2013年10エロパロ357: ハケン【ドラマ】黄金の豚でエロパロ【とっくり】 (499) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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ハケン【ドラマ】黄金の豚でエロパロ【とっくり】


1 :2010/11/09 〜 最終レス :2013/09/17
○再放送につられてスレたててみましたが…何か?○
・ドラマ『ハケンの品格』&『黄金の豚』に今更萌え滾るスレです。
・エロはもちろん小ネタ、ほのぼの、甘々も大歓迎。
・荒らしはハエにとまられただけだと思ってスルーで。
・801はグレーゾーン。好みは人それぞれ
・文章の初めにカップリングを示すやさしさ。


2 :
スレ立て乙!!
2GET!!

3 :
今日黄金の豚だ。そういや昔あったハケンのエロパロ版って保管庫ないんだな。

4 :
わっ!たってるw
>>3
まだあると思う

5 :
1乙
今日の黄金の二人めちゃくちゃ可愛かった

6 :
角松が母ちゃんに「ようこさんと同じ布団でいいわよね」って言われた時の顔がツボったw
婚約者ならHぐらいしてるだろうに

7 :
>>3

http://wasabimaru.h.fc2.com/haken/index1.htm

8 :
つ四円

9 :
>>7
つ30円
感謝!

10 :
わーい>>9さんに30円もらっちった!
ってことで作品投下
初文章書きなのでいろいろなとこに目をつむっていただきたいです…
一郎×芯子(洋子時代)
エロなしです
長くなっちゃいました
先に謝りますスンマセン

11 :
『堤洋子』になりきるのは思いの外、神経を費やす。
男言葉は使わない。
がに股にならない。
スカートを履いていつも清楚な服装。
振る舞いもそれはそれは女の子らしく。
気付けば部屋のクローゼットの中には、絶対に自分では買わないような洋服やバッグがずらりと並ぶようになった。
それを眺めながら芯子は腕を組む。

「…にしてもこんなぶりぶり、私の柄じゃねぇな」
ターゲットを落とす必要経費ではあっても、やはり自分の趣味ではないもので部屋が埋め尽くされるのは、いささか気が滅入る。
まぁその経費が相されるぐらい(むしろそれ以上に)踏んだくってやるつもりだけれど。
ふと部屋の時計に目をやる。
待ち合わせの時間はもうすぐだ。

「やっばい!こんなことしてる時間ない!遅刻すんじゃん!!」
慌てて髪を結って部屋を飛び出す。
階段をドタドタと降りていきながら、左手の薬指に例のものが無いことに気付いた。

「あッ…忘れた!」
階段で急ブレーキをかけて部屋に駆け戻る。
慌てていたからか部屋のドアに豪快に足の小指をぶつけて激痛が走る。
ガンッ!!
「あだ…っ!」

前のめりにベッドに倒れ込み、顔をうずくめる。
「っつう〜、痛ぁ……」
「ちょっと芯子!なにドタドタやってんの!店まで丸聞こえだよ!」
階段下から母の啄子が声を荒げる。

「うっさいなぁー、なんでもないっつーの!!」
くっそう、なんであのターゲットの為にこんな思いまでしなくちゃいけないんだ…。
痛む足の小指に堪えながら窓際に置いた指輪ケースに手を伸ばす。
婚約指輪として渡されたそれを薬指にはめる。
一瞬だけ窓から差し込む光にそれをかざしてから、再び慌てて部屋を飛び出した。

12 :
「え、なにこれ」
綺麗にラッピングされた小包を手渡され、芯子は意味がわからずターゲット
――角松一郎を見た。
一郎は芯子の座るソファの横に腰掛け、にっこり笑うと嬉しそうに口を開いた。

「記念日」
「記念…日?」
「そ。俺と洋子が婚約しようって決めてから今日でちょうど1ヶ月」
あ、さいですか。
芯子はあまりの一郎ののめり具合に改めて驚く反面、ちょっぴり胸が痛んだ。
恋愛じみたことを続ける度、この人は傷付いてしまうのに。

「あ、ありがとう…」
開けてみてよ、と一郎に催促されラッピングを丁寧にはがしていく。
可愛いネックレスだった。
「貸して、つけてあげる」
言われるがままにネックレスを手渡して向かい合ったまま距離を縮めた。
一郎の腕が芯子の首の後ろにまわり、少しだけ抱き合うような体勢が続く。

「あれ、なんだこれ。くそっ、うまくいかねぇな」
小さなフック穴を通すのが馴れていない一郎は、そう言いながらネックレスと格闘している。
芯子はそのままじっと一郎の胸の近くでネックレスが付けられるのを待っていた。
伸ばされた一郎の首筋から、少しだけ男の人の汗の匂いがした。
仕事、大変なのかな。
ふとそんな思いが芯子を占めた。
一郎が公務員だというのは聞いていたが詳しい仕事は知らない。
思えばいつもこうして優しくしてくれる。
私に騙されてるなんて思いもしないで。
優しい男。
優しい男なのに、なんで私なんかに引っかかっちゃうの。
貧乏だ、嘘つきだと子供の頃からイジメられ続けてきた芯子にこんなに尽くしてくれる男なんていなかった。
だから勘違いしてしまいそうで嫌なのに。
そんなことじゃ詐欺師としてプライドが許さないのに。

13 :
「ついた!」

パッと一郎の腕が離れて芯子は慌てて我に返った。
自分の首もとには可愛らしいペンダント。

なんでこんなに優しいの。
なんでこんな私なんかに優しくするの。
詐欺師として矛盾した思いが胸の中でモヤモヤと広がりはじめ、迂闊にも涙がこみ上げる。
「うん可愛い…って洋子?ちょ、どうした」

芯子が唇を噛みしめて涙目になっている姿に一郎は動揺を隠せない。
「ご、ごめん。ネックレスとか嫌だった?」
慌てて見当違いな謝罪を始める一郎が可笑しくて、少しだけ芯子の心が安らぐ。

「ううん、違うの。…違くて」
優しすぎだよ、と俯いて小声で呟く。
いつもは演技で可愛くぶりっ子するのに、今だけは本心だった。
一郎の手がそっとその芯子の頬に触れた。
つられて顔を上げた芯子の視界で一郎の顔が静かに近付いてきたのが見えたので、ゆっくりと目を瞑った。
次第に一郎の体重が少しだけかかり、ソファに優しく押し倒された。

今日だけはいいか…。

芯子は一郎のクルクルな髪の毛に手をまわす。
大型犬を撫で可愛がるかのように触りながら、一郎の口づけにそっと応えた。


********

次の日。
母、啄子は店先で野菜を品定めする芯子を見つけ不審な眼差しを送る。

「なんだい芯子、珍しく店手伝ってくれるのかと思ったら一丁前にウチの商品にケチつけるってかい」
「ちっげーよ、食材選んでんの!」
うるさいな放っておけよ、と付け足して芯子はニンジン、玉ねぎ、ジャガイモを手に取る。

14 :
「食材?なにアンタ、料理も出来ないくせに」
「出来ないんじゃないの、しないだけ!カレーぐらい楽勝だし」
思えば一郎に何かをしてあげたりプレゼントしたことがなかった芯子は、昨日の一件でちょっとだけ、ほんのちょっとだけ優しくして料理でも作ってあげようと改心していたのだ。

「…ふーん」
「…?なんだよ」
「男だね」
「バ…ッ!違うし!な、何言ってんのかーちゃん!!」
「なになに芯子姉ぇ、彼氏できたの?」

店先が騒がしかったからか、奥から妹のみぞれも顔を覗かす。
「そういえば最近芯子姉ぇの服装可愛くなってきてたしね」
「だから違うって言ってんじゃん!」

妙に納得し始める啄子とみぞれに何を言っても無駄だと悟った芯子は、袋に野菜をつめてその場を立ち去る。

「ちょっと芯子!商品なんだからお金置いてきな!」
「なんだよケチくせぇな、帰ってきたら払うよ!」

全く調子が狂う。
ちょっと良いことしようとするとすぐこれだ。
腹立つ。
彼氏?違う違う。
ただのカモ。昨日はほだされかけちゃったけど、私は詐欺師よ?
金をせしめるだけせしめたらハイさよならだ。
そう心の中で言い聞かせて一郎の部屋に向かう途中、一軒のブティックのネクタイディスプレイに目がとまる。
…ネクタイか。
父親のいない芯子にとって男性にネクタイをプレゼントをするなんて経験のない事だった。

15 :
わっふるわっふる

16 :
ふらっと店内に入り色とりどりのネクタイを見て回る。淡い紺地にうすくブルーのストライプが入ったネクタイに目がとまった。
一郎に似合いそうだな。
そう思った瞬間、女性店員が芯子に声を掛けてきた。

「恋人にプレゼントですか?」
「ち、違いますッ!」
思わず手にしていたそのネクタイを放り投げて、とっさに目に入った黄色地になんの動物だかわからない刺繍が施された、趣味の悪い派手なネクタイをつかみ、こっち下さい!と大声を上げていた。
そうよ私は詐欺師。
好きでもない男に嫌がらせでこんな悪趣味なプレゼントしちゃうんだから!
このネクタイ見てあの人はどんな顔をするかしら。
くくく、とわざとらしく悪い振りをして一郎の部屋へと急ぐ。

まさか一郎が嬉しさのあまり、その悪趣味なネクタイを気にもせずに喜んでくれるなんて思いもせずに。

(終わり)

お目汚し失礼しました
それ以来、派手で悪趣味なネクタイをこれでもかってくらい一郎にプレゼントするツンデレ芯子を想像しました
それを今でも大事に持ってる一郎、とか
長々と失礼しました…

17 :
素晴らしい想像力ですw
是非実写で見たい

18 :
おおおっ!!
やっと職人現る!ありがとうございます!!
エロなくても充分に萌えたw

19 :
>>7
乙!
楽しませてもらった!
やっぱり心子はダブルパーのどっちでもいいから
くっついて欲しい

20 :
おおおぉ!グッジョブ!b
ツンデレ芯子もえー
ドラマでももっと角松にツンデレしてほしい!

21 :
gj!クローゼットの中のネクタイを見るたびに苦い思いをするといい。

22 :
後ろ向いてみて・・・。
まるでいっしょ、区別つかねー。

23 :
職人さん新作期待してますよ!
くるくるパーマで萌えてしまう自分が心配だ

24 :
職人さあん!!!
早く読みたい
なんかすごく萌える

25 :
黄金の豚の為にぴったり定時退社してしまった。大前春子気分だ

26 :
久しぶりに1日中楽しみだなってわくわくしていられるドラマ
内容はたいしたことないし寒い時もあるけど無償に楽しみ
篠原涼子と大泉洋の絡みが微笑ましい
なにげに桐谷健太いいかんじ

27 :
来週の予告に全力で釣られるぞっとw
何の話をするんだ角松よ!

28 :
きゅうりプレイ想像してニヤけた

29 :
予告で芯子が角松に抱きついてたのは気のせいか?
自分も全力で釣られてみるw

30 :
まあ裏はあるんだろうけど抱きついてるよ
予告動画一時停止して楽しんでる

31 :
芯子がホテルの8階にいるってわかった瞬間すぐ駆け出していった門松に萌えた
来週の抱きつきと二人っきりでの話が楽しみだww

32 :
楽しみだけど・・・結局はオチだろw
高級クラブで金使いすぎたから芯子に詐欺に遭った金を返せと要求するが
抱きつかれて話逸らされる・・みたいな
大泉のブログとか篠原の連載コラムに2ショット写真有るよ
2人ともお似合いで可愛いから萌えたい人は是非どうぞ

33 :
>>32
連載コラムってなに?

34 :
>>33
In Redの12月号
2人が肩ならべてVサイン
大泉のは月額払ってみる携帯サイト
雨降ってて機嫌悪い大泉の横で能天気に笑う篠原w
「篠原涼子・・なんて無邪気なんだ・・可愛いから許す!!」ってコメントしてるよ

35 :
大泉ってブログやってんだ
知らなかった
角松が補佐に
「事務のハケン呼んで下さい」って頼んだから
大前春子が来るのかとドキドキしたw

36 :
>>35
自分もそう思った

37 :
むしろ大前春子登場してくれと思う
また春子のツンデレ見たい

38 :
 一郎が襖を開けると、一組の布団、枕が仲良く二つ並べられたそれに堤芯子が胡座をかいていた。
 結局温泉には入らずに家の風呂を使ったため、まだしっとり濡れたままの髪を乱暴に拭き続けていた芯子が、襖の紙擦れの音にこちらを見やる。
「おそかったな?」
 アンタの母ちゃんに、これ二人で使って下さいね、って言われたんだけど?
 指されたのは芯子が下に敷いている一組の布団で、これを二人で使え、は一郎も言われた。
 枕はあるのに布団はないってのも面白い、と呟く芯子に、一郎が深いため息を吐く。
 正直襖をあけた時に彼女が元婚約者ママ粛々と座って居たらどうしよう、とドキドキしていた。
 この一ヶ月で堤芯子というそれこそありのままの人間を知ったというのに。
 期待すればしただけ裏切られるというのに。
 例えば過去だとか、最近でいうならあの時とか、あの時とかッ! 否、期待なんか、していないけれど!
 一郎は思い出した諸々にムカムカとしながらも、それをぐっと耐え込んで、布団に座る芯子に手を差し出した。芯子は訝しげにその手を見る。
「何」
「枕一つ寄越せ」
 向こうでアイツ等と一緒に寝るから、と面倒くさそうに言う一郎に、芯子は僅かに口角を上げる。
「あっれーぇ?」
「なんだ、早く枕寄越せ」
 言われた言葉に従うように、芯子は枕を一つ取り上げると、けれどそれを手渡すでも投げるでもなく、前に抱えた。そして、可愛らしく小首を傾げると詰まらなそうに唇を尖らせる。
 こんな女、か、わ、い、く、な、ん、か、と思うのに、一郎の単純な心臓は早鐘を打つのだからなんだかもう、自分で自分が情けない。

39 :
「……なぁに、角松さん、せっかくお母様がお布団ご用意して下さったのに、あっちでお休みになるんですかぁ? ヨーコ寂しい……」
「バッ……!? 馬鹿言ってないで早く寄越せッ」
 この、男タラシが! とうとう叫ぶようにそう言うと、柔和に細められていた芯子の眦がキリリと上がった。強気の瞳がガッツリ一郎を睨む。ちょっとビビる。
「……寄越せ寄越せ言ってないで枕の一つくらい自分で持って、け、っつーの!」
 ひっつかまれた枕は、一郎の顔目掛けて綺麗に飛び、その顔面を強か叩いた。
「ブッ……おいこら投げるな!」
「あーもーっさいな、とっとと出、て……ると寒いから、早くお布団入りましょ、ね? シ……一朗さん」
 突然声色と喋り方が変わった。
「あ? お前何言って、」
 角松は、コイツ頭大丈夫か、と訝しむが、芯子が、自分の後ろの誰かに小さく会釈をしたのを見て、動きを止める。後ろの、誰に? そんなこと、決まっている。
「一朗、明日も早いんだから、早く寝なよ?」
 母であった。
 途端に、角松の挙動は不振になる。当然だ。普段のように罵倒し合うことは、即ち自分と婚約者の仲を隠し通せなくなること。避けねばならない第一優先事項なのだから。
「か、あちゃ、お、おお、寝るわ! 寝よ寝よ、な、洋子!」
 母親の前で『自分の女』とそそくさ一つの布団に入るのもどうかと思うが仕方ない。促すように二人で布団に潜り込む。自然に身を寄せ合う形になるその格好に、芯子があからさまに眉間に皺を刻む。が、構うものか。
「本当に仲いいわねえ」
「はぁい(もっとそっち行け!)」
「お、お休みぃ〜(これ以上行けるか馬鹿! ギリギリだわ! お前こそもっとそっち寄れ!)」
 小声の言い合いを『もっとこっちに来て』『これ以上行けるか馬鹿! 母親の前だぞ!』とでも取ったのか? それじゃ、私もアテられちゃう前に休みましょ。と、何を想像したのかわからない母は、お休みなさい、と襖を閉めた。
 遠ざかる足音、布団の中の二人は、仲良く溜め息を吐き出す。
「で?」
「あ?」
「一緒に寝るわけ?」
「寝るか馬鹿!」

*
*
*

「あっちで寝るんじゃないんですか?」
「出来るわけねえだろ」
※※※
すみません最初に初めましてのご挨拶しようと思ってたのに焦って書き込んでしまいました…。
一応4話の布団話です。
お目汚し失礼いたしました!

40 :
GJ!GJ!
目に浮かぶやりとりww
昼休みに覗きにきてよかったw

41 :
天才!
情景が目に浮かぶ

42 :
>>38
心からの乙を!
布団の中でのもぞもぞいいわあw
翌朝爆発天パでボーっと昨夜の事ちょっと惜しかったなとかって思い出すんだな。
それを同じく爆発天パの工藤が?てな顔で眺めた後に起きだしてって
芯子さんが居ない!となるとこまで浮かんだ。
てか、男部屋に角松が戻ってくるとこ見るとちょっと離れてる印象あるけど
襖挟んで隣の部屋だよね?
やりとり筒抜けだった可能性もある、かな?
ずいぶん仲良いんですね、て嫉妬するといいよ工藤w

43 :
gj
頻繁に覗きに来ててよかったあ

44 :
GJ!
見に来てよかった〜!

45 :
何でもいいので、萌えをください!

46 :
反応ありがとうございまつ!
調子にのってもう一本投下します。突貫なので荒いですが、5話の、錦に啖呵切った後の話です。
ほんのり角松×芯子(むしろ芯子×角松)です。

47 :
 教育管理委員会の無駄の一つを潰して、これで何が変わるとは思えないがそれでも、何かのきっかけにはなる。
 芯子は、スワロフスキーの散りばめられた電卓をポケットの中で握り締めると息を吐き出した。
 一人、検査庁へ足を速める芯子を後ろから見る男達は、確実に1ヶ月と変わる自分を、感じている。
 例えば、角松一郎も、だ。
 騙された筈なのに、今だって、その屈辱は忘れていない筈、なのに。だから、堤芯子が錦に襲われようが関係などなかったのに。
 工藤や金田、それから後ろを歩く年増園のキャバ嬢達より少しだけ足を速めれば、容易く芯子に近付ける。
 角松はこちらを見ようともしない詐欺師の旋毛に目を落とし、それから芯子と同じく真正面を向いた。
 芯子の手が、何度か自らの尻をぱんぱんと、まるで埃でも払うかのように叩いているのが、気になった。声をかけようとすれば、小さく、ったくあのエロ親父が、が聞こえる。エロ親父、で今頭に浮かぶのは、錦。思いつくのは昨日のお持ち帰り。
「なんかされたのか?」
「あ?」
 声を掛けられた芯子は、正面を見据えたままで不機嫌そうにそれだけ返した。
「錦にだ」
 そこまで言ってやれば、やはり芯子が触るのは己の臀部。実に忌々しげに、唇を尖らせる。
「あー、ケツ触られたね。あと、股関に手ェ突っ込まれかけたからキュウリつかませてやった」
 余程嫌だったのだろう。その声には嫌悪しかない。
 それにしても。
「あのキュウリ、やっぱり」
 股関の一物代わりだったのか、と、角松は再び自分のそこに目を伏せた。
「いやー、御守りがわりに持っててよかった。一瞬ひやっとしたけど、まさかホントにキュウリで騙されてくれるとは、な」
「触られて、嫌だったのか」
「あったり前だ、ろ! 誰があんな中年に尻触られて喜ぶかっちゅーの!」
 のびのび君越しじゃなかったら投げてたな、と荒まいて吐き出す芯子は普段男まさりな格好や口調をしているものだから、角松は少し、ほんの少しだけ意外に思ってしまった。
 そして、ほんの少しだけ、もやもやとした思いが胸に渦巻く。
「……悪かったな、その」
「ンぁ?」
「だから、すぐ、追いかけなくて」
「あー、……別に、逃げたし。つーか追い出されたし?」
 角松が素直に悪かったと言えば、芯子は居心地が悪いのか? つっけんどんに言い返す。

48 :
「どうせキュウリ入れるなら、俺か工藤が入れば、」
 そこまで言って、けれどその言葉は思い切り振り返った芯子によって遮られた。
「なーになーに、なんかあった? ンもぅなんかきもちわっるいんだけど!」
 あ゛ーむずむずする! と身体を掻くようなジェスチャーをしながら叫ばれる。
「……いや」
「あ、もしかしてアレか。錦にケツ触られんのは嫌だったけど、俺ならどうなんだろう、とか思ってんのか」
「ぅンなわけねーだろ!」
 殊勝な気持ちで身を案じるような言葉を掛けたのになんでそんなことを言われなければならないのか、と憤慨する角松は、自分が芯子のペースに引き込まれていることに気づかない。
 芯子は内心ほっと息をついた。先のように他人に主導権を握られるのは、性に合わない。
 特に、コイツには。
 いつだって私が、心を乱してやる側だ。
 こんな風に。
「……別に、やじゃないヨ?」
 つつつ、と少し角松の近くに寄って、斜めに上目遣いで見上げると、相変わらずの単純馬鹿が息を呑むのが喉仏の動きでわかる。
「え」
 極力小さな、小さな声で、アナタだけに聞こえるように言うね、とばかりに紡ぐ言の葉は、口八丁の詐欺師、最大にして唯一無二の武器。
「角松サンになら、さ、わ、ら、れ、て、も、やじゃナイ」
 きゃ、なんて頬に手を添える仕草など、妹のみぞれが見たら瞠目するだろう。しかし妹は工藤君と金田っちをもう二人と囲んで次の遠足の算段に勤しんでいる。それも、かなり後方で。
 公道ではあるが、芯子と角松は今完全に二人きりだ。
「……」
 芯子は突然、角松の腕をガバリと引くと、横路に逸れる。いつかのように壁にトン、と突き飛ばすと、コンクリートは角松をその硬い身で受け止めた。
 イッテェ、と漏らす角松に、笑う。
「のびのびとぉー……」
「なにすん、」
「ちゅー、のポーズ!」
「だっ……ぅええ……!?」
 目を閉じ唇をツンと突き出した芯子に、角松がうろたえる。
 据え膳かこれ据え膳か食わぬは男のなんとやらか!? いやしかし待て待て角松一郎思い出せ、この間だってそのまた前だって!
 馬鹿である。
 そのままの格好で、5、4、3、2、1、心で数えた芯子は、目を開け、離れた。ゼロ。
(ばーか)

49 :
「にゃーんちゃって、な」
「ああ……ま……た騙され……!」
 コンクリートに頭をこすりつける角松の後ろ姿に、芯子が、舌を出した。
 騙してないし。今回はただの、時間切れだっちゅーの。
 あんな格好で待つ女を、長く待たせるア、ン、タ、が、悪い! そう毒づく瞳が角松にわかるわけもなく、だから芯子もなんにもなかったことにして、角松を横路に残したままで踵を返して大きな通りに歩き出した。
 遅れていた後方組と合流すると「何してたの芯子姉ェ」とみぞれに言われて、けれどつい今し方なんにもなかったことにした芯子は、なーんにも、と答えてやる。
「芯子さん、今度は動物園とかどうですか?」
「どーぶつえん?」
「はい!」
 元気に返事をするは、工藤優。どうやらコイツにも好かれているようだ。
(モテ期到来だね)
 口角を上げた芯子は、どう控えめに見ても先ほど錦に啖呵を切った後よりも機嫌がいい。
 その機嫌の良さのまま呟く声も、いつもよりもどことなく、すがすがしく晴れやかだった。
「いーかーないっちゅーの!」

50 :
お粗末様ですた。
芯子独特の、言葉と言葉の間は文字で著しにくいす……ぁ。
お目汚し失礼いたしました。

51 :
>>47乙! 
寝る前に覗いてみて良かった

52 :
もうあなた脚本書いちゃいなよw
昨日は芯子が角松のネクタイ上目使いでクルクル絡ませるのが可愛かったなー

53 :
GJ
萌えた
職人さんまたお願いします!

54 :
数々の職人さんに触発されてスペースおかりします
そういえば工藤と芯子って一話でチューしてたよな
って思い出して投下してみます
エロパロスレなのにエロくないので
すんません…

55 :
「うげ、雨降ってら」
 秋の空模様は移り変わりやすい。就業時間終了とほぼ同時に退室した芯子は、入口で足留めを食らい空を睨みつけていた。
 勢いよく出てきたものの、この雨脚で傘なしで帰るなんてびしょ濡れ確実だ。さすがに風邪を引くだろう。あまりの寒さに襟元を締め、ジーンズのポケットに両手を突っ込んだ。
「うわぁ雨降ってたんですね、庁舎の中にいると気づきませんでした」
 背後から工藤優の声がした。芯子が振り返ると工藤は空を見上げ、結構強い雨ですねぇと言葉を続けた。手にはちゃっかり傘を持っている。
「あれ、芯子さん帰らないんですか」
「傘持ってきてないっつーの」
 ぷいっと芯子はポニーテールを振りそっぽを向く。その毛先が見事に命中し、ムズ痒そうに顔を払う工藤は思い出したかのように口を開いた。
「あ!そうだ僕、ロッカーに置き傘してるんですよ。折りたたみでよければ芯子さん使って下さい」
 ちょっと待ってて下さいね、今取りに行ってきますから。そう言って工藤は踵を返したが、ぐいっと腕を引っ張られて足が止まる。
「えっ…?」
 引っ張られた自分の腕を辿っていくとそこには芯子の手が続いていた。
「し、芯子さん!?」
「アンタのそっちの手に持ってるのは、なあぁに?」
「…傘、ですけど…?」
「じゃあその傘に入れてって?」
 にっこりと不敵に笑う芯子に工藤は慌てて制する。
「いやいや、こんな強い雨なのに二人で傘使ったら濡れちゃいますって、ね?」
「あ〜、私と相合い傘するのイヤなんだ〜」
 ひどーい傷ついたなぁと芯子は人差し指で工藤の胸をつつく。にやにや笑い続ける彼女に、あ、からかわれてるなと工藤は直感的に思った。顔を引き締めて芯子のその人差し指を優しく払いのける。
「もう!からかわないで下さいよ」
「いいじゃん別に。つうか早く帰りたいんだよ!ほらほら入れてってばシングルパー!」
 半ば強引に工藤の腕にしがみつき、ホラホラと催促をする。渋々工藤は傘下に芯子を招き入れ、雨脚が強まる中、身を寄せ合う。
 自分より一回り以上年上で、自分より一回り以上も細くて小さい芯子。それでもなるべく濡れないようにと、工藤は芯子寄りに傘をさしてやる。
 それに気付かないのか芯子は濡れまいと更に工藤の腕にしがみつき、はたから見るとそれは恋人同士のようだった。

56 :
「し、芯子さん…あの、そんな、あんまり」
「あ?」
「いやあの。当たって、ますんで…」
 赤面しながら視線があちらこちらに泳いでいる工藤の表情を確認した芯子は、あっ!と気付き、すぐさま自分の胸元に目をやる。なんだろうこのウブ過ぎる反応は。
 芯子は笑いを堪えながら構わず工藤の腕にすり寄った。
「なあに?アタシのこと意識しちゃったあ?」
「ち、違いますッ…!」
 何言ってるんですか!、と慌てふためく工藤に芯子は内心笑いが止まらない。
「思ったんだけどさぁ、シングルパーあんた」
「はい?」
「もしかして童貞?」
「なッ…、何を急に!!?」
 その裏返った言葉を合図に見る見る顔を赤くしていく工藤を見て、芯子は納得した。
「だと思ったんだよなぁ、カモフラージュでキスした時の慌て振り異常だったもんね。東大出身だから勉強ばっかしてたんじゃないの、もしかしてチューも初めてだった?」
「芯子さんっ!お、怒りますよ!」
「もう怒ってんじゃん」
 芯子は笑いを堪えながらごめんごめんと、工藤の肩を叩く。
「下手くそと童貞ね。そうめんカボチャはなんだかマニアックなの好きそうだし、ここにはマトモな男はいないのかねぇ」
「だから童貞童貞って言わないで下さい…って、あれ?」
「ん?」
「下手くそって、誰のことですか?」
「…………」
 工藤は指折りぶつぶつと小声で整理していく。童貞は不本意ながら僕の事だとして、そうめんカボチャは金田さん…で後は。
 その工藤の横で芯子は隠れれるようにやっべ、と顔をしかめて舌を出す。からかい過ぎて墓穴を掘ってしまった。
「え?も、もしかしてしゅに…」
「ストップ!」
 芯子の人差し指が工藤の唇に触れる。有無を言わせない威圧感にも似たオーラが漂っていた。
 工藤はそれに圧倒されて思わず目をぱちくりさせる。芯子はゆっくりと顔を近付けて微笑んで見せた。
「今のはぁ〜記憶からぁ〜消し去ること!」
「え、ええっ!?それってどういう…」
「童貞くんがそんなこと根掘り葉掘り聞くなんて、野暮だ、ぞ!」
 ちょんと工藤の唇をつついてからかう。
「だから童貞童貞って止めて下さい!ち、違いますから!」
「だ〜いじょうぶだって、お姉さんが手解きしてあげよっか?」
「ッ!?…けけけ、結構です!」
 顔を真っ赤にした工藤はそう叫ぶと、歩幅を気にせずにズンズンと足を進めていく。ちょっと!濡れちゃうでしょ!とおいて行かれた芯子は慌てて工藤の後を追いかけた。

おしまい

57 :
スペースありがとうございました
工藤は初回から童貞っぽいと思ってたんですが
最近は腹黒くなってきたので下剋上もかましてほしいっス

58 :
>>54
萌えた…!
同じく工藤はドーテーか、年上女に喰われたことがあるかだと睨みますww

59 :
主任は下手くそなんだw

60 :
金田はマニアックなのが好きなんだw

61 :
拙いながらお眼汚しします。
第4話の川に飛び込むシーンから芯子×角松を。
エロはほとんど無し。

62 :
「洋子!…や、芯子、芯子つ!」
 角松の切迫した声が響く。
 蒼白な顔で水面を見、左右を見、助けを求めても誰も居ないことを確かめると
慌しくスーツの上着を脱ぎ捨て、震える指先でネクタイを緩める。
────ああ、溺れたことあったんだっけ……子犬助けて。
 対岸の縁にびしょ濡れで腰掛け、芯子はわなわなと揺れる角松の両膝を眺めた。
 も、ちょっと顔上げて前を見れば、あたしがここに居るってわかるのにねえ
……詰めが甘いんだから。
────無理すんな
 そう声にする前に、
「芯子!ぬなよ!」
 角松が川へ身を躍らせる。
────……っ!
 思わず腰を浮かせた彼女の耳に、工藤と金田の心配気な呼び声が届き、
ぺたん、と芯子はまた座り込んでしまう。
「芯子っ!…た、助けてっ……!」
 ばしゃばしゃと水飛沫をあげてもがく角松を見つけて
工藤達が上着と靴を脱ぎ捨てる。
「何やってんの?!」
 やっと声が出せた気がする────
 芯子は水面の水飛沫と、対岸の二人に向かって叫んだ。
 何故かうろたえた自分にほんの少し腹を立てながら、
芯子は脱いだ靴を逆さにかざして中の水を投げ捨てる。

63 :
「……ヴあ?!」
 間の抜けた声と共に角松が芯子の方を見た。
「ああぁ?! 芯子、おまっ……ヴふわっっ!」
「そこ、背が立つから」
「……ほんとだっ!」
 水を滴らせながら、ばつが悪そうにぬぼぉと立ち上がった長身の男は、さながら…
────濡れそぼった大きな犬だね。羊とか追っかけてるやつ。
    なんて言ったかねぇ……なんとかイングリッシュ・シープドッグっての?
 あわてて川岸に駆け寄った工藤達は、
川の中で腰まで水に浸かって立ち尽くす角松に安堵の息をもらす。
 その直後、違和感を覚えた金田は眼鏡の奥の秀麗な眉を微かに寄せた。
 金田の表情を捉えた芯子が問う。
「ねぇ、ここの水の深さってさ、何メートルあるはずだっけ」
「6メートル」
 工藤の眼が見開かれる。
 芯子は角松に向かって手をひらめかせた。
「そのまま真っ直ぐ歩いて」
「無茶言うなッ」
 
「いいから、歩けって!
 ………あたしも今、そっち行くからさ」
「……へ?」

64 :
 巻き毛の先から水滴を飛ばしながら、
いいよ来んなよ危ねーよ、と叫ぶ男にはかまわずに
芯子は工藤に顔を向ける。
「シングルパー、写真撮って」
「はい!」
 そのまま角松を指差す。
「こっちのシングルパー入れて撮って。深さがどれくらいかわかるようにさ。
あれだ、釣った魚のスケール代りのマッチ箱だね」
 それって例えとしてどうよ、とでも言いたげな角松に向け、
カメラを持って戻ってきた工藤がシャッターを切るのを確かめて、
芯子は再び川に飛び込んだ。
 音も立てず滑らかな動きで角松の傍まで泳ぎ着き、
すっと立ち上がると黒目勝ちな瞳で彼の顔を覗き込む。
 たじろいだ角松が呟いた。
「河童か」
「古式泳法だよん」
「……おまえ、何者よ…」

65 :

────ふう。
 ようやく人心地がついて、芯子は湯の中で身じろいだ。
 昨夜、角松が言っていた公営の温泉だ。
 すっかり凍えた二人を、工藤達がここへ連れてきてくれた。

 
 結局、川の中をほぼ1km、歩いたことになる。
 水への恐怖心をなんとか押さえ込んだ角松は、つま先で川底を探りながら
芯子の半歩前を行く。
 機材を担いだ金田と工藤が、川岸に沿ってついて来る。
「あ……!」
 何かにつまずいた芯子の左腕をとらえ、背に腕をまわして支えた角松は
芯子の視線から逃れるように水流の先を見やった。
「ありがとな」
 濡れて張り付いたワイシャツの白さが眩しい。
「おふくろも、この里も、これで……」
 角松はいったん視線を落とすと、今度は芯子の眼を見つめる。
 
「ありがとな」


 ぱしゃん、と片手ですくった湯を肩口にかけながら
芯子は微笑んだ。
 その指を自分の首筋に添えてみる。
────この辺に、ほくろがあるんだよな……あいつ。
 覚えてる。
 忘れちゃいない。
 耳元でささやかれたあの声も。
────洋子、洋子……
 その名を呼んであたしを助けに来てくれた。
 ……溺れかけたけどな。
 芯子の唇からクスッと息が漏れる。

66 :

 なんだか頭がぼうっとする…のぼせかけてるのかな。
 うつらうつらと、彼女は角松が川に飛び込んだ場面を反芻する。


────洋子!…や、芯子、芯子つ!


