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2012年5月エロパロ392: 【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。13 (366)
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。13
- 1 :11/06/11 〜 最終レス :12/04/23
- [剣と魔法と学園モノ。]通称[ととモノ。]でエロパロです。
喧嘩・荒らしは華麗にスルーでいきまっしょい。
前スレ
剣と魔法と学園モノ。でエロパロ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214711527/
剣と魔法と学園モノ。でエロパロ2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221435495/
剣と魔法と学園モノ。でエロパロ3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228482964/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。4【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236354234/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。5【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246283937/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。6【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1248257329/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。7【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1250608764/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261647330/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。9【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1274110425/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。10【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1287594710/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。11【エロパロ】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293545186/
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。12【エロパロ】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1302355832/
【保管庫】
2chエロパロ板SS保管庫
「ゲームの部屋」→「アクワイア作品の部屋」
http://red.ribbon.to/~eroparo/
次スレは480KBを超えた時に立てましょう。
- 2 :
- >>1
スレ立て乙です。
お手すうお掛けしました。
- 3 :
- >>1
スレ立て乙です
- 4 :
- >>1
スレ立て乙です。
1にはこれを差し上げよう
つチャンピオンREDいちごと間違えてかったチャンピオンRED
- 5 :
- >>1乙
っ【ノームの使用済み依代 制服・下着付き】
- 6 :
- 今回も公式四コマのにくばなれ氏は絶好調だなw
- 7 :
- ヌラリって…少年なんだ
- 8 :
- 教師陣に混じってても気づかない風貌だよなあいつはw
でもあれでベコニアとかジャコっちと同い年という事実……
- 9 :
- そういうヤツ、学年に3人くらいいるじゃん?
夏休みに私服で受験相談受けに行ったら
先生に教材やら保健の営業と間違われるような子。
- 10 :
- ヌラリの毛髪は新天地を求めて旅だったんだろうね
- 11 :
- バカハゲじゃなくワカハゲと申したか
それはともかく3Dのペットとやらが地味に楽しみ
ペットとあれやこれやなSSが見られるわけか…
スライムとか触手とかいかにもなのはないけど、悪魔っぽいのと羊っぽいのがかわいいな
- 12 :
- >>8
えっ、ヌラリってブーゲンビリアより年下なの?
つか、ブーゲンビリアってヌラリより年上なの?!
- 13 :
- >>12
自分もよく知らんが、ここは同年齢という事でイこうか
- 14 :
- え?なんで?
ブーゲンビリアとPCとトウフッコが同学年で
トウフッコの現・兄貴(当時は性別未定)とヌラリが
同級なんだからヌラリが年上じゃないの?
- 15 :
- >>14
え?!そうなん?!
あんまちゃんと見てなかったからかそれは知らんかったよ!!
すいません出直してきますorz
- 16 :
- そういえば、オボロは卒業したんじゃなかったっけ。
- 17 :
- お久しぶりです。何とか3DS発売前に書き上がったんで投下します
前回からの引き続きのパーティネタで、今回がラスト
フェアリーとディア子で、注意としては些かドロドロとした展開になります
楽しんでもらえれば幸いです
- 18 :
- 自分より能力のない者が活躍したり、あるいは自分が不要とした物が誰かに有効活用されていたりして、それを不快だと思う者は
少なからず存在する。そして、ただ思うだけならまだしも、中にはそれを壊してやろうとする者も存在する。
掃溜めと呼ばれる彼等にとって不運だったのは、そんな者がかつての仲間の中にいたことだった。しかもそれは、最悪な形で
彼等を壊そうとしていた。
「そんなこと言わないでよぉ……神様はいるもん〜…」
「そうねぇー、捨てる神あれば拾う神ありとも言うし……ま、貧乏神拾っちゃった神様は、大変だろうけどねぇ」
「………」
心底困った顔のドワーフに、その隣で敵意を剥き出しにした表情のセレスティア。そんな二人を、ディアボロスの少女が挑発する。
「ああ、でも別にいいのかぁ。あんたら、使えない奴等の集まりだもんね」
「ディアボロスちゃん……ひどいよぅ…」
「間違っちゃいないでしょー?あんたら、掃溜めって呼ばれてんじゃん。隣の堕天使も、実は『駄天使』だったりねぇー?」
セレスティアは何も言い返さない。しかし、固く握られた拳が、彼女の怒りを表していた。
と、そこに明るい声がかかった。
「お、二人とも何してるんだい?ああ、それにディアボロスじゃないか!三人で何してるんだい?」
途端に、三人はそちらへ振り返った。
「フェアリー君〜、ディアボロスちゃんがぁ…」
「あらフェアリー。別に、ちょっとお話をね」
「旧交を温めるって奴かい?」
「ま、そんなとこ」
押しの弱いドワーフは、二人の会話に口を挟むことができず、しゅんとした表情でフェアリーを見つめている。セレスティアは、
そんな彼女を優しく抱き寄せてやった。
「ああ、そうだ。セレスティア、ドワーフ、装備の強化頼んどいていいかい?そろそろ僕のグローブじゃ、防御に不安があるからさ」
「………」
セレスティアは返事をせず、黙って踵を返す。ドワーフはまだ何か言いたそうだったが、セレスティアに促され、渋々従う。
「……フェアリー」
「ん、何だい?」
「仲間より大事なものが見つかってよかったわね」
吐き捨てるように言うと、セレスティアはドワーフを連れて去って行った。そんな彼女を、フェアリーはぽかんとした表情で見送る。
「僕、何か怒らせるようなこと言ったっけな…?」
「さあね?でも気難しそうな人だし、何かはあったんじゃない?」
「まあなー、確かに難しい子だしなあ。あとでとりあえず謝っとくか。それより、次の水術、一緒に受けてくれるって言ってたよね?」
「え?ああ、そういえば。じゃ、一緒に行こうかぁ」
現在の仲間が、かつて所属していたパーティ。それと繋がりを持つことは、自然な流れだろう。その仲間が、どんな人物なのか。
どんな行動を取っていたのか。そういったことを事前に聞けるということは、命がけの冒険をする者にとって非常に重要な要素となる。
まして、リーダーともなれば、その重要性は飛躍的に高まる。それ故に、フェアリーはかつて仲間達が所属したパーティのほぼ全てと
接触し、仲間達のことを詳しく聞き出していた。
その中の、ドワーフが所属したパーティとは、その後も接触することが多かった。そして現在、パーティの一員であるディアボロスと、
非常に仲良くなっている。
教室に着くと、二人は並んで席に座り、それぞれ筆記用具などを取り出す。だが、ディアボロスはノートとペンを取り出した後も、
しばらくごそごそと鞄を漁っていた。
- 19 :
- 「何してんだい?」
「あーっと、受講届忘れちゃったっぽい……水術、受ける気なかったから受講届出してないんだよねぇ」
「ああ、なんだ。僕、予備でいつも持ち歩いてるから……ほら、使いなよ」
言いながら、フェアリーは鞄を開け、中から受講届を取り出した。
「おお、用意いいね」
「これでもリーダーやってるからね。準備をこなすのも仕事のうちってね」
「さっすがぁ。で、これで……あ〜っと、現在の所属書いてない。風術……っと、完成!ん?あ、これ二枚重なってるよ」
「ありゃ、失礼。道理で一枚足りないと思ったよ」
一緒の授業を受け、教室移動も仲良く二人一緒。ここ半月ほどで、二人は異常なほどに接近していた。いつもは仲間と一緒に昼食をとる
フェアリーが、今では仲間達とではなく、彼女と一緒にとることがあるほどなのだ。
この日は、二人一緒に学食に向かうと、一度彼女のパーティの方へ顔を出した。しかし席には着かず、ばつが悪そうな顔で言う。
「ごめんよ、ディアボロス。ご一緒したいところなんだけど、さっきセレスティア怒らせてるから…」
「ああ、そういえばそうね。リーダーっていうのは大変ねぇ」
「リーダー不在のパーティっていうのも、間が抜けてる。仲いいのは結構だけど、自分とこを疎かにしないようにね」
そう言うのは、錬金術を学ぶノームである。ディアボロスを嫌わない人物という繋がりで、フェアリーは彼とも仲がいい。
「そりゃもちろん。僕はリーダーだからね」
「じゃ、残念だけど、また今度ね」
「ああ。それじゃ、また……っと、ノーム。課題の進捗はどうだい?」
「明日にはできるんじゃないかな。面倒で参っちゃうよ」
「はは、今度何かおごってあげるよ。それじゃ、今度こそまた!」
笑顔で彼等と別れ、フェアリーは自分のパーティの元へと向かう。が、席について早々、セレスティアの意まであと一歩という視線に
射竦められる羽目になった。
「な、何だよ…」
「……幸せね。頭の中身も、状況も」
「いや、今全然幸せじゃない…」
「なあフェアリー。お前、またあいつらのとこ行ってたのかー?」
ヒューマンの言葉に、フェアリーはこれ幸いと食いついた。
「ああ、そうだよ。どうしてだい?」
「いやなー、あいつらって、前ドワーフがいたパーティの奴等だろー?なんか、好きになれねえんだよなー」
その言葉に、ドワーフはまるで自分が怒られているかのように小さくなってしまう。そんな彼女を、セレスティアは優しく翼で抱き寄せる。
「あ〜、君は事情も知ってるしね……けど、あの人達自体は悪い人じゃないよ、ほんとに」
「そうかあ!?お前と一緒にいるディアボロス、お前といるときは大人しいけど、俺達と会ったときってほんっとにうぜえぞー!?」
どうやらヒューマンも、ドワーフやセレスティアと似たような目に遭ったらしく、その口調はだんだんと荒くなる。しかし、フェアリーは
そんなヒューマンに対し、不思議そうな顔をしている。
「え、ディアボロスが?そんなことないと思うけど……何か、すれ違いがあったんじゃなくってかい?」
「すれ違いって、ただすれ違おうとしただけでも、色々言ってくるんだぞあいつー!お前が仲良くなきゃ、俺もう殴ってるぞほんとにー!」
「ん〜、まあ君の言葉を疑うわけじゃないけど……彼女には、一応言っとくよ」
「嘘なんか言ってねえからな俺ー!」
そんな彼等の会話を、ディアボロスは喧騒の中から拾い上げ、しっかりと聞いていた。その顔にはニヤリとした、邪な笑みが浮かんでいた。
- 20 :
- ディアボロスが狙う相手は、主にドワーフとセレスティアだった。ドワーフはかつて仲間だったこともあり、性格も把握している。
その彼女にべったりのセレスティアは、本人を攻撃するまでもなく、ドワーフを攻撃すれば勝手に怒りを蓄積させてくれる。
あとは手さえ出してくれれば、それは明らかな問題行為となり、何かしらの処分が下されるはずである。そして、もしそんな事態になれば、
彼女の怒りの矛先は、リーダーであるにもかかわらず、何もしなかったフェアリーに向く。そこまでいけば、パーティの崩壊はそれこそ
あっという間だろう。
そのためには、フェアリーに気付かれては困る。ディアボロスはまず彼を誘惑し、完全に手中に収めたところで仲間への攻撃を開始した。
彼の前では、大人しく人懐こい女を演じ、仲間に対しては辛辣な皮肉や嫌味で攻撃する。彼女の思惑は、面白いほどにうまくいっていた。
多少、不満があるとすれば、バハムーンが思った以上に傲岸不遜で、嫌味や皮肉に対して一切反応しなかったことと、フェルパーはそもそも
寝てばかりいるため、攻撃のしようがなかったことぐらいである。
だが、それは大した問題でもなかった。少なくとも現状、事態は彼女の思惑通りに進んでいるのだ。
もう一つ、些か予想外だったのは、フェアリーが彼女のパーティ全体と仲良くなっていることだった。知らない者が見れば、彼もパーティの
一員だと思われるほどに馴染んでおり、仲間の方も、成績優秀かつ実戦経験豊富な彼のことを歓迎しているようだった。ディアボロスは
最初、この事態に少し戸惑ったが、結果として彼の仲間の不信を煽る結果となったため、これはこれで満足している。
昼食を終えた後、ディアボロスは購買へと向かった。予想通り、フェアリーはここに来ており、彼女の仲間のヒューマンと会話をしていた。
「ああ、やっぱりか。君も苦労するね」
「や、悪気があるわけじゃないと思うけど……気難しいんだよね、きっと」
「ハイ、フェアリーにヒューマン。仲良くお話?」
彼女の声に、二人は揃って振り向いた。
「ああ、ディアボロス!君も来たのかい」
「フェアリーがいるかと思って。ヒューマンもいたのは予想外だけど」
「はは、俺はお邪魔虫か?」
「まあ、別にいいよいても」
「うーわ、超邪魔くせえって感じだな。ま、お若い二人の邪魔する気はねえさ。午後の授業もあるし、この辺で失礼するぜ」
冗談めかして言うと、ヒューマンは肩越しに手を振りながら去って行った。
「フェアリーは?午後も何か授業ある?」
「ん?あー、賢者だから術師系は一通りね。火術と闇術が残ってるけど、君はどうする?」
「うーん、悪いけど、その辺はパスかなぁ。朝の水術と風術だけでもうお腹いっぱい」
ディアボロスが言うと、フェアリーはあからさまに残念そうな顔をした。
