2013年10エロパロ325: キモ姉&キモウトの小説を書こう!part44 (198) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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キモ姉&キモウトの小説を書こう!part44


1 :2013/03/10 〜 最終レス :2013/09/28
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。
○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹するまでの
お兄ちゃん、どいてそいつせない!! とハードなネタまで・・。
主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。
■関連サイト
キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html
キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/
■前スレ
キモ姉&キモウトの小説を書こう!part43
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1345041048/
■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません

2 :
一乙

3 :
>>1
スレ立て乙です。
「あなたがいないなら何もいらない 第5話 飛翔する我欲」投下させていただきます。
なお、筆者は名古屋弁を知りませんので、作中の名古屋弁は実際に使われているものとは関係ありません。

4 :
 それからしばらくして、清次は件のクラークと一緒に汗を掻いていた。
 二人とも下着姿である。
 彼は首筋に口付ける。
「清次さん、キスマークが残ったら……」
 だが、発する最中から、抗う声に力がなくなっていった。
 後ろに回り、乳房を揉みつつ、右首筋へのキスを継続する。
 荒々しくはないが、大胆に、奔放に。
 女は、呆気なく快楽へと堕ちていった。
 やがて、彼女は上気した顔で自らの発情を伝える。
「でらええがや」
(ヤってる時は名古屋弁になるんだな)
「ここも濡れてるぞ」
 周りと違う色になったクロッチを指でなぞる。
「おべんちょもねぶりゃあ」
 そう言われ、彼はショーツの中に手を差し込み、クリトリスを弄りだした。
「ここはもう津波じゃないか」
「それをいうなら、津波じゃ、なくて、洪水、だがや…」
 弄るほどに愛液の量は増し、溢れんばかりになっている。
「1兆5000億の借財があるのに何が減税党だ、我欲を洗い流す必要があるな」
「みゃ、あっ…」
「どんどん演繹していくと、どうなる? 日本がEC入ってたらECから追い出されるよ、ユーロ使えないよ」
 某都知事が乗り移ったかのような言葉責めを交えつつ、その手の動きも早くなりつつある。
「受け止めろっ!」
 清次は一際激しく手を動かし、彼女は達した。

 彼女は四つん這いとなって男を受け入れている。
 対する清次は、当初は後背位で入れていた。
 やがて、挿入したまま、180度回転し、足が地から離れ、腕立て伏せをするようにして下腹を尻に叩き付け出した。
 ヘリコプターとも称されるスタイルだ。
「みゃ、みゃ、みゃあ、あっ!」
 清次は彼女の上で、ホバリングをする時のローターのように、腰を上下させていた。
「はっ、はっ、今度、本物のヘリにも、乗せてやろうか……!」
 その内、彼は逆立ちしたようになり、足は天に向かって真っ直ぐに伸びた状態で女に挿れ、海老反りながら腰を動かしている。
 金の鯱。
 特に難易度の高いとされる体位である。
「はあっはあっはぁっ……!」
 さしもの清次も体力をいささか消耗している。
 とはいえ、このようなアクロバティックな体勢を保っていられるのは、やはり百戦錬磨の彼であればこそである。
「みゃ、みゃ、みゃあ、みゃあ、みゃああっ!」
 結合部の水音が段々と大きくなりはじめてきた。
 ぐちゅっ、ぬぷっ、ぐちょっ……
「清次さん、うち、もう、イくがね!」
 快感を剥き出しにした叫び。
 それを聞いた彼は力を振り絞って、今まで以上に腰の速度を速める。
「お、れ、もだ、……もう、イくぞっ!」
「みゃあああああああっっっっっ!」
 一際大きな声で女が叫んだのと同じ瞬間、彼の腰と陰茎は、盛大に爆ぜていた。

5 :
「今日は本当に何から何までありがとうございます」
「ああ」
 一戦を終えた二人は、初めて本当に休憩していた。
 というか、体力がもたなかった。
「おいしい料理をご馳走になりまして、下の口でも……」
「俺の金玉袋は点心と同格扱いかよ」
「ネックレスも買っていただきまして」
「ああ、君にとっては、お安くはないんじゃないかな、君の勤め先のあの中華屋と一緒で」
「ええ、まあ」
「なら一宿一飯の恩義もあろうな」
 清次はそういって写真を渡す。
「あんたが昨日見たのはこの女か?」
「これ……」
「どうした?」
 彼女が息を呑むのが分かった清次は、その意味を訊いてきた。
「これ、山崎雅……」
 それは、この地、名古屋が生み出した、メスカープロダクションが誇るゴリ押……売り出し中のファッションモデルの写真であった。
「え、ええっ、ああ! 違う違う! 間違い間違い!」
「でも、これ、その……」
 そういって彼女が見せたものは、所謂ハメ撮りであった。
「あっ……、
 いや、アイコラアイコラ! 友達からアイコラ写真を押し付けられたんだって!」
 そのように取り繕い、慌ててその写真を回収し、亜由美の(もちろんまともな)写真を押しつけるように渡した。
「これだよ。
 この女。昨日来ていた女はこの女だったか?」
「いえ、違いますね」
 ある意味、予想通りだった。
 誰かが亜由美に成り済まし、本物を高層階から落とした犯人がいる。
 その現実が、ほぼ確実な事実としてそこに出現してきた。
「どんな女だった?」
「若い女性で、そこそこ雰囲気は似ていると思いますが、もう少し吊り目気味で、鼻は高くて、唇は薄くて、面長で、セミロングくらいだったかと」
 ふんふんと一言ごとに、彼は頷いていた。
「全然違うじゃないか」
「私じゃなくて警察に言ってくださいよ。
 それに、この写真と比べれば、という話で、そんなに違ってませんよ」
「そうか、ありがとうな。
 また名古屋に来た時には一緒に楽しもう」
「ええ」

6 :
 警察署での取り調べを終えた篠崎夫妻と操は、一旦帰京することとした。
 名古屋駅で篠崎夫妻が券売機に並んでいる間、清次が操に話しかける。
「俺はヘリで来たんだが、帰りはお前も便乗しないか?」
「なら、お父さんとお母さんも」
「いや、2人で少し話をしたい」
「わかった」
 操が首肯するのを見て、清次は篠崎夫妻に声をかける。
「ちょっと所用がありまして、帰りは操くんと私の秘書の3人で帰ることになります」
「そうか。じゃあ、ここでお別れだね」
「気を付けて。体は大切にね。食欲がなくてもちゃんと食べなきゃだめよ」
「ありがとうございます、お父様、お母様。お元気で」
 改札を抜け、歩廊に消えていった夫妻を見届けた操、清次と赤城は、ヘリポートに歩き出した。

 ウイロウプラザのシースルーエレベーターに彼らは乗り込んだ。
「ここから、落とされたんだな、亜由美は……」
「あまり考えるな」
「ここから、飛び降りようかな」
「そんなことを言うな。亜由m……篠崎も、悲しむぞ」
「わかっている。ただ、ちょっと耐え切れなくなっただけだ」
 展望の良いこのエレベーターも、今の彼にとっては心の毒でしかなかった。

7 :
「誰か、こいつじゃないか、という奴はいないか」
 離陸とともに、清次は操に訊きはじめた。
「恨みを買うことなんて、絶対にない」
「ないだろうな。お前はあいつだけだからないだろうが、俺だったら元カノなり何なりが嫉妬を抑えきれずにして、なんてのも一応は考えられるだろうが、俺のタレ(女)にそこまで業の深い奴がいたかどうか」
「キヨにとっては以前の恋人の一人、ってだけだ。わざわざされるだけの理由はない」
「だよな。あとは、篠崎の親御さんか、俺とお前かな。警察が、名目だけでもリストアップする容疑者のラインナップは」
「馬鹿な。亜由美をすくらいなら、俺は生きてはいない」
「俺もソウはそうだろうと思うが、それは主観さ。客観的な証拠にはならない」
「それに、俺とキヨは、姉貴の誕生日パーティーにいた。アリバイはある」
「ああ、その点翼さんには感謝だな。じゃなきゃ、俺までしを疑われる破目になっていた」
「おい、まさか」
 険しい顔になる操に、清次は静かに語りかけた。
「確かに俺は女と揉めることはあるさ。でも、それはタチの悪い奴だ。俺から一文でも多くカネを巻き上げようとするゴールドディガー。
 あいつはいい奴だった。俺を強請るつもりはなかっただろうし、実際ネタを確保したりもしてなかっただろうな」
「じゃあ、誰が……」
「それをこれから暴くんだろう。もっとも、警察はこのまま葬るつもりだろうから、それを荒らすのも容易なことじゃないだろうが」
「そんなこと……、させるか!」
 清次は満足げに大きく頷いた。
「よし、じゃあ忠告、といえるほど大したことでもないが、一つ言っておこう」
「何だ?」
「言おうかどうしようか迷ったんだけどな。
 翼さんには気をつけろ」
「姉貴がか?」
「勘だけどな。でも、偶然にしてはタイミングがよすぎるだろ」
「何のタイミングだ」
 関係のない話を始めるかのように、清次は調子を変えて聞いてきた。
「ソウ、一つの会社を支配するには、その会社の株式の何パー確保すればいいと思う?」
「? 過半数、か?」
「普通はそう考えるよな。でも、任期の途中で役員を解任するには、3分の2が要る」
「それが、どうかしたか」
「ここでようよう本題に繋がるわけだ。
 翼さんは厚重(厚木重工業)の70%の株を保有している。
 そして成人に伴って親権に基づくその株の財産管理権が外れ、議決権を自分の意思で行使できるようになったのは、まさに篠崎がされたその日だ」
「そんな、偶然だろ。それを推測だけで」
「でもそんな偶然、そうそう起こるものかね?
 偶然、翼さんがソウに一人で来ることを指示し、偶然、篠崎が一人になった状況で、偶然、翼さんが成人して半川家の資産そのものともいえる企業を掌握した日に、偶然、翼さんとソウのアリバイのある状況で、篠崎がされたわけだ」
 そこまで言われた操は、押し黙る。
「偶然、という都合のいい言葉は往々にして悪事の隠れ蓑に使われる。
 その言葉だけで万事を片付けると、思考力は少なくて済むが、解決する事件も解決しなくなる」
「そう、だな……」
「それと、昨晩、ソウが戻ってから、翼さんが電話をかけてきた」
「えっ、固定電話にか?」
「お前はともかく、俺が名古屋にいて、八雲製薬の名古屋支社にいたことを知っていたということだ。
 携帯にかけて繋がらなかったから、そっちのほうにかけたんだろうよ」
「本当か?」
 そう言って、操は電源を切ったままになっていたMEDIAS N-04Eを立ち上げた。
「うわ……」
 それぞれ100件以上の着信とメールがあった。
「ほう、これはすごいな」
 そのまま、彼は再び電源を切った。
「俺らは翼さんに監視されていると思っていいだろう。
 そこまでする、となれば、疑われても仕方あるまい?」
「ないと思いたいが」
「俺もそう思う」
 儀礼的な返事の後、思うところを述べ始める。
「この件の帰趨はこれから追っていけばいい話だが、今や、厚木重工業は、翼さんが支配している。
 それだけは変えようのない事実だ。
 まあ、人の忠告は素直に受け取っておくもんだぜ。
 こっちはお前を貶めて得することなんか何もないんだから」
 ヘリの窓には、東京の街並みが映りだしていた。

8 :
今回はここまでです。

9 :
こいつ、ひょっとして某スレの風見じゃないのか?

10 :
GJ
ミャーで笑ったw

11 :


12 :
投下します。

13 :
―――昼休み
「ここの水族館はすごいキレイなんだよ〜」
「へー…」
「魚の種類も豊富で―――」
昨日の夜からアサネの様子がおかしい…。
そのことにコン太は気付いていた。
しかし何処がおかしいのかというと…、それはコン太にもわからなかった。
恐らく周りの人にもわからないだろう、というような些細な変化だ。
今朝も起きた時、挨拶をしてくれたのだが…。
「(………何か今までより…、わからんなー)」
「コン君、聞いてるの?!」
「え、…あぁゴメン」
「何か悩み事でもあるの?」
「うぅん、大丈夫だよ」
「……ならいいけど。それでコン君は何処に行きたい?」
「そうだねー…」
二人は日曜のデートプランを立てていた。
その様子を見る人影に気付くこともなく―――

「コン君、今日は一緒に帰れそう?」
「ん、うん帰れ―――」
「コン太君、ちょっと用があるから部室まで来て」
「えっ?!!」
「あっ?!」
キオナがコン太の首根っこを掴み、さらっていった。
「ど、どうしたの、大久那さん」
「話があるのよ」
「え?」
「早狩さんのことで…」

14 :
アサネは今日も一人で家に帰ってきていた。
「あらアサネちゃん。お帰りなさい」
「ただいま、叔母さん」
「今日もコン太君と一緒じゃないのね。喧嘩でもした?」
「……やだなぁ、叔母さん。たまたまですよ」
そう、たまたま―――
アサネは自分自身に言い聞かせていた。
部屋に戻り、いつもの現実逃避に入る…。
アサネは本来、自慰をする回数は少なかった。
一か月に一回あるかないか、という頻度だったのだが―――。
昨日から今日の朝方に掛けて、五回以上はしていた…。
しかし、いくらしても心の寂しさは埋められなかった……。

「コン太君、早狩さんには注意したほうがいいわよ」
「え?!いきなり何だよ…」
「ちょっと気になることがあってね…」
囲碁将棋部の部室内にて話す二人。
キオナのいつもと違う雰囲気にコン太は只ならぬものを感じた。
「私、さっきの掃除時間で体育館裏のゴミ置き場にゴミ捨てに行ったんだけど…」
「うん」
「早狩さんとアサネが何か口論しているのを見たのよ」
「えぇ?!」
「何を喋ってるのかは分からなかったけど……」
「そんな…」
「ねぇ、アサネに何処かおかしい様子はなかった?」
「―――そういえば、昨日帰ってきたときから何か変な…」
「ホント?!」
「でも、何が変ってのがわからなかったから…気のせいかも」
「二人の間に何かあったのだけは確かね」
「もしかして…喧嘩?」
「そういうわけだから…、早狩さんにあまり気を許さないほうがいいよ」
「そ、そうだね…」
「あと、このことも他言無用にしたほうがいいわ」
「え、それは二人に確かめたほうがいいんじゃ…」
「でも、アサネは何も言ってこなかったんでしょ?何か知られたくないことでもあるのかも…」
「んー…」
「他人が無闇に突っ込んでも、余計こじれるだけかもよ。新しい情報が入ったらまた知らせるから」
「あ、うん。わかったよ。あ!大久那さん!!」
「ん?」
「…アサ姉のこと、支えてあげて。多分男には言えないことも色々あるだろうから…」
「ふふっ、わかったわ」
―――コン太は気付いていなかった…。
ユキの掃除区域が教室であることを。
その時、彼女が一度も教室から出ていなかったことを…。

15 :
―――日曜日の朝
「おはよう!コン君!!」
「あぁ、おはよう」
コン太とユキは町の駅前に集合していた。
「一回乗り換えるけど、大きな街には30分もあれば行けるわ」
「へぇ…、意外に交通の便はいいんだね」
「私、水族館なんて小学校以来だよ!」
ユキは高揚している様子だ。
対照的に、コン太は若干テンションが低い。
キオナに言われたことがずっと頭に引っ掛かってるからだ。
「(アサ姉とユキちゃんは転校初日以来会話していないはずだが…)」
小学生のように楽しげなユキを見ていると、本当かどうか分からなくなってきた。
「コン君はどう?」
「中学のときに行ったよ。生物の見学という名目でね」
「うらやましいな〜」
「実際は遠足だったからね」
………今は考えるのは止そう。
ユキがどんな人間か、これから見極めればいい。
コン太はそう決心した。

16 :
満留跋水族館。
ここは、全国有数の水族館で半日は見ていて飽きない巨大な施設である。
「わっ!コン君、イルカだよ!!」
「キレイだねー」
「可愛い!!」
「ほら、むこうにはアザラシがいるよ」
「きゃあぁぁ〜!!」
「ははは…」
ユキは女子特有の盛り上がりを見せた。
一方、初めてのデートとなったコン太にとっては、ユキの豹変ぶりに少し引いていたりも…。
「むこうでイルカショーもやってるって!!」
「えぇーと…」
パンフレットを見るコン太。
「時間はちょっと空くね。さきにお昼にでもしようか」
「そうしましょ♪」
二人でラウンジの椅子に腰掛ける。
ユキはこの日も弁当を作ってきていた。
一方コン太は…。
「コン君は今日は…」
「今日のことはアサ姉には黙ってたんだ。毎回作ってもらっちゃ悪いしね」
「そうなんだ、…たまにはお姉さんも楽をしなきゃね」
「お!美味しそうだね〜」
「しそう、じゃなくて実際美味しいの!」
コン太は思う。
このまま、ユキと恋人の関係になれば、アサネの負担を減らせるのではないか、と。
ユキの弁当を堪能し、イルカショーを満喫した後、残りの展示スペースを歩いた。

17 :
「…うわぁ、グロい…」
「深海魚だね…」
二人は明かりが少なく、薄暗い深海魚コーナーにいた。
時間帯もあり、この辺りは人気が少なかった…。
「………コン君」
不意にユキが甘い声で囁いてきた―――
『(まぁ向こうにその気はあるよ、絶対)』
キオナの言葉が頭を駆け巡る。
ユキが身体を寄せてきた…。
上目遣いで顔を上げ、目をつむる―――
コン太は、半分混乱していた。
…同時にこうなる予感もしていた。
が、それはもっと関係が進んでからという認識だったため完全に不意打ちだったのだ。
―――一瞬迷った後、ユキの肩に手をのせる。
ビクッとユキの身体が震えた。
そして…
「―――!―――!!―――!!!」
すぐ近くで声が聞こえた。
咄嗟に身体を離す二人。
顔はお互い真っ赤だった…。

18 :
二人が水族館を出た時、既に夕方となっていた。
帰りの電車の中、他愛のない話をする二人だったが、さっきの件がありどこかぎこちない雰囲気ではあった。
駅に降り立ち、後はユキを送るだけのコン太だったが、思わぬ人物に遭遇した。
「コン?」
「ア、アサ姉?!」
買い物帰りらしいアサネと出会ってしまったのだ。
コン太は心中焦った。
今日のデートは秘密にしていたわけだから…、アサネがどんな反応するか心配だった。
しかし―――
「お帰り、まだ買い物が残ってるから荷物持ちお願いできる?」
「え?!…あぁ、いいけど」
穏やかに話しかけてきたアサネに拍子抜けしたコン太であった。
自分の考え過ぎであったのか―――と。
「あ、じゃあユキちゃん。悪いけどここで…」
「うん、今日は楽しかったよ、ありがとう」
「こっちこそ」
「…“また”コン君と行きたいな」
「う、うん。そうだね…」
「うふふ、じゃあまた明日!!」
そういって帰途につくユキ。
“また”という言葉に顔が赤くなるコン太。
つまりユキは…、自分のことを…。
ギュっ!!
咄嗟に腕を抱きかかえられたコン太。
「アサ姉?!」
「ん、どうしたの。コン?行きましょ」
「い、いやその…当たってる…」
急なボディタッチに焦るコン太であった…。

「ホントに楽しかったよ。…もう二度と離さないから。―――お兄ちゃん」
独り呟くユキ…。
当たり前だがそれを聞く者は誰もいなかった―――

19 :
投下終了です。
>8
GJ!