 芯子の微笑みが消える。
  
 あの時とっさに出てきたのは“洋子”の名……
 あいつにとって、今だに忘れられないのは“洋子”なんだ。
 こんな、はすっぱな口ばっかし叩いてる、前科持ちの“芯子”なんかじゃない……
 あいつの隣に並んで一緒に歩いてくのは……芯子じゃあ、ない。
 冷たい川の中で、確かに伝わって来た角松の体温が
暖かな湯の中で、さらに温もりとなって左腕と背に蘇ってくる。
 両手で顔を覆って俯いている自分に気付くと
彼女はひとつ首を振って、立ち上がる。
 見事な肢体に上がり湯を掛け終ると、不敵な笑みが浮かんだ。

────まったく、見事に騙しおおせたもんさ……我ながら、ね。



67 :
突っ込みどころ多々あるでしょうが、ご容赦。
てか、投下してから誤字に気付いたり orz
失礼しました。

68 :
>>61
GJ!すごくいい!
芯子も慌てて助けようとしてくれた角松に
何気に嬉しかったに違いない
>>54の主任ヘタクソにクソワロタww

69 :
一本投下します
・エロなし
・二話後
・芯子と工藤ネタ
あ、ID変わってるぽいですがqy7FuWl3と同一の人が書いてますちなみに

70 :
「わっかんない」
 電卓をカタカタと弄んでいた芯子は、椅子に片足を乗せて膝を立てるとそこに顎をのせた。机上の書類は一枚も捲られずにあり、そんなにも難しかったか、と口を開いたのは、こちらも新人の工藤だった。
「どこがですか?」
 問いながら芯子の手元の書類を覗きこむと、違う。全ッ然違う。と、彼女の口癖で返される。
 こっちじゃなくて。
「堺。アイツ、アタシがココで働いてること、なんで知ってたんだろ」
 堺と会ってからの素朴な疑問は、芯子の中でぐるぐると渦を巻きっぱなしだった。
 少なくとも一度目に敵地に赴いた時には、絶対に顔を合わせてはいない筈なのだ。だから、堺は警務科で鉢合わせた時に二度見してきた。だとすれば、あの刑事は一体いつ、どこで、芯子が会計検査庁で働いていることを知ったのか。それが、わからない。
 芯子が首を傾げている目の前、焦ったのは、工藤だった。
 だって彼はもう二度、芯子から警告されている。
 余計な詮索は身を滅ぼす。
「あ、それは、」
「工藤が根こそぎお前のこと喋ったから、だろ」
 なんとか取り繕おうとした工藤の首を締め上げたのは、そうめんかぼちゃ、もとい金田だった。工藤の顔から少し血の気が引く。芯子の鋭い視線が、刺すように痛い。
 ガン、と芯子が、机を蹴った。
「……すーぐーるー君、ちょっと」
「はい……」
 ちょいちょいと指で呼ばれた工藤は、素直に芯子の元までいく。椅子に座る芯子が工藤を見上げる形になり、芯子はその位置からギロリと睨み上げた。そしてスッと手を伸ばすと、ネクタイを掴み立ち上がる。
 し、芯子さん……! うっさい、黙れ。
 ネクタイを引かれた工藤が放り込まれたのは、以前芯子が角松に「金返せ!」を言われた資料室。芯子はネクタイを離すと、今度は工藤の顎をガッと掴み資料棚に押し付けた。
「工藤優、アンタさァ、上のお口がユルすぎるんじゃない?」
 警告が足りないなら本気でお天道様拝めなくしてやろうかァ? このスットコドッコイ。
「すみません……」
 顎を掴まれたままできる限り頭を下げて謝罪する工藤の耳元まで顔を寄せ、芯子は小さく囁いた。
「……その口一度はアタシ直々に塞いであげたんだから、今度は自分でチャック出来るようにな・り・な・さい」
 言葉とともに、顎が解放される。
「は、い、あのでも、塞いだって……あ……!」

71 :
 放された顎をさすった工藤は、塞いだ、の意味が判らず芯子に問いかけようとした。瞬間フラッシュバックするのは、つい先日の警察をまくためだけにされた口づけ。
 工藤はあらん限り顔中の血管を拡張させた。耳まで紅くなる、とはまさにこのことだ。
「しししし芯子さ……」
 どもりにどもった工藤の声をかき消したのは、正午を指す時計の音だった。
「お、昼だね。よし、飯でも食いに行くかー。すぐる」
「……はい、」
「アンタの奢りで。この辺で旨い定食屋かなんかないのー?」
 ガン、と資料室のドアを開け外に出れば、ちょうどそこには元婚約者の角松の姿。突然出てきた芯子にビビった角松は、その後ろから出てきた工藤に目を見張る。
「お、お前ら、資料室で二人で何してたんだ」
 角松の言葉に、いかにも面倒くさいという表情を作った芯子は、先ほど工藤にしたように角松をちょいちょいと呼ぶ。その耳元で、囁いた。
「……密会」
「みっ……!?」
「すぐる!」
「はい!」
 呼ばれれば条件反射で返事をする工藤君に、首を傾げながら芯子が微笑む。
「ねー?」
「あ、え? は、はい、」
 空気読め、と空気で言われた工藤は何も考えずに首肯した。途端に角松が表情を変えたことには、気付かないまま。
「はいはいはい、行くよ!」
「密会……ってこら、どこ行くんだ!」
「昼飯」
「あ、待って下さい、芯子さん!」
 会計検察庁は今日も平和だ。

72 :
お粗末様でした
お目汚し失礼しました
>>62さんのお話に悶えてなんども読み返してたらケータイ電源落ちたorz

73 :
職人さん続々とありがとうございます
皆さま素晴らしい!
来週予告で角松が113万8250円の内訳を話してるところがあったけど
中に旅費とかホテル代があったらニヤニヤしちゃう

74 :
ニヤニヤしちゃう!

75 :
旅費ならともかくラブホの代金ぐらい男が払うだろ
そんな事まで細かく請求されたら最悪だ
角松ってキャラはお金に細かそうでコーヒー代まで割り勘にしそうだなw
自分は東海林の方が好きだわ

76 :
今鮪解体ショー見てて大前さん思い出した

77 :
>>70
gj! 工藤かわいいよ工藤!
角松の中の人なら“oh! チェリーーボオウイィィ…”と掛け声かけそうなw

78 :
自分もニヤニヤ
ラブホ代金入ってるか注目w
てか、豚はまだ今ひとつキャラの背後を掴みきれないんですよね。
62ですけど、なんとかエロ入れようとして、そこで挫折しちゃって。
それともし、ハケンの品格でエロパロスレの職人さんが居られたら
未完作品の続き、よろしければお願いします。お待ちしてます!

79 :
そうかハケンスレでもあるね!
ひとつぶで二度おいしいw

80 :
>>70です
また一本投下します
・4話後の帰路のでの話
・芯子×角松
・エロではないけどシモではある
・キャラクター崩壊はいつも
・毎度くどい文章ですみません

81 :
犯行は数分の間に。
 角松の実家のある清杉村を出て帰路につく会計検査庁の面々は、疲労しきった様子で新幹線のシートを向かい合わせたボックス席に沈んでいた。
 後から来てすぐに蜻蛉返りになる明珍だけはそんなメンバーを見て、場を盛り上げようと頑張る。
「温泉! 気持ち良かったねえ!」
 会計検査庁としての仕事を終え、取れなかった昼休みを取ろうと五人が向かったのは飯屋ではなく何故か、角松の実家近くの公営の温泉だった。
 それぞれに色々流したいものがあったのかも知れない。
 飯は電車で食えるよな、と言った誰も、腹に溜まるものは買わずに、ただ黙々と乗り込んだこの新幹線だった。
 最も、ここでも明珍は軽く握り飯を購入していたが。
 そんなわけで、目下五人に共通する話題といえば、温泉なのだ。
 明珍の言葉に、男三人も、苦笑いで頷く。
 確かに、温泉はもやもやと重たかった空気の何割かを洗い流してくれた、と。
 そんな男性陣を横目で見た芯子は、窓側の席でもって窓が白く濁る程に息を吐き出した。
 てゆーか、さ。
「芯子さん?」
「確かにアンタ等は三人で温泉入って楽しかったカモしんないけど、アタシは一人なんだよねえ」
 気持ちは良かったけど、つまんなかったぁー。
「当たり前だろう、温泉なんだから」
 呆れたようにそう返したのは、角松一郎だった。
 何を言っているんだ、と鼻で笑う角松に、芯子はその頭を指して、シングルパー、頭三割り増しで巻いてんぞ、とこちらも負けずに鼻で笑ってやる。
 一生懸命乾かして解かした髪の毛を巻いていると言われて、角松は両手でパーマを触る。
 三割り増し……!? しっかり伸ばしたのに……!
「……ねえ、そーめんか、ぼ、ちゃ」
「だからそうめんかぼちゃって、」
「あーもうじゃあ、か、ね、だ、くん」
「……なんだ」
 巻いてないよ角松くん、いや巻いてるけどいつも通りだよ、と宥められている元婚約者を視界からアウトさせて、芯子は隣に座る金田と正面の工藤をからかいにかかる。
「混浴だったら良かったのに、な?」
「な!」
「何を……」
「……え? 堤くん?」
「何言ってんですか芯子さん……!」
 三者三様の反応に、芯子はニッコリと口角を引き上げる。
「ジョーダンだよジョーダン。何マジになってんの」
「冗談でも言うな!」

82 :
 顔を紅潮させて叫ぶ角松に、芯子が、迷惑なやつだ、と眉間に皺を寄せた。
 幸いにも人は殆ど乗っていなかったが、それでも疎らに視線が集まる。
「アンタも何真っ赤になってんだか。あ、もしかして、想像したな?」
「何をだ!」
「アタシのハダカ」
 笑顔のままで言ってやれば、角松は一瞬詰まったように何か言い返そうとする。
 しかし、すんでのところでそれを飲み込み、そして息を長く吐き出す。
「……だーれーが、お前の貧相な裸なんか」
「……ほー? 貧、相、な?」
 言われた言葉に、芯子の目がすうっと据わった。
「お、おお、俺はな、もっとこう、豊満なバストにきゅっとくび……何を言わすんだ、何を……!」
「勝手に言ったんじゃん」
 べえ、と舌を出した芯子に角松は、言い返す言葉も見当たらず、苛立ちを抑えようとその場で落ち着きなく足を組み替えたり手を組み替えたりしてから諦めたように、席を立った。
「主任?」
「ちょっとトイレ行ってくるわ……」
 片手で頭を掻きながら、そう言ってトイレのある車両へと歩き出した。
「……便所ってさあ、だーれか一人行くと行きたくなんの、アレ、なんでだろうな?」
 ちょっとどいて、アタシもお花摘んでくる。
 男三人の足を除けるようにして、芯子も角松の後に続いた。
「あ、ちょっと、……あの二人ってなんであんなに相性悪いんだろうね?」
「悪いわけではないと思いますよ、俺は。ただ、似た者過ぎるんですよきっと……まあ、俺には関係ありませんが」
「芯子さん……」
***
(ったくなんなんだあの女は……!)
 向かっ腹を抱えた角松は、トイレのドアを乱暴に開ける。
 中に入り、背後で勝手に閉まるドアに鍵をかけようとしたその時、ガン、と、そこに足を挟んだのは、角松の後に続いてトイレに向かったはずの芯子だった。
 勿論、こちらは男性用トイレである。
 角松が、うわ、と声を上げる。
「おい、こっちは男せ、」
「満足、……してなかったんだあ?」

83 :
 男性用だと言おうとした角松の言葉を遮り細身をスルリと中へ入れた芯子は、唇を尖らせると決して綺麗とは言えない狭いトイレの中で角松の体にぴたりと自分の身を寄せた。
 持ち前の手癖の悪さを発揮して、ちゃっかり鍵まで閉めている。
 角松は芯子の突然の暴挙に、先ほどの苛立ちも忘れてホールドアップの姿勢でじりじり壁に後退りするが、如何せん広さがない。
 壁に背が着いても芯子はにじり寄ってくる。
「おま、やめ、ま、満足って、なんのことだ、」
「貧相なカラダって、思ってたんだあ?」
 そう言いながら寄せられる体は当然女らしく柔らかい、しなやかな、角松の知っている体。
「……っ」
「キ、ズ、ツ、イ、タ、な。……でーもぉ」
 芯子が背伸びをすれば、二人の身長差が少し埋まる。その位置で、太ももを意味ありげに押し付ければ角松が小さく呻いた。
 ま、確かに全裸で自慢出来るよーなカラダじゃないカモだけど、と前置きをして、角松の丁度胸板あたりに寄せた自分の胸を覆う服を、下着が見える程度まで手でもってグイッと下げてやる。
「こんな貧相なカラダにむしゃぶりついて離れなかったのは、どこのだあれ?」
「む……!?」
「ン、やめて、ァ、も、むり、って散々言っても止めてくれなかったのはぁ、だーれ?」
 喘ぎ声を再現するように、吐息を混ぜて角松の耳元にあたたかく掛けると、唾液を飲む音が芯子の耳を打つ。
 芯子は、自分の胸から離した手を太ももで刺激していた角松の股間にもって来ると、いつぞや、金玉を握った時よりも優しくスーツの上から揉み込むように全体を撫でた。
「! 何、してんだ……!」
 引きつった声を上げる角松に、挑戦的な目を向ける。
「別にぃ。……角松さんはぁ、こんな貧相なカラダじゃぁー、勃ちもしないんでしょう?」
 声音を変えて、既に勃ちかけている角松の股間の竿の先をぐりぐりと片手で嬲り、同時に体を更に密着させるように押し付ける。
「……!」
 とうとう思わず前かがみになった角松から、芯子はようやく体を離した。
「じゃ、ごゆっくり?」

84 :
 気が済んだのか鍵を開けてさっさとトイレから出て行く芯子とは対照的に、角松は腰に力が入らない。なんせこの角松一郎、結婚詐欺にあってから女がちょっと信頼出来なくなってしまい、結局『洋子』との経験が最後になっているのだ。
 久しぶりに感じた『女』の刺激はそんな俺の体を高ぶらせ……って、そうじゃなくて……!
「……ッ……ちょっと待てコラァアー……!」
 なんだかもう色々頭を巡りながら、閉まるドアに叫ぶとそのドアの隙間から芯子が、あ、そうだ、と呟く。
「こんな貧相なカラダで良ければ、オカズにしても、か、ま、わ、な、い、から、ネ?」
 じゃあまた後で、を残して、角松が何も言えないうちに、ドアは音も立てずに閉まったのだった。
***
「あ、芯子さんおかえりなさい」
「んー」
 用を足した芯子は、座席に戻るとシートに深く沈み込んだ。
 斜向かいでは明珍が腕時計をちらりと見、次いでトイレのある車両への通路を見る。
「随分時間経ってるけど、角松くんはまだ帰ってこないねえ」
「出すモン出すのに手間どってるんじゃナイ? なんか、気張ってたみたいだし」
 アタシ疲れたから寝る。着いたら起こして。
 欠伸をした芯子は、そのまま目を閉じた。
 その後、文字通り出すモノを出して帰ってきた角松の精神的苦痛は、想像に難くないだろう。

85 :
お読みいただきありがとうございました!
お粗末様でした
しかし実際角松がカモなら芯子は『ヤり逃げ』ならぬヤらせず逃げ出来るだろうなあと思ったりも……w

86 :
>>80 乙です!
ある意味個室でイチャイチャww
ご無沙汰主任、大変だったねw
いつも素敵な投下
感謝感謝です!

87 :
>>81乙!
やっぱキッカケは公営温泉ですよね!w
>しかし実際角松がカモなら芯子は『ヤり逃げ』ならぬヤらせず逃げ出来るだろうなあと思ったりも……w
うんうん、そしてヘタクソだったと(違

88 :
芯子が抱きついた後に角松が腰持って抱き寄せようとした所は良かったよ
いい加減じらさずにラブシーンしたらいいのに
不意打ちのキスだけでもいいからさー

89 :
角松芯子的にもイチャイチャしてる回だったけど
(冒頭の抱きつき、教授そっちのけでベタベタ、椅子グルグル)
それ以上にソーメンカボチャと新人シングルパーの押しが強かったな

90 :
ハケンの時から喧嘩=イチャイチャだからな
キスシーンが有っただけ奇跡かもしれん

91 :
角松の騙されメモの中に温泉旅行代があったんだね
本スレ見て、一時停止してみたら確かに

92 :
温泉旅行だと完全にHしてるな
もうその回想を次回のストーリーでお願いします

93 :
新人くんがいきなり告白しちゃったけど
ここの方々はやっぱり角松芯子派?

94 :
やっぱりツンデレ春子と東海林の方がエロ妄想掻き立てられる
この二人のその後が気になって仕方ない

95 :
大穴で切り込んでくる金田とか
関係ないぎ、金田は子供好きだけど子供に嫌われるタイプだな

96 :
誤字orz

97 :
メモを見返してみた。温泉旅行の他にも紅葉狩り行ってない?かわええ
でも4話みたいな感じでお似合いだったんだろうな
正直今の二人よりも角松と洋子の方が気になる

98 :
職人さん!
ぜひ萌えをください

99 :
紅葉狩り。
「おぉー! 絶景だなー! な、洋子」
「えぇ、ほんとうに、綺麗」(あ、ほ、く、さ……紅葉狩ってどうすんだっつーの。食えないじゃん)
「ほら、洋子は色が白いからこういう色が映えるんだよなぁー」
「やだ、そんな、恥ずかしい……」(本ッ当に恥ずかしい奴)

100 :
>>99
…と()内で思いつつ、ついうっかり温泉旅行への誘いに頷いてしまう洋子w

101 :
「な、な、洋子、今度、ここ! ここ、行かないか? 近いし」
「え?」
「えっと、温泉なんだけど……な〜んて、年寄りくさいか! なぁ!」
「……」
「よ、ようこ……? や、嫌ならいいんだ、他んとこにしよ、うん」
(なんも言ってないじゃん、あたし)ムッ
「……おんせん、好きよ?」
「ぅえ!? い、じゃあ、行こ、うか……?」
(ったく、いっつも煮え切らねえ男だなあぁ……。しょーがない)
「はい、ぜひ」
「じゃあ、休み取らなきゃな!」
「ね、角松さんも温泉、好きなの?」(そーいや久しぶりだな、温泉)
「好き……っていうかなんか、懐かしいんだよ。実家の近くに温泉があってさ、公営の、小さいんだけどな……ああ、こ、今度俺の実家に来た時、行こうな」
「うん」(ま、そんな日は来ないけど、な)
「とりあえず、温泉な。休み取ってくるから」
「楽しみにしてるね」

102 :
続きプリーズ

103 :
すんません
>>99さんが書き終わっていないのでマナー違反だとは重々承知ですが
ひとつ投下させてもらいます…
角松×芯子でエロです
なんでそうなったか背景とか関係なしです
ひたすらエロですが、最後は結局ギャグっぽくなってしまいました…

104 :
「腰、少し上げろよ」
 足の間に角松一郎がいる。そっと腰に手を添えられたが、その手がとても熱を帯びていたのでこっちの胸がドキドキした。言われた通りに腰を浮かすと、ゴムを付けた彼のものがあてがわれた。
 芯子は息を静かに吐く。目を閉じてわざと意識をそこに集中させた。受け入れる準備は十分に出来ている。
 閉じた瞼から覆い被さる角松の影が動くのがわかった。押し開かれたそこは先端をゆっくりと迎え入れる。
 息を詰めないように出来るだけ身体の力を抜かす。少しずつ角松のかたちを確かめるように収まり始める自分の身体に、ものすごい快感を覚えた。久し振りのせいでもあるが挿入の瞬間が堪らなく好きなのだ。
「ん、っ…、」
 まだ奥へと進む動作が終わらない。どこまで中に到達するのだろう。甘い声が漏れて、角松の両腕に手を添えた。その腕は芯子の腰に回されている。引き寄せられたかと思えば侵入が終わり、口の端に角松の唇が触れた。
「全部中に入った」
「うん…」
 瞼を開けると角松が満面の笑みで芯子を見下ろしていた。すぐにでも律動を開始してほしいのに、角松は芯子の表情を視姦するかのように見つめ一向に動いてはくれない。

105 :
「なん…だよ、早く動けっての」
 言ってる自分が恥ずかしくなって腕を叩いた。
「動くよ、動くって。久し振りなんだから堪能させろよ」
 ヘラッといやらしく笑いゆっくりと律動を始める。ぎりぎりまで引き抜いてはまたゆっくりと時間をかけて押し進め、久々の感覚に内股がひくつく。
 律動はいたってゆっくりなくせに、芯子の乳房を撫でる手の動きは機敏だった。
 その度に芯子が甘い声を漏らしていると、執拗にそこばかりを責められた。弱い箇所は徹底的に、それが角松の昔からの癖だった。
 指先で弄ぶように胸を愛撫され、絶えず喘がされる。覆い被さる角松の肩口に顔を埋めどうしようもない快感を堪えようとした。
「すげえ、久々だけど昨日のことみたいに全部お前のいいところ覚えてる。これ好きだろ?」
 わざといやらしい言葉を耳元で囁かれた。その言葉に一気に身体が熱くなる。彼が言った通り久々の逢瀬、身体は正直だ。
「…ん、気持ちいい…」
 こちらとてサービス精神は持ち合わせている。素直に、だけどどこか挑発するかのように角松の耳元で苦しそうに囁けば、彼は随分と嬉しそうに笑った。
 腰の律動は少しだけ力強くなる。角度が突き上げるかたちに変わり、思わず揺さぶられながら身体が浮いた。押さえつけるように腰を抱えられた。
「あっ、あ…んん」
 ジワジワと快感の波が下半身に押し寄せる。ひくつくそこに、いやらしく動く角松の手に、思考回路まで溶かされていきそうだ。

106 :
 唇を吸う角松がいやらしい顔をして芯子の表情を伺う。
「あれ、あれやって」
 いつもやってたやつ、そう言って律動を緩める。昔付き合っていた(?)頃に
毎度おねだりしてくるその内容に、アンタ好きだねと呟いて吹き出した。
「やってやるから膝、支えなさいよ」
 やわやわと揺さぶられながらも腰の位置をずらして角松に催促をする。両足を持ち上げて折り曲げた。
正常位からの体勢で自分の方向に思いっ切り折り曲げて膝を出来るだけクロスさせる。なかなかにキツい体勢なので芯子の膝を押さえつけるようにクロスさせて支えるのは角松の役割だ。
 おのずと中の締め付けは強くなる。
「はっ…やっばい、芯子、これ…もっていかれる」
 何がそんなに可笑しいのかヘラヘラしながら角松は言った。
「あっ…気持ちいい?」
「やっばいです…、」
 なぜか敬語になる角松。こっちは腹が潰されてどちらかと言えば苦しいのに、少しだけ力任せに押さえつけられるこの行為は妙な興奮感に襲われる。
昔から普段優しい彼の、この時だけ一瞬見せる男としての本能に触れた気がしてゾクゾクとした。

107 :
「いいよ、…もっと強くして」
「痛いの好き?」
「違うっつーの」
 じゃあお言葉に甘えて、角松はそう言って芯子の膝に更に力を込めた。腹部に圧がかかり、上がる呼吸も苦しいはずなのに不思議と体は興奮する一方で。たまらない快感に喘ぎ声が上擦る。
「あっ、ああ…!」
 角松が芯子の膝を下ろし、突く動作が浅いところに変わった。少しだけ物足りないと感じてしまった芯子は自分で相当イかれてしまっていると頭の片隅で思った。
 唇が重なり目を閉じた。
「ふ、…っん、ん…」
 うごめく舌に必に食らいつく。途端にびくんとその角松が身体を震わせて律動を止めたので嫌な予感がした。
「あ、やべ」
「ちょ…」
 先に達してしまった角松がすみませんと笑う。
「さいっあく…」
「し、仕方ねえだろ…ご無沙汰だったんだから」
 お前だってそうだろと開き直る角松が、そのまま腰の動きを再開する。
「ちょ、なに続けて…あ、んん!」
「大丈夫だ、こんなときは回数で補ってやる。なんせ久々だからな」
「いいっ!いいってもう…あ、もっ…動くなってぇ、ん」
 こうして久々の逢瀬は罵り合いながら明け方まで続いたとか。

終わり

108 :
お粗末さまでした
ここの角松の定番?な
ヘタクソにでご無沙汰な彼に早漏要素まで加えてしまって
ごめんなさいww
そして>>99さん
割り込んでしまいスミマセンでした!
続き楽しみにしております

109 :
>>103
乙!
角松さん久しぶりだったんだもん、ソーローでもしょうがねえよなw
>>99だけど小ネタで続く予定も無かったんだが、続けた方がいいのかな?

110 :
乙です!
東海林は早漏だと思ってたのでツボりましたw

111 :
>>110
間違えた
角松でした・・

112 :
いや、図星かもしれんw
>>103
心から乙!
>>109
よかったら是非 m(_ _)m

113 :
>>109
もし続きがあれば是非是非!

114 :
GJ!

115 :
温泉宿にて。
「夕食、部屋に持ってきてくれるから」
「それじゃあ、先に温泉に行きましょうか?」
「そだな」
「角松さん、浴衣着る?」
「ん。……あれ、洋子は着ないの?」
「浴衣の方がいい?」(浴衣着るといつも以上に歩き方に気ィ使うんだよな)
「……できれば」
(まあ、ここも全部コイツ持ちだし、浴衣くらいしょうがない、か)
「うん、わかった」
「楽しみだ」
「あんまり、期待しないでね?」(浴衣って右が前だっけ……?)

116 :
夕食の時間。
「気持ち良かった。お腹空いちゃった」
「なー。よし、んじゃ、食うぞー」
「お酒、注ぎますね」
「ありがとう。洋子は?」
「それじゃあ、一杯だけ」
「弱いもんな」
「うん、直ぐに酔っちゃうから」(調子乗って飲んで地が出たらやっばいんだっつの)

117 :
わっふるわっふる

118 :
>>116ですが、すみません
ちょっとハケンの小ネタ(?)を先に投下します
途中なうえ誰得ですがorz
良ければ見たってください
・東海林×春子
※個人的な趣味で リュート×黒岩匡子要素 あり※
・ほぼ会話文のみ
・名古屋から帰ってきたその日にカンタンテにて

119 :
 ギイ、と開いたカンタンテの扉。リュートと眉子が覗いたそこから顔を出したのは、スペインに行っていた、というか帰っていた、というか、まあそんな感じの大前春子だった。
「お帰り、春子」
「お帰りなさい、春ちゃん」
 ステージの椅子に座ったまま声をかけるリュートと、カウンターから出てきて微笑む眉子は変わらずにあり、春子はほう、とため息を吐いた。
「ただいま」
「三ヶ月経っても戻ってこないから、どうしたかと思ってたよ。ずっとスペインにいたの?」
「んー? ……ちょっと向こうにいて、あとは、名古屋」
「ナゴヤ? 珍しいね、東京じゃないなんて」
「名古屋といえば、クルクルパーマちゃんは、一緒に来てないのね」
「うん。東京には戻ってるけど、身辺整理が終わってないから」
「あら、東京には戻ってるの?」
「……あ、そっか! ナゴヤって、クルクルパーマが飛ばされたところか。わざわざ行ったんだ」
「……ママ、私、自分に自信なくなってきちゃった」
「何、春ちゃんどうしたの?」
「自分は面食いだと思ってたのに……」
「あら、あらあら、なあに、もしかして、春子」
「春子が指輪付着けてる」
「あー……あ゛ー……」
「……ねえ、春子、クルクルパーマと僕、どっちがカッコいい?」
「リュート」
「大丈夫だよ春子、春子の美的感覚は正常だ」
「バカねえ、恋愛に美的感覚は関係ないのよ。あ、恋愛と言えばね、春子」
「うん?」
「リュート、好きな人が出来たのよ、ね?」
「うん」
「へえー! どんな人?」
「クロイワさん」
「……クロイワ?」
「春子が前にハケンで行ってた会社の」
「……へえ……またアンタ物好……いや私が言えたことじゃないけど」
「ちょっと頑張ろうと思って」
「応援するわ……」
「アリガト。ん、帰って来たばっかで疲れてるカモだけど、どう? 春子、一曲」
「ん……、じゃあ一曲」

120 :
「あれ、……え、東海林くん?」
「お、おぉ、黒岩匡子!」
「戻ってたの!?」
「おー、めでたく本社復帰ってな」
「うっそ、やったじゃない! え、里中君は知ってるの?」
「おー。ケンちゃんとは割とマメに連絡とってんのよー」
「私にも連絡しなさいよ! 全く……え、それで、アンタこれからどこ行くの? マンション?」
「ん? いや……知り合いの店」
「じゃ、方向変わるまで一緒しましょ」
「おう」
カンタンテ。
「アンタの知り合いの店って、此処だったの? あ、知り合いって、大前さん?」
「なんだ、知ってたのか」
「いつだったか森さんに連れてきてもらってねー」
「で、結局お前はどこ行くのよ?」
「私もここに、ちょっと用があって」
「なんだお前なの。お……なんか音がする。まだ店開いてねえのに」
「……リュートくんが弾いてるのかしら」
「……もしかして……」

121 :
「こんちわー……」
「今日は」
「あら、まあまあまあクルクルパーマちゃんお久しぶりねえ! それに、匡子さんも、いらっしゃい!」
「お久しぶりです。て、やっぱり、踊ってる。返ってきて早々……元気だな。衣装は着てねえのか」
「あの、開店前にすみません」
「いいのよ、リュートも喜ぶわ。あ、クルクルパーマちゃん。ね、良かったら夜までいらしたら? 春子の部屋ならこの上だから」
「あ、はいありがとうございます……でもまだマンションの片付け終わってなくて……お、終わった」
「東海林くん、ね、ちょっと、あれ、大前さん……?」
「ああ、お前は知らなかったっけ? あれ、フラメンコ、アイツの唯一の趣味なんだ。……春子」
「東海林くん……マンションは?」
「いやそれが全然片付かねえの! 手伝ってくんない?」
「私は貴方のハウスキーパーではありません! 大体まだ整理し始めたばかりでしょう。全く……カンタンテ来てる暇があるなら整理しなさい」
「とかいいながら来てくれる春ちゃんが好きだなあ」
「……言ってろ、馬鹿」
「大前さん……随分印象が……」
「……!?」
「春子も会うの久しぶりだろ? 黒岩匡子、覚えてるか? やー、そこで会ってさあ、コイツも此処に用があったみたいなんだよなー」
「……お久しぶりです、黒岩さん」
「黒岩さん、今日は早くからアリガト」
「べっ、別に、貴方に会いに来た訳じゃ、なくて、」

122 :
「ハールちゃん、なあ、手伝って?」
「知りません! 大体来るなら来るって連絡の一つも寄越したら?」
「したよ、電話! 大前春子です。出ません! て言われたよ!」
「……」
「それにさ、一緒に片付ける方が、お互いに一緒に住むって実感沸くと思うわけよ」
「言ってることが変わりすぎ! 俺が片付け終わったら呼ぶから、何日かカンタンテでゆっくりしてなって言ったのは誰ですか?」
「そ、そう思ってたのよ? ……でも、その、いざマンション行ったらさ、寂しいんだよね……」
「子供か」
「だってお前、お……お前は平気なのかよ」
「平気じゃない。だから手伝うって、あれ程言ったの。でも、どうしても自分でやるって東海林くん聞かなかったじゃない」
「……ごめんなさい、でした……一緒に、片付けて下さい」
「……ママ、しばらくお世話になるつもりだったけど」
「あら、あらあらもしかして、春ちゃん、クルクルパーマちゃんと?」
「うん。あ、でも、部屋は……うん、部屋は、誰か使う人が居るなら、」
「馬鹿ねえ、あそこはずっと、春子の部屋よ」
「ショウジさんとケンカしたときとか、戻ってくれば?」
「そうよ、それに、また踊りに来てくれるでしょう?」
「うん」
「え、ちょっと、東海林くんと大前さん、一緒に暮らすの!?」
「まあ、名古屋の時も俺ンところにいたからあんま変わんねえっちゃあ変わんねえんだけどさ」
※※※
すみません超途中ですが、ここまでです……
お読みいただきありがとうございました!

123 :
やったあ!ハケンだ嬉しい!
東海林とリュートどっちがカッコイイかで即答する春子可愛いwww

124 :
こんな夢のようなスレがあるなんて…!職人さん凄すぎです♪萌えをありがとうございます(*´∇`)また覗きにきます。

125 :
乙!
くるくる・とっくりのあんま変わらん名古屋生活もいいなw

126 :
このスレドラマより面白いよ
ドラマも篠原涼子と大泉のニヤニヤコントずっとしててほしいよ

127 :
クルクル&とっくり見てたら小学校の時に好きな女の子に振り向いてもらう為に
悪戯や悪口してた男子を思いだす
しかしこの二人のエロ妄想はイイね
ドラマの役自体には何の色気も無いのに

128 :
今日の黄金は面白かった!芯子は結局どっちとくっつくのか…個人的には角松なんだけどな。

129 :
いつもフランス語読めない2人が可愛すぎる

130 :
断然角松派!なんだけど予告を見て
芯子は若くて綺麗な方に行きそうな気がしてきました
あんなに息ぴったりなのにお似合いなのに…

131 :
すまん流れと全然関係ないんだが芯子の下着がものすごくダサくて色気とかくそほどなく、上はいっそスポーツブラとかどうだという誰得な電波が降ってきた…
洋子の時はいっしょうけんめいがんばって色気のある下着つけようとしてとりあえず紐パン穿いとけばいいか!とか思ってて、普段と下着のギャップに角松さんが「え、洋子って意外と大胆なのね……」とか思ってればいいなあとか…
「お前昔は紐とか穿いてたじゃねーか! なーんーだーこの白無地!」
「うるっさいな! どうせ脱ぐなら紐だろーが白だろーが関係ないだ、ろ!」
ほんと空気読まなくてすまんです
どうしても誰かにいいたくてorz
自分も角松派だなあ…

132 :
>>131
紐www
なんなら芯子は中学生みたいに苺パンツやうさちゃんパンツでもいいw

133 :
>>131
ワロタw
>>130
私も断然角松派だけど、来週のあらすじ見てちょっと不安になった。
でも、後2話ってことを考えると来週ラストで工藤が帰ってきて、最終回で今度は芯子が2係を離れる番かもとか考える。
それを止めるのが角松さん、とか…
あそこまで散々引っ張っといて、角松とは何もなしで終わるのはいくらなんでもなぁ。

134 :
芯子は工藤好きだろ
年齢の事考えると「可愛い」って感じかもしれない
角松に対しての気持ちが全く見えない
ハケンの時は東海林が好きなんだろうな〜って分かったんだけどね

135 :
影でこっそり優しい表情になる、みたいなのもちょいちょいあるけど
如何せん描写が少なすぎるって感じだよね
金田の角松芯子を見ての発言は伏線でいいのかな

136 :
工藤が芯子に好きだってちゃんと伝えたのは、やっぱりでかいよな…
角松は一件あったせいで、例え好きだろうが伝えられない感じになってるから
金田はお兄ちゃん的な感じかなあ…伏線で考えても「好き」を伝えた上での進展はなさそうな…

137 :
まあ結婚詐欺された女に「好きだ!結婚してくれ」なんて言うバカはいないよねw
でも角松は工藤と金田、芯子の盾になってるけど
芯子は角松の出来ないことをして盾になってる
仕事上では良い関係だよ

138 :
今回角松は騙され振られて置いてかれた女に「信じて待ってな」って言われたんだよな
自分的にはあの二人は絡んでるだけでイチャイチャしてると思ってるわ

139 :
ドラマ撮影の目撃した人が休憩の合間に2人が仲良く話してるの見たらしい
まるで恋人の様で見てる方が照れたって書いてた
もう現実で結婚して欲しかったわw

140 :
>>139
角松と芯子?工藤と芯子?

141 :
前者だそうです

142 :
そりゃお似合いだけど、中の人は仲が良いぐらいで丁度いいよ
じゃなきゃ今後共演できなくなっちゃう
せっかくハケンの名コンビなのになんだか持ち腐れだよね
過度な期待をしてしまった自分がいけないんだろうけど、やっぱりどこか比べちゃう

143 :
工藤×芯子も好きだけどな

144 :
最終回的な感じなネタ投下しまつ
・ほぼ会話文
・CPは角松×芯子寄り
・所詮ネタ

145 :
工藤→会検に戻ってくる
「おはようございます」
「おお、おはよう。なんだ工藤、今日やけに早いな?」
「あれ、芯子さん、まだ来てないですか?」
「来てないな」
「お前、一緒じゃなかったのか?」
「はい、芯子さんのお母さんに『芯子ならもう出てったよ』って言われて……てっきり来てるものだとばかり……」
「先に出たくせにどこで道草食ってんだ……たく……」
「……あれ?」
「どうした工藤」
「いえ、芯子さんからメールが……なんだろう」
「遅くなるってメールか?」
「……『デスクの引き出し開けて、中に入ってるやつ、もう一人のシングルパーに渡しといてちょ』だそうです」
「デスク〜?」
「……ッ! 補佐! これ!」
「ん? 辞職願……辞職願〜!?」
『もしもし』
「あ、もしもし、くるコメ?」
『また、誰かにつけられてるのかな?』
「……アンタさー、ほーんと食えないジーサンだよな」
『ん?』
「なんでも。あ、そうそう、アタシ、アレ出してきた」
『アレ?』
「辞、職、願、ってやつ。今頃ダブルパーとそーめんかぼちゃが読んでんじゃないかな?」
『何故、勝手に?』
「勝手っつーか、なんかさー……あー……水が合わないっつーの? なんかも、善人面とかだめだわ、うん。悪いね!」
『君は、善人面などしていなかっただろう。悪を暴いても、人を助けても。私は、会計検査の仕事は君にとって天職だと思うがね』
「アタシの天職は、……詐欺師だよん」
『そう、思っていない人は、私の他にもいるんじゃないかな』
「はあ?」
「つつみしんこ−……ッ!」
「……シングルパー……?」
「……ッお前、なんだ、これは! ……辞職願に自分は詐欺師で仮釈放中だのシングルパーだのそーめんかぼちゃだのマメにヨロシクだの書く奴があるか!」
「なんでアタシがここに居るって……」
「昔、お前が好きだっつってた場所、しらみつぶしに……んなこたどうでもいい! お前な、」
「もどらない」
「あぁ? ……そっちじゃない……俺の前から消える前に俺から騙しとった1138,350円耳そろえて返してけ!」
「まーたそれか! っとにしつこいおと」
「返せないなら!」
「……」
「……返せないのなら……返せるまで、会検で働け……」
「……おことわりだ、な」
「……」
「……大体、アンタ、最初アタシが行った時、二度と顔見せるな〜みたいなこと言ってたじゃん」

146 :
「……お前に騙された時、すごく荒れた。金が返らないなら、二度と顔も見たくないと思った」
「だろうな」
「……けどな……」
「……」
「……工藤も、探してる」
「なーんだ……それ」
「……アイツも、金田も、……俺も……必になって……お前を探してた……堤芯子が、必要だと思ってる」
「……」
「……しん、」
「趣味悪ッ……」
「あぁ!? あ、このネクタイか……ってこれもお前のプレゼントだろ……ッ!?」
 角松に抱きつく芯子。
 工藤と金田が角松を追って探しにくる。
「しんこさー……」
「つつみしん……あ」
「芯子さん……」
「いいのか?」
「……芯子さんが詐欺師だったころを、補佐は知ってるんでしょうね……」
「あの様子じゃ、一回騙されてるな」
「でも」
「ん?」
「年数なんて、関係ないですよね」
「……まあな」
「諦めませんから」
「そうか……」
「金田さんは良いんですか?」
「俺!? 俺は……あ」
「ん?」
 工藤、金田が芯子と角松を見ると、二人が顔を近づけている。
「……芯子……」
 が、またふいっと置いて行かれる角松。
「……学習しねー男だな」
「ほっとけ」
「やっぱり、優かな?」
「……」
「そーめんかぼちゃも、いー男だよ、な?」
「……」
「……アンタもさぁ」
「え?」
「……張り合うんなら、私の送り迎えから始めるんだな!」
「……だ〜れがお前みたいなサンゼロ!」
「……戻るよ、シングルパー、そーめんかぼちゃ」
「無視すんな!」
 叫ぶ角松に芯子が笑った。
お粗末様でした
誰か職人さん投下してくれないかな…

147 :
芯子ハーレム状態いいな〜

148 :
ありそうなラストでいいなー!

