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2012年5月エロパロ486: 【カノカレ】上月司作品総合・3【れでぃ×ばと】 (262) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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【カノカレ】上月司作品総合・3【れでぃ×ばと】


1 :10/06/24 〜 最終レス :12/05/05
れでぃ×ばと!、カレとカノジョと召喚魔法、上月司作品のエロパロスレです。
@過去スレ
れでぃ×ばと(上月司)でエロパロなスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169213400/
【カノカレ】上月司作品でエロパロ【れでぃ×ばと】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208538546/
@保管庫
http://green.ribbon.to/~eroparo/
 ⇒ライトのベルの部屋⇒1号室

2 :
容量とかすっかり忘れてたわ乙

3 :
1乙

4 :
スレ立て乙
・・・と言いたいところだが
スレタイの【カノカレ】は【カレカノ】だったんだ
俺が前スレでスレタイ間違ったばっかりにすまん

5 :
1乙ですわっ

6 :
ふぉす

7 :
ほしゅあげ

8 :
>>1

9 :
ははは
理事長SSのデータ消えた

10 :
>>9 つ「データ復旧ソフト」
ttp://www.vector.co.jp/soft/winnt/util/se475491.html
一応フリーだしダメモトで試してもいいんじゃない?

11 :
あげ

12 :
あげ

13 :
あげ

14 :
即回避

15 :
あげ

16 :
一応前回の続きです。
気づいたら
みみな×秋晴←朋美
的な話になっていました。
何か文章体が前より原作離れしてる気がするのは気にしないで頂けると嬉しいです。
『This is my daily life』
 目が眩むような日差しの差し込む午後のカフェテラス、二月ももうすぐ終わる。一年で今一番寒い時期は過ぎたもののまだまだ寒い日は続き春の気配は姿を見せない。
 テラスに差し込む西日は低く傾き、高級なカーテンといえどその光を遮るには力足りないらしい。あと一月半もすれば高校一年の課程も終了し、秋晴達は進級をすることになる。
 それは同時にこの白麗陵で生活を始めてから一年が経つことになる。転入してきた秋晴は他の生徒よりも二月ほど短いが。
 そうすれば一期生であり直接の先輩のいなかった従育科に後輩ができるし、自分達の学ぶべきこともより専門的な部分が増えたり、重要な事柄が増えるだろう。そう考えると気を引き締めなくてはいけない。
 ただでさえ、ただでさえ自分の生活に多大なる影響を与えている大問題を抱えているのだから。
「今日はいらっしゃらないのですわね」
「個展が終わったばかりですからね。あと片付けだったりいろいろとお忙しいではないのでしょうか」
 秋晴は従育科の日課である奉仕活動をしているだけだった。ここ数日諸事情により参加できていなかったこと、そして給仕の欠員が出たことが重なり急遽秋晴が担当となった。
「そうかもしれませんわね。でもそれなら個展の準備の手伝いと称してずっと奉仕活動を休んでいたどこぞの庶民がここのいるのはどういうことでしょうね」
「そうですね…準備の時に大失敗をして出入り禁止になったとか、あまりの顔の怖さに来るなと言われた、とかですかね」
 日野秋晴の白麗陵内でのイメージは悪い。それは未だに変わっていない。転入初日からの大騒動、そしてそれ以外にも様々な問題を起こしてしまったし、巻き込まれた。
そして何より茶髪、傷、耳に安全ピンと単語だけでもトゲトゲしさを感じる外見をしている。それがお嬢様だらけの白麗陵となれば仕方が無い。故にそんな秋晴の担当エリアのテーブルには知り合いしか寄りつかない。
 それは年が明けたとて変わっていないのだが――変わったものもあった。
「どうしたのかしら、顔が引きつってますわよ? 秋晴」
「本当ですね。まるで蛇に睨まれた蛙のようですよ? 秋晴君」
 秋晴に言葉をかける二人の表情は笑顔だ。傍から見れば午後のお茶を優雅に楽しんでいるようにしか見えない。ただそれは傍から見ればであって渦中にいる秋晴にはお茶を優雅に楽しんでいるようには見えない。
 もちろんじゃあどう見えるかなんて口にした瞬間に怖ろしい結末が見えるのは確定しているので秋晴がとる行動は一つである。 
「本日のお茶は何をお持ちいたしましょうか?」
 秋晴は笑顔でそう告げた――できる限り顔が引きつらないように。

17 :
 目の前、自分の担当テーブルには二人の女子生徒がいた。
 一対の金色ドリ……見事な縦ロールの髪型を持った碧眼の女性、セルニア=伊織=フレイムハート。
 ブラックホール以上の腹く……才色兼備の優等生、彩京朋美。
 共に秋晴のクラスメイトであり、仲が良いかは微妙な判断が必要だが少なくとも親しい間柄と言える関係にある二人だ。
 その二人が仲良く座っている。正確には明らかな敵意を秋晴に向けて。
 全く心当たりがないと言えば嘘になる。嘘になるがそれでも秋晴は自分がこの状況に置かれている根柢の原因が分からない。
「それでどうして今日はここにいらっしゃるの?」
 ギラリ、と効果音が出そうなくらい鋭い視線。元々眼光の鋭いセルニアだが今はいつもの数十倍キツい。深閑の凍てつく視線に慣れていなければ石になってしまっていたかもしれない。
「………一人欠員が出ちまったんだよ。急な話だったから代わりもすぐにっていかなかったし、最近ずっと休んでたから俺が代わりにって立候補したんだ」
「桜沢さんの個展のお手伝いはいいんですか?」
 ザクリ、と突き刺さるような視線。朋美の表情は笑っているその眼は視線だけで人がせる武器のようで、深閑の氷の視線、セルニアの眼光を凌駕する怖ろしさだ。ペルセウスすら石にできそうなほどだ。
「………今日は元々見学だけの予定だったからな。何日間かかかる準備はともかく一日で撤去しなきゃいけない今日は俺がいたって邪魔になるだけだ」
「熱心なのですわね」
「そうですね、まるでこれからも手伝うことがあるのが確定しているような口振りですね」
「…………」
 秋晴の担当テーブルに座った容姿端麗な二人はその姿の美しさを忘れさせるほどの怒気を帯びて秋晴を見ていた。もっとも朋美はその様を隠しており秋晴のような朋美を理解する人間しか分からないが。
 とにかく秋晴は二人にずっと睨まれているのだ。それも今日だけではなく、最近ずっと。
「……前も言ったと思うが…お前ら何が目的なんだよ」
 重たい空気、近寄りがたい雰囲気で他の生徒は秋晴たち三人だけを無視――というより飛び火しないように関わらないように離れていた。
 秋晴も関わりたくはない。しかし二人の標的は自分だし、何より担当テーブルから離れる訳にはいかなかった。
「も、目的だなんてそんな……まるで私が貴方に興味があるみたいではないですの!」
「私はありますよ? と言っても秋晴君と言うよりは最近ずっと一緒にいらっしゃる桜沢さんにですが」
「わ、私もですわっ! 最近よく一緒にいらっしゃる桜沢さんに不埒な行為を働いてないのか、そもそも何故貴方のようなろくでもない庶民が桜沢さんと一緒にいるのかが納得いきませんの!」
 焦ったように取り繕うセルニアと対照的に落ち着いたままの朋美。
 そんな二人を交互に見て、空を仰ぐ。と言っても見えるのはカフェテラスの純白の天井であり、気が晴れる訳でも何かが解決する訳でももちろん無かった。
「あー………結局そこに行きつくのか……」

18 :
 秋晴は去年の終わりから上育科の先輩である桜沢みみなと付き合っている。互いに健全……では初めからなかった気がするが、真剣に、互いを想い合っている。
 二人はそれを白麗陵という場所、互いの立場を考えてそれは秘密にしている。少なくとも秋晴は秘密にするべきだと思っている。
 しかし実際は――怪しいなんてものじゃないんだよなぁ……と秋晴は溜息をついた。
 秋晴とみみなが想いを伝えあう機会を作ったとも言えるみみなの個展、その作品の制作作業、従育科の鍛錬である奉仕活動、そのほとんど全てにおいて秋晴とみみなは一緒にいた。
 先日の個展の準備開始期間まで秋晴の横には必ずみみながいて、みみなの横には秋晴がいた。秋晴が奉仕活動の日は秋晴の担当テーブルには必ずと言っていいほどみみながいたのだ。
その上個展の準備期間中には秋晴はみみな同様公欠扱いで授業を休んでいた。これでは何かあると思わない方がおかしい。それは秋晴にも分かっていた。
 当然周りは騒ぎたてる。そして中でも――今目の前にいるこの二人はしつこかった。普段なら適当な理由をつけることができるし、一緒にいるみみなの目の前では突っ込んだことも聞けないでいたのだが今日はそのストッパーは期待できない。
「それで、結局どうなんですの?」」
 好機、とでも言うべきかこの状況はセルニアと朋美には好条件だ。しかし、秋晴はなかなか口を割らないので痺れが切れてきたようだ。
「それで、結局どうなんですか?」
 元々気の短い猪突猛進なセルニアはともかく冷静沈着な朋美まで変わらない状況にイライラしているのだろうか、その言葉は酷く重たい。体中が重たい鎖でがんじがらめにされたようだ。
「どうにも何も前から言ってるだろうが……大きい画材を持つのに多少でも力のある男がいい。 んで、男の従育科生徒は四人だろ? 消去法で俺になったんだよ」
 思わず屈してしまいそうな空気の中、幾度となく口にしてきた言い訳をする。それは全てが嘘という訳ではない、というよりみみなが秋晴を手伝いに選んだ建前だった。
「それは前にも聞きましたわ」
「それだけであの桜沢さんが秋晴君を選んだというんですか?」
「う………」
 聞き飽きた言葉に二人のイライラは明らかにましたようだ。実際にそれは秋晴が選ばれたきっかけにはなってもみみなとほぼずっと一緒にいる理由にはならない。去年末から秋晴とみみなは絵の制作有無問わずに四六時中一緒にいたのだから。
 そもそも一緒にいるを減らしていればよかったのだが、それをすると秋晴はともかく小さな先輩が酷く悲しそうな顔で「う、うん、分かったよ……」と全然分かってない涙目の顔で明らかに元気なく呟くのであった。
現に一緒にいない一日は元気がなく、翌日の制作活動に支障が出た。そんな調子だ、既に二人がただの主人と従者であるなんて納得できる人間はいないだろう。
 それでもなぁ、と秋晴は頭を悩ませた。
「……そこら辺に関しては朋美、お前が一番よく知ってたろうが」
「それは……」
「何のことですの?」
 朋美も知る秋晴とみみなの接点。秋晴が転入してきて最初の従育科試験。秋晴とみみなを接近させた最初の出来事で、それを仕組んだのは朋美である。
「他にも一緒にピナの手伝いもしてるしな。 そもそも執事ってのはそういう手伝いもひっくるめて執事だと思ってるから俺にしてみればいい経験だし、やるからにはできる限り力になりたい。 だから個展の手伝いもしたってだけだ」
 桜沢みみなの交友関係は狭い。元々生徒数の多くない白麗陵であるが、本人の知名度が高いせいと本人の性格が相まって友人が少ない。その少ない友人は秋晴を起点にしたピナだったりともかく秋晴との接点が多いのも事実だ。
「………一応理屈は通ってますわね」
「………ですね」
 笑顔のままの朋美に対してセルニアは明らかに苦虫を噛み潰したような顔をしている。明らかに納得はしていない顔だ。
「理屈も何も事実だっつーの」
 嘘は言ってない。その先の本当を伝えていないだけだ。そんな状況に少しだけ負い目を感じつつとりあえずは切り抜けれたかな、と秋晴は溜息をついた。

19 :
「で、実際はどうなのよ」
 セルニアが鳳と用事があると退席してしばらく、無言で座っていた朋美が口を開いた。
 周りの視線がある場所だからか笑顔だが、先程までの笑顔とは微妙に違い、その裏に本当の感情が見え隠れする。本性を知る秋晴にしか分からない笑顔――というよりは本性を知る秋晴に向けられた笑顔と言うべきか。その裏には先程まで以上の不機嫌が窺える。
「……実際って何だよ」
 彼女の怖さは知っている。というよりセルニアと言う外面を気にする要素が減った分、より一層のプレッシャーに押しつぶされそうになる。秋晴は負けるな俺、と平静を装った。
 そんなうちの葛藤を知ってか知らずか朋美は小さく溜息をついた。イライラを通り越して呆れかえっているのかもしれない。
「………強情ね」
「強情も何も……むしろどう説明したら分かってくれるんだよ」
 嘘をついていることに対して負い目がある。自分が隠すと決めたこと、自分が守ると決めたこととはいえ朋美をはじめとする友人たちに嘘をつくのは心が痛んだ。
 秋晴が意識的に避けている為に同じ会話が繰り返されている、というのもあるが今年に入ってからずっとこんな会話、状態が続いていた。秋晴としては前みたいに過ごしたい。互いの関係が変わった訳ではないのだが、まるで自分だけ対岸にいるように距離を感じる。
「ただ絵の手伝いをしてるだけ、か……」
「ああ」
 窓の外は赤く染まっていた。外を見ている朋美の顔は秋晴からでは見えない。
「あれだけ四六時中一緒にいて、ね」
「…………ああ」
 その言葉は独り言のように、小さく呟かれた。
 普段から感情の分かり難い朋美だが今日はいつも以上に分かり難い。彼女のことは知っているつもりだ。それは幼馴染がどうとかではないし、自分が知らない空白の数年は彼女を普通の女の子から社交界の令嬢に変化させた数年であるたから彼女の全てを知っている訳ではない。
それでも彼女の本性、いや本質は自分が分かっているつもりだった。ただ今の朋美の背中を見て、それは思い上がりだったのかもしれない、と秋晴は感じていた。
「秋晴」
 ぼーっと考えていた秋晴を引き戻したのは凛とした朋美の声だった。
「何だよ」
 先程まで考えていたことが知られる訳でもないのに少しだけ恥ずかしくなり、取り繕って答える。
「どうしたの? まあ、いいわ。もし桜沢さん……いや、他の人でもいいや。白麗陵の誰かと付き合うことになってもそれを周りには言わないわよね?」
「結局そう言う質問かよ……」
 自分が原因とは言えウンザリするくらいの会話のループ。何度目だろうか、秋晴は溜息をついた。
 もう大人しく隠すのを止めた方がいい気がするくらいにしつこい。どうしてこんなにも諦めが悪いのだろうか。
 とにかくどうにかこの終わりないやり取りを終わらせるために――
「答えれないの?」
 秋晴はずっと逸らしていた視線を朋美に向け、正面からその顔を見た。外からの光は一層傾き朋美の顔ははっきりと見えない。朋美の瞳だけが暗闇の黒猫のように光っている。  
「それとも答えたくないの?」
 一言、口にすればいいだけだ。何でもいい。とにかく何かを言えばいい。そう思いながらも秋晴は固まっていた。蛇に睨まれた蛙というよりは、上手く表現できないが恐怖では無い。目が離せない、逸らすことを体が拒否していた。

