2013年10エロパロ468: 年の差カップルでエロ萌え 6歳差 (461) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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年の差カップルでエロ萌え 6歳差


1 :2011/06/12 〜 最終レス :2013/10/03
親父と少女、お姉さまと少年など、年の差万歳なエロと萌えを語るスレです。
職人様へ
特殊傾向は表記必須でお願いします。

■前スレ
年の差カップルにエロ萌え 5歳差
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272234202/
■過去スレ
年の差カップルにエロ萌え 4歳差
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1243290093/
年の差カップルにエロ萌え 3歳差
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214833826/
年の差カップルにエロ萌え 2歳差
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1194432193/
年の差カップルでエロ萌え
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176813582/
■保管庫
http://wiki.livedoor.jp/toshinosa_moe/d/FrontPage

2 :
1乙

3 :
>>1
乙!

4 :
スレ立て乙!

5 :
1乙ー
六歳差か
中学1年と大学1年ですな

6 :
>>1さん乙
>>5
男女どちらが年上、年下でも良い感じだな

7 :
一乙ポニテ

8 :
>>1
>>5-6
数か月前まで小学生と成人直前か…家庭教師ものを想像したw

9 :
>>1
乙ー
16歳と10歳という子供同士の年の差も嫌いじゃない

10 :
女年上だと微笑ましいが男年上だと危険だな
だがそれが良いけど

11 :
思春期を迎えた青年の底なしの性欲を、未成熟な身体で健気に受け止める少女……胸と股間が熱くなるな。

12 :
七歳と13歳でほのぼのとした感じも好きだ

13 :
成人したばかりの20歳の若造を、26歳のやや大人の魅力を持ち始めたお姉さんがリードしてくれるのも捨てがたい。

14 :
「うさぎドロップ」が松山ケンイチ、芦田愛菜主演で映画化らしいが・・・
漫画知ってるだけに、いいのかこれ映画化して。

15 :
そういや、松ケンもリアルで年の差夫婦だな

16 :
小雪と8歳差だな

17 :
マツケンは小雪の高齢妊婦姿を見せてくれるのかなw

18 :
>>11
やべえどろろで変換した

19 :
>>1乙!
中3の時に初めて付き合った女性が
OLのお姉さん(25)だった
今思えばアレが俺の年の差道の始まりだったのか

20 :
■わぁい! (小)インキュバス■
蒸し暑い真夏の夜のこと。
その日も茹だるような熱気でした。
ギャル系JKは、部活の厳しい練習に疲れ、もうへとへとです。
布団に寝転がるものの、息苦しさから中々寝つけないでいました。
風通しを良くするため、部屋の窓を全開に開け放っています。
――涼しい夜風と共に、人ならざる者を招き入れるとも知らずに。
JKが就寝して暫く経つと、彼女の頬を突っつく指がありました。
次いで、変声期前のボーイソプラノが、元気に話し掛けて来ます。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。起きて! ぼくと遊ぼうよっ」
「ふぁあ……ん〜? 誰だよ。近所の子? チビ、どこから入って来たの?」
安眠を妨害されたJKは、不機嫌そうに欠伸をしました。
「こんばんは。ぼくはインキュバスだよ。窓から入った!」
ここは2階です。
羽虫やバッタやカエルならともかく、子供が侵入出来る高さの場所ではありません。
さすがに不審に思ったJKは、少年の格好をよく観察しました。
腋の下がちらつく素朴なタンクトップに、半ズボン。
横にリコーダーを差した黒いランドセルを背負っています。
どう見ても、小●校高学年のやんちゃ盛りな男の子です。
しかも、目の醒めるような美少年でした。
「ねぇねぇ。お布団で一緒に寝てもいい?」
甘えるように小首を傾げ、男の子が尋ねます。
「……早くお家に帰りな。お父さんとお母さんが心配してる。
 一人じゃ危ないから送ってやろうか?」
JKがそう冷ややかに返すと、男の子は俯き、唐突にしゃくり上げました。
「帰れないよう……ぐすん、ぐすっ!」
つぶらな瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちます。
「だって、何もしないで帰ったら、兄ちゃん達に怒られるもん。きっと虐められる。
 ……ふわぁあぁん」
ピーピーと泣き喚かれると、姐御肌のJKは放っておけません。
「な、泣くなよ。わけがあるなら話してみなよ。泣いてちゃ分かんないだろ」
少年は、ぽつり、ぽつりと事情を話し始めました。
彼は生まれたばかりの新米インキュバスです。
インキュバスとは、雄の夢魔、淫魔のこと。
わんぱくな小●生に扮装するのが、彼の仕事着です。
今は研修中。
指導係の先輩インキュバスから、課題を与えられているのです。
実習に協力してくれそうな若い女の子を物色していたところ、
たまたま窓が開いていたので、ここに侵入したという訳です。
下級悪魔の世界も、上下関係が厳しい縦社会。
何も収穫しないで引き下がるような、出来の悪い生徒は、こっぴどく折檻されてしまいます。

21 :
「その宿題ってのは、あたしと一緒に寝るだけでいいの?
 ……だったらさっさと入りな。もし、変なことしたらブチすからな!」
お人好しのJKは、小さなインキュバスに同情しました。
彼が、女性の保護欲求や母性本能をくすぐる姿形をしていたからでしょう。
インキュバスは喜びに飛び跳ねました。
さっそく薄いタオルケットの中に潜り込み、JKにぺたぺたと触ります。
「こらチビ。どこ触ってんだ、このエロガキ。いい子にしてろ」
不躾な手をつねって叱りながら、JKは驚いていました。
少年から、蕩けるような芳香が漂って来たからです。
とても子供とは思えない、まるで媚薬を思わせる甘い体臭。
インキュバス、サキュバスのような夢魔族は、特殊なフェロモンを分泌するのです。
JKの全身に触れながら、インキュバスはこっそりと魔術を掛けました。
術が効いたのを確認すると、彼女のパジャマ代わりの体操着をめくり上げます。
水泳部に所属するJKの、健康的な小麦色の肌には、スクール水着の日焼け跡が残っていました。
「お姉ちゃんのおっぱい、おっきいね」
たっぷりした釣鐘型のバストに鼻先を埋め、愛撫します。
インキュバスの愛らしい口が、剥き出しになった乳首に吸い付きます。
「ちょ、ちょっと。勝手に吸うな……あ、ぁん……ぁ」
夢魔の必技、「魅了の術」に当てられたJKは抵抗出来ません。
脳髄がのぼせ、意識に靄のかかった状態です。
「ん、ちゅっ……ちゅ、おっぱいおいしい。
 ちょっとだけ、お姉ちゃんの精気もらうね。んちゅぅ……」
課題の提出用に、乳頭からそっと精気を吸引します。
「お礼に、指でしてあげるね」
まだ男の特徴が現れていない――子供らしいプックリした手が、ジャージ生地の短パンに忍び込みます。
幼いながら、さすがは生粋のインキュバス。
JKはアッという間に達してしまいました。
加藤鷹も真っ青な玄人の指技でした。
「……なんだよ、上手いじゃねーか。インキュバスとして自信持てよ」
励ましの言葉を掛けると、そのままJKは気を失うように寝入ってしまいました。
少量とはいえ、生命活動の根源となるモノを抜き取られたために、休息が必要なのです。
軽食を終えたインキュバスは、礼儀正しく手を合わせます。
「ありがとう。ご馳走さまでした」
……彼はまだ未精通なので、次の段階へは進めません。
「優しいお姉ちゃん、大好き。ちゅっ」
年相応のあどけない少女の寝顔に、別れを惜しむようなキスを落とします。
「ぼくが大きくなったら、また来るからね! 今度はもっと気持ち良くしてあげる」
畳んで仕舞っていた蝙蝠の翼と尻尾をほどき。
インキュバスは真夏の夜空に消えて行きました。
――経験を積み、成長したインキュバスとJKが再会するのは、数年後の夜のこと。
おわり。
淫魔スレより、年の差スレかなと思ったので投下。

22 :
これは良いネタ! GJ!

23 :
JKやさしいな!

24 :
ショタとJK(*´Д`)ハァハァ

25 :
中国だかのニュースにちょっと萌えた
16歳の少年が自を図ろうとしてるところに通りすがりの19歳女性が説得+キス→少年を思い止まらせた
という話

26 :
>>21
数年後wktk
>>25
胸がきゅってなった
それは思いとどまっても仕方がない

27 :
年上のお姉さんの魅力にやられてしまう男の子か

28 :
>>19
どうやったらそんなお姉さんと知り合うイベントが発生するんだw
>>21
これは良いネタ

29 :
ある国に領民から慕われる賢王がいた
王は20歳で隣国の王女と結婚し、ふたりは中睦まじかったが、5年たっても子供ができなかった
妃はもともと体が弱く、更に子供ができないことで周囲から心ない言葉をかけられ、その心労から亡くなってしまう
愛する妃を失ったことから、王はもう妃は娶らぬと決める
そして15年の月日がたち、王は40歳になっていた
その年になっても妃を娶らぬ王に、心配した隠居中の先王が無理矢理妃を娶らせる
相手は王の国から遠く離れた国の16歳の姫だった
王は始めは抵抗し姫にもそっけない態度を取るが、姫に非はないと思い直し優しく接する
姫は幼いながらも優しく、愛らしく聡明であったので王もだんだんと惹かれていく
姫は姫で、父のような穏やかな王を夫として愛するようになる
しかし王は、姫を愛しく思うがその幼さと清らかさから未だ清い関係から抜け出すことができなかった
姫は結婚した初夜に何が行われるかを教わっていたので、一向に手を出してこない王に対し不安が募る
まだあどけない姫に四十路の男が手を出していいのか、触れたいが触れられない王
愛する人に愛されたい、でもそんなはしたないことを思う自分が恥ずかしい姫
そんな二人がすれちがって、その後幸せに結ばれる話が読みたいです……
長文さーせん

30 :
>>29
何これ悶絶する・・・。
「おっさん×少女」の組み合わせってたまらんもんがあるな
はっきり言って障害は年齢差だけなんだけどしかも少女が大人になれば大抵
解消される問題なんだけど、それまでの間のヤキモキするようなやり取りとか
触れたくても触れられない見えない壁に悩む男の姿とかがとにかく萌えるよ

31 :
>>29-30
なにそれ萌える
お姫様スレとも迷いそうな内容だけど
あっちは同年代の男女が比較的多いから住み分けできるかな
おっさん×少女は永遠のロマンだよなあ…

32 :
BSで見ているからどういう展開になるかわからんし、一線は超えそうにないけど。
アニメのCの主人公と登場人物の一人ジェニファー・サトウがいい感じ。
19歳でちょっと幼い感じで流されやすい主人公を、坊やって感じで見ながら行く末を心配している31歳のお姉さん。
お姉さんの方は潜入調査員だの、金髪の日系人(ハーフ?)だの、小柄な主人公より頭半分ぐらい背が高いだの
色々素晴らしい属性を持っているしw

33 :
今日の唐突に思い立ったキーワード
「小説家と、彼の家に住み込みで働いている少女」

ものぐさで無口、口を開いても「ああ」位しか話さない気難しい先生と、百姓の娘でろくに字も読めないという学の無い少女。
二人の出会いは一年前。
口減らしの為に売られた少女は、生まれて初めて住み慣れた田舎を離れて街に来た。
もっとも、ソレも楽しいものではなく、コレからは遊女として食べていかねばならない。
宿に縛られる事になる前夜。人買いが、二度と見られる事はないのだろうからと、この夜だけは町を見て回る事を許してくれた。
はじめて見る町の夜は明るく、華やかだった。
ふと、町の様子に目を奪われていた少女は道行く男とぶつかった。それが、作家先生だった。
先生は尻餅をついたまま、呆然と自分を見上げている少女を眺め、続いて慌てて駆け寄ってきた人買いに視線を移した。
少女を叱り、もう散策はお終いだと言う人買いに先生は声をかける。
「この子いくら?」
人買いが提示した金額を、先生は悩む様子も無くポンと出した。
少女は自分を買った男が怖かった。
本来ならば遊女としての仕事は明日からだった。まだ心の準備が出来ていない。
しかし、彼は面倒臭そうに少女を自分の家へと連れ帰ると、何も言わずに誇りと紙くずで埋まった部屋を指差すだけだった。
少女はどういうことか必に頭を悩ませ、ああ、ココが自分の初めての場所になるのかと考えた。
布団を引くだけのスペースを作れという事か。
少女は泣きそうになりながら部屋を片付けた。せめてもの悪足掻きにと、時間をかけて部屋の隅々まで綺麗にしてやった。
夜は更けていたが、男は少女が掃除をしている間、ココよりも更に汚い部屋で机に向かい何かをやっていた。
掃除が終わったと告げると、男は部屋を見回して小さく頷いた。
「思ったよりも良い買い物だった」
次に男は炊事場に少女を案内し、やはり無言で去っていった。
少女は何か妙だと暫く考え込んだ。
もしかすると、彼が自分を買った理由は……。
夜が明ける頃、少女は自分の出した答えが間違い出ない事を確信した。
ああ、この人は自分に女を求めているのではなく、家事を求めているのだと。
アレから暫くして、彼女は彼に「何故あの時自分を買ったのか?」と尋ねた。
「目に付いたのがたまたま、お前だっただけだ。働けないようなら蹴り出していた」
「働けるかも分からないのにあんな大金を出したんですか?」
「印税が丁度入った所だった。ソレに何より、使用人を探すのが面倒だった」
何と言うものぐさだ。
しかし、そのものぐさに自分はいろんな意味で助けられたのも事実である。
時は戻る。
先生の人となりを理解し、相変わらず無口な彼の下で働く事にも慣れてきた頃、少女は何時しか自分が異性に興味を持ち始めている事に気付く。
その先たる人物こそ、常に身近に居る存在。彼女の主人であり、恩人である先生だった。
風呂を沸かす時、湯加減を訊ねる振りをしてその裸体を盗み見る。
ここに住み始めたばかりの頃は、彼が自分に触れたり、服を脱ぐような素振りをしただけで身を硬くし、その都度に破瓜の覚悟をしていたというのに、
今となってはその様な空想を自分のほうから繰り広げていたりする始末だ。
もっと先生の裸が見たい。出来るならば、触れ合いたい。
少女は思い切って、風呂に入ろうとしている所の先生に声をかけた。
「お、お背中をお流ししま、しまひゅ」
あからさまなほどに噛んだ。
しかし、彼は「そうか」とだけ答えて裸になり、浴室に向かう。否定の言葉は無い。おそらく、許可してくれたのだろう。
手ぬぐいを手に、少女は主人である男の背中に向かった。
ひょろひょろとした外観に似合わぬ、大きく逞しい背中。
後の記憶は殆ど無い。
ただ、その日より、少女は自分が先生に特別な感情を抱いているのだと自覚した。

出来上がったもの
「そんなあらすじから始まる、一途で健気でややむっつり気味な少女が、無精者で色恋沙汰に無頓着な己の主人にモーションを掛けては袖にされるという、ハートフルラブコメディ」

34 :
>>33
いつまで俺は全裸でいればいいのですか?

35 :
長文のプロットよりも実作にして投下してくださいよ。生し感が半端ない。

36 :
>>33
よし、それで良い、問題無い!!
投下して下さい……

37 :
大人男×少女で男が少女がふと見せる女らしさにムラムラきたり
でもそれを必で抑えたり隠したりってシチュが大好物だが
少女→男で、自分を女として見てない大人の男を振り向かせようとするのもいいものだな
そして実は男が少女に全く興味ない素振りで実は大切すぎて手が出せないとかだともっといい

38 :
あれだな?
寒いとか怖い夢見たとかで布団に潜り込んで少女一人すやすやお休み。
男は人の気も知らんで、と苦笑しちまうやつだな?

39 :
小ネタ
「お兄ちゃん、今日はバレンタインデーですね」
「ああ、そうですね」
「女の子からチョコは貰えましたか?」
「少ないですが、幾つか貰う事が出来ました」
「……そう、ですか(しょんぼり)」
「あ、いえ、すみません。嘘です、見栄を張って嘘をついてしまいました」
「え?」
「実を言うと、一つも貰っていません。ああ、残念で仕方が無いなぁ、今年は誰からもチョコが貰えなかった」
「そ、そうなんですか?」
「はい、そうなんです」
「そ、そうですか。じゃ、じゃあ、お兄ちゃんが可哀想なので、わ、私がチョコをあげます」
「本当ですか? ソレは嬉しいなぁ」
「ぎ、義理ですから、そんなに美味しくないチョコをあげます」
「美味しくないんですか?」
「義理ですから! 義理だから、美味しくないんです(悲しそうに)」
「開けていいですか?」
「ど、どうぞ」
「これは……(明らかに手作りの、歪な猪口の塊が出てくる)」
「……(泣きそう)」
「(せっかく手作りを用意したのだけど失敗してしまったのだと察する)もちろん食べていいですよね?」
「義理だから美味しくないですけど、どうぞ」
「パキン、ムグムグ。一つ、訊いていいですか?」
「はい」
「義理だから美味しくないんですか? 美味しくないから義理なんですか?」
「えっと、その……」
「俺的には後者のほうが嬉しいんですけれど」
「え?」
「だってコレ、美味しいですから。もし、美味しくないから義理だって言うんなら、このチョコは美味しいから義理じゃないって事になります」
「え? あ、え?」
「どっちですか? 義理だからですか、美味しくないからですか?」
「あ、あぅ、あぅ(真っ赤になってあたふた)」
「(ニヤニヤ)」
「し、知りません! ソレに、そのチョコは美味しくないって私は知ってます! 嘘をついても駄目です!」
「嘘じゃないです。その証拠に、ほら、もう全部食べてしまいました」
「……(唖然)」
「うん、ありがとう」
「〜〜!!(そっぽを向いてクッションで殴りかかってくる)」

キャスト:男(二十台半ば)、少女(小学校低学年)
場面:男の自室で二人きり。なぜか正座で向かい合いつつ。
小さい女の子に歳不相応の丁寧な言葉で話されるのが好き。それに対して、同じように丁寧に返すのも好き。

40 :
>>39
構わん。続けたまえ

41 :
ああ丁寧語の女の子良いね
小学生低学年とかなら萌えるw

42 :
すげー萌えた
いいよな、なんか畏まっちゃうの GJ

43 :
ここのスレ的に、「これは恋のはなし」って漫画はどうだろうか。30歳の小説家と10歳の女子小学生の話なんだが、女の子が健気に小説家の世話やいてるのがたまらん。

44 :
面白そう

45 :
>>43
この漫画読んだよ、めちゃ良かった。
ツボをわかってるよねこの作家は。
三巻早く読みたいよ

46 :
盛り上がっていて嬉しい限りである
年の差萌えは尽きるところを知らないな

47 :
「お兄ちゃん、今日はまた一段と暑いですね」
「そうですね。もう日中を出歩くのは辛い季節になりました」
「クーラーが恋しくなりませんか?」
「恋しくないといえば嘘になりますが、今は扇風機が恋人ですので……」
「浮気は出来ませんか?」
「浮気をする男としない男、ちぃちゃんはどちらが好みですか?」
「無論、しない男の方です」
「でしょう? 俺も同じ意見です」
「でも……暑いですよね?」
「……」
「知っていますか? クーラーと扇風機を同時に使えば――」
「設定温度を高めに設定しても、冷却効果が高いと?」
「ええ。コレは、浮気になりますか?」
「やはり、浮気ではないでしょうか」
「でも、本命も居ます。クーラーは二号さん、といった所ですね」
「難しい言葉を知っていますね」
「私は浮気をしない男の方が好みですが、本妻への愛が揺らがないのであれば、愛人が一人二人居た所で
ソレも男の甲斐性であると思える、理解のある女性のつもりです」
「それはまた……なんというか……」
「お兄ちゃんに甲斐性はありますか?」
「どうでしょうか?」
「私は、お兄ちゃんを信じています」
「……」
「……」
「やはり」
「はい」
「幾ら財布を逆さまにしてみても、クーラーを買う余裕が無い事に変わりはありません」
「……甲斐性なし」
「申し訳ありません」
「暑いですね。こう、なんというか、涼しくなりたいですよね(チラ)。水浴びと化したら、気持ちよさそうですね(チラ)」
「……(ソレに気付く)そうですね、プールとかいいかもしれません。でも、水着がないとプールに行けません」
「実は今、偶然にも服の下に水着を着ていたりします」
「なんというぐうぜん(棒)」
「そ、その、似合うでしょうか?(服を捲って水着披露)」
「よく似合っていると思います」
「(顔を輝かせる)本当ですか! で、では、お兄ちゃんの水着も偶然持っていると言ったら、プールに連れて行ってくれますか?」
「よほど奇抜なものでなければ、構いませんよ」
「そうですか、では、急ぎましょう。善は急げといいます」
「分かりました。行きましょうか」

キャスト:男(二十台半ば)、少女(小学校低学年)
場面:男の自室で二人きり。手提げカバンを背後に隠しながらやって来た少女を前に、横から扇風機の風を浴びつつ。
当然、帰りの際に下着を忘れている事に気付き、涙目になりつつ下着なしで帰るというお約束展開へと向かう。

48 :
小ネタGJ
それで投下して欲しいw

49 :
>>47
会話が淡々としてて可愛い

50 :
>>47
GJ
おっさんが年下の女の子をちゃん付けしてるのいい

51 :
ラプンツェルの映画のってここ的にどう?

52 :
ラプンツェルって歳の差ものなの?
エロ描写を切った切らないっていうイメージしかないが

53 :
主役の二人のイラストしか見たことはない。
ラプンツェルが18なんだろ?相手の男が髭面のくたびれた感じだったからおっさんかとw

54 :
フリン、外見はあれだけど中身はオヤジってわけでもないし
年齢差も2、3くらいだからなぁ

55 :
〜オッサンVS幼女〜
「お休み、おじさん。」
俺の腕に絡みつきながら寝入る幼女。
可愛らしいもんだが、鬱陶しさが全く無いわけでもない。
まぁなるべく手短に言うと、こいつと一緒に過ごすようになったのは色々偶然が重なった結果だ。
こいつの保護者がどっか行っちまって、手近な所にいた俺が面倒見る羽目になった。
とりあえずはそんな所である。詳しいことはそのうち説明していくんじゃね?

「おはよう、おじさん。」
朝を迎える。
で、俺より若干早くに目を覚ましては、こいつは毎度―――
「ん…。」
俺の頬に口づけする。
それで俺も目を覚ます。
「…おう。」
「ん。」
俺が上体を起こす様をニコニコしながら見つめるこいつの頭に、軽く手のひらを乗せる。
そのまま撫でてやると一層喜ぶのである。
まぁ考えようによっては嬉しい、毎朝の定例イベントではある。
が、生憎と25も年の離れた小娘に欲情できる程俺は餓えちゃいないし、そんな趣味に目覚める気もない。

「いただきます。」
炊事、と言うか家事全般はもっぱら俺の仕事である。
こいつには、本人が手伝いたがった場合にできそうなことを少量頼む程度だ。干し終わった洗濯物の取り込みとか。
実質、ほぼ俺の一人暮らしも同然の状況に、ちょっと手間のかかるペットが一匹いる程度の感覚である。
ペット扱いしたら流石に本人も怒るだろうが。
オッサンの手料理が嬉々とした表情で平らげられていく。

56 :
「歯ぁ磨くぞ。」
「はぁい。」
別に歯磨きぐらいこいつも一人で普通にできるはずなのだが、俺がいる時はこんな些細なことまで俺の手でやらせたがる。
おじさんにやってもらう方が気持ちいい、らしい。
とんだ手間である。
で、磨き終わって「口が綺麗になった」ら、することと言えば。
「おじさん。」
両手を頭上に向けて広げながら、俺の顔を見上げてくる。
「はいはい。」
膝を折ってしゃがみこんで、俺の頭をこいつの顔が届く高さに持ってくる。
「ん。」
俺の頬にキス。既にお約束の領域にある。
よく飽きないものだ。
「おじさん、大好き。」
甘ったるい言葉を吐き散らしては、俺の首に両手を回して抱きついてくる。
…面倒くさい、とかガキ引き取るなんてやめときゃ良かった、とかいう思考が殆ど浮かんでこなくなったのはいつ頃からだろうな。

「…。」
平時のこいつは主に読書で時間を潰す。
とにかく本を読む。アホほど読む。
絵本か漫画でも読んどきゃいいものを、無駄に賢いもんだから文字しか書いてない本をさも当然のように読む。
…ソファの上の俺にぴったりくっつきながら。
本人的には「膝の上」が一番らしいが、流石に邪魔過ぎるので「真横」で妥協してもらっている。

57 :
で、俺の方は読書するこいつの隣で何をしているのかと言うと…
まぁ「仕事」探しである。
断っておくが今無職なわけではない。
「今の職業」で「やる仕事」をチラシ見て探しているのである。そのうち説明する。
「ん、終わった。」
本を読み終えたようだ。
そこそこ分厚いやつを与えておいたのだが、相変わらずアホほど読むのが早い。
多分俺の読書よりよっぽど早い。
そういうのが得意な頭でもしてるんだろう。
「ねぇ、おじさん。この本さ…。」
俺に読み終わった本の内容を語りたくて仕方が無いらしい。
お前用に買ってきただけの本だから俺は読んでないんだが、それ。
「主役の男の人が煮え切らない。」
お前は何を言っているんだ。
「むしろ全体が煮え切らない。
 三角関係きて盛り上がったと思ったら、なんかいまいち決着つかないまま、片方があっさり引き下がっちゃって…。」
知るか。
こいつは無駄に豊富な読書経験のおかげで、露骨に批評が厳しい。
二桁にもちょっと届かない程度の年齢のくせに、語彙まで無駄に沢山身につけている。
「ねぇ、聞いてる?」
「きーてるきーてる。」
俺は生返事しか返さない。基本的にどうでもいいから。
「途中で結構ドキドキしてたのに…こんなんじゃ収まんない。」
幼女が男女の三角関係を語る時代か。世も末かもしれん。
「だからおじさん…。」
何故俺に結び付ける。
「わたしと…んぐ。」
手で口を塞いでやる。

58 :
「なによぅ。」
俺の手をどけつつ、こちらの行為に反抗的な態度を示す。
ただ、口からどけた後でも一旦握った俺の手は離そうとしない。
「俺にしょうもないこと頼む気だろ、どうせ。」
「しょうもなくないよ。」
知らんわ。
「この火照った体を鎮めてもら――あいたっ。」
言いきる前に、もう片方の手で軽くチョップを入れる。
「その生々しい表現をやめろ。」
「えー、何かいけないの?」
さっき言った通りこいつは無駄に語彙が豊富だ。
「無駄に」な。
知識ばっかり頭に貯め込んで、それらの正しい活用法ってやつをきちんと学習していないのである。
そういう中途半端な所がガキくさくて面倒臭い。
「…おじさん、わたしのこと嫌い?」
で、ちょっと困るとすぐこれである。
「はいはい好きですよ、っと。」
頭に乗せておいた手刀の角度を変えて、今度は手のひらで優しく髪を撫でてやる。
「ん。」
今にも泣きそうだった表情が笑顔に戻る。
…俺も甘いのが悪いのかね。

59 :
「…抱っこ。」
「そう言え。」
結局こいつは何がしたいのかと言えば、とりあえず俺に寄りつきたいだけなのである。
…「だけ」にとどまる保障はないが。
「ん。」
ソファに尻を下ろしたままの俺に対して、ソファに膝立ちして顔の高さを合わせてくる。
で、こちらの首に両手を回して体を寄せ付け…いつものパターンである。
こちらも片手を相手の背中に回して、優しくポンポンたたいてやる。
「ん。」
すると喜ぶ。
こいつは人に触るのが大好きであり、人に触られるのが大好きなのである。
ただあんまりこうやって調子に乗せると…
「…。」
俺の頬じゃなくて唇を狙ってくるので、余った片手で奴の口を押さえ、阻止する。
「むぅ。」
頬へのキスは許しても唇へのキスは許さない、という区別にどの程度の意味があるのやら俺にもわからんが、
俺が何となくやりたくないんだから仕方が無い。
こいつがやる気満々でも、だ。
「いいじゃん。」
「俺が良くねぇ。」
こいつが大切だからこそ一線を越えたくない。
…みたいなもっともらしい理由づけもできないわけじゃないが、果たして俺はそこまでこいつを大切に思っているのだろうか。
正直今でもこいつと一緒にいるのは、「ただの成り行きであり、それ以上の理由は無い」という思考が頭から抜けきらない。

60 :
「ぅー。」
あんまり納得していないのが表情からも読み取れるが、俺に抱きつく腕には一層力が入る。
小さい身体も更に俺にめり込んでくる。
…うん、まぁ髪からすげぇいい匂いするよ。ぶっちゃけ。
むしろ俺みたいなオッサンの加齢臭が向こうは気にならんのかが心配だ。
きっちり毎日風呂には入ってるし、なるべく体も綺麗に洗っているつもりではあるが。
…そっちも想像ついてるであろう通り、風呂入る時も勿論一緒だ。
「…。」
片膝を軽く上げて、俺の両脚の間に滑り込ませてくる。
丁度俺の股間に膝頭が当たって…って。
「やめんか。」
股間を擦ってくる膝をどける。
幼女のふとももを引っ掴むなど、そこだけ見ればセクハラしているのは俺の方だが
実際は向こうが先に仕掛けてきたんだから俺は悪くない。無罪だ。
「男の人はそこいじると気持ちいい、ってお姉ちゃんが…。」
「忘れとけそんなこと。」

お姉ちゃんとは以前のこいつの保護者である。実姉ではなく、血縁は全く無い。
当然俺もこいつ、及びこいつの関係者達と血の繋がりは無い。
あんまり細かい事情まではいちいち聞いてないが、こいつは元を辿れば「お姉ちゃん」の拾い子だったらしい。
で、そのお姉ちゃんが相当な曲者であり、早い話がバイだった。
こいつ拾ってしばらくした後、十代そこそこの男も拾って、こいつの「お兄ちゃん」とした。
それでまぁ三人仲良く…中々にただれた生活を送っていたようである。
ただ途中で何かあったらしく、お兄ちゃんが逃げ出して、お姉ちゃんが追いかけていってしまったのである。
こいつを放ったらかしにして。
それで手近にいた…お姉ちゃん達と多少なり関わりのあった俺に所に回ってきたのである。
この幼女の年齢に不釣り合いなビッチぶりは、お姉ちゃんの「英才教育」の賜物というわけだ。
酷いお姉ちゃんもいたもんである。

61 :
お姉ちゃんは毎晩自分を抱いて眠ってくれた。
お姉ちゃんはよくキスをしてくれた。
お兄ちゃんもお姉ちゃんとよくキスしたり「抱き合ったり」してた。
という具合に何かと過去の保護者の自慢話を繰り広げては、俺にまで同レベルの行為を求めてくる。
よくもまぁ、自分を捨てたも同然の奴にそこまで肩入れできるものである。
と言うか俺が新しい保護者になってから俺に心を開くまでの間の無さときたら。
こいつの甘えん坊ぶりは異常。
ツンなど皆無である。こいつはデレ100%でできている。
どんだけ餓えてんだ。俺30過ぎのオッサンだぞ。
どうもお姉ちゃんにもアホみたいに甘えていたようだが、こいつをここまでにしたお姉ちゃんどんだけ、って話だ。
…お兄ちゃん、年下と年上揃ったダブルビッチの板挟みに耐えかねて逃げたんじゃねえの?
根拠は無いが、きっと大体合ってる自信があるぞ。
「お腹空いた。」
「まぁそうだな。」
飯の時間か。

一日二食で夕方寝たら半日寝っぱなし。
いかにもデブりそうな生活形態だが、俺の自主トレに付き合って運動する時もあるのでそんなに太らない。
今日は読書に費やしていたが。
まぁ成長期ってのもあるし、こいつは縦には伸びるが横にはそんなに伸びない。
さて、こいつを寝かしつけてからが俺の「仕事の時間」だ。
こいつは大変な我がままであり、片時たりとも「一人だけ」で居たがらない。
目を開けている間は、常に俺が傍にいないといけないのである。
おかげで空が黒くもならないうちにさっさと寝かしつけでもしないと、俺が仕事に出られない。
で、実際俺が何を収入源としているのかと言えば。



「何者だァッ!?」
「僕は森岳、フリーの傭兵さッ!!」
賞金稼ぎとかそんなんである。

62 :
飲食店でバイトとかができないわけではない。そこまで不器用じゃない。
だがたまたま流れ着いたこの絶妙に治安の悪い街は、おあつらえ向きに「金づる」がいっぱいいる。
そいつらをブチのめして留置所に持って行って、たんまり稼がせていただく。
自分で言うのも何だが、俺は「この収入源でそこそこ稼げる」程度に実力がある。
俗に言うファミリーとかマフィアとか結構潰してきた。
ヤクザ狩りを生業とする俺も、ある種のヤクザなのかもしれん。
別に正義の味方を気取るつもりもさして無いしな。金が稼げりゃそれでいい。
そして稼ぐついでに、「強い奴」と当たれたら尚いい。
ハッキリ言ってしまえば好きなのである。
「命のやり取り」が。
…更にハッキリ言ってしまうと、女のお相手をするよりも、だ。
さぁ今日も元気良く、夜空の下で…
「っしゃオラァァァァァァアアアッ!!」
「づッはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!?」
ヤーさん共を叩きのめそうか。

〜とりあえずここまで〜

63 :
GJ!
続き待ってる。しかし名乗りに笑ったw

64 :
うおおおおぉぉおGJ!
久しぶりに来てみたらすごい滾った!!
続編楽しみにしてます

65 :
わぁい好評だった。
幼女の性欲強すぎに対してオッサン枯れすぎかもしれんがファンタジーなのでノリでお楽しみ下さい。
それじゃあもうしばらくビッチ幼女(9歳)VSガチムチバトルマニアオッサン(34歳)にお付き合い願います。

66 :
〜オッサンVS幼女 その2〜
体は気合で出来ている。
血潮も気合で、心も気合。
幾たびの戦場を越えて…不敗とはいかんな。
…と言うのはさておき。
一しきり大暴れは済んだ。
ちょっとした力を持て余して威張り散らしているだけの下らんヤクザ衆など、我が敵ではない。
あとは賞金の懸かったリーダー格を連れ出して報酬と交換して終わりの簡単なお仕事です。
いやぁ体を鍛えるって素晴らしい。
これで後はもっと強い奴もいれば更に盛り上がるのだが。

金を受け取り、宿に戻り、夜食をつまみ、シャワーを浴び、一日の最後の整理体操を済ませ…
麗しの幼き痴女がすやすや眠るこのベッドに入らねばならん、のだよなぁ。
備え付けのベッドは二つある。が、現在使用しているのは片方のみ。
朝、目覚めた時に自分のベッドに俺が入っていないと怒るのである、こいつは。
だから一つしか使えない。
全くもって我がままな甘えん坊だ。
まぁ…結局一旦ベッドに入っちゃうと、片腕でわざわざこいつを引き寄せておく俺も、大概甘いんだがな。
「ん…。」
寝息が漏れてくる。
一体どんな夢を見ているのやら。
夢の中で逆レイプでも仕掛けられてんじゃねぇの、俺。
いやぁ俺が対象ってのは流石に自惚れが過ぎるか。
だが何か適当な淫夢とか平気で見てそうだ。
我ながら何とも失礼な妄想だが、こいつに限っては現実ですらやりかねん勢いがあるから困る。

67 :
―――――――――

口元に違和感を覚える。
と言うか顔に何か乗っている。
鬱陶しさのあまりに目を覚ましてみれば。
視界の大半を、奴のご尊顔が覆い尽くしていた。
「んぁ…おじさん。」
反射的にこいつの頭を両手で引っ掴み、突き放す。
「んむ。」
とりあえず上体を起こす。こいつの頭は押さえたまま。
外は…日が昇りかかってうっすら明るくなってきたぐらいか。
いつも俺達が目を覚ます時間よりも早い。
「…何やってんだ。」
問いかける。
いや、もうマジで何やってんのこいつ。
「ちょっと早く目、覚めちゃって。」
「それで?」
「ほっぺにちゅーしただけじゃ、おじさん起きないから。」
「ああ、それで?」
仕事帰りだったからな。俺の眠りも少々深かったのだろう。
「だからもっといっぱいしようか――ぉあ。」
両手で両頬を引っ張ってやる。
顔が面白い形になった。
「ぁーめーえー。」
こいつの睡姦行為に対する反撃を済ませて軽く溜飲を下げた後、解放してやる。
「ぬう…。」
あからさまに不機嫌な顔を向けてくるが、悪いのはこいつだ。
俺の方が許しを請う理由は無い。謝罪されるべきは俺。
「おじさん…キス嫌?」
まぁこいつが反省するはずもないんだが。

68 :
「口は駄目って言ってんだろが。」
言いながら、手の甲で口元を拭う。
…汁でベトついてた。
「なんでぇ?」
何でもクソもあるかこの腐れビッチが。
人が寝てる間に唇ベロベロ舐めやがって。
「お子様には早いんだよ。」
まぁ流石に心に思った言葉でそのまま罵倒するとガチ泣きされるので、現実に捻り出す台詞は選ぶ。
…そういう甘さが反省に繋がらんのかもしれんが。
「早いといけないの?」
「こういうのは大人になってきちんと好きな男の人作って、相手と合意の上でやるの。」
「おじさんのこと大好きだよ?」
「合意とれ。」
「じゃあちょうだい。」
「それが早ぇってんだよ。」
「大人になった後ならいいの?」
「25も下の女なんざ、俺からすりゃこの先何十年経とうが子供も同然だけどな。」
「…どういう意味?」
子供めんどくさい。
子供の相手めんどくさい。

69 :
「俺とお前じゃ年齢差がありすぎるの。
 だから俺から見ればたとえお前が20歳過ぎても30歳過ぎても子供にしか見えないの。」
こいつが20過ぎた頃には俺は40半ば。
30過ぎた頃にはもう50半ば。
何かもう色々とまずい構図しか思い浮かばんぞ。
「…わたし、大人になれないの?」
「そうじゃなくて、お前が成長したらお前のことを『大人の女』と認めてくれるような、
 俺以外の男を探せ、ってことなの。わかるか?」
「ややこしーよ。」
こいつ、賢いんだかアホなんだかよくわからん。
分厚い本をホイホイ読破するかと思えば、本質的な部分はどうしようもなく子供。
まぁ…どっちかと言えばアホなんだろうな。エロいこと大好きな。
つくづくなんつー拾い物をしとるんだ、俺は。
どうしてこうなった。
…そういや俺の弟の嫁の姉が、こいつの「お姉ちゃん」っていう縁はあったか。
その辺も原因の一部ではあったが、繋がりが濃いんだか薄いんだか。
「…ねぇ、何で子供は駄目なの?」
法律的に。
…とか言うと「何で法律はそう決められてるの」で返されるのがオチか。
いくら駄目と言ってもガンガン食い下がってくる。
もうどうしろってんだよこいつ。
「おじさんのこと好きだから、もっといっぱい抱きしめてもらって、もっとキスしたいのに。
 そしたらすごく気持ちいいのに。それの何がいけないの?おじさんは嫌なの?」
…嫌ってハッキリ言った方がいいのかね、これは。

70 :
だが拒絶するとこいつは泣く。
そして余計にすり寄って甘えてきて許してもらおうとする。
いやまぁ、肯定しても調子乗ってやっぱり甘えてくるんだけどな。
こいつのコミュニケーション手段は「甘える」でほぼ全てが構成されている。
ほんとすげぇよこのビッチ幼女。
だから、どう対処するのが一番正しいんだかマジでわからん。
「おじさんに嫌われたら、一人じゃ生きてけないよ、わたし。」
まぁ俺の収入で生きている以上その通りである。
…人に嫌われないように生きてるのがバレると嫌われる、とかどっかで聞いた覚えもあるが。
「へいへい。」
で、結局何だかんだ言って。
俺も理性ではいくら厳しい態度を取ろうと思っても、こいつの泣きそうな顔を見ると反射的に頭を撫でてなだめてしまう。
別に女が嫌いとまでは言わない。
悲しい泣き顔を見せられるよりは、嬉しい笑顔を見せられる方が好きだ。
男同士のドツき合いがそれよりもっと好きなだけだ。
「ん。」
つまる所。
ややこしい言葉を逐一選んで長話を垂れ流すよりも、頭撫でて友好的な態度を示しておけば、
向こうは勝手に落ち着いて納得するから、最終的には手っ取り早いんだよな。
…めんどくさいわ。やっぱもうこれが一番正しい対処でいいよ、もう。

71 :
「まだ早いからもうちょい寝るわ。」
窓を差す。
若干明るくなってきたがまだまだ薄暗い。
昨夜は仕事もしたし、早めに無理矢理起こされたのも気に食わないので、もう少し眠っていたい。
「…ねぇおじさん。」
それでまーた何か残ってるって言うのかよこいつは。全く。
「もっとちゅーしたい。」
「めんどい。やだ。」
流石にもうそろそろ拒絶の一つでもかましてやりたくなった。
「むぅ。」
上体を再び後ろに倒し、仰向けになる。
とっとと二度寝に移りたい。
「じゃあさ。」
するとまぁ、こいつときたら今度は腹の上にまたがってきて、まだ何か言ってきやがんの。
女が無闇に男の胴体になんぞ馬乗りするな、と言いたくもなったが、
何が駄目なのか問いただされる未来しか見えないのでやめておくことにする。
「胸揉んで。」
…今なんと?
「揉んでよ。」
俺の合意を得るより早く、衣服の胸元に手をかける。
とりあえずそこから先は見ないよう、俺は目を閉じて顔も横に反らしておいた。

72 :
「揉んだらおっぱい大きくなるってお姉ちゃんが。」
またあの女の入れ知恵かよ。
「迷信だろ。」
「じゃあ試そうよ。」
痴女だ。痴女がおる。
幼女の皮被った痴女が俺にまたがっとる。
「揉んでよぉ。お姉ちゃんみたいな大きいおっぱいになりたいよぉ。」
あーそういや「お姉ちゃん」すげぇガタイしてたな。
俺より身長高かったっけ。180cmある俺より。どんな女やねん。
「ねー。」
腹の上の物体が胸まで移動するのを感知すると、今度は顔の側面に何か当たってきた。
あーなんか、若干骨が浮き出ながらも柔らかい人肌が直に触れる感触が。
「やめい。」
再び上体を起こす勢いも乗せながら、こいつの両肩を掴んで引っぺがす。
つい目を開いてしまうと案の定、上半身の前面を惜しげもなく晒した幼女の姿があった。
「これも駄目とか言うのー?」
「たりめーだ。」
まだ発達の兆しすら殆ど見えないような胸部を自分で撫でている。
「じゃあキス。」
「その二択以外ねーのか。」
俺の人生内で見られるであろう屈指のビッチが幼女だったとかどんな衝撃体験だよ。
ビビるわ。
「やってよー。人に揉んでもらう方がいいのにー。
 おじさんがしてくれないから自分で揉むのもうやだー。」
風呂で自分の胸揉みまくってたのそういうことかよ。
「ねー。」
薄い胸をむにむに歪ませて先端の色が違う部分を強調している。
もうやだこのビッチ。

73 :
このままギャーギャー喚き続けるのを放置して二度寝を妨害され続けるか。
手短に要求を満たして再度一緒に眠るか。
二つに一つ。
第三選択肢は…思い浮かばん。


で、俺がとった答えは。
「後ろ向け。」
「ん?」
言われてこいつは体を持ち上げて角度を変え、俺に背中を向ける態勢になる。
なかなか素直だ。
何をしてもらえるか直感で理解している場合は。
「ん。」
両手で腰を掴んで俺の方に引き寄せる。
背後から抱きしめるような形となる。
そのまんま両手の位置を上の方にずらし。
「…ん…。」



何でキスじゃなくてこっちを選んだのか。
いやぁ…何となく?
わからん。ノリとしか。
…ちょっといじめてやりたかった、とか?

74 :
「ぁ、ぅ。」
俺は目を閉じている。
特に理由は無い。
見たくないとか罪悪感やら背徳感から目を背けたい、とかそんなこじづけはできるかもしれんが。
「外側」から見るだけでは女性らしい膨らみなど、まだまだ全然帯びていないのだが、
実際手で触れて「内側」まで探ってみると、思いのほか中身が詰まっている。
「ゃ…。」
引っ張ると結構伸びるところとか。
「は…。」
…白状しよう。
割と楽しい。
でもさっさと終わらせてさっさと寝たい。
俺の中の理性が確実にひび割れていっているのがわかるから。
「…ね、おじさん。」
上ずった声で呼びかけられる。
「勃ってる?」




75 :


次の瞬間、俺は手を離して再び仰向けの姿勢に戻っていた。
「もうちょっとやってよぉ。」
「もう勘弁して。寝る。」
再度言うが女が嫌いとは言わない。
むしろ見るぐらいなら好きだ。
綺麗なねーちゃん見て感動するぐらいの本能は流石に残っている。
思春期の少年みたいな存在よりは性欲を枯れさせているつもりとは言え、完全絶無に至る程じゃあない。
だからそりゃあ、
「女の局部をいじらされながら」
「女の喘ぎ声を聞かされ続ける」
なんて拷問を喰らえば、そりゃあ変な気持ちの一つも湧く。
言い訳がましいのは承知の上だ。
だが楽しんでいた俺もまた存在するのは事実だ。
だから体くっつけ過ぎて、こいつの尻のあたりに触れていた俺の股間はまぁ…
そういうことになって、気付かれるわな。
「うー。」
「駄目。終わり。」
寝ながらこいつの軽い体を持ち上げて、俺の真横に横たわらせ、腕を枕としてやる。
その後は、それ以上の文句はこなかった。
…あーいっそこっちから積極的に攻めた方がかえって大人しくなるのかね。
〜また続く〜

76 :
長い時間をかけて少しずつ書きながら投下するのではなくて、
ある程度書き溜めてからまとめて投下するようにしてください。
ご協力のほどよろしくお願いいたします。

77 :
了解しました。次回以降そうさせていただきます。
失礼、おかけしました。

78 :
えちーキター!(´∀`*)
ビッチやべええ!

79 :
〜オッサンVS幼女 その3〜
ウェイ!!!!

