とかなると言ってましたから、幸那さんもその辺は勢いで何とかします。
でも幸那さん運が悪いし、もしかしたら大変な神様を選んじゃったかも知れないんですよね。
相手の人となりなんて直接会わないと分かりませんし、少し不安です。
まあ、別に幸那さんを好きになって欲しいとか高望みしませんから子供を可愛がってくれる方ならそれでいいです。
うーん、それにしても。
「……遅いですね」
思わず声が出ました。今幸那さんは相手の神様の住処近くだという原っぱに来ていますが、幸那さん以外に誰かがいる様子はありません。
幸那さんの事だからすっぽかされたんでしょうか。いやでも、交神は神様の義務の一つだってイツ花が言ってましたね。
仕方ないのでまだ顔と名前くらいしか知らない神様に思いを馳せます。
何年か前にうちの一族の人が解放した『火』の神様だという事ですが、それなら心証は悪くなさそうです。
幸那さんのお父さんと同じく迷宮の番人をさせられていただけあって、能力は『技』も『体』も申し分ありませんでしたね。
何か『心』の力がやたら偏ってたのが気になりましたが…ああいうのって神様本人の性格も関係あるんでしょうか。
見た目はー…何と言うか、暑そうでしたね。周りが。とりあえず姿絵で見える所は人間っぽかったです。顔もいい方なんじゃないでしょうか。
そんな結構失礼な事を考えていたら、遠くから音が聞こえてきました。地響きのような音です。
段々音が近付いてきます。がらがら、と形容する感じの音がしますね。方向は、幸那さんの背後のようです。
ところでこの音、何だか聞き覚えのある音なんですよね。こんなに勢いのある感じではなかったんですが――
「燃え尽きよ!!」
「何でしたっけぶっ!?」
ああ、あれです。思い出しました。
幸那さんが初めて都のお祭りを見に行った時、いつも通り運悪くお公家さんの牛車に撥ねられた際の車の音ですねこれ。
幸い幸那さんは丈夫なので、大事には至りませんでした。お父さんありがとうございます。
――そんな事を、凄まじい速度で突っ込んで来た台車に撥ね飛ばされ宙に舞いながら幸那さんは思いました。
本当、丈夫な体に生まれてこれてよかったです。

286 :
「言われた処に行くつもりが早とちりで真逆に行ってしまっていた!待たせて悪かったな、鳴神小太郎ここに推参!!」
やたら大きな声が広い原っぱに響き渡ります。
幸那さんの耳が衝撃でおかしくなっていなければ、今聞こえたのが幸那さんの交神相手の鳴神小太郎様の名前です。
「ん?消えたのか、どこに行った!?俺は逃げも隠れもしない、姿を現してくれ!」
貴方が探している人なら多分、数十歩分ほど先の地面に転がってますね。そう、ここに突っ伏している人です。
「どうした!何があった、誰にやられた!」
起きたのは人身事故で、やったのは鳴神小太郎様です。
まあ、見つけて貰えただけでも良しとしますよ。
「あー……心配には及ばないです、幸那さん丈夫なので」
土まみれになった着物をはたきつつ(それなりに上物を着てきた事は気にしてませんよ、ええ全く)、幸那さんは立ち上がって『お雫』を唱えました。
「そうか!丈夫なのはいい事だ!!」
見上げた鳴神様は、大きな台車に乗った人間っぽい上半身に大蛇の下半身が付いた方でした。髪が燃えています。赤いです。
と言うか一連の言動を見るともしかしてこの方、バ……いやいや、半神の一族の当主たる幸那さんが神様をそんな風に思ってはいけませんね。
人も神様も第一印象で判断するのはよくないです。
「そうですね、幸那さんもそう思います。傷も治りましたし、改めまして…」
「応!どこからでもかかって来い!!」
そう答えて、鳴神様は明らかに戦いの構えを取りました。
「すみません、ちょっと何言ってるか分からないです」
「ん?俺は呼び出された、だからすぐに出て行った…要件を聞く前にそうしたが見当は付いている、果たし合いだろう!」
「早とちりってそこからですか!?」
大変ですイツ花並びに家の皆、もしかしなくても幸那さんの交神相手がバカです。あ、思っちゃった。
「幸那さんはどうして名前に運が付いて来ないんですかね…」
「どうした、疲れたのか!」
「色々言いたい事がありますが取り敢えず違います、後果たし合いじゃないです交神の為呼ばれたんですよ貴方」
「そうだったのか!?」
「間違いなくそうです」
まあ幸那さん挫けませんよ、分かって貰えたらそれでいいです。
「今度こそ改めますよ。幸那と申します、当主などをしていますけど今のが本名なのでこう呼んで頂ければ嬉しいです」
若干投げやりな口調になりましたが、漸く自己紹介をする事が出来ました。
ここから勢いで何とかしていけばいいんですよね、相手がもう勢いのみで来てる気もしますが。
「応!俺は鳴神小太郎、火の神などをしている!」
「知ってますけどどうか宜しくお願いします、鳴神様」
丁寧に一礼します。やっぱり幸那さん家の顔な訳ですから、すぐ変わる顔だとしてもきちんとしておいた方がいいですよね。崩れた感が否めませんが。
「固いな!俺はそういうのが苦手だ、もっと砕けるといい!」
「へ?じゃあ、鳴神さん…いえ、小太郎さんで」
「まあ、それでもいい!宜しくな、幸那!!」
こうして、幸那さんと鳴神様改め小太郎さんが出会った訳ですが。
…前途に難しかなさそうなのはきっと気のせいなんですよね、ええ。

287 :
「着いたぞ!何も無い家だが、寝るくらいは出来る!」
寝るってどういう…まあ、この分だと普通にお休み的な意味で言ってますよね多分。
そんな訳で幸那さん、小太郎さんの台車に乗っています。
ちなみに来るまでに三回ほど振り落とされました。あれだけ遠慮のない速度で走られて、よく三回で済んだと思いますが。
「ところで小太郎さん」
「応!」
「ここは家と言うより、洞窟と言った方が近いんじゃないでしょうか」
原っぱを抜けて台車が停まった先は、紅蓮の祠の入り口に丁度似たような所でした。
幸那さんのお父さんはお社に住んでいたので、てっきり神様の家とはそんな風だと思っていたのですが。
「気にするな!人間立って半畳、寝て一畳と言うだろう!」
「ええ、まあ言いますけども」
「俺は畳が無くても寝られるからこれでいい!」
「そういう意味で言ってるんじゃないと思うんですよねそれ」
幸那さんの突っ込みを華麗に無視して、小太郎さんはにょろにょろどすんと台車から降りました。
見てます。何か幸那さんを物凄く見てます、この神(ひと)。
「どうした!遠慮せず乗るといい!」
どうも、小太郎さんは幸那さんに大蛇の尻尾へ乗って欲しいようです。蛇は別に嫌いじゃないから構わないんですが…
「どうしてわざわざ?」
「さっき三度も落ちただろう、ああ見えて俺の車はあまり人を振り落とさない!余程運が悪いのかも知れない!」
かもじゃなくて実際そうですけど。
「術で傷を治したって、痛いものは痛いだろう!そんな日はもう寝てしまえばいい!何も今日中に帰らなければならないなんて事もない筈だ!」
「う…まあ、確かに一月は自由にしていい事になってますが」
「ならいいな!筵くらいしか敷いていないが、寝られないなら布団を後で持ってくる!だから、とにかく乗ってくれ!」
そこまで言われると、特に断る理由も見つかりません。
流石に跨るのは恥ずかしいので、横から緑色の尻尾にちょこんと腰掛ける事にしました。
「乗ったな!」と勢いよく言って、小太郎さんは洞窟の奥へと向かいにょろにょろ動き出しました。…何で腕組んでるんでしょう。
それに呼応するかのように、壁に立て掛けられているたくさんの松明に次々と火が点いていきます。明るいです。
幸那さんの事なので途中で何度も落ち…ませんでした。珍しく。
それと言うのも、幸那さんの重心が少しでもぐらつくとそれに合わせて小太郎さんの尻尾が動くんです。お陰でかなり安定しています。
前だけ見ている小太郎さんはこっちを振り向きませんが、どうやらとても幸那さんの存在に気を配ってくれているようです。
不意に、洞窟全体に響くような大声で小太郎さんがこんな事を言ってきました。
「いいんだぞ、少しくらいゆっくり休んでも!バチは当てないし、当てられる前に俺が止めてやるからな!!」
…いい神なんですよね、もしかしなくても。バカですけど。あ、また思っちゃった。

288 :
野宿は普通に出来ます。一生の大半を討伐に費やす訳ですしね、仮眠も重要な行動ですし。
なので小太郎さんに連れて来られた洞窟の一番の奥に敷かれていた筵の上でも、幸那さんは難無く寝られる訳です。
………………とは言え。
「あの、小太郎さん」
「応!」
「流石に真っ昼間にさあ寝ろと言われても、体は中々眠りに落ちないんですよ幸那さんとしては」
幸那さんが天界に着いたのはそろそろ朝と言えなくなるかなと言うような頃合いで、色々あったのでもうすっかりお昼です。
確かに結構体に疲れは溜まっているんですが、やっぱりそう簡単には眠れないんですよと横で尻尾を伸ばしている小太郎さんにちゃんと伝えます。
あ、別に小太郎さんがうるさくて眠れない訳じゃないんですよ。寝ようとしていると静かでした。呼ぶとうるさいですけど。
「そうか!なら、眠れるまでに話でもしないか!何でも言ってみてくれ!」
あ、これ逆に寝れなくなりそうですね?
とは言え、折角だから何か話してみたくもあります。
取り敢えず、交神相手の事を全く知らないのはよくありませんよね。何か、何か――
「じゃあ、質問していいでしょうか」
「よーしッ!そうこなくっちゃあな!」
ノリノリです。自分で持ちかけておいて何ですけど、貴方本当に幸那さんを寝かしつける気あるんですか小太郎さん。
何はともあれ、気になった事を口に出します。
「小太郎さんは、どういう経緯で鬼にされていたんですか?」
失礼な質問だとは思いますが、聞いておきたいと思ったんです。
話に聞く天界のドロッドロの権力闘争と、どうも小太郎さんは上手く結び付かないんですよ。
「その話か!実の所俺にもよく分からん!気が付いたら天界に戻れなくなっていて、体が言う事を聞かなくなっていた!」
いや、気が付いたらって。…ん?
「気が付いたら戻れなくなっていて、と言うと地上に落とされた時の事は覚えているんですか?」
「応、幸那は頭がいいな!俺は太照天に投げ落とされた!文句を付けに行ったからな!」
「…何の文句を?」
「他の投げ落とされた連中の事だな!変わらない天界を変えようとするのはいいだろう!だが、それに反対した者を片っ端から追い出すのは理不尽だ!
 あいつらにだってあいつらなりの考えがある!それを聞きもせずに粛清するなど、絶対に納得出来なかった!」
成程、幸那さんそれとなく合点が行きました。
話によると件の太照天側は相当強引に天界の改革を行ったとの事。一年と少ししか生きていない幸那さんでも、改革には反発がつきものだと知っています。
それで消される他の神様達の姿に怒り、権力者に楯突いた結果自分も追放された――地上でも普通にありそうな話ですね。
そういう事をする人って、大抵損をする生き方をしてますよね。と言うか、大声でこんな話していいんでしょうか。
「小太郎さんは、バカなひとなんですね」
はっきり口に出してしまいましたが、仕方ありません。
「よく言われるな!!」
「そうですか。でも、そういう風にバカな方は幸那さん嫌いではないですよ」
乙女はそういう事をして損をするバカな人の姿に、案外好感を覚えるものですから。
などと考えていたら、いい感じに眠くなってきました。