「はぁ、そうかぁ…」
「あ〜、そんな顔されても……あ、じゃあ何か埋め合わせっていうんでもないけど、何か付き合おうか?」
「おお、いいのかい?それじゃあ…」
フェアリーはいたずらっ子のように笑うと、ディアボロスの耳元に口を近づける。そして何事かを囁くと、彼女は苦笑いを浮かべた。
「そうきたかぁ……ま、いいよ〜。私から言ったことだしねぇ」
「よぉっし!!それじゃ、約束だぜ!?楽しみにしてるから!」
「はいはい。じゃ、午後の授業も頑張ってらっしゃ〜い」
非常に上機嫌で購買を出ていくフェアリー。そんな彼を、ディアボロスは笑顔で見送る。
だが、その笑顔は無邪気なものとは程遠い、嘲笑の多分に混じった笑みだった。
- 21 :
- 授業が終わり、食事を終え、消灯までの自由時間となった頃、フェアリーは購買付近を飛んでいた。どうやらまだまだ上機嫌なようで、
その顔には一日中笑顔が張り付いていた。
そこに、道具袋を担いだバハムーンが通りかかった。その道具袋はやはりフェルパー入りらしく、僅かに寝息が聞こえている。
バハムーンにやや遅れて、フェアリーが気付く。仲間に気付くと、フェアリーは手を挙げて挨拶した。
「おー、バハムーン。またヒューマンと手合わせしてたのかい?」
そんな彼に、バハムーンは沈黙で応える。しばしの間をおいて、バハムーンは重い口を開いた。
「お前、わかってるのか?」
「何をだい?」
変わらぬ笑顔のまま、フェアリーは聞き返した。その顔をじっと見つめ、やがてバハムーンは目を逸らした。
「………」
それ以上は何も言わず、バハムーンは再び歩き出した。彼の背中を、フェアリーも黙ったままでじっと見送る。その顔には、変わらぬ笑みが
張り付いたままだった。
「幸運よねぇ〜。あんたみたいな役立たずが、お隣の優等生様みたいのと組めるなんてさぁ〜。その分、そっちは大変そうだけどねぇ」
「………」
「ディアボロスちゃん〜、私、何かしたぁ…?何かしたなら、謝るよぉ……だからもう、ひどいこと言わないでよぉ…」
「本当のこと言ってるだけだけどぉ?事実に、ひどいも何もないでしょ〜?」
翌日も、ディアボロスの攻撃は続いていた。もはやセレスティアの顔からは表情が消え、固く握られた拳は真っ白になっている。
一方のドワーフも、さすがにこうも続くとだいぶ参っているらしく、その顔は今にも泣きそうになっていた。
「ま、『掃き溜め』に『役立たず』なら、割と合ってると思うけど……公共の場所は、きれいにするべきよねぇ」
「えっと…?こ、こーきょーの場所…?」
「掃き溜めだか吹き溜まりだか知らないけど、ゴミはゴミ箱にあるべきって、そう思わない?」
セレスティアの翼が、勢いをつけるように揺らいだ。しかし、それが空気を打つ直前、後ろから仲間の声が飛び込んだ。
「お前達、ここにいたのか。ご飯の時間をきっちり守るお前が、珍しいな」
「……バハムーン」
余計な目撃者が来たためか、セレスティアは静かに翼を戻した。
「バハムーン君〜…!」
「……ドワーフ、とりあえずご飯だ。他の奴等は、もう学食に行ってるぞ」
言いたいことはわかっているというように、バハムーンはドワーフの肩を優しく叩いてやる。すると、セレスティアが即座にその手を
払い落とし、代わりに自分でドワーフの肩を抱いた。
「変な臭い付けないで」
「ステーキの匂いでもついたか?」
バハムーンが言うと、ドワーフの顔がパッと輝いた。
「え、ステーキあるのぉ?」
「ああ、まだいくつかあったはずだ。急げば間に合うだろう」
「わぁ〜、ステーキおいしいんだよねぇ。セレスティアちゃん、行こぉー」
「あ、うん」
珍しくドワーフに引っ張られるようにして、二人は学食へと走って行った。それを見届けると、バハムーンはディアボロスを一瞥した。
- 22 :
- 「うちのリーダーが、世話になってるようだな。礼ぐらいは言ってやる」
「あんたも大変ねぇ。周り、お荷物だらけでしょう」
「そうだな」
「ああ、それとも天才様は、それぐらい何ともないのかなぁ?」
「そうだな」
「……それにしても、その図体で『ご飯』なんて、似合わない」
「俺もそう思う」
いかにも面倒臭そうに言ってから、バハムーンは踵を返した。
「うちのリーダーは、お前を気に入ってるようだ。世話は任せる」
「いいの?リーダーをそんなぞんざいに扱って」
だが、バハムーンは彼女の質問には答えず、黙って去って行った。
多少判断に困ったものの、恐らくは言い返せなかったのだろう。計画は着実に進んでいると、ディアボロスはその顔に悪魔のような笑みを
浮かべるのだった。
いつもは和気藹々としている昼食の時間だが、ここ最近はその雰囲気が少し硬い。フェルパーとバハムーンは普段と変わらないが、やはり
セレスティアとヒューマンはフェアリーにかなりの不信を持っているようだった。最も激しく攻撃されているドワーフはと言うと、
根が素直すぎるせいで誰かに不満を抱くということがないらしい。
「フェアリーよぉー、お前があいつと仲いいのはいいけどなー、ほんっとあいつうぜえんだぞー!」
その日も、ヒューマンは唇を尖らせ、フェアリーに食ってかかっていた。
「放っておけ。構ってやるから調子に乗るんだ」
そんな彼に、バハムーンがそっけなく答えた。その隣では、珍しく道具袋なしのフェルパーがデザートを食べている。
「あっちから構ってくるんだから、しょうがねえだろー!?」
「だから、向こうが話しかけようと無視すればいい。そのうち飽きてやめるだろう」
「あっちが喧嘩売って来てんのに、どうしてこっちが逃げなきゃいけねえんだよー!?」
フェルパーはデザートを食べ終えると、辺りをきょろきょろと見回し始めた。
「それは逃げとは言わねえ。相手はお前を不快な目にあわせてえんだから、構っちまえば負けも同然だぞ」
「えっと…?な、何?あいつが〜…?」
「だからな、あいつはお前を嫌な気分にさせてえわけだ。それで、お前が反論するってことは、嫌な気分になってるって証拠に…」
不安げに辺りを見回すフェルパーに気付くと、バハムーンは制服の上着を脱ぎ始める。
「……なるってわけだ。ここまではいいか?」
「なんで俺が嫌な気分だとかわかるんだよー?」
「不機嫌そうに言い返したり、怒ったように言い返せば、誰だってわかるだろう?」
言いながら、バハムーンはフェルパーに上着を被せた。すると全身を覆う布の感触に落ち着いたらしく、彼女は椅子の上で丸くなった。
「あー、なるほどなー」
「嫌な気分にさせてえ奴の思い通りに、わざわざなってやる必要はねえだろう。それこそ負けも同然だ」
「だけどよー!ほんっとに腹立つんだぞあいつー!」
「……まあ、お前に感情を抑えろと言う方が無理か」
会話の間中、フェアリーはセレスティアの気を帯びた視線に射竦められており、会話に参加することができない。
「あ、あ〜、えっと、ドワーフ。君も、その、なんだ。ディアボロスに、まだ何か言われるのかい?」
「ん…」
- 23 :
- フェアリーが尋ねると、ステーキを齧ろうとしていたドワーフはしょんぼりと耳を垂らし、持っていたそれを皿に戻す。
「……ディアボロスちゃん、何かあっただけだと思うんだけど……だけど…」
涙を堪えているのか、ドワーフは僅かに吐息を震わせ、くすんと鼻を鳴らした。
「ちょっと……辛いよ…」
最後の一言は、はっきりと声が震えた。途端に、セレスティアの気が鋭くなったかと思うと、彼女は突然立ち上がった。
「うわっ!?」
「……ドワーフ、帰りましょう。ステーキはわたくしが持つから」
ドワーフは黙って頷き、席を立った。セレスティアはステーキを皿ごと持つと、フェアリーに冷ややかな視線を向ける。
「仲間割れなんてしたら、それこそあの売女の思うつぼ。そうでなければ、お前を生かしてはおかないところよ」
冗談も誇張も一切含まれない声で言うと、彼女はドワーフを連れて去って行った。それを見送ると、ヒューマンも席を立った。
「俺も帰るかなー。何か今日は、もうお前と一緒にいたくねえし」
フェアリーを正面から見つめつつ、ヒューマンは言った。
「お前があいつと仲いいのはわかるけどよー……仲間よりあいつ信じるとか、お前、最低だぞ」
「………」
その言葉に、フェアリーは答えない。食器を下げ、そのままヒューマンが消えてしまうと、バハムーンも席を立った。
「俺はこいつを部屋に届けてくる。お前は、好きにしろ」
上着に包まったフェルパーを抱き上げ、バハムーンは食器を下げに向かう。
「え、あれ、人攫い……ね、猫攫い…?」
「そこの、こいつは俺達の仲間だ。俺を犯罪者に仕立て上げるな」
そんな会話を幾度か繰り返しつつ、バハムーンは寮へと去って行く。仲間達の去った食卓で、フェアリーは小さく溜め息をついた。
「はぁ、やれやれ。そんなこと、するわけないのにねえ」
一人呟き、フェアリーも席を立つ。そこには、仲間からの言葉を気にするような素振りは、一切なかった。
その夜、フェアリーは消灯時間直前に部屋を抜け出た。廊下を素早く飛び抜け、目的の部屋の前に立つと、ドアをノックする。
するとすぐにドアが開き、フェアリーは即座に中へと飛び込んだ。
「こんばんは、フェアリー。もう来ないかと思った」
「その割には、出迎え早かったよね」
「ふふ。まあ私だって、期待してないわけじゃないし」
妖艶に微笑むディアボロスに、フェアリーはいつもの笑顔を見せる。そして後ろ手に鍵を掛けると、早速ディアボロスを抱き寄せる。
「あん、いきなり?」
「ダメだったかい?」
「ん、ダメではないけど……ちょっとびっくりかな」
「そうか。じゃ、もうちょっとびっくりしてもらおうかな」
言うが早いか、フェアリーは彼女の胸に手を伸ばし、ゆっくりと撫で始めた。
「ちょ、ちょ!早い早い!展開早いってば!」
慌ててその手を押さえると、フェアリーはいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。
「いつも同じだと、飽きるだろ?」
「むう〜、そういうのも嫌いじゃないけど……もうちょっとムードとか考えてほしいなぁ」
「はは、そうかい。そんじゃ、とりあえずベッド行こうか」
- 24 :
- 反省のない顔で言うと、フェアリーはディアボロスの肩を抱き、ベッドへと促す。その縁に並んで腰かけると、フェアリーは改めて
彼女を抱き寄せた。
「それにしても、どうしてわざわざ私の部屋でなの?」
「ん、気分の問題だよ。女の子の部屋に来るってのは、男子にとって憧れだよ?」
「あ〜、何となくわかるかな。それ、男女が逆でも通じるよねぇ」
「わかってくれて何より。じゃ、早速」
フェアリーはディアボロスの後ろに回り込むと、大きな胸を両手で包みこんだ。同時にピクリと、ディアボロスの体が跳ねる。
「んっ……なんか、今日は……あくっ……ずいぶん、がっつくじゃない…?」
「そりゃあね。僕だって、したくてたまらない時ぐらいあるさ」
言いながら、軽く耳を噛む。ディアボロスの体が仰け反り、全身が強張った。
「あっ……くっ…!」
ディアボロスは腕を上げ、肩越しにフェアリーの頭を押そうとする。しかしそれは、彼の手が突然服の中に入ってきたことで止められた。
「あっ!?やっ、ちょっ…!」
フェアリーの手が大きな乳房を包み、やんわりと刺激する。全体を優しく捏ねつつ、指先では尖り始めた乳首をこりこりと刺激し、
その度にディアボロスは熱い息を吐き、体を震わせる。
「ちょ、ちょっとフェアリっ……やっ!い、いきなりそんなっ……んあっ!?」
片手が離れたと思った瞬間、それはスカートの中へ滑り込み、さらにショーツの中へと侵入した。くち、と小さく湿った音が聞こえ、
ディアボロスの体がビクンと震えた。
「くぅっ…!あっ、あっ……んああっ…!」
もはや喋ることもできず、ディアボロスはフェアリーの愛撫を受け入れることしかできない。フェアリーの指が秘裂をなぞり、開き、
中へと侵入する。膣内を掻き回すように動き回り、その動きが急に止まったかと思うと、最も敏感な突起を撫でながら抜け出ていく。
「あぐぅっ!ま、待って!もう無理!もう無理ぃ!!」
必に叫ぶと、ディアボロスは何とかフェアリーの腕を振り払い、彼を押しのけた。そんな彼女に、フェアリーは実にいい笑顔を向けた。
「はは、どうだい?結構良かっただろ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……も、もう〜、いきなり飛ばしすぎだって言うのにぃ…!」
かなり追い込まれていたらしく、ディアボロスの目つきはとろんとしたものになっており、呼吸は荒い。かと思うと、その真っ赤に
染まった顔に、反抗的な笑みが浮かぶ。
「……よぉ〜し、君がそのつもりなら私だって…!覚悟しろぉ!」
「うわ!?」
ディアボロスはフェアリーを押し倒すと、ズボンを下着ごと剥ぎ取った。そしてすっかり硬くなった彼のモノを取り出すと、根元から
ねっとりと舌で舐め上げる。
「くっ…!」
「ふふ、さっきの仕返しー!」
楽しそうに言って、ディアボロスは彼のモノを丁寧に舐め始める。先端を舌でつつき、捏ねるように舐め、一度口を離すと、半ばまでを
口の中に収める。
「うぅ…!」
彼女の口内は温かく、中で動く舌の感触が心地いい。ともすれば果ててしまいそうになり、フェアリーはシーツをぎゅっと握って
その刺激に耐える。
そんな彼を上目遣いに見上げ、ディアボロスは妖艶に微笑むと、口の中のモノを強く吸い上げた。さらに唇を窄め、舌で先端を
撫でるように刺激すると、たまらずフェアリーは彼女の頭を押しのけた。
- 25 :
- 「もっ、もう無理無理!それ以上されたら出ちゃうって!」
「ぷはっ!ふふーん、いきなり激しくされる気持ち、わかったぁ?」
「ああ、わかった。十分わかったよ。でもまあ、これでお相子だね」
言いながら、フェアリーはディアボロスの手を引き、体を入れ替えて押し倒す。
「ほんと、がっつくね今日は」
「そんな日もあるんだって」
互いに笑顔で言うと、フェアリーは彼女の足を広げ、その間に体を割り込ませた。割れ目に自身のモノを押し当て、確認するように
彼女の顔を見ると、ディアボロスは恥ずかしげに頷いた。
ゆっくりと、腰を突き出す。秘裂が開かれ、彼のモノが少しずつ入り込んでいくと、ディアボロスは僅かに顔をしかめた。
「あうっ……く、うっ…!」
「ごめん、痛いかい?」
「へ、平気……大、丈夫…!」
一つ息をつくと、ディアボロスは少し恥ずかしげに笑った。
「気持ち、いいだけだから…」
「そうか。じゃあ、遠慮はいらないね」
奥まで一気に突き入れる。さすがに多少痛かったのか、ディアボロスの体がビクンと跳ねた。
「うあっ!?ちょっ……ほんと、激しいね…!」
「君も、嫌いじゃないだろ?」
フェアリーはゆっくりと腰を引き、再び強く突き入れる。その刺激にディアボロスが快感の声をあげると、そのままリズミカルに腰を
動かし始めた。
パン、パンと腰のぶつかり合う音が響き、それに混じってくちくちと粘膜の擦れ合う音が響く。フェアリーが腰を動かす度に、
ディアボロスは小さな嬌声を上げ、彼のモノを強く締め付ける。
「んっ!あっ!フェアリっ……気持ちいい、よぉっ…!」
可愛らしく鼻にかかった声で言うと、フェアリーの動きが僅かに強まる。二人の体には玉のような汗が浮かび、フェアリーの体を伝って
落ちたそれがディアボロスのものと混じり、シーツに染み込んでいく。
「うああっ!フェアリーっ……今日、すごくっ…!」
「くぅ…!君も、なかなか……激しいね…!」
お互いに前戯で追い込まれていたからか、二人の声は既にかなり追い込まれたものになっている。そして、フェアリーは一気に
追いこもうとするかのように、ディアボロスの腰をしっかりと掴むと、激しく腰を振り始めた。
「うあああっ!?そ、それ強すぎるぅ!!だ、ダメ!もうダメぇ!!!」