ん、ああ夢か。

窓を見やる。
もう十分朝日も昇りきっていて明るい。
…で、二度寝に入る直前にしていたことを思い出して気分が重くなった。
時間を置いてから改めて振り返ると、俺も随分とまぁアレなことをしでかしていたものだ。
でも元はと言えばこいつの異様なテンションに当てられたせいだ。
俺ぁ悪くねぇ。
頼まれたことやったまでだ。
責任転嫁かっこ悪いだと?知るか。
心の中で何を考えるかなんて自由だ。
しかしキスか乳揉みかの二択で後者選ぶってのはどうなのよ。
どっちの方が構図的に危ないかとか、そんなもん考えるまでもなく。
って、やかましいわ。
女の子の胸って膨らんでなくてもやぁらかいデスネ。
って言うかこの子華奢っぽいようで触ってみると案外肉付きが
おいコラ。
…何を悔いているんだ俺は。
後悔を後悔とせず我道を突き進み生きていくのが俺の信条だっただろうが。
昔、偉い人も言ってたじゃないか。
我生きずしてすこと無し…何だっけ、後悔とともにすこと無し…とか何とか。
まぁ…どこの偉い人かは知らんが。
とりあえず愚考に時間を割くことはここまでにしておいて。
お目覚めのお約束を喰らう感触が無いのに気付いて真横を振り返ると、
俺の方が先に目を覚ましていたということを認識する。
…折角だから俺からかましてやろうか、という思考も湧いてきたが、まぁやめておいた。

80 :
不埒な思いを切り捨てながら上体を起こすと。
「んあ。」
振動でこいつも目を覚ました。
「…あ、おはようおじさん。」
で、結局ほぼ同時に起床しては寝起きの一撃を貰う。
「…おう。」
とりあえず頭を撫でて応じておく。
明け方のことは…特に触れてこなかった。
…俺が内心勝手に引きずり過ぎなだけか。
こいつにとってはあの程度、何気ない日常風景の一部も同然ということである。
友達と遊ぶ、ぐらいの行為と同レベルの。
つくづく魔性の女だ。
んじゃ、拘る必要性の無い過去はそのまま通り過ごさせておこうか。

朝食を済まし。歯を磨き。髪を梳き。
買い出しに出かけ。勿論片手は握られっ放しで。
帰宅したら自主トレして。向こうが飽きて読書に移っても自主トレして。自主トレして。
タオルで汗拭き取ろうとして近づいてきたこいつが変な所に手を伸ばすのを阻止して。
やめんかコラ。
金入りのあった次の日は基本的に暇だ。
うちの生活形式に、週休何日とかそんな固定化された概念は無い。
目ぼしい獲物が見つかったら、さっさと狩りに行って換金するまでである。
今の所は見当たらないので、出現待ちとなる。
で、そんなこんなで飯と風呂も終わってこいつを寝かす時間だ。
平和な一日を謳歌するのも良いものだが、あまり休みすぎると中だるみするんだよな。
尚、湯船の中でやたらベタベタくっついてきた件に関してはあまり気にしないでおく。
いちいち対応するのが面倒だ。
…最初の頃よりこいつとの付き合いを殆ど面倒と思わなくなってきたかな、と思いきや
やっぱり何だかんだで色々ダルいことに気付く。
いや、面倒臭い事態を起こさない振る舞いを覚えてきたら、
その振る舞いの維持が面倒臭くなってきた、って所か。
ややこしい。

81 :
まぁ細かいことはどうでもいい。
さぁて

「おじさん?」
「隠れとけ。」
大きなクローゼットの中に小さい体を押しこませる。
入口のドアを叩く音は一体何だったのか、何故こんな所に隠れなければならないのか。
いちいち問われるが、この野暮用を手っ取り早く済ませたい以上、説明が面倒だ。
…適当なこと言って釣るか。
「いい子にしときゃ後で言うこと一つ聞いてやるから。」
「…ん。」
完全には納得しかねる、といった面持ちだが、
あのまま放っておくと邪魔になるから仕方ない。
とっととこいつを退避させておいて。
早速「お客様」に応対だ。

ガチャリとドアを開け。
顔面に向かってくる刃物を往なして。
殴る。
後ろに控えていた奴らも殴る。殴る。
人ん家に襲撃かける悪い子はどんどん殴っちゃおうねぇー。
「この――ぼぇッ。」
抗議の声だか呻き声だかよくわからぬ音声も耳に入ってくるが、
そんな些事に興味は無い。
やられ役の雑魚の方々お疲れ様です。
残り一人になったのを確認して、その最後の男の武器を弾き落とし。
首を引っ掴む。
幼女のふとももと比較するとゴツゴツ加減が半端無い。
引き合いに出すには極端過ぎるが。

82 :
「で、お前ら何用?」
俺の一睨みに程良く震え上がっているが、
生憎こんな雑魚共をいくら屈服させてもあまり楽しくない。
「…言われなくても大体わぁってんだろうがよ。」
生意気な。
首への握力を高める。
ぐあ、とか呻いて苦しそうにしたのを確認したら緩くしてやる。
「まぁどっかの奉仕活動…じゃなくて報復活動か。」
「その通りだよ…クソ野郎。」
生意気過ぎる。
手元の痴れ者を地面に叩きつけておき、
この襲撃は大方昨日潰した連中の残りが、ご丁寧にも仕返しにやって来たものなのだろうと結論づける。
とりあえず返り討ちの返り討ちは完了。
我が宿舎に被害が及ぶ前にさっさと戻ろう。
と思って家入ってみりゃ、
知らん間に窓割って侵入とか舐めくさった行為に及ぶコンチクショウがいるでやんの。
「…ッやべ!!」
表の連中はマッハで掃除したが、既に所々物色された形跡がある。
余程俺のこの手を血に染めたいようだ。
まず目についた一人をそォいと叩き潰す。
そのまま奥に駆け入ると、一人がクローゼットを開く場面に―――おいィィィィィッ。
「あ。」
「んぇ?」
ドアとクローゼットの位置が中途半端に遠いッ―――
「て、テメェ!!大人しくしねぇとこのガキはッ!!」
―――うちの大事なお姫様にナイフを突きつける隙を与えてしまう。
それにしても何ともまぁ、わかりやすい展開ではあるな。
が。

83 :
「逆だろ。」
きっぱり言い返してやった。
「…何?」
困惑している。
で、我が家の腐れビッチ、もとい姫君は喉元に向けられた刃を見て、流石に萎縮している。
さっさと状況を打破してやらないとな。
「下手にそいつに手ぇ出しゃ、その瞬間俺が『大人しくしてやる』理由も無くなるんだが?」
奴を見据える目つきは最大限鋭さを維持しつつ、口の端を釣り上げて「凶悪な笑顔」を演出する。
我ながら相当ヤバい顔になっているんではなかろうか。
「は…ハッタリだろ!?」
焦りが見透けているぞ。
「表の『掃除』から俺が帰って来たのが十分証拠だろ。」
「んだと…!?」
まともにやり合えないから小細工する。
それはわかる。
が、やり方が悪いんだよ。
「…もう一回言おうか。うちの大事な娘をせば――」
全くもって手間を取らせる。
「――俺も遠慮無くお前をブチしていいことになる、ってな。」



勝手に戦意を喪失して下さった。
話のわかる奴で助かる。
玄関先まで送り届けた後、お礼に向かいの壁まで殴り飛ばしておいた。

84 :
「終わったからもういいぞ。」
かくれんぼ終了を促す。
さっさと二人で一緒に部屋の片づけをしないと――
「…。」
俺を視認するなり無言で駆け寄られて抱きつかれた。
背中に回した両手はガッチリ固定。
俺の腹筋あたりに顔を押し付けている。
「あー、うん。」
とりあえず頭を撫でておく。
「怖かったよな。」
「…おじさんが、たすけて…くれるって…わか、ってた…から…。」
もう片手で背中もさすっておく。

こいつが落ち着いてから部屋の片付けに移り、
双方共に汗まみれであることに気付いて、再度軽くシャワーを浴びた。
ちなみに窓の修理費は、さっきの連中から徴収してきた財布の中身で賄う予定である。
やれやれ。やっとまともに寝られるな。
「おじさん。」
「何だ。」
「わたし、いい子で隠れてたよね?」
「そうだな。」
野郎共に見つかったのは伏兵を計算しなかった俺の落ち度であり、こいつに罪は無い。
「ねぇ。」
ベッドに腰かけていた俺に顔を近づけてくる。
「言うこと一つ聞いてくれる、って、言ったよね。」

85 :
…あー。
説明端折るためにそんな約束しちゃってたな。
「…そうだな。」
何やら妙に顔を赤らめている。
さっきまでボロボロに泣いていたのが嘘のようだ。
泣き晴らした赤さかもしれんが。
「キス。」
…わかりやすい注文で助かった。
と言いたい所だったが。
よく考えりゃこの状況で頼むキスが、頬への口づけ程度で終わってくれるわけもないか。
「…お口開けて。」
目を閉じて、とかじゃないのな。
「待て。」
「んう?」
「どんなキスがいいんだよ。」
あまりまともな返答が来ることは期待していない。
でもとりあえず聞く。
俺も俺で結構なビビリなのかもしれん。
「舌でぺろぺろ舐め合うやつ。」
で…いざもらった返答への感想を正直に告白すると。
多分それぐらいの注文が来る気はしていた。
ただ一つ言いたいのは、そんなお願いはもうちょっとぐらい恥じらいを込めたらどうだってこと。
…今更過ぎるか。今更過ぎたな。
「…どこでそんなキス知ったんだよ。」
「お姉ちゃんよくしてくれたよ?」
うん、まぁその返答もほぼ予想通りなんだなこれが。
「言うことを聞く」という前提条件を示したのは俺。
ここでまで「口はやめろ」とか拒絶すると確実に喧嘩になる。
退路無し。
腹を括れと。
…俺ついさっきまで悪漢共を軽く捻ってたよな。
何でこんなちっこい幼女一人に勝てないんだろうか。
と言うか何だこの状況の高低差は。
「野郎共と大乱闘」から「幼女との性的交渉」て。
ご褒美?

86 :


「んむ。」
とりあえずベッドに仰向けになって、
お望み通りに口を軽く開けておいた後は、こいつの好きなようにさせておいた。
こうして横たわるオッサンの口中をベロベロ貪り尽くす幼女という地獄絵図の完成である。
どんな悪鬼羅刹も裸足で逃げ出しそうだ。
延々ベロベロベロベロと。
犬かお前は。
いや犬でもこんなに舐めねぇよ。
恋人同士のお熱いディープキス?
そんないいもんじゃない。
本質的には子供が親に甘えているだけ、だと思う。
やり方が過剰なだけで。
もっと言えば乳幼児が母親の乳をしゃぶっているだけ、が一番近いんじゃなかろうか。
唾液しか出ないけどな。
そんなことを考えていると、ふっ、と突然口が離れていく。
「おじさん。」
そろそろ飽きたか?
「大好き。」
残念、ただの途中休憩でした。
えらい勢いでこいつの唾液が落とし込まれてくるが、
少々気に食わないので出来る限り上に押し返しておいた。
結構な頻度でこいつの喉が鳴っている。
…ところでいつまでやんの?
いつまでそんなベチャベチャベロベロビチャビチャネチョネチョゴプゴプと。
とか何とか言ってるとまた口が離れた。
「すー……はー……。」
ただの深呼吸でした。

87 :
で、まぁた戻ってくるのかと思いきや。
突然顔の位置をずらした。
「ん。」
そして今度は喉を舐めてきた。
何、首ちゅー?
「そこまでやっていいって言ってねーぞ。」
抗議の声を上げつつ、頭部を引きはがす。
別に好きにやらせておいても良かったが、
あんまり調子に乗せすぎるとどこまで進めちまうか、わかったもんじゃない。
「…言うこと、聞くって。」
「一回だけな。その一回でキスまでだ。」
軽く、むぅ、と唸る声も聞こえたが
それじゃあキスならいくらでも好きなだけやってもいいんだよね、とばかりに唇に戻って来た。
生意気言う口は塞いじゃえ、って感じもする。

散々むしゃぶり尽くされた末に一旦唇を離すと、
このド痴女はあろうことかまた胸元をはだけて強調してきたので、
とりあえず頭引っ掴んで胸元に抱き寄せ、きつめに抱きしめることで黙らせておいた。
やっぱり俺から攻めた方が大人しくなるのは早いんだろう。
俺の胸板に顔を埋めて眠るこの腐れビッチの髪から漂う芳香は、
結局何だかんだ罵倒しつつも嫌いになれなかった。
〜更に続く〜

88 :
よろしい、全裸で待つ。

89 :
年の離れた幼馴染みに、おへその下あたりを蚊にヤられてキスマークみたいなんだよね、と言われたら、どうする!???

90 :
〜オッサンVS幼女 その4〜
暑いわ。

俺の真上でうつ伏せになっているこいつが完全に寝入ったのを確認。
刺激を与えないように、ゆっくりと真横にずり下ろす。
これで拘束具が外れて自由になった。
再度刺激を生まないように注意を払いつつ体を起こし、ベッドから降りる。
…あの態勢のまま寝っ放しだったら、翌朝寝汗がやばいことになっていただろうな。
外は日が沈み切って、黒い空に月が浮かんでいる。
三日月と半月の中間ほどといった所か。
然程満ちてはいない。
まぁ、あまり細かいことには拘らないでおく。
窓際に座布団を敷いて腰を下ろす。
買っておいた酒を開け、不完全な月夜を眺めながら安いツマミで飲む。
あまり酒は飲む方じゃない。
昔、「思いの外酒に弱くてむしろ驚いた」なんて言われたことまである。
まぁその何とも失礼な台詞を吐いた奴、つまりその当時同伴で飲んだ相手が
意味不明と言っていいぐらいのウワバミだったことを差し引いても、
多分俺は大して酒に強くない。
それでも時々無性に酒を飲みたくなる。
正直、酒を特別美味い物だとは思ってない。
今手元にあるコレ自体はありふれた安酒であり、美味くもないのは当然なのかもしれないが、
馬鹿みたいな値の張る高級酒の類も、一度か二度ぐらいなら口に入れた経験はある。
それでも安物よりは美味いんじゃないか、程度の感想が湧いたぐらいで
「酒への認識を改める」ほどの感動なんて生まれやしなかった。
安酒も高級酒も、酒は酒だろう。
俺は三十過ぎまで生きてきた今でも、単純に「喉を潤す」という目的を果たすのに
最も理想的な飲み物は「冷やした茶」だと、幼少期から変わらず考え続けているぐらいである。
だから普段の飯の際、脇に置く飲み物は冷茶である。
飲食店で食事をする時も、タダで持って来てもらえる冷水だけで最後まで通すことが多い。
「酒を飲むことを主体に飯を食う」という人種がいるが、俺にはそういう連中の気が知れない。
それなのに、たまに思い出したように酒を飲む。
何故かついつい飲む。
さして美味くもない酒を、大した感動を得るわけでもなく、無意味な通過儀礼のように飲む。
本格的に酔ってくる前には飲むのを切り上げるので、
飲酒を楽しめているのかどうか俺自身にすらよくわからん。
全く、何でこんな無駄なことに時間をかけてるんだか。

91 :

まぁ頭の中で否定的な意見をいくら垂れ流しても、
しばらく時間を置くと「つい」手を伸ばしてしまう癖を根付かされているという事実こそが
「酒に酔っている」ということなのかもな。
ツマミを食べ尽くし、まだまだ中身が残ったままの酒瓶を片付ける。
食べ物をかじったので一応歯も磨く。
「休日の一人酒」はこれで終わりだ。

そして宿から少し出た所で、運動を始める。
いつもの自主トレである。
飲酒か運動かどちらの方が好きかと問われれば、俺なら迷い無く運動と答える。
アルコールよりこちらの方がよっぽど中毒だ。
以前俺の膝の上であいつがなかなか読書を終わらせてくれなくて延々離れてくれなかった時、
性欲ならぬ運動欲で全身が呻き声を上げていたような記憶がある。
うん、断じて性欲なんかじゃないですよ。
俺は何を強調している。
それにしても。
こうやって鍛錬と闘争の反復作業で長年鍛え続けたこのマッスルボディー。
高めの身長と合わさって我ながら自慢の逸品だとそれなりに自負してはいるが、
だからと言ってオッサンの筋肉と汗の結晶なんぞにベタベタすり付いて、あいつは何が楽しいんだ。
あいつも、あんな華奢な…触ると意外と肉付きが良くてぷにぷにしてるが…身体の子供なんかじゃなくて、
もっと目に見えてわかるような性的魅力を撒き散らす、豊満な肢体を誇る大人の女とかだったら
俺の方はもうちょっと楽しいのかもしれんが。
いや…そのナリであそこまでどうしようもない腐れビッチだったら尚更引くかもな。
あの性格、幼女だから許せるって面も少なからずあると思うし。
まぁいい。
さっさと雑念は捨てて自己鍛練に集中だ。

そこそこの所で切り上げる。
整理体操も終わらせた。
また結構な量の汗を流すことになったが、
もう今日だけで既に二度も風呂に入っていたことを思い出すと、
三度目のシャワーというのも面倒だ。
面倒だが…汚れた体のまんま、あいつの隣で寝るのは余計失礼だろうと思い直す。
やっぱり清潔にしとかないとな、まぁ。
ついでにトイレだ。


92 :

しかしまぁ、実際入っちゃうと狭苦しさの無い一人風呂に軽く感動を覚えちゃって、
解放感のおかげで生半可な負の感情が吹き飛ぶ。
人間の感情って結構単純だ。
別に一人風呂ぐらい仕事帰りにはいつもやってるだろうに。
一日二回もあいつと一緒に入ったからだろうか。
さて、お姫様との添い寝に備えた身だしなみは済んだ。
我がままなド痴女への最低限の配慮とも言うが。
俺も律儀なもんである。
ついさっきまでヤクザ衆の報復に応対していたことを思い出す。
住居を嗅ぎ付かれたことが判明した以上、これから当分の間は警戒の色を強める必要がある。
何より、俺はともかくあいつに被害が及ばないように十分注意だ。
今度は「娘を盾にされる」なんて隙すら与えないようにならんとな。
そのためにも、さっきだって改めて自主トレを―――

えーっと。

寝室がもぬけの殻だった。

枕の下に何か挟んであった。
書き置きのようだ。

「娘さんを返してほしかったらここまで来てね☆」
以上、意訳。
…。
おめでとう!
ペット系ビッチ幼女は囚われのお姫様に進化した!!
……。

どうやらトレーニングのためにほんの一瞬だけ家を空けたのが裏目に出たようだ。
どんだけー。
そんな細かい隙まで逃さず見張られてたっつーのかよワッホイ。
連中も暇な奴らだなぁ、そう思うだろブラザー。
とまぁ、ここにいない弟に話を振ってもしょうがないので。

93 :

早速秘蔵の…あれ。

我が秘蔵の「得物」まで無かった。
そっちも連中の目に付いて、ついでに持って行かれたようである。

よし。
決まりだ。
全力で潰そう。
最近のいつも通りに素手で行かざるを得ないが、その辺は気合でカバーだ。

愛用の指抜きグローブを両手にはめて、夜の街に乗り出す…
…前に中途半端に残っていた残尿感だけ先に絞り落とすべくトイレに向かった俺は、
我ながら結構冷静なんじゃないかと思った。
オーケィ。
今度こそ乗り出すぜメトロシ…じゃなかった。
サウスタ…どこだよ。
気を取り直して。
さらわれた我が秘蔵品とお姫様を助けるため、危険な街へ―――
行くぜッ!!



意外とワクワクしてるように見えるのは気のせいってことにしといてくれ。




94 :
道すがら襲いかかって来た雑魚を潰して潰して道も尋ねながら潰して。
…お前らわざわざ俺一人潰すために集結したのか。
本気で暇なんだな。
そんなわけで、行き先の途中にあるそこそこ広い公園に出くわしたのだ。
…ふと見ると、ベンチに一人のイカした男が座っていた。
ウホッ、いい(強そうな)男…。
そう思っていると、突然その男は俺の見ている目の前で
ゆらりと立ち上がっては周りの雑魚共と一味違うオーラを発し始めたのだ。
「闘(や)らないか。」
そういえばこの公園は不良の溜まり場として利用されることで有名な所
…だったっけ。いや知らんし。
強い奴に餓えていた俺は、誘われるままホイホイと臨戦態勢に入っちゃっ

とか何とか言ってたらいい男がどっかに吹っ飛んだ。
俺の獲物がッ。
「…いきなり何だ?」
いい男との睨み合いに集中していたせいで、
真横から乱入者が割り込みを仕掛けて奴を殴り飛ばした、という事態の認識が遅れた。
マジでいきなり何しやがんだこいつは。
「フン…。」
乱入者は愛想も人相も悪く、オッサンの俺より更に年上っぽいオッサンだった。
ガタイも凄い。俺より更にデカくてマッチョだ。
何でまたこんな夜中、ヤクザ狩りなんぞに精を出す変態がいるのだろうか。俺以外にも。
色々問い詰めたくはあったが、
このオッサン情け容赦無く俺にまで拳向けやがんの。
「おっ…とォ。」
不意打ち気味の初撃を回避。
イヤン手が早いのね。
なんて冗談も通じそうにない威圧感を放ちながら、オッサンはガシガシ攻めてくる。
しかも激しいのね。
とりあえず避けたり弾いたりはできているが、攻撃の鋭さが雑魚連中とは段違いだ。
しかも重てぇ。弾き方悪いと手が痛ぇ。
「調子に――」
やられっ放しは気に食わないので、間を見つけては態勢を直して。
「乗んな!!」
ハイキック。
オッサンの頭を刈る――

95 :
――とはいかず、避けたせいでオッサンを背後から襲いかからんとしていた雑魚に命中する。
カウンター気味に繰り出されていたオッサンの拳も俺を通り過ぎて、後ろにいた奴を殴り飛ばしていた。
周りに邪魔されるのが面倒だ。
その見解だけは一致したらしく、俺達は一旦お互いを無視して周囲の掃除から始めた。
たった今出会ったばかりのオッサンと、流れで共闘する形になる。
オッサン&オッサンVSヤクザ。何だこの暑くてにそうな構図は。

それなりの数のマフィアやらを潰してきた俺相手ですら、
反撃の隙をなかなかくれなかっただけあって、オッサンはそりゃあもう強かった。
見る見るうちに雑魚の数が減っていったぞ。
一先ず余計なもんは取っ払った。
とっとと仕切り直そうじゃないか。
オッサンに視線を向けると、向こうも俺の存在を視界の中心に収める。
敵の敵なんだからこのオッサンは味方なんじゃないか、と思わんでもないが、
向こうは闘る気満々なんだから応じるのが礼儀だ。
さっきはいきなり獲物を横取りされて憤慨しかけたが、
おかげで予想外の強敵と向き合えたので良しとする。
さて、早速――

「君達!!」
横から声が割り入る。
何かまた来た。
「君達はあの連中と戦っているのか?」
声の方に目線をよこす。
また別の中年男性が歩み寄って来ていた。
俺が30半ばに対して、今共闘したデカいオッサンは丁度40程に見えるが、
今度来たこの小太り紳士は50を過ぎたぐらいに思える。
30代のマッスルおじさんと40代の超マッスルおじさんと50代のチビデブおじさんの揃い踏みか。
何だこの中年の祭典は。
誰得。
ニッチ過ぎる。修正が必要だ。
「どうしたおっちゃん。」
一応相手をしておく。
デカいオッサンの方も新しい横槍に対して不満顔だったが
流石に対話を求めてきた相手にまで遠慮無く殴りかかる程、傍若無人ではないようだ。
俺はいきなり殴られたが。

96 :

「君達の力を見込んで、どうか頼みがある…!!」
小太り紳士は真剣な面持ちで話し始めた。
紳士マジ真剣。
「うちの娘が奴らに誘拐されてしまったのだ。
 礼は弾む…だからどうか、娘を助け出して欲しい!!」
「…マジか。」
あいつら、うちの大事な可愛いお姫様もとい腐れ幼女ビッチクイーンに飽き足らず、
こんな妙に綺麗に身だしなみを整えた中年紳士の娘までさらってんのかよ。
…それにしても。
「おっちゃん、向こうに何したんだよ。」
…この絶妙に治安の悪い街の中にあって、
紳士のその「妙に綺麗な身なり」がほんのちょっと僅かに引っかかった、というのも本音だ。
そんなお綺麗な服着て、何か恨み買うようなことでもしたのか。俺みたいに。
「まさか。私が言うのも何だが綺麗な娘で、
 前々から悪い虫がつかないかと心配していた矢先にこれなんだよ。」
まぁ、向こうはこう返してきたけどな。
「…よしわかった。」
「おお、引き受けてくれるのか!!」
とりあえずは承諾する。
「俺も丁度娘がさらわれてたんだよ。それを助けるついでで良けりゃな。」
「なんと…お互い災難だな…。」
「礼は弾むんだろ?」
「無論だ。私に聞ける範囲で良ければ、どんな要求でも呑もう。」
気前のいいこった。
その娘とやらを救出した時に、どんな無茶振りをしてやるか考えとくのも悪くないな。
「オッサンは?…俺もオッサンだが。」
さっきからダンマリ続きのデカいオッサンにも話を振っておく。
「…貴様も今、さらわれた身内のことが気がかりか?」
…ああ俺に聞いてんのかそれ。

97 :

「一応な。さっきあんたと闘り合ってた時は忘れかけてたが。」
むしろマジで忘れてたかも。
向こうの闘志に当てられて熱くなってたわ俺。
忘れてたと言えば、オッサンに不意打ちで一撃必されたいい男も。
いやそっちはどうでも良かったわ、もう。
「懸念を抱えたままの貴様と殴り合っても、到底満足のいく仕合にはなるまい。
 連中を先に叩き潰すぞ。」
あらまだ共闘してくれんの?
ぶっちゃけその辺が頭から消えてた俺なら、あのままでも思う存分戦ってた気もするが、
そんな親切心から俺本来の目的を手伝ってくれるなんてありがたい話じゃないの。
やっぱり本来の目的こそが一番大事の最優先事項だよな。
「おお、君も引き受けてくれるのか?」
「そちらの話に興味は無い。この男とはまともな形で決着をつけたいだけだ。」
何このオッサン。
無口無愛想と見せかけて「勘違いするな」展開まで軽くやってのけるとかどんな高純度ツンデレだよ。
巷に溢れ返った安っぽいツンデレ小娘キャラに見習わせたいわ。
「悪いな、あんた。」
「人質でおびき寄せるという手口も気に食わん。そんな連中は一刻も早く消し去るのが世の為だ。」
案外熱い奴なのか、この人。
とは言え。
「…じゃあ何でさっき俺にも殴りかかったわけ?」
この辺はちゃんと聞いとくべきだよな。
「殴る敵さえいればそれで良かったんでな。」
…こいつが一番暴力的なんじゃないのか。
熱い奴とかいう評価は取り下げるべきだろうか。
こんな人が「世の為」とか口走っちゃっていいんだろうか。
「強い奴と戦えればそれでいいとかそういうクチか?」
「そんな所だ。こうやって貴様の事情を聞くようなこともなければ、あのまま続けていただろう。」
話が通じるんだか、ただの危険人物なんだか、どっちなんだよあんた。
まぁ「強い相手がいればいい」ってあたりは俺も大差無いんだが。

98 :

「事情聞いちゃったからには、きちんとした状況で闘り合いたいと。だから手伝うと。」
「…そういうことにしておけばいい。」
出たよ素直じゃない遠回しな肯定。
こいつほんとツンデレだな。
中年の祭典のうち一名はツンデレ属性付きと申したか。
どこまでニッチの最先端突き進むんだよ、この公園の会合。
「無駄に喋り続けるのも時間が惜しい。先に行かせてもらう。」
踵を返されてしまった。
隣の中年紳士の方を見ると、「頼んだぞ!!」とでも言いたげに俺達に熱い視線を注いでいる。
暑苦しい中年三人の祭典はここまでのようだ。
ここから先はダブルマッスルおじさんのバトルカーニバルだな。
「おいオッサン。」
とりあえず俺はツンデレの背中に向かって。
「俺の目的地は逆方向だ。」
道を間違っていることを告げた。

無言のまま戻って来てそのまま俺の横を通り過ぎていったオッサンを、
ちょっと可愛いと思ったのは胸の内に秘めておく。
〜またしても続く〜

99 :
GJ

100 :
〜オッサンVS幼女 その5〜
さらわれた幼女を助けに行く道程で、
あろうことか自分より年上であろう同性の中年に萌えるという禁忌に触れかけたりもしたけれど、
私は元気です。

無尽蔵に湧いてんじゃないのかと思わんばかりの量で襲いかかる雑魚敵軍団を
ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
夜明けの光を背に受けながら、目的地までひたすら突き進む。
気付いたら徹夜まっしぐらで戦っていたわけだが、気にせずガンガンいこうぜ作戦を維持。
ここまでテンションが保つのも、直前に多少なり酒を入れたせいだろうか。
拳が鈍ってなきゃいいが。
まぁ途中で鉄パイプ拾って、それ武器にしてるんだけどな。
最後まで全部素手ってのもしんどいし。
終わったらあのチビデブ紳士にたんまり返礼を要求してやる。
とは言え隣で一緒に戦ってくれているデカいオッサンの方は、ずっと素手なんだが。
でもさっき取っ組みあった感触からして、あのグローブ何か仕込んでたような。
そういや向こうも徹夜だよな。
身体に障ったりしないのかねぇ、そこん所大丈夫なんだろうか。
アホみたいな強さに物を言わせて、終始無表情で目のついた獲物を片端からドツき回すやっこさんに、
そんな下らん心配はかけるだけ無駄か。無駄だな。
オッサンと共闘とは言いつつも、お互い好き勝手に共通の敵をボコっているだけのような
微妙な距離感を保ちつつ、目的地に大分近付いてきていることを認識する。



たまに有象無象の雑魚共とは一味違う奴が紛れ込んでいる。
部隊長、とでもいった体の。
「…やれやれ。」
薄汚れた軍服を纏った男が倒れ伏しているのを、見下ろしながら呟く。
「あんた結構強かったぜ。」
なんか無暗やたらに動きが素早かったのを振り返りつつ。
いやほんと無駄に強くて困ったわこやつ。燃えたが。
何にせよ目で追いきれない範囲じゃあない。

101 :

「しっかし、何でまた軍人崩れがこんな所で。」
大分形が歪んできた鉄パイプを肩に担ぐ。
そろそろ新品に取り換えようかな。
…とか何とか言ってると。
「…そのまま返させてもらうぞ、その台詞。」
返答をもらった。
まだ意識あったのかあんた。
「そんな『剣術』、どこで磨いたんだかな…。」
なかなか下らんことを突っ込んでくる。
しかし、既にまともに起き上がることもできなくなった相手にまで、
わざわざ止めをくれてやる必要も無いか。
「さぁな。自分で考えな。」
そのまま軍人崩れのたわ言を華麗にスルー。
とりあえずこの面はクリアだ。
ようやく辿りついた連中の本拠地…最終面にブッ込むとする。
オッサンは…先行っておっ始めてるのか。
さっさと引き続く。

廃ビル内を上へ上へと駆け上がる。
連中が「ここまで来てね☆」と書き残した場所はここで合ってたはずだが、
無駄に静かだ。敵の姿が見えん。
と思ったら最上階ちょっと手前でいっぱい待ち伏せてらしたんですがね。
ああこの奥に最終ボスがいるのかな、と思って戦闘開始したら
ちょっと間を置いて下の階段、つまり俺達の後ろからも何かいっぱい押し寄せてきた。
「挟み撃ちか。」
小賢しい真似を。
そこそこ高い階層でこれやったのは逃げ場を封じるためか。
「気に食わんな。」

102 :
オッサンが忌々しげに吐く。
あんたは最初っから終始、連中に対して気に食わなさげだったけどな。
「後ろを引き受ける。」
「あ?」
俺の確認を取るより早く、オッサンは方向転換して、背後の増援の方に向かって行ってしまった。
おいおいオッサン。
伝統のツンデレ芸「勘違いするな」に引き続いて、
お次はまさか伝家の宝刀、「ここはオレに任せてお前は先に行け」を抜き放つ気か。
あんたは一体どこまで俺に惚れてるんだ。
「…仕方ねぇな。」
あそこであんたと共に戦う流れになったのも何かの縁だったんだな。
オッサンよ…
お前の遺志は…無駄にはしないッ…!!

まぁあの馬鹿強マッスルがぬ心配なんてぶっちゃけ一切してないんですがね。
俺も自分がぬ心配なんて全くしてないのと同様に。

前面の雑魚軍団だけを切り開いて更に突き進む。
ボスはどこだ、ボスは。
雰囲気を重視して扉を蹴り破る。
部屋のド真ん中に一人だけ佇んでいた。
いた、ボスいた。
貴様くァーッ貴様が皆ウォォォォッ。
「よォ。」
「…よォく来なすった。」
でもとりあえずは挨拶から始まる俺達。
けったいなロングコートを身に纏って大ボスの風格を演出したがっているこの男は、
俺よりいくらか若いようだ。
20代末ほどに見える。
何だ、親父の後でも継いだばっかりなのか。
雑魚を侍らせず、一人だけで待ち構えていた気概は認めてやらんでもないがな。
ジュースでもおごってやろうか。

103 :

「早かったなオイ。昨晩おっ始めて午前中には到着かよ。」
「あんたらが寝かせてくれねぇもんでな。」
ほんとどうしてくれんだこの寝不足。
「安心しろ、今寝かせてやる。」
「そちらからお先にどうぞ。」
大ボスさんは手元の長袋から得物を取り出し―――ってオイ。
その刀は。
「なに得意げに人のもん握ってんだ。」
「そんな大事なもん置きっ放しにしてた奴の言葉かァ?」
我が秘蔵の得物はこの痴れ者の手に渡っていたようだ。
よし、決まりだ。
いや最初っから決めてたけど。
「潰す。」
「上等ォッ!!」
右手親指で首の手前を掻っ切る動作にて挑発する。
奴は抜刀後、鞘を投げ捨てて襲いかかって来た――コラ鞘を粗末に扱うな。

「はッ!!」
正面から振り下ろされる。身体ずらして回避。
「らァ!!」
斜め上に薙がれる。屈んで回避。
「だッ!!」
横薙ぎで振り回される。下がって回避。
「ンのやろッ!!」
顔面に突き出される。首ずらして回避。
「…!!」
辺り構わずブンブンブンブンと。回避回避回避回避。
「………!!」
回避回避回避…。


104 :

「やる気あンのかてめぇ!!」
叫び散らしながらも手は休めてくれないが勿論全回避。
髪の毛に掠らせもしないぜ。
「オラオラどうした当ててみろやオラ。」
真後ろに下がり過ぎて壁際に追い詰められたりしないよう、
後退時にやや斜めに角度を入れておくことで、部屋中グルグル回り続ける形にする。
「だァらッ!!」
すかさず回避。
まぁ俺の自慢の硬くて太い…じゃなかった。
厚くて重い長刀を、気軽にブルンブルン振り回す腕力だけは褒めてやってもいい。
「下手くそー。」
「ンぬァァァ!!」
当たらなければどうということはないが。
「一撃も当たらなくてねぇどんな気持ちねぇねぇどんな気持ちッ!?」
「クソがッッ!!」
挑発にキレたらしく大上段に振り被った、
その
瞬間を
逃さず―――
「はいィァッ!!」
手首に強振を叩き込んだ。
がっ、とか呻き声が上がる。
堪らず手元から吹っ飛んだ刀は、後ろの方をガラガラ転がっていく。
物の見事に奴の大攻撃の出鼻を挫いてやった。
いやそんなことより…我が愛刀は無傷だ、よしよし。
「痴れ者が。」
手首をものっそい痛がっている大ボスさんを見下す。
そりゃあもう見下す。

105 :
「武器一つ手にすりゃ強くなれるとでも思ったかぁ?」
残念だったなぁ。
それだけで実力が上がるんなら、俺ここまで苦労してねぇよ。
「手前の軍人崩れの方が、あんたよか強かったぞ。」
アレ相手には攻撃全回避といかなかったからな。
「…黙れ…!!」
「どうせその地位も親の七光りなんじゃねーのかぁ?」
「だァァまァァァルェェエエエァアッ!!」
右ストレート襲来。
左で捌いて。
右ボディブローで反撃して。
「ばッ…!!」
左アッパーで、
天井まで、
飛べッ。

「はー……はー……。」
吹っ飛んだ勢いで天井に突き刺さってそのまま落ちてこなくなる…
とまでは流石にいかず、天井を軽く凹ませながら跳ね返って落ちてきた。
狙ってたんだがな。まだパワーが足らんか。
それとも鉄パイプ握りっ放しで拳部分だけ当てるアッパーはちょいと無謀だったか。
ところで親の七光り、は図星だったのかしら、あのキレ様。
「立てよ。」
さておき。
大ボスさんは会心の二連撃を貰いながらも、まだ意識を保っていらっしゃった。

106 :
「はぁー…クソが…!!」
ガッタガタの体を何とか起こしなさる。
脚にもきているようだ。
「うちの娘と…あと何かちょっと小柄でふくよかな紳士からさらったっつー娘はどこだ。」
「うるせーよ…。」
答えない気か、生意気な。
俺の得物に気安く触れた時点で十分、この上無く生意気だが。
「手ぇ出してねえだろうな?」
「ガキはあくまで、テメー誘う餌だ…傷もんにするような真似はしてねぇ…。」
ほう、いい心がけだ。
「こっちにも…はー…最低限の面子はある…。」
「拉致なんかしといて何が面子だコラ。」
「ぐッ…!!」
そんな悔しそうな顔したっておじさん許しませんよ。
「そういや紳士の娘の方は何でさらったわけ?」
「あ、そっちはちょっとオレ好みだったんで。」

ああ、そう。
あれ、何を顔を赤くしてるのかな。

「どゥるァァァアアアアアアアアッ!!」
「させるかァァッッ!!」

最後の一撃が交差する。
立っていたのは。
無論、俺。

ファイナルファイト〜ダブルマッスルおじさんがいく!編〜完ッッツ―――!!

一応言っておくが、大ボスさんは壁を凹ませるぐらいにブッ飛ばす程度で済まして
高層階から叩き落としたりはしていない。念の為。

107 :


我が秘蔵の愛刀を拾い上げ、鞘も拾って納める。
やれやれ、まさかコレまで盗まれるとは。
…元はと言えば、あいつと一緒に過ごすようになってから、
自分の手を汚す様を見せるのが嫌で封印したんだったか。
あいつが持って行かれたのに気付いた瞬間は、
思いっきりコレで百人斬りに行く気満々になってたからなぁ。
結果的にはこっちも無くなってたおかげで…しをせずに済んで、良かったのかもしれん。
さて。
後はあの最後の扉を開けるだけか。
ガチャっとな。
「あ…。」
簡素な部屋に、女の子が、二人。
「おじさん!!」
「おう。」
会いたかったぞマイスイートプリンセスもといド腐れビッチ。
体当たりでもかますかのように抱きつかれたが、その反応は全くもって想定範囲内だ。
柔らかい頭髪を撫でておく。
昨日の晩から本日昼前まで、よく考えれば別に大して時間も経ってないんだが
こいつに触られ、触ったのが随分と懐かしい感触に思える。
よしよし、言ってた通り外傷とかは見当たらないな。
で、だ。
「そっちは…。」
俺が来るまで、こいつが抱きついてた向こうの女の子は、と。
「…助けに、来てくれたんですか?」
改めてその姿を観察する。
ややあどけなさが残るも、成長はある程度終えた少女…16,7歳ぐらいだろうか。
しかしそんなことより、粗末な衣服の下になかなかとんでもない物を二つ抱えているのが
明らかに見て取れることの方が重要だろう。
しかも別に腹がだらしないわけでもない。
更に下を見ると臀部もまぁ、そこそこな。
やだ…何そのバディ…。
囚われのお姫様ってこうあるべきじゃないのか、としみじみ思わされる。
こんな色気の無い体型の幼女じゃなくて。
成程、おっちゃんが言ってたように悪い虫つくのも仕方ないんじゃないの。

108 :
「あんたの父親に頼まれてな。」
「え…父親?」
「娘をさらわれたから助けて欲しい、って。」
こいつを助けるついでだが、と付け加えつつ。
…しかしこの少女は、父親という単語に対して何やら訝しげだ。
「親父さんじゃないのか?あの、ちょっと太ったおっちゃん。」
「それは…違います!!」
何故か怒られる。
うんまぁ、確かにおっちゃんとこの子全然似てない。
それとも母親似なのかね、と思いきや。
「私、あの人の所から逃げてきたんです!
 そしたら、ここの人達に捕まってしまって…。」
この口ぶりからして、親子関係ですらないのだろうか。
じゃあ何故あのおっちゃんは娘とか言ったんだ。
「…なぁ君。一体何があったわけ?」
これは詳しいことを聞いておかねばなるまい。
「それは、あの…。」
言いあぐねている。
よっぽど嫌な思い出でもあるのか。
「…うっ…。」
しかも泣き出した。
おいおい。
そんなにやばい事情なのか。
「…どういうわけ?」
俺の腹筋に顔をすり寄せるこいつに振ってみる。
…どうでもいいけど結構汗かいてるんだが、それでもくっつきたいのかお前。
「あのね、この人ね。」
お、何か聞いてるのか。
「しょうふ、っていうお仕事してたんだって。」

…娼婦?
〜まだまだ続く〜

109 :
続き楽しみにしてます!

110 :
流れ切って悪いんだけど、ここって海外ドラマの二次創作でもいいの?

111 :
保管庫に載ってるのも基本的に一次創作だけっぽいけど
二次創作も僅かにありますね。いいんじゃないでしょうか。
あと次が出来上がったんで投下します。

112 :
〜オッサンVS幼女 その6〜
衝撃!!
おっちゃんの娘は娼婦だった!!

