2013年10レズ・百合萌え250: Sound Horizonで百合 第二の地平線 (409) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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Sound Horizonで百合 第二の地平線


1 :2011/01/24 〜 最終レス :2013/09/29
Sound Horizonのキャラクターや中の人などの女の子に萌えるスレです。
前スレ
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1213769262/

2 :
>>1乙です

3 :
僕の理想の>>1乙はどこにいるのだろう!

雪白姫×男装子の王子がキャッキャしている妄想の果てに
ともゆめに目覚めた…なんてことだ!

4 :
>>3
それは新しい ともよちゃんは大人びてそうだから、二人で話してる時に結女さんが「最近の子はませてるな…」とか思ってたらいいのに
ふと思ったんだけど、野薔薇姫が目覚めた後でもアルテローゼが生きてるってことは、賢女ってすごい長生きなんだろうか。
それと、復讐BGMのところでは、アルテローゼは大広間に自由な状態でいるってことだよな、捕らえよって言ってるし
何で逃げなかったのかなーとか、何で老いないのかなーとか考えるうちに、アルテローゼも眠ってたんじゃないかと思いついた。
床で倒れたはずの野薔薇姫がいつの間にか寝台に移動してるのも、アプアルが二人で運んであげたからだと可愛いなーと。
確かネズミーの眠り姫では、妖精(魔女)達が自分たちにも眠りの魔法をかけるんだよな?
もしそうなら、やっぱり魔法をかけたのはアプリコーゼかな。野薔薇姫が目覚めた後にアプリコーゼは出てこないし。
長文&チラ裏スマソ

5 :
歓びて父が催したのは>>1を乙る祝いの宴
よーしお父さん、新スレ祝いも兼ねて野薔薇姫と赤王子の呪い誤爆の話投下しちゃうぞー!
前スレで知恵を貸してくださった皆さんに感謝です。
基本設定・ラストでアルテローゼから野薔薇姫を庇った王子に呪いが誤爆していた。

「呪いと祝いの境界。姫君達の孕む想い。砂のように流れる時の中。
薔薇の塔。二人の乙女。君達は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん……」

6 :
「まさか王子が妊娠するとは思いも寄りませんでしたわ」
「そうだね。僕もこんな予定無かったよ」
「うふふ。女の子同士では逆立ちしたって子供は産まれませんからね」
野薔薇姫達がわいわいとお茶を楽しんでいる。
王子のつわりは先ほどの煎じた薬草でだいぶ収まったようだ。
(本当は野薔薇姫も呪っちゃったんだけど黙ってよ……)
アルテローゼは会話の輪には加わらず、息をし、存在をもしてティーカップに口づけた。
それにしても悪いことをしてしまったな。野薔薇姫はともかく、王子は無関係なのに。
でも呪いをかけてる最中にいきなり飛び出してくる方が悪い。
そうだとも。私は悪くない。フフンッ。
「ですけど、だからこそアルテローゼには感謝しないといけませんね」
「ブッ!」
「いやですわ、アルテローゼ。気高き王女にお茶を吹きかけないでくださいます?」
アプリコーゼが変なことを言いだすから噎せてしまった。
野薔薇姫は睨んでくるし、最悪。
また更に呪ってやろうかとも思ったが良心が痛んだので止めておく。
「何故です、アプリコーゼさん?」
「何故って簡単なことだわ、王子。あなた達二人だけでは決して手に入らなかった子供を、
アルテローゼがあなた達に授けてくださったんだもの。感謝しなくてはね?」
「言われてみると、そうですね」
「少しだけ、感謝しますわ」
「ありがとうございます、アルテローゼさん!」
100年の呪いについてまだ蟠りを感じているらしい野薔薇姫とは対照的に、
王子が無邪気にお礼を言ってくる。アルテローゼは少々居心地悪く思った。
実は王子が女の子じゃなかったらマジやばかったとは言えない……。
たまたま偶然女の子だったからいいようなものを、
もし男性だったらあの呪い誤爆によってどんな被害が出ていたことやら。
ぬだけならまだいい方で、もっと悲惨なことになっていたかもしれない。
例えば……痛すぎて考えたくもない。
「ゲコッ」
「カエルさんまだいたんですの?」
「ゲコ、ゲコゲコゲコッ」
「あらまあカエルさんが何か言ってるわ。聞いてみましょう」
「おーっと、私はそろそろ帰るよ!カエルが鳴くから帰ろうってね、オーホホホッ」
アルテローゼはカエルを引っ掴んで、部屋を飛び出した。
危ない。野薔薇姫も呪っていたことがバレたら、また王国を追われるところだった……。
というかもう既に王国を追われているのだが、アプリコーゼの進言により
アルテローゼは度々城に招かれていた。今回も彼女の招待で姫達とお茶会をしていたのである。
あの野薔薇姫なんぞとお茶会なんて……とは思うが、招かれて悪い気はしない。
アプリコーゼの作ってくる様々なお菓子はとてもおいしいし、お茶も素晴らしい。
王子は単純で素直で思いこみ激しいから、からかい甲斐がある。
野薔薇姫もまあそれなりにほどほど――私の次くらいには可愛い。
べ、別に喜んでお茶会に参加してるわけじゃないんだからね!
呼ばれるから仕方なく参加してやってんだからね!
しかしどうしてアプリコーゼは私などを庇ったり、招いたりするのか……可笑しな女だ。

「あんなに慌ててどうしたのだろうね」
「さあ?カエルが鳴いたから帰るだなんて下手な冗談ですこと」
野薔薇姫は王子と顔を見合わせて、肩を竦めた。
(カエルさんは「野薔薇姫も」と何かを言いかけてたわ。もしかして、アルテローゼ!)
アプリコーゼがすっと立ち上がる。
あまりに突然のことだったので、何事かと野薔薇姫達は怪訝そうに視線を向けた。
「私もそろそろお暇しますね。王子も野薔薇姫もお体にお気をつけて」
「はい。お気遣い感謝します」
「またいらしてくださいませね」
野薔薇姫は王子と共にアプリコーゼを城の外まで見送った。

7 :
アプリコーゼが見えなくなると、二人はじーっと見つめ合った。
結ばれたばかりの若い二人にとっては、二人きりの時間が何よりこの上なく大事なのであった。
勿論、野薔薇姫を救ってくれたアプリコーゼとのお喋りも楽しかったが、
やはり二人きりの時間が一番だった。ただ見つめ合っているだけで、時間が砂のように流れてゆく。
愛し合う二人の時間はいくらあっても足りないくらいだった。
「この間は王子に守られていた私ですけれど、今度は私が王子を守りますわ!
王子のことも、王子のお腹の中の私と王子の子供のことも、みんな守ってみせますわ!」
「無理はしないでほしい。僕は自分の身は自分で守れるし、姫のことも守ってあげる」
「けれどそれでは私の気が済みませんわ。今までの私は誰かに守られてばかりのお姫様でしたが、
これからの時代のお姫様は自ら立ち上がって王子様をも守らねばならないのですわ!」
「そうなの?」
野薔薇姫は力説する。現代の女性には自立が必要であるッ!
故に王子様が迎えに来るのを眠って待っているだけでは駄目だッ!←でも野薔薇姫寝てたよね?
とにかく女性は強く生きるべきなのであるッ!
「だが女の子は守られるべきだ。だって小さくてか弱いんだもの」
「それなら王子も同じですわ。王子も小さくてか弱い女の子です」
「面と向かってそういうこと言われると照れちゃうな」
王子は上気した薔薇色の頬を掻いて、話を摩り替えた。
「そういえば野薔薇姫の誕生を告げたのも、カエルさんだったね」
「はい、そうですわ。母が水浴びの最中にお告げを聞いたのです。
それを聞いた父は大層喜んで、私の誕生を祝う宴を準備したそうですわ」
遠い遠い昔の話。野薔薇姫は俯き、今はいない両親を思った。
優しい父と美しい母。そして幼い私。そんな日々がいつまでも続いてゆくと信じてた。
しかし時は無情に流れ落ち、私は齢十五の朝を迎えて――。
「あ、すまない」
「いいえ。気にしないでください。私は寂しくなどありませんわ……」
「そうだ。僕らもこの子の誕生を祝う宴を準備しよう!」
「えっ」
「確か国中に散らばる神通力を持つ賢女様達を全て招いたのだろう?今から招待状を送ろうよ」
夜伽話に聞かせたことを王子はよく覚えていた。
些細なことも聞き逃さずに憶えていてくれる。野薔薇姫はそれだけで嬉しかった。
「ですけどやめた方がいいと思いますわ」
「何故だい?」
「だってその宴で私は呪いをかけられたのですもの」
「黄金の皿が一枚足りずに?」
「ええ」
「なら僕が黄金の皿を探しに行くよ!」
「いけませんわ、あなたはもうお一人だけの体ではないのですから」
「心配しないで。僕こう見えて丈夫だから」
こう見えてと言っても、王子はどこにでもいる風が吹いたら飛ばされてしまいそうな女の子。
彼女を男性だと思い込んでいたうちは、野薔薇姫の目にはさぞ立派な殿方に見えていたが、
今にして思えば男性にしてはやはり線が細い。
あの細腕で剣を振り回して、棘の生け垣を越えてきたのかと思うと胸がキュンとする。
いや、胸がギュッと締めつけられる。
「あぁ〜あ♪唯 野薔薇姫の夜伽話を聞いただけで、運命感じた〜♪
これこそがきっと僕の《我が子の為に出来ること:使命》なのだろう(キリッ
ならばどんな困難も乗り越えてみせよぉ〜う♪
――そうして僕は産まれてくる子供の為に、黄金の皿を捜す旅を始めたッ!」
「あぁん王子、そのようなお体でいけませんわ」
「ダンケシェーン!うんっ、王子頑張るっ!」
「お待ちになってー!」
行ってしまった……。私も付いていくべきだったかしら。
けれど足手まといになるくらいならここに残っていた方が……。
「あ、あらら……んん、なんだかめまいがしますわ」
「ゲコゲコ」
「カエルさん、帰ってきたんですのね。あら何か私に伝えたいことがあるのかしら?」
「ゲコッ!ゲコゲコゲコッ!」
「日本語でおkですわあ〜」

8 :
――カラカラ、カラカラ。
空を望む薔薇の塔に麻を紡ぐ孤独な音色が響く。
一人きりで作業をしていると寂しい……。いや、寂しいはずが無い!私はいつも一人だった。
勿論ハブられていたからでない。一人でいたかったのだ。そう、ハブられてなどいない!
だが実際普段から賢女仲間にハブられてさ……泣きたくなってきた。
でもいつからかアプリコーゼが色々と私を誘ってくれるようになって……嬉しかったなあ。
しかし、そんなことで気を許す私ではない!大体アプリコーゼは野薔薇姫の誕生祝いのときに、
私のことを皆と一緒になってハブにしたのだから。一生忘れてやらない!
嗚呼、でも一人で作業するのは寂しい……。誰もいないし、少し歌おうか。
「塔の上で、糸を紡ぐ、指先はもう♪あーん、擦り切れて緋い血を出して〜」
「紅く糸巻きを染め上げーたーかーらー♪」
「!?」
「御機嫌よう、アルテローゼ。ご精が出るわねえ」
「どっ、どこから入ってきたッ!?」
「普通に表からよ。ノックしたのだけど、聞こえなかったかしら?うふふっ」
「食えない奴め……。いいから帰れッ!」
「優しい人ね。これから産まれてくる子供達の為に麻を紡いで産着を作ってあげているのでしょう?」
「違う、違ぁーう!」
「うふ、照れなくてもいいのよ。……あらアルテローゼ、指先から血が出ているわ」
「これくらいどうってことない」
「見せて」
「……うん」
ああ、まただ。アプリコーゼと一緒にいるといつもペースを乱される。
こんなはずではなかったのに。気を許すつもりなどないのに。
「大した応急処置も出来ないけれど、ごめんなさいね」
「べ、別に……きゃあっ!」
パクンッと緋く滲んだ指先をアプリコーゼが食べた!
いや食べたというか、舐めたというか……とにかく口に含んだ。
「な、何をするッ!」
「んー?舐めれば治るかと思って……ぺろぺろ」
「キィーッ、食べるなッ!指を離せッ!舐めるなーッ!」
あ、あれ。何故だかおかしい。変な気分。
うう……きっとアプリコーゼが変な魔法をかけたに違いない。
「――これでよしと。おうちに帰ったらちゃんと消毒をして、包帯を巻いておいてね」
「それくらいわかっている!」
「うふふっ。ね、私も麻を紡ぐのお手伝いしてもいいかしら?」
「えっ、あ……見られたからにはただでは帰せない!手伝え!」
「勿論よ、アルテローゼ。一緒に頑張りましょうね」
嗚呼本当にアプリコーゼと一緒にいると調子が狂う。心を乱され、平静ではいられなくなる。
あのときだって姫の誕生を祝う宴に貴女がいたから、私は冷静でいられなくなった。
どうして私を呼んでくれなかったのか?傲慢なる王に私を呼ぶように進言してくれなかったのか?
アプリコーゼは私を裏切ったのだ!そう思った私は祝いの宴席に呪いを添えようとした。
『いいえアルテローゼよ。不吉な言の葉、退けよう』――貴女は私をまた裏切った。
しかし裏切られたと感じていたのは私だけ。
13人のうちで最も発言力のなかったアプリコーゼ――姫へのお祝いを後回しにされていたことから、
それは明白な事実。そんな彼女がどうして王に進言できよう。
心根の優しいアプリコーゼは何も出来なかったことを今も悔やんでいて、
だからこそ私に優しくしてくれるのだろうか。そんなのは悲しい。
「あのときの罪滅ぼしのつもりなら、もう私にちょっかいを出すな」
「いいえアルテローゼ。私はそのような気持ちで貴女に会いに来ているのではないわ」
アルテローゼは僅かながらの期待を込めてアプリコーゼを見つめた。
「私は貴女と一緒にいたいのよ。この気持ちを人は恋と呼ぶのかしら?」
アプリコーゼが真顔でそんなことを言うものだから、アルテローゼは照れてしまいそっぽを向いた。
「知るはずないだろう!…………でも嬉しいよ。ありがと、アプリコーゼ」
「うふふっ。どういたしまして、アルテローゼ」
――カラカラ、カラカラ。
空を望む薔薇の塔に麻を紡ぐ二人の愉快な笑い声が響く。

9 :
――そして十ヶ月後……。
「はあ。まずいですわ。最近太ってるような気がしますわ」
野薔薇姫は姿見に自分を映し、まるまるとしたお腹を撫でた。
王子が黄金の皿を探しに出かけてもう十ヶ月近く経った。臨月もいい時期である。
しかしいつまで経っても帰ってこないどころか、便りさえもなかった。
便りが無いのは元気な証拠というが、心配で仕方なかった。
さて、冒頭のお腹の話に戻る。
愛しい人がいないからといって決して怠けていたわけではない。
しかし心なしか丸くなった気がする。いや気がするどころか、絶対丸くなっている。
お腹なんてぽんぽこりんである。マジぽんぽこりんである。
「でも王子を思うと食が進んでしまいますの。王子はちゃんと食事をとっているかしら?
お腹の子は元気かしら?お腹の子もお腹いっぱい食べてるかしら?
あぁん、私が食べてもお腹の子には栄養はいかないのに。ついつい食べてしまいますの」
カエルさんに愚痴っても仕方ないですわね……。
野薔薇姫は深々とため息をついた。
嗚呼、王子は何処にいらっしゃるのかしら?私、寂しくてんでしまいそうですわ。
「ゲコッ」
「カエルさん、王子は何処にいると思います?」
「ゲコッ、ゲコゲコッ」
「えっ、王子がピンチ?」
「ゲコッ(ちげーよw」
「こうしてはおられませんわ!王子、待っていてくださいませね!」
「ゲコーッ(だからちげーよw」
「一緒に参りましょう。私を導いてくださいな、カエルさん」
「ゲコゲコーッ(話を聞けーッ!」

――ところ変わって古井戸の底で。
「あなたも今日まで陰日向無くよく働いてくれたわ」
「はいっ!」
「身重の体で御苦労でしたね」
王子としてはここで羽ぶとんを振るう簡単なお仕事よりも、
黄金の皿を探して、西も東も、北も南も、雨にも負けず、風にも負けず、
駆けずり回った時期の方がよっぽど御苦労だった。
「いえいえ。ここにくると金の延べ棒がもらえると働き者の女の子から聞きまして」
「もしかしてあの子かしら……でもね、欲深い子にはあげませんよ」
「困ります。黄金の皿が足りないとお腹の子が呪われてしまうのです」
「それは大変ねえ。では帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう!ほれっ!」
大きな門が開くと 黄金の皿が降ってきて あっという間に 全身 覆った!
     ↑黄金の皿が全身に降ってきたらぬような気がした↑
          ↑嗚呼、でもそれは気のせいよ↑

「あっ王子!」
「野薔薇姫!どうしてここに?」
「王子がピンチだとカエルさんに聞いて、ここまで参りましたの!」
「ゲコゲコッ(んなこと言ってない」
野薔薇姫の肩でカエルがけたたましく鳴いたが、見つめ合う二人はそれを完全に無視した。
半年以上離れ離れだったのだ。こう、込み上げてくるものがある。
二人はしっかりと抱き合った。ん?抱き合おうとした……?
「あれ?」
「あらあら?」
うまく抱き合えない。
「もう一度やってみよう」
「はい」
しかしどちらのお腹もばいーんと張っていて正面からは抱き合えそうになかった。
「なんてことだ……」
「まあ……」

10 :
「おかしいな」
王子が首を捻る。野薔薇姫は原因が自分にあると察して頬を染めた。
「あらいやですわ……。あの、私のこと嫌いにならないでくださいね?」
「嫌いになるはずがないよ」
「ありがとうございます。私は王子が旅に出てからというもの、食欲が止まらなくて。
ついつい食べ過ぎてしまいましたの。だって王子のことが心配で、お腹の子も心配でしたの。
こんなぽんぽこりんなお腹、恥ずかしくてたまりませんわ……。王子も嫌でしょう?」
「女の子は少しぽっちゃりしてた方が可愛いよ」
「まあ。ですが、体型も維持出来ないようでは女の子として失格ですわ」
野薔薇姫はしゅんと肩を窄めて小さくなった。
その姿があまりにも可愛くて、愛おしくて、王子は思わず肩を抱き寄せる。
「僕のお腹もこんなに大きくなってしまったのだから、気にしなくともいいんだよ、姫」
「王子のお腹には御子がいるのですから当然ですわ。
私のお腹は単純にまるまる肥えているだけなのですわ。
どうか私のことを嫌いにならないでくださいね……?」
野薔薇姫は頬を押さえて恥ずかしそうに体をくねらせた。
「あははっ、可笑しなことを言うね」
「だって笑いごとではありませんわ」
「僕は外見で姫を好きになったのではない。どんな姫でも僕の愛する女性だよ、野薔薇姫」
「まあどうしましょう、王子。私嬉しくてんでしまいそうですわ」
「おやおや、それは大変だ。また僕のキスで起きてくれるね、姫?」
「はい。貴女のキスで起こしてくださいませ」
何度呪いをかけられようと、私は何度でも愛しい貴女の口づけで目覚めることでしょう。
だから今は、今だけは私から口づけることを許してくださいね。
僅かに踵を持ち上げて、薔薇色の唇をそっと頬へ近づける――。
「ゲコッ、ゲコゲコッ」
「カエルさん、静かにしてないと切るよ?」
「後にしてくださいます?」
「ゲコッ、ゲコゲコゲーッ!」
「あぁもうっ!」
王子が腰の剣に腕を伸ばす。細腕で大剣を振り下ろそうとした瞬間。
「だから野薔薇姫も身籠ってんだよ!」
「まあ……」
「カエルが喋った!?……って、野薔薇姫も身籠ってるぅ?」
「ゲコッ!(うん」
「あら気付きませんでしたわ。私のお腹にも新しい命が宿っていたのですね」
不思議な感じがして野薔薇姫はお腹に手を這わせた。
そんな野薔薇姫の手を王子のあたたかな手が包みこみ、二人は暫くお腹を撫で続けた。
「つらくはなかったのかい?体の異変に気付いたりは?」
「いいえ全く」
「女の子の日が来ないとか」
「そういえばそんな日もありましたわね。100年眠っていてコロッと忘れてましたわ」
「おいおい」
王子はうなだれて、すぐにむくっと起き上がった。
「だが一体誰が?」
「私は浮気などしてませんわ!」
「勿論信じているよ。しかし」
「きっとアルテローゼの仕業ですわ!またしても私に呪いをかけたに違いありません。
しかも私だけでなく王子まで巻き込んで……絶対に許しませんわ!お城に帰りましょう!」
「じゃ、お皿を拾ってっと」
大きなお腹を抱えながら、王子が地面に屈みこんだ。
野薔薇姫もそれに倣って屈みこんで黄金の皿を拾い集める。
「一枚、二枚、三枚、四枚――」
「――十枚、十一枚、十二枚、十三枚」
「まだまだ沢山ありますわね」
「うん、これだけあれば大勢呼べるね」
結局全ての黄金の皿を拾い集めるのに夕刻までかかり、お城についたのは深夜であった。

11 :
「ただいま帰りましたわー。さあ誰ぞアルテローゼを捕らえよ!」
「ただいま。っていきなりぃ?疲れてるし明日にしようよ……彼女にも悪気はないと思うよ」
「王子は甘いですわ!お菓子の家より甘いですわ!
気高き王女を二度も呪い、王子まで巻き込んだ罪は重いのですわ!」
「まあまあ」
ぷんすか怒る野薔薇姫を王子が宥めていると、そこにアルテローゼが引きずられてやってきた。
随分と早いご到着だ。その後ろからいつも通りのニコニコ笑顔なアプリコーゼも付いてくる。
「あらおかえりなさい、野薔薇姫、王子」
「「ただいま帰りました(わ)」」
「ちょうどアルテローゼとお茶をしていたのですよ。勝手にお城を借りてしまってごめんなさいね。
でもお城で野薔薇姫達が呼んでいると言わないとアルテローゼったら来てくれないのよ。
私が一人で招待するとね、意地を張っちゃって……」
「余計なことを言うなッ!」
アルテローゼが顔を真っ赤にして暴れ回る。しかし両腕を掴まれているので普段ほどの迫力はなかった。
「それで今日はどうしたのですか?」
「アルテローゼが気高き王女を二度をも呪い、王子まで巻き込んだので
今日こそは本気で王国を追放しようと思いましたの!」
「あらまあそれは物騒ですね。王女にかけられた呪いとは?」
「御子を孕む呪いですわ!」
「?」
アプリコーゼがきょとんと目を瞠る。思わず野薔薇姫と王子も同じように目を瞠ってしまう。
「あら野薔薇姫も気付いているのだと思っていたわ」
「全然気付いてませんでしたわ!」
「王子と同じときにかけられていたのよ。でもね、それは呪いではないかもしれないわ」
「「呪いではない?」」
野薔薇姫と王子は揃えて小首を傾げる。その様子はさながら番いの小鳥のようであった。
「前にも言ったように、あなた達二人だけでは決して手に入らなかった子供ですもの。
アルテローゼは呪いではなく、あなた達が出会った記念に祝いの魔法をかけた」
「うーん、そう言われてみると」
「そうかもしれませんわ」
「違う!私はそんなつもりでは……!」
「アルテローゼはあんなこと言ってますけど、本当は照れてるだけなのですよ」
「違う違う!」
じたばたしているアルテローゼをにこやかに見つめて、アプリコーゼが止めを刺した。
「アルテローゼは二人の赤ん坊のために産着まで用意しているのですよ、ほら」
アプリコーゼの手には可愛らしいピンクの産着が二つ。
これはアルテローゼが手に血を滲ませながら作ったものらしい。
(血が滲んだからピンクになったのではない)
「お優しいですね、アルテローゼさん」
「見直しましたわ。そうですわね、特別にこの国に戻ることを許してやっても良いですわ」
「ッ!これは別に、お前達のためでは……だってその子は私の子供なんだから、
私の子供のために作っただけだからねッ!これ以上余計なこと言うつもりならまた呪ってやろう!」
「ああっ!う、うう……」
「王子?……まさかアルテローゼ、また王子に!?」
「えっえっ、私まだ何もしてない」
うろたえるアルテローゼと野薔薇姫をよそに、アプリコーゼがうずくまった王子に駆け寄る。
「いけない、赤ちゃんが早く外に出たいと暴れているのだわ。皆さん、準備をお願いします!」
「あら、あらら?どうしたのでしょう、私もお腹が痛くなってきましたわ」
「あわあわ。え、えっと、私は何をしたらいいのアプリコーゼ!」
「大丈夫よ、私に任せて。アルテローゼ、私の助手をお願い!」
「わ、わかった!」
その日、彼女達にとってめでたいことが起こった。
一つは野薔薇姫と王子、愛し合う二人それぞれに一人ずつ御子が産まれたこと。
もう一つはアルテローゼが御子の養育係として、再びこの国の土を踏めるようになったこと。
後者を一番に喜んだのは言うまでもなくアプリコーゼであった。
――めでたしめでたし。

12 :
「祝いと呪いとは、案外似たようなものなのかもしれないね」
「デ、復讐ハ?復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」
おしまい。


ラフレンツェ関係なくなってしまったすみません。
ホレお姉さんに黄金のお皿をもらう展開はいつだかの本スレで
ホレお姉さん(=アプリコーゼ?)がホレ子に黄金あげちゃったから一枚足りないんじゃね?
という話を参考にしました。
改めて前スレで知恵を貸してくださった皆さんありがとうございました。
>>4
即ちアプリコーゼは…サンホラらしい悲恋に仕上がるね
姫のために城全体に魔法をかけるが自分にはその効果が無い
もうアルテローゼには会えないけれど、姫のために…だったら泣ける

13 :
なんか こう ほのぼのしました ありがとうございます

14 :
>>12
野薔薇姫も赤王子ちゃんも天然ボケで可愛いw
王子頑張るっ!はそう言われてみれば赤王子の日のネタだったな
アルテローゼは相変わらずツン:デレの黄金比で、みんなの保護者アプリコーゼさんが頼もしいですw

15 :
GJ!!
ニヤニヤしました!ありがとうw

16 :
>>12
GJ!相変わらず王薔薇かわいいなw 機会があったら是非また王子×雪白姫も書いてほしいものだ
Märchenの流れ豚切りで申し訳ないが、クロセカ萌えの同志はいないのだろうか。
歌姫二人が自分の中でのトップなんだが

17 :
>>16
同志…!!歌姫2人は萌える。
俺的には、ほわほわしてると見せかけて腹黒いジュリエッタとツンデレロベリア…って感じに妄想。なんかアプアルも似たものを感じるがw

18 :
>>17
おお…!仲間がいて嬉しい!
俺は、腹黒×ツンデレなジュリロべもお姉さん×ピュアなロべジュリもいける。
ただ、前者はやっぱりアプアルと同じ香りがするので、どちらかというと後者派かな…
ロべジュリSS書きたいんだが需要あるのかな

19 :
需要あるよ、ありまくるよ、是非ともお願いします
つっけんどんながらも意外と面倒見のいいロベリアお姉様が
田舎から出てきたばかりのジュリエッタちゃんをお世話してあげてたら萌える
「仕方なく面倒見てやってんだからねッ!勘違いしないでよねッ!
あんたがトチるとライバルの私の格まで下がるでしょ!しっかりなさい!」
「はい、お姉様!頑張ります!」みたいなのがおいしいです
でも腹黒ジュリエッタ様も捨てがたい…

20 :


「ジュリエッタ」
ロべリアはきっと、魔法が使える。
小石をケーキに変えてしまったり、枯れてしまったお花を元通りにしてしまうような魔法とはちょっと違う。
ロべリアの声は、何でも歌に変えてしまう、魔法の声だ。
たとえば、二人でお話しているとき。
彼女の発する言葉のひとつひとつが、彼女が呼んでくれるわたしの名前が、音として耳を抜ける。
一つ話題が終わるごとに、わたしはなんだか長い音楽を聴き終えたような気分になるのだ。
「ジュリエッタ、聞いてる?」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい」
少し不機嫌そうな顔で、ロべリアがわたしの顔を覗き込んできた。
聞き惚れていたとは、恥ずかしくてさすがに言えない。
困ったように笑って誤魔化すと、もう、と一言だけ言って黙り込んでしまった。
…あ、あれ、もしかしなくてもご機嫌を損ねちゃった…のかしら。
そうだ、ロべリアは小さいころから大勢の使用人に囲まれて生活してきたのだ。
わたしという対等な話し相手が出来たことは嬉しいって、前に言っていたけど…
自分の話を聞かない人になんて、きっと今まで出会ったことがないのだろう。
「ごめんね?お昼だから、その、少し眠たくなっちゃって。ちゃんとお話聞くから、怒らないで?」
「…………一回、一回だけよ。次やったら、もう一緒にピアノ弾いてあげないんだから」
ロべリアの眉間の皺がふっ、と消えた。
安堵から、自然に顔が綻ぶ。
「ジュリエッタ」
ああ、やっぱり。
彼女の歌はなんでも大好きだけど、やっぱり一番はこの歌かしら、なんて。
「顔がニヤけてるわよ」
「えっ!?ほ、本当に?」
「嘘」
「…え?あ、遊ばないでよー!」
この歌が聴けるのは、世界でわたしだけなのだ。

end
お城で二人でお茶してる…イメージ
初SSなもんで色々変なところとかあるかもしれんが申し訳ない
ありがとうございました

21 :
>>20
GJ!
お姉さん×ピュア、イイな…!!

22 :
GJ
魔法の歌声。うまいなあ

23 :
GJ
歌姫萌えるなぁ
ところで高級遊女萌な同志はいないか?

24 :
>>23
ヘタイラよいよね 自分はストレートにカッサンドラ×メリッサ派
メリッサの「お姉さまぁ〜ん」だけでものすごく妄想が広がる
メリッサがミーシャに若干キツいのも、ちょっと嫉妬しているというようにしか考えられなくなってきた
お姉さま大好きなメリッサと、「仕方ないわねぇ、いつになったら姉離れできるのかしらぁん」とか言いつつ満更でもないカッサンドラおいしいです

25 :
ちーちゃんとともよちゃんの百合ネタは難しいか

26 :
ともよちゃんのツイッターアイコンの写真に雪白姫と小人の人形しか写ってない
ということはお花の上に一緒に飾ってあった青王子人形はゆめさんにあげたんだろうか
渡すところを想像すると和むw

27 :
>>25
考えてみたけど難しいなぁ。ちーちゃんは継母か井戸子がベスト

28 :
ホレ子と雪白姫のどちらから投下しようかと悩んでたらドンピシャな話題がキタ!
投下するなら今のうち
ホレ子と古井戸の面々の話
名前がわからないキャラクターで三人称の話を書くのは難しい
硝子と薔薇がやたらと書きやすい理由がヒロインの名前がわかってるからだと気付いた
とりあえずホレ子一人称で誤魔化した

「生との境界。憾みを抱いた少女。迷いの淵で揺れながら――。
古井戸の境界。残された者の想い。君はいつ気付くだろうか。
さぁ、唄ってごらん……」

ぱたぱた、ぱたぱた。
今日も元気に羽根ぶとんを振るう。
ふわふわ、ふわふわ。
地上に真っ白な雪の花が降り注ぐ。
私は今日も、お父さん(ファーティ)頑張っているよ!
「さあ今度はこっちのおふとんもお願いね」
「はーい、ホレおばさん!あいたっ!」
「これ!おばさんじゃなくて、お姉さんとお呼びなさい」
ポカッと雪の結晶が先っぽについた可愛らしい杖で頭を小突かれる。
このおばさん……じゃなくてお姉さんはホレおば、お姉さんと言って
よくおとぎ話に出てくるおば……えっと、お姉さん。
私の仕事はホレお姉さんのおうちを綺麗にすること!
今日もせっせと炊事洗濯。でも一番大切なのは羽根ぶとんを振るうこと。
振るうと地上に雪が降るんだって。ということは私は可愛い雪の妖精?わおっ!
あれ、なんだか……大事なことを忘れているような?
ま、いっか。そういうわけで、私は明日も、お父さん(ファーティ)頑張ってみるよ!

くるくる、くるくる。
糸車が回り続ける。いつも見る夢。
くるくる、くるくる、
夢の中では私は糸車を回し続ける。
私、大事なことを忘れてる気がする。
指先が擦り切れて緋い血を出して、糸巻きを紅く染め上げる。
私は糸巻きについた血を洗い流そうと井戸を覗きこんで……。
「ああっ!」
夢の中の私が悲鳴を上げる。
手にした糸巻きが井戸の底に吸い込まれるように落ちてゆく。
いつもならそこで目覚めるはずの夢が今日は続いた。
泣きながら家へ帰った私を待っていたのは、意地悪な継母と性悪な義妹。
糸巻きを落としてしまった私を酷く怒鳴りつける
「この愚図っ!潜ってでも取ってきなっ!じゃなきゃ晩飯は抜きさっ!」
私はどうしても糸巻きを取ってこなくてはと宵闇の迫る道を走った。
晩御飯を食べたいから急いでいたのではない。
それもちょっとはあったけど、でも急いでいた本当の理由は……。
「はやく家に帰りたかったから……」
私は暖かなベッドの上で目覚めた。柔らかな羽根ぶとんを押し退けて起き上がる。
私はどうしても糸巻きを取ってこなくてはいけなかった。
だって、はやく家に帰りたかったから!
意地悪で性悪な継母と義妹だけど、私に残された大切な家族。
捨てられたくない!そんな思いで私は井戸の底へと落ちたのだ。
「でも私はんじゃったの?天国なの?気のせいなの?わからないわ……」
もしんでいたとしても、家に帰りたい。
もう会えなくても、二人に会いたい!

29 :
「ホレおばさん!」
「お・ね・え・さ・ん!」
「あ、えとホレお姉さん」
「おはよう。今日も天気がいいわ。おふとんを振るう絶好の日和ねぇ」
ホレお姉さんに促されて台所に立つ。朝ご飯を作るのも私のお仕事。
「今日は起きるの遅かったわね。お腹空いちゃった。はやくお願いね」
「うんっ、私頑張るっ!」
パンケーキと目玉焼きを焼いて、昨日用意しておいたスープを温め直して、
野菜を適当に盛り合わせて、テーブルに並べれば出来上がりっ!
「いただきます」
「ホレおばさん」
「お姉さん」
「お姉さん」
「よろしい」
「お願いがあるんです。私、家に帰りたい!」
小さく切ったパンケーキを口に運ぼうとしていたホレおばさんの目がまんまるになる。
ナイフとフォークを取り落とす。ガシャンッと乾いた音がした。
ついでに大きく見開いた目まで落っこちてしまうのではないかと、
私はハラハラしたが別にそんなことはなかった。
「今、何と言いました?」
「家に帰りたいんです」
「どうして?私の元で働いている方がきっと幸せよ」
「それでもどうしても帰りたいんです」
「……」
ホレおばさんは表情を曇らせ、それ以上何も言わずに自室へ引き返した。
私、いけないこと言っちゃったのかな?
ホレおばさんには大事にしてもらったのに、家に帰りたいなんて悪いこと言っちゃったかも。
でも帰りたい。けどホレおばさんを悲しませることになるのかな……。
暫くしてホレおばさんが部屋から出てきた。
と思ったらパンケーキと目玉焼きを持って引き返して行った。
空腹には勝てなかったらしい。

炊事洗濯全て終わらせて、私はおうちの前の草原で寝そべって空を見上げた。
今日はホレおばさんが部屋から出てこないから羽根ぶとんを振るえない。
今朝言われたことを思い返してみる。
『私の元で働いている方がきっと幸せよ』
そうだ。ここにいる方がきっとたぶん幸せ。
無理難題を押し付けてくる意地悪な継母もいないし、炊事洗濯全て押し付けてくる性悪な義妹もいない。
ここは平和で、時間もゆったりとそよ風のように流れてゆく。
けれどあの家はお父さんとの思い出が沢山詰まった家で、
継母や義妹との(あまり楽しくはない)思い出もいっぱい詰まった家。
帰りたい、ような。帰りたくない、ような。
「どうしよう!お父さん(ファーティ)私、全然わからないよ!」
でもお父さんは雨にも嵐にも負けずに大海原を乗り越えたんだよね。
私は今も覚えている。お父さんが聞かせてくれた話。
海の向こうの大きな街の話。大海原で出会った巨大な鯨の話。
波間を飛び跳ねるイルカの群れ。歌う海鳥に誘われ、迷い込んだ珊瑚の樹海。
お父さんは数々の困難を乗り越えて、大海原を渡ったのに
お父さんの娘の私が意地悪されたくらいで負けてたまるものか!
私は帰るんだ!帰って、復讐してやる!

30 :
「ここにいたのね」
ホレおばさんが頭上から覗き込んでくる。私は慌てて飛び起きた。
お仕事はちゃんと終わらせたつもりだけど、こんなところで寝転がってたら怒られちゃう!
「あっ、ホレおばさん」
「だ・か・ら」
「お姉さん!」
「よろしい」
「私やっぱり家に帰りたいです!」
「……」
「ホレお姉さん、お願い!」
ホレおばさんは俯き、すぐに顔をあげた。一瞬だけ悲しそうに顔を歪ませて、笑顔に戻る。
「わかったわ。あなたも今日まで陰日向なくよく働いてくれたわ。
帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう!ほれっ!」
ホレおばさんが雪の結晶の杖を振るうと、目の前に大きな門が現れた!
大きな門が開くと 黄金の雨が降ってきて あっという間に 全身覆った!

美しい草原に宵闇が訪れ、ホレおばさんはふっとため息をついた。
あの子もまた帰ってしまった。
帰郷を望む者、怠惰ゆえにこちらから追い出す者。
数々いたけれど、結末はいつも一緒。
「これでまた、寂しくなるわね……」
また一人ぼっち。羽根ぶとんを振るって地上に雪を降らすだけの簡単なお仕事が始まる。

「キッケリキー!うちの黄金のお嬢様のお帰りだよぅ」
「ただいまーっ!」
扉を蹴破る勢いで家に帰ると、玄関には大きな箒で一生懸命掃除をしている義妹がいた。
箒があまりに大きいのでまるで義妹の方が箒に振り回されてるようにも見える。
下手くそ。そんなんじゃ日が暮れても綺麗にならないから。
心の中で悪態をつく私を見るなり、義妹は飛び上がって、箒を放り出して室内に逃げ帰っていく。
「ムッティ、ムッティー!あの子だよ、あの子が帰ってきたよー!」
私のことを言ってるみたい。
その騒ぎを聞きつけた継母が慌てて台所から飛び出してくる。
「本当かい、ちーちゃん。……ひゃっ!」
「ムッティ!」
義妹が継母にしがみつき、継母は私を見てやはり飛び上がる。
まるでお化けでも見たかのような態度に、私はムッとした。
「ただいま!」
「……」
「……」
「ただいまっ!」
「お、おかえり」
「どこに行ってたの?」
義妹が恐る恐ると近づいてくる。私は胸を張って答えた。
「井戸の底のホレお姉さんのところよ!」
「???……でもよかったあ、帰ってきてよかったね、ムッティ」
「えっ?」
「この愚図っ!」
継母にいつものように怒鳴られて、私は身を竦める。
「本当に井戸に潜ることないだろう、この愚図っ!」
「で、でも潜ってでも取ってきなって」
「それは例えだよ。ああもうそんなこともわからないなんて、やっぱり愚図だねっ!」
なんか不条理に怒られてる気がする……。
「帰ってきてよかった。あのね、愚図がいなくて、あたい、たいへんだったんだよ」
「炊事洗濯全てしなきゃならないから?」
「そう。まだ半日だけど、とってもたいへんだったんだから」
やっぱり帰ってこない方が良かったかな。
私のこと、ていのいいお手伝いさんだと思ってる!ううん。これでは奴隷や下僕よ!

31 :
「それに愚図がいないとさびしい。そうだよね、ムッティ」
「ち、ちーちゃん!余計なこと言ってはいけません」
「さびしい?」
「そうだよっ!あんたがいないと意地悪する相手がいなくて退屈なんだよ!」
「ムッティ、昨日と言ってることちがう」
「ちーちゃん!」
継母が義妹を黙らせようと腕を引っ張って、家の奥へと連れて行こうとする。
しかし義妹はその腕を振り払い、私の元へ駆け寄った。
「あたいも、愚図がいなくてさびしかった」
「意地悪言う相手がいないから?」
「ううん。わかんないけど、いないとさびしかった!もうどこにも行かないでっ!」
義妹が突進するように抱きついてくる。私は避けきれずに鳩尾にタックルをかまされた。
「ぐはあっ!」
わざとやったのなら赦さないからね……。
「よくわかんないよ。離して、ちーちゃん」
「やだやだやだ!離さない、離さないから!」
「……」
必に抱きついてくる小さな義妹が何だか不思議と可愛く思えて、
私は戸惑いながら彼女の小さな背中に腕を回した。
「ちーちゃん」
「……おねえちゃん」
義妹はぎこちなく私を呼ぶ。
ああ、そうよね。血は繋がってないけど、私はこの子のお姉さんなんだよね。
「あははっ。私もう離れないわ、ちーちゃん!」
私も意外と可愛いところもある義妹をギューッと抱きしめる。
すると義妹が悲鳴をあげた。
「痛いっ!痛いよ、離してよ、おねえちゃん!」
「どうしたの、ちーちゃん?」
じたばたしだす義妹を見て、継母が慌てて私達を引き離そうとする。
「ちーちゃんに何をするんだい。今すぐ離しなさい!」
「えー、でもちーちゃんが離れたくないって言ったんだしぃ?」
「痛いよー、痛いよムッティ」
「こんなに良い子がどうしてこんな目に!いいから離しなさーい!」
継母の馬鹿力で私達は強引に引き離される。義妹のぬくもりが消えて、少しだけさびしかった。
それは義妹も同じようで、彼女はほんの一瞬だけ切なげに私を見上げた。
しかし継母が私達の間に入り込んで、それを遮った。
「大丈夫、ちーちゃん」
「うえーん、愚図の胸、かたいよー痛いよー」
「この愚図っ!胸パット山盛りで大きく見せかけてるね、良い気になるんじゃないよっ!」
ポカッ。頭を殴られた。とてもいい音がした。
空っぽだといい音がするって聞いたことあるけど、本当かなあ?空っぽってどういう意味なのかなあ。
んん?そういえばなんか胸の部分が重いなー。硬いってのも案外当たってるのかも……。
もぞもぞと服の中を探ってみる。硬いものが指先に当たる。引っ張り出してみる。
「わあ!」
服の中から金の延べ棒が出てきた!
「なっ!?」
「それなあに、おねえちゃん?」
「ホレおばさんがくれたのかも」
「すっごーい。よくわかんないけどすっごーい!」
「ねー、すごいね。すごいねー、ちーちゃん!」
きゃいきゃいしてると金の延べ棒に目が釘付けだった継母が義妹の頭を撫でた。
「貴女も貰っておいで、ちーちゃん!」
「うん、あたい頑張る……」
とぼとぼと義妹が井戸の元へと歩いていく。
その背中はとても小さく、義妹の心細さが手に取るようにわかった。
私はふと面白いことを思いついた。
私は復讐しに帰ってきたんだもの。二人に復讐しないとね。
「私も一緒に行くわ!」
「ほんと、おねえちゃん!」
「うんっ、私も頑張るっ!一緒に頑張ろうねっ!」

32 :
私を呼び留める継母の声を無視して、私達は手に手を取って井戸の底へと落ちていった。
目覚めれば綺麗な草原。幾千の花が咲き誇るホレおばさんのお庭。
憾みの唄を指揮する男が私達に手を振る。男の抱いていた女の子が暴れ出して、何か叫んでいる。
私達は彼らを無視して草原を走り抜けた。
喋るパンの願いを聞いてシャベルで全部掻き出して、
熟しきった林檎の木を揺らし、散らばる林檎を積み上げるだけの簡単なお仕事!
そして辿りついた可愛いおうちに佇んでいたのは――
「あら帰ってきたのね」
「ただいま、ホレおばさん!」
「お・ね・え・さ・ん!」
「えとホレお姉さん」
「おかえりなさい。おうちはどうだった?」
私は家に帰ってからのことを説明して、誇らしい気持ちで義妹を紹介した。
「私の義妹です!」
「まぁ可愛い子ね。こんにちは」
義妹は警戒しているのか、単に面倒なだけか、ホレおばさんを無視した。
「おや悪い子は瀝青塗れにしないとねぇ」
あららっ。それも面白そうだけど私の考えた復讐はもっと凄いのよ。
こんなところで簡単に終わらせてあげないから!
「ほらちーちゃん、ご挨拶は?」
「……こ、こんにちは」
「よろしい。ではあなたにも今日からここで働いてもらうわ」
「えーいやだよぉ」
「大丈夫。私がお仕事教えてあげるからね」
「お仕事いやだよー」
愚図る義妹の手を引いて、ここでの仕事を教える。
そして私は炊事洗濯全てやらなくて(・∀・)イイ!
「これ!あなたもお仕事するの!」
「あいたっ!」
日が替わり――
「そろそろ帰らないと親御さんが心配するでしょう?また遊びに来てね。ほれっ!」
ホレおばさんに見送られて大きな門をくぐれば――
「キッケリキー!うちの黄金のお嬢様方のお帰りだよぅ」
「ただいまーっ!」
「ただいま、ムッティ!」
扉を蹴り飛ばさんばかりの勢いで帰宅ッ!
慌てて飛んでくる継母。私のことは完全に無視して、ちーちゃんを抱きしめる。
「おかえりなさい、ちーちゃん。無事でよかったわ」
「ただいまムッティ。何かお手伝いすることは?」
「えぇ?」
「あたい、ムッティの役に立ちたい!」
「どうしたのちーちゃん。何か悪いものでも食べたの?」
「食べてないよ」
無邪気に笑う義妹。戸惑う継母は私を睨み、怒鳴りつけた。
「この愚図っ!私のちーちゃんになんてことをしてくれたんだい!キーッ!」
「あははっ。ちーちゃん、一緒にお夕飯作ろっ!」
「うんっ、おねえちゃん!」
健やかで良い子な私の復讐!
性悪で意地悪が大好きだったちーちゃんを健やかな良い子にしちゃった!
今度は意地悪で低能な継母を大変身させちゃうから、楽しみにしててねっ!
しゅびどぅびどぅびどぅー!ダンケシェーン!(ぱちぱちぱちー)

「今回は随分と可愛い復讐だったね。復讐、だった……よね?」
「コンナノ駄目ヨッ!私達ノ復讐ハ、モット……!」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」

33 :
姉妹ってどうしてこんなに萌えるんだろう
復讐になってないね、ごめんねエリーゼ
ホレ子行方不明で継母とちーちゃんが慌ててたら可愛い
本当は心配だったのにホレ子帰宅後はまた冷たくしちゃう
でも以前より少し優しくなってたらさらに可愛い
>>26
「せめて私の代わりにこの子を一緒に連れて行ってね」
「ぜったい、ぜったい、また一緒に歌おうね!」
「うん、約束さ」
またライブに参加してほしいなー

34 :
>>33
GJ!ちーちゃんのおねえちゃん呼びの破壊力を甘く見ていた…ちーちゃん可愛いよちーちゃん
これは一応ホレ子×ちーちゃんのフラグなのか…な?
今度継母を連れて行ったときには、ホレおb…お姉さん×継母フラグが立つんですね分かります

35 :
おらこういうの待ってただよ!

36 :
ちーちゃんくらいの年頃だとお姉ちゃんのお手伝いが楽しくて仕方ないだろうな
何でも真似したがって後ろをついて回ってたりしたら萌える
赤王子ちゃんに金の延べ棒の話を教えてあげた働き者の女の子がちーちゃんだとしたら胸熱

37 :
>>33
やりとりの可愛さに悶えた
ともよちゃん結女さんがまたライブで
キャッキャウフフしているところが見たいぜ…

38 :
メルヒェン出てからえらい盛り上がってるな
もう前の歌姫の需要はないか…そうか…

39 :
>>38
そんなこと言わないでくれ…!!
かおゆうかお、れみまり、みきれみ、はるみきはる、みんな大好きだ!!

40 :
盛り上がるのはいいことだよ
このスレは元々中の人萌えの横でキャラ萌えしたりとカオスだったじゃないか
今更新旧が入り混じろうと誰も気にしない
この際地平線飛び越えようが、中の人×キャラだろうがなんでもどんとこいですよ
過去の地平線もマルチェンも中の人ネタもどしどしお待ちしてますよー

41 :
中の人×キャラと聞いて
ドSで性格歪み気味だけど実は淋しがり屋の雪白たんと優しいお姉ちゃんなともよちゃんを受信してしまった
ロリコンと蔑むなら蔑むが(ry

42 :
>>38
ゆーかお好きな自分もROMってるだけでまだいるから安心してくれw
過疎ってるより賑わってたほうが嬉しいから新旧関係なくssが上がるのを期待

43 :
みきさんのブログ見てて、
手料理を囲んできゃっきゃっ
とか、お料理教室的なのを開いてきゃっきゃっ
という電波を受信した。
既出だったらごめんね

44 :
>>43
みき先生…いい…
俺的には、みきれみ→ゆうまり→かお→しもつきん くらいの順番で料理上手なイメージ

45 :
>>44
俺は、みき>れみまり>はるかお>ゆう かな
ゆうきが料理下手だったりしたら萌える
というかどこかでそんな話を聞いたような気もする、気のCeuiかもしれないけど
女優さんたちだと、ぶらん子≧ホレ子>火刑子>エリーザベト・青髭子>野ばら姫・雪白姫って感じ
野ばら姫は自己流アレンジで悲惨な事態 雪白姫は消し炭にしそうなイメージ
というか貴族・王族が多いから料理の経験少ない人が多そうだな

46 :
>>45
たしかに料理ヘタなゆうき萌えるな…
正月の煮物って母親と作ったんだったっけ?
しもつきんはうまくいった例がないから料理自体やらない…とか、そんな話を聞いたんだが…
ぶらん子とホレ子は上手そうだなー、シスターも料理は習ってそうだし
スレチで悪いが、青髭子より青髭の方が料理上手だったらかわいい夫婦になりそうだ

47 :
>>46
なんだ…と…そうなのか…
じゃあ、しもつきんとゆうきに上手い人二人がついて教える…みたいな感じだろうか。
個人的にはしもつきんにはみきさん、ゆうきにはれみこがついてほしい
それで放ったらかしにされた二人がちょっといじけてたりしたら 可愛い のに
そういえばもうすぐバレンタインシーズンか。チョコネタ投下されたりするかな

48 :
なに雪白が料理下手だと…
白雪姫は小人さんちの家事を手伝うからおうちにいさせてもらったということで
雪白姫も意外に料理上手設定で書いていた
なんてことだ…

49 :
何度もすまない
>>48
いや、全然構わないと思うぞ!俺は!
あくまで俺の個人的な想像だからな、>>48にも自分のイメージがあるし、人それぞれでいいと思うぞ
いや、決して野ばら姫と雪白姫に左右からすごい料理押し付けられてあたふたしてる王子が見たいとかそんなことは

50 :
>>49
レスどうもです
よく考えれば家事手伝うのはデゼニーだけだったかもしれない
> 野ばら姫と雪白姫に左右からすごい料理押し付けられてあたふたしてる王子
こういうことですね
メル「バレンタイン。追い詰められた王子。君は何故ry唄ってごらん」
二人「「さぁどうぞ召し上がれ」」
王子「な、口にするものとは思えないおぞましい紫色のデロデロ……」
薔薇「野薔薇姫特製チョコケーキですわ。隠し味に(ピー)を入れましたのよ」
王子「チョコって色では無いのですが」
雪白「私のもちゃんと見てよぉ」
王子「こっちはこっちで身の危険を感じる黒い物体……」
雪白「クッキーよ。失礼しちゃうわ!」
王子「消し炭にしか見えませんが」
雪白「いいから食べなさぁーい!可愛い雪白姫の手料理なのよぉ?」
薔薇「召し上がってくれますか?くれますよね?全部食べてくださいね?食べろ」
王子「イヤちょっと待っ――嗚呼、なんてことdもごもご」←強引に押し込まれた
雪白「おいしい?おいしいよねぇー。雪白姫様のお手製クッキーだものねぇ?」
薔薇「ふんふん。とてもおいしい?まあありがとうございます。嬉しいですわあ」
王子「」←返事がないただの屍のようだ
メル「なるほど。それで君は毒されたわけだね。如何でしょうエリーゼさん?」
エリ「バーカw」
メル「復讐はなかったことにw」

51 :
紫ww
なんとなく王子ちゃんは料理上手そうなイマジナシオンがある
嗚呼でもそれは中の人補正ってやつか…?

52 :
期待せずに戻って来たら旧歌姫の名前がいっぱいで思わず涙目
やっぱりまたここに通おうと思った みんなありがとう
過疎ってることに比べたら賑わってるほうが嬉しいよな
自分も今の歌姫達が仲良しなのももちろん好きだし
そして旧歌姫のことも忘れずに話題にしてくれたら嬉しい
ところでアルテローゼが一番可愛いと思っているのは自分だけだろうか

53 :
>>52
同志だ!!アルテローゼ可愛いよな…!!
アルテローゼ好きすぎてにハマりすぎて生きるのがつらい…
中の人×キャラになるが、すぐ拗ねて意地を張るアルテローゼの頭を撫でて甘やかすみきさん…なんて萌えないか

アプアル前提みき+アル
みき「…(可愛いなぁ…)」←頭なでなで
アル「…ッな、何よ…!!」
みき「アプリコーゼさんが野薔薇ちゃんに構ってばっかりで淋しい?」
アル「違っ!!どうして私が…あんなやつ別に…!」
みき「…あ、アプリコーゼさん」
アル「っ!?」
みき「あ、気のCeuiだった。ごめんなさいね?」
アル「…な、」
みき「ふふ…アプリコーゼさんが来るまでお茶でもしてましょうか。ローズティーでいい?」
アル「笑うな!!…アンタといいアイツといい…癪に障る…!」
みき「もっと素直にしたらいいのに…お砂糖いくつだったかしら?」
アル「…っ…ひとつでいい」
みき「あ、お茶する気になってくれた?」
アル「紅茶が飲みたいだけよ…!」
みき「はいはい」
アプ「あら、2人でお茶?」
アル「…!!」
みき「えぇ。アプリコーゼさんもどう?」
アプ「喜んで。どうしたのアルテローゼ、そんな拗ねた顔をして…」
アル「…拗ねてなんかない…!!」
みき「アプリコーゼさんがいなくて淋しかったのよねぇ?」
アル「違う!!アンタ適当なこと言うんじゃないよ!!」
アプ「あらそうなの?ごめんなさいね、淋しい思いをさせてしまって…」
アル「だから違うって…!!」
アプ「今度お菓子を焼いてくるから、機嫌を直してくれないかしら…?」
アル「もういい…!」
みき「仲直り?相変わらず仲良しねぇ」
アル「な、仲良くなんて…!!」
アプ「ふふ、そうでしょう?」
アル「アンタと仲良くなった覚えは…」
アプ「あら、この紅茶おいしいわね…」
みき「ありがとう。アルテローゼがくれた薔薇で淹れたの」
アプ「みきさんは紅茶淹れるの上手よねぇ…」
アル「話を聞け!!」

…みたいな。
他の歌姫たちがアルテローゼをからかいに、お茶会に参加しててもおいしい(笑)
無駄に長くなってしまって申し訳ない…うまくまとまらなかったしorz

54 :
>>53 GJ!!
やっぱりアルテローゼさんかわいい!