149 :
角松も芯子とチューするのかな?
ハケンでは角度の問題とかでw唇からズレてたけど
今度はディープなキス見たい

150 :
今回は僕はキスしないんですよー、目撃する側で
みたいなことを角松の中の人が記者会見かなんかん時言ってたから多分しないんだろうな…
しょぼん

151 :
今日から最終回の撮影開始だそうで…
色々不安もあるけど、やっぱりこのゴールデンコンビの復活ってことでスゴい嬉しかったドラマだから、終わるのは寂しい…
出演者側も割とギリギリまで話の内容知らなかったみたいだから、それは1話のことでまだ分からないかも…
まあ、希望的観測に過ぎないけれど。

152 :
アンフェアの続編するならハケンの続編もしてくれよ

153 :
キスシーンはあってもなくてもどうでもいいけど
もっとこっ恥ずかしくなるような掛け合いが見たい

154 :
>>153
判る判る
おめーら両思いなのバレバレなんだよ!ってぐらいの掛け合い
この二人は言い合いがラブシーンみたいなもんだからな

155 :
まさかの降って湧いた、金田×芯子です。
洋子時代には体の関係ありで、再開後は全く無いけれど、
体は覚えてる芯子が前提。
工藤もまだ2班にいる状態で書いてます。
暴力とかではないですが、ちょっと拘束ありなので、嫌な方はスルーで。
エロより心理描写のほうがうだうだ長くてすみません。

156 :
――とある街のとあるビジネスホテル。
空室が目立つごく普通のホテルの一室に、カタカタとタイピングの音が響いている。
都心であれば窓からの景色もそれなりのものかもしれないが、
あまり産業が発展しているとはいえない片田舎のホテルでは夜景など望むべくも無い。
室内の灯りはベッドサイドの小さなスタンドライト、
そして男の向かうノートパソコンのディスプレイの光のみだった。
「…750万…その後の調査で、判明…と……」
「…そーめんかぼちゃって、独り言言いながらパソコン打つんだぁ」
不意に、響くはずの無い声が背後で響き、
スーツの上着を脱いだだけの金田はぎょっと目を見開いて後ろを振り返った。
「なんであんたがここにいる!」
ホテル備え付けのしどけない浴衣姿で、缶ビールを片手にシングルのベッドに腰掛けていたのは
今回の調査に同行していた堤芯子だった。
「あんたの部屋は隣だろ、勝手に鍵開けて入ってくるな!」
「えー? 鍵、開いてたけど」
「嘘つけ、俺が鍵を掛け忘れるはずがない」
しかめっ面で立ち上がり、つかつかと近寄った金田は
「ベッドの上で飲むんじゃない」と、芯子の手からビールの缶を取り上げる。
「だぁって、今回はダブルパーもいないしさぁ?
たった二人しかいないのに、あんた部屋に篭っちゃうしー。
お風呂も入っちゃったし、暇だったんだもん」
芯子はわざと拗ねたそぶりで唇を突き出して、ベッドにごろりと転がった。

157 :

――今回の地方出張は、金田と芯子の二人だけだった。
不正会計の調査の通知を渡してきた門松は物凄く複雑な顔色で
「二班は人員が足りないから、今回は仕方なく、しかたなーくだな…」と、
何かを振り払うように繰り返しぶつぶつ呟いていたのだが。

「…俺は仕事をしてただけだ。あんたも自分の部屋に帰って早く寝ろ。
明日も調査があるんだ、寝坊でもしたら置いてくからな」
苦虫を噛み潰した顔でそう言うと、
金田は芯子の事など無視して再びパソコンに向かう。
部屋を出ることも無く、ディスプレイの青白い光に浮かび上がる輪郭を
黙って見つめていた芯子は、不意に猫が甘えるように擦り寄ると
金田の背中に抱き着いてきた。
押し当てられる胸元の柔らかさと、首に絡む白い腕。
石鹸の甘い香りが、ふわりと金田の鼻腔に忍び込む。――そういえばさっき風呂上りなのだと言っていた。
「――っ、おい、なんだ!」
唐突な出来事に狼狽した声を上げ、振り払おうとした金田の身体がぎくりと硬直した。
「…鉄男、さん。私より仕事が大事?」
耳朶に押し当てられる柔らかな唇。
蓮っ葉な芯子のどこにそんな媚態が潜んでいたのか、
にわかに彼女のものだとは信じられないくらい、甘い蜜のような囁き声。
「お仕事なんて置いといて、たまには私のこと…ちゃんと構って」
耳元で、ちゅっと小さくキスの音。思わずぞくっと背筋が震えたのを悟られたか、
振り返ると抱擁を解いた芯子は、悪戯が成功したと言わんばかりの無邪気な顔でくすくすと笑っていた。
「やだなーそーめんかぼちゃってば動揺しちゃって。彼女いないのぉ?」

158 :

もしかして童貞?なんて失礼極まりない品のない呟きは、  
呆然としていた金田の耳には届いていなかった。
――なんで。なんで、こんな女がいるんだ…。
じわりと湧き上がる激しい衝動。
それは出会ってこのかた振り回されっぱなしの金田の中に我知らず蓄積されていた苛立ちだったのか。
それとも、力強い輝きで不正を正す彼女への憧憬だったのか。
金田の心情を知ってか知らずか、侵入した時には既に酔っ払っていたらしい芯子は
再びベッドにころりと横たわってまだケタケタと笑っている。
ぼんやりと灯りが燈るのみの狭い室内に、先程嗅いだ石鹸の香りが漂っていた。
シーツに長い髪が散っている。僅かに乱れた浴衣の裾からは、白い素足が覗いている。
色気とは無縁に思っていた女の無防備な姿に、噛み締めた金田の唇から低い唸りが漏れた。
「…仕事より、女のほうが大事な時もあるな」
いつになく低い金田の呟きに、緩めただけのネクタイを解く布音が鋭く混じった。
え?と笑顔のまま固まった芯子に有無を言わせず圧し掛かると、
あっという間にその両腕を頭上に纏め上げ、細い手首を自分のネクタイで縛りつけてしまう。
「え、…ちょ、ちょっとなにしてんのそーめんかぼ」
「ちゃ、じゃない。鉄男さん、だろ?」
最後まで言わせずに言い返した金田は、わざと酷薄に微笑んでみせながら
拘束した手を離すと芯子の浴衣の襟元に手を掛けた。
「…やだ、さっきのはじょーだんだって、じょーだん! 重ーいってば!」
体格差は歴然としている上、手首を纏められていてはさしもの彼女も身動きが取れないのだろう。
ベッドに押し付けられたまま金田の強張った表情を見て焦った芯子は
取り成すように愛想笑いで誤魔化そうとしたのだが。
「冗談? 誘惑してきたのはそっちだろ。
男の部屋に勝手に入ってきておいて…今更なしなんてのは無理な相談だ」

159 :

芯子の発言は金田の勢いに油を注いだだけだった。
気まぐれな雌猫みたいに男に擦り寄って、気が向かなければそっぽを向いて身を翻す。
そんな勝手は許さない。
「っ、やだってば! やーめてって言ってんでしょっ、強姦で訴えるよ!?」
「自分から二人きりになってベッドに寝っころがっといて、そんなの通用するかよ」
たとえ女でも、どかどか本気の蹴りを入れてくるのは結構痛い。
暴れる芯子の両足首を掴むと、力任せに押し広げて身体の上に乗り上げる。
ちょうど正常位のような格好だ。
乱れた浴衣の下のショーツに熱く滾った部分を押し付けると、
芯子は小さく息を呑んだ。
襟元を掴んで、ぐいっと左右に肌蹴させる。
ぎくりと身を強張らせる彼女を見下ろし、しばし目を見開いていた金田がはーっと落胆めいた吐息を漏らした。
「…随分色気のない下着だな」
「い、色気なくて悪かったね! 見せるつもりなんかなかったんだからしょーがないでしょうがっ」
浴衣の下は飾り気の無いごくごくシンプルなブラのみだった。
あまり豊かとは言えない小振りな胸元だ。
見たくないならさっさと離せと噛み付くように叫ばれたが、
羞恥にか頬に赤みが差したのが見て取れて、却って煽られてしまう。
身を離した金田は芯子の身体をひっくり返してうつ伏せにすると、襟元を掴んで引き下ろした。
衣服の上からでは判らない、細い肩から背中が剥き出しになる。
淡い光に照らされた肌は白くなめらかだった。
いつもは束ねている長い髪はまだ少ししっとりと濡れている。
金田は唇でその髪を押しのけると、現れた耳朶に先程のお返しとばかりに噛み付いた。
「うひゃっ!」
「だから…なんでいちいちそう色気がないんだ」
「んんっ! や、だ…あぁっ、しゃべんない、でっ…うんっ」
耳朶に唇を這わせ、舌を差し込んで擽りながら囁くと、びくびくと組み敷いた身体が震える。
耳が酷く弱いようだった。嬌声じみた声を引っ切り無しに上げている。
抵抗が弱まっているのは感じているせいなのか、それとも暴れて酔いが回っているせいだろうか。
耳を食んだまま首筋から肩先に撫で下ろし、今度はブラの隙間から指を潜り込ませて直に乳房を掴んだ。

160 :

「『ちゃんと構って』やるよ、堤芯子」
「あ……っ、だから冗談って……あ、ぁっ…」
やわやわと揉みしだきながら乳首を転がすと、存在を主張するように硬く尖ってくる。
離した片手で今度は裾を割り、太腿を撫で上げると、緩く首を振って唇を噛み締める。
どこもかしこも過敏で、本当に拒否しているのだろうかと疑いたくなるくらい、吐息交じりの声は甘い。
身じろぎするたびに酷い格好になっていくことに気付いていないようで、
普段やり込められている相手をいいように翻弄できる悦びに
知らず金田の表情は薄く微笑みを浮かべていた。
「…たまには可愛いとこもあるんじゃないか」
「っなにが…強姦しといて、よく言う…っ…もう、重いってば!」
「この程度じゃ単なる強制わいせつ…まあ、合意の上だから犯罪にはならんがな」
応酬を繰り広げながらも、太腿を撫でた無骨な指は、これまたシンプルなショーツの脇から中へと滑り込んだ。
割れ目に添って指を動かすと、そこはしっとりと濡れている。確かに感じているのだ。
摺り下ろしたショーツは太腿辺りで中途半端に絡まったまま。
脚を開かされているので、閉じようとしても閉じられず、芯子が悔しそうな声を漏らした。
「むっつりすけべのヘンタイそーめんかぼちゃっ……、ああもう…やめてって言って…、あ、あっ!」
不意に、恨み節が嬌声へと変わった。
弱いところを捕らえた指先が、器用に動いてそこを刺激したからだ。
細い腰が浮き上がり、快感に震えて竦んでいる。どっと溢れ出した蜜を掬って更に追い詰め、
金田は無言のまま塗れた指を中へと潜り込ませた。
熱くて狭くて、どこをどう弄っても声が上がる。快感を湛えた女の声。
いやだのやめてだの吐息混じりにわめいていた芯子だが、
やがて騒ぎ疲れてしまったのか、くたりとシーツに顔を埋める。
芯子の顔が見えないのは残念だが、金田もそろそろ限界だった。
「っ…も、このへんでいい……だろー…」
諦めを含んだ声に苦笑した。この期に及んで止められるか。
伏せたままの彼女を放置して、偶々財布に入れていたゴムを手早く着ける。
万一の対応は抜かりない、この辺りが公務員気質、なのかもしれない。

161 :

準備を終え、興奮を隠し切れない熱い息を吐いた金田が
喘ぐばかりの芯子の腰を抱え上げて浴衣の裾を捲り上げると、
「腰、あげてろよ…」
散々いたぶったその場所へ、一息に押し入った。
「っは…――ぁああ…あっ!」
潤みきった芯子の中は熱く蕩けて、金田を強く締め付けてきた。思わず充足感に喉が鳴る。
剥き出しの丸い尻をぐっと掴み、更に奥を掻き回すと、芯子が仰け反って髪を振り乱した。
強く腰を打ちつけ、感じて声を上げる箇所を執拗に突き上げる。
不意に、ネクタイで縛られたままの指先で、堪えるようにきゅっとシーツを掴んでいるのが目に留まった。
――いま何を考えて俺に抱かれているんだろう。
不正を働く者たちに、金を返せと宣言するその様は凛としていて、圧倒されて。
ただの蓮っ葉な言動の馬鹿女などではないと思わせるには十分だった。
だが今は、ぐしゃぐしゃになった浴衣は帯でかろうじて引っ掛かっているだけ、
ホックを外しただけのブラも、肩紐が二の腕辺りに絡んでいるだけの酷く扇情的な姿で
恋人でもない男に揺さぶられている。
金田の指先が無意識に動いて、動きにつられて揺れる乳房を強く掴んで捏ね回した。
――工藤は。あいつには、この女がどう見えているのか。
芯子に告白をした工藤は、このことを知ったらどう思うだろうか。
「……んんっ! …あっ……も…う、……あたし…だめ……っ」
思考を巡らせていた金田は、首を振って懇願する芯子の声にはっと我に返った。
ぎゅうっと中の締め付けが強くなり、達しかけているのが伝わる。
この女を征服したような、圧倒的な満足感に、自然と金田の動きは速まった。
「……そろそろ、いくぞ」
「…ん、あ、はあっ、…ああ、い、ち……ろ、…っ…――…あああ…っ!!」
「……――っ!!」
高い声を上げて仰け反った芯子が絶頂へと駆け上がり、食い締めるように中が激しく痙攣する。
引き摺られるように、ぐっと唇を噛み締めた金田は彼女の中で達した。
脱力してぐったりとシーツに身を投げ出した芯子から身体を離し、
後始末をした金田はベッドの縁に腰を下ろしてこめかみに手を当てた。
彼女は、誰に、抱かれていたのだろう。
自分はもともと蚊帳の外だということだったのか。

162 :

ややして、ゆっくりと体を起こした芯子が
いい加減痛いんですけどと、拘束されたままだった手首を差し出してくる。
無言でネクタイを解いてやると、眉を寄せた芯子が顔を覗きこんできた。
「……何、……どしたの、そーめんかぼちゃ」
汗に濡れた前髪を掻きあげて気だるげにこちらを見つめる芯子の瞳には、
はっきりと金田の姿が映っていた。
「……いや、なんでもない。あんたはこのままここで寝てろ。俺は向こうの部屋で寝る」
放置していたノートパソコンを閉じ、
首を傾げつつも素直にシーツを纏った芯子を残して、金田は部屋を出た。
――あの時、嬌声に紛れて聞こえた一つの名前。
芯子と繋がりがあるのは、工藤などではなかった。
まさか、角松が相手だとは――……。
色々と思い当たる節が無いわけではなかったけれど、
発覚してしまった事実に目の前が暗くなる。
隣室のドアを開けると、そこには一度芯子がシーツを剥いだのだろう、乱れたベッド。
「………はっ」
自嘲の笑みを漏らすと、扉に凭れ掛かった金田はずるずると床へとしゃがみ込んだ。
ある名前を呼んでいたことに、彼女は気付いていないらしい。
強引に抱かれても、芯子の心は揺らいでさえいない。
後悔も怒りもなく、ただありのままの彼女がそこにいた。
忘れてくれとか、二人の秘密だとか、そんな陳腐な台詞はんでも言わない。
いや、言わずとも、彼女は口を噤むだろう。
――ただひとつ。
「鉄っちゃん!」と屈託の無いあの笑顔で呼ばれたその時に、
今までと同じ顔で応えられるのだろうかと、
それだけを金田は一晩中悩み続けたのだった。

            (終)

163 :
ちょっと調べたけど、芯子の中の人って
ひんぬうでいじられたこともあったとか。
なのでその説でいってみました。
シンプル下着はこのスレの中のネタを頂きました(礼)
できたらドラマでは角松芯子があるといいなあ。

164 :
>>155
gj! 充分エロティックでした!
自分の中の金田→角松の琴線にも触れたw

165 :
>>155
おぉぉ、GJ!
上手いなぁ〜、いい感じにエロくてスゴい好き!
角松→芯子←工藤に圧されて隠れてるけど、芯子→角松←金田も気になる所だとこっそり思ってたから、萌えた。
乙。

166 :
金田との行為中に角松の名前出ちゃう芯子に萌えた

167 :
Sなメガネ萌え

168 :
お、おかわり!w
GJでしたニヤニヤする!

169 :
>>162
確かにドラマで貧乳いじられてた
でも素の時グータンで「脱ぐと意外とすごいんだから」と言ってたので
一郎が芯子の貧乳をバカにして逆上した芯子が…みたいなのをぜひ!
職人さーん
ホントこのスレ
ニヤニヤしちゃうね!!

170 :
大前さんはおっぱい大きかった
トックリセーターの膨らみやフラメンコドレスの谷間はでかそうだったよ
クルクルがドレス着てる時に谷間ちら見してるからw

171 :
昔ひんぬー今豊満…それはそれで (*´д`*)

172 :
155です。
調子に乗って第二段、金田×芯子です。
今まで録画流し見してたから、所属は二係だったとか
細かいところがドラマとずれてました。
色々とすみません。あとエロらしいエロはないです…
再放送を見たら、確かに大前さんちょっと巨乳ですよね。
最初ひんぬーで書いちゃったから仕方ない、このまま行きます。

173 :
――ここしばらく、あいつが変だ。
いつもの通りお行儀悪く机に腰掛け、片足を膝立てて頬杖をつきながら
堤芯子は胡乱げな眼差しで一人の男を見つめていた。
書類に目を落とし、眼鏡のフレームを押し上げて淡々と調査内容を読み上げている
『そーめんかぼちゃ』こと金田鉄男。
二人で調査のために地方へ出張したのはつい先週のこと。
まあ人には言えないあれやこれやを致してしまったのは不徳の至りだが、
酔っ払っていたし、年下の割にはなかなかよかったし、なにより久々だったし。
…決して縛られたから燃えたというわけでは、断じて無い、はず。
出張から戻った日、微妙にやつれた顔をした角松には
「勿論何も無かったんだろうな!?」とやたらな剣幕で詰め寄られたが、
いつもの通りはぐらかしている。
とにかくあれは大人の情事というやつで、
それ以上を追求する気も、「襲われちゃいましたー」なんて大っぴらにする気も
全く無かったのだ。
ーーなのに事が済んだ翌日から、金田は決して芯子と視線を合わせなくなってしまった。

174 :

ちゃんと職務は全うしているし、必要最低限の仕事上の会話もある。
周囲の人間と談笑している姿だって見られるのに、
芯子が近づこうとすると無言で身を翻す。逃げ回る。
「……くっだらない」
何を気にしてんのかねぇ。
視線の先には、まだ打ち合わせ中の金田の背中。
唇をへの字に曲げて、芯子はぼそりと声を漏らした。

――木枯らしの吹き荒ぶ、ある夜。
角松は朝から調査に単身出かけ、
工藤はとあるお方に呼び出されたとかなんとかで出掛けてしまい。
定時で帰宅した芯子が再びふらりと会計監査庁に顔を出すと、
予想通り一人で残業していた金田の姿がそこにはあった。
二係の辺りだけ明かりが灯ったオフィスに響くタイピングの音。
入り口随分と集中しているらしい。
しばらく黙って金田の後姿を見つめていた芯子は、そろりと気配を消して近づくと
「……ダーリン。なーに考えてん、の」
「の」の所で、すいっと首筋をなぞってやった。
首筋が弱かったらしい金田は、うひゃっとかうへっとか妙な声を上げて大仰に飛び上がる。

175 :

首を押さえて後ろを振り返り、金田は芯子の姿を見つけて顔色を変えた。
何故ここに、という顔だ。
「……帰ったはずだろ。わざわざ何しに来た」
さっと視線を逸らして立ち上がると、
金田は逃げるように薄暗い資料室へと足を向けた。
棚からバインダーを取り出してぱらぱらとページを捲る。
淡々としたそっけない態度は、芯子に出会った当初の頃のようだった。
「酷い言い様だねー、なにも獲って食おうってんじゃあるまいし」
扉にもたれかかり、あからさまに不満げな声を漏らして腕組みした芯子は
じっと鋭い視線を送った。
しばらく無視を決め込んでいた金田だが、
重たげな溜め息を落としてちらりと芯子の方を向きかけ…、結局また棚へと視線を
戻す。
――煮え切らない態度に溜め息が出そうなのはこっちだ。
「ごーかんしといて後悔してんだ?」
「っ、だからあれは…!」
「あれは?」
畳み掛けられて、金田はぐっと言葉に詰まった。
ずいっと近寄ってきた芯子の険しい表情に気圧されたように
バインダーを取り落とした金田の肩を押しやると、
芯子は金田のネクタイをぐいと引いて顔を近づけた。

176 :

「あれは襲われたとかじゃないし、後悔もしてない。なにがご不満?」
じっと下から見上げられ、思い悩んだような顔をした金田は
しばらくしてから視線を逸らしてぽつりと呟く。
「知らなかったから。……あんたが…その、角さんと…出来てたなんて」
「………………は?」
唐突に出てきた角松の名前に、今度は芯子が固まる番だった。
よりによって、何故今、その名前が出てくるのか。
一瞬、脳裏に浮かんだのはへらへら笑う男の顔。
だが自分の情けない過去を角松が軽々しくしゃべるはずは無い。
他人の前で二人の関係を臭わすような事も話していないのに。
「ななな、なんでくるくるパーマの名前が出てくるわけ?!
あたしとあいつは、全くもってそーゆー関係じゃないんだけど!」
若干焦った口調になるのは動揺が激しいからだ。
角松に対しての結婚詐欺が発覚すれば、クビ。
どころか刑務所に逆戻りかもしれない。仮釈放中の身なのだ。
――せっかく掴んだ就職先だってのに!
ぶんぶん首を振って否定する芯子に、金田は怪訝そうに眉を寄せる。
「だってあんた…呼んだだろ。一郎って。
…俺に抱かれるのが嫌だったから、すり替えてたんじゃないのか」
「――――……呼んだ、って……」
「考えれば、思い当たる節はあったんだ。二人が特別な関係だって。
だから…俺は」

177 :

呼んだ?
芯子にネクタイを掴まれたまま項垂れる金田を前に、今度こそ芯子は絶句した。
よもや自分が情事の真っ最中に角松の名前を口にしたなどとは。
堤芯子一生の不覚だ。
真っ最中に他の男の名前を呼ばれたら、
それは相当ショックだろうし冷めてしまうだろう。
――だーから思いっ切り避けられてたわけ、か。
さっさと誤魔化してしまわねば。こんなに悩んでんじゃ可哀想だ。
真相を知って逆に申し訳ない気分になった芯子は
哀れな男に抱いてしまった同情を誤魔化すように、あのねぇ、と言葉を続けようと
した。
だがそれを遮って、金田が苦い声を発する。
「……だけど、知らなかったじゃ済まされない。
俺が角松さんの女を抱いたなんて知ったら、…あの人はショックを受けるだろうと

「…………はい?」
普段の彼からは考えられないくらい弱々しいその言葉に、
頭をがんと殴られたような衝撃を受けてめまいがした。
つまり、だ。
金田は『芯子が』角松のものだったことにショックを受けたのではなく、
『角松が』ショックを受けてしまうことのほうを心配していたのだ。
――よりによって、この芯子様より、くるくるパーマのほうが上だってこと!?

178 :

俯いたまま震えていた芯子の唇から、くつくつと笑いが零れ落ち、
金田は怪訝な顔で芯子を見た。
「…あのねぇ、そーめんかぼちゃ。一郎なんて名前の男、世の中にどんだけいると
思ってんの」
「……は? だ、だってあんた、角さんと…」
「あーもー、角さんだか格さんだか知んないけどさ。あーんなくるっぱー、
こっちから願い下げだっつの。…あたしが呼んじゃったのは、他のイチロー。判っ
た?」
第一もう古っるーーい名前だし?と苦笑したまま肩を竦めて、
事も無げに言い放つ。
彼女らしいもっともな物言いに、「…そうなのか?」と呟き脱力する金田を見て
内心安堵した芯子は、彼のネクタイをぐいと引いて再び顔を近づけた。
まるで今にも口付けするかのように。
「て・つ・お・さん。…もうあたしが別の男を呼んだりしないでいいように、夢中
にさせてよ」
ね?と甘く囁いて、大きく目を見開いた彼の眼鏡に片手を掛ける。
――本当は自分が角松をどう思っているのかなんて、今はあまり考えたくも無い。
金田にも、出来れば忘れてもらいたい出来事だ。

179 :

遮るもののなくなった彼の素顔は、普段より少し若く見えた。
薄明かりに照らされた金田は無言で、じっと芯子を見つめている。
その表情に浮かぶのは微かな戸惑いと、確かな欲望。
「……自分で言ったんだから、逃げるなよ」
あまりにも近い距離にいたせいで、低い声で言い切った金田が
不意に抱き寄せて口付けてきても、芯子には逃げる時間がなかった。
「ん、っ……!」
合わさった唇で開かされ、口腔に入り込んだ熱い舌先が、芯子の舌を捕らえて舐め回す。
そういえばこの間はキスもしなかった。
濡れた音が小さく響く中、眼鏡を持ったままの片手は次第に力無く垂れ下がり、
角度を変えて幾度も唇が重ねられる。
目を閉じたままの芯子がはぁっと熱い息を零すと、
金田は頬から首筋へと口付けを落として、薄手のシャツの裾から中へと
手を潜り込ませてきた。
素肌に触れた指は少しひんやりとしていて、その冷たさに芯子は微かに肩を竦める。
シャツを脱がせることも無く、その中で男の手が蠢いている様はどこか卑猥だ。
やがて節の高い指先がカップの下から差し込まれ、
ブラを押し上げ胸元を露にしようとするに至って、
その性急な行動に芯子は焦りを覚えた。
誤魔化すのが目的で誘ったのは事実だが、まさかここでとは思わなかった。

180 :

「ちょちょちょ…っと、ストップ! 何考えてんの!」
慌てた声を上げて身をもがかせた芯子に、
鎖骨に歯を立てていた金田は「あぁ?」と少し掠れた声を上げた。
「俺の言葉を聞いてなかったのか。逃げるな」
熱っぽい息と共に、歯先が肌に食い込む。
興奮と欲情が交差する眼差しで上目遣いに見つめられ、芯子の身体にも火が点る。
――が、このまま流されるのはちょっと危険だと思うんだけど。
「誰か来たりするかもしれないようなトコで、できるわけないっしょ!」
なにせ自分は仮釈放中の身。
隠れて事に及ぶならまだしも、仕事場で致したとバレて問題になったら困る。
抑えた声で噛み付くと、金田はしばらく無言になった後、
身体を離して芯子の手から眼鏡を取り上げた。
そして彼女の手を掴むと、有無を言わさぬ勢いでコートとカバンを手にし、
灯りを消すとずかずかとオフィスを出て行こうとする。
「ちょっ、どこ行くわけ?」
「俺のマンション。だったらいいんだろ」
前を向いたまま間髪入れずの答えに、はぁ?と呆れた芯子だったが、
拾ったタクシーの奥の座席に押し込まれるに至っては、
今夜は年下男の暴走に付き合うしかないかと苦笑する他なかったのだった。

――走り去るタクシーを見送る、背の高い人影があったことを、
手を握り締められたままの芯子が気付くはずはなかった。

                    (終)

181 :
GJGJ…!
是非続いていただきたい!
正座して待っております!

182 :
おおお、続きが!
GJGJ!続き気になる〜
角さんだか格さんだかに笑ってしまったw

183 :
いい!いいんだけど・・
角松頑張れと言いたいw

184 :
頑張って欲しいよね角松
せめて過去話にはケリつけてあげてほしい

185 :
今日の展開見て、どうしても角松応援したくなったので、職人揃いの中を恥を忍んで短いけど角松←芯子を投下します。
一応7話の大使館前のシーン。


騙されるくらいなら騙した方がいい。
どうせ裏切られるなら、最初から何も信じなければいい。
貧乏人として、社会的弱者の立場で自分は生きていかなければいけないんだと理解した時から、これがあたしの生きる術だと信じてきた。
だから母ちゃんやみぞれ、あの暑苦しい元警官以外の誰かを信じることもなかったし、逆にあたしのことを信じて欲しいと思う人間なんていなかった。
あんたに出会うまでは。
洋子として付き合っていた頃も今も、あんたは中身も外身も全く変わらないシングルパーのままだね、本当に。
他人の事になれば無駄に勘が働く癖に、自分のことになればことごとく詰めが甘い、愛すべきバカ天パ。

「大丈夫だよ。あたしの仕事は、あんたには出来ないことをやること。信じて待ってな。」

詐欺師を辞めた今、『信じろ』なんて言葉を使うのは、家族以外にはきっとあんただけ。
人を欺く必要がなくなってもなお、あたしを信じて欲しいと心から思った初めての男。

『芯子!!』

発進させた車のバックミラーは、あたしの名前を呼びながら今にも泣き出しそうなシングルパーの姿を写し出す。
その姿は、不覚にも滲んだ涙であたしの視界を霞ませた。
あの門をくぐれば、あたしはもう堤芯子ではないのだから、泣いている訳にはいかない。
門をくぐるまでの僅かな時間でさえも、『堤芯子』としてあんたの姿をこの目に焼き付けていたいから、やっぱり一瞬たりとも涙は必要ない。
目尻に浮かんだ水滴を、運転席に座るみぞれにはバレないようにそっと拭ってもう一度バックミラーに写るシングルパーを見る。

『心配するなよ、必ず帰ってやるから。』

日本に。
あんたの隣に。
その場所こそが、あたしの居場所だから。

お粗末さまでした。
あの話、もし工藤があんなことしなかったら、芯子は結局どうなってたんだろう。

186 :
>>185
GJ!
内心はこうだとイイね
自分は「信じる!」って言ってくれる器の広い角松の方が男らしくて好きだ
来週で最終回・・ただの結婚詐欺師とその被害者で終わらすのかな?

187 :
>>185
乙、本当に有難う。
なんかね、本編の方、観たいものの素材がそこにあるのに
ずらされてくっていうか、凄くもどかしかったんで、
これこれこれよ!っての読めて嬉しい。
>あの話、もし工藤があんなことしなかったら、芯子は結局どうなってたんだろう。
外交よくわかんないからアレだけど、
隠しワイン等横領突き止めてるから、角松達が助け出してると思う。
アブラビへの密入国者扱いになってるから、強制送還として返してもらうとか、
前アブラビ大使の不祥事が起因だが、それに加担したことが表沙汰になっては
貴国にとっても色々と拙いのでは、ここはお互い内々に処理したほうが云々…なーんてw
(あ、口八丁に交渉する角松も観てみたくなったw)
でも時間がかかって本国へ連行されちゃってたらかなり面倒だし、
工藤の焦りも解る。

188 :
昨日の録画改めて見たら
芯子が角松の髪の毛クルクル触った後に「ばっちぃ」って顔で指見てるw

189 :
185です。感想ありがとう!!
同じ思いで見ててくれた人がいてくれて本当に嬉しい。
>>187
おぉ、ありがとう!
やっぱりそう考えるべきだよね。
大使を逮捕することが、遠回りなようで一番の近道だって角松は判断したんだろうな。自分だって本当は芯子のことが心配で仕方がなかっただろうに。
確かに工藤の不安も分かるよね。自分には角松にはない確実なカードをもってた訳だし、それにすがりたくなる気持ちも芯子を想う一心からきた、若さ故の行動だと思ったし。
うまい対比だなーって思ってた。
だからこそ、8話であまりにも急に工藤側に傾いて話が進みだしたことが正直キツイ…
>>185、188
このままで終わるなら、詐欺師とその被害者なんて設定何で必要なのか理解に苦しむなー。
やたらと113万8350円を持ち出してた訳だし、ケリをつけて欲しいよね。
「ばっちぃ」ホントだwwwあのやり取り、いつもの覇気がなかったからちょっと心配だったんだけど、それ聞いてなんか嬉しくなった。また見たいな、あの2人のあんな絡み。

190 :
ごめん、間違った。
185じゃなくて186です。

191 :
>>185、188
>>186、188
って意味です。慣れてなくて申し訳ない…
余計な書き込みでスレ埋めちゃってゴメン。

192 :
155です。今更ですがご感想等ありがとうございました!
意味ありげなラストで投下したものの、
長々とスレを占領するのはいかがなものかと止まっております。
これって釣りかな…
185さんの補完、GJでした!
録画を観て工藤に感情移入はできたんだけど…
ハケンがよかったのはあの二人の絡みあってのものだと思うんだけど。

193 :
やっぱり・・春子&東海林は良かったな
芯子は萌足りない

194 :
>>193
春子は元々カラオケ好きな明るい女だったからな
それを捨ててツンケンしてるキャラが垣間見せるデレにヤられたわ・・・

195 :
>>192
よかったら是非…!
楽しみにしてます♪

196 :
155です。調子に乗って上げます。
その後の続き、簡潔ですが終わらせました。
今回は角松芯子です。エロ無しですみません。
勝手に捏造してしまいました。
とりあえず、芯子→金田の恋愛ベクトルは一切なし。
金田は恋愛感情というよりは、興味とか男の生理現象ってとこ。
角松とくっついたと知ったら金田は
むしろ芯子を憎く思いそうw
工藤は…うん、あの泣き方がかわいらしすぎたから…
読んで下さった方、ありがとうございました。

197 :

「堤芯子。ちょっと話がある、顔貸せ」
それは工藤が総理付きの秘書として異動になる直前のこと。
会計検査庁内に久々に平穏な空気が流れていたその日は
当然新人である芯子の仕事もあまりなく、
そろそろ帰宅しようかと思っていた矢先に
上司である角松に声を掛けられた。
何事かと無言で問い掛ける仲間の視線が突き刺さる。
が、芯子は肩を竦めるリアクションのみでオフィスを出た。
「あンだよ、たまにはさっさと帰ってゆっくり飯食おうかと思ってたのに」
さっさと終わらせてよね、と、普段と何ら変わらない蓮っ葉な態度を取る芯子を、
やや緊張気味の顔をした角松は、オフィス建物の裏手の、あまりひと気の無いスペースへと連れ出した。
「…こないだ、の、夜。俺が一人で出張に行ってた日だ。覚えてるか」
視線を合わさない角松のお茶を濁した物言いが気に食わなくて、
芯子はイライラしながら腕組みをして角松をにらみつける。
「こないだっていつ。判んないっつの。んで、その夜がどしたって?」
荒い口調になるのは致し方ないだろう。回りくどいのは好きじゃない。
眉根を寄せた怖い顔で続きを促す芯子に、ゴホンとわざとらしい咳払いをした角松は
芯子へと向き直った。ずい、と一歩近づく。

198 :

「…俺は出張が終わって、必要な書類を取りにいったん戻ったんだ。
そしたら真っ暗な事務所…お前と、金田が出てきた。
手繋いで、タクシー捕まえてさ。男と女が行くとこっつったら……」
その言葉に、芯子は「げっ」と声を上げてしかめっ面になってしまった。
よりによって、金田のマンションに移動するところをシングルパーに見られていたとは。
…元はと言えば、二度目の逢瀬は元々角松のせいなのに。
内心で思いっきり理不尽な責任転嫁をしておいて、
芯子は大げさな溜め息をついて頭をボリボリと掻く仕草をした。
面倒なことこの上ない。あの日以来、金田とは何の関係も持っていないのだ。
「…行くとこっつったら、なんだって言うんだよ。
男と女のカンケイに首突っ込むなんて、どういうつもりなワケ?
それともなに、これも上司の役目ってやつ?」
両手を腰に当て、下からねめつけるような姿勢で矢継ぎ早に言う芯子に、
角松は図星をつかれたようで、ぐっと言葉に詰まった。
やっぱりね、と芯子は思う。あの現場だけ見たのなら当然心配になるだろう。
特に自分と金田の組み合わせなんて、騙されたとしか思えないはず。
「…あー、そっか。そーめんカボチャのしょーらいせーがどうとか心配しちゃってんだ。
カワイイ部下だもんね。結婚詐欺女にカモにされちゃかわいそうってことか」
「……違う」
「あ、じゃあ自分と同じ目に合わされたらヒサンだし、今のうちに釘刺しとこうって思ったのか」
「……違うって言ってるだろ!」