20 :
「秋晴がもし白麗陵の誰かと付き合うことになったらきっと誰にも言わないと私は思ってる」
 その言葉は先程までとなんら変わらない口調で
「共学になって一年目、従育科ができて一年目、そんなことになったらああやっぱりって言われるだけ」
 その台詞はいつも通りの彼女ので言葉で。
「それに秋晴自身の評判は決して良くないから、だから相手の評判を気にして付き合ってることを隠す」
 それでもなぜか秋晴の脳を直接揺らすような台詞だった。
 秋晴から朋美の顔は見えない。そして普段通りの彼女の口調からは怒りも悲しみも喜びも何も感じない。事実を淡々と報告している新聞記事の朗読のようだった。
「……だろうな」
 短い沈黙の後にどうにか肯定の言葉を口にする。彼女に圧倒されることなんて日常茶飯事である。それどころか他の誰かに押し切られることは多い、恥ずかしい話だが。しかしそれは相手の感情に呑まれることがほとんどだった。
 喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、勢いに押し切られたり冷たい空気に黙ってしまったり。でも今の状況はそれのどれでもない。今の朋美の感情が秋晴は分からなかった。
「相手を気遣って……自分をして相手を立てて…………それは親切というか……なんだろ、責任感…なのかもしれないわね」
 朋美はそのまま一方的に固まった秋晴へと言葉を投げかける。少しずつ言葉を選びながら。
 それは秋晴に対しての言葉であると同時に自らに確認しているような話し方だった。
「ねぇ、それは私達に対してもするの? セルニアさんや大地君、四季鏡さんや……ううん、違う」
 
「私に対しても同じなの?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうしたの?」
「あーいや、大丈夫だ。 ちょっと考え事してて」
「……ならいいけど」
「…………にしてもすごいな、ここ」
「うん、まさかみみなもこんなにすごい場所を貸して貰えると思ってなかったの」
 秋晴とみみながいるのは白麗陵内の小さな小屋だった。小屋と言ってもログハウスのようなものではなく詰め所、と言った方がいいかもしれない。
 寮から歩いて十分ほどの場所にある小さな家。
 中には多くの画材や絵、様々な道具が運び込まれておりその中心にある大きな四角いクッション(イスかもしれない)に二人は座っていた。

21 :
「鍵は深閑センセイが預かっててみみなしか借りちゃダメだって。 あと、大きなものを入れたい場合は必ず申請することだって」
 ここはみみなのために用意されたアトリエだった。一生徒のためにそこまでするのか、とも秋晴は考えたが白麗陵ならやりかねない。それに今回の個展で桜沢みみな個人の名声だけでなく白麗陵の評判も上がったようで特別扱い、ということなのだろう。
ある意味アイシェも特別扱いだし、そこまで特例でもないのかもしれない。
「で、ベッドと冷蔵庫…台所に浴室まであるのはなんでだ?」
 今いる部屋に加え、キッチンにバスルーム、寝室まである。本来の寮から十分ほどしか離れていないのだからキッチンはまだしもバスルームや寝室はいらないだろう。
「元々警備さんのお部屋だったらしいの。 といっても数年前から使ってなかったらしいけど」
「あー……」
 警備の部屋、おそらく白麗陵内の守衛室だったのだろう。今でこそ防犯カメラや各種センサーがあるが由緒正しき白麗陵とはいえ昔からそんなものが完備されていた訳ではなかったのだろう。取り壊してなかった小屋を綺麗にしてそのまま使った、という事なんだろう。
深閑に直接聞いた訳ではないので全て推測だが。
「家具とかは泊まったり夜の時間も活動できるようにって用意してくれたの。 泊まる場合は前もって鍵を返せないのを言わなきゃいけないのとお休みの前の日しかダメなんだけど」
「はー……」
 みみなが信用されていると言うのもあるんだろう、ほとんどその扱いを一任されているようだ。基本的には好きに使っていいらしい。そしてその管理をみみながやると思われていないだろうことも裏に見え隠れする。というか俺がやるって見抜かれてるんだろうな。
先週深閑に呼びだされ、復習と称した炊事洗濯掃除メインのマニュアルを読まされたことを思い出す。
「なんつーか……至れり尽くせりだな」
「うん」
 みみなは秘密基地ができた子供のように嬉しそうな返事をする。対して秋晴はその肩に乗せられた見えないプレッシャーを感じ、少し気が重くなったり、みみなはともかく自分のためにここまでやってもらえたことに引け目を感じていた。
「んでさ、今日はてっきり掃除の手伝いとか持ってくる画材でもあると思ったんだけど……俺は何すればいいんだ?」
 秋晴が来た時点で大量の画材は既に部屋にあり一つ一つ整理されていた。荷物が入っていると言うことは当然掃除もほとんど終わっている。キッチンや寝室も新品のものが綺麗に用意されていた。
 秋晴がすることと言えば今後のために家具や配置を確認することぐらいだがそれもすぐに終わってしまっていた。
 が、待っていても返事はなかった。代わりに秋晴の体が小さな手に包まれる。座ったままの格好でみみなに後ろから抱きしめられたのだ。
とりあえずここまでです。またエロまでいかなかったああああああ。
続きは後日。
なるべく早くします。

22 :
乙&GJ
相川らずみみな可愛いし朋美も切なげで良い感じでした。
続き期待。
ところで最近のここのSSは文体的にも内容的にも原作に近くて読みやすくて素晴らしいな

23 :
乙乙
みみなSSなのに朋美にくらっと来たけど後ろから抱きしめられるとか反則過ぎる
お泊りとかもう同棲じゃね?ピナが突撃してこないと爛れた性活にwww

24 :
むしろみみなSSなのにみみな出てないことを後悔するべきだった。
気づいたらどころか完全にみみな×秋晴←朋美
『This is my daily life』
「みみな?」
 秋晴は振り向かず、その手をほどかずに聞き返す。それは疑問であると同時に答えが分かっているのだからただの意地悪だ。
「………分かってるくせに」
 それを察してかみみなも少しだけ膨れたように呟く。もっとも恥ずかしさが勝っているのかその声は小さかった。
「そんなことしたらこの場所使用禁止になると思う」
 みみなが望むことは秋晴が望むことだし、秋晴が望むことはみみな望むことである。しかしだからと言ってその望みをそのまま受け入れる訳にはいかない。が、しかし秋晴の否定的な言葉を聞いたみみなの手が力無く離れていく。
 何事かと思い、秋晴が振り向いてみみなの顔を見ると――そこにはこの世の終わりを見たかのように落ち込んだ少女が一人。
「…………そんなに落ち込まないでくれよ」
 今にも零れ落ちそうなほどの涙を瞳に溜めて潤ませ、さらに唇はプルプルと震えている。余りの反応にこちらが悪者になった気分だ。
「べ、別に……」
 何とか絞り出したであろうみみなの声は震えている。そんなにもショックなのか、と秋晴は小さな溜息をつき、みみなの顔に右手を伸ばす。
 優しく頭を撫でる。猫のような柔らかい髪が心地いい。ずっと撫でていたいくらいだ。
 しばらくしてみみなの表情が緩み、落ち着いた。目を閉じて頬を染め、照れ臭そうに秋晴の手の感覚を楽しんでいる。
 その様子を見ながら秋晴は右手をすばやくみみなの頬まで下ろし、そのまま眼を閉じて唇を重ねる。
 数秒間の軽い挨拶のようなキス。
「ま、バレなきゃいいんだけどな」
 とからかうような笑顔をみみなに向ける。
 目の前のみみなは驚いたように目を丸くして、頬を更に赤らめる。
「……いじわる……」
 頬を膨らましながら訴える言葉はどうしても年相応に見えない子供の仕草である。
「みみな」
「…………なに?」
「大好きだ」
「う……ずるい……」
「みみなは?」
「もちろん」
 みみなは秋晴の胸に飛び込むように頭を預け、その体に手を回す。
「大好きだよ」
 秋晴は胸の中から聞こえてくる声に確かな幸せを感じた。
「さて、んじゃ移動しますか」
「うわっ」
 秋晴は言葉と同時にみみなの背中と太腿に手を入れて立ち上がる。いわゆるお姫様だっこの状態だ。
 みみなは少しだけ驚き、目を閉じて体を秋晴に預ける。

25 :
 それを合図に秋晴は歩き始めた。
「そういえばさ。 前から聞きたかったんだけど」
「なぁに?」
「みみなってよく目を閉じるよな。 まだ恥ずかしいのか?」
「え? あ、ぅうーん、と……」
 手からみみなの緊張が伝わる。言い難いことなのだろうか。
「あ、無理に聞きたいわけじゃないから」
「別に隠すようなことじゃないんだけどね」
「そうなのか?」
「うん。 まあ、恥ずかしいのもあるんだけど……目を閉じるとはっきりするからかな」
「…………はっきりする?」
「触られてる手の感覚とか、抱きしめられた時の体温とか……」
 相当恥ずかしいらしくみみなの声が少しずつ小さくなっていく。
「下ろすな」
 そんなことを話している間にベッドに辿りつく。秋晴はみみなを優しく下ろし、ベッドの端に座る。
「制服が汚れて…ん」
 制服が汚れても困るから先に脱ぐか、という秋晴の提案は途中で遮られた。
 ベッドの上にペタンと座り込んだみみなに顔を抱きしめられる形で振り向かされ、そのまま唇を奪われたのだ。
 柔らかい唇の感触が伝わりそのまま口の中にみみなの小さな下が伸びてくる。
「ん……ちゅ、っつ……」
「ん……はぁ……」
 先程のキスとは違う舌を絡ませた濃厚なキス。元が仮眠室なのだろうか、そして広くない部屋に二人の吐息と湿った音が響き渡る。
 キスをしながら首に回されたみみなの左手が秋晴の心臓の腕を撫で、右手に向かう。秋晴はそれを迎え入れるように右手で包み込み、指を絡ませる。
 掌に力がこもる。それはきっと互いに待ちきれないという意思表示。
 秋晴は空いた左手でみみなの右手を優しく解いてからみみなの顎を持ち、彼女の体を離す。
 深いキスは終わりを迎え、互いの唇から透明な糸が伸び、ゆっくりと繋いだベッドに落ちる。
 みみなはそれを満足そうに眺めていた。
「制服が汚れると困るからちゃんと脱ごう、な?」
「………はい」
 子供に言い聞かせるように言うと秋晴はモーニングコートを脱ぎ出す。
 タイを緩め、上着とシャツを脱ぐ。ズボンを脱いだところでふとトランクスまで脱ぐべきか迷い、チラリとみみなの方を見る。