55 :
>>52
おかえり!
アルテローゼ可愛いよアルテローゼ…>>53で中の人×キャラに目覚めた

56 :
初SSです。ラフレンツェに冥府の番人を継いだ後のアプアル妄想。

「そんなに彼が欲しいなら、恋の呪いをかけてしまえばいいじゃない」
「なっ!?」
またこいつは、いきなり押しかけてきて自宅のように寛いでると思ったら……!
しかも、アドバイスのようでいて平然ととんでもないことを言っているのが恐ろしい。
「うふふ、隠してたつもりなのかしら? 貴女がずうっと前から彼を愛してることくらい、
私にはお見通しよ。ねぇ、純潔の結界はもう守らなくていいのでしょう?何を悩むことがあるの?」
図星を突かれて怯む私に、彼女は若い娘のようにうきうきと質問を畳み掛けてくる。
「そ、そんなこと……できるもんか」
「何故?」
きょとんと。おどけた仕種は妙に可愛らしい。
云百歳のくせに!と内心で罵倒してから、自分も大して変わらないことを思い知らされてちょっぴり凹む。
「だっ、だって……」
「だって、なぁに?」
私は気恥ずかしさから、無意味に紅茶を掻き回しながら下を向いて声を落とす。
「……すっ、好きな人には……自分の魅力で、振り向いてもらいたいじゃないか……。
ア、アンタだって、恋をすればきっとそう思うはずさ!」
嗚呼、絶対に笑われる。そう覚悟して呪詛の言葉を吐こうと顔を上げると、
意外なことに彼女はカップを揺らしながら神妙な面持ちで空を見つめていた。
「……アプリコーゼ?」
「そうね、貴女の言う通りだわ。相手を惑わして得た心なんて、偽りの愛でしかないものね」
想定外すぎて一瞬処理が遅れたが、彼女の台詞を脳内で反芻して、私は得心した。
これは……普段やり込められている彼女に反撃する絶好の機会かもしれない。
「おやおや、なんだいアプリコーゼ。その語り種……もしかしてアンタも、懸想してる人がいるんじゃないかい?」
「ええ、いるわ」
「……え?」
あっさりとした告白に拍子抜けして、思わず変な声が出た。
「でもね。その人にはもう、好きな人がいるから。私の出る幕はないわ」
「気持ちも伝える前に諦めるなんて、アンタらしくないじゃないか」
「いいのよ。恋仲にはなれなくても、私はその人と下らないことを話しながらゆっくり時間を過ごすのが好きなの」
「ふんっ、残念だ。アンタがその彼を射止めれば、私のとこに押しかけてくる回数も減ってせいせいするだろうに」
「ふふ、淋しいのかしら? 大丈夫よ、そんなことにはならないから」
「だ、誰が淋しいなんて言った!」
おかしい、主導権を奪ったはずなのに、いつの間にやらまた彼女のペースに乗せられている。
彼女は昔からこうして人を手玉に取るのが上手かった。
彼女の話術をもってすれば魔法など使わずとも容易く人の心を搦め捕れるだろうに、
彼女の想い人というのは、よっぽどひねくれた、手強い男なのだろうか?
「今日は楽しかったわ、アルテローゼ。また一緒にお茶しましょ?」
「二度と来なくていい!」
「今度は、杏のパイを焼いてくるわ」
憎まれ口にも動じず柔らかく笑う彼女はやけに幸せそうで。
「……まずかったら、呪うよ」
「うふ、楽しみにしていてね」
私は一生、彼女には敵わないのだろうか。
彼女を追い出した後の室内は、静寂が嫌に耳に響いた。

アルテローゼ片思いネタと見せ掛けて永遠の片思いなアプリコーゼオチ。
アルテローゼのお相手は俺も知りません。
お粗末さまでした。

57 :
アルテローゼさんもアプリコーゼさんも可愛いよぉ
片思いネタは切なくていいね
毎日のように燃料投下があってうはうは
ところで雪白姫ってなんて呼んでる?
「ゆきしらひめ」「ゆきしろひめ」
どちらにせよ変換が面倒だから「ゆきしらひめ」で単語登録した
王子は変換するたびに皇子が第一候補に出てきて間違いそうになるw

58 :
ラジオで偉い人が控え目にゆきしろひめって言ってた

59 :
>>58
ゆきしろちゃんか
ありがとう今度からそう呼ぶよ

60 :
アルテローゼさん萌えの流れですがぶった切ってすみません。
王子に首ったけな雪白姫と蕾も花も愛でる青王子のお話。

「生は朽ちゆく運命。は永遠との約束。
ふくらんだ蕾は美しい花を咲かせ、やがては枯れ果てる。
花の命は短くて。命短し恋せよ乙女。さぁ、唄ってごらん……」

61 :
「王子ー?どこにいるのー?」
ここに来てもうだいぶ経つけど、やっぱり慣れない。
昔住んでたお城とは違うし、この間まで住んでた小さな可愛いおうちとも違う。
王子やお城のみんなは優しくしてくれるけど、でもちょっぴりホームシック。
といっても、もう帰るお城なんてないのだけど……。
うぅ、こんなこと考えてたらとっても寂しくなっちゃった。
こういうときは王子に甘えるに限るんだけど、肝心の王子が見つからない。
「王子ってばー!もうどこに行っちゃったのよ……」
こんな可愛い私を放ってどこかに行っちゃうなんて、ぜったい、ぜったい、許さないんだからね!
そういえば、最近王子が私を避けてるような気がする。
やっぱり私があんなことするからかなぁ?
でもでも仕方ないのよ。私は悪くないの。悪いのは全部王子なんだから。
だって王子は女の子で、私にそのことをずぅーっと隠していたんだもの!
――結婚したばかりの頃。
一緒のベッドに寝るのが恥ずかしくて、でも女の子としてそれなりに期待はしてて。
『おやすみなさい、雪白姫』
『おやすみなさい……』
そう言って王子は燭台の焔を吹き消して、ベッドに横臥った。
どきどき。どきどき。
目を瞑って待ってるのに、いつまで経ってもこないから、私は飛び起きた。
『寝ちゃったの?しないの?ねえ王子ってばぁ!』
『うぅん……何かしなきゃいけないことあった?』
『うー』
女の子の口からは恥ずかしくて言えない。
『そっか、おやすみのキスしてなかったね。おやすみ、雪白姫。チュッ』
『あ……』
ふわりと優しい額へのキス。思わず照れてしまい、額をこする。
『ふふっ、また明日ね』
ベッドに沈む王子を恨めしく見つめているうちに私も眠りに落ちた。
そんな日が何日も続けば、女の子なら誰しも不安になるもので。
私に魅力が無いのかしら?他に女がいるのかしら?
もしかして王子は私がまだ小さいから、大きくなるまで待つつもりなのかもしれない。
けれどそれはいつまで?今はまだ小さな蕾が大輪の花を咲かせるまで。
……そこまで待っていられない!
うー、くよくよ悩んでいるのは私らしくないわ!
ということで寝起きも超スッキリな美少女の私は王子に突撃したのであった!
『おうじー!』
『なんだい、雪白姫?』
『はぐっ』
不意打ちで後ろから抱きつく。王子からは甘い花のような香りがした。
そして意外にも体は細くて、ふわふわしてる。
男の人ってこういうモノなのかしら?お腹が出てるのかな?
さわさわ……うーん、そうでもないみたい。
『ゆ、雪白姫』
『王子、どうして私のことを抱いてくださらないの?』
『それは』
さわさわ……心地よくって王子のお腹を撫でていると、手に柔らかいものが当たった。
『ん〜?』
もにゅ。何気なく手で掴むと王子が甲高い悲鳴をあげた。
『きゃあっ!』
『きゃあっ?』
随分と可愛らしい声を出すのね……って、アレ?
『こ、これは……』
『あぅ〜』
『ええええええぇぇぇぇッ!?』
とまあこれが簡単なあらましである。

62 :
私としては王子が男だろうと女の子だろうとどうでも良かったので、
その点については特に咎めなかった。また帰る場所もないし、別れることも無かった。
どうでも良いと言っても、別に王子自体がどうでも良いわけではない。
最初は復讐に利用するためだけだったし、かなりどうでも良かったんだけど。
一緒に過ごしているうちに王子の人となりを知って好きになりかけてるのは私自身気付いていた。
だから男だろうと女だろうとどうでもいっかなあーって。
だって私のことを好きでいてくれているのは間違いないんだもの。
だよね?王子は私のこと好きだよね?あまり王子からは言ってくれないのでちょっと心配。
それとね、王子が女の子で良かったって思うこともあるの!
あのね、ぷにぷにってすると気持ちいいんだー。
マシュマロみたいに柔らかくてね、ふわふわなの。
しかも釈然としないことに王子って結構胸あるのよね。
私よりずうっと大きくてね、羨ましいやら何やらって……
あっ。今、雪白姫はぺったんこだから当然じゃんって思った子、手を挙げなさい!
後で復讐しに行くからね!いいこと?今から必こいてダンスの練習でもしてらっしゃい!
もぅ油断も隙もないわね。私はこれからもっともっと――おっと、閑話休題。
あれかな、さらしできつく締め上げてると逆に大きくなっちゃう現象かな?
私もきつく巻いておけば大きくなるかなあ……あ、違う違う。私の話でなくて王子の話だった。
うーんと……そうそう、王子の胸をぷにぷにって話だったわね。
ぷにぷにむにむに気持ち良くって、私は王子が女の子だとわかった日から毎日ぷにぷにしてた。
ご飯を食べる前、おやつを食べる前、お風呂に入る前、眠る前にゆったりしてるとき、
お散歩してるときやお昼寝をしてるとき、お仕事をしているとき、
ぐーてん☆もるげんっ!な目覚めの朝、ぐーて☆なはとっ!なおやすみの夜。
とにかく朝から晩までぷにぷにむにむにしてたら、王子がいきなり怒りだして……。
『あぁもうやめてっ!どうして雪白姫は僕のおっぱいをぷにぷにむにむにするんだ!』
『えー。だってえ。せっかくあるんだからいいでしょーお』
わきわきと宙を揉みしだいていると、王子が泣きそうな顔をして逃げだした。
よく考えてみれば朝から晩までは不味かったかなあ?
せめて国民の前でだけはやめておけば、まだ許してもらえたかもしれない。
臣下達の前では、ばんばんぷにぷにむにむにふにふにするけどね!
えっ、それって羞恥プレイじゃないかですって?
やだあ。雪白姫、まだ子供だからそうゆう難しいことわかんなぁーい。
とにかく突然怒りだしたあの日から私は王子に避けられているのだった!

「どこにいるのー?王子ー?」
怒るのも当然よね。私も悪かったと思っているわ。
だからはやく私の前に現れてよ。私、寂しくてんでしまうわ!
お城を抜けて広いお庭を回る。なんだかくたびれちゃった……と思ってた矢先に!
お城から遠く離れた真白な雪に一面を覆われる裏庭にに王子を見つけた。
地面はまっさらで足跡一つ残っていない。
王子がつけた足跡はしんしんと舞い降りる雪が消してしまったらしい。
寒いのにずっとここにいたのかしら?
私は冷えた指先をこすり合わせ、白い息を吹きかけた。
一瞬だけ指先が暖かくなり、すぐに冷たくなった。
何度か繰り返し、大して意味のないことに気付いて、私はそれをやめた。
手袋してくれば良かったと思いながら、王子の様子を窺う。
王子はこちらに背中を向け、ぼんやりと足元に降り積もった雪を見つめていた。
こんな寒いのに何してるのかしら……少し呆れながら、息をひそめて近づく。
幸い、足音は真白の雪が消してくれた。また降り注ぐ雪も味方してくれた。
そして私は無防備な背中を向ける王子に勢い良く飛びついた!
「王子っ!」
「!?」
バランスを崩した王子が前のめりになる。
私は咄嗟に雪だらけの青いケープを引っ張って、留めた。
「ぐえぇ、く、首が絞まるぅ」
「あっごめんなさい!」
慌てて手を離すと王子が雪の中に倒れ込んだ!

63 :
雪の中に倒れ込んだ王子はなかなか起き上がらない。
もう少し待ってみる。……まだ起き上がらない。
「王子、起きて!んじゃいや、いやいやいやー!おうじー!」
「勝手にすなッ!」
むくっと王子が起き上がる。私はほっとして気が抜けたのか、その場にへたり込んだ。
「良かったあ」
「雪白姫?」
「王子、すっごく冷たいんだもの。まるで体みたい」
「えっ」
王子は自覚がないらしくきょとんと首を傾げる。
私は先ほど抱きついたとき、王子の体がどれだけ冷たかったかを説明した。
「氷のように冷たくて体みたいだったから、怖くなったの」
「心配かけてごめんね」
「うん。王子が無事で良かった」
「あっ!」
王子は忙しなく立ち上がると、さっきまで倒れ込んでいた場所に何度も目をやった。
「どうしたの?」
「あ、えと……。ほら寒いだろう?雪白姫も立って」
さあと差し伸べられた手を掴んで立ち上がる。王子の手はやはり氷のように冷たかった。
王子は寒くないのかしら。
そういえば私の息は白いのに、王子の息は白くない。
きっと体の芯まで冷たくなっていて、吐く息まで凍てついてしまったんだわ。
「……」
「……」
私達はそれ以上会話を交わすことなく、沈黙した。
なんだかとても気まずすぎるのでとりあえず話題を振ってみる。
「どうしてこんなところにいるの?もしかして私と一緒にいたくないから?」
もとい、お城にいれば間違いなく私に見つかって、おっぱいむにむにされるから?
「なんとなく歩いてたらここにいて」
「足跡が降り積もる雪で消されるくらい長時間ぼーっとしてた?」
「……うん」
こんな寒いのにぼーっとしてたなんて言い訳にもならないわ!
ぜったい、ぜったい、何か隠してるに違いない!
「本当に?何かがあるからここにいるのではないの?」
「……えっと」
目を逸らした!嘘をついている証拠だわ。
王子がまたしても先ほどと同じように私に背中を向けようとするので、
私は回り込んで正面を陣取ろうと真っ赤な靴に飾られた小さな足を持ち上げた。
すると王子が全身を使って、私を抱き留めるようにしてそれを拒んだ。
「離して、はーなーしーてー!」
「駄目だ、離さない!今すぐ足をどけて!」
「どうしてよ!」
「いいから!」
王子は私を軽々と抱き上げて、そこからだいぶ遠くに離れた場所に下ろした。
そして私を残して王子はさっさと先ほどいた場所へ引き上げていく。
「むー。そんなに私のことが嫌いなのね!どっか行っちゃえって思ってるのね!酷いわ!
嫌いになったのならそう仰ればいいのに!もういい、私も王子のこと嫌いになるから!」
そりゃ私だって王子には悪いことしたと思ってる。世界で一番可愛いのは雪白姫だけど、
王子には我が儘いっぱい言っちゃう可愛くない子だとも自覚している。
でもね、これでも一生懸命に王子のお嫁さんをやってたつもりなのに……。
「待って雪白姫!」
「もう知らない!」
「違うんだ、ここに来てこれを見てよ」
「いや!」
「ほらこっちにおいでよ」
「……むぅ」
「おいで」
そんな優しい声で言われたら従うしかないじゃない。……貴女って罪な人だわ。
もしも復讐するとしたら、貴女の罪は私の心を奪ったこと。
奪われて空っぽになってしまった部分は貴女を想うことでしか埋められないの。

64 :
隣に立つと、王子はにっこりと笑って視線を落とした。
意味がわからず横顔をじぃっと見つめていると、下を見るように促される。
足元なんて見てもどうせ雪しかないのに……同じように視線を落とす。
するとそこには青々とした緑の葉とぷっくらとした蕾があった。
蕾は今にも開きそうだ。けれどこんな寒い中で咲いても誰も見てくれないのに……。
と、そこまで考えて私はハッとした。そうか、王子はこの蕾をずっと見ていたんだわ。
王子は男みたいな仕草で男みたいにお喋りするけど、本当は意外と乙女ちっく。
私は王子と過ごすうちに、彼女の王子様らしい立ち振る舞いが、
全て意識して行われているのだと知った。何が彼女をそうさせているのかはわからないけど。
とにかく王子はこう見えて女の子らしい一面を持ち合わせているのだ。
最もわかりやすい例をあげると、王子はお花が好きだった。
今は真白に塗り潰されたお庭だが、ついこの間までは色鮮やかなお花が至る所に咲いていた。
私はその中を王子と一緒にお散歩するのが好きだった。
ちょうちょになった気分で花から花へ、お花畑を散策する。
その殆どは専属の庭師達の手で育てられたものだったが、一区画だけそうでない場所があった。
そこのお花は王子が育てているらしく、毎日せっせと水を撒いていた。
けれど長い間ほったらかしにしていたそうで(理想の花嫁を探していたらしい)
なかなか芽が出ないうちにこうして冬になってしまった。
お花を見てるのは好きだけど、咲かないお花を、芽吹くことのないお花を育てることに、
何ら意味を見いだせなかった私は一度だけ王子に訊ねたことがある。
『毎日、咲かないお花に水をあげて楽しい?』
『楽しいよ。いつかきっと咲いてくれるよ』
『でもずーっと咲かないわ』
『これから咲くよ』
『つまんない』
『こうして愛情を注げば、注いだ分だけ綺麗な花が咲くんだよ』
『でもまだ咲かない』
『咲かなくても与え続けなくてはいけないよ。花には毎日一杯の水といっぱいの愛情が必要なんだ』
……正直に言うと、私はお花に嫉妬した。
王子はお花を踏まれちゃいけないと思って、私を抱き上げたんだわ。
そんなにお花のことが大事なのかしら。私よりももっとずっと?
「可愛い花だろう?まるで雪白姫みたい」
「どっ、どうして?」
びっくりして声が裏返ってしまった。そんな私を見て、王子はおかしそうに笑う。
「雪の下で頑張ってるから。知らない土地で頑張ってる雪白姫に似てる」
「そうかしら」
「蕾のままなところも似てる」
「私がまだ未熟だと仰りたいの?」
「未来があると言いたいんだよ。この蕾が開いたら、どんな色の花が咲くだろう?
雪白姫が大人になったら、どんな女性になるだろう?
君は沢山の可能性を秘めている未来に開く蕾。どんな女性にもなれる」
「なんか年寄りくさい」
「そ、そうかな。ハッキリ言われると傷つくんだけど……」
どうやっても越えることの出来ない年齢の差を思ってか、王子が項垂れた。
私こそ項垂れたいくらいだわ。いくら背伸びをしても王子には追いつけないんですもの。
「このお花は今度こそ咲くよね?」
「きっと綺麗な花を咲かせるよ」
「うんっ」
「くしゅんっ」
王子は大きなくしゃみをしたかと思うと、体を震わせ始めた。
「急に寒くなってきた。雪白姫に見せたら、安心したかな」
「もしかして私に見せようと思ってずっとここにいたの?呼びにくればいいのに」
「離れたら雪に埋もれてしまうのではないかと思って。柄でもないと君は笑うかい?」
「ううん。お花が好きな王子らしいわ」
勇敢な王子様はずっとお花を守っていたらしい。……嫉妬しちゃう。
もしも嫉妬が罪なのだとしたら、私は間違いなく復讐されてしまうわ。
そのときは貴女が助けに来てね、私の王子様。

65 :
「お花は雪に埋もれてもなないわ。そんなに弱くないもの」
私は体温を分け与えようと冷たい王子の体に抱きついた。
微かに残っていたぬくもりが触れ合ったところから逃げていき、震えが私に伝染する。
けれど離さない。もう離してあげない!
「でもね。お花はなないけど、私は王子がいなくなったら寂しくてんでしまうわ!
もう黙っていなくならないで、お願いよ……」
「ああ、約束するよ。……しかし雪白姫もそんなに弱くないだろう?」
「そうよ、私は弱くない。けど」
王子の氷のような手に白い息を吹きかける。
意味のないことだと知りながら、何度も何度も繰り返した。
「王子はいつか、お花には水と愛情が必要だと教えてくれたわ。
だからね、あのね……蕾に似てる雪白姫には大好きな王子と愛情が必要なの」
「ふふっ、あはははっ」
王子がお腹を抱えて笑いだした。私は頬をぷくーっと膨らませる。
恥ずかしいけど頑張って伝えたのに。王子は何もわかってない。私は本気なのよ!
「もぅ笑わないで!」
「だって可愛いこと言うから」
「私が可愛いこと言っちゃだめなの?」
「可愛い子が可愛いこと言うのは反則だよ。ギューッてしちゃう!」
王子の両手が背中に回り、私はきつく抱き寄せられた。
剥き出しの頬に王子の冷たい頬が触れて悲鳴を上げる。
「きゃあっ!王子ってば冷たい!」
「なら暖かくしてよ、雪白姫」
耳元で囁かれて私の体は煮え滾る鍋に蹴飛ばされたかのように一瞬で熱くなった。
心臓が大きく脈打って、王子に聞こえてしまうのではないかと心配になる。
どうしよう。きっと真っ赤になってる。
真っ赤な顔を見られたくなくて、王子のふかふかな胸に頬を押し付けた。
体温を取り戻し始めた王子の胸から血潮の響きが聞こえる。
早鐘を打ち鳴らすような私の心臓の鼓動とぴったり重なる。
王子もどきどきしているの?――それともこれは私の鼓動かしら?
どこまでが私で、どこからが貴女かわからなくなる。
「うーん。雪白姫がぬくくなってきた」
「人を湯たんぽみたいに言わないで頂戴」
「言い直す。雪白姫が興奮して熱くなってきた」
「興奮してないもん!」
「どうかな、顔が真っ赤だよ?」
王子は冷たい手で私の両頬を掴み、うっとりと微笑んだ。
ひんやりとして火照った頬には気持ち良い。私も微笑み返す。
「王子のほっぺも林檎みたい」
「少し熱くなってきたかな」
「おいしそうだから食べちゃうね。いただきまーす!」
ぐいっとケープを引っ張って王子を前屈みにさせると(悔しいけど背伸びだけじゃ届かないの)
血潮のような唇で真っ赤に熟れてる林檎を啄ばんだ。
首筋に腕を絡ませ、乱暴に唇を重ねる。
柔らかい唇に吸いついて、強引に割り込ませて、舌を絡めとる。
相手が食いついてきたところで引っ込めて、もう一度唇からはじめる。
何度も繰り返すうちに焦れた王子が私を力強く引き寄せた。
「んんっ」
奪い合い、求め合い、互いを確かめ合う。息継ぎも儘ならない目眩がするほどのキス。
なんだか、頭ががんがんして、ふらふらする……。
私は「離して!」と王子の肩を叩いて押し返した。
唇をぺろりと舐めて、名残惜しそうに王子の唇が離れていく。
「ごちそうさま」
「あんっ……ってあれれ?」
私が「いただきます」したのに、王子が「ごちそうさま」してるのはどうして?
目蓋をぱちぱちさせて唇を撫でる。王子がくすくすと笑いだす。
意味がわからず小首を傾げた瞬間、がばっと王子が勢いよく襲い掛かってきた!
「きゃあん!」
か弱い私はなす術もなく真白の雪のベッドに押し倒されるのであった。

66 :
雪のベッドはふわふわで柔らかかったけれど、とても冷たかった。
けれど体はとても熱くて、今にも溶けてしまいそう。
このまま溶けだしたら二人を隔てる境界がなくなって、一つになれるのかな?
「雪白姫……」
私に覆い被さった王子が熱い吐息を洩らす。もう寒くない。痛さも何も感じない。
どうしてかな?今日の王子は積極的。そんな貴女も素敵。
私も貴女の名前を呼んで見つめ返す。王子がふっと微笑み、私に倒れ掛かってくる。
一瞬重みを感じたかと思うと、体がふわりと浮かび上がり、今度は王子の上に乗っかっていた。
目を白黒させていると、また私が下に移動していて王子が覆い被さっていた。
やっぱり目を白黒させていると、また王子の上にいた。
抱き合って雪の上をくるくる転がっているのだと理解するのに、私は数秒の時間を要した。
「このままじゃ雪だるまになっちゃうわ!」
「あははっ、それもいいね。二人で雪だるまになっちゃおうか」
「きゃあっ!うふふっ、きゃはははっ」
寒さでどこかおかしくなったのか、王子が無邪気に笑っている。
私もおかしくなって笑い転げる。くるくる回る。くるくる回る。
終いには二人雪塗れで真白のベッドに転がっていた。澄み渡った高い高い冬の空を見上げる。
「ねぇ雪白姫。君は未来に開く蕾だけど、時々その美しさを永遠のものにしたいとも思うよ。
美しい君を硝子の棺に閉じ込めて、永遠に枯れることなく、僕だけのものにしたい。
いいや硝子の棺の中で二人きり、永遠に美しいままで眠り続けたい。素敵だろう?」
王子はまるでの淵へと誘惑する悪魔のように艶やかな笑みを浮かべた。
悪魔に心を奪われた弱い乙女のように私は恍惚として王子を見つめ返す。
「永遠という林檎の甘い蜜の毒を喰らう覚悟があるならば共にのう」
私の心は揺れ動く。永遠を手に入れられたら、永遠に貴女と一緒にいられたら。
けれど時間を止めてしまったら、貴女との日々を紡げない。
「んでしまったら毎日が楽しくないわ」
進むことも戻ることも出来ない暗い世界に二人きり。
私は貴女と毎日新しいことを見つけたい。新しいことを知りたい。新しいことをしたい!
「だがによって永遠を手に入れることが出来る」
永遠って何なのかしら?停滞した時間のことを言うのなら、私はそんなのいらない。
だって私は貴女と流れる時間の中を歩み続けたいから。
「私にとっての永遠はもうここにあるわ。貴女と過ごす時間が、私の永遠なのよ!」
愛する人と共に過ごす時間はまるで砂のように流れてしまうけれど、
同時にとても穏やかに和やかに流れてゆくもの。
その愛しい時間にまだ名前がないのなら、私はそれを「永遠」と呼びたい。
「そうか、雪白姫と共に過ごす時間こそが永遠だったんだね。僕は既に永遠を手にしていた――。
…………可笑しいな。なんだか、目蓋が重くなってきた。先に、眠るね……」
王子は空のように柔らかく微笑んで、ゆっくりと瞳を閉じた。
そして私も彼女の肢体にそっと寄り添い、同じように瞳を閉じるのだった。
――折り重なった二人を覆い隠すかのように雪が降り積もってゆく。
どこまでも続く白の世界は全て二人のためだけに……。

「永遠とは一体何なのだろうね?」
「復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「あっ、家来の人ー!こっちに姫君達が倒れてますよー!」
「メル〜!モゥ放ッテ置ケバ良イノヨ。ンダラ復讐サセヨウネ」
「こっちですよー!急がないと大変ですよー!」
(――ああっ、こんなところに殿下と雪白姫が埋もれてるぅ!?)
(――急いで担架を持ってこないと。いや毛布?ホットチョコレート?)
(――暖炉暖めてきまーすっ!あっ焚き火の方がいいかな?おいも取ってきまーすっ!)
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」

67 :
蕾も花も(中略)愛でても(以下略)と歌っていたので青王子はお花好きと強引に変換。
途中の「おっぱいぷにぷに」は元々書こうと思っていた話の名残。
ぶっちゃけると最初はおっぱいぷにぷにしてるだけの話でした。
>>56
GJ!
幾つになっても恋する乙女なアプアル可愛いよアプアル

68 :
>>67
GJ!!王子×雪白姫リクエストしたので、書いてくれて嬉しい
新スレになってからSS職人さんが頑張ってくれて幸せな毎日

69 :
共にのうって青王子ちゃんは女の子でもそういうキャラかw
アンコールネタの使い方うまくて禿げる
王子の武勇伝(笑)もうまい具合に調理してくれておいしいです
> ぶっちゃけると最初はおっぱいぷにぷにしてるだけの話でした。
さて、おっぱいの話をはやくだな…

70 :
ちーちゃんのブログに百合フラグ発生

71 :
みきれみの劇判の正体が…プリキュア…だと…!?
「ふたりはプリキュア☆」とか言いながらきゃっきゃしてるみきれみを受信した←

72 :
>>71
ちょっと待て、何ソレ萌える

73 :
>>60の続き。嫉妬深いヤンデレ雪白姫とぞっこんベタ惚れ青王子のお話。
前半2レス分は王子と家来さんらのお話。全部で11レスです。

「硝子の棺から飛びだして、永遠を手に入れた姫君。
だが、はたしてそれは幸せの始まりなのかな?
嫉妬の焔がその身を焼き尽くす前に、さぁ――」
「メル、マダコノばかっぷる見テルノ?趣味悪イワァ」
「エリーゼさんorz」
「サァ、唄ッテゴラン……」
「お願いですから台詞取らないでください」

「馬鹿ですねw」
「馬鹿王子w」
「ばーかw」
「馬鹿っていうな!」
全く主君になんて口の利き方だ。
相手が僕で助かったな。もしも他の誰かだったら、今頃宵闇の森で憾みを唄ってるところだぞ。
この生意気な三人は僕の優秀で忠実なる臣下。いや優秀は言い過ぎか。
ともかく僕が物心ついた頃から影のように付き従うお世話係。
元々はお姫様(と自分で言うのも照れるけど)の遊び相手兼お世話係として雇われていたが、
僕が突然むちゃくちゃを言って理想の花嫁を探す旅を始めたときから、彼女達の仕事は一変した。
お姫様が王子様に変わって、お世話係のメイドは付き従う騎士へと変わった。
勿論僕が彼女達にそうなるように強要したわけではない。
寧ろ僕が「来なくていい」と言ってきかせたのに付いてきたのだ。
三人曰く、僕は一人では何も出来ないお姫様らしい。別にそんなことはない、と思う。
僕が男の恰好をして理想の花嫁を探す旅に出ることを、父をはじめとする城の面々は皆反対した。
けれど三人だけはいつも味方でいてくれた。何があろうとずっと僕の味方。
それがどれだけ心強く、嬉しかったことか。だからこそこのような物言いも許しているわけだが。
「だって馬鹿じゃないですかw」
「どこをどう見ても馬鹿w」
「ばーかばーかw」
やはり少しばかり、いいやとっても物凄く失礼な口の利き方だ。
そりゃまあ多少は自分でも馬鹿だなと思うこともあるが、自分で思うのと他人に言われるのは違う。
「お前達、剣の錆にされたいのか!?」
「やれるものならどうぞ」
「どうせ出来ない癖に」
「痛くしないでくださいね」
……もうやだ。ところで、何故僕が三人にからかわれているのかというと。
「それは我々がご説明致しましょう」
「えっ」
「極寒の冬空の下。雪白姫とお話していたら気分が盛り上がってしまって」
「雪の上をぐるぐるぐるぐる、いちゃいちゃラブラブしてたら」
「いつの間にか頭ががんがんして気が遠くなって……。ですよね、殿下」
その通りなのだが、他人の口から聞かされるとやはり馬鹿ではないか……。
「あのときは本当に驚きましたよ」
「城のどこにも殿下と姫の姿が見当たらないので外に探しに出かけたら」
「な・ん・と!雪の下に埋まっているではありませんか!」
「これは大変と掘り起こして城まで運んであげたのですよ」
三人は揃って肩を竦めた。何を言いたいのかはわかる――「馬鹿王子」
「そういえば僕が気がついたときに食べてた焼き芋はなんだ?」
「それよりあのときの白い男の人は誰だったのでしょうね」
「いい歳してお人形抱いてる時点でお察しください」
「あー、あの人がいなければ今頃お二人は根雪の下で春を待つようでしたね」
「「「あはははっ」」」
うまくはぐらかされたような気がする……。
しかし根雪の下で春を待ってたら、こうして文字通り姦しくお喋りする彼女達とも
永久に会えなくなるわけで。その謎の白い男の人には感謝しないといけないな。

74 :
「それからがまた大変でしたよねー。殿下は高熱を出して一週間も寝込むし」
「馬鹿は風邪ひかないって嘘だったんですね」
「だから僕は馬鹿ではないぞ」
「あれ、馬鹿はんでも治らないじゃなかったっけ?」
「良く言うねえ」
「残念でしたね、殿下」
「だから僕は馬鹿ではないと」
ここはやはり剣の錆にしておくか?腰の剣へと手を伸ばす。
「我々がいなくなったら生活していけるのですか?」
「炊事洗濯全てお一人で出来るのならご自由にどうぞ」
「羽根ぶとんを振るうだけの簡単なお仕事は出来ますよね?」
うう、僕は何と無力なんだ……。致し方あるまい。
「よし続けよ」
「「「ありがとうございます、殿下」」」
「殿下は一週間も寝込んでましたけれど、姫はすぐに治りましたね」
「やはり若さでしょうかねえ」
「ぜんぜん年齢違いますもんね!」
「僕が老けてると言いたいのか。たかが五歳や七歳や十歳十二歳十云歳程度の年齢差……うぅ」
気にしてないつもりでも実際に口に出してみると胸に突き刺さるものだ。
年齢の差など気にするものか。でも雪白姫が美しい女性に成熟した頃の自分を考えると……ぐすん。
「今から沈んでどうするんですか」
「だいたい五十年後の方がヤバ――」
「余計なこと言わないの。今だって充分ヤバイ」
「五十年もすればお二人とも薹が立って久しいクソババアですし気にせずとも良いのでは?」
「そもそも天と地ほどの年齢差より性別を考慮すべきです」
「お前達、毒舌だな……というかそこまでボロクソに言われるほど年齢は離れていない」
だが彼女たちの言うとおりだ。雪白姫はまだ幼いから、僕を優しくて頼りになる
少し特殊な性癖=女の子大好きな男装の「おねにーさま」位にしか思っていないだろうが、
思春期を迎えたら彼女は僕をどう感じるだろうか。
雪白姫の血潮のように赤い魅惑の唇で「気持ち悪い」と言われたら立ち直れそうにない。
「そういえば雪白姫はどこへ?」
「姫でしたら殿下のお花に水やりに出かけてますよ」
「病み上がりの体では無理ですとお止めしたのですがどうしてもと仰るので」
「姫は王子と違ってすぐに元気になりましたからね。回復してから毎日のように行ってます」
今日もしっかりと暖かい格好をさせて送り出したのだという。
「そうか。雪白姫は優しいのだな……」
なんていじらしいのだろう。戻ってきたら温かいお茶を入れてあげよう。
頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめてあげよう。それでそれで……。
「殿下、顔が緩みまくってます」
「えっ」
慌てて頬を押さえる。し、指摘されるほど緩みまくっていたのだろうか。
「それはもうニヤニヤデレデレでしたよ」
「姫がごらんになったら幻滅ですね!」
「ガーン」
き、気をつけねば。あーん、けれど雪白姫を考えると自然と頬が緩んでしまう。
僕をここまで魅了するとはなんて可憐で美しく罪深い姫君。
「馬鹿」「馬鹿」「馬鹿」
「おい、本気で斬るぞ」
見事なジェットストリーム馬鹿を決められて、僕はとても傷ついた。
いいもん。雪白姫に慰めてもらうから!
「ですから顔が緩みまくってますって」
「うるさい。いいの」
「ほんとベタ惚れですねえ」
「可愛いのだから当然だ。あれだけ可愛い雪白姫は実は天使なのではないかと最近思うんだ」
「本気で言ってるんですかw」
「天使でないのなら女神かな。お前達もそう思うだろう?ま、絶対渡さないけど」
「「「あーはいはいごちそうさまですぅ」」」
三人は投げやりに声を揃えて、同じうんざり顔で肩を竦めた。

75 :
――今日もお花にたっぷりお水をあげて、たっぷり愛情を注いでお城へ帰る。
王子が大事にしているお花。ちょっぴり嫉妬しちゃうけど、
この間の「雪白姫に似てる」ってお話を聞いて考え直した。
王子はきっと私に似てるからあのお花を可愛がっているのだわ。
そう考えるとお花がとても愛おしく思えた。
今日はお部屋に寄って行こう。そろそろ王子も起き上がっていい頃だってお医者様が言ってたわ。
あっ、その前に厨房へ行って何か貰ってこようっと。
あの日、雪の中で埋もれていた私達は王子の三人の家来に助けられてお城に運ばれた。
一時はかなりの高熱でうなされていたらしいけど、私はすぐに元気になって目覚めたの。
お医者様から「風邪は治りました」と言われて、さあこれからは王子の看病をしなくちゃ!と
張り切ったのだけど、あの三人が「姫の風邪がぶり返したらいけません」と私と王子を引き離した。
それから私達は毎日一時間しか会えなくて、しかも王子は眠っていて名前も呼んでくれない。
ううん、眠っているのならまだいい方で、うなされてる日もあった。
そんな日は私はすぐにお部屋から追い出されちゃうの。
王子が病気だから仕方ないとわかってはいるけど、私は寂しくてんでしまいそうだった。
でもそんな日々とも今日でおさらばよ!
厨房からお部屋へ帰る途中でお医者様に王子の病状について訊く。
お医者様はもう王子は完全に良くなっていて、既に起き上がっていると教えてくれた。
私はお礼を言って大急ぎで走り出す。
起きたのならどうしてまず最初に私に会いに来てくれないの?
「おうじー!」
「あははっ。お前達は相変わらずだなあ」
「いえいえ殿下にはかないませんよぉ」
楽しそうな笑い声。王子があの三人と仲睦まじくお話してる。
何を話しているのかわからないけれど、仲がよさそうで――私が入り込む隙間などないように思えた。
いつか王子から聞いた。あの三人とは幼い頃からずっと一緒にいるらしい。
思い出を語る王子はとても楽しそうで、私はあの三人に嫉妬した。
私の知らない王子を彼女達は知っている。
私の知らないところに私の知らない王子がいるなんて堪えられない!
王子は私の王子なの。私だけの王子なの。他の誰にも渡さない!
今回の件だってそうだわ。あの三人は私と王子のことを邪魔してるに違いない。
ぜったいに、ぜったいに、許さないんだからっ!
憎しみをこめた眼で三人の背中を睨んでいると、王子がこちらに気づいた。
「雪白姫?」
「姫が会いに来て下さったようですね」
「良かったですねえw」
「くすくすっ」
「笑うな!……雪白姫もそんなところにいないでこちらにおいでよ」
「うんっ!」
王子に手招きされて私は駆け寄った。王子の胸に飛び込む。
「うわっ」
「「「危ない!」」」
椅子ごとひっくり返りそうになる王子を三人が支えた。
「すまない、ありがとう」
「「「いいえ〜」」」
「むぅ」
何よお〜。早くどっか行っちゃえ!――念を込めて粘着質な視線を向ける。
三人は怪訝そうに顔を見合わせ、曖昧な笑みを浮かべた。
「ええっと。如何なさいましたか、姫?」
如何も何も邪魔してる自覚ないの?やっぱりわざと邪魔してるのね。
私は三人を無いものとして無視すると、王子に満面の笑顔を向けた。
「ねぇ王子、林檎を貰ってきたの。一緒に食べましょ」
「じゃ、僕がお茶を入れてあげるよ。外は寒かっただろう?」
「ありがとう!王子、だーいすき!」
「お前達も座るといい。今日まで苦労をかけたな。お茶を入れてやろう」
「いえいえ、滅相もない」
もぉ王子のいじわる。私の渾身の告白をどうして無視するのよ。
この三人はいらないの。二人っきりになりたいの!

76 :
「うーっ、うーっ」
早く出てけー出てけーと低く喉を鳴らして獣のように威嚇すると、
ぼんやりさんの三人もさすがに気づいたらしく顔色を変えた。
「ありがたいお言葉ですが、我々にはまだ仕事が残っていますので」
「後回しにすればいい」
「あー。そういえばお庭にいっぱい雪が積もってて歩きづらかったなぁ。
雪かきの人手が足りてないのかなー?こんなところに三人もいたら人手不足にもなるわよねー」
「雪白姫、彼女達の仕事は僕達の世話であって雪かきではない」
「いいえ、姫の仰る通りです。人手が足りないのでしたら、私達が行います。
油を売ってばかりでは、ハウスキーパーに怒られてしまいます」
「だが」
「あなた達、肉体労働は得意そうだものねー?行ってらっしゃーい!」
「雪白姫」と咎める声色の王子を遮って、三人がぺこりと頭を下げる。
「構いませんよ、殿下。では行って参ります!」
「ばいばーい!」
これでさ・よ・う・な・ら!雪の下で凍えんじゃうといいわ!
私と王子の邪魔をする人はいなくなっちゃえばいいのよ!きゃはははっ!
「あぁ。せっかくみんなでお茶しようと思ったのに」
「王子は何もわかってない」
「えっ?」
「ううん何でもないの。林檎剥いてあげるね」
私は王子の向かいの席に腰を下ろすと、籠から真っ赤に熟れてる林檎とナイフを取り出した。
用意周到にも準備してあったポットに茶葉を入れ始めた王子が目を丸くする。
――あの三人とお茶しようと思って前々から用意していたの?
目覚めたらすぐに私に会いに来てほしかったのに。
私よりもあの三人とお茶するのが大事なの?王子の浮気者!
「雪白姫が林檎を剥くのかい?」
「他に誰が剥くの?王子は出来るの?」
王子は私が剥いてあるリンゴを持ってきたのだと思っていたらしい。
「えとそれは……なら三人にいてもらえば良かった」
「私にだって林檎くらい剥けるわ!」
ああもう!どうしてあの三人のことばかり話すの!?私をイライラさせないで!
今なら「硝子の棺に閉じ込めたい」という貴女の気持ちもわかるわ。
停滞した永遠なんていらないけれど、貴女が私だけのものにならないのなら、
他の誰かに奪われる前に、貴女が私から逃げ出す前に、硝子の棺に閉じ込めてしまいたい。
この世界でただ一人の愛しい貴女。私だけの麗しい貴女。もう誰にも見せたくない!
私の手には鈍く輝く鋭いナイフ。これは林檎を剥くための物。
でもこれ以上私をやきもきさせるつもりなら、このナイフで貴女の心臓を刺すわ。
私の気持ちなど爪の先ほども気づかぬ王子がナイフを指差す。
「でもナイフを使うなんて危ないよ」
「大丈夫よ。私、お料理上手なんだから!」
「!?」
どうしてそんなに驚くのよ。私って何も出来ない女に見えるのかしら……?
王子は知らないかもしれないけれど、私は色々苦労してきたんだから。
お城では継母に冷たくされつつも、それなりに慎ましやかに暮らしていた。
そしてお城を追い出されてから、私は――。
「小さな可愛いおうちで、お料理お掃除お洗濯をしていたのは私なのよ」
「それは大変だったね」
「小人さん達が何もわからない私に優しく根気強く教えてくれたの。
失敗もいっぱいしたけど、私はいつの間にかお料理もお掃除お洗濯も出来るようになった」
恥ずかしいから王子には教えたくないけど、つらくて泣いた日もあったわ。
継母に幾度もされかけ、その都度に奇跡的に復活し続け、またされかける繰り返しの日々。
だけど貴女がそれを終わらせてくれた。私を悪夢の日々から目覚めさせてくれた。
「今度お菓子を作ってあげるね」
「本当?嬉しいなあ。あっ、なら一緒に作ろうよ」
「うんっ。王子はお料理上手なの?」
王子が一緒にお菓子を作ろうって誘ってくれた。楽しみ!
しかし私の問いかけに王子の表情が曇った。茶葉の缶を閉めて、難しい顔をする。
「うーんと確か森に迷い込んで五日目だったかな。食料が底をついて――」

77 :
――宵闇の迫る森の奥で。
「えぇー?食糧がなーいー?」
「仕方ないじゃないですか。あれほど言ったでしょう」
「まだ道がわかるうちに引き返しましょうと」
「なのに殿下がどんどん進んでいくから」
「だってこっちの方に理想の花嫁がいるような気がしたんだ……」
でも見つからないし、いつの間にか迷ってるし、お腹空いたし、一体どうしたものか。
「お腹が空いてはなんとやらだ。皆、各自食料を取ってくるように!僕も行ってきまーす!」
「「「ああっ!待ってくださいよ、殿下ー!」」」
――そして小一時間後。
僕はしっかりちゃっかりと野ウサギを捕まえたのだったッ!
「ただいまっ!お待たせー産地直送の野ウサギだよー!みんなも何か見つかった?」
「ええまあ」
「って木の実ときのこだけか。お前達、それでお腹がいっぱいになると思っているのか?」
「でも他にありませんし」
「これだけ見つかればいい方ですよ」
「まあいい。野ウサギを焼いて食べよう。まずは毛を剃る?皮を剥く?」
僕は腰の剣を引き抜き、小さな野ウサギに向けた。
冷静に考えると腹の足しにもならないレベルだったが、極限状態なのでそこまで頭が回らない。
「ストップ!ストーップ!」
「何事だ騒がしい」
「何をなさるのですか!?」
「食べるから皮剥く。そして焼く。そうだ、調味料はあるのか?」
「ウサギが可哀想でしょう?」
「うむ、生きたまま皮を剥くのは惨い。ここは一思いにしてやるのが情けというものだな」
「そうでなくて。いいからウサギさんはポイしましょうね。逃がしましょうね」
「はあ、以前は虫もせぬ優しい姫君でしたのに。はいさようならして!」
「あぁ〜ん僕の焼き鳥ぃ〜」
「……言っときますけどウサギは鳥ではありませんからね」
「えっ」
こうして僕はウサギは鳥でないと学んだ――ってそんなこと最初から知っていたに決まってる!
「ざっとこんな感じかな」
えへん。と王子は胸を胸を張って回想を終えた。
「王子はサバイバル精神旺盛なのね。順応力たかーい。すごーい!」
元お姫様が野ウサギを狩るようになるなんて……誰も思わないわよね。
「いやいやそれほどでも」
王子は照れ笑いを浮かべて、それを誤魔化すかのようにポットにお湯を注いだ。
砂時計をひっくり返す。文字通り時間が砂のように零れ落ちてゆく。
「どうしてこんな話になったんだっけ?あっそうそうお料理の話。王子はお料理出来るの?」
「だから今の話」
「ごめんなさい。今のどこが料理の話だったのかちょっとわからないです……。
結局ウサギさんは剥いてないし、剥いたところで丸焼きは料理ではないと思うの」
「そ、そうだよね」
大雑把でワイルドな男のサバイバル料理ではあるかもしれないけど、
それを伝えると意外と繊細で乙女な王子が傷つきそうなのでやめておく。
「でもあの人達が拾ってきた木の実やきのこで何か作ったのよね?」
「何の足しにもならなかった……」
「本当にあの人達ってダメダメよねー。ボケっとしてるし、道に迷ったのだって三人のせいじゃない」
敵愾心丸出しな私に対して、まるで自分の悪口を言われたかのように王子がムッとする。
「だが彼女達には本当に助けられたよ。彼女達がいなかったら、僕は今頃きっと……」
「むぅー!」
「どうしたの?」
「もぅ知らない!」
何よお、あの三人のことばっかり。どうして私の前で他の子の話をするの!?
王子は私の話なんて全然してくれない。いつも私の話をニコニコ聞いていて、
たまに自分からお喋りするかと思ったら、お花の話にあの三人の話、
あとは天気やご飯の話に、難しい国内の政治の話に、やっぱりあの三人の話。
嗚呼、王子は私を愛してない!気付かない振りしてきたけれど。
もうこれ以上は偽れない。私は誰よりも愛しているから!

78 :
「どうしたんだい、雪白姫?落ちついて話してごらんよ」
ぽむぽむと王子が優しく私の頭を撫でてくれる。
普段なら大好きな王子の柔らかな手も、今は憎悪の対象でしかなかった。
王子は私を妹だとか、お人形さんだとか、何かだと思っている。
頭を撫でて、ギュッと抱きしめて、可愛く着飾って、愛でる。私はまるで王子のお人形。
王子の愛はきっと私とは違う。私はこんなにも貴女が好きなのに、愛しているのに。
貴女の愛は単に可愛いものを愛でる――お花を愛でるだけのそれと同じ。
そうよ、そうに決まっているわ!どうして、どうしてわかってくれないの!
「もうあの人達の話をしないで。いいえもうあの人達に会わないで、誰にも会わないで。
貴女は私だけの貴女なの!貴女は私だけを見ていればいいの!どうしてわかってくれないの!
でなかったら私は貴女を硝子の棺に閉じ込めなくてはいけなくなるわ」
私の手には鈍く輝く鋭いナイフ。これは林檎を剥くための物。だったけど。
たった今、貴女の心臓を刺す物に変わった。貴女の胸をめがけて振り下ろす――!
「えーいっ!」
「ああっ!雪白姫、一体何が……?いやっやめて!」
王子が寸のところで椅子ごと床に倒れこむ。ナイフが宙を切った。
今度こそと私は床に寝転んだ王子に飛びかかる。寝返りを打たれてかわされる。
「全部貴女が悪いのよ!私だけを見ていてくれないから、他の子の話をするから。
私はこんなにも貴女が好きなのに!私はもう貴女だけの私なのに……どうして!?」
「な、何を言っているのか……わからない」
「私だけの貴女でいてくれないのなら、私は貴女を硝子の棺に閉じ込めるってことよ!」
起き上がろうとする王子に向けて、力任せにナイフを振り回す。
王子はよろめき、仰向けに倒れた。私は彼女に馬乗りになりナイフを振りかざして――
「君はっ、んだら楽しくないと、一緒の時間こそが永遠だと、僕に教えてくれたはず!」
「それは貴女が私だけを見ている場合よ。他の誰かを見ていて、他の誰かを愛するようになって、
他の誰かに貴女を取られてしまうくらいなら、貴女をして私だけのものにする!」
「!?」
「あうっ!」
手首をきつく掴まれ、私はナイフを取り落とす。王子は落ちたナイフを遠くへ放った。
ナイフを失ってしまえば私はただの無力な子供で、大人には到底かなわない。
「雪白姫は何か勘違いをしている」
「お願い止めないで!」
「僕には雪白姫しか見えてないのに」
「貴女をして私もぬのぉ!…………えっ?」
「だから、僕にはもう雪白姫しか見えてないのに」
「?」
「だから、僕にはもう君しか見えていない。雪白姫にぞっこんってことだよ」
「いつも三人の話ばっかりしてる癖に……」
なんだか勝手に体中の力が抜けてしまって、私はぐったりとする。
王子は私の頬を撫でて、俯いた顔を持ち上げた。
「三人からはいつも雪白姫の話ばかりと言われるよ。今日だって雪白姫の話ばかりするから、
からかわれてたんだ。そこに君がやってきたから冷やかしのつもりかニヤニヤされっぱなしで」
「あの人達の前では私のお話をするの?ならどうして私の前では私の話をしてくれないの?」
「そんなの決まってる。面と向かって言うのは恥ずかしいからだよ」
「恥ずかしいこと考えてるの?どんなこと?」
「言うの?」
「言ってほしいな」
「……ごほん。雪白姫があまりに可愛いから、その、天使なのではないかって思うんだ……。
でも天使でなくてよかった。天使だったら僕の元に来てくれなかったかもしれない。
天使は天に帰ってしまうから、君が天使だったら僕は羽根を毟ってでも引き止めていただろうね」
「ほ、本気で言ってる?照れちゃうわ」
「本気だよ。僕の可愛い天使さん。今日まで心配掛けたから、明日からはいっぱい埋め合わせをしよう。
花に水をあげて、手を繋いで庭を散歩をしよう。いつまでも笑って過ごそう。
夜は眠るまでお喋りをして、君が眠ったら君の寝顔を眺めながら安らかな眠りに落ちたい。
本当はあんなことやこんなこともしたい。でもね、時間はたっぷりあるのだから
二人で順番にゆっくり歩んでいけたらいいな……って。もっと言う?」
王子はしどろもどろに言い終えて、不安そうに瞳を揺らして私を見つめた。
話を聞いていた私も、話をしていた王子も顔が真っ赤だった。
王子が私をこんなにも思っていてくれたなんて、知らなかった。

79 :
「僕は四六時中、雪白姫を考えているんだよ。わかってもらえたかな」
「ならどうして言ってくれないの?今の半分も伝えてくれないから、私はいつも不安なの。
だっていつも抱きつくのは私から、キスするのも私から、好きだと言うのも私だけ。
これで安心していろって言う方がどうかしてるわ」
頬に涙が伝うのがわかった。幾筋も流れ落ちて止まらない。
本当は泣き顔なんて見せたくないのに。いつも綺麗な私を見ていてほしいのに。
でも涙が止まらないの。きっと今の私はへんな顔をしてる。
「不安にさせてごめん。何も言わずに何もせずにわかってほしいなんてエゴだよね」
王子のあたたかい手がそっと私の頬を撫でて、細い指先が涙をぬぐう。
私はその手に自分の手を添えて、おずおずと王子を見つめ返した。
視線が絡み合うもすぐにふいっと逸らされてしまう。
「でも」
「でも?」
「僕も不安だった。僕は女だから。君を騙していたから、嫌われていたらどうしよう。
雪白姫が僕の胸を揉みしだくのも、きっと私が女だったから嫌がらせをしているのだと」
私に対して騙していた手前、王子はそれを悪い意味に受け取っていたらしい。
「あれは嫌がらせでなくて、ぷにぷにすると気持ちいいからよ」
「そ、そうなの?でも私は退屈な女だから……話すのも上手ではないし。
僕の話は聞いていてつまらないだろう?いつもそういう顔してる」
「つまらなくないわ!あ、けれど政治のお話はよくわかんない……かな?」
つまらないというか、より正確に言うと嫉妬していた。
王子があまりにも楽しそうにお花の話やあの三人のことを話すんだもの。
「と、なると日常の話か、あの三人のことしか共通の話題が無くて」
あっそうか。王子は私を気遣って、私の知ってる話をしようとしてくれていたのだわ。
私と王子が同じように知っている話。お花の話、天気の話、ご飯の話、あの三人の話。
「嫌われたくなくて一生懸命お話してたけど、それが不安にさせる要因だったんだね」
「王子の心遣いに気づけなくてごめんなさい」
「いいや僕の方こそごめん。三人は僕の妹みたいなものなんだ」
「彼女達は王子より年上だと思うけど?」
幼少より王子の世話役だったことからして少なくとも五つ以上は離れてそうなものである。
しかし王子の言いたいことはわからないでもない。
彼女達はそれだけぼけぼけしているというか、頼りないというか。
好きだから無意識に補正してるだけで王子もそこまでしっかりしてるとも言えないけど。
そういえば王子は小さい頃はどんな女の子だったのかしら?
私は貴女が好きなのに、貴女のことを全然知らない。貴女も私のことを全然知らない。
「これから貴女のこともっとよく知りたいな。私のことも知ってほしい」
「僕も君をもっとずっと深く知りたい。僕のことも今より知ってほしい」
少しずつ順番に貴女の全てを知って、私の全てを教えてあげたい。
互いの胸から心臓を抉り出して、触れ合わすことが出来たのならば……
何もかも飛び越えて一瞬で全てをわかりあえるのかしら?けれどそれでは味気ないわ。
ゆっくり時間をかければかけるほど、二人の時間は永遠に続いていくの。
「じゃ手始めに「あんなことやこんなこと」ってどんなこと?」
「……言いたくない」
私の問いに王子は顔を赤くしてそっぽを向いた。睫毛を揺らして答えようとしない。
もぅ最初からこれでどうするのよ〜。これでは先が思いやられるわ……。
「私には言えないことなの?私が子供だから?私は貴女が思ってるほど子供じゃないのよ」
オトナの貴女から見れば、コドモの背伸びなのかもしれないけれど。
それでも同じ高さで歩けるように頑張るから!
「恥ずかしいから言いたくない」
「言えないようなことがしたいの?えっちなこと?」
「女の子がそういうの考えちゃいけません」
「王子も女の子でしょ」
「大人はいいの」
「ずるい」
「いつか教えてあげるよ」
「本当?ぜったいよ、約束だからね!」
大人はいつも「子供だから」って線引きするから嫌い。
でも王子は大人だけど大好き。私はぎゅーっと抱きついた。

80 :
王子の血潮の響きが聞こえる。どきどき。どきどき。大急ぎで流れてる。
ほっぺが熟した林檎のように真っ赤に染まっている。
「王子、なんだか嬉しそう」
「そうかな?」
「うん。とってもニコニコしてる」
私の指摘に王子はハッとして緩んだ口元と頬を両手で押さえた。
あわあわとうろたえて、すぐに表情を引き締める。
「僕のこと嫌いになった?」
「どうして?嫌いになんてならないわ」
「だって雪白姫にああしたい、こうしたいって考えてるときの顔だから」
「私も王子とあんなことやこんなことしたいなって考えるわ。それはいけないことなの?」
よく、わからない。私は毎日のように貴女との今日を、明日を、未来を考えているのに。
「いや。いけないことではないよ」
「なら私と何がしたいの?一緒にしようよ」
「いいの?」
「うんっ、いいよ」
「どうしよう。可愛すぎてにそう」
王子の頬がまたでれっと緩んだ。クールで格好良い王子も好きだけどかわいい王子も好き。
ところでそういうときの因はなんて言えばいいの?
雪白姫がこの上なく可愛すぎたため亡?エリーゼさん、これって復讐になりますか?
「ね、キスしてもいい……?」
「うんいいよ。しよ」
「んー」
「ちょっと待って」
私は手の甲で頬をごしごし擦って涙の跡を消そうとする。しかしその腕を王子が掴んだ。
「肌に傷がつくよ」
王子はいつも優しい。だからこそ……。
「いつでも一番美しい私を貴女の瞳に映してほしいんだもの」
「ふふっ。どんな雪白姫でも僕の世界で一番美しいのは君だよ」
「えへへありがと」
「心の準備はよろしいかな、お姫様?」
「うんっ」
王子の透き通る潤んだ瞳に私が映っている。その瞳が長い睫毛が縁どる目蓋に覆われると、
さらさらな黄金の髪からふわりと甘い花の香りがした。大好きな貴女の匂い。
ねぇ私も貴女のことを天使ではないけれど、おとぎ話の王子様みたいに思うわ。
でも違った。貴女は絵本の中の王子様じゃない。ページの外側でも私の傍にいてくれる。
これからどんな物語が始まるの?予定調和なおとぎ話とは違う物語を二人で歩んでいきたい。
「あーっ!!」
「!?」
「どうしよう!私、復讐されちゃうわ!」
私の魂の叫びを間近で受けた受けた王子は涙目で耳を塞いだ。
キスの直前だったということもあり、げんなりした様子で肩を竦める。
「誰に?」
「私、三人に凍えんじゃえばいいんだって念じたんだもの。もしも本当にんじゃったら……」
嗚呼どうしよう!私は嫉妬の罪で復讐されてしまう。
きっとそろそろ宵闇の森で白い男の人が憾みの唄を指揮している頃だわ。
私はバネ人形のように飛び上がって窓辺へ向かった。
遅れて王子が片膝をついて「よっこらせ」と立ち上がる。
でもすぐにはこちらに来ず「なんてことだ……」と口を覆っていた。
何が「なんてことだ……」のかよくわからなかったので私はスルーした。また訊ねる余裕もなかった。
私はバルコニーに飛び出ると、柵に身を預けるようにして見渡した。
外は一面の雪世界。木々や遠くに見える山までもが真白な雪に覆われている。
「危ないよ」
いつの間にか隣まで来ていた王子が私を抱えて柵から引き剥がした。
私は身を捩って元の場所に戻ろうとしたけど、やはり大人と子供。かなうはずなかった。
「離して。私は三人をどうしても見つけなきゃいけないの」
「彼女達ならすぐ下にいるよ」
王子は柵の真下を指差した。身を乗り出して下を覗き込むと三人が、いた。

81 :
三人は何やら姦しく騒ぎながら雪を丸めたり、大きくなった雪玉に何かつけていた。
雪かきというより、雪遊びをしているようにしか見えない。
良かったあ、んでない。と私はほっと胸を撫で下ろす。
「だめだこりゃ」
王子は肩を竦めて嘆いた。呆れ声で呼びかける。
「おーいお前達何してるんだー?」
「ゲッ」と彼女達はあからさまに嫌な顔をして大きな雪玉を背後に隠した。
「ややっ殿下は病み上がりですからお部屋の中にいてくださいってば」
「私達は一生懸命雪かきしてる最中ですから」
三人のうち二人は目を泳がせ、腕をぶん回しながら、
シャベルも何にも持ってないのに雪かきしてるアピールを始める。
そして残りの一人はこちらに背を向け、大きな雪玉と見つめ合っていた。
「赤い実を並べてお口っと。目はどうする?石ころにする?」
「シッ、黙って」
「なんでもありませんよー」
どうやら雪だるまを作っているらしい。雪かきついでに遊んじゃうなんていい御身分ね。
私は王子と顔を見合わせた。王子も同じ気持ちらしくため息をつく。
「遊んでるのなら部屋に帰ってこい」
「遊んでなどいませんよ!」
どこをどう見ても遊んでいるというのに彼女達はまだ遊んでいないと言い張るらしい。
さすがに言い訳しきれないと判断したのか、三人は私達に背を向けて何かの相談を始めた。
暫くして結論が出たらしくこちらに向き直る。
「……そうなんです。私達遊んでたんですよー」
「雪だるまを作りましてね」
「とっても可愛く出来たんですよ」
三人は先ほどとは一転して雪かきをサボって遊んでいたと認め始めた。
そして「「「じゃっじゃーん」」」と出来上がった雪だるまを披露する。
石ころの黒い目に赤い実の唇、植物の蔓で出来た王冠を被った歪な雪だるま。
だから何なの?と私が言おうとしたとき、彼女達は遮ってこう大きな声で言った。
「「「雪白姫でーす!」」」
えぇ!?あのぶさいくな、いやえっとあの美しい雪だるまが私?
でも彼女達の懸命な気持ちは確かに伝わってくる。
私はあんなに彼女達に嫉妬して邪魔者扱いしてたのに、意地悪言って困らせたのに、
彼女達は私を思って、私の雪だるまを作ってくれた。
こみ上げてくるものを感じた私は王子の服の袖口を掴んだ。
「みんなーありがとー!」
「いえいえ、どういたしまして〜」
「次は殿下を作りましょう」
「姫は寂しがり屋さんですからね」
「ぐずっ」
鼻の頭を真っ赤にして泣き出してしまった私の手のひらに、王子の手が滑りこんでくる。
指先を絡めとられ、ぎゅっと手を繋ぐ。
見上げると穏やかな笑顔を浮かべた王子がいて、私は思わずその胸に頬を押し付けた。
「というかむしろ殿下の方が寂しがり屋ですよねw」
「寝込んでたときだって気がつくたびに「姫どこー姫どこー」ってw」
「うなされながら姫の好きなところ数え始めたときはさすがに笑ったw」
ふるふるふるふる。
王子が小刻みに震え始める。身の危険を感じて私は体を引き剥がした。
俯いてくれたので背の低い私には王子の表情がよく見える。
唇を一文字に結んで顔を真っ赤にしている。潤んだ瞳が可愛い。
ふと私と視線がかち合うと目を泳がせて終いにはそっぽを向いた。見られたくないらしい。
どうせなら私にも私の好きなところ聞かせてほしかったなあ。
お返しに私も王子の好きなところいっぱい教えてあげるのに。
ひとつずつ交互に言い合いっこするのも楽しそう。
「好きなところ108つは余裕に越えてた」
「姫が聞いてたら呆れ果てて離婚の危機だったね」
「あんな細かいところまで見てるなんてただの変態だよね……」
むむっ、そんなにいっぱいあるのね。私も負けてられないわ。
あれ?へん、たい……?

