2013年10エロパロ484: 保健室の神でエロパロ 入室者2人目 (546) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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保健室の神でエロパロ 入室者2人目


1 :2010/10/30 〜 最終レス :2013/07/26
前スレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1258469346/

2 :
保健室のぬるぽ

3 :
ガッ
やらすなw

4 :
容量超えちゃったのでこっちに投下させてもらいます

5 :
次の日、花巻さんは学校に来ていましたが、俺から見ても藤を避けているというのは一目瞭然です。
朝に顔を合わせては逃げ、昼休みにはトイレに閉じこもり
移動教室で席が近くになれば必で寝たふりをしてました(すごくバレバレで逆に面白かったです)
藤はといえば、せっかく大嫌いな音楽の授業に出たというのに
たまたま歌のテストの日と被ってしまい、悲惨なことになってました。
神様は本当に残酷ですが、神は二物を与えないということがわかりました。
藤の後なので、美っちゃんの美声も一層際立ち、初めて藤が役に立ちました。
藤を授業に参加させた花巻さんに賞賛の拍手を送りたいとおもいます。
5時間目の休み時間に、痺れを切らしたのか、藤は強行作戦に出たようです。
なんと、自分から花巻さんの机に出向き、話をつけようとしたのです。
花巻さんは廊下にむかって全力で逃げました。
すかさず藤も追い掛けます。
それから先は、あの二人のにしかわからないことだけど、
きっと悪いようにはならないと思います。


だって藤には…

美っちゃんがついてるから…。




6 :
えー
もう終わっちゃうのかよ・・・
もっと聞かせろよ(゜д゜)/ゴルァ

7 :
>>5
GJ!
スレまたぎで大変だったね
美っちゃん、この二人を早くくっつけて下さいお願いします

8 :
前スレハデみの藤花の人も、本好実験の人も後日談ありがとう!
藤花好きなのでニヤニヤが止まらんw

9 :
本好が良キャラすぎるwwwww
彼の中で美っちゃんどれだけ万能なんだw
藤花好きだし本好おもろいしGJでした

10 :
シンヤエロス

11 :
久々に来てみたら、ハデみの藤花藤シンが投下されてた…!
全部好きだからニヤニヤする
特に藤シンがえろすで萌えました。

>>5の本好に惚れたんだけど、この設定使って書くのはダメかな?
自分は>>5とは別人なんだけど。

12 :
藤花投下してくれた人マジGJすぎる

13 :
前スレの時点で書きかけていたハデみのが完成したので投下。
相変わらずエロスランプの上、風邪気味。

14 :
「…助かりました、才崎先生」
「いいえ、お役に立てたようで嬉しいですわ」
放課後の保健室。心底安堵しきった表情をしたハデスが、ソファーに座った美徳の前に一杯の
お茶を置いた。
「もしも、またハデス先生では手に余ることがおありでしたら、いつでも相談なさって下さい」
熱いお茶を一口飲んで、美徳はまめまめしく立ち働く空ろ姿に声をかけた。
何となく、お茶の味がいつもよりも苦いような気がした。
三十分ほど前、職員室に困りきったハデスがやって来て、たまたま書類整理をしていた美徳に
とある女子生徒のことで相談がある、と持ちかけたのが今回のきっかけだった。
よくよく話を聞いてみれば何のことはない、その生徒は思春期特有の体調変化による不安という
ものを抱えていたのだが、ここからが厄介だった。他の学校なら大抵は養護教諭といえば女性
だから相談もしやすいのだが、男である上に普段から無駄に怖がられているハデスにはなかなか
悩みを訴えられない。けれどやっぱり気になって仕方がない。ようやく意を決して保健室に入った
ものの、それでもはっきりとは言えないままだったので困り果てたハデスが、同性として話を聞きや
すい女性教師が誰かいないか探しに来たという訳だった。
結局、美徳が十分ほど本人の話を聞いて、思春期の頃のことを話すとようやく女子生徒の不安は
解消したようだった。
「分かってはいましたが、やはり女子生徒のこととなると男ではやりにくい部分はありますね」
ようやく向かい合わせに腰を降ろしたハデスが居心地悪そうに笑う。
「まあ…年齢的に身体の悩みは異性には言いにくいものですからね。でも、だからこそまたこの
ようなことがありましたら、どうぞご遠慮なく。私も男子生徒のことで手に余ることがあれば相談
に伺いますので」
「ありがとうございます、才崎先生」
少しだけいつもの笑顔を見せたハデスに、胸がときめいた。学校では何よりも生徒たちのこと
ばかり気にかけているのに、こんな風にどうしようもなく力及ばずにいるのはどんなにか歯痒い
ことだろう。そう気遣う気持ちの端で、あまり見られない表情を目にすることの出来る喜びを噛み
締めているのだ。
そんな穏やかな時間の中。
「…あ、そのお茶、調合を変えてみたんです。このところ残業が続いていますのでお疲れだと思い
ましたから」
やっと普段の様子に戻ったハデスが、ほとんど飲み干してしまったお茶を指した。

15 :
「そんな、お気遣いなく」
「いえ、僕に出来るのはこれぐらいですから」
お茶が苦いと思ったのは間違いではなかったようだ。それで普段の疲れが取れるかどうかは
ともかくとして、わざわざそこまでしてくれたのは素直に嬉しい。
翌日の昼休み、いつものように弁当持参で保健室に来ていた美作が淹れたばかりのお茶を噴き
出した。
「うわ苦っ、何だよこれっ」
「そうかなあ…そりゃちょっとは苦いかもだけど」
隣で弁当を開いていたアシタバは、首を傾げながら湯呑みの中のお茶を飲んだ。
「ああ、それ?昨日調合してみたんだけど、どうかな。疲れが取れるし集中力もつくから午後の
授業にいい結果が出るよ」
ハデスはにこにこしながらお茶の説明をしている。それなりに自信作だったのだろう。そのせいで、
余計なことまで口に出してしまったのが後々の出来事に繋がった。
「才崎先生も昨日飲んだから、今日はとても元気だしね」
「え、マジかよ?」
素っ頓狂な声を出したのは美作だけで、アシタバと藤は何とも言えない微妙な顔になったのだが
それは美作にもハデスにも気付かれなかったらしい。
「それって、媚薬か何かの失敗作で、仕方ないからお茶にしただけじゃね?」
教室に戻ってから美作がぽろっと漏らした先程のことを、教室のどこから聞きつけたのか物凄い
勢いで安田が食いついてきた。
「誰でもお前と同じにするなよ」
美作の側で頷きながら話を聞いていた本好が、相変わらず冷静に辛辣な言葉を吐く。しかしそれ
ぐらいで挫けないのがエロリストたるものだ。
「だってよ、せっかくみのりちゃんに飲ませるんなら、只のお茶じゃ勿体ないじゃん。もっとこうさ…
やらしい気分になるようなモンとか」
「飲ませたのが先生で良かったと思うよ」
だが、他のクラスの体育の授業の為にたまたま廊下を通りかかった美徳が、そんな教室の騒ぎ
を偶然聞きつけてしまった。
「媚薬…って?」

16 :
急に抑えられなくなった。
体育の授業が終わってからすぐに職員用トイレに駆け込んだ美徳は、ずっと堪えていた身体の
疼きを少しでも癒す為に知る限りの性感帯を探り始めた。
「んっ…」
声が漏れないようにジャージの襟を噛みながら、はちきれそうな乳房を揉み、ショーツの下で熱を
帯び始めて刺激を求める核を擦り上げた。以前ならはしたないことだからと自分ですることなど滅多
になかったのに、快感を知って身体も心も満たされてからというもの、もう制御することなど出来そう
にもない。
「ぅん、ん…っ」
安田が言っていたことが本当でも嘘でも、それはもうどうでも良かった。ハデスと媚薬という二つの
単語を聞いただけで頭の中に妄想が渦巻き、欲情のスイッチが入る。そんな簡単に反応してしまう
自分にまだ戸惑っているのだが、これだけはどうしようもない。
あの微笑、あの優しく探られる手、何もかもが今すぐに欲しかった。
「あ…逸人さん」
もうこうなってしまった以上は、早く抱かれたかった。自分でその場しのぎの慰みを与えているだけ
では全然足りない。
放課後の保健室は、昨日と同じで穏やかな空気が流れている。主であるハデスの存在が静謐
な雰囲気を醸しているのだろう。
「ああ、才崎先生」
保健室に入った途端、ハデスが笑いかける。ずっと疼きを抑えたままだった美徳は押し黙って
ソファーに座った。一言でも声を漏らしたら、何かとんでもない淫らなことを言いそうで怖かった
のだ。
「今日は少し肌寒いですね、どうぞ」
昨日と同じように、淹れたばかりのお茶がテーブルに置かれた。中身も昨日飲んだものと同じ
なのだろう。いつもよりも少し苦い、安田が媚薬と言っていたお茶だ。
「…ありがとう、ございます」
やっとのことで声を振り絞りながら、美徳は湯呑みを手に取ると湯気の立つ熱いお茶を少しずつ
飲んだ。やはり苦い。けれど恋という蜘蛛の糸に絡め取られている美徳にとっては苦味すら甘露
に感じるほどだった。
やがて、全てを飲み尽くしてしまってからゆっくりと立ち上がった。
「才崎先生?」
いつもの様子とはまるで違う美徳に、ハデスはいぶかしむように見上げてくる。

17 :
「逸人さん、私を癒して下さい」
「え…?」
返事を聞かないうちに隣に座るなり、抱きつく。
普段はほとんど感じることのない髪や肌の匂いをこうしてダイレクトに感じ取りたいと思ってしまう
のは、異常なほど性感が高まっているせいだろう。こうして間近にいるだけでも心臓が鼓動を早め
てしまうのだ。感覚や身体の隅々にまで馴染みきったこの男の全てで、今も内部から絶え間なく
突き上げようとしている淫らな惑動を鎮めて欲しかった。
「ごめんなさい、でも私…ずっと我慢していて、もう抑えられないんです」
「美徳さん」
「はしたないのは、分かっています。でも…」
以前にも似たようなことがあっただけに、とんでもなく淫らな女だと思われるのは嫌だったのだが、
他の手段など考えつかなかった。思わず抱きつく腕に力が入る。
「そんなに苦しいのですか?」
耳元で優しい声がした。
「ええ、苦しい…苦しくて仕方がないのです」
「僕がそうさせてしまったのですね、では」
「あ…」
反応する前に胸元に手が入ってきた。慌ててジャージを下まで引き下げ、触りやすいようにきつい
ブラに締め付けられている乳房を開放した。肌触りを楽しむように探ってくる手の感触にほっと安堵
しながらも、まっすぐに見つめてくる視線をそのまま見返した。
「前のこともあるし、ここでするのは抵抗がある…とは思いますけど、私もう…」
「構いませんよ、美徳さん。具合の悪い人をきちんと診るのは僕の役目ですから。それに」
そこでわずかに、ハデスが言葉を濁して美徳の手を股間に導いた。触れさせたそこには、確かに
熱く脈動するものが布地の下にある。
「そういう美徳さんを見ていると、僕も堪らないんです」
言葉が終わらないうちに乳房を彷徨っていた手が力を強め、ぐっと抱き寄せられた。
「あぁ…逸人さんたら…」
ハデスもまた自分と同じように興奮していることで、より昂りが増して目眩がしそうだった。望ま
れるままに身を添わせれば、乱れた髪を掻き上げられて顔が一層近付いてくる。

18 :
「…逸人さん、わがままを聞いて下さって嬉しいですわ…」
「お気になさらず。僕もあなたとこうして過ごしたかったんです」
すっかり見慣れて怖いとも思わなくなった顔が、恥ずかしそうに笑む。こういう純粋なところに心
惹かれてここまで来たのだ。
舌先で唇を撫でられながら、昂りに突き上げられるように瞼を閉じてその先を促す。
その途端、渡り廊下の方向で何か物音が聞こえた。
「あっ…」
急に現実に引き戻されて、美徳は咄嗟に露出した胸元を隠した。入口のドアには鍵すらかけて
いないのだ。生徒の誰かが入って来ないとも限らない。
「ここにいて下さい」
ハデスは一旦立ち上がると異変があったのかと様子を伺いに行った。そして外を一通り眺めて
からドアを閉めて戻って来る。
「特に何事もなかったようです」
「そう、ですか…」
だが、美徳はまだ胸元を隠したままだ。それまで勢いと情欲に任せていただけに、出鼻を挫か
れてしまった形になってはそう簡単には戻れない。
「私…」
ためらうような声に、ハデスの腕が伸びて抱き締められた。
「何を恐れているんですか?」
「えっ?」
「以前、約束をしましたね。僕があなたを守りますから、何も心配はいりません」
「逸人さん」
咄嗟に感じた不安を見透かすように、ハデスの柔らかい声が現実の前に萎縮しかけていた美徳
の心を癒した。
そうだ、何も恐れることはない。この男との関係は決して世間に顔向け出来ない性質のものでは
ない、ただ生徒たちを指導するという職業柄もあって、軽はずみなことは必要以上に自戒している
部分がある。ただそれだけのことだ。
「私、あなたに守られてもいいんですね…」
「もちろんですよ、美徳さん。むしろもっと頼って欲しいぐらいです」
その言葉で、収まりかけていた心身の熱と昂りが瞬時にして復活した。確かに立場上付随する
諸々のことは教育者の一人として考慮しなければならないとしても、過剰に恐れたりする必要は
何もないのだと。

19 :
カーテンが引かれ、壁際のベッドに寝かされた美徳はようやく表情を緩めることが出来た。その
肌の上を長い指が這う。
「どこの具合が悪いんですか?」
「あ…む、胸がさっきから…それに、ここがもっと」
身体から湧き上がる疼きに従うように、ハデスの手を取って呼吸で上下している乳房やまだ露出
していない下肢に触れさせた。この身体がこれほどまでに欲しがっていることを知って貰いたい。
もうまだるっこしいことは一切抜きで感じ合いたい。それだけしか考えられなかった。
「分かりました、美徳さん」
別に焦らしているつもりはないのだろう。すぐにベッドに乗り、舌を絡めてきながら両手で乳房を
掴んできた。つられて一気に性感が高まった。
「んン…」
呼吸すら危ういほど口腔内をくまなく犯され、頭の芯がぼんやりとしながらも美徳は必に腕を
回して愛しい男を掻き抱いた。もっと欲しい、もっとその目で見て、その手で触って、全てで感じ
取って欲しいと言葉なきまま訴え続けていた。
「ぁ…」
やがて、思う存分絡め合っていた舌が細い糸を引いて離れていく。思わず不満そうな声が漏れて
しまったが、恥じ入る余裕などもうなかった。その舌が今度は乳首を撫で、軽く歯で噛んできた
からだ。
「ぅあ、そ、んなぁ…」
「嫌、ですか?」
乳房の感触を確かめるように揉んでいた手の片方が離れて、ジャージの上から股間を探った。
「…あ…いえ、もっと、して下さい…」
中心で疼いている箇所 を的確に刺激してくる指先が、更に美徳を煽る。少しずつ脱がされてい
くジャージがベッドから滑り落ちた。
「美徳さん、綺麗ですよ。とても…」
ショーツ一枚だけになった姿を見下ろして、ハデスは満足そうに笑った。
「それは…逸人さんの為ですわ…あなたに恋をしたから私はこんな風に…」
「…嬉しいです」
見交わした視線にねっとりと艶かしい色がよぎった。ぴったりと眼差しを合わせてお互いに無言
のまま、美徳の足から最後の一枚が抜かれる。

20 :
「あぁ…」
両手で口を押さえ、堪えようとしても声が漏れる。慣らす必要もないほどそこはびっしょりと濡れて
いるのが自分でも分かるのに、それでも少しでも傷つけまいとしてハデスはその指先で念入りに
膣内を探り尽くしていた。
そんなことよりも、早く欲しい。指などではなくもっと確実に内部を満たすもので好き放題に突き
上げて、メチャクチャにして欲しかった。
「逸人、さん…早く…っ」
「…そうですね、そろそろ…」
もう少しも我慢出来ず、腰をもじもじさせながら身をくねらせてねだる美徳の誘いに応じるように、
ハデスは一度身を乗り出して唇にキスをしてきた。
「お好きなだけ、差し上げます」
「…下さい、早く…」
堪りかねて叫ぶように声を絞り上げた途端、ぬるついた膣口に硬い圧迫感を感じた。溢れる愛液
を先端に絡めるようにしながら、ようやく待ち望んだものが浸入してくる。
「はぁうう…っ」
二つの身体が一つになる感覚に支配されゆく美徳の意識にあったのは、もう歓喜のみだった。
長い間汚されざる領域だった最も神聖な箇所、その奥の奥までを侵略されながらもこうして無上
の悦びを感じることが出来るのはこの男がそれだけ信頼に足る、この心を預けるに相応しい相手
だからなのだろう。
でなければ、こんなことはとても出来ない。考えることすらも。
「あっ…ん、い…逸人、さん…もっと、もっと、ぉ…」
情欲のままに激しく突き上げられる度に、細い爪先がシーツを蹴る。愛される女としての悦びを
甘受しきっている美徳の表情は幸せそうに蕩けている。こんな時にただ一人にだけ見せる最高
の顔だった。
「美徳さん…」
ずっと絡めていた指が解かれ、背骨がしなるほど硬く抱き締められて更に深く突き立てられた。
凄まじい刺激に予期すらしていなかった絶頂が突然やって来る。
「やああっ…」
目を見開きながら、美徳は先に達してしまった。

21 :
「くっ…」
達した途端に強く引き絞られる膣内の誘惑から逃れようとしたのだろう。一瞬だけ早く一物を引き
抜いたハデスだったが、先端から勢い良く放たれたものが乳房から腹部までを濡らしていった。
「あっ、済みません…」
「…いえ、お気になさらず…」
息を弾ませながらも、美徳は白濁したものを指先で拭った。心底済まなそうにしているハデスを
見るのは本意ではない。今の美徳にとっては、こんなことぐらい何でもないことなのだ。
それよりも、ハデスとの時間がこれで終わりなのかと思うと何となく呆気なくて名残惜しい。出来
ればもう一度抱かれたかった。
と、唐突に誰かが室内に入ってくる物音がした。
「何だよ、誰もいねーのかよ」
声からして、美作のようだ。例の三人がやって来たのだろう。ばれてはいけないと、美徳は慌てて
シーツを被った。
「どうしたの、君たち」
ハデスは何事もなかったようにカーテンの外へ出て行った。
「それがさ、傑作でさー」
三人はいつもの調子で今日の様子などをてんでに話し始めた。話の腰を折らずその合間を見計
らうように、ハデスが静かに制している声がする。
「ごめんね、今日は具合が悪くて寝ている子がいるから、また明日」
「なーんだ、そっか。じゃあ帰っか」
「そうだね。じゃあ先生、また明日」
特に疑問も持たずに、三人は帰って行ったようだ。再びベッドの側に戻って来たハデスは決まり
が悪そうに笑っている。
「…ここにしておいて良かったですね、危ないところでした」
「え、え…本当に…」
あれだけではまだ完全には満足しきっていない身体が、まだ疼いている。美徳はベッドから降り
るとハデスの足元に蹲った。
「美徳さん…?」
「ここにいれば、すぐに邪魔が入らないのなら…続きをしましょう。ね…?」
すかさずスラックスのファスナーを開いて、先程まで膣内を存分に支配していたものを取り出す。
まだ時間はそれほど経っていない上にハデスも満足はしていなかったのだろう。それはまだ充分
な硬さを保っていた。
「逸人さん…あなたもなのですね…嬉しい」
硬い幹に誘うように舌を這わせながら、上目遣いで愛しい男を見た。仕方ないですねと苦笑して
髪を撫でてくる手の感触にうっとりとしてしまう。
手の中でまた熱く脈を打ち始めた一物を愛しく擦って、頬を寄せる。すぐにでも始まるだろう次の
交わりがもう待ちきれなかった。
「また、愉しみましょう。これは私のものなのですから」




22 :
IDがDQ児かよ…orz

23 :
超GJです!
みのりちゃんたまらんよ
ハデスうらやましすぎる…
>>11
自分実験書いた者だけど
あんなのでよければどうぞ使ってやってください
gdgdなのに光栄です

24 :
どこからGJしていいかも解らないほどの神々の宴……!

25 :
雀の盛りマンむにむに

26 :
許可もらったので投下
実験本好君の話です
・藤花
・花ちゃんが可哀想
・同じクラスの女子がひどい
エロ入れたら強引な展開になりました
ドロドロしたのが見たくない方は見ないほうが無難かも

27 :
なんだかつまんないなぁ。修学旅行ってもっと楽しいのかと思ってた。
こんなふうに考えてしまうことには理由があった。
まず、旅館の部屋割りを決める日に学校を休んでいたせいで、グループを勝手に決められていたのだ。
そのことにより、普段仲良くしている友達とは別の部屋になってしまった。
おまけに、同室の人たちとは一度も話したことがない。
さらに、バスの座席は出席番号順で座るから、藤くんとは隣のはずだったのに
部屋割りで同室になった女の子に強引に席を替えられて、離れた席に座ることになった。
彼女が藤くんに恋愛感情を抱いているのは明らかだ。
そのことを分かっているのに断れなかった自分の気弱さに腹が立つ。どうしていつもこうなのか。
ハイテンションな女の子達の声が耳に障る。
きっと、私が隣だったらあんな風に盛り上がらないんだろうな。
そんなことを考えて、自己嫌悪に陥った。
離れた席でため息をつく。
隣の人は、後ろに仲のいい子がいるらしく、その子とばかり喋っている。
――退屈。もう、寝ちゃおう。
窓際にもたれ、ゆっくりと瞼を下ろす。
昨日、あまり眠れなかったこともあり、意識を手放すのはすぐだった。

どれくらい経っただろうか。
「…おい…花巻ー?……起きねーな」
肩を揺すられる感覚がある。
誰よ、せっかく気持ち良く寝てたのに。
意地でも起きないんだから!
覚醒しようとする意識を、無理矢理眠らせようとする。
しかし、次に聞こえてきた台詞に、決意も虚しく目を開いてしまった。
「なんで狸寝入りしてんだよ。俺だよ。藤」
慌てて目を開くと、本当に藤くんがいる。
「えぇえぇぇー!?何で…」
寝呆けた頭で必に思考を巡らせるが答えが浮かばない。
「あ、わかった!これは夢ね!そうよ、夢なのよ美玖!そうに違いないわ!」
「お前、それ面白い」
クスリと笑い、欠伸を一つ。その後に
「じゃ、俺寝るから」
そう言って、藤くんは目を瞑った。
「藤くん…?」
話し掛けてみるが、返事はない。本当に寝てしまったみたいだ。
「あああぁあ!どうしよう!」
あの日以来、藤くんは何事も無かったかのように接してくる。
しかし、前よりも少し気に掛けてくれているような気がするのだ。自惚れかもしれないが。
爆発しそうになる頭を一度冷やしてみる。
考え方を変えるのよ美玖!こんなこと、夢でもないとありえないわ!
なら、堂々と寝顔を見てもいいじゃない!
夢だと決め付けた途端に、ちょっぴりオープンになる感情。
「やっぱりかっこいいな…」
しかし、あまりにも気持ち良さそうに寝られると、こちらまでウトウトしてくる。
夢で眠るっていうのも変な話だけど…
意識の片隅で呟くが早いか、すぐに眠りの世界に引きずりこまれた。

28 :
「ちょっと、なんで藤くん、花巻さんの隣に行くのよ」
「ありえなーい!せっかく席替わったのに。花巻さんのどこがいいの?」
「最近藤くんと仲良いよね、花巻さん」
「ムカつく。あの子調子乗りすぎ」
「ちょっとわからせてあげないとね…」
「おいおい、ちょっとやべぇんじゃねえの?」
前の席から聞こえる、不穏な会話(完全な逆恨み)に気付き、美っちゃんはこっそりと俺に話し掛けた。
「美っちゃん。女というのは怖いものなんだよ」
「あれは藤がいけないよな。付き合ってるならまだしもよ」
俺の経験則はあえなくスルーされた。さすが美っちゃん!
女の悪口を言わないなんて器が大きすぎるよね。素晴らしいことだと思います。
「…美っちゃん。例え花巻さんでも何してるかわかったもんじゃないよ」
俺は保健室の二人の情事を思い出した。
薬のせいではあるのだが、二人の距離はかなり近くなったように思う。
しかし、美っちゃんが詳しいことを何も知らないとは。
藤のやつ、美っちゃんに頼らないなんて馬鹿もいいところだよね。愚か者だと思います。
俺は藤と花巻さんのことなんて本当に興味ないんだけど、
美っちゃんに心配かけるのはいただけない。
それに、花巻さんには少し負い目があるし。
解毒剤は渡したけど、それで万事解決ってわけにもいかなかった。
俺と安田のせいであの二人は急接近して、藤は花巻さんを今まで以上に気にするようになった。
それは、俺からみてもはっきりと断言できる事実。
でも、その態度に嫉妬した藤のファンの子達に花巻さんは疎まれてる。
あまりよろしくない状況だよね。すべての原因は残念なイケメンにあります。
あいつは自分の価値をわかってない。
確かに俺からしたら、藤なんて無価値にも程があるんだけど
ファンの人からしたら、それはもう、神様みたいなものだよね。
それをいきなり取られちゃうんだもん。嫉妬に狂うに決まってます。
そのことは、俺自身も病魔に罹ったことで体感してるし。
本当に、嫉妬という感情は恐ろしいよね。
「ウチら花巻さんと同じ部屋じゃん?だからぁ……」「いいじゃんそれ……だからさ……だよね」
「もっとひどい目に遭ってもいいくらいだよね」
「ウケるーなんかかわいそー」
肝心な部分は聞こえないが、花巻さんと同室であることを利用して何かするようだ。
さて。どうしたものか。
藤は自分の行動がどれだけ他人に影響を与えているかもわからない能天気野郎だし
花巻さんは花巻さんで、何されても泣き寝入りしそうだし。
いや、別に俺はそれでもいいんだけど、美っちゃんが黙ってないと思う。
それに、俺が原因で花巻さんがひどい目にあうのは、すごく胸くそ悪い。
「確か、ハデス先生は来てるんだよね?」
「おう。一番前のアシタバの隣の席のはずだぜ。」
彼女達が何をするにしても、ハデス先生が旅行中についててくれるなら最悪の事態は免れられるだろう。
「ありがとう美っちゃん。手は回しておくよ」
「本好が味方なら怖いもの無しだな!任せたぞ!」
「ラジャー」

29 :
「ちょっと、なんで藤くん、花巻さんの隣に行くのよ」
「ありえなーい!せっかく席替わったのに。花巻さんのどこがいいの?」
「最近藤くんと仲良いよね、花巻さん」
「ムカつく。あの子調子乗りすぎ」
「ちょっとわからせてあげないとね…」
「おいおい、ちょっとやべぇんじゃねえの?」
前の席から聞こえる、不穏な会話(完全な逆恨み)に気付き、美っちゃんはこっそりと俺に話し掛けた。
「美っちゃん。女というのは怖いものなんだよ」
「あれは藤がいけないよな。付き合ってるならまだしもよ」
俺の経験則はあえなくスルーされた。さすが美っちゃん!
女の悪口を言わないなんて器が大きすぎるよね。素晴らしいことだと思います。
「…美っちゃん。例え花巻さんでも何してるかわかったもんじゃないよ」
俺は保健室の二人の情事を思い出した。
薬のせいではあるのだが、二人の距離はかなり近くなったように思う。
しかし、美っちゃんが詳しいことを何も知らないとは。
藤のやつ、美っちゃんに頼らないなんて馬鹿もいいところだよね。愚か者だと思います。
俺は藤と花巻さんのことなんて本当に興味ないんだけど、
美っちゃんに心配かけるのはいただけない。
それに、花巻さんには少し負い目があるし。
解毒剤は渡したけど、それで万事解決ってわけにもいかなかった。
俺と安田のせいであの二人は急接近して、藤は花巻さんを今まで以上に気にするようになった。
それは、俺からみてもはっきりと断言できる事実。
でも、その態度に嫉妬した藤のファンの子達に花巻さんは疎まれてる。
あまりよろしくない状況だよね。すべての原因は残念なイケメンにあります。
あいつは自分の価値をわかってない。
確かに俺からしたら、藤なんて無価値にも程があるんだけど
ファンの人からしたら、それはもう、神様みたいなものだよね。
それをいきなり取られちゃうんだもん。嫉妬に狂うに決まってます。
そのことは、俺自身も病魔に罹ったことで体感してるし。
本当に、嫉妬という感情は恐ろしいよね。
「ウチら花巻さんと同じ部屋じゃん?だからぁ……」
「いいじゃんそれ……だからさ……だよね」
「もっとひどい目に遭ってもいいくらいだよね」
「ウケるーなんかかわいそー」
肝心な部分は聞こえないが、花巻さんと同室であることを利用して何かするようだ。
さて。どうしたものか。
藤は自分の行動がどれだけ他人に影響を与えているかもわからない能天気野郎だし
花巻さんは花巻さんで、何されても泣き寝入りしそうだし。
いや、別に俺はそれでもいいんだけど、美っちゃんが黙ってないと思う。
それに、俺が原因で花巻さんがひどい目にあうのは、すごく胸くそ悪い。
「確か、ハデス先生は来てるんだよね?」
「おう。一番前のアシタバの隣の席のはずだぜ。」
彼女達が何をするにしても、ハデス先生が旅行中についててくれるなら最悪の事態は免れられるだろう。
「ありがとう美っちゃん。手は回しておくよ」
「本好が味方なら怖いもの無しだな!任せたぞ!」
「ラジャー」

30 :
目的地に着いたときに目を覚ますと、これは夢じゃないんだということに気付いた。
恥ずかしさに身体中が熱くなる。
藤くんがわざわざ隣の席に来てくれたなんて信じられないことだけど、すごく嬉しい。
これは来世もその次の運も使っちゃったな…
でも、いいや。
そんなことを思いながら研修を終えた。
「人数の都合により、入浴はクラスごとに別れてしてもらいます。
入浴の順番は、厳正なるあみだくじの結果、B→C→Aとなりました
入浴時間は厳守。順番を間違えないようにね」
才崎先生はそう言って、女子だけ残るように言って解散させた。
「今日が生理の子は入浴する場所が別のところになるから気をつけてね。
なにかわからないことがあれば先生に聞きにきてちょうだい」
「いけない。私生理だ…」
隣で仲良しの子がため息をもらす。
「えー、そんなぁ」
「花ちゃんごめんね。明日には終わる予定だから!」
同室の子達に私は良く思われていない。彼女たちは藤くんが好きなのだ。
確かに、バスでのことは嬉しかった。けど、同時に言い様のない不安を掻き立てる。
胸騒ぎが起きたけれども何が起こるかはわからない。
友達と入浴中とはいえ離れてしまうことで、同時に心細くなる。
「まぁ、大丈夫だよね」
そうやって自分に言い聞かせることで不安を拭おうとしたが、さほど効果はなかった。
あっというまに入浴の時間が来た。
部屋のある3階から1階の大浴場まで降りなければならない。
何かをされるかもしれないという不安に苛まれる。
しかし、何が起きるでもなく、入浴は終わった。
「はぁ、取り越し苦労かぁ」そう呟いた時だった。
「あれ?私の服が無い…」
確かにここに置いたはずなのに。
念のため、脱衣所内をくまなく探してみるが、それでも見つからない。
そうこうしているうちにみんな帰ってしまい、脱衣場に残るのは、残すところ数人となってしまった。
「あれぇ?花巻さんどうしたの?」
同室の、それもバスの席を替わった子に話し掛けられる。
「あの…着替えがなくて…」
「なんでだろうねぇ?アタシが花巻さんの着替え、取ってきてあげる」
「いいの?ありがとう!」
とりあえず一安心。
かに思えたのだが、20分経っても30分経っても、さらには1時間経っても帰ってこない。
バスタオルで身体を隠して通路を覗く。
大浴場から部屋まではかなり距離がある。
人と会う可能性の低い階段を使ったとしても、きっと廊下で誰かに会ってしまうだろう。
もし誰にも会わずに部屋にたどり着いたとして、彼女達が入れてくれるだろうか?
ケータイも部屋に置いてきてしまった。
「もぉー!!どうしてこうなっちゃうのよー!!」
叫んでみるが、一向に誰かが来る気配はない。
おそらく大浴場は常伏中の修学旅行団が貸し切っているのだろう。
誰も助けに来てくれない。
こうして、悪い予感は的中してしまったのだった。

31 :
入浴も終わり、俺たちはこっそり持ってきたゲームで通信プレイをして遊んでいた。
俺たちと言っても、ゲームをしているのは美っちゃんと俺とアシタバ君だけで
安田は『夜這いに行って来る!』と言って出ていったっきり戻ってこないし、藤はケータイ片手に悶々としている。
さすがに見兼ねた美っちゃんが「どうしたんだよ。仲間に入れなくて悔しいのか?」と話し掛けた。
さすが美っちゃん!こんな残念なイケメンを仲間に入れてやろうなんて、懐が深すぎるよね。なかなか真似できることじゃないと思います。
「ちげーよデブ!」
藤は、あろうことか美っちゃんの好意を蹴った。何様なんだよ美っちゃんいないと存在価値無いくせに。
よっぽどそう言ってやろうかと思ったが、たしかに藤の様子はおかしい。ケータイ片手に悩むなんて、藤らしくない。
やつなら、そんなことする暇があるなら寝るだろう。
「あ。わかった。花巻さんでしょ」
思ったことを口にだすと、藤はまたもや噛み付いた。
「…ちげーよ!バッカじゃねえの!?」
「何、その間」
これは花巻さんだな。何かあったんだぁ。美っちゃんも同じことを考えたようで、藤を問い詰める。
状況が飲み込めないアシタバ君は、ただ黙って話を聞いていた。
「花巻のメールがおかしい」
とうとう観念したのか、藤がぼそりと言う。美っちゃんがプルプルと震えながら返事をした。
「…お前、そんなことで悩むキャラじゃねーよな」
笑わないなんて美っちゃん優しすぎるよ。俺は本気で爆笑したけどね。アシタバ君が引くくらい。
「だから言いたくなかったんだよ!」
藤は本気で恥ずかしがっている。これはレアだ。ケータイで写メしてクラス中にばらまいてやろうかな。
「あいつ、トロいからさ、メールの返信はいつも遅いんだよ。それにハートマークなんて使われたことないし」
確かに、花巻さんは性格上ハートマークなんて使いそうにない。どちらかといえば汗マークを大量に使ってそうなイメージだ。
しかしあの鈍感王子がこんなことに気付くとは…
さすが、美っちゃんの近くにいたことはあるよね。
優しい美っちゃんが、イマイチついてこれていないアシタバくんに状況を説明していると、安田が帰ってきた。
「鏑木、蝶間林、蜂谷、日暮のパンツは拝めたんだけど、花巻が見つからなかった…
部屋まで行ったけど居なかったし、全室覗いたんだけどな!」
花巻さんが見つからないという状況。
バスの中での不穏な会話が頭を掠める。
「同室の子達に良く思われてないんだ。はめられたのかもね」
俺がそういうと、藤の顔が一気に青ざめる。
「嫉妬は怖いよ。病魔かもしれない」
俺がそういうと、アシタバ君は『ハデス先生を呼んでくるよ』と言って部屋を出ていった。
「安田はもう一度女子の部屋に夜這いに行ってきて。俺は男子の部屋を調べる。」
「俺はアシタバと合流して花巻の部屋に行く。それでいいか?」
「さすが美っちゃんだ。ほら、急げよ安田」
部屋を出ると、藤が追いかけてきた。
「おい、俺は?」
藤が俺に指示を求めるなんて、どういう風の吹き回しだよ。
でも、こいつを女子の部屋に行かせると逆効果だ。俺も藤と行動するのは嫌だし。
「お前は大浴場だよ」
入浴の時間は終わっている。藤には当たり障りのないところをやらせておくことにした。
「なんでだよ!もっと他に居そうなとこあるだろ!」
本当にこいつは分かってないよ。呆れちゃうよね。
「よく考えろよ。今回のことの原因の一部はお前にもあるんだ」
「はあ?意味わかんねぇよ」
「時間が無いから教えてやるよ。お前の花巻さんに対する態度に嫉妬した女子が、彼女を嵌めたんだよ」
心当たりがあるのか、藤の表情には後悔が見受けられた。
「それに大浴場もそれほど的外れでもないよ。
風呂はA組が一番最後なんだから、そこにいる可能性だって無いわけではない」
「…本好、お前」
「こうなってしまった責任の一端は俺にもあるんだ。しっかりやれよバカ王子」俺がそういうと、藤は階段の方へ走っていった。

32 :
脱衣場内の時計を見ると、消灯時間の23時が迫っている。
湯冷めして体温の下がった身体をあたためるためにバスタオルにくるまるが、あまり効果はない。
消灯時間を過ぎればこっそり部屋にもどれるはずだ。
中に入れてもらえなければ、友達の部屋に入れてもらって一晩を過ごせばいい。
ぶるぶると震える身体をさすりながら自分を鼓舞する。
片隅にある脆さを隠すように。
大丈夫よ美玖!別にぬわけじゃないんだから!

「おーい!誰かいる?」
男の人の声が聞こえた。
聞き間違えるはずもない、藤くんの声。
「藤くん…!」
そう叫べばこちらに気付いて脱衣場に入ってきてくれた。
「大丈夫か?」
私の格好に驚いたようだが、なりふりかまわず抱きつく私を抱き留めてくれる。
「藤くん…私、悔しいよ…」
泣きじゃくる私をあやすように背中を撫でてくれる。
「もう大丈夫だから」
藤くんの体温が、冷えた身体に流れ込んでくる。
恐怖を吸い取ってくれる、不思議な声。

私が落ち着いてきた頃、藤くんはポツリポツリと話しだした。
「ごめん、花巻。責任は俺にある」
「そんなこと、ないよ」
「俺、お前に甘えてたよ。
だから、今からケリをつける」
藤くんは私を見つめた。
こんなに真剣な表情の彼を、見たことが無い。
「花巻、俺、お前の事が好きだ」
せっかくおさまってたのに、また涙腺が崩壊する。
「私も…だよ…ありがとうっ…」
藤くんは、初めて唇にキスをしてくれた。

33 :
「していい?」
私が頷くと藤くんは、身体中のいろんなところにキスを落とした。
おでこ、瞼、頬、鼻、唇、首、鎖骨…
だんだんと位置が下がっていくにつれて、安心感が身体を覆う。
胸の先にキスをされると、ぴくんと身体が跳ねてしまう。
「やっぱり、ここが好き?」
キスから徐々に舐める愛撫へと変わっていく。
そのたびに思考を埋め尽くしていく白い霧。
「ふぁあ…んぁ…」
思わず声が洩れると、藤くんは、可愛い、とだけ呟いて頭を撫でてくれた。
胸を舐めながらお腹や脇腹をすべすべとさする暖かい手。
特におへその辺りを撫でられると、一瞬力が抜けて声が出てしまう。
「ひゃっ…んぅ…」
手の動きは少しずつ下降していき、太ももの内側に到達した。
舐められる箇所が、胸から太ももに変わる。
先ほどよりもビクビクと跳ねる身体。持て余した熱を、どこに出せばいいのかすらもわからない。
「どう?続けてもいい?」過去2回とも気絶しているからだと思う。藤くんが最終確認をしてきた。
「うん…はやく…」
藤くんを見つめると、決意したかのように、舌を秘所に這わせる。
「ひゃあぁあん!」
電流が駆け抜けるような快感にどうしていいのかわからない。
時々甘噛みされる度に、藤くんの頭を押さえ付けてしまう。
「あはは。俺、窒息しちゃうかも」
藤くんは笑いながらそう言ってたけど、私にはその言葉を処理するだけの余裕が無かった。
「花巻、いれるぞ」
藤くんが熱をあてがう。
そして、ゆっくりと私の中に入ってきた。
「痛い…!痛いよぉ」
思わずそう言ってしまうと、藤くんは私に優しいキスをして頭を撫でる。
「ダメそうなら今日は止めとく。無理するな」
「嫌ぁ!やめないで…」
藤くんに抱きつくと「無理そうならすぐ言えよ」と耳元で囁いた。
「はい、息吸って」
いきなりそういわれて、訳も分からず息を吸う。
「息吐いてー」
「はぁー…」
ゆっくりと息を吐くと、そのタイミングに合わせるかのように、熱いものが奥に進む。
それを3回ほど繰り返した時には、藤くんは私のなかにぴったりと収まっていた。
「やっと、一つになれた」
藤くんはそういうと、ぎゅっとだきしめてくれる。
私も抱き締め返すと、深い深い口付けの雨が降ってきた。

34 :
ハデス先生によると、やっぱり花巻さんと同室の彼女たちからは病魔の気配がするらしい。
早速退治してくれたらしくて、彼女達は泣きながら事情を説明していた。
しかし、藤のどこがいいんだろう。
あいつ、ゲラゲラ笑うし、食事中下品なこと言うし、暇さえあれば寝てるし。さらに口は悪い。イケメンのすることじゃないよね。
見た目はイケメンかもしれないけど、中身はとんでもないブサイクだよ。
それにくらべて美っちゃんは、男らしく豪快に笑うし、出されたものは何があっても完食するし良く眠るし、口調も男らしく荒々しい。素晴らしいよね。
ちなみに藤とやってること同じじゃん、と思ったひとは美っちゃんへの愛が足りないよ。修行して出なおしてこないと、俺にボロカスに罵倒されるから気をつけてね。
俺たちは花巻さんの着替えを受け取り、脱衣場に向かった。
ハデス先生は、他の部屋からも病魔の気配がすると言って、そっちに行ってしまった。
「怖いね、女子って」
アシタバ君が発言する。
「藤なんかのどこがいいんだろうね。性格最悪じゃん」
「本好くん…」
脱衣場につくと、藤と花巻さんの声が聞こえてきた。
「…動くぞ」
「うん……ぁ」
「ヤバい花巻……俺…ッ」
「痛ぁ、ぁ、ん」
「うっ……」
何で俺っていつもこのパターンなんたろう。
なんか俺、あの二人を覗く親みたいじゃん。
「本好くん…これは…」
アシタバ君が顔を真っ赤にそめて言った。おそらくなにをしているか、彼にもピンと来たのだろう。
「アシタバくん。ここは覗かないでおこうよ」
「いや、うん。わかってるよ」
俺たちは、脱衣場の外に花巻さんの着替えを放置して立ち去った。
「なんか、人間不信になりそうだ…」
アシタバ君の一言はやけに心に響いた。

「さぁ、やっと捕まえたよ。」
「くっ!やっぱりアンタが俺の行く手を阻むんだな…」
「君も懲りないね、安田くん」
ハデスはじりじりと安田に迫る。
「さぁ、日暮さんを離すんだ」
「嫌だよ!鏑木は強いし、蜂谷も凶暴だし、蝶間林は容赦が無い!手籠めにできそうなのは花巻か日暮だけだ!」
「どうしても話さないというのなら」
「ぎゃぁああああああ!」
その日から、ハデスの教育方針は、安田に対してのみムチ10割になったのだという。



35 :
>>29誤爆です。
初書きなのでお見苦しい箇所、多いと思いますがご容赦ください。
ご拝読ありがとうございました。

36 :
GJ!GJ!GJ!!
萌えたしうまいよ
本好の嫉妬病魔経験からめるのとか
実は安田と日暮好きだからオチも俺得w

37 :
GJ!
女ってホントこんな感じで嫌なところがあるね。
でも、最後に花巻が幸せになれて良かった。本好のキャラも生かされていて読み応えが
あった。
ところで、突然アフォな話が降ってきたので書いた。
今夜はハデみの・赤ずきんちゃんパロ。明日は藤花で何か書けるかな。

38 :
昔々、常伏町に美徳という名を持つ25歳の巨乳美女がおりました。
周囲の子供たちには何故か本名ではなく「みのりちゃん」と呼ばれていましたが、この歳でそれは
ちょっと痛いかも知れないと思い始めているところです。
さてそんなある日。
みのりちゃんは町内運動会でビーチバレーをするというので赤いビキニを着せられましたが、どう
やら騙されたようです。
「人を騙すなんて失礼な!こんなものはもう着替えますからね!」
不当なことには我慢ならないと烈火の如く怒り狂ったみのりちゃんでしたが、とりあえずの代替案
が出て来ました。それが森に住むという謎のお婆さんのお見舞いだったのです。一体どこがどう
謎なのかはほとんど聞かされませんでしたが、体力だけは有り余っているのであっさりOKしたの
でした。
「じゃあこれ、お願いしますね」
やけにびくびくしているM田(仮称)が渡してきたバスケットには、クッキーらしきものが詰め込ま
れていました。
「何ですか?これは」
「ええっと…お婆さんが今ハマっているという、モンブランのティーコンフェクトです…」
あまりにも出来過ぎているこの流れが良く分かりませんでしたが、病気のお婆さんのお見舞いと
いうシチュエーションは悪くありません。何より、良いことをしているという気分にはなれます。
「じゃあ…お気をつけて」
そんな訳で、M田(仮称)に見送られてみのりちゃんはバスケットを持って森に向かいました。
「あ、森には怖い狼さんがいるって…あー…行っちゃった…」
どうやら話を最後まで聞かなかったようです。
ともあれ体力に感謝。
15分ほどで町はずれの森の入口に到着したみのりちゃんは、一息つく間もなくそのままずかずか
と入って行きました。森には何かがある。昔からそう聞かされていたからです。
ところが、いきなり出くわしてしまいました。
「…あの、寒くないですか?」
どうやら、狼さんのようです。

39 :
出発する時にM田(仮称)の言葉を最後まで聞いていなかったみのりちゃんには分からなかった
のですが、常日頃から町のみんなに事あるごとに怖い怖いと言われているのはどうやらこの狼
さんのようでした。
「…は?」
無意識に身構えていたみのりちゃんは拍子抜けしてしまいました。何故なら、白髪長身でやたら
コワモテな狼さんは幾つもの変なぬいぐるみを側に置いて、のんびりと日本茶を啜っていたから
です。
「今日はいいお天気ですね。もしお時間がおありでしたらご一緒にお茶でもいかがですか?」
「…あ、で、では少しだけなら」
北風と太陽という寓話によれば柔らかい物腰は要注意ということですが、気持ちの隙を突かれて
しまったせいで一瞬みのりちゃんは無防備になってしまいました。
「…本当に、寒くないですか?」
「え?」 
「あ、いいえ。この時期にその格好ですからね」
「…!」
忘れていましたが、みのりちゃんは赤いビキニのままです。いくら何でも11月にその格好は寒い
にも程があるというものです。
「何を言ってるんですか、いやらしい!」
つい頭に血が昇ってしまったみのりちゃんは、学生時代の栄光を思い出して咄嗟に無抵抗の
狼さんを背負い投げしてしまいました。そしてはっと我に返ったのです。
「あ、いけない…私ったら」
気の毒な狼さんは思い切り投げつけられて、地面に伸びたままです。
「あの、もしもし…狼さん?」
んだようになっている狼さんを抱き起こすと、みのりちゃんはとても悲しくなってぽろぽろ涙を
流しました。
「ごめんなさい、私こんなことするつもりじゃなかったのに…」
その涙が狼さんの頬にぽたりと落ちました。
「…どうかしましたか?」
ベタといえばあまりにも使い尽くされたベタな展開ですが、うっかり盛り上がってしまった二人には
もう関係がなくなってしまったようです。

40 :
「乱暴にしてしまって、ごめんなさい。お怪我はありませんでしたか?」
「ええ、大丈夫ですよ。あの…」
「美徳ですわ、狼さんのお名前は?」
「逸人と申します」
「まあ、とても素敵なお名前ですわね…」
「あなたもですよ、とてもお綺麗な名前です」
古い伝説のカップル、トリスタンとイゾルデのように脈絡に関係なく突然恋に落ちてしまった二人
にとっては、この場で出会ったことだけがお互いの全てとなったのでした。
狼さんなのに意外に草食系っぽいところも、割ととみのりちゃんのタイプだったようです。
「美徳さん、どうしてこんなところに」
しばらく見つめ合った後、狼さんが口を開きました。本来の目的を完全に忘れてしまったことに
頬を染めながら、みのりちゃんは言葉を返します。
「ええっと…お婆さんのお見舞いに来たのですけど、家が分からないのです」
「それでしたら、僕がご案内しますよ」
お婆さんの家はそれほど遠くはありませんでした。けれどどうした訳か留守のようで家の中は
しんと静まり返っています。
「病気の筈なのに…おかしいですわね」
早く用事を済ませたかったみのりちゃんは、がらんとした家の中を見回してあからさまに不満そう
な声を出しました。
「あの人は気紛れですからね、お疲れでしたらこのままお待ちになってはいかがでしょう」
狼さんはそつのない物腰で、傍らにあった丸椅子を勧めました。ついでに持って来たらしいペット
ボトルの青汁も勧めてきましたが、それはひとまず遠慮をしておきました。
けれど、待てど暮らせどお婆さんは帰って来ません。そのうちに二人は何となくそういう雰囲気に
なってきました。
「…あの、逸人さん。もしよろしければこのままお付き合い願えますか?」
裸同然の扇情的な格好をしてもじもじしているみのりちゃんを見て、何とも思わない男がいる筈は
ありません。
「そんな、僕でよろしければ」
「嬉しい…」
本来のストーリーをガン無視して盛り上がっている二人には、もう他のことなど全部どうでもいい
ことに思えているのでしょう。
ちなみに、ゴスロリファッションで決めたお婆さんは毎日暇を持て余していました。時間さえあれば
町のゲーセンで高校生たちと対戦し、今日も圧倒的な勝ち逃げをして意気揚々と帰って来ました。
タイミング的にはみのりちゃんと狼さんが×××に雪崩れ込んでいる真っ最中に。
後のことは言わぬが花というものです。




41 :
千歳ちゃんがお婆さんww
ともあれGJです!