「男の人に無理矢理エッチなことをさせられるんだって。」
うん、それは知ってる。
いかにもお前の好きそうな仕事だな。
「好きでもない人にそんなことしなきゃいけないなんて、酷いと思う。」
――と思いきやそれぐらいの分別はあったのかお前。
そうか、流石に嫌いな奴にまで身体寄越したりはせんか。
「それで生活に嫌気が差して逃げたらこうなった、と。」
少女に視線を戻す。
まだ俯いて泣いている。
「そう、です…。」
「泣いてるのは、俺があのおっちゃんの所にまで連れ戻すと思ったからか?」
「…あそこにだけは、帰りたくないんです。
 ここから助けて下さったことは、感謝します…
 でも…あそこに戻ったら…意味が、無いんです…。」
よっぽど娼婦生活が嫌らしい。
濃い客の濃い要求にでもいじめられてトラウマになったか?
「…そうか。」
「ねぇおじさん。」
どうした。
そしてお前はいつまで俺に抱きついてる気だ。
汗でべとつくぞ。
「おねえちゃんを助けてあげられないの?
 このままじゃ、かわいそうだよ。」
随分と肩入れするな。ついさっき会ったばっかりじゃねぇの。

113 :

「ここで捕まってる間に仲良くなったのか?」
「朝起きたらこんな所に閉じ込められてて、おじさんもいなくて…
 すごく怖かったんだけど、おねえちゃんが側にいてくれたから。」
それで二人抱き合って気を紛らわしてたのか。
なんというバイ。
そんな所まで前の「お姉ちゃん」の性質を忠実に受け継いでいたと言うのか。
「おねえちゃんも男の人は怖いみたいだけど、わたしなら平気だって。」
向こうもイケるクチか。
百合百合だな。
それと、お前ほんと他人に心開くまでの時間無さ過ぎだろ。
オッサンがいなきゃ、たまたま側にいたお嬢さんにまで毒牙にかけんのか。
なんという見境の無さ。
散々腐れビッチ呼ばわりしてきたがまだ飽き足らぬと言うか。
「…ねぇ、どうにかしてあげようよ。」
「どうにか、っつってもな。」
新しい就職先でも斡旋しろってか?
「…逃がして、くれませんか?…どこかに。」
すると、少女が訴えかけてきた。
「あの人に見つかったら、絶対またあそこに戻されて…
 見つかる前に、私をどこかに逃がして下さい…お願いです…。」
成程な。
確かにどっかに消えてしまえば戻る必要も無いだろう。
だが。
「どこか、ってどこだよ。」
「どこでも、いいんです。出来るだけ遠くに行って、見つからなければ…。」
「一人で逃げるのか?」
「…え?」
あんたのその提案は、承諾しかねる。
いい加減に俺にくっつき続けるこのビッチ幼女も適度な所で引きはがしておき、
頭に手の平だけ乗せてやっておきながら、俺は言葉を続けた。

114 :

「逃げた矢先にとっ捕まってこんな所に押し込まれたんだろ?
 またこっから逃げても、こんな治安も良くない街で、一人で誰にも頼らずに生きていくことができるか?」
「…!!」
俺の言葉に衝撃を受けている。
…あんたの提案は。
「娼婦やってた、ってつまり娼館で働いてたんだろ。」
「…はい。」
「金で女の身体売り買いするとか、俺も酷い仕事だと思う。
 俺としても嫌いな類の商売だ。それで儲けてる連中とか最悪だな。」
「…。」
「けどな。そこで働いてる限り、あんたも店の存在が後ろ盾になっていた、ってのも事実だ。
 だから…。」
「…ぅ…。」
「…店から逃げたせいで、誰にも護ってもらえなくなったあんたは、
 こうやってあっさりヤバい男に捕まったんだ。」
「…ぅあ…。」
とにかくどこかに逃がして、って後先を一切考えてないあんたの提案はな。
所詮子供の一時凌ぎ…いや一時すら保つかどうかも危うい、拙い即興案に過ぎないんだよ。
「むしろ今回は捕まってすぐには手を出されなかっただけマシなぐらいだ。
 ここよりもっとヤバい変態に捕まってりゃ、『店のルール』に護られることもないせいで
 店で客の相手する時より更に酷い目に遭ってた可能性もある。」
「……やめ…て…。」
俺も至近距離に幼女置きながら娼館の話とかあんまりしたくねぇよ。
こいつビッチだからまだいいけど。
「…また一人だけでどこへともなく逃げる、ってこういうことだ。」
「う……。」
…意地悪が過ぎたか。
えらくボロ泣きされてしまった。
「…どうするの、おじさん。」
いやぁほんとどうしたもんだろうな腐れビッチよ。
「とりあえずまぁ一旦帰るぞ。疲れてんだよ、俺。」
お前は寝起きだったっぽいが、徹夜なんだよこっちは。

115 :

「おねえちゃんも一緒だよね?」
「一先ずはな。一人でここに置き去りじゃあ、それも危ねぇ。」
少女を手招きする。
「…あ。」
「今はとりあえず一緒に来てくれ。どうするかは後で考えよう。」
少し悩んだ素振りの後、彼女は無言で頷いた。
…とりあえず、おっちゃんの所に突き出すかどうかは、帰ってから考えよう。

ビルを下りる。
所々雑魚を喰い散らかした痕跡が広がってるのは、あのオッサンがやったのか。
無惨な事後もあったもんである。
一階まで来て外に出てみると、玄関でオッサンが座り込んでいた。
「おう、お疲れさん。」
「…フン。」
声をかけてみたが素っ気ない。
オッサンは顔や服など所々に細かい切り傷が見えるぐらいで、実質ほぼノーダメージだった。
流石である。
むしろ俺も合わせて流石だよな俺ら。

「いやぁ、流石だ。よくやってくれたよ君達。」
…と、そのタイミングで実際に口で流石と言う評価を下して割り込んだのは。
「まさか連中を丸ごと粉砕とは。予想以上だよ。」
もうついたのか。早い。来た、紳士来た。チビデブ紳士来た。
お前も徹夜で張ってたのかよオイ。
「おっちゃん…。」
「さて、うちの娘は?」
問題の少女は、慌てて俺の背後に身を隠した。
…やれやれ面倒臭い展開になった。
このおっちゃん無視して帰宅してそれから作戦考えるつもりだったのに。

116 :

「その前におっちゃんって娼館の店主だったのか?」
「…ああ、聞いているのか。その通りだよ。」
揺さぶってみても案外動じない。
いや、もうちょい揺すってみるか。
「その辺誤魔化してたよな。娘がさらわれた、とか言って。」
「人聞きが悪いな。娘も同然だってことさ。」
ほう。
娘も同然って言う嬢ちゃん本人はアホほど嫌がってるんだけどな。
なかなかふてぶてしい奴だ。
「この子、あんたが嫌で逃げたらしいんだが?」
身体は振り向かず、真後ろにいる人間に親指をさす。
「恥ずかしがりな子でね。」
「あんたン所で働くのもう嫌だってよ。」
「…。」
お、黙り込んだ。
「とにかく君にはその子を取り戻すことを頼んだだけじゃないか。
 早くこちらに返してくれないか?そこから先は君の立ち入る領域じゃないだろう?」
話題逸らしやがった。このデブめ。
神経まで太いな。
「取り返してきた礼は?」
「何?」
「礼は弾むんだろ?約束果たしたからには。」
「…おっと、そういう条件だったな。」
おいおい今の今まで忘れてたのか?
俺からすればそこが一番重要であるべきだろうに。
「それでは是非うちの店に来てはくれんか?」
…おいコラ。
私に聞ける範囲ならどんな要求でも呑もう、って言ってたのすら忘れたか。
自分から内容を決めてどうする。

117 :

「君が望む通りの娘を用意しようじゃないか。何ならその子でも――」
「金で女買う趣味は無ぇよ。」
「ッ…で、では君は?」
「興味が無い。」
オッサンにも突っぱねられてやんの。
流石オッサン。見た目に違わず硬派だ。
ここで「じゃあ是非」とか言い出してもそれはそれで面白い展開になったかもしれんが、
とりあえず俺の期待通りだ。
「ッ…これは無礼な申し出だったか…すまないな。」
紳士に焦りが見えてきた。
いや割と下衆い本性がバレつつある現状でまで、紳士の称号で通してやる必要も無いか。
「では君達の力を見込んで、うちの用心棒に――」
「女売る商売に加担する気も無ぇよ。」
「ッ…君は…。」
「…聞くまでもないと思うが?」
オッサンも大概ウザがっていらっしゃる。
キレかかってんじゃね。
「給金は弾むよ!なんたってウチはこの辺の界隈でも最大手で――」
「知らんがな。」
しつこいな。油汚れか。
「もしかして最大手だから脱走者が出たとか、そういうの露呈させたくないわけ?」
「…そうだよ、よくわかっているじゃあないか。」
ぬ、おっちゃんの顔色が変わった。
「だから…この件に直接関わった君達には、口封じをさせてもらおうか?」
言うや否やおっちゃんが指パッチン。
ほお、デブでもできるのか。
いやそりゃ偏見か。
「正直君達には適当に撹乱でもしといてもらって、
 適当な所で勝手にやられといてもらうのが一番都合が良かったんだが…
 まさか本気で全部潰して大成功、とは予想外だよ。」

118 :

強面のお兄さんが、どこからともなく四人もやって来なすった。
いわゆるボディガードとかSPの類のようだ。
「そういうわけで丸めこもうかと思ったんだがね。
 それもできないとあらば…こういう手段も辞さないよ、私は。」
ほほう、そうきたか。
まったくこちとら徹夜で大乱闘し続けてやっと終わったと思ってたってのに。
まーだ俺に戦えってか。
上等。
「おじさん…。」
「下がってろ、二人とも。」
こういう状況だと邪魔な幼女と少女はできるだけ後ろに下げておく。
「オッサン。」
「…。」
返事くれよ。
が、目つきが明らかに戦闘モードなので、問題は無い物として処理しておこう。
「…お疲れのところ悪いね、君達。」
「本当に疲れてるんでな。手短に頼むわ。」
タヌキ親父め。
何やらいかにも悪人的ないい笑顔を浮かべながらガードマン4人衆を差し向けてくる。
が。
生憎と。
そんなもんで。
俺達が止まったりは。
しないんだな、これが。
「――なッ!?」
襲いかかって来た刃物に自分の刀をブチ当てた。
砕けた。
向こうの刃が。
よしよし、結構久々に握ったが感覚は鈍っちゃいねぇ。
その調子で―――


119 :



「――さて、こっちこそ悪いな、おっちゃん。」
「…ぅひッ…!?」
オッサンと二人ずつ潰して四人、だ。
すまねぇな、世の中何でも自分の思い通りには運ばんよ。
ちなみに武器破壊は刀で行ったが、連中は拳で沈めたので安心して欲しい。
「あの嬢ちゃんのことだけどな。」
とりあえず、いい加減本題に戻ろうじゃないか。
あんたの部下とドツき合ってる間に思考もそれなりに固まったし、な。
「ど…どうするつもりかね…?」
「あんたの所には返せねぇな。」
本人も嫌がってるし。
「…そうか。しかしそうは、言うがな。彼女は一人で生き残る力も、社会に取り入る教養も無い。
 結局はウチの店に留まっておくのが一番安全なんだよ。」
この状況下でまだ食い下がるか。
図太いな流石デブ神経図太い。
「で、年食って売れなくなったら捨てるのか?」
「ぐッ…!!」
図星かよ。
所詮娼婦なんぞ使い捨ての駒だわな。
よくもまぁ、娘だなんて言い張れたものである。
…つくづく反吐が出る商売だ。
「だからなぁおっちゃん。嬢ちゃん取り戻したお礼っつーことで。」
「…なに、かね。」

「あの嬢ちゃん買い取らせてくれ。」


120 :




「…と、いうわけでだ。もうお互い結構疲れてるし、一旦帰らねぇ?」
「いいだろう。」
「明日改めて…でいいか?」
「承知した。」
なかなか話が通じる奴で助かる。
「…だが一つ、言わせてもらう。」
お、どうしたんだオッサン。
あんたから話を振るとは。
「『そんなもの』を…一つどころか二つも抱えたまま戦い続ければ、
 いずれ足元を掬われるのは目に見えている。今回だってそうだろう。」
「何とかなったじゃねぇか。少なくとも今回は。」
「今回は、な。次も同じだと言い切れるのか。」
何だよ、意外と喋るんじゃねぇかオッサン。
「心配ありがとよ。」
「…フン。」
素直じゃないな、まったくこのツンデレめ。
「でもま…何とかしていくさ。これからもな。」
「どうやって、だ。」
そんなもん決まってるだろ。
「俺が強くなりゃいい。何があっても何とかできるぐらいにな。」
「…忠告はしたぞ。」
「おう、ありがとな。」
「……精々、強くなるがいい。」
ま、そういうわけだ。

121 :
というわけで。
「帰るぞ、お前ら。」
「うん。」
「…。」
「おねえちゃん、ほら。」
「…はい!」



あまり眠気を無視して起き続けると、いつの間にか眠気も半分ほどは消え去る。
が、残り半分は中途半端に留まり続けるがために
「起きてはいられるが意識の奥底に眠気が潜み続ける」というややこしい状態が出来上がる。
徹夜後特有の奇妙な覚醒感と疲労感を味わいながら
シャワーを浴び。
お腹空いたとせがまれ。
そういえば俺もちょっとは何か口に入れたいと思って軽食を作り。
食って歯磨いて。
欠かすと気分悪くなる整理体操だけはして。
思いっきり寝る。
真っ昼間から力の限り爆睡し――ようとしてると。
「おねえちゃんも一緒に。」
「えっ…!?」
こらそこ、一つのベッドで三人とか正気かコラ。
「…隣のベッドで二人で寝ろ。」
「や。」
「えええ…!?」
嬢ちゃんも困惑してるだろうが。
「気持ちいいよ?」
誘惑すんな。

122 :

「…………それ、なら。」
…え、嬢ちゃん何。
「あの…いい、ですか?」
……おいィ。



夜。
二人を寝かせてから。
俺はワクワクしながらオッサンの下へ赴いたとさ。

123 :
書き始めの段階で構想してた内容はこれで全部終わりました。
以下本文で語らなかった設定。
世界観:
「現代の現実世界」にそれなりに似たような文明レベルの異世界。
オッサンがやたらパロディ台詞吐きまくってたのはただの書き手の暴走なのであまり気にしないように。
主人公のオッサン:
若い頃に同い年の彼女(酒一緒に飲んだウワバミの人)と「試しにやってみようぜww」ぐらいの感覚で、ヤることはヤったので非童貞。
が、両方不完全燃焼に終わって「そんなにいいもんか、これ」という結論に至り、それ以来「快楽目的の性交」というものに懐疑的。
本人も言ってた通り、身体鍛えることと強い男とドツき合うことが結局一番好き。
ビッチ幼女:
前の保護者の性質を如実に受け継いでどうしようもないビッチに育った。
が、「お姉ちゃん」も流石に自重したのか「男女が性交したら子供できる」ということまで教えなかったので、何だかんだで実は処女。
(お兄ちゃんのちんこ独占したかっただけかも。)
男も女も股間いじると気持ちいい、ぐらいしか知らない。
教えてもらったら喜んで「子作りしよ☆」って言い出しそうな気もするけど
作者的には「幼女相手に前戯はやってもいいけどガチで犯すのはちょっと嫌」という考えがあるので
あんまり本番シーンとか考えないです。
娼婦少女:
娼館で働いてたので当然のように非処女。
誰かれ構わず身体を売らなければいけないのが嫌で逃げてきたけど、
自分を助けてくれたオッサンにどうやってお礼をすればいいのかを考えると「身体を捧げる」しか思い浮かばないことに苦悩する娼婦脳。
男の人苦手だけどオッサンには特別に心を開きたいと思ってる。
デカいオッサン:
割と経歴不明(作者がそれ程設定煮詰めてないので)。
主人公のオッサンはぶっちゃけ女の子の相手するより、こういう強い奴とボコり合ってる方がよっぽど好き。
以上です。
エロパロスレに出しといて後半殆どファイナルファイトしかしてなかったのが微妙に心残りなんで
どなたか「こういうエロネタ見たい」とかがもしあったら喜んで引き受けたいと思ってます。

124 :
年の差スレ的にはデカいおっさんにも幼女がいたりすると嬉しい

125 :
覗いてみたら、なにやら良さげなSSが。
   _、_
 ( ,_ノ` )      n
 ̄     \    ( E) Good job!
フ     /ヽ ヽ_//

126 :
>>123
GJ!
おっさんたちのバトルが熱すぎるw

上で質問してた110なんだけど、大丈夫そうなんで投下します
海外ドラマ『Dr.HOUSE』の二次創作です
注意点
・カップリング→ハウス×キャメロン(グレゴリー・ハウス×アリソン・キャメロン)
・全体的にシーズン1ネタバレ
・シーズン1第20話のデート後
・無駄に長い
以上、嫌な方はスルーでお願いします

127 :
帰る仕度をしようと自分のオフィスの扉を開けると、まるでその部屋の主であるかのようにその男は居座っていた。
行儀悪く机に足を乗せながらゲームをしていた彼は、部屋に戻ってきた本来の主である自分に適当な視線を投げかけただけで、再びゲーム画面に視線を戻した。
何とか重要そうな書類が無事だったことに安堵しつつ、未だに出ていく気配のない男にウィルソンは溜め息をついた。
「ハウス」
はっきりとやや強い口調で男の名を呼んだ。
だが、呼ばれた男は顔を上げることもせずに、何だ、とぶっきらぼうに返すだけだった。

128 :
その不機嫌そうな声色からは、男の苛立ちや疲れが感じられた。
それが何に対して向けられているものなのか、ウィルソンにはある程度予想はついていたが、敢えて彼に尋ねた。
「どうした、何かあったのか?」
そう尋ねても、別に何でもない、と再び不機嫌な声が返ってくる。
それは暗に放っておいてくれ、と言っているようだった。
「ここだったら、口煩いカディから逃れられるからだ」
「君の今日の仕事はもう終わったんだろ?だったら、隠れる必要もないはずだ」
ふう、と二度目の大きな溜め息をつくと、ウィルソンは少し躊躇いがちに話を切り出した。
「…キャメロンに何を言ったんだ?彼女の眼が赤く腫れてたってフォアマンやチェイスが気にしてたぞ」
そう言った途端、今にも舌打ちが聞こえてきそうなほど、ハウスの顔つきが険しいものになった。
ゲーム機を操作する手は止まり、画面にはゲームオーバーの文字とそれを知らせる音楽が鳴り始める。


129 :
嫌な沈黙が、しばらく部屋を包み込んだ。
「……俺はただ真実を言っただけだ」
沈黙を破った彼の言葉に、言った彼自身が嫌悪するようにさらに顔をしかめた。
ぐっと彼の拳が握り締められるのが眼に入った。
「どんな真実なんだ?」
「……」
彼から答えはこない。
まあ、ここまでは予測済みだ。
「言ったこと後悔してるのか?」
少し驚いたようにハウスの瞳が大きくなり、口からは唸るような言葉にならない声が洩れた。
この偏屈な男が、こういった行動をとるのは実に珍しいことで、予想外のことだ。しかし、その予想外の行動を嬉しく感じるのも事実だ。
「僕に何かを訊かなくたって、もう答えはわかっているんだろ」
手早く自分の持ち物をかき集め、帰り仕度を済ますと、まだ何か考え込んでいる顔のハウスと視線が合った。
「どうするかは君次第だ」
そう言い残し、彼の肩を軽く叩いてから、部屋を後にした。
幸運を――その言葉を無言で親友に向けながら、ウィルソンは一人廊下を歩いていった。
きっとあの二人なら上手くいく。そうなったら、今度は自分があいつを存分にからかってやろう。
自然と頬が緩むのを感じながら、ウィルソンは病院を出ていった。

130 :
ウィルソンのオフィスに一人残されたハウスは、仕方なく立てかけておいた杖を手にとり、ゆっくりと部屋を出ていった。
自身も帰り仕度をするべく、足を引き摺るようにして自分のオフィスへと向かう。普段よりも足の痛みや重みが強く感じられた。

自分のオフィスの手前まで来て、はたとハウスの歩みが止まった。
既に医師や看護師のほとんどが帰宅し、廊下も各部屋も暗くなっている中、何故だか自分のオフィスだけがぼんやりと明かりがついている。
不審に思いながら中を覗くと、そこには自分の悩みの原因である女の姿が見えた。
自分に背を向ける形で机で作業をしているため、彼女はこちらには気付いていないようだ。
小さなその背中をしばらく見詰めた後、こちらの存在をわざと知らせるように音を立てて扉を開けた。
びくり、とキャメロンの身体が小さく跳ねたのを、ハウスは見逃さなかった。
しかし、こちらの存在に気付いたにも関わらず、彼女は振り向くことも声をかけてくることもなかった。
「こんな時間まで何をしてるんだ?」
「先生の書類の整理をしてるんです」
依然として背を向けたまま、彼女が返事をする。
紙にペンを走らせる音に混じって発せられた声は、微かに震えているように聞こえた。

131 :
嫌な予感がした。
「おい、こっちを向いたらどうなんだ」
提案と言うよりは、仕事時の指示を出すような命令口調で言うと、ペンを走らせる音がぴたりと止まった。
やがて、やや躊躇いがちに彼女が椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらに振り返った。

形の整った綺麗な顔は、酷い疲れに覆われていた。しかし、それよりも、赤く腫れ、まだ涙の跡が残る瞳がいやでも眼に入る。
身体中が軋んだような音を立て、胸を鋭い痛みが貫いた。息が詰まり、心臓が止まってしまったかのような錯覚を覚えた。
自分とは違う柔らかな温もりを感じて、再び鼓動が蘇ったような気がした。

ふと我に返った時には、手に持っていた杖は床に落ち、自分の腕の中には先程まで目の前に立っていたはずの彼女がいた。
激しい痛みを感じた後の記憶が曖昧だが、この状況から察するに衝動的に彼女を抱き締めたことは間違いなかった。
「……せん、せい…?」
自分自身もどうしていいかわからなくなっていると、腕の中にいるキャメロンがおそるおそる声を上げた。それに応えようと、ハウスはゆっくりと彼女の顔を覗き込んだ。
驚きと戸惑いと自分と同じような、どうしたらいいかわからないといった表情が、そこにはあった。何かを言おうとして彼女の口が開いたかと思うと、すぐに閉じられる。ぱくぱくと意味のない動作を、赤い唇が繰り返した。

132 :
やけにその赤い色が気になって、漠然と触れてみたくなった。
無骨で少し皺のよった手が頬に触れると、ただでさえ固くなっていたキャメロンの身体が、更に強張った。それをいいことに、男の手はじっくりと頬の感触を確かめるように動いてから、目的の唇に指を伸ばした。
触れた頬も唇も驚くくらい柔らかく、指で軽く押せばふっくらとした弾力が指先に伝わってくる。
うまそうだな――その言葉が頭の中を駆け巡ると同時に、何かに強く惹き付けられるようにハウスは顔を近付けた。
「……っ!?ぃ、いや…っ!」
互いの息がかかり、唇同士が触れ合いそうな距離になった途端、キャメロンが急に抵抗を始めた。
不意の出来事にハウスの腕が緩むと、その隙をついて、キャメロンはよろけながら後退りした。
衝撃でぐらつく身体を、杖の代わりに手近にあった椅子を掴んで支え、彼女に視線を戻す。
酷く怯え、傷付いた顔をしていた。

再び身を引き裂かれるような痛みが、ハウスを襲い始めた。
「…どうして…っ」
絞り出された悲痛な声が空気を揺るがした。
身体中の痛みと普段から悩まされている足の痛みが、どんどん激しくなっていく。

133 :
「私のこの想いが勘違いだって言ったのはあなたよ。だから、私は…この想いを抑えようとしてるのに…っこんな…」
次々と新しい涙が浮かんでは、柔らかい頬を伝い落ちていく。耐えきれなくなったように、彼女の声に嗚咽が混じり始めた。
「…こんな、同情なんてっ」
彼女の言葉を否定しようとしたのか、涙を拭おうとしたのかははっきりしないが、彼女のもとへ行こうとおもいっきり身体を進めた。
だが、足の激痛がそれを許さず、身体は鈍い音を立てて床に崩れ落ちてしまう。
「先生!」
いきなりの出来事に、キャメロンが心配そうに慌てて彼に駆け寄った。
気遣う華奢な手を大きな手が掴んだかと思うと、ぐいと強く引き寄せた。
全く抵抗もできずに、キャメロンはハウスの胸元に倒れ込み、きつく抱き留められる。
「お前は、俺が同情するような人間だと思うのか?」
逃げ出そうと再び抵抗し始めた彼女の耳許で、そう囁くと、一瞬抵抗が止んだ。
これ以上抵抗されないよう、細い手首を強く握り締める。
おそらく、白い肌に目立つ痣が残ってしまうだろうが、それを気にしている余裕はハウスにはなかった。
「…じゃあ、なん、で…?」
キャメロンの言葉に、今度はハウスの身体が硬直した。

134 :
何かが身体の奥から這い上がり、言葉となって発しようとするが、喉に引っ掛かって出てこない。
その何かが唇から零れてしまうのを、ハウスは恐れた。
自分の気持ちを認めるのも、それを言葉にして言うのも酷く恐ろしかった。
「……何で俺なんだ?」
喉につっかえていた何かの代わりに、彼女にそう尋ねた。
涙で濡れた瞳が、ゆっくりとこちらを見詰める。
「俺は嫌われることはあっても、好かれるようなことはない人間だ。年だって二倍は離れてる。それに、俺は……"傷物"だ」
最後の台詞に、こちらを見詰めていた瞳がゆらりと揺れた。
自分が彼女に向けた残酷な言葉を思い出しているのだろう。
透明な雫が止まることなく流れ落ち、嗚咽が零れないよう噛み締められた唇が痛々しい。
「くそっ…!」
彼女ではなく、自分に腹が立ち、思わず悪態をついた。
もう、彼女を傷付けたくなかった。

135 :
怯える彼女を無視して、頬に手を添えると、すっかり腫れてしまった瞼に唇を寄せた。
どうにかして涙を止めようと、必に唇で涙を掬う。
塩辛いはずの液体は、彼女のものだと思うと、何故だか甘く感じられた。
「せん、せ…ぃ」
もはや彼女が抵抗することはなかった。涙も嗚咽も徐々に治まっていくようだった。
「キャメロン…」
彼女の瞳が、本来の青とも緑ともつかない色で、不安気に揺れている。
その瞳を、ハウスの深い青色の瞳が射抜くように捕らえた。
互いの視線を外すことなく、ハウスはそっと柔らかい唇に己の唇を重ねた。
ただ触れ合うだけの単純なキスなのに、心は不思議と満たされていく。
触れた唇から、自分の想いが少しでも伝わればいい、とらしくないことを思った。

その温もりを惜しみながら、ハウスは静かに唇を離した。
すると、ゆったりとキャメロンの唇が弧を描いた。
顔を覗き込むと、普段の彼女が見せる温かく優しい微笑みが浮かんでいた。
「先生…」
男よりも小さな手が、無精髭の生えた頬に触れる。
どちらともつかず、自然と二人の顔が近付き、再び唇同士が重なり合った。

136 :
綿飴――その単語が頭の中を掠めた。
ああ、彼女とモンスタートラックを見に行った時に食べた物だ。
ふっくらとした彼女の唇からは、あの時のような甘い味が感じられた。
ただ、綿飴と違う点は、いくら触れていても溶けてしまわないことだ。
熱を帯び始めた唇の表面を、ハウスの舌が形を確かめるように舐めた。
キャメロンの唇が微かに震えた後、促されるようにして小さく口が開く。すかさず、その隙間から男の舌が、女の口内へと侵入した。
「…ん」
唇同士の隙間から洩れた彼女の声に急かされるように、より深く舌を潜り込ませ、彼女の舌を絡め取る。
一瞬驚いたように舌が逃げたかと思うと、今度はおずおずと彼女の方から舌を差し出してきた。
ハウスは遠慮なくその舌を捕まえると、たっぷりと彼女の味を堪能する。綿飴よりも遥かに強い甘みが広がり、夢中になってその甘みを求めた。
「ふ、んぅ…!んん」
貪るような相手の動きに合わせて、彼の無精髭がキャメロンの肌をちくちくと刺激する。
擽ったさに顔を逸らそうとしても、後頭部に回された男の手がそれを許さない。
息苦しさに生理的に涙が浮かんだ。

137 :
頭の中が霞がかったようになってきたころ、ようやくハウスは唇を離した。
反射的にキャメロンは、新鮮な空気を必に求める。
キャメロンの唇の端から顎にかけて伝う二人の混じり合った唾液を、ハウスの舌が掬い取った。
そのまま濡れた唇を舐めると、未だ呼吸が乱れたままの彼女に軽く口付ける。
「……ん…」
先程とは違う優しく甘い口付けに、キャメロンはうっとりと瞳を閉じた。
しかし、それも束の間のことで、ハウスの手が着ている衣服を脱がそうとする感覚に、キャメロンは驚いて顔を上げた。
「せ、先生!?」
ぴたり、と手の動きが止まったかと思うと、欲望に濡れた青い瞳が少し寂し気に見詰めてくる。
「……嫌か?」
「っそ、その…そうじゃなくて」
「苦手、なんだろ?」
「…え?」
「お喋りな部下がいて助かるよ」
その"お喋りな"同僚の顔が瞬時に頭をよぎり、キャメロンは大きく溜め息をついた。彼に話さなければよかったと、今更ながら後悔した。
「大丈夫だ。俺を信じろ」
それは常に彼女がしてきたことだ。

138 :
彼女なら自分を絶対に裏切らない、という確信がハウスにはあった。
「で、でも、こんなところで…」
まだ渋るキャメロンを尻目に、ハウスは床から立ち上がると、机の上に積まれていた書類の山を大きく薙ぎ払った。
紙の乾いた音とともに、無造作にたくさんの書類が床に散らばる。
「場所ならあるぞ」
今作ったばかりの机の上のスペースを、手で軽く叩きながら、ハウスが得意気に鼻を鳴らした。
その様子に観念したように、キャメロンは溜め息をつくと、床から静かに立ち上がった。
そのまま彼の方に近付き、座るよう促された机の隙間に腰掛ける。
ハウスの唇が、キャメロンの額や頬をなぞるようにして触れた後、再度唇に重ねられた。
最初は慈しむような軽い動きだった唇が、すぐに獣のような荒々しいものへと変わっていく。
しっかりと引き寄せるために彼女の後頭部に手を伸ばすと、固い髪留めが指に当たった。
一連の出来事で、すっかり乱れてしまっている彼女の髪に、その髪留めはもはや意味を成していない。
男の指が意味のない髪留めを外し、綺麗な長い髪に指をとおした。さらさらと指の間を流れていくそれは、手に心地よかった。

139 :
「ん…っは、ん……ん」
宥めるように頭を撫でる手とは反対に、唇の動きは緩むことがなく、再びキャメロンの頭がぼんやりとしていく。
服のボタンを外し始めた男の手のことも、気にならない様子だった。

「ん…は、ぁ…」
ハウスは一旦唇を離し、ボタンを外した彼女のシャツを脱がそうと手を伸ばした。キャメロンは腕を抜きやすいよう、ハウスを助ける形で大人しくその動作に従った。
「良い子だ」
子供をあやすような口調でそう言った男の顔には、満足気な笑みが浮かんでいた。
脱がしたシャツを適当に床に投げ、露になった白い肌に唇を寄せた。
首筋に鼻先を埋め、彼女の甘い香りを思いっきり吸い込む。酒に酔ったような感覚と身体中の血が沸き上がるような感覚がした。
誘われるまま白い肌に吸い付くと、赤い跡がくっきりと残る。それを何度か繰り返すだけでは飽き足らず、軽く歯を突き立てるようにして肌を辿った。
柔らかく瑞々しい彼女の肌は、自分とは全く正反対だった。
歯が肌を掠める度にぴくりぴくりと反応する仕草に、ハウスの中に愛しさと嗜虐心が込み上げてくる。

140 :
「…ぁっ」
不意をついて耳朶に甘噛みすると、彼女の口から可愛らしい声が零れた。
その声を出してしまったのが恥ずかしかったのか、キャメロンの頬が赤く染まる。
それに更に気をよくしたハウスは、キャメロンの胸元へと手を伸ばした。
微かな音を立ててホックが外れると、素早く下着が抜き取られ、乱雑な床へと落ちていく。
咄嗟にキャメロンの腕が胸を隠すように覆った。
「おい、隠すな」
邪魔をする彼女の腕を掴み、退かそうとするが、中々彼女も言うことをきかない。
どうしてそこまで頑なに拒否するのかがわからず、ほんの少しだけ不安になった。
「何故、そこまで隠すんだ?」
「……わ、私の胸…小さいから嫌なんです…」
突拍子もない言葉に、訳がわからなくなっていると、彼女がおずおずと話し始めた。
「だって、先生は普段からカディ先生の胸について言ってるし、読んでいる雑誌にだって……
私の胸はあんなに大きくないし、綺麗じゃないから、きっと…」
先生を失望させます、そう言おうと思ったら、余計に悲しくなった。
様子を窺おうと見上げると、何故だか彼はにやついている。
「大きさなんて見てみなきゃわからないだろう。その手を退けろ」
「でも…」
「いいから、退けるんだ」
少しばかり強い口調に、キャメロンは渋々手を下ろした。


141 :
何も覆い隠すものがなくなった乳房が、外気に晒される。
すかさずハウスの手が伸び、その膨らみに触れた。一瞬怯んだキャメロンを無視して、手はゆっくりと揉み始める。
大きな手にぴったりと膨らみが収まった。自分が思い描いていた通りの完璧な一致具合に、軽い感動すら覚える。
「綺麗だ」
素直に零れた感想に、彼女は驚いたようにこちらを見詰めた。
潰れてしまいそうなほど柔らかいそれを、傷付けないよう優しく揉むと、キャメロンの身体から力が抜けていくのがわかった。
しばらくその素晴らしい感触を堪能していると、ふと指に膨らみの突起が触れた。
「…ん…っ」
自然と洩れた声に、赤い頬を更に赤くしてキャメロンは顔を逸らした。
慌てて口を手で塞いだが、ハウスがその声を見逃すはずがなかった。
今度は、意識的に赤い突起に指が触れた。指の腹でからかうように撫でた後、器用に指の間に挟み込んだ。
既に硬くなっているそれを集中的に弄べば、塞いだ手の隙間から抑えた喘ぎが洩れる。
「声を抑えるな」
彼女の耳許で低く囁くと、こくりと喉が小さく動いた。
そして、ゆるゆると口を塞いでいた手が下げられていく。
その動作を確認すると、ハウスの指は離れ、代わりに唇が寄せられた。
そこに軽く口付けるように触れたかと思うと、おもむろに口に含んだ。

142 :
飴を食べる時のように、舌を絡ませて口内で転がせば、キャメロンから控えめな喘ぎが上がる。
「ん、ぁっ……ぁ、んんっ!」
ハウスの口が吸い付き、甘噛みする動きに変わると、華奢な身体が小さく跳ねた。
彼女の呼吸が乱れ、零れる喘ぎ声を抑えられなくなってきた頃、ハウスはようやく唇を離した。
解放された乳房は、男の唾液でいやらしく濡れていた。

ハウス自身も服を脱ごうと、服のボタンに手をかける。その手付きは、まるで今にもボタンが弾け飛びそうで、服も破りかねない勢いだった。
だが、ハウスにとってそんなことはどうでもよいことだった。目の前のキャメロンを抱きたいという欲求が彼の頭を支配していた。
まるで十代の若者みたいだ、とハウスは心の中で自嘲した。
乱暴にシャツが脱がされ、ハウスの上半身もまた外気に晒される。
キャメロンが何気なく視線を上げた時、飛び込んできた光景に思わず息を呑んだ。
年齢を感じさせない逞しい筋肉がそこにはあった。若々しいとまではいかなくても、無駄な肉がなく引き締まっている。
特に日頃から杖を使っているためか、肩から腕にかけての筋肉は素晴らしいものだった。

143 :
無意識にその逞しさに見惚れていると、再びハウスが覆い被さってきた。
「あの…先生、待って」
たちまちハウスの顔が不機嫌になり、行き場のない欲求が大きな溜め息となって出る。
「私も先生にしたいことがあるんです。少しの間、任せてくれませんか?」
拒絶ではないことを示すと、ハウスの表情が和らいだ。そして、キャメロンの言葉に、無言のまま頷いた。
ハウスの了承を得ると、キャメロンは彼を椅子に座るよう促した。
やや緊張した面持ちで、女の手が男の身体に触れる。
細い指が硬い筋肉をなぞり、その後を追うように柔らかな唇が落とされていく。
それが腹まで辿ると、躊躇いがちに白い指がズボンのベルトを外し始めた。
そこで、ハウスの頭の片隅に一抹の不安が生まれた。
それは、このままズボンを下ろせば、彼女に見られるであろう傷痕のことだった。
医者である彼女が、大抵の傷で動揺することはないことは知っている。
だが、それでも彼女に己の醜い傷痕を見せたくはなかった。
そう思考している間にも、既にキャメロンの指がズボンを下ろし始めていた。
途端に淫らな予想が頭を掠め、逆らう気もなくなる。
彼女の綺麗な指と柔らかい唇が、自分の欲望に触れるのを期待しながらじっと待った。

144 :
しかし、柔らかな感触を感じたのは期待したそこではなかった。
自身が忌避していた醜い傷痕に彼女の唇が寄せられている。
まるで傷を癒していくかのように、傷痕に沿って何度も丁寧に口付けられる。
彼女は自分の醜い傷痕でさえ、慈しみ、愛おしんでいた。
自身の内の激しかった勢いが急速になくなり、代わりに何かが沸き上がった。
自分が自分でなくなるような感覚に、それを必で堪えた。
「キャメロン……もう、いい」
やっとのことで絞り出した声は情けないぐらい震えていた。
気遣うように彼女がこちらを見上げる。その仕草が、酷く愛おしい。

キャメロンを再び机の上に座らせ、彼女のズボンを一気に脱がした。
すらりとした細い脚が現れ、ハウスはその太腿に唇を押し付け、赤い印を刻んだ。
微かに震える反応を楽しみながら、さりげなく下着を脱がした。
思わず自身のポケットにしまい込みたくなるのを我慢して、床の衣服の山に投げ捨てた。

145 :
目の前の彼女の裸身は、完璧な美しさを誇っていた。
透き通るような白い肌や、なだらかな曲線を描く華奢な肢体は至高の芸術品のようだ。
かつて、自分が彼女をそう比喩したのは間違いではなかったのだ。
ハウスはキャメロンを机の上に横たえると、彼女の脚の間に自身の身体を割り込ませた。
爪先から徐々に上へと指を滑らせ、そっと秘部に触れた。そこは既に濡れていて、微かに湿った水音がした。
花弁を数回撫で、指を慣らしてから、ゆっくりと奥へと差し入れる。彼女が息を呑むのがわかった。
熱くぬかるんだそこは、ハウスの指をきつく締め付けた。
人差し指を軽く抜き差し、親指で赤い蕾を刺激すと、彼女から鼻にかかった甘い声が上がる。
「ぁあっ…あ、んっ」
指での愛撫はそのままに、身を屈めてそこに口付ける。
舌全体で撫で上げては、溢れる蜜を敏感な蕾に塗りたくるようにして舌を動かした。
「ゃ、ああぁっ、ひぅ」
刺激を拒もうと脚を閉じれば、逆にハウスの顔を近付ける形になる。
それをハウスは喜んで受け入れると、彼女の蜜を一滴も零さぬよう音が出るくらい強く啜った。

146 :
「っ、ああぁぁ!」
一際高い嬌声が上がり、ハウスの指に内壁がぎゅっと絡み付く感覚がした。
ひくひくと収縮を繰り返すそこから指を引き抜き、迷わず自らの口元へと持っていく。
赤い舌が、指に付着した粘液を残らず舐め取っていくのを、キャメロンは荒い息のままぼんやりと眺めていた。
垂れ下がっていたズボンを足首から抜き、ボクサーパンツも一気にずり下ろすと、勢いよく一物が飛び出した。
痛いくらい張り詰めたそれは、強く脈打ち、先端からは既に液体が滲み出している。
脱ぎ捨てたズボンのポケットに手を入れ、小さな包みを取り出した。
『コンドームは持ったか?』
そう言った親友は、自分が拒否したにも関わらず無理矢理この避妊具を持たせたのだ。
マナーだの、テクニックだの細かく喋り始めた彼を黙らせるために、自分は渋々ポケットにそれを入れていた。
だが、結果として、お節介すぎる親友に、この時ばかりは感謝せざるを得なかった。
封を破り、手早くそれを取り付け、彼女の濡れた花弁に自身を押し当てた。
数回擦り付けるように動くと、キャメロンは未だ余韻の残る身体を小さく震わせた。

147 :
「キャメロン…」
自分でも軽く驚くくらい熱の籠った声で彼女の名前を囁くと、ゆっくりと腰を落としていった。
「あ、ぁ…んっ、せん、せい…」
指よりも圧倒的に大きな塊が、じわじわと内を押し広げて入ってくる感覚に、キャメロンの白い喉が震える。
一方、ハウスの方も拒むような強い締め付けに必で耐えながら、慎重に腰を進めた。
やがて、彼女の最も深い所まで到達すると、ハウスは一切の動きを停止した。
キャメロンが慣れるのを待つとともに、温かい内壁がぴったりと絡み付いてくる感触を楽しんだ。
しばらくして、彼女が慣れてきたことを確認すると、男は少しだけ腰を引き、浅く突き上げ始めた。
「ん、ふぁっ…あぁ、あ……っあ」
自分の内側を満たす熱が奥に擦り付けられる度に、女の唇から自然と吐息が零れる。
そこに苦痛の色がないことがわかると、ハウスは腰の動きをより早めた。
机に体重をかけ、言うことを聞かない足は上手く椅子を利用して、深く腰を落としては中を掻き乱した。
陰茎が沈み込み、薄桃色の秘唇がいやらしく捲れ上がる光景に、ハウスの昂りが更に煽られる。
「ぁぁあ…ぁ、やっ……あっ」
益々激しくなる律動に、組み敷いた華奢な身体が小刻みに震え始めた。
それは、彼女の絶頂が近いことを如実に表していた。

148 :
「やぁ、っ…こ、怖い…っ」
先程よりもずっと大きな快感の波にさらわれる感覚に、キャメロンはどうしていいかわからない。
机の上に力なく投げ出された白い手を、大きな手がしっかりと握り締めた。
「大丈夫だ。そのまま身を委ねればいい」
そう彼女を励ます一方で、空いた方の手は敏感な肉芽へと伸びていく。
指で強く撫で上げた瞬間、彼女の背が弓なりにのけ反った。
「ひぅっ…あ、ぁあああっ!」
キャメロンの身体が強張ったかと思うと、ぐったりと弛緩した。
荒い息のまま、心を満たしていたのは性交に対する嫌悪感ではなく、純粋な幸福だった。
「先生…」
ふわふわとした夢見心地の気分で、自分の身体の上にいる彼に触れようと手を伸ばした。
しかし、その手が男の頬に触れる前に、伸ばした腕ごと強く引き起こされた。
「っぅん!」
繋がったまま抱き起こされたために生じた刺激に、キャメロンは思わず声を洩らした。
こちらを見詰める男の瞳が野獣のようにぎらついていたことに、女は気付かない。

149 :
キャメロンを抱き上げたまま、ハウスは支えに利用していた椅子へと腰掛けた。
より深く抉るようにして貫かれる体勢に、彼女は再び切な気に啼いた。
達したばかりの身体は、軽く動くだけでも堪らない快感をもたらすらしい。
「あ、ぅん…っぁあ、な…んで…っ?」
「俺はまだ終わってないんでな」
にやり、と意地悪く笑むと、ハウスは激しい突き上げを再開した。
座っているおかげで足に負担をかけない分、彼の動きはより獰猛なものになっていた。
たちまち高い嬌声が上がり、男の腕の中で小さな身体が跳ねる。
反射的に逃げようとする細い腰を、大きな手ががっしりと掴み、それを許さない。
「ひゃっぁ…あぁ、ぁっ……んぅ!?」
逃げ場のなくなったキャメロンに追い討ちをかけるようにして、ハウスの唇が重ねられた。
零れるはずの喘ぎ声さえ飲み込まれていく。
呼吸のために仕方なく離された唇同士を銀糸が繋いだ。
「っはあ、あぁ、あぁあっ……グレッ、グ…グレッグ!」
次々と新たな快楽の波がキャメロンをさらっていく中、彼女は必に目の前の男に縋った。
今まで経験したことのない感覚に、力を振り絞って抱き付き、名前を呼ぶことしかできない。
合わさった汗ばむ肌から伝わる互いの鼓動は、同じくらい速かった。

150 :
「……っ、アリソン…!」
陰茎が最奥に一番強く叩き付けられ爆ぜた。
繋がっている部分がひたすら熱い。
思考が白く塗り潰されていく世界で、男が呼んだ自分の名前だけが妙に耳に残っていた。

自分が既に着替え終わった頃、彼女はまだ上半身を着替えたところだった。
ふらふらと覚束ない足取りで、着替えに奮闘する彼女はどこか可愛らしい。
ふと、何かに気付いた彼女が、にやつく自分に声をかけてきた。
「先生、私の下着を返してください」
「くそっ!ばれたかっ」
大袈裟に額を叩いてから、ポケットに忍ばせていた一枚の布を彼女に手渡した。
するり、とそれが元の場所に収まり、無事に彼女の着替えも終わる。
そのまま二人は病院を出ると、すっかり車の数が少なくなった駐車場へと向かった。
互いに疲れた様子でそれぞれの車に別れた時、不意にキャメロンが立ち止まった。
くるり、と振り向いたかと思うと、やはり少しふらつく足取りでハウスの方に戻ってくる。
何かと思ってハウスが首を傾ければ、その頬に柔らかい唇が押し当てられた。
「おやすみなさい、グレッグ」
唇はすぐに離れ、彼女がはにかみながらそう言う。
自然と自分の口角も吊り上がった。
「ああ、おやすみ、アリソン」
男の顔付きは酷く穏やかだった。

151 :
こんこん、と控えめなノックが部屋に響いた。
処理していた書類から一旦顔を離し、訪ねてきた相手を軽く確認すると、入室の許可を出した。
片手に書類の束を抱えながら、彼女は礼儀正しく入ってくる。
彼女にしては珍しく皺がついてしまっている書類の山が、邪魔にならないよう机の空いている場所に下ろされた。
「この書類の処理は終わりました。すいません、一度落としてしまったので…」
「ああ、大丈夫、気にしないで。ハウスの書類でしょ。いつもお疲れ様」
「ありがとうございます」
そう言って微笑む彼女は本当に可愛らしいと思う。
カディが再び自分の書類に向かおうと顔を戻そうとした瞬間、それが目に入った。
思わず目を凝らして見詰めてみても間違いのないそれに、持っていたペンがぽとりと手から落ちる。
「……本当にお疲れ様」
開きっぱなしになりそうだった口でようやくそう紡ぐと、キャメロンは純粋に不思議そうな顔をした。
相手は全く気付いていないことがわかると、大きな溜め息とともに犯人を叱り飛ばしたい衝動に駆られる。
「随分と派手につけられたのね…首よ」
一瞬考えるように手を首筋にもっていくと、たちまち彼女の頬が真っ赤に染まった。

152 :
「あ、あのっ…これ、は」
「わかってるわ、ハウスでしょう」
目の前にいる彼女が何故あの男に惚れているのかがわからない。
だが、逆に彼女でないとあの男を受け入れられないとも思う。
祝福したい気持ちとあの嫌な男を叱りつけたい気持ちに、カディは思わず苦笑した。
「あなたも大変ね……幸運を」
「カディ先生…」
「あの馬鹿が調子に乗ったら、いつでも相談しなさい」
「…はいっ」
そう答えた彼女の微笑みはいつものように柔らかで、カディはほっと胸を撫で下ろした。

「なぁ、上手くいったのか?いったんだろ?」
自分が病院に到着してからというもの、ずっとこの調子で絡んでくる親友はいい加減鬱陶しかった。
何度か杖で振り払おうとすれば、図星なのか、と喜んで食い付いてくる。
終いには、物語口調で話し始める始末だった。
「若く、美しい医者がその優しさで気難しい年上の医者の心を開き…」
「おい、やめ…」
「ハウス!!」
ハウスがウィルソンを制止する前に、切り裂くような鋭い声が廊下の奥から響いた。
男たちにとって既に馴染みのあるその声の主に、二人揃って顔を向けた。

153 :
憤慨した様子で男たちに歩み寄ると、二人の内の一人を睨み付けた。
「ハウス、あなたって人は…」
もはや決まり文句のように始まり出したカディの台詞に、ハウスはすぐに逃げ出したくなった。
今回は何を咎めに来たのかは知らなかったが、とにかく皮肉で応戦すべく口を開く準備をする。
しかし、続いて発せられた台詞に、皮肉での応戦はかなわなかった。
「キャメロンを泣かせた次は、職場で抱くなんて何を考えているのかしら」
石のように固まって動けない自分を尻目に、ウィルソンはその台詞に弾かれたように飛び上がった。
大きく開いた口を片手で覆ったまま、もう片方の手で力強くハウスの肩を叩く。
「本当かっ!?やったな」
「やめろ!彼女とは何もなかった」
「何も?じゃあ、いつもなら綺麗な書類がくしゃくしゃになっているのも、彼女の首筋に大きな赤い跡があるのも偶然かしら?」
勝ち誇ったようにそう捲し立てる上司に、親友の顔が更に綻んだ。
にやにやと、まるで子供を見守る親みたいな表情で二人はハウスを見詰めた。
「…キャメロンを大事にしなさい。また泣かせたら、承知しないわよ」
「本当によかったな…おめでとう」
自分の幸せのように祝う二人に、皮肉の一つでも言い返そうとした時、聞き慣れた声が自分を呼んだ。

154 :
患者のカルテを抱えながら近寄ってくる姿を視界の端で確認すると、有無を言わさずその手を引いた。
「せ、先生?」
混乱する彼女を無視して歩き出すと、背後からカディとウィルソンの笑い声が聞こえてきた。
そんな二人への報復を軽く考えつつ、ハウスはどんどんと廊下を進んでいく。
ついにはあまり人気のない通路に辿り着いた。
「先生、どうかしたんですか?」
立ち止まって振り向くと、怪訝な表情のキャメロンが少し息を荒げて尋ねてくる。
一旦周囲を見回し、誰もいないことを確認してから、杖を持っていない方の手で彼女を抱き寄せた。
自分よりもずっと小さな身体は、片腕だけでも容易く収まる。
「アリソン…もう、どこにもいくな」
耳許でそう囁いた後、静かに彼女と顔を合わせた。
彼女は、眩しさを感じるくらい穏やかで優しい微笑みを浮かべていた。
「はい……あなたの傍にいるわ、グレッグ」
その返答に、ハウスは満足気に笑い返すと、ゆったりと唇を重ねた。
触れた唇から伝わる体温は、日だまりみたいに温かかった。


本文が長すぎるらしく、変な細切れになっちゃた…
もし、スレチだったらごめん

155 :


156 :
口惜しいくらい起ちました
描写が丁寧! GJ!!

