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小説 愛の蹉跌


1 :2012/10/07 〜 最終レス :2013/08/26
立ち上げます

2 :
<主な登場人物>
岡野芙美江(吉原ソープ「エンペラー」やよい)
黒澤和正(吉原ソープ「エンペラー社長)
佐山治(山菱組系闇金業者、渋谷デリヘル「東京BIG」店長)
安羅木一郎(吉原ソープ「エンペラー」マネージャー)
大崎努(警視庁品川湾岸警察署警部)
高原雅浩(埼玉県警秩父東警察署警部)
西田美幸(鶯谷デリヘル「美乱妻」ともみ)
小松佳子(鶯谷デリヘル「美乱妻」店長)


3 :
【小説】「愛の蹉跌」=第1回=伊勢湾を臨む風光明媚な田舎町・・三重県朝日町。
小さな民家が並ぶ平和な町を夏の夕刻、1人の少年がかけぬける。
「あら!治(おさむ)ちゃん!転んで怪我せんようにな!気をつけれ!」
『うん!』コロコロ太った坊主頭の少年が元気よく挨拶する。
「治ちゃんのお母さん今日留守中なんやてな!叔母ちゃんが家に来とるねん。」
近所の老婆が治少年に話しかける。『ほんと?!佳代叔母ちゃんや!』
治の父方の叔母が遊びに来てる!叔母は夏にスイカを持ってきてくれるんだ。嬉しい!
・・少年の名は佐山治。父、佐山清三郎、母、佐山多恵子の間に生まれた長男である。
父母及び父方の祖父である佐山清二と同居している。
佐山家は、漁業関連工具の販売店を細々と経営していた。・・・・
『ただいま!父ちゃん帰ったよ!佳代叔母ちゃんきとる?!』
・・・ガラガラと玄関の扉を開いた治。しかし、返事がない。ん?誰もいないのであろうか?
いや、そんなことはない。お爺ちゃん、父ちゃん、そして佳代叔母ちゃんがいるはずや。
玄関から台所まで狭く長い廊下がある。台所で水をがぶがぶ飲む治。

4 :
〜あ〜ん!〜女性の呻き声が聞こえる。ドスンドスンと天井が響く。
2階に叔母ちゃん来てるんだ!治は、大きなおしりをプリプリさせながら、
急階段を上っていった。2階和室の扉が少しだけ開いている。
ちょっと覗いてみよう!治は、2cmほど開いた隙間から和室内に視線をうつした。
そしてそのとき。治の首から後頭部にかけて激震が走る。異常な光景が治の目に
映り繰り広げられていた・・・・祖父 清二。父 清三郎。そして父方の叔母 佳代(清二の娘)。
3人が全裸になっている。和室内に布団が数枚敷かれており、清二はパイプタバコをくわえたまま、
1枚の布団を占拠している。もう1枚の布団に佳代が横たわり、その上に清三郎が覆いかぶさる
(清二)「おい清三郎!もっと腰をふらんとあかん。ん、そうやそうや!ワシが若かった頃のぉ、
軍隊時代、唯一楽しみにしておった中国大連の従軍慰安所通いを思い出すわい〜
佳代は、慰安所の朝鮮女によぉ似とる!ワシのオキニやったんや(笑)」

5 :
「おい佳代!お前は清三郎の子を産め!それとも、ワシの子を産むか?よーしワシが代わろう。
清三郎は離れとれ!」・・・清二は、そういうと佳代の膣に正常位で男性器を挿入する
・・・「佳代よ(笑)ワシのチンポと清三郎のチンポどっちが気持ちいか言いてみや!」・・・
その日、佐山家では近親相姦が行われていたのである。当時5歳だった佐山治。
彼のその後の暗黒人生を決定付けた瞬間である。隣家のテレビ音声がショックで腰を抜かした
治の耳をつく。それは、当時人気番組であった「仮面ライダー」。そのオープニング音楽であった。
昭和47年(1972年)8月のことであった・・・・・・・・・(次回に続く)

6 :
【小説】「愛の蹉跌」=第2回= ・・・・・それから38年後。2010年5月初旬のある日、東京吉原。
高級ソープランド‘エンペラー’の待合室にマネージャーの安羅木(やすらぎ)一郎の姿があった。
午後11時45分。その日仕事を終えた姫達の手取り精算作業に追われる。この日の出勤は14名、
ラストまでのシフトは計9名だ。ゴールデンウィーク最終日の来客数は35。悪くない数字である。
エンペラーの社長は黒澤和正といい、故郷の広島に2店、吉原に1店のソープランドを所有する。
雇われではないオーナー社長である。先代の創業者である父が急逝したのが6年前。
以後、和正が二代目オーナーとして経営に当たってきた。といえば聞こえはいい。実は、
彼はソープランドはおろか、風俗店従業員として働いた経験は皆無。なので、現場の実務経験はゼロ、
したがってソープ店経営のイロハなど何も分からない素人社長であった。ソープランド以外に、広島と神戸、
さらに横浜や東京に商業ビルを所有。毎月相当額のテナント賃料が入る。

7 :
さらに、大阪でお好み焼き店、東京では回転寿司店をも経営。そこの売上も日々吸い上げる。
要は、典型的な世間知らず、苦労知らずのボンボン二代目 であった。エンペラーには週に3日ほど顔を出す。
だいたい1時間ほどで店をあとにする。旅行にゴルフ、マリンスポーツ、骨董品やら高級絵画集めと趣味は幅広い。
エンペラーの内装は、ペルシャの大理石で覆われており、入り口玄関の正面に巨大なペルシャ製花瓶が目に入る。
そこに、その季節に相応しい花が生けられる。これは黒澤社長のアイデアである。彼が旅行で訪れた中東イラン国。
そこでペルシャ芸術に魅せられたのがきっかけであった。エンペラーには、前年末まで横尾というベテラン店長が稼働していた。
しかし、彼は黒澤を好かず飛んでしまったのだ。「素人の馬鹿社長の下で働いてられるかよっ!安い給料で!
ふざけんじゃねっていうんだっ!」・・・これが横尾の口癖であった。その後、店長の補充は無し。
そして、マネージャーの安羅木が事実上の責任者として店を切り盛りしてきた。
安羅木の店長昇格は?・・・まだである。黒澤オーナーからそれに関する話は一切ない。

8 :
「マネージャー、社長から電話っすよ!」 ボーイの平野田が待合室にいる安羅木に声をかける。
ニキビ跡であろうか、顔がボツボツ。イボ蛙みたい。中年ボーイであるが、髪はボサボサの茶髪。風体はよろしくない。
安羅木は、フロントに向かい電話をとる。『はいお待たせ致しました。安羅木です。社長お疲れ様でございます。』
(黒澤社長)「ん。今日の本数は?まだ聞いてないよ。早く報告しなきゃダメだろ!何をやってるんだ君は!」
(安羅木)『こ、これは大変申し訳ございません。社長。遅くなりました。35です。』
(黒澤社長)「ん〜。伸びがいまいちだなぁ。50はいくかと思ってたよ。」
・・(これには安羅木はカチンとくる)・・

9 :
「君の店舗運営のやり方に問題があるんじゃないの?35で甘んじているようじゃ、君のビジネス感覚を僕は疑うよ。
明日からはきちんと早めに連絡をくれ。いいな?そんじゃ。」ガチャン・・・
しょせんは金持ちの世間知らずのクセに。この不景気のさなか、それも総額6万5000円の高級店で
日に30本いれることがどれだけ大変でしんどいことか。知りもしないくせに。安羅木は怒りからしばし無言のまま
受話器を握ったままであった。・・・・・・・・(続きは次回)

10 :
【小説】「愛の蹉跌」=第3回= ある日曜日の午後、吉原高級ソープ店‘エンペラー’の玄関入り口。
ボーイの平野田が携帯ラジオを片手に煙草をふかしていた。そう、競馬である。
・・・‘さあ残り100M、スイングエルマンが逃げ切るか!おっゴダイロッソだ!ゴダイロッソ!
ゴダイロッソが抜いたぁ!優勝はゴダイロッソ!ゴダイロッソが安野記念を制しました!’・・
「ち、ちくしょう!また負けちまった!んだよっ、ついてねえな。」「ああ、ちくしょちくしょちくしょっ!」
平野田は、ハズレ馬券を指で小さく切り刻み、その場にパラパラと捨てる。煙草もポィ捨てだ。
そこにちょうど安羅木(やすらぎ)一郎が休憩から戻った。
(安羅木)『お疲れ!ああ負けたんだね(笑)。顔に書いてあるよ。』
(平野田)「あっマネお疲れっす!ほんとっすよっ!ぜーんぶハズレ馬券です。」

11 :
(安羅木)『おいおい。ここに馬券捨てるなよ。煙草も。後で掃除しとけ!それはそうと、
最近、賭け金多くなったんじゃないの?(笑)経済的に余裕が出てきて何よりだ。』
(平野田)「え?ええ、まあ(笑)。マネージャー勘弁してくださいよっ。嫌味いわないでくださいよっ!
困りますよそんな!」意味ありげな安羅木の指摘に苦笑いする平野田であった。・・・
今日の来客数は現時点でたったの1名である。吉原は、村全体がひっそりと静まり返っている。
予約はおろか、問い合わせの電話すら鳴らない。このままでは、お茶をひく出勤嬢が続出する。
また、あの素人社長からネチネチと怒られるだろう。一体どうすればいいのか?
フロントに座った安羅木の口から思わず溜め息がもれる。予約表をチェックする。
頼みは、エンペラーNO1の弥生(やよい)姫。ラストまですべて予約は完売だ。さすがである。

12 :
他の出勤姫は7名だが、予約はすべて合算してもたったの3本。昨日入店した新人は、客をもっていない。
なので全くあてに出来ない。今日も出勤しているが、今のままだとお茶引き確定だ。
安羅木は、携帯を取り出し、エンペラーの馴染み客、常連太客に営業をかけることにした。・・・・
それからしばらくして、2号室からフロントに内線コールが入る。(安羅木)『はい。お疲れ様です。』
(弥生)「やよいです。お客様上がられます。」(安羅木)『了解です。お疲れ様でした。次、続きます。』
(弥生)「はい。」・・・その後、弥生姫は常連指名客と手をつなぎ1階に降りてきた。お礼と挨拶を終え、
常連指名客は上がり部屋へ。弥生姫は、すぐさま階段を駆け上がり、2号室に戻る。
それを見計らった安羅木は、2号室に内線コールをした。
(弥生)「はい?」(安羅木)『休憩無しで本当にごめん。次の客来てるから、急いでお願いします。
セットは1人で大丈夫ですか?』(弥生)「ありがとう。1人で大丈夫ですよ。

13 :
あ、あと...今晩、いつもの場所で...会えますか?不安で...話したくて...」
(安羅木)『・・・・・・ん。いいよ。夜中1時過ぎ頃になると思うけどね。』
(弥生)「ありがとう。楽しみにしてます。絶対ですよ?!いつもの場所で。」
内線を切ると、弥生は大急ぎで部屋のセットに取りかかる。
エンペラーのナンバー1弥生。本名は、岡野芙美江。吉原年齢は23歳だが、実年齢は35歳。
目鼻立ちが整った美人タイプで、身長164cm、3サイズは上から85、57、86である。
スレンダーで、一生懸命なサービスと礼儀正しい接客姿勢。業界歴は8年ほどである。
数多くの指名常連客をもち、昨今の厳しい景況の吉原にあって、安定して稼いでいる数少ない姫の1人である。
いったい弥生と安羅木。2人はどのような関係なのか?・・・・・(続きは次回)

14 :
【小説】「愛の蹉跌」=第4回= 『じゃみんなお疲れさん。先に失礼するよ。』
安羅木は午前1時少し前にエンペラーを後にした。朝9時前から深夜1時頃までの長時間勤務。
休憩時間はあるものの、楽な仕事ではない。建て前としては公休は週1日。
しかし、これも実際は休みなど取れないのが現実だ。店長が飛んでからというもの、
安羅木の休暇は半年にたった2〜3日だったのではないか?吉原ソープに限らない。
これが、風俗業界で今もなお当然視されるスタッフの過酷な労働実態なのだ。・・・・
『そうだ、芙美江(エンペラーNO1弥生の本名)にお茶を買っていってあげよう。』
安羅木は、吉原ソープ街にあるコンビニ ‘サンクトマート’に立ち寄ることにした。
「あら安羅木さん!久しぶり!」 背後から呼び止められる安羅木。
ふと、振り向くと、以前、別店で共に働いていた姫の姿があった。西田美幸(本名)である。

15 :
(安羅木)『おお、久しぶりだね。元気でやってる?』(美幸)「店が暇だからね。吉原離れたのよ...。
もう40歳オーバーだしね。ちょうどいいかなと思って。いま鶯谷にいるの。良かったら遊びにきて。」
美幸はバッグから名刺を取り出し安羅木に手渡した。・・・鶯谷デリバリーヘルス美乱妻 ともみ・・・
(安羅木)『へえー鶯谷デリにいるんだ。景気はどう?』
(美幸)「まあまあ。吉原時代のお客さんが指名してくれるから...。手取安いけど我慢だね。」
(安羅木)『そうか。ん。身体に気をつけてね。頑張って。』
(美幸)「ありがと。」(安羅木)『ん。それじゃ。また。』安羅木は、早く芙美江に会いたいのもあり、
早々と切り上げようとする。ところが、である。(美幸)「ねえ!安羅木さん。く、車なに乗ってる?」
思いがけない質問に困惑する安羅木。
(美幸)「あらっゴメンなさい!何でもないわ。ゴメンね。気にしないで!」 そういい残し、

16 :
美幸は、さっさと台東病院方面へと足早に消えていった。いったい何だ?車って?変なの。
安羅木には美幸の質問の意図が皆目分からない。まあ、いい。早く芙美江に会いたい。それだけだ。・・・・・・・
『ひさご通りに行ってください。』安羅木はタクシーをつかまえ、芙美江と会うべく急いでいた。
吉原から千束通りに入り、浅草方面へ。すると、言問通りにぶつかる。ここで安羅木は下車した。
信号を歩いて横断し、ひさご通り商店街へ。真夜中だ。営業している店などほとんどない。
そして、左の狭い路地へと足を踏み入れると、右手にラブホテル「ラ・カルチェ」が見える。
そう、ここが芙美江との「密会場所」だ。芙美江と密会を始めて1年位になるか。
ラ・カルチェのすぐ近くに有名な「浅草花やしき」がある。週末ともなれば、家族連れや観光客で大いに賑わう。
安羅木は、芙美江の携帯に連絡を入れた。(芙美江)「お疲れ。いまどこ?」(安羅木)『ラ・カルチェの真ん前だよ。』
(芙美江)「203号室ね。」・・・・・この周辺には、ラ・カルチェをはじめ数軒のラブホテルが点在するが、

17 :
目立たないロケーションに立地するゆえ、密会には最適の穴場といえる。
これが、西浅草や鶯谷のラブホテル街となると、誰に見られるか分かったもんではない。
実際、先ほど久々の再会となった美幸は鶯谷デリに在籍している。吉原関係者や出身者がウジャウジャいる鶯谷。
そこのラブホテルを利用するなどというのは危険きわまりない行為である。・・・・
安羅木はエレベーターで2階に上がり、先に入室していた芙美江がいる203号室へと廊下を歩く。
そして、ドア横にあるチャイムを鳴らした。『僕だけど。』 芙美江は、ドアを開け、安羅木を迎えた。
安羅木は、すぐさま芙美江を強く抱きしめ、2人は濃厚なキスを交わす。業界で風紀と言われる。まさにそれである。
しかし、当の2人には罪悪感などまるでない。《夜の砂漠》で生きる孤独な男女愛。
その光景しか見えないのである・・・・・・・(次回に続く)

18 :
【小説】「愛の蹉跌」=第5回= 浅草ラブホテル「ラ・カルチェ」203号室。
安羅木(やすらぎ)一郎は、芙美江〔吉原エンペラー弥生(やよい)〕をそのままベッドに押し倒し、2人は愛欲に溺れていく。
桑田佳祐の曲‘祭りのあと’のBGMが流れる室内であった。・・・・・その後、芙美江が不安を安羅木に打ち明けた。
(芙美江)「あれから時間がたったけど....本当に大丈夫なの?不安だわ。」
(安羅木)『ちょうど4か月か。大丈夫だ。心配いらないよ。』
(芙美江)「・・・・・・・・・・」
(安羅木)『体はまず発見されない。見つかっても3年後、いやそれ以降かも知れないな。それまで時間稼ぎが出来る。
だいいち、あの現場に僕が体を遺棄したことは誰にも見られていない。大丈夫大丈夫。』
(芙美江)「憎い奴の敵をうってくれて本当に感謝してるわ。でもね、ぜんぶ貴方にお願いしてしまって。
すまない気持ちで一杯なの。わたしは何一つ手を汚さないなんてズルい女。そう思わない?」

19 :
(安羅木)『いや、僕自身が考え決めたこと。そして、僕自身が実行したことだ。いいんだよ。すべては僕がやったことさ。
芙美には、1日も早く業界をあがって欲しい。忌まわしい過去のこと、奴のことなんて早く忘れることだ。
奴はもうこの世にいないんだからね。あいつに泣かされ、人生をめちゃくちゃにされた被害者は大勢いる。
天罰が下ったんだよ。そう思えばいいさ。』
(芙美江)「あなたもお店辞めて、一緒に田舎かどこかに行こう。ね?早く一緒になりたいわ。」
(安羅木)『ああ。そうしよう。 信じていいんだね?芙美。愛してるよ。』
(芙美江)「わたしも。ねぇ、もっと抱いて!お願い!」・・・・・・2010年6月。ある静かな夜の出来事であった。・・・・・・・・
それから1年半後。2011年の師走。安羅木は、公休中の芙美江から話があると言われ、荒川区東日暮里のファミレスに呼ばれた。
(安羅木)『ごめん!遅くなって。今夜、珍しく社長が店に抜き打ちチェックに来てさ。やれ、ここが悪い、あそこが悪い。
売上がああだこうだ。参ったよ。』 時刻は午前1時半をまわっていた。

20 :
(安羅木)『で?話って何かな?』(芙美江)「実は....年内でお店を辞めたいの。」
(安羅木)『えっ?!』(芙美江)「あなたにはとてもお世話になって。将来を誓いあって。前向きに生きたい。
それはそうなんだけどね...あいつに母をされて25年が過ぎました。最近、毎晩、お母さんが夢に出てくるの。
ずっとわたしを見つめて、優しい笑顔で。ずっとね。それでスっーと消えていくの。」 芙美江は突然、涙を流す。
(安羅木)『・・・・・・・・・・・』
(芙美江)「最近ずっとなのなんでかなぁ。それで、精神的に限界かなって。」
(安羅木)『・・・そうだったのか。・・・・』(芙美江)「ごめんなさい、いきなり泣いちゃったりして。それでね、しばらく母の供養をしに、
富山県で過ごそうと思うの。」(安羅木)『お母さんのふるさとだね?』
(芙美江)「そう。母が子供時代をすごした富山でゆったりと。静かに。しばらく過ごしたいのよ。ごめんね、勝手なこと言って。」

21 :
(安羅木)『いや、いいんだよ。わかった!君の望むようにしたらいいよ。富山でゆっくり休んできなよ。』
(芙美江)「ほんと?有難う。ほんとに有難う。しばらく会えないけど、時々ちゃんと連絡します。そして、東京に戻ったら...
結婚してほしい....いい?」
(安羅木)『ん。分かった。それまで、僕もこれからの人生ね、身の振りかたを考えとくよ。僕も45歳過ぎてもう若くないから。
真剣に考えます。あの村(吉原)を離れて生きていく術を。』・・・・・
エンペラーNO1姫‘弥生’こと岡野芙美江は、2011年12月30日をもって退店。エース姫が不在となった高級ソープ店エンペラー。
そして、事実上の経営責任者である安羅木一郎。本来は、芙美江が不在となったエンペラーの危機をどう乗り越えるか。
これに大いに悩まされるところだ。しかし、実際は逆であった。芙美江のためなら、それが一番なのだ。芙美江の幸せのためなら.....
愛する女のため、どんな泥でも喜んでかぶってやる。どんな犠牲でも払ってやる。
安羅木は、決意を新たにしたのであった。・・・・・・・・(次回に続く)

22 :
【小説】「愛の蹉跌」=第6回= その翌年、2012年4月。本格的な桜シーズンを迎え、各行楽地は賑わいをみせていた。
ナンバー1姫「弥生」(本名:岡野芙美江)が突如退店し、吉原エンペラーであったが、期待の新人が数名入店し、
また暖かくなってから店の売上は上昇基調をみせている。
マネージャーの安羅木(やすらぎ)一郎は、富山県にいる芙美江と週に1、2度連絡を取り合っていた。
・・・・・「へいっ!いらっしゃい!あっ、いつもお世話になります!」
安羅木は、休憩をとり、吉原近くの蕎麦屋 ‘前田屋’の暖簾をくぐる。いつものザル蕎麦を注文した。
店内は狭いが、吉原とその周辺に贔屓客が多く、むしろ混んでいることが多い人気の老舗蕎麦屋だ。
女将が、テレビのスィッチを入れる。おなじみの ‘生島ヒロタ’が司会を務めるワイドショーだ。
(生島ヒロタ)「はい、ではですね、最新のニュースを浜本アナウンサーに伝えてもらいましょう。浜本くん!」


23 :
その後、先月の年度末でテレビ関東を退職し、独立しフリーになったイケメンの浜本正樹アナウンサーが画面に登場。
Kinki Kidsの堂本光一に似た長身。女性に大人気のアナウンサーだ。安羅木は、ただ々モクモクと蕎麦を食っている。
(浜本アナウンサー)「こんにちは。それでは最新のニュースをお伝えいたします。
埼玉県秩父市大野原にあるマンホールから腐乱白骨体が発見されました。」
・・・・・安羅木の箸(はし)の動きがピタリと止まる。・・・・
「秩父東警察署は、事件・事故両面から捜査に着手しました。
調べによると、発見された遺体は男性と見られ、後1〜2年は経過しているとのことです。」....
「発見現場のマンホールは、埼玉県が管理する大野原地下貯水タンクに連結しており、マンホールは
重さ数10キログラムのフタで常時密閉されているため、何者かが、そのフタを開けて遺体を遺棄した
可能性が高いということです。それでは、次のニュースです。税と社会保障一体改革の審議が......」
安羅木は、怯えた目でテレビ画面を凝視していた。

24 :
とうとう遺体が発見されたか。予想より早かった。安羅木は蕎麦を食べ残し、急ぎ前田屋を後にする。
居ても立ってもいられなかったのだ。そして、徒歩で1、2分の距離にある「樋口一葉記念館」正面の公園へと向かった。
ベンチに腰かけ、芙美江の携帯に連絡を入れる。あの体の青白い顔、そして、あの現場の光景が安羅木の脳裏に蘇生する。
恐怖から汗がどくどくと吹き出てくる・・・
(芙美江)「はい。元気?」
(安羅木)『芙美、ニュースでやってた。い、い、遺体が見つかった。』
(芙美江)「・・・・・・・」 安羅木は、明日以降、マスコミ報道を注視するが、とりあえずは事態を見守る方針
でいくことを芙美江に伝えた。
・・・・・それから数日後・・・・・・ 安羅木は、仕事を終え、深夜、寮への帰途につく。寮は、台東区竜泉にある粗末なアパートだ。
吉原から目の鼻の先にある。4月中旬だが、深夜はまだ寒い。思わずジャンパーの襟を立てて寮へと急ぐ。