82 :
なんというバカップルwwGJwww
もしや連投規制に引っかかった?

83 :
「王子ってへんたいなの?」
「……それはあの、えと。あーもう!おーまーえーたーちーはー!」
私が首を捻っていると王子が顔を真っ赤にして叫んだ。
「はい、殿下」
「変態王子w」
「ロリコンw」
「こら!本当のこと言ったら悪いでしょうが」
笑い転げる二人を諫めてるこの人も何気に酷いこと言ってる。
私としても好きな人が変態だって笑われてるのは良い気がしない。
それが事実であれ、虚構であれ、事実であれ、事実であれ良い気分ではない。
「頼むから勘弁してください……」
「もぉーみんな王子のこと泣かせちゃダメよ」
「雪白姫〜みんなが僕のこといじめるぅ」
「よしよし」
王子が私の胸に泣きついてくるので、私はぽむぽむと頭を撫でてあげた。
いつも甘えてばかりの私だけど、こうやって甘えられるのもいいかも。
「はあ。姫にはかないません」
「さっさと雪かきしよっと」
「あまりの熱さに雪も溶けちゃいますね」
三人は雪の上に投げ置かれていたスコップをそれぞれ拾い、雪かきを再開させた。
王子の雪だるまはもう作らないのかな?と思ってた矢先に泣きついていた王子が復活した。
「こらーお前達ーッ!」
「なんですかもう……」
「僕の雪白姫はもっと可愛い!」
「「「あーはいはいごちそうさまですぅ」」」
王子が誇らしげに胸を張り、三人は苦笑いを浮かべた。
やだもう……私、鼻の頭だけでなくて全身が真っ赤になってしまいそうよ。
「ふふっ。耳まで真っ赤になってる」
王子が笑いながら私の耳に唇を寄せた。熱い吐息がくすぐったい。
「三人は口は悪いけどさ」
いつもよりトーンを落とした低めの声で囁かれる。
「彼女達のおかげで僕は君に出会えたのだから感謝してるよ」
「えっ」

――迷い込んで一週間。宵闇の迫る森の奥で。
「おなかがすいてうごけない……」
「しっかりしてください殿下!」
「あちらからいい匂いがしますよ」
「ほんとに?」
「本当ですってば」
こうなったのは自分の責任だが、僕はもう1ミリだって無駄な体力は使いたくなかった。
地面にうずくまり、視線だけで三人を見上げる。今思えば三人も同じ状況だったのに、
弱音を吐かずに(文句は大量に吐いたが)よく頑張ってくれたと思う。
「おまえたちは、食いしん坊だったからな……」
「そっくりそのまま殿下にお返ししますよ。私達のおやつを何度盗み食いされたことか」
「とにかく行ってみましょう!」
宵闇の迫る陰が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
「!?」
その瞬間。僕の心に稲光が走った。途端に生気がよみがえり衝動がわきあがる。
目眩がするほどの衝撃に揺さぶられ、いてもたってもいられない!
それの意味を、それの名前を当時の僕は知らなかった。けれど今ならわかる。
「早速食料を分けて貰えるようお願いしてきます」
「いいや僕が行こう」
「ですが」
「僕が行く。僕が行かなければならない」
それはきっと赤い糸に手繰り寄せられた運命という名の導き。

84 :
「運命だなんて……えへへ」
「そして小人達にたらふく御馳走して貰って」
「運命の導きってご飯のことだったの?」
「勿論雪白姫だよ」
でも今の言い方はご飯のおまけみたいに聞こえたんだけど。
……。
もぉ。王子ってば照れ屋さんだからそうやって誤魔化してるのね。うふふ。かわいいんだから。
「なら三人は私達の愛のキューピッドね」
「今のは内緒だよ。聞いたらきっと調子に乗るから」
「またいじめられちゃうよね。そのときは私に甘えていいのよ?うふふっ」
王子は恥ずかしがってる様子でコクコクと頷いた。
本当はもうちょっとからかって照れる王子を見ていたかったけど、
私達にはまだ時間はたっぷりある。だから今は、私は私達のキューピッドを呼ぶ。
「みんなー!王子を作り終わったら今度はあなた達の雪だるまも作ってあげて。
私達にはあなた達がいるのに、雪だるまの私達にはあなた達がいないんじゃ寂しがるわ!」
三人は顔を見合わせ、頷き合うとこちらに向けて笑顔の花を咲かせた。
「「「はい超特急で作ります、姫!」」」
ここは私のおうちではないと思っていたけど、本当はそうじゃなかった。
ここは私が暮らしていたお城とは違うけれど、私のことを大切に思ってくれる人達がいる。
ここはもう私のおうち。新しいおうち。そしてみんなは私の新しい家族。私の大切な人達。
「ねぇ王子。私、これからはみんなと仲良くやっていけそう」
「でも僕と一番に仲良くしてくれないと今度は僕が嫉妬しちゃうよ」
王子は柔らかく微笑み、私の頬にキスをした。

「女の子の嫉妬は可愛いものだね」
「復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「エリーゼの嫉妬も可愛いものだね」
「本当?嬉シイ!ッテ、誤魔化サナイデ頂戴、メル」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!次コソ、次コソハ復讐サセルンダカラネ!」


頻繁に書き込みするのも申し訳ないのですが、バレンタインまでに終わらせたかったのでサクッと。
ナイフを振り回すのはやりすぎたと反省している。
雪白姫と王子は一回り以上年齢が離れてると萌える。
ジェネレーションギャップに困惑しつつ、背伸びして大人ぶる雪白姫と精一杯若い子ぶる王子超萌える。

85 :
>>82
支援ありがとうございました

86 :
GJ
ニヨニヨしましたw
雪白姫と王子っていくつだと思う?
原作にいるらしい7歳の超絶ロリコンだとしたら一回り年上(と仮定した場合)の王子は19歳
ともよちゃんと同い年の14歳だとしたら王子は26歳
雪白姫が大人になるの待ってたら王子さんじゅう×歳www
おやどこからかテッテレのテーマが聞こえる…
ホレ子とちーちゃんも結構歳が離れてるイマジナシオン
ホレ子とホレおねえさんはげふんげふん

87 :
自分の中では井戸子18〜20歳くらいでちーちゃん9〜12歳なイメージ
ホレおば…お姉さんは、実年齢は…見た目なら魔法で何とか誤魔化せr(r

88 :
赤王子は野薔薇姫とそう歳は変わらないイマジナシオンだけど
青王子はせっかくだから百合+ネクロフィリア+ロリコンの3拍子揃ったキャラの方がいっそ面白いwww
ホレおば…お姉さんはゲルマン神話にも出てくるらしいし見た目なぞ関係ないッ!くらいの心意気でお願いします

89 :
バレンタインのお話
ドイツでは男性から女性に花束を贈る日とのこと。
でも細かいことはキニシナイ。
・古井戸
今日も朝から炊事洗濯。私は今日も、お父さん!頑張っているよ!
義 妹「おねえちゃーん」
ホレ子「どうしたのちーちゃん?」
義 妹「バレンタインってなに?」
ホレ子「ちーちゃん、耳が早いなあ。バレンタインはね、大切な人に贈り物をする日なのよ」
義 妹「そうなんだー」
ホレ子(ちょっぴり期待だよー。どきどき。どきどき)
義 妹「ならあたい、ムッティに贈り物したい!」
ホレ子「……そ、そうだね。ムッティだよね(がっくし)」
義 妹「おねえちゃんどうかした?」
ホレ子「ううん全然」
《チョコを溶かして固めてデコレーションするだけの簡単なお仕事》
ホレ子「出来たぁー!あれぇ、ちーちゃんいっぱい作ったね」
義 妹「おねえちゃんにもあげるっ!」
ホレ子「マジで!ありがとーっ!(ハグッ)」
義 妹「へへっ」
ホレ子(ハッ、でももしかして作りすぎただけかも?)
継 母「いつまで夕飯作ってんだい、この愚図っ!」
ホレ子「うわあっ!」
継 母「台所をこんなに汚して、ちゃんと片付けておきな」
義 妹「ムッティ、バレンタインだからこれあげる!」
継 母「まあちーちゃんありがとう。可愛らしいチョコレートねぇ」
義 妹「バレンタインは大切な人に贈り物をする日だっておねえちゃんが教えてくれたんだ」
ホレ子「良かったら私のもどうぞっ!」
継 母「……まああんたの分ももらっといてやるよ」
ホレ子「今すぐお夕飯作りますね!」
継 母「今日の仕事はもういいから、二人とも遊んできな」
ホレ子「えーでもぉ?」
継 母「愚図に任せておくといつまで経っても食べれないからね。今日は私が作るよ」
義 妹「やったームッティのごはんー!」
ホレ子「ありがとうっ!」
継 母「今日だけだよ。明日はないからね」
義 妹「ごはん出来るまでお外で遊ぼうよ、おねえちゃん!」
ホレ子「うんっ!」
その後、お散歩がてらに古井戸を覗き込み、チョコレートを落とすと私達は家路についた。
義 妹「おねえちゃん」
ホレ子「なあにちーちゃん?」
義 妹「……あたいにはチョコくれないの?」
ホレ子「!」
義 妹「おねえちゃんからほしかったな」
ホレ子「あわわっ。ど、どーしよう!作り忘れちゃったよ!」
義 妹「がっかり」
ホレ子「ご、ごめんねっ」
義 妹「でもいいんだ。おねえちゃんからは毎日いっぱい大切なことを教えてもらってるから!」
ホレ子「えへへ照れるなぁ。これからもよろしくね、ちーちゃん!」
義 妹「うんっ!」
明日も明後日もそのまたずっと先もこうしてみんなで一緒に過ごせたらいいな。
だから私は明日も、お父さん!頑張ってみるよ!

90 :
・硝子
雪白「おうじー。今日はバレンタインよ。大切な人に贈り物をする日!」
王子「そうだね。何をくれるのか、楽しみだなあ」
雪白「一緒にお菓子作ろうよ。約束したでしょ?」
王子「よし。では何を作りましょう、先生」
雪白「さぁ真っ赤に熟れてる林檎。今日はこれでアプフェルクーヘンを作りましょう!」
☆雪白姫と王子のお料理教室☆簡単なアプフェルクーヘンの作り方☆
雪白「まずは毒入りでない林檎を用意します。最重要だよ☆」
王子「あとは皆さんで各自お調べください(ぺこり)」
雪白「最初に生地を作ります。材料をまぜまぜします」
王子「そして型に流して、とんとん。とんとん。型をとんとん」
雪白「次に林檎を切って並べて……オーブンで焼きまぁす」
雪白「嗚呼、ケーキは素早く、おいしく焼かなきゃ駄目なんだわ!」
王子「まずくなる前に焼かなきゃヤ・バ・イ!生地をドン!と投入!」
生地「ぎゃあぁぁぁぁ!」
雪白「妬いたのがお前の罪なら♪」
王子「おいしくなるまでこんがり焼けろー♪」
――そして小一時間後。
生地「ひっぱりだしてぇ×2もうとっくのむかしにやけてるんだよぅ♪」
二人「「まじで!?」」
雪白「焼き上がったらジャムを塗って冷まして出来上がり!」
王子「おいしそう。早速食べさせてよ。あーん」
雪白「じゃ三人を連れてきましょ」
王子「へっ。あれ、僕の為に作ってくれたんじゃないの?」
雪白「えっ。だって今日は大切な人に贈り物をする日なのよね?」
王子「僕は?」
雪白「みんなーおやつにしようよー」
王子「無視された……」
王子(今頃四人で楽しくケーキ食べてるんだろうなー。嫉妬しちゃうぞ)
雪白「おうじー。もぅむすっとしてどうしたの?」
王子「僕抜きで食べるケーキはおいしかったかい?」
雪白「うん、おいしかったよっ!」
王子「むー」
雪白「あのね、王子にはとっておきの贈り物があるのよ!」
王子「ほんと!?」
雪白「もぞもぞ(首にリボンを巻く)」
雪白「私をプレゼント♥」
王子「ありがとう……嬉しいよ(むぎゅ)」
雪白「えへへ。三人に教えてもらったんだぁ」
王子「ちょっと待っててね」
王子「こーらー!僕の雪白姫に変なこと吹き込むなーッ!」
家来「お褒めに預かり光栄です」
王子「褒めてない」
家来「本当は嬉しいんですよね?」
王子「まあね(でれっ)」
家来「特別手当はホワイトデーに三倍返しでいいですよ」
王子「考えておこう……ってオイッ!」

91 :
・薔薇
王子「わあ、チョコレートがいっぱい」
薔薇「うふふ。お気に召しましたか?」
王子「うん、おいしいね。でも何故だい?」
薔薇「今日はバレンタイン。大切な方に贈り物をする日なのですわ」
王子「大切な方って(でれっ)」
薔薇「勿論王子のことです♥」
王子「照れちゃうよ」
薔薇「気に入ってくださって嬉しいですわ。国中に散らばるお菓子職人に作らせた甲斐がありましたわ」
薔薇(本当はお菓子の作り方を教わろうと思って招いたのですけれどごにょごにょ)
王子「もぐもぐ。野薔薇姫も食べなよ」
薔薇(喜んでくださったのですから結果オーライですわね)
薔薇「では私もお一ついただきますわね」
王子「あっ」
薔薇「如何しました?」
王子「今日は大切な人に贈り物をする日なんだよね?」
薔薇「はい」
王子「僕としたことが何たる不覚。何も用意してないなんて!今から作ろうにも時間と材料がッ!」
薔薇「うふふ。王子ったらじたばたしちゃって可愛いですわ」
王子「笑い事ではないよ。僕も姫に贈り物がしたかったのに……」
薔薇「構いませんわ。私は貴女の気持ちだけでいっぱいです」
王子「それでは僕の気が済まない……」
薔薇「貴女が傍にいてくださるだけで充分ですわ♥」
王子「うーん。あ、そうだ!(チョコをパクッ)」
薔薇「?」
王子「いただきます。んんー」
――そして小一時間後。
薔薇「あぁん。こんな甘いチョコレートは初めてですわあ」
王子「ふふっ。喜んで貰えたようで嬉しいよ」
薔薇「もっと欲しいと言ったら、はしたない女だとお思いになります?」
王子「ううん。僕ももっと食べたいな」
薔薇「うふふ」
王子「じゃあ」
二人「「いただきます……」」
その後二人は唇が真っ赤になるほどチョコレートを食べましたとさ。

92 :
・薔薇2
アプリコーゼ「お邪魔しまーす」
アルテローゼ「帰れ」
アプリコーゼ「またまたつれないこと言っちゃって。ねぇ今日は一緒にお菓子を作りましょうよ」
アルテローゼ「一人でやれ」
アプリコーゼ「そんなぁ、お願いよアルテローゼ」
アルテローゼ「うるうるした目で見つめるな!ええい仕方ない、一緒に作ってやろうじゃないか!」
☆アプリコーゼとアルテローゼのお料理教室☆簡単なザッハトルテの作り方☆
アプリコーゼ「まずは」
アルテローゼ「以下略」
アプリコーゼ「各自お調べくださいね(ぺこり)」
アルテローゼ「ケーキの生地が出来たら燃やす!」
アプリコーゼ「燃やしちゃダメよ」
アルテローゼ「見よ、これが《深紅の魔女》と謳われたアルテローゼ様の実力だッ!」
――そして小一時間後。
アプリコーゼ「一時はどうなることかと思ったけど、上手に出来てよかったわ」
アルテローゼ「私が作ったのだから当然だ」
アプリコーゼ「今日のザッハトルテはどうだったかしら?」
アルテローゼ「私が作ったのだから当然おいしいに決まってる」
アプリコーゼ「ね、今日は何の日か知ってる?」
アルテローゼ「さあね。あんたの誕生日とは違うと思うが」
アプリコーゼ「まあ私の誕生日を覚えていてくれたのね!」
アルテローゼ「か、勘違いしないでよねッ!たまたま覚えてただけだからねッ!」
アプリコーゼ「私も貴女との記念日を忘れたことはないわ。今日はね、バレンタインデーよ」
アルテローゼ「だからなんだって言うんだ。私には関係ないね」
アプリコーゼ「大切な人に贈り物をする日。アルテローゼ、今日はおいしいケーキとお茶をありがとう」
アルテローゼ「なっ!?」
アプリコーゼ「貴女の気持ち、しかといただいたわ」
アルテローゼ「わ、私はあんたに付き合って作っただけであって……」
アプリコーゼ「また遊びに来るわね」
アルテローゼ「もう来なくていい」
アプリコーゼ「あらあら。今度はアイアシェッケでいい?」
アルテローゼ「おいしくなかったら呪う」
アプリコーゼ「ええ、頑張るわね」

93 :
・黒き女将
女将さん「おはよぉーん、今日もいい朝ねェ。って誰よぉ、調理場に花を並べたのはぁ」
女将さん「……あの娘しかいないわね。もぅこんなに沢山どうするつもりなんだか」
ぶらんこ「あ〜の日の空の色〜♪……あ、女将さん」
女将さん「あんたどこ行ってたの。朝は忙しいんだからさっさと調理場キレイになさい!」
ぶらんこ「わぁーかったつってるべ。女将さん、怒ってばっかだと皺増えるっぺ(ボソッ)」
女将さん「あぁ〜ン?あんたね、花摘んでどうするつもりぃ?」
ぶらんこ「……えと(並べた花を集めて)女将さんにあげようと思って」
女将さん「ハァ?」
ぶらんこ「今日は大切な人に贈り物をする日だってお客さんから聞いたべ。だ、だから……ええっと」
女将さん「だからぁ?」
ぶらんこ「ん、あげる」
女将さん「……まぁ貰っといてやるわぁーん。んふふっ、小さな青いお花ね」
ぶらんこ「おらの好きな花だべ」
女将さん「艶やかな私にはちょっち地味だけどォ」
ぶらんこ「……(しゅん)」
女将さん「まぁ美しいあたしは何でも似合うからぁ〜。ほらそれより今日もしゃかりき頑張るのよぉ」
ぶらんこ「チッ、今日も人使い荒いなクソババア」
女将さん「なんか言った?」
ぶらんこ「何でもないっぺ」
女将さん「ふんっ、今日くらいはつまみ食い許してやってもいいわよ」
ぶらんこ「やった!」
女将さん「ちょっとだけよぉ〜って早速チキンにかぶりついてぇ、高いのよォ!」
ぶらんこ「もぐもぐ。女将さんが食っていいって言ったべ」
女将さん「女の子なんだから丸かじりはお止しなさぁい。あたしのような妖艶な女になれないわよぉ〜ん?」
ぶらんこ「ずぇ〜ったい、女将さんみたいなアバズレにはなりたくないっぺ」
女将さん「なぁんですってぇ!?」
ぶらんこ「でも優しいところは見習いたい……あっ今のはナシ」
女将さん「あーら可愛いこと言うじゃなぁーい?」
ぶらんこ「違うべ、これは何かの間違いd」
お客さん「おぉい、いいから早く朝食を作れ」
・詩女神
フリュギア「お姉様〜、チョコレートって何?」
ド リ ア「さあ。イオニア姉様はおわかりになります?」
イオニア 「……わ、わかるわ」
アイオリア「さすがイオニア姉様!」
リュディア「チョコレートとは一体なんでしょう?」
イオニア (やはりわからないとは言えない……)
ロクリア 「お姉様!私、下界でチョコレート見てきたわ」
アイオリア「ホント?」
リュディア「ロクリアったらまた黙って遊びに行ったのね」
ド リ ア「危ないから一人で行ってはだめよ」
フリュギア「それよりチョコレートのこと教えて!」
ロクリア 「風の都で神官さんが」
イオニア 「嫌な予感がするから言わなくてよろしい」
フリュギア「それにしてもチョコレートってどんなものかしら〜」
アイオリア「ロクリア、こっそり教えてよ」
ロクリア 「神官さんは小さい女の子に〜」
イオニア 「だから言わなくてよろしい」
リュディア「小さい女の子?」
ド リ ア「チョコレート……?」
詩女神姉妹「にんげんのひとってへん……」
おしまい。

94 :
GJ!
みんな可愛いな…!!
そういえば、ここの職人方ってサイトとかやってらっしゃるのか…?
サイト運営してないならもったいないレベルの文才だなぁと思ったんだが…

95 :
GJ
不覚にも女将かわいいと思ってしまったw

96 :
ツイッター上のともよちゃんと結女さんのやりとりに思わずパーンとなった
なんて息の合った挨拶ww

97 :
なんてことのない朝の挨拶「オハヨ」がここまで萌えるとは、な…
燃料投下にずっと躓いてた雪白姫と王子ネタが峠を越えて一気に形になり始めた
と思ってた矢先にPC規制されてたw
ちょっと宵闇の森で憾み唄ってくる

98 :
野薔薇姫×雪白姫の同志はおらぬか

99 :
>>98
おるぞ

100 :
>>99
お前とはいい酒が飲めそうだ
7人の女優たちが並んだ絵を見ると、何通りのCPが組めるのか考えてニヤニヤしてしまう俺がいる

101 :
七人で二人ずつ組み合わせると一人余るね
ここはエリーゼさんに参戦していただいて、是非ともエリーザベトさんとキャッキャしてほしいなぁ
キャッキャとは少し違うけど
磔刑ラストでメルヒェンさんがエリーゼを置いていったら…という展開でサクッと書いてみた
カタカナだと読みづらい&書きづらいので地の文は通常通り

「ネェ、嫌……嫌ヨ、メル。嫌、嫌嫌嫌ァァァ!オ願イ、オ願イヨォ、メル……嫌アアァァァァァ!!」
「もういいんだよ、エリーゼ」
ああ、メルが離れていく……。行かないで、私を一人にしないで。
私達ずっとずぅっと一緒だって約束したじゃない。
貴方と一緒にいることが私の存在理由なのよ。貴方がいなくちゃ、私は……私は……。
背後から足音が近づいてくる。
メルが戻ってきてくれたのね!そうよ、私に貴方が必要なように、貴方には私が必要なのよ。
私はふわりと抱き上げられた。柔らかくあたたかなその懐かしいぬくもり。
けれどこれはメルの腕じゃない。
もううまく動かなくなった硝子の瞳を巡らせて、私を抱き上げた人物を見上げる。
碧い目をした神々しいまでに綺麗な女性。
この女は復讐をしないと言い張り、メルを狂わせた張本人!
私は最期の力を振り絞って抵抗する。
「ヤメテ、離シテ!貴女ナンテ嫌イ!メルヲ返シテ、私ニ返シテ!」
「ずっと私の代わりにメルの傍にいてくれたのね……」
「何ヲ言ッテイルノヨ、離シテ、メルノ元ヘ返シテ!」
「ありがとう、エリーゼ」
「ア……」
女は私をぎゅうっと抱き締めた。私は彼女のぬくもりを知っていた。
それは遠い遠い昔の話。私には貴女しかいなくて、貴女には私しかいなかった。
狭い鳥籠の中で私達はいつも一緒だった。
彼女は人形である私に、娘のように、妹のように、友達のように、恋人のように、様々な役柄を求めた。
だから私は娘のように、妹のように、友達のように、恋人のように、彼女と遊んだ。
でもいつからか、彼女に友達ができた。彼女は彼に連れられて宵闇の森へとたびたび遊びに行った。
二人が遊びに行くときはいつも私はお留守番。私は彼に「友達」と「恋人」の役柄を奪われてしまったのだ。
独りで待ち続けるのはとても寂しく、彼に嫉妬したこともあった。
けれどそんな二人に別離の日がやってきた。
彼女は大きな瞳に涙を湛えて、私にこう言った。
「どうか私の代わりにいつまでもメルの傍にいてあげてね」
彼女と彼が斜陽の接吻を交わして離れ離れになったとき、私と彼女も離れ離れになった。
そして、私はずっとメルの傍にいた。
彼が彼女との約束を忘れても、私が彼女との約束を忘れても、私達はずっとずぅっと一緒にいた。
「エリーゼ」
私を呼ぶ優しい声。
彼女の碧い瞳から丸い涙が零れ落ちる。その粒が私に降り注ぐごとに、私はあの頃の私にかえっていく。
「エリーゼ……私、約束、守レナカッタ……。メルハ今、独リボッチ……」
「いいえ、メルは独りぼっちではないわ。今から私達で迎えに行くのよ」
「エリーゼ、コレデ私達……ズット、ずぅっと、一緒ね……?」
「ええ。これで私達、ずっとずぅっと一緒よ」
愛しい腕に抱かれて、あたたかなひかりに包まれて、私は目を閉じる。
木漏れ日の落ちる森の奥でメルとエリーゼ、そして私が笑っている姿が見えた気がした。
おしまい。

エリーゼは元々はエリーザベトのお人形なんだよね
当時のエリーゼは動かないし喋らなかっただろうけど、鳥籠の中で二人がキャッキャしてたらいいな
エリーザベトが一人芝居して、お人形とお喋りしてたら萌える

102 :
>>101
泣いた GJGJ!!
エリーゼも幸せになってほしいよ…

103 :
>>101
うわーーー
そうなんだよね
エリーゼは幸福者だ

104 :
>>101
ちょい自信ないんで確認させてくれ
終盤はお互いにお互いをエリーゼと呼び合ってる…であってるよな?
今までベトとメルツの別れにばかり注目しててベトとエリーゼの別れを認識してなかった
もったいないことしてた…
ただでさえ泣ける鳥籠がさらに泣ける歌になったよ

105 :
>>101
GJ!!エリーゼが最後カタカナじゃなくなるところで涙腺爆発した

106 :
これで火刑子、ぶらん子、ホレ子、青髭子が残ったわけだな
さてどうするか

107 :
>>106
ヒロイン同士の組み合わせに限らなければ青髭子は新妻ちゃんと是非ッ!
>>104
仰る通りです。わかりづらくてすみません
思いつきで書いて即投下するとぐだぐだで申し訳ない
かといって時間をかけて煮詰めてもごらんの有様だよ!!!
7レス分投下します。
>>73の続きで雪白姫と王子。好きには種類があるよねという話。
ついにエリーゼさん待望の復讐劇が始まる……かも。

108 :
「エリーゼ」
「メル、イツモノ言ワナイノ?」
「いつまでこのバカップルを見ていればいいのかな?」
「ダッテ、マダコノ娘達、復讐シテナイモノ」
「楽しんでる?」
「ウフフッ。ホラァ、イツモノ言ッテヨォ」
「真っ白なページに書き綴る物語。策略をめぐらす作者の作為的な嘘。
深い虚構の闇に葬り去られた――知られざる八人目の女優よ。
自らの気持ちを偽ることなく、さぁ唄ってごらん……」

――むかしむかしあるところにとても美しいお姫様がおりました。
けれどそのお姫様は普通とは違いました。お姫様は女の子しか愛せなかったのです。
そんなお姫様を受け入れてくれる女の子はどこを捜しても見つかりません。
お姫様はひらめきました。生きている女の子が駄目ならばんだ女の子ならどうでしょう?
物言わぬせる乙女ならば女の子である自分を受け入れてくれるに違いない。
例え自分を愛してくれなくとも……。
女の子しか愛せないという特殊な性癖をもつお姫様は理想の花嫁を捜す旅に出ました。
そうして見つけた硝子の棺で眠る姫君。
お姫様が愛したのは王子様ではなく小さなお姫様。
これは幸せなお姫様と硝子の棺を飛びだした小さなお姫様の物語――。

「雪白姫」
僕の可愛いお姫様。小さな体が震えているよ……。
僕は寒くはないけれど、雪白姫は小さいからすぐ凍えてしまうのかな?
なんて思いながら細い肩に回した腕で強引に向きを反転させる。
「冷えてきたね。そろそろ中に入ろうか」
「でも……」
雪白姫は文字通り長い黒髪を引かれる思いなのか、雪だるまを作り続ける三人を振り返った。
「風邪がぶり返すと大変だよ」
「うん」
促すと雪白姫は案外素直に従った。子供は素直でいいなあ……なんて口に出すと
子供扱いしないでとふくれっ面になるのでやめておく。ふくれっ面も可愛いけどね。
室内へ戻るとむわっとした空気が襲い掛かってきた。むせ返るほど暑い。
襟元をくつろげようと指先を伸ばすと、それを見ていた雪白姫が明らかに動揺し始める。
「あっ。えと。あの、あのっ」
「えっ?」
ああ、僕が言えないようなことがしたいなんて言ったから警戒しているのかもしれない。
服を脱ぐこと=そういうことでもないのだが説明するのは骨が折れる。
精一杯背伸びして大人ぶっても、やはり本当はそういうのが怖いのだろう。
いや、僕も特段これといって怪しいことがしたいわけではない。
ただ純粋に仲良くしたいだけであってやましいことはない。本当だからね!
「この部屋暑いね」
「そうかしら?」
今、言い訳したと思われた。否定したいけど怪しまれること間違いなし。
僕が曖昧な逃げの笑みを浮かべると、雪白姫は言葉を続けた。
「寒いところから戻ってきたばかりでそう感じるだけよ」
「そうだね」
話が終わると雪白姫は僕からすーっと離れて、床に落ちてるナイフを拾いに行った。
もしや三人が「変態」だとか言ったから避けられてる?嫌われちゃった?
僕は内心焦りながらも努めてポーカーフェイスで倒れた椅子を元に戻して着席。
雪白姫も何事もなかったかのように向かいにちょこんと着席して、籠から林檎を取り出す。
「林檎剥いてあげるね」
そういえばあんな修羅場があって忘れていたけど、僕らはお茶の準備をしていたのだった。

109 :
目の前に置かれた砂時計はとっくのとうに空になっている。
僕は恐々とポットの中身を確認して、ポットの中身より渋い顔をした。
時計がないので正確な時間はわからないが、どう考えても必要以上蒸らしてしまったに違いない。
「お茶は淹れなおすよ。お湯をもらってくるから少し待ってて」
ポットを載せた黄金のトレーを持って立ち上がると呼び止められた。
「待って」
「なんだい……!?」
扉の手前で振り返ると雪白姫がこちらに駆けてくるのが見えた。
それだけならとても可愛らしいのだが、彼女は手に銀色に煌くナイフを持っていた。
臆病ではないと自負する僕でもさすがにうろたえる。
な、何が起こったんだ?
もしやさっきの件で犯られる前にらなきゃヤ・バ・イ!とでも思ったのか。
そうこう考えているうちに雪白姫がこちらに迫ってくる。逃げ場はない。――ナイフが煌いた!
「ひぃ、いやぁやめてっ」
「行かないで、行っちゃダメーッ!」
「きゃあああああ!」

「なるほど。それで君は――えっまだ早い?おっと失礼。さぁ、物語を続けようか……」

――こんなところで終わるなんて心残りがありすぎる。
こんなことなら雪白姫の心情や成熟具合など考慮せずに自分のやりたいようにやるべきだった。
まだやり残したことが沢山ある。例えばあんなこととかこんなこととか……。
そういえばまだ伝えてないことがあったな……。僕がどれだけ君を好きかってこと……。
……。
…………。
ん、痛くない?覚悟していたはずの鈍い痛みがいつまで経っても襲ってこない。
堅く瞑った瞼を恐々とあける。
「今日はずっと一緒にいて」
「雪白姫……」
はっと我に返ると雪白姫が背中にぎゅうっとしがみついていた。
不意打ちをかまされて胸がきゅんきゅんと高鳴る。
「だってずっと離れ離れだったんだもの。今日はずーっと一緒にいてね」
上目遣いの大きな瞳に見つめられ、いてもたってもいられなくなる。
――危ない。トレーを持っていなかったら押し倒してるところだった。
雪白姫が求愛する小鳥のように甘く囀る。
「お・う・じ」
「ゆ・き・し・ろ・ひ……ってああっ!」
忘れてた!
僕は抱きつかれたままテーブルの前まで移動して、そこにトレーを置いた。
次に刺激しないように雪白姫の小さな手を取ってゆっくりと指を一本一本丁寧に広げてゆく。
そっとナイフを抜き取ってトレーに放った。
「ほっ。雪白姫、ナイフを持ったまま動きまわったら危ないだろう?」
「ごめんなさい」
雪白姫がしゅんと目に見えて小さくなった。僕は身を屈めて視線の高さを合わせると、
聞き分けのない子供を諭すときと同じように雪白姫に話しかけた。
「誰かに刺さったらどうするの?転んで怪我したらどうするの?」
「だからぁごめんなさぁい」
「真面目な話をしてるの。ちゃんと聞いて。世の中には便利だけど危ないものが沢山あってね」
「むぅ……」
「使い方によって人の役に立ったり、人を危険にしたりするんだよ。だからね、きちんと――」
「王子ってお母さんみたい」
「えっ」
「あれはだめ、これはだめ。ああしなさい、こうしなさいってうるさいんだもん」
「あ、あぁ……」
「独り言だから気にしないで」
僕がお母さんだ、と……。雪白姫にとって口うるさい大人は皆お母さんみたいなのか。
だが勘違いしないでほしい。断じて母子ほど年齢が離れているわけではない!
くっ、僕がもっと若ければ……いや充分若いとは思うけど。もっと年齢が近ければ……ッ。

110 :
「とりあえず座ろうよ」
「うぅ……」
雪白姫がいじけている僕の腕を引っ張る。その手に導かれるままに着席する。
「ねぇおうじー、王子ってばあ。もぅどうしたのよぉ」
「…………」
「お話しようよー。ねーねー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。……。
揺さぶり飽きた雪白姫はため息をついて、背後から抱きついて僕の肩に顎を乗せた。
椅子に座った僕と立ったままの雪白姫。背丈がぐっと近づいた気がする。
同じ視線の高さで歩けたらいいのに。でも現実はそんなに甘くはない。
――朝、目が覚める度に彼女の寝顔を見ながらバウムクーヘンのようにぐるぐると考える。
僕がもっと若ければ、背丈が低ければ、男性であれば――。
もっと若ければ――彼女といつも笑い転げて遊んでいられる。
背丈が低ければ――彼女と同じ目線の高さで歩いていられる。
男性であれば――彼女に相応しい王子様になってみせる。
どうして君はもっとはやく生まれてきてくれなかったんだろう。
どうして僕は君よりずっと先に生まれてきてしまったんだろう。
この出会いが生まれるずっと前から決まっていたのなら、どうして神様は僕を女にしたの?
それともこの出会いは気まぐれな女神のいたずらだというのか。
どうして。どうして。どうして。
「そんなの決まってるわ」と雪白姫が耳元で呟いた。
「えっ」
「うふふっ。全部声になってるわよ」
「!?」
慌てて両手で口を塞ぐも後の祭りである。
雪白姫の口癖ではないけれど、僕だって彼女にはいつも格好いい自分を見ていてほしいのに。
こんなことぐだぐだ悩んでいるようでは格好がつかないよ……。
理想の王子様を演じ続けるのは皆が思うほど楽じゃない。
「どうして貴女が私より先に生まれてきたのかですって?
――それは私の為よ。私を探し出す為。私が迷わないように手を取って導く為」
「では君が遅く生まれた理由は?僕は君のいない世界で君を知らないまま何年も過ごした」
「十何年もでしょ」
「ハハハ……きついこと言うね」
「私だってはやく生まれたかったわ。子供扱いなんてさせなかったのに。
ねぇ、王子は私が小さくてよかったって思うことないの?」
「この僕がロリコンだと?」
いつも皆に言われるが、僕はロリコンなどではない。
たまたま好きになった娘が小さくて可愛いお姫様だっただけである。
「うーんそういう意味ではないのだけど……」
雪白姫はうまく言葉に出来ないと、僕の髪に鼻をうずめた。
「私は王子が女の子でよかったと思うわ」
それも口に出ていたのか。居心地の悪さに身を捩るが雪白姫は僕を離してはくれなかった。
動けないのなら腹を括るより他あるまい。僕は覚悟を決めて訊ねた。
「どうしてそう思うんだい?」
「逆に訊いてもいい?王子は女の子なのが嫌なの?苦痛なの?お父さんに何か言われた?
本当は男の子が欲しかったのにー。男の子でないと王位は渡せないーって」
「いいや。父は僕がこうなったことを嘆いているよ」
蝶よ花よと大切に育て上げた姫君が――もとい政略の道具がこんなになってしまって、
父は今頃とんだ番狂わせを喰らっていることだろう。
「ならどうして女の子なのが嫌なの?」
「嫌というか……女では雪白姫を」
と僕は口を噤んだ。女では雪白姫を抱けない(性的な意味で)なんて直接口に出したらドン引きされる!
いや女でも抱けるのだがそういうのはここで説明しかねるというかごにょごにょ。
「私を、なあに?」
「女では雪白姫の理想の王子様に、なれないから……」
よし、我ながらうまい落とし所だ。内心でガッツポーズを決めながら、
頬と頬が触れ合いそうなほど近くにある雪白姫の顔を横目で窺う。
雪白姫は零れ落ちそうな大きな目を更に大きく見開いて首を傾げた。

111 :
「へんなの」
「へんなのって僕は真剣に悩んでるのだが」
「王子は私の理想の王子様なのに」
「女なのに?」
「性別が関係あるの?それともお姫様って呼んだ方がよかった?」
「いや、もうお姫様という柄ではないから」
大変悔しいが、もし仮に今も女性の格好をしていたとしても、
もうお姫様と呼ばれるには少々恥ずかしい年齢であることぐらい僕も承知していた。
「私はお姫様でも王子が好きよ」
……おや、性別のことで悩んでいるのはもしかして僕だけなのか。
「好きになったら女の子とか男の子とか関係ないよね?私、おかしくないよね?」
雪白姫が不安げに瞳を揺らす。
首だけで振り返っていた僕は体ごとそちらに向いて、二人は見つめ合う形になった。
林檎のように赤い頬を両手で挟んで安心してもらえるように優しく微笑む。
雪白姫も悩んでいるんだね。君の気持ちは痛いほどわかる。
はじめての好きという気持ち。でもその相手が女の子だったという戸惑い。
どんどん加速していく好きの気持ち。どうしても止められない焦り。
好きで愛しくて、寝ても覚めても彼女のことばかり考えてる。
こんな自分はおかしいのではないかという不安。
全部僕も経験してきたこと。そして今もまた現在進行形で経験してること。
雪白姫をもっと好きになってもいいだろうか?駄目だとしてももう止められない!
「王子、女の子が女の子を好きになるのはいけないこと?」
柔らかな頬に触れた僕の手にそっと雪白姫の小さな手が重なる。
「いけないことではないよ。僕も雪白姫が好き」
「けれど王子の好きは私の好きとは違うかもしれないわ」
違う?――ドキリと心臓が飛び跳ねる。
好きには種類がある。
家族に対しての好き。友達に対しての好き。恋人に対しての好き。
愛情にも種類がある。
親が子に向ける無償の愛。親や兄弟に向ける尊敬の愛。友達同士の友愛。恋人同士の情愛。
雪白姫は僕を「お母さん」みたいだという。
彼女の僕に対する「好き」は母親のように、兄や姉のように慕っているという意味かも知れない。
その「好き」は嫌だ。家族への愛も素晴らしいものだと思うが僕はその愛が欲しいわけではない。
どうして人は恋をすると欲張りになるのだろう?
神様は欲張りな僕を嫌いになりますか。雪白姫は欲張りな僕を嫌いになりますか。
――神様に嫌われたって構わないから、どうか君は嫌いにならないでほしい。
雪白姫も何か思うところがあるのか、僕らは無言のまま暫く見つめ合った。
「雪白姫はきっと僕を家族のように思っている。尊敬を愛と履違えている」
「王子はきっと私を妹みたいに思ってる。可愛いお花を愛でるそれと同じ」
――違う。と僕らは表情だけで語り合った。
そしてどうか同じ気持ちでありますようにと祈りながら続きを口にした。
「僕の愛はきっと雪白姫の愛とは違う。僕は君を――」
「私の愛はきっと王子の愛とは違う。私は貴女を――」
重なり合う言葉が美しい音色を奏でる。
続く言葉をお互いに感じ取り、泣きそうになる。
「どうして泣きそうなの?」
「君の気持ちがわかって嬉しいからだよ。雪白姫こそどうして」
「私も嬉しいから」
言葉が無くとも想いは伝わる。けど今の僕らにはまだ気持ちを確かめ合う言葉が必要だった。
「僕は雪白姫が好き。だから恋人になってほしい」
「私も王子が好きです。だから恋人になってください」
僕が答えの代わりに赤い頬に口づけすると、雪白姫は照れた笑みを浮かべて僕の頬にお返しをくれた。
想いを伝えるのは勇気のいることだけど言葉にしてみれば至ってシンプルで、
今まで悶々と悩んでいた日々は何だったのだろう?とさえ思える。
しかしそのつらかった日々でさえ、こうして想いが通じ合った今では愛おしい。
「私達、恋人同士になれるよね?」
「なれるよ。誰が何と言おうとなるよ」
「うんっ!」

112 :
ある日、僕は硝子の棺で眠る君を見つけて城へ持ち帰った。
君はとある出来事によって目覚め、僕らは全ての事柄をすっ飛ばしてすぐさま結婚式を挙げた。
愛の告白もせず、それどころか会話だってろくに交わしていない状態で、
お互いをよく知りもせずになんとなく流れで二人は愛の契りを交わした。
それから徐々にお互いを知り合って、分かり合って、漸く告白までこぎつけた。
順番が逆になってしまったけど、これはこれで僕ら「らしい」のかもしれない。
姫のために勇んで棘の生垣に立ち向かったわけでもなく、迷い込んだ見知らぬ森で偶然に見つけ、
真実の愛のキスで目覚めるわけでもなく、とんだ起床で二人は出会った。
雪白姫に伝えたら「ロマンチックじゃない」とむすっと小さな口を窄めるだろうが、
僕はこの出会いに運命を感じている。
「うふふ。なんだか恋人同士ってドキドキするね」
「僕は雪白姫と一緒のときはいつもドキドキしてるよ」
「あらら。ドキドキのしすぎで心臓止まっちゃわないようにね」
くすくすと雪白姫が籠から林檎を取り出した。
またしても忘れていたが、僕らは先ほどからずっとお茶をしようしていたのだ。
今度こそはお茶はともかくとして林檎にはありつけそうだ。
「お茶は新しく淹れなおそうか?」
「だめ。今日はずっと傍にいて」
雪白姫はいつになく頑なだった。
風邪の期間、離れ離れだったのが相当堪えたらしい。
寝込んでいた僕でさえ時々起きだしては雪白姫の姿が見えずに寂しい思いをしたのだ。
きっとすぐに良くなった雪白姫はもっと長い間寂しい思いをしていたに違いない。
だからこうして一緒にいたがるのだろう。そう考えると胸がきゅっと締め付けられる。
雪白姫には寂しい思いをさせてしまったのだから、今日だけと言わず明日も明後日も、
ずっと未来まで出来る限り傍にいてあげよう。いいや、傍にいてほしい。
雪白姫の小さな手が赤い林檎を器用に切り分けて、
真っ白なお皿の上に愛らしいウサギさんが一匹、また一匹と並んでいく。
時折ハラハラさせられたが概ね失敗もなく指を切ることもなく、林檎はあっという間に剥けてしまった。
料理上手というのは本当だったようだ。いや疑っていたわけではないが。
「はいどうぞ、召し上がれ」
「可愛いウサギさんだね」
ウサギさん林檎を摘まんでぴょんぴょんと飛び跳ねさせる。
雪白姫も同じようにウサギさん林檎を飛び跳ねさせた。
ウサギさんは僕と雪白姫の間でご対面してキスをした。
「あ、でも王子にウサギさんは相性悪かったかしら?丸焼きだっけ?焼き鳥?」
「それはもう忘れてください」
焼き鳥の件は黒歴史にしたいというか、既に黒歴史というか。
どうして雪白姫にあんなこと暴露したんだろうか……。穴があったら掘りたい、でなくて入りたい。
「忘れてあげないよーだ。だって王子のことは何でも知りたいし、覚えておきたいもの」
「じゃ僕も雪白姫の恥ずかしいことも知りたいし、覚えておきたい」
「やだぁ、王子のえっちー」
「そ、そういう意味で言ったわけでは」
「でもぉ、知りたいなら教えてあ・げ・る♥」
「ゴクリ……」
「やっぱり教えなーい」
「えぇー」
期待させるだけ期待させておいて、おあずけだなんて僕は犬か。
でもね、どれだけ主人に忠誠を誓った騎士だって牙を剥くんだよ。雪白姫も後悔する日が来るさ。
正式に恋人同士になったのだからこれからは大手を振って色々出来る。
いずれ時期が来たら硝子の棺であんなことやこんなこと……えへへ楽しみだなあ。
おっといけない。また顔が緩んでる。
「寒気がする。とてつもなく嫌な予感がする」
「おや風邪がぶり返してきたのかな?」
「なぁにこの変態、白々しいんですけどぉ。とぼけるならもっと上手にやってくださらなぁい?」
まさかこれは三人からだけでなく雪白姫からも変態だと罵られ、からかわれるフラグ?
なんてことだ……どうして僕ばかりがこんな目に。でも雪白姫になら罵られてもいいかも。
「へんたい」
「否定のしようがないです」

113 :
「お話はそろそろおしまいにして、林檎食べましょ」
ぴょんぴょん、ぴょんぴょんとウサギさんが跳ねて口元にやってくる。
蛇に唆された二人が楽園を追われる原因となった禁断の果実。
招かれざる争いの女神エリスが祝宴に投げ込んだ黄金の林檎。
林檎はいつも災いを呼ぶもの――。
抗えない 誘ってる悪魔 7つめの罪は蜜の味。
「いただきまーす!」
「いただきます……」
白い果肉に歯を立てると甘酸っぱい切なさが口の中いっぱいに広がった。
それは永遠という名の甘い蜜の毒。
「甘くておいしいね」
「うっ」
「王子?」
目の前が真っ赤に染まり、やがて全てが真っ黒に塗り潰される。
椅子ごと床に倒れこんだ僕に雪白姫が駆け寄る。
「どうしたの?苦しいの?」
わからない。声が出ない。体がまるで自分のものでなくなったかのように動かない。
バラバラに切り刻まれて、自らの意思とは裏腹に勝手に組み直されていく。
「しっかりしてよぉ」
今にも泣きだしそうに揺らいだ大きな瞳に僕が映り込んでいる。
泣いてほしくないのに、いつまでも笑っていてほしいのに、幸せにしてあげたいのに僕は無力だ。
ついに涙が零れて雪白姫の真雪の頬を伝い、僕の頬に落ちた。
「人を呼んでくるから待ってて」
行かないで。しかし雪白姫は駆け足で姿を消してしまう。
彼女がいなくなった世界はまるで太陽を失ったかのように真っ暗になった。
いつの間にか、僕が僕を見下ろしていた。
正確に言うと僕と同じ顔をした男の人が僕を見ていた。
僕は重たい瞼をどうにか開けて彼を見上げる。
彼が僕自身だと気付いた瞬間、ページが勢いよく巻き戻った!
始まりの場所から――誰かが僕の物語を書き換える……。

――むかしむかしあるところにとても美しいお姫様がおりました。
けれどそのお姫様は普通とは違いました。
特殊な性癖をもつお姫様は理想の花嫁を捜す旅に出ました。
そうして見つけた硝子の棺で眠る姫君。
お姫様が愛したのは王子様ではなく小さなお姫様。
幸せなお姫様。
真っ白なページに書き綴るのは小さなお姫様との物語。
――歴史が事実を語るように、作者は作為的な嘘で物語を騙る。
誰にも知られることなく虚構の闇に葬り去られた八人目の姫君。
物語の掟。可哀想なお姫様を救うのはいつだって王子様の役目。
そうして書き換えられた童話。
硝子の棺で眠る姫君と彼女を迎えに来る王子様。
哀れなお姫様。
真っ黒に塗り潰されたページに存在した証さえ残せず。

「なるほど。それで君は消されてしまったわけだね。
残念ながら私にはページの外側に干渉するほどの力はない。
だがページの内側にいる君の代わりのあの男にならば可能だ。
さぁ、復讐劇を始めようか」

114 :




「おや、復讐するのが怖いのかい?だが恐れる必要はないよ、お嬢さん。
屍揮者は君の味方さ!…………えっ長くなったから一旦切る?なるほど。ならば仕方あるまい」
「連投規制ニ怯エルダナンテ、情ケナイワァ」
「じっくりと復讐の計画を練りながら時が満ちるのを待とう、エリーゼ」
「ウフフ。良ク分カッテルジャナイ、メル。サァ、オ楽シミハ、コレカラヨ。キャハハハハッ!」


一旦切ります。
当初の因は雪白姫が可愛すぎて出血多量で亡。平たく言うと鼻血でした。
エリーゼさんに「ばーか」と言われるのがオチなので林檎に変更。

115 :
GJ!!続きが気になる…
あと王子ちゃんの妄想の中の硝子の棺であんなことやこんなことされちゃう雪白たんのことも気になって眠れません

116 :
ホレ子はちーちゃんや継母、ホレおbお姉さんと結構よりどりみどりだな
ひっそり火刑子×ぶらん子支援

117 :
王子が王子に復讐とは新しすぎるw
赤王子も仲間になりたそうにそちらを見てますよ
>>115
同士よ
雪白たん可愛すぎてもう辛抱ならん

118 :
ぶらん子×雪白が気になっている
そうだよ中の人にやられたよ
頭なでたり抱き締めてたり手繋いで退場したり可愛すぎる

119 :
あっ今日雛祭りじゃないか。
しかし寒いな。

ホレ子「あかりをつけましょ、ぼんぼりにぃ〜」
義 妹「おはなをあげましょ、もものはなぁ〜」
義 妹「ところで今日は何の日なの、おねえちゃん」
ホレ子「今日は雛祭り。女の子のお祝いなのよ!」
義 妹「そうなんだー」
ホレ子「今日はちーちゃんが主役の日ね!」
義 妹「えへへ。おねえちゃんも女の子だよ」
ホレ子「あ、そうだね。忘れてた!」
ホ レ「……わざわざ私の家まで遊びに来て雛祭りのお祝いとはねぇ」
ホレ子「お邪魔してますっ!」
義 妹「してますっ!」
ホレ子「今日の主役は私達二人だね、ちーちゃん」
義 妹「うんっ!」
びゅおおおおおおおおん
ホレ子「うわっ寒っ」
義 妹「ふぶいてるよー」
ホ レ「まあいけない子達ねぇ。どうしてお姉さんのこと省いたのか教えてもらえる?」
ホレ子「……えと」
義 妹「おねえちゃぁん」
ホ レ「私が男性だと疑っているのかしら?特典カードのトランプでスペードだったものね」
ホレ子「けけけ、決してそおゆうわけではぁ」
ホ レ「なら年齢で省いたのかしら?おばさんは女の子ではないと?ん?」
びゅおおおおおおおおん
義 妹「やだやだやだ、寒い!寒いよマーチ!」
ホレ子「三月なのに寒いよ〜」
ホ レ「お姉さんは心底傷ついた……春は当分来なくてよろしい!」
ホレ子「そんなぁ」
ホ レ「冥界より来たりし凍てつく吹雪よ、我が力となれ!エターナルフォースブリザードッ!!!!」
ホレ子「きゃああああああ」

たぶんこんなことがあって寒いんだと思う。
ホレお姉さん勘弁してください。指先が凍えてキーボード打てないっす。

120 :
>>108の続き。王子と雪白姫のお話。9レス分くらい。
復讐パートは諸々替え歌しつつ適当に。

「なるほど。それで君は消されてしまったわけだね。
残念ながら私にはページの外側に干渉するほどの力はない。
だがページの内側にいる君の代わりのあの男にならば可能だ。
さぁ、復讐劇を始めようか」

……気がつくと僕は森の奥に佇んでいた。傾いた太陽が木々を真っ赤に染め上げる。
まるで血染めの夕焼け。しかしその深紅もやがて漆黒へと変わるだろう。
「お待ちください、殿下」
ハッとして振り返るとそこには僕と同じ格好をした王子様がいた。
今の呼びかけは僕に向けられたものではなく、彼に向けられたもののようだ。
「先ほどもここを通りませんでしたか?」
「これ以上動き回っては帰れなくなります」
「だが歩みを止めるわけにはいかない。――僕の理想の花嫁は何処に居るのだろう」
ぽうっと目の前に白い男の人が現れて指揮棒を振るう。
陽が落ちた宵闇の森に響くのは憾みの唄。
森の奥迷い込んだ 可哀想な王子様 花嫁探しを 急ぐ気持ちは 痛いほど解るさ
嗚呼 家来らを操り 小さなおうちへと導き 真雪のように 美しい姫の元へと誘った
「〜全ての女性を愛でても尚 見つからな〜い!」
「あっ。殿下、あちらからいい匂いがしますよ」
「行ってみましょう!」
宵闇の迫る陰が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いおうち
「見て、王子殿下。ほら、あそこに家があります!」
「でも、お前。それは、怖い魔女の家かもしれない……けど」
「けど?」
彼の耳元で僕はこう囁いた。
「小さな可愛いおうちでキミの理想の花嫁が迎えを待っているよ……」
「!?」
「どうなされましたか」
「い、今誰かが僕の傍に……いや、何でもない。僕が住人に話をつけてこよう」
そう そのドアノブに 触れたら 回せばいい
もうすぐ始まるでしょう【王子と姫の物語】
小さなおうちの中では小人達が硝子の棺を囲んで嘆き悲しんでいた。
どうやら者を悼んでいるらしい。
彼も物悲しい気分になり、者の冥福を祈るためにそっと棺を覗き込んだ。
儘、鎖された硝子の中で、眠るようにんでる君は、
誰よりも、嗚呼、美しい。やっと、見つけたよ!
「小人達よ、その体を私に譲ってはくれないか?」
「こいつ」
「どう」
「見ても」
「王」
「子」
「様」
「だし」
「「いいんじゃね?」」
ノリの良い愉快な小人達は疑うこともなく彼を王子様と認め、硝子の棺ごと姫君を譲った。

121 :
宵闇の森を王子様と硝子の棺を担ぐ三人の家来が行く。
「お前達、くれぐれも慎重に運ぶのだぞ」
「はい殿下」
……けれどそうはさせない!
「心の準備はよろしいかな、お姫様?さぁ、復讐劇の始まりだ!」
嗚呼 僕が本当に望んでいることは復讐ではなく姫の幸せ
例え君が僕を忘れようとも
記憶から記述から抹消されてもいい
ただ君が目覚めてくれるなら……
僕の存在を今、彼に譲ろう!
もう一度。全身全霊の力を込めて、家来らを操り足下を縺れさせる。
遂に硝子の棺は落とされ、物語の幕は上がった!
「うわあーっ!」
「ぐーてんもるげんっ☆」
「あぁ〜」
「はじめまして王子様!起こしてくださってありがとう!」
「……はじめまして、お姫様」
「でもどうしてかしら?はじめて会った気がしないわ」
雪白姫はゼンマイ仕掛けのお人形のようにむっくりと上半身を起こした。
目覚めてしまった姫君に戸惑いうろたえる彼の背後に立って、僕はそっと彼を操る。
彼の意思などお構いなしに雪白姫に手を差し伸べた。
「――お手をどうぞ、雪白姫」
「ありがとう、王子」
彼の手を取って立ち上がった雪白姫は確かに僕の方を見たような気がした。
その後、彼の体を借り、彼らを森の外まで道案内して僕は役目を終えた。
これでおしまい。
意識がふわりと浮かびあがる。けれど怖くはなかった。
ただ得も言われぬ充実感が体中を満たした。
一つだけ心残りがあるとすれば、彼女の歩みを傍で見守れないこと……。

――作者が騙る作為的な嘘で塗り固められた理想の王子様。
けれど一つだけ嘘で上塗り出来なかった部分がありました。
それは彼が体を求めた理由。
彼が如何にして体を愛し、求めるようになったのか。
記述が塗り潰された真っ黒なページ。
こうして彼は体愛好家として後世まで名を馳せることとなるのでした。

「何故だ。彼女は何故復讐をしなかった?」
「彼女ハ復讐ヲ望ンデ等イナイワ。幾ラ憎クテモ、王子様ヲ消シテシマッタラ、
彼女ノ愛シイオ姫様ハ永遠ニ眠リ続ケルコトニナルモノ。
果タシテ彼女ハ、愛スル姫君ノト引キ換エテマデ、本当ニ復讐ヲ望ムノカシラ?」
「……」
「彼女ハ、ドンナ姿ニナロウト、約束ヲ守リタカッタノヨ」
「そんなになってまで約束を守ってくれた……。どこかで聞いたような気がする」
「↑嗚呼 デモ ソレハ気ノセイヨ↑」
「なら風のせいか」
「ソレニ彼女ノ物語ハ、マダ終ワッテイナイワ。サァ、続キヲ唄ッテゴラン……」

122 :
――硝子の棺にしがみついて雪白姫が泣いている。
「えっく、えっく……。王子、起きてよぉ。起きてってばぁ!」
硝子の棺で眠るのは青い王子様。未だ目覚めることのない長い長い夢を見ている。
葬儀に参列するものは皆一様に口数も少なく、ただ式は静かに執り行われるばかり。
そして僕は硝子の棺の脇に立って、僕の葬儀を眺めていた。
……ん、僕が僕の葬儀を眺めている、だ、と……?
奇妙な違和感に気づいた僕は慌てて自らをアピールする。
(僕はここにいる!)
「うわぁ〜ん、おうじぃ〜」
「お気を強くお持ちくださいませ、姫。殿下も姫の泣き顔など見たくはないはずですよ」
「こういうときこそ、笑顔でお送りしないと……うぅ〜」
「ほらあなたも泣かないの」
叫んでも腕を振り回しても完全にシカトだった。どうも聞こえていないし、見えてもいないらしい。
この状態が一体何なのか、皆目見当もつかなかった。
これが壮大なドッキリ大作戦ならどれほど良いかと僕は神に祈った。でも救ってなどくれなかった。
僕はここにいて、僕は硝子の棺で眠るようにんでいる。
ここにいる僕は皆には見えておらず、硝子の棺で眠る僕は皆に見えている。
……僕はんでしまって、今ここにいる僕は幽霊なのだろうか。
なんてことだ……。
このようなメルヒェンちっくなことがあって良いのか。否、良いわけがない。
だいたい幽霊話はホラーであり、メルヒェンではない。たぶん。
屍揮者のメルヒェン(君の味方らしい)は幽霊のようなものだが。
「しかし硝子の棺に殿下自身が横臥わることになるとは運命の皮肉ですね……」
「言葉の通りミイラ取りがミイラ」
「あれだけ体を愛していらっしゃった殿下ですもん。きっとお喜びになっておられることでしょう」
いやいや体を愛でるのと自分が体になるのは違う。全然違う!
愛しい体と共になるために体になる覚悟はあっても、一人で体になりたいとは思わない。
大事なことだから二度言うが体を愛でるのと自分が体になるのは違う。これ重要。
でも現実問題として僕は硝子の棺に横臥わっているわけで。
一体どこの誰がこのような世界を望んだというのか。《運命の女神》か。
悲しみに暮れて、再び硝子の棺を覗き込む。
自分で言うのも図々しいが、眠るようにんでいる僕も雪白姫の次ぐらいに美しいかもしれない。
そうか、僕が二人いれば自給自足が出来たのだな。
気づかなかった。気づいても実行に移せそうにないけども。
閑話休題。
雪白姫はこのようなときにも相変わらず毒舌な僕の家来達を無視して(正しい判断だ)
葬儀に参列していた七人の愉快な小人達に声をかけた。
「小人さん、お願い助けて」
「雪白姫の頼みなら何でも叶えてあげるんげん」
「みんなは私が腰紐で締め上げられてんでしまったときも、櫛を突き刺されてんでしまったときも、
知恵と勇気で切り抜けて私を助けてくれたわ。だからお願い、今度は私の王子を助けてほしいの」
小人達は顔を見合わせた。もっとも賢そうな一人が代表して頷く。安堵から雪白姫の表情が和らいだ。
「王子様はどうしてんでりっひ?」
「王子と私は同じ林檎をウサギさんにして一緒に食べたの。
私は何ともなかったのに、王子は突然苦しみだして倒れてしまったのよ……」
「みんな、どうするんべるく?」
うーん。と小人一同は各々腕組みや額を押さえて考え始める。やがて一人が閃いた。
「こういう場合は大抵王子様が接吻すればいーねん」
なるほど。王子様による真実の愛のキスでお姫様が目覚めるのは物語の掟である。
僕はその接吻される対象が自らであることを忘れて納得した。
「で、誰かこの中に王子様はいるんしゅたいん?」
「私は、世界で一番可愛い雪白姫ちゃん!」
「我々は殿下の忠実で優秀な家来です」
「んじゃ、この際お爺様でもいいんじゃね?」
「「「それだ!んんー」」」
(ちょ、やめてくれぇー!)
んでるけど僕にだって選ぶ権利がある。いやんでるなら選ぶ権利は無い、か?
とにかく僕はこれでもうら若き乙女の端くれなのだから良く知りもしない人にキスされるのは嫌だ!

