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2013年10エロパロ368: 女装SS総合スレ 第9話 (280) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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女装SS総合スレ 第9話


1 :2013/03/30 〜 最終レス :2013/09/17
ここは既存スレに該当しない女装関連のSSを総合的に取り扱うスレです。
無理やり女装させて、嫌がったり、恥ずかしがったりするのをニヨニヨするのもよし、
自分の意思で女装させ、女よりも女らしい子を目指すのもよし、全ては書き手の自由です。
女装っ子を愛でながらまったりと盛り上げていきましょう。
※次スレは>>980または、485KBになったら立てて下さい
(直近に投下予定のある方は、投下作品の容量に応じて前倒し願います)
※age・sageについては各々の判断でお願いします
【前スレ】
女装SS総合スレ 第8話
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1350803150/
関連スレは>>2-

2 :
【既存の女装関連スレ】
強制女装少年エネマ調教 ネオ×7
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1255107219/
ニューハーフ・シーメールでエロパロ6
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1336219403/
↑のシチュに該当するSSはこちらのスレでお願いします。

【隣接ジャンル】
女にお尻を犯される男の子8
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1287824025/
強制女性化小説ない?Part47
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1346641476/
男装少女萌え【11】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1296266561/
【女体化】TS系小説総合スレ【男体化】8話目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1338195162/
立場だけの交換・変化6交換目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1352137904/
男の娘でエロパロ!
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272566973/

3 :
容量オーバーぎりぎりだったのか。次スレ案内すら貼れないとは。

4 :
>>1
それから、前スレ最後の作品に つC

5 :
485だと残り15なので少なすぎでは?
確か1レス最大2なので15だと連投7〜8レスで打ち止めになりますよ
450〜470くらいで次スレにしたほうが好いのでは?

6 :
投稿されないときが長かったから、遅めになってるんだよな

7 :
まあその辺は適宜判断するということで
作品投下中なら足りないだろうが、雑談のみ継続中なら余りすぎる

8 :
お礼参りができないのは、楽しくないですよ。
それくらいの余裕は欲しいと思います。

9 :
前スレ投下時、512KBまで書き込めるものと勘違いしていたせいで、多大な迷惑をおかけして申し訳ありません。
テンプレ的には、自分のようなポカ野郎がいない限り、充分現状でよいと思います。
9話目最初の投下ですが、すいません今回は(このシリーズ初の)エッチシーンなしです。
おまけに「3連作」と言いつつ4話目という。

このスレから読み始める人のためのプロフィール(2013年4月時点)
●瀬野雅明 性別男。身長172cm。大学2年
 『俺』。この話の主人公。ごく平凡な男キャラ……だったはずなのだが、
「10歳のときに“女の子”になるよう調教された経験あり」との設定が加わって以降、頻繁
に女の子の格好をさせられるハメになった。
 女装時には、「アキちゃん」と呼ばれ、そのモードでは一人称が『あたし』に変わる。
●瀬野悠里 性別女。身長167cm。大学2年。B=83(C) W=59 H=85
 雅明の義理の姉(再婚相手の連れ子)。昨年6月に告白して以来、恋人同士でもある。
 高校時代から読者モデルとして活動。現在駆け出しタレントとして活躍の幅を広げ中。
 「アキ」からは「お姉さま」と呼ばれる。
●瀬野俊也 性別男。身長167cm。高校3年。
 瀬野悠里の実の弟。外見的には悠里とそっくりで、彼女のふりをしたら雅明にも見分けが
つかなくなる(キスやお尻の手触りなどで判別は可能)。
 モデルの仕事にも代理で参加することも多々あり。
 「アキ」からは「悠里お姉さま」と呼ばれる。
●春美(仮)・冬子(仮)
 雅明が10歳のころ、彼に女装調教を施した近所のお姉さん(♂)とそのセフレ。
 名前を憶えていなかった雅明が、説明のときに適当につけた名前。春美の本名は今回判明。
●北村 性別男。身長192cm。大学1年
 元バスケ部エースでハンサムな医学部生。「アキ」にべた惚れしている。

10 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 1/10
「うん、いい感じいい感じ。そんな感じで続けてちょうだい」
 悠里と俊也の行きつけの美容院。
 何故か本日臨時休店の、他に人気のないその店内で、眼鏡をかけた店長のおば……お姉さ
んにレクチャーを受けながら、俺は化粧の練習なんてシロモノをしている。
「貴方、メイクの才能があるのね。もっとしっかり勉強と練習を重ねて欲しいな」
 なんだか最近、女装関係でばかり褒められてる気がする。
 そんな考えが顔に出てたのだろうか。少し楽しそうな声で、店長さんが続ける。
「男性のメイクさんは多いし、貴方のその才能を伸ばしてみるのも手かもしれないわよ? 
悠里ちゃんの傍にずっといたいなら、メイク兼マネージャーって方法もあるかもしれないし」
 ……そっか。自分の女装関係なしに、メイクを習うこと自体に損はないのか。
 俺の中にあったわだかまりが、少し溶けた気がする。
 いっそ、ということで化粧の落とし方まできちんと教えてもらい、最初からメイクを行う。
 余分な工程は避け、可能な限り薄化粧に見えるよう、でもしっかりと可愛らしくなるよう。
 家で自分だけでやった数回より、さっきの1度目より、ずっと上達してきたように思う。
「貴方って飲み込みよくって教え甲斐があるわぁ。……でも本当、羨ましい肌してるわね」
「それ、正直よくわかんないんですよね。悠里のほうが絶対肌綺麗ですし」
「あの子たちは素材もいいし、自分を磨くために凄い努力もしてる」
 ──それはこの半月の間、俺が特に痛感させられことだった。
「でも特にお肌に関して言えば、あなたの素質も悪くないとお姉さんは思ってるんだけどな。
なんだか底が知れないっていうか。……貴方のお肌、大切にしてね」
 返答に困りながら、化粧を続行。リップを自然になるように注意しながら塗り、グロスを
厚くならないように置いて艶やかさ出す。フェイスパウダーをはたいて完成。
 悠里のテクに及ばないものの、先程までと違って“可愛い女の子”レベルにできたと思う。
 それを楽しく思ってる自分、もっと上手くなりたいと思ってる自分──それも“アキ”で
はなくて“雅明”──に気がついて少し困惑するけれど。
「『魅力的な女の子』になるためにはね、普通はとっても努力と積み重ねが必要なの。
 ──でも、貴方は違う。その積み重ねをパスして、いきなり『魅力的な女の子』という結
果だけを手に入れてしまった……そんな感じがする。
 そのアンバランスさも貴方の魅力なんだけど、充分注意してね。貴方ガード甘いから」
 そんな言葉に送られつつ店を裏口から出て、電車に乗って一駅分の移動。
 この時点で“アキ”に意識を切り替えてるつもりだったのに、何故か“雅明”のままだ。
 以前はどうやって切り替えたのかも、もう思い浮かばなくなってる。
『アキに成り切れば、女装姿で外出しても恥ずかしくない……ハズ』
 という目論見が見事に外れ、羞恥心が半端ない。
 ショートカットの少女のような髪に結んだリボンも。揺れるパッドの重みも。食い込むブ
ラジャーの紐も。くびれさせたウェストも。ショーツのぴったり感も。カーディガンのピン
ク色も。花柄のブラウスの生地の柔らかさも。スカートの裾を揺らす風も。むき出しの脚を
見る視線も。全部が羞恥心を煽って、墓穴があったら入ってそのまま埋葬されたい気分だ。

11 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 2/10
「ねえ、君、大丈夫?」
 ついつい俯きがちになって歩く俺に、駅の構内を出たあたりでそんな声がかけられた。
「え? えぇっと、あの……あたしですか?」
「うん、そう。なんか具合悪そうに見えたからさ。余計なお世話だったらごめん」
「特になんともないですよ。大丈夫です。気を使わせてすいません」
「ああ、良かった。……ところで君さ、どこに行くの?」
「どこ、って、買い物ですけど……」
「へえ、そうなんだ。あ、オレ灰村って言うんだけど、君の名前は?」
「いや……ナンパするのは勝手だけど、俺、男なんですけど?」
「またまたぁ。断るために嘘つくにしても、もうちょっとマトモなのにしようよ」
 男声に戻して言ったつもりだったのに、それでも信じてもらえなかったらしい。
 どうしたものかと悩んでいるところに、「オレの愛しい恋人にちょっかいをかけるのは、
それくらいにしてもらえるかな?」と、どこかで聞き覚えのある声がした。
 助け舟かな? と、思いつつ、その声の方向を見ると……
「うげ。デンパナンパ男」
 半月ほど前、最初に女装外出したときにしつこくナンパしてきた電波男だった。
「“恋人”どころか、以前彼女をナンパしたことがあるってだけの、一方的な関係っぽいな」
 ナンパ君第一号にも、しっかり見破られて分析されてるし。
「君も疑うなんて酷いな。オレたちは運命で結ばれた前世からの恋人同士なのに。さ、こん
な奴ほっておいてデートはじめようよ」
 こいつは一体、俺を俺と分かってるのか、会う女の子全員に『運命』って言っているのか。
 この事態をどう収拾つけたものかと困っていると、見逃しようのない長身が目に入る。
「北村さーん、へるぷ・みーです」
 ぱたぱたと手を振って呼び寄せる。さすがのナンパ男×2も、身長190cm超のスポーツマ
ンの存在感には敵わないと退散してくれた。
「お役に立てて良かった……のかな? えーっと……」
「すいません、本当に助かりました。ありがとうございます。あぁ、あたしです。アキです」
「ああ! すぐに分からなくて、本当にごめん。私服も素敵で、すっかり見違えたよ……制
服のときとは、随分感じが違うんだね」
 それはもう、前回とは『中の人が違う』状態だから。誤魔化す言葉を、少し捜す。
「そうかな? ……どっちのあたしが好きですか?」
「うーん、どっちも魅力的だけど、今の私服のほうが、一緒にいて気が楽ってのはあるかな」
 『女としての魅力』で“アキ”に勝てたと、優越感を覚える俺が既にやばかった。
「さっきは何だったの?」
「ナンパがしつこくて困ってたの。……あたし、そんなにナンパのカモって感じなのかなぁ」
 店長さんが言ってた、『ガードが甘い』って、こういうことなんだろうか。
「それは、アキちゃんが魅力的すぎるからしょうがないよ」
 そういえば、こいつもまたナンパ男の一人だったか。

12 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 3/10
「今日も彼氏さんはお仕事?」
「うん、7時に待ち合わせ。それまであたしは、お姉ちゃんのお遣いとか……北村さんは?」
「僕のほうは、特に用事はないかな」
「もしよければ、お買い物付き合ってくれないかなぁ」
「彼氏さんに悪くない?」
「それはぜんぜん大丈夫」
「なら、喜んで」
 2人で恋人同士のように、並んで街を歩く。思ったとおり、ナンパよけとして最適の相手
だった。背の高さの関係で、『のっぽ女?』という視線が減るのも気が楽でいい。
 彼は基本無口なので、喋ってボロが出る機会が減るのもありがたかった。
 少し歩いて、最初の目的地のランジェリーショップに到着。
 悠里の依頼で買い物に来るのもこれで何回目かになるけど、その度に居心地の悪い思いを
してきたお店のひとつ。
 いっそ女装して、『アキモード』で来れば恥ずかしくないんじゃ? と思ったのが、今日
の女装外出の理由である。『雅明モード』のままなのが、ひどく計算外なわけだが。
 北村氏はすごく恥ずかしそうな感じで俺について来ている。
 前回までの俺の居心地の悪さを押し付けているようで、意地の悪い楽しみを覚えてしまう。
 リストに従い、補正下着とか色々購入。思い出せば、俺が付けさせられた下着はこうして
自分で購入したものだった。
 買った時点では、自分でつけるとは夢にも思ってなかったわけだけど。
「……荷物、持ってあげるよ」
 店を出て少し歩いたところで、そんなことを言われる。
「いや、そこまでは流石に悪いですよ」
「家に帰っても筋トレくらいしかすることないから、ウェイト代わりってことで。……それ
になんだか、女の子に荷物持たせてると視線が痛いんだ」
 そっか。周りから見れば今は俺が『彼女』で、こいつが『彼氏』な状態なのだった。
「……そういうことなら……うん、ごめんなさい。お願いします」

 そんな感じで、寄り道を交えつつ店を回っている街中。ふと足を止める。
 店頭に並ぶ、特大サイズのポスター。その中で悠里が微笑んでいる。
 複雑な気持ちが心に渦巻く。
 誇らしさと、手が届かないところに彼女が行ってしまうような寂しさを同時に覚える。
「……どうしたの?」
「いえ……えーっと、瀬野悠里ってモデルの人、知ってます?」
「僕、テレビとかあんまり見ないし……そういうの疎くて。ごめん」
「一般的な知名度としては、そんなものかな。あたし、彼女のこと前からずっと憧れで」
「それがこのポスターの人? 確かに美人だね……でも僕には、アキちゃんのほうがもっと
もっと魅力的に見えるよ」