ディアボロスは彼の腕を掴み、必に止めようとするが、フェアリーは構わず腰を動かし続ける。
「もう少し我慢してっ……僕も、もうっ……出る!」
最後に一際強く突き入れ、フェアリーの動きが止まった。ディアボロスの中で彼のモノが脈打ち、それと共にじわりと温かい感覚が
広がっていく。
「うあ……出て、る……中に、出されてるぅ…」
呆けたような表情で、ディアボロスが呟く。それを心地よく聞きながら、フェアリーは彼女の中に精を注ぐ。
やがて、フェアリーがゆっくりと腰を引いた。腰に愛液が糸を引き、彼のモノが抜け出ると同時に、彼女の中から出されたばかりの精液が
溢れ出た。
- 26 :
- 「あうっ!はっ……はっ……い、いっぱい出たね…」
「ああ……ごめんよ、最後ちょっと乱暴で」
言いながら、フェアリーは彼女の股間を拭いてやり、自身のモノも軽く拭くと、ディアボロスの隣に身を横たえた。
「でも、乱暴なのもいいかも……なんてね」
「君、そっちの趣味があるのかい?」
冗談めかして言うと、二人は笑顔を交わした。しかし、そこでふとフェアリーの表情が変わった。
「あ、話いきなり変わるんだけどさあ」
「ん、なぁに?」
「君、うちのドワーフとかヒューマンに何か言ってるのかい?なんか、喧嘩売られたーなんて話聞いたんだけど」
彼の言葉に、ディアボロスはまったく悪びれることもなく答えた。
「するわけないでしょー、そんなこと。そんなことして、何の得があるの」
「それもそうか」
あっさりと答えるフェアリーに、ディアボロスは心の中で嘲笑した。しかしそれは、すぐに消えることになる。
「……でも、あの二人が嘘言うとも思えないんだけど、ほんとに何も言ってない?」
「だーかーらー、何もないってばぁ。大方そっちが、私の言葉何か取り違えたんじゃないのー?」
「あの二人なら、あり得なくもないかなあ……でも、はっきり馬鹿にされたとか聞いたんだけど」
ごまかせたかと思うと、妙にしつこく食い下がるフェアリーに、ディアボロスはイライラし始めていた。それに従い、口調も自然と
きつくなる。
「だから何もないって言ってるでしょ?あんたさ、私よりそっち信じるわけ?」
「いやぁ、もちろん君は信じてるさ。でも、僕はパーティのリーダーでもあるからさ…」
ここまで、全てうまくいっていた。それが突然思い通りにいかなくなり、ディアボロスの苛立ちはとうとう限界に達した。
「……あーっ!うるっさいなあんたは!!馬鹿共を馬鹿にして、何か悪いわけ!?」
突然、本性を曝け出したように叫ぶディアボロスに、フェアリーは驚きの目を向ける。
「え……な、何言って…?」
「ああそうよ!喧嘩売ってますよ!あんな屑どもが、私達より成績いいとか許せるわけないでしょ!?」
「……君は、初めからそのつもりで僕に…?」
「それ以外、あんたみたいな奴とどうして付き合うってのよ?思い上がってんじゃねえよ、このチビが!」
彼女の暴言にも、フェアリーはあまり表情を変えない。
「全部、演技だったってわけかい…」
「ああそうですよ。あっさり騙されてくれたおかげで、楽しませてもらいましたよ。あんたさ、もうあんたのパーティに、居場所なんか
ないんでしょ?仲間より私の方信じて、そんなリーダー、誰も信じないもんねえ」
勝ち誇った顔で言うディアボロスに、フェアリーは暗い溜め息をついた。
「そう、か……騙されたのか…」
「男って、ほんっと馬鹿だよね。ちょっと股開いてやりゃあさ、もうそいつ疑うなんてしないもんねえ」
「………」
フェアリーは黙ってベッドから降りると、のろのろと服を身につけ始めた。それを、ディアボロスは会心の笑みを浮かべたまま見守る。
「……さすがに、一緒にいる気には、なれないね……部屋に帰るよ…」
「ああそう、バイバイ」
フェアリーの背中に、ディアボロスの勝ち誇ったような声が突き刺さる。
「負け犬」
パタンと、ドアが閉まる。それを見届けると、ディアボロスは声をあげて笑い始めた。それは悪意と優越感に満ちた、不快な笑い声だった。
- 27 :
- 翌日、フェアリーは朝から授業にも学食にも姿を見せなかった。しかし、彼のパーティでそれを気にするのはドワーフ一人であり、
ディアボロスもまた、既に終わった男のことなど何の興味もなかった。
しかし、午後の授業も残り一コマとなったところで、ディアボロスの前に突如フェアリーが現れた。
「やあ、ディアボロス。昨夜はどうも」
「何よ?何か用?」
「ん、ちょっと大事な話があるからさ……夕食後、寮の屋上で。待ってるよ」
それだけ言うと、フェアリーは返事を待たずに飛んで行ってしまった。一体何の話なのかは気になったが、どうせ形だけの別れ話だろうと、
ディアボロスは考えていた。
それから残りの授業を終え、夕食を終えると、ディアボロスは一旦部屋に戻った。とはいえ、別に何か用意や考えがあったわけではなく、
単にフェアリーの言葉を忘れていたからにすぎない。
それを思い出して屋上に向かう頃には、消灯時間はあと一時間にまで迫っていた。屋上のドアを開けると、微かな月明かりに照らされ、
フェアリーの羽が煌めいた。
「お待たせ。で、話って何…」
言いかけた瞬間、彼女の耳に信じられない声が飛び込んできた。
『ああそうよ!喧嘩売ってますよ!あんな屑どもが、私達より成績いいとか許せるわけないでしょ!?……君は、初めからそのつもりで…』
「なっ…!?」
それは確かに彼女とフェアリーの声であり、会話の内容は昨夜のものと一言一句違わぬものだった。
パツッと音がし、声が止まる。フェアリーは屋上の手すりに座ったまま、笑みを浮かべた。
「いや〜、べらべらべらべら、あっさり喋ってくれたおかげで助かったよ。ま、付き合ってる子の性格ぐらい、男は知っておかなきゃね」
いつもの軽そうな笑顔。ディアボロスは咄嗟に魔法を詠唱しようとしたが、フェアリーは不敵に笑う。
「あ〜、やめた方がいいよ。空際線ってのは目立つからね。魔法なんか使ったら、一発で知れ渡るよ」
「くっ…!」
ならば直接攻撃を仕掛けるかと考えたが、すぐにそれも不可能だと知る。もし不穏な動きをすれば、フェアリーは屋上から飛び降り、
飛んで逃げるつもりだろう。
「い、いつの間にそんなのっ…!?」
「や〜、君のとこのノーム、いい腕だよねえ。君の喘ぎ声を録音しておかずにしたいって言ったら、『この変態め』とか言いながら
しっかり仕込んでくれたよ。デザートいくつか奢る羽目にはなったけどね」
その時ディアボロスは、いつだかフェアリーとノームが『課題』について話していたのを思い出した。
「ま、『たまたま』こんなのが録れちゃったけど、こんなに明瞭に録音できてるなんてね。技術の進歩はすごいねえ」
「ふ、ふざけるな!あんた、脅すつもり!?」
「いや、別に?僕はこんなのもあるよって教えてるだけさ」
「くそっ……お前、あとでお前のやったこと、みんなに話して…!」
「……あのさー、君、そんなに自分がパーティで信用されてると思ってる?」
心底呆れたというように、フェアリーは大袈裟に嘆息して見せる。
「ヒューマンも言ってたよ。君はわがままなところがあるし、嫉妬深いとこがあるから、付き合ってる僕は苦労するな、ってさ。
もしも手に負えなくなったら、是非相談してくれとまで言われたぜ?」
「う、嘘だっ!」
「そう思うならそう思ってればいいさ。僕は事実を述べてるだけだ」
ここでようやく、ディアボロスはなぜ彼がこちらのパーティとも異様に仲良くしていたのかを悟った。
- 28 :
- 「君ねえ、僕達を攻撃するのはいいけど、自分のとこをまずは見直しなよ。それに、君はうまく立ち回ってたつもりかもしれないけど、
君の仲間はみんなこのことを知ってる。なのに、誰一人君を止めなかった訳は、僕が何とかするから手を出さないでくれって、みんなに
言ったからだよ?」
「い……いつから、気付いてた…!?」
にんまりと、フェアリーは実に無邪気そうな笑みを浮かべた。
「君が僕に接近して、二日目ぐらいかな。僕はリーダーだ。仲間のことは、誰より把握する義務がある」
これは勝てそうもないと、ディアボロスは悟った。小さく溜め息をつき、しかしすぐにフェアリーを睨む。
「……今回は、負けてあげる。でも…」
「今回は、だって?君、次があると思ってるのかい?」
心底驚いたというように、フェアリーはまたも大袈裟に驚いて見せる。
「まあ、やりたいならやればいいけど……この学校、直筆のものさえあれば、代行で退学届出しても受理されるんだよねえ。仮に、
その人がんでてもさ」
「私をして、退学届偽造しようってこと?」
「いやあ、まさか。僕だって人しはしたくないよ。それに、君がそんなもの用意してるわけはないし、僕にもできることと
できないことがあるさ」
言いながら、フェアリーはぴょんと手すりから飛び降り、ディアボロスの横を悠々と通り抜ける。彼女が手出しをしなかった理由は、
フェアリーがまるで迷宮探索の最中のように、警戒した視線を彼女に送っていたからだった。
屋上のドアに手を掛けると、ふとフェアリーはディアボロスの方に向き直った。
「あ、そうだ。君、コインとかを誰でもものすっごくリアルに模写する方法、知ってるかい?」
「……は?」
思わず聞き返すと、フェアリーは懐から小さな紙とペンを取り出し、カリカリと擦り始めた。やがて、動いていた手が止まり、
彼は持っていた紙を紙飛行機にして投げてよこした。それを拾い上げてみると、そこには1G硬貨の模様がくっきりと浮かんでいた。
「紙を重ねてさ、上から擦るだけ。凹凸がある物なら、何でもリアルに模写できるんだよねえ」
何気なくその紙を裏返した瞬間、ディアボロスの背筋にぞくりと冷たいものが走った。
「……だから、授業に誘ったっていうの…!?」
「さてさて、何の事だかね?ま、それはあげるよ。受講届なら、いつも数枚常備してるからさ」
楽しげに笑って、フェアリーは今度こそドアを開けた。そして体を滑り込ませると同時に、立ち尽くすディアボロスを肩越しに振り返る。
「これ以上、仲間を傷つけるなら……僕も、本気でお相手するよ」
「………」
背後でドアが閉まると同時に、フェアリーは軽く息をついた。そして、ほんの少しだけ寂しそうな笑顔を浮かべる。
「体の相性は、割と良かったと思うんだけどなあ……は〜ぁ」
溜め息をつきつつ、階段を降りる。最後に滑り込みで購買でも見ようかと考えていると、不意に意外な人物が目に入った。
- 29 :
- 廊下の向こうから歩いて来るバハムーン。フェアリーが手を挙げて挨拶すると、彼も軽く手を挙げてそれに応える。
そのまますれ違い、フェアリーがやはり部屋に戻るかと思った瞬間、後ろから声がかかった。
「能ある鷹は」
「……?」
「爪を隠す。だが、隠しっぱなしなら能無しも同然だ」
「………」
二人は振り向かず、バハムーンは背中越しに喋り続ける。
「お前は、爪を出すべき時を知っていたようだな」
「……やだなあ。君、人が悪いぜ?いつからわかってたんだい?」
「お前に、わかっているか聞いたときに確信を持った」
「あ〜……さすがだね」
「俺がそれを悟ると、理解した上での行動じゃないのか?」
「……いやあ、さすがさすが。やっぱり君には、どうやってもかなわないな」
極端に省略された会話を交わし、二人はそこでようやくお互いの方へ向き直った。
「ドワーフかヒューマンくらいなら、騙せるかもだけどねー」
「あいつら以外で、『わかっているのか』というだけの問いに笑顔で聞き返す奴が、何もわかってねえなんて思う奴はいねえだろう」
「セレスティアだと、逆上してしにかかってきそうだけどね」
冗談めかして言うと、バハムーンは少しだけ笑った。
「それだけの才覚があって、どうして隠し続けた?」
バハムーンの問いに、フェアリーは困ったような笑みを浮かべる。
「僕は言葉のイメージ通りの小物だからね。君のように才覚を誇ることもできず、セレスティアのような純粋さもない。隠して、少しずつ
発揮して、受け入れられなければまた隠す。一人で生きる力も度胸もないのさ、僕には」
「相手に合わせて力量を調節するのは、それも一つの才能だと思うがな」
「だから言ったろ?買い被りすぎさ」
「本当に、食えない男だ」
「お互い様だろ」
二人は笑顔を交わすと、同時に背を向けた。
「仲間の不満、抑えてくれてありがとう」
「気付かれてたか。だが礼を言われる筋合いはない。お前のパーティは、お前だけのパーティじゃないんだからな」
「僕が嬉しく、ありがたいと思った。お礼の理由には十分だろ?」
「……確かに、な」
それだけ言って、二人は再び歩き出した。遠ざかる背中の気配が、頼れる最高の仲間だという思いを、胸に秘めながら。
- 30 :
- 掃き溜めと呼ばれる彼等は、パーティとしてはそれなりに優れているという程度の成績を取り続けた。
極めて優れているわけではないが、どちらかと言えば優秀という部類。個々で見るなら、何でもそつなくこなすフェアリーを筆頭に、
格闘だけ見れば優秀なヒューマン、聖術の実施試験だけは優れたドワーフ、堕天使学科と、タカチホの巫女学科という変わった履修の
仕方ながら、そのどちらも優秀な成績を収めたセレスティア、いつも寝ている割になぜか点数のいいフェルパー、そして様々な学科、
特にツンデレ学科において類い稀な成績を収めたバハムーンと、それなりの逸材が揃っていた。
初年度こそ色々と問題が起こったものの、彼等はその後順調に授業をこなし、大きな問題が起こることもなかった。
月日はあっという間に過ぎ去り、一年経ち、二年経ち、やがて彼等は森羅万象の理という、最難関とされる迷宮すらも突破してみせた。
もはや、彼等はこれ以上教わることはなかった。ここまで生き延び、走り通した同期達と、躓き、それでも歩き続けた元先輩達と共に、
彼等は来るべき日、卒業を迎えた。
世話になった恩師達の言葉。仲間として、あるいはライバルとして共に歩んだ者達の言葉。それらを胸に、彼等はプリシアナを去る時を
迎えていた。
「みんな……もう、ほんとに、お別れなんだねぇ…」
鼻をぐすぐす鳴らしつつ、ドワーフが言う。彼女は卒業式の間中も、ずっと泣き続けていた。
「早かったねえ、ここまで。まあ、あの二人は、なんかいつも通りだけど…」
彼等は今、揃って体育館に来ていた。卒業前に手合わせしろと、ヒューマンがバハムーンに食い下がって聞かなかったためである。
「今日こそ、今日こそ叩きのめしてやるからなー!最後に勝つのは、俺だー!」
「ずっと、そう言い続けてたなお前は。そして結果は、いつも変わらなかった。それは今日という日だろうと、変わらんぞ」
「なめるなー!これまでずっと、頑張ってきたんだからなー!今日こそ絶対、勝ってやる!」
ヒューマンが床を蹴り、バハムーンが身構えた。
顔への突きをかわし、反撃の拳を繰り出す。ヒューマンはそれを軽く捌き、蹴りを繰り出そうと足を上げた。
その軌道の先に、バハムーンが膝を突き出した。そこで防がれては、いかなる格闘家であろうと、戦闘続行は困難となる。
蹴りのために上げた足が、そのまま踏み込みへと変化した。一気に懐へ迫ったヒューマンに、バハムーンは目を見開いた。
「がっ!?」
渾身の突きが、バハムーンの腹にめり込んだ。途端に嘔吐しかかり、バハムーンは頬を膨らませ、口元を咄嗟に手で押さえた。
「これで終わりだぁー!」
そこへ、ヒューマンが追撃の蹴りを放った。だが、バハムーンの目は既に闘志を取り戻していた。
咄嗟に体を開き、不用意に上がった足を肘で叩き落とす。たまらずヒューマンが呻いた瞬間、バハムーンは口の中の物を飲み下し、
思い切り体を捻った。
「はっ!!」
「ぐあっ!」
掌底が、ヒューマンの胸に直撃した。それなりにいい体格のヒューマンが軽々と吹っ飛ばされ、彼はそのまま何度も床を転がり、体育館の
壁にぶつかってようやく動きを止めた。
「ヒューマン君!大丈夫ぅ!?」
「いや待てドワーフ!それより先にバハムーンを頼む!」