289 :
ふう、どのくらい寝たのでしょうか。昼寝なんて滅多にしないので、貴重な時間を過ごせ――
「どわああああああああっ!?」
先程乙女らしい事を考えていたばかりだと言うのに、幸那さん思わず全く乙女らしさのない声を上げてしまいました。
いや、でも叫びますよそりゃあ目を開けたら視界いっぱいに赤い男の人の顔があったりすれば。
「どうした!」
「どうしたってこっちの台詞じゃないですか!?何してるんですか心臓に悪いですよ!」
寿命が縮みますよ縮んでますけど、なんて笑いにくい自虐ネタが飛び出しそうになったじゃないですか。
「悪いな!暇だったから幸那の顔を眺めていた!」
「見て面白い顔はしてないと思いますけど」
「顔の傷は痛くないのか!」
小太郎さんの言うように、幸那さんは両頬に二条ずつ傷があります。生まれが生まれなので、元からある痣だと思って貰える事も少なくないのですが…
「……去年に執事が飼い始めた猫を抱いた矢先、思いっ切り引っ掻かれただけです」
イツ花曰く普段は大人しい猫なので、たまたま幸那さんの抱いた時に虫の居所が悪かったんだそうです。
「そうか!痛くないならいい!」
うーん、でも仮にも乙女が寝顔を男の人にじっと見られるのはよくないですよね。いやでも、ちょっと忘れかけてましたが小太郎さんは幸那さんの交神相手な訳で…
「傷が付いても美人は美人だからな!」
「ごほっ!?」
息が肺に変な入り方をしました。いきなり大声で何言い出すんですかこの神は。
「ちょっと、あのですね小太郎さん…」
「心配するな!俺は嘘を吐かないし吐けん!」
「でしょうね!!」
思わず小太郎さんばりの大声を出してしまいます。
「最初から思っていたぞ!幸那は美人だ!さっき笑った時も、綺麗だったな!それと寝顔も気に入った!」
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って下さい。
何で貴方、そんなに自信満々に腕組みして晴れやかに恥ずかしい事を大声で言えるんですか!
「………………っの、ですねぇ」
まずいです。幸那さん、当主たる者冷静沈着を心がけていますが。
ここまで直球で言われ続けると、幾ら何でも照れます。こういう事を言われた事が無くはないですが、こんな言い方は初めてされました。
二の句が継げません。先程うっかり好感を持ってしまったせいでしょうか。このままでは幸那さんはちょろい女です。
「幸那は色が白いから、赤くなると目立つな!」
貴方は少し黙っていて下さい。ああもうとにかく、この空気を変えてしまわなければ。
「そ・れ・は・そ・う・と!幸那さんは十分に休みましたし、小太郎さん退屈じゃないですか?何か用があれば付き合いますよ?」
「そうだな!」
小太郎さんの『心』の力は、『火』と『風』に偏っていました。それが性格に関係するなら、じっとしているのは苦手な筈で…
「もうすっかり夜も更けた!交神の儀、始めるか!」
今のは幸那さん運が悪かったんでしょうか、単に迂闊だったんでしょうか。

290 :
そりゃあ、幸那さんも交神は果たさなくてはならない使命である事は分かっていますよ。当主ですから。
でも幸那さんは一応乙女である訳で、子を残す過程に色々複雑な感情を持たなかった事はないんです。
有り体に言えばそれらしい雰囲気になったりしたらいいなぁとか……正直思っていましたよ、はい。
「俺はいつでもいいぞ!来い!!」
ええ、ですからもう少しでいいのでしっとりとした感じになってくれるとよかったんですけどね!
そんな髪をめらめら言わせて腕組みして言われても何かこう、違うじゃないですか。ねえ?
しかし向こうがいいと言っているのです、相手になって頂いてる立場がどうこう言えた事ではありません。
いいですよ。幸那さん腹を括りました。勢いですよ勢い。
「――って、あれ?」
ここに来て、幸那さんはやっと重大な問題に気付きました。
「あの、小太郎さん」
「応!」
「小太郎さん、下半身蛇ですよね?幸那さん、蛇のあれやこれやってどうすればいいのか分からないんですが…」
ぼやかした言い方しか出来ませんでしたが、ちゃんと幸那さんの困惑は伝わったのでしょうか。
いやでも重要ですよ、現に小太郎さんの蛇の部分を凝視しても(よく考えたらはしたないですね)それらしきモノが見当たりません。
「そういう事か!なら、幸那が出すといい!こういうモノは、多くの生き物はこういう時にだけ体から出すからな!」
「え、ちょっと、出すって……」
理屈は分かりました。一見ないように見えても、しかるべき時に探すと出てくるんですね。生き物って不思議です。
――だからって、いきなりそんな事言いますか!?
「怖がるな!俺の場合、位置は大体人間と一緒だ!」
「怖がっている、と言うか…自力で出したり出来ないんですか?」
「何も無いのに用意をするのは難しい!男とはそういうもんだ!」
そうですか。身も蓋もないですが納得は行きました。
幸那さんがやらなければいけないのなら、やるしかありませんね。
「こ、この辺ですか…?」
位置は大体人間と同じとの事なので、小太郎さんの人間で言うと股間に当たるだろう所に近付きます。
やっぱり堅い蛇の鱗しか見えません。どこにどうやって仕舞っているんでしょうか?
「失礼、しますよ?」
触れば何か分かるでしょうか。それと、小太郎さんは急に黙らないで欲しいです。…何か調子狂いますので。
鱗らしくつるりとした感触があります。目を閉じて、指先に意識を集中させながら何かないか探ります。
「…ここでしょうか」
分かりました。触って確かめると、鱗と鱗の隙間に亀裂があります。多分、ここから出てくるんですね。
「そうだ!そのまま触っていれば出せる!」
本人もそう言っているので、亀裂に指先を当てるような感じでさすってみます。出て来て下さーい。
かりっと軽く引っ掻いてみたりなどして、幸那さんは真剣にそうし続けていました。
そんな矢先の事です。
「ひわっ!」
『それ』は、唐突に幸那さんの鼻先めがけてずるっと飛び出てきました。

291 :
先程も言いましたが、幸那さんは冷静沈着を心がけています。なので、宝箱から急に鬼が出ても慌てません。
交神するに当たっても、心の準備くらいはしてきました。男性のアレを初めて見る訳でもありません。お父さんがいますし。
「…………!」
ですが、今のには不覚にも驚いてしまいました。
いきなり顔に突き付けられたのもありますが、何より『それ』は見た目が凄かったもので。
まず、赤いです。小太郎さんの人間部分の肌は火のように真っ赤なのでここが赤いのも当然ですが、肌よりも更に赤黒いんです。
その上に大きいです。これが俗に『怒張』と表現されたりする事があるのは知っていますが、確かに字面に呼称が合いすぎています。
それに太い血管が走り、脈打っています。うわあ。
あ、形自体は人間のそれです。すみません幸那さん混乱してます。
「幸那!悪いがもう一声足りない!頼んだ!」
「もう一声、って…大きくなるんですか?これ以上!?」
「なる!!」
清々しいくらいの勢いで言い切られました。正直、この状態でも大丈夫なのか心配になるんですが。
それはそうと頼んだ、ですか。ええ、勉強はしてきましたよその手の事が必要になると思って。
「ちなみにもう一本出そうと思えば出るぞ!出すか!?」
「いえ要りませんよ、一本で勘弁して下さい!」
「そうか!人間は一つしか入る所が無いんだったな!」
どうも蛇という生き物は、雄の入れるモノも雌の入れられるモノも二つずつあるみたいですね。
…勉強にはなりますが要りませんこんな知識。
とにかく、幸那さんは例え半分でも人間なので相手をするのは一つで手一杯です。
「こ、これは……」
両手で握ると、それだけで熱いくらいに体温が伝わってきます。思わず息を飲みました。
「それでは、行きますよ?」
「応!熱き血潮よ、ほとばしれ!!」
本当この神しっとりした感じに無縁だなぁなどと思いつつ、幸那さんは眼前の怒張の頭に口を近付けます。口取りですね。
「ん、んむっ……むうっ」
やっぱり大きいです。口の中に収めていくのが大変です。
それと、咥えると本当にこれは熱いです。火傷しないのが不思議なくらいと言っていいのではないでしょうか。
こんなに熱い思いをしたのは、紅蓮の祠で戦った舞い首の『凰招来』が幸那さんにだけ当たった時以来です。
頭の所に舌を押し付けるように当てて、どうにか動かしていきます。参考文献には飴を舐めるようにとありました。
むぐむぐと口を動かして、頬張ったモノに出来るだけたくさん触れるように。これ、本当に気持ちいいんで――
「ん、ふぅっ!?」
ずくん、と口の中の質量が大きくなります。その拍子に唾液が唇の端から漏れ出て、やけに恥ずかしいです。
「んく、ん、んっ、ふぐっ…ぅ」
しかし、これでも幸那さんはこの時のために努力したのです。
参考文献、言ってしまえばまあ艶本という物ですが読んで勉強しているのをイツ花に見られてもめげませんでした。
じゅるっ、と舌を動かした拍子に音が立ちます。
苦しくなってきたので、慎重に口から怒張を抜いていきます。
ぷはっ、と空いた口で息をして、不意に小太郎さんと目が合ってしまいました。
……何で真顔で黙ってるんですか。動揺しますよ。

292 :
口を離して改めて見てみると、成程確かに出した時よりも更に膨れ上がった怒張は凶悪な大きさになっています。
いくら何でもこれより上があるとは思えません。
と言うか、身の安全を考えると思いたくありませんね。
でも、小太郎さんは何も言わずに幸那さんの動向を見ているように見えます。
「…あの、小太郎さん、これで――終わりにしますか?」
首を上げて問いかけると、意外な答えが返ってきました。
「いや」
それは、これまでで幸那さんが耳にした彼の声の中で最も静かなものでした。
「このまま、もう少し続けてくれ」
こんな喋り方も出来るんだなぁと頭の片隅で思うと、急に体温が上がります。
『火』の神の神威に当てられたのでしょうか。いけませんね、幸那さんは冷静であるべき立場の人間でしょう。
「では、もう一度」
深呼吸をして、再び怒張に顔を寄せます。
あまりに大きくて口に入り切らなかった部分もあるので、そこが不満なのかも知れません。
「はふっ、んんー…っちゅ、はぁ…ぁ」
なので、幸那さんは咥えるのでなく先から根元まで舐め伝ってみる事にしました。がちがちに硬いです。
空いた所に手を添えると、唾液でぬるぬるします。
こんな事をしていると、自分が凄くいやらしい女であるように思えてきます。正真正銘処女なのですが。
――そして、その処女を差し上げる訳ですよね。小太郎さんに。
駄目です、変に意識しては。その手の高望みはしないと、自分で考えていたじゃないですか。
「ふぅっ、うんっ、……んん」
ずるずると、何往復も舌を這わせぬるつきの線を指でなぞります。頭がぼうっとしてきます。
そうしている内に、舌先に唾液とは違う液体の感触がするようになってきました。
舌を通して、怒張に走る血管がより強く脈打ちだしたような感じもします。
何とか鈍った頭の回転を早め、幸那さんは予備知識からこの状態に関する情報を引き出します。
最も重要な子種は、男性が至上の快楽に昇りつめた際に出てくるもの。その直前に出てくるのが先走り。
と言う事は、今幸那さんがしているご奉仕は決して間違っていなかったようです。
こんな事を考えている間にも幸那さんは舌と手を動かし続けているので、小太郎さんの顔を見上げられません。
どんな感じなんでしょう…男性の気持ちよくなった顔って。
それが気になって、怒張からまた舌を離します。ねとり、と唾液が糸を引きました。
「はむっ……ん、ふむっ…」
もう一度、頭から怒張を咥え込みます。何度も舐めたお陰で滑りがよく、さっきより深めに入りました。
やっぱり、熱いです。口の中で舌をぐるりと動かし、その熱さを味わうように舐めます。
上目遣いで見上げて、やっと小太郎さんの顔が見えました。さっきの真顔が、少し崩れています。
幸那さんの事を気持ちいいと思って貰えている実感が湧いて、思わず目元が綻びます。
その時でした。
「くふぅっ……!」
どくんと脈動を強く感じた直後、口の中に唾液でも先走りでもない液体が流れ込んできます。
この苦くてどろりとした物が子種なんだと気付くまで、それから少しだけ時間がかかりました。