13 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 4/10
 なぜだか不意に、彼の唇の感触を思い出す。
 肩に回された腕の力強さを思い出す。
 ……自分が“アキ”でいるときならともかく、“雅明”でいるにも関わらず。
 たまらないほど恥ずかしい気分がしてきて、彼にくるりと背中を向ける。
 流れる沈黙に耐えられなくなったのは、自分のほうが先だった。
「……北村さん、あたしのことなんか忘れて、早く彼女作ったほうがいいですよ。大学に入
れば、きっと素敵な彼女が出来ると思います」
「それは無理だと思う。……アキちゃんが、彼氏さんのことを本当に大切に思ってるのは分
かるから、奪おうとは思わないけど……
 でも、僕がアキちゃんのことを忘れることはできないし、世界中のどこを探しても、アキ
ちゃんよりも素敵な女の子を見つけることもできないと思う」
 なんでこいつはこんな低く響く声で、真剣な声で、こんな女しの台詞を言えるんだろう。
 そしてなんで俺は、こんな『女し』の台詞に、胸がぎゅっと苦しくなっているんだろう。
 荷物さえ彼に渡してなければ、今からこの場をダッシュで逃げ出してしまえるのに。
 ポスターの中から、営業用の笑顔で見つめる悠里の視線が痛かった。
「……ごめん、こんな困らせるようなこと言うべきじゃなかったね。忘れてくれると嬉しい」
「こちらこそ、ごめんなさい。ちゃんと応えることができなくて」
 深呼吸をして、無理に笑顔を作って再度彼に向き直る。
 たぶんそれは、泣き笑いみたいな顔に見えたはず。
 彼も、どこか辛さを押し隠したような笑顔で応えてくれる。
 ──もし自分が本当に女の子だったなら、いや、男のままでも悠里と先に恋人になってな
かったら。今この時、恋に落ちてどうしようもなくなっていただろう。そんな瞬間。
 ふたりどちらからともなく手を……恋人つなぎではないけれど……繋いで、再び道を歩き
始める。それだけで、なんだか胸のドキドキが止まらない。
 “アキ”じゃないのに、“雅明”のままなのに、自分のことを自然に女の子のように考え
てしまっている。そして、そんな自分をたまらないほど愛おしく感じてしまっている。
 あんなに恥ずかしかったスカートが、少女めいた外見が、何故だか今は誇らしく思える。
 ……“俺”は本当に、大丈夫なんだろうか?
「今日は、本当にどうもありがとう。北村さん力持ちで、ほんと助かりました」
 すっかり暮れた街並み。買い物リストを最後まで終えて、駅へと到着。荷物をロッカーへ。
「いや、僕もすごく楽しかったよ。……彼氏さんに謝らないといけないけど」
「大丈夫。許してくれると思う……これは、今日つきあってもらったご褒美」
 精一杯背伸びをして、彼のほっぺにキスをしてみる。
 すごく驚いたした顔で俺──あたし──の顔を見つめたあと、崩れそうな笑みを浮かべて、
「うん、……ありがとう。……じゃあ、彼氏さんと最高の夜を過ごしてね」
「ありがと。じゃあ、おやすみなさい」
 そう言って手を振って別れ、姿が見えなくなるまで見守る。もしここで強引に迫られてい
たら、きっと落ちていただろう。そうでなかったことを、寂しく思う自分がいた。

14 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 5/10
 寄ってきたナンパ男たちを半分上の空でスルーしつつ、待ち合わせの場所に到着。
「あれ、アキちゃん?」
 意外そうな声に迎えられる。
 デニムのスカートにGジャンをあわせた、珍しくカジュアルなスタイル。
 頭にはウェーブのかかった茶髪のカツラ。すらりと伸びた黒ストの脚が目に眩しい。
 不意の衝動に襲われ、その姿に思いっきり抱きついてキスをする。これがもし俊也の女装
姿だったらという不安が背筋を走るけど、それでも止まらない。
 でも良かった、これは悠里だった。
 やっぱり俺、男なんだ。女の子が好きなんだ。さっきの一幕はただの気の迷い。
 落ち着いて、冷静になって、自分を取り戻して。
 落ち着いた。冷静になった。自分を取り戻した。
「ぎにゃー」
 思わず大声で叫びをあげそうになって、飛び離れて自分の口を押さえる。
「なんというか……その……ごめんなさい」
「うわっレズかよ」「だいたーん」「すっげえ美人同士なのにもったいねェ」「眼福眼福」
 周囲の呟きが一気に耳に入ってきて、頭をかかえてしゃがみたくなる。
「……さすがに移動したほうがいいかな、これ」
 冷静な悠里がありがたかった。
「けど、あなたがアキで来るのは流石に意外すぎたなぁ」
 少し移動してガードパイプに腰を預け、2人並んで化粧直し。馴染んでしまってる自分が
少し嫌になる。手早くそれを終わらせたくらいに、悠里の携帯が着信音を奏でる。
「……うん、ごめんね。ちょっと事情があって移動しなきゃならなくなって。そこからその
まま、高島屋のほうに来て……うん、……うん、……あ、見えた。こっちこっち」
 手を振る方向を見ると……ずんずんずんと、お袋登場。
「悠里ちゃん、お待たせしてしまってごめんなさい。……そちらの方は?」
 俺を見て、首をかしげながら尋ねてくる。……俺が俺だと気付いてないんだろうか。
「モデルの後輩のコでね、アキちゃんって言うの」
「なるほどモデルさんかあ。道理ですっごい美人だと思った」
「ありがとうございます。えぇと、はじめまして、アキです。……悠里さん、こちらの方は?」
「ああ、ごめんなさい。悠里の母親で、純子と申します」
 本気で気付いてないのか、気付かないフリをしてるだけなのか。
 判断つかないけど、とりあえずこっちとしては、お袋の前で『駆け出しモデルのアキ』に
成り切って対応するしかない。
 心臓を裏側から、ごりごりと削られていくような感覚だった。
「お母様ですか。随分とお若いんですね。お姉さんかと思いました」
「生みの親じゃなくて、うちのパパの再婚相手だけどね」
「といっても、悠里ちゃんと同じ齢の実の息子もいるから、年齢としては変わらないけど」
「へぇ、意外です」

15 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 6/10
「って、あんまりお邪魔してもいけないですね。悠里さん、今日はお疲れ様でした」
 白々しい会話をこれ以上続けるのもアレだし、顔を合わせるのも辛いので逃亡に挑戦。
「アキさん、待って。これからお時間ある?」
「えぇと、あたし門限があるので」
「嘘おっしゃいな。さっきまで『夕食どこにするかな』とか言ってたくせに」
 我ながらナイス言い訳だと思ったのに、即座に悠里に逃げ道を塞がれてしまう。
「ああ、そうなんだ。じゃあいい機会だし、ご一緒に食事でもなさらない?」

「そういえば、雅明はどうしたの?」
 前にも来た、悠里お奨めの定食屋の席に腰掛けながら、そんな会話。
 結局、逃げ出すのに失敗したのがひどく辛かった。母親相手に女のフリ。悪夢に見そうだ。
「急に用事が出来て、今日は来れなくなったって」
「そうなんだ。楽しみにしてたのにな」
「雅明さん、ってどなたですか?」
「ああ、さっき言った、わたしの息子」
「そ。で、ついでに私の彼氏」
「んー……え? ってことは、姉弟同士で恋人なんですか?」
「まあ、連れ子だから血が繋がってないし、戸籍上は一応姉弟でも、普通に結婚できるしね」
 他人事として改めて聞くと、やっぱり少し不思議な感じのする自分達の関係だった。
 雅明の話題がそれから暫く続き、モデルのお仕事上での体験談、美容や化粧、ファッショ
ンの話に会話が転がっていく。
 俺の話題からそれたときは心底ほっとしたけど、でも美容や化粧の話に気楽に普通に参加
できたのはどうなんだろうなあ。

 そんなこんなで、まあ和やかに食事も終わりかけたころ。
「ところで、雅明」
「うん?」
 お袋にいきなり名前で呼ばれて、つい返事してしまって、気付いて硬直。
「あの……お母様。いつから気付いていらっしゃいました?」
「背のすっごく高い、ハンサムな男の子と一緒に歩いているときからかな」
 ムセタ。
 最初っからですらなく、合流するはるかに前からだったとか。
「え? 何それ?」
「えーっとね。なんでか知らないけど俺、やたらにナンパにあってね。しょうがないから通
りすがりの北村っていう、前言ったバスケの人にナンパ避け目的で同行してもらったんだ」
「そんな雰囲気じゃなかったけどなあ。手なんて繋いで、本当に初々しいカップルのデート、
って感じで。キスなんてしてたし」
「わーわーわーわーわー」

16 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 7/10
「へぇ。……私の仕事中に男と浮気? これはお仕置きが必要かな」
 『それはぜんぜん大丈夫』、どころじゃありませんでした。
 目以外は笑顔なのが、逆にとっても怖いです。
「キスって言っても、ほっぺただよ? 荷物持ってもらったし、何かご褒美あげないとまず
いかなあ、って思ってごめんなさい申し訳ありません俺が悪かったですもうしません」
「ま、詳しいことはまたあとで」
「でも、ナンパにあうのは分かるかな。なんというかスキだらけで、『あたしと一緒に居て
ください』って感じで、目を離せない、ほっとけない感じがすごくするもの。
 援助交際とかで変な病気でもらわないようにしてね?」
「息子が女装で歩いてて、まず気にするところはそこなんだ」
「キモい女装趣味なら嫌だけど……すごく似合ってて違和感ないし、美人だし、声も女声だ
し。……あなた、あれなの? 性なんとか障碍、だっけ?」
「別に俺、そういうのじゃないよ。心は男だし、女が好きだし、女の体になりたいわけでも
ないし。女装だって強制されなければするつもりはないし」
「でも、今日は別に誰からも女装を強制されてないよね?」
「女物の下着とか女性誌とか買い物するのに、こっちのほうが気楽かなあ、って。前、男の
格好で買ったらすごく恥ずかしくて、ならいっそ、って。……大失敗だったわけだけど」
「ま、趣味のレベルで続けるならわたしも気にしないし、化粧やお洒落のアドバイスくらい
なら出来ると思う。
 悠里ちゃんのベッドの下の奥にある、あなたの女装道具、もう別に隠す必要もないわよ」
 こんなとき、どんな顔すればいいかわからないの。笑えばいいと思うよ。そうなのか。
「あとは恋人に愛想を尽かされないようにしないとね。……こんな息子でごめんなさいね」
「いえ、むしろ息子さんを女装趣味にしてしまって、こちらこそごめんなさい」
「あら。そういう経緯。……でもそれは関係なかったと思うな。この子って昔も一時期女装
に嵌っていたころがあってね。ほっておいても、いずれまたやってたと思う」
「冬子さん……でしたっけ?」
「いや、確か篠原……うん、篠原睦さん。あれ? わたしが知ってるのと別口がまだあるの?」
「ああ、そっか睦さんだ。言われてやっと思い出した。春美(仮)さんって言ってた人、確
か本当はそんな名前だった。……前説明したとき、名前思い出せなくて、適当につけたんだ」
「そんなことまで話してたんだ。少し意外」
「でも、あんまり詳しいとこまで聞けなかったから、教えてもらえると嬉しいかな」
「あ、うちに帰ったらその時の写真あるわよ? 見てみる?」
 ……神様。俺は前世で、どんな重い犯罪をやらかしていたのでしょうか。
 そろそろ店を出ようかと、お袋がお手洗いに行くのを見送って。
「……悠里さ、今日のお袋のことは仕組んでたの?」
「いや全然。ママから一緒に食事したいって話が来て、あなたに電話かけても繋がらなくて、
それでアキちゃんの格好で来たからびっくりしたもん。その分だとメールも見てないよね?」
「あー。つまり全部俺の自業自得なわけか」

17 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 8/10
 ……でも、今日は悪いことばかりじゃなかった、ような気もする。
 悪戯や演技や冗談でいつも誤魔化されてばかりいる悠里の本心。
 本当は俺の片想いで、空回りしてるような気もしてきただけに、ふと見せてくれた嫉妬が
なんだかとても心地よかった。もう2度と見ないよう、俺がしっかりしないといけないけど。
「……雅明、なんか変なこと考えてない?」
「いや、悠里とエッチしたいなあ、って。……こんなことばっかり考えててごめんね」
「むぅ。どうしよっかな。……そっか、『お仕置き』の内容決めてなかったね。じゃあ今日
いっぱい、私に『駄目』とか『嫌』とか言うの禁止で。全部OKで答えてね」
「それ、どんな酷いことされるか怖いんだけど……」
「あら? そんなこと言える身分と思ってるのかな?」
「……そうでしたごめんなさい」
「で、今日はエッチはお預けで」
「分かりました従います。……こんな感じ?」
「ん。OK。……こんなことなければ、今日はするつもりだったんだけどね。残念でした」
 半分魂が抜けてるところにお袋が戻ってきて、店を出る。
「あ、そだ。これからアキちゃんの服買ってあげたいんだけど、ママはどうする?」
「わたしも一緒に行っていいの? なら喜んで」
 『そんなの嫌だって』……と喉元まで出かけた言葉を、どうにか飲み込む。
 それからの時間は、拷問に近かった。
 お袋と店員さんの前で女の子のフリをして、露出度が高かったり、露出度が低くても可愛
すぎる系の衣装を、店を回っては次々に試着させられて。しかも嫌とは言えなくて。
 結局4組くらい購入して、今はそのうち1着に着替えて、夜でもなお明るい街を歩く。
 以前、悠里と女子制服擬似レズしたときに比べると多少はマシな、でもそれがちっとも慰
めにならない白地に赤の花柄で超ミニのフリルスカート。
 少しオフショルダー気味で襟ぐりの大きく開いた、同じ柄のトップス。
 羽織ったカーディガンの長い裾がお尻方面を隠しているのが、まだしも救いだけど。
 本当の女の子でも、こんなの着たら恥ずかしいに違いない。ほとんど露出狂だ。
 カーディガンの前はあけてるから、いつ膨らんだ股間が見られてばれるか不安すぎる。
 風が吹くたびに、金玉にほぼダイレクトに外気が当たって恐怖が走る。今日はタックとや
らをしてないから尚更だ。森ガールごときで恥ずかしがってた昼間の俺を殴りたい。
「この身長で9号が入るとか羨ましい。脚もすっごく綺麗だし、隠しちゃ勿体無いわね」
「まあ、どうしてもヒップのラインとか男だし、昼間にこの格好はきついかなあ……」
 いや悠里様。夜でも充分きついです。
「でも似合ってて可愛いよ。もっと自信を持って、背筋をしゃんと伸ばしなさい」
 こんな時と場合だというのに、勃起しかける自分の身体が恨めしい。
 人の気も知らないで、何人も何人も鬱陶しいくらいナンパの声をかけられるし。駅でロッ
カーから荷物を取り出し、家に到着した時点で、撃沈しそうな思いだった。
 ……しかし息をつく暇もなく、まだまだ試練の夜は続くのでありました。

