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2012年7月エロパロ150: 【ダークソウル】エロパロソウル【デモンズソウル】 (881) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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【ダークソウル】エロパロソウル【デモンズソウル】


1 :12/01/21 〜 最終レス :12/07/04
このスレはソウルシリーズでエロい妄想ができる猛者を広く求めています。

2 :
過去スレは下記のアドレスからどなたでも簡単に観覧可能です
【過去スレ】
デモンズソウルをエロくするスレ
ttp://mimizun.com/log/2ch/eroparo/1239437136/
デモンズソウルをエロくするスレ2
ttp://mimizun.com/log/2ch/eroparo/1272413943/
デモンズソウルをエロくするスレ3
ttp://mimizun.com/log/2ch/eroparo/1300193807/
ダークソウルをエロくするスレ
ttp://mimizun.com/log/2ch/eroparo/1315776927/
【過去スレのSS部分だけをまとめた保管庫】
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://green.ribbon.to/~eroparo/

3 :

    __    ゴォォォ..
   ./  nヽ                    これは>>1乙じゃなくて薙ぎ払う炎だ
   (, (;;;;;))  ,,人从,.,il人从,.l从炎vW、        変な勘違いするなよ、馬鹿弟子が
   /  `ー、。 ;;             ,.人     
  .iヽ,...,、,.、.ノ  ヽ,炎W,.,从w从,.,.、   W
  ./`'``'"'"`i         ,,ノ   ,,人
 /.,.,、,.、,、...,,i       ,,.人   ,.炎
              ノ   ,.从     、.
            人   人      人
           炎    W、,,.,w...,.w,,从从.
           从     ,        人
            人炎w从,,..,人、w从从人

4 :
まずは>>1
またまたまた女主人公とレアものです。伝道者との絡みとかすっ飛ばしてますが最初からそんな事実はなかったとか
不思議な力で元通りになったとか、そんな感じです。
百合注意、前半部分全く台詞無し、短いです

5 :
 手と手が触れ合う。瞳は互いの瞳を映している。どちらからともなく瞳を閉じ、心で相手を感じ取る。
彼女が差し出した唇をレアは静かに受け入れた。掌から、口唇から熱が伝わりあう。少しずつ同じになっていく。
 長く、永く、感じ合いたい。
 風吹けば火は燃え上がるか、消え去ってしまうか。
 彼女達は風と火種で在りたかった。
何時までも消えないように、二人共に在る時は燃え盛り、二人別たれた時は風となって再び巡り合える様に。
 教会の祭壇の前、祈り捧げるべき領域で二人は重なり合っていた。
レアが合わせた掌に力を込めた。一層熱が伝わってくる。
彼女はそれに答え唇を離した。瞼を開けた彼女の瞳に涙で目を潤ませたレアが映る。
 彼女はレアに微笑みかけ、今度はその口を開き、同じ様に待っているレアに口付けをした。
舌は絡まりあい、唾液を啜り合う。愛しき者を己の体内へと取り込もうとする。
 口は選ぶ。言葉を選び、食を選び、人を選ぶ。
口は触れ難き場所であり、そこを許すという事は聖女であるレアにとってどれ程の事であるか。
レアは貪り続けた。自分より背の高い彼女を見上げながら、必になって舌を伸ばしていた。
 先に口を離したのは彼女であった。
名残惜しそうにレアは離れていく彼女の顔を見つめている。
彼女は腕をレアの肩に回し力強く引き寄せた。レアの頭を撫で、己の胸であやすように抱き留める。
自分より豊かな小山に顔を埋めながら、レアも彼女を抱き締め己の気持ちを彼女に伝えた。
 このまま眠ってしまえば夢の世界へ行けるのではないか。
そんな事をレアが考えていると、彼女はレアの頤を持ち上げた。
喜びで零れた涙を、剣を握り続けてきた指先で拭い、頬を摘み上げ笑顔を模らせる。
 恥ずかしさから慌てて彼女の指から離したその顔に、心からの笑みを感じ取れた。
 夢は何時かは覚める。此処にある現実が幸せであるのにこれ以上の夢など存在しない。
自分が何かを成した訳ではない。地の底で泣きながら祈っていただけだ。
自分を信じず、自分を信じられるだけの事もして来ず、自分の為に命を落とした友の事を祈りながら、その実誰かの救いだけを望んでいたのだ。
 そんな私をこの人は受け入れてくれた。私に会えて良かったと言ってくれた。
この運命を齎してくれた神に感謝したい、それを口にすることを彼女は良く思っていなかった。
 神は助けてくれない、貴女を助けたのは人間だと。
本音は神に対する嫉妬であった。レアは彼女の気持ちを分かっていた。その後、強く求めてくれていたから。
だから、時々わざとその言葉を口にしていた。
 二人は体を離した後、再び見つめ合っていた。気持ちを確かめ合う。
それは愛。どちらにとっても必要なもの、誰にも奪われたくないもの、何者にも侵されたくないもの。

6 :
 それは壊れる、人は弱い故に。だから何度も確かめ合う。様々な手段で確かめる。
レアは彼女の胸へおずおずと手を伸ばした。彼女がそれを止める気配はない。
柔らかな小山の中へ指が沈んでいく。指先の力を抜けばすぐに元に戻ろうとする張りの良さ。
 胸を触りながらもじもじとしていたが、意を決しある一点へと指を走らせた。
彼女の山の頂は固くなっていた。僅かに引っ掻いてみると、彼女は少し驚いたような声を出したがやはり止める事はしない。
それの弾力や触り心地の良さ、そして彼女の気持ちを知ることが出来たのが嬉しくて何度も押し潰し、こね回す。
 ますます固く張り出してくる彼女が愛おしい。レアも自身の奥が熱くなっていくのを感じていた
自分ばかりじゃない、この人にももっと私を感じて欲しい。レアは彼女の手首を自らの胸へと導いた。何をして欲しいかは聞くものではない。
普段は見せないその様子を自分だけに見せてくれる事が、彼女の中でレアを更に大きな存在とした。
 やや小振りではあるが不足無いその丘を掌全体で包み込み、中心で小さな頂をこね回しながら揉みしだいていく。
思わず彼女から手を離してその腕を掴み抵抗の素振りを見せるが、力は全く入っておらずそれがレアの本心を示していた。
 彼女はレアを抱きかかえ、優しく床へと降ろしていく。
上衣の下へ指を入り込ませ、下着ごと捲り上げてレアの素肌を露にすると桃色の頂を口に含んだ。
目を瞑り無心となって吸い立てる。空いている指でレアの秘所の入り口を撫で、確かな湿りに口元を緩ませた。
 顔を真っ赤にして、息も段々と荒くなってきているレアの眼前へ、彼女は自分の胸を曝け出した。
禁断の果実のような蠱惑を感じながらレアはそれに口を付けた。
まるで赤ん坊のように一心不乱にむしゃぶりつく。彼女はその様子を見て、微笑みながら頭を撫でた。
 ちゅぱ、という音を残し彼女はレアの口から身を離すと今度は彼女がレアの手を自身へと導いた。
触れさせられた彼女の秘所は触っているほうが恥ずかしくなるほど濡れそぼっていた。
彼女はレアの手を離し床に尻をつけると、両脚を大きく開きレアに自分自身を良く見えるようにする。
 初めて見るわけではない、それなのに胸の鼓動の早まりは止まる事を知らない。
彼女の入り口へ指を差し入れると、ぬるりと奥へ沈んでいく。彼女の中の暖かさを感じながら、ゆっくりと指を折り曲げて引いた。
体が軽く仰け反り、そこが弱いところであることを確かめさせる。
この人が自分の指の為すがままになっている、その事がレアの無意識の欲望を満たしていった。
 指を引き抜き、先端に付いた彼女の愛液を舐め取り、それに濡れた唇を彼女の秘所へと近づける。
尻を高く上げ、夢中になって女の股を舐め続ける聖女。神が見たらなんと思うであろうか。
 顔を上げ、蕩けた彼女の顔を見て、レアも同じ様に脚を広げ物欲しげにひくつく其処を曝け出す。
彼女とレアは互いの脚を絡ませ、互いの女を擦り合わせた。二人同時に高まって行く、二人が一体になっていく。
棄てられた教会の聖堂に、嬌声と肉がぶつかる音が響いていた。

7 :
 二人は火継ぎの祭祀場へと降り立っていた。以前レアはこの場所は賑やかで苦手だと言っていた。
「…もう、誰も居なくなったわ」
 彼女の言葉は寂しさを感じさせるものであった。
「ここにあの人が居て、上にラレンティウスがいて…そうそう、ここでレアと初めて話したんだよね」
 改めて此処へ私を連れてきた理由はなんだろうか、普段の彼女とは違う雰囲気にレアは不安を感じていた。
「ここにはグリッグスが居て…うん、まぁ何と言うかな」
「………」
「前に言ってたね、ここは人が多いから苦手だって。…うん、皆ここに居たんだ。でも、皆居なくなった。私さ、皆が居た時は楽しかったんだよ。
あそこから出た時は、話し合える人と出会えるなんて考えてなかったから。」
その言葉は針のようにレアの心に刺さり、自分が愚かであった事を思い知らされる。
彼女とレアは不である、して蘇る人ならざる者。
だが彼女とレアでは境遇が違い過ぎていた。ただ一人、ぬ事も出来ず永い間囚われていた過去を持った彼女。
彼女の気持ちを考えず、一人で居たいと言った事が酷く我侭だったように思えた。
「…えと、火を継げば不の呪いが消えるらしいんだ。いきなり火を継ぐって言われても何のことか分からないよね、私も良く分かってないし」
 あははと笑う。まるで砂の様に乾いていて風に吹かれて消えそうな笑いであった。
「不の呪いが消えればここに居る必要もないし、私が居なくても大丈夫だよね」
「………えっ?」
 何を言っているのだろうか。彼女が此処にいる理由は、不として何かしらの使命を果たすためであることは知っていた。
彼女自身、その使命が何であるか良く分かっていないと言っていた。それが分かったという事なのか。
「私は今から神様をしに行く。火を継ぐというのはそういう事。…だから、多分戻ってこれない」
「…仰る事が分かりません。何故貴女が、それに戻ってこれないって…冗談、ですよね?私…私を、一人に…するのですか…?」
「呪いが解ければ故郷に帰れる、待ってくれている人が居るはず。だから、一人じゃないさ」
「家族なんて、私を待っていてくれてるはずありません…。そ、それに、貴女はどうなんですか!?」
「…私を知っている人はもう居ないはず。家族も、友達も。それにここまで来れたのは私だけ。だから、私がやらなくちゃいけない」
「だったら私も…!」
「レア、レアには普通に生きていて欲しい」
 幸せになってほしいとは言わないのは彼女の意地であった。
尚食い下がるレアを抱きしめ、泣きじゃくるレアに気付かれぬように腹を打つ。
「ごめん…」
 気を失ったレアをそっと寝かせると、羽織っていた外套を掛けてやる。
「これだけ貰っていくわ…。今までありがとう、レア」
 レアの首に掛けられていたペンダントを握り締め、彼女はフラムトの方へ歩いて行った。