25 :
「あ〜安羅木さんだぁ!」 スナックの前を通り過ぎた時、泥酔した1人の女が安羅木に話しかけてきた。
西田美幸。そう、元吉原姫で、現在、鶯谷デリで働く女性である。
(安羅木)『あー、美幸さん!久しぶりだね。今も鶯谷デリにいるの?』
(美幸)「そ、そうだよーん♪」
(安羅木)『おやおや(笑)だいぶ酔ってるね。じゃ、また。今日はこれで失礼するよ。』
ところが、である。(美幸)「おい!待てよッ!てめぇ!」 豹変した美幸に安羅木はビクっとする。
(美幸)「体あがったねぇ〜♪ やっぱ、あの日の夜、クルマ運転してたのお前だったんだぁ!へへへ♪」
(安羅木)『な、何をいってるんだよ。体?意味わからないね。変な言いがかりつけるなよ。』
安羅木はその場を離れようとするが、美幸はさらに恫喝する。
(美幸)「逃げられね〜よ!あのクルマのナンバーちゃ〜んとひかえてあるしー♪へへ。
デジカメにあのクルマとテメぇの姿ちゃ〜んと写ってるもんねぇ!」

26 :
(安羅木)『・・・・・・・』
(美幸)「口止め料は後日ね相談しまひょ♪へへへ。鶯谷のホテルでエッチしながら相談しちゃおうかな〜♪へへへ」
安羅木は、美幸と別れてから、しばしの間、スナックの斜め向かいにある駐車場に身を潜めていた。それから30分後。
美幸が千鳥足でスナックを出る。1人だ。....安羅木は、美幸のあとをつける。
そして、美幸は千束3丁目、台東病院至近にあるマンションに吸いこまれた。それから3階の部屋の明かりが点灯。
『あの部屋か....』 安羅木は、ジャンパーのポケットからマイルドセブンを取り出し、煙草に火をつける。
安羅木の脳裏に‘悪魔’がささやいた瞬間であった。・・・(続きは次回)

27 :
【小説】「愛の蹉跌」=第7回= それから1週間後のことである。『お電話有難うございます。エンペラーでございます。』
安羅木(やすらぎ)一郎は、フロントで電話をとる。「あ・た・し♪へへ。誰だかわかるよね?フフフ♪」 西田美幸だ、やっぱり来たか・・・。
安羅木は全身から血の気が引くのを感じる。(美幸)「ねえねえ明日会いましょうよ♪へへへ。」
安羅木は、周囲に気付かれないよう小声で応対する。(安羅木)『何を言ってるんだ。明日は出勤だ。会えないね。』
(美幸)「あんたさぁ〜誰にむかって口聞いてんのさ!秩父の体、ったのお前だろ!お・ま・え。あたい写真もってるんだからね!
クルマのナンバーも。察に言っちゃうよ!いいのかなぁ〜へへへ♪」「あたい明日14時から出勤なのchu☆ 店に電話して予約いれてよ。
14時から22時受まで全コマ貸切り!最近さぁ暇すぎだから助かっちゃうわ!フフフ」
(安羅木)『な、なんだと?そんなことできるわけないだろ!』 思わず声を荒げる安羅木。

28 :
フロント近くで立っているボーイ2人が何事かと安羅木を見つめている。...ヤバイ....
(安羅木)『了解いたしました。私のほうから、お客様に後ほど折り返し連絡を差し上げます。こちらの番号でよろしいですよね?
では失礼します。』 そういい残し、安羅木は一方的に電話を切ったのであった。
・・・・・・・(翌日)・・・・・
安羅木は、鶯谷デリヘル‘美乱妻’に電話を入れた。確認電話である。
なんと美幸は、太客が出来たといって、姫予約で既に店に貸切りを伝えていた。全コマ貸切りだと総額15万円近くにもなる。
それプラス、美幸は、鶯谷エリアでは豪華と評されるラブホテル‘インペリアルスクエア’を指定してきた。ここじゃないと嫌だという。
早速、安羅木を脅し・ゆすりにかかってきた格好だ。・・・・・安羅木は、急な体調不良と嘘をつき、店を欠勤。
インペリアルスクエアの507号室に入る。それから15分位の後、‘美乱妻’ともみ姫こと、西田美幸が到着した。

29 :
(美幸)「おっはよ♪ご指名頂きありがとねchu☆」(安羅木)『ふざけんなよ。』 美幸は、ホテルフロントに内線コールを入れ、
シャンペーン、日本酒、ワインを注文。すべて有料サービスだ。(美幸)「とりあえずね、月に20万円あたいにちょうだい!
口止め料ね!へへへ♪毎月20万♪助かっちゃうわ!」(安羅木)『君がいうとおり、あの事件の犯人は僕だ。』 美幸は反応がない。
『したのも、遺体を捨てたのも僕だ。そう、すべて僕がやったんだよ。』
(美幸)「フフフ♪どこで誰に見られてるかぁ分からないわよね〜安羅木さん運が悪かったのよ!へへへ♪察には黙っててやるから!
毎月20万円くれればネ!先々ね金額↑お願いするかも♪フフフ」・・・・このままでは、ずっとこの魔性の女にゆすられるだろう。
いつまでも、どこまでも追いかけてくるに違いない。・・・・安羅木は、遠く富山にいる芙美江の顔を思い浮かべていた。
会いたい。助けてくれ芙美!・・・・

30 :
美幸の話によれば、こうである。安羅木は、害した被害者の遺体をクルマのトランクに入れ、
北へとクルマを走らせた。2010年2月のある深夜のことである。途中、東京西北に位置する清瀬市のファミレスに立ち寄った。
実はここに偶然にも美幸がいたのだ。美幸は安羅木を目撃する。もちろん安羅木は、美幸に気付きもしなかった。
バイクが趣味の美幸。何かにとりつかれたような怖い形相の安羅木が気になり、安羅木が運転するクルマを尾行。
クルマは、清瀬から埼玉県に入り、所沢、入間をぬけ飯能へ。そして国道299号線をひた走った。
その後、140号線へと進入し、さらに北上を続けた。それから、間もなく、クルマは狭い路地を通り抜け、空き地に。
周囲は草木が生い茂り、唯一、白光を放つ巨大な鉄塔が背後にそびえ立つのみである。安羅木は、クルマから下りる。

31 :
そして、空き地中央部に移動し、大きな鉄製に見えるフタを持ち上げた。・・・・・美幸が目撃した場面はここまでであった。
遺体遺棄を見られていないとはいえ、もはやどうにもならない。警察にチクられたら、万事休すであろう。
美幸は、ひたすら酒をあおり、さらにカラオケを歌いだす始末。安羅木の脳裏で再び悪魔がささやいた。
・・・・・・・・(次回に続く)

32 :
【小説】「愛の蹉跌」=第8回= 「お客様。コーヒーのおかわりは?」『えっ?あ、ありがとう。』
吉原近くの ‘デリーズ’東浅草店。左奥の喫煙席に安羅木(やすらぎ)一郎の姿があった。午前2時。
エンペラー閉店後、遅い夕飯をとった。そして、彼は、全国紙、夕刊紙、スポーツ紙など10数種類の新聞を持ち込み、
各紙の三面記事に釘付けになっていた。そう、秩父大野原で発見されてしまった遺体。安羅木の予想はなぜ外れたのか?
なぜ予想外に早く遺体が発見されたのか?・・・
当然他人様に聞くわけにはいかず、しょうがない。マスコミ報道に頼るしかなかったのだ。
さらに、彼はいわゆる前科前歴がない。むかし駐車違反で交通違反切符を切られたが、
あれは道路交通法の特則である「反則金制度」と呼ばれるもの。前科にはならない。
彼個人は、いわゆる犯罪組織とも関わりはない。なので、これまで縁がなかった警察の動きは五里霧中だったのだ。
しかし、警察の対応の素早さは彼の想像を遥かに超えていた。
安羅木の認識が甘かったのである。

33 :
日刊‘ゲンダイジン’平成24年(2012年)4月2x日....
「埼玉県警捜査1課及び秩父東警察署捜査本部は、2x日、被害者(男性)の似顔絵を公開した。」 ......
発見された被害者の頭蓋骨に粘土細工を施し、骨格や歯型から、被害者の生前の顔を復元する作業。
捜査本部は、早速この作業を終了し、被害者似顔絵の全国公開に踏み切ったのだ。言うまでもない。市民からの情報を募り、
被害者の身元を特定するためだ。
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これが、公開された被害男性の似顔絵である。

34 :
安羅木は、とっさに目をそむける。害した場面と、
体遺棄をしたシーンを想起し、思わずコーヒーを吐き出しそうになった。日刊‘ゲンダイジン’に、
さらに次のくだりがある。......
「埼玉県条例の規定により、3年に一度の水質検査が実施されてきた関係上、事件現場のマンホールも、
3年に一度開閉されるのみであった。しかし、昨年から、近隣住民より、‘あのマンホールから異臭がする’
’飼い犬がマンホール付近を通ると執拗に吠える’との情報が大野原駐在所に複数よせられていた。」
「そこで秩父東警察署の署員がマンホール蓋を開けたところ、白骨化した遺体がみつかったものである。」.......
「腐乱の進み具合は尋常ではなく、マンホール内から取り出そうとした際に、胴体と首がちぎれてしまうほどであったという。」
安羅木に急なめまいが襲う。彼は、立ち上がり、急ぎトイレへと駆けこんだ。便器内に少し前に食した物をおう吐する。

35 :

『警察に自首しようか?』『いや、芙美江のためにここまで来たんだ。あと少しの辛抱だ。』
『次はあの女さえ始末すれば』『いやいやそれはいけない』芙美江の笑顔が浮かぶ。
『ぉ、お、オェーッ!』安羅木は、おう吐を繰り返していた。そして、目から涙が溢れ号泣した。
・・・・・・・(続きは次回)

36 :

【小説】「愛の蹉跌」=第9回= 澄み切った青空のもと、近くに険山脈が連なる小さな町。
秩父東警察署はこの町の中心部に位置する。2階の刑事1係に大野原で発見された白骨腐乱体、
通称‘マンホール事件’の捜査本部がおかれている。警察の始業時刻は朝8時半だが、主任刑事の高原雅浩(警部)は、
今朝6時に登庁。鑑識係及び埼玉県警科学捜査研が作成した報告資料、被害男性の粘土復元を施した骸骨写真とにらめっこする。
頭蓋骨の損傷具合から、被害男性は、頭部を殴打されたことが判明。これが致命傷となったと思われる
。しかし、人事件とは未だ公表できないでいる。また、遺体発見現場及びその周辺の写真、さらに、埼玉全域、群馬、山梨、長野、
そして東京から秩父への侵入経路を電子地図でくまなく調査する。しかしである...被害男性の似顔絵を全国にマスコミ報道させてから
既に1か月。有力情報が全くない。もちろん、全国の失踪行方不明者リストとも照合した。

37 :
しかし手がかりがないのである。‘これは一体なぜなのか?’....捜査本部詰の捜査員らは想定外の難局に直面し、
途方に暮れ始めていた。ベテラン刑事(デカ)の高原は、被害男性像について、1つの推測をたてていた。
・・・「被害者は、暴力団関係者。あるいは何らかの犯罪に手を染めていたウラ街道の人物ではないか?」・・・
アウトローの場合、内輪もめなどで、組織に害され闇に葬られるケースは珍しくない。仮に家族がいても、家庭崩壊などで、
家族に関心をもたれず忘れ去られてしまっていることが多いものだ。結果、情報提供はまず期待できないで終わる。・・・
他方、別の可能性として、被害者が韓国人や中国人等である。この可能性もあるだろう。.......
1981年(昭和56年)の始めから春頃にかけて新宿歌舞伎町のラブホテルで3名の女性が相次いで絞されるという
痛ましい事件があった(通称‘新宿ラブホテル連続人事件’)。それぞれ別のホテルで事件は起きた。

38 :

そして、ラブホテル従業員の目撃証言から、3名の女性とチェックインしたのは、いずれもスーツを着たサラリーマン風の中高年男。
同一犯の可能性が極めて高い。しかし、残念ながら犯人は特定されず事件は迷宮入りしてしまう。
とっくの昔に公訴時効を迎え、捜査は打ち切られてしまった。捜査にあたった警視庁と新宿警察署は、
なぜ犯人を検挙できなかったのか?...その理由の1つとして、3名の被害女性のうち、1名の身元が最後の最後まで
判明しなかったことにある。この1名は全裸体で発見され、 さらに衣服や所持品が全て無くなっていた。
そう、犯人がラブホテルから逃走する際に持ち去ったのである。この被害女性は、歯が悪く、多数の治療痕が残存していた。
そこで、警察は、歯科大学、歯科医院など全国の歯科治療施設に被害女性の治療痕データを照会し、身元を割り出そうとした。

39 :
ところがである。一致する該当者が出なかったのだ。この捜査に多大な労力を削がれてしまったことが警察の、いや、
良好で平和な治安を願う我々市民の敗北の引き金となった。
「おそらく被害女性は、韓国や台湾などから来日したアジア系外国人だったのではないか?」...事件が起きた81年。
30年超も前の大昔だが、当時すでに新宿歌舞伎町や隣の大久保では、アジア系外国人女性がホステスや風俗姫として多数働いていた。
彼女達の1人が、犯人に声をかけられ誘われたのではないか?そして、犯人と一緒にラブホテルに入り被害に遭った。.......
今回のマンホール事件の捜査責任者である高原雅浩。彼は、当然、上記の新宿ラブホテル連続人を知っている。
被害者の身元特定作業でコケると、もはやお手上げ状態。迷宮入りする可能性がグッと高まってしまう。
「いや、絶対にそうさせん!必ず身元を割り出してやる!必ずだ!」
短髪で色黒。がっちりした体格の‘熱血’刑事は、不安を打ち消しながら捜査に没頭していく。・・・・・

40 :

その頃、安羅木(やすらぎ)一郎は、未だ布団の中にいた。あれから2年数ヶ月が経過したが、心休まる日など1日たりとてない。
いくら愛する女のためとはいえ、とんでもないことをやってしまった。 自責と後悔の念が入り混じり不眠症に悩まされる日々である。
今日も眠りについたのは明け方5時頃だったであろうか?...安羅木は、夢の中で、暗い夜道をひたすら1人で走っている。ずっと1人だ。
そして、目の前に白光を放つ巨大な鉄塔が突如現れた。そう、あの「現場」で見た鉄塔だ。恐怖で足が動かなくなった安羅木。
そして、後ろを振り向くと.....

41 :

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『あッあ〜ッ助けてくれぇ!』安羅木は大声で叫び、布団から飛び起きた。夢か....。思わず頭をかかえこむ。もう8時だ。
起きて仕事に行かなくては。登校途中の小学生達の声が聞こえてくる。純粋で、穢れていない子供達の無邪気な声が
安羅木の耳に吸い込まれていく・・・・・・・(続きは次回)

42 :
【小説】「愛の蹉跌」=第10回= 安羅木(やすらぎ)一郎は、
鶯谷デリ姫の西田美幸に深夜呼び出しを受けた。
6月上旬のことである。(美幸)「お・ま・た・せ♪ウフフ!
いいクルマ乗ってるのね?あ、店の送迎車ね!」
鶯谷駅北口ラブホテル街の端に駐車場がある。安羅木は、
そこで美幸と待ち合わせたのだ。
美幸は左の助手席に乗り込んできた。香水臭がきつい。
......(美幸)「たしかに20万円ね。ありがとchu☆。毎月大変だわね。

43 :
でもさ〜察にタレこまれてムショ行くよりずっといいもんね♪
口止め料としちゃ安いもんよね。」「秩父の白骨体みもと割れないわね(笑)。
あれ誰なの?」(安羅木)『誰だっていいだろう。お前には関係ないさ。』
(美幸)「そっねっ!知らぬが仏っていうもんね!♪」「あとね、来月7月から月30万円ちょうだい。
10万円アップ也ぃ!」 ....口止め料アップの通告である。とんでもない悪女だ。
しかし、安羅木は、なぜか寡黙のまま。これに美幸は拍子抜けする。
(美幸)「ねえぇ聞いてる?」
(安羅木)『ははは(笑)』
(美幸)「・・・・・」

44 :
(安羅木)『お前は、今ここでぬんだよ!』 と、次の瞬間、安羅木は、美幸の髪をわし掴みにし、
彼が座る運転席に引っ張り倒した。「キャーっ!」 そして、安羅木は、上着の右ポケットから、針金を取り出し、
美幸の首に巻きつけたのだ。力を振り絞り針金で美幸の首を絞める。身長150センチほど、
小柄で細身の美幸は、抵抗むなしく安羅木の膝の上で窒息寸前であった。白目に変わる美幸。舌を噛んだのか、
美幸の口から血が溢れでてきた。
『貴様に恐喝され続けてたまるか!この馬鹿女!地獄に行け!クソ女!』
安羅木は、最後の力を振り絞り針金をギュッと絞める。それから間もなく美幸は絶命した。・・・・・
安羅木は、すぐさまクルマのエンジンをかける。そして、言問通りを浅草方面に進み、国道4号線を右折した。
そう、首都高速にのるためだ。美幸の遺体遺棄場はすでに決めてある。美幸が所持していたバッグは後部座席に移した。
後で必要だからだ。ラジオをつけると、エレファントカシマシの《今宵の月のように》が流れる。

45 :
97年に大ヒットした曲だ。安羅木の目は血走り、今や人鬼そのものの形相であった。
・・・・・(そしてその翌日)・・・・・
「はい、捜査本部。」 秩父東警察署の刑事、高原雅浩が電話をとる。『ああ〜デカ長さんいるけ?』
(高原)「私ですが?何か?」『情報提供してやるよ。秩父マンホールの白骨体の件だ。』
(高原)「匿名ですか?」(情報提供者)『あったりめえだろ!アホか?おめえは。』
情報提供者の口のきき方から、やはり、仏さんは普通の人間じゃない。
高原はすぐに察知した。(高原)「これは大変申し訳ありません。御協力感謝します。話して頂けますか?」
高原の部下達が一斉に高原を取り囲み固唾を呑んで見守っている。

46 :
うち、1人の刑事は、すでに情報提供者の通話元の逆探知手配を終えている。
公衆電話なのは間違いない。
(情報提供者)『ただで教えてやるんだからな!感謝しろよオメぇ。仏さんの名前は佐山治。
さ・や・ま・お・さ・む・。だ。渋谷で風俗店‘東京BIG’ちゅう本番デリヘルを経営してる。』
高原はペンを走らせメモを取る。『それにだ、仏さんは、ヤミ金もやってたんだ。借り手は、
その日ぐらしの風俗従業員や、風俗嬢だな。ヤミ金の元締めは山菱組。あとはテメえで調べるんだな。
そんじゃ。』 〜ガチャン〜。

47 :
「前(前科前歴)を調べるんだ。早く!」 高原は、部下に即座に指示を出した。
それから間もなく佐山治の前科記録データが高原のパソコン画面上に表示される。
彼の顔写真を見て、してやったり。
頭蓋骨に粘土復元した彼の似顔絵とピタリと一致する。

48 :
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間違いない。マンホール白骨体は、佐山治である。そして、情報提供者は、
東京港区西麻布の公衆電話を使用したことが判明した。
〜秩父大野原、マンホール白骨体の身元が判明!
〜その日の夕方のニュースでマスコミ各社は報道した。

49 :
情報提供が寄せられなかった理由。それは、被害者・佐山治がヤミ金業者だったから。
これが大きいであろう。彼から金を借りて返済に苦しんでいた債務者達、いや、それだけでなく、
元締めのヤミ金主も佐山治の身元が判明しないほうが好都合だったのだ。・・・・・・・(続きは次回)

50 :
【小説】「愛の蹉跌」=第11回= それからしばらく後・・・・東京六本木にある雑居ビル3階に
小包をかかえた宅配スタッフの男が現れた。‘二光エステート金融株式会社’ドア横のチャイムを押す。
〜ピンポン〜「はい」『あ、東濃急便でーす!荷物をお届けに参りました。』「はい」
事務員とおぼしき女性がドアを開ける。スタッフは小包を女性に手渡す。
ところがである。軽い。何だこれは?カラ箱ではないか?....
)と次の瞬間、宅配スタッフの男性と入れ替わり、スーツ姿の男性が次々とドカドカ事務所内に入ってくるではないか。
10名近くの男達が二光エステート金融に無言で押しかけてきた。「な、なんなの?!あなたたちは!」
『埼玉県警だ。おたくの会社を貸金業規正法違反並びに出資法違反容疑で家宅捜索する。責任者をだしなさい。』

51 :

角刈り頭の刑事が家宅捜索令状を女性に示す。そして、奥から北大路欣也風の年配男性が姿をあらわした。
紫色のスーツを着ている。「私が社長だが?何の騒ぎですかな?いったい。」
角刈り頭刑事の令状に目を通した社長。「うちは、まっとうな金融業と不動産取引業を営む会社ですぞ。
法に触れることはいっさいしとらん。」『嘘つけ!ヤミ金の元締めだろうが。』
....
二光エステート金融は、暴力団山菱組系のフロント企業である。大阪を拠点とする山菱組傘下組織が経営する。
主に不動産競売物件の取引、並びにヤミ金融の大手元締めとしてウラ社会で知られてきた。
近年は、オレオレ詐欺の関与も疑われている問題企業である。

52 :

(角刈り刑事)『お宅の資料をぜんぶ押収するからね。直接の容疑は、埼玉県所沢市在住の主婦に法定金利を
大幅に上回る暴利で貸付けた出資法違反。ヤミ金のパシリがぜんぶゲロしたんだよ。』
なんと角刈り刑事の隣には、秩父東警察署の高原雅浩が同席している。そう、秩父マンホール体遺棄事件の
主任刑事だ。高原が口を開く。(高原)『ところで社長さん。この男知ってるよね?』
白骨腐乱体で発見された佐山
治の顔写真を差し出す。(社長)「(一瞬ビクっとする)・・・さあ、知りませんな。誰ですかこのデブ男は?」
(高原)『何者かに害され、白骨体で発見された男。4月にね。』 高原は、遺体発見現場のマンホール周辺の写真、
白骨写真、粘土細工を施した頭蓋骨写真を次から次へと机に並べていく。


53 :
(社長)「や、やめたまえ!何を考えておるんだ君は!佐山なんて知らん!」
(高原)『おや?あんた、この男を知らないとさっき言ったばかりだよ。』(社長)「・・・・・・・・・」
(高原)『何者か知らないのに、なぜ、この男の名前を知っている?」
マスコミは、身元が判明したと報道しただけ。被害者の氏名は今も公表していないんだよ。
おかしいじゃないか。え?答えろ!』 高原はガンっと机を叩く。
(角刈り刑事)『まあまあ・・・。ねえ社長さん。あなた、娘さんの結婚式もうすぐだよね?なんなら、あんたを人と
体遺棄容疑で逮捕状とってもいいんだぞ。そしたら、娘の花嫁姿みれないね。』

54 :

(社長)「わ、わ、わかった。わかったよ。全部答えますわ。佐山治。知っておる。うちの下で働いておった。
ん。刑事さんがいうヤミ金。営業部隊の1人だった。」「佐山は、渋谷で風俗店を経営しとった。でも、経営難で金がないと。
そんで知り合いの紹介でうちにきたんだ。紹介者は、渋谷の住田会系の893組員だ。」
「一昨年の2月頃やったな。急に連絡がとれなくなってしもうた。音信不通や。それいらい奴とは会っておらん。」
(高原)『本当か?お前がったんじゃないのか?!』
(社長)「ち、ちがう。わしは知らん。やってない!本当だよ!信じてくれ」
(角刈り刑事)『佐山治が貸付けていた顧客リスト。ありますか?行方不明になる以前のものだ。』(社長)「ああ。ある。」
(角刈り刑事)『さっきも言ったけど、おたくの会社の資料を全部押収する。佐山治の顧客リストはその1つというわけだ。
別件逮捕だなんだ後で騒ぐんじゃねーぞ!おい!分かったか?!お前!』
二光エステート金融の社長は、ただただ頭を下げ頷いていた。・・・・・・・・・(続きは次回)