199 :

いきなり角松が大声を上げたので、
露悪的な態度で臨んでいた芯子は思わず素で驚いてしまった。
蒼白な顔をした角松は苦渋の表情を浮かべると、つかつかと歩み寄り芯子の肩を強く掴んだ。
「お前と金田が本当に、…本当に恋愛関係にあるんだったら、俺は……、俺は」
「……俺は、なにさ。応援するって? ああ、金返してからにしろってことか」
「違う、そうじゃない。いや、金田はいい奴だし、本当にお前らが恋人同士なら…応援する。
…けどさ、工藤のことはどうすんだ。お前に告白してきてただろ」
その言葉に、芯子は「はぁ?」と鼻白んだ。えらく的外れな事を言われた気がする。
「シングルパーはかわいい舎弟。そーめんカボチャとは恋人とかじゃないし。
…男女のことには色々あるんだから、あんたに余計な首つっこまれる筋合いないって、
今言わなかったっけ? ほんとにあんたはニブチンのカタブツだねぇ」
だからモテないんだよ、と言い捨てて、芯子は掴まれた腕を振り払う。
無言で唇を噛み締める角松を見て、今度こそきびすを返して帰ろうとした、その時。
「俺は、お前のことは、…素直にすごいって認めてる」
「……は?」
なにを突然言い出すのか。
意外な言葉に、芯子は今度こそ目を丸くした。
振り向くと、見覚えのある顔で、角松が芯子を見つめていた。

200 :

――真剣さと純粋さとが同居したこんな表情を、昔見たことがある気がする。
「お前は俺たちとは違う。俺たちにはない嗅覚で、次々成果を上げて。
お前の正義感っていうか…、自分の信じてるものを疑わない姿勢を、俺は本当にすごいと思ってる。
――堤芯子、お前は俺たちの仲間だって」
段々と熱を帯びた口調で角松が語る。
懐かしい光景を一瞬垣間見た芯子は、過去を振り払うように肩をそびやかした。
「あっそ。それはありがたーいお言葉ですねぇ角松補佐。んで、その話がどう繋がるワケ?」
「…今のお前を見てて、最近すごく洋子を思い出すんだ。洋子は、何で俺から逃げたのかって」
ものすごく嫌な話題を振られた、と思った。
芯子はぱっと顔を顰めると「金だけ欲しかったから逃げたんだろ」と言い置いて
今度こそ帰ろうとしたのだが。
「金だけ欲しかったら、たった100万ちょっとで逃げるか?
もっと理由があったんじゃないかって、俺は最近思うんだ」
結婚詐欺を働いた女を目の前にして言う台詞だろうか、しかもオフィスのすぐそばで。
芯子は息を呑み、肩を掴む角松の腕から逃れようと身をもがかせた。
――このままいけば、何かとても嫌なものを引きずり出されそうな気がする。
切羽詰った危機感に、芯子は取り繕う余裕をすっかり失ってしまった。

201 :

角松から、『洋子』が逃げた理由。
――その答えはひとつしかない。
『この純粋な人をずっと一生騙し続けることに、罪悪感を覚えてしまったから』。

ネクタイの趣味が悪くて、ついでに私服の趣味も悪くて、
でもそんなことちっとも気に掛けない、ちょっとお茶目なところもある素直な人。
お人よしの馬鹿だねと心の内で嗤いながらも、笑いあう時間は純粋に楽しかった。
清楚な服に純情な仕草に殊勝な態度。
なにを言っても角松は洋子を信じてくれて、
兄の入院だのなんだのといった単純な嘘でさえ、心から心配してくれた。
――そんな彼を前に、ずっと嘘で塗り固めた自分で居るのが苦痛になったから。
だから結婚式の直前に逃げ出した。
彼に対して覚えていた感情も全部振り捨てて逃げて……挙句の果てには逮捕され。
牢獄の中で見た景色は、すっかり『洋子』の思い出を消し去ってしまったと
思っていたけれど、本当はそうじゃなかったのかもしれない。

202 :

「……どうした?」
角松の声に、はっと芯子は我に返った。
押し黙って俯いてしまった芯子を心配しているのが、ありありと判るその表情。
彼女の顔に一瞬過ぎった感情を、角松は今度こそ見逃さなかった。
「洋子っ…いや、芯子! 逃げるな、ちゃんと言え、全部!」
薄暗い闇が迫る中、角松は逃げようと必で抵抗する芯子の細い肩を後ろから抱き締めて言った。
「…金は、返すよ。いつになるかわかんないけど。それでチャラにしてよ」
「そういうことが聞きたいんじゃないっ、――お前なら判るだろ?」
いつになく角松は本気だった。
いや、彼の本気を見ようとしていなかったのは、芯子のほうだったのかもしれない。
芯子はようやく動きを止めて、恐る恐る角松を振り返った。
真摯な瞳が、戸惑いに揺れ動く芯子を見つめている。
「…金なんていらない。あれはお前にやったものだし、俺の気持ちだから、
もう俺に対する負い目とか、感じなくていいんだ。
だから、…お前の素直な気持ち、俺に聞かせてくれないか」
「………言いたくない」
腕の中で、ぼそっと呟いた芯子の声に
「素直じゃねぇなー、ったく」とやや呆れ気味の角松の声が振ってきた。

203 :

「お前の素顔を、俺は誰よりも知ってる。全部、受け止めるから。
洋子の顔も、詐欺師の顔も、不正を挫く検査官の正義の顔も」
…それと、素直じゃない顔も、好みだ。
多分これは相当無理をして言ったのだろう。
取り繕ったような響きを声音に感じて、芯子は思わず笑ってしまう。
「シングルパー…じゃなくて、…一郎。覚悟、してんだろうな?」
素直じゃない芯子の、精一杯の告白に、角松は「はは…」と空笑いをして。
「ハイ。覚悟、しております」
笑みを浮かべて眼を閉じると、吐息と共に、そっと唇が重なった。
何年ぶりかのキスなのに、身体がじわりと熱くなる。
思えば『洋子』ではない本当の素顔を彼に見せられたのは、会計監査庁に来たからだ。
…くるコメには感謝してやらなきゃなーと、芯子は心の内で小さく呟く。
なにもかも赦された気持ちになって、深くなる口付けに応えようと、
芯子が角松の首に両腕を回した瞬間。
「…あ。……やば……」
なにやら先程とは違う、イヤーな予感を伴ううめき声を聞きつけて、
芯子の眉根に皺が寄る。
「……思いっきり、勃っちゃった……」
引きつった笑みを浮かべて呟いた角松の顔に、
怒りマークを浮かべた芯子の鉄拳がヒットしたことは…勿論言うまでもない。
               (終)

204 :
>>196
185です。感想ありがとうございました!
角松芯子GJです!!!
私も、結婚詐欺なのに一円も取ってないって、一体洋子はどういうつもりで詐欺にかけたのか気になってた所なんでスゴい共感。
やっぱりこの2人の会話はいいなー。
乙でした。

205 :
GJ!
自分が脚本家なら最終回はこのストーリにするw

206 :
GJ!乙でした!
やっぱ角松と芯子の掛け合いはいいよなあ…
「………言いたくない」とかかわいいぜえ(ニヤニヤ)
賑やかしになるかわからんが、自分も一本(?)投下します
小ネタからの本編
・角松と芯子
・エロなし
・工藤の告白後。時系列には突っ込まない方向でお願いします
・本編くそ長いかも

207 :
 純粋な好意、というものに、どうにも弱い。
 好かれて嫌な気はしないんだけど、正直、参るね。
 下心が見え見えならいいんだけど、ただ告白されるだけってのは、堪える。
 なんでかっつうと、答えはカンタンで、アタシはその純粋な好意に対して返せるものを持ってないから。
 好きって言葉の重いこと。
 見返りなんか要らないなんて殊勝な顔をして、だから余計に困るだなんてきっと、わかっちゃないんだろ。
 「好きです」の後に「付き合って下さい」なんて付いてたら良かったのに。そしたら、断ってやれたから。
 でも、アイツがアタシのことが好きだって気持ちを、嘘だ、なんて無下には出来ない。
 言ってくれなきゃ良かったのにな。
 アイツはアタシを「好きなのかもしれない」そんな曖昧なままなら良かったのに、な。
 あーあ。
 アタシはもう、考えなきゃいけない。
 どーやってアンタを突き放すか、考えなきゃいけない。

208 :
 酷く体調が悪い。風邪をひいたようだ。
 目の前がぐらぐらと揺れて、芯子はふらりとよろめいた。
 思えば、昨日から少し背筋に寒気が走るような感覚はあったのだ。
 けれど、テレビの気象情報曰わく今年一番の寒さ、であったから、そのせいで肌寒く感じただけだと思っていた。
 秘密の睦言
 いつものように検査庁へ赴き、椅子にどっかり腰を据えると気怠い身体をデスクに身体を預けた。
 すると、伸びて早々に堤芯子、金田鉄男、工藤優に声が掛かる。
「今日は−−」
 招集をかけてきた相手、角松一郎が何かを話している。
 今日はどこそこの、なんとかというなんたらの調査を、云々。耳に入らない。
 寒い。デスクに突っ伏したままで居ると「寝てるんじゃない」と誰かに言われた。
 角松か、金田か? 言い方からして工藤ではない。
 わからないけれど、その言葉に芯子はただ一度息を重く吐き出し、立ち上がる。
「行くよ……」
「聞いてなかったのか」
 角松に、呆れたようにそう言われた芯子は思い切り苛立った顔をそちらに向ける。
「なに」
「調査は昼過ぎからだ」
 ……。
「あっ、そ」
 どうにも調子が、あがらない。
※※※
 今回の調査対象は所謂「ハコモノ」。着いて行った芯子は、しかし実際に何か不正らしきものが出るまでまるで役立たずだ。
 椅子にもたれ掛かり、一応形だけは電卓を打つがそれも意味はない。
 ぐるぐる、ぐるぐる、意識は冴えているが景色が一枚フィルターを挟んだようにふわふわとして現実味を帯びない。
 寒い。カタカタと電卓を打ち鳴らす音が止んだ。書類を集める、紙の擦れる音がする。
「……おわり、か?」
「ああ。とりあえず書面上怪しいところはなかったな。……よし」
 書類をまとめた角松が、出るぞ、と促した。
「それじゃあ、俺はこれを上に出してから帰るから、みんな直帰していいから」
 片手に書類の入ったバインダー、片手に鞄を携えた角松がそう言って検査庁へ踵を返そうとするのを、工藤が引き留める。
「あ、それもし僕でいいなら提出して来ます。デスクに携帯忘れちゃって、取りに行くので」
「や、でも」
 提出は誰でも、否、コイツでなければ誰でも良いんだけれど上司としてそれは悪い、と首を振る角松に、金田も言う。
「俺も一度庁舎に戻りますから、補佐こそ直帰して下さい。最近忙しくて録に寝てないんでしょう」

209 :
 二人に、後は任せて下さい、と言われ、角松はそこで折れた。
「……じゃあ預けていいか?」
「はい」
 バインダーを受け取った工藤がどこか上の空の芯子を見やる。
「芯子さんは……」
「ん? ……アーターシーは、帰、る」
 危ない。ほうけていた。芯子は取り繕うようにいつもを装って、少し怠そうに歩く。
「んじゃ、お疲れさん」
 後ろから、お疲れ様でした! の声、それから、んじゃあ俺も帰るな、悪いけど宜しく頼むわ。が聞こえた。
 路地にふらりと入り込んだ芯子は、その壁に背中を預けるようにずるずるとしゃがみこんだ。
 気持ち悪い。吐きそうだ。唾液の量が半端じゃない。はあ、はあ、と荒い息を地面に向かって吐き出す。
(こりゃカンッペキ風邪ひいたな)
 検査庁の面々には恐らく気付かれずに済んだ筈だ。
 少し休めば、家まで歩いて帰れない距離ではない。遠くはあるが、大丈夫。
 そう自分に言い聞かせながらも立ち上がる気力が出ずに身体を折り曲げていた芯子の前に、影が立った。
「何してんだ、お前」
「……」
 角松だった。
 よろよろと見上げると、長身が此方を見下ろしている。なんて間の悪い男だろうか。
「……体調、悪いのか」
「べ……っつにぃ、わるくなんか……」
 ない、よっ! 勢いで立ち上がるが、頭が揺れる。途端にこみ上げる吐き気。
 それをなんとかやり過ごして、壁伝いに歩きだす。
「ってあからさまに悪いだろ!」
「……っさいな……」
 寒い、寒い、寒い。
「さむ……」
 うっかり、言葉に出してしまった。
 とはいえ元々芯子の今日の格好はいつもの長袖のシャツにジャケットなので、別段おかしい言葉ではない。
 ごまかすように、「きょーはさっみぃなあ」と呟いて、アンタも風邪ひかないうちに帰んな、と、そちらを見もせず手を振ってやると、その手が、掴まれた。

210 :
「寒い? 手はこんなに熱いのにか?」
「……触んなっつーの……」
 言いながらも振りほどく力もない。折れそうになる膝に、舌を打つ。
「タクシー呼んでやるから、」
 それに乗って帰れ。
 角松がその台詞を言い切ったのと、芯子が地面に崩折れたのはほぼ同時だった。
「き……もち、わ……」
 意識がブラックアウトする。その、寸前に、芯子の耳に「しっかりしろ、芯子」という聞き慣れた声が聞こえた。
(アタシの、名前)
 洋子ではなく、堤芯子を呼んでいる声。
※※※
(芯子さん、好きです)
 そんな声が頭に響いて芯子は目を覚ました。
 またこの夢かと思いながらそろそろと目を開けば、そこは、知らない天井。
 周りを見ると、それ程物はなく整理された棚だの何だのがあるだけの簡素な部屋。
 部屋や調度品には見覚えはないのでここは取り乱すべきかも知れないけれど、寝かされたベッドの匂いだけは知っていた。
(ここは……)
 ジャケットだけは脱がされていて、暖かな布団が芯子をくるんでいる。
 序でに、アイツの香りも。
 オッサンくせ、と内心悪態をつきながらも出ようとしないのは、寒いからだ。
 決して心地良いからではない。筈。
 ガチャリとドアが開いた。
「起きたか?」
 角松が聞きながら入ってくる。
「……引っ越したんだ?」
「ん? いや、一回もしてないぞ」
「うーそ、だってアタシこの部屋知らない」
 し、ベッドだって変わってる、と言いながら身を起こす。角松が洗面器とタオルを持っているのが見えた。
「家具は替えたし寝る部屋も替えたけど越してはない……てかお前、いきなり倒れんじゃねーよ」
 倒れる。そうか、倒れたのか、それでコイツの家にいるのか。
「アンタんちの近くだったんだ」
「……お前の実家までタクシー乗せようかと思ったけど、とりあえず一回休ませたほうが良いかと思ったんだよ」

211 :
 安心しろ、ジャケットしか脱がしてないから、と別に此方が気にもしていないことをポツリと呟いた角松を見つめる。
(変わんねーな、お人好し)
 ベッドサイドに持っていたものを置いて、洗面器からコップを出すとそれを芯子に寄越す。
 黙って受け取った芯子は、入っていた水をゆっくりと飲み込んだ。
「落ち着いたか、少しは」
「まーだちょっと気持ち悪いけど、大分、な」
 コップを返してふーっと長く息をした芯子の額に、角松が手の甲を押し付ける。
「熱いな」
 体温計、見つからないから、と言いながら今度は少し汗ばんだ手で芯子の頬を包むようにして、やっぱり熱い、と眉間に皺を寄せた。
「もう少し休んでろ。帰りはタクシー呼ぶから」
「……」
 角松の手が芯子の身体をベッドに横たえてから、離れる。体温が、温もりが、離れる。
 イヤだな、そう思ったのは、芯子だった。
 置いてくな。ぐるぐるする。芯子さん、好きです。優はそう言った。
 じゃあ、アタシは誰が好きなんだろか。
 コイツは、アタシの事が、好きなんだろーか。
 騙されて、捨てられた癖に騙した相手を甲斐甲斐しく世話する。誰にでも?
 イヤだな。
「すっごい、寒い」
「寒いか? じゃあもう一枚ふと……」
 言い終える前に、するりと伸びた両の手が角松のYシャツを勢いよく引いた。
「うぉっ!」
 突然前に引き倒されて、思わず声が出る。間一髪、芯子の頭を挟んでベッドに手を付き、彼女に身を叩きつけて押しつぶすことだけは避けた角松は、代わりに芯子と直近で面を突き合わせることになる。ほぼゼロ距離に不覚にも心臓は早鐘を打った。
 何考えてんだこの女は。表情からそう読み取れる。

212 :
「……離せ」
「今なら、逃げらんないな、アタシ」
 何をわけのわからないことを、と眉を顰めた角松のシャツを更に引いて、今度こそ体勢を崩したそいつに、その唇に、芯子は自分の唇を押し当てた。
 ただ合わせるだけのその行為が、ひどく落ち着く。人の、角松の温度の心地よさに吐き気が嘘のように収まっていく。
 いつの間にか、芯子の手はシャツを離れて角松の頬を包んでいた。
 そっと唇を離す。
「……ほら、な?」
「な、じゃないだろうが……!」
 されるがままになっていた角松が至近距離で叫ぶが、芯子は構わない。
「寒いん、だ、って」
 計ってこそいないが恐らくは熱に浮かされた頭。もう何かを明瞭に考えることもままならない。
 身体は昔嗅ぎ慣れた匂いに熱くなるのに、内側がただ、寒い。
「ていうかお前、熱……」
「あるかも、な」
「……かも、じゃない。あるぞ、絶対」
 感染す気か、と言われて、芯子が笑った。
「あっためてよ、シングルパー」
「布団入ってろ、その内あったくなる」
「ちーがう……」
 アンタが、あっためて。
 うまく動かない怠い指先でネクタイを外し、ベッドの下に放る。次いで上から一つ、一つ、ボタンを外す。
「昔さ、よくこーやって外してやったね」
「……何考えてんだ、お前」
 何考えてんだ、もないだろう。男女がベッドで裸でする事なんか決まりきってる。嫌なら逃げれば良いのだ。芯子が摘んでいるのはシャツのボタンだけだし、乗り上げる格好なのは角松の方なのだから。逃げないのは、風邪っぴきでも抱く気があるってこと、だろ?
「アンタ、しんぞーの音ヤッバイよ?」
「ほっとけ」
「その気んなったか?」
 なったんなら、後はアンタが脱いで、アンタが脱がして。
 性急に事を進めようとする芯子に、角松が溜め息をついた。
「なるか馬鹿!」
「……やっぱりタマナシなのか」
「違う! そうじゃなくて、お前……」

213 :
 角松が真剣な目をしている。
「何」
「お前、何焦ってんだ」
「焦る?」
 焦るってなんだ。なんにも焦っちゃいない。ああ、がっついてるってコト? だって、無性に、体温が恋しい。寒いから。
「……工藤に告白されてから、お前ちゃんと寝てんのか」
「……」
「体調崩すくらい考えてるんだとしたら、」
 だとしたら何。
 −補佐こそ直帰して下さい。最近忙しくて録に寝てないんでしょう−
 金田の言葉が芯子の脳裏をよぎる。
「人のこと、言えんのか? アンタこそ碌々寝てないんだろ」
 詰まった角松に、芯子が鼻を鳴らす。睦言の距離なのに、何故説教されねばならないのか。
 やっぱりアタシはこんなシングルパー好きじゃない。
 心中で結論づけた芯子を、角松の瞳がじっと見た。
 そして、ゆっくりと、言う。
「ああ、ここ二、三日寝てない。工藤がお前に告白したとき、正直すごく動揺したからな、自分でも驚いた」
「……なんだそれ」
 なんだその理由。
「でも、それは俺の問題でお前と工藤は関係ないことだ」
「……」
「お前はお前が思うようにすればいい。焦るな。工藤だってお前のこと困らせたいわけじゃないだろ」
 アタシは、誰が好きなんだろうか。
 アンタは、アタシが好きなんだろうか。
 ……もしも、アンタがアタシを好きなら、関係なくはないんじゃないか?
「アンタ寝てないの、忙しいからじゃないわけ?」
「え……あ、いや、忙しい! なんせ補佐だからな! 別にお前と工藤がどうなるかとかそんなことはどーでもいいんだ!」
 真剣な様子はどこに行ったのか。角松は途端に顔を赤らめてどうでもいいどうでもいいを叫ぶ。
 その様を見て芯子がふっと笑った。
 焦るな、と言われた言葉に落ち着いた。誰も気づかない自分に気付いてくれる人がいる。

214 :
「ね、シングルパー……」
「その呼び方止めろ!」
「いちいち叫ばないでくれる……アタマに響く……」
「……なんだ」
 ずっと腰を折ったままの体勢でいる角松の頬をもう一度両手で包む。
「アリガトな」
「なんのこ、」
 また、最後まで言わせずに、少し頭を浮かせて唇を塞ぐ。
 今度は、押し付けるだけではなく、合わせた唇の間から舌も押し入れて、深く。
 どうしようかと思案するようだった角松も、そろりと差し出してくる。優しくて、だけど深く。こんなキスも久しぶりだ。
 唇を離した。
「……あったまったか……?」
「ばーか……」
 まだ寒いっちゅーの。
 芯子は、両腕を角松の腰のベルトに回し、えい、と投げて自分の隣に転がした。
「うぉっ! おっまえどこにんな力が……」
 折っていた腰をさすりながら、狭いシングルベッドの上でそう呟いた角松が固まる。二人が密着して、少し幅が余る程度の広さしかないそこで、芯子がすり寄ったのだ。
「……いちろーさん」
「え」
「添い寝、して?」
 柔らかな身体がぴったりと角松に合わさって、外されたボタンの隙間から芯子の吐息が掛かった。
 硬直している角松の胸に縋るように、身を縮こませた芯子が、一つぶるりと震える。
「……」
 腕にその震えを感じた角松は、掛け布団を二人に掛かるように直すとそうっと芯子の身体を抱き寄せた。
「熱いな」
「アタシは寒ぃの」
「……今だけだ」
「ん……」
「寝ちまえ、もう」
「……おきるまで、放さないでて」
「わーかったから」
 言葉と同時に少し強く抱きしめられて、速く脈打つ角松の心臓の音を聴きながら芯子は目を閉じた。
(今だけだ)
 寒いのも、温もりが欲しいと思うのも、誰でもない角松一郎に抱きしめていて欲しいのも、今だけ。

215 :
 ただ、弱ってるときに傍にいたから、縋ってるだけ。治ったら、今この時を忘れるって約束するから、だから。
 −芯子さん、好きです−
(今、この間だけ、)
 真摯な告白を、芯子は今だけ頭からそっと追いやって、寒さごと包んでくれるひどく優しく暖かな腕の中、芯子は微睡み、寝息を立てた。
 角松は、穏やかに寝入る芯子の髪を撫でて思案するようにじっとその女を見つめた。
 朝から体調を崩しているのはわかっていた。
 覇気がなかったし、いつも以上に集中力も欠けていた。
 まさか、いきなり倒れるとは思わなかったが、調査にも連れ出して無理をさせたとも思う。
 ただ、ふとした瞬間に何かを思い詰めたように遠くなる視線を、どうしても見ていられなかったのだ。
 自分は二人には関係ないと頭では理解しているのに、工藤優の告白はあまりに衝撃的だった。
 あれから角松の睡眠時間も削られている。
 『洋子』相手なら素直になれるのに『堤芯子』だと思うとどうにも見栄を張ってしまう。まるで子供だ。
「……芯子」
 今だけだと角松は縋る芯子にそう言ったが、その言葉は、自分に向けた言葉でもある。コイツが素直に俺に縋るのは、きっと今だけ。
 ……芯子が寝ている今なら、俺も素直になれるだろうか。
「……俺さ、騙されても、馬鹿にされても、」
 意識が薄れて、自分も寝そうだ。久しぶりにいい夢が見られるだろうか。
 角松は、唇を芯子の耳に寄せる。
「……やっぱお前のこと、好きだわ」
 『ん〜マジで?』そんな反応一つ返らない、独白めいた告白。
 これはただの自己満足で、云うつもりのない角松の秘密。
 そして、云われなければ知るつもりのない、芯子の秘密。

 起きればいつもの通り、変わらない二人が在る筈で、だから、今だけ。
 合い言葉のように心でなぞると、二人は互いに、いい夢を、と願うのだった。

216 :
長々と失礼しました
読んでいただきありがとうございました
お粗末様でした!
あードラマの角松と芯子どうなるんだろうなあ……

217 :
>>216
おつです! しっとりした大人の二人で切なくなりました
角松かっこよすぎww
ドラマ本編は期待できなさそうです…

218 :
職人さんGJ!
好きな人のベッドの匂いってほのかに感じる幸せだよね
角松が男前ww

219 :
GJ!!!
大人で素敵な角松芯子ありがとう。
角松カッコ良すぎだし、熱出して甘える芯子もめちゃ可愛いです。
本編期待できないなら、せめてここはそれなりに盛り上がってくれたら嬉しいな…。
そいえば、ここの書き込み見て久しぶりにハケン借りてきて見たけど、やっぱりこの2人もいいよねー。

220 :
GJ!
やっぱり芯子は守ってくれる大人の男の方が似合ってる
お互い素直になって最終回気持ち良く終わって欲しい!

221 :
ドラマ終わってもここは続いて欲しい・・
ちなみに今日大泉が携帯サイトのブログに篠原&安田(一ツ木)&大泉の3人で写真載せてます
ちょっと歳とった東海林wとっくりは変わらず・・
いい雰囲気で和んだよ〜

222 :
どこだろう。
さがしてみよう。

223 :
写真がのってるのは所属事務所の携帯サイトなので有料だよ
篠原が中心でWピースしてて両脇が大泉と安田
どちらかというと篠原が大泉寄りなせいか
一ツ木さんが東海林夫妻宅へ訪ねた時に撮った写真
という妄想をしてしまった

224 :
>>221
いいなぁ、ソレ。
今回のドラマで中の人にも結構興味持ち始めたから、スゴい気になる。
前の篠原大泉ツーショットも良さそうだったし。

225 :
み、みたすぎるうううううううううううううううううううううう

226 :
>>223 いいね!永久就職してしまった春子にまた派遣ライフに戻って来てくださいと懇願する一ツ木さん
でも東海林は大反対、みたいなw

227 :
>>225
315円だけど見たかったら今月だけ登録してみては?
篠原と写ってるの他にも何枚か有るよ
>>223
それ自分も思ったw
3人とも同級生なんだよね
たった1枚の写真で色んな妄想出来ましたw

228 :
結局登録してしまった…。確かに萌える!教えてくれてありがとうございました。

229 :
やべぇ新妻春子を想像して萌えたw
ふりふりエプロン姿でおかえりなさいって言ってくれ!

230 :
東海林とは両思い
角松は方想い?
金田に「堤芯子のこと好きなんですねー?」って言われて
無言で頷いた角松・・切ないの〜

231 :
アレはある意味両思いなのかなって思ったけど…。芯子らしい照れ隠しで、私は好きだったな。

232 :
豚の最終回見て小ネタ打ってたんだが、(別にネタバレはないんだけど)最終回後ネタは投下まだ早いかなあ…?

233 :
「今度はあなたに社長賞を取って頂きます」で気持ち伝える最終回には敵わなかった・・
それに工藤に肩入れし過ぎて角松への気持ちが最後まで分からないまま終わった

234 :
もたいかーちゃんの、抱きしめてくれる人がいれば…
あたしにはあんたたち(娘)が居た、ってセリフからのイメージや、
屋上で工藤の頭クチャってするところとか、
なんとなーく、芯子の工藤への気持ちは
保護者的なものだったんかな、って気はしたな。
角松が工藤の頭をクチャっとするのにもシンクロしてるw
やっぱ角松・芯子は波長が合ってるんだわ。

235 :
>>233
中途半端な感は否めないねぇ。
それゆえに、このスレは心底有り難い。
>>232
是非是非!正座してお待ちしてます m(_ _)m

236 :
自分は、芯子から工藤への気持ちはあくまでも姉的な目線ぽいなーと思った。
まあ、ハケンの時は流れが最初のうちから完全に東海林→春子で完成してたから、豚の『過去に色々あったし角松が素直になれない』流れからじゃ適わなくても仕方ないな…
でも豚の終わり方好きww

237 :
かえって妄想しがいあるかも…
4人でママチャリ疾走とか、
明珍豆押し復活とか、好きなテイストもいっぱいあるしw

238 :
>>235
どもです!
とことで、マジで小ネタですが投下します
一応角松×芯子が基盤にあると思って読んでくd…無理かなw←

239 :
パー二人差し置いて金田とごはん食べに行っちゃえ!と思って書いたネタ。
「なーそーめんかぼちゃ、こないだ行ったレストラン、あそこ名前なんだっけ?」
「あ? ああ、あそこは……」
『レストラン?』
「うん。出所祝いにおごってくれて、さ」
「待て待て待てこら、出所祝いは今日だろ、今日!」
「だーかーら、その前に、こないだ」
「金田さん」「鉄っちゃん!」
「まあまあ、二人とも落ちついて」
「落ちつけませんよ!」「落ちつけねーよ!」
「え、なになに、アンタ等も食べたかったのー?」
「お前わざとか! わざと言ってんのかそれ! ニヤニヤしやがって!」
「まさか金田さんまで……」
「先手必勝だろ」
「先手……」
「必勝……」
『って、先手だったら俺(僕)達の方が打ってるはずなのに!』
「んー、なーんか」
『……?』
「きぶんいーな!」
芯子ニコニコ。
「ほれほれほれほれ、仕事だよっと!」
「鉄っちゃん、も、おま、ライバルだからな!」
「あ、先手といえば! 僕、芯子さんの手料理食べた事ありますよ!」
「手料理?」
「んなもん俺だって食ったことあるぞ」
『え?』
「意外と上手いんだよな」
「え?」
「煮物だよ、食わなかった?」
「た、べましたけど……」
「あー! あー! 昔の話だろっ! 何自慢げに話してんだ、よっ!」
「いて! 物投げんな、物を!」
「洋子さん、の時は作ってたんですか?」
「うっさいうっさい!」
「はーい皆さん、楽しそうで結構ですけども、えー、今回はまた遠方に出張に行ってもらいます」
「お、マメ! いーとこ来たね! どこどこ?」
「今回は長野です。で、二人です」
『二人?』
「角松君と、堤君、よろしくね」
「げっ」
「げってなんだ、げって!」
「なんでですか、課長!」
「俺と主任とか、工藤とかじゃあだめなんですか?」
「いや、ローテーションでね、行こうかと思って」
『ローテーション……て……』
最後明珍さんがアレすぎますが。
読み返すとすごくくだらねえ…orz

240 :
一郎のシングルパーもクチャクチャってしたの見たかった
今回はハケンの時のバトルを思い出させるシーンは多かったけどねw
角松が「俺のケツの穴が小さいとでも言いたいのか!」って言われた芯子が「あんたのケツの穴はこんなんだろ」って言った時に
密かに過去に見た事有るんだなって確信しましたw

241 :
>>232
個人的には是非お願いしたいです!

私も、工藤に対する感情は母親に近いものなのかなって思った。もたい母が幼い芯子にしてくれたことと、全く同じことを芯子もしてたように見えたから。
屋上のシーンが終わった後から、角松とのやり取りが急に増えて嬉しかった。後部座席に並んで座ってたりして。
でも、確かにハケンほどはっきりしなかったのは事実なので後は妄想で補うしかないな。
なので、私もここのスレは本当にありがたいです!

242 :
>>239乙!
行っちゃえ長野。ガツンと決めて来い!(何をw

243 :
>>239
Gj!
もう芯子の過去を知った者同士オープンな付き合い楽しそうw
実際金田って先手打ちそうな性格だし
なんだかSPでこんなやり取りして欲しい

244 :
>>239
わぁ、乙!みんなカワエエ…!長野が勝負だ、頑張れ角松!
下らなくないよ、面白かった。ありがとう。

245 :
>>240
人前でそんな告白(*´Д`) ……と確かに自分も思ったのは内緒だw

246 :
もいっちょ小ネタです。芯子出所直前の三人衆。
「芯子さんの出所、もう近いですね」
「五日後か……あれから一年経つのか……早いな」
「角さんも工藤も、どうするつもりでいるんだ?」
「え?」
「どうする…って」
「堤芯子が出所したら、だよ」
「……やっぱり、課長も、ですか。負けませんよ?」
「……なあ工藤……二人でこう、後ろ向いてたらさ、どっちに先声かけるだろうな?」
「そりやあ勿論、僕ですよ」
「なんだいやに強気だなコイツ、なあ鉄っちゃん」
「とりあえず、舎弟から昇格したいんで」
「工藤は舎弟から昇格、角さんはカモから昇格、か」
「鉄っちゃん最近ちょいちょいそのネタ挟んでくるよな……!?」
「じゃあ、俺がアイツ迎えに行きますよ。検査庁前に居てください」
「……おお」
「迎えなら、みぞれさん達も行くかもしれないですね」
「出所祝いと職場復帰祝い兼ねて、盛大にしような」
「……あと、五日、ですね」
・きっと卓上カレンダーに赤丸ついてる出所の日付ww
・「おかえり」を最初に言ったのは金田で芯子が「ただいま」を最初に言ったのは工藤なんだけど、芯子が突っかかった流れで
「お前何なんだ」「挨拶だよ。挨拶が先だろ」
みたいなん言ったのは角松が最初なんだよな、つまり芯子が最初に「ただいまの意味の挨拶したの」は角松なんだ!
って考えてニヤニヤしてた自分キメエww
みぞれが「芯子姉から連絡あって」って金の豚ちょきを母ちゃんに渡したところ、理由がなくても家に帰るっていう芯子の暗黙の意思表示もあるのかなと思った
一話かなんかで「今回は長く居座った方だろ」的なこと言ってたから
長くてスマソ(^q^)

247 :
声掛けられるの待ってるシーンで角松してるネクタイ
昔洋子が買ってあげたのだったねw
なんか細かい演出だった

248 :
>>246
乙!楽しい3人組ありがとう。
強気な工藤とツッコミ金田と弄られ角松、みんならしくていいな。
みかんアーンといい、見所沢山のラストシーンだったよね。

249 :
>>246乙! 
自分もあれからあのシーン見直してニヤニヤしておりますw

250 :
とってもスレチですが・・
冷静と情熱の間って映画で篠原って竹之内のフェ○してるシーンあってビックリしたー

251 :
女優魂だねえ

252 :
職人さん居ないかなあ(´・ω・)

253 :
同じくお待ちしてます職人さん
ゴゴドラのNGシーン、大学の講義見てるとこ
芯子の横でじゃれてる3人が可愛いかったなあ
角松にグイグイもぐり込まれて、椅子から落ちる金田とかw

254 :
同じくお願いしたいです。
自分は、最終回までに書き上げたい話があったんだけど、結局間に合わなくて止まっちゃった…
最終回の後、お互いの母ちゃんにどんな顔して会いに行くのか想像すると萌える。
NG集、面白かったねー!『金田さん、真面目にやってもらえますか?』とまで言われててワロタ
マメのシーンで芯子が間違ったときの2人の様子にも癒されたな。

255 :
>>254
是非その止まっちゃったお話が読みたいです!
無理かな……?
NG集は明珍の「……誰でしたっけ?」「工藤です……」がつぼったw
(あのNG集録画し損ねて祖母に連絡して録ってもらった自分乙すぎた)

256 :
>>254
マメの位置のNGシーンの時何気に芯子が角松に寄りかかって可愛い

257 :
どちらも普段から他人との距離が近い俳優だから
二人揃うと密着感が凄い>豆NGの芯子角松
なぜかポカポカ叩く芯子が可愛すぎる

258 :
そのNG全部見てないんだけど
篠原が大泉の鼻の穴に指突っこんだって誰かが言ってたけど本当だろうか?w
踊るさんま御殿に出た時に
「女優さんの過度なボディータッチは勘違いする」って話題出て
篠原が「本当に好きな人には触れない〜」って言ってたなww
大泉がボソッと「なら止めて欲しい・・」って呟いてた
男は嬉しい事なんだろうけどね

259 :
>>258
指!最後の方で『カトちゃんぺ』みたいに突っ込んでたーw
あの二人は兄と妹(か姉と弟)みたいな絡み方してるなあと思いながら見てる

260 :
一本書き上げたんだが、中身が割と暗めでエロなし、久留米がんでしまう話だから投下見合わせてる
もし読みたいといってくれる方が居れば投下します
スルーしてくれてもよいです
と、一応確認!

261 :
>>260
読みたいです!