8 :
以上です。シリーズものは纏めて投下したほうが良いのかもしれませんが、最初から道筋立てて書いておらず、
その時々書きたいもの書いているので順序とかバラバラになって申し訳ない
タイトルも特に考えてないので、前スレ979のようにしてもらえれば幸いです
ところで女主人公の名前考えてないから全部「彼女」で通しているけど、表現の未熟さ故です
あと、闇の王エンドしか知らないから火を継ぐってほんとにどういうことか知りません

9 :
>>8
……GJ、である
知らないならばご自身で確かめ、
そしてグウィンのソウルの説明文の意味を理解して下され

10 :
>>1
デモンズ組も早く合流出来ると良いな

11 :
やっぱり何かおかしいところあったか、取り敢えず火継いだら燃えるってぐらいしか知らなくて

12 :
燃えるでだいたい合ってるよ。結局話の意味なんてフロム脳で補完ってゲームだし。
そして職人は名前欄に話のタイトル入れて纏めて投下が良さそうだね
前スレの連絡スレ見てきたけど、ダクソSSで分割投下の多さが際立ってた気がする
保管されるために書いてるわけじゃないから最終的には職人の自由だけど収納する側も大変だろうからね

13 :
>>8
救済編来てた!…と思ったらやっぱり救われなさそう
ダクソだから仕方ないよね。世界は悲劇だもんね

14 :
おー新スレできてたか

15 :
>>8
乙。女主もレアも切ねえな…
ダークソウルのスレも無事埋まったし、このスレもまた賑わうといいな

16 :
新スレきてたー>>1乙です。
記念に書いたんだが無駄に長いうえにえろいとこないわ・・・
せっかく書いたから投下するよ。

17 :
あれは公爵殿が生み出したものらしい。回りは彼に対しあまりいい印象をもってない様だが、
俺はそうは思わん。確かにやりすぎだと思うことはまあ多少あるにせよ、何より彼は我らが主の盟友だ。
それにそういう風に人をとやかく言うのはどうも好かんのでな。まあ、人でなく竜だがね。」
はるか頭上、優雅に飛行するそれを指さし男は笑った。風のある夜での出来事だ。
女が見ていたのは男が指すものではない。無情で残酷なこの世を「美しいな」と語るその男の横顔ただそれだけであった。
その男は留守が多かった。無粋にも別の次元から潜りこむ輩が後を断たなかったせいもあるが、
理由はそれだけではない。神に仕える者としてどうなのかと思うほど、男は外の世界に知人が多かったのだ。
いつまでたっても王都に戻らぬ男を連れ戻すのは大抵女の役目であった。女からすればほとほといい迷惑である。
そして決まって男はあの月の見える森に居た。はたして御互い通じているのかいないのか、呆れるほどにでかい
狼と話し込んだりじゃれあって遊んでいる様を見るたび女はうんざりした気分になった。
「帰るぞ」と女がひっぱりだすと、男は大きな体に似合わぬ仕草でうなだれるものだから、
(次はゴーにでも行かせよう。絶対そうしよう。)と何度目か分からぬ決意を再び胸の内に立てていた。
その狼だが、男以外に懐く事はなく女が近寄るとその大きな口から牙を光らせ唸り声を上げていた。
狼にしてみれば、男を連れ戻しにくる女はよほど敵意の対象だったに違いない。普通の狼ならまだかわいいものだが、
かわいいでは御世辞にも済ませられない大きさだったので始末が悪い。今は多少なりとマシになった方である。
初対面の時は軽くし合いになったが寸でのところで男が止めに入ったので事なきを得た。
「お前も俺の様にあいつに話しかけてみろキアラン。あいつなら分かってくれる。」
誰のおかげでこんな目にあったと女は言いたかったが、感情を剥き出すのも馬鹿馬鹿しくて黙っていた。

18 :
「何故あいつの自由を許す。外に出て真面目にやっているかと思えば下賤な者共と戯れてばかりいたぞ。
実力はあるだろう。不本意だが私も認めるよ。だが力はそれを持つ者の誇りや気高さそのものを言うのではないのか?
力を持つだけの者なら他にも大勢いる。あの処刑人の様にな。」
最後の女の言いぐさはまるで吐き捨てる様であった。ちょうどその時遠くで竜が一匹悲鳴を上げる。
「――心臓をはずした。」
言い終わらぬうちに今竜を撃ち落とした騎士は駆けだした。一刻も早くとどめを刺しに行きたいのだろう。
どいつもこいつも御優しい事で――まあそれは言わずに飲み込むのが吉だ。
その騎士は女と、件の男にとってのやはり長なのだから。
「身の内の強さがその者の持つ力か。それはいいが、さてお前はどの様にしてその誇りや気高さとやらを測るのだ」
ずるずると重量のある音を引きずりながら騎士は女の元に戻ってきた。
肩に担いでいるのは先ほど騎士が撃ち落とした竜だ。既に事切れているが…
女は騎士のこの所業を見るたびやはり彼は我々の誰にも及ばぬ強さをもっていると痛感する。それにしても、
「それはどういう意味だ。」
「そのままの意味だ。アルトリウスには”お前の言う”強さがないというが、その強さとやらをお前はどう証明する」
にぶい音と共に騎士が肩に担いでいた竜の尾を勢いよく地面におとした。びりびりと僅かに地面が振動したのが
女の足元にも届く。何故かそれがにわかに女を緊張させる。
「…よく分からないが、王に仕える者として奴にはその自覚がなさすぎる。貴方も分かっているだろう。
永久に火は燃えている訳ではない。いずれ主は行かねばならぬ。その時王都を――いや、世を守護していくのは
我々4騎士の務めであり運命だろう。それをあの様な者に一端託すなど私は」
「なるほど、それがお前のいう強さというものか。――何か勘違いをしている様だから言っておくが、
我々にはお前の言っている使命とやらを遂行できるほどの力などこの竜の牙ほども持ってはおらん。
ゴーも、アルトリウスも、お前も、―――そして私もな。」
ぼきり、意外に軽い音をたてて騎士は竜の牙を抜いた。側面に生えそろう口の中でも比較的小さい牙だった。
「…貴方は何を言っているんだ。」
「我々はこの世に対してあまりに無知で無力であるという事だ。そしてそれ故に知ることのできる強さとやらを
アルトリウスは持っている。私はそう思った。それが私のいう力というものだよ。」
騎士が投げてよこした牙を女は反射でうけとった。…一部では武器としても扱われるほどの鋭利さだと
いうことを分かってるのかと悪態をついたら騎士は低い声で少し笑った。
「もう行け。竜狩りの邪魔だ。」
女の疑問ははれるどころか、ますます深まる一方である。

19 :
――男が闇の者を契約を交わしたのは王が旅立ちしばらくたった頃の出来事だ。
男はそれまで狩る側の戦士だった。暴走した愚かな小国の王共を封印するため致し方なかったとはいえ、
王都では穏やかでない噂もたびたび耳にする様になった。神のおわす国で、なんとも情けない話である。
男はそれまで以上に王都に寄り付かなくなった。というより、その一見以来男が王都に戻る事はなかった。
仲間だ戦友だなどといって感傷に浸る心など女は持ち合わせていなかったが、”偶然”男がよく好んで
遊んでいたあの森に出向く事があり”偶然”男と居合わせた。
「久しぶりだな。皆は元気か?」
男は女が記憶しているより幾分かやつれた様に見えたが、
能天気によく通るその声と、女の姿を見るなり唸り声をあげる狼は、記憶のそれとなんら変わりなかった。
この男だけが持つ強さをやらを 女はずっと知りたかったのだ。
たびたび顔を出すようになると、男は逆に何かあったのかと不安になった様だったが女は構いはしなかった。
ただそのせいで女に妙に顔見知りも増えた。来るたび森を番する太った白猫に逢い引きだなんだのと
ちゃかされるのも5回目で慣れた様だ。男曰くそういう話題に飢えてるのでからかってるだけとの事らしい。
不思議なものである。まだ4騎士として機能していた頃この男に女が持つものといえば不満や苛立ちばかりで
まともに会話をする気にもならなかったのいうのに、こうなった今の方が男の話をよく聞くようになっているなど。
共にいる時間が長いせいか、狼も前に比べ女に対し耐性がついたようだ。やはりうっとうしがってはいるが、
それより友人をとられた気分でいるのだろうか、二人で少し話し込むと隠れもしない巨体を樹蔭にし、
しゅんとうなだれている事がたびたびある。男が呼ぶとすぐこちらに向かってくる様を見て、
かわいいところもあるものだなと女は思った。
男は女に色んな話をする。これまで会話がなかった分だけ沢山の事を。
そのどれもが神や世界などといった尊大な話でなく、すぐそこに生えた草木や花、この森に住む生き物の事だった。
以前の女なら聞く耳もなかったはずであろう話題だが、不思議と今はまったく苦にならなかった。
この花は月の光で発光している。あの岩の騎士は過去此処に王国があったもののなごりだ。あの湖の怪物は――
過去に幾度、うんざりしながらこの男を迎えに来ていた女にとってただそこにあるだけであったものだ。
背景として過ぎ去るだけだったものを、男が今までどの様に写してきたかを女は知る様になった。
――だから何だというのだ。我々に何の関わりもない、底辺の存在だ。――
などど、女はもう決して 思えない様になっていたのだ。

20 :
「美しいな」
頭上で神秘の生物が舞う。二人を囲む花々が風に吹かれ一瞬揺らめき、華弁を散らせ静かに宙に浮かぶ。
風のある夜だ。そろそろ行こうかと男が腰を上げようとするが、その肩に手を置いて女は制した。
ずっと男を見ていたであろう女の視線と男の視線が交わる。
「どうした?」と男はきっとこう言おうとしていただろう。
遠く高い空で、月が雲に隠れたのが 目を瞑っていても分かった。
息をのむ男の声が聞こえた気がした。驚いただろうか。まあ驚くだろうな。やけにぼんやりした思考で
そう考えながら、女は男に口付けた。
といっても位置が位置だっただけに、男の口の端に若干触れる程度の乏しいものであったが、構わなかった。
ただ女はしたかったからしたのだ。これまでさんざ男の迎えに付き合わされた身だ。
――少しくらいこちらに付き合ってもらってもいいだろう――
数秒間をおいたのちゆっくりと離れ男を見ると、意外にも落ち着いた様子でただ静かに微笑んでいた。
(なんだ、湯気が出るほど真っ赤になっているのではないかと少し期待したのだがな。)
男が予想外に落ち着いているので何やら突発的に動いた女の方が気難しくなったのか、さっさと立ち去り
お茶を濁そうとした、瞬間だった。
風が一瞬止む。音が止まり世界が止まり、月明りが消え二人だけになる。
男が女を強く抱きしめた。
息をのむのは、今度は女の方だった。
「聞いてほしい事がある」
「…何だ……」
「俺はもうすぐぬ」
世界が再び動き出す。
風と共に隠れた月が暴かれ夜を照らす。
見開かれた女の目に 月光が淡く反射していた。