18 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 9/10
        <<俊也視点>>
「ただいまー」
 久々に友人たちと夜遅くまで遊び倒し、やっと帰宅。
 奥からパタパタとスリッパを鳴らして、メイドさんが登場した。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
 日常が、一気に非日常に変化したような違和感に硬直する。
 見覚えのある可愛らしいメイド衣装に身を包んだ少女が、微かに媚びを含んだ仕草で綺麗
におじぎをしてお出迎えしてくれている。
 背が高いのが難だけど、そこらのメイド喫茶なら一気にトップに登りつめそうな美少女だ。
「……どうしたの、お義兄ちゃん」
「うん、バツゲーム」
 凄くげんなりした顔だった。一体何があったのだろう。
「おかえり、俊也。早くこっち来てー。すっごく面白いよー」
 うがい手洗いを済ませて、声のした居間に移動。
 お義母さんとお姉ちゃんが、興味津々といった体でPC画面を覗いている。
「俊也、お帰りなさい」
「……なんか今日、色々とすごいことがあったみたいだね」
「そりゃもう。ま、それはあとで話すけど、まずはこれを見て」
 シックな色合いの豪奢なドレスに身を包んだ、精巧なアンティークドール?の写真だった。
 金色の巻き毛、水色の瞳、長い睫毛、愛くるしくもどこかにコケティッシュさを含んだ顔
のつくり、滑らかすぎるほどに滑らかな肌。やや幼い、美しい少女を模した人形だ。
「まるで生きてるみたいな綺麗な人形だね。……これ、何?」
「いいコメント。じゃあ、もっとめくっていくよ」
 ピンクやブルーの色鮮やかな、あるいはゴスロリ風の衣装に包んだお人形の画像が現れる。
 髪や瞳の色が違うけど、これ全部同じ人形なのか。
 不思議なくらいに魅惑的で目が離せない。息をするのも忘れて現れる画像に見入る。
 しばらくしてようやく、どこかで見たことがある面差しだな、と思う。……ってこれ、人
形じゃなくて、映っているのは人間の女の子なんだ。
 いや、“女の子”ですらない。
「……これ、“アキちゃん”なのか」
「ピンポーン。雅明の10歳の写真集。……というか、分かるまで意外に時間かかったわね」
「前聞いたとき、これほどまでとは思ってなかった。……随分と控えめな表現だったんだね」
「この時の面白い話はまだまだあるわよ? さっきの話の続きだけど……」

 玄関のチャイムが鳴り、しばらくして鍵を開ける音がした。お父さんの癖だ。
「あ、パパ帰ってきたわね……アキちゃん、ゴー」
 天井を仰いで、玄関に向かう偽メイド少女。散々自分でも弄んでおいてあれだけど、今日
ばかりは流石に同情する。

19 :
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みD 10/10
「えーっと、どちらさまでしょうか?」
 玄関からうろたえる声がした。そりゃそうだろう。普通うちに美少女メイドさんはいない。
「そうか、雅明くんなんだ……」
「こんな格好で、本当すいません」
 色々説明が入って、ようやく落ち着く。
「あっ、もうこんな時間か。じゃあ私寝るけど、雅明は12時まではその格好でいてね」
「はいはい」
 散々かき回しておいて、嵐のように自室に向かうお姉ちゃん。今日はいつもよりなんだか
更に度を越してた感じがしなくもない。
「雅明くん、娘が迷惑かけてすまないね。その服脱いでもいいよ? 口裏合わせとくから」
「いや、これでも悠里との約束なんで、12時まできっちり守りますよ」
「あなた、いつもの通り熱燗でいい?」
「うん、お願い。……そっか。じゃあ君の意思を尊重する。あと、そんなに恐縮する必要も
ないよ。……もう全部説明してしまったほうがいいか。あれ、ある意味血筋なんだ」
「……血筋???」
「悠里の母親も、何故か男に女装させるのが大好きでね。僕も昔は随分被害にあったもんだ。
だから雅明くんがそうしてると、なんだか戦友めいた気分になるね」
 笑うしかない、という感じの引きつった笑いをひとしきり。
「今でもスリムでハンサムだし、さぞ似合ったんだろうなあ」
「僕なんて全然だよ。雅明くんみたいに、女性に見間違えるようなことは絶対なかった。あ
と、俊也も小学校入るまではほとんどずっと悠里のお下がり着せられてたっけ」
「はい、どうぞ……雅明、どうせだからお父さんにお酒注いであげなさいな」
「美人メイドの酌で呑む熱燗か……なんだか少しシュールかも」
「ワインかブランデーあたりが良かったかしら? ごめんなさい、わたし気が利かなくて」
「いや、別にいいよ。雅明くん、注ぐのうまいね。君も一緒に呑むかい?」
「いやまだ俺、19歳ですし」
「そんな固くならないでいいと思うけど、まあもうすぐだし楽しみに待つことにするよ」
 そんなこんなで、いつになく会話も弾んで。12時をすぎて、「よっしゃ、やっと男に戻れ
るー」と、大きく背伸びをしながら洗面所に向かう背中に、お父さんが声をかける。
「雅明くん、その、女装が嫌なら、僕のほうから悠里に言っておこうか?」
「いや、大丈夫です。悠里って、俺が本当に嫌がることは絶対にやらないですから」
「じゃああなた、今日のミニスカとかも嫌じゃなかったの?」
「うーん、あれ自体はとても嫌なんだけど……でも悠里が俺に妬いてくれた証ってことで、
あの罰に見合うだけの悪いことをしたと思ってくれてる、ってことなら、悪くないかなって」
「まあ、その心理なら僕にも分かる気がする……あんな娘で悪いけど、よろしく頼むよ」
「悠里は、俺には本当に勿体無い、最高に素敵な女の子ですよ。俺が今、恋人を名乗れるこ
と自体が奇跡に思えるくらい」
 振り向いて笑顔で答えた顔は、服や化粧にも拘らず、ひどく男らしく見えた。

20 :
つC

21 :
おかあさん、おとうさん、公認になったのですね。
おかあさん、良く保存していましたね。写真。

22 :
両親公認とくれば次はモデルデビューしかないな(笑
いっそのこと三姉妹モデルで売り込んでみたらどうか

23 :
>>20、IDがPINK2だw

24 :
まとめほしいな

25 :
欲しいなら作りなさいよ。
皆さんの意見を聞きながら。
しかし、なかなか、御家族の了解や公認は難しいですよ。
特に、再婚とかだと。
こうなったら

26 :
間違いの書き込み。ごめんなさい
欲しいなら作りなさいよ。
皆さんの意見を聞きながら。

しかし、なかなか、御家族の了解や公認は難しいですよ。
特に、再婚とかだと。
こうなったら女よりも女な男の娘になって男だけどかわいいママ、そして、かわいいおばあちゃんを目指すのが良いのかも。

27 :
他所の某スレではある住人の「まとめ作る」の発言でその頃投下していた
作者達が一斉に反発して消えたからなあ
どうか悪い影響の無いようにしてくれよ

28 :
私としては、是非まとめサイトが欲しいところです。
というか、他に誰も作らなかったら自分で立ち上げるかと、第一話から過去ログあさって纏めていた
ところだったり。

29 :
wiki、アーカイブからも消えて見られなくなってたわクソ

30 :
>>28
自己流でまとめたテキストファイル必要なら
ttp://www1.axfc.net/uploader/so/2865888
パスはjosou

31 :
>>30
おお、素晴らしい!
相原⇒相川とか、自分のやらかしてたポカミスも色々修正済みで素敵です。
これ利用して、まとめwiki作成する方向に動いてしまってもよろしいでしょうか?
@wikiで大丈夫なんかな……

32 :
任せた

33 :
作者じゃない自分がおk出していいのか知らないけど、自分としては使ってもらって結構ですよ。
これまで投下された作者さん全員の中で、「自分のは使ってくれるな」という方がおられたら
(今でもここを見ておられたら)そういう方は拒否の意思表示をお願いいたします。

34 :
ちなみに自分はこれらのファイルのうちいくつかをMyKindleに送信して、iPadの
Kindleアプリで読んでたりします。

35 :
今回は ◆fYihcWFZ.c 様の作品だけまとめに載せれば良いのでは?
他の作者様のは、作者様が希望したら転記すれば良いでそ?

36 :
自分の作品だけなら、それこそブログ作ってそこに貼り付ければいいだけなんで、「まとめ」としては
正直いらないよな、って感覚です。
それこそ『偽装彼女』とか、それ以外の作品を読めるようにしたい、っていうのが思いですので。
今更過去作の作者が出てくる展開はないでしょうし。
(いらっしゃれば歓喜しますが)

37 :
前の保管庫みたいに男×女とか書いてくれると嬉しい
http://megalodon.jp/2010-0517-1806-12/mywiki.jp/josouthread/%E5%A5%B3%E8%A3%85SS%20%E4%BF%9D%E7%AE%A1%E5%BA%AB/

38 :
>>30
昔に投稿したのがあった
懐かしいなぁ・・・・・・

39 :
作者降臨

40 :
少し話題を遮る形になりますが、第8話に投下し損ねた、『Symbolon』§21.5です。
良く分からないかたは、
「女装すると30代そこそこの美人に見える、実際には40代の2児の父親が、実の妻と娘から上下の口を
ペニバンで雌のように犯されるシーン」
 ということだけ了解していただければOKです。そういうのが苦手なかたは回避推奨。
あとSM色が強いので、そっちが苦手な方は読み飛ばしお願いします。

41 :
『Symbolon』 §21.5・朝島慶子 1/4 2007/04/17(火)
 思いも寄らぬことになってしまった。
 奨められて女の格好になった時点で、今夜あたり、みちると久々にエッチできることは内
心期待していたけど、まさか実の娘も参戦(それも真昼から)することになるとは。
 使い込まれたと分かるペニバンを装着した娘が、怪しい瞳で私をじっと見つめている。
「……パパには、ひとつ恨みがあるの」
「こんな“父親”でごめんなさいね。いえ、今まで黙って隠していたことかしら。心当たり
がありすぎて、ひとつって言っても、どれか分からないの」
「そんなことじゃないの。……玲雄の肌って、父親譲りなのね。今まで真剣に見たことなかっ
たけど、これ絶対四十男の肌じゃないでしょ。どうして私にこの美肌遺伝子くれなかったの」
 流石に返答に困る私のお尻に、すっと指を差し伸べて当てがう。
 途端、視線ががくんと下がってびっくりする。
 一瞬後、腰が抜けたように脚から支える力がなくなり、お尻が床についたことを理解する。
 そしてそのあと、ようやく頭が、たった今自分のお尻に与えられた快楽を把握する。
「パパ、すっごい感度いいお尻持ってるのね」
「……慶子さん、そんなに気持ちよかったの?」
 返事しようとしても、ただ「あぅあぅ」という音にしかならない。
「あらあら。パパって随分可愛いのね。……“パパ”って感じじゃないな。慶子、って呼ん
であげる。私のことは、お姉さまって呼んでもいいわよ」
「お姉さまぁ」
 ようやく口が動き、そんな言葉を発する。自分でも信じられないくらい、甘えた声だった。
「慶子さん、やって欲しいことがあるなら、ちゃんと言ってみなさい?」
「お姉さまぁ。……もっと私のいやらしいお尻をいじめてください」
「……たったひと撫でで、慶子さん取られちゃったのね。なんて恐ろしい子なの」
 呆れるような、面白がるような、妬むような、からかうような口調でみちるが言う。
「そうね。この子をしゃぶってくれたら考えてあげる」
 そう言って目の前に突き出された擬似肉棒を、口に含む。でもそれはすでにご褒美だった。
 懐かしい感覚が蘇る。
 そっとそれを舌で嘗め回す。
「あら、意外に下手糞なのね。……まるで処女の女の子みたい。それじゃご褒美は無理よ?」
 嘲るような声の調子。フェラチオはそれなりに自信があるつもりだったのに、この子は一
体、どこでどんな経験を積んできたのだろう。
「わたしとやってる時には、いつもこんな感じだったんだけどね?」
「そっか、別にじらしているわけでもないんだ。……じゃあ、こっちからいくわね」
 かぶったウィッグごと頭をぐいっと掴み、力強く前後にゆすり始める。
 いきなり喉奥までぐいっとねじ込まれた硬い擬似亀頭に、ついえずきそうになる。嗚咽と
涙が止まらない。
 その惨めさに、久々に穿いた女物の下着の中、(不本意ながら)自分についている器官が
むくむくと自己主張し始めるのが分かる。