20 :
完スルーでありんすw

21 :
>>20
自宅警備のお仕事に一日数回のスレ確認も入ってるですねwww

22 :
>>19
GJ
雲行きが怪しくなってきましたね。続きが気になります

23 :
乙です

24 :
おっ、お兄ちゃん!?
これからの展開がますます楽しみです。
GJでした。

25 :
なにこの台本
お呼びじゃないからVIPでやれや

26 :
>>25
VIPの糞住人がなんでこっち来るんだよ気持ち悪い
さっさと巣に帰れよ臭い

27 :
GJ
姉は相変わらずの豆腐メンタルだな
妹は敵か味方か

28 :
>>19
乙乙!

29 :
GJ
お兄ちゃんとは…続き楽しみにしてます。

30 :
俺だけか?
第二保管庫でクリック以外の操作が出来なくなってるの。
PageUPもPageDownもマウスのホイール操作もドラッグもできん。
読もうと思ったときに読めないとストレス溜まるな。
前スレはもう落ちてるし、ローカルに全部落しておけば良いんだろうけど
一つの圧縮ファイルに全部まとめたような物は、…無いよな?

31 :
第二保管庫何もおかしいところはない件について
ホイールだろうがなんだろうがフツーに操作も受け付けるしな
>>30のPC側がトラブってんじゃねーの?

32 :
投下します。

33 :
「ここにこの公式を当てはめると…こうなるのよ」
ムギュ―――
「う、うん…」
「他の問題にも応用は出来るから―――」
ムニュムニュ―――
ユキと水族館に行ってから、一か月。
アサネのボディタッチは一層過激なモノへと昇華していた。
勉強だ何だと理由を付けては、コン太の部屋へ上がりこみこうして必要以上に胸を押し付ける…。
アサネの胸は決して小さくはない。
それは弟として一緒に成長してきたコン太にも分かっていることだ。
それを四六時中押し当てられては、意識せずにはいられない…。
しかし何故アサネがそんなことをするのか…、その理由がいまいちわからなかったのだ。

学校でもアサネはコン太と常に一緒にいたがった。
流石に、胸を押し付ける行為は人前ではやらなかったが。
休み時間になるごとに、コン太のクラスに赴き、一通り話すとチャイムが鳴る前に自分のクラスに帰っていく。
しかし、それを面白くないと思う者もいるわけだ。
「それで、キオナったら何て答えたと思う?」
「…さぁ?検討つかないや」
「あの…小泉さん、席どいて「これが傑作なの―――」
キーンコーンカーンコーン…
「あ、じゃあもう行くね」
「あ…うん」
「……コン君、最近お姉さんが良く来るけどどうかしたの?」
「いや、わからないんだよ。どうも最近アサ姉の様子が変なんだよ…。なんかゴメンね…席を勝手に…」
「ううん、気にしないで―――。あ、そういえばコン君。もうすぐ始まる文化祭のことなんだけどね」
「文化祭?」
小さな町ゆえに、この高校の文化祭は一大イベントであり、当日は町中の人間が集まり賑わうのだ。
「うちのクラスは何をやるか決まってないんだよね…」
「そっか…、王道で喫茶店とかは?」
「何の王道?―――ちょっと大変そうね…」
「駄目かな?」
「皆次第かな?あとでホ−ムルームで採決するから考えておいて」
「…うん、わかったよ。(アサ姉とユキちゃんが仲悪いのは本当なのかも…)」

34 :
「アサネ、最近機嫌がいいね。何かあったの?」
「ん、んふふふ…。秘密」
「なにそれー…」
「もっと早くにこうしておけばよかったなーって」
「コン太君のこと?」
「ふふふふ…」
アサネの中でコン太に対する考えに変化が起こっていた。
守るべき存在から共存する関係へと…。
少なくともアサネのなかでは―――そう思い込んでいた。
「今日の晩御飯は何にしたら喜ぶかなー?」
「………」
キオナは呆れ顔でそれを見てることしかできなかった。
いや、その裏には―――。

アサネが妄想に浸っているうちに、アサネのクラスは喫茶店を文化祭でやることが決まった。
服装は女子がバニーガールで接客する案が男子一同から提案されたが、女子と担任(女)によって阻止され、メイド風の露出が抑え目の衣装に妥協された。
ちなみに、コン太のクラスは露店での営業販売に決まった。

―――囲碁将棋部室
「というわけで、私らはメイド喫茶になったんだよね」
「へー、そうなの?うちは露店を出すよ」
「コンは料理できないでしょ」
ムギュ―――
「い、いや…調理は他の人に任せて僕は宣伝でも…」
「(機嫌がいいのはこれが理由か)コン太君はアサネのメイド姿見てみたい?」
「えっ?!」
アサ姉のメイド…。
この胸で出迎えて…、お帰りなさいませ、とか…。
「私はメイドやりたくないな。恥ずかしいし…」
「アサネはコン太君次第でしょ?で、どう?」
「…うん、見てみたい…かも…」
「ほらっ!アサネ決定ね。折角スタイルいいんだし…」
「えぇー…(まぁでもコンが言うんなら…)」
「そういえば、大久那さんはやらないの?」
「あたしは、裏で調理スタッフやらなきゃいけないのよ。こうみえても自信あるし」
「ふーん……」
コン太はキオナを見て……少し残念に思った。
ムギュゥゥゥ―――
「コン…何考えてるの?」
「えっ?!いや、別に…」
「いやらしー、コン太君…」
「そんなぁ…。―――あ、そういえば囲碁将棋部は何か出し物やらないの?」
「こんな幽霊部で何やれっていうのさ…」

35 :
―――文化祭まで前日
この時期は部活動が中止になり皆クラスの出し物に集中していた。
「テントは学校のやつを貸してくれるって―――」
「出すメニューと具材は―――」
「看板は今日中に仕上げろって―――」
放課後になるとそれぞれ自分の仕事に没頭し、学校中が騒がしくなっていた。
そんな中、コン太達も準備に追われていた。
「ど、どう…コン君…」
「…うん、似合ってるよ!」
ユキは露店の宣伝として当日は学校中を回らなければならない。
そのため目立つ恰好をしたのだが―――。
「が、学ランって初めて来たけど…不思議…」
「あとはハチマキを着けて、宣伝用の旗を持てば出来上がり!!」
「へ、変じゃないかな…?」
「大丈夫だよ、ユキちゃんは何着ても似合うし」
「そ、そう。嬉しいな、やっぱり…。ねぇコン君」
「うん、どうしたの?」
「文化祭終わったら、話がしたいから…何処か……。屋上!―――屋上で待ち合わせたいんだけど…」
「いいよ、じゃあ終わったら屋上ね」
「…ありがとう」

36 :
―――その夜
アサネはキオナからあるメールを受け取っていた。
「コン、明日の文化祭終わったらちょっと手伝ってほしいことがあるから」
ムニュ―――
「え?!…いやちょっと……」
「何?直ぐに済むからさ。文化棟の裏で待ち合わせね」
ムニュムニュムニュ―――
「(ま、まぁユキちゃんのあとでいいか…)わ、わかったよ…。でもクラスの片付けが残ってるから遅くなるかもよ?」
「しょうがないわね…。迎えにいくわ」
「(えっ?!…どうしよう)」
キオナからのメールには
『早狩さんとコン太君の仲がどうも怪しい。文化祭あたりで急接近してくるかもよ』
とあった。
それぞれの思惑が絡み秋の夜長は更けていく―――

37 :
投下終了です。

38 :
>>37
乙乙!

39 :
乙です。
文化祭は学園ものの定番ですよね。
当日どうなるか、今から楽しみです。

40 :
すまん教えてくれ下さい
昔養子で引き取られてきた男を姉妹で
虐めてたけど、男に惚れて姉妹喧嘩する
作品ってなかったっけ?

41 :
便乗します
キモ姉妹のお金絡んだSS教えてください

42 :
>>40
たぶん『傷』だと思う

43 :
>>40
もしかして嫉妬にある転帰予報かな?

44 :
>>40
>>43の転帰予報が正しいと思うわ
早とちった

45 :
いや、そんなスレじゃなかった

46 :
おいおいwww
俺もてっきり転帰予報の方だと思ってたけど傷ってのも似た感じなのかな思って読んでみたがなんじゃこりゃ!?
こっちは姉妹で主人公に過去に危害を加えたことはないって分かってちょい安心してたのにこっちの方が全然キツイなw
でも段々読んでて苦しくなるんだけど中々内容が興味深くてレベルは高いと思ったよ。好き嫌いはわかれるかなぁ?でも名作ってそういうもんよな。
ようやく良い方向に進んでいくのかと思ったら途中で終わってたw。ここまで話を練ってるなら最後までと頼みたいところだけどそれは都合とかあるからね…。

47 :
なんだこいつ

48 :
転帰予報ちょっと読んでみたけど傷の方が数倍面白いと思う
面白いというより、まず文章としてのレベルが傷の方が数段上だろ
間違えるのがどうかしている

49 :
傷す気になる所で止まってるよな

50 :
気になる所で止まってるSSが多い
もう来ないんだろうな

51 :
傷とかいうのかなり胸糞悪いなw
でもやっぱ話の道筋は結構考えられてたのかレベル高いわ。まぁそれにつっかえたから止まったのかもしれないが…。
修羅場スレとかよりはまだ望みがあると思ってはいるが難しいかな。

52 :
このスレ見てるともうどれが荒らしか区別つかんな

53 :
投下します。

54 :
「たこ焼きいかがっすかー!!」
「地元で採れた美味しい野菜を使った焼きそばあります!!」
「演劇部によるシンデレラ、間もなく第二回の公演が始まります!!」
文化祭当日。
午前9時の開会とともに町中の人間が集まってきた。
元々小さい町なのでこういったイベント事が少なく、住人にとって貴重な催しであった。
「あら、コン太君。頑張ってるわね」
「あ、叔母さん。うちのクラスの露店に寄って行ってくださいよ」
「もう行って来たわよ」
コン太の保護者である叔母も当然来ていた。おばさん軍団と共にだが…。
その彼女の手にはたこ焼きがのっていた。
同時にコン太の隣にいたユキが聞いてきた。
「ねぇ、もしかしてコン君の…」
「うん、そうだよ」
「初めまして!!コンく…じゃなくて、小泉君のクラスメイトの早狩ユキといいます!!」
「初めまして。あなたのことはよくコン太君から聞いてるわ」
「え?!そ、そうですか…」
急に顔を赤くして俯くユキ。
「ほら、何してるの?行くわよ!!」
「えぇ、ちょっと待ってちょうだい。…ごめんなさいね、もう行かなきゃ」
「いえ。構いませんよ。―――あ、アサ姉のクラスも喫茶店をやってるんで是非!!」
「わかったわ。…早狩さん、その恰好似合うわね〜。モデルさんとか向いてるかもね」
「え…あ、ありがとうございます……」
「それじゃあね」
おばさん軍団に急かされて、その場を後にする叔母であった。
「似合ってるっていうのは嬉しいけど…でもちょっと複雑」
「そんなことないよ。ユキちゃんカッコいいよ」
ユキはさらに複雑な心境だった。
自身の恰好が学ランを着た男装コスプレであったからだ。
「(もしかしてコン君はこういうのが趣味?)」
「ん、どうしたのユキちゃん?」
「―――んーん、何も!!」
「?―――あ!ほら、校内を周らなきゃ。宣伝にならないよ」

55 :
「い、いらっしゃいませ〜…」
「まぁ!!アサネちゃん。可愛いわね〜」
「お、叔母さん?!!」
コン太の勧め通り、アサネのクラスを訪れる叔母。
普段とは違ったメイドの恰好をしているアサネに興奮しているようだ。
対照的にアサネは恥ずかしさで頭が茹で上がったようになってしまった。
「あら、小泉さんとこのお子さん?」
「よく似合うわね〜」
「ほんと、アイドルも務まるんじゃないかしら?」
実はこの文化祭は生徒達にとってはある意味地獄であった。
このように、普段見れない子供達の様子を親が観賞し、それぞれの子の品評会なるものが始まるからだ。
「ご、ご注文は何にしましょうか………」
アサネは蒸発したくなる気持ちを抑えて、仕事に没頭することしかできなかった。

「そういえばコン君、叔父さんは?」
「ああ、叔父さんは仕事が忙しくてなかなか帰ってこれないんだよ」
「―――大変だね」
「うん、でも叔父さん叔母さんには本当に感謝してるんだよ。でなきゃこうして学生として生きていなかっただろうし」
「…ごめんなさい、辛いこと思い出させちゃって…」
「気にしないで、それにユキちゃんとも出会えたわけだし」
「え?!」
「あ…?!」
不意に自分が何を言ったかわからず、それに気づいたときは手遅れで、お互い顔をそらし赤くなるばかりだった…。
「そ、そろそろ交代の時間じゃない?」
「あ、そ、そうだね。私着替えてくるよ。友達と見て周る約束もあったから…」
「うん、行ってらっしゃい…」
そういってユキを見送るコン太。
さて、次の仕事までどうやって時間をつぶそうか?
コン太は考えあぐねていた。
一方のユキも友達との約束などなかった。
今はコン太と距離を置き、心を落ち着かせたかった…。

56 :
「ぷぷっ…どうしたのアサネ?」
「あんた、わざと聞いてるの…?」
「い、いや別に…ぷっ!…でも照れるアサネは可愛かったなぁ〜」
「!!」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさい。ほ、ほら!!お客さん!!」
「…覚えてなさい―――いらっしゃいませ〜ってコン?!!」
「お、アサ姉、似合ってるよ♪」
「コン太君、どうよ、このきゃわいいアサネ♪」
「あんた〜…」
「きゃわいいって…。いやでも実際可愛いよアサ姉」
「ほ、本当?」
「うん、新鮮でいい感じ」
「いい感じ……。ふふ、ご注文は何にしますか?」
「おっと、そうだね…イタリアンスパゲティを。あとアイスコーヒー」
「かしこまりました♪」
「よし、腕を振るってご馳走を作りますか!!」
料理は、キオナの自信ありげの台詞通り、美味かった。
時折、キオナがアサネを弄り回し、それに笑いが続いた―――。

―――昼過ぎ。
午後三時くらいになると人も減り閑散とした雰囲気が漂い始めた。
「ふぅ…」
コン太は昼までがクラスの仕事で、昼過ぎからは自由行動が出来た。
しかしユキもいなく、アサネも仕事を抜けることが出来なかったので一人ぶらぶらして周ることしかできなかった。
そして、とうとう疲れ果て階段に座り込み無想するに至った。
―――ブーンブーンブーン―――
「ん、メール?」
差出人はキオナから、手が空いたので一緒に周らないかという誘いだった。
待ち合わせ場所はお馴染みの囲碁将棋部室。
コン太は了承の返信をし、向かうことにした。
―――このときのコン太の行動を責められる者はいない…。
むしろ、コン太から離れて別行動をしたユキに非があるといってよいだろう。
もし、ユキが傍にいたら…結末は違うものになったはずである。

57 :
クラスの催しものをやっている教室棟からは少し離れた場所。
そこで、ユキとアサネが対峙していた。
仕事を終えたアサネが初めてユキにコンタクトを取り、ここまで連れてきたのだ。
「あの…小泉さん?話というのは…?」
恐る恐る聞くユキ。
今までの対応を見ていれば、警戒して当然だろう。
「いえね、コンのことでちょっと…」
「はい…」
「あの子を引っ掻き回すのは止めにしてくれないかしら?」
「?!―――どういう意味です?」
「言った通りよ、コンは正直、迷惑がってるわ」
「そ、そんなこと!!」
「毎日毎日引っ付かれて…うんざりしてるって…」
「…コ…小泉君がそう言ったんですか?」
「―――ええ、そうよ」
無論、コン太がそんなことを言うはずがなかった。
アサネのでっち上げである。
この行動の裏にはアサネ自身の焦りがあった。
キオナから毎日のように、コン太とユキの状況を聞き、その不安感は煽られていった。
そこに昨日のキオナからのメールである。
今のアサネには正常な考えができない状態であった。
ただ、ユキを危険と考え、コン太から離れさせようとした結果の行動である。
「そんなの…嘘です!!コン君はいつも笑ってくれて!!」
「社交辞令に決まってるでしょ?全く発情して周りも見えないのかしら…」
「!!!―――この!!」
そこからは取っ組み合いの喧嘩になった。
止める人間がいないため、それは激しさを増した。

58 :
―――ガラガラガラ
「大久那さん?」
「ああ、コン太君。いらっしゃい」
「あれ?てっきりアサ姉も一緒だと…。何処に行ったの?」
「―――アサネはまだ忙しくて抜けられないのよ」
「なるほど…、確かにあのアサ姉なら人気が出そうだね」
キオナは“アサネ”という単語が出る度に不機嫌さを増した。
「っ!!―――ねぇ、コン太君?」
「うん?」
不意にキオナと目が合い、そのまま―――
キイイィィィィィ――――――
「………?!」
ドサッ!
コン太は身体の力が抜け、床に倒れこみそうになった。
かろうじて、キオナが支えてくれたので胡坐で座る形になったが―――
「どう?動けないでしょ。でも安心して―――悪いようにはシナイカラ……」
「なに…?」
コン太は身体どころか息も絶え絶えになり、声もか細くなった。
まるで、水に溺れるような…でも呼吸はなんとかできる、そんな状態だ。
「ずっと―――ずっとこの機会を待ってたの。コン太君…いえ、“コン兄さん”」
にいさん―――?
コン太は混乱していた。
自分の肉親は今やアサネだけのはずだから…。
妹の存在など聞いたこともない。

59 :
「―――色々あるでしょうけど、今は、今だけは私のお願いを聞いて…。やっと…会えたんだから」
涙を流しながら語るキオナ。
それを見て、コン太は頷くことにした。
「ありがとう…兄さん。ん―――」
―――?!
今、何をされたのか?
「私のファーストキス、兄さんにあげたよ。兄さんは初めて?」
またも頷くコン太。
身体から抵抗する力が抜けていった―――。
「ふふふっ。嬉しいな―――こっちも初めてだよね?」
そう言ってコン太の股間に手を伸ばす。
少し撫でられただけで、みるみるうちに大きくなっていった。
「待ってて。今、楽にしてあげるから」
学生ズボン、それにボクサーブリーフを下ろし、露わになる怒張。
「?!!―――は、初めて見るけど…すごいのね…」
手を竿の部分に触れさせ、上下に動かすキオナ。
――――――!!!
コン太の身体に快感が稲妻のように駆け巡る。
「気持ちいいんだね?兄さんのことならわかるよ…」
怒張の先からは汁がだらしなく垂れてきていた。

60 :
「ふうふう、―――あむぅん」
ビクビクビク!!!
さっきのを上回る快感が洪水となって押し寄せる。
コン太は身体を振るわせつつも、声にならない悲鳴を上げていた。
「ん、んむうぅ」
ぢゅるるるぅぅぅ―――
ちゅじゅうう―――
ぐちゅる―――
「うんむ、おん、ふうん…」
ビクゥゥゥ!
ドプドプドプ!!!!
遂に堪えきれなくなり、キオナの口内に白濁を流し込むコン太。
「?!!んんんぅ?!―――ん…んぐぅ」
あまりの量に息ができなくなるキオナ。
しかし、一滴も逃すまいと喉を動かし飲み込む。
ごく、ごくごく―――ごく……ちゅうぅぅぅ…
「っぷはぁぁぁ……、凄い量だったね…溜まってたみたいだね」
――――――
既に反応も薄くなるコン太。
「でもまだ元気だね、もっと気持ちいいことしよっか?」
狂った宴は始まったばかりだ……。

61 :
投下終了です。

62 :
あれ?前ユキも兄さんみたいなこと言ってなかったけ?
まぁ妹が多いことはええことやな(至言)
面白いのでフラグ回収が無事にされることを願っています。

63 :
しかし白々しい擬音と意味のないセリフを除いたら、何にも残らないスカスカの作品だな
いや、これを作品と読んでいいのならの話だけど……

64 :
>>61
これは予想だにしない展開
続き待ってます

65 :
>>61
真相に入るのはまだかかりそうかな
ぜひとも完走してくれ!!お願いします><

66 :
>>61
乙乙!