21 :
封印の代償とは、かくも大きなものなのか。いや、これだけで済んだのがむしろ幸運だったと男は言う。
逃れる術はない。もはや決められた事なのだとも。
無礼は承知だった。だが世に興味も示さず閉じこもり研究に没頭する公爵の存在など女は気にしていられなかった。
目も眩むほどの膨大な知識の海に溺れながら、女は男を救う術を探していた。
戦いならどうとでもなる。相手を沈黙させればいい。それだけの力が女にはあった。
だが、見えぬ呪いという相手にどうすればいい。剣で貫く事も、盾で防ぐこともできぬ相手に一体どうすれば――
苦悩する間にも男の命はへ向かっているのだと思うと尚女を焦らせた。
冷静になれば、なぜ彼女がそこまでしてその男を救わねばならぬのか、
義理や貸しなど何もない、むしろ疎ましいとさえ思っていた男になぜそうまでするのか、
合理的価値観でそれまで生きてきた彼女なら、その事に思い至るはずである。
だが女は気付かない。もはやその様な感覚で考査する思考回路をとっくに失っていたからだ。
誰のせいでもない。あの男と共にした時間で知らず彼女が築き上げていたものだ。
それこそが、男の強さであったのだ。
「どうすればいい」
「どうもしなくていいさ。」
「嘘だ。何かあるはずだ…何か…」
「そうだな…じゃあ傍にいてくれるか。」
「違う 違う違う…それではお前はぬだけだ」
「俺はぬんだ。大丈夫だ。そんなに苦しくはない。」
「…私はどうなる……」
――我々はこの世に対してあまりに無知で無力であるという事だ。――
長が言った、いつかの言葉が女の頭を支配していた。
その通りだ。女は何もできはしない。神に仕え世を守る事はおろか、
たった一人、心の底から助けたいと願うたった一人でさえ 救うことはできないのだ。
「…シフと なかよくやれよ さみしがりだから」
「……何故ぬんだ…」
女が最初に涙を流したのはいつだったか。もしかすれば、この世に生まれ出で初めての涙であったかもしれない。
雨にしてはやけに儚いその滴が落ちる音を聞き、もはや目が見えぬ男にも女が泣いているであろう事は
分かった様だった。大きいが、もはや覇気のない手をあてずっぽで宙に掲げると、導く様に女がその手をとった。
「泣くな」など言わない。これ以上ない時を持ってに往けるのに、彼女にはただおいていく事しかできない。
それが分かっていながら、傍にいたのだ。そして「忘れろ」とも言えない。彼女には 忘れてほしくなかったのだ。
「――キアラン…お前は…気付いてなかったと 思うが」
「………」
「ここで道草 してた。お前が迎えに くると 思って」
「………」
「すご く 厭な顔… はは してたな。結構 そ れ 」
面白かったぞ
遠くで狼が泣く声が聞こえた。森中に響き渡り、木霊し、
やがて森の中に音は消えた。
風のない 静かな夜の出来事だ。

22 :
「アルトリウスっていうのはダークレイス狩りで知られる剛健だと聞いたんだが」
突如現れた灰色の狼に追われそれどころではなかったが、静かになって見返すと大きな剣に大きな墓、
それらに似つかわしくないものが石碑に横たわっているのが分かった。
大昔の事をあれやこれやと考えるほどその男は暇ではないし興味もなかったが、
それの指に光っているものは役立ちそうだったので素直に頂戴する事にした。人に口なしである。
何、大体の想像はつく。神に仕えた英雄の騎士もいっぱしの生き物だったという
ただそれだけの話であろう。風が少し出てきた。長居は無用である。
男は振り返る事もなくその場を後にする。諍いは終わり、後には月光に照らされた石碑が残った。
森の中は今だ 静寂に包まれている。

23 :
以上です。いきなり大量に埋めてごめんよ・・・。
間違いとか捏造も多くてごめん。なによりえろくなくてごめん!

24 :
>>23
謝れ!尚更シフが倒せなくなった俺に謝れ!
ああダメだかなしい

25 :
>>23
×捏造
○フロム脳
いやホントGJ超GJ!
2人の性格や口調が理想通りで思いっ切りツボにきた
そしてしゅんとなってるシフを想像して萌えたw

26 :
アルトリ×キアランキテター!
この二人好きだわー
キアランまじ可愛いよキアラン

27 :
これは素晴らしい

28 :
シフかわいいよシフ

29 :
デモンズソウルのスレも埋まったね これで完全統合か

30 :
業務連絡
ゲームの部屋の「デモンズソウル/ダークソウルの部屋」に収蔵が完了しました。

31 :
SS管理人様乙

32 :
お疲れ様です

33 :
おお、専用カテゴリできた!
しかもこのスレの作品まで入ってる!管理人様ありがとうございます。
やっぱりまとめ読みできると嬉しいね

34 :
デモンズソウルスレに投下していた青ニート×女主人公の続き。今回エロなし
*****
【X周目以降、XX周目以前の世界より】
 楔の神殿広間に、絃の狂った怒号が響いた。
「もう放っておいてくれ……! お前は俺の何だ?! 関係ないだろう! もう、俺に
構うんじゃない……!」
 蹲り頭を抱えて喚き散らす男と、立ち竦み呆然とする女とが発生源だった。
「わ、私は、」
「うるせえよ!」
 伸ばしかけた手がぱしんと振り払われる。実際の衝撃よりも大きく、女がよろめく。
「お前がデーモンをすなら好きにすればいいだろうが! 勝手にんで、勝手にして、
世界でも何でも救えよ! ──だがな、“英雄様”──俺に構うな! 俺に期待するな!
 “俺”を“お前”に巻き込むな!」
 デーモンをす女は声もなく心折れた男の前に立つ。
「俺は、」
 その。絶望と諦念と自己嫌悪と劣等感と嫉妬と憎悪に満ち溢れた言葉を、唯、聞く。
「お前とは違うんだ! だから放っておいてくれ──! ──もう、俺に、こんな俺に
何かを望まないでくれ──!」
 男の言葉が段々と低く、小さくなり、やがて支離滅裂なものへと変わってゆくのを、女
は唯見ていた。罰を受ける子どものように震えて、怯えて、見ていた。
 やがて女はぎくしゃくと足を動かし階段を昇る。目指すは塔の要石、ラトリア。彼女が
すべきデーモンのいる場所。彼女の使命がある場所。彼女が“次”へ進むために必要な
場所。
 途中、下の遣り取りを眺めていたらしいパッチの脇を通る。と。
「おい、アンタ、今日は一段とひでえフラれ方したな」
 揶揄と呆れの篭った口調で話しかけられる。“ハイエナ”はにやにや笑い、
「これだからお嬢ちゃんはよう。オトコ一人につれなくされたくらいで、世界が終わった
みたいなツラしなくってもいいんだぜ?」
 どうということはない、少なくとも発言者にそれほど悪意があったわけではない言葉
だったし。
 しかし。言われた側は強く唇を噛み、不意に銀のコロネットをむしり取る。留めていた
前髪が広がり、額へ落ちた。困惑するパッチの前で女は懐から黒布を取り出し顔に巻き
つける。黒い髪と黒い布とに顔が隠れる。音のしない黒一色の姿となった彼女の中で、
緑の瞳だけが澱んで光っていた。
 女が。手にするコロネットを眼下へ叩きつける。数瞬の間を置き、神殿広間に金属の
跳ねる澄んだ音が響いた。

35 :
「おいおい、勿体ねえな! 要らないなら俺が貰うぞ?」
「いいよ」
 女は答える。絞り出す、掠れた声。
「もう、いい。……もう、いいんだ」
 女の返答をパッチは聞いていない。承諾を得るより先に飛び降りて獲物を拾いに行って
いる。
 目聡いパッチのことだ。拾うついでに心折れた戦士を見、彼が“いけなくなった”こと
を見抜くだろう。そして。使命を拒否しデーモンをさなくなった彼が、とうとう世界に
“喰われる”瞬間も、見るかもしれない。
 女は首を振る。
 何度も。何度も。
 要石に触れる。デーモンをすために。使命を果たすために。この世界を救うために。
 この世界を救って──“次”に行くために。
 “次に行く”──否。
 逃げる。そう、彼女は逃げたかったのかもしれない。
 “彼”を救えなかった世界から。
 救えなかった“彼”を捨てて次の“彼”に望みを託す、残酷で矮小な自身から。
【XX周目かの世界より】
(“逃げる”)(そうだ)(そっちの方が、しっくりくる)
 頭の中をぐるぐる駆ける、記憶。デーモンスレイヤーの使命、繰り返す世界、世界を
繋ぐ要人としての終わりなき永久螺旋。
(“逃げる”)(あと何度繰り返せばいい?)(あと何度、貴方をせばいい?)
 壊れる彼を無力にも見送った。
 心無い言葉で傷つけて、消滅の期を早めた。
 自分の手で、刃で、した。
(あと、何度繰り返せば、)
(私は、諦めるんだろう)
 諦めて。
 進むのを止めて。
 座り込んで。
 ──彼のいない世界で? 彼を救えなかった世界で?
 あの。背中を撫でる。不器用で、温かな手の、存在しない世界で、
 何処からも来ない救いを終わりを待て、と?
「い、や、だ」

36 :
 拒絶の言葉は確かな音となって滑り出た。
 ソウルとなり世界と同化しかけていた身体が精神が同一化を拒絶する。急激に輪郭を
取り戻す意識、肉体、──激痛。
 偽王オーラントの振るうソウルブランドが唸りを上げ、引っ掛けていた華奢な身体を
跳ね飛ばした。
 血痕だらけの床にまともに叩きつけられ、衝撃を逃すことも叶わぬ身体はひしゃげ中身
をはね散らかす。唯の人間か唯の化け物ならばとっくにんでいるはずの損壊ぶり。
 しかし。
「……ぐ、えっ、げほ……っ!」
 を拒むソウルの業が彼女の肉体を再構築する。流した血を無理矢理補充し、壊れた
部分を元の形に戻してゆく。失った体力全てを取り戻すまでには至らずとも、その身体は
ほんの瞬きひとつの間に戦えるだけの状態にまで回復していた。
 復活ののち、女は息つく暇もなく床を転がる。先程まで女が存在していた空間を重い刃
が切り裂いた。女とデーモン、充分にあったはずの両者の間合いは今やゼロにほど近い。
尚もローリングを繰り返し、場に留まり地の底から響くが如き唸りをあげるデーモンから
離れる。
 柱の陰に隠れた彼女のすぐ脇を衝撃波が駆け抜けていった。謁見の間がびりびり震え
床材が剥げて舞う。
 タリスマンを手に復活の奇跡を願い、満月草と香料とで体力魔力を継ぎ足す。
 戦える。まだ戦える。ならば戦わねばならない。
 相手がぬか、自分がぬか。そのどちらかの決着がもたらされるまで。
「──ふッ!」
 デーモンが一瞬の内に間合いを詰める。女はショーテルを手に迎え撃つ。剣の軌道を
見切りぎりぎりのところを避ける、避ける。軽量化した装備は脆い代わりに動き易い。
 黒革のブーツが音もなく軋み、女が跳ねる。前へ。脇を晒したデーモンへ。
 両手で構えたショーテルが、王の似姿をとるデーモンの肩から腹までを袈裟掛けに斬り
裂いた。裂け目から血の代わりにソウルが飛び散る。
 デーモンが仰け反る。が、それも一瞬。剣を持たぬ左手を伸ばし女の頭をわし掴みに
しようとする。
 白く発光する手が掴んだのは帯電する空気だけだ。女は地を這う姿勢で王の手を避け、
一気に懐へと潜り込み、
 その右目に歪んだ刃先を突き立て手首を捻り眼球を引っ掛けるように身体ごと──引く。
 ごり、と不吉な手ごたえがあって、硬いところに刃が食い入る。抜けない。デーモンが
吼える。頭を振る。痛みではなく、怒りで。屈辱で。その時には女はもう武器を手放し
離れている。
 デーモンの左手が突き刺さったショーテルを掴む。掴んで、眼球ごと引き抜く。
 床へ落ちる刃にこびりつくのはソウルの名残りのみ。デーモンの両目は何事もなかった
かのように炯々と光っている。