42 :
『Symbolon』 §21.5・朝島慶子 2/4 2007/04/17(火)
「……口のほうはあんまり面白くないなあ。やっぱりお尻か。……慶子、立てる?」
 その言葉に、ベッドに手をつきながらよろよろと立ち上がる。
「さて。おしゃぶりの下手な慶子には、何か罰を考えてあげないとね。……そうだ。ママ、
アイマスクとか持ってる?」
「面白いこと考えるのね。んー。ちょっとないかな」
「じゃあ、テープでいいわ。持ってきて」
「はいはい。すぐに持ってくるわね」
 ペニバンをつけた全裸のみちるが部屋を退出し、すぐに布テープをもって戻ってくる。
「そのままベッドに上がって、膝をついて四つんばいになって。スカートをめくって」
 実の娘に命じられるまま、ワンピースの裾をたくしあげて自分のお尻を妻と娘の前にさら
け出す。その屈辱感に、鼓動が早まる。
「じゃあ、まずはペナルティその1。私の期待に添えないなら、次は口をふさいじゃうから」
 両目をふさぐ形で、布テープが化粧を済ませた顔に貼り付けられる。
 視覚を失い、回りが把握できない不安感に、全身の汗がにじんでくるのを感じる。
 女物の衣装を着て、きれいに化粧をして、ウィッグもつけてきちんと髪型をセットして、
そして実の娘に手荒に扱われる。
 ──その事実に、そう。私の身体はかつてないほどに性的な興奮を覚えていた。
 無言のまま、何の前触れもなく、私の下着が引き摺り下ろされる。
 私のお尻が、なぶるように撫でまわされるのを感じる。熱い吐息とともに、喘ぎ声が零れ
るのを止めることができない。
「慶子、きれいなお尻してるわね」
 しなやかな指先が、谷間の穴に再度触れる。先ほどとは違い、遮るものが何もない接触。
「あ、ぁ、あぁぁぁんっ!」
 そのあまりの快感に、背中が弓なりにしなる。腰がうねりはじめるのを止めようもない。
「やっぱりお尻は感度高いなあ。いやらしいお尻」
「でしょー? でも、あなたのテクニック凄いのねえ。わたしじゃ絶対こんなにならない」
 母と娘の、仲むつまじい茶飲み話のような会話。
 その話題の対象になっているのが自分であるという羞恥心に、全身がうずく。
「反応が丸分かりで面白いのね。慶子って随分マゾっ娘なんだ。苛められて喜ぶ娘なんだ」
「いやぁぁぁぁっ!」
 ぐりぐりぐりぐりと、私のあそこをこねくり回す指の力が強くなっていく。
「ほらほら、やって欲しいことがあればちゃんと言ってみてちょうだい?」
「おねがいしますぅぅっ! 私のはしたないケツマンコに、お姉さまのおちん○んをいれて
くださいぃぃぃぃっ!!」
「……あらあら。びっくり」
 あざけるような、呆れるような声の調子。
「でもね、いきなり最後のご褒美をねだるなんて、駄目すぎるわね。はい、ペナルティ2」
 口紅を塗った唇を覆って、布テープが貼られる。もう「ふごふご」としか声が出せない。

43 :
『Symbolon』 §21.5・朝島慶子 3/4 2007/04/17(火)
「次のペナルティは……そうね、手首を縛ろうかしら」
「あなたどれだけ女王様なの。SMで食べていくつもり?」
「どこからも内定取れなかったらそうしよっかな。……ま、大丈夫だと思うけど」
 そんな会話を行いながらも、指を私のお尻の中に潜り込ませてくる。
「そういえば玲雄とやったときは、最後まで挿入を拒んでたんだけど、慶子はあっさり堕ち
たわね。どういう違いなんだろ」
「へぇ、あなた玲雄ともやったことあるの」
「うん……あれは……あんなつまらないことやらなきゃよかった」
「そうなの? 綺麗な身体してて、感度もよくって、良さそうに見えたけど」
 実の母と姉の会話として、それはどうななの……と思うけど、今はそんな言葉も発せない。
「プレイ中は最高だったんだけどね。今まで相手してきた中で、最高の『美少女』だったし。
でもそのあとの件まで含めると、色々トラウマ」
「そうなんだ」
「肌がつるっつるっでね、唇なんかプルプルでね、匂いもいいし、反応も可愛いし、顔も声
も仕草も女の子そのもので……それが今は俊彰といちゃついてるんだもんなあ」
「玲雄と、俊彰さん。あなたはどちらに嫉妬してるの?」
「もちろん、両方によ」
 声にわずかに、いらつきの響きが混じる。
 会話中ずっと私の体内を弄り回していた指先に力がこもり、前立腺を的確に責め立てる。
思わず『ところてん』状態で、私のアレの先から白い粘つく液体が零れる。
「ちょっと、早漏すぎ。ペナルティ3ね。次は……ママ、耳栓ってある?」
 娘の命令に従い、ベッドの上に座る。着ていたレディスのジャケットを脱がされて、ワン
ピースの袖を捲り上げられ、後ろ手に布テープでぐるぐると手首を巻かれる。
「色白いし、細いし、綺麗な手。……手タレだって出来そうね。羨ましい」
 そのまま上半身を押し倒され、顎から肩がベッドについた状態にされる。
「菜々華、ローションなんてつけずにそのまま突っ込んでしまって大丈夫よ?」
「へ?」
「触ってみて何も感じなかった? 慶子さん、もう濡れてるはずだけど」
 再度、私のお尻に指が押し当てられる。
「これは不覚。ウンコする穴なのに、確かにぬれてる。でもちょっと不安。滑りが悪いかも」
「そのくらい手荒に扱っても大丈夫よ。むしろこの人、そのほうが喜ぶから」
 菜々華のサディスティックな面がみちるにも感染し始めているような台詞。……いや、今
までセーブ側に回っていただけで、みちるは昔からこんな感じだった。
 ──私を立派なマゾ牝奴隷に堕としてしまうくらいには。
「ぅ、ふぐぅうううううっ?!」
 声にならない悲鳴が部屋に響く。いきなり奥深くまで、ペニバンの竿の部分をねじ込まれ
たからだ。
 数年間の間ご無沙汰していた痛み。でもそれが私の興奮を誘う。腰の動きが止まらない。

44 :
『Symbolon』 §21.5・朝島慶子 4/4 2007/04/17(火)
 口で息が出来ない息苦しさも、今は悦びの一部でしかない。
 パン、パン、パンという音とともに私の直腸に、硬いまがいものの肉棒が打ちつけられる。
「慶子さん、なんだか不満そう。本物のお○んちんじゃないと満足できないの?」
 そんなこと微塵も考えていないのに、からかう声を投げられる。
「そっか。あなた、俊彰さんの立派なものを見て、物欲しそうにしてたもんね」
 そんなことしてない。いやいやと首を振るけど、この体勢だとそれも難しい。
「『違う』なら『違う』って言ってね。慶子さん、玲雄と俊彰さんの結婚を許可するの渋っ
てたけど、それは自分が俊彰さんと結婚したいなあ、って思ってたからでしょう」
「ひ……ひがっ」
 “違う”と言いたかったのに、もちろん、それは言葉にならない。
「『違う』って言わなかったわね。じゃあ図星なんだ」
「ママもなかなかやるわね……」
「菜々華、どうなの? 俊彰さんのお○んちんってどんな感じだった?」
「知らないわよ。あの人、私相手だと勃たなかったし。……今考えると、『女としての魅力』
で私、結局玲雄に惨敗だった、って意味なのか」
「クス……でも、それ正解かも」
「本当、失礼な話よね。それはそうと、息子の彼氏に色目使おうとした父親には──凄い話
ね──もちろん、ペナルティ4実行で。……次のペナルティはどうしよっかな」
「次は鼻ふさいじゃったら?」
「それ、息ができないんじゃ?」
「ここまでわたしたちの意志に反してしまうんだもの。それもしょうがないわよ」
「ふぐぅっ、ふぐぅっ」
 抗議の声も、当然言葉にならない。
「ほら、慶子さんだって同意してる」
「そっか、なら仕方ないわね。次は鼻をふさぐから注意してね」
 ぞくぞくするような冷たい響きに、思わず絶頂を迎えてしまう。
 ひくついている私の耳に、しっかりと耳栓がはめられる。ご丁寧に上から貼られる布テー
プ。視界は真っ暗で、耳には自分のこもった喘ぎ声と鼻での荒い息しか聞こえない。
 時間の感覚が曖昧になる。
 どれだけの時間、その状態でひたすら突かれていたのだろう。途中、挿入役をみちるに交
代したりもして、それでも挿入が続く。明日無事に仕事できるのだろうか?
 耳栓で音が聞こえないせいでどんな会話が交わされたのか知る由もないけど、突然腕のテー
プがはがされ、四つんばいにさせられる。続いてはがされる、口のテープ。
 ぜいぜいと息をする暇もなく、その口にペニバンが突っ込まれる。
 目隠しの下を涙で完全にぐしょぐしょにしつつ、上と下の口を突かれ続ける。
 実の妻と娘に牝の性奴隷のように扱われる。
 今後も、こういうプレイが続けばいいのになと思いつつ、快感と幸福感に包まれながら、
いつの間にか私の意識は途絶えていた。

45 :
自分が暴走してもしょうがないので、「まとめ」について何か意見があれば是非にお願いします。
作ることになったとしても、実際に動けるのはGWだと思いますし。
>>38
おお(狂喜乱舞)。まさか本当にいらっしゃるとは。
「まとめ」については、どんなもんなのでしょう。
作るのに反対/どっちでも別に/作るのは賛成だけど、自分の作品は載せないで/普通に賛成
 あたりで言えばどのあたりになるのか、とか、何かご意見いただけると幸いです。

46 :
おお、ついにアレが来ましたか。眼福眼福
いいもん読ませてもらいました。GJ!

47 :
みんな喜ぶと思うよ。
なかなかスキルがないから応援しかできないけど

48 :
>>45
ざっとチェックした感じ、19と42かな?>投下作品
見落としはあるかもしれない
というか、「女にお尻を犯される男の子」の方に投下したのか
それともこっちに投下したか覚えてないものも多く
「立場交換スレ」建ててからは、基本的にあっちにしか投下してないからわかるんだけど

それはそれとしてGJであります!
やっぱり女装が似合うパパは娘に犯されてこそ、ですね!

49 :
>やっぱり女装が似合うパパは娘に犯されてこそ、ですね!
中年男性が強制的に全身整形を受けさせられて、(性器以外は)完全な美女になって息子に犯されるとか、
巨漢の息子に女装させられ、無理やり犯される小柄な父親。それが徐々に本当の愛情に変わっていくとか、
女装すると娘そっくりになる父親が、娘の彼氏と身代わりデート。いつしか互いに惹かれあってラブラブHとか、
厳格な父親が、振袖の美少女の姿で女中に犯されているシーンを偶然覗き見て、ドキドキしている娘とか、
そういうのは駄目でしょうか。

50 :
というか、肝心なこと書いてなかった
自分のはもちろん掲載OKであります
>>49
もちろんそれらもステキに決まっております

51 :
コメント次第にどこに転がっていくのか作者でもまったく不明なこのシリーズ、>>22
拾わせていただきつつ、新エピソード開始です。今回も前・後編に分割。
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-1 1/5
        <<俊也視点>>
「瀬野君、ちょっといいかな?」
 土曜ホームルーム終了後。帰宅しようとしたところに、クラスの女子達が押しかけてきた。
「これから僕、用事があるから、時間かからない話ならいいよ」
「あ、それならすぐに終わると思う。……これ、瀬野君でいいの?」
 差し出されたスマホの画面上で、動画が流れ出す。
 タキシード姿の少年と、その少年に似たブルーのイヴニングドレス姿の少女が交互に登場
し、色々なポーズを取っているCM画像。
「ああ、これもうオンエアされたんだ」
「じゃあ? じゃあ?!」
「おっと、瀬野。それ少し職員室でも話題になってたんだ。うちの学校、バイト禁止だぞ」
 いつの間にか担任や他の生徒もやってきて、ちょっとした人垣になっている。
「タキシードの子が僕じゃないか、って話ですよね? これ、僕の姉が男装してるんです」
「えぇ──っ? こんなにそっくりなのに?!」
「確か使用法が2つある商品の宣伝ってことで、タキシードの男装とドレス姿の2通りで撮
影した、って言ってたかな。……だからその人は、僕じゃないです」
「へぇ──そうなんだぁ。でもお姉ちゃんがCM出るなんて凄いよね。名前なんての?」
「瀬野悠里。何年か前から雑誌のモデルやってて、最近はテレビにも出てるみたい」
「あの人ってやっぱり瀬野君のお姉ちゃんなんだ。そうじゃないかって前から思ってたけど」
「聞かれたときには答えてたんだけどね。別に言って回ることじゃないし」
「何か、証明できるものはあるかな」
「姉の卒業アルバムを持ってきますよ。一応証拠になりますよね?」
「でもさ、お姉ちゃんが男装すると瀬野君そっくりってことは、瀬野君が女装すると、お姉
ちゃんそっくりになるってこと? あの人すっっっっっっっごい、美人だね?」
「うん、なるのかもね。女装してって言われても、する気はないけど」
「えぇ──もったいなーいー!!」「見てみたい見てみたい」「一度でいいから女装してー」
「駄目、駄目……じゃあ、僕、帰るよ」
 お姉ちゃんのサインをもらってくる約束とかさせられつつ、教室を後にする。
「……それはそうと、スマホの持ち込みも禁止だから、お前それ没収な」
「えっ? えぇ──っ?! おーぼーだぁ──っ!!」
 帰宅しながら、頭の中で自分の台詞を反芻。うん、嘘は言っていない。
 ──ドレス姿の“少女”が実は僕ということを、説明してないというだけで。
 2日がかりの撮影日、一日目の男装での撮影後。裸で制服姿のお義兄ちゃんと抱き合って、
ドレスでむき出しになる肩から腕に跡をつけて、結局僕が“悠里”として参加した二日目。
 モデルとしてはあるまじき行為なわけだけど、プロのメイクさんに本格的にしてもらった
化粧、綺麗な付け爪をしてもらった指先の優美さ、纏ったサテンシルクのドレスの滑らかさ、
高価なアクセサリの輝き、出来上がった映像上の『悠里』の姿の美しさ愛らしさ。
 結果的に僕が得られた『役得』を思い出すと、今でも鼓動が高まるのを止められない。