42 :
昔々、とある国で二番目の王子が誕生しました。
そこで国王は生まれたばかりの王子の為に国中の魔法使いを招待しましたが、ただ一人だけ
意図的に招かなかった人物がいました。
うっかり呼んでしまうと、うるさい上にその場をとんでもなくエロい感じにしてしまうからです。
でも来てしまいました。
お城の大広間で他の魔法使いが一人一人様々な才能や美点をお祝いとして授けている時に、
奴はやって来たのです。
「ちょっと待ったー!!俺を忘れんなよなっ!!」
そう、安田です。
安田はずかずかと生まれたばかりの王子に近付き、まじまじと顔を眺めて勝手に敗北感を感じて
しまったようです。
「ちくしょー、イケメンに生まれやがってーーー!お前なんか大人になる前に饅頭喉に詰まらせて
んじまえっ!」
そう言って、一人で騒いだ挙句泣きわめきながら出て行ってしまいました。大広間に集まっていた
人たちがぽかんとしていると、また誰かが入って来たようでした。
「あのー…遅れてしまってごめんなさい」
招待した魔法使いは十二人、その最後の一人のアシタバがようやく到着しました。そして、大広
間の空気が何となく暗いのを察して、王子に何か大変な呪いがかかってしまったことを他の魔法
使いたちから聞いたのです。
「それひどいなあ。じゃ、一度かかった呪いは消せないけど…十四歳の誕生日に百年の眠りに
落ちるってことには変えられます…それでどうかな」
どうかなと言われても、んでしまうよりはましです。そんな訳で、うっかり喉に詰まらせたりしない
ようにと国中の饅頭は全部なくなってしまいました。

43 :
そして王子は成長と共に大層イケメンとなりましたが、隙あらば怠けようとする困った癖がありま
した。そんな呪いはかかっていない筈ですので、これは個性というものでしょう。
そんな感じで迎えた十四歳の誕生日、パーティーの準備があるので誰も相手をしてくれないので
王子はすっかり退屈していました。ついでに空腹でした。
なので城中をうろうろしながら食べるものを探しているうちに、塔のある小部屋に辿り着きました。
「お、ラッキー」
どうやら食べるものを見つけたようです。
けれど飲み物もなしにがっついてしまったので、喉に詰まってしまいました。王子はその場に
倒れ込んで、そのまま深い眠りに落ちてしまいました。
その瞬間、城の中にいた人も時間も全てが止まってしまったのです。
長い時間が経ちました。
「あのお城の中に超イケメンの王子様がいるよ」と女の子たちの間では噂になっていましたが、
イバラに囲まれてしまったお城には誰も辿り着けませんでした。
ある日のうららかな午後。
どこからどう見ても兄妹だと分かる二人が、お城の前を通りかかりました。
「ったくお前は…もっと落ち着いて話せよなあ」
「…そんなこと言ったって、いざとなるとどうしても慌てちゃうんだもん…」
ノートを抱えた妹は、兄にもごもごと言い訳をしながらいつものようにお城をそのまま通り過ぎよう
としましたが、何ということでしょう。その瞬間に例の百年が経ってしまったのです。
もちろんそんなことを、今通りかかったこの二人が知る訳はありません。ただ、これまで何者をも
阻んでいたイバラが自動ドアのように一人分のスペースを空けて、城へと導いているようでした。
「うわっ、何だよこれ…気持ち悪っ」
兄はあからさまにキモがってさっさとその場を離れてしまいましたが、妹は普段の臆病さも忘れて
しまったようにイバラの奥を覗き込んでいます。

44 :
「美玖!」
少し離れたところから兄が名前を呼びましたが、妹は迷いながらもきっぱりと断りました。
「私、中に入ってみる…」
「あっ、こら!中に何がいるのか分かんないんだから…」
そんな言葉ももう届いていないようでした。
「うわー…すごい」
妹は一人でイバラの奥をどんどん進んで行きます。百年もの間、誰も見たことのないお城の敷地
を初めて見ました。イバラに囲まれてはいても、とても広大でおとぎ話のようです。そういえば、
超イケメンの王子様がここには眠っていると聞いたことがあります。どのみち会えないものと思って
いましたので、今までは興味のない振りをしていましたが、もしかしたら出会えるかも知れないと
思うと胸がドキドキしてきました。
敷地の中には、色々なものがありました。色々な人もいました。けれど何もかもが動きを途中で
止めたままです。薪を割る使用人は斧を振り上げたまま。暖炉の火は勢い良く燃え上がったまま。
全ての時間がここでは止まっていたのです。
そんな城の内部の様子に驚きながらも、妹は呟きました。
「王子様…どこなんだろう」
城の内部はあまりにも広大でどこを探せば良いのか分かりませんでしたが、ありとあらゆるところ
に巡らされていたイバラがまるで波が引くようにざわめいて妹を導いていきます。
「何、ここ…」
そのうちに、イバラの後を追って城の隅にある塔の回廊を上って行きました。その頂上に小さな
小部屋があり、妹は思い切って粗末な扉を開けました。
「こんなところに王子様がいる訳…あ、いた…」
案外簡単に見つかったようです。
ベッドの上に横たわる王子は、とてもイケメンでした。噂以上です。初めて見たばかりの妹は
どうしていいのか分からなくなって、しばらく眺めるばかりでした。

45 :
と、それまでずっとんだように眠り続けていた王子が突然寝返りを打ちました。その拍子に
思いっきり床に転げ落ちそうになったので、怪我をさせてはいけないと妹が咄嗟に下敷きになり
ました。弾みで床に額をぶつけてしまいましたが、王子は無事のようです。
「…いったぁ…」
「…ふぁあーーー」
王子が、いきなり伸びをして目を覚ましました。百年の呪いが今解けたのです。
「あー良く寝たあ…誰お前」
やっと、下敷きにしている相手に気付いたようです。
「え、あの…えーと…初めまして、王子様…」
たんこぶを作りながらも、妹は健気に挨拶をしました。いまいち状況が分かっていない王子は
妹と一緒に塔を降りて来ました。他の人たちや物の時間も動き出したようで、みんな大騒ぎで
大変な喜びようです。
そこで、王子もようやくお城の中の時間が百年も止まったままだったことに気がついたのです。
「マジかよ…でも、ありがとな」
感謝の言葉に、思わず妹も頬を染めました。
「あ、い、いえ…私はそんな…」
お城中の喜びの声は、やがて国全体に広がっていったのです。
程なくして王子と妹の婚礼が執り行われました。
妹は一番目の王子夫婦と共に城で暮らし、絵に描いたような幸せを手に入れましたが、城のあり
とあらゆる場所に仕掛けてあるトラップにその後もことごとく引っ掛かっては、散々な目に遭った
といいます。




46 :
アフォ話第二段w
エロは入れられなかった

47 :
何これかわいいwGJ

48 :
安田wwwww
ハマり役過ぎて噴いたw

49 :
アシタバも適役だよなww

50 :
雀×リュウキはないのか!?

51 :
リュウキと雀か…
胸にコンプレックスのある雀が、男に揉んでもらったら胸が大きくなるという話を聞いてリュウキに揉ませようとする王道展開を受信した。
だって上のねーちゃんみんな大きいんだもん。
絶対気にしてるはずだよ

52 :
龍黄と雀を見てたら、ヤンキー君と眼鏡ちゃんとか俺の妹(姉)がこんなにryとかしか思い浮かばないw
実の姉弟とはいえ好きな組み合わせだ

53 :
>>51
みのりちゃんや花巻のパターンも含めて、明日投下予定。

54 :
恋する姉は、切なくて弟のことを思うとry

55 :
そろそろ保管庫ほしいね

56 :
書いたので投下。

57 :
花巻編
鏡に映るのは、いつもと同じ自分だった。
成長期だというのにここ最近というもの、身長から体重に至るまで全く変化が見られない。当然
一番大きくなって欲しい胸囲も同様だ。
気休めだとは思っても、一応やるべきことはやっている。牛乳は毎朝飲んでいるし、乳腺を成長
させる体操も寝る前に必ず行っている。なのに全く効果がないのはどういうことだろう。
誰かに揉んで貰うといいと聞いたことがあるが、相手は一人しか思い浮かばなかった。しかし、
その気になってくれるとはとても思えない。
「はあ…」
意味もなく溜息が漏れた。
どうでもいい悩みといえばそれまでだ。しかし全く成長しないというのはこの時期の少女にとって
大きな問題だ。特にプロポーションに関することにはどうしても敏感になってしまう。
今はとりあえず藤の気が向きさえすれば色々と構ってくれてはいるが、女としての魅力のない
こんな身体ではすぐに嫌になるに違いない。そうなったらどうしようとつい余計なことばかり考えて
しまうのだ。
「やっぱ…胸おっきい方がいいよねえ…」
その日はずっと放課後になるまで溜息をつきっぱなしの悩める少女、花巻だった。
「腹痛いのか、お前」
「…あひゃっ…」
そろそろ帰ろうと教科書をカバンに入れている時、突然藤に後ろから声をかけられた。
「あ、あ…あの、私…」
今一番顔を合わせたくなかった相手を前にして、何か気の利いたことを言おうとしてもテンパって
しまって全然言葉が出て来ない。それどころか、一層もごもごと口篭って醜態を晒すばかりだ。
他の生徒が誰もいなくて良かった、と心から思った。
「どっか具合悪いんじゃないかと思ってたぜ」
「あの、私大丈夫、だから…どこも悪くなんか」
「そうか?」
テンパりながらも一生懸命言い訳を探す花巻を不思議そうに眺めながら、藤はぺたぺたと制服
の上から身体を触ってきた。
「うぁ…な、に???」
いきなり想像すらしていなかったことをされて、ますます身体が縮こまる。
「嫌いじゃないぜ、お前のそーいうトコ」
きっと藤のことだから特に理由もなかったのだろう。ぶっきらぼうな言葉を残して教室を出て行こう
とする後ろ姿が、ふと止まった。
「何してんだよ、置いてくぞ」
「あ…藤くん、待って…!」
花巻は慌ててカバンを持って追いかけた。
一日中悩み続けたことは結局解消すらしていない。そしてきっとこれからも続くに違いない。それ
でも、今はそれほど気にしなくてもいいように思えていた。
とりあえず、次の日から朝食の時に飲む牛乳の量が増えたけれど。

58 :
美徳編
恐れていたことが起こった。
この間ワンサイズ上にしたばかりのブラが、またキツくなったのだ。
美徳にとって最も憎むべき敵であるこのボリュームがあり過ぎる胸は、これでもかと不幸を呼ぶ
ばかりだ。胸の大きい女性用に開発されたというブラも結局あまり効果がなかったし、本当に
万策尽きてしまっている。
とはいえ、最近のこのサイズアップの原因は嫌というほど分かっていた。
「僕のせいですね、きっと」
相変わらず穏やかな物腰で、目の前の『原因』が憎らしいほど優しく微笑む。
「…そう、なのでしょうね」
くだらないと言われればそれまでだが、美徳にとっては長年の問題でもある。
只でさえ嫌というほど大きいのに、この男と付き合うようになって揉んだり吸われたりアレやコレ
される機会が増えてからは、その刺激もあって尚更サイズアップするばかりだ。これ以上大きく
なるのは正直勘弁して欲しいが、だからといってこの男と過ごす時間をなくしてしまうことなど、
今となっては決して考えられない。
「胸腺を刺激することが乳房を大きくするのはもちろん分かっていますが、もし美徳さんがお嫌だと
仰るのであれば少し控えることも」
「それは嫌です!」
「美徳さん?」
校内でも暇な時間を見つけては、何とか一緒にいられる時間を捻出しているほどだ。どんな些細
なきっかけでもこの男と繋がっていたい。なのに胸が大きくなる程度のことで遠ざかってしまうこと
だけは絶対に嫌だった。
「私、こうして一緒にいられるだけでいいんです。そりゃあこれ以上大きくなったら、嫌…なのです
けれど。でも、逸人さんにされることでしたら、それが何であっても私は望みます。ですから、構い
ませんわ」
言いながら美徳はハデスの手を取って、悩みの種である胸に押し当てた。
今でさえこの胸の大きさは嫌だし、これ以上となったら本当に想像もつかない。けれど、この男
がもたらすものであるならば受け入れられそうな気がした。
「あなたにそう言われたら、堪えられませんよ。美徳さん」
交歓による極上の快味を覚えた男の手が緩やかながらも力を込めた気がして、美徳は湧き上が
ってくる甘やかな欲情に目が眩みそうだった。

59 :
雀編
妹尾家はいつも賑やかだ。
両親は揃って出張続きで不在がちだが、四人の娘と一人の息子が朝から晩まで何かと騒動を
起こしている。
今日の騒動の中心は四女の雀だった。自室のベッドで寝こけていた龍黄に突撃して、とんでも
ないことを言い出したのだ。
「リュウキ、ちょっと起きなさい!」
気持ち良く寝ていたところをいきなりパンチされて、龍黄は最悪な寝起きを迎える羽目になった
のだが、そんなことに気遣う姉ではない。制服のスカートを脱いだだけの姿でぐいぐいと身体の
上に乗ってくる。
「何だよ、うっせーな…」
「あんたに頼みごとがあるの」
「あぁ?面倒くせーな、何だよ…」
いきなり起こされてまだ頭がふらふらしているのか、龍黄は不機嫌ながらも律儀に返事をする。
「ちょっと胸揉んでよ」
「はぁあ???」
龍黄はパニックを起こしそうなほど慌てていた。一番年の近い姉である雀とは喧嘩ばかりして
いるのだが、いつも訳の分からないことばかり言われるので雀は正直苦手だった。
「だーって、友達みんなナイスバディーなんだもん、羨ましいの。それって彼氏がいるからだと
思うんだよね。でも私いないじゃん。せめて胸ぐらい誰かに揉んで貰わないと幼児体型のまま
高校生になっちゃう。そんなの嫌なの!」
雀は弟に媚を売るように、過剰なほどくねくねとしなを作っていた。普段はそんなことをする姉では
ないだけに、気色が悪い。それに、いくら何でも胸を揉むなんてとんでもないことだった。
「んなの知るかよっ」
「ちょっ、待ちなさいよ!」
止めようとする雀の声が背後で聞こえたが、胸を揉まされるのだけは御免だった。そのまま外に
飛び出してしまった龍黄は、その後二女の竜美が帰って来るまで怖くて家に入ることが出来なか
った。
そして、ますます女嫌いになってしまったのだった。




60 :
GJ
三者三様に可愛すぎるな…
特にみのりちゃん

61 :
誰か今週のハデス先生をみのりちゃんの愛と
おっぱいで治してやろうと思った奴はいないのか

62 :
でも・・先生のためなら・・私・・
先生に私の裸を見てほしいんです(4巻収録34診スプリングハズカムより)

63 :
今のところ、先生の為なら裸でも何でもするっていう女は二人か。
しかも美人ときた。
結構なリア充だな、先生。

64 :
誰か藤シン書いてよ
今週とかむちゃくちゃ藤シンだったじゃん
正直藤花とかただの花巻の片思いでしょ

65 :
自分で書けよ

66 :
これで余計、藤シン書く職人の足が遠のいただろ

67 :
>>64
藤シン主張するのは別にいいけどさ、他のカップリング批判はどうかな
藤花が花巻の片思いというなら、藤シンは全くフラグなしだろ

68 :
>>67
どうして1行目でやめないんだ…

69 :
ごめん、勢いあまった

70 :
シンヤ厨のクレクレっぷりパネェwww

71 :
花巻ちゃんもシンヤも好きな自分に角はなかった

72 :
>>71
今のお前かっこいいよ

73 :
お前らが藤のCPでケンカするからハデみのを投下しようと思って即興で書いてたら
平和を愛する心が溢れすぎて少女漫画になっちまったじゃねーか
エロなし。

(さて……どうしたものかな)
「冷血」が飢えて感情が枯渇したハデスを保健室に残し、千歳は策を練る。
 病魔の情報を待つか、何か他の手を講ずるか。
 思案しながら歩いていると、行く手に見慣れた顔を見つける。
「ん……おや」
「あら校長先生」
 茜の髪に凛とした瞳、豊かな胸を実らせた若い女。
 才崎美徳だった。
 彼女を見て千歳は、ひとつの策を思いつく。
 誕生会でのお膳立てはあのヘタレの驚異的なヘタレっぷりに台無しにされてしまったし、ここらでもう一押ししてやるのもいいだろう。
「才崎君、ひとつ頼まれてくれんかね?」

「なるほど、これは……」
 触れれば崩壊しそうなほどひび割れたハデスのグロテスクな顔を見て、みのりは引き気味に納得した。
 ハデスはイスに座ったまま、お茶も淹れずにぼんやりと目の前に立つみのりを見上げている。
「才崎先生お仕事はいいんですか?」
「君は黙っとれ」
 普段ならば保健室への来客はいつでも誰でも大歓迎だろうに、今のハデスは健常なみのりが保健室に来ていることをただ不思議がっていた。
「ですが、私に何かできるんでしょうか」
 困ったように眉根を寄せて、みのりは首をかしげる。
 千歳にハデスを助けてくれと頼まれ、事情を聞かされて保健室まで来たはいいが、彼を救う方法などみのりには思いつかない。
 強い感情を抱かせれば良い、と言われても、普段の二人の場合、強い感情を抱かされているのはみのりのほうなのだ。
 時には憤慨、時には呆れ、時にはときめき。いつもみのりが一方的に心を昂らせて、ハデスはただ静かに構えているだけだ。
 しばし考えこんでから、みのりは頼りない声でハデスに言った。
「えっと……り、リヤカーの隠し場所を見つけました。廃棄します!」
 もちろん嘘だ。手製の愛車のことならば、怒るか悲しむかするだろうと思ったのだ。
 しかしハデスはさも当然といったように頷くばかり。
「そうですか、ついに……。また作らないとなあ」
「だっだから作っちゃだめなんですってば!」
「こら君が怒ってどうする」
 みのりがついいつもの調子で怒鳴り返してしまったところで、千歳が諌める。

74 :
 すみません、とみのりはしおれた。
 上司の頼み、同僚の危機だが、みのりの手には負えそうにない。
 千歳はやれやれとため息をつくと、
「ええいまだるっこしい」
 手に持った杖でドンとみのりの背を押した。
 不意のことにみのりはあっさりと膝を折り、目の前のハデスのほうへと倒れこむ。
 イスに座ったハデスの膝の上に、みのりも膝を乗せ。
 とっさに支えようとしたハデスの両手がみのりの腰を掴み。
 白衣を掴むように、みのりが両手をハデスの胸に突き。
 みのりが上から覆いかぶさるように、唇が重なっていた。
「……っきゃああ!」
 みのりはあまりのことにしばらく思考を停止していたが、やがて顔を真っ赤に染めて飛び上がった。
 ハデスを突き飛ばすように離れようとするが、彼の手が腰を掴んでいて叶わない。
「よし、あとは任せたぞ」
 千歳は満足げな顔で杖を魔女のように振り回しながら出て行った。
 みのりは驚いて呼び止めようとする。
「ちょっ、こっ校長先生!」
 しかしいまだ、ハデスの腕はみのりを離さない。
 離して、と言おうとみのりは再びハデスのほうを振り返り――目を疑う。
 彼は、見たこともない顔をしていた。
 肌のヒビはいつもより少ないくらいにまで減っていた。
 より人間らしい頬をもどかしく歪めて、骨の凹凸からしか解らない眉を切なげに寄せて、瞳孔の開きかけた目にそれでも必の感情をこめて、強く強くすがりつくように。
 ハデスは、真っ直ぐにみのりを見つめていた。
 その表情の意味するところを、みのりは知る。
 切ない渇望、狂おしい愛情。
 この男は私を愛しているのだ、私がそうであるように。
「ハデス先生……」
 引いていた身を戻し、彼の膝に乗せた自分の膝に体重をかけて、みのりはハデスと額を合わせた。
「才崎先生」
 目を伏せると彼のほうから唇を寄せてくる。
 これは事故でも一方的でもない。確かな相互の愛情表現。
 しばらく呼吸も忘れて貪り合って、息を継ぐため唇を離す。
 同時に目も開くと、そこにはまたしても見たことのないハデスの顔があった。
 ヒビひとつないなめらかな頬に、黒々とした柳眉と瞳の凛々しい青年が、優しく微笑んでいた。
「は、ハデス先、生?」
 みのりの戸惑いでようやくハデスも自身の変化に気付いたようで、顔にかかる黒髪をつまみあげて苦笑した。
「『冷血』も食いきれなかったみたいですね」
「何……を?」
 みのりが首をかしげると、ハデスは抱き寄せて耳元で回答を囁いた。
 あなたへの愛をですよ。

終わり

75 :
GJ!
少女漫画いいじゃん、純愛路線なハデみのもまた良し

76 :
ぐっじょぶ
エロなしでもこんなに萌えれると思わなかった

77 :
少女漫画好きだから
すごく萌えた
このハデみの最高

78 :
喧嘩っていうか片方が一方的につっかかってきてるだけだろ
ハデみのGJ
この二人は大人なのに初々しいのがいいな

79 :
素晴らしいハデみのの後に、もう一つハデみの
>>61のリクになるべく応えてみたんだが、やっぱりちょっと外してる感が
ある
ハデスはみのりちゃんのおっぱいが好きなんだよ、そう思ってるよ

80 :
放課後、保健室の周辺がいつになく騒がしい。
しかも明らかに部外者が列を成しているのを偶然見かけた美徳は、思わず絶句した。
「これは一体どういうことです!」
ごった返す列をかきわけて中に入ると、またも驚いた。この保健室の主であるハデスの様子が
明らかにおかしいのだ。いや、様子だけではない。見慣れていた筈の顔のひび割れは更に深く
走り、今すぐにでも崩壊してしまいそうに思えた。
「…才崎先生、何か御用でしょうか」
椅子に座るハデスは茫洋としたまま、美徳に声をかける。
「この人たちは一体何なのです、それとハデス先生、どこかお具合が悪いのでは」
「いえ…それが僕にも良く分からなくて、ただ、生徒たちが心配してくれましてね」
ハデスの表情は妙にうつろで、声に何の感情も篭っていなかった。その様子にひどく悪い予感が
して仕方がない。
「…ともかく、この人たちにはお帰り願います。いいですね」
「はあ…才崎先生がそう言うのなら…」
特に何を思うでもない風に、ハデスは言葉を返してくる。
「それでは、大変申し訳ありませんが皆様はただちにお引取り下さい。お願いします」
どうやら生徒たちが何かを言って集めて来たらしい人たちは、少しの間不満を述べたりして騒が
しかったものの、比較的大人しく帰ってくれた。この事態に関して生徒たちへの追求もしなければ
いけないものの、やはり気になるのはハデスのこの只ならない様子である。
「一体、何があったんですか?」
ようやく静かになった室内で、美徳は声を潜めた。
「さあ。僕自身はいつもと変わらないつもりですが…」
あくまで茫洋と、まるで別の人間にでもなってしまったようにハデスは感情のない目で見上げて
くる。いつもならばその眼差しに様々な思いを見出せるというのに、今日は何もない。全く何も
そこにはないのだ。
「…ハデス先生、私のことをお忘れになったのですか?」
「いえ、才崎先生とは毎日顔をあわせているじゃありませんか」
返ってくる言葉にも普段の情感を感じない。やはりこれはどこか悪いのか、それとも完全に二人
でいる時のことは忘れてしまったのかと最初から感じていた不安は最高潮に達してしまった。

81 :
「…ハデス先生、私はいつでもあなたの理解者でありたいのです。ですから最近のことで何か
異変を感じたことがありましたら教えて頂きたいのですわ」
「そう言われましても…まあお茶でも淹れますから」
椅子から腰を浮かしかけたハデスを制して、念を押すように言葉をかける。
「率直に伺います。私のことは覚えてらっしゃいますよね?」
「…ええ、もちろん」
「こうして二人でいる時のことは?」
「覚えています。それが何か」
その言葉と同時に、一切感情の見えなかった眼差しにほんのわずかに柔和な色がよぎったのを
見逃さなかった。
「…良かった、お忘れになったのかと思いましたので」
それだけが美徳にとっては不安だったのだ。これまで積み重ねてきたものが全てこの男の中で
なかったことにされていたら、本当にどうしていいか分からなかっただろう。
ほっとした途端に笑みが漏れる。
「あなたのことを、僕が忘れる筈がありませんよ。美徳さん」
差し伸べてくる手が頬を撫でた。
「ええ…そうですわね。私ったら…逸人さんがそこだけは違えないのであれば、何も怖がること
なんてありませんのにね」
大きな手の感触をもっと感じたくて、頬に当てられていた手を首筋に、そして胸元へと滑らせて
いく。ハデスの反応はないものの、普段からこうして接しているだけに決して嫌ではないだろうと
思った。
「逸人さん、私はずっとあなたのものです。たとえどんなことがあっても…」
特に何の抵抗もないことに密かな喜びを感じて、美徳は次第に大胆になっていった。ジャージも
ブラも脱ぎ捨てて、誰もが羨む見事な乳房を晒したのだ。
「美徳さん…?」
一体何をするのかと首を傾げるハデスの頭をそのまま抱き込んで、豊かに張り詰めた乳房に押し
当てる。
「私をあなたの一番の理解者にして下さい、逸人さん」
今の美徳には実際のところ、何も分かっていなかった。どうしてハデスがこうなってしまったのか、
そして以前のように戻る手段があるのかどうかすらも。それでも二人で過ごした時間を決して忘れ
ていないのであれぱそれでいいと思っていた。

82 :
ふと、ハデスが子供のように乳房に顔を摺り寄せたのに気付いた。
「あなたはとても温かいですね、美徳さん」
「あなたがそういう私にしてくれたのですわ、逸人さん」
もう不安も何もない、なのに何故か頬が濡れるのを感じたのだが止めることは出来ずにいた。
「…泣いているのですか?」
涙の粒が落ちたのを察したのだろう、ハデスが顔を上げて尋ねる。
「いえ、何でも…」
「美徳さん、どうか泣かないで下さい」
何とか涙を誤魔化そうとした美徳を、立ち上がったハデスが抱き締めた。強く強く。今までにない
ほどの力の強さに、戸惑ってしまいそうだった。
「逸人さん…苦しっ…」
「すみません、このまま少し…」
しっかりと腕を回して逃さないようにと抱き締めてくる腕に、美徳は若干の苦しさを覚えながらも
とろりとした陶酔に浸っていた。この男に、これほど強く求められていることが何よりも嬉しくて、
時がこのまま止まってしまえばいいと願ってしまった。
「あっ…」
ようやく腕を解かれて、見上げたハデスの顔は普段見慣れたものに戻っていた。何がどうなった
のかは全く分からない。この事態に頭がついていかない美徳に、ハデスが恥ずかしそうに言葉を
かけた。
「…美徳さん、その格好、寒くはありませんか?」
「…えっ…あ、あのっ…」
床に落ちていたジャージを美徳の肩に着せ掛けて、まだ濡れていた頬を指で拭った。
「僕のせいで泣かせたのですね。決してそうするまいと思っていたのですが…」
「いえ、逸人さんのせいなんかじゃ」
言葉が終わらないうちに唇を塞がれた。今日の色々な不安や負の感情が全て溶かされていく
ようで、夢中で求められるままに応え続ける。
「…本当に、僕はあなたに心配ばかりかけてしまいますね」
名残惜しげに唇が離れた後、ハデスが呟いた。
「それは、私も同じことですわ。だからお気になさらないで」

83 :
もう一度抱き締めてくる腕に甘えきることにして、それだけを返す。
まだお互いにこの恋には慣れてはいないのだ。だから分からないことばかりが目の前にある。
今日の事態のように全く予期すらしないこともある。
それでも、この男と往く道程であれば大丈夫そうな気がした。不思議とそう思えた。
「逸人さん、私はあなたのもの…」
恋する男に腕に掻き抱かれながら、確かめるようにそう呟いて目を閉じる美徳の表情は心から
幸せそうだった。
「先生、戻ったのかあ。良かった…けど…」
保健室にいる二人は知るよしもない。ドアの前でアシタバがおろおろしながら様子を伺い、入るか
どうしようかと迷っているのを。
まだ二人の時間は終わりそうもない。




84 :
今回、番号がムチャクチャになってごめんよ

85 :
いやぁ、天地がひっくり返るかと思ったわ。
あのイケメン野郎が俺、こと安田さんに女子の下半身(たましい)の揺さぶり方を聞いてくるなんて。
でも俺…
ぶっちゃけ女のことよくわかんねーんだよな…
確かに安田さん激選コレクションには自信を持っている。けれども、なんやかんやで、生身の女の全裸を見たことが無い。
あ、母ちゃんはあるけどあれはないわ〜
ときどきベッドで1人でモサモサやってると時々脳裏によぎっちゃうんだよね。
やめてくれないかなマジで。折角いいところなのに一気に萎えちゃうんだぜ。
まぁ、この件に関してはサシで語り合える相手がいないから自分のなかにしまい込んどくとして。

藤が俺に自分から関わってくるなんて今まで一度もないから、思わず俺は持っていたエロ本を落とした。
「なぁ…避妊ってどうやってすんの?」
えぇえぇぇえぇ!?
そこ俺に聞くゥ!?ネットで調べろよそんなもん!!
てかんなもん保健の授業ちゃんと聞いてたらわかるだろ!
保健舐めんなよコルァ!
と、言いたいことは山ほどあったのだが、ひとまず飲み込み、一番聞きたいことを聞く。
「相手、誰?」
イケメンだから相手選び放題なんだろうなフゥー!
と茶化しながら言うと、藤は本気で黙り込んだ。
ちょっとやりすぎたかな、と思いつつも、藤の相手が誰なのかは気にかかるところだ。
「なぁ、ヒントだけでも教えてくれよ」
自慢じゃないが、俺は常中の女子の全データを網羅している。
2、3のヒントがあれば的中させる自信があった。
「不器用なやつ」
オィィィィィイ!!!!
幅広すぎだろそんなもん!
なんだよわかんねーじゃねーかよ。
不器用って性格的に!?
それとも実質的に?!
どっちも含めたらすごい数になるじゃねーか。
てかむしろどっちも器用なやつって凄くね?

86 :
これはルックスだルックス!
「見た目は?!見た目!!」
安田さんは自慢じゃないがルックスにはうるさい。
常中の女子の全データを網羅している俺に、角は無いはずだ!
「まぁ…そこそこ可愛い」
オィィィィィイ!!!!
んなもんお前のさじ加減だろうがよ!!鏑木を可愛いと言う奴もいれば花巻を可愛いと言う奴だっている。日暮だって俺からしたらめっちゃ可愛い。
ん?ちょっと待てよ。
藤と頻繁に接触してるのは鏑木だよな。可愛いよな?不器用だよな?
はっはーん!
俺分かっちゃったー!
やっぱり俺に角はなかったわ。やばい今の俺カッコ良すぎる。
「いやぁ。まさかお前がな〜!美男美女でいいんじゃね?」
「わかったのかよ!お前なんか気持ち悪ぃな」
「よく射止めたよなー!あいつ女子だけじゃなくて男子にも結構人気なんだぜ?」
藤が露骨に固まる。
「うそだろ…マジかよ」
「おぅ!顔可愛いし、何よりあのスタイルだろ?そりゃモテるわ」
藤は鏑木が大人気なのを知らないのか?おめでたい奴だな。
「まぁたしかに太ってはねぇけどさ…スタイルは…いいのか?」
…ムカつくよこのイケメン!!ムカつくマジでムカつくよ!助けてお母さん胸に黒いものが渦巻いてる!
どうしよう安田さん更年期でもないのにイライラするわ!
鏑木スタイルいいだろ!みのりちゃんまでとは言わないけど胸デカいし! その気持ちをそのままぶつける。
「お前どこ見てんの?胸デカいしウエスト細いしそそるじゃん。安田さんそろそろキレるかもよ?」
そういうと、藤は頭を抱える…
「嘘だろアレででかいの?まぁ俺は気にしてないけどさ…」
イケメンコノヤロォォォ!!
絶対嘘だろ気にしまくりだろ!超イライラする!お前が望んでるのは何カップなんだよ!Eか!?Fか!?Gなのか??
まさか…Hなのか…?
「藤のおっぱい星人がぁぁぁぁー!」
「ちょ!止めろよ声でかい!」

「見事に食い違ってるな。藤が少し可哀想になってきたぜ…」
「あんなのの心配するなんて、さすが美っちゃん!優しいんだね」
「…。藤くんは花巻さんのこと言ってるんだよね?」
「だが安田はシンヤのことだと思ってる…と。」
「まぁ、二人ともアホってことだよ」
「本好くん…」
端でこんな会話がされていたことなど、安田は知る由もない。


87 :
エロ入れられなかった。
ただ安田さん中心に猥談してほしかっただけなんだけどグダグダになってしまった…
ハデみのの方、本当に尊敬します。GJでした!

88 :
二人ともGJです!!
>>80-84
献身的なみのりちゃん超可愛い!
パフパフ先生超羨ましい!!
>>85-87
地の文の安田さんの口調がおもしろすぎて
読みながらずっと笑ってたww
藤のとぼけっぷりもうまいww

89 :
シンヤとリュウキ思いついたけど文章に出来るほどの力が自分にはなかったw

90 :
龍真大好きなので頑張って欲しいんだが
展開とかだけ書いとけば職人さんが拾ってくれるかもよ

91 :
この流れで、何故か本好冤罪話が降りてきた。
数時間後に投下予定。

92 :
>>91
wktk

93 :
書いた。
そしてエロはないんだが、何だかなあ。
どうしてこんなものが降ったのか自分の脳味噌が激しく疑問。

94 :
うちは母が身体が弱い上に少しエキセントリックな性質だったので、僕はあまり心配かけない
ように普段から言動を抑制する癖がついていた。母に似てあまり丈夫な体質ではなかったことも
関係しているかも知れない。
そんな僕の現在に人格形成に多大な影響を与えてくれた美っちゃんについて、語るべき重大な
ことはそれこそ幾らでもあるけれど、今回は直接関係がないので控えることにする。
あの日、僕は学校からの帰路で美っちゃんたちと別れた後、近くの本屋に寄って前日に入荷した
という数学の参考書を三冊買った。もしなければ注文しようと思っていたので、手間が省けたと
自分の運の良さに感謝したぐらいだ。
その後、滅多にないことではあるけれど、親戚の家に寄って晩御飯を御馳走になった。前々から
遊びに行く予定があったとはいえ、何かと用事があったので先延ばしになっていたから、これも
丁度良かったといえばその通りなのだろう。
しばらくその家で過ごしてから自宅に帰ることになったので、時刻は既に深夜に差しかかろうと
していた。おじさんが心配して家まで送ると言ってくれたけど、それほど距離がある訳ではないし
女の子じゃないから危険も少ないと断った。
今考えると、送って貰った方が面倒に巻き込まれずに済んだのだろう。
時刻は午後十一時過ぎ。
時計代わりの携帯を手に家路を急いでいると、住宅街の外れで何やら篭った悲鳴のような声が
聞こえた気がした。嫌な胸騒ぎがあって、面倒だから通り過ぎようとしたけれど、その声は随分
近かった。
「ゃぁ…」
立ち止まって耳を済ませると、声はすぐ側の暗い路地からしきりに聞こえていた。場所的なもの
からいってもこれは間違いなく女の子が最悪の事態になっているのだと確信して、僕はすぐに
警察に電話をした。
もちろん、早合点だけはしないように出来るだけの状況は確認した上でだ。
「もしもし、常伏警察署ですか?今××町×丁目の路地で女の子が襲われています。早く来て
下さい。目印は××というドラッグストアの角の電話ボックス。そこから常伏中学校へと伸びる
道沿いの住宅街の端にある路地です。出来るだけ早く、お願いします」
とりあえずは目につく限りの目印を言ってから、通話を終えた。ここで帰ればそれで済んだ筈だ
けれど、一度目にしてしまった以上関わりませんさようならでは済まないような気がして、出来る
だけのことはしてみようと思った。
何より、女の子にはとても優しい美っちゃんなら、こんな場面に遭遇したとしたら全力でどうにか
するだろうと想像したからだ。友達なら、美っちゃんの意に沿わないことなんて絶対に出来ない。

95 :
次に、どうせ暗いから綺麗には撮れないだろうとは思ったけれど、証拠として携帯のカメラで撮る
ことにした。それには、なるべく近付かなければいけなかったが、幸い、連中は行為に熱中して
いるのか僕に気付くことはなかった。何人いるのかまでは分からなかったが。
「ぃやぁぁ…」
その間も、女の子は声を振り絞って助けを求めている。さっき警察に電話をしたからすぐに警官が
来る筈だ。それまでは何とか我慢して欲しいと思いながら、僕は撮影音を消して写真を何枚か
撮った。その上で今の時間も記憶していた。ICレコーダーでの録音も始めた。
間違っても、僕は正義漢などではない。こんな事態に立ち会ってしまった以上は全くの部外者と
して、自分の身の安全をまず考えただけのことだ。それは決して間違ってはいないだろう。もしも
正義を振りかざしてすぐに女の子を助けようとしても、ひ弱な僕に一体何が出来るというのか。
通報してから十分経過した。
そろそろ警官が来てもおかしくない。
さすがにこれ以上罪もない女の子をそのままにしてはおけないので、邪魔をすることにした。多分
一発や二発は殴られるだろうけど、それは十分もの間放置していた罪滅ぼしとして一応の覚悟を
していた。
そろそろと近付いて、僕は声を発した。
「もうやめてくれないかな」
街灯のない暗がりの中、女の子に覆いかぶさっていた奴を含めて数人…咄嗟に数えて全部で
五人の若い男たちは声をかけるとぎょっとしたように身を硬くして、その後激昂したのかてんでに
罵りながら殴りかかってきた。
何を言っているのか分からなかったけれど、きっと卑猥な罵倒なのだろう。
特に何の心得もない僕と、暴漢と化している男五人では絶対に勝てる訳がない。あっと言う間に
取り囲まれて殴られるままになっている間に、タイミング良く警官が駆けつけた。その姿を見て、
男たちは驚いたのだろう、一人二人と散り散りになりながら逃げて行ってしまった。
五人とも、隣町の高校の制服を着ていることは覚えておこうと思った。
「君、大丈夫かい?」
女の子を保護した警官が、労わるように声をかけてくれた。しかし、次の瞬間事態が変わる。
「この人です!」
何を思ったのか、助けたつもりの女の子がまっすぐに指を差しているのは僕だった。
「この人が私を…私を!」
情けは人の為ならず、という諺が誤用されるのも当然なのだろう。せっかく助けたつもりになって
いても相手がそう思わなければ何の意味もない。
同時に、女はやっぱり面倒臭いと思った。

96 :
その後、時間が遅いというのに警察署に連れて行かれて事情聴取される羽目になった。
もちろん僕の方には幾つかの無実の証拠があるし、状況的に犯人である必然性が全くないことが
すぐに証明された。通報後に警官が駆けつけるまではものの十数分。その間に撮った不鮮明な
写真も時間の誤魔化しがほぼ不可能とされたし、普段の備えとして持っていたICレコーダーでの
録音も功を奏した。
「こんな時間まで、大変だったね」
最初に駆けつけた警官が長い聴取後、気の毒そうに声をかけてくれたが、僕の心の中には無実
が証明された安堵やこんなくだらない犯行の濡れ衣をかけられた怒りなどよりも、どうしてあの子が
そんな嘘を言ったのか、その疑問だけがとめどなく膨れ上がった。
日付はとうに変わっていて、自宅で心配しているだろう両親にそれまでずっと警察署にいたことの
説明をしなければならない煩わしさもあったが、それはもうどうでも良くなっていた。
女の子は、暗がりの中では顔すら良く分からなかったが同じ常中の同級生だった。
2-C組の栗本奈美。
安田じゃあるまいし、女子生徒たちには特に関心のない僕でも顔と名前ぐらいは知っているほど、
色々と目立つ容姿の子だ。
こう言っては何だが、結構恋愛関係の方も盛んなのだろう。
それまでは全く接点がなかっただけに気にも留めていなかったのだが、一度疑われたからには
何としてでも本当の答えを見出さないと気が済まない。
栗本奈美が一体何を思って調べればすぐに分かる程度のあからさまな嘘を言い、通りすがった
だけの僕をあんな卑劣な犯行の犯人にしようとしたのか。それだけははっきりさせないと何も始ま
らない気がした。
明けて翌日。
先生も生徒も、昨夜のことを知る者は誰もいないようだ。僕が何もしていないと証明された以上、
栗本も無駄に嘘は言い触らさないだろう。そこまであえてリスキーなことをするほど馬鹿ではない
筈だ。
とはいえ、まだ何が起こるか分からないので僕も最小限度の自衛をする必要はあった。
差し当たっては、先生にでも相談するのが妥当というところか。では一体誰に、と考えたところで
担任の才崎先生が思い浮かんだが、話し方をよくよく考えないと火に油ということが容易に考え
られるので結構厄介だ。
だとすれば、普段は生徒と接点を持たない養護教諭のハデス先生ぐらいか。

97 :
その日の昼休みは、珍しく美っちゃんたちが早く引き上げて教室に戻って来た。それと入れ替わる
ように保健室に入る。
「珍しいね、君が相談だなんて」
怖い顔をしているのに生徒思いで優しいハデス先生は、いつもと変わらずに接してくれた。いつも
美っちゃんの後ろにいてあまりこれといった話もしない僕が相談を持ちかけても、親身になろうと
してくれているのが分かる。
「実は昨夜のことですが…」
僕は起こったことを洗いざらい話した。集団暴行現場に偶然立ち合ってしまい、何故か犯人にされ
そうになったことまで。
ハデス先生は聞き終わったあと、しばらく黙り込んでからようやく口を開いた。
「証拠の写真とICレコーダーは持っているかい?」
「いいえ。まだ本当の犯人が捕まっていないので、警察署にあります。ただ、念の為にそれぞれ
コピーは取ってあります」
「それは大切に保管しておくんだよ。ところで、君の口調だと犯人の目星はついているようだけど」
穏やかな口調が探るようなものに変わっていく。
「暗いのではっきりとは見えなかったけれど、制服の特徴からして隣町の××高校のものでは
ないかと思っています」
「それは本当?」
「手元にあるコピーの写真を調べれば、はっきりします」
ここでまたハデス先生は考え込み、声を絞り出した。
「…そんな重大なことを、よく相談してくれたね」
他に適役がいなかったから、と言わなくて良かった。僕もやはりまだ子供だ。とんでもない事件
の犯人にされそうになったことは大きなストレスになっていて、それだけでは何も解決しないと
しても、ただ誰かに聞いて欲しかったのだ。
それは美っちゃんでは決して有り得ない。美っちゃんにだけはこんなくだらないことで心配をかけ
たくなかった。なので若干の罪悪感をハデス先生には感じたけれど。
さて、こうやってとりあえず先生に対する相談実績は作っておいた。もし栗本があの連中にレイプ
されていたとすれば、体内に残っているだろう体液は僕のものではないことなどすぐに分かる。
いくら中学生だってその程度の知識ぐらいはあるだろうに、何て馬鹿な女、もうどこにも逃げ場は
ないのだ。
自分の首を絞めるだけの真似をした栗本がどうするのか、僕はしばらく静観することにした。

98 :
それから三日ほどして、犯人たちが全員捕まったというニュースが入ってきた。
「ヤったの××高校の奴だって、びっくりだよなー!」
クラスの隅で声高に話しているのは、もちろん安田だ。有名大学への進学率の高い高校だけに
騒ぎもより大きくなっている。もしも僕があの時無実を証明出来ず、一時的にでも疑われたままだ
ったら、安田はやはり大袈裟に喋っていただろうかと考える。
応えは否、だ。
安田はエロいことは大好きでも、下衆なことには決して首を突っ込まない。まして確証のないうち
は口にも出さないだろう。それがこいつといまだ何とか友達でいる理由の一つだ。
ニュースでは被害者の身元も名前も伏せられているが、栗本があれから登校してきていないこと
もあって、噂が広がっている。
いい気味だ、ぬまで悩み苦しめ、と思った。
「頭いい奴も色々なんだよ、中身がいい奴も悪い奴もいるってこと」
色々考えながら僕は自分の席に大人しく座っていたのだが、突然美っちゃんがふざけて背中を
押してきた。
「…痛いよ」
「お前は大丈夫だもんなっ!」
からっと笑う美っちゃんの顔は、いつ見ても晴ればれしていて気持ちがいい。みんなこんな風に
裏表ない生き方が出来れば世の中は平和になるのにと思うばかりだ。
「当たり前じゃないか」
僕もつられて少し笑った。
結局、栗本はそのまま退学になったらしい。
転校したのかどうかは分からない。ただ、本当なのかどうか、例の事件に関連する噂が一人歩き
をして様々な尾ひれがついて伝わって来てはいた。
栗本は××高校の生徒と付き合っていたが、そいつがえらくたちの悪い奴で、深夜に呼び出さ
れて出かけて行ったら数人の友人が待ち構えていて襲われたとか、数人の女たちと争って男を
取り合ったとか、良からぬものばかりが面白おかしく広まっている。
どうして嘘をついたのか、噂のどれが本当なのかは、もうどうでも良かった。
今、栗本がどこで何をしているにしても、全ては自分自身が撒いた種なのだから。
くだらない嘘で人を陥れようとした報いは今後も必ず降りかかることを覚悟しているがいい。そう
呟いて、まだ煮え切らないものはあるものの、後はもう一切忘れることにした。

99 :
栗本の件もあって、女の子や恋愛に関して僕は一層懐疑的になった。この世にはどうしてそんな
ものばかりが山と溢れているんだろう。どうして女というものは愛なんかを全ての拠り所にしたがる
のか、ますます分からなくなった。
ただ、美っちゃんが変な女に引っ掛からないようにはしてあげたかった。男の価値は心にあるの
だから、目に見える表面じゃなく、内面を気に入ってくれるような女性ならいいのに。そうだ、鏑木
さんのような子が世の中にもっと増えれば、美っちゃんももっと幸せになれるだろう。
「本好くん、大変だったね」
考えながら廊下を歩いていると、後ろから声をかけてぽんと肩に手を置く人がいる。ハデス先生
だった。
「…そうですね、何事もなく終わって良かったです」
当たり障りのない返事をして通り過ぎようとして、ふと気付いたことがあった。この人も恋をして
いるのではないかと。特に何を知っている訳でもない、ただの勘のようなものだ。しかし妙なほど
確信が持てた。
例の事件の噂のどれかが本当だったとして、栗本は恋で身を滅ぼした。だから必ずしも恋愛感情
が良いものではない。けれど決して悪いものでもないことを証明する実例が見てみたかった。本当
ならそれが美っちゃんにとって良い相手と巡り合う瞬間であれば喜ばしいけれど、そう簡単には
いかないに違いない。
ならこの人であれば、大人である分幾らか容易そうに見えた。
だから僕はわざと意地の悪い質問をしてみよう。
「先生、恋をしていますか?」
案の定、困ったような顔をして無理に笑うばかりだった。




100 :
GJ!
本好は本当に性別:本好だな

101 :
GJ!
さすが「知性」の本好
この前のリベンジで今度こそエロ書きたい
>>94読んでたら本好で何かやりたくなった
相手誰がいいかな

102 :
本好大人気だなw
本好関連は全部おもしろいw

103 :
本好は程良いポジションで目立たないから想像の余地があるし、キャラも
かなり立ってる。
ただやっぱりエロは思いつかない。フラグ立ってる女子もいないし。
そう考えるとハデス先生以上に難物な訳だ。

104 :
本好はまともに絡みのあるキャラが男ばかりなうえ
安田のエロネタに心底不愉快そうな顔をするくらい
女子にもエロにも関心を示さないからな
体育に参加できないくらい病弱なやつってエロやっても平気なのか?
お色気女教師やナースにエロ方面を開発してもらうしかないのか!?

105 :
本好話、続きじゃないけど何となく関連はある
書けたので投下

106 :
このところ、よく考えることは恋についてだ。
もちろん僕自身は今のところ恋にも女の子にも特別興味はない。まだ中学生なのだし、早いと
すら思っている。大学で自分ひとりの力で生きていく為の基礎的な能力を身につけた後に、社会
に出た時ならようやく可能かも知れないと思うだけだ。
そこで良い出会いがあり、この女性とならばと思えるならそれで良し、そうでないなら一人でその
まま生きていくだけのこと。もちろん両親を喜ばせる為に将来幾らかの譲歩をする必要もあるに
しろ、最低限の自分の気持ちだけは変えたくなかった。
余談だが、僕の全ての価値観の基礎は美っちゃんの影響に基づいている。美っちゃんが今後
生涯の伴侶となる相手と出会えて幸せになったのを見届けた後でなら、僕もきっとそれを見習え
そうな気がした。
どちらにしても、それが叶うのは恐らく大人になってからのことだ。周囲の女の子たちの見る目が
ないせいもあって、美っちゃんはまだ当分モテる気配もない。
そんなある日、昼休みの終わりに僕は廊下の隅で一年の女子から呼び止められた。彼女の両隣
には二年の女子が付き添っている。
顔も知らない一年女子は不安そうに真っ赤な顔をして、手紙らしきものを抱き締めていた。そして
意を決するようにそれを差し出してくる。
「あの、これを藤先輩に渡して貰えませんか?」
ああそういうことか、と次の瞬間に思わず鼻で笑ってしまった。別に僕に対して好意を向けられて
いるかもと自惚れていた訳じゃない。好きという気持ちを直接本人にぶつけられないのなら、所詮
その程度の気持ちしかないということだ。
「藤なら教室にいるから、自分で言えば?」
わざと突き放すように言ったことが気に障ったのか、両隣にいた二年女子たちが騒ぎ出す。三人
がどういう関係なのかは不明だが、同じ部に所属していて仲が良いとか、そんなところだろう。
「あんた何様?それが出来ないから頼んでるんじゃない」
「自分がモテないからって僻んでるんじゃない?」
全くくだらない女たちでうんざりするばかりだ。言いたいなら勝手に言ってればいい。どのみちどれ
だけ好きだろうと、気持ちと行動が伴わなければ恋は最初から門前払いを食わされるだけ。それ
に気付かずに一生報われない不幸なワタシと嘆くがいいさ。
一年女子は手紙を抱えてしくしく泣いている。二人の女子はますます激昂して口汚くなっていく。
まさに修羅場といったところか。当事者であればの話だが。
僕は頃合を見てポケットに入れてあったICレコーダーを取り出した。

107 :
「あんまりうるさいと、藤にも聞こえるんじゃない?」
それが何なのか最初は分からなかったらしい三人は、次第に顔色が青くなったり赤くなったりで
百面相のようだった。こんなものを録音するつもりは最初からなかったけれど、あまりにもしつこい
ので自衛策を取っただけのことだ。
「あ、あんた…それを藤くんに…」
聞かせるつもりか、と言っているつもりの口は機械のようにぱくぱく動いているだけだった。
「手紙、直接藤に渡せばいいことだよ。簡単だよね」
もうこんなくだらない女たちには関わりたくなかった。
以前にも全く無関係にも関わらず、どうでもいい女のせいで刑事事件にされかけ時間を無駄に
したことがあったけれど、どうして女は恋でここまで愚かになれるのだろう。他のものは一切目に
入らなくなってしまうのが理解出来ない。
それとも、もしも恋に落ちたとしたら僕もそうなるのだろうか。決してならないと言えるだけの自信
はない。そこまで胸が焦げるほどの思いを感じたことがまだ一度もないからだ。
「あなたたち、お昼休みはもう終わりますよ。教室に戻りなさい」
立ち尽くしている女たちに見切りをつけて背を向けようとしていた時に、タイミング良く声をかけて
きたのは才崎先生だった。
「あ、いいえ…何もありません…じゃ」
録音されていたことに驚いて萎縮していた三人の女子にとっても、これは良いタイミングだったの
だろう。弾けるように立ち去ってしまった。
「本好くん、どうしたの?何か揉めていたようだったわね」
「…本当に何でもありません。では教室に戻ります」
「もうすぐ予鈴が鳴るから、急いでね」
職員室に向かう才崎先生を見送ってから踵を返しかけ、僕はあることに気付いた。匂いだ。
体臭などというものではなく、気配が香るといった方が的確だろうか。
極悪な人間には醜悪な気配がある。狡猾な人間には油断ならない気配が。それが濃厚である
ほど、見えないものであるにも関わらず身の回りに纏われて香気に似たものになるのだ。当然
人によってその性質は大きく異なるので香気も変化する。
それも一つの能力なのだろうか。僕はそれを感じるお陰で、これまでの人間関係を辛うじて円満
に過ごしてきたのだ。
才崎先生に感じた気配は、恋。
以前ハデス先生に感じたものと全く同じものだった。

108 :
同じ職場にいることでもあるし、二人がそういう関係であっても別段不思議ではない。ただ、恋人
同士であったとしても気配の質までがほぼ同じになることなど、これまでの経験上有り得ないこと
だったのだ。
とはいえ、二人についてはただの気配だけのことで、今のところは何の確証もない。
それでも今後美っちゃんの幸せに繋げる為の参考ぐらいにはなるだろう、と密かに観察を始める
ことにした。きっと恋を知らない、必要性も今のところ感じない僕にとっても、何か得るものはある
に違いないのだから。
数日経っても、あの一年女子が藤に手紙を渡したという情報はない。あのまま怖気づいて諦めて
しまったのだろう。
鍋釜に至るまで八百万の神様がおわすというこの国で、しかも独自の言霊すらもあるこの国で、
その程度の行動力もなしに恋が叶うと思っていたのなら甘いにも程があるとしか言いようがない。
いくら神様でも見放すレベルだ。
どうせ藤は手紙なんか受け取っても読まないし、女子にはほとんど関心を持ってはいない。どうか
するとごく弱い気配を感じることもあるが、僕自身があまり藤に関わりたくないので知りたくもない
し、どうでもいいことだ。
気配どころか邪念だらけの安田は、今日も目をギラギラさせて女の子を追っかけている。考えを
変えればあれも幸せな生き方かも知れないが、僕自身の人生の損失になるので決して見習い
たくはない。
その邪念の塊が、その日は朝から嬉々として声をかけてきた。
「なあなあ、今度日暮と遊園地行くんだけど、これってフラグだよな?」
「へえ良かったね」
こんな奴にもたまにはいいことがあったのか、よく承諾する女子がいたなと興味のない声で一応
返事だけは返しておく。
「こりゃ張り切らないとなあ。これで一気に大人の階段?だったりして!」
「まあ頑張ることだね」
浮かれている安田を尻目に僕は自分の席に戻った。その途端に溜息が出る。クリスマス前という
時期もあるからだろうか、誰も彼もが恋に浮かれて結構なことだ。
美っちゃんがどうでもいい相手にのぼせてしまわないように、より一層注意深く見守っていかなけ
ればいけないと僕は気を引き締めた。
そして観察対象にしたあの二人のことも忘れてはならない。
いつか美っちゃんが素晴らしい恋人を得て誰よりも幸せになるのを見るまでは、僕自身の幸せ
なんて不要のものだ。
それまではどんなに時間がかかろうとも、傍観者であって構わない。




109 :
IDが、でらGJてww

110 :
でらGJ!
相変わらず本好クールだなww

111 :
GJ! 本好はほんと良キャラだなw
美っちゃんの幸せを見たいというのが、
実にラブでもライクでもなくリスペクトなのがよくわかるw
安田×日暮も好きなんで、さらっと入ってて嬉しかった

112 :
はっ!!
今になって、本好の一人称を間違えたことに気付いた。二作とも。
「僕」じゃなく「俺」だったね。
ごめん、ホンマごめん。

113 :
>>112
正直、GJとは言えない
一人称の違いも含め、本好らしくないし
本好は、そこまで女嫌いでも冷血でもないだろう
濡れ衣を着せられたとはいえ、悲惨な事件の被害者に
「いい気味だ、ぬまで悩み苦しめ」はないんじゃないか?
そもそも、一生の心の傷になりかねない事件だろうに…
リンカンに限らず、悲惨な事件の直後に錯乱するのはありえる話で、
その後もPTSD対策が必要だから、長期欠席も当然と言える
そりゃ個人差はあるだろうけど
こういうスレだから、リンカンを書くなとか言うつもりはないよ
ただ本好の内面が陰湿すぎて不快だし、キャラが違うと思う
あと、知性の本好なら、事件現場に立ち入った時、
「さっき警察に通報したよ」って言うべき
そうすれば、凹るより逃走する方を優先するだろうから
…まぁそれじゃ話が進まないわけだけど

114 :
sage忘れゴメン
校長に踏まれてくる

115 :
GJとは言えないなら黙ってればいいだけ
そもそも一人称見て合わないと気づいた時点で読むのをやめるべきだった
気に入らないSSにいちいち>>113の調子で批評?してたら、スレからあっという間に職人が消えるぞ
林間とか特殊エロは注意書きあったほうがいいと思うけどね

116 :
職人が消えたら困るな
>113の気持ちはわからなくもないけどさ
幸い一人称が違ってるんだからオリキャラの話だと思ってスルーしとけば?
キャラの良くない面(本好だと毒舌で皮肉屋)が強調されてる話は
今回みたいに荒れる元になるから気をつけたほうがいいとは思う

117 :
101だけど、本好の相手は>>104のナースでおk?
シンヤ、みのり、校長以外なら既存の女キャラでもいけそうだけど

118 :
>>90 展開的には女らしくなるためには経験するしかないと思ったシンヤが自分を慕ってくれてるリュウキに頼んでヤっちゃうみたいな感じ
拾ってくれる職人様がいたら幸いです

119 :
揉める原因になってごめん
自分でも突然思いついて勢いで書きながら、内容がネガティブだったんで
「これはどうなんだろうか」と思ってた。
勢いだけだったんで一人称含めて配慮が足りなかったね。

120 :
>>119
まあそんなこともあるよ
自分は文章が好きだったからまた投下してくれると嬉しい
今週藤花萌えた

121 :
今週は何だかんだと結局、様子を見に来る藤で藤花に萌えたな

122 :
手伝いには参加しないけど(たまたま通りかかったから)様子を見に行くとか
その行動に至るまでの藤の心情とか花巻さん窓拭きの片付けとかで色々想像したら楽しい
でもエロに繋がらん…

123 :
>>117
美人ナースにエロい悪戯されるのは男のロマン
期待してる

124 :
>>123
あなたは安田ですか?