262 :
>>260
是非是非!
放送も終わっちゃって悲しいよ〜
職人さん!よろしくおねがいします!

263 :
反応ありがとうございます!
では投下しますー
・暗め
・エロなし
・最終回後数年経過

264 :
 コンコン、と、鉄の扉を叩く音がした。出にくい声をそれでも張って、はい、と返事をすれば引き戸が開かれる。
「……くるコメ……」
 酷く押ししたような声が、久方振りに鼓膜を打つ。最後にあったのは、いつだったか。もう流れる年月すら外の出来事になってしまって、時間すら曖昧で。
「待って、いたよ……」
 その曖昧に永い時を、ただ君に逢うために生きた。
 暁光に帰す
「……痩せたな」
「まあ、座りたまえ……」
 そう、扉を開けた女性を促せば、彼女は唇を噛み締めながらベッドの脇の椅子に腰掛けた。
 記憶にあるよりも、面差しが柔和になったように感じる。いい歳の重ね方をしているのだろう。
「ひさ……久しぶりだね」
 掠れる声は聞きにくいだろうが、どうにも出来ない。それでも痰の絡んだ喉を震わせて、声を出す。
「……アンタにまた会うとは、な」
「なぜ、……来てくれたのかな」
「……呼んだの、アンタのくせに。あーったく、アンタのせいでアタシ、自首することになったんだよな」
 返答は的を外していたが、それでもいい。彼女があの日切り捨てた自分との『会話』が今、続いている。
「どちらにしろ、自首はするつもりだったように思うがね……」

265 :
 彼女は。
 堤芯子は、自分が思っていたよりもずっと潔い女性だった。
 自分は世の中を牛耳るつもりでいたにも関わらず世の中の様子を知らずにいたことで、見事に潰された。
 彼女自身への脅しは意味をなさないことはわかっていた、それ故にあの課長補佐を、否、彼女以外の二係を彼女の安全を確保することによって操作しようとしたのだ。
 それも彼女の彼女たる信念にはやはり、無意味であったけれど。
 そんな日々さえ懐かしい。
 ふーっと息をついた彼女が、口を開く。
「アンタさあ、命を救われたとかなんとか言ってただろ。なんか勘違いしてそうだからゆっとくけど、それ、アタシじゃないから。自分でもっとよく探したほーがいーんじゃない? って言いに来た。これが今日きた理由」
 で、アンタは何でアタシを呼んだの、と、問われる。
「……私は、ガンでね。末期だ……先も長くない」
「……」
「君にもう一度だけ会いたかった……それが、理由だ」
「……生きることを諦めるんだ」
「はは……もう、充分だ……充分」
 命を捨てるなんて贅沢だ、と言った少女が居た。その言葉に、その少女に、救われた自分がいた。
 彼女は勘違いといったが、それでも構わない。自分にとってのあの少女は、紛れもなく目の前の彼女なのだから。
 ……ふと、気になった。
「……君は、今も会検で……?」
「ま……一応籍は置いてるけど? なんで」
「……茶々君に君に会いたい旨を伝えた時に……少し難しい顔をされてね……」
「ああ……そ」
 もう居ないのかと思ったのだ、と言うと、続いてるけど、が返る。彼女にしては煮え切らない反応だ。

266 :
「他の面々も、元気かな……?」
「……優もそーめんかぼちゃも元気だよ。優は自分の力でなんかちょっと上に行ったけど、ちょくちょく会ってるし、そーめんかぼちゃは主任になったな。マメも元気だけど娘さんが反抗期って嘆いてる。……もー片方のシングルパーも、そこそこ、な」
 新しい奴が一人入ったけどコイツがまたせーぎせーぎ五月蝿いんだ、と、彼女が笑った。
「……笑ってくれたね」
「は?」
 面食らったような顔をした彼女に、自分も少し笑う。
「……あのさ、アタシはまだアンタを許せないし、これからも許せる日は来ないかも知れない。つか、来ないね」
「……だろうなあ……残念だが……」
「でも、一個だけ礼言っとくよ。……アタシをカイケンに呼んでくれたこと。アリガトさん」
 今度は、此方が目を見開く番だった。
 蓮っ葉な彼女の言動が少しだけ大人びたようだ。
「んじゃ、アタシはこれでお暇するか、な」
「ああ……ありがとう」
 堤、芯子くん。
 その言葉に、少しだけ彼女の目がきょろきょろと動いた。何かを言おうか言うまいか迷うような顔。
「何か?」
「……あー……アタシ、堤じゃないんだよな」
「うん?」
「……苗字、堤じゃなくて……」
「……結婚したのかい?」
「ん……」
 こんなんでも、いちおーな。
 そう言って笑った彼女は、記憶のどれに残る顔より、幸せに満ちたそれをしていた。
「ま、また来る時があったらそん時に、な」
「……ああ、そうだね……それでは」
「ん、じゃーな」
 再び会うことはもう叶わないだろう。けれど、これでいい、とそう思った。
 彼女が重い鉄の引き戸に手をかけ、そのまま、あー、と唸る。
「……くるコメ、アタシ、アンタを許せないけど」
 別に嫌いじゃなかったよ。
 扉が閉まった。パタン、と小さなゴムの音だけを残して。
 彼女の出て行った扉を、暫くの間見つめていた。脇にあるナースコールを震える指で押し込めば、ワンコール、ツーコール、スリーコール目で『はい、どうしました?』と、看護師の声が聞こえる。
「……すみませんが、少し外が見たいんだ……お願い出来るかな……?」

267 :
 病院を出て足早に歩く芯子。道の途中に据えてあるベンチから、その姿を見つけてはしゃく小さな子どもが居た。抱かれているにも関わらず、抱いている男をばしばしと小さな手でもって叩く。
「まぁー!」
 それまでおとなしかった子が突然必になって手を伸ばす様子に、クルクルパーマも振り向いた。芯子の姿を認めた一郎は叩かれながらもその口角を上げる。
「……お、おかえり……イッテェ! こら、パパを叩くな!」
「ただーいま。ほれ、母ちゃんとこおいで……っと」
 大暴れする我が子に苦戦する一郎に、芯子が手を伸ばした。子どもの脇に手を差し入れて慣れた手つきでひょいと抱き上げる。
「いー子してたか?」
 きゃっきゃと笑う子を抱き締めると、一郎が苦笑しながら溜め息をつく。さんざん髪の毛を弄ばれたのだろう。一郎があやす時はいつもそうだから。
「……どうだった? 久留米さんは」
「あー……がんだってさ。本人が言ってたよ」
「そうか……。何話した?」
「うん? んーとね……アンタが救われたっつってた話の女の子はアタシじゃないよ、って話とかー」
「お前なのに?」
「……あと、苗字が変わったって話とか」
 一郎が噴き出す。

268 :
「結局言ったんか。あんだけ言わないっつってたくせに」
「でも! 誰とーとは言って、ない」
「……お前の優しさは伝わりにくいんだよ」
 一郎の手が、芯子の頭を撫でた。
 あの時芯子達の挫いた悪は、言い意味でも悪い意味でも久留米の生きがいだった。後悔など勿論ないが、それでも芯子には思うところがあったのだろう。
「……もし又今度があったら、そん時は、教えてやるよ」
「だな……。……おーおー寒いな! さっき工藤からメールがあってな、鉄っちゃんと一緒に年増園に居るってさ」
「昼から酒浸りか、お大臣だねーえ」
「鉄っちゃんがみぞれちゃんに会うための口実だろ」
 先をスタスタ歩く芯子を見ながら、一郎はちらりと後ろに聳える病院を見る。もしあの時に久留米があの国家予算を手にしていたら、こんな病院ではなくもっと豪奢なところで余生を過ごしていたのかもしれない。
 と、一郎が見上げた先にこちらを眺める影が一つ。あまりよくは見えないが、記憶にあるよりも大分痩せたその姿。
 久留米だった。
 一郎が小さく会釈をすれば、窓の向こうの人も頷くように返してくる。
 一郎は、踵を返した。
「ってお前、歩くの早えーよ!」
「あー? アンタが遅いんだっちゅーの。早く来な」
※※※
 窓から離れた久留米は、座り込んだ車椅子の上で微笑んだ。
「彼だったか……」
 彼女が彼から取り上げて抱えたのは、恐らく彼らの子どもだろう。否、違っても構わない。己にとって倖せな夢であればいい。
「時代は、進んでいる……か」
 とっとと若者に託せ、と言われた言葉が蘇った。
 日本は、ぬかもしれない。けれど、生きるかもしれない可能性があるならば、老害は矢張り朽ちるべきだろう。もう、思い残すこともない。
「ああ……一つだけ」

269 :
※※※
 二係の面々が駆け込んだ時、久留米の命は尽きる寸前だった。それでも、なんとか生き繋いでいる。
「くるコメ……」
『久留米さんが、末期には君を呼んで欲しいと言っていたんだ。来てくれるかね』
 茶々に呼ばれた芯子は、久留米の傍に寄る。
「……なんだよ、アタシを呼んでって」
「……」
 芯子の後ろでは、一郎、工藤、明珍、金田が息を飲んでその様子を窺っている。
 薄い息遣い。芯子がそこに耳を寄せると、微かな音が聞こえた。
 お、め、で、と、う
「……っ」
「芯子……?」
 口を引き結んだ芯子の手を、一郎が握る。
 その手と、それから、芯子の頬に流れた一筋を見て、久留米は最期に笑みを浮かべた。
 窓からは眩い光明が差し込む。

 夜が沈み、新しい日の昇る、ある冬のことだった。

270 :
一回sage損ねたやらかしたorz
お粗末様でした…

271 :
>>260
乙です!
くるコメは悲しいけど、あの最終回自体が残念すぎたもん
余談だが金田はみぞれちゃん狙いなのか…
二人が上手く行ったあかつきには
「角さん!これからは義兄さんとよびますよ!」
「鉄ちゃん、いや、おとうとよ!!」
てな二人が簡単に想像できる…というかみぞれ狙いの半分はそr…

272 :
GJです♪
こんな話大好き…!
くるコメが芯子を選んだのは、心のどこかであの時のように自分を止めてくれる、って期待してたのかもって思いました。
切ない中で、夫婦の会話が微笑ましいし、素敵な話でした。
ありがとう!!

273 :
とっても素敵でした!
切ないけれど心が暖まった!
芯子ママ想像してニンマリしたw

274 :
「パパを叩くな!」が個人的ツボw

275 :
子供もくるくるパーマの男の子だったら可愛いw
いい父ちゃんになりそうだもんな

276 :
>>264
乙!すごく良くて、何回も読み返しちゃった。
くるコメも救われたのかな。
角松芯子になった経過も見たいな〜。
>>271
>…というかみぞれ狙いの半分はそr…
あるあるあr…w

277 :
264の職人さんの素敵な話に触発されて、芯子が妊娠した時のコネタが浮かんじゃったんだけど、上げても大丈夫かな??
>>264さん、ダメだったら言ってもらえると嬉しいです。
素敵な話をホントありがとう。

278 :
>>277
264です^^
おおお是非是非読みたいです!
>>276
>角松芯子になった経過も見たいな〜。
角松があらぬ嫌疑をかけられて〜ってのから芯子の男前逆プロポーズ(?)ネタをもりもり妄想してるんだが、まず「あらぬ嫌疑」が思い浮かばないw頭の拙さに自分涙目w
プロポーズネタは小ネタでメモってあるんだが……

279 :
またふんだくられてしまわないか、冷や冷やしていたに違いない。笑
 
おめでと。


280 :
>>278
277です!早速ありがとう。大したものじゃないんだけど、了解してもらえたので投下します。
逆プロポーズとかイイ!
これからも楽しみにしてます。
ありがとう、職人さん。

結婚して、オレの妻になったコイツから聞かされた話は衝撃だった。

「このあたしがかーちゃんだってさ。世の中、何が起こるか分からんもんだねぇ」

照れ隠しなのか、わざとオレと視線を合わさないようにしながら、自分のお腹をそっと撫でるコイツは本当に綺麗で、気がついたら身体が動いていた。

「オ、オイ!ちょっといきなり何すんのさ。苦しいんだけど…」

コイツを抱き締める腕の力は、オレが思っていたよりずっと強かったらしく、苦し気な声をあげた芯子に驚いて、慌てて腕の力を緩めた。けれど、その背中に回した腕をほどくことはせず、そのまま彼女の後ろ髪をそっと撫でる。

「ありがとな」

好きだとかありがとうだとか、どうにもコイツ相手にはすんなり出てこなかったはずの言葉は、今日は何の恥ずかしさもなくすんなりとオレの口からこぼれ落ちた。
ヘヘッと笑いながら、オレの肩口に顔を埋めた芯子は、目を閉じて言葉を続ける。

「あたしさ…。」
「うん?」
「昔から、自分が男だったら良かったのに、って思ってたんだよね。中学の時にみぞれがいじめられた時もさ、あたしが男だったらもっとやり返せたかもしれないじゃんか。
女ってのは、どうしても体力的に不利なことが多いからねぇ。
…ま、結婚詐欺は男じゃ中々うまくいかねぇけど、な。」
「…オイ。」
「何ムキになってんの、ジョーダンだよ冗談。
でもさ、ここにあんたとの子どもがいるって聞かされてさ、今日初めて女に生まれて良かったって思ったよ。」
「そうか…」

オレもお前が女でいてくれて良かった、なんて口にするのは少し抵抗があるけれど。
それでも、何とも不思議な出会いと別れを繰り返してきた自分たちが、ようやくここまでこれたことには感謝せずにはいられない。
だから今日だけは、何度だって言ってやる。
これまでも、これからもオマエにだけしか言わないこの言葉を。

以上です。
相変わらずの短文で申し訳ない…!
しかし、黄金ないと水曜が寂しかった。

281 :
>>280
GJ!この二人の幸せってほんわかする
結婚詐欺が笑い話になってよかったね!産まれた子供溺愛するんだろうなw

282 :
264です。やばい萌えました…!
なんだこの可愛い元詐欺師w
ありがとう!

283 :
>>278
是非読みたい!
あらぬ嫌疑か…自分も浮かばないw
検査庁自体が公費横領の疑惑、その責任者として角松が…とか
こじんまりと査察先のマダムに色仕掛けの罠に…とか
いっそ「あらぬ嫌疑をかけられた角松だったが、芯こに間一髪救われた」
から始めるとかw
>>280
乙!二人の姿が目に浮かぶようです。


284 :
芯こ、じゃなくて芯子ですね。

285 :
あらぬ嫌疑といえば検察庁のデータ改ざん問題かな
カイケンをつぶすためにうごいた検事が
証拠のフロッピーを書き換えて…とか

286 :
>>285
データ改ざんか…
ホントもう自分頭弱過ぎる…orz
が、そっちでがんがって書いてみようかな…
一応ちょろっとメモ程度のネタ投下を…
時系的には
あらぬ嫌疑
→工藤がちょっといい感じで上にいくかも?(な噂とかになるかも。いくらエリートでも一年くらいじゃそうポンポン上に行けんよなあ…よくわからんが)
→工藤が芯子にプロポーズ
→うっかり現場見ちゃって焦った角松も芯子にプロポーズ
→芯子に断られた(?)な角松が有給とってちょっと実家に里帰っちゃう
みたいな感じ…
の小ネタです

287 :
芯子が角松を追いかけて角松の実家に。
「シングルパーァアア!」
「……え?」
「……アンタ、なに逃げてんだよ……!」
「おま、なんでこんなとこに」
「こっちの台詞だ……っ呑気にネギの収穫か、はっ、ご勢が出ますねえ!」
「あら、芯子さん?」
「……どうも、ご無沙汰してます……」
「ちょうど休憩にしようと思ってたのよ、お仕事でいらしたんだろうけど、良かったら寄っていって? お茶くらいしかないけれど」
「ありがとうございます……私も、お母様にお話したいことがあって参りましたので」
「おい、なんだよ、お前がおふくろに話したいことって……もしかしてアレか。お宅の息子さんに付きまとわれて困ってますー、ってか? そうだよなあ、お前には工藤が居る。わかったから、もう、いい」
「わかった? なんだ、それ……んなこと言いに来たんじゃねーよッ!」
「……二人とも、早くいらっしゃい」
「突然一郎が帰って来てね、有給とったから来た、って私もう、びっくりしちゃって。初めてだったから」
「……偶にはって思ったんだよ」
「そうしたら、芯子さんまで。……なにか、嬉しいお知らせ?」
「嬉しい知らせだったら、二人で一緒に来てるよ」
「あらでも、お仕事の都合ってこともあるから」
「……お母様」
「はい?」
「先日、一郎さんに結婚を申し込まれました」
「おい」
「俺の実家で一緒にネギ作って暮らさないか、って」
「もういい」
「私は、お断りしました」
「もういいって言ってん」
「よくない! 全ッ然よくない! ……アンタ、やってもないことで疑われてんだよ? 悔しくないの?
 嫌疑掛けられて、なのに二係守るために辞表まで書いて、でも出さずじまい。そんでアタシが工藤にプロポーズされたから焦ってアンタまでプロポーズ?
 全部中途半端なまんま実家に帰ってネギ収穫して! 誰がアンタみたいな半端モン……」

288 :
「芯子さん」
「……」
「せめて! 自分の疑い晴らしてから、やめんだったらキッチリ辞めな……」
「……」
「工藤の方は断った」
(アタシ、アンタのこと好きだよ。でも、……ゴメン。どーっしてもほっとけない奴がいる。ゴメン、な。ありがとう)
「でも、アタシ、アンタの『プロポーズを断った』覚えなんか、ない」
(ネギぃ? ……悪いけど、まだ隠居生活する気にはなれないんで、な)
「断ったも同然だろあんなの」
「調査ってのは裏とってこそじゃないの? 今回の疑いのこともそう。『やったも同然』だったら、『やった』ことになんの? 『断られたも同然』なら、『断られた』ことになんのかよ」
「……断ってないのか」
「……お茶、入れ直してくるわね」
角松母がお茶入れに行く。
「アタシはもう、逃げない。絶対アンタから逃げない」
角松母帰ってくる。
「……母ちゃん、わり、俺」
「……次に来るときは嬉しい報告期待してるよ、一郎」
帰路にて。
「……決着着けたら、結婚してくれるか」
「着いてから言え」
「……なんでこんなとこまで来たんだよ」
「……決着着けてから答えてやる、よ」
※※※
ガチで小ネタですが、こんな感じで妄想してたんだ…

289 :
>>287
乙!!
芯子がカッコいい、スゴく。
こうなっちゃった過程も気になっちゃいます。

290 :
メリークリスマス!
クリスマスプレゼントにDVD-BOXが欲しい…。
特典ディスクの内容ってどんなんだろう。
ゴゴドラと同じかな…

291 :
>>287乙!
いつか全編読みたいな。
>>290
なかなか発表無いよね、待ってるんだけどな…

292 :
大泉さんが、ブログに角松のネクタイコレクションの写メあげてたね!
ホント、色々あったんだなぁ。意外と気付いてなかったかも…

293 :
中の人話になるけど
何日か前に大泉さんおすすめの調味料屋さんのつぶやきで
大泉さんが来店した数日後に篠原さんもきたみたいだね
料理対決する角松と芯子を想像したよ

294 :
炎の料理人光臨しちゃってクルクルパーマ燃えちゃうんだろww
そこは芯子勝つだろうなあ…
勝負後みんなに振る舞ったりするんですね!
ジェラシー工藤とかww

295 :
クルパー燃えるのかww
対決っていっても、2人肩並べて調理台に立ってるのって萌えるね!
そりゃ工藤も嫉妬するわー。
にしても、そのお店個人的に気になるなぁ。
大泉さんが、篠原さんに教えてあげたのかな。

296 :
バックドラフトのテーマが・・・。
なんて事になったら面白いんだが。

297 :
料理対決(?)小ネタ。
『え、補佐って料理、できるんですか?』
『お前今バカにしただろ! 料理くらいでーきーるーわー! 何年一人暮らししてると思ってんだ』
『何年も作ってくれる人が居ないってこーげんしてるよーなもんだなーまさしく『シングル』パーってかぁ?』
『そういうアンタは出来るのか?』
『ん? アタシー? アタシはーぁ、……上手いよ?』
「はいはいはいはい邪魔邪魔!」
「うぉっアブネ! おま、火! 火ぃ使ってんだ俺は!」
「うっさいな、ほら、どーけってもう! あ、火」
「だから言ってんだろ、火使ってるって」
「違う。火、うつってる。もーえーてーる!」
芯子が水をかける。
「うぉ!」
「あー……あーあークルクルパーマがチリチリパーマだなこりゃ」
「ちょ、大丈夫ですか角さん!?」
「あ、ああうん、芯子が水かけてくれたから……」
「ったくっとに手間のかかるパーだ、な!」
「ってもとはといえばお前が俺のこと押すからだろうが!」
「はーい、出来たよん」
「聞け!」
「はい、あーん」
「ん……うまい……って違う!」
「……」
「堤芯子」
「んー?」
「工藤が拗ねてるぞ」
「なーんでー」
「角さんばっかり構うからだろ」
「別に僕は! そんなんじゃ……」
「なーに、拗ねてんのか?」
「だから、別に拗ねてなんかないですって。ただその、なんか二人揃って台所に立ってるのがいいなあって思っただけで……」
「そーいうもんかねえ? ……ほれ、優、あーん」
「……おいしいです」
「そーめんかぼちゃには口移ししてやろうか?」
「いらん!」
「うーそだよじょーだん! うっし、アンタも早くつくっちゃいなー。優、そっち、食べる用意して、そーめんかぼちゃはマメ呼んできて。メシはみんなで食うほうがうまいから、な」
最後の方テケトーになりましたが。

298 :
>>297
GJ!!
ダブルパーにあーんが可愛すぎる、ありがとう。
職人さんの仕事の早さとその質に脱帽です、ホント。
ここ覗くの止められそうにない。

299 :
大泉にはアンフェアで雪平支える同僚の役とかして欲しい
お互い好意持ってるけど恋愛に踏み切れない・・みたいな
スレチですいません

300 :
>>299
仕事上のパートナーから始まる関係が似合うよね、この2人。
ハケンや黄金の続編かどうかは分からないけど、きっといつか3度目の正直があると信じてる。

301 :
>>297
早速文章にしてくれてありがとうございます
みんなでワイワイ食べている図は微笑ましいなぁ
そして大泉さんが紹介したのはたしか「茅乃舎だし」だったかと

302 :
>>301
295です。教えてくれてありがとう。ちょっと検索してみます。
大晦日だねー。
2係は、仕事納めもドタドタしてそうでなごむ。

303 :
仕事納めは28日だけどな

304 :
誰か姫初めSSとか書いてくれないかなーとか言ってみるww
自分で書いてもエロまで行かないんだ…

305 :
あけおめです。
姫初めいいな…!!今頃くっついて寝てるのでしょうか。

306 :
あけおめ、ことよろ
お屠蘇でつぶれて寝てる角松のお腹を
ペチペチ叩きながら一献傾けてる芯子の姿は見えたw
…あぁっ、これじゃ姫初めにならないっ

307 :
かわえぇ…!
エロなしでも萌えです。
この2人は寝正月って感じかな?

308 :
・最終回後
・角松→芯子
・エロなし
短いですが投下しますー。
賑やかしにでもなれば幸い。

309 :
 正直、運転はあまり得意じゃない。車を出すときは大抵金田に頼っているし、自分で運転することは殆どないからだ。
 それでも、助手席で高鼾をかきながら寝こけているコイツにさせるよりはマシだろう、と、角松一郎は汗ばむ手でもってハンドルを握り締めた。
 本日は、二手に分かれての実地調査。明珍の計らいにより、一郎と芯子のチームと金田、工藤、明珍のチームとに分けられ調査場所へと向かった。
 チーム編成で内心喜んだのも束の間、苦手な運転をさせられて芯子とも碌々話せず終いである。
 あまりに暇すぎたのだろう、大あくびを幾度となくかましていた芯子は、着いたら起こせ、と寝始めてしまった。せっかくの二人きりなのに、と仕事中にそんなことを考えている自身にため息が出る。
 しかも、もう直ぐで庁舎へ到着出来るという所まできて、事故渋滞。なかなか進まないし、逸れる横道もない。
 はあ。
 再び漏れた溜め息に呼応するかのように、芯子が深く息を吸う。そして、へえっくしょい! と妙齢の女性らしからぬくしゃみを致した。
「……オッサンか、お前は……」
 返事はなく、代わりにまた小さな寝息が聞こえる。
 でかいくしゃみをしたくせに起きる気配もない女。
 少し俯き加減の顔。化粧っ気のないそれだけれど、長めの睫毛、意志の強さが現れたような眉、すらりとした鼻、ふっくらした唇に、つんと尖った顎。
 表情もなく唇は引き結ばれているが、寝ている顔は、普段が蓮っ葉で子どもっぽいからだろうか? いやに整っているように見える。
 普段とて綺麗な顔つきなのだけれど、悪態をつかないだけで全然雰囲気が違う。
 ジッと芯子を見つめていた一郎は自身の鼓動が速度を増していくのを感じて、慌てて視線を前へと戻す。
 相変わらず、前の車は一向に進む気配を見せない。
「……いつんなったら帰れるんだか」

310 :
 思わずそう呟いて、再た助手席を見た。
 工藤は、コイツのどこが好きなのだろう?
 考えて、自嘲する。俺の方が筋金入りだ。
 尤も、芯子は工藤の方が好きなのかも知れないけれど。
(アイツは『優』で俺はひたすら『シングルパー』だもんなー……)
 昔、『洋子』と付き合っていたときは、『一郎さん』と呼ばれていた。それが酷く懐かしく、また、工藤優がちょっと嫉ましい。
(って、バカか俺は)
 横を見ればくうくうと寝息を立てる女。無防備すぎて涙が出そうだ、まったく。
 ……今なら、出来るだろうか。芯子は寝ているし、見ている人も居ない。咎める奴がいない。しかも彼女はお誂え向きに此方を向いている。
 未だ動かない車内。
「芯子……」
 一郎は、シートベルトで縛られた身体を捩ると、芯子の顔に自分のそれを近付けた。脈がどくどくと早くなる。
 触れた唇が、熱い。
 触れただけ。ただそれだけ。
 唇を離しても芯子は起きない。
「……進まねえなあ……」
 前に向き直った一郎は、そう小さく呟いた。
 一向に進まない。あの日遮られた告白もそのまま、何も。
 十二月二十八日、仕事納めの日の午後の車内での出来事である。

311 :
うぎゃあ!!GJ!GJ!
起きてるよ、絶対起きてるよ芯子ww
正月休み最後に萌えをありがとう職人さん!明日から仕事頑張れそうだw

312 :
>>307
ぐはぁ、萌えた!!
GJ!!
絶対起きてるよね。可愛いなぁ、もう。

313 :
キスだけで萌えてしまいましたww

314 :
>>309です
反応ありがとうございます^^
調子に乗ってまた投下します。一応、上のssの続きです
・角松×芯子
・エロあり(と言えるほどエロくはならなかった)
・色々矛盾してるところとかありますがスルーしてください
・くそ長いです…まとまんなかった…すまそん

315 :
「寝てる部下襲うなんて、いい度胸してるな?」

 夢だ。
 一郎は、そう確信して肩を落とした。
 自分の家に堤芯子が上がり込んでいるなんて。しかも、昼間の出来事を咎められるなんて。罪悪感が見せる夢に違いない。
 玄関を入ってすぐ、壁に寄りかかる芯子には構わず、一郎は寝室へ向かう。風呂に入るのも億劫だ。どうせ今日は仕事納め。明日は一日中寝ていたところで支障はない。
(ああ、夢なのになんでこんなこと考えてんだ俺……)
 コートと背広の上着だけ床に放り投げて、電気も付けずにベッドに倒れ込んだ。
「シカトか?」
 パチンと乾いた音がして、部屋が明るくなる。シカトか? そう問うた芯子が、ベッドの脇に立ったのが解った。
「起きな、シングルパー」
 シングルパー。芯子はいつも、一郎をそう呼ぶ。ずっと嫉妬していたのだ。同じようにシングルパーと呼ばれる新人に。だって、アイツは、名前を。
「……洋子が……いや、お前がさ」
「あ?」
「俺の名前呼んでくれんの、好きだったんだよ、俺」
「んなこときーてない」
「聞けって。そんでな、お前が俺の名前呼んでくれた後に、キスすんのが好きだった。なんかこう、俺のモンて感じがしてさー」
「だからキスしたって? 答えんなってないね」
 そうだ。答えじゃない。答えなんか簡単だ。したかったからした。
 好きだから、した。
「……アホか俺」
「……アンタ飲みすぎてんじゃないの?」
「かもなあ」

316 :
 そう、飲みすぎたかもしれない。仕事納めで金田と工藤を誘って、飲み屋でしこたま呑んだ、ような気がする。
 それすら朧気だ。飲み過ぎたのだと思った。だからこんな夢も見る。
(……夢……)
「夢なら、いえっかなー……」
「夢ぇ? 誰が、」
「俺、お前のこと好きなんだわ……」
「……」
「なあ、芯子」
 夢なら、構わないだろうか。
 一郎は、投げ出していた上半身を起こすと芯子の腕に手を伸ばして掴み、自分の方にぐっと引き寄せた。
「……キスしたい」
「……嫌だっつったら?」
「……知るか」
 腕は逃がさないように掴んだまま、もう片腕で首の裏を支えた。そのまま、背けるでも抵抗するでもない唇に自分の唇を押し付ける。
 一度、二度、三度。今度は食むように少しそれを含み、舌でもって合わせ目をそうっとこじ開ける。差し入れて歯列をなぞれば鼻に掛かった声が漏れて、鼓膜が震えた。
「ん……ンーぁ……」
「ん……」
 奥に逃げる舌を追いかけて、捕まえる。
 首を支えていた手をずらして、耳の裏を撫でてみた。少し身を捩る芯子をもっと追い詰めてみたくなる。
 掴んでいた腕を放して、代わりに本格的にベッドへ引き込み、押し倒す。再び唇を唇で舐りながらモッズコートを脱がしにかかった。腕の途中に絡ませて、動きにくくする。
「あ、んた、ね……んっ」
 息継ぎの合間に何かを言おうとする口を、塞ぐ。
 服の上から、胸に手を這わせてみる。記憶通りの大きさ。心臓の音が早まる。
 手に少し力をこめて、ゆるゆると揉む。けれどやはりそれだけでは物足りず、裾から手を差し入れて直接胸に触れる。ブラを押し上げれば、既に堅くなっていた突起にそれが擦れたのか、舐っていた口元が歪んで甘い声が聞こえた。
「はぁ……ん……」
「……好きだ」
 唇を離して、両手は胸の頂をこねながら譫言のように呟く。
「じゅ、んじょが……ゃ……逆だ、ろっ……!」
 アタシはまだ何も言っていない。そう言って眉を寄せながらも、抵抗はしない。
 爪で軽く引っ掛くと、更に甘い声が上がった。片手を芯子の頭の後ろに回し、髪を結わくゴムを解く。柔らかい髪を梳いていると、芯子が抗議するように声を上げた。
「背中痛いから……コート脱がしてほしーんだけど」
「……いいのか?」
「ヤだったらてーこーしてるっちゅーの……」
 拒否されなかったことに安堵して、コートを脱がす。それを床の上に落として、服と下着も取り払おうと手をかけた。
「待った、その前に……」
「なんだよ」
「……でんき」
 芯子がつけた電気。それを手元のリモコンで消すと、目が慣れないせいで目の前の芯子の顔すら見えない。それでもなんとか手探りで下着まで脱がせた。

317 :
「一応、ゆっとくけど」
「……」
「あー……」
 うじうじするのが嫌いな芯子が珍しく言葉を濁す。
「……早く言え」
 段々不安になってそう急かすと、漸く暗闇でも見えるようになった輪郭を俯かせてぼそぼそと言う。
「……アタシ、かれこれ二、三年……ご無沙汰なんだよ、な……」
「そりゃあ刑務所暮らしじゃあな……で?」
「だから、その……や」
 やさしく、してほしー……なー……。 
 照れ隠しのためだろうか? 自由になった両手で一郎の頬を包んで、ぎゅーっと潰す。
 あにふんどぁ、言葉にならずもごもご言って、手を外させる。そのまま、それぞれ頭の脇に縫い付けた。
「……悪いけどな、俺も誰かさんに逃げられてからご無沙汰なんでなー優しく出来るかどうかはわからん」
「……ん、ぁ」
 深く口付けて、唾液を交換する。首筋に唇を移動させて、そこに吸いついた。強く吸啜したせいで、舌が痺れる。その感覚さえ甘い。
 胸の膨らみに顔を寄せて、暗くて見えない色づきを含んで、軽く歯を立てる。
「んっ……」
 手を乳房に置いて、吸っていない側をこねたり弾いたり引っ掻いたり押し込んだりと楽しむ。唾液塗れの方にふっと息吹きかけると、身体が震えたのがわかった。
 動く度に金具が音を立てるジーンズの掛け金を外し、チャックを下ろす。
「腰、上げてくれるか」
「……はいはい」
 下肢を覆っていたものを全て取り除くと、芯子が脚を擦り合わせる。
「恥ずかしい?」
「ったり前だっつうの……あーもーやるなら早くしろっ!」
 顔を背ける様子が愛しくて仕方がない。一度は自分を騙した相手だというのに。
 遮るものがなくなったそこに指当てると、既に潤っている。少し堅くなっている突起を指に感じて、それを摘むように擦り上げると、芯子が高く鳴いた。閉じかける脚を左右に割開いて、戦慄く内腿を片手で宥めた。暫くクリトリスだけを弄ってやる。
「なん、でそこばっか……ぁあ、や、……んっ……!」
 ヌルヌルと手に纏わりついた体液を、今度は手のひら全体で塗りつける。
 芯子が息も絶え絶えになったところで、指を一本中に差し入れた。難なく入る。幾度か出し入れして、二本目。これも抵抗なく入った。
 中で指を折って内壁を擦る。脚がその都度びくびくと跳ね上がる。
「気持ちいいか?」
「う……っさ……」
 腕で顔を覆っているのか、くぐもった声が答える。打ちつけるように出し入れしてやると、中がきゅうと締まった。
 指を引き抜く。

318 :
「おー……ベトベト……」
「……は、ん……はぁ……」
「まだシャツ脱いでもねーよ俺……」
 なんだか気恥ずかしくなって、はは、と苦く笑うと、芯子が整わない息のままで起き上がり、ネクタイを引いた。無防備な身体は自然前のめりになる。ついでに強く肩を押されて、ベッドに転がった。
「うぉっ!」
 しなやかな身体が上に乗り上げ、細い指が暗い中器用にネクタイを外していく。シャツのボタンに触れるたび、鼓動の速度が増す。
「お、おい、お前」
「手ぇーベトベトにしてスイマセンねー。お詫びに脱がしてやるから、だ、ま、っ、て、な」
 言うが早いか、芯子の手がベルトに掛かり、カチャカチャ音をさせたそれは、簡単に腰から抜かれ、チャックも下ろされる。
「呑んでたっつってた割にちゃーんと勃ってんじゃん」
 芯子の媚態に首を擡げていたそれ、を、布越しに指が撫でた。
「……なんだよ」
 舐めてくれんの? 冗談めかして訊くと、芯子がくっと笑った。先ほどまで一郎の下でアンアン嬌声を上げていたとは思えない豹変ぶりだ。
「シてほしーわ、け?」
 オネガイする時はぁ、なんてゆーの? ジッと間近で見つめられて、ちゅっと唇を奪われる。
「オネガイします……」
 思わず口をついてしまった。
 芯子の指が下着に入り込み、それを少し押し下げて中の一物を取り出す。片方の手でもって竿を支えるともう片手で落ちてくる邪魔な髪を耳にかけてから、それに顔を寄せた。
 つるりとした部分に舌を当て、指はやわやわと袋を揉み、唾液をダラリと垂らして、空いた手でカリをなぞり、竿を扱く。一郎は少し腰を上げると、下着とスーツを若干下げた。
 芯子は一物をくわえ込み、舌で舐ったり吸ったり、軽く歯を当てたりと一郎を高みに誘う。
 ぐちゅぐちゅと漏れる音が、芯子の、鼻に掛かったような息遣いに混じる。
 ん……はぁ……、
「ん……一遍出しとけ」
「え?」
 油断していた。手はせわしなく動きながら、先端をぎゅう、とキツく吸われる。
「わ、お前……ッ」
 腰が浮くような感覚がして、それが抜けたかと思った時には、射精していた。芯子の口の中に。
 指で搾り取り、啜る。離れた口元からきらりと白濁の糸が引くのが見えた気がした。

