2013年10エロパロ305: ホモ・ゲイ・オカマキャラ×女性スレ (610) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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ホモ・ゲイ・オカマキャラ×女性スレ


1 :2009/07/23 〜 最終レス :2013/09/29
ホモやゲイ、オカマなどと女性が絡むシチュエーションのスレです。
参考スレ(DAT落ち)
ホモキャラが女に誘惑されてしぶしぶ女とやるスレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202661793/

2 :
   /__.))ノヽ
    .|ミ.l _  ._ i.)    
   (^'ミ/.´・ .〈・ リ     こ、これは>>1乙じゃなくてわしが育てたティムコなんだから
   .しi   r、_) |      変な勘違いしないでよね!
     |  `ニニ' /     
    ノ `ー―i´     
 / ̄    '   ̄ヽ
/   ,ィ -っ、    ヽ  
|  / 、__う人  ・,.y i   
|    /     ̄ | |  
ヽ、__ノ       |  |  
  |     。   | /  
  |  ヽ、_  _,ノ  丿
  |    ( 二二二二二二二二二 ̄ ̄ >    
  |    / ヽ   |          ̄>/
                    / /
                   /  <___/|
                   |______/

3 :
誰得wwwwwwwwww

4 :
昔あったな

5 :
見たい

6 :
オナベ×オカマのカップル、テレビで見たな。
これなら法律上問題なく結婚できる。
バンド・ユニコーンの、シュガーボーイって曲のシチュも面白いかも。
いつもオジサマに抱かれていた美少年が、女性に一目惚れ。
だけど、やっと訪れたチャンスにも後退り。
真っ赤になって項垂れている少年を男前なお姉さんがウマーとか。

7 :
書き手スレかどっかでリアルにホモレズ夫婦らしい人を見かけた
実体験でも書いてくれないかなw

8 :
恋愛偏差値?だったかいうドラマで、
ゲイの男(確かV6の岡田がやってた)が、それまで友人だった女性(その男がゲイと知ってる)を好きになって
って言うのを見た気がする。
そういうのいいなぁ。

9 :
性同一障害の壁を突き破って女と結ばれるってことか??

10 :
オカマ、ニューハーフ、お姉系なら普段の女らしさとエロの時の男らしさのギャップとかが魅力か?
ふざけた子安と真面目な子安みたいな

11 :
オカマと女 エロないよ。2レス
元・ライバル

「あ……あんの、バカーーーーーっ! うぉぉぉっ……! ひぐっ……」
「ちょっとは落ち着きなさいよ、アタシが泣かしてんのかと思われるじゃない」
大声で泣きじゃくる小柄な女と、それを小声でなだめる大柄な女、ではなく大柄なオカマが並んで
バーのカウンターに座っていた。周りの客はこの奇妙な二人連れと目を合わさないようにしていた。
この二人、さっきまで一人の男を巡ってのライバル関係だった。
しかし、その男が女を次々と騙し貢がせるロクデナシであることが発覚したので、
それぞれ仲良く片頬ずつ引っぱたいて縁を切ってきたところなのである。
「うおおおッ……うぐっ…………」
「アンタ意外と男らしい泣き方するのねぇ」
オカマは隣の女の背中に触れようと、手を伸ばした。
「せ、セリカさんはぐやじくないんですかッ?」
「え、アタシぃ?」
セリカと呼ばれたオカマはふと手を引っ込めて、天井を仰いだ。
「そうねェ、脈がないコトなんか最初っから分かってたようなモンだし……」
ノンケに迫ったってねぇ。そう言ってセリカは苦笑いした。
「でも『アタシを女だと思ってアンタも本気で来なさい』って、セリカさん……」
「よっくそんなコト覚えてるわね」
セリカは彼女をライバル認定してからの日々を思い返した。
この、ちっちゃなコは真面目だった。女のクセに、恋愛の駆け引きも知らなかった。
今だって、まっすぐすぎるが故に大きく傷ついているのだ。
だから……、好きな相手がいつの間にか変わっていたのかも知れない。

12 :
セリカはスクリュードライバーを一気に飲み干し、グラスを置いた。
「アンタになら譲っても良かったんだけどね」
「へっ?」
きょとんと見つめ返してくる女の顔に、一瞬心を奪われた。
(むしろ、アンタをあの男に譲る気になってたんだけどねぇ。)
「セリカさん?」
「あー、アタシ、もう女なんのやめちゃおっかな」
「そんな! 一回失恋したぐらいで諦めちゃ、駄目ですよ!」
彼女は見当違いの方向に慰めてくれる。自分の涙の跡も拭かずに。
セリカはハンカチを差し出しながら尋ねた。
「景ちゃん、って言ったっけ」
「ああ、はい……」
本当はずっと呼ぶタイミングを伺っていた。
「ねぇ、景ちゃん、辛かったらアタシがカラダで慰めてあげよっか?」
声を低くし、耳元で囁く。景の頬が一瞬で染まった。
「かか体って! セリカさん、その……!」
「チンコ切ってなくて良かったわぁ。使い時が来るなんて♪」
「セリカさん! あの、あの、お気持ちは嬉しいですけど、そんないきなり無理です! そんな!」
「ほんとアンタはウブねェ、冗談よ。んふふ」
(ま、トーゼンの反応よねぇ。)
セリカは口に手を当て、おどけてみせた。
「あ、あは、そうですよね……」
慌てたのを恥じたのか、景は小さな体を余計縮ませて俯いた。セリカはその頭にそっと触れ髪を撫でた。
「かんわいいー」
「セリカさん」
「……あ、イヤだった?」
セリカは顔を曇らせる。
「いえ、その……セリカさん、……ちょっと抱きしめてくれませんか」
セリカは二、三度目を瞬かせた後、優しく景の背に太い腕を回した。
「ぎゅーっ♪」
「ふぇぇ、……セリカさーん……」
景はセリカの厚い胸板にもたれかかると、眠るように目を閉じた。     (終)

13 :
>>11
あーこういうの好きだ!GJ!GJ!

14 :
ちょちょちょちょっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
すっごいなんか可愛いぞ。
こういう素敵なお話をこれからも読ませていただきたいです。

15 :
めちゃくちゃGJ!!!!
続きを期待してます

16 :
>>12
ふむ…これはなかなか…

17 :
期待age

18 :
良いかも知れない。

19 :
バイはどうなの?

20 :
>>19
どんとこい

21 :
>>11-12
GJ!続きが読みたい
できれば景が処女の設定で

22 :
期待

23 :
途中までしか読まなかったが、「あべこべカップル」という話を思い出した
自分もこのスレに期待

24 :
やはりオカマは人生経験が豊富かつ特異だから、フィクションでも深みがあるな

25 :
保守あげ
オカマはともかくホモ・ゲイ×女って無理くさくないか

26 :
>>25
中身が女であるオカマの方が無理だろ
残りはあくまで性的嗜好なんだからさ

27 :
どうも認識に偏りがあるようだ。

28 :
オカマもホモもゲイも、男性の同性愛者だけど
フィクションなんだから、この前のSSみたいについ好きになっちゃうみたいのでいいんじゃないか

29 :
好きな男の代わりとして近しい女を抱くとか
ショタだと思って襲ったら男装少女だったとか

30 :
オカマ(チンコ以外改造済のニューハーフ)×女性の実話っぽい漫画思い出した
子供が出来て、結婚して幸せになったっけか

31 :
よしながふみ?の漫画にオカマ×漫画家があったが結構面白かった

32 :
 何か唐突に頭が湧いて来たので、保守代わりに小ネタ投下。
 以下4レス拝借。剣と魔法のファンタジーなゲームっぽい感じで、
ツンツンオカマシーフ→鈍感女ファイター。
エロ無しで頭のゆる〜いギャグなんで、そんなん要らねぇと思った方は
タイトルの「割れ鍋に綴じ蓋」をNGして下さい。

33 :
 「いやぁっ! 止めてぇっ!」
 真っ暗な洞窟の中に、若い女の甲高い声が響き渡る。
「いやぁっ! こんなのいやぁぁぁっ! あぁぁっ!」
 悲痛な叫び声に混じって、豚の鼻息に似た音が不規則に湧いては消える。
「あらら、ちょいと遅かったかもよ」
 鎧戸を閉めて光量を落としたランタンを片手に聞き耳を立てていた赤毛の青年は、
後ろを付いて来た銀髪の少年に囁く。
「いや、まだ生きている。まだ救いはある」
 声変わり前なのか、男性とも女性とも付かない声で少年は答え、腰に下げた新月刀を
抜き放つ。
「で、どうするの?」
「明かりを全開にして、奴らの目が眩んだ隙に踏み込む」
「あいよ」
 青年は頷いてランタンの鎧戸を開き、呼吸を合わせて奥へ踏み込んだ。
「ブギィッ!?」
 突然の光に、豚と人を掛け合わせたような怪物の群れは耳障りな悲鳴を上げた。
 間髪入れず、少年は怪物の群れに突進し、瞬く間に手前の一匹を切り伏せる。
「ギィィィィッ!」
 洞窟を満たす据えた悪臭に血の臭いが混じり、普通の人間であれば吐き気を覚えた
だろうが、少年は顔色を変えずに次々と怪物を屠り、程無く、最後の一匹が倒れた。
「毎度ながら見事な腕だこと。あたしの出番は全然無かったわね」
 青年が女のような口調で言うと、少年は血糊を振るい落として刀を収め、壁際に膝を
ついて何かを見ている青年に近付いた。
「娘は無事か?」
「えぇ、ちょっと怪我してるけど、決定的なのは貰ってないみたいよ」
 青年の前には、傷だらけの体に服の用を成さなくなった襤褸切れを貼り付けた少女が
一人、壁を背に座り込んでガタガタと震えている。
「麓の村の方に頼まれて、貴方を探しに来ました。もう心配は要りませんよ」
 少年は跪くと整った顔に優しげな笑みを浮かべ、少女の胸元に手を伸ばした。
「っ!」
「じっとしていて下さい。傷を治します」
 少年が神妙な面持ちで何事か呟くと、その手に柔らかく温かな白い光が灯る。
「あ……」
 その光に照らされると、傷がみるみるうちに塞がり、凍えていた手足に血が通い、
震えが収まってゆく。
 少女が落ち着いたのを見て、少年は手を降ろし、再び笑顔を作った。
「とりあえず傷は塞ぎましたが、念の為、帰ったらもう一度手当てをしましょう」
「……私、助かったの?」
「えぇ。ご家族が心配していますよ。村へ帰りましょう」
 そう言ってから少年は振り返り、周囲の物品を漁っている青年を見上げた。

34 :
「デルフィ、上着を脱いでくれ」
「はぁ?」
「村に帰るまで、この娘に貸してやって欲しい」
 すると、青年はあからさまに不服そうな顔になった。
「えぇ? 嫌よそんなの。何であたしが……」
「嫁入り前の娘を裸で歩かせるつもりか?」
「知らないわよ、そんな事。あたしは嫌よ。自分の物を女に触らせるなんて」
「……解った。じゃあ、少しの間これを預かっててくれ」
 少年は立ち上がると、腰の刀を外し、青年に押し付けた。
「ちょっ、ちょっと待っ……」
 反論を待たず、少年は革の小手を外し、革のベストを脱ぎ、ポーチの付いたベルトを
抜き取り、その全てを青年に預ける。
「ちょっと、リンデン! あんたねぇ!」
 叫ぶのも構わず、少年は白い短衣の裾に手を掛け、躊躇い無く捲り上げた。
 突然の事に呆気に取られていた少女は、更に驚き、目を丸くした。
「お……女、の子?」
 少年だとばかり思っていた人物の胸には、白い布に包まれた丸い膨らみがあった。
「……」
 少年改め男装の少女は脱いだ短衣を眺めて少し考えた後、膝下まであるブーツを脱ぎ、
ズボンの腰紐に手を掛ける。
「こっ、こらリンデンっ! 待ちなさいよっ!」
 聞く耳持たず、彼女はズボンを脱ぎ、短衣と合わせて少女に差し出した。
「少々汗臭くてお恥ずかしいのですが、村までこれで我慢して下さい」
「は、はぁ……」
 裸の少女は、何の香料か微かに甘い匂いのする服と、その持ち主の笑顔とを見比べ……
立ち上がって服を受け取った。
「悪かったな、重い物を持たせて」
 リンデンはブーツを履き直すと、何事も無かったように預けていた物を取り、手早く
身に着けてゆく。
「まっ、まさかあんた、そんな格好で帰るつもり!?」
「ん……足が少々心許無いが、まぁ仕方が無い。帰るまでの辛抱だ」
 新月刀を腰に取り付け、事も無げに言う。
 胴衣と小手に覆われた上半身はともかく、腰から下はブーツと、股間を覆うささやかな
布が一枚だけと言う有様だ。
 しかも、尻から太股にかけての輪郭は筋肉と脂肪の配分が絶妙で、むっちりとした肉感
は、およそ人型生物の雄であれば目を奪われるだろう一品だ。
「……あぁもう! 見てらんないわ全く!」
 デルフィは金切り声を上げて緩く波打つ赤毛を掻き毟り、着ていた赤い羽織を脱いで
リンデンに押し付けた。
「ほらっ! これでも着なさい、みっともない!」

35 :
「いや、私は別に……」
「あんたは良くてもあたしが嫌なの! 可愛い男の子なら大歓迎だけど、女の尻なんて
見たくもないわ!」
「いや、と言うか、女に触られるのは嫌じゃないのか?」
「ふんっ、あんたみたいな恥知らずは女のうちに入らないわよっ!」
「……お前、自分の言動に矛盾を感じないか?」
「……五月蝿いわねぇ! とっとと帰るわよっ!」
 デルフィは苛立ちで顔を真っ赤にし、大股で歩き出した。
「お、おいっ、明かりを持って先に行くなっ!」
 リンデンは右腕に赤い羽織を抱え、少年のような少女と女のような男の奇妙な遣り取り
に目を白黒させている少女を左手で引き、後を追い掛けた。

 (あぁもうっ、嫌になっちゃうわ全く)
 それから数日後、根城にしている街の宿屋の一階にある酒場の隅で、デルフィは日の
沈まぬうちから一人で酒をあおっていた。
「よぅ、今日はまた随分とご機嫌斜めだな、男女」
 と、いかにも力自慢の戦士と言った風情の大男が、エールがなみなみと入ったジョッキ
片手に向かいの席に着く。
「何よ熊男。って言うか男女って何よ、男女って。男女ってのはリンデンみたいなのを
言うのよ」
「宿の親仁さんから聞いたぜ? 他所の町からの帰りに通り掛かった村で二束三文の報酬
でオーク退治を引き受けて、しかも、攫われた女の子が裸だったからってリンデンが自分
の服を着せて帰ったんだってな」
「……思い出させないで頂戴。安いお酒が余計に不味くなるわ」
「いやぁ残念だ。同行してたら目の保養になっただろうになぁ」
「思い出させないでって言ってるでしょ」
「リンデンの奴、あんな可愛い顔して結構いい肉付きしてんだよなぁ。特にあのむっちり
した尻と来たら、ありゃ存在自体が犯罪だな犯罪」
「思い出させンなっつってんだろケダモノ野郎がッ!」
 デルフィが目を吊り上げて立ち上がり、無駄にドスの聞いた声で怒鳴ると、周りの客が
一瞬彼の方を見たが、すぐに視線を戻す。
「まぁ待てときにもちつけ。そんな汚い声出すとお里が知れるぞ」
 向かいの大男もさして驚きもせず、にやにやと笑っている。
「……誰が出させてんのよ」
 デルフィは憮然として椅子に座り直した。
「でさ、リンデンは今どこにいるんだ?」
「……お買い物に出てるわ。あの子に何か用?」

36 :
「いや、今度の仕事の助っ人を頼もうかなぁって」
 瞬間、デルフィの細く整えた眉がぴくりと吊り上った。
「いや、どこぞの領主様が冒険者を雇って大掛かりな魔物狩りをするってんで、腕自慢の
猛者を集めてるんだ。あいつは剣も出来るし、ちょっとした魔法も使えるだろ? うちの
連中は腕力ばっかりで魔法はからっきしだから、あいつが来てくれたら心強いなぁと」
「……残念だけど、他を当たって頂戴」
「何でだよ? 別に今は仕事を受けてないんだろ? っつーか、うちには斥候役がいる
から、来るのはリンデンだけで良いんだけど」
「尚更駄目よ。あんたに預けるなんて、飢えた狼に羊番をさせるようなもんだわ」
「ひどい言い草だな。俺は女の子が嫌がる事はしない紳士なんだぜ?」
「嫌がる暇を与えない、の間違いでしょ。どこが紳士なのよ、全く」
「……毎度毎度ながら、凄まじい過保護っぷりだよな。美少年は好きだけど小娘は大嫌い
だ、なんて言ってるくせに、何でそうカリカリしてまで世話を焼くのかねぇ?」
「……」
 デルフィは押し黙り、テーブルの木目を睨む。
(そうよ、リンデンが女なのが悪いのよ。って言うか、あの出会いが悪かったのよ! 
つまらないドジ踏んでピンチになったあたしを、顔立ちから性格から完璧にあたし好みの
美少年が颯爽と救ってくれて、あの瞬間『運命の出会い!』とか思ったわよ。それが
女って判ってどれだけガックリ来たか! しかも、少年っぽい体付きならまだしも、服を
脱いだらあんなに一杯無駄な肉が付いててさ、詐欺もいいとこじゃないのよ……)
「あぁぁもうっ、男の子だったら何も問題なんか無かったのにぃぃぃぃっ」
「お前それ普通逆じゃね?」
 思わず声に出して突っ伏すデルフィに、男は呆れ顔でツッコミを入れた。
「ほっといて頂戴。あれが男の子だったら一から十まで手取り足取り腰取り面倒見て
あげるのに、何が悲しくて小娘一人に振り回されなきゃなんないのよぅ」
「そんなに嫌なら別れりゃ良いだろ」
「出来たらしてるわよ。でも、ほっとけないじゃない。あんなトボけたお人好し、
あたしが見ててやらなきゃあんたみたいな奴の餌食になっちゃうじゃない。あたし、
女は嫌いだけど、野蛮な男も大ッ嫌いなのよ」
「……だったら、何もそうツンケンしなくてもいいんじゃね?」
「……あぁもうやだ、あたしどうにかなっちゃいそう。アイデンティティの危機だわ」
(YOUもうどうにかなっちゃえYO)
 彼らの周りでその奇妙な遣り取りを聞いていた者達は、心の中で一斉にツッコんだ。

 「……おや? 何があったんですか?」
「知らんがな」
 買い物から帰還し、場内の奇妙な空気を怪訝に思って尋ねたリンデンに、宿の主である
初老の男はカウンターにて皿を拭きながら短く答えたのだった。

37 :
 投下終了。
 書き上げてみたら単に801の定番「一目惚れした相手が同性だった」の
性別を反転させただけになってしまった。
 そしてどちらも、キャラとしては「嫌なはずの物を好きになってしまう」
って設定だが、妄想主としては元からバッチコーイな訳で……改めてこの
シチュエーションは難しく、業が深いと思ったの事アルヨー。

38 :
GJ!
いいなーツンデレオカマと男装娘

39 :
GJ!!
かなりツボった!ありがとう
書き手さん来ないかなー

40 :
ひゃっはー!作品だぜーっ
大変GJでございました

41 :


42 :
おぉ、職人さん来てた!
GJ!!

43 :
保守

44 :
保守あげ

45 :
中村明日美子の漫画にドラァグ×女、オカマ×女のエロがあるけどあれ最高

46 :
新ジャンル おかま 女 でググルと幸せ

47 :
>>46
幸せになった!d

48 :
ホシュ

49 :
保守あげ

50 :
このスレって
ゲイさんは私のこと
でググってでるやつみたいなノリのやつ投下したらいいの?

51 :
バッチ来い
むしろ来てくださいとお願いしたいくらい

52 :
自分からもお願いしたい

53 :
自分からも

54 :
http://img.2ch.at/s/20mai00062217.jpg

55 :
ほす

56 :
昔デボラがライバルって映画見てオカマ×女性も良いなと思った
多田かおる原作のやつ

57 :
ほしゅ

58 :


59 :
守age

60 :
需要ないのか…

61 :
ここにある
誰かー

62 :
需要はあれども、供給が…

63 :
スレタイに惹かれて書いてみたら
エロまで到着するのに時間が掛かった…
ので、前後編に分けて投下
オカマ×女の子、前編はキスまで
NGワードはトリかタイトル「悠生ちゃんと私」で
以下投下
 *****
 バイトを終えて家に帰ると、ルームメイトの悠生ちゃんが、今にも泣きそうな顔つきでビールを飲んでいた。
 冷たいリビングの床にクッションも敷かずに座り込み、頬杖を突きながらグラスにビールを注ぐ姿は、とても綺麗だ。
「ただいま」
 夜食もかねたお土産の回転焼きを空き缶の転がるテーブルに置く。
 大好物の回転焼きを目の前にしながらも、悠生ちゃんは私の方をちらりとも見なかった。
 溢れそうなぐらいにビールを注ぎ、への字に曲げた口にグラスを近付け一気飲み。
 空き缶は三本。六缶パックのうち半分。しかも500ミリ缶。
 手にしているのが四本目だから、いくらなんでも飲み過ぎだ。
「悠生ちゃん、どうしたの?」
 コートを脱いでソファに置くと、私は悠生ちゃんの向かいに腰を下ろした。
 さりげなく残った二本を手元に引き寄せると、悠生ちゃんは恨めしそうな眼差しで私を見た。
「お帰り」
「……ただいま」
 もう一度、苦笑混じりに挨拶。
 すると途端に、悠生ちゃんはボロボロと涙をこぼし始めた。
「ちょ、悠生ちゃん?」
「チィ子ぉぉぉ」
 私の名前を呼んで、号泣。しかもテーブルに突っ伏して。
 いったい何があったのか。高校時代からの付き合いとは言え、いきなり泣き出されちゃこっちも戸惑うしかない。
 悠生ちゃんは、文字通りおいおい泣きながら、手にしていた空き缶をぐしゃりと握りつぶした。

 悠生ちゃんこと渋澤悠生と、私・大峰千鶴子は、高校からの友人だ。
 悠生ちゃん、と呼んではいるが、彼女の性別は戸籍上はれっきとした男。
 いわゆる『オカマ』と言うやつなんだけど……知り合った時はすでに立派な『オンナノコ』だった。
 高校には制服が無くて、私服通学が基本。悠生ちゃんが高校を選んだポイントも、そこだったらしい。
 初めて見た時は、誰も彼もが悠生ちゃんを女の子と信じて疑わなかった。
 私も最初は驚いたけどね。
 でも悠生ちゃんは、そんじょそこらの男子よりも格好良くて、下手な女子よりも女の子らしくて、何よりすごく絵が上手。
 同じ美術部の中でも、そのセンスは群を抜いていた。

64 :
 純粋にその才能を尊敬する私に、悠生ちゃんが声を掛けたのがきっかけで、私と悠生ちゃんの友達付き合いが始まったのが六年前。
 大学進学の時、一人暮らしが不安だと言う私に付き合って、ルームシェアを申し出てくれたのも悠生ちゃんだった。
 最初は不安もあったけど、うちのお母さんなんか、未だに悠生ちゃんのことを女の子だと信じて疑わない。
 悠生ちゃんのお母さんも、『ちょっと代わった娘』ぐらいにしか、悠生ちゃんのことを認識してないって言うんだから……。

「チィ子ぉぉぉ、聞いてよぉぉぉ」
 ぐずぐず泣きながら、悠生ちゃんが顔を上げる。
 今時のマスカラは、涙ぐらいじゃ流れない。何とも優秀だ。
 私がそんな事を考えているなんて知らない悠生ちゃんの右手が、ビールに向かって伸ばされた。
「聞くから、その手は禁止。何?」
 悠生ちゃんの限度は缶ビール四本まで。五本目を飲んだが最後、そのまま寝ちゃうのは経験済みだ。
 私はわざと悠生ちゃんの手の届かない所にビールの缶を避難させると、ビールを求めてさまよう悠生ちゃんの手に回転焼きの紙袋を押し込んだ。
 悠生ちゃんは不満そうに眉を寄せながら、のろのろと体を起こした。
「今日、バイト先でさ」
 紙袋を開き、中身を確認。一瞬、悠生ちゃんの頬は柔らかくなったけど、またすぐに悲しそうな表情に戻る。
「『男じゃないって得だよな』って」
「うん?」
 確かに悠生ちゃんはオカマだけど。
 もふもふと回転焼きを口に運ぶ悠生ちゃんは、それから暫く無言のまま。
 話してくれなきゃ分からないけど、無理に聞き出すのもどうかと思う。
 取り合えず、回転焼きは悠生ちゃんが独占しちゃったし……ビールでも飲もう。
「チーフがね……明後日の飲み会で、腕相撲大会するって言って」
 話があちこちに飛ぶなあ。
「女子は女子組、男子は男子組で、って」
 悠生ちゃんのバイトはチェーン店の居酒屋さん。
 同じ年頃の子も多いから、働きやすい職場ではあるらしい。行ったことがないから知らないけど。
「それで?」
「でね……チーフに、『私はどっちですかー?』って聞いたの。冗談っぽくね」
 まあ……そうなるか。

65 :
 悠生ちゃんは、自分の性癖を隠さない人だから。バイト先でも、学校でも、一応はみんなが悠生ちゃんの事情を知っている。
 信じない人や、毛嫌いする人も居るだろうけど、悠生ちゃんは「私は私だから」と強気の姿勢。
 そんな所も悠生ちゃんの魅力だと私は思う。
「そしたら……」
「そしたら?」
「……言われたのよ、さっきの言葉」
「チーフに?」
「じゃなく、スネ夫に!」
 ああ、なるほど。これで話が繋がった。
「前々から私の事が気に入らないのは知ってたけど、あんな風に言う事ないじゃない!? 私だって、顔を合わさないようにわざわざシフトずらしてやったり、代打入ったりしてやったのに、あんなあからさまに嫌味言うなんて……私、もう悔しくて悔しくて!」
 言って、悠生ちゃんは回転焼きにかぶりつく。
 通称スネ夫は、悠生ちゃんのバイトの先輩。その口からこぼれる嫌味と自慢があだ名の由来。
 どうやら悠生ちゃんとは馬が合わないらしく、私も前から色々と話は聞いていたんだけど、今回の事で悠生ちゃんは完全に頭に来たみたいだ。
「そんなの今更でしょ? 悠生ちゃんは悠生ちゃん。男とか女とか大した問題じゃないって、悠生ちゃんだって言ってるじゃない」
 慰めついでにビールを傾ける私に、悠生ちゃんは回転焼きをもふもふ。
「でも、悔しいじゃない! こっちがどれだけ尻拭いしても、『ありがとう』の言葉も無いし、むしろ嫌味ばっかりでさ!」
 そうとうフラストレーションが溜まってたのか、悠生ちゃんはまた涙をボロボロ流しながら回転焼きにかぶりつく。
 正直、かなり壮絶。とっても男らしい。
 もぐもぐごくん、と回転焼きを食べ終えて、悠生ちゃんは動きを止めた。
「もう辞めたいよ、あそこ」
 小さな小さな弱音を吐いて、二個目の回転焼きに手を伸ばす。
 普段、あんまり弱音を吐かない悠生ちゃんだから、その言葉がどれだけ重いのか、私には容易に想像がついた。

66 :
 たぶん本心なんだろうな、辞めたいって言うのは。
「けどさ」
 半分に減ったビールの缶をテーブルに置いて、私は悠生ちゃんに視線を向けた。
 弱々しい女の子にしか見えないその姿には、いつもの強気な気配はない。
「チーフや他の人たちは、悠生ちゃんのこと気に入ってくれてるじゃない? スネ夫一人の事で辞めたらもったいないよ」
 私の言葉に、悠生ちゃんは顔を上げた。
「チィ子……」
「むしろスネ夫を辞めさせてやるぐらいの姿勢でいかなきゃ。ね?」
 にっこり笑ってそう言うと、私の慰めが効いたのか、悠生ちゃんは回転焼きをテーブルに置いて。
「チィ子ぉぉぉ」
 むぎゅっ。
 女の子にしては強い力で、私を思いっきり抱き締めた。
「うわっ!」
 ビールを2リットル飲んだ悠生ちゃんは、完全に酔っ払いと化しているのか頬ずりまでしてくる。
 普段は女の子然としているけれど、抱き締める力は間違いなく男の子のそれ。
 息苦しくて思わずもがいたけれど、酔っ払った悠生ちゃんは、気付いてくれそうにない。
「そう言ってくれるのはチィ子だけよぉぉぉ。もう、チィ子大好きぃ!」
「分かったから……ちょ、腕緩めて……」
 もがきながらも、何とか悠生ちゃんの腕から顔を出す。
 悠生ちゃんはそれでも、腕の力を緩めようとしない。
 私の体に回した腕はしっかりと固定されていて、悠生ちゃんのふわふわした長い髪が頬に当たってくすぐったい。
 やや体格の良い女の子、で通じる悠生ちゃん。けれど、こうして抱き締められると、ちゃんと男の子なんだなぁって言うのが分かる。
 普段あんまりスキンシップが激しくないだけに、それは余りに顕著で。そんな事を意識してる場合じゃ無いけれど、悠生ちゃんも男の子なんだと認識した瞬間、私の心臓は大きく飛び跳ねた。
 コレッテマズクナイデスカ……?
「チィ子……?」
 動きを止めた私を不審に思ったのか、悠生ちゃんはひょいと顔をのぞき込む。
 うわっ、近い近い近いっ!
「やだ、なに赤くなってんのよ」
「な、なってないから! ビールのせいだって!」
 黒い綺麗な瞳が際立つ端正な顔立ち。それが間近にあるせいで、私は苦し紛れの言い訳を放つ。
 いつもの悠生ちゃんなら、冗談混じりにかわしてくれたんだろうけど。
「ふふふっ、かーわいー」
 ビールのせいか潤んだ瞳が、妖しく細められた。
「か、可愛くないし! て言うか、そろそろ離して」
「やーよ」

67 :
「ちょっとぉ!」
 じたばたともがいてみるも、力の差は歴然。
 悠生ちゃんは再び私を抱き締めると、私の耳元に唇を寄せた。
「チィ子は可愛いわよ」
 低い声。
 今まで聞いた事のない男の人の声音に、今度こそ私は抵抗する意思を奪われた。
「ちょっとぉ!」
 じたばたともがいてみるも、力の差は歴然。
 悠生ちゃんは再び私を抱き締めると、私の耳元に唇を寄せた。
「チィ子は可愛いわよ」
 低い声。
 今まで聞いた事のない男の人の声音に、今度こそ私は抵抗する意思を奪われた。 口調はいつもの悠生ちゃんなのに。
「分かったから……離して」
「どうして?」
「だって……」
 女の子じゃない悠生ちゃんの色気を感じたから、なんて……絶対に言えない。
 今までずっと、女の子として接してきたのに、これは余りに唐突すぎる。
 しかも悠生ちゃんは酔っ払い。さっきまで、あんなに泣いて喚いて弱音をこぼしていたのに。
「だって?」
 少し体を離した悠生ちゃんが、また私の顔を覗き込む。
 泣いた跡の見える悠生ちゃんの頬は、うっすらとピンク色に染まってる。
「……恥ずかしい、から」
 真っ直ぐに私を見下ろす視線が痛くて、私は悠生ちゃんから目を逸らし、口の中でもごもごと呟く。
 そんな私に、悠生ちゃんはいつもの調子で囁いた。
「可愛い、チィ子」
「や、だから……」
「そんな顔されたら、チューしたくなっちゃうじゃない」
 ……何ですと?
「や、待って待って待って!」
 何なの、この展開は!
 って言うか、私、いつそんなフラグ立てました!?
 悠生ちゃんのバイトの愚痴から、なんでこんな風に話が進んじゃってるの!?
 恥ずかしさと混乱で慌てて顔を上げると、悠生ちゃんは少し意地悪そうな笑顔を浮かべ。
「チィ子だったら、私、チュー出来ちゃう」
 はいぃ!?
「いや、悠生ちゃん、男の子が好きなんじゃ?」
「もちろん、男の人が好きだけど、チィ子の事も好きだもの。それともチィ子は、私の事、嫌い?」
「好きだけど、それとこれとは――」
 話が別。
 そう言葉を続けようとした私の唇に、悠生ちゃんの人差し指が押し当てられた。
「だったら良いじゃない。チィ子にチューしたくなっちゃったんだもの」
 悠生ちゃんの魅力は強気なところ。
 酔っ払っているからか、強引な部分も二割り増し。
 「ね?」と微笑まれた私は、その魅力にあらがえず、渋々小さく頷いた。

68 :
 これが他の人だったら、なんとしても拒否していただろうけど、悠生ちゃんだったら……まあ、良いか。
 そう思える自分が少しばかり情けないけれど、そんな事を考えているうちに、私の唇には指とは違う柔らかな感触が押し当てられた。
「……っ」
 反射的に体を強ばらせる私の背中を、悠生ちゃんの手が優しく撫でる。
 熱い吐息を漏らす唇が何度も何度も重ねられ、背中を撫でる手の感触に、徐々に緊張がほぐれていくのが自分でも分かる。
 下唇を優しく噛んで、悠生ちゃんの舌がその上を這う。
 くすぐったいけど、ちょっと気持ち良い。
 何だか不思議な感じ。
 悠生ちゃんは『女の子』で友達なのに、唇が触れ合うたびに私の心臓のドキドキが大きくなる。
「チィ子」
 閉じた瞼の裏、名前を呼ばれて薄目を開けると、悠生ちゃんは薄く笑ってまた私の唇に自分の唇を重ねた。
 今度は触れ合うだけじゃない。
 少し強引に私の唇を割ったのは悠生ちゃんの舌。唇を味わうように這わせたかと思うと、今度は歯列をなぞってくる。
 あくまで優しく。それでいて強引に。
 悠生ちゃんの性格そのままのキスに、気付けば私は悠生ちゃんのシャツを握りしめていた。
 もっと口を開けてと催促するような舌の動き。
 優しいのにいやらしいキスは、頭の芯がぼーっとなって喉の奥から声が漏れる。
 力の抜けた私の中に悠生ちゃんの舌は易々と侵入を果たし、今度は縮こまっていた私の舌を、誘うように絡めてきた。
「ふ……ぅ、んっ」
 まるで別の生き物みたいに動き回る舌に、私もおずおずと自分の舌を絡めてみる。
 一瞬、悠生ちゃんは笑ったみたいだったけど、確認する暇なんてない。
 舌の表も、裏も、悠生ちゃんに味わわれて、そのたびにゾクゾクした快感に襲われる。
「っ……は、悠生、ちゃ……」
 とろりとした熱い唾液が注ぎ込まれても、私はあらがう事なんて出来なくて、喉を鳴らしてそれを飲み下した。
「ゆ、きちゃん」
「あー、やべ」
 長かったのか、短かったのか。どれぐらいの間キスを続けていたのか分からない。
 私の息も絶え絶えになった頃、悠生ちゃんはようやく私の舌を解放したけれど。
 聞き慣れない男言葉でポツリと呟くと、少し困ったような笑顔で私を見下ろした。
「勃ってきた」
「……え」
 言われた意味を理解するより早く、悠生ちゃんは私を抱き直して、より体を密着させる。

69 :
 お腹の少し下辺りに、固い物が押し当てられて、そこでようやく私は我に返った。
 これって……アレ、だよね。
 私にはなくて、悠生ちゃんにはある、アレ。
「どうしよう」
「ど、どうしようって……」
 耳に掛かる髪をかき上げられながら、私は悠生ちゃんの顔を覗き見る。
 悠生ちゃんは苦笑したまま、固くなったソレを持て余しているみたいだった。
「あー、もう……チィ子が可愛い声出すから」
「なんでそうなるの! チューしたいって言ったのは、悠生ちゃんの方じゃない」
 責任転嫁も甚だしい。
 私だって、いきなりこんなモノ押し付けられたって困るんだって!
「もう、やっちゃおうか」
「ちょ、な、え、えええ!?」
 爆弾投下。
 慌てふためく私と対照的に、悠生ちゃんはやけに冷静な表情を浮かべると、私の体を離して立ち上がった。
「チィ子なら出来ると思うのよね、私」
 い、いやいやいや、そう言う問題じゃなくて。
「女の子相手は始めてだけど……何とかなるでしょ」
 いや、だからぁ!
 何とか思いとどまらせようとするけれど、私の喉は引っ付いたみたいに声が出ない。
 陸に上げられた魚みたいに口をぱくぱくさせる私の目の前で、悠生ちゃんは自分のショルダーバッグから、小さな四角い袋を取り出した。
「ゆ、ゆ……悠生ちゃんっ!」

 *****
今回はここまで
後編は、早ければ明日、遅くても月曜には
携帯投下なので、お見苦しいやもしれませんがご容赦を

70 :
言ったそばから……
5レス目の冒頭の打ち込みミスは、脳内スルーでお願いしますorz

71 :
うおおおぉぉぉ!!!!
待ちに待った職人様の降臨!
しかもリアルタイムで遭遇とか、マジラッキーすぐるwwww
GJ!!
待っててよかった

72 :
ふぉぉぉおお!!!!
供給ktkr
やばいやばい興奮した!
待ってたかいがあったよ本当
ありがとう!!!
続き楽しみだー

73 :
すみません、思いの外長くなってしまったので
前中後編にさせて頂きます
今回は挿入まで
NGワードはタイトル「悠生ちゃんと私」かトリで
以下投下
*****


74 :
いきなり投下ミスすみません…!
改めて
今回は挿入まで
NGワードはタイトル「悠生ちゃんと私」かトリで
以下投下
*****
 ゴムの袋を手に私の前に戻ってきた悠生ちゃんを前にして、ようやく私の声、復活。
 このまま形成逆転が出来なかったら……いやいや、今は余計な事を考えてる場合じゃない!
「駄目だよ、それは! 酔った勢いで、冷静じゃなくなってなくない?」
「チィ子の方こそ、冷静じゃなくなってるわよ」
「私の事は良いの! てか、ほっといたら何とかなるでしょ? 何もエッチしなくても」
「だって、このままじゃ苦しいんだもの」
 へー、男の人って、そうなんだ。
 まあ、女だって中途半端だと気分的には苦しい物があるけど。
 ……じゃなくて!
「それに」
 一瞬、余計な事を考えたのがまずかったのか、悠生ちゃんは私を抱き締めると、あの低い声で囁いた。
「チィ子の事、好きだし」
 …………。
 嗚呼、駄目だ。
 この声は心臓に悪すぎる。
 いつもだって、別に意識をして女声を作ってる訳じゃないんだろうけど。
 悠生ちゃんに『男』を意識させられたら、もう適わない。
「……用意が良すぎ」
「女のタシナミよ」
 悔しくて、それでも拒否なんて出来なくて。精一杯の恨み言に、悠生ちゃんは男の人の声で小さく笑った。
「ベッド、行く?」
 どこまでも優しい悠生ちゃんの言葉に、私は首を横に振る。
 さっきのキスで感じてるのは、悠生ちゃんだけじゃない。
 本音を言えば私だって、体の奥がもやもやして仕方なかった。
「いい」
「寒かったら言って。もっとも、そんな暇なんて与えるつもりもないけどね」
 冗談めかして笑う悠生ちゃん。
 見慣れたはずの笑顔なのに不思議な感じがするのは、その中に『男』が潜んでいると知ってしまったからかも知れない。
 耳に熱い吐息を感じて、私はゆっくりと目を閉じる。
 悠生ちゃんの口は魔物だ。
 耳をなぞり、耳たぶを甘噛みされただけで、私の口から吐息が漏れる。
 くちゅくちゅといやらしい音を間近で聞かされ、悠生ちゃんのシャツの袖を掴んでしまう。
「千鶴子」
「あ……っ、やぁ」
「千鶴子」
 滅多に呼ばれない名前を繰り返す悠生ちゃんの声に、恥ずかしさがわき起こる。
「だめ……名前っ、やだ……ぁっ」
「駄目じゃない。千鶴子」
「んんっ!」

75 :
 意地悪な声。
 耳に舌を差し入れて、耳を口に含んで。その最中にも断続的に呼ばれる名前は、頭の中に直接響いてくるみたいで。恥ずかしいのに、気持ち良い。
「やぅっ、あ、悠生、ちゃ」
「千鶴子……可愛い」
「そんなっ、言わ、ないっ…」
 頭を振って逃れようとしても、悠生ちゃんの右手は私の後頭部をしっかりと支えている。
 羞恥心に煽られて、なのに逃げることも許されない。
 悠生ちゃんは尚も私の名前を呼びながら、首筋に顔を埋めてきた。
「千鶴子」
 舌先が私の首や顎を這う。
 こんな時に限って、私の服装はハイネックのカットソーにジーンズ。
 でも、悠生ちゃんには関係無いみたいで、僅かに覗いた首筋に吸い付きながら、逆の耳へと唇を移動させた。 それと同時に、背中に回されていた左手が服の中に潜り込む。
 背骨を伝い撫で回されて肌が粟立つ。その感触に気を取られている間にも、悠生ちゃんの舌は妖しく蠢き。
「あああぁっ!」
 じゅるり、と盛大な音をたてて耳を吸われ、私は思わず悠生ちゃんにしがみついた。
「千鶴子、耳、弱すぎ」
 喉の奥で笑いをこぼす悠生ちゃんは、今度は私の背中に爪を立てる。
 カリカリと優しく引っかかれ、その刺激に腰が浮いた。
「あ、んんっ……だってぇ…」
「背中も、駄目?」
「だ、だめぇ……」
 自分で聞いておきながら、悠生ちゃんの手は止まらない。
 私の敏感なところを探るように指の腹で背骨をなぞって、私が声を漏らすたびにそこに爪を立てていく。
「やらしー声」
「ちが…っ、ゆうき、ちゃんがぁ」
「私が、何?」
 ブラのホックを外した悠生ちゃんは、両方の手を服の中に差し入れる。
 中途半端に浮いたブラが邪魔だけど、悠生ちゃんはお構いなしに、いやらしく手を動かしていく。
「悠生ちゃん、が……触るから…っ」
「私が触ると? 声、出ちゃうの?」
「ひゃうっ、ぅああ!」
 答えようにも、口からこぼれたのは甘い悲鳴。
 返事をする前に、悠生ちゃんが私の耳をくわえたせいだ。
 人並みに経験はあるけれど、こんなに翻弄されるのは初めて。肝心な部分にはこれっぽっちも触れられてないのに、声を抑えることも出来ない。
「千鶴子」
 嗚呼、本当に駄目だ。
 悠生ちゃんの声だけで、頭の中が白くなる。
「千鶴子、すっごくエッチな顔になってる」
 男の人の声で囁いて、悠生ちゃんの唇が私の唇を塞ぐ。

76 :
 そのまま優しく押し倒された私の体に、悠生ちゃんの手が伸びた。
 ブラごと服をたくし上げ、ひんやりとした外気にさらされた胸を手で覆う。
 固くなった頂を指で摘まみ。かと思うと指の腹でこねまわされる。
 そのたびに声が漏れるけれど、深く口付けられたままだから、表になったのはうめき声にも似た声音。
 どちらかともなく舌を絡めあいながら、私はぼんやりと悠生ちゃんを見上げた。
 整えた眉。長い睫毛。ふわふわとカールした髪が、私の肩にこぼれる感触。
 キスも、胸への愛撫も気持ち良くて、悠生ちゃんの頬に手を伸ばすと、閉じられていた瞼が押し上げられた。
 ばっちり交わる視線と視線。
 目元を緩めた悠生ちゃんの眼差しに、こんな行為の最中だと言うのに、目を逸らす事が出来ない。
 悠生ちゃんは唇を離すと、私の首の後ろに手を回した。
「千鶴子、借りるわよ」
 後ろで一つにまとめていた髪が解かれ、私の髪ゴムは、悠生ちゃんの手に渡る。上体を起こして手早く髪をまとめる姿は、やっぱり色っぽい。
「服も脱いじゃうか」
 力の抜けきった私は、促されるまま体をよじる。悠生ちゃんは私の服を脱がせると、自分もシャツの胸元をはだけた。
 悠生ちゃんの手で上半身が裸にされたのは良いんだけど、フローリングの床は、直接横たわるとちょっと冷たい。
 胸を抱えて一瞬体を震わせた私に、悠生ちゃんは気付いたらしい。
「千鶴子」
「ん…? あ、わっ」
 鼻先にキスを一つ。かと思うと、私の体は軽々と悠生ちゃんに抱えられ、ソファの上に転がされた。
 そんな何気ない行動の一つ一つに男の人を意識してしまう。
「床、冷たいでしょ」
「う…、ん」
「ベッドじゃなくて悪いけど」
「いいよ」
 シャツを脱ぎ捨てた悠生ちゃんの体は、ほどよく筋肉がついて引き締まっていて、思わず見とれてしまう。
 これで女の子になりたいだなんて……もったいない。
 胸を隠す私の両手をやんわりと引きはがし、悠生ちゃんは私の胸に頬ずりした。
「柔らかい」
「んっ、くすぐったいよ、悠生ちゃん…」
 私の両手をソファに縫い止め、悠生ちゃんは口を使って私の胸を刺激する。
 寒さと快感で固くなった頂を口に含み吸われると、ジンッ――と下半身に熱が走った。
「ぅ…っふう」
 ねっとりとした舌が乳首を転がし、時折そこに歯を立てられる。

77 :
 甘い痛みに声を漏らすと、悠生ちゃんは気を良くしたのか、両手で私の胸をすくい上げて両方の乳首に交互に歯を立てた。
「ひんっ、あ、ああ!」
「痛いのに、気持ち良いの?」
 わざと意地悪な質問をする悠生ちゃんに、私は声を漏らしながら小さく頷く。
 そんな私に、悠生ちゃんは強く胸を揉みながら、なおも乳首に歯を立てて舌先でちろちろと舐め回した。
「うぁ、ああっ」
「やらしー。千鶴子、虐められるのが好きなんだ」
「ち、ちが…んんんっ! やぅっ!」
 悠生ちゃんに触れられるたび、私の体はぴくぴくと跳ねる。
 覆い被さる悠生ちゃんの顔は良く見えない。
 休む間もなく与えられる快感に、私は声を上げることしか出来ずにいた。
「可愛い、千鶴子」
 悠生ちゃんの手が脇を通って私の下半身に伸ばされる。
 熱くほてった足の付け根に手を伸ばし、そこを強く押されると、ジーンズの上からだと言うのに、一際強い快感が私の身体を走った。
「や、ああ、ゆう、きちゃっ!」
「気持ち良いの?」
「ぅんんっ、は、気持ち、い」
 むにゅむにゅと四本の指で足の付け根を蹂躙される。
 胸を揉まれるのとはまた違う、じれったいような快感。
 中途半端で。触って欲しくて。
 足をすり合わせる私の姿に、悠生ちゃんは身体を起こすと、私のあそこをいじりながら目を細めた。
「千鶴子、どうして欲しい?」
「…っ、やぁ……」
 そんなこと言えない。言える訳がない。
 口許を抑え悠生ちゃんを見ると、悠生ちゃんは意地悪く笑いながら、空いた左手で私の足を割り開いた。
「ここ、気持ち良いんでしょ? どうして欲しいの?」
 ジーンズを履いていても、もう私のあそこはぐちょぐちょになっているのが分かる。
 もっとして欲しい。悠生ちゃんに触って欲しい。
 けど吐息混じりの喘ぎ声しか上げることが出来なくて、私は小さく首を横に振った。
 そんな恥ずかしいこと言えない。
「もっと触って欲しいんじゃないの?」
「ふぁ、う…んんっ!」
 ぐりぐりと強く圧迫されて、私は強く目を閉じて大きく頷く。
 悠生ちゃんは意地悪だ。
「言ってくれなきゃ分かんないわよ?」
 何が悠生ちゃんの加虐心に火を点けたのかは分からないけれど、悠生ちゃんはあそこをいじったまま、私の耳元に唇を寄せた。
「言って? 触って欲しいって」
「う……あ……、さ、触って……悠生ちゃん……」

78 :
 まるで熱に浮かされたみたい。
 恥ずかしいのに、悠生ちゃんに言われると、どうしようもなくあらがえない。
 吐息の隙間から切れ切れに呟くと、悠生ちゃんは私の耳に口付けを一つ。
「良く出来ました」
 にっこり笑ってジーンズに手を掛け、私の足から引き抜いた。
 両手で大きく足を割り開かれ、私は恥ずかしさで目を閉じる。
「もうぐちょぐちょ。女の子って、こんな風になっちゃうのね」
 目を閉じていても、悠生ちゃんの視線がどこに向けられているのか分かる。
 呟いた悠生ちゃんの屈み込む気配がしたかと思うと、熱い吐息が下着越しに感じられた。
 太股を撫でながら、悠生ちゃんの唇が私のあそこに触れる。
 何かを確かめるみたいに舌先が伸ばされ、私は思わず腰を浮かせた。
「んぁ、ああ…っ!」
「千鶴子……めちゃくちゃ濡れてる」
「や、あ…そん、な……ことぉ…」
 にじみ出た蜜がぴちゃぴちゃといやらしい音をたてている。
 悠生ちゃんは私の下着をするりと脱がすと、私の太股を持ち上げた。
「やらしー、千鶴子」
 片足を悠生ちゃんに持ち上げられた私は、いまや隠す物もなく悠生ちゃんに全てを晒している。
 目を開けると、悠生ちゃんは私の足に唇を這わせていたけれど。その眼差しは一点に向けられていて。
「だ、だめ…ぇっ、見ちゃ、やあ…っ!」
 部屋の明かりは点いたまま。
 悠生ちゃんの眼差しに、私は思わず両手で顔を覆った。
「どうして? 可愛いわよ、千鶴子」
「だ…って……あああっ!」
 くちゅり、といやらしい音が耳に届く。
 私の足を味わう悠生ちゃんが、右手を私のあそこに伸ばしていた。
「千鶴子」
 悠生ちゃんが入り口を指でかき回すたび、ねばついた音が絶え間なく響く。
「んあ、ぁ、や、あぁぁ」
「千鶴子の中、すっごく熱い」
 低い声で囁かれ、その声が気持ち良さを増して。お尻の方まで蜜が伝うのが分かった。
「舐めて良い?」
 なんでいちいち訊くんだろう。
 私のあそこは、もう指だけじゃ足りないのに。
 けれど悠生ちゃんは、今度は私の答えを待つ事はせず、私の中に指を埋めたまま身体を屈めて顔を近づけた。
「ああぁっ、悠生、ちゃん…っ!」
 じゅるっと悠生ちゃんが蜜をすする音が聞こえる。
 かと思うと、一番敏感な場所に吸い付かれ、私は堪えきれず声を上げた。
 私の中で蠢く指は、徐々に本数を増やしているのか、圧迫感が増している。

79 :
 でも、それを苦しいと思う暇なんてないぐらい、悠生ちゃんの口は私を気持ち良さでいっぱいにして。
 もう、何も考えられない。
「やぅ、あ、はあっ! ゆ、きちゃ…っ!」
 淫らな音と淫らな声。
 快楽に身を任せる私の視界は、いつしかぼんやりとした水の膜に覆われた。
「あ、ああ! だ、だめぇっ! いや…やあぁ――っ!」
 制止をかけようとする声は悲鳴にも似ていて、悠生ちゃんの指は激しく私の中を乱していく。
 その勢いに全身が大きく突っ張って、私は身体を孤にした。
 快楽の絶頂に息も絶え絶えな私を見下ろし、悠生ちゃんは指を引き抜きながら体を起こす。
 酸素を肺に送り込みつつ悠生ちゃんを見ると、蜜に濡れた唇をぺろりと舌で舐めながら、にんまりとした妖しい笑顔を浮かべていた。
「ゆ……きちゃん…」
 悠生ちゃんは、一端ソファから降りると、さっき取り出したゴムを手に取る。
 ズボンを脱ぎ捨てソファに戻った悠生ちゃんに、私はのろのろと身体を起こした。
「悠生ちゃん…?」
「あんま見んな。……恥ずかしいだろ」
 ボクサーパンツの前は膨れ上がっていて、ゴムの袋を破りながら悠生ちゃんは苦い笑み。
 わざと男言葉を使う悠生ちゃんに、思わず小さく笑いがこぼれた。
「貸して。付けたげる」
 私ばっかり気持ち良くなるのも悪いと思う。
 両手を差し出し悠生ちゃんを見ると、悠生ちゃんは少し戸惑ったようだけど、存外素直に私の手のひらにゴムを乗せた。
「お手柔らかに頼むわよ」
「ばか」
 肩の高さで両手をぴらぴらと掲げる悠生ちゃん。
 おどけた口調がおかしくて、つい笑い混じりに唇を尖らせてしまう。
 ゴムを取り出し左手に持った私は、右手で固く張りつめた悠生ちゃんのモノを包み込んだ。
 酷く熱くて、先走りのせいかじっとりと湿っている。
 優しく撫でながらボクサーパンツに手を掛けると、悠生ちゃんは私の頭を撫でながら、私の動きをさまたげないように腰を上げた。
 途端、雄々しいとも言える悠生ちゃんのモノが顔を出す。
 綺麗な顔に似合わないソレを思わず凝視してしまった私に、悠生ちゃんは眉を下げた。
「だから見ないでって」
 *****
今回はここまで
度重なる投下ミス、本当に申し訳ないorz
月曜までには後編を投下に参りますのでノシ

80 :
>>79
GJ!全裸で待ってるよー

81 :
悠生が単なるオネェ言葉の兄さんになってる気がする……
後編投下
NGワードはトリかタイトル「悠生ちゃんと私」で
以下投下
 *****
「悠生ちゃんだって見たじゃない」
 一言で表すならばグロテスクなソレを右手でそっと掴むと、悠生ちゃんがわずかに眉を寄せた。
 ぬるりとした液に濡れた先端を、親指の腹で撫でてみる。
 それに反応するかのように、ピクンッと右手の中で悠生ちゃんのモノが震えた。
「千鶴子…っ」
 形成逆転。
 掠れた声で私の名前を呼ぶ悠生ちゃんに、内心にんまりと笑いながら、私は震えるそれに唇を寄せた。
 親指で先端に孤を描きながら、真っ赤に色づくその部分に舌を這わせる。
 あんまりフェラの経験はないけれど、これぐらいなら。
 つるつるとした先端に舌を絡ませ、右手で悠生ちゃんのモノを上下にこする。
「っ、はあ……千鶴子…っ」
 悠生ちゃんの口から吐息が漏れる。
 ちらりと悠生ちゃんの様子を伺うと、気持ち良さそうに目を細めて、私の方を見下ろしている。
「あー……やべ、気持ち良い…」
「ほんと?」
「ほんと」
 額に掛かる髪を掻き上げ、悠生ちゃんはふぅっ…と息を吐き出した。
「千鶴子、もう良いから」
「まだ……駄目」
 さっきの仕返しとばかりに悠生ちゃんのモノを口に含み大きく吸い上げる。
 途端、「くっ」と苦しそうに悠生ちゃんの顔が歪む。
 私の知らない悠生ちゃんの顔。
 快感に眉を寄せる悠生ちゃんは、すごく色っぽい。
 もっとその顔が見たくて、私は悠生ちゃんのモノを吸い上げながら、ぎこちなく舌を動かした。
「っ……ふ…ん……、そん、なに」
「?」
 口の中で大きさを増す悠生ちゃんのモノに夢中になっていると、吐息混じりの悠生ちゃんが何事かを呟く。
 それが気になって動きを止めた瞬間。
「俺の、美味い?」
 ニヤリと悠生ちゃんが笑った気がした。
 あからさまに訊かれた言葉と、悠生ちゃんが自分の事を『俺』と言った事。その両方に心臓がドクンと大きく波打った。
「ち、違うよ」
「でも、美味そうに食ってんじゃん」
 慌てて顔を上げると、私の髪を撫でる悠生ちゃんが意地悪く笑った。
「千鶴子のえっち」
「悠生ちゃんには言われたくないっ!」
 からかわれるのが悔しくて、思わず右手に力がこもる。
 その瞬間、悠生ちゃんが眉を寄せたので、私は慌てて手を離した。
「い…っ!」
「あ、ごめん!」

82 :
 上体を起こして悠生ちゃんのモノを優しくさすると、悠生ちゃんの両手が私の手に被せられた。
「そう思うなら、千鶴子の中に入れさせて」
「……ん」
 オブラートに包む事のないストレートな要求に、躊躇いがちに頷いた私は、左手のゴムを悠生ちゃんのソレに被せた。
 にゅるにゅるとしたゼリーに覆われたゴム。それを付けられても、悠生ちゃんのモノの熱さは、私の手に伝わってくる。
「千鶴子」
 もう何回呼ばれたんだろう。
 名前を呼ばれ顔を上げると、悠生ちゃんは私に深く口付けながら、私の腰を持ち上げた。
「っ…う、ふ、ぅん」
 軽々と身体を持ち上げられ、悠生ちゃんをまたぐ格好に座らされる。
 触れ合う素肌が気持ち良い。
 ぴたっと抱きつくと私たち二人の体の間で、私の胸と悠生ちゃんのモノが挟まった。
「千鶴子……自分で入れてみ?」
「ん…」
 私の腰を支える悠生ちゃんの声は、どんどん艶を増していてあらがえない。
 固く立ち上がった悠生ちゃんのモノを右手で支え、悠生ちゃんの手でぐちゃぐちゃに解されたあそこに当てがう。
 ゆっくりと体を沈めると、自然と互いの口から熱い吐息がこぼれた。
「はあ、あ……気持ちいー、千鶴子ン中」
「ん…っ……悠生、ちゃん……くるし」
 下世話な言い方をすれば『ご立派』な悠生ちゃんのモノは、私の中を広げるかのようで。
 ぶっちゃけ、過去に一人しか経験がない上、最後のエッチは半年以上前のこと。
 そんな私に、悠生ちゃんのモノはかなりキツい。
「痛い?」
「ちょっと…」
「ん、分かった」
 悠生ちゃんもそれを知っているからか、無理に動こうとはせずに、私をソファに押し倒した。
 胸に手を伸ばしながら、何度も何度も優しいキスを繰り返す。
 唇が触れるだけなのに、それは酷く甘くて、そのたびに私の中の悠生ちゃんを締め付けてしまう。
 今更かも知れないけど――。
「――入れちゃってるんだ」
 思わずこぼれた心の声。
 唐突な言葉に悠生ちゃんは目を瞬かせると頬を緩め。
「ん……千鶴子ん中に、俺の、全部入ってる」
 別に繰り返さなくて良いし!
 改めて言われると破壊力がある。しかも悠生ちゃんに。
「千鶴子、顔真っ赤」
「だ、だって…!」
 ぴくんっと私の中の悠生ちゃんが脈打つ。
 そんな小さな反応すらもが分かって、気恥ずかしさに悠生ちゃんの顔がまともに見られない。
 うわぁぁぁ、もう、どうしよう。