293 :
「げほっ、かはっ…けほっ、うぅ、すみません」
勢いよく口の中に子種を出され、失礼かも知れませんが完全に口取りを止めて咳き込みます。
何と言うか、濃いと言うべきなんでしょう。吐き出すのも悪いですしこの際飲みますが、喉に絡み付いてきます。
物を口に入れてこんなに泡を食ったのは、晩御飯の味見をしたらイツ花が間違えて塩の塊を落としてしまい、捨てようとしていた料理だった時以来です。
それはそうと、小太郎さんはどうしたのでしょうか。
「大丈夫か!」
「まあ、大丈夫ですけど…」
どうもしていませんでした。小太郎さんの静かになるまでが幸那さんいまいちわかりません。
すると、幸那さんの頭に何か乗ってきました。暖かいです。
「よく頑張った!幸菜は偉いな!」
顔を上げれば、赤い手を伸ばしている小太郎さんが笑っていて――って。
幸那さん、もしかしなくても頭を撫でられているんですか。
「そ、そう言えば。よかったんでしょうか、口に子種を出しちゃっ…」
妙に気恥かしかったので、慌てて視線を下に戻します。
「うわっ」
『それ』の様子は全く変わっていません。おかしいです、出したら萎むと参考文献に書いてたじゃないですか。
結構な量を幸那さんの口に流し込んだと言うのに、赤黒くて大きくて太い血管が走っているままです。
「あ、あのー小太郎さん?これは…」
「心配するな!一回くらい出した方が調子がよくなる!」
納得しました。俗に言う絶倫って事なんですね、貴方。
言われてみれば肌つやが少しよくなったなぁなんて思っていると、急に幸那さんの体が宙に浮きます。
「待たせたな!これからが本番だぞ!」
小太郎さんに抱き上げられたんだと気付いた時には、もう大蛇の尻尾が幸那さんの着物の帯を強引に抜き取ろうとしていました。
「ち、ちょっと。待って下さい、幸那さん…自分で、脱ぎますから」
腹は括っているんですから、その位訳もありません。
…乙女の恥じらいとして、下に降ろして貰って後ろは向きましたが。
「はい、脱ぎました――ってひゃあ!?」
振り返る前にまた抱き上げられました。幸那さんの頭が丁度、小太郎さんの胸板に当たる体勢です。
幸那さんも小太郎さんも髪が長いので、土の色と火の色のそれが絡まり合うのが見えます。
「少し、我慢してくれ」
また急に静かな声で囁かれたかと思うと、小太郎さんの尻尾が伸びてきました。――幸那さんの脚の間に。
「そ、そういう事ですか…?」
尻尾の先が、『そこ』に触れてきます。意外と器用に、引っ張って開いてきました。
「っひ、あぅっ!」
入口をつうっとなぞられたり、その、豆…をつついてきたり。
気付くと、幸那さんから尻尾を伝って体液が流れていました。

294 :
「……よし、このくらいでいいな!」
元気よく小太郎さんがそんな事を言う頃には、幸那さんはもう大分恥ずかしい状態になっていました。
手よりも寧ろ尻尾の方が器用なんだそうです。いい事なのか悪いことなのか。
「じゃあ…挿れるんですよね、これ」
尻尾であれこれされている間にも、小太郎さんの怒張はずっと幸那さんの脚の間で待ち構えていました。
やっぱり大きいです。本当に入るんでしょうか…裂けたら嫌ですね。
「行くぞ。痛いのは、我慢しなくていいからな」
幸那さんを落ち着けるような声でそう言って、小太郎さんが一気に突き上げてきました。
「っ痛……う、ああっ!」
予想はしていましたが、痛いです。身体にめりめりと穴を開けられているかのようです。
どんどん入ってきます。反射的に閉じた目を開けると、繋がった所から血が滴るのが見えました。
一回抜けて、また入って、荒々しく出入りされています。
「かはっ――!」
その都度痛みが全身に走り、喉の奥から息が押し出されます。
でも、見縊らないでほしいですね。血と苦痛なら、幸那さん達は生まれて二月で慣れ親しんでしまうんですよ。
口の端を吊り上げて、幸那さんの腰を抱く手に自分の手を重ねます。真っ赤で、武骨な手です。
「っ、でも……嫌いでは、ありませんからねっ…!」
無意識に、思った事を声に出してしまいました。
実を言うと、小太郎さんの手は幸那さんのお父さんの手に似ているんです。
お父さんは『土』の神様ですが、小太郎さん同様肌が赤い方でした。大きくてごつごつした、でも優しかった、今でも幸那さんの好きな手です。
「はぁっ、はぁ…っ、あ、あっ」
そうしていると、もっと深くまで突き通されます。お腹の奥にこつこつとした感触がありました。
冷静に思い起こすと、これは子袋に当たってるんですね。
「くっ、だ、大丈夫…ですから、続けてもっ」
いいですよ。突いちゃって下さい。
一生使われないよりは、少しでも使われた方がいいですから。
小太郎さんは、幸那さんが選んだ方ですしね。…なんて。
「あ――」
そんな事を思いながら突かれ続けていくと、急に体の中の動きが止まりました。
そして、元から熱かったお腹の奥に紅蓮の祠の溶岩のような熱の奔流が出来ました。
子種です。どくどくと、命の素が流れ込んでいます。
ってあれ、こんなに出されたのに中のモノが萎んだ気配がないのですが。
と言うか、ちょっと止まったかと思えば小太郎さんまた動き出してるんですが。
「あの、ちょっと…ちょっと待って下さい、その、せめて違う体勢で」
痛みが薄れてきて、幸那さんやっと気付きました。
…後ろから抱きかかえられてこういう事されるって、もしかしなくてもかなり恥ずかしい体勢じゃないですか!

295 :
一般的な体位を俗に正常位と言いますが、何が一般的かなんて相手によって違いますよね。
ですから、さっきの形が本当は正常位でよかったのかも知れませんが…
「これでいいのか?」
「概ね、これでいいですね」
幸那さんが考えていた別の体勢とは、人間にとっての正常位でした。
それは小太郎さんにはかなりやりにくい体勢のようで、近いけれど別の形を取って貰っています。
具体的にどういう形かと言うと、幸那さんが座った(脚が蛇なのであまり適切な表現ではありませんが)小太郎さんにぴったり抱きついている感じで――
「……こっちの方が恥ずかしい事を除けば、これでいいです」
肝心な処同士は繋がる直前の、触れ合っている状態で。
幸那さんの顔は、小太郎さんの胸板に埋まっているような状態で。
ついでに、小太郎さんの尻尾は幸那さんの腰から下を覆うように巻き付いてきている状態で。
身体を曝け出す事はなくなりましたが、密着度がとても高くなってしまっています。正直に言えば、小太郎さんの方へ顔を上げられていません。
もう相当冷静さを欠いている精神状態で当主として情けないのですが、小太郎さんには幸那さんがどう見えているのでしょう。
「よし。じゃあ、改めて行くぞ!」
「んっ…………!」
そう声をかけられて、みちみちとまたあの大きな怒張が幸那さんの中に侵入してきました。
中に出された子種が抵抗を減らしているのか、先程よりは痛みがありません。
「ぁ、やんっ、んっ」
巻き付いている尻尾の力加減が変わる事で腰が動かされ、熱い感覚に変な声が出てしまいます。
これが、気持ちよくなっているという事なのでしょうか。
「ひぁうっ!は、ぁ、ああっ……っふ、んくっ!」
どうしても胸を小太郎さんに押し付けている形になってしまっているのも、どうにも恥ずかしいです。
無音の洞窟に、幸那さんの声だけが響いています。小太郎さんが黙ってしまうから、余計に。
目をぎゅっと閉じてされるがままにしていると、髪の中に手が差し込まれる感触がありました。
武骨な手の、それでも優しく幸那さんの髪を梳く、お父さんに似た感触でした。
「はっ、あ……小太郎さんっ、ぅう」
熱くて頭の中が痺れる感覚の渦の中で、どうにか目を開けます。幸那さんと繋がっているひとの顔を、見ます。
小太郎さんの顔が、今までで一番近くにありました。金色の目の中で、青い目をした幸那さんの姿が揺れていました。
その表情が、微笑みと呼べるものだったから…愛おしげにとか、そんな風に見られているのかと高望みもしたくなってきて。
「あ、あっ!」
大きな背中に掴まる両腕に、らしくもなく一生懸命力など込めてしまいました。
すると、ぐいっと頭を小太郎さんに押し付けられます。と言うより、頭を抱かれているんでしょうか。
上半身はそんな風で、下半身は下半身で小太郎さんで占められていました。
今、幸那さんの胎内はみっちりと彼で埋められているのです。あれだけ大きいから、隙間なんて無いのかも知れません。
つまり、幸那さんはどこまでも小太郎さんに密着している訳です。上でも下でも、ぴったりと寄り添っているのです。
頭の中まで、きっと小太郎さんでいっぱいにされているんでしょう。もしかしなくても、さっきから彼の事ばかり気になっていますから。
「あ、きちゃう、何か、きちゃいます、ひくっ、ゃ、あっ――」
「我慢するな。俺が、幸那に付いている!」
もう…だから、そういう風に喋るの止めて下さいって。嬉しくなってしまうじゃないですか、乙女として。
「小太郎さん、小太郎さんっ、ひゃあ、あ、あぁあああっ!」
身体中が燃え尽きるような熱の中、幸那さんの頭の中で何かがぱしんと弾けました。また中にたっぷりと出された、子種を感じながら。