123 :
どれほど必に叫んでも暴れ回っても誰も気づいてなどくれなかった。
そうこうしているうちにもさもさ髭の小人達の顔が硝子の棺で眠る僕に迫ってくる。
(いーやー無理ぃー!!)
もうおしまいだと天を仰いだそのとき。僕と小人達の間に雪白姫が立ち塞がった!
「なぁにそれぇ?冗談は顔だけにしてくださらなぁーい?」
「……」
「ハッ!やだ、私ったらつい素を……ううん何でもないの」
「き、聞き間違いに決まっとるんげん」
「ちょっと無理があるっひ」
「それで、どうするんべるく?」
うーん。と今度はこの場にいる全員が各々腕組みや額を押さえて考え始める。やがて雪白姫が挙手した。
「はい、私がやってみるわ!」
「ですが姫は王子様ではありませんよ」
その通り。雪白姫は美しく可憐でまるで天使のような微笑みに真雪ような(中略)お姫様だ。
「呪いを解く魔法のキスは何も王子様だけの専売特許ではないわ。
悪い魔女にカエルや野獣に変えられた王子様を救ったのはお姫様の真実の愛のキスよ」
雪白姫の言うことは一理ある。そういったメルヒェンは至る所に転がっているもの。
というかお爺様方からキスされるより雪白姫にキスされる方が億万倍マシだ。
しかし彼女の提案を三人が真っ向から否定した。
「カエルの王子様はキスでなく壁に叩きつけられた衝撃で呪いが解けたと風の噂に聞きました」
「野獣の王子様はフランスのお方でしたよね。相手はお姫様でなく商人の娘という話ですし」
「だいたい殿下は王子様ではなく元お姫様のカテゴリーに属してますからね」
(元とはどういう意味だ。今だって女装すれば立派にお姫様になれる。どさくさ紛れに失礼なこと言うな!)
↑嗚呼、でも自分で女装と言ってる時点でたかが知れてるのよ↑
雪白姫は三人にめためたに言い負かされて唇を噛む。
「ぐぬぬ……じゃ、私も王子様になる!」
式場を飛び出した雪白姫を睨み、(参列)客は怒り、僕は平謝り(相手には聞こえないけど)
――そして小一時間後。
空気読まず出戻った雪白姫は――。
「お待たせ、じゃっじゃーん!」
僕の服を着ていた。どうも僕の衣装部屋から一着拝借してきたようだ。
しかし丈が合っていないらしく捲り上げても袖はずるずる、ブーツも長靴状態だった。
「似合う?」
(……)
「よくお似合いですよ」
「ほんと?嬉しい!」
雪白姫はキラキラと星を飛ばしながら軽やかに一回転した。
(…………ハッ、雪白姫が天使すぎて呼吸を忘れてた。か、可愛すぎる……むぎゅーってしたい!)
可愛い子には可愛い格好をさせるものと相場が決まっているが、
敢えて可愛い子に男装をさせるのもなかなか良いものかもしれない。
興奮と感動に体が打ち震える。僕は今、僕自身の新たなる性癖の開花に立ち会っているのだと思う。
「あぁんっ!」
雪白姫が甲高い声をあげた。顔を真っ赤にしてお腹を押さえる。
僕も思わずお腹を押さえる。そんな声を聞いたらお腹の下の方がきゅんとしちゃうよ←腹痛じゃないよ。
「あーん、ズボン落ちるぅ」
「殿下のウエストは太ましかったのですね」
さり気なくまた失礼なことを言ったな。
雪白姫が細すぎるだけであって僕が太いわけでは無い!
だいたい縦にも横にも発育途中の少女と横にしか育たなくなって久しい大人の女を比べるな。
「とりあえず腰紐でウエスト絞りましょうね」
「今度、姫にぴったり合うようにサイズを調節しますね」
「うんっ!」
(かぼちゃパンツに白タイツな典型的王子様ファッションも作ってくれ頼む)
「ええもちろんですとも殿下。って相変わらず変態ですね」
「……え?」
「あれ?今、殿下の声が聞こえたような気がしたのですが」
「↑嗚呼 でもそれは気のせいよ↑」
(↑気のせいじゃないわ!↑)

124 :
もしかして彼女は霊感が強いのだろうか。僕の声が聞こえるのか?
何度も呼びかけてみたが二度目はなかった。
「キスしてみるね」
雪白姫が、いや雪白王子がしっかりとした足取りで硝子の棺に近づいてくる。
彼女の真剣なまなざしに射抜かれて、心臓が早鐘を打ち始める。僕は思わず目を閉じた。
「いただきまーすっ!」
だが雪白姫の柔らかな唇の感触はいつまで経ってもやってこなかった。
むむむっと、焦れて目を開けてみるとそれもそのはず。
雪白姫は硝子の棺に眠っている僕の方にキスをしていた。
ああそうかと漸く理解する。ここにいる僕は硝子の棺にいる僕から抜け出した魂だけの存在で、
今はもう彼女に触れることさえ儘ならないのだ。
しかし雪白姫のキスによって目覚めがやってくるのならば、僕はすぐに肉体に呼び戻されるはず。
その瞬間を今か今かと待ち侘びるが、なかなかやってこない。
雪白姫は何度も何度も角度を変え、時に優しく、時に激しく僕の唇を啄んでいる。
(何故目覚めない!?)
僕だけでなく、この場にいた全員に焦りの色が見え始めた。
やがて静かな式場に雪白姫のすすり泣く声が響き出す。
「どうしてなのよぉ。どうして起きてくれないの!?私のキスは真実の愛のキスではないの?」
雪白姫の大きな瞳から丸い玉のような涙が零れ落ち、ぽたぽたと棺に眠る僕の頬を濡らした。
けれど僕はそれでも目覚めることはなかった。
お姫様の真実の愛のキスも、清らかな乙女の流す涙も、どれも全く効果がなかった。
泣き崩れた雪白姫を囲んで三人や小人達がどうにか慰めようと声をかける。
僕はどうしてもその輪の中には入れなかった。
また声をかけたとしても、その声が彼女に聞こえるはずもなかった。
僕は硝子の棺に横臥わる僕自身を激しく揺さぶる。
(起きて!起きてくれないと雪白姫を悲しませることになる。僕はそれを望んでなどいない!)
けれど眠るようにんでる僕はぴくりとも動かない。
額同士を重ね合わせても魂の僕は元の場所に帰れなかった。
(どうして、どうしたら……そうだ。よく魂は口から出入りすると聞いたことがある)
口をこじ開ける。体は冷たいながらもまだ後硬直は始まっていないようですんなりと開いた。
体愛好家の僕としては体は硬直してからの方がより素晴らしいと思っている。
少し残念だが、硬直していないということはまだ生き返る可能性もあるということだ。
気を取り直してぱっくり開いた口から中に入ろうとするがどうにもこうにも無理そうだった。
(おや、なんだろう……?)
喉の奥に白い何かが引っかかっている。もしやこれは林檎?
そうか、林檎が喉に詰まってんだように眠っているのだ。
僕はまだんでなどいない。だからこそ憾みを唄う宵闇の森からここへ帰ってこれた。
林檎を摘まみ出そうと手を突っ込む。だが空気を掴むばかりで林檎に触れることが出来ない。
(あぁもう!)
苛立って金切り声をあげた途端に雪白姫ががたがたと震えだした。
「私にも王子の声が聞こえるわ。私に対して憾みを唄ってる。林檎を勧めたのは私ですもの。
でも私は貴女をそうとなんて思ってない。どうかわかってほしいの……」
違う。僕は復讐しに戻ってきたのではない。ただ君の元に帰りたかっただけだ。
僕はまだ生きている。だから宵闇の森から帰ってきた!
それを伝えたくて優しく雪白姫の名前を呼ぶ。けれど今の彼女には逆効果だった。
「嗚呼、王子の声が聞こえる。私を呪う声が、私に復讐しようとする唄が!」
「姫、どうか落ちついてください」
「はやいところ遺体を埋葬してしまいましょう。体がなければ復讐も出来ませんよ」
(!?)
「早速、棺を運び出しましょう!」
三人はいつになく素早い動きで硝子の棺を持ち上げた。
雪白姫もどうにか気を持ち直したらしく棺を運ぶ三人の後に続いた。
の行進は者の冥福を祈る小人達の前を通り過ぎ、同じく冥福を祈る城の人々の前も通り過ぎる。
そして城の敷地を抜けて、森の奥の墓場へと進んでゆく。
(あああああ〜、なんてことだ〜。僕はまだんでいない。林檎が引っ掛かっているだけだ!)
僕の嘆きは誰の耳にも届くことなく、ただ虚しく響くだけだった。
嗚呼どうしよう!このままでは白塗りをして可愛いお人形を抱いて気障っぽく
「童話はいつだって墓場から始まるものさ……」とか言わなきゃならなくなる!
それも面白そうではあるが、やはり嫌なものは嫌だ。その役目は他の誰かに譲るとしよう。

125 :
硝子の棺が運ばれてゆく。同じ光景を僕は見たことがある。
それは先ほど憾みを唄っていたとき。
僕ではない僕の家来達が雪白姫の棺を運んでいた。
そしてもう一つ。僕が雪白姫を見つけたとき。
僕は僕の家来達に命じて雪白姫の棺を運ばせていた。
そのとき僕は家来達にこうも言った。「お前達、くれぐれも慎重に運ぶのだぞ」
雪白姫もそれと同じ台詞を彼女達に述べる。
「みんな、くれぐれも慎重に運ぶように」
「はい姫……ああっ!」
しかしどじでのろまな亀な彼女達が何事もなく棺を運び終えることなど不可能に近かった。
案の定、足を縺れさせてひっくり返りそうになる。
「心の準備はよろしいかな、お姫様?」
――え?
声の方を振り返ろうとした瞬間、突風が僕を襲った。
どんがらがっしゃんとしか言いようのない音と共に体に衝撃が走る。
その勢いで喉から林檎の欠片が飛び出した!
「ああっ!げほっ、げほっ」
「!?」
「う〜、お尻が割れる……ってあぁ生き返ってる!」
僕は自らの体に触れて自分が確かにここに存在することを確認する。
あれほど冷たかった体に体温が戻っており、火照るほどだった。
「……王子?」
雪白姫が目と口をまんまるにしてこちらを見ている。僕は彼女に伝えるべき言葉を知っていた。
「ぐーてんもるげんっ☆」
「え、あ。ああ……」
「オハヨ、雪白姫。心配かけてごめんね」
「嘘……」
「本当だよ」
「どうして?」
「嬉しくないの?」
「嬉しくないわけない!」
雪白姫は泣いているのか笑っているのか、顔をくしゃくしゃにして僕の胸に勢いよく飛びこんできた。
しっかりと抱き留めて、ふわふわした小さな体をぎゅっときつく抱き締める。
華奢な背中に流れ落ちる艶やかな長い黒髪を撫でてると甘い蜜の香りがした。
細い首筋に鼻先をうずめてそっと囁きかける。
「ね、笑って。嬉しいなら笑顔を見せてほしいな」
「ぐずっ。うん……」
雪白姫はゆっくりと身を引き剥がし、赤い唇を持ち上げて笑みを浮かべた。
涙を湛えながら微笑む雪白姫を僕はとても美しいと思った。
大きな瞳から零れ落ちてゆく涙を指先でぬぐってやる。
「雪白姫が目覚めてくれて良かったと思うよ」
「突然どうしたのよ」
話の意図が見えないと雪白姫は眉を顰めて口を窄める。そんな表情も愛おしい。
「だってコロコロ変わる表情をどれも見ることが出来る。
硝子の棺に眠ったままでは君の笑顔も泣き顔も怒った顔も悲しむ顔も、何一つ見ることが出来なかった。
僕は君のどんな表情も見逃したくない。どの顔もみんな好き。
でもね、笑顔が一番好き。もう絶対悲しませたりしないと約束するよ」
「もぅ何を言うのよ……」
雪白姫は白い頬や首筋、耳たぶ、果ては頭皮まで真っ赤にしてはにかんだ。
また僕にぎゅーっと抱きついてそっと囁く。
彼女の囁きはあまりに小声だったので僕はその言葉を聞いたというより察した。
「私も貴女が目覚めてくれて嬉しいわ。これで私達、ずっとずぅっと一緒ね!」
「ああ、ずっと一緒にいようね」
ちっちゃな雪白姫の手と少し大きな僕の手。小指と小指を結んでゆびきりをする。

126 :
目覚めを告げる真実の愛のキスはいらない。
僕らにはもっと確実に目覚めを告げてくれる優秀(?)なキューピッドがいるから。
くだんのキューピッドな三人は、僕と雪白姫の感動の再会に際して
空気を読んでおとなしく遠く離れた場所で待機していた。
どちらかといえば、空気を読んだというよりも僕らの仲の良さに当てられて
遠く離れた場所から冷やかしていたという方が正しいかもしれない。
僕が注目していることに気付いた三人はそそくさとこちらにやってきた。
吐き出された林檎を摘み上げて苦い顔をする。
「林檎が喉に詰まって仮状態に陥っていたと?」
「さあ?」
当事者である僕にもよくわからなかった。それにしても彼女達は随分と反応が淡白である。
何も泣いて喜べとは言わないが、もう少し喜んでくれてもいいのに。
「お前達は僕が目覚めて嬉しくないのか?また面倒な奴が起きたとでも思っているのか」
「滅相もございません。嬉しいですよ。ですが林檎を喉に詰まらせるなんて恥ずかしくないんですか」
「食い意地張ってるからこういうことになるんですよ。めっ!」
「しっかりもぐもぐしてからごっくんしてくださいと普段から言ってますのに」
「気をつけます……」
三人は深いため息をついて、揃って額を押さえた。
これについては申し開きのしようがない。僕は身を縮ませて小さな雪白姫の影に隠れた。
「本当に小さな頃から何にも変わってないのですから……」
「そんなに王子のことを責めないであげて。林檎を剥いた私も悪いの」
「いいえ、姫は何も悪くありませんよ」
「悪いのは全て王子です」
「そうそう。よく噛まなかった僕が悪いのだから」
「そうかなぁ。あ!」
雪白姫はすっと立ち上がり、颯爽たる王子様然とした態度で僕に手を差し伸べた。
誰かに手を差し伸べることはあっても、誰かから手を差し伸べられることなど
数えても両手で足りるくらいしかなかった僕は思わず彼女を見つめた。
「お手をどうぞ、お姫様」
「ありがとう、雪白姫……いいや、僕の可愛い王子様」
僕が躊躇いがちに雪白姫の手を掴むとぎゅうっと握り返される。
そしてカブを引き抜くかの如く腕を引っ張られ、僕は立ち上がった。
雪白姫が「えっへん」と小さな胸を張る。
「どう?私は何着ても似合うでしょお?」
上目遣いを駆使した可愛い王子様は僕の心臓をいとも簡単に射抜いていった。
あぁん、可愛すぎて直視出来ない。こんなの犯罪だよ。狼さんに食べられちゃうよ。
「もう黙らないでよぉ」
「…………ハッ、ただでさえ天使の雪白姫が女神すぎて呼吸を忘れてた。
ところで雪白姫、今すぐ棺に入ってくれないかな、というか入れ!」
「きゃあんっ!ど、どーして閉じ込めようとするの!?」
力任せに硝子の棺の中に押し倒す。蓋を閉める寸前で雪白姫のか細い腕がそれを阻止した。
「さぁ僕と契約して、新鮮な体になってよ!体ごっこをしよう!」
「わけがわからないよ!ついさっき生き返って嬉しいって言ってくれたのにぃ?」
「体のふりするだけでいいからぁ、ねっねっ?」
「やだ。気持ち悪いことするつもりでしょ」
「大丈夫。僕は女を貫く槍など持っておらぬ」
「持っていたら私の方から刺してるわ」
「えっまさか雪白姫ってふたなry」
ちょっ、それは女の子好きとして困る……。
ああでも僕は雪白姫を愛しているのだからこの際ふたなりでも男の娘でも……何でも構わない!
「生えてないわよ!刃傷沙汰にしてやるって意味!」
な、なんだ……そうだよね。こんな可愛い雪白姫に生えてるわけないよね。
それはそれで好きな人もいるかもしれないけど女の子ハァハァな僕の趣味とは違うし。
「まあいい。とにかく今すぐ体ごっこをしよう!」
「ね、ねぇ体ごっこってなあに?嫌よ、やめてお願い」
「ふふっすぐに終わるからね……うふふふふふふ」
「へんたーい!こっち来ないでぇー!いーやー無理ぃー!!」
嗚呼、何も知らない無垢でいたいけな雪白姫。
君は何もわかっていない。そういった悲鳴こそが血を滾らせるのだと!

127 :
棺の中の姫君に襲いかかろうとした瞬間、僕は羽交い絞めにされた。
「離して、僕を止めないでくれ」
「殿下、情けなくなるんでやめてくれません?」
「どうして私達、こんな人に仕えてるんだろう」
「オー人事、オー人事」
そんなに辞めたいなら辞めてもらって結構!と言いたいところだが、言わないでおく。
言ったら最後、彼女らはまるで使用済みティッシュのように僕を捨ててくれちゃうだろう。
義理堅く見えて案外あっさりしているのだ。
「何か失礼なこと考えませんでしたか、殿下」
「こんなにも尽くしてきた我々を殿下は薄情者だとおっしゃりたいのですね」
「転職しようかなー」
もういい。こんな奴ら放っておこう。僕は彼女達の腕を振り解いて、硝子の棺の前に跪いた。
先ほど落下した衝撃で棺には大きな罅が入ってしまっている。
「なんてことだ……」
いつか雪白姫と体ごっこをして遊ぼうと用意していた硝子の棺がッ!
体ごっことは説明すると長くなるので省くが、平たくいえば雪白たんちゅっちゅみたいな感じである。
本当はもっと素晴らしい遊びなのだが以下略。とにかく僕は虎視眈々と機会を窺っていた。
その間に僕は雪白姫と様々な言葉を交わし、思い出を共有し、仲を深めて、
自分自身や愛する人が生きていることの素晴らしさを学んだ。
僕の特殊な性癖は生きたまま花嫁でいてくれる雪白姫のおかげでだいぶ改善したのだった。
(以前は雪白姫が美しくぬ方法を割と本気で考えていた)
が、しかし!改善したといってもやっぱり好きなものは好きだからしょうがない。
でも実際にんでしまったら悲しいので、雪白姫に体のふりをしてもらおう!
体の(ような)雪白姫を思う存分愛でることが出来て、生きた雪白姫ともキャッキャ出来る。
ぼかぁ〜幸せだなあ〜。……ここが楽園でなければ世界の九割は奈落に違いない!
「やだぁ、変態がいるんだけどぉ!?」
雪白姫は身の危険を感じたのか、超高速で硝子の棺から飛び起きて僕を嘲る。
都合のいい三人は雪白姫に調子を合わせた。
「変態でネクロフィリアでロリコンな殿下なんて放っといて帰りましょ」
「僕はロリコンじゃなぁーい!」
「じゃペドフィリアですね。というか変態とネクロフィリアはご否定なさらないのですね」
「すみません。今度からロリコンでなくてペドって言います」
「ええい、お前達いい加減にしろ。僕はペドではない!雪白姫はロリの範疇だ!!」
…………文字通り、場の空気が凍りつく。
表情を無くした雪白姫の茫然自失とした視線が痛い。薄ら笑いをした三人のからかう視線が痛い。
「あーあ、言っちゃった」
「ついにご自分でロリコンだとお認めになりやがりましたね」
「ロリコンでもでかい顔して王族やってられるなんて我が国は平和だなー」
「なにそのロリコンには人権無いみたいな言い草」
「人権あったんですか?」
「無いんですか?」
だから今まで僕はロリコンだの変態だのと虐げられていたのか……。
しかし全てのロリコンが悪ではない。よって僕のロリコンは正しい!←などと意味不明な供述をしておりry
「好きになった人がたまたまちっちゃい女の子だっただけだ!ロリコンで何が悪い!」
「あ、開き直った」
「ロリなら誰でも良いわけではない。雪白姫でなければ駄目なんだ!
ま、恋もしたことのないウブなお前達に恋する乙女な僕の気持ちがわかるわけないけどなっ」
「……私達だって恋してますよ」
「えっいつの間に?僕に黙って抜け駆けとは許すまじ」
「所詮叶わぬ恋ですけどねー」
「でもいいんです。好きな人が幸せなら私も幸せです」
「可愛いことを言うのだな」
「え、あ。は、はい……!」
「ん、どうした?顔が赤いぞ」
「……殿下の馬鹿。意地悪。馬に蹴られてね!」
「はぁ?」
でも彼女達の言いたいことはわかる。好きな人が幸せならそれだけでもう幸せなのだ。
――例え君が僕を忘れようとも……アレ?何故だか僕に似た誰かが傍にいるような気がした。

128 :
「それに加えて」
三人の僕に対する毒舌評論は続く。
「男装でボクっ娘だからなー。救いようがないですよね」
「お前達も男装してるだろうが!そういうのを同じ穴の狢というのだぞ!」
「我々は殿下に強要されてこんなことに」
おい、サラッと嘘をつくな。誰がいつどこで男装を強要した。
「更にそこに百合属正まで備わって変態ここに極まれりって感じですね〜」
「ちょっと待って」
凍りついていた雪白姫がハッと我に返る。
「ネクロフィリアは間違いなく変態だけど、百合属正は変態ではないと思うの。
好きになった人がたまたま女の子だったってだけで全面否定されたらかなわないわ。
あなた達の好きな子だって女の子でしょう?ま、絶対に渡さないけどね」
「いえ我々は姫から奪うつもりなど決して……」
「何を奪うつもりがないのかは知らないが、ネクロフィリアだって趣味を全面否定されたらかなわない。」
「なぁにこの変態。気持ち悪いのが移るから勝手に会話に入ってほしくないんですけどぉ?」
あっそんな蔑んだ目で見ないでっ!ビクンビクンしちゃう!おかしくなっちゃう!
こうして好きな女の子(かなり年下)に罵られるのもいいかも。
「ネクロフィリアでロリコンで男装ボクっ娘で百合属性のマゾな変態」
「世の中って奥深いですね(遠い目)」
「高度すぎてついていけません」
「ついていかなくていいのよ。寧ろ変態がんでから出直して来るべきだわ」
「さすが姫、仰る通りです!」
「僕のときと対応が違うのだが」
「変態に仕えるより愛らしい姫君に仕える方が精神衛生上いいですから」
「きゃはっ!みんなよくわかってるぅ。可愛いは正義だよねっ☆」
「ですよねっ☆」
四人は仲良く手を繋ぎながら、さっさと城へ帰っていく。
そこはかとない疎外感を覚える……。
彼女達が仲良くしているのは見ていて微笑ましいけど、
なんだか好きな人と大事な友達を一遍に奪われた気分だ。
どうしてか気後れして彼女達のずっと後ろを歩いているとそこに僕が現れた。
正確に言うと僕と同じ顔をした男の人が現れた。彼は手に持った本をそっと僕に差し出す。
「くれるの?」
彼がこくりと頷いたのを確認して僕はその本に手を伸ばした。
指先が触れた瞬間、あたたかなひかりが世界を包み込む。
その輝きが収まったとき、一冊の本は二冊に分かれていた。
一冊はこれまでの――これからの僕の物語を書き綴ってゆく本。
そしてもう一冊はこれから始まる彼の物語を書き綴ってゆく本。
僕はふと彼を見つめて微笑み、彼も僕を見つめて微笑んだ。
「さよなら。君にも君だけの理想の花嫁が見つかるといいね」
僕らは背中合わせに別れる。
もう決して交わることのないそれぞれの地平線を目指して。
「おうじー、少し言い過ぎたわ。ごめんなさぁい。だからはやく帰ろうよー、置いてくよー」
「うん、今行くよ!」
僕の世界でただ一人のかけがえのないお姫様。
真っ白なページに二人の物語を書き綴ろう。誰も知らないおとぎ話の続きを――。


「私達モ、モウ行キマショ、メル」
「彼女達の復讐は?」
「アノ娘達ニハ必要ナイワ」
「作者が虚偽の物語を作り上げるように、姫君達は愛の物語を書き綴り続ける……か」
「メデタシメデタシ……ウフフッ!」
おしまい。

129 :
雪白姫に男装させたり趣味に走りまくって正直すみませんでした。
可愛い子は何着ても似合うよね!
最初に書こうと思い立ったおっぱいの話は結局没になってしまったw
以下どうでもいい説明。


策略をめぐらす作者が王子ちゃんの物語を作為的な嘘で強引に書き換えた結果
たった一つの童話の世界を巡って男女の王子が覇権を争うことになった。
一時は劣勢だった王子ちゃんが生き返ったため、元の位置から物語が再開される。
今度は男の王子が消滅のピンチに陥り、メルヒェンさんの力を借りて復讐しようと乗り込んでくる。
しかし彼もまた「雪白姫が幸せならば」と身を引くことを決意。
王子ちゃんに物語を返そうと本を差し出す。
そこで一冊の本が二冊に分かれて、彼らの世界はそれぞれ独立した並行世界として存在するようになった。
要するにパラレルワールドだよーと説明したかったが力及ばずに断念。
長々と失礼しました。

130 :
GJ
王子ちゃんちゃっかり自分の体にまで萌えとるw
かぼちゃぱんつの王子様な雪白姫想像したら眠気吹っ飛んだ

131 :
ミシェル×朝子夜子の話題は出尽くしただろうか・・・

132 :
アニソンメイトきたー
王子と姫ズの件で女性同士なので遠慮なくいちゃいちゃしてもらいました(笑)
って偉い人が答えてるw
もちろん中の人の話だけどな
一瞬王子の男装娘説が現実になったのかと思ったw
百合スレ的には
女将とぶらんこの写真が仲良さげで微笑ましい
アニカンには雪白姫と王子が手を繋いだ写真
後半は演出変更で王子は雪白のあとを歩いてたからこれは貴重かも
絡みはこれくらい
あとはとにかく女性陣がふつくしいの一言に尽きる
おなかいっぱい。ごちそうさまでした

133 :
>>132
遠慮なくいちゃいちゃ…だと
偉い人ww稽古場でどんな指導したんだww
アニカン、読んだあとの保存に困るからどうしようか迷ってたけどポチろうと決めたよ

134 :
二週間以上書き込みないのか
領拡でのゆうかお共演に期待しつつ保守
YUUKI白姫とKAORI王子来い!
きっとメルヒェンメンバーも来てくれるよね

135 :
ホワイトデーの話。
14日はそんな雰囲気でも気分でもなくて投下出来ませんでした。
個人的にはまだそんな気分でもないけどこのまま没にするのも勿体無いので3月が終わる前に投下します。
薔薇編で爆発ネタがあるので今はそういうのを読みたくないという人は飛ばしてください。
3から4レス目が薔薇編です。

・古井戸
お父さん!今日は待ちに待ったホワイトデーです!
私、バレンタインのお返しを貰いに井戸へ飛び込みます!
もしかしたら最悪、そっちへ行きまーす!セイッ!
……と思ったけどうまく着地出来ました!
お父さん!そっちへ行くのは当分先になりそうです。
ホレ子「ホレおばさん!」
ホ レ「まぁ口の悪い子ねぇ。おばさんじゃなくてお姉さんとお呼びなさいといつも言ってるでしょう」
ホレ子「頭グリグリしないでくださぁい」
ホ レ「さてと。今日も羽ぶとんを振るってもらおうかしら」
ホレ子「今日はお仕事しにきたわけじゃありません」
ホ レ「わざわざ瀝青塗れになりにきたのね」
ホレ子「違います。今日はホワイトデーです!」
ホ レ「あら」
ホレ子「バレンタインにチョコレートを贈った私にじゃんじゃんお返ししちゃってくださいっ!」
ホ レ「ハート型のチョコレートは貴女からだったのね。わざわざ割れたのをありがとう」
ホレ子「あわわっ、やっぱり井戸に落っことすのはまずかったみたい」
ホ レ「食べるときはどうせ砕くのだから気にしてないわ。でも食べ物を粗末にしてはいけませんよ」
ホレ子「ごめんなさーい」
ホ レ「では私からバレンタインのお返しに素晴らしいものをお贈り致しましょう!ほれっ!」
ホレおばさんが杖を振るうと空から白いのが沢山降ってきてあっという間に全身を覆った!
日が替わり――
 鶏 「キッケリキー!うちの真っ白いお嬢様のお帰りだよぅ」
ホレ子「ただいまぁー!」
義 妹「わあ。まっしろー」
ホレ子「うん、お砂糖塗れ!これでいーっぱいお菓子作れるね!」
義 妹「やったあ!」
継 母「さぁ貴女も貰っておいで、ちーちゃん」
義 妹「うん、あたいがんばる」
日が替わり――
 鶏 「キッケリキー!うちの真っ白いお嬢様のお帰りだよぅ」
義 妹「わーい。今度はお塩もらったー!」
ホレ子「これで当分調味料には困らないね!」
継 母「くっ。もっと金目のものをもらってらっしゃいと……ええい、私が行ってくる!」
日が替わり――
 鶏 「キッケリキー!うちの真っ白いお嬢様のお帰りだよぅ」
義 妹「ムッティはなにもらったの?」
継 母「雪」
義 妹「食べれないね」
継 母「キィーッ!次は絶対に金塊をもらってやる!!……くしゅんっ」
ホレ子「よければホットミルクをどうぞ。ちーちゃん、お砂糖入れてあげて」
義 妹「はいどうぞ、ムッティ」
継 母「ありがとうちーちゃん。……ってしょっぱい!」
義 妹「あれ?お塩とお砂糖間違えちゃった」

136 :
・硝子
雪白「おうじー。今日はホワイトデーよ。大切な人にバレンタインのお返しをする日!」
王子「そうだね。ところでどうしてホワイトデーというのか知っているかい?」
雪白「お砂糖が白いからでしょ?」
王子「ブー、違います」
雪白「下種な話をするとお菓子業界の陰謀」
王子「その通り!でも本当は」
雪白「本当は?」
王子「バレンタインのお返しに男の人が女の人に白いものを贈る日」
雪白「マシュマロやキャンディをね」
王子「男の人が女の人に白いのをぶっかける日」
雪白「……白いのってナニ?」
王子「身も心も清らかな乙女の僕の口からは言えない」
雪白「そーゆうこと考える時点で清くない」
王子「僕も雪白姫に白いのをいっぱいあげたいけど、僕は女の子だから出来ないし」
雪白「しなくていいです」
王子「でも白いのあげられるように王子頑張るっ!」
雪白「頑張らなくていいです。王子って耳年増よね。お母さんというより親父化してきた」
王子「えっ年増!?越えられない年齢差を気にしてるのに酷い……」
雪白「耳年増!聞きかじりのえっちな知識ばっかりってこと!」
王子「えっちじゃない知識もある(キリッ」
雪白「わりとどうでもいい」
王子「でね、僕でも白いのをぶっかけられる方法を思いついたんだ」
雪白「で?」
王子「とりあえず硝子の棺に横たわってもらえる?」
雪白「えー。また体ごっこするの?」
王子「うん。全裸で」
雪白「」
王子「新しく用意した硝子の棺にさあどうぞお入り」
雪白「やだぁ、一体何をする気でいるのかしらぁ?(ピキッピキッ)」
王子「えっちなことなんて考えてないよ!」
雪白「ふーん?」
王子「……生クリームぶっかけて雪白ちゃんペロペロ(^ω^)したいなぁって」
雪白「へぇ……ペロペロしたいんだ?」
王子「あれ、声に出てた?」
雪白「バッチリ」
王子「なんてことだ……」
雪白「私は王子とは違うから何も全裸でとは言わないけど……とりあえず棺に入ろうか?」
王子「もしかしなくとも怒ってる?」
雪白「やだぁ、怒ってないよぉ?(ピキピキッ)」
王子「ガクガクブルブル」
雪白「明日は一日、棺の中で反省してなさーいッ!!」
王子「いーやー!!!!」
雪白「ま、今日の残りの数時間は付き合ってあげてもいいわよ」
王子「生クリームぶっかけ?」
雪白「それは絶対にしない」

137 :
・薔薇
王子「バレンタインは何も用意できずに失敗しちゃったけど、今日は王子頑張るっ!」
薔薇「私もお付き合いさせてください。一緒にお菓子を作りましょう」
王子「じゃあ何を作ろうか。とりあえずオーブンを熱しておこう」
薔薇「ホワイトデーと申しますし、白いナニカを作りましょう」
王子「いいね。クッキーをホワイトチョコレートでコーティングしたり」
薔薇「まあ美味しそうですわ」
☆野ばら姫と王子のお料理教室☆簡単?ホワイトチョコレートの作り方☆
薔薇「まずは茶色い普通のチョコレートを用意します」
王子「鍋に放り込んで火で溶かします」
薔薇「どうやって白くするのでしょうか?」
王子「とりあえずミルクを入れてみよう(どぼどぼどぼ)」
薔薇「白砂糖も入れてみましょう(どばばばば)」
王子「……バターも入れてみよう(どかどか)」
薔薇「この辺りの白い粉も入れてみましょう(どばばばば)」
王子「……なんか違うような」
薔薇「思うように白くなりませんわね」
小僧「調理場を綺麗に磨いとかないと親方の鉄拳が飛ぶ……ってええ!?」
王子「あ、ちょうどいいところに。こっち来てよ」
小僧(こいつら調理場をめちゃくちゃに使いやがって……)
薔薇「チョコレートが白くなりませんの。どうしてでしょう?」
小僧「はあ?」
王子「ホワイトチョコレートを作りたいんだ。とりあえずミルクや白い粉を入れてみたんだけど」
薔薇「私達の知ってるホワイトチョコレートにはなりませんのよ」
小僧「だから粉が舞い散ってるんすね……片付けるの俺なんだから勘弁してほしいっす(ボソッ)」
薔薇「どうしたらいいと思いますか?」
小僧「とりあえずホワイトチョコレートを使えばいいと思うっす」
二人「???」
小僧「黒いのを白くするのはたぶん無理。ホワイトチョコレートはこれです(どんっ)」
薔薇「まあ」
王子「知らなかった」
小僧(こいつら箱入り天然すぎる……)
王子「じゃこれを鍋に放り込んで火で溶かして」
小僧「って直接火にかけたらダメっす。湯煎しないと」
薔薇「まあ」
王子「知らなかった」
小僧(駄目だこいつら……はやく何とかしないと……)
――そして小一時間後。
薔薇「なんてこともありましたがどうにかホワイトチョコレートも溶かせましたし」
王子「クッキーの生地も無事に出来たね」
薔薇「教えてくださってありがとうございました。あなたはきっと一流のシェフになれますわ!」
王子「ありがとう。これからも修行頑張ってね、下っ端くん」
小僧「どういたしまして」
薔薇「今度彼からお料理を習おうかしら」
王子「よろしくお願いします、師匠」
小僧「勘弁してくださいよ〜」

138 :
・薔薇つづき
小僧「ってこんなに粉だらけになってちゃ親方に……ぎゃーっ!!」
親方「こぉら小僧。調理場は綺麗に磨いておけと何遍言ったらわかるんだ!マジでぶっ飛ばすぞ!」
小僧「もうぶっ飛ばしてるじゃないっすか、親方〜」
親方「こんなに粉が舞ってるようじゃ火をつけたらたちまち」
王子「あっ、オーブン熱してあったんだった」
薔薇「では早速クッキーの生地を焼きましょう」
親方「!?」
薔薇「嗚呼、クッキーは素早く、おいしく焼かなきゃ駄目なんだわ!」
王子「まずくなる前に焼かなきゃヤ・バ・イ!オーブンをドン!とあk」

どっかーん!!!!!

王子「なーにがーおこったのかー」
薔薇「よくーわからなかーった」
王子「ぶっ飛ばされた小僧の悲鳴」
薔薇「灼けた菓子の風味ー」
小僧「うわあ調理場が木っ端微塵っすよ、親方〜」
親方(涙)

・薔薇その2
アプリコーゼ「お邪魔します」
アルテローゼ「帰れ」
アプリコーゼ「またまたつれないこと言っちゃって」
アルテローゼ「と言いたいところだが、レープクーヘンを作りすぎたから食べていけ」
アプリコーゼ「……」
アルテローゼ「どうした?泣いてるのか?」
アプリコーゼ「ありがとう、アルテローゼ。やっと私の気持ちに……」
アルテローゼ「違う!あくまでこれは作りすぎただけであって」
アプリコーゼ「うふふ。今日はホワイトデーね」
アルテローゼ「うっ。べ、別に深い意味はないっ!」
アプリコーゼ「私もアイアシェッケを作ってきたの。一緒に食べましょう」
アルテローゼ「そういえばついさっき城の厨房が粉塵爆発で木っ端微塵になったらしいね」
アプリコーゼ「ええ、聞いた話によると下っ端くんがまた何かやったみたいよ」
アルテローゼ「まったく、駄目な奴だねえ」
アプリコーゼ「何故か野ばら姫達も巻き込まれたらしいわ」
アルテローゼ「!?」
アプリコーゼ「どうしたの、アルテローゼ?」
アルテローゼ「こうしちゃいられない。野ばら姫の元へ行くよ!」
アプリコーゼ「あらあら何だかんだ言って彼女のことが心配なのね」
アルテローゼ「野ばら姫は見た目通りか弱いからね。何かあったら大変だ」
アプリコーゼ「そうね、うふふ」
アルテローゼ「笑ってないでお前も急げ!」
アプリコーゼ「はいはい。もぅ。今日はせっかく二人きりと思ったのに……」

139 :
・黒き女将
女将さん「あたしってばさすがだわぁ。こ〜んなにプレゼント貰っちゃったぁ〜ん♥」
ぶらんこ「……」
女将さん「ほらあんたにも来てるわよ。あたしには負けるけどねぇん」
ぶらんこ「女将さん、バレンタインのこと覚えてるっぺ?」
女将さん「モチのロンよぉ。二人でお客さまにサービスサービスぅ♥しまくったじゃな〜い」
ぶらんこ「……うん」
女将さん「読者の皆さま、勘違いしないでねぇ〜ん。黒狐亭名物レバーコッヒェンを振舞ったという意味よん」
ぶらんこ「それだけ?」
女将さん「他に何があるってぇのよ」
ぶらんこ「はぁ〜」
女将さん「お客さまからプレゼント戴いて嬉しくないのぉ?」
ぶらんこ「嬉しいけど嬉しくない」
女将さん「あのねぇ。幾ら嫌な客だって貰えるもんは貰っとかないと。世の中綺麗事ばかりじゃないわよ」
ぶらんこ「女将さん」
女将さん「若いうちからちゃんと客をキープしとくのよぉ。今の客だってあたしの若い頃のぉ〜」
ぶらんこ「……はぁ〜」
女将さん「辛気臭い顔してないでしゃかりき働きなさぁい!」
お客さま「おぉ〜い、邪魔をするぞー」
女将さん「あらんいらっしゃいませぇ。本日は如何いたしますぅ?」
お客さま「そうだな……おや嬢ちゃんはどうしたんだい」
女将さん「さあ?今日はずっとあんな調子で、ほんっと駄目な子で申し訳ございません〜」
お客さま「ふむ」
女将さん「で、本日は如何……あぁん!嫌ですわ、暗がりに連れ込んで、あたしに何するつもりィ!?」
お客さま「シッ、変な声出すな!女将、あの子に何か渡したか?」
女将さん「なんで渡す必要があるの?」
お客さま「女将はバレンタインにあの子から花を貰ったんじゃないかい」
女将さん「だからぁ?」
お客さま「きっと嬢ちゃんはお返しが欲しいんだろうよ」
女将さん「あたしはあの子に毎日良くしてやってるけどぉ?」
お客さま「こういうのはしっかりお返ししとかないと、恨まれても知らんぞ」
女将さん「ふんっ」
お客さま「まあいい。ほら女将にやるつもりだったけど、これを女将から嬢ちゃんに渡しなよ」
女将さん「べ、別にあの子なんかに渡すもんなんて」
お客さま「いいから、俺の顔に免じて渡してやれ」
女将さん「んもぅ、しょうがないわねぇ……」
お客さま「ほらさっさと行って来な」

140 :
・黒き女将つづき
女将さん「ちょっとあんた」
ぶらんこ「んあ?」
女将さん「ちゃんと働いてるの?」
ぶらんこ「わーかってるべ。相変わらず人使い荒いなクソババア」
女将さん「なんか言った?」
ぶらんこ「んにゃ」
女将さん「まあいいわ。今日は気分がいいから許してあ・げ・る」
ぶらんこ「はぁ〜。おらは気分が最悪だべ」
女将さん「えっとほら先月……14日だったかしら、あのその……」
ぶらんこ「?」
女将さん「あんた、あたしに花をくれたわよね」
ぶらんこ「女将さん、覚えてやがってくださったんですね」
女将さん「……これ、お返しにくれてやってもいいわよぉ〜ん」
ぶらんこ「ほ、本当に?嬉しい!」
女将さん「だから、もう俯くのはおやめなさぁい。あたしの次くらいに可愛い顔が台無しよぉ〜ん」
ぶらんこ「開けてもいいべ?」
女将さん「いいわよ。何入ってるか知らないけど(ボソッ)」
ぶらんこ「女将さんからのプレゼントだべ!やったやった!(ガサゴソ)」
女将さん「そんなに丁寧に開けなくとも」
ぶらんこ「女将さんからのプレゼントだから包み紙も取っておくんだべ」
女将さん「あらん可愛いこと言うわね」
ぶらんこ「ええと中身は……赤いパンティ」
女将さん「あんの馬鹿、余計なもんを渡しやがって……」
ぶらんこ「まさか女将さん、おらにこれを穿いて体を売れと?」
女将さん「ち、違うわよぉ。あたしのような女になるにはセクシーな下着も必要ってことよん」
ぶらんこ「もしかして女将さんも赤いパンティ穿いてやがります?」
女将さん「モチのロンよぉ〜ん。赤パン健康法と言ってねぇ、元気になるのよ〜」
ぶらんこ「女将さんとお揃い……嬉しい!早速赤いパンティ穿くべ(ぬぎぬぎ)」
女将さん「ちょwお客さまの前で何やってんのよあんた」
ぶらんこ「スカートだから中身は見えないっぺ」
女将さん「そーゆう問題じゃないでしょうが!黒狐亭は如何わしいお店とは違うの!」
ぶらんこ「でも女将さんは夜な夜な暗躍ry」
女将さん「いいから着替えるなら奥でしてらっしゃい!」
お客さま「ここで着替えさせてもよかったのになぁ(ニヤニヤ)」
女将さん「あの子に手ぇ出したら食材にしてやるからね!」
お客さま「いやあ怖い怖い。女将はあの子が余程大事なんだねぇ」
女将さん「当然よ。あの子にはあたしのような苦労はさせたくないんでね」
お客さま「愛だねぇ〜」
おしまい。

141 :
ホワイトデー乙
女将の赤パンツw
メンバー紹介でスカートたくしあげた時に赤いものがチラリと見えt
バレンタインでケーキを作った雪白姫と青王子
ホワイトデーでクッキーを作ろうとして爆発する野薔薇姫と赤王子
どうして差がついたのか…慢心、環境の違い

142 :
いつも乙です!
青王子の変態具合ww
王薔薇はリア充すぎて違う意味で爆発するのかと思ったw
映画で赤王子の胸に目が釘付けになったよ
いただきますシーンに座席で悶えてた
メルコンは2階席だったから大画面で表情まで見れて幸せだ

143 :
映画観てきた
赤王子の胸と書かれてたから青王子は無乳かと思いきやちゃんとあるじゃないか
でも赤王子のほうが胸も腰も丸く見えるのは色の錯覚でしょうか
いいえ、願望です
王子の胸も確認できたし、女将の飛び出すおっぱいwも堪能したし
美しすぎる屍人姫さんや美しすぎる皆さんもたっぷり観賞できて最高の映画だった
でもエリーゼさん怖かった

144 :
野ばら姫と赤王子の話。王子が身の上話を唄いますが基本的にどこかで聞いたようなお話。

「真っ白なページに書き綴る物語。策略をめぐらす作者の作為的な嘘。
深い微睡みの闇に落とされた――知られざる九人目の女優よ。
誰もが知っているおとぎ話を、さぁ唄ってごらん……」

それは野ばら姫のある一言から始まった。
「いつも私が話してばかりですわね。時々は貴女のお話を聞かせてくださいな」
「僕のことが知りたいのかい」
「好きな人のことなら全てを知りたいと思うのが普通でしょう?」
野ばら姫が僕に彼女自身のことを話す機会は多々あったが、
僕が野ばら姫に自分自身のことを話す機会はあまりなかった。
何も隠していたわけではない。単に野ばら姫に僕のことを知ってもらうよりも、
僕は野ばら姫をもっと深く知りたかった。彼女の言う通り「好きな人のことなら全てを知りたい」
だがそれは不公平というものだ。彼女もきっと僕をもっと深く知りたがっているに違いない。
話すのはあまり得意ではないが、野ばら姫が望むのなら……。
「何が聞きたい?」
「そうですわね……王子がこの世界にお生まれになったときのお話が聞きたいですわ。
貴女が生まれてきてくださったからこそ、私は目覚めることが出来たのですから」
語って聞かせるような特別なお話ではないが……僕は深呼吸をして、僕の物語を唄い始める。
「――微睡みの闇に落ちる ゆめの孤独と 月影に蝶は朽ちて 真の愛を恋う……」
「それ私の唄なのですけど。しかも微妙に替え歌しないでくださいます?」
「ごほん。――幼い記憶の途を辿るようにぃ〜♪」
「どこかで聞いたことありますわね」
「朧気な記憶を辿って……曖昧な自分を描いた……」
「真面目にお話する気あるんですの?」
ふざけているつもりは微塵もないのだが、野ばら姫にはそのように映ったようだ。
ぷりぷり怒った姫もそれはそれで可愛らしいものだが、口に出すと「真面目にやってない」と
そっぽを向かれるに違いないので封印しておく。僕は改めて物語を唄い出した。
【七の罪科】恋の痛みも知らぬ乙女が 野ばらに乞われて紡ぐ唄は――
――むかしむかしあるところにとても仲の良い王様とお妃様がおりました。
けれど二人には子供がおらず、毎日のように神様にお願いしていました。
そんなある日のことでした。……水浴びた妃が聞いたのは身籠り告げし蛙の声。
「お望みの御子が、一年経たずに、お生まれになるでしょう」
「まあ……!どこかで聞いた話ですこと」
「最後まで聞いてほしい」
「私が続きを唄って差し上げますわ。――歓びて王が催したのは貴女の誕生 祝う宴」
「そう。黄金の皿が一枚足りずに事件は起こってしまった……」
初めて野ばら姫から身の上話を聞いたとき、僕はとても驚いた。
彼女の話は僕自身が生まれた際と状況が全く同じだったから。
もしかするとこれもまた運命なのかもしれない。と人知れずときめいたのは内緒。
「王子は私をからかっていらっしゃるのね。私は真剣にお願いしているのですよ」
「本当の話です」
「なら続きはこうですわね。招かれた十二人の賢女達から祝いの贈り物を授かる姫君。
けれど招かれざる十三人目の賢女が現れ、呪いを手向けられた――!」
野ばら姫はそう吐き捨てて不愉快そうに眉を吊り上げた。
「【七の罪科】気高き王女をからかうなんて傲慢なのはお前の方よ!
誰ぞ、無礼な嘘つき王子を捕らえよ!もう二度とこの城の土を踏めぬものと思え!」
「野ばら姫よ、待ってください。僕の話を聞いてください」
「嘘つき!貴女の声など聞きたくない!はやく私の前から消えて!」
野ばら姫は目を瞑って、耳を塞いで、僕の全てを拒絶する。
「いいえ、本当の話なのです。どうか僕を信じて……あっ」
「喚くな、さっさと歩け!」
いつの間にか現れ出た城の衛兵に両脇を掴まれ、引き摺り回され、僕は城を追い出された。