83 :
 顔を背ける私を見下ろした悠生ちゃんは、両手で私の額の髪を上へと撫でつけ、そのまま頬へと手を滑らせる。
 身体も顔も悠生ちゃんで縫い止められて身動き出来ずにいると、悠生ちゃんは少しだけ意地悪な笑みを浮かべた。
「可愛い、千鶴子」
「っ! ゆ…悠生ちゃん……さっきからそんな事ばっかり…」
 しどろもどろに言葉を返す私と、意地悪な笑顔の悠生ちゃん。
 またいつの間にか形成逆転。
 もっとも、最初から悠生ちゃんに逆らえるはずなんて無いんだけど。
「だって、可愛いんだもん、千鶴子」
 私の頬を両手で挟んだまま、悠生ちゃんは私の頬や瞼や鼻先に唇を落とす。
「だから……そういうこと言わないでってば…」
 今の悠生ちゃんに言われたら、胸の辺りがきゅうっとなって、何だか心が締め付けられるみたい。
 でも悠生ちゃんには、そんな私の気持ちなんて分からないみたいで。
「何で?」
「……恥ずかしいから」
 真っ赤になって答えた私は、その胸の苦しさを伝えたくて、悠生ちゃんにしがみついた。
 耳元で悠生ちゃんの笑いを含んだ吐息が聞こえる。
「可愛い、千鶴子」
 うー……また言ってる。
「……俺、千鶴子の前なら男でも良いかも」
 もー、分かったから――って……。
 え……今、なんて……?
 ぼそりと呟かれた言葉。
 その声があんまり低かったもんだから、上手く聞き取る事が出来なくて。
 悠生ちゃんの顔を覗き見ようとした瞬間、悠生ちゃんがぐっと身体の中のモノを動かした。
「やぅ……っ!」
 全部入ったと思ってたソレを、突き動かすような悠生ちゃんの動きに付いて行けず、私は思わず悠生ちゃんにしがみつく。
 痛みはいつの間にか和らいでいて、痺れるような快感が全身を駆けめぐった。
「や、あ、悠生っ、ちゃ…っ」
「千鶴子…まだ痛い?」
 身体の最奥に悠生ちゃんのモノがぶつけられる。
 熱く高ぶったその塊は、私の中を余すところなく擦っていて。
「んっ、ん……へーき、っ」
 いきなりの事で驚いたけれど、私が小さく首を横に振ると、悠生ちゃんは私の頬の横に両手を突いて、上体を起こした。
「辛かったら言えよ」
「うん…っ、あ」
 ずるりと引き抜かれたソレが、再び私の中に入り込む。
 身体の中を擦られるたび私の中で熱い何かがじわじわとわき起こり、繋がった場所から蜜が溢れていく。

84 :
「んぁ…っ! や、ああ、あ!」
 ぐちゅぐちゅといやらしい音に、さっきまでの思考回路は切り離されて、快感だけが身体に残る。
 何かに掴まっていないと置いて行かれそうな錯覚に、私は悠生ちゃんの肩に両手を回した。
「は、千鶴子…っ」
 頭上から悠生ちゃんの声が降る。
 薄く目を開いて見上げると、悠生ちゃんは何とも言えない眼差しを私に向けていた。
「ちづ、こ…っ気持ちいい?」
「う、……っん、い、いい、よぉっ」
 絶え間ない動きは深く、浅く。固くなった悠生ちゃんのモノが角度を変えて私の中を擦り上げる。
「ゆ、きちゃんっ、ゆうき、ちゃ…ああっ!」
 揺さぶられる身体は悠生ちゃんの動きに併せてどんどん高みへ追いやられて行く。
 口からこぼれるのは、甘い悲鳴と悠生ちゃんの名前。
 私が名前を呼ぶたびに、悠生ちゃんは私の身体を軋ませる。
「う、ああっ! やぁ、あ、ゆう、き…」
「千鶴子…っ、すげ、きもちい」
 徐々に激しさを増す悠生ちゃんは、私の頬に両肘を突いて、私の頭を掻き抱いた。
 噛みつくような口付けに、私も舌を絡めて悠生ちゃんにしがみつく。
 擦れる身体も、触れ合う肌も、絡めた舌も、熱くて熱くてとろけそう。
 頭の中がぼーっとして、気持ち良すぎておかしくなる。
「ふ、ん…っ」
 舌を離した悠生ちゃんは、一際強く私の中を突き上げると、ゆっくり身体を起こした。
 緩やかになった律動に目を開けると、悠生ちゃんは一旦私の中から自分のモノを引き抜いた。
 薄らと汗ばむ体を荒い呼吸で上下させる私に手を伸ばし、うつ伏せに向きを変えられる。
 抵抗出来ない私は、悠生ちゃんにされるがまま。高くお尻を持ち上げられて、悠生ちゃんの前にいやらしい部分を晒す格好を取らされた。
「千鶴子、もっと欲しい?」
 私のお尻を両手で掴み大きく広げた悠生ちゃんは、男の人の声で私に問いかける。
 恥ずかしくて、でもまだ足りなくて。さっき感じた悠生ちゃんが気持ち良すぎたせいで、私は何度も小さく首を縦に振った。
「い、れて……悠生ちゃん、の」
「どこに?」
 そんなの、訊かなくても分かってるくせに。
 さっきまで悠生ちゃんのモノを受け入れていた私のあそこは、悠生ちゃんがお尻をこねまわすたびに、ヒクヒクと疼く。
「や……そん、な、言えない…っ」
「言ってくれないと……私、どっちでも良いんだもの」

85 :
 いつもの口調なのに、声は男の人のそれ。経験のある悠生ちゃんらしい意地悪な台詞だ。
「ほら、言って? ……ここ?」
 熱い吐息と共に、ねっとりとした感触が私のお尻の穴を伝う。
「や、違っ…!」
 固くすぼめられた舌先でツンツンとそこを突付かれて、思わず身をすくませる。
 悠生ちゃんと違って、私にそっちの経験はない。
「じゃあ、どこ?」
「……っ! …も、っと…したぁ…っ」
 堪えきれなくて声を上げると、悠生ちゃんはつぅっと舌を滑らせて。
「ここ?」
「ぅあ、はぁっ…! そ、こぉ…っ!」
 ぐちゅりとあそこの入り口をかき回され、私は思わず目の前の肘掛けにあった自分のコートを握り締めた。
「ここで良い?」
 私のあそこを舐め回しながら、悠生ちゃんは中々入れてくれようとはしない。
 もう駄目。足りない。もっと悠生ちゃんが欲しい。
「そこぉ…そこに、悠生ちゃんの、入れてぇ…」
 意地悪で優しい悠生ちゃんは溢れた蜜を吸い上げると、ようやく満足してくれたのか、私のあそこから顔を上げた。
「素直でよろしい」
 舌とは違う熱い塊があてがわれたかと思うと、一気に私の中に押し込まれる。
 走り抜けた快感に声も出ない私は、ソファに顔を埋めて喉の奥で悲鳴を上げた。
「っ、あ…あ、やぅぅっ!」
 さっきとは違う角度で当たる悠生ちゃんのモノは、一気に私を高ぶらせる。
 後ろから攻める悠生ちゃんは背中に覆い被さると、ぴたりと密着して私の胸を鷲掴んだ。
「千鶴子……どっちが気持ち良い?」
 どっちって、何が…。
 問われた意味が分からず喘ぎ声を上げる私の耳元に、悠生ちゃんの吐息が掛かった。
「前と、後ろ。気持ち良い方でイカせてやる」
 緩やかな律動に合わせ、私の口からは声が漏れる。
 けれど、悠生ちゃんの問いかけには、答えられるほどの余裕がない。
「あっ、あ、ん、ああっ」
「ほら、答えて?」
「ひっ!」
 きゅっと乳首を摘まれて、悲鳴にも似た声が上がる。
 こんな状態で答えられるはずがない。
 悠生ちゃんもそれは分かってるはずなのに、律動も手の動きも止まらない。
「ほら。千鶴子」
「あう、んんっ! あ、やぁ…っ!」
 なおも答えを迫る悠生ちゃんは私の上体を起こすと、下から突き上げながら私の太股を開かせる。
 繋がった部分に手を伸ばし、敏感な部分を指で転がす。
「やあぁっ! あ、あああっ!」

86 :
「千鶴子、答えて?」
 胸と、あそこと、体の中と。
 体中の気持ち良い場所を、悠生ちゃんは容赦なく責め立てる。
 ただでさえ後ろから攻められるのは弱いのに、こんな風にされたら気持ち良すぎてんじゃいそう。
「千鶴子」
 耳元の悠生ちゃんの声は僅かに掠れて。掛かる吐息が酷く熱い。
「あ、ふぅ…っ! やあ、あっ、も、らめぇっ!」
「このままイく?」
 ぱくりと耳をくわえられ、悠生ちゃんの声が頭の中に直接響く。
 その言葉に、私はただもう頷くしか出来なくて。
「いく…っ、いかせてぇ…! ゆ、きちゃあ…っ! ああ、ああぁっ!!」
 すがる物が欲しくて悠生ちゃんの腕を掴む。
 悠生ちゃんは私の耳を味わいながら、突き上げる速度を早くした。
「あ! あっ、ああっ、やぅっ!」
 全身を激しく揺さぶられ、力の抜けた体の奥に悠生ちゃんのモノがこつこつと当たる。
 蜜の溢れたあそこからも、くわえられた耳からも、ぐちょぐちょと淫らな音が響いている。
「ゆ…きちゃん…っ、ゆうきちゃ…ぁっ! 」
 甘い悲鳴で悠生ちゃんの名前を呼ぶ私に、悠生ちゃんの舌が差し出される。
 ぬらぬらと光るそれに自分の舌を絡めると、目を細めた悠生ちゃんの瞳が視界に入った。
 真っ黒な瞳は、真っ直ぐに私を捉えていて離さない。
「ぅ、むふぅっ、う、んんぅっ!」
 舌を絡める動きは、いつしか深い口付けになって、どっちの口の中で動いているのか、もう分からない。
 私を突き上げる悠生ちゃんの動きに、体の高ぶりが増していく。
「ふはっ、あ、やぁっ! ゆ、きちゃっ、悠生…ちゃ、やあ、も――っ!」
「良いよ、イって」
 声と同時に最奥を突き上げられ、瞼の裏でチカチカと閃光が瞬いた。
 ぐぷり、と体の奥から蜜がこぼれ、全身から力が抜ける。
 ただ悠生ちゃんと繋がった部分だけが、痙攣するみたいにヒクついていて。ぐっと私の中に押し付けられた悠生ちゃんのモノが一際大きく膨らみ、何かを吐き出すように震える感触が伝わった。
「っ……ふあ…は、あぁぁ…」
 汗ばむ体を悠生ちゃんに預け、私はぐったりと力を無くす。
 悠生ちゃんも肩で荒い呼吸をしながら、後ろから私を抱き締めた。
 しばらくの間、私も悠生ちゃんも黙ったまま、二人してソファに沈み込んでいたけれど。
「やべ…」
 ボソリと呟いた悠生ちゃんが、ふと思い出したかのように、私の中から固さをなくしたソレを引き抜く。

87 :
 私の体の前でその口を縛り、床に捨ててあった袋の上にゴムを捨てると、私の体を抱き直して、ごろりとソファに横になった。
 二人で寝転がるには狭いソファだけど、悠生ちゃんは私の体が落ちないようにしっかりと支えてくれる。
 その腕の力に、私も安心して悠生ちゃんに体を預けた。
「あーあ、やっちゃった……」
 ぎゅうっと抱き締める腕に力を込めて、悠生ちゃんは私の髪に顔を埋める。
 言葉とは裏腹に、何だかすっきりした口振りに、私も小さく笑いをこぼした。
「やっちゃったね」
「まさか、女の子とやる日が来るなんて、思ってなかったわよ。しかもチィ子と」
「私だって悠生ちゃんとするなんて、考えたこともなかったよ」
 本当に、今の今まで一度も、そんな事を考えたことなんてなかった。
 たぶん、他の女友達と同じように、悠生ちゃんのことも『女友達』だって思っていたから。
 でなきゃ三年もルームシェアなんか出来っこない。
「チィ子……」
「ん?」
 甘えるような悠生ちゃんの声音。
 その声に顔を上げて悠生ちゃんを見ると、悠生ちゃんは目を閉じていて。
「……気持ち悪い」
「へ?」
 ……。
 忘れてた!
 悠生ちゃん、限界ぎりぎりまで、ビール飲んでたんだっけ!
「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
 慌ててソファに手を突いて体を起こすと、悠生ちゃんは眉をしかめて小さく唸った。
「お水ぅ」
「わ、分かったから! 頼むから吐いたりしないでよ!?」
 部屋の中とは言え、裸でウロウロするのは抵抗がある。
 私は手近にあったコートを羽織ると、悠生ちゃんのシャツを悠生ちゃんに放り投げ、キッチンに向かった。
 冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、悠生ちゃんの元へ戻る。
 蓋を開けたペットボトルを悠生ちゃんに手渡すと、悠生ちゃんは喉を鳴らして一息に半分ぐらい飲み干した。
「大丈夫?」
「んー……気持ち悪い。寝るわ」
「うん……お風呂は?」
「明日入る」
 ふらふらと体を起こした悠生ちゃんは、覚束ない足取りで自分の部屋に向かう。
 そんな悠生ちゃんを見送って、私は小さく溜息を吐いた。


88 :

 翌朝。
 私が部屋を出ると、先に起きていた悠生ちゃんがリビングで朝食を取っていた。
「オハヨ」
「おはよー。早いね、悠生ちゃん」
 先に起きた方が朝食を作る、とルームシェア当初の決まり通り、テーブルの上には二人分の朝食が並んでいる。
「今日は一限からだもの。食べたら出るから、後片付けお願いね」
「うん」
 昨日の夜と同じように、悠生ちゃんの向かいに腰を下ろして、私も両手を合わせる。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
 いつもと変わらない悠生ちゃんの笑顔。
 昨日の事が嘘みたい。まるで夢か幻か。悠生ちゃんは何もなかったかのように、私の前で朝食を食べている。
 まあ、いきなり意識されても困るっちゃ困るし……私も、その方が気楽に出来る。
「やだ、忘れてた! 今日は朝一で教授に呼び出されてたんだったわ」
 テレビから流れる朝のニュースを見ていると、悠生ちゃんが慌てたみたいにコーヒーカップを置いた。
「ごめんチィ子、私、もう行くわね」
「うん、大丈夫なの?」
「平気よ。行ってきます」
「行ってらっしゃい……」
 ばたばたと忙しない足音で、悠生ちゃんが家を出る。
 悠生ちゃんらしからぬ慌てっぷりに、私は呆然とその後ろ姿を見送った。
 珍しい事もあるもんだ。あの隙を見せない悠生ちゃんが。
 昨日はバイトもあったし、色々と忙しかったのかな。
 のんきにそんな事を考えながら、私は再び朝食を取る。
 だから、私は知らない。
「やべー……顔、まともに見れねぇじゃん」
 玄関の向こうで、悠生ちゃんが顔を真っ赤にして顔を覆っていたことも。
 悠生ちゃんが、私を意識し始めていた事も。
 私は、まだ何も知らなかった。
 *****
以上です
何レス消費するか、もうちょっとちゃんと計算しなきゃ駄目ですね
これだから携帯投下は……
では、スレが活性化する事を祈って

89 :
GJ!!

90 :
GJGJ!
面白かった

91 :
待ってたよ!!!
好きなシチュスレで好みのエチー内容だったから、ぬほど禿げた
本当ありがとう! gjgj!!

92 :
萌えた、GJ!

93 :
GJ!
また気が向いたら来てください!

94 :
GJ!
禿散らかるくらい萌えた。
設定も文章もしっかりまとまってて、とても読みやすかったよ!
本当にありがとう

95 :
すごいおもしろかった、GJ!続き読みたい・・

96 :
保守

97 :
上に参りまーす

98 :
>>56
原作しか見てないけど、デボラ良いよね

99 :
期待保守

100 :
おすすめなスレにそった作品って他にあるかな?
燃料が欲しいんだぜ

101 :
ゲームネタで悪いがPS2のマーメイドプリズムって乙女ゲーに出てくるトーヤってオカマキャラがツボだった


102 :
オカマが出てくる作品って意外と思いつかん

103 :
漫画だが、KEYJACKの神林がツボ

104 :
保守

105 :
保守

106 :
保守ついでに質問
同じオカマでも、がっつり男臭さが残るオカマと見た目が凄く女性的なオカマ
皆ははどっちが好みなんだろうか?
ホモやゲイっつーと、どうしても男の部分が残ると思うんだが

107 :
その中間くらい。
確実に男だとわかるくらいが好みだなー

108 :
自分も外見は男だけど、中身は乙女みたいな感じが好きだな〜

109 :
自分は、見た目完全女性なオカマも好きだ。
端から見るとどう見ても百合にしか見えないのに、実は片方男なんだぜ……って言うギャップがなんか興奮する。

110 :
原作ライアーゲームフクナガって体女?

111 :
アンジェリークのオリヴィエ様がいい
声はテラコヤス

112 :
女子高生とオカマが同居することになる「ノラ猫の恋」って漫画があるよー
でもオカマは女子高生の父親の元恋人とかだからくっつかんのかなー
と、呟きながら保守。

113 :
保守

114 :
珍しいシチュだな

115 :
神よ降りられ賜え
希望あげ

116 :
悠生ちゃんと〜の続きが読みてえ。超ツボ。

117 :
虹の投下もオケ?
10年以上昔の漫画だが

118 :
良いと思うよ。
wktkしてまってる!

119 :
>>117
投下が増えるのは大歓迎なんだぜ
期待して待ってる

120 :
わっふる!わっふる!

121 :
わっふる!わっふる!

122 :
わっふる!わっふる!

123 :
ホモ×女の子の趣味はなかったんだが、いいなGJ!!
しかも書く職人のレベルが高いな〜!

124 :
オカマ×男装少女も続きを読みたい

125 :
保守っとく

126 :
永井豪のバイオレンスジャックという漫画に外見はセクシー美人、
おっぱいもろ出しボンテージ衣装のオカマが美少女をレイプするシーンがある

127 :
わっふるわっふる!

128 :
性嗜好的には至ってヘテロな女装男子と女の子ってのもここでOKなのかな?
可愛い女の子が大好きでそれが高じて自分の見た目も可愛い女の子にしちゃったってタイプの女装男子なんだけど
やっぱり男性もいける口のキャラじゃないとここだとスレ違い?

129 :
是非読みたいです

130 :
初めて来たけど、悠生ちゃんと私よかったなー。他の、新たな作品にも期待

131 :

ここって二次はダメなんだろうか?
オネエ・釜キャラ×作品内女性キャラみたいな感じで
一応作品名と注意は入れるつもりだが
オリジナルじゃなく二次のオネエでカプ物を見たいと思った人も居るのでは?

132 :
>>131
個人的には大丈夫かな。
二次でも投下が増えるならむちゃくちゃ歓迎だ!
wktkして待ってます!

133 :
体は男で心は完全に女、ただし男に興味ないガチレズの女っていうのはどっちになるんだろう

134 :
>>133
オカマ&ホモであら不思議、って考えればありじゃないかと
1が望んだシチュではないかもしれないが、性倒錯した(肉体)男と女の子ってシチュだし

135 :
>>133
スレタイ的にはずれてると思う
ただ個人的にはすごく読みたい
オカマ×男装少女の続きも読みたい、待ってます

136 :
>>135
>>133くらいのだったら、このスレで受け入れていいんじゃないかと
他に受け止めるようなスレもないしね

137 :
まぁとにかくノーマルな男女同士、一般的なBL、百合にさえならなければいいってことさ。
そんなに厳しい定義なんてないと思うし晒したいものがあるなら遠慮なく晒してくれれば自分は嬉しい。過疎ってるしな。

138 :
ほっしゅ
最近人気のある作品内でオネェキャラって居るっけ?

139 :
>>133
とのとはちょっと違うかな
>>138も違うかもだがまりあほりっく
てのがある意味
オカマ(?)と百合女
てのがある
まあもう個別にあるがな
スレチ覚悟で言ってみた

140 :
自分なんか最初に思い付いたオカマキャラか薪売触二だった。
端役過ぎて絡みがないw

141 :
後は少女漫画系で
やぶうち優のGOGOICHIGOの秋姫いちご(一語)
天使じゃない!だかの
きどいずみ・・・
って
これじゃ男の娘で女装男子だorz
オカマにホラレテキマツ・・・

142 :
のだめカンタービレの真澄ちゃんって、好きかも

143 :
男の娘と女で希望

144 :
最近思い出した
週刊ストーリーランドのシャルロットのライバル
笑ゥせえるすまんの離婚倶楽部のオカマ

145 :
グリエ・ヨザック一点押し
オカマじゃなくてキャラだけど。だがそこがいい

146 :
オカマとかゲイも面白いが、バイもいいかも。
どちらかと言うと男が好きだけど、女もいける みたいな

147 :
オカマキャラが実は男前とかそういうの好きだけど
男の側が受とかネコとかそっちの経験ありの場合
エロシーンのプレイの幅が広いのも好みな点だな。

148 :
保守

149 :
Blood+のネイサン好きだったな。
オネエ言葉しゃべってる中、時々出るすげえ低い脅し声、男言葉が効いてた。
体格もかなりよかったし。
原作中なんのフラグも立ってなかったけどネイサンこそ主人公に迫って欲しかったな。

150 :
保守するわよ〜ん

151 :
カラカラマンコスレですか

152 :
不思議遊戯の柳宿が好きだったな
柳宿の男として宣言にはご馳走様だった
公式カプより柳宿とくっついてほしかったのは長年の秘密だ

153 :
ミスフルの紅印
剣菱の女房役の立場を利用して妹の凪さんに近づきエロいことを…

154 :
>152
よう、俺
柳宿は未だにベスト3に入るくらい好きなキャラ
おっとこ前な上にかわいいよ柳宿
でも美朱とのエロ妄想となるとどうも無理だ
柳宿にはもっといい娘がいるはずだ

155 :
サモンナイト3ではスカーレル×アティ先生がイチオシ

156 :
アンジェリークでオリヴィエに
「うふふ、もうここから出さない…って言ったらどうする?」
と言われて萌えた人ノシ
密室で主人公にネイルアート施した後、
「…だーめ、乾くまで物に触っちゃ。あたしの芸術品を台なしにしたら、お仕置きよ?」
と釘をさした後、制服のブラウスのボタンを外して可愛いレースのついた白いブラの下から手を差し入れたり、
スカートの下から太ももを撫で上げた後、下着の上からつまんだりさすったりと
なすがままの主人公にあれこれ悪戯しまくった後、何度もイかされて息も絶え絶えの主人公に
「はい、よく頑張りました。ご褒美になんでもしてあげちゃうけど、どうしてほしい?」
と意地悪く問いかける姐さん(♂)
というシチュをうっかり想像したんだ。萌えても仕方ないだろう。

157 :
>>156
ちょおまwww
いいからさっさとその妄想をSS化して投下して下さいお願いします

158 :
>>155
スカーレルとアティのEDは良かった
あのくっつきそうでくっつかないけど少しだけくっつくみたいなのが良い

159 :
俺の最初はシュラトだったなあ。
レイガがほんのりラクシュを気にかけてる描写が好きだった。

160 :
カマ系キャラで初めて良いなと思ったのは、まさかの快感フレーズだな
今まで同性みたいな気のおけない関係から、実は「男として」愛してる。な感じがイイ
ゲイキャラでいくと、楽園の魔女たちのフレイ少佐だが…ちょっと違うか?

161 :
メゾン・ド・ヒミコ良かった
ゲイ役のオダギリジョーがエロすぎた

162 :
良作の教え場になっとるww
しかし、やはり燃料になるゲイ・カマキャラは少女・女性向けが多いな
少年・青年向けはこういうキャラは、ギャグか信念持ったカッコイイカマが多いからかな
年の差スレにも通ずるがこういうのは、エロも大事だけど、過程も大切だよなぁ
今まで投下されてたSSGJ!!

163 :
>>162
ギャグかつかっこいいオカマで思い出したのはボン・クレーなんだけど
絡める女キャラが思いつかないわ

164 :
>>163
>>162だが、自分もボン・クレー思い出しながら書いたww
あとヨクサルキャラとかw
やっぱりああいうキャラはくっついたらなんか違う気がするしな
いや、女キャラとくっついたらたぎるがww

165 :
お久しぶりです、悠生ちゃんと私の作者です。
続編を希望して頂けたのは嬉しいですが、ネタに詰まっているうちに、ゲイ×おにゃのこのが先に出来上がりそうなので投下に参りました。
相変わらず捻りのないタイトルな上、またも(恐らく)前後編ですが、スレ活性化を願って
・ゲイ×女
・今回はエロ無し
・NGワードはタイトル「長谷君と私」かトリで
以下投下
*****
「別れよう」
 聞き覚えのある声が聞こえたのは、バイトの休憩時間の事だった。
 ランチの時間もすぎ、客足も減った午後二時半。そこそこ大きなカフェバーの、厨房から裏口を抜けた路地裏で聞こえた声に、私は思わず煙草を取り出す手を止めた。
 もしかして……いや、もしかしなくても修羅場ってヤツですか?
 たぶんあの声は、同じバイトの長谷将吾君だ。
 長谷君はモテるタイプの男子だ。たぶん。そこそこ。恐らく。
 わずか150センチの私・遠山梓と比べ、長谷君は180を越える長身。顔かたちは純和風。穏やかな物腰はいわゆる草食系男子に分類されるから、そういうのが好みの人には受けが良い。
 けど、特筆すべきはその声だ。
 甘いマスクにはやや物足りないけど、声の甘さは絶品。声優オタクの友達なんかは、長谷君の『声の』ファンだったりするぐらいだ。
 路地裏の、さらに角を曲がった路地裏々から聞こえるにも関わらず、相手が誰なのか聞き分けられたのもそういう訳だ。
 特別仲が良いって訳じゃないけど、不仲ってことも無い、私とは至って普通のバイト仲間。
 そんな相手のこんな場面を盗み聞きする勇気は私にはない。
 反射的に身をすくませ、そろりそろりと忍び足で店の中に戻ろうとする私。
 けれどその足を止めたのは、長谷君のお相手の声だった。
「やっぱり……その話だろうと思った」
 ……をや?
 いま……聞こえたのって……。
 何となく、嫌な汗が背中を伝う。
 ――振り返るな。店の中に戻れ。今ならまだ引き返せる――
 頭の中でそんな言葉が聞こえたけれど、同時に浮かんだ疑問の方が、私の思考回路を埋め尽くした。
「ごめん」
「謝るな……こっちも悪かったんだ」
 をやをや…?

166 :
 想像とは違って、円満に別れ話は進んでるらしい。
 いやしかし、他人様の別れ話を覗き見するなんて、良識ある大人のする事じゃない。
 けれど、私の良識はどうやらかなりヘボかったみたいだ。
 店の中に向かっていたはずの足はUターン。息をしながら、そっと顔を覗かせると、果たして。
「和樹さんは……悪くないよ」
「いや……悪い、俺から切り出すのが筋だったのにな」
 私の目に映るのは長谷君と、お相手さんの背中。
 ただしその身長は、長谷君と同じぐらいか少し高いほど。肩幅だけをとっても、間違っても女性には見えない。むしろ見えた方が怖い。
 長谷君は男。……お相手さんも男。
 てえ事は……。
「俺が浮気したのは事実だし」
「いや……」
「殴ってくれても良かったんだぜ?」
「出来ないよ、そんな事」
「……そうか」
 うーん……長谷君ってば、何とも謙虚だ。
 別れ話の原因は、お相手さん――和樹さん? だっけ?――の浮気らしい。
 そんな相手は殴り倒して丸めて海に流すぐらいの事は、してやっても良いと私なんかは思うんだけど、長谷君は穏やかさんだからなあ。
 じゃなくて!
「ごめん……今までありがとう」
「俺も……和樹さんと一緒に居られて楽しかったよ。……ありがとう」
 円満に話は終わろうとしているけれど、私の頭は混乱しっぱなし。
 これは……あれか? やっぱホモ……いや、ゲイ? 同士のうにゃうにゃした話……なのか?
「バイト、頑張れよ」
 ポンと長谷君の肩を叩いた和樹さんに、長谷君は小さく頷きを返す。
 そのまま、向こうの表通りに向かう彼の背中を見送って、長谷君は小さな溜め息を吐いた。
 その表情は寂しそうで、切なさに満ちていて。けれど、確かに今、二人の関係が終わったと認識するには充分だった。
 目の前で繰り広げられた光景――いや、半分は私が勝手に覗き見たんだけど――に、私は我知れず溜め息を漏らした。
 他人様のこう言う場面ってドラマでしか見た事無かったけど……見てる方も切ないよなぁ。
 私も何人かと付き合ったことはあるけど、今までこなした別れ話って、大抵は修羅場だったし。今じゃ笑い話に出来るけど、高校の時なんか、逆ギレされて、その事に逆ギレ仕返した私が、真冬の公園の噴水に相手を突き落とした事もある。
 あれは壮絶だったなぁ……いやはや、若いって怖い。

167 :
 などと、懐かしい思い出に浸っていたのが悪かった。
 私がバイトの休憩中って事は、長谷君も同じくって事で。
「……遠山?」
「はい? …………あ」
 店に戻ろうとした長谷君が、私の姿に気付いたのも当然の成り行きだった。
 *****
 その場は笑って誤魔化したものの、そんなもんで終わるはずもなく。
 長谷君との気まずい空気の中、バイトを終えた私が店を出ると、先に出ていたはずの長谷君が、昼間鉢合わせした路地裏で待っていた。
「ちょっと……良い?」
「あ〜……うん」
 もちろん、断れる訳がない。非は全面的にこちらにある。
 あんな場所で、あんな時間に別れ話をしていた方も悪いと言えば悪いけど、気付いた時点で立ち去らなかった私の方が悪いのは、誰が見ても明らかだ。
 長谷君は怒っている様子はなかったけれど、その代わり、しょんぼりと肩を落として私の斜め一歩前を歩いていく。
 恋人――と思われる人――と別れ話をした上に、その現場を他人に見られたんだから無理もない。
「えーっと……お腹、空いてる?」
 居心地が悪い私が声を掛けると、長谷君は肩越しに私を振り返った。
「立ち話って訳にも……いかない……よね?」
 うう……ごめんね長谷君。そんな情けない顔をさせる私が悪かった。
 捨てられた子犬のような眼差しに、自然と語尾が弱くなる。
 捨て犬な長谷君は歩みを止めると、ショルダーバッグを掛け直しながら思案含みに眉を寄せた。
「そうだね……。遠山、酒は飲めたっけ?」
「ちょっとなら」
「じゃあ、こっち」
 時刻は夕方。お酒を出す店でも、早い所ならもう開いてる時間だ。
 頷いた私を見て長谷君は駅の方へと足を進める。
 その歩みが、背の低い私を気遣ってゆっくりだったような気がしたけれど。たぶん、気のせいだ。
 駅ビルの中のチェーン店の居酒屋は、さすがにまだ早い時間とあって他の客の姿は無かった。
 座敷に案内された私達は、おしぼりを受け取ると、それぞれドリンクを注文する。長谷君はビール、私は梅酒。
 ドリンクが運ばれ、フードの注文を終えると、長谷君はジョッキを手に私に視線を向けた。
「お疲れ」
「あ……お疲れ」
 カチンとガラスのぶつかる音。
 文字通り梅酒を舐める程度に口にする私とは対照的に、長谷君は良い飲みっぷりで、一息に三分の一を空にする。

168 :
 思えば長谷君と二人で飲みに行くことなんてなかったし、バイト仲間との飲み会でも長谷君とは一緒になる機会が少なかった。
 もしかして長谷君って、結構いけるクチなんだろうか?
 何となくそんな事を考える私を見やり、長谷君は付きだしに箸を伸ばしながら口を開いた。
「遠山」
「あ、うん?」
「俺に訊きたいことがあるんじゃない?」
 え?
 まさか、そう来るとは思わなかった。
 謝れと言われれば――言われなくても――そうするつもりだったし、内緒にしろと言われれば――やっぱり言われなくても――そうするつもりだった。
 けど、質問するのを許されるなんて、私には予想の範囲外。
 「あ〜」とか「う〜」とか逡巡する私に時々視線をやりながら、長谷君は付きだしを口に入れた。
「えーっと……まず、ごめん」
 とにもかくにも、謝らない事には居心地が悪い。
 そう結論付けて頭を下げると、長谷君はもぐもぐと口を動かしながら箸を置いた。
「覗き見するつもりは無かったんだけど……その……ね」
「いいよ、それは。俺の不注意ってのもあったし。他人のあれやこれやに興味が湧くのは不思議じゃない。それが女性なら尚更ね」
 苦笑混じりにビールを飲む長谷君。その口調はいつもとはちょっと違って皮肉っぽい。
「それに、たぶん分かっただろうけど……相手が相手だったからじゃない?」
 ご名答。
 もしお相手が女の子だったら、私だって、ここまで興味が湧く事も混乱する事もなかった。
 一度は店に戻ろうと思ったのだ。それを踏みとどまらせた挙げ句、方向転換させたのは、お相手さんが男性だと気付いたからに他ならない。
 申し訳なくて頷くことでしか返事が出来ない私を見て、長谷君は苦笑混じりに頭を掻いた。
「隠すつもりは無いからさ。むしろ、遠山だったら知られても平気だと思ってる。この際だから、何でも訊いてよ」
「それは……信頼してるって事?」
「信頼と言えば信頼かな。少なくとも遠山は嘘は吐けないと思ってるから。このまま疑問を残しても、俺も遠山も居心地が悪いだけだろ? だったらいっそ、打ち明けた方がお互いのためだと思わない?」
 成る程。悔しいけれど、確かにそうだ。
 このままうやむやにしてしまうには、私にはあまりにも荷が重い。
 たかがバイト仲間、されどバイト仲間。長谷君は私の性格を理解してらっしゃるようで。
 だったらこっちも遠慮なんてすることないか。

169 :
「じゃあ訊くけど、あの人って誰?」
 景気付けに梅酒を一口飲んだ私は、あぐらに座り直すと、まずは小さな疑問から口にした。
「和樹さんは、俺の元恋人。東通りのバーの店長さんだよ」
「へえ。だからか」
「何が?」
「平日の昼間に私服で、別れ話に応じられる余裕がある大人だったから。バーの店長さんなら納得だ」
 ふむふむと頷く私に、長谷君は一瞬目を丸くして、それからくつくつと喉の奥を震わせた。
「そんな事まで気にしてたんだ」
「だって……普通の人だったら、私服はともかく別れ話に応じるには妙な時間じゃない」
 偏見かも知れないけど。
 そう言う話は仕事の合間にするもんじゃなく、もっと余裕を持ってするもんだと思う。
 枝豆を運んできた店員さんに長谷君はお代わりを注文して、少し首を傾けた。
「遠山って変な所で細かいね」
 それは褒め言葉じゃないでしょうに。
 面白いと言いたげな長谷君の表情が小憎らしい。
 この姿だけを見れば、今日、つい数時間前に、彼が恋人と別れたなんて誰も思わないに違いない。
「気のせいだよ。しかし相手の浮気が原因で別れ話って……長谷君も大変だったね」
 その相手が男かどうかも、気になるところではあるけれど。さすがにそこまで訊くのは無粋ってもんだ。
「まあ……ね。和樹さんは仕事柄顔も広いし、いずれは別れると思ってたけど」
「でも、付き合ってる間はそうじゃなかったんでしょ?」
「そりゃあ。遠山だって、別れるのが前提で誰かと付き合ったりしないだろ?」
「当たり前でしょ」
「うん。だから、俺もね……和樹さんが浮気する前後ぐらいからかな……駄目かも知れないって思い始めたんだ」
「そうなんだ」
 枝豆とビール。親父臭い品を目の前にしながらも、長谷君の表情はどこか明るい。
「だから、別れられて逆にすっきりしたよ。あの人、優しいところがあるからさ。俺から言わなきゃどうなってたか」
 優しい人は、そもそも浮気なんてしないと思う。たぶん。
 相手にほだされて浮気をするのは優しさなんかじゃなく、恋人に対する不満をオブラートに包んでひた隠しにして、優しさを言い訳に誤魔化してるだけ。
 とは言え、そんな事を言ったところで長谷君には慰めにもならないだろう。
 梅酒と一緒に言葉を飲み込み、私は箸を割った。
「長谷君って、優しい人が好みなの?」
「優しいって言うか……暖かい人? 俺が冷たい人間だから」

170 :
「そうかな……?」
 あまりに似合わない単語に、私は付きだしを食べる手を止めた。
 人当たりが良くて、朗らかで穏やか。それが長谷君に対する印象だ。少なくともバイト仲間はそう思ってると思う。
 決して「冷たい人間」なんて評価は上がらない。それが長谷君だと思ってたけど。
「仕事じゃ、当たり障りのない所でしか接さないからさ。その方が余計な摩擦もないし、お互い気持ち良く仕事が出来る。接客業なんだから客に優しいのも当然だしね」
「ふーん」
 肩をすくめた長谷君は、ビールを飲み干すとジョッキを床に置いた。
 冷たいと言うよりは合理的なのかな。どちらにせよ、さっきから感じていた「長谷君らしからぬ皮肉さ」は、あながち間違いじゃないのかも知れない。
「じゃあ長谷君は、本当は黒いんだ」
「黒とはいかなくても灰色ぐらいにはね。人間だし、真っ白じゃないのは確かだよ」
 そう言って二杯目のビールを口に運ぶ。
 結構ペースが早い。
「じゃあ次。長谷君ってゲイ?」
 これこそ本題。
 一番の疑問を口にすると、長谷君は楽しそうに目を細めた。
「むしろバイ」
「……え?」
 にっこりと笑うその顔は、営業スマイルなんでしょうか?
 意外な返答に思わず凍り付いた私を見やり、長谷君は困ったように眉を下げた。
「和樹さんと付き合う前は、女の子と付き合ってたよ。その前は男。その前は女。奇しくも交互にね」
「……え……っとお?」
 ちょっと待って。頭の整理が追い付かないから!
 頭と同じく言語中枢も混乱の極みで、私はぱくぱくと金魚のごとく口を動かす。
 てことはアレですか? 男も女も、どちらも残さずイタダキマス……?
「……両刀?」
「そう、両刀」
 ぽつりと、何とか口に出来た言葉に、長谷君はあっさりと頷いた。
 それを見た瞬間、私は何故か力が抜けて、大きな溜め息とともに机に突っ伏した。
「遠山?」
「……びっくりした」
 そりゃあ、人の好みは千差万別、十人十色。異性が好きな人も居れば、同性が好きな人だっている。長谷君はたまたま、どちらも許容範囲だって事なんだろう。
 ただ、頭では理解していても、今までそんな人が周りに居なかっただけに、私の中ではかなりの衝撃。
「ごめん。けど、ゲイってのは違うからさ。今更隠す必要もないかなあ、って」
「あ〜、うん。分かる。だいじょぶ」
 よろよろと顔を起こすと、苦笑混じりの長谷君と目が合った。

171 :
 人当たりが良くて、穏やかな長谷君。けどその本質は合理的な思考回路の持ち主でバイセクシャル。
 これ……他の人に言ったところで、信じてもらえるとは思えないな。
「ごめん。ゲイってだけでも大概なのに、バイだもんな。……そりゃあ驚くか」
 独り言のように呟きながら、山盛りの野菜サラダを小皿に取り分けた長谷君は、それを私の前に差し出した。
「それって……昔から?」
 ふうっと呼吸を整えて、差し出された野菜サラダに箸を伸ばす。
 長谷君は自分の小皿にも野菜サラダを取り分けながら、小さな頷きで肯定した。
「たぶんね。昔は女の子だけだって自分に言い聞かせてたんだけど。一回男と付き合ってからは、開き直る事にしたよ。好きになったら、男も女も関係ない。むしろどちらも好きになれるって人より得なんじゃないの? ってね」
「ああ、そう言う考え方なんだ」
 合理的。うん、長谷君は合理的だ。間違いない。
 もしゃもしゃと野菜サラダを食べながら納得すると、長谷君は自分も野菜サラダを食べながら小さな笑みを浮かべた。
「その代わり、別れも人より多いかもだけど」
 ……ああ、そうか。別に吹っ切れてる訳じゃなかったんだ。
 結果的に長谷君から別れを切り出しただけで、長谷君はまだお相手さんの事が好きなんだ。
 何でもない風にも見えるけど、嫌いになって別れたのなら、こんな寂しそうに笑う訳がない。
 今更ながらに申し訳なくて、私は長谷君から視線を外した。
「……ごめんね?」
「何が?」
「いや、何か……励ますならまだしも、こう……掘り返すようなことばっか訊いて」
「変な遠山。何でも訊いてって言ったのは俺だよ?」
「そうなんだけど……」
 長谷君は穏やかに笑うけれど、私はもにゃもにゃと言葉を濁すばかりで彼に視線を合わせられない。
 我ながら、ちょっとデリカシーが無さ過ぎたかも知れない。友達と呼ぶには少し距離のある長谷君に対して、根掘り葉掘り訊くにしても、もうちょっと気を使うべきだった。
「気にしないで……って言ったところで、気にするのが遠山か」
 箸を進めるスピードが落ちた私を見て、長谷君は苦笑混じりの溜め息を一つ。
 私に向けられたと言うよりは、独り言めいたその言葉は、何かを考えるような響きを持っていた。
「じゃあ、一つだけ頼みがあるんだけど。それでチャラになるなら、遠山も負い目を感じなくてすむかな?」
「あ、うん」

172 :
 励ますことも出来ない私に、何を出来るのか分からないけれど、それで長谷君の寂しさが紛れるなら。
 頷いた私に長谷君は申し訳なさそうに眉を下げた表情で、改まるように箸を置いた。
「今日は一日付き合って欲しい。本音を言えば、一人で居るのが辛いんだ」
 真っ直ぐに私を見据え、長谷君はぽつりと呟いた。
「どうしても、思い出しちゃうからさ……和樹さんのこと。忘れるとまではいかなくても、遠山が居れば、落ち込まなくてすむような気がする」
「……ん、分かった」
 残念ながら、私はそこまでお酒が強くない。その代わり、酔いつぶれることもないから、いつまでも長谷君に付き合えるのは間違いない。
 それで長谷君の気が紛れるって言うなら、今日はとことんまで付き合ってやろうじゃない。
「じゃあ今日は飲もう! って言うか、長谷君は飲もう!」
 励ますつもりで声を掛けると、長谷君は少しだけ驚いたように目を見開いて。ぱちぱちと瞬きを繰り返したあと、くっと小さな笑いを漏らした。
「ありがと。もちろん遠山のおごりだよな?」
「う……し、食事代ぐらいなら」
 念を押すような物言いに、思わず口ごもってしまう。長谷君がどれだけ飲めるのか分からないけど、今のペースでいくのなら、正直ちょっときつい。
 またも口ごもった私に、ジョッキを手にした長谷君は、今度は声をあげて笑った。
「冗談。付き合わせてるのはこっちだよ。せいぜい割り勘が良いところだろ」
「うう……重ね重ね申し訳ない」
「気にするなって。付き合ってくれてるだけで、こっちはありがたいんだから」
 今の長谷君には誰かが側に居るほうが良いらしい。そして出来るなら、事情を知っていて愚痴を溢せる相手。
 それぐらいなら――例え覗き見が発端でも――私にも出来る。
 そんな軽い気持ちで承諾したことが、後々にまで響くなんて、この時の私には考えることも出来なかった。
*****
今回はここまで
またスレ数の計算間違えた…orz
続きは来週中に投下しますのでノシ

173 :
これは良作の予感
後編が待ち遠しい

174 :
わーGJ!!GJ!!
久しぶりの投下でうれしい!
こういう感じ好きだ!続き楽しみにしてます。

175 :
Good Job!!!
続き楽しみに待ってる!

176 :
新作ktkr!
あなたの作品のファンです・・!続き楽しみ!

177 :
注意書きにゲイと書いておきながら、バイの間違いでした…
もう、何か色々とごめんなさい
気を取り直して、推敲が済んだ物から投下
気に入らなければスルーでお願いします
・バイ×女
・アナル表現あり
・本番無し
・NGワードはタイトル「長谷君と私」かトリで
以下投下
*****
「遠山、大丈夫?」
 ふらふらと覚束ない足取りの私の頭上から声が降る。
 答える代わりに頷いてみせたものの、かくんっと思っていた以上に私の頭は縦に振れて、その弾みで私は長谷君の腕に頭をぶつけた。
「う? ……ごめん?」
「いいけど。遠山、ほんっと酒弱かったんだな」
 30センチの身長差のある私を見下ろす長谷君の顔は、穏やかな苦笑に満ちている。
 店に入ったのは夕方なのに、今はもう終電も間近な時間帯。
 あれから色々と濃い話――実は長谷君はタチもネコもいける、とか。初めて男にホられた時は痛みで二日ほど引きこもった、とか――で盛り上がり、気付けばこんな時間になっていた。
 普段ならお酒は二杯で止める私だけど、今日は調子に乗りすぎた。
 長谷君に付き合ったからってのもあるし、何となく理性を保っていたくなかったってのもある。話が濃かっただけに尚更。
 だからついつい、四、五杯も飲んじゃったんだけど。
 う〜……地面がゆらゆらしてる…。
「帰れそうか?」
 分かりません。
 何せこんなに飲んだのは久し振り。今ならまだ電車に間に合うだろうけど、寝ちゃう可能性は限りなく高い。
 乗り過ごして終点まで行っちゃったら、ここからタクシーに乗る、その倍以上のタクシー代が掛かる。元々、ここから家に帰るタクシー代すら持ち合わせて無いんだけどね。
「分かんない……」
 長谷君の腕を掴んで首を左右に振る。頭は重くて持ち上がらないから、長谷君の表情は見えない。
「分かんないって……」
 参ったな……と長谷君が呟く。
 ええ、参りました。まさか自分でも、こんなことになるとは思ってませんでした。反省。
 幸いなのは、酔うと吐き気より眠気が勝つタチってことぐらい。
「遠山、歩ける?」
 立っていても体の揺れる酔っぱらいの私に、長谷君は腕を貸したまま、体を屈めて私の顔をのぞき込んだ。
 私よりも遙かに飲んでるはずなのに、その顔はいつもと変わらない。不公平だ。

178 :
「う〜……」
 たぶん、と言いたかったけど、言葉よりも声が先に出る。
 それで意味が伝わったとも思えないけど、長谷君は苦笑したまま、もう片方の手で私の頭をぽんぽんと叩いた。
「もうちょっとだけ頑張れ」
「うい……」
 励まされたのか、呆れられてるのか。かくんっと頭を縦に揺らした私を見て、長谷君は私に腕を貸しながら、ゆっくりとした歩調で歩き出した。
 眠い。
 暑い。
 蒸し暑い夏の夜に、お酒の回った体はぽかぽかを通り越していて、その暑さにくらくらする。
 ああカミサマ、どうして人は調子に乗ったりするんでしょう。
 今日はこんなに飲むつもりは無かったのに。
 明日のバイトが遅番だったことすらも、今の私にはカミサマの意地悪としか思えません。
 早番だったら、こんなに飲み過ぎることもなかったのに。
 ああカミサマ、ひどいです。
「遠山、重い」
「うー……」
 殆ど長谷君にしがみつきながら、よろよろと歩く酔っぱらいが約一名。
 どこをどう歩いているのかすら分からないけど、今の私には長谷君の腕だけが頼みの綱。はぐれないようにと必にしがみついている私に、長谷君は変わらず優しかった。
 もっとも、内心じゃ呆れかえってるのかも知れないけど。
「ほら、着いたよ」
 遠かったのか近かったのか、気付けば私達の前にはアパートの扉が一枚。アパートと言うより、ハイツ? なのかな。違いは良く分かんないけど。
 長谷君が鍵を開けて中に入ると、換気のされていないむわっとした空気が肌に触れた。
「遠山」
「うー」
 駄目だこりゃ。我ながら、もういっぱいいっぱい。
 鞄を床に捨て、奥の部屋に通されると、長谷君の承諾も得ないまま、私はベッドに倒れ込んだ。
「水飲む?」
「……のむ」
 ああ、タオルケットが気持ち良い。
 ぎゅうっと抱きしめると、洗濯物の匂いが鼻の奥でくすぐったい。
 さっきまで肌にまとわりついていた空気は、長谷君がクーラーを入れてくれたのか、ひんやりとした心地よさに変わっていた。
「犬みたい」
 聞こえた声に目を開けると、水の入ったコップを持った長谷君が、私を見下ろして笑っていた。
「はい」
「ん」
 重い体を無理矢理起こし、コップの水を一息に飲み干す。体にしみ入る冷たさがまた気持ち良い。
「あんがと」
 ぐいっとコップを突き返して、私はまたタオルケットを抱きしめて横になる。

179 :
 おかしい。酔いつぶれるつもりなんて無かったはずなのに。何で私はここに居るんだ? と言うか、そもそもここは何処?
 ぐるぐる回る頭で考えるけど、耳の奥で心臓はどくどく鳴ってるし、体の暑さも収まらない。
 中途半端に考えても分かんないことだらけだし、タオルケットは良い匂いだし、もういいや。
 手足を縮めてタオルケットを抱きしめる私の頭に、ふわりと何かが触れた。
「無防備だね」
 ふわふわと頭が撫でられる。それがひどく気持ち良い。
「遠山って、いつもそうなの?」
 いつも? いつもって何だろう。
 考えてみるけど、長谷君の問いかけの意味が分からなくて、取りあえず首を左右に振る。
 私の頭を撫でる長谷君は、少し笑いを溢していたみたいだけど。
「何だかなぁ……」
「うん……?」
「何でもない。ほら、風邪ひくよ?」
 抱きしめていたタオルケットは腕の中から体の上に移動する。クーラーの風が直接当たってたから、こっちのほうが気持ち良い。
 鼻先まですっぽりとタオルケットにくるまると、お日様と洗剤と長谷君の匂いがして、何だか幸せな気分になる。
「……遠山」
 長谷君の声が聞こえる。ふわふわと、でもしっかりと私の頭を撫でてくれる手が嬉しい。大人になると、撫でられることなんて滅多にないから。
 嬉しいのと気持ち良いのとで思わず笑みがこぼれる。
 けれど、その手はしばらくすると私から離れ、長谷君の気配も遠くなった。残念。
 酔うと自分の気持ちに正直になるって言うけど本当だ。もっと撫でて欲しい。傍にいて欲しい。
 タオルケットの心地よさも、クーラーの気持ちよさも変わらないのに、長谷君の手が無くなっただけで気持ちが萎んでいく。
 ぼんやりと目を開けると、部屋には私一人が残されていて、やがて聞こえたシャワーの音に、私は体を縮こめて目を閉じた。
 少し眠っていたのかも知れない。
 ギシとほんの小さくベッドが揺れて、その感覚に意識だけが浮上する。瞼は重くて持ち上がらないけど、長谷君が戻ってきたのが分かる。
 わずかに感じる人の熱に、すり寄るように首を伸ばす。
 頭頂部から後頭部へ。撫でられる感触に頬が緩む。もっと撫でてとねだる気持ちのまま、私はタオルケットごと長谷君の方にすり寄った。
「ほんと、犬みたい」
 私に向けたのか、それとも独り言なのか。長谷君の呟く声音は優しい。

180 :
 確かに、撫でるのをねだるなんて犬みたい。私の実家にも犬が居るけど、その子も私を前にすると「撫でて」と言わんばかりに背中を向けて座り込むし。
 でも、それもこれも気持ち良いから。私も、犬も、たぶん気持ちに変わりはない。
「……ん〜」
 不意に長谷君の立ち上がる気配がして、私は思わず腕を伸ばして長谷君の手にしがみついた。
 さっきみたいに一人になるのは嫌だ。
 けれど、長谷君は少し腰を浮かしただけで、瞼の裏で部屋の灯りが落とされたのが分かった。
 私が手に――むしろ腕に――しがみついたからか、長谷君は少しだけ戸惑ったようだけど。薄く目を開けると、オレンジ色の間接照明を背中にした長谷君は、困ったように笑っていた。
「何で遠山がそんな顔してんの?」
「……うん?」
「寂しいって、そんな顔してる」
 そうかな。
 そうかも知れない。
 恋人と別れた長谷君だって寂しいかも知れないけど、頭を撫でてもらえない私だって寂しい。
 答えるのも億劫で、ぎゅうっと長谷君の腕にしがみつくと、長谷君は小さな笑いをこぼして私の隣に横になった。
「ほら、もう寝な」
 タオルケット越しに私の体を抱きしめて、ぽんぽんと背中をあやすみたいに叩く長谷君。30センチの身長差で、私の体はすっぽりと長谷君の腕の中。
 ああ、やっぱり気持ち良い。
 抱きしめる腕も、あやす背中も、甘い声も。さっき感じた寂しさを吹き飛ばしてくれるみたいだ。
 けど、何かが足りない。
「長谷君……?」
「何?」
 抱きしめられた腕の中、もぞもぞと動いてタオルケットを持ち上げる。それをばさりと長谷君に掛けると、私は長谷君の背中に腕を回して抱きついた。
「……遠山?」
 少しだけ、困惑の混じった長谷君の声。
 でもそんなの知らない。
 足りなかったのは私の腕の中。自分の体を抱きしめるより、こうして長谷君を抱きしめてる方が、さっきより何倍も気持ち良い。
 胸元に顔をすり寄せると、長谷君は私の体に腕を回して、また、優しく頭を撫でてくれた。
「駄目だよ、遠山。そんな無防備になっちゃ」
 ふわふわ、ふわふわ。
 いつまでも冷めないアルコールと、石鹸混じりの長谷君の匂いと、優しい声に頭の中がふわふわする。
 だから長谷君の言葉の意味が分からなくて、答える代わりに私はぎゅうっと長谷君にしがみついた。

181 :
 クーラーが利いているせいか、長谷君の体温が気持ち良い。
「遠山」
 甘えるように抱きつく私に、長谷君は私の頭を撫でるのを止めて。
 ぐいっと腰を抱き寄せられたかと思うと、ふんわりとした柔らかい物が唇に触れた。
 あ……気持ち良い。
 二回。三回。
 柔らかな感触を受けて瞼を持ち上げると、いつもは見上げてばかりの長谷君の顔が間近にあった。
 優しい笑みを浮かべた長谷君は、私に顔を近づけると、さっき感じた柔らかな物を私の唇に触れさせる。
 ああ、そうか。キスしたんだ、長谷君。
 眠気とアルコールでぼんやりと考えているうちにも、長谷君は何度も私の唇にキスをする。
 頭を撫でられるより、抱きしめられるより、触れるだけの唇が気持ち良い。
 もっと気持ち良くなりたくて、長谷君の首に腕を回すと、私は自分から長谷君にキスをせがんだ。
 唇を薄く開いて舌を差し出す。長谷君の唇はそれを受け入れると、ちゅっと小さな音を立てて私の舌を吸い上げた。
 熱く濡れた舌が絡まって、舐められるたびに頭の中が白くなる。
 腰に回されていた手は優しく、けれど時折強く、ミニスカートの上から私のお尻を揉みしだく。
「ふ……ん……っ」
 舌を伸ばして絡め合う。緩慢だけど予測出来ないその動きが、気持ち良くて満たされる。
 ぬるぬるとした唾液がそそぎ込まれて一瞬息苦しくなったけど、喉を鳴らして飲み干すと、今度は長谷君の舌が私の口の中に潜り込んできた。
 上顎を舐め上げられると、反射的に体が震える。その反応に気付いたのか、長谷君の舌は執拗に私の上顎を舐めていく。
「んっ…ふう……んんっ」
 喉の奥からわき上がる声は、子猫の鳴き声にも似ていて。
 お尻を揉まれ広げるように刺激されると、私のあそこからぬるりと熱い蜜が漏れ出たのが分かった。
「遠山……」
 唇を離した長谷君の声に目を開けると、長谷君は困ったような顔で私を見つめていた。
「もう、おしまい。これ以上は駄目だよ」
 駄目って……。
 最後にぎゅうっと私の体を抱きしめた長谷君は、またあやすように私の背中をぽんぽんと叩いた。
 せっかく気持ち良かったのに。
 頭を撫でられるのも、抱きしめられるのも気持ち良い。けど、それ以上に長谷君とのキスは気持ち良い。
 今もこうして、私の体を抱きしめてくれているのに。キスの気持ち良さのあとじゃ、全然物足りない。
「やぁ……」
「遠山……?」

182 :
「もっと……ちゅーして」
 あのふわふわした感覚が欲しい。
 酔いのせいだとしても、我ながら無茶な要求をしている自覚はある。
 眠いし、酔いが回ってくらくらもしてる。けど、もっともっと気持ち良くなりたい。
 本能に火が付いたとでも言おうか。舌っ足らずに伝えると、私は長谷君の首にすがりついて、その唇に自分の唇を寄せた。
「遠山……」
 その唇が触れるか触れないか。長谷君はぽつりと私の名前を呟いたけれど、私のキスを拒むこと無く受け入れると、背中に回した手を腰の方へと滑らせた。
「んっ……やっちゃうよ? 良いの……?」
 私のキスを受け入れながら、それでもまだ躊躇うように、私の腰を優しく撫でる。
 その躊躇いがもどかしくて、私は長谷君に口付けながら、自分から体をすり寄せた。
 それが合図になったのか。
 長谷君の手はミニスカートの中に潜り込み、私の下着ごとレギンスをずらすと、剥き出しになったお尻を掴んだ。
 広げるように揉みしだかれて、溢れる蜜が足の付け根を濡らす。
「ん、すごい……もうぬるぬる」
 指先が私のあそこに触れて、長谷君はひときわ強く私を抱きしめると、ぴちゃぴちゃといやらしい音をたてながら、指先で私のあそこを叩いた。
「んっ……んん…っ」
 長谷君の腕の中でお尻だけを裸にされて、あそこを指先で叩かれているだけなのに。キスと同じぐらい気持ち良くて、私の体は素直に跳ねる。
 このままキスをしたら、たぶん、もっと気持ち良い。
 そんな風に思った私が、笑みをにじませる長谷君の唇に自分の唇を寄せると、長谷君は舌先を差し出して私のキスに答えてくれた。
 片手で私のお尻をまさぐりながら、もう片方の手は私のあそこを指先でいじる。
 ぴちゃぴちゃ。くちゅくちゅ。そんな音が唇からもあそこからも聞こえてきて、恥ずかしさと同じぐらいの気持ち良さが、私の体を支配した。
「遠山……っ、こっちは……?」
 キスの合間をぬって問いかけた長谷君は、蜜にまみれた指先を私のお尻へと伸ばす。
 片手で大きく広げられたお尻の穴に、ぬるりとした感触を受けて、私は身震いするような感覚を覚えた。
「したこと、ある?」
 お尻の穴を指先で押され、私はふるふると首を左右に振る。
 そんなところ、普通のセックスじゃ触られることすら稀だと思う。少なくとも、今まで一回だって、こうして触られたことなんて無い。

183 :
 ついばむような口付けを繰り返しながら否定した私に、長谷君は笑い含みの吐息を吐いた。
「気持ち良いよ、ここも」
 そう言って、蜜を絡めた指先を私のお尻へと潜り込ませる。
「ひ…っ」
 出すことはあっても受け入れることなんて無かったそこは、溢れる蜜のお陰か、いともあっさりと長谷君の指先を飲み込んだ。
「や、ああ……っ!」
「痛い?」
 痛みはない。むしろ、くにくにと指先が動かされるたびに、感じたことのない刺激が腰を伝って這い上がる。
「嫌?」
 嫌じゃない。気持ち良い。
 けど、上手く言葉にならなくて、私は必に長谷君の首にすがりついた。
「あ、あっ、や……んん…っ!」
「気持ち良いんだ?」
「ん…っ、は……気持ち…い…」
 刺激されているのはお尻なのに、私のあそこからは絶えることなく蜜が溢れる。
 横抱きの姿勢のせいか、溢れた蜜は私のお尻を刺激する長谷君の指に絡まって、抜き差しされるたびにちゅぽちゅぽといやらしい音をたてていく。
「あん…っ……あ、は、はせく…っ」
 気持ち良い。
 頭だけじゃなく、体も何だかふわふわする。
 ゆっくりと抜き差しをする長谷君の指は、徐々に深さを増していく。
「感じてるんだ、お尻なのに」
 意地悪な言い方だけど、長谷君の声はひどく甘くて、私は声を上げながら頷いた。
「ん、気持ち、ぃのっ…お尻…っ、気持ち良い……!」
 こんな快感、知らない。たぶん長谷君じゃなかったら、こんな風に気持ち良くしてくれることなんて無かったと思う。
 あそこをいじられている時とは違う、鈍くて甘い感覚に、私は知らず腰を揺らしていた。
「遠山……素質あるかも」
「……え?」
 何のことだろう。
 長谷君の言葉の意味は分からないけど、それよりもお尻に与えられる刺激の方が強くて、その快感に私はその身を震わせた。
 軽くイった私の様子に、ちゅぽんっと指が引き抜かれる。
 それまで快感を与えられていたお尻も、蜜をこぼし続けていたあそこも、体の震えと同じぐらいひくひくしている。
 長谷君は私の唇にキスを落とすと、私のお尻で手に付いた蜜を拭って、私の背中にその手を潜り込ませた。
*****
今回は以上です
思った以上に長くなりそう
短く纏める才能が欲しい……

184 :
>>183
GJ!後編も待ってます!