296 :
幸那さん、何事にも限度があると思うんですよね。いや本当。
「只今、戻りましたよー……」
でなきゃ、幸那さんこんなにふらふらになって洞窟の奥に着くなり倒れるように座り込みませんし。
「応、お帰り!」
で、そうさせた張本人の方はいっそ腹が立つくらい元気に出迎えてくれますし。
「人生で一番疲れた日ですよ、今日は…今日っていつの事を指すのかもう分からなくなってますけど」
どうしてこんな事になっているのかは、大体お察しの通りかと思いますが。
ええそうです、あれから小太郎さんが全く放してくれなかったもので常人よりずっと体力のある幸那さんでも音を上げてしまった訳です。
力加減が絶妙だったとは言え尻尾で何度も締め付けられたせいか腰が物凄く痛いですし、身体も汗とか色々な体液でべとべとです。
ですので、ちょっと休んでからお父さんのお社に行って湯殿を借りてきました。
ほぼ半半生と言っても過言ではなさそうな幸那さんを見てお父さんは驚いていましたが、体調を心配してくれつつも幸那さんの成長に喜んでくれました。
本当、参りましたよ。
「いやあ悪かったな!ついつい放したくなくなってしまった!それに、蛇は元々二日かかる生き物だ!」
「二日って…普通でもそんなに長いんですか」
「足の無い生き物はそんなもんだ!そうだな、蛞蝓なんかも長いぞ!」
「へぇ。…まあ、いいんじゃないですか。情熱的で」
何に参ったって、それが嫌ではない幸那さん自身になんですけどね。
小太郎さんの横に座って、何となく言うべき事が見つからずに黙っていると頭上から「まあ、許せ!」と言う大声が降ってきました。
「それもこれも幸那が可愛いからだしな!」
「ごほっ!?」
全力で咳き込んでしまいます。今、ちょっと衝撃的すぎて頭に入ってこなかった台詞が聞こえたような気がするんですが。
「ちょっ…あの、小太郎さん、だからそういう幸那さんを勘違いさせるような事は!」
「何を勘違いするんだ?幸那は美人だし、落ちついているようでよく恥ずかしがる処が可愛いのは本当だろう!幸那は可愛いな!!」
「だーかーらーっ!!」
どうしましょう、薙刀を持っていたら勢いで斬りつけていたかも知れません。何でこの神大声で恥ずかしい事を言う事に躊躇いが無いんですか。
「違いますよ、幸那さんそんな風に言われる人じゃないです!幸那さんは運が悪くて特技が借金とか言われてて男性の選び方なんて分からなくてだから交神相手をぱっと見で決めるような人ですよ!?自分で言っててへこみますが!」
「運くらい悪くても最終的に幸せと言えるならいい!幸那はそういう名前をしている!それに偶然選んだのが俺なら、それは運命って事になるな!惚れ直したぞ!」
「惚れ直し……って、そんな、ちょっと、一日か二日前に会ったばかりの人にそういう事言いますか!?」
「一目惚れをするのに何日も要らないだろう!言った筈だ、最初から好ましく思っていたと!」
反論する余地を与えない気ですかこの神。幸那さんそろそろ涙目になりますよ。
間髪入れずに、小太郎さんはこんな事まで言ってきました。
「幸那はどうだ!俺の事が好きか!最初に会ったのが敵としてでも、俺を好きになったか!」
「質問しておきながら好き…な事を前提に話を進めるのはどうかと思いますよ、大体敵を好きになるってどんな意味の分からない性格をしてる人ですかそれは」
ああもう、悔しいです。何が悔しいかって。
「まあ、…………好きか嫌いかで言えば、小太郎さんの事は嫌いになれないと思いますよ。小太郎さんは、いいお父さんになると思いますし」
どちらかと言えば、その前提が正しいと言えるのが悔しいんですよ。だってもっとこう、段階とか踏みたいじゃないですか。
「そうか!嬉しいぞ!!俺達の子、強くいい子供に育ててやりたいな!」
そんな事を言いながら、ひょいと抱き上げられました。
――でも、あれですね。このくらい段階を飛ばした方が、時間の無い幸那さんには向いていたかも知れないです。

297 :
そんな事が、ありました。
あの一月は今思い出しても目まぐるしい時間でしたね。
小太郎さんの台車に乗せられて、仲間の神様達全員に見せに行かれました。
その神様達が皆こいつバカだから大変だろーなんて言うものですから、幸那さんおかしくなってその都度笑ってしまいましたよ。
まあバカな方である事には間違いないですよ。けれど、多くの『火』の神様達と仲がよかった辺りあるんでしょうね。
人望(『神』望と書くべきでしょうか)と言うか、そういうものが。
台車を高速で動かしながら「吠えよ、歌え、情熱の嵐!!」などと上機嫌で言っていた姿が好ましく見えたのも、きっとそのせいです。
でも、一月の間に何回も……したがるのはどうかと思いましたよ。その都度へとへとになる方の身にもなって下さい。
一度も嫌がれなかった幸那さんも、幸那さんなんですけどね。
「母ちゃん」
ああ、言い忘れていました。この子がその後幸那さんの下へやって来た幸那さんの息子で、名前は閃雷(せんらい)と言います。
閃く雷、神鳴り。幸那さんの子のお父さんになってくれた、幸那さんがすっかり好きになってしまった方の名前から付けました。
最初は気付かれないかなーと思ってたのに、すぐ「俺の事か!幸那はいい名前を付けるな!幸那がいい名前だからな!!」なんて言われて恥ずかしかったですよ。
「何ですか、閃くん」
床に寝たままの幸那さんの手を、閃くんが力強く握っています。
閃くんは最初に家に来た頃は体が弱くて、訓練中すぐに寝込んで随分心配したものでした。
けれどやっぱり小太郎さんと幸那さんの子ですね、初陣を経たらどんどん元気になって強くなっていってくれました。
その小太郎さんは意外と心配性だったみたいで、「いや、逆に何でそれでばれないと思ったんですか」と言いたいくらいあからさまに地上へ様子を見に来てもいました。
勝手に地上に降りたらまた太照天に投げ落とされますよと注意すると、「もしそうなったら、幸那か閃雷に助けられたいな!!」なんて答えたりして。
そんな事もありましたが、今では閃くんは立派に討伐隊の中核を担ってくれています。
『幸那猛毒刃』も使いこなしていますし、この子かそのまた子供が新しい奥義を創るかも知れません。
「母ちゃんは、幸せだったかい」
「何を言いますか」
今更ですけど、幸那さん説明し忘れている事がありました。
「幸せに決まってるじゃないですか。だったじゃなくて、今この時も幸せですよ」
幸那さん、『幸運』という意味では名が体を表しませんでしたが『幸せ』という意味ではしっかり表しているんです。
お父さんとお母さんに恵まれて、家族がいて、図らずとも好きになってしまったひとが出来て、その方との子供に看取られているんですから。
人より短い生涯でも、人より不幸とは思いません。幸那さんのような最期を迎えられない人が、世の中には何人もいます。
ですから幸那さんの人生は――不幸中の幸いならぬ不運中の幸い、と言った処でしょうか。
と言うか、不運でもないかも知れませんね。小太郎さんを選べた時から、恐らくそうだったのでしょう。
「閃くん」
「何だい、母ちゃん」
「これだけは覚えておいた方がいいですよ」
ふぅ、疲れてきましたね。あの時ほどではありませんが。
「人間、運くらい悪くても最終的に幸せだと思えれば勝ちです」
閃くんにも、幸那さんの次に当主になる子にも、この家の人皆に覚えておいて欲しい事です。それだけ覚えれば、十分だと思います。
さて、あのひとは迎えに来るでしょうかね。また方向を間違えてなければいいんですが。

閃くんが体弱かったというのはプレイ中間違えてどっぷり交神してたせいで初期ステが低かったという話

298 :
GJ!
幸那さんもこたろ

299 :
すまん興奮のあまり切れたw
幸那さんも小太郎もかわいすぎると言いたかったんだ

300 :
GJ!イイヨイイヨー
暑苦しかわいいカプだなwww
もしかして黄川人とひなりん書いたのと同じ人?タイトルの付け方が…
貴方の文が凄く好みです。ぜひまた書きにきてください

301 :
GJ!小太郎と幸那のやりとりが可愛らしすぎて萌えた!
迎えに来てくれた小太郎とどんな会話をするのか気になるよ
とても面白かった

302 :
GJ!
くせのある主人公に最初は戸惑ったけどストーリーがすごく面白くて引き込まれましたー

303 :
GJ!
コピペの信号青だから渡れるねの犬みたいに
暑苦しくて、邪気の無いおバカな小太郎にわろたwww
幸那もちょっとズレてて、そこが上手く噛み合って、
ほのぼの幸せそうで良かったです

304 :
時事ネタで七夕カップルの逢い引きにwktkなんだが文才も妄想力もない自分が腹立たしい
とりあえず北海道の七夕は八月だってことだけ言っとく

305 :
あげ

306 :
昼はお涼さんの胸に挟まれながら六ツ花さんに凍らされたい
夜は春菜さんにあたためてほしい

307 :
お甲の4番目のセリフが急にしおらしくなって見た目も心も俺にドストライク。

308 :
http://iup.2ch-library.com/i/i0701157-1343379484.jpg

309 :
よくわからんけど、一族の呪いが解けたら一番最初にやることはイツ花を孕ませることだな。

310 :
言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だ

311 :
>>308をネタにエロパロ書いてほしいな

312 :
後ろ向き一族男子とイツ花の話。暴力描写あり、あと一族男子がクズいので注意
*****
 種絶と短命の呪いに縛られた一族は、今日も今日とて鬼退治に血道をあげていた。
「朗報を、お待ちしております!」
 元気いっぱいの笑顔で送り出す世話役の娘に、戦装束の四人もそれぞれ笑みを浮かべて
応える。なかでも、今回が二度目の出陣となる拳法家の少年は、それは大層な張り切り
具合であった。
「今よりずっと強くなって帰ってくるからな! 楽しみにしててよ、イツ花ねえちゃん!」
「はい。お好きなものをたんとこさえてお待ちしておりますねッ」
 少年のうすじろい頬に、はっきり分かる紅色が差す。年嵩の家族らは少年に気取られぬ
ようこっそり肘でつつきあう。外界との接点が少ないこの一族では、男子が異性を意識し
始めるのは姿絵の女神相手か世話を焼いてくれるイツ花かの、ほぼ二択であった。
 その後なんやかやと遣り取りがあり、最後にイツ花が、
「当主様のご期待に、応えられますよう……いざ、出陣!」
 快活な声で送り出した。
 揃いの戦装束が見えなくなるまで手を振って、イツ花も家の中へ戻る。
 人が減ってもイツ花の仕事がなくなるわけではない。掃除に洗濯、買い出しにご近所さん
とのお付き合い、飼い猫に餌もやらねばならないし、居残る家人の世話もある。
 それら雑事をパパパッと片付け、最後に残った大仕事にかかる。
「……よォし」
 自分で自分に喝を入れ、ホウキとハタキを手に、たすきがけも凛々しく廊下を進む。
向かった先は、昼前だというのに戸の閉め切られたままの一室だ。
 しんと静まる部屋の前。掃除用具を脇に置き、正座するイツ花は声を掛ける。
「当主様」
 朗らかな声は沈黙に虚しく消える。
「そろそろお昼ですよ。ちょっと、空気の入れ替えでも──」
 それでも明るく言葉を継ぐイツ花。
 その袖を。すうと開いた戸より伸びる手が、捉えた。
 一瞬のことだった。イツ花の小さな身体が日の当たる明るい廊下から薄暗い室内へと
取り込まれる。
 あとには所在なさげなホウキとハタキとが残された。

 部屋の中は暗い。空気も淀み、季節にそぐわぬ冷気すら凝っている。
 当主の居室に相応しく、床には贅沢にも畳が敷き詰めてあった。柔らかなイグサが受け
止めてくれたお蔭で、引き倒される格好のイツ花もそんなに痛くはない。
 身体の方は。今のところ。
「当主様」