26 :
「…………」
「…………」
 みみなも下着姿で秋晴を見ていた。どうやら互いに最後の一枚(みみなは上下二枚だが)をどうするか迷っていたようだ。
 こういう行為は流れがあるし、慣れるほど行っていても勢いが無くては始められない。微妙な雰囲気で止まってしまった場合はきっかけが必要だ。秋晴はそのきっかけを作るのが苦手だった。
 それはこういう行為自体に苦手意識、とまではいかなくても積極的になれない理由があるからだ。理由は二つ、行為の頻度ととみみなの容姿である。
 付き合い始めてから秋晴とみみなのそういう行為の回数は多い、秋晴はそう考えている。世間一般がどうか知らないが、付き合い始めてから週に三日はことに及んでいた。必ずしも最後まで…という訳ではなかったのだが、白麗陵という環境においてこの頻度は多い。
 思い当たる節はいくつか、作品制作につきあってほぼ毎日一緒にいたこと、そもそも始まりの日にそういう行為をしてしまったこと、最初が外だったために外でも気にならなくなってしまったことなどなど。
とにかく回数が多い気がするし、まるでそのために会っているんじゃないかと言われてもおかしくないくらいだった。もちろん秋晴だって嫌な訳でないが、そもそもまだ高校生であるからそういう行為はもう少し自粛するべきだと思っている。
 そしてもう一つの理由はみみなの容姿が原因の背徳感だった。みみなの容姿、それはお世辞にも十九歳とは思えない小学生と見られてもおかしくない体型、言ってしまえば子供なのだ。頭では年上だと知っているし、秋晴としては相手を子供などとは思っていない。
しかしどうしたってその見た目に影響されるし、それ相応の行為をするとなれば犯罪を犯しているような背徳感を持たざるを得ない。
 今だってそうだ、簡素な白の下着に包まれた体は女性特有のものと表現するべきより少女特有と表現すべきだ。
 胸は思春期の少女のふくらみかけでそれは小さいと言うよりは成長途中という表現が正しい。腰や太腿の肉付きは女性の指に張り付くような柔らかさではなく、少女のプニっとした指を弾く柔らかさであるし、そもそものパーツが細くて美しいと言うよりは小さくて可愛らしい。
 今伸びてきているこの手だってそうだ。手のサイズは身長の近いピナや朋美、セルニアと比べたってそこまで大きな違いはない。しかし、その掌から来る印象は小さな子供のようで――あれ?
 とそこまで考えて秋晴は気付く。秋晴が自分の押しの弱さを尤もらしい理由で肯定しようとしているうちにみみなの手が秋晴の腰、正確にはその下着の中にあるモノへと伸びていたのだ。
「ちょ……」
 動揺した秋晴を無視してみみなはそのまま手を伸ばし、トランクスを下ろす。
「んー……もうおっきくなってるね」
「………嬉しそうだな……」
 下着から出てきたモノを見て、恥ずかしそうにみみなは喜ぶ。対して秋晴はそんなみみなに呆れ、更に散々女性というより少女と表現するべきだ考えたみみなの下着姿だけで元気になっている自分に呆れる。
 情けない、そう思いながらも秋晴はみみなの顔を引き寄せて、先程よりももっと深いキスをした。
 ちゅぷちゅぷと唾液の水音が響き、互いの吐息が漏れる。
 それはキスと言うよりは深い深いクチヅケ。互いを貪るような、互いの口内を刺激し合うクチヅケ。そしてそれが始まりの合図となった。
 秋晴はクチヅケをしながらみみなの胸に右手を伸ばす。慣れた手つきで胸にあるブラを外し、その胸を優しく撫でる。
「ん……」
 小さな反応とともにみみなの鼓動が速くなるのが分かる。優しく包み込むように触れると柔らかい胸の奥からトクントクンと脈打つ心臓の感触が心地いい。
 ふくらみを確かめるように指を這わせる。本人は小さいと気にしているが秋晴は体つきからすれば妥当だと思うし、手のひらに収まり自由にできるほんのりとしたみみなの胸が好きだった。

27 :
「んぅあ……」
 胸の感触を楽しんでいると外に出ているモノの刺激に情けない声を出してしまう。秋晴と同様、みみなが手を伸ばしてきたのだ。ただし胸では無く、先程トランクスから解放されたモノに。
 硬くなり大きくなった竿、そして先端の部分を小さな掌で包まれ、丹念に撫でられる。本来ならいくら準備ができていても痛い行為であるが、みみなは既にどこまでが痛みでどこまでが快感になるのかを知っている。
 そして更に感じる違和感。みみなの小さな手は明らかにぬるっとした粘液で覆われている。秋晴からでたものではない、ならばそれは何なのか。一つしかないな、と思い秋晴は空いた左手を伸ばす。
 前からではなくみみなの背中側から左手を回し、下着の中に手を入れ、みみなの秘所へと辿りつき、心の中で驚く。そこはもう準備ができていて、ただ割れ目を触るだけだったつもりが指がツルンと入口に導かれてしまう。
「んぁ……ぁんっ……」
 胸だけではなく体の芯から来る快感でみみなの口が離れてしまう。
「みみな……濡れ過ぎ」
「だ、だってぇ……」 
 既に二人の声はいつも通りの声では無い。互いが互いにしか見せない心の底から出す悦びの音。
「脱がすぞ……もう遅いけど」
「……うん」
 秋晴は手早く脱がすとみみなの背中へ左手を回し、そのまま下へと伸ばす。右手を胸に、左手を秘所に置き、みみなを抱きかかえたような格好になる。
 みみなは胡坐をかいたの秋晴の足の中に座り、その手で秋晴のモノを撫でる。
 掠れる吐息、唾液よりももっと粘着質の液体の音が互いの体から聞こえてくる。
「気持ち、いい?」
「もちろん」
 みみなの愛液で濡れた手は秋晴の先から少しずつ出てきた液体と混ざりあい、更に秋晴の体を刺激する。徐々に強くなる感覚に体が高ぶるのを感じる。
「みみなは?」
「……えっと……」
 聞き返す言葉にみみなは答える余裕がないのかはっきりと言葉にされない、が少しだけ違和感を秋晴は感じた。みみなの体から感じるのは余裕がないと言うよりは小さな不満。
「ああ、ゴメン。 ここもか」
「ああああっ!」
 胸に伸ばしていた右手に力を込めて、その指の間に硬くなっている中心部を挟む。するとみみなの体がビクンと跳ねる。一瞬だけその手の動きが止まる。
「強かったか?」
「いきなり、だったから……大丈夫」
 その言葉とともにみみなの手が再び動き始める。
 無言で互いの体を愛し合う。時折思い出したようにどちらからともなくキスをするが集中できずに離れてしまう。
 触れている部分は多くない、抱きあっている訳でもない。それでも全身が溶けて互いに一つに繋がったような錯覚に陥る。
 ただ、それでもその先を知っている人間には物足りなく、この行為すらただの準備だ。
 秋晴はみみなの入り口を撫でていた左手の触れ方を変える。唇を撫でるように触っていた手に力を込める。人差し指と中指の二本を中へと入れる。
 二本の指はクチュリと水音を立てるとみみなの中へと吸い込まれる。
「ふぁあっ!」
 先程よりも強い反応でみみなの体が弓形に反る。その瞳はトロンとして焦点があっておらず、口の端には唾液が少し。唾液が顎を伝って下に落ちる前にキスで吸うと、秋晴はわざと意地悪そうに質問をする。

28 :
「イったのか?」 
 その言葉で我に返るとみみなは真っ赤な顔を秋晴に押し付け、隠すようにして「……少しだけ……」と小さな声で呟く。
「……ひ、久しぶり、だった……かんっ、あっ……」
 みみなの言い訳は秋晴の手の動き、そして彼女自らの体から響く水音によって遮られる。胸とその中心、そして下半身の中と外で感じる部分を刺激されているのだから無理もない。
 みみなの中はその体のわりに大きい。いや、大きいと言うよりは中が広い、と秋晴は思っている。自分はみみなしかしらない訳だが四十センチ近い体格差で、決して小さくないだろう自らのそれを根元まで飲み込めるのだから。その広い中を更に広げるように指を入れる。
 壁をなぞるように、奥を撫でるように、みみなの中を暴れまわる。
「ひっ、ぐぅぅ……」
 敏感になったばかりの体を更に快感が襲い苦しそうな声を出すがこれは悦びの悲鳴であることを知っている秋晴はその指を止めることはない。徐々にその動きを激しく、その中の全てを撫でるように動かす。
 それどころか親指を動かし、既に硬くなっている小さな突起を探し当てる。そのまま親指の腹を押し当て、三本の指でみみなの体を挟んで持つように刺激する。それも座ったみみなの体が少し浮いてしまうくらいに強く。
「〜〜〜〜っ!!!!」
 もはやみみなの反応は声にならない。快楽に耐えるために体はしなり、既に止まっている手は秋晴の太腿を強く握りしめている。先程よりも強い衝撃にガクガクと小さな体が揺れるとそのまま倒れ込む。
 白い体は全身が火傷しそうなくらいの熱を持っており、朱に染まっている。呼吸は完全に乱れてその体重を全て秋晴に預けている。
 秋晴はしまったと思い「…………やり過ぎたか?」と聞きながら優しくみみなの体を抱きしめる。
 話すのも辛いのだろうか、胸の中でみみなの頭が小さく縦に振られると調子に乗り過ぎたことを理解する。
「ごめん、俺も久しぶりだから、つい……」
 少しでも落ち着くようにと右手を頭に乗せて優しく撫でる。
「……激し過、ぎだよ……嬉しい、けど………激し、過ぎ………」
 途切れ途切れの言葉。反省したばかりで抑えた気持ちが膨れ上がる。そして同時にそれはみみなの体へ集中していた意識を自らへと引きもどしてしまう。
「もう……我慢でき、ないよね……?」
 確かめなくても分かる。秋晴のモノはみみなの愛撫、そしてみみなの乱れた姿によって痛いくらいに膨れ上がっている。
「………みみなも、もう…指じゃ我慢できない………」
 みみなはゆっくりと顔を上げ、秋晴の胸から彼の顔を見上げる。その目は既にいつもの少女の目では無い。完全にスイッチが入っている秋晴だけのみみなの目だ。大きな瞳は底から来る快楽と内から来る感情に耐えきれず艶やかに水気を帯びて秋晴の顔を映し出している。
「秋晴、くんのが……欲しいよ」
 潤んだその瞳に吸い込まれるように。
 呟かれたその言葉が神経を直に触れそれだけで達しそうになる。
 脳が揺れ、心臓が破裂し、四肢の感覚が消失し、みみなを愛する部分だけに意識の全てがいく。
 その全てで奪われてみみなを感じたい。
「俺もみみなに入りたい」
 それだけ言うと秋晴はみみなの体を抱きしめてそのまま小さな体を持ち上げる。
 膨れ上がった秋晴と濡れて待ちかまえているみみな、二人の敏感な粘膜がピトリと触れ合うとそのまま繋がる。

29 :
 限界まで大きくなっていたモノがそのまま一気に最奥へと導かれる。
「うぁ……ぁん」
 みみなの口から空気が漏れる。秋晴も予想以上の快楽に歯を食いしばる。
 先程まで指で広げられていたにも関わらず、みみなの中は小さく戻っていて入った際にズブリと壁が削れかと思うほどの抵抗を感じる。そして秋晴を受け入れた瞬間に抱きしめるように収縮をする。みみながまた達したらしい。
 秋晴もその抱擁に一瞬で達しそうになる。それを避けるためにもみみなの中を指で広げていたのだが無駄な抵抗だったようだ。
 みみなの体の震えが止まるのを確認すると秋晴はみみなにキスをして、その体を抱きしめる。興奮している体を一度落ち着かせるようなキス、理性を取り戻すためのキス――そしてそれはこれから先は果てるまで止まらないと言う合図。
 みみなは答えるようにその手を秋晴の背中に回し、強く強くしがみつく。繋がっている部分だけでなく、胸も腰も腹も全てが触れる。
 触れた部分から相手の熱が伝わる。触れた部分から相手の想いが伝わる。
 もっと感じたい、もっと知りたい、もっと触れたい。
「ぁん……ぅあぅ……」
 秋晴の動きに合わせみみなの口から微かに漏れる矯正。それは徐々に力のない虚ろなものへとなっていく。秋晴に痛いくらい巻きついていた腕も徐々に力が抜けていく。
 反対に秋晴の動きは徐々に力強く、速く大きくなる。互いが求めるものへと近付くために。
 焦点の合わない力の抜けた瞳、気持ち良さそうに呆けて開いた半開き口、高揚して真っ赤になった顔、その全てが愛おしく、残った理性を駆逐する。
 秋晴はその口内に舌を伸ばす。するとみみなは目を閉じて秋晴の口内へとその小さな舌を侵入させてくる。まだ自分は物足りないと言っているように。
 それに答えるように秋晴は何度も何度も体を動かし、みみなの入り口を、その壁を撫で、その最奥にあるモノへのキスを行う。
 互いの体液の粘度が上がり過ぎて音が小さくなっていく。グチュリと鳴っていた水音は小さな低いボジュとした音に変わり秋晴とみみなの肌の音に掻き消されるくらいだ。
「ん……はぁ…みみな……んぅ……」
「……いぃ……よぉ……きてぇ……」
 口を離さずその舌を絡めながら互いの限界を確認すると秋晴は動きを変える。常に上下させていた体を奥に触れる際に止め、自らの先端とみみなの奥をくっつけすり合わせる。
「あああ」
 最後の刺激を受けみみなの体が力を取り戻す。それは手だけでなく、秋晴を包み込んでいる部分、そしてその最奥すらも秋晴を求め吸いつくようになる。
 徐々に最奥での時間を長くしていく。それはまるで始まりに徐々に長く長く何度もしていたキスのようだ。
「くぁ……でるっ!」
「ぅんっ、うんっ!」
 言葉とともにその全てをみみなの一番深い場所へと注ぎこむ。
 二人の体が何度もビクンと動き、しばらくして止まる。
 荒い息をしながら口を少しだけ、数センチだけ離し、互いの目を見る。
「愛してる」
「みみな、も」
 そう言ってもう一度キスをした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
 激しい行為が終わった後、二人はそのまま眠ってしまった。
 意識が覚醒したのはピピピピという電子音。鳴っているのは自分の携帯ではなくみみなの携帯からのようだ。時間を見ると寮に戻るべき時間の四十分程前。