185 :
もう続き来てた!
wktkが止まらないww

186 :
GJ!
むしろもっと長くしてくれても構わないw

187 :
>>186に応えた訳じゃないですが、エロを濃く! と思ったらかなり長くなりました
気に入らなければスルーでお願いします
・バイ×女
・フェラ、69、本番有り
・NGワードはタイトル「長谷君と私」かトリで
以下投下
*****
 ブラのホックがはずされて、キャミソールの中で違和感が生まれる。そのことが気持ち悪くて、私がもぞもぞとブラを引き抜こうとしていると、長谷君はボレロもキャミソールも一緒くたにして持ち上げた。
 長谷君の手を貸り、万歳をする形で衣服を脱ぐと、のろのろとベッドの下に落とす。
 その合間に長谷君は体を起こすと、ミニスカートを脱がし、下着とレギンスを足の間から抜き取った。
 酔いと軽く達したのとで体を動かすのも億劫。横たわったままの私の片足を、長谷君は大きく持ち上げると、今度は剥き出しになったあそこに指を這わせた。
「ん…っ!」
 一本。二本。
 体の中に埋め込まれた指が、肉壁をほぐそうと動き回る。
 逃げようにも、片足はしっかりと長谷君に抱き込まれていて、体をずらすこともままならない。
「ひ、あっ! ああ、あっ」
 激しく胎内を乱されて、大きな快感の波が押し寄せる。
 気持ち良い。気持ち良い。
 私の頭の中を埋め尽くす言葉は、まるで呪文のように同じことの繰り返し。
 でも、それで良い。私が欲しかった気持ち良さを、長谷君は与えてくれる。
「遠山ってさ」
 空いた手をベッドに突いて、体を前に押し倒した長谷君は、すがる物が欲しくて枕を抱えた私の耳元で囁いた。
「イイ声で鳴くよね」
「ん、やあっ、あ、そん…な…っ!」
 そんなことない。そんな訳ない。
 言葉にしたかったのはどっちなんだろう。
 もうそれさえも分からなくて、私は枕に顔を埋めて鳴き声を上げる。
「そうだよ。俺、これでも結構我慢してるんだから」
 舌先を耳に這わせた長谷君は、甘い声で私の思考を散らしていく。
 指が増やされたのか、圧迫感を伴うあそこの刺激に、私は枕越しに鳴くしか出来ない。
「うむぅ…っ、む、うぅぅ…っ!」
「だから、もっと聞かせて」
 そう言うなり、長谷君の指は乱暴に私の中を乱し始めた。
 じゅぷっと深く指が埋め込まれたかと思うと、その勢いと同じ早さで引き抜かれる。それを何度も何度も繰り返されて、私は思わず枕から顔を上げた。

188 :
「や…っ! あぁっ、あっ!」
 クスッと、耳元で長谷君が笑う声がする。
 けど、もうそんなの気にしてられない。
「あっ! あっ! やぅ…っ、あああっ!」
 耳をくわえられ、あそこをかき乱されて、長谷君に翻弄されるがまま、私はひたすらに声を上げて鳴き続ける。
「や、だぁっ、も、やあぁっ」
「イきそう?」
「イくっ、や、イっちゃ…っ!」
 私の体を背後から抱く形で引き寄せた長谷君は、私の声にベッドに突いていた手を私のあそこに忍び込ませ、きゅうっと強く肉芽を摘む。
 その刺激に、私は声を上げることすら出来ず、汗ばむ体を大きく反らせて、二度目の絶頂を味わった。
 さっきよりも大きくビクビクと痙攣するあそこから指が引き抜かれ、その刺激にすら私の体は反応する。
 抱き込まれた足は解放されて、くたりと力なくベッドに落ちた。
 けど、まだ終わりじゃない。
 枕元に座り直した長谷君は、私の体を引き寄せる。
 全力疾走のあとにも似たけだるさの中、ようよう顔を上げると、長谷君は私の手を取り自分の太股に導いた。
 私の顔の前には、膨らみを見せる長谷君のモノがある。顔を見上げても、何も言わない。ただ、私がどうするのか、見定めているみたいで。
 たぶん、このまま何もしなくても、長谷君は何も言わないだろう。何も言わず、私が望むように、この熱を体の奥深くに突き入れてくれるに違いない。
 何となくそう思ったけれど、さっきまで散々気持ち良くしてもらっていて、何も返さないのも悪い気がする。
 そんな妙な義務感に駆られ、私は長谷君の膨らみに手を沿えた。
 寝間着代わりのハーフパンツ越しなのに、ピクンとそれが跳ねたのが分かる。
 ゆるゆると下着と共に寝間着をずり下ろすと、固くそそり立った長谷君のモノが露わになった。
「してくれる?」
「ん」
 私の頭を撫でて尋ねる長谷君に小さな頷きを返すと、長谷君は腰を浮かせて寝間着を脱いだ。
 長身のせいか、長谷君のモノも少し大きい。太さはたぶん人並み。だけどその長さは、少なくとも今まで私が見てきた中では一番長い。ような気がする。
「んむ…ぅ」
 幹を握りしめ先端を口に含む。苦くてしょっぱい、男の人特有の味が口の中に広がった。
 舌を絡めれば、長谷君のモノは私の口の中で膨らみ始める。
 口いっぱいに長谷君のモノを頬張るけれど、まだまだ長さに余裕がある。やっぱり長い。

189 :
 えづかないよう気を付けつつ、喉の奥まで飲み込んで、長谷君の根本に指を沿える。
 ゆっくりと、上顎に擦り付けながら強く吸い上げ、根本の指を上下させると、長谷君の口から熱い吐息が漏れた。
「それ……気持ち良い…」
 壁に体を預けた長谷君は、片足を立てて足を開く。少しスペースが空いたので、横になったままの私は、長谷君の足下ににじりよると、両肘を突いて体を支えた。
 両手で長谷君のモノを握りながら、さっきと同じように大きくくわえる。つるつるとした先端を顎に擦り付け、音を立てて強く吸い上げる。
「ふ、……っあ」
 ビクン。手の中で長谷君のモノが震えると同時に長谷君は声を上げたけれど、すぐにその口元に手をやった。
「ふん…?」
 何だろうと、視線を上に向けてみる。
 指の隙間から吐息と声を漏らす長谷君は、眉を下げた笑みで私を見下ろした。
「んふっ…う。……どうしたの?」
 唾液と先走りでべとべとになったモノから顔を上げ、両手の動きを緩やかにして問いかける。
 刺激が弱くなったからか、長谷君は口元を覆う手を外すと、大きな吐息を漏らして問い返した。
「声、出ちゃうからさ。男の喘ぎ声って、嫌じゃない?」
 変なの。気持ち良いなら声を上げたって不思議じゃないのに。
 そりゃあ、洋物のAVみたく喘がれたらさすがにちょっと驚くけど。
「やじゃないよ? むしろ」
 ぐりゅっと、先端を親指でこねまわす。とたん、長谷君は唇を噛みしめて声を押しす。
「聞いてみたい。……長谷君の声」
 ねっとりと舌を絡め、先端の割れ目に舌先を潜り込ませる。
 私の答えに、気にすることを止めたのか、それともよっぽど気持ち良いのか。長谷君は今度は声をさず、吐息と共に小さな呻き声を漏らした。
「う……っ、くぅ…」
 ああ、何か可愛い。
 幹をこすりながら、裏筋から根の方へ舌先をを滑らせると、今度は唇で軽く吸い上げながら同じルートを辿る。
 もうガチガチに固くなった長谷君のモノは、私が与える刺激に素直に反応して、透明な露があとからあとから湧いてくる。
「あっ……ん、んん…っ」
 長谷君の声が色っぽい。
 男の人が女の人を攻める時も、こんな感じなんだろうな。声が聞こえるたびにゾクゾクする。
 ちゅるちゅると音をたてながら裏筋を上下し、袋をやんわりと口にする。舌全体を使って口の中で転がすと、長谷君はくうっと呻く。
「……遠山っ、もっと下も…」

190 :
「ふん? んん、んぁ……」
 長谷君の要望通り、二つの塊を舌で転がし顔をさらに奥へと向ける。お尻から袋までの部分を唇で刺激していると、汗と長谷君自身と石鹸の蒸れた匂いに、私の体もきゅうっと切なくなってくる。
 こんな所まで舐めたことなんてなくて、自分でもちょっとびっくりする。けど、長谷君が気持ち良くなってくれるなら。
 そんな想いで長谷君のあそこに顔を埋めていると、長谷君は私の頭を撫でてくれた。
「気持ち良い……、良いよ、遠山…っ」
「んふぅ、んっ……気持ちいんだ?」
「ん。あっ、ああっ」
 もっと、もっと。
 気持ち良くなって欲しくて、手を激しく上下させながら長谷君の体にむしゃぶりつく。幹も、袋も、その下にも。それこそお尻の穴にまで、唇と舌を使って攻めていく。
 もっと、もっと。
 私が気持ち良かったのと同じぐらい、長谷君にも気持ち良くなって欲しい。
「は、あ、とお…やまっ……も、出る…ぅっ」
 ちらと視線を上に向けると、長谷君は眉間に皺を刻んで目を細めて私を見下ろしている。
 長谷君のモノをくわえると、私は一段と激しく吸いついた。それこそ喉の奥まで飲み込むぐらいに深く頬張り、強く強く顔を上下させる。
 少し長めの長谷君のモノは吸い上げるのも大変だから、根本の方は手で刺激するしかないけれど。
「くぅ、あ、ああっ、あっ!」
 もう声をさない長谷君は、小さな悲鳴にも似た声を上げながら、私の頭を優しく掴む。
 私が自分からシてるのに、長谷君に無理矢理ヤらされてるみたいな錯覚に興奮する。
「遠山っ…あ、うぅ…っ……!」
 ビクンッ、と。長谷君のモノが大きく震え、口の中に温かいものが放たれる。
「んむぅ…っ」
 反射的に飲み込むけれど、ビクビクと震える長谷君からは、止めどなく熱い塊が溢れてきて、喉を鳴らしても追い付かない。
 独特の匂いがする熱を口の中に受け止めながら、最後まで搾り取るように吸い付いて。長谷君のモノが力を無くして柔らかくなった頃、私はようやく長谷君から顔を上げた。
 飲み込みきれなかった熱が顎を伝い、ぽた、と私の手に落ちた。
「っ……は……遠山…激しすぎ……」
 肩で荒い呼吸を繰り返す長谷君は、私の口元に手を伸ばすと、唾液と長谷君のとでべとべとになった顔を拭ってくれた。
「飲まなくても良かったのに」
「ん……」
 申し訳なさそうに長谷君が笑う。

191 :
 でも長谷君の物だと思ったら、自然と飲み込めてしまったんだから仕方ない。
 言葉を返す代わりに、私は長谷君のモノを掴んだ手を緩やかに上下させて、柔らかなソレに舌を這わせた。
 さっきまであんなに主張していたのに、今はふにゃふにゃと心許ない。
 男の人って不思議だ。
「……長谷君」
「何?」
 まとわりついた液体を舌で綺麗に舐めながら、長谷君の顔を覗き見る。
 一度達した長谷君は穏やかに笑っているけれど、私の方はそうもいかない。体の奥が疼いていて、足りない部分を埋める何かが欲しくて仕方ない。
「ちょうだい、……これ」
 余った皮を手で引き延ばし、露わになった先端に口付けを落とす。
 私の言葉の意味を理解したのか、長谷君はくすと笑い声を漏らし壁から背中を離した。
「良いよ。……遠山が大きくしてくれたらね」
 私の足下に腰を下ろした長谷君は、足を投げ出して座り直す。その長谷君に跨る格好で座った私は、長谷君のモノを大きくしようと体を屈めた。
 けど。
「遠山、お尻、こっちに向けて」
 長谷君は私の肩に手を伸ばして、私の体を引き寄せる。
 その体勢から得られる甘美な予感に、私は一瞬躊躇ったけれど。気持ち良くなりたい欲望が勝って、素直に体を逆に向けた。
 長谷君がTシャツを脱いでいる間にも、私は体を屈めて長谷君のモノを舐め上げる。手の中で小さく反応はしたけれど、そうすぐには大きくならないみたい。
 さっきも、私が舐めたり吸ったりしてる間、固さと太さは増していたし。やっぱり、男の人って不思議だ。
 口付けを落とし、手でしごきながら様子を見る。
 さっきは舐めるのに夢中で、どこが弱いかなんて考える余裕もなかったから。今度は確実に長谷君の良い所を刺激したい。
 そんなことを考えながら長谷君のモノをいじっていると。
「ひゃっ!」
 不意にお尻が持ち上げられた。
「遠山ばっかり、ずるいよ」
 笑い含みの声が聞こえたかと思うと、ぐちゅりっといやらしい音を立てて長谷君の指が私のあそこに埋め込まれた。
「やぁんっ」
「遠山のここ、ちっちゃいよね」
 私の中を探るように指を動かしながら、長谷君は私のあそこに息を吹きかける。
 身震いするような感覚に襲われながらも、長谷君の問いに答えずに、私は手にしたソレに唇を寄せた。
「んぅっ、ふ、ん…っ」
 少し勃ち上がり始めたソレをくわえ、口の中でなめ回す。

192 :
 指であそこをいじられる刺激に耐えながら、長谷君のモノを舐めていると、長谷君のモノがピクピク震える箇所があった。
 裏筋の上の部分の、先端と皮の境目。そこに舌を這わせると、長谷君のモノは明らかに反応を示す。
 試しに、固く尖らせた舌でそこを執拗に攻めると、一瞬長谷君の動きが止まった。
「遠山…っ」
 快感の滲む長谷君の声。
 やっぱり。長谷君はここが弱いんだ。
 思わず笑みがこぼれる私。
 だけど、相手の良い部分を探していたのは、私だけじゃなかったみたいで。
「……っ!」
 不意に襲った大きな波に、今度は私の動きが止まった。
 長谷君の指が、私のお腹の方の壁をこすっている。指の腹が私の体を往復するけれど、少し強めに押された部分に、私は耐えきれず声を上げた。
「や、うぅ…っ!」
「ここ?」
「ひっ、あぁぁっ!」
 確かめるように、長谷君は何度も指先を押しつけてくる。
 強い刺激にあらがえず、せめて声だけでも抑えたくて。腰をくねらせる私は、長谷君のモノをくわえることにした。
 気持ち良い。けど、今はとにかく気を逸らせたい。このまま、されるがままだったら、間違いなくまたイかされちゃう。
 私が長谷君のモノをくわえると、長谷君の指は私の弱い所を攻めるのを止めて、今度は深く潜り込んできた。
 とめどなく溢れる蜜が音をたて、足の付け根を濡らしていく。
「むふ、うん…っ、んん」
 口の中で長谷君のモノは大きくなる。
 長谷君の指で私のあそこはぐちゃくちゃになる。
 与えられる快感に頭の奥がふわふわしてくるけれど、相手に快感を与えるのも忘れない。
 気持ち良い。
「気持ち良い?」
「うんっ、ん…ぅぅ」
 長谷君の問いかけに頷きながら、必に長谷君のモノをくわえていると、ひときわ大きく下半身が持ち上げられた。
 なかば逆さまになる格好にされて、それでも長谷君のモノを舐め回す私のあそこに、ぴちゃとなま暖かいものが触れる。
 長谷君が、私のあそこに舌を這わせている。
 そう理解するより早く。
「ん…っ」
「ぅむうっ!」
 じゅるるっと、激しく蜜をすすられて、私は喉の奥から声を漏らした。
 長谷君の両手はしっかりと私の腰を抱きかかえていて、逃げることも許されない。
「ん、む…ふっ」
「ぅあっ、や、あんっ、やぁ…あ!」
 体の中で舌が蠢き、かと思うと肉芽をなぶられ、体の奥が熱くなる。
「や、あ、らめぇっ! そこ、やあぁ!」

193 :
「ん? …どこ?」
 固い舌が私の肉芽をぐりぐりとこねまわす。
「ひゃあっ、ん、そこ…ぉっ!」
 やだ。これじゃあ長谷君を気持ち良くさせるどころか、長谷君に翻弄されっぱなし。
 でも体は思うように動かないし、長谷君の動きも止まらない。
 蜜をすすり、舌でなぶり、私の腰を抱え上げて肉芽に吸い付く。
 痺れるような快感に、頭の芯がぼおっとする。
「ほら、遠山も」
 片手で背中を押され、長谷君のモノに顔を近付ける。手の中で握りしめたままのソレは、さっきよりも勃ち上がっていて、かなり固さを取り戻していた。
 体の中に舌を埋め込まれながら、私も長谷君のモノをくわえ込む。
 さっき長谷君が私にしてくれたように、大きな音をたてて吸い上げながら、手で上下にこすり上げる。
 早く欲しい。
 指も舌も気持ち良いけど。この熱いモノで、早く私の中をいっぱいにして欲しい。
「はせ、君…もう……」
 じゅぽんっと長谷君のモノから唇を離すと、唾液と先走りの混じった物が糸を引いた。
「も、駄目……」
「……欲しいの?」
「ん、長谷君のコレ…入れたい…」
 顔を見ることが出来ない代わりに、長谷君のモノに何度もキスを繰り返すと、長谷君は私の体をベッドに横たえ、そのままベッドから降りて、机の上にあった小さな茶筒を手にした。
 何だろうと思って起きあがると、中から取り出されたのは連なったゴムの袋。
「そんなとこに入れてるんだ……」
 思わず呟いた私に、長谷君は苦笑しながら缶を戻した。
「あからさまなのは好きじゃないんだ」
 ベッドに戻った長谷君は、一つちぎって「はい」と私に手渡した。
 男の人がゴムを付けるあの空気って、いつもなら何だか微妙だけど。こうして手渡されると、それはそれで変な感じ。
 けど長谷君の動きはスマートで、私の隣に腰を下ろした長谷君にすり寄りつつ、ゴムの袋を破る。
 ゴミを返して長谷君のモノに手を掛けると、長谷君はゴミ箱に袋を捨てて私の方に向き直った。
 ゴムを被せ、二三回長谷君のモノを手でしごく。薄い膜越しに熱を感じ、それが自分の中に入ってくる期待と興奮に、また私の奥で熱が疼いた。
「遠山」
 顔を上げると、長谷君の唇が私の頬に触れる。
 腰を引き寄せられて私からも唇を寄せる。さっきの攻めで、私も長谷君も、もう口元がべとべとだけど。気にすることなく唇を交わし、舌を絡めながら、私達はどちらからともなくベッドに倒れ込んだ。

194 :
 開いた足の間に長谷君は居場所を定め、私に覆い被さりながら私の胸を掴む。
 そう言えば胸を触られるのは初めてかも知れない。
 今更ながらに恥ずかしくなったけど、長谷君と絡め合う舌が気持ち良くて、すぐにその考えも消えていく。
 胸を揉まれ。固く尖った頂を指でこねまわされ。長谷君のモノをあそこに擦り付けられ。
 長谷君の体に腕を回しながら、高ぶる熱に私は必になって長谷君の舌に自分の舌を絡めた。
「は、せ…くぅん…っ」
 絡め合う舌の隙間、名前を呼んで腰を浮かす。
 せびるように腰を押しつけると、目だけで笑った長谷君は、私の両の太股を持ち上げながら体を起こし。
「入れるよ」
 そう、小さく呟いて、蜜にまみれた熱い杭を私の中に押し込んだ。
「ああぁぁぁ――っ!」
 散々指でほぐされた私のあそこが、長谷君の熱で押し広げられ、私ははしたなく鳴き声を上げた。
「っ…やっぱ……ちょっとキツい」
 ぐっと私の中に押し入った長谷君は、吐息を漏らしながら呟いた。
 長谷君は少し窮屈そうだけど、ようやく満たされた体に心までが満たされて、腕を伸ばして長谷君の顔に手を伸ばす。
 汗の滲む頬を撫でると、長谷君は私を見下ろした。
「ね、ちゅーして」
 長谷君とのキスは気持ち良い。私と同じように、長谷君も気持ち良かったら良いのに。
 キスをねだる私に、長谷君は唇を寄せてくれる。
 唇で食み、舌を伸ばして絡め合う。
 ああ、やっぱり気持ち良い。
 体の相性と同じように、キスにも相性があるんだとすれば、今までで一番長谷君とのキスが相性が良い。そう思えるぐらい、長谷君とのキスは気持ち良い。
 私の体を抱きしめた長谷君は、体の一番奥に熱いモノが当たっているのに、更に奥を求めるように腰を押しつけてくる。
 ゆっくりとした動きでぐりぐりと奥深くをこねまわされ、唇の隙間から声がこぼれそうになる。
 だけど長谷君は、その声すらも飲み込むように、深く深く唇を重ねた。
「んっ、うふぅ、んん、んぁっ」
 ぐっ、と長谷君が腰を沈めるたびに体が軋む。
 快楽の波が押し寄せるけど、唇をふさがれて逃げ場を失った波は、体中を駆けめぐり息苦しささえ覚える。
 気持ち良い。気持ち良すぎて頭が変になりそう。
 ちかちかと白い光が瞬く瞼に涙が滲む。
 それでも長谷君と繋がっていたくて、私は必になって舌を絡めた。
 長谷君が大きく腰を引いて、また私の奥へと熱をぶつける。

195 :
 押しつけるような動きから、大きく抜き差しする動きに変わった長谷君の動きについていけず、私の中で高まった熱が大きく弾けた。
 だけど長谷君の動きは緩まない。激しく打ち付けられる固い熱に、私は喉を反らして声を上げた。
「ひっ! あぁ、やっ、ああっ!」
 長谷君の顎を伝った汗が私の目尻にぽたりと落ちる。私の涙と混じり合ったその汗は、重力に従って枕元に小さなシミを作った。
 体を起こした長谷君は、私の片足を大きく持ち上げ、太股に腕を回しながら絶え間なく腰を打ち付ける。
「あっ、ああっ、ん、はっ、ああっ」
 気持ち良い。気持ち良い。気持ち良い。
 思考回路は焼き切れて、もう何も考えられない。
 軽くイったのに、長谷君はそんなのお構いなしに、片手を伸ばして私の胸を鷲掴んだ。両方の胸を荒々しくまさぐりながら、抱きしめた足に甘い噛み痕を残していく。
 それすらも今の私には気持ち良くて、私はシーツを握りしめた。
「遠山…っ」
 ぐんっ、と長谷君のモノが私の中を攻め上げる。さっきいじられたお腹の裏側を攻められて、また目の前が白くなった。
「うあぁっ、や、だ、だめぇっ!」
「駄目…? ここ、良いだろ…っ?」
 激しく抜き差しを繰り返しながら、それでも確実に、長谷君は私の弱い所を攻めたてる。
「やぁ、っ……あ、はぁぁっ!」
「好き、なんじゃ…ないの? ここ…っ、こう、されるの…っ」
「や、あぁぁっ!」
 駄目なのに。そんなに何度も攻められたら、おかしくなる前にんじゃいそう。
「んはっ、やっ」
「ほらっ……『梓』っ」
 ビクンッ、と。無意識のうちに体が震え、これまでにない快感に私の体は固くなった。
「あ…ああぁっ…」
 開いた口からこぼれる声は甲高い嬌声にもならず、もう完全に快楽の色に染まっている。ただただ揺さぶられるままに、私は力を無くして音だけを漏らした。
「あず、さ…、まだ…っ」
「やう、うぁっ、あああ…っ」
 長谷君に名前を呼ばれるたび、頭も体もふわふわする。
 もう、自分がどこにいるのかも分からない。
「ね、梓…っ、これ、好き…っ?」
 ぐちゅぐちゅと粘ついた音と共に、長谷君の声が耳を打つ。
 体の中をこすり上げる熱と、長谷君の声だけが、私の中に残る唯一の感覚。
 好き。気持ち良い。好き。
 長谷君に撫でられるのも、抱きしめられるのも、キスも、何もかも全部。

196 :
「ふ、うあ、あっ…好きぃっ」
「梓…っ」
「すきっ、あ、はせ、くぅんっ、好きぃっ」
 涙をこぼして鳴きながら、私は長谷君の言葉に頷いた。
「あ、ずさ…っ」
「はせく…っ、や、好きっ、好き…っ」
 ひときわ大きく腰を打ち付けられ、もう何度目かも分からない絶頂を迎える。
 すがる物がほしくて腕を伸ばすと、長谷君は私の中に深く体を埋めながら、その腕を取って私の体を引き寄せてくれた。
「は、あ…梓…っ」
 長谷君のモノが私の中で大きく震えている。
 繋がった部分から溢れた蜜が行き場を失い、私と長谷君の太股を濡らしていく。
「はせ、くん…」
「ん?」
「……好き」
 しっかりと長谷君の体に両腕を回して抱きつくと、長谷君は私を抱きしめ返して、唇に触れるだけの口付けを落とした。
 *****
 目を覚ますと、窓の外は薄らと明るくなっていた。
 時間を確かめようと首を伸ばすと、脱ぎ散らかした服の向こう、床に置かれた壁掛け時計は四時すぎを示していた。
 壁掛け時計なのに、何で床にあるんだろう…。
 まだ眠い頭でぼんやりとそんなことを考えながら寝返りを打つ。
 その拍子に、穏やかな寝息を立てる長谷君の顔が視界に入り、私の頭は一気に覚醒した。
 ……やっちゃった。いくらお酒が入っていたからって、これはないでしょ、自分……!
 長谷君の穏やかな顔とは対照的に、自分の浅はかさに頭を殴られたような衝撃が走る。
 最悪なことに、何をやらかしたか、きっちりばっちり記憶がある。覚えてない方が幸せだったと思えるぐらい、昨日の私の乱れっぷりは酷かった。
 念のため、タオルケットをめくって確認すると、昨夜長谷君が寝間着代わりに着ていたTシャツとパンツは身につけていた。
 けど、自分で着た記憶はない。たぶん、長谷君が着せてくれたんだと思うけど。
 あぁぁぁ……何やってんの、私。
 恥ずかしさを通り越して、情けなさに涙が出そうだ。
 それもこれも……って、全面的に私が悪いのか。酔ったのも、最初にせがんだのも、全部私なんだから。
「……馬鹿だ」
 ボソリと呟いて再び横になった私は、いまだすやすやと眠る長谷君を見つめた。
 くっきりと浮かんだ喉仏。少しまばらに髭が生えた顎。閉じられた瞼はぴくりとも動かないけれど、その奥の瞳がどんな色をしているのか、今でもありありと思い出せる。

197 :
 つい昨日までは、単なるバイト仲間だったのに。今や私の中にわき上がるのは、そんな単純な想いじゃない。
 体を重ねただけで情が湧くなんて、我ながら馬鹿馬鹿しいと思うけど。
 体だけが満たされたのなら、こんな風に長谷君のことを想うことはなかったはず。
 頭を撫でる優しい手も、私の名前を呼ぶ甘い声も。そのどれもが、私の心を満たしてくれたから。
「……長谷君」
 長谷君の胸元に体を寄せると、規則正しく打つ心臓の音が聞こえて、なんだか泣きたくなってくる。
 もう一度眠ろう。せめて今だけは、傍に居ることを許してもらって、目が覚めたら何もなかったように、今まで通りに。
 そんなことを考えながら目を閉じようとした時、長谷君が小さく声を上げて私の方に寝返りを打った。
 腕が回され、体がぎゅっと抱きしめられる。
 ああ、やっぱり気持ち良い。
「…ん……?」
「あ、……ごめん、起こした?」
 何度か長谷君の瞼が動き、やがて薄らと目が開けられる。
 何となく居心地が悪くなって、小さな声で尋ねると、長谷君は私の頭に顔を埋めた。
「ん……今、何時…?」
「四時過ぎ」
 頭にかかる吐息がくすぐったい。
 私の答えに、長谷君は小さく呻くような声を上げ、やがて私の体に回す腕に力を込めた。
「遠山……」
 小さく名前を呼ばれ、胸の奥がざわめく。
 「梓」じゃなく「遠山」。それが如実に私と長谷君の距離を表しているようで、私は胃に何か重いものをぶつけられたような錯覚を覚えた。
 けどもちろん、長谷君はそんなことは知らない。
「昨日のあれ、ホント?」
 頭上から聞こえる声に、私は何気ない風を装って、長谷君の腕の中で顔を上げた。
「あれって……?」
「最後に言ったの……忘れた?」
 ……。
 …………。
 忘れるわけが無い。そのせいで、今、こんなに苦しい想いをしてるんだから!
 長谷君は昨日恋人と別れたばかり。それを知っててあんなことを言ったんだから、弱みにつけ込んだと思われたって仕方ない。
 何とか誤魔化そうと思考回路を働かせた私だけど、結局上手い言い訳も思いつかず、私は小さく頷いた。
「……ほんと。……でも、ごめん。別に気にしなくて良いから」
 自分で言ってて泣きそうになる。
 でも泣いたところで何かが変わる訳でもなし。むしろ卑怯な気がして、私は顔が見えないのを良いことに、唇を噛みしめて無理矢理気持ちを押さえ込んだ。

198 :
 でも。
「いや……むしろ、謝るのは俺の方……かも」
 私の頭に顔を埋めたままの長谷君が、何やら言いにくそうに、もごもごと呟いた。
「……え?」
「その……。和樹さんと別れたけど……彼が浮気する少し前からかな……気になる人が出来たんだ」
 顔を上げようとしたけれど、視界に入るのは長谷君の喉元だけ。
 何が言いたいのか、いまいちピンと来ない私に、長谷君は視線を合わさずに尚ももごもごと呟いた。
「その人が、いつもバイトの休憩中に裏口で煙草を吸ってたのも知ってた。知ってて、わざとあの時間、あの場所を選んで和樹さんに別れ話を切り出した」
 え……っと?
「お酒があんまり飲めないってのも、本人から聞いて知って……それでも居酒屋を選んだ。まあ、無防備さに負けてキスしちゃったのは……俺の計算違いだったけど」
 え…? あれ……?
 ち……ちょっと待って。
「和樹さんが好きだったのもホント。けど、同じぐらい……それ以上かな、気になる人にベクトルが向いてたのも、ホント。……だから、遠山が気にする必要なんてないよ」
 そう言って、長谷君は私の頭をぽんぽんと優しく叩く。
 一気に色んなことが起こって混乱する私に、長谷君は大きな体を屈めて、私の顔をのぞき込んだ。
「だから……ごめん」
 ……。
 …………。
 ち、ちょっと……。ちょっと待ってよ!
 てことは、全部長谷君の計算のうち!?
 私が別れ話を覗き見ることも、酔いつぶれることも、もしかするとあれやこれやをせがむことも。
 全部長谷君の計算だった訳!?
「そん……ちょ、それって……もしかして私、長谷君にはめられた……?」
 昨日の告白以上の衝撃の事実に、私は愕然とした声を漏らす。
 私の表情に長谷君は困ったように笑いながら私の頭を撫でた。

199 :
「人聞きの悪い。計算じゃなく賭。どう転ぶかなんて、俺にも分からなかったんだから」
 いやいやいや、確かにそうかも知れないけど!
 だったら、見事に全部の賭に負けた私の立場はどうなるの!
 さっきまでの苦しい想いとは一転、私の中にわき起こるのは、長谷君に対する怒りなのか呆れなのか。
 だけど長谷君は、私の頭を撫でながら、悪びれた風もなく口を開いた。
「答えてよ。遠山は、俺のこと好き?」
 甘い声で囁く長谷君に、私は言葉を失って視線を逸らす。
 今となっては、もう抑えることも出来ないけれど。だけど、簡単に答えるのは癪に触る。
 だから。
「……梓って呼んでくれたら、答えてあげる」
 怒りか、照れか。顔を真っ赤にして唇を尖らせた私を見て、長谷君は喉の奥で小さな笑い声を上げた。
 その甘い声が、私の名前を呼ぶまであと少し――。
 ****
以上です
反応を頂けると、やっぱやる気が違いますwww
それでは、またどこかでノシ

200 :
>>199
あーもうあーもう!!
GJ!

201 :
悠生ちゃんも長谷くんシリーズも、もう本当に大好きだ・・・!
描写が丁寧なだけでなくエロいし、女の子もかわいいし、もう大ファンです!
ふたつとも、続編があったらぜひとも!

202 :
GJGJGJ!!!!!!!!!
このスレにいて良かった!

203 :
最初あたりの長谷君の性格が割合淡白なように感じてたから、
この話の最後は遠山さんだけが、好きになってしまってて
頑張ってこれからこれから彼を落とすぞ、になるのかなと思ってたんだけど…
後半読んでて顔がにやけるのを止められなかった。
外で読んでなくてよかったwww
GJでした。幸せ。

204 :
なんという、なんという…!!
上手く言えないけどめちゃくちゃ悶えた。
超GJ!!!

205 :
うわぁ……!
帰省で来れなかった間に悠生ちゃんの人が新作投下してくれてた!
禿げあがるほど萌えました!あなたが神か!!
どっちも続編待ってます。あ、あと他の話も拝見したいです
ところで、作者さんって声フェチですよね?(断言)
私もです。

206 :
お疲れ様です
悠生ちゃんの神が再び現れるなんて!
今回も最高でした
今後悠生ちゃんや長谷川くんの続きを書かれる予定はありませんか?
悠生ちゃん達があの後どうなったか気になって仕方ありません!

207 :
うあぁぁ神が再臨なさったー!もう悠生ちゃんの人の
作品は見れないのかなとしょんぼりしてたので嬉しい!
ありがとう!

208 :
久々に覗いてみたら……なんというGJ!
あなたの作品大好きです、ごちそうさまでした!

209 :
二人とも可愛くてニヤニヤしたwww
乙でした!

210 :
たまたまたどり着いた動画サイト
>女とゲイ男のセックス
>これぞホモサイトの最先端!ゲイ男と女が繰り広げるセックスは、
>一味違った展開に。。マニア好きにはたまりません!
>ゲイとバイとストレート乱交
>ゲイとバイとの絡みは、何とも言えないエキゾチックな世界!
>その上乱交シーンも加わり、マニア好きにはたまらない!
こんなカテゴリ分け初めて見たよw
アメリカには少なからず同志が居るようだ

211 :
向こうはクィア論とか日本よりも主張されてるからね
まあ大概のゲイセクシャルは女興味ないと思うけど

212 :
あげておこう

213 :
不思議なテーマだが面白そうだ

214 :
思ってもみなかったジャンルなのに超ツボだと判明した
悠生ちゃんの作者さんに溢れんばかりのGJを送りたい

215 :
最初は、ゲイでネコの友人を縛り上げ責め立てるドS女の話を書きたかったのに、
なぜか全く違う展開に終わった話を投下
寝込みを襲う、自慰、挿入なし、ハッピーエンドではない、そこはかとない変態臭
苦手な方はスルーお願いします

216 :
ゲイという存在は知っていた。
あまり抵抗を感じたこともない。
ただ、まさか自分の身近に現れるとは思ってもみなかったし、
更に友人に近い付き合いをするとも思っていなかった。
この私が。異性間の友情全否定の私が。
しかしよくよく考えてみれば、ゲイとは恋愛関係に発展しようがないんだから持論を頑固に守り通す必要もない。
恋愛に多少のトラウマがあった私は異性との付き合いに慎重だったけど、
そんな気兼ねをしなくていい相手と出会えて私は浮かれていた。
気づいていなかったけど今ならわかる。浮かれすぎていたのだ。
「あーっ、やっばいなあ」
お気に入りの缶チューハイりんご味をひとくち。うまい。
就職を期に一人暮らしを始めた私の部屋は実家が近いこともあって、
生活必需品と趣味の本やDVDばかりの超快適空間だ。
服は元々頓着しない方だけど物持ちだけはいいというか捨てられない性分なので、
季節ものと通年使えるもの以外は全て実家。一度片づけに帰らなきゃいけないと思いつつ放置。
この快適空間に数ヶ月前からふらりと現れるようになったのが件のゲイ、水内裕竣(みずうちゆうしゅん)。
あだ名はそのままユーシュン。
ゲイとはいえ女の一人暮らしに男をほいほい入れるのはどうかとも思う。
しかしユーシュンは生粋のゲイだ。相手のどこに惹かれるって適度な筋肉と腰なのだ。
しかし決してやつは女っぽくも華奢な体つきでもない。まあガチムチでもないけど。
まあとにかく。そんな奴だから大丈夫だと思って今まで過ごしてきたのだが、
この前私は気づいてしまったのだ。「私は」ユーシュンを恋愛対象にし得るということに。
まさしく青天の霹靂だ。油断以外の何者でもない。うっかり私はユーシュンに惚れたらしい。
好みどストライクではない。しかしいいなと思うところが少しずつ散りばめられているのだ。
例えば見た目。長年武道を嗜んでいたからか男くさくない程度に男らしい体だ。
例えば気安さ。気分屋の私が突然話しかけたり突然何かに没頭し始めてもユーシュンは気にしない。
帰りたくなったら帰る。居たかったらいる。余計な気を回さなくてもすむ。
最初の数日は抵抗したがすぐに無駄だと気づいた。もう自分にとってのツボしか見出せない。
惚れた。恋の病だ。久々に。まだ制御できるけどこのままじゃやばい。
だってあたしはこの友情を絶対に壊したくないのだ。女友達とは絶対に築けないこの友情を。

217 :
最近はユーシュンにも彼氏ができたらしく、
――ああ、ユーシュンはそういえばネコだ。あたしには可能性のかの字もない――
あまり連絡も寄越してこなかったんだけど、今日は久々に我が家に来るらしい。
いつもならどっかで一緒に飲んだ後我が家のパターンが多いのに珍しいこともあるもんだ。
取り敢えず手作りもつ鍋は用意できた。味噌のしょっぱさとチューハイの甘さは無限ループ。
ユーシュンには前飲み残した焼酎と日本酒があるし、あとで何か適当に出せばいいだろう。
あとは、あたしの気持ちだけだ。
しばらく会っていなかったので、会った瞬間に何か粗相をやらかしてしまいそうな気がする。
いや、たぶん大丈夫だけど。
******
「よっ」
「ん、久しぶり。取り敢えず中、どうぞ」
久々に会ったユーシュンはカッコ良かった。
妄想のあたしは飛びかかる勢いで抱きついたが、現実のあたしはただ少し笑っただけ。
勝手知ったる他人の家。あたしはユーシュンを放置して台所に向かう。
「もつ鍋作ったんだけど他にもなんかいるー?」
無反応。
「おい、答えろや」
小さめに叫んで、取り敢えず大きめの鉢に盛ったもつやら大根こんにゃくやらと酒を運ぶ。
ユーシュンは定位置、ちゃぶ台とソファの狭いスペースに胡座をかき、ぼーっとテレビを見ていた。
「どっち?」
焼酎と発泡酒を両手に目の前で軽く振ると、ユーシュンは黙って焼酎を取った。
ふむ。ご機嫌ななめ。かつ、飲みつぶれたい気分なのか。
念のためゴミ袋や新聞紙を近くに待機させ、自分の缶を開けて。
「……いただきます」
ユーシュンは小さく頭を下げただけだがまあ良しとする。
目の前に不機嫌な人間が居ようと、どんなに空気が重かろうと、このもつ鍋の旨さに変わりはない。
煮玉子を入れたのは天才的発想だな。ネットからのパクリだけど。
味は濃いめだし、もう少ししたら野菜とおろしポン酢も用意して――
「――おまえ、よく食うな」
「ふぇ? ふぉーお?」
一瞬もつを噴きそうなくらい驚いたのを隠し平静を装う。どうやら構ってほしくなってきたらしい。
「だって美味しいよ? 自慢みたいだけど。後で大根おろしとポン酢も用意するから」
「あっそう……」
気のない返事である。しかしこのまま再びもつに没頭できるほど私の神経は図太くない。
不機嫌なユーシュンもステキ、などという不埒な人格が私を支配する前にレッツアタック。
「で。どうしたの。なんかあったからそんなぶすっとしてんでしょ」

218 :
ようやく箸でもつをつつき始めたユーシュンをちらっと見やる。
だいたい話の内容は読めるような読めないような。
「こないだの新しい彼、なんだっけ。タケさん? あの人はどーしたの」
「違う。トチ。トチさん」
「あー、そうだそうだ。その人とは? 最近どうなのよ」
「まあまあ」
「は? 全て順調なわけ?」
「いやー……、順調ではないけど」
男のめんどくさいと思うところは、いかにも悩んでいる、という態度をしながらなかなか口を割らないところだ。
なんでもかんてもぺらぺら喋るよりは格段にましだが、
それ程多くない男との付き合いの中でも、ユーシュンはこの傾向が強い方だ。
そして一度話し始めると、独自の視点から自分の考えを怒涛のようにまくし立てるのだ。
「――な? これは詐欺だろ。
 別に俺は縛りたくなんかねーよ。縛られんならまだしもさー。最初から言ってんのにな」
「そーですねー」
1時間弱経ったころにはべろべろの酔っ払い完成。あたし生々しさにドン引き。
話をまとめるとこうだ。
見た目に似合わずネコでMっ気抜群の筋肉フェチ男は、所謂ハッテン場で好みの男を見つけました。
しかし見た目と嗜好がちんぷんかんぷんなのはゲイの常識。まずは嗜好を確かめると、
見事需要と供給が一致。めでたしめでたし、だったのは先週の初めまでだったようだ。
実はその男、隠れドMだったらしい。
「もうこっちはヤられる気満々でさ。そんなときにいきなり輪ゴムないか、って。
 意味わかんねーし。この間際に、突っ込むより大事なことは何なのかと思ったね」
その、まあ、つまりは、そのトチという男は己のナニの根元を輪ゴムで縛って欲しかったらしい。
イきたくてもイけない状態を繰り返すことで最高の快感を得られる、という性癖の持ち主だったのだ。
「でも縛るだけなんでしょ? ちょっと譲れば済む話じゃないの?」
「いや、無理。想像してみ?
 セックスの一番盛り上がった瞬間に、男にここ輪ゴムで縛って、って頼まれんの」
「指差すなバカっ」
しかし自分に置き換えると……、確かに別れは頭に過ぎるな。興奮も一気に冷めるだろう。
「じゃあ今はどうしてんの。別れたわけじゃないんでしょ?」
「あっちの仕事が忙しいのもあって会ってない。次会うときなんらかの結論出すと思う」
「ふーん……」

219 :
別れたらいいなとも思うけど、しかし今の話聞く限りやっぱ望みは薄いなあ。
だってあたしもネコだ。入れられないし入れられたい。
ペニパン着けてユーシュン犯すか? ……女として大事なものを失いすぎるでしょ。
「奈々絵は。彼氏作んねーの」
ぼんやりしていたらユーシュンに水を向けられた。
「もうひと月くらい経つじゃん。そろそろいんじゃないか」
「あー……、そうだねぇ」
まさか目の前のあなたですとは言えない。
「ぼちぼち、ね。やれることやってみるわ」
何本目かの缶チューハイ。低カロリー。でもそろそろお茶かなんかに切り替えようかな。
その後もだらだら、お互いの近況やら愚痴やらを話していると、いつの間にか眠っていたようだ。
突然襲ってきた寒気にぶるっと体を震わせると、私はがばっと身を起こした。
部屋は豆電球の明かりで薄暗い。視線をあちこちにやるとようやく自分の状況がわかり始めた。
背中の辺りで引っかかっていた毛布を抱え込むとまだはっきりしない頭で現実を把握する。
あちこちにあった空き缶はゴミ袋の中に入れてあり、皿もちゃぶ台の上から消えている。
シンクに刺さった箸が見えるから下げてくれたのだろう。
「でも、味噌……」
水に浸けてくれただろうか。こびりつくと後が面倒くさい。見に行く?
少しだけ迷って私はのろのろと立ち上がり覚束ない足で台所に向かう。
「………………」
この状況で。ユーシュン。あなたは私をす気か。
ちゃーんと水に浸けてある。しかも余ったものは皿に分けてラップまで。
できればタッパーが良かったけどそんなのこの際些細なことだ。
あたしを床に転がしといてちゃっかり自分はベッドに寝ているのも些細なことだ。
ずるずると座り込みたいのを我慢して部屋に戻る。
ベッドに向かってしまったのは本能だ。許せユーシュン。
君に触ろうか触るまいか迷っているのも本能だ。許せユーシュン。
しかし好きな人に久々に会って、酒飲んで寝て起きたら触りたいとかどんだけ本能に忠実だよ。
でもこの状況は、私にとってひどく蠱惑的だ。
相手はぐっすりと眠り込んでいる。寝汚いというか、一度寝ると途中で目を覚ますこともほとんどない。
顎から首にかけてのライン。肩の張り。Tシャツから伸びる肘から手首にかけての美しさ。
「――う、わぁ……」
上半身はそのままなのと毛布のせいで気づいていなかったのだが、こやつ、パンツ一丁でいやがる。
なんと破廉恥な。いや、逆ならともかく男が女の家でどんな格好しようと問題はないか。いや、あるだろ。

220 :
もう触っちゃうぞ。あんなとこやこんなとこ触っちゃうぞきゃーっ! あたし破廉恥!
「………………」
とかいうのを私はじっとユーシュンを見つめながら心の中だけで騒いでいるのだ。
破廉恥というよりただの変態。
「……ユーシュン?」
でも止まらない。こんなチャンスもうないかもしれない。
この気持ちがバレる前に、関係が壊れる前に、ユーシュンを感じたい。
変わらない寝息にあたしはゆっくりとユーシュンに手を伸ばす。どこにしよう。
迷った挙げ句最初に触れたのは耳と顎の境目辺り。所謂えらの部分。
そこから少し指をずらして顎までの中間地点、上に滑らせて伸びかけの髭をなぞる。
ユーシュンは起きない。閉じた瞼は安らかで、呼吸も相変わらず規則正しい。
男の人にしては少し厚め下唇。キス、したい。きっと凄く気持ちいい。
けど、さすがにそこまでの勇気は出ないので、人差し指で軽くなぞるだけに留める。
そっとその指を自分の唇に寄せる。間接キスですらない、小さな接触。
なのになぜかあたしの快感値は高まっていく。心臓がうるさく鳴り響く。
「ユーシュン……、起きないでね」
無理なお願い。わかっているけど祈るような気持ちでユーシュンの右手を両手で持ち上げる。
失敗した、と気づいたのはその直後。ほんの数瞬だけ逡巡すると、私はそのまま続けることにした。
ゆっくりと体を寄せる。震えが止まらない。チリチリと皮膚が過敏になっているのがわかる。
「あ、ふっ、ぅん……」
手が。ユーシュンの手が私の胸に触れた瞬間、確かに私は小さな絶頂を感じた。
絶対にユーシュンが触らない場所。ゲイにとって一番嫌いな女の象徴。そこに、ユーシュンの手が触れた。
更にぎゅっと体に手のひらを押しつける。ブラジャーを着けたままなのが惜しいけど、
たまに指の腹が先を掠めるのがもどかしくも気持ちよくて、ますます興奮してしまう。
もっと。もっと。もっとあなたが欲しい。
こんなんじゃ足りないよ。
「ユーシュン……」
手を離し着ていたパーカーを脱ぐと、タンクトップの中に手を入れブラジャーだけ抜き取る。
ほぅ、と小さくため息を漏らす。
どうしようどうしようと頭の中はその言葉ばかりが駆け巡る。でも、気持ちはもう定まっている。
ユーシュンの額に張りついた髪の毛をそっとかき分ける。
脱いだパーカーでユーシュンの目を隠し視界を塞いだ。
これで大丈夫。大丈夫じゃないけど、大丈夫。

221 :
再びユーシュンの手を取り、今度は自分の頬に当てる。男の人の手。大きくて硬くて気持ちがいい。
これをナニに例えて舐める行為は何回かしたことがあるけど、今ほど熱望したことはないんじゃないだろうか。
皮膚の感触、ごつごつと節くれだった部分、きれいな爪の形、あたしのより長く伸びるその指。
――中指がいちばんおいしそう。
舐めたい。味わいたい。少しでもあなたをたくさん感じたい。
「はぁ……、んっ、むぅ……」
ぴちゃ、ぴちゅと我ながらイヤラシイと思う音が大きく響く。
耳から音にも犯されて、あたしは夢中になってユーシュンの指をくわえ込む。
満遍なく舐めているからふやけてはいないけど、手のひらまで唾液でべとべとだ。
あたしの口の周りは言わずもがな。
さっきから下腹部の奥がすごく切ない。胸も服にこすれたてっぺんがうずうずする。
私は片手でタンクトップをたくしあげると、ぎゅうっ、と自らの左胸を握りしめた。
痛いくらいの刺激で、ようやく体を駆け巡る痺れが弱くなる。でもその分、今度は下腹部の切なさが強くなる。
躊躇は一瞬だった。
大型スーパーで買った安いパンツとショーツ、そして繁みをかき分け、
私は潤みだしているそこに手を伸ばした。
「あ……、……んんっ」
自分でするときも人にされるときも、絶対にその上の突起がいいのに、今日は迷わず自分の中に指をはわす。
口はとうにユーシュンの指をくわえていられず、頬に僅かに引っかかっているくらいだ。
でもその感覚が、口の中に残る感触があたしの指と重なっていく。
いつもは1本だってキツいのに、今日は最初から2本差し込む。ユーシュンの太さに少しでも近づけたい。
声は漏らせない。でも、下の方から響く音はどんどん大きくなる。
目の前にある膨らみは最初は誘惑だったけれど、今は戒めだ。見るだけで、我慢しなさい。
今だって充分言い訳の効かない状況だけど、出しちゃったら、舐めちゃったら、
あたしは入れてしまうかもしれない。
そしたらもう明白な事実しか残らない。ユーシュンは気づくだろう、あたしの所業と気持ちに。
イってしまおう。そうすればこの気持ちも治まる。だからごめん、もう少しだけ、ユーシュン。
「ユーシュン……、ごめんね……」
ユーシュンの膨らみに顔を寄せる。空いている手でその形を確かめる。
柔らかいそれを触ったことはなかった。不思議な感触。ちょっと強く握りたくなる。
下にある丸い2つの膨らみをころころと弄ぶと、根本から先端まですーっと逆撫でする。
何回か繰り返すと少し芯が入ってきた気がして、手の動きを速めると少しずつ硬度が増す。
手をはずす。顔を埋める。はずした手を下に持って行き、あたしの一番感じるところを強くこねる。
汗の混じった匂いと肌に感じる硬さ。それらを今までの記憶と自分の指に重ねてあたしは陶酔する。
ぐちゅぐちゅと中をかき回して、同時に小刻みにその上の部分も擦りあげる。
今までで一番感じる。
手がどんどん早くなって体中を駆けめぐる快感の粒がぎゅぅっと集まって体を満たし破りそうな――
「んんん――っ、……ぁあっ、ふぅ、んん――――っ!」
――最後、彼のモノを少し口にくわえてしまったのは許してほしい。

222 :

******
それからしばし放心したあたしは、暫くしてからもぞもぞと着衣の乱れを正しそっと立ち上がった。
今更なのは承知で、なるべく物音をたてずに台所に向かい、布巾をお湯で濡らし甘めに絞った。
今はもう乾き始めているユーシュンの手を慎重に、でもしっかりと拭い清める。
逡巡したものの、結局股間はそのままにして毛布をかけ直すだけにとどめた。
大判の膝掛けをとりだし体に巻き付ける。
イルカの柄のそれは手触りといいデザインといいあたしの一番のお気に入りだ。
ユーシュンのちょうど向かいの壁に、クッションをいくつか重ねてもたれ掛かるように寝る。
冷静になったあたしは、それでも後悔していなかった。
バレたらどうしようと思わないこともないが、終わってしまった今となっては些細なことだ。
だって、気づいていたのに止めなかったのだとしたら、明日以降ユーシュンはどう切り出すというのか。
あたしだったら何もいえないだろう。事情がどうあれ結局は黙認したのだから。
それに問い質したところで、もし関係を壊す何かが起きたらどうする。
自惚れではなく、ユーシュンにとってあたしの存在はもうなくてはならないのだ。
自分を許容し、適度に距離を保ち、付き合ってほしいと迫ってこないオンナ。
挿入もフェラもしなかった。匂いは嗅いだし頬擦りもしてしまったけど、でも決定的なものはなかった。
あたしは、ユーシュンを使って自慰をしたにすぎないのだ。
ただそれだけの話。
視界が歪む。覚悟はしていたけど、この虚しさはやっぱりキツい。
明日の朝は定番のお味噌汁を作ろう。豆腐とわかめのオーソドックスなやつ。
そしたらいつも通りの朝が、いつも通りのあたしたちが始まる。
だからどうか、眠るまでのひとときだけ、始まることのないこの恋に浸らせて、ユーシュン。

223 :
以上です
有難うございました

224 :
GJ
この二人の続きが気になるよ!

225 :
GJ!
シチュがすごい好みだw
むくわれなさが良いけど、続きがあったら見たいな

226 :
GJ!
二人の馴れ初めが気になるな
難しいシチュなのに良作の宝庫だwww

227 :
切ないけど萌えた…ごちそうさまでした、GJ!

228 :
GJ!まさになさぬ恋って感じだね
それにしても、輪ゴムw

229 :
あげあげ

230 :
GJ!
このスレ萌えが半端ない

231 :
ここか神の集うスレは・・・
どれも続編がみたい
保守

232 :
ゆうきちゃん、ちぃこに目覚めてからどうなったんだろ?

233 :
ゆうきちゃんとちぃこには萌えた
しかし母の名がちづこで自分の名がゆき○なので非常に複雑な気分にorz

234 :
ここ萌の宝庫過ぎる

235 :
なんという神スレ
オカマ×女子に昔から萌えてて
ふしぎ遊戯の柳宿とか好きだったなあ
ところでノンケ男×ガチレズとかはスレ違いかな

236 :
>>235
板的にはスレチだろうな
だが個人的には読んでみたい

237 :
保守

238 :
あげ

239 :
ここって女×ゲイはアウトかな
ゲイネコがS女に玩具突っ込まれて騎乗位で、前後同時に攻められるみたいな

240 :
ちょっと前にバイ×女があったんだから大丈夫でしょ

241 :
>>239
書くの?読みたい

242 :
なんとなく開いたらまさかの良スレで萌え転がった
悠生ちゃんとチィ子の話も他のもGJすぎる
こんなはずじゃ〜は切ないな。でも良かった
続きが読みたい話ばっかりだ

243 :
古本屋で見かけて思い出したが、昔プライベートアイズって漫画があって
それで初めてオカマ×女性というシチュに出会った
その頃から好きだったなぁ…このスレはほんと良スレだ

244 :
デボラがライバル
世界でいちばん大嫌い
紳士同盟†(ワキ)
オカマ(おネエ言葉)キャラが女に惚れる話でいまパッと思い付いた作品

245 :
あ、BASARAもかな。これも主役じゃないけど

246 :
>>243
プライベートアイズ懐かしいな。
オカマカップルふた組いていい漫画だった。

247 :
あの漫画オカマってより仕方なくの女装って感じじゃなかったか

248 :
プライベートアイズ懐かしいw これと世界で一番大嫌いは別に真のオカマってわけではなかったような気がする。
デボラは良いオカマだったけど
>>245
BASARAって揚羽の事?