「え…?」
気付けば、バハムーンの顔は真っ青になっていた。そして腹を押さえたかと思うと、その顔が苦しげに歪んだ。
「ぐ……ぐっ…!がはぁ!」
バハムーンの口から、大量の血が床へと撒き散らされた。途端にドワーフは悲鳴を上げ、その場に跪いて手を合わせた。
「神様……お願い、二人とも助けて…!怪我、治してあげてください…!」
- 31 :
- 彼女の祈りは抜群の効果を見せた。バハムーンの顔はたちまち赤味を取り戻し、倒れたままピクリとも動かなかったヒューマンは、
呻き声をあげて立ち上がった。
「う……あれ……なんで、俺…?ま、また……負けたのかよぉ…?」
「……最後まで立っていたのは、俺だ」
口元を拭い、バハムーンははっきりと言った。
「く……くっそぉー!!あれが決まって、それでもまだっ……くそぉー!」
悔しげに叫び、床を殴るヒューマン。彼に駆け寄るドワーフを横目で見ながら、フェアリーはバハムーンに近づく。
「危なかったね」
「ああ……だが、負けるわけにはいかねえだろう。俺は、上に立つ人間になる。ああいう奴の、目標であり続ける義務がある」
そう言うバハムーンの顔は、実に楽しげだった。
「しかし……一対一の立ち合いで、あんなにまともに攻撃を受けたのは、生涯で初めてだ。あんな奴でも、ただ一つの目標に邁進すれば、
ここまで化けることもあるんだな」
「そんなの相手に勝ち続けなきゃいけないってのも、大変だね」
「そうでもねえ。これでやっと、俺も人生で楽しみを見つけられたからな」
最後の一大イベントも終わり、彼等は住み慣れた寮を引き払う準備を終え、荷物を持って正門前に集まった。
これまで、ずっと一緒だった六人。仲間達の顔を見回し、リーダーであるフェアリーが口を開いた。
「まあ、その……みんな一緒に、今日を迎えられて良かったよ。僕はこれで、故郷に帰るつもりだけど、みんなは?」
「私も、おうちに帰るよぉ」
ようやく落ち着いたドワーフが、いつも通りのおっとりした口調で答えた。
「お金もね、いっぱいもらえたし、お父さんに楽させてあげるんだぁ」
「ほんと、君はいい子だなあ……セレスティアは?」
ドワーフにずっとべったりだった彼女がどうするのか気になり、そう問いかけると、仲間の誰もが予想しなかった答えが返ってきた。
「……ドワーフと結婚する」
「はぁ!?」
「ええっ!?」
「え……あ、あの、私とぉ…?」
ヒューマンやフェアリーとは違い、ドワーフは思ったよりも反応が薄い。あるいは、驚きすぎて反応できなかったのかもしれないが。
「えっと、女の子同士だけど……できるのかなぁ…?」
「シスターの信仰するものとは違うけど、そのためにわたくしも、タカチホの神について学んだ」
「あ……そのために、巫女学科入ったんだぁ」
「それに愛があれば、そんなの関係ない」
「ん〜……わ、私も、ね。セレスティアちゃんのこと、大好きだからぁ……お父さんも、お話すればわかってくれるかなぁ、えへへ」
本当に嬉しそうに笑うセレスティアと、恥ずかしげに笑うドワーフを見ながら、フェアリーはぽつりと呟いた。
「……こりゃ、お父さんは大変だな…」
「本人達がいいなら、他人が口を出せることでもねえだろう」
「それでバハムーン、君は?」
フェアリーの問いに、バハムーンは当たり前のように答えた。
「俺はさらに上を目指す。モーディアル学園に入学するつもりだ」
「君もさすがだねえ。ヒューマン、君は?」
「こいつ、モーディ……モーディア学園?に行くんだろ?まだ、勝ってねえからな!俺も行くに決まってんだろー!」
- 32 :
- ヒューマンが言うと、バハムーンは少し嬉しげに笑った。
「どこに行こうと、お前が俺に勝てるわけはねえだろう」
「ふざけんなー!いつか絶対!絶対絶対、勝ってやるんだからなー!」
入学当初から変わらない関係に、フェアリーは笑いながら二人を見つめていた。
そこでふと、バハムーンは担いでいた袋に目を移す。
「おい、フェルパー。起きろ。大事な話だ。お前も寝てないで参加しろ」
「……おはなし?」
もそもそと、袋の中からフェルパーが這い出る。この飼い猫化した仲間がどうするつもりなのかは、全員が気になるところだった。
「俺達は、今日で卒業だ。これからは別々の道を歩むことになる」
「……ダメ」
ぼそりと、フェルパーは言った。
「こればかりは、お前の都合に合わせられない」
「ダメ」
さっきよりもはっきりと、フェルパーは言った。その顔は無表情だが、声には怒りとも悲しみともつかない表情が篭っていた。
「お前に家があるように、こいつらにも、俺にも、帰る場所がある。俺達は、ずっと一緒というわけにはいかねえんだ」
「……やだぁ…!」
表情を変えぬまま、フェルパーはぽろぽろと涙を流し始めた。思わぬ人物の思わぬ行動に、誰もが言葉を失ってしまった。
そんな彼女を見つめ、バハムーンは一つ溜め息をつくと、静かに話しかけた。
「フェアリーと、ドワーフとセレスティアは故郷に帰る。だが、俺とヒューマンは、モーディアル学園とやらに行くつもりだ」
その言葉に、フェルパーはバハムーンの顔をじっと見つめた。バハムーンも彼女の顔を正面から見つめ、やがてフッと笑いかけた。
「お前も、来るか?」
「行くっ!!」
嬉しげに叫ぶフェルパー。バハムーンが道具袋の口を開けてやると、フェルパーは早速その中に飛び込んだ。それを肩に担ぐと、中から
にゅっと腕が突き出し、フェルパーがちょこんと顔を出した。
「そうか、君達はまた別の学校かあ。頑張るね」
「上を見れば、果てがない。どんなに努力しようと、しすぎるなんてことはねえ」
全員が進む道を把握し、フェアリーは改めて全員の顔を見回した。
「……それじゃあ、みんな。ここでお別れだけど、元気で…」
「ちょっと待てよー!」
その言葉を、ヒューマンが遮った。一体何事かと思っていると、ヒューマンは意外な言葉を口にした。
「俺な、お前に言いてえことあるんだよー!あのなー、お前が俺拾ってくれなかったら、その、なんだー?そう!こんなに楽しくなかったと
思うんだよなー!だから、ありがとなー!」
「あ、じゃあ私もぉ。あのね、私のこと、仲間に入れてくれて、ありがとねぇ。おかげで、セレスティアちゃんにも会えたし、
すっごく楽しかったよぉ」
そう語るドワーフを見つめ、セレスティアはフェアリーから目を逸らしつつ、ぼそっと呟いた。
- 33 :
- 「……ドワーフに会えたことに関しては、感謝してる」
「楽しかった。この二人はまだ一緒。まだ楽しい」
バハムーンの肩から、フェルパーまでもがそう口にした。そしてバハムーンも、少し迷いつつ口を開いた。
「少し、入らなければよかったと思う部分もある。お前のおかげで、二番手の気楽さ、動きやすさを知ってしまったからな。だが、
これまで何でも思い通りになって、人生の何一つ面白いと思えなかったが、お前のおかげでこいつらに会えた。お前には、いくら
感謝しても足りないな」
そんな仲間達を、フェアリーは呆気に取られたように見つめていた。が、やがて表情が崩れたかと思うと、慌てて後ろを向いた。
「や、やだなあ君達!笑って別れようと思ったのに、できなくなるじゃんかー。そ、そういうことは最初に言ってくれよなあ」
「三年間の集大成を、会った瞬間抱く奴がいるか」
バハムーンの言葉に、セレスティアとフェルパーはクスリと笑った。ドワーフとヒューマンは、その意味を理解できていない。
「……それに、感謝なら僕だってしてる。陳腐で使い古された言葉しか出ないけど、君達と過ごした今までは、僕の中で最も輝いてる
時間だよ。この先、もしかしたら二度と会わない人もいるかもしれない。だけど……絶対に、忘れない」
六人はそれぞれの顔を見回し、校舎を見上げ、そして正門に目を向けた。
「それじゃあ、みんな……今まで、ありがとう!」
拳を作って突き出すと、全員がそれに倣い、拳を突き合わせた。そして最後に、六人揃って正門を抜け、校外へと踏み出した。
ここから先は、もうパーティの仲間同士ではなく、それぞれの道へと進んでゆく。当然、寂しくもあり、悲しくもある。
三年間を共に過ごし、喧嘩や仲直りを、何度も繰り返した。それでも助け合い、共に歩んだ仲間は、もういない。
しかし、傍らにはいなくとも、目を閉じればすぐにその姿が思い浮かぶ。共にあらゆる困難を乗り越えた仲間達の記憶が、自信となり、
力となり、勇気を与えてくれる。
夢と希望、危険と困難、それらに溢れた青春を共に駆け抜けた仲間達。
共通するその記憶を持ち続ける限り、彼等はずっと一緒に歩き続けている。
- 34 :
- 以上、投下終了。何とかまとまってよかったw
それではこの辺で。
- 35 :
- GJっす!
フェアリー体はちっそいけど器がでかいぜ!
- 36 :
- 毎度ながらGJです!
ととモノ3DSをやるためだけに
3DSを買うか……?
悩みどころですね!
- 37 :
- 遅くなったけどGJ!
フェアリーかっこいいな
個性的なメンツの中で一人地味かと思ってたが、そんなことは全然なかった
3DSではどんなパーティに巡り会えるか楽しみにしてます!
- 38 :
- モミジ先生もみもみしたい
- 39 :
- 保守
- 40 :
- としm……もとい、妖艶なおねーさまであるザッハトルテの魔力を封じたうえで、
好き放題に犯し尽くし、アヘ顔で「らめぇ」としか言えなくなった時点で
優しく抱いて自分に依存されるSSを書きたい──そう想ってた時期が自分にもありました。
ザッハさん、なかなか再登場しねぇ……。想像力の翼も広がんないよ。
- 41 :
- ・ノームの肉体は生まれたときに構築される
・儀式で他者と交換可能
なにこのエロパロ向き設定
- 42 :
- ルドベキア先生のふたなり両刀設定とか、もっと活用できないものか。
──エロパロ的に。
つーか、ゲーム本編での登場があまりに少なくね?
前作のカーチャ先生やリリィ先生と比べてもアピール度低いぞ!
モミジ先生はなんか「おかーさん」って感じだし……。
サービス薄いよ! 何やってんの!?
- 43 :
- ルドベキア先生は色んな意味で残念なお方だったな……
そして今回はカーチャ先生のサービスってか暴走が凄まじいよなw
- 44 :
- タカチホでクシナがデモレアたちに閉じ込められたときはエロパロ妄想余裕でした
- 45 :
- ザッハトルテと3D主人公の純愛系エロ話書こうかと思ってるんだけど、ゲームしててもなかなか本筋にからんでこねぇ……。
ザッハ様の見せ場っていつ頃くるの?
- 46 :
- 中盤辺りで結構絡んできたと思う
ザッハ様は実にいいキャラだ
- 47 :
- 垂れ目ロリババァいいよ垂れ目ロリババァ
- 48 :
- 「final」の公式キタコレ!
TOPページのザッハたん、まるでヒロインみてぇだw
- 49 :
- >>45
友達になる、の辺りから急激にデレる。
そこから先はもはや会話に出るたびに異様にデレる。
- 50 :
- お久しぶりです。
忍法帳のレベルが上がらないのが辛いですが新作投下でございます。
- 51 :
- クロスティーニ学園。
パルタクスなどがある世界とは一つ裏側の世界の冒険者養成学校の一つである。
校舎の豪華さや制服の素材が上質である事からエリートや上流階級の学校と勘違いされやすいが決してそういう事は無く多くの生徒に門戸を開いている。
この物語はそんなクロスティーニ学園から始まる。
クロスティーニ学園のすぐ近くにはじめの森という迷宮が存在する。
いや、それは迷宮とは呼べないほどの単なる森なのだが、入学したばかりの一年生達が迷宮内のセオリーを学ぶのに適している事から授業にも使われる。
一人前に罠まで設置されているから侮れない。
そのはじめの森の中を、三人組のパーティが進んでいた。
「……本当にマルガリータ先生の授業難し過ぎるんだよなぁー……アンがいてくれなきゃオイラ絶対落第してるよ」
先頭で教師の悪口を言っている戦士学科のドワーフの少年の名前はコッパ。
このパーティのリーダーを勤めているがバカである事が欠点である。
- 52 :
- 「ありがとう、コッパ君………でも、マルガリータ先生の授業、プリントを読めば解りやすいよ?」
「……オイラ、初級学校にいた頃から難しい字読めないんだよ……」
パーティの真ん中、コッパの後ろでお礼を言いつつコッパを嗜めているのは魔法使い学科のエルフの少女で、名前はアン。特待生故に成績は抜群であり、バカすぎるコッパの補習も平然とやってのけてしまう。
「おいおいコッパよー、ヒーローがそれでいいのか? 俺がクロスティーニのヒーローになる日は近いようだ」
そう言って笑うパーティの最後尾は普通科のディアボロスの少年、ビネガーである。
背中にライフルを背負っている辺り、得意武器は恐らく銃なのだろう。
「なんだとビネガー! オイラの方がぜってー先になるからな!」
「その時を楽しみにしてるぜおバカ毛玉」
「毛玉言うな! この牛野郎!」
「なんだとぉ!?」
「ふ、二人とも喧嘩しないでー……」
ドワーフとディアボロスの仲裁に入るエルフというのもおかしな話だが、アンの言葉にコッパとビネガーは慌てて止めた。
「それにしてもよー、ダンテ先生厳し過ぎるぜ。パーネ先生の所は羨ましいよ」
「いや、パーネ先生も怖い時は怖いぜ? 俺はダンテ先生の方がまだ親しみやすいかもな」
「そうか?」
- 53 :
- コッパの言葉に、ビネガーは頷く。
「姉貴の担任がダンテ先生だったからな。姉貴がすっげぇ尊敬してるっつーか……今はお前の担任だけどな、ダンテ先生」
ビネガーは頭を掻きつつそう言って笑った。兄弟がいると先生の印象もまた違うのだろう。
コッパがそう思った時、ふと気付いた。
「お?」
前方に、誰かが倒れている。行き倒れだろうか。
「行き倒れみたいだな」
「ああ……行ってみるか?」
「ヒーローたるもの、人助けが基本!」
「……よしきた、行こう」
コッパとビネガー、そしてアンの三人はその人影まで近づいた。
「……冒険者養成学校の生徒、かな? でも、見た事無い制服だよなー」
コッパが呟きつつ、丁寧に調べる。
そのセレスティアの青年は恐らく上級生なのか、体格は大きめだった。
「ちょっと失礼……お。まだ生きてる」
コッパが脈を調べ、まだ生きてる事に気付くと顔が見えるように一旦ひっくり返した。
「……ってぇ……」
青年の口が小さく動く。どうやらまだ意識はあるらしいが、はっきりしてはいないようだ。
「保健室まで運ぶか。とにかく」
「そうだな……立てますか? 立てそうにないなら、掴まって下さい」
ビネガーが青年を背負い、コッパが後ろを支えて落ちないようにする。
意外と重い。何を持っているのやら、とビネガーは思った。
- 54 :
- 「……主に疲労と外傷…、ですね。意外とひどいですがこの怪我でも生きているとは大した生命力ですよ。新薬の実験台に……キシシシ」
保険医、ガレノス先生はそう言って笑った後、呆れた顔のビネガー達に「おっとそうだ」と思い出したように生徒手帳を突き出した。
「一応、生徒手帳が出て来たので名前ぐらいは覚えておきなさい」
「はーい……パルタクス学園六年……聞いた事無いな、パルタクスって」
ビネガーの呟きにコッパが頷きつつ言葉を続ける。
「ギル……ガメ、シュ? ギルガメシュか………すげぇ名前だなぁ、オイラと天地の差だぜ」
「確かにな」
ビネガーとコッパはそう言って笑った後、コッパがふと呟く。
「それにしてもなぁ……この人どっかで見た事があるようなないような……」
「おいおいコッパ、何を言い出すんだ?」
「んー……気になっただけ。まぁ、いいや!」
コッパはすぐに気分を変え、アンと一緒に保健室を出て行った。
ビネガーも慌ててその後を追うが、実はその時。ベッドの上では。
「…………」
そのギルガメシュが意識を取り戻し、コッパ達の背中を見送っていたのだった。