125 :
>>122
様子見に来てくれたお礼にケーキ持っていった花巻がぶちまけて全身クリーム塗れに
それを藤がくまなく食べればいいんじゃないかな(性的な意味で)

126 :
邪魔をしてどうする

127 :
邪魔?どういうこと?

128 :
花巻の手伝いの邪魔ってことかと思ったが
手伝い当日じゃなくて、後日にケーキを持っていっても
>>125の展開にはなるし邪魔じゃないよな

129 :
>>118の龍真書いたんだけど
投下しようとしたらPCのほう規制されてた…

130 :
携帯から抗ってみる
シンヤの動機変えちゃってごめん

 呼び鈴が鳴って玄関を開けたとき、龍黄は来客の顔を一瞬親友と見間違えた。
 トウ、と呼びかけて、別人であると気付く。刀哉によく似た顔立ちのその人は、
「姐さんじゃないですか。どしたんスか?」
 そもそも、弟はよく来るものの、彼女にこの家の場所を教えていただろうか。
 鏑木真哉は思いつめた表情で、首をうつむかせて上目遣いに龍黄を見た。
 らしくなく小さな声で「家、今だれかいる?」と訊いてくる。
「いや、俺ひとりっスけど……」
 答えながら龍黄は既視感を覚える。返し刃と謳われる彼女にこんな暗い表情は稀だが、前例があった。
「まさかまた刀哉に何かあったんスか!」
 龍黄が勢いこむと、真哉は驚いたように顔を上げて首を振った。
「うっううん! そういうわけじゃないの。ただ、あの……」
 真哉は煮え切らない態度で目を泳がせると、玄関扉を支える龍黄の手に力なく触れた。
「あの、上がっても、いい……?」
 目に涙をためて、さも困じ果てた様子ですがりつき頼りこんでくる。
 そんな「女」の都合の良さを、龍黄はずっと嫌悪してきた。
 だのに龍黄は、
「ど、どぞ……」
 真哉に、抗えないのだ。

131 :
>>128の言うとおりです
>>122の想像が手伝い当日の話だと思ったので当日にエロ入れれないなら
後日談で入れればいいんじゃねと思って書いたが上手く伝わらなかったようだ
藤の家に持って行くとかいれればよかったな

132 :
 真哉は龍黄のベッドの隅に、遠慮がちに浅く尻を乗せている。
 茶でも、と龍黄が身を翻すと、その背中をとどめた。指先だけで、ほんの少し服をつまんで。
「いいよ、構わないで。あの、あのね、妹尾くん……」
 引き止めたきり、言いよどむ。
 迷いがあるわりに、気は急いているようだ。しかし肝心の用件は一向に見えてこない。
 気の短い龍黄はすぐに痺れを切らし、真哉の隣にどっかりと腰を落とすと、彼女の顔を覗き込んで噛み付くように訊いた。
「どしたんスか姐さん!」
 思わぬ顔の近さにびくりと真哉は身を引くが、やがて意を決したように口を引き結ぶ。そして、
「あっ姐ッ……さん!?」
 左手で自分の首からリボンを抜き取り、右手でほとんど引きちぎるようにしてブレザーを脱ぎ捨てた。
 厚いブレザーの生地すらも押し上げていた形の良い胸が、ブラウス越しによくわかる。
 真哉は龍黄の手を取り、持ち上げると、そのやわらかい胸に押し当てた。
 龍黄は目を剥き、顔を赤くして絶句する。
 慌てる龍黄の様子に真哉も改めて赤面し、ごにょごにょと口の中で呟いた。
「抱い、て……」
「何言ってんですか! どうして、何かあったんスか!!」
 龍黄は真哉の手を振り解き、身を引いて真哉から距離を取りつつ、混乱した様子で問い詰める。
 真哉はそれを追って身を乗り出し、ついには龍黄の胸板に手をついてのしかかってきた。
 龍黄の服を握り締めて、記憶を蘇らせているのだろう、なかば呆然とした表情で言葉を搾り出す。
「クラスの女子たちがね、話してたの……大人の男の人には、その、えっと、し、処女、は、めんどくさいんだって……。そっそれに、私、色気とか全然ないし……このままじゃ、このままじゃ……!」
 みるみるうちに目に涙がたまり、したたって龍黄の頬をぬらした。
「アニキに振り向いてもらえねーってか」
 龍黄は顔を歪めて雫を拭う。敬語も忘れて吐き捨てた。
 子分として、ハデスのことは純粋に尊敬している。しかし鏑木真哉という女を通して見れば、彼はライバルにほかならない。
 返し刃の真の脅威――その戦力の強さと裏腹な、女としての魅力。龍黄はその力に大敗北を喫したのだ。転校だって彼女の傍にいるためという理由が少なからずある。
 だのにどうして、彼女が他の男になびく手助けをしなければならない?
 しかし真哉は龍黄の苛立ちなど知る由もなく、ただ理解が得られたものと喜んでこくこくと何度も頷いた。
「そう、そうなの。だから……ね、妹尾くん……」
 真哉がブラウスのボタンを外しながら龍黄に迫る。
 逼迫した面持ちで、けれど恥ずかしそうに頬染めて、熱い額を首筋にすり寄せる。
 ――わたしを、おんなにして?
 こんな「女」の都合の良さを、龍黄はずっと嫌悪してきた。
 だのに龍黄は、
「姐さん……」
 真哉に、抗えないのだ。

133 :
 ブラウスをはだけて、ホックを外したブラジャーも鎖骨の辺りまでずり上げ、露わになった乳房に龍黄はむしゃぶりついていた。
 姉たちが毎日のように押し付けてくるため、龍黄は女の胸の感触には慣れている。
 真哉の胸は、どの姉よりも弾力があった。
 やわらかさでは、きっと竜美が一番だろう。けれどこの、爪を立てたら破裂しそうなハリと弾力は、姉たちにはない。
 胸筋もすげェんだな、と考えながら、試しのように龍黄は軽く歯を立てた。
 真哉は「やっ……」と身をよじって痛がる。当然、胸は弾けたりはしなかった。
「……すいません」
 ばかばかしいのかおもしろいのか解らなくなって、龍黄は苦笑しながら謝った。
 赤くなった噛み痕を癒すように舌で舐めた。そのまま舌を移動させて、やがてキリリと立ち上がった乳首に至る。
「ひ、あッ……」
「イイですか、姐さん」
 片方の胸に吸い付いて、もう片方をもみしだくと、真哉の体がふるふると震えた。
「あっわか、んな……くすぐった……んんっ」
 刺激を与えるたびに体を震わせて、息を荒げている真哉だが、あまり声は出さない。
 敏感な所に触れたときに鼻の奥で小さく声を上げるだけだ。
 兄貴分たちに見せられるAVに比べると静かすぎるくらいだ。
 「女の喘ぎは演技八割」という噂は本当らしい。
「んあっ」
 龍黄の犬歯が乳首を掠めると、ひときわ大きく真哉の体が跳ねた。
 これがいいのか、と何度も繰り返す。加減を間違えると敏感な場所だけに痛めつけそうなので、慎重に。
「ひあ、あっあっあっあっ、せの、妹尾く、それ……っ!」
 媚びた演技のできる女じゃない。そんな彼女の喘ぎ声は、本当に感じているのだと伝わってきて、龍黄を高揚させる。
 龍黄はその責めを執拗に繰り返した。真哉は首を振って喘ぐ。
「やあっ! ん、あっ……」
 牙で撫でるように乳首を責めたてながら、龍黄の手は乳房を離れ、下へと下りていく。
 下着はスパッツと一緒にとうに脱ぎ捨てていて、腰にはスカートだけが残っていた。
 腿を下から撫で上げるように指先を這わせて、スカートの下に手を滑り込ませる。
「ふぅ……っ」
 くすぐったかったのだろう、真哉の肌が少し粟立ったのが解った。
 手を腰まで上らせると、今度は股間の繁みを撫で下ろす。
 毛の流れに沿って掌を這わせると、指先は自然と秘部の割れ目に滑り込み、そのままとぷりと蜜に絡んだ。
 とろみのある液体は、けれどもはや会陰を伝って尻のほうへまで流れ込んでいた。後ろ側のスカート生地が濡れて、色が変わっている。
 女は濡れる、というのは常識的に知っていたが、こんなにも溢れ出るものだとは思わなかった。
 単純に興味深くて、龍黄はいたずらのように蜜を掻き出して陰部全体に塗りたくる。
「あっああっや、んあ、ああっ」
 甘い声を上げ続ける真哉。大分感度が上がってきているようだった。しかしまだ吐息に鼻声を乗せている程度だ。
 しかし龍黄の指がぷくりと尖ったやわらかい芽をひっかいたとき、それまでにない甲高い声を上げた。
「あっ!? んああああっ!」
「姐さん……ここ?」
「ああっだ、だめっそこ、ひあっああっだめっだめえ!」
 爪先をつりそうなほどつっぱって、真哉はびくびくと体を跳ね上げる。
 愛液は掬う間もなく溢れ出て、龍黄の指の動きを更に滑らかに助長した。ねばっこい水音をさせながら、速く速くすりあげる。
 やがて、陰核の皮がむけていっそうつるりとした皮膚があらわになった。
 痛めてはいけない、と龍黄は少し慎重に、やや力を抜いて指の腹でそこをこする。
「っやあああん!」
 より大きな真哉の嬌声が上がる。
 ああ、気持ちいいのか。龍黄はにやと笑って愛液を掬い取り、二本の指で陰核を挟みこむと、先刻以上の速さでしごいた。
「あああうあっだめ、そんなの、いや、やんっあ、ああ、あああんっ!!」
 真哉はおもしろいように反応して、どんどん声を上ずらせていく。
 そしてのどの極限まで、かすれるほど高くなった声が、息を詰めるように止まった。
「あっあっあっあ…………っっ!」
 全身がビンッと強張り、きつく目を閉じてぎゅっと眉を寄せている。
 数秒ほどそうして何かに耐える様子を見せて、深い息を長く長く吐きながら脱力していった。

134 :
「イッたんですか」
 少しからかうように下から龍黄が笑いかけると、真哉は「やあ……っ」と恥ずかしそうに手で顔を覆った。
「でもまだ終わんねーっスよ」
 いつにない彼女の媚態を散々見せ付けられて、龍黄も最早限界だった。
 ガチャガチャと乱暴に金具の音をさせて手早く前をくつろげ、怒張した陰茎を取り出す。
「ふえっ!」
 指の隙間からそれを見た真哉が驚いたような声を上げて慌ててまた手で顔を覆う。絶頂で一度引いた頬の赤みも、また耳まで染まっていた。
 弟がいることもあり男性器を見たことがないわけではないだろうが、こんなにもしっかりと勃起した姿は言葉でしか知らなかったのだろう。
 恥じ入る姿がいじらしくて、見せ付けるように龍黄は陰茎を真哉の白い腿にこすりつけた。
 先走りで濡れた先端が真哉の肌に触れて糸を引く。鍛えられた真哉の腿は硬めで、力強くこすられる感触があった。
 独特の快感に、龍黄の陰茎はますます硬度と熱を増していく。
「あう、やだぁ……」
「どうですか」
「えっ、あ、熱……い……」
 感想を口にして更に恥ずかしくなったのか、「やだやだっ」と真哉は身もだえした。
 龍黄は手で弄ったときと同様、少しずつこすりつける位置をずり上げていく。真哉の腿に、龍黄の先走りでちらちらと濡れ光る道ができていった。
 上りつめた熱はやがてもうひとつの熱に行き当たる。
「ひ……っ」
 ひくん、と真哉が反応した。
 龍黄の先端が、真哉の蜜穴の入り口に当たったのだ。他のどこよりもむにむにとやわらかいヒダ肉が先端の敏感な部分を包み込んで、じわじわと快感がにじんでくる。より明確な快感が欲しくて、龍黄の腰がうずいた。
「姐さん」
 荒い息と共に、急いた声を出す。その言葉の意味を、真哉も理解して、おそるおそる頷いた。
「う、ん……妹尾く……あ、ああッ!?」
 許可が下りきるのも待ちきれず、龍黄は真哉が頷くのと同時に突き入れた。
 ズクリと肉を断つような感触があって内心ヒヤリとするが、押し寄せる快感が大きすぎて気にする余裕がなかった。
 自分の手でしごくだけでは到底得られない、性器全体を熱くきつく包み込んでしめつけて摩擦される感覚。
 けれど龍黄が駆け上がる快感に背骨を震わせたのは一瞬で、すぐに強烈な痛みに意識を飛ばしかけた。

135 :
 大きな物を受け入れたことがない体腔は驚くほどに狭く、加えて破瓜の痛みに真哉が身を強張らせたのが災いした。
 尋常でない筋力を誇る真哉は膣括約筋の力もやはり尋常ではなかったのだ。
 締め付けられるを通り越して握りつぶされそうな痛みに龍黄の息子は萎縮した。
 ベッドに膝をついて、龍黄は真哉に覆いかぶさるようにへたりこんでしまう。
「姐っさ……ちから、抜い……ゆる、おれ、つぶ……っ」
「ふぇっあっご、ごめんね!」
 体の使い方を熟知している真哉は、深く胸に息を吸い、初体験でありながら巧みに膣の力をゆるめていった。
「ん……っだい、じょうぶ……?」
「ありがとうございます……姐さんこそ大丈夫っすか?」
 痛みから解放されて余裕のできた龍黄は、真哉にのしかかった状態から少し身を起こし、彼女の顔色をうかがった。
 真哉はすこしぼんやりとした表情で、目に涙を溜めていた。
 痛いのだろう。体も、心も。
「すいません……」
 アニキじゃなくて、とは口の中だけで呟いた。真哉はゆるく首を振って、両手で龍黄の肩を抱く。
「ううん……私が頼んだんだもん……妹尾くん」
 促されて、龍黄は腰を少しゆすった。
 体積を取り戻した陰茎全体が、所々で感触の違う膣に一度に締めつけこすられて快感が突き抜ける。
「ああ、ぅん……っ」
 真哉の声は、先ほどまでの喘ぎとは違っていた。純粋な痛感からくるうめきだ。
 龍黄はあまり急な角度で膣壁にこすりつけないよう心がけ、できるだけ優しく腰を進めた。
 先の絶頂でとろんとろんに濡れきった膣に初めての出血もあいまって、じゅっぷりと包み込まれた陰茎は滑らかに出入りする。
「姐さん……あ、ねさ……っ!」
 何度も呼びながら腰を打ち付ける。答えるように、肩にかかっていた真哉の腕が龍黄の首に巻きついた。
「ぅあ、んっあ、……ぅき、龍黄ぃ……」
 体を中心から揺さぶられて震える声で、真哉は龍黄を、初めて彼の名前を呼んだ。
 その音は、龍黄の心臓を熱くする。
 毎日毎日キーキーとした女の声で、飽きるほど呼ばれる自分の名。けれど恋い慕う彼女の声で呼ばれるそれは、まるで意味が違った。
 すでに真哉の体への労わりや気遣いなどする余裕もない。龍黄はひたすら快感を追って、真哉の膣を貫き続ける。
 初めての強い快感に龍黄は、早々に順調に登りつめていった。
 限界まで大きく硬くなった陰茎が、膣の中を敏感に感じとる。
「……ッア、まや、さん……っ!」
 龍黄もまた初めて真哉の名を口にして、それを合図に絶頂した。
 腰が震えて意識が白く飛ぶ。強い解放感に打ち付けられて、荒い息を吐きながら真哉の上に倒れこむ。
 そこはちょうど胸の上で、ぽよんとした乳房の間に顔面を埋め込む形になった。
「龍黄……」
 真哉は優しく呼びかけながら龍黄の頭を抱いた。
 豊かな胸に顔を押し付けられて息苦しさを覚えたが、龍黄は振りほどこうとはしなかった。

おわり
メール上限が5000字とは知らず
あと数百字ってとこで本文切れてて焦った

136 :
乙です
途中割り込んじゃってすみません

137 :
>>118だけど本当に拾ってくれた職人様がいて感激だ!
乙&GJでした

138 :
乙!
龍シンにハマったわ

139 :
乙!!
龍シン好きだから嬉しすぎる
もっと続きというか、このあと2人がどうなったのかも気になるくらいだ

140 :
乙!
続きが気になるよ。
藤花書いた。
藤がグダグダ青春の悩みに陥ってるだけの話になったかも。
タイトルは数年前のドラマから。視聴率あまり良くなかったけど結構好きで
見てたな。

141 :
未来。
いずれ必ず来るものだとは分かっていても、それを具体的に想像することは今までなかったような
気がする。
考えたところでどのみち自分の望む通りには生きられないんだろうと思うと、いつも思考はそこで
止まったきりだ。とりあえず、大人になってから考えればいいんだろうと、大抵は何かに逃避して
ずっと生きてきた感じが強い。
ハデスや友人たちと出会ってある程度感化された部分はあるが、それが今の時点での藤の偽ら
ざる気持ちだった。
「あー…なんか頭痛ぇ…」
その日は朝から頭が妙に重かった。
未来の自分を思わせる怠惰な大人に、数日前に会ったことも関係するのかも知れない。さすがに
あんな風になってしまうのは嫌だが、今の自分には一体何が出来るのかというとさっぱり分から
ない。
とにかく結果がああならないように、今のうちから軌道修正をしていくしかないのだ。
「藤くん」
ずっと放置してあった茶碗を持ち帰ろうと風呂敷に包んでいると、お茶を淹れ終えたハデスが声を
かけてきた。
「今日は随分調子が悪そうだね」
「んー…まあそうかな」
答えるのも何となくかったるい感覚があったが、妙に喉が渇いていたので風呂敷包みを抱えた
ままどっかりとソファーに座った。
「顔色はそれほど悪くなさそうだけど、疲れてるのかな」
「気にしなくていいって、そういう時もあるだろ」
これを飲んだら帰ろう。そう決めて熱いお茶が満たされた湯呑みを手にした。もう季節は冬に入り
かけていて、かなり日も短くなっている。窓の外は既に薄暗くなってきていた。
「このところ様子が変だって、才崎先生が心配していたよ」
「ふーん…」
その言葉にどこか引っ掛かるものは感じたが、とりあえず何も感じないでおくことにした。生徒の
様子に関して話し合うぐらいは、教師なら誰でもすることだろう。二人がそういう関係だろうとなか
ろうと関係のないことだ。
その一点で変に公私混同をしてしまうのなら、なりたくない大人のカテゴリーにまとめて入れる
ところだが、さすがにそこまでには至っていないらしい。

142 :
ともかく、やはり頭が重いままだ。
考えないようにしていたことが変に気に障って、つい絡んでみたくなった。
「『美徳さん』が、だよな」
「うん、そうだね」
わざとそう言ってみたのは単にハデスの反応が知りたくなっただけなのだが、意に反してさらりと
返されただけだった。あんな場面を見られていたにも関わらず、あれこれと変な言い訳をしなかった
ことも不思議と心に引っ掛かったままだ。
「…もっと驚くかと思った」
「そう?特に隠す必要はないと思うし」
ハデスは相変わらずの様子でテーブルの上に置いたお菓子を勧めてくる。そこだけは以前と何も
変わらないものの、やはり譲れない部分での強さを感じさせるものがあった。それもまた恋の力
というものか。
ずきりと、頭の隅が痛んだ。
何に悩んでいるのかもう忘れてしまったが、何となく口を開きたくなくて藤は押し黙ったままお茶
が少し温くなるのを待って飲み干してしまった。
今の状態でも結構面倒なのに、大人になるのはもっと面倒臭い。だからこそ、まともな大人でいら
れるというのは実はかなりすごいことなのでは、とも思い始めていた。むしろ勉強などよりも、そう
なれる方法を教わった方がよっぽど為になるのではないのかと。
「あー、面倒臭ぇなあ…」
口を突いた言葉にハデスがその複雑極まりない心中も知らぬまま笑った。
「大人になったら、分かるのかもね」
そんなに上手くいくものなのかどうかは、まだ分からない。
周囲はもうすっかり暗くなっていた。
ハデスから幾つかお菓子を貰ったので食べながら歩いているうちに、ついいつもの癖で寄り道を
してしまう。そこでとあるケーキ屋の前で足を止めた。ぶら下げている風呂敷包みの重さなど、
忘れてしまっていた。
店の前では赤ずきんのような格好の一人の少女が、近くの街路樹から舞ってくる落ち葉の掃除
をしていた。花巻だった。
前に偶然ここを通りかかった時にはガラス拭きをしていたのを覚えている。店名からして花巻が
店長の娘だというのは話さなくても察していたが、さすがにあの極端なまでのアガリ性では店内
での接客もままならないだろう。むしろ酷な気がした。
それでも、その後も何度か見かける度に何かの手伝いはしているので、花巻自身が率先して
申し出ているに違いない。あの性格に向いているのかはともかくとして。
「よう、花巻」
花巻は背を向けて掃除をしていて藤に気付かなかったが、声をかけられた途端にバネ仕掛けの
人形のように飛び上がって驚いた。
「…ひゃあっ!」

143 :
正直、そこまで驚くとは思っていなかった。
「あ、悪りぃ」
「あ、ふ、藤くん…?やだ私…」
ホウキを持ったままあたふた戸惑っている為に、掃き集めて塵取りに纏めようとしていた落ち葉が
再び舞い散った。
「あ…あ、う…」
更にテンパって訳が分からなくなっている花巻の手からホウキを取ると、藤は代わりにさっさと掃き
始める。
「ふ、じくん…いいって」
「びっくりさせたの俺だからさ、やってやるよ」
「…う、うん、ありがとう」
みっともないところをまた見られたと思っているのだろう、花巻はもじもじしながら真っ赤な顔をして
いる。何事もなさげに要領良く生きている人間なんかゴマンといるのに、いちいち何かにこだわって
不器用にしか生きられないところは、妙に似ているのかなとも思った。
「ほれっ」
落ち葉を吐き集めてからホウキごと塵取りを花巻に渡すと、ついでのようにまだポケットに残って
いたお菓子を一つ渡す。
「え…?」
ぽかんとした顔は、取り残された子供のようだ。
「頑張れよな」
「うん、ありがとう藤くん…」
まだ真っ赤な顔をして涙を滲ませたまま、花巻は少しだけ笑った。あどけない子供のようだった
顔が途端に愛らしくなる。
自分に何が出来るのか、どんな大人になれるのか。そんなことはやってみないと分からないし、
今思いあぐねて悶々としているのは滑稽というものだ。それでも、一つ一つ模索しながら一歩を
踏み出していって、何か少しでも結果を見出せたなら、それが成長なのだろう。
「あのさ」
周囲はもうすっかり暗い。さっきまで夕食の買い物や帰路を急ぐ為に途切れることなく行き交って
いた人影が急に少なくなって、街は別の世界のようにしんと静まり返っている。
「…藤くん」

144 :
何を言われるのかと不安そうな表情で見上げた花巻の唇を、何も言わずにそのまま塞いだ。街路
には誰もいない。店内からも二人が立っている位置は角になっていて見えない。完全に外界
から遮断されていた。
花巻の唇から震えが伝わってきたので離れて目を覗き込む。
「急にごめんな」
「う、ん…いいけど…何?」
見開いた目尻に溜まった涙が零れ落ちそうだ。花巻は突然のことに驚いているだけだが、その
奥に微細な非難が滲んでいる。どうして、と。
「何でもないんだ、本当にごめんな」
大人になることへの不安は幾らでもある。これまで生きてきた経験が少ない以上、実際に大人に
なってみるまではこの先何年も悩むに違いない。分からないことだって山ほどだ。だからといって
焦っても苛立っても何もならない。
必要なことがあるなら、自分で掴んでいくしかないのだろう。
この数日、ずっと頭が重いままだったのは、そんな慣れない悩みに支配されていたからだった。
でも、そうして無駄に時間を潰すのも自分らしくない気がした。
「…私、びっくりしただけ…だから気を悪くしちゃったらごめんね」
戸惑ったように笑いながら、花巻は藤の手に冷たい小さな手を重ねてきた。その冷たさが妙に
心地がいい。
「そんなことない」
本当に、今まで囚われていたものがもうどこかに消えてしまっている。代わりに花巻の存在の
確かさが自然と伝わってきた。どうせ一人で成長しても心許ないだけだ。なら二人でいればどう
だろう。少しは何か違う結果になるかも知れない。
そんなことを考えている藤の耳に、街の喧騒が戻ってくる。
夜を迎えて、再び街が賑わいを取り戻したのだ。
「俺さ、もしかしたらお前のこと」
声は最後まで続かなかった。
自分で少しずつ知っていかなければいけないことがどれだけあっても、一人じゃなければ何とか
なりそうな気がした。だけど今はまだ口にすると壊れてしまいそうで怖い、とも思った。




145 :
GJ!
かわいい!かわいい!!!
このスレではハデみのは完全にカップル扱いだなw

146 :
GJ!
藤みたいなやつにとってはいつも頑張ってる人が
隣にいることがいちばん効くんだろーなー

147 :
GJ
甘くちょっと切ない感じが実に俺好みだ

148 :
藤花続きで申し訳ないが書いたので投下します
10レスほど消化予定

※花巻さんがちょっと強引にやられちゃいます
※藤ってこんなやつだっけ?

149 :
パレットに出した橙色を水で溶いて明るさを調節する。
この色を重ねていくと、人の肌の色になるのだ。
思い通りの明るさができたら、いったん筆を洗い水気をふき取って深呼吸した。
そして、目の前のカルトンに貼り付けられた画用紙と向き合い、それをじっと見つめ
る。
すると、さっき深呼吸したばかりなのに、緊張で心臓がバクバク言い始めた。
(あう……、落ち着いて美玖!失敗なんてできないんだから……!)
自分に言い聞かせるけど、心臓はいっこうに言うことを聞いてくれない。
筆を持った右手で胸を押さえながら、気持ちを落ち着けるために深呼吸を繰り返す。
そして、震えそうになる手を何とか抑えながら筆に橙の絵の具を取った。
画用紙は、昨日入れた影のグレーが完全に乾いていつでも色を重ねられる状態だった。
その画用紙の中で気持ちよさそうに眠っている人物は、藤くんだ。
私は絵は好きだけど、まさか藤くんの絵を描くだなんて思ってもみなかった。
だって勝手に描くのは藤くんに悪いし、もし失敗して下手くそな絵になっちゃったら
もっと悪いから。
だからこの絵は自分で描こうと思ったんじゃなく、藤くんにお願いされたものなのだ。
藤くんとときどき一緒に帰るようになって、始めのうちは何も喋ることができなくて
しどろもどろしてるだけだったけど、最近は少しずつだけど藤くんの話にちゃんとし
た言葉を返せるようになっていた。
藤くんにいつ誘われてもいいように、ノートにたくさん書きためてある話題はまだ一
つも使えてないけど、「はい」とか「えと…」とかしか言えなかった頃に比べれば大
きな進歩だと思う。
だから、もっと頑張らなくちゃいけないのは分かってるけど、それでも藤くんと話が
できることがすごく嬉しかった。
そんな藤くんと一緒の帰り道、私が美術部だと知った藤くんが自分の絵を描いてくれ
と言ってきたのだった。

150 :
「じゃあさ、俺の絵描いてくれよ」
「ふぇっ!?……ふ、藤くんの絵を……?」
思いもしない言葉に思考が停止した。
え?え?藤くんの絵を?かく?私が?それってどーいうこと?えと……藤くんの絵を
藤くんのえを藤くんのえおふじくんのえおくぁwせdrftgyふじくん……
「……まぁ別に嫌だったらいいんだけど。無理に頼むわけじゃねーからさ」
足を止めて目をぐるぐるさせている私を訝しがりながら藤くんが声をかけてきた。
どうやら戸惑う私を見て迷惑がられていると思われてしまったようだ。
私は慌てて言葉を返した。
「あ、いえ……。その……ち、違うの!
 びっくりしただけで……、全然嫌なんかじゃなくて……
 あの……わ、私でよければ……か、描かせて……くださ…い……」
最後は本当に消え入りそうな程の声で言った。アガッてしまって、ちゃんと言葉が出
せたかどうか自分でも分からなかった。
それでも、藤くんは少し安心したような顔をすると、
「……そっか、サンキュ。そんじゃよろしくな」と言った。
それから、部活が休みの日に藤くんと二人でこっそり美術室に入り、藤くんの絵の下
描きを描いた。藤くんは気にしてないみたいだったけど、美術部のみんながいる前で
藤くんにモデルをやってもらうのは、さすがに恥ずかしくてできなかった。
あまり動かないでいてねと頼むと、藤くんは「おー」と言って椅子に座ると、机に突
っ伏して10秒で寝てしまった。
少し呆れながら、私は藤くんの寝顔をスケッチし始めた。
友だちに誘われて入った美術部だけど、昔から絵を描くことは好きだったからこの部
活は私にとって全然苦にならなかった。絵を描くのが楽しくて、もっと上手に描ける
ようになりたくて、一年生の頃は何枚も何枚もデッサンを描いた。
何をやってもダメな私だけど、少しずつ絵は上達したし、ナイフで鉛筆を削る時に指
を切る回数も減った。私が何回失敗してもまた頑張ろうと思えるのは、絵を描いてる
お陰なのかもしれない。
藤くんとのお話も、絵と同じように少しずつ上手になれたらいいなと思った。
そういえば藤くんはどうして私に絵を頼んだのだろう。丸くなった鉛筆を削りながら
ふと思った。少し考えたけどよく分からない。ただの気まぐれかなと思いながらナイ
フを置き、削り終わった鉛筆で画用紙に線を加えていった。
スケッチが終わっても藤くんはなかなか起きなくて、私はしばらくすやすや眠る藤く
んの寝顔を見ていたけど、外が薄暗くなってきたので、悪いと思いながらも藤くんを
起こした。
藤くんは私の絵を見たがったけど、私は何だか恥ずかしくて、まだ完成してないから
と言って見せるのを頑なに断った。

151 :
藤くんに絵をお願いされてから2週間が経っていた。
私は藤くんを避けている。なるべく藤くんに話しかけられないように、休み時間はト
イレに行き、放課後はHRの後すぐに帰るようにしていた。
今日も一日、藤くんと話をすることもなく何とか乗り切ることができた。
(うぅ……できることならこのまま何もなかったことにしたい……
 ……そうだ、藤くんが私のこと全部忘れてしまえばいい……)
涙目になりながらそんなことを考えていると、突然後ろから声をかけられた。
「よう花巻!」
「ひゃうううううううう!!!」
「……相変わらずだな。あのさ、俺の絵描いてくれって頼んでただろ。
 水彩だからあんまり時間かからないって言ってたけど、あれどうなった?」
藤くんだ。とうとうこの時が来てしまった。避けられないことだとは分かってはいた
けれど、できる限り先延ばしにしたい。そんな最後の審判の時が、来てしまった。
「あう……藤くん……そ、それなんだけど……
 ……ごめんなさい。……えっと…し、失敗しちゃって……その……」
私がもじもじしていると、大したことないというような表情で、
「ふーん?まぁ俺の絵なんかより100倍マシだろ。
 今日は部活休みで美術室に誰もいないんだろ?ちょっと見せてくれよ」
そう言うと私を置いてさっさと教室を出ていってしまった。
「あっ……だ、ダメ……っ!」
咄嗟に言って止めようとしたけど、藤くんはもう教室を出てしまっていた。
(どうしよう、どうしよう……)
頭の中をぐるぐるさせながら、私は仕方なく藤くんの後を追った。どうにかしなくち
ゃいけないのに、思考が全然まとまってくれない。溢れそうになる涙を必にこらえ、
バクバク言う胸を両手で押さえながら、重い足取りで美術室に向かう藤くんに付いて
いった。

152 :

「……なんだよコレ」
イーゼルに置かれた絵を見て、藤くんは怒っていた。私には背を向けているから顔は
見えない。でも、声の調子から怒気が伝わってきていた。……怖い。
絵は、刃物でずたずたに引き裂かれていた。
恐らく美術室にあったペンディングナイフで傷をつけたのだろう。切り口は粗く、重
色が足りなくてまだ全体的に薄い水彩を汚すように絵の具の原色がこびり付いていた。
「……コレお前がやったんじゃねーだろ」
きつい口調で言う藤くんに、私は何も言えなかった。
たぶん同じ美術部の誰かを通して、この絵のことが藤くんのファンの子に伝わったん
だろう。これはきっと、分不相応に藤くんと仲良くしてた私に対する報復だ。
「……誰だ、やったの」
「……え…、その……わ、わかんない……」
低い声にびくびくしながら、私はやっと答えた。
誰がやったかなんて、そんなの知ろうともしなかった。
だって、これをやった子の気持ちが全然分からないわけじゃなかったから。私だって、
藤くんが他の子と仲良くしてたらきっと嫌な気持ちになるだろう。私はその子と同じ
だ。
だから、私にはその子を見つけ出して責める気にはなれなかった。
ただ、藤くんのために心を込めた作品が台無しになってしまったことだけがどうしよ
うもなく悲しかった。
でも、だからと言って私には何も出来ない。私に出来ることは、誰にも迷惑をかけな
いように、誰にも心配をかけないように、起こったことをひたすら隠すことだけだっ
た。
それじゃダメなことは分かっていた。いつか知られてしまうことだということも分か
っていた。でも、どうすればいいのかは全然分からなくて。考えても考えてもその答
えは見つからなかった。
どうしようもない自分が情けなくて、涙がこぼれそうになる。

153 :
私が鼻をすすって俯いていると、藤くんは怒った表情のままこっちを向いて言ってき
た。
「探すぞ、犯人」
「……えっ?……あっ…嫌……やめて……っ!」
私は慌てて、目の前を通り過ぎようとする藤くんの袖を掴んで必に止めた。
「はぁっ!?お前こんなことされて悔しくねーのかよ?」
「う……だって……その、ほら……わ、私が悪いの……っ!
 ……私が…私なんかが藤くんを好きになったから……」
「……っ!……何だよそれ……!」
藤くんの怒気がさっきまでとは異質なものに変わった。
驚いて藤くんを見上げると、藤くんは怒りのこもった、それでいてどこか悲しげな眼
つきでこっちを真っ直ぐ見つめていた。
掴んでいた袖を振りほどかれ、両肩を乱暴に掴まれる。
「何だよそれ!!ふざけんな!!!
 お前が俺を好きになったら悪いのか!?
 俺はお前に想われちゃいけないのかよ!?」
背の高い藤くんが、私に覆いかぶさるようにしてまくし立てる。
私はわけが分からず、荒々しい藤くんの口調が怖くて、ずっと我慢していた涙が一筋、
すぅっとこぼれてしまった。
「……っ!」
藤くんは一瞬辛そうな顔をして、そのまま私の口を塞いできた。
「……っ!……んっ……んむ……っはぁ……」
驚く間もなく藤くんの舌が口内に入ってきた。私は目を閉じて、されるがままになっ
ていた。
両肩を掴んでいた藤くんの手はいつの間にか私の背中に回され、私の体を力強く抱き
しめていた。私はまだ怖かったけど、目を閉じたまま藤くんの胸に手を置いてシャツ
を軽く握った。
「……はぁっ……ふ、藤くん……?」
長い口付けの後、口唇を放すと、藤くんは熱を帯びた眼で私を見ていた。
顔が火照って耳まで熱い。心臓は心音が聞こえてきそうな程高鳴っていた。

154 :
「……俺は…お前のことが好きなんだよ……」
藤くんが少し荒い息遣いで口を開いた。
「なのにお前はどうなんだ?俺のこと好きなのか?
 こんな俺のどこがいいんだよ?分かんねーんだよ、全然よ!!」
そう言うと、藤くんはもう一度乱暴に私の口唇に喰い付いてきた。
背中に回されていた両手のうち、一方は引き出した裾からシャツの下に侵入し素肌を
撫で、もう一方はスカートの下からお尻を掴んでいた。
「……あっ!……藤くん……こんなところで……?」
こういうことをするのは初めてではなかった。でも、学校でするのはやっぱり恥ずか
しい。
私は少し嫌がる素振りをしたけど、藤くんは気にも留めずに愛撫を続けながら、私の
首筋にキスを落としていく。
私はもう抵抗はせずに、藤くんのくれる少し荒っぽい刺激を全身で受け止めた。
「……は……あっ…ん……っ!」
藤くんの指が膨らみかけた胸の周りを這う。そこに当てられた布はほとんど見栄だけ
でつけてるものだけど、その中に隠れている二つの頂点は確かに硬くなっていた。
指がその頂点をなぞる度に快感が走り、思考が融けていく。
「ひゃっ……ぁうっ!!」
突然、それまでとは質の違う強い快感が全身を襲った。
キスと愛撫で充血して膨らんだ私の突起を、藤くんの指が不意に擦ったのだ。
指はそのまま私の奥へと侵入し、内襞と突起とを同時に責めてくる。
そうやって敏感な部分を責められながら、愛液で濡れ始めた下着がずり下ろされた。
「……っふぁ……!あ……ぁあ……藤く…ぅん……」
気持ちがよくて腰が砕けそうになる。
藤くんは私の身体を支えて机の上に腰掛けさせると、ベルトを緩めて自分のものを取
り出した。

155 :
「え……もう……?」
まだ早いと目で懇願したけど、藤くんの目は熱を帯びるというのを通り越してもはや
血走っていた。
それを見て、私は藤くんのすべてを受け止めてあげたいと思った。
藤くんは、私が藤くんのことを好きなのかどうか分からないと言った。
私が藤くんのどこを好きなのか分からないと言った。
藤くんはきっと不安だったんだ。
私はいつも藤くんの隣にいるだけで、何もしてあげられてなかったから。
私が何もしてあげられないから、私の気持ちが藤くんに届いてなかったんだ。
藤くんは私にはない「すごいところ」をたくさん持ってるのに、藤くんはそれに気づ
いてなくて、私はそれを伝えられてなかったんだ。
私が絵を描くと言った時の、藤くんの安心した顔が頭を過ぎった。
……馬鹿だな、私。
私はやっぱり、もっともっと頑張らなきゃいけなかったんだ。
もっともっと頑張って、藤くんにあんな安心した顔をさせてあげられる人になりたい
と思った。
「藤くん……きて……」
「……花巻……」
藤くんは私の片足を持ち上げると、そのまま自分の身体を私に重ねてきた。
藤くん自身が私の中に入ってくる。
まだ準備が整っていない痛みに顔が歪んだけど、それでも藤くんの全部を受け入れる
ことが出来た。
藤くんが私の腰を抱えてゆっくり動いてくる。
「んっ!……つ…うぅ……!…ぅあ……っ!」
動かれるとさらに痛いけど、ゆっくりした動きから藤くんが自分を抑えようとしてく
れているのが分かる。その優しさに、痛みとは違う涙が一つ流れた。
それでも動きはだんだん激しくなっていき、掴んでいた腰をさらに強く抱えて私の名
前を呼ぶ。
「……花巻……!花巻……っ!」
「藤くん……!あ…ぁあ……っ!」
私の中で動いていたものが、一瞬膨らんで痙攣する感触があった。
同時に、藤くんが私をきつく抱き締めてくる。
私は藤くんにしがみつきながら、藤くんと一緒にその感覚をやり過ごした。

156 :
「……花巻、ごめん……俺……」
藤くんは荒い息をしながら私から身体を離すと、すぐに謝ってきた。
あの藤くんが、今にも泣き出しそうな顔をしている。
私は息を整えて、ゆっくり首を振りながら言う。
「ううん、いいの……あ、あの……その…えっと……」
「ホントにごめん……無理やりするなんて最低だよな……
 ……俺、もう絶対しないから……ごめんな……」
「え?ううん、ホントによくて……そうじゃなくて……
 ……あの……も、もう一回……して欲しいな……って……」
「へ?」
「えと……その……だ、ダメかな……?」
藤くんはキョトンとして私の顔を見た。
「お前……怒ってねーの?」
「え?……うん……」
「俺のこと嫌いになってない?」
「ふぇっ!?……な、何で……?」
「何でって……無理やりしちゃったし……」
「え?……で、でも…いつもけっこう無理やりだし……」
「……」
10秒くらいの間があっただろうか。
藤くんが何も喋らないので、どうしていいか分からずあたふたしていると、
「……ぷっ!!」
藤くんが噴きだした。
「……はは!変なやつだな。俺やっぱお前のこと好きだわ」
そう言って私を優しく抱き締めてくれた。
「でもホントにごめんな。今日みたいなことはもう絶対にしないから……」
「……??……う、うん……」
藤くんが何をそんなに謝ろうとしているのかよく分からなかったけど、私は曖昧に返
事をして抱き締めてくれる藤くんの胸に顔をうずめた。

157 :

もう充分に濡れているから大丈夫だと言ったのに、藤くんはさっきよりずっと優しく、
ゆっくりと私の中に入ってきた。
私の心は言葉も出ないくらいに満たされてしまい、今にも溢れ出そうな気持ちを逃が
さないよう、藤くんの背中を優しく、それでも力強く、きゅうっと抱き締めた。
お互いに融けて一つになってしまいそうな幸福感の中で、藤くんに声をかけた。
「……はっ……ふ、藤くん……?」
「……っ……ん?」
「……っあ……私ね、藤くんのこと……す…好きだよ……?」
「……」
「テストの時、消しゴムをくれた時からずっと見てた……
 藤くんはね、面倒くさがりで怠け者で授業中はいつも寝てるし……
 ……んんっ……学校の行事はサボることばっかり考えてて……」
「……よく見てるじゃねーか」
「……ふふっ……それにぶっきら棒で礼儀も悪いの……、あ……っ」
「なんだよ……いいトコなしじゃん……」
「でもね、いつも自分に正直なの……
 ……あっ…だから、自分がいいと思ったことを素直に出来るんだよ……
 何でもないことのように、困ってる人に手を差し伸べられるの……」
「……」
「……ぅあ……私はね、誰かの役に立ちたくても…いつも……っはぁ……
 き…緊張して失敗しちゃうから……私も…藤くんみたい…にぃ……んっ……!」
「……」
途中から藤くんは何も言わなくなったけど、代わりに私をしっかりと抱き締めてくれ
ていた。

158 :

「なぁ花巻」
汚れてしまった下着を履き直してて、気持ちが悪いなぁと思っていると、藤くんに声
をかけられた。
「ふぁっ!?は、はい!!」
びっくりして返事をすると、藤くんは傷つけられた絵を見ていた。
「これ、俺にくれない?」
「……え?でも、そんなになっちゃって……」
「いいんだよ。こんなことがあったらもう俺の絵は描きたくないだろ?
 俺は完成してようがしてまいがお前の描いたものならそれでいいから」
「で、でも……」
「俺がいいって言ってんだろ?だからいいじゃん、くれよ!」
「は、はいいい!!」
強引に押し切られてしまった。
傷ついた肖像画を人に渡すのは忍びない。
でも、本人がいいと言ってるから、まぁいいか……?
絵を傷つけたのが誰なのか、追及するつもりはやっぱりない。
でも、いつか自分から謝りに来てくれたらいいな。
そして、その時には今よりもっと藤くんの隣にいられることに自信を持っていたい。
そうだ、私がもっと自分に自信を持てるようになったら、その時にはまた藤くんの絵
を描こう。
そして、絵と一緒に藤くんへの気持ちを贈るんだ。
「あなたはとてもステキな人です」と。




159 :
お粗末さまでした
しかし文章薄いなー。他の職人様方を尊敬せざるをえません

160 :
なんだよこれ…
切ないやらかわいいやらで凄いどきどきした
超良作ですGJ!!!
文章薄いなんてことないよ
行動描写も心情描写も凄い丁寧できれい

161 :
公式でハデみのパフパフが見れて幸せ
蝶間林が可愛すぎたので誰か頼む

162 :
原作のがエロいてどういうことだよw

163 :
いくら仕事のためとはいえ、自分のパンツ(多分使用済み)を実兄が頭にかぶるのを容認するのかみのりちゃん。
それでいいのかみのりちゃん。

164 :
まさか作者がパフパフを描くとは。
どこまで行くんだ、あの漫画は。

165 :
・パンツ=神への供物
・「『舐めたい!』と思えるような土踏まずを描かねばならない」
・「女子更衣室でも漁りにいくか」
才崎善徳・・・あなたをネ申と呼ばせていただくw

166 :
一位記念に郁くんと頼子ちゃんがズッコンバッコンするやつを

167 :
>>159
超GJ!
このスレ初めて来たけどいきなり素晴らしい作品に出会えて感激です

168 :
新作のためにみのりんとハデスをからませる善徳
これも兄さんがいい作品を書くため・・

169 :
>>168
なにそれ超読みたい

170 :
「仕事のため」で下着被るの許容するくらいだし、漫画のためと頼み込めば、ヌードデッサンさせてくれるんじゃないかと思った。

171 :
>>168
うおおお!
今週のハデみのパフパフで萌寸前だったのに、そのネタで書きたくなった。
いや、ハデみの職人としては何としても書かずにいられまい。
とりあえず今週は仕事が忙しいんで、土曜日深夜投下予定。

172 :
ハデみの大好きなので超楽しみにしてます…!
場繋ぎまでに例の本好エロを

 中学に上がってから初めての入院。
 最後にしたのは小学六年生のときだっただろうか。
 それ以前はほぼ一年に一回は入院していたので、成長とともに多少なりとも体は強くなっているようだ。
 美っちゃんぐらい頑丈になれるのは何年後かな……本好は、自らの点滴を打たれる細い手首を見下ろしてため息をついた。

173 :