55 :
【小説】「愛の蹉跌」=第12回= 「マネージャー」・・・・「マネージャー!!」フロントに座っていた
安羅木(やすらぎ)一郎はハッと我にかえり見上げる。吉原高級ソープランド‘エンペラー’在籍の由里華(ユリカ)が
目の前に立っていた。「帰っていいですか?」『え?どうして?なにかあったの?』「ん〜ちゃっと・・・体調が悪いから。
帰らしてください。」仏丁面のユリカが答える。『あ、ああ。いいですよ。お大事にね。ごめんね、お客さんつけられなくて....』
体調が悪いなんて嘘だろう。暇で客がつかないからな。このまま店で待機しても時間の無駄。仕方あるまい。
もしかしたら、デリヘルとかけもちしているのだろう・・・エンペラーは、社長の黒澤の方針で他風俗との掛け持ちは厳禁である。
しかし、彼女達にも生活があるのだ。こう吉原が暇で、客数が激減している状況ではどうにもならない。

56 :
安羅木も、内心気付いてはいる。しかし、彼女達のデリヘル掛け持ちを黙認しているのが現実であった。
店としても、客を集められない以上は、姫達に強く出れないのだ。そして、姫の管理がますます難しくなる。・・・・
今日のエンペラーは、19時現在で来客数はたったの3。この後の予約数が1。明日の予約はガラガラだ。
フロントの傍に突っ立っているボーイはスマホン携帯をいじりっぱなし。もう1人のボーイは、腰が痛いといって、
さっきからずっとしゃがみこんでいる。安羅木の直属の部下である平野田主任。彼はどこだ....?
なんと広い待合室を1人で占領し、来客用のビールを何缶も空けた。すでに酔っ払っている。「ぎゃははは!!」
「がハハハ!!」 待合室の大型テレビを観ては笑い転げる始末だ。バラエティー番組である。

57 :
モチベーション低下どころではない。吉原の‘一流全国ブランド’。そんなものは、今や過去の遺物であろう。
激烈な風俗業界の客獲得競争。それに無残にも敗れ去り、客の支持も失い、将来の展望もない。
末期的かつ伐とした崩壊絵が安羅木の目の前に繰り広げられていた。・・・・・で、当の安羅木はというと?
彼も、これまた仕事の意欲などとっくに喪失した。ヤミ金(兼)風俗経営者の佐山治。そして、鶯谷デリ姫の西田美幸。
2名の命を奪った人鬼である。彼は、いかに逮捕から逃れるか。それで頭が一杯で、
考えていることはこの1点だけである。事件を闇に葬り、現在は富山県で暮らす岡野芙美江(エンペラー元NO1姫)と結婚し、
幸せになるためである。もはやエンペラーの運営などどうでもよくなっていた。小姑のようにやかましくウザイ黒澤社長。


58 :
あの素人社長に何を言われようが、怒鳴られようが馬耳東風。てめえの店だろ?俺が辞めたら、
てめえ1人で運営すればいい。そう開き直る安羅木であった。フロントの机上に全国紙の三面記事がある。・・・
〜ヤミ金大手元締め逮捕〜・・・‘埼玉県警察本部捜査4課は、○○日、東京都港区六本木「二光エステート金融」社長○○○○
を組織犯罪処罰法違反で逮捕した。’・・・・・安羅木は、この社長と面識があった。
そう、佐山治と一緒にエンペラーに来店したことがあったからだ。三面記事に掲載されている社長の顔写真を再度みる。
ん。間違いない。この顔は見覚えがある。佐山治のボスが捕まったか。しかし、なぜ埼玉県警なのだ?
秩父の白骨腐乱体の身元が割れた。佐山治だと警察は気付いたに違いない。そう考えるべきでだろう。

59 :
   ;ヾ、,.、,、.、rツ ッッシ、:':' r':' _,、-'゙_,  や 公 帰 そ
 ,、,、,ミッン、,._        _,、-'゙_,、-'゙.   っ 園. り ん
 、ィッ ,:、 ゙''ゞ=ミ、~.: _,、-'゙_,、-'゙  __,  て の 道 な
 }; ヾ ゙' {!li;:,. _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,::|_|  来  ト に わ
 ゞァ''゙ぐ _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,、-''" .|_   た イ  あ け
 ,ヘ:'_,、-'゙_,、-'゙..::「┴_,エ ┴  ''"_|_|  の. レ る で
  └i'゙-ニ,ニエ,.:|ニ「 _エ ┴  ''"_|_   だ に
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60 :
安羅木の額から汗が吹き出てくる。急に胸騒ぎがしてくる。西田美幸の体はいまだ発見されずだ。
しかし、こちらも時間の問題である。西田美幸が所持し、安羅木に対する恐喝に使っていたあの写真だ。
そう、あの写真をみつけ回収するのだ!それしかない。それが出来れば犯人が自分だとバレることは永久にないはずだ。
真相は闇に消える。ん。あともう少しだ。・・・しかしだ...安羅木は、西田美幸のバッグに入っていたマンションの鍵を使い、
千束3丁目の彼女のマンションに2度侵入し、室内をくまなく探したのに。写真は出てこなかった。
パソコンと携帯にもデータは存在しなかった。美幸のマンション室内は、さしずめ‘水族館’のよう。熱帯魚が好きだったのか、
室内はいくつもの大型水槽で覆われていた。おかげで、灯りをともさなくても、十分。助かった。これから、
再度、美幸のマンションに行ってみようか。安羅木は、ボーイに声をかける。『おい!』「は、マネージャー。何でございましょうか?」

61 :
『僕は、これからちょっと外出するわ。2時間ほどで戻るよ。平野田君にいい加減にしろと。フロントに座るよう伝えておいてくれ。』
「はい。」・・・・安羅木はエンペラーから徒歩で美幸のマンションへと向かう。10分もかからない。
美幸を車内で絞したときのおぞましい光景が脳裏に浮かぶ。ここまで来たのだ。あと少しの辛抱だ。
美幸のマンションが目の前に現れた。が、次の瞬間、安羅木の背筋が凍りつき、全身の血の気が引いていった。
なんと、美幸の部屋に灯りがともっている。誰かいる・・・。いったい誰なのだ?・・・・・・・・・・・・(続きは次回)

62 :
【小説】「愛の蹉跌」=第13回= 安羅木(やすらぎ)一郎が害した鶯谷デリ姫の西田美幸。彼女のマンション室内に灯りが・・・・。
度肝を抜かれた安羅木は、とりあえずマンション入り口へと急ぐ。すると、中年で太めの女性が入り口に立っていた。見覚えがある顔だ。
「あら!安羅木さん?そうだ安羅木さんだ!久しぶりです!」 彼女の名は、小松佳子(本名)。安羅
木が以前在職していた吉原ソープ
‘サテンドーレ’で一緒だった元姫である。当時の彼女の源氏名はマロンであった。『ああ!マロンさん!ご無沙汰しています。あれ?このマンションにお住いなのですか?』
(小松佳子)「いや、違うのよ。あ、そう、私ね、いま鶯谷にいるのよ。安羅木さん、遊びにきてー」 佳子は、安羅木に名刺を差し出した。
それをみた彼は、驚愕し顔面が蒼白になる。〜鶯谷デリバリーヘルス 美乱妻 店長 小松マロン〜

63 :
なんと、西田美幸が在籍していた鶯谷デリ店ではないか!(小松佳子)「どうしたの?安羅木さん・・・・・」
(安羅木)『や、や、いや何でもありません。すいません。へぇ、鶯谷デリの店長さんですか。ママさん?ですか?』(小松佳子)「うん。一応ね。経営者よ。」
(安羅木)『へー社長さんかあ。すごいですね。』(小松佳子)「ぜんぜん。暇で大変なのよ。あ、実はね、うちの店の子が行方不明なのよ。」(安羅木)『・・・・・・・・』
(小松佳子)「ずっと連絡がなくてね。携帯も通じないし。どうしちゃったのかと心配で。それでね、マンション管理人さんに連絡して、部屋に入ってもらってるのよ。」
「警察にもさっき連絡したわ。あっ!きたきた!」吉原交番の警察官だろうか、自転車で2名の巡査がマン ション前に到着した。・・・・
(巡査)「いつ頃から連絡がとれなくなりましたか?」・・・・・・


64 :
(安羅木)『じ、じゃ、マロンさん。僕、休憩中なもんで。これで失礼します。姫、早く見つかるといいですね。』(小松佳子)「ありがとう。それじゃ。お互い頑張りましょうね。」
安羅木は、花園通りを越えた先にある小さな公園のベンチに腰かける。そして、岡野芙美江(エンペラー元NO1姫)に連絡する。安羅木は、秩父白骨体が佐山治だと警察は察知したこと、
そして、安羅木をゆすっていた西田美幸の体も、もうすぐ発見され身元が割れるであろうこと。しかし、安羅木の一連の犯行とバレる可能性は低いであろうこと。
堰から吹き出る滝水のごとく矢継ぎ早に芙美江に伝えた。涙が溢れる安羅木に気付いたのであろう、芙美江が語りかける。
(芙美江)「ごめんね本当に。私のために辛い思いをさせてしまって。」(安羅木)『いや、いいんだよ。』


65 :
(芙美江)「私ね、富山に来て母のことを思い出してね。母の生前の楽しい思い出をたくさん。もう十分です。」(安羅木)『えっ?どういうこと?』
(芙美江)「もし、警察があなたの犯行だと察知したときは、一緒ににましょう。ね?」(安羅木)『・・・・・・・・・・・』(芙美江)「あなたと一緒にこの世を去る。思い残すことなんて何もないわ。」
孤独な2人に通じ合う愛のひと時であった。・・・・・・その翌日。東京湾に浮かぶ平和島。ここは、東京の物流「動脈」というべき一大備蓄拠点である。数多くの倉庫会社、物流会社が密集する。
大手商社‘住菱商事’グループの‘住菱商冷蔵’の物流センターも平和島の一角にある。スタッフ達が忙しく貨物の仕分け作業に追われていた。上空は、至近の羽田空港に着陸する旅客機の轟音が絶え間なく響きわたる。
耳栓をしないと、耳がやられてしまう。現場を仕切る責任者が、若い男に大声で指示を出す。「今日は忙しいぞ!福岡と沖縄からのがもうすぐ羽田に着く。
それもあるからなあ!」


66 :

「あ、そうそう、修理に出してた業務用冷蔵庫が隅っこにあるだろ?あれ、フォークリフトでこっちに持って来い!」
「分かりました!」若い男は、フォークリフトに乗り、物流センター端へと急ぐ。広大な物流センター敷地内。フォークリストで移動に10分弱かかった。「よし、これだな。」
若い男は、業務用冷蔵庫に近付く。ん?扉が開いている。なぜだ?若い男は、冷蔵庫の扉を開いた。
と、次の瞬間、大きな物体が若い男に覆いかぶさる形で冷蔵庫内から崩落した。それは、女性の全裸体であった。「あ、あっあ〜ヒェっ!!!!!!」
ショックのあまり若い男は、その場でしりもちをつく。・・・・・・・・・(続きは次回)

67 :
【小説】「愛の蹉跌」=第14回= 平和島で発見された女性の全裸体。所轄の品川湾岸警察署が捜査本部を設置した。捜査員及び鑑識が現場及びその周辺から収集した物品の解析を進めるとともに、
物流センター付近の関係者らに聞き込みを行う。捜査の指揮を執るのは、大崎努(警部)刑事だ。被害女性の遺体解剖の結果、被害者は、目と鼻、さらに胸部に整形手術を施したこと、さらに精神安定剤を日常的に服用していたことが判明している。
すでに、行方不明者リストと照合を行っている最中だ。大崎刑事が着目したのは、遺体発見現場から10メートルほどのフェンス下で発見された小さな紙片だ。フェンスの扉鍵は破損していた。おそらく犯人は、このフェンス扉から物流センター内に侵入。
業務用冷蔵庫に遺体を遺棄したに違いない。遺体は後2週間ほど経過している。小さな紙片・・・・。これは何だろうか?先日の雨により皺になっているが、解析は可能だ。
もし、犯人が履いていた靴裏に付着していたものだとしたら?

68 :
それが、剥がれて現場に残された。もし、これが犯人のものだとすると、犯人の指紋が付着しているかも知れない......。1.5センチ四方ほどの小さな紙片である。
が、指紋の一部でも採取できれば、現在は、指紋全体を割り出すこと。これが可能なのだ。捜査現場においても、最近の技術革命は目ざましいものがある。「この紙片の解析。あと、指紋採取を鑑識に頼んでくれ。至急でお願いしますとね。」
大崎は、部下に指示を出した。・・・・・・その頃、埼玉秩父の秩父東警察署。・・・マンホールで白骨腐乱体で発見された佐山治の捜査を高原警部以下、捜査員らは全力で捜査を継続していた。
先日摘発した東京六本木のヤミ金元締め(二光エステート金融)から、佐山治が貸し付けていた顧客債務者リストを1人1人あたる。しかし、手がかりがない。佐山治が経営する渋谷の本番デリヘル‘東京BIG’。ホームページは現在も生きてはいる。
しかし、もう前から営業を中止している。したがって、佐山治にとっては、ヤミ金が唯一の収入源だったのは確かなのだ。


69 :
佐山治が居住していた渋谷区神泉のマンション、ならびに彼が所有していた外車BMWの登録も当然調査をした。
しかし、佐山が行方不明になり、マンション賃料ならびにマンション敷地内の駐車場料未払いがかさんだ。そのため、マンション大家は、佐山治に対して家賃及び駐車場料支払いを求め民事を起こしたのだ。
訴える相手が居所不明であってもは可能だ。この場合、‘公示送達’という所の手続きを利用する(民事法110条以下)。
結果は、マンション大家側の勝訴となり、賃貸契約は解除。彼が居住していた部屋は原状回復された。未払家賃・駐車場料を回収するため、大家側は、部屋に放置されていた佐山治所有の家具・電化製品、そして車BMWを全て差し押さえ、競売にかけた。
BMWは第3者が落札した。ところがである。この第3者は、BMWを最近廃車にしてしまったのだ。なので、陸運局の自動車登録は抹消されている。......以上が経緯である。

70 :
が、見逃せないのは、秩父東警察の捜査で、佐山治が行方知らずとなった当時から、BMWはマンション駐車場にずっと駐車されたままであったという事実である。
これは、先日逮捕したヤミ金元締めの社長もそう証言している。もし、犯人が、佐山治を害後、彼の体を佐山のBMWで秩父まで運んだとしたら?・・・BMW車内に犯人検挙につながる有力証拠が残されていたかも知れない。
残念だ。だが、仕方がない。今は、佐山治のヤミ金貸付リスト。これを1人1人つぶしていく他あるまい。気が遠くなる作業である。高原警部は、念のため、佐山治の事件に関し、警視庁や千葉県警など関東周辺の警察本部に対し、秩父マンホール事件の概要、
そして、ヤミ金貸付リスト、さらに彼が所有していたBMWの自動車登録(ナンバーなど)の情報を提供し、協力を呼びかけることにした。・・・7月に入った。早朝から既に蒸し暑い。ある日の午前5時過ぎ。
安羅木(やすらぎ)一郎は、浅草花やしき近くのラブホテル「ラ・カルチェ」にチェックインする。

71 :
そう、岡野芙美江(吉原エンペラー元NO1姫)との密会に利用していたホテルである。この日は、安羅木は久々の公休だ。夕方5時までサービスタイム。つまり、
追加料金無しで夕方までホテルに滞在できる。もう疲れた。本当に疲れた。せめて、芙美江との思い出深いこのホテルで短い休息をとりたい。それが安羅木の偽りない本音であった。広いベッドに横たわる安羅木。
個室の天井は、ガラス張りになっている。自分の顔を見つめる。そして、そのとき、前から頭の片隅にあったある「疑念」が安羅木の脳内に再来した。...
『佐山治は、27年前に芙美江の母親を害し逮捕された。埼玉県警は、佐山治の前科前歴をとっくに調べたはず。となると、怨恨の線から、被害者遺族の芙美江を疑うのが普通ではないだろうか?』
『芙美江から警察が聞き込みに来たという話は一切聞いていない。富山にいるから?そんなのは、警察捜査の障害にならないだろう。彼女の母の実家を調べれば一発でわかるだろう。』



72 :

『なぜ、埼玉県警は、芙美江を捜査対象にしないのだろう?おかしい.....』・・・
『いや、そんなことはどうでもいいだろう。ったのはこの俺なんだから。何を今さらだよなあ。』
安羅木は、睡魔に襲われ、いつの間にか夢のなかへと消えていった。・・・・・・・(続きは次回)

73 :
【小説】「愛の蹉跌」=第15回= それから数日後・・・・・台東区千束3丁目の西田美幸が居住していたマンションに1人の老人男性に続き、2人の男性が入っていく。
老人はマンション管理会社の嘱託従業員。そして、2名は、品川湾岸警察署の捜査員である。そう、平和島で発見された全裸女性体。身元が判明したのだ。決め手は、西田美幸が施した豊胸手術であった。
最新の医療技術で、この手術に対応できる形成外科医院が都内、いや関東でも限られていたためだ。複数の形成外科クリニックをあたったところ、すぐに西田美幸が浮上した。
彼女が在籍していた鶯谷デリヘル‘美乱妻’店長の小松佳子は、美幸の捜索願いを警察に出していた。そのため、警察の事情聴取を受けた。
しかし、品川湾岸警察署捜査本部は、被害者の身元判明の件はいまだマスコミに公表していない。犯人をおびき寄せる目的である。
しかし、西田美幸を(あや)めた安羅木(やすらぎ)一郎。彼は、とっくに警察の動きを察知していた。


74 :
というのも、そう、小松佳子に連絡をしていたからだ。小松佳子は、まさか、吉原時代から旧知の仲である安羅木が犯人とは露ほども思っていない。
なので、西田美幸の遺体が平和島で発見された時の様子、警察で受けた事情聴取の内容などをペラペラと彼に話したのだ。しかし、安羅木が気がかりなのは、あの写真である。
彼が、佐山治の体を秩父に運んだ日に、あの現場で撮られた写真だ。何とかして、美幸のマンションに再度侵入し、探せないものか。
今日も、安羅木は、エンペラーのフロントでそればかりを考えている。西田美幸の部屋に入った捜査員2名。
前に侵入した安羅木と同じく、怪しげな青光を部屋全体に照らす熱帯魚の大型水槽に面を食らう。
主任刑事である大崎努。背が低く細身の体で、眼光が鋭い禿げ頭。1975年(昭和50年)に警視庁に入庁。現場一筋であった。数々の難事件を解決してきた大崎の捜査手腕は、
警察内部で高く評価されている。室内をグルっと一瞥し、見渡す大崎。居間〜キッチン〜浴室を一通りチェックする。

75 :
そして、鋭い目が光る。(大崎)「星(犯人)は、この部屋に来てるね。」「見ろ。あの大型テレビの上に積まれているファッション雑誌。
一番上の雑誌だけ埃がついていないだろ?」「被害者は几帳面な性格だと、鶯谷デリの女店長が証言していた。
なのに、浴室隣の洗濯機横に積まれたタオル。くしゃくしゃだぞ。衣類もそう。几帳面な女が畳んだように見えない。」
すると、まだ20代か?若い刑事が大崎に問いかける。『犯人は、現金を盗む目的だったのでしょうか?』(大崎)「ん〜。違うだろ。金を探すのに、
いちいちタオルまで広げて見る奴がいるか!?被害者のバッグやカバン、財布類がこの部屋にない。犯人が持ち去ったんだろ。
金目的なら、被害者のキャッシュカードやクレジットカードにとっくに手をつけてるはずだ。しかし、被害者のカードで、現金が引き出された形跡はないだろう。」
「となると....星(犯人)は、世間様に見られたら困る何かを探していたんだ。それを被害者が所持しているのを知っていた。...」


76 :
「女店長が、被害者は最近、金まわりが良くなっていたと。そう言ってたよな?」
(若刑事)『はい。』(大崎)「もしかすると、被害者は、星(犯人)をゆすっていたんじゃないか?.....
それで、逆に被害者は消されてしまった。わからんよ。あくまでも俺の邪推だよ邪推(笑)。」 現場で捜査経験を積み重ねてきたベテラン刑事。
さすがという他はない。(大崎)「今日のところは、これで引き上げる。明日また来よう。」(若刑事)『はい。』
(大崎)「ち、ちょっと待て!あれは何だ?!』
大崎は、大水槽に指をさす。若刑事は、大水槽に目を移すが、ただ、カラフルな熱帯魚群しか目に入らない。
しかし、大崎は何かを見つけたようだ。・・(次回に続く)

77 :
【小説】「愛の蹉跌」=第16回= ここは、埼玉県さいたま市浦和区にある埼玉県警察本部。
そこの職員食堂に秩父東警察署の高原雅浩刑事の姿があった。日替わり定食500円。14時。遅い昼食をとる。
高原は、県警本部近くにある‘さいたま拘置支所’を訪れるため、秩父から足を運んできたのだ。ヤミ金大手元締めの「二光エステート金融」社長が勾留されている。
彼に面会を申し入れ、話を聞いてきた。・・・(高原刑事)「害されたお前の元部下、佐山治だが、ヤミ金以外に何か商売をやっていたとか。そういう話。聞いたことある?」
(社長)『んーそれは知らんわ。住田会系893組員の紹介でうちにきたんが2007年の暮れやったかな?ボロ服着とって、汚いなりしてたわ。
もともとワキガでな。よけい臭いんや。もうたまらん臭さだったの、よぉ覚えとるさかい。』『ま、刑事さんが言うてはる通りでね、
うちの稼ぎだけで渋谷のマンション住んで、BMW乗り回す。不可能やな。』



78 :
(高原)「つまり、他に収入源があったと?」(社長)『そうやな。俺だってさ、山菱組竹見組の若衆だった昔な、いろいろやってきたんや。
刑事さんとっくに俺の過去しっとるやろ?』(高原)「ああ。」(社長)『大阪で暴れまわってね。自分で金の匂い嗅ぎつけ、自分で稼ぐ。組織のおこぼれ当てにしとうたらあかんやろ。』・・・
「やはり、佐山は、ヤミ金以外の何かで儲けていた。いったい何をやっていたんだろ。それが分かれば一気に突破口が開けるのに...クソ!」
高原は、日替わり定食のメンチカツを箸で突き刺した。・・・・・・それから数日後、・・・・・・・・
東京都墨田区の曳船駅近くの古びたアパート2階から、1人の男が下りて来た。午前8時半。ちょうど仕事にでかける時刻だ。
男は、競馬雑誌「ジャロップ」と競馬新聞を手にもっていた。アパート前に駐車してあるスクーターに乗ったそのとき、
3名の男性がスクーターの脇に駆け寄ってくる。「んだよおめえら!!」『久しぶりだな(笑)平野田!』「えっ、あ、大崎さん....」