30 :
 自分の横でゆっくりと覚醒して携帯のアラームを止めているみみなを見ながらこういうところは抜け目なくしっかりしているな、と感心しつつ明らかにそのつもりだったんだと複雑な気分になる。
 一緒に入るのは恥ずかしいというみみなの意見を受けて準備のかかる(であろう、理由:女の子だから)みみなを先にシャワーへ送り出すと、汗やシワや口には出せないもので洗わざるを得ないシーツの処理をする。
 そのそも置いてあるのがダブルベッド(二段)だけ。更に寝具は一式が三つもある。いろいろバレてしまっているんだろうな、これは深閑の忠告兼配慮なのか、もしくは楓辺りのいたずらなのか。
 少しだけ考えて意味がないと悟りそのままありがたく使わせてもらう。表示を軽く確認し、手早く処理。授業で習っていることが役に立って少し嬉しくなる。
 ゴウンゴウンと回る洗濯機を見ながら秋晴はぼーっと考える。結局流されてしまったこととかそれでもやっぱり気持ちよかったこととか今日はみみなはどうだったんだろうか、とそこで重大なことに気付く。
 今日は突発的なものだった(秋晴はすることを考えてなかった)
 今日初めて来た場所であり、あるのは家具や食器などの基本的な調度品のみだった。
 流されてそのまましてしまった。
 秋晴はすぐさま浴室に走りそのドアをガラリと勢い良く開け――
「みみなっ! さっき俺思いっき――
 ゴン。と鈍くて硬い音が響いた。
 秋晴の言葉を遮ったのは用意されたプラスチックの手桶だった。もちろん投げたのは既にタオルでその体を隠しているみみなだ。
 みみなは飛んできた手桶に茫然としてドアを閉める気配のない秋晴を見ると一言だけ低い声を出した。
「入浴中」
「ス、スマンっ! って、それどころじゃ――
「入浴中」
「…………ゴメンナサイ」
 秋晴は足元の手桶を中に入れ、ドアを閉め外に出る。桶の当たった頭が痛い。
「それで…どうしたの? 女の子の入浴中に飛び込んでくるほど慌てて」
 先程よりはマシだが明らかに機嫌が悪くなっている声が聞こえる。
「えと、いや……ゴメン」
「……いいよ、何か大事な用事があったみたいだし…」
「いや、そうじゃなくて……さっきなんだけど」
 どうやら伝わっていないようで秋晴の謝罪も浴室を覗いた(突撃した)ことに対してだと思っているらしい。
「……中で、しちゃったろ」
 そう、秋晴が気付いた重大な問題とはそれだ。最初の時こそ生でしてしまったがそれ以降、行為をする時はしっかりと避妊具をつけていた。それはお互いのためにと当然の行為だった訳で無い時はしていなかったのだが、今日は勢いに負けてそのまましてしまったのだ。
 まだお互いに高校生であるし、それ以外だって問題は山積みだ。将来的にそういう関係になったとしても今は注意するべきだ。
「ああ、大丈夫だよ」
「大丈夫って……だって……」
「みみなは今日は大丈夫な日だから」

31 :
「…………大丈夫な日?」
 深刻な顔をしている秋晴の耳に届いたのはいつも通り明るいみみなの声だった。
「安全日って言えば分かりやすいかな? もちろん百パーセントじゃないけど、ちゃんとみみなは基礎体温だって測ってるし、そういうのは気にしてるから」
 安全日。基礎体温。秋晴もその単語は知っているし、そもそも「主人の体調管理も重要な仕事」と授業でいろいろと習っている(他の男子が真っ赤にしている中、轟だけは興味心身で興奮していた)
 急に出てきた単語を頭で噛み砕き、理解すると大きな溜息をついた。
「安心した?」
「ああ、言ってくれれば……といっても俺も流されてたからみみなを責めるのは筋違いだけどさ」
 考えなしな自分、焦った自分、そして今安堵している自分の全てを情けないと思い再び深い溜息をつく。
 とりあえず懸念したことは一応は大丈夫なようだと安心し、秋晴はその場を離れようとする。
 そこでふと、みみなのいる方、浴室のガラスを見る。
 磨りガラスガラスは曇っていて見えるのは明かりと人影だけ。
 そこで秋晴は気付く。
「スマン。 勘違いはしないで欲しい。 嫌な訳じゃないんだ。 まだ責任が取れないし、今は流石に不味いから……」
「大丈夫、みみなだって分かってるよ。 ちょっといじわるしたかっただけ」
「………ならいいけど…」
 返ってきたみみなの声はやはりいつも通りのもので、ただその行動自体はいつも通りのみみなではないようなズレを感じる。
 秋晴は少しだけ考えてそのままその場を後にした。
 みみなの入浴の後、秋晴がシャワーを浴び、シーツを干し、そのまま二人で寮へと向かった。日はもう落ちていて暗いため、互いに手を繋いでいる。
「やっぱりさ……」
「ん?」
「みみなって……」
 秋晴が控えめな声で呟いた。とても言い難そうに。
「みみなって?」
 急に言われて何の話か理解できないみみなはきょとんとしている。
「…………何でも無い」
 秋晴は何度かみみなの顔色を疑いその度まで出かけた言葉を内に止めた。
「……気になる………」
 みみなは振られた話をそのまま引っ込められて肩すかしをくらったような気分になる。しかもさも何かありそうな雰囲気で何でも無いと言われれば気になるのは当然だ。
 歩きながら無言で不満な視線を向ける。
 ああ、思わず口に出してしまったがうっかりしていた。恋人の無言の圧力が辛い。仕方ない、と秋晴は思い――
「いや、多分言ったら怒る」
 ――と正直に答えた。
 ああ、また「もう、なにそれっ!」とか頬を膨らませながら怒られるんだろうなーと思っていたが予想した反応は来ない。繋いでいた手がスッと静かに話される。みみなが歩くのを止めてしまったからだ。
 秋晴が振り返ると少し離れた位置にみみなが立っていた。
「ん?どうし……」
 秋晴は振り返りながら謝罪の言葉を口にしようとしたがその言葉は最後まで言えなかった。
「………怒るようなこと言おうとしたの?」 
 秋晴は口をパクパクと固まってしまう。

32 :
「…………………」
 セルニアの激しい火山のような怒気とは違い分かりやすいものではない。
「何を言おうとしたの?」
 朋美の冷たい吹雪のような怒気とは違い心を擦り減らされるものではない。
「何を言おうとしたの?」
 自分の意識を持っていかれそうな感覚。
「何を言おうとしたの?」 
 三度同じ言葉が告げられる。
 かつて初めてその状態の彼女見た時、みみなだと秋晴は思えなかった。普段の明るい様子はなく、目は笑っているが焦点があっていない。一瞬で空気が重くなったのを覚えている。
 みみなと付き合うようになって知った隠れた一面――本気ギレモードだ。
 秋晴は覚悟を決めて思った言葉を口にした。
「…………いや、結構エロいよなーって」
「ぅえっ!」
 予想していなかった秋晴の言葉に一瞬でみみなの様子がいつもに戻る。同時にいつも以上に慌てだす。暗くて距離もあるのに顔が赤くなっているのが分かる。
「あ、いやさ。 今日とかも一週間も間空いてなかったと思うんだけど……」
「そ、それは……」
 先程までの不機嫌はそれどころじゃないらしく、恥ずかしそうに秋晴と距離を空けたままだ。
「それは……?」
「………不安、なんだよ…」
 小さな声で、寂しげにみみなは呟いた。
「………不安?」
 秋晴は首をかしげる。彼女が震えているのが分かる。
「キミはさ、みんなに優しいし……みんなと仲がいいから」
 俯きながら、小さな小さな声でみみなはそう言った。
「……………」
 秋晴はその言葉、その表情で全てを理解する。この二カ月でみみなと自分の距離は近くなったと思っていた。現に近くなっていた。それでも、それでも二か月前と変わっていないものがあったのだ。
 自分の大好きな彼女を不安にさせている自分に歯がゆさを感じながらも、その不安を掻き消せるのは自分だけだと知っている。
 空いてしまった距離をつめ、みみなを抱きしめる。寒さでは無い別の理由で震えていた彼女をぎゅっと強く抱きしめる。
「俺が好きなのはみみなだけなんだけどな」
 耳元で優しく、それでいてはっきりと伝わるように自分の気持ちを言葉にする。
 緊張からでは無い、世界で一番大切なものを抱きしめている興奮から鼓動が速くなる。
 それはみみなも同じなんだろう。トクントクンと感じる音が心地いい。
「ぅうー……知ってるけど……」
 顔を見なくてもどうなっているのかが分かる。ただ、それは自分も同じだ。
 秋晴はみみなの震え収まるのを確認し、「さ、遅くなる」と言って手を繋いでまた歩き出す。みみなも安心したように小さく頷くと秋晴の手を握りしめて歩き出した。
 見上げると冬の澄んだ空気の中で、真っ暗な夜空に星が散りばめられていた。
 ただ秋晴が考えていたのは美しい星では無くて、深い深い天井の無い夜空のこと。澄んだ空気のせいでより一層その深さを感じる。澄んでいるからこそ見えないその先。
 彼女の不安を消すために自分がしなくてはいけないこと、そして彼女のために自分がしなくてはいけないこと。
 秋晴はそれを思い浮かべた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
 冬の日没は早い。故に空が赤らんだ夕暮れ時になっても下校時刻を過ぎてはいない。
 もちろんかといって生徒や教師は校舎に残っておらず、その殆どが寮の自室へと戻っている。
「何の用ですか? 話って」

33 :
 静かな教室、夕日以外の明かりは無く、黒と朱に染まっている。
 秋晴は声の主を見る。自分が呼び出した幼馴染、彩京朋美だ。
「……あーえーと……」
 覚悟を決めたはずなのに、覚悟が鈍る。一昨日、カフェテラスで何も言えずに分かれてからほぼ丸二日話してないからか。
「用がなければお暇させていただきますよ? 私も暇ではないですから」
 重たい空気が広がる。その口調は秋晴と二人の時の幼馴染ではなく、他人がいる時の優等生だった。
 自業自得だ、と口の中で呟きながら――伝えたい言葉を口にする。
「朋美」
 いつになく緊張しているのが分かる。一世一代の告白、と言えるほどのものではないかもしれないが秋晴の人生で一番重たい告白ではある。
 そんな空気を感じ取ってか朋美の方も身構えている。
「…………何」
 互いの息遣い、心音まで聞こえそうなくらいに静かな教室。
 少し動くだけで衣擦れの音が響く。
 喉がヒリヒリと痛い。つばを飲み込んでもそれは変わらない。
 少しだけ目を閉じて、目の前にいる朋美を見る。
「みみな先輩と付き合ってる」
 秋晴の言葉に朋美は顔色一つ変えない。それでも秋晴はそのまま続けた。
「まあ、バレてたのかもしれないけど……今更なのかもしれないけど、嘘ついてたんだ。 スマン」
 言いきって頭を下げる。それは謝罪というよりは怖くて朋美の顔が見れなかったから。
 長い沈黙が訪れる。誰もいない校舎というものはこんなにも静かなのか、月並みな表現だが泊まった空間のようで時間がいつもより長く感じる。
 頭を上げると頭を下げる前と何ら変わらない朋美がそこにいた。
「いつから?」
「去年の暮れ」
「秋晴」
「何だ?」
 いつも通りの二人。
 秋晴の緊張も清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟を持った告白もなかったように平然と淡々と交わされる会話。
「わざわざそれだけを言う為に私を呼び出したの?」
「ああ」
 朋美は溜息を吐いて、口を開く。秋晴を改めて見直してから。
「理由くらいあるのよね?」
「ああ」
 ゆったりと過ぎる時間。周りが静かだからか。それとも秋晴の感覚が緊張で狂ってしまっているのか。
 徐々に日は落ちて影が伸びる。いつの間にか窓際の朋美の影は秋晴の足元まで来ていた。
「あ、くだらない理由だったら分かってるわよね?」
「…………ああ」
 会話が始まってからずっと朋美の顔は変わらない。変わったのは口調くらいだろう。
 対して秋晴はその表情も言葉も緊張のせいか定まらない。変わらないのは自分の覚悟くらいだろう。
「理由はいくつかあるんだけど……全部聞いてくれるか?」
「嫌だったら止めるわ」
「……了解」
 秋晴は今一度心を鎮めると朋美に話しかける。