67 :
ほしゅ

68 :
ご無沙汰しております。
「あなたがいないなら何もいらない 第6話 龍虎相対する」
投下させていただきます。

69 :
 街から目を離した操が、清次に向いて問いを発する。
「ところで、どこに着陸するんだ。
 新木場の東京ヘリポートか、それとも八雲製薬のヘリポートか?」
「いや、二雀銀行に借りた」
「どうしてわざわざそんなことを?」
「まあ、すぐに判るさ」
 ベル230が、二雀帝都ABE銀行本店のヘリパッドに、翼を休めようとするかの様に吸い込まれていったのはそれからすぐのことである。

 操と清次、赤城が正門から出ると、そこには既に一人の女性が待っていた。
 半川翼。紛れもない半川操の実の姉である。
 ロングヘアをハーフアップにして、ライトグリーンのシルクサテンワンピースに身を包んでいる。
 腰背部には結び目のある黒いリボンをあしらっており、いかにも上品な感じが滲み出ている。
 傍らには、操に名古屋行きの切符を手配した先の老執事も伴っていた。
「操!」
 弟の姿を認めるが早いか、彼女は駆け寄って抱きしめた。
「良かった、良かった……」
「姉貴、……落ち着いて」
 彼女の腕の力がようやく緩んだ。
「勝手に抜け出して、そのまま戻ってこないんだもの。心配したのよ」
「亜由美が、んだんです。何をおいても行きますよ」
「ふうん」
 と、少しの間を置いて、彼女は言葉を継いだ。
「まあ、そんなことはいいわ。そこにリモを停めてあるの。一緒に帰りましょう」
「待ってください」
 そのやり取りに、清次は思わず呼び止めた。
「何かしら、清次さん」
 呼び止めてから、何と続けようかと思案を差し挟まなければならなかったが、何とか続く言葉を捻り出すことができた。
「俺と赤城――ここにいる俺の秘書です――も便乗させてもらえませんか」
 即興の提案にしてはまあマシなものか、と思い、彼は相手の表情を眺めた。
(どの道、翼さんとも話をしておかなきゃいけないだろうしな)
 声をかけられた彼女はというと、顎に手を当て、考える素振りをしていた。
「東京まで操をヘリに乗せたんだから、俺らもその位いいじゃないですか」
 自分から帰路を共にすることを誘ったことは伏せ、それを交渉材料として相手に使う。
 ややあって、彼女は首を縦に振った。
「ええ、わかったわ。それでは、こちらにどうぞ」
 一行は停車していたストレッチリムジンに乗り込んだ。

70 :
 シートに着いた清次がロメオ・イ・フリエタを取り出そうとした時、翼がそれを制して言った。
「吸わないでくださいな」
 不満げにではあるが、彼は手にしたシガーを懐に戻した。
「じゃあ、ロックを」
「わかりましたわ」
 そう聞き、彼女はアイストングを手にしてバカラのタンブラーに氷を入れる。
「私がやります」
 執事の青柳が止めようとしたが、彼女は構わずに続けた。
「いいの」
 青いスコッチの瓶を手にして、そのラベルを清次に見せる。
「ジョニ青でよかったかしら」
「ええ、結構ですよ」
「操もどう?」
 操は一瞬考え、そして頷いた。
「ああ、じゃあ俺も貰います」
「翼さんに手ずから作っていただけるなんて光栄だなあ」
「こちらこそ、清次さんのような大物にお酌するなんて光栄ですわ」
 そう社交辞令を交わしながら、彼女は杯を清次らに渡していく。
「おい運ちゃん、お前さんも貰えや……、ってあれ、ああ、リモだからパーティション(間仕切り)があるわけか、残念」
「何普通に飲酒運転を教唆してるんだ」
「運転席が仕切られていることがこんなことで役に立つなんて思わなかったわ」
 さすがに見かねた半川姉弟が諌める。
「悪い悪い。ついつい人に酒を勧めたがる性質で」
「アルハラで訴えられないように気を付けることね」
「へいへい、注意しますよ」
 軽く手を振って彼は応じた。
「それでは、乾杯」
 ぐっ、と呷り、清次はどう切り出そうか考えあぐねていた。
 すると、話し始めたのは翼のほうであった。
「どうかしら、最近は」
「まあ上手くやってますよ」
「ご家族は?」
 彼の口元が僅かに左に歪む。
「ご家族、ですか?」
 一応は隠そうとしているものの、清次の苛立ちは、その声に表れている。
「ええ、ご両親。それに、三陽くんと美月ちゃん」
「相変わらずですよ。
 知らないわけじゃないでしょう?」
「お気にはなさらないのですか?」
「この前の日産連(日本産業連盟の略。財界三団体の一つ)の晩餐会でも言いましたか。
 何度でも言いますよ、近親相姦というのは畜生の所業です。
 俺はあんな連中とは違います」
「あんな、ってご両親やご弟妹のことですか」
「そうですよ。
 いいですか、この社会には、人工の法律、即ち私たちが一般に呼ぶ法律――憲法とか刑法とか民法とか金融商品取引法とか、そういうウザったい法律のことです――とは違う、天然の法律とも言うべき、人間が生き抜く知恵として無意識に制定してきた自然のルールがあるのです。
 そうしたものに逆らえば、単純に法律を犯すことより重い咎を負わなければならないのです。
 その二つの法は、全てが全て違う内容ではありませんが、人工の法律で禁じられていなくても、天然の法律で禁じられていることは間々あります。その逆もまた然り。
 英語で言えば、その人工の法律がクライム(crime)で、天然の法律がシン(sin)です。
 俺はクライムはともかくシンにコミットすることはありません」
「今はそう思っていても、先々のことはわからないじゃないですか」
「あの妹は弟にべた惚れですからそれはないですよ。
 縦しんばそんなことがあるとしても、俺は自分の身の守り方くらい心得ています」
 それを聞いて、彼女は由ありげに微笑した。
「ふふっ、ならいいわ。
 面白おかしく見守らせてもらいます」
「ええ、いい見世物になってみせますよ。
 ある種の政治家や億万長者というものは、コロッセオで戦うグラディアトルのようなものです。
 俺はそういう類の人間ですから、を厭うことはないのですがね……、彼女は気の毒でした」
 さすがに気を落としたと見えて、この時彼の声の調子も少しだけ落ち込んだ。

71 :
「篠崎さんのことですね?」
「そうです」
 我が意を得たりと肯く。
「あの人が、どうかしたのですか」
「篠崎はぬつもりはなかった、これは俺と操の共通の見解です。
 なあ、そうだよな、操」
 操の方を向くと、彼は既に眠っていた。
「操?」
「寝かせておいてください。お酒も入っていますし、それに疲れもあるのでしょう」
 彼女は操の頬をそっと撫でる。
「そうですね」
「それで、篠崎さんは自されたのではないのですね」
「ええ、そうとしか考えようがありません。
 昔のCMじゃないですが、『良かった、自した娘(こ)はいないんだ』ってところですかね」
 ジョニーウォーカーの残るグラスをかざし、話を道草の種にする。
「まあ、誰がそんな恐ろしいことをなさったのかしら」
 彼女は、眉を顰めた。
「それはまだわかりませんよ。一つ言えるのは、彼女と生前親しかった我々は、潜在的な容疑がかかり得るということです」
「『我々』というのは、清次さんと、どなたですか」
「操」
 そういって清次が操を指差す。
 途端に、翼は烈火の如く怒りはじめた。
「操がそんなことするわけないじゃない! あなた、ふざけてるの!?」
 いきなり憤りはじめた彼女のあまりの剣幕に驚きながらも、彼はなだめにかかる。
「まあまあ、俺もそう思いますよ。でもね、少なくともソーメン(逮捕)まではポリ(警察)の疑いの目は彼女の周りにいた皆にかかり続けるということです」
「警察が結果を出すまでは、ということね」
「そうです。取り敢えずは木っ端役人のお手並み拝見、といったところですかね。
 俺や翼さんならもっと早くホシ(犯人)を挙げられると思いますがね」
「私が?」
「鮮やかだったじゃないですか? 誰に聞いたんです、俺らが八雲製薬の名古屋支社にいたなんて」
「大体予測はつくじゃない。
 あなたもパーティーから抜け出したと伺っていましたからね」
「それだけじゃないでしょ。何で二雀ABEに場所を借りたって知ってるんですか」
 痛いところを突かれたと見えて、それから些少の沈黙があった。
 それから、彼女は、ウインクし、それからばつが悪そうに話した。
「国交省の管制官に聞いたわ」
 本当は守秘義務違反なんでしょうけどね、と悪戯っぽく笑む。
「ほら、あなたも中々の悪じゃないですか」
 悪と形容しつつ、その笑顔の優雅さに感心していた。
(気品の良さは親父譲りかな)
 とはいえ、清次は翼には食指が動かなかった。
 女とみればすぐに興味を示し、まして美女とみれば見境なしの彼だが、なぜか彼女に対しては「その気」にならなかった。
 友人の姉だからというわけではない。そうではなく、得体のしれない、彼の中に存在する感覚によるものだった。
 彼はそれを「完璧な美に対して人類が普遍的にもつ恐怖心」、平たく言えば「恐ろしいくらいに美しい」ということだろうとしたが、その結論は自分でも胸に落ちるものではなかった。
「そうかもね。でも、あなたほどじゃないわ」
「その通りです。俺は三国人並の、もとい、三国一の悪といっていいでしょうな。
 そして、悪を締めるには悪が一番なんですよ」
「毒を以て毒を制すということね」
「正にその通りです。では、この話はいずれまた」
「ええ、機会があればまたお会いしましょう」
 そうまで言った時、車は八雲邸の前で停まった。
「おお、いい塩梅に家に着いた。
 じゃあまた、操、学校で会おう」
 と、眠りこけたままの操に挨拶する。
「翼さん、それでは失礼」
「それでは清次さん、御機嫌よう」
 赤城を従え、リンカーンを降り立った清次は、柄にもなく彼らが消えるまでずっと見送っていた。

72 :
 半川邸に着いても、操はまだ眠っていた。
「お坊ちゃ……」
 起こそうとした青柳を翼が止めた。
「起こさないで、私がそのままベッドに運ぶわ」
「承知しました」
 彼女は眠ったままの操をお姫様抱っこで抱え上げ、彼の自室まで連れて行く。
 そのまま、静かな寝息を立てる彼をベッドに寝かせる。
「着替えさせなきゃね」
 脇にパジャマと替えの下着を用意し、服を脱がせる。
 間もなく、彼はボクサーブリーフ一枚になった。
 そこで、彼女は一旦手を止め、操の上に覆い被さる。
「ふふっ、操……」
 彼女は胸板に頭を擦り付けていた。
 気が済むと、今度は全身を嘗めるように彼の肌を観察し始めた。
「ふぅ」
 ややあって、彼女は安堵したように溜息を吐く。
「あの淫売は、操にキスマークをつけたりは、してないようね」
 いつの間にか、寝息も聞こえなくなっていた。
「あ、早く着替えさせなくちゃね」
 パンツに手をかけ、秘所もまた晒された状態になった。
「ああ、これが……」
 彼女にとって操の体はありとあらゆる箇所が尊いものであるが、その中でもここは見るたびに、悦びを覚える部位である。
 縮こまった陽根に、これまた頬擦りする。
「操、これを、お姉ちゃんに頂戴。
 あの泥棒猫のことは、許してあげるから……」
 勃起していないそれは、今この場で肉体的充足を与えられるものではなかったが、それでも彼女には生半可ではない精神的な満足を与えていた。
「着替えさせなくちゃ」
 返事のない操を寝巻に着替えさせ、掛け布団をかける。
「お姉ちゃんを抱いてくれるのを、待ってるからね」
 頬を撫で、彼女は部屋を後にした。

73 :
 操は、夢を見ていた。
 亜由美と並んで歩いていた。
「期末どうしよう〜。世界史とか全然自信ないよ」
「どうせ亜由美はヤマを張るつもりでいるんだろ。小野里は満遍なく出すからヤマ勘は通用しないぞ」
「えー、どうしよう。赤点なんか嫌だよ」
「じゃあ、俺と一緒に勉強するか?」
「そんなこと言って、また保健の実技を勉強するの?」
 他愛もない話で盛り上がる、普段通りの(だった)光景。
「ね、ね、ゲーセンでQMAやろうよ! 試験勉強に入る前に一度思いっ切り遊ぼう!」
「お前、言ったそばから……」
 そこに、いきなり、虎が現れた。
「!」
「ミ、ミィくん……」
「あ、亜由美、逃げろ。いいから、俺はいいから!」
 しかし、虎は真っ直ぐ亜由美に飛び掛かり、彼女を食いしていく。
「ミィくん、逃……、げ……」
 程なく、彼女は事切れてしまった。
 自分も牙にかかるのを覚悟の上で、彼はその虎に飛び掛かろうとする。
「畜生、この人食い虎!」
 が、その刹那、一匹の龍が現れ、彼を乗せて空を走り出した。
(おい、小僧。あいつにされるつもりだったのか?)
 脳内に直接響く声。操もまた、声を発することなく言葉を返していた。
(そうだ。あの獣に恋人をされたんだ)
(そうか、ならそいつの所に連れて行ってやろうか?)
(知っているのか?)
(ああ、知っているとも。しっかり掴まってろよ!)
 そうして、空高く翔け上がり、やがて、雲の上に到着した。
 果たしてそこには、亜由美がいた。
「ミィ、くん?」
「亜由美!」
 夢であると理解していたのか、それとも理解していなかったのか、操は、起き抜けると自分の彼女が待っていると思い、おもむろに目を覚ました。

74 :
以上です。

75 :
久しぶりにGJ
姉が本性を表したな

76 :
>>74
乙乙

77 :
こいつはやっぱり風見だよ
あのヤンデレスレを壊滅に追いやった風見先生に違いないわw

78 :
>>74
GJ

79 :
そこに、いきなり、虎が現れたw

80 :
テスト

81 :
規制解除されました。
鬼子母神8話、9話、10話は避難所に投下してましたが
こちらにも投下したほうがいいですか?

82 :
どの道wikiにまとめられるからいいんでね?