319 :
「……てぃっひゅ……」
「え? あ、ティッシュ、ティッシュな! ええと……」
 慌ててちり紙を探してベッドサイドを漁るが、見つからない。
「……いーや……」
 舌足らずにそう言った芯子は、口を引き結んだ。
 ごく。
「……ぅえー……喉に引っかかる……まずー……」
「飲んだのか!」
「アンタおっそいんだもん」
 シャツはボタンをはずされただけで下肢は精を放って萎えたモノがスーツからはみ出している。対する芯子は、何も身にまとっておらず、いつも結んでいる髪も解いているせいか雰囲気が違って見える。
「……いいか?」
「ま、このまま放り出されても、な」
 合意と取れる言葉に、一郎はシャツを脱ぎ捨てた。抱き寄せてベッドに倒し、脚を抱え上げた。開いて、縫い止める。
 そのままゆっくりと、潤む場所に顔を近づけた。
「なに」
 強張った声。
 何をされるのかわかった声。昔、騙されたときもこれだけは嫌がっていた。
 汚いから、と。
 しかし、他人の一物くわえておいて、『自分は汚いから』もなにもない。
 唾液を含ませた舌で祕部を舐め、逃げようとするのを捕まえて指でそこを開いた。突起にむしゃぶりついて、唇で食む。
 芯子が嫌々と首を振る。
「や、だっ!」
「なんで」
「きたな、」
「くない」
 穴に舌を差し込んで、広げる。何度か注挿してから、代わりに指を挿入した。二本、三本。
 中を更に解しながら、一郎はふと、あれ? と首を傾げた。眉間に皺が寄る。
「あ……やべ……」
「……」
「……ゴム、ねえや……」
 買い置きするようなものでもない、恋人が出来たら買えばいい。行きずりの女とそういう関係になることなどないだろう、と、用意もしていなかった。
 行きずりの女ではないけれど、恋人でもない。そんな女とそういう関係になってしまうことだって予想外だ。
「……ナマは拙い……よな?」
「……」
「や、うん、まあこんな時も、な……あるよな……」
 ハァアア、と深く息を吐いて、すごすごと離れ、ようとしたのを引き止める手。言わずもがな、芯子だ。

320 :
「とる気、あんのか?」
「え?」
「責任。子どもがもし出来たらとる気あるのかってきーてんの」
「そりゃ、お前とは結婚まで考えたし……」
「あんの、ないの、どっち!」
「あります!」
「じゃあ、いーよ」
「……は?」
「だから、着けなくていーから」
「……っ……」
 甘い誘惑に流されかけて、しかし首を振る。責任をとるつもりは勿論あるけれども、いい大人としてそんなできちゃった結婚はどうかと思う。
 ……思う。
 芯子が、ふうん、と鼻を鳴らした。
「アタシとするのが嫌なんだ?」
「嫌なわけあるか!」
「コーカイするかもって思ってんだ?」
「違う」
「アタシも、後悔なんかしない」
 腕が伸びて、一郎の頭をそうっと掴む。
「アンタなら、イイ」
 どんなし文句かと、思った。

321 :
「本当に、いいんだな?」
「アンタもしつこ、ん……」
 いい加減呆れたような声音を遮り、塞いだ口内を舐め尽くして脚を抱えると散々指で掻き回したそこに、何も着けないままの一物を宛った。
 芯子が息を詰める。
「息、抜けよ」
「かんたんに言うけど……な……ぁっ……!」
 狭く柔い内壁を掻き分けて、押し入った。何も着けていないダイレクトな感覚に、一郎は眉を寄せる。
「きっつ……いな……」
「ぃ……あ」
 なんとか根元まで押し込んだ。吐き出す息に熱が籠もる。ヤバい。気持ちいいなんてモンじゃない。
「……う、動いていい……?」
「い、ちいち、訊くな……」
 腰を引くと、肉が絡みついてくる。単調に打ち付けてからぐるりと中で回せば、芯子が秀麗な顔を快感に歪めた。
 耳、首筋、胸、脇腹、腰骨、臍下の茂みやその下の突起、至る場所に触れながら、注挿の速度を速めていく。
「ンっ、ん……っ、ん、ぅん、」
「声出してよ……」
 噤む唇が寂しくて、唇に指を入れる。抗議のために開かれたであろう歯の間にそれを噛ませれば、閉じられない口からはひっきりなしに喘ぐ声が漏れた。
「あっ、あ……や、あ……」
「かわいいなお前……」
「あっ、ぁ……あんひゃにぇ……」
 がり、強く指を噛まれて、思わず手を引く。何すんだ、とむくれてやったらこっちの台詞だと髪を引っ張られた。
「いたたたいてえよ!」
「うっさい」
 睨んで、口付けあって、もう何も言わずにただ穿つ。水音と肌のぶつかる音だけ、電気の消えた部屋に淫らに響く。
 ふいに耳鳴りのする感覚。クリトリスをグッと押し潰すと、芯子の表情が更に歪み、中も狭まった。
「あ、も、イく……ぅ!」
「一緒に……ッ」
 腰を支えて最後に強く打ちつける。
「しん、こ……!」
「っ、ぁあ、イ……」
 二人で高みへ登りつめたとき、芯子が、詰まった声でもって、噛み締めるように紡いだのは、他でもない、一郎の名前だった。
「い、ちろ……!」
「ッ……」
 放った白濁が、抜かれることなく全て芯子に注がれ、一郎は何度かゆっくりと腰を押し付ける。

322 :
 は、は、二人して荒い息を吐き出して、ベッドに沈み込んだ。
「あー……あー……」
「なーんだ、その声」
「すげ、良かった……お前は?」
「……ま、そこそこ、な」
「そこそこってなんだ、そこそこって……まあいいわ……」
 一物を引き抜いて、芯子を抱き寄せる。物凄く瞼が重い。いつの間にか足元で蟠っていた毛布達も引き寄せて、二人でくるまる。傍らの芯子が後始末をしろと五月蝿く喚くが、起きてからにしてくれ、と瞼を閉じた。
※※※
 目が覚めた。随分と、都合のいい夢を見た。目は開いたけれどあまりに身体が気だるく起き上がる気にはなれずに、何時だろう、そう思って時計に手を伸ばす。
「起きたか?」
 後ろから、するはずのない声がして、驚きで時計を取り落とす。
 声の主は、堤芯子だった。
「なーに、そのカオ。風呂沸いてるから入ってきな、ひっどいカッコしてるよー?」
 芯子はそう言うと、リビングへ消える。
 訳も分からず下を見れば、夢と同じように下穿きだけ穿いている。
「ゆ、めじゃなかったのか……」
 ヨロヨロと部屋を出ると、味噌汁のいい匂いがした。
「アンタさー、時計あんだけ煩いのに、なんで起きないかね〜?」
 一郎の服を身につけた芯子が、お玉を握っている。
 これも夢だろうか。それとも。
「お前……か、身体、平気か……?」
「はぁ?」
「いや、……だから」
「起きたら身体中ベトベトだし、へんなトコ筋肉痛だし。立ったらなんか出てくるし誰かさんはぐーすか寝てるし? ……ま、いーけど」

323 :
 くるりと一郎に向き直った芯子が、お玉を肩に担いで片手で一郎の胸あたりを強く押すと風呂場へ追いやった。
「とりあえず、風、呂、入、れ」
 どうやら、朝食にありつくには身を清めなければならないらしい。
 風呂場の扉を開ければ一面鏡がある。姿見にうつる自分の格好は、確かに酷いものであった。
 ってこれ、マジでか。
 色々なものを流してさっぱりとしてリビングへ向かう。
 風呂場で悶々考えた末に出た一つの答えは、どうやら、自分が夢だと思っていたことは全て現実だったらしいということ。
「……夢じゃなかった……」
 リビングへ入ると、食卓にならぶ小鉢たち。食材がないとぶつぶついう芯子は、それでも何品目かを作っていた。料理などてんでできないように見えるのに、実際のその腕は確かだ。
「モノが少なかったからこんだけしか作ってない、よ。ホイ、食いな」
「いや、ありがとう……」
 あれが現実だったとして、後始末もせずに寝転けていたとかもう最悪だ、と溜め息を吐く。口に運んだ煮物が旨くて、情けなくなった。
「旨い……久しぶりだな、お前の料理」
「味わえ、よ」
 まるで、夫婦のそれのように穏やかな時間。けれど実際には、恋人ですらない。
 そう、恋人ですら。

324 :
 一郎は、箸を置いた。
「どーしたシングルパー」
「……堤芯子」
「なーになーにどーした」
「俺は、お前のことが、好きだ」
「……そーれで?」
 一息、吸い込む。
「芯子さん、俺と付き合って下さい」
 身体中が心臓になったように、鼓動が五月蝿い。頬杖をついて告白を聞いていた芯子は、んー、と唸ると椅子の背もたれにもたれ掛かった。
「……アンタがなんでそんなにアタシのことが好きなのかワカンナイけど……なーんか一郎さんは私が居ないと駄目みたいだしー?」
 机を挟んで、身を乗り出した芯子から手が伸びる。それがわしゃわしゃと一郎の髪をかき混ぜた。
「しょーがねーから、付き合ってやる、よっ」
「……マジ?」
 一郎が瞠目する。その様子に、芯子が息を吐いた。
「……んなことで嘘吐いてどーすんだ」
「前科があるだろお前は……」
「……あー……っと……しっかし昨日はまーさか、寝込み襲われるとは思わなかったなー……しかも、車ん中で、仕事ちゅーに?」
「!」
「ホントどんだけヨッキューフマンなんだっちゅーの」
 芯子が一郎の家に来たわけ、一郎の記憶が正しければ、あの車内でのキスの理由が知りたかったからだったはずで、詰まり……。
「おま、起きてたのか……!」
「ったり前だろー? あんな頼りない運転じゃ寝たくても寝らんなーい」
「嘘こけ、高鼾かいてたじゃねーか!」
「つーか例えあの前に寝てたとして、アタシくしゃみしたんだよ? あのタイミングで普通『起きてない』って判断しないだろ、っとに頭ん中までパーだな!」
 確かに、言われて見ればそうなのだが、一郎としては納得いかない。
「嫌なら目ぇ開ければ良かったじゃねえか……」
 少し拗ねたようにそう言って、箸を再び取った。ジャガイモの煮物をつつく。
「……だから、開けなかったじゃん」
 照れを隠すように、ふてた声音で吐き出す芯子。その言葉の意味を正しく理解して、一郎はジャガイモを取り落とした。
「……す、なおじゃねーなー……」
「……お互いサマだ、ろ」
 掛け合う言葉に温かさが滲む。
 二人の想いの繋がった、二十九日の、昼間のことであった。

325 :
お粗末さまでしたー!
ながながと使って申し訳ない…
お目汚し失礼いたしました!
最後終わり方が雑杉田orz

326 :
ぎゃーー!!萌えにそうです、GJ!!GJ!!!
ほんとありがとう。
昼間に覗いて良かった、ほんと。
エロいしラブラブだけど、普段通りの2人が素敵過ぎる。
ありがとう!乙でした。

327 :
>>314
乙でございます、素晴らしいお年玉でした。
芯子は良いおかみさんになるだろなぁ、一郎のかあちゃんも喜ぶだろなぁ、
なによりやったね角松っ、と元気になれるエロを有難う!

328 :
ぐぉぉおおおお!GJGJGJGJGJGJ!!!!グッジョブ!!
たぎった…!本気でたぎりました…!
まさしく二人という感じの話でした!
ありがとぉぉおお!

329 :
乙です!
なんだか健康的なエロでほっこりしてしまいました
芯子は安全日だったのかな?w
子供出来たら角松&チビシングルパーが芯子を取り合いする姿が浮かんだw

330 :
>>314です
反応ありがとうございます^^
性懲りもなく事後のおまけSS投下します
・角松×芯子
・エロなし

331 :
 芯子が目を覚ますと、ベッドサイドのボードで目覚まし時計がけたたましく鳴っていた。芯子を力無く抱え込む男は、そんな騒音の中でも一切起きる気配を見せない。
「……うっせー……な……」
 一郎の腕を退けた芯子は、その身体を跨ぐようにして時計に手を伸ばし、アラームを切る。
 毛布にくるまって腕に抱かれていた時には気付かなかったけれど、冬の朝の寒さは裸の身には辛いものがある。
 起こした身体は節々が痛いし、色々なところがベタベタして気持ちが悪い。腰には久しぶりに違和感があり、芯子は、ふん、と鼻を鳴らした。
「……とりあえず……風呂!」
 勢い勇んで裸のままベッドから降りる。と、下半身、太ももに、何か、伝う感触。
「……忘れてた……」
 コンドームがなかったため、ナマでやって、ナカに出されたのだ。
「……」
 出されたことは構わないが、せめて後始末くらいしろと、後ろで寝転ける男を睨んだ。
 一人気持ちよさそうに寝やがって、揺り起こしてやろうか、とのそのそ傍に戻ると、むにゃむにゃ動く口元。
(アタシの名前でも呼んでなら、ま、許してやるかね)
 そっと耳を近付けた芯子が、呟きを聴く。
「……しん……こ」
「……ふー……ん」
 可愛いとこもある、と、少し頬を染めた芯子の耳に、続く言葉。
「はら……」
「ん?」
「へった……」
「……そりゃ、こっちのセリフだっちゅーの!」
 芯子は憤慨して叫ぶ。
(こちとら、昨日の夕方からなーんにも食ってないんだ、よ! 誰かさんのせーでっ!)
 一郎が時計にも気付かず爆睡している理由は十中八九あの運転のせいだろう。慣れないことに神経を使った上に、(奴の言葉を信じるなら)久しぶりのセックスでまさに精も根も尽き果てたのだろうことは想像するに難くない。
 けれど、だ。芯子だって、あの車内での突然の口付けに動揺していなかった訳ではない。
 思わず一郎の家まで来てピッキングして部屋の中まで入り込んだ。なかなか帰ってこない部屋の主を待っていた時、正確に言えば口付けされてから今まで、何も口にしていないのだから、一郎よりも確実に腹が減っているのだ

332 :
「……めし……」
 あーもー!
「しょーがねーなー……」
 芯子は一郎を起こすことなく、ベッドから降りる。下に落ちていた一郎のシャツで下肢を軽く拭い、それを持って風呂場に駆け込むと、シャワーのコックを捻った。
 頭からつま先まで綺麗に洗い清めて、ナカの残骸は指を突っ込んで掻き出す。
 さっぱりとして鏡を見ると、白い肌に一つだけ赤い徴が咲いていた。
 それを指でもってなぞって、口角を上げる。
「さーて、と」
 風呂場から出た芯子は、タオルで粗方水分をとり、それをグルグル巻き付けて一郎の眠る部屋へ戻った。
「まーだ寝てんのか」
 ソイツを横目で見て、一郎のクローゼットを開ける。パンツだけはどうにもならんな、と息を吐いて、仕方ないので袋に入っていた新しい、男ものの下着を身につけた。
 洋服も見繕い、落ちている服を拾って再び風呂場へ。洗濯機き二人分放り込み、ガラガラ回っている間に髪を乾かす。
 腰の違和感は否めないのに、それを意識すると何故か、頬が弛むので考えないようにした。
※※※
 台所へ移動して冷蔵庫を漁る、と、年末だというのに……否、年末だからだろうか?
「……なーんもないな」
 とりあえず、米を炊飯器に任せてから、あったもので味噌汁をつくる。冷蔵庫には豆腐が一丁。半分賽の目に切って味噌汁に入れて、半分は葱をたくさん乗せて出してやればいい。
 ジャガイモ、人参、それからインゲン。
(煮物好きっつってたっけ)
 鍋にゴロゴロ具を入れて、煮込んで味をつけて、火を止め少し冷ます。
 洗い終わった洗濯物をベランダに吊すと、風が凪いで気持ちが良い。
 台所へ戻れば、炊飯器が鳴った。味噌汁に、最後の仕上げに味噌を入れて、豆腐を入れて。すると、ちょうどよく、今度は部屋でもの音がした。
(……よし)
 ガスを止めて、一郎のいる部屋へ向かう。開けたままのドアの向こうで、時計に手を伸ばす一郎の姿。
「起きたか?」
 後ろから声を掛けてやる、と、驚いたのだろう一郎が時計を取り落とした。
(ほーんとに夢だとでも思ってたのかね)
「なーに、そのカオ。風呂沸いてるから入ってきな、ひっどいカッコしてるよー?」
「ゆ、めじゃなかったのか……」
 夢なわけあるか、この違和感が、それからこの赤い徴が。
「アンタさー、時計あんだけ煩いのに、なんで起きないかね〜?」
 その音に起こされて、一郎の寝言に急かされて、飯まで作った芯子が呆れたように呟いた。

333 :
「お前……か、身体、平気か……?」
「はぁ?」
「いや、……だから」
「起きたら身体中ベトベトだし、へんなトコ筋肉痛だし。立ったらなんか出てくるし誰かさんはぐーすか寝てるし? ……ま、いーけど」
 いーけど、の理由が、寝言でアタシの名前を呼んだからだとは言ってやらない。
 もういい加減腹も減った。
 くるりと一郎に向き直った芯子は、お玉を肩に担ぐと片手で一郎の胸あたりを強く押し、風呂場へ追いやる。
「とりあえず、風、呂、入、れ」
 話は、それから、だ。

 彼が起きるまでの、彼女の話。

334 :
お粗末さまでした!
素敵な職人さんが現れるのを楽しみにして投了しますー^^

335 :
GJ!!
何回言ったか分からないけど、ホントにありがとうございます。
新年早々萌えすぎて困る。今年はいい年になりそうだなぁ〜
芯子が新妻みたいで大変たぎりました…!!角松の寝言も可愛すぎて。
幸せいっぱいの朝って感じですね。
昨日、ココで萌えて4話を見直して更に萌えたけど、それだけじゃ足りなくなったので、もっと見てネタ探したいと思います。
本当にご馳走様でした。
ありがとう、乙です。

336 :
GJ!
呼んでる自分も幸せな気分になったよー
この二人には是非夫婦役を演じて欲しい

337 :
>>330
乙!心からの乙を!

338 :
このスレぐっじょーぶ!
さいこー

339 :
GJ!!
またどなたか書いてください。

340 :
スゴくいいですね、このお話。
別れた後も、お互い誰とも関係もってなかったってことだよね?
個人的にスゴいときめく、それ。

341 :
本当職人さん素晴らしすぎです!!!
最終回が終わってもこんなに妄想もりたてられるなんて素敵!!!

342 :

職人さんの素敵な角松×芯子の余韻が残ってる中、お目汚し失礼致します。
角松×芯子で、姫始めSSのつもりで書き始めたんだけど、本番が中々上手くいかなかったので事後っぽい所だけ投下します。
そのせいで、あんまり姫始め関係なくなったという残念さ加減ですが、次の職人さんが現れるまでの繋ぎにでもしていただければ幸いです。

343 :
窓側に設置されているベッドの上で、この部屋の主である角松一郎は、背中にかかる冷気を感じて震えとともに目を覚ました。
冷たい空気を感じる背中とは反対側で、もぞもぞと動く暖かな存在は、つい数刻前までの行為のせいで疲れきっていた彼の眠気さえも一気に吹き飛ばす。
別に今夜が初めてという訳ではない。
…目を覚ました時、自分の腕の中で眠っている彼女、堤芯子に目を奪われるなんてことは。
けれど、何度経験してもこれっぽっちも慣れそうにはなかった。
自分が芯子とこういった関係になっている事実が、今だに信じられないというのも本音だったりするのだから、まあある程度は仕方ないのかもしれないけれど。
彼の身体にぴったりとくっつくように自分の身体を丸めて眠る癖がある彼女は、目を覚ましている角松の動きに合わせるように身体の位置を変えて、ちょうど収まりの良い場所を見つけると、またくうくうと寝息を立て始めた。
こんな些細なことであったとしても、角松の心臓はご丁寧に毎回毎回はね上がってくれる。
…これが惚れた弱みと言うやつか、なんてちょっと情けなくなるような自らの解答に、一人こっそり溜め息をついた。
「にしても、さみぃなぁ…。」
誰に聞かせる訳でもなくそう呟くと、角松は冷たい風を運んでくる窓の方へと顔を向けた。
中途半端に開いたままになっているカーテンの隙間から月明かりが射し込み、そのカーテンはすきま風に吹かれて静かにヒラヒラと波を打っているのが目に入る。
この季節には珍しい、風もあまりない穏やかな夜ではあるというものの、やはり冬の風は衣類を身に付けていない身体にはいささか堪えるものがあった。
「仕方ねぇか…」
まるで何か大きな事を一大決心でもしたかのようなリアクションで、芯子を抱き抱えていた両腕を離すと、下着一枚を身に付けただけの姿でベッドから抜け出す。
もっと窓から近い所にベッドを設置しておけば良かったな、なんて今更な後悔をしながら。
パタンと小さく音を立てて窓を閉め、鍵を確認した後で今度はきちんとカーテンを閉める。
角松がベッドに戻ろうとした時、人間毛布を失った芯子もまた、寒さで目を覚ました。
「…ちょっとシングルパー…、寒いっちゅーの…」
寝ぼけ眼の芯子の非難めいた声は、いつも以上に幼さを感じさせた。
「ちょっと待ってろ。今、もう一枚毛布取ってきてやるから。」
「ばぁか…。違うっちゅーの!」
一体どこにらそんな力があったのか不思議で仕方がないような力で突然腕を引っ張られた角松は、抵抗する間もなくベッドに倒されてしまう。
「うぉっ!ちょ、芯子…お前一体何しやがる!?」
角松のクルクルの頭に手を掛けて、引きずりこむようにしながらベッドに寝かせた芯子は、彼の頭をぐしゃぐしゃと散々撫で回した後、満足したのかそのまま彼にぎゅうっと抱き付いて、また気持ち良さそうに寝息を立て始めた。
それまで芯子にされるがままになっていたけれど、彼女の寝息でようやく我に返った角松は、抱き付かれたままの状態ではダイレクトに伝わる彼女の柔らかい身体に興奮を禁じ得ない。
「…そうは言ってもな…」
こんな気持ち良さそうに寝られたら、襲うに襲えねぇじゃねえか…
なんて言う自虐的な呟きは、誰に聞かれる訳でもなく暗闇へと消えていく。
それは、彼が自分の若さを知ったある冬の晩のこと。朝日が昇り、彼女が目覚めるまで後数時間。

344 :
以上です。
なんか>>308さんと似たような雰囲気になっちゃってるかもしれない、と反省してます。ゴメンなさい。
中身は全然比べ物にならんくらいダメダメですが…
とりあえず、置き逃げさせてもらいます。
職人さん、またよろしくお願いいたします。

345 :
>>344
GJー!
308ですー^^
一人で寝てるときは寝相悪そうな芯子が二人で寝てると大人しくすやすや寝るとかマジいいすよねw
やはり他人様のお話読むとニヤニヤします!
ありがとうございます!

346 :
GJです!
角松に甘える芯子が可愛すぎます!
ツンデレな所も良いなー

347 :
>>342乙です!
お昼前に覗きに来てみて良かった〜
雑種のモジャモジャ大型犬と黒猫が寄り添って寝てるみたいで可愛いw

348 :
308です
スマン投了とか言っときながらまたオマケのオマケ投下します…
・エロなし
・なんか文章ぐちゃぐちゃw
よければ読んでくだされ

349 :
 芯子は、一郎の前の椅子行儀悪く腰掛けると、箸を取っておかずをぱくぱく摘んでいく。
 一郎も取り落としたジャガイモを皿から拾い上げて、口に運んだ。ふと、窓の外に目を向ける。すると、干した覚えのない、一郎のYシャツに下着、芯子の脱いだであろうそれらがベランダで棚引くのが見えた。
「洗濯、してくれたのか」
「んー……? ま、そのまんまにしとけねーだ、ろ? アタシのだけ洗っても良かったんだけどな」
 ついでだよ、ついで!
 大したことじゃない、と明後日を向く芯子に、笑った。
「何笑ってんの……。つか、アンタんとこ食い物なさすぎ」
「今日買いに行こうとこ思ってたんだよ……。まあ、どうせ一人だからな、出来合いの物で済ませてもいいし」
 それとも作ってくれんのか? と半ば本気で訊くと、調子に乗んな、と一蹴されて少し凹む。それなら煮物と味噌汁はとっておこうかと思ったが、煮物は既にほぼ胃袋の中であった。
 取りあえず膨れた腹を抱えて人心地つく。
「もう、帰るのか?」
「ん? んー……あー……そういやあ、連絡してないな」
「連絡……って、家にか? 電話とか……メールは!?」
「いーれーてーない」
 だって、泊まるつもりなかったし? そう言われてしまうと、返す言葉もない。
「けどなあ……」
「あーのさ、アタシだって良い大人なんだっつの。十代のガキの家出じゃねーんだから、一日やそこら帰らなかったからってどってことないんだ、よ! ……大体、昔は家帰ってるほーが珍しかったんだから」
 芯子はそう言いながら立ち上がり、食器を片付けていく。一郎もそれに倣うと、台所に並んだ。
「メールでも電話でも着てるかも知れないだろ、片付けくらい俺がやるから、連絡してこいって」
「……はいはい、ったく……わかりましたよ」

350 :
 面倒くさい、と言いながら、芯子は一郎の部屋に落としたままのコートから携帯電話を取りに行く。
「着信はー……っと……」
 開いて、息を呑んだ。
「着てるし」
 そこには、みぞれからのメール。件名には『お母さんが』とあって、芯子は少し心臓が早くなるのを感じた。
 何かあった?
 本文を開く。
『帰ってくるときに、お雑煮に入れるお肉買って来てだって〜』
「……」
 えらいキラキラのデコレーションメールで、そんなお願い。
 ベッドに携帯を投げ、息を吐くと自分もそこに身体を預けた。ぼす、と空気の抜ける音。
「どうだった? ……って何うずくまってんだよ」
「……べっつに……」
 洗い物を終えて部屋を覗いた一郎が、ベッドに突っ伏す芯子を見て近寄る。
「着てたんだろ? 何だって?」
「……正月の食い物買ってこいって、さ」
「それでなんでお前そんなんなってんだよ」
「……」
(だってまるで、家に帰るのが当たり前みたいじゃん)
 これまでどれだけ掛けたメイワクか判らない。母にしろ、妹にしろ、このお人好しの男にしろ、見放されて当然の自分であるにも関わらず幾度も居場所を与える。与えてくれる。
 それを、今、ふと感じて胸が熱くなった? そんなの、アタシらしくない。
「……んなカッコで帰ったら何つってからかわれるかわっかんねえなあ、と思って、溜め息吐いてたんだ、よ……」
 背中越しに、咄嗟に思いついた理由で悪態をつく。と、一郎が笑ったのが空気で解った。
「なに、笑ってんの」
「いや、なんか」
 一郎は、ベッドを挟んで反対側から上半身だけそれに乗り上げると芯子に手を伸ばした。
 いやいやと首を振る芯子に構わず、こっち向けって、とその頭を捕まえる。
 そらした視線すら愛しいといったら、バッカじゃねえーの! とでも言われるだろうか。

351 :
「じゃあ、乾くまで居たらいい」
「……さっき干したばっかなんだよ? どんだけ時間かかんだっつの」
 ……そ、れ、と、も、何か暇つぶすよーな楽しいコト、する?
 芯子が、挑戦的な目で一郎を見、頭から頬に移動したその手に触れた。
 ごく、と一郎の喉が鳴って、芯子が、よし、このまま主導権を握ってしまえ、と思ったのも束の間、一郎が頬に添えた手でもって、そこを軽く挟んで引っ張った。
「っひゃ、にゃにすんだ!」
 芯子は驚いて、目をつり上げてその手を振り払う。
 一郎は、再び笑顔に戻り、芯子の頬をゆっくりと撫でた。
「お前、都合悪くなるとすぐそうやって人を誘うみたいにして話逸らすけどなあ……」
 よっこいしょ、とベッドに乗り、仰け反る芯子を逃がさまいと捕まえる。
「なになに、なんだよ、もう……っ」
「……なんでもねーや……なあ、キスしてもいいか?」
「はぁ?」
「したくなった、お前の顔見てたら……駄目か?」
「……」
 逡巡した芯子の瞼がゆっくり降りる。一郎が、顔を近付けた。
 三センチ、二センチ、一センチ、触れる瞬間に、ベッドの上の携帯電話が震えて、一郎が飛び上がる。
「うぉッ!? あ、な、なんだケータイか……」
「……ビビりすぎだろ。……それ、取って」
 一郎が携帯を渡すと、芯子が開いて耳に当てる。
 もしもし、ああみぞれ。ん? 見ーた。買ってかえりゃいーんだろ? え、なに? 帰り? ……んー。
 ちらっとベッドを見れば、心臓あたりを押さえて溜め息を吐き出している一郎の姿。それを見た芯子は、電話の向こうにいる妹に向かって言った。
「ゆーがたか、夜になりそーだな。帰るときまた連絡する。んーじゃーね、はい」
 電話を切ると一郎が驚いたように此方を見ていた。芯子は、携帯を横に放ると、ベッドに上がる。洗っていないシーツはなんだかゴワついてあまり気持ちのよいものではないけれど、夕方洗って干して帰ればいい、と思った。
 一郎の上にのり、抱きつくような体勢になると、そこから伸び上がって一郎の唇に自分のそれを落とす。目を閉じて少し口を開けば、触れるだけのキスは簡単に深いものに変わった。
「ん……」
 一郎の腕が芯子を抱く。
 もらう居場所のなんと心地いいことだろうか。

352 :
「あー……そんな風に乗られるとな、キスだけじゃ収まらないんですけども……」
 一郎が少し首を持ち上げれば、広めに開いた男物の服からバッチリ見える、下着をつけないままの胸の輪郭。
「収めなきゃーいーんでないの?」
 ふふん、と微笑んだ芯子は、再度一郎に口付けた。

353 :
このままエロに行くのもくどいなあと思ったので、ここで終了です
お粗末様でした!

354 :
>>348
ふぉぉ、乙です!!
実はあの後の2人を想像して2828してたので、続き書いて下さってスッゴい嬉しいです。
気持ちが通じ合った後だもの、一回じゃ足りないよねお互いw
その後、芯子の買い物に角松も付き合えばいいと思います!
素敵な話をありがとう!!

355 :
乙です!
年明けに連続萌させて頂きましたw
なんて可愛い2人なんだろう
個人的にはこの先のエロも知りたいな〜と思いましたが
気が向いたらお願いします!

356 :
乙です。
この後、二人で実家に帰って
「こっちのシングルパーなの?!」
って母ちゃんとみぞれに言われる図まで想像した

357 :
GJ!
ぜひ2回戦も!

358 :
>>356
>「こっちのシングルパーなの?!」
ひどい!コーヒーフイタwww
だがそれがイイ!なんだよね。348さんありがとん。

359 :
>>353GJ!
余韻で終るのもまた乙なものですが
このままエロに行くのも щ(゚∀゚*щ)カモォォォン 
>>356
母ちゃんとみぞれの同時突っ込み
それ、凄く観たいw

360 :
>>356
私も同じこと想像してたww
その時の複雑そうな角松想像すると笑える。

361 :
里中にご奉仕する森美雪タソきぼーん

362 :
懲りずに参上348です
調子こいてエロ書こうとしたら途中で失速したので、勢いで東海林×春子書いてたらうっかり全消ししちゃったw
最終的にカッとなって349‐352のみぞれと啄子側(?)を書いてみたのでよろしければ読んでやってください
投下!

363 :
 電話を切ったみぞれは、じっとその携帯に目を落とし、にんまり口角を上げた。
「……」
 姉は昔よく家を飛び出していた。母との折り合いが悪かったわけでも、妹である自分との間に溝があったわけでもない。
 ただそんな放浪癖のあるような姉だったから、年に何度かしか帰って来ないこともあった。それこそ今回のように何も言わずに出て行ってそれっきりなんてことも、だ。
 けれど、今回だけは絶対に違う。確信を持ってそう思っていたみぞれは、昨日とうとう連絡もなく帰らなかった姉に、また飛び出して帰って来ないのではないか、という心配はしていなかった。
 一日帰って来なくとも騒ぎ立てるほど子供ではないし、今回は、むしろ。
(このまんま、ゴールインしてくれたらいいなあ)
 そう思うのは、姉が具体的に誰と居るのか、はわからずとも雰囲気から某かを感じとった妹としてである。
 姉ももういい歳だ。刑務所暮らしが長かった故に婚期を逃したなんて、言わせたくない。
 勿論、姉が幸せなら別に無理に結婚しろとは言わないけれど、けれど、だって、あの姉が満更でもないのなら、応援したいと思うから。
「みぞれ、芯子の奴電話出たかい?」
「うん、夕方か夜には帰るって」
 昼食のおかずを食卓に並べながら、母にそう伝える。店をあけるのは昼を過ぎてから。それまでは暇があるのだ。
「朝には帰ってくるかと思ったら、まったく」
 悪態をつく母も、本気で怒っているわけではない。それがわかるみぞれはくすくすと笑うと箸をとった。
「いただきます」
「はいよ」
 煮浸しに手を伸ばしたみぞれ、そして今まさに座ろうとした啄子が、玄関の戸をたたく音で動きを止める。
「誰だろ?」
「……回覧板とか?」
 啄子がトタトタと玄関へ向かい、その戸を開ける。と、そこにいた人物に啄子が間の抜けた声を出した。
「あれ……」
「あ、こんにちは」
 その聞き慣れた声に、みぞれもひょいと顔を出す。
「ん? ……優くん!?」

364 :
 そこに立っていたのは芯子を慕う年下男であり、そしてみぞれと啄子がまさに今の今まで芯子と伴に居ると信じて疑わなかった、工藤優その人だった。
「あの……芯子は……」
「あ、芯子さんまだお休みですか……?」
 優の目線が玄関のすぐ近くにある階段の上に向けられる。
「え、じゃなくて……優くん、芯子姉ェと一緒じゃなかったの!?」
「え? はい、芯子さんとは昨日庁舎で別れたきりで……もしかして、昨日から帰ってないんですか……?」
「ていうか、てっきり優くんと一緒に居るもんだとばっかり……」
 みぞれの言葉に優が唇を噛んだ。
「優くん……? あ、芯子姉ェに電話してみたら、夕方か夜には帰るって言ってたんだけど……」
「早めに帰るように連絡するかい?」
「あ、いえ」
「……じゃ、じゃあ、ご飯だけでも食べて帰ったら……?」
「え、と、お昼食べてきたので、大丈夫です、すみません……あ、私用の前にちょっと寄っただけなので、これで失礼します!」
 お邪魔しました。
 ぺこりと頭を下げて、堤家を跡にした優。残されたみぞれと啄子には、疑問が残された。
(いま、誰とどこに居るんだろう……?)
※※※
 芯子のことだから、仕事納めの翌日ならば昼頃まで寝ているのではないか、そう考えて悠々と足を運んだ自分が滑稽に思える。だって、彼女は、帰宅してすら居なかった。
 そして恐らく、自分はその居場所に心当たりがあるのだ。
 優は芯子の実家から少し離れた場所で、電話をかけた。
 表示された名前は『角松一郎補佐』。何度も呼び出して居るが、出る気配はない。
 勿論、芯子と一郎が伴に居ない可能性だってある。というか、伴にいるというその可能性を想像するのは自分と金田くらいかもしれない。それでも、確信する。
「……負ける気はないんだけど、なあ」
 閉じた携帯に、優は深いため息をついた。

365 :
お目汚し失礼しました!といいつつまた性懲りもなく続き書くかもです…
というか今更ながらなんか拙作ばかりぼろぼろ投下してて申し訳ない気分になってきた…職人さーん…(´・ω・)

366 :
乙です!!
しかし東海林と春ちゃんもったいないね…

367 :
>>362
乙です!
優くんの登場いいですねー!!優くんも何気に一途だと思う。
断然角松さん派だけど、優くんも幸せになって欲しいなぁ。
東海林くんと春子さんとか、エロとか色々気になりすぎて…!
いつもありがとうございます。ホント感謝してもしきれないです。

368 :
乙です!
工藤が電話してる時に芯子と角松は・・・と想像すると萌えますねw
しかしクルクル&とっくりの読みたかったよorz

369 :
ツィッターの診断メーカーやったら、こんなの出てきて可愛かったので書きこみします。
大前春子から東海林武の手造りチョコの成分【愛情 50%│イタズラ 50%】
芯子から角松なら、愛情99%|ドキドキ1%だったw

東海林くんと春ちゃんのお話って、どんなのだったんですか?
良かったらネタだけでも教えてもらえると嬉しいです。

370 :
>>369
ほーなんか合ってるw
巡り巡って東海林は春子からチョコレート貰ってたら良いねw
あんだけ義理チョコでも欲しがってたからさ
本当にいじらしい2人だわ

371 :
>>369
99%とか愛情パネェw芯子は角松のこと大分好きだなw
くるくるとっくりSSははありがちな「本社に戻れるぜ!」ネタでした。まだホント初っ端しか書いてなかったので、気が向いたらまた書くかもです^^その時は読んでやってくださいー

372 :
ホント2人ともいじらしくて可愛い…!
チロルチョコ一個とかでも、目を潤ませて喜んでそうだw
>>371
ちなみに、堤芯子から角松一郎で診断すると、【本気 99%│抱いて下さい 1%】になってたw
ふぉぉ、ありがとうございます!定番だけど、一番妄想しがいがあるネタですよね。
余裕あったらでいいので、また形にしてもらえると嬉しいです〜
私もまた書けたら投下しにきたいです。豚の方だけど。