 二年ぶりとはいえ、入院生活には慣れている。戸惑いや不便はない、いやないはずだった。
 入院生活三日目。本好の体調がほぼ回復し、退院も近くなった日の深夜。
 寝静まった病室で、本好は十二歳と十四歳の違いを思い知っていた。
 あの頃は無くて今は有るものがある。
 性欲だ。
 美作含め周囲の男子は小学校高学年ぐらいにはもうすっかりそういうことに興味津々だったけれど、本好はずっと遅かった。
 関心や欲求の限界を感じ、本好が自慰を覚えたのは実に中学一年生の終わり頃のことだ。
 それを生物的に当然のことであると受け止められるほどの知性が彼にはあった。
 しかしその行為や欲求、嗜好自体は秘すべきものと思っていたし、所構わず大声でそういうな話題を振り続ける男子(主に安田)たちには嫌悪を抱いていた。
 こんなこと、決して人に晒すものではない。
 いかに、堪えがたい欲求に苛まれても。
 ……トイレに、行こう。本好は意を決した。
 いくらトイレの個室でも気が引けて今までは我慢してきたが、もう無理だ。
 周囲の患者に、長い外出から何をしているのか予測されるような気がして、本好は可能な限りゆっくりと音を立てずに行動した。
 布団をまくりあげ、足をベッドの外側へ下ろしたとき、足音が近づいてきた。
 本好は舌打ちしたいのを堪え、ベッドに腰掛けたままの姿勢で音を立てないよう静止していた。
 足音は本好の病室に入ってくる。
 見回りの看護師だろうか、と思うと同時、本好のベッドを囲うカーテンが動いた。
 びくりと本好は跳ね、ベッドが鳴る。
 カーテンの隙間からしゅるりと滑りこんできたのは、やはり看護師だった。
 看護服が苦しそうな豊かな胸の、唇の厚い女。
 しかし見回りにしては様子がおかしい。
 手に何も持っていないし、勤務中ならぴったりと結んでいなければならない髪の毛がほどかれている。
 看護師はベッドに座ったまま硬直している本好に笑顔を寄せた。
 声帯を震わせない、吐息だけの声で耳元にささやいてくる。
「びっくりした? ごめんねえ」
 同じようにひそひそ声で本好も答えた。
「どうかしたんですか」
 早くどこかへいってほしい。
 ただでさえ辛いのに、その巨乳や厚唇に挑発されて、いよいよ限界なのだ。
 血が下半身に集まりつつあるのが解る。
 まずい、まずいこのままでは……!
 焦る内心を無視して、昂っていく中心。
 隠す暇もなく、看護師の柔らかい掌がそっと本好の股間に触れた。
 膨らみかけのそれを、子供を誉めるように撫でさする。
「ふ……っあ」
 思わず漏れた声に本好は頬を赤くする。
 その顔面に、看護師は自らの胸を押し付けた。
 本好の頭を抱き込んで、ささやく。
「いいのよ、わたしがお手伝いしてあげる」
 何が知性か、何が理性か。
 本好暦は、抗えない血の巡りに屈した。

174 :

 取り出した雄芯の先端を、指先でいい子いい子と撫でられる。ふっくらした指の腹の感触と、指の一本ごとの隙間がつくる段差が当たる感触。
 些細な刺激ではあったが、爆発寸前の体の敏感な箇所にはどんなに腰を揺らしても逃がしきれない強い快感だった。
 刺激のたびに震える息の荒さが、深夜の病室には響き渡るようだ。
 本好は手の甲を口に当てて必に呼吸音を隠す。
 看護師の手が芯を握り込んだ。親指が裏筋に当たるように持って、全体を上下に扱く。
 先端から滲み出た液が塗り広げられて、括れの段差を行き来するたびに、くちゅんくちゅんと音がした。
 片手で作業をしながら看護師は、胸を見せ付けるように本好の眼前にずいと寄せて、空いた方の手でボタンを外し、はだけさせた。
 現れたのはぶりんとみずみずしい肌色の肉果。
 まだ下着があると思っていた本好は目を剥いた。
 看護師は身を押し引きして何度も本好の顔面にぽにょんぽにょんと乳房を当てた。
 ひとしきり楽しんだあと、今度は身を屈めて床に膝をつく。
 ベッドに腰掛けた本好の脚の間に上半身を入れている。
 更に服をはだけて完全に両乳を取り出すと、両手で持ち上げ――
「あっやっ待っ……!」
 本好の肉茎を挟み込んだ。やわらかくあたたかい、もっちりとした肉が敏感な性器全体を包み込む。
 看護師は得意そうな笑顔で自分の乳房を外側から押さえ、左右にすりあわせた。
 真ん中に挟まれた本好自身ももみくちゃにされる。
 本好は今にも絶頂を迎えそうだった。
 ガチガチに固くなったそこに看護師はちゅっと唇を落として、
「もうちょっと頑張ろうね」
 注射に耐える子供を宥めるようにささやき、そのまま、胸の間から突き出た本好の先端を口に含んだ。
 やわらかいのにどこか固い、ざらざらしてるのにねばっこい、皮膚のどの部分とも違う舌独特の感触が、神経の集中したそこにこすりつけられた。
 舌は生き物のようにうごめきのたうちはいずり回る。
「あっあ、あ、あぁ、もう……っ」
 尖らせた舌先がぐりっと先端の割れ目にねじこまれたとき、ついに本好の目の前が白く焼けた。
 腰が痙攣してどくどくと熱い精液を送り出す。
 看護師は射精を促すように乳房で陰茎を下から上へもみしごきながら、口内に放たれた本好の精液を飲み込んでいった。
 最後に尿道からちゅうっと残りの精液を吸い上げて、ようやく本好を解放する。

175 :

「濃い〜ぃねえ、ずっと我慢してたんだねえ」
 子供扱いした甘い喋り方はいちいち癇に障る。
 ベッドに体を横たえて荒い息をつきながら、本好は吐き捨てた。
「用が、済んだなら、出てって、くださいよ……っ」
「そうしようと思ってたんだけどねえ」
 言いながら看護師は膝からベッドに上がり、本好の上に跨がった。
 四つん這いになる形で本好の上に覆いかぶさる。
「わたしも欲しくなっちゃった」
 そして半身を起こすと、収めたばかりの息子をまた取り出される。
「こんだけ溜まってるなら、もう一回くらいイケるよね?」
「そんな、ぅあっ」
 本好は拒否しようと口を開いたが、またしても陰茎を口に咥えこまれて言葉を封じられる。
 イッたばかりのそこは敏感に刺激を受け取りゆるゆると再び硬度を取り戻していく。
「……っ」
「いい子ねえ」
 一回目よりは時間をかけてだがしっかりと立ち上がった肉棒に、看護師はキスをした。
 そしていそいそと本好に跨がり直すと、スカートをずり上げる。
 やはりというべきか、下着は着いていない。
 黒々と茂みに隠された受け口が、本好の中心に狙いを定めた。
 看護師はゆっくりと腰を下ろす。ちゅく、と先端が肉襞に埋まった。
 ずぐりと入口を押し広げながら亀頭が飲み込まれる。
「う……」
 あとは一気に、根本まで飲み込まれた。
 声を上げる暇もなく、看護師が腰を揺すりだす。
 上下に前後に激しく動きながら甘ったるい声で喘いだ。ベッドのパイプがギシギシと鳴る。じゅちゅじゅちゅと、やたら水音がした。
 先程のねっとりじっくりした責めから打って変わって激しい責めに本好も翻弄された。
 もはやどの角度でどう気持ちいいなどと理解していられないほど、ただ与えられる刺激に感じつづける。
 目はぼんやりと、荒々しく跳ね回る乳房を見上げていた。
 何分間そうしていただろう、女の喘ぎがどんどん上擦ってきた。
 いっそう強く本好を締め付け、激しく責め立て、熱くぬめっていく。
「やああああんっ」
 一際高く鳴いて、中がきゅうっと収縮する。
「えっ、あ、ああ……!」
 その痛いほどきつい締め付けに、本好は半ば強制的に絶頂に押し上げられた。
 ビグッと熱がほとばしる。
 腰には女の体重がかかってほとんど動かせず逃せない快感が直に頭を叩いた。
 絶頂の波を越えてふっつりと糸の切れた人形のように脱力した本好は、そのまま意識を失った。
 溜まっていたとはいえ、もともと病弱な彼の体に二連続は負担が大きかったのだ。
 泥のように落ちていく眠りの中で、看護師が体に布団をかけて本好の頭を撫でるのを感じた。
 どこまでも人をばかにした女だ、と考えて、本好の意識は完全に途絶えた。
 夢に、美作と安田が出てきた。
 安田は鼻息荒く暴れ騒ぐ。
 童貞卒業じゃん、どうだった、きもちよかった、そんなことばかりまくしたてる。
 美作は怒った様子で安田と、そして本好を殴り飛ばす。
 くわと目を開いて怒鳴る。
 何が童貞卒業だ、好きな女抱いてやらねえで男になったなんて言えんのかよ馬鹿野郎!
「美っちゃん……うん、美っちゃん……」
 本好の枕は、濡れ続ける。




176 :
GJ!
エロナースの姿が何故か鈍ちゃんで再生された…
本好俺と代われ!

177 :
自分もなぜか鈍ちゃんで再生されたw
ともあれGJです!

安田が媚薬作ってるの見て、本好実験の思い出した>ジャンプ

178 :
90のGに99のIか…

179 :
>>168のネタを書いた。
予告より一日遅れたけど、投下。

180 :
事は昨夜に起因する。
その日もいつものように漫画家である双子の兄、善徳の部屋に家事をしに行った美徳だったの
だが、到着するなり一つの紙袋を渡された。というよりも押し付けられた。
「これを着てみろ」
「ええっ!?」
善徳は漫画家だけにネタ命でもある。この頃は慢性的なネタ不足に悩んでいるので事態が深刻
なのは分かっているのだが、最近は一層訳の分からないことを言うようになってきていた。
「…で、これをどうしろって?」
紙袋の中から出てきたのは、黒レースで飾られたやたらセクシーなデザインのベビードール一揃い
だった。
「いいから着てみろ、サイズは合っている筈だ。見たところ2サイズアップしたみたいだが」
「絶対嫌!何考えてるの兄さん」
この兄は昔からこうだ。こうとなったら意思を絶対曲げない。しかし双子だけに頑固なのは美徳も
同じことだ。こんなものを着た姿を兄とはいえ見られるのは我慢ならない。
「どうも頭だけの想像ではこれというイマジネーションを喚起出来ない。そこで美徳に手伝って貰い
たかったのだが…仕方ないな」
その言葉に、兄が折れたと思ったのが運の尽き。
「第三者の介入も必要か…ならば美徳、それを着て誰かと絡め。男なら誰でもいいから」
「えっ…ちょっと待って!」
全くこの兄の頭の中は未だにどうなっているのかさっぱり分からない。ネタの為なら協力したい
のはやまやまだが、さすがに自分の貞操の危機ともなればパニックを起こしそうになった。この
ままでは誰か適当な相手を連れて来かねない兄だ。
目眩を覚えながらも、美徳は必で改善策を探した。探すというよりも相手となったら一人しか
思い浮かばなかったのだが。
「あのね兄さん、すぐにとはいかないけど心当たりがあるから頼んでみる」
「ほう、巨乳搭載してる癖に色気のないお前にもそういう奴がいるのか」
「色気がないは余計よ、ともかく明日まで待って」
それが最善なのかどうかはともかくとして、意図しない方向に事態が持っていかれる可能性は
これでなくなった。それは喜ぶべきことだろう。

181 :
しかし、美徳にとっての難問は次の日にあった。
「お話とは、何ですか?」
翌朝、顔をあわせてすぐに相談したいことがあるとハデスには声をかけておいた。律儀なハデス
のことだ。頼まれごとがあれば時間を作ってでも待ち合わせた屋上に来てくれるだろう。こんな
話は他の誰にも聞かれる訳にはいかないのだ。
そして、昼休み途中の約束をした時間にハデスは屋上にやって来た。
「ええ、こんなことは決して誰にも…聞いて頂けますか?」
美徳は昨夜起こったことを出来るだけ思い出しながら、全て話し終えた。兄が漫画家でネタの
為ならどんなことでもする男だというのは、この間の騒ぎもあったことだしハデスも分かっている
筈だ。
「そうですか…そんなことが」
ようやく話し終えた後、ハデスは何かしばらく考え込んでいるようだった。普通の感覚からすれば
兄のアレな思考など決して想像もつかないだろう。しかし今の美徳にとっては大事な貞操が関わ
っている。絡むにしてもせめてこの人とならと思う相手でなければ絶対に嫌なのだ。
「…どうでしょうか」
「それはお困りですね。僕でよろしければ協力致します」
「本当ですか?」
嬉しかった。実際のところ、ハデスが承諾しなければマジで大変なことになりかねなかったのだ。
どれだけ縋るような目で見ていたのかと身も縮む思いだったが、これでひとまず第一関門突破と
いうところか。
「ええ。お兄様の為といえども美徳さんに危害が及ぶのは、僕としても本位ではありません」
「嬉しい、逸人さん。話して良かったです」
「僕もお役に立てるのであれば本望ですよ、美徳さん」
いつも無理難題を言うのは美徳の方だ。それをことごとく受け入れて穏やかに笑っているこの男を
好きになって本当に良かった、と改めて思った。ともすればその優しさに甘えきってしまいそうに
なる自分でもあるが、決して当たり前のように思って傲慢にだけはなるまい、と決めている先から
こんなことが起こる。
やっぱり恋は人の心などではままならない魔物なのだ、と実感するしかない。

182 :
ハデスには兄のマンションの住所と部屋番号を教えておいた。午後八時に到着するという約束も
してある。これで事故でもない限り時間通りに来ることだろう。
後はここで待っていればいいだけだ。
しかし。
「ちょっと…こんなの嫌だってば」
一応、例のベビードールを着てみた美徳だったが、そのあまりの扇情的な格好に顔も身体も熱く
なるのを止められなかった。
黒レースのベビードールは前開きのデザインで、やたらと恵まれ過ぎてしまったプロポーションを
更に引き立てるばかりだ。それに生地が薄いのでほとんど透けている状態だ。揃いのショーツも
ただ局部を申し訳程度に覆っているだけの代物で、美徳からすれば考えられないほど劣情的な
姿だった。
「お、着たか。良く似合ってるじゃないか」
兄はその姿を見て腕組みをしながら満足したように頷いた。眉間の皺が少し薄くなっているのは
良い結果に繋がることを予感しているからだろう。身体を張るのは美徳自身なのだが。
「兄さん…ホントに絡まなきゃダメ?」
「何を言う。リアリティーのあるエロを描くにはまず実際の場面を見なければならんだろうが。今後
ラブコメだけでなく本格的なエロ作品を描く上でも必要なことだ。頼むぞ」
あっさり受け流す兄の背後に鬼が見えた気がした。幾ら何でもこんな恥ずかしい格好をハデスに
見られるのはどうにかして欲しい。しかし他の男になどもっての他だ。
もう美徳には一托しか残されていなかった。
それでもまだうだうだと悩んでいるうちに、玄関のチャイムが鳴る。
「…良くいらっしゃいました」
ドアを開けた美徳の姿に、さすがのハデスも驚いたようだった。招き入れるとマフラーを外しながら
靴を脱ぐ。
「才崎先生の頼みですからね。お邪魔します」
「どうぞ、部屋はこちらですわ」
せっかちで無粋な兄はすぐにでも男と絡めと言うに違いない。あまり聞いたことはないのだが、今
までに恋の一つもしたことがあるのだろうかと、ふと思った。もしあるとすればそんな性急なことは
間違っても言えないだろう。
兄の描くラブコメ作品のラブの部分がどことなく薄い感じなのは、きっとそれが原因だろうとまで
考えてしまう。普段使っている寝室に案内する間、とめどもないことばかりが頭の中を巡るばかり
だった。

183 :
「来たようだな…うわあっ!」
会話を聞きつけて兄が仕事場から出てきた。そしてハデスの顔を見て派手に驚いていた。以前
にも会ってはいたが(そして色々とやらかしていた兄をどうにかして貰った)、まだ慣れていない
らしい。
「どうも、お久し振りです。才崎先生のお兄様」
マフラーに続いてコートを脱いだ後、ハデスは丁寧に頭を下げた。
「…お、おう。お前だったのか。確か養護教諭だったな」
「はい、才崎先生には日頃からお世話になっております」
「そうか。よし、美徳。早速こいつと絡め」
「だーからー!」
思わず叫びながらも、頭がくらくらした。どうしてこんな兄の言う通りにしなければならないのかと
思うのだが、ハデスと抱き合える機会が一度でも増えることは純粋に嬉しかった。だからこそ、
この恋心は決してこの兄にだけは知られてはならないと悟った。
知られたら最後、どんなことを強制されるか分かったものではない。
「こ、こういうのはやっぱそれなりに気持ちが盛り上がらないと…ねえハデス先生」
「ええ、そうですね。でも今の才崎先生を見たらきっと誰でも落ちますよ」
「まあ、そんな…」
二人きりでいればここですっかりいい雰囲気になるところなのだが、今夜ばかりはそう簡単に事が
運ばなかった。
「何をしているお前ら。さあここに入れ」
兄は美徳の寝室のドアを開けて待ち構えていた。予想通りだ。あまりにも想像通りで空しくなる
ほどだった。
「兄さん、せっかく寒い中を来て頂いたんだから、せめてお茶の一杯ぐらい御馳」
「そんなモンは後でいい。まず先にすることがあるだろう」
美徳が言う側から兄が言葉を被せてきた。こればかりは譲るつもりなどないらしい。それでも抵抗
しようとした美徳の手に、ハデスがそっと宥めるように触れてきた。
「ハデス先生…」
「分かりました。それではこれから始めますね」
何か言おうとした美徳の身体がふわっと浮いた。ハデスに抱き抱えられて寝室の奥にあるベッド
に運ばれていたのだ。所謂お姫様抱っこというもので、内心ずっと憧れていたものの、して欲しい
とは今まで言えなかったことだった。

184 :
「あ…あの…」
「ご心配なさらず。決して悪いようにはしませんから」
ハデスの声は今まで聞いたことがないぐらい優しかった。こんな形で今夜は接することになった
とはいえ、きっとこの男なら大丈夫なのだと気分が落ち着いてきた。
「はい…お任せしますわ」
見慣れた黒いシャツを掴んで、美徳はやっと笑みを漏らした。今まで悩むあまり笑うことすら忘れて
いたことをやっと思い出す。
そしてベッドに下ろされるなり強く抱き竦められて、頭の中がぼんやりとしそうになった。
「あ…逸人さん…」
部屋の隅で凝視している兄には聞こえないほどの声で呟く。もうこうなれば人の目があることなど、
どうでも良くなってきていた。
「美徳さん、今夜のあなたはとても素敵ですよ」
ハデスもまた、二人だけにしか届かない声で囁いてきて頬に熱い吐息がふわりとかかった。
「ン、ン…」
そのまま唇が捉えられる。口腔内に差し入れてくる舌を迎え入れようとしたのだが、強引に絡め
取られてしまった。これまでずっとしてきたキスとは全く違う荒々しさに心がざわついた。この男
にはまだ知らない部分が幾らでもある。改めてそれを実感して胸が震えるほどだった。
もっと知らない面をたくさん見せて欲しい、柔らかい粘膜の隅々までを探られて静かに女の欲情
に火がついていく。
抱き締めていた腕の力が緩んだ。キスを続けながら大きな手がぐいぐいと薄いレース生地に覆わ
れているだけの乳房を揉み始める。肌触りを楽しむように揉みしだき、指先が興奮で立ってきて
いる乳首を巧みに弄んだ。
「ぁあん…」
思わず声が漏れた。
「痛かったですか?」
「…いえ、続けて下さい」
お互いの声音に次第に熱が篭ってきた。乳房を緩やかに掴んでいた手がベビードールの肩紐を
ずらす。現れた乳房が薄暗い部屋の中でも真っ白く浮き上がった。それがハデスの欲情を刺激
したのだろう。急にベッドに押し倒されて両手で揉まれながらも舌と唇で貪られた。痛いほど強く
吸われ、時折歯を立ててくるのが堪らない。
身体の芯が切ないほどに激しく疼き出した。

185 :
「は、ぁ…ぁんっ…」
ベッドの上で絶え間なく身体を捩り、美徳は喘ぎ始める。宥めるようなキスが断続的に与えられて
きて、その間だけわずかに正気を取り戻した。しかしそれも束の間、ショーツの中に手が入ってくる
のを感じて肌が粟立った。
「ぅあ、やぁ…」
「嫌、ですか?」
分かっている癖に、憎らしいことを言う男だ。
嫌な筈はない。この身体はこの男によって変貌したのであって、隅々まで細胞の一つまでが好み
のものになっている。
「いいえ…ご存知でしょう?」
「そうですね。僕の、美徳さん」
その声が耳を蕩かすほどに甘かった。この男からは今の今まで所有するに等しい言葉は決して
聞けなかった。それがどこか澱のように心の隅で堆積していたのに、やっと全てが晴れた思いと
なっていく。
「はい、私はあなたのもの…ですからもっとお好きになさって」
返事の代わりに睫毛に吐息が触れた。薄いショーツに覆われた局部に指が滑り込む。性急では
あったけれどそれなりに時間をかけて愛撫を施された為か、そこがもう濡れそぼって待ち受けて
いるのは指先を通して伝わっているだろう。
「ぁぅ…あっ」
膣内が充分過ぎるほどに潤っていることを察したのか、壁を探る指が乱暴に動き出した。決して
粗野なものではなく、知り尽くした動きで的確に快感を増幅させていく。二本の指先で掻くような
淫らな動きが堪らなく良くて、思わず腰が浮きかけた。
「いいんですね」
「ン…ええ、とても…」
心からの幸せに思わず笑顔が浮かんだ。もう何も考えられない。びっしょりと濡れたショーツと身体
に纏わりついていたベビードールが脱がされる。これからやっと抱かれるのだと思うと、嬉しくて
仕方がない。
「だいて…」
二人の間を隔てているものがあるのは、もう少しも耐えられなかった。もどかしい手つきでハデス
のシャツのボタンを外すと、腕を回して裸の胸に頬を寄せる。今までずっと着衣のままだったこの
男の肌身をようやく知った。それだけでも充分に嬉しかった。

186 :
不意に頬を撫でられた。暖かくて優しい手だった。
「すぐに、差し上げます。僕ももう待てませんから」
「嬉しい…」
身体の力を抜いて待ち受ける美徳の目が、次の瞬間一杯に見開かれた。限界まで足を開かされ、
膣内に突き立ててくるものがびっくりするほど熱かったからだ。
「ぁ、あ…?」
痛みでも苦しみでもない、もっと別の感覚が快感と共に怒涛のように押し寄せてきて歯止めすら
利かなくなってきた。こんな感覚は知らない、戸惑いながら抱き締めてくる腕に翻弄されて美徳は
ただ喘ぎ続けた。
「ぃや…はああんっ、私、私っ…ぁああっ!」
「怖い、ですか?」
あやすような声が耳元で響く。怖いのではない、ただ未知のものが不安なだけだ。細胞組織が
ばらばらになりそうな感覚に襲われ震えながらも、美徳はただ女としてもたらされる快感に酔い
痴れていた。
刀剣がぴったりと設えた鞘に収められるように、隙間なく合わさった二つの身体の間に湧き上がる
ものなどもう何もない。恐怖も不安もない。
あるものはこの恋情だけだ。
美徳にはもう正気すらない。ひたすら快感に浸りきった女の顔をして、恍惚としている。それ以外
のものは一切必要ないと言わんばかりに。
「もっと、ご存分に…抱いて下さい…」
ほころぶ唇が果実のように色鮮やかに熟れていた。
目覚めた時、髪を撫でる手の感触をまず知った。
「えっ、私は…」
どうやら行為中に何もかも頭の中から飛んでしまって、そのまま気を失ってしまったようだった。
何もかも終わったようだ。ベッドに横たわっている美徳に付き添っていたらしいハデスも、今はもう
シャツを着込んでいる。
「心配しましたよ、でもお目覚めになって良かった」
「…ごめんなさい…」
まさか気を失ってしまうとは思ってもいなかったので、急に恥ずかしくなってしまってシーツを頭から
被った。
そういえば、事の発端だった兄はどうしているのか。それが気になった。

187 :
適当な服を側の箪笥から引っ張り出して着ると、美徳は兄の仕事場になっている部屋に向かった。
こんなに身体を張ったのだから、何としても作品の中で実になってもらわないと困る。
「ちょっと兄さん!」
兄は相変わらず眉間に皺を寄せ、ネタ作りで頭を悩ませていた。
「兄さんたら!」
「うるさい、美徳。静かにしろ」
「私にあんなことさせて、役に立たなかったとは言わせないからね!」
怒り心頭の美徳に対して、兄はまたもあっさりと返してきた。
「あー、あれか」
「あれかじゃないってば」
「真のエロはそんな簡単なものじゃないんだぞ、一回や二回で極められたら神だな」
びっしりと書き込みのあるボロボロのネタ帳に何かまた書き込んでいる様子からして、それなりに
得るものはあったようだが、どうにも腹が収まらないのが本音だ。
「それに、お前も結構乗ってただろ。また次も頼むぜ」
「次って…」
呆然とするしかない。
こんなことは一度だって嫌だというのに、この兄は平然と次を要求しているのだ。
「美徳さん」
寝室の戸締りをしてきたハデスが、背後からまた二人だけに聞こえる密やかな声で話しかけて
くる。もし次があるとしても、絶対に相手はこの男しかいない。
「ものは考えようですね」
これは良いことなのか違うのか、今の美徳には判断がつかない。ただ、どうなってもこの男の側
にいればそれだけで恐怖も不安もないことは分かっている。今夜の収穫があるのならば、そんな
ものだ。
「そうかも、知れませんね」




188 :
待ってました!!
凄い萌えた
お姫様抱っこに一番萌えた
携帯で読んだら
「大丈
夫なのだ」
って改行されて脳内でハデみのが結婚してた
乙&GJです!

189 :
前スレにもあったけどアシタバ君が『色欲』に浸かれる話。
本編なし、出だしだけ。相手はしおりちゃん。駄文。表現が冗長。
本編が書けたら相手は多分美徳ちゃん。
キャラがおかしい。
NGは名前で。

190 :
 淫夢を見た。
 内容はあんまり覚えてない。
ただ、出てきたのは大人の女性だったような気がする。
体育の時間に見るクラスメートの健康的な肢体とも違っていたし、
目の前にある毛が生えかけてもいないような神聖なモノでも無かった。
美しく魅力的だったけれど、同時に危険を孕んでいるような……
前者を華、後者を蕾とすれば、それはまるで毒林檎……あるいは美しきラフレシア、
自分の指先が奏でる幼く甘い喘ぎ声をBGMにそんな似合わないことをつらつら考え、
ふと気付く。
 『目の前』? 『指先が奏でる』?
 思わず手が止まった。
 僕は今何をしてるんだ? 自問自答の答えが出る前に、
首にあった湿った感触と硬質な感触が存在を主張する、痛い。甘噛み。
今までしていたことに対するささやかな抵抗なのか、まさか手を止めたことへの無言の抗議か。
 ビクリと、頭が答えを出す前に己の分身が反応した。
背筋を通り、それに直接口を付けられてるみたいに感じた。吸われてる、強く求められてる。
抵抗でも抗議でも無い、これは催促だ。挑発だ。おねだりだ。
 応えなきゃ、割れ目に指をあてがった。今までずっと上には触っていたのに、
わずかにしか湿り気を感じないのは、まだ身体ができていないからだろう。
けれどもう我慢できない、相手以上に僕自身が求めている。
神聖な領域を侵略し、正に犯すべく指先に力が――
『おにいちゃーん』
「!」
 手が止まる。部屋の外からだ。
『お兄ちゃん、しおりちゃん知らない? 起きたら部屋にいなかったんだけど』
 この子がそうだ。自分に横抱きにされている矮躯をみやる。改めて自分が何をしていたのかに思い当たる。
 上は胸元を開けられ、幼いそれを覗かせている。
真っさらな平面を飾る鮮やかなピンクは美しいと言うより美味しそうだ。
下は、純白をピンクのリボンが飾る最後の砦が足首にひっかかっているばかりだ。
脚は細く、白い。肉感的な意味ではまったくのはずだが、なぜか舌を這わせたくなる。
 また分身が跳ねた。理性を総動員して目を逸らし、そして手を退け下着を戻す。
直に見てしまえば止まらなくなる気がした。

191 :
『……お兄ちゃん?』
 妹の声に怪訝なモノが混じる。
「ああ、ごめっ……!」
 首が、口を付けられたところが、背筋が、分身が、ジンジンとする。
これ以上無いくらいに求められているという事実に、暗い喜びを感じたけれど、なんとか引き離す。
「しおりちゃん、寝ぼけて部屋間違えたみたいだ。今起こすよ」
 かろうじてそんなことを伝えたと思う。
名前を呼ぶと彼女は正気付き、ベットの脇に落ちていたパジャマの片割れを拾うと慌てて出ていった。
記憶の有無は定かではないけれど、そんなことを気にしてる余裕はなかった。
ドア越しに、風邪みたい、朝ごはん食べられない、部屋に入らないで、と言葉を伝えられたと思う。
 何があったのか、考えるまでも無い。昨日僕は安田くんの家に遊びに行った。
名目は次に先生が栄養失調に陥ったときの対策について。
 ああ、確かに安田くんのコレクションの効果は絶大だ。利用するかどうかは別だけど。
 まず間違いなく病魔に憑かれた。それも恐らく『色欲』の。
 ふと引き離したときの表情が目の裏に浮かぶ。多分プロヴォークみたいな病魔なんだろう。
 前髪が汗で額に張り付き、とろけたような瞳の上目遣いで、
頬は上気しうっすら赤く、小さな口から除く歯は白く舌は紅い。
 唇を落としたかった。その白い足に。
 舌を這わせたかった。その細い首に。
 指を踊らせたかった。その薄い胸に。
 己を刻印したかった。その神聖域に。
 僕は何を考えてるんだろう? あまりにもあまりな自分の妄想に嫌気がさす。
とにかく病魔をなんとかしなくちゃ。
『おにいさん』
「!」
『学校終わったら、お見舞いに来ます』
 それも早急に。
 けれどこちらから行くことはできない。途中で何をしでかすか考えたくもない。なら呼ぶしか無い、
『おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません……』
 どうやら、充電し忘れたらしい。美作君とか誰かにかけて呼んでもらうのは……内容が内容だけに恥ずかしい。
かといって考えるまでもなく蛇頭さんには頼めない、経一さん一人では不安がある。
 なら……
「はい、常伏中学校職員室です。うん? ええと……そうか。それで君は誰だい?
 ははぁ、二年A組の明日葉君ね。うん? ハデス君かい? 彼はまだ来てないよ。
 ああ、取り次ぎ? うん、うん、それじゃお大事にね」
「あの、私のクラスの生徒がなにか?」
「うん? ああ、才崎くんは2Aの担任だったね。明日葉くんといったかな、体調が悪くて欠席するそうだよ」
「そうですか」
「そういえば才崎くん、今日授業無いだろう? お昼でも」
「いえ、遠慮しておきます」
「なぜハデス先生なのかしら……私じゃ頼りないの?」

192 :
以上。投下終わり。
良作の後のお目汚し失礼しました。

193 :
GJ
本編期待

194 :
しおりちゃん最高だ
もっと増えろ

195 :
妹を襲うシチュを妄想してしまったww
GJ!!

196 :
辞めようとするハデスをみのりちゃんに必に引き留めてほしい

197 :
もうすぐクリスマス。
「美徳、クリスマスが近いな」
「そうね、兄さん」
「そこで頼みがある」
「絶対嫌!」
「エロいサンタガールの衣装で奴と絡め」
「だから嫌だってば!またハデス先生に頼むこっちの身にもなってよ」
「だったら代わりの相手を連れて来るぞ、それはもっと嫌だろう」
「当たり前じゃない、いい加減にして!」
「じゃあ決まりだな。お前も顔見知りの方がちっとはましな筈だ」
「人の話を聞いてってば!」
また兄のゴリ押しでコスプレをする羽目になる、みのりちゃんであった。

198 :
ハデみのも好きだけどハデシンも見てみたいな
藤花も大好物です

199 :
>>196
舐めようとするに見えたけどオカシイと思わなかった俺ヤバス

200 :
>>198
ハデシン書いた。
ハタ先輩再登場記念。

201 :
ハタ先輩はいいなあ。
このところ、真哉はそんな思いに苛まれている。
元々自分が小さい頃からあまり女らしくないのは自覚してはいる。だからこそ料理や裁縫など、
それなりには頑張っているのに一向に上達する気配がない。
やはり男というものはどんな時代であっても女性らしい子が好きなのだろう。
モテているのにあまり女の子には興味がなさそうな藤でさえそうだ。これまでに何度か、花巻と
一緒にいるところを見たことがある。藤ファンを自称している賑やかで華やかな女の子たちとは
違って、控えめでひっそりと咲いている白い花のような少女だ。つい放っておけなくて側にいたく
なる気持ちは良く分かる。
そういう、守ってあげたい女の子としての魅力が自分には一切ない。
少しは何とかしようと思って手芸部に入ったものの、凄まじいほどの不器用さが意欲の邪魔を
するばかりだ。
そんなコンプレックスのある真哉にとって、部長の機本真綿はまさに理想の女性であり、一から
十まで見習うべき価値のある存在でもあった。とはいえ、機本にも実は深い悩みがあったことは
彼女が病魔『見栄』に取り憑かれた時に知ったのだが。
その日の部活動が終わった頃、他の部員たちと一緒にミシンや道具類の片付けをしている時に
つい溜息が出た。
「私、ハタ先輩が羨ましいです」
「なあに、いきなり」
ここ数日、かかりきりで縫っているパジャマを手早く畳みながら、機本はいつものようにさらりと
笑った。
「…だって、そんなに器用だったら何でも出来るじゃないですか。私も早くそうなりたいです」
「あ、無理無理、ハタ先輩は特別なんだから」
「そうよ、せめて手際の良さだけをお手本として見習わないとね」
機本を理想にしているのは他の部員たちも同じだ。そう簡単に同じレベルになれるとは思ってない
にしろ、毎日一緒に部活に勤しんでいれば少しは上達するかもとみんな真剣に取り組んでいる。
古着をリメイクして普段着にしている機本の裁縫の手つきは、いつ見ても見事なものだ。細い指の
間で縫い針がまるで生きているように操られて、たちまちのうちに縫い上げられていく。縫い目も
綺麗に揃っていて売っているものより何倍も素晴らしい出来上がりだ。
なのに、真哉の心からの感嘆の言葉に機本は困ったように笑って答えた。

202 :
「私には、それしかないもの。みんなのように他の取り得がないの」
「そんなことはないです!私、尊敬してますから」
「ありがとう、そう言って貰えると嬉しい」
以前、病魔に憑かれた時のことはまだ忘れられないのだろう。普段ひた隠しにしていた悩みを
暴露された上に、いつもなら決してしないような言動に走ってしまったことが心に引っ掛かった
ままなのかも知れない。
それでも。
病魔に憑かれている間も、裁縫の腕だけは変わらなかった。
あの時に年季もののぬいぐるみを再生させたアボカドぬいぐるみは、ハデスが妙に気に入って
ずっと大事に飾っている。それだけでも羨ましくて仕方がない。
真哉が保健室に訪ねて行けるのは、卒業するまでだ。もちろん卒業後であってもいつでも遊びに
来ていいよと、あの優しい人は言うだろう。
けれど、それに甘えてばかりもいられないし、卒業してしまったら実質的にハデスとの関わりは
絶たれてしまうのだ。
あと十年後には、ハデスに釣り合うような大人の女性になっていたい。その時にならもっと自信を
持ってアプローチ出来るだろう。ただ、それまでの長い期間に決して目標を見失わずに気持ちを
保てるだけの、確固とした礎が欲しかった。
部室を出てから保健室に向かうのは、もう習慣のようなものだ。
ドアを開ければ、いつものようにアシタバや藤、美作がいるに違いない。そこで帰宅するまでの
少しの間、他愛もない話をしながらハデスの穏やかな顔を盗み見るのが毎日の密かな楽しみに
なっていた。
「こんにちはー」
なのに、今日は誰もいない。保健室の中にはハデス一人だけだ。
「あ、いらっしゃい。鏑木さん」
「あいつらは?」
滅多にこんなことはないので嬉しい反面、身の置き所がない感覚で落ち着かない。そんな女心に
気付く風もなく、ハデスは言葉を返した。
「今日は数学の宿題がたくさん出されたみたいで、すぐ家に帰って取り掛からないと間に合わない
って言ってたよ。今は家で頑張っているだろうね」
「あ、そ、そうですか…」
「お茶、飲むよね?すぐに淹れるから」

203 :
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃあ、そこ座って。お菓子でも摘んでて」
「はい、ハデス先生」
今日は誰も長居をしなかったので、ハデスも暇だったのだろう。どこかうきうきとしながらお茶を
淹れている後ろ姿を眺めながら、真哉は自然に頬が緩んでいくのを感じていた。やはりこの恋は
十年経ったところで変わるものではない。毎日何でもないことの積み重ねで生きているとしても、
ここに来ればこの人がいると思えるから頑張れるのだ。
そしてアボカドぬいぐるみに目をやる。
あんたはいいね、今もこれからもハデス先生に大事にして貰えるんだからと自嘲気味な気分に
なりながらも呟く。機本ほどの腕がなくとも、これから頑張って少し何かが出来るようになったら、
ぬいぐるみでも人形でも作り上げて贈れば保健室に置いてくれるかも知れない。いや、ハデスは
きっとどんな出来であっても大事にしてくれるだろう。
その事実があれば、十年もの時間を渡りきった末に恋を掴むことはきっと出来そうだった。
「はい、鏑木さん」
「あ…ありがとうございます」
淹れたばかりでとても熱い湯呑みを両手で包む。
今はまだ果てしない千里もの道程でも、ゆっくりと十年かけて少しずつ着実に成長しながら歩んで
いけば、その先にきっとこの人はいるだろう。恐れることはないのだ。まっすぐにこの人が放つ光を
目指していけばそれでいい。
「先生」
呼ぶ声に、何があったのかと近寄ってきて屈むハデスのシャツを掴んで、唇にキスをした。不思議
と迷いは少しもなかった。一瞬硬直した表情がすぐに元に戻る。
「…ダメだよ」
「分かっています」
全ては千里の先にある。無事に辿り着いた頃に真哉は欲しいものを得られるに違いない。今は
まだ一歩も踏み出していない状態だけど、一度ぐらいのフライングなら許されるだろう。
人真似は出来なくとも、自分なりの成長をしさえすればそれでいい。今の決意を違えたりせずに
いるなら長い時の果てに必然的に望みは叶うのだ。
真哉は、礎を見つけた。




204 :
GJ!
シンヤ可愛いな

205 :
GJJJ!
なんと爽やかなかわいさ!
ハデシン難しいだろうにもえた!

206 :
そういや去年のクリスマスは4コマ漫画で済まされたっけ。
みのりちゃんもまだ登場してなかったな。
今年は何かあると思ってるが、どうなんだろう。

207 :
サンタガールにやられた。
全然関係ないけど藤花投下。
エロは無しです。

208 :
あいつと俺は、なにかと一まとめにされることが多い。
その要因は、出席番号が隣であること。
多分、それだけ。
日直、掃除班、それに加えて今回のように体育の授業中でも出席番号順で分けられたりする。
「今日は体力測定をします。出席番号順で前から二人ずつペアを組んでください」
才崎はそう言うと、体育倉庫の方へ歩いていった。
前から順番でいくと、26番の俺は25番のやつと組むことになる。
「花巻」
「ぶああぁぁう!ふ、藤くん!?」
名前を呼べば返ってくるのは悲鳴ともとれるような驚いた声。
「いや、うん。」
最近はこいつのおたけびにも慣れた。
多分俺の周りの連中も。アシタバも美作も、なんだかんだで花巻との接点は多い。
「あ…ご、ごめんなさい!あの…えっと…」
「いや別に気にしてねーよ。それより、整列だってよ」
「あ、はいっ!」
なんか転びそうだなぁ、と思っていたら案の定、転んだ。
「ひゃぁっ!」
予想通り過ぎて、思わず笑みがこぼれる。
「っ!…おい、大丈夫かよ」
「大丈夫…ですよ…」
体育館であったことと、ハーフパンツでなかったことが幸いして、ケガはなかったようだ。
しかし、頬が蒸気しゆでダコのようになっている。
「立てる?」
「はい…お、おかまいなく…」
花巻は立ち上がると、そそくさと列に混じっていった。
なんか、あいつ別の組の列に混じってったような気がするなぁ、と思っていたらやっぱりそうだったようで、それに気付いた才崎が花巻を連れて戻ってきた。
「花巻さん、あなたは少し慌てやすいところがあるようね?先生は花巻さんのそういうところ、嫌いじゃないのだけれど…」
あーぁ、怒られてんなぁ。
その様子をぼーっと見つめていると、才崎がこちらに気付いた。
「藤くん?そもそもあなたは花巻さんとペアのはずよ?何を他人事のように見ているの!」
俺、才崎のこと嫌いじゃないけど、口煩く言われるのは嫌いなんだよなぁ。
チラリと隣を見ると、花巻が涙を浮かべながら俺を見上げてくる。
ダム、決壊寸前。
もしかして俺が自分のせいで怒られてると思ってんのか?
なんでそんなこと気にすんだよ。めんどくせぇな。
と思ってはみたものの、なんだか心地いい。
なんか俺って最悪だな。
緩んでしまいそうになる口元を必で隠して、才崎に怒られてやった。

209 :
「藤、なんで笑いながら怒られてんだ?」
美っちゃんが少し呆れながら、怒られている二人を指差す。
「なんか才崎先生の胸元をみてるように見えるよ」
俺がそう言うと、美っちゃんが凄い勢いで振り向いた。
「だよなぁ?だよなぁ!いやー、やっぱりあいつはむっつりだと思ってたんだ!」
美っちゃんですらも気付かないなんて、藤もなかなかやるじゃないか。
まぁ、俺が美っちゃんを誘導したんだけどね。
「自分の気持ちに気付かないなんて、なんか微笑ましいよね」
「いきなりなんだよ?」
「こっちの話だよ」
これから藤を脅迫する材料ができたかと思うと、緩む口元を誤魔化すことなんてできなかった。



210 :
なんかこのスレ見てたら、本好がすべてわかってそう(ハデス←シンヤとか藤←花巻)で怖いな、と思った。
奴は読心術ができてもおかしくないと思う。

211 :
藤花GJ
あなたのそういうところ嫌いじゃないでみの花を考えたのは俺だけでいい
本好はきちんと周り見れば気づけるんだけど美作以外に興味がないから見ようともしてないと予想
アシタバが全部わかってそうだな

212 :
わかってるけど興味がないから特になんとも思わないし言及するつもりもない
そんな本好

213 :
自分もそんなイメージ
人間関係を把握するための知識って感じでドライに受け止めてそう
知ってることを表に出さないから、当事者たちは本好が気づいてるって事を知らない
だからこそ本好は怖い…
ふとした会話でペロっと「ハデス先生は才崎先生で見慣れてるから…」とか
「いくら藤でも避妊は面倒がらないでやってるよね」とか言いそう

214 :
おお藤花GJ!本誌はハデみのもGJだったな!
実は俺も藤花書いたんだが続けて投下もあれなんで遠慮しとく。
10レスくらい使っちゃいそうだけどそれでよければ水曜あたりに投下しようかと思います。
>>213
言いそうというか既に言ってそうで怖いw

215 :
>>213>>214の流れに萌えたので一発書き

216 :
「先生、その雑誌の山は?」
アシタバは、保健室の片隅で、大量の雑誌をビニール紐で縛ってるハデスに問い掛けた。
「あぁ…これはね、才崎先生が安田くんから没収した雑誌の一部だよ」
ハデスは、苦い笑いを浮かべながら答える。
「はぁ?それで一部?」
「ははは…安田君も懲りないね…」
その雑誌は、明らかに年齢制限付きのもので、中学生が読むには不健全な代物だ。
「安田のやつ、一体どっから仕入れてるんだろうな」
美作が呟くと
「なんだよ、お前こんなん見てぇの?」
と、藤がさも興味なさそうに、加えて馬鹿らしいというように返した。
「なんだよ!あぁ、見てぇよ!悪いか!お前それでも男か?むっつりなんだろ?」
「美作くん…」
藤のその態度が気に入らなかったのか、美作は藤を指差し『むっつり野郎』と連呼した。
「まぁまぁ、落ち着いて」
ハデスが慌てて仲裁に入る。
「なんだよ。先生だって興味あるんだろ?大人だもんなー」
ハデスが間に入ったことで、矛先が藤からハデスに向かう。

「いや、その…なんというか…。こういうものにあまり興味は引かれないんだ」
「嘘だろ?先生それでも男かよ!?」
「美作くん…」
美作が頭を抱えてうんうんと唸ると、隣にいた本好が、お茶を啜りながら涼しい顔で爆弾を落とした。
「まぁ、ハデス先生は才崎先生で事足りるだろうし、藤も花巻さんのおかげでそういうモノには手を出す必要がないのかもね」


217 :
この流れなら、GJすぎるハデみのに影響されたものを何か書ける!