249 :
>>248
プライベートアイズは事情があってあの格好してた筈
世界で〜はおねえ言葉になるまでにはちょっとワケがある
両方ともオカマではなかったな
どっちもノリノリでやってたけどw

250 :
保守がてらにネタ投下。
エロなしで。
恋のライバルのオカマ(20)と女(19)。

251 :
アタシは今、森の中。
人生という広大な森の中で迷子になった可憐な子羊と言ってもいいわ。
…嘘だけど。
サークルの夏合宿で、好きな男と大嫌いな女が2人っきでイチャコラしようとしてる所に割って入って
失敗し、ヤケになって歩いてるうちに森で迷子になった、ただのオカマ。
『○○村自然の家』とは良く言ったものね、ほんのちょっと歩いただけのつもりなのに
明かり一つみえないなんて。超大自然って感じ。
夏休み。サークル合宿。夏の夜。花火の後。星空の下。2人きり。
青春ワード満載のこのシチュエーションで恋に落ちない男がいるだろうか。
仕方ないって分かってるの。
だってアタシは男、オカマなんだから…!
大学の入学式で、隣に座った真に一目ぼれして、同じサークルに入って1年。
何とか普通のお友達にまでなれたのになのに…。
それを新入生のクソ小生意気な女に横取りされるだなんて。
「ううっ。こんなところで迷子になるなんて…あたしってばなんて不幸なの…。
だいたい男に生まれた時点でかなり不幸よ。
19まで男として生きてきた事も不幸だし。
やっと女として初めて好きになった相手がノン気な上に一番キライな女に取られそうなんて。
ああ、アタシってなんてかわいそう。」
することもなかったので、自分に酔ってみた。
合宿最後の夜の大宴会だもの。みんな酔っ払ってもう寝てるわね。
これは朝になるまで探してもらえないかも。
うっそうとした夜の森にたった一人だけど全然怖くなかった。
ふつー、女の子なら震えて恐怖におののいたりするところじゃない?
やっぱりアタシって男なのねぇ、はぁ。
ため息をついて抱えた膝に顎を乗せると、チカチカと懐中電灯の明かりが見えた。
良かった。助かった。

252 :
「せ〜んぱ〜い。」
げ、高山小春…。何でこんなところに…。今は絶対に顔を合わせたくないわ。
「ハナせんぱ〜い、どこですか〜。返事してくださ〜い!」
「花京院太郎せんぱ〜い!」
「ちょっと!!その名前で呼ばないでって言ってるでしょ!!」
「あ、先輩み〜っけ」
…しまった。無駄に豪華な苗字のクセに名前が男の代名詞『太郎』だなんて…
親のセンスを恨むわ。
「は〜、疲れた。先輩歩くの早いんだもん。どっこいしょっと」
ずいぶんオバさんくさい座り方ね。
「何よ、あんた何しに来たのよ」
「だって、先輩中に戻るって言って全然違う方向行っちゃうし。」
「ま、迷ってないわよ。ただちょっと夜風に当たろうと思っただけだし。
考え事しながら歩いてたらちょっと遠くに来すぎちゃって疲れたから軽く休んでただけだし。
すぐに戻るつもりだったし。」
「…ふ〜ん」
絶対ウソだってバレてる…。アタシ最高にミジメ。
「…」
「…」
「あ、あんただって。うっ…腹ん中じゃあたしの事笑ってるんでしょ?
あ、たしなん…て、こんな…オカマ…だもの。ぐすっ。
せっかく2人っきりのとこ、邪魔して、悪かったわね。」
「…。ほんとはハナ先輩が来てくれてホッとしたって言ったらどうします?」
「な何よ、それ。バカにしてんの?」
ぶすっとして答えるアタシに向かって、小春は両手を大きく広げた。
「な、…何よ」
「『私の胸でお泣き。』いっかいひゃくえん」
小春は真面目ぶって言った後ちょっといたずらっぽくふふっと笑った。
その声音には、同情も哀れみも蔑みもなくてアタシは不覚にも泣いてしまって。
小春はそんなあたしの背中をずっとさすってくれていた。

253 :
それから夏休みが終わるまで、田舎に帰っているらしく小春とは顔を合わせなかった。
ちょっとバツが悪かったから、丁度良かったわ。
休み明け、小春は肩下まであった髪を、顎のラインでバッサリ切っていた。
「なあに?!どうしたのその髪型!」
「切っちゃいました!」
「まぁ、節子みたいね」いつものようにイヤミっぽく言ってやった。
「あはは!やっぱり?奈緒にもさっき言われました〜。
 カエラちゃんみたいにって言ったのになぁ〜」
唇を尖らせて髪の毛をつまんでいる。
あら?いつもなら言い返してくるところなのに…調子が狂うわ。
「ほれ、高山。『にぃちゃん』って言ってごらん?」
「も〜、やめてくださいよ。優子先輩まで」
「…何かあったの?」
「何かって?」きょとん。
「髪は女の命じゃない。心境の変化とか…」
真に振られたとか。そうゆう答えをちょっと期待した。
「別に。なんにもないですよ」
あっけらかんとして答えると小春は
「ハナ先輩」と言って小さく手招きした。
背のびをして口元に手を添えると小さな声で
「富岡先輩の事諦めました。ハナ先輩の味方ですからね」
それだけ言うと
「じゃまた〜!」
と言って駆け出していく。
「何だって?」優子が尋ねる。
「…さあ?」
今度は私がきょとんとして太陽の下を駆けていく小春の後ろ姿を見つめている。
「若いわねぇ」
隣で優子がタバコを咥えながらゴルゴみたいな渋い顔をしていた。

254 :
失敗した…。
勢いで書いたからオカマの一人称がアタシと私、混じってた。
もっと推敲すればよかった。
すいません。
この後オカマが女に惚れる展開の予定だけどエロがない。

255 :
GJ
なんか可愛いよ太郎可愛いよ
エロなしでも、私はわりと好き。

256 :
同じく太郎可愛いよ
春たんも可愛い
続きが気になる

257 :
じゃあ、調子に乗って続きを投下。
エロないから、興味のない人はスルーお願いします。

258 :

「もういいのよ!アタシの事なんてほっといて!!」
フトンを頭から被って叫んだ。
「今すぐ取ってやるこんなモノ!!…ううっ」
優子が小さくため息を吐いた時、部屋の中に携帯の着信音が響いた。
ゴットファーザー…優子ったらどこまでシブいのかしら。
「はい、ああ、着いた?そうそう、5階。待って今開けるから」
玄関の方に優子の声が移動していく。
何?誰と会話してんの?
ガチャリとドアが開く。
「いらっしゃーい。え…、ああ、いいのに。気ぃ使わなくって」
「…」
何よ。誰よ。ここはアタシん家よ。
ちょっと、アタシの事ほっぽって何やってんのよ。
優子はアタシを慰めに来たんじゃないの?
もうほんっと女の友情なんてこんなものってわけよね。と思いつつ、部屋に戻って来る優子達の会話に耳をそばだてる。
「悪いね〜、急に呼び出しちゃって」カチャ。
「いいえ〜…わあ!!何コレ??服塚??塚ってゆうかもう何か要塞?!」
収納とか衣替えとかいうワードに無縁だったと思われる、春夏秋冬のおびただしい量の服がベットの周りを占拠している。
「すごいでしょ」
「先輩って以外と……何て言うか…その…大雑把…なんですね」
来訪者はコメントに詰まって、何とかソフトな表現を選ぼうと頑張ったが上手く行かなかったようだ。
「だらしないのよ。基本的に家事とか全部ダメだし。そのくせ」
ちょっと…、それ、アタシの事?黙っていれば言いたい放題じゃないのよ。
もう我慢出来ない。
はっ…てゆうか、さっきの声って…まさか高山小春?!
「優子!!」
フトンを撥ね退けて怒鳴ると、小春が驚いた顔でこっちを見つめていた。
やだ!アタシってばいっつもこのパターン!!
「か、彼氏さん…です…か?」
「誰だか分かんない?」
優子はおかしそうに片眉を上げ、小春はジッとこっちを凝視している。
「……?」コケシが首を傾げる。
「ほら、あのケータイ。見た事ない?」
テーブルの上の、リラックマストラップの付いた白いケータイを指差す。
「えええ!ハナ先輩?! わっ!だっさああ!!誰?」
グサッ。アタシはそのままベットに倒れ込んで再びフトンを被る。
「アレ門島高校って!高校のジャージですよね?ありえない!」
黙れ、座敷童子。
「どうどう、高山。落ち着いて、色々言葉の刃が剥き出しになってるから」
アタシのお部屋スタイルは可愛い部屋着でもセクシーネグリジェでもなく
すっぴんメガネに高校のジャージ&スウェット(足首がキュってなってるやつ)。
…これが落ち着くんだもん。
「だって!私ハナ先輩に何度も『田舎くさい』とか言われて…
あれ?じゃあここって、ハナ先輩のお家なんですか?」きょろきょろ。
「イエス。」
「…竜の巣だ」
「は?」
「ハナ先輩の家には竜の巣があるって噂、…ほんとだったんですね」
うちは天空の城か。
「あ〜、アレね。腐海の森…とか呼び名はいろいろあるね。」
そこまでひどくないわよ…多分。

259 :
「で、悪いんだけど。ちょっとコレ見ててくんない?何があったか知らないけど荒れててさ。
『トルコに行ってチ○コ切って来る』とかヤケ起こしてんのよ。あたしこれから用があるんだ。」
「え…ちょっとってどれくらいですか?」
「大丈夫ただのヒステリーだから、ひとしきり喚いたら元に戻るからさ。じゃ、よろしく」
「あ、まっ…。」
バタン。
優子の薄情者。
よりによってこんな女置いてくなんて。信じらんないわ。
「えと…先輩。私、梨持って来たんですけど…食べません…よね?」
「…」
「後で、にしましょうか…」
「…」
ほっといたらそのうち帰るだろうと思っていたけど、高山小春はなかなか帰る気配がない。
何だかゴソゴソ物音がしている。
「ちょっと。アタシの物に触らないでよ」
「だって、座る所ないんですもん」
床一面に物が溢れてて。
「座らなくっていいわよ、帰って頂戴!」
「何かあったんですか?先輩」
「あんたに関係ないでしょ」
アタシはフトンを被って、背中を向けたまま。
「言いたくないならいいですけど。言いましたよね。私、先輩の味方だって」
フン、どうだか。こないだまでライバル同士だったのよ。
その味方発言だってアタシを油断させようってつもりなのかも。
信じられたものかどうか…。
「あんたにアタシの何が分かるのよ。
アタシの気持ちなんて…アタシは女になりたいの。
トルコだってどこだって行ってやるわよ」
ベットの近くに寄って来たのか、声が少し近くなった。
「それで、…ほんとに先輩は女の子になれると思ってるんですか?」
「どうゆう意味よ」
「残念ですけど、女にはなれませんよ。手術して、胸に詰め物して、ホルモン注射とか打って、戸籍の性別を女にしたって。
それで、良いって言う人もいるし、それは個人の自由ですけど。
そこにこだわっちゃうと、一生手に入らない物を求め続けるだけになっちゃいませんか?
私、上手く行かない原因を全部そこに持って行っちゃってる気がしますけど…。」
何よ何よ。自分が女だからって上からもの言ってくれちゃって。
そんな事…、アタシが一番良く分かってるわよ。
ほんとの女の子になれない事くらい…。

「先輩、甘いものあんまり好きじゃないでしょ。ほんとはお酒が大好きだし、タバコもちょっと美味しいって思ってるでしょう。」
う…。毎日お酒が飲みたいし、酔っ払うと男言葉が出るし、スカートは股がスースーして好きじゃない。
「けど、先輩は女の子は甘いものが大好きで、お酒が弱くて、タバコなんて吸っちゃいけないって思ってる。
そうじゃなくてもいいのに。女の子にもいろいろいるのに。甘い物が嫌いな人、お酒が大好きでヘビースモーカーでも、女らしい人はたくさんいますよ?」

260 :

「それは…そのコ達が本物の女だからよ」
「だって、それにはなれないんだから…。
私は、女らしさってどうゆうものか…良く分からないけど…、自分がどう思うかだと思うんです。
先輩が、自分で『私は女』って思うなら誰が何て言ったって、女の子なんですよ。
いいじゃないですか、無理しなくたって。男らしい外見の、男らしい仕草の女の子だって」
「先輩はちゃんと女の子ですよ。」
「こ、こんな部屋着きてても?」
「はい。」
小春は床に座ってベットの淵に頬杖をついていたけど、あたしが起き上がると
ベットに腰掛て、あたしにその肩を貸してくれた。
「けどもし、先輩がほんと〜に、どうしても女の子の体になりたいって時は、私反対しませんからね」
小春はアタシの背中を優しくさする。
節子…なんてええ子や。ぐすっ。さっきから涙止まんない。

「先輩、お腹空きません?夕飯の時間過ぎちゃいましたね〜、何食べたいですか?」
「…牛丼…」
「あ、吉牛。私買ってきます」
その背中にそっと声をかける。
「…つゆだく大盛りで…卵もつけてよね…」

「あれ、もう落ち着いたの?今回早かったね。わ、ハナん家でテーブル使えるなんて」
大事な用事を急いで切り上げて来た、という優子先輩は驚いていた。
「高山あんたい〜嫁になるわ〜、ハナと違って」
「ほんとですか〜?」
「けど、こうゆうしっかりしたのにはハナみたいなのとくっつくのよね」
「えぇ〜、私どっちかってゆうと優子先輩みたいなシブかっこいい男の人が良いな〜」
「あんた達ねぇ、ちょっと人の家で百合ごっこはやめてよね。まったく。
だいたいアタシの事何だと思ってんのよ」
俄然元気になったハナ先輩は、牛丼をワシワシかき込んだ後、満足そうに
「は〜、やっぱコレだわ」
と男らしく言った。


261 :
誤字脱字あったらすんません。
こんな話があと4話ぐらい続いて、エロまでいけるか不明な感じ。
エロなしで長引くとすれ地

262 :
途中で送信しちゃった。
エロなしで長引くとスレチっぽいので出来上がったら
エロなしスレにでも投下しようかと。
ちなみにアタシも部屋着はジャージです。
何故か書いてる方までオネェ口調になってくる不思議。

263 :
GJ!!ありがとう!主の文章好きです。
個人的には注意書きしとけばここでも大丈夫じゃないかと思うけど別スレに投下するなら見に行くよ

264 :
まあ長引くのはしゃあないからな。
スレのテーマ的に、相手をまず性的な対象として
見られるようになる所からはじめんとならんし。

265 :
GJ!
このスレに投下してもらえたら個人的には嬉しいです
続きが気になる

266 :
GJ!
シンプルでテンポが良いから、読みやすくて自分的にはすごく好みだ
多少長くなっても構わないから、投下してもらえると嬉しいな

267 :
>>264のレス読んでちょっと気になったんだけど、
オカマっぽいヘテロ×女はありなのかな?

268 :
>>267
口調が女性っぽいとか服装仕草が女性っぽいとかわかるような記述があるなら自分はありだと思う

269 :
恋とは…の者だけど、バーッと書いてみたらエロ前までで9話くらいだった…。
投下済みの2話除いて、長すぎる話は分割するとして12〜13回くらい?
長すぎじゃね?
もはや全然ショートじゃねぇ…軽い連載になっちまうわ。
投下先はここでもエロなしでも良いんだけど、長すぎるのがネック。
需要がなければお蔵入りで。


270 :
そのストックの容量がどのくらいか分からんが、
一度の投下で例えば50KBくらい落としても問題ないと思う。
どうしても気になるなら完結させてからロダとか色々方法はあるよ。
需要があるかどうかは読んでみないことには分からん。

271 :
幼馴染みスレとかでもエロパロだけどエロ強制じゃないスレもあるし、
住人がOKならいいんじゃないんだろうか
ちなみに自分はエロなくても投下してほしい


272 :
おいらもエロなしでもおkだぜ

273 :
同じく
先が気になるお

274 :
じゃあ、様子見ながらって事で。
エロ無いんで、興味ない方はスルーお願いします。
ほぼ、会話と心理描写のみ。
表現力?なにそれおいしいの?
みなさんの想像力が頼りです。

275 :

「あ」
「…え…?」
自分を通り越した優子の視線に小春は背後を振り返ろうとする。
「小春〜♪」
がしっ。(捕獲)
「わっ、ヤダ先輩やめて、いや〜〜〜〜!!」
夕方の、人もまばらな学生ラウンジに小春の悲鳴が響く。
「ん〜、かわいいかわいい♪」
(片手ヘッドロックで思う存分)わっしゃわっしゃ。
「…あ〜…うわ〜ん」
頭髪を爆発させた小春は縋るように優子を見つめる…。
「毎日毎日よく飽きないね…」
「うふふ」
小春の隣に座って満足気に笑うと優子はため息をついた。
「けどそろそろ結べそうじゃない?高山。髪、伸びたね」
「やっと節子脱出ですかねぇ。もうちょっと伸びたらパーマかけようと思ってて」
ようやく肩に届きそうな髪をとかしながら、嬉しそうに言う。
「ストレートでも可愛いと思うけど…ってえ〜、伸ばしちゃうの??
せっかく可愛いのにぃ。アタシは短い方が、いいと思うな〜☆」
必に手櫛で梳いている小春の頭を撫でる。
「素直によろこべない。先輩、絶対バカにしてるんだもん…」
ついこの間まで昭和の子供みたいな髪型だったのだ、本人は木村カエラを意識したと言っているが。
「そんな事ないって、テヘ☆」
「嘘!その顔は絶対バカにしてる!も〜…。」
ぐちゃぐちゃになった髪を直しにトイレへ向かう小春の背中を笑顔で見つめる。
「いい加減にしなさいって」
「だってぇ、かわいいんだもん。もう何ていうの?お姉さんの気分?ああゆう妹が欲しかったのよ。
アタシ一人っ子じゃない?」
それにあの髪型。あの映画アタシダメなのよねぇ…。
小春を見ると節子を思い出してついつい世話を焼きたくなるというか、保護欲が沸くってゆうか。
ほぅ…と頬に手を当てると、優子が呆れたように
「ペットじゃなくて?高山とじゃれてる時のあんた、ムツゴロウにしか見えないけど…。
過保護なタイプだったなんて意外」
と言った。
「そういうアンタは千尋の谷に突き落とすタイプよね。
何か…心配なんだもの。何これ、母性本能ってヤツかしら?」
「あたしは別の事のが心配だけど」
「何よ?」
「あんた、自分達の体格差気付いてる?
いつか高山の首の骨が折れるんじゃないかと、あたし気が気じゃないわ」
「うそ〜!!」
アタシ……?
「あんまりしつこくすると嫌われるわよ。高山だってそのうち彼氏が出来たりしたらあんたなんて…」
「彼氏?!まさか〜。節子じゃ誰もときめかないわよ」
「そうかな。もうちょっと髪が伸びたら、モテると思うけど。あんたと違って素直だし」

276 :

「なんの話ですか?」
戻って来た小春が椅子に座る。
「ん〜?高山が最近かわいくなったって話」
「ほんとですかぁ?」
「んなわけないでしょ〜、ワカメちゃんみたいでかわいいって話よ」
「先輩のいじわる!」
「お姉さんの気分で心配なん、だ、って」
「え〜、私どうせなら優子先輩みたいなお姉ちゃんがいいです」
「まっ、何よいっつも優子優子って!!」
きぃぃと歯噛みするアタシを2人が笑う。
「あ、私そろそろ…」
時計を確認すると、小春は帰り支度を始めた。
「帰るの?じゃあアタシも一緒に…」
「あ〜、私…その友達と約束が、あって」
「そうなんだ…」
がっかり。
「すいません。じゃあ、お疲れさまで〜す」
「おつかれ〜。ね〜え?最近あのコ付き合い悪くない?」
「そお?」

昼過ぎの部室では数人のメンバーが談笑していた。
普段は特に何をするでもなくただ集まってお喋りをするようなサークルなのだ。
「お疲れ〜♪っと小春は…」
隅のテーブルで真と一緒にマンガを読んでいた。
「あ、せんぱ〜い。お疲れさまで〜す」
小春がアタシに気がついて手を上げる。
「じゃあ」
真は席を立ってソファーに固まっている集団の方へ向かい、あたしは真が座っていた小春の向かいに
腰をおろす。
「富岡先輩がね、来月の連休にね、皆で旅行に行かないかって〜…」
小春はジャンプを読んでいた。
「ふわ〜あ」
「おっきな口あけて、はしたないわ〜。寝不足?お肌に良くないわよぉ」
「うん、ちょっと…。」
少し潤んだ瞳を瞬かせた。
「それより先輩、今週のワンピース読みました?」
「まだ。先に言わないでね。」
「ちょっと待ってくださいね、もうすぐ読み終わりますから…」
小春はジャンプから視線を上げない。
俯いた頬には睫の影が出来ていた。
「小春〜、みんなでコンビニ行くけど行く〜?」
ソファの方にいた奈緒が小春に声をかける。
「ん、いいや。奈緒ちゃん、みかんのゼリー買って来て」
小春は財布から小銭を取り出して、奈緒に渡した。
「おっけー。ハナちゃん先輩なんかいりますか?」
「あたしはいいわ」

みんなが出て行くと部室はとたんに静かになった。
ページをめくる音と、時折ふっともれる小春の笑いだけが聞こえる。
熱心にマンガを読む小春は眉間にうっすら皺を寄せている。
この子熱中するとこうなるのよね。
睫長くて羨ましいわ〜。色も白いし、ほっぺたすべすべね。
優子の話を思い出す。確かに、元の造詣は…悪くはない。
もう少し髪が伸びて、大人っぽくなったら…きっとたくさんの男達が彼女を振り返るだろう。

277 :

「へ…へんはい…?」
アタシにほっぺを抓まれて、怪訝な顔で見つめる小春にやっと気がついた。
「あっ、ごめん」
無意識だった。
「何か私気に障る事…あっ、さっき富岡先輩と2人で話してたから?
先輩怒ってるんだ?あ〜、ごめんなさい。」
ああ、真ね。
ほんとうは、そのうち真は小春のことを好きになり、2人は付き合うと思っていた。
「ねぇ、小春。あんた真の事好きだったのよね。どうして諦めたの?」
一瞬、小春はビックりしたようだけれど、空を見つめて言葉を選ぶようにゆっくりと話だした。
「…諦めたってゆうか…。あの、ほんとはそんなに好きじゃなかったのかも。
『富岡先輩に振られても、ハナ先輩みたいに泣けないなぁ』って思ったんですよねぇ」
「アタシに敵わないって思ったのね」
「いやそれは違いますけど(サラッと」
可愛くない。
小春はそのままマンガに視線を移した。
「恋に恋してたってゆうか、田舎から出てきて浮かれてたってゆうか。
富岡先輩って背が高くて、オシャレで、優しくて女の子の憧れのタイプじゃないですか。
たまたま近くに富岡先輩がいただけで、恋が出来そうな相手なら誰でも良かったのかもしれません。
それにいつも、ハナ先輩や誰かと一緒にたから…、合宿で初めて2人っきりになって…嬉しいとか、ドキドキとかって言うより、
困ったな〜と思って。
あの時、先輩が来てくれて助かったって思っちゃった。
ハナ先輩や優子先輩達とワイワイやってる方が楽しかったのかも」
頬杖をついて、懐かしむように思い出し笑いをしてながらページをめくる。
「それで、アタシを応援してくれる気になったってわけね。」
「けど…、それって現段階で言うと富岡先輩がゲイになるって事でしょう…?
その…それは富岡先輩の意思というか…いろいろ難しくて…積極的に応援は出来ないってゆうか…。
先輩ごめんね」
申し訳なさそうに、上目遣いで見つめてくる…。
ああ、何かその髪型でその目!節子に見つめられてるみたい!
何コレ、罪悪感?何かお腹いっぱいご飯を食べさせてあげたい気分!(←ちょっと違う)
「わかってる」
アタシがそう言うと、小春は笑ってジャンプに視線を戻した。
しばらくたつと、小春のケータイのアラームが鳴った。
「あ、私用事があるのでこれで…ジャンプどうぞ」
「また?ゼリーは?」
「あっ、〜っ奈緒にあげるって言っといてください」
「…」
「?」
「あんた…、最近おかしくない?」
「…何がですか?」
「何か、アタシに隠してるでしょう!!」
「そんな事ないですって、ちょっと友達と約束が…」
「…アヤシイ、はっ、まさか男?!」
ほぼ毎日一緒にいたのにいつの間に、どこのどいつだ?!
「男じゃないです!あやしくないです!」

278 :
数日後の部室で、小春はまだジャンプを読んでいた。
「まだ読み終わってなかったの?」
「はい、だからまだネタバレしないでくださいね」
それだけ言うと小春はジャンプを読み始めた。
やっぱり、最近ちょっとおかしい…。
冷たいとか言うのではないのだけれど、時々…何ていうか…。
思い廻らせていると、小春の同級生、関が現れた。
「お疲れっす」
「あ、関君。おつかれ〜」
「今週のジャンプ?おもしろい?」
小春の背後から覗き込む。
「まだ途中。」
「ちょっと関。顔が近いわよ!」
「すんません、俺目が悪くて」
苦手なのよね、コイツ。ニコニコしてるけど腹ん中で何考えてるか分かんないってゆうか。
小春と同郷関は、直接の知り合いではなかったようだけど、共通の知り合いがいるらしく何かと絡んでくるのよね〜。
油断ならない感じ。
「そいえば、旅行の話聞いた?」
「うん」
「富士急とサファリパークに1箔2日って予定」
「へ〜、楽しそう!!私どっちも行った事ないんだよね〜」
「あら、そうなの?」
「レンタカー借りて行くから、3万くらいなんだけど」
「3万か…」
「あら、そんなに安いの?アタシ行く。小春も行きましょーよ」
「えっ、でも…」
小春はちょっと考えこんだ。
「高山。強制じゃないし、予定とかあったら無理しなくていいから…。
返事は来週まででいいし」
「うん、ありがと」
関が優しい…だと?
「高山、髪伸びたね。伸ばしてるの?」
小春の髪を一房手に取る。女の髪を慣れなれしく触るなんて!(←あれ、自分は?)
「うん、今度は背中くらいまで伸ばすんだ〜」
「似合いそう」
「ほんと?」
あら?なにこの雰囲気。
「いけません!!」
「「えっ」」
「いけませんよ!頭髪の乱れは風紀の乱れ!」
「何それ、先輩だって伸ばしてるじゃないですか」
「大人はいいの!」
「1コしか違わないじゃない!」
「うるさい、未成年!
アタシが切ってア・ゲ・ル(ハート)」
シャキン。
「う…ウソでしょ?」
ガタっ、小春は困惑顔で椅子を後ろに引いた。
「マ・ジ」
「キャー、コワイコワイ。先輩目が怖い!!」
椅子から立ち上がって走り出した小春を追いかける。
「お待ち!」
クラブ棟に小春の悲鳴が響き渡った。
「やだ〜、優子せんぱ〜い!!」



279 :

翌週、学食で昼ご飯を食べながら、小春は旅行に行かないと言った。
「え〜〜〜、行かないの?」
「はい。…優子先輩も行かないんですよね?」
何よぅ、またまた優子?
「こんな寒い時期にわざわざクソ寒いところへ行く人間の気がしれないわ」
「え〜〜、優子がいないと嫌なの?行こうよ、絶対楽しいって。ねぇ」
「それに今、ライオンの赤ちゃんと写真撮れるんですって。ほら」
「ライオンの赤ちゃん??わぁ、かわい〜。い〜な〜…」
食い入るようにパンフレットを見つめている。
お?好感触?落とせるか?
「けど…もう、連休予定入れちゃって…」
未練たっぷりにライオンの写真を眺めながら、パンフレットを返して来る。
「そんなのキャンセルしちゃいなよ」
「こら、無理言わない」
優子が口を挟む。
「ごめんね、関君。せっかく誘ってくれたのに」
「しょうがないよ、また今度な」
何だよ、アタシにゴメンは?
むくれていると優子が
「その顔やめなって」
と言ってひじでつついた。
「だって。いないとつまんないんだもん…。」
「あ、けど真先輩行くじゃないですか!」
「そ〜なんだけどさぁ…」

「ねぇあのコ、やっぱり変よねぇ。何か…、」
小春が午後の授業へ向かってから、誰ともなしに呟く。
「何かあったのかしら…」
「何かって…バイトのことっすか?」
と関が言った。
優子が口の動きだけで「ばか」と言った。
「バイト?!いつから?き…きいてないわよ!」
「あ、コレ先輩には内緒って言われてたんだった…」
「優子、あんた知ってたの?!てゆうか関は何で知ってんの?!」
「本人からは聞いてないけど…」
「最近、カフェでバイト始めたらしくて。俺も詳しく知らないっすけど高山ん家、お袋さん亡くしてて大変みたいだから。
俺、店でたまたま見かけただし、誰にも話してないんじゃないっすか。」
「そういえば、あんまり家の話しないわね…」
小春の家も複雑なんだ。
「ああ、疲れてたのか…」
最近、小春が纏っているあの余裕のなさはそれか。
眠そうだったり、ぼーっとしていたり。
どうして、思い至らなかったんだろう…。
「…!ねぇ、じゃあ…」


280 :

数日後、部室に勢いよく小春が入って来て、扉はものすごい音を立てて閉じた。
ツカツカと歩み寄って来る。
「先輩」
怒っているようだった。
優子は『ほら、言わんこっちゃない』という顔をしてアタシを見ていた。
「どうしたの?」
「ちょっといいですか?」
「なぁに?今、…」
「ちょっと!!」
廊下に出ると小春は
「何ですか、アレ」
と、冷たい声で言った。
「アレ?」
「旅行のこと!」
「ああ」
「私、行かないって言いましたよね。どうして先輩が私の分のお金払ってるんですか?」
「お金、無いんでしょ?3万くらいアタシが出してあげるわよ」
「勝手な事しないでください」
「ほんとは行きたいくせに。素直に言えばいいのに、意地張っちゃって」
「私は、先輩とは違うの!
自分で買えないものは欲しくないし出来ない事はしたくない!私は行きません!!」
ムカっ。そうゆう言い方はないわよね。
本気で怒ってるらしく、頬が赤くなっている。
「何よ!!人がせっかく…」
「そんな事頼んでないでしょ!
私は…自分のことは自分で出来ます!こないだっからいちいち干渉してきたり…ほっといてください!」
も〜〜〜〜、可愛くない!!
「心配してあげてるんじゃない!!」
「だからそれが余計なお世話だって言ってるんじゃないですか!
ってゆうか、何で先輩が怒ってるんですか?!!!」
「アンタがアタシに嘘つくからでしょ!!」
「嘘?」
「バイトの事、知ってんのよ!
こないだっからオカシイと思ってたのよ。疲れた顔して、理由も言わないし。
心配されたくないなら、何で隠してたのよ」
小春は一瞬黙ったけど、まだ怒りが収まらないらしく
「だって!!!だって…恥ずかしいし!!」
うつむきながら言った。
恥ずかしい?
「先輩、絶対来たいって言いそうだし…」
ああ、そうゆうこと…。
「私まだ」
「分かったわ」
「…え?」
「分かった。もういい。おせっかいで悪かったわね」
何よ…。友達だと思ってたのに。

つづく
                          

281 :
3が2こになっちゃった…。
すんません。今回は長くなったので後編に続く。
1レス何行くらい書き込めるものなの?
改行でが難しい。
ちなみに、今、富士サファリパークでは実際に赤ちゃんライオンと
記念写真がとれるそうです。

282 :
GJ!

283 :
この板の制限は、容量は4096バイト、行数は60まで。
2ch全体の制限として、一行に256バイトまで。

284 :
つづき投下。エロ無いんで(以下略
>>283
ありがと〜。参考にする。

285 :

「またハデにやったわね〜。」
床に散乱する未開封の買い物袋。
毎度同じく、フトンに引きこもるアタシ。
「うわっ、コレ今回いくら使ったの?」
「…」
高級ブランドの袋を見つけて優子が呻いた。
「だから言ったのに。
今回のことは、あんたに非があるんだから…ちゃっちゃと謝っちゃえば?
なに意地はってんのよ。」
無言で優子に背を向ける。
「あたしが高山なら…、アンタみたいなヤツと付き合うなんてまっぴらゴメンね。
金持ちのオカマなんて厭味ったらしくて。
そのくせ何かあるとこうやって大騒ぎして他人を巻き込むのよ。」
「…」
「あの子、自分の弱いとこ知られるのが嫌なのよ。
プライド高そうだもの。同情されたり、哀れまれたりしたって思ったんじゃない?」
「アタシあのコに嫉妬してたのよ。ほんとの女のあのコが妬ましかったんだわ。
アタシの手の中で可愛がっていたかったのよ。離れて行くのが怖かったから縛り付けておきたかった…。
支配的で…依存的よね」
「そうかな…?
あんたはいつも、もっともらしい理由つけて納得させようとするのよね。
だから上手く行かない。
ほんとのことを知るのが怖いから、あり合わせの言い訳に自分を押し込めようとするの。」
「どうゆう意味?」
「さあ?それは自分で考えなさいよ。
それに、高山だって頭にカッと血が上っちゃっただけよ。」
「けど、『恥ずかしい』って言ったのよ!
ほんとはずっと、オカマと知り合いなの恥ずかしいって思ってたのよ!」
「あたしは高山がそんな事言う奴だとは思えないけど…。」
「人の心なんて分からないって言ったのはアンタじゃなかった?」
「…そうね。」


286 :

避けているわけじゃなかったんだけど…、学内でハナ先輩に会うことはほとんどなかった。
てゆうか、向こうは完全に私の事避けてるし!
昨日なんて、挨拶したのに無視されたし!!私が怒ってるのに!!
「高山」
「あ、優子先輩。こんにちは」
「アイツまたいつもの発作が出て大変だったのよ〜?」
「知りません!」
「私、前々から思ってたんですけど…、男とか女とかそうゆうんじゃなくて…
ハナ先輩と感覚違いすぎるってゆうか、時々…ついていけない。
お金の使い方とかもそうだけど、いい加減だし…。
部屋だって、私がちょっと片付けても、次に行くともっとひどくなってるんですよ!
それに」
「問題はね」
私の言葉を遮って、優子先輩は話し出した。
「本人が思うほど、難しくないのかもしれない。
 …けど、あなたが思うほど単純じゃない」
「え…」
「人の心なんて、誰にも分からない。
あんたがハナの事分かった気になってるんなら、それは思い上がりじゃないの?
たった1年にも満たない付き合いで、彼の何が分かるの?
感覚が普通とは違うところあるけど、別に、労働をバカにしてるわけじゃないし、お金を大事にしないわけでもない。
ただ…、あのお金に何の価値も見出せないだけなのよ。
『手切れ金』なんだって。
『女になりたい』って言った時に、両親に4年間の学費と生活費の入った通帳とカードを渡されて
『もうこの家には戻ってくるな』って言われたそうよ。
『こっちから縁を切ってやったのよ。せいせいしたわ』って笑ってたけど」
「…」
「意地っ張りだから、自分から謝るなんて出来ないだろうけど
あいつの事嫌いにならないであげてね」
「…」


287 :

はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
せっかくの旅行なのに、ちっとも楽しくねぇ…。
「やっぱり、高山いないとつまんないんだ?」
帰りの車の中で、隣に座った真が言った。
「そんなことない!超たのしい!」
「顔に『寂しい』って書いてあるww」
「…」
「高山。いつも、ハナの話ばっかりするんだよ。知ってた?」
「アタシの…?」
「『家に遊びに来て、カーペットにコーヒーこぼした』とか『料理しようとしてもうちょっとで火事になるとこだった』とか
ハナ先輩がど〜したこ〜したって。」
「それ、アタシのことバカにしてんじゃないの?」
まぁ全部事実なんだけど…
「でも、散々言っても最後に必ず褒めるんだよ。
優しいんだって。」
どいつもこいつも…。何にも知らないくせに。
家の近くの大通りで降ろしてもらうと、もう外は夕暮れ時だった。
途中、コンビニに寄って帰ると、マンションの入り口の花壇に座り込んだ、小さな人影。
「何してんの…」
影が驚いて顔を上げると、髪の毛が揺れて長さのラインがわかった。
「富岡先輩が…そろそろ帰る頃だってメールくれて…。」
鼻の頭が赤くなっている。
「…どうしたの、その頭…。」
むき出しの首筋が寒々しい。
「別に…ちょっと長くなって来たから切っただけで…。」
気まずそうに髪の毛を弄りながらそう言うと、目線を逸らした。
「…ごめんなさい。私、言いすぎました。」
「別に。アレがアンタの本心だったって事でしょ?」
「売り言葉に買い言葉って言うか…つい勢いで言っちゃっただけで…。
先輩、仲良くしてくれるの…嬉しいし。」
「けど。アタシと知り合いなの恥ずかしいんでしょ?」
「??」
「言ったじゃない。アタシがお店に来たら恥ずかしいって。」
ああ、と思い当たった顔をした後、言いにくそうに
「だって!!
先輩、絶対来たいって言うじゃないですか。まだ入ったばっかりで、何にも出来ないし、
毎日失敗してるし…、怒られてるとこ見られたら…恥ずかしいんだもん…。」
と言って、唇を尖らせた。
「…なんだ」
バッカみたい。


288 :
「ううん。何でもない。アタシもごめん。無神経すぎた。
コレ」
手に持っていた紙袋を差し出す。
「何ですか?」
「お土産」
そう。ケンカしてるってのに見つけたら、つい買ってしまったのだ。
小さな赤ちゃんライオンのぬいぐるみ。
「私に?」
受け取らないかと思ったけど、小春は袋の中身を見つめながら
「ありがとうございます」
と笑った。
ほんとうだ、人の心なんて誰にもわからない。
本人ですら分からない時もあるのだから。
嫉妬でも、依存でもないその向こう側には、いったい何があるのだろう。
「あ、これ」
カバンをから小さな紙を取り出すと、
「皆には内緒ですよ」
と言って、来月から使えるコーヒーの割引券をくれた。
暫くその紙を眺めた後、アタシは…

先輩は…、いつものように私の頭に手を伸ばして、私は身構えたけれど、
ぽんぽんと軽く触れて、
「ありがとう」
と小さく言っただけだった。

おわり

289 :
こんな感じの話。
次くらいからもうちょい恋愛要素を増やせればと
思ってるけど、どうなるか…。
オカマと書いてある以外太郎がオカマらしい表現とかまるで無いしね…
投下については、住人のみなさんにまかせます。

290 :
乙&gj
楽しく読ませてもらった
俺はこういう話好きだ
エロなしでも全然大丈夫だがあれば嬉しい
個人的にこの二人がどうやって精神的以外に
肉体的にもどう結ばれるか気になりはする

291 :
GJ
ただやってるだけの話よりも、キャラに愛着が湧いてからエロがあると
より盛り上がるのでおk
エロなしで終わるとしても続き読みたい
小春かわええ

292 :
太郎可愛いし小春可愛いし。
続き楽しみにしてる。

293 :
GJ!
エロまでが長い作品でも全然好きだ
変にご都合主義で書かれるより丁寧に書いてあって
とても良いと思います

294 :
あの…なんかものっそいハードル高くなってない?
何コレ、自分であげたの?
いつも通りエロないんで以下略。
前回から1年後の設定で。太郎3年、小春2年の終わりくらいの話。
より増してセリフしかないんだけど…。

295 :

僕がまだ小さくて、クリスマスツリーが大きかったとき
あの人達は僕を優しい子だと言った。
僕が大きく、ツリーは小さくなった。
誰も僕を優しい子だとは言わなくなった。
時が過ぎていくのはどうしてなのか、僕には分からない。
「あ、小春」
「ん?どこ?」
優子が本から顔を上げて窓の外を見つめる。
ラウンジの窓際の席からは、構内が見える。
「図書館に行くとこの…」
「ああ。あんた目、いいのね」
背丈や、姿勢の良い歩き方、肩にかけたカバンを抱える持ち方…目が覚えてしまった。
いつからだろう、こうして彼女を目で追うようになったのは。
彼女の髪はずいぶん伸びて、時折顔にかかる髪の毛をうざったそうにする仕草を密かに気に入っていた。
僕はまだ、いつかの答えを出せないでいる。
「どうだったの?高山ん家。」
優子は本を読みながら尋ねる。
「…超ド田舎」
彼女はとっくに視界から消えて、僕は頬杖をついたまま窓の外を眺める。
「みんな良い人だった…」
この冬、誘われて彼女の田舎を訪れた。
彼女の家族は何も言わなかったし、何も尋ねなかった。
そして彼女は何も語らなかったけれど、たくさんの事を初めて知る。
彼女の家族は祖父と祖母、年下の弟は、この春から大学生になるという。
父親とは一緒に住んでいないらしい。
小春がスケートをやっていた事。それを母親の病気の為に諦めた事。
母親の後、半年もたたずに父親が再婚した事。
可哀想だとは思わなかった。世界が理不尽で、不平等であるということを事を、僕は知っている。
ただ、ひとつ思った事は、その時彼女は泣いただろうか…という事だった。
僕はまだ、彼女の涙を知らない。
「何にも知らなかった…」
「何にもって?」
「自分以外のこと」
「…今更ね」
「ほんとに…」
何も知らない。本当は、自分の事だって…。
僕は…何だ
男か、女か。大人か子供か。
自分が今何を考えているのかさえ。


296 :

「帰る」
そう言うと、優子はやっと本から顔を上げた。
「…そう。じゃ。」
どうしたの?とは聞かなかった。もしそうだったとしても、何も答えなかっただろうけど。

相変わらず雑然とした部屋に帰ると、ベットに倒れ込む。
寝具に染み付いた匂いで肺を満たす。
目を閉じると世界が回るようだ。
あと1年も経てば、僕はこの場所を去り、彼女と今のように会うことも無くなる。
彼女は卒業後、地元に帰るつもりらしい。
いつしか、メールも途切れがちになり…
そうしていつか…僕達はお互いの事を忘れてしまうかもしれない。
いつの間にか眠ってしまった。
目を開けると部屋の中は暗くなっていた。
昼は終わり、夜になる。
夜と昼の間を読めなければ…。
カーテンの隙間から、外の明かりが僅かに差し込んで部屋の中を見る事が出来た。
彼女はいつも床に座り、ベットにひじをついて僕を見る。
いつも。
目を開けると、すぐそこに、僕を見つめる彼女の姿が見えるようだった。

『せんぱい?』


ああ…。



297 :

「何コレ?フリマ?」
部室のドアを開けると、部屋の中には大きな段ボール箱がいくつかと沢山のレディース服が。
「あら、優子に小春。」
近寄って来るハナ先輩に後輩の女子が声をかける。
「せんぱーい。コレいいですか〜?」
「いいわよ。その中のは好きに持ってって」
「キャー、やったぁ」
「え?これハナ先輩の?どーしたんですか?」
「アタシ、今の部屋引越すのよ。それでいらないもの処分しようと思って
アンタたちも好きなのあったら持ってっていいわよ」
「けど…、先輩の部屋にあるのあんなものじゃないですよね?」
「そうなのよ。けど次の部屋今のとこほど広くなくって。
で、悪いんだけどアンタ達ちょっとお願いがあるのよ」
可愛く首を傾げると
「げ、まさかあんた手伝えとか言うんじゃないでしょうね。
業者頼んじゃいなさいよ。金あるんだから」
テーブルに広げられた洋服を物色していた優子先輩が言う。
「あら、バイト代くらい出すわよ?
持ってくものといらない物の区別くらいはしておきたいのよ。
てゆうか、部屋に何があるのか全然把握してないし。」
「私はいいですけど…」
と優子先輩を伺うと
「…しょうがないなぁ。1日だけだよ」
とめんどくさそうに言った。
「やったぁ。悪いわね。で、いつが都合いいかしら?」
簡単に予定を決めながら、服の山を探っていると、そのほとんどはまだ値札がついたままだった。
もったいない。


298 :

「じゃーね、ハナ。あたし達帰るわよ」
「ありがと〜。助かったわ。後は大丈夫だから」
ハナ先輩が『いらない物』というものを、リサイクル業者が引き取りに来ると部屋の中は驚くほど物がなくなった。
引越し自体は数日後らしい。
「は〜…しんど。」
優子先輩が顔をしかめながら腰を叩く。
「あたし達、焼肉が食べたい。ね、高山?」
「…え、焼肉?」
「あら、いいわね。奢るわ。じゃあ明後日の夜とかどうかしら。アンタ、バイトは?」
「あ、6時上がりですけど…」
「決まり!じゃあ、明後日6時半に駅前で。じゃーね」
さっさと歩き出した優子先輩をあわてて追いかける。
「あ、お疲れさまでした」
「ありがとね〜。」

優子先輩と並んで、駅までの道を歩く。
「いいんですかねぇ?ほんとに奢って貰っちゃって…」
「あんたねぇ、今日のバイト代は焼肉くらいじゃ足らないわよ!」
怖い顔をした後、真面目な顔をして言った。
「ちょっと、付き合わない?」

「ぷはーーーーーーっ!」
ダン!!
「労働の後のビール最っ高!!」
優子先輩は勢い良くビールジョッキを置いて、手の甲で口を拭った。
「けど、ハナ先輩全部処分しちゃっうなんて…」
「あれ、全部サイズ小さいって知ってた?」
「え…」
「オカマ心は複雑ってヤツでね…。
ワザと着れもしない洋服を買いあさっては棄てることも出来ないでいるの。
そうやって安定を保ってるのよ。」
お通しをつまみながら優子先輩は話しだす。
「ゴミ屋敷の住人が、無理やり部屋を片付けられると自しちゃう事があるって知ってる?」
「…」
「心の空洞を、埋めようとするのよ。お金のある人は自分のもので、無い人は他人のもので。」
だから優子先輩は、一度も『片付けろ』って言わなかったんだ。


299 :

「自分を守るためのあれは壁なの。子宮に見立てる人もいるわ」
「しきゅう…ですか?」
「ええ、母の胎内の再現。一番安心できる場所ってとこね。
何かあるとヤケ買いして、ベットに籠もるでしょ」
「……」
「彼は頭のいい人よ。自分の事良く分かってる。竜の巣の本当の意味知ってる?
『向こう側は逆に風が吹いている』
目の前に見える性質の裏側には全く逆の性質が潜んでいる…その矛盾が認められないの。」
「生物学的に…つまり身体的な性、性的嗜好がどちらに向くか、まぁ両方イケるって人もいるけど。
それから社会学的な性別。認識として女と思うか、男と思うかって事ね。」
そう言えば、優子先輩は心理学専攻だったんだっけ…。
「体は男、心も男、性的嗜好も男って人もいるし、女の体で女の心、性的嗜好も女って人もいる。
コレはもうほんとうに掛け合わせの問題じゃなくて、個々で違うから、難しいところなんだけど。
例えば、1から100までの目盛りがあって100%の完全な女って人がどれくらいいるのかね。
50:50の人は?男かしら?女かしら?どっちでもないのかも。
たった1%でも男の部分があったら『自分は男だ』って思う人だっている。
全ては自己をどう認識するかによる。
男らしさも女らしさも、両方あっていいのよ。
矛盾しているようだけど、それは至ってまともで自然な事なんだけど…そこがダメなの。
彼は完璧主義というか…、自分の中にある女性らしさの為に、男の部分を消そうとしているみたいだった。
それは逆も同じで、男性の部分があるが故に女としての自分を肯定しきれないの。
出来上がってる理想の型に自分をはめようとするから、そのうちボロが出るし、無理が出る。
女になろうとすればするほど、男の自分を意識せざるを得なくて、もがいているのが可哀想だった」
「先輩は、ハナ先輩の事よく分かってるんですね」
「あんたより、一年付き合いが長いだけよ。
ハナが女になっていく過程を見たわ。
痛々しくってね。」
「あたし達は、あんたが思ってるよりずっとドライな関係なの。
私は彼を、学術的な興味で見ているし。向こうは向こうで自分でも説明出来ないモヤモヤを分析して欲しいのよ。
あたし達はいつも心のどこかでお互いを利用しあっているから…、一番肝心なところであたしを頼らない。
あんたがいてくれて良かったって思ってる。」

春はまだ少し先で、まだ夜の空気には凛とした冷たさが潜んでいる。
家に帰る途中、アルコールの残った頭で優子先輩の言葉を思い出す。
あの部屋に住んでいたのは、竜の巣に守られたかわいそうな人。
あんなに広い部屋の中で、安心できるのはベットの中だけ…。
たくさんの物の囲まれて、頭からフトンを被っていた先輩を思い出す。
あの、ガランとした部屋で、今どうして過ごしているんだろう。
どうか。あの人が今夜は、悲しい夢を見ませんように…。


300 :
後日の焼肉。
次から次に重ねられて行く、空の皿とジョッキ。
呆然として見守っていると、優子先輩が
「高山、ぼーっとしてないであんたもどんどん行け!!」
と言う。酔っ払ってる。
「…いえ、私はもうお腹いっぱいで…」
「あ、すいませーん!上カルビ3人前と上タン塩2人前それからユッケと…」
まだ食べるの?
「あたしビール!」
まだ飲むの?!
「アタシも!小春は?」
「…いえ…」
「遠慮しちゃって、何、ダイエット?女の子はちょっとぽっちゃりくらいが可愛いのに」
いや…、そうゆうわけじゃ全然ないんですけど?

「は〜食った食った」
「…ご、ごちそうさまでした…」
店を出ると、ハナ先輩はお腹をさすった。
2人とも、何か明らかに通常時と体型が違うんですけど…。何か…こう…生まれそうな…。
お会計が一体いくらだったのか…想像するのも怖い。
ハナ先輩は売り払った『いらない物』から結構、収入があったのだと笑った。

優子先輩と別れた後、2人で歩いた。
お腹が苦しいから少し歩きたいのだと言う。
家の方向が違うからめったにないのだけど、遅くなるとハナ先輩は私を家まで送ってくれる。
先輩も女の子なのに…変な感じ。
「ね〜、先輩」
「ん?」
「…」
呼んでみたものの、何と言っていいのか。
聞きたい事はたくさんあったけど、そこまで踏み込むのは失礼な気がして躊躇われた。
私が何も言わないでいると、先輩も何も言わなかった。
頭の中でいろいろ考えてるうちに、あっという間にアパートに着いてしまった。

301 :

「私、今まで先輩に…いろいろ無神経な事言いました?」
ようやく声に出すと、先輩はちょっと意外そうな顔をした。
「ごめんなさい」
「別に。気を使われるのも疲れるし。
アタシ、アンタの事好きよ」
「え…えへへ」
何か、テレる。
「あれ。全部捨てちゃって良かったんですか?」
「ああ、…いいのよ。遅かれ早かれいつかはこうなってたんだから。」
その声からは特別どんな感情も感じられなかった。
「あそこの郵便局あるでしょ?」
「ああ、はい」
?何の話?
「あそこをさ、セブンのほうにずーっと歩いて行くとさ、小さな雑貨屋とかあるあの辺」
先輩はその方向に体を向けながら、指をさす。
「はい……が?」
「アタシの部屋」
「ええええええ?!」
「遊びに来てね♪」
と言って笑うと、背を向けて歩き出した。
最近、先輩は少し変だ。
けど、もっと驚いたのは次の日だった。
先輩がもうずっと伸ばし続けていた髪の毛が短くなっていた。
「どうしたんですか!その髪……何かあったの?」
「何かって?」
「髪は女の命って言ってたじゃないですか。心境の変化とか…」
私達はいつかの会話をなぞる。
「別に。」
「私が『女の子にはなれない』って言ったから?諦めちゃうんですか?」
「そうじゃなくて」
先輩が首を振ると、それに合わせて髪の毛がサラサラと揺れた。
「無理するの、辞めることにしたの。
『自分』に戻るだけ。
…何でアンタがそんな顔してんのよ」
先輩はちょっとムっとした顔で私のほっぺをつまんだ。
「ら…らって…」
先輩はその手を離して私の耳元に顔を寄せると
「アタシがあんたを好きだって事は覚えていてね」
と言った。


誰が泣く?五月が来たとき。

302 :
なんか太郎がただの男っぽくなって来たよ…。
優子の会話の中の汚部屋の話は半分ほんと。
けど、性別うんぬんのところの話は創作と感覚です。
もし、ご不快にさせてしまったら申し訳ないです。


303 :
すんげー面白い!
んでやっぱりちょっと切ない・・最高です。
続き楽しみにしてます。

304 :
GJ
これからふたりが恋愛関係になっていくんだろうとwktkして待ってます

305 :
良スレ保守

306 :
年末で職人さん達忙しいのかな。毎日覗いてるけど、良スレが過疎ってて悲しい

307 :
一次スレだもん、そんなにポンポン来ないよ。気長に待ちやしょうぜ

308 :
二次でもいいんでおまいらのオヌヌメ教えてくれ

309 :
二次だと自分は、ふしぎ遊戯の柳宿が好きだ。

310 :
わりと甘いというかラブいSSが多いけど、苦めのヤツ投下していい?
男2女1の嬲もので注意事項がちょっと多め

細かくは描写してないけど男同士のアナルセックス
二穴責め
言葉攻め
アンハッピーエンド
などを含みます。NGはトリップでお願いします。

311 :
大好きなダイ兄ちゃんのお嫁さんにはなれないらしい、と私が理解したのは
同じく大好きなパパと結婚できないと知った頃よりも少し後のこと。
血の繋がりなんて複雑なことはまだわかっていなくて、知っていたのは
結婚とは好きな人と1対1でするものだということ、
ただの好きではなく、特別な好きが必要だという二点だけ。
パパのお嫁さんはママだから、私はパパと結婚できない。
ダイ兄ちゃんは私のことを相当好きだけど、結婚するような特別とは違う。
好きな男の子を決めてきゃぁきゃぁ騒ぐ遊びに頑なに参加しようとしなかった私は
同じ年頃の女の子たちに比べてその手のことに少しおくてだと思われていた節があるけど
少し年の離れたダイ兄ちゃんの特別をもらえる対象が自分ではありえないことを知って
独りこっそり泣く程度にはませていた。
私がダイ兄ちゃんの秘密を知っているのはそういうわけだから私と同い年の、
つまりダイ兄ちゃんとは少し年の離れたチュウ君にこんな風に問い詰められても困るのだ。
「俺が気に入らないのは!兄貴が“ああ”だってことを俺達には秘密にしてたのに
 ショウコには教えてたってことだよ!」
「別に教えてもらったわけじゃないよ。順番が逆なの。
 私はずっと前からそのことを知ってたから、ダイ兄のコイバナの相手に選ばれてただけ」
「ずっと前に!!兄貴が教えたってことじゃねーか!!!」
紅茶の入ったマグカップを持つチュウ君のごつい指がプルプルと震えている。
チュウ君は外見だけはダイ兄と良く似ているけど
ごちゃごちゃ考えるよりも先に行動に移す直情型で、悪く言えばちょっとだけ馬鹿だ。
「教えてもらわなくてもわかるんだよ。だって、ずっとダイ兄のこと見てたから」
「なんだよそれ!?俺だって見てたよ!兄貴のこともショウコのこともずっと!!」
ほのめかしただけでは頭に血が上ったチュウ君には通じない。

312 :
だからチュウ君は、兄の恋の秘密を知ってしまったのと同じ日に
幼馴染のそれも聞かなくちゃいけない。まぁ、後者についてはすでに気づいてるかもしれないけど。
「違うんだよ。チュウ君みたいに、弟が兄ちゃんを見るような意味じゃないの」
ティーカップのふちをなぞって熱を楽しむ。チュウ君のよりずっと細い、目障りな指。
「自分がそうやって見てたからわかったの。ダイ兄が、私がダイ兄を見るのと同じ目で
 男の人を見てること。ダイ兄が今の人と付き合い始めるより前、子どものころからずっと」
すぅ、とチュウ君が青ざめ、また赤くなって泣きそうな顔になる。
そんな顔をするから、君はいつまでたっても私の弟分なのだよ。
年齢だけならチュウ君のほうが半年ほどお兄さんなんだけど。
「なんだよ、それ。じゃぁ、ショウコは兄貴のこと…」
途中で口ごもるくらいなら最初から言わなきゃいいのに。
「すきだよ。ずっと好きだった。いまでも、大好き」
少し遠くの大学に進学して家を出たチュウ君が冬休みのバイク旅行の寄り道に
アポなしで押しかけた実家でどうしようもなく決定的なシーンを目撃したのが数時間前。
まさかダイ兄が男の人とそういう関係を持ってるなんて知らなかったチュウ君は混乱したまま
私の部屋に押しかけ、自分の見たものを語り、私の落ち着きっぷりにキレて騒いで今に至る。
「ダイ兄もさ、別に隠してたわけじゃないと思うんだ。チュウ君だって家族に
 みかんちゃんの話はしないだろうし、私にもわざわざ恋人の性別なんか言わなかったでしょ」

313 :
今までに聞かされたお惚気によるとチュウ君の恋人は
実家暮らしの小柄な文学少女で、飼っている猫の名前はみかん。
名前も聞いたけど知らない人だし、私は猫の名を取ってみかんちゃんと呼んでいる。
ダイ兄のお相手は取引先の大企業の出世頭だというダイ兄曰く若手エリートで
独身寮(といっても会社借り上げの高級マンション)に独り暮らし。
何らかの抵抗が働くのか、私は何度教えられてもありふれた姓と中性的な名で構成される
その人の名前を覚えることができない。
北国出身のその人は絆創膏のことをサビオと言うので便宜的にさびおさんと呼んでいる。
ダイ兄とチュウ君は兄弟だけにコイバナの傾向まで似ているのだ。
決定的な違いはチュウ君の話に出てくるみかんちゃんは恋人のことをすごく大事にする子だけど
さびおさんはそうじゃない、ってことだろうか。
ダイ兄が小さいときからずっと恋に苦しんできたことを私は知っている。
大きくなって恋愛に肉体の欲が絡むようになったら、さらにダイ兄の苦しみは深くなった。
だから、ようやく恋心を受け入れてくれる相手を見つけたのに
ダイ兄があいかわらず苦しい思いをしているのがとても辛い。
「家族といえばさ、親父達にはなんて言えばいいと思う?」
ダイ兄たちの両親はおじさんの仕事で外国に長期赴任中なのだ。
「己の欲せざるところ他に施すことなかれ、でいいと思う。
 ダイ兄にみかんちゃんのこと知られたら、チュウ君はどうしてほしい?」
チュウ君は耳まで真っ赤になって視線を泳がせる。

314 :
「え?えぇ?!俺達はまだそういうのないし!
 違、えっと、そういうってのは、親に紹介するような!」
付き合いだしてけっこう長いしチュウ君は独り暮らしなのに、そういうのない、らしい。
きっとチュウ君もみかんちゃんのことをすごく大事にしてるんだろう。
「わ、わかった。親父達には、っていうか誰にも、このことは黙っとく。
 悪いんだけど、どうしようもなくなったらまた相談させて。
 あと、本当に彼女とはまだ、その…」
微笑ましいけど、嘲笑と受け取られるといけないのでことさらに眉を寄せてみせる。
「まだ、か。さっき言ったようなわけだから、その言葉すごくうらやましいよ」
ダメだよ、チュウ君。黙りこんでも、顔に“しまった”って書いてある。
チュウ君の素直な反応に、騙してしまった罪悪感が募る。
「はぁ〜……。俺、もう旅行切り上げて帰るわ。聞いてくれてサンキュな。紅茶ご馳走様」
400ccの大きなバイクに跨ったチュウ君を見送って部屋に戻ると携帯に着信が一件。
ダイ兄からだ。
私はシャワーを浴びる準備をしながらため息をつく。馬鹿なチュウ君。
嘘は何も言ってない。でもものすごく大きなパーツをチュウ君には見せていない。
昔からダイ兄のコイバナの相手をしていたのは本当だけど、それくらいで
突然男同士のベッドシーンの話を聞かされて、落ち着いてなんかいられるわけがないのに。

玄関のドアに鍵をかけ、声のする方向を探ってそちらに向かう。
応接間に入ると、おばさん御自慢の手入れの行き届いた革張りのソファのうえで
さびおさんがダイ兄を組み敷いていた。

315 :
肌蹴て乱れてはいるけれど、ふたりとも仕立てのいいスーツを身に着けたままだ。
何かのマンガに“ホモの嫌いな女はいない”と言い張るキャラクターがいるらしいけど
そういう子は私をうらやましく思うだろうか?
好きな人がそうだからホモセクシュアルに嫌悪感はないけれど、さびおさんのことは好きじゃない。
ダイ兄が切なげな声を上げながら熱くとろけた表情をこちらに向ける。
「やぁ。弟君からもう聞いた?
 ショウちゃんのために鍵を開けておいたんだけど、失敗しちゃったよ」
対照的に涼しげな顔でさびおさんが言う。嘘つき。
ここはチュウ君の家でもあるのだから、鍵なんか関係ない。
剥き出しの400ccのエンジン音は通りの向こうからでも聞こえるほどにぎやかで特徴的だし
ふたりともまだスーツを着ているのだから、チュウ君のバイクの音が
家の前に止まった時点で大急ぎで離れればいくらでもごまかしは効いたはずだ。
自分の露出趣味を満たし、ダイ兄を困らせて楽しむために
わざと見えやすい位置、見間違いようのないやり方でチュウ君に見せ付けたのだろう。
ダイ兄とこうなってすぐに、私を巻き込むためにそうしたように。
「ダイ兄ちゃんはさ、弟に見られて興奮しちゃって声が止まらないらしいんだよね。
 ショウちゃん、唇でふさいであげてよ」
ソファの端っこ、獣の姿勢でさびおさんを受け入れたダイ兄のすぐそばに座って
言われたとおりにする。
さびおさんの言葉は提案か懇願のかたちだけど、実際はいつも命令だ。
さびおさんが小さく動く度にダイ兄の唇が甘く蠢き、鼻からくぐもった声がこぼれる。
唇を割って入ってくる舌が、熱く湿ってダイ兄の欲情を伝えてくる。
欲情の相手は、舌を絡めている私ではないけれど。

316 :
ダイ兄の意外なほどごつい指が私の服を剥ぎ取っていく。
「そんなにガッついちゃ駄目だよ。ごめんね、ショウちゃん
 ダイのやつ君の裸が見たくてがまんできないみたいだ」
もちろんこれも嘘。
こうしないといけないように、あらかじめダイ兄を追い詰めていたに決まっている。
鍛えても鍛えても筋肉はつかず、肉が削げ落ちていくだけの薄っぺらな私の体。
この体ではダイ兄は慰められない。
ダイ兄の呼吸がさらに荒くなる。おなかの中で、さびおさんのものに変化があったのだろう。
可哀相なダイ兄。
ダイ兄は男であることを止められなくてそれでも男の人に恋してしまう同性愛者だけど
さびおさんは単なる性倒錯者、両刀使いのソドミーだ。
「相変わらず、やらしー体。ダイ兄ちゃんにたっぷり可愛がってもらうといいよ」
そこだけは何故か肉の落ちない忌まわしい乳房をダイ兄の熱い手がこねまわす。
この丸い乳房の代わりに厚い胸板を、すがりつく細い腕の代わりに逞しい男の腕を持っていたなら
私でもダイ兄を幸せにできたのだろうか?やっぱり、さびおさんでなきゃダメだった?
ダイ兄の熱い手指に、ダイ兄の匂いに、ダイ兄の吐息に、ダイ兄の声に、体が熱くなって
触られている部分の先端が赤くとがっていく。
ダイ兄が手を止めて苦しげにうめく。さびおさんがここぞとばかりに腰を押し付け攻め立てる。
「ねぇダイ兄、もう、して?」
見かねて声をかけるとダイ兄ではなく、さびおさんが答えた。
「ははは、ショウちゃんやらしー。大好きなおにいちゃんにおっぱいもまれただけで
 その気になっちゃった?まだおまんこ濡れてないのにそんなおねだりしちゃうんだ」
さびおさんが笑うとおなかに響くのだろう、ダイ兄が細く長く悲鳴をあげる。

317 :
「やさしいダイ兄ちゃんはさぁ、けなげでやらしいショウちゃんに
 痛い思いなんかさせないよねえ?」
さびおさんがダイ兄の手に何かの容器を押し付けた。
ダイ兄の体が、目に見えてこわばる。
「これは、だめ」
かすれた声でささやいたダイ兄が背中をそらせていやいやをするみたいに首を振る。
私からは見えないけど、逆らったお仕置きにおなかの中で何かをされているのだ。
「にいちゃん!いいから!私だいじょうぶだから!」
「だってさ、ダイ兄ちゃん。ますます痛くなんかできないね?」
そういってさびおさんは容器の中身を先走りにぬれたダイ兄の性器に塗りつける。
目を剥き歯を食いしばるダイ兄を見ればそれが何かは想像にたやすい。
「駄目だと思うならさぁ、効いてくる前に他の液体をたくさん
 ショウちゃんの中に出して洗い流しちゃえばいいんだよ」
ダイ兄が私の両手を掴む。
目はうつろで体には力なんか入らないように見えるのに、それだけで、もう動けない。
「ショウちゃん、ごめん」
お尻にさびおさんを飲み込んだまま、ダイ兄が私の中に入ってくる。
さびおさんへの愛で張り詰めたダイ兄の性器が、塗りつけられた薬のせいか目が眩むほど熱い。
「う、ぁ…!ダイに、…ゃ、ぁっ、ぃ…おに、ちゃ」
「ああああぁあ!――!――!――!」
「ははははは!ふたりとも入れただけでイっちゃったんだ?
 ほんとに中に出してるよ!すっごい脈打ってる!」

318 :
笑い転げるさびおさん、壊れたみたいに叫びながらさびおさんを呼び続けるダイ兄。
さびおさんがまともに声も出せない私をダイ兄から引き剥がし、キスをする。
首を振って逃げようとすると顎をつかんで固定された。
技巧的なさびおさんのキスは悲しいけどダイ兄とのつたないキスよりずっと気持ちいい。
私とキスをするとき、ダイ兄もこんな悲しい気持ちになるのかな。
私のキスはこんなに上手じゃないけれど。
「ショウちゃん、感じまくってるでしょ。
 さっきからダイがすごく嬉しそうに俺のに吸い付いてるんだ」
違う。呼んで欲しいのはこの声じゃないの。
欲しい声の持ち主は固く目を閉じ眉根を寄せて堪えている。
もう、どちらがどれだけイったのかわからない。
さびおさんの入れ知恵で薬を服用しているから妊娠の心配だけはない。
生理痛が酷いとお母さんを騙して連れて行ってもらった病院で
『生理不順がなおって生理痛が楽になるお薬があるって聞いたんですけど』
教えられたとおりに言って処方してもらった低用量ピル。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
「――さん、――。――、さ…」
ダイ兄が私の中で腰を振りながらうわごとのように何度もさびおさんを呼ぶ。
大好きなダイ兄の声。
甘くかすれて耳に焼きつくのにやっぱり何と呼んでいるのか認識できない。
違うよ、ダイ兄。
さびおさんはダイ兄に突きたてていたものを引き抜いて離れていってしまった。
だからダイ兄が今感じているのは私だよ。
ぜんぶ、わたしだけ、なのに……

319 :
快感と悲しみでぼろぼろとこぼれて頬に流れる涙をさびおさんが舐め取る。
ダイ兄と私が出したものでぬるぬるのお尻にさっきまでダイ兄をいじめていたものがあてがわれる。
薬の力を借りてどろどろに汚しあう私達と違い、さびおさんは必ず避妊具を使う。
私達の体ではなくて、さびおさんの人生を守るために。
さっきの薬が塗られているのだろう、冷たく濡れた感触がおなかを押し拡げる。
「く、ふ。ちゃんと、中まで洗ってあるんだ。ショウちゃん、こうされるの期待してた?」
さびおさんが勝手なことを言いながら私の中をかき回す。
ダイ兄のだけでもおなかの形が変わってしまいそうにいっぱいなのに
壁越しに固いものがこすれてすごく苦しい。
さびおさんは一番深くまで押し込んだままで
私の内臓の蠢きとダイ兄の性器の感触を楽しんでいる。
ダイ兄が私越しにさびおさんを感じて暴れまわり、何度も何度も喜びを吐き出す。
もうわけがわからなくなっているのだろう。私の肩を掴み、跡が残るほど握り締め、しがみつく。
いたい、くるしい、うれしい。
ダイ兄の心の中に私が入る隙間はないけれど。
遠くから特徴のあるエンジン音が近づいてくる。
さびおさんはいつの間にか、私達から離れてどこかに隠れてしまった。
体がだるい上にダイ兄に押さえつけられてちっとも動けない。
玄関から鍵の開く音がした。 fin.