313 :
 黙って見下ろす男へと、イツ花は気丈にも笑顔を向ける。
「ホラ、やっぱりお布団ひきっぱなしにして! 朝もお食べにならなかったでしょう?
 篭もりっぱなしは身体によくありませんヨ」
 男──鬼切りの一族の当主は答えない。腺病質な印象の、造作だけ見れば眉目秀麗と
呼べなくもない青年だ。しかし不健康に白い肌の色と濁った血色の瞳とが、彼の雰囲気を
最悪にしている。
 日に焼けない白い肌も、赤の瞳も、一族の中ではそう珍しいものでもない。それでも彼
が異質に映るのは、陰にばかり身を浸してきたような色合いのせいばかりではない。
 表情が。イツ花を見下ろす視線が、他の一族とは明らかに違っている。
 無機質な、苛立つような、澱みのような熱の色が、ある。
「当主さ」
 尚も呼びかけるイツ花の傍らへ、男は膝をつき。
 なだらかな曲線を描く胸元へ両手を掛け、荒々しく引き剥がす。
「──?!」咄嗟に振り払おうとするイツ花の抵抗も虚しく、袂が、帯が乱れる。「ちょ、
ちょっと、当主様! ちょっと待──」
 ぱん、と。
 乾いた音を立て、イツ花の頬が鳴った。
 呆然と見上げるイツ花にも、叩かれた熱に赤く染まる頬にも構わず、男は作業を続ける。
作業、と呼ぶに相応しい無機質ぶりだった。当主の指輪を嵌めていない方の手で殴ったの
だけが、彼の、僅かばかりの気遣いか。
「皆、行ったのだろう」
 男がおそらく今日初めて発した声は、ひどく澱んだものだった。
「誰もいないなら誰に見られる心配もない──助ける人間はいない。諦めろ」
 男の言葉にイツ花が泣きそうに顔を歪める。
 抵抗は、もうなかった。

 男は、イツ花に口での奉仕を命じた。普段の快活さの消えたイツ花は、無言で命令に
従った。
 陽の差さぬ、暗く澱んだ室内。乱れた布団の上で、肌着一枚の男に同じく襦袢一枚の
少女が奉仕する。小さな口で、これから己れを犯す男根を愛撫する。震えながら、犯される
準備を整える。
 男側の準備が済んだところで、彼はイツ花の口から乱暴に性器を引き抜き、小さな身体
を押し倒した。
 美形、とは呼べずとも愛嬌のある可愛らしい顔が、泣きそうな色を湛えたまま男を見て
いる。鼻の上にちょこんと眼鏡が載っている。イツ花が外そうとするのを、「どうせ顔に
触れることはない」と言って、男は許さなかった。
 普段は一族の世話役としてくるくる働く快活な少女が、今は男の暴虐に震えている。
 背徳的で、気分が悪くなるほど興奮する眺めだった。
 男もイツ花も、無言。男が傍らの小さな壺を手にし、中の香油をイツ花へとぶち撒けた
ときだけ、ようやっと細い悲鳴が洩れた。

314 :
「足を開けろ」
 それだけ言って、男はぬるつく香油をイツ花の秘所へと押し込める。何度貫かれても
少女の身体相応にしかなれない部分は、潤滑液の力を借りてどうにか男の指を受け入れる。
 動かされると、小さな身体が跳ねた。顔を紅潮させ、必で喘ぎを堪えている。
 イツ花の努力に男が心動かされた様子はなかった。秘所から響くくちゃくちゃとした
水音に恥じ入り、それでも命令に従って足を必で広げる様子にいじらしさを感じること
も。いじらしく無力なさまに嗜虐心を煽られることもないようだった。
 唯、準備しているだけ。
 口取りをさせたときと同じく、性交に必要な段取りを整えているだけ──指にたっぷり
の香油を絡め、奥の襞までなすりつける男は、以前そんなことを口にしていた。
 お前は、唯の道具だと。
 欲を吐き出す、道具だと。
 “神”が我ら一族を朱点討伐の道具としたように、自分もイツ花を自分の為だけに使う
のだと。
 一族の世話役であり、太照天昼子に仕える巫女でもある少女に、呪われた一族の当主が
そう告げた日から。二人の関係は、他の誰にも知られることなく続いている。
「──!」
 敏感な場所を執拗に往復され、イツ花の口から喘ぎが洩れる。一度出てしまえばあとは
止める術もなく、襞に男の爪が、指先が、ごつごつとした節が潜る度に、ひ、ひ、と短い
呼気を洩らした。
 充血し絡みつく場所を、男はやっと解放する。わざと入り口を拡げるようにし抜いた
せいで、入れたよりも明らかに量の多い粘液が溢れて落ちた。
 身体の準備は万端。
 心の方は──男にとって、意味がない。
 ぐったりしたイツ花の両膝を抱え、広げ、肉付きの薄い腰を浮かす。粘液を垂らす肉の
あわいは、うす赤くひくついている。
 イツ花が身をよじる。濡れた場所を見られる羞恥か、濡らす自身を見せつけられる恥辱
か。或いは足の間に入り込んでくる男への恐怖か。
 理由は聞かれず誰にも告げられず、太い肉が狭い場所を一気に割り裂く。
 悲鳴が上がる。背中が反り、薄い腹がびくびくと痙攣する。
 躊躇なく根元までを埋めた男根が、今度は自分勝手な律動を始める。裏側にある太い筋
を擦りつけ、亀頭を奥へと押しつける。巻き込まれる襞に摩擦の熱が篭もり震えるのにも
一切頓着しない。
「ひッ! ひはッ!」
 足を掴まれ逃げられもしないイツ花は、せめて衝撃を逃がそうと、腰を叩きつけられる
のに合わせ上体を揺らす。乱れた袷から小ぶりな乳房と突起が覗いた。
「ひ、ひう、──ぐうッ?!」
 不意に。圧し掛かる体重が増す。跳ねる身体が押さえ込まれる。

315 :
 繋げたまま顔を近づけてきた男は、どろりと濁った瞳のまま、口だけを笑みに歪ませた。
「あれは、お前を好いている」
 “あれ”というのは、討伐隊の一人、拳法家の少年のことだ。元服もまだまだ遠い少年
は、イツ花を一族の世話役や姉代わり以上のものとして見ている。
「分かりやすいな、あれは。もう咥えたか?」
 こんな風に──ぎしりと音がするまで押し込まれて、イツ花が激しく首を横に振る。
亜麻色の、珍しい、けれど一族よりは人間に近い髪が、ばらばらにほどける。
 男が「ほう」と笑う。答えを知っているのに、嬲るのに唯使う。
「そうか。ならば、」
 男は上体を起こす。繋がった場所が強く刺激されて脚が引き攣るが、体重が離れた分
だけ楽にはなった。
 それが一時のものでしかないと、イツ花は知っていた。
「当主から教えてやるべきかな──イツ花は、こうして、悦んでいる、と!」
「ひ、ああッ!」
 衝撃と熱とが爆ぜる。貫かれる勢いがそのまま胎に快楽を叩きつけ全身へと伝達される。
一度では終わらない。男根は何度も何度もイツ花の奥底を執拗にかき回す。イツ花の肉が
悦ぶ場所をひとつひとつ抉り出し突き上げる。
 交合相手に快楽を与える。麗しい行為のはずなのに、イツ花は泣いて、男は狂気じみた
笑声を上げる。未発達なまま成長の止められた肉は、許容を超えた悦に狂ったように伸縮
を繰り返す。そこを潤滑油の力を借りねば到底入らない太い肉が容赦なく拡張し限界を
訴える柔肉を押し広げ無理矢理に新しい快楽を注ぎ込む。
 かは、と、イツ花の喉が鳴る。
 小さな身体がぶるぶる震える。限界が近いと、外見からでも分かる。快楽を直に与え
られる場所は尚のこと。
「あいつら」
 男は。汗を滲ませる頬を、歪めた。
「昼子様の顔を見たら──さぞ驚くだろうなあ! あいつら、昼子様の顔を知らないもの
なあ──なあ、イツ花──!」
 ずん、と。深すぎる衝撃に、イツ花が大きく目を見開く。
 眼鏡さえなければ、その顔は天界の最高神とそっくりだった。少なくとも姉妹か、或い
は同じ人間の過去と未来ほどに似通っていた。
 それが。天井を、仰ぐ。空気を求めるように口を開け、悲鳴を迸らせ、貫く肉を中心に
全身を硬直させて。落ちた。
 ひ、と、微かな呼吸音。
 最初は小さかった音は、肉が肉を穿つにつれてはっきりとした声となる。
 絶頂に弛緩する肉が硬いままの男根に抉られる。終わったはずの身体から再度快楽が
滲みだす。一度は緩んだ柔襞が男根を強く包む。喘ぎ首を横に振る主人を余所に、快楽を
貪ろうとする。

316 :
 ぎしり。肉が鳴る。男がイツ花へと顔を近づける。ふたつの身体が重なる。
「みんな俺を恨んでる」
 声は昏く。重ねる肌は気分が悪くなるほど温かく。血色の瞳は、濁って、澱んでいた。
 瞳から零れる涙だけが透明だった。
「呪いを続けた俺たちを恨んでる」
 うわごとの間にも肉は肉を打つ。脚が絡まり、先端は奥を強く突く。痛みに狭まる襞は
却って擦過の悦を受ける。
 痛みが悦楽を彩る。
 粘液にどろりと満たされた腹のなか、男根がびくびくと振動を始める、その微かな動き
ですら伝わるほどに敏感になる。そこをかき回され、突かれる。絶頂を迎えたばかりの
身体は簡単に閾値を越える。
「お前も、」
 上がる呼吸。その下の、泣く声。
「お前もだろう、イツ花──なあ、イツ花ぁ!」
 いちばん深くまで貫く衝撃に、イツ花はその脚を男の腰に絡めた。それで、肉と肉とは
ひたりと重なる。爆ぜる快楽全てが胎へと直に叩きつけられる。背中が反り、閉じた目の
前が真っ白に塗り潰される。収縮する肉の中、勢いよく吐き出される奔流が、奥へ奥へと
注がれる。
 イツ花に抱かれて、男は泣いていた。
 小柄な少女の身体を抱きしめ、天界最高神である太照天昼子へと反旗を翻した一族の
現当主は、壊れたように泣いていた。

 呪いつきの一族は仇敵である阿朱羅を倒し、掛けられた種絶と短命の呪いを解き。
 それで全て解決、めでたしめでたし、のはずだった。
 だが。地獄から帰還した一族は、恨みを捨て切れなかった。
 なんだアレは。あのオンナの言は。鬼を許せというのか。自分たちに呪いを掛け、多く
の血族の命を奪った鬼を。神を。
 恨みと怒りを手放せなかった一族は、とある“神”の提案に乗るかたちで太照天昼子に
戦いを挑んだ。その結果が裏京都での昼子との対戦である。
 阿朱羅と直接戦った面々は、結局昼子まで辿り着けなかった。阿朱羅を確実に倒すため
ぎりぎりまで修練を重ねた者──高齢の者が多かったせいもあるだろう。
 阿朱羅戦を生き延びた当時の当主が去し、裏京都にて一族の長の座を継いだのは、
阿朱羅討伐当時、若輩として、いざというときに血を残す役として留守を守っていた少年。
 今の、当主。
 彼はよくやった。全てが鏡映しの世界で、血を残し、昼子への道を切り開き、あとを
託せる後進を育てた。
「──俺がねば、恨みは消える」