145 :
「姫様の怒りが治まるまで、頭冷やして反省してるんだな」
「待て」と呼び止める声も虚しく、扉は無情にも閉められた。
……目の前から消えてと言わしめるほど、野ばら姫から嫌われてしまった。
王子として誰からも無条件に愛される日々に甘んじてきた僕にとって、
それは身が引き裂かれるほどの痛みを伴う拒絶の言葉だった。
誰かに嫌われるのは痛い。好きな人に嫌われるのはもっと痛い。
恋は甘く楽しいだけではない。好きになれば好きになるほど嫌われたときに胸がしくしく痛む。
ぼんやりと白亜の城の周りを歩いていると、聳え立つ塔が目に入った。
嗚呼、気高き野ばら姫の口癖「塔へ行ってはいけません」
なんて言うけれど――僕は春を告げるために舞い踊る蝶に導かれて塔へと向かう。
彼女はあそこで百年眠り続けていたためか、空を望む薔薇の塔があまり好きではない。
けれど僕には関係ない。湧き上がる好奇心は抑えきれないのだ。
塔の魔力に引き寄せられるかのように、僕は震える手を伸ばした。
「ドキドキだわ……」
――燭台の揺れる焔 仄暗い闇を照らす 石壁の部屋を廻り 古い塔へと上がる。
野ばら姫の伝説を聞いてやってきたときは部屋を飛ばしてしまったが、
今回はゆっくりと各部屋を廻る。どの部屋にも素晴らしい宝物が寝かされていた。
百年前に描かれたと思われる幼い日の野ばら姫の肖像画。見たこともない場所を切り取った風景画。
翼を広げ今にも飛び立ちそうな天使の彫像。神に祈りを捧げる聖女の御像。
そうして僕の宝探しの足取りは望まざる終焉の地へと向かう。
――狭い螺旋型の階段を上ると 部屋の中 独り 老婆が麻を紡いでいた。
「こんにちは、お婆さん。ここで何してるの?」
「あぁ〜ん?誰がお婆さんだってェ!?」
最上階の部屋にいた老婆……でなくてアルテローゼさんに凄まれて萎縮する。
「すみません……」
「おーほっほっほ。あーら、これはこれは今日も頭がお天気そうで結構ですこと。
まさかうら若きアルテローゼ様を老婆呼ばわりしたのではあるまいな、傲慢なる王子よ」
「うら若い、ですか?」
「全くいい面の皮だねッ!用がないのならさっさと出て行きな」
今日は怒られてばかりだ。さすがに少しへこむ。
と言ってもアルテローゼさんはいつも怒ってるようなものだが。
アルテローゼさんはというといつも通りぷんぷん怒りながらそっぽを向いた。
彼女の目の前には見たこともない何かが置かれている。僕はそれに興味を覚えて覗き込んだ。
何か歯車のような、車輪のようなものに糸が絡みついている。
「いいかい、もう一度チャンスをあげよう。用がないならさっさと出てけ」
しかし追い出されるわけにはいかない。僕はこの塔にいなくてはいけない。そんな気がするのだ。
「実は野ばら姫と喧嘩をしてしまい、城を追い出されたのです」
「ほう。仲のいいあんた達でも喧嘩するんだねぇ。そうして可哀想な王子はこの塔へと迷い込んだと」
「はい。やはりここに来て正解だった。一人では退屈ですから」
「へらへら笑ってるんじゃないよ。私はまだいてもいいだなんて言ってないからね!」
アルテローゼさんは口は悪いが根は優しい。だから今回もきっと……。
「ま、仕方ないから暫く置いといてやってもいいよ。ただし作業を手伝ってもらおう」
「ところで。こんにちは、お婆さん……でなくて、うら若きお嬢さん。ここで何してるの?」
「糸を取っているんだよ。世間知らずな王子はそんなこともわからないのかい」
「また産着を作るのですか?」
アルテローゼさんは意外と世話焼きだ。赤子の産着だけでなく、
野ばら姫にも白い華飾衣を作ってあげたりしていた。僕には何も作ってくれないが。
「今から大急ぎで作ったとしても間に合わないよ。子供の成長は早いからね。
そうね、夏頃に着せるワンピースでも作ろうかしら。きっと似合うわ」
想像したらしくアルテローゼさんの目元が緩む。今ならもしかしてとねだってみる。
「なら僕にも何か作ってください」
「はあ?何の義理があってあんたのを作れって?第一男物を作ってもねぇ」
普段のアルテローゼさんやアプリコーゼさんの野ばら姫や子供の衣装に対する態度を見てわかるように、
二人は彼女達を着せ替え人形に見立てて遊んでいるつもりらしい。
そりゃ男物を着てる僕はつまらないだろうな。でも僕が男装をしているのにも理由があって……。

146 :
「そんな顔するな。そうだね、手伝いの頑張りによっては何か作ってやってもいい」
「本当ですか、ありがとうございます。何を作ってもらおうかな」
「ふんっ。役に立たなかったら作ってやらないからねっ」
カラカラ、カラカラ――空を望む薔薇の塔に麻を紡ぐ音色が響く。
清らかな乙女グレートヒェンが唄いながら軽やかに糸車を廻すように、
気まぐれな運命の女神は無情な手のひらで密やかに歯車を廻し始める。
廻り始めた歯車は誰にも止められない……。
僕はそれに心を奪われ、何も知らぬ幼子のようにそっと手を伸ばした。
「じゃあ、それなぁに?面白そうに、ぐるぐる跳ね回ってる物!?」
「本当に世間知らずだね、これは……えっ」
「あっ!……うぅん」
目の前が真っ赤に染まり、やがて全てが真っ黒に塗り潰される。
寝台の上に倒れこんだ僕をいばらが寝台ごと呑み込んでゆく。
抵抗しようにも体がまるで自分のものでなくなったかのように動かない。
バラバラに切り刻まれて、自らの意思とは裏腹に勝手に組み直されていく。
遠退く意識の中で僕は愛しい彼女を想った。
彼女に嫌われたまま、互いの心がすれ違ったまま、さよならも告げられないまま、
棘の檻によって離れ離れに引き裂かれるなんて……。
嘆いても、叫んでも定められた運命から逃れることは出来ない。
「ああっ!」
鋭い棘は僕の一番柔らかくて、一番繊細な弱い部分を的確に貫いた。
それは他の誰も触れられない脆く儚い心。
触れるのを許されたのは彼女だけ。しかし彼女は拒絶することで僕の心をずたずたにした。
傷だらけの心がいばらの棘に覆われてゆく。
とても痛くて、イタくて、いたくて、ずっと一緒に居たかった……。
しかし彼女を失った僕の世界に絶望という名の夜のとばりが降りてきて、全てを宵闇へ染めてゆく。
やがて瞼が重たくなってきて、微睡みの闇へと意識を手放した。
ページが巻き戻り、誰かが物語を書き換えてゆく……。

――むかしむかしあるところにとても美しいお姫様がおりました。
けれどそのお姫様は普通とは違いました。王子様の格好をしていたのです。
お姫様はいつしか夢を見るようになり、ある日理想の女性を捜す旅に出ました。
そうして見つけた薔薇の塔で眠る姫君。
お姫様が愛したのは王子様ではなく気高きお姫様。
幸せなお姫様。
真っ白なページに書き綴られた気高きお姫様との物語。
――歴史が事実を語るように、作者は作為的な嘘で物語を騙る。
誰にも知られることなく微睡みの闇に落とされた九人目の姫君。
物語の掟。可哀想なお姫様を救うのはいつだって王子様の役目。
そうして書き換えられた童話。
薔薇の塔で眠る姫君と彼女を救いだす王子様。
哀れなお姫様。
真っ黒に塗り潰されたページに存在した証さえ残せず。
地平線が語らざる詩……大切な人と物語を取り戻す為の復讐劇。
そして物語を取り戻した彼女を待っていたのは……。

「なるほど。それで君はいばらに抱かれたわけだね。
目覚めへと至る口づけがほしいのかい?
だが残念ながら私は君の王子様……お姫様、いや真の恋人じゃない。
さぁ、もう暫し運命の相手は夢の世界で待つものさ……」

147 :
――ところかわって。
「いつも仲の良いあなた達が喧嘩だなんて珍しいわ」
私の話が終わると、アプリコーゼさんは何度か頷いてティーカップをソーサーに戻した。
「私は悪くありませんわ。王子が真面目にお話してくださらないのが悪いのです」
「あらあら」
「私は悪くありません!王子は私に隠し事をしているのですわ!
嗚呼、王子は私を愛してない……。愛しているのならば、隠し事などしないはずですもの!」
「野ばら姫、どうしてしまったの?いつものあなたらしくないわ」
「私はいつも通りです。嘘つきな王子が悪いのです!」
「彼女はうまく嘘がつけるほど利口な子ではないわ。信じてあげて」
「信じられません!」
私は目を瞑って、耳を塞いで、先ほどと同じように拒絶した。
何故だか今日ばかりは王子が信じられなかった。彼女の言葉が全て偽りに聞こえたのだ。
「……わかるわ。仲直りしたいのよね」
「いいえ。王子から謝らない限り口も利いてあげません!」
私はどうしてこんなにも意地を張っているのかしら。それはきっと彼女を好きだから。
好きだからこそ嘘をついてほしくなかった。全てを知りたかった。
けれどそれはおざなりにはぐらかすほど苦痛だったというのかしら……。
「野ばら姫、アプリコーゼッ!」
静かな昼下がりののどかなお茶会にアルテローゼが飛び込んでくる。
私は水をさされた思いで僅かにいらつきながら振り返る。正反対にアプリコーゼさんは嬉しそうに応じた。
「そんなに慌ててどうしたの、アルテローゼ?」
「大変だわ、大変だわ!大変だわ、大変だわ!」
「アルテローゼ、落ちついてくださいません?うるさいですわ」
「よかったらお茶を飲んで頂戴」
気が落ちつくようにとアプリコーゼさんは自らの紅茶を差し出す。
アルテローゼはそれを飲み干し、噛みつくように話し始めた。
「塔の上で王子がいきなり倒れた」
「また呪いをかけたんですのね。今日という今日は許しませんわ!」
「違う。ただ麻を紡いでいたら……どうしてあんなことに」
頭を抱えたアルテローゼが崩れ落ちる。
アプリコーゼさんが窓際へ近づき、カーテンを退けた。窓枠の外に見えるは忌々しいあの塔。
しかし今日はいつもとは違う。空を望む塔にいばらが巻きついている。
いや、それどころかうねるいばらの蔦が城の近くにまで迫っていた……。
「指先が紡錘に触れた途端に王子は寝台の上に倒れて、いばらが彼女を覆った。
回避の呪文を唱えようと杖を構えたが相手の力が強すぎて、私は襲い来るいばらから逃げるしかなかった。
嗚呼ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。私が付いていながら……」
「貴女は何も悪くないわ」
アプリコーゼさんはアルテローゼを抱きかかえるようにして立たせると、どうにか椅子に座らせた。
アルテローゼは見たこともないほど動揺していた。
しかし私もそんな彼女さえ目に入らないほど動揺していた。
「なんてことでしょう……。王子がお話していたことは全て本当だったのですね。
なのに私は疑って追い出してしまった。王子が塔へ上ったのも私のせいです」
これが王子を信じようとせず疑ってしまった私への罰でしょうか。
私達はまだ出会ったばかりなのに、こうして離れ離れになってしまった。
薔薇の塔で百年という永い孤独の中で眠り続ける貴女を、私はどうすることも出来ない。
「アプリコーゼさんお願いです。どうかこの城を、いいえ私一人で構いません。
私をまた百年眠らせてください。彼女が目覚めたときに傍にいられるように」
けれど彼女は沈痛な面持ちで俯くばかりで、私の願いを聞き入れてはくれなかった。
「アルテローゼでも構いません。私を眠らせなさい、今すぐに!お願いですから!」
「野ばら姫、次の百年は恐らく耐えきれない。目覚める前にぬだろう」
「それでもこのまま王子のいない世界で生き続けるよりましですわ!」
王子のいない世界を想像してみる。朝が来ても誰もおはようのキスで起こしてはくれない。
夜になっても誰もおやすみのキスで夢の世界へ見送ってはくれない。
そう。彼女以外の他の誰にもこの唇はゆずれない。
彼女がいなければ、私は寂しくて寂しくてんでしまうわ……。
「もういいですわ。私は一人で眠ります。誰の力も借りません!」
二人の呼びとめる声を背中で聞きながら、私は不確かな足取りで部屋を飛び出した!

148 :
――そして数日後。
『野ばら姫、王子のご両親からお手紙が届きましたよ』
『さっさと起きなさい!』
部屋の外から二人の声が聞こえる。私は重たい目蓋を恐々とあけた。
また今日も朝がやってきた。貴女の口づけで目覚めない朝はとても憂鬱。
けれど私はもう何度も目覚めている。彼女がいなくても平気で朝はやってくるのだ……。
「お手紙ですの?」と私は軽く身支度を整えて二人の元へと向かった。
「ええ。王子が倒れた日にすぐ送ったのよ。ついさっき返事が届いたの」
泣きながら眠ってしまった私と違って、二人や城の面々はよく働いてくれた。
しかしながら薔薇の塔には誰一人として近づけず、現在塔の中がどうなっているのか、
王子がどのような状態なのかは一向にわからなかった。
アプリコーゼさんはきっと眠っているだけだから安心するようにと励ましてくれた。
けれど本当かしら。私と同じ状態に陥ったとは誰も断言出来ない。
「手紙よりも風の噂の方が早かったようだけどね」
人々が囁き合う噂の伝播速度とは凄まじいもので王子が紡錘に刺されて倒れた事件は
あっという間に王都から王国全土、近隣諸国、そして遠く離れた王子の国へも伝わったらしい。
「きっと皆さん、噂話に熱を込めるほどお暇なのでしょうね」
「アプリコーゼ、いいから早く手紙を読め」
「私からもお願い致しますわ」
「では……おほん――拝啓野ばら姫様。突然の娘の悲報に我々も大変驚いております。
娘はあなたにお話していなかったようですが、娘には恐ろしい呪いがかけられておりました……」
【七の罪科】恋に焦がれてせる乙女が いばらに抱かれて眠る理由は――
――【祝い】が【呪い】に代わる 運命の皮肉。彼女の誕生にまつわる知られざる物語。
宴に招かれた十二人の賢女達は生まれたばかりの姫にそれぞれ祝いの贈り物を授けた。
しかしそこに招かれざる十三人目の賢女が現れ、彼女の運命は流転する。
「では私からも姫へ逃れられないの呪いをお贈り致しましょう。
妙齢となった姫はやがて心より惹かれ合う運命の相手と出会う。しかしすぐに仲違い。
深い絶望の中、高い塔の上、恋に傷つき灼かれながら、紡錘に刺されて床に倒れてぬがいい!」
まだ贈り物をしていなかった賢女がその呪いを修正する。
「いいえ、姫はんだと見せて寝台の上、恋の傷が癒えるまでただ眠るだけ。そして――」
こうして祝いの宴は不吉な呪いを残して幕を閉じた。
不安に駆られた両親が招集したのは国中に散らばるありとあらゆる分野の学者達。
彼らは姫にかけられた呪いについて真剣に話し合い、一つの結論に達した。
姫をへと誘う紡錘とは男性ならば誰もが持っている女を貫く槍のことで、
それに刺されたショックで姫はんでしまうのではないか。
両親は国中の糸車と紡錘を処分させると、城中の男性に近づくことなかれと申しつけた上で
姫を離宮に隔離して本人にすら真実を伝えることなく王子として育てることにした。
こうして彼……いや彼女は自身を男性だと思い込んだまま、期待通り立派な王子へと成長した。
齢十五を迎えた朝を迎えることとなった、そんなある日。
彼女は両親に「旅に出たい」と申し出た。頑として許そうとしない両親に彼女はこう伝えた。
「夜ごと夢を見るのです。高い塔の上で眠る乙女の夢。彼女は待ち続けている。
永く永い眠りから目覚めることを願っている。僕は彼女を捜し出して救ってやりたいのです」
両親は驚きを隠しきれなかった。
やがて深く深い眠りに落ちるはずの姫が未来の自分を夢に見ているのだろうか。
両親は彼女の鎖された未来に胸を痛め、せめて旅に出たいという願いを叶えてやろうと考えた。
彼女の運命を定めたあの事件と今後待ち受けているであろう呪われた運命を事細かに教え、
道中如何なる者にも女性だと明かさないことを条件に旅に出るのを許したのだった。
ここからはご存じの通り。
姫は王子として西も東も北も南も、雨にも風にも負けず、夢に見る女性を捜し始めた。
旅に疲れた王子が辿りついた白亜の城下町。そこで素晴らしい噂を聞く。
〜野ばらの生垣に 抱かれた白亜の城 空を望む薔薇の塔 眠る美しい姫君〜
嗚呼、彼女こそが夢にまで見た《捜し求めていた女性》に違いない。
王子はある種の衝動に突き動かされたように薔薇の塔を目指した……。

149 :
王子が夢にまで見た高い塔の上で眠る乙女とは誰?
これまで百年もの間、薔薇の塔で眠り続けた私。
これから百年もの間、薔薇の塔で眠り続ける貴女。
恐ろしい呪いで微睡みの闇に落とされた二人の乙女。
王子は私に運命を感じて薔薇の塔までやってきたのかしら。
それとも呪いによってすべき運命の地へ引き寄せられただけ?
蜘蛛の糸に絡めとられた哀れな蝶は塔の上での夢を見続けている……。
「そうして薔薇の塔へ上った王子は野ばら姫と出会ったというわけね」
「運命の出会いだわ」とアプリコーゼさんは締めくくった。
「王子の両親が野ばら姫との結婚をやけにあっさり認めたのは、
相手が女性ならば紡錘に刺されてぬこともないと勘違いしたからか」
アルテローゼの言うとおり、百年も眠っていた骨董品の私の元へ、
世継ぎの王子(もとい姫君)を喜んで差し出すなどよくよく考えてみればおかしな話である。
(そもそも同性で結婚するなど親としてはあまり歓迎出来ることではない)
出会えた喜びで二人とも舞い上がっていたため、今の今まで気づく由もなかった。
でも私達は出会えて本当に幸せだったのかしら。
時を置かず、入れ替わるように眠りにつくのならば、どうして私達は出会ってしまったの?
出会わなければ、目覚めなければ、引き裂かれることもなかった。
けれどこんなにも深く誰かを愛することを知らずに高い塔の上眠り続けたでしょう……。
「お願いです。私をもう一度百年眠らせてください。す覚悟は出来ております。
どうせこのまま生きていても、生きたまま再会することは出来ないのですもの。
んだように生き抜いてのうのと、眠りながらのうと同じことです」
アルテローゼは杖を取り出し、泣く寸前のように顔を歪めた。だがすぐに表情を引き締める。
「野ばら姫よ、ならば私が再び呪いをかけよう!姫の抱く運命――」
「いいえ《十三人目の賢女:アルテローゼ》よ」
「アプリコーゼさん、どうか止めないでくださいませ」
「百年も眠る必要はないわ」
「せめて彼女の夢を見ながらぬことを許してくださ……えっ?」
「必要がないとは一体どういうことだ。さては何か隠しているな、アプリコーゼ」
「とっとと白状しろ!」とアルテローゼは赤黒く光った杖の先をアプリコーゼの鼻先に向ける。
アプリコーゼは怯えることなくのほほんと切り返した。
「あらいけない。私としたことがお手紙を読み飛ばしていたわ。今度はちゃんと読むわね」
――しかしそこに招かれざる十三人目の賢女が現れ、彼女の運命は流転する。
「では私からも姫へ逃れられないの呪いをお贈り致しましょう。
妙齢となった姫はやがて心より惹かれ合う運命の相手と出会う。しかしすぐに仲違い。
深い絶望の中、高い塔の上、恋に傷つき灼かれながら、紡錘に刺されて床に倒れてぬがいい!」
まだ贈り物をしていなかった賢女がその呪いを修正する。
「いいえ、姫はんだと見せて寝台の上、恋の傷が癒えるまでただ眠るだけ。
そして――真の恋人からの真実の愛のキスで恋の傷は癒えて、ただちに目覚めるでしょう!」
十二人目の賢女が贈った希望の光により、姫はの運命から逃れ、目覚めを約束されたのだった。
「真実の愛のキス。まあなんてロマンティックなのでしょう」
「アプリコーゼ、わざと読み飛ばしたな……」
「王子に魔法をかけた私は気が利くわね」
「あんたとは違うだろう」
「あら王子に呪いをかけたアルテローゼも気が利いてるわ」
「だから私でもお前でもないだろうが!」
「だって運命の相手と出会うと予言したのは、私でなくアルテローゼですもの」
「だーかーらー!ええい、呪うぞアプリコーゼ!」
「私には運命の相手と出会う呪いは必要ないわ。もう出会ってるもの。ねぇそうでしょう?」
「くっ、今に見てろよ……」
アプリコーゼさんとアルテローゼは相変わらず仲良く談笑している。
傍から見ると喧嘩しているようにも見えるが、あれが二人の通常モードなので心配いらない。
というより彼女達の心配などしていられなかった。
私の心を支配しているのは変わらず王子のことだけだった。彼女はんでしまったわけでなく、
私が傷つけた恋の痛みが癒えるまで、ただ眠り続けているだけというのはわかった。
そして目覚めるための方法も十二人目の賢女は指定してくれた。けれど……。

150 :
「ほら野ばら姫、さっさと行っといで」
「私達は目覚めた王子のために祝いの宴を準備して待っていますね」
「で、ですが私が真の恋人である保証はありませんわ」
私の心底悩み抜いた末の言葉はアルテローゼに笑い飛ばされた。
「ハッ!何を馬鹿言ってるんだ。毎日あれだけいちゃいちゃしといて違うわけないだろう」
「自信がありませんわ……」
「ハァ?」
「アルテローゼは少し静かにしてて頂戴」
アルテローゼはアプリコーゼさんに何か言い返そうと口を開いたが、言わずに口を噤んだ。
普段ならどうってことのないアルテローゼの刺々しい言葉も、
今は私を百年抱いていた野ばらのように痛く感じられた。
「どうしてそう思うのかしら?」
「……もしも私の口づけで王子が目覚めなかったら」
この世にそれ以上恐ろしいことはあるでしょうか。
私は真の恋人でないと、私のキスは真実の愛のキスではないと無言のうちに突きつけられる。
「大丈夫よ。きっと目覚めるわ。十三人目の賢女がかけた呪いを思い出して」
「運命の相手と仲違いして紡錘に刺されてぬという呪いですか?」
「ええ。そして十二人目の賢女はその仲違いした運命の相手に彼女を起こす役割を与えた」
「もしも私が真の恋人でないとしたら、私が運命の相手でないとしたら」
私と出会うずっと前に、彼女はもう運命の相手と出会っていて既に仲違いをした後だとしたら。
私との出会いは単にすべき運命の塔への足掛かりにすぎないとしたら。
ぐるぐる。ぐるぐる。まるでバウムクーヘンのように不安が渦を巻く。
「馬鹿だね!」
「失礼な!私は真剣に悩んでいるのです!」
「それが馬鹿だって言うんだよ!」
「アルテローゼには失いたくない大切な人がいないから、私の気持ちなど微塵もわからないのだわ!」
「私にだって……!!ま、まあいい」
アルテローゼにも思うことがあるらしく、彼女は視線を遠くへ投げた。
彼女にも失いたくない大切な人がいるのかしら――そう、誰にだっているはず。
だとしたら悪いことを言ってしまった。謝るべきか迷っているとアルテローゼが再び口を開いた。
「野ばら姫よ、やっぱりあんたは馬鹿だよ。運命の相手はこの世に一人だけって相場が決まってるんだ。
二人も三人もいたら迷惑だろう?だからあの娘を起こすことが出来るのはこの世界でただ一人。
野ばら姫に目覚めの口づけを与えることが出来たのが彼女一人であったように」
「私が運命の相手でないとしたら?」
「ハァ、もういいよ。うだうだ悩んでいたいならずっと悩んでな」
アルテローゼは煮え切らない私の態度に呆れ果ててどこかへ行ってしまった。
「野ばら姫、自分に自信を持ちなさい。そしてどうか彼女を信じてあげて」
「アプリコーゼさん……はい!」
そうですわ。私が王子を信じることが出来なかったから、こんな事態になってしまったんですもの。
今度はちゃんと信じてあげなくては。きっと彼女も私が来るのを信じて待っているはず。
だから私も彼女が希う運命の相手が自分自身だと信じて、彼女の気持ちを信じて、
どんな困難も乗り越えてみせなくてはなりませんわ!
「ありがとうございます、アプリコーゼさん」
「あらあら。お礼を言うのはまだ早くてよ。彼女が目覚めてから二人でお礼をしに来てね」
「はい。行って参ります!」
部屋を飛び出そうと勇んで足を踏み込んだら、アプリコーゼさんに引き留められた。
「ひらひらした恰好で出掛けるのは危ないわ。着替えてからにしましょう」
「えっですが急いで迎えに行って差し上げないと……ってあぁん、そちらは王子の衣装部屋ですわ〜」
強引に引き摺り込まれた部屋は真っ赤だった。ずらりといつもの服が並んでいる。
着の身着のままなのかと思っていたが、毎日ちゃんと洗いたてのに着替えていたらしい。
「……全部同じですわ」
「年頃なのだからもう少しおしゃれに興味を持ってくれると私も嬉しいのだけど」
それは王子を着せ替え人形にするという意味ですわね、わかりますわ。
普段からアプリコーゼさん達に散々着せ替え遊びをさせられている私はしたり顔で頷いた。
「せめて色のバリエーションがあればねぇ……」
「ええ、例えば青い王子など面白そう」
……やはり駄目ですわ。私の王子は赤くなければいけませんわ。
それになんだか青は変態ちっくなイメージで嫌ですわあ。

151 :
「今度可愛いドレスを作ってあげましょう。どんなのが似合うかしら〜」
「でしたら私もお揃いのドレスがほしいですわ」
「うふふ。きっと姉妹のように愛らしいでしょうね」
「アプリコーゼさんもアルテローゼとお揃いのドレスを作ってみては如何でしょう?」
「まあ素晴らしいわぁ。今すぐにでも生地を用意しないと」
「では着替えて参りますわね」
私はずらりと並べられた衣装の中から一着を拝借して、そそくさとカーテンの奥に消えた。
まずはドレスを脱いで、コルセットを外して……うぅん苦しかった。
華美なドレスで着飾ったり、コルセットで締め上げたり、女の子は毎日大変なのです。
お次は着替える番ですわね。服に王子の匂いが残っているような気がして、
着替える前にぎゅっと抱き締める。ほんのりと爽やかな香りがした。
はやく会いたいという気持ちが今までよりずっと押し寄せてきて、私は急いで袖を通す。
もぞもぞ。もぞもぞ。うーん、こんなものでしょうか。
鏡の前でポーズを決める。いつもより少しだけ格好良くなれた気がした。
衣装一つでここまで印象が変わるとは……王子とドレスをお揃いにする楽しみがさらに増えましたわ。
王子はああいうなりですけど、ふとした仕草が可愛らしかったりするのですよ。
え、ご存じない?うふふ、私だけの特権ですわね。
「じゃっじゃーん。着替え終わりましたわ」
「まあお似合いよ、野ばら姫」
アプリコーゼさんは目をキラキラ輝かせて「異性装も背徳的でいいわね」と私を見ている。
なんだか嫌な予感がしないでもないが気にしない。
着せ替え人形が何を言ったところで、発言権など全く無いに等しいのだから。
「丈が少し長いけれど許容範囲ね。きつくない?」
「はい。ですけど胸の辺りが少し窮屈ですわ〜」
「……本人には言わないようにね」
「はい?」
よくわかりませんけど、アプリコーゼさんが仰るのなら言わない方がいいのでしょう。
「では行って参ります!」
「ちょっと待ったあ!」
とそこにアルテローゼが飛び込んできた。
「きゃあっ!」
「ってなんて格好してるんだい」
「私は何を着ても似合いますでしょう?」
「ん、似合うね……」
「よく聞こえませんでしたわ。何ですの?」
「何でもない!いいから、ほらこれを持っていきな!」
アルテローゼはぶっきらぼうな言葉と共に女の子が振り回すには些か大きすぎる剣をひょいと寄こした。
「どういう風の吹き回しですの?」
受け取ったそれはずっしりと重く、これから挑む試練の強大さを改めて実感した。
「必要になるときが来ると思ってね。しっかり呪いを施しておいたから、きっと役に立つはずさ」
「のろいですって!?」
「お呪いだよ。お・ま・じ・な・い!」
まあ。このネタは文章でしか伝わりませんわね。というのは横に置いといて。
アルテローゼに心より感謝した。そろそろ百年前の件も許していい時期かもしれない。
私とて彼女を心の底から嫌っているわけではなく、仲良くなりたいと思っている。
「ありがとう、アルテローゼ」
「べっ別にあんたのためじゃないよ。あの娘は私の目の前でぶっ倒れたんだ。
ぽっくりとなれたり、いつまでも寝腐ってられたら後味悪いからね。
……さっさとあの寝ぼすけを叩き起こしてきな。さもないと私が呪いに行くよ!」
「――なんて言うけれど、アルテローゼも本当は貴女や彼女のことが心配でたまらないのよ」
「アプリコーゼ!余計なことを言うな!」
「うふふ。図星だから怒ってるの?可愛いわねぇ」
「違ぁーう!いい加減にしないと呪うよ!」
「ならば私も運命の相手と恋に落ちる呪いをかけてほしいわ」
「こ、恋ぃ!?な、ななな、何を言って」
「でも私達には恋の魔法なんて必要ないわね。だって、ねぇ……うふふっ」
「アプリコーゼ!!」
二人は相も変わらずいちゃいちゃしている。いつまで経っても終わりそうにない。
「あ、あの……お邪魔みたいですし、行って参りますわね」

152 :
嗚呼 王子の話を聞いたときは嘘だと思い込んでしまったけれど。
私こそがきっと彼女の《真の恋人》なのでしょう。
ならばどんな困難も乗り越えてみせますわ!待っていてください、王子!
迷いの森の霧の中に足を踏み入れると、私を愛しい王子の元へ誘うかのように霧が晴れてゆき、
鋭い棘の生垣が姿を現した。薔薇の塔を守るように至るところに張り巡らされている。
きっとこれがアルテローゼの言っていた「必要になるとき」なのでしょう。
私は腰に下げていた大きな剣の柄を握りしめる。
本当に良かった。こんなに重たいのに使う機会がなかったらどうしようかと……。
さぁ、剣を引き抜かなくてはなりませんわ!
「ん、んん、うぅん……ん〜ッ!……よいしょっと!」
ようやっと鞘から引き抜いたと思ったら、今度は地面にグッサリと刺さってしまった。
「お、重たいですわぁ」
王子はいつも軽々と振り回していらっしゃるものだから、きっと私にも楽に出来ると思っていましたのに。
剣を振るうのは誰にでも出来る簡単なお仕事とは違うのですね。
強大な力を得るためには、それ以上に重たい責任が伴う。
ナイフやフォークより重たいものを持ったことのないお姫様には難しいお仕事なのですわ。
ずるずると剣を引き摺って棘の生垣に近づく。つんつんとつついてみると生垣がうねった。
ちょっと面白いような、動きが気持ち悪いような……。
重たい剣をどうにかほんの少しだけ持ち上げて棘の生垣の端っこの方を切ってみる。
「えいっ!」
にょろにょろにょろっと見ていて背中がぞわぞわするような動きで、
私を愛しい彼女の元へと導くかのように、棘の生垣が口を開けてゆく。
「まあ……」
ちょっぴり切っただけですのにこの威力。私には剣の才能があるのかもしれませんわ!
いいえ、違いますわね。これはきっと王子が私を望んで、導いてくださっているに違いない。
私は途端に嬉しくなって、愛しい彼女の元へと急いだ。
燭台の揺れる焔、微睡んだ闇を照らす。
石壁の部屋を飛ばし、古い塔へ上がる。
狭い螺旋型の階段を上ると――
塔の最上階の部屋には繭にも似たいばらの塊が鎮座していた。
それはまるで侵入者から大切なモノを守る堅牢な檻のよう。
恐る恐るいばらに覆われた寝台へと近づく。
手を伸ばすといばらの棘が瞬く間に退いていき、中からんだように眠る美しい乙女が現れた。
私は眠る乙女をまじまじと見つめ、彼女の寝顔を見るのは初めてかもしれないと思った。
夜がくれば私はいつも王子より先に眠りにつき、朝がきても私はいつも王子に起こされるまで眠っている。
目覚めてから毎日一緒にいるのに、私は彼女の寝顔を一度も見たことがなかったのだ。
いばらに抱かれてんだように眠り続ける乙女。
閉ざされた瞳を覆う長い睫毛。安らかに上下する胸。物欲しげに小さく開かれた艶やかな唇。
凍りついたように冷たい体。――其処彼処に張り巡らされた誘惑の罠。
胸の奥にちろちろと愛欲の焔が灯り、この身を焼き尽くさんと広がっていく。
初めての感覚に戸惑いながらも生まれたばかりの欲情に抗う術はなく、
衝動に突き動かされる儘にいばらの寝台に手を掛ける。
「いただきます」
薔薇色の唇に自分の唇を重ねる。冷たいのに柔らかな唇に魅了されて何度も何度も口づけを繰り返した。
いけないとわかっているのに……熱に浮かされた私は行為を続ける。
しっとりとした唇に吸いつき、ぷっくりとした下唇を啄み、味わい尽くす。
駆け抜ける衝動と高鳴る鼓動で胸が張り裂けてしまいそう。
ずっとこうしているわけにもいかないので名残惜しいながらも唇を離す。
すると王子の凍りついたように冷たかった肢体がいつの間にか熱を帯びて、
長い腕が私の白い首筋ににゅうっと伸びてきた。
力強く引き寄せられて私はバランスを崩して、寝台の上に眠る彼女の胸に倒れこんだ。
慌てて起き上がろうと腕を突っ張るもぎゅっと抱き締めて離してくれそうにない。
どうやらまだ寝ぼけているらしくむにゃむにゃ何か呟いている。
――いばらの寝台の上で眠ってる可愛い私の王子様。ねぇ、どんな夢を見ているのかしら?
うふふ。意外とお寝坊さんなのですね。
起こされるまで百年も眠ってた私もあまり人のことは言えませんけど。

153 :
どくん。どくん。再びリズムを刻み始めた目覚めを告げる鼓動の音色。
どくん。どくん。私の体を駆け巡る血潮の響きと重なり合い、ハーモニーを奏でる。
ずっとこうして二人の鼓動のメロディを聞いていたいけど。
私は強引に腕を振り解き、そっと囁きかける。
「お・う・じ、起きてください」
「うぅん……」
長い睫毛が揺れて重たい瞼がゆっくりと持ち上がった。
王子は何度か瞬き、ぼんやりとした眠たげな瞳をこちらに向ける。
「おはようございます、王子」
「ふわぁ、おはようございます……?」
王子はむっくりと上半身を起こすと猫のように大きく伸び上がった。
まだ状況を把握しきれてないらしく、不安げに辺りを見回す。
「ここは薔薇の塔です。ご気分は如何ですか?」
「良好です。姫が僕を起こしてくれたのだね」
「はい!お目覚めになられて良かったですわ。ですが待ちくたびれてはいませんか?」
これでも懸命に急いでやってきたつもりだが、それでも何日も待たせてしまった。
彼女にかけられた呪いを解く方法をようやっと知ってからも、自信がないと悩み、また時間を潰した。
「ふふっ。素敵な夢を繰り返し見ていたから、退屈してないよ」
「どのような夢ですの?」
「それはね」
彼女は視線を横に流してはにかんだ。いつもと変わらぬ照れたときの何気ない癖。
「薔薇の塔で眠る乙女が運命の相手の真実の愛のキスによって目覚める夢。
運命の相手とは野ばら姫、貴女のことです。貴女が迎えに来るのをずっと信じてました」
「まあ……」
話が終わると王子は気恥ずかしげに私を見つめた。
なので私も同じように見つめ返すことしか出来なくなる。
もうどこも触れ合っていないのに、胸の高鳴りが伝わってしまうのではないかと息を止めた。
「おや。顔が真っ赤だよ」
「えっ、あ、はい」
あらあらどうしましょう。火照った頬を押さえてうろたえていると王子がまた笑った。
「ふふっ。僕よりも百年眠っていた姫の方が退屈だったのではないかな?」
問いかけに応じて私は眠り続けていた日々を思い返す。
けれど不思議と長くは感じなかった。何故ならば……。
「私も百年間ずっと夢を見ていました。運命の相手が私に目覚めの口づけをくれる夢。
運命の相手とは王子、貴女のことです。私も貴女が迎えに来るのをずっと待っていました」
「百年はつらくなかった?」
「いいえ。だって信じてましたもの。……どうして忘れていたのでしょう。
ふと魔がさして信じることが出来なくなっていた。酷い言葉で貴女を傷つけてしまいました」
「大丈夫。恋の傷は野ばら姫のキスで癒えました」
王子はにっこりと笑顔の花を咲かせた。ズッキュンと私の心はいとも簡単に射抜かれてしまう。
罪な貴女は無自覚なままで、私の心を捕らえて放してはくれない。
「いやん。ナチュラルに恥ずかしいこと仰らないでくださいな〜。照れますわ」
「それに今回の件は姫のせいではないよ。僕に定められた運命なのだから」
これこそが十三人目の賢女が仕掛けた巧妙な罠。相手を信じられなくなって仲違いをしてしまう呪い。
「では貴女にその運命を授けた賢女に感謝したいですわ」
「どうしてだい」
「だって何の障害もないまま育む愛など退屈ですもの。
仲違いの一つや二つ、愛を深めるのにちょうどいいスリリングなイベントです」
王子がきょとんとまんまるな目をして小鳥みたいに首を傾げた。
その仕草が可愛らしくて私も思わず彼女と同じように首を傾げて微笑む。
「……あ。そうだね。僕らの愛は今回の件でより深まった」
「はい。海よりも深く、山よりも高い強い絆を手に入れましたわ!」
「でもこれからは」
もぞもぞとベッドから両足を床におろして、彼女は続ける。
「運命は僕らで切り開かなければいけないね」
「はいっ!」
私や王子に呪いをかけた招かれざる十三人目の賢女も、その呪いを修正した十二人目の賢女も
目覚めてからの運命の道筋は定めてくれなかった。だからこれからは自分達で運命を切り開く番。
これからどんな未来が待っているのかしら?
予定調和ではない誰も知らないおとぎ話の続き。貴女と二人ならどこまでも歩いてゆける。

154 :
「さぁ帰りましょう。皆さん、貴女の帰りを待ち侘びてますのよ」
私が手を差し伸べると王子は躊躇なくその手を掴んで立ち上がった。
「皆が僕の帰りを?」
「ええ。アプリコーゼさん達が貴女のためにと張り切ってパーティの準備をしております」
「僕のために……」
王子の目じりにじんわりと涙が滲む。誤魔化したいのか瞬きの回数が増えた。
私は彼女の無駄な努力に応じて、敢えて気づかないふりで話を続ける。
「はい。貴女が目覚めたのが嬉しいのでしょう」
「僕が目覚める前から準備してるのはおかしいね」
「いいえ、おかしくはありませんわ。何故ならば私のキスで目覚めるのは確定事項ですもの」
少し不安もあったのだけれど、王子には内緒。
「……野ばら姫も平気で恥ずかしいこと言うよね」
頬を朱に染めて、照れた笑みを浮かべながら王子は続ける。
「野ばら姫も僕が目覚めてくれて嬉しい?」
「はい。嬉しくて胸が張り裂けそうですわ!」
ぶちんっ!
「きゃあんっ」
「な、何!?まさか本当に胸が張り裂けてしまったのか!僕のせいですまない」
「いえ、胸は張り裂けてないかなー。ですわ」
私はよもやの事態にうろたえながらも、さりげなくケープの合わせ目をぎゅっと掴んだ。
「ちゃんと見せて。血が出てたら大変だ」
「平気です。何でもありません」
しかし王子は許してはくれなかった。
必に抵抗するも蝶よ花よと育てられた深窓のお姫様と王子として育てられた勇敢なお姫様では、
力の差は歴然。小枝を払うかのように私の手は飛ばされてしまう。
「駄目だよ。ちゃんと見せて!」
「きゃっ!」
結論から言うと血は出ていなかった。最初に言った通り、胸は張り裂けていない。
「ごめんなさい。王子のお洋服を駄目にしてしまって」
張り裂けたのはぱっつんぱっつんの胸元だった。
でもきついのは胸元だけで……というのは伝えてはいけないとアプリコーゼさんが仰ってましたわね。
「ああ、そうか。ごめんね。腕やウエストはきつくない?」
「いいえ。ウエストは緩いくらいですわ」
「……」
王子は何故か本気で泣きそうな表情をして自分の胸を押さえた。
「どうしたのですか?胸が苦しいのですか?」
「僕も胸が張り裂けそう……」
「まあ!では私がお洋服を繕って差し上げますわね」
「そういう意味ではないデス」

「キャハハハハ。メル、今ノ見タァ?貧乳ッテ可哀想ネ!」
「エリーゼも人を笑えるほどあるわけでは……ってやめて、グーで殴らないでください!」
「ヤダァ。メルッテバ、ドコニ目ヲ付ケテイルノカシラァ?」
「こ、こうして姫君達は誰も知らない愛の物語を書き綴り続ける……」
「メデタシメデタシ……ウフフフッ!」
おしまい。


どこかで野ばら姫の名前が茨姫でないのは赤王子が茨姫だからだよ!!なんだってー!!
というのを見たので書いてみた。
「男装で王子として育てられた」は本当は怖いグリム童話。
「真の恋人の愛のキスで目覚める」「期間は百年でない」はネズミー版眠れる森の美女。等々から設定をお借りしました。
実は前回の青王子編より先に粗方書き終わってました。
映画公開前だったので貧乳オチになってますが特に他意はありません。

155 :
王薔薇GJ
男前な野薔薇姫と乙女な王子ちゃんイイヨイイヨー

156 :
領復まで保守!

157 :
サンホラの診断メーカーって色々あるんだなーとそれぞれ診断していたら
CP診断ってので「あなたは○RTされたら雪白姫×茨姫を描く運命にあります」という結果
茨姫というと野ばら姫?
妄想をアウトプットしろという神のお告げか

158 :
間違いなくミラのお告げ

159 :
Twitter見てたら、ゆめさんの夢にみくにさんがでただと……百合王薔薇派の自分歓喜過ぎる。ナマモノには興味がないはずなのにっ

160 :
6レス分お借りします。雪白姫と青王子が野ばら姫の噂話をしています。
青王子は野ばら姫に会いに行きたいようですが……?

――ある晴れた朝、いつものように少女が目を覚ますと……。
「ぐーてんもるげんっ☆寝起きも超スッキリな美少女、私の目覚めを待っていたのは、
可笑しな性癖を持つ、ええかっこしいな王子様で、その後、実は女の子という驚愕の事実を突き付けられ、
困惑しつつも、彼女の特殊な性的嗜好に引きずられて無垢な少女は未知の世界に足を踏み入れたのだった!」
「朝から元気だねぇ……」
「王子はテンション低いわね!」
ベッドから飛び起きた雪白姫とは正反対に、王子はごろんと寝返りを打ってシーツの中にもぐりこんだ。
「雪白姫がテンション高すぎなんだよ。夜もフルスロットルだし、付き合わされる身にもなってよ」
「えーオールで徹夜なんて余裕でしょおー?」
「若いうちはね。大人になると徹夜がつらくなるのです……」
はぁ……と王子が深いため息をつき、騒がしかった朝の空気がしんと静まり返った。
「ごめんね、王子。私そういうつもりじゃなかったのよ。ほら私達ダブルスコアくらいしか違わないでしょ」
「それは相当違うというのでは……」
「じゃトリプルスコア?もっとたくさん?」
「やめてくれ。眩暈がしてきた……」
「だいじょうぶ?お熱があるのかな?」
「舐めてくれれば治る(シャキーンッ」
心配そうな雪白姫の表情が見る見るうちに虫けらに対する顔つきに変わった。
「潔くねばぁ?馬鹿とヘンタイはんでも治らないと思うけどぉ、キャハハハッ!」
「ふふっ。今日も朝から絶好調だね。元気でた」
「何よ、罵られて元気がでるなんておかしいんじゃないの?ビョーキよ!近寄らないでよね!!」
雪白姫の金切り声をBGMに王子は素早く身支度を始めた。
「今日は出かけるよ。雪白姫も早く準備して」
「どこに行くの?あはっ☆もしかしてデート?」
恋する乙女とは現金なもので雪白姫は速攻で機嫌を直した。
ぴょこぴょこと王子の後ろを付いて回って同じように身支度を整える。
「私お菓子のおうちに行きたいな。でもね、王子と一緒ならどこでもいいの!えへへっ!」
「今日はお姫様に挨拶しに行くだけの簡単なお仕事デス」
「なにそれ。だれそれ。浮気宣言?私というものがありながらry」
「詳しく説明すると長くなるので、カクカクシカジカなんだよ」
――隣の国には百年間眠っていたお姫様がいるらしい。
「薔薇の塔で百年も眠っていたお姫様かぁ」
「この辺りでは有名な伝説だが、雪白姫は聞いたことないのかい」
「知らない。私そーいうの興味ないもの。世界で一番可愛いお姫様は私!」
「そーですね」
「あっさり流さないでもらえるかしら?」
ツッコミされるのも癪だが、さも興味なさげに流されるのもちょっと気分悪い。
雪白姫が頬を膨らませてぷんすかしていると、鏡台の前で髪型を整えていた王子が振り返った。
「髪梳かしてあげるからおいで」
雪白姫は少々不満に思いながらも手招きに従い、鏡台の前に腰を下ろした。
櫛が優しく長い黒髪を梳いてゆく。撫でられているようでなんだか少しこそばゆい気分。
「綺麗な黒髪だね」
「ひゃあう!」
「どうしたの?」
鏡越しに目が合う。ビクンッと飛び上がった雪白姫を王子が不思議そうに見ている。
「あ、ううん」
耳元で囁かれてドキッとしたなんて言えない……。
肩から滑り落ちた黒髪を弄びつつ、雪白姫は視線を落とした。
「私は黒いの好きではないわ。金髪ならよかったのにぃ」
「僕は雪白姫の長い黒髪が好きだよ」
「お母様……」
「なっ!?」
「お母様もそう仰ってたわ。黒檀のように黒い髪の女の子がほしいって神様にお願いしたんですって」
「そ、そう。雪白姫のお母さんも君の黒髪が好きだったんだね」
また母親呼ばわりされたと固まっていた王子がほっと胸を撫で下ろす。

161 :
「そうだわ。王子は髪を伸ばさないの?長い金髪を靡かせてにっこりしたら本当のお姫様みたい!」
くるりと雪白姫が振り返る。長い黒髪がふわりと広がり、王子の頬を撫ぜた。
いくらふわふわで柔らかい髪だとしても勢いよく頬を弾かれては痛い。
考えなしに頭を振って人様に迷惑をかけてはいけないよと注意したいけど、
また「お母さんみたい」なんて言われたくないのでぐっと我慢する。
こういうのは後で侍女の誰かから伝えてもらうに限る。
「本当のお姫様みたいって、本当はお姫様なんですけど」
「じゃあ王子姫様は髪を伸ばさないの?」
「嫌だよ。長いと面倒だもの」
「えー女の子なら髪を伸ばして可愛くしなくちゃ!みつあみにポニーテールにツインテールもいいよね!」
雪白姫はぐいと体を仰け反らせて王子の顔を覗き込んだ。
王子はかつての日々を思い出しているのか、遠い目で答える。
「髪が長いとどこかに引っかかったり、鳥の巣になったりしてさ。短い方が楽だよ」
「鳥の巣はただのズボラだと思うの。せっかく素材はいいのになー」
しかしいくら可愛く着飾ろうと、世界で一番美しい雪白姫にはかないっこないのだから
同じ土俵で勝負しようと考えるだけ無駄である。
僕は雪白姫にかないっこないけど、もしかすると彼女であれば……。
「そういえばさっき話した薔薇の姫君は長い金髪の可愛い女の子だよ」
「ふーん。どうして知ってるの?」
先ほどの話では王子が知っているのは薔薇の塔で眠る姫君の「伝説」だったはず。
どーして姫君の外見を知っているの?
雪白姫が訝しげな目を向けると王子はばつの悪そうな顔で話し始めた。
「僕も伝説を聞いて塔へ向かったことがあるんだ」
「浮気者!」
「まだ雪白姫と出会う前だったんだからノーカウントだ!」
「なぁんですってぇ!?口答えなさるおつもりぃ?」
「それに僕は棘の生垣に門前払いされたよ。でもその城の近くの廃屋で少女の肖像画を見つけたんだ」
「ふーん?それがお姫様の肖像画だったんだ?」
「うん。長い金糸の髪にうるんだ瞳。おっとりとした可愛い女の子」
「キーッ!!うーわーきーもーのー!!」
雪白姫は小さな拳を振り上げて王子をポカポカ殴った。
「おっとりとした子が好みなら、ちょっぴりワガママな私は好みじゃないって言うの?」
「君のワガママはちょっぴりどころじゃない」
「悪かったわね!」
でも的確すぎてそれ以上文句が言えない。
ワガママも少しは卒業しなくちゃいけないわねと雪白姫は思った。
オトナは何事もガマンをするものだ。
王子のようにガマンせずに己の欲望に忠実な危ないオトナもいるにはいるが。
「僕以外にも数多の人々が眠り続ける姫君の伝説に引き寄せられて薔薇の塔へ挑んだ。
だが誰一人として最上階で待つ姫君の元へは辿りつけなかった……」
「ずいぶんと人嫌いのお姫様なのね。たくさんの人がお姫様の元に行くのだからきっと綺麗なんでしょうね。
しかも眠ったままだなんてネクロフィリアな王子のドンピシャ好み。
過去のことにはとやかく言いたくないけど嫉妬しちゃうわあ!」
王子は梳かし終えた雪白姫の頭に愛らしい王冠を乗せた。
おしとやかでおっとりとしたあの絵の中の少女とは全く正反対な気が強く不遜なお姫様。
でも王子は知っている。女の子は年相応にワガママな方が可愛い。ワガママ放題は困るが、
ワガママを言ってもらえないのもオトナとして信用に足らないと言われたようで悲しいものだ。
それに絵の中で黙りこくった乙女より、傍にいてくれるワガママお姫様の方がずっと素敵。
……だ、だが僕はロリコンじゃないんだからね!
ついでに雪白姫に対しても修正しておく。
「雪白姫はネクロフィリアを勘違いしている。んだように眠っているのは体ではない。
よって反応しない(キリッ 眠るようにんでるのには反応する(キリリッ」
「うわあ……変態にもこだわりがあるのねぇ。いや変態だからこそ、か。聞きたくないわあ」
「即ち雪白姫は理想の体だった」
王子の目が爛々と怪しく輝く。雪白姫は小さな体をさらに小さく折り畳んで耳を塞いだ。
「鳥肌立つから本気でやめて。お願いだから体の話しないで」
「えー雪白姫が嫉妬するから君が一番だって話をしてあげたのにー。
真雪の肌は冷たく、黒檀の髪も冷たく、血潮のように冷たい唇。僕の見つけた理想の姫君!」
「体の話はもういいって言ってるでしょーが!(ばっちーんっ!」

162 :
「で、だいぶ脱線したけど何のお話だったかしら?」
「今日は隣国のお姫様が目覚めたことを祝して、ぐーてんもるげんっ☆とご挨拶に行く話でした。
体の話で雪白姫を不快にさせたことは本当に申し訳なかったと思っております」
赤く腫れた頬の王子がぺこりと頭を下げた。雪白姫は満足げに頷く。
「よろしい!……でも私行きたくない。王子も行かないで」
「何故だい。他国との交流は公務であり、我が国に利益をもたらす。サボるわけにはいかないよ」
王子の気持ちはわかっているつもりだ。これが大事なお仕事だってことも。
彼女はご存じの通り放蕩娘だったから、これが初めて彼女一人に任されたお仕事。
何よりも、国王である彼女の父が初めて彼女に「期待」をもって任せた仕事なのだから
なんとしても成功させたい気持ちは痛いほどわかる。
雪白姫には父娘の仲はよくわからなかったが、
男装して好き勝手に振舞っていた娘と仲が良いとは、どう贔屓目に見ても思えない。
だからこそ「期待」されるのは嬉しいし、成功させたいと思うのは当然のことだ。けれど。
「行きたくない。おうちにいる。王子も一緒にいて!」
「こらワガママ言わない!君が行かないというのなら僕は一人で行きます」
「でもでもだってぇ!王子が傍にいてくれなきゃ嫌なの!」
「「でも」も「だって」もありません!」
「王子ってお母さんみたい」
「はいはい。お母さんでいいから、お母さんと一緒に行きますよ」
「やだやだ〜!」
ふわりと雪白姫の体が浮かんだ。足をじたばたさせて抵抗するがオトナとコドモの力の差は歴然だった。
「イヤ!離して、下ろしてよ!!」
意味がないとわかっていながら変わらずばたばたさせていると、
お気に入りの赤い靴のヒールがちょうどいい具合に王子の向こう脛にクリーンヒットした。
「〜〜っ!」
浮かんでいた体が急に床に下ろされたかと思うと、王子が床を転がりだした。よほど痛かったらしい。
海の向こうの遠い国である日本では向こう脛のことを「弁慶の泣き所」という。
弁慶というのはとても強い大男なんですって。大男でも泣いちゃうくらい痛い場所という意味らしい。
「ええと……こんな時なんて言うんだっけな……ああそうか、ごめんね」
「うっ、うぅ〜……。どうしてそんなに行きたくないんだい?」
額に脂汗をびっしょり浮かべ、涙目になりながらも王子は普段の調子を崩さず、やんわりと訊ねた。
雪白姫は王子に手を貸して、どうにか立ち上がるのを助けると椅子に座らせる。
「お姫様には会ってみたいけど、やっぱり会いたくないんだもん」
王子は痛みに苛まれながらも、ぽつりと呟かれた雪白姫の本音をきちんと聞き取った。
「世界で一番可愛いお姫様は自分一人だから彼女のことを認めたくない?」
「私はそこまでちっぽけな女じゃないわ。勿論私より可愛いお姫様は存在しないけどっ!」
「そうだね」と王子が優しく相槌を打つ。
私が不安に思うことを何にもわかっていない……雪白姫はむっとしながら続けた。
「でももしも王子がそのお姫様のことを好きになっちゃったら嫌だもん」
「え。……あははっ。それは困ったね?」
きょとんと目を丸くした後に王子は突然笑い出した。雪白姫は彼女を睨みつけ、地団太を踏む。
「笑い事じゃないの!私は心配なの!」
「大丈夫だよ。こんなに可愛い雪白姫がいるのに目移りするわけがない。お仕置きも怖いしね」
「私、DV女じゃないわ」
「ふふっ。それにね、もし仮に僕が彼女を好きになったとしても、
彼女には運命の王子様がいるから僕の出る幕はないよ」
「王子様?」
「そう。百年眠っていたお姫様を起こしたのは王子様のキスだったんだよ」
「わぁロマンチックぅ!いいなーいいなー」
雪白姫の大きな瞳がきらきらと輝いた。お星様を散らしながらくるくると回りだす。
「さて安心したところで出かけようか、僕のお姫様?」
「ぐーてなはとっ☆おやすみなさーいっ☆」
王子が差し伸べた手は取らず、雪白姫はふわりとスカートの裾を翻して、ばたんきゅーとベッドに沈み込んだ。
「あぁ〜雪白姫!」
「お姫様は眠ってしまいました。起こすのには王子様のキスが必要でっす☆」
唇を突き出した雪白姫を見て王子は額を押さえた。
「やると思った。だから言いたくなかったんだよ……」
「チュウして!チュウしてくれなきゃやだやだやだー!!」
「もぅ仕方ないんだから。一回だけだよ?」
王子はベッドに歩み寄り、恭しく跪いた――。

163 :
一方その頃。野ばら姫は眠っていました。

――この国には百年眠ってもなお寝ぼすけなお姫様がいるらしい。
そう。目の前にいるのがその有名なお姫様、野ばら姫である。
「うぅん……すーすー」
太陽はとっくにおはようと元気に挨拶して空高くまで上ったのに、彼女はまだ眠り続けている。
眠る姫君を起こすのは王子様のキスと相場が決まっているが、当の王子は……。
「ふふっ可愛いなぁ」
なんてことを言いながら彼女の寝顔を眺めていた。
太陽が地平線から「おはよう」と顔を覗かせる前から眺めているので、
もう彼是七時間近くこうしていることになる。
よくもまあ飽きもせずに眺めていられるものだと思われるかもしれないが、恋は盲目なもの。
好きな人の寝顔を見つめているだけで時が砂のように流れてゆく。
目覚めた彼女と楽しくお喋りするのも好きだけど、こうしてゴロゴロしながら見つめているのも幸せ。
こんな穏やかな時間がいつまでも続けばいいのに……。
「野ばら姫、王子、まだ寝ているの?」
「とっとと起きてこい!何時だと思っている!」
「今日はお客様がいらっしゃるから早く起きなきゃだめよー」
「というかもう来てるからさっさと起きなさい!」
部屋の外からアプリコーゼとアルテローゼの声が聞こえる。
「返事がないわ。どうしたのかしら」
「よし。私が叩き起してこよう!」
二人に乱入されて寝室を荒らされ、あまつさえ喧嘩されては野ばら姫の目覚めを害しかねない。
それはとっても困る。大声で答えて飛び起きる。
「ハイ!今起きます!起こします!」
寝台が大きく揺れても野ばら姫は目覚めなかった。
安らかに眠る彼女を起こすのは心苦しいけれど……王子はがばっと姫に覆い被さる。
「いただきます」
「うぅ〜ん。おはようございますぅ……」
野ばら姫はぽわぽわとした瞼をしきりに擦ってぼんやりしている。
やがてその瞳に王子を捉えて、うっとりと見上げた。王子は彼女の頬を撫でて甘く耳元で囁く。
「ごちそうさま。もうお昼だよ」
「きゃああああ!いやだわ、どうして起こしてくださらなかったの?今日はお客様がいらっしゃるのに」
おっとりとした見た目からは想像も出来ない勢いで野ばら姫は跳ね起きると、
パタパタと部屋中を行ったり来たりし始めた。とうの昔に身支度を終えていた王子が爽やかに答える。
「だって姫の寝顔が可愛かったから」
ぴたりと野ばら姫が動きを止めた。その頬は薔薇色で、小さな口はパクパクと言葉を無くしたようだった。
どうにかして言葉を取り戻すと、野ばら姫は体ごと王子を振り返ってまっすぐ見つめた。
「……あら嬉しいです。でも私も王子の寝顔が見たかったですわ」
「なら今度はもっと早く起きないといけないね。僕は負けるつもりはないけど」
「いじわる。そうだわ。今からお昼寝しません?そうすれば万事解決です」
「いいね。僕もちょうど眠たくなってきたところなんだ。ふわぁ」
「私もまだ眠たくて……」
寝台にごろーんと転がって目と目で見つめあう。高鳴る鼓動が流れる時間に魔法をかける。
そうしてだんだん瞼が重たくなって……「おやすみなさい」っていうと「おやすみなさい」っていう。
お互いに寝顔など見る暇もなく、深い微睡みの淵を覗き込んだ。






……と思ってた矢先に
「いつまで寝てるの。早く起きなさい」
「いい加減にしないと呪うぞ!」
アプリコーゼとアルテローゼが扉を蹴り飛ばし寝室に乱入してきた!