157 :
なんというGJ!!
エロいしキャラが魅力的

158 :
おいおい、なんか凄い力作がきてるよー

関係ないが、このスレを見るたびにBPSを思い出す

159 :
BPSは名作
ロリ魂を揺さぶる

160 :
GJ!
まさかDr.ハウスのSSが投下されるとは思わなかったわwwwwww

161 :
「うあ……、○○さんっ、ヤバい、出ちゃいそう!」
「んっ、いいよ……、我慢しないで、いっぱい出して」
そういう感じで年上の女の人に筆おろしされる年下くんが俺の理想

162 :
こんばんは、お久しぶりです。5スレ699です
長い間あいてしまいましたが前スレの続きを失礼します。
すみません今回はエロなしです
では4レスお借りします

163 :
 ぼんやりとした頭でも、その掌の柔らかさが伝わる。
 気付けば、誰かの手首を掴んで床に押し付けていた。
小さくて細い、だがだいぶ大人びたその体を跨いで、俺はそれを押し倒す格好になっていた。
どうしてそうなったのか全く思い出せず、だが上手く頭が働かない状態で、黙って静止する。
ふわふわと、甘いような匂いがする。
「――はせくらさん」
「……」
 下敷きにされている彼女が、喋った。長年傍に居て、大事にしてきた女の子の声だった。
支倉は驚きもせず、気の抜けた表情で、組み敷いている少女の顔を見る。間違いなくそれは楓だった。
リボンタイを結んだ制服姿で、学校指定のハイソックスを履いた脚を投げ出していた。
父親に似た丸い目を彼に向けて、どことなく熱に浮かされたような顔をしている。
軽く開かれた桃色の唇はグロスか何かのせいでつやつやと光り、その間から見える歯は真っ白だ。
その絶妙なコントラストを描く唇で、また名前を呼ばれた。声色が甘く、支倉は逃げ出したくなる。
「――好きだよ。ずっと好き」
 やめろ、と囁いたはずが、声が出なかった。なぜだか無性に喉が渇いている。
ひりつくような粘膜の奥で、掠れた呼気が零れるだけだった。
 反応に遅れた支倉を置いて、楓の指が支倉の手をひっかく。
その感触にようやく我に返って、彼女に覆いかぶさっていた状態から体を起こすことができた。
勢いよく頭を上げたせいで一瞬くらりとして、それが敗因だったのか、支倉はそのまま体勢を整える暇もなく背中を強かに打ち付けた。
何が起こったのか理解できない。痛みに耐えて薄く目を開けると、今度は楓が支倉に馬乗りになっていた。
どうやら素早く起き上がった彼女に逆に引き倒されてしまったらしい。
「楓ちゃん、どくんだ」
「楓って、呼んでよ」
 そう言って、楓が前に倒れこんできた。腹筋の要領で起き上がろうとする支倉の胸に、べったりとその身をくっつける。
なぜだか重みを感じなかった。
だが不思議と熱ばかりは高く、お互いのシャツ越しだというのに、体温は直に流れ込んでくるようだった。

「本当は、ずっと前から好きだったんだよ」

 かすかなデジャヴに目を瞬かせ、だが支倉はこの状況を打破しようと身をよじった。
幸せそうに、楓が支倉の胸にすり寄る。彼女の後頭部を眺めながら、支倉の動きが思わず止まってしまう。


164 :

 昔にもこうやって、楓に抱き着かれたことがあった。
 確か彼女が中学校に上がる少し前の頃だったように思う。
彼女がうれしそうに広げた紺色のセーラーカラーには、白いラインが入っていたはずだ。
「これで私も大人でしょ? 支倉のお兄ちゃん」
「そうだな、楓ちゃんももう大人だ」
「じゃ、じゃあ」
 少しためらったようだが、楓は顔を上げると、彼女よりもずっと体格のいい男を睨むようにして、口を開いた。
「楓ちゃんって呼ばないで」
「……は? 何を」
 そこで、合点がいったように支倉がうなずいた。ほっとした表情の楓を見て、彼は申し訳なさそうに頭を掻く。
「こんな男に名前呼びされるの、恥ずかしくなる年頃だもんな」
「……えっ?」
「悪かった、頑張って戻す。遠藤さ……ぐはっ」
「ばか、さいてー!」
 まだ幼い声で彼を罵り、彼女は助走をつけて男の鳩尾に頭突きをかました。
同級生の中でも小柄な彼女の頭の位置は、支倉の胸にも届いていなかったからだ。
鈍い痛みに呻きながらも、このまま後ろに倒れこんでしまうと危険だと判断し、踏ん張って彼女を抱きとめた。
体勢が整って、二人は抱き合うように部屋の中央に立っている。
「……」
「ねえ。支倉、さん」
 ねだるような声色に、何を求められているのか察せられてしまった。
こうやって女の子ってのは大人になっていって、あっという間に手元から居なくなってしまうんだろうなあ、などと
親心のようなものを思ってしまう。
 幼い楓が、顔を上げる。支倉さん、と呼んだその唇に、先ほどのグロスがだぶった。

165 :

「楓」
「――な、なに?」
 目を見開く。
 楓がこちらを覗き込んでいた。
周りは、さきほどのぼんやりとしたわけのわからない空間でなく、間違いなく支倉の部屋である。
ああ、と溜息を吐きかけて、喉がからからに乾いていることに気付いた。
「びっくりした、ベッドから落ちるんだもん」
「……楓、水くれ」
「はい」
 差し出されるコップ。まるで支倉の考えが読めていたようで驚いたが、まずはそれを受け取った。
指先が過敏になっているのか、それがやけに冷たく思える。ぐっとコップを傾けると、よく冷えた水が喉元を駆け下りていった。
 ずるる、と体勢を立て直しながら、ベッドを背もたれにして、支倉は首をひねった。
「なんで俺はベッドで寝てるんだ」
「……は?」
「ベッドは楓が使うものだろうが」
「お、覚えてないの?」
 恐る恐るという風に尋ねる楓を見て、そんなことはないと怒りかけたが、
実際に昨日の夜からぼやぼやとした記憶しか残っていないことに気付く。
まったくおぼえていないわけじゃない、と曖昧に濁して、唸りながらも昨日のことを思い出していく。
 身内だけの同窓会に呼ばれて、そこでたくさんの話をして、まだ結婚できないのかとからかわれた。
なんとなく気に食わなくて、ぐいとジョッキを傾けたが、確かそこまでだ。
「これは?」
「うおっ、なんだそのレシート……長いぞ」
「昨日、支倉さんが買ってきたんだよ」
「……」
 覚えてないんだ、と、楓は呆れたように言う。支倉は受け取ったレシートをしげしげと眺める。
チョコレート菓子の名前が延々と続くそれに、なぜだかさきほどの夢が被さった気がした。
(好きだよ。…………チョコレート)


166 :

「……?」
「っていうか、シャツ皺くちゃ」
「あー……」
 洗濯するから、と手を差し出され、暗に脱げと言われているのに気付かなかったわけではなかったが、それは悪戯心だった。
伸ばされた手を素早く掴み、そして優しく引き寄せた。
予想外の行動だったのか、楓は大した抵抗もせずに支倉の腕の中に転がり込んでくる。
「な、なななな、な」
「昔もこうやって、泣く楓を慰めたよなあ」
「なに、な……! わ、わけ、わけわかんない!」
 そう、昔も、と口に出して、急にさっきの夢がフラッシュバックした。
 幸せそうに笑って、頬を擦り付ける楓。
さきほどは重みを感じなかったせいか現実味が足りないように感じたが、今のこの状況は、現実でしかない。
細身の楓を抱きしめているのは、夢では彼女を止めようとした支倉自身だ。
「……、……」
「ひう!」
 手持無沙汰の両手を、彼女の腰あたりで落ち着かせる。
支倉の両手の輪の中に居る楓はがちりと体を固まらせてしまい、身動きひとつ取らなくなってしまった。
てっきり「離してよ、このえろおやじ!」と振り払われるのだと思っていたが、支倉もまた彼女の予想外の反応に、相当困っていた。

 そして、予想外のことがもうひとつ。

 抱きしめている体は、腕の中でゆっくりと呼吸している。その体はふにふにと非常に頼りなく思えて、つまり、柔らかい。


167 :

「…………」
 おかしい。
 思い出の中の楓は、こんな風ではなかった。
鳩尾あたりに頭がきて、クラスでも小さかったあの頃の楓は、もうここには居ない。
居るのは、短いスカートから惜しげもなく白い脚をのぞかせ、細っこい手で支倉のシャツを握る、女だった。
手を回した腰が折れそうに細く思われ、動揺しそうになったが、余裕を持ってゆっくりと手を離す。
追い詰められた逃走犯のように両手を上げると、胸の中で動かない楓に囁きかけた。
「悪い、冗談が過ぎた」
「……」
「楓?」
 手の輪は解かれ、楓は自由になった。なのに、彼女は動かない。
そんなに嫌だったか、と軽率な行動を後悔しかけた瞬間、楓が動いた。

 ぎゅうっと、首元に腕を回される。楓は膝を立てて、支倉の頭を抱えた。

「か、えで」
「なんで、もう、私が、私は」
 何が言いたいのか楓自身もわからないようで、ぼろぼろと言葉だけが零れる。
長い付き合いだというのに初めての抱き着き方で、楓は支倉に頬ずりするような仕草をした。
そのときに香った甘い匂いに、ああ、あれは楓のシャンプーの匂いだったのかと的外れな納得をしていた。

 彼女が泣いている気がして、支倉は彼女を抱きしめ返した。
 そして、あえて無視をしていた感情と向き合う日が来てしまったのだと、気付いてしまった。


168 :
途中で改行多すぎって怒られたので1レス増えてしまいました、すみません……
以上です、失礼しました

169 :
お久しぶりです!
ずっと待っていました
超GJです
続きも全裸でお待ちしてます。
風邪引いても構わないもんっ

170 :
GJ!

171 :
>>162-168
GJ!!
楓ちゃんが可愛い過ぎる
早くエロオヤジになるんだ!

172 :
ずっと待ってました!
楓ちゃん可愛い。続き期待。

173 :
きたぁぁーずーっと待ってたよー!!支倉さぁーん!!

174 :
きたーきたきたきたー!!gj!

175 :
ヴィクトリア朝の女性の結婚・性交の承諾年齢が12歳な件について

176 :
>>175
あの頃は40代であぼんな時代だったからなぁ…

177 :
実際エドガー・アラン・ポーが24の時に13歳の従姉妹と結婚してんな
それより史実のカプとしてはシューマンとクララが萌えるな
20歳と11歳?の時に出会って5年後にはもうキスとか

178 :
大モルトケ閣下だろ
妹の義理の娘を嫁にしてるし
しかも昔から妹に向かって俺嫁にするならお前の娘にするわとか言ってたんだぜ
大モルトケ閣下マジパネェっす

179 :
ほうほうほうほう13歳の時点で嫁宣言しておいて
「結婚は富籤だ」発言とは大したツンデレだな
おっさんだけど

180 :
カトちゃん夫妻にはまったく萌えないが
ケンコバとココちゃんはなんか萌える

181 :
投下期待

182 :
三十路前のセレブと11才の少年


183 :
五年振りに会う親戚の少年。生まれつきの病のせいで、かつては病院での生活を余儀なくされていた彼であったが、最近は改善の傾向にありリハビリを兼ねて自宅での生活も認められているらしい。
そんな彼がこの夏、私の家へと遊びに来る事となった。
5年の月日は長い。ましてや、子供にとっては尚更だ。
彼を乗せた電車を待ちつつ、私はぼんやりと考える。私の記憶の中の彼は、どのように成長したのだろうか? 病院での生活が長いから、相変わらず色白なのだろう。
幼少の貴重な時間を閉鎖的な空間で過ごしたせいで、屈折した性格になってはいないだろうか? 不安は募る。
電車が到着した。溢れる乗客。
その波から少し遅れて、彼が現れた。
「私ね、付き合うならきっと歳が離れた人とだと思っていたの」
「ああ、そんな事言っていたわね」
「まさか、実際に胸を鷲づかみにされたその人が、あんなに離れているとは思わなかったけど」
「へぇ……。いくつ?」
「――11」
「はぁ? あんた23でしょ? 34かぁ。まぁ、アリ……かなぁ」
「――下に」
「うん?」
「上じゃなくて、下に」
「……って、12?」
「うん」
「いやまて、それはないわ。ソレは犯罪だわ。ソレくらいの歳なら、可愛いとは思ってもそれ以上はちょっとないわ」
「ですよねー」
でも、本気でそう思っている自分がいる訳で。
ただの母性本能とか、保護欲とか、それだけじゃないと思う。
「私はさ、アンタの恋が本気なら反対はしないけどさ」
「ほんと?」
「まぁ、程ほどにね。それで聞きたいんだけど、やっぱ精通ってしてるわけ?」
「さ、さぁ? まだソコまでは確認してないなぁ」
昨日のお風呂の一件からして、既に確認済みだったりする訳だけど。
ああ、今日も「病弱な親戚を心配をするあまり、お風呂にまで押しかけて介添えする親戚のお姉さん」を演じなければ。
ふふふふふ。
「何にやけてんの?」
「わかってる、分かってるから、お姉さんに任せて……ふふ、ふふふ」
「……ダメだコイツ、イッてやがる」
「え、母さん、今晩居ないの?」
「うん。町内会の集会があって、遅くまで帰ってこないって」
「ああ、そういえばそろそろ祭りか。母さん、ああ見えて祭り好きだから」
「何かあったら電話してくれって言ってた。僕としては、電話しないで済む方が良いんだけど」
「それが一番ね。(でないと、せっかくの二人きりというチャンスがががが)」
「お姉さん?」
「いや、そうね、うん。とりあえず、お風呂にしよっか?」
「え? ……え?」
「ほら、脱いだ脱いだ。今日も綺麗に洗ってあげるから」
「あ、いや、僕ももう12歳だし、はずかし――」
「23の私が恥ずかしくないんだから(本当は恥ずかしいけど)気にスンナ!」
「あ、ちょっと、自分で脱ぐから脱がさないで」

こんなノリのを仕事の合間にチョコチョコと書いてたら、ふとした切欠に危うく大惨事になる所だった。
無事回避できたが、ショタチンポ弄りのシーンが職場バレとかキツイわw

184 :
>>183
何やってんだwwwwwwwwwwww

185 :
>>183
仕事中は自重しようw
でも投下期待!!

186 :
「ふふっ、面白いもの見ちゃった。>>183クンって、年上の色っぽいお姉さんにいじめられるのが好きなんだ」
的な先輩女性社員の登場はまだですか?

187 :
>>183
わっふるわっふる

188 :
なんという俺好みの年上のお姉さん
俺の中で何かが弾けちまったぜ

189 :
>>183
いいぞもっとやれ!

190 :
学生の頃に戻りたひ…

191 :
いやおっさんになった今こそ清楚な女生徒を…フヒヒ

192 :
3次だけど俳優の濱田岳羨ましすぎだろ。
井川遥と共演したインテルのCMの時の年下キャラも良かったが
リアルで自分より9才年上で約20cm背が高いスーパーモデル姉さん女房なんか貰ってしまうとは。

193 :
くっそくっそ!

194 :
爆発しろ

195 :
今夜22時からNHKのドラクロワで女教師と男子生徒の恋物語らしい

196 :
浅尾きゅん優勝おめでとう

197 :
年の差の何に萌えるかって、
想いを掛けられている方は自分は若すぎる・年上過ぎるから
異性としての魅力がないと思っているのに対して、
懸想している方はそんな相手に異性を感じている(ムラムラしている)
というこの気持ちのギャップに萌える

198 :
カノジョを見て、もしオレが20代のときなら無条件で懲役3年なのかと思うだけで萌えまくる今日この頃・・・

199 :
年上のお姉さん用心棒に守られる貴族の男の子という電波を受信した

200 :
>>199
それは良いな素晴らしい

だが男性年上でおっさんと女子中学生、女子小学生というのにも興味惹かれる

201 :
女子小学生に守られるおっさん?
斬新だな。

202 :
>>201
いや下段はおっさんと女子中学生、女子小学生の組み合わせが最近好きだって話ですw

203 :
ロリに守られるオッサンもありだろ

204 :
>>199
その電波の発信元は私だ、早く執筆作業に入ってくれたまえ。

205 :
まだ幼い女の子に慕われてるおっさんが良いな

206 :
「おじさんは料理が上手くて凄いなぁ」
「一応プロの料理人だからな。んで、一体何料理を作りたいんだ?」
「おじさんが好きな料理がいいな」
「俺が好きって言うと、和食だな……。よし、肉じゃがとかどうだ?」
「それ、おじさんが一番好きな食べ物?」
「そうだな、好物の一つだ」
「うん。じゃあソレの作り方を教えて!」
「よしよし。じゃあ、まずは材料を買いにいくとしよう」
(買い物後)
「ところで、何でまた急に料理を教えてくれとか言い出したんだ? ドラマか何かの影響か?」
「んっとね、お父さんとお母さんが結婚した理由を聞いたの」
「ほう」
「お父さん、お母さんが作った料理があまりにおいしくて、お母さんと結婚しようと思ったんだって」
「ははは、なるほどなるほど。その気持ちは分からなくもないな」
「ホント?」
「ああ。やっぱり美味い飯作ってくれる嫁さんは嬉しいよ。ソレが自分好みの飯ならなおさらだ」
「良かった」
「つまり、お前もそういう事を考える歳になったって訳か。好きなヤツに食わせる為の練習か、いいねぇ」
「うん。胃袋を掴めば勝ちだってお母さんが言ってた」
「ハッハッハ! よしよし、俺がしっかりと美味い肉じゃがを伝授してやるからな」
「うん! 目標はおじさんが結婚したくなるような美味しいヤツだからね」
「おうよ、任せとけ。 ――え?」
「――え?」

出演:家事スキル高いおっさん&のほほんと好意を隠そうともしない女の子

207 :
>>206
これは萌えるw

208 :
>>206
貴方は神か……
うらぶれた中年と、その世話を甲斐甲斐しくする中高生っていいよな。
探偵と助手気取りのコとか、叔父と姪とか。
最近だと陸乃家鴨の新作とかもいい。

209 :
>>208
その電波を撒き散らしてるのはお前さんか!
ダメなおっさん←肉食系女子中高生とか
もちろん援交とかでないっつーのが大前提で

210 :
女子向けドラマCDで
「三十路の警察官と、従姉妹の女子高生」って設定のがあったな
警察官の勤務先に合わせて通う高校を選び
毎日手作り弁当を届けて最後は警察官がオチるという

211 :
いまアニメやってるP4のネタバレになってしまうが
主人公の叔父(刑事)と男装高校生探偵とか
おっさん×少女的に萌えるんじゃないかと思った

212 :
>>208
そう言う感じだと、ドラマの三代目明智が素晴らしかったな

213 :
今日本屋でふと、引かれるように何気なく手に取った本が
オッサン×女子高生の恋愛小説だった。
もう自分には、年の差萌えの神がついているとしか思えない。

214 :
>>213
タイトルkwsk

215 :
>>214
三代目明智小五郎〜今日も明智がされる〜
三代目明智がへたれで、三代目小林少年(女子高生)に
仕事からプライベートからひたすら世話焼かれてる
それだけのドラマと言っても過言でないw
ちなみに明智は田辺誠一だから、オッサンらしいオッサンじゃないとって人はダメかもしれん

216 :
>>214
楡井亜木子って人の本で、「あなたを独りで、泣かせはしない」
忙しくてまだちょっとしか読めてないけど、なかなかいい雰囲気だよ。
ありがとう、年の差萌えの神!
ttp://www.junkudo.co.jp/detail.jsp?ID=0111683919

217 :
>>210
良かったらそのドラマCDのタイトルか、タイトル晒すのが問題だったらヒントを下さいな

218 :
>>217
タイトルは「月刊男前図鑑 制服編 白盤」
ドラマCDというより、男性側の一人語りなので
シナリオもツッコミどころが多いが、自分にはツボだった

219 :
>>218
ありがとう!じっくり調べてあいそうだったら買ってみる!

220 :
>>215
なにそのタイトルw
だけどいいな、面白そう
こんど借りてこよう

221 :
ブータン国王夫妻の馴れ初めの話だけでご飯三杯はいける
素晴らしい置き土産ありがとうございます(´Д`;)ハァハァ

222 :
女王様と王子様とか女王様と執事の男の子とか
女王様と衛兵の男の子とか女王様と(ry

223 :
>>221
今同じ事書きにきたところだw
彼女が七歳のときにプロポーズしたとか、妻はひとりでいいとか…ぱねえ…

224 :
>>223
気になって今調べた
これはいかん、どストライクすぎる

225 :
「さぁ、責任を取ってくれますよね!」
 バンと勢いよく卓を叩きながら、曜子は俺を睨んだ。
 綺麗に切りそろえられた前髪の下では、キリリとしたどことなく男前な瞳がまっすぐに俺を見つめている。
「今更、アレは冗談でした〜なんて言わせませんよ」
「ええと、何と言うか」
「ソレともなんですか? おじさんは自分の言動に責任が持てないと、そう仰るおつもりですか」
「そんな事は無いが……」
「じゃあ、ココに判子を押すのはおじさんの義務ではないですか」 
 そういいながら彼女は俺に一枚の紙を突きつける。
『婚姻届』
 今までの俺の人生に置いて、これっぽっちも縁が無かった言葉が印刷されているソレには、既に欄の半分が記入されていた。
「私、おじさんとの約束を守りました。始めてあった10年前から、成人する今日この日まで。
 おじさん10年前に言いましたよね? 私が結婚してくれと言った時、もし私が成人するまで一度も彼氏が出来ずに、キスはおろかデートの経験すらない
惨めな人間だったら、惨めな者同士結婚しようって!
 だから私、当然処女です! デートの誘いも、付き合ってくれって言う告白も全て断りました! 勿論キスなんて夢の中のおじさん意外とした事なんてない
ですし、男の子と手をまともに繋いだ事もありません!」
「いや、だから、俺が言ったのは、曜子ちゃんだったらそんな事にはならないから、結婚はまず無理だよって言う――」
「当時の私はそう解釈しました! 身持ちの硬い女になれと、そういう意味なのだと!」
「えぇ〜……」
 フンスと鼻息荒く詰め寄ってくる成人したての小娘に対し、今年で35になろうというおっさんの俺はといえば、しどろもどろに後ずさるのみ。
 ドンと背中に衝撃。壁だ。追い詰められた。
「私がどれだけこの日を待ち望んでいたか、わかりますか?」
「いえ、その……スミマセン」
 追い詰められ、吐息が顔に掛かるくらい接近され、目を反らす訳にいかず、改めて曜子を見る。
 昔の俺の読みは当たっていた。俺がもし今より10歳若く、俺とは思えないほどの行動力と勇気があったならば、声を掛けずには居られない女がそこに居る。
「歳を一つ重ねる度に、ベッドの上で悶えるんです。歳を重ねる毎にいろんな知識が備わって、想像が豊かになるんです。こうしておじさんの部屋に遊びに来た
日は決まっておじさんの夢を見るようになるんです。夢の中で、おじさんと色んなHなことをしようとして、恥ずかしくなって何も出来ないまま目が覚めて、
夢だったのなら――せめて夢の中で位!って何も出来なかった夢の中の自分を恨むんです!」
 曜子の目は本気と書いてマジだった。
「三ヶ月前くらいからはもうずっと、カウントダウン状態で……正直に言うとココ三日くらいまともに眠れて居ません」
「……」
「それくらい、想っているんです。今更、おじさんの事を忘れることなんて出来ません」
 そう言って、曜子は俺に抱きつき、俺の胸に顔を埋めた。
 先ほどまでとは打って変わって弱弱しい、震える声で曜子は言う。
「だから、責任を取って下さい。おじさんが今日まで誰とも結婚しなかった責任を。私に、おじさんを諦める切欠をくれなかった責任を――」
「曜子ちゃん……」
 俺は彼女を抱きしめ返し、耳元で囁く。
「分かった。責任は取らせてもらう。……だから、俺なんかを選んだ事を後悔しないでくれよ? 俺は、ソレが一番怖いんだ」
「後悔なんて、そんなことする筈が無いじゃないですか」
 顔を上げ、涙で目を赤くした曜子が笑う。
「私だって、今までデートすらしたことが無いんですよ? 今おじさんと結婚できなかったら、その後一生、結婚なんて出来る機会が現れる事なんてないんですから!」
そんな話を国王夫妻の流れから思いついたので書いてみた。

226 :
>>225
やだなにこのごほうび

227 :
>>225
ひゃっほう
なにこれ萌える
女の子に押される気弱なおっさんもいいな〜

228 :
たぎった…

229 :
年上のお姉さんと年下の男の子をオナシャス!

230 :
ミサトさんとシンジくんに萌えられるのはもう昔のアニメ(の前半)だけの特権だなー

231 :
今週のシャナで年上お姉さん×年下男子高校生のベッドイン→朝チュン描写ががが

232 :
>>231
落ち着けw

233 :
この間の渡辺謙さんのドラマでたぎった。

234 :
妹が買ってきた路地恋花って漫画が良かった
純文学系小説家としての夢に敗れて、
場末の喫茶店やりながらも大成する夢を諦められないおっさんが
外見ビスクドール京女女子高生、でも大の京都嫌いで反抗期
に気に入られて、店に入り浸られてるうちに少女に堕ちていく
という、このスレ御用達な内容だった
個人的にはその一本前の画家の話もオススメだけど

235 :
てst

236 :
4月発売のゲームにおっさん少女要素があるんじゃないかと今からwktkが止まらない

237 :
>>236
kwsk

238 :
>>237
3DSのファイアーエムブレムっていうゲーム
キャラ同士で支援を組むとエンディングで結婚したりする
最新作は支援同士でダブルアタック?が出来るみたいだから
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm16537017 の1:18あたりからの
おっさんと少女で支援が組めるんじゃないかと妄想している
説明の意味がさっぱりだったらごめんね
シリーズでもけっこう年の差カップルが多いから
年の差好きにはオススメのゲームだと思っている

239 :
写メとりました♪
お風呂あがってから写メとりました
Hな写メなどたくさん載ってます。
ぜひ見てください☆
http://m.invites.ameba.jp/m/registerSIDConfirm.do?inviteEkey=f44d151956060c2f3&mkey=49270999fc0737fec&guid=on
あんま見られるのも恥ずかしいので携帯専用です❥
ケータイからどうそ☆彡

240 :
牧場物語新作でも着流しのおっさんと結婚できるね
おっさんじゃないけど年上執事とかもいて結構wktk
しかしおっさんキャラは定着しつつあるけど
そろそろ熟女の嫁候補をだな・・・

241 :
病気のせいで田舎で一人暮らしさせておくわけにいかなくなって
都会の主人公の家に引き取ったお爺さんが長い闘病生活の末他界。
その遺言で荒れ果てた田舎の家と畑を復興させるために向かう主人公(もちろん色白ひ弱なもやしっ子少年)。
すると田舎の家の最寄りのローカル線の駅の駅員も、そこから乗り継いだバスの運転手も
バス停の前にあるよろずやの店主も全ておじいさん&おばあさんで村はさびれきっている。
おじいさんが元気だった頃に長い休みに遊びに来た時との変貌にショックを受ける少年。
ひとまず家に向かうと、草がある程度むしられたりして手入れがされている畑に気づく。
誰のおかげだろうと思ったら生垣の向こうから女の人の「こら待てー!」みたいな声と一緒に
山羊が飛び出してくる。
驚いてぼけっとしていると、その山羊を追ってきた隣のお姉さん(30over)が少年を山羊だと勘違いして
思いっきり抱き締めて捕まえようとする。
そんなこんなで昔憧れだったお姉さんと再会して始まる牧場物語はありませんか?

お姉さんは海外青年協力隊とかで農業支援に携わった上で地域の農業の再興に取り組もうと
高い志を持って空き家になった実家に戻ってきたけど
一人での生活もままならない周囲のお年寄りの面倒を見たり、その日その日の作業に追われたりして
現実と理想のギャップで志を失いかけていた。
そんなところに同志になりそうな少年が来て、かつての溌剌さを取り戻すとお姉さんぶって色々田舎や農業の事を教えて
共に働き弟のように可愛がる。
けれどある時、少年に恋心を抱いてしまっていることに気づき戸惑うお姉さん。
それを田舎生活でたくましくなった少年が受け止め愛し合う二人。
気はいいけどゴシップ大好きな周囲のお年寄りがそれをほくそ笑んで眺めながらはやし立てる。
そんなこんなで少年とお姉さんが結ばれていく牧場物語がありましたら10kまで出します!

242 :
>>241
もうお前がゲーム作れよwwwwwwwwww
いや作ってくださいおねがいします

243 :
ここの住人でゲーム作ればいいんだよ

244 :
>>241
今更だけどなにこれ萌える

245 :
姉がブラコンである事は知っていたし、一人娘を溺愛している事も知っていた。
しかしまさか、愛娘と俺を結婚させようという野望を持つ程だとは知らなかった。
全てを俺が知った時、目の前には俺に三つ指をつく姪の姿。
「おねーちゃん、人生で一番本気出しちゃったわ」
親指を立てて何かの達成感を味わっている姉。
呆然とする俺。
つーか、姉さん、旦那さんはこの事知ってるんですか? 何て言ってるんですか?
「無論、説得済みよ! 結納が決まれば、即挨拶に来るってさ」
えー、なにそれー。
それになんか、姪っ子の俺を見る目がマジなんですけど。「慕っています」感が半端じゃないんですけど。
姉さん、アンタ娘にどんな教育してんだよ。

そんな電波を受信した。
常に旦那の半歩後ろを歩くような、幼な妻(夜伽を期待していますアピールあり)とかたまりません。

246 :
よし、そのまま文章化しようか

247 :
おじと姪じゃ「三親等内の傍系血族」で結婚はできないんだがそれはさておき
絆されるのか姪が押し倒すのか興味があります

248 :
じゃあ大叔父、大伯父と兄弟姉妹の孫娘でw

249 :
ツンデレ女子高生が独身おっさん先生にバレンタインのチョコを渡す…
今日はこの妄想で乗り切ろう

250 :
小中高のどれかの女子生徒からバレンタインチョコ貰うおっさん……
18歳未満の美少女からチョコ貰いたいですぅ

251 :
 あまい。
 何がと言えば匂いであり、雰囲気でもある。最近は肉を腹一杯食べると次の日に響くようになり年齢を意識した僕には甘すぎる。
しかし僕とは違って若々しい花の高校生たちは廊下で教室で、今日という日を目いっぱいに楽しんでいるようだ。
どうも話を聞くに、僕らが学生の頃には無かった“トモチョコ”だの“セワチョコ”だの、訳のわからない“ホモチョコ”なんていう
ものまでが現れたらしい。世代が違うと異文化だなあ、と先生方と笑ってみた。

 そんな今日を精一杯楽しんだ高校生が帰っていくのを屋上から眺めながら、僕はコートの襟を掻き合わせた。
吐く息がぼんやりと白くなり、まだまだ冬だということを感じざるを得ない。
友人を突っつきながら、あるいは好きな人と手を繋ぎながら校門から散らばる人影を見ながら、鼻をすする。
「若いなあ……」
 胸やけしそうになり衝動買いした無糖コーヒーの缶を掌で包みながら、思わず呟いた。
「うわあ、年よりくさい」
 その呟きに、背後から返事がくる。この寒い時期の屋外に人が来ることには驚いたが、声には聞き覚えがあった。
「現役高校生と比べるとどうしてもなぁ」
「……否定しないんですか」
「できないからね」
 振り返ると、ぶすくれた表情の女の子が一人立っていた。コートを着込み、ミルク色のマフラーが口元まで覆っている。
肩に鞄を背負っているところから帰宅直前だということが分かる。彼女は今日の僕の授業でもうたた寝をしながら化学式を写していた。
試験前でもないのによく質問に来てくれる勉強熱心な生徒だ。
「質問かな? ここは寒いだろ、職員室で聞こう」
「や、違うので……ここで」
「ここで? 寒くないか、そんなに足出して」
「わっ、若いからいいんです!」
 そう吠えると、彼女はまっ白い脚で僕に近づいてきた。
タイツの生徒もちらほら見るが、この気温の中で素肌を晒す根性はさすが女の子だなあというところだ。
びゅうと吹きつける風が冷たくて身震いする。
 目の前で立ち止まった彼女は、うつむき気味で、目を伏せていた。見下ろすと、まつげが長いのが分かる。
彼女の柔らかそうな髪の間から覗く耳が、鼻先と同じくらい赤くなっていた。僕の鼻もこれくらい赤いんだろうか。
「先生はどうせ今日誰からも貰えなかったんだろうなって、笑いに来たんですよ」
「はは、手厳しいなあ。でも残念でした」
「え」
 弾かれたように顔を上げた彼女の目が丸くなる。
確かにこんなおじさん先生にチョコを贈る女子生徒なんて少ないかもしれないが、可愛くラッピングされたものをいくつか渡されたし、
女性の先生方からも頂けたし、ゼロではないのだ。嬉しいが、消化に時間がかかりそうだ。

252 :

 見る見るうちに彼女は不機嫌そうになっていった。先ほどよりずっと険しい表情で睨まれ、苦笑がもれる。
「……」
「そんなに怒らなくても……」
「……。それ、全部義理とか世話とかですから、勘違いしないでくださいね」
「分かってるって」
 僕がぬるくなり始めた缶コーヒーを摩ると、彼女は顔をそむけて、溜息を吐いた。
おおきな白濁がふわりと浮かんで、水泡みたいだなと思う。
「あ、これ少しは温かいけど、触っておく?」
「……、うん……」
 彼女は素直にうなずくと、ポケットに突っ込んでいた手を出して、僕に手を伸ばした。その白くて小さい手に缶コーヒーを持たせてやる。
一瞬だけ触れた指先が冷え切っていて、カイロでも持っていれば渡せたのにと後悔した。
「あの!」
 やっぱり寒いし屋内に引っ込もうか、と提案しようとした矢先の切羽詰まった声に、僕は思わず声を呑みこんだ。
「な、何かな」
 返事には驚きの色が色濃く表れていて、格好がつかない。
しかし彼女は僕の格好悪さには言及せず、視線をうろうろさせて、何度も瞬きをしている。
二度ほど呼吸を挟んで、彼女はようやく意を決したように口を開いた。
「ほ、本当に、勘違いしないでくださいよ!?」
「だから、大丈夫だって……」
 よっぽど僕はガツガツしているように見えるらしい。
手をぶらつかせ、よこしまな気持ちがないことを伝えようとしたが、彼女は目の縁を赤くして、
「先生みたいなおじさんを相手にする枯れ専は、わ……私しか居ないんですからね!」
 そう言い捨てて僕に向けて何かを投げつけると、一目散に駆け出して行った。
ばたばたと走っていく途中にスカートが際どいところまで翻って、生白い脚が目に焼き付く。
本当、最近の女子高生はあんな短いスカートでよく頑張るな、と考えて、現実逃避から思考が引き戻された。

 開け放たれたままの出入り口を眺めたまま、立ち尽くす。
取り残された僕は受け止めた何かを腕に抱えたまま茫然として、それに視線を落とした。
「僕、そんな枯れてるかな……」
 そんなことを考えなければ、かわいらしくラッピングされた箱を直視できなかった。

***
>>249-250を受けて遅れたがバレンタイン投げ

253 :
うおぉ、GJ!
いやいや、投げずにー!
願わくば、この続きがあるとうれしい・・・

254 :
>>251-252
GJです
続きが気になるw

255 :
GJ!!!
続きをだな…

256 :
GJ
続き読みたいな…

257 :
WANだのCMいいなぁ

258 :
>>251-252
GJ!萌えた
出来れば続きも書いて欲しい

259 :
ホワイトデーはおっさん先生からお返しを貰って、
「別にお返しなんか期待してなかったんですよ!でも、先生がくれるなら貰いますから!」
って言って顔を真っ赤にする女子高生
そんな妄想してたらいつの間にかホワイトデーが終わってました

260 :
 僕はセーターの裾を肘まで捲り上げたまま、開け放ったままの窓の外を見た。マスク越しに深呼吸をして少し咳き込む。
肺に取り込む空気は、刺すように冷え冷えとしたものではなくなったが、代わりに花粉が辛い時期になってきた。
例に漏れず僕も軽度の花粉症である。
 窓のそばにある桜の木はまだ冬の格好のままだったが、入学式を迎える頃には花をつけるだろう。
今日の日付は三月十四日――それを確認するたびに、僕は一月前のことを思い出す。
「……うーん」
 彼女が投げつけた可愛らしい箱の中身は、たぶん手作りであろうチョコレートとクッキーだった。
甘すぎないトリュフに、サクサクのラングドシャが綺麗に詰められていて、小テストの採点のお供に頂いた。
とても美味しくてびっくりしたのをよく覚えている。しかし重要なのは味ではない。
 二月に発覚した彼女の気持ちについての僕の見解は、“気の迷い”だ。
高校生というのは多感な時期で、彼女のように周りの男子生徒とは違う教師というものに興味を示すのは当たり前のこと。
それがたまたま僕だっただけで、きっと高校を卒業して外に出てみれば、僕のことはいい思い出になるだろうと思っている。
「そうに決まってるさ」
 自分に言い聞かせるように言って、僕は窓を閉めた。
新学期が始まる前に、と始めた化学準備室の掃除をようやく終えられた安堵の息を吐く。
休憩にコーヒーでも飲みたいな、と思ったところで、控えめなノックが二つ響いた。
「はい?」
「先生、失礼します」
 思わず返事がワンテンポ遅れた。扉を開いたのは、彼女だった。
 あの二月十四日と同じ格好をした彼女は、マスクをした僕を見て怪訝そうに首を傾げる。肩先から髪がこぼれた。
「風邪、ですか?」
「いや。花粉と埃対策にね」
「掃除ですか。お疲れさまです……あの。これ、どうぞ」
 彼女がスクールバッグを漁って差し出してきたのは、黒い缶の無糖コーヒーだった。
目を丸くしてしまったが、すぐに笑って受け取る。「ありがとう」、缶は温かい。
彼女は耳元をほのかに赤らめて、鞄の中から缶コーヒーをもう一本取り出した。
僕のものとは違う、柔らかい色調の甘いコーヒーだ。
「とりあえず、座って」
「はい……」
 僕には少し小さい椅子も、どうやら彼女には丁度いいらしい。
温かい飲み物で唇を潤して、僕は口を開くタイミングを探していた。当たり障りのない言葉も思い浮かばない。
彼女は彼女でちびちびと缶に口をつけるばかりだ。しかしこのまま黙らせていては可哀相である。
「……そうだ。ちょっと待っててね」

261 :
 腰を上げた僕を見上げて、彼女はこっくりと頷いた。僕の荷物から、一つの紙袋を取り出すと、ふたたび着席する。
机を挟んで向き合った状態で、僕はシックな色合いの紙袋を差し出した。
彼女は袋を見て瞬きをして、二度も僕とそれとを見比べた。
「これは?」
「お返しだよ。ホワイトデーだからね」
「えっ、あ……!」
 僕の手からうやうやしくそれを受け取った彼女は、ぽかんとした顔で袋を見つめていた。じわじわと頬が赤くなっていく。
彼女のように色白な子は、血の色が透けやすいせいで、表情の変化がわかりやすい。
僕の微笑ましさ全開の視線に気付いたのか、彼女はキッと僕を睨んだ。
「……べ、別にお返しを期待してあげたんじゃありませんから!」
「いらなかった?」
「先生が、くれるなら……貰います」
「はは。チョコレートもクッキーも美味しかったよ」
「ほんとですか?」
「本当です」
 それを聞いて、安心したように微笑む彼女に、僕の顔もゆるむ。でも僕は言わねばならないことがあるのだ。
彼女を諭さねばならない。僕への気持ちは一過性のもので、思い出になるべきものだということを伝えておこう。
 わざとらしい咳払いを一つして、僕が話を切り出そうとしたとき、彼女がガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。
「先生」
 彼女には話を遮られてばかりだ。勢いに押されて、僕はまたも言葉を飲み込む。
「……な、何かな」
「私、諦めませんから」
 二秒かかって、先を越されたと気付いた。
 今度は僕が真っ赤な彼女をぽかんと見上げる番で、僕が渡した紙袋を大事そうに抱いた彼女は扉へと駆けて行く。
なんとなくデジャヴだ。扉に手をかけ、彼女は僕をちらりと見ると、表情を険しくした。やはり耳が真っ赤である。
「ば、バレンタインには三倍返ししますからね! 分かりましたか!?」
 疑問系を取っているくせに、彼女は返事を聞きもせず扉を閉めた。本当に人の話を聞かない子だ、と僕はまた取り残される。
 テーブルに残った無糖コーヒーを煽って、飲み下す。
「……まいったなあ」
 諦めさせるどころか、来年の約束まで取り付けられてしまった。どうすればいいのだろう。
そう思っても、一番やっかいなのは、来年が少し楽しみに思えてしまった僕自身だというのが手に負えない。
外から差し込む春めいた日差しで、背中がじんわりと温かかく感じた。

***
>>259を受けて遅刻ホワイトデー投げ
バレンタインに反応ありがとうございました

262 :
259ではないが、ナイスだ! そしてGJだ!

263 :
おおおっ、良い物を!
いやいやいや、投げずにー GJ!!
…………続きを全裸で待つことにする…よ?

264 :
おおお、自分の妄想が文章化されるとは…!
ありがとうございます!そしてGJです!!

265 :
GJ!続きを是非!

266 :
FE覚醒のグレゴ×ノノに萌えたage

267 :
暇つぶしに妄想
幼い頃から勇者として育てられていた少年(15歳)が旅に出て、特に大事件もなく魔王の元へと到着する。
でも魔王は実は美女であり、大人の女性としての熟れた肉体とテクニックで彼を篭絡する。
そして、実は「魔王が親から自動的に受け継がれる仕事」であること、「人々に一定の恐怖と脅威を与え続けることで世の中にある程度の秩序」を与える役職だと知り、次代の魔王を産ませるために魔王を孕ませるために旅に出たのが勇者と教える。
困惑する勇者だが、魔王は次代の闇を残し勇者に倒されて、代わりに魔王に捕われていた美女を救い妻にした、と流され、勇者と魔王はなし崩しに夫婦になることに。


在り来りやね

268 :
>>267
次代に闇を継がないように勇者と魔王が手を取って動いたり周りのキャラを巻き込んだりするともっと在り来たりになるなw

269 :
>>268
勇者の仲間になるはずだった女僧侶、女魔法使いのお姉さんたちはその話に納得行かず、多夫多妻制度を盾に勇者の妻になろうとする
しかし最初から勇者にデレデレなショタコン気味の魔王様はそれが嫌で、より一層勇者の側にいようとする

うわー、一山幾らの漫画だな

270 :
「ちょっと!それ、どういうことよ!」
「そうねぇ。私も、説明して欲しいなぁ?」
烈火の如く怒り猛る魔法使いの美女と、穏やかながら拒否を許さぬ僧侶の美女の声に、勇者たる少年は、背筋を震わせた。
眦にはうっすらと涙が浮かんでいる。
当然である、つまらぬ理由で勇者に飾り立てられて旅にだされたとは言え、少年は未だに12歳。
理由を理解出来ぬ怒りをぶつけられては、感情が恐怖に染め上げられるのも無理はなかった。
「ちょっと!泣いても許さないわよ!」
「でしたら、お帰り下さいませ。勇者様はこの家の主様、幼き主様を理不尽な怒りで泣かせる不届き者は、当家への立ち入りを禁じさせて頂きますわ」
「あ、フィーさん!」
なおも怒りを隠さずに少年にぶつけようとした魔法使いに、侍女が声をかける。
少年へ見せる慈悲深い優しい表情と違い、魔法使いと僧侶には感情の篭らぬ冷たい視線を投げかけている。
この侍女、少年が全幅の信頼を預けるだけのことはあり、家事から夜伽まであらゆることに精通していた。
またその衣装の胸部を大きく盛り上げる爆乳も、魔法使いは気に入らなかった。
僧侶のようにある程度の大きさがあり、美しいと形容される胸ならばいいが、魔法使いの胸は悲しいことに、全く育つ気配がなかった。
「このフィーナと、魔王討伐の際に見初められたアルヴィール様が勇者様の妻なのは、帝国教会にも認められた厳然たる事実でございます。異議があるのでしたら、帝国教会へどうぞ。最も、二度と我が家の敷居は跨がせませんが」
侍女の声に、魔法使いと僧侶は渋々と去って行く。
下手に対抗しても、勝ち目はなかった。
バタン、と音を立てて玄関が閉まった後、フィーナは先程の凛とした顔付きを忘れたかのように、顔を崩した。

―――これは、未だ12歳の幼き龍勇者と、未亡人侍女のフィーナ、魔王ことアルヴィールの三人が繰り広げる、(性的な意味での)勇者育成の物語である―――
続かない

271 :
なんか人間関係がわからない
4人出てるのか?