79 :
吉原ソープ‘エンペラー’の「あの」平野田である・・・・(大崎)『申し訳ないが、品川湾岸警察まで任意同行してもらいたい。』
(平野田)「えっ!な、なんでですか?俺はこれから仕事だし、なにも悪いことしてないっすよ。いまはちゃんと働いてますよ。」
(大崎)『いいからちょっとだけ来いよ。話を聞くだけだ。』 すると、2名の刑事が平野田の両腕を掴み、覆面パトカーへと移動させようとする。(平野田)「おらッ!おめえ離せよ!ぜんぜん任意じゃねーじゃんか!」
平野田は、有無を言わされず覆面パトカーの後部座席に乗せられ、車はそのまま走り去った。・・・・・・・その頃、秩父東警察署・・・・・
高原刑事のデスク。1本の電話が鳴った。「はい。」『へへ(笑)。この前のデカ長さんけ?』あっ!あのときの!公衆電話から佐山治について情報提供した匿名男だ。
(高原)「ああ、あのときの。御協力ありがとうございました。助かりましたよ。」


80 :
(匿名男)『いいんだよ。人類みな兄弟。協力しあわないとね。』(高原)「ありがとうございました。それで?今日は何か(匿名男)『佐山治について、気になる話を耳にしたんだ。』
(高原)「・・・・・・・」(匿名男)『俺の知り合いが、数年前、新宿歌舞伎町のキャバクラで佐山を見かけたんだってさ。隣のテーブルに佐山がいた。ついた複数のキャバ嬢たちに、
‘大物スポンサーを見つけた’って佐山は自慢げに話してたそうだ。近いうち大金が入る。これからもずっと金が入るってハイになってたとよ。
んじゃ、今日はこれぐらいで(笑)。あとはテメエで調べろ。んじゃ!』(高原)「ちょっと待って!頼むから。その歌舞伎町のキャバクラは何て店ですか?」
(匿名)『しょうがねーなあ。社会貢献。ただで教えてやる。‘ディアレード’だ。じゃあな。頑張れや!(笑)』 ガチャン!今回も公衆電話からの情報提供だ。

81 :
誰か分からない。が、助かる。高原は、早速、外出の支度にかかる。「タレこみがあった。新宿のキャバクラに聞き込みに行くぞ!」
高原は、勢いよく部下に声をかけた。そして、高原が捜査本部から出ようとしたそのとき、
また高原のデスク上の電話が鳴り響いた(高原)「はい!捜査本部」『こちら、警視庁品川湾岸警察署、刑事1係です。
私、警部の大崎努といいます。高原警部殿はいらっしゃいますか?』・・・・・・(続きは次回)

82 :
【小説】「愛の蹉跌」=第17 回= (高原)「はい。私が高原ですが?」(大崎)『初めまして。先日、警察庁関東管区警察局経由で、
秩父の....えーっと、マンホール事件ですか。情報提供を呼びかけられましたよね?』(高原)「はい!何か分かりましたか?」(大崎)『実は、別件の捜査で、重要参考人を先ほど確保。
これから取調べを開始するところなんです。』(高原)「はい。」(大崎)『彼が本星(犯人)かどうかは...断言できませんが、別件の捜査で、有力な証拠を手に入れました。
秩父で害された、あーさ、佐山、お、治に関する証拠です。とりあえず、後ほど結果を御知らせする時に、添付してお送りしますよ。』
(高原)「有難うございます!では、後ほど御連絡お待ちしております。」 やっと、視界が開けてきたぞ。
あと、もう一息だ。高原は、高揚する充実感・達成感を抑えられずにいた。・・・・・・品川湾岸警察署の取調室では?
・・・・・(大崎)「おお、平野田。久しいなあ。」(平野田)『なんっすか!さっきから言ってるけど、俺は何も悪いことしてませんよ!』

83 :
(大崎)「最後に貴様と会ったのは?....ああ、お前が傷害事件起こした時だったね。」(平野田)『だからなんだっていうんっすか!
ちゃんと罪つぐなってシャバに出たんすよ!』大崎は、平和島で発見された西田美幸の遺体写真数枚を平野田の面前に置いた。(平野田)『ひ、ひ、ひィーーーーー!!!!!』
(大崎)「どうした平野田?絞された女だ。知っているだろ?」(平野田)『し、知るわけないじゃないっすか!誰っすかこの人?』
(大崎)「知らないだと?では、なんで、お前は、平和島の住菱商物流センターに行ったのだ?」(平野田)
『な、なんすか?それ?俺は平和島なんて行ってないっすよ!信じてくださいよ!』 大崎は小さなビニール袋を平野田に示した。
じっと凝視する平野田。(大崎)「いいか平野田。この袋に小さな紙片が入っているだろ?」(平野田)『はい。』
(大崎)「これは、馬券の片だ。ここにお前の指紋がついてるんだよ。この紙片は、遺体発見現場の近くに残存していたものだ。まだしらを切るつもりか?え?平野田!」

84 :
(平野田)『ち、ちっと待ってくださいよ!俺、ほんとに何も知らねえんだよ(泣)!信じてくださいよ!(泣)俺じゃないよ!(泣)
ああ〜(泣)ええ〜ん(泣)!』 平野田は、その場で泣き崩れる。(大崎)「な、平野田。被害者のこの女は、鶯谷デリヘルに在籍していた風俗姫だ。しかも、
この女は、お前が働いている吉原ソープ店に複数回電話を入れている。女の携帯から、通話記録が出たんだ。通話した相手は、平野田。
お前じゃないのか?」(平野田)『違う違う違う!!!!俺じゃねーよ(泣)俺じゃない!ああ〜(泣)えええ〜ん!!(泣)』 すぐにカッとなる性格であるが、
実は小心者の平野田。こいつは、星(犯人)ではない。大崎は、そう確信する。が、念のため。(大崎)「おい平野田。正直に何もかも話したらどうだ?ん?それともう一つ。
この男知ってるだろ。な?」 大崎は、佐山治の顔
写真を平野田に見せる。(大崎)「なあ平野田。お前、佐山から金を借りていたろ?ヤミ金だ。」
(平野田)『ああ。それは認めるよ。佐山治。吉原じゃ奴から金を借りていたボーイや嬢は結構いた。


85 :
俺だけじゃないっすよ!吉原の店にもよく遊びに来てました。有名人っすよ。奴がどっかの山奥で、白骨体で見つかったって。ニュースでみて、
ざまあみろと。俺、俺そう思いました。本当っすよ!』『こいつへの返済分がなくなったんで、んで競馬に使う金が増えたんです。』・・・
間違いない。平野田はシロだ。大崎は、次に、3枚の別の写真を平野田に見せる。(大崎)「じゃ、こいつは誰だ?分かるか?」 「被害者の女の自宅マンション。
そこの熱帯魚水槽の中にあったものだよ。ビニール袋で何重にも覆われていた。」西田美幸は、実は、「あの」写真を大型水槽の中に隠していたのである。・・・・・
いずれも夜間に撮影されたのか、背景が暗い写真だ。1枚目は、中肉中背の男が外車だろうか、左運転席に乗り込む姿。車のナンバーは判別できる。
2枚目は、その外車から降りた直後らしき姿。3枚目は、車の横で、難やら大きな蓋を持ち上げている姿。(平野田)『薄暗くてよく見えないっすね!
これBMWっすよね?.....あ、あ!あッ!』(大崎)「どうした?平野田。誰だ?誰なんだこの男は!え?答えろ平野田!」 大崎は大声で平野田に怒鳴る。

86 :
・・・吉原‘エンペラー’では、安羅木(やすらぎ)一郎がいつもの通り、フロントに座っていた。平野田が来ない。
無断欠勤か?いや、奴は仕事は適当でいい加減だが、出勤だけはちゃんとしている男だ。
平野田の自宅に電話したが、留守である。平野田は、携帯料金未払いを繰り返し、携帯契約を解約された身だ。
なので、携帯電話は現在所持していない。曳船の自宅アパートを出て、スクーターで店に来るまでに事故ったか?......
いや、まさか.......安羅木は、何か不吉な予感がした。・・・(続きは次回)

87 :
【小説】「愛の蹉跌」=第18 回= その日の午後、安羅木(やすらぎ)一郎は、店の並びにある駐車場で、岡野芙美江(エンペラー元NO1姫)の
携帯に電話を入れる。しかし、何度コールしても彼女は出ないのだ。なぜだろう。ま、いいや。夜にまた連絡しよう。店のフロントに戻ると、
1本の電話が鳴る。店員及び姫しか利用しない内部関係者用の電話。公衆電話からだ。もしかすると平野田かも。安羅木(やすらぎ)一郎は、さっそく電話をとる。
「マネージャーっすか?」(安羅木)『おお!平野田くん!心配してたぞ。どうした?』(平野田)「すいませんっす。朝スクーターで自損事故やっちまいました。
足ケガして病院に行き、これから店に出ますっよ!」(安羅木)『おいおい、無理しないでいいよ。今日はそのまま自宅に帰っていいんだぞ。』
(平野田)「そうっすか。じゃお言葉に甘えて。明日からでまっすよ!」(安羅木)『ん。じゃお大事にな。連絡ありがとう。』・・・(平野田)「これでいいっすか?」

88 :
平野田は、取調べを受けていた品川湾岸警察署3階廊下にある公衆電話から安羅木に連絡を入れたのだ。平野田の両脇に刑事1名ずつが密着していた。
後ろにいた主任刑事の大崎。満面の笑みを浮かべている。(大崎)『ああ。それでいい。上等だ。不自然な感じは無かった。よく出来たな。礼を言うぞ!平野田!』
その後、大崎は、吉原(台東区千束4丁目)を所轄する浅草中央警察署に応援を要請。大崎らが、現場に到着するまで、被疑者・安羅木一郎が逃亡せぬよう処置を施す
依頼をした。万が一のことがあっては厄介だからだ。捜査は、最後の最後まで油断は禁物。詰めに詰めること。長年の刑事(デカ)人生で大崎が失敗から学んだ教訓である。
安羅木は、そのままフロントに座り、芙美江との将来のこと。自分が犯した2件の人事件。その逮捕からいかに逃れるか。考えることは今日もそればかり。すっかり、
平野田の‘猿芝居’に騙された安羅木。ボーとフロントに座り、午後出勤組の姫が店に到着しても、ろくに挨拶もせずであった。

89 :
それから15分後・・・2名のスーツ姿の男性が訪れた。安羅木は、ハッとする。(安羅木)『すみません。いらっしゃいませ。女の子たくさん出勤していますよ(嘘)。
口開けでご案内可能な子、いい子が選べます!待合室へどうぞ!』 し かしである、彼らは入り口で突っ立っている。(男性)「安羅木マネージャーさん?」(安羅木)『はい。私ですが?
あのぉ....?何のご用件でしょうか?』そして、別の1人が上着ポケットから何かを取り出し、安羅木に提示する。安羅木は、みるみる顔が青ざめていく。警察手帳だ。
(刑事)「浅草中央警察署のものです。ここじゃなんですから、ちょっと待合室で話をきかせてもらおうか。簡単にね。言っておくが、店のことではない。君のことだよ。」
(安羅木)『・・・・・・・』 その後、間をおかずに吉原交番の制服警察官2名が自転車でエンペラーに到着。2名は、そのまま店内へ。
さらに、自動車警ら隊のパトカー2台が、先ほど安羅木が芙美江に電話をかけていた駐車場に停車。


90 :
制服警官4名が同じくエンペラーに吸い込まれていく。そして、それを見ていた周囲の同業他店のボーイ達がさっそくチョコチョコ動き出す。
《エンペラーに警察が入ったぞ!ガサかな?!》 《エンペラーが潰されるぞ!》あっという間に、エンペラーに警察が入ったニュースが吉原「村」をかけ巡る。
さらに、ほんの数時間でご近所の鶯谷。さらに大塚や池袋にまでニュースは、尾ヒレがついて、あるいは歪曲された形で伝ぱしていくのだ。・・・
それからしばらくの後、品川湾岸警察署の大崎及び他3名の捜査員がエンペラーに到着した。エンペラー待合室で、無表情の安羅木。
借りてきた猫のように背中を丸め、呆然とソファに身を沈めている。室内には、8名もの警察官がすでに安羅木を包囲していた。(大崎)「品川湾岸の大崎です。お疲れ様です。
御協力ありがとうございます。」 大崎と部下達は、深々と彼らに頭を下げる。(大崎)「安羅木一郎だね?」(安羅木)『はい。』(大崎)「なぜ警察に囲まれているか。
分かってるよな?」(安羅木)『・・・・・』


91 :
(大崎)「西田美幸に対する人及び体遺棄容疑で話を聞きたい。あと、埼玉秩父で発見された白骨腐乱体の件もだ。署まで任意同行してほしい。いいな?」 安羅木は、抜け殻のように脱力し、歩くのがやっとである。
大崎とともに覆面パトカー後部座席に乗車する。〜平和島女性体遺棄事件。40代後半の風俗店員を重要参考人として任意同行。〜その日の夕方、テレビ画面に報道テロップが流れた。それをジッと見つめていたカップルがいる。渋谷広尾の超高級マンションの大型リビングルーム。
女性の微笑に男もまた微笑む。そして、2人は抱き合い濃厚なキスを交わす。・・・・・(続きは次回)

92 :
【小説】「愛の蹉跌」=第19 回= 品川湾岸警察署に連行された安羅木(やすらぎ)一郎。
3階の取調室で無言のまま着席している。入り口ドアの横に、大崎の部下だろうか、40代とおぼしき刑事が座っている。
書記係のようだ。室内にいるのは2人だけだ。外では、テレビ局、新聞社などの報道陣が詰めかけている。それはそうだろう。
平和島の女性全裸体遺棄事件、そらに埼玉秩父で発見された腐乱白骨体遺棄事件が同一犯による犯行だというのだから。
どうせ害もその犯人がやったのだろう。早くも世間は、そう断定していた。世間のイメージの前には、
『被疑者・被告人の無罪推定原則(憲法31条)』など存在しないに等しい。そんなものは、社会では通用しないのだ。
治安悪化が懸念される昨今の日本ではあるが、近年稀にみる凶悪犯罪なのは言うまでもない。
マスコミの餌食になるのは必然というものだろう。当然、安羅木が稼働してきた吉原ソープ‘エンペラー’にも報道記者達が押しかけた。
が、エンペラーは既にシャッターが閉まり、営業自粛となった。


93 :
在籍する姫達は、即日全員退店。在職するボーイ達は、即日解雇が社長の黒澤より電話で言い渡される。
店のホームページも即削除された。老舗有名店のエンペラー。営業再開は困難という他あるまい。
現役マネージャーの逮捕という不祥事により、あえなく廃業してしまったエンペラーである。・・・それからほどなくして、
主任刑事の大崎が入室し、安羅木に対面し机に腰かける。険しい目つきだ。とっさに目をそむける安羅木。
(大崎)「あのな、安羅木。君に対する逮捕状が所より発行された。口頭で読み上げる。よく聞いてろ。いいな。」....
もう何もかも終わった。すべてが終わったのだ。俺の完敗だ。2人もしたんだ。刑判決は免れないだろう。
芙美江は面会に来てくれるだろう。会いたい。.....安羅木は、大崎の話など上の空だ。...(大崎)「おいッ!安羅木!聞いてるのかお前は!」
(安羅木)『は?はい。』(大崎)「今何時だ?」(安羅木)『19時、19時にじゅう......』
(大崎)「ん。19時22分。西田美幸及び佐山治の人及び体遺棄容疑で、君を逮捕する。」(安羅木)『・・・』

94 :
それから1時間ばかり後だろうか、佐山治が白骨腐乱体で発見された通称‘マンホール事件’
の捜査本部が設置されている埼玉県警秩父東警察署の高原に大崎から電話が入る。
(大崎)「先ほど被疑者 安羅木一郎を逮捕しました。被害者 西田美幸のマンション室内より押収された写真3枚の画像をすぐ添付メールで送信します。
被害者 佐山治が所有していたBMW及び登録ナンバーが写っています。もちろん安羅木の姿もバッチリです。
彼が大きな蓋を持ち上げている様子が3枚目の画像にあります。これは、おそらく秩父の遺体発見現場である
マンホール蓋であろうと思われます。ご確認ください。」(高原)『了解いたしました。ご協力ありがとうございます。
で、佐山治はどこで害されたのでしょうか?』(大崎)「安羅木一郎は、佐山治を安羅木が働いていた吉原ソープ店の
店内で害したと。そう自供しています。そして、佐山治の車で遺体を秩父まで運んだそうです。」(高原)『そうですか。』
(大崎)「取調べは先ほど始まったばかりですが、


95 :
東京地検の捜査担当検事からは、佐山治の事件も品川湾岸が捜査するようにと。すでに指示が出ています。
秩父東署さんのほうにも、さいたま地検ですか?検事さんから連絡があるはずです。」
(高原)『では、こちらは捜査本部解散ですね?』(大崎)「そうなると思います。いやぁ、秩父東署さんは、一生懸命やってくれて、
こちらも助かりましたよ。資料もたくさん送って頂いて。あなたとは話が合いそうですな。こんど一杯どうです?(笑)」
(高原)『ですね(笑)。こちらこそ近いうちに。お願いします。』(高原)『ところで、その安羅木何とかという
被疑者逮捕の決め手は何だったのですか?』(大崎)「平和島の女遺体発見現場。そこの近くに落ちていた馬券の紙片です。
そこから前科持ちの指紋が検出された。私がよく知ってる奴で、なんと佐山治からヤミ金で金を借りていた男です。」
(高原)『ほお。』(大崎)「そいつが働いていたのが被疑者と同じ吉原のソープ店だった。奴に、例の3枚の写真を見せたんです。
そしたら、写真に写っている男が安羅木だと判明した。」

96 :
(高原)『指紋の奴が破り捨てた馬券の紙片が、たまたま被疑者の靴底に付着していた。
それが、現場で剥がれ遺留されたと。そういうことですか?』(大崎)「おっしゃる通りです。この馬券が無ければ、
安羅木一郎は浮上しなかったでしょうな。ラッキーでした。」 ・・・そう、ボーイの平野田が、よく店の入り口で
破り捨てていたハズレ馬券。その小さな紙片が、安羅木の靴底に付着してたのだ。
これが安羅木逮捕の有力証拠になろうとは。この紙片が、安羅木の命取りとなったのである。
他方、害された佐山治。彼は、ヤミ金以外に何か大きな収入源があった。それは一体何か?
もちろん、大崎にその話はとっくに伝えてある。しかし、秩父東警察署の捜査本部解散が決まった以上は、
あとは大崎の裁量で、必要ならば継続捜査をやってもらうしかない。事件は自分の手を離れたのだから。・・・
大崎が戻った取調室。再び空気に緊張が走る。(大崎)「なあ安羅木。西田美幸の大まかな話はさっき聞いた。
佐山治の害を知られ、ゆすられていたと。俺の推測通りだ。


97 :
次に、佐山治害の件を話してもらおうか。奴といつ出会ったのか?なぜ害するに至ったのか?
どうやって害したか?遺体を秩父で捨てるまでの経緯を話せ。
おい!聞いているのか?安羅木!佐山治の件は、こちらも情報不足なもんでね。」
数分間の沈黙があっただろうか、ようやく安羅木は、重い口を開き、佐山治害の【真相】を語りだす。
・・・(続きは次回)

98 :
【小説】「愛の蹉跌」=第20回= 品川湾岸警察署3階の取調室。逮捕された安羅木(やすらぎ)一郎は、
秩父にて腐乱白骨体で発見された佐山治との出会いを大崎刑事に話し始める。
(安羅木)「私が勤務していた吉原エンペラーに佐山が初めて来店したのは、2009年2月でした。それ以前も、
彼は頻繁に吉原に足を運んでいましたので、顔は知っていました。彼がヤミ金のパシリであることもです。
当時、上司の横尾という店長がエンペラーにおり、彼と佐山は親しそうでした。」・・・(横尾)「ああ、佐山さん!
いらっしゃいませ。当店初のご利用ですね。有難うございます。」(佐山)『おお!横尾君ご苦労!!
せやな、初めて遊びに来たで!!ええ娘が仰山おる聞いとったさかい、来てみたんや!』(横尾)「有難うございます。
是非当店自慢のコンパニオンとお遊び下さい。安羅木く〜ん!佐山さんを待合室にご案内して!」・・・


99 :
(安羅木)「いらっしゃいませ。飲み物は何がよろしいでしょうか?」
(佐山)『せやな、おッ電話や。おまえちっと待っとれや!』『おらッ!借りたもんキチンと返さんかい!
返済できへんやと?待てるわけあらへんがな!ふざけんなッコラ!なに考えとんじゃい!われ!』
エンペラー待合室に佐山の怒声が響き渡る。ヤミ金債務者に怒鳴りつける佐山。ピンク色のスーツに身を包みサングラス。
身長165cmほどで、体重は100キロはあるだろう。ズボンのベルトが腹肉に隠れて見えないほどの太りようだ。
佐山の怒声に周囲の待客達は仰天する。 ・・・(安羅木)「その後、佐山はたまに来店してました。
が、その年の5月だったか、佐山は、なんと毎週来店するようになったのです。多いときは週に2日、
いや3日来店することもありました。」(大崎刑事)『ふん。それはなんでだ?』

100 :
(安羅木)「エンペラーでナンバー1の人気姫だった弥生という嬢がいました。本名は岡野芙美江です。風俗を引退し、
現在は富山県にいます。」(大崎)『つまり、その女を気に入り、佐山は入れ込んだというわけか?』(安羅木)「はい。」
(大崎)『で?お前は、佐山の金回りの良さに目をつけたと。それで、奴から金を強奪しようと。そう考えたわけか?』
(安羅木)「ち、違う!それは違います。」「私は、恥ずかしい話ですが、前述の岡野芙美江さんに密かに惚れていました。
彼女に魅かれていたボーイは他にもいたと思います。ちょうど私は、マネージャーに昇格したこともあり、
嬢達の相談にのり、彼女達を束ねる役を任されるようになりました。それで、ある日、
芙美江さんから深刻な悩みを打ち明けられたのです。」・・・2009年5月下旬のある日。
(安羅木)「弥生さん今日もお疲れ様でした。気をつけてお帰り下さい。」


101 :
(芙美江)「あのぉ....」(安羅木)「ん?何か?」(芙美江)「相談したいことがあるんです。人に聞かれたくないことなんです。」
顔は青ざめ、やつれている芙美江。悩みごとがあるんだろう。(安羅木)「分かりました。
まだ精算が終わっていない子が他にいるからね。土手通り沿にファミレスのデリーズがあります。場所知ってますか?」
(芙美江)「はい。」(安羅木)「そこでお話を聞きましょうか。申し訳ないけど、先に行っててくれますか。」・・・
(安羅木)「待たせてごめん。それで、相談とは?」(芙美江)「私をいつも指名している客の佐山。」
(安羅木)「ええ佐山さん。常連様ですね。」(芙美江)「あいつは私の敵(かたき)悪魔なんです。」(安羅木)「・・・・」
(芙美江)「佐山は私の母をした加害者です。まさか、あの顔をまた見ることになるなんて。
それも、吉原で接客することになるなんて!もうにたい。地獄です!」


102 :
芙美江はその場で号泣した。・・・(安羅木)「ねえ刑事さん。私は2名の命を奪った人鬼です。偉そうなことはいえません。
でもね、この際はっきりと言わせてもらいます。佐山を社会から隔離せずに、社会で野放しにしてきたのは国家であり、警察。
つまりあんた達だ。そうアンタらの責任なんだ!佐山をずっと刑務所に入れとけば、彼の害悪に泣く人も、
迷惑をこうむる人も出なかった。私はそれが許せなかった。佐山は、ああなって当然の人間なんですよ!
芙美江さんの敵を討ったこと。これについて反省はしていない。正直な話ね!」大崎刑事は、腕を組み、じっと安羅木を無言のまま睨みつける。
確かに、佐山治の前科記録には「人罪」とあった。もちろん、他にも罪を犯し処罰されてきた男である。
佐山治が岡野芙美江の母を害した?・・・これも後で記録を調べてみよう。佐山治が犯した人事件とは何か?話は27年前に遡る。・・・(続きは次回)