164 :
「もうお客様がいらしてますよ……ってまあ!ごめんなさいお邪魔だったかしら」
「正装のまま横になるな!皺になる!汚れる!」
「いいえ、アルテローゼ。着衣のままもなかなか……」
「何の話だ!如何わしい発言をするな、アプリコーゼ!」
二人のやり取りに気分を害された野ばら姫は無表情でむっくりと起き上がり、肩を払った。
ドレスの裾をひらりと翻して二人の間を横切っていく。
王子も慌てて飛び起きて寝台の足元に転がったブーツを掴んだ。
足を突っ込んで紐を結ぼうと四苦八苦するが気が動転してうまくいかない。
「待って姫、置いていかないでよ!」
「お客様が待っておりますので」
「そのような話は聞いていない」
「では今からお話しします。今日は隣の国の王子様が遊びにいらっしゃるのですよ」
「そんなの聞いてない!」
王子は野ばら姫に詰め寄るが、直前で足が縺れてその場にへたり込んだ。
「クッ、アルテローゼに呪われて、力が出ない……」
「人のせいにするな。ブーツを左右逆さに履いてるだけだろ」
「……あ、スミマセン」
床にぺたりと座り込んで王子がもぞもぞとブーツを履き直す。
野ばら姫はその様子を見下ろしながら、準備が面倒なブーツは一生履くまいと思った。
「で、どうしてどこの馬の骨ともわからぬ王子サマが我が姫の元へ?」
「私が目覚めたお祝いに来てくださるのですって」
「へぇ。姫が目覚めてからだいぶ経つのにやっと挨拶に来るのか」
「あちらの国でも何か騒ぎがあったそうで遅くなってしまったそうです」
「そんな言い訳にもならない嘘をいう輩に会う必要ないよ」
「王子、怒っていらっしゃいます?」
「いいえ全然。これっぽっちも」
王子の返事はあまりに即答なので「嫉妬しています」と言ってるようなものだった。
王子は今度こそ左右間違わずにブーツを履き終えて野ばら姫の元にやってきた。
難しそうな顔をしながら野ばら姫の腰をぐいっと引き寄せる。
そして王子様パワーでしゃらんと背後に薔薇を咲かせると爽やかに笑む。
「そんな男のことなど忘れてしまいなよ。きっといけすかない奴に決まってる」
「そうでしょうか?まだお会いしてないのですから決めつけるのは早計です」
「王子様など総じてそのようなものさ。王子様なんて気障でええかっこしいで僕は大嫌い!」
ぽかん。と口をあんぐり開けて野ばら姫は王子を見つめた。
ついでにアルテローゼとアプリコーゼも彼女達をぽかんと眺めていたが、王子の眼中にはなかった。
「どうしたのかな、僕の愛しい姫?」
「ご自分のこと仰ってます?」
「まさか。僕は気障でもええかっこしいでもないよ」
王子はふわりと髪をかきあげて周囲にキラキラを散らした。
どこをどう見てもええかっこしいだが……そういうことにしておこう。
「隣国の王子様、ねぇ」
「言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうだい、アプリコーゼ」
「ならハッキリ言うわ。隣国に王子様はいなかったと思うの」
「ハァ?」
わけがわからんと言わんばかりにアルテローゼは眉を跳ね上げた。
それは野ばら姫と王子も同様で小首を傾げて顔を見合わせる。
「百年眠っていた二人や最近いらした王子は知らないでしょうけど、お隣は最近出来た新興国なのよ」
「知らない名前だと思いましたら私が眠っている間に新しく出来た国でしたのね」
「だいたい七十年前だったかしら」
「あの僕の勘違いでしたら大変申し訳ないのですが、アプリコーゼさんは百歳以上……?」
「あらあら女性に年齢を聞くなんて全くいけない子ねぇ」
アプリコーゼはニコニコと笑いながら(目だけ笑っていないあの笑顔である)杖を取り出す。
王子は慌てて野ばら姫を庇った。というか野ばら姫はこの件に関しては特に口出しをしたわけではないので、
わざわざ野ばら姫を巻き込んだことになるのだが王子は気づいていなかった。
「いいこと?アプリコーゼさんにはね、年齢なんてちっぽけな枠組み必要ないのよ。
私もアルテローゼも永遠の乙女。百年経とうが千年経とうが永 遠 の 乙 女。い・い・わ・ね?」
「ハイ、ワカリマシタ」
ご婦人方の矜持を傷つけると恐ろしいことになるのは自明の理なので、素直に従うのは正しい対処法である。

165 :
「で、隣の新興国が何だっていうんだい」
アルテローゼが苛立ちを隠さずに脱線した話題を修正した。
しかし王子はアルテローゼよりもさらに強引に話の流れを変える。
「僕にはわかります。数百年も脈々と続くこの国の姫君をモノにすれば、
ぽっと出の新興国でも歴史に名を連ねる名家の仲間入りですからね。
誰がそのような馬の骨に姫を渡すものか!僕は決して許しはしないぞーッ!」
キシャーッと両腕を振り上げて見えざる敵を威嚇する。
そんなどうしようもない王子をアルテローゼは冷めた目で見ていた。
「なんであの子は一人で勝手にヒートアップしてるんだ?」
「さぁ。王子は少々思い込みが激しくていらっしゃるから……」
「少々でなくとっても、な」
「でもその思い込みの激しさで運命を感じて来てくれたのだから感謝しないと」
「そうですね。私に運命を感じてくださったのですもの……あぁん嬉しいですわ」
花のような笑顔を綻ばせる野ばら姫。アルテローゼは額を押さえる。
「思い込みで嫉妬されちゃかなわないね。第一どこの馬の骨ってそのままそっくりお返しするよ!」
「いやだなアルテローゼさん。僕の出身国はこの国ほどではありませんが歴史があるのですよ」
王子が自慢げに胸を張る。しかし彼女自身は何もしていないので誇られるべきは彼女の先祖である。
「あっそ。で、話を戻すけど隣国の王子がなんだっていうんだい」
そういえばそんな話だったわねとアプリコーゼがのんびりと話を再開する。
「だから隣国には王子様はいなかったと思うのだけど……。
でも私もここ云十年かは百年の節目が近いということで、ばたばたしちゃってたから自信がないわ」
ふーん。と野ばら姫とアルテローゼは当然の如く聞き流した。
しかし王子はアプリコーゼが百年間眠らずにいた件を初めて聞いたので興味深く訊ねる。
「まさか百年も一人でこの城にいらしたのですか?」
「ええ、そうよ」
あまりにあっけらかんとした答え。王子は胸が押し潰されるようだった。
もしも自分がたった一人で、全員が眠ってしまった城に取り残されたとしたら……。
きっと寂しくてんでしまうだろう。孤独とは耐えがたい恐怖。徐々に精神を蝕むの病。
「でもやることは沢山あったから寂しくはなかったわ。一人でお城を守るのも楽ではないのよ」
アプリコーゼは王子の考えを見透かしたかのように先回りで答えた。長い孤独の日々に思いを馳せる。
野ばら姫が定められた運命通りに眠りに落ちた日。
アプリコーゼは彼女の両親に呼ばれて白亜の城に魔法をかけた。
百年後、野ばら姫がたった一人で目覚めて寂しがることのないようにと城中に眠りの魔法をかけたのだ。
アプリコーゼが呪文を唱えると、城の人々は瞬く間に床に崩れ落ち、深い眠りについた。
そしてその中には野ばら姫を罠に捕えたアルテローゼもいた。
その事実にアプリコーゼの心は揺らいだが、彼女は弱い女ではなかった。
どの道百年もの間、城を放置しておくわけにはいかないのだから、私が守らなくてはならない。
百年経ったらまた会える。アプリコーゼは思うことで日々の孤独を乗り越えた。
流れゆく時の中で変わってゆく世界。数多の人々がんでは生まれ、近隣諸国は栄枯盛衰を繰り返す。
そんな中でこの城だけはずっと変わらずにいた。
アプリコーゼがかけた眠りの魔法は城の人々の時を凍りつかせ、
アルテローゼがかけた棘の生垣の魔法は外部の人間を完全に拒絶した。
永遠を思わせる停滞した時の中。百年目のある日、眠る姫君の元に王子様が現れた。
しかし眠る姫君も、呪われた棘の生垣も、白亜の城の守り人でさえ、
彼――彼女が本当は女の子である事実を見抜けなかった。
何はともあれそうしてアプリコーゼは守り人の役目を終えた。
と思ってた矢先に続けざまに野ばら姫の世話係に任命されるのだが。
「ご苦労なさったのですね」
「あら苦労だなんて……うふふ。お気遣いありがとう」
「いえ年長の方を労わるのは当然です。……あ、やば」
「さてと。口の悪い王子が抱く運命、余命七分!斧で腹を裂かれ――中に誰もいませんよ。をされたのち
ナイフで内臓抉られて、林檎を喉に詰まらせ、井戸に落ち、鞭に打たれて、磔になり後悔するがいい!」
「勘弁してくださーい!」
「王子、私と逃げましょう。途中で振り返ってはなりません!いざ、隣国の王子様の元へ!」
野ばら姫と王子は手に手を取って謁見の間に走っていく。
彼女達の背中を見送り、アルテローゼは肩を竦めた。
「やっと行ったよ。相手が怒ってないといいけど」
お客様がこの城についてから、彼此三時間経過していた……。

166 :
つづく。
初回の名前欄ミスってすみませんでした。
ミラのお告げをもらったのであたためていた妄想をアウトプット。
とんでもなく長くなりそうな予感。
今まで書いてきたものがだいぶ溜まってきたのでどこかにまとめようかと悩み中。
閲覧用に登録したピクシブの小説投稿機能を利用しようかしらん。
サイトもブログもやったことのない人間には色々とハードルが高すぎる。
そもそも男装娘王子ちゃんは需要があるのか云々。

>>159
本当だ可愛い
「みく」「ゆめさん」と呼び合ってるのが新発見だった
キャラと中の人は関係ないのについニヨニヨ

167 :
GJ!!
>>160
>「お母様……」
>「なっ!?」
にクスっときてしまったwww

168 :
GJです
いつもたのしませてもらってます
いつも原作の言い回しににやにやしてるので
今回のポカフェリネタよかったです
そしてゆめみくさんな2人がかわいい

169 :
GJ
ブーツ履き直す辺りにときめきを覚えた
自サイトなかったのか
いくら探しても見つからないわけだorz

170 :
写真集とインタビュー本でのみんなが可愛すぎてつらい。ニヤニヤのしすぎで頬が痛い。
雪白姫と野ばら姫のお話の途中ですが雪白姫と青王子のお話。4レス分。
もやもやしてた「お母さん」ネタの形がやっと掴めたので忘れないうちにちゃっちゃと書いて投下します。
時系列は二人が恋人同士になって青王子の特殊な性癖が完全に露見する前辺り。>>120の直後かどっかその辺。

「あーもぅうるさいわね。王子はいつ私のお母さんになったの!?」
「雪白姫。君は僕のことをお母さんお母さんと言うが僕は君のお母さんじゃない!」
「だっていっつも口うるさく言うんだもの。お母さんみたい!」
いつも仲の良い二人にも、お互いに譲れないこともある。
今回の喧嘩の原因は雪白姫の「お母さん」発言だった。
王子は雪白姫に「お母さんみたい」と言われるのをとても嫌っていた。
それもそのはず。雪白姫が王子に「子供」として見てもらいたくないように、
王子も雪白姫に「お母さん」とは見てほしくないのだ。
色々あったけど、二人はこうして対等な「恋人同士」になったのだから、
「お母さん」だとか「子供」だとかいう余計なノイズは不要なのだ。
「君がしっかりしないからいけないんだ。この際はっきりしとくけど、君はだらしなさすぎる。
脱いだ服はちゃんとたたむか、洗濯籠に入れなさい。遊び終わったらおもちゃは片付けなさい」
「何よ、王子だって脱いだ服は三人に拾ってもらって、仕事が終わったら仕事道具も
三人に片づけてもらってるじゃない!どうせなら下着も替えてもらったら?もはや介護ね」
雪白姫は口を尖らせた。
――私にだってそういう人達がいれば、王子並みにはしっかりして「見える」でしょうよ。
所詮見かけ倒しで終わるでしょうけどね!
「ぐぬぬ……。わ、悪かったよ。では今度から僕も一人で出来るようにしよう。ならいいだろう?」
「ふんっ。そんなの知らないわ」
「雪白姫」
王子が咎めるような声色で名前を呼んだ。雪白姫は無視をしてソファーに身を投げる。
「はぁ」
なんで王子がため息つくのよ。ため息つきたいのはこっちの方だわ!
雪白姫はぷりぷりと怒りだし、苛立ちを紛らわすため足をバタバタさせた。
「こら暴れないの」
やっぱりお母さんみたいなことを言って王子が隣に座ってくる。
ムッとして睨みつけると、王子はこんなことを言い出した。
「雪白姫のお母さんはどんな人だった?」
どうしてそういうこと言うかなぁ……。
王子ってデリカシーない。そんなだから女の子に逃げられるのよ。
きっと今までの女の子達は王子が「女の子だから」逃げたんじゃなくて、
王子のデリカシーのなさに嫌気が差して逃げていったに違いないわ。
……ううん。本当は気配り上手で、繊細な人なんだって知ってる。
相手が望む王子様像を一生懸命作り上げて、理想にかなうよう合わせてくれる。
でもちょっとうっかりさんなのよね。時々頑張りすぎて空回りしちゃう。そこが放っておけないんだけど。
「僕達の結婚式で踊っていた人?」
前言撤回。やっぱり「ちょっと」でなくて「すっごく」うっかりさん。全然デリカシーない!
「あれは継母よ。私を妬いたのだから当然だわ」
「そっか。じゃ僕は彼女に似てるということ?」
「違うわ。あの女は私に母親らしいことなんて一つもしなかったもの」
妻を亡くした雪白姫の実父は自分はともかく、幼い雪白姫には母親が必要だと考えた。
そこにやってきたのが継母で、彼女はとても若く美しかった。
実父はすぐに彼女を気に入り妃にしたが、彼女は幼い雪白姫の母親になるどころか、
一人娘として夫の寵愛を受ける小さな雪白姫にあろうことか嫉妬した。
彼女は謀略を巡らし、夫から、そして彼女自身から雪白姫を遠ざけたのだった。
だから雪白姫は母の愛というものをあまりよく知らない。
亡母との思い出を求めてぼんやりとした幼い記憶を辿ってみる。
けれど遠い昔の話過ぎて覚えているのは断片的なものばかりだった。
でもお母様が優しかったのはなんとなく覚えている。
優しい腕に抱かれて眠っていた頃を今でもよく夢に見る。
俯いて亡母について考えていると、王子の手が伸びてきて、雪白姫の手をギュッと握り締めた。
雪白姫は急に現実に引き戻されてわけがわからないながらも王子の手を握り返す。

171 :
お互いにお互いの手を握り締めたまま、二人は無言で見つめあった。
どうしたのかな?そんなに熱く見つめられたらドキドキしちゃうわ。
雪白姫がトキメキと期待に胸を膨らませていると王子は言った。
「ずっと寂しかったんだね」
雪白姫が俯いているのを悲しがっているのだと考えたらしい。
血管に冷水でも注ぎ込まれたかのように体温がザッと下がり、血の気が失せていくのがわかった。
雪白姫は必になって自分に言い聞かせる。
特に悲しいわけでも落ち込んでいるわけでもない。私はだいじょうぶ……。
私は同情されたのだ。一番そう思われたくない人に、同情された。
私は王子と対等でありたいのに、王子は私を自分より下等であると同情したのだ。雪白姫は恥辱に震えた。
「別に寂しくない。勝手に私を憐れまないで!ちょっと知ったくらいでいい気にならないでよ!」
冷たくなった体温が今度は見る見るうちに上昇していく。
カッと頭に血が上り、怒鳴りつけようと思考を巡らせる。でも舌が縺れてうまく言葉にならない。
「ど、同情して優しくなったつもり?私を不幸せだと思うことで優位に立ったつもり?」
「そうやってずっと気を張り詰めてきたんだね。可哀想に」
「……憐れんでくださってありがとう。でもね、幸せそうな王子様。私が不幸かどうかは私が決めるの!」
他人の物差しで人の幸福は測れない。人それぞれ幸福の度合いは違うのだから。
例えば優しい母親と一緒にいられるだけで幸せだという人もいれば、
おなかいっぱいご飯が食べられないなら幸せでない人もいる。
雨風凌げて働ける場所があれば幸せだという人もいれば、強欲に稼がねば幸せでない人もいる。
誰かを想っているだけで幸せだという人もいれば、誰かから想われていなければ幸せでない人もいる。
だからそんな目で私を見ないで!
私は不幸せなお姫様じゃない。私は世界で一番幸せなお姫様なんだから!
「もういいんだよ。雪白姫。そんなに頑張りすぎなくても」
「意味がわかんない。私は別に無理なんかしてないもん。勘違いしないでっ!」
手を振り払おうとするも逆にふわりと抱き寄せられる。
逃れようと身を捩っても逃がしてはくれない。
「どうして私を憐れむの?なら貴女は私を幸せにしてくれるの?」
「憐れんでないよ。でも、そうだね。君を幸せにしたいよ。だからもう無理しなくてもいいんだよ。
泣きたいときは泣けばいいし、甘えたいときは甘えればいい。僕が傍にいるから」
「わけわかんないよぉ……。離して、離してよ」
伝わる柔らかな温もりが雪白姫の頑なな心を解してゆく。
涙が溢れそうになって赤い唇をきゅっと噛んだ。
「お願い、離して。このままじゃ私泣いてしまうわ……」
「泣いてもいいんだよ」
「泣かないもん。私は弱くないんだもん。弱い私なんていない」
人はそれを強がりというけれど、雪白姫はいつもそうして生きてきた。
弱みを見せたら継母に付け入られるから気を張り詰めて、強がって、背伸びして。
だから今さらそれを変えろだなんて言われてもよくわからない。よくわからなくて怖い……。
「わかるよ。ほんとうの自分を曝け出すのは怖いよね」
思いが通じたのか、王子はそう言って雪白姫の頭を撫でた。もしかすると何度も経験があるのかもしれない。
きっと……いいや絶対にそうだ。王子は理想の花嫁捜しの日々で、
出会った女の子達に何度もほんとうの自分を曝け出し、そしてその都度拒絶されてきたのだろう。
だからそれを曝け出す怖さも知っているし、拒絶される恐ろしさも知っている。
でもそんな王子が雪白姫にこう切望する。
「僕はほんとうの君が知りたい」
「ほんとうの、わたし?」
「弱い君も、甘えん坊な君も、我儘な君も、どんな雪白姫も僕がしっかり受け止めるから」
雪白姫はハッと我に返り、王子を見上げた。優しく微笑んでいる。
何故だか懐かしい気がした。幽かな記憶の糸を手繰り寄せる。
うっすらとした記憶の中でいつも微笑みを絶やさないお母様。
私が知ってる肖像画のお母様と王子は全然違うのに、どうしてだか似てるような気がした。
「――その言葉を信じてもいいの?」
喉が震えて掠れ声しか出てこない。
こんなはずじゃないのに。私は弱くなかったのに。と雪白姫は必に涙を堪えていた。
「ほんとうの私を見せてもいいの?」
……答えはなかった。王子はただただ優しく微笑んでいた。
それがとても嬉しくて、どこか救われたような気がした。
だから雪白姫も何も言わずに王子の胸に身を預けた。堪えていた涙が溢れだし、青い服を濡らした。

172 :
柔らかな温もりに硝子の心が溶かされてゆく。強く硬いつもりでいてとても脆く繊細な硝子の心。
ああそうか。私ほんとうは寂しかったんだわ。
でも私は孤独ではない。私はずっと一人ぼっちなんかじゃなかった。いつも誰かが一緒にいてくれた。
継母には疎まれていたけれど、実父は優しかった――だからこそ疎まれてたんだけど。
そしていつしか実父とは疎遠になった。継母がそう仕向けたから。
けどまだ私は一人ではなかった。私には爺やもいたし、森のお友達もいた。
城を追い出されてからは小人さん達が一緒にいてくれた。
ある日、林檎を食べてんでしまった私の元に王子がやってきた。
それからの二人は何をするにもいつも一緒だった。
私の世界はぐーっと広がって、見知らぬ国の見知らぬお城での生活が始まった。
様々な人と出会い、仲良くなって、嫉妬もしたりしたけど今はとても幸せ。
私はきっと世界で一番幸せなお姫様。貴女がいて、みんながいてくれる。
――それでもまだ寂しかったんだわ。私は未だに母親の温もりを欲している。
いくら強がっても、子供ではないと背伸びしても、コドモはコドモなのだ。
幾つになっても母親の温もりが恋しいコドモ。
……何度も何度も繰り返し見る夢がある。
春のあたたかな日射しの中で眠っている私とそんな私を優しく見つめるお母様の夢。
本当はお母様とお話したいのに、私はいつも眠っているの。
これは夢だからもしも夢の中の私が目を覚ましたとしても、お母様とお話なんて出来ないでしょうけど。
でもね、私はいつか夢の中でお母様とお話出来るんじゃないかって思ってる。
優しい春の匂いがするお母様。貴女の温もりに抱かれて私は眠っている。
お母様は私の黒髪を撫でて、子守唄をうたうの。……甘く切ない懐かしいメロディ。
「うぅん……おかあ、さま……」
ここはどこ?まだ夢の続き?
優しい歌声が聞こえる。あの懐かしい子守唄が聞こえる。細くしなやかな指が長い黒髪を撫でる。
「おかあさま、わたし……」
ぴたりと歌声が止まった。
――だめ、まだ行かないで。私の話を聞いて。お母様、私は今日も幸せよ!……ってあれぇ?
重たい瞼をあけるとそこは王子の膝の上だった。
「起きた?泣き疲れて寝ちゃったから心配したよ」
「あっ」
雪白姫は慌てて自分の頬に触れた。乾いた涙がカピカピしてる。
恥ずかしさがこみ上げてきて手の甲で頬を擦っていると王子が濡れたハンカチで頬を拭ってくれた。
「今日の王子優しい」
「失敬だな。僕はいつも優しいよ」
そんな当たり前のこと言われなくても知ってるわ。
雪白姫はまだ起き上がるのが勿体無い気がして、王子の膝の上でごろりと寝返りを打った。
仰向けに転がり、柔らかな笑みを浮かべた王子を見上げる。
「泣いたらね、スッキリした」
「それは良かった。またいつでも胸を貸すよ」
「うん」
泣いたり、甘えたり、弱くて情けないほんとうの自分を見せることは格好悪いことだと思っていたけれど、
たまにはこういうのもいいのかもしれない。でもほんとうの私を見せるのは、貴女にだけよ。
「ねえさっきの子守唄」
「ん、これのこと?〜〜♪」
王子が軽くハミングする。夢の中でお母様が歌っていた子守唄と同じメロディ。
「どうして知ってるの?あまり有名な子守唄じゃないよね」
雪白姫は亡母との唯一ともいえる繋がりの子守唄を最後まで聴きたくて、
色々な人に訊いて回ったことがある。それこそかつてのお城でも森の奥でもこのお城でも訊ねて回った。
けれど続きどころか、誰一人としてこの子守唄自体を知らなくて、雪白姫の願いは叶わず終い。
子守唄を最後まで聴けたらきっと何かお母様のことがわかるような気がしてたのに。
だからもしかしたらこの子守唄を知ってる王子は私のお母様なのかもなんて、有り得ないことを考えてしまう。
「そうだね。この国ではあまり聞かないな。僕はきっと遠い国の子守唄なのだと思ってる。
もしかして雪白姫の国の子守唄だったのかな?もしそうなら嬉しいな」
「ううん。私の国でもみんな知らないの。王子はどうして知ってるの?誰に教えてもらったの?」
雪白姫があまりに必に食いつくものだから、王子は困惑気に答える。
「僕の母だけど」

173 :
王子のお母様?
……そういえば王子のお父さんには会ったことがあるけど、お母さんには会ったことない。
雪白姫の頭を不安がよぎる。もしかしてこんな女に娘は渡せないわよーって出てきてくれないのかな?
「ああまだ話してなかったね。僕の母もだいぶ前に亡くなってて」
「あっごめんなさい」
「いいや。だからと言ってもう泣いたりはしないよ」
口ではそういうけど王子の姿は少し沈んで見えた。
雪白姫は配慮が足りなかったと反省しながら、言葉を選び話を再開させる。
「あの子守唄ね、私のお母様も歌ってたの。こんなところで繋がるなんて不思議だね」
「故郷が同じだったのかな……うーむ」
「細かいことはどうでもいいわ。私達の運命を証明するものがひとつ増えたってことよ!」
出会いは偶然でたまたま森に迷い込んだだけだったとしても、
目覚めが突然でどっかーんって棺を落とされただけだったとしても、
雪白姫は二人はきっと運命なのだと信じている。祈っている。
「ねぇやっぱり王子ってお母さんみたい」
「どっ、どうして?」
「だって優しくてあたたかくてふわふわなんだもん」
「えー」
やはり当然不満なようで王子はぐったりとうなだれた。
雪白姫は待ってましたとばかりにぴょこんと飛び起きて、細い腕で王子の頭を抱き寄せた。
「よしよし。もういいんだよ、王子。そんなに頑張りすぎなくても」
「雪白姫?」
「泣きたいときは泣けばいいし、甘えたいときは甘えればいい。僕が傍にいるから」
王子の頬が林檎色に染まる。自分の台詞を真似されたのがよほど恥ずかしいようだ。
「や、やめてよ。僕そんな顔して言ってないだろ」
「言ってたよぉ?もうすっごく優しくにっこりしててね、なんかお母様みたいだった」
「〜〜ッ!」
王子は耳まで真っ赤にして身悶えている。
その姿が可愛いのなんのって……私だけの特権ねと雪白姫はひそかに笑った。
「あのね、私にもほんとうの貴女を見せてほしいな」
「……」
「弱い貴女も、女の子な貴女も、特殊な性癖のマゾな貴女も、どんな王子も私がしっかり受け止めるから」
「ほんと、僕の真似して喋るの勘弁してくれない?」
「やーだー。真似っこするー。泣いてもいいんだよ(キリッ」
「勘弁してよぉ〜!」
嘆く王子の頭を撫でて、雪白姫は小さな小さな声で囁く。
「ほんとうの私を受け入れてくれてありがと」
あまりに小声だったので聞こえたかが心配になったが、王子は微笑みを返してくれた。
きっと声が届いたのだと思う。声が届かなくとも気持ちが通じたのだと、そう思いたかった。
「今度は私がほんとうの貴女を受け止めるね。それと、もっとほんとうの私を見せてあげる」
まだ誰も知らない貴女を知りたい。まだ誰も知らない私を知ってほしい。
ねぇきっと私達今よりもっと仲良くなれるわ。うふふっ!
おしまい。


こうして王子ちゃんは「ほんとうの自分」を曝け出した結果、
坂を転がり落ちるように爽やか王子様からただの変態にまで落ちぶれるのでした。
でもって雪白ちゃんは「ほんとうの自分」をさらに曝け出した結果、
朝っぱらから王子を罵るような軽いサディスティックな女の子になったのでした。めでたしめでたし。
元々雪白姫と青王子でやろうと思っていた「お母さん」ネタを
雪白姫と野ばら姫にスライドしてみたら、さすがに野ばら姫を「お母さん」ってのも悪いし、
やはり雪白姫と青王子でやりたくなって一気に書き上げ、このタイミングに。
今度は寄り道せずに雪白姫と野ばら姫の話を書いてくる。
編集後記。Pixiv難しそうで早速挫折した。

174 :
GJ!!
王子の真似する雪白姫と恥ずかしがる王子が可愛すぎた
なんかイシューの発送とか不備が多いみたいで心配だが、ここの皆さんは大丈夫だろうか
とりあえずオルドローズ抱いてるゆめ王子が色っぽくてヤ・バ・イ!

175 :
ムッティが恋しいお年頃な雪白たん可愛い
王子ちゃんも変態全面に押し出さなければ普通の優しいお母s王子様なのに
いや変態でなければ青王子じゃないかw
って挫折はやいよw
イシューのインタ
れみこのぶらんこ解説泣けた
ぶらんこ×女将さんの時代がキター!と思ったらじまさん他(偉い人も?)女将をカマ認定してるっぽくてヘコんだ

176 :
>160の続き。8レス分お借りします。
赤王子の思い込みの激しい勘違いっぷりと青王子の変態能力っぷりが炸裂するお話。
今回の王子は別人設定です。同一人物説を推してる方、申し訳ありません。
そもそも男装娘設定がお嫌いな方はすみません。なお、爽やかで格好いい王子はどこにもいません。
途中から地の文では「赤い王子」と「青い王子」で両者を区別しています。

時計の針が行ったり来たり。忙しそうに動き回る長い針とそれを追いかける短い針。
けれどどんなに頑張っても短い針は長い針には追いつけない。
まるで私と王子のようだと雪白姫は思った。
どんなに頑張っても背伸びしても王子の背中には追いつけないの。
「それにしても。いつまで待たせるつもりなのよぉ。もう三時間くらい経ったよね?」
「……」
「ちょっと無視するつもり!?せっかく可愛い雪白姫が話しかけてあげてるのよォ?」
何としても返事をしないつもりらしい。もしかすると声が届いていないのかもしれない。
王子の額には脂汗がびっしょりで、何度も何度も生唾を呑み込んでいる。
握りしめた紙はくしゃくしゃ。さらにはその手も震えていた。
緊張してるのね。こんな状態の人間に追い打ちをかけるほど雪白姫も終わっていない。
雪白姫は猫なで声で王子の腕に縋った。
「ねーえ、おうじー。少しは構ってよぉー。雪白たいくつぅ〜。……もう王子ってば!」
「……あ、うん。どうしたの?」
「どうしたのはこっちの台詞。一体どうしちゃったのよ」
答えは聞くまでもないが。
「失敗したらどうしようって思ったら、怖くて。今度こそ僕は父に怒られて勘当されてしまうかもしれない」
まさか。そんなことあるわけない。私が付いていながらみすみす失敗などさせないし、
仮に失敗したとしても勘当されるわけもない。だってもしも彼女の父が彼女を勘当する勇気があるのならば、
彼女が好き勝手に男装して女漁り(もとい体漁り)を始めた段階で勘当しているはずだ。
雪白姫はそっと王子の手を取って、ゆっくりと指を広げると紙を抜き取った。
しわくちゃな挨拶文のカンペを綺麗に伸ばして折りたたむ。
「だいじょうぶよ。自信を持って」
「うん……」
「もーしょうがないわね。よしよし、王子なら出来る!」
頭をぽんぽんしてあげると王子は心地よさそうに目を細めて、雪白姫にしな垂れかかった。
重たいから払いのけたいけど、今日だけは許してあげる。
本当は私も王子にイイコイイコしてほしいけど、今日だけはガマンする。
「元気でた?」
うん。とまだ少し不安そうに頷く。そんな風にされたら放っておけなくなるじゃない。
「じゃあ私がおまじないしてあげるね」
「おまじない?」と、俯いていた王子が一抹の希望を瞳に宿して顔を上げた。
雪白姫は王子の膝に跨って、首筋に腕を回した。なるたけ優しく微笑む。
「元気がでるおまじない、してあげる。目を瞑って」
澄んだ瞳が金の睫毛に縁取られた瞼に覆われる。
高まる期待と高鳴る鼓動に王子の胸が張り裂けそうなのがわかる。
なんでわかるのか、ですって?だって私の小さなこの胸も張り裂けそうなんだもの。
食べちゃいたい唇に吸い寄せられるけど、今日はこれから大事なお仕事があるからガマン。
なのでふわふわぷにぷにのマシュマロほっぺをいただきまーすっ☆
「ちゅっ」
「!?」
「まだ目あけちゃだめ!」
反対側のほっぺにもチューして、仕上げにおでことおでこをコツンとさせて念を込める。
「だい・じょう・ぶ。きっと王子なら出来る!はい、おしまい」
「……ありがとう雪白姫。元気になった。元気すぎて雪白姫ぎゅーってしちゃう!」
「キャッ!あははっ、苦しい〜。もうそういう元気がでるおまじないじゃないのにぃ。ウフフッ」
時計の針が行ったり来たり。やがて忙しそうな長い針に短い針が追いついた。ほんのひとときの邂逅。
私達も同じ。毎日くっついたり離れたり。それは実体の距離感であり、心の距離感。
そうして何度も繰り返して、私達も時計のように日々を刻んでゆくのかな。
けれど時計の針は止まれないからまたすぐに離れ離れ。
――でもそれでいいの。離れ離れになっても時を刻み続ける限り、二本の針は何度でも巡り合えるから。

177 :
時計の針がくっついたり離れたり。チクタクチクタク。仲良く時を刻む。
「でも私はいつも一緒にいられなかったら寂しくてんじゃうけどね」
「何の話?」
「なーんでもない。あ、誰か来た」
初夏を思わせる若草色のフレアスカートに清楚な純白のエプロンをつけたメイドさん。
メイドさんはぺこりと一礼すると、にっこりと接待用スマイルを浮かべた。
「姫様のご用意が済んだようです。ご案内致します」
「やぁっとだよー。待ちくたびれたー」
「こらそういうこと言わない」
「はいはい。あーあ。王子の調子が戻ったらまたお母さんモードになっちゃったあ」
「お母さん言うな」
通された場所は所謂玉座の間だった。赤い絨毯が敷き詰められた大階段の上に立派な椅子が置かれている。
「やだ。まさか眠ってばかりの世間知らずな姫君はこの雪白姫様を見下ろす位置に出てくるつもりなの?」
「国同士のやり取りは年功序列が世の常だから」
「年功序列なら王子が一番年上よね!」
「どさくさ紛れに失礼なこと言わないように。もしかすると薹が立って久しい姫君かもしれないだろ」
「そっちの方がよっぽど失礼よ」
仰る通りで。王子は考えた。過去のことだとしてもほんの一瞬でも憧れたことがあるのだから、
世界で一番美少女とまではいかなくてもいいが、そこそこ可愛い子でないと困る。クソババアでは大変困る。
「僕らの年齢でなくて、国の歴史の長さという意味ね」
眠っていたのに百年間も国が保てたというのも不思議な話だが、
まあそこはファンタジーなメルヒェンということでどうか理解していただきたい。
「っておっそーい!またここで待たすつもりなの?何様のつもりかしら!ぷんすかだわ!」
雪白姫は仁王立ちで主が不在の玉座を睨んだ。
例のカンペで最終確認をしながら王子が言う。
「お姫様が出てきたらそういう態度しないでね」
「うふふ。どうかしら?」
「薔薇の姫君を怒らせて国交断絶になったら本気で洒落にならない」
国交断絶ならまだいい方で戦争になっちゃうかもしれない。
胸に気高き王女の薔薇を抱いた《薔薇の騎士団》なんかが攻め込んできたら我が国などひとたまりもない。
最悪の未来を想像しながら身震いしているとバタバタと慌ただしい足音が聞こえだした。
王子ははっとして平身低頭に努める。
そこまで謙る必要はないのだが相手がどんな女性なのかわからないのだから念には念を。
もしかすると絶対的な権力を持つ稀代の暴君かもしれない。がくがくぶるぶる。
――ばたんっと重厚な扉が勢いよく開いて、少女が駆け込んできた。
遅れて少女の手をしっかりと握った青年が現れる。彼は背後が気になるのか、しきりに振り返っていた。
「はぁはぁ。私……今とてもドキドキしているわ。こんなに、いっぱい、走ったの……初めてなんですもの。
はぁ、ふぅ……うふふっ。疲れましたけど、思い切り走るのは、うぅん……気持ちがいいですね」
「大丈夫かい」
呼吸が上がりきり肩で必に息をする少女を、青年は労わるように抱き寄せた。
少女は呼吸を乱さぬ青年の胸に身を預けてコクリと頷く。
「どうやら逃げ切れたようだね」
「うふふ。アプリコーゼさんは最初から王子を呪う気なんてありませんわ」
「かなり本気に見えたが」
「あ、そうだわ。お客様がこちらにいらしてるのでしたね」
少女が長い金髪を揺らして自らを抱く青年ごとこちらを振り返った。
うるんだ瞳のおっとりとした穏やかなお姫様。雪白姫は視線を横にスライドさせて今度は青年を見る。
「ひゃあっ!」
雪白姫は息をのんだ。しかし頭を下げたままの王子は気づかない。
「本日はお招きいただき光栄に存じます……って雪白姫も頭下げて!」
「やだあ!どうして私が頭を下げなきゃならないのよ。私は世界で一番可愛い雪白姫様なのよぉ!」
「いいから頭下げてよ、お願いだから!」
「それよりあれ見てよ。ねーねー」
「こら、指差さないの。すみません。えっと、なんだっけな……この度は」
「ドッペルゲンガーだわ!」
「!?」
ドイツに限らず、世界中に同じような怖い話がある。例えばこんな具合だ。
この世には同じ顔の人間が三人はいるらしい。そして同じ顔の人間に出くわすと――ぬらしい。

178 :
雪白姫の発言に王子がはたと顔を上げると、
玉座の前に見るからにお姫様なふわふわピンクのドレスの女の子と
彼女の腰をがっちりと抱き寄せた赤い青年が見えた。
薔薇の姫君はこちらを見て零れ落ちそうな大きな目をぱちくりさせている。
しかし青年はこちらを見ておらず薔薇の姫君をじっと見つめていた。
なんと言ったらいいかわからないが、僕×雪白姫はあんなにべたべたしない。
少なくとも人前ではいちゃいちゃしない……と王子は思う。
もしここに常に彼女達の傍に付き従っている従者達がいたら
「んなこたぁない。いつもアツアツじゃないですか」と訂正してくれただろうが、生憎不在だった。
「ごきげんよう。あなたが隣の王子様ですか?」
「えっあ、はい!」
鈴を転がしたような軽やかな姫君の声色に王子の心臓は瞬く間に鷲掴みにされた。
雪白姫が背後にどす黒い何かを揺らしながら睨んでくる。
いや、雪白姫の声もとても可愛らしい音色だよ。そんな可愛い声が罵ってくれるなんて……しあわせ。
ゴゴゴゴ……。考えが顔に出ていたらしく雪白姫の背後の何かがさらに大きくなった。
何かを飛ばしまくる雪白姫など露知らず、薔薇の姫君はゆったりと雪白姫を示した。
「まあ。そちらのお嬢さんが仰ったとおり、そっくりさんだわ!王子のお知り合いですか?」
薔薇の姫君が自らを抱く青年を見上げる。王子――この場合は彼女の王子様に対しての発言だろう。
彼女の王子様は自分の姫君以外は瞳に入れたくないといった様子だったが、渋々顔をあげた。
まず雪白姫をその瞳に捉え、次に王子を捉えた。彼は無表情のままだった。
「知り合いなの?」
雪白姫も嫉妬というより純粋な疑問として訊ねてくる。王子はぶんぶんと首を横に振った。
「知らない」
「だよねー。他人の空似よね」
これで一件落着……と思ってた矢先に、赤い王子がよく響く嫌味なほどいい声で歌いだした。
「あぁ〜あ♪唯《青い王子》の姿を見ただけで、運命感じた〜♪
あなたこそがきっと僕の《生き別れの兄》なのだろう(キリッ
ならばどんな困難も乗り越えてみせよぉ〜う♪」
ズサァッと階段を凄まじい勢いで飛び降りてこちらに駆けてくる。
青い王子は避ける間もなくタックルを食らわされて、力強く抱きつかれた。
「ずっとお会いしたかった……お兄様!」
「!?」
「ハァ?困難って階段下りただけじゃない大げさすぎ!というかこの人誰?知り合い?」
雪白姫の「可愛い」金切り声がただっぴろい玉座の間にきゃんきゃん響き渡る。
ボルテージが上がっていくのが手に取るようにわかる。いつ爆発してもおかしくないレベル。
自分が悪いのであれば謝れば済むことだが、こればかりは自分のせいではないので如何ともしがたい。
青い王子は慎重に言葉を選んで答えた。
「知らない。このような電波ゆんゆんな知り合いはいない」
「お兄様、私が誰だかわからないのですか!?」
「何を訳のわからぬことを……私に触れるな無礼者!」
「そうよ!私の王子から今すぐ離れなさーいっ!!」
やんややんやと騒いでいるところにのんびりと薔薇の姫君がやってくる。
気立っているのがわかっていないのか、天然なのか柔らかに微笑みながら彼女は彼女の王子様に話しかける。
「まあ王子に兄君がいらしたなんて初耳ですわ」
「はい僕も初耳です。でもこれは運命に違いない(キリッ」
「残念ながら僕は君のお兄様ではない」
「いいから私の王子から離れてよ!はーなーれーてーよー!」
薔薇のお姫様と王子様はちらりと雪白姫を一瞥し、この子は関係ないと解釈したのか話を再開させた。
「はじめまして、王子のお兄様。私は野ばら姫と申します。以後お見知りおきを」
「はじめまして、僕のお兄様。僕はあなたの可愛い――」
「ちょっと無視しないでよッ!私を誰だと思っているの?」
二人は顔を見合わせて苦笑し合ったあと、野ばら姫は身を屈めて雪白姫に視線を合わせた。
これはただちにヤ・バ・イ!雪白姫は子供扱いされるのを一番嫌うのだ。
青い王子はぎゅっと抱きつかれて逃げも隠れも出来ないまま天を仰いだ。
「はじめまして。私は野ばら姫と申します。あなたのお名前は?」
「はじめまして、可愛いお嬢さん。君はお兄様の妹?ならば僕の妹だね!」
「あら妹さんでしたのね。なんてちっちゃくて可愛らしいのでしょう。お人形さんのようだわ」
「僕の妹なら野ばら姫、貴女の妹でもあるんだよ」
「まあ!こんな愛らしいお嬢さんが私の妹になってくださるなんて嬉しいです!」

179 :
薔薇の姫君――野ばら姫とその王子は雪白姫を「妹」認定して勝手に盛り上がっている。
特に野ばら姫は一人っ子だったので妹が出来たのが嬉しいらしい。
というかこの場にいる全員が「今まで」一人っ子であった。
雪白姫や野ばら姫は当然のこと、雪白姫の王子も野ばら姫の王子も一人っ子。
兄弟がいるなんて見たことも聞いたこともない。
「だ、誰が妹ですって?!ちっちゃいですって?!私は王子の理想の花嫁なのよっ!!」
「あらあらそういうおままごとですか?可愛いですね」
「なぁんですってー!!」
「お兄様、超→ロリ↓コン↑」
「ロリコンでは……や、ロリコンでいいです」
青い王子は訂正しかけて、やめた。美しい体を探していたら雪白姫と出会って、
とても不思議な出来事によって生き返って、あんなことやこんなことがあって
今では雪白姫に罵られるのが快感です。なんて説明するのも面倒だし、確実に引かれるのでロリコンでいい。
「王子がロリコン?そんな当然の罵り文句じゃ王子はビクンともしないわ!」
「うんうん。言われ慣れてるからね」
青い王子はしたり顔で頷いた。ロリコン如きのちゃちな野次でいちいちへこむようでは、
ワガママお姫様(これでもかなり控えめな表現である)な雪白姫や口の悪い三人の従者と暮らしていけない。
「それに愛に年齢差などないのよ!」
「雪白姫……僕は感動した!君の言う通りだ!好きになったら生も年齢も性別も厭わない!」
「さすがに生は厭う。……だって王子がんじゃったら嫌だもん」
雪白姫の胸キュンな言葉に青い王子だけでなく、野ばら姫もきゅっと胸を押さえた。
まあ可愛らしいですわと微笑ましそうに見ている。
「ふふ。ああもう雪白姫は可愛いなぁ。っていいから離してくれないか。雪白姫が抱きしめられないだろう」
「お兄様まじロリコン。僕も身の危険を感じます」
「男には興味ないから安心してくれていいよ。第一僕は君のお兄様ではないし」
「……」
赤い王子は何か言いたげだったが、黙りこくったまま抱きしめる腕を強めるだけだった。
「だいたいそっちのお姫様は百歳超えじゃない!」
雪白姫は子供扱いに加え、王子の妹だの言われたのがよほど悔しいのか、野ばら姫の悪口を言い始めた。
「百年も眠っていた骨董品の世間知らずなお姫様なんてゴミ箱にポイポイよ!」
「まあ酷いわ。【七の罪科】気高き王女を侮辱するなんて……くすん」
しゅんと野ばら姫が悲しそうに俯いた。
「雪白姫、謝りなさい」
「イヤよ!だって本当のことだもん!王子だってそう思ってる癖に!」
雪白姫はぷいっと顔を背け、唇を尖らせた。
「そ・れ・に!そっちの王子様は今の今まで自分に兄弟がいることを知らなかったんでしょう?」
「ええ、お嬢さん。ですが僕はとある事情によって隔離され、男性に触れることもなく、
齢十五の朝を迎えました。きっと僕の両親は僕に兄がいることを伝えられなかったに違いない!」
「ウフフッ。アハッ、アハハハハッ!」
雪白姫が高らかに笑いだした。赤い王子はビクッと震えて青い王子にしがみつく。
同様に野ばら姫も身を縮めて自分の王子に寄り添った。
「あーら真っ赤な血みどろ王子様もご苦労なさったようですけど、それは間違いだわぁ!」
「僕の勘に間違いはない」
思い込みの良さに定評のある赤い王子がドヤ顔をかました。
それが大変ツボに入ったのだろう。雪白姫はお腹を抱えて笑い転げる。
「アハッ。馬鹿な王子様!だってぇ私の王子は女の子なんですもの!キャハハハハッ!」
「嘘だ!」
「嘘じゃないわ!王子は特殊な性癖のちょっとおかしい女の子だもん!」
「あのー勝手に僕の秘密をカミングアウトしないでほしいのですがー」
「うるさい!王子は黙ってて!」
「スミマセン」
ピシャリと怒鳴りつけられて青い王子が口を噤んだ。
同時に頬を引き攣らせて赤い王子が青い王子から身を引き剥がす。
「嘘だ。信じられない」
グサリと青い王子の心の柔らかい場所に鋭いナイフが突き刺さる。
今までの少女達と同じだ。僕が女の子だと告白したら拒絶して突き放した少女達と同じあの表情。
喉をきゅうっと絞め上げられたように呼吸が出来なくなる。青い王子は咄嗟に雪白姫を見た。
思い出して、雪白姫は他の子とは違った。「女の子でも構わない」と受け入れてくれた。
だから、誰に拒絶されたってへいき。雪白姫がいてくれれば、それだけでじゅうぶん。

180 :
「なんなら触って確かめてもいいのよぉ?私だけの王子だけど特別に許してあげる」
「……ではお兄様、いただきます。むぎゅ」
もにゅもにゅ。
「や、柔らかい……?」
「いっ、いやああああ!!!!」
青い王子は腕を振り上げると力任せに赤い王子の頬を弾き飛ばす。
乾いた音が響き、勢い余って赤い王子が床に倒れこんだところで、青い王子は我に返った。
こちらの姫君に招かれてやってきたのに、姫君の大事な人をはたいてしまった。
けれどこうせずにはいられなかった。いくら今は男の格好をしていようと、男らしく振舞おうと
青い王子はずっと女の子として蝶よ花よと大切に育てられてきたのだから。
「素性も知らぬ男に胸をまさぐられるとは……よくも私を辱めたな。――許さない……絶対に許さない!」
「あっ、あなたはひょっとしてあの、僕のお兄様ではなく、お姉様?」
「君にそう呼ばれる筋合いはない!」
「まあ王子のお姉様でしたのね」
野ばら姫は青い王子の頭の先から爪先まで舐めるように見終えると、その顔と胸元を交互に見やった。
「お姫様も触ってみたら?」
「え、よろしいのですか?」
「はい!女の子なら大歓迎でっす!」
「やだあ。なぁにそのマヌケな顔〜!鼻の下伸び切ってるんですけどぉ?」
「では失礼して。まあ……あらあら……詰まってますわ。意外にありますわね……」
さわさわ。女の子に触られるのってなんだかくすぐったい。
今日は雪白姫にうふふなおまじないしてもらえて、綺麗なお姫様とむふふなことも出来て幸せだなぁ。
でもこう、なんというか。自分より胸がある人に胸を触られるのってちょっと恥ずかしい。
なんてことを青い王子が考えていると白いブーツの爪先に真っ赤なヒールが降ってきた。
むぎゅうううううう!
「痛っ、痛い、痛いです!」
「私以外の人にデレデレしちゃだめ!」
「あっごめんなさい。不躾にも撫で回してしまって……あの、ごちそうさま、でした?」
「いえこちらこそお粗末さまでございました」
「なんでお礼言うのよ」
「こっちもおなかいっぱいになったから」
へらっと青い王子が笑う。雪白姫はイライラと何もない床を蹴り飛ばした。
「やはりアプリコーゼさんの仰っていた隣国には王子がいないというお話は本当でしたのね。
ですけどどうしてあなたは王子様の格好をしていらっしゃるの?女性の方なのですよね?」
「話せば長くなるのですが」
「では結構です」
「父が私の婿探しのために催したパーティで、私は男性ではなく女性に恋をしました……」
「ですから結構ですわ。私はあなたほど暇ではないのですよ」
「年寄りは昔話が好きなのよねぇ。同じ話を何度も何度も飽きもせずによくやるわ」
野ばら姫の制止も雪白姫の口汚い罵り文句も青い王子には聞こえていないようだった。
うっとりと自らの世界に浸りながら……さぁ、物語を続けようか。
「私は勇気を振り絞り、想いの全てを告白しました。しかし、私の想いは彼女に『拒絶』されてしまいました。
その時の彼女の言葉は、とても哀しいものでした。なので僕は男のふりをして理想の花嫁を探す旅を始めた」
「そうでしたの。ではお話はこの辺で」
「未来に開く少女も過去に開いた老婆も、蕾も花も生きとし生きる全ての女性を愛でても、
どの女性も僕が女だと知った途端に離れて行きました。見目麗しいだけで彼女達は心の奥こそ醜かった。
でも雪白姫だけは違った。硝子の棺で眠るようにんでいた彼女こそが僕の理想の花嫁!」
「私も貴女のこと運命の相手だと思うわ。特殊な性癖で気持ち悪いけど。気持ち悪いけど。気持ち悪いけど」
「気持ち悪い言いすぎ」
「だってホントに気持ち悪いんだもん」
「ぐぬぬ……」
「王子、本当は私に気持ち悪いって言われてハァハァしてるでしょ?」
「どうかな?」
「またまたぁ〜。ニヤけてるよお?ヘンタイさん!」
罵りながらも雪白姫は甘えた様子で青い王子にしなだれかかった。
それに応じて、青い王子はそっと雪白姫の頭を撫でる。途端に甘い空気が流れだして二人だけの世界。
「あ、あのぅ……」
野ばら姫は控えめに声をかけた。もしかしてのろけられているのでしょうか?
そうであれば私達もおのろけを見せつけた方が良いのかしら。やられっぱなしというのも癪に障るわ。

181 :
「悔しいですし私達も見せつけ……ってあらら王子?」
床に突っ伏していた赤い王子がゆらりと立ち上がる。長い前髪が影になり表情は読めない。
「おねえさま……いいえ、おねにーさま……」
「な、何か?」
尋常でない空気を感じた青い王子が身構える。甘えていた雪白姫はいち早く飛び退った。
薄情者と罵られようとも自分が可愛い。よくわからない姉弟?の愛憎劇に巻き込まれては堪らない。
「やはりおねにーさまに運命を感じた僕の勘は正しかったようです。
あなたこそがきっと僕の《捜し求めていたおねにーさま》なのだろう!(キリッ」
こういうのを思い込みの激しい困った人という。
遠くから見ている分には面白いが近くにいるととっても困るタイプの人種だ。
……赤い王子だけでなく、青い王子も雪白姫も傍にいられると困るタイプに違いないが。
「残念ながら僕は君のお姉様ではない。おねにーさまでもない!」
「お言葉ですがおねにーさま!」
「おねにーさまではないと何度言ったらわかるんだ!僕には弟はいない!」
「いいえおねにーさま。僕はあなたの弟ではございません!」
どこかで聞いたような台詞の応酬を繰り返しているうちに赤い王子が支離滅裂なことを言い出した。
青い王子を「おねにーさま」と呼ぶ癖して「僕は弟ではない」――わけがわからないよ。
「おねにーさまも女性であることを隠している。これを運命でなくて何と呼ぶのですか」
「たまたま。偶然。気のせい。……っておねにーさま「も」???」
言葉の真意に気を取られているうちに青い王子は赤い王子にまたしても抱きつかれた。
むぎゅううう。彼?は青い王子に自らの平たい?胸を押しつけて何やらアピールする。
しかしだから何だというのか。青い王子は憤然として言い放った。
「離れてくれないか。あばら骨が当たって痛い」
「しょぼーん」
赤い王子が目に見えて落ち込む。
弟であれ赤の他人であれ、年下の子が目の前でしょぼくれているのをみると、どうも母性本能をくすぐられる。
言葉ではうまく励ますことは出来ないけど……青い王子はそっと彼?の体を撫でた。
無意識のセクハラ行為であるが本人は至って純粋に慰めたいだけであった。だからこそ始末が悪い。
がっしりしているようで意外と華奢な肩。あばらの浮いた薄い脇腹。きゅっとくびれた細い腰。
……ん?この表現ではまるで女性ではないか。
「ま、まさか……」
信じがたい気持ちとウラハラな期待と僅かなときめきに突き動かされて、無遠慮に尻臀を鷲掴みにした。
むにゅ。
「んんっ!」
「なんてことだ……」
赤い王子が本格的に悲鳴を上げる前に、雪白姫の怒声が飛んだ。
「なぁにしてるのよーっ!」
「お尻を触っています」
「それは見ればわかる。どうしてそんなイヤラシイ手つきで触ってるのかと訊いてるの!」
「触ってほしいと尻が言う」
「んなわけないでしょーがっ!私以外の子とべたべたしちゃだめ!男の人とべたべたするのはもっとだめ!
男の人にはキョーミないって言っておきながら、ちゃっかりお尻は撫でるなんて、こんのド変態がっ!」
雪白姫の真雪の頬が良く熟れた林檎ように真っ赤になる。今にも頭から湯気が立ち上りそうだ。
「結局王子は体のように自分の思い通りに出来れば男でも女でもどっちでもいいのよ!
《雪白姫……真雪のような女の子……》この世界で一番可哀想なお姫様……。
悔しくて涙が出ちゃう。ドMで特殊な性癖の男か女かよくわからない王子様に捕まっちゃったんだもの!」
「私はれっきとしたお・ん・な・だ(シャキーンッ」
「この際性別はわりとどうでもいい。浮気性でプレイボーイなのが問題なのよ」
「いいやガールだッ!でも僕は雪白姫と出会ってからは君一筋だよ」
「なぁにそれで誤魔化したつもりぃ?男の尻揉みながら白々しいこと言わないでくださらなぁーい!?」
雪白姫の凄まじい剣幕を、青い王子は飄々と受け流した。
夫婦?喧嘩は犬も食わないというが、正にその通り。犬は勿論誰もが近寄りがたい雰囲気。
出来ることなら僕もいっそ空気になれたら素敵なのに……と赤い王子は考えた。
何が悲しくて尻を揉まれながら修羅場のど真ん中にいなくてはならないのか。
一心不乱に願いを込めて愛しい彼女を見つめる――どうか助けて野ばら姫!
しかし野ばら姫は何が不快なのか、むすっと唇を尖らせて据わった目で
きゃんきゃん喚き合う二人と巻き込まれている赤い王子を見つめていた。