37 :
「……化け物」
 呟きに、我ながら笑いが零れた。
 化け物なのはお互い様だ。奇跡を使って何度でも復活する自分が、数多のデーモンの
ソウルを喰らってきた自分が、何度も何度も何度も世界を繰り返す自分が、まだ、ヒト
だと。狂っていないとデーモンでもないと胸を張って言えるだろうか?
 どうだろう。
 分からない。分かるはずもない。
「はは、」
 手に冷たい感触がある。予備の武器。湾曲する刃、突きには向かず抉るための切っ先。
渋い輝きを放つショーテルが、もう一本。多分、この刃と同じく自分も歪んでいるのだ。
なんと相応しい武器だろう。
「ははっ、はははは!」
 大気が震える。またあの突進が来る。今度こそされるかもしれない。恐い。される
のが恐い。んでまた蘇ってまたしされに行くことが恐い。
 けれど。
 まだ、残っている。
 軽い装備を身に着けること。
 受けるよりも、避けること。
 自分のスタイルに合った武器を使うこと。
 全部、彼から教わったことだ。彼女を今まで生かし続けてきたものだ。
 “これ”を覚えている限り。彼の声が、忘れられない限り、女はデーモンになれない。
諦めることも出来ない。
 傷つける。してしまう。けれど、次があるから。次は、助けられるかもしれないから。
 ──次の世界の貴方は、また、私に優しくしてくれるかもしれないから。
「はははは──あああああッ!!!」
 女が、吼える。疾る。デーモンをすために。醜い自分を、デーモンに重ねるように。
 楔の神殿に大穴が空いた。
 神殿の誰もが感じていた。終わりが──変革が、近いのだと。
 大袋のトマスが不安げな顔をし、鍛冶屋ボールドウィンは不機嫌っ面で砥石の手入れを
している。
 聖者ウルベインと信徒たちは静かに祈っていた。

38 :
 “拓く者”魔術師フレーキは興奮と思索の内に篭り、その弟子は相変わらずフレーキの
側に控えていた。
 ハイエナのパッチは定位置の塔の要石の前で大穴を見下ろし、火防女はともし火を手に
待ち。
 そして心折れた戦士は。この異変の原因となった女と向かい合っていた。
「これを」
 女が短く告げて無理矢理握らせてきたのは、何の変哲もない鉄の鍵束だ。こんなものを
渡される理由が分からない。
「……そいつは、何だ?」
「ボーレタリア王城の、牢の鍵だ」
 ますます理由が分からない。この女は心折れた自分に何を望んでいるのやら。
「貴方に救出をお願いしたいけれど、もしも無理なら、王城にいるオストラヴァという騎士
に渡して欲しい。高台で困ってる子。“ビヨール殿が捕らわれている牢の鍵だ”と伝えて
くれ。金の鎧で目立つから直ぐ分かると思う」
「おい待て、俺にそんなこと」
 する謂れはない。
 出来るはずも、ない。
「大丈夫」何が大丈夫なのか、女は黒ずくめの格好の中でそこだけ緑の目を男に向けて。
「霧はもうすぐ消える」
「……は?」
 絶句する男の隙をつき、女は口を挟む暇も与えず一方的に喋り続ける。
「王城には魔女も閉じ込められているが、そちらはビヨール殿が助けてくれると思う。
あ、王城で、目だし頭巾にこんな」──言って、女は自らの革製の鎧を指差し──「感じ
の恰好をした女に会ったら、全力で逃げろ。彼女には話が通じない……彼女や、ラトリア
の職業人鬼と祭祀場の性癖人鬼はどうにかした方が良かったのかもしれないが、私には
その決断が出来なかった。ごめん。他の──エドさんや、ブライジやスキルヴィルさん、
セレン殿は、自分で何とかするだろう。出来る人たちだ」
 女の言葉は理解し難い。
 その次々出てくる人名は誰だ。“ビヨール”と言えばボーレタリア王家を支える英傑に
“双剣のビヨール”なる人物がいたが、まさか同一人物ではあるまい。それに、魔女?
 わけが分からない。
「──最後に、これを」
 そう言って。
 女が差し出した淡く輝く石は、男の混乱に拍車をかけた。
 その欠片の名前を、男も知っている。“儚い瞳の石”──如何なる業か、ソウル体に
失った肉体を取り戻させる石だ。男には意味のないものだ。生身を取り戻したところで、
戦いから逃げた男には何の影響もない。肉の苦痛が増えるだけだ。
「──お前」

39 :
 彼女の言っていることは根本的におかしい。色の無い霧が晴れることは、有り得ない。
 ボーレタリアのデーモンをし尽くす。そんな奇跡でも起こさない限り、有り得ない。
「──」
 まさか。起こったのか。この女は、奇跡を成し遂げたのか。
 彼女は。無言で。彼に。
「……本当は。世界がどうなるか、私は知らない。見たこと、ないから。知らないけれど
……全部、良い方に向かうよう、祈ってる」
 彼女が静かに身を離す。
 聞きたいことは勿論あった。霧が晴れる、のを信じるとして。何故、心折れて何も為せ
なかった自分に今更話をするのか。何故、自分に後を託すのか。何故。彼女が“そう”
しないのか。
 何故。
 彼女は。
「ごめんなさい」
 綺麗な、南の海の色の目を、揺らして。
「何度も、何も出来なかった代わりに──貴方に、未来を、あげるから」
 黒髪が翻る。彼女は男に背を向け、大穴の傍の火防女の元へ行く。
「いいよ。行こう」
 黒髪の女を、黒髪の女が抱き締める。母親が娘を慰めるように、優しく。
 そうして──二人が、昏い奈落へと姿を消す。
 叫ぶ声。男ではない。同じ光景を見ていた者がいたようで、そいつが叫んでいる。けれど
どうしようもない。二人が消えた穴は今や唯の床に戻っている。最初からそこには何も
なかったように、二人の女がいなかったかのように静まり返っている。
 我知らず立ち上がっていた心折れた戦士は、デーモンしの女の幻影を呆然と見送る。
手には、託された鍵束と、儚い瞳の石。
 予感があった。
 色のない霧は晴れるだろう。世界はきっと救われるだろう。
 そうして。彼女の救った世界に、彼女はきっと帰ってこない。
 触れなかった唇のぬくもりがまだ残っていた。
【世界ではない何処かにて】
「サイコロを二つ振って、両方とも六の目が出る確率は三十六分の一だそうだよ。単純に
言えば、三十六回振れば一回は六ゾロが出るってこと」

40 :
 色の無い霧の中を、女が一人、歩いてゆく。
「まあ三十六回振っても一度も出ないこともあるけれど。確率って、そんなものだしな」
 黒い髪と緑の目の、戦士とも盗賊ともはたまた魔術師ともつかぬ雰囲気の女だ。
 彼女はひとり、霧の中を歩く。その言葉を誰に届かせるでもなく、足音静かに。
「だから」
「──あれは、サイコロを二つ振って、最初に六ゾロが出たような──そういうこと
だったんだと思う。確率は低くても、有り得ない話じゃない。そういうこと」
 彼女は笑う。ひとり。独りきり。
「サイコロ二つじゃ足りない、か」
 彼女が楔の神殿で何度もんだこと。彼がそれを止めてくれたこと。隣に座らせてくれた
こと。優しくしてくれたこと。
 おかしくない、と。言ってくれたこと。
「ああ、うん──私はサイコロ百個が全部六の目、みたいなすごい奇跡を、最初に引き当て
ちゃったんだろうな──」
 だから戦えた。
 彼をなせなくなかった。生きて欲しかった。
 あの背中を不器用にさする手の温かさがもう一度欲しくて、何度も繰り返した。
 何度も。何度も。
 彼女が繰り返し“世界”の霧を晴らすことが出来たのは、“もしかしたら”“次の彼は
救えるかもしれない”──それだけを考えてのことだった。
 世界とはなんと奇跡的なのだろう。
 一人では戦えない。“世界を救う”が戦う理由になれない心弱い彼女への、世界からの
素敵に残酷な贈り物。
「でも、良かった」
 声がする。澄んだ、優しい、哀しみを帯びた声。歌。
「分かったから。私が鍵だ、って分かったから」
 女を呼ぶ声がする。楔の神殿に囚われた、黒衣の娘の声がする。
「話しかけること。触れること。うん、それが、鍵だったんだ。どうしてだろうね? 私
がデーモンのソウルを喰らったせいかな? 私は、デーモンなのかな?」
「──」
「でも」
「好きになるのは、大丈夫」
「好きになっても、話したり、触れたりしなければ、大丈夫」
 女は一度だけ振り向く。
 闇が、あった。何もない戻れない道があった。
「世界の霧は、晴れたかな」
「貴方は、ちゃんと、戻れたかな」
「──そうだと、いいな」
 視線を戻す。光が見える。次の世界。色の無い霧に侵された“次”の世界。
「大丈夫」
 声が、近い。もうすぐそこ。
「“次の貴方”にも、触れない、話さない、決して」「決して」「だから」
 女は少しだけ立ち止まって──「だい、じょう、ぶ、だから──ごめん、ね、少しだけ、
待って」
 彼女の涙を、誰も見ない。
 世界を繋ぎとめるものは、此処にはひとりしかいないから。
*****
なんか書いてるうちに異様に長くなってしまい。次回エピローグ的なもので終了します
長々と済みません

41 :
なんていうかさ、その......
泣いた(´;ω;`)

42 :
確かに、青ニートに話しかけなければイベント進まないよな…
せつねぇ…

43 :
いっそ自分の手でしてしまえばソウルは永遠に自分と一緒だと思った
羨ましいくらい綺麗な文です

44 :
うひゃあ切ねええ!
そうなんだよな…ダクソでもデモンズでも、好きなキャラをなせないために一番確実なのって、イベントを進めないことなんだよなぁ…

45 :
>>44
ダクソだとソラールさんとアナスタシアは進め方次第で助けられるけれど、他はな…
救済ルートなんとかならんかったのかな

46 :
>>45
ラレンティウスも選択肢次第でどうにか
ダクソのキャラは心が折れ切ってないんだろうな
だから各々が自分の目的の為に積極的に動いて、悲劇的な方向に向かっちゃう

47 :
しかしアナちゃんはさっさと役目終えてにたい的なこと言ってたし助けたのか微妙な所
助けた後に闇の王ルート行ったらまた不のまま使命続けなきゃいけないという

48 :
主人公が闇の王になっても、火守りは続けなきゃいけないのかな
世界から火が消えるなら、お役御免にならないもんかね
不の呪いは残るだろうけど

49 :
エスト瓶の説明見る限り、んでも楽にはなれなさそうだがな…
あんな仕打ちを受けても「皆を救って下さい」とか言ってしまうアナスタシアまじヒロイン

50 :
宵闇ちゃんって姫様だったんだね。知らんかった。

51 :
救えないならせめて二次創作でと思ってたら救えなかったなんてことは良くある話
ところで火が消えるって具体的にどうなるんだろうか
カアス曰く人間の時代、火が生とを分けたなら火が消えればの概念が無くなり、不はんでも蘇るのではなくなない不になったりするんだろうか

52 :
火が起こる前は不の竜しかいなかったやん?
だからも生もなかったのが、火によって生ある者が生まれたためにと生が分かれたって意味だと思ってた
かぼたんは人としてにたいっていうんだから別に自願望がある訳ではないような気がするけどなぁ
不は人の世界では化け物らしいだろ。俺だって化け物としてよりは人間としてにたいわ
いや不になればクラーグ様とかミルドレット姐さんとかビアトリスちゃんとかに会えるということを知ってれば別として^q^
闇の王は真の闇をもたらすように言われるから、火が消えるというより能動に火を「消す」ってことだと思う
篝火も消さないといけないよな
火防女の特別な火を消すにはどうしたら良いか?みんな知ってるだろう?
そういうことだよ…(´Д`)

53 :
ビアトリスちゃんとのイチャラブマダー?