83 :
本当は避難所にもイラネ
昔みたいに面白い作品はもうここでは読めないのか……

84 :
懐古趣味ならまとめwikiで満たしとけ

85 :
投下します。

86 :
「小泉アサネの意識が回復しました。しかし、事件の精神的ショックにより、幼児退行…一時的な精神疾患に陥っており、聴取は未だ難しい状況です」
「…大久那キオナの方は?」
「そちらも昏睡状態が続いています。回復の見込みは不明―――とのこと」
「―――んー…」
隣町の警察署の刑事課。
初老の刑事が現状を淡々と報告していた。
それを聞いている相手は少々疲れ気味のようだ…。
「二人の携帯電話は校内の焼却炉で発見されました。
内部にまで損傷が達していることから、データの復元は困難です。
ですが、電話会社の記録によれば、大久那キオナが小泉アサネにメールを送信しているのは確認済みです」
「そして弟である小泉コン太にも送信している…。そのことは聴取で分かっているが…、一体何の目的があったか…だな」
「―――課長、実は一人、気になる人物が浮かび上りました」
課長と呼ばれた人物は睨めていた書類から顔を上げた。
「誰だ?」
「早狩ユキという女子生徒です。彼女は小泉コン太と親交があります。そして、事件当日に焼却炉付近で何人かの生徒に目撃されています」
「そいつは…臭うな…。よし、任意同行で引っ張ってこい!」
「了解!!」
「必ず尻尾を掴んでみせろ!!」
事件発生から一週間。
警察も動きつつあった。

「コン君!見て!!私達の町があんなに小さいよ!!!」
「ほんと!ほら、アサ姉!!」
「………たかいとこ、いや…。コン、おうちかえろ?」
「来たばっかだよ…、アサ姉」
「ゴメン、やっぱり迷惑だったかな…」
「ううん、嬉しいよ!―――アサ姉の気分転換にもなれば良かったんだけど…」
コン太とアサネは町から外れた小山に来ていた。
ユキが二人を誘ったのだ。
「この辺は小さい頃、よく遊んだから懐かしいよ」
「ピクニックにはちょうどいい場所だね」
「春や夏もいいけど…冬の山も乙なものよ」
「コン、はやくかえろ」
「アサ姉…」
「あんまり無理させちゃいけないよね…。早めに病院に帰りましょ」
「そうだね、しかし外出許可を出してくれるとは思わなかったよ」
山の天気は変わりやすい…。
さっきまで晴天だったのに、もう雲が広がり始めていた―――。

87 :
「早狩ユキは見つかったか?」
『いえ、まだです。自宅にも行きましたがもぬけの殻でした。今は一人張り込みにつかせてます』
「早狩ユキの親は?」
『そっちも捜索中です』
「新しい変化があればまた連絡をくれ」
『了解』
初老の刑事は無線で部下とやりとりしていた。
その彼は、今、町の役場に来ていた。
早狩ユキの戸籍について調べにきたのだ。
「―――父親は離婚…、母親と二人暮らし………」
ユキの情報について調べる刑事。
「父親の名前は小泉―――小泉?!…たしかあの二人も小泉だったな…」
さらに読み進めると―――
「早狩…キオナ…?」
早狩ユキの双子の妹、とあった―――。

ゴオオオォォォォ――――
「…外は凄い雪だよ。これじゃ下山は難しいね」
「でも山小屋に辿り着けて助かったね。最悪、ここで一晩泊まることになるかな…」
「すー、すー」
どうやらアサネは疲れて眠ってしまったようだ。
その横で、暖炉に薪をくべるユキ。
手慣れた様子にコン太は驚いていた。
「暖炉とか使った経験あるの?」
「言ったでしょ、昔はよく遊んだって」
「あぁ、なるほど…」
考えてみればユキのことを何も知らないコン太だった。
親はどういう人なのか…、彼女がどういう風に育ったか…。
「―――気になる?」
「え?」
「私のこと」
どうも表情に出ていたようだ。
「私はね、母子家庭で育ったの。コン君とは反対だね。…母様は私を育てる為に色々苦労したみたい。でもお金はそれなりにあったからなんとかやっていけたの」
暖炉の明かりに包まれながら、ユキは自身のことについて話し始めた。
それはコン太には、とても…幻想的に映った。

88 :
「小泉アサネが病院から消えただと?!」
『はい、医師が回診に来た時にいないのを発見したそうで』
「連れ出した人物はわかってるのか?」
『看護師達は誰も見ていないというんですが、防犯カメラに早狩ユキと小泉コン太の姿が映ってます。はっきり正面玄関から出ていくところも確認済みです』
「なんでそれで誰も気づかないんだ?!!」
『まだ事実確認中なので、はっきりしません』
「三人を探せ、大至急だ!!」
『了解』
初老の刑事にはある予感があった。とても悪い予感。
幾多の事件で研ぎ澄まされたそれは、外れて欲しいときによく当たったのだ。
そして今回も…。
「やめてくれよ、本当に…」

「そして今年の梅雨ぐらいに、母様は何処かに行ってしまった」
「一体何処に?」
「さぁ?…でもきっと幸せなところじゃないかしら。
最期に私に、思い人のところに行くって出掛けて行ったわ」
「その人って…」
「コン君もよく知ってるはず」
「え?!」
「梅雨頃に何があったか…、覚えていないの?」
梅雨…。
忘れるはずがない…。
コン太、そしてアサネにとって生涯を変えてしまう事件、彼らの父親が遭難してしまった時だった…。
「母様は…、恐らく山でその人と永遠に一緒になったんじゃないかしら…」
「?!!」
「あなたのお父さんと…。わかるでしょ?お兄ちゃん」
「お、にいちゃん…?」
「キオナから何も聞いてないの?…あぁそうか、私がおしおきしたから喋る機会はなかったのね」
「…どういう意味だ?」
「あの子がお兄ちゃんに手を出したからよ。もっとも私の話は聞かなかったでしょうけど…」
「もしかして、キオナに…」
「そうよ、私がやったの。お兄ちゃんの…いや、私達のお姉ちゃんがいたのは計算外だったけどね。急所は外してあげたから、ぬことはないわ、安心して」
オレンジ色の炎の光を受け、笑みを浮かべるユキは美しかった…。

89 :
「な、何を…言って」
「だから、私もキオナもお兄ちゃんも、そしてそこで寝てるアサ姉ちゃんも兄弟なのよ」
「?!!!」
「そんなに意外だった?」
「だって!…キオナは苗字が…」
「あの子はね、可哀想な子なの。幼い頃に山で両親がんで…、それを母様が引き取ったの」
「じゃあ、なんで…」
「戸籍上は早狩キオナ、でも彼女は自分の苗字を…彼女の先祖達の生きた証を捨てたくはなかったのよ」
そういうユキの顔には深い悲しみが浮かんでいた…。
大きなものを背負ってるかのような―――
「もう一つ、お兄ちゃんに伝えたいことがあるの。信じられないかもしれないけど…私の母様やキオナは―――」
雪女、なのよ。
ユキはそう語った。

90 :
「―――雪女?そんな…」
「おかしいと思うでしょ?でも本当なの。私達の一族はこの地方でひっそりと暮らしていたわ。でも人間の山狩りに遭って人数もどんどん減っていったわ…」
「………」
「母様とキオナがその最後の生き残り。そして、私とあなた達は雪女と人間のハーフなのよ」
「僕と、アサ姉も…」
「風邪を引かなかったり、雪が恋しくなったりするでしょ?それが私達にも雪女の血が流れてるの証拠なの。母様はこうも言っていた、一族の血を絶やさないために…、私達が何とかするしかないって」
「どうするの?」
「―――子供を作るのよ。私と、お兄ちゃんで」
「?!―――そんなこと出来るわけないじゃないか!!」
「でもお兄ちゃんはキオナと何回もセックスしたでしょ?」
「っ!―――」
「キオナもそうなのよ。だからあの子をすことは出来なかった…。その気持ちは痛いほどわかるもの。それに―――お兄ちゃん達はこの地に戻ってきた」
「それが何の関係が―――」
「運命よ。巡り巡って―――私達は結ばれるべくしてここにいるのよ。でなければ出会うことはなかったわ」
運命…。
コン太にはあまりにも信じられない話の連続だった。
二人の妹、母親は雪女、子供を作る―――。
「だから…私も…」
キイィィィィ―――
「?!!」
「身体が動かないでしょ。私は特に血が濃いから怪異の力…眼力も使えるの、当然キオナもね」
「(学園祭の日―――キオナが使ったのはこれだったのか…)」
コン太は的外れな考えを巡らせていた。
「病院から抜け出すにも使ったわ。お姉ちゃんも必要だったから。でも母様は決して悪事にこの力を使うなって言ってたわ。一族の誇りを穢すことになるから…」
ユキは笑っていた…。
やっと捕まえた…、彼女の目がそう物語っていた―――。

91 :
投下終了です。

92 :
GJ
まさかの全員姉妹だったのか

93 :
>>91
GJです。
よもや雪女とは想像もしていませんでした。
姉妹みんないい感じにキモいですね。
これから第7話を投下します。
ですがその前に、前回の投下について、てにをはの訂正を入れさせていただきます。
>>69
(正)腰背部に結び目のある黒いリボンをあしらっており、いかにも上品な感じが滲み出ている。
(誤)腰背部には結び目のある黒いリボンをあしらっており、いかにも上品な感じが滲み出ている。
>>71
(正)ジョニーウォーカーの残るグラスをかざし、話の道草の種にする。
(誤)ジョニーウォーカーの残るグラスをかざし、話を道草の種にする。
となります。
それでは、「あなたがいないなら何もいらない 第7話 酔余と悲憤と」投下させていただきます。

94 :
 まだ空も明るくなっていない彼誰時(かわたれどき)、清次は酒の酔いによる短い眠りから醒めた。
 翼から馳走になったジョニーウォーカーだけでは足りなかったのか、彼は自室に戻ってからロイヤルハウスホールドを呷っていたのである。
 だが、疲れもあって、やがて寝込み、起きた時には氷がすっかり融けていた(彼は、ウィスキーはオンザロックにするのを好んでいる)。
 酒が勿体ない――彼は金持ちの御曹司らしくない、しみったれた根性を持ち合わせていた――と、すっかりぬるくなり、薄まったRHHをちびりちびりと口の中に運び始める。
 そうこうしていると、充電器に差し込んでいたBlackBerryが「月光花」を奏ではじめた。操からの着信である。
「八雲清次です」
『キヨ、俺だ。操だ』
「どうしたんだ、こんな朝早くから?」
『いや、昨日は俺はすぐ寝てしまったから。姉貴は何て言ってたかと思って』
「その話は、今日、授業が終わってからしよう」
『ああ、わかった。
 ……それとだな、夢を見てなあ』
 懐かしむような、揶揄うような口調で、清次は応じた。
「あれだろ、篠崎が出てきたんだろ」
『ああ。それだけじゃなくて、お前も出てた。
 声はキヨだったんだけど、姿は龍でな』
「龍か。確かに干支は辰年だが、むしろトラだと思うがな。
 帰ってからも飲んでたしな」
 冗句を口にしつつ、それに自分で苦笑いした。
 親友を電話越しに相手にしながら、水っぽくなった酒をなおも口にする。
『亜由美が虎に一度食いされて、その後で俺を乗せて雲の上にいる亜由美の所に連れて行ってくれたんだ』
「そうか……」
 沈黙することしばし、ようよう清次は返事を続けられた。
「まあ、しばらくは夢を見るごとに篠崎との逢瀬を楽しむといい。
 だが、また会いたいからって二度寝するなよ」
『わかってる』
「学校で会うのを楽しみにしてる」
『じゃあ、また』
 会話を終えてから、彼はグラスに残っていたそれを不味そうに飲み干した。
「まずいな。実にまずい」

 通話を済ませ、電話を切ると、フットマンが扉をノックし、操を迎えにきた。
「お坊ちゃま、朝餉の用意ができました。食堂にお越しください」
「わかった。すぐ行く」
 相槌を打ち、パジャマを制服に着替え、部屋を後にした。

 人が、それも自分の恋人がされた直後だけあって、今日の彼は朝食の席では本当に無口であった。
「会社のことも早く手綱を握っておく必要があるし……」
 代わりに、今朝は翼が饒舌だった。
(こういう時に脂っこい食事は堪えるな)
 操は厚切りのパンチェッタを胃の中に押し込みながら――彼はずっと食欲が皆無に近い状態だった――、適当に聞き流そうとして、
「……それで、明日は会社の方の用事で学校を休むから、一緒に登下校できないの」
 危うくその一言を捉えた。
「今日は?」
「いつも通りよ」
 いつも通り、つまりは翼のリムジンで、一緒に登校し、そして一緒に下校する、この二人にとっての当然の習慣。
「本当は操と一緒にいたいんだけど、ごめんなさいね」
 あとは彼女がまた止め処なく話し続ける。
「でもこれから操と二人三脚で仕事をしていくなんて本当に想像しただけでわくわくしちゃう。……」
 彼もまた黙々とフォークを動かし、口にミラノ風リゾットを運んだが、サフランもブイヨンもオリーブオイルも、バターや塩胡椒の味さえも、この日は全く感じられなかった。

95 :
 休み時間を利用し、二人は話し合う。
「で、話の続きってのは」
 その様は、一見すると何かの謀議のようにも見える。
「ああ、それか。
 いや、本当は東京に帰ってくるまでに言っておきたかったんだが、言いそびれていたことがあってな。
 それを伝えたくて」
「?」
「耳貸せ」
 口を耳に寄せて、囁く。
「当日のマリオネットホテルのロビーの防犯映像を持ってる。
 篠崎を装ってチェックインした女が映ってるものだ」
「本当か!」
「声が大きい」
 清次は逸る操を誡めた。
「悪い」
「今日来てくれるな?」
「わかった」
「放課後な」
 そうして、彼らは一旦離れた。

 放課後、二人は八雲邸の清次の部屋にいた。
「で、ちゃんと翼さんの方は断ったか」
 普段、半川姉弟は登下校を共にしているが、今日はイレギュラーな形になった。
 一緒に帰宅することを断ったかと清次は訊いているのである。
「ああ」
「そうだ、何か出さなきゃな。飲むか?」
 室内に取り付けてあるバーカウンターを指差す。
「まだこんな時間だぞ」
「そうか。じゃあ、紅茶にしよう。
 紅茶なら俺の帰宅に合わせて淹れさせておいたから、すぐ出てくる」
「最初からそっちにすればいいのに」
「まあ、そういうなよ。俺の楽しみといえば酒と煙と愛液を飲むことだけなんだから」
 彼は手を叩いてメイドを呼んだ。
「おーい、持って来い!」
 間もなく戸が開き、既にビューリーズが注がれた2客のティーカップを持ってきた。
「失礼します、紅茶をお持ちしました」
「入れ」
 操と清次のそれぞれに1客づつ置かれる。
「どうぞ、お召し上がりください」
 だが、その中身は、一つはストレートの紅茶だったが、もう一つは、生ホイップクリームを浮かべたものであった。
「それは……?」
「アイリッシュティー。アイリッシュウィスキー入りの紅茶さ」
「何が何でも酒を飲みたいんだな」
 半ば呆れるように操が言った。
「そうだ、俺は何が何でも酒を飲みたいんだ」
 と言って、ブッシュミルズ21年をステアされた紅茶を啜る。
「それで、物を見る前に、これをどうやって手に入れたか一応説明しておく」
「警察から流してもらったんじゃないのか」
「そうだ。愛知県警の幹部に流してもらった。
 捜査で何か進展があれば、そいつから連絡があることになっている」
「そうか。その連絡はいつ来るんだ?」
「早ければ今日、と言ってたな。
 だが、いつ来るかもわからないし、取り敢えずはこれを見よう」
 DVDを手にする。先に焼き増した防犯カメラの映像だ。
「そうだな」

96 :
「どうだった?」
「やはり違うな」
 見終わった二人は、早速その正体を評しはじめた。
「まあ、俺にわかるんだから、ソウにだってそりゃわかるわな。
 ちなみにこの女の特徴は、若い女性で、篠崎とそこそこ雰囲気が似ているが、もう少し吊り目気味で、鼻は高くて、唇は薄くて、面長で、セミロングだそうだ」
「それも警察が?」
「うんにゃ。俺が、その時受付をしていた女から自分で聞き出した。お前らが警察で取り調べを受けていた間にな」
「さすが、手が早いな」
 手が早いと言われて、ついつい別の意味に聞こえたのは、彼の日頃の言動への世評を彼自身が認識しているからだろう。
 その受付嬢との逢瀬が、片時彼の脳裏に呼び起こされた。
 頭がピンク色に染まるのを避けようと、彼は話を変えた。
「ところで、昨日の翼さんとの話をソウにも伝えようか」
「ああ、頼む」
「篠崎のが自ではない、と伝えた時、彼女は『まあ、誰がそんな恐ろしいことをなさったのかしら』と俺に返してきた」
「何か問題か?」
「俺は自じゃない、と言っただけで他だとは言ってない。事故したという可能性を彼女は想定しなかったということだ」
「確かに。
 でも、姉貴がそう合点しただけじゃないのか」
「かもな」
 一応の首肯の後、清次は更に続ける。
「俺が、ソーメンまでポリの疑いの目が、つまり警察は犯人を逮捕するまで篠崎の周りを疑い続けると言ったら、彼女は『警察が結果を出すまでは、ということね』と微妙に意味を変えてきた」
「それは姉貴がそういう用語を理解してなかっただけじゃないのか」
「理解してなかったら聞き返すだろ。理解して、それで警察が犯人を逮捕する以外の結論を出すことを想定した、そう考えてもいいんじゃないか」
「うーん……」
 唸り、考え込む操。
「それで、翼さんに何か変わったことはあったか?」
「何……、あっ。
 明日、姉貴は学校を休むらしい」
「どうして」
「会社の都合らしい」
 顎をさすりながら、清次は考える。
「気になるな」
 暫く経って、一つの発意を操に伝えた。
「明日、俺たちも休もう」
「えっ? どうして」
「厚重に俺らも行って、彼女の真意を探ろう」
「行ってって、俺はともかく、キヨはどうやって入るんだ」
「策がある。明日の朝、ここにまた来てくれ」
 その時、清次のブラックベリーが鳴った。
「The Best is Yet to Come」は、警察関係者からの着信である。
「お、早速来た」
 案の定、それは黒木からのものであった。
「八雲清次です」
『私だよ』
「どうなりましたか?」
『自ということで断定したよ』
「どうにかなりませんかね」
『自というのが支配的な意見だからね、もうどうこうしようもないよ』
 清次は嘆息するように言葉を継ぐ。
「わかりました。この件ではお世話様でした」
『それでは失礼』
「ありがとうございました」
 通話が切れる。
「警察が自と断定したそうだ」
「何てことだ……。正義も糞もあったもんじゃないな」
 操は清次にも増して長嘆息する。
「まあ、それを打ち破るためにこうして動いてるんだ」
「ああ、踏ん張らなきゃな」
「また明日の朝な」
 操は一旦八雲邸を退いた。

97 :
 翌朝、再度清次を訪れ、部屋に入った操は、彼の姿を見て言葉を失った。
 カールロングのウィッグを被り、スリットの深いネイビーブルーのチャイナドレスを身に着けていた。
「……」
「おお、来たか。俺も丁度メイクアップを終えたんだ」
 唖然としていた操は、やっと言葉を取り戻した。
「一体どうしたんだ、それは」
「普通なら会社の中にはIDカードがなければ入れないだろうが、ソウの親父さんは時々女を連れ込んだりするからな。
 警備も父親がいつもやってるように、息子に対しても同じように『配慮』してくれるかもと思って」
「そんな、他に方法ないのかよ、それはいくら何でも」
「あるかもしれんが、思いつかなかった。
 まあ、失うものもなかろうし、やってみるだけならタダだ」
「人として大事なものを失っているような気もするけど。
 それに、女装なんて誰得だよ」
「分かってないなー、最近はこういう『男の娘』がブームなんだよ」
「背も高いし、どっちかと言ったら大人の女に近い気がするけどな。
 それにしても、なんでチャイナドレスなんだ?」
「俺の趣味だ。
 本当は、某大阪市長みたく、スチュワーデスのコスプレの方が好きなんだが、それだと流石に不自然だろうから」
「それも十分不自然だろうけどな」
 操は失笑した。
「ま、行こう」
「そうだな」
 首肯した清次はドレスアップを手伝っていたメイドに向かい、手短に用を告げる。
「車を回すよう、赤城に伝えろ」
「畏まりました」
 メイドが部屋を出るのに従うかのように、清次と操も部屋を出る。
 二人が駐車場に向かい、キャデラックDTSに乗り込むと、そのリムジンは厚木に向けて、出発した。