272 :
楓ちゃんの続き気になるなー。脳内で続き考えちゃうよ。

273 :
「先生、教えて下さい。愛に国境は関係ありますか?」
「さぁ、無いんじゃないですか?」
「では、愛に性別は関係ありますか?」
「大多数の人にはあるかと」
「なるほど。それでは、愛に年齢は関係ありますか?」
「あまりないんじゃないですか? 国が定めた法律がソレを邪魔することはあっても、人を好きになること自体は小さな子供でも体験するんですから」
「素晴らしいです。じゃあ先生、私達はどうでしょうか?」
「客観的に見れば、まぁ……問題はないかと」
「ふむ!」
「ですが、何と言いますか、僕自身が人を愛するという事を忘れたといいますか、愛する事に疲れたといいますか……」
「ソレがなにか問題ですか? 忘れたのなら、私が思い出させてあげます。疲れたのならば、私が癒してあげます。先生、貴方自身が私に言ったんですよ」
「人を愛する事は素晴らしい――ですか?」
「はい! あの日、あの時より、私の胸中は貴方を愛したいという思いで溢れています」
「それであの論文? 周りくどいというか、どストレートというか、反応に困る提出物でしたね」
「いかがでしたか? 判定は?」
「――困ったなぁ。教員としてあるまじき事ですが、当の論文を紛失してしまったようだ」
「構いませんよ。同じ物をコピーして用意してありますし、コレがなくても一語一句朗読できますから」
「ふぅ――。本当に困りましたね」
「先生、無理に愛してくれとは言いません。愛せないのなら、愛されてください。少なくともソレで満足する女が一人、ココに居ます。それとも、私に愛される事自体が迷惑ですか?」
「……」
「無言は肯定と受け取りますよ?」
「それ、否定っていうべきでは?」
「いえいえ、だって先生は私に誤解されることを恐れているでしょう? 本当は人を愛したいし、愛されたい。そう思っているくせに、歳の差とか、苦い過去とか、そういった物を盾に自分の本心を隠してしまう弱い人。それが先生なんですから」
「……」
「先生は私が、先生の言葉を素直に信じ、従うことを知っている。だから私が去るという選択肢を掲げれば、先生はソレを否定するしか無い。そうしないと、私は本当に去ってしまうから。素直になれない先生は、そんな事、耐えられないでしょう?
 一度きりしかない人生なんです。どうせ絶望した人生を生きるなら、少しでも心地いい場所に収まりませんか?」
「それが、君の隣かい?」
「少し違いますね。私の胸の中です」
「君には敵わないなぁ。自分の人生の半分の長さも生きていない子供にソコまで見ぬかれていたら、今更些細な僕のプライドや恥なんて、あってないものかもしれませんね」
「私は好きですよ。先生のそういう所」
自分で書いてて何だコレ。俺はただ、人生に弱り切ったおっさんと、若さでソレを引っ張るお嬢様を書きたかっただけなのに……

274 :
>>273
いいよいいよいいよー

275 :
君と僕2の、ゆっきーと食堂のシンデレラに萌えた

276 :
>>275
あのふたりいいよね
ゆっきーがこっそりお姉さんの髪の毛に触ったとこ萌えた

277 :
そのアニメは見たことないけど
「こっそりお姉さんの髪の毛に触った」
という>>276の文章だけで萌えた

278 :
年の差ゲームないかなー
おっさんと少女の生活を第三者の視点で見守るゲームとかあったら絶対買うのに

279 :
http://www.pornhost.com/3835813230/
http://www.pornhost.com/4196058122/
http://www.pornhost.com/8982550961/

280 :
↑今年46になるヒモ歴12年の男だが
俺はぬまで、こういう状態を築き上げたい。自信はある。俺の師匠が67歳だったからな

281 :
おっさん×少女のなんかいい本ないか
>>216のなかなかよかった。男がもう少し歳を感じさせてくれれば尚よかったけど

282 :
俺のように一応そこそこ金持ってても女に触れさせてもらう事すら出来ないキモメンも居れば、
ガキの頃近所に住んでた還暦過ぎの爺みたいに、貧乏てわも若い女と遊びまくりの男も居るんだから不条理極まりないないわホント( ;´Д`)

283 :
貧乏てわも→貧乏でも

284 :
今日買ったジゼル・アランって漫画が青年×少女っぽい感じだった

285 :
年上男年下少女ものって、大抵が少女の方がしっかり者な気がする

286 :
しっかりした幼女が好みなだけだ!
そんな幼女がたまに、歳相応に甘えてみせたり、わがままを言ってみせたりするのを優しく受け止めるオッサンorお兄さんという組み合わせが大好物なだけだ!
個人的な趣味は置いといて、やっぱり女の子って、ませてるじゃない。そんなイメージを形にすると、しっかりものっていう姿になりやすいんだと思うよ。

287 :
幼女かわいいいキエエエ

288 :
復帰

289 :
保守&投下
家庭教師男と教え子
エロなしですんません
以下2レスほどお借りします

290 :

「本当にそんな安いやつでいいの?」
「うん」
満面の笑みで頷く彼女の手には100円程度のアイスが握られていた。
せっかくのご褒美なんだからもっと高いやつを選んだっていいのに…
散々こっちはどう?あっちはどう?なんて彼女が好きそうな味のちょっと高級アイスを勧めてさり気なく誘導してみても結果は同じだった。
はじめに選んだ棒付きアイスがいいらしい。
自給の安い僕の懐具合を気にしての健気な選択なのだろうか?
だとしたら大人として不甲斐ないと共に男として少々情けなくも思う。
「テストで満点取れたご褒美なんだからもっと高いやつ選んだっていいんだよ?」
そういう約束だっただろう?と優しく言ってみても答えは変わらないみたいだ。
これにするの一点張りで首を左右に振っている。
子供ってやつは大人が思っている以上に自我がある生き物なんだなぁ、とぼんやり思いつつ
そこまで言われちゃ無理に押し付けるのもあれだなぁと仕方なく僕も同じようなカップアイスを選んで支払いを済ませた。
僕は彼女の家庭教師だ。
大学の講義がない日、週に二日ほど彼女の勉強を見ている。
「さ、溶けちゃうからそこの公園で食べて行こうか」
コンビニのビニール袋をぶら下げてテクテクと歩いて公園を目指した。
気をつけて歩かないとすぐに歩幅に差が開いてしまう。
小走りで僕の後を追いかけてくる彼女はちょっと、いや、大分可愛い。
その姿はころころと丸い子犬のようで悪戯心に火が着いてしまいそうだ。いかんいかん。
立ち止まって後ろを振り返り、ビニール袋を持っていない方の手を差し出す。
小さな手が嬉しそうにぴたりとくっついてきた。
恋人同士…には見えない僕達は端から見たらどんな風に見えるのだろうか。
いや、教え子と家庭教師以外の何者でもないんだけどさ。
こうして手なんか繋いで外なんか歩いちゃってるとどうしたって周りの目が気になっ てしまう。
しかもこの歳でこんな場所に来るなんてちょっと場違いな気がして気恥ずかしい。
が、彼女が同伴なら健全で至って普通の選択である――と自分に言い聞かせ子供用の小さなブランコに腰掛けた。
錆び付いた鎖が想定以上の体重を受け止めてギブアップと軋んだ音を立てる。
それに少々大人の尻を納めるには窮屈だ。

291 :

「はい、どうぞ」
アイスを手渡すと彼女は早速袋を開けて冷たい塊にかぶりついた。
小さな赤い舌先がチロチロと無邪気に棒状のアイスを嘗め回している光景は見ている者になんとも言葉にし難いむず痒さを生む。
これはひょっとしてイケナイ大人のお兄さん達に目撃されたら危ないレベルなんじゃなかろうか。
いやいやすでに僕自身がそういう目で彼女を見てしまっているではないか。
ダメだ、ダメだ。
こんな誰が見ているかわからぬ公共の場で…!
このままでは彼女の身が危ない。僕が止めずに誰が止める!
「ね…ねぇ、それ先生のと交換しない?」
「なんで?」
「なんでって…えーーっと………」
「?」
(食べ方がエロイから、なんてこんな小さな子に口が裂けても言えないよな…)
「まぁ、ほら…なんて言うか味が変わった方がいいじゃない?」
そこそこの大学へ通う現役学生とは思えぬ語彙のなさである。
我ながら間抜けで苦しい言い訳だ。
引き攣った笑顔でずいっとカップアイスを押し付けるように彼女の手元へ差し出した。
食べる速度も違うらしく僕のカップの中身はすでに半分以上この胃の中に入ってしまっている。
交換を申し出るには量が違い過ぎるが気にしている場合ではない。
ちゅぱっと口からアイスを引き抜くとニッと笑って彼女は言った。
「あ、わかった!」
「えっ!?」
「先生自分がこっち食べたいんでしょ?
 だったらはじめからそう言えばいいのに、大人げないんだからー」
「あ、あぁ…うん、そうそう、そうなんだ」
パタパタと 可笑しそうに笑いながら足を動かす彼女からアイスを奪い取るようにして一口で食べきった。
こめかみが一気に冷えてキーントとした痛みを感じる。
よし、これでもう不安材料は消し去った。
幼い彼女の身も安全だ。よからぬロリコンお兄さん達から彼女を守りきったぞ!
「で、先生」
「はい?」
「そのズボンの膨らみはなんですか?」
「へ?」
ふっと視線を下げるとジーンズのある一点が主張するように張っていた。
ぼとりと落ちたアイスの棒が靴の先に辺り、ひっくり返る。
ハズレと印字された棒に早くも蟻達が我先にと列を成して群がっている姿が見えた。

終わり
1レス目、改行乏しく読みにくくなっててすみません
失礼しましたー

292 :
先生羨ましい
GJ

293 :
葛藤する先生がいいなw無邪気な生徒可愛いww
GJでした!

>>281
少女漫画でもよければ、倫敦恋奇譚おすすめ
42歳中年主人×15歳メイドの恋愛ものです

294 :
オジサマ専科ってCDドラマ良かったよ

295 :
ダブルスコア悩む
高い…

296 :
>>293のやつ読んでみた
いい感じに萌えたよ〜ありがとう!
続編沢山あってびっくりした
自分のオススメは群青学舎の三巻に入ってる赤い屋根の家って話
青年とお嬢様なのでそういう組み合わせ好きな人はぜひ

297 :
思わず萌え
青年少女も良いものです
ttp://blog.livedoor.jp/nicovip2ch/archives/1783401.html

298 :
皆様皆様…ひみつのアッコちゃんが意外とこちら向けでしたよ…

299 :
確かに内容的にはあくまで12歳×20代だもんな
魔法で見た目変わってるだけで

300 :
>>299
甘いぜ!!w
ラストシーンに10年後があるんだ。
これがたいへんニヤニヤします。
ちなみに17歳差らしいよ。

301 :
初めまして。
お姉さんと少年はいいですよね。ということで、よろしゅう。

302 :
   『約束』

 大学の講義を終えてへとへとになった瑞妃は自宅の玄関先で付き合って間もない晃太とキスをした。
 大人びていても蓋を開いてみればぎこちない瑞妃の舌使いが、悶々とした晃太の一日を溶かす。音だけはいっちょ前。
唾液の味が骨を溶かすぐらいに甘く感じるなんてと、二人して初めての口付けを交わして時間の流れを忘れていた。
 真っ白なカッターシャツに袈裟掛けして食い込むスクールバッグのかすり傷、制汗剤と混じり合う高校生になり立ての男子の匂い。
瑞妃は記憶の底から虚ろにして高校時代が蘇る。そんなに時間は経っていないのに、そんなに華やかな思い出なんかないのに、
晃太とのキスで年の離れた瑞妃は事実を受け止めながら時間を遡る。息苦しくなった二人が唇を離すと、まったりと口内が蕩けた。
 「約束だしね」
 なけなしのバイト代で買った誰もが名を知るブランド物の財布から100円出した瑞妃はこっそりと晃太のポケットに押し込んだ。
 双方の合意だから、交わしておいた約束だから、遠慮することは罪になる。ひとつ義務を果たした瑞妃に再び疲労感が舞い降りた。

      #

 その日の瑞妃の帰り道、自販機の前であたふたと困り果てる彼女を晃太は目撃した。
 夕方、晃太は瑞妃の家に立ち寄るつもりだったのだ。家に着くまでのわくわくタイムは瑞妃の行動で色あせた。
 しゃがんで自販機の下を覗いたり、落ちている枝でまさぐったりと、おおよそ女子大生がすすんで行う挙動ではないと、晃太は
物の陰から見守った。一方、瑞妃は焦れば焦るほど事態が悪化していることは気付いているにも関わらず、手を止めるそぶりさえ
見せなかった。端から見れば人の悲劇は喜劇。ただ、晃太には悲劇でも喜劇でもなく、ガラスの靴を探すシンデレラのように見えた。
 「あっ。晃太くん?じ、時間にはまだ早いって!」
 探し物を探す手を止めた灰被り姫はばつが悪そうに枝を投げ捨てた。誰もが知っているブランド物のワンピースには木の枝は似合わない。
 晃太はだいたい予想が付いた。自販機の下をまさぐる理由は限られているしと、晃太は迷えるシンデレラの手を取った。
 「落としたんですよね。お金」
 「うん……。10円」
 「たった10円ごときで?」
 「ごめん。嘘ついた。100円」
 「どうして嘘つくんですか?」
 「だって……。いいじゃないの?嘘ぐらいつかせてよ!」

303 :

 晃太は自販機のデジタル数字が「20円」と表示されていることから、瑞妃の落とした金額を推理したのだが、それが瑞妃を刺激した。
逆切れ姫を宥める王子は溜め息ついて、お手軽に買える安っぽい財布から100円取り出して渡した。きっと、大切なお小遣いだろう。
気の毒に思った瑞妃は手を後ろに隠して拒んだが、少年の必さに負けて渋々手の中に収め、声を荒らげたことを恥じた。
 本当はお姉さんらしいことなんて晃太の前ではしてはいけないと抑えていた。いくら自分が先にこの世に生を受けたとしても、
相手が両手で数えるくらいの歳が離れていても、晃太が持つ『男子』としての誇りを大切にしたかったからだ。
 
 「晃太くん。ごめん」
 青臭い晃太の額に汗が滲んだ。
 「ぼくが100円落としたってことにすればいいでしょ?」
 「借りですか」
 「借りですね」
 自販機に硬貨を入れると一斉にランプが一列に点灯し、赤いボタンを瑞妃が押すと、ごとりと無機質な缶の音が二人を遮った。
 「あーあ。約束だしね」
 ジュースの缶を取り出して、瑞妃は頬を赤らめる晃太のほっぺに押し付けた。今の瑞妃が辛うじて出来る、お姉さんらしいこと。
 「わたしたちが付き合い始めてからの約束」
 「わかってます」
 「初めてだよね」
 どちらかが相手に借りを作ったならば、その日のうちにキスをする。
 
 お互いが一歩踏み出す為の理由付け。なぜなら二人の差を意識してしまうから。せめて対等にしようと決めた約束だった。
 瑞妃はお姉さんぶって晃太の手を取り、約束を果たす為に自宅へと駆ける。
 履きなれ始めたスニーカーと、誰もが知るブランド物のパンプスがアスファルトを蹴る音が、町を飲むかわたれ時に響いた。
 

    おしまい。


304 :
姉しょた、ばんざいですばい!
投下おしまいです。

305 :
GJ!

306 :
GJ!!
姉しょたはいいものです

307 :
GJ
可愛い2人だ

308 :
スピードグラファー見終わった
中々の歳の差モノだった

309 :
ロリ彼女prpr

310 :
年上彼女prpr

311 :
おっさんprpr

312 :
まとめてprpr

313 :
眠れる森の熟女見てる人いないかな

314 :
すごいタイトルだねって姉ちゃんが笑ってたわ

315 :
歳の差クリスマスSSはまだかね(´・ω・`)

316 :
何歳上まで恋愛対象ですか?
http://www.ten-colors.com/graph/home/111/?nosignin=on
男って若いうちは年上のお姉さんにとか言ってるけどある程度の年齢になると
急激に年上を非難し始めるよね。

317 :
ここって従兄妹・従姉弟ものってありなのかな?

318 :
スレの趣旨的に、年の差さえあればOKなんじゃね?

319 :
どう見てもモテそうにないおっさんとそんなおっさんに懐いている
小動物系気弱おどおど美少女っていう組み合わせに萌える

320 :
バレンタインにチョコじゃなくて、自分をプレゼントしちゃう女子高生と、慌てふためくおじさん先生
とかどうでしょうか!?

321 :
テスト

322 :
生徒会から「卒業生へ送る言葉」なんてものを書いてくれと頼まれ、忙しさにかまけているうちに締切日が来てしまった。
それを書き終えたのが、18時過ぎ。職員の多くも帰ってしまって、職員室の中にいるのは若手が5人程。
仕事の話しか雑談なのかは判らないが、時折笑い声が聞こえる事を考えれば、深刻な話ではなさそうだ。
「お先に失礼します。」彼らにそう言い残し職員室を出る。
2月の半ば。期末考査の1週間前という事で部活禁止というこの時期、校内に残っている生徒はほとんどいない。
駐車場への道すがら、晩飯は自炊にするか、行きつけの定食屋にするか、はたまたホカ弁で済ますかと考える。
一人暮らしも20年ちかくやっていると料理の腕は上がるが、反比例して面倒臭がり屋になってしまう。今日はホカ弁の焼肉弁当とビールに決めた。
自宅に帰りついて、とりあえず暖房を入れる。
いつか誰かと所帯を持つ事もあるだろうと考えて購入したマンションだが、独り者には広すぎて、結局はリビングとベッドがある部屋以外はまったく使っていない。
同じ間取りの隣で暮らす6人家族に申し訳なさを感じてしまう。
ユニクロで買ったスウェットと毛玉がつきまくりのフリースに着替えて、リビングのソファーでホカ弁を広げる。
アサヒスーパードライのプルタグを引き、弁当のふたを開けたところで「ピンポーン」と訪問者を知らせるインターフォンの音。
丁度、アマゾンで頼んだハードカバーの本が届く頃合。ヤマトか佐川のあんちゃんだと思って、インターフォンを取り上げる。
「もしもし」
小さな液晶の向こうには、ミニーマウスがしているような、大きなリボンを付けたどこかで見たような顔・・・・・。
「先ちゃん、メリー・バレンタインデーだよ!」
2年3組。出席番号27番の五十嵐芽衣がそこにいた。
全俺一致でポメラニアンまたはスピッツを連想させる五十嵐芽衣は、俺が担任を務めるクラスの生徒だ。
正月に駅に近い本屋で偶然会い、腹が減ったというのでファミレスで昼飯をごちそうしてやって以来、懐かれてしまったのだ。
「五十嵐。お前、何しに来た。」務めて冷静な声で質問する。
「何ってバレンタインのチョコ持って来たよ!」さも当然のように明るく答える。
そういえば、昨日、チョコ楽しみにしてねって言われたような・・・。
「教師が生徒からチョコ貰う訳にいかないんだよ。」だから持って帰れ。
「そんな、せっかく作ったんだよ。それにプレゼントも用意してあるから。」とにかく入れて!
いかん、こいつをエントランスの中に入れたら大変な事になる。本能がそう告げる。
押し問答をしていると、一人の女性がモニターに映り、カードキーをレシーバーにかざす。音を立てて自動扉が開く。
モニターの向こう側で五十嵐がにんまりと笑い、踵を返すと自動扉をすり抜けてエントランスに侵入した。
いかん第一防衛ラインが突破されてしまった。
俺の部屋は2階。非常階段のすぐ横。玄関ドアを施錠してない事を思い出して慌てて玄関に向かう。
第二防衛ラインは守しなければ!
俺が玄関ドアの鍵をかけた瞬間、扉の向こうから駆けこんでくるような足音。
そしてピンポーンという音。除き穴の向こうには赤いリボン。
「先ちゃ〜ん、チョコとプレゼントのお届けに来たよ〜。」扉をドンドン叩く音。
向こうが諦めて帰るか。世間体を気にした俺が扉を開けるか。闘いは佳境を迎える・・・。

323 :
GJ!
これは、先ちゃんが風邪引くと悪いとか言って、五十嵐ちゃんを部屋に入れる流れ!!

324 :
>>319-320
良いな
>>319の設定だと勇気を出したけどテンパってしまって
思わずエロい発言を女の子がしたとかだろうか?
ちなみに先生も良いけど近所のとか知り合いのと偶然出会ったとか
そういうおじさんもありだな
>>322
GJです
芽衣ちゃんの喋り方好きかもw
これは自宅に上げてしまい
性的に喰わざる得ない状況に追い込まれるのか?
続き期待

325 :
あら、仮題「芽衣ちゃんの先生」意外と好評ですか?
では、チマチマと書いて投下します。

326 :
ディズニーランド・東京スカイツリー・渋谷ヒカリエ。
旦那をほったらかして、母娘して岐阜からやってきたのは12月30日。
4日間たっぷりと東京を堪能していた。
お年玉を毟り取られ、コンビニで予約しておいたお節料理も食い散らかされ、
その代償は、東海地方限定のじゃがリコが一箱。
岐阜に帰る2人を乗せたタクシーがマンションの敷地外へ出た時、正直ほっと
した。
朝食の洗い物を片付け、客間の布団のシーツをはがす。
さすがに洗濯をする気になれず、昼飯を食いがてら本屋とTSUTAYAに行く
つもりで家を出た。
ジーンズにネルシャツ。その上にエディバウアーの革ジャン。歩いて10分の
駅へ行くには充分な格好だ。
本屋は線路の高架下を活用した店舗。この近隣では一番大きな本屋。
店の前には自転車がたくさん置かれている。
1階は雑誌と文庫本・新刊本。2階はコミックと専門書。正月でも立ち読みを
している人が結構いる。
お目当ての本は新刊本なのでレジ近くのコーナーに並んでいるはずだ。
秋の終わりに買い、積ん読本の山に埋れていたとある作家の本を読んでみる
と案外面白くて、その続きの新刊本を買いたいのだが、どこの出版社から出
ているのか解らず、広い売り場を右往左往する事になった。
売り場に店員さんの姿はなく、在庫があるのか聞くことも出きず、仕方なく
革ジャンのポケットからスマートフォンを取り出して、本の名前を入力し
出版社をググる。最初からこうしとけば良かった・・・。
ほんの数秒で結果が表示され、その出版社のコーナーへ移動する。
無事にお目当ての本を見つけた。
ハードカバーのその本は、1冊1800円。上下で3600円。ちょっと躊躇する
値段だ。前のシリーズは確かに面白かった。しかし、作品の出来に波がある
と噂されるこの作家。投資に対するリターンは期待出来るんだろうか?
書き出しの数行に目を通す。面白い本は数行読んだだけでも引き込まれるの
だが、この装飾過剰な書き出しは、いまひとつ肌に合わない。積ん読本の下
の方に埋れて行くような気がする。
ブックオフで半額で売られるのを待つか、積ん読本覚悟で買うか迷うところ
だ。
「うーん、どうするかな〜。」思わずつぶやいた独り言に、近くで立ち読み
をしている女性が怪訝そうな顔でこちらをみやる。
「沢辺先生?」
うちのクラスの、五十嵐芽衣がそこにいた。

327 :
ゆるふわ系のウェーブが効いた髪は実は癖毛。ふわふわした髪に合せているのかは
知らないが、パステルカラーのコートを含めて、どこか幼さを感じさせる。
仲の良い友人や、文芸部の先輩からは『わんこ』と親しみを込めて呼ばれている五
十嵐は、確か2つ程離れた駅の住人だったはずだが。
「五十嵐か。何やってんだこんなところで?」
「えーっと、私は母と初詣にきたついでに、本を買いに来たんですが・・・。」
言われてみると、彼女のかばんからは、破魔矢の端っこがはみ出している。
先生こそ何でいるのという質問に、地元だから昼飯がてら出てきた事を伝えた。
彼女が手にしている本をみると、この春に、アイドルグループの中心メンバーが主
人公を演じる映画の原作本だった。
「その本、買うのか?」
「前から読みたかった本で、お年玉もらえたから買おうかなって。」
「その作家、好きなのか?」
「本屋大賞とってるし、Amazonレビューも評判いいから。」
とりあえず原作本だから買うわけじゃないんだな。
「こう言っちゃなんだが、1500円の価値はないぞ。出だしから中盤にかけては中々
だけど、終盤のグダグダさと、救いのない終わり方が半端ない。」
どうしても読みたいならブックオフで買え。
俺の力説に、五十嵐はキョトンとした顔で、手にした本と俺の顔を見比べた。
「本屋で本をけなした上にブックオフで買えって、営業妨害だよ〜!」
ケラケラと笑い出した五十嵐の姿に、俺は頭を掻く以外にやることがなかった。
何がどうツボだったのか、五十嵐の笑は止まらず、咳き込み始めてしまった。
静かな店内だけに、我々二人は悪目立ちしてしまい、レジにいる店員が何事かとこ
ちらを見にくる始末。
結局、俺も五十嵐も本を買わずに店を出た。
「先生恥ずかし過ぎだよ〜!」
「うるさい、自分の笑い上戸を人の所為にするな。」
咳き込んでゲホゲホやっている五十嵐を近くのベンチに座らせて、キオスクで買っ
たミネラルウォーターを飲ませる。しばらくすると咳き込みも止まった。
あ〜苦しかった。ペットボトルを両手で握り締めて、目の前に立つ俺を眩しそうに
見上げる。眦には微かに泪の跡。
「結局、本買えなかったしぃ。」
「もう一度買いにいけばいいだろう。」
「店の人に変な目で見られたし、恥ずいから、もうあの店には行けないよ。」
非難がましい目で俺を見るな。
駅前ロータリーに設置した大時計が正午を告げる鐘を鳴らす。
それに反応したかのように、五十嵐がお腹すいたと呟く。
「何だ、腹減ったのか?」俺の問いかけに小さく頷く。
本を買った後、そばにあるマックで、ハンバーガーをパクつく積りだったらしい。
「予定狂っちゃたんだから、先生なにか奢ってよ。」当然のように要求してくる
その感覚が判らない。まぁ、さっきまでいた姉貴のところの娘とおない年なんだ
から、判らなくて当然か。
「いいよ、なんか奢ってやるよ。」
ただし、俺はコメが食いたいから、ファミレスかバーミヤンな。
そういうと五十嵐は瞳を輝かす。「じゃあ、ファミレス!」
なんかお尻にしっぽが見えそうな勢いだ。

328 :
これは…良い!!
正座で待機してます

329 :
駅と我が家の中間に位置するファミレスは程々の混みよう。
隣には安い割に美味いと評判の回転鮨。100メートル先にはハンバーグ専門店。
食事にドリンクバーを付けると1500円近くになるこういったファミレスは、高級
でもない、でも決して安くないという中途半端なカテゴリーになってしまい、家族
連れよりは、2人か3人のグループが多いみたいだ。
俺は煮魚御膳にドリンクバー。五十嵐はパスタセットにドリンクバーを頼んだ。
料理がくるまでの間、五十嵐は快活にしゃべった。
三ヶ日は、友人と会う予定がなくて暇していて、母親と初詣に出かけてきたが、その足で母親は仕事に行ってしまい、自宅に帰っても1人だということ。
担任だから、生徒の家庭状況はある程度把握している。彼女の母親は総合病院で看
護士をしていると記憶してる。
「じゃあ、晩飯はどうしているんだ?」と聞くと自分で作ると返ってきた。
小学校の頃から母親に仕込まれていて、大抵の料理は作れるというので、豚の生姜
焼きの作り方を聞いた。生姜をベースにしたタレに肉を漬け込むという五十嵐家の
レシピは、手間はかかるけど生姜のエキスが肉を柔らかくするから美味いはずだ。
タレの作り方のちょっとした小技を聞いて、こいつが本当に料理をしているのが判った。
料理を食べてる間は、ほとんど会話がなかった。
海老のクリームソースがテーブルに届いた時に見せた子供のような笑顔。
一口目を口にして幸せそうに微笑んだあと、パスタが茹で過ぎて軟らか過ぎると
むくれる。見ていて飽きない奴だ。
うちの姪も小学校高学年まではこんな感じだったな。そう思ったら、ちょっと笑
ってしまった。
「そういえば、先生の家ってこの辺だっていってたよね?」
2杯目のメロンソーダをドリンクバーから持ってきたタイミングで五十嵐が聞く。
あそこ。窓越しに見える少し離れたマンションを指差す。
「ヤバイ、本当に近いんだ〜!」
先生の部屋は見えるって聞くから、2階だから見えないと答えた。
「先生って独身だよね?」「そうですが。なにか。」
「いや、1人なのにあんなに大きいマンションに住んでるんだって思って。」
「中古だったし、ローンだって部屋借りるのと変わらないよ。」
それに、いつか相手が見つかるかも知れないだろ。
「まだ諦めてはないんだ。」五十嵐が意地悪い笑顔で言った。
「あのな。俺はまだ42なんだぞ。」
「えっ、先生ってうちのお母さんと同い年なの?」
もっといってるかと思ってた。さも意外そうに言う。
「老けててわるかったな。」このところ急速にオッサン化している自覚はあるぞ。
「じゃあ、早く彼女見つけないとね〜。」「余計なお世話だ!」
何だか、姪っ子とジャレあっているような気分になり、しばらく会話が弾んだ。
「ふーん。豪華マンションだね〜。」
うちのマンションの玄関を見て、五十嵐がどこぞのおばさんのような声をあげた。
「ここで待ってろ。」
そう言って彼女を待たせて、マンションのエントランスを抜ける。
部屋に入り、積ん読本の山から五十嵐が買おうとしていた本をサルベージする。
適当な紙袋を探すが見当たらず、リビングで、姉貴が置いて行った土産の入った
紙袋を見つけた。スナック菓子は食べないので、そのまま袋に本を入れた。
五十嵐はマンション前の歩道に置かれた看板を熱心にみている。
「お待ちどうさん。」そういいながら彼女に紙袋を渡した。
本は気に入ったら返さなくて良い。お菓子は貰い物だが食べないからやる。
そう言うと、五十嵐は紙袋の中身を見る。
「あっ、じゃがリコだ!」 「そっちか!」思わず突っ込んでしまった。
これ食べたかったの〜! 彼女にしっぽがあるなら、今は全力で左右に振れている
だろう。
駅へつながる大通りまで送ってやった。
「気をつけて帰るように。」「はーい、先ちゃん。ごちそうさまでした。」
五十嵐は小さく敬礼のような仕草をして、手を振り振り帰っていった。

330 :
お節料理の残りと出汁の素を使った簡単雑煮の夕食。見るべきTVもDVDもない。
冬休みはまだ続くが教職員はいろいろ仕事がある。リビングにパソコンを持ち込
み、休み明けに実施するミニテストの問題を作り始めた。
俺の担当科目は現国。現国担当の教務主任が進歩的な考えの人なので、ミニテスト
にはAKB48の歌詞を問題文に取り入れて、生徒の興味を引くようにしている。
とりあえず問題文のベースである歌詞の入力は終了。時計を見ると9時近く。
珈琲を淹れようとキッチンに行き湯を沸かし、マグカップにインスタントの粉を
投入して火にかけた。
テーブルの上に置いたスマホが「ポーン」と鳴りメールの到着を知らせる。
年度初めに、クラスの生徒が気軽に相談できるようにと取得した捨てアド。
生徒達も、最初は面白がってメールしてきていたが、今となっては、クラス委員と
部活の顧問をしているワンダーフォーゲル部の部員くらいしか使っていない。
そのアドレスからgmailに転送されてきたメールが表示された。
サンリオのキャラクターに数日4文字の羅列。残念だが誰が送信者かは判らない。
でも、何となく五十嵐の顔が浮かんだ。メールを開く。
五十嵐芽衣
「 ムカつく {(-_-)} 」
先ちゃんから借りた本 読んでまっす!
しかし、主人公の彼女がジコチュー過ぎてムカつく♯
もう100ページ終わったから明日の夜には読み終わるよ!
^o^
あゝそうかい。思わず苦笑い。
主人公の優柔不断さとその彼女の自己中心性。その果てにある愛憎劇がその本の胆
なのだ。
あと50ページ読み進んで、彼女の気持ち悪いまでの加虐性にゲンナリすればいい。
五十嵐が地団駄を踏む姿を思い浮かべてしまった。
沢辺智哉
「がんばれ」
明日の夜。君は先生に購入を止めてもらった事を感謝するだろう。
感想文は400字詰で5枚な。( ̄▽ ̄)
送信ボタンを押してから、生徒用アドレスじゃないことに気がついた。
まあ、五十嵐なら悪用するような事はないだろう。
ちょうど沸いたお湯をマグカップに注いで、俺はテスト作成にもどった。

331 :
夏休みと違って短い冬休み。始業式はクラス全員が揃っていた。
明日からは通常授業という事で、HRでは各教科のミニテスト実施が告げられる。
まあ生徒達も予想していたらしく、大人しく試験範囲をメモしている。
五十嵐とのメールのやり取りは、1日に一通か二通の割合で続いている。
読んでる本の感想やら、夕飯に作った新作メニューの写真やら、内容的には、岐阜
の姪と交わすメールとかわらない。
でも、担当する生徒の一人だけとメールを交わすことに、微な罪悪感に似たものを
感じているのも確かだった。
クラスの中での五十嵐芽衣の立ち位置を一言で言い表すなら、本好きの大人しい
女子。彼女の生来の人懐っこさと多少の天然ボケなキャラも、クラスの連中に受け
入れられている。担任としては、もう少し理数系と英語について頑張って貰いたい
ところではある。
五十嵐と文芸部の部長である6組の神崎が職員室にやってきたのはHRが終わった後。
教務主任との打ち合わせの直前だった。
「沢辺先生に相談があるんですが。」神崎は6組のクラス委員務める才女。
黒髪・セミロング・赤いフレームのメガネが五十嵐と違い男前だ。
打ち合わせは教科準備室でやる予定。下っ端ではないけど、教務主任よりは先に
部屋に行きたい。
「悪い。これから打ち合わせなんだ。後でいいか?」
神崎には打ち合わせが終わった後、文芸部の部室である図書準備室に行く事を伝えた。
今日はここまで。

332 :
>>325-327
>>328-331
GJです!!
芽依ちゃん可愛い
続き期待
ただ書きながら長時間掛けての投下はやめて>>331まで書き上がった段階で
一気に投下した方が良いかと
その間スレにレスし難くなりますし

333 :
332さんの助言に従い、きりの良いところで少しづつUPさせていただきます。

334 :
「という訳で、退職される戸塚先生の授業を全員でフォローする必要があります。」
12月の始め頃から噂にはなっていたが、1年担当の戸塚先生が定年を目前にして、1ヶ月前倒しで退職する事に決まった。
生徒達には家庭の事情という事になっているが、実際には退職金が減額される前に辞めてしまうという家計の事情なのだ。
我が校で国語を担当しているのは教科主任を含めて7名。
幸いなことに、2月に入れば3年生が家庭学習になるので、3年担当の教員が
フォローする事が出来る。それまでは全員で一日に3駒の穴を埋めす必要がある。
主任を中心にスケジュールの割り振りを行い、穴埋めの目処が立つまで2時間かか
った。
教科準備室を出たのは2時過ぎ。さすがに五十嵐達も帰っただろうけど、念のため
図書準備室を覗く。
案の定、鍵が掛かり中は無人のようだ。メールが入っているかも知れないと思い、スマホを確認するがメールが届いた形跡はない。
急ぎの相談事でもなかったんだろうと思い職員室に戻った。
始業式と一斉清掃しか予定のない3学期初日。職員室に残っている職員も少ない。俺も校内用のジャン
パーを脱ぎ、ツイードのジャケットに着替えて、残っている同僚に挨拶をして職員
室を出た。
駐車場に行き、自分の車に乗り込もうとドアに手をかけた時に、運転席側のワイパ
ーに紙片が挟んであることに気がついた。
さりげなく辺りを見回し、紙片を手に取る。
「先ちゃんへ」サインペンで書かれた文字に見覚えはなかったが、俺を先ちゃん呼
ばわりする奴は、1人しかいない。
手にしたカバンを足元に置いて紙片を開く。
バカ〜! こんなに時間かかるなんて聞いてないよ!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。
お前、担任に向かってバカって・・・・ 。
とりあえず車に乗り込みスマホのメーラーを立ち上げる。
送信トレイを呼び出して、五十嵐のメルアドを選択。
沢辺智哉
今、打ち合わせが終了。思った以上に長引いてスマン。
明日の授業終了後は時間が取れるから。^_^
顔文字は余計かなって一瞬考えたけど、送信ボタンを押す。
ふと画面をみると、受信トレイも送信トレイも五十嵐芽衣の名前で埋め尽くされて
いる。
恋人でも家族でもない、17歳の女子生徒の名前に満ちたメールボックス。
そして彼女からのメールが来るのを心待ちにして、スマホを片時も離さない自分に
気づく。
ドウシテコウナッタ?

335 :
冷凍しておいたご飯をレンジで加熱。
大根と油揚げの味噌汁をどんぶりによそい、コンビニで買った御新香と酢豚をテー
ブルに並べる。
キッチンカウンターに置いてあるスマホの画面は黒いまま。覗き込む自分の顔を映
している。
あと数ヶ月もすれば43になるというのに、姪と同い年。つまりは自分の娘であっ
てもおかしくない女子生徒からのメールを心待ちにして、何度も受信ホルダーを確
認する自分が嫌になる。
五十嵐とのメールの内容なんて本当にたわいのないものだ。ロマンチックな事なん
て一文字も書かれてない。
晩飯に何を作った。今読んでいる本が当たりだ外れだといった感想。誰々先生の課
題は難しい過ぎる
という学生らしい不満。そういったものを絵文字混じりに送ってくるだけだ。
それに対して、こちらは少し茶化しながら、彼女のメールに感想なり、評価なり、
アドバイスなり、ダメ出しなりを送る。
こちらは独り身の有り余る時間を。あちらは母親のいない不安な夜を。メールを交
わす事で凌いでいるのかもしれない。
五十嵐に好きな人でも出来て、そいつとメールを交わすようになれば、担任とのメ
ールのやり取りなんてすぐになくなる。
ピーターポール&マリーの「パフ」に出てくる竜のように。俺は忘れ去られるんだ
ろう。
そして五十嵐は、俺の中の思いで深い生徒の一人になればいいんだ。
3年生の担任は、卒業式のあと、たった一人教室に取り残されたような喪失感を味
わうけど、多分そんなものだ。
電子レンジが加熱終了を知らせる電子音を鳴らす。
とりあえず腹を満たせば、余計な考え事は消えてなくなるはずだ。

336 :
教師って職業は服装に無頓着になりがち。スラックスに白いシャツを着て、地味なネクタイをダブルノットで締めて、アウトドアメーカーのウィンドブレーカーを羽
織れば、どこの学校にも1人はいる、冴えない教師の出来上がりだ。
張りというかボリュームがなくなってきた髪に、フォームを撫でつけて手櫛で整え
る。買い置きの缶コーヒーを啜りつつ調理パンを囓る。
テレビの横に転がっているGショックが7:35を告げるアラームを鳴らし始めると、
テレビを消して部屋を出た。
学校までは車で20分ほど。FMを流しながら車を走らせる。10年落ちのSUVは4駆と
いう事もあって燃費が悪い。またガソリンの値段が上がって来ているし、そろそろ
軽にでも乗り換えるかとも思う。
スマホがメールの到着を告げたのは校門を曲がる直前。授業開始まではまだ時間が
あるので、校内を歩く生徒の数は多くない。
駐車場の定位置に車を停めて、スマホを取り上げる。
五十嵐芽衣
おはよう〜 (つД`)ノ
DVD見てて、先ちゃんのメールに気がつきませんでした。
ゴミン×2
職員室ですか? 教科準備室ですか? 指定してくれたら。
神ちゃんと一緒に行きます。
軽くイラッとした。理由は自分でも判らない。というよりイラッとしたこと自体を
認めたくない。
スマホをコートのポケットにねじ込み、カバンを手にして車から降りる。
普段よりもドアが閉まる音が大きかったのは気の所為だろう。
1時限目の予鈴が鳴る。4階の1年の担任が予鈴と共に席を立ち職員室を出る。
俺もファイルを手にして3階へ向かう。
チャリ通の連中だろうか、予鈴が鳴っても急ぐことなく階段をチンタラ上がって行
く生徒を見つける。
「ほら、予鈴鳴り終ってるぞ、もっと急げ!」
普段よりも口調がキツイのも気の所為だろう。
2ー3も相変わらず騒がしい。前の引き戸から教室に入ると、慌てて席につく生徒。
「ホームルーム始めるぞ! 携帯は電源切ってカバンにしまえ。」
うちの学校のルールでは、携帯は持ち込みOKだが、昼休み以外は電源を切ってカバンにしまう事になっている。
授業前のHRで担任がカバンにしまうのを確認するのだ。
電源を切る時の電子音やバイブレーションの音がして、チャックを開け閉めする音
が響く。
教壇近くの席を見ると、五十嵐がまだ携帯をいじっている。
「いつまで携帯触ってるんだ。すぐにしまえ。」
声をかけられた五十嵐がビクッとこちらを見た。何か言いたげな目をしている。
「どうした五十嵐! なんか緊急な用事でもあるのか?」 「いえ。」
「じゃあ早くしなさい。10秒ルールなんか適用したくないぞ。」
しまえと言われて、担任が10数えるうちにカバンにしまわないと没収というのが10
秒ルールだ。クラスの注目を集める中、五十嵐は携帯をカバンにしまった。
SHRが終わったあと、教科準備室に顔を出したのは神崎だけだった。
五十嵐は調子が悪いらしく、図書室で待っているらしい。
「相談は2つあります。」神崎はノートを取り出して、端的に説明してくれた。
戸塚先生が退職する為、文芸部は顧問が不在になってしまう。文芸部は、県が主催
する学生向けの文芸賞『陽春賞』への応募に向けて準備中で、その執筆指導をお願
いしたい。
沢辺先生が顧問をしているワンダーフォーゲル部は、1年・2年を合わせても3人し
かおらず、その3人も活動に興味があるわけでもなく、その存在は風前の灯。
なので来年からは文芸部の顧問になって欲しい。
「水谷先生は、沢辺先生が良いって言ってくれたら問題はないそうです。」
神崎は、ノートを見る際にずり落ちたフレームを、人差し指1本で直した。
あのキツネめ!教科主任の狐面を思い出してしまった。

337 :
今日はここまで

338 :
GJ!
DVDに嫉妬しちゃう先生いいよー

339 :
いいですね〜
続き楽しみにしています!

340 :
「もう一つの相談いいですか?」
「どうぞ。」
「先生。最近、芽衣とメールしているんですよね。」
顔に表情はないけれど、瞳は興味深々といった感じで俺を見つめる。
「五十嵐に聞いたのか?」まあ、そんなところです。神崎は言葉を濁す。
「日に一通か二通メールしてるよ。」他愛のない内容だけどな。
「いつ頃からですか?」
「正月に偶然会ってな。んで本を貸してやったら感想のメールが来たからそれ以
来だな。」
「そうなんですか・・・・。」やっぱりねと言った感じで神崎が溜息をつく。
「それがどうかしたのか?」
「いえ。少し私の話をしても良いですか?」神崎がちらりと腕時計をみる。
「長いのか?」
「そんな事はありません。」五分もかかりませんよ。神崎はちょっとだけ皮肉な笑
顔を浮かべて、話を始めた。
私、クリスマスに彼が出来たんです。相手は家庭教師の大学生です。私にとって芽
衣は一番の友人だから、告白された後、真っ先に報告しました。芽衣もすごく喜ん
でくれました。芽衣は、私が彼のことを好きになり始めた頃からずっと話を聞いて
くれてたんです。でも、彼と私が付き合い始めると、芽衣が何と無くよそよそしい
いんです。電話をしても長く話してくれないし、メールの数も減ったんです。
私がおかしいと思って、理由を聞いても答えてくれないんです。
でも、私と芽衣は小5の頃から一緒だから、彼女の考えている事は解るんです。
芽衣は、私と彼に遠慮しているんですよ。
芽衣は人付き合いが得意じゃなくて、いつでも他人に遠慮しながら生きてるんです
人懐っこいのもそれの裏返しで、そうやって戯れていって、相手との距離を計って
いるんです。
神崎はもう一度溜息をつく。
彼とは毎日会っている訳じゃないし、四六時中メールしている訳じゃないんだから、今まで通り、電話もメールもしてきなさいって言うんですけど、自分にも新し
いメル友が出来たから、メールしなくなっただけって言うんです。
「その相手が俺だって言いたいのか?」その割にはメールの数は少ないんじゃない
のか?
「先生は芽衣の事をどう思ってるんですか?」神崎は、俺の質問には答えるつもりがないらしい。
「普通の生徒だと思ってる。メールのやり取りは楽しいが特別な感情はないよ。」
「恋愛感情はないんですか?」
「ない。」というか有ったら大問題だろう。
「それを聞いて安心しました。」神崎が初めてにっこりと笑った。
「最近、地域ネコっているじゃないですか。どこかの家で飼われているんじゃなく
て、地域全体で面倒みて貰ってるネコ。」
「ああ、いるな。」
「芽衣って、それに似てるって思いません?」
クラスの中では特定のグループに入らず、浅く広く付き合っているって事を言いた
いのか?