54 :
プリシラたんまだー?

55 :
鯖落ち回復の隙に、流れ切って投下するよー。
青ニート×女主人公>>34-40の続き。これで最後。エロは9くらいから
フロム脳暴走の結果、世界観等々が破綻しました。苦手な方はスルーよろ
*****
 例えば。この世界が、サイコロを百個同時に振って全部六の目が出るような、そんな
奇跡の起こる場所だとしたら。
 サイコロを何度も振り続けたなら、もう一度同じ奇跡だって起こり得るのかもしれない。
 それは希望だ。“二度目”への希望だ。希望あればこそ人は目の揃わないサイコロを
何度でも何度でも何度でも振ることができる。
 最初の“奇跡”が用意されたもので。
 二度目への希望も、用意されたものだったとしても。
 ──世界とは悲劇だと、かのデーモンは言った。
【XXプラスX周目の世界より】
 楔の神殿に歌が響く。
 男は王城の要石の前で腰を下ろしていた。ソウル体だ、長時間同じ姿勢でいることは
苦痛ではない。
 じっと神殿中央の広場を見つめる男の目が、床の“ゆらぎ”を捉える。黒衣の火防女が
古い歌を紡いでいる。呪われたボーレタリアの地に、デーモンをす者を呼ぶ歌。
 男はずっと待っていた。
 神殿の床が水面のように揺れ、そこから一人の女が立ち上がるのを。彼女が静かに頭を
巡らせ、男を見、視線を逸らし、王城の要石へと歩み寄るのを。
「よう」
 男が声をかけると、女はびくりと身を竦ませ。「──」短い逡巡の後、無視して手を
要石へと伸ばす。男は内心気を悪くした。話す必要もないと思っているのか、余裕がない
のか。
 後者、と。女の、黒い髪と黒い布から覗く表情を観察し、そう考える。ならばもう一度
程度なら試す価値はあるだろう。
「お前の探してるもの──デーモンのソウルならその先さ。しかしお前、デーモンしか
いねえクソみたいな場所に、一人で行く気か?」
 華奢な手が中空で静止する。

56 :
 見下ろし向けられる緑の目には、戸惑いと怯え、のようなものがあった。顔は見えないし
やたら老成した雰囲気だが、この女、案外若いのかもしれない。
「お前はまだ“んだ”ことがないようだから教えてやるが」男は言って、生身のままの
女を眺める。身体のラインをくっきりと浮かび上がらせる防具、奇妙に湾曲した刃の武器。
どれも使い込まれて彼女にしっくりと馴染んでいる。それでもこの女、瞳の表情が消せて
いない。「このボーレタリじゃ、ナマの身体は貴重品だ。敵にされないよう大事にしな
きゃならない。ねば、俺みたいなソウル体になるからな」
 ならば。
 交渉の余地はあるだろう、と。男は踏んだ。
「道案内は要らないか?」
 微かな。吐息に似た、え、との布越しの声が聞こえた。
 初めて聞いた彼女の声は誰かに似ているような気がした。
「なん…で……」
 尤もな問いだった。男はそう思った。女の声が必要以上に揺らいでいることには気づか
なかった。
「悪いが、何も親切心で言ってるわけじゃない……ちょっとした落し物がある。そいつを
拾いに行かなきゃならんが、一人じゃどうにもならなくてな。それで、こうしてお前に声
を掛けてるってわけだ」
 落し物、というのは──最後に男がんだ場所、そこにあるはずのソウルの残滓だ。
時間が立ち過ぎているが故にまだ残っているかは定かではないが、まあ、無ければ無いで
諦めもつく。男にとって区切りになる。
 道はある程度知っている。戦闘も手伝う。だからお前も俺に協力しろ、と。そういう
提案であった。
「……まあ突然こんな話をされても信用ならん、というのは分かるがな」
 男は自嘲と苦笑の中間の笑いを洩らし、右手を開き握っていた儚い瞳の石を見る。
「こいつをお前にやろうと思ってたんだが、必要ないようだからな」
 手元を覗きこんだ女の目が、それと分かるほど丸くなる。
「どうして、これ、」
 次の瞬間。女がぺたりと崩れ落ちた。いや男と目線を合わせるために座っただけなの
だが、そう、見えた。
「使わなかったの……なんで……」
「なんだ。お前、こいつを知ってるのか」
 此処に来たばかりにしては詳しい。ぬ前に幾らかボーレタリアを彷徨ったのだろうか。
 ソウル体に肉体を取り戻させる効果のあるアイテムだ。これで恩を売りつけて交渉を
有利に運ぼうと皮算用していたのだが、なかなか上手くいかないものだ。
「せっかくドラゴンの足元かいくぐって拾ったのに、とんだ無駄足だ」
「え」
「信じられないか? 残念だが事実だ。この神殿の外ではドラゴンはじめ化け物が山と
うろついてる。嘘だと思うなら一度見てこいよ」

57 :
 それで心折れたら俺との話を考えろ──とまでは言えなかった。
 相対する彼女が。混乱し、困惑しているのが手に取るように分かったから。
「それ、って」
 こんな子どもをいたぶる趣味は流石にない。
 それに、何故だろう。彼女はあまり泣かせたくない。
 女は。緑色をした目で、男を見上げて。
「外に、行ったのか」
「それが何だよ」
「……貴方は、こっ、恐く、ない、の」
 恐くないのか。ぬことが? すことが? されることが? 一人でいることが?
 XXをひとりで行かせてしまうことが──「嫌に決まってるだろうが」
「だからお前に“協力しないか”って言っているんだよ」
 ぬのは嫌だ。痛い思いをするのも嫌だ。負けることも、もう嫌だ。
 だから逃げた。逃げて、いた。
 けれど。もっと嫌なことを、知ってしまったから。
 何時のかは知らない何処でかは知らない何故かも、知らない。けれど。記憶が、ある。
 名前も知らない誰かに。腕の中で震える、黒い髪の、緑の瞳の──“偶然”か。目の前
の女と同じだ──デーモンの長をせるほどに強いのにたった一度きりが忘れられない
弱いXXに置いていかれる方が。XXを置いて救われてしまう方が辛い。と。
 彼は、そう記憶してしまったのだから。
「それで。お前はどうす」
 絶句。
 突如ぼろぼろ泣き出す女を前に。男は、勝手に泣き出した女への鬱陶しさと、面倒臭い
のに話を持ち掛けてしまったという後悔と、思い切り抱き締めて泣き顔を自分以外の誰にも
見せないようにしたいという衝動と──まあ大体そんなもので胸中わやくちゃになって
動けなくなってしまう。
「……っめ、な、……」
 女が何か言っている。なにか、必で、彼に。
「ご、めん、な、さい……!」
 謝罪だった。
 何に対しての。突然泣いたことへの。申し出を断ることへの? それとも、別の。
「行かないのか」
 女が激しく首を横に振る。否定。
「それじゃあ」

58 :

「……っ、き、たい」
 覆い布の下から声が零れる。彼女の声。言葉。魂から絞り出す、叫び。
「貴方と、いきたい……!」
 ──仕方ないだろ。
 男は自分に言い訳をする。確かに知らない女だ。会ったばかりの、利害が一致するかも
まだ不明な、しかも面倒臭い女だ。でも、こんな風に泣かれたら、
 抱き締めて、しがみつかせてやって、背中でも撫でてやるしかないじゃないか。
 ごめんなさい。ごめんなさい。謝罪を繰り返す。あれほど誓ったのに。彼を救うのに何
が必要か、もう、知っているはずなのに。ごめんなさい。ごめんなさい。謝罪を幾度も
繰り返す。誰が? 彼女が。誰に? 彼に。過去と未来の彼に。過去に救えなかった“彼”
へ。この先、言葉を交わして、触れて、──好きになって。また奪ってしまうかもしれない
“彼”の未来に対して。
 それでも。
 それでも──今、抱く腕の温かさがいちばん欲しいものだったから。
 彼女はまた、小さな希望に縋りついた。
“だったらここに座ってりゃいい”
 奇跡は既に起こった。数十万分の、数百万分の一の奇跡が。
 ならば。例えば、折れた剣が蘇るような奇跡だって、起こらないとは言い切れない。
 そんな希望に縋る人間がいても不思議ではない。
 それから、時間に直して数日後。
「あ。」
「あ。」
 男の目の前で彼女は奈落へと落ちていった。驚いたような、申し訳なさそうな緑の目が
狭い視界のなか焼きついた。
「こ──の」ソウル体であるにも関わらず全身の血が逆流する。轟々と、耳鳴り。嘲笑
めいた地響き──「バカが! 足踏み外すとか、素人かよ──?!」

59 :
 思わず怒鳴る男の耳に、腐れ谷の汚泥に落ちる、ぼちゃん、という音が届く。
 眼下のデーモン──“ヒル溜まり”が哂った気がした。
 男は弓を手に歯噛みする。相手の直接攻撃範囲外から狙撃する手筈だったのが、ヒル団子
ぶん投げられてバランス失い足場から落下とは、間抜けにもほどがある!
 自身も無数のヒルにたかられつつ、男は悪態を吐きながらも弓に火矢を番える。ヒルが
ずるずるねとねと身体じゅうを這い回り襟足やら手袋と袖の間やらから入り込もうとして
ぬほど気色悪い上どろどろの粘液で手も滑りそうになるが、文句を言う暇はない。。毒気
対策に顔を布で覆っているのだけが救いか。
 落ちた女が無事なのは確かめるまでもない。落下する高さではないし、ソウルの消える
気配もなかった。
 デーモンの背を──無数のヒル、に似た何かの集合体であるデーモンに腹も背中もない
が──狙い、矢を放つ。
 ヒル溜まりが身震いする。犬が体を振るって水滴を払うが如く、ヒルが雨霰となって
周囲に飛び散る。なかなかに胸の悪くなる眺めだった。
 手袋の中に汗が滲む。
 ──落ち着け、落ち着け。間合いの利は此方にある。手を休めず攻めればヒル溜まりの
自己回復も上回る打撃を与えられる。
 デーモンがその巨体からは想像もつかぬ俊敏さで腕もしくは腕を模した身体の一部を
沼に叩きつける。びしゃりと汚らしい音を立て男の足に汚泥の飛沫がへばりつく。
 悲鳴を堪える。悲鳴を上げて逃げ出すのを堪える。
 どうせ逃げ場はない。ぬかデーモンをすかするまで、この場所からは逃げられない。
 加えて。
 彼女が。あの、馬鹿がまだ下にいる。置いて逃げるわけにはいかない。
 彼女だって、まだ、生きている。其処にいる。そのはずだ。
 ──それじゃあ。
 ──降りて、助けにいってやったらどうだ?
 汗で、手が滑る。ヒルがのたくる。身体を這い回る。呼吸を止めようと粘りつく。
 此方には弓がある。下に降りる必要はない。必要はない? 降りれば、降りて自分も
デーモンの標的になれば、今現在狙われている女の手助けにはなるかもしれないのに?
 足を止める。否。(──畜生)
 足 が 竦 ん で 動けない。
「畜生が……!」
 吐き出す呪いの言葉。この身はもう折れてはいないのに。それとも。“折れていない”
と思ったのは──XXと──思考が混線する。自分ではない別の記憶が滑り込む。違う
方法を、──と思ったのは──
 炎が爆ぜた。