218 :
場が凍り付いた。
アシタバは何となく感付いていたのか斜め下を向いて言葉を発しなくなり、美作は目を見開いて動かなくなった。
当のハデスは少しびっくりしたような顔をしただけだったが、藤は動揺して金魚のようにパクパクと口を開閉させるだけだった。
「いやー、しかし意外だよね。こんなホラーな顔でもそういう相手がいるんだからさ。
美っちゃんが先生くらいの歳になったら20人くらいと寝れるんじゃないかな?
まぁ美っちゃんはそんなことせず1人の人をまっすぐ愛していくんだろうけどね」
「お…お前それどこで…」
藤がおそるおそる問い掛ければ、本好は涼しい顔で話しだす。
「そうだなぁ。確信したのはあのときかな。
ほら、この前の美術の時間、二人して居なかったでしょ。藤はともかく真面目な花巻さんがさぼるなんておかしいなって。まぁ興味ないんだけど。
それで、偶然指を切っちゃったから保健室に行ったらハデス先生が出張中なんだよ。
鍵も閉まってたけど、中から声が聞こえたからピッキングして…」
「も、本好くん…ピッキングとかできるんだね」
「この学校で俺に開けられないドアはないよ」
「は…ははは…」
アシタバが引きつった笑みを浮かべるが場の空気は依然として凍ったままだ。
しかし、空気を読まない本好は、さらに温度を下げていった。
「でも、少しだけ藤を見直したよ。中学生っていったら結構相手を気遣わないものなんだろうけど、ちゃんと避妊もしてたからなぁ…。証拠写真もここに…」
「あー!あー!あー!やめろ!マジでやめてくれ!後生だから!」
「…ふうん。じゃあ週末に美っちゃんが女子と遊園地に行く計画があるんだけど…」
「わかった!行く!行くからその画像は消去しろ!」
「やったよ美っちゃん!イケメンが釣れた…って、美っちゃん!?」
本好が嬉しそうな顔をして振りかえると、美作が完全にダウンしている。
「ちょっと!大丈夫?美っちゃん!?」
「…あはは…はは」

ただ笑うしかないアシタバだった。



219 :
GJ!
リロードしてなかったせいで、挟まってごめん

220 :
GJ
…これが「恐怖の本好くん」か
       ヽ|/
     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /         ヽ
   /  \,, ,,/    |
   | (●) (●)|||  |
   |  / ̄⌒ ̄ヽ U.|   ・・・・・・・・ゴクリ。
   |  | .l~ ̄~ヽ |   |
   |U ヽ  ̄~ ̄ ノ   |
   |    ̄ ̄ ̄    |


221 :
GJ!本好こええなww
あまり動じてないハデスは大人
>>218冒頭のアシタバと美作原作絵で凄いクリアに思い浮かんだ

222 :
GJ禿萌えた!
俺も藤花書いたので投下します
9レスほど使用致します

※私的な妄想のせいで藤が別人に…

223 :

「まぁ確かに目立つようなやつではないけどよ。
 俺から言わせればみんな見る目がねーとしか言いようがないぜ」
意味不明の得意顔がとてつもなく鬱陶しい。
さっきから美作があの女子が可愛い、この女子が可愛いと、クラスの女子を褒めまくって
いるのだ。やれやれ、誰も聞いてないっつの。見ろ、アシタバもちょっと引いてるじゃね
ーか。
本好曰く、どんな女子も受け止められる心の広さは同じ中二とは思えないよね、らしいが、
生憎分相応な心の広さしか持ち合わせていない俺には美作の言うことはさっぱり分からな
い。
俺にとって周りの女子は、中身もなくぎゃーぎゃー五月蝿いだけで睡眠妨害にしかならな
いものだ。
「目立たないといえば花巻だけどよ、あいつまたとーちゃんのケーキ屋の手伝いしてたぜ。
 あの健気さがあいつのいいとこだよな。顔も実はけっこう可愛いしよ」
唐突に花巻の話題になった。…ふむ、まぁ今のは認めてやってもいい。こいつの女を見る
目も捨てたもんじゃないのかもしれない。
「へぇ、あいつまだ店の手伝いとかしてんだ?」
「…おまっ!何で知らねーんだよ!?
 お前ら付き合ってんじゃねーのかよ!?」
「な!?なな…何言ってんだよ……バカじゃねーの?」
「なんだ、お前らあれで隠してるつもりだったのか?
 最近やたらつるんでるし一緒に帰ったりするし、バレバレなんだよ!」
「いや…ちょっと待て…。隠す隠さない以前の問題でだな……」
そう言いながら自分でもよく分からなくなってきた。
確かに、最近俺たちはよくつるむし一緒に帰ったりもする。俺は花巻のことが…まぁ嫌い
じゃないし、向こうも俺に対して好意を持ってくれている……ような気はする。
だがそれは果たして「付き合う」と言っていいものなのだろうか。
…駄目だ。考えれば考えるほど分からなくなってくる。ここは誰かに助けを請おう。
「…なぁ、アシタバ。……俺と花巻って…付き合ってるのかな…?」
「いや…僕に聞かれても困るけど……」
アシタバからはもっともな答えが返ってきた。

224 :
学校の帰り道。俺の隣には花巻がいる。だが俺も花巻もさっきから黙ったままだった。
いつものように一緒に帰ろうぜと誘ったはいいのだが、学校でアシタバや美作に言われた
ことが気になって俺はなかなか話を切り出せないでいた。
花巻は花巻で、いつも持っているピンク色のノートを胸に抱えながら居心地悪そうに歩い
ている。
「無理やり花巻を付き合わせてるんじゃないだろうな!」と憤る美作なんかよりも、俺に
トドメを刺したのは「花巻さんなら押し切られると断れなそうだよね」というアシタバの
言葉だった。
クソ。あの野郎、人のよさそうな顔して心を抉るようなこと言いやがって。
もやもやした気持ちのまま歩いていると、花巻が足を止めていることに気付いた。
「ん?…どうした、花巻?」
「あ…えと…その……わ…別れ道…です……」
あぁそうか。俺たちは帰る方向が違うから、いつもこの場所で別れているのだった。
結局、お互い何も喋らずにここまで来てしまったわけか。
花巻は本当に俺と一緒にいたいと思っているのだろうか。アシタバの言葉がまた俺の心を
ちくちく刺し始める。
畜生、何で俺がこんな思いしなきゃならないんだ。こんなんじゃ家に帰っても気持ちよく
眠れそうにない。これは早急に解決しないと俺の安眠にかかわる。
俺は心を決めて、花巻の帰り道のほうへ向きを変えて歩き出した。
「いいよ。今日は話したいことあるし。家まで送ってく。お前ん家こっちだろ?」
「へ?…え?え?……あ、は…はい…!」
とは言え、どうしたもんかな……。
顔を真っ赤にしてついてくる花巻を見ながら、俺はどうすればこいつの気持ちを聞きだせ
るか考えを巡らせた。
いきなり「俺のことどう思う?」と聞くのも何だか変だ。それにナルシスト野郎みたいで
気持ち悪い。だからと言ってまわりくどく質問するのも面倒だ。
面倒臭くなくて恥ずかしくなくて、一発で花巻の気持ちを聞けるような、そんな魔法の呪
文みたいな言葉はないものか。
あーだこーだと考えてはみるものの、一向にいい案が浮かんでこない。それどころか、堂
々巡りをしてさっきから同じことばかり考えているような気さえする。
こんなことで俺は花巻の気持ちを聞けるのだろうか。さっきとは違う種類の不安を感じて
いると、花巻が小さな声を出した。
「…ふ…藤くん……ここ…私の家……」
……。何てことだ。俺はまだ何も聞かないうちに花巻の家に着いてしまったらしい。
ここまで来てしまってはもうどうしようもなり。出来るだけ早くカタを着けたかったのだ
が、今日はもう諦めるしかないか…。
情けない気持ちになって花巻に別れの言葉を告げようとすると、先に花巻が口を開いた。
「…あの…よ…よかったら……家に上がっていかない…?」

225 :

花巻の家には誰もいなかった。聞けば、母親はそそっかしくていつも買い物に時間がかか
るのだそうだ。兄貴はたぶん友だちとどこかに出かけているとのことだった。
花巻の部屋に案内されると、そこは綺麗に片付いた寝室だった。
ただベッドの布団だけが起きたままの状態になっていて、花巻は部屋に入った途端「ふわ
ぁ!?」と短く叫び慌てて布団を直していた。
たぶん今朝遅刻しそうになって慌てて布団を飛び出したのだろう。涙目になりながらわた
わたする花巻の姿が目に浮かぶ。
そういえば花巻はどんなパジャマを着てるのかな。ピンクの水玉とか似合いそうだ。少し
子どもっぽいかもしれないがかなり可愛い。
そんな下らないことを考えていると、適当に座るよう勧められた。
俺は言われるまま、淡いピンクのクッションに腰掛け、ぐるりと部屋を見回した。
女の子の部屋というからもっとメルヘンチックな感じを想像してたけど、花巻の部屋は思
っていたよりだいぶ普通だった。
だが、そこかしこにピンクの小物があったり、小さなぬいぐるみが置いてあったりと、や
っぱり女の子の部屋なんだなと思わせる部分もちゃんとある。
何というか、派手過ぎなくて花巻らしい部屋だと思った。
花巻は何か飲み物を持ってこようかと聞いてきたが、お盆ごとひっくり返すのが目に見え
ているのでやんわりと断った。
飲み物を断られた花巻はおろおろとした様子で立っていたが、そのうちベッドの端の俺か
ら一番遠いところにちょこんと座った。
いや、何でそこに座るんだよ。もっと俺の近くに座ってくれよ。傷つくだろ。
花巻は顔を赤くして何も喋らない。どうやらここは俺から話を切り出すしかないらしい。
まぁどっちみちここまで来たからには俺もハラを括らなくちゃならない。
今ここでカタを着けてやろうじゃねーか。
そう決意して俺は花巻に声をかけた。
「あのさ、花巻。…俺たちって付き合ってると思う?」
「え?…え…?…ぇええええ!?
 つつつ…!付き合うって……ふ、藤くんと…あの…わ、私が…!?」
「そーだよ、他に誰がいんだよ。……どう思う?」
「……そ…そんなこと……突然言われても……
 私たち…その…つ、付き合うとか…そういうこと……言ってないですし……」
真っ赤な顔で俯いて黙り込んでしまった。
まぁ花巻が戸惑うのも無理はない。花巻の言うとおり俺たちはお互いに告白なんてしてな
いし、たぶんするつもりもなかっただろう。
俺たちの関係は特に何を宣言するでもなくいつの間にか始まっていた。だけど厄介なこと
に、始めはあるのかどうかも定かでなかった俺の気持ちは、宣言など何もしなくとも勝手
に発展していった。
だんだんと変わっていく気持ちを見ない振りして曖昧に時間を重ね、気が付けば俺はこの
気持ちを何と呼べばいいのかさえ分からなくなっていた。
こうなってしまったのは俺の責任だ。そこのところは俺がしっかりとけじめをつけなくち
ゃいけないと思っている。
だけど、その前に知りたい。少しずつ変わっていくこの気持ちを、俺はこのまま変わらず
花巻に向け続けていいのかを。自分でさえ正体の分からないこの不安定な想いを、花巻は
受け止めてくれるのかどうかを。

226 :

俺は黙ったままの花巻にもう一度、今度は違う質問をした。
「…じゃあ、お前はどうしたいんだ?」
「え?…私……?…私は…その……うぅ…そ、そんなのわかんない……」
花巻はそう言うと、また俯いて何も言わなくなってしまった。
何も答えてくれない花巻を前に、俺は嫌な焦燥感に襲われて背中が寒くなった。
やっぱり俺は花巻を無理やり付き合わせていただけなのだろうか……。
そんなことは認めたくない。だが、違うと断言することも出来なかった。
不安が頭を駆け巡り思考の邪魔をする。思考が上手く働いてくれない。
「頼む…教えてくれ……もしかして、俺と一緒にいるのが嫌なのか……?」
「そ…!そんなことないです…!
 私は藤くんといられるのがすごく嬉しくて……でも……」
「…でも…?」
「あう…でも……わ…私なんかと一緒にいて……
 藤くんは迷惑なんじゃないかって……それが心配で…不安で……」
花巻は口元に手を当てて言葉を濁した。瞳には少し涙が溜まっている。
俺が迷惑じゃないかどうか、か。思えば花巻らしい考え方だ。このタイプの人間は自分基
準でものごとを考えない。一番はじめに思いつくのはいつも自分以外の誰かなのだ。
最近、そういう考え方をする人間が実は少なくないことを知った。アシタバとかハデス先
生とか、そういうタイプの人間が俺の周りにいるからだ。
自分にはなかなか出来ない考え方だから、面倒臭そうだと思いながらも彼らに対してはひ
そかに一目置いている。
花巻は明らかにそのタイプの人間だ。
嫌がられているわけではなさそうなので少し安心したが、俺が知りたいのはそんな答えで
はなかった。
俺が知りたいのは、花巻は俺のことをどう思っているのか、俺は花巻のことを好きでいて
いいのかということだ。
それをこいつから聞き出すのは、どうやら思った以上に難しそうだ。
俺は右耳に小指を入れて、はぁと溜息を吐いた。
「…あのなぁ、アホかお前?」
「へ?……あ…!ご…ごめんなさい!」
「あ、ワリ。そうじゃなくてさ……
 いつもお前のこと誘ってんの、俺のほうじゃん。
 お前のこと迷惑だと思うなら俺がわざわざ誘うわけないだろ?」
「…そ…それは…その……そうなんですけど……
 えと……藤くんは…いつも私にやさしいのに……
 私はドジで…いつも失敗ばかりで…藤くんのために何もできなくて……
 わ…私…その…悔しくて……悲しくて……うぅ……」
花巻は身体を強張らせて、ただでさえ小さい身体をさらに小さくした。
瞳からは今にも涙がこぼれそうだ。
震えながら話す花巻を見て、俺は奇妙な感情に襲われていた。
懐かしいような……温かいような……不思議な気持ち。
そして、ふと気付いた。

227 :

…あぁそうか。こいつは、俺に似てるんだ。
でも、俺なんかとはやっぱり全然違う。
今まで不確かだった花巻に対する気持ちの正体が、何となく分かったような気がした。
「…あのさぁ、花巻……
 お前は俺のため俺のためって言うけどさ、俺はそんな大した人間じゃないんだぜ?」
「…え……?」
花巻は涙を溜めた目を大きくして不思議そうにこっちを見てきた。
俺はその真っ直ぐな目が少し恥ずかしくて、目を逸らしながら話し始めた。
「…これから言うことは誰にも言うなよ?……ここだけの話だからな…?」

――俺の家は古くからある料亭で、いわゆる老舗ってやつだ。
誰もが予想するとおり礼儀や作法にはとことん厳しくて、家の連中には小さい頃からよく
怒鳴られた。
だけど、俺は昔から我慢の苦手なガキで、俺に対する躾の効果はほとんど見られなかった。
それでも、兄貴が家のことを完璧にこなすことで俺への非難はだいぶ薄れていたし、お婆
や仲居さんは完璧に出来なくたって俺のことを何でも褒めてくれた。
俺はたぶん恵まれてたんだろう。
家の連中は厳しかったけど、お婆も仲居さんも板さんもみんなやさしかった。兄貴だって
家を継ぐまではすごくやさしかった。
俺は何でも出来てしまうやさしい兄貴が大好きで、どこにでも兄貴の後をついていっては、
出来もしない真似をしては失敗してた気がする。
でも大きくなるにつれて、それじゃ駄目なこともだんだん分かってきた。
俺は家のことで忙しい兄貴の邪魔をしないように、だんだん兄貴から離れていった。
「……本当は…家のこと兄貴に全部押し付けちまって、悪いと思ってるんだ。
 でも、俺に出来ることなんて邪魔しないようにすることくらいだしさ……」
花巻は相変わらずの円い目でこっちを真っ直ぐに見ている。
俺は誰かに話すどころか、言葉にしたことさえ一度もないような気持ちを打ち明けてしま
い、何となく居心地が悪くなってまた目を逸らした。
「…あ…あの…いつか、お兄さんの力になれるようになったらいいですね……」
「な…!そんなの出来るわけねーだろ!?……俺、気が短いし、不器用だしさ」
「え…!?そ…そうでしょうか…?……私…藤くんならできるって…思います……」
自信なさそうにそんなことを言う花巻を見て、俺はまたあの温かい感情に包まれた。
そうだ…こいつはそういうやつなんだ。
こいつはどんなに失敗しても、決して努力することをやめはしない。
こいつは俺に、無邪気に兄貴の後をついて歩いてた頃の自分を思い出させる。
兄貴の力になりたいという、諦めようとしても諦め切れていない俺の本当の気持ちを思い
出させるんだ。

228 :

「…お前のそういうとこが、俺は羨ましいのかもな……」
兄貴のこととか、昔のこととか、花巻への愛しさとか、いろんなものがごちゃ混ぜになっ
て溢れそうになる。
この想いを伝えたいけど、どうやら上手く言葉にはなってくれなさそうだ。
俺は花巻の小さな肩に手を置き、そのままぐいと力を込めた。
すると花巻はぱたんと、いとも簡単に押し倒されてしまった。
「え…?…え?…藤くん……何…?」
「……したい」
「えぇ!?そそそ…そんな突然……」
「突然じゃねーよ。お前が悪い」
「ええぇ!?……」
花巻はどうしていいか分からないというようにあちこち目を泳がせていたけど、やがてゆ
っくり目を閉じコクンと頷いた。
俺はそれを合図に花巻の小さな口唇に口付け舌を吸った。
花巻の舌を俺の舌で撫でてやると、花巻もそれに応えて舌を絡ませてくる。
俺たちはしばらく夢中になって口付けを交わした。
やがて息苦しくなって口を放すと、花巻は名残惜しそうな顔をしながらも、仰向けのまま
制服のボタンを外し首もとのリボンを緩めた。
俺はその間に制服とセーターを脱いだが、シャツのボタンに手をかけていた花巻を待ち切
れず、もう一度花巻の口唇に口付け、その状態まま右手で花巻のシャツのボタンを外して
いった。
ボタンを全部外してシャツをはだけると、重ねた口唇はそのままに、そこに充てられてい
た布に手を入れて胸に指を這わす。
「…ん……むぅ……ふっ…あ……!」
花巻の口唇から漏れる吐息が激しくなる。
ほとんど平らと言っていい下着をずらすと、やはり平らで薄い胸が露わになった。
今度はその薄い胸にちょこんとついている乳首に口付け、吸い上げ、舌を這わせ、そして
甘噛みする。
「…っあ…あぁ……はっ…ぁん…っ!」
敏感に反応する花巻を上目遣いで見ながら、俺は花巻に刺激を与え続けた。
胸は平らで薄くても、花巻の身体はやっぱり女らしく、その肌は同じ生き物とは思えない
ほどに柔らかくすべすべとしていて、その骨格は俺の力でも壊せてしまうのではないかと
思えるくらい華奢にできていた。
こんなにも壊れやすく、汚れやすそうな生き物が自分と同じ生活を送っていることが信じ
られなかった。
誰の目にも触れないところにこいつを隠して、俺だけのものにしたい。そんなどうしよう
もない独占欲を抑えることが出来なかった。

229 :

シャツを全部脱がせ、花巻の白く柔らかな素肌に愛撫を続けているうちに、花巻は太もも
をもじもじさせ始めた。
俺はそれを見て左手を内ももにやり、ゆっくりと上に滑らせた。
花巻はピクンと反応して一瞬身体を強張らせたが、俺の手を受け入れるようにすぐに力を
抜いた。
しかし俺はそれを裏切るように滑らせていた手を止め、逆方向に動かした。
そのまま行ったり来たりと内ももへの愛撫を続けていると、花巻が涙をいっぱいに溜めた
目で訴えてきた。
「…はぁ…あっ……ふ…藤くん…お願い……!」
「……何を?」
「……っ!……」
意地悪して聞き返すと、花巻は顔を両手で覆って黙り込んでしまった。
でもまぁ、こっちとしてももう我慢なんて出来ない。もう一度聞き返すことはせずにファ
スナーを下ろしてスカートを脱がせた。
そしてすでに湿り気を帯びている小さなパンツをゆっくりと、丁寧に下ろしていく。
花巻のそこはまだ触れてもいないのにしっとりと濡れていて、毛の生えそろっていない割
れ目からはピンク色の突起が顔を覗かせていた。
「うわ…お前こんなにしてたのかよ。…俺にされて興奮した?」
「やぁ……見ないでぇ……」
花巻は両手で顔を隠したままいやいやと首を振った。
俺はそんな花巻の仕草が愛らしくて、何も言わずにピンク色の突起を口に含んだ。
「ふぁっ!?…あ…あぁ……んっ…あぁ…っ!」
舌を動かすたびに花巻の身体はビクンビクンと大きな反応を返してくる。
俺はもっと大きな反応が欲しくて、膨らんだ陰唇を舌で転がしたり押し付けたり、その下
にある入り口に舌をぐりぐりと押し当てたりした。
花巻の華奢で柔らかな肢体が、可愛く濡れる喘ぎ声が、止め処なく溢れる愛液が、俺を堪
らないほどに興奮させる。
崩れてしまうんじゃないかと思うほどに身体を撥ねらせる花巻を気遣う余裕もなく、俺は
花巻に愛撫を与え続けた。

「はっ……ぁん…っ!!」
やがて花巻の身体が一際大きく撥ねた。
愛撫を止めて花巻のほうに目をやると、花巻は虚ろな目をして時折身体を痙攣させている。
どうやら一度ではなく何度かイッてしまっていたようで、意識も朦朧とした状態だった。

230 :

「……花巻」
「……藤くん…抱き締めて……」
俺が声をかけると、花巻はそう言って手を差し伸ばしてきた。
俺は言われたとおりに花巻を抱き起こし、その小さな身体を抱き締めてやった。
そして、涙の筋が残る目尻にそっとキスをした。
「…大丈夫か?……まだできる?」
「…うん……私…欲しい……」
「…よし。じゃあこのまましようぜ」
「…え?…このままって……どういう……?」
俺は不思議がる花巻を正面に膝立ちさせると、腰を浮かせてズボンと下着をずり下ろした。
それまで隠れていた強張りが真っ直ぐ上を向いて屹立している。
「花巻、そのまま腰落として」
「えぇ!?…そんな……は…恥ずかしいよぅ……」
「平気だって。いつもと変わんないから。ほら」
花巻ははじめ戸惑っている風だったが、やがて俺のものに手を添えて膣口にあてがうと、
少しずつ腰を落としていった。
「ぐ…っ!」
「ん…んんっ…ぅあ…藤くん……いつもより…奥まで……あ…ぁあ…っ!」
いつもと変わらないと言ったが、いつもとは違った締め付け方にすぐにイッてしまいそう
になる。
花巻は花巻で、俺を全部飲み込んでもまだ足りないのか、ぐいぐいと腰を押し付けてくる。
狂おしいほどの快感に何とか堪えていると、花巻が苦しそうな声で聞いてきた。
「…う…藤くん…はぁっ……シャツ…脱がせてもいい……?」
「え?…あぁ、別にいいけど……」
そう答えると、花巻は震える手で俺のシャツのボタンを外していった。
そして俺のシャツをはだけると、花巻は俺の胸板にぴったりと身体を寄せてきた。
花巻の柔らかくて温かい身体を直接受け止めて、これまで味わったことのないような心地
よさを感じる。
ふと俺は、こんなに小さな花巻に全身を包み込まれているような不思議な錯覚を覚えた。
それだけで俺はもう爆発しそうになっているのに、花巻はさらに俺の首もとに小さな舌を
ちろちろと這わせてきた。
言いようのない快感が全身を走る。もうこれ以上我慢するのは無理だった。
「花巻…!俺…もう…っ!」
「え?…あっ……!」
俺は花巻に包まれたまま、花巻の中で果てた。

231 :

俺と花巻は二人してベッドに横になり、荒い息を整えていた。
俺はあの後、花巻を上に乗せたままさらに三回もイッてしまった。
息を切らせたまま「クセになるかも」と言うと、花巻は困ったような顔をして俯いた。
横になったまま、手持ち無沙汰になった手でお互い触れ合っていると、花巻が言った。
「…藤くん……私には…何ができるでしょうか……?」
「…ん?…何の話?」
「…藤くんの…お兄さんの話……」
「…お前、まだ言ってんのかよ」
少し笑いながら、それでも俺の気持ちを打ち明ける。
「…そうだな、お前には俺のこともっと知って欲しい…
 そんで俺が迷ってる時にどうすればいいか教えて欲しい…」
「ふぇ……そんなこと…私にできるかな……?」
「できるに決まってんだろ。心配すんなよ」
出来ようが出来まいがそんなことはどうでもいい。
花巻が隣にいれば、俺はどんな時も迷わないでいられるような気がした。
怠け者で、行儀も悪くて面倒なことからすぐに逃げようとするどうしようもない俺だけど、
花巻が隣で頑張ってくれていれば、俺も「なりたい自分」を見失わずにすむんじゃないか
と思った。
そんなことを考えていると、何だか温かい気持ちが湧き上がってくるようで、俺はその温
かさを花巻に伝えたくて隣にいる花巻をぎゅっと抱き締めた。



232 :
>>216が禿萌えだったのでオマケを書いてしまった

「…藤くんって、それ…いくつ持ってるの……?」
「え?…あぁコンドーム?
 兄貴の部屋の箪笥に溢れるんじゃないかってほど隠してあるんだよ。
 したいときにできないと嫌だし……いつも10コは持ち歩いてるかな」
「ふぇえええ!?…わ…私、そんなにできないよぅ……!」
「そうか?お前してるときはけっこう欲しがるじゃん」
「え……そ…そんなこと……」
「あるだろ?…もう一回する?」
「え……う…うん……」
以上です。お目汚し失礼致しました。
そして驚きの薄さ。だらだらと長い文章で申し訳ありませんでした。

233 :
GJGJ
健気な花巻さんもいいけど情事中限定で積極的な花巻さんも凄くいい
オマケ吹いたw山蔵ww
二人目は当分作らない予定なのか?w

234 :
藤花メインもおまけもGJ
文才ある奴がうらやましいぜ!

235 :
なんか、おまけなんて書いてくれてありがとう
山蔵がいいキャラだということに気付いたww
GJGJ!

236 :
ハデス先生の誕生日大晦日みたいだから
誰か幸せにしてあげて

237 :
これは、普段生徒達が世話になってる礼なんだから
ただそば玉を多く買いすぎただけなんだから


238 :
>>236
もうちょっとしたら書く。
>>207>>222で藤花に萌えたので、続けざまに藤花クリスマス話。

239 :
冬休みが始まったと思ったら、もうクリスマス当日になってしまっていた。
花巻は時間を持て余すよりは少しでも父親の役に立ちたいと、初日から「はなまき」でバイトを
続けている。何しろこの時期のケーキ屋はかきいれ時なのだ。
とはいっても、まだ店頭に出られるまでには至っていない。店の奥で職人たちの作業の補助を
したり、小さな焼き菓子の包装を手伝ったりするぐらいのものだ。それでも役に立っているという
実感があるのは嬉しい。
クリスマスとはいっても特に誰かと出かける予定はないから丁度いい。そう思っていた。
今日は小さなケーキの上に飾るマジパン人形を山ほど作ることになった。急かされたりしければ、
結構落ち着いて作業に取り掛かることが出来る。白い顔に青い目と赤い帽子と身体。バランスを
見ながら作り上げていくのは何だか楽しい。幾つも作っているうちにコツも分かってくるので速度
も上がっていく。
「美玖はこういうことには才能がありますからね。急がなくても確実にしてくれればいいんです」
時々奥まで様子を見にやって来る父も今日は満足そうにしている。何しろ最初の頃は色々やって
しまって迷惑をかけたのだから、少しでも力になりたかった。
「私、もしかしたら職人になれるかな」
「そうですね。美的センスも集中力もありますから、頑張れば多分ね」
トレイの上に綺麗に並んだマジパン人形が、その瞬間に命を得たように見えた。
その日は調子良く作業が進んだお陰か、特にこれといった失敗をすることもなく終わった。それに
気を良くしているせいか、店を出てからも足取りがとても軽い。
「出来ることを少しずつ増やしていけば…いいよね」
暗くなってきた街はクリスマスのイルミネーションで飾られて、どの店のディスプレイも街路樹も
眩くきらきら輝いている。見慣れている筈の街に突如として魔法がかかったようで、何だか不思議
な気分になった。
街路樹の中の一際大きな樹がツリーに見立てられ、様々な光で彩られていて思わず目を引かれ
てしまう。
「…綺麗」
思わず見上げたツリーの天頂には、大きな星が煌いている。
「…ホント、綺麗…」
魂が抜けたように立ち尽くして見上げている花巻の横を、一組のカップルが通り過ぎた。それに
すらも気付かないままだった。

240 :
手を伸ばしたら届きそうなのに決して届かないところにある星は、今まで花巻が何もしないまま
諦めてきた夢のように思えていた。これまではそうだった。
でも、これからも同じでいるつもりはない。花巻も何とか成長しようと足掻いているのだから。
だから、頑張ればあの星にもいつか手が届く。きっとそうなる。
そう思えている今の自分こそが少しだけ成長した証なのだろう。
「明日も…がんばろっ」
煌く星を眺めながら静かに決意をする花巻の肩を、誰かが後ろから急に叩いた。
「…ぅひゃっ!」
「俺だよ、何してんだ。こんなトコで」
「あ、ふ…藤くん…」
偶然通りかかったのだろうが、こんな日に出会うのは何か運命を感じずにはいられないものが
あった。それも今夜がクリスマスだからなのだろうか。
藤は相変わらずラフな格好で立っている。こんな時間に一人で散歩でもしていたのだろうか。
「あ、あ…ツリーがすごく綺麗だったから…」
「ツリーね、そうだな」
そう言われて、改めて藤はツリーの存在に気付いたかのように見上げた。もっと親しくしていたら
今日のような日は一緒にどこかに出掛けていたのかも知れない。それも楽しいだろうけど、何を
話していいのか分からなくなりそうだ。まだそこまで二人は段階を踏んでいない。
「で、今日はバイト帰りだったのか?」
「…うん。マジパン人形をたくさん作ったの。面白かった。お父さんにも褒められたの」
「そっか、良かったな」
不意にぽん、と頭に手が置かれる。労われたようで嬉しくなった。
すっかり日が落ちて夜となった街は一層華やかさと輝きを増して、テーマパークのように賑やか
になっている。そんな中にいるだけで、気持ちが浮き立ってしまうのは仕方ない。ツリーの周囲で
幸せそうに笑い合っている恋人たちと同じように、寒いのを理由にしてそっと寄り添った。
「…私、明日も頑張れるよ、きっと」
「だな、花巻なら何でもやれるって」
抱き寄せたりはしないものの、藤は巻いていたマフラーを花巻にかけてくれた。
もしかしたら自分たちも周囲の人たちからはカップルに見えているのかも、と思うと頬が熱くなって
気の利いた言葉が一つも出て来ない。それでも、冷たくなった手を藤の手が強引に握ってきたこと
で、更に言葉に詰まる。

241 :
「…っ」
「ツリー、綺麗だな」
「…うん、綺麗…」
この夜に偶然出会えたお陰で、こんな幸せな時間を過ごしている。それが信じられないほど嬉し
かった。嬉しくて知らない間に頬が濡れてきていた。
「変な奴だな」
涙の跡に気付いた藤の指が、ぶっきらぼうに拭う。
「うん、おかしいね…私こんなに嬉しいのに」
泣き笑いの変な顔で無理に返事をすると、素晴らしく晴れやかな顔で藤が笑い返した。
「嫌じゃないんなら、良かった」
その言葉に、再び後から後から零れ落ちる涙はもう止められなかった。拭われる指の代わりに
唇が額に、頬にと降ってくる。
「…あ」
「もう泣かなくて済むように、これから一緒にいればいいだろ、な」
閉じられる瞼の端で、イルミネーションがちかっと光った気がした。次の瞬間にキスをされて頭の
中がぼうっと霞む。
今までずっと見てきたドラマや映画の場面が、ぐるぐると踊る。クリスマスの夜に一番好きな人と
こうして過ごすのが夢だった。でも自分のこんな性格では絶対に無理だと思っていた。それなのに
偶然にしろ叶えられたことが信じられない。
そんな花巻の気持ちを察するように、藤の手が無造作なままだったマフラーを丁寧に巻き直して
きた。それによって温まった首元よりも、今夜は心がとても熱い。
神様が生まれた日の夜は、やはり奇跡が起こった。




242 :
藤花クリスマス!誰か書いてくれると信じてたGJ!
俺、いつもエロいの書くけど実はこのくらいの距離感がすごく好きなんだ
直接的じゃない心情描写がうまくてほっこりしました再度GJ!

243 :
藤花GJ萌えたー
良いクリスマスプレゼントありがとうでした
ここってエロパロというよりエロOKなカプスレって感じ
エロさより恋愛(萌え)が歓迎されてるっていうか

244 :
ハデス先生童貞紳士で
ベッドの中でも紳士なんだろうな

245 :
>>243
>ここってエロパロというよりエロOKなカプスレって感じ
まあ生徒たちが中学生だからってのもあるかも
大人組の話はちゃんとエロいんだし、それなりにバランスは取れてる

246 :
>>243
文章に力があればそんなものは関係ないよね。
惹き込む人はホント暴力的なまでにグイグイ惹き込んでくれる。
そのレベルとは言わないけど、そういう人が多いってことじゃない?

247 :
まぁこの比率じゃ最早エロパロスレではないわな
最初からエロ入れる気無いんだろうなっての多いもん

248 :
別によくね?
ただやってる文章力ないのよりもレベル高くていいとおもうが

249 :
カプスレには作品ないからなー、好きなカプだったら非エロでも泣いて喜ぶわ
ハデみのハデシンハデ鈍藤花蝶シン乳姉妹とか
まぁそのカプが好きじゃない人にとって非エロはスルー対象なんだろうけど

250 :
ごめん言葉が足りてなかった
俺は肯定派
エロければいいヤッてればいいじゃなくて、
キャラたちの心情や職人さんの技術を大切にしてる風潮が良いなって思う
エロがあってもなくてもいつも萌えさせてもらってます

251 :
ここはエロパロスレではあるけど、職人さんたちが作品の雰囲気やそれぞれの
キャラの気持ちを大事にして書いてるのが分かるから、このままでいい
エロはそこから出てくるものだと思うし

252 :
冬混みで美徳ちゃんと校長先生のやらしい本買ってくるお

253 :
しおりちゃんある?

254 :
アシシンかアシ操でどなたか書いてくれないかな
地味だ草だと言われているがかなりのポテンシャルを秘めていると思う

255 :
しおアシ

256 :
何故かしおりちゃんとアシタバが雨に降られて一緒に風呂に入るシーンを想像してしまった
そういえばアシタバ兄妹ってまだ一緒に風呂入ってるのかな?

257 :
入ってるわけねーだろwwと思ったがアシタバならあるいは…
アシタバ出てなくて申し訳ないけど蝶鏑
みのり兄降臨回で思いついた話
3レスほど使います

※百合です。苦手な方はスルー推奨
※シンヤがタチ。苦手な方は(ry

258 :

「これは一体何のつもりなの!?」
男でも怯んでしまうような強い口調で蝶間林は叫んだ。
彼女はテニスウェアのまま、部室の隅に後手で縛られ地べたに尻をつかされていた。
「こんなことをして……ただで済むと思って!?」
きつく睨む彼女の視線の先には、シンヤこと鏑木真哉がいた。
「あら?勝負に負けた方は勝った方の言うこと何でも聞くって言ったのは誰だっけ?」
「ぐっ…それは……!」
確かにそう提案したのは蝶間林の方だった。
だがそれは、一度でいいからシンヤを完膚なきまでに打ち負かしてやりたいという思いか
ら口を出た言葉で、彼女は自分が負けたときのことなど考えていなかった。
ましてや、こんなことをされるなんて思いおよびもしなかった。
「さーて、どうしてやろうかなー」
不敵な笑みを浮かべたシンヤは蝶間林にじりじりと歩み寄った。
蝶間林は身の危険を感じて後ずさったが、壁を背にしてもはや逃げ場はなかった。
シンヤは膝をついて蝶間林と目線を合わせると、彼女の目を見つめたままウェアの裾にゆ
っくりと手を差し入れた。
「なっ…!?鏑木っ!?やめなさい…っ!!」
蝶間林は叫んだが、シンヤは彼女の声など聞いていないという顔で、つつつと手を滑らせ
ていく。
そしてその手は蝶間林の胸部へ到達すると、ブラの上から形のよい乳房を揉みしだいた。
「ちょっ!!…こんな……っ!」
蝶間林は身体をひねって抵抗したが、ぐいと身体を寄せてきたシンヤに動きを封じられて
しまった。
「ふふふ。観念しなさい……」
妖艶な目をしてそう言うと、シンヤは蝶間林に口唇を重ねた。
「……!!」
驚いて動けずにいると、その隙にもう一方の手がウェアの中に侵入してきた。
今度はブラの上からではなく、中に手を入れて直接胸を揉んでくる。
さらに、重ねられた口唇の間ではちゅぱちゅぱと音を立てて舌が絡み合っていた。
今まで味わったことのない刺激に意識が朦朧としてくる。
蝶間林の柔らかな乳房はシンヤの細く長い指に包み込まれ、指先の動きに合わせてその形
を柔軟に変えていた。
彼女の胸は弾力こそ弱いが、その代わりふわふわと柔らかく、シンヤにそのまま指が胸の
中に埋まり込んでしまうのではないかという錯覚を覚えさせた。

259 :

「ちゅっ!」と舌を強く吸い上げて口を放すと、シンヤは両手で蝶間林の頬を撫で、嘗め
るような視線で彼女の大きな瞳の奥を覗き込んだ。
両手はゆっくりと頬を滑り、額に巻かれていたバンダナを取り去った。
「蝶間林、あなたバンダナ取ると可愛い顔してるじゃない?」
「ばっ…!馬鹿なこと言わないで!!」
コンプレックスを指摘され、蝶間林は彼方に彷徨っていた意識を取り戻した。
男子にも負けない強い女になりたい。そう強く願うのに、自分の広すぎる額は可憐でか弱
い乙女のような印象を与える。
蝶間林はそれが嫌で、女の子っぽい自分を隠すためにいつも額にバンダナを巻くのだった。
「いい加減になさい!もう許さないわよ!!」
縛られて身動きが取れない状態にもかかわらず、蝶間林は強く言い放った。
「もう!こんな状況なのに相変わらずうるさいなー。
 ……じゃあ、これならどう……?」
シンヤは蝶間林の脚を無理やり開き、その間に自分の片膝を入れた。
そして膝を当てた部分にぐっぐっ、と断続的に押し付ける。
「やっ!…だめっ…!……鏑木っ!!」
スパッツ越しに、甘い刺激が蝶間林の背筋を上っていった。
このままではいけない。だが自分の奥の何ものかがその刺激を求めている。
蝶間林は、思考を侵食していく刺激とそれを求めるもう一人の自分と必に戦っていた。
しかしシンヤの膝が動くたびに彼女の理性は確実に蕩けていき、気が付けば自ら腰をシン
ヤの膝に押し当てていた。
それに応えるように、シンヤも自分の股間を蝶間林の膝に当てて腰を動かし始める。
二人は、お互いの膝に自分の股間を擦りつけ合っていた。
「はぁっ!…はぁっ!……鏑木、鏑木っ!!」
「……はぁ…蝶間林、可愛い……もっと声、聞かせて…?」
もはや駄目だと感じる理性などどこにもなく、蝶間林はただ淫らに腰を振り続けていた。
やがて思考を侵食し続ける快感が極限に近付き、頭がまっ白になっていく。
「あぁっ!…あぁっ!…鏑木ぃぃーーーっ!!!」

260 :

――がばっ!
頂点へと登りつめる直前で身体が跳ね起きた。
「……夢…?」
肩で荒い息をしながら蝶間林は呟いた。
まるで1ゲーム終わった後のように身体が疲れている。
広い額にはじんわり汗が滲んでいた。
どうやらもう朝のようで、早起きの小鳥が囀る声が耳に入り部屋には明けたばかりの朝日
が流れ込んできていた。
酷くうなされていたのか、布団がだいぶ乱れている。
「…何で私が…あんな夢をっ…!」
思い出しただけで恥ずかしくなる。
そして身体が、夢の中で擦り合っていた部分が熱くなる。
「こんなこと…あるわけないわ!…何かの間違いよっ!!」
彼女は夢のことは忘れて、学校へ行く支度を始めることにした。

朝方のことを振り払いきれずに、気分が重いまま校門を通ろうとしていると、蝶間林は夢
で聞いたのと同じ声に声をかけられ、息が詰まった。
「おはよっ!蝶間林!」
「か…!…かかか、鏑木っ…!」
「どうしたのよ?カオ真っ赤にして…?」
「ななな…何でもないわよ!鏑木!今日の放課後、私と勝負なさい!!」
「あ、テニス?いいよー、受けてたった!
 …じゃ、またね。私、保健室よってくから」
シンヤはそう言うと、たたた、と小走りで蝶間林を追い抜いていった。
とっさに、蝶間林は遠ざかるシンヤに向かって叫んだ。
「鏑木、いいこと!?負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くのよ!!」
シンヤは振り返って蝶間林にオーケーの合図を送る。
「懲りないなー。また花巻さんとこのケーキ奢らされたいの?」
「ふん、見てなさい!今に痛い目を見ることになるんだから!」
そう言って蝶間林は昇降口へと急ぐシンヤの背中を見送った。
「…私が勝ったら……覚えてなさい…!」
蝶間林は少し頬を紅くしてそう呟いた。
重いはずだった気分は、ひらひらと舞う蝶のように軽くなっていた。



261 :
お目汚し失礼致しました。
年末に東京へお出かけする方、ご報告お待ちしております。

262 :
GJ
百合もいいな
明後日行ってくるよ

263 :
誰もいないうちに、ハデみの年越し話を書いてる途中。
完成次第投下予定。
今日のうちに完成目指す。

264 :
今年が終わるまであと二日。
美徳は兄・善徳の住むマンションに朝から行っていた。
おせちというほど気合の入ったものではないが、そのまま食べられる大量の料理を作る為にで
ある。
「んー…これでいいかな、兄さん結構食べるしなあ」
冷凍庫には作り置きしているハンバーグとカレーが幾つも入っている。何もしなくても兄は勝手に
そこにあるものを食べて仕事をすることだろう。とはいえ放っておくのも悪い気がして、せめてもの
正月らしさを演出する為の料理作りだ。
いつもの年ならどうせ一人でいるのも何だしと、同じような状況の兄と一緒に年越しそばを啜る
だけの寂しい年末年始を過ごしていた。だけど今年は違うのだ。
まだ何となく気後れがして特に約束はしていないけれど、大晦日の夜は一緒に過ごしたい相手
がいる。
手が空いたら電話してみようと思いながら、もし断られたらと思うとついつい後回しになってしまい
がちになっている。
「あー、腹減った…おっ」
夕方近くになって仕事場からようやく出てきた兄が、のそりとキッチンへとやって来た。そして大量
に並んでいるとりどりの料理に目を見張っている。
「豪勢だな、美徳」
言いながら、重箱に詰める前のだし巻き卵をつまむ。
「うん。明日の夜はちょっと遊びに行くから、悪いけど兄さんはこれ食べててね」
「男か」
「…えっ」
ぎくりとしながらもなるべく平静を装う美徳の気持ちを見透かしてでもいるのか、兄は相変わらず
眉間に皺を寄せたままだ。その手がひとつふたつと煮しめをつまんで口に放り込んでいく。
「ま、お前もいい歳だからな。男の一人や二人その気になれば捕まえられるだろ」
「そ、んなんじゃないけど…」
「せっかくの巨乳が無駄にならんように、せいぜい頑張れ」
「だからー、いちいち自分の漫画のネタに結びつけないでってば!こ、この間だってハデス先生に
頼むの大変だったんだから」
若干噛みながらも文句を言う美徳をどう思ったのか、兄はやはり何を考えているのか分からない
曖昧な表情でつまみ食いを続けていた。

265 :
「もしもし…」
夜になってから、何度もシミュレーションした言葉を反芻しつつやっと美徳は電話をかけた。電話
の向こうのハデスはいつもの如く静かで優しい声だ。
『ああ、こんばんわ、美徳さん。どうかなさいましたか?』
「あの…明日そちらに遊びに行ってもよろしいですか?お嫌でなければ…ですけど」
『構いませんよ、どうぞ。もしかしたらお忙しいのではないかと思ってお誘いするのを躊躇していま
したから、嬉しいです』
「そんな、忙しくなんか…それでは一緒に過ごして頂けるのですね、逸人さん」
『ええ、お待ちしています』
柔らかい声がすぐ側にでもいるように、耳に響く。
女として、こんな日が来るのをずっと待っていた。新しい年に変わる瞬間を共に過ごせる相手が
最も愛する男であるなら、どれだけ幸せだろうと憧れてもいた。それがようやく叶えられようとして
いることに感激を隠しきれない。
「それでは、日が暮れる頃にお邪魔しますわ…会えることを楽しみにしています」
『僕もですよ、美徳さん』
電話が切れてからも、美徳はしばらく携帯を握り締めたまま動けずにいた。翌日のことを考えると
胸が一杯になってしまう。
ハデスの部屋にはまだ一度も入ったことはないが、今までも何度かためらいながらもドアを叩き
かけたことがある。それはあまりにも迷惑なのではと思い直して、結局いつも踵を返すばかりで
終わっていたが、ようやくその先に進めるのだ。嬉しくない筈がない。
それに、明日という日にはもう一つ別の意味もある。それを思えば、どうしてもあの男の側にいた
かった。
「顔が緩んでるぞ」
また小腹が空いたのか、仕事場から出てきた兄がそんな美徳をからかう。だが、もう何もかもが
バレても構わないと思えるほど幸せな気持ちだった。
翌日の大晦日。
手ぶらで行くのも気が引けるので、量は少ないものの昨日作ったものとあまり変わらない品数の
料理を仕上げて別の重箱に詰めた。ハデスがどんなものを好むのか全く分からないので、本当に
誰もが好きな無難なものばかりだ。もし予期しないことがあったとしても、その時はその時と開き
直るしかないだろうと覚悟も決めている。
「喜んでくれるといいんだけど…」
思う気持ちもぎっしり詰まっている重箱を前にして、不安がありつつもまた頬が緩むのを隠せない
でいた。

266 :
この時期は日の暮れるのがとても早い。
午後四時を過ぎればすぐに暗くなってくる。闇が迫るのを見計らうように、美徳は料理の詰まった
重箱を抱えて目的地へと急いだ。辿る道は何度も足を運んでは勇気がなくて引き返してきた苦い
思い出が濃い。それも今日でおしまいだと思うと、妙に誇らしい気持ちになった。
ハデスの部屋の前まで来た頃には、もうとっぷりと日が落ちていた。
約束はしてあるので、もう迷うこともなくチャイムを押す。すぐにドアの奥で気配がして、チェーンが
外される音が響く。ドアを開いて出てきたハデスは、学校で見る姿と全く同じだった。
「こんばんは、美徳さん。どうぞお入り下さい」
「こんばんは、お邪魔します…」
初めて入ったハデスの部屋は、色々な意味で想像していた通りだった。まず、キッチンからして
生活感を全く感じない。良く言えば整頓されているのだが、普段から炊事には使っていないこと
がすぐに分かる綺麗さだった。基本的な電化製品は一通り揃っているのだが、あまり使いこなし
てはいないことが伺えた。それは普段寝起きしている部屋も同様のようで、テレビとベッド以外
無駄なものは一切なかった。
ついじろじろと眺め回してしまったことに罪悪感を感じながらも、美徳は招かれるままに重箱の
包みを抱えたままベッドに腰を降ろした。
「驚かれましたか?あまりにも素っ気ない部屋ですよね」
隣に座ったハデスが恥ずかしそうに俯いている。以前生徒たちがここに来たことはあるらしいが、
さすがにその時と今は違うと思っているのだろう。普段は決して伺えないプライベートを見たこと
で、さすがに美徳も恥ずかしくなってきた。これではまるで中学生と変わらない。
「…え、ええ…でも逸人さんらしいとは思いましたわ。保健室もこんな感じですし」
「自分のことにはどうにも無頓着なのです、服もあまり持っていませんので」
「それはお気になさらないで、ここに来たいと言ったのは私のわがままなのですから…でも、こう
して一緒にいられるだけで本当に嬉しい…」
見慣れた黒いシャツの胸にもたれかかるように顔を埋めると、髪に手の感触を感じた。そこから
温みが次第に伝わってくる。
「いつも済みません、僕が臆病なばかりに」
「ですから、それは」
温みを感じられたことで安堵したせいか、何となく大胆な気分になってきていた。顔を上げるとより
一層身を寄せてひび割れた頬に手を当てる。もう好ましいものにしか見えない愛しい男の表情が
より欲情を掻きたてた。

267 :
「…何も仰らないで。お側にいられれば、私は幸せなのですから」
「美徳さん、何のおもてなしも出来ずに申し訳ありませんが…このまま、いいですか?」
何度も肌を重ねてきたからこそ分かる、わずかな欲情の兆しを瞳の中に感じ取れた。元々その
つもりで来たのだし、いつでも求められれば応じられるようにしていた。それでも、随分急なこと
だとは思う。それでも、段階を全て飛ばしてでも抱き合いたい、とハデスも思ってくれているの
ならば、心から嬉しい。
「ええ…もちろん」
エアコンが効いているお陰か、風景に思える部屋はそれほど寒々しさを感じない。このまま
身を任せてもきっと大丈夫だろう。まだ少し冷静さが残る頭の隅でそこまで考えてから、膝の上
に抱えたままだった重箱を床に置いた。そしてベッドの上でためらうことも忘れて抱き着く。
「逸人さん…」
すぐに強く抱き締められて、あまりの幸福感で何も分からなくなってしまった。普段ハデスが暮ら
しているこの部屋で事に及ぶことに対して、異常なほどの高揚感があったに違いない。
「…ン」
気がついた時、目の前にハデスの顔があった。
「あ…私、は…?」
「少しの間、気を失っていたんです…制御出来なかった僕の責任ですね」
頭が重いものの、身体の芯は熱くて疼いている。起き上がると剥き出しになっていた肩が妙に
冷たい。
「今…何時ですか?」
慌てて携帯の画面を見ると、もう深夜に差しかかっていて日付が変わる少し前だった。一体どれ
だけの間歓楽に耽っていたのだろうと思うだけで、まだ火照っている身体の奥がじわりと潤み始
める。
そんなはしたない自分を誤魔化そうと、焦って声を上げる。
「…あ、あのっ!お腹空いていません?私、お料理持って来たんですけど…」
完全に脱がされなかった為か乱れきっている服を直しながら、もどかしく床に置いていた重箱の
包みを開いて蓋を取った。
「逸人さんは何がお好きなのか分からなかったので、つい色々と作ってしまいました…召し上が
りませんか?」

268 :
「すごいですね」
ぎっしりと詰められた重箱の御馳走にハデスも感嘆の声を漏らし、そして自嘲するように呟く。
「そう言えば人前ではあまり飲食をしたことがありませんからね。美徳さんにお気を使わせてしま
ったようで心苦しいです」
「いいえ、私はこういうことが…好きなので構いませんの。それに」
やや言い淀んだ後、美徳は今日ここに来た理由を口にする。
「逸人さんは今日がお誕生日だったのでしょう?校長先生に伺いましたわ。ですから、どうしても
一緒にいたくて」
まっすぐに見た瞳の色は、相変わらず穏やかで優しかった。
「美徳さん、そこまで僕を」
「はい、私はずっとあなただけですから」
ぎゅっと手を握られて、また我を忘れそうになる。そうしている間にどうやら日付も変わったよう
だった。
「では一緒に食べましょうか。後で初詣にも行きましょう」
「…はい、逸人さん」
重箱のチキンロールを一つ口に運んで笑顔を見せてくれるハデスに、美徳もようやく笑みを浮か
べた。新しい年の最初の日、これからしばらく一緒にいられることが無上に嬉しい。
そして、もしも初詣に行って願うことが同じであるなら、どんなに幸せなことか知れない。




269 :
書いてる途中でうっかり寝てた。
ちょっと遅れたけど、何とか出来て良かった。

270 :
GJ!
感情の動きが丁寧に書かれててすごく引き込まれた
今年もたくさんの良作期待してます

271 :
>>270
ありがとう。
ハデみの書いたら藤花も書かないとな、という訳で昨日寝てた分も頑張って
藤花初詣編も書いてる。元旦だから何かおまけも書けたら上出来かな。

272 :
GJ!!
ハデス先生可愛いみのりちゃんと幸せそうな年越しを迎えられて良かった良かった。
藤花も期待してます!