98 :
 神奈川県厚木市、厚木重工業本社。
 高さは150mを超し、人口20万余の都市には似つかわしくないほどの荘重な超高層ビルである。
 威風堂々たるその姿は、日本経済の隆盛を誇示するかのようでもある。
 その本社の脇に、清次のストレッチリムジンは停車した。
「ご苦労さん、帰りにまた電話する」
「承知しました」
 車は二人を降ろすと、そのまま走り去っていった。
「ここだな」
「ああ」
「やはり大きいな」
 ビルディングを見上げる清次に、操はひとりごちるかのように声を掛けた。
「さあて、上手くいくかどうか」
「恋人に見えるように、なるべくイチャイチャした感じで」
「了解」
 操は清次の腰に手を回し、爛れた雰囲気を演じつつ、エントランスに入っていった。
 間もなく、警備員が近付き、声を掛けてきた。
「操様、そのお方はどなたですか」
 返答の代わりに、無言で小指を立てる。
「失礼しました、お通りください」
 それを聞き、昂る内心とは裏腹に、平然たる態度でエレベーターホールに向かっていった。

 エレベーターは、順調に上昇している。
「まさかそれで成功するとは……」
 操は清次の女装した姿をしげしげと見る。
「ああ、結構異性に化けるのってやれるもんだな」
 得意気な清次が可笑しくて、彼は心にもない冷やかしを入れる。
「いや、わからんぞ。ニューハーフと思ってるかもしれないだろ」
「それでも所期の目的は達成したわけだから、別に構わんさ」
 そうまで言ったところで、目的の階に着き、彼らは降りた。
「俺の部屋に来るか?」
「いや、もう真っ直ぐ行こう」
 二人は、目的の部屋に向かって歩を進めはじめた。

99 :
以上です。

100 :
投下乙

101 :
ひっさびさに覗いたら投下きてた!
>>98
乙。続きが気になる終わり方ですな

102 :
投下します。
最終話です。
>93
GJ!!
次回の投下も楽しみにしてます。

103 :
辺りを吹きすさぶ雪。
白い嵐が行く手を阻み、道と呼べるものも見えなくなっていた。
「駄目です!何も見えません!!」
「こんなときに吹雪とはな…」
「危険です!下山しましょう!!」
初老の刑事達は早狩ユキを重要参考人として行方を追っていた。
いくつかの目撃証言により、彼女達が山に登ったことを突き止めていたが…。
「―――間に合わないか」
「は?」
「いや…、早く下りるぞ。こっちが遭難しそうだ」


アサネは眠りから覚めつつあった。
まるで海中から海面に上がるようなふわふわした感覚の中を漂っていた…。
「ん―――ふぁっ、お兄―――ちゃ―――」
「う―――やめ―――」
「いや―――そのお願い―――聞けな―――」
何か、聞こえた…。
―――何だろう?
知ってる声、…誰だっけ?
そうだ―――これは―――
アサネは目を開けた。
彼女の瞳に映ったものは―――
暖炉に照らされた男女。
女が男に跨り、腰を激しく動かしていた。
その影が何倍にも大きく見え、まるで怪獣か魔物か…とにかく恐ろしいものに見えた。
下にいる男は…。

「うぅぅっ!!」
ドプドプドプ!!
「ふぁぁぁ…、一杯射精したね…。温かい…」
?!!
「コン!!」

104 :
アサネは咄嗟に叫んだ。
と、同時に身体を起こし、二人に突進する形で近づいた。
跨っていた女、ユキはそれに気付くと片手を挙げ、掌をアサネに向けた。
シュオオオォォォォォ!!
突如、掌から風が巻き起こり、アサネに向けられた。
アサネは吹き飛び、壁に身体を打ち付けた。
「邪魔しないで、アサ姉ちゃん」
「ゴホッ?!!」
「アサ姉?!」
アサネは背中が酷く痛んだ。
肺にも負担が掛かり、むせこんだ。
「ゲホゲホッ、ゴホッ!…はぁはぁ、あんた…」
「なんだ、正気に戻っちゃったのね」
「?!―――どういうことだよ、おい!アサ姉に何をしたんだ!!」
「落ち着いてよ、お兄ちゃん。軽く吹き飛ばしただけよ。これも怪異の力」
「そうじゃなくて…、アサ姉が幼児退行したのは―――」
「それは関係ないわ。本人が望んだことよ」
二人が何か話していたが、今のアサネにはただ一つ、コン太を救い出すことしか頭になかった。
「離れなさい!!」
「うるさいな…」
キイイィィィ―――
「ぐっ?!!」
ドサッ!!
アサネはその場に倒れこんだ。
ユキが再び眼力を使ったのだ。

105 :
「アサ姉!!―――これ以上は止めてくれ…。僕はどうなってもいいから…」
「別にお兄ちゃんとお姉ちゃんをどうこうしようとは思ってないわ。ただ私達四人で暮らしていきたいだけ…」
「四人…?キオナもか…?」
「当然でしょ、私の妹分よ。例え血は繋がってなくても…」
「しかし…子供だけで生活なんてしていけるわけが…」
「一族の中では、私達の年齢は立派な大人よ」
コン太は何故ユキが自分の一族こだわるか気になっていた。
「―――何で俺達の先祖は人間に追われたんだ?」
「一族の人々が…人間の子供をさらうのよ。さらって食料にするの…」
「そんな?!…」
「昔…まだ電気やガスがなかった時代には私達の一族は恐れられてたわ。妖怪、化け物、神々…呼び名は様々みたいだけど…」
「それが雪女伝説…」
「ええ、でも大きな戦が終わり国が変わった頃には、もう五人も残っていなかったらしいわ。そんなとき…お父さんに出会ったのよ」
「それが、始まりなのか…」
「お父さんは子供を食料にする習慣を認められなかったらしくてね、お兄ちゃんお姉ちゃんを連れて姿を消したのよ。それで母様は深い悲しみに暮れてね…」
コン太はようやく納得がいった。
何故兄弟が離ればなれになったのか。
しかし、兄弟で子作りは容認できなかった。
あまりにも…狂っている…。
「―――僕達が生きている限り、血は無くならない。何も兄弟で関係を作ることは無いんじゃないのか?」
「さっきも言ったけど、私達は惹かれあってるのよ。
私を妹と知らない時でも、気に掛けてくれてたよね?すごい嬉しかったよ。
それで運命とか関係なくお兄ちゃんに夢中になっていったわ。今日はどんな話が出来るんだろうとか…、どれだけ笑ってくれるんだろうとか…。
お兄ちゃんに会うために学校に行っていたものよ」
「………」
コン太は言葉を紡げなかった。
目の前の女の子に魅力を感じていたのも事実だが…、話し合って諦めてくれるようではないのが分かった。ある種の執念じみたものさえ感じた。
彼女は何がなんでも自分を離そうとはしないだろう…と。

106 :
「―――随分お楽しみね…」
「アサ姉!!」
アサネが目を覚ましたようでこちらに近づいてきた。
いまだに、コン太とユキは繋がったままだ…。
「…どうする?私をす?アサ姉ちゃん?」
「いえ、思い出したのよ。私達の両親のこと、私が自分自身で記憶を消したこと」
「えっ?!!」
「私も眼力くらいなら使えるのよ。父さんがんだときに自分で掛けてね。何とか二人だけで過ごせないか考えて…、私が普通の女の子になればって思ったの。…結局無駄に終わったみたいだけどね」
「お兄ちゃんの童貞はキオナが奪っていったわ。それについては何とも思わないの?私は悔しかった…」
「残念ね、コンの初めては私よ」
「「?!!!」」
「父さんがんだときにね、襲っちゃったのよ。とっても興奮したわぁ…。その後にコンの記憶も少しいじってね」
もうコン太には何が何やら分からなかった。
ただ一つ、もう自分は逃げられないのだろうと感じた。
しかし、さっきまでの倫理観やらはどうでもよくなってきたようだった…。
また眼力に掛けられてるのか…あるいは自分自身納得し始めてるのか…。
「さぁ、今度は私と楽しみましょ。雪女は子供を沢山作れるというから、今から楽しみね」
「お姉ちゃんが分かってくれてるなら話は早いわ。お兄ちゃん、私達だけの家庭を育みましょ?」

107 :
―――数日後、警官隊や消防団が山をくまなく探したが、三人の行方は掴めなかった。
三か月にわたり、捜索が行われその後に中止となった。
事件に繋がる唯一の証人であった大久那キオナは三人が山に入った翌日、病室から消えた。
捜索が中止になった日、初老の刑事は小泉姉弟の保護者だった叔父夫婦を訪ねた。
二人は深く悲しんだが、同時に諦めもついていた。
「この手紙は私の兄…、つまり姉弟の父親からぬ直前に受け取ったものです」
そう言いながら、刑事に手紙を見せる叔父。
「拝見させていただきます」
内容は遺書に近いもので、自身の期が近づいていることを悟り、二人の子供を頼むというものだった。
「お兄さんは病気か何かを患っていらっしゃったんですか?」
「いえ、特にそのようなことは…。ただ、実際に兄がんでしまって、何かはわからないんですが…、あの二人にもとんでもないことが起こるんじゃないかっていう…。すいません、上手く説明できないです。第六感的なものとしか…」
「いえ…わかりますよ…」


それから年月が経ち、ある噂が流れた。
町の近くの山々に登ると、雪女に遭遇するとか―――。
遭遇したものは生きて帰れないか、帰れても不幸な事故に遭って日を置かずにんでしまうとか―――。
遭遇した際生きて帰るためには、ナイフを口に咥えておくと怪異から逃れられるとか、それどころか帰ったものは、立身出世、玉の輿の幸運に巡りあえるとか―――。
その噂を聞いて、興味本位の者や幸運にあやかりたい者がこぞって山に押し寄せた。
大半は雪女には出会えなかったが、ある者は吹雪の中を多くの子供を連れて遊ぶ三人の雪女を見たと語ったらしい…。

108 :
投下終了です。
ご愛読ありがとうございました。
また機会があれば…。

109 :
完結GJ
何だのハーレムハッピーエンドじゃないか
姉はしっかり童貞もらってたのにワロタ

110 :

過疎の中よく頑張ったです

111 :
それにしてもひどい過疎だなあ
このままいつのまにか消えてるなんてこと・・・

112 :
自分も久しぶりに来てびびった
このスレ立ったの3ヶ月前か……
前スレまでは結構書き込みも多かったのに

113 :
多分みんな一途スレに行ったんだろ。
あっち大盛り上がりだし

114 :
>>113
一途スレって何?
エロパロ自体が過疎だね
なんと言うかキモ姉妹のネタが尽きた

115 :
ここで書く利点もないもんな
他サイトが機能的にもシステム的にも充実してきたし、ここは荒らしを排除できないっていう欠陥があるし

116 :
と言ってもなろうorノクターンにもpixivにもまともなSSはほとんどないけどね・・・

117 :
短編投下します。

118 :
電車の窓から見えるのは田んぼや山々。
地方のローカル線は定期的な音を立てて走り続けていた。
乗客はまばらだったが、ある男が乗り込んでいた。
男の目的は人里を離れた場所へ向かうことだった。
その傍らには女が寄り添っていた。
「眠くなったか?」
「…いえ、ゆったりしてました」
「そうか…」
男はこそばゆい感覚に身震いした。
女は男の許嫁であった。
贔屓目に見ても美しいその女を嫁に出来る自分はなんと幸せであろうと。
「あなたこそ大丈夫?」
「ああ…特には…」
「妹さんのこと…」
「―――」
男には妹がいた。
彼女もまた美しかった。
周囲から将来を期待されるほどの才女でもあったが…。
「ごめんなさい…」
「いや、いいんだよ。君が気に病むことじゃない…」
妹は兄である男を愛していた。
狂おしいまでのその愛は、長年隠され続けてきた。
しかし、男に許嫁が出来たその日にそれは一気に噴出した。
即ち、両親を害し、男に重傷を負わせた。
「何とか出来なかったのかな…」
「でもあのまま元の居場所にいてもいずれ…」
「そうだな、今は距離を置くことが大事って警察の人に言われたんだろ?」
「はい、これから行く町なら人もまばらと聞きました。妹さんも追ってはこれないでしょうね」
男は重傷を負った後、厄介な後遺症に悩まされていた。
記憶喪失だ。
日常生活においては支障はないが…今まで自分がどういう風に生きてきたかが思い出せなくなっていた。

119 :
PRRRRR――――
ピッ
「はい」
『返しなさい!!私の大事な人を!!!』
「前にも言いましたが、あなたと彼を会わすことはできません」
『あんたが勝手に彼を連れ去ったんだ!!この誘拐犯!!!!』
「人聞きが悪いことを言わないでくださいよ」
『居場所は検討が付いてるわ…、必ず取り返してやる!!』
「そうですか、ここまでたどり着ければいいですね」
『どういう意味だ?!』
「それじゃあ、妹さん」
「何を?!妹はあんた―――」
プツッ
「妹か…?」
「はい…、錯乱してる様子でした…」
「そうか…、早くまともになってくれるといいんだがな…」
「元気出してください、私が付いていますから。いつまでも…」
男は記憶喪失だったのだ。
当然、家族や許嫁の顔を覚えているはずがなかった。
全ての事情は許嫁と名乗る目の前の“女”に聞かされた。
昔撮った家族写真等は“妹”が燃やしてしまって一切の顔と名前を判別するものが無いそうだ。
しかし、男に疑う余地も術も無く、現状を受け入れるしかなかった―――。


『本日未明、○×県△☆市にお住まいの―――さんが遺体で発見されました。
因は肺が圧迫されたことによる呼吸困難とされ、複数の性的暴行の跡があり、
金品が無くなっていることから警察は強盗人として被疑者の行方を追っています。
また被害者の女性は先日起こった一家失踪事件の人物関係に何らかの関連があるとみて―――』

120 :
投下終了です。
需要があればまた長編を書きたいと思ってるんですが…どうでしょうか?

121 :
いいねえ。短いけどゾクゾクするで

122 :
GJ
この妹は出世して大統領になるな
長編どうぞどうぞ

123 :
>>120
長編完結と短編の投下、お疲れ様です。
楽しく読ませていただきました。
それでは
「あなたがいないなら何もいらない 第8話 頑是なき龍虎」
投下します。

124 :
「こいつはすげえな」
 時代ばった机を、清次はペタペタと触っている。
「このルイ15世様式のデスク、それとブックケースやキャビネットもイタリアのフラテッリ・ラディーチェだ」
 そう見定め、無遠慮にチェアに腰を下ろし、天井を見上げる。
「マリア・テレジア様式のシャンデリアはオーストリアのロブマイヤーか。
 さすがは天下の厚木重工、金がかかってるな」
 二人は半川翼の部屋に侵入していた。
「ふうん、18世紀のスタイルか」
「そうだ。今、翼さんは社主――だっけ? 新聞社のオーナーみたいな呼称だな――だから、やはり一番贅沢に仕立ててるんだろう」
 彼は足を組んで机の上に乗せている。その様はあたかも八雲製薬での自分の部屋にいるかのようである。
「詳しいんだな。
 俺の社賓室もやたら立派だけど、どこのどういう代物だとかは全然……」
 と言う操に、清次は苦笑いして応じた。
「社賓って、お前今そんな役職にいるのか」
「ああ、まあ。内実はないんだけどな」
「破綻した昔の総合商社にそういう肩書で好き放題してたワンマン創業家がいたな」
 まあ、そんな是非はどうでもいいんだが、と語り捨て、話を転じる。
「さて、翼さんが来るまで、机の中の書類でも漁ってみるか」
 そう言って手袋をはめ、さらにもう一双の手袋を取り出して操の方に投げる。
「ソウも」
「ありがとう」
「じゃあ、見てみるとするか……、?」
 操が手袋をはめた時、外から声が聞こえてきた。
「まずい、隠れるぞ」
 突然のことに声も出ない操を引っ張って、清次はクローゼットに隠れた。

 間一髪で彼らが隠れおおせると、ドアが開いて外から人が入ってきた。
 若い女が二人と、中年の男が一人。
「入りなさい」
 若い女のうち、一人は言うまでもない。
 半川翼。この部屋を占める、厚木重工業の主である。
「承知しました。ほら、お前も入りなさい」
 中年の男が、もう一人の若い女に声を掛ける。
「わかったわ」

 クローゼットの隙間からその女の顔を見た時、操と清次は共に息を呑んだ。
「間違いないな」
 言った言わないかわからないほどの小声で、清次が呟く。
「あの女だ……!」
 操が怒りを押ししているのが、声の調子からも伝わってくる。
 その溢れんとする激情を察して、清次は釘を刺した。
「掴み掛るなよ」
「わかっている、わかっているさ」
 それは応(いら)えというより、自分に言い聞かせているようであった。

125 :
「ご苦労だったわね」
 中年男を労う翼に、その男が言葉を返した。
「全くですよ。人一人を高層ビルから窓の外に放り投げろだなんて、無茶な業務命令もあったもんです」
「あら、あなたはそれを成し遂げられたんだから、無茶じゃなかったじゃない」
 機嫌の良い翼に対して、男は若干の不安を感じているように見える。
 もっとも、普通は人を犯せばあれこれとした心配や、あるいは罪悪感を覚えるもので、それを寸毫も感じていない翼のほうがおかしいのだろうが。
「無茶ってのはこれからのことですよ。
 捕まったらどうするんですか。わたしだけではなくて、娘まで人犯ですよ」
「だーいじょうぶよ。警察は自と断定したわ」
「あれでですか? 手を回したんですか」
「勿論。そうじゃなかったらこんなことしてないわよ」
「さ、頂くものを頂きましょう」
「わかったわ」
 手にしていたかなり大きいスーツケースを開ける。
「じゃあ、これが成功報酬ね」
 その中には、札束がぎっしり詰まっていた。
「ありがとうございます、お嬢様。
 それと、今後造船部門へのご支援をお忘れなきように……」
「わかっているわ」
 首肯し、彼女は続ける。
「こんなことがあって命拾いしたわね。
 本当ならあんな不採算部門、中国か韓国に叩き売ってるところよ」
「なに、これから立て直して見せます。エネルギー事業並に利益をたたき出してやりますよ」
「期待しないで待ってるわ。
 うちは同族企業だから、どこかの神戸の企業みたくクーデターが起きて社長が解任されたりはしないから、気長にやることね」
「それでは、失礼します。
 さ、帰ろう」
「ええ、父さん」
 父の勧めに、娘は頷く。
「そんなものを持っているんだから、真っ直ぐ帰ったほうがいいかもしれないわね」
 と、翼は男の手に渡ったスーツケースを指差す。
「勿論、そのつもりですよ。
 お嬢様は、どうされますか?」
「家で弟が帰ってくるのを待っているわ。私の一番の楽しみだもの」
「そうですか。良いお時間を」
「あなた方こそ」
 そう言い交して、三人とも部屋を後にした。