その翌日。ガレノス先生から彼が意識を取り戻したと聞いたコッパ達は見舞いに行く事にした。
見ず知らずの学校の先輩を見舞うというのも不思議な話ではあるが。
- 55 :
- 「こんにちはーっス! ご機嫌いかがですか?」
「ビネガー、それなんかおかしくね? こんにちは」
「二人とも保健室では静かに……あの、こんにちは」
ビネガーとコッパが花束を抱えて顔を出し、その後に続いてアンが姿を現す。
「………? ああ、オメェらか、俺を助けてくれたっての」
既にベッドの上で起きていたギルガメシュが視線をちらりと向けた後、そう口を開く。
セレスティアにしてはぶっきらぼうで、珍しいな、とビネガー達は思う。
「具合はどうですか?」
「まだ本調子じゃねぇがだいぶマシにはなった……ちったぁリハビリさせてくれたらいいんだが」
「あ、そうだ。ギルガメシュ先輩、荷物、持って来たんですけど」
ビネガーは昨日彼が倒れていた場所に散らばっていた荷物を持てるだけ集めて持って来ていた。中にはレアなアイテムもあって少し驚いたが。
放課後すぐに行って来たとはいえ、いくらか無くなっていないかが心配だが。
「ああ、ありがとな………ん、剣も拾ってくれたのか。悪ぃな」
「いえ……それより、デュランダル二本って凄いですね」
「まぁな」
ビネガーの言葉にギルガメシュは少しだけ自慢げに鼻を鳴らした。
デュランダル二本を振り回しているだけあって、実力は高いのだろう。
「………先輩!」
「……あ?」
「オイラ達を弟子にしてください!」
- 56 :
- コッパが突如として口を開く。その突然の一言にギルガメシュだけじゃなく、ビネガーとアンも固まった。
「お、オイラ達、もっと強くなりたいんです! 先輩が相当な強さだって事、今ので解りました! お願いです、オイラ達を……」
「強く、か」
ギルガメシュは小さく息を吐く。
「テメェがそれを望むなら、教えられるだけ教えてやる。ついてこれないならついてこれないと必ず言え。無茶だけはするな」
「ありがとうございます! ほら、ビネガーも!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「お前もかよ!? まぁ、いいけどな…」
「すいません、私も!」
「お前も!? つーか、俺は魔法そこまで得意じゃねーぞ?」
ギルガメシュは三人の特訓に付き合わされる羽目になった。
口では嫌がっているが認めてしまったものはしょうがない。諦めてやるしかないようだ。
「の、前に俺はリハビリがしてぇよ」
「リハビリですか? いい所知ってますよ!」
ギルガメシュの言葉に、アンが声をあげる。
今までわりかし静かなアンが口を開いたのには驚いた。
「ガレノス先生、先輩を少し」
「あまり推奨しませんが、まぁいいでしょう。彼も身体を動かしたがってるようですし…無茶は禁物ですが」
「ありがとうございます、ガレノス先生!」
その時はアンだけでなく、コッパもビネガーも同時に頭を下げた。
- 57 :
- 「で、場所はどこにあるんだ?」
ギルガメシュの問いに、アン達は「こっちです」と頷き、彼の手を引いて歩き出した。
そして、彼ら4人が保健室を出るとき、ちょうど入り口の所で。
「ガレノス先生、すまないが…ん? ああ、お前らか」
背中に大剣を背負ったディアボロスが姿を現した。
「あ、ダンテ先生。こんにちは」
「…コッパ。お前の後ろにいるセレスティアは誰だ? 見掛けない顔だが」
「昨日、はじめの森で倒れてる所を助けまして。で、これからアン達と一緒にこの先輩のリハビリを手伝うんです」
コッパが胸を張ってそう返答すると、ダンテ先生は「いや、そうじゃなくてだな…」とため息をついた、が、その時にギルガメシュの視線を見て、少し驚いた。
「なるほど、なかなかできるようだな」
「そういう、お前も」
「せ、先輩。ダンテ先生は、オイラの担任で、めちゃくちゃ強い先生です」
「そうか」
ギルガメシュの方はそれを聴くと興味無さげに視線を前に向けたが、ダンテの方はそれが気になった。
「……で、どこでリハビリをするんだ?」
「え? は、はい。ロッシ先生の所に…」
「オレも行く」
アンの返答にダンテは即答するなり、即座にロッシ先生の道場へと向かいだした。
- 58 :
- 数分後、ロッシ先生の道場に一行が到着した時、ロッシ先生は不在で、代わりに弟子のスフォリアがいた。
「おろ、珍しいネ」
「こんにちはスフォリア先輩。ロッシ先生は……」
アンの問いにスフォリアは「校長の所アル」と答える。どうやらロッシ先生、なんか問題でも起こしたか。
「ところで、ダンテ先生はともかく、後ろにいるセレスティアの人、凄く怖いアル…誰?」
「ギルガメシュだ。パルタクス学園の…副生徒会長をやってる。ちょい、事情があって拾われた」
ギルガメシュはスフォリアにそう答えた後「で」と言葉を続ける。
「おい。…俺のリハビリって誰がすんだ?」
「ロッシ先生に頼もうかと思ったんですけど……」
アンは困った顔で答える。そう、その相手であるロッシ先生がいない。
コッパとビネガーはアンに近寄り、声を潜める。
「おいおい、先輩怒ってるかも知れないぞ? セレスティアにしては気が短そうだし」
「だな。誰か適当に先生引っ張ってくるか?」
「ダンテ先生には……」
アンがそう言いかけたとき、ダンテは興味深げにギルガメシュを見ており、ギルガメシュはそれを不快そうにしていた。
ダンテがそんな顔をするのは珍しいが、あまり仲良くなれそうではないようだ。
- 59 :
- そして何もわからないスフォリアが「どうしたネ?」と首をかしげたとき、道場の扉がガラガラと開いた。
「ロッシせんせ…あ、コッパ君、ビネガー君、ここにいたのか!」
扉を開いて入ってきたセレスティアの青年はコッパとビネガーにつかつかと近寄ると口を開いた。
「二人とも。この前の補習プリントはどうしたんだい?」
「ま、マルガリータ先生…いや、その…」
「ぷ、プリントは…その…」
今年赴任してきたばかりの新人教師マルガリータは新人故にまだお固い部分がある事で知られている。
一生懸命なのはいいが、コッパとビネガーの二人にとってはうるさいものである。
「で? どうしたんだい、プリントは?」
「おい、マルガリータ。そのへんにしといてやれ。ちょうどいい時にきたな」
珍しいことに、本当に珍しい事にダンテがマルガリータの前へと入って追及を止めた。
「ああ、ダンテ先生……ちょうどいい時って?」
「ああ。紹介しよう、昨日そこの二人とアンが拾ってきた、ギルガメシュだ。六年らしい。腕も立ちそうだ」
突如ダンテはマルガリータにギルガメシュを紹介した後「で」と言葉を続ける。
「戦術科教師としてお前も経験を積むべきだろうしな。こいつのリハビリに付き合ってやれ」
「……わかりました、ダンテ先生が言うなら」
マルガリータはため息をつくと、ゆっくりと剣を抜いた。
- 60 :
- 一般的なロングソードだ。ギルガメシュはそれを見ると、さすがにデュランダルで相手をするのもと思い、剣を収めて壁にかかっていた日本刀を勝手に取る。
ロッシ先生のコレクションの筈だが、この際気にしないでおこう。
「さて、ギルガメシュ君、でいいかな? 生憎と手加減しないつもりだ。そのつもりで来て欲しい」
「ああ。…頼むぜ」
ギルガメシュもそれに答え、じりじりと距離を取る。
そして、ダンテがそれを見て興味深げに目を見開いた次の瞬間――――勝負は決まっていた。
たった一瞬。
コッパも、ビネガーも、そしてアンも。
いや、マルガリータも認識できなかった。ギルガメシュはたった一瞬で距離をつめ、刀の峰で一撃を浴びせた。
コッパ達が認識できたのは、道場の壁に叩きつけられるマルガリータの姿だけだった。
「……大した運動にもならネェか」
「…マルガリータ先生!? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ…なんとかね」
マルガリータは文字通り半分震えながら立ち上がり、そのまま壁によりかかった。
苦しそうに胸を抑えているのは、胸に峰の一撃を食らったからだろう。
「どうだった?」
ダンテがマルガリータにそう問いかけるが、マルガリータは首を横に振る。
「その…私が彼に教えるべきことは何も無いです」
「だろうな。まだまだ勉強が足りないぞ、マルガリータ」
- 61 :
- ダンテはそう答えた後、アンに視線を向ける。
「アン。こいつの治療を。それとギルガメシュ」
ダンテは背中の大剣を抜き放つ。直後、ギルガメシュも日本刀を壁に戻してデュランダルを一本だけ抜いた。
後は言葉をかわさなくてもわかる。
「お前ほど強い奴とやりあうのは、久しぶりだ」
「……あんた、強いな」
ギルガメシュはダンテの言葉にそう返すしか無い。まだ本調子ならどうにかなりそうだが、勝てるかどうか解らない。
ギルガメシュは、先日の敗北のダメージからまだ立ち直ってない、いわば手負いだ。
だが、本調子になったとしても、この男を倒せるかどうか解らない。
だが、とギルガメシュは思う。
この男の腕前を見てみたい、とも思う自分がいた。
「行くぜ!」
先に仕掛けたのはギルガメシュだった。
デュランダルを片手で振り上げ、一気に距離を詰めながら力任せの荒削りな連撃。
ギルガメシュはセレスティアらしからぬ力強さと攻撃速度で相手を圧倒する、それが彼の基本にして最強の戦いだった。
「荒削りだな!」
ダンテはデュランダルの二倍ぐらいの重量はあるであろう大剣を、文字通り軽々と扱い、その連撃を捌ききる。
- 62 :
- 「!」
「今度はこちらから行くぞ!」
ダンテは大剣を横薙ぎに大きく振るう。その風圧で、ギルガメシュは少しだけ仰け反るハメになった。
そこに隙が出来る。
強烈な踏み込み。道場全体が揺れたと錯覚しそうな踏み込みとともに振り下ろされる大剣。
だが、ギルガメシュとて、それで倒れるものではない。
右手でデュランダルを握っていた、だが仰け反った今では防御には使えない。ならば――――空いている左手を防御に使った。
左手だけで、大剣を受け止めていた。
「なっ…!」
ダンテが思わず動きを止める。そこへ、ギルガメシュは右手を再び動かし、デュランダルを振りかぶった。
しかしダンテもその頃には思考を戻し、咄嗟に大剣を戻す。
剣撃がぶつかりあう。
そのままつばぜり合いなって数秒後、ギルガメシュは距離を取ろうと盛大に床を蹴って後ろに飛び、そして着地して床を蹴り、距離を詰めようとした時だった。
「っ!?」
彼を、激痛が襲った。
傷が開いた、と思った直後にギルガメシュの身体は床へと叩きつけられた。
「勝負ありだ」
「……ああ」
ギルガメシュは首だけを上にあげながらそう返した。
そう、彼の負けだった。
- 63 :
- 「あの時なぜ動きを止めた」
「…あ?」
「今のだ」
「……傷が疼いただけだ」
ギルガメシュの返答に、ダンテは冷たく返す。
「それでそんな反応をしていたら、生き残れないぞ。今がただのリハビリで良かったな」
「………ああ、そうだろうな」
「邪魔したな」
ダンテが立ち去った直後、ギルガメシュに手を差し出す人物がいた。
マルガリータだった。
「戦術科主任のダンテ先生にあそこまで切り合えるなんて、君は大したものだよ」
「……けど、負けは負けだ」
ギルガメシュはそう返すと身体を起こした。
ふと視線を向けると、コッパ達三人はギルガメシュに畏怖と尊敬が混じったまなざしを向けていた。
それもその筈だ。なにせ、コッパ達は新学期初日にクラス全員ダンテ先生一人に大敗したのだから。
だが、今のギルガメシュはそんな彼と平然と戦っていた。だからこそ、だ。
「……みっともねぇ所見せたな…傷が治ったら、いくらでも教えてやる」
ギルガメシュはそう答えると、どうにか立ち上がる。どうやらこの学校でも退屈せずにすみそうだ。
ダンテは道場を出た後、職員室へと戻ってきた。
職員室にいるのは同僚のパーネ先生だけ。他の教師も生徒もいない。だから、ダンテはいつもとは違い、昔のように声をかけた。
「パーネ先輩」
「どうしました、ダンテ?」
- 64 :
- 生徒や他の教師の前では呼び捨てにし、ぞんざいに扱っているが二人だけの時はそうもいかない。
「……あっち側の世界の生徒が、一人来ている」
懐かしそうに、ダンテにしては珍しく笑みを浮かべながらそう答えるとパーネも面白そうに笑った。
「そう、で、今は?」
「なかなか強い。帝国の連中とマトモにやり合う事ぐらいは出来るだろうさ」
「……ならば結構。その生徒が帝国の眼を惹きつけておいてくれれば、私たちも動きやすいですし」
パーネがそう答えた時、職員室の扉が開いて魔術科のジョルジオ先生が入ってきた。
二人は即座にいつもの二人に戻った。
「パーネ、いくらなんでもそれは無理な相談だ。勘弁してくれ」
「ダメです。なにがなんでもなんとかしてください」
「しかし」
「しかしもなにもありません。あなたが担任だったではありませんか?」
傍から見ればパーネがダンテを説教中である。いつもの日常だ。
「あら、お二人ともどうしたの?」
「ジョルジオ先生、いい所に来てくれた。実はその…」
ダンテが口を開くより先にパーネが口を開いた。
「ダンテ先生が前に担当していた生徒がダンテ先生に戦術の補習を頼みに来たんです。しかしダンテ先生はさすがにそれはまずいと」
- 65 :
- 「…その生徒の戦術の成績は?」
「三年生の中ではトップクラスだ。俺個人として教えるものはもう散々教えている」
ジョルジオの問にダンテが首を横に振った時、ジョルジオはダンテの両肩をつかんだ!
「ダメよ! 恋する乙女は愛しい人に一秒でも長くいたいもの! そして何よりダンテ先生の強さは古今無双、その全てを教えるにはまだまだ時間が足りないわ!」
「ほら、ダンテ先生。私の言った通りでしょう。諦めて補習をしなさい」
「ジョルジオ先生に相談したら全部乙女のなんちゃらで片付けられそうな…痛っ! ちょ、ジョルジオ先生、そのステッキ冗談抜きで痛いからやめあだぁっ!」
そんないつものクロスティーニ学園の日常。
しかし、それでも時として変化は訪れつつある。
例えば、行き倒れはギルガメシュ以外にも、出てきたとか。
- 66 :
- 最初は以上です。
さて…実はえちぃシーンを書く相手候補がいくらか出てきたのですが、誰がいいかしら?
1:アスティ
2:キャンティ先生
3:パスタとヴォローネ
4:GJ
- 67 :
- おお、ここにきてギルガメシュ先輩に再び会えるとは。続きを楽しみにしてます
しかし4番……GJ?GJ!?
- 68 :
- ヒュマ男「バハ子♪」
バハ子「ヒュム男♪♪」
バハ男「見つけたぞ…世界の歪みを!」
ノム男「ターゲットを確認、…任務を遂行する」
エル男「人前でイチャイチャと…恥を知れ、俗物!」
ドワ男「この嫉妬の力すごいよぉ!さすが嫉妬四天王だあ!!」
ヒュマ男「ヒートォ!」
バハ子「エンド!」
バハ男「俺は…リア充になれない…」
ノム男「くっ…一時撤退す…(ガクッ」
エル男「俗物が…俗物があぁあ!」
ドワ男「 」
負けるな嫉妬団!戦え嫉妬団!!
- 69 :
- お久しぶりでございます。
覚えている方がいるかは分かりませんが
新作が出来たのでまた投下しにきました。
諸注意 エルフ♂×エルフ♀
…近親相姦
- 70 :
- 「綺麗な月…」
静まり返った夜の校庭に立ちながら、私は空に浮かぶ銀色の月に向かって手を伸ばす。
当然ながらその手が月に届くことなど無く、その手は空しく宙を掴んだ。
「遠いなぁ…」
すごく近くに感じるのに、絶対に届かない。
目の届く場所にあるのに手に入ることが無い。
まるで、私の中のあの人への思いのようで…私は少し寂しさを感じていた。
あの人はもう寝ているのだろうか?それとも起きているのだろうか?