320 :
以上です。
ごめんなさい。分割するの忘れちゃった。お粗末さまでした。

321 :
GJGJ
久し振りの投下、じっくりと堪能しました〜
報われない想いが切なくて、良作でした。
よかったらまた投下して下さい!

322 :
このスレいらないだろ

323 :
良スレ

324 :
すごい良かったー。
GJです。
この最後まで救われない感じが何とも切なくてイイ

325 :
水城せとなの同棲愛ってマンガに
ゲイ×ノンケ女性があったなあ
ハグまでしかできない関係ではあったが、すごく好きな二人だった。
知ってる人いないかな?

326 :
アニメのふしぎ遊戯の柳宿とプライベートアイズの時緒って
見た目がなんか似てないか?自分だけだろうか…

327 :

ご無沙汰です…。
つづき投下します。

328 :

大学に入って、3度目の春。
自分の名前についているこの季節が、私はあまり好きじゃない。
正門から続く桜並木はまだ4月の初めだというのに散り始めていた。
地元ではやっと満開になったばかりだというのに。
都会の性急すぎる季節の変化も相まって、どこか悲しい気分になる。
少し伸びた前髪が風に煽られて、肌をくすぐる。
昨日、とても嫌な夢を見た。
「サークル入りませんか?」
差し出されたチラシにハッとして顔を上げた。
「私は新入生じゃ…………あ、先輩」
優子先輩がいたずらっぽく笑っている。
「何ぼーっとしてんの?」
一瞬、誰だか分からなかった。
「先輩たち、何やってるんですか?勧誘は2年の仕事でしょ?」
「そうなんだけどさ〜、あれ、黙ってれば見た目は悪くないからさ」
と言って優子先輩は新入生の女の子に声をかけているハナ先輩を指差す。
どうしてだろう髪の毛を切っただけなのに、先輩は普通の男の人に見える。
「けど…すぐバレるんじゃないですか?先輩有名だし」
「まぁね〜」
ハナ先輩目当てで入って来た女の子はきっと、悲しい真実を知る事になる。
それは少し、胸が痛むようだ。
「かわいそうに…」
「え?」
「…え?」
「今、何か言った?」
「私、…何か言いました?」
「陽気でぼーっとしてんの?ね、来週の新歓行く?」
「あ〜…えと。何日でしたっけ…」
「え、お前行けないの?!」
お前?
いつの間にかハナ先輩が私達の近くに来ていた。
「あ〜、バイトのシフトとまだ見てなくて。それに月末にもありますよね。
両方は…ちょっとツラいかな〜って。すいません」
「…そっか」
「しょうがないね。月末おいで」
そう言ってハナ先輩は私の頭を、チラシの束でポンと叩いた。
オマエ…。
「……先輩。」
「ん?」
「あ、…何だっけ…忘れちゃった」
「ちょっと高山大丈夫?」
優子先輩がちょっと呆れた声を出した。

329 :

4月の終わりの、新歓。
待ち合わせ場所の部室には、もう多くの人が集まっていた。
「あ、お疲れ様です」
優子先輩と、ハナ先輩を見つけて声をかける。
「お〜、今日は2次会まで出れるの?」
「はい」
「アンタ、連休は地元に帰るんでしょ?」
…!
「はい!明日帰ります!」
「はは、元気いいね。お祖父様とお祖母様によろしくね」
「ありがとうございます。おばあちゃんも『また遊びにおいで』って。」
そう言うと、ハナ先輩は嬉しそうに笑った。
先輩と何だか久しぶりに話をした気がする。
************
「うわ、出たよ。関のミスチル」
2次会のカラオケで優子先輩が苦虫を潰したような顔をした。
「あ〜、あれでオチる子多いですからね」
「相変わらず手がはえ〜な、あいつ。もう新入生隣にはべらしてんじゃん」
酔っ払って幾分言葉使いが乱暴になった優子先輩。
カラオケも終盤になると、部屋の中で小さなグループが出来て歌よりも会話がメインになって来る。
私は、優子先輩や奈緒たちと新入生の女の子たちの相手をしていた。
関君のミスチルから始まった優子先輩の「アホな男に騙されない講座」は新入生にも大いにウケていた。
ハナ先輩とは、部室で話をしたきりだった。
仕方がない、これは新入生のための飲み会なんだから。
女子に囲まれた関君を見つめて
「どこがいいんだろうね〜」
と、奈緒が言う。
「彼女、いるくせにね…」
相槌をうつ私。
「けどさぁ、あたし達が1年の時もあんな感じだったんだろうね〜」
「あ〜…」
「富岡先輩の回りに女子鈴なりだったもんね」
「そうそう、そんでそこにいきなりオカマがさあ!!」
私達は顔を見合わせるとお互いに噴出して、笑いを堪えられなくなった。
「い、痛い痛い…腹筋が!」
「は〜っ…涙出た。あれはね〜一生忘れらんないね。くっ…」
奈緒は涙をぬぐいながら、再び思い出してツボにハマったらしい。
いつの間に『懐かしい』と思える程時は過ぎ去ってしまったんだろう。

330 :

「洋楽?うまっ」
「え、誰?」
「ハナ先輩??」
サビから始まったその曲がかかると、部屋の中が少しザワついた。
マイクを握って歌っているのはハナ先輩だった。
いつもより低い歌声は、英語の歌詞と相まって別人のようだ。
私は、グラスに残っていたお酒を一気に飲み干した。
この場所からはモニターが見えず、ときどき聞き取れるフレーズがあるだけで
酔いの回った頭では、どんな歌なのかさっぱり分からなかった。
先輩は歌いながら立ち上がると、ちょっと怪しい足取りでこっちに来て
私の隣に勢い良く腰を下ろした。
先輩はへらへらした笑いを浮かべている。
「やだ近い近い!先輩!ちょっと!!近いったら!」
わざと私に顔を近づけて歌う先輩のマイクが、私の悲鳴を拾って、皆が笑う。
サビが終わって間奏になると、先輩は昔のように私の首を軽く絞めると頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「もうっ!!」
歌いながら元の席に戻ろうとする先輩の背中をメニューで叩くと、歌声に笑いが溶けた。
髪の毛を梳いていると優子先輩が
「なんか懐かしいわね、今の」
と言ったので、私は少し笑ってみせた。

トイレを出ると、ロビーのソファでタバコを吸っている先輩を見つけた。
「あ、いっけないんだ。タバコはお肌に悪いのよ?」
というと。先輩はふっと笑った。
「ね。」
そう言って、吸殻を潰すとまたタバコに火をつけた。
「先輩、歌上手なんですね。ビックリしちゃった」
隣に座ると、小さくソファが音を立てた。
「そう、上手いの俺♪いつも女の歌しか歌わねぇから」
ご機嫌さん。素で男言葉になっている。
先輩は楽しそうだ。
「ふふふ。英語が得意なんて知らなかったです」
「まあね、留学するつもりで必に勉強したしぃ」
ふぅ、と煙を吐き出す。知らなかった。
「留学って?」
「昔ね〜、行きたかったんだよね。どこでも良かったんだけど。とお〜いところに行きたくて」
「どうして?」
「もう、ここじゃ生きて行けない気がしてたから」

「今も、行きたいですか?」
先輩は笑って煙を吐き出しただけで、何も言わなかった。


331 :

私は、会話の糸口を見失ってしまった。
深夜のカラオケボックスは来客もなく、ロビーは閑散としている。
手前で奥に入ったこの場所からは、フロントまでは見えない。
先輩はソファに寄りかかって、天井に向かって煙を吐いていた。
他の部屋から洩れる歌声に合わせて鼻歌を歌っている。
私は思ったより酔っ払っていたようだ。
感覚が遠く、一秒先の事を考える事すら難しい。
頭痛がしそうな予感がしている。

たいして珍しくもないのに、初めて見るもののように店の中を見ていた。
ここはどこだろう。
膜を隔てたように全てのことはぼんやりとして、私だけどこか別の世界にいるような感覚すらする。
ほんとうに、ここにいるのだろうか。
誰かが歌う、いつかの歌。
子供の頃、通っていたスケートリンクで何度も聞いた。
『かかってる曲の、ここで跳ぶって決めるとタイミングを合わせる練習になるよ』
と少し年上のお姉さんが教えてくれた。
自分で少し振りつけの真似事をして、曲のサビが来たときに丁度踏み切れるように何度も何度も跳んだ。
背伸びをして、意味も分からない悲しい恋の曲をお気に入りにしていた、小さな私。
題名も思い出せない歌を聞いていたら、少し泣きたくなった。
どうしてだろう、今日はとても楽しいのに。
それでもどうしても涙は出てこなくて、先輩の鼻歌が、調子を外したのでなんだか笑ってしまった。

332 :

どれぐらいこうしていたのだろう。
先輩はまた新しいタバコを咥えて、火をつけようとしていた。
ずいぶん仕草が手馴れている。
ライターを持つ指の関節がやけに目立って見えた。
先輩の指は、こんなに骨ばっていただろうか。
あんな男らしい足の組み方だったろうか。
何度も見たことがあるのに、思い出せない。
「…せんぱい…?」
空気が漏れるようにつぶやくと、視線だけが合った。
私を見るあの瞳がだれのものかすら分からない。
手入れを止めたらしい眉毛は、まだ少しまばらで変だ。
瞬きの度に揺れる下向きの睫毛、額から高めの鼻を通って喉までのライン。
タバコの為に軽く開かれた薄めの唇は、横から見ると上だけ少し突き出た感じがする。
その横顔を、私は初めてキレイだと思った。
震えるような何かの感情が確かにあるのだけれど、私の感覚は麻痺してそれをどこか遠くへ置いておく。
ああ、目にかかる前髪を直すことすら億劫だ。
知らない。

こんなひと、私は知らない。


「…あなたはだれ?」

その人は少し笑ったようで、かすかに空気が揺れた。
タバコを持つ左手に体重をかけて私に近づいて来ると、ソファが軋む音がした。
反対の手で私の目にかかる前髪を耳にかけるように払うと

私にキスをした。

おわり

333 :

あ、エロ無しって書くの忘れた…。すんません。
風呂敷広げすぎて、収集つかない。
こんな駄文に時間かかってすんません。
前回の冒頭部は映画「小さな恋のメロディ」の曲をパクりました。
「若葉の頃」のが有名かもだけど。
春たんが泣きそうになったのは映画「スワロウテイル」の曲。
ふしぎ遊戯のオカマはアレだよね…。
主役じゃないってのはわかってたけど、ああゆう展開って教えて欲しかったな…。

334 :
GJ!!
待ってましたよ!
小春に感情移入して、読んでて自分もドキドキしてしまった
続きを正座して待ってます!!

335 :
続き待ってましたー!GJ!

336 :
保守

337 :
保守

338 :


339 :
恋どん、めちゃくちゃ面白いです
続きも楽しみにしてます。

340 :
連載中や単発の職人さんに無限の感謝を。
そして書いてる途中の職人さんはガンガレ!超ガンガレ!!
応援してるからなー!!!

341 :
恋どんの気になる(´∀`)

342 :
ほっしゅ

343 :
保守

344 :
ほしゅ

345 :
やっとやっと規制解除かな?
職人さん達も規制に泣いてたんじゃないだろうか
続き読みたい

346 :
規制に負けずにほしゅ

347 :
ほしゅ
職人様待ちの間、自分で書いてみようとガンガったが進まない…orz

348 :
>>347
君ならデキル!
待ってますぜ

349 :
保守

350 :
ほしゅ

351 :
一介の読み手だが無い知恵を振り絞って、ゲイ→男→(両片思い)←女からゲイと男がバイに宗旨替えして
男→ゲイ→女→で三角関係完成か
男→ゲイ→←女
になるシチュエーションを妄想してみた
ただ宗旨替えに至るエピソードは全く想像がつかない。
職人さん達の凄さを改めて実感した。

352 :
ゲイ→男×女でゲイが女をレイプする話。
苦手な方は「彼が欲しい物」をNGしてください。

353 :
彼氏が帰ったあとはどうにも寂しくなる。
千佳子はベッドの上で膝を抱えてふうと息を吐き出した。まだシャワーすら浴びていない体は
彼のにおいがする気がする。気恥ずかしくなってベッドから降りる。
自分もシャワーを浴びてシーツを取り替えて寝よう。明日だって仕事があるし。
そう思って裸足でぺたぺたとフローリングの床を歩く。
がたがたと玄関で音がした。もしかして彼が何か忘れ物でもしたんだろうか。
「ケースケくん?」
声をかける。狭いアパート、申し訳ばかりについている部屋と廊下兼台所のドアが開けられる。
そこにいたのは見慣れた彼氏ではなかった。
「や、千佳子さん」
「……橘さん?」
軽く片手を上げた男だ。仕事の同僚で、千佳子の彼氏である圭介は彼と自分の上司にあたる。
突然の登場に呆然としていたが、はっと我に返りベッドからシーツをひったくって体に巻き付ける。
橘はそれすらもにこにこと見ている。変だ。なんで?
彼には自分の家は教えていないし鍵だって渡しているわけがない。もしかしたら圭介が開けっ放しで
帰ってしまったのかもしれないけれども勝手に入ってくる理由がない。
千佳子はずるずると後ずさる。
単身者用の狭い部屋、そう逃げ場があるわけではない。すぐに踵はベッドにぶつかる。
「どうしたのさ?そんなに警戒して」
「警戒、するでしょ!突然部屋に入ってこられたら!っていうか何!?何しに来たの!?」
逃げ場はない。せめてもの武器にと後ろ手にベッドを探る。その隙を突かれた。
一瞬にして橘が距離を詰め、千佳子の肩を強く押す。
膝の裏にベッドがあたり彼女の上半身はあっけなくベッドの上に倒れた。
その上に馬乗りになるように橘がのしかかる。
「……なんの真似」
「さっきの質問の答え。俺ね、千佳子さん犯しに来たの」
一瞬何を言われたのかわからなかった。橘の顔は来たとき同様にこにこと笑みすら浮かんでいる。
しかし枕元の明かりとこの距離で、彼の目が笑っていないことに気づいた。怖い。
手にぶつかった何かを掴んで彼の顔にぶつけようとする。投げつけた枕はひょいと首を動かした
だけで避けられる。もう片手を伸ばしても届かない。
脚をじたばたと蹴り上げる。橘の膝が千佳子の太ももの上にのり、重さに顔をしかめる。
「あ、ごめん。痛かった?」
「それ以前にやめてよ!降りて!離れて!」
「やだよ。俺、千佳子さんを犯しに来たって言ったでしょ」
「なに、私のこと好きなの!?」
「そんなわけないじゃん」
橘の目が冷たく光った。
「俺が好きなのは、高橋さん」
「え……?」
高橋は、圭介の苗字だ。
予想外の告白に千佳子の抵抗が止まる。それをいいことに橘は千佳子の腰骨にうまく体重をかけて
座り直す。手際よく千佳子の腕を持っていたらしいロープでむすび、ベッドの支柱にさらに結びつける。
もうどうあがいても逃げられない。橘は表面上は変わらないままににこにこと話す。
「俺ね、ゲイなんだよ。入社したときからずっと高橋さんが好きだったわけ。あの人の下につけるって
決まったときは本当に嬉しかったなあ。それなのにさ、なんで君が彼女なわけ?」

354 :
あこがれの人を話すかのように彼は恋情を語るけれど意味が分からない。
だからね、と千佳子を理解の外においたまま、橘は笑う。目以外で。
「君を、犯すの」
「……そんなことしても圭介さんはあんたのことなんか好きにならない」
「いいよ。それは最初っから諦めてる。目的はそれじゃないんだよ」
「ひゃっ!」
「俺、そういう声嫌いなんだ」
橘の指が無遠慮に千佳子の秘所に突っ込まれる。半時間程前まで圭介のものが入っていたそこは
まだ指ぐらいなら軽く受け入れる。橘は嫌そうな顔になるもやめない。
ぐちょぐちょと優しさの欠片もなく指は動く。
「よかった、高橋さんのものまだ入ってるね」
千佳子の顔に血が昇った。
千佳子の中からだした指を嬉しそうに橘は舐める。気色悪い。さらに自分のものを出してしごき始めた。
「やめてよ!」
「じゃあ暴れれば?女の力じゃ男には勝てないよ」
「ずるい!」
「なんとでも言えばいいよ。俺から見たら君みたいな女であるっていうだけで好きな男と恋愛できる
ほうがずるいよ」
さっき嫌いって言われた通りおもいっきり喘いでやろうか。でもこの男の愛撫なんかで鳴きたくない。
千佳子の思考がそちらに離れる。その隙を突いたかのように。
「あー女で勃たせるのって本当気持ち悪い」
突っ込まれた。ある程度ほぐされてはいるといっても衝撃に息が詰まる。
千佳子の顔を見て嬉しそうに橘は笑う。
「高橋さんはいつも中で出すんだ?」
「教えない!」
「へえ、そうなんだ。橘さんはどんなふうに動かすの?」
「聞かないで!」
「俺も抱いてほしいなあ。抱くほうでもいいけどさ、相手が高橋さんだったら。いいなあ、千佳子さん。
女で、高橋さんに愛してもらえて、子を為せて」
「……え?」
動き始める。しかしそれはまったくもって千佳子の事を考えていない動きで、気持ち悪い。
奥に突かれる。引かれ、突かれ、引かれ、突かれ。まるで出すことだけを目指したセックスだ。
唇を噛み締める。

355 :
「子が、欲しいんだ」
熱に浮かされたかのようにそう橘はつぶやく。
「俺と高橋さんの子が欲しいんだ。子どもがいれば我慢できる気がするんだ。でも俺は男だから、
子宮なんてないから、だったら君じゃないか」
「意味、わかんない」
「だってさっきまで高橋さんとしてて、高橋さんのがまだ入ってて、きっと今だったら俺の子か
高橋さんの子かわからない。だったらそれはきっと俺と高橋さんの子なんだよ」
橘の口元が歪む。いびつなえがお。目の中にある光を、千佳子は知っている。恋情と狂気だ。
この人は自分と同じだ。圭介のことが好きで好きでたまらない。
「やだ、そんなのやだっ、絶対嫌!」
「安心してよ、ちゃんと俺が育てるから。君になんかあげない。俺と高橋さんの子だから。ねえ、
君は高橋さんから愛されてて、女で。だったら俺にひとつぐらい頂戴」
突き上げる速度が早くなっていく。
ひときわ大きく橘が突く。吐き出す。少しだけ千佳子の上で息を整えてから、彼は体を起こす。
もう嫌だとばかりにずるりと抜き出す。
「……変な同情はやめてほしいよ。俺はそれが一番嫌いだ」
「してない」
荒い息をつきながら橘は千佳子を睨みつけ、千佳子はそれを真っ向から受け止める。
吐き出された場所が気持ち悪い。
「もし子どもができたとしてもこれは私と高橋さんの子か、私とあんたの子なんだから」
「違う。俺と高橋さんの子だ」
「違う。あんたは、子供なんか作れない」
あとこれ、外して。ロープを巻き付けられた手をぶんぶんと動かす。舌打ちひとつして橘はそれを
外す。見ればロープの痕が赤くなっていた。
「あんたは、絶対に私には勝てない」
言い捨てて今度こそ浴室へと向かう。今にも泣きそうな橘の顔は見ないことにした。

356 :
以上です。
ナンバリング付け忘れやEND付け忘れなど失礼しました。

357 :


358 :
おぉ、GJ!
こういう歪んでるやつ好きだから嬉しいな。

359 :
GJGJ!
ゲイ切ないな……。

360 :
投下来てたーGJGJ!

切ねぇ…だがそれが良い

361 :
遅くなったけど投下乙です!
橘、切ない…。

362 :
・恋愛関係じゃないゲイと女の子の駄べってキスするだけの話
・恋愛関係には陥らないと明言

「別に俺は女の子になりたいわけじゃないんだよ」
「へぇ?」
「好きになった人が男なだーけ」
なんかBL漫画みたいだねぇと言えば、二次元と一緒にするなと怒られた。
秋はウーロンハイ、私はマッコリ片手、もう片手には箸の体制でテーブル挟んで座っていた。
本日は、何回目かわからない私たちの失恋パーティーである。
会場は駅前の居酒屋の個室。これは飲むと泣き上戸になる秋のためだ。
「っつーかさ、妻子もちなら自己紹介ん時に言ってくれって話!」
「わかるわかる、知ってたら最初っから諦めたのにさー」
「教授のばかやろー」
ゼミの教授、なかなかのナイスガイ。
しかし左手薬指にはまる銀の指輪で私たちはあえなく失恋。わずか1日の恋だった。
はぁ、と二人同時にため息をつく。
「普通さぁ、いちおー異性が好きな私のほうが早く彼氏できるはずじゃん。
なのになんで私も秋も年齢イコール恋人いない歴なのさー」
「だってほら、性格?」
「んなこと言ったら秋は性癖がアウトなくせにー!」
「それ言っちゃお終いだろー」
秋はゲイだ。好きなのは男。そして、私と男の趣味がとてもよく似ている。
出会ったのも同じ男を追っかけてたからだし、好きなアーティスト(男)もなにもかも、
私たちは良く似ている。それが故に、友達だ。
秋はナイスガイが好きだし私もナイスガイが好きだし、恋のライバルになりこそすれ、
恋愛関係にはなれないのだ。
「男とキスしてみてもいいじゃんー。俺それなりにイケメンだし?」
「自分で言っちゃだめじゃん」
「自分以外に誰が言ってくれるっていうのさー」
はあ、と品を作って秋は頬に手を当てる。それなりにガタイがいいので似合ってない。
顔だけなら秋はちゃんとイケメンなのだ。性的指向は男だけど。
よくネタだとウホッとかアッーとかあるのに残念ながら秋には彼氏はいない。世の中ネタと現実は重ならないようである。
だからといって、Eカップの私も彼氏はいない。全部この貧乳ブームが悪いのだ。
「そんなこと言ったら私だってボンキュッボンじゃんー。モテてモテてモテまくってもいいじゃんー。
ねえほら、見て見て今日の寄せてあげるブラ」
「みたくないよそんなの。だったら見て見て、俺の筋肉」
「二の腕ぷよぷよじゃん」
「可愛いでしょー」
「そんなところ可愛さ追求してどうすんのさー」
あははと笑いながら私はマッコリを飲む。つまみで注文した鳥の軟骨をカリカリと噛み砕く。
秋はウーロンハイを飲みながらため息を付いた。

「男とキスして何が悪いのだー。最後に一回だけキスさせてって言うとみんなドン引きすんだよね。
その点女の子はいいよねー、一回だけヤらせてが通用するし?」
「それ本気で言ってるー? そんなん通用すんのマジで可愛い子だけだし。
穴さえありゃー突っ込みゃいいのにねー」
「そうだよそうだよ、俺みたいなイケメンがいるならとりあえずクラっと来ない?ほらほら、来ないー?」
「来ない来ない、だって秋だし?」
「なんだよー、俺じゃ駄目かよー!」

363 :
秋は目尻を赤くしながらばしばしとテーブルを叩く。
その衝撃で落とされないように、私はシーザーサラダの皿を持って食べ続ける。
かららんと音を立ててマッコリの入っていたグラスが倒れるけれどももう空だ。
ぐすぐすと、秋は鼻を鳴らす。あー泣き始めた。
イケメンが泣く姿は目の保養になる。ただし好みの男に限る。
「一回ぐらいキスしてくれたっていいじゃん!」
秋は純情なのだ。
同じ男同士なんだから襲っちまえばいいのになーなんて思いながら私は鯵の塩焼きを咀嚼する。
「私だったら可愛い女の子だったら一回ぐらいならキスしてもいいかなー」
「それが普通だよー。だって一回だよ? 一回ぐらいならキスしたっていいじゃん。
それで俺は思い出になるし、相手は犬に噛まれたと思って忘れ……忘れられちゃうのかあ……」
「ベロでもなんでも突っ込んで忘れられないキスにしちゃえばー?」
「無理矢理なんてだめだろー」
純情かつ常識人なのだ。
同じゼミの女の子同士の会話だと、「酔って寝たとこを襲って既成事実作ればよくない?」なんて
恐ろしいことを話してることを考えると、すごく常識人だ。
「んじゃ私とキスしてみるー?」
ふと思いついたことを言えば、秋は赤くなった目を私に向けた。
「え、なんで?」
「そしたら男が男とキスする気分わかるんじゃないー?」
「あー、それそうかも」
同性っていうか、性的嗜好対象外とキスする気分?
私は上半身を伸ばして唇を突き出す。秋も、首を伸ばしてちゅっと唇を触れさせる。
「……んー、どうでもいい」
「たしかに。秋とキスしたっつっても秋はどうせ好みじゃないしなー」
「あ、それ酷いー」
「だって私ナイスガイじゃないしー?」
「たしかに俺も好みじゃないけどー」
あ、グラス空になった? と聞いて新しいお酒を注文するためにメニューを開く。
唇をぺろりと舐める。
どうしようもなく、私たちは友人であり、恋愛関係にはなれないのだということを最認識した。
「そういえばさー、うちの近所の図書館に良く来る紳士?なおじさまがいい感じなんだけどさあ」
「うわ、見てみたい。今日泊まってっていい?」
「私んち? いいけど客用ふとんあったかなー。毛布は一枚貸したげるけど」
「一緒に寝る?」
「図体でかいから嫌」

364 :
以上です。
またENDマーク付け忘れすみませんでした。
もうほんと学習したほうがいい。

365 :
GJGJ
ふたりのやりとりが自然でその場面が思いうかぶ。イイネ!

366 :
職人さん投下乙です!

367 :
俺得スレはけーん。
男よりも男前で女よりも美しくありたいオカマ×ちょっと女らしさに欠けた女の子
とか兆萌える

368 :
>>363
GJ!
ちょっとメソメソしてる男と、うんうんと聞きながらよく食べる女に吹いたw

369 :
小学生のころ上級生にオカマさんとオコゲ?が
結婚するマンガ借りたんだがタイトルも作者も判らない
覚えてるのは発禁とかではなく騎乗位の本番があって
オカマさんが野菜クズでジュース作るシーンだけなんだけど
詳細知ってる方いませんか?

370 :
もうすぐ結婚するホモだけど質問ある?
ttp://mamesoku.com/archives/368407.html
自分はアリだと思うが
末永く幸せでいてくれるよう願っとく

371 :
GJ!
淡々としたテンポがいい
日常生活の一コマって感じだ!
自然さが素晴らしい

考えさせられる内容だね
普通に好きみたいだしいいんじゃないかな
完全に義務って訳でもないと思う
好きが前提での結婚だし
幸せになってくれ

372 :
ほしゅ

373 :
なんという俺得スレ
保守!

374 :
まさかこの組み合わせに萌えている人が自分以外にいようとは・・・
海外物によく出てくる大柄黒人オカマと女が好きだ。それも完全オネエ言葉の
女の子の方もゲイって知ってるから、胸に飛び込んだりするんだよ。
そして恋愛相談とか、女同士みたいに会話してんだ
そんな二人のセクースとか禿萌えるな
見た目でかい男と小柄な女なのに、言ってることはどっちも女性的。
経験豊富なオカマのすげえ女っぽい手つきで、女の子を翻弄するんだよ

375 :
黒人オカマといえばTIGER&BUNNYのファイヤーエンブレムとかもいいよな
JKのブルーローズとの絡みが好きだ
ブルーローズが主人公に惚れてるらしいからそういう描写はないけど
しょっちゅう相談受けたり、悩んでたりするのを少し後ろから見てたりしてるのが萌える
他キャラ同士に比べて結構絡んでるのもツボ

376 :
>>375
同士よ
相談できるとか、まず女同士の関係が前提にあるのがいいな
それで男スイッチがたまに入れば激しく萌えるというわけでして

377 :
花とゆめ?だっけの「キミはガールフレンド」がいい感じにオカマと女の子の恋愛ものだったなー
最後自分はオカマじゃないとか言い出すけどどう見てもオカマでした

378 :
そういえばデッドマンワンダーランドにもあったな。
助川(オカマでゲイ)と水名月(毒舌女子)。カプではないけど…。
しかしタイバニといいこれといい、女子とオカマが共闘するときは「女同士ヨロシク☆」みたいなこというのはお約束なんかね?

379 :
>>377
気になって買ってみたらこれはいいオカマ
キリエイケメンすぎる
オカマと女の子のカップリングってなかなか商業誌で見かけないから貴重だ

380 :
保守&期待

381 :
おかま×女の漫画なら『りっちゃん(吉野マリ作)』オススメ。
同じ男を好きになったり
一緒に住んだり
子供できて結婚したり
おかま×女好きの夢がつまってる。
あとはマーメイドラインっていうオムニバス百合漫画の中におかま×女あり。
おかまは性自認は女、性嗜好も女だから精神的にはビアンという。

382 :
>>381
ケータイ漫画でりっちゃん読んでみたけどすごくよかった!
ありがとう

383 :
俺得スレだー
十ン年ぶりに何か書けそう

384 :
保守

385 :
>>383
わっふるわっふる

386 :
ほしゅ

387 :
久々にスレを頭から読んで悶えまくった
恋どんの続き超待ってる

ここって女装男(ヘテロ)×女ってスレチかな

388 :
いいんじゃない?
一応オカマの範疇だと思うけど

389 :
書き上がってないけど忍法帳確認
>>387
いいんじゃないかな?

390 :
フローリングの上でゴン、という派手な音をたてて、
ビリーの後頭部は床に打ち付けられた。
「いったあ・・・!ちょっとキャシー、何すんのよ!」
言葉遣いは女そのもの、けれども声質はとても女とは言えない、
文句の言葉がその男の口から飛び出した。
優に190はあろう長身、筋肉質の引き締められた身体。
形の良い輪郭が見て取れる、よく手入れされた丸刈りの頭。
今は化粧がされていない、整った顔立ち。
ビリー(本名ウィリアム)の今の姿は、可愛らしいパジャマと
派手な色の長い爪さえ視界に入れなければ、誰もが認める「いい男」だった。
ビリーが見上げる先には、全てが対照的とも言える少女が自分を睨んでいる。
小柄で、セミロングの茶色い髪。
少しクセのあるその毛先は、中途半端にかかったパーマのように内側にカールしている。
透き通るように白いその肌は、今は酒でみっともないくらいに真っ赤になっていた。
「・・・・・・」
キャシーことキャサリンが膝で一歩踏み出すと同時に、
酒類の空き缶がカラカラと机から落下する。
ビリーの頭の痛みがひいた頃には、キャシーはすでに腹の上に馬乗りになっていた。
「・・・ちょっと。飲みすぎじゃない?」
キャシーはその言葉にも答えることはせず、やはりビリーを睨み続けていた。
(…もう)
酒のせいで、視界が霞む。
(なんで)
それに加え、涙が浮かぶものだから余計に何も見えなくなる。
(なんで、こんな人好きになっちゃったんだろう)
輪郭線もしっかり捉えられない目の前のその人。
(よりによって、オカマの人なんか!!)

続かない

391 :
>>390うわーGJ!
ガタイのいいオカマさんと小柄美少女の組み合わせは大好物です(^Q^)
是非酔った勢いで破廉恥な行為に走って欲しいw

392 :
>>390
GJ!
でかいオカマと小さな女の子はたまらん
続きはまだか

393 :
>>390
GJ! 続けよぉぉぉ

394 :
氏ね

395 :
恋どんの人もゆきちゃんの人も短編の人もgj!
良作ばかりじゃないか…もっと早く気付いてれば良かった
続きを全裸待機してます

396 :
女→オカマの片思い
女視点、エロ無し、語り口調が気になる方はNGを
いま書いてるののパイロット版なので、気になる点があれば指摘お願いします

◇‥‥‥◇

「ただいまカナちゃーん。外暑いよー。熱の字の方が正解なくらいよー」
「お帰り、ミツル」
大学の夏期休暇を利用して親しい飲み仲間との京都旅行から帰ってきた同居人、ミツルの第一声は艶のない低い声だった。
綺麗に整えられた化粧は崩れていないが汗が気持ち悪いのか、スーツケースはそのまま、挨拶もそこそこに洗面所に駆け込んで化粧を落とす。
「ふう、さっぱりした‥‥ってこの部屋も暑くない?」
「アンタが居ない時はかけてないのよ」
マンションの家賃と光熱費、水道代はミツルと私の頭割りだ。独り冷房の恩恵を貪るのはしたくない。
エアコンのリモコンを操作して冷房を利かす。その間にミツルがスーツケースを開けて、洗濯物や土産を取り出す。
「はいカナちゃん、これお土産」
「‥‥何コレ」
スーツケースから出てきたお土産は、なんとも奇妙なものだった。
器の内側が玉虫色――晴れやかな緑色に黄金や朱の色彩が輝く、少し大きめの御猪口だ。器の外側が落ち着いた乳白色である所為で、少しミスマッチな印象を受ける。
「京紅よ。舞妓さんや江戸時代の女性がつけていた口紅」
「ああ、これが『紅』か」
紅花の花のエキスを凝集させた『紅』は斯様に輝くのか。
『紅』のことは知識としては蓄えていたが、実際に目にするのは初めてで、感動する。
「顔彩絵の具みたいに水で溶かせばいいのか?」
参考までにと使用方法を尋ねると、ミツルは薬指を『紅』の器にこすりつけ(自分用にもう一つ買ったようだ)
「こうやって湿らせた指で取って‥‥はい」
と私の唇に紅を乗せる。制止する暇もなく、下唇、上唇、もう一度下唇と、薬指で撫で上げる。
「あら、綺麗」
「ふ、筆でもいいだろ」
動揺を押し隠して私が指摘すると、ミツルは「そうねー」と暢気に首肯する。こやつめ。
「それで、旅行は楽しかった?」
「ええ! アヤサワさんも土壇場で参加決定したから緊張したけれど、もうすっごく楽しかった!」
旅行話に水を向けると、ミツルは薔薇の花が開くように笑った。好きな人が格好良かった、他の仲間に優しくて嫉妬した、あの人とあの人できてるよね、とのべつ幕無しに旅行の思い出を語る。
反対に、私の心は鈍色に沈む。
そもそも、ミツルが旅行に行くのだけでも心は穏やかではなかった。
無事の帰宅に安堵はするが、ミツルとミツルが片思いする人との旅行話を――ミツルがいかに彼の人を好きかと語る様に心は千々に乱れてしまう。
旅行話をしなければいいとは思っても、努めて良き同居人、姉貴分であろうとする義務感と、恋の終焉への怖れからつい尋ねてしまう。そして仄暗い安心感と引き替えに、痛苦に心を浸すことになる。
白状しよう。私はミツルが好きだ。体は男性で、心は女性のミツルが好きだ。
けれど、女の私よりも、ミツルをミツルが望む性で愛してくれる人の方がミツルにとってもいいと思う。
しかし、諦めきれない。
「‥‥この旅行で改めて分かったんだけど、やっぱりアヤサワさんのこと好きな人多いのね‥‥」
「諦めるのか?」
「嫌よ。諦めたくない」
か細い期待を押し隠して尋ねると、ミツルは決然と言い切る。
「こう言っちゃ悪いけど男前になったなあ‥‥。嘘。アンタは魅力的な女の子よ。‥‥応援してる」
――恋と諦めの狭間で、同居人の義務感は主人の如く私を制御し、いつしか言葉は空疎になっていった。
今の私に、真は無い。

(おわり)

397 :
>>396
GJ!
完成心待ちにしてる!

398 :
裸待機が寒い季節になってきたな…
わっふるわっふる

399 :
ほしゅ

400 :
保守します

401 :
保守

402 :
なんちゃってファンタジー世界のバイなオカマと男装少女。
男装少女スレと迷ったけれど、とりあえずこちらへ。
逆ハーレム状態かもしれない。
続きたい。
エロ未到達ご容赦ください。
 物心ついたときから、とかく美しい物に惹かれる性分であった。
 姉のドレス。母の宝石。香水の瓶に繊細な飴細工。
 それらの物に興味を示した幼いカディに、同じように幼かった姉は面白がって化粧を施し、
自分のドレスを着せて人形のように可愛がった。
 けれどそれら全ての物に、自分は指の一本も触れてはいけないのだと知ったのは、カディが
七つを迎えて間の無くの頃だった。
 海軍の士官として長く航海に出ていた父が家に戻り、姉のドレスを纏ったカディを見たときの
憎悪にも似たその顔を、今も忘れることは無い。
 血が出るほど殴られたことよりも、姉のドレスを破り剥がれ、水桶に顔を突っ込まれて化粧を
剥がされた屈辱の方が、今尚カディの心に深く暗く根付いていた。
「おいカマ、何物思いにふけってんだ。仕事中だぞ」
 冬である。
 窓に踊る紳士淑女のきらびやかなドレスを茂みの中から眺めていると、上空から罵声が飛んだ。
カディは苛立ちに眉を吊り上げ、木の上に立つ相棒を睨み上げる。
「そっちこそ、あたしに見とれてる暇があったらちゃんと見張ってなさいよ。ったく、要人警護の
お仕事だって言うから期待してたのに、寒空の下茂みで警備だなんて! ろくでもないったら
ありゃしないわ」
「近衛騎士団の仕事つっても、下っ端の傭兵がやることなんて泥臭いもんさ。嫌ならそのカマ言葉
直して、お父様の膝元に泣きつくんだな。そうすりゃあの中で美味い飯食って、高尚なご歓談に
興じられるってもんだぜ」
 突き放すような粗雑な口調であったが、歯に衣着せぬ物言いはいっそ清々しくすら感じられる。
カディは短く鼻を鳴らし、マントの前をかきあわせた。
「じょーだん。今更のこのこ戻ったら、剣のさびにされちゃうわ」
「だったら文句言わずに見張って――おい、今何か動いたぞ!」
 なに、とが聞き返すより前に、木の上からすとんと影が落ちてきて、そのまま林の奥へと飛び込
んでいってしまう。カディは一瞬ぽかんと闇の向うを見つめ、慌てて相棒の背中を追いかけた。
「ちょっとカッツェ! 待ちなさいよこの馬鹿! どうしてあんたっていつもそう――!」
 ぎゃう、と茂みの奥で短い悲鳴が上がった。カディが潅木をかきわけてカンテラをかざすと、
黒ずくめの男が肩を押さえて草の上でもんどりうっている。
「いつもそう、勇敢で有能なのかって?」
 もがく男の背を踏みつけ、ロープを片手に不遜な笑みを浮かべたのは、まだ年端も行かぬ少年だった。
カディは表情を険しくし、腰に挿したナイフを一本引き抜いた。
「どうしていつもそう――」
 言葉尻を鋭く切って、カディは少年めがけて真っ直ぐにナイフを投げ付けた。――と、難なく避けた
少年のすぐ背後で、何者かが低く呻いてその場に倒れ付す。
「身勝手で迂闊なのかしらって言おうと思ったのよ、馬鹿カッツェ!」
「ありゃ……もう一人いたか」
 言って、少年はぺろりと舌を出す。
「ありゃ、じゃないわよ! 何か見つけたらちゃんとあたしを待ちなさいって、何度言ったらわかるわけ!? 
何のために組んでると思ってんのよ!」
「俺が突っ込んでお前が補佐するため」
「ええそうよ。ちゃんとお互いの行動を相談した上でね!」
「相談してたら敵が逃げるだろ?」
「で、突っ込んだ先に敵がうじゃうじゃいたらどうするのよ!」
「逃げる!」
 堂々と胸をはるカッツェの自信に満ちたその姿に、カディは頭を抱えた。これが若さという物か、
カッツェは始終こんな調子である。
 ともかく賊徒と思しき連中を縛り上げ、カディはその場をカッツェに任せて茂みを抜け、見張りに向けて
カンテラを振り上げた。
 憲兵が駆けつけると共に周囲がざわめきだし、次いで警笛が鳴り響く。
「な、カディ」
 捉えた男二人を憲兵に引渡し、カッツェはにわかに浮き足立った森を見渡して目だけでちらと
カディを見上げた。

403 :
「これって俺達のお手柄だよな」
 自分の胸の下までしかない小さなカッツェを同じく視線だけで見下ろして、カディは細く白い息を吐く。
「ま――二階級特進ものってとこね」
 ついと笑って、カディとカッツェは互いの手の平を打ち合わせた。
 屋敷を囲む茂みのあちらこちらに潜んでいた賊徒が次々捕縛される中、カディとカッツェは
若い騎士の案内で屋敷内の一室へと通されていた。
 赤々と暖炉の燃える貴賓室である。
「わ、あったかぁーい」
 奇声を上げてしなを作るカディを横目に、カッツェはこきこきと肩を鳴らしながらどっかと
ソファに腰を下ろした。その正面に座る人物には目もくれず、テーブルの上に置かれた菓子を
ひょいとつまんで口に放り込む。
 近衛騎士団の制服を身に纏った、壮年の男であった。腰に佩いた壮麗な剣は、実戦用というよりは
儀礼用という趣が強い。国王から直々に賜ったと言うその剣は、代々騎士団長に継承されるものであった。
 すなわち、カッツェの正面に座す男こそ近衛騎士団現団長――名をロルフと言う。
「それで、団長さん」
 甘ったるい菓子をじっくりと味わいながら飲み込んで、ようやくカッツェは口を開いた。
「いい仕事したから、ご褒美くれるんだろ? 一人頭金貨十枚として、二人で二十枚は欲しいなぁ」
「本来銀貨五十枚の仕事に――か?」
 言葉少なに、だが言外に明らかな拒絶を滲ませてロルフは答えた。堂々たる長身にがっしりとした
体躯を持つロルフは、そこにあるだけで他者に十分すぎる威圧感を与える。
 まだ、三十に届かぬ年齢だ。子供ではない――というだけで、ようやく青年の域を抜けたに過ぎない
ロルフのことを、しかし尻の青い若輩者だと罵る者はこの町に誰一人としていない。
 その、泣く子も黙る騎士団長に正面から相対して、カッツェは気後れした風もなく言った。
「ただの警備と、賊徒の拿捕じゃ天と地ほども差があるだろ? 出し惜しみすると俺、次の警護でうっかり
賊徒見逃しちまうかも。栄養不良で目が見えにくくなってさ」
「なるほど、食うに困る懐具合というわけだ。では無理にふっかけては以後の仕事に差しさわりがあるとは
思わんか? こちらも余裕があるわけではないから、安く使える傭兵を起用しているのだ」
「そうだな。あんたからの仕事がなくなったら、困りに困って盗賊に転身しちまうかもな。警備の穴も
付きやすいし、案外まともに仕事するより稼げるかも? なあカディ?」
 ぐるりと首を巡らせて、カッツェが肩越しにカディを見る。
「あら、あたしはやーよ。盗賊なんて。食うに困ったらカッツェをふん縛って、男娼としてヒヒジジにでも
うっぱらうわ。高い値付きそうじゃない? かわいい顔してるし」
「だって。どうしようロルフさん! 俺このオカマに売られちゃう!」
「……なるほど」
 言って、重々しいため息を一つ。ロルフは顰めつらしい表情はそのままに、だがわずかに頬を崩して
カッツェに皮袋を投げ渡した。
「それは私も心が痛む。持っていくがいい」
「わ、重っ……!」
「五十枚だ。まったく、あれほどの手柄を立てておいて、要求するのがたかだか金貨二十枚とは――
欲がなさ過ぎるなカッツェ。騎士団員なら出世ものの大手柄だぞ?」
「ご、五十枚!? え、なに騎士団てそんなに金持ってたの!?」
「私の家系を知らないではないだろう」
 眉を上げたロルフをしばし眺め、カッツェは忘れていたとばかりに額を叩いた。
「稀代の豪商様であられましたね……そういやぁ」
「そういうことだ。その道の才覚がない私でも、資金運用の基礎くらいは心得ている」
 ロルフが先代から騎士団長の座を譲り受けて二年。なるほどそろそろ資金繰りにも余裕が
出てきたということだろう。
「で、あるから。今後も傭兵諸君には励んでもらいたいものだな。この通り褒美は弾む」
「なーるほど。成功報酬で腕のいい傭兵を釣って、何もなければ銀貨五十枚の格安料金で
最高の警備をさせようってわけね」
「そう単純な話でもないのだがね。まあ最初に成功報酬を明示しなければ、金貨二十枚で
済む場合もあるわけだ」
 ロルフが笑って立ち上がると、カッツェはしばし皮袋を眺め、あろうことかその中身を
テーブルの上にぶちまけた。
「カッツェ!?」
 目を剥いたカディとロルフの前で、金貨を二十枚だけ拾い上げてポケットに押し込む。


404 :
「金貨二十枚だ。俺は要求した以上は受け取らねぇ」
「はぁ!? 馬鹿、何かっこつけてんのよ! くれるって言うんだからもらっときなさいよ!」
「受けとらねぇの! 行くぞカディ。じゃ、またよろしく。ロルフさん」
 言って、さっさと部屋を出て行ってしまう。カディはテーブルにぶちまけられた金貨を
名残惜しそうに睨みながら、しかしカッツェを追いかけて慌てて部屋を横切った。
「カディ」
 その背中を呼び止められ、カディは足を止めてロルフを見やる。
 その静かな怒りをたたえた表情に、カディは面白がるように唇を吊り上げた。
「やだ、いい男にそんな熱烈な視線で見られたら興奮してきちゃうじゃない」
「冗談であろうと――二度と口にするな」
「カッツェを売るって? やあね、割と本気よ?」
「ならば今すぐ切って捨てようか」
「ま、こわぁい! 冗談よ、じょーだん。だから剣から手を離してくれない? 
大事な腹違いの弟ちゃんが危険な傭兵家業をやめないからって、あたしに
八つ当たりされても困っちゃうわ」
「……腹違いで、且つ種違いだ」
「つまりただの他人じゃないの……。ただれた貴族の血縁事情なんかどーだっていいの。
何にせよあんまり過保護だと、まるでカッツェを狙ってるみたいよ? 団長さんって、
ひょっとしてあたしのお仲間ちゃん?」
 ロルフは静かに肩を落とす。その態度になんらかの安堵を見て取って、カディは
ついと片眉を吊り上げた。
「どーも胡散臭いのよねぇ、あんたのカッツェに対する態度って。誇り高い騎士なら普通、
そこは断固として否定するところじゃない?」
「話はすんだ。もう行け」
「あら、横暴。そんなとこも魅力的よ?」
「カディ! 何ぐずぐずしてんだこのカマ!」
 廊下から飛んだ罵声に、カディは小さく肩を竦めて怒鳴り返した。
「今行くわよ! あたしには男を口説く自由もないわけ!?」
「相手を選べよばーか! 時間の無駄だっつーの!」
「……そんなに脈無しかしら?」
 誰に聞くでもなく言って、カディは頬に指をやる。
「そうよね、あたしもそう思うわ」
 一人頷き、カディはウィンクを残して部屋を出た。
***
 カッツェと出合った――と、いうより、見つけたのはほんの一年前だ。
 仕事を探して流れ着いた町の酒場で、スープが服に跳ねたの跳ねてないので、
大の男三人を相手に大立ち回りを演じていたのがカッツェだった。
 野蛮ね、と一言言って無視するのが常の下らない喧嘩であった。だがその、
自分よりはるかに大きい男三人を相手取り、無謀ともいえる喧嘩に興じるカッツェの
姿は、目をそらしようが無いほど美しく輝いていて見えたのだ。
 しなやかな筋肉に覆われた細い手足はまるで森を駆ける動物のようで、テーブルの
上をあちらへこちらへ跳ねる、跳ねる――。数分後、割れた食器に足を取られたところに
拳をもらって壁に激突し、鼻血を流しながら綺麗に伸びたカッツェを介抱してやったのが
すべての始まりである。
 近くで見れば、なんとも可愛らしい少年だった。顔は鼻血で見るも無残に汚れていたが、
それであっても十人が十人振り返る。
「でかい女だと思ったら……カマかよ。きーめぇ」
 それがカッツェのカディに対する第一声だった。意識が朦朧としていたから覚えていないと
カッツェは言うが、であるからこそ本心だったのだろう。
 身長だけで言えば、カディの背はロルフよりもわずかに高い。長く伸ばした髪と、
なよやかな立ち居振る舞いのせいで遠目に見れば女に見えるが、近くで見ればカディは
間違いようもなく男である。
 顔立ちは整っているが女性的というわけではなく、化粧はその男性的に整った容姿を
そのまま引き立てているに過ぎなかった。
 女のようである。だがどう見ても男である。それがカディの容姿だった。
「けど、どんな美貌を持ってたって男になびく男は少ないのよねぇ」
 自室で洗い髪を櫛づけながら、カディはやれやれとため息を吐く。

405 :
 ロルフといい、カッツェといい、欲しいと思った男はどいつもこいつも、オカマどころか
あまりにも頑なに他人を寄せ付けようとしない。
 金貨二十枚の報酬をきっちりと折半し、二人がそれぞれの自室に引けたのは夜も大分更けた頃だった。
 同じ部屋で寝起きすれば宿代も浮くというのに、組んで一年が経った今でもカッツェは頑なに
相部屋を拒む。別にカディが尻を狙っているのが原因というわけでもないようで、宿屋の女将が
言うには、今までカッツェが誰かに相部屋を許したことは一度たりとも無いらしかった。
「女だな」
 部屋の隅から唐突にだみ声が上がり、カディは髪をすく手を止めて振り返る。それからすぐに、
カディは振り返ったことを後悔した。
「ああやだ、なんて醜い……! 獣臭いと思ったらあんただったの。いつからそこにいたのよ、
気持ち悪いわね!」
「なあおい。さっき一緒に部屋に来たよな……報酬がよかったから飲み明かそうつってきたのは
そっちだったよな!」
 怒りもあらわに酒瓶をカディに突きつけて、巨岩のごとき大男が低く吼えた。
 そうであったと先刻の自分の行動を思い返し、酒の勢いとはいえ間違いだったと重ねてカディは
後悔する。風呂上りでさっぱりとした今の頭ならば、決してこの男を部屋に上げようとは思うまい。
「悪いけど帰ってくれない? あたし今、カッツェのお尻の事を考えるのに忙しいの」
「それが久々に会った恩人への態度かカディ! 森で半行き倒れだったてめぇを助けてここに
つれてきてやったのは誰だと思ってやがる!」
「もう、二言目にはすぐそれを出す! そういう性格も醜くて嫌いよ。恩人じゃなかったら、
あんたなんか視界にも入れたくないっての。やだやだ、なんでこんなのに助けられちゃったのかしら。
いえ、そもそも助けられてなんかいないのよ! ちょっと休憩してたら、あんたが勝手に行き倒れと勘違いしただけ」
「毒蛇に噛まれてゲーゲー吐いてたくせに、よく言うぜこのオカマ」
 狩のために一年の大半を山ないしは森で過ごし、いつも見ても頭からすっぽりと何かの
毛皮を被っているこの男は、半ば獣臭さと血生臭さの代名詞と化していた。付いたあだ名が
ヴィルト(野獣)である。
 本名よりも“らしい”からと自らそう名乗り始めるあたりが、なるほど“らしい”と誰もが頷く。
そんな大味な男だった。
「いいさいいさ。てめぇがおっぱらうんなら長居はしねぇよ。てめぇがご執心のカッツェでも
部屋から引きずり出して付き合わせるさ」
 吐き捨てて立ち上がりかけたヴィルトの鼻面をナイフがかすめ、そのまま壁に深々と突き立った。
ヴィルトの野生に限りなく近い反射神経がなければ、間違いなく鼻をもぎ取られている位置である。
「見た目から性格から発言から全てが醜い男ね。その反射神経だけは惚れ惚れするわ」
「そいつぁどうも」
 壁からナイフを引き抜いて、ヴィルトは刃こぼれ一つ無いナイフを黙って自分のベルトにしまいこむ。
「ちょっと」
「取り返したきゃ、もう一本投げてきちんと当てるんだな。これで三本目だぞ、下手糞め」
 狼の毛皮の奥で不適に笑うその顔面に、カディは頭の中で深々とナイフを突き刺した。
「それで……カッツェに女がいるって?」
「誰がそんな話をした」
「あんたよあ、ん、た……!」
「違う違う。俺ぁカッツェが女なんだつったんだ」
 ひらひらと手を振るヴィルトの言葉に、カッツェは心底呆れ果ててため息を吐いた。
「あんた本気でそんな御伽噺信じてるわけ……? 呆れた。ナイフ投げんのももったいないわ」
「夢があっていいじゃねぇか! 通る顔はしてるだろ?」
「なあに? じゃ、あたしにも実は絶世の美女伝説があるわけ? 薬屋のおばあちゃんが黒魔術の
スペシャリストって噂の方がずっとあり得るわよ、馬鹿馬鹿しい」
「そりゃありそうな話だな! 俺には亡国の王族って噂があるぜ? だから森で暮らして毛皮で
顔を隠してるんだってな」
 暇な酒飲み達の、下らない遊びだった。寄った勢いで適当な噂をでっちあげ、声を潜めて
まことしやかに囁き合う。その中に、カッツェは実は男装した少女だという物があった。
なるほどいかにもありそうだが、実際信じている者などいはしない。
 この、見た目ばかりか脳内まで獣に成り果てている男を除いては――のようだが。
「しかしま、実際カッツェは何か隠してる。前に馬鹿をそそのかして部屋に押し入らせたことが
あるんだが、あの時の怒り方は普通じゃなかったな。本気でその馬鹿をしちまうんじゃないかと慌てたぜ!」

406 :
「あんた、思ってた以上にとんでもない糞野郎ね……」
「巣穴を見るとつつきたくなる性質でな。どんな蛇が飛び出すか知れねぇが、誘われてるみてぇで
うずうずするぜ。やべぇ勃ってきた」
 ぞくぞくと肩を震わせ、ぐっと酒瓶を一気に煽る。舌なめずりをするその様は獲物を前にした
野獣そのもので、カディはカッツェの不憫を思って目頭を押さえた。
「やだ、ちょっと団長さんの気持ち分かったかも……あたしこんな風に見えてるのね、きっと」
 ならばなるほど、ロルフの態度は正常である。心底弟を思う兄ならば尚のこと、あの場で
切って捨てられていても不思議は無い。
「……真面目な話、な」
 ふと、ヴィルトが言葉通りに真剣な声で呟いた。
「あいつの守りは堅すぎる。あんなにガッチリ守ってちゃ、誰だって何か隠してるんだって
思うだろ? 危険だぜ、ありゃあ。前まではそういう性格なんだろうで済んでたが――お前と
組んでからはかなり不味い」
「なに、あたし!?」
「お前は知らんだろうがな、カッツェが誰かと組むこと自体がそもそも驚天動地なんだよ。
そんならそうか、あの新顔のカマ野郎にケツでも掘られたか知らねぇが、よっぽど
気を許したんだろうなって思ったら……どうだ? カッツェはお前にも徹底した守りを崩さねぇ。
こいつはいよいよ何かあるなと、思ってる奴が宿の半分――」
 すうと、背筋が冷えるようだった。馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばすにしては、ヴィルトの声が
あまりにも静か過ぎる。
「大したことじゃないんなら、暴かれる前にさらしちまった方が傷が浅いこともあらぁな。
大したことなんだったら、もっと上手くかくさにゃいつか全部ぶちまけられちまうぞ」
「それ、あたしじゃなくてカッツェに直接言ったらどうなのよ」
「素直に聞くタマかよ!」
 半ば叫ぶように言って、ヴィルトはソファにひっくり返った。
「あー……本気で、女だったらいいんだがなぁ」
「どうでもいいし、どっちでもいいわよ」
「なんだ? おまえ、カッツェが男だから追いまわしてるんじゃねぇのか?」
「あたしは綺麗だったら男でも女でもいいのよ。性別って概念から解放されてるの。あんたこそ、
カッツェが女だったらどうだっていうのよ」
「ん。ま、物にするな」
 酒を口に含みかけて、カディは思い切り噴き出した。
「なんですって!? 冗談じゃないわ、汚らわしい! あんたそんな目でカッツェを見てたのわけ!?」
「惚れてるからなぁ」
「ほ……惚れ――!?
 慌てふためく自分が馬鹿馬鹿しくなるほどに、ヴィルトの口調は落ち着いたものだった。
絶句したカディが愉快だったのか、ヴィルトはひっくり返ったまま首を巡らせてカディを見る。
「てめぇが驚く話かよ。まあてめぇと違って俺は男にゃ興味ねぇんだ。だれからカッツェを
どうこうしようとはこれっぱかしも思わねぇ。が、惚れてるのも間違いねぇ」
「あんたのその、社会的規範だとかなんだとか、もろもろを無視して感情に馬鹿正直なところは
美しいと思うわ……」
「そいつぁどうも」
 で、とヴィルトはにやりと口角を持ち上げた。
「てめぇはどうなんだ。カッツェに惚れてんのか? それとも、てめぇが言うところの美しい物
その一としてケツおっかけてるだけか?」
「あたしは惚れてる男のお尻しかおっかけないわよ」
「そりゃ、随分一途な話だな」
 馬鹿にしたように小さく笑うとほぼ同時に、ヴィルトの手から酒瓶が落ちた。んだような
沈黙が訪れてしばし、眠ったのだとようやく気付く。
「まったく……息してるのかも怪しくて不気味なのよ、あんたの寝方って!」
 忌々しげに吐き捨てて、カディはヴィルトを残して足音も荒く部屋を出た。

切らせていただきます。
スレチな感じだったら男装少女スレに移動しますので、ご指摘頂ければ幸いです。

407 :
>>402-406
読みやすい文章で続き読みたい!
男装少女スレでもいけそうだけど
男性がオカマでバイだから人を選ぶ気がするのでこっちでいい気がする
投下先に悩んだらQ&Aスレで聞いてみるのもありかと
Q&Aはここ!エロパロ板総合質問スレッド7
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261999123/

408 :
ヴィルトともエロがあるんなら、その部分だけ別スレ投下とか?