60 :

 轟音。世界が白く染まる。炎によって生まれたハレーションと蒸気とが視界を塞ぐ。
ヒル溜まりが大きく仰け反る。再度の爆発。熱風。どろついた沼の表面が焦げる臭い。
 魔法。“火の玉”。沼に転げ落ちデーモンと相対することになった彼女の、反撃の一打。
 デーモンが腕を振るう。汚泥とヒルとが飛び散る。先とほとんど変わらぬ場所から炎が
放たれる。沼の足回りは最悪だ、彼女は回避を捨て正面から押し切る道を選んだらしい。
削り合い。先に体力の無くなった方が負け。
 理解した瞬間。ようやっと身体が動いた。
 ヒルが絡みついたままの腕を叱咤し火矢を番え打つ。打つ。打つ。撃てばそれだけデーモン
の体力を削れる。生き延びる確率が上がる。だから打つ、打つ、打つ。
 自己嫌悪の念も、経験にない記憶も、頭から消えていた。
 なに、簡単なことだ。
 生き残る。生き残らせる。この大きな目的で頭をいっぱいにしてしまえば、余計なこと
は考えずに済むというものだ──今は。
 当初の姿を留めていられなくなったデーモンに、最後の火の玉がまともに当たる。
 濁った咆哮を上げ。腐れ谷のデーモンはぐずぐずとその巨体を崩壊させていった。
 デーモンを倒したことにより失った生身が戻る。途端、ソウル体では鈍化されていた
嗅覚が悪臭を捉え一瞬気が遠くなりかけた。
 吐き気を堪え、細い足場を伝い下へと降りる。広がる沼地は男の膝辺りまでの深さで、
動きにくいことこの上ない。しかも臭いし重い。そんな泥水をかき分け歩く。探す。あの
女の姿を探す。生きていればそこら辺にいるはずだ。生きていれば。
「……あ」
 果たして彼女は要石の脇でしょぼくれた様子で立っていた。
 男が近づくと、気づいてびくりと顔を上げる。顔を覆う黒布の隙間から、曇った色合い
の緑眼が覗いていた。
 彼女が次に何を言うのか男には予想がついた。
「ごめん」
 全く。この女は、すぐ謝る。当然の理由でも。男には分からない理由でも。
 彼と彼女が組んでからというもの、倒したデーモンの数は片手に余るまでになった。
 最初の内、彼は思ったものだ──この女、自分の手助けなぞ要らないくらいに強いのに、
何故に協力の申し出を受けたのやら。と。
 或いは自分への同情かと腐ったのだが、日が経つにつれ考えを改めた。
 彼女は確かに強い。強いが、肝心かなめのところでミスをやる。足場から落ちる、罠に
嵌まる、敵の攻撃をパリィし損ねる。失敗をあげつらえばキリがない。根性だけは認める
が、んでソウル体になっても楔の神殿に戻っての立て直しをせず探索を続けるという
のは無茶が過ぎる。

61 :
 そいつを指摘すると、彼女は妙に間の抜けた「ああ」という声を洩らし、「……そうか。
そう、だった。もう、戻っても、平気なんだった」という独り言を呟いて、男を見て。
その次からは神殿に戻るようになった。何が彼女を楔の神殿から遠ざけていたのか。男に
知る術はない。
 一人で往けぬほど弱くはないが、一人で往かすには危なっかしい。
 “探し物”を見つけた男がまだ彼女と行動を共にするのは、そういう理由もあってのこと
だ。いや、彼女は少なくとも彼よりは強いのだが。
 もしかしたら。話はもっと単純で。
 彼が“探し物”を見つけたとき。正確に言えば、自分がんだ場所にソウルがもはや
残ってはいないのを確認したときに。悔恨や、寂寥感や、一区切りついたような清々しさ
や、そんなもので言葉を失う彼の隣に、彼女が──誰かの体温があったのが、有難かった
から。そんな理由なのかもしれない。
 彼女は。よく謝って、よくにかけて、鬱陶しくて。それでも、触れたこともないのに
温かかったから。
 彼女と共にあるわけ。単純な理由。
 こんな化け物のうろつく土地で得た知己を、手放したくなかったから。先に進むのに
彼女の力は役に立つから。彼女が女で、自分が男で、つまりはそういう欲もあったから。
 総括すると。
 彼女が、欲しい。
 だから。
 ……しかし。
 一緒に風呂に入らないか、と持ちかけたのは流石に焦り過ぎだった。
「え」
 女は案の定目を丸くしている。男も女もヒル溜まり戦から戻ったばかりでずるずるの
ぐちょぐちょだ。怪我その他は神殿に帰還した時点で治っているとしても、着替えたいのも
肌に残る感触を綺麗に落としたいのも人情、そのための風呂。しかし“一緒に入る”という
選択肢が女にあろうはずもない。
「他意はねえよ。お互いこの有様だ、順番待ちも面倒臭いし、とっとと入ってとっとと
流すのも手だろ?」
 他意がないなぞ大嘘、ありまくりだ。
 下心を見抜けぬほど女も子どもではない。そのはず。証拠になにやら耳朶を赤く染め
俯いている。適当に流すか断ればいいものを、反応が意外と初心でこっちが困惑する。
いっそ冗談ということにしてしまおうか──早くも撤退を考える男の耳に、
「──うん」
 返答。受諾。許可?

62 :
 いや、それはない。いや“あわよくば”を考えないではなかったが──彼女の行動の
端々には──実は見当違いかとも思っていたのだが──男への好意があって、男も彼女も
真っ当で──多分──健康な普通の──おそらく──人間で、欲も当然ながらあって、
欲を満たしたい願望も当然あって、
「冗談、なのか」
 思考のループが切断される。
 泣きそうな声の女の腕を把る。
 冗談で終わらせてはならない、と思った。誤魔化せばきっとまた彼女を泣かせてしまう
から。
 楔の神殿の端も端に入浴場を作ったのはボールドウィンだった。元々あった水場のひとつ
に地下から汲み上げた熱水を流し入れるだけの、製作者曰く手慰み程度の風呂ではあるが、
この地の人間の心身を癒やすのに絶大な効果を発揮している。
 なのだが。
 今日に限って言えば、男は風呂で全く寛げずにいた。
 自業自得である。一人で浸かるには十二分な広さの湯船で足を伸ばせないのも、横に
裸の女がいるのも、その女を気にしなければならないのも、全て身から出た錆である。
「──」
「──」
 沈黙。
 ぱちゃん、と湯に水滴が落ちる。女がびくりと身を縮こまらせる。
 正直。背中を流してもらったりこのふっくら張り詰めたおっぱいが押しつけられたりと
いった素敵な出来事を期待しないでもなかったのだが、本気で何もない。単に一緒の湯船
に浸かっているだけである。
 残念なのと、期待させるなよという逆恨みと、悪いことをしてしまったという後悔とが
胸中を苦く浸す。
 女の背中は傷だらけだった。服を脱ぐ際僅かながら躊躇った理由はこれか。なんかもう
取る行動取る行動全てが裏目に出ている気がして頭を抱えたくなる。
 抱える代わりに。
 男は、女の背に手を伸ばした。
 触れる。女がびくんと震える。動かない。拒絶がない。温かい湯に浸かってそれでも
震えているというのに、男の、傷痕を撫ぜる手を止めるそぶりすらない。
「痛むか」問い。
「……ううん」微かに首を横に振る気配。否定。「もう、治ったから」
 沈黙。
「……痛かったか」再度の問い。
「……」微かに、首を縦に振る気配。肯定。「すこし」肯定に混じる嘘。少しだけの嘘。
 湯に濡れた背中を撫ぜる。痛くない力加減を知っている気がした。
「──悪かった」

63 :
 謝罪の言葉は危惧したより滑らかに出た。女が顔を男へと向ける。濡れた黒髪の下で緑
の目が潤んでいる。幼い造形の唇が微かに開いている。
「さっき、腐れ谷で。助けに行かなくて、悪かったな」
 嘘。小さな嘘。“行かなかった”ではなく“行けなかった”。足が竦んで、ぬのが
恐くて。この女の“”を見るかもしれないのが恐くて。
「うん」
 離した手がおずおずと握られる。揺らぐ湯の中で指と指とが絡む。
「ありがとう」
 囁き。
 女の肌が赤く染まっている。湯に当てられたか。男の頭がぐらつく。湯に当たったか。
心臓が速い。
「恐いのに。痛いのに。……一緒に行こうって言ってくれて、嬉しかった。いや、今も、
すごく、嬉しい」
 ──くそったれ。手を繋ぐだけで胸高鳴る時期はとっくに通り過ぎた。口付けの先も
経験済みだし、股間の分身はいつでもイケるぜと自己主張も甚だしいし、この後どうすれば
いいかも知っている。知っているのに、
 手も、足も、声も、ガキみたいに緊張してこんな柔らかい身体をぎこちなくしか抱けない
なんて、情けないにも程がある。
 結露が水面に落ちて、新しい波紋を作った。
 何かもういっぱいいっぱいの男だったが、風呂の中でコトに及ぶ真似だけはかろうじて
避けた。そんなことしようものなら、ボールドウィンにはどやされトマスには娘を取られた
父親みたいな目を向けられパッチからは下品なやっかみを十や二十受けることは明白だ。
 とにかく。動きを阻害する下半身と、キスひとつでぐでぐでになってしまった女とを
抱えて人のこない物陰に潜り込む。
 服は着た。念の為。どうせ脱がすとしても、それが人の道というものだ。
「ん……」
 潜り込んだと思ったら女から口付けを求めてきて。その、目を伏せ、長い睫毛を揺らす
様が余りにも色めいてしかも擦り寄る身体というか押しつける格好になる乳房の感触が
これまた素晴らしかったので、男は至極あっさりこれまでの苦労を水に流してしまった。
せっかく着けた服は予定よりも早く脱ぐことになるだろう。
 立ったまま、身長差を埋めるように身を屈め、唇を合わせる。やわらかかった。離す。
声になる寸前の吐息が零れるを聞き、もう一度。今度は深く、舌を使って口内を貪る。女
が微かに身を震わせる。
 そこは温かくて、湿っていて、甘かった。生身の感覚はソウル体なぞ及びもつかぬ直接的
さで神経を波立たせる。