そんなことを考えていると小さな音がなって闇の中から錬金術師学科の制服を着た白髪のノームの少女が現れる。
「…人に練習手伝わせておきながら浸るとは良い御身分ね、銀」
木製の杖で地面を削りながら、私のあだ名を呼んだ彼女は少し苛立ったような顔で私を見る。
「あ、ごめん…鈴蘭」
「そう思うならちゃんと練習しなさいよ」
あわてて謝りながら杖を拾い上げると呆れたようにそう呟きながら彼女、鈴蘭は手じかな花壇の縁に腰かけた。
「まずは簡単にアンタの術の流れを見る、通してやってみなさい」
「うん、分かった」
鈴蘭の言葉に促されるまま、中断していた練習を再開する。
―こうして…こう―
あの人の姿を脳裏に浮かべながら、あの人の動きをなぞって呪文を口にする。
精霊魔法、今、私が練習しているのはそれだった。
呼吸を落ちつけ、魔力を集める。
イメージを描いてそれをかためる。
そこまではあの人と変わらない。
だけど…。
肝心の精霊と交信し呼び出そうとしたところで、魔力が霧散して消えていく。
「…また失敗」
「そうね」
顎に手を当てて鈴蘭は答えながら、真剣な目をして呟く。
「もう一度」
「うん」
言われるままに繰り返す。
あの人をなぞって、あの人の動きそのままに、だが何度おんなじことを繰り返しても。
呼び出すところで集めていたはずの魔力は砂のようにこぼれていってしまう。
「…」
「また…駄目」
何度目かの言葉を繰り返し、ため息をついて地面に座り込んだ。
- 71 :
- 「…何が違うんだろ…」
単位が足りなくて呼び出し方が分からないのならまだ分かる。
だけど、呪文自体は知っている、単位だって頑張って取得した。
高位の精霊を呼び出すことはできなくても低位の精霊ならば呼び出せておかしく無いはずだ。
なのになんどやってもうまくいかない、何度呼びかけても答えてくれない。
エルフという種族に生まれて、精霊使いという学科を選んでいるくせに。
私は一度たりとも精霊を呼び出せたことがなかった。
途中まではうまく行くのに、どうしても精霊を呼び出そうとするたびに魔力が霧散して失敗してしまう。
「どうしてよ…どうして、来てくれないのよ…」
あの人のようになりたいのに。
あの人の役に立ちたいだけなのに。
それすらも許されないとでも言うのだろうか。
苛立ちをぶつけるように地面に杖を投げ捨てると、鈴蘭は静かに口を開いた。
「今日はここまでね」
「…まだ、できる」
そう言って立ち上がろうとした私を見ると彼女は空を見上げて一言だけ言った。
「いいえ、ここまでよ、空見てみなさい」
彼女に言われるままに空を見上げると先ほどまで綺麗に姿を見せていたはずの月を分厚い雲が覆い隠していた。
「いつの間に…」
全然気付かなかった
「雨の中で練習したい?貴方がどうあれ私は嫌だから帰るわ」
鈴蘭は視線だけで私にそう告げると反論は認めないとでもいうかのように踵を返す。
「…わかった」
仕方なく頷きながら私はそれに従って、寮へと歩き出した彼女の後を追う。
一人で練習をしても良いのだけれど、それでもし暴走などしてしまったら、ろくに精霊を呼び出すことも出来ない私が対処できるわけが無い。
鈴蘭に私の練習を付き合ってもらっているのは、もし魔法が暴走してしまったときに彼女に止めてもらうためだ。
その彼女が戻ると言った以上、万が一の時のことを考えても今日はあきらめるしかない。
- 72 :
- 「また、今日も駄目だった」
「そうね…」
私の言葉を予想していたかのように、何の興味も持っていないという声で答えると、彼女は不意に何か思いついたように振り返る。
「…ところで、銀、あんた何でそこまでして精霊使いになりたいの?
別段今まで通りの通常の魔術であれば問題なく使えるじゃない」
一瞬、何と言おうかためらいながら私は“用意していた方の答え”を彼女に告げる。
「…精霊魔法がちゃんと使えるようになれば…皆をもっと守れるようになるから」
「…ふぅん」
私の言葉を聞いた彼女はどこかつまらなそうに私を一度だけみて告げる。
「…まぁ、いいわ、とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる」
「…ありがと」
「礼を言われても何の事かわからないわね」
きっと本当の理由に気付いているのに、私の嘘を受け入れていつものように興味を持っていないという表情で呟く彼女に感謝する。
「ただね…銀、今のアンタじゃきっと永遠に精霊魔法は使えないよ」
「…どういうこと?」
「さぁね、ヒントはもうあげたんだから、あとは自分で考えなさい」
問いかけた私に、鈴蘭はピシャリとそう言いきる。
無言のまましばらく歩き続けると寮の近くに来たところで鈴蘭は靴を掴んでふわりと浮きあがる。
「それじゃあ、お休み」
「…うん、お休み」
なんとか絞り出すように、そう返すと鈴蘭は寮の壁をかけのぼり闇に紛れるように消えていく。
その背中を見送りながら、私は彼女の言葉を反芻する。
―何で精霊使いになりたいの?―
もともと白魔術師学科だったのだから出来ないのならば戻れば良いだけなのかも知れない。
だけど、私の目的のためにはもっと強い力が、必要だった。
「…見てほしいんだもん」
守ってもらうだけなんて嫌だ。
あの人の事を私が守れるくらいじゃないと駄目なんだ…。
- 73 :
- あの人は小さい頃からの憧れの人だった。
とても優しくて、私を大事にしてくれて。
両親がんだときだって自分だって悲しいはずなのに泣き続ける私を優しく抱きしめてくれた。
ずっと一緒だった。
ずっと一緒に育ってきた。
そして…
これからもずっと一緒に居てほしいと、あの人のそばにずっといたいと思ってしまった。
「…あれ?」
自分の部屋に向かおうとした私は、屋上に見覚えのある影を見つけて静かに階段を上り続ける。
そうして軋んだ音を立てるドアを開けると、暗い屋上の一角に小さな赤い光が漂っていた。
「またタバコなんか吸って…」
予想通りの人がそこに居た。」
肩まで伸びた黒髪のポニーテール、片手に堂々とタバコを持ったエルフの少年は、私を見るといつものように笑った。
「ようユエ、お疲れさん」
ユエ、あだ名ではない私の本当の名前。
両親が亡くなってから私をその名で呼ぶのは一人しかいない。
「もしかしてみてたの?兄さん」
私の言葉に兄さんはどこか楽しそうな笑みを浮かべながらタバコを口に咥えてその煙を吸い込んだ。
「ちょっとだけな、タバコを吸いに来たらお前が鈴蘭と校庭で練習してるのが見えたからよ」
「そっか…」
情けない姿を見られていたということが悔しくて、精霊を未だにうまく呼び出せない自分に腹が立つ。
そんな私の心を見透かしたかのように、兄さんは私のそばまで来ると、私の頭をくしゃりとなでた。
「辛気臭い顔するな、ユエ」
「…でも」
このままじゃ、私は何の役にも立てない、そのことが悔しくて泣きそうになる私を兄さんは優しく抱きしめる。
「ちょっとうまくいってないだけだ、お前ならきっと出来る、なんてったってお前は俺の自慢の妹だからな」
「…ありがとう兄さん」
でも…、と私は心の中で一人呟く。
―妹じゃ、やだよ…―
そんな枠に入れないで私自身を見てほしい。
「それまでは素直に俺に守られとけ」
「…うん」
―貴方の隣に立てないと意味が無いの―
貴方に私を見てもらえないから…
だって…私は…。
「私、兄さんのこと大好きだよ…」
「はは!俺もだ、ユエ」
笑う兄に抱きしめながら、私は心の中で再び呟く。
- 74 :
- ―ううん、違うよ兄さん―
貴方と私の好きはきっと違う。
貴方は私を妹としか見ていないけど、私はちがうの…
だって私は…
貴方を異性として見てしまっている。
貴方に抱かれたいと思ってしまっている。
―私はね、兄さん…貴方を男性として好きなの…―
決して口には出せない言葉を心の中で呟きながら、私を抱きしめる手にすがりつく。
涙を流してはいけない、言葉を漏らしてもいけない。
だってそうしないと、隠しているこの気持ちを抑えられなくなると、私自身が知っていた。
「もう戻るね」
だから私は別れを告げる。
「そうか、まぁ、疲れてるだろ今日はゆっくり休め」
「うん…」
いつもと変わらない兄さんの笑顔を見ながら、秘めた思いを隠すように私はそっと屋上の扉を閉め、自分の部屋へ歩き出した。
- 75 :
- 「うう…寒い…」
呟く声に合わせて上がる吐く息が白く染まるのを見ながら私は体を震わせる。
辺りは一面真っ白な雪原だった。
「全くだな、さっさと見つけて宿に戻ろうぜ」
今回のクエストの私の相棒はそう言ってタバコをくわえながら…いつも通り笑った。
「うん…そうだね、兄さん」
兄さんは何とも思ってないかもしれない、だけど今、彼と二人きりである、という事実に私の心の中で小さく悪魔が囁いて来る。
―今なら何をしてもバレない…―
「…何を…しても」
「どうかしたか?ユエ」
「な、なんでもない、早く探そう」
「お、おい!」
心の中で一瞬思ったことが口に出てしまいそうになり不思議そうに首をかしげる兄さんの手を引っ張って歩き出す。
この顔が熱いのは、寒さのせいだと自分に言い聞かせて…。
なぜ、私達二人がこんな場所に居るのか、私は兄さんと共に雪原を歩きながら今朝の事を思い出す。
それはいつものチームでの会議のこと。
ドラッケン学園の寮のロビー
その片隅には私達のチームのメンバーが座っていた。
「困ったものだな」
カソックを身にまとったディアボロスの少年がため息を吐きながら呟くと体面に座ったバハムーンの少女が明らかに肩を落とす。
「すまない、団長」
鎖が巻きついた刀を腰に下げたバハムーンの少女がそういうと団長は苦笑してうなだれている彼女に笑いかけた。
「気にするな鎖、あくまで期限の確認を怠った俺の問題だ、お前が気に病むことじゃない」
「だけど、実際問題どうするのさ、間に合わないんでしょ期間」
そんな二人を見ながら右目を眼帯で覆った男子制服のヒューマンがビーフジャーキーを齧りながら呟くと、ヒューマンの隣で爪をやすりで整えていた鈴蘭も軽く頷く。
「まぁわけるしかないだろうな、チームを」
さも当然のように団長はそう答えると、異なる二枚の依頼書を見比べながら皆を見渡す。
「幸い、採取の方は危険度も少ないようだし、人数も少なめで問題ないだろう」
「人選はどうする?」
「そうだな…」
鎖の言葉に団長は全員を見渡すと不意に私を見て止まる。
「銀、頼めるか?」
「うん、大丈夫、それなら今の私でも役に立てるしね」
私は…精霊使いなのに、精霊が使えない。
そんな私が討伐依頼に参加したところで足を引っ張るだけなのは目に見えている。
だったら戦闘以外で皆の役に立とう…。
だからと思って私が頷くと隣に座った兄さんが、不意に私の頭に手を置いた。
「兄さん?」
「団長、俺も採取で、別段俺がいなくても戦力的には問題ないだろ?」
何だろう?そう思って問いただすよりも前に兄さんは団長にそう告げる。
「そうだな…では、頼むぞ黒」
「了解、団長」
そうして、私達は二人で依頼を果たすために雪原へとやってきたのだった。
- 76 :
- 「んで、目的の花ってのは分かりやすいもんなのか?」
「少なくとも花弁が水晶みたいって言う話だからみればすぐわかると思うよ?」
二人で雪原を歩きながら、辺りに生えている草の上に積もった雪をどけて確認しながら先に進む。
「ホントにそんな花あんのかね?」
「なかったら依頼になんてならないでしょ」
タバコをくわえながらそう呟く兄さんにそう言うと、それもそうかと呟きながら、兄さん鞘をつけたままの剣で草の上の雪を払っていく。
「…ねぇ兄さん、何で一緒に来てくれたの?」
探索を続けながら、何度目かの魔獣を倒し、剣についた血を拭っていた兄さんに、私は不意に問いかけた。
「…またなんだ藪から棒に」
「…兄さん、こういう地味な感じの事、嫌いじゃない」
私の言葉に兄さんは少し困惑したようにしながらもしばらく何か考えながら不意に呟く。
「別に…たまには兄妹水入らずってのも良いかと思っただけだ」
「…嘘つき」
私の漏らした言葉に兄さんは一瞬だけ顔を引きつらせ困ったような表情を浮かべる。
私には分かっている、何で兄さんが自分からあまり好きでもないこの依頼についてきてくれたのか。
「私…そんなに頼りない?」
…私に力が無いから、兄さんにこんなことを強いてしまっている。
「んなことねぇよ」
そう言いながら兄さんが私の頭を撫でてくるけど、一度思ってしまったことはなかなか消えてなんかくれない。
それどころか大好きな兄さんにそんなことを言わせてしまう自分自身に悔しさがこみ上げてくる。
- 77 :
- 「ユエ…泣くな」
「やだよ…私だって兄さんの役に立ちたいよ…」
今までずっと抑えてたのに、二人きりであるという状況に少しずつ気持ちがこぼれ出す。
「…ユエ?」
兄さんが困惑した表情で私を見ている。
当然だろう、私がどうして泣きだしたのか分からないから…。
涙がこぼれるのと同時に今まで抑えてたものがこらえられずにこぼれ出す。
「ねぇ兄さん…私はいつまで妹なの?どうしたらホントの私を見てくれるの?」
「落ちつけユエ、お前なんかおかしいぞ?」
少し強い口調の兄さんの声についに私はこらえられなくなって叫んでしまう。
「おかしい?私をおかしくしたのは兄さんでしょ…」
優しくするからいけないんだ。
ずっとずっとそばに居て優しくしてくれるから勘違いしてしまって。
分かっているはずなのに、もうこの感情は抑えきれない。
それ以上言ってはいけないと分かっているのに、私はその勢いのままに、兄さんに向けその言葉を告げた。
「私は兄妹なんかじゃなくて…異性として貴方が好きなの…」
その言葉を告げた瞬間、辺りの空気が静まりかえる。
驚いたような兄さんがタバコを取り落としたのを見た瞬間、今私は自分が何を言ってしまったのかを思い出す。
「あ…」
「ユ…エ、今なんて?」
驚いたままの兄さんがそう言って立ち上がる。
言ってしまった。
恐る恐る顔を上げると真剣な表情の兄さんと目が合う。
「ユエ…俺は…」
嫌だ…聞きたくない
脳裏に拒絶の言葉を続ける兄さんの姿が浮かんで胸が締め付けられる。
「…っ!」
だから、兄さんが何かを告げようとした瞬間、私は思わず逃げ出した。
- 78 :
- 言ってしまった、壊してしまった。
この世でたった一つしかない居場所を私自身で壊してしまった。
あんなことを受け入れてくれるはずがない。
ボロボロとこぼれる涙が冷気にさらされ凍っていく。
自分がもはやどこを走っているのかも分からない。
ようやく立ち止まった私は自分がしてしまった事の後悔にとらわれる。
「ふ…ぐっ…」
どうして言ってしまったんだろう、あんなこと言えばもう居られなくなると分かっていたのに…。
兄さんは絶対に気持ち悪いと思ったはずだ、実の兄にそんな感情を抱いていたなんて知りもしないはずなのだから…。
苦しい、悲しい、いろんな感情が混ざり合いすぎて、もう何が何だか分からない。
それでもふらふらとした足取りで休む場所を探していると、不意に視界の端にきらきらと光るものが目に入る。
「あれは…」
雪で覆われた大きな木、その麓にひっそりと生えた水晶のような花弁の花がただ一つ、ぽつんと咲いている。
「…遅いよ」
もう少し早く見つかれば、今までどおりでいられたのに。
それでもその花を取るためにゆっくりと近づいていく。
依頼はこれで完了、だけど達成感など何もない。
「兄さん…」
あの人はどう思うんだろうか、これからどうやっていれば良いのかもう何もかもが分からない。
- 79 :
- 分かっていたのだ、他の人達とは違う…。
私と兄さんは兄妹、受け入れてもらえなければ、これからもそのことを引きずって生きていかなくてはならない。
だから隠していたのに…。
ぐるぐると回る思考のまま私は無造作にその花に手を伸ばす。
グルル…
「何…?」
突然聞こえた泣き声に私は思わず身構える。
ズシャリ…と重量感のある足音と共に現れたのは全身を氷で覆った竜だった。
その眼は明らかに花を取ろうとした私に向いている。
「団長の嘘つき…危険性は少ないって言ってたじゃない…」
ただでさえ、今は私一人しかいないのにこんな相手に勝てるとは思えない…。
「それでも…」
やるしかない、相手はすでに臨戦態勢に入っている、簡単には逃がしてくれないだろう。
「…足りるかな?」
腰のポーチに手をかけてその中に入った呪符を確かめる。
私は足手まといに何かなりたくない…。
取りだした呪符を片手に走り出す。
同時に竜も動きだし、鋭い爪を私に向かって振り下ろす。
何とかそれを回避しながら私は複数の呪符を投擲する。
火、水、土、風、それぞれの魔法がはじけ竜の体をほんの少しだけ傷つける。
―水は無意味、風も効果なし―
当たった瞬間のリアクションを元に頭の中で効果の低いものを選択肢から切り捨てる。
戦う力が無い代わりに私が何とか編みだした分析技能、その全てを活用し、効果のある攻撃の身を繰り返す。
だけどもともとの火力に乏しい私では攻撃を回避し、時折呪符による攻撃をするのが関の山だった。
- 80 :
- 戦いが長引けばそれだけ、私の体力も削れていく。
「くっ!」
振り下ろされる爪を転がって回避し、もっとも効果の高かった火属性の呪符を投擲する。
「燃えろ!!」
私の言葉に反応して呪符は竜の顔ではじけて炎を発するが、水晶のようなもので出来た外殻をわずかに焼いただけ。
むしろそれに憤った竜の攻撃はさらなる鋭さを増して襲いかかってくる。
「きゃぁ!」
何とか攻撃を回避しながら私は現在の状況を分析する。
残存の火属性呪符枚数13枚、これまでに使用したのは17枚。
攻撃の手は緩むどころか加速し始めていることから相手はまだ余力を残しているに違いない。
「足りない…」
勝てない、それを冷静に理解する。
この程度の火力では押し切られてしまう。
相手を怯ませられるぐらいの火力でないと、攻撃を回避しながらでは無理がある。
どうすればいいのだろう?