273 :
藤花書いた。
タイトルは好きなアーティストの曲から。
ついでにハデみの初詣編もちょっと書いた。
今日は寝ずに頑張った。

274 :
『あのさ、これから初詣に行かね?』
日付が変わって新年になった頃、家族全員で年越しそばを食べていた花巻の家にそんな電話が
かかってきた。
最初に電話を取った兄は妙に不機嫌な顔になって花巻に受話器を渡し、そばの残りを物凄い勢い
で啜ってから自室に入ってしまった。
そんな兄の機嫌も気になったが、それよりも受話器の向こうの相手の声が花巻の心を捉えて離さ
ない。
「は、初詣…?藤くんと一緒に?」
『そ。嫌か?』
受話器の冷たささえ気にならないほど、頬が熱い。色々な場面を想定して今までノートに書いて
きたけど、こんな場面は一ページもなかった。こんな日が来るなんて最初から思ってもいなかった
からだろう。だからこそ、どう答えていいのか分からない。
「う…ううん全然!!!でもいいの?私なんかよりもっと」
『お前がいいんだよ、花巻』
噛み噛みになりながら答える花巻に、藤は当然のことのようにすぐあっさりと返す。
「あ、じ、じゃあ…すぐに出るから」
『慌てんなよ、神社への通り道にお前の家があるから迎えに行くわ俺』
「えぇっ…ち、ち、ちょっと待って…」
『あと10分ぐらいかな、風邪ひかない格好してろよ。じゃ』
言うだけ言うと電話は切れてしまった。
「ちょ…藤くん…」
ろくに話も出来ないうちに、初詣に行くことが決まってしまった。これから藤と一緒に出掛けられる
のはとても嬉しい筈なのに、今度はどう言って家を出ようかとそちらの方が気にかかってしまう。
「お友達ですか?」
キッチンで片付けをしていた父が声をかけてくる。
「あ、う、うん…えーとね、これからみんなで初詣に出かけることになったの」
「それは大変、このところとても冷え込んでいますので気をつけるんですよ」
「うん、分かった…ありがとう」
一応母にも外出することを言っておこうと思ったのだが、既に眠くなったのか寝室に入った後で
顔を合わせることはなかった。

275 :
セーターを重ね着して、コートとマフラーと手袋、そして一番厚手のタイツで完全武装して花巻は
外出に備えた。そうまでしても、スカートでいることだけは絶対に外せない。プロポーションに自信
がないだけに、パンツスタイルになったが最後、女の子ではいられなくなる気がしたのだ。
どんなに寒くてもやはり少しでも可愛いと思われたい。恋する少女の心はいつも複雑に揺れ動い
ていた。
約束した時間に合わせて家の外に出たものの、周囲に人影は見当たらない。
いつもの年は日が昇ってから初詣に出かけていたので、こんな時間に外に出ることなど今まで
なかった。
路地の端に街灯の灯があるものの、それ以外は真っ暗闇なので一人であまりうろうろするのも
怖い。大人しく待っているしかないのかなと思い始めたところで、ようやく藤の姿を見つけることが
出来た。
「悪いな、呼び出したりして」
ラフな服装にマフラーを巻いただけの藤はいつも通りのマイペースさだ。
「あ、ううん。大丈夫…いっぱい着たんで寒くないから…」
「ふーん、そっか。一応これ買ったから一個やるよ」
「えっ?」
何をと聞く前に、藤は抱えていた白い包みから何か丸いものを取り出して渡してきた。手袋越し
でもそれはほんのりと温かくて柔らかい。どうやら肉まんのようだ。
「美味そうだったから、つい買っちまった」
「あ、ありがとう…」
温みが残る肉まんを持ったままの花巻に、急かすような藤の言葉が降る。
「ほら行こうぜ。こんな時間だからこそ結構混むんだよ、初詣って奴は」
「うん…ごめんね」
「それ、覚めないうちに早く食えよ」
一体幾つ買ったのか、藤もまた肉まんを取り出してかぶりつきながら勧めてくる。そしてすぐに
すたすたと歩き出した。
「あ、ま、って…」
意外に足が速い藤の後を、花巻は慌てて追いかけるしかなかった。

276 :
神社が近付いてくると、どこから来たのか分からないほど人が多くなってきた。日付が変わって
まだ一時間ほどしか経っていないというのに、こんな時間からもう初詣に出向いてくる人がこんな
にも多いというのが不思議なほどだ。確かに世の中は色々と不安なことばかりで、神様にでも
縋らなければ心の平穏が保てないのかも知れない。
懸命に藤を追い掛けながらも肉まんの最後の一口をようやく飲み込んだ花巻の前に、手が差し
出される。
「手、繋ごうか」
「…えっ」
「この人ごみじゃ、絶対はぐれるだろ」
「うん…」
寒いことも人が多いのも、全部が自分の味方になったような気がした。誰もがみんなそれぞれの
願い事で頭が一杯で、花巻のことなど見てはいない。そんな雰囲気は不思議と心地良いものに
思えて自然と手を繋ぐことが出来た。
一の鳥居をくぐったところで、藤が参道の中央を避けるように脇に寄り始める。何でも、真ん中は
神様の通り道だから人が歩いてはいけないらしい。本来なら一の鳥居をくぐる時には一礼をしな
ければいけないそうだが、この人の多さではままならないから省略したようだ。
「詳しいね、藤くん」
「そりゃあな、うちは結構そういうのうるさかったし」
それでもこの参拝の仕方は特に厳密なものではなく、ごく一般的な作法のようだが、花巻は全く
知らないまま毎年参拝していた。だから藤がそれを知っているというだけで、ただ驚くばかりだ。
「そ、そうなんだ…」
「ま、いいんじゃね?初詣のこの人出じゃきっちり作法通りにやる方が周りに迷惑ってこともある
だろうしさ。状況に応じてればいんだよ。神様もそれぐらいの無礼は許すだろ」
藤はこんな場所でも変わることなく鷹揚だ。それでも握った手を決して離そうとはせずに人の流れ
に従って前に進んでいる。どうかすれば人に流されて簡単にはぐれてしまいかねない花巻も、その
お陰で何とか藤から離れずにいられる。
神様の住む場所にはそれ故の特別な力があるのだろう。いつもなら願っても叶わないことがこんな
にもすぐに実現する。奇跡とも言えないそんな小さな出来事でも、花巻にはことごとく信じられない
ほどの喜びになっていた。
「離れてないよな」
「うん、大丈夫」
交わす言葉は少なくとも、心は通じ合っているような安堵感があった。それだけでこんなに寒く
ても心がぽかぽかと温まっていた。

277 :
それからしばらくして、ようやく二人の番になった。
「一緒に鳴らそうか」
「…うん」
目の前にある紅白の綱を持って、二人で思い切り振って頭上の鈴を鳴らす。藤はまるで子供の
ように、鈴を振り落としそうなほど勢い良く鳴らした。
「こういうのはさ、景気良く鳴らした方がいい。神様に俺たちが来たことを知らせるんだから」
「そ、そうなの…?」
本当に、今まで知らないことばかりだ。だからここは藤のやる通りにしていれば間違いはないの
だろうと、ついついぎこちない動作になってしまう。賽銭の入れ方も、参拝の二礼二拍手一礼も、
全部藤のすることの見様見真似だった。なので肝心の願い事も『家族みんなが今年もずっと健康で
いられますように』と無難なものになってしまっていた。
「別にそんなきっちりしなくてもいいって。神様だって忙し過ぎていちいち見てないだろ」
と、藤はやや呆れながらも言ってくれたのだが。
参拝を終えて帰る間際、今年の運勢を占おうとおみくじを買うことになった。
実は花巻は毎年あまり良い結果が出た試しがない。小吉や末吉ばかりが続いている。それでも
凶ではないだけましというところか。
せめてもう少し良い結果が出ることを祈りながら、売り場の巫女から受け取ったおみくじを開いて
みると、そこには『大吉』と大書されていた。
「あ…」
「良かったな、今年はいいことあるって」
あまり運勢など信じていないという藤はおみくじを買わなかったが、花巻のこの結果を気持ち良く
喜んでくれた。
いいことなら、もう日付が変わってから数えきれないほどたくさんあった。少しだけ神様が花巻の
力になってくれたのだ。
「それは大事に持っていろよ。今年一年のお守りになるから」
毎年の習慣で、側の木の枝におみくじを結びつけようとして止められた。良い結果の出たおみくじ
は持って帰ってもいいらしい。そんなことも今までずっと知らずに参拝していたのだと思うと、恥ずか
しくて仕方がなくなる。
「私、知らなかったから…」
耳まで真っ赤になった花巻の頬を、藤の両手が包み込むように触れた。
「じゃ、来年からは同じことを繰り返さなくて済むよな」

278 :
「え…?」
「今、覚えただろ」
「うん、覚えた…私、来年はちゃんとやれる…」
幼い子供に返ったように急に拙くなってしまった言葉を必で返す花巻に、藤は泣きたくなるほど
優しい笑顔を向けてきた。
「なら来年の初詣も一緒だな」
「来、年…?」
「嫌じゃないよな」
もちろん嫌な筈がない。でも言葉にならずに頷くだけだった。それに、教えられたことはきちんと
忘れずにいたい。それが神様の住む場所で決めた最初の約束となった。
二人の間にあることの積み重ねは一つ一つが些細なものであっても、着実に間違いなく積み上げ
ていけばいつかは花巻自身の願いもおのずと叶えられる。それは神頼みでも何でもなく、確かに
信じられた。
「…寒くないか?」
「ん、少し…」
今夜は出来るだけ防寒対策をしてきたつもりだったが、やはり全国的に寒波が襲来しているこの
時期の寒さの前では限界があった。足先から抗い難い冷たさが這い上がってくるのを改めて感じ、
ぶるぶると身を震わせる。藤もまた相当の寒さを感じているに違いない。
「そこで甘酒でも飲んで帰ろうか、随分遅くなっちまったし」
もう一度、手を握られた。今度は離れない為ではなく思いの確認の為に。
「…うん」
握ってきた手が力を込めるのを感じて、花巻もぎゅっと握り返した。ここは神様が住む場所なので、
敷地内にいるうちはまた何か嬉しいサプライズが起こってもおかしくはない。
今夜は、何だか特別なのだから。




279 :
出来れば、いえ、必ず一番愛する相手と幸せになれますように。
参拝する時に、何度も胸の中で繰り返していた願い事は怠りなく神様に告げた。それがきちんと
聞き届けられるかどうかはまた別のこととして。
隣で同じように手を合わせているハデスが何を願っているのか知りたかったが、それは尋ねては
いけない気がして美徳は開きかけた口を噤んだ。本当に、二人の願うことが同じであって欲しい
と思うばかりだ。
「…やはり寒いですね」
普段の服装に薄いコートとマフラーだけのハデスが、首元を掻き寄せて震えていた。真冬の深夜
の冷え込みは尋常なものではない。風邪をひかせてはいけないと、早く部屋に戻ろうと言いかけた
美徳に、急に無邪気な子供のようになったハデスが目を輝かせてある一角を指した。
「おみくじがあります…引きましょう」
「あ…」
何か言いかけた美徳に構わず、ハデスが売り場の一角に向かって歩き出す。こうなったらもう追い
かけるしかなかった。
「美徳さんも、引いて下さい」
二人分の金額を払ったハデスが楽しそうに笑いながらおみくじを受け取っている。本当に子供の
ようで、つい見入りながらも美徳もおみくじを巫女から貰った。
折角だから、良い運勢であれば嬉しい。そう思いつつおみくじを開いてみる。
「…小吉、ですね」
「私も、同じようなものです」
隣のハデスが少し残念そうに自分のおみくじを眺めている。美徳のは中吉だった。結果としては
まあまあといったところなので、文句はつけられない。
「逸人さん、お風邪を召してはいけませんわ。戻りましょうか」
「そうですね…早目に来て良かったです」
神社にはこれからますます人が押し寄せてきていた。タイミングを外していたら、まだ参拝まで
時間がかかっていただろう。ハデスの言う通り早く済ませてしまったのは幸いだった。これでもう
一度あの部屋でゆっくりと過ごせるのだから。
鳥居を抜けて神社の敷地から出ると、寒いことを理由の一つにして美徳はぴったりとハデスに
寄り添った。
「美徳さん?」
「私も、寒いのです。温めて下さいね」
返事の代わりに抱き寄せる腕が今夜は力強かった。

280 :
「美徳さんはとても料理がお上手なのですね」
帰途、ハデスがぽつりとそう言った。
「今まで披露する機会がありませんでしたから…」
「驚きました。昆布巻きも、煮〆も、とても美味しかったですよ」
「まあ…」
あまり差し出がましいことをしては、と今まで控えていただけだった。けれどこんなに喜んでくれて
いるのなら、もっと早いうちにお節介を焼いても良かったかも知れない。
「もし、よろしければ…これからも折を見て何か作りに行っても…?」
「美徳さんがご負担に感じない程度に、甘えさせて頂いても構わなければ是非とも」
「ええ、それでしたらご心配には及びませんわ」
きっぱりと、美徳は言い切った。自分が出来る限りのことであれば、少しでも力になりたいのだ。
それをこの男が望むのであればもう何もためらうこともない。
こうして、少しでも距離を縮めていくことが出来れば、今はそれだけで嬉しい。神仏に願う事柄の
根幹には日々の些細な出来事が関わっている。全く何もないところからは決して偶然の幸運も
奇跡も起こり得ない。全ては必ずどこかで繋がっているのだから、決して一つもおろそかにしては
いけないのだ。
いつか起こる筈の輝かしい奇跡を信じて、今夜の美徳もまた何か自分に出来ることから始めよう
としている。
けれど、今夜ばかりはその前にすることがある。
「部屋に帰ったら、温めて下さい。代わりに私が逸人さんを温めて差し上げますから」
「そうですね、美徳さん」
恋に囚われ囁き合う者たちの強い思いが、奇跡の原動力として変化し始めていた。




281 :
続けざまに二作投下してみた。
まあ元旦(過ぎたけど)ということで、滅多にないことだからごめんよ。

282 :
GJ×2!!
ほんわかするよ〜

283 :
遅ればせながらどっちもGJ!

284 :
ハデみのはどっちも口調が丁寧ってところがいいな

285 :
喧嘩してても、Hの最中でも、酔っ払ってても(これは原作で)
常にハデみのはそんな感じだ

286 :
長いのも短いのも、今までだらだら書いてたのを数えたら49作になってた。
50作目は元日からハマってる曲のイメージで、また懲りずにハデみのになる
予定。

287 :
>>286 凄すぎワロタw
でも完成wktkしてます。ちなみにハデみの以外にも書いてるの?

288 :
しおりちゃんの続きはこないのか…

289 :
ハデみの込みで、その数。
全てここに投下してる。第一作目は前スレ>>172
何故か保健で書いた最初のエロはハデシンだったのはいい思い出だ。その後
みのりちゃんの可愛いさに参ったので今に至る。
とりあえずはハデみのも藤花もその他も、書けなくなるまで続けるつもり。

290 :
次の発売日は17日か、長いなあ

291 :
>>289
おぉ、そうだったのか…!
ハデみのも藤花も大好きなんで、よかったらまた投下してください!
煽り文が若干長編フラグぽかったけどどうなんだろうか…

292 :
投下予定は理由あって明後日12日。
キリのいい数なので記念に色々と盛りたいし。

293 :
ワクテカワクテカ

294 :
何か都合の良い病魔無いかな
急に性欲がハネ上がって、一通り事が済んだら後腐れ無く消えてくれるような

295 :
「ムラムラする」は心の迷いに入るのか?w
まぁ、そういうこと考えすぎたらなるかもな

296 :
それは病魔いなくても本能とちゃうか?w

297 :
自制心を母の胎内に置いてきた安田がいるじゃない。

298 :
大人っぽいセクシーさが欲しい花巻さんやシンヤが
男の性欲をかきたてる病魔に罹る展開があってもいいと思うんだ
>>297
安田の性欲は父親似なんだろうか
かーちゃんはまともだよね?

299 :
ぬーべーでノロちゃんが取り付かれたパウチみたいのか

300 :
12日は過ぎてしまったけど、何とか書いた。
・とりあえず別の話がチョコチョコ混ざっている
・詠みにくい
・エロがほんの少ししかない
という、色々考えて盛った割には詐欺としか思えない代物になった

301 :
闇に溶けそうに細い三日月が冴えざえと輝く夜だった。
薄明かりの下で愛しい男に抱き締められて、美徳は目を閉じて身を寄せている。いつもと変わら
ない二人だけのささやかな幸せの時間が静かに過ぎていく。
「美徳さん、本当にここでいいんですか?」
目的地まではまだ少し距離がある。送って行くと言った手前、何かあっては大変という心配性を
発揮して、男の声が揺れた。
「はい…兄のマンションはすぐそこですわ。これ以上遠回りになっては私の方が恐縮しますもの。
どうぞお気になさらず逸人さんはこのままお帰りになって下さい」
「しかし」
「もう危ないことなんか、ありませんから…」
「そう、ですか?」
まだ多少なりとも気にかかることがあるのだろうが、美徳の性格を察したハデスはこれ以上の
主張をするのを控えたまま、ただ腕の力を強めた。
「矛盾してますわね、私はこんなに逸人さんに甘えていますのに、まだ気持ちが甘えきれていな
いんです…自分でも分からないんです」
「構いません、美徳さんにもお考えがおありなのですから」
いつものように優しいハデスの声に、わずかな罪悪感が兆す。
こんなに毎日が幸せなのに時々分からなくなるのだ。このまま愛を免罪符にしてハデスに甘えて
しまっても良いものなのか。そうなってしまったら自分は一体どうなってしまうのか。恋すら知らな
かった時期が長かっただけに、まだ心の距離感が正直掴めてはいない。
どこまでこの優しい男の心に踏み込んでいいものなのかすら、分からない。それが余計に臆病な
気持ちに拍車をかける。
本当に、恋というものは厄介だ。思いが通じさえすればそれで幸せでいられると思っていたのに、
お互いの距離が変化するごとに複雑な問題が次々と表れる。
「明日もお会い出来るじゃないですか。私もそれを楽しみにしていますから」
今夜はとても冷え込む夜だった。三日月が目に沁みるように美しいのもその為なのだろう。どこか
禍々しく見えるのは気のせいに違いないと思いながらも、いつにない妙な胸騒ぎを覚えずにはいら
れなかった。

302 :
一週間振りに入った兄の仕事場はやはり今日も散らかり放題だった。仕事があるのをいいことに、
元々のずぼらな性格から面倒なものは全部放りっぱなしにしているのだろう。
「もう…自分で少しは片付ける習慣ぐらいつけてよね」
そう言いながらも手早く周辺に転がっている紙くずや脱ぎ散らかした服を拾っていく美徳は、兄の
行く末をふと心配して溜息を漏らす。しかし、それもいつものことと兄は気に留める様子もなく原稿
に向かっている。
仕事熱心と言えば聞こえはいいが、社会人として疑問を感じる生活態度ではある。
「聞いてるの?兄さん」
「…そんな大声でわめかなくてもいい、もう夜中だぞ。近所迷惑になる」
「言わずにいられないじゃない、私だっていつまでここに来られるか分からないんだから」
「ふーん」
美徳の言葉をどう受け取ったのか、兄は一瞬神妙な声を出した。その間も美徳は手を休めること
なく片付けを続けていく。
「いらないものがあったら、次に来た時に捨てるから箱にでもまとめておいてね。それぐらいなら
出来るでしょ」
あらかた片付け終わって夕食の支度に取りかかり始めた美徳に、原稿を置いた兄が声をかけて
きた。
「奥の部屋の書棚に並んでいるノート、あれもう必要ないから捨てていいぞ」
「え?あれって兄さんが子供の頃からネタを書いてた宝物じゃないの?」
エロラブコメ作家とはいえ、兄がこの初志を貫徹する為に長年どれだけ頑張ってきたのかは身近
にいたからこそ充分に知っている。だからこそ、その言葉に驚いて聞き返した。当の兄はといえば
特に興味もなさそうに返事をしただけだが。
「ネタ書いてた奴は全部仕事場にある。奥の部屋のは落書きノート同然のものばかりだから、
もう必要ない」
「そう。でもその前に一応目は通しておくわよ。何かの間違いってこともあるかもだし」
「勝手にしろ」
という経緯があって、美徳は普段立ち入ることが出来ない奥の部屋に足を踏み入れた。そこは
古い漫画雑誌や資料など、兄が長年溜め続けてきた自称『資料』が山積みになっていて物置
と言ってもいい状態になっていた。その中でも兄が大事にしていた筈のものが書棚のノートの
大群だった。もういらないと言われても、はいそうですねと思えないのが美徳の性分だ。
早速中身を確かめてから捨てるかどうか判断しようと、積もっていた埃を払ってからノートを取り
出す。

303 :
二冊、三冊…十冊を越えてもノートに書いてある内容は似たりよったりで、捨ててもどうということ
のない落書きしかなかった。全部これなら不要物が一掃出来るなと思いながら、美徳は几帳面
にも別のノートを次々と開いていく。
その中に、他のノートとは全く違う内容のものが一冊だけあった。
兄の字は今でも下手だが、更に幼稚さを感じさせる鉛筆書きの字体からいっても十代の頃の書き
込みなのだろう。最初のページからぎっしりと続いているのは千夜一夜物語風の摩訶不思議な
物語だった。
あらすじはこういった感じだ。
教王の治めるバスラに程近い地に栄える、とある国の王子はスライマーン、そして幼い頃からの
許婚は隣の国の姫スレイカ。
二人は兄妹のように睦まじく育ったが、スライマーンが十五の時にシナの国の香料を求めて旅に
出たまま三年も音沙汰がなかった。待ち侘びるあまり、残されたスレイカは男の姿に身をやつし
愛する男を捜す旅に出た。旅先で見聞きする各地の驚愕の出来事を絡めながらも、次第にシナを
目指しているスライマーンに近付いていくのだが…。
ノートの半分ほどで物語は唐突に中断したまま終わっていた。
物語の筋としてはごく正統な千夜一夜物語の形を取っている。精読していた時期があるに違い
ない。現在の兄の作風からは想像も出来ないが、これも古典的なエロといえばその通りなので
案外好みとしては繋がっているのだろう。
「兄さん」
他のノートは全部捨てることにしたが、それだけは何故かどうしても気にかかった。片付けの手
を止めて仕事場に向かう。
「こんなの見つけたんだけど」
兄は何事もなかったように原稿にペンを入れている最中だった。差し出したノートを一瞥するなり
やや表情を帰る。
「…あー、そんなのもあったな」
どうやらノートには覚えがあるらしい。
「何で話が最後まで書いてないの?」
「飽きたから」
「そんな…話としては悪くないから続ければ良かったのに」
それなりに話の内容に引き込まれていたので、美徳は続きと結末がどうなったのか気になって
仕方がなかった。かといって代わりに想像力を駆使して書くにも限界がある。そもそも千夜一夜
物語風の話なんて難易度が高いから逆立ちしても無理だ。

304 :
兄はすっかり冷めたマグカップのコーヒーを飲み干して、思い切り伸びをする。
「その気がなくなったから仕方ないだろ」
「もう…勝手なんだから…」
ノートを胸に抱いて、不満そうな声を出すしか美徳には出来なかった。兄にとっても時間だけは
充分にあった十代の頃と今では違う。単なる趣味のことで仕事に専念している兄を煩わせる訳
にはいかないのだ。
ここは引くしかないようだ、と諦めるしかない。
『幼い頃より、スライマーン王子とスレイカ姫の二人には小さな秘密がありました。
夜半にお気に入りの馬を駆って二つの国の境にある丘の上で落ち合い、肩を並べて月を眺めるの
を密かな楽しみとしていたのでございます。
落ち合った夜には満ち欠けを繰り返す月を眺めながら、二人は実に様々な話をしました。その日に
出会った面白い人々のこと、美味しかったお菓子のこと、そして将来のこと…。話は尽きることなく
湧き出す泉のように続きます。
そんな話の合間に、スライマーン王子は大層愛おしげな面差しでスレイカ姫を見つめてきます。
「この先、幾千、幾万の昼と夜を越えても、我々にどのようなことがあっても、一緒に月を眺めま
しょう。姫」
その眼差しを嬉しく思いながらも、スレイカ姫は恥ずかしそうに頬を染めます。そして生まれる前
からの約束のように指に嵌めた指輪をそっと天にかざすのでした。
「これはわたくしが生まれたときから身につけていた、操の証の紅瑪瑙の指輪。いつの日にか
これを受け取って頂けますね。スライマーン様」
「もちろんです、その日を今から楽しみにしているのですよ」
「わたくしもですわ。この願いが届かない筈がありません、今宵も月が大層美しゅうございます
から」
そのようにして日々を過ごしていた、それだけで幸せだった二人でありました。』
その夜、美徳はいつまでも眠れずにいた。
十代の頃の兄が書いたこの未完の物語に自分でも意外なほど引き込まれていて、二人がどう
なってしまったのかをずっと考えるばかりだ。そんな気持ちにずっと心に引っ掛かっていた不安が
一緒に引きずり出されて、すぐにでもハデスの声が聞きたい、顔が見たいと思ってしまう。
ふと携帯を握り締めた途端に現実に返り、慌ててサイドテーブルに投げるように置いた。
「いけない…もう真夜中なんだから…」
このままではとても眠れそうになかった。早く夜が明けて朝になることを必で願い続ける。そう
すればハデスに会えるのだからと、それだけを心の拠り所にして無理矢理ベッドに潜って目を
閉じた。

305 :
翌日、奇妙なことが起こり始めた。
ハデスに会えないのだ。
もちろんハデス自身はきちんと出勤してはいるし、保健室にもいる。ただ美徳と顔を合わせること
が朝から一度としてなかった。単なる偶然が重なっただけだとたかを括っていたものの、昼休みを
過ぎ、放課後になっても変わらない。新学期に入ったばかりで色々と落ち着かない部分もあるのだ
と思ってみても、どうにも腑に落ちない。
業を煮やして保健室に乗り込んでみたのだが、アシタバが一人でソファーに座って本を読んでいる
だけだった。
「あ…」
「あれ?どうしたんですか」
アシタバは急に居心地が悪そうな顔になった。
「ハデス先生に用事があったのですが、不在のようですね」
「…さっきまでここにいたのですが、急に校長先生に呼ばれたので…」
「そうですか、では行ってみることにします」
妙にどもりがちになっているアシタバには悪いことをしたと思ったが、それ以上に会えないでいる
苛立ちが募っていた。本当に奇妙なことばかりだ。電話をかけても一瞬だけ通じるものの、すぐに
切れてしまう。メールもやたらと時間がかかった挙句送信出来ない。
どうあっても会えない魔法をかけられてしまったかのように。
漠然とした不安は見事的中した。
校長室に行ってもハデスはいなかったのだ。ほんのわずかな時間上の擦れ違いが決定的な断絶
となっている。結局、その日は一度たりともハデスと会うことも、声すら聞くことが出来ないままで
終わった。
気持ちは少しも癒されることなく、苛々とするばかりだ。
帰って来てからも夕食を摂る気になれず、仕方無しに何度も読み返したノートの物語をまた読み
始める。
兄に物語を作る才能がどれだけあるのか今もはっきりとは分からないが、一応プロとしてそれなり
にはやっているのでかなりのものなのだろう。その基礎的な部分でこの物語が関わっているので
あれば、兄にとって決して無駄な作品とはなっていない筈だ。
まして感性が鋭く豊かだった頃に書いたものなら尚更に。
読めば読むほどに、行方知れずの愛しいスライマーン王子を捜し続けるスレイカ姫の切なくリアル
な感情が、今の美徳の心の中に入ってきて溢れそうだった。
「そうだよね…三年も会えずにいるのは…辛くて胸が痛いよね……スレイカ姫」
いつの間にか、涙がぽろぽろと頬を流れ落ちた。

306 :
次の日は土曜日だったが、やはり会えない時間だけが過ぎていった。
ただ、ハデスの方も顔を合わせられない、電話もメールも出来ないというこの異常事態にさすが
に気がついたのか、アシタバに短い手紙を託していた。
「何があったのかは分かりませんけど、元気出して下さいね」
わざわざ美徳の住む部屋を訪ねて手紙を渡してきたアシタバは、もちろんこの事態を知っている
訳ではない。原因すら分からないものだから説明しようもない。それでも生来の勘の良さで何か
を察したのだろう。
「ありがとう、アシタバくん」
「いいえ、どう致しまして」
手紙を受け取った後も美徳はしばらく開けずにいた。不用意に中を見ようとすれば、途端にこれ
までのことが全て霧散しそうで怖かった。
日が落ちてからしばらくして、ようやく大事にしまい込んでいた手紙を開いてみる。
『何が起こったのかまだ完全に理解しているとは言えませんが、どうやら僕たちは何か抗い難い
力によって会えずじまいになっているようですね。何とか解決の為に調査しているところです』
短いが思いの篭った文面が端正な文字で綴られていた。ハデスが持つらしい力ではどうにもなら
ない気がしたが、こうして手紙を書いてくれたことは素直に嬉しい。
「逸人さん…必ず近いうちに会えますから…」
自分に言い聞かせるように呟いた美徳は、突然稲妻にでも打たれたように目を見開いた。その
まましばらく動けずに立ち尽くす。
「似てる、まさか、ね…でも」
閃きのように脳裏によぎった思いは、もう止められなかった。
「兄さん!」
すぐに兄の仕事部屋に向かった美徳は、いつにない叫び声を上げた。時間としてはまだ宵の口
というところだ。いつもなら訪れる日でもなく、時間としても早過ぎる。
「珍しいな、忘れ物でもしてたか?」
それでも兄は些細な変化を一切スルーしたまま、慌しくやって来た美徳の様子を面白そうに見上
げていた。
「急で悪いんだけど、この話の続きを書いて。最後まできちんと」
「はぁ?」
作業机の上に例のノートを置いてまくし立てる美徳の剣幕がすごかったのか、兄は訳が分から
ないながらも若干引いている。

307 :
「あのな、そんな昔に書いた話の続きなんてもう忘れちまったっての。飯の種を犠牲にしてでも
書きたい訳でもないしな」
「無茶だってのは分かってる。でも、どうしてもなの」
「無理無理、諦めな」
「兄さん!」
あまりにも必な美徳の様子に只ならないものを感じたのか、兄の表情からはいつものからかう
ような色が消えた。面倒臭そうにがりがり頭を掻きながらしばらく考え込んだ後でぼそりと言葉を
返す。
「何があったのか分からないが、考えとく」
「…本当?」
「まあ日頃お前には無理させてるトコもあるしな、ノートは預かっとくぞ」
次の締め切りが近いのに、とか面倒なことをやらせんな、とか色々と文句を言いつつも特に理由も
聞かずに兄は続きを書くことを引き受けた。美徳自身もこれで何が解決するのかを分かっている
訳ではない。ただ他に糸口が全く見えなかったので手探りで一つ一つ原因を手繰っているだけの
ことだ。
「ありがとう、兄さん…」
「これはすぐに書かなきゃいけないんだろ?お前は昔から急かす癖があるからな」
昔書いたきりとはいえ、兄は内容を一読しただけで当時のことを思い出したようだ。今取り組んで
いる原稿に支障がない程度には早く仕上げてくれるに違いない。それを確信して、事態が一歩
前進したことを感じていた。
「うん、本当に、ありがとう…」
ハデスと会えなくなって三日目、今度は美徳が手紙を書いた。
『私の方でも原因を探っています。多分近いうちに私たちはまた会えるでしょう。きっとあなたにも
理解しきれない原因なのだと思いますが、どうかお待ちになって下さいね』
それを成り行き上とはいえ、二人の間の仲介者になってしまったアシタバを呼んで渡した。彼なら
怠りなく任務を遂行してくれるだろう。
「僕には何も知ることが出来ませんが、早く解決するといいですね」
穏やかな仲介者は全てを知らぬままに、知る者の如き眼差しで美徳を見た。不思議と、その言葉
が心に沁み入る。
解決の時は近い、と何故か強く確信した。

308 :
『航海の旅を続けるとある日のことです。
静かな海を渡る船上で、麗しき男装のスレイカ姫は空を往く雲を眺めてはまだ会えぬ愛しいスラ
イマーン王子に思いを馳せておりました。
「姫様、飲み物をお持ち致しました」
傍らにはお気に入りの女奴隷、珊瑚がうやうやしく控えておりました。華麗な装飾で縁取られた
盆の上の杯を手にしてスレイカ姫は微笑み、ついと視線を逸らす。
「珊瑚、いずれお前にも見せてあげます。この先に待ち受ける世界を」
「それは嬉しゅうございますこと」
「シナの国はまだ遥かに遠い。しかしこの心を翼にしてわたくしはどこへでも行きましょう。たとえ
どれだけの時を経ても、どれだけの苦難が待ち受けていても。それがまさにこのわたくしの操の
証というものなのですわ。全能の神に心あらば、必ずやこの願いは聞き届けてくれる筈」
そう呟いて紅瑪瑙の指輪を高くかざします。すると不思議なことに石から真っ白な光が差して、
一方向へとまっすぐに伸びていきました。それは船の進行方向と同じです。
「やはり間違いはありません、このまま船を進めればシナの国に辿り着くでしょう。私はこのまま
神の御心に従って進み往くのみですわ」
一切迷いのない純真なスレイカ姫の示す通り、船はしばらくの間嵐に遭うこともなく順調に海の
上を滑ってゆきました。』
夢の中で、美徳はスレイカ姫となっていた。
目覚めてからも、逸る気持ちを秘めて愛しい王子を探し続ける健気な姫の心情が更にリアルに
感じられて、胸が潰れそうに苦しい。
しかしいずれにしても、兄がどんな結末を用意してこの物語を締めるのか。それによって物語の
二人と同様に美徳とハデスの今後の運命も決まりそうではあった。たとえ単なる物語とはいえ、
ここまで心情が深くシンクロすることなど今までなかったのだ。ハデスに会えずにいることと決して
無関係では有り得ない。
「絶対に、負けない。こんなことぐらいで…」
ベッドから起き上がって身支度を整えようとしていたその時、携帯が鳴った。朝早いこんな時間に
珍しく兄から電話がきた。
「…なあに兄さん」
『あの話を最後まで書いたぞ』
大したことでもないような、兄の声。その言葉を心から待っていたのだ。
「本当?すぐに行くから!」
今日は月曜日だが祝日でもあった。今日こそはずっと気掛かりだった物語の結末を知りたいと、
そればかりが頭の中を占める。

309 :
「…とりあえず、腹減った」
駆けつけた美徳の顔を見るなり、兄はだらりと仕事場の隅にあるソファーに伸びていた。目の下
には隈がくっきり刻まれていて見るからに疲労困憊といった有様だ。どうやら徹夜であの物語の
続きを書いていたらしい。
「すぐ何か作るけど…そんなに根を詰めなくても良かったのに」
「馬鹿言え」
目頭を押さえながら、兄はふらふら立ち上がって美徳の肩を叩いた。
「何があったか知らないが、続きがどうしても必要だったんだろ?妹の頼みなら無理してでも書く
のが兄ってモンだ」
「そりゃそうだけど…本当にありがとう、兄さん」
仕事熱心なところ以外は正直どうしようもない兄だが、時々こんな風に気概を見せられるとやはり
嬉しい。兄妹で良かったとさえ思ってしまう。普段、美徳が何かと時間の都合をつけてここで家事
や雑務をこなしている対価のつもりでもあるのだろう。
感謝のしるしとしての埋め合わせはまた労働力で補うことにして、まずは肝心のノートの中身を
確認することにした。
「で、ノートは?」
「ほれ」
兄はソファーの陰からノートを取り出して渡してきた。逸る気持ちがもう抑えられない。
「ちょっと読むことにする、いいわね」
朝食を作ることも忘れて、美徳は物語の続きを読み始めた。これまでは男装のスレイカ姫が船で
立ち寄った先の各地で起こる、細かい出来事に終始して中断していたのだ。
『「勇ましいこと、さすがはスライマーン王子が称える姫君だけのことはありますわ。よくぞ単身で
この国までいらっしゃいましたわね」
王の間の宝石に彩られた寝台に優雅に身を横たえ、シナの国の姫、麝香華はそっと面衣を引き
上げて微笑むのでした。触れなば落ちんばかりのたおやかな仕草はスレイカ姫ですら惚れぼれ
するほどの色香を漂わせていたのでございます。
「それはもちろん、この心と神の思し召しによるものですわ。全てはスライマーン王子様と見事再会
を果たす為のこと」
長い苦難を乗り越え、ようやくシナの国の姫に立ち会えたとはいえ、ここにはスライマーン王子が
いる様子はありませんでした。

310 :
「あの方は何処に…?」
「スライマーン王子は確かに二年前に、この国を訪れました。そして長らく所望致していた香料を
大切に持ち帰ったのですよ。全てはあなた様、スレイカ姫様の為にです」
「それならば、あの方は一体」
何もかもが分からなくなり、戸惑い慌てるスレイカ姫の前に、麝香華姫がさらりと着衣の裾を揺ら
して近付いて参ったのです。面衣の下に流れる黒髪からふわりとシナの国にしかない香が立ち
昇って、甘く鼻をかすめました。
「まだ、お分かりになりませんの?スレイカ姫様。スライマーン王子がこの国を去って後より二年
という月日の間、あなた様の側に着き従っていたのは誰ですの?」
そう言って麝香華姫が白い指で示す先に、一人の人物が立っておりました』
物語は核心に入っている。
会えずにいたのは果たして真実だったのか。
先が気になって仕方がなかったが、ノートのページはもう残り少ない。これだけ待ったというのに
一気に読了するのも呆気ない気がして、美徳は一旦兄の朝食を作ることにした。
ここを訪れてから既に一時間半経っている。疲れ果てている兄は放っておかれてうたた寝でも
しているのか物音一つない。
その時、不意に携帯が鳴った。
番号はハデスからのものだ。慌ててもどかしく通話ボタンを押す。
『もしもし、美徳さんですか?』
この数日、聞きたくて堪らなかったハデスの柔らかい声が耳に飛び込んできた。何だかひどく懐か
しく感じて思わず泣き出してしまいそうだった。
「はい、私ですわ。逸人さん」
『不思議なものですね、今までどうやっても通じませんでしたが』
「そう、ですね」
交わす言葉は思いに反比例して短い。どう言えばこの数日の寂しさと声を聞けただけで嬉しい
気持ちをあらわせるものなのか分からなかった。ハデスの方も言葉を選びかねているようで、
結局会う約束もしないまま通話は終わった。
焦ってはいけない、まだ全てが解決した訳ではないのだ。この数日の間に得られずにいたもの
を一気に取り返そうとして慌てたら、元も子もなくなるように思える。
全てはあの不可思議な物語の終わりに待っているのだから。

311 :
充分過ぎるほどの品数の朝食を作り終え、部屋の掃除と洗濯もこなしてから、再び物語の続き
を読み始める。書き足された物語を途中まで読んだ時点でハデスから電話がかかってきた。それ
まで何をしても決して通話が出来なかったというのに。
とすれば、最後まで読んでしまえばきっと会えるようになる筈と信じて、美徳は自分の寝室として
使っている部屋に篭ってノートを開いた。
『そこにいたのは女奴隷、珊瑚でした。
「珊瑚、お前は何かを知っているのですか?」
スレイカ姫はどこか咎めるような口調になっております。
この女奴隷がスレイカ姫の前に現れたのは一年半前のこと。もしもスライマーン王子のことを何か
知っているとすれば、良からぬ企みがあると勘繰っても無理からぬことでした。しばらく目を閉じて
いた珊瑚は、やがて静かに目を開き、口を開いて言葉を発しました。
「申し訳ございません、姫様。私は今の今まで大変な秘密を隠していたのです」
「秘密とは何ですか」
「それを申し上げる前に、姫様、その指輪を御覧になって下さいませ」
言われて指を見たスレイカ姫は、あっと声を上げそうになりました。そこにあったものは生まれて
この方、ずっと嵌めていた紅瑪瑙の指輪ではなく、黒瑪瑙の指輪だったからです。しかも、意匠
といい、石の色艶といい、どこかで見た覚えのあるものでございました。
「これは、もしやスライマーン王子様の指輪…?」
そうです、幼い頃より毎晩のように落ち合っては肩を並べて月を眺めていた愛しい御方の指に
輝いていた品でした。それぞれの指輪には王族の印が刻み込まれていて、二つとして同じものが
ある筈もないのです。
だとすれば、答えは一つ。捜し求めたスライマーン王子は今ここにいるのでございました。
「もうよろしいようですわね、王子」
これまで静かにこの場の様子を見届けていた麝香華姫が、いと穏やかな声で促しました。
「そうですね、麝香華姫様。今まで御協力ありがとうございました」
驚いたことに、珊瑚が麝香華姫に向かって深く頭を下げるなり、それまで顔を覆っていた面衣を
さっと脱ぎ捨てました。その途端、全くの女だった筈の珊瑚の姿が見る見るうちに変化を遂げて
ゆきます。
「ああ…珊瑚、まさかお前は」
目の前で起こっていることが信じられず、スレイカ姫は言葉を失ってしまいます。その間にも珊瑚
だった者は光り輝くように美しい若者へと姿を変えました。

312 :
その姿に、スレイカ姫は感極まったように叫びます。
「スライマーン王子様!」
長い間待ち続け、探し続けた人が今ようやく現れたことで、スレイカ姫の心は嬉しさで弾けてしま
いそうでした。駆け寄って夢にまで見た胸に抱き着き、確かにここにいることを確かめます。
「どうしてわたくしに何も仰って下さらなかったのですか?」
スライマーン王子は神妙な面持ちを崩さず、一言一言を噛み締めるように話し始めます。
「姫、一年と半もの間女奴隷に身をやつして、あなたを欺いてしまったことはお詫び致します」
けれど、どこか口に出し難いものがある様子でした。その窮状を救ったのは、やはり全てを見通
しておられる麝香華姫だったのでございます。麗しい麝香華姫はさながら呪術者のような妖しい
眼差しで口を開きました。
「スレイカ姫様、スライマーン王子様がこの苦難の年月を耐え忍び、女の姿をしてでもあなた様に
付き従っていらしたのは全てあなた様への愛ゆえですわ。今こそお話致しましょう」
シナの姫君、麝香華姫がそれから語り続けた話は驚くべきものでした。
三年前、スライマーン王子は数人の奴隷を率いて海難に遭いながらもはるばるこのシナの国に
やって来たのです。そして王族打ち揃っての長い歓待の宴の後で、求め望んだシナ産の香料を
譲り受けました。そのまま船で引き返せばこれほどに時を経ることもなかったのでしょう。しかし
運命が波乱を選択致したのでした。
同行していた奴隷の一人に心掛けの良からぬ者がおりまして、スライマーン王子が受けた香料
を荷物の中から密かに盗み出そうとしたのです。希少な品で値知れぬことから、どこかの市場
で売りさばこうとでも企んだのでしょう。もちろんそのように浅はかな行為はすぐに露見し、その
奴隷は即刻首を刎ねられました。とはいえ奴隷の罪は主人の罪と、全ては至らぬ私の罪と年若い
スライマーン王子は大層悩み苦しみました。
しばらく滞在していたことでスライマーン王子と兄と妹のように親しくなっていた麝香華姫ですが、
更に恐ろしいことを告げなければなりませんでした。それは呪いです。
地の果てであるシナの国のものを盗み出そうとした罪には、必ず手枷のように破滅の呪いがかけ
られていたのです。当人の奴隷は既に亡き者となりましたが、残された呪いは主人である自分が
代わりに受けると、スライマーン王子は申しました。
シナの国の香料は女が特に好み身につけるもの。よって呪いが解けるまでは女の姿のまま別人
として生きねばならない。身元だけは決して明かしてはならない。それがこの香料に課せられた
呪いの中身でございました。

313 :
その呪いが解ける時が訪れるとすれば、それは他者が何らかの出来事によっておのずと察する
時だけなのです。その出来事に関して、麝香華姫が一つの提案を致しました。それがスライマーン
王子とスレイカ姫の幼い頃よりの約束、そう聞き及んでいた指輪の交換だったのです。
つまりは、一介の女奴隷としてスレイカ姫の身辺に従い仕え、隙を伺って操の証としている指輪を
交換出来れば、それがすなわちスライマーン王子の存在となって香料の呪いか解かれるのだと。
麝香華姫は長い叙事詩を語り終えるように言葉を一旦途切らせ、ふっと微笑みました。
「…そうしてスライマーン王子様は本日、ようやく本懐を遂げられたのです。あなた様の操の証を
その指に。あなた様の指にも同様の証が」
言葉に反応するかの如く、黒瑪瑙と紅瑪瑙の指輪が二人の細い指の上で輝いております。スレ
イカ姫はまだ信じられないという面持ちを隠せないでおります。震える声で隣にいるスライマーン
王子に尋ねました。
「では、最初にこのシナの国に香料を求めにいらしたのは一体何故ですの?」
それがなければ後々に続く艱難には遭うこともなかったし、もっと早く幸せになれたのだと言葉に
ならない感情が八方に迸ります。そんなスレイカ姫の手を取って、スライマーン王子は強く答えま
した。
「あなたの喜ぶ顔が見たかったからです」
「え?」
シナの国の香料はその希少さと魂を揺さぶらんばかりの香気ゆえに瑞祥香と呼ばれ、世界各国
の后や姫、名家の娘たちに大層人気がありました。スレイカ姫もまた幼い頃から瑞祥香の香に
慣れ親しんでいたのです。
「私は、自らこのシナの国に出向いて、あなたの為にだけ瑞祥香を求めたかったのです。それを
もって婚姻の証とする為にも」
「スライマーン王子様、では…」
「我が身の妹と頼む麝香華姫様のお力添えもあり、こうして元の姿に戻ることが叶い、そして」
言うなり、懐から小さな布袋を取り出しました。
「ようやく瑞祥香をあなたに渡すことが出来ます。受け取って頂けますね?姫」
スレイカ姫は身体の震えが止まりませんでした。次々にこのように信じられないことが起こって
いて、まだ夢かうつつかどちらにいるのかが分からないのです。
しかし、意を決して布袋に手をかけました。
「…もちろんですわ。わたくしはこれであなた様の后」
ずっと胸に閉じ込めていた言葉を口にすることで、スレイカ姫の心はシナの国の花が咲き乱れる
ように幸せなものへと染まっていきました。』

314 :
長い物語にはつきものとはいえ、結びの文章は大抵が冗長だ。
この物語もこうして二人がようやく出会えて幸福になるまでが面白かった。その後の婚礼の描写
や、築き上げたものが全て壊れ果て、世界が終わりを迎えるまで二人は末永く幸せに暮らした
というお決まりの言葉などは正直どうでも良かった。それでも最後まで読まなければ美徳に課せ
られた問題は何も解決しないままだ。
そんな義務感だけでノートに綴られた物語を読み終える。
気がつくと時刻はもう午後になっていて、日もかなり傾いている。思い出しながらでもこれだけの
物語を、よくあの兄が書けたものだと感心する他ない。随所に他の物語の模倣のような描写は
あるが、出来るだけ千夜一夜の世界観に合わせて書いたに違いない。
「…疲れたあ」
さすがに根を詰めて読んでいたので目が痛い。立ち上がり、水でも飲もうとキッチンに向かう途中
で玄関のチャイムが唐突に鳴った。
「はい、どなたでしょう」
疲れているせいか、てっきり兄の担当かと思い込んでインターフォンに愛想のない声を通す。
「美徳さんですね、僕です」
「逸人、さん…?」
やはりあの物語は、美徳が今こうしている現実と重なっていたようだ。
十代の頃の兄が精魂を込めたものだからこそ、命が吹き込まれていたのだろうか。
それがどういう経緯をもって美徳とハデスの運命に影を落としていたのか、そして続きが再開された
ことによって物語の二人のようにまた出会えたのか、それは依然として分からないままだ。
多分永遠に解明はされないのだろう。
見えない力によるものであるなら、追求するだけ徒労のような気がしていた。
疲れが溜まっていたのか、兄はまだ寝入っている。
美徳は今までいた寝室にハデスを招き入れると、二人にこの数日間起こったこととノートの物語を
手短に説明した。もちろん簡単に信じられるものではないが、それ以外に原因は考えられない。
「不思議なこともあるものですね」
ベッドに座ってパラパラとページを捲りながら、ハデスは首を捻る。
会えずにいたこの数日、ハデスもまた色々な方法を取って美徳と接触をしようとしていたらしい。
もちろん兄の仕事場であるこの場所にも訪れたのだが、どうしたことか直前で道を間違えたり
部屋番号を失念したり、とにかく見えない形の妨害が相次いでいたという。
まるで姿を変えて別人としてでなければ愛しい姫の側にはいられなかった、あのスライマーン
王子のようにもどかしい心持ちだったのだろう。

315 :
「もう、全ては元に戻ったようですわ。こうしてようやくお会い出来たのですもの」
物語の中の二人とは違い、美徳が会えずにいたのはたった四日の間だ。それでもこんなに切な
くて懐かしい気持ちになっている。
「何もお力になれず、申し訳ありませんでした。美徳さん」
「いいえ…私だって何も出来ませんでしたわ。ただ戸惑って、慌てて、うろたえるばかりでした」
隣に座って、間近で見上げるハデスの顔は見慣れていた筈のものだ。なのに長い旅を終えた後
のように思える。
「…本当に、逸人さんなのですね」
髪の白さも頬の手触りも、何もかもが覚え馴染んでいたそのものだ。なのに心が痛くて締め付け
られそうに切なくて、何度もひび割れが走る頬を撫でる。吸い寄せられるように唇が重なり、深く
噛み合わされて舌が絡まる。
長くその時を堪能し合った後、わずかに離れた唇から甘やかな囁きが漏れた。
「間違いなく、僕ですよ。今ここにいるあなたが美徳さんであるように」
「…ええ、ですわね…」
ハデスはいつものように優しい眼差しで微笑んでいる。以前なら当たり前に感じていたそれすら、
四日間与えられなかったのだ。乾いて今にもぼろぼろに崩れそうだった心が急速に癒されていく
のが分かる。
「逸人さん、お会いしたかった…本当に」
「僕もですよ。ずっと悪い夢を見ていた気持ちです」
間近で合わせる視線が熱い。もう言葉など必要なかった。空白になっていた時間を埋める為にも
早くこの男を感じたい、触れて触れられたい。そう考えただけで身体の芯が痺れるように疼き始
めた。
「逸人さん、欲しい…」
「先程お兄さまがお寝みになっている、と仰ってましたが構わないようですね」
「はい、すぐにでも確かめたいのです」
淡いクリーム色のセーターに包まれた胸をぐいぐいと押しつけ、腕を回して愛しい男にしっかりと
抱き着いた。その感触と体温がリアルな感覚として身体に伝わり、二人だけでこれまで過ごして
きた時間の蓄積がまざまざと蘇ってくる。
「あ…」
大きな手で乱暴なまでに身体中を探られ、喜びが性感となって弾けた。望んでも得られずに悔し
涙を流した時間などもう完全に忘れてしまうぐらいに、この男の全てを今すぐにでも確かめ感じた
かった。

316 :
「い、逸人さん…」
上擦る声につられるように、ハデスの仕草も熱を帯びる。
「今ここにあるがままに感じて下さい。僕もこの数日の間、お会い出来ずにいてどれだけ焦れて
いたことか」
「…私は、最初からあなたのもの…ですわ」
まだ触れられているだけなのに、わずかながら体臭が変化しているのが分かった。嗅ぎ慣れぬ
それは紛れもない雌そのものの獣じみたもので、芯から蕩け欲情しきってこの唯一心を許した男
を求めているのだ。
「ン…」
セーターがするりと脱がされた。すぐに剥がされるようにブラも取り去られ、いつも周囲の者を魅了
してやまない見事な肢体があらわになる。鮮やかな果実の如く豊かに揺れる乳房を、いっそ摘み
取らんばかりに両手で揉みしだきながら愛しい男が肌を焼くほどに熱く囁く。
「乱暴にして、申し訳ありません。でも…我慢がきかないのです」
いつにないハデスの荒々しさに、今日の美徳は余計に興奮を覚えた。会いたい、触れたいと思い
を募らせても決して叶わずにいた時間は、こうでもしなければ埋められない気がした。もっと強引
に奪い取って欲しい。もっと身も心も愛して欲しいと抑えられない女の本能が咆哮する。
「今日ばかりは、我慢なさらなくてもいいですわ。私もはしたない女になりますから」
乳房を揉まれながらも合わせる視線が火を噴きそうに熱い。ジーンズも足から抜かれてショーツ
一枚だけの姿になった美徳が更に陶酔した表情で誘う。
「時を忘れるほど、二人で愉しみましょう、逸人さん…」
微笑んで差し伸べる手を、愛しい男の大きな手が受け取った。そのままベッドへと引き倒されて
反射的に肌が熱くなる。もうすぐ、一番望むものを与えられるのだ。期待に震える身体がしっとり
とベールのように汗を掃いている。
「あなたはどんな風になっても可愛い人ですね、美徳さん」
愛しげに耳元で囁く声に、身体が一層疼く。少しでも早く欲しいのに長い指はショーツの上から
するすると、感じる箇所を悪戯でもするように這うだけだ。
「あぁ…」
こんな緩い刺激だけでも、はしたなくなっている身体は貪欲に感じている。指先でそんな反応を
直に察しているのか、ハデスは頬から唇にキスを落としてから身体をずらした。そうして抵抗も
出来ないうちに布越しに舌先で舐め上げてきた。
「や、ぁ…っ」
初めてそこにダイレクトな刺激を受け、美徳は無意識に腰を跳ね上げた。

317 :
「本当に、可愛いですよ…」
ショーツ越しとはいえ、刺激に震えてひくついている箇所の反応が面白いのだろう。より性感を
煽るように核を指先で軽く抓りながらも遣り方をわずかずつ変えてくる。それがまたすっかり雌と
成り果てた身にはひどく堪らなくて、切ない声で喘ぐばかりだった。
「ぁんっ…」
もう我慢出来ない。そう言いかけた頃にようやく唾液で濡れきったショーツが脱がされた。何一つ
身に纏うもののなくなった美徳が獣のように妖しい眼差しでベッドから起き上がり、乱れた髪を
気にすることもなく妖艶に微笑んだ。
「お願い、私にもさせて下さいな、逸人さん…」
淫らに蠢く舌がちらりと色付いた唇を舐める。興奮によって正常に動かない指が、それでも懸命
にハデスのスラックスに手をかけてファスナーを開く。既に充分過ぎるほどに硬く反り返っている
ものを眺めて、ぞっとするほどに悩ましい笑みを浮かべた唇が先端にキスをした。
形を確かめるように念入りに舌を這わせながらも、指先が更に大きくしようとでもいうように根元を
擦り続ける。
「素敵ですわ…これが私のものなのですもの…」
「そうですよ、美徳さん」
「嬉、しい…」
髪を撫でられ、美徳は心から幸せそうに笑った。空白になっていた何もかもが埋められていく、
その充足感だけが心の中を満たしていたのだ。
「では逸人さん、さあ…」
もう二人が望むものは一つしかなかった。わずかな羞恥心など待ち受ける快楽の予感の前では
簡単にかなぐり捨てられた。力の入らない膝が大きく割られ、間にハデスが身体を割り込ませて
くる。即座に先程まで舌先で蕩かされ、愛液を滴らせている箇所に硬い一物の先端が押し当て
られた。
一瞬身が竦んだものの、ぬめる愛液の感触が妖しいばかりに背筋を震わせる。
「あぁ…早く」
「どうぞ、お互い存分に愉しみましょう」
はい、と答える間もなく、それは敏感になっている女の最奥を一気に突いた。さして慣らされても
いなかった膣壁が刺激で収縮するのが分かる。
「ぅうっ…んっ…」
痛みこそもう感じなかったが、その代わりに身体を支配する感覚は凄まじかった。あまりの快感が
全意識を振り切ってしまいそうだった。

318 :
決して離れないように腕を回して抱き合い、言葉すらも必要ないとばかりにねっとりと二人の舌が
絡み合う。
完全に全てが満たされたことで美徳の意識は天へと駆け上がった。
「あ、ぁ…逸人、さん…」
すぐに達することなく長く快感を続ける為にあえて不規則に突き上げられ、紅色に染まった乳房
を揺らしながら美徳は激しく喘いだ。頑丈な筈のベッドが軋む音すら、もう耳には届かない。聞こ
えるのはただ愛しい男の紡ぎ出す声だ。
その腕の中にいる今この時だからこそ、最高に幸せな女でいられた。
美徳が幸せになれるのはこの男以外に有り得ない。
「うっ…んっ…やぁああんっ…」
膣壁を擦る硬いものがわずかに突き上げる位置を変える度、美徳は身を反らせ、または焦れった
げにくねらせて素直なまでに快感に溺れた。
「ここが、いいんですね」
「ぁ、んっ…いい、のっ…」
律動が繰り返されるごとに濡れた音が寝室に響き、隙間すらないほど嵌り合った部分からとろとろ
と愛液が伝い落ちる。
「逸人さん、離さ、ないでね…」
夢うつつになりながらも、美徳は懇願するように声を絞り出した。
「もちろんですよ、美徳さん」
一度目のけりはもう間もなく訪れるだろう。けれどようやく見えない力を越えて巡り会えた二人に
とってのこの時間は、まだ当分終わりそうにはなかった。
翌日の火曜日、美徳は廊下を歩いていたアシタバを呼び止めた。
「あなたにも迷惑をかけてしまったわね」
短いその言葉だけで、聡い彼には全てが呑み込めたようだった。特に余計なことを聞き質すでも
なく、穏やかに返してくる。
「いえ、そんなことは…何とか上手くいったんですね?」
「まあ…それはどうなのか分からないけれど」
咄嗟に言葉を濁しはしたものの、中学生の少年に簡単に見抜かれていたことが妙に複雑な気分
でもあった。確かに恋愛に関しては中学生と似たようなものだ。それもまた、この先少しは大人に
なれば変わってくるのだろうかと考えてしまう。

319 :
そのまた翌日の水曜日、勤務を終えて帰る美徳の隣にはハデスがいた。
当たり前に繰り返される毎日、当たり前の時間の一秒一秒が、これほどまでに愛おしく大切と思
えるようになったのはあのノートの物語の一件があってからだ。
漫然と過ごすことなく、今この時間をより大切に思えるのであれば、たとえこの先にどんなことが
待っていてもきっと後悔などしないのだろう。
「寒くはないですか?」
気遣ってくれるハデスは今日も穏やかで、誰よりも優しい。
「ええ、寒いですわ。でも平気です」
周囲に人がいないのをいいことに、美徳は以前よりも大胆に身を添わせる。見えるものが見え
ないものに遮られて惑乱されるその時が再び訪れても、決してうろたえたりなどしない自信の
ようなものが出来た。人はこうして経験を積んで強くなるのだ。
「だからですね、月がとても綺麗です。ほら」
「…まあ、本当に」
見上げれば真っ白な半月がぽっかりと雲のない夜空に浮かんでいる。以前見上げた時にはまだ
三日月だったのに、と時の流れの速さを感じずにはいられない。
「今夜は上弦の月、ですね。月名は九夜月」
「ではこれから満月になるのですわね、あの月は」
足を止めて冴えざえと輝く美しい半月を眺める美徳の脳裏に、物語の中の二人の姿が浮かび
上がった。あの健気な二人も、ただ二人でこうやって満ち欠けを繰り返す月を眺めてさえいれば
それで幸せでいられた。なのにほんの少しだけ、地球の地軸がずれるようにわずかな変化が
生じて、運命が大きく変わってしまった。
それでも思いが変わらなかったから、幸せになれた。
そんな強さを出来るなら持ちたい。これから現実の世界を生きていく為にも心底そう思った。
「美徳さん」
夜空を見上げたまま急に黙り込んでしまった美徳に、全てを包み込むような優しい顔でハデスが
微笑む。
「今夜の月は、本当に綺麗ですね」




320 :
12日は月齢7.27の上弦の月
だから間に合わせるようにやってたけど、遅れた。
まあ、こんなもん書く自分の脳味噌の構造が心配になってる。

321 :
GJ!
千夜一夜物語って、平気で話が横道にムチャクチャそれてくよね
その雰囲気を思い出した

322 :
違うスレ開いたかと思ったw

323 :
月尽くしか
最後のハデスの台詞は漱石が訳した「I love you」のイメージかな
ともあれGJ

324 :
GJでした!
長編はやっぱ読みがいあって嬉しいです

325 :
昔お父さんに教わったのです。

エロパロのネタにしちゃだめだぞ。

326 :
あだるてぃーな

327 :
全然出来るんじゃない
娘三人が発情したアヌビスに膜破られていくとか
ロリ獣姦だよ

328 :
しおり×アシタバの続きはまだか

329 :
それよりも保管庫の設立が先だと思う

330 :
このスレとは関係ないけど、そのうちハデス×マリヤの同人誌が大量に出回るんだろうなぁ

331 :
いいからとりあえず、数字板に行こうね

332 :
今週号の鈍ちゃんのおっぱいが、非常にけしからん件について。

333 :
>>332
まだ見てないからうp

334 :
買え

335 :
だれかアシタバ×シンヤ書いてくんねーかな

336 :
言いだしっぺが書くこと
職人は簡単に空から降ってこない

337 :
>>332
ネタバレスレで見てこい

338 :
シンヤならねじきる事も可能だろうな

339 :
前から思ってたけどここの職人さんって他のジャンプスレに比べてレベル高いよな。
キャラの雰囲気壊してないし。
好きだ。職人さんたちありがとう!