126 :
「行った、か?」
「もう大丈夫だろう」
 二人は徐にクローゼットの中から出る。
「さて、再開だ」
 そう言って、清次は机の方に足を向けた。
「さて、何かないかな」
 一番上の引き出しを開ける。
 中にあったのは、アウロラの万年筆と、モンブランのシャープペンシル、それとステッドラーの消しゴムであった。
「筆記具だけか」
 その次の引き出しも、同じように開け、中のものを手に取る。
「こっちも書類だけだな」
 そういって溜息をつき、パラパラと内容に目を通す。
「それも何の変哲もない、社業のものだけか」
「何があるのを期待してたんだ?」
「いや、トカレフかマカロフでも転がってりゃ、翼さんを脅しやすく」
 その時、入口の方から声が聞こえてきた。
「そんなものがあるわけないでしょ、貴方じゃなし」
 驚いて目を向けると、翼がそこにいた。
「姉貴、何でここに……!」
「何でって、ここは私の部屋よ。貴方たちこそここで何やってたの?」
「翼さん、あんたの動きが怪しいと思って探らせてもらったが、やはり、ビンゴだったな。
 さっきの家に帰るというのはフェイクだったんだな」
「そう言えば出てきてくれるでしょ。
 操とお話ししたかったもの」
「ああ、俺も姉貴と話したいことがあるしな……!」
 平然とした姉とは対照的に、弟は声を震わせている。
「あ、あ、姉貴が、姉貴が、亜由美をしたのか!」
「そうよ」
 あっさりと彼女は自らの人を認めた。「悪い?」とでも言わんばかりである。
「しかし凄い恰好ね」
 と彼女は清次に目を向ける。
「中々似合ってますね、その女装。
 私としては、操に着てもらったほうが嬉しかったですけど」
 可愛いからきっと似合いますわ、と頬を赤らめながら語る。
 その表情は、つい先程人を自白した女のそれとは到底思えないほど穏やかで艶やかなものだった。
「お褒めに預かり誠に光栄であります、翼さん」
 それで、と清次は話を引き戻した。
「あの男は、厚重の社員なんですね」
「ええ、うちの船舶・海洋事業本部長よ。連れてたのは娘さん」
「そいつらが実行犯というわけですか。
 翼さん、あんた一体何のつもりなんです?」
「つもりも何も、最初から貴方たちに隠していることなんてはなかったわ。
 勝手に私があの売女をしたことを隠したがってると思った貴方たちの独り相撲よ」
 お姉ちゃんは操とそこで相撲を取りたいですけど、と傍らのベッド――これまたフラテッリ・ラディーチェのバロック家具である――を指差して、またも頬を染める。
「いよいよわからない。あんたパクられたいのか?」
 彼女は静かに首を横に振る。
「そんなこと心配してないわ。
 私を突き出すわけはないもの」
「ふざけるな!」
 激高した操が喚く。
「絶対に警察に捕まえさせてやる、それが無理ならこの手で姉貴、お前をしてやる!
 覚悟してろ!」
 対して、翼はなおも平気の平左である。

「そんなこと、絶対にないわ。だって私たち、姉弟だもの」

127 :
以上です。

128 :
GJ
姉が正体を表してどうなるか期待

129 :
1レス短編投下します。

130 :
地元の商店街は夜が更けると閑散となっていた。
明日が月曜日ということもあり、多くの人々は家にいることだろう。
広場にくると何本かの笹が集めて置かれており、枝に色とりどりの細長い紙がいくつもぶら下がっていた。
そこで今日は7月7日、七夕ということを思い出した。
自分が短冊に願いを書いたのはいつのことだっただろうか…。
周りには誰もいなかったこともあり、その中の一枚を見てみることにした。
『お兄ちゃんとずっと一緒にいたい』
恐らく、お兄ちゃんが大好きな妹が書いたのだろう。
微笑ましくなり、次々と読んでいく。
『今夜、弟に私の愛を捧げられますように』
『兄貴の初めてを貰えますように』
『最愛の弟を奪った雌猫にの制裁を』
これは一体…。
気になるのは、兄、弟、という単語がいくつも散りばめられていたことだ。
どうも彼らの姉妹がこの短冊を書いているようだ。
俺にも妹がいるが、まさかこの中には名前はないよな…。
妹とはごく普通の兄妹をやってきたつもりだ。
しかし、たまたま目をやったところに妹の名前を発見してしまった。
見つければ、気になり、読みたくなるのが人間であった。
―――恐る恐ると手を伸ばし、短冊を読んでみる。
『兄さんと永遠に結ばれたい』
俺は思わず後ずさりした。
まさか、そんな…。
「兄さん、ここにいたんだ」
?!
考えるより先に走り出そうとし―――
バチッ!!
何―――だ?
からだがうごかな―――
「怖がらないで兄さん、これからイイコトするんだから…」
いもうとはてにばちばちとなるものをもっていた―――
そのひょうじょうはしたなめずりしてえものをほしょくしたもうじゅうのようだった―――

131 :
投下終了です。
日付が変わる前に書けて良かった。
長編はもう少ししたら投下できると思います…。

132 :
GJ
所でこの笹はどこの商店街行けば見つかりますか?

133 :
GJ
もう七夕がある季節か…
夏は海とか祭りでキモ姉妹が開放的な気分になるんだろうな

134 :
逆に他の連中が海だ山だと出払ってる隙に室内で…じゃね?

135 :
クローズドサークルとキモ姉妹か

136 :
「あなたがいないなら何もいらない 第9話 シャム猫の弁」
投下します。

137 :
「くそっ!」
 帰りのリムジンの中で、操は毒づいていた。
「姉貴は狂っている!」
「今さらだな」
 対して清次は、厳然とした態度でいる。
「それよりもこれからのことだ。
 翼さんは愛知県警に手を回したと見える」
「ああ、そう言ってたもんな」
「ひとまず俺は翼さんに競り負けたことになる。
 警視庁とそれを所掌する内務省に圧力をかけて再捜査させよう」
「警視庁? 管轄外じゃないのか」
 キョトンとした顔の操に、清次が諭すように語る。
「あのな、篠崎は誘拐されてされたんだ。
 そうだとするなら、拐かされたのはどこだ?」
 途端に、彼はハッとした表情になる。
「そうか、東京だ!」
「そ。だから愛知県警だけじゃなくて警視庁のヤマでもあるわけだ」
 と、人差し指を立てながら彼は続ける。
「それに警察庁長官や警視総監は退官後に政界に転身する男が結構多い。
 そのままじゃ重光章止まりだ、大綬章は貰えない。
 長い間国に奉公してきた見返りがそれじゃあんまりにも寂しいよな。
 今の奴も確か知事だか国会議員だかに出馬したがってるそうな。
 それなら俺のフィールドだ、八雲の支持なしで国民党の公認も推薦も得られるわけがない」
「しかし、他の党から出馬することは……?」
「どこの党がある?
 進歩党なんて労組依存の左翼政党に落ちぶれてしまったし、平成奇兵隊なんか地元の大阪以外ではパッとしない風任せの寄せ集め集団だ。
 何より、警察官は保守的な考えの持ち主が多いから、もしそんな政党から、もしくは市民党とか無党派とか謳って出馬すれば、母体の支持さえ失っちまうだろ。
 嫌でも俺の言うことは聞かなきゃならん」
「どうなるかな。
 まあ、俺にはキヨに頼る以外ないわけだけど」
「だな」
 頷き、話を変える。
「とりあえず腹拵えをしよう。
 車中だからそんなに大したものは出せないが」
 とのたまいつつ、ランチボックスを取り出す。
 その中には、スモークサーモンやカルパッチョなどのサンドイッチが並んでいた。
「ありがとう。もらうよ」
「どうぞどうぞ、そのためにうちの下女に作らせたんだから」
 二人でサンドイッチにパクつく。

138 :
「しかし、翼さんがあっさり歌ったのは意外だったな。
 気づいていてわざと聞かせたとはね」
 今しがたローストビーフのサンドイッチを持っていた手をチャイナドレスのスリットに伸ばし、そこを捲って太腿に装着しているホルスターから拳銃を取り出す。
「いざとなったらこれでゲロさせにゃいかんかと思ったが、持ってくるまでもなかったな」
 操は驚いた顔で拳銃を見る。
「本物か」
「勿論。ワルサーPPK、ドイツ製の半自動拳銃だな。軍や警察にも人気がある歴史ある代物だし、フィクション作品にも数多く登場している」
「007とか名探偵コナンにも出てるな。チャイナドレスでワルサーPPKって、どっかのロマノフ王朝専門の強盗人犯みたいだな」
「あの犯人は劇中でコレを使用していた時にはチャイナは着ていなかったがな」
「『財界のラスプーチン』にはぴったりだな」
 巷間言われている仇名を、本人の前で口にする。
 気にした風でもなく、蘊蓄を語り始めた。
「実際のラスプーチン暗に使われたのはピストルじゃなくてリボルバーだがな。
 この銃で実際にんだのは、そう、ヒトラーが自に使うほど愛用していた。
 あとは韓国の朴正煕大統領を暗するのにも使われた。
 まあその時は途中でジャムって、銃を別のものに取り換えたと聞くが」
「そうか。俺にも一丁貸してくれればよかったのに」
 あの場に銃があったと知って、彼は不満げだ。
「駄目だ。貸してたら間違いなくソウは撃っただろ」
「当たり前だ、血祭りにしてやる」
「だからだよ。
 人をすときはもっと慎重にやれ、翼さんを見習ってな」
「悔しいけど、姉貴は計画的だよな」
「問題は目的だが、ある程度の推測はできる。
 親父さんも一枚噛んでたりするんじゃないのか?」
「知っているのか?」
「篠崎のことをよく思っていなかったことだろ、そりゃ知ってるさ。
 俺にまで愚痴ってきてたんだから」
「嫌っていたなあ、親父は」
 顧みて、嘆息する。
「あれでも一応妥協案は出したんだが、と言ってたが」
「亜由美を愛人にして別に本妻を迎えろ、だろ。
 誰がっ!」
「されずに済んだとしてもか?」
「非常識な提案を受け入れる道理はない。
 それこそ、親父じゃあるまいし」
「気持ちはわからんじゃないがね」

139 :
 その時、BBが鳴り出した。
「半川……栄。親父さんからだ」
 発信元を確認して、ディスプレイを見せる。
「俺に代わってくれ」
「駄目だ。こういう時は感情的になっちゃ駄目なんだ」
 そのまま着信に応じる。
「はい、八雲清次です」
「清次くん、元気かね」
「お蔭様で」
「それで、操も一緒なんだろ?」
「ええ」
「早く帰ってくるように伝えてくれ。
 そうだ、君が連れてきてくれないか」
 人から見れば清次が操に振り回されている形なのに、構う様子もない。
(俺も人のことは言えんが、随分半川社長も無体な御仁だよ)
 以前読んだ海音寺潮五郎の「悪人列伝」にあった、
「生まれながらに最上位にある人は、人に奉仕されても奉仕する習慣がない。
 従ってその人々のモラルは一般の人のモラルとはおそろしく違っていて、人を犠牲にすることに全然平気なのである」
 という一節が、思い浮かんだ。
(まあ、俺は好きでやってるから構わんがね)
 通話口を押さえ、静かに苦笑してから、操に伝える。
「帰れとさ」
「嫌だ。あの女もいるだろ」
「そらなあ」
「顔も見たくない」
 決して悪くなかった、いやむしろ良すぎるくらいに良かった姉弟仲を知っているから、会いたくないという意思より「あの女」という三人称に、彼の姉に対する好感度が極度に悪化したことを再認識した。
 その返事を聞き、通話に戻った。
「その気はないようです」
「どうしてだね?」
「もう知ってるでしょう?」
 険しい言葉に、栄は詰まりそうになったが、少しの時を挟んで、何とか応じることができた。
「知ってるんだね、清次くん」
「ええ、知ってますよ。僕も操くんもね」
「それでは、君だけでも来ないか? 君とも話をしたい」
 何のつもりなのか。
 暫しの思案の末、彼は承諾した。
「わかりました」
「では、待ってるよ」
 そこで通話は切れた。
 それを確認した彼は、操に告げる。
「俺だけでも来いというから、行くことにした」
「大丈夫なのか」
「取って食ったりしないだろうよ。
 翼さんや親父さんとは、このことできっちり渡りを付けなきゃならんだろうから、会わんわけにもいかんだろう」
「だが……」
「心配するなって。
 ほら、残り全部やるから、腹一杯にして元気出せ」
 ロブスターのサンドイッチを一つ手に取り、操の口の中に押し込む。
「自分で食えるってば」
「つれないな」
 そう冗談めかして呟き、人差し指で操の頬を軽くつついた清次は、運転席に向かって下知する。
「止めろ、俺はここで降りる」
 即座に、キャデラックは路肩に寄せて停車した。
「俺はタクシーに乗るから、お前は彼を俺の家まで連れてくれ」
「承知しました」
 そして操に向き直り、連絡事項を伝える。
「帰ってくるまで俺の部屋で寛いでいてくれ。下女は自由に使え。ホームバーにあるものは、好きに飲んでいいぞ」
「了解」
 ドアを自分で開け(それだけ押っ取り刀だったということである)、降りる。
 彼はすぐさまタクシーを拾いにかかっていた。

140 :
 たっぷりとチップを弾んだ料金を支払い、タクシーを降りる。
「八雲だ、私が来ることは聞いてあるね?」
 柵越しに門番に話しかけた。
「はい、お嬢様より伺っております。どうぞ、お入りください」
 荘厳な鉄製の門扉が開かれ、彼はスペイン風コロニアル様式の邸宅に入っていった。
「清次くん、よく来てくれたね」
 車寄せのところで、栄が待っていた。
「誕生会以来ですね、栄さん」
 このような自らの言い回しに、清次は短い間に長い歳月を経たかのような感覚を覚えた。
「昼食はもう済ませたかい?」
「ええ」
 無駄のない簡便な返答には、優雅への憧憬、そして僅かな嫌悪が仄めいていた。
「では、腹ごなしにビリヤードでもしないか」
「久しぶりですね」
 今よりもずっと小さかった時分には、清次は栄ら半川家の面々と遊戯などを楽しむことも多かった。
「では、こちらへ」
 そうして邸内を連れ立って進む。
「懐かしいですね。まだあったんですね」
 指差した先には、オリーブがあった。
 相変わらずその木は専従の庭師によってよく剪定され、よく維持されていた。
「昔は大きく感じたんですけど」
 だが、もう戻れない。あの頃には。
「君も大きくなったということだよ」
 小さくて、楽しくて、清らかだったあの頃には。
 撞球室に二人は着いた。
「入り給え」
 ドアを開け、中に入る。
「これでいいですか?」
 キューラックにあった中の一本をおもむろに手に取る。
「ああ、構わんよ」
 肯きつつ、彼もまたバットを掴んだ。

141 :
「今更ながら、凄い格好だね」
 栄は、チャイナドレスを着てキュー・スティックを手にしているその姿を見やる。
「ですよね。でも、うまく化けられているでしょう?」
「ああ、君が女ならこの場で手籠めにしていたところだ」
「もしくは僕とあなたの両方がバイだったら、ですね。
 SMとか乱交とか青姦とか強姦とか獣姦とかは試したことありますけど、さすがに男とはようやりませんわ」
「さらっとすごいこと言ってるね」
「あなたも同じ穴のムジナでしょう」
「はは、一本取られたね。
 今度乱パでも一緒にやるかい?」
「お、いいですね。
 竹会長とか鳥井議員とかも誘って、今度一緒にやりましょうよ」
「やっぱり気の置けない面々だといいね」
「勝手がわかっていますからねぇ。
 同じサチリアジスでもタイガー・ウッズなんかは男にもホールインワンしてたみたいですけどね。
 僕はカサノヴァよろしく女のポケットだけにショットを決めていきますよ」
 ラシャを見定め、清次は3番と5番の球を狙う。
「そういえば、この頃は君のご家族はどうしているかね?」
 ティップが手球を突いた。
「別に変わりありませんよ」
 手球はまず3番に当たり、方向を変えて5番に当たる。
「うちの親父なら財界活動だか何だかで栄さんとお会いする機会の方が多いんじゃないですか」
「いくら何でもそんなに頻々と経営者同士の会合が開かれてるわけじゃないよ」
「知ってますよ。それよりもなお少ない、と言ってるんです」
 それぞれサイドとコーナーに的球は吸い込まれていった。
「翼さんにも同じこと訊かれましたよ、親子なんですね」
「大抵の場合、親子というのは似るものさ。喜びや悲しみ、様々な感情を分かち合うことができる、それが家族というものであり、麗しき美徳というものだよ」
 続いて、栄が打つ。打った球は、これまたそのままポケットの中に入っていった。
「それが、憎しみといった醜いものであろうとね」

142 :
 台に背を向け、清次は栄と向き合う。
「やっぱり、あなたの意向もあったんですね」
「勿論だとも、翼だけの考えじゃない」
 エプロンにキューを置き、清次は挑戦するかのように台詞を吐いた。
「こんなことをして、操が折れるとでも思いましたか」
「折るさ、折ってみせる。
 戦争とは外交の延長線上にあるものだからな」
 対する栄は、キューを手にしたままもう片方の掌を苛々と叩いている。
 その様を見た時、清次は危ういものを感じた。
「クラウゼヴィッツですか」
「小林よしのりじゃないぞ?」
「操もしますか? 篠崎をしたように」
「彼女に愛を誓わせたように、新しい愛を新しい伴侶に誓わせる。どうやってでもな」
「無理でしょうな。今でも、操は篠崎のものです」
 と嫌味たらしく首をすくめ、その言葉に応じる。
「おい、何と言った。もう一度言ってみろ。操が、私の息子が、あの女のものだと? あの卑しい女のものだと?」
「ええ、篠ざ……」
 突如として、フェラルが清次の顔を攻撃する。
「巫山戯るのもいい加減にしろ!」
 不意を突かれた彼の鼻っ柱に当たり、鼻腔には忽ちにして鼻血が溢れだした。
 もんどりうってうつ伏せに倒れこんだ彼を、さらに栄は突いた。
「さっきから聞いてりゃ他人事みたいに!」
 後頭部を、背中を、腰を、尻を。
「そもそもお前があの雌豚を最後まできっちり飼育してりゃこんなことにはなってなかったんだろうが!」
 ようやく打撃が止み、彼はゆっくりと立ち上がる。
 持っていたバーキンからラルフ・ローレンのハンカチ(さすがにこればかりはメンズのものであった)を取り出して鼻血を拭い、栄に声をかけた。
「気は済みましたか」
「はあ、はあ……。君なら、分かってくれると思ったがね」
「何をです」
「君が普通よりももっと近親相姦を忌み嫌っているのは知ってるよ」
 栄の言わんとするところを、清次は掴み兼ねた。
「私の貴賎相婚を憎む気持ちも、君の近親相姦を憎む気持ちと同等以上に強いだろう。私にしてみれば」
 一呼吸。
「貴賎相婚より近親相姦のほうがまだマシだ」
 話の趣旨は理解できたが、それに賛同しかねることを、清次は沈黙することで示した。