317 :
 阿朱羅、そして一族の鬱憤を爆発させた神を、直接には知らず。しかし一族の鬼と神に
対する恨みと怒りとを背負わざるを得なかった男は、虚ろな口調でそう言う。
「みんな、俺がねばいいと思ってるんだ」
 とっくに消えているはずの恨みを次代に背負わせた当主は、そう言って周囲に怯える。
自責の念を仮託する。
 ──イツ花。
 ──お前も、そう思うだろう?
 彼はまるで憎まれるのを望むように、イツ花を責める。この暴力がイツ花以外に向く
ことはない。この一族は外とのつながりが薄く、彼は一族の者を守るべき“当主”であった
から。
 イツ花しかいない。
 彼は、一族に最も近しく、けれど血縁ではないこの少女にしか頼れない。
「みんな……みんな……」
 肩を震わせる男を、イツ花は抱きしめる。すがりつく手は幼い子のようだ。
 男が当主であるように、イツ花も一族の世話役でしかない。それ以上にもそれ以下にも
なれない。
「……さ、当主様」
 だから。優しく声を掛ける。当主の任を果たす彼を責めることなく、彼に救いを与える
こともなく。
「お昼にしましょう。大根の煮付け、お好きですよね?」
 討伐隊が帰還するまで、最短でもあと十日。
 その間、彼はイツ花に辛く当たるだろう。酷いことも、するだろう。
 たった一人、澱を見せることの出来る少女に欲を吐きだし、それで彼は来月からまた
“当主”に戻れる。
 呪いつきの一族──その主柱となる男は、一族を支える少女に抱かれて、長い間泣いて
いた。

*****
阿朱羅倒したあとの一族の呪いの原因=朱点を許せなかった一族の恨みって考えると、
裏京都前と裏京都後の一族の間に確執が生まれそうですごいわくわくするね!

318 :
GJGJ!!
こういう話好きだ

319 :
>>312
うおおおお!イイヨイイヨ!!!
この薄暗さがたまらんね!!!!!!

320 :
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=29456313

321 :
冷えて乾いた空気。
室内に何十も点された蝋燭の灯りは、かえって周囲の闇の深さを際立たせている。
石造りの壁に大小二つの影が写って揺らめいていた。
向かい合って座っているのは、この領域の主である月蝕と闇を司る神・月喰い夜刀介と、
かの神に交神を申し込んだ人間の娘だった。
人間はおろか、神々の前にも滅多に姿を見せない月喰い夜刀介の容貌を知るものは少ない。
月蝕が不吉の前触れという言い伝えもあるが、それを司るこの神の姿もやはり不気味なものだった。
酷薄さと嗜虐性を秘めた金色の瞳は、目の前の娘を品定めするように見下ろしている。
側頭部から突き出た、欠けた月を思わせる長大な角。
幾重にも纏った暗色の錦衣は、豪華さよりも不気味な威圧感を感じさせる。
「こんなに灯りがついているのに、ずいぶんと暗いですね」
「クク、恐れるより闇を楽しめ」
夜刀介は哂ったが、娘の声は落ち着いており、暗いのが恐ろしいと訴えたわけではないと知れた。
生き餌を前にした毒蛇のように舌なめずりする所作に、並の人間ならば背筋が凍る所だが、
夜刀介と対面している少女といってもいいほどあどけない娘は怯える様子さえなかった。
頭の両側で二つに結った金の髪が幼い印象をより強めている。
灯りを受けて星のように輝く瞳は紅く、玉兎(ぎょくと)という彼女の名にいかにも相応しかった。
この娘が自らの意志で来たのか、一族のために役目を押し付けられたのかは知らないが、彼女の意思や経緯は
夜刀介にとってどうでもいい事だった。
交神の儀の申し出が来るまで、何者かと子を成すなど孤高を好む自分には縁のない事だと思っていた。
かつて人間どもから差し出された生贄の乙女達と同じように、壊れるまで弄び、飽きれば打ち捨てればいいというものではないが、
相手が孕むかどうかの違いで肉の交わりに変わりはないと思い、夜刀介は務めを始めようとした。
「あっ、夜刀介様、交神の前に一つ聞きたい事が」
「何だ、申してみよ」
「その頭の角は本物?」
いかにも男女の事など無知そうな娘なだけに、子を作るには具体的に何をするのかとでも訊かれるかと思っていたが、
予想外の質問に夜刀介は内心面食らった。
「……何故そのような事を聞く」
「さっきからずっと気になっていて……今まで倒してきた鬼にもそんな大きな角が生えているのは見たことがなくて」
「本物だ」
「やっぱり! 少しだけ、触ってみてもいいかな」
「……好きにせよ」
ずっと夜刀介を凝視していたのは、異形の姿に慄いていたのではなく、珍しい角が気になって仕方なかったからだと分かった。
元服しているとはいえ、夜刀介の印象以上に子供っぽく好奇心の強い性格らしい。
鬼を素手で倒すとは思えない小さい手が角に触れ、固く滑らかな手触りを確かめる。

322 :
「こんなに大きくて、寝る時邪魔じゃない?」
素朴な疑問を夜刀介は無視した。
玉兎はしばらく角を撫で回し、確かに本物だと納得した様子で手を離した。
「気が済んだか、では閨に来い、忘れられなくしてや」
毒が滴るような囁きは、ぐうぅぅぅ〜、と室内に響いた奇妙な音にかき消された。
緊張感をぐ間の抜けた音は、玉兎の腹の虫だった。
「ごめんなさい、禊ぎのため朝から何も食べなかったので……」
さすがに照れ臭そうな表情の玉兎だったが、人である以上空腹は如何ともしがたい。
呆れるのを通り越した顔の夜刀介が手を叩いて呼ぶと、芝居の黒子のように黒い長衣を着込み、顔を黒い布で隠した従者が
室内の暗がりからぬっと現れた。
その指先までもが人の肌の黒さとは明らかに異質な、闇を固めたような黒であり、彼らが人ではない事を示していた。
黒ずくめの従者に夜刀介は食事を持ってくるよう申し付け、石造りの部屋から出ていこうとした。
「あ、どちらへ」
「今日はもう気が萎えた、勝手に食うがいい」
夜刀介と入れ替わりに、あらかじめ室外に用意していたような早さで、影の従者たちが食事の膳を運んできた。
返事は返ってこないと思ったが、黙々と給仕する影たちに玉兎は一応礼を言ってから箸をつけた。
「いただきます」
生まれてこの方ずっと家族と食事を共にしてきた玉兎には、一人で食事を摂るのは初めてだった。
食べたこともない御馳走ばかりだったが、家族の皆もイツ花もおらず、一人きりの食事がこんなにも寂しいと玉兎は始めて知った。
人の分までねだるぐらい大好物の魚の目玉も、とろけるほど美味しいはずなのに何だか味気なく感じられる。
(……夜刀介様は、いつも一人でご飯を食べるのかなあ……)
『交神の儀』のために今日この神域を訪れた玉兎は、想像と実際に見たものとのあまりの違いに驚いたものだった。
岩と砂ばかりの荒涼とした景色の中にそびえる、半ば朽ちたこの石造りの神殿が夜刀介の住処だった。
永遠に明けないという夜空には、月どころか星の一粒も見えない暗闇が広がるばかりだった。
(こんな寂しいところで、ずっと長いこと暮らしているのかな……)
少なくともお日様を見られるだけ、流刑された罪人の方がましなのではないだろうか、と玉兎は思った。
神が住んでいる所といえば、いつでも陽光が降り注いで花が咲き乱れているような楽園を誰しも想像するだろうが、
この闇の神域を統べる月蝕の神には、そんな極楽浄土の風景よりも荒涼とした砂漠が似合っていた。

323 :
交神の義務がある相手だというのに、夜刀介は話しているとどうにも調子が狂うこの娘を扱いかねており、
従者の影どもに世話を任せていたが、次の日も、その次の日も玉兎は夜刀介のそばにやって来ては勝手な事をしゃべっているのだった。
「月って、美味しい?」
従者が持って来た饅頭を頬張りながら玉兎は聞いてきた。
とりあえず物を食わせておけばその間は大人しいので、夜刀介もいちいち咎めはしない。
「……いきなり何だ」
「月喰い夜刀介様ってお名前だから、月を食べた事があるんでしょう? どんな味だった?」
実際に月を喰ったわけではなく、月が影で覆われる現象を指した名だと夜刀介は説明したが、玉兎は今一つ納得が行かない様子だった。
手にした饅頭を月に見立てているのか、一口かじって三日月型にして夜空に掲げたりしている。
「でも、ここはずっと夜なのに月が見えないよ? 夜刀介様が全部食べたからなくなっちゃったんでしょう?」
全くとんちんかんな事ばかり言う小娘だ、と夜刀介は溜息をついた。
ふと見ると、盆に山盛りになっていた饅頭がもう二個しか残っていない。
こんな小さな身体のどこに入ったのか、生き餌を丸飲みにする蛇も顔負けの貪欲さだと夜刀介は呆れた。
「お前ほどの大食らいなら本当に月を丸ごと平らげかねんな」
ほんの戯れ言のつもりだったが、玉兎はぱっと笑顔を見せ、「うん、食べてみたい!」と答えた。
「でも、できたら夜刀介様といっしょに食べたいな、おいしいものでも一人で食べるのってつまらないから」
「…………」
「最後のお饅頭だけど、どうぞ」
物を食わなくても飢えない神の身だが、夜刀介は差し出された饅頭を黙って受け取った。

324 :
来る日も来る日も、玉兎は聞かれたわけでもないのに、家族の事やイツ花の事、討伐に出掛けた迷宮の事や手強かった鬼の事、
初めて見た花の美しさや雪の冷たさなど、いろいろな事を夜刀介に話した。
夜刀介はそれに相槌を打つわけでもなく、聞くともなしに聞いているだけだったが、それでも玉兎は
一年にも満たない半生の出来事全てを吐き出すように話し続けた。
その話の中で、玉兎の母は兎の姿をした女神・稲葉ノ美々卯だと聞かされ、白い肌に赤い眼、軽快に跳ね回る動作も無邪気な性格も
なるほど母神譲りの特徴だと合点がいった。
月に住む兎の名をつけられた娘が、暗闇に住み月を喰らう蛇神と交わるとは、妙な因果だと思った。
石造りの階(きざはし)に立ち、闇一色の空間を見上げながら、夜刀介は無意識に玉兎の姿を探している自分に気付いた。

「はっ! とぅっ!」
玉兎の掛け声と共に、二つに結った髪束が揺れ、動きに合わせて跳ねる。
素早い足捌きなどできそうもない裾の長衣なのに、夜刀介は一切の無駄もない最小限の動きで玉兎の猛攻をいなしている。
焦れた玉兎は、地を蹴った勢いで一気に相手の懐に飛び込み、一撃を食らわせようと腕を振りかぶる。
空を裂く手刀が夜刀介の眉間を打つより早く、冷たい感触が頸にひたりと吸い付く。
蛇の顎が獲物に毒牙を食い込ませる形で、夜刀介の五指が玉兎の喉笛を捉えていた。
玉兎の紅い眼と、夜刀介の金の瞳が互いを見据え、視線が交錯する。
クク、と夜刀介の喉から笑いが漏れ、玉兎の頸から指を離した。
「三十八手で詰みだ」
「あー、悔しいっ!」
余裕にも攻め手を一々数えていたのか、息も切らしていない夜刀介に玉兎は口惜しがる。
体がなまって仕方ないから、と組み手の相手をせがまれたのは、玉兎が訪れて何日目だったろうか。
何も無い神域に二人きりとはいえ、気付けばこの娘が傍にいて共に過ごす事が当たり前のように馴染んでいた。
相変わらず月は照らず日は昇らず、あらゆる生物がに絶えたような地は闇に包まれたままだったが
玉兎の来訪は、永遠に繰り返される同じ夜に、ほんのわずかな変化をもたらした。
それはこの神域の主である夜刀介自身の変化でもあった。
喰われて欠けた月がまた満ちていくように、淀み、停滞していた時が動き出していくようだった。