340 :
新キャラが出てきたんで何かと騒がれてるけど、このスレに限ってはエロ萌えな展開が
ない限りスルーされる運命なのでいい感じだ
そして恐らくキャラ的な性質上、奴がここでssを書かれることはないだろう
ある意味ここが一番冷静で的確にキャラを見ていると思う。

341 :
今後の展開次第かなあ、今は何ともいえない状況だ

342 :
とりあえず、原作では長編の導入部でしばらくシリアスが続きそうなので、
軽いものを投下しておく。
安田×日暮でエロはない。

343 :
ミナトヨコハマ、天気晴朗なり。
日曜日の山下公園は風が強くて寒さを感じるものの、とても気持ちが良い。
自販機から取り出したばかりの缶コーヒーが熱くて持てないほどでも、そんなちょっとしたことに
喜びを感じてしまうのは面白い。
「ほら、これだったよな」
「うん、ありがとう」
安田は先に出した一本を側にいた日暮ふるえに渡してから、別の銘柄の缶コーヒーのボタンを
押した。
「今日はすごくいい天気だよねー、もうちょっと歩いてみようよ」
こんなに寒い日だ。しっかり着込んではいるがやはり女の子らしいコーディネイトの日暮はとても
可愛らしい。何度かデートをしてきた安田の目から見てもどんな女の子よりも可愛い…のは欲目
だとしても、それでいいと思えるぐらいだ。
結局日暮とはあれから何も進展がないまま、中学生そのもののデートを重ねているだけだ。もち
ろんアレもコレもしたいのはやまやまなのだが、きっかけが掴めない。
いかんなあ、と呟く。
エロリストとしての安田らしからぬことだが、こればかりは仕方がない。
「安田くん?」
うだうだ考えている間に、コーヒーを飲み終わったらしい日暮が不思議そうに覗き込んできた。白い
毛糸の帽子の下で、大きな瞳が煌いている。
「お腹でも痛いの?」
「あーあー、いや、全然そんなことない」
「そう?あ、ほら、今日は海がすごく綺麗だよ。あの船の近くまで行ってみようよ」
白い船を差してはしゃぐ日暮に手を引かれて、小走りになる。本当のデートってものがどんなもの
なのかは分からないが、これはこれでいいとも思う。何といっても楽しい。
特に何をするでもないのに日暮が喜んでくれている、それだけで嬉しくなってくるのだ。
「日暮」
「なあに?」
超え不意にをかけると、振り返った日暮の長いふわふわした髪が鼻先を掠めた。それだけでも
ふわっといい匂いがする。女の子って、何だか不思議な生き物だなと思った。
「寒く、ないよな」
「うん、寒くない!」
にっこり笑う日暮の顔は、今まで見たどんな顔よりも可愛かった。

344 :
それからも二人は広い公園の中を歩き回った。園内に幾つかの施設はあったけれど、特に興味を
引かれるものもなかったので、ただぶらぶらと他愛無いことを話しながら歩いた。言葉通り、日暮は
少しも寒さを感じていないのか元気に前を行く。
「あ、ほら。赤い靴の女の子の像があるよ」
急に一際元気な声が上がった。
話では聞いたことのある、有名らしい像がそこにはあった。安田の目から見れば特に何の変哲も
ない、座り込んで彼方を眺めている女の子の像だ。
「こんなトコにあったんだあ、意外ー」
言いながら、日暮はバッグから取り出した携帯で何枚か写真を撮っていた。
「これってアレだろ?いい爺さんに連れられてったっていう…」
「やぁだあ」
安田の言葉に、また日暮はけらけらと楽しそうに笑った。最初に出会った頃のいつも何かに怯えて
いたような姿とはまるっきり別人だ。
「いい爺さんじゃなくて、異人さんだよ。アメリカの宣教師さん」
「ふ、ふーん。詳しいじゃん」
「子供の頃ね、絵本で読んでてこの話がとっても好きだったの。でも、この子はアメリカに行けな
かったけどね」
そう言った日暮は、像の女の子と同じ表情で同じ方向を見ていた。くるくる変わる表情には正直
ついていけているとは言い切れない。だけど、瞬きも惜しいほどその変化をくまなく見ていたい
とも思った。
「ねえ安田くん」
像の女の子を愛おしむようにぎゅっと抱き締めて、日暮が悪戯っぽい笑顔を向けてきた。
「いつか私が赤い靴を履く時には、どこでも好きなところに連れてってね」
「んあ?」
返事の代わりにうっかり変な声が出てしまった。
女の感性は相変わらず謎だ。まだ尻に卵の殻がくっついているような安田には日暮の言葉が何を
意味しているのかさっぱり分からない。
ただ、言うべきことだけは何となく分かっていた。
「んー、そうだな。その時が来たら行こうな」
やはり肯定の言葉を待っていたのか、日暮の頬がぱっと染まった。
「うん!」
ニュースでは全国的な大寒波が来ていたり、噴火中の火山があったりと、世の中は目まぐるしく
変わっていくけれど、この約束だけは絶対に忘れてはいけない気がした。




345 :
GJ!
安田×目暮いいな!
エロリストの安田はほんとに好きな女の子に対してはなかなか手を出せないといいな。
かわいいSSありがとう。

346 :
>>340
一番冷静で的確とかゆうなよ。
藤が花巻さんをレイプする話でへこんだりした奴もいるんだからさ…花巻さん……
このスレもあくまで妄想ってことを心得といた方がいいと思う。
ハデスが恋愛感情を抱いた描写だって原作じゃ出てこないのに、
鈍ちゃんとのエロでは鈍ちゃんが女レイパーみたいになってて、続編でのみのりちゃんとのエロ
の為の当て馬っていうか、完全に損な役回りだったわ。
職人さんは色々な話を作ってくれてるけど、ここでのカプが原作カプとかはないわ。片思いならともかく。

347 :
妄想に情熱を捧ぐスレが冷静で的確っていうのは違うわな

348 :
>>346
それ、どっちも書いてた職人だけど、ごめんよ。
完全に妄想100%だし(でないとハデスの性格上全くエロに絡まないので)何とか
整合性のある展開を目指してはいるんだけど、その時の勢いで書いてることも
あるので。

349 :
346も347も『冷静で的確』って表現に引っかかってるだけで、別に職人さんを責めてるわけじゃないよ

350 :
うん、職人さんを責められるわけがない

351 :
だよな!
職人さんはこれからものびのびと書いてください

352 :
職人さん、いつも萌えと興奮をありがとう。
また投下してくださることを心待ちにしてます!

353 :
むう・・・龍黄がねーちゃん4人を犯しまくる話とかは、お蔵入りにしたほうがよさそうだなorz

354 :
>>353
言ってる間にここに落としちゃえば良いのよ
寧ろそういうのが無いからこのスレ変なんだよ

355 :
>>353
そんなことないよー 読みたいですー(棒読み)
満足した?

356 :
わざわざそういう宣言する奴ほど、何もしないでそのまんまになる
自分が書きたいものをさっさと投下すればいいのに
そういやここの職人はみんな何か書き次第投下してるな

357 :
やっと出てきた敵キャラじゃ、確かにエロは難しげだ

358 :
やっとまともなエロパロが来そうな時に何故嫌な空気にする?

359 :
>>358曰く、今まで投下されたエロパロは「まともなエロパロ」じゃなかったらしい。
職人も大変だな。

360 :
これはどのスレでも言えることだけど、元々エロパロスレにおけるssってのは
職人の厚意によるものだろ
まともかそうでないかは、誰も定義出来ない
その作品が好きで職人なりに萌えるカップリングなら、投下数も増えるだろうが
それ以外なら全くもってどうなのか分からない
でも、それが自由ってものだろ
営利関係なく個人が個々に頭を捻って書いて投下するんだし
ってことだ
まともなエロパロの定義づけが出来るまで、安易に投下しない方がいいね
職人さんたち

361 :
>>360
そんなに過疎らせたいのか?

362 :
エロでもエロなくても好きなカプのSSは読みたいな。
エロパロスレだからエロにしなきゃいけないとか、縛りはしないであくまで自由であってほしい。

363 :
>>362 完全同意
職人の文章が見たいです

364 :
書き手からすればエロパロは読み手の厚意あってこそだと思うんだ
ただの妄想を読んでくれて感想まで書いてくれるなんて有難いことこの上ない
書き手には得手不得手があるし読み手の好みもさまざまだから、
もっと書き手が増えてくれればいろんな人が楽しめるスレになると思う
とバレンタイン1週間前に言ってみる

365 :
僕みたいな可愛い子とこのスケベを一緒にしたらry
いやキミの方がおそう方だね。コードネーム的に

366 :
まさかのチンコ付きかエロス

367 :
風邪っぴきで寝込んでいる間に、おまいら…w
まだ熱があるんで頭回ってないけど、なんかエロのない短いものなら書ける。
明日投下出来るといいな。

368 :
書いた。
ハデスが貰ったという例のアレは、もちろんシンヤ作の石炭ということで。

369 :
「…あの、逸人さん。これは何ですの?」
久し振りに訪ねたハデスの部屋で、美徳は奇妙なものを見つけた。
元々インテリアがどうこうと特に拘らないこの男のことだ、本当に人が住んでいるのかと思うほどの
風景な室内で余計な物などはほとんど置かれていない。
なのに、プレゼントらしいその箱だけが大切そうに棚の端にあったのだ。目立たない場所でもある
ので、今まで気付かなかった。
「ああ、それですか?去年のバレンタインデーの夜に僕の下駄箱に入っていたものなんです。誰が
くれたものかは分からないのですが、とても嬉しかったので」
「まあ、そうなのですか…」
先に尋ねておきながら、何となく微妙な気持ちになった。
相変わらず闇雲にハデスを怖がっている生徒も多いが、何かと保健室に入り浸っている生徒も
いるぐらいだ。それなりには生徒たちからの信頼も勝ち得ている。その中には女子生徒もいるの
だろう。そう考えると嫉妬に似た感情が湧き出そうになるのを必で押し込めた。
「で、ではそろそろ召し上がられては如何でしょう。時間も経っていますし」
「え?」
「ですから、箱の中身はチョコレートでしょう?食べ物でしたら長期の放置はいけませんわ」
親切ごかしてはいても言下に処分を強いているのは美徳も分かっていた。本音はもちろん、他の
誰かがくれた物など一つでもこの部屋にあってはならない。抑えきれはしないそんな気持ちがどう
しても出てしまう。
しかし、ハデスの返事は意外なものだった。
「いいえ、石炭でしたよ」
「は?石炭??」
うっかり間抜けた声が出る。
「ええ、石炭でした。確認してもよろしいですよ。意外性があったので面白いと思いました」
特に頓着することもなく、ハデスはその箱を開けて中身を見せてきた。そこには真っ黒で硬そうな、
誰がどう見ても食べ物には見えない物体が幾つか転がっているだけだった。
「…これは、石炭・としか言えませんわね…」
「ええ、だから石炭なんです。でも僕にとっては嬉しいプレゼントです」
バレンタインデーに貰ったにも関わらず、ハデス自身はやはり石炭だと思い込んでいるようだ。
だったらもう、それでいいかと美徳も冷静になって考える。余計なことを言うのはトラブルの元だ。
誰か女子生徒に好意を寄せられていることを意識もしていないのであれば、その方が都合も
良いし精神的にも楽でいられる。
その為には、このプレゼントの箱一つぐらいは知らぬ顔をしているのも肝心なことだろうと。

370 :
「逸人さん、今年は私からのプレゼントも受けて頂けますよね?」
抱き寄せられて目を閉じながらも、美徳は去年結局渡せずじまいだった悔しさと今年の幸せを
逡巡して微笑む。
「あなたから頂けるのであれば、本当に嬉しいですよ」
愛しい男の声が耳元で蕩ける。そして何故かいつもとは違って胸の中に苦く溜まった。
チョコレートなんて、テレビCMでやっているように溶かして固めればそれでいい訳じゃない。湯煎
にテンパリングの仕方など、意外と難しい作業ならそれこそ幾らでもある。たとえ結果が石炭に
なってしまったとしても、この男の為にわざわざそれをやろうとする誰かは確実にいるのだ。
この男の心の中にいるのが、自分だけであれば嬉しい。この先もそうであって欲しい。誰も人の
心の中を知らないからこそ、余計にそう思う。
古来、チョコレートは媚薬の役割を持っていたともいわれている。だからこそ女性たちは恋を叶える
為に贈るのだろうか。
「ええ、とびきり美味しいものを…差し上げますから、楽しみになさっていて下さい」
心の全てを託すことの出来る愛しい男にしっかりと抱き着きついて、美徳は誰にも見せない艶然と
した表情で微笑んだ。
この恋を守る為なら、どんなことでも出来る気がした。




371 :
GJ!
みのりちゃんの可愛いさは今年も絶好調だな

372 :
GJです!
バレンタインデーネタはやっぱ美味しいな

373 :
>>368
病み上がりのところ乙です
俺も藤花書いた。バレンタインとは関係ないけど
5レス使います

※エロあり。でもなんか中途半端
※今回は全体的にビミョーな出来に…

374 :

数学の問題を解くコツは、解法のステップを一つずつ確実にこなしていくことである。
単純な計算問題でもない限り、答えを一度に出せるということはほとんどない。問題の答
えを得るためにはある程度決まった手順があり、与えられた問題が一連の手順のどの段階
にあり、次の手順に進むために何をすればいいのかが分かれば、いつか求める答えにたど
り着くことができる。
重要なのは、一つ一つのステップを混同しないこと、そして一つのステップをクリアする
まで次のステップには進まないようにすることだ。
花巻の部屋で、いま藤と花巻がやっている連立不等式の宿題も例外ではない。
まず与えられた複数の不等式のそれぞれについて、式を変形して境界線の形をイメージす
る。次に境界線同士の交点を求めてグラフを描く。そうしたら一つ一つの境界線に注目し
て、不等式が境界線のどちら側を表しているのかを検討する。そして最後に全部の不等式
の範囲が重なる部分に斜線を引いてやればお終いだ。
藤は最後の問題の境界線同士の交点を求めたところで、今日五度目になる言葉を吐いた。
「しかし円のヤロー不公平だよなー。俺たちだけ宿題追加なんて人権侵害じゃねーの?」
藤と花巻に宿題の追加を言い渡した数学の教師に対する愚痴である。
「でも……私たちだけ先生に宿題出せなかったのが悪いんだし……」
「だって仕方ねーじゃん。お前は家にノート忘れたんだし。
 俺なんて授業中寝てて宿題あったことさえ知らなかったんだぜ?」
「う、うん……」
授業中に寝ていたのは仕方ないとは言えないのではないかと思ったが、それは口には出さ
ず花巻は曖昧に頷いた。
藤はそんな花巻を気にすることなく、言葉を続けた。
「追加された分は二人で分担するとして、昨日の分は悪いけど写させてくれよな」
「あ、うん。藤くんは宿題とかやらなくても数学できるもんね。
 …でも、私は自信ないから……もし間違ってたらごめんなさい……」
「大丈夫だって。こんなもん、やってあればそれでいいんだから。
 それにお前だってそんなに成績悪いわけじゃないだろ?」
「そ、そう……かな……?」
「そうだって。お前は余計な心配しすぎなんだよ」
「……うん」
花巻は少し顔を赤らめて返事をした。
藤のそういう、何にもとらわれずに自由なところに花巻は憧れていた。アガリ症でドジが
多く、なかなか自分に自信が持てない花巻だったが、藤が大丈夫と言ってくれるとなぜか
安心できた。
はじめはただの憧れで遠くから見ているだけだったのだが、藤と一緒に過ごす時間が増え
るにつれて花巻は自分を安心させてくれる藤に何かしてあげたいと思うようになっていた。
そんな花巻の気持ちなどそ知らぬ顔で、藤は自分のノートに不等式の境界線を引いた。

375 :

「…で、どんな感じ?こっちはそろそろ終わるけど」
「えぇっ!?藤くんすごい……。私、まだ半分くらいしかできてないのに……」
「お前、たしかめ算とかやりすぎなんじゃねーの?」
「そうでしょうか……何だか間違ってないかどうか不安で……」
「ふーん……」
個人主義で他人にはあまり興味を示さない藤である。いつもであれば自分以外のことにか
かわろうとせず、時間があれば昼寝でもするところだが、花巻の場合だけは少し違った。
いつも失敗が多いせいだろうか、藤は花巻の側にいると彼女が一生懸命に何かをしている
姿を見守っていたいと思うのだった。
それが自分らしくないことだと藤自身も自覚していて、調子を狂わされることもたびたび
あるのだが、藤はそれが嫌だとは思わなかった。
むしろ最近は、自分から花巻の側にいたいと思うようにもなってきていた。
「……どれ、ちょっと見せてみろよ」
「え?えぇっ!?」
思いもかけない言葉に花巻が驚いているうちに、藤は花巻のすぐ隣に座ってノートに目を
遣った。
「うわ、すっげー丁寧なノートじゃん。教科書みてー」
「あう……ふ、ふ、藤くん……」
肩が触れ合うほどの距離に、花巻は赤い顔をさらに真っ赤にして固まってしまった。
「……うん、やり方は問題ないな。
 無駄な部分を書かなけりゃもっと早く終わると思うぜ」
そう言ってノートから目を離したところで、藤は硬直している花巻に気づいた。そして二
人の肩が触れ合っていることにもはじめて気づいた。
「…………」
「…………」
二人きりの部屋に沈黙が流れる。
藤にその気はなかったのだが、紅潮した花巻の顔を見ると触れ合った肩を通して花巻の熱
が伝わってくるようで、その熱が藤の気持ちに静かに火を灯した。
「…………」
藤は黙ったまま左手で花巻の肩を抱き、鼻で花巻の髪をかきあげて首筋に口付けた。
藤が使っているのとは違うシャンプーの香りが鼻腔をくすぐった。
「ひゃっ!?……ふ、藤くん……私、まだ宿題が……」
「俺は終わった」
「そ、そんな……」
藤は構わずに花巻の首に鼻筋をすりつけ、右手を花巻のへその下あたりに持っていった。
そしてその右手で子どもをあやすようにお腹をさすってやると、花巻は顔を俯けておとな
しくなってしまった。
何度も情事を重ね、花巻がそこに弱いことを藤は知っていた。
「……藤くん、ベッドで……」
やがて熱い吐息とともに花巻が言った。藤が無言のまま花巻を解放すると、花巻はゆっく
りとした動作で振り向き、すぐ後ろにあったベッドの前に膝立った。
花巻のその後姿を、藤はじっと見つめた。
花巻の身体は女の子らしい体つきではあるものの決して発育がいいとは言えなかった。そ
れにもかかわらず、上気した彼女の身体は熱を帯びて不思議な色っぽさを湛えていた。
その熱と色っぽさに中てられ、藤はいっそう身体が疼いた。
藤の頭にはまだ冷静さが残っていたが、身体は極限まで興奮して理性の表面下ではどす黒
い欲望が残った理性をはねのけようと暴れまわっていた。
ぎりぎりのところでコントロールできてはいるが、少しでもたがが外れてしまえば衝動に
身を任せるほかなくなってしまう、そんな危うい感情の中に藤はいた。

376 :

その藤の視線には気づかず、花巻は手を着いてベッドに上がろうとした。が、藤はそこで
後ろから花巻の肩を押さえつけてうつ伏せに押し倒した。
「ぶわあああっ!?」
花巻は驚いて悲鳴を上げたが、藤はそれを無視して花巻に覆いかぶさった。そのまま欲望
に身を任せてしまいたい衝動を堪えながら、花巻の身体に腕を回して力強く抱き締める。
花巻の柔らかくて温かい身体は藤の衝動を駆り立て、限界かと思われた興奮がさらに高ま
っていくのが分かった。心を締め付けるほどの興奮のはけ口を探して、藤は熱くたぎる下
半身を花巻の尻に押し付けた。
「あ……!」
制服越しからでも感じ取れる熱くて硬い藤の分身に、花巻は驚きの声を上げた。だがそれ
はすぐに花巻自身の興奮と期待に変わった。好きな男が御しきれないほどの露骨な欲望を
自分に対して向けてきている。その事実が花巻に媚薬のように作用した。藤の熱も欲望も、
その全てを自分の中に受け入れたい、そんな感情に花巻は支配された。
「……藤くん……藤くんの、好きにして……」
「……やめろよ。そんなこと言われたら俺、お前のこと泣かしちまうかも」
「……うん……」
花巻は目を閉じて、背中側から感じる藤の身体に神経を集中させた。
藤は返す言葉が見つからず、黙って花巻の身体に回した一方の手でシャツのボタンを外し、
もう一方の手でスカートの中の下着をおろしていった。
開放されたシャツの下に手を入れ、抱き締める力はそのままに花巻のきめの細かな素肌を
乱暴に愛撫する。花巻への配慮がないわけではなかったが、優しい愛撫をする余裕など藤
にはもうなくて、暴力的な感情を寸でのところで抑えるのが精一杯だった。
だが今の花巻にとっては、藤の乱暴な愛撫も興奮を高める一因となった。有無を言わせな
いといった調子の藤の力強い愛撫は、花巻に被虐的な感情を呼び起こさせて思考を麻痺さ
せる。心臓はパニックを起こした時のように激しく鳴り、呼吸は息が詰まるほどに荒くな
って眩暈がする。
呼吸の乱れる花巻を見て自身も息を荒げながら、藤は花巻を抱き締める腕にさらに力を込
めた。そして左手を腰のほうに回し、へそのさらに下へと手を遣った。
「あ……は……」
既にしっとりと濡れ始めていた割れ目に指を這わすと、花巻は甘い声を漏らした。
藤が割れ目に沿って指を動かしその奥へと侵入していくにごとに、そこから漏れる音も花
巻の声もだんだんと濡れていく。
「はっ……ぁあん……っ!」
割れ目に隠れていた陰核をぐいと押されて、花巻の背中に電撃が走った。藤はくりくりと
指を動かしてそこにさらに刺激を与え続ける。ぞくぞくと背骨を伝っていく刺激に堪らず
花巻は背中をのけぞらせ、逃げるように腰を突き出す。
だが藤に後ろから抱きつかれているために逃げることはかなわず、もぞもぞと尻を動かす
ことしかできない。藤はその柔らかい尻に熱と欲望の塊と化した下半身をさらに強く押し
付けた。そうやって花巻の動きを封じ、蜜があふれ出してくる薗で指をかき回し続ける。
「すげーな花巻……。もう指に滴るくらい濡れてる」
「だってぇ……だって藤くんがぁ……っあぁ……!」
花巻が泣き声に近い喘ぎ声を出す。その声を聞き、どうにかなってしまいそうなほどの興
奮が藤の頭を突き抜けた。
自分の腕の中で花巻が一心に乱れ可愛らしい嬌声を上げている。可愛い花巻への愛しさと、
乱れる花巻をもっと暴き立てたいという二つの感情が混ざり合い、藤の頭を混乱させた。
藤は頭を落ち着かせようとべたべたになった手をいったん引いたが、一度スイッチの入っ
た身体の熱は引くはずもなく、愛撫へと集中していた神経が途切れて痛いほど大きくなっ
ていた自分の分身が余計に疼きだした。

377 :

ふと藤は分身を押し付けている花巻の尻に手を移してそっと撫でた。
自分の筋肉質で骨ばったそれとは違い、花巻の尻は丸くて柔らかく本当に「美味しそう」
と形容してよさそうなくらいだった。
藤が手のひらをゆっくりと進ませていくと、不意にその指が普段は出口となっている穴に
触れた。そこは柔らかなひだが集まって口を塞いでおり、藤を新たな欲望に駆り立てた。
藤は高まり続ける興奮に息を荒げながら、ひだになっている部分に中指を当てて優しく円
を描いてみた。
「あ……ダメぇ……そんなとこ……」
花巻は嫌がったが、先ほどの愛撫で力が抜けてしまって抵抗できる状態ではなかった。藤
の指は円を描く力を少しずつ強め、やがて出口に当てた指を上下させ始めた。
力が入らずに緩んでいるそこが、愛液の絡んだ指の動きに合わせてさらにほぐれていく。
藤は切ない喘ぎ声を上げる花巻の反応を見ながらぐにぐにと指を動かしていたが、第一関
節まで指が入ったあたりで指を立ててゆっくりと押し込んでいった。
「あ、あ、あ……藤くん…藤くん……!」
自分でも驚くほど容易に指を受け入れていく生々しい感触に、花巻は羞恥の声を上げた。
自分でも触れたことのない部分を藤の指が侵している。そのことに花巻は今まで味わった
ことのない恥ずかしさとともに、歓喜と興奮を感じていた。
これまで自分の中にあることさえ知らなかった感情を藤はいとも容易く掘り当ててみせる。
花巻は歓喜と興奮におぼれそうになりながら、同時に自分の知らない全てをくれる藤への
愛しさが止め処なく溢れてくるのを感じた。
根元まで入ってしまった指を動かされるたびに、溢れ出る藤への感情が飽和していく。や
がてそれは極値に近付き、花巻は頭が白んできた。
「あぁっ……藤くんっ……ぁああ……っ!」
軽い絶頂に達し、花巻は肩で息を吐いた。
「……何だよ、イッちまったの?お前意外とエロいな」
「…はぁ…はっ……藤くんの……せいだもん……」
息の荒い花巻を見て、藤はもう自分を抑えきれなかった。後ろの穴に入っていた指を抜い
て花巻の耳元でそっと囁く。
「なぁ……俺ももう……いい?」
その声を聞き、花巻は達したばかりだというのに期待感に胸が高鳴った。熱い下半身がき
ゅうと締まるのが自分でも分かった。
「藤くん……はやく……っ」
花巻が請うのを聞き、藤は花巻をうつ伏せに押し付けたまま、片方の手で花巻の陰核をつ
まみ上げた。そしてその突起を弄りながら、どろどろになってしまっている花巻のそこに
自分自身を押し当てた。花巻は高まる快楽と期待感を抑えきれず、脚を大きく開いて腰を
突っ張り淫らに藤を求めた。
藤がそのまま力を込めると、花巻はその奥へと容易に侵入を許した。花巻の身体は何度も
受け入れた藤の形容を覚えていて、愛しいその形容を迎えて歓喜しそれを離すまいと締め
付けるのであった。
「う……お前これわざとやってんの?ダメだすぐイキそう……」
花巻に締められて一気に爆発寸前まで追い詰められ、藤は自分の全てを吐き出そうと激し
く腰を突いた。
「はぁっ……ぁん…藤くん……激し……っあぁ……!」
「花巻……花巻……!」
藤は花巻の名を呼びながら腰を振り続け、最後に一つ腰を突いて全てを爆発させた。意識
が飛びそうなほどの快楽に、藤は全身を花巻に押し付けて耐えた。
やがて霧散していく快楽と欲望の果てに、花巻への愛しさだけが残った。
藤は自分と同じように肩で息をしている花巻の頭に頬をすり寄せながら声をかけた。
「すげーよかった。……大丈夫だったか、花巻?」
「うん、私もよかった……。でも、ちょっと疲れちゃったかも……」
満ち足りた表情でそう言う花巻を見て、藤は言い知れぬ幸福感に包まれた。
「いいぜ、ちょっと寝てろよ。帰る頃になったら起こすからさ」
そう言って藤が花巻の頭に手を置いて頬にキスをしてやると、花巻はもううとうとし始め
ていた。

378 :

いったい自分はどうしてしまったのだろうと、すやすやと眠る花巻を見ながら藤は思った。
ドライでマイペースなのが藤の「売り」だったはずである。他人には興味がなかったはず
なのに、いつの間にか花巻のことは気になって仕方なくなっていた。前から女に興味がな
いわけではなかったが、花巻に対する気持ちはそういうのとはまた違った感情だった。
慣れない感情に戸惑うことは多々あったが、それでも藤はこれまで知らなかった気持ちを
教えてくれた花巻に感謝していた。いつかこの気持ちのお礼を花巻に返してやりたい。だ
から花巻にはこれからもずっと側にいて欲しい。藤はそんな風にも思うのだった。
「さて、めんどくせーけど花巻の分の宿題でもやっといてやるかな」
まったくもって自分らしくないと自嘲気味にわらいながら藤はテーブルに着いた。
「……う〜ん、藤くん……」
藤の後ろで寝言を言った花巻のあどけない寝顔を見て、藤は優しくわらった。
「……ま、見返りはもうもらってるようなもんだしな」



379 :
以上です。どうもお粗末さまでした。
藤花バレンタインは他の職人様に期待ということで。
それにしても本誌で長編始まるのちょっと早いよ!
こっちはクリスマス回終わったあたりからバレンタイン回楽しみにしてたのに…

380 :
>>373-379
藤花乙です!!GJ!!!
萌え禿げたwwww
やっぱり藤花好きだー

381 :
てす

382 :
エロないけど変質者出てくるのでここに投下します。空気読めてなかったらごめんなさい
 出席番号が前後ということは、当然のように日直も同じになるわけで――
「ふわあぁ……終わったあ」
「相変わらずだな花巻は」
 水替えをしようとしてぶちまけてしまった花瓶の水を掃除し終え、
花巻はようやく一息つく。その間に藤は通常の掃除を適当に済ませ、
今は日誌を書いていた。
「あれ? 消しゴムねえな、花巻持ってる?」
「あ、はいっ!」
「サンキュ」
 渡す時わずかに指先が触れ、花巻はびくっと反応するが藤は特に気にしていなかった。文章を書くのが苦手な藤にとってわずか数行の感想欄もなかなかの難業で、それどころではないのだ。
「よし、終わり。帰るか」
「うぁ、はいっ、また明日……」
「何で? 途中まで一緒に帰ろうぜ」
「え、ええええっ!?」
 何気ない藤の発言に、花巻は必要以上に焦ってしまう。そんな台本は用意していないし、
あったとしても緊張して役に立たない。そんな心中など知るよしもなく、
藤は花巻の鞄も一緒に持って教室を出てしまった。
「もうこの時間でも結構明るいな」
「そ、そうですね……」
「でも春になると変な奴も増えるよな、朝礼で言ってたけど」
「そ、そうですね……」
「……明日も見てくれるかなー?」
「えっ!?」
「いや、なんでもない」
 傍から見たら奇妙な会話をしながら、靴を履き替えて校門を出る。
しばらく歩き、ふたつめの角まで来て未だ自分の鞄を持っている藤へ、
花巻は遠慮がちに声をかける。
「えっと、私こっちなので」
「へー、気を付けて帰れよ」
「あの、鞄……」
「あ、悪い」
「いえっ、ありがとうございました!」
「家まで送っていくか?」
 肩掛けの鞄を両腕で抱えて去ろうとする後ろ姿に、藤は自然と声を掛けていた。
花巻は一瞬立ち止まったが、振り返らず首を横に振る。
「まだ明るいし大丈夫です!」
「じゃあまた明日な」
「はいぃぃぃ」
 今度はぶんぶんと縦に振り再び歩き始める。藤のちょっとした言動に
すぐ緊張したり舞い上がってしまう自分が恥ずかしく、
せっかく二人でいられるチャンスでも花巻は逃げるように避けてしまう。
その情けなさにやや落ち込みながら歩いていると、道の端でうずくまっている人に気付いた。
サラリーマン風で、幅のある体格の男性だ。周囲に他の通行人はいない。
おそるおそる、近付いて声を掛けた。

383 :
「あのぅ、大丈夫ですか……?」
「!!」
「ひゃあっ」
 瞬間、うなだれていた首がぐるりと回ってその目が花巻をとらえる。
「あ、あの……」
 男はのそりと立ち上がり、両腕をぶらぶら揺らし始めた。
異様な雰囲気に、言葉も出ず立ち尽くす。抱えていた鞄がどさりと地面に落ちた。
「ああ、ありがとうねえ、うれしいなあ親切だなあ」
「いたっ……!」
 両腕を掴まれ、ほとんど建物同士の隙間でしかない路地に押し込まれる。
助けを求めて花巻は視線をさまよわせるが、
学生と社会人の帰宅時間のちょうど中間で人影はない。
「君可愛いね、彼氏とかいるのかな? もうキスなんかもしてるのかな? 
いいよねえ若いねえおじさんともっとお話ししよう!」
 恐怖でパニックを起こし動けない花巻に、男はぐいと近付いて顔を寄せてきた。
間近で確認して分かったことだが、シャツはよれて黄ばんでいるし、
にやけた口元から見える歯列はまだらで、タガの外れた人間であることが見てとれた。
関わらなければ良かった、という後悔も遅く、体は硬直している。
じとりと汗ばんだ指が花巻の肩を掴む。何をされるのか想像もできず、
息をつめて強く目をつむった。
「うわっ! 何してんだおっさん!」
 聞き覚えのある声と同時に、まぶたに感じていた人影が消えた。
うっすらと目をあけて見えたのは、腕をひねり上げられて目を白黒させている男と――
「っ、ふ、藤くん!」
「なあ、これって変質者だよな?」
 戸惑った様子ながらも男をじわりと花巻から離して捕らえているのは、
先ほど別れたばかりの藤だった。
「……どうすればいいんだ」
 言葉の通じなさそうな男と、話せるような状態ではない花巻、状況をうまく飲み込めない藤。
場は時が止まり、興奮した男の呼吸だけが充満していく。
「あーっと、とりあえず警察か」
「び、いぃぃぎゃあああああ!!!!!!!」
「うおっ!?」
 警察、と単語を出した途端、男は渾身の力で藤を振り払い、
その風体からは想像もつかない身のこなしで走りだした。

384 :
この過疎っぷりはどういうことなんだ?
先週藤花書いた者だけど勢い余って藤花バレンタインも書いてしまった
投下して…いいよね?
4レス使用します

※エロなし。申し訳ありません
※恐ろしいほどのベタ。忙しい方はスルー推奨

385 :
「てめえ待てコラ!」
「藤くん!」
 すかさず追い掛けようとした藤の背後から、震えた花巻の声が響く。
反射的に立ち止まり振り返ると、座り込み、
決壊寸前といった様子で涙をためた花巻が見えた。
「い、いかないで……」
「花巻」
 歩み寄り、立ち上がるよう手を貸す。
こまかく震えている彼女はなかなか藤の手を取れない。
藤は花巻の手首を掴み、半ば寄りかからせるようにして目線を合わせた。
「大丈夫か? なんかされた?」
「まだ大丈夫……です、うぅ……藤くん、藤くん……っ」
 せき止められていたものが一気に溢れたのか、
花巻はぼろぼろと涙をこぼして藤にしがみつく。
左胸のあたりがセーターを通り越してシャツまでぬるく湿っていくのを感じながら、
藤は控えめに彼女の背を撫でた。
「鞄だけ落ちてたから、何事かと思った」
「ごめんなさい……わ、私、もうなんにも分からなくなっちゃって……」
「仕方ないだろ。俺だって停止するよあんなん」
「うぇ……怖かったよぅ……藤くんがいてくれて良かった……」
「最初から送れば良かったんだよな。ごめん」
 泣きながら首を横に振る花巻を見て、なんとも言い難い感情が渦巻く。
一人にしなければ良かった、大事にならず良かった、助けたのが、自分で良かった。
「……ごめんな」
 小さく呟き、背中へ回していた腕に少しだけ力をこめる。そのまま会話もなく、
花巻が落ち着くまで狭い路地にただ立っていた。
「あの、警察に届けるの本当に明日で大丈夫でしょうか」
「先生と一緒に行くか、学校から言ってもらったほうがいいだろ。
今日はもう帰って休んだほうがいいって」
「ごめんなさい、ありがとう……」
「あーもう泣くなよ! いや泣いてもいいけど、
お前は悪くないんだからそういう泣くのはナシだろ!」
 花巻の家までの道々を歩きながら、二人はようやく出来事を整理した。
花巻はショックと不安が残っているためか、藤の袖口を掴んで離さない。
一度気を利かせててのひらを握ったら飛び跳ねるように驚いて離れてしまったので、
あえてそのままにしている。

386 :
「あ、私の家ここなので……えっと、今日は本当に」
「そういうのいいって。あのさ」
「は、はいっ」
「これからはなるべく二人で帰ろうぜ。日直じゃなくても」
「そんな、そこまで――」
「危ないってのもあるけど、一緒に帰りたいんだよ」
「え?」
「じゃあ、また明日な」
 言葉の意味を花巻が理解してしまう前にと、藤は素早くきびすを返して歩き出した。
胸や腕にまだ体温が残っている気がしてこそばゆい。ポケットに手を突っ込み、気付く。
「……返しそびれた」
 一度別れた花巻を追ってきた理由、あのタイミングであの場にあらわれた原因。
「またお前か、って感じだな」
 日誌を書く際に借りたまま、間違えて持ってきてしまった消しゴム。
返すのは翌日だって良かったはずなのにわざわざ道を戻ったのは故意か偶然か、
考えることはやめて藤は足を速めた。
おわる

387 :
うわすみません、終わったので投下してくださいバレンタイン
藤花続いてアレな空気にしたらすみません…

388 :
リロードし忘れ申し訳ないorz
こちらこそ空気まったく読めてなくてホントすいませんでした
花巻さんを放っとけない藤が好きすぎるのでとてつもなく萌えました!GJ!
できればまた投下してください
藤花バレンタインは自粛して3日後くらいに投下します

389 :
藤花GJGJ!!!乙です
素敵作品ありがとうござます!!
花巻ちゃんのピンチに藤くんが颯爽と現れる展開萌える〜!
バレンタインも楽しみにしてます!

390 :
バレンタイン話の流れで、何となく出来てしまった短いものが二つ。
投下してみる。

391 :
二月十四日月曜日。
放課後、いつも集まっている生徒たちが帰宅時間になって保健室からおのおの去っていくのを
注意深く確認してから、美徳は様子を伺うようにドアを開けた。
「ハデス先生」
保健室の主はいつものように生徒たちが使った湯呑みを片付けながらも、新たな来訪者の声に
静かに視線を向けてきた。
「どうなさいました、才崎先生」
「いえ、あの…」
その穏やかな瞳に囚われると、いつも言葉が途切れる。どんなに周到に適切な言葉を用意して
いてもやはり動揺してしまうのだ。いけない、落ち着いて話そう、と一度言葉を呑み込んでから再び
口を開く。
「…今日は、その…バレンタインデーですよね」
「ああ、そうですね。藤くんは大変だったようですが」
「それでですね、これを」
思い切って、後ろ手に隠していた薄い箱を差し出す。生まれて初めて男性に渡すチョコレートだ、
どれが良いのかと懸命に選んだ挙句の品だ。喜んでくれると嬉しいと思いながらも、不安で心臓が
弾け飛んでしまいそうだった。
「受け取って頂けますね、逸人さん」
これ以上ない、というぐらい顔が熱くなって堪らない。きっとみっともないぐらい真っ赤な顔をして
いるのだろう。
シャンパンゴールドの包み紙にシルバーのリボンがかかった箱を差し出されて、一瞬呆気に取ら
れたような顔をしたハデスは、次の瞬間に心が蕩けるほどの優しい笑みを浮かべた。わずかに
美徳自身の震えが伝わっている箱を受け取るなり心底感激したように言葉を放つ。
「嬉しいです、本当にあなたから頂けるとは思ってもいませんでしたから」
「そんな、私は嘘なんか言いませんわ」
去年は色々考えあぐねてしまって結局渡しそびれてしまった、そんな思いをするのだけは本当に
嫌だったのだ。思いが通じた今は、自分の心に正直でありたかった。
「…そうですね、あなたはいつもそういうまっすぐな人です」
箱を宝物のように胸に抱え、ハデスは美徳の片手を取った。
「今、どんなに嬉しいのか、思っている半分も伝えきれる自信が僕にはありません」
「逸人さん…そんなに?」
「ええ、自分の不調法さが悔しいほどですよ」
「逸人さん」
囚われた視線からもう目を離せなくなっている。
全ては今日という日の為に、今まで色々なショップのチョコレートを買ってみた。自分で美味しいと
思えるものでなければ一番大事なこの男には贈れない。そう思って焦ったりもした。結局、花巻の
父親が経営する店が今年から発売した生チョコが最も美味しいという結論に達したので、これに
してみた。
こんなに喜んでくれるのであれば、何よりのことだ。
「もし、よろしければ今夜は一緒に…美徳さんが選んだものであるなら尚更共に堪能したいと思う
のですが、どうでしょう」
「えっ…」
「よろしいですか?」
よろしいも何も、それが一番美徳の望む答えだ。いつもならなかなかその言葉を引き出せずにいる
のに、今日ばかりは世の中に数多いる恋人たちの妖しい魔法に二人ともかけられてしまったように
思える。
「ええ、もちろんですわ。嬉しいです…」
次から次へと溢れてくる感情を隠せないまま、美徳は抱き寄せる腕に身を添わせた。

392 :
『美玖、手作りは地雷なんですよ』
去年、バレンタインデーに向けて手作りチョコの本を見ていた花巻に、父親がぽつりと呟いた言葉
がそれだった。既製品より手作りの方が何となく心が伝わると思っていたのでその時は聞き流して
いたのだが、今年はその意味が痛いほどに分かった。
やはり父親はプロの立場から、安易な考えで難しいものにチャレンジするのを快くは思っていない
のだろう。それぐらいチョコレートは大変だ。
今年は勇気を出して藤にチョコレートを贈ろうと思っていたのだが、そんな訳でどこにでもあるような
板チョコ一枚になってしまった。あえてバレンタイン仕様のものにしなかったのは、もし自爆しても
誤魔化しが効くようにというずるい考えからだ。
「いいのかなあ、これで…」
鞄に忍ばせたチョコが割れたりしないように厚めの教科書で挟み込んだ。問題は渡すタイミング
だが、こればかりは本当に分からなかった。
藤の周囲でいつも華やかに笑っている女の子たちが、今日は一際賑やかだ。渡す予定のチョコも
綺麗にラッピングされた宝石箱のような箱ばかりだ。ありふれた板チョコ一枚では絶対叶いっこ
なんかない。
そう思うと、何となく悲しい気持ちになって一日空虚に過ごしてしまった。
さすがはバレンタインデーだ。
今日は朝から放課後まで、男子たちはどことなく浮かれていて、女子たちはひそひそと顰めた声で
誰に何を渡すのか話し合っている。
藤の方はといえば案の定、休み時間になる度に入れ替わり立ち替わり色々なクラスの女子たちが
チョコの箱を持ってやって来た。その都度面倒臭そうに応じるものの、男だからきっと悪い気はして
いないのだろう。
「そうだよね、今日は堂々と告白出来る日だもんね」
今日という非日常の中に花巻一人だけがぽっかり取り残されてしまった気分になって、一層気分
が塞ぐばかりだった。
「花巻」
「…あひゃっ!」
後ろから肩を叩かれて、思わず変な声が出てしまった。
やはり渡す勇気が出なくてこのまま帰ろうと校門を出たところで、追いかけてきたらしい藤に声を
かけられたのだ。
「あ、あ…藤くん、何で」
「何でじゃないって、無視すんなよ」
「べ、別に無視はしてないよ、私…」
そこでふと思い至った。今の藤は一つもチョコを手にしていない。鞄の中にも入っている様子はない。
あれだけどっさりと貰った筈なのに。
「あー、やっと振りきって来た。あいつら、なんか面倒なんだよな。肩凝ってさ」
「…チョコ、どうしたの?」
「欲しがってた奴らにやっちまった。さすがに捨てらんないだろ」
「あ、そ、うなの…」
捨ててはいないと聞いて少しほっとしたものの、藤の為にチョコを選んだ女子たちを思うと気の毒に
なった。あんなに綺麗なチョコでもいらないのなら、尚更自分のつまらない板チョコなんか差し出す
訳にはいかない。
押し黙って歩く花巻に、藤がなおも声をかけてくる。
「あー、腹減ったなー。花巻、なんか持ってね?」
「え?」
「チョコ、とかあると嬉しいんだけどさ」
「…チョコって、そんな…」
もしかして、期待してくれているのだろうか。だとしても花巻が鞄に忍ばせているのはどこにでも
ある板チョコだ。バレンタインの為のものですらない。
「ある?」
「う、あ…」
ある、と言ってしまえばいいのだろうか。けれどチョコなんて持ってないとは絶対に言えそうには
なかった。困り果ててしまった花巻の髪を、春先の風が軽く吹き上げていった。


終わる

393 :
立て続けにGJJJJ!!!
バレンタイン、確信ないとカッコつかない行動だな藤w

394 :
ハデみの藤花GJGJ!!!
どっちもかわいいwwww
そうだよね花巻ちゃんは自分からあげられないよねw
藤くんの行動わろたw二人ともかわい///

395 :
ハデみのも藤花もGJでした!
藤花かわいい!!!

396 :
GJGJGJ!
なにこれ萌える!