373 :
抱いてください噴いたw
豚投下されるの楽しみにしてます!
また(この間投下したエロの続き物で恐縮ですが)エロありSS投下します
角松×芯子。エロのパターンが前回と同じ…

374 :
 くぁあ、と大きく欠伸をした芯子は、汗ばんだ首筋に手を這わせた。自分のではなく、一郎のそれに、である。
 中年男が出っ張った腹か、と思っていたが、この男は意外にも記憶に違わない身体つきを維持している。いい意味で。
 それに、身体の相性もこれまでの数えられるどの男よりいいのだろう。
(ま、あいっかわらず耐え性はないけど、な)
※※※
「アタシさ、嫌いじゃナイんだよねえ」
 芯子は、それだけ呟くと徐に一郎の服を捲り上げた。狼狽える男には構わず、見えた肌に顔を寄せ、吸いつく。
 強めに舌を使えばそこには鬱血の小さな跡。それをなぞって、芯子は唇を舐めた。
「アンタとするの」
 芯子は上体を起こすと、仰向けの一郎の腰に跨がるように座った。そのままゆらゆらと身体を動かす。
「お前、あんま煽んないでもらえねーかな……。……ッホント、余裕ないのよ俺……」
「嫌いじゃナイっつってんのに、なーんでそんなコトゆーわけ?」
「そりゃ俺はいい。……気持ちいいしな。挿入れて動くだけだし。でも、お前、久しぶりで辛くないか?」
「……っとに、パー……」
 好きだのなんだの言う癖に、アタシに惚れてる癖に、自分本位で動こうとはしない。そんなところに少し苛立つ。普段言い合いをしているときのような距離がいいのに。
「パーってなんだ、俺はお前を心配して、」
「脱げ」
「聞け!」
「いーから、脱ーげってほらほら」
 もうホントお前知らないからな、途中で止めるとか言われても無理だぞ、と再三に渡って言われた芯子は、実にうざったそうにハイハイと答えると昨日のようにズボンに手を掛け、前を寛げていく。
 観念したのか諦めたのか解らない一郎は、それでも上は脱ぐことなく、ただその芯子の様子を目で追った。
 芯子が、一郎のソレを取り出してさする。

375 :
「どーでもいーけど、アンタパンツまでだっさい、な」
「なんでだよ、可愛いだろ、ピンクで」
「いーとしこいた上司が蛍光ピンクでアヒル柄の下着穿いてるとか、絶対ヤだ」
 昨日見てたら萎えてたカモ。
 冗談混じりな口調でそう言って、勃起しかけているそれを指でつついたり、撫でたり唇でなぞったりと弄ってから、握り込んだ。
 尿道の穴を攻め、そこから滲み出たものを周りに塗り付ける。時々思い出したようにペロリと亀頭を舐めたり雁首を弄る気紛れさが、猫のようだ。
 口に含んでくちゅくちゅと唾液まみれにして下の袋も舐る。
 伏せた睫毛、器用に動く舌、掛かる吐息のなま暖かさ、さらさらと纏わる横だけ下ろした髪。
 自分のモノが出し入れされる様が卑猥で、一郎は喉を鳴らした。
「芯子、も、いいから」
「ひゃんひぇ」
「ッ……喋るな……!」
 口一杯に頬張ったモノをズルリと出した芯子は、唇に付いた唾液だか体液だかを舐めとる。
 そのまま、自分のズボンと下着を脱いだ。
「なーんかアンタやる気なさそーだ、し……好きにするからな?」
 言うが早いか、慣らしていない自分のそこに一郎のソレをあてて、重心を落とす芯子に一郎が瞠目した。
「おま……」
「あ……ん……ンン……」
 口に一物を含みながら芯子自身濡れてはいたのだろうが、それでもつい昨日まで久しく閉じていたそこにある程度太さのあるそれを入れるのは難しいようだ。
 膝を折りながらゆっくりと埋めていく。
「ン、……いちろうさん、」
「え」
 ふいに名前を呼ばれて、一郎が間の抜けた声を出した。芯子の瞳が訝しげに一郎を捕らえる。
「なに、なま、え、よばれたいん……でしょー……? ぁっ……やっば……」
 きもちいい、と、腕で身体を支えながら腰を上下させる芯子を、一郎はじっと見詰めた。そして、芯子の上下するリズムに合わせて、一郎も腰を使う。

376 :
「あっ、や、だ……ぁ」
「何が嫌なんだよ、こんな……あーも……知らねーって俺言ったからな!」
 一郎はベッドから上半身を上げ、洋服ごと芯子を掻き抱くと深く腰を打ち付けた。
「ぁああッ……っぅ!」
「く……」
 子宮口を抉るように穿つ。一郎の耳元では、芯子がひっきりなしに喘ぎ、細いうではその首にしがみついた。
 芯子が強請る口付けに応えて口内を舐り、騎乗位だった体位をその身体を押し倒して正常位に換えて脚を持ち上げると更に腰を入れる。
 奥に届く度に、芯子が身悶えた。
「ぁッあ、……ぅん……!」
「く……ぅ……芯子……ッ!」
「……ッひぁ……ッ」
「うゎ、ッ」
 一郎は、一瞬狭まった芯子の中で、耐えきれず精を放つ。歪んだその顔と突然緩やかになった動作に、芯子が唇を尖らせた。
「……」
「……すみません……」
「ほんっと……相変わらずはやーい、な……」
「う……」
「……どーすんの、抜くの、抜かないの」
 芯子の言葉に、一郎はふっとだらしなく笑みを浮かべるとその身体を抱え直した。
※※※
「……しーんぐーるぱー……」
 添えた手が、鎖骨を辿る。芯子はそこに唇を寄せると、きつく吸った。二つ目の跡。
 一郎の眉が寄り、目蓋が持ち上がる。
「んー……?」
「腰、おっもいんだけど」
「うん……」
「もー三時なんだけど?」
「……マジで?」
「マジで。風呂入って、買い物付き合って」
 だるい重いを繰り返しながら、芯子はよたよた浴室へ向かった。
「あー……シーツの替えどこだっけなあ……」
 芯子の後ろ姿を見ながら呟いた一郎は、置きっぱなしだった仕事鞄に目を向ける。
「携帯の充電もしてねーや……」
 気怠い身体を動かして、鞄を取る。中から出した携帯を開けば、一件の着信があった。相手は、工藤優。
 一郎の胸がずくりと動いた。ああそうだ、堤芯子に惚れているのは、自分ばかりではない。

377 :
「話つけねーとな……」
 意を決した一郎、の後ろで、あー、と芯子の声がした。振り向くと至近距離に顔があり、一郎は目を見開く。全く気配を感じなかった。
「だれからの連絡いっしょーけんめい見てんのかと思ったら……」
「……」
「……アタシが選んだのは、アンタだよ」
 後ろからわしわし髪を混ぜられる。
「ああ……」
「……あーもうっ、ほら! いつまでもジメジメしてないでとっととケツ上げな、シーツ洗うんだから! アンタの服も一緒に洗濯しちゃうから、全部脱いで洗濯機入れとけ」
「ってお前素っ裸になったら風邪、」
「い、ち、ろ、う、さん」
「だから最後まで、」
「お風呂、一緒に入ってアゲルから、中で待・っ・て・て」
「……!」
 ちゅ、と一郎の頬に口付けた芯子は、ズボンだけ穿くと、トタトタ台所を横切りベランダに出て自分の下着と洋服を取り込む。
 お天道様がよく射し込んでいたおかげで着られる程度には乾いていた。
 冬の強く暖かい日差しは今もベランダに降り注いでいる。
「……んー……まぶしーね、こりゃ」
 芯子は空を仰ぐと、一郎への電話の主を思い浮かべた。
 芯子さん、好きです。
 そう言った優が本気だなんて、そんなのとっくに知っている。それでも、芯子が選んだのは、優ではなかった。
(アタシが、選んだのは)
「我ながら、よくわかんない趣味してる、な」
 芯子は、風呂場で待つであろう恋人を思い返して笑みを零し、そしてもう一度、もう一人のシングルパーに思いを馳せた。
(優。アタシ、アンタに言わなきゃなんないことがある)

378 :
お粗末様でした!

379 :
>>372
チロルチョコ可愛いw
チョコじゃないけどサイコロキャラメル一粒ずつ分けあってても良いなw
もうひと月もしたらバレンタインか…
ハケン6話で東海林がチョコつまもうとした手を
春子にペチッとされるシーンが大好き。

380 :
>>373
乙です!ほんと373さんの描く二人、好きだ。
読んだ後、元気になれるw

381 :
サイコロキャラメルとか懐かしい…!
何かの景品に付いてて、『あっても邪魔なだけですから。』とか言って分け分けする感じかな〜
あのシーン、私も大好きです!あのタイミングといい、めっちゃ夫婦のやり取りって感じで萌えw
そういえば、ハケンは今の時期にやってたんだよねー。
>>373
乙です!380さんに同じく、ホントいつも元気もらえる2人をありがとう…!
芯子の身体の心配してあげる角松さん優しいなぁ。

382 :
>>373
乙です!
この2人ナマでまたやっちゃったのねwとか
蛍光ピンクにアヒル柄のパンツってwとか
ニヤニヤポイントが多くてたまりません

383 :
チロルチョコを春子から貰って喜ぶとかって東海林主任のキャラだから余計に可愛いw
「あいつもようやく俺に心開いたか〜」とルンルンしてる顔が浮かびます
>>373
角松の優しさが良いです!大人の男だ(下着の趣味まで悪いけどw)
黄金のSPとか有ればいいのに・・

384 :
反応があると嬉しくてニヤニヤしちゃう373です
チロルチョコ…
「今日はバレンタインなわけだが」
「だからなんですか」
「いや……別に期待なんかしてねーよ……」
「そうですか」
「ホントにないの?」
「期待してないんじゃないんですか……チロルチョコで良ければどうぞ差し上げます」
「……」
「何か文句でも?」
「いや……貰えると思ってなかったから……嬉しくて、びっくりした……」
「……大袈裟です。バッカじゃなかろうか……」
「なんだそれ……あ、そうだこれ、誕生日のプレゼント」
「要りません」
「なんで!」
「貰う意味がわかりません」
「……誕生日、祝わせてくれよ……実はバレンタインよりこれ渡すの楽しみにしてたんだからさ、俺」
「……本当に、貴方は……ばかですね」
こうですかわかりませんw
ハケンの流れで一本投下します。
・東海林→←春子←土屋みたいな
・エロなし
・別にラブくもない
おかしいとこはスルーしてくださいw

385 :
 何も変わりのない日常。お前が来た、それだけ、たったそれだけなんだ。大前春子。
「東海林所長」
 S&F運輸名古屋営業所。
 正式な契約を交わしてからは初めての出勤になる大前春子は、本日の仕事内容を東海林に確認するためデスクへと足を向ける。
 既にデスクでパソコンを立ち上げていた東海林は、その自分を呼ぶ春子の声で顔を上げた。
 本当はこちらに歩いてくる彼女に鼓動が速まっていたのだけれど、おくびにも出さずに、否出さないように春子を見る。
「おぉ、おはよう……大前さん」
「おはようございます」
 今まで一人きり、孤独感に苛まれていた東海林にとっては、見知った人間が伴に働いてくれる、それだけで嬉しい。それも、己が悪く思っていない否、それどころか好意を抱いている相手ならば、尚更だ。
「いやぁ、いっつもとっくりとっくり呼んでたもんだからいざ『大前さん』て呼ぶとなんかこっぱずかしいな! 『大前さん!』てな!」
 自然と饒舌になるが、大前春子は眉一つ動かさない。目の奥に呆れの色は見えるけれど、それだけだ。
「時間が惜しいので業務の詳細を教えてください」
「相変わらず連れないねぇアンタ……ま、来てくれただけで嬉しいけど……さ」
 後半は囁くような小さな声でもって言う。春子にきこえただろうか、と盗み見ると、苛立ったような表情が見下ろしていた。
 ……ですよね。
「……えーっと、今日は事務の方をやってもらいます。資料は全部、そっちのデスクにあるから」
「わかりました」
 軽口を叩くのは諦めて春子に業務の指示を出した東海林は自分も業務に着くために運送の日程の書いてあるボードをとって、事務所の時計を見る。
「八時四十五分……よし、んじゃちょっと外見て来ますんで、なんかあったらー……」
(って、聞いてねーかぁ……)

386 :
 見れば、春子の他にいる二人の事務員はお喋りしながら珈琲を飲んでいるし、春子は、本社で見たあの至極真面目、というか仏頂面でキーボードをカタカタ叩いている。
「九時には一旦戻ってきます……」
 誰からの言葉もなく事務所を後にした東海林は、ドライバー達のメンチを切るような視線の渦を思って、深い溜め息を吐いた。
「……って、んん? なんでとっくりの奴業務時間外なのにキーボード叩いてたんだ?」
 始業のチャイムはまだ鳴らない。
※※※
 事務兼ドライバーを二人分こなす、と仮契約をしてそのまま福岡へ向かった春子は、帰社すると東海林と本契約についての交渉を行った。
 春子は一日の中で事務職とドライバーを兼務する、と粘ったが、結局東海林の
『運転に慣れているドライバーでも事故を起こすことがある。俺はアンタを信用してるし信頼もしてるけど、もし事務と兼務なんて慣れないことして、万が一、事故が起きればこの営業所だけじゃない、本社にだって迷惑がかかる』
 という尤もな意見により、原則的には事務職、どうしても人手が足りないときだけはドライバーに回るという形で落ち着いた。
 断じて『それに何より、アンタ自身にもしものことがあったら、ホント俺やってけねえよ』という、里中張りの子犬の目に胸がときめいて大人しく従ったわけではない。絶対。動揺だってしていない。
 春子が邪念を振り払うようにカタカタキーボードを叩きつけていると、九時の始業のチャイムが鳴った。
 ピタリ、と一瞬キーボードを叩く音が止んで、春子はバッと壁に掛かっている時計に目をやった。
(……仕事が溜まってるみたいだったから、九時前に始めただけなんだから)
 動揺なんて、していない。

387 :
 チャイムを合図に外で東海林に文句を垂れながら煙草をふかしていたドライバーがぞろぞろと入ってくる。その筆頭は売り言葉に買い言葉で東海林の下では働けない、と福岡行きをボイコットした土屋。
 幾ら上司が気に入らなくとも、東海林の態度自体に問題があるわけではない。
 相性の良し悪しはあってもそれだけで仕事を放棄するわけにはいかない、と一応は考えたらしい彼だった。
 一番後ろからくっつくようにして入ってきた東海林は、ホワイトボードのある場所まで行くと、朝礼を始める。
 いつも大抵この東海林の挨拶をちゃんと聞く者は居ないし、今日もそれは同じだろう。それでも決まりは決まり。
「えー、本日も皆さん宜しくお願いします。あー……今日から新しい派遣さんが入りました、原則的には事務職、人手が足りない時にはドライバーも兼務してもらいます。大前春子さんです。大前さん、何か一言挨拶を、」
「必要ありません」
 朝礼中ということで手は休めているが、その顔には『とっとと仕事を始めさせろ』と大きく書かれている。その春子の慇懃な態度に、どこからかヒュウと口笛が聞こえた。
 東海林は息を吐くがこの女の仕事におけるヒューマンスキルのなさは判っていたこと。特に気にもしない。けれど。
「あ……!」
 興味なさげにペットボトルのお茶に口を付けていた土屋が、春子という女の名前にだけは反応した。
 運送は男社会。必然的に女との接点は少なくなる。そんな中での興味。そして彼の目に映ったのは、つい先日知った顔だった。
「アンタ! うちの隣越してきた人じゃねーか!」
「……!」
 途端に春子の表情が『しくじった』とでも言うように歪み、東海林の顔は不安に染まる。
 仲間に自慢げに隣に引っ越してきた女の話をする土屋は、確実に生活範囲という意味で距離の近しいこの女に、興味を持ったようだった。
「……では、朝礼を終わります……各自持ち場についてください。えー、大前さんは仕事の前に確認したいことがあるので、応接室までお願いします」
(職権乱用するんじゃない!)
 実に迷惑そうにこちらを見る春子に、東海林は不安げな視線を返した。

388 :
※※※
「お前、家が土屋さんの隣って……!」
 どこで聞かれているかわからないため、小声で春子を問い詰める。何せ惚れた女が他の男に言い寄られるかも知れないのだ。東海林にとっては一大事である。
「厳密には家ではなく部屋です。住む場所がなければ私生活にも業務にも支障が出ますので、近い賃貸住宅を借りましたそれが何か?」
「だからってなんで土屋さんちの隣なんだよ……!」
「あの人の隣だから選んだわけではありません。あの人が此処で働いていることなんて知りませんし、偶々です」
「だ、ってお前……女一人で……」
「別に四方八方男で囲まれているわけではありませんが?」
「……」
 春子は、ふっと息を抜くと改めて東海林を見た。こんな気弱な東海林武、本社では見たことがない。否、会社を辞めようとした時には同じような表情を見たが、それだけでこの男が追い込まれているのかがわかる。
(しょうのない人、どれだけ一杯一杯なんだ、全く……)
 春子は、ロシア語で、東海林に話し掛けた。もし盗み聞かれていたとして、英語ならばわかる者は多いかもしれないが、ロシア語となれば話は別だろう。ただ、東海林にだけ伝われば良かった。
『私が此処に来たのは誰でもない貴方のため。それは今も、三ヶ月後も変わらない。わかった?』
 今はこれしか言えないけれど、見つめた視線は絡んだまま、東海林が頷いたから大丈夫だろう。
「……わかりました」
「では、業務に戻ります」
 ガチャリと扉を開ければそこには、なんでもない風体を装った土屋が立っていた。しかし幾ら繕っても、春子を待っていたことは明らかだ。
「あ、大前さん、何かわからないことがあったら何でも俺に! 訊いて良いから、ほら、隣のよしみってやつでさ」
「……」
 ノリが東海林と似ている、と思った。

389 :
「聞いてっか?」
「仕事とプライベートを混同しないで下さい。隣人であることと同僚であることは全く関係ありません」
 バッサリと切り捨ててデスクに戻る春子を、土屋が放心したように見る。
 そんな土屋になんとなしに目をやっていた東海林が土屋に『何見てんだよ、アァ?』と因縁を付けられるのは、数秒後。
 すみません、と平謝りしながら、東海林はにやけそうになる口元を必で引き締めた。
 ヒューマンスキルゼロの女に、云われた言葉があまりに暖かかったせいだ。

 何も変わりのない日常。お前が来た、それだけ、たったそれだけなんだ。大前春子。
(ああ、けれど、たったそれだけの変化が、まるで嵐の予感)

390 :
オリジナル設定ガンガン入れてすみませんw
お粗末様ですた!

391 :
うわぁぁぁぁぁ!!!
これからどうなっちゃうのか気になって仕方なさすぎます!!!
もう373さん天才すぎます!!!

392 :
>>384
ひゃあぁ、GJです!!
チロルネタまで拾って下さってありがとうございます!!!!
まさにそんな感じだと思います、可愛いホントに…
里中主任並の子犬のような目をした東海林所長も、明らか動揺してるのに頑なに認めない春ちゃんもたまりません…!
春子みたいなタイプに土屋さんとか弱そうですよねwwめちゃめちゃ気になる三角関係ありがとうございます…!

393 :
GJです!373さん!
続編が有ったならこんな流れになってた気がしますw
春子が気になる土屋にあたふたしてる情けない主任・・可愛いな〜

394 :
うはぁぁぁぁ!!相変わらず東海林も春子もかわいすぎるんだぜ…
ぶたにくさんGJ!!!
あーもーおまいらはやくくっつけよ

395 :
GJ!
もちろん続き書いてくださいますよね??

396 :
流れをぶった切ってしまうような形になってすみません…!
前に書き上げたら投下するって言ってた豚ネタを一本投下させていただきます。
頭の中は、今ハケンの二人で一杯だったりするんですが…

個人的にずっと気になってる、角松と芯子(洋子)の出会いを捏造してみました。
ぶたにくさん始め、職人さんが投下されるまでの退屈凌ぎにでも読んでやって頂ければ幸いです。

397 :
耳障りな音を立てている遮断機が、列車の通過が近いことを知らせている。
夜も更けて人通りも殆どなくなったその場所で、角松一郎は何度目か知れないその音を聞きながら一人立ちすくんでいた。
冷たい秋の風がヒューっと音を立てながら彼の目の前を駆け抜ける。寒さで両手を無造作にそのポケットに突っ込めば、その中で不意に何かに触れた感触に、思わず動きを止めた。

「……」

触れたそれの正体など、確認するまでもない。
今日の夕方、検査庁を後にする際に引きちぎるようにしてスーツのポケットに突っ込んだ一枚の紙切れ。
公務員の身である彼にとって、大切であるはずの『辞令』と書かれたその紙切れを、角松は惜しみもせずにその中で握り潰した。

「くそっ…!」

あの日から、声にもならないこの悲痛な叫びを一体何度繰り返したことだろう。
彼が信頼する部下と共に暴いた防衛庁の100億もの不正は、蓋を開ければたったの8億にされていたという事実。
その上、天下り先の確保が優先という、あまりにも身勝手で理不尽な理由のおまけ付き。
自分が選んで進んできた道は、何も間違ってなどいなかったはずだと今も角松は信じていた。
『国民が汗水を流して国に納めた税金を、無駄遣いする輩を絶対に許す訳にはいかない。』そう思ったからこそ、自分は会計検査庁に入ったのだから。
自らの正義を信じて進んだ道に後悔などないけれど、組織の中でのあまりにも非力な己の存在を思い知らされてしまう。そしてそれは、彼に絶望を与えるには十分過ぎる物だった。
ポケットの中で握りしめていたそれを徐に引っ張り出し、ゆっくりと広げて中身を確認する。
異動部署の欄にはっきりと書かれている『特別調査課』の文字さえも、彼を嘲笑っているかのように思えた。
『検査庁のパフォーマンス集団』の異名を持つその場所は、文字通り手のひらで踊らされていた自分にはまさにうってつけの異動先かもしれない。
いつの間にか列車は通過し、視界を遮っていた遮断棒が元の場所へとその姿を隠していたことに気がつき、角松はハッと我に帰る。向かい側からすれ違った人の姿が、自分の部下とよく似ているような気がした。

「金田の奴、大丈夫かな…」

彼の脳裏に蘇るのは、検査庁で最後に見た金田鉄男の姿。
『ごめんな、鉄ちゃん。こんなことになっちまって…』
『…謝らないで下さい。角さんが悪いんじゃありませんから。』
他に何を言うでもなく、黙って検査庁を後にした彼は、今頃どこで何をしているのだろう。
今回の件で、角松が唯一後悔していること。
それは、ノンキャリの自分とは違って、将来有望な金田を巻き込んでしまったこと、ただそれだけ。
けれどその一つが、部下想いの彼にとって、あまりにも大きな後悔なのだ。
ここに来る前に立ち寄った自宅のテーブルの上に置いてきた一通の『遺書』。
角松が今ここで、次にやって来る電車の前に飛び出すことが出来さえすれば、その中身は必ず公になるだろう。
『今回の件の責任は全て自分一人のものであり、部下である金田鉄男には何も落ち度はありません。』
とだけ書かれたそれを。
金田を救ってやることが出来ると分かっていながら、後一歩が踏み出せないままにただ時間だけが過ぎていく。
ガタンガタンと無情な音を立てる列車を見送る角松一郎のその頬には、一筋の涙がその痕を遺していた。


398 :
「はぁ…、まったくスウスウして寒いっつーの。」

同じ頃、履き慣れないピンヒールをカツカツと鳴らし、不機嫌な表情を隠すことなく一人通りを歩いていた堤芯子は、吹き抜ける風のせいで捲り上げられるスカートの裾を手で抑えながら、そんなことを一人呟いた。
つい先ほどまで、好きでもない男に興味もない話に延々と付き合わされていたために、彼女の機嫌の悪さは今まさに頂点に達しているところだ。
自らの利権の事しか頭になく、下らない自慢話ばかりのその男は、芯子が最も嫌いなタイプで、ふとした時に触れられた腰の辺りが気持ち悪くて仕方がない。

『あんな奴、騙されて当然だっての…』

そう思う一方で、ふと啄子やみぞれの顔が脳裏に浮かんでくる。それを追い出すかのように、彼女は慌てて頭を左右に大きく振る。
履き慣れないこの靴も、好きでもないこんな服装も、一刻も早く脱ぎさってさっさとシャワーを浴びて寝てしまいたくなった。
よし、と気合いを入れ直して顔をあげた彼女の視線の先で、一人の男が立ち尽くしているのに気付く。

「なにやってんだ?こんな時間に…」

電車はとうの昔に過ぎ去ったにも関わらず、全く動こうとはしない様子に、芯子は首を傾げた。
詐欺師の性なのか、まず足元に注目することを忘れない。
擦りきれたその靴の持ち主からは、どう見ても金の臭いなどしそうになかった。
とてもカモにはなりそうにもない男だとすぐに分かるのに、なぜか彼女はその視線を彼から離すことが出来ないでいた。そして暗闇の中で、男の頬を伝う一筋の涙に目を奪われる。

『あいつ…、泣いてんのか?』

「大の男が、こんな所でみっともないねー」
なんて毒づいてみせたものの、どうしても無視出来ない何かを、彼女はその男に感じてしまう。

「ったく、仕方ねーな…」

こんな場所で、どんなみっともない顔をして泣いてやがるのか見てやりたいだけなんだ、と自分で自分に言い訳をしながら芯子はその男が立っている所へと足を進めたのだった。

399 :
「あの、どうかされましたか?」
「うわっ!」
「す、すみません。何かお困りのように見えたので…」
「あ、こちらこそすみません。ちょっと考え事をしていたものですから…」
「そうですか。電車はもう通過しましたよ。また新しいのが来るかもしれませんから、早く渡られた方が…」
「そ、そうですよね!すみません、ありがとうございます。」

辿々しい会話が進むそばで、また一際強い風が吹き、疲れきっている芯子の足は、その風に耐えることが出来ず、彼女は思わず前のめりになってしまった。

「きゃっ!」
「うぉっ!?大丈夫ですか?」

小さな悲鳴をあげた芯子を、角松は咄嗟に抱き留める。思いがけず抱き締められる形になってしまった彼女は、驚きでその身体をびくりと震わせた。

「あぁっ!す、すいません。つい…」

初めて至近距離で見上げた角松の顔は、芯子以上に疲労の色を浮かべ、その瞳をとても寂しげに潤ませている。そして彼女は、無意識のうちに彼のその頬に白く長い指をそっと這わす。

「えっ…」
「泣いてらしたんですか…?」

身体を固くした角松に構わずにそう言葉を続けると、彼がハッと息を飲んだのが分かった。
バツが悪そうに視線を反らした彼に笑いかけてやると、照れくさそうに頬をかいている。
その様子を見ながら、今自分が会ったばかりの男と道端でとんでもないことをしていることにようやく気がつき、慌ててその身体を離した。

「す、すみません。私は大丈夫です!助けて下さってありがとうございました。夜も遅いですし、気をつけて帰って下さいね!それじゃ…」

突然失われた腕の中の温もりが、角松にもまた現実を思い出させる。
久しぶりに触れた他人の温もりが、張り詰めたままの彼の心を急速に溶かし、気がつけば芯子の腕を握りしめた。
それは、2人の複雑な運命の糸が初めて絡み合った瞬間。

400 :
以上です…!
最終回のクルコメを見たときに何となく思い付いたネタだったんだけど、過去の二人が殆ど分からないままドラマ終わっちゃって、どうしようか悩んでこんな形に…
この話の続きを考えながら思ったんですが、2年前の芯子さんはどこに住んでたんですかね?あまり実家には帰ってなかったみたいだけど…
長々と失礼いたしました


401 :
それにしても、相変わらず読みにくい文章ですみません。
職人さんはどうやって書いてらっしゃるのか…
ハケンも豚も投下心待にしております。
お粗末様でした。

402 :
>>396
GJ!乙です!
続きが読みたい!
二人の出会いはホント気になるとこですよねー。396さんのお話読んで映像浮かべながらニヤニヤした!
しかし豚は過去から未来まで妄想しがいのあるドラマですね☆(ということにしてしまえーw)
私はハケンの続きを書いてますが、もう二話目でキャパ限界です!
運輸で社長賞ってどうやってとらせるつもりだったんだ大前春子…!
皆様ネタ求ムです…
396さん乙でした!

403 :
>>396
乙です!是非続きをお願いします!
芯子が金目的で角松に近寄ったのでは無いというくだりに思わずキュンとしてしまいました・・
本当に此処の職人さん達は凄いです

404 :
ぶたにくです。
ハケンの続き投下しますー……が、今回消化不良です。
いつも以上にぐだぐだ感漂ってますすみません…文才が欲しいです……
東海林→←春子でエロなし

405 :
 職場内恋愛は、決して御法度ではない。けれど、子会社をまとめきれていない『所長』と入ったばかりの『派遣』のそれは、確実に社内の雰囲気を悪くするだろう。それが判っているから、東海林は何もできない。
 どれだけ近くて遠い距離がもどかしかろうが、春子が仕事上での自分の支えに徹するならば東海林は、否、上司である東海林から『派遣とは言えど部下との適切な距離』を保たなければならない。
 けれど。
 そんな理屈だけで恋愛が成り立つなら。
 そんな理屈で成り立つ恋愛ならば。
 こんなに焦がれることもないだろう。
 大前春子が来て三週間。最近、土屋の春子への態度が目に見えて、優しい。
 春子に手酷く『仕事とプライベートを混同するな』と叩かれた男は、懲りることもなく、仕事は仕事、プライベートはプライベート、と割り切ってアプローチしようとしているようだった。
『春ちゃん、仕事帰りに同僚として食事にいかねえか?』
『行きません』
(って、全然割り切ってねーじゃん……)
 東海林にとっての救いは、仕事において春子が土屋に何かを頼る必要が一切ないことくらいだ。
 勿論、社内の連携を考えれば人間関係に難あり、というのは問題なのだけれど、別に春子が土屋を無視している、などということではなくあくまでも普段通りの彼女に相手にされていないというだけ。
 尤も、それも土屋には堪えていないようだけれど。
 正直あのガテン系の趣味がイマサン解らない。
「ってまあ、人の事言えねーか……」
 焼きそばパンを頬張りながら、パソコンを弄る東海林は浮かない顔をしていた。というのも今日は、ドライバーの一人が欠勤したため春子がそちらにまわっているのだ。
 いつもは視線の先に居る彼女が居ない。事務職は三人入っているので業務自体に支障はないのだが、どうにも溜め息を禁じ得ない。

406 :
 とは言え、東海林とて青二才ではない。自身の職務は全うしているわけだけれど。
 ……けれど。
 こんなとき、気軽に彼女を食事に誘ったりできる位置にいる土屋が羨ましいと思ってしまう。その誘いに春子が頷くかどうかは別として、だ。
(……って、んな弱気でも居られないよな……)
 東海林は幾度も漏れる溜め息を飲み込んで、ついでに焼きそばパンも口に放り込むと、頬を叩いて気合いをいれた。
 お前が頑張ってくれてんのに俺の方が情けない面なんてしてられないもんな。
※※※
 東海林が社員のシフトを組んで居ると、一本の電話が入る。表示された番号を見れば、ここ数週間ですっかり見慣れたそれ。思わず表情が緩む。
 ガチャリ、と受話器を取った。
「はい、S&F名古屋運輸営業所の東海林がお伺い致します」
『大前です。これから、帰社致します』
「おー、お疲れさん。ってもう六時になるじゃねえか……。最後の納品先は……あー、そっからじゃこっちに帰ってくると七時まわるだろ……直帰していいよって言いたいけど、トラックあるもんなあ……」
『ご心配には及びません。……東海林所長は定時にお帰りになりますか?』
「俺か? いや……金曜日だしな。もう少し粘ってから帰るわ」
『金曜日だから、という理由がなくともあなたは会社に居着いている気がしますが』
「ほっとけ」
『それでは、失礼致します』
「安全運転でな」
『はい』
 受話器を置き、東海林は再びパソコン画面に向かう。
(本社じゃあ、あれだけ残業は致しませんっつってた癖に……)
 この営業所に来て、春子は定時で帰宅することが少なくなった。ちゃんと休んでいるのか、と不安になることもある。尤も、本人にそれを言ったところ『業務に支障が出ないよう自己管理しています』と返されたが。
(そーゆーことじゃないだろ……)
 歯痒い想い。

407 :
※※※
(私一人、帰るわけに行かないでしょう)
 名古屋の営業所で働くと決めてから、定時での帰宅という決め事を一つ、捨てた。
 放っておくといつまでも仕事をしている東海林武のせいだ。春子には早く帰れと発破をかけるくせに自分の腰は上がらない。春子が納品を終えて帰社すると、大抵定時を過ぎた事務所に東海林一人残って残業している。
 なんのために一ツ木を通さずに名古屋まで来たと思っているのか。東海林が身体を壊せば、意味がないのに。
 それに、東海林を追い詰めているらしい要因に心当たりがある。最近、春子に言い寄る土屋に気を揉んでいるようなのだ。
 まあこれは、春子の思い過ごしかも知れないけれど。でも、先日東海林の前で土屋に食事に誘われた時など、酷かった。奴は使っていたホッチキスで、指を打ったのだ。幸い爪を削っただけで傷は浅かったが、職務に支障を来していてどうするのだ。
(まあ、たまたまあのタイミングだっただけで、自意識過剰と言われれば、その通りかも知れないけど)
 けれど、そう感じてしまってもおかしくないくらいには、動揺していたように見えたから。
 勿論春子は土屋に特別な感情など持ち合わせていないし、食事の誘いもその場で『行きません』と断った。土屋という男は気のいい兄気質の男だとは思うが、その程度。
 春子が名古屋に来た理由なんて、ただ一つ、ただ一人のためなのに。
(言葉にしなくちゃ、いけないの? 疎い人)
 歯痒い想い。
※※※
 二人して互いを慮る日々。
((ああ、でも))
(アイツと居られる時間は)
(あの人の近くに居られる時間は)
(落ち着くなんて)
(嫌いじゃないなんて)
 ……きっと知る由もないのだろう、と二人、時を同じく別の場所にて、溜めた息を吐き出す日。

408 :
まじで消化不良ですがとりあえず投下しちゃいました……
つぎ がんばります orz

409 :
ぶたにくさんGJ!ですよ!
なんか春子と東海林のもどかしい距離感が堪んないですw
続き楽しみに待ってます!

410 :
ひゃぁ、早速続きが!
GJです、乙です、ありがとうございますー!!!
ホント、このもどかしい感じこそあの2人ですよね。
口にこそしないものの、お互いがお互いを気にかけてる感じ。
たまらないです。
めっちゃ読みやすいですよ、ぶたにくさんの文章。
ホント、凄いです。

そう言えば、全然関係ないのですが、大泉さんのブログネタが豚4話でした。
ずぶ濡れで冷えた身体をどうするかっていうので、『僕なら抱き締めてた』みたいなこと言ってて、そうか角松さんは芯子さんを抱き締めて温めてやるんですか、とか考えてニヨニヨしちゃいました。
失礼しました。

411 :
毎度読んでくださりありがとうございます!
>>410
ブログの4話ネタ、私もそれ思いました!←こっちが本題w(…)
しかしスーツで簡易風呂に沈む角松の珍妙なことww

412 :
ぶたにくさんありがとう!!!
ハケン、もう一度見たくなってきました!!!
職人さん達まじで尊敬です!!!

413 :
>>411
レスありがとうございます…!
ですよねwアレはニヤけましたよ〜♪
山の中でスーツ姿で風呂に浸かってるなんて、それだけでも浮きまくりだろうに、面白かったですww

414 :
うはーーーー!!

415 :
ぶたにくさん
角松&芯子の混浴する続きお願いしま〜す!

416 :
豚もハケンもうまいこと進まんです…むむむ…(´・ω・)ムツカシー
ハケンで何かもどかしい感じのいいネタないかなーとかつぶやいてみる←

417 :
文才もアイディアもない私はただ待つのみです。。
すみません。でも楽しみにしてます。

418 :
アイデアは浮かぶのにそれを文にするのは難しいですね・・
スレチですが・・昔笑っていいともの番宣で上戸彩と夫婦役するって事を言うと会場からブーイングw
その時に大泉さんが「えーじゃねーよバカ!」って一喝w
言い方が東海林主任そのものだったな〜
大泉さんは素で演じてたのかもw

419 :
新しいの楽しみに待ってます!