325 :
組み手を終え、神殿に戻った夜刀介は影たちに命じて玉兎に湯を使わせ、いつものように食事を用意させた。
同席する夜刀介は少量の酒しか口にしないが、玉兎が美味そうに食べているのを見ているだけで満たされるようだった。
「ここで頂くご飯も美味しいけど、そろそろイツ花のお味噌汁が恋しくなってきたなー……同じ具とお味噌でも毎日味が違って面白いの」
時間の感覚に疎くなっていた夜刀介は、玉兎の何気ない言葉に、彼女が来てからもう大分時が経っている事に気付いた。
一月が経ち、交神の儀が終わればこの娘は下界に戻る。
人間がいつまでも神域に留まれるわけではない。
「……すべき事を済ませれば、お前はここから出ていくのだな」
「夜刀介様は、私が帰ったら寂しい?」
「クク、戯けたことを言う」
鮑の吸い物を空にし、一息ついた玉兎に夜刀介は声をかけた。
「夕餉が済んだら私の寝所に来い、今度は腹の虫も鳴らんだろう」

326 :
幾重にも御簾で覆い隠された寝所には、大小無数の蝋燭が灯されていた。
夜刀介は暗闇の中でも相手の表情まで手に取るように分かるので、これは玉兎のための灯りだった。
影に案内されて寝所に通された玉兎は、かつて夜刀介と初めて対面した隣室とは違い、その蝋燭の灯りに暖かい印象を受けた。
今の玉兎は異国の姫君が着るような裳裾がひらひらした夜着姿で、帯にも美しい刺繍が入っている。
それが交神のため特別に用意されたものと察したかどうか、一応身に着けてはいるが長い裳裾のせいで動きにくそうな足取りだった。
「来たか、玉兎」
「よろしくお願いします」
玉兎は御前試合の始めのように真剣な顔で一礼し、夜刀介が待つ寝台へ歩んできた。
入浴や着替えと同じように、これから肌を合わせる相手に見られている恥じらいもなく、潔く夜着を脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿で
寝台にころんと横になる。
「これでよかった? どう始めるかよく知らなくて……」
自分から裸になっておいて、妙な空気を取り繕うようにおずおずと聞いてくる玉兎。
媚態も色気もあったものではない寝姿が、夜刀介は可笑しくてならなかった。
「私に帯を解かせなかった女はお前ぐらいなものだ」
皮肉とも悪意とも違う笑みを浮かべたまま、夜刀介も寝台に上がる。
暗色の衣が覆い被さり、玉兎の白い肌を隠した。
せめてこちらを解いてやろうと、黄金色の髪を結う紐に指をかける。
下ろした髪が夜具の上に広がり、いつもの玉兎よりほんの少しだけ大人びて見えた。
満月の光のように輝く髪の一房を弄んでいた夜刀介の指が、玉兎の唇へ伸びた。
いつでも食べたり話したりと忙しい唇だが、改めて見ると饅頭を二口で平らげる唇は意外にも小さかった。
「夜刀介様、……!!」
何か言おうとした唇に自分のそれを重ねると、玉兎は驚いたように身じろぎした。
なにせ生まれて初めての接吻で、慣れていないと白状するように夜刀介の衣をぎゅっと掴む。
唇を甘噛みされ、内の粘膜をくまなく舐められ、自分の舌を相手の長い舌に絡め取られる。
息苦しいほど濃厚な接吻に、まるで食べられているみたいだと思った。
ようやく唇を解放され、玉兎は深く息をつきながら夜刀介を見上げた。
「はーっ……息が止まるかと思った……」
「クク、お前の大食らいとお喋りを封じるいい手を見つけた」
たっぷり貪られた唇から出る台詞は色香とは程遠かったが、玉兎の内側ではゆるやかな変化が始まっていた。
指先まで温かなもので満たされるような感覚が何か、玉兎はまだ知らなかったが、それが夜刀介によってもたらされた事ははっきり分かった。

327 :
いかにもおぼこ娘といった玉兎だが、交神の儀で何をするかについて全く無知という訳ではない。
好奇心から従兄の交神の最中をこっそり覗き見た事があり、鱗がきらめく背中に口付けを受ける五月川山女の『あなたになら、食べられてもいいよ』
という睦言は、今も鮮明に思い出せる。
ああいう事を言ったら相手は喜ぶものなのかな、と思ったが、あの女神は冗談ではなく本気で口にしたのだと玉兎はいま初めて知った。
(本当に、食べられてもいいって思うんだ……)
触れられても最初はくすぐったいばかりだったが、巧みな指と舌に官能を育てられ、やがて玉兎の肌は茹だったような桜色に染まり、
熱い息を弾ませていた。
ようやく膨らんできたといった感じの微乳は、濡れた刷毛で撫でられるような舌戯に淡桃色の先端がつんと張り詰め、軽く摘まれただけでも
声を上げてしまいそうだった。
淡い産毛しか生えていない、柔らかな恥丘の真下の割れ目にはさらに濃密な愛撫が施された。
蜜に濡れた指先があるのかないのか分からないほど小さな器官を捉え、ゆっくりとその形を確かめるように愛でる。
「あっ……! そこ、だめっ」
訴える玉兎の赤い眼に涙が溢れているが、それは無論苦痛のせいではなかった。
自分で意識した事もない蕾を暴かれ、悦い処を知り尽くしているような指に責められてはとても平静でいられない。
「んっ……んんっ! はぁっ、あ……だめ、だめぇっ」
割れ目を繰り返しなぞり、蜜の糸を引く指をわざと離すと、無意識に玉兎の腰が跳ね、すべすべの恥丘が堪らないようにせり上がる。
淫蕩な蛇を思わす動きで指が再び襞の間に潜り込むと、歓迎するように蜜が溢れ出てきた。
果てそうになると指を止められ、疼きが収まりそうになるとまた追い上げられる。
意地悪く生しにされながら悶える玉兎の愛らしい表情を見下ろし、夜刀介はこの娘に今日まで振り回されてきた溜飲を下げた。
「もう、おかしくなっちゃう……お願いだからぁ……!」
どんな闘でも経験がないほど追い詰められ、玉兎はほとんど涙声になって哀願した。
狂う寸前まで焦らしてやりたいとも思ったが、このあたりで情けをくれてやろうと夜刀介はやや手荒く指を使った。
相手の肩にしがみつき、腰を悶えさせながら玉兎は声にならない声を上げて陥落した。
「はぁ……はぁ……」
童女のような容貌ながら、夜刀介の手で生まれて初めて気をやった玉兎の表情はそれまでになかった色香を含み、玉の汗が浮かぶ肌からは
発情した女の匂いを立ち上らせていた。
生娘に十分な下拵えを施した夜刀介は、目の前に横たわる生き餌を一刻も早く味わいたいと舌なめずりする。
これで終わりではないとぼんやり理解していた玉兎は、まん丸い膝頭に夜刀介の手をかけられ、声を上げた。

328 :
「待ってっ!」
「今更怖じ気付いたか」
「違うの、あの、お着物のままでなくて……夜刀介様を、全部見ておきたいんです」
着衣のままでも出来ない事はないが、真の姿を晒し合うも一興、と夜刀介は襟飾りに手をかけた。
衣擦れの音と共に重たげな長衣が石床に落ちていき、蛇の頭を模した冠も取り払われる。
筋骨隆々といった感じではないが、手足が長くしっかりとした骨格で、立派な衣装に見劣りしない堂々たる体格だった。
しかし何よりも異質なのは、夜刀介の首から下の肌を覆う、蛇の鱗の斑模様そのものの、刺青とも烙印ともつかない紋様だった。
玉兎はおぞましさに目をそらす事はせず、むしろ夜刀介が自分だけに秘密を見せてくれたようで嬉しく思い、いつぞや角に興味を示した時と同じ表情で、
触れてもいいかと手を伸ばした。
拒まず好きにさせる夜刀介は、たとえ生まれてくる子に角や鱗が生えていても、玉兎は笑ってこんな手つきで頭を撫でてやるのだろうと思った。
そして玉兎の好奇心に輝く赤い瞳が、それよりも下にある器官へと吸い寄せられるのは自然な成り行きだった。
「わぁ……」
初めて目にしたそれを玉兎の知っているもので例えるなら、頭をもたげて威嚇する蛇によく似ていた。
そこも斑の紋様が覆っているのだから、なおさら蛇そのものに見えるが、男は皆こんなふうだと言われれば玉兎は信じてしまっただろう。
「そうだ、さっき夜刀介様がされていたような事、私からもお返ししていい? ここに……」
蛇の頭にあたる部分を温かい手のひらでくるみ、ちゃんと出来るか分からないけど、と心配そうに言う玉兎の提案を夜刀介は退けた。
「食いちぎられるのは願い下げだ、お前は加減を知らん」
「そ、そんなに食い意地張ってないよッ! それに、赤ちゃんを授かる大事なものって分かってるから!」
耳朶を真っ赤に染め、夜刀介に気をやらされた時よりも恥ずかしそうにしている玉兎を見て、後でこれに口の使い方を教えてやるのも面白いかも知れんと
夜刀介はほくそ笑んだ。
今はそれよりも先に果たすべき務めがある。
玉兎を仰向けにして、できるだけ負担が少ない格好にさせた。
「んっ」
小さな扉を探り当て、くちゅ、と生々しい音を立てて先端が襞の間に浅く潜ったが、ここより奥の肉路はより狭い。
玉兎の柔肉を喰らい尽くそうとするように、体温のない硬さが押し入ってきた。