103 :
【小説】「愛の蹉跌」=第21回= 地元の三重県で女児に対する強制わいせつ、準強姦未遂で逮捕された佐山治。
当時17歳であった。昭和59年(1984年)のことである。彼は、それ以前から窃盗、恐喝、器物損壊などで度々補導されてきた。
上記の事件で、三重県の津家庭所は、彼を三重県伊勢市の‘宮元医療少年院’に送致処分とする。
「情緒的未成熟が伺われるので、当医療少年院にて矯正教育が必要である。」と
の家裁の審判官(官)の判断であった。翌年、彼は、医療少年院を出所。そして、こつ然と姿を消した。
・・・昭和60年(1985年)3月。18歳になった佐山治は、東京にいた。家出をし、金が底をつきそうである。
引ったくりをやるか、食品の万引きをやるか。それとも強盗でもやるか。JR京浜東北線・桜木町駅行の電車内で、
その後の犯罪計画について思いをめぐらす佐山治。


104 :
そう、医療少年院での矯正教育など、彼の矯正には何の役にもたっていなかったのだ。
そうしたところ、JR大森駅で1人の女性が乗り込んできた。30代半ばであろうか。
服装と所持しているバッグから、いいところの「奥様」に見受けられる。佐山治は、じっとその女性をみつめていた。
女性は、JR鶴見駅で下車。彼もあわてて下車し、女性のあとをつける。「ウヒヒ(笑)・・・」
不気味な笑みを浮かべる佐山治。・・女性は、鶴見駅前でバスに乗った。そして、15分ほどで‘下末吉’という停留所に到着し下車する。
険しい坂道を登っていくと、洒落た分譲マンションがあった。女性はそこの住民だろうか、マンションに入り、
入り口左側の郵便ポストから郵便物を取り出す。そして、エレベーターに乗り込んだそのとき、
若い男が飛び込んできた。女性のわき腹にナイフを突きつける。「おらッ!声だすんじゃね!声だしたらころすで!
はよーボタンおさんかい!」佐山治である。

105 :
(女性)「なんなのあなた!離しなさい!」 (佐山治)「ええから、あんたの部屋まで案内しな!金や、金くれたらそれでええねん!
おとなしゅう金だしたら、わいすぐに帰るでんな!」 桜開花直前の平日昼間のことであった。それから数時間後、
ランドセルを背負った少女が帰宅した。『あれ?鍵が開いてる。』『ただいま〜おかあちゃん?帰ったよ!』
少女は、室内に入る。そして、・・・ リビングルームの中央にメッタ刺しにされた母の遺体、リビングからキッチンにけけて血の海が広がっていた。
そう、この少女こそ岡野芙美江であった。芙美江はすぐに110番通報をし、職場の父に連絡を入れた。
鶴見北警察署の捜査員がマンションに到着。そく周囲の聞き込みを行うとともに、現場周辺を捜索。結果、
近くの三池公園で血のついたナイフが発見される。警察は、緊急配備を敷く。


106 :
そして、その日の夜11時頃、「鶴見医科歯科大学の敷地内に不審な男がいる」との通報があり、
警察官が急行。その不審者は佐山治であった。発見時、佐山治が警察官に吐いた言葉。それは、
「わいなぁ腹減っとんねん。飯食わせてや〜」「わいは未成年やで!少年法や!わいは少年法で守られとんねん!」
であった。佐山治は、強盗人罪で逮捕。横浜家庭所は、未成年とはいえ18歳になったこと。さらに事件の凶悪さと、
彼が医療少年院出所後まもなくに起こした事件であることから、横浜地方検察庁(地検)に逆送致処分とした。
こうして、佐山治の事件は、成人と同じく公開法廷で審理を受けることが決定し、横浜地検は、
佐山治を強盗人罪で横浜地方所に起訴した。・・・・・(続きは次回)

107 :
【小説】「愛の蹉跌」=第22回= 横浜地方所に起訴された佐山治。未成年でありながら、
成人と同じく公開法廷で公判審理が進められた。官は3名(合議体)であり、
長は白髪混じりの眼鏡をかけた、50代半ばであろうか。いかにもインテリという感じの女性官であった。
佐山治の弁護人は、刑制度反対運動で全国的に有名な亀田静歌弁護士である。
これまたマスコミによく登場する刑反対論者の安本好彦弁護士の盟友である。
この2名の弁護士は、刑事被告人や犯罪者の人権擁護、犯罪者の『更生』『社会復帰』を声だかに叫び信奉する一方、
犯罪被害者やその遺族に対する冷淡な弁護活動が度々見受けられ、問題視されてきた人物である。
他方、佐山治は、「はよう終わらしてくれへん?刑務所でもどこでもワイをぶちこめや!それでええやんか!」
「毎回に出て来なきゃあらへんの?面倒臭いんやけど!?」と反抗的な言動を法廷でとるわ、
審理中も居眠りをするわ、で幾度となく長に叱責されていた。


108 :
本人は、自分がした凶悪犯罪をまったく反省などしていないのである。・・・・そんなある日のこと、第○回公判期日。
(廷吏)「起立!」......(長)「はい。それでは開廷します。」......そして、
間髪をいれずに女性長が検察官に対し言葉を発する。(長)「検察官」(検事)『はい長!』
(長)「(苦渋の表情で)これまで審理をある程度重ねてきました。ん〜どうでしょう、
起訴状の内容ですねー。あのーぉ別の構成は考えられないものでしょうか?」
これを聞いた検察官は落胆ぶりが顔に顕れている。対して、亀田弁護人は笑みを満面に浮かべている。・・・
佐山治は、強盗人罪で起訴された。強盗人罪とは、被害者の害前に財物(金、貴重品)
奪取の意思が生じていたことが必要なのだ。財物奪取の意思→被害者を害→財物奪取。この流れである。
これを検察は立証しなければならない。他方、仮にだが、犯人が被害者を害して初めて財物を盗もうと考えたとする。
この場合は、強盗人罪は成立しない。成立するのは、人罪及び窃盗罪である
(但し、窃盗罪については条件を満たした場合のみ。)。


109 :
今回の事件では、どうであったか?神奈川県警並びに鶴見北警察の捜査報告によると、
岡野宅から佐山治により現金・貴重品類が持ち去られた形跡が無かったのである。
遺体発見場所の室内を荒らされたわけでもない。さらに、岡野宅から逃亡した後に、
佐山治が、別の場所で窃盗などを犯したわけでもない。犯行後、鶴見医科歯科大学敷地内で確保されるまでの足取り。
これが不明であったのである。つまり、犯行状況からは、佐山治を強盗人罪で処罰するには不十分。
そういわざるを得ない。検察は、佐山の犯行当時の所持金が1000円に満たなかったことから、
金に困り被害者を害したのだ。つまり、害「前に」財物奪取の意思が存在した。
これを立証しようと努めてきた。対して、佐山治側は、もちろん財物奪取の意思など無かったと言う。
盗み目的ではなく、被害女性に対するわいせつ目的であったと猛烈な反論に打って出たのである。
強盗人罪の法定刑は、刑か無期懲役(刑法240条)。いずれかしかない。大変な重罪である。

110 :
では、人罪は?現在の刑法199条は、「刑又は無期もしくは5年以上の懲役」である。
強盗人罪と、単なる人罪では法定刑の重さがまるで違うのだ。なので、検察は強盗人が成立する!と主張するが、
弁護人は、軽い人罪にとどまる!と反論することとなる。そして、検察が、強盗人罪で起訴したと。で、
結局、所が「いや、ただの人罪にとどまる。強盗人罪ではない。」と判断したらどうなるのか?これは、
「無罪」判決が言い渡されることとなる。『えっ!そんな馬鹿な!』『 たとえ強盗人罪の立証を検察が出来なかったとしても、
被告人が人事件を起こしたのは事実だろう。なのに無罪?それはないだろう!』
もっともな国民感情である。ただ、所は、検察が主張した起訴内容が事実かどうかを判断するだけ。これが建て前なのだ。
検察が強盗人罪で被告人を処罰せよと主張した。


111 :
だが、その立証が出来ない。となると、強盗人罪は無かったことになるから、→無罪となってしまう。
さらに、仮に、強盗人がダメで確定してしまうと、再度、人罪で被告人を起訴し直すというのは不可能なのである。
やり直しはきかない。これを「一事不再理」といい、憲法39条で保障されている。しかし、それにしても、
人をしておいて無罪。これはいかにも不都合であろう。これが通用するなら、日本国民は、
司法や所など信用しなくなるに違いない。このような不都合を回避するために、法は、の途中で、
検察官が起訴内容を変更することを認めている。今回の例でいうと、強盗人罪から人罪に変更するのである。
これを、専門的な用語であるが、「訴因変更」という(刑事法312条)。さて、女性長は、
冒頭で、『別の構成は考えられないものでしょうか?』と検察官に言った。

112 :
これは、『所としては、検察が主張する強盗人で佐山治を裁くことは出来ません。
なので、人罪に訴因変更しなさい。』というサインなのである。訴因変更は、検察の権限である。
所が勝手に変更することは出来ないのだ。だから、検察にサインを送ったのである。
さすがは、刑事にめっぽう強い亀田弁護士だ。佐山治の事件で検察の劣勢は明らかであった。
しかも、被害者遺族の岡野芙美江並びに芙美江の父は、公判の進捗状況について、
所からも検察からも何も知らされていなかった。「何かあったら連絡します」と横浜地検の事務官から電話があり、
それっきりだ。佐山治が犯した人事件。昭和60年(1985年)当時の日本の刑事では、
犯罪被害者及びその遺族の人権など無いに等しく、彼らは蚊帳の外に置かれていた。

113 :
そして、被害者とその遺族は、地域社会から奇異の目でみられ、マスコミの好奇心による過剰報道被害にあい、
孤立していく。家族を害された挙句の果てにである。これを二次被害という。そう、ただただ理不尽に泣き、
ひたすら涙を流すだけであった。この許しがたい理不尽。国会議員や法務省官僚、
さらに社会の理不尽と闘い、人権擁護が職責であるはずの弁護士ですら皆知らんぷりであった。
なぜか?それは、犯罪被害者支援活動が、彼らの「利権」や「天下り先」獲得、「収入増」に直結しないからである。・・・(次回に続く)

114 :
【小説】「愛の蹉跌」=第23回= 佐山治の公判に関しては、さらにもう1つの問題があった。
それは、公判開始後に明らかになった事であるが、佐山治が逮捕された鶴見医科歯科大学敷地内に設置された公衆電話から
彼は自ら110番通報をしていたのだ。「不審者が敷地内」にいると通報があったのが犯行当日の午後11時頃。
実は、そのわずか10分ほど前に神奈川県警・通信指令センターに「人をした」と連絡が入っていた。
連絡をしたのは佐山治であったことが判明したのだ。これは、「被疑者が誰であるか未だ明らかになっていない段階で」、
「犯罪事実を申告する」こと。つまり、刑法42条1項に規定がある‘自首’にあたる。
当然、弁護側は、佐山治は自首をしたのであるから、刑は減軽されるべきと主張する。
強盗人罪で起訴されたにもかかわらず、検察による立証が困難であったため、人罪に訴因変更される。
その上、自首が認められるとなると、さらに刑が軽くなるのだ。検察側の敗北に等しい結果となりかねない。


115 :
検察側は、刑法42条1項には、『罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、
その刑を減軽することができる。』とある。「減軽することができる」であって、「減軽しなければならない」
とは規定されていない。この趣旨は、被告人の犯行態様、罪質の悪質さ、被告人に改悛の情があるか否か、
被害の程度などを所が総合的に判断し、所に被告人の刑を減軽するか否かを決める裁量を与えたものだ。
本件では、佐山治は、事件を起こした反省がまったく見られず、
しかも医療少年院を出所した直後の犯行であり、非常に悪質である。さらに、何の罪もない被害者を害され、
遺族の被害感情は実に厳しいものがあること。また、佐山治の再犯の可能性が高いと思われること。
佐山治本人はいうまでもなく、彼の両親や親族から遺族への被害賠償はまったく行われていないし、
賠償をする意思すらないと見受けられること。


116 :
以上の点を考慮すれば、佐山治に自首を認めるべきではないと検察は反論した。・・・
そして、佐山治の刑事がいよいよ大詰めとなったある日の公判期日。検察側の証人として、被害者の夫、
つまりは岡野芙美江の父が法廷に立った。この日、芙美江も法廷の傍聴席にいた。
芙美江は、この日、初めて佐山治を目にしたのだ。芙美江の父は、妻を害された悲しみと、被告人への怨念が日に日に強まっていること。
娘も大変な心的ショックを受けており、学校を休みがちになってしまったこと。
同じような思いをする遺族が将来二度と出ぬよう、佐山治に厳刑を科して欲しいこと。以上の点を女性長の面前で申述した。
そして、岡野芙美江と父が退廷した直後のことである。佐山治は顔を真っ赤にし、
いきなり女性長に大声で噛みついた。(佐山治)「ちぇ!なに言いとんねん!あのオッサン!
てめえの女房がされたは、運が悪かったんや!(笑)

117 :
ただそれだけのことやろ?なあ、長はん。そう思うやろ?」(長)『被告人!黙りなさい!』
(佐山治)「なんじゃい!このクソばばあ!黙れとはなんやねん!ワイは未成年やで!少年法で保護されとるんや!
ワイは自首したんや!ワイには人権ちゅうものがあるんや!」(長)『ひとまず休廷しましょう。被告人を退廷処分とします!』・・・
佐山治のような犯罪者は、実は珍しいケースではない。法廷で官に盾突くのはさすがに少ないかも知れないが、
自らが犯した犯罪を真摯に反省する犯罪者など少ないものだ。多少古い統計データであるが、平成15年(2003年)
における刑法犯のうち、再犯者が占める割合は、なんと49.6%にのぼる。半数弱は再犯者による犯罪なのだ。
人、強盗、強姦、放火の凶悪犯についてみると以下の通りである。人→41.1%、強盗→37.6%、強姦→33.3%、放火→46.9%。

118 :
そして、法務省の矯正予算(刑務所、拘置所、鑑別所などを維持管理するための予算。
受刑者に対する社会復帰支援事業なども含む)は、なんと2282億円にものぼる(2011年度)。
前述の受刑者の出所後の再犯率を見る限りにおいて、わが国の犯罪者矯正政策がうまくいっているとは思えないであろう。
うまくいかないものに、年間2282億円もの‘血税’がジャブジャブとつぎ込まれているのである。
毎年である。犯罪者の矯正、つまり刑事政策は社会に必要である。犯罪者にも人権がある、その通り。
犯罪者の社会復帰を支援する、これも必要。その通り。
だが、これだけの膨大な予算をつぎ込む以上は、日本の矯正政策が効果的なのかどうか?絶えず検証する姿勢。
これもまた重要であるのは論を待たない。しかし、当の法務省は当然のこと、日本では国会議員や、
刑事法が専門の学者達もこのような問題意識がゼロなのである。財政難が叫ばれ、
消費税をはじめとした租税アップが次々に行われる昨今である。

119 :
仮に、現行の犯罪者矯正政策が誤りであり、効果がないのであれば、早急に見直す必要がある。効果がないものに、
膨大な税金を支出するほど今の日本には余裕は残っていないであろう。だいたい、犯罪者の「矯正」「社会復帰」
という言葉じたいが、刑罰を教育刑と捉える立場である。そう、日本の矯正政策は、
基本的に刑罰を教育と捉える思想に立脚している。犯罪者を「教育」し、社会に復帰させ、
二度と犯罪に手を染めないように国家が支援するというもの。だが、上記の統計データを見る限り、教育刑の限界は明らかではなかろうか?
となると、刑罰を応報刑、つまり、目には目を。歯には歯をといった厳罰化を推進していく。これが、これからのあるべき姿ではなかろうか?
同じことは、少年法にもいえる。少年法の分野だと、たとえば少年院送致処分は刑罰ではない。
つまり、前科にならないのである。

120 :
これも、国家が非行少年を教育していくという教育刑思想そのものである。だが、少年院送致処分を受けた未成年者が、
成人になって犯罪者となり、刑務所の受刑者になるケース。これも言うまでもないが非常に多いのだ。
となると、少年院での教育(?)。これも見直すべき時期に来ているように思えてならない。・・・(次回に続く)

121 :
【小説】「愛の蹉跌」=第24回= それから2ヶ月後のこと。・・・佐山治に対する判決公判が横浜地方所の法廷で開かれた。
(長)『では開廷します。被告人、前へ。』 手錠を外された佐山治は長の正面に立つ。
(長)『佐山治に対する人被告事件について判決を言い渡す。主文、被告人を懲役5年から7年に処する。以上です。』
少年事件の場合、○年から○年と幅をもたせた刑が言い渡される。これを不定期刑という。
刑務所で問題を起こさずに、ちゃんと懲役に励めば5年で出てこれるであろう。いくら少年とはいえ、18歳である。
普通は、すでに判断力や理性を十分持ち合わせている年齢であろう。なのに、未成年というだけで、
人をしても、たった5年から7年の刑である。いくらなんでも軽過ぎはしないか?・・・
佐山治は思わずガッツポーズを見せる。弁護人の亀田静歌も満足な表情で頷く。

122 :
判決内容を知った岡野芙美江の父は、横浜地検に東京高等所への控訴を強く懇願した。
しかし、地裁での審理経過を鑑みると、高裁での逆転はまず不可能と判断。控訴を断念する旨、
検察官から岡野芙美江の父に伝えられた。さらに、芙美江の父は、佐山治の両親に対し、
民事で損害賠償請求を起こしたいと横浜市内の法律事務所を訪れ弁護士に相談をした。
佐山治本人のみならず、彼の両親も、被害者遺族に対する謝罪は無ければ、被害賠償もまったく無い。
弁護士は、『佐山治の両親の、治に対する親権者としての監督義務違反を理由に勝訴する可能性はある。』
『しかし、佐山家が三重県で経営する零細企業は、現在、経営難である。治の父名義の不動産には、
銀行の抵当権が目いっぱいついている。』『なので、仮に勝訴したとしても、治の両親から賠償金を取ることはほぼ不可能だ。』
『したがって、悔しい気持ちはよくわかるが、民事の提起を断念するのが妥当だと思う。』
と芙美江の父にアドバイスした。

123 :
結局、犯罪者は少年法で厚く保護され、被害者への賠償などしなくても何もぺナルティーを科されずじまい。
こんな理不尽な話があるだろうか?それが通用してしまう先進国(?)日本である。
犯罪被害者とその遺族を取り巻く冷徹な現実、「悲劇」がそこにあった。その後、
岡野芙美江の父は、最愛の妻を失った悲しみから、酒に溺れるようになっていく。
そして、会社を辞め、自宅で引きこもりがちに。事件現場となった鶴見のマンションは、
ローン返済の目処が立たなくなったことから売却した。岡野芙美江も、引きこもりで精神を病んだ父と家計を支えるため仕事についた。
そう、経済苦から高校進学を断念せざるを得なかったのだ。まだ15歳、16歳の芙美江であったが、
世間は情け容赦はしない。芙美江は、その後、厳しい社会の荒波に翻弄されていくこととなる。
そして、芙美江の父は、それからしばらくして肝臓を患い去。

124 :
そう、犯罪者・佐山治の手により、岡野家は崩壊したのだ。一方、佐山治は、23歳で刑務所を出所。
それからも定職につかず、新宿歌舞伎町のテキヤ系暴力団‘極西会’の準構成員(チンピラ)となる。
そして、恐喝、覚せい剤取締法違反(所持)、詐欺、売春防止法違反などで度々警察に逮捕され、
文字通り、刑務所を出たり入ったりの人生となっていった。もはやコメントは不要であろう。
三重県の少年院や18歳で服役した刑務所の矯正「教育」などという甘っちょろい小手先の手法で、
佐山治の犯罪性向を変えることなど所詮は無理な相談だったのである。・・・
「警部!会議の時間ですが?」品川湾岸警察署4階の資料室で、
佐山治が27年前に犯した人事件記録を読みふけっていた大崎刑事。その大崎に若い部下が声をかけた。
(大崎)『あ、ああ、そうだ。今日は全体会議だったね。』
(若手刑事)「ええ。署長が既に着席していますよ。」

125 :
(大崎)『おお、それはまずい。早くいかないと。今すぐ行くよ!』
会議の後は?...安羅木(やすらぎ)の取調べだな。それが終わったあとでまた記録の続きを読もう。
大崎刑事は、安羅木が稼働していた吉原エンペラーから押収した書類一式の上に分厚い記録簿を置いた。・・・(次回に続く)

126 :
sage

127 :
続きはどうなった?

128 :
>>127
ありがとうございます。予定としましては、今週末の更新になります。
よろしくお願いします。

129 :
【小説】「愛の蹉跌」=第25回= 大崎刑事は、品川湾岸警察署5階の大会議室に入った。
なんと署長の真向かいの席である。大崎は、思わず溜め息がもれる。大崎より年下の署長は、
いつも「警察のメンツ」ばかり。自己保身と出世しか考えない男だ。
本人は、時代劇で有名な俳優‘高橋○樹’似のイケメン男を気取るが、「は?どこがだよ!」
と大崎も他の部下達もみんな署長を毛嫌いしていた。しかし、警視正である署長は人事評価権者だ。
彼に嫌われると、出世は絶たれる。
それどころか、どこの署に飛ばされるか分かったもんではない。東京といっても広いのだ。
それこそ奥多摩やら、伊豆諸島にでも飛ばされたらえらいことになる。だから、みんな署長のイエスマンを
(表面的に)演じざるをえないのだ。・・
(署長)「ええっと。例の体遺棄事件。平和島の。被疑者の取調べは?もう終わったんだろうね?大崎君。」
(大崎)「いえ。まだです。」(署長)「なに?物証はあるし、被疑者の取調べなんて少しだけやればいいんだよ。
それで、さっさと君が作文にして、被疑者の供述調書にする。それで終わりじゃないか!