52 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-1 2/5
「ただいまー」
「あ、俊也さん、おかえりなさい」「俊也、お帰り」
 家に戻ると、ややハスキーな甘い声と、甘ったるい匂いとが迎えてくれた。
 手早く着替えを済ませてダイニングに向かうと、可愛いエプロンをつけた“アキちゃん”
がにっこり微笑んで、改めて「おかえりなさい」と言ってくれる。
 食卓につき、出された昼食を食べる。
 今日はお父さんとお姉ちゃんが仕事で不在だから、母と兄と僕の、この3人で全員だ。
「あれ、2人とも、もう昼飯は食べたの?」
「うん。俊也さんが食べたらすぐに出発できるように、って、メイクの前に」
 撮影用ということで、いつもと違って濃い目の化粧。
 といってもケバい系でなく、アキちゃんの愛らしさを絶妙に引き出した可愛い系のメイク。
 前々から化粧栄えのする人だとは思っていたけど、ここまでとは思ってなかった。
「そのメイク、どうしたの?」
「んーとね」と、お姉ちゃんと僕が懇意にしている美容院の名前を挙げて、「そこの店長さ
んにやってもらったの」
「ああ、あの人プロのメイクで食べてける腕してるよね。流石に上手いなあ」
「だよね。だよね。あたしも早く、あの人の腕に追いつけるといいんだけどなぁ」
 ここ1ヶ月の間、何気に誰よりも『美の追求』に熱心な義兄だった。
 もともとうちの一家では最も余裕のあった時間を、メイクの練習や美容に注ぎ込み続けて
いる。女装に消極的なふりをして、自分を可愛く磨くことに余念がないのが面白い。
 特にメイクの腕は、『甘い点はまだ多いけど、私たちが抜かれる日もそんなに遠くないか
なぁ』と、お姉ちゃんが嬉しそうな表情で語っていたのを思い出す。
 ほんの2ヶ月前。最初にメイド服を着せたときにちらほらと見え隠れしていた違和感も、
今では余程注意してないと見つけることすら困難だ。
 昔僕がやらされたみたいに、自分が誰も男だと思ってない女の子たちに囲まれて、24時間
ずっと少女として1週間ほど過ごす生活を送らせてみたいなとも考えてみる。
 そのくらい、ごく自然に女の子している2つ年上の義理の兄。モデル業で美人/美少女に
接することの多い僕でも、表情がくるくる変わるたびについつい見蕩れてしまう。
「俊也さん、今日のあたしどうかな? おかしな所とかない?」
 僕の視線に気付いたのか、少し恥ずかしそうな表情でそんなことを聞いてくる。
「いや、アキちゃんとっても可愛いから、すっかり見蕩れてただけだよ。どこも変じゃない」
「うわあっ、ありがとう!!」
 無垢で無邪気で無防備な笑顔を満面に浮かべて、僕の言葉に凄く喜んでくれる。
 見ている僕も、なんだかつられて笑みが零れる。そんな素敵な笑顔だった。
 目の前で繰り広げられる、『息子』2人のそんな会話。
「そうそう、アキはわたしに似て美人なんだから、不安になることはないのよ?」
 世をはかなんで辞世の句でも詠みたくなる人もいそうな状況なのに、ニコニコしながら会
話に加わる、この義理の母親の動じなさに一種尊敬の念すら覚えてしまう。

53 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-1 3/5
「じゃあ、2人とも頑張ってね……俊也、アキをお願いします」
 食事と支度を終えて、アキちゃんがお義母さんから包みを受け取って、2人で家を出る。
「アキちゃん、その包みは?」
「野菜たっぷりで、美容にも健康にもいいマフィンだって。今日、ちょっと時間が余ってね。
ママに教えてもらいながら作ってみたの」
 なるほど、帰宅したとき感じた甘い匂いの正体はこれなのか。
「あたしまともにお菓子作りしたのって初めてだから、美味しくできたか不安だけど。撮影
終わったら食べたいなぁ、って」
 しかしお姉ちゃん、お義兄ちゃんに女子力でもう完敗してるような気がしなくもない。
「僕にも食べさせてくれるかな?」
「もちろん! ……あ、まずあたしが食べてみて、それで美味しくなかったらバツで」
 指で小さく×印を作りながら、はにかんだ表情で言う。中身は大学2年の男だというのに、
仕草や表情がいちいち少女めいて可愛すぎた。
 フリルやレースの一杯ついたワンピースに、フリル付きのカーディガンの、ピンク一色の
装い。スカート丈は膝が覗く程度で、足首の締まった綺麗な生足がそこから伸びている。
 僕の学校の校則もあって、そんなに髪を長く伸ばせない僕たち姉弟。それよりもう長くなっ
た髪を、ショートカットの女性に見える感じにセットしてある。
 義母もそうなんだけど、アルビノが少し入っているんだろう。
 高校時代は黒く染めていた髪も今は蜂蜜色がかった茶色で、肌は陶磁器を思わせるほどの
滑らかな白さを帯び始めている。琥珀色にきらめく瞳の色が、すごく印象的だ。
 “女としては”彫りが深い顔立ちもあって、ハーフか、いっそ外国人の美少女のようだ。
 電車の車内でも、そんな可憐な姿は注目を集めまくっていた。
 純粋な容姿やスタイルならお姉ちゃんのほうが上なんだけど、それでも人を惹きつける雰
囲気は天成のものがある。
「今日のモデル、ってどんな感じでやればいいのかな」
「お姉ちゃんの撮影風景は何度も見学して知ってるよね? あんな感じ。まあ気楽にしてれ
ばいいよ。いつもの素敵なアキちゃんをみんなに見せてあげてね」
 今日はそもそも、お姉ちゃんに来た仕事だった。
 中華街でチャイナドレスのレンタルをやってる店の、広告用の写真のモデル。
 お姉ちゃんがやるには日程的に折り合いがつかなくて、“アキちゃん”が代理でモデル役
をやることになったという流れ。
 約10年前の“アキちゃん”時代、『彼女』はかなりモデルとしても経験を積まされていた
のだろう、というのというのがお姉ちゃんと僕の見解。
 最初にネコミミメイドの衣装を着せてみたときから、立ち方にも、動作にも、その名残が
強く残っていた。
 僕達が『モデルやらない?』と2人で何度も誘っていたのは、実はそういう要素も大きい。
 ようやくこれからその姿が見れると思うとかなり興味深かった。

54 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-1 4/5
 土曜昼過ぎだけあって観光客で賑わう中華街を通り、目的のお店へ。
「あらまあ! すっごい美人さんたちだこと。代理、ってことでちょっと不安だったんだけ
ど、これなら十分以上に合格点。1人って話だったけど、2人なのね?」
 外見は貫禄たっぷりだけど、おネェの混じった中年男性の店長さんが歓迎してくれる。
 「僕はただの付き添いで、ついでに男です」と言うと、凄いがっかりしていたけれど。
 店長さんから撮影方針とか聞き出しながら、今日着る衣装などを選んでいく。
 服を替える度に、顔を輝かせて喜ぶアキちゃんの笑顔が眩しい。
 補正下着がはみ出したり、ラインが見えたりしない衣装を選ぶのは少し骨だったけど。
 少し遅れていたカメラさんも到着して、撮影開始。
「体を入り口に向けて、右手を腰に当てて、視線をこっちに向けて。──いい感じ、いい感
じ! アキちゃん。ここに今、一番好きな人がいると思って、最高の笑顔をちょうだい!」
 アキちゃんがカメラさんの声に従ってポーズを取り、喜びの表情を浮かべる。
 その瞬間、部屋の空気の色自体が変わったような気がした。
 カメラさんも見蕩れたのか少しの間静止したあと、シャッターを鳴らし始める。
 引き出しが多い。一つ一つの表情が魅力的だ。部屋の隅で見学しているだけなのに、すご
くワクワクしている自分を覚える。
 天衣無縫で無邪気な愛くるしさに、体の芯をぞくぞくさせるような妖艶さが混じる。
 その不思議なアンバランスさから目を離せない。
 今着ているピンク色で超ミニのチャイナドレスにそんな雰囲気が良く似合って、まるでア
キちゃんのためにあつらえたオーダーメイド品のように見えた。
 僕が学校に行ったあと、お姉ちゃんが補正下着とお義兄ちゃんの体を使って『女性の体』
を再現すべく、散々遊んだのだろうか。
 ここ一ヶ月の本人の美容の努力の賜物もあわさって、とてもこの薄いドレスの下に男の体
が隠れているとは思えない、見事な曲線美が形作られている。
 接着剤で胸に直接貼り付けた、乳首まである超リアルなBカップのフェイクバスト。アン
ダーバストの差があるから、衣装の上からだとDくらいあるように見える。
 今着てるドレスは胸の部分がちょっと小さくて、本来そこにない双つの丘が窮屈そうに納
まっているのも余計に色っぽい。
 コルセットで絞った、高い位置できゅっと括れたウエストのラインと、ヒップアップガー
ドルにパッドを入れて作った腰つきまでの、流れるようなラインがセクシーだ。
 下着が見えないぎりぎりの丈のスカートから覗く、引き締まった長い生足もなまめかしい。
 カメラさんの指示に従い、扇を持った腕を水平に指し伸ばす。
 肩からむき出しの、人形のパーツめいたすらりとして白い腕。指がそんなに華奢じゃない
のが残念だけど、女の手と言われて違和感を覚えるほどでもない。
 ドレスの色にぴったり合う、マニキュアの施されたピンク色の爪が綺麗だった。
 ちょっと条件が変わっていれば、この花のように可憐な美少女めいた義理の兄の代わりに、
僕がこのドレスを纏えていたのにと、嫉妬心が微かにうずくけれど。

55 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-1 5/5
 赤い足首丈のドレス、黒くて長袖のドレス、短い袖付きで膝丈までの青いドレス、緑色の
アオザイ、中国の古典衣装、赤と金も眩しい中国の婚礼衣装etc.etc.
 準備していた衣装に次々と着替え、途中化粧直しを挟むくらいで息を付く間もなく撮影を
進めていく。
 ラスト、僕の提案で入れることになった、私服に戻って店内で衣装選びをしているシーン
まで終えて撮影を終える。
「アキちゃん、良かった!! 凄かった!! 可愛かった!!」
「本当?! ありがとう!!」
 思わず歓声を上げた僕の胸に笑顔で飛び込んできて、受け止めるのに一苦労。
 なんだか小さな女の子みたいな印象だったけど、中身は僕より重い男性なのだ。
 撤収作業をしているカメラさんを眺めながら腰掛け、休憩に入る。
「アキちゃん、本当におつかれさま」
 お店の人に出された冷えた烏龍茶をチューチュー飲む。そんな仕草さえ凄く女の子らしい。
「さて、作ってきたマフィンの出来はどうかな?」
 ぽむ、と掌をたたき、いそいそと包みを広げて一口サイズのマフィンをかじる。
「どう? おいしい? 僕も分けてもらえそう?」
「これなら……うん。なんとか大丈夫、かな?」
 少し不安の残る表情で、おずおずと差し出してくる。
 受け取って頬張ると、控えめな甘さが口の中でとろける。『お菓子作りが得意』って言っ
てるクラスの女子が作るのと、同じくらいの出来栄えだろうか。
 初めてでこれなら充分以上だろう。将来が楽しみになる味だった。
「うん、すごく美味しいよ。きめが細かくて、しっとりしてて。甘さもいい感じ」
「本当? 良かったぁ」
「もう一つ頂戴。……ありがとう。じゃあ、アキちゃん初仕事お疲れ様でした。あーんして」
 一瞬きょとん、としたあと、ピンク色に輝く艶やかな唇をあけて目をつぶってくれる。
 無邪気な姿に悪戯心が動いて、他のもの(僕の舌とか)を入れたくなったけど自制。
 渡してもらったマフィンを半分に割ってその口に入れ、残りを自分で食べる。
「本当なら僕が用意してたご褒美をあげるシーンだけど、そこまで気が回らなくてごめんね」
「ううん、すっごく嬉しい。……俊也さん、ありがと」
 そう言って返してくれた笑顔は、抱きしめて本当に唇を合わせたくなるくらい素敵だった。
「そういえば聞いてなかったけど、君たち恋人同士?」
 撮影終了直後から席を外していた店長さんが戻ってきて、僕たちに声をかけてきた。
「いえ、兄弟ですよ」
「へえ兄妹かあ。うちの子たち、顔を合わせるたびに喧嘩しかしてないから羨ましいわねェ」
 何か漢字が違っていたような気がしなくもない。
「あ、あたし今日、マフィンを作ってきたんです。よければみなさんもお一つどうでしょう?」
 皆で集まって、マフィンを食す。凄い好評で、僕もなんだか嬉しい気分になる。