34 :
「一つは白麗陵に来てから一番世話になってるから」
 秋晴は思いだすように語り出す。
「転入してきて、誰よりも世話になってるから。 覚えてるか?俺が着衣水泳で溺れて……っつーかあれはどっかの誰かが原因の事故だったけど……」
 一つ一つを懐かしむように。
「正直朋美がいなけりゃ辞めてたと思う。 馴染めず何も分からず、そもそも初日で変質者扱いだったからな、あれもセルニアのせいだったけど」
 一つ一つが大切な記憶だ。
 セルニアという言葉に朋美が少しだけ反応した気がしたが秋晴はそのまま続ける。
「もう一つは幼馴染として、かな」
 今度は照れ臭そうにその言葉を口にした。
「あー幼馴染じゃなくてもなのかもしれない。 なんて言えばいいだろうな……近いんだと思う」
「近い?」
 どこか照れつつ、言葉に悩みつつ、止めようと思っている耳の安全ピンを触る癖も意識せずに言葉を探しながら。
「うまく言えないんだ。 親しいというよりは近い。 お前には嫌な表現って言われるかもしれないけど、感覚が近いっていうか、お前とだけしか共有できないものがあるっていうか親友とかは違うし……」
 言いたい事がある、伝えたい思いがある。それを正しく伝えるために、一つ一つの言葉を選んで。
「やっぱ幼馴染ってのが一番いい表現だと思う」
 照れ隠しに少しはにかむように笑いながら。
「…………そう」
 上手く伝わったのだろうか、何というか旧知の存在というのはどうにもやり辛い。相手が朋美だからというのもあるのかもしれないが距離感が難しい。考えるのが苦手な秋晴には特にかもしれない。
 秋晴の言葉を聞いても朋美はそのままだった。
 教室に入った時のまま窓際に立っている。そこにいるのが当然と言うように、自然体で立っている。
「まだあるの?」
 会話は途切れていた、ただ終わってはいなかった。秋晴が本当に言いたかったことはまだ言えていない。
「先に言っとく」
「何?」
「別に俺は自惚れてる訳じゃないし、勘違いだったら俺を蔑んで罵ってくれてもいいから」
 それは秋晴の謙遜の気持ちと言うよりは臆病な結果、念のための逃げ道のような言葉。
 ここまで来ても言わないでおこうと言う気持ちが芽生える。自分は何も気付いていないんだ、何も知らないんだと逃げたい気持ちが。
 それでも前に一歩だけ踏み出す。
「俺は――お前の気持ちに答えられないから」
 その言葉を口にして最初に感じたのはやはり勘違いだったかという気持ちと言わなければよかったと思う後悔。
 次に感じたのは――自分の考えが正解だったと言う確信。
「どういう、意味?」
「いや、勘違いならいいし分からないならいい。 言っちまえば俺のただの自己満足だから」
 朋美は先程までと何も変わらっていない。
「どういう意味なの?」
「そのままの意味だよ」
 朋美の反応は何も無く、先程までと同じだった。怒ることも呆れることもしていない。
「俺は鈍感だけど、それでも好意を向けられてずっと気付かないなんてことは無いんだよ」
 それはいつか秋晴が彼女自身に言われた言葉。
「まるで私が秋晴のことを好きみたいな口振りね」
 自分に向けられた従姉妹からの明らかな好意。
「そう言ってるつもりだ」
 あの時の自分はずっと逃げていた。目を背けていた。
「最低ね」
「知ってる」
 朋美は先程までと何も変わっていない。
「セルニアさんに言わせれば粗野で乱暴な庶民らしい貧困で救いようのない発想ね」
「そうかもな」

35 :
 秋晴の言葉に朋美は少しだけ呆れたように溜息をつく。
 そのまま一瞬だけ目を閉じ、再びその目を開く。
 その両眼は目の前の秋晴をしっかりと見ている。
「秋晴」
 言葉とともに朋美は一歩踏み出す。秋晴との距離をつめる。
 一歩進むとまた一歩また一歩と進む。コツコツと朋美の靴の音が響き、合わせて少しずつ二人の距離が縮まる。互いの手を伸ばせば互いが届く距離まで。
 並んで立つと十センチ以上も差があるために朋美が秋晴を見上げる形になる。
「好き」
 その瞳は微かに憂いの雫を帯びていて、宝石のように輝いている。
 ただ秋晴が感じたのはその美しさよりも、そこから伝わる想い。
「貴方が好き」
 必で、愚直で、難解で、複雑で、それでも伝えたいという気持ち。そして伝わる気持ち。いや、伝わりきってはいないのかもしれない。
 他人の気持ちが分かるなんてのは嘘だと秋晴は思った。なぜならこんなにも気持ちが伝わってきてるのに秋晴は朋美の気持ちが伝わったなどと思えないから。
「秋晴が、好き」
 秋晴は受け止める。分からないなりに、伝わりきらないなりに。それのために今日この場所に来たのだから。
「ゴメン」
 言葉とともに目と閉じる。朋美の強い視線から逃げる。
「いつ気付いたの?」
「きっかけは一昨日だ」
「一昨日……か」
「まあ、あくまできっかけだし強いて言えばって感じかな。 確信なんてなかったし、ずっとセルニアと張り合ってるだけかもって思ってたし」
 セルニアという言葉に朋美が反応する。
「セルニアさんの気持ちも気付いてるの?」
「…………正直もっと確信無いけどな」
 秋晴の言葉は煮え切らない、迷いだらけのものだった。
「なんて言うか、分かりにくいんだよ。 朋美と張り合ってるのか、俺に対してなのか……両方って言われたらそれまでなんだろうけど、それでも分かり辛すぎる」
「四季鏡さんとかは?」
「…………そこまで来ると完全に自信ないな。 嫌われてないって思うけどってレベルだ。 そこまで自分に魅力があるとは思って無いし」
 薄々感づいている気持ち、ただそれを全部酌めるほど秋晴は万能でも大人でもない。
「隠してた理由は?」
「お前の言った通りそのままだ。 追加するなら先輩は別に気にしないって言ってくれてるけどどうしても俺が尻込みしたんだよ」
 淡々と続けられる質問。朋美が淡々と疑問を口にしてそれに秋晴が答える。決められた台本のように淀みなく。
 ただ、朋美が聞きたいのはそれでは無い。
 本当に聞きたい言葉は違った。
「何で言ってくれたの?」
 そこで秋晴が止まる。即答してた口が閉ざされる。
「違うな、何で私が最初だったの?」
 同じように朋美の言葉も変わる。ただ質問していた言葉に想いが乗る。
 少しだけ間を置いて秋晴が答える。
「世話になってるし、幼馴染だったからってのも理由だと思う。 でもそれ以上にさ」
 
「多分大事だったんだよ、朋美が」
 それは秋晴の偽りない気持ちだった。向けられた好意を自分から断っておいた人間が言うには都合のいい言葉。それでも伝えたい言葉だった。

36 :
「それはさ」
 少しだけ朋美の頬が朱に染まっている。しかしそれは夕日のせいなのかもしれない。本人すらも分からないだろう。
「もし桜沢さんより前に私が告白してたら私でもよかったって意味?」
 恥ずかしそうに、楽しそうに、悪戯をした子供のように、いつも通りの朋美の顔でそう言った。
「…………かもしれない」
 たっぷりと考えて秋晴は正直に口にする。
 迷ったのは自分の気持ちというよりはみみなに対しての罪悪感。
「最低ね」
「だよな」
 当然の罵りを受けて秋晴は肩を落とし狼狽する。言わなきゃよかったかなーと考える。
「ああ、多分勘違いしてるから」
「は?」
 顔をあげて見た朋美の顔は少し怒っているようでどこか楽しそうで。
「さっきのもしって質問で『それでも俺はみみなを選ぶ』って言わなかったことを最低だって言った訳じゃないわよ? きっかけは知らないけど秋晴がずっと桜沢さんを好きだなんて思ってないし」
「じゃあ秋晴の分際でよくも私をフったわね、ってか?」
「それもあるかもだけど」
 そう言うと朋美はくるりと背を向けた。今までずっと向き合っていた姿勢を初めて崩す。
「フった相手を気遣うなんて最低よ。 嫌えないじゃない。 叶わなくても好きなままでいちゃうじゃない。 悪いと思ってるなら――嫌わせなさいよ」
 顔は見えない。だから朋美の目に涙が浮かんでいるかは分からない。それでも秋晴は朋美は涙を流してないと思った。ただ、その声はどこか寂しそうで。
「まったく、女心を分かってないんだから」
 呆れている言葉。怒っている言葉。
「秋晴らしいけどね」
 そして安心したような言葉だった。
 振り向いた朋美の顔には涙は無く、少し呆れたような笑顔が輝いていた。。
「ありがとね」
 日は完全に落ちて空には月が輝いている。
 二人がいるのは教室ではなく寮の前。
「何でありがとなんだよ」
「言ってくれて、かな。 まあ、もっと早く言ってくれればもっと丸く収まったのかもしれないけど」
 茶化すような朋美の言葉に秋晴は「うっ」と低く唸り少しだけ言葉に詰まる。
「じゃあ、また明日」
「あ、ああ、また明日」
 また明日、か……秋晴は寮に入る朋美の後ろ姿を見送るとそのまま踵を返し自分の部屋へと向かった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「何だその山……」
「…………知らない」
「アッキーはホンマにあれやな……本来ならウッキウキで昨日の夜から寝れんでも可笑しくないのが普通の反応やで!? オレなんて二月になってから……いや、年が明けてから今日が楽しみで楽しみでしかたなかったちゅうのに」
「それは慎吾君だけだから」
「ミケもかいな…まったく……女の子だらけの楽園にいてそれはないやろ……そろいもそろって……」
 特に打ち合わせをした訳ではないが従育科男子生徒四人はどうしても教室に来るタイミングが重なる。全寮制であるし男子生徒の数が少ないためにどうしても固まってしまう。

37 :
 いつも通り四人が教室に入ったところ、大地の机と三家の机にラッピングされた箱の山が積まれていたのだ。ちなみに大地の机の山の方が倍以上も高い。
 その山を見て、大地は溜息をつき、轟は今日という日に一喜し、自分の机には何もないことに対して一憂し、三家はそんな轟に苦笑していた。そして秋晴は今日と言われても思い当たる節は全くなかった。
「んで、何なんだそれ?」
「無視かいな……」
 せわしなく動いている轟を無視し、起こっている異変(と言っても秋晴の机には変化なし)へ疑問と興味を向ける。
「チョコレートだよ」
 答えたのは少し照れながら箱を見ている三家だった。
「……チョコ?」
 チョコレート。カカオの種子を発酵焙煎したカカオマスを主原料とし、これに砂糖、ココアバター、粉乳などを混ぜて練り固めた食品である(某電脳辞典より)
 何でチョコレート?
「今日は二月十四日、聖バレンタインデーや!!」
 首をかしげていた秋晴の疑問を氷解させたのは轟の一言だった。
「あー………」
 そう言えばそんなイベントもあった。今まで縁がなかったのとこれからも縁が無いと思っていたこと、そして最近いろいろと忙しかったことですっかり忘れていたことを思い出す。
「っつーわけで俺は今からヤボ用やから失礼するでぇ!」
「…………もうすぐ授業だっつーのに轟のやつはどこにいったんだ?」
「多分、『きっと白麗陵の慎ましくも奥床しい大和撫子なお嬢様方や! 恥ずかしくて俺から言わんと渡してくれへんのや!』とか思ってるんじゃないのかな?」
「うわーありそう」
「というか朝、空のポスト見て言ってたから」
「………………そうか」
 何とも言えない気まずい空気が流れる。
 何と言うか轟は存在自体が周りに何らかの悪影響を与えている気がしないでもない。
 大地は机の上のものを凝視しながら「これは……いやでも……だからといって……」と何かを呟いている。
 こうなった大地はしばらく何を言っても反応はしないと経験上知っていたので秋晴はそのまま自分の机に行こうとした。
「おはようございます」
「おはよう、彩京さん」
「おはよう」
「……おはよう」
 背中から掛けられた声になるべくいつも通り挨拶をする。
 秋晴が振り向くと予想通りの人物、彩京朋美がいた。
「大地さん、三家さん。 どうぞ」
 朋美はそう言うと笑顔で手に持っていた小さな包みを二人に渡す。
「え……?」「………」
「義理チョコです。 日頃お世話になっていますから。 まあ、お二人は他の方からも貰うでしょうので迷惑でなければ貰ってくださいと言う程度ですが」
 丁寧にラッピングされた箱からは質素だが上品さが覗える、おそらくどこかのブランドのものなのだろう。
「そんなことないよ、ありがとう」
「………ありがとう」
「どういたしまして」
 二人に渡されたものを見ながら、当然自分には無いんだと秋晴は悟る。欲しい訳ではない。正確には欲しいが羨ましい訳ではない。というより貰ったとして秋晴はどう反応すればいいか分からなかった。
 そんな様子を見ながら大地が呟いた。
「…………日野には無いのか?」
「え? ありませんよ」
「………………何かしたのか?」
「……………………まあ、いろいろと」
 明らかに不自然だと思いながらも秋晴は渇いた笑いを浮かべるしかなかった。