143 :
以上です。
>>131
GJでした。

144 :
投下乙

145 :
皆さん、こんばんは。
「あなたがいないなら何もいらない 第10話 権力欲の彼方」
投下します。
※……この話は架空のものであり、実在する人物、団体、事件、国家などとは一切関係ありません。

146 :
「娘も娘なら親父も親父だよ、ったく」
 退出した清次はその様に独語した後、再びタクシーを拾った。
 八雲邸に向かうよう告げ、BlackBerryを手にする。

「ああ、桂さん」
 警視総監に対して気安い口調で気安く電話を掛けた彼は、気安く頼み事を持ちかけるのだった。
「実はですね、ちょっと看過できないことが起こりましてね、お力を貸していただきたいのですよ……」

「おい三宮、お前ぁ爺様に地盤を譲ってもらった恩義を忘れたわけじゃあるまいな! ……ああそうかそうか! わかったよ、お前にはもう何も頼まねえ!」
 手荒に電源ボタンを押し、通話を切る。
「お仕事ですか?」
 不意に、タクシーの運転手が話しかけてきた。
「まあ、そのようなもんです」
「かりかりしていてはうまくいくものもうまくいかないものですよ。
 腰を落ち着けて事を進めるのが一番です」
「そうですね」
 と、取り敢えずは頷く。
(それができれば、苦労はしないのだが……)
 そう沈思していると、携帯が鳴りだした。
(桂か三宮の気が変わったか? そうならいいのだが……)
 ボタンを押し、出る。
「私だ」
『清次様、イケッタのことに関して厄介なことがありました』
 だが、淡い期待に反して、社用の連絡であった。
「厄介? 既にを起こされていて、今さら何が厄介なんだ」
『ハーバードの林口客員講師が心筋移植でTS細胞の臨床応用に成功したと、押売新聞が報じています』
「へぇ、それは凄いじゃないか。それの何が厄介なんだ?」
『わかりませんか、川中教授が会見で語っていた通り、TS細胞はまだ実際に手術に応用できる段階じゃないんですよ』
「じゃあ、虚報ってことか」
『押売と林口のどちらが主導的に嘘をついたのかまでは知りませんがね』
「それは馬鹿な奴だね。それとイケッタと何の関係が?」
 それに対する返事は、これまでよりより一層悲痛な声であった。
『イケッタの有効性の根拠となる論文は彼が書いているんです』
 彼もまた、それを聞いて事態の重大性を知り、息を呑んだ。
「……それは、まずいな。
 わかった、善後策を話し合おう。
 今、社にいるんだな?」
『はい。お待ちしています』
 通信が切れると、彼は運転手に行き先の変更を告げた。
「八雲製薬に行ってくれ、急用ができた」
「わかりました」
 そうして、彼は使用人に自邸に電話した。
「社用で帰ってくるのが少し遅れる、操は俺が帰ってくるまで丁重にもてなしていてくれ」
 タクシーは、都下を目的地へと走り抜けていくのだった。

147 :
「ただいま。ああ、疲れた……」
 何とか懸案をこなした帰ってきた清次が自室に入ると、やはり操は酒を飲んでいた。
「おお、お帰り、キヨ……」
 清次は隣にあったウィスキーボトルを一瞥する。
「こんな安酒を飲んでいたら体に悪いぞ」
「じゃあ何であるんだ」
「部下と飲んだ時のパワハラ用、もとい、罰ゲーム用だ」
 シーバスリーガル25年を手にして、操の前に置く。
「せめてこっちにしろ」
「ああ、じゃあ……」
 操が掴もうとした瓶を、清次は持ち上げた。
「その前に、チェイサーだ」
「チェイサー?」
「強い酒を飲む際に口直しに供される水や軽い酒のことだ」
「いらんよ、俺のチェイサーは亜由美との思い出だ」
「俺はいらんが、飲み慣れていないソウには必要だ。
 ちょっとまってろ、直ぐ着替える」
 と、彼はチャイナドレスを脱ぎ捨て、急いで着替える。
 上はシャツの上から黒のウェストコートを着用し、下はスラックスを履いた出で立ちになった。
「XYZにしよう」
「何だ、それは?」
「ラム、コアントローとレモンジュースをシェイクしたカクテルだ。
 ショートドリンクだから少し強いが、レモンの酸味で良い酔い覚ましになるだろう」
 スクイザーを手に取り、脇にある冷蔵庫から取り出したレモンを絞る。
 果汁をメジャーカップに注ぎ、カクテルシェイカーの中に入れる。
 次いでラムとコアントローもボディに注ぎ、最後に氷を入れる。
 ストレーナーとトップをかぶせ、シェイカーを手にし、振りはじめる。
 シャカシャカシャカ、シャカシャカシャカ。
 程なく混合を終え、カクテルグラスに注いだ。
「さ、飲め」
 促されるままに、彼はぐっと一口飲んだ。
「美味いな」
「だろ?」
 さらに飲み、彼はグラスを干す。
「じゃ、またウィスキーといこうか」
「ああ」
 タンブラーに氷を入れ、酒を注ぐ。
 無言で杯を掲げ、二人は飲みはじめた。
「あのあと、方々に連絡を取ってみたんだがな。
 警視総監もダメ、内務大臣もダメ。
 どうしたもんだか」
 その顔には、今や操に匹敵する程の憂愁を帯びている。
「あと残るは総理大臣くらい、……!」
 そこにまで話を及ばせた刹那、彼ははっと閃いた。
「そうだ、総理だ!」
「総理? キヨ、総理大臣とも伝手があるの?」
「当然だ、八雲製薬は国民党の大スポンサー様だぞ」
 いそいそと受話器を持ってくる。
「そうと決まれば早速」
 番号を押し、いまだ首相公邸に移っていない我が国の首相の私邸へと掛けた。
「この時間なら総理は家に帰ってきてるはず……」
 間を置かず出たのは、その秘書であった。
『はい、』
「星野か? 総理に繋げ」
 弾んだ声で、主を促す。
『わかりました』
 ややあって、電話が代わった。
 その相手こそが、日本国内閣総理大臣、九尾伊(くお おさむ)である。

148 :
「よお、九尾さん。首相就任、いや、再就任ですかね。まあともかくおめでとう」
『どうも、清次くん。八雲には本当に助かっているよ、資金面でも人員面でもね』
「お力になれて光栄です」
『参院選もよろしく頼むよ』
「もちろんですよ。またうちの連中に選挙を手伝わせますよ。
 ところで」
 と一旦呼吸をおく。
「治安のために拘引すべき人物が一人いますので、一刻も早い対処をお願いするためにご連絡申し上げました」
『ふむ』
 と合点がいったかのように相槌を打った。
『また、女と揉めたの? それとも詐欺かなんかで訴えられそうなん?
 笠松に話を通しておくよ。罪状は重い方がいいかい?』
 茶化すように言葉をかけ、こともなげに警察庁長官に不正を働かせることを示唆した。
「いいえ、今回はセフレでも商売敵でも取引相手でもありません。
 友人の姉貴がちょっとやらかしましてね、引導を渡してほしいんですよ」
 彼の声が訝るようなものに変わった。
『友人の姉貴?』
「ええ、名古屋でホテルの最上階から女子校生、じゃなかった、女子高生を投げ落としてしましてね。
 彼女の『身柄』と引き換えのギブ アンド テイクです 捕まえてくださいよ…早く捕まえてください」
 だが、九尾の次の言葉が彼が予想していなかったものだった。

149 :
一昨日は失礼しました。
投稿している途中で規制されてしまいましたので、避難所の方に残りの分を投下させていただきました。
URLを載せておきます。
http://www2.atchs.jp/test/read.cgi/kimosisters/1194270405/372-376
それでは、失礼しました。

150 :
あ、すみません。>>149は自分です。
お騒がせしました。

151 :
>145
GJ
姉が恐ろしい…
投下します。

152 :
本州からやや離れた位置にある島。
日に数度の定期船が往来するだけで、都会の喧騒とは隔離されたのどかな町が広がっている。
夏も本格的になりつつある日、一人の少女が港をぶらぶらしていた。
港の先端から海の彼方を眺めては、少し町の方へ歩き、そうかと思えばまた港の先端へ…。
何かを待っているらしい少女はそわそわしていた。
「(年に一度しか会えないからなぁ…)」
彼女は来るであろう客を心待ちにしていた。
最初に何と声を掛けようか?
何をして遊ぼうか?
どれだけ一緒に過ごせるのか?
去年、客人が去るときに彼女は大泣きした。
いや、去年だけじゃなく毎年のことで、来たときはひまわりのような笑顔を見せ、去り際にはにわか雨のような涙を流していた。
ブオォォォォォ―――
過去の行為に恥じらいを感じているそのときに聞こえてきた汽笛。
彼女は港の先端へ突っ走った。
危うく落ちそうになりながらも、その瞳はやって来る定期船を見逃さなかった。
「(やっと会える!!)」
小躍りしそうな喜びを抑えつつ、上品に気取って船着き場の出入り口へと向かった。
もっとも、そのあふれんばかりの笑顔で誰が見てもその心中はまるわかりだが。
降りてくる人を注意深く見つめ、目的の人物を逃すまいと探し続ける。
「トシヤ!!」
「マキ姉ちゃん…!」
刹那、飛びつきそうになる少女を船から降りてきた少年が手で抑える。
「ひ、久しぶり!!元気だった?」
「うん、僕は元気だよ、マキ姉ちゃんは?」
「私だって元気よ!!」
あれこれ考えていた最初の言葉は月並なものになった。
「さ、行きましょ!」
そう言って、少年の…、トシヤの手を握る少女、マキ。
「うん」

153 :
ミーンミーンと蝉の大合唱を聞きながら、島の舗装されていない土の道を歩く二人。
途中、島に唯一ある駄菓子屋により、アイスを買うことに。
「おやおや、今年も彼氏と一緒かい?」
駄菓子屋のおばあさんが優しく微笑みながら話しかけてきた。
「ちょっ?!彼氏とかそんなんじゃないわよ!!」
「………」
マキは顔を赤くしながら反論、一方のトシヤも赤面しそのまま顔を伏せる。
対照的な二人の反応だった。
しかしながら、二人共繋いだ手を離すことはしなかった。
駄菓子屋のおばあさんは多少、物忘れをしていた。
八原マキ、向田トシヤ、苗字は違えど二人は正真正銘の姉弟だった…。

やってきたばかりのトシヤの荷物を家の玄関に放り込むと、
そのままトシヤを引っ張って海遊びに興じようと急ぐマキ。
「マキ姉ちゃん速いって…」
「あんたに合わせてたら、日が暮れちゃうわよ!!」
マキはトシヤが滞在する間、存分に遊びつくすつもりだった。
それも例年のことだが…。
港から反対側には浜辺があった。
小さいが美しく、白く輝いている様な砂に透き通った海水。
その部分だけならリゾート地にも見えた。
「はぁはぁはぁ…」
「相変わらず体力がないわね」
「都会っ子にそんなもの求めないでよ…」
「見て、浜辺よ」
「わぁ…」

154 :
トシヤはその絶景に言葉を失った。と、同時に―――
「あれ?去年は他の子供達もいたのに…」
「皆、島を出て本土に行ったわ…」
実際、過疎化が急速に進み、島の存続が危うくなっていた。
もう子供はマキしか残っていなかったからだ…。
「マキ姉ちゃん…、寂しくないの?」
「―――あんたがいるじゃない。だから平気」
そう言って笑うマキは若干無理をしているようにトシヤには見えた。
「さぁ早く遊びましょ。二人締めした私達だけの浜辺よ」
その後二人は、蟹を採ったり、波打際で走り回ったりと大はしゃぎした。
気付くと辺りは夕焼けが照り付け、オレンジ色の世界が広がっていた。
「今年はどれだけいられるの?」
「多分一週間…」
「そう…」
「マキ姉ちゃん…」
二人はまた自然と手を繋ぎ、水平線に沈みゆく太陽を眺めていた。
「私、トシヤが好きよ」
「僕も…マキ姉ちゃんが好きだよ」
そう言い、互いの顔を見て笑う。
この言葉の意味するところが家族愛なのか、男女愛なのか…。
この時点で判断できる者はいない。

155 :
ただ、トシヤにはマキが寂しがっているのは常に分かっていた。
それは、島に彼女以外の子供がいないからとかじゃなく、
弟である自分と離ればなれだからだと感じていた。
無論、トシヤも寂しかった。姉と離れて暮らすのは心にぽっかりと穴が
開いたようだったからだ。
『僕と一緒に本土で暮らしてほしい』
何度、この言葉が喉元まで出かかって、引っ込めたかわからなかった。
そう、自分達は一緒にはいられなかった―――
彼らの両親が離婚したのは二人が物心ついたあたりだった。
マキは母親に引き取られ、故郷の島に戻ってきたのだ。
強制的に離された二人は大泣きし、会いたいと懇願し、遂には離婚した父母が折れ、
夏休みの期間だけ会っていいことになっていた。
しかし、島に来るのはトシヤのみで、父親は本土側の港で彼を見送っていた。
「帰ろう…」
「うん…」

156 :
母親は離婚したといえど、トシヤにも等しく優しかった。
やはり、自分が腹を痛めて産んだ子供だからだ。
夜になると、ちゃぶ台を囲み、夕飯を振舞っていた。
「マキはトシヤが来るのを楽しみにしててね」
「ちょっと、お母さん!!」
「カレンダーの前で、あと何日と指折り数えていたわよ」
「ふふ、なんか嬉しいな」
「―――!!」
マキは再び、羞恥で顔を真っ赤にしていた。

大人が独りで入るには窮屈な風呂釜は、二人の子供を難なく収めることが出来た。
「ここも、久しぶりだね」
トシヤは自分の家とは違う昔ながらの風呂に興味を持っていた。
「―――マキ姉ちゃん?」
「…う、うぅ」
「………」
一年分の寂しさが溢れたのか、とうとうマキは涙を零した。
「まだしばらくはここにいれるからさ…」
そう言って震えるマキの身体を抱きしめるトシヤ。
この時、八原マキ、11歳。向田トシヤ10歳であった―――

157 :
投下終了です。
またよろしくお願いします。

158 :
>>145
GJ
姉がどう弟を堕とすか期待してる
>>152
新作GJ
まだ姉がキモくないね

159 :
投下します。

160 :
島にはわずかな畑が存在していた。
出荷できるような量の野菜は採れないため、自給自足が主な目的である。
「トシヤ!!見てこの大きなトマト!!」
「う、うん…」
「あんたまだ食べれないの?情けな〜」
畑作業を手伝う二人。
風呂場で号泣してから翌日、マキはいつもの調子に戻っていた。
トシヤはそれに安堵しつつも、彼女が無理をしていることもわかっていた。
「マキ、トシヤ。少し休憩にしましょうか」
「「はーい」」
「お昼はそうめんでいい?」
「うん、いいy「えー、またー?」
「あら、マキはお昼いらないのね?じゃあ私とトシヤで…」
「う、嘘だって!お母さん!そうめん食べさせて!!」
「マキ姉ちゃんワガママだよ」
「う、うるさい!!」
このとき、マキは昼食が食べられなくなるから焦っている、とトシヤは考えていた。
しかし事実はトシヤと母親が二人きり、という状況に正体のわからない不安、
苛立ちをマキが感じていたからである。
まだ幼いながら、実の弟に対しての執着心を芽生えさせつつあった。
「お昼食べたら、遊んできていいわよ」
「え、ほんと?!」
「でも心配だから3時には一度帰ってきてね。かき氷作ってあげるから」
「「やったー!!」」

161 :
島は小さな山と集落からなっていた。
かつての島の子供達は海と山の両方を遊び、自然から知恵や感性を学んでいた。
山の頂上には神社があり、そこからの景色もまた絶景と呼ぶにふさわしいものであった。
視界の端から端まで水平線が広がり、わずかに曲線を描いていて地球が丸いことを実感させられるものだった。
「うーみーはーひろいーな、おーきーなー」
「その歌聞いたことある。でも古くない?」
「あんたいちいち茶々をいれてくるわね…」
「ふー、あついー」
神社の境内に寝転がるトシヤ。
「わぁ…」
視線の先にはどこまでも青い空に白い入道雲が浮かんでいた。
トシヤはこの景色が大好きだった。
都会でも見れるものだが、この島に来ると一層神秘的なものに見えるからだ。
「―――うん?そこにいるのは誰だ?」
突然声をかけられて、二人はびっくりした。
「あ、村長さん…」
「おお、八原さんとこの…。そっちは…」
「あ、お久しぶりです。トシヤです」
「大きくなったなぁ〜。今何歳だ?」
「あ、はい。10歳です」
島に唯一ある集落は村として治められていた。
この村長もかなりの高齢である。
妻には先に立たれ、子供は数人いたが、皆、本土に出稼ぎに行き、彼独りが残るのみであった。
「それじゃ、儂はそろそろ…。お母さんによろしくの」
ごく短い世間話を終えた後、彼は山を下りて行った。

162 :
「冷た〜い」
「うあ…頭痛い…」
帰宅した二人を待っていたのは当然かき氷だった。
マキは意外にもみぞれを掛けていた。通である。
トシヤはメロンシロップ、子供達の間では定番だ。
「落ち着いて食べなさいな」
「トシヤのドジ!!」
「あ〜…」
「食べ終わったら海にでも行ってきたら?」
「うーん、昨日行ったしなー」
「今なら潮も引き気味だから浅い場所を見れるわよ」
「ほんと?!よし、トシヤ、海行くよ!!」
「え〜…」
「ほら!!」
マキは二人分の水着を持つと、唸るトシヤを連れてささっと出掛けて行った。