56 :
>>26
シリアス方面は避けるように試行錯誤してるところです。おかげで変態一家が量産されてる気もしますがご容赦を。
ママさんは『Symbolon』でやってしまったので、方向は変えるべきか悩むところです。
>>48 >>50
個人的お気に入りの一つ19の作者さん、更に「立場交換スレ」の設立者でしたか。
着替え風景を丹念に描き切る手法は見習いたいと思いつつ、§24レベルになってしまう筆力不足が恨めしい。
用鍛錬です。
(そして§24が2回あったことに今更気付く)
使用許可、ありがとうございます。

57 :
新作キター
何気ない一言を書き込んだ者として、非常に嬉しいのであります。

58 :
後半部投下ということで。
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 1/6
 そのあと、スタッフ用のPCで撮影画像を確認する作業を少し見学させてもらう。
「わあっ!! これがあたしなんですね。こんな可愛く撮っていただけるなんて、ありがと
うございます! ドレスもすごい素敵で良かったです!!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ様子が、なんだかとても可愛らしかった。
 報酬を受け取り、普段用にメイクを直したりしたあと、店を出て傘をさす。
「アキちゃん、今日はすごい良かったよ。百点満点で二百点あげて、ついでに花丸つけたく
なるくらい。どうかな。もっと本格的にモデルやる気はない?」
 僕の言葉に、考え込む様子のアキちゃん。
「ま、すぐに決める必要は全然ないから、気が向いたら声かけてよ。……で、どうしよっか。
このまま帰る? それとも遊んでいく?」
「俊也さんは、どうしたいの?」
「僕はね……うん決めた。これからアキちゃんとデートする!」
 少しぱらつく雨の中、相合傘で中華街を回りはじめる。
 昔はよく来ていた、でもここ暫く来ることのなかった懐かしい街並み。
(地元育ちなのに)ここに来るのは初めてというアキちゃんを案内しつつ、色々歩いてみる。
 ローズピンクのワンピースと、クリームピンクのカーディガンというピンクずくしの少女
らしい衣装と面差しは、この中華街だと少し浮いていたかもしれない。
 それが身長の高い、見事なスタイルの持ち主であるという不釣合いさもあって尚更に。
 身長172cmで60cmを切ってる今のウエストは、強く抱けば折れそうな印象を見る人に与える。
 僕と違って素の状態のヒップのラインは男のものだけど、そのウエストとの対比があると
“引き締まった美尻”に見える。
 巨乳というほどではないけど、充分豊かで形の綺麗な胸との対比もいい感じだ。
 いつもお姉ちゃんや僕自身が浴びるのとは少し種類の違う視線に、楽しい気分になる。

「あなた達、ちょっと良いかな?」
 そんな声に呼び止められたのは、小さな水族館を出たくらいだった。スカウトだろうか?
 デート中に声をかけるとは無粋な、と思いつつ声の主の顔を見て驚く。
「弓月摩耶、さん?」
「その名前で呼ばれるのも随分久しぶり。それも男の子で知ってる人がいるなんて」
 背が高くてスタイルがいいスーツ姿のその美人に誘われるまま、すぐ近くのカフェに入る。
「俊也さん、知ってるヒトなんですか?」
「えーっとね。……お姉ちゃんがモデルやってる雑誌で、昔読者モデルやってた人」
「よく知ってるのね。もう覚えてる人誰もいないと思ってた」
「もちろんですよ。弓月さんに憧れて、読者モデルに応募したんですから……えっと、僕の
姉の話なんですが」
 本当は、彼女に憧れて読者モデルに応募したのは、僕だったりするわけだけど。
 あのころはまだそんなに慣れてなかった女装をして、写真を撮って姉の名前で書類を作成。
書類選考を通ったらお姉ちゃんに面接に行ってもらう。今思えばかなり無茶をしたものだ。

59 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 2/6
「あっ、あなたひょっとして瀬野悠里さんの弟さん?」
「はいそうです。瀬野俊也、っていいます」
「なるほど、道理でそっくり。なんで今まで気付かなかったんだろ、ってくらい」
「弓月さんって今、何をされてるんですか?」
「そうそう。それを忘れちゃお仕舞いよね。今はわたし、こんな感じ」
 渡された名刺を受け取って眺めてみる。
 
 ──『芸能プロダクション ○○事務所 山田瞳』
「山田瞳っていうのは?」
「それがわたしの本名。……わたし、モデルとして結局芽が出なくて、それでもこの業界に
いたくて、後進を育てたいなあ、ってお仕事」
「なるほど、そうなんですか。弓月さん、もっと活躍してるところ見たかったんですが」
「それよりわたし、あなた達が活躍しているところを見たいな。……どうかな。是非芸能界
入りして活躍して欲しい。わたし達がそのお手伝いできるなら嬉しいし」
 結局その場での回答は保留させてもらって、3人分の名刺をもらって別れる。
 正直僕自身の気分はかなり傾いていた。憧れだった人と一緒に働けるというのも大きいし、
初見で僕のことをきちんと男と認識して誘ってくれたのも、個人的にポイントが高かった。
「……あ、やっと思い出した。あの人一度だけ、会ったことがあるんだ」
「へえ、どこで?」
「甘ロリの格好で初めて外出して、初めて女子トイレに入ったとき、入り口で一緒になって」
 『袖振り合うも多生の縁』、だったか。そんな偶然。

 それからまた遊んで、少し早めの夕食まで食べて。中華街を出て駅へと歩く。
「今日はいっぱい遊んだね──このまま帰る? それともタワー登ってみる? それとも」
 通りすがりに見える建物に、つい意識を取られてしまう。
 僕の視線を追って、赤面するアキちゃん。
「ん。……お願いします」
 スルーして通りすぎそうになったとき、そんな呟きが聞こえた。
 少し戻って『御休憩』の看板の出た、その建物に入る。
 アキちゃんに先にシャワーを済ませてもらって、そのあと僕も浴室へ。
 ──ここから『僕』は、『私』になる。
 アキちゃんに恋しているのは『俊也』もなのに、その状態だと愛してもらえなくて、
『悠里お姉さま』でないといけない。それがなんだか、少し寂しい。
 体を拭いて、バスタオルを胸で巻いて外に出る。
 可愛い私の“妹”は、チャイナドレスに着替えて化粧をしているところだった。
「あっ、お帰りなさい悠里お姉さま」
 そう言って微笑んだ顔は、今日見たどの表情よりも素敵だった。
 思わずその身体を抱きしめ、ルージュを塗っている途中の唇に私の唇を重ね合わせる。

60 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 3/6
「はむ……くちゅ……ちゅる……」
 ほんの1ヶ月前までは、ざらざらと乾燥して荒れ放題だった唇。それが今はとても滑らか
で柔らかで甘い感触に生まれ変わっている。
 その心地よさを、存分に楽しむ。
「悠里お姉さまぁ。……いきなりすぎますよぅ」
 とろけるような顔で、とろけた瞳で、とろけきった声色で、抗議するアキちゃん。
「アキちゃんが可愛すぎるからしょうがないでしょ。今日一日、私が我慢するのがどれだけ
大変だったか分かる?」
 そのまま続行したかったけど、もう一度我慢を重ねて身体を離し、荷物を漁る。
 ブラジャーをつけ、パッドを入れ、チャイナドレスを身に纏う。
 今日の仕事の報酬の一環としてもらった、レンタル落ちの衣装たち。
 俊也と父用のメンズチャイナ、母用のアオザイ、アキちゃんと私用のチャイナドレス。
 アキちゃんはそれ以外に、モデルのときに最初に着たピンクのチャイナドレスも店長さん
から特別にプレゼントしてもらって、今はそれを着ている。
 これはレンタル落ちでない、多分ほとんど新品のアイテム。
 他の服もそんなに状態は悪くない。真面目に購入した場合の値段と拘束時間を考えると、
破格と言っていい報酬かも。
 段取りもスムーズなほうだったし、カメラさんの腕もお店の人からの待遇も良かったし、
『いつもこんな感じだったら良かったのにな』と思わせるお仕事。
 花の刺繍入りの赤い超ミニのそのドレスを着て、アキちゃんに向き直る。
 完全に勃起状態の股間の先端が、裏地でこすれるのが変な気分だけど。
「悠里お姉さま、お化粧させてもらっていいですか?」
「うん、お願い♪」
 椅子に腰掛け、アキちゃんに自分の顔を委ねる。
 他人の操るパフや筆が幾度も撫でて、存在を塗り替えていく感覚が私は好きだ。
 メイクや衣装にあわせて、表情や仕草をどういう風に変えていくか、考えるのは楽しい。
 それで、相手の対応が変わるのを見るのも楽しい。
 他人にメイクを施すのは慣れてない……というかひょっとしたら初めてなのかも。
 決して上手とはいえない、たどたどしい手つきで、でも真剣な表情で、丁寧にメイクを進
めていくアキちゃん。
 そんな顔もまた、思わず抱きしめたくなるくらい愛らしかった。
 最後にグロスをルージュの上にさして、化粧の完成。
 どきりとするほど色っぽい、“女の色香”が漂う顔が鏡の中から見返してくる。
 まだまだ隙の多いメイクだけど、それもこれからの成長の余地を示していると思えば悪く
ない。
 でもそーか。アキちゃんは今、こういう相手をお望みなのか。
「どう……ですか?」
「とっても素敵ね。なんだか自分でもドキドキしてる」

61 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 4/6
「お姉さま達には、全然敵いませんけどね」
「そりゃそうよ♪ これまでの経験が全然違うもの。
 アキちゃんも私達に追いつけるよう、もっと努力して、素敵な女の子になってね。
 ──私も簡単に追いつかれないよう、その上をいけるよう、もっともっとがんばるから♪」
 キラキラと輝く琥珀色の瞳で私を見つめる身体を抱き寄せ、ピンクの薔薇の蕾のような可
憐な唇に、真紅の薔薇の花のような私の唇を、再び重ね合わせる。
 口付けしたままベッドに上がり、ルージュとおそろいのチャイナドレスの色に包んだ身体
同士をぴったりと密着させて、しっかりと抱きあったままベッドの上二人ぐるぐると転がる。
 やがて私が上位の体制でストップ。互いの舌を絡ませあう、濃厚なキスを続ける。
 回した指の先で、シルクのドレスに包まれたアキちゃんの背中をくすぐるように弄ぶ。
 そのたびに、敏感に身もだえして応えてくれる可憐な少女。
 腰のうねりが大きくなり始める。その度に、チャイナドレスの下の私のおちん○んが、私
とアキちゃんのお腹に挟まれて刺激されて、大変な状態になってるのを覚える。
 複雑に絡ませあった脚が暴れだす。腰はもう、痙攣していると言っていい動き。
 綺麗にマスカラを塗った両目から、とめどなく涙が溢れ出ている。
 やがて、全身の筋肉が硬直したあと、だらりと力が抜ける。
 『アキちゃんはキスだけでイクから』と聞いてはいたけど、実際に目にすると圧巻だった。
 まだ呆けたような表情で喘ぎを漏らし続けているその顔に、首に、むき出しになった肩に、
二の腕に、キスの嵐を浴びせていく。
 全身紅潮し、チャイナドレスに負けず劣らず綺麗なピンク色になった、アキちゃんの白す
ぎるほどに白い肌。それを私の真紅のルージュで染め上げていくように。
「はぁっ、ぁぁぁあん! はぁぁんっ!」
 さっきイったばっかりなのに、また身もだえを始める。
 まるで、全身が性感帯と化したような反応。
 あまりの愛らしさにぎゅっと抱きしめると、その感触だけでまた絶頂を迎えてくれる。
「本当、アキちゃんってなんでこんなに可愛らしいのかしら」
 思わずこぼした言葉。私の作り物の胸に顔をうずめて、わんわんと泣いてそれに応える。
「ゆ、悠里お姉さまぁ。お姉さまぁ……悠里お姉さまぁ……」
「はいはい、アキちゃん♪ ……私の、とってもとっても大事な大事なアキちゃん」
 しばらくその状態を続けたあと身体を下に移動させ、チャイナドレスをめくってアキちゃ
んの、陰毛のないつるりとした股間に顔をうずめる。
 タックで作成した、まがいものの割れ目が面前にある。その割れ目に向かって、たっぷり
と唾液を含ませた舌を伸ばし、ちろちろと舐めあげる。
 ここは感じやすい神経の集中する場所なだけに、反応は今までの比じゃなかった。
 もう絶叫としかいいようがない嬌声が部屋に満ち溢れる。
 腰や脚があばれまくって、腕もなんだか痙攣するような動きを繰り返して、体勢を保つだ
けでやっとの状態。
 今アキちゃんの脳内はどんな状態なのだろう? 私はこんなにイけないだけに嫉妬が疼く。