182 :
「こんなに可愛い雪白姫様というものがありながら男の尻を撫でてぐへへだなんて超→変↓態↑」
「さっきから何をよくわからないことを」
「よくわからないのは貴女だわ!」
「雪白姫、手を貸してごらん」
青い王子がお尻から手を離し、そのまま差し伸べると雪白姫はさもバイキンのようにその手を払った。
「イヤよ!ヘンタイに貸す手はないわ。穢れる!」
「雪白姫も触ってごらん。気持ちいいよ」
「おまわりさぁああああん!!こいつですうううううう!!!!」
雪白姫が変質者とばかりに甲高い悲鳴を上げる。
青い王子は気怖じせずに色白く小さい手を取り、例の尻まで導いた。
もにゅ。
「あ。柔らかい。おにくいっぱいついてる」
「これはどこをどう触っても女性の桃尻」
「うんうん。男の人のお尻はもっと筋肉質で平たくて硬いもんね」
「もしや触った経験が?」
「うふふ。どーかしらぁ?」
「むむっ」
「あれぇ?もしかして妬いてくれた?あは!嬉しい!」
もにゅもにゅもにゅもにゅ。
「あまり妬いてると焼けた靴で復讐されちゃうよぉ?」
「君を想いながら焼かれるならそれも本望さ」
「いやぁん。王子ったらぁ!雪白照れちゃう〜」
なでなで。もにゅもにゅもにゅ。
人の尻を揉みしだきながら、喧嘩したり突然いちゃいちゃしないでいただきたい。
かといって余計な口を挟んで変な恨みを買いたくはない。こんなくだらないことで復讐されるのはごめんだ。
赤い王子は涙を浮かべながら、野ばら姫に助けを求めた。震える喉を鳴らす。
「の、野ばら姫……」
むすっとしていた野ばら姫は赤い王子の懇願に我に返った。控えめに進言する。
「あの、お二人とも私の王子を虐めないであげてください……」
「なぁに聞こえなーいんですけどぉ?今イイトコだから邪魔しないでくださらなぁい?」
「雪白姫、そんな言い方したら悪いよ。ふふふっ」
――ピキッ。
「【七の罪科】気高き王女を差し置いて王子のお尻を撫で回すなんて、傲慢なのはそっちの方よ!」
野ばら姫が外部から衛兵を呼ぼうと息を吸い込む。雪白姫がそれを遮った。
「だったらお姫様も触ってみない?」
「……え、よろしいのですか?是非ッ!」
もにゅ。
「まあ柔らかい」
もにゅもにゅもにゅもにゅ。
――そして小一時間後。
「ごめんね、赤い王子様。あなたのこと男の人って言っちゃって」
「あの、王子のお尻とても良かったです。よければ今度は他のところも……なんて、ぽっ」
野ばら姫の頬が薔薇色に染まる。赤い王子も思わず赤面した。青い二人のニヤニヤとした冷やかしの視線が痛い。
それにしてもそんなにいいものだろうか?さわさわ。赤い王子は評判のいい自らの尻を撫でてみた。
触られすぎていつもより大きくなっているような気がしないでもない。
「でもわかってくれて良かった。これでおねにーさまも僕を妹だと認めてくださいますね」
「いいや妹ではない」
「何故です。何故僕を妹だと認めてくださらないのですか!?」
「その話なら終わった」
「僕が男のような格好をしているから……いえ、僕がおねにーさまより若くて美しいから!」
「何気に失礼なこと言ってないか?」
「嗚呼ごめんなさい……罪作りな僕が、若くて美しいこの僕が悪いn」
「くどいと言っている!僕は君のおねにーさまではない!姉妹では都合が悪いじゃないか!」
言っている意味がわからずにその場にいた三人は一斉に首を捻った。雪白姫が代表して訊ねる。
「どうして姉妹だと都合が悪いの?」
「血が繋がっていたら僕のおにゃのこハーレム加えられないだろ(シャキーンッ」
「訊いた私が馬鹿だったわ」

183 :
おまけ。青い王子がひたすら変態。救いようもなく変態。嫌いな方はスルーで。

赤王子「どうしておねにーさまは僕の胸ではなくお尻を触って女性だと確かめたのですか?」
青王子「胸は平たくとも尻は丸いから」
赤王子「僕がひんぬーだと仰りたいのですね」
青王子「貧乳はステータスだ!希少価値だ!」
赤王子「【七の罪科】気高き王子をひんぬー呼ばわりなんて、ひんぬーなのはおねにーさまの方よ!」
青王子「僕の方がある(シャキーンッ」
雪白姫「目糞鼻糞なんですけどぉ?」
青王子「雪白姫、汚い言葉使っちゃいけません!めっ!」
雪白姫「ハイハイお母さんお母さん」
薔薇姫「あの、皆さん喧嘩なさらないでくださいね(ぽよーん」
青王子(負けた……最初からあのふわ〜んぽよ〜んに勝つつもりもないが)
赤王子(で、でも僕だってあの小さいお嬢さんよりかはある。ある、よ、ね……?)
雪白姫「今誰かが失礼なこと考えた気がする……」
薔薇姫「いいじゃないですか。胸の青の王子様、お尻の赤の王子様ということで」
赤王子「褒められてる気がしない」
青王子「いいや尻は偉大だ。触っただけで相手の体調がわかる」
雪白姫「それは変態の特殊能力でしょ。普通の人にはわかりません」
青王子「初潮はまだとか、女の子の日だとか、処女だとか、経産婦だとか大体のことはわかる(キリッ」
赤王子「」
薔薇姫「」
雪白姫「私のお尻には絶対触らないでね」
青王子「当然胸にも同じことが言える」
雪白姫「胸にも絶対触らないでね」
青王子「触れるほどない(シャキーンッ」
雪白姫「黙れこの腐れド変態があああああ!!!!(ばっちーん!」

つづく。


気が強いわがまま姫、特殊な性癖の変態、思い込みの激しい勘違いという濃いメンツの中では
普段は天然。怒ったら怖いだけの野ばら姫はどうしても影が薄くなる。
雪白姫と野ばら姫が殆ど会話してなくてすみません。
次回こそは姫君達がきゃっきゃする予定。予定。

184 :
gj
おい誰か青王子の暴走をとめろw
で結局二人は姉妹設定なの?
王子ちゃんズが姉妹なら野薔薇姫と雪白姫の間で義理の姉妹フラグが立つ
私得ktkr

185 :
>>176の続き。今回こそ雪白姫と野ばら姫の話。以下9レス分お借りします。
序盤は青王子のむふふな妄想劇。ですが機を見ていづれご退場願います。
ついにうちのプロバイダにも忍法帖が適用されました。
まだレベルが低いので投稿が途中で止まってしまったらそういうことだと思ってください。すみません。

186 :
レベルが低すぎて「本文が長すぎます」って出て投稿できないwww
1レス分の分量を調整してから出直してきます。すみません。

187 :
調整してきました。
たぶん大丈夫だと思いますが途中で止まってしまったらそういうことだと思ってください。すみません。
176の続き。以下10レス分お借りします。

188 :
「血が繋がっていたら僕のおにゃのこハーレムに加えられないだろ(シャキーンッ」
「訊いた私が馬鹿だったわ」
怒る気も失せた雪白姫が項垂れる。青い王子は鼻息も荒く夢を語り始めた。
「僕の夢だったんだ、ハーレムというか女学校というか。とにかく女の子がいっぱい!
僕には家庭教師がついていたから学校というものを知らない。だからそういうのに憧れてて。
女の子しかいない校内。お姉様と慕ってくれる下級生との共同生活。憧れの先輩への淡い恋心。
誰もいない教室。夕陽が射し込む窓辺。二人の影が徐々に近付いて――」
『いけませんわお姉様。こんなこと神様がお赦しになられません』
涙を浮かべたか弱き乙女。追い詰めたもう一人の乙女がふっと微笑む。
『神様が赦さない?ならば私が赦そう』
『そういう問題では……あっ!』
『大丈夫だよ雪白。さぁ、私に身も心も預けてごらん……』
『あぁん!お姉さまぁ!』
ついにか弱き乙女が机に押し倒され、その長い黒髪がサラサラと床に零れ落ちた。
細く長い指先が胸元のリボンをほどき、純白のレースに包まr(以下長くなるので略)
「ぽわんぽわ〜ん。なんて麗しき乙女達の愛と青春の日々ッ!」
青い王子は時にしなを作り、格好つけたりして二人を演じ分けると逞しい妄想(だだ漏れ)を終えた。
些か女子校に夢を見すぎな気もするが、それも仕方のない話だ。
そもそもこの場にいる四人の姫君は皆それぞれ訳ありで文字通り箱入り娘だったり、
世間から隔離されて生きてきたわけで、誰一人として女子校どころか世間一般の生活すら知らない。
「しかし女教師と女学生も捨てがたい!居残りでマンツーマンの特別授業――」
『うーん……』
『ここはこうしてこうすれば……ね、わかりやすいでしょ?』
ペンを握る手に先生の手が添えられて、少女の頬は窓枠から消えてゆく夕陽よりも赤く染まった。
この気持ちだけは先生の教えてくれる公式だけではどうしても解けないの。だから。ねぇ教えてほしい。
『私、先生のことが……!』
『だめよ雪白、貴女は私の教え子なのよ』
『じゃあ先生……私に恋のABCを教えてくだs(以下長くなるので略)』
「ぽわんぽわ〜ん。禁断の愛は何よりも嗚呼美しい!」
「ねーねー独り芝居してて悲しくない?恋のABCって何?語?古くない?これだから年寄りは嫌よね。
というか勝手に私を気持ち悪い妄想に登場させないでくださるぅ?」
雪白姫はにべもない辛辣な言葉で青い王子のくだらない妄想を一蹴した。
しかし青い王子も慣れたもので咳払い一つで聞き流す。
「コホンッ。勿論そちらの薔薇の姫君も僕のハーレムに入れてあげるよ」
「遠慮しておきますわ。私には心に決めた方がおりますので」
「冷たいこと言わずに」
「おやめください、おねにーさま!!」
赤い王子は野ばら姫を背中に庇い、「おねにーさま」こと青い王子を睨んだ。
「僕の野ばら姫までそのような気持ち悪いハーレムに加えようだなんて……」
「夢はおっきく第七の地平線制覇!美しすぎる屍人姫の皆さんは当然のこと、下は腹ペコの妹から
上は薹が立って久しいクソババアにおとぎ話によく出てくるおば、お姉さんまで女の子は全て僕のもの!」
「うわぁこれはひどい」
赤い王子は野ばら姫を抱えて青い王子から距離をとる。
自らが気持ち悪がられていることを知ってか知らずか、青い王子はうっとりと妄想に浸り続けた。
「七度巡って全ての女性をモノにしたら、地平線を軽々と飛び越え……おっとみんな落ちついて。
大丈夫。順番に可愛がってあげるよ。けんかをやめて、みんなをとめて♪私のために争わないでーっ♪」
青い王子のお天気そうな脳内で、彼女に都合のいい女の子達が喧嘩を始めたらしい。
気持ち良さそうに歌い始めた青い王子の脛を雪白姫が蹴り飛ばす!
「貴女みたいなッ!どーしようもないッ!王子を巡ってッ!争う女の子なんてッ!一人もいないわよッ!」
「あっ!いっ!うっ!えっ!おっ!」
雪白姫は打てば響く太鼓のように悲鳴を上げてのた打ち回る青い王子を満ち満ちた表情で眺めた。

189 :
嬲ってばかりでも可哀想なので雪白姫は小声で付け足した。
「貴女を相手にするような娘はどの地平線を探したって私以外見つからないんだから……」
つっけんどんな雪白姫も実に可愛らしいが、このようにデレる瞬間も最高に可愛い。
普段は罵られ、痛めつけられもするからこそ、より一層この瞬間が輝いて見える!
「雪白姫大好き!もう絶対に浮気しない!はぐはぐ。ちゅっちゅぺろぺろ」
「私も王子大好きー。はぐはぐ。でもちゅっちゅぺろぺろは人前で 絶 対 に す る な !」
ぷりぷりしだした雪白姫の耳元で青い王子が魔法の一言を囁く。
「誰もいなければしてもいいんだね?」
「う……やだぁもぅ私に言わせるつもり!?」
雪白姫から普段の意地っ張りな面影はたちどころに消え失せ、完全にデレた状態になった。
むぎゅむぎゅと見てるこちらが暑くなるほど盛りついた青い二人の邪魔にならないように
遠巻きに眺めていた(もとい冷やかしていた)野ばら姫と赤い王子は同時に肩を落とす。
「よくも私の前でいちゃついてくれますわね……」
「僕と野ばら姫はあのように人前ではいちゃつかない」
「ですよねー」
ツッコミ担当のアルテローゼ辺りがいたら嫌な顔をして「んなこたぁない。あんたらのが相当だよ」と
指摘してくれたかもしれないが、生憎この場にはいなかった。
「僕はおねにーさまと仲良くしたいのに」
「私はあのお嬢さんと仲良くしたいのに」
ふと漏らしてしまった本音に野ばら姫と赤い王子は申し合わせたわけでもなく顔を見合わせた。
「二人きりで?」
「二人きりで!」
利害が完全に一致した赤い二人ががっちりと握手を交わし、策略を巡らす。
「丁度良い手駒もあることでございますし、ただちにッ!目障りな青の王子様にはご退場願いましょう♪」
「ではご退場した後のおねにーさまは僕が引き受けよう」
「私は青のお姫様をいただきますわね♥」
破滅を演じる歴史の舞台。とは言わないが赤い二人は銘々「面白い劇が観れそうだ」とルージュの笑みを浮かべた。
「で、どうやって彼女らを召喚するかだけど――」
「簡単ですわ。私に考えがあります」
野ばら姫が「それ」を行動に移そうとした瞬間。
「というわけで!」
どういうわけで「というわけ」なのか当人にしか永遠にわからないことだが
青い王子が風に靡く布よりもいとも軽やかに主張を翻した。
「僕と君は姉妹ということで頼む」
「は?あ、そっか……漸く僕を妹だと認めてくださるのですね!」
「君が僕の妹ならば薔薇の姫君は僕の義理の妹。義理の妹というのもなかなかどうして滾るじゃないか!」
「だめだこりゃ」
ただ実の姉妹で禁断の愛だとか言い出さなかったことだけは感謝したい。
赤い王子は無意識のうちに姉の出来る喜びと変な人が身内になる不都合を天秤にかけた。
姉が出来るのは単純に嬉しい。一人っ子だったから姉や妹というものに憧れを抱いているのは確かだ。
しかし付き合う人間は選ぶべきと両親に教わったこともまた事実。
小さな少女があれだけ慕うのだから悪い人間ではないのだろうが、あまり近づきたくない人種でもある。
傾かざる天秤がどちらかに沈み込んだとき、青い王子が野ばら姫に気さくに話しかけた。
「麗しの薔薇の姫君、あなたも僕のことを「お義姉様」と呼んでくださって良いのですよ」
「迷惑です」
「冷たいこと言わずに」
野ばら姫の折れそうなほどの細い手首が青い王子によって掴まれる。
四人の間に不穏な空気が流れたが、野ばら姫が腕を振り払うことによって事無きを得た。
「私に触れましたね」
「え、ええ?」
「鴨が葱をしょって、もとい変質者がわざわざ犯罪行為に手を染めてきましたわ」
「犯罪とは大げさな。少し触れただけじゃないか」
あらあらうふふと野ばら姫は笑みを浮かべて大きく息を吸い込んだ。召喚の呪文を唱える。
「きゃー!誰ぞ、この青の王子を捕らえよ!もう二度と私には触れられぬものと思え!」
棒読みの悲鳴であったが、野ばら姫のピンチにアルテローゼとアプリコーゼが光の速さで現れ出でる。

190 :
野ばら姫のいう丁度良い手駒の二人は自慢の杖を構え、互い違いに呪文を唱えだした。
すると青い王子の足元に一本の茨のつるが生えてきて、きゅっと締まった足首に絡みつく。
「ハハッ!素敵なアンクレットをだんけしぇーんっ☆この程度で僕にかなうと思い上がっているのなら
いつでも掛かっておいでなさい!あーははははh……ん?きゃあっ!」
にょろにょろにょろ。瞬く間に足元の茨の数が増えて足だけでなく腕も絡め取られ、体を掬い上げられる。
「よくも私の野ばら姫を卑猥な目で見てくれたねぇ。お代は高くつくよ……?」
「あらアルテローゼ。いつの間に野ばら姫が貴女のものになったのかしら?」
「う、うるさいっ!呪ったときからだ!」
「いいえ野ばら姫は僕のものです!僕が起こしたのですから!」
「何言ってるんだろうねぇ、この馬鹿王子は」
「あらあら。なら私も野ばら姫を救ったということで、私の野ばら姫と呼んでもよろしいかしら?」
「なにぃ!?」
「うふふ。ではここは平等に皆の野ばら姫ということで」
「仕方ないね。了承しよう」
「本当は僕の野ばら姫なのに」
「あのー私抜きで勝手なこと決めないで頂けますぅー?」
野ばら姫を巡って盛り上がっている最中、青い王子は茨のつるから振り落とされそうになっていた。
アルテローゼの注意力が削がれ、杖の先が揺らいだ為だ。
「わわわっ落ちるーっ!」
そのまぬけな悲鳴によって意識をこちら側に引き戻されたアルテローゼは杖を荒々しく振るった。
茨のつるが勢いよく青い王子に絡みつく。
「とにかく純情な姫君を脳内であれ穢そうとは言語道断!」
「穢してない!僕は純粋に……やっ痛い痛い!!!!」
「ならばもう僕の野ばら姫に近づかないと約束してください!」
「いやそれは約束出来ない(キリッ」
「この機に及んでまだそのような口を叩くとは。ひと思いに呪いす!」
「いいえ《十三人目の賢女》よ。ひと思いでは勿体無いわ。反省するまでじわじわと後悔させてあげないとね」
あんず色のフードを被ったアプリコーゼが真っ赤なフードのアルテローゼを押し留めた。
「あんただけは敵に回したくないと思うよ」
「うふふそうかしら?」
アプリコーゼがあんずの枝で作られた特注の杖を軽やかに振い、生きた茨を操った。
「いっ痛い。チクチクトゲトゲするっ!離して、下ろして!イヤァーッ!!」
青い王子の悲鳴が玉座の間に響き渡る。雪白姫の焔のように赤い唇がにやりと弧を描いた。
うねる茨のつるに両手両足を絡め取られた男装娘なんてコアな触手好きか、
はたまた一部の男装娘萌えしか喜ばない光景だわあ。
雪白姫はそのどちらでもないし、特殊な性癖も持ち合わせていなかったがときめきに胸を躍らせていた。
好きな人の悲鳴や好きな人の顔が苦痛に歪むのって素敵でゾクゾクしちゃう!
青い王子をしょっちゅう変態だとか罵る雪白姫も十分特殊な人種であった。
一際甲高い断末魔をバックに野ばら姫がにっこりと雪白姫に話しかけた。
「王子達は何やら積もる話があるようですし、よろしければあちらでお茶を致しませんか?」
「どうしよっかなぁ。今は王子の悲鳴聞くのに忙しいしぃ。あ、泣き出した」
「とても美味しいお菓子があるのですよ」
「ホント?行く!」
お菓子の話を持ち出すと雪白姫は二つ返事で了承した。茨にぐるぐる巻きにされた青い王子に手を振る。
「じゃあ私は薔薇のお姫様とお茶してくるね!アウフ ヴィーダーゼーエン☆」
――そして青い王子と引き離された雪白姫を待っていたのは……。
案内されたのは部屋中に真っ赤の薔薇が飾られた応接間だった。
「私が生まれる以前から薔薇は我が国のシンボルだったのですが、百年眠っている間に
さらに強固なイメージがついたそうでお客様をこちらにご案内するととても喜ばれるのですよ」
「ふーん。だから?」
雪白姫は自慢話にそれ以上の価値を見いだせず、猫のように気まぐれな態度でそっぽを向いた。

191 :
雪白姫としてはお菓子に釣られてやってきたわけだから世間話など正直どうでもいいのだ。
しかし野ばら姫はそうは思わないようで再び話を振る。
「え、ええと。それにしても驚きましたね。お二人が姉妹だったとはびっくりです」
「うちの王子は違うって言っていますケド?」
途中で急に姉妹ということにしてくれと騒ぎ出したが、それは下心があるからだ。
彼女がどこまで計算してあんなことを言っているのかはわからないが、
赤い王子と姉妹であれば薔薇の国との強力なコネクションになる。
それは歴史の浅い彼女の国にとってプラスになるはずだ。といってもそこまで難しいことは考えず、
単に可愛い野ばら姫が義理の妹になってくれればハッピー程度にしか思っていない可能性もあるが。
「ですが私の王子の勘はいつもぴたりと当たるのです。私に運命を感じて私を起こしてくださいました」
「のろけるなら余所でしてくださるぅ?」
「ごめんなさい……」
「べっつに〜。あっ!」
雪白姫の顔が真っ白から真っ青へ移り変わる。――そういえばお姫様のご機嫌を損ねちゃいけないんだったわ。
今日は王子の大事なご公務デビューなんだから成功させてあげないと!
どどど、どうしよう!私のせいで失敗しちゃったら大変だわ!
「薔薇のお姫様、ごめんなさいっ!ええっと『ほんじつはおまねきいただきこうえいにぞんじます』だっけ?」
「お願い!畏まらないで、私はそういうの好きじゃないの」
「……」
「私は野ばら姫と申します。どうか気軽に話しかけてくださいね」
「……じゃあ野ばらちゃんって呼んでいい?」
「はい!本当に妹が出来たようで嬉しいですわ!私ずっと妹がほしかったんです。
妹が出来たらお互いに髪を触りっこして、お揃いのドレスを着て……それからそれから」
野ばら姫のはしゃぎっぷりと言ったらまるで子供のようで、雪白姫は面倒な親戚付き合いはごめんだけど、
野ばらちゃんがお姉さんになるならあの二人の王子が姉妹でもまあいいかなと考え直した。
「本当は王子とそういうことが出来たら良かったのですけど、王子はドレスを着るのが嫌だそうで」
何でも赤い王子にお揃いのドレスをプレゼントしたところ一度着ただけで
『女装してるみたいで変な気持ちになる』と拒否されてしまったらしい。
女装してるみたいって男装してる癖して変な物言いね。と、雪白姫は適当に相槌しながら考える。
「あ、お茶にお誘いしたのにお喋りが過ぎましたね。今用意しますからお待ちになって」
「私も手伝う!」
「ではテーブルに食器を並べてくださいね。キッシュトルテを切り分けますから」
「ほんと!?私大好き!」
野ばら姫がキッシュトルテを切り分けている間に紅茶は良い頃合いとなり、
それぞれのティーカップに注ぎ入れると二人は楽しいお茶会を始めた。
「青のお姫様はお砂糖いくつ入れますか?」
「いーっぱい入れて頂戴。私甘いのだーいすき!」
野ばら姫の細い指が白い角砂糖を摘み上げ、一つ二つと雪白姫のティーカップに運んでいく。
……って青のお姫様?
「あっ私は雪白姫って言います!」
自己紹介がまだだった!雪白姫は心の中でしまった!と舌を出した。
失礼な子だって思われちゃったかな……。
「素敵なお名前ですね。……はいどうぞ、雪白姫様」
「私のことも普通に呼んでほしいな。だめ?」
「でしたら雪白ちゃん」
「うんっ!」
二人の距離が少し縮まった気がする。
雪白姫はティーカップを覗き込み、澄んだ紅茶の水面を見つめた。
長い黒髪の美少女が映っている――勿論私のことよ。
「キレイ」
「綺麗な色でしょう?ローズヒップティーと言います。野薔薇の実を使ったハーブティーです」
「野ばらちゃんの実?」
「あらうふふ。私には実はなりません」
だよね。と雪白姫は何度も頷いた。……もしそうだったとしたら照れちゃって飲めないよ。
「ビタミンCが豊富でお肌にとても良いのですよ」
「そーなんだ。お肌の曲がり角な王子にも教えてあげよっと」
ろーずひっぷてぃーっと。

192 :
雪白姫が脳内に紅茶の名を刻みこんでいると野ばら姫が申し訳なさそうに訊ねてきた。
「雪白ちゃんの王子様はおいくつですの?随分と年齢が離れているように見受けられますが……
いっいいえ、決して小児性愛者などと差別するつもりはありません」
「んーロリコンでいいと思うよ?」
雪白姫はこれといって自らの王子を庇う義理を感じなかったのでアッサリと答えた。
他人にとやかく言われようと自分がいいと思ったらそれでいいのだ。雪白姫はそういう性格だった。
それに私が王子を罵るのはいいけど、他人に罵られる筋合いはないもの。王子を罵っていいのは私だけ。
「そういう野ばらちゃんの王子様はどうなの?どうして男装してるの?」
「実はかくかくしかじか(>148)で男装して暮さねばならなかったようです」
「ふーん。野ばらちゃんの王子様は別に特殊な性癖ではないのね」
赤い王子はつい最近まで自分を男の子だと思い込んで生きてきたため、
野ばら姫からお揃いのドレスをプレゼントされた際に『女装してるみたいで変な気持ち』などと言ったのだ。
「トクシュナセイヘキってなぁに?」
野ばら姫の純粋な疑問を雪白姫はサラッと聞き流した。
説明するのも疲れるし、説明したところでこの純情そうなお姫様が理解出来るか怪しいし、
何より説明するのは気持ち悪いし、きっと野ばら姫の耳も腐るので説明しないのが正しい判断である。
「野ばらちゃんと野ばらちゃんの王子様は年齢近いの?」
見ればわかる話だが、雪白姫は気を利かせて話を逸らした。
敢えて王子の前では言わなかったが、赤い王子と並んでいるとキッパリハッキリ年齢の差がよくわかった。
だってほうれい線が、頬のハリとたるみが違いすぎるんだもの……。
いやその言い方は酷すぎるか。赤い王子が見るからに若いから王子の老け具合が際立tごにょごにょ。
「ええ。齢十五の朝に私は百年の眠りにつき、王子は《夢に見た女性》を探す旅を始めたそうですから」
「だったらそれぞれ百と十五歳と十五歳のときに二人は出会ったと」
「……」
「あっごめんね、野ばらちゃん。私そういうつもりじゃなかったのよ」
「いいえ、そうですね。百と十五歳、です……」
野ばら姫が先に振った話題とはいえ、女性に年齢を聞くのはまずかったかなぁと雪白姫は視線を落とした。
静かに流れてゆく沈黙の時間。雪白姫はこんなことを考えていた。
嫌われたらどうしよう。嫌われたらイヤだわ。……野ばらちゃんには嫌われたくない。
こんな気持ち、今まで王子にしか感じたことなかったけれど、なんでかしら。
他人にどう思われたって構わないのに、王子や野ばらちゃんには嫌われたくないよ。
「えっと……そーいえばいい匂いするねー」
雪白姫はティーカップを顔に近づけ、話を振った。強引だったが野ばら姫はにこやかに話に乗ってきた。
「はい。ローズヒップティーの香りには癒し効果がありますのよ」
「うん紅茶もそうだけど、野ばらちゃんからも同じ匂いがする!」
くんくんと小さな鼻を鳴らして綺麗な金髪に顔を近づける。
今朝の王子との会話を思い出して雪白姫は純粋に羨ましいなと感じた。
野ばら姫も同じように雪白姫の長い黒髪に顔を近づける。
「雪白ちゃんからは甘い林檎の香りがします」
「あっわかる?ここに来る前に王子と林檎をはんぶんこにしたの」
「うふふ。仲がおよろしいのですね」
野ばら姫がふいに手を伸ばし、細い指先で雪白姫の黒髪を撫でた。
「ひゃっ!」
雪白姫がびっくりして飛び上がると野ばら姫は慌てて指を引っ込めた。
「髪に花びらがついてましたよ」
「あっありがと!」
なんて嘘ですけどと野ばら姫が心の奥で呟いたことなど、雪白姫は知る由もなかった。
――ただそのさらさらな黒髪に触れるきっかけがほしかっただけ。
「雪白ちゃんの髪に触れてもいいですか?」
「うん、いいよ」
「本当ですか。嬉しい!」
野ばら姫がキラキラと目を輝かせる。妹が出来たら髪を触りっこしたいという夢が今叶おうとしている。
うきうきと弾むような野ばら姫の笑顔が眩しくて雪白姫も目を細めて笑った。

193 :
「野ばらちゃんに触ってほしいな」
「あらうふふ。では失礼して……まあサラサラなストレートですね。黒くて素敵」
「私は野ばらちゃんの金髪が羨ましいな。ふわふわでキラキラしてる」
「ありがとうございます」
女の子って無いものねだり。他人のものがとても綺麗に見えて、欲しくなってしまう。
雪白姫が自分にはない野ばら姫のふわふわな金の髪を羨むように、
野ばら姫も自分にはない雪白姫のサラサラな黒い髪を羨んでいる。
さわさわさわさわ。
雪白姫はくすぐったさに目を閉じる。野ばら姫の息遣いが近くに感じられ、小さな心臓がぴょんと跳ねた。
「真雪の白い肌に黒檀の黒髪、血潮のように赤い唇。雪白ちゃんはお人形さんみたいね」
「ほんと?うれしい……。でも野ばらちゃんもお人形さんみたいだよ」
「そうですか。うふふ」
二人はそれから暫くの間、お互いの髪を触り合いっこした。
色こそ違えど二人は同様に長い髪なのでみつあみをし合ったり、今度お揃いの髪型にしようと相談したり。
でも楽しい時間は風のように過ぎ去って……。
――そして小一時間後。
「このトルテおいしい」
「ありがとうございます。シュヴァルツヴェルダーキッシュトルテと言います」
「さくらんぼのケーキ。私生クリーム大好き!」
「まあ奇遇ですね。私も生クリームが大好きです」
女の子はなんたって甘いものが好き。ふわふわしたものも好き。
だからふわふわであまーい生クリームはとっても好き。
甘いのが好きなのはお菓子だけじゃない。好きな人と過ごす甘い空気も好き。
とにかく女の子は甘いものが大好きなのだ。
「このケーキも紅茶も野ばらちゃんが作ったの?」
雪白姫は感心するとともに内心野ばら姫を脅威に感じた。
私の次くらいに可愛くて女の子らしくおしとやかで長い金髪のお姫様でお料理上手だったら……。
どうしよう!私の王子が好きになっちゃうかもしれないわ!
でも雪白姫はおしとやかなお姫様になるつもりなど微塵もなかった。
無理に自分を変えるくらいなら、悲しいけど王子とばいばいする。
「いいえ。茶葉はアルテローゼが、キッシュトルテはアプリコーゼさんが作ってくださいました」
「そうなんだ」
先ほど玉座の間に音もなく突然現れたフードの女性達を思い起こす。
あの二人は野ばらちゃんと仲がいいのかしら?雪白姫は何故だかもやもやした。
野ばら姫が今にも「アルテローゼ」と「アプリコーゼ」の話を始めそうなので、雪白姫は慌てて遮ると話題を振り直した。
「野ばらちゃんはお料理しないの?」
「えっ。ええ、そうですね……あの、あまり」
野ばら姫がうろたえて視線を泳がせた。
その態度にピンと来るものを感じて雪白姫は恐る恐る訊ねてみる。
「もしかして野ばらちゃんお料理できない?」
「……ええ」
この間、厨房を破壊してしまった話は絶対に守しなければと野ばら姫は堅く心に誓った。
「じゃあ今度一緒にお料理しよ!」
「まあ雪白ちゃんはお料理出来るのですか?」
「うんっ!王子とよくお菓子作るの。案外たのしーよ」
「あら雪白ちゃんの王子様はああ見えて意外と女の子なのですね」
野ばら姫から青い王子がどう見えていたのかは察するより他ないが、
どっちにせよ聞かなくてもわかることなので雪白姫はにこやかにスルーした。
さしずめもっとガサツで大雑把で男らしいかと思った……その辺りだろう。
雪白姫にしてみれば野ばら姫の赤い王子の方がよっぽど男らしい……というか紳士的な立ち振舞いで
勘違いも甚だしいちょっと迷惑な人種だと思ったが口にはしなかった。
……野ばら姫は野ばら姫でこんなことを考えていた。
雪白ちゃんの王子様も意外ですけど、実は言うと雪白ちゃんも意外。
まだちっちゃいのにお料理上手だなんて、雪白ちゃんスペック高いですわ。
サラツヤストレートの艶やかな黒髪にくりくりとしたおめめ。真雪の肌に映える血潮の唇。
純白のフリフリエプロンドレスの雪白姫を想像してみる。
……ライバルでなくて良かったわ。もしもそうだったら負けてしまうかもしれないもの。

194 :
「今度一緒にお菓子作ろうよ、野ばらちゃん!ねっ!」
「ですけどご迷惑になるかも」
野ばら姫はぎこちない笑みを浮かべた。
口が裂けても言えないが厨房をダメにしたのは野ばら姫と赤い王子なのである。
何故かアルテローゼとアプリコーゼは下っ端の小僧クンが破壊工作をしたと勘違いしていたが。
「大丈夫よ。お菓子作りって意外と簡単だから。私が手取り足取り教えてあげる」
べ、別に性的な意味じゃないからねっ!――って当然よ。あーもう王子に毒されてるなあ。
雪白姫が心の中で一人ツッコミをしていると、不安げな野ばら姫の表情にやや希望が見えてきた。
「わ、私にも出来るでしょうか?」
「うん。野ばらちゃんの王子様もきっと野ばらちゃんの手作りお菓子喜ぶよ!」
「本当ですか。でしたら今度教えてくださいね」
「うん!ぜったい、ぜったいに約束よ!」
「はい!」
また会う約束を取り付けて雪白姫は満面の笑みを浮かべた。
――やった!これでまた野ばらちゃんに会える。
どうしてだか今回限りの関係にするのは惜しい気がしたのだ。
「王子にも何か作って差し上げたいですけど、アプリコーゼさん達にも何か贈れるでしょうか」
「え、うん。野ばらちゃんは何をあげたいの?」
野ばら姫の口からまたあの二人の名前が飛び出した。
ぞわぞわと雪白姫の小さな胸がさざめき立つ。
――私の知らないところに私の知らない野ばらちゃんがいる。
「アルテローゼもアプリコーゼさんもご自分で何でも作れますから……何がいいでしょう?」
「……何を贈っても喜ぶと思うよ。野ばらちゃんがあげたものならなんでも」
あのフードの二人組のことはほんのちょっぴりしか見てないけど、
二人が野ばら姫を大切に思っているであろうことは雪白姫にも十二分にわかった。
野ばら姫のピンチに音もなく現れるなんて(の割に赤い王子のピンチには現れなかった辺りお察しである)
そして野ばら姫も二人をこんなに大切に思っている。
何をプレゼントしたら喜んでくれるかなって悩んだりして、まるで恋する乙女みたい。
……なんだか気分悪いわ。私の前で私以外の人の話はしてほしくない!
これも王子に対してしか感じたことなかったのに、どうしてかしら。
雪白姫はこの感情の名前を知っていた。感情の名前は「嫉妬」
嗚呼すぐに心を独占欲に支配されて、誰にでもすぐに嫉妬しちゃう私はいつか誰かに復讐されてしまうわ。
雪白姫があからさまに不機嫌になったのを感じ取ったのだろう。
野ばら姫は話を切り上げて、魅力的な提案をする。
「よろしければお庭に出ませんか?今は薔薇が綺麗な季節ですの。雪白ちゃんにも見ていただきたいわ」
「ほんと?私に見てほしいの?」
「はい。雪白ちゃんがよければ私とお散歩しましょう」
上がったり下がったりの忙しい気まぐれな雪白姫は気になる子に誘われてすぐさま機嫌を直した。
「うんっ!よろしい!今すぐ行こっ!」
超ご機嫌な美少女はいてもたってもいられず、椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がると野ばら姫の腕を掴む。
「ですけど私まだ食べ終わってn」
「私はケーキも紅茶も食べ終わったから早く行こうよ!」
……野ばら姫に導かれて真っ赤に染まった薔薇が咲き誇る庭園を歩く。
「ね、綺麗な薔薇でしょう?我が国の自慢です」
「薔薇がいっぱーい!王子がこのお庭を見たら喜ぶだろうなあ」
「あら雪白ちゃんの王子様は薔薇がお好きなのですか?」
「お花が好きなの。お庭でお花を育ててるのよ」
あまりにお花を大事にしているので、ときどき嫉妬してしまうくらいだ。
春に向けて育てていたお花が綺麗に咲いたことに王子はとても喜んでいた。
今は夏に向けて花壇を整えているところで、暇があったらすぐにお庭に行ってしまって
雪白姫はなかなか構ってもらえず不満な日々を送っている。
なら一緒に花壇を作ればいいじゃないですって?この雪白姫様が土いじりするわけないじゃなぁい!
ガーデニングなんて下々のお遊びなぞ高貴な雪白姫様には似合わないわぁ!
てなわけで最近の雪白姫は花壇を作る王子の背中ばかり見つめているわけだった。

195 :
「意外なご趣味ですね。では花束を用意させておみやげに」
「んー王子は種をもらった方が喜ぶと思うな。育てて愛でるのが好きみたいだから」
「あら……では雪白ちゃんのことも育てて愛でて可愛がって楽しんでいらっしゃるのかしら」
「えっ」
今なんかすごいこと言わなかった?
雪白ちゃんのことも、育てて、愛でて、可愛がって、楽しんでる?
「あっごめんなさい。気づいててそういう関係なのかと」
「野ばらちゃんってさり気なくとんでもないこと言うのね」
「そうですか?ありがとう」
「褒めてない」
でも野ばらちゃんの言う通りなのかも……雪白姫は考える。
王子はまだ幼くて無垢な乙女の私を自分好みの大人の女性に育てるつもりなんだわ。
私は他人に命令されて性格を変えるような意志の弱い女ではない。
ヤられる前にヤらなきゃヤ・バ・イ!逆に王子を私好みにしてやるんだから!
まずは私のお願いをすぐに聞いてくれなきゃだめでしょ。私に歯向かうのもだめでしょ。
私のこと一番に想ってくれなきゃだめ。ってアレレ?もう調教済み?
そんなことを考えていると野ばら姫がそっと薔薇に手を伸ばした。
馨しき薔薇と乙女。絵になる光景。思わず見とれちゃう。
「野ばらちゃん……」
「やはり花束を作りましょう。雪白ちゃんの王子もきっと喜びます」
「……うん」
「雪白ちゃんが摘んでくれたと知ったらきっともっと喜びますわ」
「そうだね!今日はちょっぴりキツイこと言い過ぎちゃったから仲直りしないとって思ってたの」
いつもは王子がこれっぽっちも悪くなくとも、王子から謝ってくれるまで口利いてあげないけど
今日は野ばらちゃんと知り合えて気分もいいから、私から謝ってやってもいいわ。
なんてとんでもないことを雪白姫が考えていたのは、野ばら姫には内緒である。
「お二人の仲直りにご協力出来るなんて光栄です」
「うん!」
この際、仲直りなんてもうどうでも良かった。
二人でお花を摘んで、お喋りして、それだけで幸せな気持ちになれる。
美しい薔薇の庭園に二人きり。雪白姫はそれが嬉しかった。
馨しき薔薇に手を伸ばす乙女達。
どんなに名高い芸術家も彼女達の美しさを額縁の中には留めておけないだろう。
またどんなに素晴らしい絵画も彫刻も彼女達の美しさにはかなうまい。
花がもっとも美しく咲き誇るのが一瞬のように、
乙女が美しく咲き誇るのも、止まることなく流れ続ける時間のほんの一瞬。
一瞬だからこそ花も乙女も美しく咲き誇るのだから。
野ばら姫は指先で薔薇の茎を摘まみ、鋏を入れる。雪白姫も見よう見まねで真似をした。
「野ばらちゃんも野ばらちゃんの王子様に花束をプレゼントしたらどう?」
「私の王子は薔薇には興味ないみたい」
こんなに綺麗なのにと野ばら姫は寂しそうに続けた。
「でも仕方ありませんね。私もあそこで百年眠り続けていたためか、あの塔があまり好きではありません。
王子はつい先日いばらに抱かれたばかりですから思うこともあるのでしょう」
「ウソ。野ばらちゃんの王子はどの薔薇よりも綺麗な「野ばら」ちゃんに首ったけよ」
「うふふ雪白ちゃんはお上手ね」
野ばら姫はまた一輪の薔薇を折り、燃えるように赤い花びらに口づけた。
「もしも私が野に咲き乱れる薔薇のたった一輪だとしたら、王子は沢山の中から私を見つけてくれるかしら。
私は季節が巡って枯れ果ててしまうくらいなら、王子に手折られて美しいままにその胸の中で散りたい。
そして私は最期の力を振り絞り隠した棘で王子の胸を刺して、その血を受けて最期の瞬間まで輝く」
「……」
雪白姫は言葉を無くし、ただ野ばら姫をぼんやりと見つめていた。
きっと野ばらちゃんは赤い王子のことがとても好きなんだろうな。
その手で手折られてにたいなんて好きでなければ言えない。私には言えるだろうか?

196 :
もしも私が林檎だったら……と雪白姫は考える。
もしも林檎だったら、私の意志とは関係なく「いっただきまーす☆」されてんじゃうかも。
それでも愛しい人の血となり肉となるのなら……うーん?
私は少し躊躇しちゃうけれど、王子なら喜んで私にその身を捧げるだろう。
だってドMだもん。雪白姫に食べられるなら本望だ!とか言ってノリノリに違いないわ。
そうして王子は私の血となり肉となり、私と共に生き続けるの。
これでもう二人を別つものは何もなくて、二人はずっと一緒。寂しくなんてないわ。
……閑話休題。
やっぱり野ばらちゃんは素敵だな。しとやかな気品の中に燃えるような情熱を秘めている。
凛と咲き誇る薔薇と同じで美しいだけとは違う。したたかな強い意志の棘を隠し持っている。
「でもね、雪白ちゃん」
「な、に?」
野ばら姫が急に真剣な声色になるから、雪白姫は反射的に身を強張らせた。
「私は貴女に手折られても構わない。いいえ気まぐれな貴女のいたずらな手で私を手折ってほしいとも思うの」
そう懇願する野ばら姫は息を呑むほど美しく、この世のものとは到底思えなかった。
雪白姫は目を伏せ、発言の意図を思いあぐねる。
――私に手折られても構わないってどういうこと?
野ばらちゃんはもしも自分が薔薇だったら赤い王子に手折られてにたいと言っていた。
それはきっと愛しているから。愛している人に手折られるなら本願だということだ。
その上で雪白姫にいたずらに手折られても構わないとは?
……もしかして野ばらちゃんは本命は赤い王子だけれど、
私といたずらに戯れても構わないのよって言いたいのかな?
それって、私になら何されてもいいって、どうされてもいいってこと?
野ばらちゃんにもっと触れてもいいの?野ばらちゃんにもっと近づいてもいいの?
私はもっと野ばらちゃんの近くにいたい。もっともっと野ばらちゃんを深く知りたい。
……ドキドキ。小さな胸の小さな心臓が早鐘を打ち始める。
静かな庭園にこの胸の鼓動が鳴り響いてしまうのではないかと心配になる。
それでも雪白姫は表面上は極めて平常心を装って、薔薇に手を伸ばした。
「あ、痛い……」
指先にチクリと鋭い棘が触れる。焼けるような痛みを感じて薔薇から手を引いた。
白い指先からぷっくりと赤い玉が浮かび上がり、自らの重みによって流れてゆく。
ぽとりと落ちた血は赤い薔薇の花びらよりも赤かった。
指先に残る僅かな痛みに雪白姫は顔をしかめる。
――綺麗な薔薇には棘がある。不用意に触れてはならない。
嗚呼きっと私に罰が下ったんだ。
野ばらちゃんはもう赤い王子の薔薇なのに、触れようと手を伸ばしてしまったから。
でもだって触れてみたかった。こんなにも気高く可憐な薔薇は初めてだったんだもの。
王子はいつも私のことをワガママだって言うわ。誘惑に打ち勝てずにすぐに欲しがってしまう。
毒林檎に手を伸ばしたあの時と同じ。欲しいものは手に入れないと気が済まない。
そして私はすぐに嫉妬してしまうの。私だけのものにならないとイヤ。
だから王子にはいつも私一人を見ていてほしいし、野ばらちゃんにも今だけは私だけを見ていてほしかった。
私は野ばらちゃんの想い人にはなれないけれど、友達にはなれる。
ねぇ野ばらちゃんの友達は私だけで十分でしょ?他の人なんていらないわ。
あのフードの二人組なんて忘れて、私だけと友達になってよ!
ほらこんなワガママな私だから薔薇の棘が意地悪をするんだわ……。

197 :
「まあ大変!棘が指に刺さってしまったのね。ごめんなさい、私が薔薇を摘もうなんて言ったばかりに」
「ううん野ばらちゃんのせいじゃないわ。これくらい平気よ」
心配そうに覗き込んでくる野ばら姫から指先を隠そうと背中に手を回そうとした。
しかし野ばら姫は雪白姫の手首をぎゅっと握りしめてそれを阻止する。
「いけませんわ。痕が残ったら大変です。救急箱を持ってこさせましょう」
「これくらい舐めとけば治るわ」
「なら」
野ばら姫は地面に膝をつき、雪白姫の白い指先に唇を寄せた。
薔薇色の唇が指先に触れる。ぽってりとした赤い舌が傷口をぺろりと舐めた。
「ひゃ!」
ドキンと心臓が飛び跳ねた。バクバクと口から飛び出してしまうんじゃないかと思うほどだ。
雪白姫は慌てて手を引っこめようとしたが、指先に柔く歯を立てられ、動きを止める。
跪いた野ばら姫に上目遣いに見つめられ、雪白姫の時が止まった。
その表情はどこか色っぽく、挑発的な感じがした。
ううん。彼女は特に何を思って私を見上げているのではない……雪白姫は必に言い聞かせる。
野ばらちゃんは優しいから、ただただ私を心配してくれているだけよ。
けれど私は……期待してしまう。雪白姫は気分が高揚し、体中が熱くなってゆく自分を感じた。
まるで野ばら姫に口づけられた部分から血が沸騰してしまったみたい。
熱い血潮が体中を駆け巡って熱に浮かされた私はクラクラしてる。
きっと私の顔真っ赤になってる。野ばらちゃんはきっとそんな私を見て不思議に思ってる。
どうしよう!私今とてもドキドキしているわ……。
雪白姫は息を止めて、時よ止まれと祈りながら野ばら姫を見つめた。
――今は私だけの野ばらちゃんでいてほしい。というワガママな願いが通じたのか、
今の野ばら姫の瞳の中には雪白姫だけが映っていた。満開に咲き誇る薔薇の中、二人だけの世界。
野ばら姫のふっくらとした唇が白い指先から離れていく。
雪白姫は野ばら姫の唾液で濡れた指先で、そっと彼女の唇をなぞった。
その魅惑の唇がやんわりと弧を描いたところで雪白姫の指先は薔薇色の頬を撫で、滑り落ちた。
くいっと顎を持ち上げる。
「ねぇ野ばらちゃん」
「何でしょう、雪白ちゃん?」
「……キス、しても、いい?」
熱く絡み合った視線を揺らして野ばら姫はゆっくりと瞳を閉じた。
答えはなかったけど、いいんだよね?
雪白姫は高まる衝動を抑えきれなかった。
そうして美しすぎる二人の姫君の影がそっと近づいて――。


つづく。
染まる薔薇の庭園ですが百合です。
レベル低いと最大文字数の0,6倍、0,8倍などしか書き込めないようです。
あと長文を連投しまくるとレベルが下がるそうです。皆さんもお気をつけください。
何度も書き込んでしまいすみません。スレ汚し失礼致しました。

198 :
忍法帖は最近全体的に初期化されたからそれ関連かな?お疲れ様
寸止めなのは文字数調整したから…ではないな。おぬしも悪よのう…

199 :
明日は何の日か知ってる?王国で一番偉い人の誕生日!前夜祭というわけでもありませんが9レス分お借りします。
>>188の続き。せっかく女同士なんだからとドロドロさせたら歯止めが利かなくなりました。不快でしたらすみません。
野ばら姫vs青王子でばちばち。雪白姫あたふた。赤王子は空気。

「ねぇ野ばらちゃん」
「何でしょう、雪白ちゃん?」
「……キス、しても、いい?」
熱く絡み合った視線を揺らして野ばら姫はゆっくりと瞳を閉じた。
二人の影がそっと近づき、赤い唇が触れ合う直前――。
「あっ雪白姫!ここにいたのか!」
空気の読めない……いや敢えて読もうとしない青い王子の気の抜けた声が薔薇の庭園に響く。
あともうちょっとだったのにぃ!――雪白姫は思わずずっこけた。
予定不調和な王子の登場によりとんだ番狂わせを食らい、野ばら姫もため息をつくしかなかった。
そんな彼女達の元へ青い王子がしっかりとした足取りで向かってくる。
野ばら姫はまるで二人だけの秘密の花園が土足で踏み荒らされているような複雑な気分になった。
「あらどうしてこちらだとおわかりになったの?」
「雪白姫のことならどこにいたってわかるのさ。僕は彼女の王子様だからね」
青い王子は感情を隠すつもりなどさらさらないらしく、その声色からは敵愾心がありありと感じ取れた。
野ばら姫としてもそういう対応をされると応じざるを得ない。
舞台の場面をくるりと入れ替えるように、女優が仮面をすばやく付け替えるように
ゆったりとした甘い空気が、ぴりぴりとした不穏な空気にガラリと摩り替わる。
「それにしたって君は僕に来てほしくなかったって顔をしているね」
「あら当然だわ。二人で楽しくやってたのに、ねぇ雪白ちゃん」
「え、あ……うん」
雪白姫は柄にもなく歯切れが悪かった。まるで浮気現場を押さえられた間抜けな妻みたい。いやそのまんまか。
だからこそ雪白姫を責めるでもなく、相手の野ばら姫を責める青い王子が恐ろしく思えた。
私のことなんて怒る価値もないって、もうどうでもいいって思われてしまったのではないかしら。
雪白姫の不安を余所に本妻と間男ならぬ間女の今にも刃傷沙汰の起きそうなドロドロなやり取りは続く。
「私の王子はどうしましたか?」
「ああ彼女には少し荷が重すぎたようだね」
「はい?」
「さしずめ君はあの子に僕を引き留めておくように言ってたんだろう?残念だったねぇ」
「……何のことでしょう。私はただお二人の邪魔をしては悪いと思って席を外しただけですよ」
野ばら姫はゆったりと立ち上がり、膝についた土埃を払った。
口元にうっすらと笑みを浮かべて青い王子を見据える。
青い王子はその視線を受け止めて、さらに数十倍は険しい顔で応えた。
「私の王子のことは、まあいいですわ」
「そうだね。どうでもいいよね」
当の赤い王子が聞いたらきっと泣き出すであろう扱いで、二人はその存在を記憶の彼方へと投げやった。
そして仕切り直しとばかりに小首を傾げるとニコニコと会話を再開させた。
笑顔で話し合うような内容でもなかったがとりあえず体面だけでも保つつもりらしい。
「薔薇の姫君よ、君はとんだカマトトお姫様だねぇ」
「どういった意味でしょう?」
「そうやって何も知らないふりをして雪白姫を誘惑したんだろう?」
「嫌だわ。今のをご覧になっていらしたのでしょう?雪白ちゃんから私に――」
「まるで薔薇のようだ」
野ばら姫は言葉を遮られて不愉快そうに細い眉をぴくりと跳ね上げた。どうぞと先を促す。
「馨しい香りで誘って手を伸ばした瞬間、花弁の下に隠した鋭い棘で獲物を捕らえる」
「あらうふふっ。さっぱりわかりません」
「君の王子様もそうやって薔薇の塔まで誘ったのかい?」
野ばら姫の顔からすぅっと微笑が消える。
彼女の微笑を受け取ったかのように、青い王子は得意げに口角をにやりと持ち上げた。
「さぞ面白いほど簡単に引っかかっただろうね。あの子は気の毒なほど純粋だから。
あの子は君を捜し出して救ったと思い込んでいるようだが本当は逆だ。君があの子を罠にかけた」
「仰ってる意味がわかりません。あなたと話していると気分が悪いわ」
「こっちこそ君と話してると虫唾が走るよ」
氷と焔の相容れない宿命のように『乙女の愛した薔薇の庭園』は二人によって戦場へと変貌する。

200 :
ばちばち火花を散らし合う二人の間で雪白姫はまさしく本妻と間女の狭間に立たされたあばずれ女そのものだった。
いやいや未遂なんだけどっ!なんて必に弁解してみるが後の祭りである。
とにかく今にも野ばら姫に掴みかかりそうな青い王子を止めなくてはとその腕に縋りつく。
「や、やめてよ。悪いのは私なの。野ばらちゃんに意地悪しないで」
「雪白姫は彼女をかばうの?」
はたとこちらを見る青い王子の表情がまるで捨てられた仔犬のようで、雪白姫は一瞬返答に迷う。
それでも雪白姫は当初の目的を果たそうとしどろもどろに野ばら姫をかばうことにした。
「……野ばらちゃんは何も悪くないわ。私がしたいと思ったからそうしたの。未遂、だけど」
「ですってよ。うふふっ」
野ばら姫は勝ち誇った顔で笑い出した。その微笑みはまるで花がほころんだようだったが、
青い王子にはどうしてもそれが純粋なものに見えなかった。ギリギリと歯軋りをして吐き捨てる。
「小悪魔」
「野ばらちゃんは悪魔じゃないわ」
雪白姫が即座に否定するので、青い王子も意固地になって言い返す。
「いいや魔性の女だ」
身に覚えのないうちにそう振舞っているのか、はたまた知っていてそうしているのかはわからないが
野ばら姫にかかれば相手は罠に嵌められたにも拘らず、自らの意思で選んだと錯覚するのだ。
「あらやっかんでらっしゃるの?鏡をごらんになったら?嫉妬はみっともないですよ」
「聞き捨てならないな、薔薇の姫君よ。君こそ人のものに手を出すのはお行儀が悪いよ。
それとも他人のものさえも自分のものだと思い込んでいるのかな?その傲慢さはいつか身を滅ぼすだろう」
「まあ失礼しちゃうわ!気高き王女を侮辱した報いは受けていただきます」
「やれるものならどうぞ。売られた喧嘩はいつだって買うまでさ!」
赤と青。どうしても相容れない二人が眉間に皺を寄せてぐぐぐいっと睨み合う。
雪白姫は自分の行為を棚に上げて今にもおでこゴッツンしそうな勢いの二人を投げやりに眺めて考える。
どうして喧嘩するのかな。好きだから意地悪しちゃうのかしら。
……何より最初は私の取り合いがメインだったはずなのに、
いつの間にか二人のどーしようもない女としてのプライドと意地の張り合いになっている。
私を蚊帳の外に放っておいて喧嘩だなんていい御身分だわ!
雪白姫は注目を集めるべく天性の女優魂で棘に刺された指先を天高く掲げてふらりとよろめいた。
「あぁ〜ん、指がぁ指が痛むのぉおおおおお!!!!」
「まあ!」
「なんだって!?」
予想通り野ばら姫と青い王子は即座に停戦協定を結び、駆け寄ってきた。
「雪白姫怪我したの?どこで?どうして?痛くない?どう痛いの?嗚呼誰がこんなことを!」
「大げさよ……」
青い王子がこの世の終わりと言わんばかりに嘆き喚くので雪白姫はため息交じりに応じる。
心配してくれるのは正直言って嬉しいけれど、これは些かやりすぎだ。
それに本当はもう痛まない。野ばら姫に舐めてもらったから治ってしまった。
あれれ?いつも王子が「舐めてくれたら治る(キリッ」っていう気持ちわかるような気がしてきた。
やだな。変態な王子に毒されてしまったのかしら。
「薔薇の棘で指を怪我してしまったのよね、雪白ちゃん」
「うんそうなの。でもへいきよ。だからそんなに心配しないで王子」
「……君が怪我をさせたのか」
青い王子がまた喧嘩腰に野ばら姫に話しかけた。
雪白姫は一触即発の空気にまたかと首を竦めたが意外にも喧嘩にはならなかった。
「ごめんなさい……。私がお庭に誘ったばかりに……救急箱を持ってきますね」
「よろしく頼むよ。痕が残ったら大変だからね」
「はい……待っててね、雪白ちゃん」
ちらりと青い王子に冷たい視線を向けられた野ばら姫はしおらしい様子で薔薇の庭園を去って行った。
雪白姫はそんな彼女の消え入りそうな背中を見えなくなるまで眺めていた。