気持ちは焦っても、力の無さはどうにもならない。
必で攻撃を回避しながら反撃を重ねるがそれが効果を発揮しているようには思えない。
「しまっ!!」
余計なことを考えていたせいか、回避に失敗し私はそのまま転んでしまう。
命を失うには十分すぎる隙
見開いた眼に竜の尻尾が迫る。
―ごめんね…兄さん―
心の中で呟いて私は静かに目を閉じた。
- 81 :
- ガキィィン
けたたましい金属音に驚いて私は目を開く。
「…っ!間に合った!!」
それは聞き覚えのある声だった。
黒い髪、エルフには不釣り合いな大剣、私に振り下ろされるはずだった竜の尻尾は大剣によって振り下ろされる直前の空中で止められている。
「邪魔…くせぇ!!」
気合の言葉にその人が剣を振るって尻尾の一撃を受け流す。
「兄…さん?」
ぽつりとつぶやいた私の言葉にその人は振り返っていつもの笑みを浮かべて言った。
「よぉ、ユエ、こんなのと遊んでんなよ、バカ野郎…」
「何で…」
どうして来たのか、どうしてそうやって笑えるのか、言いたいことがあり過ぎて何を言えば良いのか分からない。
そんな私を置いて兄さんは、竜に向かってきりかかる。
連続の斬撃は怯ませるまではいかないがある程度の攻撃を抑える事に成功してはいる。
だけど…やっぱり足りない。
「セイッ!」
ビシリ、気愛の掛け声とともに振り下ろした剣は水晶のような外殻にヒビを作る。
「もう一回!!」
そのヒビをめがけて兄さんは再び剣を構えるが、そこからこぼれる音を聞いた私は思わず叫び声をあげた。
「駄目!兄さん逃げて!!」
「!?」
私の言葉に兄さんが剣を振り下ろすのをやめあわてて飛び退る。
その瞬間にヒビは一気に広がり内側から砕け、まるで弾丸のようにその破片が飛び散った。
「今のは何だ?」
くるくると大剣を片手で器用に操り水晶の塊のような弾丸を撃ち落とした兄さんが背中を向けたまま私に問う。
「外殻と本体の間にガスみたいのでスペースを作って、本体に衝撃を伝えないようにしてるんだと思う…あれをどうにかしないと、倒せない」
私の言葉を聞いた兄さんは竜に向き直ったまま再び剣を構える。
「ならとりあえず撤退だな、ユエ…一瞬で良い、アイツの視界を奪え!」
「う、うん!!」
言われるままに残り少ない呪符をかき集めまとめて竜に向かって投擲する。
防御の事は考えない、ただ正確に目標に向かって投げつける。
私に向かって振り下ろされた爪の攻撃を兄さんが剣で受け止める。
そうして竜の視界を奪うために私は再び呪符に命じる、
「燃えろ!!」
遅れて爆音、まとめて投げつけた5枚の呪符は狙い通り竜の目のすぐ近くで爆発する。
怒り狂った竜が尻尾を振りまわして暴れるのを回避しながら兄さんが私を抱きかかえて口に咥えた呪符を引きちぎる。
「壁の中に飛ばないでくれよ!」
兄さんが何を使ったのかを理解した瞬間、私達の体は光に包まれた。
- 82 :
- ガラガラと音を立てて私達は地面に着地する。
「っ!…何とか、成功か」
「そう…だね」
戦闘中テレポル、どこに飛ぶかは分からないが、あの状況ならそうでもしないと逃げられなかったのだから、兄さんの行動は正しい。
きょろきょろとあたりを見回すとそこは外よりもほんの少しだけ温かい。
「洞窟か…ちょうど良いな、とりあえずしばらくは休めるだろう」
「うん…もう、外も暗いし宿に帰るのも無理があるもんね…」
「だな…今日はここで野宿だ」
兄さんはすぐに適当な木切れを拾い集めるとそのままライターで火をつける。
洞窟にほのかな明かりがともったところでようやく私は、言葉を紡ぐ。
「…助けてくれてありがと…」
「ああ、気にすんな…」
言葉は少ない、会話も続かない。
すぐに無言になってしまって何とも言えない空気に満ちている。
何をしゃべれば良いのか分からない。
何と言えば良いのか分からない。
不安な思いだけが募ってだんだん苦しくなってくる。
しばらくして洞窟の中が温まってくるとようやく兄さんが呟いた。
「…何で逃げた」
「…!」
ビクン、と思わず体が震える。
「それは…私…」
「兄妹のくせに気持ち悪い…」
予想していた言葉に思わず耳をふさごうとする私に、兄さんは更に言葉を告げる。
「と、言うとでも思ったか?」
「え?」
- 83 :
- 予想外の言葉に思わず兄さんを見上げると、兄さんはいつもの表情で笑っていた。
「そんな不安そうな顔してんな、俺がそんなこと言うわけないだろ?」
「どういう…こと?」
―兄さんはいつも通りのはずなのに私はその言葉がうまく理解できない―
「どういうことも何も…言葉通りの意味だよ」
―それではまるで…―
「え?おかしいと思わないの?だって私達兄妹なのに…それなのに私…」
―貴方を異性として好きだと告げたのに…―
それなのに兄さんはいつも通りの表情で笑う。
「俺は嬉しかった」
「え?」
兄さんの言葉に私は耳を疑う、そんな私を抱き寄せながら兄さんは私の耳元でその言葉を告げる。
「俺もお前を好きだった。兄妹なんかじゃなくて、一人の女として…な」
「嘘だよ…」
予想外の言葉にそれが真実と信じられず、私は兄さんの胸を押して思わず距離を取ってしまう。
「嘘じゃねぇよ…真実だ」
「嘘でしょ…兄さん優しいから私を傷つけないように、ってそんな…」
何が何だか良くわからない、ただ…そんな夢みたいなことあるはずないと、素直じゃない言葉が出てしまう。
そんな私を見ながら兄さんはやれやれと肩をすくめる。
「お前って、昔からそうだよな…」
「え…?」
言葉と共に兄さんは私を抱き寄せるとそのまま体勢を入れ替えて私を押し倒す。
「兄さ…」
何をするの…、そう問いただそうとした私の口が温かい感触にふさがれる。
「んむ…」
「…甘いな、俺好みの良い味だ」
キスをされた、その事実に困惑する私を尻目に兄さんの手は私の制服のボタンを一つ一つ丁寧に外していく。
「兄さん何を…」
「言葉じゃ…どれだけ言ってもお前は納得しないだろ?」
- 84 :
- そこにあった兄さんの眼はとても真剣で、それでいて優しさを感じさせてくれる光が宿っている。
「だから…お前の体に直接教えてやる」
パチンと小さな音を立てて最後のボタンが外されて、兄さんに私の下着がさらされる。
―体に直接教える―
それが何を意味しているか、分からない私ではない。
だから私はその眼を見つめながら静かに頷く。
「嫌だったら言えよ?」
嫌なわけがない、ずっとこうする事をこうなる日をずっとずっと夢見てきたのだから…。
だから、私は兄さんの手を取って耳元で小さくその言葉をささやく。
「初めてだから…優しくしてね」
私の言葉に応えるように、兄さんは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、再び私の唇に優しくキスをした。
「んふぅ…」
薪の灯りに照らされたほの暗い洞窟内に私の声が反響する。
「気持ち良いか?」
「兄さん…触り方いやらしい」
「いやらしい事してるからな…」
クスクスと笑いながら兄さんが私の胸を優しく揉みほぐす。
丁寧に、優しく繊細に…。
まるで壊れモノを扱うかのような優しい力加減で兄さんの手が私の胸をこねまわして形を変える。
「ふぅ…くっ…」
言ってしまえばたったそれだけ、たったそれだけの事なのにそれがとても気持ち良い。
刺激が加えられるたびに皮膚の下にピクピクと電流が走って体の熱をどんどん上げていく。
「胸、結構敏感なんだな」
「う…ん」
「こんなに汗かいて…」
「ふぁぁ!!」
言葉と共に突然訪れた今までと違う刺激に大きな声を上げてしまうと兄さんがにやりと顔をゆがめる。
「今…何したの?」
「何って…こうだよ…」
私の問いかけに応えるように今度はゆっくりと、まるでスローモーションのように胸に舌を這わせそろそろと円を描いていく。
「あ…あ…ああ…」
兄さんの舌が円を描くたびにゾワゾワと背筋に今まで感じたことない刺激が走り、体中から汗が噴き出すような錯覚を覚える。
そしてそのまま固くなったそこへたどり着くと兄さんは何の躊躇もなく、その中心に吸いついた。
- 85 :
- 「ふくぅぅ!!」
ビリビリと、先ほど感じた強い刺激が背筋を一気に駆け上がる。
―もっと欲しい…もっとして欲しい…―
そんな思いが顔に出ていたのか兄さんは目を細めて吸いついたままのそこをカリカリと噛む。
「ひひゃ!くふぅん!」
そうして胸を弄びながら兄さんの手が私の大事なところへ伸びていく。
ぐちゅり…
「くはぁっ!」
覚悟はとっくにしていたはずなのに兄さんの予想外の行動と大きく響いた水音に思わず大きな声を再び上げる。
そんな私を楽しそうに見ながら兄さんは耳元で囁いた。
「ずいぶんたっぷり濡れてるな…ユエ」
恥ずかしい事を言われている、それが分かっているのに私は何も反応出来なかった。
なぜなら…
「兄さん…まって!ゆび…指がはいってぇ…」
自分の中、浅い場所ではあるけれどそこに確かに自分のものではない熱が入っている。
兄さんの指はまだ狭い私の中をほぐそうとするかのように、浅い場所でゆっくりと円を描く。
自分の中に自分のものではない異物がある、それなのにそれすらも気持ち良い。
「にい…さ…」
グチュグチュと続けられる愛撫に頭の中が溶けて来て次第に一つの事しか考えられなくなっていく。
「限界か?」
「うん…早く、兄さんと一つになりたい…」
私がその言葉を口にすると、兄さんはごくりと唾を飲み込んで熱に浮かされたような声で呟く。
「体勢…変えるぞ」
「うん…」
兄さんに言われるがままに四つん這いになって腰を兄さんに向ける形をとる。
ショーツはまだつけてはいたが、もはやそれは完全に濡れてしまって下着越しでも兄さんには私の形がはっきりと見えてしまっているだろう。
恥ずかしい、んでしまいそうなほど恥ずかしい。
カチャカチャと兄さんがズボンを下ろすまでの時間を私は腰を上げたまま必で耐える。
「準備…いいか?」
「う…ん」
背中越しに見える兄さんのモノはとても大きくてあんなものが本当に入るのかと怖くなる。
だけど勇気を出して私は自らショーツを引き下ろす。
もはや隠すものは何もない、素肌をさらしたその部分にドクドクと脈打つ兄さんのモノが押しあてられる。
- 86 :
- はぁ、と熱い吐息が勝手にこぼれ、期待と恐怖で体が震える。
そんな私を心配したのか兄さんが優しげな眼で私を見つめる。
「ユエ…これがラストのチャンスだ、やっぱり嫌だっていうなら今言ってくれ」
―兄さんはやっぱり優しい…―
本当なら今すぐにでも入れてしまいたいだろうに、それでも私を心配してくれる。
だから私はそんな兄さんに、一番の笑顔を浮かべながら答える。
「今更…やめてなんて言わないよ、最後までしよう、…ルーク」
兄さんではなく…彼の本当の名前を呼ぶ。
今から兄妹の垣根を越えようと言う私なりの意志表示。
「分かった、行くぞユエ…」
私の言葉に覚悟を決めたように兄さんは私の腰を掴んで押し当てたそれを埋没させていく。
「んくっ!」
「くっ!」
ミシミシと私の膣内を割り開くように兄さんのモノが入っていく。
「ユエ…力抜け」
「う…うん…!」
すごく痛くて、泣きだしそうで、額には汗が浮かぶけれど着実にその時が近づいているのが分かる。
はぁはぁ、と互いに荒い息をしながら私の純潔の証についに兄さんがたどり着く。
「怖いよな…」
「ううん…」
兄さんの呟いた言葉に私は首を振ってそう答える。
「ルークが一緒だから怖くない、だけど…」
「ん?」
「キスしてほしい」
「はいよ…」
触れ合うだけのキスではなくて絡み合う様なキスをして、ゆっくりと離れながら私は頷く。
それに合わせて兄さんも頷いてからゆっくりと腰を推し進める。
「う…あ…ああ…」
プチプチと自分の中で何かがちぎれていく音と激しい痛みがやってくる。
―あと少し、あと少し…―
少しでも体の緊張を和らげるために深呼吸を繰り返す。
そして…
- 87 :
- 「うっくぅぅぅぅぅ!」
ブツリと何かがはじける音が響いて、兄さんのモノが私の奥深くまで埋まっていく。
「るー…く」
こつんと私の一番深いところに何かがぶつかる。
確認のために振り返ると兄さんは私の頭を撫で優しく笑う。
「全部入ったぞ」
「うん…わかる」
初めて男の人を受け入れたそこはまだズキズキとした痛みを伝えてくるけど、同時に繋がった部分で兄さんの鼓動も伝えてくれる。
「ルークのあつくておっきぃね…」
「お前の中が狭いんだよ」
「…気持ちよくない?」
不安になって問いかけると兄さんはクスクス笑いながら何度も背中にキスをする。
「バカ、んなわけないだろ、良すぎるぐらいだっての」
「…良かった」
しばらくそのままの体勢で待っているとちょっとずつ兄さんが腰を動かし始める。
「ん…っ、うっ…」
「まだ、痛いか?」
「…大丈夫、気持ち良いよ」
心配そうに私を見ていた兄さんにそう笑いかけると兄さんは表情を柔らかくして笑う。
「めちゃくちゃ痛ぇくせに…」
「痛いけど…それだけルークが私の事を好きって思ってくれてるってことでしょ?」
痛みをこらえながら笑うと兄さんが優しく頭を撫でる。
「バカ…」
「うん…そうだね」
ゆっくりと浅く短いストロークで兄さんが腰を動かしていく。
兄さんの言うとおりまだ痛みは強いけどそれは決して耐えられないものではない。
それに少しずつ、じくじくと滲みだすように気持ち良いという感覚が芽生えているのも本当だった。
「ちょっと強くするぞ」
「うん…」
言葉と共にズルズルと兄さんが自分を引き抜いて一番深いところまでたたきつける。
「あう…」
触れ合った体の体温が、許されない事をしているという背徳感が、私の興奮を一気にあおり、痛みを急速に奪っていく。
- 88 :
- 「ふ…はぁ…きもち…良い」
ついに私は堪え切れずその言葉を口にする。
「良くなってきたか」
「うん、気持ち良くて頭が溶けちゃいそう…」
「なら、もう少し早くするぞ」
兄さんの言葉にうなづくと、言葉通りにペースが速くなり、より強い快感の波が襲ってくる。
「待ってぇ…やっぱこれ以上速くされたら…私、我慢が…」
パチパチと目の前で火花がはじけて頭がぼんやりとして一つのことしか考えられなくなっていく。