62 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 5/6
 指先でそっと、アキちゃんのすぼまりをなであげる。
 愛液が溢れ出すお○んこのように、腸液でぬちゃぬちゃ状態のその穴。
 軽く力を入れたつもりすらないのに、私の指先はその秘孔にずぶずぶと飲み込まれていく。
 中は火傷しそうなくらい熱くて、トロトロの柔らかい肉が複雑に指先に絡みついてくる。
 括約筋でぎゅっと絞られた指が、折れそうなくらいの圧迫感を感じてあわてて抜きさる。
「ゆ……悠里お姉さまぁっ。ぬい、抜いちゃ嫌ですぅ。もっと奥にぃ」
 息も絶え絶え、という様子なのに、涙目のままそんな懇願をしてくる。
「ごめんね。……でも指はこれ以上は無理かな。締め付けがきつすぎて、折れちゃいそう」
「そっ、そんなぁっ?!」
「だ・か・ら、本物を入れてあげる♪ アキちゃんが、今日一日可愛かったご褒美♪」
「ゆーりおねえさまぁっ!!」
 ピンクのチャイナドレスに包まれた肢体全部を使って、熱烈にハグしてきたりする。
「ちょっ! アキちゃん力緩めて! これじゃ挿入できない!」
 私よりずっと力が強くて、痣にならないか不安になるほど。身動きすらできない状態で、
体勢を整えることもできない。
 力を緩めてくれた隙を縫って、正常位に持ち込む。
「アキちゃん、挿れるわよ?」
 という私の呼びかけに、歓喜に満ち溢れた表情でコクコクとうなずきを返してくれる。
「アキちゃんって、本当にお○んちんが好きなのね?」
「うん、だぁい好き……やっぱりエッチな子はダメなの? ……あたし、嫌われちゃうの?」
「大丈夫。私、そんなアキちゃんが、大好きで大好きでたまらないのっ!」
「アキ、こんなにインランで、いけない子なのに?」
「淫乱でエッチな娘“だから”いいのっ! そんなアキちゃん“だから”大好きなのっ!!」
 今はコルセットをつけてないけど、その状態でもこのチャイナドレスがなんとか着れるま
でくびれが出てきたウエスト。
 そのウエストを両手で掴み、今日一日溜め込んだ本心を大声で吐き出しながら一気に挿入
する。
「はぁぁああああぁあんっっ!!」
 身体を大きく弓なりにしならせて、そんな悲鳴とも絶叫ともつかない嬌声をあげる。
 比較対象の知識に乏しいから良く分からないけど、これまで世界で一番気持ちいいと思っ
てきた、“もう一人の悠里”のおマ○コの数千倍もの快感が襲い掛かる。
「くうっ……かはっ……アキっ、アキちゃん気持ちよすぎっ!」
 ぎゅいぎゅいと、物凄い力で圧迫がかかる。
 ぬめりを帯びた、腸内の熱い肉壁と粘膜と襞々とが、複雑に絡み付き、吸い付いてくる。
 最初に結ばれて以来、オナニーの度にこれしか思い浮かばなってしまっている、まるで麻
薬のような快感。
 アキちゃん以外のお尻は私は知らないけど、たぶん普通のアナルセックスではありえない
そんな快感に、まだ身体を動かしてもないのに一瞬で放出してしまう。

63 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-2 6/6
(やっちゃった……)
 幾らなんでも早漏すぎるだろうと、私自身に呆れる。
 アキちゃんと、萎えてしまった私のモノに内心謝りつつ、引き抜……こうとしたけれども、
いつの間にか私の身体に絡みつくように回されていた、アキちゃんの脚が許してくれない。
 意識的なものか、無意識によるものか分からない、その脚と腰の動きに導かれるままに私
自身、腰を振る。
 萎えた状態でも、括約筋だけではない、直腸全体から締め付けられるような感覚は減って
いない。どんな素質があれば、どんな鍛錬を重ねれば、こんな魔性が生まれるのだろう。
 真下を見る。
 赤いチャイナドレスに包まれた、偽物の双丘が激しく上下しているのが見えるだけで、接
合部の状態は見えない。
 この部屋に大きな鏡がなくて、今の自分の姿が見れないことを残念に思う。
 世界で一番好きだった、今でも世界で二番目に好きな『瀬野悠里』の美しい姿。
 他の有名なモデルや芸能人と並んでも少しも見劣りすることのない、(ちょっと大げさに
言えば)絶世の美少女。そんな少女と自分が“一緒”になれるという陶酔感、高揚感。
 “アキちゃん”が愛しているのは、その『瀬野悠里』ただ一人。
 それでも『僕』が『私』でいる間は、『悠里お姉さま』として愛してもらえる。
 そしてこの絶妙なる名器を味わえるのは、世界でただ一人、『私』だけの特権。そう思え
ば、今までとは異なる高揚感が押し寄せてくるのを覚える。
 アキちゃんのその穴の中に納まり続けていた私のモノも、いつしか力を取り戻してきた。
 いつの間にか剥けた状態になっていた私の亀頭に、まるでミミズのような襞々がからみつ
いてきつく締め上げてくる。
 精液と腸液が交じり合った液体でぬめぬめの直腸全体が、私の竿の部分全体を絞りこむ。
 「もう離さない」とばかりに、私のモノが奥に奥にと吸い込まれていくような感覚。
 気を抜けば一瞬で再度の射精に至りそうな快感に逆らって、大きく腰を振り始める。
 そのたびに嬌声で応えてくれる、ピンク色のチャイナドレスの美少女。
 どのくらいの時間そうしたのだろう。
 私の射精と同時に、ひときわ大きな嬌声をあげて、すべての力が全身から消滅した。

 ぐったりと意識を失い、ベッドで静かに息を立てるアキちゃんの髪を撫でつつ思う。
 『失神にいたるほどの快感』というのは、一体どういうものなのだろう?
 あまりの快感に脳内で処理しきれなくなって、頭のヒューズが飛んでしまってシャットダ
ウンされるような状況。それほどの快楽。
 いつか自分もそれを味わってみたいと思ったところに、フロントから電話がかかってくる。
『御休憩』を『御宿泊』に変えてもらって、次はお姉ちゃんに電話を入れる。
 お姉ちゃんがここに到着するか、アキちゃんが目を覚ましたら第二ラウンドだ。
 どんなプレイにしようかと考えつつベッドに横になり、この愛しい愛しい存在を後ろから
抱っこする。それまではこのまま、しばしの休息を楽しもう。

64 :
いいねいいねー

65 :
ぐはぁ!最高だぁ!!
三姉妹(?)でブライダルファッションショーの花嫁モデルでウェディングドレス姿とかあったら、
間違いなくねる(爆

66 :
弟君の学校の学園祭で、姉と義姉(♂)の舞台を行うのはいかがでしょ?
服の選び方とか化粧とかファッションショーとか
同じ組の皆さんはお姉さんの学校アルバムで説明できますが、他の、全教職員、そして、全校生徒の前で姉と美少女義兄を紹介してしまえば、卒業まてモデルのアルバイトを疑われなくなると思います。

お姉ちゃんの花婿さんに義兄・弟の花嫁さん、とかを披露するもよし。
和服と洋服で。
ついでに秘密に一部の女生徒だけを集めて、初夜ごっこを披露するとか?

67 :
まだまだ作業途中ですがまとめwiki 立ち上げました
http://www55.atwiki.jp/jososs/
まとめのないorなくなった他スレの女装SSとかもフォローしたいな、と考えて広くとってみましたが。
ご意見・誤り指摘・要望等ありましたら、是非に。

68 :
乙です

69 :
>>65
ブライダルファッションショー、いいですねえ。
ただあの手のショーの裏側調べてみると、下着丸出しで着替えまくる戦場みたいな状況っぽいので、
どういうシチュにするか悩んでみたりするところです。
>>66
そのシチュエーションなのですが、「三姉妹モデル」ってことですので意味が薄くなってしまうのかなあ、
とBパートほぼ書き上げた状況で困ってみたりしております。
魅惑的なご提案なので、なんとか取り込みたいとは思いますが。

70 :
wiki乙です。
ここまで分類されてると実に捜しやすいなあと実感。

71 :
>>69
wiki乙であります
自分でも書いたことを忘れてたやつをちゃんと分類してもらってたのにはびっくりしてます

72 :
まとめ乙
wiki連絡用メールアドレスって無いの?

73 :
ようやく掲載がひと段落しました。手間取って申し訳ないです。
30氏には多大なる感謝を。思いっきり助けられました。
>>72
右上の「ログイン」から、ユーザ名「joso」パスワード「joso」でログインして編集可能になりますので、
何かおかしな箇所を見つけられたかたは、直接修正頂ければ幸いです。
もちろん、ここに書いていただかれば可能な限り対応します。
左上の「ツール」の「このウィキの管理者に連絡」で、私宛てのメール送付が可能みたいです。
ただ、毎日50件くらいスパムが届くため見落としてしまう可能性がありますので、非公開にしたい
話でなければ、このスレに書き込んでいただくのが確実かなと思います。
自分のサイトで投稿文章を掲載されているお二方(【】の人と、KCA氏)の扱いはこれでよいかどうか。
追って確認いたします。

74 :
【】の人って女装SS総合と立場交換スレでは示す人が違うのか
はじめて知った

75 :
『とりかへばや?』の作者を“【】の人”としたのはご本人のサイトの記載に従ったのですが、
立場交換スレでの“【】の人”とは確かに別の方ですねえ。
言われて確認してみて、びっくりしてしまいました。
注釈追加してみたのですが、こんな感じでも大丈夫でしょうか。

76 :
まとめwiki乙です。
別項目に挙げられてますが、以下も実は私の書いたものです。
ヒメガミ(非・女神)
誰が為の幸せ
禍福は糾える縄の如し
影武者姫
あと「信じて送り出した可愛い弟が、リア充男の娘になって恋人(♂)と共に帰宅した件」もですが……これは、まぁ小ネタのところでよいかな。

77 :
わざわざご丁寧に痛み入ります。訂正しておきました。

78 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-3(おまけ) 1/4
        <<柊朋美視点>>
「……うわぁ」
 妹の久美が、店の入り口を見つめたまま、うっとりした表情で賛嘆の声をもらした。
 店内の他のお客さんも、かなりの割合で同じ感じだ。
 わたしも釣られて、同じように入り口のほうを向いてみる。
 何かのロケなのだろうか?
 ため息をつきたくなるような美男美女5人連れがお店に入ってきて──そしてウェイトレ
スさんに案内されるまま、何の導きなのかわたし達のすぐ隣の席にやってくる。
 座る動作すらとっても優雅で、思わず見惚れてしまう。
 うち2人はたぶん双子なのだろう。ガーネットと黒曜石のような色彩の、色と柄だけが違
う同じデザインのチャイナドレスに身を包んだ、瓜二つの究極美少女たち。
 ドレスの裾は足首までだけど、腰まで入ったスリットから見事な脚線美を描く生足が覗い
ている。
 ノースリーブの肩からむき出しになった腕も、余分な肉が一切付いてなくてすごく綺麗。
 手足がびっくりするほど長い。身長の半分より股下のほうが長そうだ。
 ほっそりとして、頭もありえないくらい小さい。目測9頭身美人。
 1人でもアトラクティブなそんな美少女が、2人もいるのだ。目を引かないわけがない。
「こりゃ、やっぱり目立っちゃってるねえ」
 たぶん彼女たちの父親なのだろう。
 一行の黒一点の、アメシストの色のメンズチャイナを着た男性が飄々と面白そうに言う。
 スマートで背が高く、少し童顔の入ったハンサムな顔には、確かに彼女たちの面影がある。
「わたしだけ、なんか浮いてる感じで嫌かも」
 サファイアのような色合いのアオザイを着た女性が、笑顔でそんなことを言っている。
 一行では一番小柄な、女優だと言われたら納得しそうな美人。
 茶色の髪をシニョンでまとめた、色白で灰瑪瑙の瞳をした大人の女性。
 肌も綺麗で、多分20代半ばか、いって後半くらいだろうか。
 あからさまに見蕩れすぎていたわたしに向かって、最後の1人がはにかんだ笑顔を向ける。
 とたんにドキリと高鳴るわたしの心臓。
 その瞬間から、あれだけ魅力的だった双子? も意識から離れて、彼女の姿から目をそら
せなくなる。
 超ミニでピンク色の、珊瑚を削って作ったみたいなチャイナドレスに身を包んだ少女だ。
 アラバスターのような、白くてつややかな手足がドレスからすんなりと伸びている。
 中に内臓が入ってるのか疑問に思うくらい細いウエストと、ドレスのヒップが余り気味な
小ぶりなお尻。それなのに豊かな胸が、窮屈そうに自己主張している。
 スタイルも見事で背も高いし顔立ちも整ってるのに、表情や仕草を見ていると、妙にあど
けない感じがする、そんな不思議な、人形めいた美少女。
 アオザイの女性のたぶん妹なのだろう。顔立ちが似ている。
 ハーフなのか色素の薄い大きな瞳が、琥珀の色で輝いているのがとても印象的だった。