38 :
「………状況がつかめないんだけど」
 秋晴は目の前の状況を見て思わず呟いた。
 時間は午後のティータイム。前回の奉仕活動とは違い秋晴が担当の正規の時間の奉仕活動だった。
 場所は秋晴の担当テーブル。年が明けてからは四人がけの小さなものだけでなく交代で大きなテーブルが回ってくるようになり、今日はその日だった。
 そしてそこにいるのは自分だけではなく、みみな、ピナ、早苗、大地の四人だった。
「ん? 妾は秋晴から話があると言われてここに来たのじゃが?」
「私は日野さんから大事なお話があると聞いたのですでここに来たんですが…」
「全く心当たりがないんだが………大地もか?」
「………ああ、彩京から日野がどうしても話したい事があると聞いている」
「朋美から?」
 ここにはいない首謀者(?)の名前が出てきてドキッとする。
「妾もトモミからじゃ」
「私も彩京さんからです」
 何やらそわそわしている大地にいつも通りのピナと早苗。そして少し怒っているみみな(なぜ起こっているかは不明で薮蛇になりそうで誰も話しかけていない)
「…………………何考えてるんだアイツ」
 色々とあった昨日の今日である。秋晴はどうにか朋美を避けたい。しかし彼女のためにできることがあるのであれば力になりたいという矛盾した気持ちがあった。
「お待たせしてすみません」
「遅かったじゃないか……ってセルニアまで……」
 しばらくしてきた朋美は一人ではなく、なぜか赤いセルニアと一緒だった。
「全く…私も暇じゃないんですのよ」
 秋晴に挨拶もせずにそれだけ言うとセルニアはそのまま椅子に座る。
「それで話したいこと何ですの?」
 どうやらセルニアも秋晴から話があると聞いているんだろう。心当たりのない秋晴はみみなの隣座った朋美を見る。
「朋美……」
「あら? どうしましたか秋晴君?」
 白々しい言葉。明らかに知っているのに自分は何も知りませんと言う主張。それを見て秋晴は彼女が何をさせたくてこんな状況にしたのかを悟る。
 はぁ、と深い溜息をつく。
「別に改まって集まって貰ってまで言うことじゃなかったんだけどな」
「何ですって!? わざわざ私を呼びつけたというのにどういう事かしら!?」
 秋晴の言葉を聞いてセルニアはキッと睨みつけた。呼びだされてそんな風に言われては腹が立つ。
「あー誤解だ。 そもそも俺が呼んだ訳じゃないというか……いや、都合がいいっちゃ都合がいいんだけどな」
「どういうことですの?」
 セルニアだけでなくその場にいる全員の視線が秋晴に向く。
 一呼吸置き、覚悟を決める。昨日一度通った道だ、怖いものは何もない。
「少し前から、みみな先輩と付き合ってる」
「「「「「「え!?」」」」」」
「んなっ……やっぱり貴方嘘をついていたのですね!」
「え? 日野さんが桜沢さんと……えっと、おめでとうございます?」
「秋晴……ロリコ…みなまで言うまい。 はっ! まさか妾も狙って…!!」
「………そうか……」
 五者五様というべきかそれぞれがそれぞれの反応をする。
 セルニアは憤慨、早苗は祝福、ピナは何やら妄言を、そして大地はなぜかショックを受けているようでみみなは驚きのあまり声を失っている。既に事実知っている朋美は無反応でニコニコと黙っている。
「いろいろあってな。 言わなかったのもいろいろあったんだけど……ただ、やっぱり言っとくべきだと思って」
 しまりのない秋晴の言葉とともにセルニアの糾弾と早苗の質問攻めが始まった。

39 :
「朋美」
 十分ほど(秋晴の体感では何時間も)続いたセルニアの怒りは多少鎮静化し、早苗の興味も落ち着いたらしくその対象は秋晴からみみなに向いたらしい。二人の言葉に圧倒されながら「…うん…」とか「ええと、それは…」と答えている。なぜか向かいの大地も興味深々の様子だ。
 そんな状況で平然と秋晴の用意したダージリンを飲んでいる人物が一人。
 この状況を作った首謀者の彩京朋美だ。
「何?」
 秋晴の視線に気付き少しだけ不機嫌そうな言葉を放つ。
「ありがとな」
 礼を言うのが正しいのかは知らない。それでも秋晴は感謝するべきだと思った。
「お礼をなんていいわ」
 そっけなくそれだけ言うと朋美はティーカップを置いた。
 あれ?と秋晴は違和感を感じる。何だろうこの違和感は。
「もう少しセルニアさんが怒ったり何か反応すると思ったんだけど……」
「……そんな目論見があったのか」
「そうなったら面白いかな程度にはね。 本題は別にあるし」
 少し不機嫌だったのはこのせいか。そして秋晴は気付く。ここにはセルニアや他の人間がいるのに、いつものように小声で話している訳でもないのに朋美の口調が余所向きの言葉では無い。
 さっき感じた違和感はそれだった。物腰はいつも通りの優等生に近いがいつもは隠している素の朋美が出てしまっている。いや、朋美は隠すのを止めたのだった。
「はい」
 何で急にそんなことを?と考える秋晴の疑問をよそに朋美は小さな包みを出した。
 目の前に出されたのはシンプルな包装の包みだった。
「………何だこれ?」
「チョコレート」
 秋晴は少し考えて、朋美が自分にバレンタインチョコを渡していることに気付く。
「………朝教室で俺の分は無いって言わなかったっけ?」
「ああ、あれは義理チョコだったから」
「…………………………………は?」
 朝三家や大地に渡していたのとは明らかに違う包み。あれを義理チョコと言っていた。それとは違う包みなのだから義理チョコでは無いのだろう。
 ではこのシンプルな包みはなんなのだろうか?まるで店に売っている自分で作ったお菓子を包装するデザインの包みは一体何チョコなのだろうか?
 秋晴を余所に朋美はそのまま席を立った。
「え? あ、ちょ……朋美?!」
 秋晴の動揺で四人の意識がこちらに向く。何があったのかと疑問符を浮かべる中、みみなだけが秋晴の手の中にある包みを見て現状を理解する。
「桜沢さん」
 自分の手の中の包みと朋美の顔を交互に見ながら戸惑っている秋晴を無視し、朋美はみみなの方を向く。
 みみなと朋美の視線が交差すると朋美は優等生の仮面を外した、一人の女としての宣戦布告をした。
「私、諦めませんので」

40 :
>>40
GJ!
なんだか背筋が震えましたw
文章上手いなあ。
そして最後に褒め言葉ですが、このロリコンめっ!!(^O^)/

41 :
>>16-39
乙乙
みみな先輩かわいいなあ。でも合法なんだよなあ。絵面は犯罪だがw
>>40
このロリコンめ!

42 :
ロリじゃないもん!年上だもん!
超乙

43 :
今更自分にレスしてたことに戦慄を覚えた。
というわけで気を取り直して……
>>39
このロリコンめっ!!(^O^)/

44 :
19と16だから下手したらみみなの方が犯罪なんだよなぁ

45 :
ナイスバディな自分が
秋晴を一方的に子供扱いして
精液搾り取るという夢を見るみみな

46 :
実は>>39を投稿した後に連続規制で投稿できず。
まあ、キリがよかったのもあって放置してましたw
そしてこの言葉が言いたかっただけです。
もうちょっとだけ続くんじゃよ(老紳士風)
内容的には蛇足。
エロ要素増し(当社非)
このSSのみみな先輩の正しい立ち位置
的な内容です。
『This is my daily life』
「えーと」
「…………」
「何でこんなことになってるんだ?」
「…………」
「みみなさーん……」
「…………」
「無言で睨まないでください………」
 どうしてこうなったのか、秋晴は全くついていけない状況に頭を悩ませていた。
 ちなみに『こう』とはどうか。端的に言うと秋晴はアトリエのダブルベッドに寝転がされていた。トランクス一枚と手錠でその両手を後ろ回されて。
 今日はバレンタインデー。授業が終わり奉仕活動の際に朋美の策略により知人一同にみみなと付き合っていることを発表した(させられた)。
 奉仕活動の後、明日の休みにさっそく泊まりがけでアトリエを使うからと言われ、夕食の後、着替えと夜食用の食材と飲み物を用意して(朝は寮に帰ってきて食べる予定)そのままアトリエへと向かった。
部屋を出る時に「今日は帰らない、深閑には言ってるから」と大地に言ったらすごい顔で見られたのを覚えている。
 そこまでは覚えている。正確に言えばそこまでは思い出せる。別に秋晴は記憶喪失で今の状況に至った訳でも気を失って気付いたらこの状況になっていた訳でもない。
 冷静になれと自分に言い聞かす。目の前では本日(知人に対して)公式発表した愛しの彼女、白麗陵の小さくて年上の先輩こと桜沢みみなが座った目をしてこちらを見ているが気にしない。というか気にしたら冷静になんてなれない。
 数分の距離をみみなと手を繋ぎながら歩き、その時のみみなはいつも通りだった。今日の事はなんとなく触れないようにしてアトリエで落ち着いて話そうと思っていた。が、アトリエに入ったとたん、みみなに引っ張られそのまま寝室へ。
後に服をはぎ取られたと思ったら、ガチャリと音がした。ガチャリ?なんの音だ?と思ったら手首に冷たい感触。そして思い出す、授業で一度だけ使った鉄の腕輪、手錠の感触を。
 そのまま今の状況に至る。

47 :
 秋晴はほぼ裸の状態で手錠で拘束されてベッドの上。それを行ったみみなは無言で秋晴を見ている。
「あー………怒ってるのか? 今日のこと」
「…………怒っては、ないよ」
 たっぷりと間を置いてみみなのからの返事。
 怒って『は』ない。その言葉を聞いて秋晴は安堵をする。同時にそれが原因だとも悟る。やっぱり一度みみなに相談するべきだったかな、とぼんやりと考えてから――
「それにしたってコレはおかしいだろう……」
 ――と我に返った。手錠で縛られてってどんな状況ですか?そもそもどこからこんな手錠を手に入れたんだ?と考えながら秋晴は本格的に文句を言おうとその体を起こす。が、その口からはみみなに対しての文句は出てこなかった。
「今日は、嬉しかったんだよ」
 みみはな先程までの表情を緩め、恥ずかしそうにその胸の内を語り出す。
「不満、はなかったよ? みんなに話すって前もって言って欲しかったけど……言ってくれたこと自体は嬉しかったし」
 小さな体は震え、その可愛らしい瞳には溢れんばかりの涙がたまっていた。
「……みみなは小さくてお子様みたいだから、付き合ってるなんて恥ずかしいのかなって思ってたんだよ? だからみみな、今日は本当に嬉しかったの」
「そんなこと………スマン」
 そんなことないと否定しようとして秋晴は言葉に詰まる。それは秋晴が少しでもそう思っていたとかでは無くて、みみなを不安にさせる要素として自らのコンプレックスがあったからだ。秋晴がそんなことを思っていないと分かっていても考えてしまう。
 そこまで考えて秋晴は改めてみみながどれだけ我慢してきたかを悟る。どれだけ不安だったかを悟る。抱きしめようとしてその手を伸ば――せない。
「いや、でもそれとこれとはどう関係があるんだ? 何で俺は脱がされて手錠をつけられたんでしょうか?」
 思わず動かそうとした体が動かないことで秋晴は冷静になる。みみなの表情に流されてしまいそうになったがほぼ裸手錠なのは変わらないしその理由にはならない。
「ご褒美」
「…………ご褒美?」
 先程まで決壊寸前のダムみたいな顔をしていたみみなが真っ赤なリンゴのように赤く照れる。相変わらず表情がクルクルと変わる子供のようで可愛らしい、じゃなくて。自分の思考にツッコミを入れながら耳を疑う。今ご褒美と言ったか?
「うん、ご褒美。 いつもみみなばっかり、気持ちよくさせてもらってる気がする、から……キミを…キミを、気持ちよくさせたいなって思って……お礼、のが分かりやすいかも」
「………そういうことか……」
 今度は不安ではなく恥ずかしさが爆発寸前なのかみみながくるりと後ろを向く。全ての言葉がはっきりと聞こえなかったがようは嬉しさを伝えたいってことなんだろう。
「ん? やっぱり縛るの関係なくないか?」
「だってキミは縛らないと暴れちゃうかもだし…みみなを触っちゃうでしょ?」

48 :
「あー…………」
 振り向いたみみなの顔は真っ赤なまま切実に語る。そして秋晴は心当たりを思い出す。行為に入る前は秋晴は消極的だったが入ってからは積極的になる。むしろ主導権は常に秋晴にあるために気付けばみみなに与えてばかりだった。
 それを回避するために手錠。みみなの目的からすればある意味正しい。正しいのだけれど――
「……いくらなんでも手錠はな……」
 気乗りがしないと言うよりはこれが普通の反応なのだろう。むしろ自由な方が秋晴は嬉しい。少なくとも秋晴にはそういう趣味は皆無だ。
「でも……それがいいって、描いてあったし……言われたし」
「今何て言った?」
「み、みみななにも言ってないよ?」
 みみなが明らかにしまったと言う顔をして首を横に振る。しかし秋晴はみみなの口から漏れた小さな小さな独り言を秋晴は聞き逃さなかった。
「描いてあったし言われたしって言ったか?」
「……いじわる……」
 恨めしく見るみみなを見る限りやはり聞き間違いでは無いらしい。描いてあった言われたと言う事は誰かに介入されていると言うことだ。特に前半、描いてあったという事は……。
「あれか、原因はオタク姫かダメ理事長辺りか……」
「…………」
 思いついたのは白麗陵きってのダメ人間コンビ。そしてその思いつきは当たりらしい、無言のみみなの顔がそう言っている。嫌な予感がするというよりは嫌な予感しかしない。あの二人から得た知識アドバイスなのであれば御免被りたい。
というか一切関わりたくない。替わりに深閑の特別猛特訓(特が二回なのはわざとだ)を受けることで間逃れられるならそちらを選ぶくらいに全力でお断りしたい訳なのだが……。
 そこまで考えて秋晴は溜息をつく。
「………情報の出所が半端なく不安だけど……お手柔らかに頼むな」
「い、いいの?」
 先程までのこの世の終わりのようなみみなの顔を見て拒否できる人間などいるのだろうか?いるはずはないだろう。自分にできることで自分が彼氏なのだから仕方ない、と秋晴は思った。
「みみながしたいって言ってるならそれを尊重してやるべきだと思うし、痛かったり俺の嫌な事はしないだろ? ならまあ、いいかなって」
「ほんとうに?」
 先程までの絶望の表情は一転して輝いた宝石のようになる。この笑顔が見れるだけでもイエスと言った価値はあるのかもしれない。
「ああ。 ………でも手錠は外してくれないか?」
「ダメ」
 流れで持っていこうとしたのだがやはり無理だった。諦めるか、と秋晴は思いながら一つの結論に至る。手錠が罰則の道具だってことは当然みみなだって知っているはずだ。ならばみみながこんなにもこだわる理由は――
「…………もしかして、怒ってるのか? 朋美のこと」
「…………………………怒っては、ないよ」
 長い長い沈黙の後にみみなから返ってきた言葉は表情とは裏腹の否定の言葉だった。