64 :
 “甘い”、そんな感覚忘れていた。味蕾に埋め込むように、女の口内を舌でまさぐる。
控えめに絡んでくる舌に軽く歯を立て吸いたてる。びくんと跳ねる女の肩を抱いて、何度
も繰り返す。深さを変えて、強さを変えて。口内の熱が増すのを直に味わう。
 細い両の腕が、男の脇腹を掠めて背中へと回される。彼女の腕では完全には回りきらない
らしく、所在なさげな手が背中をところどころ撫でてゆく。あえかな、刺激とも呼べない
感触がぞくぞく来る。
「……ん、は……っ、あ……」
 女の上衣裾から手を突っ込み、捲くり上げるようにして侵入させる。上衣といっても布
一枚、防護には到底使えぬ肌着のような薄いものだ。しかも下着をつけていないせいで
乳房のかたちはくっきり分かるし、呼吸が速くなるにつれて小刻みに上下するのもしっかり
見下ろせるし、こうして手を突っ込めばあっという間にやわらかな胸乳に辿り着く。
 片手で華奢な肩を押さえ、もう片方の手では乳房を堪能する。どちらも吸いつくような
手触りだった。特に乳房。掴む指を何処までも沈ませ包む甘い温度と柔軟性だけで出来て
いるのに、男の目を惹きつけてやまぬ豊かな丘陵を保てるのは一体どういうわけだろう。
 更に力を込めると喘ぎと弾力が返る。成程、そういうわけか。
 先端は既に硬くなっていた。抓んで布に擦りつけるよう揺すってやると、抱く身体は
大きく震えた。
 口を塞がれたままの彼女は、男の背、布越しに爪を立てることで抗議する。痛くも痒くも
ない。唯々愛らしいだけだ。
 緑の目が潤んでいる。
 あんなに泣かせたくないと思ってたのに、今はもっと追い詰めたくて仕方がない。
 唇を離し、彼女の首筋に顔を埋める。濡れた黒髪が頬をくすぐる。鼻で息を吸い込むと、
女がちいさく悲鳴を洩らした。
「ちょ…やだっ、に、臭うだろ……!」
 何処が、と返す。
 汚れを落として湯に浸かっただけなのに、その肌からは乳に似た甘いにおいがする。舌
を這わせると矢張り甘かった。女がぎゅっと目を瞑ると匂いがより強まった。
 女は涙目になって震えている。嫌がっているのだろうが、口以外は男を拒絶しようと
しない。だからつい男も調子に乗ってしまう。
 肩から手を離し、背中へと滑らせ、下穿きの中に突っ込む。下も着けていなかったよう
で、しっとりした尻の感触が直ぐにあった。
 怯えるような吐息が、女から洩れて。「──ッ!」華奢な背が大きく仰け反り反動で
目の前の男にしがみつく。
 元凶の男は。「……」驚き戸惑っていた。尻に這わせた指を、動かす。女が身を捩り、
熱い柔肉に触れる指先に熱い粘液が滴った。
 女の身体は開いていた。
 勃起した性器を擦りつける男と同じく、女も、相手を求めて興奮していた。
 男は呆然とし指だけが本能の赴くまま秘裂をつつく。ちゅぷ、と、粘る水音が生まれる。

65 :
「ごめん…な、さい……」
 女が囁く。
「おかしい、な……はしたないし……貴方に、さわられてる、だけ、なのに……」
 熱を増す肉。濃くなる“女”のにおい。震える身体。瞳。声。
「──きらいに、なる?」
 その全部が欲しいのに馬鹿な問いをされたものだから、男は黙って口付けて抱き締めて
指を突き立て掻き回して息も出来ないようにしてやって。それを答えにした。
 そこはもう前戯が必要ないくらいに潤っていた。
 生まれたままの姿で石床に仰向けに転がり“男”を待つ彼女へ、脚をひらかせ先端を
めり込ませる。柔襞は何の抵抗もなくかたちを変え、たっぷりと蜜を湛えた場所まで迎え
入れようとする。
 入り口からの刺激に女の背が大きくしなり──ごん、と、床に後頭部をぶつける鈍い音
が響いた。男根のくびれまでを呑み込んでいた肉がぎゅうっと絞まり進入が留められる。
「……」
「……」
「……体位、替えるか」
「……っ、ひ、うくっ……!」抜かれる刺激に女が腰をくねらせる。涙目になっている
のは、さてどちらの理由やら。
「い、痛くしてもいいから」
「いや落ち着けよ」
 喘ぎながら言われるとそそられるのは事実だが、おっぱい捏ねたりちんこ突っ込んだり
して痛がらせるならともかく、こういう形での加虐は望んでいない。
 一応服を下敷きにしてみたが、効果は無いに等しい。だからといってこれから敷布に
なりそうなものを取りに行く、というのも嫌だ。どちらも早く繋がりたくてとろとろ零して
いるのに。
 仕方ねえな──男は呟き、
「俺が下になって」「いやだ」
 即行否決、石火の如し。
「だからってお前が下だとまた頭ぶつけるだろうが──おい、不貞腐れるなって」
 女はころんと側転しうっすら傷の浮く背中を向けて。
 その。しなやかな腰が浮く。まるみを帯びた尻が持ち上がり、男の前に慎ましい後孔と
どろついた秘裂とを晒けだす。
「これなら、」女の声は震えていた。顔は、床に押しつけられて見えなかった。「頭、
ぶつけないから──」
 誘われている。理解した瞬間思考が沸騰する。
 尻たぶを掴んで広げる。朱く爆ぜた秘裂が露わになり、外気に触れてとろとろ涎を零した。
 物欲しそうにひくつく肉の合間へ、勃起した男根をねじ込む。先走りを滲ませる先端
から大きく膨らんだ雁口まではきちきちと周囲の肉を拡げながら進み、くびれはずるりと
呑み込まれ、幹の部分はず、ず、と柔らかい肉から粘液を削ぎ落しながら沈んでいく。

66 :
「ひぐ、う、うあっ、あ、」
 一気に貫いても良かったのだが、肉の隙間を縫う毎に上がる短い嬌声が突く場所を変える
度に色を違えるのに夢中になる。
「あ、んくっ、く、あ──」
 最後。奥までをすり潰すようにゆっくりと貫くと、長い。溜息に似た喘ぎが零れた。
男根を包む肉が狭まり、柔らかく、しかし吸いあげるようにきつく絞られる。
 肌と肌とがひたりと密着する。汗ばむ肌は薄桃色に染まってぐらつくような匂いを放って
いた。掴む場所はもっと赤く指の痕を滲ませる。
 引いて、押し込む。
 肉が肉を打つ高い音と、甘ったるい悲鳴とが混ざり合う。女の、白い傷の散る白い背中
に黒く濡れた髪が貼りついて、快楽を示すように、内側の肉と連動するように、うねる。
 彼女の、必で掲げる腰を抱えて突き入れて、奥を叩いて、それなのに抉れば抉るほど
深くなるのに驚嘆する。何処までも、男が望むなら何処まででも受け入れる──そんな
幻想すら抱かせる。
 不意に。嬌声に、苦痛が混じる。
 当然か。下は石床、身体を預けるには硬過ぎる、冷た過ぎる。膝立ちの男とて痛みを
感じぬわけではない。
 考える──濡れた声、肉、ここから苦痛を完全に取り払って快楽一色に染めたらどんな
反応を示すものだろう──?
「ふあっ?!」
 推考の時間は取らない。貫いたまま女の腰を抱きかかえ、床に腰を下ろす──繋がった
女ごと。
 崩れた胡坐の上に女が落ちた瞬間。「──ひう、っ、あああ──ッ!」そそり立つ男根
を加重と勢いで根元まで呑み込んで、悲鳴が迸る。切羽詰まったわななきは、けれど甘い。
射精を堪え汗を流す男に軋むまでに抱き締められて、女は快楽を逃がすことも叶わず全て
受け止める破目に陥った。折り畳まれた脚が硬直し、震えたのちに弛緩する。同時に全身
から力が抜けて背後の男に全部を預ける格好になる。
「ふ──や、あ──」
 全部。身体も、自由も、快楽も。
 身動きもままならぬ身体を揺すられ、女は再び昂ぶってゆく。首を振ったのは懇願か
意味のない反射か。男を咥える場所は隙間なく絡みつき擦られる度に新しい蜜を垂らして
悦ぶのに、細い腕はなすがままに揺れるだけ、喉からはかぼそい喘ぎが洩れるだけ。内の
熱と外の従順さとの落差に、後ろめたい興奮が生まれる。
 ──しかし。
 男は女が崩れぬよう、細い腰に腕を回す。ついでに重く揺れる乳房を掴む。跳ねる身体
の軌道を制御し、どうもがいても繋がりのほどけぬよう支配する。
 ──おっぱいも、ナカの肉も。こんなにみっしりと甘く重いのに。
 ──身体がこんな軽いのはどういうわけだ。

67 :
 軽く突きあげる。それだけで女は顎を反らして跳ねる。力失い戻ってくると、貫かれる
場所がより深くなる。最奥のこりこりした門に先端が当たると、全身を引き攣らせて快楽
を訴えた。
 この軽さで。
 この細さで。
 この、弱さで。ずっと、ひとりで、デーモンを倒してきたのか──。
 男の側も限界が近いらしい。記憶が、思考が混線する。知らないはずの光景が脳裡に
焼き付く。今抱く熱を確かにしようと、衝動のままに乳房を結合部を責めたてる。彼女は
反らした後頭部を男の肩へと預け、与えられる快楽に翻弄されている。
 大きな胸乳が重く上下した。片手で掴んで、捏ねまわす。収めて収めきれない張り詰めた
肉が手にひたりと吸いつく。
 捏ねる手を移動させ、下からすくい上げる──と。
 指先に。滑らかな肌とは異なる固い感触があった。
 女が身を震わせる。
 ──傷痕だ、と。
 見たことも教えられたこともない記憶を思い出した。
「──お前」
 傷痕を、なぞる。肉欲がほんの一瞬だけ凪いでいた。言葉を伝えられる程度に、心を
伝えられる程度に。
「この身体で──よく、頑張って、生きててくれたな」
 あ、と。女が、呻く。
「あ、ああ、ひ、っく、うあ、ああああ──!」
 泣きじゃくる女を抱えて犯す。下から突き上げられて、しかし女が発するのは歓喜だけ
だ。傷痕残る背中を男の胸に預け、ぐちゃぐちゃに蕩けた肉を男に貫かれて、自らの下腹部
──男の存在する胎の辺りを愛おしげに手で押さえる。肉越しに伝わる圧と熱とに男根が
膨張する。
 碧。
 女の緑眼が男に向いている。必で首を回し、舌を伸ばす。接吻をねだる。応えて、
くちづける。互いに貪り合う激しい口戯、貫いて最奥まで呑まれる悦楽。
 女が。不意に、身を強張らせた。
 抱き締める。口も、性器も、肌の一部も逃がすまいと、強く。
 強く、強く、繋がった場所が爆ぜる勢いで痙攣し、根元から奥へと雪崩うつ快楽に、男
も込み上げる射精感のまま叩きつける。
 女の身体は何度も跳ねて。一度も男から離れることのないまま、静かにその身を委ねて
きた。