そんな私の顔を見た兄さんは満足そうにしながらより深いところを抉るように私を強く抱きしめる。
「るーく…るーくぅ…」
「ユエ…ユエ…」
もはや洞窟には私と兄さんが互いに呼び合う声と濡れた音色しか響かない。
もやもやとした感覚は破裂しそうなほどに高まって今か今かとその時を待っている。
「ルーク、もう駄目…私、わたし…」
「俺ももう…」
言葉と共に兄さんは私の腰を強く掴み、ラストスパートをかける。
パンパンと大きな音が響き渡り、ただひたすらに貪られるような突き上げにブレーキが壊れてしまったように快感が加速する。
そして…
「ぐ…ぁぁぁ!」
「ふぁぁぁ!」
2人分の叫び声とともに私の中を火傷しそうなほどの熱が染め上げる。
「大好き…兄さん」
「俺もだ…ユエ」
初めての行為で荒くなった呼吸を整えながら私達はもう一度深いキスをした。
- 89 :
- 「どうしようか?」
「何がだ?」
兄さんの胸の上に頭を載せて呟くと、私の頭を撫でながら兄さんが私を見る。
「依頼、花は見つけたけど、あの竜を倒さないと…」
「その話か、もう少し色っぽい話かと思ったんだがな」
「…だって、他の話しないと恥ずかしくて兄さんの顔見れないんだもん」
お腹の中ではまだ兄さんの熱が残っていて、先ほどまでの行為を思い出すだけで体が火照ってくるのが分かる。
「そうか」
クスクスと楽しそうに笑いながら兄さんは私の背中をなであげる。
「しいて言うなら、あの外殻さえ何とかなりゃ、何とでもなると思うんだがな…」
「そうだね…」
呪符よりももっと強力な…強い炎があれば、何とかなりそうではあるけれど…
ヒーロー学科である兄さんの魔法でも壊せるかは分からない。
精霊魔法を使えればそんな問題も解決できるはずなのに、それも私は使えな…
―とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる―
「…あれ?」
「どうした、ユエ?」
突然身を起こした私を兄さんが驚いた眼で見つめる。
「兄さん!もしかしたら、私なんでいままで使えなかったか分かったかも!!」
「へぇ…」
何でこんな簡単な事に気付かなかったのかと思ってしまうぐらいだけど、きっと間違いない。
「兄さんのおかげだね」
「なんか良くわからないが…今まで、ってことはつまり、もう使えるってことか?」
「うん!」
間違いない、今の私なら間違いなく呼び出せる。
だって、隠す必要なんかないだから、偽る必要だって無い。
だからきっと呼び出せる、間違いなく呼び出せると確信する。
その事が嬉しくてはしゃいでいると不意に兄さんが私の腕を引いた。
「なら、明日はリベンジって事になるよな」
「え…うん?」
どこか楽しそうな兄さんにそう答えると、兄さんは再びキスをしてくる。
「だったら、明日に備えて、英気養わせてくれよ…ユエ」
「…うん、そうだね兄さんにはしっかり守ってもらわないといけないもんね」
クスクスと笑う兄さんに合わせて笑うと、兄さんは再び私を押し倒した。
- 90 :
- ザクザクと雪を踏みしめて昨日の場所に向かうと私達を待っていたかのように竜が咆哮する。
右の目は酷く焼けただれたままで、残った眼は私達を強く睨んでいる。
「ユエ、熱い視線送られてるぜ?」
大剣を引き抜きながら笑う兄さんに、私も笑って杖を構える。
「困るなぁ…私もう、兄さんのものだから、そんな熱い目で見られても答えられないのに」
「そういうことだ、俺の女に手を出す気なら、まずは俺を倒してみろよ、トカゲ野郎」
兄さんの挑発が効いたのか竜は再び咆哮を上げ兄さんに向けて爪を振り下ろす。
「ユエ!手筈通りに行くぞ!」
「了解!!」
竜の爪を大剣で受け流しながら走り出す兄さんに応え、私は術を編んでいく。
昨日の戦いの時のように呪符を使うのではなく、使うのは今までずっと使えなかった精霊魔法。
昔、兄さんが見せてくれたときのように。
兄さんが使っていた時のように、正確に術を編んでいく。
それまでは今までと何ら変わりない。
だけど私は、今回は失敗しないというのを確信していた。
「…今までごめんなさい」
術を組み上げながら、私は精霊に語りかける。
「ホントの事を隠して力を借してほしいなんて言って、かしてくれるわけないよね」
鈴蘭の言葉を思い出す。
―とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる―
それはあくまで、鈴蘭が私がどうして本当の理由を告げないのか、それに気付いていたからこそ、出た言葉だ。
仲間として、私を知っているから、私を信頼しているからこそ、そういうことにしておくと言う言葉で済ませてくれた。
だけど、力を貸してほしいと頼む相手に、本当の事は言えないけど力を借してほしいと言って、力を貸してくれるわけがない。
「大好きな人がいるの、その人の事を守りたいから、そのための力を貸してほしい」
皆のため、綺麗な言葉で飾ってたけど、結局私が力を欲した理由はただ一つ。
- 91 :
- 兄さんの事が大好きだから、兄さんを守れるような力が欲しい。
今まではそのうちに秘めたもう一つの思いを兄さんに知られてしまうのが怖くて、隠し続けてきたけど、もはや隠す必要なんかどこにもない。
だって、私と兄さんは愛し合ってるんだから。
目をあけると、兄さんは竜の攻撃をいなしながら竜から私を守ってくれていた。
その背中に向けて私はたった一言だけ告げる。
「下がって!兄さん!!」
「おうよ!!」
言葉と共に兄さんが飛び退り、竜が無防備な私めがけて襲いかかってくる。
だけど…
「遅い…!!」
既に魔法は完成している。
手の中の光は白から赤へと変色し、こぼれる熱気が辺りの雪を溶かし始める。
そして私は、その力を目の前の敵に向かって解き放つ。
「来い…!フェニックス!」
私の言葉に応えるように手の中の光がはじけ空中に赤い魔法陣を描き出す。
「出来…た」
魔法陣から現れた火の鳥は呼び出した私を守護するように旋回し、竜に向かって突撃する。
遅れて爆音。
「ガァァァ!!」
爆風が収まった中心に居たのは外殻を失い、全身を焼かれた竜。
絶叫を上げながら苦しげにのたうちまわる竜に向けて待っていたかのように兄さんが駆ける。
「さすがに、外殻が全部無くなっちまえば、あの攻撃もできねぇよなぁ!!」
獰猛な笑みを浮かべた兄さんはそう叫びながら剣を振り下ろす。
「グガァァ!!」
突き立てた剣が体を引き裂くたびに竜が絶叫を上げる。
「入魂…」
静かに息を整えながら兄さんは剣を構える。
竜はそれに気づき苦痛から逃れるために、兄さんを睨んで爪を振り下ろす。
だが…
「なんてな…」
連続の6連撃をたたき込むはずだった兄さんは、軽く笑って構えを崩し、爪での攻撃を受け流す。
「わりぃな、俺はただの囮だよ」
爪をはじいた剣を回転させながら兄さんはその場から飛び退る。
そして、私を見ながら告げる。
「やれ、ユエ」
「…了解」
作り出した魔法陣は1つではなく二2つ。
二重に展開された魔法陣はひきあうように重なってその威力を増幅する。
「1回じゃ外殻だけだったけど2倍ならどう?」
倍加魔法で呼び出したフェニックスは先ほどとは比べものにならない熱量を放ちながら悠然とその姿を現して漂い始める。
その姿に竜は恐怖したのか私を排除しようと爪を振るう。
だけどその攻撃は届かない。
「ありがとね、兄さん」
「気にすんな、自分の女を守ってるだけだからな」
「学園帰ったら、またしようね」
「そうだな」
互いに笑いあいながら私は竜を睨んで呼び出したフェニックスに命令を送る。
先ほどとは比べものにならない爆音が辺りに大きく鳴り響いた。
- 92 :
- 私と兄さんの関係は許されるものじゃないかもしれない。
「ねぇ兄さん」
「なんだ?」
「皆になんて言おうか?」
「普通に言えば良いんじゃねぇか?今後、俺とユエは宿一緒の部屋で構わないってな」
「皆にバレちゃいそうだけどね」
「どうせ隠してもすぐバレるだろ?鼻の効くワンコロもいるしな」
だけど、私はこの人とずっと居たいと、いつかこの人と誰の目もはばかることなく居られるようになりたいと願う。
「ルーク」
「何だユエ?」
「愛してる」
「…俺もだ」
学園への帰り道、長いようで短い道のりを私達は手をつないだまま、二人並んで歩きだした。
- 93 :
- 以上で投下完了です。
相変わらず長々と失礼しました。
- 94 :
- 久しぶりに来たらちょうど遭遇
これから読むところだが乙です!
ファイナルは3Dの移植みたいだし発売されても盛り上がらんかねぇ
3DS持ってない自分は楽しみだが
- 95 :
- どうも、こんばんは。
ファイナルは3Dの移植かぁ…ま、買うけど。
>>67
ようやく先輩の話です。
もしかしたらGJかも知れないしそうじゃないかも…?
>>69
乙です。
同種族モノでおまけに近親ってのも本当に珍しいですよね。
- 96 :
- ギルガメシュがクロスティーニ学園にやってきて、4日が過ぎた。
ガレノス先生曰く驚異的な回復力を見せた彼はようやく退院し、保健室から学生寮へと移り、そして…。
「サイズはどう?」
「ああ。丁度いい」
寮母のトレネッテの問いに、オレンジ、白、黒の三色を基調とする、クロスティーニ学園の制服を纏ったギルガメシュはそう頷いた。
元々着ていたパルタクスの制服はかなりボロボロになっていたので、せっかくだからとトレネッテが用意したのだ。
ただ、この制服は1つだけ他の制服と異なる点がある。
ギルガメシュもセレスティアなので羽がある為、半分ほど見えないが、それでも羽の隙間から背中に大きく描かれたそれは目立っていた。
天使の羽と月桂樹の葉に包まれた、一本の剣とその上に書かれた髑髏のモチーフ。
そんなマークの上には『我、最強なる者』と書かれ、マークの下にはGilgameshの名が描かれている。
そう、この制服はパーソナルマークを入れた制服なのである。もちろん、前例は無い。
姿見でマークの存在を確認したギルガメシュは再び満足そうに頷いた。
「ありがとう。大した腕前だよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。…ああ、他にも何か要る?」
トレネッテの問いにギルガメシュは笑いながら答えた。
- 97 :
- 「ああ。この近くの迷宮地図と、転移札をくれ。そうだな…迷宮は三種類ぐらい。転移札は6枚で」
「あら、もう迷宮に潜るの? 病み上がりだから無理は禁物よ」
「まぁ、大丈夫さ。それに…今回は、後輩どもを特訓してやらにゃなんねぇしな」
ギルガメシュはそう答えてニヤリと笑った。
「おい見ろよ。また落ちこぼれコンビがいるぜ」
「あいつら入試もギリギリだったんだろ? なんでまだいるのかが不思議だよな」
「おまけにドワーフとディアボロスでしょ? 知性の欠片も無いわ」
「アンちゃん可哀そうだよなー。特待生なのに、あんな奴らの相手させられて。エルフで、かわいいのに」
放課後。クロスティーニ学園の食堂にコッパ、ビネガー、アンの三人が入ってくると即座にそんな陰口が聞こえてきた。
コッパとビネガーへの悪口だけで、アンへの陰口は一つも無い。
だからアンは余計に気分が悪くなってしまう。自分ならまだしも、友達がいわれのない事を言われるのが。
「………」
「おーい、アン落ち着けって」
「そーそー。俺達は慣れてるよ、あれぐらい」
コッパとビネガーはそんなアンの肩を優しく叩きながら席に座る。
「でも、コッパ君もビネガー君も、嫌じゃないの? あんな事言われて…」
- 98 :
- 「そりゃー嫌さ。けどさ、アイツらを見返す為に、特訓頼んだんだろ?」
「そーそー。俺達皆強くなればたぶんアイツらも何も言わなくなるさ」
ビネガーの言葉に、コッパも「だよなー」と返す。
皆、という言葉にアンは少し嬉しくなる。
アンにとって、コッパとビネガーは本当にいい友達なのだ。
特待生入学したはいいけれど口下手で引っ込み思案、そんな彼女に声をかけたのがコッパとビネガー。
二人は頭は悪いし成績も悪いけれど、誰かに優しくすることや気を使うことは出来る。
だから、アンは二人の友達でいたいのだ。どれだけ馬鹿にされようが、どれだけ失敗しようが、コッパとビネガーの二人は信じている。
ヒーローになって、誰かに尊敬されるようなぐらい、立派な人になりたい。
そう願う二人の夢を、支える事が出来るのが、アンにとって本当に嬉しい事だから。
「それにしても特訓って何をするんだろうな? オイラ、少し気になるぜ」
「あ。俺もそう思う。案外、講義形式でやるかもな」
「よう。何の話をしてるんだ?」
「お、ルオーテ」「よう、ルオーテ」「こんにちは、ルオーテ君」
ルオーテは三人に「おう」と声を返した後、アンの隣に座った。
- 99 :
- 「ああ。この前、違う学校の先輩が来たって話、しただろ? その先輩に特訓をつけてもらう事になってさ。それでどんな特訓だろうなーって」
「へぇ。そりゃすごいな。…特訓っつーぐらいだから、チャンバラでもするんじゃないか?」
コッパの返事にルオーテがそう返した時、周りの生徒が何人か吹き出していた。
「ぷっ、落ちこぼれコンビ特訓するだってさ」
「どーせすぐ音を挙げるぜ。アイツらバカだしよ」
「そーそー。こんなはずじゃねぇって叫ぶのが何時になるか賭けようぜ」
「野郎…!」
ルオーテが椅子を蹴ってまさしく立ち上がろうとしたその時だった。
コッパ達の噂をしていたであろう男子生徒が首を捕まれ、そのまま持ちあげられていた。
「わっ…! な、なんだ!?」
「…おい。テメェら、コッパ達の何が解るんだ? ああ?」
「せ、先輩!?」
ギルガメシュだった。ギルガメシュは何も答えずにただ口をパクパクする男子生徒に顔を近づけ、更に睨む。
「で? なんだ? 言ってみろ? ん?」
この時になってようやく正気に戻ったのか、男子生徒のパーティ仲間たちがそれぞれ得物を手に立ち上がる。
「おい、離せよ! ただ噂してただけだろ!」
「そうだぞ、あんな…」
「なんだ?」
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