130 :
なーにをモタモタしとるんだ君は。ダメじゃないか!」(大崎)「は。分かりました。早急に終わらせます。
大変申し訳ございません。」(署長)「君は、捜査手腕には優れているようだが、仕事の効率性と事務処理能力。
これが劣っているようだね?(笑)早く処理したまえ!」(大崎)「・・・は。大変申し訳ございません。」
・・・署長は、次の人事異動で本庁の課長か次長ポスト。あるいは、序列上位の赤坂溜池警察署や銀座警察署の
署長ポストを狙っているとの噂だ。さっさと面倒くさい事件を処理し、自分の部下統率力と指導力を
警視庁幹部連中に大いにアピールしたいのだろう。嫌なやつだ。
が、大崎は煮えくりかえる怒りをグッとこらえ我慢する。今年で警察人生38年目。若い頃から辛抱の連続であった。
ただ、それでも長年の刑事経験で磨いてきた捜査の実力。これは誰にも負けない自信がある。これが彼の誇りである。
・・・・・・・会議が終わり、大崎は、3階の取調室へと向かう。

131 :
が、待てよ。署長の指示に反するが、被疑者である安羅木(やすらぎ)一郎の取調べに長く時間をとりたい。
その後は?ああ、佐山治の公判記録だ。あれも一応最後まで読むと。
う〜ん先に昼飯を食おう。そうするわ。大崎は、食堂へと足を向けたのであった。
タヌキうどんとカレーライスのセット。これが大崎の昼飯だ。私服の刑事のみならず、
制服警官、白バイ交通警官がわんさかと食堂に入ってくる。和気あいあいとした雰囲気だ。
ちょうど、食堂の大型テレビに目をやる。昼のワイドショー番組である。・・・
すると、女性に大人気のタレント‘小田輝義’が画面に映る。高橋克典似の細身の長身。
新宿歌舞伎町の元売れっ子ホストである。彼の売上記録はいまだ全国歴代1位の座に君臨する。
伝説のカリスマホストである。5年前にホストを電撃引退。その後、
みずからホストクラブ「レヨン」をプロデュース。歌舞伎町にオープンしたのだが、
これが空前の大ヒット。瞬く間に2号店、3号店...と次々とホストクラブを開店していった。


132 :
現在は、レヨングループのオーナー社長をつとめ、女性専用エステサロン、ネイルサロン、
さらに水商売関係の広告代理店業にも進出。のみならず、
タレントとして、マスコミTVにも積極的に出演し、現在、4本のレギュラー番組を獲得している。
『女が抱かれてみたい男ナンバーワンみたいですよ。』
大崎の隣に交通課に席をおく白バイ警官が着席する。30代前半の巡査部長で大崎と話が合う仲良しだ。
(大崎)「へえ〜抱かれてみたい男ねえ。ま、たしかに小田輝義はイイ男だわな。
俺みたいなチンチクリンの禿げジジイからしたら羨ましいわい(笑)。」
(白バイ警官)『羨ましいですよね〜女に不自由しないなんて。経営者としても超やり手みたいですし。
怖いもの無しですよね。』(大崎)「あれ?隣にいるのは?」テレビ画面を指差す大崎。(白バイ警官)
『ああ、あれは...小田輝義の彼女じゃないですか?ごく最近ですよ、彼女がテレビに出始めたの。
小田輝義の専属秘書を名乗ってね。

133 :
綺麗な女性ですよね。いずれ2人は結婚するんじゃないですか?』
(大崎)「ふ〜ん。いいねまったく!こっちは馬鹿野郎の署長にムカついているってのによ!」
(白バイ警官)『ははは(笑)!!!』 昼休みの品川湾岸警察署の平和なひと時であった。・・・・・・・・(続きは次回)

134 :
【小説】「愛の蹉跌」=第26回= その後、大崎刑事は、3階の取調室に入る。昼休み時とは別人の険しい人相だ。
さっそく安羅木(やすらぎ)一郎の取調べを開始する。(大崎)「27年前に佐山治が、
岡野芙美江の母を害した件だがね。公判記録に途中まで目を通したよ。要は、
吉原エンペラーの嬢だった岡野芙美江にお前は同情したと?そういうことだな。」
(安羅木)『はい。』(大崎)「それでどうなった?」(安羅木)『佐山は、それからも度々芙美江さんを指名し、
店に来店しました。と同時に、芙美江さんの悩みはさらに深刻になり、私が相談にのる回数が増えていきました。』
(大崎)「店外で会う機会が増え、そんで男女の仲になったと?」(安羅木)『はい。』
(大崎)「岡野芙美江はいま富山県にいると。お前そう言ったよな?会いに行かなかったのか?」
(安羅木)『なにぶん休みが取れない仕事なもんでして。それに、しばらくそっとしておいてあげたほうがいいと思ったのです。
だから彼女とは電話でのやり取りだけでした。』(大崎)「なるほど。じゃあ、佐山治害までの状況を詳しく話せ。

135 :
あれか?お前に害を教唆したのは女じゃないのか?」(安羅木)『違います!それは違う。
害を決意し、計画を練り、実行したのは私です。芙美江さんはなにもしていません!』
『佐山治が週2、3回も来店するようになって、.......・・・・』(大崎)「ん?
どうした安羅木?おい!いまさら黙秘しようっていうのか!お前は!」(安羅木)『いえ違います。』
安羅木は、この時、あることを偶然に思い出したのである。
しかし、大崎にそれを敢えて伝えなかったのだ。(安羅木)『佐山治の害を決意したのは、
2009年の9月頃です。佐山を接客して感じたのは、彼は結構用心深い男だなということでした。
なので、まずは佐山に私への疑念を払拭してもらうこと。そして、彼の自宅を突き止めること。
この2つを目標にしたんです。』・・・2009年9月のある日・・・(安羅木)『これはこれは佐山様。
本日もご来店頂き誠に有難うございました。』(佐山治)「ええんやて!土下座してワシに礼いうほどのことじゃあらへんやろ!
ほな、ワイだけ個室の上がり部屋かいな?初めて入ったわこの部屋。豪華やなあ!」


136 :
(安羅木)『大変申し訳ございません。申し遅れました。
ここはVIP客専用の待合室(兼)上がり部屋なのです。当店は、有名芸能人や歌手、
さらに大物政治家といったVIP客様にも御利用頂いています。他客様と顔をあわせることがないよう、
こちらにご案内させて頂いております。』(佐山治)「オホホ!(笑)
んじゃワイはVIP客の1人やと?そりゃ嬉しいわ!ほんまオマエは気が利く男やな!礼をいうで!」
(安羅木)『とんでもございません。恐縮です。今後は佐山様をこちらにご案内させて頂きます。
いつもご贔屓頂き本当に有難うございます。』・・・そして、2009年の暮れ。・・・
(佐山治)「んにゃんにゃ」(安羅木)『どうしましたか?佐山様』(佐山治)「オマエと話しとると酒が美味いんや。
すっかり酔うてしもうたわい(笑)。んじゃそろそろ帰るかいな。」

137 :
(安羅木)『それはいけません佐山様。年末ですからね、
飲酒運転の取り締まりをあちこちでやってるでしょう。』
(佐山治)「なんやて?んじゃどうしたらええんや?」(安羅木)『私めが代わりにお車を運転し、
佐山様の御自宅まで送らせて頂きます。』(佐山治)「ほんまに?ええんか?」
(安羅木)『ええ。いつも御利用頂いている超太客の佐山様へのささやかなお礼です。』
(佐山治)「オホホ!(笑)ほんまオマエはええやっちゃな!ますます気に入ったわい!」・・・
安羅木は、佐山のBMWのハンドルを握り、渋谷へと向かう。バックミラーで時折り佐山を見つめる安羅木。
佐山治は、すっかり安羅木を信用し、大いびきをかいて寝こんでいる。
よし。これで奴の自宅を突き止められる。あとは、害計画を煮つめて実行するだけだ。・・(続きは次回)

138 :
2chやHLに書くなよ

139 :
【小説】「愛の蹉跌」=第27回= そして年明けの2010年2月のこと。
(安羅木)『ああこんばんは。佐山様。御来店有難うございます。先ほどの御案内時、
私は休憩に出ておりまして。御挨拶が遅くなり大変申し訳ございません。』
(佐山治)「オオ!安羅木くん!会いたかったぞ!最近な、ワイは弥生(岡野芙美江のエンペラーでの源氏名)
よりオマエさんと会うのが楽しみで遊びにきとんねん!」(安羅木)『それはそれは(笑)
有難うございます。恐縮です。お飲み物は何を?』(佐山治)「せやな!じゃウィスキーくれや!」
(安羅木)『かしこまりました。』・・・(安羅木)『ところで佐山様。次回の御来店時は特別に時間無制限でお遊び頂いて結構ですよ。』
(佐山治)「は?なんやて?どーいう意味や?」(安羅木)『・ ・・山様には本当にいつも御世話になっております。
社長の黒澤から、先般、私に指示がありましてね(嘘)。通常の120分コースだと物足りないだろう。
是非とも佐山様にはお好きな時間だけ弥生とお遊びになってもらってはどうかと。延長料金無で。特別にです。
佐山様だけ特・別・に・です。』

140 :
(佐山治)「ほっ!んじゃ3時間4時間...ずっと弥生と過ごせると?そういうことかいや?」
(安羅木)『そうです。』(佐山治)「うひょひょ!そりゃええわ!スペシャルサービスちゅうわけやな!」
(安羅木)『さようでございます。但し、他の指名客様との兼ね合いがありますので、
次回は夜22時の御案内とさせてください。それから何時間でも店内に残って頂いて結構ですよ。』
(佐山治)「なんなら、夜10時からずっと貸切にしたいもんや。弥生とどっか出かけるちゅうのはどうや?」
(安羅木)『佐山様。あいにく弥生は最近ですね外出はNGになりまして(嘘)。店内接客のみとさせていただいております。』
(佐山治)「えっ!そっかそりゃ残念やな。」(安羅木)『こうしてはいかがでしょう?夜10時からお遊び頂くと・ ・・
その後、ここで寿司の出前でも食べながら、佐山様、私、そして弥生の3人でゆっくり語りあうとか。』
(佐山治)「それやっ!それおもろい!よっしゃ!それでいこっ!」 へへ(笑)馬鹿な奴だ。
安羅木は、内心ほくそ笑む。

141 :
(安羅木)『かしこまりました。それでは、次回の予約を早速お取り致しますね。またの御来店、心よりお待ち申し上げます。』
・・・数日後、佐山治は22時少し前に吉原エンペラーに来店し、いつも通り芙美江を指名した。
そして、これまたいつも通り、VIP客用の待合室(兼)上がり部屋に入った。日付変わり午前0時10分頃のことである。
そして、佐山治は、焼酎を飲みながら安羅木を待っていた。ところがである。なかなか来ない。どうしたんだろう。
0時40分過ぎになってようやく安羅木がVIP室に入る。(佐山治)「おら!オマエ遅いやん。どないしたんや?」
(安羅木)『お待たせして大変申し訳ございません佐山様。本日も御来店頂き誠に有難うございました。実はですね、
弥生から佐山様にプレゼントがあるそうです(笑)。お手数ですが、いまいちど2階の個室まで来ていただけないでしょうか?』
(佐山治)「へ?おお!ワイにプレゼントかいや!ほな嬉しいわ。待て。いますぐ行くで!」
佐山はVIP室を出る。そして、階段で2階へと上っていく。165cmで100キロの巨体。

142 :
酒に酔い始めてきたのか、肥満体の動きがさらに緩慢になってきている。安羅木は、佐山の後に続く。
(安羅木)『つきあたりを左に。一番奥の部屋になります。』・・・(佐山治)「ん?ドア開けるで?」
(安羅木)『どうぞごゆっくり。私は下でお待ち致します。あとで弥生と一緒に降りてきて下さいませ。』
(佐山治)「お!了解!」 佐山治は個室のドアを開ける。しかし... 誰もいないではないか?怪訝な表情の佐山治。
すると、‘ガツン!’佐山治は、両目玉が飛び出んばかりの衝撃を覚える。後ろには、バールを手にした安羅木の姿があった。
(佐山治)「な、なにするんや!なんや貴様!」 安羅木は、よろめく佐山の左こめかみ部分をさらにバールで殴打する。
(佐山治)「うぉ〜!」安羅木は、佐山治の上着を掴み、個室端の浴槽まで引っ張っていく。

143 :
そして、次に佐山治の髪をわし掴みにし、彼の顔面を浴槽にためた湯に押しこんだ。
「あぶぶ、ぶ、あぶぶぶ!あぶぶぶ!」「あぶぶ...あぶ..あぶぶぶ!」
必に抵抗する佐山治。対して、安羅木は終始無言のまま表情を変えず。全身の力を振り絞り、
佐山の顔面を湯中に押しこむ 、押しこむ。バールで殴打された頭部から血が漏出している。
そして、浴槽の湯は徐々にピンク色に染まっていった。「あぶ...ぶ...」
しばらくの後、佐山治はぐったりする。絶命したのだ。・・・(続きは次回)

144 :
第1回の存在意義がよくわからん展開やな

145 :
【小説】「愛の蹉跌」=第28回= 安羅木(やすらぎ)一郎は、吉原エンペラー2階の個室で、
煙草を吸いながら、遺体遺棄場である秩父までの走行ルートを地図で再度確認する。
『もし、ガソリンが不足していたら、近所の日本堤のスタンドで補給しておこう。』
浴槽に目を移す。湯をはった浴槽に上半身を突っこんだままの佐山治。馬鹿が。ざまあみろ。
芙美江を苦しめてきた当然の報いだ。出かける前に湯を抜き、
血が飛び散っている床ともども綺麗にふき取らなければならない。ボーイの下積みが長かった安羅木。
そんなの10分もかからず終わらせるわ。そうだなあ、いま午前1時か。出発は30分後にしよう。
・・・安羅木は、あらかじめ用意しておいた大袋に、裸にした佐山治の遺体を入れる。チャックを閉める。
佐山治の衣類と凶器のバールは自分の寮に持ち帰り後日処分する。よし!安羅木は、外に出る。
2月の深夜、冷気が身を激しく突く。石鹸の匂いが残存する深夜の吉原ソープ街。真っ暗で不気味な静けさだ。
江戸遊郭から350年超の歴史をもつ吉原。

146 :
数百年前の遊女達の地縛霊が出てきてもおかしくない。安羅木は、大袋を背負う。重い。
遠くにリネン業者のトラックが1台止まっているだけだ。自分を見ているのは誰もいない。
よし今だ!安羅木は、駐車場に向かい、佐山治のBMWトランクに大袋を放り込む。
そして、一路秩父へ向け車を走らせた。・・・・(大崎刑事)「それで?途中、清瀬のファミレスに立ち寄り、
そこでお前が害した西田美幸が偶然居合わせたと?そういうことか?」(安羅木)『はい。』
(大崎)「秩父のマンホールに佐山の体を遺棄し。その後、お前は渋谷にある佐山治のマンションに向かった。だな?」
(安羅木)『その通りです。車と部屋の鍵は奴のマンション室内に置いてきましたよ。オートロック式ドアでした。
私は渋谷から電車を使い吉原に戻りました。』安羅木に罪の意識などまるでない。
淡々と佐山治害の状況を終始落ち着いて供述してきた。(大崎)「おい」(安羅木)『はい?』
(大崎)「お前、本当に自分がしたことを悪いと思わないのか?」

147 :
(安羅木)『ええ。悪いことをしたという意識はないと。先日も申し上げましたよね?
奴はああなって当然の人間なんだと。私は、彼の被害に遭ってきた人達の代わりに奴を成敗しただけ。
そう思ってます。』(大崎)「じゃ聞くがね、お前が平和島で遺棄した西田美幸はどうなんだ?」
(安羅木)『・・・・』(大崎)「お前の犯行に気付き、お前をゆすった西田美幸は確かに悪い。
だが、あの子は故郷の九州で独り暮らしの母親に毎月仕送りしていたそうだ。」(安羅木)『・・・・』
(大崎)「母親は、わざわざ昨日上京し、ここに来たんだ。犯人、つまりお前を絶対に許せないと。
厳罰に処してほしい。そう言ってたぞ。お前がやったことは、佐山治と変わらないじゃないか?!
というか佐山と同じだ!!」 大崎に大声で叱責されると、安羅木は両手で顔を覆う。
そして号泣し始めた。・・・それから1時間ほど後のことである。取調べが終了し、
安羅木は留置場で横になっていた。そのとき......先ほど取調べ最中に思い出した「ある事」について考えていた。

148 :
なぜ今まで気がつかなかったのであろう?佐山治が岡野芙美江を指名し始め、以後、
週2〜3回も来店するようになった。実は、その前にこんなことがあった。・・・
(安羅木)「本日も有難うございました佐山様。」 安羅木は、上がり部屋で佐山に冷茶を差し出した。が、
佐山は、無反応で姫アルバムを手に芙美江の写真をじっと見つめている。真剣な面持ちであった。
(安羅木)「ああ、当店不動のナンバー1弥生ですよ。佐山様は、巨乳グラマー体型の子がお好みですよね?
弥生はスリムです。ネットには顔出ししていません。綺麗な子です。」
(佐山治)「そんなことは、どーでもええんや。次回からこいつに入るわ!ずっとこいつを指名するわ。
ええな?」 佐山が芙美江を指名し始めたきっかけ。これが不自然だったのだ。
芙美江は佐山の顔を知っている。27年前の刑事のおり、傍聴席から彼を見たからだ。
だが、逆に、佐山は芙美江を知らないであろう。仮に27年前に被告人席にいた佐山が芙美江を見たとしても、
27年前というと、芙美江は当時8歳である。今の芙美江に気付くはずはない。

149 :
なのに、佐山の「あの時」の目は、何かが違った。佐山治のキモく細い目。まるで何か獲物を見つけたような、
何かをたくらんでいるような真剣な眼差しであった。さらに、佐山治の腐乱白骨体が見つかった後も、
警察が芙美江を捜査対象にした形跡がないのだ。これは一体なぜなのか?
そう、‘疑念’が安羅木の脳裏に再来した瞬間であった。なにより、自分が逮捕された当日、
彼女は電話に出なかったし、それからも自分に連絡してきもしない。なぜなのか?
今回再び襲来した‘疑念’は、容易に消えそうはない。マグマの如く沸々と安羅木の脳裏に浮かんでは消えた。
・・・その頃、大崎刑事は?・・・4階の資料室に入り、佐山治が起こした人事件の公判記録の続きを読んでいた。
27年も前の事件である。が、いつの時代・ ・・あっても、事件の悲惨さや遺族の悲しみに変わりはない。
大崎自身、これまで数多くの犯罪被害者や遺族達と会い、彼らの悲痛な叫びを何度も聞いてきた。
彼らの地獄の苦しみも嫌というほど見てきたのだ。


150 :
当時少女だった岡野芙美江。事件後、しばらくして父親も他界。可哀想だった。安羅木が惚れこみ、
心から愛した岡野芙美江。どんな女だろ?お、エンペラーから押収した書類があるな。
在籍姫達の身分証明書コピーを綴じてあるファイル...あ、あった。大崎は、そのファイルを開ける。
ファイルには姫の顔写真付き身分証明署コピーと、入店時に姫が提出した誓約書がセットとしてファイリングしてある。
おお、あった、あった。岡野芙美江。そして次の瞬間 「えっ!!」 大崎は驚愕から顔面が凍りつき、
目つきが見る見る険しくなっていく。「ま、まさか!」・・・・(続きは次回)

151 :
sage

152 :
sage

153 :
sage

154 :
【小説】「愛の蹉跌」=第29回= 品川湾岸警察署の4階資料室。佐山治の公判記録に目を通していた大崎刑事。
吉原エンペラーから押収した在籍姫のファイルを開き、呆然とする。岡野芙美江のエンペラーでの源氏名は、『弥生』であった。
しかし、彼女だけ身分証明書コピーならびに誓約書が見当たらないのだ。
そして、...何より決定的な「あるもの」がそこに綴じられていた。
・・・・・(その翌日のこと)・・・・午前6時。留置場に勾留されている安羅木(やすらぎ)一郎は、身を起こした。
『ああ、今日もきつい取り調べか。刑を待つだけの身だ。しょうがない。』前科前歴がない安羅木にとって、
身柄を拘束されての警察取調べの日々は想像を絶する過酷さであった。
まさか、これほどきついとは思わなかった。仕事人間の大崎刑事は、毎日午前7時から7時半には登庁する。
それですぐに取り調べ開始なんて日もある。

155 :
それから夕方、夜までずっとだ。ずっと。だが?・・・今日は看守係が来ない。どうしたのであろう?
もう少し横になってよう。もう疲れた。いっそのこと、ここで首を吊って自害してもいい。
結局その日の午前中、取調べは行われなかった。安羅木は、ただ々目を閉じて、今までの自分の人生を静かにふりかえっていた。
安羅木(やすらぎ)一郎は、茨城県出身である。現在は、ベッドタウンとして都内通勤住民が多い取手市。
ここが彼の故郷だ。彼の父親(安羅木太郎)は、小さな町工場を経営。母も従業員として工場経営を支えていた。
彼には弟が1人いた。決して豊かではなかったが、幸せな少年時代だった。なぜなら、
その当時の嫌な思い出が彼には無いからだ。しかし、小学校4年生のある日、彼の運命は暗転する。
日曜日だった。彼が友達と遊んで帰宅したのだが、自宅に両親の姿は無かった。

156 :
安羅木は、しばらく家にいたが、不安になり、自宅敷地内の工場へと向かう。そして、作業場の大扉を開けたその時。
彼の両親と幼い弟の変わり果てた姿がそこにあった。そう、首吊り自さつである。実は、安羅木の実家の工場は、
オイルショック[昭和48年(1973年)] を境に受注が急減。経営危機に瀕していた。金策に走りまわる安羅木の父、太郎。
しかし、頼みの信用金庫から追加融資を冷たく断られる。そして、意気消沈し、
千葉県松戸市の繁華街を歩いていた時、ある広告看板が太郎の目に入った。....‘樺小企業支援センター’....
お得な手形割引あります!メインバンクに断られた経営者様!あきらめないで!道は必ずあります!
そんな貴方を我々は応援します!.....「ここに頼もうか。ん。資金繰りはもう限界だ。ここに頼もう。」
‘道は必ずあります’・・・これが安羅木太郎に対するコロシ文句となった。が、
実は、中小企業支援センターなる社名に反し、ここの実像は、いわゆる会社整理屋・暴利街金だったのである。


157 :
‘道’は、道でも、会社再生への道では断じてない。それは、会社‘倒産’への地獄道であった。
安羅木太郎と彼の町工場は、悪徳街金融の餌食となり、安羅木家は崩壊したのである。
それから、安羅木は、親戚をたらいまわしにされていく。両親と弟を失い、筆舌に尽くしがたい苦労を散々味わってきた。
成人してからも、社会の底辺で何とか踏ん張って生きてきた。そう、似ているであろう?誰と?
岡野芙美江とである。安羅木一郎は、自分の「過去」に、芙美江の『過去』を重ね合わせた。そして、彼女を心から愛した。
と同時に、芙美江を地獄の底に突き落とした佐山治。彼がヤミ金業者であったこと。
このことが、彼の実家を崩壊させた悪徳街金融と二重映しになったのだ。そして、安羅木の内心に深く眠っていた強烈な憎悪が、
意の炎として燃え上がり爆発した。「親父とお袋。あと弟がいるあの世に早く行きたいよ。それだけだ。」


158 :
・・・・(その頃、大崎刑事は?)・・・・ (大崎)「話を聞かせてくれて有難う。礼を言います。」
大崎は、川崎堀の内のソープ街にいた。‘ムクムク倶楽部’という激安ソープ店をちょうど出るところであった。
オールバックで、四角い顔の店長が丁重に大崎に頭を下げる。『いえいえ刑事さん。とんでもない。こちらこそ。』
(大崎)「あ、すみません。貴方のお名前なんでしたっけ?ど忘れしちゃった。」
(ムクムク倶楽部店長)『はい。わたくし横尾といいます。』ん?横尾....
そうだ、吉原エンペラーで店長をやっていた男。安羅木の元上司である。・・・・(続きは次回)

159 :
【小説】「愛の蹉跌」=第30回= その翌日の早朝。安羅木(やすらぎ)一郎は、
手錠をかけられ看守に引っ張られながら品川湾岸警察署3階の取調室に入った。いつもの席に座る。
大崎刑事と若い部下が1人。(大崎)「なあ安羅木。留置所生活はどうだ?きついだろ?」
(安羅木)『・・・・』(大崎)「ぜんぜん食事を摂ってないと聞いたが。大丈夫か?」 おや?いったいどういう風の吹き回しだろう。
普段の大崎は、それはもう怖い形相で、手厳しい質問を取り調べ開始時から矢継ぎ早にぶつけてくるというのに。
大崎は、財布から1000円取り出す。すると、それを部下の若い刑事に渡した。
(大崎)「向かいの‘マクドネル’で朝飯買ってきてやれ。」(若刑事)「はい!警部」・・・
それから10数分の後、若刑事は、マクドネルの朝メニューセットを安羅木の目の前においた。
ソーセージバーガー、フライドポテト。あとアップルパイだ。(大崎)「コーヒーでも飲もうか。
おい、テレビつけろ。例のやつ安羅木に見せるんだ。」