329 :
「うっ、う……!」
蛇に容赦なく引き裂かれる痛みに、玉兎は眉を寄せて押しした声を上げた。
骨が砕けるほどの力でしがみついてくる指が背中に食い込んでも、夜刀介は振り払わなかった。
「あ、あ……まだ、入ってくるっ……やあぁ……」
痛々しい涙混じりの声は、かつて毒牙にかけてきた乙女達と同じく夜刀介の嗜虐心を刺激する一方で、別の情動を目覚めさせていた。
たった二年も生きられない、そして交神の儀が終われば二度と会えないだろう玉兎が、今のこの一時だけでも、自分だけのものになった。
歪んでいるとしても、満たされた気持ちだった。
「……どうだ、玉兎」
奥の奥まで押し拡げられ、さすがの玉兎も堪えたのか、涙が滲む眼をつぶったまま荒い息をついている。
繋がった所から、初花が散った名残が滴っていた。
血の匂いや初々しい締め付け以上に、夜刀介を昂ぶらせたのは見上げてきた玉兎の眼差しだった。
炎よりも鮮やかで血の色よりも深い紅の宝石に見つめられ、夜刀介の熱を持たない肌の内側、それよりも深いところに情欲の炎がともる。
「大丈夫だから、このまま最後までして……夜刀介様の好きなように……」
そうは言っても、わずかに身動きするたび裂けるような痛みが走り、玉兎の体はまだ快さを感じられるほどではない。
呻き声を出すまいと一生懸命だったが、肌を合わせている夜刀介には無理をしているのが分かった。
「辛ければ泣こうが喚こうが構わん、堪えずとも良い」
「っ……でも……」
気を悪くしたのではないかと身を固くする玉兎だったが、夜刀介は意外な行動に出た。
自らの手を口元へやり、指先を浅く噛みちぎった。
傷からじわりとにじみ出た血は、闇を一滴に濃縮したような漆黒で、玉兎は目を見開いた。
その黒い雫が、玉兎の下腹部にぽたりと滴る。
ちょうど真っ白い紙に墨を落としたような眺めだったが、墨は生き物のように蠢き、ひとりでに黒い蛇を描き出した。
黒い蛇はのたうちながら何匹にも分かれて白い紙、いや玉兎の肌の表面を這いずり回った。
「これ、何……!? ひああっ!」
あまりに奇怪な現象に、玉兎は幻を見ているような気分だったが、何匹もの蛇にまとわりつかれる感触はまぎれもなく現実だった。
膨らみかけの胸をくびり出すように締め付け、乳を欲しがる赤子のように乳頭に吸い付く蛇。
なめらかな脇腹をくすぐり、臍の内側を執拗に舐める蛇。
背骨に沿ってゆっくりと這い、二つに分かれた舌を汗ばむうなじへと伸ばす蛇。

330 :
「あぁ……あ……」
玉兎の全身に絡み付く黒い蛇には実体はなく、平面に映る影に過ぎないが、この世のものならぬ愛撫に玉兎はたちまち蕩け出した。
蝋燭の灯りに照らされて絶えず形を変え、白い肌をすみずみまで苛む蛇は淫靡な意匠の刺青のようだった。
蛇たちの働きの甲斐あって、玉兎の奥底が催促するように蠢き出したのを感じた夜刀介は、できるだけ深くへと沈める。
もう玉兎の表情に苦痛の色はなく、奥を突かれて呻く代わりに愛らしい童顔には不釣り合いなほど悩ましい声を漏らした。
「夜刀介さまっ……」
自らを喰らう神の名を呼び、玉兎の方から夢中で口付けてきた。
唇から伝わる熱い吐息をじかに感じ、どんな美酒や生贄の鮮血にも勝るその甘美さに、息が止まるほど貪り尽くしてやろうと
夜刀介は唇の隙間に舌を忍ばせた。
覚えたばかりのやり方で玉兎も舌を絡ませ、喰らい合うような激しい口付けを交わしながら、深く長い抽挿にただ溺れる。
玉兎の最も秘められた処に出入りする雄蛇は蜜でぬらぬらと濡れ光り、新鮮な肉の弾力を存分に味わっていた。
蛇めいた器官が粘膜の襞を拡げ、潜り込んでくるたびに内側をくまなく擦られて、玉兎は切なく息をついた。
「お願いっ、わたし、わたし……もう……!」
終わりが近い、というのをどう言い表せばいいのか分からず、玉兎の訴えは上ずった喘ぎにしかならなかったが、夜刀介にはそれで十分だった。
もう一度深く突き入れると、毒牙を突き立てられた獲物のように玉兎はびくん、と背中を反らせて一際高い声を上げた。
「あ、はうぅっ……!」
断末魔の反応に近かったが、官能に浸り蕩けきった表情は紛れもなく彼女が気をやった事を示していた。
根本まで受け入れた雄を、誰に教わったでもなく本能で子種を絞り出させるように締め付ける。
夜刀介もまた、玉兎の熱い肉体を抱きながら、数千年ぶりに欲望を解放した。
「っあぁ……! 何か、中でどくどく出てるぅ……! ふあぁっ、まだ、出……」
熱くもなく冷たくもない子種が胎内に迸り、玉兎は何にも例えられない生々しい感覚に肢体を震わせた。
あるいは、今の交合で孕んだと感じ取ったのかも知れない。
達しても夜刀介は息すら乱していなかったが、玉兎を見つめる金の双眸が満たされた事を何よりも物語っていた。

331 :
「もう……中が……いっぱい……」
「愉しんだか」
玉兎は恥ずかしそうに、しかし素直な仕草で頷いた。
上気した肌にいまだ絡み付く黒い蛇たちが結合部へ頭を向け、溢れる蜜と精を舐め取り始めた。
その舌使いに、一度悦びを極めて徐々に整いつつあった息がまた熱と甘さを帯びる。
「あぁ、また変になっちゃう……ふぅっ、んっ」
まだ硬いままの雄が秘処を占拠しているのを否応なく感じ、まだ交神が続くのだと知った玉兎が自ら腰を揺らし、夜刀介を求め出すまで
時間はかからなかった。

既に時間の感覚は麻痺し、どれだけ長いこと抽挿を続けているかも分からない。
閨に籠もってもう何刻経つのか、二人は蛇の交合いのように延々と抱き合い続けた。
蝋燭が溶けて一つ二つと消えていき、最後の灯りが消えて閨が完全な暗闇になるまでの間、夜刀介は何度も精を放ち、玉兎は繰り返し気をやった。
普通の人間なら精根尽き果てて情しかねない程だったが、半神半人の娘はむしろ夜刀介から精気を吸い尽くそうとするように求め続けてきた。
情交の激しさを示す咬み痕を柔肌のそこかしこに付けられ、ほとんど気を失いながらも雄を締め付けて離さない様は、淫蕩というよりも健気なほどだった。
「何もかもくれてやる、ありったけ搾り取ってみせろ」
人ならぬ身の月喰い夜刀介が、献身と呼ばれる行いをした事が一度でもあるとすれば、玉兎と契りを結んだこの時だったろう。

332 :
交神の儀が成り、玉兎が下界に帰った後、夜刀介は深い眠りについた。
人の世の尺度で何百年にもあたる長い夢から目覚め、しばらくして玉兎はもうどこにもいない事を思い出した。
(……あれが居ないと、こんなにも静かだったか)
何をするでもなく神殿の階に立つ夜刀介の側に来た影の従者が差し出したものは、一通の手紙だった。
開いてみると、懐かしい人間の匂いがした。
手紙を書くのに慣れていないらしい乱筆だが、夜刀介には誰が書いたものかすぐに分かった。
『……イツ花にお願いしたこの文が夜刀介様に届くのがいつになるか分かりませんが、その頃もう私は生きていないと思います。
 今月、一族の中で一番のお年寄りになったのでそろそろ私も覚悟するようになりました。
 夜刀介様から授かった娘は、想(そう)と名前をつけました。 目の下のアザがお父さんに似ている可愛い女の子です。
 想は丈夫でとてもいい子に育って、毎日本当に本当に嬉しい事でいっぱいです。
 ついこの間、新しい奥義を編み出したぐらい腕を上げたので、もう私がいなくてもやっていけると思います。
 寿命が近づくと昔の事ばかり思い出すそうですが、最近は夜刀介様と過ごした時の思い出をよく夢に見ます。
 夜刀介様の角の手触りも、頂いたお饅頭の味も、交神でどきどきした事も、みんなはっきりと思い出せます。
 私にはぬというのがどういう事か分からないけど、んだ後も家族のみんなや夜刀介様からもらった思い出を忘れたくないから
こんな夢を見るんだろうと思います。
 人はぬとお星様になると聞いた事がありますが、もしそうなったら今よりもっと輝いちゃってチョー恥ずかしけれ、なんちゃって。
 ……書きたいことは他にもっとありますが、きりがないのでこのあたりにします。 いつまでもお元気で、夜刀介様』
丸文字で綴られた手紙を何度も何度も読み返し、ようやく書面から顔を上げた夜刀介は、そこにあり得ないはずのものに目を見張った。
視界いっぱいに広がる、昼も夜も闇に覆われた星も見えない黒い空。
その永遠に明けない夜の中に、ただひとつ紅い月がぽっかり浮かんでいた。
「……忘れられなくなったのはこちらの方だ」
人間の方がよほどおっかねえ。
苦笑してそう独りごちる夜刀介は、恋人とでも見つめ合うように、紅い月に跳ねる兎をいつまでも眺めていた。
(終)

333 :
元気娘かわいいなあ、最後が切ない

334 :
「何もかもくれてやる」で惚れた
夜刀介様いいな

335 :
昼寝してたら明美さんと女一族の夢みたんだが結構エロエロでなんか萌えた

336 :
やだ…続編のバーローの服装が変態度増してる…

337 :
夜鳥子っぽい娘でも一本書けそうだな
腸からムカデ引き出すシーンで抜いた

338 :
ageていいか?

339 :
人居ないな

340 :
ここにいるぞ!

341 :
保守あげ

342 :
ここも寂しくなったもんだ

343 :
2が出たらまた人来るといいが

344 :
http://upload.sakura.ne.jp/06_omorashi/cgi-bin/img-box/img20120522011044.jpg

345 :
どういうことなの・・・

346 :
今年は進展あって少しでもスレが賑わうといいな

347 :
なんか十二月に交神したソイヤさんがボクからのクリスマスプレゼントはキミとの愛の結晶だよみたいな妄想が降って涌いて出てきた
さきに頭にあったのはクリスマス過ぎたから炬燵入って蜜柑と餅食ってるソイヤさんなんだが

348 :
ほしゅ

349 :
「ねえ、ママ。僕ってどうしてあの娘たちに相手にされないのかなぁ」
「クルスちゃん軽いし女の子侍らせて喜んでそうだからじゃない?
もっとピュアなほうのクルスちゃん見せてあげないからよ。あと部屋が地味で予想裏切ってるわ」
「…当たりすぎててへこむなぁ……僕好きになったら尽くすタイプなのになぁ……」

350 :
「まあ、アタシの魅力に理解のあるイケてる娘が来たら紹介しておいてあげるわよ」
「なかなか難しい課題出すねママ…」
「そのぐらい肝の座った子じゃないとアタシの方からお断りするわよ」
「お互い同じくらいの奉納点で見た目も性格も良さそうな神いるしね……もう奉納点カツカツだし気晴らしに子供たちにプレゼント用意しておくよ。運ぶのが僕の役目だしね」
「頑張りなさい。アナタやれば出来る子なんだから。奉納点30000の力はあるのよ?自信持ちなさいよ。そのうち良い子が来るわよ。…たぶん」
「いつか、きっと、か……もう少しやってみるよ、ありがとう、ママ」
「ご飯くらいならいつでも食べさせてあげるから、また来なさいね、約束よ?」
「うん。明日も陽気にしてるよ。あの子たちにはめげないでやり遂げて欲しいんだ」
「じゃ、またね」「いつでも歓迎するわ、またね(うっふん)」

351 :
イイナハシダナー

352 :
このスレを見て、何で俺屍もっと早くプレイしなかったんだと後悔
亀だが神SSばかりで素晴らしいです・・・

353 :
このゲームR18化しなかったかな...

354 :
保守
2さえ出ればなんとか盛り返せる……はず。

355 :
保守

356 :
保守

357 :
保守っといたがいいかな

358 :2013/09/22
新ボスは福招き美也・吉焼天摩利&火車丸姉弟かな
コーちん腹黒エロそうかわいい
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