341 :
親友をネコ扱いするのはどうかと思うぞ?」
言葉のあやです。神崎は黒い笑を浮かべる。こういう奴が、親友を酔わせて外人部隊に売るのか?
「芽衣はいつも私とばかりい一緒にいて、そんなに深く人と関わったことが無いんですよ。でも、こ
の先は、大学も違うだろうし、社会に出たらもっと私との付き合いは希薄になると思うんです。少し
遅かったかも知れないけど、芽衣が自立っていうか、他の人と関係性を持つ時期なのかなって思うん
です。」
「俺からみると、五十嵐が人付き合いが苦手とは思えないんだけどな。」まあ積極性はないけど、協
調性は十分にあるんじゃないのか。俺がいうと神崎はキッと俺を睨んだ。
「他人との摩擦や軋轢が怖くて、自分の意見を言わずに、他人に合わせる事が協調性だと思います?」
さすが才女、どちらが教員か判らないくらい、するどいツッコミを入れてくる。
「つまり神崎は、これを機に、五十嵐に交友関係を拡げて貰い、成長してもらいたいんだな。」
「ええ、そうですね。子猫の芽衣ちゃんには、飼い主宅からおでかけしてもらって、少しづつ行動範
囲を拡げて欲しいんです。幸い、割と早く別宅らしきものを見つけてくれたみたいで、多少、安心し
てるんですよ。」
「別宅って、それ俺の事か?」
肯定も否定もせずに意味ありげに笑う。
「私以外にも、心からリラックスできる場所と言うか、存在があるって良いことですよね。」
「担任に対して、あんまりリラックスされても困るんだがな。」
「先生だって、芽衣みたいなネコが寄ってきて、エサねだられたらあげるでしょ?」
エサね〜。正月にファミレスでメシを食った時の、幸せそうな笑顔をおもいだす。
でもやっぱり、あの人懐っこさはネコっぽくない。
「残念だな神崎。五十嵐は全俺一致でイヌのイメージなんだよ。」
「生徒を犬呼ばわりする先生も、結構ひどいと思いますよ。」
という訳で、芽衣の事、適当にかまってあげてくださいね。神崎の2つ目のお願いはそれだった。

342 :
神崎が帰ったあと授業で使うプリントに目を通す。でも頭には入ってこない。
6時間授業が終った今はコアタイムを外れているので、帰っても問題ない時間。
運動部の顧問をやっている職員はけっこう遅くまで残っているが、地域では進学校と位置づけられて
いるうちの学校では少数派だ。
神崎から貰った「陽春賞」の募集要項のプリントをファイルに綴じてカバンにいれる。
明日、文芸部の顧問代行について狐面の教科主任と打ち合せをする。来週からは顧問代理として
指導に当たることになるだろう。
文芸部の部員たちがどんな作品を書いているのか知りたくなり、去年の学祭で頒布した小冊子を読み
たくなった。今の時期の最終下校時刻は5時半。神崎と五十嵐はまだ残っているだろうか。

旧校舎の2階にある図書室の隣が図書準備室。木製の引き戸が10センチほど開いていて、誰かしら
残っていることが判る。部員のほとんどが女子生徒という事もあり、引き戸のガラス部分をノック
して来訪を知らせる。
「はーい!」誰かが立ち上がる音がして足音が近づいてくる。
「あれ、沢辺先生?」扉を開けたのはタイの色から見て1年生。知らない生徒だ。
「部長はいるかい?」聞くと彼女は振り返り
「神崎先輩〜! 沢辺先生が呼んでま〜す!」
その声に、準備室にいる7人ほどの部員が一斉にこちらをみる。
グッドタイミングなんて言いながら、奥の方から神崎が出てくる。
「神崎。この部のレベル知りたいから、秋に出した小冊子を貸してくれ。」
「さっそく指導の準備ですか? じゃあ、去年の陽春賞に参加した時の原稿もお渡しします。」
ちょっと待って下さい。そう言われて引き戸を閉められてしまった。
きっと俺がイケメン教師なら、待っている間、準備室の中に入れてもらえるだろうな。
我がクラスの副担任である若手教師の顔を思い浮かべ、扱いの粗雑さに哀しみを感じた。
ピンポンパンポンという音がして、今日の放送担当の若手教員が最終下校時刻の15分前であることを
告げる。窓の外はすでに暗い。中庭の植栽が風に大きく揺れている。外は寒そうだな。
2分ほど待っていると、帰り仕度を整えた格好で神崎と五十嵐が出てきた。
「マユ、戸締りの確認と、鍵の返却よろしくね。」
残っている生徒に対し、注意事項を与えてバイバイと手を振る。
神崎の手には、A4の透明ファイルがあって、学祭の時に発行した小冊子がみえた。
黙って手を差し出すと、レンタル料は1泊210円になりますと悪びれずに言った。
「レンタル料は冗談として、先生もこれから帰るんですよね。」
「ああ、帰るよ。」メシでも奢れっていうのか?
「じゃあ、芽衣のことを送ってくれませんか?」
芽衣の調子が回復しないみたいで、歩いて帰るのもキツそうなんです。
五十嵐を見ると、確かに顔面蒼白で、今にも倒れそうにな雰囲気だ。
「大丈夫なのか、保健室行くほうが良くないか?」
といっても、既に下校時なんだから保健室に連れて行ってもダメか・・。
「まあ、昔から朝礼の貧血で倒れる率ナンバーワンでしたから。」
先生に送って貰って、一晩眠れば直ると思いますよ。さすが小5からの付き合い。
五十嵐の体調不良など慣れっこのようだ。
「大丈夫だよ、1人で帰れるよ。」五十嵐がうなだれたまま言う。
ダメ。そんなフラフラした状態じゃ、倒れて車に轢かれてペッシャンこになったらどうすんのよ。
神崎に怒られて、余計にシュンとなる五十嵐。
「まあ、その状態じゃ本当に途中でぶっ倒れかねないだろ。」
送ってあげるから素直に従いなさい。担任命令発動ってやつだ。
五十嵐はまだゴニョゴニョ言っていたが、強制搬送を決めた俺と神崎は、車を廻してくるから職員用出入口に連れて来るようにと、段取りを打ち合わせる。
俺と神崎のコンビは意外と悪くないかもな・・・。
車で10分ほどの五十嵐の家に向かう。
まだ帰りのラッシュアワーには早いのか、県道は思ったよりもスムーズに流れている。
昔から、日没からしばらくの間を逢魔が刻という。
暗闇に目が慣れないせいか、狭い路肩を走る自転車や歩行者を見落とし易い。
生徒2人を乗せて事故ってはシャレにならない。普段以上に慎重にハンドルを握る。
バックミラーをちらりとみる。五十嵐は神崎の肩に持たれて目を閉じている。
車外からの光を受けて、ミラー越しに見る2人の顔は青白くみえる。

343 :
車が信号の為に減速する度、神崎は右手を五十嵐の胸の下あたりに延して、五十嵐が前のめりになら
ないよう支える。
小5以来の付き合いといっていたが、神崎はこうやって五十嵐の事をサポートして来たのだろう。
2人の学力差を考えると、神崎のいう通り、卒業したら別々の大学に通う事になる。
神崎の志望校は知らないが、五十嵐は保育士を目指して専門学校に通う事を志望している。
それを考えると、卒業までの約1年で、神崎のマンツーマンサポートから自立しなければならないん
だ。結構キツいハードルであるような気がする。
神崎と違う立場でどれだけのサポートをしてやる事ができるのか、しかも特別扱いはしないという
制限つきだ。ちょっと溜息が出た。
登校拒否の生徒。自分から仲間の輪に入っていけない生徒。そういった生徒なら何人も見てきた。
指導という名のもとに、結構プライベートな事までサポートしてあげた事もあるが、それは、そう
言った現象が、他の生徒に影響を与える可能性があるケース。
五十嵐の場合は、誰にでも人懐っこく寄ってゆき、浅く広い関係は築いている。
問題なのは、それがあくまでも表面的なもので、神崎以外の他人と、深い人間関係を構築出来ていな
いという事。これは本来ならローティーンのうちに克服すべき課題だ。
正直なところ俺には、神崎に代わって、彼女とメールを交わしたり、電話で話を聞いてやったりする
位しか出来る事はない。ただ、電話で話をするのも、特定の生徒を特別扱いしていると誤解される恐
れがある。
そうなると学校での面談の機会を増やす事しかない。幸い、文芸部の顧問に担ぎ出される事になりそ
うだし、部活の時間に、他の生徒と一緒にいる時に雑談するくらいなら、誤解を受ける事もないだろ
う。たいした事が出来ない別宅でごめんな・・・。後部座席の2人に心の中で謝った。
五十嵐家は団地の4階だ。建築から30年は経過しているかと思われる建物にはエレベーターはない。
歩けないようなら、おぶって階段を上るかと覚悟したが、暖房の効いた車内にいたせいか、若干では
あるが、五十嵐の体調は回復していて、神崎が彼女の鞄をもってやれば歩けるようだった。
俺も4階まで送ろうかとも考えたが、神崎が私だけで大丈夫だというので、車の外で待つ事にした。
頼りない足取りで階段を昇りはじめた五十嵐の後ろ姿を見送る。もともと小柄な身体が、いつも以上
に小さくみえた。

344 :
from 沢辺智哉
体調はどうだ?
もし明日も調子が悪いようなら、一日休んで3連休明けから出てくればいい。
念のため、俺の携帯番号を添付する。なにか有ったら電話してこい。
(もちろん、緊急連絡網に載っている自宅の番号でもいいぞ)
さっき、五十嵐が書いた小説読ませてもらった。(去年の学祭のやつな)
なかなか面白かったよ。これから神崎の話も読むつもりです。
何度読み返しても当たり障りのないメール。
たかだか6行の文章を打ち込み、推敲を重ねるうちに30分が経過していた。
時計をみるともうじき10時。電話をするには遅い時間だが、メールなら問題ないだろ。
送信完了の表示を確認して、スマホをソファー放り投げる。
夕食のあと、リビングでコーヒーを飲みつつ、去年の学祭で頒布された小冊子を読んだ。
うちの文芸部は昔からレベルが高いと言われていたが、俺が予想した以上に完成度が高い作品が多い。
特に、前部長が書いた、大学生と女子高校生の心の交流を題材にした作品は、読み終わって、不覚に
も涙がこぼれた。やっぱり文学はいい。
五十嵐が書いた小説は、どちらかと言うとライトノベルに近いかもしれない。なにかのゲームに出て
くるキャラクターを主人公にしたお話。
内容はよくわからんが、描写力はなかなかのもの。陽春賞むけの原稿を早く読みたいと思った。
風呂に入って、ビールを飲みながらニュースを見ているとスマホが鳴った。
画面には知らない番号。でも五十嵐だと思った。
どんな風に喋ればいい? 何となく焦る。
自分の生徒を相手になにを焦る必要があるんだ。
そう思い直して、通話ボタンを押した。
「もしもし、沢辺です。」
「先生?」小さくか細い声。
「五十嵐か?」念のため確認。
「うん。」
「体調どうだ?」彼女の声を聞くため、リモコンを使ってテレビの音量をさげる。
「だいじょう。」
「そうか。でも無理するなよ。」
明日は大事をとって休んでもいいんだぞ。そう言ったら、五十嵐が黙ってしまった。
「もしもし、聞こえているか?」受話器の向こうからはため息のような音。
「心配かけて・・・ゴメン・・・ね。」五十嵐は途切れ途切れにいう。
「生徒を心配するのは先生の仕事のひとつだぞ。」だから気にするな。
しばしの沈黙。でも五十嵐の息づかいははっきり聞こえる。
「一晩ゆっくり寝て、明日は元気な顔を見せてくれよ。」
お前さんの笑顔が見たいんだよ。本当はそう言いたかった。
「・・・・うん。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
誰かとおやすみの挨拶を交わすなんて、いつ以来だろ。
通話がきれた機械音を聞きながら、少し某然としてしまった。
昔聴いた、アート・ガーファンクルの「もう一つの子守唄」のメロディーが頭に浮かんだ。

今日はここまで。

345 :
ジャンプのHUNGRY JOKERみたいなのも良いよな

346 :
>>344
ここからどうバレンタインデーにまで行くか気なる

347 :
雪が降り出した事に気が付かないまま、とある映画の原作となった小説を読んでいるうち
に、窓の外は白い雪の世界になってしまった。
昼食はインスタントラーメンに野菜を炒めたもので済ますとしても、夕食の食材はない。
どちらにしても買物に出かけなけりゃならないのかと溜め息をつく。
お昼のニュースはどこも、不意に首都圏を襲った大雪に関する事。成人式だというのに
雪に降られて、せっかくの振袖も雪に濡れてしまっているようすをカメラが写しだす。
電車が運行停止した路線もぽつぽつ増えてきた。学校が休みの日でよかった。
テーブルの上に置いといたスマホが電話の着信をしらせる。
画面にはサンリオのキャラクターが写し出されている。五十嵐からの電話だった。
木曜日に携帯番号を教えて以来、毎日、電話が掛かって来るようになった。
「芽衣からの電話やメールがすぐに判るようにしてあげる。」
そう言って俺からスマホを奪い取り、神崎とあれこれと画面をいじる。
返された時には、写真ホルダーに見知らぬ画像がダウンロードされ、五十嵐からの連絡が
あった時には、サンリオのキャラが表示されるように魔設定されていた。
(別に保存されていた、道徳的に良くない写真が見つからなかったのは僥倖というものだ)
スマホを取り上げて通話ボタンを押す。その途端に
「先ちゃん、お母さんが!」鼓膜を破らんばかりの大声で五十嵐が叫ぶ。
思わずスマホを耳から話す。藪から棒になんだ!
「五十嵐、お母さんがどうしたんだよ?」
あちらの大声に釣られて、こちらも多少大声になってしまった。
「お母さんが、倒れて動けないって・・・・。」
最初の大声から、だんだん泣き声に代わって行く。
「どこで倒れたんだ!?」
「病院で! 先生どうしよう! 電車動いてないよ!」
「落ち着け。とりあえず、どこの病院なのか教えてくれ。」
五十嵐を宥めつつ情報を聞き出す。
昨日、夜勤だった母親が、仕事を終えて帰る際に勤務先の病院の敷地内で転んだ。
腰を強打したらしく1人では動けずにいるところを、除雪作業中の警備の人に助けられた。
レントゲンを取ったけれど骨には異常はない。でも歩けないので車いすに乗っている。
「迎えに行きたくてもタクシーがつかまらないし、京浜東北線も動いてないの。」
五十嵐はそれだけ言うと、また泣き始めてしまった。
母親の勤務先は板橋区だった。この雪では都内でもタクシーはつかまらないだろう。
とりあえず一旦電話を切って折り返す旨を伝える。
ベランダに出て雪の具合を見る。駐車場は真っ白。目の前の広い道路は交通量もあるせいか
まだ路面がみえる。でも一本裏道に入ったら、歩いた人の靴跡だけが残る。積雪量は5cm
ってところかな・・・。
4輪駆動といってもノーマルタイヤの我が愛車。俺は岐阜の山深い町の出身だから、雪道
の運転には慣れている・・・。正確には慣れていただな。
広い道をスピードを抑えて走れば何とかなるだろう。そう思った。
五十嵐の番号を呼び出す。呼び出しは続くが繋がらない。いったん留守電に切り替わった
が、伝言を残す前に五十嵐の声が聞こえた。
「先ちゃん!」
「これから車で迎えに行く。とりあえず暖かい恰好で待ってろ。」
五十嵐の自宅近くになったら電話する。それまでは家にいろ。そう伝えて電話を切った。
昔々、毎週末に山を登っていた頃の名残であるノースフェースのレインスーツを着る。
内側もヒートテックと厚めのフリース。チノパンにトレイルランニング用シューズ
俺が持ってる対雪装備を総動員して家を出た。
透明のA4ファイルを3枚重ねにしたスコップ代用品で、屋根とフロントガラスの雪を落とす。
シートが濡れるのも気にせず運転席に乗り込んだ。
2車線の県道は気持ちいいほど空いている。先行車のトラックの後ろを20キロほどの
スピードでついて行く。もちろん車間距離は十分に取る。この分なら行けるかもって
思った途端にハンドルを取られてしまいヒヤリ。命大事にモードのスイッチを押して、慎重な
運転に専念した。

348 :
五十嵐をピックアップして、今きた道を折り返す。
雪の勢いは相変わらず強くて、ワイパーを動かしてもすぐにフロントガラスに貼りつく。
横目でちらりと五十嵐の様子をうかがう。ジーンズにユニクロだかのフード付きダウン。
赤色チェックのマフラーを二重巻にして口元を隠している。
車に乗り込んでくる時に見た五十嵐の瞳は真っ赤に充血していた。
こんな日に母親が遠くの勤務先で倒れて歩けないなんて聞いたら、たぶん俺でも取り乱
しただろう。
「紅茶。冷めないうちに飲めよ。」
彼女を待つ間に自動販売機で買った紅茶は、手のなかでゆっくりと冷めて行く。
五十嵐はコクンと頷きはしたが、キャップを緩めようとはしなかった。
信号で停まったところで、缶コーヒーを一口飲む。あまり飲まないメーカーのショート缶
だが、口の中に酸味が残るのが好みに合わない。憂鬱な気分が上積みされる。
信号が変わり、前を走るトラックがゆっくりと走りだす。後輪に巻かれたチェーンがキン
キンと気障りな音を響かせる。それが一定のスピードに乗るとリズムを奏で始めて、どこ
かで聞いたような感じだなっと考えていると、中学時代の音楽の授業の時に聞いた、バリ
島のケチャのリズムに思い当たった。
ケチャ、ケチャ、ケチャと単純なリズムが繰りされる事で、一種のトランス状態に陥る
原始的な呪術がうんたら。音楽教師はそんな説明をしていた。トランス状態に陥る訳には
いかないので、カーステレオのスイッチを入れる。
昨日の帰り道で聞いていたジャズのMDから「A列車でいこう」が流れ始めた。
ピアノソロの後、サックスとトロンボーンがアップテンポの調べを奏でる。
五十嵐を元気づけるなら、AKBだのSKE?だのの方がいいのかも知れないが、おっさんの
ライブラリーにそんなものはない。それでも、今後の機会の為に、TSUTAYAで借りてくる
か、なんて不埒な事を一瞬だけ考えたのは内緒だ。
戸田橋を越えて都内に入る。志村坂上の交差点を左折すると五十嵐のお母さんの勤務先。
思ったよりもスムーズにくる事が出来た。
駐車場に車を停めて、夜間休日診療の窓口に向かう。
五十嵐が母親の名前を告げると、同僚の看護師さんが迎えに来てくれるという。
親族ではない俺は、同行を遠慮して待機スペースのベンチで待つ事にした。
本は持ってきていない。スマホのバッテリーは残り3分の1ほどなので、ネットやゲームを
楽しむには心もとない。薄いカーテンが引かれた窓の向こう側は17号線に出ようとする車
の渋滞。雪の中ライトグリーンの国際興業バスだけが目立つ。車内は満員だ。
五十嵐のお母さんは大丈夫なんだろうか。去年の夏の3者面談で一度だけ会った事がある
母親の容姿を浮かべた。
肩にかからない短めの髪。黒いパンツスーツに胸元が少しだけ開いた生成りのシャツ。
化粧っけもなく、何というか着ているシャツにも似た、清潔感を身にまとった女性だった。
俺と同い年と言っていたが、30歳代後半と言われても信じるだろう。
7月初旬に提出させた調査票に、五十嵐が記入した進路希望は「保母」。
無邪気な五十嵐はその志望動機に「子供が好きだから」と書き、あまりの単純さに、俺と
副担任は頭を抱えた。
三者面談の席上、その書類をみたお母さんも深いため息をついたのだった。
結構大きな病院で副看護師長という役職についているので、五十嵐が専門学校に進んでも
収入的には問題は無い。
「ただ、無邪気すぎる娘が保母になったら世間にご迷惑をおかけするのではと。」
娘の行く末を変な風に心配していたのは御愛嬌だろう。
そんな事を考えながらしばらくの間、外の景色をみていた。

349 :
「先生。」
振り返ると五十嵐がお母さんの車イスを押してすぐそばまで来ていた。
横には若い看護師さん。茶色の大きめのトートバッグを持ってる。
車イスに乗せられたお母さんは、車イスに乗せられているのが恥ずかしいのか伏し目がちだった。
黒いロングコートにブラックジーンズ。首にはフェルメールブルーのマフラーが巻かれている。
大人の女性にありがちなブラックコーディネートだけど、マフラーのフェルメールブルーが彼女の
センスの良さを感じさせた。
「大丈夫ですか?」ベンチから立ち上がりお母さんに声をかける。
「この度は先生に、大変なご迷惑をおかけしてすみません。」
ムスメがパニックになったみたいで、先生を呼びつけるなんて・・。彼女はそう言いながら頭を下げ
ようとしたが、痛みがはしったのか、痛そうに顔を歪めた。
「まあまあ、お母さんが倒れたなんて聞いたら、誰でもパニックになります。」
この雪じゃタクシーはつかまらないし、娘さんが電話してきたのは、良い判断だと思いますよ。
俺がそう言うともう一度頭を下げた。
「転んだ時に腰の筋を痛めてしまったんです。一応、骨には異常はないんですが、腰を少しでも動か
そうとすると、すごく痛むものですから。」
「とりあえず、僕の車はワゴンなので車椅子は積めます。ただ、車に乗れますか?」
「コルセットで固定していますし、時間はかかりますけど乗れると思います。」
「じゃあ、車をとって来ますけど、どこに着ければいいですかね?」
「ああ、正面玄関につけて下さい。」そこなら屋根がありますから。若い看護師さんが言った。
「判りました。」
車の鍵をポケットから出しながら、俺は建物を出た。
帰り道の運転は、行き以上に神経を使うドライブになった。
五十嵐のお母さんの状態は思った以上に良くなくて、車イスから立ち上がるのに3分。助手席に乗る
というか収容するのには10分近くかかった。コルセットをつけて、医療用の強い鎮痛剤が効いてい
る状態でこれだから、鎮痛剤が切れたあとはどうなるんだろうと心配になった。
今、五十嵐のお母さんは、助手席のシートをフルリクライニングさせた状態で横になっている。
17号線は意外と路面に轍やへこみもあって、スピードを落としていても、たまに大きく揺れる事が
ある。そのたびに彼女から苦痛を我慢するような吐息が漏れて、ひどい罪悪感を感じてしまう。
鎮痛剤がちゃんと効いているのは、あと2時間くらいだ。それまでに彼女を連れて帰らなけりゃな
らない。
病院を出て、休日でも開いていた調剤薬局で薬の処方を受けた。その薬局の駐車場で話し合ったの
が、お母さんをどこに連れて帰るのかだった。
車イスから立ち上がるのに3分かかる状態の人が、五十嵐家までの4階分の階段を歩ける訳がない。
仮に俺がおぶって行ったとしても、次の問題は五十嵐家にはベッドがないこと。腰を痛めた人を
布団に寝かせるのは負担が大きすぎる。じゃあ、どこかホテルに宿を取るにも、雪と受験シーズン
のせいで、市内のホテルは満室だった。
「時間をかければ階段も登れるので、自宅へ送って下さい。」
そう言うお母さんに対して、五十嵐は無理だよという。俺もそう思う。
親子が対策を考えている間も、俺はスマホで何件ものホテルに電話するけど、満室を理由に断ら
れた。
「芽衣さんの担任として、この提案はどうかと思うんですが・・・。」
そう俺が切り出したのは、薬局の駐車場に停まって30分経過後。
「芽衣さんが言うとおり、あの階段を鎮痛剤が切れるまでに上るのは無理です。ぎっくり腰の経験
もあるので、腰痛の時に、敷いた布団で生活するのが大変んな事も知ってます。で、ホテルも都内
から市内まで当たりましたがすべてダメです。」
これを言ってしまったら、まずいような気がしないけど・・・。
「なので、うちに来ませんか・・・・?」
「えっ?」
2人の瞳が大きく見開かれて、俺の事を不思議なものを見るような目でみつめる。
やっぱり、やっちまったみたいだ。

350 :
>>322
いいですね。
続き楽しみにしています。
がんばってください。

351 :
どんな物事も、それを成し遂げるには、勢いというものが重要なファクターを占める。
例えば説得。正当な理由があって、有無を言わさぬ程の勢いがあれば、大抵の場合、相手は受け入
れざるを得なくなる。
それが義理がある相手と娘からの説得であれば、どんなに抵抗しても、最終的には受け入れざるを
得ない。受け入れたならば後は身を任すしかない。世の中というものは、そんな風に出来ている。
今、恵美子さんは、うちの客間のベッドで安らかな寝息を立てている。
昨日の夜は、ほとんど寝てなかったというし、鎮痛剤の作用もあるのでしばらくは目を覚ます事は

352 :
ダメだ書き込みエラーがでます。
明日再チャレンジします

353 :
楽しみにしてる!

354 :
どんな物事も、それを成し遂げるには、勢いというものが重要なファクターを占める。
例えば説得。正当な理由があって、有無を言わさぬ程の勢いがあれば、大抵の場合、相手は受け入
れざるを得なくなる。
それが義理がある相手と娘からの説得であれば、どんなに抵抗しても、最終的には受け入れざるを
得ない。受け入れたならば後は身を任すしかない。世の中というものは、そんな風に出来ている。
今、恵美子さんは、うちの客間のベッドで安らかな寝息を立てている。
昨日の夜は、ほとんど寝てなかったというし、鎮痛剤の作用もあるのでしばらくは目を覚ます事は
ないだろう。
とりあえず、ある程度動けるようになるまでの間、俺の家の客間で過ごす。
動けるようになったら、自宅に帰るなりホテル移動するなりすれば良いって条件で、恵美子さんは
うちにくることを了承した。
あと、「五十嵐」と呼ぶと、五十嵐のお母さんと本人が返事をするので、便宜上、五十嵐を「芽衣」
、五十嵐のお母さんを「恵美子さん」と呼ぶことになった。

355 :
恵美子さんをベッドに収容したあと、2人の着替えを取りに五十嵐の家まで戻った。
雪は降り続いているものの、広い道路なら問題なく走れるし、雪道運転の勘も戻ってきた。
裏道に入ると多少は難儀するが、無事に五十嵐宅の階段下に到着。
二人分の着替え(とりあえず3日分)は大きな紙袋に二つ分だった。
それからスーパーに立ち寄って、いろいろな食材を買って帰った。
すべての買い物を終えて、我が家に帰り着いたのは、午後4時を過ぎていた。
正直、俺も芽衣も疲労困憊状態だった。
誰も昼食をとってなくて、スーパーで買ってきた巻き寿司を軽くつまんだあと、本格的に夕食の準
備にかかる6時まで、俺はリビングで、芽衣は恵美子さんに付き添って過ごした。
普段は一人で暮らすこの部屋に、二人の女性が存在するというのは不思議な感覚で、不用意にリビ
ングから出ることが躊躇われた。
読みかけていた小説の続きを読むが、何だか頭に入ってこない。仕方なく、テレビのバラエティー
番組の再放送を見ながら時間を潰した。
夕食は野菜たっぷりの寄せ鍋。(恵美子さん用の雑炊を作るための選択)
テレビのニュース番組を流しながら、魚のアラで出汁をとっていると、リビングの扉が開いて芽衣
が顔をのぞかせた。
「支度は俺がやるから、恵美子さんについててやれよ。」俺がそういうと芽衣は
「今はぐっすり寝ているから大丈夫だよ。私がやるから先ちゃんこそ座っていてよ。」
と言ってセーターの袖を捲った。
半ば強引にキッチンから追い出されて、俺は再びソファーに座った。
「ねえ先ちゃん?、このキッチン使いやすいね。」
「そうか?」
「うん、うちの台所は古いから使いずらいんだよね。」お湯を使いたくても給湯器が古いから、お
湯が出るまで時間かかるし。」
「そりゃ、多少は時間かかるだろ。」
「でも先ちゃん家のはすぐにお湯でるじゃん。やっぱ高級マンションは違うねー。」
芽衣は歌うように言った
「高級じゃねえよ。」中古だしな。まあ、築浅だから設備は新しいけど。
「でもさ、こんなに広い家に1人って淋しくな〜い?」
「別に。教師になってからはずーと1人だから、誰かと暮らすなんて感覚なんて忘れたな。」
「まさか、彼女いない歴20年っすか?」小娘め、痛いところを突いてきやがる。
「そこまで酷くはないぞ。」まあ、17年も20年も大して変わりないけどね。
「じゃあ、私が彼女になってあげるよ〜。こんな可愛い彼女がいるなんて自慢出来るでしょ?」
芽衣の何気無い一言に驚いて顔を挙げると、芽衣はまな板の野菜を刻みながら続けていて、こち
らを見ようとしない。
教師を20年もやっていりゃ、この手のからかいは幾度も経験する。いちいち真に受けてたら、高校
教師なんてやってられない。
「完全にストライクゾーンを外れてるぞ。どっちかと言ったら養女の間違えだろ。」
「幼女ってなに! 私が子どもだって言いたいの?」
菜切包丁を手にしてキッとした目で睨むんじゃない。
「そこの文芸部員。話の流れからして、幼な子じゃなくて養い子の方だろ!」
「あっ、そっちの養女か。」
大体、女子高生は幼女じゃないだろう。まあ、芽衣の天然さは、幼女と言ってもおかしくはないが。
「でもさ、養女って事は、先ちゃんがうちのお母さんと結婚しなきゃダメだよね。」
まさか先ちゃん、うちのお母さんを狙ってるの〜!? やばい、寝込みを襲われちゃうかも〜!
ひとりで盛り上がっている芽衣を冷たい視線で一瞥。
「生徒の母親に手を出すわけないだろ。」
「でもさ、先ちゃんとお母さんは同い年だよ。教師と看護師どっちもお硬い商売だし。」
意外にお似合いかもよ〜。でもお母さん面食いだからな〜、先ちゃんダイエットしないとね。
二人が結婚したら新居はここだよね。じゃあ、あの部屋が私のものになるんだ。
俺が言葉を挟めないほど、からかうような言葉を芽衣は続ける。
でも芽衣の言い方になんとなく、からかい以外の成分が含まれているような気がした。
「なんだよ、俺にお母さんを取られそうって寂しがってるのか?」
「違うよ。お母さんに先ちゃんを取られるのが嫌なの。」
「・・・・・・。」なんか特大の地雷を踏んだ気がする。

356 :
iPodに入っている青木カレンのCDを聴いている間に眠ってしまったらしい。
薄目を開けてリビングの時計を見ると19:30過ぎ。キッチンからは、カレーを煮込んでいる刺激的な香
りが漂ってくる。
腹が減ったのだが、今日の夕食番長である芽衣に「今日の夕食は20時」と宣言されてしまい、配給を
待つ我が身は、もう暫くの間、我慢するしかない。
ちなみに、恵美子さんの面倒を見るために学校を休んだ芽衣は、やる事がなくてカレーを4時以上も煮
込んでいたというのだ。
誰もいないリビングは当然静かで、うたた寝をするには最適の筈なのだが、空腹感とカレーのスパイ
シーな香りが逆に目を覚まさせる。
もう一度音楽を聴こうとイヤフォンの再生ボタンを押すが、操作音も曲も流れない。
バッテリーの持が悪いという、Bluetoothイヤフォンの最大の弱点である電池切れだ。
そりゃ、小まめに充電しない自分が悪いんですけどね。仕方なくこのまま不貞寝する事に決めた。
今、俺の家には3人の女性がいる。恵美子さんと芽衣。それに恵美子さんの見舞いと称して、半ば強引
に押しかけてきた神崎。6畳の客間で3人で話し込んでるのだ。
恵美子さんの容態は、「昨日よりは幾分よくなった」という程度で、トイレに行くのも大騒ぎだ。
俺がリビングにいるのも、俺の寝室がトイレの横なので、俺が寝室にいると、恵美子さんが何かと気
を遣うだろうという、気の回し過ぎと取られても仕方ない理由からだった。
家主の俺がそういう気遣いをしているのに対して、芽衣の方は実に堂々としたもので、まるで随分と
前からこの家で暮らしているかのように、生き生きとしていた。
俺が仕事に行ってる間に、リビングからトイレまで掃除してくれたのだが、隙があれば俺の寝室まで
掃除しようと機会を窺う状態だ。この年齢だから、道徳的に良くない本やDVDなんぞは殆どない。
しかし、俺の趣味や志向が生徒に知られるのは、やはり憚られる。
さっき、洗濯物を取り込む時、俺が穿いている下着がボクサーブリーフだと暴露て赤面したばかりだ。
昨日、大きな地雷を踏んだと思ったが、今日の芽衣の様子を見ると、俺の思い過ごしだなって考えら
れるようになった。
カチャリという音がしてリビングの扉が開いた。
「あーあ、先生寝ちゃってるよ。」ソファーで横になってる俺を見て、神崎が呆れたような声をあげ
る。
「疲れてるんだよ。ご飯の支度が終わるまでそのままにしておいてあげよ。」
芽衣がそう言って、食器棚から皿を出し始めた。
「優しいじゃん。」
神崎の足音がキッチンカウンターの方に遠のいていった。
「でも、沢辺っちの家、結構きれいに片付いてるよね。」
「うん、先ちゃんA型だから結構きれいにしてたよ。」
「そうだよね、でなけりゃなんの準備もなく芽衣達を泊めたり出来ないよね。」
「エロい本とかDVDは? 」「なかったよ。寝室はわかんないけど。」
聞きたくない会話まで聞こえてくる。寝たふりをしたのは失敗だったようだ。
「芽衣にとっては、ちょ〜LOVEな沢辺っちの家でお泊まり出来るんだから、凄いラッキーでしょ?」
「まあね。」
「なに、何かあったの?」何だか歯切れの悪い返事に、神崎は何事か感じ取ったらしい。
「あのね。」芽衣が急に声をひそめた。2人の会話は断片的にしかきこえない。片耳のイヤフォンを
外そうかとも思ったけど、盗み聞きは良くないという良心の声に従った。
それでも聞こえてくる会話の断片を整理すると、芽衣が俺の好意を持っているけど、俺は恵美子さん
の事を気に入っている。そして、恵美子さんも俺の事を「たよりになる人」だと言っているらしい。
「つまり、今回の事で芽衣と沢辺っちの距離が近づいたけど、芽衣ママと沢辺っちの距離も急速接近
したって言いたいんだね。」芽衣の回りくどい説明を神崎がまとめてくれたようだ。
「でもさ、さっき芽衣ママが、沢辺っちにちゃんと御礼してないって言ってたよ。2人っきりになる
ようなタイミング有ったの?」
芽衣が何か一言言った。
「そんなの芽衣の考え過ぎだよ。」だから元気だせよ〜!パシンと背中を叩く音がした。
丁度、ご飯の炊き上がりを知らせるアラームが炊飯器から聞こえて、2人は夕飯の準備に勤しみはじめ
た。

357 :
夕飯のカレーを堪能して、芽衣と二人で神崎を駅まで送ったあと、風呂に入った。
風呂に入る時には、下着一枚で闊歩できる我が家だが、芽衣と恵美子さんがいたのでは、それも憚ら
れる。普段着ている、パジャマ代わりの小汚い部屋着というのも、あまり見られたものではないし、
二人が来て以来、地元のサッカーチームの赤いレプリカユニフォームとイングランド代表チームの
ユニフォームを日替わりで着ている。
脱衣所の扉にa4のコピー用紙に極太のマッキーで「使用中」と書いたものを貼り扉を閉めた。
誰かが入っている時に、不用意に扉を開けないための防護処置だが、やり過ぎ感は否めない。
だが、間違えを起こさないためには必要な処理なのだ。
湯船に半身を浸し目を閉じる。普段なら更衣室との境目の扉を開けておき、スマホでJAZZを流すの
だが、恵美子さんが寝ているかも知れないので自粛する。気を使いすぎだという意見は無視する。
目を閉じて考えるのは、さきほどの芽衣と神崎の会話の事ばかりだ。
芽衣が俺に対して好意をもってくれている。それは嬉しいことだ。ただ、それは一過性の熱のような
もので、幻想にもにたものだと思う。
こんな俺でも、若い頃には生徒に告白された事もあった。(高校教師というドラマが流行していた)
ラブレターも貰ったし、バレンタインには10個近いチョコももらった。
でも、それは殆どがlikeの延長であって、loveではなかった。確かに一人だけ、本当に好きなんだと
言ってくれた生徒もいたが、それは誰かの身代わりだったと後から知った。
芽衣場合はどうなんだろう。担任と生徒というラインを超えてメールを交わすようになって、まだ
2週間も経っていないのだ。多分、likeの延長だと思う。それに芽衣は気付いていない。
だから、自分のだけのおもちゃだと思っていた俺が、恵美子さんに好意を持ってるなんて考えて
不安になっている。お気に入りのおもちゃを母親が取り上げるなんて考えているんだろうか。
確かに恵美子さんは魅力的な女性だ。正直にいえば、好みのタイプの女性だ。
多分、俺が7歳若かったら恋に落ちていたかも知れない。引力にも似たものを彼女に感じているのも
事実だ。でも、40を過ぎたおっさんは、そう簡単には誰かを好きになったりはしない。
誰かを好きになるということは、もの凄く情熱が必要な行為だ。その情熱が今の俺にはない。
好きになった相手には、自分の事を少しでも良く見せたい。相手の気を引くために、相手の趣味や
志向をリサーチし、どう口説き落とすかと様々な戦略を練る。それが若い頃の恋愛の一番の愉しみ
かも知れない。
だが、40を超えると何かと神経を使うことが多く、恋愛に情熱をかけるより、一人の時間を愉しん
だ方が楽で、自分のテリトリーから出ていかなくなる。
俺の場合は、食欲>睡眠欲>物欲>越えられない壁>恋愛を求める欲望ってな感じになっている。

358 :
芽衣ちゃんキタ━(゚∀゚)━!
毎回楽しみにしてます

359 :
自宅のWi-Fiからだと、なぜか書き込みが出来ません。
中途半端なところで切れてますが、続きはなるべく早くUPします。

360 :
昨日、書き込み出来なかった部分です。続きは金曜日に!
「愛する人とめぐり逢い、その愛を一身に受けて、腹を満たし、肌の温もりを得られれば、その上
何を欲する。」俺が好きな小説の中にこんな一節があった。
30代の半ばだった俺は、この一節を読んだ時に、何だか悲しくなってしまった。
人間の幸せをここまで端的に表現した言葉を、俺はそれまで見聞きした事がなかったからだ。
30代も半ば。職場では生徒に先生と呼ばれ人並みの収入は得ている。でも俺の中にある欠落した
部分を埋めてくれる人はいない。
「お前は本当の幸せを手にしていない。」という事実を、厳然と突きつけられた気分だった。
俺にも愛した人はいた。でも、その存在が去った後、俺はこのマンションを購入した。
居心地の良いソファー。高級なオーディオセット。当時は高級品だった薄型の大型テレビ。寝室
には高級ホテルで使っているのと同等のセミダブルのベッド。ウォールナットを使用した机に、
高機能のオフィスチェア。まるで武装するかのように、病的なまでに居心地の良い空間を求め、
自分が籠るべき城を作り上げた。
美味しい珈琲を淹れ、JAZZを流しながら好きな本を読む。腹が減れば自分好みの味付けの食事を
作り、食べる。心を乱す物について、この城にいる間は考える必要もない。まるで繭のような城。
この城に出入り出来るのは本当に限られていて、岐阜の家族か親友と言える男の家族だけだ。
この8年間、それ以外の存在に、リビングの扉を開けた事はなかった。
それに今回、芽衣と恵美子さんが加わった。
・・・俺はなぜ2人を受け入れたんだろう?
半身と信じて疑わなかった存在が、誰か別の人間の半身であると知った日。俺は自分の心の扉を閉め
窓を塞いだ。
自分の心の中に誰かが侵入してくるのを怖れたのかも知れない。はたまた、去って行った半身の思い
出という幻影が消えるのを怖れたのかも知れない。いつしか入口の扉の鍵は錆びつき、塞いだ窓から
日が差し込む事はなくなった。思い出という幻影も薄らぎ姿を消した。
いつか、この扉をノックする女性が現れる事を渇仰する自分。消えた幻影を懐かしむ心地良さに酔う
自分。その日毎。その瞬間毎に迷う自分がいた。
そして気がついたら、俺の心の中に芽衣が入り込んでいた。
錆び付いた鍵は開かないはずだった。でも芽衣の人懐っこさが鍵についた錆を落とし、芽衣の危うさ
が俺に扉を開かせた。なんの事はない。芽衣に導かれて、俺は繭のような城から出ていたのだ。
「参ったな・・・。」漏れた言葉が狭い浴室に響いた。

361 :
>>360
GJ!
正直>>322の時には、ここまで深く詰めてくるとは思わなかった。
とりあえず木曜までは服着ておく。

362 :
うおお、超大作すなぁ

363 :
ここまで詰めちまったら安易にエロに突っ走らないでほしいと思う自分がいる。
…ところでこの話の部長、どっか別のスレとかで出ているとかあるのかな?

364 :
神崎ちゃんの話は書いておりません。
いずれ書くのも面白いかと。
他の話を書く前に、筆ならしのつもりで書き始めたこの話。思った以上に長くなってしまい、書いてる本人も、どないするべと悩んでます。

365 :
テスト

366 :
誰にでも眠れない夜はある。
今、寝室のベッドサイドの電波時計は2:30を表示している。ベッドに入ったのは午前零時過ぎだったが、何だか目が冴えてしまって眠れずにいる。
起きるのは6:30だから、すぐに眠ったとしても4時間しか眠れない。そう思えば思うほど眠気がとん
でしまう。
時計が3時を示す。もう無理に眠るのは諦めよう。そう思って読書灯をつけた。
携帯ホルダーからスマホを取り上げてツイッターをチェックする。三桁の数字の未読ツイートが表示
されるが、あまり興味をそそられるツイートはなく、5分もしないうちにチェックし終わった。
ニュースサイトも見るが、寝る前にチェックした内容とそう変わらない。世の中は平穏のようだ。
扉の向こうの廊下で微かな音がするのに気がついた。芽衣はまだ起きているのか?
恵美子さんの介護の為、明日も学校を休むとはいえ、こんな時間まで何をやってるんだ。
扉を急に開けて、軽く説教の一つもくれてやろうという悪戯心が湧きおこる。
忍び足で扉に近づき耳をすまして気配をうかがう。足音が寝室の前をゆっくりと通り過ぎる。
という事は、腹でも空かせて冷蔵庫を漁りにいったのか。
リビングの扉が開く音がした。今だ。
「こら、こんな時間に何をやってんだ。」「えっ!?」
廊下に溢れた俺の寝室の灯りに照らされて、驚いた表情のまま固まっていたのは恵美子さんだった。
コーヒー豆はスターバックス。緑茶は狭山茶の上等な物。紅茶はトワイニング。別にブランド至上
主義者ではないけど、せめてコーヒー豆と茶葉にはこだわりたい。
とあるスペースオペラに登場する紅茶好きの元帥に顰に習い、気が向いた時に飲むために、プリンス・
オブ・ウェールズという上等の紅茶の茶葉も用意してある。
少し多めに沸かしたお湯をティーカップに注いで温める。いつかこのリビングを訪れるであろう女性
の為に、遥か昔に、名古屋にあるノリタケの直営店で買い求めたティーセットが初めて活躍の場を与
えられた。
ティーポットにお湯を移して、水の量に合わせた茶葉を入れた。これで少しおいておけばジャンピン
グが始まり、美味しい紅茶が淹れられるはずだ。
キッチンカウンター越しにリビングを見ると、ダイニングテーブルの椅子に座り、恵美子さんがキョ
ロキョロとリビングの様子を伺っているのが見える。
深夜の3時過ぎに、リビングで紅茶が出てくるのを待つというのも、なかなか得られない経験だろう。
「寒くないですか?」二重窓に守られているリビングと言っても、冬の真夜中だ、暖房を入れた方が
いいかもしれない。
「いえ、だいじょうぶですよ。」うちよりもずっと暖かいですから。
恵美子さんはそう言って笑った。

367 :
神崎が持ってきてくれた電池式の湯たんぽのような物を、痛む腰に当てていたら、冷湿布を当ててい
た時よりも痛みが軽くなったとかで、爆睡している芽衣を起こして水を飲みに行くのも申し訳なくて
1人で起き出してきたところを、俺に驚かされたらしい。
驚かしてしまったお詫びにと、12時間遅れの3時のお茶会に至った訳だ。
ポットを開けて茶葉が十分に開いているのを確認して、ティーポットをダイニングテーブルに持って
いく。そのあと、温めたティーカップのお湯を捨て、紅茶を注いだ。
紅茶の香りがふんわりとリビングに拡がって行く。「いい香り。」恵美子さんがテーブルに身を乗り
出して、ティーカップから立ち上る香りを嗅ぐ。
「プリンスオブウェールズっていう茶葉なんです。」
「へー、ずいぶんと大げさな名前ですね。」
「まあ、日本語に直訳すれば、紀州候とか尾張候なんてものに近いかもしれませんね。」
「なるほど、日本茶なら、それもありかも知れないから不思議ですね。」
ティースプーンをソーサーに並べて、恵美子さんの前に置く。
一応は角砂糖も用意したが、恵美子さんはストレートを味わいたいと言って、そのままティーカップ
に口をつけた。
「美味しい。でも猫舌の私にはちょっと熱すぎです。」ちょと冷まさせて下さいね。ティーカップを
ソーサーに戻しながら彼女は言った。
「どうぞ、ごゆっくり。」そういいながら俺も紅茶を口にするがやはり熱すぎだ。
「真夜中のアフタヌーンティーなんて、すごく贅沢な感じですね。」
「ビスケットとかがあればもっと良いんですが、あいにくポテチくらいしかないんです。」
「ああ、気にしないで下さいね。お腹が空いている訳じゃないんです。」
余計な事を言ったのかと思ったのか、恵美子さんは少し慌てて否定する。
「でも、こういう濃いめに淹れた紅茶には甘いものは必須でしょ?」
「こんな時間に甘いものなんて、翌日、体重計に乗るのが怖いです。」
恵美子さんの言葉に、俺が自分のお腹の余った贅肉を掴むような仕草をしたら、口許を右手で隠して
笑う。
「沢辺先生ってほんとうに面白い方ですね。」
「まあ、教師って笑いが取れるぐらいじゃないと、授業が上手くいきませんから。」
「それって、医師も同じで、良い先生は面白い人が多いんですよ。」
腕の良い先生は、患者さんや看護師にも気さくで、取っ付きやすい人が多いんです。
「僕は、そんなに人気があるわけじゃありませんよ。」
「でも、芽衣はすっかり懐いてる感じですよね。迷惑かけていませんか?」
「迷惑になんて感じてませんよ。」
「なら良いんですけど、先生の事を先ちゃんなんて呼んでるし。」
「まあ、他の生徒の前では、ちゃんと沢辺先生って呼んでくれてますから。
どちらかといえば、俺のことを影で「沢辺っち」呼ばわりしている神崎の方が問題だ。
「先生は、雰囲気がうちの兄に似ているんです。」
「お兄さんですか?」
「ええ、三歳上なんですけど、芽衣もずっといっしょに暮らしていたんで、父親みたいに懐いてい
たんです。」
「僕はそのお兄さんにそっくり何ですか?」また誰かの身代わりなのか?
「いえ、全然にてないです。でも、全体から伝わってくる雰囲気というか、匂いが兄と同じような
ものを感じさせます。」
「そうなんですか。」
「看護師って時間が不規則になりがちで、前の旦那と別れた後は、実家に帰って、母と兄と芽衣の
4人で暮らしていたんです。実家は飲食店をやってまして、日中も兄が家にいたんです。だから、芽
衣は、私とよりも兄と過ごす時間の方が長かったんですね。」
恵美子さんは、ティーカップを持ち上げて、冷め始めた紅茶を口にした。
「その兄も縁あって、芽衣が5年生の時に遅い結婚をしまして、今は横浜でイタリアンのお店をやっ
てるんです。でも、兄の結婚が決まった事を芽衣に伝えたところ、それはもう怒りまして。」
「物でも投げましたか?」
「家の中のありとあらゆるものを、兄と私に投げつけてくるし、伯父さんは私のだ〜って大泣きす
るしで、ちょうどその時は夏休みの時期だったんですが、自分の部屋に籠城して3日も出て来なかっ
たんです。」
「芽衣ならやりかねませんね。」

368 :
「まぁ、小さな頃からずっと一緒にいて、大人になったら伯父さんと結婚するって云うぐらい大好き
な伯父さんを、見たこともない女の人に取られるんですから、悲しかったんでしょうけど。」
「僕の姪も小さい頃は、叔父さんと結婚するって言ってくれましたけど。」
「いまは?」
「私の方が先に結婚しちゃうぞって脅かされています。」
恵美子さんが俺の事を本当に気の毒そうな目で見つめた。
「でも沢辺先生は、なんでお一人でいらっしゃるんですか?」
ティーカップを両手で持ち、上目遣いに俺を見ながら、恵美子さんが答えにくい質問をストレートに
ぶつけて来た。
「単に縁がなかっただけです。この歳になると、今更、嫁探しってのも、案外億劫なことですし。」
「お付き合いされている方とかも、いらっしゃらない?」
「残念ですが。まあ、学校と自宅の往復と、近所に買い物に行くぐらいの生活ですからね。」
「私が同僚なら、先生みたいな人は放っておきませんけど。」
「昔、生徒に、沢辺先生みたいな旦那様が良いって言われた事はありますけど、沢辺先生が良いって
言われた事はないですね。」
「その生徒さんは?」恵美子さんは、俺の言い方が気にかかったらしい。
「今はニューヨークかどこかで暮らしてるはずですね。」
「ニューヨークですか。」
「ええ。その生徒も母方のおじさんを好きになってしまって、道ならぬ恋に悩んでいたんです。で、
おじさんが仕事の関係で、アメリカに渡ることになったんですが、周りの反対を押し切って、無理
矢理渡航してしまったんです。」
「もしかして、先生とその生徒さんって。」
「卒業して数年経ってから偶然再会しましてね。悩みとか聞いてやっているうちに恋仲になりました
でも、最終的にはおじさんを選んだんで。」
「 ・・・・・。 」恵美子さんは黙ったままだ。
「すみません。こんな話しちゃって。でも10年も昔の話ですから。」
「じゃあ、10年も誰も・・・。」
「好きになった事はないですね。別に去って行った彼女を未練に思っている訳じゃないんですが、さ
っきも言いましたけど、面倒くさいんですよ、今更、誰かを探すのが。」
「そうですよね〜。」恵美子さんがため息交じりに感慨深かげに言う。
「若いうちって、結構勢いで恋が出来るけど、私たちの年齢になると、ご縁が有ったらって感じにな
りますものね。」私の場合は勢いで結婚して子供作って痛い目に遭いましたし。自嘲的な笑顔。
「で、母と兄の多大なる協力を得て、グレることなく芽衣を育てることもできて、あと数年経ったら
完全に手が離れるでしょうけど、そうなると残り40年くらい、私は1人で生きるのかなって悲しくなる
んです。勿論、芽衣が子供を産んだら、母が助けてくれたように全面的にサポートしますけど。」
恵美子さんは、自分の言葉を探すかのように、ティースプーンで紅茶をかき回し続ける。
「でも、自分を生きたいって願望もあって・・・。」
「中島みゆきの歌にありましたね、題名は忘れたけど、一人でも私は生きられるけど、でも誰かとならば人生ははるかに違うって・・・。そんな感じですか?。」
「・・・・。」
「独り者の僕がいうのも何ですが、いっしょに生きる人がいるってのはとても素敵な事だと思います
よ。適度に枯れてるから、相手を縛る事もないし、相手を理解しようと努力もするでしょうし。」
恵美子さんは素敵な人だから、きっとそういう相手が見つかりますよ。そう口にしたら、心の奥底で
鈍い痛みが走った。
「先生は、御自身にそういう相手が現れることを望んでいますか? 」
「そうですね。そういう女性が見つかったら幸せでしょうね。」
質問と答えがチグハグな気がしないでもないけど、あまりがっついたところを見せるのも気が引ける。
低い室温のせいで適度に冷めた紅茶を飲み干す。
なにか言いたげな表情で恵美子さんが俺を見つめていた。

369 :
今週はここまで。
うちの会社は2月が年度末で、今週はこの程度しかUP出来ません。

370 :
○○○○
年度末、キツイね。
無理せんようにな。

371 :
うむうむ、無理して潰れないようにね。

372 :
何とかWDまでには書き上げたい。
( ̄◇ ̄;)

373 :
無理のない中でがんばってください。

374 :
芽衣と恵美子さんが、我が家で過ごしたのは、たったの4日間だった。
初日と2日目は起き上がることも出来なかった恵美子さんだったが、患部を温めたことが良かったの
か三日目にはある程度歩けるようになり、4日目の夜。最初の約束どおり、2人で暮らす本来の家に
帰って行った。
2人を車で送り、自宅に帰り着いたあとの何とも言えない空虚感は、それから1週間過ぎた後もぬぐ
い切れず、澱のように心の奥底に沈澱していた。
2人を泊める前には快適だったリビングが、やけに寒々しい空間に感じてしまい、リビングよりも、
寝室で過ごす時間の方が多くなってしまった。
ダイニングテーブルの椅子に座り、少し猫背気味にティーカップを持つ恵美子さんの姿。
キッチンで、ハンバーグヘルパーをぶちまけてしまって、情けなさそうな表情で俺を見る芽衣の姿。
リビングのソファーにいると、二人のそんな姿が、まるで体温を持つ残像のように浮かんでしまう。
半身をなくした時にも似た喪失感は、もう一度、俺を繭の城に閉じこもらせるのに十分なものだった。
もちろん、芽衣とは今まで通り学校でも会っているし、メールや電話の回数は以前より増えている。
短期間でも同じ家で暮したという事実は、芽衣と俺の関係を「近しい者」にしていた。
彼女は、母親が夜勤で不在なので淋しいから一緒にご飯を食べたいとか、俺自身の食生活の栄養の
偏りの矯正を理由にして、もう一度、我が家に来て料理を作ろうとしていたが、俺が頑なに断った為
その目論見を達成できずにいた。
今も、作ることの出来なかったハンバーグステーキのリベンジをしたいとメールしてきたが、月末で
退職する戸塚先生の送別会を理由にして、それを断ったばかりだった。
あまり盛り上がらないままに送別会は終了。
そのまま2件目に行くという教科主任と若手2人を置いて、京浜東北線のホームに上がった。
満月まではあと3日。街中のイルミネーションにいびつな形の月が淡い光を帯びて浮かんでいる。
今日は風があるせいか夜空には雲も少なく、いつもより星が多く見えた。
次の電車まではあと6分程。ホームの後端は電車を待つ人の姿も少なく、この駅が県庁所在地の隣の
駅である事を忘れさせてしまう。急に、「ティファニーで朝食を」の主題歌「ムーンリバー」が聞き
たくなった。
カバンのポケットから使い古しのウォークマンを取り出して、曲を探した。
オードリーヘプバーンのオリジナルが一番好きなのだが、今、ウォークマンの中に入っているのは、
手蔦葵のカバーだけ。YouTubeで再生するのも手だが、それも面倒だ。
イヤフォンを耳にいれて、再生ボタンを押す。彼女の静かな声が流れ始めたところで、月を見上げた。

375 :
ジャケットの胸ポケットに入っているスマホが小さく振動した。
革のグローブを外し、スマホを取りだして画面を見ると見知らぬアドレスからのメールだった。
題名 恵美子です
こんばんは。先日は本当にお世話になりました。
今度の土曜の夜、夕食を御一緒しませんか?
その日、芽衣は朱音ちゃんとランドに行くみたいで暇なんです。
開いてビックリ、俺のメルアドを知らない筈の恵美子さんからの夕食のお誘いだった。
確かに深夜のお茶会の後、電話番号は交換した。でもメルアドは教えてなかったはずだ。
そういえば部活の時、土曜日に芽衣と神崎がディズニーランドに行くって話していたっけ。
という事は、この朱音ちゃんというのは神崎の名前なんだな。
こういうメールにはすぐに返信するべきか、それとも多少時間をおいてから返信した方が良いのか
彼女いない歴10年になろうとするおっさんは、こういう時に困る。
まあ、カッコつけてもしょうがないか。
題名 こんばんは
お誘いありがとうございます。
土曜日は何にも予定が無いのでOKです。
しかし、この寒い時期にディズニーランドなんて
あいつら元気だな〜! (^◇^;)
もう随分とディズニーランドに行ってないが、海辺にある魔法の国は、この時期は無茶苦茶寒いは
ずだ。まあ、霙交じりの雨が降る日でも、膝上15cmまで制服のスカートを捲り上げてる女子高生に
してみりゃ大した事ないのかもしれないな。
文面をもう一度読み直して、送信ボタンを押したところで電車がやってきた。
自宅の最寄り駅までは二駅。隣の駅で降りても、自宅の近くを通るバスがあるのだが、何となく、
歩いて帰りたい気分だった。
最後部の車両は空いている。スマホのバイブレーションの設定をいじって、一番判りやすいものに
変更する。これで、いつ恵美子さんから返信があってもすぐにわかる。

376 :
「いずれ、改めてお礼にお伺いします。」2人を送って行った夜、恵美子さんに言われた時から、
何らかの形でもう一度会えるとは思っていたが、まさか2人だけでの食事に誘われるとは思わな
かった。
生徒の母親と個人的に会うのは、本来ならアウトだろう。でも、理由はどうであれ、生徒とその母親
を自宅に泊めた段階で、既にアウトになっている訳で、今更、そういう線引きを持ち出す事ではない
のだ。
それ以上に、もう一度、ゆっくりと恵美子さんと話ができるというだけで、気持ちが浮き足立つ事に
戸惑いを覚えてしまう。
生徒の母親と担任教師。三文オペラなら、背徳の道に堕ちて行くのだろう。
そんな小説やドラマなら幾らでも見てきた。その度に、リアリティがないなと思っていた。
でも、いざ自分が同じような立場になってみると、恵美子さんから発せられる、強力な、引力にも
似た何かに捉われそうになっている自分に気づく。
多分、いまよりも恵美子さんとの精神的な距離が縮まったら、俺は彼女に恋をしてしまうだろう。
そうなれば、俺自身が三文オペラの主人公に成り下がる。教職者としては、それだけは避けたかった。
それならば、今すぐに「やっぱりダメです」と短いメールを送れば良いのだが、それも出来ない。
恵美子さんは、芽衣と違う形で、俺の心の中に確固たるスペースを確保したらしい。
「参ったな・・・・。」知らずに漏れた独り言が、こもった音で頭の中で響いた

377 :
うわ〜、また書き込みが出来なくなった。

378 :
気長に待ってます!