68 :

 寝転がる男は、今度からは敷布を用意してからやろう、と思った。
「ごめん。腰はまだ痛むか?」
「全然」
 心配する女に見栄を張ったはものの、格好が恰好だけに説得力がない。
 彼女は少しばかり困った顔をして。何も言わず針仕事に戻った。
「……意外か?」
「まあな」
「だろうな。けど、出来ないわけじゃないし」
 ちくちく。針と糸を器用に操り、女は手元の布を縫ってゆく。元は暗者の覆いを引き
裂いた切れ端だったのが、あっという間に長いリボンへと姿を変える。男はその光景を
彼女の膝に頭を載せて眺めている。
「よし、っと」
 縫い終わり、女は出来たばかりのリボンで自らの髪を結ぶ。長い前髪と後ろの髪をひと
まとめにして、真直ぐ尻尾のように垂らす。
 へえ、と男は声を洩らす。「悪くないんじゃないか」
「そうか?」
「ああ。目がよく見える」
「……うん。そうか」
 女は。隠すもののなくなった顔で晴れ晴れと笑う。
 澄んだ色合いの緑眼。碧。誰かが南の海の色だと言っていた。
「全部、終わったら」
 だからというわけでもないのだろうが。男はふとこんなことを口にした。
「海でも見に行くか。一緒に」
 女は目をぱちくりさせて。「……うん」はにかむ。
「あのな。南の海がいい。碧の海なんてものが本当にあるのか、自分で見てみたい」
「そうだな」
 女の手が頭を撫ぜる。それが心地好くて、疲れも手伝って瞼が重くなる。
「──あのな」
 声が、遠い。優しい。
「聞いて欲しいことがあるんだ。その内」
「今じゃないのか」
「今は……うん、今は、上手く伝えられるか自信がないから」
 けれど。声は微かに泣きそうで。けれど揺るぎない何かを持って。
「いつか、必ず。信じられないかもしれないけれど、全部、本当のことを話すから──」
 だから。
 一緒に。

69 :
 ──いこう、と囁く声を。きっと、ずっと、聞きたかった。
 世界とは悲劇だと、かつて王であったものは言った。
 ならばこの“奇跡”も悲劇の一端なのだろう。一人の戦士が何度も傷つき何度もに
何度も蘇る、無限の輪廻の始まりに過ぎないのだろう。
 だから。この物語を、共に歩むべき者が傍らにいる滑稽な二人の悲劇と笑わば笑え。
 世界とは悲劇で。
 悲劇の中にも希望は生まれ。
 奇跡は、何時だって何度だって起こり得るのだ。
【世界の涯てにて】
 静かな砂浜と、無音の海とが広がる世界。
 ここが世界の涯てだった。
 “彼女”は静かに横たわっていた。既にヒトとしての容(かたち)を保てなくなった
身体には無数の武器が突き刺さっている。剣があった。槍があった。斧があり、矢があり、
その他名も知らぬ武器があった。
 ──ああ、でも、“私”をすには足りなかったなあ。
 ──“私”はどうやらデーモンをし過ぎたみたいだしなあ。
 “彼女”はぼんやりと思いを巡らせる。かつて彼女自身が“デーモンをす者”であり、
デーモンをしそのソウルを喰らってより強いデーモンをす、そんな日々を送っていた
頃のことを。
 後悔はしていない。多分。おそらく。
 けれど。デーモンをす内に自らもデーモンに近づき同化してしまったのは、矢張り
悲しかった。
 なにしろ。この身体では抱き締めてもらうことも叶わない。
 足音が聞こえる。
 目を開ける。そこだけは昔のままの、碧の瞳。
 瞳に映して、“彼女”は笑う。

70 :
 ──来ると、思った。
 ──やっぱり。来てくれた。
 それは希望。最強のデーモンをす希望。世界の希望。最後のデーモンを眠らせる希望。
“彼女”の希望。世界が“彼女”に用意した、最初と最後の希望。
 刃が見える。躊躇わないで、と願う。躊躇えば──自分が、してしまうから。
 ごめん。届かない声で囁く。
 ごめん。こんな役目を背負わせて。こんな辛い思いをさせて。これで最後だから、最後
にするから、だから。
 痛く、しないでね。
 それは無論意味ある音としては発せられなかったが、“彼女”は静かに感謝する。
 ありがとう。
 もう、あまり痛くない。
 そうして。
 最後のデーモンと最後の要人がいなくなって。
 世界はまた、繋がれる。
【i周目の世界にて】
 目の痛くなるような真っ白な砂浜。日射し跳ねる波打ち際。鳥。虫。船。汽笛。人──
海には雑多な音と光とが溢れていた。
「海……これが、海?」
 黒髪緑眼の女もそのひとつで、驚愕を越えると途端にはしゃぎだす。
「海?! これが?! 嘘、本当に碧だ! あと赤と青と蒼! すごい何これ凄い!」
 ブーツを脱ぎ捨て海に入り、南地方特有の、透き通る海水を掬っては散らす。膝丈の
スカートはこの時点でびしょ濡れだ。男は溜息を吐き、頭を掻いた。
「ったく。ガキじゃあるまいに」
「だってだって!」
 小声での悪態だったのだが、女の耳にはきっちり届いていたようだ。「だって、本当に
碧だから! こんなの私見たことない!」
 海と同じ色の目をした女はそう言ってくるくる回る。見ているこっちが恥ずかしいくらい
にテンションだだ上がりだ。

71 :
「な、な、貴方も」
 男は断るつもりだったのだが、恋人からとびっきりの笑顔を向けられてはそんな決意は
日向の砂糖菓子よりも脆い。数分後には靴を脱ぎズボンを捲り上げて水遊びに興じる破目
になった。
「そういえば」
 きらきら光る海水を手に、女が言う。
「夢を見た」
「どんな」
「……うん、いい夢と、悪い夢。あ、でも」
 女が。手を空へと伸ばし、広げる。海水が飛び散り陽を反射してきらきら輝く。
「どっちも幸せだった」
「悪い方もか?」
「うん。だって」
「どっちも、貴方と一緒だったから」
 海の色を瞳に映し、女は微笑む。男も気恥ずかしさに顔をしかめ。でも結局はつられて
笑う。
 そして思う。
 ──世界はとても、美しい。
*****
青ニート×女主人公、これにて終了です
当初は「青ニートと女主だったらソウル体×ソウル体、ソウル体×生身でのエロが書けてお得じゃね?」
という軽い気持ちで書き始めたのですが、何時の間にやらこんなことに。結局、生身×生身まで書いたし
このくっそ長い妄想にお付き合いくださった方、ありがとねー。

72 :
ただただGJ!
こんなに濃いのを青ニートで読めるなんて!
特に〆が素晴らしすぎる・・・最後マジやばい。
本当にお疲れ様。いい作品をありがとう!

73 :
GJ!!物凄いGJ!!!!
作中での伏線というか、イメージの響き合いがエロさと美しさを尚引き立ててるのが凄い。
痛いのがキライな主人公たちとかくるくる回る女の子とスカートとか、南の海の色だとか。
女主が微笑っててくれて良かった。境遇は色々あれど魂が救われて何ぼのデモンズソウル。

74 :
楔の神殿まで届け、このGJ!!
デモンズリタイヤしたのがちょうど青ニートが消えた頃だったから、余計胸にくるものがあった
頑張ってもう一周してこよう…

75 :
夜中にPCの前で全裸でおもくそ泣いたじゃんかよー
GJ超GJ

76 :
(´;ω;`)
素晴らしいssだった。筆舌に尽くし難いとはまさにこの事だな。
やはりソウルシリーズは素晴らしい。
このssを書いてくれた書き手さんに感謝。

77 :
素晴らしい、素晴らしいが自信を無くすくらい素晴らしい

78 :
名前無しの登場人物でこんなに書けるの凄いね!
>>75
その姿、人に見られんなよw!

79 :
主人公「楔の神殿でユルトを無視し続けたらどうなるか」

80 :
>>79
無害な黒ウサギの出来上がりですね
神殿の二階で立っているだけの簡単なお仕事です
沈黙の長()

81 :
デモンズの青ニートさんの方が、本当に心折れてるって感じするお。
ダークの青ニートさんは、なんかこう…。さぼってる感が漂う気がするんだよな。
デモンズさんの方が自分的には、こころなしかっこよいキガス。

82 :
>>81
こうやって「デモンズの方が〜」「ダークの方が〜」って言い出す奴が絶対出ると思ったから、総合にしてほしくなかったんだよなぁ…

83 :
まぁシリーズものとして比べるのは悪くないだろう

84 :
>>82
それなら、スレ立てよろしく。
一緒にしている限り、比べられるのは仕方ないだろうけど。
こうギスギスされちゃ、うかつにレスできんね。
単にそう思っただけのレスでも、嫌悪感を抱く人は多いのだろう。
デモンズキャラ×ダークキャラのネタが上がる危険性も出てくるだろうから
そうならない為にも、別々にするのも良いかもしれんね。
まあ、俺はどっちでも良いけど。
嫌ならスルーするなり、NGするなり対処は他にもあるが
別々の方が当たり障りなくて良いのは確かだな。

85 :
>>82
無意味な比較は書き込まない、って選択肢はないわけね
そう思っただけなら自分の中にしまっときゃ良いのに

86 :
あぁもう何やってんだか。
>>85>>84宛な

87 :
無意味な比較かな?青ニートの印象の違いを感じてのレスだったのだが。
「デモンズの青ニートは本当に心折れてる感が漂うな」
これだけだったら良かったのか?
これだけでも、じゃあダークの青ニートは心折れてないのかよって反感もらいそうだなw
ダークとデモンズの両方の感想を書き込みたい時は、
そっと心にしまっておかないといけないみたいだな。

88 :
>>87
それだけだったら別に反感は覚えないかな
実際ダークの青ニートは心が折れ切ってないと思う
だからこそ再びやる気を取り戻せたわけで
…まぁ結果は無駄にだったけど

89 :
拗ねんなよ…>>82の嫌味っぽい書き方も、>>84でいきなり長文でグチグチ書くのも
スレの空気を悪くするだけだってわかるだろ
ちゃんと言葉選べば穏健に意見交換できるはずだろお前ら

90 :
>>89
正直反省してる
本当にごめん

91 :
>>90
オズワルド「フフフフ。免罪ですか?罪はわたしの領分。そしてここはエロパロスレ。
罪の償い方はもうわかっていますね?素晴らしい作品を期待していますよ!ウヘヘヘヘへ!!」

92 :
夜中のテンションで笑ってしまった…!くやしいっ

93 :
>>91
オズワルドさんのナニで女主人公のアソコを贖罪させたい!

94 :
プリシラたんまだー (´・ω・`)

95 :
ロートレクが3人がかりで女主をいじめる話希望!

96 :
ロートレクが3人?
ロートレク(金)
ロートレク(銀)
ロートレク(銅)
とか?

97 :
ロートレクの世界に侵入した女主が返り討ちに、ってまだなかったんだな。意外

98 :
>>96
不覚にもワロタ
>>97
小ネタっていうか話題自体は前スレにいくらか出てたんだけどね

99 :
>>98
あったねー
個人的には、そこにソラールが助けに来るってのが読みたい

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ファイアーエムブレム&ティアサガ第41章 (259)
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