397 :
こっそり投下。
まだキヨラカ()だった頃の妄想みのりちゃん。

398 :
ある日の放課後、職員室で生徒指導の資料をまとめ終えた美徳は窓の向こうの校庭にふと目を
留めた。
「…みんな、頑張ってるわね」
部活に勤しんでいる生徒たちの姿はいつ見ても清々しさを覚える。あの年頃の自分も同じだったと
郷愁さえ感じるほどだ。しかし、その中に一人だけ異様な様子の人物がいた。
「ああ、またあの人は…」
すぐさま立ち上がって校庭へと向かう。せっかくの生徒たちの頑張りに水を差しかねないと思った
のだ。
「ハデス先生!」
救急箱を提げ、所在なげに校庭内をぶらぶらと歩いているハデスに、遠くからでも聞き取れるほど
大きな声をかけた。
「何をしていらっしゃるのですか、こんなところで」
「…どうかなさいましたか?才崎先生」
長身の男は美徳の姿を見るなり、やや身構えたように感じた。
「どうかなさいましたか、じゃないです!生徒たちの妨げになるじゃありませんか。あなたは大人しく
保健室にいて下さればよろしいのです」
「ええ、そう思いますが、もし誰かが怪我をしたらと思うと」
「それなら余計に、自分の持ち場を意識して頂かないと困ります」
きっと目を見据えて言い放つ美徳に、ハデスもこの場は従うしかないと悟ったようだ。黙ったまま
救急箱を抱えて頭を下げる。
「…ですね。御迷惑をお掛けしました」
どのみちまた明日も同じことをするのだろうが、無理矢理言うことを聞かせたように思えて少しだけ
胸が痛んだ。本当ならこんな風にきつい物言いをするほどのことではない。なのにハデスの顔を
見るとどうしても何か言いたくなってしまうのだ。
きっとうるさい女だと思われていることだろう。嫌われているかも知れない。
そう考えると、更に胸が痛い。わざと嫌な言い方をしておいて虫のいい話ではあるが。
この気持ちは一体何なのだろう。
「…ふうっ」
その夜、夕食と入浴を終えてすることがなくなってしまうと、美徳はベッドに力なく身を横たえては
溜息をつくばかりだった。
ここ最近、何故か分からないがハデスの存在が気になって仕方がない。

399 :
言葉を交わす機会が増えてからというもの、その言動には何かと心を掻き乱される。始めの頃は
それがただの苛立ちでしかなかったのに、次第にその気持ちが不快なものではなくなってきて、
今は無意識にでも目が追っている。
この気持ちは今まで自分でも理解してはいなかったのだが、やはり異性として意識しているのだ
ろうか。
「あの人を?まさかね…」
ごろんと寝返りを打っても、気持ちが変わることはない。自分自身でも把握していない思いなのだ
から、どうすることも出来ないでいる。美徳自身にもっと恋の経験値があれば、これはどういうこと
なのかと比較も可能だろう。
しかし、恋はおろかまともに男性と接してこなかったことが仇となっている。美徳も気付かないで
いることではあったが、それが最大の難点だった。
恋をするという気持ちが、まだあまり分からない。
美徳にとって男性というものは、ずっと相容れない存在だった。最も身近な異性である双子の兄が
あの通りなこともある。だからこそ理解する気にもなれずにいた。とはいえこれからもずっとそのまま
でいたら、恋も知らず人の心の機微も解することのない、女として空っぽのつまらない人間になって
しまうだろう危険性は感じていた。
「うーん…」
どうしてハデスのことが気になってしまうのだろう、とふと考えてしまう。
以前は勝手に怖いイメージを持っていたから、あえて避けていた。言葉も交わさずに済ませていた
のだが、受け持っているクラスの生徒たちが何かと立ち寄るようになり、何かがある度に一緒に
いるのを見ることも多くなった。
その度に担任である自分の無力さを痛感したりもしたのだが、同時にそれだけの力がハデスには
あるのだろうと思えた。
一体、ハデスはどんな人間なのだろう。
確実に気にはなっているのにハデスのことを全く知らないのがもどかしい。ほんの少しでいいから
何か情報が欲しかった。好きな食べ物や休日の過ごし方程度のことでいいから。
目を閉じると、真っ暗な瞼の裏で見慣れた長身の後ろ姿が蘇った。生徒たちに向けられた慈愛に
満ちた眼差しと意外と人懐こい笑顔が、もし一瞬でも自分に向けられたら…。
そう考えるだけで胸がときめくのを感じて、自分でもおかしいほど動揺した。
「そんな、わけ、ない…」
必で振り払おうとするハデスのイメージが、今夜だけは不思議となかなか消えてはくれない。

400 :
何度も寝返りを打ちながらも、ようやく気付いたことがあった。
本当は生徒たちに向けられるあの果てしなく優しい笑みが欲しかったのだと。
なのに顔を合わせればつい憎まれ口を聞いてしまうことが自分でも耐えられないのに、今更もう
変えられそうもない。
「ハデス先生…」
ぎゅっと腕を回して熱を帯び始めた身体を抱き締めながら、美徳は決して応えることのない相手を
呼んだ。
あの眼差しで見つめられたい、あの微笑に心を満たされたい。
ただそれだけの欲求だったのに、何故かどんどんあらぬ妄想が膨れ上がっていくのはどうしてなの
だろう。今までハデスをそんな風に見たことなどなかったのに。
あの指で触れられたら、あの声で囁かれたら、一体どんな感じなのだろう。そう考えるだけで堪ら
なくなってきた。とはいえ自分ですることなど汚らわしいと思い込んできただけに、どうやって慰めて
いいのか良く分からずにいた。
「私、変…」
次第に淫らになっていく妄想を抑えることも、ただ昂っていく身体を鎮めることも出来ないままに、
美徳は空しく眠れない夜を過ごすことになった。
翌日の朝、職員室でハデスとお決まりの挨拶を交わした後、美徳は普段よりもやや語調を緩めた
声で話しかけた。
「今日からは、あまりウロウロしないで下さいね。お願いします」
出勤する前から、何と言えば棘が立たないかと懸命に選んだ言葉ではあったが、もちろんハデス
に通じているかどうかは分からない。
「はあ、そうですね」
そんなどうとも取れる返事しかなかったのだから。
ハデスが自分をどう思っているのかはあまり考えたくなかった。あの態度からして美徳には大して
関心も持っていないだろう。それだけならまだましな方で、もし嫌われているとしたら目も当てられ
ない。
それもまた、今までのことがあるから自業自得なのだろうか。
そうだとしても、これ以上に嫌われたくはなかった。出来ればくれぐれも穏やかに、何事もない日に
なって欲しい。うっかり文句を言わずに済むように。
「期待していますわ」
「それでは、僕はこれで失礼します」

401 :
依然として腹の読めない男は、美徳の心を掻き乱したまま悠然と持ち場である保健室へと去って
行った。
その後ろ姿を盗み見ながら、ちりちりと心の端が焦げるのを感じていた。
ハデス先生、私はあなたが思うような堅苦しい女ではないのです。もっといやらしくて浅ましい、
どこにでもいるような愚かな女でしかないのですわ。
そう心の中で呼びかけながら、美徳は目を閉じた。
もしも万が一、あの男があの優しい声で囁きかけて抱き締めてくれたら、きっと嬉しくて心臓が破裂
してしまうかも知れない。
そして更に、もっと先のことが二人の間に起こるとしたら…。
妄想がまた止まらなくなった。
性的なイメージなど一切結びつかないあの男は、そんな場合には一体どんな風に欲情して事を
運ぶのだろう。どんな感じで女を抱くのだろう。
美徳自身の経験のなさもあって想像すらつかないことだからこそ、妄想の内容だけが存分に淫らさ
を増していく。どこにいても、誰が側にいても。
このままでは、本当におかしくなってしまいそうだった。
何もしないままでは胸が苦しくて仕方がないし、どう考えても他人に関心のなさそうなハデスの方
から動く筈もない。それなら何としてでも自分から誘いをかけるしか手はないではないか。
ハデスをもっと知りたいばかりに妄想をただの妄想では終わらせたくはない美徳にとって、手段など
選んでいられる余裕などはなかった。
どっちみち、あの浮世離れした男にはマニュアル的な手口など通じそうもないのだから。




402 :
だけど、付き合ってみたら案外マニュアル的な手口というか、ベタな手が好きな
方だと思いましたわ(美徳談)

403 :
投下中に日付が変わったら、IDも変わったw
当たり前だけどびっくりした

404 :
本編の方が日常回が不足気味だから
こーいうのイイよーGJ

405 :
本編ではシリアス突入だから、みのりちゃんの出番は当分なしかな
物足りんな

406 :
私、二人くらいなら相手できるかも

407 :
とりあえず、いつもと同じ日々が送れることを幸せに思う。
現実の世界も常伏町も平和が訪れますように。

408 :
世の中色々あったけど、とりあえず何か書きたい。
スレが以前のように賑わうように。

409 :
>>408 おぉ、待ってます!
まじ平和くるといいなぁ

410 :
藤花書いた。
少しでも早く、混乱している世の中が以前のような穏やかな平和を取り戻し
ますようにと祈るばかり。

411 :
放課後の図書室は薄気味悪いほどに静まり返っている。
終業式間近ということもあって、校内の雰囲気は何となく落ち着かないものが満ちていた。それが
いたたまれない感じがして、藤は似合わない『図書室での勉強』に逃げているのだ。
目の前の席には一人じゃ何だから一緒にやろうと誘った花巻が、ちらちらと藤を気にしている様子
を見せながらも律儀にシャーペンを走らせている。
しかし、飽きっぽいのが藤の性分でもあった。
三十分もそんなことをしていたら、耐えられない気分になってきていた。
退屈しのぎにがりがりとシャーペンの尻を齧りながら、藤は目の前にいる花巻を盗み見た。あまり
人の顔の美醜などには興味を持たない性分なのだが、こうして見てみると花巻はかなり可愛い。
成績もかなり良い方だから才女キャラも通るのだろう。ただ、あがり性ですぐテンパる性格のせい
もあって、あまりそれを感じさせないのは多分良いことなのだと思う。
少なくとも他の女子には嫌味な感じを与えていないし、むしろ可愛がられている。やはり何もかも
完璧ではなく、どこかが抜けているからだろう。
「ふーん」
「えっ…な、に…?」
唐突な藤の声に、花巻の肩がびくっと震えた。
「んー、別にどってことない。驚いたんならゴメンな」
歯型だらけのシャーペンを机に置いた手が、花巻の柔らかい髪に触れる。
「…ひゃっ」
怖いことでもされているように、華奢な少女が身を竦める。そういえば何度も抱いたことがあると
いうのに、花巻はいまだ一向に慣れるということがない。元々臆病な性格ゆえか、慣れ合うことを
恐れてでもいるようだ。
もちろん、花巻自身には一切の自覚すらないだろう。藤が誘えば応じる、それ以外は他の少女
たちと同じように藤を憧れの入り混じった目で見つめてくるだけ。
もしも花巻が少しでも慣れ合おうとする性格であったのなら、と考える。そうだったとしたら途端に
ウザいと感じてしまっただろう。男なんてこうも勝手なもので、だからこそ藤は今まであまり誰かを
寄せ付けたりしなかったというのに、花巻だけは何かと気になってしまうのだ。
そういう執着こそが恋だというなら、あえて例外的に認めてもいいと思った。

412 :
放課後の図書室は静まり返っている。
もちろん他の生徒たちもいるにはいるが、それぞれに勉強したり読書に勤しんでいたりで自分の
着いた席から動く気配はない。二人のいる席は一番隅で他の生徒たちからは見えにくいことも
あって、藤の手はより大胆に動く。
「…っ」
髪を撫でる手がわずかでも動く度に、花巻は今にも泣き出しそうな顔でぐっと声を押しして耐え
ている。そんな顔をさせたい訳ではないのにどうしていつも反対になってしまうのだろうと、不器用
極まりない自分に苛立つほどだ。
「怖くないから、泣くなよ」
これ以上怖がらせて泣かせたりしないように、出来る限り優しい声を出す。他の生徒たちには聞こ
えないように気を遣うだけでも精一杯だというのに、本当に面倒臭いことだと思いながら。
「う、うん…」
びくびくしながらも花巻は下手な笑顔を作った。頬にも触りたくなって、涙の落ちなかった頬に指を
走らせた。こちらには決して踏み込んで来ないこの少女の何がそんなに気になるのか、藤自身
にもさっぱり分からないままだが、恋情とはそういう理屈を越えたものなのだろう。
踏み込んで来ないのであればこちらから行くまでだ、と頬を撫でていた手が顎にかかる。
「えっ」
「ごめんな、ちょっと目ぇ閉じてな」
潜めた藤の声に、花巻は怯えながらも素直に従う。その唇を逃したくないと不意に焦りを感じて
机越しに長いキスをした。誰も見ていないとはいえ、やはり何があるか分からないのが怖いのだ
ろう、花巻の唇が震えている。
あ、これは泣くかもな。
さすがにそう感じたので離れてみると、花巻は泣きそうな顔ではなく、ただ戸惑ったようなどうして
いいのか分からないといった表情で見上げていた。
「…藤くん、私…」
臆病で真面目な花巻にとっては、たった今起こったばかりの出来事はかなりのショックだったに
違いない。まだ心がついて来てないようだった。
「悪いのは、全部俺だから…今は泣くなよ」
今はそう言って宥めるしか出来なかった。

413 :
恋なんてホントに面倒臭い。
どう言って何をすれば相手が喜ぶのかが全然分からない。その結果として思うこととは反対に
傷つけたりすることがあるなんて、とんでもないことだと思う。
一体何が最善策なのか、それは自分でいちいち体当たりして掴んでいかなければ分からないこと
だなんて、面倒臭がりの藤にとっては厄介極まりない。
とはいえ、ようやく掴みかけたものを手放すことも絶対出来そうになかった。
「お前は、側から離れるなよ」
「…藤くん、私、離れないよ…どんなに怖くても」
怯える臆病な少女は、それでも健気に藤の手にあることを望んでいる。今まであまりはっきりと
自覚することのなかった恋情の成就。それが鈍感な藤にも今ようやく分かったように思えた。




414 :
おお、職人さんの投下があった。
GJ!

415 :
GJです! こういうの好きだー
藤花やっぱいいなぁ!
片想い以上両思い未満美味しいです

416 :
GJ
このスレにきてたみんなの無事を願う

417 :
打ち切られる前に屋本しおりちゃんの出番をください

418 :
カプスレを見て、美シンってたしかに良いなぁって思った

419 :
畜生、順位悪いな

420 :
?

421 :
ジャンプの掲載順がやばいって話か

422 :
藤花GJGJ!

423 :
>>417
落ちていたエロ本をもってきて花巻さんに解説を求めるしおりちゃんだと
花「こういうの詳しい人に心あたりが」
安田見参
だが安田は、ロリコンじゃないのでしおりちゃんには、好印象。

424 :
>>423 それ安田をアシタバにかえて考えたが妹が邪魔だな

425 :
ハデス先生がヤバそうなんで、今こそみのりちゃんの愛とおっぱいの出番だ

426 :
今後機会有るなら是非ともシンヤとエロスの絡みに期待したい

427 :
経一は、保健室通いか
経「先生ー鈍に金玉蹴られて・・」
千歳「それは、ご褒美だ。よかったな」ぴしゃ

428 :
www

429 :
最近ハデみの不足だ...。

430 :
ごめん。
今のところハデスがどうなるのか分からないので、書くにも何をネタにすれば
いいのか戦々恐々としている状況。
書けそうになったらハデみの再開させるよ。

431 :
とりあえず奪還作戦の立案指揮を果たしたアシタバ君に三途川先生からのご褒美という電波を誰か形にしてくれ

432 :
>>429
見舞いにいったときの表情からその夜・・・
でその様子は、バッチリ兄にみられていて

433 :
>430
ありがとう職人さん
最近本誌の掲載状況が危ないからアンケ出して応援する。

434 :
そういやハデみの以前書いたのって一ヶ月以上前か。
原作の展開がアレなことになってる上に過去編に入ってるので、なかなかみのり
ちゃんを出せないでいる。
とはいえ書かずにいるのも感覚を忘れかねないので、リハビリを兼ねて短いものを
書いてみた。
タイトルは「白衣のカレシ」にでもして、いつものラブな感じにするつもりだった
けど、やっぱ原作の影響が出てしまった。
こんなんだけど連載継続祈願!!!

435 :
初夏の保健室には夕方の涼やかな風が抜けていく。
下校時間を過ぎたこともあって廊下を行き交う生徒たちの数もめっきり減っているせいか、昼間の
賑やかさが嘘のように校内は静かだ。
「んっ、あ…」
極力押しした声が室内に漏れている。
「ご無理をなさってはいけません、今でなくともいいのですから」
椅子に座る白衣の男の股間に顔を埋めている女が、その声にふと顔を上げて微笑んだ。
「…いいえ。私がしたいと思うからですわ、逸人さん」
長い指で髪を撫でられて更に恍惚とした美しい表情になった美徳は、手の中にしっかりと握った
ものを離さぬようにしながらも一瞬だけ縋るようにちらりと見上げた。
「ご迷惑でも、私は今のこの気持ちを止められないんです。どうしてなのか自分でも分かりません
けど」
「美徳さん、迷惑だなんてことはありませんよ」
髪を撫でていた指が額に、頬に触れる。
いつでも優しいこの男に嫌われたくはない、ずっと側にいたい。それが美徳のたった一つの願いで
他のことなど考えられもしなかった。なのに現実ではこうして自分のエゴを押し付けるだけになって
いるのが心苦しい。分かっているのに衝動を抑えられないのだ。
股間の一物にしゃぶりついている美徳の目尻から、不意に涙が零れる。
まるで何かに憑かれてでもいるようにこの行為を続けているのは、あまりにもらしくなく映っている
に違いない。頬にかかる指がやや強引に涙を拭った。
そしてどこか痛ましげな声が降ってくる。
「いずれ近いうちに僕は、心ならずもあなたを苦しめるのでしょうね。美徳さん」
心の内をあまり語りたがらないこの男にしては、この言葉は妙に啓示的なものに思えて美徳の
胸の奥に細い針のように突き刺さったままになった。
「…あなたのことであるなら、今の私の知る範囲外のものがまだたくさんあるのでしょうね。でも
必要がなければ要求はしません。それが原因で傷つくことになろうとも」
「すみません、本当に」
「それが逸人さんとこうして過ごせることのリスクなのだと思います、大したことではありませんわ。
その程度のことを恐れたりはしません」
このところの不安めいた強い感覚は、きっと何かの予兆なのだろう。だからこれほどに一緒にいる
時間を持ちたい、側にいて何もかもを感じたい。
ハデスの言葉通り、近いうちに必ず何か思ってもいない出来事が起こるに違いなかった。
けれど今はまだこうして側にいられる時間を大事にしたいと思っている。それほどに心に満ちゆく
不安の感覚は濃い。
絶対に、負けるものか。
これまで幾つものアクシデントを越えてきた経験が、美徳を強くしていた。




436 :
久々のハデみのgj!

437 :
GJ! 久しぶりによかった!

438 :
もしもハデスに冷血が憑いていなかったとして、そのまま常伏中の養護教諭に
なっていたら。
とか妄想して書いてみた。
相変わらずエロはないよ。

439 :
才崎美徳は苛立っていた。
原因は無論、例の保健室の主にある。
「ハデス先生!」
とうとう我慢も限界に来て、放課後の保健室に乗り込むこととなった。対峙するハデスもそう来る
ことは想定していたのだろう、割と平然としている様子だ。
「何ですか、才崎先生」
平然としているにしては、黒髪の奥の視線が妙に鋭い。うるさい女がまた来たとでも思っているに
違いない。しかし、どうしても言わずにはいられなかったのだ。
「…また、生徒たちの喧嘩の仲裁に行ったそうですね」
「ええ、行きましたが何か」
「余計なことはなさらないで下さいと、以前忠告した筈ですが」
「余計?」
鋭い視線が一層きつくなる。
「そうです、そんなことは生徒たち自身で解決させるべきことですから」
負けまいとして、つい声が荒くなってしまうのを止めることが出来ない。
「そういう教師の態度が生徒たちを放置する結果になるんじゃないですか?第一、一方的に殴ら
れるだけになっているのは不公平でしょう」
椅子に座ったままの姿勢を崩さずしらっと言ってのけるハデスに、美徳は少々鼻白みながらも乗り
込んだ勢いを無駄にしたくないとばかりに睨みつける。
放課後の保健室の雰囲気はやたらと険悪なものになっていった。
と、ハデスがあるものを目に留めた。
「切り傷があるようですね、そこに座って下さい」
先刻の体育の授業で用具の端で指先を少し切ってしまったのだが、それを目敏く見つけたよう
だった。
「これぐらい…いつものことですから」
「いいから座りなさい」
ここは保健室だ。主がそう指図するなら従うしかない。美徳は渋々丸椅子に座る。側の棚から
薬や用具を取り出すハデスは普段の様子のままだ。どうしてここに来たのかを忘れてしまうほど
に。
「とりあえず消毒をしておきますから、あまりいじらないで下さい」
てきぱきと傷口を消毒して薬を塗り、包帯を巻くハデスの手つきを見るともなしに眺めているうちに
すっかりさっきまでの勢いは美徳から失せていた。

440 :
「さ、いいですよ」
「あ、ありがとう、ございます…」
丁寧に処置された指先を膝の上で揃え、素直に頭を下げる。最初に乗り込んだ手前、無様だとは
思ったのだがこればかりは仕方がない。完敗だった。
つい、傷口を処置している時の流れるような動きに見蕩れてしまったのも大きい。
血気に逸って生徒たちの仲裁に飛び出して行く行動力と、今の静かさがどうしても結びつかない
のだが、それもこの男の特徴なのだろう。
何となく、もう少しここにいたい気持ちがあるのが不思議だった。




441 :
gj! エロなくてもやっぱりハデみのは良い。
本誌で中学生ハデスが鈍に反応してたけど、病魔にかかってなかったらみのりちゃんにもあんなに無反応じゃなかったかもな。

442 :
非現実的エロでなくてもいいな

443 :
原作展開が何となく不穏な感じのままなんで、エロが書きにくい。
とりあえずエロなしのハデみの投下。

444 :
ハデスがインフルエンザで倒れたというので、他の職員たちと見舞いに来た美徳だったが、ドアは
硬く閉ざされて中からは何の気配もしない。
恐らく病院にでも行っているのだろう。そうは思ったが何か決定的な重い胸騒ぎはあった。
「…いないみたいだな、帰ろうぜ」
勢いをそがれたように言葉を吐き出して背中を向けた絶花が、乱暴に足音を響かせて遠ざかって
いく。何度となく訪れた部屋だったのに今日は何者をも立ち入らせない雰囲気なのが妙に寂しい
と思った。
「そう、ですわね」
しかし、いつまでもここにいる訳にもいかないので、見舞いの品を入れたスーパーのビニール袋を
ドアノブに掛ける。
早ければまた明日会えるかも知れない。
しかし、またしばらく会えないかも知れない。むしろこちらの方が可能性としては大きい。
ハデスと親密になってからは、何度もこんなアクシデントがあった。その度に必で乗り越えて
きた。その経験からの勘が今回は一番の難物だと訴えている。
ここで待っていたい気持ちを振り払って歩き出した美徳は、一度振り返ってドアを見た。いない
ことは分かっているのに、それでもハデスが出てくる気がしたのだ。
自分に黙ってどこかに行くなんて、と憤るほど思い上がってはいない。まだハデスには何となく
心の距離感を感じている。ほんのわずかなものではあるが、心の中が見えないことに苛立つこと
がある。
それがあるから二人の間で交わす約束もいつ会えるかどうか、その程度の軽いものだけだ。
お互いの将来についての約束など、おこがまし過ぎて口にすることさえ出来ずにいる。もう付き
合っている期間からいってもそんな話が出てもおかしくない頃だというのに、その何段階も前の
状態で踏み留まっているのはきっと世間的には重大事から逃げているずるいことなのだろう。
しかし、美徳自身もまだ色々な面で自らの未熟さを痛感している状態で確たる自信が持てない。
全てにおいて情感の薄いハデスとの関係もどこか浮世離れしたものだ。せめてもう少し自分に女
らしいわがままを言える可愛げがあれば、ハデスの反応も違ったのだろうかと思わずにはいられ
ない。
お互いに良い意味での嘘一つもつけない不器用な二人だ。何かと躊躇するばかりで心の奥まで
踏み込め合えないままの関係は、この先いつまで続くのだろう。そして、こんな二人には未来が
あるのだろうか。
不安が湧き上がりそうになるのを何度も振り払って、今はただ何も聞かずに信じることに気持ちを
向けることにした。そうでもしないと心が黒い感情に食い潰されてしまいそうだったのだ。

445 :
鬱々とした気分を抱えたまま夜を迎えた頃、帰宅してすぐに携帯が鳴った。
「はい」
『美徳さんですね』
「…逸人さん!」
それは聞き慣れた柔らかい声だったが、いつもの穏やかさは失せどこか苛立つように尖っている。
やはりハデスの身に何か異変があったに違いないと想像するに余りあるものだった。
「今日、お見舞いに行ったのですが御不在でしたね。お加減は如何ですか?」
『すみません、美徳さん。やはり僕はあなたを傷つけます』
「そんな…」
いつも心苦しいまでに優しいハデスの口からそんな言葉が出るとは思ってもみなかった。これは
いよいよ只事ならない事態なのだろう。次にどんなことを言われるのか、美徳は全身を耳にして
ひたすら待った。
『今の僕は…あなたに会えません。訳は言うことが出来ませんが、どうかすればもう二度とは』
頭を見えないもので何度も殴られる気がして、すぐには言葉を返せなかった。それをどう捉えた
のかハデスが言葉を続ける。
『やはり僕はあなたほどの女性には相応しくな「私はあなたを愛していますわ。今もこれからも」』
最後まで言わせたくなくて、やっとそれだけを被せる勢いで吐き出す。それだけが、それこそが
美徳の言いたいことだったのだから。
「ですから平気です、たとえしばらく会えないことがあっても」
あれほどに優しい男がこんな冷たく残酷なことを告げるまでには、どれほどの思いがあったか知れ
ない。その心中を思い遣るに責める気になどなれなかった。むしろ、同じだけ一緒に苦しみたいと
思った。
『…ありがとうございます。あなたは、こんな時でも優しいのですね』
ハデスの声がやや穏やかさを取り戻して、笑ったように聞こえた。いつも嘘など決して言えない
美徳の性格を思い出したのだろう。
「逸人さん、私は今のあなたがどのような状態にあるのか全く存じ上げませんし、尋ねても答え
ては頂けないのでしょう?語る時期にはないのでしょうからそれは追求しませんわ。ただ、どれ
だけ時間が経ったとしても私はあなたをお待ちします。それしか出来ませんから」
『すみません、美徳さん。僕はいつもあなたに甘えるばかりですね…』
「お気になさらず」
『本当に、何もお返しをすることが出来ずに…』
やや口篭るハデスの声はそこで唐突に途切れ、電話も切れてしまった。途中で一体何があった
のか気になって仕方がなかったが、恐らくしばらくは電話すらもかかっては来ないのだろう。

446 :
「逸人さん、あなたは一体どうなさったのですか…?」
独り言のような呟きが空しく夜の空気を震わせた。
自分の知らないところでハデスに異変が起こっていても、何も手助けをすることが出来ないのは
歯痒い。しかし無関係な人間が無駄に行動しても迷惑が掛かるだけなのだから、結局はただ
待つことしか出来ない。
そんな古いタイプの女になることだけは嫌だと思っていたのに、あらゆる選択をした後で残った
ものはやはりそれだけだ。
信じて待つことで、果たして美徳の望む展望が開けるのだろうか。
答えはハデスの胸の中にしかない。




447 :
GJ!
みのりちゃん、もうすぐ戻って来るよ

448 :
>>441
ハデス先生冷血にエロ感情食われないと
直情的になりエロ感情が噴き出すのかw

449 :
4巻30話でハデス先生とみのりちゃんが食事してる時
安田のセリフを明日葉が隠しているところだと
「どこまで鈍いんだあの○貞め」だぞ

450 :
「童○め」だった
しつこく書き込んでごめん

451 :
楽しければよかろう

452 :
童(云々に関しては、アレは吹き出しの向きから校長が言ったんじゃないか?
だとしたら・・・


453 :
口調からしても、校長だろうな
なんで言い切ってるのかは謎ということにしておこう

454 :
保管庫はないのかな?

455 :
ここで安田x日暮で


456 :
校長いわくアラサーでも義理チョコすら貰ってないハデス
とりあえずハデス先生はみのりちゃんに
「義理ですよ、義理!」っていわれながらチョコもらうところから

457 :
ありゃ、いくらイケメンでも、中学でチョコ貰えんわ。

458 :
むちむちの鈍ちゃんはチョコやらなかったんだな

459 :
中学の頃ならイキって、チョコなんてっていう姿勢ありありだったかもな
まさかアラサーになっても貰えない羽目になるとはw

460 :
みのりちゃんがあげるよ、多分

461 :
寅の穴の同人誌委託通販のサイトで保健室本をサーチしたら
ノーマルカップリング本やノーマルエロ本なのに
分類表示が女性向けになってる本があったんだけどあれってなんなの?

462 :
ドエロでもなきゃ男性向け表示すんなと言われるので女性向けなんだよ
女性向け=全部ホモ、じゃないからややこしい

463 :
>>461
女性だって、嗜好はいろいろ
ノーマル好きだったり、百合ップル好きだったり
女絵師は、子供の頃から女の子を描くのが普通に好きだし
恋愛モノも好きだから、カプ本は多い

464 :
>>461
甘ったるい少女マンガみたいなノマカプは女性向け
男性需要は>>462の言うように基本ドエロだから。

465 :
また一回だけでも横に戻らないかな
過去編でひそかにみのりちゃん登場しないかと願っていた
ハデスより一つ年下か同い年だよね?
鈍ちゃん同様中学生の時からムチムチボディだったのだろうか

466 :
みのりちゃんも常中生だった可能性は非常に高い。
てか下級生かあ。
ハデス過去編でちらっと出てたら美味しかったのに。

467 :
ハデスが自由に冷血と会話出来るんなら、それで何か書けそうな気もする。

468 :
みのりんを押し倒して
よしイツヒトこのままじっくり愛撫をつづけるんだ。胸を
断る!僕は、足がいいんだ。
胸!足!胸!
で最後は、隠れていた善徳に意見を求める

469 :
兄、そこにいるんかいw

470 :
兄にワロタ
過去編先生体育委員だっけ
みのりちゃんも常中生だったなら体育委員勤めてたりしてないかな

471 :
美徳はちょっと戸惑っていた。
ハデスが戻ってきて、いつも通りの日常がまた続き始めている。
何もかもが以前と同じだというのにどこかおかしい。
「逸人さん…あの」
首を傾げながらも、目の前の男を見る。やはり何も変化はないように思える。
「何ですか、美徳さん」
男の微笑みに惑わされかけて、今日も些細なことと思いかけている違和感はやはり確固として
心に居座っている。
何故なのかは分からないが、唯一心を預けた男が一人ではないように思えているのだ。
これまでに見たことのない顔をふと垣間見ることもあり、それが違和感を感じさせるのだろう。
やはり、いなくなっていた間に何かあったのだろうか。
詳しいことはまだ分からない。
みのりちゃんの視点からすれば、こんな感じか。

472 :
続きがきになるw

473 :

打ち切りおめでとう汚物共w

めだかちゃん大勝利いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい


474 :
めだかちゃんも面白いから好きだけど、お前のようなファンが無駄に印象悪く
するんだよ。
わざわざ場違いなトコに来んな。

475 :
18歳以下は来ちゃ駄目なんだよ!!知ってた?

476 :
>>474 同意

477 :
みのりちゃん覗かれておっぱい見られちゃったのにすぐ許すどころか感心してたよね
普段はあんなに潔癖気味なのになんでだろう

478 :
「シンヤかわいいのに」でエロス×シンヤに萌えたんだが、
その組み合わせってアリなのか?
エロス肉体は男だがマニアにキスされたがってたり、恋はどっちの性にするのかわからん。

479 :
経一が完全にアシタバ君を恋敵認定してるんだが、そこまでフラグっぽい関わりあったっけ?

480 :
経一の妄想

481 :
>>478
同性の友情に近いところから始まって、だんだん男として目覚めればいい

482 :
男のよさにめざめるかあ

483 :
涙の連載終了記念orzorz
ブランクが長かったんで、エロ入れられなかった。

484 :
保健室に静かな時間がまた戻ってきた。
いつものように出されたお茶を一口飲んでから、美徳は目の前で穏やかに微笑んでいる相手を
ゆっくりと見る。
「…美味しい」
「どう致しまして」
短い間に本当に色々なことがあったけれど、それも全て終わったのだ。美徳がずっと危惧していた
ことは結局起こらずに済み、愛する男は戦いを終えて何事もなかったように戻って来た。
そしてずっと以前と同じ平和な日々が続いている。
幸せ、と言っていいのだろう。
「ハデス先生」
静かな時間の中、美徳は口を開いた。
「はい、何でしょう」
「私、あなたに謝らなければいけないことがありますわ。あなたのことはなるべく尋ねないつもり
でしたけれど、聞いてしまいましたの。校長先生に」
「…そうですか」
ハデスは特に驚いている様子はなかった。全てが終わった今、美徳にも話しておくべきだと三途川
が判断したことを悟ったのだろう。
昨日の放課後のことだが、三途川に呼び止められた美徳はそこでハデスが密かに負っていた
任務と中学生の頃からの病魔との因縁を聞いた。それまでも薄々何か特別な役目を持っている
ことは察していたのだが、それではっきりと知ることが出来た。
『そのことによって逸人くんは長く孤独なままだった』
『…それでは、今のハデス先生はある程度は病魔との折り合いをつけたのですか?』
『それなりには、な。だから君には理解者であって欲しいのだ』
理解者。
以前ハデスにもそうありたいと言ったことがある。しかしその時は何も知らずにいた。今は全てを
知っているからこそ改めて思う。
いつも何もかも一人で抱えがちになる、そんなハデスの胸の内を汲んで察することの出来る女に
なりたいと。

485 :
保健室に静かな時間がまた戻ってきた。
いつものように出されたお茶を一口飲んでから、美徳は目の前で穏やかに微笑んでいる相手を
ゆっくりと見る。
「…美味しい」
「どう致しまして」
短い間に本当に色々なことがあったけれど、それも全て終わったのだ。美徳がずっと危惧していた
ことは結局起こらずに済み、愛する男は戦いを終えて何事もなかったように戻って来た。
そしてずっと以前と同じ平和な日々が続いている。
幸せ、と言っていいのだろう。
「ハデス先生」
静かな時間の中、美徳は口を開いた。
「はい、何でしょう」
「私、あなたに謝らなければいけないことがありますわ。あなたのことはなるべく尋ねないつもり
でしたけれど、聞いてしまいましたの。校長先生に」
「…そうですか」
ハデスは特に驚いている様子はなかった。全てが終わった今、美徳にも話しておくべきだと三途川
が判断したことを悟ったのだろう。
昨日の放課後のことだが、三途川に呼び止められた美徳はそこでハデスが密かに負っていた
任務と中学生の頃からの病魔との因縁を聞いた。それまでも薄々何か特別な役目を持っている
ことは察していたのだが、それではっきりと知ることが出来た。
『そのことによって逸人くんは長く孤独なままだった』
『…それでは、今のハデス先生はある程度は病魔との折り合いをつけたのですか?』
『それなりには、な。だから君には理解者であって欲しいのだ』
理解者。
以前ハデスにもそうありたいと言ったことがある。しかしその時は何も知らずにいた。今は全てを
知っているからこそ改めて思う。
いつも何もかも一人で抱えがちになる、そんなハデスの胸の内を汲んで察することの出来る女に
なりたいと。

486 :
「ハデス先生…いえ、逸人さん」
手にしていた湯呑みをテーブルに置くと、美徳は一瞬たりとも見逃すことのないようにぴったりと
目を据えた。
「やはりあなたは、私が思った通りの……それ以上の方でしたわ」
ハデスは何も答えなかった。ただ、照れたような笑みを浮かべただけで。しかし言葉以上の感情が
そこには見えた。思わず笑いが漏れる。
もう一度、全ての感情を込めて今この場で思いつく最高の言葉を告げた。
「私は、間違ってはいなかったのですもの」




487 :
なんか二回書き込んでたトコがあった、ごめん。
連載は終わったけど投下は出来るだけ続けるぞーー!!

488 :
保健のあとに叶をあてて慰撫してきやがった
編集策士
1年あれば次回作練るに充分だからな

489 :
>487

原作終わっちゃったけど、職人さんの作る話好きだから楽しみにしてる

490 :
原作終了したからこそ今後の展開を気にせず
欲望の赴くまま無制限に妄想できるってことじゃないか
つまりあれだ
今こそエロス×シンヤのテラエロスなSSをだな

491 :
まあ、NEXTでは5年後の話だし、まだ幾らでも想像の余地はあるね。

492 :
5年後かー
美っちゃんに春は来るのだろうか…

493 :
残念

494 :
next楽しみだねぃ。ところでSS保管庫って無いのカネ??

495 :
NEXT見た。
先生は五年後も誰ともくっついてなかったんだな。
とはいえ以前よりは冷血に感情を食われていないのか、満面の笑顔が良かった。
原作はこれで終わってしまったけど、今後は自分なりに何か書けるといいな。

496 :
NEXT見ました!なかなか面白かったねぇ。
「保健室の神」って結構人気だったのな。

497 :
藤林丈司は裏切り者

498 :
しおりちゃんかわえええ

499 :
原作終了記念のハデみのだけど、しばらく書いてなかったらなんか低調。
またリハビリしよう。

500 :
習慣と言えるだろうか。
いつも美徳の目は保健室、いやその主を見ている。
何かを求めるのはおこがましいと分かっていても、側で見守るだけならと心は逸るし思いは募る
ばかりだ。
「今日は随分賑やかでしたわね」
日も暮れかけた頃、ようやくざわめきが消えた保健室に顔を出した美徳に、湯呑みの片付けを
していたハデスはいつも以上に穏やかで優しい微笑みを漏らす。
もちろん知っていた。何かといえば保健室によく集まってハデスを囲んでいた元生徒たちが遊びに
来たのだと。静かになった室内にはまだその名残りのように熱気が残っている。
「…ええ、とても懐かしくて。みんな大人になっていてびっくりしました」
当時を懐かしむような口調はとても静かだ。あの頃のことはとても良く覚えている。何か共鳴する
ようなものがあったのだろう、何人もの生徒たちが毎日事あるごとにやって来ていた。ハデス当人
はその容貌や雰囲気から必要以上に敬遠されがちではあったけれど、それでも生徒たちを思う
気持ちだけはその頃も今も変わりない。
もちろん美徳の気持ちも変わることはない。
出会ってから決して短くはない時が過ぎ、もう決して若いとは言えない年齢になっても、欲しい
答えを求めることもないままこうして側にいるだけで嬉しいのだから不思議なものだ。
「美徳さん」
片付けを手伝っていると、変わらぬ優しい眼差しでハデスが声をかけてくる。
「はい」
ふと手を止めると、長い指が髪に絡んできた。
「僕はとてもあなたに甘えていますね」
「どういう、意味でしょう」
ハデスはたまにこんな風にとても抽象的な物言いをすることがある。それは決まって何か言いたい
ことが他にある時だ。ストレートに言えない分、あえて回りくどい口調になる心情には何が隠れて
いるのかいつも気になっている。けれど口に出したら長い時間をかけて築いてきた二人の間にある
空気が消えてしまいそうで不安になった。
「それは…」
「想像しているものと同じなら、私にとっては嬉しいことですわ」
ハデスが手にしている最後の湯呑みを受け取って戸棚にしまうと、何となく切ない気持ちになって
しまった。無理に笑った顔はきっと変に見えただろう。

501 :
「そんな顔をなさらないで下さい」
何を思ったのか、ハデスが急に抱き寄せてきた。
「あ…」
「本来なら、もっと早いうちに言うべき大切なことがありました。なのに」
腕の力がぐっと強くなった。
「僕は、卑怯なんです」
「逸人さん」
そのただ一つの言葉を待たなかった、とは言わない。もしも他の女であれば痺れを切らしていた
かも知れない。ただ、毎日静かに積み上がっていく二人だけに通じるものが心地良かった。それ
だけで今まで気持ちを繋いできた。
「逸人さん…私には時間はそれほど枷ではありませんの」
抱き締められながら、美徳は喘ぐように言葉を紡いだ。
壊れてしまいそうに脆い絆をこれだけの時をかけて少しずつ強くしてきた。この男の側にいられる
のであれば、それは決して無駄ではなくむしろ有益な投資でもあった。
たとえ若さを失うことであっても。
美徳はそのまま、ハデスが次に何を言うのかを待つことにした。




502 :
GJ!!エロイし、面白かったよ。
ところでココのSSの保管庫って無いのカネ?

503 :
ないよ
別に必要とも思えない
そんな雰囲気だから、職人さんたちが投下しにくくなるんだよ

504 :
最終巻やっと読めた
まさか経一と鈍が結婚して、子供3人も作ってたとは…

505 :
読み切り載せて欲しかった

506 :
しばらく書いてないから、なんか不調だけどとりあえず投下。

507 :
「はあ…」
柄にもなく、情けない溜息が出た。
ついさっきの体育の授業中、美徳はわずかな不注意か腕に軽い怪我をした。幸い、生徒たち
には一切感付かれることもなく終わり、保健室で手当てを受けたがつくづく不覚だったというしか
ない。
溜息に気付いたハデスが不思議そうに首を傾げる。
「どうかなさいましたか」
包帯を巻き終わって片付けを始める静かな横顔に魅入られながら、またこっそりと溜息をつく。
「私は、まだまだなのですわね」
「何がですか?」
「こんな怪我をするなんて…教師の自覚不足です」
自己嫌悪がつい愚痴になってしまう。いつにない美徳の落ち込む様子に奇妙なものを感じたの
だろう。片付けを終えたハデスは黙ってお茶の用意をしていた。
部活はもう始まっているのだろう、生徒たちの元気な声が校庭から聞こえてくる。
「お茶をどうぞ」
目の前に差し出される湯呑みを受け取ると、お茶の温みが優しく伝わってきた。手当てが済んだ
のならもうここにはいない方がいい筈なのに、どうしてまだいたいと思うのだろう。それはきっと
慰めて欲しいからだと自覚している。
「…ありがとうございます」
どこまでも身勝手な気持ちに、美徳はまた落ち込みそうになっていた。
「美徳さん?」
常に人の心の内を察しようとするハデスなら、もうそれに気付いているだろう。だから余計なことを
口にしないのだ。
本当に、この男に甘えきっている。恋がここまで人を駄目にしてしまうとはさすがに思ってもいな
かった。しかし今更なかったことにはしたくなかった。
今の美徳の価値観の根幹に、ハデスは大きな意味で存在しているのだから。
「あなたはとても頑張っていますよ、お気になさらず」
優しい男の大きな手が頬に滑ってきた。温かい感触が頑なになりかけている心を一瞬で蕩かして
いくのが分かる。
「あ…逸人さん」
「あなたほど毎日頑張っている人を、僕は知りません」
「いいえ私は」

508 :
ためらう美徳の頬をなでる指がわずかに力を込めてくる。
「僕がこれほどにあなたに甘やかされているのですから、あなたもまた辛い時はお気持ちを委ねて
下さっても良いのですよ、美徳さん。そうして欲しいと思っています」
返事をする前に、涙が溢れた。怖い顔をした優しい男が身を屈めて表情を伺っている。何もかもを
知って欲しいと思ったのは事実なのに、どうしてこんな時にだけ変なプライドが出るのだろう。
「…私はきっと馬鹿なのですね、そして幸せ者ですわ…」
嬉しい、もっと気にかけて欲しいと言えないままはらはらと泣く美徳に、困っている様子もなくただ
子供を宥めるように頬を撫でているハデスの眼差しが降る。恋はとうに叶っているというのに、
一番厄介なのは自分自身だ。
「抱き締めても、いいですか?」
一段と優しさの込められた声が間近で聞こえた。こんな風になった美徳を慰める最も最良の方法
など、どこにもない。何を言っても傷を増すばかりなのは付き合いの長さで感じ取っているのだろう
ハデスにとって、こういったランゲージしか残されていなかったのが察せられた。
こんなに愛する男の心を煩わせて、気を使わせて、子供のようにわがままを言う自分が堪らなく
嫌いだったが、こんな性格でなければ恐らくは今のような関係にもなれなかった。
「…ええ、もちろん」
指先で涙を拭いて立ち上がった美徳に手を差し出す優しい男が、わずかに笑顔を見せた。その
まま息も詰まるほどきつく抱き締められながら、この恋をして本当に良かったと思った。
「逸人さん、私を離さないで下さいな…」
ぎこちなくともこれまでの年月の中で少しずつ積み重ねてきた二人の絆が、美徳の胸の中で煌き
を放っていた。
「もちろん離しませんよ」
当然だと主張するような言葉がやんわりと、しかし確実に熱を帯びて耳を温める。




509 :
ピクシブのタバしおの人消えとる(´つω;`)

510 :
保守〜♪

511 :
ハデみの大好き

512 :
だけど職人さんもみんなどこかに行ったなあ。

513 :
職人さんは、どこかで元気に書いてるよきっと

514 :
みのりちゃんお幸せに

515 :
藍ちゃんツイッターからすれば
ハデみのは今後くっ付くってことでいいんだよね?
ここの職人さんはハイレベルだったなあ

516 :
あの二人は上手くいくのか、それなら嬉しいな

517 :
ここのSSの保管庫って無いのカネ?

518 :
ないけど、君が作ってくれるかな

519 :
エロパロ保管庫に頼むのがいいんじゃね

520 :
職人さん、戻ってきてくれないかな

521 :
職人さんどうか戻ってくれ

522 :
ごめん。
職人だけど、今は別スレに行っちゃってる。
でもまた何か書けたらとは思うよ。

523 :
待ってるよ!

524 :
お待ちしております

525 :
>>522
わたしまーつーわー

526 :
保守〜♪

527 :
読者が女だけの漫画や落ち目の漫画には職人は来ない
エロパロ職人はたいがい男で男オタクは人気のない作品に
手を出すことはあまりしないから
(女オタクが手を出すかどうかは作品の人気の有無でなく
自分の好きなカップリングがあるかどうかで決まるが)

528 :
↑要約すると「職人さん来ないかな」

529 :
保守

530 :
お久し振り
エロないけど、なんか短いもの書けた

531 :
職員室のドアを閉めてから一歩踏み出し、再び立ち止まった美徳は深呼吸をして無意識に保健室の
方角を眺めた。
もう何年も平凡で穏やかな毎日が幸せに過ぎている。
ハデスとの関係も至って良好でいるのが何より嬉しい。今の関係が何より大切だから、それ以上の
ものを望むのは贅沢なのだと分かってはいる。元々があのハデスのことだ、普通の男性に対する
感覚とは全く同じにはならない。
ならば何が一番近いかといえば、崇拝的なものだ。
だからこそ若い女としての時期を何年も共に過ごしても、その先を望む気にならないのだろう。
「今日は、別の新茶を淹れてみました。どうぞ」
休憩時間に美徳を迎えたハデスは、今日も変わらない穏やかさでお茶を淹れてくれた。まろやかで
濃い一杯のお茶の味が一日の疲れを心地良くほぐしていくのが分かる。こうして静かで満ち足りた
時間を過ごせるなら、本当にそれだけで幸せだった。
専用になってしまった白磁の湯呑みを空にしてしまうと、ほうっと安堵のように吐息が漏れる。
「…美味しいです」
「それは良かった、あなたが喜ぶ顔を想像してこれを買いましたから」
「え…?」
湯呑みをテーブルに置きかけて、はっと顔を上げた。ハデスの表情は穏やかな中にもどこか複雑な
感情が揺れている。
「このお茶は、美徳さんにだけ賞味して欲しかったんです」
「そんな…私はそれほど味が分かる訳でも」
「構いません、それでも」
茶筒を棚にしまったハデスは、美徳の隣に座った。
「あなたは特別ですから」
「……」
やはり今でも、こうして見つめられると否応なしに胸が高鳴る。
最初に会った頃に比べれば遥かに感情豊かになったとはいえ、それでも多くの生徒たちにはまだ
何を考えているのか分からない不気味な先生だと敬遠されているハデスだ。わざわざ保健室にまで
来る生徒もそう多くはない。
あるといえば、数年前にここの生徒だったアシタバの妹とその友人たちぐらいだろうか。数は少なく
てもハデスの良さを分かっている生徒が今も以前もそれなりにいるのは有り難いと思った。

532 :
「ハデス先生、私は」
「…美徳さん」
何か言おうとしたところを、珍しく遮られた。こんなことは本当に今までまずなかったので、驚いて口を
噤んでしまう。しかし美徳の動揺には気付かないのか、ハデスはそのまま勢いで言葉を継いだ。
「僕が不甲斐ないばかりに、あなたを今まで一人にしてしまいました」
「…あの」
「本当ならもっと早く物事を進めなければいけなかったのですが…」
「ハデス先生…いいえ逸人さん…ちょっとお話が見えないのですけれど」
何が何だか全く訳が分からない。
なのに何故かハデスは口調に勢いが増していく。美徳はただひたすら唖然とするばかりだった。
「今度の休日にでも、一緒に指輪を買いに行きましょう」
「はい?あの…」
「昨日、アシタバくんから聞きました。美徳さんをもっと大事にしろと言われまして」
そこでようやく合点がいった。以前ハデスを慕ってよく保健室に集まっていたアシタバたちは今でも
ハデスとそれなりに交流がある。特にアシタバは美徳も同じ町内に住んでいるので家も比較的近い
ので、買い物の時などに顔を合わせることも珍しくはない。
数日前にスーパーで会った時は軽い雑談のついでに、今も独身でいることを笑いながら話したような
気がする。特に何の考えもなく。
それが原因なのだろうとしか思えなかった。
「美徳さん、もしご都合があるのでしたら」
恐らくアシタバに窘められたに違いない、ハデスはきっと改めて二人の関係について考えてしまった
のだろう。
「…いいえ、今度の日曜日にでもお付き合いしますわ。逸人さん」
くすりと笑みが漏れた。
本当はもっと緩やかに進んでも良かったのかも知れない。それでも構わなかったのだけれど、どうも
周囲はそれを許してはくれなかったようだ。
ならば乗ってみるのもこの際必要なことなのだろう。何事もタイミングというものはある。
「嬉しいです、美徳さん」
おずおずと抱き寄せてくる腕が確かで温かかった。
今までもこれからも二人でいられる時間だけは何より得難いものに違いない。今回の出来事でより
大切に思えるのであれば、もう他に何も必要はなかった。




533 :

おおおおGJGJ!!!
このスレをブクマから外さないで良かったー!!
職人さんお久しぶりです。
穏やかな、そして幸せな二人のその後が見られて本当に嬉しい。
この時の2人はもう30過ぎくらいかな。
なんか、今日はいい夢見れそうだw

534 :
読んでくれてありがとう
最近はすっかり別スレで職人やってるから、なかなかここまで手が回らなかったけど
二人のことはまだ書きたい気持ちがある
漫画の最終回で数年後の美徳がやっぱり思いを持ち続けている様子なのと、ハデスが
普通に笑えるようになっているのが印象的だった

535 :
職人さんありがとう!GJ
最終回こうゆうの見たかった本当に。
待っててよかったな。

536 :


537 :


538 :
鈍はなに食ったらあんなエロい体に育つんだ

539 :
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?

540 :
なにって・・・ナニだろ///

541 :
誰のだっていうかあの人ロリコンじゃねえのか

542 :
「小便小僧」 second opinion
http://junko717.exblog.jp/
小便小僧の野郎が聖水を飛ばしやがる。
尻拭いは、俺たちか?
任せときな!手慣れた物さ!
my What do we live for?way 
彼は40歳を過ぎてもおねしょをしていた。
だから、強い、睡眠薬を服用、起きれないから おねしょする。
「小便小僧」の惨状だ。
情け、容赦はご法度、ここは、医療、介護の現場だ。
小便小僧の野郎が聖水を飛ばしやがる。
尻拭いは、俺たちか?
任せときな!手慣れた物さ!
my What do we live for?way 
彼はベッドで小便をするので、カビが発生して汚臭がしました。
だから、断熱シートを敷く小便が弾いて清潔なんだ。
「小便小僧」の惨状だ。
情け、容赦はご法度、ここは、医療、介護の現場だ。

543 :
すっかり寂れたな…

544 :
うふふふふふふふふふふ

545 :
ケモナー
自分達の嗜好がニッチだという自覚があってこっそりやってるぶんにはいい
しかし、笑顔ぷり熊の狼がブレイクしたせいで調子に乗り出した輩は滅べ
「次のぷり熊シリーズはぷり熊全員ケモノにすべき」とかマジキチなこと言い出すし
スレまで立てるし痛すぎる
ぷり熊はてめえらの為の作品じゃねえっつーの
そんなにケモノキャラしか見えなくて、作品そのものや他キャラがどーでもいいなら
自分でオリジナルのケモキャラ作って勝手に萌えてろよと思う
ついでに、ケモキャラが敵陣営にいた場合、それを倒す主人公陣営を筋違いに叩く奴らも滅べ

546 :2013/07/26
ケモナー
自分達の嗜好がニッチだという自覚があってこっそりやってるぶんにはいい
しかし、笑顔ぷり熊の狼がブレイクしたせいで調子に乗り出した輩は滅べ
「次のぷり熊シリーズはぷり熊全員ケモノにすべき」とかマジキチなこと言い出すし
スレまで立てるし痛すぎる
ぷり熊はてめえらの為の作品じゃねえっつーの
そんなにケモノキャラしか見えなくて、作品そのものや他キャラがどーでもいいなら
自分でオリジナルのケモキャラ作って勝手に萌えてろよと思う
ついでに、ケモキャラが敵陣営にいた場合、それを倒す主人公陣営を筋違いに叩く奴らも滅べ
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