379 :
今週も、あまり進めませんでした。金曜日の定期投下します。
翌日、授業が終わりLHRの後、図書準備室へ向かう。
今日は陽春賞へ向けてのミーティングを行うとかで、顧問代理として必ず出席するようにと、神崎に
念を押されていた。
大きなテーブルを9人の部員が囲み、それぞれが作ってきた小説のプロットを発表しあい、その内容
について討議する。
俺は窓際に椅子を出してきて、部員たちが提出して来たプロットに目を通すが、討議には加わらない。
討議の主導権は神崎が握り、議論が脱線しそうになったり、批判めいた発言が出てくると、一旦、討
議を止めて軌道修正を行う。
そういう役割を神崎がやっている以上、余計な口を出すべきではないのだ。
午後5時30分。下校時間となり部員たちも帰ってゆく。
図書準備室の鍵を閉めて、職員室にあるキーボックスに返却する。この時間になると残っている職員
も少ない。部屋の片隅にあるスペースで、教頭と業者らしい男性が教材に関する打ち合わせをしてい
るので、小声でお先に失礼しますと言って、職員室を出た。
ジャケットの中のスマホが震える。取り出して画面をみるとサンリオのキャラ。芽衣からの着信だ。
一旦、保留にしてジャケットのポケットに戻した。また晩飯作るとでもいうのか?
駐車場に置いてある自分の車に乗り込むと、アドレスを開いて芽衣に電話する。
3・4回コールしたところで、芽衣が不機嫌そうな声で電話に出た。
「先ちゃん、電話出るの遅い。」
「・・・あのな。まだ仕事してるんだぞ。」
「生徒は携帯使っちゃいけないけど、先生はいいんでしょ!」
すぐに出てよ。珍しく芽衣は御機嫌斜めのようだ。
「これでも一応は、生徒に遠慮しているんだぞ。」
「うぅ〜。」小さな唸り声。お前は犬かって突っ込みたくなる。
「で、何の用事なんだ?」
「今日の夕ご飯は何が食べたい?」一転して明るい声。
「そうだな、今日は牛フィレ肉のロッシーニ風がいいな。」
「は〜、何それ!」そんな高そうなもの作れる訳ないじゃん。
電話の向こうで唇を尖らせて怒る、芽衣の姿が目に浮かぶ。
「冗談はおいといて、うちに飯を作りにくる必要はないぞ。」
「え〜、ハンバーグステーキのリベンジさせてよ。」
「生徒が、担任の家に夕飯を作りに来るなんて、他の人に暴露れたら不味い事くらい、五十嵐だって
判るだろ?」
「 ・・・・・・。」
「五十嵐の気持ちだけもらっておくよ。」
「 ・・・・・・。」芽衣は黙ったままだ。
「聞こえているか?」
「なんで五十嵐って呼ぶの?」
「えっ?」
「なんで、芽衣って呼んでくれないの?」
何だか押ししたような声。
「特別扱いはできないって、判っているはずだろ。」
「でも、芽衣って呼んでよ。」
「生徒を、名前で呼ぶこと自体が特別扱いなんだよ。」
「でも、私は先ちゃんにとって、特別な存在なんでしょ?」
「あのな。」
思わず口ごもってしまった。特別な存在であることは事実だ。ただ、どういう存在かは自分の中でも
整理がついていない。
「五十嵐は他の生徒よりも近い存在だ。でも、特別な存在じゃない。」
「なんで!?」電話の向こうで芽衣が叫ぶ。
「じゃあ、何で毎日メールしてるの、何でお母さんがああなった時に泊めてくれたの?」
「あれは、恵美子さんが 。」
「なんでお母さんのことは名前で呼ぶの?」もういい! そう言って電話が切られた。
国語教師を20年やっていても、自分の感情を言葉に表すのは難しい。
少し時間をおいて、自分の気持ちを正しい言葉にしてから、芽衣に連絡しよう。
気を取り直して、車のエンジンをかけた。

380 :
金曜日は、推薦入学対象者の面接があって、いろんな雑用に追われてしまい、芽衣と話すことが出来
なかった。ご機嫌伺いのメールも無視されたまま。完全に怒らせてしまったようだ。
午後9時。NHKのニュースを見ていると、恵美子さんから電話があった。
「今日も寒いですね。」恵美子さんは仕事からの帰り道なのか、スピーカーの向こうで風切り音が響
いていた。
「いま、帰りですか?」
「ええ、事務処理してたら遅くなってしまって。」
「腰は大丈夫ですか?」
「ええ、おかげさまで。もうコルセット無しでも大丈夫です。でも、周りが気を使ってくれて、少し
でも重い物を持とうとすると、若いこに怒られるんです。」まるで年寄りみたいに扱うんですよ。
そう言って笑う。でも、その口調は、そういう扱いも満更ではなさそうだった。
「明日は、大丈夫ですか?」
「ええ、でも、急患とかが来たら、多少は遅くなるかも知れません。」
「じゃあ、恵美子さんが病院を出る時にメール下さい。」僕の方は暇ですから、何時でもOKです。
そう言い添えると、そうしてもらえると助かりますと言った。
板橋の病院から赤羽まではバス。それから京浜東北線で15分あれば、地元に帰れます。
「とりあえず、待ち合わせの目標時間は19時という事で。」
まるで、重要な手術の打ち合わせをするような口調で恵美子さんがいう。
「了解。」そういう、キッチリとしたところは、副看護師長という役職のせいか、それとも恵美子さ
んの性格なのか。明日会ったら聞いてみよう。
そう思いながら、お休みなさいと言って、電話を切った。
土曜日。
昼過ぎにもらったメールで、待ち合わせ場所は、互いの最寄り駅の中間にある駅の改札口になった。
お店の選択は恵美子さん。今回は、すべてあちらにお任せだ。
午後6時。風呂に入り身支度を整える。着て行く服は、細身の綺麗目ジーンズ。ラコステの白シャツ。
グレーのツイードジャケット。それにエディーバウアのフィールドコート。
俺の持っている服の中では、シックの部類に入るコーディネートだ。
何しろ、女性と二人っきりで食事をするのなんて、10年振りなのだ。多少はオシャレに気を使う。
テーブル上のスマホがメールの着信を知らせる。恵美子さんからだった。
30分ほど待ち合わせに遅れます。絵文字も顔文字もなく、簡単な文章。
最近は、芽衣とばかりメールしているせいか、こういうシンプルなメールが、逆に新鮮に感じる。
こちらも、「わかりました。慌てずにきて下さい。」とだけ送信する。
30分の余裕が出来たので、ウォークマンにJAZZのCDをダウンロードする作業を続ける。
昨日、恵美子さんと交わしたメールで、恵美子さんがJAZZに興味があることを知った。
今度、何かお勧めのCDを貸して下さいと有ったので、今は殆ど使っていない、ウォークマンに気に
いっている曲を入れて、プレゼントすることにした。
チャーリー・パーカー、アート・ブレーキーとジャズメッセンジャーズ、ソニーロギンス、山下洋輔、
渡辺貞夫、青木カレン、上原ひろみ等の他、ブルーノートの常連達のCD。
それに、恵美子さんが昔聞いたであろう80年代から90年代の流行り歌。適当に聞いてやって下さいっ
てな感じで渡すつもりだ。
待ち合わせの改札口には15分前についた。人通りの邪魔にならないように、改札とは反対側の壁際に
立つ。目の前をディズニーリゾートのお土産袋を持った、中学生ぐらいの女の子が通りすぎる。
今日は、芽衣と神崎もディズニーランドに行っているはず。あいつらも、そろそろディズニーランド
を出たんだろうかと考える。
今日の日中も、芽衣からのメールはなかった。普段なら4・5通のメールが届くのに、木曜日以降、一
通も来ない。
芽衣に、心ならずも、特別な存在ではないって言ってしまった事を、今は後悔していた。
確かに、担任と生徒という守るべきラインはある。でも、それ以上に、芽衣は俺の心の中に住み着い
ていた。
それは恋愛感情ではない。家族的な愛情でもない。でも、芽衣がいてくれれば、何かが変わる。何か
が動き出す。そんな気がするのだ。ただ、残念な事に、この気持ちを言葉にするのは難しくて、未だ
に、芽衣にどう伝えれば良いのかが見えないのだ。
「お待たせしました。」横から急に声をかけられて、飛び上がらんばかりに驚いた。
いつの間にか、恵美子さんが立っていた。

381 :
今週は以上。

382 :
乙です
連載みたくなってきたなw

383 :
乙!
これが最近の楽しみw

384 :
キャメル色のトレンチコートに黒いタートルネック。ネイビーのデニムにコートと同じ色合いのブー
ツ。首にはピンク色のマフラー。急いできたのか、若干、呼吸が乱れている。
「こんばんは。そんなに息を切らせるほど、急いで来なくてもいいのに。」
「でも、お待たせするのは申し訳ないので。」
時計をみると、待ち合わせの19時30分には、まだ少しだけ余裕があった。
「まだ時間前ですよ。」
「予定時刻からは、30分も遅れてますから。」
仕事を終えて、着替えたところで、来週、行われる手術の事で、医長に呼ばれて15分ほどロスした。
赤羽に着いたら、高崎線が遅れていて、慌てて京浜東北線に飛び乗ったはいいが、乗った場所が悪く
て、改札口まで思ったよりも距離があった。
「何でこう、大事な用事がある時に限って、邪魔が入るんでしょうね。」
恵美子さんは、そう言ったあと、バツが悪そうに笑った。
「まあ、大抵、そういう風に出来ていますよ。」
「そうですかね? じゃあ、とりあえずお店に行きましょう。」
こっちです。彼女は、伊勢丹の方に向けて歩き出した。
隣駅に住んでいるというのに、この駅の西口を歩くのは随分と久しぶりだ。
土曜のせいか、伊勢丹から県庁へ抜ける歩道をゆく人は多くない。俺と恵美子さんは、並んで歩いた。
今週末は、寒波が来ているとかで、吹き抜ける風は冷たい。フィールドコートの襟を立てるが、喉元
が冷たい風にさらされてしまう。
「そういえば、今日は、あのブルーのマフラーじゃないんですね。」
「ブルーのマフラー?」
「ええ、腰を痛めて迎えに行った時に巻いていた、フェルメールブルーのマフラー 」
「ああ、あれですか? あれ、今日は芽衣が巻いて行ったんです。」
「芽衣が?」
「あのマフラーは、カシミアだからとても暖かいんです。ランドは寒いから貸してって、持って行かれちゃったんです。」
このピンクのは、芽衣のもので、代わりに巻いてきたんです。左手で、マフラーの端を触ってみせる。
「いや、恵美子さんにしては、可愛らしいマフラー巻いてるなって思いました。」
「もしかして、若作りって思ってます?」
「いや、フェルメールブルーも似合うけど、ピンクもなかなかだと。」
実際、キャメルのコートなら、ブルーよりピンクの方が合うような気がする。
「沢辺さん、思ったよりも、お世辞が上手ですね。」
芽衣そっくり(というか芽衣の方が恵美子さんそっくりなのか)な、ジトっとした視線で、俺を見る。
沢辺さんか・・・。今まで沢辺先生と呼ばれていたから、少し親しみを感じる呼び方だな。
「お世辞なんかじゃないです。女性にお世辞が言えるほど器用なら、とっくに結婚してます。」
「じゃあ、一応、褒められたと受け取っておきます。」いたずらっぽく笑う。

385 :
旧中山道を渡る信号で止まる。すぐそばに、有名なピザハウスがあるせいか、信号の向こう側の歩道
には、10人ほどのグループが集まっている。格好からすると、どこかの大学のサークル仲間らしい。
「楽しそうだな〜。」大声をあげて笑う集団をみて、恵美子さんが目を細める。
「コンパですかね?」
俺がそう言うと、恵美子さんは俺の顔を見て、コンパって言葉久しぶりに聞いたという。
「あれ、普通に使いませんか?」
「うーん、私の周りでは聞きません。合コンなら、うちの若い看護師でも参加するみたいですけど。」
「確かに昭和な響きかもな。」
「うちで一番若い看護師さんは、芽衣より2歳上で、平成5年生まれなんですよ。」
19歳ですよ、19歳! 私たちが23の時に生まれた子供が、もう社会に出てきたんです!信じらんない。
世に、こんな不条理が有って許されるかとでも言うぐらいの勢いで嘆く。
「そんな事言ったら、今の1年生の生徒は、早生まれだと、平成10年ですよ。」
「うわ〜、信じられない。10年って事は西暦だと・・・。」
「1998年生まれ。」
「1998年って、ついこの間じゃないですか!?」そりゃ、歳とる訳だ〜。盛大にため息をつく。
信号が変わったので、横断歩道を渡る。歩きながら、自分が1998年に何をしていたか話した。
長野でオリンピックに行った。初めて新車を買って、仲間とSMAPを聞きながらドライブをした。
高校3年の担任を初めて受け持った。半年間付き合っていた女性に振られた。
恵美子さんは、芽衣の子育てに明け暮れる日々だった。
「28歳か〜、ついこの間のようで、いつの間にか遥か昔になっちゃったな。」
「恵美子さんは、結婚もして、芽衣の子育ても頑張ったじゃないですか。俺なんて、こんな大人にな
ると思わなかったよ。」
「じゃあ、若い頃の沢辺さんの計画では、今頃、どんな生活を送っていると想像してたの?」
「う〜ん、お嫁さんもらって、小学校高学年くらいの子供がいる生活?」
「ありきたりね。」
「でも、現実には、子供どころか、嫁さえいないと・・・。」
「はいはい、落ち込まない、落ち込まない。」
手のかかる患者をいなすような口調で、恵美子さんが突っ込んでくれた。同い年は気安くていい。

386 :
恵美子さんが予約していたレストランは、旧中山道から一本路地に入った場所にあった。
レンガ風の外壁材を、ツタのような葉が覆っていて、外見は結構、高級な店に見える。
「ここです。見た目は高そうですけど、気軽な洋食屋さんなんですよ。」
「へー。お薦めは?」
「この店に来る時は、私はタンシチュー、芽衣はハンバーグばかり食べてますね。」
とにかく入りましょうと言って、恵美子さんはドアを開ける。
店の中はそれほど広くない。カウンター席が5席。4人掛けのテーブル席が2つ。椅子やテーブル、調
度品、すべてが年季が入っていて、この店の歴史を感じさせる。
オーナー兼シェフの旦那さん。フロアすべてを担当する奥さん。2人とも70歳を超えているように
見えるけど、明るい笑顔で俺たちを迎えてくれた。
本来の営業は8時まで。既にラストオーダーの時間を超えているけど、特別な予約客ということで、
営業時間を延長してくれたらしい。
「今日は芽衣ちゃんは一緒じゃないのかい?」
厨房から出てきた旦那さんが恵美子さんに聞く。
「あの子、今日はディズニーランドに行ってるの。」
「彼とかい?」
「ううん、朱音ちゃんと2人らしいよ。」
「で、こちらは?」
早く紹介しろくらいの勢いで、旦那さんが聞く。
「ふふふ、友達の沢辺さん。」なんだか勿体ぶるような口調で、恵美子さんが俺を紹介する。
友達ね〜。まぁ、芽衣の担任の先生と紹介されて、あらぬ誤解を生むよりはましか。少しだけ落胆。
「なんだ、予約なんてするから、婚約者でも連れてくるのかと思ったのに。」
奥さんは落胆を隠そうともせずにいう。
「あら、失礼ね。もしかしたら、いずれそうなるかもしれない人かもよ?」
まったく貴女は相変わらずだね。奥さんが呆れながらメニューを渡してくれる。
「私はいつもの。」恵美子さんはメニューを開くこともなくいう。
「はいはい、あんたは決まっていても、こちらさんは初めてなんだから。」
気にせずに、ゆっくり選んで下さい。恵美子さんを嗜めながら、俺のグラスに水を注いでくれる。
オムライスからステーキまで。洋食と呼ばれるものは、だいたい網羅されている豊富なメニュー。
けど、今日、誘われた経緯を考えると、支払いは恵美子さん持ちになるだろう。
ふとみると、当店の人気ナンバーワン「ポークソテー」と書かれた一行が目についた。
値段も、恵美子さんが頼んだタンシチューよりも安い。
「じゃあ、ポークソテーを。」
「和風とデミソースがあるけど。ご飯は大盛り?」
「じゃあ、デミグラスソースで。ご飯は普通でいいです。」
「そんな、お礼なんだから、もっと高いもの頼んで下さいよ。」
俺が、遠慮していると考えたのか、恵美子さんがメニューの再考を促す。
「いや、遠慮してる訳じゃなくて、人気ナンバーワンだから美味しいんだろうって。」
「んじゃ、サラダ頼んで2人で分けなさいよ。」
奥さんが助け舟の妥協案を出してくれる。
もう一度、メニューのサラダの欄に目を落とすと、シェフの気まぐれサラダというのがある。
「じゃあ、これを。」奥さんに、メニューを指し示す。
食前酒は、俺がジントニック。恵美子さんはカンパリオレンジを選んだ。

387 :
「よく来るお店なんですか?」
奥さんが厨房にメニューを通しに行ったので、恵美子さんに疑問をぶつける。
「私の母方の親戚なんです。うちの父親が修行した店でもあって、私は、子供の頃から出入りしてい
たんですよ。」
「ああ、だから気安いんだ。」
ジントニックも、カンパリオレンジも、奥さんが慣れた手つきが作ってくれた。
こう言ってはなんだけど、これまで飲んだジントニックの中で、最高齢の作り手によって供された物
のようだ。
「あ〜、美味しい。」お酒は、お正月に軽く飲んで以来と言う恵美子さん。食前酒なのに結構なぺー
スで、クイクイとカンパリオレンジを飲む。
「けっこう、いける口なんだ。」
「うーん、あまり飲みには行かないけど、こういう甘いカクテルは好きだから。」
うちは飲兵衛の家系だよ。俺たちの会話を聞いていた奥さんが、お通し替りのマリネを出しながら、
軽くちゃちゃを入れる。
「うるさいな〜! お客の会話に入ってこないでよ。」
ごく、ささやかな、家族の秘密を暴露されて、恵美子さんは苦笑いだ。
「近くに、こういう親戚がいるっていいね。」
「沢辺さん、こちらに親戚は?」
「元々が岐阜の山奥の出身だから、一番近い親類は静岡だね。」
「じゃあ、たまには岐阜に帰るの?」
「いや、どっちかっていうと、向こうがこっちに遊びにくる事が多いね。」
夏休みと冬休みには、姉が姪を連れてやってくることを話した。
「じゃあ、その姪御さんが、うちの子と同い年なんだ。」
「そう。干支も同じ亥じゃないかな?」
「芽衣は6月」
「うちの姪は9月かな?」
「じゃあ、芽衣の方が少しだけお姉ちゃんだ。」
芽衣と姪。今頃、二人ともくしゃみをしているかも知れない。
サラダが運ばれてきた。取り皿を手にして、トングでサラダを取り分ける。
「ああ、私がやるよ。」
「いやいや、これぐらいはやるから。」
彩りを考えながら、取り皿に美しくサラダを盛り付ける。恵美子さんが嫌いなトマトは、自分の皿に。
トマトと赤ピーマンを抜いたサラダを、恵美子さんの前に置く。
「トマトとピーマンがダメだって、話した事有ったっけ?」
「前にうちに泊まった時に、芽衣から聞いた。」あと鳥の皮もダメなんでしょ?
あいつ、よけいな事を。恵美子さんの背後にどす黒いオーラのようなものを感じた。
恵美子さんが家に帰って、芽衣がひどい目にあわなけりゃ良いのだが。

今日はここまで

388 :
◯◯◯◯
気長に待っています。

389 :
同じく、お待ちしてます。

390 :
「でもさ、トマトや鳥皮がダメって人は結構いるんじゃないかな?」
確か、狐面の教科主任も、トマトがダメなはずだ。
「沢辺さんは、これだけはダメって食材は?」
「ん、椎茸と牛乳。」
「えっ! 牛乳ダメなの?」
「匂いも、味もダメ。」
「だって、給食で出るじゃない。」
「絶対に飲まなかったから。」
「じゃあ、授業が終わった後も、飲むまでは、家に帰してもらえないとかなかった?」
「あった。担任のおばちゃん先生と教室に残って、まっ暗になるまで根気比べ。」
「私も、サラダのトマト食べなくって、残された。」
わ〜! 仲間がいた。私もおばちゃん先生だったよ。夜の7時くらいまで教室で二人っきりだった。
砂漠のオアシスで、久しぶりに、他のキャラバンに出会った旅人のように、変に盛り上がる恵美子さ
ん。
「俺は、途中で職員室に連れて行かれて、やっぱり7時までだった。で、家に帰ったら、お袋に、先生
に迷惑かけるなって、箒で叩かれたな。」
「私も、母に擂り粉木でお尻叩かれたよ。で、芽衣はニンジンがダメで、幼稚園の頃、お残りさせら
てた。」
「ああ、それで芽衣の作るカレーには、ニンジンが入ってないんだ。」
「千切りくらいなら、イヤイヤ食べる程度にはなりましたけどね。」
兄が、芽衣にニンジンを何とか食べさせようと、いろんな工夫して、食べられるようにはしたんです。
それを聞いて、コックコートを着たオジサンと、小さな頃の芽衣が、テーブルで向き合って、根比べ
を演じている姿が目に浮かんだ。
「じゃあ、何か機会が有ったら、ニンジン入りの料理を、頼んで食べさせようかな。」
「そんな事したら、沢辺さんの家に押しかけて、椎茸のフルコースを食べさせますよ、きっと。」
椎茸入りの炊き込み御飯。椎茸出汁のお味噌汁。椎茸と野菜の炊き合わせ。椎茸入りハンバーグ。
あの子、意外とレパートリー豊富だから、物凄い品数出してきますよ。
「・・・・・。」
「デザートは、私が牛乳たっぷりで作ったフルーチェね。」
我が家のダイニングテーブルを埋め尽くす椎茸料理の向こうで、母娘して、満面の笑みを浮かべてい
る、恵美子さんと芽衣の姿を想像してしまった。
「・・・鬼だ。そんな事になったら、トマトのフルコースで仕返ししますよ。」
「ふふふ、三すくみ状態ですね。でも、もしも私たちが一緒に暮らしたら、炊事って面は、3人で当番
制で回していけるから、楽できそうですよね。・・・・って、私、何をいってるんだろ。」
カンパリオレンジの酔いがまわってきたのか、それとも、不用意な発言を恥じているのか、恵美子さ
んの頬が、急にあかくなる。
「今、流行のルームシェアってやつですね。」恵美子さんの言葉の意図が判らないので、とりあえず
話題に乗るように見せかけて、話を逸らす。
「そ、そうそう、沢辺さんの家は広いし、シェアすればいいかなって。」
「住宅ローンも楽になるしね。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
会話が止まってしまって、急に雰囲気が重くなってしまった。
「すみません。変なこと言って・・・。」
「別に、変なことは言ってないですよ。もしもの話なんですから。」
「・・・・・。」
「もしもって話なら、俺と恵美子さんが、こういう風にちょくちょく会っているうちに、本当にそん
な風な関係になるかも知れないし、やっぱり、いまいちだなって会わなくなるかも知れない。」
「・・・・・。」
「でも俺は、今日、こうして恵美子さんと食事が出来る事を、愉しみにしてましたよ。」
少し濃いめに作られたジントニックの魔力か、随分とクサい台詞が、いとも簡単に口をつく。
「・・・・私も愉しみにしてました。」俯きがちに、小さな声で恵美子さんが応えてくれる。
「じゃあ、おあいこという事で。」
俺がそう言うと、ジャンケンみたいと言って笑った。
「お待ちどうさま。」ちょうど良いタイミングで、タンシチューが運ばれてきた。

391 :
待ってました!

392 :
昨日、書き込めなかった続きです。
「お待ちどうさま。」ちょうど良いタイミングで、タンシチューが運ばれてきた。
「これこれ。」
手にしたカンパリオレンジのグラスをテーブルに置いて、タンシチューと付け合わせのパン皿のスペ
ースを確保する。白い陶器の深皿の蓋をとると、デミグラスソースの芳しい香りが拡がった。
「あっ、美味しそう。」やっぱり、恵美子さんのレコメンドに従い、同じものにすれば良かったと、
今更ながら、自分の選択ミスを後悔する。
「あとで一口あげますよ。」そう言ってくれた恵美子さんが、一瞬だけ女神に見えた。
すぐに俺のポークソテーも運ばれてきて、それほど広くないテーブルは皿で埋まった。
「いただきます。」
「御遠慮なく。」
少し厚めに切られた豚肉にナイフを入れる。一口大に切り口に運ぶ。けっこう赤ワインの香りが強い。
「美味しいです。」俺がそういうと、恵美子さんは相好をくずした。
「そうでしょ。開店以来、注ぎ足し、注ぎ足してきた、伯父自慢のソースですから。」
なんだか、恵美子さん自身が褒められたかのような、抜群な笑顔。
「こちらも食べて見て。」そういいながら、自分のタンシチューの肉を切り分けて、フォークの先を
俺の方に向ける。
デミグラスソースで煮込まれた牛肉は、照明に照らされて艶やかに輝く。
「ほら、早く。」
えっこれは、もしかして。
「ソースが落ちちゃうから、早くアーンして。」
こちらの困惑に、恵美子さんはまったく気がついていないようだ。
少しだけ腰を浮かせて、左手をフォークのしたに差し出して、顔をフォークに近づけ、口をあける。
恵美子さんの左手が近づき、フォークの肉が口の中に収まる。
「美味しい?」
「美味しいよ。」
肉を咀嚼しながら、そう答えるけど、正直、味なんかわからない。これじゃ、まるで仲の良い恋人み
たいじゃないか。
どちらかといえばクールビューティーの部類に入ると思っていた恵美子さんが、実は芽衣と同じ天然
系であることに、今、はっきりと気がついた。
そして、恵美子さんの引力に完全に囚われた事を自覚した。

393 :
親父さんとおかみさんに見送られて、店を出たのは9時過ぎだった。
帰りは須原屋からイトーヨーカ堂へ抜ける小道を歩く。
酒に火照った顔に当たる冷たい風が、やけに心地良かった。
「せめて酒代だけでも受け取ってよ。」
2杯のジントニック。3杯のカンパリオレンジ。タンシチューにポークソテーとサラダ。案の定、会計
は、恵美子さん持ちになってしまった。
「嫌よ。今日は、私がはらうんだも〜ん。」
顔を真っ赤にして、少しばかり呂律が回らない様子で、上機嫌に答える。
食事中に、カンパリオレンジをひと口飲ませてもらったのだが、ジントニック同様、少しばかり濃い
目に作られていたようだ。そんなものを3杯も飲めば、そりゃあ酔っ払うだろう。
二人並んで線路沿いの歩道を歩いていると、恵美子さんが、ふと思いついたように質問してきた。
「ねえ沢辺さん。この間飲んだ紅茶ってなんだっけ?」
「ああ、プリンスオブウェールズだよ。」
なんで、こんなことを、このタイミングで聞くんだろう?
「私、今、あの紅茶がすごく飲みたいの。」
急に立ち止まり、俺のフィールドコートの袖を引っ張りながら言う。
「残念だけど、あの紅茶は普通の喫茶店じゃ飲めないよ。」
駅前にファミレスがあるが、アッサムティーかダージリンティーしかないはずだ。
「違うの。沢辺さんが淹れてくれた紅茶が飲みたいの。」
「え〜!」
この酔っ払いは、突然何を言い出すんだ?
もう遅い時間だから、またの機会にっていうには、夜の9時という時間は微妙だ。
部屋が片付いてないからって理由も、短期間とはいえ、我が家で過ごした恵美子さんには通用しない。
困ったことに、断る理由が見当たらなかった。それ以上に、少しでも長く、恵美子さんと一緒にいた
いという、素直な欲求が、断るべきという理性を押さえ込んでいた。
「でも、そろそろ、芽衣も帰ってくる時間だよね。」
「ああ、その辺は大丈夫。今日は私は遅くなるって言ってあるから。」
しれっと言うな!と突っ込みたいところだが、同時に、もっと一緒にいられる事を喜ぶ自分がいる。
「もしかして、私のことを、どうこうしちゃおうって考えてます?」
「それはない。」語尾に被せるように、全力で否定。
「じゃあ、良いじゃないですか〜。」
「まあね、本当に断る理由はないんだけど、一応は担任と生徒の母親という微妙な関係だから。」
「今更、それを持ち出します?」恵美子さんが眉を顰める。
「本当に今更だけどね。」
「私は、沢辺さんの事、娘の担任って目でみてませんよ。」
「・・・・。」
「その辺を、切り離しましょうよ。学校から出たら、沢辺先生じゃなくて、沢辺智哉さんに戻りま
しょ。私も、今は、五十嵐恵美子として素の私を見せているんですから。」
「素の自分ですか・・・。」
「そう。私から見ると、沢辺さんはいつも、良い先生でいようとしてるように見えますよ。」
私は、素の沢辺さんと仲良くなりたいんです。そう言ってウィンクをしてみせた。
「そう簡単に、人間は変われませんけど。・・・・とりあえず、お茶菓子買って帰りましょうか?」
「はい。」
最近のコンビニスイーツはバカに出来ないんですよ。恵美子さんは俺の左腕に腕を回してきた。
初めて感じる恵美子さんの体温に、俺の心拍数が跳ね上がった。

394 :
こっちもドキドキしてきたわ

395 :
+(0゚・∀・) * ワクテカ +

396 :
コンビニでスイーツを購入したあと、京浜東北線に乗るためにホームに上がる。
次の電車は10分後だった。
二人並んで電車を待っている間に、恵美子さんの携帯が鳴り始めた。どうも職場からの緊急の連絡ら
しい。
電話の内容は判らないけど、入院患者さんに関して、テキパキといくつか指示をしている。
さっきまで、酔っ払いモードだった恵美子さんは、今は副看護師長モードに切り替わったようだ。
恵美子さんがこちらを気にしないように、俺は少し離れた場所に立つ。
夜空を見上げると、パルコの向こう側に、青白い光を放つ満月が浮かんでいた。
月の魔力。そんな言葉が唐突に頭をよぎる。
モダンジャズのナンバーに「old devil moon」という曲がある。誰がオリジナルかは知らないが、俺
のiPodの中には、ソニー・ロギンスとakikoのナンバーが入っている。
歌詞はうろ覚えだけど、君の瞳の中にある月の魔力に魅せられて、僕は恋に落ちたなんて曲だ。
なんてベタな曲だろうなんてバカにしていたが、今日、恵美子さんの引力に取り込まれた事を自覚し
てみると、なるほどねって頷いてしまう。
どんなに拒もうが、理屈を捏ねて否定しようが人は恋に落ちる。
この10年近く、恋愛感情というものの存在を忘れていたというか、その感情と向き合ってこなかった
俺が、2週間足らずで、恵美子さんに恋してしまったのだ。まさに魔力と言っていいだろう。
恋を忘れた中年教師と、クールビューティーの皮をかぶった天然系看護師。その娘は天然系女子高生。
三文オペラというよりも、ドタバタコメディーの方が似合いそうだな。そう思いつつ、こんな風にな
った事を、芽衣が知ったらどうなるんだろうと寒気を覚える。
問題は2つある。
一つ目の問題は、恵美子さんとの関係。
恵美子さんは、俺の事を芽衣の担任ではなく、沢辺智哉としてみていると言ってくれた。
でも、学校の門を出たから、これからは個人的な時間って切り分ける事は出来ない。
もし恵美子さんと恋仲になったとしても、芽衣が卒業する迄は、関係をあまり、おおっぴらには出来
ないだろう。
2つ目の問題は芽衣のこと。
まだ告白された訳ではないけど、最近の芽衣の言動を見聞きしていると、芽衣は俺に対して、担任以
上の感情を持っているらしい。風采のあがらない、国語教師のどこが気に入ったのかは知らないが、
芽衣は、芽衣なりに本気らしい。これで、知らないうちに、母親と俺が会っていて、俺が恵美子さん
に惚れたなんて事が判ったら、間違えなく噛みつかれそうだ。
今日、恵美子さんへの感情は、恋であることを自覚した。じゃあ、芽衣に対する感情はどうなんだ?
正月に本屋で会って、メシをご馳走した時には、たまたま、自分のクラスの生徒に会ったからと言う
単純な気持ちだった。
メールのやり取りが増えるうちに、本の話や料理のことで、空間を隔てていても、時間を共有する仲
になった。
家に帰ったら、夕食を食べて、風呂に入って、音楽を聴きながら本を読む。単純な生活の繰り返し。
自由だけど、けっして満たされていない。学校以外では、他人との関わりを持たないようにして、傷
を負わないように、そして他人に関わらないように過ごす。芽衣はそんな生活に活力を与えてくれた。
恵美子さんが腰を痛めて、我が家で過ごす間は、擬似的な家族になった。
じゃあ、今はどうなんだろう。
担任と生徒という関係は、どうしても消えない足枷だ。
ただ、俺は、今まで、自分の体面だけを気にしていて、その足枷を芽衣だけにつけさせていたのでは
ないだろうか。
その足枷を受け止めて、身につけるべきは俺であり、芽衣ではない。芽衣は、自分の感情を素直に発
して良いのだ。
恋人にはなれない、父親でも兄でもない。言葉には言い表せられない関係をつくるのはこれからで、
動き出す前にあれこれ考えても仕方がない。
今の俺が芽衣にできるのは、芽衣の気持ちを受け止めて、自分の感情を伝えることだろう。
一時的に芽衣を傷つけることになったとしても、恵美子さんへの気持ちを隠し、騙すよりも良いはず
だ。

397 :
視界の片隅で、恵美子さんがベンチから立ち上がるのが見えた。
「お待たせしました。」
「なんかあったの?」
「うん、今日、入院したお婆ちゃんが、ちょっとね。」
言葉を濁すのは、守秘義務うんぬんってやつがあるからだろう。
「大変だね。」
「最近は、患者さんの容体を気遣うよりも、他のことに神経が割かれてしまうの。」
「そうなんだ。でも、さすがプロって思ったよ。」
「なにが?」
「酔っ払いモードから、副看護師長モードへの切り替わり具合。」
「やだな〜。」さっき、沢辺さんに仕事が終わったら、モード切り替えろって言ったばかりなのに。
そういいながら、照れ笑いを浮かべる。
「でも、人の生きにに関わることだから、本当に気が抜けないよね、」
「そうね。だから夜勤の時に、完徹するのが辛い年頃になってまいりました〜。」
あと、副看護師長の事は、副師長って呼ぶのと教えてくれた。
「そういえば、今、芽衣からメールが有って、やっとランドを出て、電車に乗ったって。」
「ってことは、帰ってくるのは11時近くか・・・。」
「朱音ちゃんと一緒だから心配はないけど・・・。」
「そうだね。」
芽衣1人じゃ心配でしょうがないけど・・・・。
東京方面行きの電車が間も無く到着するとアナウンスが告げる。
「わ〜、今日は綺麗な満月だね。」
恵美子さんも、満月に気がついたようだ。
「ねえ沢辺さん、月の魔力って知ってる?」
俺の方を見て話す、恵美子さんの瞳の中に、水銀灯の明りが映り込む。それはまるで、瞳の中の月
だった。
やっと、起承転結の転部分が終わりました。
残りは少々、お待ちを。

398 :
GJ!
残りも楽しみにしてる!

399 :
待ち遠しいのぉ

400 :
鋭意入力中です。そういいながら、新入社員研修の準備で書けていない322。

401 :
待機。

402 :
超待機。

403 :
チラッ(切望

404 :
期待
成人男性と少女だと
30歳前後の男と小学生高学年〜中学生
昔から知ってる物同士も良いな
幼い時にお嫁さんになるとか言ってた関係で

405 :
やっぱりおっさんと美少女というのは良いものだ

406 :
時は江戸、もうまもなく十八になろうかという武家の娘と元服を迎えたばかりの若武者夫婦の初夜とかどう?

407 :
…どっちも若いのはスレ違いじゃね?

408 :
元服って12ぐらいでしょ?
6つ離れてたら十分じゃね
日本版乙嫁語りみたいな感じか。あっちはもうちょい離れてるけど

409 :
姉の友達と弟とかどう?
どっちも異性縁が薄く奥手なので姉に半ば強引にくっつけられたみたいな

410 :
幼い頃から知っているお姉さんを嫁にして
犯して自分の女にするとか最高じゃね?

411 :
先生、まだかな…?

412 :
>>410-411の流れで幼馴染で8〜12歳差の高校生の男と女教師とか思い付いた
学校とか外じゃ秘密、家族以外は基本的に幼馴染って知らない関係
女教師は優しい、男の親が居ない時に時々飯作りに行ったりとかしてる
女教師の家で食べたりする事も
男はちょっとツンデレ気味、でもまあちょっと
偉そう振りたい御年頃って妄想が

413 :
私も年上の美女と犯りたい

414 :
私も年上のおっさんと犯りたい

415 :
新海誠の新作映画の言の葉の庭が年上のお姉さん×年下の男子高校生で最高だった

416 :
矢口と旦那も結構年からなんから差があったよね・・・

417 :
新人さんが、もうじき巣立ちます。
芽衣ちゃんシリーズ7月には再開します。

418 :
短大卒と高校卒の小娘の面倒をみたおかげで、しばらくネタには困らない!