160 :
(若刑事)「はい!警部」・・・若刑事は、DVDをセットしているようだ。(大崎)「まあ、食えよ。安羅木。な。このコーヒー美味いぞ。」
安羅木は、ソーセージバーガーを口にほおばる。ここ数日間、ほとんど何も食べていなかった。美味い。
それにしても、今日の大崎は変だ。彼の温厚で優しい表情を初めてみた安羅木であった。
その後、しばらくの後、安羅木と大崎はテレビ画面に目を移す。〜「こんばんは。クローズアップ日本の時間です。」〜
なんだ、NHJが19時半から放映する番組を収録したDVDじゃないか。米ハーバード大学卒の肩書きをもつ女性キャスターが話し始める。
〜「今日は、犯罪被害者問題に焦点をあてます。平成16年の臨時国会で犯罪被害者等基本法が成立してから8年。
日本でも、ようやく犯罪被害者支援活動が社会で認知されてきた段階に差しかかりました。・・・・ではゲストを紹介いたします。

161 :
‘全日本犯罪被害者家族の会’専務理事で、事務局長をつとめておられる岡野芙美江さんにスタジオにお越し頂きました。」
〜安羅木は、モクモクと食べていたアップルパイを思わず机下に落としてしまった。思わず画面に食い入る。
〜「岡野さんは、27年前にお母様を害された被害者遺族です。現在は、犯罪被害者家族の会の活動の傍ら、
訪問介護のお仕事をされています。岡野さんこんばんは。ようこそおいで頂きました。」〜
な、な、なんだって?なんで芙美江が?!そして、テレビに登場した「岡野芙美江」なる女性は、
光浦似のメガネをかけた肥満女性で、吉原エンペラーに在籍していた弥生とは180度異なる別人であった。・・・・
呆然とした安羅木は、大崎に顔を向ける。が、大崎は落ち着き払い、無言のままコーヒーを飲んでいる。
いったいどういうことだ!(大崎)「おい!テレビ消せ!」

162 :
(若手刑事)「はい!警部」...(安羅木)『あ、あ、あのぉ・・・』(大崎)「ん?どうした安羅木。」
(安羅木)『ふ、ふみ、芙美江わ、は』ショックのあまり言葉が出てこない。
(大崎)「なあ、安羅木。今日はお前さんにあえて辛いことを知らせなければならん。いいか?」・・・・(続きは次回)


163 :
sage

164 :
sage

165 :
sage

166 :
sage

167 :
【小説】「愛の蹉跌」=第31回= 取調室で見せられた
収録番組に登場した岡野芙美江は、安羅木(やすらぎ)
一郎が愛する岡野芙美江と全くの別人・・・
なんだこれは?!茫然自失の安羅木を目に大崎が静かに
語り始める。いつもの険しい人相と口調はいずこへ?彼
も、いつもの大崎刑事ではなく、別人に豹変していた。

168 :
安羅木に対して哀れみの情すら垣間みえる。(大崎)
「俺は37年この世界にいる。取調べ経験は35年ほどに
なるかな。聞き込みを含めて会ってきた人数は数千。

169 :
いや万に届くかも知れん。だから、なあ安羅木。お前が
逮捕されて今日まで取調べで嘘偽りなく事実を話して
くれたこと。それは俺は信じられるんだ。
理由なんてない。勘だよ勘。それだけ。」(安羅木)
『・・・・・・』(大崎)「お前は、岡野芙美江を名乗
り岡野芙美江を演じた女に騙され罠にハメられたんだ。

170 :
なりすましだな。」
(安羅木)『ハメられた?い、や、いやこれは何かの間違いですよ。
芙美江はそんな女じゃない。いま富山県にいるはずだ。
探してみてください!』

171 :
(大崎)「じゃあ教えてやろう。お前がよく知る女の名は、
本間恵美子。これが本名だ。」
(安羅木)『ほ、本間・・・さ、さん?』
(大崎)「そう。すでに確認済だ。しかも、本間恵美子が
富山県に現住しているなーんてのもデタラメだ。

172 :
奴はずっと東京にいる。お前を騙し嘘をついていたんだ。」
大崎は芙美江、いや本間恵美子を「奴」呼ばわりするが、
安羅木はなぜか怒りが湧いてこない。
いまだに狐に包まれたような信じがたい現実が
そこにあったからだ。

173 :
(大崎)「おい安羅木!聞いているのか?
お前、横尾って元店長知ってるよな?」
(安羅木)「は?はあ。2年前の年末で辞めた上司です。
知ってます。川崎に居ると風の便りに聞きました。』
(大崎)「俺は昨日、横尾がいま働いている川崎堀の内の
ソープ店に行き、彼から話を聞いてきたんだ。」

174 :
そして、大崎は分厚いファイルを安羅木の面前におく。
そう、吉原エンペラー在籍姫の身分証明書コピーが綴じ
られているファイルだ。身分証明書は写真付のもので
なければならない。

175 :
しかし、コピーすると黒色に変色し、見難くなることも
考えられる。そこで、所轄警察の保安係は、コピーとは
別途、本人の顔写真をもファイルに編綴するよう各店に
指導が行われていた。(大崎)「岡野芙美江こと、本間
恵美子は弥生という源氏名だった。が、ほら?みろ。奴
のだけ身分証明書コピー、住民票、誓約書など書類が無
いだろ?」

176 :
安羅木は、腰を上げ、前かがみの姿勢でファイルを見入
る。本当だ。源氏名・弥生のぶんだけスッポリと欠落し
ている。安羅木は、事実上の店舗責任者であった。

177 :
しかし、日々の業務に終われ、従前から在籍する姫達の
分まで書類をチェックすることはしていなかった。
(大崎)「おそらく本間恵美子は、お前を騙そうと決め
た後に、このファイルから自分の書類だけ抜いた。横尾
元店長の証言で、ファイルは店フロントの後ろのキャビ
ネットにあった。

178 :
こいつは、出勤日にフロントに誰も座っていないタイ
ミングを見計らい、ファイルを持ち出したに違いない。
なぜか?奴が岡野芙美江になりすまし、岡野芙美江を演
じるには本間恵美子の書類があっちゃまずい。ただそれ
だけのことだ。」

179 :
「昨日、横尾元店長と会った後、俺は本間恵美子に
あったんだよ?つまりはお前が愛した‘岡野芙美江’と
だ。」(安羅木)『え!そうなんですか?どうでしたか
?彼女は元気にしてましたか?』 未だに冷酷な現実を
受け入れられない安羅木であった。・・(続きは次回)

180 :
sage

181 :
つまんね

182 :
sage

183 :
sage

184 :
絶賛中断中! 中折断筆!?作家の新境地!
絶望的な文才で紡ぐ陳腐なストーリー!
そして小説風文章と脚本形式風文章の間で彷徨いつつ、温情ある読み手の如何なる読書欲をも、
中折れさせてしまう個性的な文体!ペンネーム挫折放棄のストーリは予後不良!

185 :
【小説】「愛の蹉跌」=第32回= 前日のことである。大崎刑事は、
部下の若刑事とともに、とあるマンションの一室にいた。
(若刑事)「それにしてもスゴいマンションですねぇ。」
(大崎)「ああ。渋谷区広尾の超高級マンションだ。おそらく月の家賃は
200万円はするだろうな。俺ら安月給公務員は、オンボロ官舎住まい。
縁がない世界だ。」
・・・コンコン・・・ドアをノックする音が聞こえる。
すると、家政婦とおぼしき老婆が大崎らに紅茶を差し出す。
(大崎)「これはどうも。どうぞお構いなく。」
(老婆)「奥様はもうすぐいらっしゃいます。しばしお待ちを。」
(大崎)「奥様?....本間恵美子さんはご結婚なさったのですか?」
(老婆)「ええ、先日入籍しましたのよ。」

186 :
(大崎)「そうですか。」・・・それから数分後・・・
30代半ばの女性が入室した。『はじめまして。本間恵美子です。
警察の方がいらしたと聞いて意外です。』
(大崎)「ほ?意外?それはこちらが言いたいセリフですな。』
大崎の煽りにも表情を変えない。これはしたたかな女だ。大崎の直感だ。
(大崎)「ところで本間さん。この男知ってるよね?」
大崎は、佐山治及び西田美幸の害と体遺棄で逮捕勾留されている
安羅木(やすらぎ)一郎の写真を恵美子の面前に差し出す。
(本間)『はい。私が吉原にいた当時御世話になったマネージャーです。
凶悪犯罪を起こして捕まったってテレビ報道で知って。大変驚きました。』
(大崎)「あんた、吉原エンペラーで何と言う源氏名だった?」

187 :
(本間)『弥生(やよい)ですわ。〜ムッとした表情〜なんでそんな質問をするのですか?
刑事さん』
(大崎)「あんた、佐山治を知ってるね?」
(本間)『はい。私の常連指名客で、しつこい客でした。安羅木さんに相談して、
出禁にしてもらったお客様です。それが何か?』
(大崎)「あんたさ、岡野芙美江という別人の実在女性を名乗り、安羅木に近付いた。
そして、安羅木を教唆し、佐山を害させたんじゃないのか?岡野芙美江さんは、
佐山治に27年前に母親を害された被害者遺族。あんた、佐山の過去を調べたんだろ?
そして、岡野芙美江になりすまし、安羅木に接近した。違うか?」
(本間)『はぁ?何の話ですか?私にはさっぱり分かりませんね。推測でものを言わないで下さい!
私は本間恵美子。

188 :
岡野芙美江なんて女性は知りません!』 大崎は、例の
吉原エンペラー在籍姫ファイルをカバンから取り出し、
机上に置いた。(大崎)「ねえ、本間さん。あなた、
つまり弥生姫のぶんだけ身分証明書や本名署名入りの
誓約書コピーが無い。あるのは、あなたの水着姿の写真
だけだ。なぜこれだけファイリングされていたのか。
俺は知らんけど。なぜ身分証明署などのコピーがあんた
のだけ無いのか?それは、あんたがこのファイルから
抜き取ったからだろ?」(本間)『そんなこと知りま
せん!だいいち、そのファイルはお店の店長とか責任者
が管理しているものですよね?私は姫として働いていた
だけなんです。私が抜いたとか。わけわからないこと
言わないで下さい!

189 :
何か証拠でもあるというのですか?』・・・大崎が言ったとおり、
ファイルには弥生の水着姿写真が綴じてあるだけであった。
これは、店のアルバム用に撮影した写真であろう。誰がその写真を
ファイルに綴じたのか?それは謎である。安羅木ではない。彼は、
ファイルの存在じたい忘れていたのだから。だから、本間恵美子の
‘なりすまし’罠にまんまとハマってしまったのだ。が、大崎は、この写真を見て、
事件の‘闇’に気付くことになる。(大崎)「ならいい。あんた、入籍したんだってね?
旦那さんは、元ホストでタレントの小田輝義。だろ?」 (本間)『そうですが?それが何か?』
...大崎は、品川湾岸警察署の食堂で昼休みに小田輝義をテレビで見た。

190 :
そう、白バイ警官が隣に居たときのこと。そして、その時、小田輝義の隣にいた女性。
白バイ警官は、小田の専属秘書だと言っていたが、大崎は、その女性の顔を覚えていた。
そして、その日の午後にファイルの水着写真を見たのである。・・・(大崎)「ねえ本間さん。
安羅木はね、あんたを岡野芙美江だと信じた。岡野芙美江の27年前の事件の敵をとるため
佐山治を害した。岡野芙美江を愛し、いずれ、あんたと結婚することになっていた。
しかも、あんたは富山県に帰郷しているとも。なぜ彼はそんなことを言うのか?
それは、あんたが岡野芙美江になりすまし、安羅木を騙していたから。そうとしか考えられないがね。」

191 :
(本間)『もう、いい加減にしてください!それは安羅木さんの妄想でしょ!私は、
姫としてエンペラーに在籍していただけです!安羅木さんとは挨拶程度。話なんてしたことないし。
人犯の言うことを信じて、私のような善良な市民を疑うとは何事ですか?!もう帰ってください!
人権侵害で訴えますよ!』(大崎)「・・・・・」本間恵美子は、小田輝義が社長を勤める‘潟潟ンエンタープライズ’
の副社長になっている。なぜ、本間恵美子は、別人になりすましてまで、安羅木を騙したのか?
それは、カリスマホストで実業家の小田輝義。彼が、佐山治に脅されていたからだろう。
本間恵美子は、小田輝義を守り救ったのだ。

192 :
だから、2人は結婚し、本間恵美子は今の豪華な生活を享受できる。
佐山治の腐乱白骨体が発見された秩父のマンホール。捜査にあたった秩父東警察署の高原が言っていた。
佐山は、何か大きな金吊るを掴んでいたらしいと。それこそが小田輝義だったに違いない。
しかし、佐山治はあの世に行ってしまい、小田輝義も本間恵美子もそんな話を認めるわけがない。
安羅木は、岡野芙美江になりすました本間恵美子に男がいたことすら気付かなかった。
小田輝義と佐山治の間にいったい何があったのか?・・・真相はすべて闇に消えたのだ。・・・(次回に続く)

193 :
>>184は金玉置浩二こと佐藤歩ですね(笑)。
 / ̄ ̄ ̄ ̄\
( 人___ )
|ミ/ ー◎-◎-)
(6 :(_ _):)
ノ|/∴ノ 3 :ノ、
/ \____.ノヽ

194 :
sage

195 :
sage

196 :
近日中に更新予定です。しばらくお待ちを。よろしくお願い申し上げます。

197 :
【小説】「愛の蹉跌」=第33回= 品川湾岸警察署の取調室。安羅木(やすらぎ)一郎は、自分が信じ、
愛した女が別人になりすましていた現実を直視できずにいた。安羅木は、「岡野芙美江」
になりすました本間恵美子にまんまと騙され利用されたのである。
しかも、彼自身会ったことも無い「岡野芙美江」のために敵をとった。そう、わざわざ佐山治さらには西田美幸と
2人の命を奪う連続人を犯してしまったのだ。

198 :
大崎刑事は、再び部下の若刑事に命じテレビのスィッチを入れさせ、先ほど安羅木に見せた
NHJ‘クローズアップ日本’の収録番組を再生する。光浦似の眼鏡をかけた肥満女性である
‘本物の’岡野芙美江が熱心に犯罪被害者の人権擁護の必要性を主張している。
(大崎)「なあ安羅木。岡野芙美江さん生き生きとしてるだろ。27年前にお母さんを佐山治に害され、幾多の悲しみと試練を乗り越えてきた。
そして、今は、犯罪被害者支援活動をライフワークに活動なさっておられる。

199 :
彼女は生きる道を見つけたんだ。お前が敵をとる必要なんて、そもそも無かったんだよ。
岡野芙美江さんは強くたくましい女性に成長したのだからね。」(安羅木)『・・・・・』
安羅木は、無言のままテレビ画面を見つめる。お世辞にも美人とは言えない岡野芙美江であったが、
とても魅力的な女性に感じられてくる。対して、彼を陥れた本間恵美子(ニセ岡野芙美江)は、悪魔ではないのか?
本間恵美子は、なりすましだったから、道理で埼玉県警・秩父東警察署の捜査線上に佐山治害の重要参考人
として浮上しなかったのだ。安羅木の脳裏に当初から蠢いていた疑念。それが一挙に氷解していく。
そして、本間恵美子に対する怨念が沸々とマグマのごとく煮えくりかえっていった。
(安羅木)『刑事さん。』(大崎)「あ?」(安羅木)『私は、自分がしたことの罪を償います。
刑判決が出ようとも控訴せずにそれを受け入れる覚悟です。で、でも、
私を罠にハメた本間恵美子は何も罪に問われないのでしょうか?そ、それが、納得いきません!』
安羅木は悔し涙から声がかすれていた。(大崎)「残念ながら、それは無理だね。」

200 :
(安羅木)『な、なぜですか!?』(大崎)「可能性があるとしたら、安羅木。お前を教唆して2人を害させた、
つまり人の教唆犯だろう。でも、その証拠が無い。あの女は、お前とは店で挨拶程度しかしなかったし、
だいいち岡野芙美江なんて知らないと。あいつはなりすまし疑惑じたい絶対に認めない。お前だって、取調べの始めの頃、
全てはお前が単独でやったこと。あの女は関係ないと。そう言っていたじゃないか?」
(安羅木)『そ、そ、それは!あの女が別人になりすまし、私を騙していたなんて夢にも思わなかったから・・・・』
(大崎)「とにかく証拠がないんだよ。証拠が。証拠が無い以上は、本間恵美子を逮捕起訴するこは出来ん。
その意味では、本間恵美子は倫理的、道徳的に責められることがあっても、犯罪者として処罰されることはないんだ。
本間恵美子は何も悪いことをしていないのだよ。」・・・・・(次回に続く)

201 :
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202 :
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203 :
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204 :
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205 :
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206 :
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207 :
【小説】「愛の蹉跌」=第34回〜闇に消えた真相〜(エピローグ1)=
品川湾岸警察署の取調室で、大崎刑事から本間恵美子に対する刑事責任追及は不可能と
聞かされた安羅木(やすらぎ)一郎。実在する「岡野芙美江」になりすまし、安羅木を騙し続け、
挙句の果てに安羅木を裏切った悪女である。しかし、刑法上の犯罪に抵触しない、あるいは、
抵触しても証拠がなければ警察は動きようがないのである。安羅木は、
ただ々悔し涙を流し続けるだけであった。・・・さて、ここで一つの疑問が想起する。
そう、安羅木に害された佐山治。そして、本間恵美子と、その夫である小田輝義。
佐山治は、小田輝義を恐喝し金を巻き上げていた。小田輝義が、歌舞伎町の元カリスマホストであり、
現在、ホストクラブ運営会社である「リヨンエンタープライズ」社長であること。
さらに、タレントとして芸能界でも大活躍していることは前述した。

208 :
では、いかにして佐山治は、小田輝義に食い込んだのか?実は、世間に知られていないある‘事件’
があった。2008年12月のことである。・・・佐山治は、闇金のパシリを副業にしていたが、
本業であるデリヘル店経営もいまだ継続していた。そう、渋谷デリヘル‘東京BIG’である。
しかし、毎月積み重なる累積赤字と広告費負担の重圧に佐山治は苦しんでいた。売上は
かんばしくなく、店が暇だから在籍姫もすぐにやめていく。渋谷の本番デリヘル店であったが、
渋谷や青山にはすでに実績とノウハウを有する競合ライバル店が多数存在する。
風俗店経営の経験が浅い佐山治に、彼ら老舗ライバル店に太刀打ちできる力などなかったのだ。
そんなある日の23時頃。佐山治は、在籍姫(源氏名:ナナ)を助手席に乗せ蔵前橋通りを
走行していた。客の自宅に向かうためである。助手席の姫は、昔、渋谷でよく見かけた
‘顔黒系’のコギャル。仏丁面で無言のまま、携帯をポチポチやっている。車は、新中川を渡り、
西小岩に到着する。「よっしゃ!もうすぐ着くで!ナナちゃん!」

209 :
客からは、京成小岩駅まで来い。駅に着いたら自宅マンションまで電話で道案内するから
連絡をよこすようにと言われていた。天気予報通り大雨が降り出す。随分と強い降りだ。
「ありゃ?どこで左折するんや?左折したら京成の駅があるはずなんやけど?」佐山治は、
実はドライバー業務は大の苦手。ずばり方向オンチだからである。以前、西船橋のデリヘルで
アルバイトドライバーをしたことがあるが、道に迷ってばかりで使えないゆえ、
数日で解雇された。今回も...「あれぇわからんわ。ど、ど、お?また川を渡るんか?」
車は、なんと江戸川を越えてしまう。京成小岩駅はとっくに通り過ぎた。そして、
大きな道路標識が目に入る。「げ!千葉県市川市?ありゃりゃ通り過ぎてしもうたわい。
こらあかん!あかん!はよ戻らんと!」「これあかん!あれ反対車線にどう入るんや?
ああ!どないしよう!どないしよう!」 佐山はパニックになる。そうしていたところ、
佐山の営業用携帯が鳴り響いた。佐山はとっさに車を左に止める。ガクン!
急ブレーキの振動で思わずナナ姫は佐山を睨みつける。ご機嫌斜めのようだ。

210 :
(佐山)「はい、毎度ありがとうございます!東京BIG店長佐山でーす!」
(男性)「あのさぁ」(佐山)「はいはい。何でございましょうか?」
(男性)「予約してる小岩の田中だけど」(佐山)「ああ!田中様!
すみません。いま向かっているところでして...実は道に迷ってしまいまして。
あと少しで京成小岩駅前に着けると思うのですが...」
(男性客)「着けると思う?なんだそれ(笑)。もうとっくに夜11時過ぎてるじゃん。」
(佐山)「はぁ。大変申し訳ございませんです!すぐに行けると思い、あ、いやいや行きます!
行きますよ!はい」(男性客)「もういいよ来なくて。別の店の女の子呼ぶから。そんじゃ。」
ガチャン!佐山の対応にブチ切れた客は、一方的に予約をキャンセルし電話を切る。

211 :
(ナナ姫)「あの...?」(佐山)「あ...ナナ、ナナちゃん。あ〜そのぉ〜。ね、ナナちゃん。」
(ナナ姫)「キャンセルでしょ?!」(佐山)「す、すまん。ごめんな。ナナちゃん。
これから都内に戻ってな、錦糸町か、せやな鶯谷あたりで客拾うわ!んじゃいこっ!」
(ナナ姫)「もういいです!今日限りでお店辞めます!」(佐山)「な、なんやて?」
(ナナ姫)「辞めるっていうの!わからない?馬鹿じゃないの?ほんとに!店はど暇だし、
渋谷から江戸川まできてキャンセル食らうし!やってらんねーよっ!じゃあねっサヨナラ!」
そう捨て台詞を吐いたナナ姫は、さっさと車をおり、走って横断歩道を渡った。
総武本線・市川駅が右手に見える。そうか。ナナは、ここから電車で帰ろうというわけか。
ナナが辞めた。残る‘実’在籍姫数はたったの3名だ...ネット上の在籍数は20名。
だが、ほとんどがカラ在籍である。モデル写真を適当にパクって貼り付けているだけなのだ。
「3名か。もうダメやな。店閉めるか。それしかあらへんのか。」
そうつぶやく佐山治であった。・・・(続きは次回)

212 :
sage

213 :
sage

214 :
sage

215 :
【小説】「愛の蹉跌」=第35回〜闇に消えた真相〜(エピローグ2)= 佐山治は、大雨のなか渋谷の事務所に車を引き返すことにした。
寒い12月の深夜である。そして大雨。悪条件が重なっている。しかし、またしても方向オンチの佐山は道に迷ってしまう。
こんどは、なんやら川沿いを走っている。どこで右折?あるいは左折?したのか記憶にない。
きっと江戸川であろう。そして、次の瞬間、車体は右に傾き始め、右前の車輪がカラカラ音を立て始める。
「なんや?!ほなパンクかいや?どうすりゃええんや!」 ついていない男である。ナナ姫に悪態をつかれ退店され、
店は姫不足で廃業の危機に陥ってしまうわ、その上、さらに送迎車のタイヤがパンクとは・・・・・。
身長165cmで体重100キロ超の佐山治。車体が右傾したのは、彼の肥満体も要因であったことは説明を待たない。
佐山は、川沿いに停車する。先ほどより小雨になったようだ。よし、タイヤ交換は今しかない。
左は急な斜面になっており、おそらく現在地は江戸川の土手上のはずだ。佐山は、早速タイヤ交換に取りかかる。

216 :
とその時、傘をさし自転車に乗った男性が近付いてきた。傘を顔前にさしているので、前方が見難いのであろう。
「ほな、あれじゃわいの車にぶつかるで!大丈夫かいや!?」 そして、次の瞬間、その後方から赤い外車がスピードを出し、
自転車の「傘」男を追い抜こうとする。が、外車が男性の傘に接触した!『ああっ!!』男性は自転車ごと
土手斜面を転落してしまった。赤い外車は、佐野の車の前に急停車。外車からカップルであろうか?男女が慌てて下車する。
佐山も急な事故に仰天し、3人は雨に濡れた芝生斜面を走り下った。自転車の男性は、まだ30代であろうか、
コートを着ているサラリーマン風。川沿いのコンクリート面に頭部を強打し既に脈がない。亡したのだ。頭部から真っ赤な血が雨で
ジワジワと拡散していく。男女は、自失呆然と立ったまま、長身の男は恐怖でガタぶる震えていた。連れの女性が携帯を取り出した。
佐山治は、事故を起こした長身男に目をやった。「ん?どこかで見た顔やな?・・・・」
「ま、まさか!?あの歌舞伎町カリスマホストの?そうや、小田輝義やないか!テレビにもよーでとる。そや!小田輝義や!」

217 :
そして...佐山治の‘細くきもい’目が光るまで僅かな時間しかかからなかった。
人をはじめ、数々の罪を犯してきた犯罪者、佐山治。起回生、いや底辺人生から脱出する術を【悪魔】が
佐山に伝授した瞬間であった。・・・事故現場を所轄する葛西東警察署交通係は、
土手を転落し亡した自転車の男性について、「事故発生時の深夜、強風雨が降っていたことから、自転車の運転操作を誤り、
左斜面の土手に自ら転落した自損事故」と結論付けた。交通係が一応捜査を行ったのであるが、
目撃者がおらず、さらに第三者の故意・過失が介在した証拠が見つからなかったからだ。
そう、小田輝義による加害事故である真相は表沙汰にならなかった。しかし、この事故こそが、
その後の安羅木(やすらぎ)一郎による連続人事件への導火線になったのである。・・・(続きは次回)

218 :
なんじゃこりゃあ

219 :
sage

220 :
まだ続くの?