49 :
 秋晴はああ、やっぱりかと思い、冤罪だが同時に自業自得だとも考え、手錠を受け入れようという気分になる。
 そして秋晴は腹を括る。時間稼ぎのような会話はそろそろ終了しなくては。どうせ夜は長いし、今日を逃せばまた次の機会にと身に降りかかる何かが遅くなるだけなのは分かっている。それでも心の準備くらいは欲しいと最後に一つ聞いた。
「一つだけ教えてくれるか?」
「何?」
「みみなは今から何をするつもりなんだ?」
「オンナのコに攻められるのも気持ちいいらしいよ」
 みみなの顔が一瞬だけ自分の幼馴染のように見えたのは、混沌とした状況に秋晴の頭が働かなかったせいだろう。きっとそうであると秋晴は信じている。
「ここは、どう?」
「………あぐ……」
 触れる力が強くなる。幹を根元からギリギリ先を触れない場所まで絞り上げるように小さな手が動く。
「痛いの?」
「……違っ……けあぅ……」
 触られているのは体の一部なのにまるで全身を掴まれているように体が騒めくのを感じる。
「じゃあ………気持ちいいんだ」
「っつあ……ぐ……」
 みみなの「秋晴へのご褒美」宣言の後、秋晴は新しくとりだされた手錠でベッドと両手を拘束する手錠の二つを繋がれた。つまりベッドに縛り付けられて身動きが取れない状態にされた。
秋晴が抗議をしても結局それは解かれることなく、そのまま最後の砦であるトランクスも脱がされる。
 いつになく楽しそうな笑顔を浮かべているみみなが怖い。自分は何をしたのだろうか?後悔をしても何も見つからない。どこで道を間違ったのかも分からない。結局秋晴は縛られたままいつの間にか服を脱いだみみなの手によって愛撫を受けていた。
 正確に言うとみみなは服を全て脱いでいる訳ではない。その身に淡いパステルブルーのベビードールをつけて秋晴の目線の先にいる。見た限りフリルやレースは最小限にとどめられており、生地も上等なものだと言うのが一目で分かる。
非常にシンプルなデザインで着る人間によって綺麗に可愛くも妖艶にも見える。
そして今のみみなは――小さな手で秋晴を愛撫し、触られているでもないのにその白い肌と頬を朱に染め、上目遣いで秋晴の表情をじっと観察している。秋晴の反応を見るたびに愉しそうに口が緩み、その大きな瞳がきらりと輝く。
端的に言うとその見た目とは裏腹にあり得ないくらい官能的だった。
 ゆっくりと上下させられる手の動きは徐々に徐々に追いつめるように秋晴を刺激する。動けない状況でこれは辛い。最初は感じていた羞恥もそれどころではない。
 そして今日はその手だけの刺激では無かった。
 いつも通りの手での愛撫に加え、その小さな口と舌で秋晴の体のいろいろなところを舐めているのだ。
 首、耳朶、鎖骨、乳首、臍………などなど。更には脇の筋、肘の裏や股関節なんかも狙われた。時に柔らかな唇で吸われ、時に小さな舌で舐められ、時に優しく口でアマガミをされる。
しかも目線は可能な限り秋晴の顔を凝視しており、その表情を片時も見逃すまいとしているのだ。
既に秋晴の体にはいくつかのキスマークやみみなの唾液が至るところについており、しばらくは迂闊に上着も脱げないレベルだ。そして両の手は当然のようにある場所の刺激を続けている。
 気持ちいい、確かに気持ちいい。今まで感じた中でも一番というくらいに。しかし、これでは――拷問だ。じわりじわりと周りから徐々に攻められている。最初にこそばゆいだけで感じなかった部分も今では気持ちいいと思えてしまう場所もある。
 このままでは不味いと思い、秋晴はささやかな抵抗を試みた。
「そんなもの、どうやって用意したんだよ……」
「そんな、もの? ……これのこと?」
 何のことだろうとみみなは首を傾げた後自らの体に目を移した。その間も手の動きは止まることなく秋晴を攻め立てる。
「これのこと、かな? えっとね、買ったの」
「………いや、まあ……そんなもん貰ったりとかはしないと思うけどさ……」
 当然秋晴が聞きたいのはそういうことではないのだが、今の秋晴はそこまで口が回らない。ゆっくりと動くみみなの手からは強い刺激と弱い刺激がランダムに襲ってきて油断ができない状態なのだ。

50 :
 そんな様子を察してかみみなは続けた。
「少し前に、買ったの。 恥ずかしかった、けど……」 
「何でまた……」
「こういうの、好きかなぁって思って……」
「あー……」
 恥ずかしそうに俯くみみなを見て秋晴は理解する。つまりこの服は秋晴が交際宣言の公式発表をしていない段階に、少しでも秋晴の気を引くようにと用意したものだったのだ。
言われてみれば体のラインを強調するようなデザインだし、何も着てないのが分かるが中は見えないと言う絶妙な透明感がある。
端的に言うとエロイ。元々ベビードールという下着は実用性や機能性よりも嗜好性やデザイン性を重視されたものだというのだからそれに則したものなのだろう(ちなみになぜか必須知識として授業で習った。轟だけ異常に興奮していて気持ち悪かった)
 そんなベビードールを着けてご褒美をくれているみみなの姿はそういう趣味が無い秋晴でも当然興奮してしまうものだった。そしてその見た目以上に自分のために頑張ってくれたという思いに体が反応する。
「みみな、そろそろ……」
 繋がりたい。と言おうとして流石に恥ずかしいと思い秋晴の言葉が詰まるとみみなはその反応を見て次の段階へと行動を移す。
 みみなは恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうに笑うと秋晴の胸板にキスをしていた顔を徐々に下ろしていった。
 小さな口から舌を伸ばし、這わせながら静かに下へ下へと移動する。臍を通り、下腹部に近付くと名残惜しそうに舌を離すと秋晴の体に透明な線が引かれていた。そしてそのまま線の先にあるモノ、自らの両手の中にあるモノの先端へと軽いキスをする。
「っぅあぐ」
 秋晴は今まで以上の刺激に歯を食いしばってこらえる。一瞬の衝撃が収まると次に来たのは恥ずかしがり屋なみみなが口でするという驚き。口でするというのは存外抵抗があるもので人によってはどんなに望まれていても拒否する場合あるらしい。みみなだってそうだろう。
 ペロリ。
 今度は舌で舐められる。舌の先から漏れているそれを舐めとるように。秋晴の体が自然と跳ね上がる。その反応を見たみみなは満足そうだ。
 やばい。今まで手とみみな自身でしか刺激をしらなかった自分に未知なる刺激の誘惑が手を拱いている。軽くキスをされただけで、少し舐められただけであれだけの衝撃が走ったのだ。本当に始めてしまったならどうなるのだろうか。
「ねぇ」
 みみなの言葉に我に返る。気持ちよさに、その行為に期待を抱いてしまっていたらしい。そしてそんな秋晴の動揺を更に揺さぶる――
「口でして欲しい?」
 ――恋人からの甘い誘惑。秋晴の考えは全てみみなに見抜かれていた。
 どうしようかと考えて、再び訪れた刺激に体が反る。みみなの舌がほんの一瞬だけ伸びてきたのだ。秋晴の先端からでた液を抄うように。
 この状況で断ることなどできず、甘美な誘惑に屈するように頷こう、そう思い、秋晴は体を起こしてみみなの顔を見る。そして後悔をした。
 みみなの顔が愉しそうに笑っていたからだ。
 普段のような無邪気な子供の笑顔でも、時折見せる慈しむような大人の笑顔でも無い、男のための女の笑顔。そしてその大きな瞳に秋晴は既視感を感じる。いや、違う。あの目と同じ目を見たことがある。
状況は違えど全く同じ目だ。幼馴染である彩京朋美が誰かをいじめて愉しんでいる時の目だ。
朋美が秋晴やセルニアをからかって困らせている時の目をみみながしているのだ。
 その目を見て秋晴は悟る。自分の最愛の人に変なスイッチが入ってしまったことを。
「キミは、どうして欲しいの?」
 返答の無い秋晴の痺れを切らしたのかみみなは同じ質問をする。秋晴は少し考え――全てを裏切るように頷いた。ああ、誘惑に負けてしまった、とやり場の無い情けなさを感じていると……何も来ない。
みみなはそのまま愉しそうに秋晴を見ているだけで何もしてこないのだ。正確には手をゆっくりと動かしている。
それは今の秋晴には物足りない刺激であり、それどころかもどかしくなってより欲しくなる。
「み、みみな?」
「どうしたの?」
 秋晴は嫌な予感を払拭するように恋人の名前を呼んだ。しかし返ってくるのは何のことか分からないと言ったような聞こえだけは無垢な言葉。

51 :
「どうしたの? 苦しそうだよ?」
 明らかに状況を理解した愉しそうな声。
 当たらないで欲しい事柄ほど当たるのはどうしてだろう、と嫌な予感が正解だったことに秋晴は気付いた。もしかしたら手錠と同じでどこかのダメ人間コンビの入れ知恵かもしれない。むしろそうであって欲しい。
「みみな」
 秋晴が冷静で無い頭で状況を分析している間にもみみなの手は決して止まることなく動いていて、秋晴は限界に近い。だから秋晴は――
「口でしてくれ」
 ――その要望に従った。
 返事の代わりにみみながその小さな口を開き、ぱくりと秋晴のモノを咥える。味わったことのない温かさと柔らかさに包まれてそれだけで達しそうになる。秋晴の反応の大きさにみみなが驚いて口を離す。いきなりだったせいか溜まっていた唾液が口の端からぽとりと垂れる。
「そんなに気持ちよかったの?」
 衝撃としてはみみなの中に初めて入った時くらい、いや、ある意味それ以上の衝撃だった。秋晴は恥ずかしさで頭が茹でダコのように真っ赤になる。
「…………ああ」
 答えながら今日のみみなが悪魔に見える。いつだったかピナが持ってきた小悪魔のコスチューム(ビニール製の尻尾と羽と角)がついている幻覚すら見えそうだ。
 みみなはその返答に満足そうにほほ笑む。
「そうだった。 みみなはこういうの初めてだから、気持ちいいところとか、して欲しいところとか……あったら言ってね?」
「………………」
「なにか、言いたそう……」
「……………………いや、何も」
 たしかにみみなは初めてだろう。しかし絶対に下調べとか予習とかその他諸々をしてるに違いない。思えばみみなと付き合ってから引っ込み思案だと考えていたみみなが実は積極的だった……そしてそれはこれにも適応されるらしい。秋晴は完全に諦めモードになる。
いや、川の流れに身を任せるモードなのかもしれない。ただしその川は大激流なのかもしれないが。
「みみな……えと、その………もっと、してくれるか?」
「……うん」
 言葉とともに再び口で咥えられる。
 元々大きくない口をそこまで開いていないせいで咥えられているのは先だけで、薄く柔らかい唇がちょうど首の境に収まっていてる。更に温かい咥内で先端がザラついた舌で舐められる。更に口に入っていない部分は手で扱かれる。
「ぐ、ぁあ」
 神経を直接撫でられるような快感が襲う。電気が流れるように全身を駆け抜ける。適度に硬く柔らかい舌と唇の感触が経験したことの無い衝撃を秋晴に与える。
 仰け反った体を立て直すと自らのモノを咥えたみみなと目が合う。その表情は少し不安そうだ。
「……気持ちいい。 というか良過ぎだから…もう少し、優しくしてくれ」
 秋晴の言葉にみみなの不安は消え去ったようだ。秋晴の言葉を確認するとみみなは秋晴の顔を見たまま口を動かす。
 舌は舐めとるようにクルクルと先端を回り出し、首に収まっている唇があむあむと甘噛みを始める。手の動きもみみなの口から漏れる唾液で滑りやすくなり、より一層刺激を与える。
「ぅがああ、ちょ……みみ、あ」
 もはや秋晴の声は途切れ途切れで何を言っているかが分からない。呼吸を荒くしながら何とかみみなの顔を見ると――明らかに愉しんでいる。こちらがあまりの気持ちよさに苦しんでいるのを確実に分かっている。
 体からの芯から湧き上がる感覚。根元から搾り取られるように、体の芯から出る感覚。
「こ、れ以上は……で、で……」