「昨日は浜辺だけだったから、今日は泳ぐわよ」
「うん、一年ぶりだな〜」
誰もいないので二人して水着に着替える。
お互いに裸を気にする年齢ではなかった。
「あっ!!ゴーグル忘れた!!」
「何やってんのよ!そんなのいらないでしょ」
「でも目に染みるしな〜…」
マキは流石に島の子。
ゴーグル要らずで素潜りも出来る程だった。
反対に都会育ちのトシヤにはゴーグルは必需品だったのである。
「やっぱり取りに行ってくるよ!マキ姉ちゃんは先に泳いでて!!」
「あ、…待ってよ!私も行く!!」

163 :
トシヤは野道を駆け上がり、家に戻ってきた。
縁側から上がりこもうとしたときに、話声が聞こえた。
―――?!
不意に庭の茂みに隠れこみ、様子を窺う。
…別に知らない家ではないのだから、隠れる必要もないのだが。
後から追いついてきたマキもそれに倣い、トシヤの横に居座る。
「…どうしたの?」
「…誰かいるみたい」
「…お母さんでしょ」
「…いや、…もう一人」
「…あれは…村長さん?」
マキの母親、次いで村長が居間に入ってくる。
「なかなか元気でやっておるようですね」
「ええ、二人共すくすく育ってますよ…」
最初は世間話だった。
村長が家々を訪ね歩き回る、そんなのどかな風景。
しかし、次第に様子がおかしくなってきた。
「ふふっ…あんたも好き者だなぁ」
「…それは」
二人は異常なほど近い距離に近づき、モゾモゾし始めた。
トシヤ達からは、それがよく見えなかった。

164 :
「…何やってるんだろ?」
「…わかんないけど…」
次第に身体に熱を帯びるのを感じたマキ。
そう、これは知っている。
知識でのみだが、あれは…。
「ああっ!!せめて寝室に…」
「へへっ、子供達なら当分帰ってこないだろうよ。でもここのほうがスリルがあるだろう?」
マキは茫然としながらその光景を見ていた。
視線の先にいる二人がやっているのは子供を作る行為だった。
何故彼らがそんなことをやっているのか、マキにはわからなかった…。
だが、さっきよりも熱を帯び、自身が興奮しているのは認識していた。
隣にいるトシヤはどうだろうか?
マキは視線をずらしてみた。
トシヤは興味半分、恐ろしさ半分という感じだった。
「…行こう、見つかるとまずいよ」
「…うん」
マキはトシヤを連れて家を離れ海岸まで戻ってきた。
「………」
「………」
二人共無言だった。
喧嘩したわけでもないのに、嫌な空気が二人を取り囲んでいた。
「…トシヤ、大丈夫?」
たまらず、マキは声を掛けた。
「…うん、大丈夫だよ」
言葉とは裏腹にトシヤは心ここにあらずだった。
さっきの二人の行為に混乱しているのだろう…。
マキはそう察して、トシヤの横に座り日が暮れるまでずっと傍にいた。

165 :
それから、トシヤが戻るまでの日々はあっという間に過ぎた。
遊びつくすつもりだったが、トシヤはあの日以降、急によそよそしくなった。
畑仕事では無言、食事中も必要以上に喋らなかった…。
風呂も別々に入りたいと言い、海で泳ぐこともしなかった。
マキはそれを寂しく思いつつも、トシヤに従った。
しかし、一方ではトシヤに対する思いが強くなっていた。
トシヤを見ると、胸が苦しくなった。
こんなことは今まで一度も無かったのに…。
別れの際、マキはいつも通り泣いた。
トシヤも寂しい表情をしていた。
「また来年…」
そう言い残し、船に乗り込み島を後にするトシヤ。
マキは願った。
またトシヤが来てくれますように…。

翌年、トシヤは来なかった―――

166 :
投下終了です。

167 :
GJ
お姉ちゃん置いてくなんて酷い弟だ

168 :
武術家同士の漢と漢の戦いを見守るキモウトの作品を希望
半端な萌え厨だの恋愛脳だのの入る余地すらないのがいい

169 :
>>168
鬼哭街

170 :
あれは主人公がパンツ脱がないからNG
そもそも、トンデモ描写が多すぎてやってて萎える

171 :
>>170
装甲悪鬼村正はどう?主人公パンツ脱いでるし、地上戦は結構リアルな剣術やってるよ(空中戦はトンデモだらけだけど)

172 :
・・・つーかよくみたら名前からして奈良原信者だった。余計なお世話だったかな

173 :
食材編とか要らんわホンマ

174 :
今までのでお勧めくれ

175 :
片っ端からwikiにあるやつ読んどけ

176 :
投下します。

177 :
「えー、皆さんは明日から夏休みを迎えますが、えー、くれぐれも体調を崩さず―――」
とある中学校の体育館で校長が夏休み前の講話をしていた。
没個性的なその内容に生徒は勿論、教師達も耳を傾けることなく、夏休みの予定を各々考えていた。
そんな中に八原マキの姿があった。
「マッキー、明日からどうするの?」
「んー、とりあえずはお店の手伝いかな」
「へー、実家には帰らないんだ」
「お盆前には帰るよ。でも何もないしね…」
「島だったね、マッキーの実家。浜辺とか綺麗そうじゃない」
「まさか…。ただの未開の地よ」
「ハワイみたいじゃん。いいなぁ〜」
「おめでたい幻想は止めときな」
いつの間にか講話は終わり、後のホームルームをやる気なく過ごし、昼前に下校となった。

「じゃあね、マッキー。今度遊びに行こ。メールするから」
「うん、またねー」
マキは中学三年生になっていた。
島にいる間、即ち小学生の頃は通信教育で修了することを許されていた。
マキの年齢や、離婚による財政的な問題もあったからだ。
しかし中学以降となると、そうもいかなかった。
中学校で学ぶ科目を通信課程で済ませるには限界があり、
また母親が普通の学校生活を送らせたいと考えていたからだ。
マキ自身もそれには同意していた。
学校がどういうものか、中学校に入学するまで知らなかったからだ。
そして中学校に通うということになると、島の外で暮らさなければならない。
当然母親にマキを一人暮らしさせる余裕はなかった。
そこで助力したのが村長だった。
彼の知り合いに港町で定食屋を経営している者がいたので、
話を持ちかけマキを下宿させてもらうことになった。
条件として、店の手伝いをすることは必須だったのだが。

178 :
「マキちゃん、皿洗いよろしく。それが終わったら、仕込みの手伝いね」
「はーい」
トシヤが最後に来た五年前の出来事―――
当初は母親に不信感を抱いていた。
が、成長するにつれマキも色々と知り、母親について責める気にはなれなかった。
身寄りのない母娘が社会で暮らす為には色々と苦労がある。
自分が住み込みで働きながら学校生活を送れるのも村長との情事が関わってるんだろう。
感謝こそすれば恨むなどは筋違いである、と考えていた。
しかし―――
それ以来、来なくなったトシヤのこと。
マキはずっと心に引っ掛かるものを抱えていた。
どうして来ないの?
怖かったから?
軽蔑したから?
混乱したから?
その一点だけ―――思い続けてきた。
そして中学生としての最期の夏休み。
マキはとある計画を練っていた。
向こうが来ないならこちらから行こう―――。

トシヤの住む町は都心部の外円に位置するベッドタウンだ。
かつては家族四人で暮らしていた場所である。
離婚後は母親とマキはずっと立ち寄ることはなかった。
マキはおぼろげな記憶を頼りに、トシヤの家へ向かうことにした。
幸い住所はメモを取っていた。
しかし五年前の物であるため、今もそこに住んでいるのかという不安は消えなかった。
マキの頭に最悪の結末が浮かぶ―――
更地の土地。
行方知れずの尋ね人。
もう二度と…。
首を振り、嫌な考えを消した。

179 :
特急とローカル線を乗り継ぎ、一路都心へ…。
長旅になるが、マキにはお金があった。
働き続けて得た賃金を大事に貯めていたのだ。
今日、この日のために―――

目的地の近く、最寄駅にいよいよ到着した。
電車を一歩降りて、排ガスの淀んだ空気がマキを襲った。
こんなに空気が違うものなのか…。
駅から歩きながら、マキは考えていた。
再会の第一声は何にしようか…。
五年前と何も変わってない自分に気づき、一人で笑ってしまった。
マキは頭の中でイメージを浮かべていた。
どう成長しているのか―――
声変わりは?
背は大きくなったか?
私を見て分かるだろうか?
私への最初の言葉は…。
?!
ふと、再び嫌な考えが出てきた。
トシヤが来なくなったのは母親と村長との密会が理由だろう…。
そして私にも…、私にも同じ目を向けてくるのだろうか…。
軽蔑、非難、嫌悪、そして決別の意思を伝えてくる―――!
ぐるぐると眩暈がして、そばの壁にもたれる。
まさか、トシヤに限ってそんなことは…。
しかし、その仮説を否定する理由もなかった。
家まであと少しのところで、マキは進めなくなった。
恐ろしかったのだ。
暑い夏の昼下がりにも関わらず、マキは両手で自身の身体を抱き震えていた。
人通りは無かったので、その奇行を見られることがなかったのは幸運だった。

180 :
しばらくして、落ち着きを取り戻し再び進む。
わからないことで怯えていても仕方がない。
まずは真実を確かめることだ。
しかし、もしトシヤが本当に自分を拒絶したときは―――

とうとう家の前についた。
変わっていない、と思う。
確かに年月が経ち、古ぼけてはきたが間違いはなかった。
表札には向田と記されていた。
あとはインターホンを押すだけだった。
指が震える。
ボタンを押す、これだけの行為なのに何で怖いのか…。
そのとき、通りから声が聞こえた。
人の家の前で何もしないまま立っているのは怪しまれるだろう。
マキはそう思い立ち、その場を離れることにした。
しかし、どこかで聞いた声だった。
もしかしたら…。
近くの曲がり角に身を潜め、様子を窺う。
傍から見れば変質者そのものだった。
本当に人通りが無かったのは幸運だった…。
声の主がやってきた。
二人いる―――、男女だ!!
男の方は…。
見間違えることはありえなかった。
男の方はトシヤだ。
背は随分伸びた。
昔はマキのほうが高かったが、今は見上げるくらいだ。
肌は浅黒く、健康的に見えた。

181 :
五年ぶりに見た弟にマキは感動していた。
それだけトシヤは成長していたのだ。
今すぐ会いに行こう。
そう考えたマキを止めたのが、横にいる女の存在だ。
家の前で何か話している。
そして、トシヤに手を振り歩き始めた。
こちらに向かってくるので、マキは慌てて歩行者のふりをする。
すれ違うときに女の顔を見た。
顔立ちは中々美しく、モテるだろうと思うほどだ。
問題は―――この女はトシヤとどういう関係なのか。
そこで、自分が何を考えているのか気付き、訂正する。
弟がどう恋愛しようが私には関係ないことだ。
だって、私達は…姉弟なのだから…。
自身の中にある何かに戸惑い、そしてこの気持ちが何なのか…。
マキは分からなくなった。
結局、あれほど会いたかったトシヤとは顔を合わせることなく、マキは帰路についた。
恐ろしさからの逃亡、あるいはもっと別の何か他の気持ちが…。
答えが出ないまま下宿先に帰り着く。
「ただいま…」
「あっ、マキちゃん!!」
下宿先のおばさんが駆け寄ってくる。
「いい、落ち着いて聞いて、実はね…」
「はい?」
「お母さんが―――倒れたらしいのよ」
マキにはその言葉が理解出来なかった―――

182 :
投下終了です。
ペースが落ちてますが、頑張ろうと思います。

183 :
GJ
姉視点が新鮮で良いね

184 :
キモウトって長編だと最後にぬ確率結構高くないか

185 :
規制解除きたけど、前来てた人達は戻ってこないのかな?終盤で止まった作品がちらほら…

186 :
規制とは関係ない希ガス

187 :
でも最近は静かだし戻ってきてほしいなぁ…

188 :
投下します。

189 :
母親が倒れたと聞いて、マキはすぐさま島に帰った。
帰り着いた時、母親は既に危篤状態だった。
しかし最期に会話出来る機会があり、マキは母親に今まで自分を育ててくれた
お礼を言った。
母親は多くは喋らなかったが…、遺書の存在をマキに教えた。
それから半日もしない内に息を引き取ることになった。

「南無妙法蓮華経―――」
数日後、マキの母親の葬儀が行われていた。
参列者は島民達だった。
元々身寄りが無く、残った血縁者はマキとトシヤだけになっていた。
財産はほとんどなく、住居も村長からの借家であった。
そして、葬儀代も村長が全額出していた。
これに対してマキは働きながら返すと主張したが、村長は受け取れないと拒否した。
マキが一人前に成長することが、母親が一番喜ぶことだと説得した。
結局、マキは一円も払うことなく、葬儀の喪主を務めていた。
そんな中、参列者に島民じゃない者が現れた。
「マキ…姉さん………」
「―――!トシヤ…」
それはお互いにとって思わぬ再会になった―――。
「―――父さんも来てるよ」
「…そう」
「流石に合わせる顔がないって言って、外で待ってるけど」
「―――んで」
「え?」
「呼んで。最期なんだよ…、顔ぐらい見てあげて…」
マキはぽろぽろと涙を零しながら言った。

190 :
10年以上会っておらず、記憶もおぼろげだが、父親の顔は酷くやつれているように見えた。
そして―――母親の棺の前で静かに涙していた…。
マキは怒りと悲しみが入り混じった感情で父親を見ていた。
何故悲しいの?
何故離婚したの?
何故傍にいてあげなかったの?
すると、マキの前に来て―――
「すまなかった、マキ。母さんにも―――」
土下座してマキに謝罪した。
マキは何も言えなかった。
ただ涙が止まらなかった―――

火葬も終え、参列者達も帰って行った。
ただ、父親とトシヤはマキの家に残っていた。
「マキ姉さん、ちょっと…」
そう言って、外に連れ出したのはトシヤだった―――
夏の夕暮れが迫る中、いつかの海辺に二人はやってきた。

191 :
「………」
「―――久しぶり、だよね」
「………」
「ゴメン、ずっと来れなくて!!」
「………」
「別にあの日のことを避けてたわけじゃないんだ…」
「………」
「言い訳にしかならないけど…色々あったんだよ…。父さんの会社が潰れて…
一時期は家を手放す寸前までいったんだ」
「そう…」
「でも何とか新しい就職先を見つけて、細々と暮らしていけるまでには―――」
「母さんは―――ずっと一人で頑張って来たのよ…」
「―――そうだね…。ゴメン…」
「………」
二人の間にしばらく沈黙が流れた。
「マキ姉さんは…これからどうするの?」
「わからない…」
トシヤは何かを言おうとし、言いよどみ―――
「あの…さ、もしよかったら…また一緒に暮らさない?」
「っ?!」
「父さんは―――そうしたいと思ってる。僕だって…」
「今更…、そんなの…」
「マキ姉さん…。お願いだ、独りで生きていくなんて無理だよ…」
「…考えさせて」
マキはそう言い、その場を後にした。
海辺に残されたトシヤは寂しげだった―――

192 :
夜が更けた。
父親は最後の船便で本土に帰って行ったが、トシヤは泊まることになった。
夕食はトシヤが作った。
マキは消衰しており、とても家事が出来る状態ではなかったのだ。
食卓を二人で囲みながらいつかの記憶が蘇ってくる―――
あの頃は、苦しいこともなかった…。
毎日が、楽しみだった。
二人共、同じ思い出に浸っていたが、一言も会話しなかった。

「おやすみ、マキ姉さん…」
そう言ってトシヤは部屋を出て行った。
寝床は別々にした。
トシヤとしても年齢的にも気まずいところがあったからだ。
マキはぼぉーと虚空を見つめていた…。
何かを考え、消えてはまた繰り返し―――
どれぐらいそうしていたのか…。
ふと豆電球の明かりの中、立ち上がり部屋を出て行った。
トイレ…ではない。

193 :
行先はトシヤの泊まっている部屋だった。
引き戸を開けると、布団に入って寝ているトシヤがいた。
「ん…マキ姉さん…?どうしたの?」
「………」
「眠れないの?」
「…トシヤ、あなたが来なくなって5年も経ったわね…」
「…そう、だね」
「寂しかったのは…母さんだけじゃないのよ、私だって―――」
「………ゴメン」
「母さんがんで…今更一緒に暮らそうだなんて、都合良すぎると思わないの?」
「だって…、母さんはいつも…はぐらかしてばかりだったから…」
「…えっ?」
「遊びに来てた頃には、何度もお願いしたんだよ…。でも…」
「それで…今度は私…?」
「姉さんだって…それを望んでたんじゃないのか?…」
「?!」
確かに、昔はそうだった…。
いや、つい最近までは、母親がぬまでは…。
「お願いだ、僕に出来ることは何でもするから…」
何でも―――
マキは頭の中で言葉を何度も繰り返した。
「じゃあ、償って…」
「えっ?!つぐない…?」
「私を…慰めて」
―――?!!

194 :
刹那の後、マキはトシヤにキスしていた。
触れるだけの、優しいキス…。
「ね、姉さん?!!」
トシヤは布団から飛び出そうとした、が―――
「待って」
簡単にマキに組み敷かれてしまった。
「(うっ動かない?!!何て力…)」
年齢からみて平均的な身体つきのマキの何処にそんな力があるのか…。
男のトシヤが完全に捕えられていた。
「何を―――」
「何でもするって言ったじゃない」
「いや、でも僕達は姉弟―――んんっ?!!」
「―――ん」
今度は激しいキスに…。
まるで相思相愛の恋人達が、夫婦がやるように…。
「はぁ―――。あなただって…寂しかったんでしょ?」
唾液がお互いの口に伸びる―――

195 :
「―――そうだけど…こんな…」
「昔、好きだっていってくれたじゃない…。嬉しかったんだよ…、
でもそれが男女の愛だってあのときは気付けなかった…。
今なら…」
「マキ姉さん…。こんなのは間違ってるよ…」
「あなたが反対しても私はやめない。それに、これは償いよ…」
「そんな…待ってk―――」
「さぁ、私を慰めて…」
あとは一方的だった…。
その夜、一組の男女が契りを交わした。
お互いに初めてだった―――

マキは夏休み中に転校届を出し、島から出ていった。
2学期が始まるころにはトシヤと同じ学区に通うことになっていた―――

196 :
投下終了です。
少しでもスレが盛り上がれば…。

197 :


198 :2013/09/28
すばらしい
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