409 :
ほしゅ

410 :
GJ!続き楽しみだ。
投下スレは、注意書きをしてあればここでも良いのでは?
あとは男×女がアッサリめで、オカマ×女がしっかりあればいいんでね?

411 :
男と女もあるのかあ
お釜好きとしては、お釜一筋の純愛を貫いて欲しい
が、作者さんに好きなように書いて頂くのが一番なので、どんな展開でもバッチコイ

412 :
オカマ×女成分が満たされていれば、
特殊状況を初めに注意書きしてくれれば何でも来い来い
わっふる〜

413 :
保守がてら一筆
エロ無し、そもそも恋愛に至ってない(ほんのり意識?)
難があればNGを


晩秋。紅葉が彩るとある都市のとある部屋。友達同士のオカマと女。
「ん〜‥‥」
「ペディキュアって、今の時期靴で隠れちゃうわよ?」
「自己満足。バイト先で禁止なんだけど、良い色だし塗りたいんだ」
「そう。でも塗るの大変そうね」
「膝が邪魔で見づらくて」
「じゃ、貸して。塗ったげる」
それでオカマが足下に傅いて作業し始めるけど
「ああ、爪以外ももうちょっと気を使いましょうよ」
「く、くすぐったい」
「くすぐったがりね。止める?」
「‥‥我慢するから、続けて」
とフットマッサージを手始めにねりねりフットケアされて、ネイルカラー塗られて乾燥待ちの頃には気が気でない女と、爪の仕上がりに大満足なオカマ。
「‥‥(立て膝じゃなくて別の姿勢なら一人でできたよね)‥‥」
「時間が空いてたら、次も私がしようか?」
「‥‥お願い」
作業中の顔が格好良くて、もっと見たいと思ったのは女の秘密。
フットマッサージ中の女の顔に、何故かぞくっときたのはオカマの秘密。

414 :
>>413
よし保守続きを書くんだ
自分的にはこのスレは何かこういうイメージがある
以下失恋中のイケメンオカマとそれを性的にもなぐさめる関係になった女性。女性上位
「なんでっなんでよぅっあんたなんかっ」
「うん…」
「あんたなんかあたしをぎゅって抱きしめてくれるわけでもないしっ」
「うん…」
「あたしの奥をガンガン突いてくれるわけでもないしっ」
「うん…」
「あんたなんかっっ」
「でも私もあなたのことが好きだよ」
「っ…!」
「好きだよ…」
「……なんで、なんでぇ」
「好き…」
「なんでっ…なんで、なんでこんなに気持ちいいのぉっ?指入れられてるだけなのにっ
あぅっだめっあたしおかしいっおかしいのっ…だって前、なんで前がこんなにおかしいの?」
「おかしくなっていいよ。変じゃないよ」
「いや、いやぁっ」
「大丈夫だから、前も気持ちよくなろ…?」
「ああ、もう、もうだめ……前、前、包んで……」
「うん」
「あっああんっ…」
「あ…っ…おっきい…」
「っ…もう、なんで、なんでっ…もうあたし、あんたじゃなきゃダメな体になっちゃったわよぅっ」
「うん、ありがとう」
「なによ、なによっあんたなんか嫌いよっ大ッキライよっ!!」
「うん、知ってる。
でも私はあなたのことが好きだよ。大好きだよ」
「あ、う…っ…だめ、もうだめ、あたしイッちゃう…あ、あたし、あんたでイッちゃうぅ…」
「いいよ。いっていいよ」
「やだ、やだぁ…ああだめっもうダメっだめぇ…イク、イッちゃうっ…ああぁぁあああっ!!」
オカマ的にはレズってる気持ちになるのかな。知ってる人いたら教えてくれ

415 :
>>413
こういうの好きだ
続きを書いてもいいのよ?
>>414
こちらもGJ
個人的にはオカマ×女性って、異性愛可能な自分への気付きだと思ってたから
レズな気分とかは考えたことなかったな
科学的に脳が女性な男だったら、レズっちゃってる気持ちになるんだろうか?

416 :
>>414
414もGJ!
乱れてるオカマに対して淡々としてる女が、何か逆に情熱を感じる
肉体の性が男で心の性が女、性的嗜好が女の人はレズだという意識があるらしい
異性装の同性愛者をオカマと考えた場合は415の感じじゃないかな? でもこっちの意味でのオカマの場合はよく知らん
このスレの>>25-26あたりで「ホモ×女は無理じゃ」「オカマ×女の方が無理じゃね?」という話も出たので、オカマという言葉は結構曖昧な言葉だと思う

で、ネタが降って来たので>>413の続き
たぶん414と415の一押し無かったら無理だった
相変わらずエロ無し。

「その格好、面接? 男装って珍し‥‥ネクタイがアクロバティックだよ」
「中学高校と詰め襟だったし、ネクタイは苦手なのよ。窮屈で嫌になるったら」
「‥‥ネクタイ貸して。結んであげる」
「できるの?」
「あたしの高校、男女共通でブレザーにネクタイだったから。キミもきちんと出来るようになったら彼氏のネクタイ結ぶってこともできるんじゃない?」
「教えて」
「OK」
 意気揚々とネクタイを受け取って向かい合ってネクタイを結ぼうとするけれど、自分の首に結ぶのと、他人の首に結ぶのとじゃ違う。直ぐに壁に突き当たることになる。
「‥‥ちょっと座って」
「座ったけど‥‥なんで背後に回るのよ」
「大口叩いたけど、視点が同じじゃないと無理みたい。脇の下から腕失礼ー」
 そうして後ろからネクタイを結びにかかると、自然と後ろから抱きつく姿勢になる。
 女から漂う香りを心地良く感じるオカマ。
 意外と体格しっかりしてるんだな、と思いつつネクタイを結びにかかる女。
「ここに通して、巻いて、こうして、こうやって」
「‥‥ねえ」
「はい、完了――」
 ここで思い出してみよう。視点がだいたい同じになるように、後ろから抱きつくような姿勢で、ネクタイを結んでいた訳だ。当然、顔の位置は近くなるので、その状態で顔を向けあうと――
「‥‥ばかああああ!」
「事故だから! 事故だから! ノーカウントだから落ち着いて!」
 キスしてもおかしくないのだ。
 その場は事故だから気にしないことで一致した。
 けれど、女はオカマとキスしてからずっとドキドキしてることに、戸惑ってる。
 オカマは女の唇の柔らかさが、ずっと頭にちらついてる。
「友達なのに、な」
 本当に?

417 :
いいねいいね
自分も女のはずなのに女の魅力に惹かれてるオカマと
女友達のつもりでいたのに男を意識しちゃった女って感じか?
ちょっとずつでもいいので続きに期待

418 :
久々に来たらたまらん
皆GJ

419 :
ここって上げてもいい?

420 :
SSは歓迎だよー
sage外れても大丈夫かって意味ならよくわかんね
自分は今のところsageが続いているのでsage入れてる

421 :
田舎に住んでる親父!
田舎のお袋!田舎の同級生!会社の同僚のみんな!
http://www.youtube.com/watch?v=eLsZqEyCH_0&sns=em
俺はホモだらけの町の中野区で
肛門が開いたまんまのケツマンコオープンリーゲイとして生きて行くよ!
近所や職場でゲイ疑惑がある同僚やホモのウワサがある仲間や友達や親族を見つけたり探したり確認したいなら
この動画を見てくれ!
http://www.youtube.com/watch?v=HcvArkQtoIA&sns=em

422 :
ゲイに興味津々な強気腐女子と押しに弱いゲイって、このスレ的にはアリ?

423 :
いんでないかい?細かい規定はなさそだし

424 :
>>413>>416の続き
オカマ×女、オカマ視点、女は後半にちょっと
ネタが降ったら書いてるので、前と矛盾する箇所もあるかもしれないけど容赦して戴きたく
NGはIDで

 クリスマスを目の前にして彼氏と別れた。
 別れる予感はあった。会話が途切れた時の空気を重苦しく感じたり、電話しても留守録に繋がる頻度が増えたり、誘ってもベッドインしなくなったり。心が離れているような不安があった。
 でも、そんな不安は二人でクリスマスを過ごせば解消すると思っていた。

「クリスマスに向けてムードを盛り上げようと彼氏の部屋へ遊びに行ったら、くずかごに使用済みのスキンを発見した時の気分を十文字以内で答えて下さい。‥‥ふざけんなー!」
 オカマがバンとちゃぶ台を叩いた衝撃で、空のビール缶がからころと転げ落ちる。自宅アパートで独り騒いでいれば隣室の者が注意に来そうだが、隣室と下の階の住人は不在が常なので、独り酒を咎める者は誰もいない。
 酔態のオカマを見つめているのは、聞き役のように向かいへ置かれた酒買い狸の置物だけ。
「蓋無しのMサイズのレジ袋が丁度良いくらいのにポーンとよ、ポーンと。そのくせ誤魔化そうとするから余計に腹が立って‥‥平手打ちしたけどまだ大人しいくらいよね?」
 同意を求めるように置物の黒々とした目を覗き込んで、そのまま空しそうにちゃぶ台に突っ伏す。
「‥‥やっぱり本物の女の子の方が良いっていうの?」
 別れを告げてそのまま彼氏の部屋を飛び出したものの、何故別の女性と浮気に至ったのか聞きそびれていた。その所為か、妄想が思い浮かんではジワジワとコンプレックスを刺激して、消え入ってしまいたくなる。
 オカマの目に、紙ケースに入ったままの缶ビールが映る。吐き気と寒気がする今の状態でもう一本飲めば健康に関わるが、意識があること自体が厭わしくて、酒精を拒む本能を押さえつけてケースに手を伸ばす。
 それを遮るように携帯が唸りを上げた。女からのメールだった。
『月きれいだよ!』
 添付ファイルもついているが、携帯の解像度ではまったく分からない。
 仕方なくのろのろと窓辺へ這いカーテンを開けると、月が煌々と輝いていた。
 都市の灯りに負けぬように地を照らす月はとても美しくて、オカマは暫く胸のわだかまりを忘れて見つめていた。
 妙に冴え冴えとしたとした気分のまま、女に電話をかける。二度目のコール音の後に出た女は、少し陽気だった。
《月見た? 綺麗だよね》
「うん‥‥教えてくれてありがとう。でも、どうしてメールを?」
《綺麗な月なんだから誰かに教えたいじゃない。独り月見もつまらないし。でも、反応してくれて嬉しかった》
 女の少し甘えたような声音に、オカマも甘えたくなってしまう。
 だから、発作的に言ってしまった。
「ねえ、クリスマスかイブ会えない?」

※ちなみに今年12月10日は皆既月食が見られます。次に国内で見られる月食は三年後。晴れねえかな

425 :
>>424
乙GJ!!
タイムリーに季節ものだから一層萌える。続きに期待!
10日晴れるといいね

426 :
女友達以上恋人未満みたいな遣り取りに萌えた、GJ
10日の皆既月食、きれいだったな

最近買った漫画で、金田一蓮十郎のニコイチというのが面白かった
訳あって子持ちの女装リーマンが、女の子と恋愛する作品なんだが
女装姿の時(人格まで完全に女)のリーマンが魅力的

427 :
ISの一夏ホモ疑惑を知ってから、snegなハーレム環境だけど本人はゲイって話も良いかなと思ってしまった。

428 :
宦官萌えの自分としては
男色に走った宦官×宮廷女官など読んでみたい

429 :
ナルトの大蛇丸とアンコはなんか怪しいんだよね…
そういや中村明日美子の作品に、ドラァグクイーンのお姉さまに憧れる女子高生?の話があったな。

430 :
「マー様に捧ぐ」だな
鶏肉倶楽部っていう短編集のなかにある
中村明日美子は結構オカマとかレズとか出てくる漫画が多い気がする
オカマ×女はマー様くらいしかないけど

431 :
初投下です
女→お釜の片思い。女視点
※本番なし(微エロ?)、やや変態気味
+++
「ハーイ、イイネー、イイヨー、モット笑ッテー」
「……ちょっと、何よその棒読みは。もっと気合入れてやってくんない?」
――パシャリ、とデジカメのシャッター音が鳴る。
まったく、人に撮ってもらっているクセしてぶうぶうと文句をたれるとは……。
私の目の前で溜め息をつくこの男――純は、肩よりも少し長めの髪をかきあげて、
桃色のピアスが揺れる耳をあらわにした。
緩くウェーブのかかった髪がふわりと揺れて、ほのかに甘い、女性用の香水の香りが私の鼻をくすぐる。
……なに、この色気。なんなの、その美貌。悔しくて、悔しくて、本当に腹が立つったらない!
これまでに、何度そう思ったことだろう。「女よりも女らしい」だなんて、よく言ったものだ。
それでも私は、彼のそのちょっとした仕草にすら、不覚にもときめいてしまう。
世間では“美女”と評されることの多い純だけど……、私の中では昔っから、
コイツはただの綺麗な“オトコ”でしかなかった。
「ねえ、純。今日はどうするの? 服はそのまま? あ、それともいっそのこと全部脱いじゃおっか!
なーんて……」
「ばっか、あんた。全部脱いだら捕まっちゃうでしょうが」
上着を脱ぎ、ブラウスのボタンを淡々と外しながら、彼は言う。
些細な冗談もつれなく流されるわ、まだまだ終わる気はないらしいわな純の様子に、
私は人知れず肩を落とした。

純は、この多目的トイレによく私を連れ込んでは、自分のイロイロな写真を私に撮らせた。
もちろん、普通のポートレートやスナップ写真ならば、私も喜んで彼専属のカメラマンになろう。
だけど純が被写体として写るものはことごとく、“ほぼ”裸に近いセクシーな下着姿や、
一体どこで買ってきたのか……と赤面する程の、とにかく露出の多い破廉恥なものばかりだった。
そして、その撮った破廉恥写真をどうするのかと問えば、
なんと彼は自身のブログだの、掲示板だのにアップロードするのだという。
『えっ、そういうのって危なくないの? だって、名前とか顔とか住所とか……っ』
『ああ、平気よ平気。名前はもちろん偽名だし、顔だってちゃーんと加工で消してるもの。
身バレの心配はないわ。みんなに見せてるのは、あたしのカ・ラ・ダ・だ・け♪』
純はそう楽しそうに語った後、最後に私に向かってパチリと片目を閉じた。
……その時の私の顔といったら、きっと目を見開いて呆然としていた事だろう。
別に、人にどんな趣味があろうと干渉はしないけど、いや、でも……これはちょっとどうなの?
そもそも私は、彼にどう思われているのかもわからない。
初めて純にここに連れ込まれた時は、それこそ「ついに!?」といった期待も抱いたものだったけど、
そんな心配は全く必要がなかったから余計に落ち込んだ。
そうして第一回目は困惑したまま終わった撮影会だったが、
結局、彼の勢いとその場の空気に流されて、私は今日も彼の為にシャッターを切っている。
おかげで私達は、とっくにこのトイレの常連だ。全然、露ほども嬉しくない。
「……もう、帰りたい」
無意識に漏れる声には、切実で複雑な思いが滲む。
けれど、いそいそと服を脱ぎだす純の耳に、残念ながら私の声が届くことはなかった。

432 :
「――タイツ、どうしよっかなぁ」
純の独り言に、私はハッと我に返った。
見れば、純は既にブラウスの前を肌蹴させて、ミニスカートの裾を摘んだまま唸っている。
スカートの下の黒タイツを脱ぐべきか、それとも着たまま撮るか……。
「……半分だけ脱いだら? 太ももまで下ろしてさ。そしたらパンツも足も見せられるでしょ」
「んまっ、やらしい〜! あんたって子は、いつからそんな事言うようになったのよ」
純は、一見咎めるような台詞を吐きながらも、ケタケタとからかいまじりに笑った。
その、全部を私の所為にされるかのような物言いが、なんだかちょっと癪にさわる。
「もうっ、そんなの……! 慣れちゃったよ、誰かさんのお陰で!」
「あんたも女なら恥じらいくらい持ちなさいよ。つまんないわぁ」
「……それこそ今更でしょ。あと、それ純にだけは言われたくない!」
「フン、あたしは別に誰に裸見られようが平気だもの。
あんたこそ、人の股間見ても悲鳴一つあげなかったクセに。……ま、そんな事はどうでもいいわ」
純は、私が提案した通りに半分だけタイツを下ろすと、スカートの裾をちらちらと揺らしてみせた。
それによって、レースに縁取られた彼の下着が、際どくもいやらしく見え隠れする。
「ほらほらぁ、どうよ。セクシー?」
「はいはい、エロスエロス」
私は純の言葉に生返事をすると、再びデジカメを構えた。
先ほどはつい、「慣れた」と言ってしまったが、実際はそんな事は無い。
もう何度も彼の体を見ているというのに、それでも私は一向に「見慣れる」なんて事はなかった。
男にしては脂肪のある、けれども締まった純の太ももに、カメラの焦点を合わせた。
肌は相変わらずのスベスベ色白で、自分のものと比べるのが少し怖くなってしまう。
――純の、細い太もも。
そこからゆるりと繋がるラインの中心部には、女性物の薄い下着に包まれた“彼”が、
慎ましくも、しかしありありとその存在を主張していて……。
「……とっ、撮るカラネッ!?」
下着越しに見える、ぷっくりと膨らんだ彼が憎たらしい。
私は悲鳴をあげない代わりに、思わず、どぎまぎして声が裏返った。

――パシャ、パシャリ。
一応室内だけど、あえてフラッシュは焚いていない。
むしろこの仄明るい橙色の照明だけの方が、より艶めかしく純の肌を映してくれるような気がする。
どこから撮れば綺麗に写るのか。どの角度から撮れば一層エロく写るのか。
そんな、表では絶対に披露できないような、無駄な知識と技術ばかりが身についてしまった。
もっとも、純自身は、私の涙ぐましい努力なんて、これっぽっちも関心がないのだろうけど。
「綺麗に撮ってよね。――まぁ、あんたの腕はちゃんと信頼してるけどさ」
「……え、あっ、……うん、まかせて!」
……こんな時ばっかり持ち上げるなんて、純は本当に――、ずるい。

433 :
――その後私達は、いつも通りのやりとりをして、いつも通りに純の写真を撮り、
いつも通りに今日の分の撮影は無事終わったのだった。
私はカメラを鞄にしまい、純は脱いだ服を元通りに直していく。
白いブラウスのボタンを一つずつ留めていく彼の姿を見ていると、なんだかとても……、
ええと、その、とにかく落ち着かなくなって、私は咄嗟に彼から顔を背けた。
……二人の間に、特別会話はない。
私は、この“しん”とした沈黙と気まずさに耐えかねて、
「そう言えば」と以前から気になっていた事を、何気なく聞いてみることにした。
「――あ、あのさ。なんで純は、私に自分の写真を撮らせるの?」
「は? なによ急に。……そんなの、あんたが“女”だからに決まってるじゃない」
純の返事は、あまりにもあっさりとしたものだった。
あっさりし過ぎて、逆に呆気なく、拍子抜けしてしまう。
「……って、え? それだけ?」
「だって、男と二人きりでこんな事したら、最終的にあたしが襲われるのが目に見えてるもの。
……っつーか、実際にそういう事あったし」
純はその時の事を思い出したのか、ちょっと眉をしかめて、どこか遠い目をした。
――「男に襲われる」? それが、純は嫌なのだろうか。
というか、もう既に遭ったとは、案外彼も無防備なんだな、と他人事のように思う。
「あの、でもさ。純は男が好きなんだよね? それが、なんで嫌なの?」
「……あのねぇ、あたしを男なら誰でもいいタラシみたいに言わないでくれる?
あたしにだって選ぶ権利くらいあるわよ。それにあたしは、別にシたい訳じゃない。
ただ撮って欲しいだけ。それなのに、誘惑されたとか言って勘違いする奴がいるのよ」
純は腕を組んで、苦々しい表情でそう語るけど、
私には勘違いしてしまう方の気持ちもよくわかるような気がした。
……私だって、ときどき無性に体が熱くなって、どうしようもなくなる時がある。
それは、彼の生着替えを見ている時や、デジカメの液晶越しに姿を捉えた時なんかが顕著だ。
でもそれ以上に問題なのは、純自身がすごく鈍くて、おまけに無自覚なところが救えない、
という点だった。
私は、緊張で乾いていく喉が不快で、強引に唾を飲み込んだ。
「……それじゃ、私が『女』で、純を『襲わない』から……単に都合がいい、と?」
「ま、そういう事ね」
はっきりと肯定した純の返事に、私は軽くショックを受けた。
……いや、ショックを受けるまでもない。予想通りで、聞かなくてもわかっていた事だ。
だけど、改めてその事実をつきつけられると、少し気落ちしてしまうのも確かだった。
いっそ、純の期待を裏切って、ここで強引に彼を押し倒してしまえば――。
そこまで考えて、私は頭を振った。バカバカしい。有り得ない。本当に、くだらない。
まったく、私は何回彼に恋をして、何回打ちのめされれば気が済むんだろう。
最初から諦めていたも同然の恋だから、それを“失恋”と呼ぶのは何か違う気がするけど、
今は他に適当な言葉が見つからなかった。
「……なぁんだ」
呟く声に、隠し切れない落胆の色が滲む。
せめて嘘でも「私だから」といった理由を純の口から聞けたなら、
こんなにも肩を落とす事なんてなかったのかも知れないのに。
でも、現実はそうじゃなかった。純にとって、私はそんなに重要なものじゃない。
認めたくはないけど――ただ、それだけの事だった。

434 :
チクリと、ジクジクと、痛みに唸る胸を、私は服の上から押さえつけた。
けれど、いくら表面だけをきつく押さえても、意味なんて少しも無い。
胸の奥に、それはまるで剣山かウニかイガ栗でも居座っているかのように、
チクチクと凶暴な刺激だけを私に訴え、襲い掛かってくる。
……どうしよう。今は顔、上げられない。
俯いて視線を足元に落としたまま、そう思った時だった。
「――美乃里」
純に、急に名前を呼ばれて、私は思いもかけず耳を疑った。
それは彼の発した声が、なぜか真剣みを帯びているように聞こえたからだ。
その上、純に名前をきちんと呼ばれること自体も近頃では珍しくて、懐かしい気すらしてくる。
私は純の声に弾かれるようにして、俯けていた顔を上げると――、それは、ほんの鼻先の事だった。
近すぎて、焦点がぼやけてしまいそうな程の至近距離に、純の顔がドアップで飛び込んできたのは。
「わっ、な、なに……ッ!?」
想定もしなかったそのあまりの近さに、私の声は情けなくも上擦った。
慌てて平静を装おうと思っても、誤魔化すにはもう手遅れだ。
一瞬の間を置いて我に返った私は、近すぎる彼から少しでも距離をとろうと、一歩後ずさった。
――しかし、忘れていたけどここは一応“トイレ”だ。逃れられるほどの広さはもちろん無い。
だから後ずさっても、すぐに私の背中は壁に当たり、
先ほどまでとは一転した雰囲気の中で、彼に「追い詰められる」状況となってしまったのだった。
それでも尚、純は私をじっと見据えたまま、無遠慮に体を寄せてくる。
「えっと、なぁに、純……?」
「いや、あんたってさ……。案外大きいのね――胸」
「……へ?」
見ると、純は真剣な顔つきをして、私の胸元をまじまじと凝視していた。
ちらりと見る、なんて可愛らしいものじゃない。――凝視だ!
私が、つい今しがた胸元を強く押さえたのがアダとなったのか、
気づかない内に、私の胸は腕によって寄せられている状態になっていた。
その所為で確かに、丸い膨らみの線が、少し過剰なまでに強調されている。
……そして、私の胸から視線を逸らさない、純のあまりにも真っ直ぐな目に、
私は羞恥でどうにかなりそうだった。
瞬時に熱が顔に集まっていくのを感じて、反射的に両腕で胸を庇う。
「な、なにっ、急に言って……っ」
「だって、ホラ! 見てよ、あたしのと全っ然違う! あたしだってちゃんとホルしてるのに、
なんであんたとこんなに差があるのよッ。ムカツクー!」
純は、納得がいかないとでも言いたげに声をあげると、グイ、と自分の胸を片方掴んでみせた。
掴む、というか、純の胸は彼の手のひらの内に簡単に収まってしまう程の、ささやかな“微乳”だ。
それも最近になってようやく膨らんできた程度の……その、とても成長途中だった。
「……私は、そのくらいの方がいいと思うけど……」
本音を言えば、むしろ小さい方が羨ましい。
この、平均よりもだいぶ育ってしまった私の胸には、いつだってどうにもならない悩みがついてまわった。
無いものねだりだとわかってはいるけど、だからこそ、彼の主張に素直に頷くのは難しい。
私はそのまま、彼になんと言ったらいいかわからずに、曖昧な微笑を浮かべていると――。
純はなんと、眉間に皺を寄せた表情のままで、私の“やや”大きめな胸を両手で鷲掴みにしたのだった。

435 :
「ひゃ……、なっ!?」
「うっそ、やわらかーい! すごーい! いいなー!」
心構えの出来ていなかった私は、突然のことに全身を硬直させた。
純はと言えば、「悔しい!」とごちりながらも、何やら興奮した様子で人の胸を弄んでいる。
――これは、一体何の拷問だ!
今さっき通算何度目かの失恋をしたばかりだと言うのに、
仮にもその好きな相手に己の胸を揉みしだかれているこの状況が、訳がわからない!
ブラと服越しとは言え、かすかに純の感触と体温が伝わる。
……もしかして私は、彼の気が済むまで、
この愛撫という名の拷問に耐えていなければいけないのだろうか。
顔はさっきからずっと紅潮しっぱなしで、とっくに頭まで血がのぼっている。
それに、奥歯を強く噛み締めていないとなんだか変な声が出てしまいそうで、
それが私には一番怖かった。
だけどこのくらい、純にとってはただの“お遊び”と同じだ。
この行為に、他意なんてあるはずが無い。
女同士の戯れと同じで、だから、これくらい、平気で、反応する、方が、おかしく、て――。
「……あ、ぁン……っ」
ビクッと肩が跳ねる。体が震える。
その聞き慣れない小さな声が私の口から漏れた途端、純の手が不自然にぴたりと止まった。
ついでに、今までキャッキャとはしゃいでいたはずの、彼の声も聞こえなくなる。
……沈黙こそが、罰。
私には、これ以上ない辱めとなった。
「――ちっ、ちがう! 違うの、何でもないの! ……だ、だって、私と純は、
ただの友達で……友達だから、それ以上なんか有り得ないし!
だから、いや、えぇと、違うそうじゃなくて……、だから……ッ」
もう、頭の中は真っ白だった。
ただの“お遊び”にも感じて、喘ぐなんて。ひどく、はしたない。どうしようもない。
けれど、下手に言い訳をしようとすればするほど、自分で墓穴を掘っていく。
ひとりでパニックを起こした私は、突き刺さる純の視線が痛くて、怖くて……。
「……ごめん、ちがうの……!」
自分の汚い何もかもを、彼にだけは見られたくなくて、私は両手で赤い顔を覆い隠した。

「……悪いけど、先、外に出ててくれない?」
純の、どこか切羽詰まったような、押しした感じの声が頭上から降ったのは、
あれから幾ばくか経った――と思われる――頃だった。
その低い声が普段の彼とは全く違ったから、ついに見限られたか、と後悔に胸が軋んだ。
戦慄く唇は言う事を聞いてはくれず、加えて、この混乱した頭では何も思い浮かばない。
それでも私は何とかなけなしの勇気でもって己を叱咤すると、意を決して、
顔を覆っていた手をそろりと外した。
息を深く吸い込み、恐る恐ると彼の方を見やる。
「……純、あの、ね……っ」
――顔を上げた瞬間、バチッと視線が絡み合った。純の目が、驚きに見開かれる。
刹那、純は私以上に焦ったような声を出したかと思うと、強引に私の背中を押しやった。
「い、いいから、ほらっ、早く! 外出てってばッ」
「えっ、あ、ちょっ……!」
そうして私は、彼に反論も弁解する余地も与えられないまま、
ぐいぐいと強く背中を押され――、とうとう力任せにトイレの外に追い出されたのだった。

436 :
「はぁ……どうしよう」
私がトイレから出て、五分……いや七分が経った。
純は中に残ったまま、独りで何をしているのかわからないが、まだ出てはこない。
けれど、そのお陰で私も頭を冷やす時間がとれた。
さすがにその間独りきりにさせられていれば、嫌でも頭は冷え、顔の赤みも次第にひいていく。
……とにかく、純が出てきたら真っ先に謝ろう。
さっきは変なこと言ってごめん。何でもないから、全部忘れて――、と。
「大丈夫、言える。きっと、なんとかなる……」
頭を冷やした分、さっきよりはきちんと言葉にできるはずだ。
そうやって考え込みながら、ぶつぶつと繰り返していると、
後方からガラリとドアが開く音とともに、純の小さな呟き声が耳に入った。
「……お待たせ」
「あ、あのっ、純……、『さっきは――』」
言いながら、私は勢いよく後ろを振り返った。けれど――。
「って、……あれ? なんで、純、そんなに顔……赤いの?」
思わず、謝罪の言葉を途中で切ってしまうほどに、そちらの方が気になってしまった。
ムスッとしている純の頬はなぜか赤く、その様は、多分さっきの私以上だった。
「いっ、いいでしょ、別に! ……なんでもないわよ!」
純は上擦った声で怒鳴りながら、真っ赤になった頬を両手で押さえた。
怒鳴った事によって、ますます顔が紅潮した気がする。
「え、あの、でも……どうして? 純が赤くなる理由なんて、何も……」
「うぅ、うるさい! この馬鹿! バカ美乃里! あんたが、あんな……あんな……ッ」
純は途端に、ハッとして口元を押さえた。
怒りからか、それとも興奮からか、彼の肩が震えている。
「……と、とにかく! もう用は済んだんだから、さっさと帰るわよ!」
純はそう言い捨てて無理矢理に話を切り上げると、逃げるようにその場から身を翻した。
「あっ、待って、純――、ッ!」
……私はそのとき、全ての愁いがいともあっさりと彼方に吹き飛んでいくのを感じた。
髪の隙間からちらりと見える純の耳たぶが、燃えるように赤い。
それを見ている私の方も何だか気恥ずかしくて、再びじわじわと頬が熱を持っていく。
私は、彼に手を引かれるままに、前へと足を踏み出した。
純が握ってきた手の力は、不器用にも強くて、ほんの少しだけ痛い。
けれど、その痛みすらも覆ってしまう程に、彼の手のひらは温かく、そして優しかった。
いつか、この気持ちの全てを、彼に伝えられたらいいのにと思う。
――私は、繋いだ手の温もりを噛み締めるように、純の手をぎゅっと握り返した。



437 :
GJ!
萌えた…!

438 :
GJ!!
オカマ視点でも読んでみたいよ!

439 :
GJ!
確かにオカマ視点よんでみたい!

440 :
413、416、424の続き
オカマ×女、女視点、オカマは冒頭と最後にちょっとだけ
NGは名前欄かIDで
クリスマス間に合わなんだ‥‥

《ねえ、クリスマスかイブ会えない? ‥‥一緒に遊べない?》
「三連休はバイト三昧で空いてないよ。そもそもキミ、彼氏とデートじゃなかった?」
《別れたんだってば》
「‥‥ごめん」
《お願い。独りでクリスマスの空気吸ったらぬ》
「‥‥分かった」
 ということで、クリスマスの夜に女のバイトが終わったらオカマの自宅アパートで鍋パーティ(鍋はオカマ担当、ケーキは女担当)ということになった。

 そして今日――クリスマス当日。
「それじゃ、お先に失礼します」
「お疲れ様ー」
 三日連続のバイトを終えて、これからオカマと会う。かねてからの約束どおり、オカマの自宅アパートで鍋パーティーだ。
 制服から私服に着替えて、ロッカー室の姿見で軽く服装のチェックをする。
 特に問題ないのでコートを着てマフラーをしてから、改めてもう一度チェック――マフラーの結びが少し気に入らなくて、結び直して、納得がいったところでクリスマスイルミネーションに彩られた街に歩み出る。
 鍋の都合もあるだろうとオカマにメールで連絡を入れて、それが終わったらバイト先近くの洋菓子屋に寄って予約していたケーキを受け取って、夜気を切り裂いて電車に乗る。
 オカマの自宅アパートまで快速で五駅。夜のピークを越したとはいえ車内は混雑していたが、二駅目で目の前に座っていた客が降車したので座席に座る。
 膝の上に鞄とケーキの箱。鞄の中には密かに購入したプレゼント。ケーキは美味しいと評判の店だし、プレゼントはオカマの嗜好からそう外していないはずだ。どちらも気に入ってくれればいいと、宝箱のように両手を添える。
 服装に、ケーキに、プレゼント。
 失恋した友達がクリスマスに孤独で儚くならないようにと、一緒に遊ぶだけにしては色々と気合いが入っている。有り体に言えば、余計な下心が入っている。
 事故とはいえオカマの唇の感触を知ってから、心臓は高鳴って、目はオカマを追って。そばに居ない時もオカマの事を考えて――
 『女友達』と認識していた相手を恋愛対象にしていると自覚した時はちょっとしたパニックだったけれど、恋していると受け入れてしまえば驚くほど落ち着いた。相手が誰であれ、好きになったものは仕方がないのだ。
 代わりに胸に住み着いたのは、熾火のような情念と、オカマに恋愛対象に見られないが故のもどかしさ。いや、恋愛対象に見られないかもしれないが故の不安というべきか。
 恋愛話や彼氏の存在で、オカマの性嗜好は男性に向いていると分かっている。だが、そこに女が入り込む余地があるかもしれない。無いかもしれない。
 見切り発車でアプローチをしてオカマの脆い部分を踏みしだく真似はしたくないし、さりとて探りを入れて見込み無しと分かった時に何もしないでいる自信は無い。
「(‥‥友達のままでは居たくないのはハッキリしてる。けれど、今日は失恋したのを慰める為に行くんだし、それで仕掛けるのは拙い気がする)」
 しかし、と反駁するように、膝の上の鞄を抱える手に力がこもる。
 理性は静観を決め込んでいるが、欲望はそれを怯懦と言わんばかりに暴れ、急いている。
 今夜の方針を決めかねたまま、列車はオカマが待つアパート最寄り駅に到着しようとしていた。

 改札で終電の時間を確認してから、駅の建屋を出る。
 駅前は少し様変わりしていた。最後に来たのがオカマに今回別れた恋人が出来た初夏だったから、栄枯盛衰の習いに従い店舗の入れ替わりが起こっていても不思議ではない。が、目印にしていた店が見あたらない。
「‥‥まあ、道順は覚えてるから大丈夫」
 少々根拠を欠いた独り言を吐きながら、これだと思う方向に歩き出したところで、不意に腕を掴まれた。
「もう、呼んでるのに気づかないんだもの。そっちは違うわよ」
 振り返ると、オカマが居た。

441 :
ぜひ、続きをお願いします

442 :
新作来てた!
いいねいいね続きも期待

443 :
貴族の嫁→ガチで性的に女性を受け付けない騎士の旦那
の電波が降って来た
精神と時の間が欲しい

444 :
>>443
箇条書きでいいから内容教えてくれまいか

445 :
>>444
青年騎士と貴族の娘が諸々の理由で許嫁となり、長じて結婚
しかし実は夫が同性愛者で、初夜以降ふたりは床を共にしたことはなかった
性は不一致だけど性格は一致していたこの夫婦
許嫁の頃から夫を好いていた妻は複雑な思いを抱きながら、領地経営のパートナーとして静かに暮らしていた
それが二年にもなると具合が悪いわけで
「お前を愛さぬ男と離縁するか」
「奥様が慈しんだ領地を守る為にも、旦那様はああなので、余所から種を用意するか」
(離婚すると妻の持参金は返還しなければいけないが、そうすると持参金をつぎ込んで始めた地域振興事業は頓挫、ということにする)
あるいは、と周囲から迫られた妻は夫の寝所に忍び――
ここから話の筋が枝毛状態で纏める暇が無い

446 :
>>445
つ、つまり纏める暇が出来た時はもしかして期待してもよござんすかッ!?

447 :
オカマ(ニューハーフ)×女で話を考えてるんだけど、
いわゆる「女性らしい外見」のオカマだったら日本人設定の方がまだ自然かな?
外国人ものにも興味あるけど、どうしてもガタイのいいオネエ系しか想像できないんだ…
向こうだと男女で体つきの違いがハッキリしてるから、初対面で性別を勘違いするレベルのものは難しいだろうか

448 :
>>447
そんなことないぞー。
向こうのニューハーフさんも様々だし、
アンドレイ・ペジックみたいな女性よりきれいな男性もいるよ。
まああの人は半陰陽なだけで心は男らしいからちょっと違うか。
個人的に、外見がどう見ても男なのに心は女ってのも萌え要素だけどw
なんにせよwktk

449 :
>>448
アンドレイ・ペジックを知らなかったから検索してみたけど、
世の中にはあんなに綺麗な人がいるんだね……写真見て本気でびっくりした。特に上半身裸の写真がすごいw
ともあれこれでやっと、長いこと頭の中に居座ってたガタイのいいオネエ系からチェンジできるよ
教えてくれてありがとう

450 :
最近このスレを知ったのですが、文章どれも超いい。
ここの方々にちと古い漫画だけど秋里和国のBBB(ばっくれバークレーボーイズ)を
読んでみなよ!と言いたい。
男(うちひとりゲイ)×2 女1のラブコメできゅんとします。

451 :
保守

452 :
保守あげ

453 :
保守する

454 :
保守がてらに初投稿失礼します。オカマとビッチJKの話
 「今日からお世話になります。橘と申します」
 「あらわざわざご丁寧に…。大家の黒石です。
  何か困った事があったら遠慮なく言ってくださいね」
玄関先で母が経営しているアパートの新しい住人と話しをしている。
今度入ったのはどんな人だろう、と由璃がこっそり覗くとそこには中性的な顔立ちの青年が立っていた。
柔らかな表情と釣り目がちな瞳が印象的な、所謂イケメンというやつだ。
由璃が住人の容姿をまじまじと見ていると、橘という青年と目が合った。
 「娘さんですか?」
 「あら、由璃。こちら新しく2階に引っ越してきた橘さん。
  橘さん、こちらは娘の由璃です。近所の高校に通ってて…」
 「…こんにちは」
お引越しのご挨拶に来てくれたのよ、と微笑む母の隣に立ちながら由璃は青年をじっと見上げた。
背が高い。
青年は由璃にこんにちはと優しく声をかけると、にっこりと微笑んだ。
どんな女性だってときめいてしまいそうな優しい笑顔だ。
由璃も一瞬胸のあたりが暖かくなるのを感じたが、それもすぐに消えた。
そうやって男性に可愛がられるのは慣れている。
由璃がじっと青年を見ている間、彼はこれといって由璃の様子には気にも止めず
由璃の母親と軽く談笑をしたあと引越し祝いの石鹸を渡して帰っていった。
彼が帰る一瞬、由璃一瞬甘い香りを感じた気がした。
由璃はそれだけがやけに印象に残っていた。

455 :
その日由璃はいつもの様に繁華街にいた。
幼さの残る体を露出させ、派手な化粧で彩り、普段の様子を残さないように。
風俗店やカラオケが立ちならぶこの通りは由璃の遊び場所だ。
今日も数週間前に付き合った彼氏と遊びに来ていたが
事の発端は、ほんの数十分前由璃が彼氏のケータイを盗み見た事からだった。
 「ねえ。なんでユウが知らない人のメールがケータイに入ってるの!?
  浮気してるんでしょ!?ねえ!しんじらんない!」
 「何勝手に俺のケータイ見てんだよ!俺がどこの誰とナニしようが勝手だろ!」
 「…まさかしたの?ひどい!ユウとその子どっちが大事なの!?」
 「うるせえなあ!」
問いただそうと彼の腕に纏わりついていると、そのまま腕を振り払われ投げ飛ばされた。
細い体がどこかの店のポリバケツにあたり、存外に大きな音を立てる。
脇腹に受けた痛みに小さく悲鳴を上げた。
 「お前なんてヤるくらいの価値しかねえくせに!どうせ他の男にも股開いてんだろ!」
浴びせられる汚い罵声に、由璃は悔しさと痛みで涙をにじませた。
言い返そうと息を吸い込み、痛みで喉をつまらせた瞬間だった。
すぐ傍のドアが開き、むっとする香水と煙草の匂いが溢れ出した。
なんとなく由璃はその匂いに覚えがあったが、それを思い出す間もなく
彼よりも野太く、強烈な罵声が左耳を痺れさせた。
 「うっさいわよバカ共!!店まで聞こえてんのよ!!
  痴話喧嘩ならホテルのベッドの上でもやってろ!!」
突然ドアを蹴破り現れたオカマに驚いた彼氏は慌ててその場から逃げていった。
勿論由璃を残して。
急な出来事に痛みも悔しさも忘れ、呆気にとられた由璃が声の主の方に目をやると
声の主も丁度地面に座り込んでいる由璃を見つけ、驚きに目を見開いている所だった。
由璃は目を疑った。
それは、先日自分の家のアパートに越してきた青年だった。
ただ、それは以前由璃が見た好青年とは違い
由璃よりも派手な化粧をし、胸元を大きくあけたシャツとむっとする香水で身を包んだ
オカマの姿をした彼だった。

456 :
 「…えーとぉ…由璃ちゃん、だっけ…。まさかこんな所でね…」
2重につけられたつけまつげの下で、綺麗な釣り目が泳いでいる。
由璃は未だぽかんとしながら、彼をまじまじと見つめた。
彼に見つかったあと、由璃はドアの奥…彼の務めるオカマバーに連れ込まれてしまった。
由璃も少し焦ったが別段何をされるでもなく、こうして控え室に通されジュースをご馳走になっているわけだが。
先日見たときは普通にカッコイイ人だと思ったが、こうして見ると別の意味で綺麗だった。
丹念に化粧された顔と派手な格好、片方だけ開いたピアスが彼は同性愛者だと主張している。
不躾にじろじろ見つめる由璃に、青年は少し嫌そうに顔をしかめて睨み返した。
 「…何よ。珍しいかしらオカマが。ていうか何よその格好とメイク。
  この前見た時は、普通の女子高生だと思ってたのに随分やんちゃしてるのね」
 「それ、全部そのまま返す」
由璃が言い返すと、青年はそれ以上何も言わなくなった。
ただ少し不機嫌そうに由璃を睨み、それからは肘をついてテーブルに視線を落としていた。
 「…オカマさんだったんだ」
少し続いた沈黙の中由璃がそう切り出すと、青年は眉根を寄せて冷たい視線を送る。
 「…そうよ。びっくりした?」
 「うん。全然気づかなかった」
 「だって内緒だもの」
 「なんで?」
 「変だから」
 「なんで?」
 「なんでって…。………。…なんでもよ。変な子」
冷たかった青年の表情がようやくふっと和らいだ。
オカマであっても、その顔は整っていて改めて由璃は綺麗だと思った。
 「オカマさん」
 「なんか嫌ねその呼び方…ハルでいいわよ。春彦って名前だから」
 「じゃあ、ハル。ありがとう」
一瞬春彦の表情がきょとんとした。
 「ああ、喧嘩の事?ひっどい男ねー。アンタさっさと別れちゃいなさい」
 「うん、多分別れる」
春彦は自分も適当にお茶のようなものを取り出すと、自分もグラスに注ぎ出した。
真っ赤なデコネイルが施された手が、優雅な仕草でペットボトルを弄ぶ。
由璃も遠慮なくジュースを飲みながらじっと春彦の様子を見ていた。
 「あら、あっさりしてるのね。さっきあんなに怒ってたじゃない。
  好きなんじゃないのあの酷い彼氏が」
 「どうかなあ」
 「…は?」
 「元々、ナンパされてエッチしたのがきっかけだから…別に特別好きとかではないと思う」
春彦は驚いた表情で由璃をまじまじと見てから、また一気にお茶を呷った。

457 :
 「…アタシも貞操観念とかゆるい方だから人の事言えないけど…。
  アンタ可愛い顔してとんだ小悪魔ね。慰めて損した」
 「いいでしょ別に。それとも説教でもするの」
由璃もジュースを呷り、音を立ててグラスを置いた。
春彦は黙ってまたジュースの紙パックを取り出すと、静かに注いでいく。
 「しないわよ。出来るほど立派な人間じゃないし。ただね、自分の体は大事にしなさい。
  …女の子なんだから」
そういう彼の顔は、由璃を哀れんでいるようにも、自嘲しているようにも見えた。
ジュースを注ぎ終えると、春彦は紙パックと自分のグラスを片付けた。
 「それ飲んだら帰りなさい。アタシが送って行ってあげる」
彼が傍を通る時、由璃はまたあの甘い匂いを感じた。
どこのメーカーの香水だろう、と思ったがそれ以上は何も聞かなかった。
まだ脇腹が少し痛かったが彼の後について繁華街に出る。
由璃の家までの道すがら、二人は取り留めのない話をしながら帰った。
由璃は春彦の稀有な生い立ちを聞きたがったが、春彦はそれには答えようとしなかった。
かわりに春彦も、由璃の事をあまり聞こうとはしなかった。
 「お母さんは、アンタの遊びっぷり知ってるの?」
唯一、春彦は家の前でそれだけ聞いてきた。
 「…あんまり言ってない。心配はしてるみたいだけど…」
 「そう。…まあああいう無茶はしないほうがいいわ。何かあったら言いつけちゃうわよ」
 「何それ!じゃあ、ハルが言いつけたらユウもハルがオカマなこと言いつけちゃうから」
むくれて顔を背ける由璃を、春彦はまた眉根を寄せて軽く睨みつけたが
今度はすぐに肩を落とすと、そのまま勤め先のバーまで足を向けた。
 「じゃ、アタシお店戻るから。…おやすみ」
すれ違いざま、彼の派手なネイルの手が由璃の頭を撫でていった。
その見た目と違う男性的な感触に、一瞬由璃は胸が跳ねるのを感じた。
慌てて振り返ると、そこには派手な異性装の青年が背を向けて遠ざかっているだけだった。
甘い香を残して。
 「…変なオカマ」
由璃は聞こえないよう零し、黙って明りの灯る我が家に帰っていった。

とりあえず今回はここまで

458 :
>>454
イイ!
今回はここまでというなら次回もあるんだよね? 待ってるよー

459 :
私も待ってる!

460 :
応援してるよ〜頑張って!

461 :
保守

462 :
ほしゅ

463 :
ほしゅ

464 :
規制がかかっててなかなか書き込めませんでしたが、続き投下します。
オカマxビッチ。

ドア開けると、そこには小柄なショートヘアの女子高生が立っていた。
まん丸の大きな瞳は今日はピンクのシャドウもつけまつげもなく
あの夜着ていたレパード柄の薄いワンピースは、今日は学校指定のワイシャツと茶色のカーディガンに変わっている。
ただ、短いスカートと無邪気な笑顔の奥だけは不可思議な色気を醸していた。
春彦は突然の来訪者を不機嫌そうに見下ろした。
 「何の用よ、小悪魔ちゃん」
 「暇なの。遊んでよ、オカマさん」
由璃はそう言って満面の笑みを向けた。
 「あれからね、彼氏と別れたんだ。だから今暇なの。あそぼ」
 「へえ、そうなの。でも悪いけどアタシは暇じゃないのよ」
押し問答の末に部屋に上がり込んだ由璃は、まだダンボールの残る室内にちょこんと座り込み
気まずそうにベッドに座る春彦ににこにこと笑いかけていた。
今日仕事がない春彦は、先日のような派手過ぎるメイクもなく、どこにでもいる青年の顔立ちでいた。
ただ、室内に散らばる奇抜な衣装やメイク用品、化粧水等、男性が持ちうる物ではない物が
いくつかローテーブルや床の上に転がっている。
物珍しげに室内を見回す由璃を前に、春彦は色々と考え事をしていた。
なんでこの子がこの家に来たのか。
ただの物珍しさからで済めばいいが、春彦の中の”女性”が嫌な予感を感じさせる。
 「…へえ、高そうな化粧品使ってるんだ。あ、いいなーこれ。ユウも欲しかったの」
ほんのさっきまでは大人しく座っていたのに、今では部屋中を漁っている。
四つん這いであちこち物色している様子は、短いスカートがちらちらと揺れて危うい。
下手な男性ならそのまま後ろから襲いかかって犯したい衝動に駆られるんじゃないか、と春彦が考えていた時
 「あ」
由璃は脱ぎ捨ててあったシャツの下から小さな袋を見つけた。
それは男女のセックスでもよく使う、一般的な避妊具。
 「へー、オカマでもこれ使うんだー」
 「やだっちょっともう、返しなさいよ!」
慌ててそれを奪い取る。
由璃はにこにこしながらじっと春彦を見つめていた。
小悪魔どころでない。
厄介な小娘に目を付けられた、と春彦は苦々しく睨み返した。
由璃はそんな春彦の気持ちを知ってか知らずか、春彦のそばまで軽快に寄ってきて
春彦の端正な顔を覗き込んでいた。
 「ねね、ハルはいつも男の人とするの?」
 「…そうよ」
 「へえ、そうなんだ。女の人とはしないの?」
 「ずーっと昔に、オカマになる前は彼女とかいたけど」
 「ふぅん」
由璃は不思議そうに春彦と避妊具を見比べていた。
その表情は、幼い子供のように無邪気なままだったが
 「じゃ、ユウとできる?」
安いリップで艷めいた唇で、安い言葉を紡ぐ。

465 :
さすがに春彦も言葉を失った。
年下の女の子に、なぜ会って間もなくに性交渉を迫られなければならないのか。
当の由璃はまるでゲームに誘うかのように、目を輝かせていた。
 「できないわよ!」
 「なんで?」
 「嫌よ、女の子抱くなんて」
心底嫌そうに吐き捨てる春彦に、由璃は今度はつまらなそうな眼の色に変わる。
おもちゃを取り上げられた子供のように、退屈そうに足を投げ出して天井を仰ぎ見た。
そうしているとただの子供のようだった。
 「女の人に興奮しないの?変なの。つまんない」
 「変で結構。だからオカマしてんのよ」
 「男の人とってどうやるの?」
 「どうって…言う訳無いでしょ!」
 「けち」
ご機嫌を損ねたのか、由璃は不満そうに頬を膨らませて春彦を睨みつける。
春彦もそれに構わず、奪い取った避妊具をベッドサイドにほうり投げた。
数日前に会ったばかりの少女となんでこんな猥談をしないといけないのか、という気持ちで
だんだんと春彦も不機嫌になっていた。
由璃は暫く静かにしていたが、ふいにベッドの上に座り込んで、ねえ、と春彦に声をかけ
 「ね、これでも興奮とかしないの?」
そう、可愛らしく尋ねてみせる。
春彦がしぶしぶそちらに目を向けると、最初に目に飛び込んできたのは
少し布地の少ない、ピンクと黒のストライプの下着。
ベッドの上でスカートをたくし上げる由璃の姿に、春彦は本日何度目か顔を青ざめさせた。
 「…何、アンタ露出狂?」
 「ち、違うもん!だって男の人は女の子のパンツとか好きじゃん」
 「まあ、普通の男はね…。悪いけどアタシ普通じゃないの。
  てか、アンタそうやって他の男にもパンツ見せてきたの?」
 「誘ってきた人には、よく見せてって言われてホテルでこうして…」
 「もう、いいわ。それしまいなさい。なんか頭痛してきた」
貞操観念がないのか、若いからなのか、春彦にはいまいち理解しがたかった。
春彦自身もそういう考えはゆるい方と思ってたが、由璃はそれ以上だ。
仕事柄水商売の女の子たちはよく見てきている。
由璃もきっとああなるのだろうか、と考えるとちらりと人の良い大家の顔も浮かび、哀れな気持ちになった。
 「楽しい?そういうことして」
ふと、そんな言葉が零れ落ちた。ほんの些細な疑問から。
だが、なかなか答えない由璃に春彦が目をやると、由璃は呆然と春彦を見つめていた。
さっきまでの悪戯な顔でも、拗ねた子供の顔でもない。
それは無表情でありながら、瞳の奥には深い悲しみが垣間見えた。
春彦が次の言葉を探す間もなく、由璃は喉の奥で声を震わせる。
 「…本当は、楽しくない」

466 :
先ほどの活発さも忘れ、目を伏せる。
春彦は何も答えることが出来ずに由璃をじっと見守った。
無言の室内に遠くのほうの喧騒が僅かに届き響く。
 「…ユウの話きいてくれる?」
先に沈黙を破ったのは由璃だった。
 「ユウね、昔からあんまり友達いないの。なんか女の子に嫌われちゃうの」
 「そういうタイプっぽいわ」
 「でも男の子はよく構ってくれてね、昔はまだよかったんだけど大きくなるとさ…皆したがって。
  でもユウ他に友達いないし、嫌われてひとりぼっちになるのやでさ…」
床のボトルを目で追い、ぽつぽつと話し始めた。
下着を見せるのをやめ、膝を抱きながら春彦の隣で縮こまる。
春彦は、恐らくこれが彼女の本当の姿なのだろうと感じた。
 「最初は嫌だったけど、いつの間にか慣れちゃって。
  そこからかなあ。セックス無しだと不安なんだ。…自分でも、変なんだろうなって思うんだけど」
 「変よ」
 「そうだよね」
春彦はそこではじめて由璃に触れた。
細いショートヘアに指を通すと、少しくすぐったそうに目を細める。
 「ただ寂しいんでしょ、アンタは。
  だからって簡単に男に脚開くんじゃないの。
  今は何もないだろうけど、そのうち病気とか、妊娠とかしたらどうするの」
 「…でも、それくらいしかできない。そういうのたまに心配になるけど、今は平気だし」
 「本当、馬鹿な子」
撫でていた頭をそのまま自分の肩まで抱き寄せる。
由璃は一瞬のことに戸惑ったが、春彦の細い手が頭を抱えるのが心地よくて少し心が跳ねた。
同時に、あの夜嗅いだ香水の匂いが漂う。
 「そうやって自分をいじめないの」
卑猥な期待を持たないその行為に、由璃は逆に不安に駆られた。
だが不思議と香水の香りに包まれると安心した。
姿形は男性なのに仕草や口調が女性そのものな春彦に、由璃は改めて不思議な感覚を覚える。
今まで出会ってきたどの男性とも違い、自分を求めない。
 「…ハルは変だね」
 「なによ失礼ね!変で悪かったわね!アンタだって人のこと言えないじゃない」
由璃は何も返さず、ただはにかんで春彦を見上げた。

467 :

その日以来、由璃は度々春彦の家を訪れるようになった。
友人がいないというのは本当らしく、暇を見つけてはメールをよこして遊びに来る。
夕方、春彦が仕事に出かけてしまう前の数時間は由璃の楽しみになりつつあった。
春彦も以前程由璃を邪険に扱わなくなっていた。
 「由璃、アタシそろそろ家出るから」
 「はーい」
雑誌から顔を上げると、春彦は化粧をしている所だった。
纏わりついて一緒に鏡を覗き込む。
春彦はちらりと目をやるとそのまま由璃に構わず化粧を続けた。
もう何度も何度も見ている光景だが、由璃にとって男性から女性へと変わっていくのを見るのは面白い事だった。
 「ねね、今日は何時まで?」
 「うーん。今日は長いの。朝の5時くらいだと思うわ〜」
普段ならここで少し嫌そうにため息をつくはずが、今日に限って声の調子が少し高いのに由璃は気づいた。
心なしか、化粧もいつもより入念な気がする。
由璃はもう少し春彦に近づき、背中から肩に頭を載せ抱きつく。
 「今日はお化粧張り切ってない?」
春彦の動きが一瞬止まり、続いて高い調子の声が返って来た。
 「あら、分かる?」
 「何か良い事あったの?」
 「ん〜。今日はね、好きなお客さんが来るのよ〜」
その言葉に、由璃は一瞬小さな氷の欠片が心臓に落ちるような錯覚を覚えた。
首筋から香水が強く香る。
 「…好きなお客さん?」
 「そうよ。カッコイイ人なの」
春彦の楽しそうな声の調子に、由璃の心臓は不自然に脈打つ。
何故かは分からないが、春彦の紡ぐ言葉が酷く不安で由璃はなお一層春彦の体に抱きついた。
 「へえ…」
匂いが移るから、と少し身じろぎする春彦に構わず由璃はそのまま身をくっつけた。
同じ匂いが移ってしまえばいいと、願いながら。

468 :

 (ハルは男の人が好きなのは知ってるはずなのに)
春彦は仕事に出かけ、由璃は近くにある自分の家に戻ってきた。
移り香を纏う由璃に、由璃の母親は香水をつけるようになったの?と柔らかい笑みで問いかける。
母親は春彦がオカマな事を知らない為、この薔薇の匂いを由璃の香水だと勘違いしている。
由璃はそれに曖昧に答えると自室に閉じこもった。
何故か食欲がわかない。
 (分かってたはずなのにな)
ピンクで統一された自室は、酷くつまらない物に見えた。
物にも恵まれ、両親共に可愛がられて育ったのに由璃はずっと満たされない。
友達の少ない寂しさを埋めるように男に身を任せてきたが、最近はその寂しさを春彦が埋めていた。
その春彦ですら、自分の他に拠り所を求めている。
その事実を目の当たりにし、由璃は酷く気分が落ち込んだ。
 (ばか。ハルのばか)
部屋に篭る由璃を心配した母が声を掛けに来たが、それも適当な理由をつけて追い返した。
何故春彦に好きな人が出来ただけでこうも落ち込むのだろう。
 (あんな楽しそうな顔して。化粧なんかしちゃって。オカマのくせに)
服の袖に鼻を押し当てると、まだ薔薇の香りが残っていた。
脳裏に香水の香る細く血管の浮いた首筋が浮かぶ。
あの首筋に、今日誰か知らない人が口付けをするのだろうか、と考えて由璃はすぐにかぶりを振った。
深く布団にもぐり、その考えを振り払おうとしたがどうしてもあの白い肌の残像が拭えない。
 (何でこんな事考えてるんだろ)
自分が、あの首筋にキスをしたい。
一瞬、そんな考えが湧いてきた事に由璃は驚いた。
不自然な動悸が止まらない。
布団を強く握りしめ、由璃は何度も頭を空にしようと努めたが、その努力が実ることはなかった。