420 :
>>415
書くのがノッてきたら頑張ってみます^^
>>418
大泉さんて割とどんなキャラクター演じても素っぽいというか、わざと作り込む感じがないように思う。
シリアスでも、ちょっとー今俺カッコよくね?って感じが良い意味でにじみ出てる感じがするww
えと、ハケンの続き投下します
・エロなし

421 :
 派遣の仕事をしている時、春子はいつも、カンタンテに住まわせてもらっていた。食事は、自分で作ったり、眉子ママが作ってくれたり。パエリアを作ると、大抵余ってリュートのご飯になったりして。
 洗濯、掃除は自分でしていた。
 スペインでは、みんなとその日暮らし。ゆったりとした時間の中で、それでも自分のことは大体自分でしていた。
 一人で生きていけるだけのスキルは身につけた。誰にも頼らないで、自立しないといけないと思っていた。その為に、必になった。
 一人だって、全然構わない。生きていける。それが、何か?
 それでも、春子にはいつだって『おかえり』を言ってくれる人が必ず、いた。
※※※
 営業所から歩いて二十分足らずの住宅密集地。そこに、今の春子の住まいはある。十九時五十分、今日も定時の帰宅とはいかなかった。
 春子は鍵穴に鍵を差し込みドアを開けると、体を滑り込ませて玄関の電気を探った。カチャン、と鍵を閉めて、チェーンも掛ける。
 ひんやりした廊下を通り、リビング兼寝室の電気も点けた。
 入居した時から置いてある据付の家具以外には、殆ど物のない風景な部屋。テレビをつける気にはならず、とりあえず手洗いうがいをして部屋着に着替えると、ベッドに沈んだ。
(ご飯……どうしようかなあ……)
 簡単に出来るもの……。
 適当に何か……。
(……お腹、あんまりすいてないんだ)
 料理は好き。美味しいものを美味しく食べるのが好きだから、自分でも美味しいものを作れたら、と思う。誰かが食べてくれて、美味しい、と言ってくれたら、とても嬉しい。
 ただそれを、自分一人のために作る気にはなれない。
 カンタンテに居た時には、自分の好きな物を好きな時に好きなだけ作って食べていたような気がしていたのだけれど、考えてみれば春子一人で食べきることの出来る量だけちまちま作っていたことはなかった。

422 :
 余ってしまっても誰かが食べてくれる、そう思って作った料理だった。
 誰か、が必ず近くに居た。
(……私らしくもない)
 別に、誰かが居る生活が酷く恋しいわけじゃない。ただ、自分は思った以上に人に依存していたのだと気付かされて、人の居ない新しい生活に少し戸惑っているだけ。
(……あの人はちゃんと食べているんだろうか)
 一人暮らしは春子よりもずっと長い人。料理をするイメージはあまり、というか全然ないけれど、実際はどうだろう。やっぱり、外食か出来合いのもので済ませていそう。
 春子が名古屋に来て、もう直ぐ一ヶ月が経とうとしている。その間に春子個人が東海林に出来たことなんて何もない。
 何が出来るだろう。
 何が出来るというのだろう。
 これなら、同じ名古屋に来るのでも東海林の私生活に介入した方が良かったような気すらしてくる。そうすれば少なくとも、料理を作ってあげる位は出来た。
 朝、東海林を起こして、朝ご飯を食べさせて会社へ送り出す。
 お昼はお弁当を持たせて、夕飯は何がいいか考えて、作って、帰りを待つ。
 帰ってきたら愚痴なんか聞きながら、沸かしたお風呂に追いやって、出て来たら一緒にご飯を食べて。
 今の、仕事でもプライベートでも手助けの難しい状況とはかけ離れた暮らし。
 そんな考え、来た当初は微塵もなかったのに。
 ただただ、東海林が本社に戻れるような手助けを、『仕事』からサポートしたい。それしか考えていなかったのに。
(東海林武、あなたはどっちが良かった……?)
 ベッドの前の小さな卓上には、携帯電話。
 それを掛けることも出来ないまま、また、それが震えることもないままで、結局春子はそのまま瞳を閉じた。
※※※
 春子が目を覚ますと、インターフォンが鳴っていた。時計を見れば、二十一時。こんな夜に誰だろうか。
 ノロノロと体を起こした春子は、テレビをつけると携帯を片手に、インターフォンの受話器は取らずに玄関まで足を運ぶ。
 玄関の電気はついているから中に人が居ることは外の小窓から見て判っているかも知れないが、こちらが小窓から覗いて、明らかな不審者であれば開けなければいい。
 覗いた小窓から見えたのは。
「……土屋さん?」
 一応チェーンは掛けたままで上下の鍵を開ける。これまで、土屋が隣人である春子の家に来ることはなかった。何か緊急の用事だろうか?

423 :
「はい……」
「あ、春ちゃん、俺。土屋だけどさ」
「何かご用でしょうか?」
「や、用っていうか……ええと、晩飯作ってたら、ちょっと作りすぎて……お裾分けって程もねえんだけど、良ければ食べて欲しいと思って……め、迷惑だったか?」
「……」
 迷惑だ。そう言おうかと思った。けれど、作ったものをお裾分けといって持ってくるくらいだ。味には多少自信はあるのだろう。
 そして、この土屋とて春子よりは一人暮らしの期間は長い、と思われる。そんな土屋が、自分の食べる分以外、他人に分ける程多く作ってしまったりするだろうか?
 考えられなくはないけれど、むしろ、春子の分も余分に作ったと考える方が自然な気が……否、流石に深読みし過ぎか。
 何にしろ先程まで、誰かが自分の作ってくれた料理を食べてくれたら嬉しい、とそんなことを考えていた春子は、なんとなく、その好意を断ることが出来なかった。
「……少々お待ちください」
 春子は、一度扉を閉めるとチェーンを外す。
 再びその扉を押すと、タッパーを持った土屋の全身がよく見えた。
「これ」
「わざわざ、ありがとうございます」
 渡されたタッパーウェアを受け取ると、暫しの沈黙。

424 :
 土屋が、口を開いた。少しでもこの時間を延ばそうとするかのように。
「……あ、あのよぉ……春ちゃんて、此処来る前って何の仕事してたんだ?」
「は?」
 突飛な質問に、春子は思わず眉をひそめて聞き返す。
「いや、だって、事務とドライバーの兼務なんて普通しないだろ?」
「私が兼務することで何か、業務に支障を来していますか?」
 もし何か思うところがあれば言ってくれ、というと、土屋は首を振る。
「いや、そんな意味じゃなくて、あー…その、個人的興味っつか」
 前の仕事、とは何を指すのだろうか。春子がこの名古屋営業所に来る切欠となったのは確実にS&F本社での派遣業務だけれど、まさかそれをそのまま言うつもりはなかった。
 だってそれではあまりに露骨に、春子が東海林を追ってきたようではないか。それはなんだか、ムカつく。実際その通りだったとしても、だ。
 しかし、春子には、東海林であれば営業マン、土屋であればドライバー、というような、この仕事、といえる仕事は特にない。
「私の持つスキルで出来得る仕事をして来ました」
「スキルって、資格か何かか?」
「はい」
 そっか、と、泳ぐ土屋の視線。……他に何か言いたいことでもあるのだろうか? そうも思ったが春子は返事だけすると、一拍置いて、では、と続けた。
「……土屋さん、お裾分け、ありがとうございます」
「あ、いやどう致しまして……」
 打ち切られた会話に名残惜しげに返す土屋と、これ以上続けるべき話は春子にはなかった。むしろ、職場の人間との会話であることを考えれば続いた方だろう。
「では、また明日。……おやすみなさい」
「おやすみ……」
  閉じられた扉の外で小さく息をついた土屋は、頭を掻いて自分の部屋へと戻っていった。
 春子は施錠して台所へ行くと、まだ暖かいタッパーを開ける。中には、仄かに湯気のたつ肉じゃが。
「肉じゃが……か」
 もっと豪快な料理を作りそうなのに。意外だ。
 そう思って、少し微笑う。
(……あの人は……東海林武は、何が好きなんだろう)
 そういえばよく知らない。いつも焼きそばパンを筆頭に色々な惣菜パンをかじりながらパソコンに向かっているけれど。
 他でちゃんと、栄養をとっているんだろうか。
 温かいご飯が、恋しくならないんだろうか。

425 :
 私がもし主婦のように東海林武を支えていたら、なんてそんなこと、考えても仕方ないのだろう。春子が、春子自身の意思で選んだのは、あの人が一番苦しんでいる場所であの人の支えになることだったのだから。
 だから、春子は今、ぶれるわけには行かない。
 ただ。
(もう少し……もう少しだけ素直になってみても)
 いいかもしれない。
 肉じゃがをつつきながら、そう思った。

426 :
お粗末様でした!
書いていると段々キャラクターがわからなくなっていく不思議…
他職人さんのお話が読みたいとです…
自給自足萌えられねえ…!

427 :
ぶたにくさん、続きありがとうです!
春子さん可愛すぎる…!!
うんうん、素直になってもっともっとラブラブになっていいのよ…w

428 :
ぶたにくさんありがとうございます!
なんだか春子が可愛すぎるw
土屋もまさかネクタイくんの為に名古屋まで来たなんて思いもしないだろうしw
春子も勢いで東海林の家に転がり込めば良かったんだよ〜

429 :
久々来れた〜なんという素敵な作品の数々…
職人さん方本当に有難う!

430 :
ハケンの続きSSです。
短いですが投下しますー。
東海林→(←)春子でエロなし

431 :
「昨日も言ったように、今日は一日、東京へ出ます。帰社しないので何か報告等あれば明日、緊急なら逐次携帯にお願いします……」
 朝礼を終えた東海林は本社のある東京への出張のため、名古屋営業所を出立した。
 向かうは、S&F本社。東海林武の、家にも等しい……否、等しかった、場所。
 東京に赴くのは、名古屋に飛ばされてからは初めてだ。一応、里中には東京へ向かう旨を連絡したので、久々に彼に会えることを思えば嬉しくないわけではないが、やはり気分は上がらない。
 片や、大きなヤマを当てた本社勤務、片や名古屋の子会社へ事実上左遷された運輸営業所所長。
 里中に手柄を返したことを後悔しているわけではないのだが、やはり知った顔ばかりの本社に向かうのは、気が重いものがある。
 一人乗り込んだ新幹線。買った缶コーヒーを小さな折りたたみ式の上に置いて窓にもたれ、腕を組んだ東海林は溜め息を吐いた。
(……今日は、とっくりは事務か……)
「……ん、そういやあ……」
 東海林は、閉じていた目を開けると、仕事用の鞄とはまた別の、小さな手提げを卓上に置いた。
「とっくりのやつ、何寄越したんだよ……」
 朝、東海林が営業所に向かうと、既に一人、誰より早くデスクについていた春子がいた。
 その横顔に少し頬を緩ませた東海林は、大前さん、おはよう、と声を掛けた。すると、いつもであれば『おはようございます』と言葉だけ返るのに、春子は徐に立ち上がるとツカツカと東海林の元へ歩み寄った。
 書類に印鑑か何か欲しいのか、と首を傾げる東海林に定例通り『おはようございます』を返した後、春子はずいっとこの手提げを突き出したのだ。
 東海林は突然のそれに、面食らう。
『おおっ……!?』
『ついでです』
『……は?』
『昨日土屋さんに夕飯のおかずを頂いたのでそのお礼に作ったものの余った材料を使って作ったので、あなたのはついでです』
『つ、土屋におかず? ていうかついでって……』
 問いただそうとした東海林だったが、結局他の職員が出社してきたため、そのまま春子と話す暇もなく出て来てしまった。
 渡された手提げ、普通に考えれればお弁当。
「いや……だって、とっくりだぞ? まさかなー……」
 東海林は、中に入っている包みを丁寧に広げた。と、そこには、一枚の白い紙が入っている。折り畳んであるそれを広げれば、綺麗な筆跡で二言の簡素なメモめいたそれ。

432 :
 無理をしないこと。
 行ってらっしゃい。
「……マジか……?」
 思わず、頬を抓った。
 たった二行。そのたった二行が、とんでもなく嬉しい。
 なんだよ、どうしたとっくり大前春子。
 あ……でもこれ、土屋のついでなんだよな。
 少し気落ちしたが、それでも嬉しいものは嬉しい。
 その場で開けようとして、まだ食うには早い、と、思いとどまる。メモだけ大切に手帳に挟み、中身は包みに戻して手提げに入れた。
 少し憂鬱だった気分は、いとも簡単に浮上した。我ながら現金なものである。
「……あーなんだよ……あー……会いたくなったじゃねえか、ちくしょう……」
 独り言を呟きながらにやける、そんな端から見れば確実に不審者な男を乗せて、新幹線は速度を上げた。

433 :
次はもうちょい長めを目指します…
豚も投下出来るといいな…
お粗末様ですた。

434 :
おーーGJですぶたにくさん!
痒い所に手がと届きそうな感じが良いですw
素直になれない春子&春子の垣間見るデレな部分を嬉しがる東海林が可愛い〜
もう名古屋に帰ったら思いっきり春子抱きしめて欲しい
そうされるのを望んでるに違いないw

435 :
わああ、乙です!
ぶたにくさんの書かれる2人は、なんでそんなに可愛いんでしょう…!
お弁当の中身に鯖の味噌煮は入ってるのかな??
2828しっぱなしの東海林さんを想像すると、こっちが不審者になりそうですw

436 :
ぶたにくさん!!!素敵すぎる話をありがとう!!!

437 :
ここに来るとテンションあがるw
文章力無い自分はただ待つのみです・・
職人さんの作品楽しみに待ってます!

438 :
 久々に見上げる本社のビル。バリバリと営業をこなしていた頃が、酷く昔に思えた。新幹線の中、確かに浮上した筈の気持ちなのに、足取りが重くなる。
 時計を見れば、十一時。まだ約束の十三時には、時間がある。
「とりあえずケンちゃんにメールしとくか……」
 着いた着いた!
 いや〜久しぶりの東京だけど変わってねえなあー!
 ちっとブラブラしてから会社向かうわ〜。
「……よし」
 おちゃらけた文章を作り、里中に送ると、東海林は踵を返して会社の近くにある広場へと向かう。
 片隅のベンチに腰掛けて辺りを見渡すと、いつかに見慣れた景色が視界に入った。ここは本当に変わらない。本社に入社した頃を思えば多少整備されたりはしているが、その程度だ。
 変わったのは自分だけのような気がする。否、一人取り残された、という方がしっくり来るかも知れない。
 あの本社の中では、今も里中や黒岩のように東海林をよく知る社員が、そして、東海林を知らない新社員達が働いているのだろう。森美雪も社員になったと里中から聞いた。そうやって時は流れていく。自分は、またその流れに乗ることが出来るのか。
「……飯、食うかー……」
 寒空の下のベンチで、東海林は手提げを膝に置いた。と、弁当を広げようとするのと同時に携帯が震える。誰からかを見ると、表示されたのは里中の名前だった。
「もしもし、ケンちゃん?」
『東海林さん、久しぶり! もう着いてるんだよね? どこにいるの?』
「ん? 本社の近くの広場に……まだ仕事中だよな?」
『いや、それが、霧島部長に東海林さんが着いてること言ったら前倒しで昼休憩にしていいって……その方が休憩終わった後会議の準備もスムーズだろうって……あ、居た!』
「お? おー、ケンちゃん!」
 携帯の向こうから聞こえていた声が近くなって、東海林は通話を切る。走り寄ってくる仕事仲間に、自然と笑みが漏れた。
「会えて良かったー! 東海林さん、元気だった?」
「おー、元気元気! ケンちゃんも元気そうで良かった!」
 東海林も、立ち上がると再会を喜んだ。里中とは、春子が東海林のところへ契約をしにきた時なので実際は一ヶ月ぶりくらいになる。
「東海林さん、お昼は……」
 里中は東海林の隣に腰掛けると、東海林のもつ手提げを覗いた。
「あれ、お弁当?」
「ん? あーなんか、とっくりが『ついでです!』って寄越したんだよ」

439 :
「大前さん、て……大前さんが!?」
 思わず瞠目した里中だが、それもそのはずだ。
 本社の頃の大前春子といえば、自ら社員に関わるのは書類の提出と指示を仰ぐときのみ、と言っても過言ではないような態度で、まさか、まさか、東海林武に弁当を持たせるような女性ではなかった。
 ハケン弁当の時に手作り弁当は食べたが、あれはあくまでも『栄養バランスのとれたそれでいて見目のいいお弁当』の例えを作ったものであって、今回とは根本的に異なるものだろう。
 例えば、愛情だとかそんなものが。
 羨ましいを通り越してただただ驚愕するばかりだ。
「すごいよ東海林さん、……もしかして、一緒に暮らしてたり……」
「アイツがそんなタマなわけないだろー。しっかり自分の部屋借りて暮らしてるっての」
 これだって、隣人に貰ったおかずのお礼に作った弁当のおこぼれ、と唇を尖らせる東海林に、里中が笑う。
「でも嬉しいんでしょ?」
「……ケンちゃん、飯は?」
「ハケン弁当の新しいおかずの試食でお腹一杯だから、心配しなくていいよ。食べて食べて」
 照れた顔、唇を尖らせたままで開いた弁当箱、中身は、鯖の味噌煮、レンコンや人参の煮物等諸々に、何故か。
『……焼きそば?』
 脇にちょんちょんと詰められたそれは、紛れもなく、焼きそば。
 東海林が首を傾げる。
「普通弁当におかずで焼きそば入れるか……?」
「……東海林さんが焼きそばパンばっかり食べてるからじゃないかな」
「俺? ……だってそりゃ、焼きそばパン好きだしねえ」
「うん、だからさあ」
「……」
「東海林さんが好きなものだと思ったから、入れたんじゃないかな?」
 微笑む里中の言葉に、東海林の顔が赤みを帯びた。
「良かったね、東海林さん」
「……んじゃ、いただきます……」
 一口ずつ頬張るおかず。旨くないわけがなかった。

440 :
※※※
「土屋さん、昨晩はありがとうございました」
 春子は、お昼休みになると土屋のもとに向かった。午後から配達の彼に弁当を渡すためだ。
 特別な意味はないので誰に見られようが構わないが、幸い、人気は少ない。礼をいうと土屋がはにかんで頭を掻いた。
「いや、そんな、本当悪かったよあんな時間に」
「お礼という程でもありませんが、どうぞ」
 言いながら、三角巾に包んだ弁当を渡す。
「え、わざわざ作ってくれたとか?」
 嬉しそうに笑う土屋に、春子が言った。
「……土屋さん、大変申し訳ありませんが、今後は、私に対してのお気遣いは無用ですので」
「え?」
 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした土屋には構わず春子が軽く頭を下げる。
「では」
「あ、春ちゃん!」
「はい?」
 呼び止められて立ち止まった春子に、一度何かを決意したように唾液を飲み込む土屋。その唇が開く。
「春ちゃんて付き合ってる奴っているのか?」
「いいえ」
 即答する。
「じゃあ、……惚れてる奴はいるか?」
 ぴくりと春子の肩が震えた。
 時間がゆっくりと流れる。
 土屋の表情があまりに真剣で、関係ないでしょう、とは言えなかった。否、言わなかった。
「……はい」
 目を背けるのはもう止めることにしたから。
 信じたいと思う人が出来たから。
 好きだと想う人がいる。
 だから、あなたが好きと言ってくれても、ごめんなさい。私は応えられない。
「他にご質問は」
「いや……ねえや……」
「それでは」
 背を向けた大前春子を、土屋は唇を噛んで見送った。

441 :
前置き忘れた…
というわけでハケンの続きでした!
見切り発車すぎてどうなってくのかがワカンネーw
お粗末様でした!

442 :
ぶたにくさん今日もおつかれさまです!
素直になった春ちゃんえーよえーよかわいいよー
うふふふ

443 :
ぶたにくさん乙です!
切ないですね
春子は三カ月後にどんな答えを出すんだ・・・
とりあえず東海林頑張れw

444 :
試験終わって、久しぶりに覗いたら素敵なお話ありがとうございます、ぶたにくさんー!
これからの展開にドキドキします。

445 :
乙!何度でも乙を!
…改めて東海林とケンちゃんの2人も大好きだって確認させられましたっ
そして、土屋にきっぱり伝えた春子、一歩前進か?!
出来ましたら是非とも続きをお願い致しますm(_ _)m

446 :
意外とストレートに気持ち言われると心が揺れる春子w
平静装っててもドキドキしてたりするのかな?
東海林に店の裏で告られた時なんて微妙な春子の気持ちが表情に出てて「篠原凄い!」と思ったなー

447 :
つぶやきの診断メーカーでこんなの出た。
「東海林武が将来結婚する人はただいま、下関のふく料理店にいます。」

448 :
<<447
スゴいww
診断メーカー、結構面白いことたまに言いますよねw

449 :
今春子は下関のフグ料理店に派遣されてるのかw
免許も持ってたし
運命の赤い糸は繋がってるんだな

450 :
ぶたにくです。
ずっとハケンばっかりでしたが、ちょっと詰まったので豚を投下します。
前のやつの続きです。
エロなし。

451 :
「たっだいまー……」
 居間を覗くように入ってきた芯子の声で、うたた寝していたみぞれが目を開けた。時計を見れば、十七時。
「おかえりぃ、芯子姉ェ……頼んだの買ってくれた?」
「んー? うん。……何んな所で突っ立ってんの、入ればいーじゃん」
 芯子は、玄関に向かってそう言うと便所便所、とトイレを目指す。一方、客人かと眠い目を擦りながら玄関を見たみぞれは、そこに立つ見知った顔を視線に捉えてその瞳を丸くした。
「角松さん?」
「あ、ども」
「え、なんで……あ、とりあえずどうぞ入って! 芯子姉ェ! なんでお客さんに荷物持たせてんのー!」
 と、トイレに居る姉に向かって叫んだみぞれは、はたりと動きを止める。
 てっきり姉は、誰か、と夜を過ごしたのだと思っていた。そしてその誰かは、恐らく、工藤優なのだろうと早合点していた。しかし、昼間家に来た優の様子は思っていたものとは違い、なにより、姉が一緒でなかった。
 では、姉は今まで誰と一緒に居たのか? 母と首を傾げた疑問。その答え、もしかしてもしかすると…?
「みぞれ、何叫んでんだい全く……あら、あれあれ、芯子の勤め先の……」
 みぞれの声はどうやら母まで届いていたようだ。啄子はそれをたしなめるように居間に入ると、一郎の姿に目を止めた。
「あ、角松です」
「あれまあこんな寒いのに、それもしかすると、芯子に頼んだ……」
「あぁ、はい」
「本当にすみませんね、まったく……芯子! お客さんに何持たせてんだ!」
 角松から荷を預かった母も、トイレに続く廊下に向かって芯子を怒鳴った。よく似た母子である。
 角松は、荷を渡してしまうと所在なさげに立ったままで、やはりトイレの方を気にする。と、芯子がやっとトイレから出てきた。角松の表情が心なしか和らぐ。

452 :
「あースッキリした。……ったくかーちゃんもみぞれも、人が用足してる時にガーガーガーガーうっさいってのー」
「うっさいじゃないだろう全くこの馬鹿は、誰に似たんだかねえ」
 芯子は、卓袱台の前にどっかり腰を下ろすと、突っ立ったままの一郎を見上げる。
「シングルパーはいつまで立、ってん、の」
「いや、タイミングがな」
 居心地悪そうにしていた一郎は、とりあえず芯子の隣に腰を落ち着けた。
「ああ、パーといえば芯子、昼間に優君がうちに来たんだよ。用があるとかで直ぐ帰ったけど」
「え? ……あー、あとであれだ。連絡する。うん」
 目を背けながら卓袱台の上のせんべいを取って弄ぶ。都合が悪くなった時の芯子のごまかしかただ。
 啄子は、息を吐くと芯子の隣に座る一郎に視線を移した。
「それで、角松さんは何かうちに用事かなんかで? あ、もしかしてうちの馬鹿がまた何か!?」
 啄子の言葉に、芯子が憤慨する。
「またってなんだよ人聞きわりーな、それじゃまるでアタシがいつもいつもコイツにメーワク掛けてるみたいじゃん。違うっちゅーの」
「何が違うもんかね、掛けてるだろ、迷惑」
「だから、そっちじゃなくてー……」
「じゃあなんだい」
 だからぁ、その、と、芯子は煮え切らない。ここは俺がちゃんと説明すべきか、と一郎が口を挟もうとする。と。
「あの〜……」
「あーアンタは口開かなくていー! ややこしくなる!」
 芯子は、一郎の口に食べかけのせんべいをぐっと押し込んだ。一郎はぐふ、だか、ぶは、だか呻く。
「何すんだ!」
「あーもーうっさいうっさい」
「……お母さん、なんか、二人とも妙に仲良くない?」
「……うん」
 そのやりとりを見ていた啄子とみぞれがそれぞれこっくりと頷き、居住まいを正した。
 実際はこのじゃれあいはいつでもどこでも年中無休だが、そうとは知らない二人から見れば、上司と部下にしては仲の良すぎる光景に見える。
「……芯子、もしかして」
「ん?」
「芯子姉ェやっぱり……」
「な、なに」
『こっちのパーなの!?』
 途端に芯子の顔にバッと朱が差した。
 へぇ……はーあぁそうなんだ、と何やら完結している二人に、芯子が食ってかかる。
「なになになになんか文句あんのー!?」
「いやいや、文句なんか言ったら罰当たるよ、アンタ」
「ハァ!?」
「角松さん、芯子姉ェをよろしくお願いします」

453 :
 あ、はい、とみぞれと啄子に返した一郎に、芯子が鼻を鳴らす。
「何照れてんの芯子姉ェ」
「ばっ、照れてない!」
「本当だよいい歳して赤くなって」
「いい歳って何だよ!」
 散々二人にからかわれた芯子は、バン、と卓袱台を叩くと勢いよく立ち上がる。そのまま、もーいい! と二階にドタバタ駆け上がってしまった。
 ちょっとやりすぎたか、とみぞれが追いかける。
 ……。
「あのー角松さん」
「はい?」
 二人が出て登って行った方を見つめていた一郎に、啄子が声をかけた。向き直った一郎に、啄子が頭を下げる。
「芯子のこと、よろしくお願いします。……あんなんですけど、根は、いい子ですから」
「……わかってます」
 此方こそよろしくお願いします。
 挨拶を終えた二人が、上で叫ぶ姉妹の声に、どちらともなく顔を見合わせ、笑った。

454 :
毎度の事ながらお粗末様です!
>>444
試験ですかお疲れ様です^^
私は実習なうです。合間の息抜きが二次創作w
>>447
噴 い た w
ピンポイントで正確すぎw

455 :
久しぶりの新作ありがとうございます!
芯子の素直じゃない所を角松が受け止めててイイですね〰
ダサ格好いい三枚目の角松が素敵だ

456 :
444です。
ぶたにくさん、久しぶりの豚更新ありがとうございました!!
やっぱり豚の2人も大好きです。『こっちの〜』って突っ込まれた時にバッと顔を赤くする芯子姉が可愛すぎるぅ…!
試験乙ありがとうございました。ぶたにくさんも実習、お疲れ様です。
私も新年度から実習始まるのですが、もしかしたら同じような系統の方なのかもですね!
二次創作、楽しいですよね〜♪これからも楽しみにしています。
ありがとうございました。

457 :
また呟きのネタなんですが…
『相手の肩にもたれかかって眠ってしまった』『東海林と春子』を描きor書きましょう。
『間接キスを変に意識してしまう』『角松と芯子』を描きor書きましょう。
なんか、いつもちょっと萌なシチュを出してくれる気がしますww

458 :
職人さん新作待ってますよ・・

459 :
スレチな話題ですが・・
篠原さんが2月に北海道ロケするそうです
しかも大泉さんも同じ頃に北海道ロケ・・
メルアド交換して今でもコンタクト取ってるなら是非何らかの形で演技抜きの素の2人のトーク見たくないですか?w
例えばラジオとかテレビゲスト等で
天然の篠原さんに突っこみまくる大泉さんみたいなw
プライベートで仲が良かったら良いのですが・・・

460 :
>>459
大泉の映画の原作に「春子」さんがでてくるんだよね
ほんの少しの出番しかないはずなので
カメオ出演してくれればいいのに…

461 :
規制が酷い…
職人さん方の作品読み返しながらお待ちしてます

462 :
あ、書き込めたw
>>459
洟垂れとか燦々に篠原さん来てくれたらいいなあ!

463 :
原田知世さんは2度ラジオのゲストに来てるのにね〜
ハナたれのゲストとか良いですよねw
バラエティーに出てる篠原さんってドラマのキャラと真逆で面白い

464 :
職人さん達待ってるよ〜ノシ

465 :
ほしゅっ

466 :
ほすほす

467 :
保守
ぶたにくさんたちはもう来ないんだろうか
ハケンも豚も読みたいです

468 :


469 :


470 :
ほしゅっ

471 :
保管庫消えた…(´・ω・`)ショボーン

472 :
豚の公式HPの写真見たら萌が・・・・・・・(*´д`;)…金田

473 :
>>471
うわホントだ・・・
ショック

474 :
チラッ|ω・´)
誰かいらっさるかしら?

475 :
います!
まってました!!

476 :
おお!いらっさるなら書きますww
手直しして挙げに来まーつっ。

477 :
楽しみにしてます

478 :
うわー
はまったのが遅かったので過去ログ見ながらwktkしてました
是非是非お願いします

479 :
以前投下いたしました豚の続きです。どうまとめようとしたのか忘れてしまったのでgdgd感満載ですが、暇つぶしにでもなれば幸いす。

480 :
「僕じゃ、駄目ですか」
 そういうことじゃない、と思った。アンタだから駄目で、アンタ以外だからいいなんてそんなことじゃあ、ない。
※※※
 芯子は、優を家の近くの公園に呼び出した。
 『わかりました。十時に公園ですね』そう確認した電話越しの声は、少し堅かったような気がした。
 時刻は午前九時半。芯子は待ち合わせの三十分前から、まだ誰も居ない公園のブランコに腰掛けていた。
 年の瀬で、子どもを公園に連れてきて遊ばせる余裕もないのかもしれない。
 かと言って子どもだけで遊ばせるには危険なのだろうか。
 もう少し早ければ、犬を散歩させる老人なんかも居ないわけではないと思うが、閑散とした公園は、寂しい。
「……」
 工藤優。キャリアの若造。舐めた辛酸はまだまだ金田にも角松にも、そして芯子にだって依然として及ばない。
 しかし、確かに成長はしていると思う。
 会計検査庁に芯子と時期を同じくして入職した優の当時といえば、正義という旗を振り仰ぐのが好きな甘ちゃんだった。
 結局自らが掲げた正義に押しつぶされて、泣きべそを掻きながら電話を寄越し、挙げ句の果てには自までしようとした。
 それが、今は少しだけ懐かしい。
 優の掲げる正義という言葉は、あまりに脆く、腐敗しやすい。
 それでいて、掲げて直ぐは真っ直ぐで、研ぎ澄まされていて、だから厄介なのだ。一度折れないとわからない。
 芯子は優が正義を主張する度に悪態をつき、芯子自身を護ろうとした優の行為に息を吐いたこともある。
 もっとも、考え方、価値観の違いと言われればそれまでなのだけれど、やはり芯子は、正義が善であるなんてとてもじゃないけれど言えない。
 優はそんな善にならない正義を見て、変わったと思う。
 変わりたいと、変わろうと、工藤優が決意したからだ。それがどちらに転ぶかは、これから。

481 :
「芯子さん」
 後ろからかけられた声。物思いに耽っていた芯子は我に返った。振り向けば私服姿の優が立っている。
「……おーはよん。早かったじゃん、まだ十時じゃないんじゃない?」
「芯子さんをお待たせするわけにはいかないと思ったんですけど……」
 芯子さんこそ早かったんですね、と言外に言われ、少し首をすくめた。
「ま、いっつも待たせてるから、偶にはな」
 いつも、とは、毎朝、だ。優は芯子が出所してからも、以前と同じように朝迎えに来てくれる。でも、それも、終わり。
「話って、なんですか、ね?」
 切り出したのは、優だった。
 芯子は、うん、と一つ頷く。
「昨日、うちに来てくれたんだって?」
「はい」
「私用のついで、でしょ?」
「……いいえ、本当は、芯子さんに会いに行きました」
 心臓がドキリと高鳴る。ときめきではなくこれは、これは例えるなら、悪戯が見つかった時の罪悪感に似ている。
「……そっか。……なんか、あった?」
「好きな人に会いに行くのに、理由が要りますか? ……なんて……」
「……」
「補佐と、居たんですか?」
 確信を突かれて、少し返答に詰まった。
「はっきり訊くね」
「芯子さん、回り諄いの嫌いだから」
 時と場合に寄るだろう、とは言えない。
「まー、な」
「今日は、返事を聞かせてください」
 何の? なんて訊けるわけがない。優が芯子に聞きたい返事なんて、一つだけだ。
 そう思って、はたと気付いた。そういえば、自分はなんと断る心算だったのだ?
「……」
「……なんて、意地悪でしたか?」
「え?」
「そんなに断りの文句に悩まなくていいですよ、芯子さん」
「べ、別に……悩んでなんか……」
 ものすごく悩んでいた。
「じゃあ、どうぞ」

482 :
 そんな風に言われると、困る。だって芯子も何故一郎なのかわからないのだ。ただ、一郎の側に自分がいてやらないとなんだか駄目な気がして……否、それも言い訳だ。逃げ、だ。
「……」
 大体、優ではいけない理由なんか、一つもない。一つも、ないのだ。
 同じように、一郎でなければならない理由だって、一つもない。
 でも。
 ……。
 芯子は、すう、と一つ深呼吸をした。
「優君はいつ見ても私服の趣味いいよねえー」
「え?」
 唐突な言葉に、優が瞠目する。
「頭のてっぺんから、足の先まで隙がないカンジ」
「芯子さん?」
「詐欺師が最初に金を持ってるか持ってないか判断するとき、相手の靴を見る。……んー、いい靴履いてるね」
「……」
 話についていくことのできない優は、ただただ芯子を見つめた。
「アタシが、初めてアイツと会った時、擦り切れたような靴履いててさ、ま、普段なら絶対声掛けたりしなかったんだけど、なーんでかねえ……」
「掛けたんですか? ……芯子さんから」
 キィ、とブランコが鳴く。
 ブランコの上にトンと立てば、優の顔が少し下に見えた。
「……アンタみたいなカオしてたんだ」
「僕……みたいな?」
「一年前のアンタの今にも自しそうな、あのカ、オ」
「……」
「思い詰めて、思い詰めて、にそうですってカオしてたから、話し掛けたんだよねえ……」
「……」
 ではそれが、最初から優だったなら、今選ぶのも優だったのか? それはわからない。
 あれが優ではなかった、だけ。
「……僕じゃ、駄目なんですか」
 そういうことじゃない。アンタだから駄目で、アンタ以外だからいいなんてそんなことじゃあ、ない。
 ただ、ね。
「なんか、アタシ、さ」
「はい」
「信じたくないんだけど」
「はい」
「……どーも、惚れてるらしいんだよ、な……角松一郎、に」

483 :
 趣味が悪いと思う。これだけ自覚しているのだから、端から見ればそれこそ本当に……否、皆まで言うまい。
 結局、芯子はどうあってもあっちのパーに惚れている。それが事実だから。
「アンタの方が顔良いし、キャリアだし? 優しいし、まあ多分頭だって悪くないんだよな。でも、なんでだろ……な」
 微笑んだ芯子は、漕いだブランコからひょいと降りる。
「あっちのパーじゃなきゃ、ダメなんだ、多分」
 優だからダメなんじゃあない。優以外なら良いんでもない。運命なんてアホくさいことを言うつもりもない。
 ただ、せっかく惚れた相手なら、しっかり、愛してやりたいと思う。
「だから、……うーん、悪い、ね」
 イタズラっぽく笑う芯子に、優はうなだれる。
「……ズルいですよ、芯子さん」
 そんな風に言われたら、何も言えなくなる。と、優はふてたように呟く。
「詐欺師だからね」
「……」
 はぁ、と息を吐いた優の額をピンと弾いて、芯子はうーんと伸びをした。
「隙があったら奪いますって、補佐に伝えておいて下さい」
「……アンタも腹黒くなった、な」
 大きめの声音で謂った言葉は、きっと、木陰に隠れているつもりのパーにも伝わっただろう。
 がさがさ揺れる茂みを見て、二人は顔を見合わせ、腹を抱えた。

484 :
おそまつさまでした。最早口調もワカンネ\(^q^)/
これsageられてるんかな…?不安だ…。

485 :
もしやと覗いてみて良かった
>>484
乙です!ちゃんとsageになってますよ〜
ぶたにくさんの芯子もこっちのパーもあっちのパーも好きだぁッ




486 :
くわあ、中々覗けなかったのに久しぶりに覗いたら…!やっぱりぶたにくさんのお話大好きです。ありがとうございました。

487 :
保守してみる

488 :
保守

489 :
ほす

490 :
ほしゆ

491 :
ぶたにくさん、新作を書いてください!

492 :
ほしゅ

493 :
ほしゅ

494 :
ほしゅ

495 :
保守しとく

496 :
ほす

497 :
ほしゅ

498 :
ほしゅ

499 :2013/09/17
きてくれー><
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