419 :
wktk

420 :
>>417
うおおお!
待ってましたマジで
いつ再開されるかと毎日覗いてました
うれしいよお

421 :
T
俺の家の最寄り駅は、武蔵野線と京浜東北線が交わる駅だ。
利用者が多い割には、駅の設備は貧弱で、武蔵野線のホームにはエスカレーターさえも設置されてい
ない。それでも、京浜東北線の始発電車が有るし、都内に出るのも、千葉方面に行くのも便利なので
それなりに人気のある駅らしい。
岐阜から埼玉に引っ越してきたのは23の春。教員試験に落ちて一年間の就職浪人の後、愛知県と埼玉
県の試験を受けて、合格したのが埼玉県だった。
最初は大宮に住み、次が三郷、その次が所沢。勤務先の学校が変わるたびに転居を繰り返し、4校目に
なる、いまの高校に転勤になり、この街に移り住んだ。アパートからマンションへと住む家は変わった
が、もう10年も暮らしている。
恵美子さんと並んでバス通りを歩く。土曜の夜だというのに、近くに多く存在する学習塾に通う子供
が多く、そのお迎えの車で、それほど広くない通りは渋滞していた。
「最近の子供は、遅くまで勉強で大変だよね。」
小学校の高学年と思しき、ある塾の通学カバンを背負った一団とすれ違った時に、恵美子さんが心配
そうに言う。
「この辺は、小中学生向けの塾が多いから、小中学生の代々木って言われてるらしいよ。」
「なんで代々木?」
「代々木は予備校が多いから。」
「なるほどね。」
「勉強する子供も大変だけど、送り迎えする親も大変だと思うよ。」
「そうだね。」
それから、ひとしきり高校受験の時の思い出話をした。
僕らの世代は団塊ジュニアと呼ばれ、丁度、一学年下が戦後で一番子供が多い年だった。
岐阜の山奥ではそうでもなかったけれど、恵美子さんが中学を過ごした横浜では、1学年で14クラス
もあった。1クラスは40人。つまり560人前後の同窓生がいたわけだ。
生徒数が多いという事は、公立高校の募集枠に対して、競争率も上がる訳で、私立の高校に行く生徒
は、お金持ちか、公立の受験に失敗した奴か、成績が悪い奴って感じだった。
「受験の一ヶ月くらいまえになると、夜型から朝型の生活に変えないと、試験当日に頭が働かないか
らって、10時に寝て、6時に起きて勉強するのが流行ったよね?」
「ああ、受験必勝法なんてのに書いてあった気がする。」
「うちは飲食店やっていたから、親の帰りが遅くって、10時に布団に入ったって、夜中にバタバタす
るから、結局、起きちゃったんだよ。それで、眠くなるまでオールナイトニッポンとか聴いてると親
が怒るんだよ。」
「深夜ラジオか懐かしいな。俺は、雑音だらけの、吉田照美のテルテルワイド聴いてたよ。」
「テルテルワイドの後は?」
「後?、うーん、そのまま、文化放送を聴いてたとおもうけど。」
「ぱぱラナイトじゃなかった?」
「それだ! ぱぱラナイト♪、ぱぱラナイト、今夜もフリー&フリー♪」
番組のジングルが不意に口をついた。
「うわ〜懐かしい!向井亜紀だよ〜。なんで歌えちゃうの〜。」
中高生の頃に見聞きしていたものは、思っている以上に記憶の奥底に残るようだ。
マンションに着くまで、同じくらいの時期に放送していたテレビやラジオの話で盛り上がった。

422 :
U
部屋に入ると、玄関と廊下の照明を点ける。
靴を脱ぎ散らかしたままリビングに進み、照明とエアコンのスイッチを入れた。
恵美子さんが来るなんて、予想もしていなかったので、読みかけの新聞や雑誌を片付け、ダイニング
テーブルの上に置きっ放しの食パンやらジャムをキッチンカウンターに除ける。
小声でおじゃましますと言いながら、恵美子さんがリビングに入ってくる。
「適当に座ってください。」そう声をかけると彼女は、お茶菓子が入っているコンビニ袋をテーブル
に置いて、コートを脱いでダイニングチェアの背もたれにかけた。
「ちゃんと片付いていますね。」
「単に物が少ないからだよ。それに、今日の昼間に掃除機かけたから。」
「それって、私がくるのを見越して?」
「はは、そうなら良いんだけど、単に毎週土曜日の日課だよ。」
「それは残念。」
彼女は、そう言いながら、ソファーに置きっ放しになってる読みかけの単行本を手にした。
コンロにケトルをセットして火を点ける。棚から紅茶の缶を取り出して、ティーポットに適量よりも
少しだけ多めに茶葉を入れる。
お湯が沸くまでの間に、ティースプーンとカップをトレーに並べた。
この間は、茶菓子がなかったけど、今日はマドレーヌやらパウンドケーキやら、紅茶に合う菓子がそ
ろっている。お湯を注いでから、茶葉が十分に開くまで待つ間に、ケーキを皿に盛り、ジャムを少し
だけ添える。
キッチンカウンター越しに恵美子さんを見ると、彼女は静かに、単行本の最初の数ページを読み進ん
でいた。
「お茶はいったよ。」
「あっ!ごめん。」
慌てて本を閉じて、本を元にあった場所にそっともどした。
「本当なら、私がやらなきゃダメなのにね。」
ダイニングテーブルの椅子に座りながら、恵美子さんはバツが悪そうに笑った。
「いや、お客様だし、僕が淹れた紅茶が飲みたいんでしょ?」
そう言いつつ、ティーポットを取り上げて、まず恵美子さんのカップに紅茶を注いだ。
恵美子さんはテーブルに両肘をついて、前のめりになって、ティーカップから立ち上る紅茶の香りを
感じようと鼻をヒクヒクと鳴らす。その姿は子供のようだ。
プリンスオブウェールズは、他の茶葉よりもフルーティーな甘い香りが強い。
リビングが紅茶の香りに包まれる。
「お酒飲んだあとは、濃いめのコーヒーがうちの定番なんだけどね。」
「あっ、それわかる気がする。」
たまに自宅でワインを飲んだりすると、私もコーヒーが飲みたくなる。と言っても、うちはインスタ
ントしかないから、駄々こねてモンカフェを芽衣に淹れてもらうんだ。
「自分ではやらないんだ?」
「うーん、仕事から帰ってくると、結構クタクタだから、芽衣に頼ちゃうこと多いかな。」
でも、自分がお休みの日とか夜勤明けの時とかは、ちゃんとやっているよ。唇を尖らせて主張する。
「そういえば、芽衣がハンバーグのリベンジがしたいって言ってくるんだよ。」
「ああ、ハンバーグは芽衣の一番の得意料理だから、沢辺さんに食べてもらいたいのよ。」
「へ〜、ハンバーグが必技なんだ。」
「うん。うちで作る時は、横浜の兄直伝のスパイスを混ぜて、上手く作るのよ。」
「でも、ここで作ろうとした時は、出来合いのハンバーグヘルパー使おうとしてたよね?」
「仕方ないわよ。」沢辺さんの家にある調味料やスパイスじゃ、あの味は出せないと思って、次善の
策をあの子なりに考えたんだから。まるで自分の事のように芽衣を弁護する。
「じゃあ、リベンジする時には?」
「気合いれて、完璧なものを作ろうとするでしょうね。」
いたずらっぽく笑う。
恵美子さんが手を伸ばして、マドレーヌをとり小皿に移す。俺はジンジャークッキーを摘まんだ。
「芽衣に好きって言われた?」
突然の恵美子さんの問いかけに、口にしたジンジャークッキーを吐き出しそうになる。

423 :
すみません。
iPhoneでも自宅でも書き込めなかったのですが、ふらりと入った喫茶店で書き込めた。
携帯に保存した入力済みのデータが、これだけなので、明日以降UPします。

424 :
やった〜、再開した!
……そして続きはまた明日…だ、と?
ふふふ 高度なじらし技だなぁ(泣)

425 :
「芽衣に好きって言われた?」
突然の恵美子さんの問いかけに、口にしたジンジャークッキーを吐き出しそうになる。
粉っぽくなった口が水分を欲するが、紅茶はまだ適温に冷めてはいない。仕方なく、一口だけ啜りこんだ紅茶で口の中を湿らせた。
「急に何を言い出すんだよ。」
抗議の声をあげるが、恵美子さんはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるだけ。
「純真無垢な女子高生の心を弄ぶなんてダメね〜。」
「いや、弄んでないから。」
どちらかといえば、あなたの方が純真な中年男を弄んでますから。そう言いたい気持ちを抑えて、今は黙っておく。
「芽衣は、あなたのことが好きなんだと思うよ。」「そりゃどうも。」
別にはぐらかす必要はないんだけど、なんとなく口籠ってしまう。
「あなたは、芽衣のことをどう思っているのかしら?」
でも恵美子さんは追撃の手を緩めてくれない。
「正直なところ、恋愛感情は持てない。もし、芽衣に正式に好きだって言われても、ごめんって言うしかないよ。」
ふーん。恵美子さんは小さくため息のようなものを洩らし、紅茶を一口啜った。
「私と芽衣ってやっぱり母娘だから、趣味っていうか趣向が似ているのよね。私も、若い頃は、歳上
の男性が好みだったし・・・。」
「ふーん。」
「芽衣の父親は、私よりも一回り上の放射線技師なんだけど、看護師って、勤務時間が不規則だし、
一般の人と休みが合わないから、意外と職場内での恋愛って多いのよ。私もそのパターンで、外科病
棟で勤務している時に仲良くなって、向こうは歳上だから包容力もあるように感じたし、結構優しか
ったから、いいかなって思ったの。」
ごめんね。つまらない話で。一方的に喋っていることを気にしたのか恵美子さんが謝る。
「いや、興味があるから続けてよ。」
恵美子さんがこういう話をするのには、それなりの意図があるのだろう。その意図は分からないけど
恵美子さんの元夫には興味がある。
「その頃は、看護師って仕事に失望していたの。規模の大きな病院の外科病棟だから、四六時中、急
患は運ばれてくるから、緊急手術なんてしょっ中だったし、入院患者さんも傷が痛むから呻き声あげ
てるし、苛ついて看護師に八つ当たりする人なんかもいるから、やり甲斐はあるんだけど、やっぱり
少しづつ疲れちゃうの。患者さんに対して事務的な対応になったり、表面的にはちゃんと対応してい
るように見えて、実は手を抜いたり。看護師になって4年である程度周りが見えてくる時期だから、
理想と現実のギャップに悩んじゃってたんだと思う。で、その放射線技師の彼が、もっと待遇のいい
病院に移るのを機会に結婚したの。」
「何歳の時に?」
「ちょうど23歳。で、私は専業主婦になって、仕事が不規則な旦那様のサポートにまわったの。」
口が渇くのか、恵美子さんはもう一口紅茶を啜る。
「でも、結婚生活はそれほど上手くいかなかったの。旦那は優しかったんだけど、ただ優しいだけの
人だったの。私が芽衣の育児に没頭している間に、准看の若い女の子と浮気して、向こうにも子供が
出来ちゃって、すったもんだの挙句、浮気相手の方を選んで私とは協議離婚。幸い、お坊っちゃんだ
ったから、慰謝料と芽衣の養育費をがっつりと搾り取りましたけどね。」
結婚生活は3年ちょい。旦那と暮らしていたマンションは、向こうがそのまま住むっていうから、母と
兄が暮らす大宮に来たの。恵美子さんはそう言いながら、少しだけ淋しげな笑顔を浮かべた。

426 :
「人に歴史ありってやつだね。」
「歴史といっても、本人にとっては黒歴史ってやつですけどね。」
「それからはずっと一人?」
聞きにくい質問だけど、今なら素直に答えてもらえそうだ。
「まあ、いろいろありましたけど、芽衣が落ち着くまではって思ったから。」
「なるほど。」
「沢辺さんにだって、元教え子の方以外にもお相手はいたんでしょ?」
マドレーヌをフォークで小さく切りながら、上目遣いに恵美子さんが質問を口にする。
「初めてのデートは高校2年生の時。結局、そのデート1回でその娘とは終わり。ちゃんとした彼女が
出来たのは、大学2年生。その娘とは1年半続いたけど、向こうは関西の方で就職が決まり、遠距離恋
愛が確定したところで振られた。29歳の時に先輩に紹介された他校の女性教諭とも長続きせず。とど
めは、元教え子との恋。こちとら、振られつづけて30年だぞ。」
黒歴史にかけては、こちらも恵美子さんに負けてはいない事を強くアピールする。
「そんな、自慢気に言われてもね〜。」マドレーヌを咀嚼しながら苦笑い。
「つまり、お互いに人生を積み重ねてきているんだから、過去のことなんて気にしないって言いたい訳ですよ。」
「でも、もし沢辺さんの事を芽衣と奪い合うって事になったら、勝てる気はしないな〜。」
なにせ向こうはピッチピチだものね〜。私なんか、遥か昔にお肌の曲がり角をターンしてるし。
「あのね〜。俺はロリコンじゃないし、自分の子供でもおかしくない生徒に対して、恋愛感情を持つ
ほどケダモノでもないよ。」
「でもさ、キャンディーズだって、男は狼なのよって歌ってるじゃない?」
「それはピンクレディー!」恵美子さんの素ボケに容赦無くツッコミを入れる。

427 :
あ、おまけがきた
ラッキー♪
恵美子さんが好きな俺には良い展開だが
スレの趣旨からするとやはり芽衣ちゃんが有利か・・・
いずれにしても、これから更に面白くなりそうで
数か月待ち続けた甲斐あり!
322さん、ゆっくりでもいいので何卒完結までヨロシク
いちファンより

428 :
恵美子さん(*´Д`)ハァハァ

429 :
芽衣ちゃんの先生24
ダイニングテーブルの上に置いた携帯が軽く振動して、電話の着信を知らせる。
画面をみると神崎の名前が表示されていた。
「神崎からだ。」「朱音ちゃんから?」 恵美子さんと2人で顔を見合わせる。
浦和駅で電車を待っている時に、恵美子さんの携帯にディズニーランドを出たってメールが入った。
あれから45分ほどなので、まだ電車の中のはずなのだが。
「とりあえず出てみたら?」恵美子さんに促されて通話ボタンを押す。
「沢辺です。」テーブルの向こうで、恵美子さんも心配そうな表情を浮かべる。
「せんせ〜い、今、家にいる?」
こんばんはの一言もなく、神崎が単刀直入に質問をぶつけてきた。
「神崎か?こんな時間にどうした?」
「今日、芽衣とランドに行ってきたんだけど、お土産を渡したいんだ。」
神崎の声は、狭い空間にいるのか、少しばかり反響するような感じだ。
「土産? そんなの月曜日に学校で渡してくれればいいよ。」
「先生、学校じゃ絶対に受け取らないでしょ!」
確かに。受け取らないどころか、見つけたなら即座にボッシュート&お説教しなければいけない立場
だ。
「気持ちだけありがたく戴くよ。それは誰か他の人に廻してあげなさい。」
「うわ〜! 生徒の好意を踏みにじる、鬼みたいな発言だ〜!」
「もう遅い時間だぞ、抗議は月曜に聞いてやるから帰りなさい。」
「ていうか、沢辺っち、私達がどこにいるのか判ってる?」
「沢辺っち言うな! 帰り道の駅かなんかにいるんだろ?」
「ヒルトップマンションのエントランスって言ったら?」
「へっ?」
「ヒルトップマンション南浦和だって言ってるの!」
「うちのマンションじゃないか!?」
俺が驚きの声をあげると同時に、部屋のインターフォンが鳴る。
「今、インターフォン鳴らしたよ。」
慌ててインターフォンのコールボタンを押すと小さなモニター画面の向こうに、神崎と芽衣が立って
いた。
「ここでギャーギャーやっていても、遅くなるだけだから。」
モニター越しでも、神崎が軽くイラついているのが判る。
芽衣の方はといえば、この状況に困惑しているかのようにキョロキョロと周辺を気にしている。
多分、神崎の勢いに負けて、渋々ついてきたのだろう。
「わかった。とりあえず、今から下に取りに行くから。」
「え〜、いいよ、玄関までいくよ。部屋番わかってるし、別に上がったりしないからさ。」
「あ〜、もう判った。」オートロックを解除するボタンを押す。
2人がエントランスに入ったのを確認して、コールボタンを解除する。
「朱音ちゃんは元気ね〜。」インターフォンでのやり取りを聞いていた恵美子さんも苦笑い。
電車の時間を考えると、さっきメールくれた時には、ランドを出てから暫く経ってからみたいね。
最初から、沢辺さんのところにお土産持ってくるつもりだったんでしょ。
恵美子さんは冷静に分析する。
「とりあえず、土産受け取ったら帰らせる。悪いけど恵美子さんは、リビングから出ないで。」
「・・・・・そうね、私は出ない方がいいかもね。」
少し不満気な表情の恵美子さんをリビングに残して玄関に移動する。
恵美子さんのブーツは、靴箱と柱の間の窪みに隠すように置く。
いずれ、2人(主に芽衣だけど)には、恵美子さんに惹かれていることを話さなければならない。
でも、今はまだ、そのタイミングではないと思う。
ドアの向こうに人の気配。足音が近づいてくる。ノブを回し扉を開けると、芽衣と神崎が4・5m先を
歩いてくるところだった。

430 :
芽衣ちゃんの先生24
紫のダウンジャケットに、暗めのグレーのフレアスカート。スカートと同じ色合いの厚めのタイツに
モコモコとしたムートンのブーツ。色味を抑えているせいか、神崎の服装はやっぱり男前だ。
綺麗目のスキニージーンズに黒いロングブーツ、恵美子さんを病院に迎えに行った時に着ていたダウ
ンコート。ピンクと白のボーダーが入った毛糸の帽子。首もとには恵美子さんのフェルメールブルー
のマフラーの芽衣。2人の格好は、それぞれ性格を端的に表しているようだ。
こちらが出てきた事に気づき、2人は立ち止まる。そして先を歩いていた神崎が、一歩後ろにいる芽衣
を振り返り、何事か話しかけると芽衣の背中を押して先に立たせる。
芽衣は神崎に懇願するような視線を送ったが、小さく首を振る神崎に拒否された。
「お帰り。ディズニーランドは寒かったろ?」
俺は玄関を出て扉を閉める。すぐに帰らせるつもりだったので、上着をきてこなかった事を若干後悔
するくらい、外は寒かった。
「むちゃくちゃ寒かった。」俺の問いかけに返事をしない芽衣に代わって、神崎が答える。
「ずいぶん遅くまで、ランドにいたんだな。」
「パレード見て、ボン・ヴォヤージュで買い物してたら9時過ぎちゃった。」
「ボン・ヴォヤージュってなんだ?」
「そういうお店があるの。沢辺っち、ディズニーランド行ったことない訳?」
「もう随分長いこと行ってないな!」
「うわ〜、寂しい人生! ほら芽衣。かわいそうな沢辺っちにお土産渡してあげなよ。」
俯いたままの芽衣の右手には小さな紙袋がある。ミトンの手袋越しにギュッと握りしめられた紐状の
把手に引っ張られて、紙袋の上の方が少しだけひしゃげていた。
「くれるんだろ。」右手を差し出す。
俺の声に一瞬ピクッとなったあと、上目遣いに俺を見つめる。
木曜日の夕方に怒らせてしまってから、まだ2日しか経っていない。けど、こうして向かい合ってみ
ると、随分と会っていなかったように感じる。
芽衣の右手がゆっくりと前に差し出される。
「芽衣が30分もかけて選んだんだよ。」ありがたく受け取りなさいよね。
どこぞのツンデレ娘のような事を神崎が言う。
「そうか。ありがとな。」そう言って差し出された手から紙袋を受け取った。
ディズニーキャラクターが描かれた紙袋は、予想よりも軽かった。
「開けていいかって言いたいところだけど、時間が時間だからな。」
「え〜! 上がってお茶飲んでいけって言えないの?」
「今日はダメだ。田舎の知り合いが遊びに来てる。」
「だから今日はオシャレしてるんだ。」芽衣が小声で聞く。
「ああ、プレゼントのお礼はまた今度な。」
「なんだ、ついでに車で送ってもらおうかなって思ってたのに。」
「じゃあさ、沢辺っち。トイレだけ貸して。寒いし、駅のトイレすごい列が長くて。」
「えっ、ちょっと待て。」
「ごめん、余裕なさそう。」
俺を押しのけて、ドアを開けかねない勢いで神崎が近づく。
「いや、ちょっと掃除してから。」
「大丈夫、駅よりは綺麗でしょ?」
俺が単に掃除がゆきとどいてないから入室を断ろうとしていると勘違いした神崎は、引き止める俺の
腕を振り払い、ドアノブを開けた。
扉の向こうには恵美子さんが佇んでいた。
突然開いた玄関ドアに、恵美子さんは驚いて固まった。それでも、右手をインディアンのようにあげて
「・・・チャオ」と意味のない挨拶をしたのは、母親としての威厳を保とうとした結果なのだろうか?
数秒の間をおいて、勘の鋭い神崎はすべてを察したようだ。
「沢辺っちサイテー!」その声は、ディズニーランドを吹き抜ける北風よりも冷たかった。

431 :
芽衣ちゃんの先生25
カーステレオから流れるのは、随分と昔の浜田省吾のアルバムのラストナンバー。
「夏の終わり」というその曲の歌詞は、冬の北風が強く吹き付ける湾岸高速を走るのにはひどく不釣
り合いだ。
さいたま新都心近くのインターから首都高に乗り、もう1時間ほど経つが、助手席に座る芽衣とは会
話がほとんどない。
彼女から要求されたドライブデートだが、この重い雰囲気は、楽しいドライブというには程遠かった。
羽田空港から合流してきた新横浜行きのリムジンバスをパスするために、中央車線に移動する。
土曜日と言っても、真冬の2月のせいか行楽地に向かう車も少なく、横浜までは、あと20分くらいで
着くことができそうだ。
今日の目的地は鎌倉。
湾岸線で横浜ベイブリッジを渡り、横浜横須賀道路を通って大船へ。大船から江ノ島に出て、海沿い
の道を鎌倉に抜ける。このルートは、俺が昔付き合っていた女性と、初めてドライブしたルートだっ
た。
ディズニーランド土産を届けにやってきた芽衣と神崎に、恵美子さんと二人っきりでいるのが暴露て
神崎からサイテー男認定を受けて一週間。
2人がきた時に、恵美子さんも来てるぞって迎え入れてあげていれば、何の問題も無かったのだが、
変に気を回した結果、芽衣を傷つける形になってしまった。
芽衣が知らないうちに、二人で食事に行く約束をしていた事。恵美子さんが自宅にいるのに、それを
隠そうと嘘をついた事。
自らをジャッジメントと称する神崎に、その二つの罪状を指弾され、芽衣を傷つけた事に対する罰
して、芽衣と一日デートする事を申し渡された。
その裁定を拒否した場合は、クラスの女生徒に暴露すると脅迫された俺に、拒否する事は出来なかっ
た。
こちらとしては、恵美子さんと二人で食事に出かけたことを、指弾される事に抵抗がない訳ではない
が、芽衣が持っている俺に対する気持ちを考えると、そう強くも出られない。
それぞれが、心の中にモヤモヤとしたものを抱きながら、神崎のジャッジを受け入れて、家路につい
たのだった。

432 :
芽衣ちゃんの先生25

その夜。恵美子さんからメールが届いた。
送信者 五十嵐恵美子
夜分すみません。さっきはごめんなさい。
私が紅茶が飲みたいなんて言わなかったら、こんな騒ぎにならなかったのに。(涙)
風呂に入り、冷蔵庫から持ち出したビールをベットのサイドテーブルに置き、チビチビと飲みつつ、
恵美子さんにメールを返す。
from 智哉
お疲れさま。夕食とお酒、ご馳走さまでした。
今晩の事は、恵美子さんが悪い訳じゃないです。
芽衣と神崎が来た時に、素直に恵美子さんが来ている事を伝えていれば、なんの問題
もなかったのに、変に隠し立てしようとした俺が全面的に悪いです。
今度、食事に誘う時は、芽衣も一緒に行ける時にしましょう。
疲れと軽い酔いに加えて、眠気にまで襲われていて、文章を読み返すのも面倒だった。
それでも「てにをは」が気になってしまうのは国語教師の性なのか。
まあ、いいだろうと送信ボタンを押すと同時に、重い瞼を閉じた。

翌朝、目覚めはよくなくて、目を覚ましたのは9時を回っていた。
顔を洗い、洗濯かごに入っているワイシャツやら下着やらを洗濯機にぶち込む。
卵を焼くのも面倒なので、キッチンカウンターにころがっている、昨日で賞味期限が切れている食パ
ンをインスタントの味噌汁で食す。
携帯に、芽衣から着信が有ったのは、洗濯物を干し終えて、昨日使ったティーセットを片している最
中だった。
サンリオキャラクターが表示されるのは木曜日以来。無表情であるはずの白い仔猫のキャラが、怒っ
ているように見えるのは、俺の気のせいだろうか?

433 :
今日はここまで。
ここから、芽衣ちゃんのターンが始まります。
しかし、3ヶ月書かないと、それぞれのキャラのセリフの言い回しが変になってしまうな〜。

434 :
>>433
おっ!
いよいよ芽衣ちゃんの反撃?
それも楽しみだなぁ

> しかし、3ヶ月書かないと、それぞれのキャラのセリフの言い回しが変になってしまうな〜。
まだ再開後のウォーミングアップ中って事で、ドンマイ!(語)

435 :
芽衣ちゃんの先生25
昨日のこともあるし、御機嫌斜めなんだろなと思い、携帯を取り上げて、恐る恐る通話ボタンを押す。
「おはよ。先ちゃん。」予想に反して、芽衣の声はいつもと同じように、ポヤポヤとした柔らかさを
保っていた。
「ああ、おはよう。」平静を装うつもりが、いつもよりも声が上擦ってしまった。
「あれ? 先ちゃん、まだ寝てた?」
「いや、起きて洗濯回してるところだよ。」
「ふーん。もう11時近いよ。これから干すんじゃ乾かなくない?」
「いや、厚手の物はないから大丈夫だろ。」
うーん。担任教師と生徒の会話じゃないな。
「ところで、今日は出かけたりしないよね?」
「へっ?」
「だから、これから出かけるか聞いてるの!」
「まあ、特段、遠出する予定はないけど。」
「じゃあ、3時にうちに迎えに来て。」
「へっ? なんで?」
「夕飯にスペシャルハンバーグ作ってあげるから。」
材料とかは、迎えに来てくれたついでにパルコで買えばいいし。芽衣は、とても楽しげに、パルコの
地下食品売り場で調達する品々を読み上げる。柿安本店で和牛の挽肉500gって高くないか?
「え〜と、前にも言ったけど、担任の家に生徒が食事を作りに来るのはマズイかと・・・。」
「ふーん、うちのママを連れ込んだサイテー教師がそういう事を言うんだ。」
一転して、神崎なみの冷たい声を出す芽衣。
「いや、連れ込んだ訳じゃなくて・・・。」
「朱音ちゃんにメールしようか?」
「いえ、正直すまなかったと。」
素直でよろしい。芽衣は満足気に言う。
「あと、通話料とかもったいないから、先ちゃんもLINEに登録してよ。」
こりゃあ当分の間は、芽衣の言いなりになりそうだな。脳裏に過る悪い予感は的中間違いなかった。
普段、南浦和駅前のマルエツかダイエーで買い物している俺は、浦和パルコの地下食品売り場を利用
する事は殆どない。
たまに映画を観にきたついでに、パンやお弁当を買うくらいで、柿安本店では一度も買い物をした事
がなかった。
マルエツやダイエーなら同じ金額で、その3倍の量が買えそうな和牛の挽肉を500gと銘柄豚の挽肉を
200g。香辛料売り場では、ナツメグやらケッパーやらのスパイス各種を購入。レジを通過した時には
漱石先生が4人ほどいなくなっていた。
自炊は和食が中心の我が家。スパイス何ぞは滅多に使わなくて不経済だと主張したのだが、定期的に
やってきて、俺を胃袋から支配する気満々の芽衣に、あがらう事が出来なかった。
芽衣がトイレに行っている間に、恵美子さんにメールを一通送る。
from智哉
漱石先生が〜 T_T
買い物終わりました。お財布から漱石先生が4人も去って行きました。
これだけあれば、一週間は暮らせるのに〜!
メールの文章が、おばちゃんっぽいような気がするが、恵美子さんなら、きっとこの悲しみを理解し
てくれるだろうと送信する。
Re 漱石先生が〜T_T
うちなら10日は暮らせるわ〜!
ちなみに、私は、そのハンバーグが来るのを自宅で待つ身です。
どうせなら私も沢辺さんの家に行くって言ったんだけどね〜。
絶対に来ちゃダメ! ですって (´Д` )
芽衣が帰って来るまでお夕食は我慢。ほんと狭量な娘だわ。

436 :
芽衣ちゃんの先生25
ありゃ。つまり700gのお肉は3人分の分量なんだ。
それなら、恵美子さんがお腹を空かせて目を回す前に、芽衣を送り届けないとな。
見たことがない五十嵐家のダイニングテーブルで、ハンバーグの配給をポツネンと待つ恵美子さんの
姿を想像して、思わず笑ってしまった。
「先ちゃん、一人でニヤついてると、スゴイキモいよ。」
呆れたような声に、携帯画面から顔をあげると、あえてウワ〜って感じの表情を作っている芽衣が立
っていた。
「別にニヤついてなんかないさ。」足元に置いておいた香辛料が入ったビニール袋を取り上げる。
「誰とメールしてたの。」
「・・・別に。」
「まさか、うちのママじゃないでしょうね?」普段はポヤポヤしているくせに、こういう時だけ勘が
鋭くなるのは、女性としてデフォルトで設定されている機能なのか。
「恵美子さんとですが。・・・なにか?」
「うわっ! 女子とお買い物中なのに、他の女とメールするなんてサイテーだ!」
必要以上に大きな芽衣の声に、廊下を挟んだ反対側の雑貨屋の女性スタッフが何事かと振り返る。
「お前、自分の母親つかまえて、他の女ってのはヒドくないか?」
「今の私にとって、ママはライバルですから!」
鼻息荒く、プリプリ怒りながら訳の判らないライバル宣言をする芽衣の手を引っ張り、地下駐車場に
行くエスカレーターに乗る。ダメだこいつ!
うちの部屋のお隣さんは、俺とそう変わらない年頃の夫婦と4人の兄妹。一番上のお兄ちゃんは来年
には中学生になる。もう一軒のお隣さんは、県庁を退職した旦那さんと専業主婦の奥さん。
買い物袋をぶら下げてエントランスを抜けたところで、隣の奥さんとすれ違う。
「こんにちは〜!」ニコニコと愛想良く挨拶する芽衣の後ろを、両手に袋を提げて、居心地悪そうに
ついて行く俺。ヒルトップ南浦和のスピーカーと陰口を叩かれているお隣の奥さんに見られた以上、
歳若い女の子を連れ込んでいるという噂が立つのは、時間の問題だ。
部屋に着き。食材を冷蔵庫に。調味料の類をキッチンカウンターに置いた芽衣は、持参したエプロン
をして、調理に必要なボール等の器具を、勝手しったる台所と言った感じで準備してゆく。
ハンバーグは、合挽き肉にみじん切りのタマネギと卵というシンプルなもの。それにコックの叔父さ
んから伝授されたスパイスを加える。
芽衣が一番得意とする必技だというから、期待は高まる。
「ねえ先ちゃん。椎茸いれてもいい?」
俺が椎茸を憎んでいる事を知りながら、そういう事を言うのはイジメじゃないだろうか?
「付け合わせを、ニンジンのグラッセにするならいいよ?」
「・・・性悪教師!」
そんなやり取りを、何度か繰り返す。
呼ぶまではキッチンに入ってくるなと言われ、仕方なくダイニングテーブルでお茶を飲む。
考えてみると、この部屋のキッチンで食事を作った事があるのは、芽衣と岐阜の姉貴と姪の三人だけ。
恵美子さんは、キッチンに立ったことはない。
バンダナを姉さん被りにして、ボールにいれた合挽き肉を一生懸命に混ぜ合わす。
バンダナと額の間から、数本の髪が垂れていて、それが色白の肌に映える。
雑誌を読みながら、思わずその様子を盗み見てしまった。
随分前に、似たような光景をみたことが有った。それは何時だったんだろう?
雑誌を閉じて、窓の外を見るふりをしながら、記憶を遡る。

437 :
芽衣ちゃんの先生
独立したキッチンがある部屋で暮らしたのは、教師になって、岐阜から出てきてからだから、大学時
代に付き合っていた女性ではない。そうなると、29の時に付き合った女性教諭か、元生徒だった女性
しかいない。
女性教諭だった彼女は、料理が不得意で、逆に俺が料理を振る舞うことが多かった。
先輩教師の前の勤務校で英語教師をしていた彼女は、英国への語学留学をしていただけあって、いつ
もお洒落に気を使っていた。
それに対して、山好きが高じて、毎週末に、強行軍で中央アルプスや北アルプスの山々を歩いていた
自分は、お洒落とは全く無縁な人間。
最初のうちは、全く対照的な生活に興味を持ったが、次第に疎遠になってしまった。
もう今となっては、滅多に思い出すこともない、通り過ぎて行った女性だ。
元生徒だった彼女は、料理が好きな女性だった。
村上稜子。今はニューヨークで暮らしている。稜子は、俺が初めてクラス担任になった時の生徒だ。
俺が26歳。彼女は17歳。所沢にある高校の二年生だった。
高校生の間の彼女とは、それほど思い出はない。正直いうと影の薄い地味な生徒だった。
彼女は絵が好きだった。美術部に所属し、高校生を対象にした展覧会に参加しては、いろいろな賞を
獲得していた。
それは、イラストレーターだった彼女の母親から受け継いだ才能だったのかもしれない。
母方の親族は、設計技師の祖父、建築家の叔父と技術系の才能に恵まれた家系だった。
忙しい母親に代わり、稜子の面倒を見たのは彼女の祖母だった。それに彼女が幼い頃はまだ大学生だ
った叔父。特に叔父さんにはずいぶんと懐いていたらしい。
卒業後、彼女と再会したのは、32歳の夏。彼女は美術系大学の院生だった。
その年、俺が担任を勤めるクラスの男子生徒が、夏を過ぎてから、美術系大学に行きたいと言いだし
た。
それまで、親の勧め通りに、それなりの大学の経済学部への進学を希望していたのだが、どういう心
境の変化か、秋の三者面談の席でそう言い出したのだった。学年主任を含めて、大騒ぎとなり、とり
あえず本人の志望する学部の情報を急遽集めたのだが、オープンキャンパスは既に終わっていて校内
設備の見学は出来なかった。
そこで思い浮かべたのが村上の存在だった。卒業生の名簿を探し出し、村上の家に電話して、特別に
校内見学と、その学部の雰囲気やカリキュラムについてレクチャーして欲しいと頼み込んだ。
村上は快諾してくれて、翌週の金曜日の午後に、彼女の大学の正門で待ち合わせの運びになった。
彼女の案内で、校内見学や、生徒の希望する学部の学生へのインタビューもする事ができた。
残念なことに、生徒が思い描いていた世界と、現実との間には、激しいギャップがあったらしく、
大学見学の翌週には、元の志望校への進学に専念する事にしたという報告があった。
村上へのお礼を兼ねて、食事を奢ると伝えると、ちょうど行きたい場所があるという事で、十月末の
日曜日に、池袋駅で待ち合わせる事になった。
彼女が行きたいと言っていた場所は、その年の4月にオープンしたばかりの六本木ヒルズだった。
六本木ヒルズの上層階にはアートスペースが設置されている。ちょうど好きな作家の作品が展示され
ているので来たかったのだが、一緒に出かける相手がいないという事で、俺にお鉢が回ってきたよう
だ。近くにあるホテルのビュフェで食事とケーキバイキングを楽しみ、ヒルズの中を歩いているうち
に日は傾き、俺たちは、東京スカイビューと呼ばれる展望台に上がった。

今週はここまで。
仕事の帰りに喫茶店で、2ちゃんに書き込む生活は、いつまで続くんだろう。

438 :
創作意欲が折れない限り?

439 :
良い展開だし続き読みたいですだよ

440 :
芽衣ちゃんの先生25
展望台は、開業してから半年経過しているにも関わらず、カップルやグループ客で混雑していた。
特に、お台場や東京タワーが見渡せる方向の窓際は、ひどく混雑していて、窓際に近づくことさえも
一苦労な感じだった。
村上も俺も、人ごみは苦手。人を押しのけてまで、外の景色を見る気にもなれず、比較的、人が少な
い新宿方面の展望をみただけだった。
「なんでこんなに混雑してるんでしょうね?」
「さあな、新しく名所が出来たら、とりあえず行っておくべぇってのが、日本人だからな。」
地方からの団体旅行客と思われるおばちゃん集団に、窓際から追いやられ、苦笑いしながら展望台を
出る。
もともと、俺たちの目的は、アートスペースだったので、展望台には未練はないが、展望台を目的に
きた人にとっては、少しばかり物足りないだろうなと思ってしまった。
村上が見たがっていた展覧会は、森美術館オープン記念の展覧会だった。
「ハピネス:アートにみる幸福への鍵 モネ 、若冲、そしてジェフ・クーンズへ」と題された展覧会。
クロード・モネは印象派の巨匠。伊藤若冲は名前だけは知っているが、代表作は思い当たらない。
ジェフ・クーンズに至っては、名前さえも聞いた事がない。
大学では西洋美術史を専攻していた村上だったが、伊藤若冲についても、どんな生い立ちだったのか
まで解説してくれた。
一つ一つの作品について、じっくり見つめ、俺に解説をしてくれた結果。俺たちは美術館に2時間半
もいる結果になった。
小腹が減ったので、近くのビルに入っているサイゼリアに入って、パスタとピザをシェアする。
なかなかに楽しい一日を過ごすことができた。
六本木から地下鉄に乗り渋谷へ。彼女が今住んでいる吉祥寺の駅まで送る。
高校時代は、親と一緒に所沢の高級住宅地に住んでいた村上は、通学の便利さを考えて、吉祥寺の
叔父さんの仕事部屋の一室に住まわせてもらっているという事だった。
彼女の叔父さんという人は、建築デザイナーとしては有名になりつつある人だった。
高名な建築家の名を冠した建築事務所から独立し、まだ40歳をすぎたばかりだというのに、海外の
都市計画に関するコンペで、採用には至らなかったものの、高評価を得て、それをきっかけに、様々
な、ビルや商業施設に関する設計のオファーがやってきていた。
井之頭公園近くのマンションの一室に事務所を構え、学校がない時には、事務所の掃除や、仕事の手
伝いをする事を条件に、家賃をタダにしてもらっているという。
「吉祥寺で6畳のワンルームだったら、家賃は8万くらいかな?」
「台所も、ちゃんとしたお風呂もついていることを考えると、実質1DKみたいなものですから、もっ
とするかも知れません。」
「でも、事務所には人がいるだろう? 気を使わないか?」
「いえ、事務所って言っても、ほとんど叔父が仕事をする時に使うだけで、スタッフの人たちは別の
建物で仕事をしてるんです。だから仕事の手伝いって言っても、仕事部屋の掃除や資料整理とか、食
事の世話くらいなんです。」
仕事モードに入ってしまうと、食事を摂る事さえ忘れてしまうぐらい集中するので、生活の面倒をみ
るのも結構骨が折れるんですよ。
村上は、叔父さんの世話をすることが、満更、嫌でもなさそうな口調で言った。
井之頭線が、吉祥寺に着く間際、ポイントを通過するのに車体を大きく揺らす。
少し高めのヒールを履いた村上が、後ろに立っていたおばちゃんにぶつかられ、バランスを崩して、
俺に持たれかかった。
右腕で彼女を支えた時に、彼女の軽さに驚き、彼女がひどく痩せている事に気がついた。
「先ちゃん、何ぼーっとしてるの?」
芽衣の呼びかけに我に返って、キッチンの方を振り返る。
芽衣が、ハンバーグの種を両手でまとめて、これから空気抜きに移ろうというところだった。
「悪い。昨日、少し夜更かししたんで、少し眠気がきてる。」
「ふーん。なんか遠い目をしてるから、ママのことでも考えてるのかと思った。」
「恵美子さんの事を?」
「うん、絶対、今度はいつ会えるのかなって考えていたでしょ?」
「恵美子さんになら、今日、芽衣を家に送って行く時に逢えるだろ?」
「はぁ? 会わせるわけないじゃん。」
昨日、私に黙って会っていたことに関しては、ママも先ちゃんと同罪なんだから。当分は会わせてあ
げないもんね。
手にしているハンバーグの種を、俺にぶつけかねないくらいの勢いで芽衣は言う。

441 :
芽衣ちゃんの先生25
「大体、いつの間にアドレス交換したのよ?」
「・・・いつだったか覚えてない。」
俺が恵美子さんに教えたのは、携帯番号だけだった。
「そうやって、すぐに惚ける!」
「いや、多分、2人がこの家から帰る時だと思うよ。」
「ウソだ! 先週、ママの携帯見た時には、先ちゃんのアドレスはTEL番だけだったよ。」
えっ!? それはつまり。
「まさか、恵美子さんの携帯を勝手に見てるのか?」
「向こうだって、私の携帯勝手に触ってるもん。」
岐阜の姉貴母娘も、勝手に触った、触ってないって喧嘩してたけど、母娘って、そういったものなの
かな?
「いくら親子でも、他人の携帯を勝手に触ったりするのは良くないんじゃないか?」
「だから、向こうも同じことしてるの!」
「しかしな〜。」
「先週、お風呂に入る時に、ストラップを携帯に巻き付けておいたのに、出てきたら、巻き方がビ
ミョーに違ったんだ。その次の日にママの携帯みたら、メールのフォルダーに、ロックがかかってい
るフォルダーが新しく出来てたし、先ちゃんのアドレスにメルアドも追加されてた。」
「つまり、芽衣は、その時に、恵美子さんが芽衣の携帯を触って、俺のアドレスをコピーしたって言
いたいのか?」
「そう。」
全面的にママが悪いの! 芽衣はこの議論を打ち切るかのように、ハンバーグ種の空気抜き作業を始め
た。
「まあ、芽衣と恵美子さんの問題だから、俺は口出ししないけど。」
俺は、恵美子さんにメルアドを教えてないわけだから、芽衣の言う通りかもしれないな。
芽衣の様子からすると、これ以上、この話題を続けると、ヤブヘビになりかねない。
俺は読みかけの雑誌に意識を戻した。

442 :
今週はここまで。
今日からは、子供達が夏休み。
お父さん稼業に勤しみ、UPが遅くなりそうです。
自宅の回線もiPhoneも書き込み出来ず。
最後の砦だった、街の喫茶店もアクセス規制。
行く先々で、書き込み出来るか試しながらUPしてます。

443 :
>>442
待ってます!

444 :
>>442
楽しみに待ってますんで
無理せずにね

445 :
お待ちしてます!

446 :
規制解除きた!
気長に待っとります

447 :
楽しみだ

448 :
ラストオブアスが良い感じにおっさん少女だった
でもエロは想像できないな

449 :
舅と嫁は無し?

450 :
何時も思うが明らかにそのスレの守備範囲内なのに
無し?とか聞いてくる人はなんなんだw

451 :
>>442
もし書き込み規制きついなら代行スレも覗いてみてください。
つづきまってます

452 :
過疎ってるけど空気を読まず投稿してもいいだろうか

453 :
「…中田さんって」
「うん」
「いいや、何でもないです」
「なんやのそれ、気になるやん」
「忘れてください」
「…そう? まぁええけど…」
とある平日の午後。オープンしたばかりの飲食店の厨房で、カテラリーを磨いている二人がいた。
中田と呼ばれる三十五を過ぎた男性は、グレーのスーツをパリッと着こなし、年相応かつお洒落な髪型をしている。もうひとり、二十歳の若い女は店で支給された制服を少しだらしなく着こなして、無表情でフォークを磨いている。名前は沢口マホという。
外出チェーン店にしては少し高めの値段設定のこの店は、こじゃれたフレンチレストランである。中田は、東京の本店から新人の教育係としてこの地方都市にやってきた。
なんもないところやなぁ、と言うのが彼の本音で、大阪で生まれ育ち東京で職についた彼にとって、とくに取り柄も無いこの街は退屈の一言に限った。
アルバイトでこの店のウェイトレスをているマホは生まれも育ちもこの街らしい。
ランチタイムからディナータイムの間で、昼間使用したカテラリーを洗って磨く。マホが一人でこの作業をこなしていたので、手隙だった中田は手伝うことにしたというわけだ。
「…沢口は彼氏とかおるん?」
無言の重苦しい空気を破ったのは中田だった。
「何ですか藪から棒に」
「いやぁ、なんとなく」
「…今はいませんよ」
「へぇ、今は」
「面白がってません?」
マホは眉間にシワを寄せた。
ぽっちゃり、という言葉がぴったりのその体を纏う白いワイシャツがこのじっとりとした暑さでぴったりとくっついている。中田は見てはいけないものを見た様に目を自然にそらした。
「そんなことあらへん」
「…こんな身体でも、ありますし」
「何が?」
マホの言葉がひっかかり、中田は聞き返す。
「需要」
中田の目をとらえて上目遣いでニヤリとしながら、マホは呟いた。
…この子、こんな顔するんやな。
対して可愛いと思ったことがない、この年下の女に今、無性にぞくぞくしている自分がいる。
マホに対する興味がむくむくと沸いてきて、中田は続けて質問した。
「どんな層に?」
そうですね、と下を向きながらマホは数秒考え、思いついたような仕草をしてまた挑発的な表情で中田を見上げた。
「赤い縄は少し太い方が映えるんですよ」
そう言ってふ、と息を漏らし、小声で冗談ですよと付け足した。
中田は自分の中のオトコの部分が引っかかれたような気がした。
「…おもろいやん」

454 :
つづきます

455 :
GJ!
続き楽しみにしてますー

456 :
GJ!
雰囲気好きだーのんびり待ってます

457 :
「お疲れ様でした」
マホはまだ残っている厨房の人たちに声をかけて、従業員の更衣室へ向かった。腕時計を確認すると、夜の十時だ。明日はアルバイトがないことが、マホの足取りを軽くさせた。
着替えを済ませ、裏口から出る。そこにいたのは、少なくとも自分にとっては意外な人物だった。
「やぁ、今あがりなん?」
中田が爽やかな笑顔で立っていた。その手には煙草が収まっている。裏口には灰皿が設えているから、きっと煙草を吸っていたんだろう。一瞬たじろいだが、マホはすぐに冷静な顔を作った。
「はい。お疲れ様でした」
「んじゃあこれからヒマ?」
「…まぁ」
「ヒマならメシでも行こうかと思って。あした、沢口休みやろ?」
マホはその言葉を待ってましたと言わんばかりに、にっこりと微笑んだ。
「いいですよ」

458 :
※※※
ラブホテルの室内は卑猥な間接照明で照らされていた。そんなあかりのもと、中田に組み敷かれているマホの裸体が艶かしく光る。まだ少し幼さが残っていて、それがよりいっそういやらしさを演出していた。中田はたまらずマホの首元にかぶりついた。
「あ」
マホは小声で漏らすと、腕を中田の首にかけた。それを先に進めていい合図だと中田は受け取る。こぶりな乳房を片方は丁寧に揉み、もう片方は先端を舌先で弄ぶ。
「ん、あっ」
マホの顔が赤くなってきて目が潤みはじめた。中田は顔をマホの耳に近づけ、乳房にあった手を太ももへ移動させる。マホの耳を丹念に舐め、手は太ももの上をじれったく触ると、マホからあがる声がより一層甘いものになった。
「も、やだ…、ぁあ」
「何が?」
「…さ、触ってぇ」
「どこを?」
マホは恥じらったのか少しためらったあと、太ももを触っていた中田の手を掴み、自らの恥部に引導した。その若さゆえかは知らないが大胆な行動に、ますます中田は興奮する。
既に濡れそぼったそこを指でひとこすりするとマホから今までとはまた違った声が漏れた。中田がぷっくりと膨らんだ肉芽を指で弾くと、じんわりとまたそこが潤沢するのがわかった。
「いやぁっ、そこだめぇ、やぁ…あぁっん」
「ダメなら止めてもええんやで」
「…いじわる…、んぁ」
テンプレート通りの陳腐な会話。しかしマホは興奮したらしく身をよじらせていた。
こんなに濡れていたら大丈夫だろうと、一気に指を二本中に挿入する。中田が天井を指の腹で擦っていると、マホはいきなり大きな声を出した。
「だめだめだめ、出ちゃう、出ちゃうよぉ」
その瞬間、ピュッピュッと液体がマホの恥部から飛び、ベッドにじんわりとシミを作った。
中田がわざとらしく液体で濡れた指を自ら舐めると、マホは恥ずかしさからか顔を手で隠す。狙ってか狙わずかはわからないが、中田はたびたび見せるマホの幼い仕草を素直に可愛いと思い、反面虐めたくなる。
「あーあ、シミ作ってもうたやん。こんなに出して」
「…い、言わないでください」
「沢口ってこんなエロかったんやなぁ」
「止めてください…あの、中田さん横になってもらえますか」
今度は俺のしゃぶってくれるんかな。中田は素直に横になる。すると、マホは意外すぎる行動に出た。
「え、ちょ、沢口、待っ…ん」
「うるさいですよ」
中田の顔のあたりになんの躊躇いもなく跨り、腰を落とした。中田はマホにびっくりはしたものの、舐める行為自体に抵抗は無いので素直にその割れ目を舐める。
「あっ…やぁ、も、もっとここ舐めてください…」
マホの手がマホ自身を恥ずかし気もなく指で広げる。
この子、ド淫乱やんか…。
そう冷静に考えているつもりだが、実際のところ中田は自分の股間が先程よりも、より大きくなっていることに気づいていた。
つづく

459 :
30代半ばくらいのカタブツクッソ真面目なおっさんと十代の女の子の恋愛とかいいよね。
女の子は若さ幼さゆえに愚直なほど真正面から気持ちをぶつけてきて、
『流石にこんな若い子には将来あるし手出す訳には』とか、『大人げなくマジになるのまずい』とかで
堪えてるおっさんはかわしつつ振り回されまくるんだけど、
そのうち本気で好きになってしまって辛抱堪らなくなってくる。
それで、女の子の(おっさんからすると)子供の遊びのような恋愛ごっこでは満足できなくなって
うっかり紳士の仮面を脱いで越えちゃいけないラインを踏み外そうとするけど、
女の子は面食らって怖がっちゃったりして
「どうした?君が望んだことだろう」
「大人の男を本気にさせるとどういうことになるか、よく覚えておきなさい」
みたいなそういうのが読みたいです!!!

460 :
あれ?書きこめた。というかリロードやっと上手くいった。
読み込めたらいいの来てる!
>>453
GJ!空気えっろ!えっろ!関西弁のMな子とかめちゃ可愛い。
続き待ってます!

461 :2013/10/03
め、芽衣ちゃんはまだですか、、、
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