469 :
目が覚めるとすっかり外が白んでいた。
時間は6時少し前。
由璃はそこではじめて自分が着替えも食事もしないまま眠ってしまった事に気づいた。
のろのろとベッドから這いでて、冷蔵庫で適当に食事を探していると
ふと昨日春彦が朝の5時頃に仕事が終わると言っていた事を思い出した。
何度も時計を見ているうちに、ふとそわそわした気持ちが湧き上がる。
少し迷ったが、すぐに家の鍵だけを持ちだして外に飛び出した。
アパートまでは走ればほんの数秒。
春彦に会える確証もなかったが、それでも由璃はアパートに行かずには居られなかった。
すぐに家の前についたが室内は暗いままで、まだいないのか、寝ているのかも分からない。
ベルを押そうか、と少し迷っていると
 「…アンタ、なんでここにいるのよ」
直ぐ後ろで少し疲れたような、聞きなれた声が聞こえた。
飛び上がる由璃の後ろで、コンビニ袋を下げ仕事用の派手な服を着たままの春彦が怪訝そうな顔をしていた。
 「あっ、あれ、ハルおかえり」
 「ただいま。何なのこんな朝に…。なによ、服も昨日のと一緒じゃない」
何か言い訳を探したが、何分急に出てきたせいで何も思いつかない。
由璃がしどろもどろになりながら床に目をやっていると
その様子を暫くじっと見ていた春彦は、何も言わず玄関の鍵を開け促した。
 「なんかあったの?」
心配そうな春彦の顔を見ると、適当な言い訳も全て吹き飛んでしまい
言い様のない不安と切なさで由璃はいっぱいになった。
無言で室内に入り玄関で立ち尽くしていると、春彦も後に続きドアをしめる。
 「由璃、邪魔よ。はやく靴脱いで」
狭い玄関内で二人で立っていると体が密着する。
きついタバコの匂いが服に染み付いている。
春彦が声をかけると、由璃は何も言わず春彦を仰ぎ見た。
まん丸の瞳が、今は悲しげに潤んでいる。
 「した?」
何の事か分からず驚く春彦に由璃は強い口調で続ける。
 「した、って聞いてるの!」
 「は、え?何を?」
 「例の好きな人と、何かしたのって!」
ぽかんとする春彦を前に由璃は無性に苛立ちが収まらなかった。
暫く経ってようやく意味を理解した春彦は、ますます訳が分らないといった表情を浮かべた。
 「え…あ、例のお客さんと?何かって、そういうの?するわけないじゃない」
 「うそ!」
 「なんで嘘つくのよ。アタシはね、アンタと違って行きずりの人と寝たりしないの」
ていうかなんでそんな事聞くのよ、と呆れて呟く春彦。
だが由璃は想像していた答えでない事にほっとしたものの思いつめた表情のまま、ぽつりと呟いた。
 「行きずりの人じゃないなら抱けるの?」
 「…まあ、そうじゃない事もあるけど」
 「じゃあ」
由璃はシャツを掴み、春彦に詰め寄った。
 「じゃあ抱いてよ」

470 :
つけまつ毛とマスカラで彩られた釣り目が、予想外の事に見開かれた。
いつもならすぐに拒絶の言葉が返ってくる所だったが、意外にも春彦は困った顔をしたまま何も答えない。
そして由璃の頭に手をやり、優しく撫でながら何か言葉を選ぶように視線を泳がしていた。
 「…一応聞くけど、なんで?」
由璃も理由が分からずにいた。
何故、今更春彦にそんな事を言うのか。
貴重な友達として、自分を求める男達とは違う春彦を大切に思っていたはずなのに
その男達と同じ事を春彦に強要している。
春彦はそうであって欲しくないという希望と、整理のつかない思いが
何重もの矛盾となって由璃の中でぐるぐると渦巻いた。
 「わかんない…だけど、なんか…。なんか、ハルとしたいの」
話している途中で何度か言葉がつまり、由璃も自分で何を言っているのかよく理解できていない。
だが春彦はそんな由璃の様子を静かに見、考え事をするように視線を少しあげていた。
数秒、早朝の薄暗い中重い沈黙が続いていたが
 「…勃たないかもしれないけど?」
返ってきた答えは意外なものだった。
その言葉に由璃は驚いたが、黙って頷くことで返した。
春彦は肩を落とし、コンビニ袋を玄関先に置き低い調子で呟く。
 「…先ベッド行ってて。顔洗って…あとこれだけしまうから」
コンビニの袋の中には、少し溶けかけたアイスが2つちょこんと収まっていた。
由璃が好きな、チョコレートのアイスだった。
 「萎えさえしなければ、あとは大丈夫だと思うわ」
遅れてベッドにやってきた春彦は、化粧を落とし普段の中性的な男性としての顔になっていた。
対していつも明るいはずの由璃は借りてきた猫のように大人しくぺたんと座り込み
少し不安そうな顔で春彦の様子を見ているだけ。
 「…嫌なら別に、無理にすることはないんじゃない?」
 「嫌じゃないけど」
 「じゃあ何よ」
困り顔のまま、由璃は小さく零す。
 「…わかんないけど、嫌じゃないんだけど…なんとなく怖い」
その言葉にまた腑に落ちない顔をしたが、由璃はそれ以上答えようとはしない。
春彦も少し迷った末に、由璃の隣に座り込むとゆっくりとズボンのジッパーを下ろしにかかった。
 「いいのね?進めちゃって」
軽く頷く由璃を確認すると、春彦は黙ってズボンをずらし自身を取り出した。
由璃が見てきた中では大きい部類に入る。
今まで友人として付き合ってきた中で、初めて見る春彦の性器に由璃は少しだけ恥ずかしいような気持ちを抱いた。
男の人のは見慣れているはずなのにと戸惑う由璃を他所に、春彦は細い指先でゆっくりと自身を扱きはじめる。
男性でありながら豪華に装飾された女性のような指で雄を扱う仕草は由璃は奇妙だと感じた。
まだ柔らかなペニスを指で上下させる度に、少し春彦は目を細めた。
 「…あんまり見ないでよ」
じっと局部に目をやる由璃に、春彦は少し不機嫌にそう返す。

471 :
 「ね、触っていい?」
ふいにそんな言葉をかけられ春彦も一瞬躊躇ったが、小さくいいけどと返し少し由璃と距離を縮めた。
その距離の近さも、いつもなら対して気にもしないはずなのに何故か由璃は落ち着かなかった。
男性と体を重ねる事も、春彦に寄り添うことも、何でもない事のはずだったのに。
鮮やかなネイルの中で少しずつ赤みを帯び膨らむ性器に、恐る恐る触れる。
一瞬春彦が息を呑む音がしたが、構わずに指先で先端を包み込む。
それからゆっくりと根元の方に指をなぞらせると、春彦がその手の上から手を重ねた。
由璃は春彦の足の間に体を寄せ、心音でも聴くかのように頭を預ける。
二人で手を重ねたままゆっくりと上下に刺激を与えていく。
普段と違う由璃の様子に戸惑っていたのは春彦も同じだった。
いつもの素行の悪い少女ではなく、今はまるで初めてを経験するかのように頬を赤らめて自慰を手伝っている。
なんだか調子が狂う。
春彦に触れながら、由璃は顔を向け頬を上気させた横顔をじっと見ていた。
 「ハル」
 「なあに?」
春彦が返事し顔を向けた瞬間、由璃は唇を重ねた。
それは軽く触れるだけの物だったが、突然の出来事に春彦は驚いた。
 「ちょっ!何よいきなり!」
 「好き」
 「は?!」
 「ハルが好き」
由璃の手の中で春彦が反応し震えた。
すぐ眼の前で見つめる少女の瞳は、普段の卑猥な期待も自虐の色も映っていない。
由璃は春彦の白い首筋に額を当てた。
そういえば昨晩はその首筋にキスをしたかった事を思い出した。
 「はじめて…はじめてなの。自分から抱かれたいって思ったのは。だからきっと好き、だと思う」
そういって頬を林檎の様に染め、歳相応に恥ずかしげにはにかんだ。
また少し、手の中の茎が震えた。
続けられる愛撫により先端から体液が分泌され始め、にちゃにちゃと音を立てて由璃の手を汚す。
ふと春彦の手が離れた。
その細い手が少し強い力で由璃の顎を掴むと
同じように由璃の唇に口付けた。
 「…小娘のくせに。生意気なんだから」
そう答える声は低く、どこか自嘲していた。
目を見開いて硬直する由璃に構わず、短い調子で啄むように続ける。
時折口付けと共にびくびくと茎が反応するのを由璃は感じていた。

472 :
どれくらいキスを続けていただろうか。
遮光カーテンから覗く光が強まり、少しずつ朝の喧騒が聞こえてくる。
母親は家に居ない由璃を見て驚くだろうかと少し考えたが、それもすぐに掻き消えた。
何度かケータイに着信があったような気がした。
薄い布団の上で、由璃は肌着のまま少し肌寒さを感じながら次を待った。
 「思ったより、平気だったね」
 「…はあ、アタシもまさかアンタで勃つとは思わなかったわよ」
山になった服の下から避妊具を探し、慣れた手つきで装着する。
大きく張り出した亀頭は体液で濡れ、大きさも形も先ほどより逞しくなっている。
一見して中性的な優男な春彦にそんな性器がついていることが、由璃は少し不思議でどきどきした。
そしてそれがこれから自分の中に入る事を期待して少し息を呑む。
 「ほら、脚開いて」
大人しく寝転がったまま脚を開く。
下着はとっくに足元に転がっていて、開いた奥ではピンク色の花弁がとろりと蜜を零していた。
経験の割には明るく色づいているそこにペニスを宛てがい擦りつける。
じわりと伝わる体温に、由璃は僅かに胸を震わせた。
 「女の子とするのなんて何年ぶりか分からないから、気持ちよく出来るか分からないけど」
 「別にいーよ」
掴んだ腿に長い爪が食い込む。
男性とは違う肉の感触に春彦は違和感を感じたものの、すぐに消えた。
どこに入れるかくらいは知っている。
 「なんか…不思議な感じ」
入り口から感じるぬるぬるとしたゴムの感触と熱に、由璃はうっとりと目を細めた。
 「ハルとはこういうことしないと思ってた」
 「アタシだってすると思ってなかったわよ」
 「…ね、なんでしようと思ったの?女の子抱くの嫌なんじゃなかったの」
 「アンタね…、今更それを聞く?」
宛てがったままぐっと体重をかける。
突然胎に挿入される質量に、由璃は喉を反らせた。
 「こんな時に野暮よ。今は気持ち良い事だけ考えればいいの」
そして由璃の呼吸に合わせて、少しずつ侵入していく。
何度も経験しているとはいえ、予想以上の大きさに目を瞑り耐える。
 「…痛い?」
心配そうな春彦の声に、ぎこちなく笑って返した。
 「ううん…今までの中で、一番気持ちいい」
春彦は少し躊躇ったが、そのまま続けて奥へと挿入を続けた。
じきに先端が再奥にあたる。
春彦は由璃の上に覆いかぶさり、そっと下腹部を撫でた。
 「ほら…全部入ったわよ。ふうん、ここが子宮なの」
 「はぁ、…んっ、そう、そこで赤ちゃんができるの」
 「…変なの。女の体って」
男性との性交では有り得ない感触に、春彦は少し不思議そうに眉を寄せる。
そんな春彦の首に由璃は手を回し、ぐっと傍に抱き寄せた。
 「ハル、平気?ユウの中気持ちいい?やっぱ男の人じゃないと駄目?」
 「今のところは平気よ」
 「…今のところってなに」
 「動いてみないと分からないもの」
そういうと、春彦はゆっくりと動き出した。
ずるりとギリギリまで引きぬいては、奥に押し付けるように深く挿し込む。
その動きに慣れると肘を由璃の顔の脇について、先ほどのように口付けを繰り返した。
細い髪についた煙草の匂いと、微かに首筋から香る香水の匂いで目眩がしそう。
互いに夢中で求めた。
 「…あっ、ん…ふっ…んん…」
春彦が動きやすいように、と少し腰を浮かせて迎え入れる。
 「は…っ、由璃、もっと激しくしても平気?
  どこまでしていいのか、よく分からないのよ」
 「ん…いいよ、もっと激しく動いても…っ」
お言葉に甘えて、と小さく声が降ってきたと同時に由璃の胎を激しくピストンする。
強く掴まれた腰にネイルが食い込み、赤い痣を作った。

473 :
 「はぁ…っ!う、ぁ…あっ、あっ、ハル…っ」
力強く胎をかき回され、由璃は高く嬌声をあげる。
自分の下で乱れる由璃を逃がさないように抑えつけると腰を打ち付ける。
ゴム越しに鈴口が子宮口に触れるのを感じた。
心は女性なのに、体は雄。
男性でも女性でもなく、自身が雄であることを春彦は初めて感じた。
ぢゅぽ、ぢゅぽ、と水音がする度に気分が高揚していく。
 「ふ、ぅ…、あっ、あ…ハル、ハルきもちい…?
  ユウ、だけ、いいの…ん、やだ…」
表情を蕩けさせたまま不安そうに見上げる由璃が、なんだか無償に愛しく感じて
春彦は背中に手を回し、耳元で囁いた。
 「…気持ちいいよ、俺も」
突然の事に目をぱちくりさせる由璃。
春彦を顔を伏せながら、そのまま由璃を無理矢理うつ伏せにさせた。
 「ハル、いまなんて…ぁっ!」
腰だけ突き上げさせられ、背後から激しくピストンさせる。
まるで交尾みたい、と由璃はちらりと考えたがすぐにそれも掻き消えた。
先程より少し質量を大きくした春彦自身が、より深く由璃の胎をえぐる。
 「ふぅ…っ、あ、あ、やぁ…ハル、はる…っ」
枕に突っ伏した頭をどうにか後ろに反らせると、春彦は相変わらず顔を伏せていたものの
ピアスの開いた耳が真っ赤になっているのを、由璃は見逃さなかった。
その様子に、胸のあたりが少し暖かくなる。
 「…っ、あ…ハル、こっちきて…」
腰にあった彼の手を掴んで、由璃は自分の顔の近くに誘った。
少し唇をつき出してキスをせがむ。
春彦はそこでようやく顔をあげ、顔を近づけてきた。
見れば性交の興奮だけでないだろうに、顔は真っ赤になっている。
 「ハル、顔まっか…んっ」
 「…本当、嫌な子」
中で彼が跳ねる。
 「調子狂うのよ、アンタといると…っ」
短い間隔で息を吐き、性急に腰を動かす。
それに反応し、きゅうきゅうと由璃自身が彼を求めて締め上げる。
 「ふ、あっ!あ、あ、…なに、それ…っ」
 「…っ、知らないわよ、もう…」 
恥ずかしさをかき消すように腰を打ち付ける春彦に由璃は少し微笑んで手を重ねた。
耳元で荒い息遣いが聞こえる。
由璃が何度も聞いてきた、行為を行う時の男性の息遣いだ。
ただ、それが今回ばかりは愛おしく感じる。
こつこつと子宮に当たる感覚に、目眩がするほど快感を感じて由璃は自分の絶頂が近いのを悟った。
 「…あ、あっ、…はる、ん、ゆうイッちゃう…!」
骨ばった手に自分の手を絡め、縋るようにきつく握る。
 「…ん…っ、アタシも、そろそろ出そう…」
反対側の手を再び腰に宛てがい、スパートをかけるように一気に打ち込んでいく。
先端が蕩けて交わってしまいそうな錯覚を覚えるほど、接合部は蜜でぐしょぐしょになっていた。
吐精を促すように由璃が締め付け、奥へ奥へと誘いこむ。
 「あぁ、あぅ、んっ、きもち…だめ、っ、いっちゃ…っ!」
一際強く奥に突き立てられた瞬間、由璃は喉の奥から長く息を吐いて体を反らせた。
接合部が痙攣し、きゅう、と強く春彦を締め上げる。
それに続いて春彦自身が大きく膨らみ、びくびくと震えて由璃の中で精を吐き出した。
爪が白くなるほど互いに手を握り合い、絶頂の余韻に浸る。
びゅく、びゅくと胎内で律動し幾度も射精する春彦自身と
背中にかかる重みを感じながら、由璃はそっと目を閉じた。

474 :

 「怒られちゃう」
かなりな数の着信があるケータイを前に、由璃は青ざめていた。
部屋に大きく響くドライヤーの音を聞きながら必で言い訳を考えているが
その様子を春彦は由璃の髪を乾かしながら、複雑な顔で見ていた。
元はといえば自分にも非がある。
 「アタシが一緒に謝ってあげるわよ」
 「でも、なんて言い訳するの?学校もさぼっちゃったし」
 「うーん…」
ぐしゃぐしゃと頭を撫で付けながらドライヤーを当てる。
あの後二人でシャワーを浴び、色々している間にすっかり昼になっていた。
開け放ったカーテンの向こうではすっかり高くなった陽が覗いている。
 「ハルの所行ってたって言えばいいかなあ」
 「でもアンタのお母さん、アタシがオカマなの知らないんだから。
  娘が間借り人の男の所に一晩居たとかどうなのよ」
 「う、うーん…でも、やったことは男と変わりはな…」
ドライヤーをとめ、すっかり乾ききった頭を軽く叩く。
小さく声をあげる由璃に構わず、春彦はさっさと洗面所の方へ戻ってしまった。
ぐしゃぐしゃに乱れたベッドを綺麗に整えると、部屋の向こうで身支度をする春彦に声をかけた。
 「ね、ハル。なんでユウの事抱こうと思ったの?さっき教えてくんなかったじゃん」
 「また聞くの?しつこいわねー。気分が乗ったからよ」
 「ねね。ユウの事好き?」
振り返った春彦は不機嫌な顔で由璃を睨みつけてから、また身支度をすすめる。
 「…さあね」
ピアスをつけている耳がやけに赤いのが由璃には見えていた。
駆け寄って、後ろから鏡を覗き込む。
化粧はしないのか、何種類もの化粧水を顔に塗るだけで今は済んでいる。
これが夕方には女性もかくやという程のメイクで彩られる。
 「ねえ、また俺って言って?」
 「は?」
 「さっき言ってたじゃん。俺って。何で言わないの?」
不機嫌な顔がさらに怒りに変わると同時に、真っ赤になる。
 「絶対嫌!そんな恥ずかしい事!」
 「なんで?イケメンなんだから絶対そっちのがいいって」
 「嫌よ!」
 「変なの」
ボトルをきつくしめ、鏡の前から立ち上がった。
二人で言い合いをしながら、わたわたと玄関へ向かう。
 「ねーねー。ちゅーして」
 「嫌よ、もう!本当女って面倒くさいわね。だから嫌いなのよ!」
腰に纏わりつきながら楽しそうに笑う由璃と、その様子に嫌がりながらも邪険にしない春彦。
夏が近づく日差しの下は、やたらと眩しかったが
二人はふざけながら口喧嘩をしながら、由璃の帰りを待ちわびている母親の所へと向かっていった。

以上になります
オカマと女の子に幸あれ

475 :
最高です

476 :
gj!
最中に俺になっちゃう春彦可愛いよ春彦

477 :
GJ!

478 :
GJ!
良かったよー

479 :
「ねぇ〜、今日なんの日だか知ってるぅ?」
「へ?今日はえーと…4日だよね。なんか記念日だっけ」
「ンもう!今日は4月4日、オカマの日なのよ!」
「オカマの日?
 …あー。3月3日と、5月5日の真ん中だから、オカマ」
「そうよ!だからもっと祝ってちょうだい!」
「どうやって?」
「え」
「3月も5月も色々あるじゃん。お雛様とか、柏餅とか」
「…」
「特にないの?」
「もー!いいじゃない!とにかくめでたいんだから、祝ってよ!」
「ワガママなんだからー…」
オカマの日の記念に

480 :
>>479
これはいいオカマ エロ無のこういうの好きだわ

481 :
味わい深いテーマだね

482 :
オカマなのかは分からないけど、最近上がってるIbの2人は凄く萌える

483 :
>>482
さっそくやってみたが怖い
しかし萌える

484 :
同じくやってみた
周りは怖いけど二人は可愛いなw

485 :
>>483>>484 ね!怖いけど2人が可愛い!
年の差と身長差で更に萌えます〜


486 :
春彦いいわ〜

487 :
Ibやってみた
怖かったけどギャリーとイヴのやりとりは萌えるな
マルチエンドらしいから他のルートもやってみる

488 :
過疎あげ

489 :
このスレ初見だけど、良作多すぎて何か書きたくなってくるな……

490 :
いつでも正座して待ってます

491 :
少々スレ違いだが、『やる夫がフューラーになるようです』で、阿部さん演じるレームに、
マ太郎演じる南米系美少女が「勇者、お前の子なら産んでもいいぞ」と告白するシーンに萌えた。

492 :
ほしゅ

493 :
エロなしですが、オカマ×女
過去の神作品に触発されて初投稿
ネオン煌めく賑やかな大通りを抜け、一本小路に入った裏通り
真夜中の静けさの中ひっそりと佇む看板にはBarの文字が刻まれていた。
店内にはジャズが流れ、クラシカルな内装のカウンターには一人のバーテンが頬杖をついて客と酒を酌み交わしていた。
傾けたグラスの中で炭酸の泡が踊る。
「えぇ?あの子辞めちゃったのぉー!?」
飲めない酒を舐めるように飲んでは時間を潰していた環希はその顔に落胆の色を浮かべ、カウンターに突っ伏した。
彼のために巻いてきた髪が虚しく木目の上に投げ出される。
バーテンは慣れた様子でそれを見守り、慣れた手つきで彼女が持つグラスをひょいと奪い取った。
グラスの淵ギリギリまで揺れた液体は零れ落ちる手前で平行を保たれテーブルの上に避難させられていた。
半分以上入ったままのカクテルが照明の明かりを受けて美しく輝く。
ぶつぶつと文句を口にする環希の頭上にふっ影が落ちた。
カウンターを挟み環希の前に立つバーテンがそっとその頭に触れたのだ。
その手は暫し無言のまま彼女を慰めるように優しく髪を撫でていく 。
「まぁ、今回は残念だったわね」
「うぅ、マスターぁ・・・慰めてくれるの?」
「いい線いってると思ったんだけど…アンタさぁ、がっつき過ぎなのよ」
骨張った指の先にはゴージャスなネイルが施されていた。
頬紅の付いた頬に手を当て、重たげな付け睫がバサバサと羽ばたく。

494 :
「はぁ?そんな事ない!がっついたりなんかしてないし!」
「寧ろマスターが食い散らかしたんじゃないの?」
環希は勢いよく顔を上げ、呂律の回らぬ舌で噛み付くような反論を返した。
舌ったらずな声色がなんとも間抜けだ。
人気のない店内に反響するように広がっていく。
「ちょっと!アンタこそ人聞きの悪い事言わないでくれる?」
「アタシ、モヤシっ子と女は嫌いなの」
鼻息荒くこう言い 切る彼、もとい彼女はオカマであり、尚且つこのバーのマスターでもあった。
肩先まで届く髪を後ろで縛り白いシャツに黒いベストとタイを結んでいる。
歳は三十路付近だろうか
堀の深い顔立ちは男っぽく、どちらかと言えば体格も逞しい方だ。
しかし彼、もとい彼女は男として恵まれたルックスを持って生まれたにも関わらず
その魅力を全て掻き消すように化粧を施し女として自身を着飾っていた。
バーテンの服装に派手なメイクはなかなかにインパクト大だ。
「そもそも、アンタ男を見る目がないのよ」
ぴしゃりと言われた一言に言い返せない環希は悔しそうに眉を寄せ堪えている。
脇に追いやられていたグラスを掴もうと伸ばした指先をカウンターの中からぺしっと叩かれた。
「もうやめときな」
「アンタってばすーぐほいほい金は出すわ股は開くわ」
「まったく、頭もあそこも緩過ぎなのよ」
「うっ・・・ひどい」
「あら、アタシは真実を述べているだけよ?」
「今回のあの子にもお金渡しちゃったそうじゃない」
「・・・だって家賃も払えないって言うんだもの、可哀想じゃない」
「バカね、そんなの嘘に決まってんでしょ」
「アンタ何回目よ、いい加減学習しなさいよ」
しれっと辛辣な言葉を吐き出した赤い唇は環希のカクテ ルグラスをぐいっと飲み干した。
豪快に揺れる喉仏に視線が止まる。

495 :
「えっと・・・これで五人目です」
飲み干されてしまった空のグラスを恨めしい気持ちで見やり、環希は歴代の彼氏を指折り数えて溜息をついた。
「・・・六人目よ」
「うっ・・・」
「ふん、逃げる男なんて放っておきなさい」
「どうせはじめから価値なんてないようなクズだったのよ」
「・・・・・ねぇマスター、私新しい彼氏できるかなぁ?」
「アンタねぇ・・・数ヶ月前も今と同じ事言って酔い潰れてたわよ?」
「ったく。朝まで介抱してあげた恩、忘れたとは言わせないわよ?」
「あれ?そうだったっけ・・・?」
環希はじっとりとした視線から逃げるように笑ってごまかした。
酔っていて覚えていな いのは確かなのだ。
あの日もここで朝まで飲んで酔い潰れて、目が覚めたらマスターのマンションに転がされていた。
薄ぼんやりとした記憶は頭の片隅に残っている。
「普通の男だったら簡単に酔い潰れたアンタのこと襲うわよ?」
「オカマに感謝しなさい」
「ははっ、私マスターになら犯されてもいいよー」
赤い顔で無邪気に笑う環希を諌めるようにマスターは言葉を続けた。
「バカッ、すぐそんなこと言うから頭も股も緩い女って言われんのよ!」
「アンタ、ちんこついてればオカマでもいいって訳?この節操なし!」
「え〜?心外!私誰でもいい訳じゃないよー」
「マスターだから言ったんだよ?」
ピタリと空気が止まり、互いの視線が交差する。
「・・・そんな上目遣いで し文句言ったってアタシには効かないわよっ!」
「はいはい、わかってるわかってる。マスターが好きなのは女じゃなくて男だもんねー」
「そ、そうよ・・・」
「マスター」
「何よ」
「ううん、なんでもない」
「はっ!アタシ女のそういう意味のない甘ったれたとこが嫌いよ」
「えぇー?私はマスターの事、好きだよー?」
「だまらっしゃい!この酔っ払い!」
ケタケタと笑う環希から隠れるようにマスターは息をついた。
そんな二人の関係がこの先変わる事になるなどと当の本人達はまだ気付きもしていない。
end

将来はきっとケンカップル!
規制中だったので携帯からお目汚し失礼しました

496 :
エロ無しでもにやにやした!
GJ!

497 :
>>493
GJ!めちゃめちゃ萌えた
この続きでエロありも読みたい

498 :
GJ!
進展とかするんだろうか…!

499 :
ホモかオカマが女の子を好きになって「お前のせいでこうなったんだ責任とれ」っていう理不尽なのとかかわいいと思う

500 :
>>499
いいねー
やっぱその人だから好きになったっていうのが
丁寧に描写してあると嬉しい
このスレはほんとに良作品多いなー

501 :
>>500
>やっぱその人だから好きになったっていうのが
>丁寧に描写してあると嬉しい
はげどう!
それまでは男が好きだったけど、彼女だから……っていう特別視するような心情・展開が大好きだ
その過程でも悶々と悩んだり葛藤とかあったり
たまらん

502 :
「私だけは愛される」みたいな幻想ほんとうざいわ

503 :


504 :
「私知ってるわよ。あなたが好きな人」
美紀はクスリと笑った。真一は背筋を駆け上がる悪寒に鳥肌を立てた。
無視して立ち去ろうとする背中に、毒色の声が投げられる。
「私、武史と寝ちゃった」
うらやましい?
唇を噛んで顔色を変えた真一を嘲笑うように、赤い唇の両端が吊りあがる。
「だからなんだっていうんだ。俺には関係ない」
なんでもない様子を装おうと試みたものの、真一の声は震えていた。
青ざめた顔で固まる真一の耳元に美紀はゆっくりと唇を近づける。
「今なら味が残ってるかもしれないわよ」
意味を理解し損ねた男のネクタイをつかんで引き寄せると、美紀はねっとりと舌を絡めた。
「なにをする!」
突き飛ばされた美紀はケラケラと笑った。
「惚れた男と間接キッスさせてあげてるんじゃないの。
どうせ直接押し倒す度胸なんかないんでしょ」
正気を疑うかのように睨みつけた真一の前で、美紀はブラウスの胸を寛げた。
「見て、こんなに痕が残っちゃって。あの人赤ん坊みたいに吸うの」
真一は悔しさに拳を震わせながら、それでも赤い斑点から目が離せなかった。
「私を抱いてくれたら、彼がどんなふうに腰を振ったか、教えてあげるわよ」
知りたくないと真一は思った。
親友がどんな風に女を抱くかなんて絶対に知りたくなかった。
しかし、いつのまにか身体が勝手に、女を引き寄せていた。
鼻を寄せると、どこか覚えのある青臭い匂いがして、
能天気に笑う親友の顔が浮かんだ。
真一は泣きながら、その残り香に縋った。

505 :
どろどろこわくなった

506 :
493です
前回の続きで最終的にはエロ有りのオカマ×女(環希)エロ到達まで少々長いです
「そんなことないですよぉ〜」
間接証明の明かりに照らされた頬が赤く色付く。
ケラケラと上機嫌に笑う環希の声が店内に響いた。
ここはオカマがマスターを勤めるオカマバー
店主の名は本名雅臣、通称みやびちゃん。
なかなかの男前、もとい美人である。
雅臣はグラスを磨いていた指先を止め、本人さえ気付かぬうちにこめかみに血管を走らせる。
女のように化粧された赤い唇は不機嫌そうに尖り、表情は次第に強張った。
仕事に集中したいのにそれができず、苛立ちだけが手で拭えない煙のように充満していく。
「いやいや環希ちゃんは可愛いって。すごく魅力的な女性だと思うよ、僕は」
酒により、すでに出来上がってしまっている環希の隣には一人の男が座っていた。
ピタリと寄り添い、いやらしい目付きで彼女を舐めるように見つめている。
年若い環希と並ぶとまるで親子のような歳の差だ。
雅臣は顔を しかめ二人の会話に耳をそばだてていた。
(…あの女、まーた変な男に引っ掛かって)
「ううん、私ダメなの」
「すぐ彼氏に騙されちゃって…いっつもそう」
「それは可哀相に…」
雅臣は演技がかった男の声色に吐き気を覚え、内心鼻で笑い飛ばしてグラスを拭き続けた。
バーテンが客同士の会話を盗み聞きするような不粋な真似はしてはならない。
頭ではそう理解しているはずなのに環希の事が心配で二人の会話を聞き流す事ができなかった。
唇を引き結び、表に出てきてしまいそうな感情を踏み止ませる。
環希が誰かと話している声が聞こえてくる度に気になってしまう。
手のかかる子ほど可愛いと思う心理かはたまたオカマ故の母性本能からか、警戒心の薄い彼女の行動は幼く、見ているだけでハラハラしてくる。
環希とは、異性の概念を越えた仲の良い友人だと雅 臣は思っている。
どんなに意地の悪い言葉をかけても棘のある態度であしらったとしても、環希は能天気な笑顔で全てを受け入れてくれるのだ。
嘘か誠か、こんな異端な自分を好いてくれていると言う。
姉や兄のように慕ってくれている。
大切な友人が傷付いたり落ち込んだりする姿を未然に防ぐ事ができるのならば守ってやりたいと願うのが人の情と言うものだろう。
オカマは男よりも義理堅く、女よりも慈悲深い心を持ち合わせているものなのだ。
力強い眼差しで頷き、雅臣は近くにいたスタッフに声をかける。
何やらこそこそと素早く耳打ちを済ませ含みのあるウインクをして見せた。
ウインクを受け取った方も困ったように微笑んだ後、任せなさいと言わんばかりに厚い胸板を叩く。二人の密かなやり取りはどうやら無事交わされたようだった。

507 :
雅臣が目を離していた隙をつくように男は動いた。
今夜この店で初めて顔を合わせた行きずりの男に、環希は酔わされ口説かれている。
まったく何度同じ過ちを繰り返せば危機感を覚えてくれるのだろうか。
雅臣はカウンターの中で仕事をこなし、それとなく二人の様子を伺い見る。
すると男の手は環希のスカートを捲り上げ太股の上をいやらしい手つきで撫で回していた。
「…んっ」
「環希ちゃんの肌は綺麗だねぇ」
「近くにホテルを取ってあるんだ、これから二人で飲み直さないかい?」
雅臣の表情が微かに曇る。
一瞬見えたその顔は普段の彼が見せる妖艶な余裕のあるオカマの顔ではなく、一人の男としての憤りを含んだ顔だった。
雅臣は磨き終えたグラスを傍らに置き、 何事もなかったかのように淡々と後ろの棚からボトルを数本選び取る。
その顔はすでに夜の水商売を行う者として模範的な微笑を浮かべているものの、長い指の先に光るネイルからはナイフのような鋭さと気が感じられた。
雅臣から耳打ちされたスタッフはその異様な空気を感じ取ると、近場にいた馴染みの客達をそれとなくカウンターから遠ざけていく。
手元のボトルを丁寧に計量した後、冷たく光るシェイカーの中へと注ぎ入れた。
男は小さな抵抗を見せる環希に構う事なくその指をスカートの中へ滑り込ませている。
「環希ちゃんのここはどんな味がするんだろう…」
卑下た男の笑い声と生唾を飲み込む音がした。
雅臣は怒りを抑え、伏し目がちな視線を環希へ残したままシェイカーを振 った。
腕の筋が浮かび上がり、シャカシャカと小気味よい音楽がジャズのリズムと混ざり合う。
男はすっかり酔い潰れている環希の肩を抱き寄せ、無防備な首筋に顔を埋めた。
その瞬間
テーブルの上に勢いよく出されたグラスが大きな音を立て、男の動きを阻んだ。
「その子、アタシの知り合いなのよ」
「お客さん、あんまり手ぇ出さないでくださらない?」
阻まれた事に対し男の瞳がギロリと雅臣を仰ぐ。
敵意のある視線を正面から受け止め、雅臣は薄く微笑んだままグラスをずいっと男の前へ差し出した。
「それ呑んだら帰ってちょうだい」
「ここはオカマバーよ。アタシの店で男が女を漁るだなんて寒気がしてくるわ」
「そういうくだらない事がしたいんだったら、いくらでも 他の店に行ってちょうだい」
「金さえ詰めばプロの女がいくらでも相手にしてくださるそうですわよ?ま、オカマには縁のない場所ですけど」
穏やかな口調だが、その眼差しは鋭く冷たい。
牽制、または威圧的な空気を感じ取ったのか、男は悔しそうに唇を噛み締めるとすぐさま逃げるように店を出て行ったのだった。
雅臣は閉まる扉を見送り、男が手も付けずに残していったグラスを一口で飲み干した。
「…ったく、ほーんと手のかかる子だこと」
「ほら、寝てないで起きなさいよ環希っ!」
雅臣が環希の頭を軽く小突くとむにゃむにゃと意味の聞き取れない寝言のような声が返ってきた。
「仕方ない…よぅちゃん、悪いんだけど店お願いしてもいい?」
店内で客と談笑していたオカマが 振り向き雅臣にウインクをして見せる。

508 :
「恩に着るわ…。騒がしくしちゃってごめんなさいね」
「お詫びと言っちゃなんですけど今夜は皆様に一杯ずつ奢らせて頂くわ、好きなもの頼んで楽しく過ごして行ってちょうだい?」
「それじゃよぅちゃん、後は頼んだわよ?」
ひらひらと手を振ると雅臣は千鳥足で歩く環希を片手で掴み、担ぐようにカウンターの奥へ続く扉へと姿を消した。
◇◆◇
「さーてどうしてやろうかしら」
スタッフルームの鍵を後ろ手で閉め腰に両手を宛がいソファーに転がる環希を上から見下ろす。
鼻から吸い込んだ空気を思い切り外へと吐き出した。
「アンタ…いい加減にしなさいよ?」
「じゃないといつか痛い目見るんだから」
雅臣はきつい言葉とは裏腹に環希の頬を優しく両手で包み込むように支え、額同士をくっつけた。
肌が触れ合い、その温かさに吐息が漏れる。
「なんでオカマのアタシがこんな気持ちになんなきゃいけないのよ…」
「アタシはね可愛くて綺麗な服が好きで、綺麗な顔の男が好きなの」
「だからアンタみたいなちんちくりんなんか全然アタシの好みじゃないの。的外れなのよ…」
「…なのに何で…っ」
一拍言葉を詰まらせ 、眠る環希をじっと見つめる。
「…悔しいけど、言いたかないけど…」
太い喉仏がゴクリと上下する。
熱い塊のようなものが落下し、胸の中をジリジリと焦がしていくみたいだ。
切なくて、苦しい。
「アタシ…アンタの事いつの間にか好きになってたのね」
「馬鹿みたい、自分の気持ちに気がつかないなんて…」
雅臣は艶のある眼差しで環希を見つめ、逡巡すると、そっと唇にキスをした。
啄ばむように二回、三回と繰り返すうちにひどく感情が高ぶっていく。
そんな自分を抑える事ができない。
衝動のままに唇を割り開き、舌を絡ませ、より快楽を貪るように眠る環希の唇を犯す。
「…ん、ぁ」
その時、彼女の体がピクリと反応を示した。
閉じていた瞳がぼんやりと開き、状況 を把握しようと四方を彷徨う。
「あら、おはよ。起きたのね」
「…え?」
環希の視線が雅臣を捉えた。
見慣れているはずの顔に違和感を覚え、間の抜けた声が唇から零れる。
それもその通り。
彼、もとい彼女は今、化粧を落とし装飾品を外しあたかも男のような風貌をしていたのだから。
雅臣はにこやかに微笑み、環希のブラウスを大きな手で器用に脱がせていた。

509 :
「ちょ、マスター何?なんで?どういう事?」
「どういう事ってこれからセックスするところじゃない」
見てわかんないの?と言いながらあっと言う間に衣服を剥いでしまう。
「は?意味わかんない…待って、これって夢?」
「さぁ?アンタが夢だと思いたいならそうすれば?」
「アタシはアンタを抱ければどっちでも構わない」
「一夜限りの夢だろうと、ね…」
聞き慣れない雅臣の低い声。
いつの間にか背中に回されていた手がブラのホックを外し、腕からスルリと抜き取られていた。
小さな悲鳴を上げた環希が慌てて手で隠すも、すぐさま払いのけられ抵抗虚しく雅臣の目に晒されてしまう。
「あっ、や…!」
肩の辺りを押し返してみても女の力ではびくともしない。
「や、だ…マスター…!」
「あんまり声出すと店に聞こえるわよ?」
「ん、んっ」
あらわになった胸を両手で揉みしだき、男にはない感触を楽しむ。
舌全体で胸の尖りを舐めてやると環希の唇から甘い吐息が零れ落ちた。
「ふ、あ…あっ」
「アンタって感じやすいんだ」
耳たぶを軽く食み、普段よりも低い声色で囁く。
環希の体をソファーに押し倒し、スカートの裾から下半身に触れた。
「あのクソオヤジに触られてた時も感じてたの?」
「…っ」
下着越しに割れ目をなぞると、そこはすでに濡れそぼっていた。
くちくちといやらしい卑猥な音が下半身から聞こえてくる羞恥に環希は眉を寄せている。
「やだ…もうぐしょぐしょじゃない」
「準備万端って訳ね」
雅臣はから かうように微笑むと首筋に軽く唇を寄せ、指と舌を動かした。
舌先で胸の頂きを攻め、下着を剥ぎ取り秘部に指を突き入れる。
すでに濡れている蜜壺は男の指を軽く受け入れた。
「…っん」
指を前後に動かし、彼女の反応を確かめながら的確に快楽の波を引き寄せて来る。
環希はただその波に溺れまいと呼吸を繰り返すばかり。
彼の愛撫と酒により意識は朦朧としている。
その巧みな指先は女の体をどう扱えば喜ぶのかを心得ているかのようだった。
「そろそろイキたいんじゃない?」
指を一本から二本に増やし、親指で陰核をなぶるように左右にさすった。
環希の体に電気が走った。
込み上げる快感に体が小刻みに震える。

510 :
「んっ、ん…あ、あぁっ!」
一際高い声が室内にこだました。
波は後から後から追い掛けるように彼女の体を襲い、呼吸を乱していく。
雅臣の指で達してしまった環希は目から涙を零し彼のシャツにしがみついた。
雅臣は自身の衣服を性急に脱ぎ去り、性器を取り出す。
紛れもない男の象徴であるそれははち切れんばかりに膨張し、天を指している。
明るい室内でそれを目にした環希は息を飲んで硬直した。
「アタシ嫉妬深いのよ…」
そう言って雅臣は自嘲気味に微笑んだ。
自分自身、この感情に驚いているのだ。
友人として心配しているだけだと思っていたが、蓋を開ければまさか環希を異性として好いていたなどとは・・・
「アンタを他の男に取られるくらいだったらアタ シが抱くわ」
「アンタ、前アタシになら抱かれてもいいって言ってたわよね…?」
今まで散々体を重ねようと思えばそのチャンスはいくらでもあったはずだ。
二人きりで出掛ける事も多々あった。
酔いつぶれた彼女を一晩中自宅で介抱してやった事もあった。
なのになぜ今・・・
オカマになると決めた日からもう二度と女を好きになる事はないと思っていた。
ましてや抱く事などないと思っていた。
「…いい、よ?」
「えっ…」
「だって言ったでしょ?私、マスターの事好きだよって」
「あれ、本当だよ?」
「だから…マスターが私なんかにヤキモチ妬いてくれてたなんて、ちょっと嬉しい…」
「…ば、馬鹿。アンタって本当脳天気ね!」
「うん。だから、いいよ」
「一晩 だけの夢でも、マスターがそうしたいんだったら…」
「アタシ、アンタの寝込みを襲って犯そうとしたのよ?」
「そこに愛と意思があれば問題ないよ」
「だって私は嫌がってなんかいなかったんだもん」
「…馬鹿ね、アンタって」
「えーひどい」
「可愛いって言ったのよっ」
雅臣は自身を環希の秘裂へ宛がい腰を進めた。
その圧迫感は指の比ではないのだろう、環希の表情が苦しげに歪む。
「んっ…」
「痛い?」
「ううん、平気…」
痛いと言うより息が詰まる。
雅臣が大き過ぎるのだ。
ゆっくりと律動が始まると辺りにぬるぬると愛液が絡まり合う水音が響いた。
「や、ダメ…気持ちい、い…」
「もっと気持ちよくしてあげる」

511 :
耳を食み、唇を吸う。
舌を絡ませ互いの唾液が口内で混ざり合う。
太股の裏に腕を入れ、足を持ち上げより深く繋がる体勢を取った。
「…あ、っ」
「すっごい、中ぬるぬる…気持ちいい…」
「あ、あ、あぁっ…!」
「もっと感じて、俺を感じて…」
「あ、やぁ…も、だめ…ぇ!」
声と共に中がビクビクと痙攣し、雅臣を締め付ける。
環希は再び絶頂を迎えてしまった。
目が合うと、雅臣はニヤリと唇の端を持ち上げた。
一度それを引き抜くと一気に深く突き入れる。
入り口を荒々しく広げられる感触にぶるりと環希の体が震える。
雅臣は速度を上げ腰を振り続けた。
「あ…あっ…あ」
何度も何度も最奥に打ち付けられるペニスは息苦しくなるくらいの質量になっ ていた。
環希の中を全て埋め尽くすように隙間なく収まっている。
絡み合う愛液は二人の肌を伝いソファーの上にシミを作っていた。
「はぁ、はぁ…も、だめ…またイッちゃ…」
「いい、イケよ…何度でも俺のでイケ」
「あ…あぁ、っ…!」
環希の瞳が大きく見開かれ
彼もまた絶頂に達し彼女の中に熱い白濁色の欲望を吐き出したのだった。
◇◆◇
「えーと…その、悪かったわ…」
バツが悪そうに視線を逸らしながら雅臣は頬を掻く。
環希は見慣れぬ雅臣の姿にニッと笑うとこう続けた。
「まさかオカマに襲われるとは…」
「だから悪かったって言ってんじゃない」
「でも…悔しいくらい気持ちよかった」
「えっ…」
「一体どこでそんなテクニック覚えてきたの?」
「さ、さぁ?アンタが今まで付き合ってきた男がろくでなしばっかりだったんじゃない?」
「えぇ〜?」
「いいじゃない、これからはアタシがたっぷり愛してあげるんだから」
「他の男の話なんて聞きたかないわ」
「ふふっ、マスターって本当嫉妬深いんだね」
「あら、女はみんな嫉妬深い生き物なのよ?」
「オカマでも?」
「えぇ、オカマは男のよ うに未練がましく女のように嫉妬深いの」
「はいはい、肝に銘じておきます」
end
これにてマスター×環希の話は終了になります
言葉足らずな拙い文章をお読み下さりありがとうございました

512 :
GJ!!
二人共可愛くて素敵だった!

513 :
GJ!
普段女らしいオカマがエッチの最中に男言葉に戻るのはいいね!
なんつうか、ギャップ萌え?
またネタが浮かんだら書いて下さい
雅臣×環希でも、他の作品でもいいから!

514 :
乙!きゅんときたー。

515 :
ごめん、GJのまちがい
GJ!

516 :
GJ!
嫉妬するオカマ、いい!!

517 :
GJ!

518 :
オカマスターを書いた者です
たくさんのGJコールありがとうございました!
今、現代物でゲイ(ピアノ講師)×生徒となんちゃって大正〜明治時代設定で政略結婚させられたゲイ×お嬢様の二本を同時に書き進めてるんだけど
このスレ的にはどっちのが需要ありそうですか?

519 :
うお、現代物のが好みだけど、大正〜明治の政略結婚も読みたいです!
気長にお待ちしてる!

520 :
>>518
どっちも良いと思う!
が、個人的には政略結婚ものの方が好き
いやいやの結婚から絆されていくわけですね、にやにや

521 :
>>518
私もどっちも読みたい!
でも、どっちかというと政略結婚かな
楽しみにしてます!

522 :
>>518
どっちも読みたいけど、片方選べと言われたら政略結婚で!
全裸で待ってる!

523 :
政略結婚派が多い中、……私も政略結婚に一票を
そしてあげ

524 :
>>518です
どちらがいいか聞いておいたくせになんなんですが…
先に現代物書き終えたので投下しにやって参りました
ゲイのピアノ講師×女
エチ有り
以下、投下はじめます

525 :
私が彼を慕うようになったのはいつの頃からだっただろう。
彼は私が通うピアノ教室の先生だ。
私達の関係は講師とその生徒。
それは出会った頃から今でも一ミリも変わっていない。完全に私の片想い。
先生と言う人物は、外見は男の人そのものなのになぜか口調や仕草は女性のようでとても中性的な人だった。
まだ私が子供だった頃、ピアノ教室に通い始めて間もない頃だったと思う。
一度先生に直接聞いた事がある。
先生はオカマなの?男の人が好きな人なの?と
先生は目を丸くして驚いた後、眼鏡のフレームをそっと指で正し私に向かってこう告げた。
君に教えるにはまだ少し早いかな、と。
そしてコートのポケットからチョコレートの包み紙を取り出し私の手のひらに乗せたのだ。
少しだけ、悲しそうな笑顔を浮かべていたのが印象的だった。
その時、私は聞いてはいけない事を口にしてしまったのだと先生の顔を見て理解した。
子供とは言え自分のした行為が恥ずかしいとさえ思った。
だから4年経った今でも私にはわからない。
先生の心が、体が、男なのか女なのか。
彼が好きに なる対象が男なのか女なのか。
真相を知りたいとは思う。
けれどあの日、たった一粒のチョコレートにはぐらかされてしまってから聞き直してみた事はない。
先生と私の間にはいつの間にか見えない線が引かれてしまったみたい。
早く大人になりたい。先生に近付きたいって思っていたのに、いざ大人になりかけてきたらこの始末…
もう子供の時のようによくできたねと頭を撫でてくれる事はないし
他の子には内緒だよとポケットからお菓子をくれる事もなくなってしまった。
私の初恋は未だ成就も玉砕もしないまま、冷凍保存状態で心の中に居座り続けているのだ。
この田舎町に突然現れた先生は、当時大人達に『変わり者』だと嫌悪されていた。
根も葉もない噂が飛び交い、子供だった私の耳にもそれは時折風に乗って聞こえてきていた。
先生が同性愛者だとか
親、兄弟を捨てるも同然で家を飛び出して来ただとか
結婚寸前までいった婚約者と破談になったとか
閉鎖的な田舎町にとって、それは実に刺激的で人々の興味を引くには都合のいい噂の種だった。
大人達は先生をそういう目で見ていた。彼を疎み、内心では蔑んでいた。
私の両親でさえ噂を鵜呑みにし、もうピアノ教室は辞めなさいと私に言ってきたくらいだ。
しかし実は先生は海外のコンクールに入賞した事があるとかないとかそんな話が広がり始めると
今までの差別的だった目が嘘の ように逆さまにひっくり返り、都会から来たピアノ講師は持てはやされ始めた。
皆、現金なものだ。
大人達のあまりに露骨な変化に怒った私を先生は穏やかな表情で制した。
――みんなにわかってもらえなくてもいいんだよ、君は優しい子だね、ありがとう。
それでも当時の私は納得できなかった。これでは先生が可哀想だ。
こんなにも優しい先生が大人達から理不尽な差別を受けた事が悔しくて許せなくて、私は大声でわんわんと泣いたのだった。
今では彼の事を悪く言う人物はおろか、女性的な口調を気にする人さえいなくなっていた。

526 :

◇◆◇
「おはようございまーす」
4年前から私は週に一度、休むことなくピアノ教室に通っている。
ピアノ自体はそれほど得意ではない。
寧ろ技術面で言えば落ち零れも同然かもしれない。
それでも先生に会いたくて、ピアノだけは辞めたくないと親に頼んで高い月謝を支払い続けてもらっていた。
自分で言うのもなんだけどこの恋はなかなかに執念深いものなのだ。
ロビーを抜けて各練習室へと繋がる廊下を進む。
壁に貼られたバッハに睨まれようともベートーベンにすごまれようとも今の私は上機嫌だ。
だって先生に会える。それだけで顔がニヤけてしまう。
教室の防音扉を開けると、中から美しいメロディが聞こえてきた。
私はうっとりと聴き慣れた音楽に耳を傾け酔い痴れる。
先生が好き。
それと同じくらい先生の奏でる音楽が好き。
先生はいつも同じ曲を繰り返し弾いていた。
私は扉の内側を軽くノックして声をかけた。
「先生、おはよう。
 見て?私今日から高校生になったのよ」
言いながら自慢げにくるりと短いスカートを翻す。
音が止み、鍵盤を見つめていた瞳が肩越しに振り返った。
「ん?あぁ、それで制服がセーラー服 からブレザーになってたんだね。
 すごく可愛い。杏ちゃんに似合ってるよ」
先生はこうやって当たり前のように『可愛い』などと口にする人だった。
これまで何回私の心を動揺させただろう。
その度に心はダメージを受け、より一層先生の事を好きになってしまうのだ。
しかしその被害者は私だけではなく
憎い事にここに通う女性なら一度は経験するくらいの高いエンカウント率だった。
「…先生の言う可愛いは当てにならない。
 だって誰にでも同じ事を言うもの」
頬を膨らませ、子供のように拗ねてみせる。
先生はごめんごめんと苦笑し、ピアノの前に楽譜を開いてレッスンの準備を進めていた。
もう昔みたいに頭を撫でてはくれないの?
心の中だけで問いかけてみる。
答えなんて返って来るはずないのに…
「ねぇ先生、高校生ってもう大人だよね?」
「えっ?…と、どうかな…?ボクにとってはまだ子供、かな」
突然の問い掛けに一瞬面食らったように戸惑い、先生は下がってきた眼鏡のフレームを持ち上げた。
少し長めの前髪が実に邪魔そうだ。
「ううん、大人だよ。だって16だよ?もう結婚できる歳だもん」
「うーん…そう言われるとそうだけど…」
来て早々突拍子もない質問を投げかけた私に先生はどうしたの?と心配そうに顔を覗き込んで来る。
先生、そんな無防備な顔して近付いてこないでよ。
私が今どんな気持ちでこの至近距離に耐えてるかなんてわかってないから、そんなひどい事ができるんだ。
勢いのままその首に噛み付きたくなる衝動をぐっと堪える。
先生は最近の女 子高生がいかに肉食系なのかを知らないのね。
「先生、覚えてる?私が昔先生に言った事…」
「なんだろう?」

527 :
「先生はオカマなのって…私、聞いたよね…?」
子供じみた嫌な聞き方しかできない私は本当に可愛くない。
もうちょっと聞き方ってもんがあっただろうに…
言って早々後悔する。ばかだ、私。
「あの時、先生は君に教えるにはまだ早いって答えたの…
 でも私だってもう大人だよ?16歳だもん!
 そろそろ答えを教えてくれてもいいと思うの…ダメ?」
どうして今更そんな事を聞きたいのかと問われたらおしまいだ。
だってそれは先生の事が好きだから。
そう答えるしかない。
と言う事は必然的に告白をしなければならなくなる。
そんな度胸はまだちょっと…ない。
けれど先生は黙ったまま顎に手を宛て、私の質問の意図を探ろうとはしなかった。
束の間の沈黙の後、先に口を開いたのは先生からだった。
意を決してあの頃の問いを口にした私だけれど、先生の口から返って来る答えを受け止める心の準備など整ってはいない。
やっぱりまだ子供なのかな…
自分勝手にも程がある。
「あぁ、うん…あったね、そんな事」
「先生、私にチョコを手渡して話をはぐらかしたの」
「うん、はぐらかした。ごめんね?」
「はぐらかした事はアッサリ認めるんだ」
「うん…事実だからね」
「いいよ、別に怒ってないし。その代わり教えて欲しいの」
「どうしても?」
「…うん、どうしても」
私は先生から目を逸らさず、言葉を重ねて続けた。
もう引き返せない。
「じゃあ今日のレッスンはやめにしようか」
「え…」
「待って て、今紅茶淹れてくるから」
そう言って先生は立ち上がると穏やかな笑顔を残して教室から出て行ってしまった。
◇◆◇
「おまたせ」
二つのマグカップがその手に握られていた。
紅茶の香りを引き連れながら先生は片方を私に差し出す。
立ち上がった湯気で眼鏡が少し曇っていた。
「さて、どこから話をした方がいいのかな」
緊張している私とは対照的に、先生の纏う空気は波ひとつたたない湖のように穏やかだった。
これが大人の余裕、又は貫禄と言う奴なのだろうか。
けれど眼鏡を顔から外してシャツの裾で擦り合わせている姿はちょっと間抜けだ。
「どこからでもいいよ、先生の事何でも聞きたいもん…」
「ははっ、まいったな…そう真っ直ぐ言われると何だか照れるね」
「はぐらかさないで」
「…ごめん。
 ………昔…ね、ひどく人を傷付けてしまった事があるの」
両手でマグカップを 抱え、先生はこくりと喉を潤す。
控えめながらも張り出た喉仏は先生がちゃんと男の人だっていう証だ。
「当時付き合ってた人と、親友を、ボクは裏切って…二人を同時に傷付けてしまった」
感情の読めない表情で先生は淡々と事実だけを口にしていく。
ふと、頭の中に疑問が浮かび上がった。
付き合っていた人…って、それってもしかして男の人?
しかし聞き出すには勇気のいる内容だ。

528 :
「男だよ」
「えっ?」
顔に出ていたのだろうか。
先生は静かに私の抱く疑問に答えをくれた。
いつもと変わらぬ表情で微笑んでいる。
その笑顔が逆に辛かった。
内側を見せて欲しいのに…
先生は笑顔で全てを隠してしまう。
「ボクはね、男の人と付き合っていたの。彼とは恋人同士だったんだ」
「…」
「親友って言うのは幼馴染の女の子だった。
 ボクの事を好きだと言ってくれた子だった」
「…」
「ボクはね、杏ちゃん…男の人とも女の人とも付き合えるゲイなんだよ」
先生の唇がその言葉を紡ぎ出した瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。
おかしいな…耳が変になっちゃったのかな。
自分の呼吸の音さえ聞こえない。
霞む意識の内側でもう一人の自分 が言う。
あぁ、そうだ、昔から大人達が噂していたじゃない。
結果はその通りだった。
私は出会った頃からすでに答えを知っていたのだ。
ただ、無意識のうちに認めたくなかっただけなのかもしれない。
先生は同性愛者…
しかし現実の私は本人の口から告げられた真実をなかなか理解する事ができない。
飲み込む事ができない。
鼻の奥がツンとして狭い喉を何かが勢いよくせり上がってくる。
「ごめんね、幻滅しちゃったよね?
 ボクは杏ちゃんが思っているような大人じゃないよ、とってもずるくて汚い」
そんな事ないよ!って叫びたいのに声が前に出てこない。
もう子供じゃないって自分で言ったのに、ここで今泣くなんて反則だ。
先生は優しいから…困らせてしまうだけだ 。
「ボクは誰かを愛する資格なんてないんだよ…
 君みたいな普通の女の子はボクみたいな男を好きになんてなっちゃいけない」
告白する前にふられてしまった。
まるで体に大きな穴が開いてしまったみたい。
胸が痞えて涙がポロポロと零れ落ちてきた。
泣いてしまったらますます先生に言葉を伝える事ができなくなってしまうのに、涙は止まってくれない。
「杏ちゃん…泣かないで?」
ごめん、ごめんねと先生は繰り返し私に慰めの言葉をかけ続ける。
そんな風に言われたらますます涙が溢れてきてしまう。
先生は困ったように眉を寄せ、一瞬の躊躇いの後、私の肩を抱き寄せた。
男性にしては華奢な方だとばかり思っていた先生の胸は広く、私の体なんてすっぽりと包めるくらい ちゃんと男の人の体をしていた。
「うっ…う、ひっ」
「やっぱりまだ早かったかな…驚いたよね?
 でもね、正直胸の痞えが取れた気がしてるの。話せてよかったと思う自分もいる。
 杏ちゃんの事が好きだから、傷付けたくなかったんだ…
 これ以上君の好意に気が付いていないふりを続けて、いつか本当に君を傷付けてしまうんじゃないかって…
 その前に、少しでも傷が浅く済むうちに伝えたいって…思ってた。
 ごめん…結果的に傷付けて泣かせちゃってるよね…」
先生は子供をあやすようにぽんぽんと私の頭を撫でてくれた。
懐かしい先生の匂いに包まれる。
手のひらから伝わる優しい温度に涙は止まらない。
「…うっ、うぅ…せんせぇ優し過ぎるんだよ…っ」
「え?」< BR>「男とか女とか…関係ない…恋をして傷つかない人なんて、いない…」
嗚咽の隙間から声を絞り出すように思いを吐き出していく。
「私は先生が好きなの…!ちゃんと聞いてよっ!
 告白する前からふったりするな、ばかぁ…っ」
涙でぐしゃぐしゃの顔で叫んでいた。
これじゃ駄々をこねる子供と同じだ。