52 :
 後ろ手にされた手が強張り、背筋が仰け反る。秋晴の感覚が昇りつめてそのまま絶頂に達する――その瞬間にみみなの口が離された。これ以上ないタイミングで、秋晴が達する直前で止められた。
「か、は……」
 直前で消失した快楽に体が耐えきれずに肺から息が出される。荒い呼吸とともに強張っていた体から力が抜ける。
「まだ、だめ」
 秋晴がよろよろと顔を向けるとその顔はお菓子をねだる子供のような顔だった。
「みみ、な……流石に…今のは辛いん、だけど」
「…………出したいの?」
「……ああ」
「…………どうしても?」
「お願いします」
 秋晴の言葉に満足そうに笑う。その顔は子供をあやす大人のようで――そこまで考えて気付く。本人が意識してるかどうかはともかく、みみなは年上として主導権を握りたいのかもしれない。
見た目はどうあれみみなは十九歳、秋晴は十六歳という歳の差。そして普段はその言動のせいもあって彼女は子供のように扱われる。
彼氏である秋晴自身もそれに漏れず彼女を基本子供扱いしてしまう(と言ってもプレイベートな付き合いの中でみみなの年相応の部分を感じているのだがそれは全体からすればほんの一握りだった)もしかしたらその裏返し、仕返しなのかもしれない。
「………………キミは仕方ないなぁ」
 その言葉に秋晴は理不尽さを感じる。そもそもこれは秋晴に対するご褒美ではなかったのかと。
「出そうな時は言ってね、心の準備があるから」
「へ? 心の準備ってえ、あぐっ」
 秋晴の疑問を無視してみみなは三度開始する。言葉から察すると秋晴が一度果てるまで止まらないようだ。そしてその宣言通り、口の動きは今まで以上に激しいものだった。
 小さくない秋晴のモノが根元近くまでみみなの口に咥えられる。当然咥えられるだけでなくそのまま吸われる。それだけでも秋晴は引き剥がされるような強烈な感覚に襲われる。
 そのままみみなの顔がゆっくりと上下をする。いつの間にか溜められていた唾液が鈍く淫らな音を立てる。
 咥える時は根元近くまで一気に吸われ、先端に当たる口の裏側の感覚が気持ちいい。逆に戻る時は口から出ていく秋晴を名残惜しむように強く吸われ、更に舌が裏側をザラリと舐め刺激する。その上しっかりと先までを一旦出すためにその全てが刺激される。
「――――っ!!!!」
 秋晴の口からは既に言葉にならない悲鳴しか聞こえない。喘ぎ声でも悲鳴でも無い叫び声。その体は激しく悶え、手錠がガチャガチャと音を立てる。
 そんな秋晴の様子を気にも留めずにみみなは一心不乱に頭を動かし、更に追い詰めるために徐々に速度を上げる。
「――みみ、な――で、る」
 言葉とともにみみなは秋晴の腰に手を回す。秋晴の強張った体を抱きかかえるように。そして今まで以上に秋晴のモノを咥え、吸う。
 みみなの行為に合わせて秋晴も達する。一度ギリギリで我慢させられた全てを放つように。
 秋晴の体は小刻みに震えいつも以上の量がみみなの口に出される。量だけでは無い。一度我慢させられたからか、それとも初めての行為だからだろうか。ビュクビュクと出る勢いは音が聞こえてきそうなほどだ。
 秋晴の荒い息だけが静かに響き渡る。
 しばらくして、秋晴の震えが止まるとそれを確認したかのようにみみなの口が外される。その際も吸われたままでチュポンと小気味いい音を立て、それに合わせて秋晴が反応する。
 放心状態の秋晴はそのまま目を閉じて力無く倒れてしまう。余韻に浸れないほど真っ白になった頭でボーっとしていると、顔の前に気配を感じる。ゆっくりと目を開けると、そこにはみみなの顔があった。
 恍惚とした表情を浮かべ、口を真一文字に結び、目は愉しそうに恍惚とした表情を浮かべている――あれ?秋晴が出したモノは一体どこに………?
 秋晴がそう考えた瞬間に、ゴクン、とみみなの喉が大きく鳴る。
 
 
 秋晴が呆気にとられているとみみなはそのまま舌を出し、自らの唇を舐める。
「苦いけど、美味しいって思えるの……キミの、だからかな?」
 秋晴の首に小さな手を回し、そのまま秋晴の耳元に吐息が当たるほどまで唇を近付ける。
「次は………次はみみなに、してくれるよね?」

53 :

「やっぱりさ……」
「ん?」
 あの言葉の後、何がどう行われたのかは二人だけしか知らないことである。それでもあえて語るのであれば最初も入れて計三回、とだけ。
 互いの呼吸も落ち着き、そのまま入浴を……と考えたみみなに引きとめられて秋晴とみみなは裸のままタオルケットに包まっていた。
「みみなはエロい」
「うぅえっ!!」
 秋晴の力強い断言に大きく反応してしまうみみな。その反応は恥ずかしそうで先程までの面影はないが、どこか楽しそうな顔だ。
「あ、いやさ。 もうなんっつーか……明らかにさ」
「そ、それは……」
「それは……?」
「………不安、なんだよ…」
 小さな声で、寂しげにみみなは呟いた。
「………不安?」
 秋晴は首をかしげる。彼女が震えているのが分かる。
「キミはさ、みんなに優しいし……みんなと仲がいいから」
 俯きながら、小さな小さな声でみみなはそう言った。
「……………」
 秋晴はその言葉、その表情で全てを理解する。
「今日思いっきり皆の前で俺が公式宣言した上に、この前と言ってることが同じじゃねーか」
 途中まで感傷に浸っていた自分が情けない。
「…………あはっ☆」
 みみなは冬だと言うのに大輪の向日葵のような笑顔を浮かべている。
 明らかに遊ばれている。いや、秋晴で遊んでいる。
 秋晴はまるで年上に遊ばれているような感覚に襲われる。いや、まあ、年上なんだけど。
「そうだった」
 みみなは思い出したように自らの荷物を漁る。
 都合悪クナッテ話ヲ変エマシタ?
 秋晴の抗議の視線は完全に無視されている、というか背を向けられている。
「………別にそういうみみなも嫌いじゃないからいいけどさ……」
 ため息交じりに小さく呟く。いじられるのが好きな訳では無くて、エロイみみなが好きという訳では無くて、そういう年相応のみみなも好きだと言う意味だ。
「はい、これ」
 秋晴の心の葛藤を無視して手渡されたのは小さな包みだった。
 英字の茶色い包装紙に包まれたシックな包み。
「何これ?」
「………今日は何の日?」
「あー………ありがと」
 秋晴は薄々感づいていたが聞いてみた。というか今日の出来事があって何の日か忘れられる人間はいないだろう。それにみみなは誰よりも秋晴が貰うべき相手なのだから当然である。
「どういたしまして」
 ベッドに戻りタオルケットを巻くとみみなは照れ臭そうに言った。
「どうかしたのか?」
「開けないの?」
「へ?」
 秋晴はそのまま貰った包みをサイドテーブルに置こうとしていた。どうせ中身はチョコレート、すぐに食べる気にはならなかったのだ。
「こういうものは貰ったらすぐに開けるのが礼儀だよ?」
「そうなのか……」

54 :
 秋晴はそんなものなのか、と思いながらプリプリと可愛らしく怒るみみなに言われるままに包みを開ける。
 リボンを解くと見なれないシックなデザインのメーカーの包み(おそらく高級店のチョコレート)ともう一つ別のものが出てきた。
「あれ? チョコだけじゃ……ない」
 もう一つは純白の細長い箱。チョコレートが二つ、ということはないだろう。秋晴はそこまでチョコが好きな訳ではないし、明らかに形が違う包みだ。
「開けてみて」
 みみなは細長い方の箱を指さす。どうやらチョコレート以外にもプレゼントが入っているようだ。
「…………チェーン?」
「うん」
 細長い包みのの中には銀色のチェーンが入っていた。輪の大きくないシンプルなタイプでチェーン自体もそこまで長くない。シャツの中に隠れるくらいで、仮に服の外に出しても長すぎて邪魔にならないちょうどいい長さだろう。
 材質はシルバーかと思ったがおそらく感触的には白金だ。貴金属関係の授業はまだ数回しかやっていないがおそらくは。
 すごいものを貰ってしまった、と思いつつ一つおかしいことに気付く。ペンダントトップがない。ネックレスとしてはデザインも大人しすぎるし細すぎる。
 秋晴がそんなことを考えているとみみなの手が秋晴の右耳に伸びてくる。そのまま右耳につけた三つの安全ピンにそっと触れる。
「安全ピン、嫌いなわけじゃないけど……危ないから。 それなら首にかけれるでしょ?」
「なるほど」
 安全ピンをペンダントトップ代わりにということなんだろう。実際秋晴も安全ピンを外したくないが授業の関係で外す機会も何度かあったし、その度に戸惑っていたのを思い出す。
 みみなは既に秋晴の安全ピンの理由を知っている。伊達や酔狂でつけている訳ではない確固たる強い思い。だからこそ外して欲しくないが世間的に見ればやはり印象は良くない。それを考えてくれてのプレゼントなのだろう。
 優しいみみななりの気遣いがうれしい。
「ありがとな」
「えへへへ」
「つけていいか?」
「もちろん」
 秋晴は右耳の安全ピンを取るとチェーンに通す。首にかけようとしてふと止まり、ベッドの端に脱がされたままの上着に手を伸ばし、チェーンを首にかけた。
「似合うか?」 
「あ………」
 真新しく輝くチェーンの先には少し汚れた三つの安全ピンと、少し綺麗な四つ目の安全ピンがついていた。
 一つ目は母親の分まで頑張ろう。二つ目は一人でも負けないように強くなる。三つ目は誰かを支えられる人間になろう。ならば四つ目は……。
 秋晴が新しく何を決意したかみみなは知らない。聞いても恥ずかしがって答えてくれるか怪しいくらいだ。でも何を決意したかなんて分からないはずがない。
「うん、とっても似合ってる」
 そういって秋晴の胸に飛び込んだ。
 似合ってるよ、四つ目の安全ピンも、そのチェーンも。とみみなは心の中で小さく付け足した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「アッキー聞いたでー。 怪しい怪しいと思っとったらあの桜沢先輩と付き合っとぶふぁっ」
「うわぁ……」
「いきなり何すんねん!」
「あまりにも……つい」
「あまりにもなんや!」
 場所は食堂。いろいろあったバレンタインデーの次の次の日の朝。
 ちなみに轟は昨夜何も持たずボロボロになって帰って来たらしい(三家談)

55 :
「今のは慎吾君が悪いかな…で、本当なの?」
「ああ、少し前からな」
「そうなんだ」
「まさかアッキーがロリぶぐふぁっ」
 集まっているのは従育科一年男子四人。いつからか朝食は用事がない限り四人でとる習慣になっていた。
「次は本気でやるからな」
「…………了解や……」
 轟がボケ、秋晴がツッコミ、三家は観客、大地は傍観者、いつも通りの四人だった。
「ところでアッキーあれってホンマなん?」
「あれって何だ?」
「子供の頃に性的な事すると体の成長がぶっがああああ」
「轟、次は無いって言ったよな?」
「慎吾君………」
「待って、待ってくれアッキー。 最後まで聞いてくれ! 後生やから、後生やから」
「…………」
「いや、さっき言ったのはそういうんらしいんけどな、その逆ってホンマなんかと思ってな」
「………逆?」
「子供の頃に性的な事するとホルモンバランス崩れて体の成長が遅れるらしいねんけど、何らかの事情で成長せんまま大人になるとめっちゃエロくなるらしいって話」
「うわぁ……慎吾君。 頭大丈夫?」
「酷いなミケ。 なんや大地、その疑り深い目はっ! いやいやいや、ホンマやねんて。 そもそも子供の頃にそういう事すると成長ホルモンより女性ホルモンが出て……ってアッキーどうしたん?」
「日野……?」
「どうしたの? 黙っちゃって」
「あ、いや……」
「ま、まさかアッキー………思い当たる節がぎゃあああああ」
Next?
以上です。
実はこのSSのみみな先輩は
見た目ロリ、基本子供っぽいしぐさ、時折見せる年相応の大人のふいんき(ry
普段は愛でるれる側ですが、謎のスイッチによりエロイお姉さん(Sというよりはどっちも)になるのでした。
次はみみな先輩以外を書く予定です><
新刊待つかもですが………。

56 :
>>46-55
新刊は冬っぽいなあ

57 :

新作読めるの楽しみにしてる

58 :
>>55
GJ!!
楽しみに待ってます

59 :
読み返してたんだけど
1巻142ページ1-Bの教室いったてのは間違いだよな?w

60 :
どれどれとみてみたけど、よくよく思い返すとどのクラスだったかさっぱり覚えてないことに気づいた
wiki信じるなら1巻142ページはミスなんだろう

61 :
ho

62 :
保守

63 :
ho

64 :
誰かアニメ11話のうなぎシーンでエロパロ書いてくれないかなぁ・・・
とクレクレしてみる

65 :
保守

66 :


67 :
随分過疎ってきたな

68 :
保守

69 :
ほほ

70 :
hoshu

71 :
保守

72 :
保守

73 :


74 :
forum/showthread.php?t=256604
forum/showthread.php?t=254365

75 :
ほんとれでぃばともっと見たい・・・
先輩かわゆすぎてにそう

76 :
保守

77 :
次は何時出るんだろうか・・・

78 :
保守

79 :
保守

80 :
保守

81 :
あけおめ保守

82 :
保守

83 :
hoshu

84 :
もうだめか

85 :
新刊出たのに静かだな…

86 :
え、出てたん? まず気づいてなかった

87 :
れでぃじゃないけどな

88 :
保守

89 :
新刊出るまで保守

90 :
てすと

91 :
保守

92 :
保守

93 :
ほしゅ

94 :
5月まで保守

95 :
あげ

96 :
保守

97 :
保守

98 :
保守

99 :
ほす

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