221 :
内容的には終わったように見えるけど、「(続きは次回)」って書いてあるな。
続くの?終わるの?

222 :
こんばんは。お問い合わせ頂きありがとうございます。続きます。今週中にアップいたしますので、
しばらくお待ちくださいませ。申し訳ございません。今後とも宜しくお願い申し上げます。

223 :
【小説】「愛の蹉跌」=第36回〜闇に消えた真相〜(エピローグ3)=
江戸川の河川敷で転落した男性の傍らに佐山治、カリスマホストでタレントの小田輝義。そして、
小田の連れの女性がいた。小田輝義は、茫然自失とし、ガクガク震えている。小雨になったとはいえ、寒い冬の深夜であった。
女性がとっさに携帯を取り出す。と、佐山治がそれを制止した。(佐山治)「ほな、どこに電話するんや?」
(女性)『決まってるでしょ?警察と消防です。救急車呼ばないと!』(佐山治)「やまときなはれ。わいが黙ってりゃ事故は露見せんやろ。」
(小田)『えっ?な、なんですって?』(佐山治)「わいの車、右前輪タイヤがパンクしてもうたんや。で、あんたらが来る前から、土手に停車しとったと。」
(小田&女性)『・・・・ ・・・・』(佐山治)「ええか?察に連絡されると。疑われるのはこのワシなんやで?

224 :
あんたらがさっさと立ち去ると。わいはタイヤ交換終わらせてさーっと逃げると。それでええやんか。」
(小田)『し、しかし、そ、それはあまりにも・・・』(佐山治)「ええから、わいの言うとおりにせえや。」 佐山治は、男性
が小田輝義であること。これに未だ気付かないフリをしていた。(佐山治)「さあ!時間の無駄やで。はよう逃げんかい。」
(小田)『はぁ、分かりました。そうします。じゃあ有難うございました!』(佐山治)「おっと。ちっと待て。
あんたらが去ったあと、もしかしたらパンダ(パトカー)が通るかも知れへん。わいは絶対にあんたらのことはしゃべらん。
が、一応な、何かあった場合のことを考えてや、あんたの連絡先を教えてくれや。」(小田&女性)『えっ?はぁ。し、しかしですね・・・』
(佐山治)「そやから、万が一のときのためや。このまんま事故が露見せんと、それで終わりゃ、わいから連絡したりせえへん。約束する。」

225 :
こうして、佐山治は、小田輝義の連絡先を入手した。してやったりである。・・・(それから1週間後)・・・・・(小田)「はい小田です。」
(佐山治)『お〜小田輝義くんかい?』(小田)「は?あなた誰ですか?」(佐山治)『なんや?てめえその口の聞き方は!江戸川の事故、バレへんかったな(笑)。』
(小田)「あっっ!あなた、あの時の・・・」(佐山治)『ウホホ!思い出したかい?』(小田)「そ、そ、そうです、な。ん?あなた、
なぜ僕の名前を知っているのですか?」(佐山治)『へへへ(笑)。ワイはな、あの日、てめえの顔みてすぐ気付いとったわい!なあカリスマホスト君よぉ!』
(小田)「・・・・・」(佐山治)『とりあえず100万円や。100万俺によこせや。』(小田)「な、なんですって?!そ、それはユスリじゃないか!」
(佐山治)『なんや貴様!なんならあの事故を世間に公表したるで?ええんか?

226 :
救急車を呼ばずに被害者を救護せずに置き去りにしおって。お前がやったことは犯罪やないかい!口止め料や。』
(小田)「そ、それはあなたがそうしろと。そう言ったからじゃないか!」(佐山治)『ほ?何を言うとんねん。
わいはそんなこと言った覚えはないわい。あんたの車のナンバーちゃんと控えておるんやで!
わいが警察にいってばらしたらあんた捕まるでな。ええんか?こらっ!』こうして佐山治は、
小田輝義という‘金脈’に食い込むことにまんまと成功した。以後、小田輝義は、毎月、
多額の金を佐山治に搾りとられることとなる。そして、悪運はさらに佐山治に味方する。隠蔽された‘事故’
から半年弱の2009年5月。吉原エンペラーの弥生(本間恵美子。別人の「岡野芙美江」になりすました女)を
1人の客が初めて指名した。・・・

227 :
〔安羅木(やすらぎ)一郎〕「それではお待たせ致しました。ご案内となります。本日の御指名御来店まことに有難うございます!
どうぞ御時間までごゆっくりお過ごし下さいませ!」(弥生こと本間恵美子)「いらっしゃいませ〜お部屋は2階です。」・・・
弥生は、その客と個室で対面したまさにその時、血の気が引いていった。(弥生こと本間恵美子)「あっ!あなた!」
(佐山治)『へへへ(笑)われ覚えとるか?わいのこと。おめえ吉原で働いとるとはなぁ。このあいだ店でおめえをアルバムで見つけてな。
いやー偶然やった。てめえの彼氏の小田輝義くんには世話になっとるでな!ま、よろしゅう伝えておけ!』
そう、あの日、江戸川河川敷で事故を起こした小田輝義。彼の連れの女は、弥生こと本間恵美子だったのだ。・・・(次回に続く)

228 :
sage

229 :
【小説】「愛の蹉跌」=第37回〜闇に消えた真相〜(エピローグ4)=その後、佐山治は、たびたび吉原エンペラーに来店し、
弥生姫(本間恵美子)を指名したのだが、実は、佐山は彼女からも金銭を喝取していた。
本間恵美子は、金をゆすり取られていた小田輝義のため、佐山の要求に応じざるを得なかったのである。・・・
(小田輝義)「なあ、恵美姉ちゃん。俺どうなっちゃうんだろう!あいつ(佐山)にこのままずっと恐喝され続けなきゃいけないのかよ!
なあ助けてくれよぉ(泣)!身の破滅か?それだけは勘弁だよぉ!(泣)」小田の自宅である渋谷の超高級マンション。
そこで小田は、本間恵美子に泣きついた。本間恵美子は、小田より年上だ。恵美子は、昔からホスト遊びが大好きであったが、
とりわけ小田にぞっこん惚れこんだ風俗姫の1人である。(本間恵美子)『なに言ってるのよ!男が弱気になってどうすんの!
せっかくここまで来たんじゃない!立ち上げたホストクラブは売れ行き絶好調。あなたは今や元カリスマホストの実業家なのよ。

230 :
タレントのお仕事も増えていて、これから芸能人としても出世しなきゃいけないの!』(小田)「うん・・・(泣)・・・」
(本間恵美子)『何とかしてあの豚オヤジ(佐山治)を始末する。これしかないわ。』(小田)「えっ!い、いまなんと?」
(本間)『始末するのよ!分からない?消す、つまりすしかないってことよ!』(小田)「ええっ(驚)!そ、それは・・・」
(本間)『他に何か方法がある?あいつは相当執念深い豚ジジイだわ。このまんまずっとお金を絞り取られ続けられる。そんな人生なんて考えられない。
あの江戸川の事故の夜。やっぱりね、警察に110通報すべきだったのよ。もう遅いけどね。』(小田)「ど、どうするんだ?恵美姉ちゃん・・・」
(本間)『作戦を練るしかないわね。佐山を害する。完全犯罪を実行するの。私がぜんぶ筋書き考えるから任せな。あなたはホスクラ経営とタレントの仕事。
これだけに集中するのよ!いいわね分かった?』小田輝義は、本間恵美子の前でただただ頭を下げ泣きじゃくるだけであった。

231 :
その後、本間恵美子は、興信所を使い、佐山治の過去を徹底的に調査する。戸
籍、身上、犯罪歴調査。それも、
怪しまれないように複数の興信所や個人の探偵事務所を使い分け別々に依頼した。彼女が着目したのは、
佐山治の犯罪歴である。案の定、予想通りというか、佐山には多数の前科前歴があった。そして、27年前、
佐山が少年時代に犯した横浜鶴見の人事件の全貌を知ることとなる。本間恵美子は、さらに、この事件の被害者と
その遺族の調査を興信所に依頼。害された被害者の娘である「岡野芙美江」を知るところとなった。
『自分が岡野芙美江になりすます。無関係の第3者を使って佐山を害させるのは?どうかしら?』すると、
1人の男が本間恵美子の脳裏に浮上した。そう、吉原エンペラーのマネージャー、安羅木(やすらぎ)一郎である。
得体の知れない不器用そうな男。暗い過去の持ち主なのは間違いなさそう。彼は、自分に好意を
もっているのも確かだろう。さて、どうやって奴をおびき寄せるか・・・清楚系の美形と評される吉原きっての人気姫。
しかし、その正体は、底知れぬ恐ろしい魔女だったのだ。(続きは次回)

232 :
こんばんは。「愛の蹉鉄」をご愛読頂き誠にありがとうございます。当作品は、間もなく最終回を迎えますが、
次回作は、多少趣をかえまして、「佐川真緒」という若い風俗姫を主人公にした小説を創る予定です。
彼女の劣悪な家庭環境と異常な親子関係。若者を蝕む薬物問題・・これらにスポットライトを当てます。
いつ次回作が発表になるかは未定であります。よろしくお願い申し上げます。

233 :
早く終われ。

234 :
>>233
だから次があるのよ。佐川真緒(笑)。誰をモデルにするか?分かるかな?
 / ̄ ̄ ̄ ̄\
( 人___ )
|ミ/ ー◎-◎-)
(6 :(_ _):)
ノ|/∴ノ 3 :ノ、
/ \____.ノヽ

235 :
次作登場人物(案)
佐川真緒(韓国名=金玉姫、風俗姫)、佐川歩太郎(韓国名=金玉置、真緒の父親・無職)、小西庄三(風俗掲示板4ちゃんねる管理人)、真野信二(弁護士)・・
いろいろ構想を練るのは楽しいものです(笑)。ではまた。

236 :
ジャンプなら即打ち切りレベル
こんな先生を雇うpinkbbsさんにはヤレヤレだぜ
他の先生はおらんか?

237 :
>>236
ははは(笑)。あなたは小説道が何たるかを分かっていない。なので、私の小説の素晴らしさに気づいておられないのですよ。
 / ̄ ̄ ̄ ̄\
( 人___ )
|ミ/ ー◎-◎-)
(6 :(_ _):)
ノ|/∴ノ 3 :ノ、
/ \____.ノヽ

238 :
“小説道”→『落書き道』
私の“小説”の“素晴らしさ”→私の『落書き』の『阿呆らしさ』
>>236
冒頭の1行だけで読む価値なしと分かりませんでしたか?
引き篭もりニートに多い“自称小説家=落書き主”さんは、大方、他の2ちゃん小説投稿スレとかで酷評を浴び、
場末も場末のソープ板でスレ立てw
人通りのない路地裏で下半身を露出することで大満足のようでwww

以下適当に抜粋したの恋愛私小説作家さんの1/1000の文才でもあれば・・・

239 :
「じゃあ、また…」
ニコっと笑って先生は小さく手を振った。
校舎に戻って行く先生を見ていたら物凄いもどかしさに襲われて、
私は気がついたら先生を呼び止めていた。
???っとした顔で振り返る先生に、急いで駆け寄る。
お気に入り詳細を見る 「あの……」
「どうしました??」
ドキドキしながら話しかけ、頭の中で一生懸命先生との接点を探す。
先生との時間を作るには、今の私にはコレしかない。
「……歌を私に教えてください。」
先生は驚いた顔をした。

240 :
小説家として大成するには、近親相姦とポン酢が有効のようで(笑)。是非とも佐藤アユム師匠(韓国名・金玉置)
のご指導を仰ぎたく。普通の人は、ポン酢で身を滅ぼし「自滅」してしまう。が、
佐藤アユム師匠は、それを24時間不眠不休で闘う糧にしておられる。私の婚約者、佐藤真緒は、
そんな父(中卒)を心から尊敬しています。

241 :
佐藤アユム大師匠の似顔絵 / ̄ ̄ ̄ ̄\
( 人___ )
|ミ/ ー◎-◎-)
(6 :(_ _):)
ノ|/∴ノ 3 :ノ、
/ \____.ノヽ

242 :
【小説】「愛の蹉跌」=第38回〜最終回〜= 安羅木(やすらぎ)一郎は、その後、佐山治及び西田美幸の人罪、
並びに両名の体遺棄罪で東京地方検察庁に送検された。今後も付随的な捜査を行うものの、
基本的に事件は品川湾岸警察署から離れることとなる。38年にわたり数々の事件を経験してきた大崎努刑事。
彼にとっても、安羅木を罠に陥れた本間恵美子は許しがたい存在であった。しかし、もはやどうにもならない。
なんとも後味の悪い事件であった。それからしばらく後のこと。・・・成田空港第2ターミナル。
1組のカップルがマスコミ報道陣に取り囲まれ、眩しいフラッシュライトをあびていた。
ひときわ目立つ長身の男性と美形の女性。

243 :
そう、元カリスマホストの小田輝義と本間恵美子夫妻である。2人は、これからモルジブ島に新婚旅行に出かける。
芸能人取材専門のゴシップ記事記者達が矢継ぎ早に夫妻に質問を投げかける。(A記者)「ご結婚おめでとうございます!
今のご心境をお聞かせ下さい小田さん!」(小田輝義)『え?あ、ああ最高!ん最高っすね!ありがとう!』(B記者)「恵美子さんは?」(本間)『それはもう。
何もいうことはありませんわ。』(C記者)「本間さん、旦那様からもらったその指輪1000万円もしたんですってね!セレブ妻になられた今どう感じますか?」
(本間)『幸せ。それだけですわね。』こうして2人は、スリランカ・コロンボ経由でモルジブの楽園に飛び立っていった。
そして、それから3年後のことである。・・新宿の新大久保。黒塗りのハイヤー(センチュリー)後部座席から1人の男性が降り立つ。
オールバック髪に四角い顔の男性。白い手袋をした初老の運転手が急いで駆け寄る。(運転手)「すみません横尾さま。ドアを開けずに恐縮です。」

244 :
(横尾)『いやいいんだよ。そう気を使うなって。俺はこれからちょいと飲みにいくから。今日はもういいよ。』
(運転手)「は?は、はあ。かしこまりました。明日は何時頃ご自宅に伺えばよろしいでしょうか?」
(横尾)『んーそうだな。リヨン本社で小田社長出席の会議が朝10時。まあ、9時頃にきてよ。頼むよ。』
(運転手)「了解しました。では朝9時にお迎えにあがります。」・・ん?横尾?オールバック髪に四角い顔。そうだ!廃業した吉原エンペラーの
元店長ではないか?安羅木の上司だった。その後、川崎ソープに転職したあの男である。彼がリヨン?
つまりは小田輝義と本間恵美子が経営する会社(リヨングループ)に現在、籍をおいているというのか?なんで?
いったいどういうことなのか?・・・横尾は、新大久保駅わきの狭い路地を歩き、ある居酒屋に向かった。
ずんぐりむっくりで短足の横尾。そんな彼が何かに追われるように、せかせか急いで居酒屋に吸い込まれていく。

245 :
そして、彼はあびるほど酒を飲み始めた。そして、静かに目を閉じる。すると、1人の男が横尾の脳裏に現れたのだ。
先日、最高所で刑判決が確定した安羅木(やすらぎ)一郎である。『すまん。本当にすまないことをした。(泣)安羅木!
俺は、俺はなあ、あの女(本間恵美子)に頼まれてなぁ(泣)仕方なかったんだよ!あの頃さ、俺は借金地獄で。
金が必要だったんだ。』『エンペラーの姫ファイルから本間恵美子の身分証明書等のコピーを抜いたのは俺なんだ!』
『俺は、あの女の策略を知っていた。でも、小田と本間から協力すれば500万円あげる。無事に事件が片付いたら、
リヨンの役員として雇ってやる。そう言われたんだ。』『借金地獄で、年老いた病気の母親かかえてさ。仕方なかったんだよ!(泣)
許してくれ安羅木!』横尾は、焼酎をすかさず飲み干していく。目には懺悔の涙が溢れていた。自分がしてしまった悪事。
金が入れば何もかも解決する。生活が安定すれば、明るい未来が待っているはずだ。しかし、現実は違った。

246 :
あれから6年経った今。後悔と自責の念に襲われる日々である。自分がしてしまった悪事の亡霊が毎日横尾を襲っていた。
ぐてんぐてんに泥酔した横尾は、千鳥足で居酒屋を出る。狭い路地を新大久保駅と逆の方向にゆっくり歩き始めた。
突き当りを左に歩く。平日の深夜だ。お隣の「不夜城」歌舞伎町と違って、人の姿はまばらだ。
そして、ちょうどJR線のガード下に差し掛かったとき。『うっ!』 横尾の背中に激痛が走った。後ろを振り向くと、
目だし帽を被った男性が1人。男は、サバイバルナイフで横尾の腹部をめった刺しにする。横尾はガード下で倒れ即した。
それから10分後、本間恵美子の携帯が鳴った。(本間)「はい。いまどこ?」(男)『ワンボックスカーで明治通りに入り北上しています。
無事に横尾を始末しました。察は追ってきませんし。大丈夫です。このまま逃げます。』(本間)「お・つ・か・れ」
(男)『いえ。では失礼します。』 ・・・(本間)「ね、横尾んだわよ(笑)。これで全て解決したわね!」
本間恵美子は、小田輝義に抱きつき、2人は濃厚なキスを交わした。・・(完)

247 :
作者さん
「お・つ・か・れ」
まとまったら文庫本化できるんじゃないかな

248 :
楽しませてもらったよ、ありがと!!

249 :
何か、もうちょっと読者を唸らせる衝撃的な展開がほしかったなぁ
よくある、ありきたりな人事件のお話って感じなんだよね
まあ、>>33の似顔絵には爆笑したけどさw

250 :
                  はぁ〜? (゚Д゚)y─┛~~




              同じリモートホストから



                                                                  自画自賛って・・・(爆笑)

251 :
sage

252 :
age

253 :
sage

254 :
こんばんは。別スレにてご質問頂いた件(デリーズの求人広告)につき記します。このお店は、まったくの新規店なのか?
あるいは既存店が出店した姉妹店なのか?により話が違ってきます。まったくの新規店ですと、
姫からもらう「手数料」?3000円のみでは、到底お店を維持していけません。五反田で、しかも待機スペースもある。
ある程度の広告費用もかける。当然スタッフの人件費もかかる。どんなに経費削減しても月に200万円近くかかると思います。
そうすると、3000円の手数料?だけですと、日に最低ラインで22本の仕事が入らないと赤字になります。経費を削りに削って、
それで日に最低22本です。しかし、問題は、まったくの新規店ですと、開業しても店茶(利用客ゼロ)、あるいは日に数本しか入りません。
これが最低数ヶ月は続く。へたしたらずっとです。だいいち、22本も取れるならば、今なら繁盛店とは言えなくても悪くない数字です。

255 :
まったくの新規店では絶対にあり得ない話です。仮に、このお店が完全なる新規店ならば嘘ですね。何かウラがあるに違いありません。
始めから大赤字にするために事業を開業する奇特な経営者はいないですから。次に、既存店が姉妹店である場合です。
前記の通りで、1本3000円では赤字になります。では、なぜ大赤字覚悟で姉妹店を出すのか?狙いは、姫集めですよ。
これしか考えられない。つまり新店である姉妹店に姫に登録してもらう。そして、彼女達に既存店に移籍し働いて貰おうと。
それが目的ではないか?と私は思います。姫が集まるならば、多少の期間ね赤字店をわざと出すのも悪くないと。
どうせ求人広告に高い金をかけても、大した反響は無いわけです。しかし、求人用の新店を出せば効果はあるに違いないと。
以上の通りでして、いずれにせよ、この新規店で地に足がついた事業をやろうなんて考えていない。これは確かです。
バックが9割だなんて(笑)、そんなウマい話があるわけがないです。

256 :
御質問があった件についてです。「0930特急」グループを運営するのは、大塚の本デリ「あざみ」です。あざみは、
「鶯谷人妻デラックス」という本デリ店も運営していまして、姫によっては、あざみ・デラックス・0930特急すべてに同時在籍している方もいます。
すべて激安店ですよ。鶯谷人妻デラックスは、大塚あざみと事務所・待機場は同じ。ですから、客から電話があると、姫は大塚(池袋に転居?)
から鶯谷に出張するというシステムです。0930特急は、パイオニアである「奥様鉄道」の完全なパクリです。ちなみに、
先日記した横浜クリスタルの「改札劇場」も奥鉄をパクリました。クリスタルは、‘斬新かつ独創的で、高度なノウハウを結集した’
みたいなことを言っていましたが、それは違うでしょう。あくまでも、駅待ち合わせデリのアイデアを生み出したのは奥様鉄道ですから。
話がそれました。0930特急の経営母体である大塚「あざみ」なのですが、おっしゃる通りの内情です。この業界は、
ルーズでいい加減な部分が多々ありますが、「あざみ」は、その中でも突出しています。

257 :
内勤スタッフの電話対応一つとっても、チンピラ口調で無礼千万なのがいます。店員のレベルは非常に低いです。
多少なりとも普通の感覚が残っている人は勤まらない店ですよ。ホームページの写真もパネマジ度合いはMAX級ですし。
言いにくい話ですが、他の激安と同じく、条件の良い店に在籍できない姫達が入る店です。高年齢の姫も多数おります。
客入りも現在は厳しくなっています。いかんせん店じたい適当で、あまりにずさんな部分が目立ちます。なので、
リピーター客が増えないのだと思われます。激安デリは、確かに一時期ヒットした。が、それは一昨年あたりで終焉したのです。
今は、激安店も内情が悪い店舗のほうが多いと思われます。「あざみ」は、0930特急を全国展開していますが、
繁盛している系列店なんて果たしてあるのか?私は聞かないですね。

258 :2013/08/26
???
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