529 :
先生の手が頭から頬に下りてくる。
目尻に溜まった涙を人差し指がすくっていった。
「でも…気持ち悪いでしょ?」
諭すような声色に怒りが込み上げてくる。
先生はどうして何でもかんでも決めつけちゃうの?
私の気持ちなんて知らないくせに…
「そんな事ないっ!」
先生の胸元を両手で押し返す。
完全に頭に血が昇っている。
「杏ちゃんは何も知らないから…」
「知ってるよ。それくらい知ってる。
 男の人とキスするんでしょ?セックスだってするんでしょ?
 女の人とするみたいに…!男同士で!」
はしたない事を叫んでる自覚はある。
でも今ここで言わないとダメだって本能が叫んでる。
ちゃんと伝えないといけない。
もう後戻りする事はできないんだから、後悔のないようにしなくちゃいけない。
「うん…そうだね、男の人と肌を重ねて きたよ。女の人みたいに男に組み敷かれて喘ぐよ。
 それでも杏ちゃんはボクの事が好き?
 こんなボクに杏ちゃんはキスされたい?抱かれたい?」
眼鏡の奥の瞳が悲しげに揺らいでいた。
こんなに感情を剥き出しにする先生を初めて見た気がする。
「ごめん…嫌な聞き方しちゃったね。
 この話は終わりにしよう?さぁ、支度して?杏ちゃんさえ嫌じゃなかったら家まで送って行くから…」
一瞬、見えた笑顔の裏側はすぐに元に戻ってしまった。
私は小さな子供みたいに鼻を啜り、首を横に振った。
綺麗に折り畳まれていたプリーツスカートをギュと握り締める。
「…そっか、そうだよね…」
「違うよ。ここで終わりだなんて嫌って言ったの」
涙で濡れた目元を乱暴に拭う。
伝 わらない気持ちがもどかしい。
「先生は何一つ私の言う事なんて聞いてくれてない。
 キスされたいか?抱かれたいか?そりゃ好きだもん、されたいって思うよ。
 私だって16だよ?それぐらいの話はするよ!女の子だってそういう妄想ぐらいするんだからっ!
 ゲイだから何よ、同性愛者だっていいよ!
 先生が私の事好きだって言ってくれるなら、そんなもの気にしない!
 私は先生を差別したりなんかしない!先生が先生だから好きなの!
 でも先生の好きは私の好きと違うって知ってる。
 犬や猫や赤ちゃんなんかを可愛いって愛しむ感覚と同じだって―――」
肺がからっぽになるくらい一気に一息で捲くし立てた。
きっと顔は酸欠で真っ赤だ。
「杏ちゃん…」
ふっと風が 吹いた。
握っていた拳を取られて引き寄せられる。
手首に感じる指先の熱
よろける足音
腕を引かれ、体が前のめりに倒れていく中、反射的に目を瞑っていた。
「…んっ!」
唇に、何か柔らかいものが押し当てられている。
それが先生の唇だと理解するまで数秒かかった。

530 :
「…先生」
「ごめん…聞いて?違うんだ。
 違うよ?ボクの好きも君の言う好きと同じだよ」
どこまでも優しい声音にドキっとしてしまう。
「嘘だ…先生は優しいから私を宥めるために」
「嘘なんかじゃない…でも、この気持ちは伝えるつもりなんてなかった。
 だって歳だって離れてるし君はまだ子供だしボクは…」
先生は苦しげに眉を寄せ、肝心なところで言葉を詰らせた。
続くはずの言葉の替わりに深い溜め息を付き、手のひらを額に宛てたまま黙り込んでしまう。
「先生は意気地なしだ。そんなんで私の好きと同じ好きだなんてよく言えるよ」
「…え?」
「だったらちゃんと証明してみせて。そしたら信じてあげる。
 今から私を先生のものにしてみせて。ここ で抱いてよ」
静まり返った練習室にその声は一際はっきりと響き渡った。
ほとんど飲んでいない紅茶のマグはすっかり冷めてしまっているのだろう。
湯気は当の昔に消えてしまっていた。
俯いたままの先生が苦悩の色を宿した声で短く私の名前を呼ぶ。
額に手を宛てたままなかなかこっちを向こうとしない。
ほらやっぱり無理なんだ、煮え切らない態度に腹を立て溜め息を漏らす。
「車…取って来るから…玄関で待ってて。
 ここじゃ抱けないよ、ボクの部屋に行こう」
顔を上げた先生は確かに私の目を見てそう言ったのだった。
◇◆◇
「本当にいいの?」
「うん」
「後悔しないね?」
「うん」
「途中でやめてって言われてもやめてあげられないかもしれないんだよ?」
「…先生、しつこい」
先生の部屋に到着するなり、シャワーを浴び寝室に通された。
銀色に光るラックにはご丁寧に真新しい制服がかけられている。
これからセックスしようかって時に何とも律儀な先生らしい気配りだと思った。
明かりの消された室内、ベッドの脇に置いてある棚の上に写真立てが飾ってあった。
それは私が初めてピアノ教室に訪れた日
すなわち先生に初めて会った日、教室の外で撮られた写真だった。
今よりいくらか若い先生の隣でバカみたいに大口を開けて笑ってる幼い私が写っている。
どうしてこんな物飾ってくれてるの?
と、言うよりもっとまともな写真なかったの…?
「先生…この写真って」
「ん?あぁ、それ?
 ボクの思い出の一枚。いい写真でしょ?」
「…全然」
「そう?」
「だって可愛くないもん」
「杏ちゃんは昔も今もずっと変わらず可愛いまんまだよ。
 それに杏ちゃんはね…この町に越してきたばかりのボクにとって太陽みたいな女の子だったんだ」
言いなが ら、先生は私の顔を見てはにかむように微笑んだ。
その笑顔が少しだけ泣きそうに見えたのは気のせいだろうか。
「町のみんながボクを避ける中、君だけは変わらず接してくれていた。
 それがどんなに嬉しかったか…無邪気に笑う君の笑顔だけが救いだった」
「…そんな大袈裟な」
相変わらず先生の選ぶ言葉は歯が浮くように甘い。
嫌な気はしないが、むず痒くなって思わず棘のある言葉で否定してしまう。

531 :
「ううん、何もかも捨ててこの町に来たばかりのボクにとって
 ただ無条件で微笑みかけて慕ってくれる存在は大きかったんだよ。
 君の成長を近くで見守っていくうちに、子供だった君はどんどん綺麗になっていくし
 でもボクはもう二度と誰かを好きになって、その人と心通わせる事などないと思っていたから。
 ただ近くで杏ちゃんを見守る事ができれば、それでよかったの」
「でも私は嫌。心だけじゃなくて体もろとも先生のものになりたいよ」
「杏ちゃん……ごめんね…ボクが君の近くにいたばかりに…」
「先生どうして謝るの?」
「だってボクがいなければ君は普通の年頃の、普通の健全な男の子と結ばれていたかもしれないよ?」
この状況になってまでそんな事言 う?
だったらはじめから期待させるような事言わないで。
ドキドキさせるような行動を取らないでよ。
「…先生って女々しいのね」
「え?」
「もういい、黙ってて」
眼鏡のフレームに指をかけ、奪うように剥ぎ取った。
驚いている先生の瞳が視界の角に映り込む。
そのまま体を押し倒しベッドの上に二人倒れ込んだ。
音もなく唇同士が重なり合う。
「先生のばか!わからずや!
 何回好きって言えばこの気持ち、信じてもらえるの?」
経験のない口付けは幼稚だったと思う。
ただ重ねては離れていく。
「…ごめん…ごめんね?杏ちゃん」
「先生のごめんはもう聞き飽きた」
「それでも…ごめん。好きになってごめん」
「いいよ、私が許すって言ってるんだから…
  だから…先生からキスしてよ」
「うん」
眼鏡のない先生の顔が近付いてくる。
意外と睫が長い事や右目の下に小さなホクロがある事
そんなちょっとした些細な発見が何だか嬉しくて、すごく幸せに感じた。
そっと触れた唇はすぐに離れ、角度を変えて何度も何度も降りてきた。
何処で息を吸えばいいのかわからず、先生の服をギュっと掴んで嵐のようなキスを受け入れる。
穏やかな先生からは想像できない激しいキスに頭がくらくらしてくる。
「口…少し開けて?」
「…ん」
言葉通りに従うと唇の隙間を縫うように先生の舌が私の口内に侵入してきた。
初めて感じる湿った舌の感触に心臓が胸から突き破って出てきてしまいそうな程ドキドキしている。
「んっ…せんせっ」
「いい…上手だよ、杏ちゃん」
舌は生き物のように動き回り歯列をなぞったり、上顎を舐め回していく。
まるで舌を食べてしまうみたいにちゅっと舌先を吸われ、お互いの唾液が口の中で混ざり合う。
嫌な感じなん てしない。
寧ろ互いの唇から唾液が溢れる度にお腹の下の辺りがキュウっと締め付けられる。
「ふっ、あぁ…ダメだ…っ、キス、だけで…もう…」
先生は私の耳元で余裕のない声を途切れ途切れに吹き込んでいく。
普段より低めの声、私の頭を掻き抱く腕、強引なキス
ぴちゃぴちゃと唾液を啜る音、シーツが擦れる音
はぁ、と吐息を漏らした先生の股間に違和感を覚え手で触れてみた。
そこは山のように膨張し、ジクジクと熱を帯びて震えていた。
「ごめん…杏ちゃん…ごめんね?
 ボクはいやらしい…君とキスしただけでもうこんなだ…っ」
「いい…よ、いやらしくても…だって全部が先生だもん」
「…杏ちゃん……っ」
「ねぇ先生、ここ…見てもいい?」

532 :
私は許可を得る前に 先生のズボンのジッパーを下ろし、下着の中からそれを取り出した。
暗がりの中、先端がてらてらと濡れている。
直に触れてみると布越しよりも遥かに熱くて硬い。
初めて目にした男性のそこは想像していたよりも大きくて少しだけ怖いと思った。
「んっ、あぁ…ダメっだよ…そん、な」
やんわりとした制止を振り切って熱く猛ったものを掴み、根元を軽く扱いてみた。
興味、好奇心、興奮、あらゆる欲の方が怖いと思う感情よりも勝っていた。
余裕のない先生の擦れた声をもっと聞いてみたい。
先生の見た事ない一面をもっと見てみたい。
「へへっ…すごいね、男の人ってこんなになるんだ…」
「はぁ、はぁ、…っあ、あぁ見な…いで」
「どうして?」
「杏ちゃんにこんな姿見られてるだけで…っ、もう…っはぁ、くっ」
手の中の物が一瞬でビクビクと痙攣し、先生の顔が苦しげに歪む。
耐えるように噛み締めた唇の隙間から零れ出る恍惚の吐息
見た事ない先生の性に溺れる表情
男の人でも女の子みたいに喘いだりす るんだ…
「はぁ、はぁ、はぁ…も、限、界…っく、うぅ…あッ!」
取り出した時よりも大きくなったそこは先端からぬめりのある白い液体を吐き出し私の指を汚した。
それは勢いよく飛び散り、無駄な肉のない先生のお腹の辺りまで届いた。
「ずるい…先生だけ先にイッちゃった…」
「はぁ、はぁ、はぁ…だっ、て…杏ちゃんが触るから…」
「先生、イク時女の子みたいにあんあん言うんだね」
「…杏ちゃん」
「ふふっ、可愛い」
「もう…大人をあまりからかわない。いけない子だ」
「え?あっ、きゃぁ」
先生は長い前髪の隙間から今まで見た事ないくらい意地悪な顔で笑うと、私の足首を空高く持ち上げベッドに縫い付けた。
背中に感じるシーツの柔らかさ。
軋むベッドの音が 緊張感を煽っていく。
「やっ…!」
「今度は杏ちゃんが気持ちよくなる番だよ?
 ほら、下着越しでもわかるね…もうぐしょぐしょだ」
私のあそこは先生の言う通り、すでに濡れていた。
だってあんなもの見てしまった後だもの…私には刺激が強過ぎる。
先生は鍵盤を叩くような繊細な動きでそっと下着の割れ目を撫でていく。
何度も往復されるうちに蜜は零れ、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえてきた。
「や、ダメ、ダメ…っ恥ずかしい!」
「散々ボクの事弄くったクセに」
「あっ…」
「杏ちゃん…油断してた?
 男も女も愛したって言ったでしょ?ボクだって攻める側に回る時だってあるよ?」
先生は笑顔のまま意地悪を言う。
あれ?これって仕返しされてる?
先生 は私の太ももを掴み、手早く下着を引き抜くと足の間に顔を埋めそこに舌を這わせた。
ちろちろと小刻みに振動を送られ、初めて感じる生温かい舌の感触に思わず悲鳴を上げてしまう。

533 :
「ひゃぁあっ!あっ、ダメっ、先生ぇ…!」
濡れた秘列をずるずると啜られ、陰核を舌先で突かれる。
頭がおかしくなってしまいそうなほど気持ちがいい。
言葉とは裏腹に腰は浮き上がり、ねだるように足が開いてしまう。
「やあ、あっ、あぁ…」
「ここ、気持ちいいでしょ?」
「あっ、ん…やぁ」
ぬちゅぬちゅと聞いた事もない音が下半身から聞こえてくる。
舌先があそこに埋め込まれる度に何とも言えぬ気持ちよさに満たされ、自然と甘い声を上げてしまう。
「中、掻き混ぜてあげるね?」
「え…?あっ…はぁ…ん!あ、っ!」
ゆっくりと指先が体の中に埋められていく。
ぐちゃぐちゃになっていたそこは先生の指を容易く飲み込んだ。
先生は解すように指の腹で中 を掻き混ぜていく。
慎重に、傷つけないように、指が前後に動かされる。
指が出し入れされる度に中から大量の蜜が溢れ出て、私の内股を濡らした。
「ねぇ、自分でした事ある?」
「ん…っ、あっ指で…触る、くらい…っ」
「中に入れた事は?」
「…な、いっ…あ、あぁっ」
「そっか…全てが初めてなんだね…」
狭い入り口を広げるように指先がくるくると動いている。
圧迫感だけじゃない。
先生の指先がある一点に当たると腰が浮き上がるくらい気持ちがいい。
「先生…!先生っ!」
なぜか涙が溢れ出て、先生のシャツを必に掴んでいた。
「イキそうなんだね?大丈夫、何も怖くないよ」
「でも…あ、あっ…やぁ、あ、ダメ…っ気持ちいいよぉ」
より深い快楽を求める ように私は腰を振り、先生の指をくわえ込んでいた。
淫らな音と二人の荒い呼吸が何も考えられない頭の中に響いてくる。
先生は空いたもう片方の指で陰核を摘まみ、こねまわしては押し潰し、左右に刺激を与え私を攻め立てる。
中に差し込まれた方の指は性感帯を探すように蠢き続けている。
先生のせいでぐちゃぐちゃになったあそこはもうトロトロに溶けてしまいそう。
「や、あっ、あっ…いっ!」
足の爪先がピンと伸びて気を失いそうな強い快楽に打ち震えた。
ビクビクと体が跳ねて声が止まらない。
これがイクと言う感覚なのか。
「はぁ、はぁ…せん、せ…好き…大好き…っ」
「ありがとう…ボクも杏ちゃんの事が好きだよ。
 だから今日はここまでにしよう…」
「…えっ ?」
突然の宣言に思わずガバッと体を起こしてまじまじと先生を見つめてしまう。
「君の体を大事にしたい」
「でも…私は…」
「ね?そうさせて?」
先生にそんな顔で言われたら反論なんてできるはずもなく
私は不満の残る顔のまま仕方なく頷いた。

534 :
「時間はこれからいくらでもあるんだから…ゆっくり進めていこう?」
ちゅっと瞼に口付けを落とされる。
反論を挟む隙を与えないとばかりにいいこいいこと頭を撫でられてしまった。
このコンボはさすがに破壊力抜群だ。
「そうかな…早くしないと先生おじさんになっちゃうよ?」
「えっ…そ、そうか…そうかな?困ったな、まったく杏ちゃんは厳しいね」
「でも私はどんな先生でも好きだから問題ないんだけどね」
なんて大人ぶった事を言いながら先生に抱きついた。
これで少しはドギマギしてみろ。
最近の女子高生は積極的なんだから!
「…あっ」
「どうかしたの?先生…あっ」
見ると先生の下腹部は再びお腹にくっつきそうな程膨張していた。
慌ててシーツ を掴んで隠そうとしているけれど、それじゃ余計目立ってるよ先生。
白いテントはひどく滑稽で、抑えていた笑みは噴出すように転げ出てしまった。
「そ、そんなに可笑しいかな…その、ごめん」
「ねぇ、やっぱり今日する?」
「えっ!?ダメだよ、今言ったばかりなのに…前言撤回だなんて…
 あぁ…恥ずかしいところばかり君に見せてる気がする…情けない…」
先生は唇を噛み締めて吐息を漏らした。
耳まで赤くなったその仕草が可愛くて、色っぽくて、ドキドキして、今すぐ抱きしめたくなってしまう。
「ふふっ、先生ってなんだかいじめたくなるね?」
「もう…君には敵わないなぁ…」
ねぇ、先生
いつか先生の手で、私を子供じゃなくしてね?
約束だよ…?

end
結局致す前の前戯で終わってしまいました
スレ活性化を願って投下終了!
長々とお邪魔しましたー
政略結婚も書き上げたら投下しにやって参りたいと思います

535 :
>>534乙です!文章がとても読みやすくて素敵でした〜!
杏ちゃんと先生の2人が可愛くってしょうがない。素敵な萌えをありがとうございます!
スレが活性化するといいな…!

536 :
GJ!
きゅんとしたー
政略結婚の方もお待ちしております!

537 :
GJ !
ストーリーがしっかりしてて面白かった!
政略結婚も全裸待機してます

538 :
政略結婚、投下しにやって参りました
以下8レス程お借りします
舞台はなんちゃって大正〜昭和時代
ゲイ×女、エチ有り
冒頭に男×男の表現有り(直接的な描写はなし)

539 :
「幸嗣さん逃げてっ!」
襖を開いた瞬間、目に飛び込んできたのは生々しい景色とむせ返るような男の臭い。
明かりの消された薄闇にぼんやり白く漂う二つの人影
乱れた襦袢と一組の布団に広がるシーツの皺が全てを物語っていた。
スミレは息を飲み込んだまま一歩も動けず、目の前に広がる光景を呆然と眺め続けていた。
カタカタと揺れているのは自身の体か、それとも風に吹かれて鳴る戸の音か。
梅雨の生温い空気が彼女の首筋を撫でじんわりとした汗を生む。
夕暮れから降り始めた小雨が庭の池に落ちては水面に丸い模様を描いていた。
背後で、母が倒れる音がしていた。
父が慌てて駆け寄る足音も聞こえる。
息を潜め驚愕しているスミレの真横を物凄い勢いの風が通り過ぎた 。
これから彼女の義父となる成田家の当主だ。
その横顔は鬼のように赤く、握った拳は怒りに震えているようだった。
「―――ってっ!」
再びこだまする叫び声。
男の掠れた声が弾丸のように弾き飛ばされる。
スミレの肩はビクリと震えた。
恐る恐る声がやってきた方へ視線を向ける。
すると青白い顔をした細身の男がスミレを見ていた。
あぁ、彼が私の旦那様になるお方なのか…
スミレはどくどくと脈打つ胸の中で父に手渡された見合い写真を思い浮かべた。
笑顔が素敵な人の良さそうな青年だと思った。
しかし今スミレの目の前にいる彼は、淫らに肌を晒し男と交わっていたのだ。
受け止めきれぬ現実に一気に血の気が引いていく。
「清一郎!おまえって奴はわたしにど こまで恥をかかせれば…」
「幸嗣さん、早くっ!」
皆の視線を一身に受けていた幸嗣と呼ばれる裸体の男は、布団を蹴飛ばすと着の身着のまま裸足で表へ飛び出して行った。
烈火の如く怒り狂い、逃げる男の後を追い掛けようとする父の足に清一郎が縋り付く。
室内に走る緊張感、飛び交う怒号
破れた襖、室内に吹き込む雨
知識の乏しい生娘のスミレでもこの状況を見ればわかる。
わかりたくなくともわかってしまう。
部屋の中には紛れも無く男二人が愛し合った証が幾つも散らばっていたのだから…
数日後
彼女は件(くだん)の彼、成田清一郎と夫婦(めおと)となり性を成田、名をスミレと改めたのだった。
◇◆◇
「清一郎さん、お茶が入りました…」
「ありがとう、スミレさん」
縁側に腰掛けている背中にそっと声をかける。
振り向いた笑顔は実に穏やかだ。
庭先の紫陽花を愛おしげに見つめている清一郎の傍らに湯呑みを置き、スミレは群青や赤紫に色付く花を視界の角に入れた。
花は良い。見ているだけで心が自然と安らかになる。
数日前降った雨により、紫陽花は庭を埋め尽くす程に一面咲き乱れ広がっている。
清一郎はぼんやりとそれを眺め、新妻となったスミレの煎れた茶を静かに手に取り唇へ寄せた。
女性のようにしなやかな白い指先と薄く紅を引いたような唇がやけに色っぽい。
彼のそうした仕草は身内の者でさえ、時々ハッとする程の色気を放つ事があった。

540 :
全ては皆、内々に素早く済まされた。
嫁ぐ前日まで母は不敏だと啜り泣き、父はすまないと涙声で謝罪を繰り返していた。
しかしこの結婚をやめる事などできはしない。
スミレが嫁いだ成田の家は江戸から続く華道の名家である。
一方こちらは明治に入ってから財を成した元平民出のただの商人に過ぎない。
成田は財を、実家は家柄を欲していた。
よくある話だ。
互いに求める条件が合致した故執り行われた政略的な結婚なのである。
スミレはただ家のためにと人生を捧げるだけ。
それが女として生まれてきた運命(さだめ)なのだと受け入れるしかない。
昔から男が男を愛すると言う嗜好の持ち主がある一定の数、存在していた。
彼等のような性交を行う者の事を男色と言う。
男を知らぬスミレも知識としては心得ていた。
遥か昔の武将の中にも、頭の切れる政治家にも、そしてその傾向は彼女の夫となった男にもあったと言うだけの事だ。
清一郎は優しげな顔立ちの物腰柔らかな男だった。
美しい花に囲まれ、それを生業とする華道家故か
母親を早くに亡くし、四人の姉達に可愛がられ成長してきた境遇故か
男が苦手なスミレでもすんなり傍へ寄っていけるくらい異性のにおいを感じさせない不思議な男だった。
「お口に合うかわかりませんが…」
「いえ、スミレさんが私のために煎れてくれたお茶だと言う事が嬉しいのです」
そう言って縁側に座っていた腰を上げ、立ち上がる際に乱れた足元をサッと正す。
着物の合わせが小さな風を生み、花のような香りを漂わせた。
清一郎がスミレと並ぶと少しだけ清一郎の方が高い。
世間では洋装が流行る中、清一郎は和装を好み、身に纏っていた。
色白の彼には鮮やかな物より もこうした落ち着いた藍色の着物の方がよく似合っていた。
西の空を見上げる。
沈んだ太陽の代わりに現れた月がしっとりと浮かんでいた。
「あの…スミレさん、大切なお話があります」
清一郎はおもむろにスミレの手を握り、庭先へ出ませんか?と夜露に濡れた沓脱石へ降り立った。
先導するように彼女の手を引き、草履を履きやすいよう揃えてやる。
二人は美しく剪定された庭を歩いた。
「寒くはありませんか?」
高くもなく低くもない耳に心地好い清一郎の声にスミレの頬がアーク灯のようにぽっと灯る。
スミレは顔を俯かせいいえと震える声で呟いた。
握った手に力が込められ、ふと清一郎を見上げる。
月明かりを受けてゆらゆらと輝く漆黒の瞳が真摯に自分を見つめていた 。
「私達は、親同士が決めた相手と結婚しました。
 貴女もご存知の通り、私は男性を愛していました…」
清一郎は涼やかな声で話続ける。
「彼の事を…吹っ切れていないと言えば嘘になります。
 しかし私もこの家に生まれた嫡男として勤めは果たしたいと思っているのです。
 こうして夫婦となった以上、貴女の事も私に出来る限りの力を持って大事にしたい、そう思ってます」
「…」
スミレは何と答えたらよいのかわからないまま咄嗟に頭を下げていた。
面と向かって大事にしたいなどと告げられ首筋まで紅潮してしまう。
その初々しくも愛おしい恥じらいに清一郎は瞳を細め、異端な自らの性癖を苦々しく思っていた。

541 :
何度普通になりたいと願った事か…
どうして自分は男を好いてしまうのか、快楽に負け男と肌を重ねてしまうのか
出口の見えぬ暗闇から這い出す事はできぬのだろうか。
いつも心の中に後ろめたい気持ちが渦巻いていた。
心の中に小さな闇を抱えていた。
「こんな男の元に嫁がれたのです。これ以上の不敏がありましょうか…」
清一郎は苦笑を浮かべ自身の特殊な性癖を卑下するように冷たく言い放った。
「…い、いえ」
「スミレさん、ご無理はなさらないで下さい。
 今晩は初夜ですが私は貴女を抱く気はありません」
「でも…あのっ…」
「いえ、誤解しないでください。女性が抱けぬ体ではないのです。
 ただ貴女の心境を考えると…
 こればかりは時間をかけ てゆっくりと進めていった方がよいのではないかと思うのです」
「…お、お気遣いありがとうございます…」
「これくらいしか私にはできませんから」
「いえ…」
「私は貴女がいいとおっしゃるまで指一本触れたりしません。
 どうかご安心下さい」
清一郎は照れて俯くスミレに語りかける。
そして空に輝く儚い月のように美しく微笑んだ。
二人だけの口約が交わされてから三月(みつき)経ったとある晩の事だった。
成田の義父は貿易商の知り合いから譲り受けて来たと言う珍しい外国の酒を持って帰宅した。
居間に到着するなり大声でスミレの名を叫ぶ。
二階の自室から聞きつけ、スミレはワンピースの裾を摘み急いで木製の階段を駆け下りた。
ちょうど義父が風呂敷包みから何を取り出している最中だった。
「あぁ、スミレさん!」
「おかえりなさいませ、お義父様」
「貴女に渡したい物があるんだ。
 おい!誰か!グラスをひとつ持って寄越しなさい!」
義父が扉の向こうに向かって叫ぶと程なくして硝子のグラスが運ばれてきた。
背中に腕を回され、早く早くと急かされる。
「さぁさぁ、飲んでみたまえ」
「え ?…でもお義父様の分は?」
「わたしはいいんだ」
「でも、妻の私が清一郎さんを差し置いてこんな貴重な物を頂くなんて…」
「いや、いいんだ。これは貴女にしか効かないんだ」
義父は意味深な一言を残し、さっさと酒瓶の蓋を開けてしまった。
とくとくと硝子の器に紫色の液体が注がれていく。
それは美しくも妖艶な香りを放っていた。
スミレはどうしたものかと困惑しながら義父の行動を見守る。
結局、無下に断る事もできず促されるまま不気味な色をした液体を喉の奥へと流し込んだのだった。

542 :
「スミレさん?具合でも悪いのですか?」
床に着く支度を済ませ布団を敷いている背中に清一郎の声がかかる。
湯上がりの彼が寝巻の襦袢を纏い、立っていた。
濡れたままの髪から時折雫がポタポタと肩先へ落ちていく。
「い、いえ…なんだか体が熱くて」
あの液体を口にしてから息が荒く、妙に体が疼いて仕方がない。
風邪の兆候だろうか。
無理をして湯舟になど浸からなければよかったとスミレは後悔の溜め息をひとつ零した。
「熱があるように見えます…ほら」
清一郎の指先が赤く火照るスミレの頬を掠め、次に首筋と額に宛てられる。
くすぐったいような感触にピクリと体が跳ね、スミレの唇から艶かしい声が出てしまった。
「ん…っ」
「スミレさん?」
益々体 の熱が高まり、むずむずと何かが体中を這いずり回っていく。
恥ずかしくて顔を上げる事ができない。
清一郎の指先は優しくスミレの首筋や耳たぶの辺りを摩るように行ったり来たりしていた。
「お、お義父様にワインのような物を頂いて…それで…」
「え?」
突然清一郎の声色が変わった。
声に疑心のようなものが含まれている。
スミレが顔を上げると清一郎は眉を中央に寄せ、真顔のまま何か考え込んでいた。
彼の表情から察するに、あれは良からぬ物だったのだろうかと不安が一気に広がり胸を駆り立てていく。
「それはどのような器に入っていましたか?」
「え、っと…小さな酒瓶です。だからお義父様は私だけに飲ませてくださって」
「スミレさん、父は効果がどうとか貴 女に言っておられませんでしたか?」
「…っ、はい…珍しい物でしたし清一郎さんに飲んで頂きたいと言ったら私にしか効かないから、と…」
「あぁ」
清一郎は珍しく狼狽した様子で頭を抱えた。
肩にかけていたタオルがはたりと畳の上に落ちる。
「…もしや体に害のある…」
「えぇ…害があると言えばあります」
「私はこのままんでしまうのでしょうか?」
「いえ、にはしません。貴女が父に飲まされた物はたぶん媚薬でしょう」
「え?…びや、く…?」
「はい、一言で申すのならば性的興奮を促す強い薬です」
清一郎の唇が紡ぎ出した卑猥な言葉と彼自身があまりに似合わず思考が停止してしまう。
「えっ…ど、どうしましょう。どうしたらよろしいのですか…」
自身の 体がこれからどうなってしまうのかわからぬ恐ろしさにドキドキと脈が上がっていく。
「男なら一回自分で抜けば気も晴れましょう。
 しかし貴女は…ご自分でそのような事をした経験はなさそうに見える」
「え?…あ、あの…」
「自慰をした事はおありですか?」
「えっ………」
「なさそうですね」
清一郎は微かに唇の角を持ち上げるとスミレのか細い肩を抱き寄せた。
二人の体は隙間なくピタリと重なり、合わさった胸からトクトクと心臓の音が聞こえてくる。
「スミレさん…父が貴女に無礼をした事、許して頂けますか?」
「えっ?は、はい…」
耳のすぐ傍で聞こえる清一郎の声に背筋がゾクゾクと震え、唇を噛み締めていないと甘い吐息が漏れそうになってしまう。
媚薬に 侵された体は彼女の意思とは無関係に全ての器官を敏感にさせていく。
スミレは自分でも気が付かぬうちに内股を擦り合わせていた。

543 :
「ありがとうございます。父もきっと良かれと思って貴女に飲ませたのだと思います」
「清一郎さん…わ、たし…っ」
「スミレさん…苦しいですか?」
「…よ、よくわかり、ま…せん…」
会話を続けるのも苦しげにスミレの呼吸はどんどん崩れていく。
「私なら貴女を楽にして差し上げる事ができるかもしれません」
「…お願いします…体が疼いて…私、もう…」
「あぁ…そんな目で見ないで下さい」
媚薬を含まされたスミレよりも悩ましい表情で清一郎は吐息した。
男を知らぬ妻は気が付いていないだろう。
今の自分がどれだけ性的に男を魅了し、いやらしく見えているのかを。
部屋の明かりが消え、敷いたばかりの布団の上に仰向けに寝かされる。
清一郎は躊躇う事なく細い腰に巻きついた帯を解き、白い襦袢の合わせを崩してしまった。
美しい曲線を描いた裸体、ふくよかな乳房に視線が釘付けになる。
スミレは堪らず羞恥に顔を染め、肌蹴た襦袢の合わせを直そうと腕を伸ばした。
「あ、あのっ…清一郎さん、そんなに…見ないで下さい」
「すみません、でも貴女があまりに美しかったので」
「そんな…そんな風に言わないで」
「恥ずかしいかもしれませんが私に全てをまかせて下さい。決して悪いようにはしませんから」
「え?あっ…」
清一郎はスミレの手を布団に縫い付けやんわりと乳房を掴み、こねるように揉みほぐす。
湯上りの肌はほんのりと汗 ばみ、絹のように滑らかだ。
くすぐったいような感触に自然と眉間に皺が寄る。
「んっ…あっ」
「声を抑えないで…どうぞ感じるままに貴女の声を私に聞かせて下さい。
 その方が、きっと早く貴女を解放して差し上げる事ができる…」
そう囁いた唇が耳たぶを甘く噛み、舌先で耳の淵を嬲る。
胸の尖りをキュっと摘まれ、スミレは堪らず色めいた声を発した。
指は容赦なくそこを攻め立て彼女の甘美な声を引き出していく。
体が弓のように弧を描く。
「あっ…あっ、ダメ…清一郎さん…っ」
「どこがいいのですか?ここ?それともここでしょうか?」
「ん、やぁ…わからなっ」
「いけません、ちゃんとおっしゃって下さい」
「はぁ、あっ…はぁ、ダメ…言えま、せん…」
性 に対する知識のないスミレをもっといじめてみたいと思う反面
苦しげな彼女を早く解放してやりたいとも思う。
「では、こういうのはどうでしょう?」
清一郎は言い終えるや否や、スミレの胸を口に含んだ。
散々手で刺激を与えていた先端をねっとりと舌で舐めまわす。
「ひ、あぁっ…ん」
「っちゅ…は、ん…赤子でなくても吸うものなのですよ?
 その様子だとこのような愛撫がある事をご存知ではなかったようですね?」
「あっ、あっ、ダメです…そん、な」
「貴女の恥じる姿はなんとも魅力的ですね。
 こんな私でさえ失いかけていた男としての本能が蘇ってくるようです…っ」
清一郎は胸から顔を上げると、ゆっくりと腹を撫で薄く茂ったそこに指を差し入れた。
愛液にま みれた秘所はぐぷぐぷといやらしい音を奏で、茂みに隠れる敏感な蕾を指でくすぐると腰が大きく跳ねる。
「あっ、あっ、あぁ…っ気持ちい…そこっ、気持ちいいです…」
「ここ、ですね?」
涼やかな声で答え、指の腹で何度もそこを擦り上げた。
屈強な山男のように太くはないとは言え、清一郎も男だ。
一本とは言え男の指を飲み込んでいるスミレは苦痛に眉を顰めるでもなく快楽に腰を振っていた。
これも媚薬の効果なのだろうか。

544 :
「あぁ、あぁ…っ、や、あぁっ、ん」
「いいですよ、そのまま…全身で感じて下さい」
「はっ…あっ、あっ、んんんんっ―――!」
スミレの体はビクビクと震え、意識の朦朧とした瞳からは一筋の涙が頬を伝い落ちた。
「どうですか…楽になりましたか?」
初めての絶頂を経験したばかりのスミレに清一郎が問いかける。
布団の上で両手足をぐったりと横たわらせ、柔らかな乳房が呼吸をする度大きく上下していた。
一方、男は襦袢の合わせすら崩れておらず汗の一粒も掻いてなどいない。
「はぁ、はぁ、はぁ…あっ…」
少女の面影を残していたスミレの顔は今やすっかりと「女」のように艶のある色気を醸し出していた。
それは男の欲情を誘うには充分過ぎる変化だった。「スミレさん…?」
名を呼び、額に張り付いた黒髪をさらさらと指で梳いていく。
まだ呼吸は落ち着かぬようだ。
清一郎は濡れたままでは気持ちが悪かろうと手短にあった手ぬぐいでそこを優しく拭ってやった。
「っふ、うぅんっ!」
拭き取る行為でさえ、媚薬に犯された体には充分刺激が伝わってしまうらしい。
スミレの体が小さく跳ね、甘い声が漏れた。
弱々しい指先が清一郎の腕に触れる。
「はぁ、あぁ…清一郎さん、お願いです…最後まで…してください…」
「えっ?」
「まだ…ダメなのです…中が疼いて…
 お願いです。どうか…清一郎さん…っ」
震える彼女の指先がもう耐えられないとばかりに清一郎の襦袢の合わせから熱く猛った魔羅(まら)を掴んだ。
線の細 い体の割りには逞しいそれを妻に握られ、思わず身を固くしてしまう。
「あっ…いけません、スミレさん」
何も知らぬ彼女は先端の割れ目をぐりぐりと容赦なくこねくりまわしていた。
本能なのだろう。
虚ろな瞳は娼婦のように妖艶で怪しげな輝きを放っている。
「あぁ、清一郎さん…お願いです。これを…これを入れてください…」
スミレの直球な要求に清一郎はついに理性を手放してしまった。
共に生活する中で、彼はこんな自分の元へ嫁いでくれた女を憎からず思い始めていたのだ。
彼女は境遇を憎まず、この家に順応しようと努めてくれていた。
こんな欠陥だらけの男に文句の一つも言わず付いて来てくれる。
なんと健気な女なのだろう。
「くっ、貴女と言う人は…どうして そう私の中の男を熱く滾らせるのかっ」
畳の上に白い襦袢が投げられた。
◇◆◇
女の一際激しい嬌声が室内に響き渡る。
スミレの中に、最早羞恥と言う言葉は存在していなかった。
「清一郎さん…せいいちろ、さん…あぁ…あ、あっ!」
腕の中でか細い体が跳ねる。
暗闇に慣れてしまった瞳には破瓜した跡が生々しく白いシーツに刻み込まれていた。
初めは彼女の負担を和らげようと割り開いた足の間に自身の体を入れて挿入をした。
しかし今は四つん這いのスミレを後ろから獣のように突いている。
仰け反る白い背中に舌を這わすとスミレの唇からは甘い吐息が零れ出る。
熱に浮かされたように夫の名を呼び、より深く繋がろうと自分から腰を振っていた。

545 :
「清一郎さん…もっと、もっと…奥にっ!」
彼女の要望に応えるかの如く内壁を抉るように突き上げる。
熱くて蕩けてしまいそうな感覚に清一郎はグッと息を飲む。
激しい締め付けに今まで感じた事のない快楽の波が押し寄せ、清一郎を溺れさせた。
ぱんぱんと互いの肉がぶつかり合う異様な音が律動と同じ間隔で鳴り続ける。
もう何度、スミレの中に精を吐き出しただろう。
薬の効果などすでに切れてしまっているのではないか。
口には出さなかったが清一郎は霞む意識の片隅でそう思っていた。
例えそうだとしても構わない。
自分をこんなにも求めてくれているのだから…
「はぁ…あぁ…っスミレさん…その、口を吸っても…構いませんか?」
言いながら、ずるりと体 から魔羅を引き抜いた。
一瞬の切なさにスミレは吐息を漏らし肉付きのよい尻をくねらせる。
その光景は数時間前まで処女だった女とは思えぬ乱れきった姿だった。
太い杭を抜かれ、中からは二人分の愛液がとろりと出て白い太ももを汚す。
そしてどちらからともなく近付き、抱き合うと、性急な口付けを交わした。
舌を絡め合い、ぴちゃぴちゃと雨音のような音が響く。
「んっ、むぅ…はぁ」
「スミレさん、そのまま私の膝の上に…」
清一郎の手がスミレの腰を背後から掴んだ。
そして彼女に背を向けさせたまま膝の上に座るようゆっくりと導いてやる。
腰を落としたスミレの秘所に硬く隆起した物が当たった。
重力のままに先端が入り口を広げ、彼女の体に押し入って来る。
堪 らない圧迫感にスミレは苦悶の表情を浮かべた。
「んっ…はぁ…かた、い…」
「貴女の中は…はぁ…とろとろ、します」
「はぁ…あっ、清一郎さん、気持ちいいですか…?」
「はい…意識が白く飛んでしまいそうな程に」
「あぁ…っ!」
根元まで全て入りきるとそれを合図に清一郎が下から腰を激しく突き上げた。
ずぶずぶと出ては入ってを延々繰り返す。
ゴリゴリと子宮に当たる感覚
腹の中がはち切れそうな程、清一郎で埋め尽くされている喜び。
単純だがやめられぬ中毒性のある行為に二人は息を乱し、溺れていった。
劣情が燃え上がる。
やがて清一郎の絶頂が近付き、迫り来る射精感に美しい顔が歪んだ。
「スミレさん…あ、う…も、ぅ…っ」
「お願いです。どうか中 に…」
「はい…っはい…中に、出しますから…
 どうか、貴女だけは私の前からいなくならないで下さい!」
「清一郎さん…っ」
「は、あ、あぁ、く…はぁ…な、かに…出し、ます…はぁ、あぁあ…っ!」

546 :

◇◆◇
「清一郎、ちゃんと子は作っているのだろうね?」
「…はい、父さん」
縁側で花を生けていた清一郎は手元の鋏を置きその口元に微笑を浮かべて答えた。
梅雨は直に開けるだろう。
日射しは日増しに夏らしくなってきていた。
「それならいい」
顎鬚を撫でながら父は満足げに頷く。
恰幅のよい腹が笑い声と共に揺れた。
「またあの薬が必要になったらわたしに言いなさい。
 可愛い一人息子のためだ。いつでも容易してやろう」
「……ありがとうございます。
 でも、もうその必要はなさそうです」
「なに?そうなのか」
「えぇ、お気遣いありがとうございます…」
豪快に笑う父の傍らで、清一郎は再び鋏を手に取り、花の茎をパキンと切り落とした。
あの晩から、二人は毎夜激しく肌を重ね合わせていた。
もう媚薬があろうともなかろうとも関係なかった。
獣のように愛を求め合う。
初心な妻はもうどこにもいない。
清一郎は切り揃えた花を束ね、大きな花瓶にそれを飾った。
「紫陽花か…うむ、実に見事だ」
「えぇ、美しい花々はこうして美しく整え、生けてこそ、その美しさが輝きますから」
「一人目は男児がいい」
「わかってます。父さん…
 勤めはきちんと果たすつもりですから」
「あぁ、おまえには期待しているよ、清一郎。
 わたしを失望させないでおくれ?いいな?」
「………はい」

end
エロ特化でいこうと思ったらまさかの闇落ち…
お付き合いくださりありがとうございました!
もっと書き手様増えろ!と念じながら投下!

547 :
GJ!!
スミレちゃんかわいい
これは良い夫婦ですね

548 :
GJ!
そして、お義父さんもGJ!

549 :
GJありがとうございます!
読んで頂けて嬉しいです!
今更気が付いてお恥ずかしいのですが訂正があります…
時代設定を大正〜昭和と書いておりましたが
正しくは明治〜大正時代になります。すみません
また何かネタが思い浮かんだらやって参りたいと思います

550 :
とりあえずGJ!

551 :
GJ!
この時代は本当ぐっとくるな……

552 :
今更ながらGJ!!

553 :
芙蓉千里っていう小説が
ゲイキャラ×女性のシチュだった
ヒロインとゲイキャラが一人の男を共有してるんだけど
最終的にはヒロインとゲイキャラの間に子供が出来るw

554 :
面白そうだね、知らなかった
読んでみようかなw
自分が最近読んだ本の中では「真夜中のパン屋」に脇役でオカマが出てた
面倒見のいいナイスオカマだったが恋愛要素は皆無だった

555 :
気になってamazonでポチってみた
届くの楽しみ
G戦場ヘヴンズドアっていう、マンガを描くことがテーマの漫画があるんだけど
そこに脇役だけど達観してて優しいオカマなキャラが出てた
最終話で他の脇役のバツイチのお姉さんと結婚しててびっくりしたw

556 :
保守がてら会話文のみ投下
苦手な人はスルーしてください
・妹(ブラコン)→兄(ノンケ)←友人(ゲイ)

「あぁ〜暑い暑い暑いっ!」
「…うっさい」
「なんでこの部屋にはクーラーがないんだよ!って言うかなんでアキトの部屋におまえしかいないんだよ!」
「仕方ないじゃない。お兄ちゃん、今夏期講習行ってるんだから」
「なっ…!?夏期講習?そんな話、俺は聞いてない」
「面倒くさいから教えなかったんじゃな〜い?」
「んな訳ねぇだろ、俺とアキトは唯一無二の親友だぜ?」
「と、思ってるのはケイスケだけなのでした。あーかわいそっ」
「…っだー!!だーかーらぁ、んな訳ねぇって言ってんだろーがっ!可愛くない女」
「ねぇ、さっきから気になってるんだけどそのビニール袋、何?」
「…って、無視かよ。まぁいいや。これか?これはなぁ、アキトが好きなアイスだ」
「ふーん…このままじゃ溶けちゃうね、私が食べてあげようか」
「はぁ?!」
「うちの冷凍庫、お母さんが目一杯詰め込むから入れておく場所ないよ?溶けたらもったいないじゃん」
「…っく、それならしゃーねぇな。ほらよ」
「ありがと」

557 :
「よし、アキトが帰って来るまでの暇潰しにどっちがよりエロく食えるか勝負しようぜ」
「は?何いきなり…ケイスケ暑くて頭沸いたの?」
「照れんな、照れんな」
「…」(絶句)
「これはアイスでありアイスにあらず。よく見てみろ!オレンジ色に輝く棒を!想像するんだ、これをアキトのものだと思ってしゃぶれ」
「…ば、ばかじゃないの?できないよそんなこと…」
「おまえ、兄貴のこと好きなんだろ?本当はしてみたいって思ってんだろ?だったらいいじゃねーか、どうせここには俺とおまえしかいないんだから」
「う、うっさい…ゲイのくせに…」
「ははっ。出た、ツンデレ」
「バカにすんな」
「俺達、二人して敵わない恋に悩んでる切ない片思い同盟結んだ仲じゃねーか」
「…そんな寒い名前の契りを交わした覚えは私にはない」
「…は、…っあむ」
「…って、聞いてないし」
「ん…っアキト…ちゅ、じゅる」
「な、なんなのよ…もうっ」
「……ん、はぁ…間違っても俺に欲情すんなよ?」
「だ、誰がゲイなんかに…」
「とか言ってすでにパンツぐしょぐしょだったりして?女ってすぐ嘘つくからなーやっだぁ〜やらしーぃ」
「ケイスケだって…ぼ…その…ふ、膨らんでんじゃん!」
「別にアイス食うおまえ見て勃起したわけじゃねーし、俺の反応はアキトを思ってだなぁ」
「…えっち…ケイスケって変態…」
「…」
「な、何よ。じろじろ見ないでよ」
「なぁ、よく見るとおまえアキトにそっくりなんだな」(凝視)
「え?」
「あ、やべ…なんか興奮して勃ってきた…」
「や、やだ…な、によ…」
「キスしていい?」
「はぁ…!?」
「いいだろ?アイス代だと思って」
「や、やだやだ!無理だし…ケイスケとキスだなんて」
「じゃあ兄貴だと思って目つぶってろよ」
「あ、や…ちょ、まっ…」
「うるさい、黙ってろ」
「…ふ、ぅうん…っ」
「…んっ、はぁ。案外女とキスすんのも悪くないな…ヤバい、俺新しい扉開けちゃいそうだ」
終わり

558 :
>>556-557
GJ!
YOU、新しい扉開けちゃいなYO!

ところで、こんな良作揃いのスレを埋もれさせるのはもったいないので、
エロパロ板SS保管庫さんに収録をお願いしようと思うのですが、どうでしょうか。
住人の皆様の意見をお伺いしたい。

559 :
>>558
私は賛成!
それにしてもこのスレ過疎り過ぎだろ
最近はテレビで普通に『オカマ』を見かけるようになり、どうも二次的イメージがなぁ…
個人的にはアンジェのオリヴィエやふし遊の柳宿みたいな粋なオカマ(今で言うとこの女装家?)が好きなんだが、最近はめっきりこういうオカマキャラに会えない
時代遅れなんかな

560 :
>>558
良いと思う!
良作揃いで良いスレだよね
職人さんいつもありがとう

561 :
http://e2.upup.be/f/r/u8LDjk1f78.jpg
この画像を見てドキドキしたらホモに目覚める

562 :
ここはホモキャラと女性のスレなのでホモ単体なら801板にお帰りください

563 :
このスレにタイバニのオカマ×女の子で萌えてるって話がちらほら出てたので
594から http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303224044/584-684
タイバニを知らずに読んでも、良いオカマ×女の子だったと思う

564 :
ちらほら出てねーし
ほんとどこにでも湧くな巣に帰れ

565 :
>>563
焔薔薇よかったよー
誘導ありがとう
自分はタイバニ見てたクチだから容易に二人のやりとりが想像できてニヤニヤしてしまった
大人なオカマと表面上ツンケンしてて、でも根は素直な女の子の組み合わせも素敵だ!

566 :
>>559-560
レスありがとうございます
では、なるべく早く、保管庫の管理人さんに収録依頼をしてまいります

567 :
ほしゅー

568 :
誰ぞ職人さんはいないのかっ

保守

569 :
保管庫見に行って知ったけどサビオテープの人よその二次スレでもオカマキャラ×女キャラ書いてるね。

570 :
SS保管庫に収蔵していただきました。
次スレ移行の際は、>>1に明記してくださると助かります。
ttp://green.ribbon.to/~eroparo/
ENTER→オリジナル・シチュエーション系の部屋 22号室

571 :
義理の兄がオカマで女の子に興味なくて、妹はオカマを姉として慕うんだけどだんだん惚れちゃって、
この気持ちは色んな意味でお姉ちゃんを裏切るよなってへこむ話を考えてる。
ぱっと考えてみただけで、エロよりもふたりの掛け合いに比重が置かれた話になりそうなんですが
できたら投下してもいいですか?あと長くなりそう

572 :
ぜひしてくれ

573 :
保守

574 :
保守

575 :


576 :
このスレをROMってたせいか、この間の怒り新党でマツコと夏目アナの関係に軽く萌えてしまったよ保守

577 :
ホモ

578 :
>>576
マツコと中村うさぎ(マツコの恩人で親友)の関係性にも萌える

579 :
>>413>>416>>424>>440の続き
オカマ×女で女視点
エロは次回の予定だけど、次回が一年後にならないようにがんばる
駄目な人はNGを

 振り返るとオカマが居た。
「クリスマスに外出するとぬと言ってたひとが何で居るのよ」
「電車乗る前にメール寄越したでしょう? 久しぶりだから、迷うかと思って」
 だから、とオカマが微笑む。迷う前提か、と文句を言いたいところだが事実見当違いなところに向かいかけた手前、文句も喉で詰まる。
「じゃ、行きましょ」
 オカマはそう言ってケーキの箱を女の手から取り、空いている手を繋いで先導するように歩き出す。
「子どもじゃないんだから」
 口では悪態を吐くけれど、せっかくオカマから繋いでくれた手をふりほどくのは惜しくて離せない。
 沈黙を保ったまま、横目でオカマの様子を伺う。
 この寒い日にロングスカートとセーターの上は薄手のコート一枚だけで待っていたというのは気がかりだが、手が冷え切っていないのだからキチンと時刻表を見て丁度のタイミングで来たのだろう。
 長い髪はきちんと纏めているし、顔の手入れに抜かりはない。つまり当たり前の事に気を遣う余裕があるということだ。
 見た目から復調の要素を読み取っていると、不意にオカマと目が合った。
「今日は来てくれてありがとう」
「いいんだよ。それで調子はどう?」
「まあ、あれから随分経ってるから。私物の片付けも済んで、気持ちの整理もついたところ」
 大丈夫よ、とオカマがはにかんだように笑った。
 落ち着いた様子に理性の重石が軽くなったのを感じながら、女は平静を装って悪戯っぽく呟く。
「ならあたしが来なくても良かったんじゃ」
「嫌よ、寂しくてんじゃう」
「嘘。今日は甘えさせてやる」
 女の憎まれ口を真に受けて不安げに眉をハの字にするオカマが可愛らしくも哀れで、女は労るように身を寄せた。
 大丈夫とは言っていても、まだ失恋の傷は癒えてないのだろう。『失恋の傷を慰める』――今日来た理由を再確認して、理性の重石を意識する。
 そうしている内にオカマの住むアパートが見えたので、二人はごく自然にお喋りを止めて、替わりに足を速めた。
 冬の寒い街路でお互いの手だけを熱源にお喋りするよりも、温かい部屋で美味しい料理を肴にのんびり語らいたいというのが二人の共通認識だった。あとお腹が減っていた。

580 :
アパートの一室。
 酒買い狸が出窓から見守る部屋で、オカマと女は炬燵に入って鍋をつつき――食べ終わろうとしていた。
「ごちそうさまでしたー」
「まさか全部食べるとは思ってなかったわ」
 満面の笑みで合掌する女に、オカマは驚嘆の声を上げて文字通り空になった土鍋と小皿を流しに持っていく。
 オカマが「作りすぎたかも」と言葉を濁していた今日の料理――寄せ鍋の三分の二、付け合わせの青菜の煮浸しと甘辛いタレを絡めた椎茸の肉詰め、〆の雑炊まで女はぺろっと米粒の一つも残さず平らげていた。
 健啖家との評判を取る女も、これは新記録だった。
「昼はきちんと食べたんだけど、摂ったカロリー以上に忙しくてお腹減ってたのよ。キミの美味しい鍋が待ってるって思ったらおやつ摘む気になれなかったし」
「嬉しい事言うわね」
「デザートのケーキ食べる?」
「ちょっと待ってよ。別腹も動かないわ」
 女は「OK」と呟いて、消化を促すように腕を後ろ手に突いてゆっくりと深呼吸をする。
 キッチンから戻ってきたオカマは炬燵に座り直すと、頬杖をついてその様子をじっと眺めていた。
「‥‥何かあった?」
 無言で見られるのに居心地が悪くて声を上げると、オカマは誤魔化すような微笑を浮かべて手を振った。
「貴方とこんな風に過ごす機会は何度あるかなって思ったら、寂しくなって」
「‥‥ああ」
 鍋をつつく間に、就職の事について話していたのを思い出す。
 近辺での就職を希望する女に対して、自分らしく居られるなら場所を選ばないオカマは全国区で就職活動をしている。
 意図して就職先を合わせるようなことをしなければ、予定さえ合えば簡単に会える距離に居られるのはきっと来年で最後になる。
 今だってバイトや就活などで思い立った時にすぐ会える訳でも無い。
 だから今の延長で『会えない未来』を想像して、縁が途切れるのを殊更不安がるのだろう。

581 :
「来年で今生の別れじゃないんだから。それにこれっきりにする気は無いでしょ?」
 オカマを安心させるように、半ば自分に言い聞かせるように応える。
「そりゃ、そうだけれど‥‥でも」
 それでもオカマは思う事があるようで、炬燵机に突っ伏す。
「もう、しょうがないな」
 女は苦笑して炬燵から出て、部屋の隅に置いた鞄を開く。
 鞄を開いてすぐ目に付く、光沢のあるアイボリーの紙袋の中には、レースのシュシュとビーズを編み込んだヘアゴムの二種類が入っている。
 似合うと思って――好意を得たくて買ったのに、その気持ちを隠すように簡素に包装したクリスマスプレゼント。
 まるで今日の自分のようだ、と包みの輪郭を指先でそっと撫でて、取り出す。
「はい、クリスマスプレゼント」
 女は努めて気軽な様子で、包みをオカマに差し出した。
「どうしよう、私、何も――」
 恐縮した顔のオカマに、女は小指を立てて笑いかける。
「なら、来年も一緒に遊ぶって約束してくれる? 約束破ったら押しかけるから」
「何よそれ。どっちにしたって私が損しないわよ」
 オカマはそれまでの憂いを忘れたような顔で指を絡めて、指切りげんまん、と二人約束をする。
「包み、開けて良い?」
「OK」
 オカマは包装の一片も破りたくなさそうな慎重な手つきで開けて、シュシュとヘアゴムを両手に乗せる。
 高価な工芸品を愛でるように、撫でたり上下ひっくり返して矯めつ眇めつ見ているうちに、オカマの表情が晴れ晴れとした笑顔になっていく。
 この笑顔が見たかったんだと女が密かに幸福を噛みしめていると、オカマと目が合ったと思ったのもつかの間、急に抱きしめられた。
「ありがとう。大好きよ」
 不意の抱擁と囁きに、これまでの女の自制心は容易く崩れ去る。友情の表現だと思い込むのもできない。思い込みたくない。
 オカマの腕が緩んだ瞬間に、女は発作的に口付けていた。

582 :
ほっシュシュ

583 :
これって「百合」だよね!?ノマじゃ無いよね?

584 :
性的嗜好が男性に向いてる女装家、という意味ではなくメンタル女性のオカマとそれに肯定的だった女
という前提が書き手の中にはあったんでこうなった次第
くっつくまではこの前提覆すネタが思いつかなかった
障りあればSS保管庫さんのうpろだをお借りさせていただくよ

585 :
>>579
保守投下乙&GJ!
いろんな人間がいるように、いろんなオカマがいてもいいと思う
続きも引き続きここに投下でいいと思うよー
楽しみにしとる!

586 :
スマン、>>583だけど>>582氏単体だけじゃなくて、
このスレ全体通してって意味で聞いてたんだけども…
誤解を招いて書き手の可能性を潰してしまったなら本当にすまんかった…orz

587 :
>>579乙&GJ!!
こんな分かりやすいコピペがあったよ
133 名前:名無しさん@恐縮です[sage] 投稿日:2012/11/11(日) 13:24:34.56 ID:pMPL5mjJO
1)佐藤かよ→性転換済み。物心ついた時には既に性自認が女だった。
成長するにつれて身体つきが男らしくなることに嫌悪感を覚える。
こういう人は「性同一性障害」(GID)。男性を“異性”として好きになるので、同性愛ではない。
類似キャラ:椿姫彩菜、はるな愛
2)IKKO→同性愛者。オネエ。女装しているが、身体が男であることは受け入れている。
この人たちが言う「私はオンナ」というのは“女として扱ってほしい”ということであり、
別に女性そのものになりたいとは思っていない。むしろ女性をライバル視している。掘られる側。
一般的な“オカマちゃん”はこのタイプ。
類似キャラ:KABA.ちゃん、クリス松村
3)ミッツ→同性愛者。女装が好きなだけで、男である自覚はバリバリある。
IKKOとは違い、女扱いは求めていない。掘る側。
類似キャラ:マツコ
3')美輪明宏→同性愛者。女装しているが、男である自覚はある。女扱いは求めていない。
ミッツと違い、掘られる側。
類似キャラ:おすぎとピーコ
4)ピーター→バイセクシャル。男も女もいける。
このタイプには、元々は異性愛者で、後天的に同性を愛せるようになるパターンも多い。
同性愛者だと思い込んで警戒せずに近づいてきた女性を食うことがある。
類似キャラ:真島秀樹

588 :
ほしゅ

589 :
ほしゅ
NHも外見男のゲイも来いや(´・ω・`)

590 :
なら普通の男でやってろよって感じ

591 :
外見男を女と絡ませても結局ノンケだわな
じゃあ
女装ノンケ来いや(´・ω・`)

592 :
某所の野獣先輩×我那覇くんSS内での、KMR×あずささんに萌えた

593 :
江〜魔王の燠火〜というレディコミが
女装侍女×姫だな
姫には旦那がいて女装侍女とは不倫なんだが
「あなたを抱く時だけ男に戻れる」って台詞に萌えたわ

594 :


595 :
俺の屍を越えてゆけの孔雀院明美様が素敵すぎて禿げた
あとは女形のにいさんとか女装ケモショタとか作品の属性自体がカオス
でも癒されたいから結局明美様になっちゃうんだよなステ優秀だし最高すぎる
あと特性子作りゲー。自分の一族×神様てゲームだ

596 :
女の子が女装男に惹かれるのも理解出来るよ
なんとも言えない色気あるもんな

597 :
>>596
同意
ガタイがよかったりすると尚更いろんなギャップにときめくなー
と言うか最近めっきり書き手さん来ませんね…

598 :
そう思ったから俺屍スレに小ネタ書いといたよ
オカマのママに慰められるもてないホストおいしいです
二次キャラで該当スレあるから向いてるスレに書いてる
オリジナルは命名が厨になっちゃうからいっそ全員源氏名にしようかと画策してる

599 :
「ママ」
「パパと呼びなさい。そんな子に育てたつもりはありません」
「でも女装服あるし二丁目でもみたよ」
「関係ありません。私は男性だから一般的にパパと呼びなさい」
「うん、わかった。今度の帰りにパパのお店に寄っていい?秘密にするから」
「いいよ。ママって呼んで、ちゃんとおかまだと思いなさい。門限は20:00、母さんには言うんじゃありませんよ」
「パパ、大好き!!やっぱりママなんじゃん」
「母さんの心臓にくるから言わないようにしなさいね。約束だぞ」ゆびきりげんまん

600 :
保守

601 :
三國無双の張コウさんスレ

602 :
もうすぐ4月4日だね
オカマの日だよ!ってことで保守

603 :
女性的な男は色気あるよ

604 :


605 :
ショタのザーメンなら余裕で飲めるおw
ショタちんぽぺろぺろ (^ω^≡^ω^)おっおっおっおっ

606 :
ほしゅ

607 :
はるな愛が男に戻るとか戻らないとかの話題でちょっとグッときてしまった保守

608 :
保守
オカマと女子は正義

609 :
保守

610 :2013/09/29
にがくてあまいってマンガ読んだら、このスレ思い出した
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