79 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-3(おまけ) 2/4
「ね、ね、お姉ちゃん──ねえってば」
 ほっぺたをプニプニと突っつかれる感覚に、やっと我に返る。
「うん、ごめん。久美。何?」
「お姉ちゃん、ぼけっとしすぎ。……あれ、ひょっとして瀬野悠里って人?」
 瀬野悠里。
 言われてみればその通りだ。
 クラスメイトの瀬野君の、姉というモデルさん。
 以前クラスで話題になってからチェックし始めて、今ではすっかりファンになってた人。
 赤と黒、どっちか分からないけど、双子? のうち片方は悠里さんに違いなさそう。
「……そっか。そうだね。言われないと気付かないのは不覚だったけど」
「どうする? 声かけてサインもらっちゃう?」
「そんな、悪いよ」
 それにもし、これが何かの撮影中だったりしたら目も当てられないし。
 でも。あれ?
 その時のクラスでの会話を思い出す。ひょっとして、悠里さんとそっくりなもう1人は、
実は瀬野君の女装だったりするのだろうか。
 もう一度まじまじと2人を見直してみるけど、とてもそうは思えない。
 身体のラインから美貌まで、どこからどう見ても超美少女以外のなにものでもない。
「瀬野君?」
 少し勇気を出して、小声で呟いてみる。
 反応したのは、でも推定双子のどちらでもなくて、メンズチャイナの男の人だった。
「うん。僕は瀬野だけど……呼んだかな?」
 人の緊張を溶かすような柔らかな声。
「あっ、いいえ。そうじゃなくて。……そうじゃなくて、わたしのクラスメイトに似た人が
いたので」
 いつの間にか会話を止めて、わたしのほうを見ているご一行様。
 今すぐ消え去りたいような気分。
「あっ、ひょっとしてあなた、俊也のクラスのかた?」
 アオザイのお姉さんが手を叩いて、嬉しそうにそんなことを言う。
 瀬野俊也……うん、確かに瀬野君のフルネームはそうだったはず。
「はい、わたし瀬野君のクラスメイトで……柊朋美っていいます。こちらが妹の久美」
「なるほどね。俊也も来てれば良かったのに」
「そうよねー。……朋美さんごめんなさい、今日は俊也はいないの」
 赤と黒の美少女2人が、煙水晶のような瞳で見つめて、代わる代わるわたしに言ってくる。
 実は片方が女装した瀬野君というショックな状況じゃなかったと、内心ほっとしてみる。
「そういえばさっき、お姉さまの名前呼んでましたよね?」
 ピンクのチャイナドレスの女の子が、少し低めの甘い声で久美に聞いてくる。
 もっと高い声の持ち主だと思っていただけに少し意外だけど、でもいつまでも聞いていた
くなるような、一種癖になりそうな不思議な声色だった。

80 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-3(おまけ) 3/4
「お姉さま、って?」
「瀬野悠里」
 怪訝な顔で聞き返す妹に、女の子が笑いながらその名前を呼ぶ。
「あっ、聞こえてたんですか。ごめんなさい。お姉ちゃんがファンなもんなんで」
「ありがとー。一応、私が悠里です。どう? サインか何か書こっか。今、書くもの何も持っ
てきてないけど」
 黒いチャイナドレスの美少女が、笑顔でそんなことを聞いてくる。
 慌てて手帳とペンを差し出すと、わたしと妹の分のサインをさらさらと書いてくれる。
「あと私が瀬野愛里ね。悠里の双子の妹で、──聞いてるかどうか知らないけど、私たち、
俊也の実の姉です。……俊也の女装とか、そんなことはないのよ?」
「あうあうあう……ごめんなさい」
 顔から火が吹き出そうな気分。
「あの、皆さんどういう繋がりなんでしょう?」
 妹の物怖じしない性格が羨ましい。
「私と悠里が双子の姉妹。この子がアキちゃん。血は繋がってないけど、私たちの可愛い可
愛い大切な妹」
 その言葉に目を細め、くすぐったそうに幸せそうに微笑むピンクの少女──“アキちゃん”。
 確かに可愛い。可愛すぎだ。
「これが哲也パパ。私達の実の父親。そしてラスト、その再婚相手の純子ママって一家です」
 とすると、アキちゃんと純子さんは姉妹じゃなくて母娘なのか。少し意外。
「今日は珍しくみんなの休日があってね。中華街でゆっくりしようって来てみたんだけど」
「この前、たまたまチャイナ服を全員分手に入れる機会があってね。で、ついでだからそ
れをみんなで着てみよう、って話になって」
「わたし、何かのロケかと思いました。どこにカメラがあるの? って、探しちゃったし」
 色々話してる最中、ウェイトレスさんが瀬野君一家のところに料理を運んできた。
 久美はまだ話したそうにしてたけど、流石に悪いと自分達の昼食に戻ることにする。
「──朋美さん。俊也のことを今後ともよろしくお願いするね」
 それぞれの食事に戻る前、柔らかな声色で、目を細めて、そうわたしに言ってくるパパ氏。
「あっ! はいっ! こちらこそよろしくお願いしますっ!」
 思わず大声で返事して、店のお客さんの注目を浴びて赤面してみたりしたけれども。
 二人もくもくと食事を終えて、店を出たところで同時にため息をつく。
「あんな美形一家っているもんなんだねえ。お父さんもすっごいイケメンでファンになりそ。
お姉ちゃんのクラスメイトって人も、あんな感じなの?」
「瀬野君はパパさんじゃなくって、悠里さんそっくり……かな。多分お化粧すれば見分けつ
かないくらいだと思う。男の子にこの言葉使うのは変かもだけど、綺麗な人だよ……」
 今でも目を閉じるとありありと思い出せる、ジュエリーボックスの中の宝石のような一家。
 でもわたしの胸に一番印象に残ったのは、悠里さん達ではなく、アキちゃんの笑顔だった。
 まるで恋に落ちたかのように、いつまでもドキドキが続いていた。

81 :
『瀬野家の人々』 アキのモデル修行な日々A-3(おまけ) 4/4
        <<雅明視点>>
(──雅明、おつかれさま)
 着替えに使わせてもらった、例のチャイナドレスレンタルショップの更衣スペース。
 そこにどうにかこうにかたどり着いた俺の脳内に、面白がるような声が形作られる。
「せ……いっそ一思いにしてくれ……」傍から見てれば独り言の、そんな呟きを漏らす。
 いつかやられるんじゃないかと怖れていた、
『アキモードで可愛い女装したあと、雅明モードに意識を切り替えさせられる』羞恥プレイ。
 今日、こんな形でさせられるとは。
 ありえないくらい露出度の高い、ピンクのチャイナドレスを着て人の多い中華街を回る。
 俊也のクラスメイトだけならともかく、俺の知り合いに遭遇したときは心臓が止まるかと
思った。気付かれなかったようなのは助かったけど。
 今まで押し隠してきた羞恥心が一気にぶり返し、このまま自しようかとすら思えてくる。
(せめて、チャイナドレスから着替えたあとにしたほうがいいよ?)
 うるさい。
(でも、雅明喜んでたしなあ。本当はあたしが遊びたかったのに譲ってあげたんだからね?)
「……」
 無心にして、回答を与えないようにしてみる。
 所詮は同じ人物、互いの心は手に取るように分かってる。無意味な努力なんだけど。
 19歳の男なのに、可愛いチャイナドレスを着て、女の子のふりをして喜んでいる。
 認めてしまったら人生終わりな気がひしひしとした。
「アキちゃん、大丈夫?」
「ちょうどいいや……コルセットの紐緩めて……」
 カーテンをあけて、黒いチャイナドレスの姿のままの俊也が入ってきた。
「緩めるだけでいいの? 外したほうがよくない?」
 そんなことを言いながら紐を緩めてくれる。やっと呼吸が楽になる。
「まあ、この状態ならそんなに素と変わりないし、外すと持ち歩くのに邪魔だから」
「コルセットが苦しいのは私も思い知ってるから、きついときは遠慮なく言ってね」
 その言葉をありがたくもらいつつ、着替えを取り出す。これまたまっピンクなブラウスに、
白いミニのチュールスカートのセット。ため息をつきつつ袖を通し、鏡を見て自分を確認。
 うん、可愛い☆
(……って。おい、アキ。思考に割り込まないで)
(言いがかりだー。ぶーぶー。自分が可愛いと思ったのは雅明のくせにー)
 無心無心。
 化粧スペースでチークと口紅とグロスを付け直して、鏡の中の自分にウィンク。
 チャイナドレスよりは露出の低い衣装に、少し落ち着いた気分になる。
 ……なんだか順調に、俺の女装調教が進んでいる気がするのが怖かった。

82 :
わーい更新があった♪
Wiki作成で忙しくてこの週末(まあ1日過ぎてますけど、連休だから無問題)の
更新は無いかと思ってたので非常にうれしいです。
いや、アキちゃんが順調に染まっているようでなにより(爆

83 :
>>81
wikiの更新、そしてSS投下GJであります
そうか、自分ってこの鳥使ってたのか、と

84 :
>>69
ブライダルファッションショーのとき、下着丸出しで胸が出てしまうのが問題なら、
これでいいんでは?
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm6542400
もしくはこっちか。
ttp://www7a.biglobe.ne.jp/~love-breast/index.html

85 :
ドキッ!男の子だらけのウェディングドレスショー
という電波を受信した
受信しただけだが

86 :
>>85
作文出来るように、少し詳しく書いて。
その書き方だと、
見学者が若年層の男
と言う意味に読める。

87 :
捕捉
若年層の男の人が
結婚相手の女の人に着せる
ウェディング・ドレス
の展示
と言う意味に受け取れる
と言うことですよ。
『男の子』ですから。

88 :
>>86-87
>>85じゃないんだけど、自分自身でこのスレ向けの補正をかけて読む事ってできない?
俺は>>85の書き込みで充分男の娘モデルで一杯のブライダルファッションショーと解釈できたけど。

89 :
いやむしろ、「男の娘」じゃなくてあえて「男の子」と表記することで、
「本当は女装なんてまっぴら、ウェディングドレスなんて着たくもない。それなのにウェディングドレスを着て、
自分が男だとばれないように振舞って、女の子として扱われなければいけない少年達によるドレスショー」
まで意図してると読み取ったが。

90 :
>>89
深読みし過ぎ
それもまた妄想力のなせる業か

91 :
妄想したっていいじゃない!
普段から女装している男の娘がウェディングドレス着るよりも、
普通の男の子が着る方がなんとなく背徳感があって萌える

92 :
妄想、深読み、などから短文、作文、SS、などを書いて欲しいです。
どうして、そう言う会場に誘拐されたのか
とか、
着たら、どういう風に代わったか
とか

93 :
2013年06月25日発売予定のわぁい表紙が、男の子がウェディング・ドレスを着ている絵ですよ。
わぁい!

94 :
男の娘だったりショタが女装するのは世間的にかなり受け入れられているけど
おじさんが女装する話になると特殊な腐女子向けジャンルに思えてくるのは気のせいか
よくカップリングで新郎新婦コスでおじさんキャラがウェディングドレス着てるの見かける

95 :
>>94
40過ぎのおじさんが好きで好きでたまらない16歳ぐらいの女の子(腐女子)が
結婚式で「腐女子の夢」をかなえるため
自分がタキシードを着ておじさんにウェディングドレスを着させて挙式
という電波がどこからともなく

96 :
青年でもショタでも、「似合わない女装」に萌える、ってのはBLだと結構あるよね。
下手すると、「似合う女装」に萌える人より多いんじゃないか。
女性向けの女装アンソロジー見て、男女の感性の違いに戸惑うところ。
リアルの文化祭の女装喫茶で、女子からは、洒落にならないくらい似合ってる人はスルーされて、
“微妙に似合う”レベルの人のほうがちやほやされる、って話があって納得してしまった記憶がある。
一般化していい話かどうかは知らないけど。

97 :
文化祭など?
女の子にとっては、素で女の子よりもかわいい男の子は敵でしょ?
いじれる位、オモチャに出来るくらい、明らかな無理やり女装の男の子のほうがよいですよ。

98 :
短編投下しますです

99 :
【その1】
「おい、晩飯はまだなのか?」
「うるさいわね! だったら手伝ってくれてもいいじゃない!」
今日も今日とて、高山家には健一と由希子の口げんかが響き渡る。
結婚してから早5年。
子供ができれば変わるのだろうが、ここ2年ぐらいはセックスレスでそのような兆候もあるはずない。
今でもお互い憎からず思っているのは確かなのだが、健一も由希子も積もったストレスが原因でついつい相手に文句を言ってしまう。
一度は別居も考えたのだが、心のどこかで「ちゃんと仲直りしたい」という思いも強く、
ここでもし別居してしまったら二度と修復できないのでは? という恐れから踏み切ることもできない。
今日も向かい合いながらお互い一言も発せず晩御飯のカルボナーラを食べ、
バラバラに寝るまでの時間をつぶし、そしておやすみの挨拶もせずにベッドへと入る。
こんな状況になっても寝室ではシングルベッドを2つくっつけているのは、
どちらにとっても、ここが「関係を繋ぐ最後の場所」という意識があるからだろうか。

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