201 :
「だいじょうぶかい。ほら怪我したところをかしてごらん」
ふと青い王子に話しかけられて雪白姫は我に返る。
本当は痛くなんてないのに、彼女はこんなにも心配してくれる。
とても嬉しくて、同時に申し訳ない気もした。けれど心配されるのはとても心地がいいからつい甘えてしまう。
「へいきよ。王子は心配性なんだから……」
「いつだって心配だよ」
青い王子は跪いて雪白姫の白い手を取った。傷口の具合を確かめ、視線を上げる。
上目遣いに見つめられて雪白姫は先程の野ばら姫との続きを錯覚した。
違う。そうじゃない。ここにいるのは私だけの王子で、決して誰かの野ばら姫ではない。
「君はこの世界で一番美しいのだから、誰かに取られてしまうのではないかといつも心配だよ」
「……私ってそんなに信用ないの?」
雪白姫はそう言い切ってから酷く後悔した。野ばらちゃんにキスしようとした口で何を言いたいのかしら……。
王子を裏切ろうとしたのは自分なのに。信用がないのも当然だわ。
「ごめん、なさい」
「いいや僕……私こそすまない。彼女の言う通りだよ。嫉妬は見苦しいよね」
青い王子の顔がふっと泣き出す寸前のようにくしゃくしゃに歪んで、すぐに切なげな笑みに変わった。
その表情の変化が小さな胸を締め付けて、その笑みが全てを赦してくれたかのようで雪白姫も控えめに笑む。
「ううん嬉しい。好きだから嫉妬するんだものね。私もやきもち焼きだからわかるわ」
継母に似たのか、亡母に似たのか、雪白姫はやきもちを焼くのが得意だった。
何でもかんでも嫉妬すると有名なので、青い二人の城に仕える人々は雪白姫の嫉妬の対象にされないようにと
最近は明らかに青い王子を避けて通るほどだ。
といっても怖いもの知らずだか天然だか知らないがあの三人だけは避ける素振りも見せていないが。
でも彼女達にまで避けられるようになったらさすがの青い王子も泣いてしまうかもしれない。
「嫉妬する王子可愛い」
「や、全然可愛くないよ……」
頬をぽっと林檎の赤に染めて青い王子ははにかみを浮かべる。
「ウフフッそれが可愛いのよ」
「こら。大人をからかうんじゃありません」
「だってホントのことだもーん。でももう野ばらちゃんに意地悪言わないでね」
「努力しよう」
青い王子は野ばら姫の名前を出された途端に苦虫を噛み潰した顔をして頷いた。
「ね、ところで傷口はまだ痛む?」
「へいきよ。だって」
――野ばらちゃんが舐めてくれたもの。
「舐めたら治る?」
「えっ」
雪白姫が答える前に青い王子は白い指先をぱくんと咥えた。ひんやりとした舌の柔らかさが気持ちいい。
小さな胸の小さな心臓がドキドキと小刻みに鼓動を響かせる。
胸のリボンが今にも弾け飛んで中から心臓が飛び出しちゃうんじゃないかと思うほど。
雪白姫は自身を毒した熟れた林檎よりも、薔薇の姫君を百年抱いた野ばらよりもずっと赤くなる。
手を引っこめようとするが、指先をやんわりと甘噛みされて激しい電流が体中を駆け巡った。
跪いた青い王子の瞳が揺らいでその奥に雪白姫を映し出す。
挑発的で艶やかなその笑みに囚われて健気に刻み続ける雪白姫の小さな胸の小さな心臓はさらに悲鳴を上げた。
だんだん呼吸さえも侭ならなくなって、頭がクラクラふらふら酸欠状態。
喘ぐようにして肺に空気を送り込む。酸素がいつもよりずっと早く流れる血潮と共に体の隅々まで行き渡ると
雪白姫はようやっと新しい言葉を紡げるようになった。
それでも時々嘔吐いてしまい、言葉は途切れ途切れの欠片となった。懸命に口から送り出す。
「……野ばら、ちゃんと、間接キス……だね」
「!?」
よく熟れた甘い果実の薄皮に歯を軋らせるかの如く、柔らかい指先に噛みつかれて雪白姫は叫ぶ。
「いったーいっ!」
「ご、ごめ」
驚いた拍子に思い切り歯を立ててしまったらしい。
慌ただしく離れていく雪白姫の指先と青い王子の唇の間にテラテラと透明な糸が引いて、ぷつんと切れた。
雪白姫はぼんやりと残された淡い痛みの余韻に浸りながら指先を眺める。
細い指をぐるりと囲うくっきりはっきりとした歯型。とてもカッコ悪い。

202 :
「もー何してくれるのよぉ」
「だだだ、だってあのお姫様と間接キスって……」
青い王子は耳まで真っ赤にして指先で唇をそっとなぞる。
さっき照れたときよりもずっと赤くなるので雪白姫はとてもじゃないが面白くない。
「謝るのが先でしょ?」
「そだね。すみません」
「何よそのついでに謝っとくかみたいな言い方。心がこもってなぁーい!」
雪白姫はほっぺたをぷくーっと膨らませて地団太を踏んだ。
青い王子が右往左往して大仰に頭を下げる。
「もーしわけありませんでしたッ!さぞ痛かったこととお察し申し上げます」
本当はもう痛くはなかったが、雪白姫はうんともすんとも答えなかった。
白魚のような可憐な指先に歯形を付けた罪は重いのよ。少し口を利いてやらないくらいの罰は必要である。
それに野ばら姫と間接キスくらいでそんな真っ赤になっちゃって純情というか、うぶで可愛いというか。
どーして相手が自分じゃないんだろうってもやもやして、むかむかして……だから口利いてやらないの!
平身低頭のままの青い王子は雪白姫の返事がないのをカンカンに怒っているからだと受け取ったらしく、
顔をまだ誰の物語も書かれていないまっさらな紙のようにして地面に正座した。でもって頭を下げる。
「本当に申し訳ありませんでしたぁ!!」
そこまで大げさに謝らなくとも……と雪白姫は苦笑いを浮かべた。
私ってそんなに怖がられるほど普段から怒っているのかしら。
別に毎朝毎晩怒鳴り散らしてるつもりはない。ちょこっと機嫌が悪いとちょこっと八つ当たりしちゃうくらい。
……うぅ。これからはもうちょっと、ちょっとだけよ!ちょっとだけ優しくしてあげようと心に誓う。
「雪白姫の麗しい指先を傷つけてしまうとは一生の不覚。大変反省しておりますッ!」
「とりあえず土下座はやめようか」
「いいえわたくしめはこれで十分ですハイ」
「やめてよ。こんなところ誰かに見られたら恥ずかしいわ」
これではまるで雪白姫が土下座を強要しているようだ。
素早く周囲に視線を配り、誰もいないことを確認する。野ばら姫はまだ戻ってきてはいないようだ。
「いいえ女王陛下とは露知らず数々の非礼を……」
「お願い!頭をあげて、私はそういうの好きじゃないの……というか女王陛下って何よ」
いやまさに今までその通りの振舞いをしてきたことは軽く自覚はしている。
でもこの態度はなんだかおかしい。雪白姫はもう一度言った。
「お願いだから頭をあげて。立ち上がってよ」
すると青い王子は芝居じみた調子で雪白姫の足元に縋りついた。
「お許しください雪白姫さまぁ〜!」
思わず条件反射で蹴り飛ばしたくなったが、どうにか耐えるとそれを細い足から引っぺがした。
「だからやめてって言ってるでしょーが!王子ふざけてるでしょー!」
「あれ、ばれちゃった?」
「ばれちゃった?じゃないわよ、もぅー!うふふふっ!」
機嫌が悪かったはずなのに雪白姫は何故だか楽しくなって笑い転げた。
青い王子も同じように笑い転げる。二人で笑っているともっと楽しくなってもっともっと笑い転げる。
「あははっ!怒った顔も可愛いけど、君は笑っている方がずっと素敵だよ」
ああそうか。雪白姫は漸く「おかしな態度」について理解する。
王子はぷりぷり怒っている私に笑ってほしくておどけてみせたのだわ。
いつもそうしてさり気ない心遣いの優しい貴女。感謝の気持ちで胸がいっぱい。
でもそれを口に出すときっと違うって意地を張っちゃうから、私もおどけた態度で応じる。
「きゃはっ!やだぁもぅトーゼンでしょ!――ねぇ鏡よ鏡、私の王子鏡様。
怒った顔も笑った顔もこの世界で一番可愛いのは誰かしら?ウフフッ!」
「其れは貴女――《雪白姫》!」
「でしたが……」
雪白姫は青い王子に抱きついた。青い王子は身を屈めてしっかりと抱きとめてくれる。
広い背中に腕を回して、首筋に鼻をうずめるとサラサラの髪からは少しばかり汗のにおいがした。
「でしたが?」
青い王子が先を促す。雪白姫はそっと耳元で囁いた。
「今の私の世界で一番素敵なのは貴女――《私の王子様》!」
「ふふっ当然さ。私の可愛いお姫様」
そうして二人はぎゅうっと抱きしめ合って笑い転げた。

203 :
――パタパタと慣れない足取りで野ばら姫は走る。
文字通り深窓のお姫様だった野ばら姫に庭を走り回るような経験はこれっぽっちもない。
そのため何度もドレスの裾を踏みつけて転びそうにもなったが、なんとか転ぶことなく戻ることが出来た。
途中でちょっとしたハプニングにも見舞われたが今や昔の話である。忘れるに限る。
それに野ばら姫は自身の大切な王子のことを信じていた。だからきっと大丈夫。
ともかく呼吸を整えなくてはと足を止めると、弾けるような笑い声が耳に届いた。
薔薇の生垣の向こうを覗き込むとむぎゅーっと互いを抱きしめ合った雪白姫と青い王子が笑い転げている。
「あらぁこれはこれはお二人とも抱き合っちゃって。お熱いようで結構ですこと」
「あっ野ばらちゃん!」
雪白姫は野ばら姫の嫌味をスルーする。もしかすると純粋無垢すぎて理解出来なかったのかもしれない。
(野ばら姫は少し思い違いをしているが雪白姫は彼女が思っているほど無垢ではない)
無邪気な笑顔で野ばら姫を見返った雪白姫とは正反対に背中を向けてた青い王子はがっくりと肩を落とした。
随分な歓迎ではあるがそれは当然の対応でもある。
せっかく二人きりで楽しくやっていたのに邪魔が入れば誰だってがっくりするものだ。
野ばら姫もついさっき経験したばかりだから、青い王子の落胆具合は我が身のことのようにわかる。
図らずも先程とは立場が完全に逆転した。これは幸いだと野ばら姫はほくそ笑む。
やられっぱなしで大人しく引き下がるようなどこぞの夢の王国のお姫様とは違うのだ。
やられたらしてやり返す!気高き王女に喧嘩を売るなんて傲慢なのはお前の方よ!が野ばら姫のモットーである。
清楚で上品な見た目からは考え付かないが意外と気が強い姫君なのだ。
「まあ雪白ちゃんの王子様ったら私には来てほしくなかったというお顔をなさってますわね」
「いやそんなことは……」
どうしたことだろう。先程とは打って変わって青い王子はしおらしく俯いてしまった。
野ばら姫はあまりにも拍子抜けな態度をちょっぴり残念に思った。
久しぶりにスリリングなやり取りが楽しめるかと思いましたのに……。
最近のアルテローゼはめっきり丸くなってしまって、口喧嘩をする機会もなかなか無くなってしまった。
そんなアルテローゼも可愛いし、勿論喧嘩などしない方がいいに決まっているが、
いつも仲良しこよしというのは飽きもしないが少々面白みに欠ける。
野ばら姫はこう見えてスリルな非日常に飢えているのであった。
それは誰もが持っているちょっとした好奇心。しかしその好奇心が仇となり、
野ばら姫は行くことを禁じられた薔薇の塔に興味本位で上った挙句、百年もぐっすり眠っていたわけだが……。
――あら気高き王女に自業自得だなんて言いませんよね?
塔に興味を抱いて上ってしまったのは呪いによって定められた運命なのですから逆らいようがありません。
ほら。ですから私は自業自得な姫君ではありませんわ。
……それはさておき。
「喧嘩再開かと思いましたが、どうやら雪白ちゃんの王子様は調子が変わってしまったようですね」
「喧嘩はだめよ」
雪白姫が喧嘩という単語に反応して野ばら姫達の間に立ちはだかる。
もっとも雪白姫が主張したいのは『喧嘩ダメ。ゼッタイ』ではなく、
『私を仲間外れにして二人だけで盛り上がるなんて何様のつもりぃ?』なのだが
それに関しては野ばら姫も青い王子も気づく由もなかった。
というか青い王子にそこまで思考回路を割く余裕はなかった。
そういえばすっかり忘れていたが雪白姫の言う通り今は喧嘩どころではない。
野ばら姫は傷口が痛いと泣く雪白姫のために外したくもない席を外したのだから、
他の何を投げ打ってでもその手当てが先決である。そう、大切な王子を差し置いてでも。
「さぁ手当てをしますから指を見せてくださいな、雪白ちゃん」
「え。あ……えと」
何故か雪白姫がうろたえ始める。野ばら姫は怪訝に思い、膝をついて彼女の手を取ろうと腕を伸ばす。
しかし野ばら姫の手はピシャリと激しい勢いで振り払われた。
どうしてそうされるのかがわからず、泣きたい気持ちになる。
「ごめんなさい……何かお気に障りましたか?」
「ううん。あの、あのっ」
雪白姫は何か言いたげに口をぱくぱくさせて、でも何も言わずに怪我した指先を背中に隠した。
これには野ばら姫も、いいや神様でもない限りお手上げだった。
『くっきりついた歯形が恥ずかしくて指を見せたくなかった』とは誰も思いつかないだろう。
「もう大丈夫なの。痛くなくなったの」
「そうですか。ならいいのですけど……」
釈然としないが納得するしかない。

204 :
それにしても困りましたわ……と野ばら姫は失望からため息をついた。
姉は甲斐甲斐しく世話を焼き、妹を手当てしてさしあげようと考えていましたのに。
だからこそ青い王子の冷たい視線に応じて素直に引き下がり、救急箱を取りに帰ったのだ。
そう。野ばら姫は例えばこんな感じの手当てを想像していた。
『さぁ指を見せてくださいな』
『うんっ!』
純粋で素直で可愛い雪白姫が手を差し出す。野ばら姫はついでに反対側の手も取り、自らの腕に触れさせる。
『消毒液が滲みたら私の腕をぎゅっとしてくださいね』
『うん……あっ。あうぅ……』
雪白姫は大きな目元を潤ませて今にも泣き出しそうに野ばら姫の柔らかい腕に爪を立てる。
それでも野ばら姫は努めて笑みを浮かべ、雪白姫を安心させようと治療を続ける。
全身に滲み渡るような傷口の痛みとほんの一瞬爪を立てられるくらいの痛み。
全く違う痛みだけれど、それを与えることで雪白姫の気持ちが少しでも落ちつくのなら甘んじて受け入れよう。
――違う。痛みではない。矛盾しているようだけど、雪白姫から与えられる痛みは痛いが痛くはないのだ。
『最後に包帯を巻いて……はいこれでおしまい』
『ありがとう野ばらちゃん!』
雪白姫は長い黒髪を揺らして嬉しそうに包帯の巻かれた指先を天に翳した。
野ばら姫も嬉しくなって誇らしい気持ちで言う。
『どういたしまして』
『野ばらちゃんの腕に爪立てちゃってごめんね。痛くない?』
まぁ……私のことまで心配してくださるなんて雪白ちゃんはなんて優しい方なのでしょう。
だからこそ私は彼女のことが気になってしまうのだわ。愛でて可愛がってもっと傍に置いておきたい。
『痛いなら今度は私が舐めてあげるね』
『あっいけませんわ、雪白ちゃん。私には王子という心に決めた方が……あぁん!』
血潮のような唇から真っ赤な舌がチロリと覗いて劣情を掻き立てる。
身を乗り出した雪白姫がそっと野ばら姫の柔い二の腕を舐めて(長くなるので以下略)
ぽわんぽわ〜ん。
「うふふ、ふふっ」
そうして野ばら姫は前回の青い王子を笑えないような妄想劇を繰り広げ終えた。
まあどれもこれも予定不調和な王子の乱入と雪白姫の拒絶で泡と消えたわけだが。
「せっかく持ってきてくれたのにごめんね」
「いいえ早く良くなってよかったですわ」
野ばら姫の視界の隅でちらちら青い影が蠢く。
どうにか視界に入れないように無駄な努力をし続けたがそれは土台無理な相談だった。
蠢く影――青い王子はもじもじといじらしく野ばら姫を見つめていた。
熱い視線を向けられた野ばら姫は困惑と同時に薄気味の悪さを覚える。
失礼な言い方ですけどよくわからない人だわ。つい今し方まで私を露骨にライバル視してたのに……。
――でも仕方ありませんわね。私は美しいのですから見惚れるのも当然。
……えっ?自分で美しいだなんて傲慢?私を傲慢なんて言う方が傲慢なのよっ!
「あの、私の顔に何か付いてますか?」
「……え。ああいや」
野ばら姫の問いかけに青い王子は要領の得ない答えしか返さなかった。
ただ視線が野ばら姫の大きな瞳からすっと落ちて、ぷっくらとした唇へと移動するだけ。
――こ、これも仕方ありませんわね。だって私の唇は王子がいただきますしちゃうほど魅力的なのですから。
ですけど王子以外の方にこの唇を譲るつもりなどありませんわ。
……雪白ちゃんにでしたら、少し考えますけど。
「何か御用ですか?黙って見てるだけなんて失礼ですよ」
「……」
それでも何も答えない。普段から一緒にいる雪白姫から見てもそれは異様な姿なのか、一瞥すると鼻で笑う。
「なぁにその顔。まるで恋する乙女みたいねぇ?」
恋する、乙女?と野ばら姫は暫くの間、目をぱちくりさせてふと思い出す。
ああ、そういえばこの人も女の人でしたっけ。こんななりだと忘れてしまいそうになりますけど。
いや寧ろずっと忘れていたかったような気がしないでもないが。
青い王子が頬を赤らめてよろめいた。まるで淑やかなご令嬢といった風情で甘いため息をつく。
「はぁん、これが恋……なんてことだ……」
「ごめん。恋じゃなくて変だった」
青い王子の耳には雪白姫の訂正は届いていない様子で、ため息をつき続けていた。
ため息をつくたびに花が一輪咲いていくのなら、足の踏み場もないほどだろう。

205 :
ぽやんと夢見がちな瞳をした青い王子はブチッと勢いよく薔薇を手折った。
乙女にあるまじき腕力だったが、気分はひたすら乙女ちっくに花占いを始める。
「こい、コイ、恋……彼女は私を好き、嫌い、好き、嫌い、好き……」
「へん、ヘン、変!!野ばらちゃんは貴女を嫌い!嫌い!嫌い!嫌い!!」
雪白姫が負けじと声を張り上げる。
恋する乙女だなんて言い始めたのは雪白姫だったが、今はもう正直後悔していた。
ちょっと茶化しただけのつもりだったのに本気にするんだから……もぅ!
今朝の不安が頭をよぎる。もしも王子が薔薇のお姫様のこと好きになっちゃったら……そんなの絶対に嫌!
「変だとか恋だとか言われても困りますわ」
もし仮に青い王子が野ばら姫を好きになったとしても、相手にその気がなければ成立しない。
その点、野ばら姫は全くその気などなかった。恋する乙女を出来得る限り視界から除外して雪白姫に訊ねる。
「いったいどうなされたのでしょう」
「いつものビョーキだから気にしないで」
「病気ですか。それは伝染る類のものですか?」
雪白姫は答えなかったが、蜘蛛の子を散らすようにそそくさと野ばら姫と競いながら離れて行った。
これにはさすがに青い王子も現実に引き戻されたようでムッとして応じる。
「僕をバイキン扱いしないでもらえるかなっ!」
「間接キスくらいで舞い上がっちゃう方がどうかしてるのよ!」
「だって初めてなんだもの」
「ハァ?私とのキスはカウントされてないの?今日だって林檎はんぶんこで間接キスだったじゃない!」
「直接キスする相手との間接キスは特にときめかない」
威勢のよかった雪白姫は一瞬口ごもった。けれどすぐさま調子を取り戻して応じる。
「そ、そうよね。私達は今更間接キスで騒ぐような子供じゃないものね」
「背伸びしなくていいんだよ。雪白姫は本当はドキドキしちゃったんだよね?」
「うるさいっ!違うもん。ドキドキだわ……なんて思ってないもん!子供じゃないもん!」
ちっちゃな雪白姫が駄々をこねる子供のように手足をばたばたさせて、長身の青い王子の胸板を叩く。
まな板、もとい胸板呼ばわりはさすがに失礼だが、とにかく雪白姫は青い王子をぽこすか殴った。
「間接キス……?」
野ばら姫は青い王子の唇と雪白姫の指先を交互に見やり、そして自らの薔薇色の唇に触れた。
もしかして雪白姫の指の傷を舐めたから?その後、彼女も同じようにしたのだろうか。
だとしたら確かに間接キスに違いない。
だからといってそのように恋だとか変だとか言われてはこちらも「変」に意識してしまう。
野ばら姫が奇妙な動悸に襲われていると、ぽかぽかされていた青い王子がふいにこちらを向いた。
思わず心臓が止まってしまいそうになって、胸をぎゅっと押さえる。
「よく考えてみれば間接キスということは君も雪白姫の指を舐めたということか」
「……はい。いけませんか?」
「いけないに決まってる!」
本当に変わり身の早いことで、青い王子はまたまた喧嘩腰な態度に様変わりした。
間接キスの淡いときめきよりも何よりも雪白姫が大切ということらしい。
雪白姫の独占欲も相当のものだったが、青い王子の独占欲も負けてはいなかった。
いつまでも乙女ちっくを引っ張られては対応しにくいので助かったと言えば助かったが、
そちらから誘った癖して、こちらが釣られて「変」な気持ちになったら
ハイやっぱりどうでもいいですなんて切り捨てられるのは……野ばら姫としては少々釈然としない。
別にこれといって何か期待をしていたわけではありませんけど。
「ですが雪白ちゃんが舐めたら治ると仰ったのですよ」
「えっ。僕が舐めたら治るといっても舐めてくれない雪白姫が?」
「そうですよ。ね、雪白ちゃん」
「あ、うん」
突然話を振られた雪白姫は声を裏返しながらも頷いた。青い王子が目を輝かせる。
「雪白姫……漸く理解してくれたんだね!じゃあ次からは舐めてくれるんだね!」
「絶 対 舐 め な い」
「彼女には舐めさすのに?……ハッ僕が舐めろということか!」
「違うわ!だって王子の言う「舐めれば治る」って絶対舐めても治らないもん」
「なおるよ!」
「その頭の悪さや特殊な性癖が舐めて治ればいいのにねぇ?」
「ぐぬぬ……」
どう足掻いてもこの件に関しては雪白姫に口では勝てないと判断したらしく、
青い王子は主人に従う犬のように大人しく引き下がった。

206 :
引き下がったはいいが気持ちに収拾がつかないらしく、
青い王子はその矛先を野ばら姫に向けることでどうにか気を落ちつけようとした。
「よくも雪白姫の指を舐めてくれちゃったな!」
「いけませんの?唾液中には細菌が沢山いますけど、消化酵素なども含まれますから
いくつかの細菌に対しては消毒効果があると思います。先達の知恵ですね」
「ぐぬぬ……」
意外にもまともな答えが返ってきて青い王子はまたしても対応に窮した。
何も言えなくなった青い王子を尻目に野ばら姫は心の内でひっそりと付け足す。
(――それに傷口を舐めるのは相手の気の引く手っ取り早い手段だとアプリコーゼさんに教えて頂きましたわ。
なので試してみましたけど、余計な人間の気も間接的に引いてしまったようですね……)
野ばら姫は一通り思案し終えてため息混じりにひとりごちた。
「はぁ。楽して気を引こうとしてもなかなかうまくいかないものですわね」
「そんな杜撰な計画、うまくいく方がおかしいんだよ。あはははっ!」
すると青い王子がなんとも絶妙なタイミングで合いの手を入れ、高らかに笑いだす。
なので野ばら姫も同様に艶やかなルージュの笑みを浮かべて頷き……
「ですわねぇ……って、はいぃ?」
えっえっ。ど、どどど、どうしてこの人は「そんな杜撰な計画」などと言えるの?
あの計画は誰にも知られていないはずなのに……。
雪白姫に助けを求めようとじぃっと見つめてみるが、彼女は僅かに上気した頬で視線を逸らした。
彼女の代わりに青い王子が肩を竦めて答える。
「全部口から出てるよお姫様」
「え?」
「傷口を舐めるのは相手の気を引く手っ取り早い手段だとアプリコーゼさんに――」
声を裏返し口調まで真似されて台詞を繰り返される。ザァッと全身から血の気が引いていくようだった。
野ばら姫は真っ白になった頭を懸命に回転させて答える。
「あらん、いやですわ……。私ったらおかしなことを口走っていたようですわね。
きっとどなたかに操られてたか、黄昏に目覚めたもうひとりの私がお喋りしてたのでしょう」
「ごまかせてないよ」
「うっ……」
野ばら姫は悲しいかな、何も言い返せなかった。
それをいいことに青い王子は鬼の首でも取ったかのように勇ましく続ける。
「薔薇の姫君よ、やはり君は雪白姫の気を引こうとしていたわけだ!
彼女が怪我をしなければ、わざと怪我をして構ってもらう心づもりだったんだろう?」
ピシャリと人差し指を向けられた野ばら姫はその手を払いのける。
「聞き捨てなりませんわ。私はそのようなことは決して……」
「百年眠っていたのもあの子や両親やフードの二人組や誰かの気を引くため。とんだ構ってちゃんだな!」
「な、なんですって。それはさすがにありえませんわ!」
「だったら雪白姫の気を引こうとしてたくだりはありえるんだ?」
「……えっと」
野ばら姫は言い淀んだ。雪白姫の気を引こうとしたことは否定出来ない。
でも特殊な性癖のどこかの誰かさんと違って、気を引いてどうこうと考えていたわけではない。
ただ純粋に……純粋に、仲良くなりたかった、だけ。だと思いたい。必になって自らに言い聞かせる。
「百年眠っている間にどれだけの人間の気を引いたのだろうね」
「……それは」
野ばら姫は眠りながら見続けていた夢を思い起こす。
それはいつか運命の相手がやってきて、目覚めの口づけをくれる夢。
はやく来てほしいと切望するあまり、私の願いは、私の意識は、眠っている私の体を抜け出して
人々に素晴らしい噂を唄って聞かせたのではないか?そんな不安が頭をよぎる。
何故なら野ばら姫は確かに覚えていた。
微睡みの森へ迷い込んだ王子の傍でそっと薔薇の塔で眠り続ける姫君――自分の伝説を唄ったことを。
そして私は笑いながら王子を誘った。迷いの霧も棘の生垣も操って導いた。
きっと青い王子の言っていることは事実なのだわ。私はそうして王子の気を引いた……。
「で、ですけど無意識のことですから」
「無意識の方が褒められたものではないのだが」
意識してそうしたのならかなりの腹黒ちゃんだし、無意識ならば天然ものの小悪魔ちゃんである。
どちらがより悪いかなんて一概には言い切れないが
無意識で誘い受けな小悪魔ちゃんほど恋愛においてやっかいなものはいない。

207 :
「そういうあなたこそどうなんです?」
やられっぱなしで引き下がるような姫でないことは先ほど説明したとおり。
やられたらやり返す!野ばら姫の特性が発動した。
「本当は雪白ちゃんを一途に想っているのに、怒られたくて浮気性な自分を演じているのではありませんか?」
「は、はぁ?おかしな言いがかりはやめてもらえないかな」
よもや話を振られるとは思ってもいなかったらしく青い王子の声が不自然に裏返った。
動揺を押し隠そうと胸元の合わせ目をキュッと強く握りしめる。
「あーこの子可愛いなぁなんて言うだけで雪白ちゃんはすぐに嫉妬してくれるのですものね。
好きな人に嫉妬してもらえるというのはさぞ気持ちがいいことでしょうね」
「嫉妬以上にお仕置きが怖いけど」
「あらそのお仕置きを楽しみにしていらっしゃるんでしょう?」
「……まあ否定はしない」
にへらっとだらしなく緩みきった顔で青い王子が応じた。その表情が全てを物語っている。
「人のこと笑えませんね」
「はっ」
青い王子は飛び上がると慌てて表情をキリリッと正した。いくら改めて爽やかそうな笑顔を浮かべたところで
さっきのデレデレ顔が野ばら姫の脳裏から消去されることはないし、忘れてやるつもりもなかった。
「まさか。別に構ってほしくてわざと変態をやっているわけではない」
「生まれ持っての性質という方がうんざりなのですけど」
へらへらと笑いながら和やか?に会話していたと思いきや二人は再び視線を切り結んだ。
相容れない二人のやり取りの裏で雪白姫はずっと歯型のついた指先を見つめ続けていた。
間接キス……かぁ。そういえば野ばら姫とは「未遂」だったのよね。
この指先を舐めれば、間接キス、になるのかな……。
どきどき。どきどき。直接キスする相手との間接キスはときめかないと雪白姫の王子は言うけれど、
雪白姫はそんなことは決してなかった。そういうのにときめいちゃうお年頃なのだ。
この指先を舐めれば、間接キス、になるのかな……。
どきどき。どきどき。野ばら姫と王子と私……おかしな三角関係。ん、そういえば。
「雪白ちゃん、指を見つめてどうしたの?」
「まだ痛むのかい」
「あっううん。痛くないのよ」
ふっと野ばら姫と青い王子は可愛らしい小動物を見るときのように目を和ませた。。
「もしかして間接キスしたいとお考えになりましたか?」
「ふふっ可愛いね。そんなに私とキスがしたいのならおねだりすればいいのに」
「いいえ。雪白ちゃんは私とキスがしたいのだと思いますわ」
「なんだと」
「あらあら受けて立ちますわよ」
またしても青と赤、氷と焔のように相容れない宿命の二人の間にばちばちと火花が散る。
雪白姫は呆れかえると同時についさっき思い出した疑問を投げかけてみた。
「そういえば野ばらちゃんの王子様はどこに行ったの?」
「……」
「……」
二人はまた顔を見合わせた。ちらちらと視線で何やら押し付け合い、
やがて雪白姫に向けてぎこちなく笑みを浮かべた。
「さあ。私は存じません。如何したのでしょうね?」
「僕も知らないな。ああ本当に全く何も知らないな」
「……あやしい」
野ばら姫と王子と私と時々もう一人の王子……→物語は続く→


前回は雪白姫と野ばら姫、今回は野ばら姫と青王子、雪白姫と青王子の組み合わせを書いたので
次は雪白姫と赤王子辺りを書いてみたい。が、赤王子は行方不明です。
間接キスの話書いてる最中にBGMに流してた変ゼミで間接キスの話をやり始めたのには思わず運命感じた。
明日は王国で一番偉い人の誕生日!皆さんも良い一日を!
後記。この間Pixivは挫折したと書きましたが挑戦してみたら意外と簡単でした。
試しに短いのを二つあげてみました。長いのはシリーズ設定周辺が難しくて勉強中です。

208 :
構想シーンは出てるけど内容はKAORIとYUUKIなんだ
しかし、それが出るのは横浜アリーナ公演終わってから書いていい?

209 :
>>208
自分は大歓迎だ

210 :
かおりが王子…だと…?
おいおい…いやもうなんつーか…おいおい

211 :
KAORI王子は他の会場にも来てくれるよね!
YUUKI白姫も期待していいよね!いやYUUKI白姫にはあまり期待しないで期待しておく…
千葉公演見に行ってないのでみくにさんのキャラを掴み兼ねてますが勢いだけで少し書いてみました。
ゆうかお?かおみく?ゆうちゃんがちょっと嫉妬しちゃうお話。9レス分お借りします。

かおちゃんが千葉の公演でみくちゃんと薔薇の塔で眠る姫君を歌ったらしい。
練習でやっているのを見かけたから歌うかもしれないというのはわかってはいたけど、
初っ端からやられるとなんだかフクザツである。
もしも王子がかおちゃんの十八番になっちゃったらどうしよう……。
いつか私の目の前でみくちゃんのこといただきますしちゃうのかな。
なんだか心配になり、手帳を取り出して各公演の出演表をチェックしてしまう。
「うーん……」
「どうしたのゆうちゃん?」
「あっかおちゃん!に、みくに、さん。一緒に練習しに来たんですか?仲良しですね」
いけないとわかっているのに嫉妬心がめらめらと燃えあがり、つい辛辣に接してしまう。
どうせなら私を誘ってくれればよかったのに。
スタジオに来る前にデート……じゃなくて二人きりお買物したかったし、お喋りだってもっといっぱいしたい。
みんなの前じゃ出来ない話だってある……。変な意味でなく。
「入り口で偶然一緒になったの」
天然なのか、みくちゃんは私の嫌味をさらっと受け流した。
それとも年長者の余裕だろうか。はたまた自分の方がかおちゃんと仲がいいのよという余裕?
……だめだ。気持ちが落ち着かないよ。
「そういえばね、昨日みくちゃんの野ばら姫と一緒に歌ったんだ!ね、みくに姫!」
「ええ、KAORI王子。会場も大盛り上がりでとてもドキドキだったわ……」
「女将ローゼも最っ高でみくにコーゼも格好いいし……ってゆうちゃん聞いてる?」
「……聞いてるよ。てか私練習したいから後でもいい?」
「あっゆうちゃん!」
ぷいっとそっぽを向いて二人から遠ざかる。
自分でも性格悪いって思うけど、あれ以上聞いてたらもっと酷いこと言っちゃいそうで怖かった。

212 :
「もーっ!ゆうちゃんったらどうしちゃったんだろ。いつもはみくちゃんのことみくちゃんって呼ぶのに
今日は珍しくみくにさん呼びだったし、何かあったのかなー」
「私はなんとなく気持ちがわかるような気がする」
「えっどんな気持ちですか?」
「……ふふっかおちゃんって鈍感さん」
「そうでもないですよ!」
そういうところが鈍感なんだよ。私の気持ちに気付いてよ!
思わず二人の会話を盗み聞き。楽しそうにしててやっぱり気分はフクザツ。
「そーだ!練習に付き合ってもらえませんか。昨日王子パートを歌ってみて気付いたことがあるんです。
それを試してみたくって……ええっと楽譜はどこだったかなー」
まさか私の目の前であの「いただきます」の練習とかしちゃうつもり?
やだやだ。そんなの見たくないよう……。
で、でも二人の様子も気になるし、かおちゃんの王子様も見てみたいし……うぅ。
誘惑に負けて楽譜越しにこっそりとそちらを見る。
ちょうどかおちゃんががさごそと鞄を漁っているところだった。
……先程は気付かなかったが鞄に新しいブローチがついている。
見たことがない「それ」はみくにさんの鞄にもついていた。
二人は私の知らぬ間にお揃いのブローチをつけるほど仲がよくなったらしい。
ドラマや舞台で恋人同士の役を演じると役だけでなく本人達もそういう気分になってしまうとよく聞く。
もしかして二人もそうなのかな。お姫様と王子様の気分になっちゃったの?
私の王子様になってよ!なんて勝手なことは思ってないけど(そりゃ女の子だから少しは憧れるけど)
でもかおちゃんが他人の王子様になっちゃうのはイヤだ。
「それならもう少ししたらちょうどいい人がくるからその人に頼んで」
「誰ですか?」
もしかしてみくにさんは私のこと言ってる?
ドキドキと期待してもう一度彼女達の方を見返るが、二人は全く別の方向を見ていた。

213 :
……一体誰が来るというの?
もしかして次は別の人とかおちゃんのラブシーンを見せつけられるの?そんなのってないよ!
東京公演が控えてるから今日はいつもより長く練習しようと思っていたけど、
もうここにはいられそうになかった。だってそんなの見せられたら頭が爆発しちゃう!
ううん、きっと周りの人に当たって私すっごい嫌な子になっちゃう。
そして嫌な子になった私をかおちゃんは嫌ってしまう……だからもう帰ろう。
荷物をまとめているとそこへみきちゃんがやってきた。
「ゆうちゃん帰っちゃうの?」
「ちょっと用事を思い出したんで帰ります。私の分は一通り練習出来ましたから」
「でもまだ一曲だけ合わせてないでしょ。今日はじまんぐさんもいるし」
「?」
でも私が受け取った楽譜は全て終わらせたはず。首を捻っているとじまんぐさんまで引き留めに来た。
今日の練習が終わったら奢ってあげるから飲みに行こうと誘われる。
魅力的な提案ではあるがそういう気分ではないので丁重に断っているとスタジオの入口が開いた。
みくにさんの表情が明るくなり、否が応にも例のかおちゃん王子にぴったりな相手役が来たことを知る。
はやく帰らなきゃ!
楽譜の詰まった大きな鞄を掴むとかおちゃんとお揃いのキーホルダーが揺れた。
いつかのイベントでファンの方に貰った朝と夜のキーホルダー。
でもかおちゃんは今はもうつけてないのかな……。
もしそうだったら一人だけでつけてるのも寂しいから贈ってくれた方には悪いけど外しちゃおうかな。
そんな感傷的な気分に浸っているとみきちゃんに腕を掴まれた。
「もう少しだけ、ね?」
「でも」
私は咄嗟にかおちゃん達を見やったが二人は私のことなど知らぬようにお喋りしていた。
……まるで遠くの人になってしまったみたいだ。
これからどんどん人が増えていって、私達はどんどん離れていくのかな。
かおちゃんも私も色々なところで色々な人と出会って、そうして二人の距離がどんどん遠くなっていく。

214 :
そんなことを考えているとスタジオの扉がいきなり開いた!
「陣中見舞いに来たよ!みんな甘いものほしいんじゃないかと思ってじゃーん!」
入ってくるなり、その人はプリンやゼリーで有名なお店の箱を掲げる。
丁度疲れていて甘いものを体中が欲していたため、スタジオ内が一気に盛り上がった。
それになんだかんだ言ってみんな甘いものが好きなのだ。
「きゃーっ!やったー!」
「私は抹茶プリン!ありますよね?」
「一通り買ってきたからダイジョブ」
わらわらと集まってきたみんなに箱を奪い取られ、手持無沙汰になった彼女をみくにさんが歓迎する。
勿論みんなも歓迎していたわけだが、この状況では彼女本人というより甘いものを歓迎したようになってしまっている。
「よかった。お待ちしてました、ゆめさん!」
「みく元気だった?」
「元気です!」
きらきらと輝いたみくにさんの目を見て、私は今までの嫉妬がお門違いだったと思い直す。
かおちゃんも王子様だけど、みくちゃん――というか野ばら姫の本当の王子様はやっぱりゆめさんなのだ。
「あっゆめさん!その節はお世話になりました」
「かおちゃんも元気だった?」
「はいっ!ゆめさん、今日もサイコーに格好いいですね!」
「そ?アリガト」
ん、かおちゃんは個人的にゆめさんと会ったことあるんだ?
むむむっ。今度はこっちに嫉妬してしまいそうだぞ。

215 :
「そういやみく、待っていたってジブンを?何か用でもあった?」
「今日はメンバーが集まったんで例の練習をしようって陛下が」
みくちゃんがちらりと視線をやった先には我先にとプリンを食す陛下の姿があった。
スプーン咥えてもぐもぐしちゃって可愛い。
レコーディングや練習のときは怖いこともあるけど、こういう姿をみるとふつーのお兄さんである。
陛下は食べるのに必なのか、手をひらひらさせてみくちゃんを促す。
「私が説明するんですか?……まあ話せる機会が増えるからいいけど」
「ん、何か言った?」
「いいえ!あのですね、かおちゃんに王子のパートを教えてあげてほしいんです!……って陛下が」
「えっでももうこの間教わりましたよ」
みんなと額を突き合わせてプリンの奪いっこをしていたかおちゃんがこちらにやってくる。
「手取り足取り個人レッスンでね?」
「はいっ!本当にお世話になりました!」
「初々しくて可愛かった」
「やめてくださいよ」
ゆめさんの発言にかおちゃんがデレる。一瞬スタジオ内がさざめきだった。
↑嗚呼でもたぶんそれは気のせいよ↑
なんだかんだで女の子は王子様キャラが好きだからなぁ。ゆめさんのことが気になるのも無理はない。
だからこそ王子を演じたかおちゃんが心配でもあるのだけど……。
「ジブンに教えられることはかおちゃんに全て教えたつもりだよ」
「教わったつもりですっ!」
心なしか二人の立ち姿までしゃらんと王子様ちっくになっているような気がする。
王子様然とした二人が顔を見合わせて首を捻っているとプリンを幾つか持ったみきちゃんがやってきた。
「ゆめさんも食べます?私のおすすめは夏らしくマンゴープリンなんですけど」
「いやジブンは……」
「そうですか……あ、それで練習の話でしたね」
「何を練習するんです?」
テーブルに楽譜を広げてかおちゃんは不思議そうにした。
「野ばら姫の歌はもう教わりましたし、あっもしかして私がゆめさんの曲を歌うの?輝きは君の中にとか?」
「かおちゃんならきっと格好良くキメるだろうね」
「いやいやゆめさんにはかなわないですよー」
「そうじゃなくて。かおちゃん楽譜もらってないの?」
みきちゃんが一組の楽譜を示す。かおちゃんは「もらってない」と口を窄める。

216 :
「へーか、もしかして私の分忘れちゃいました?」
「そうかも。これがKAORIの分ね」
陛下から楽譜を受け取り、かおちゃんはそれをぺらぺらと捲り、そしてタイトルを確認する。
何度か繰り返して陛下を食い入るように見つめた。
「こっちも歌っていいんですか?」
「ウン」
「じゃゆめさんに教わらなきゃ」
「おう!また手取り足取り教えてあげる」
ざわっ……。スタジオ内がまたさざめき立つ。それを知ってか知らずか、ゆめさんは続ける。
「でもこっちの姫君は誰がやるんです?ともよ姫はいないでしょ、陛下」
「もぐもぐ。らから、ううきえあうdn」
「うんそうだね。ちゃんとごっくんしてから喋ろうね」
「……ごっくん。おかしいな。きちんと姫に楽譜渡しといたはずだけど」
ざわざわ……女性陣が挙って楽譜を捲り始める。しかし誰もが首を捻った。
誰も受け取っていないらしい。
私はもう帰る準備が済んでいたので楽譜は開かなかったがそんなもの受け取っていないことは確かだ。
もしそうなら陛下に王子役は誰ですかって真っ先に聞きに行ったもの。
「あっまた忘れてた」
「あれま」
「もぅうっかりさんなんだから」
「へーか!怒るよ!」
女性陣に怒られて陛下は小さくなりながらも「硝子の中で眠る姫君」の楽譜を持って彼女達の前へ。
期待なんてこれっぽっちもしてなかったけど、雪白姫を歌うのは自分じゃないんだって私は少しへこんだ。
トーゼンだよね。私とともよちゃんじゃ違いすぎるし……。
目を爛々と輝かせてれみちゃんが手を出すも陛下はそこを通り過ぎた。
がっくしと項垂れるれみちゃんをみきちゃんがよしよしする。
「誰だったかなー?」
「陛下遊ばないでください!」
「いやいやゴメンゴメン。そーいやこの楽譜はYUUKIに渡すんだった」
「……えっ私ですか!?」
「ウン。どうぞYUUKI白姫」
「ギャグですか?」
「お似合いだと思うよ。……KAORI王子と歌いたいでしょ?」
気を遣ってくれたのか、陛下は後半を小さな声で囁くようにして言ってくれた。
私は頬に手を添えてコクコクと全身を真っ赤にして頷く。

217 :
「ゆうちゃんがお姫様か。なら仕方ないわね」
「ねーゆうちゃんとかおちゃんならねー」
女性陣が顔を見合わせて何やら納得したように頷き合った。
納得した彼女達を余所にゆめさんは一人で不思議そうにしている。暫くしてぱたんと手を合わせた。
「そうか!ゆうきちゃん、かおちゃんのこと好きなんだ?」
「!!!!」
「ゆめさんハッキリと言い過ぎ」
「あっごめん」
「私もゆうちゃんのこと好きだよ!」
「……かおちゃん!」
嬉しくなってかおちゃんにぎゅーっと抱きつく。
「よしよし」とかおちゃんの腕が私の後ろに回って、ぽんぽんと子供をあやすときのように背中を撫でた。
それが心地良くてもっともっとぎゅっぎゅーってする。
するとかおちゃんももっともっともっとぎゅっぎゅっぎゅーってしてくれる。
その続いていく応酬が今はとても嬉しく気持ちを落ち着かせてくれた。
「ふぅ……プリンも食べ終わったし練習しようか」
プリンの器とスプーンをゴミ袋に放って陛下が立ち上がる。そしてこちらを一瞥して一言。
「ほらYUUKIもKAORIもそんなにくっついてたら練習できないだろうが」
そう指摘されて私は初めて人前なのにかおちゃんに抱きついてしまったことに気付いた。
気が高ぶって思わずぎゅーっとしてしまったけど、みみみ、みんなの前だったなんて……恥ずかしいよう。
離れようと腕を突っ張るがかおちゃんはなかなか離してくれない。
私も離れたくないのはわかるけど、これじゃお仕事にならないという陛下の言葉もわかるので
悲しいけれどどうにか強引に引き剥がした。かおちゃんがしゅんとして、すぐに陛下に口をすぼめて言い返した。
「えーもうちょっとくらいいいじゃないですかー。というか私まだプリン食べてないです!ゆうちゃんも!」
「僕は食べ終わったから練習再開する」
「横暴ですよ、へーか!」
「何とでも言え。ほらさっさと楽譜開いて!MIKIも準備はいいかい?」
「はい!プリンは名残惜しいですけど」
「君達はさっきからそればかりだなぁ」
「陛下はプリン食べてご満悦でしょうけど私達はまだ食べてませんから」
ちくちくプリン食べてない攻撃が功を奏したのか、陛下は肩を竦めて全員に着席を促した。
「じゃプリン食べ終わったら練習再開ということで」
てっきり全員で一休みするのかと思ったが陛下は忙しいらしくスタジオを出て行ってしまった。
練習再開前には戻ってくるつもりらしい。
私達はそれを見送って早速プリンの箱を覗き込んだ。

218 :
「ゆめさんはどのプリン食べますか?私のおすすめはマンゴープリンなんですけど」
「パンプキンプリンもありますよ」
「黒糖もあまくておいしいです」
「どれも美味しそうだなー」
きゃっきゃとあっという間にゆめさんの周りには女の子が集まって囲いが出来てしまった。
王子様の衣装を着ていなくてもやっぱり格好いいものね。でも私は……。
「かおちゃんはどのプリンにする?」
「うーん迷うなぁ。ゼリーもいいよね!」
「そうだね。フルーツゼリー、キラキラしててキレイ!私これにしようっと」
「じゃあ私はチョコプリンにしよ。あーでもフルーツゼリーも捨てがたいなぁ……」
かおちゃんったら子供みたいに迷ってて可愛い。
「ね、ゆうちゃん一口わけて!」
「いいよ。はいどうぞ」
スプーンとゼリーの器を差し出すとかおちゃんは違う違うと首を横に振った。そして口をあんぐり開ける。
目を白黒させている私にかおちゃんが大きく口を開けたまま言う。
「食べさせて」
「う、うん。……はいあーん」
「あーん。……もぐもぐ。んーっ甘酸っぱくておいしい!もう一口!」
なんてまた口を開けるかおちゃんは気づいていないだろうけどみんなこっち見てる……。
みんなの前でこういうことはちょっと……穴があったら掘りたい!じゃなくて入りたい!
こちらをニヤニヤと見ていたみきちゃん達がハッとしてそれぞれゆめさんにおすすめしていたプリンを掬った。
ならば自分達も!と言うことだろう。
私はほっと胸を撫で下ろす。ナニカとは違うがみんなでやれば怖くない。
「迷うんでしたら私の分を食べてください」
「マジで?いいの?」
「はい!」
「じゃ私の分も」
「こっちのプリンもおいしいですよ」
差し出したスプーンが交差して、ハッと顔を見合わせる。鬩ぎ合う視線。誰も譲らないから勝負は決まらない。
「なら順番にいただこうかな。フフフ、いただきます……」
「はい、いただかれますっ」
次々にスプーンを差し出されるゆめさんを見てかおちゃんが羨ましそうにむくれる。
「いいなーゆめさんモッテモテですね!全種類食べられちゃうんじゃないですか?」
「フフッ。かおちゃんには負けるよ」
「そーですか?えへへっ。だってさ、どうしよ、ゆうちゃん!」
「わ、私に話振らないでよぉ〜」
どこからともなく女の子特有の高い笑い声が響いて、スタジオ中が笑みに包まれた。

219 :
――ところ変わって廊下。
「あれJIMANG、プリン食べないの?」
「ああいう女の子空間には居づらくて」
「そういやその胸につけてるブローチのことYUUKIに話した?」
「いいえ」
「ふーん……昨日の公演でみんなお揃いのもらったんだったね」
「って陛下ももらったでしょうが」
「YUUKIに説明しとかないとKAORIとみくにがお揃いしてるって勘違いしてるよ、あの子」
「よほど好きなんでしょうな!しかし陛下も悪ですなぁ。楽譜を隠しておくなんて」
「だって硝子は嫉妬の歌だからそういう気持ちにさせてあげようと思ってね。さて練習再開しないと」
「奴らまだキャッキャ言ってますが」
「ほら練習再開だッ!このド低能共があああああ!!!!」
「やだぁん陛下ったらぁあ。イドさんの口調になってるわよぉ〜ん!」
「JIMANG、君も女将の口調になってるな。TNG!」

おしまい。

全員の口調がよくわからなくてただの似非になってしまいました。すみません。
今回の献上品は手紙や色紙だけだったかもしれませんがまあその辺は妄想。
YUUKI白姫とKAORI王子の硝子の棺で眠る姫君がくることを祈ってる!
投稿が細切れなのは水遁に巻き込まれてレベルが1になったせいです。
何度も忍法帖関係でぐだぐだしてすみません。読みづらくて申し訳ない。

220 :
>>211
ぐっ、GJです!
張り付いて読んでしまったw
萌える…本気でこの二人の雪白が見たいなぁ
また機会があれば次も頼みますw
しかし本スレで出てたけど
かおり王子とみくに姫の最後のイチャイチャが本家よりすごかったとかw

221 :
うわああやってしまった…スタジオの扉が二回も開いてる…
ゆめさんが行ったり来たりしてるか、どちらか無かったことにしといてくださいorz
他にも間違いがあると思いますが無かったことにしといてください

222 :
>>211
久しぶりにスレ覗いたら神がいた
211超GJ!萌えたよありがとう!!

223 :
雪薔薇とエリエリ
学園パロで幸せMarchen風

======
その日は、早めに青髭先生の授業が終わり少女たちは暇であった。
最初は他愛もない話…主にそれぞれの想い人に関して話していたのだが、いつのまにか話は可笑しなところに転がっていった。
そう。あれは、確かエリーザベトの作るお菓子が美味しいとエリーゼが言ったことにより始まった。

「野薔薇のつくるアップルパイも絶品よ」
「けれど、エリーザの作るクッキーは絶品なのよ」
「野薔薇はいつも私の手をつないでくれるわ!」
「あら?エリーザはいつも私に優しい笑みをみせてくれるもの」
「わ、私だって野薔薇が毎日微笑んでくれるわ」
「エリーザは本当に綺麗で可愛いわ!」
「野薔薇が世界で一番美しいのよ!」
「私はこれくらいエリーザが好きよ」
「私だって、野薔薇のことこれくらーい大好きなんだから」
「あら。雪白!貴方、私の円より小さいんじゃないの?」
「そんなことないわ!そういうエリーゼだって、私の野薔薇を想う気持ちより、その円小さいんじゃなぁい?」
よく解らない言い合いをする雪白とエリーゼ。
その2人を見守る野薔薇とエリーザベトは幸せそうに微笑んでいた。
「雪白ちゃんもエリーゼちゃんも可愛いわね」
「ええ。本当に可愛いわ」
「いつもは素直じゃないのにこんなときは気持ちを伝えてくれたり」
「エリーゼも雪白ちゃんも照れ屋さんですものね」
「可愛いわね」
「抱き締めたいけど、きっと怒るわね」
「実際は照れ臭いだけのようだけどね」
「「ふふ。本当にエリーゼ(雪白ちゃん)は可愛いわ」」

=====
素直じゃない組(雪エリゼ)
ほんわか組(薔薇エリザ)
どちらとも可愛いです(^^)

224 :
>>223 です。
先程書き忘れたのですが、皆様の素敵なSSに触発されて、貴重なスペースをお借りして投下させていただきました!

225 :
GJほのぼの可愛いです
素直じゃない組が可愛すぎる

226 :
ここって中の人萌えも書いていいんだよな?
昨日の東京でイヴェヒェンの頭を撫でる時とかMCの時とかゆうきとかおりがものすごい目で会話してて萌えたんだが
いやたいしたことない話で書き込んじゃって申し訳ないんだけどさ

227 :
見えざる腕で背中合わせに座る二人が可愛すぎる
みきさんじょえるさん然り、オルたんヴィオりん然り
今後色々な組み合わせが見れるといいな
オルたんヴィオりんはお人形さんが夜になって遊びだし、朝になったらまた動かなくなっちゃったみたいで別の面でも萌えた

228 :
>>226
どちらかというと大歓迎
前スレは中の人の話も結構あったよ

229 :
>>226
自分も中の人に萌えた
ゆうきとかおりは目を合わせて笑顔になるのが可愛かった
どっかの曲終わりでくっついてたよな
キャラとしての双子も萌えたなぁ

230 :
ライブやった影響か中の人話題が増えて嬉しい限り
かおゆう(ゆうかお)は王道だと信じてる

231 :
ライブも盛り上がってるみたいだし古参のゆうかお好きな住人達また帰ってきてくれないもんかね

232 :
>>231
ノシ
ROMってるけどいるぞ
たまたま久しぶりに覗いたけど中の人好きには最近の流れが嬉しくてしょうがない

233 :
自分もゆうかおとかみきはるが好きだから嬉しい
領複は大惨事ほど絡みがないみたいだけどそれでも萌えどころがあるみたいだな
双子の腕と星屑好きだからやってくれただけでもテンション上がるw

234 :
かおゆうがロマン時代から好きすぎて生きるのが楽しい
かおゆうが公式というか王道だと思ってたんだがみんな結構ゆうかお好きなんだな
なんか新鮮
えんまりとゆーきも好きってかゆーき受けならなんでも食える

235 :
うわさげわすれた
すまん

236 :
中の人と言えば
なんかともよちゃんがかおりに告白してるぞw
ゆうかお夫婦と娘のともよとか妄想した自分はどこまでも腐ってるんだろうな

237 :
>>236
どんなこと言ったの?

238 :
ずっと前に考えたパロ(かおゆう)
「わたくし、おだかおりではございません。私は…ゆうちゃんの携帯。
ゆうちゃんがhappyな時も、落ち込んでいる時もいつも一緒にいるのは私。
ゆうちゃんは泣いた顔も超絶かわいいんだよ。まあ私以外には見せないけど(どや
Ring a Ding Dong Ring a Ding Ding Dong♪Ring a Ding Dong Ring a Ding Ding Dong♪Ring a Ding…
「もしもし」
「彼氏?」
「えー違うよー」
「ホント〜?」
「ほんとだよ!わたしにはかおちゃんしかいないもん!」
「あ、あのわたくしおだかおりではありまもうゆうちゃんが可愛いからなんでもいいや!」
カエラのCM好きだった

239 :
>>237
ツイッターだから転載はできんがゆうきにも告白wしてる
ノリでだけど、かおりさん…大好きです!みたいな感じw

240 :
って連投すまん
>>238
何これ萌える
超GJ!可愛いなぁ…

241 :
ここで言うのもなんだが、女神4女はやはりかなみさんかな?
Joelleさんでもいんだけど、あのトーンは高いしな〜

242 :
>>241
φもかなみさんだったからそうじゃないか?
そして遅ればせながら>>238GJ!
リアルに見えるようだ…
この二人はどっちが前にきてもおいしくて好きだw

243 :
お前等初恋テクトニクス読んどけよ読んどけよ〜

244 :
にしても過疎ってるな…

245 :
なんかもう最近まんべコンビに萌える
あの二人は何なんだろう

246 :
>>245
分かるw可愛いよな
もう住民はいなくなっちゃったのかねー

247 :
メルコンDVD見ててやっぱり王子が女ならなぁ…とか思ってしまったw
ますますアイオニア王子が見てみたくて仕方なくなった
あとアルアプや先妻×新妻で色々妄想してしまう

248 :
そうか、シャイライが付き合ってもう4年になるのか

249 :
新潟やっぱりいってよかったわー
Romanから入って、ママン含めた4人が
きゃっきゃしてるのが好きだったから。
イベリア3姉妹がすっごく仲よさそうだったし
MCもチョコチョコ可愛かったしKAORIとYUUKIの肩組んで退場も見れたし
百合妄想まで至らなかったがマジ満足だ。

250 :
みくにさんの「カップルがキスしてた」みたいなツイートにゆめさんが「じゃあ僕たちも」と返事してて萌えんだのはわたしだけでいい

251 :
joelleさんマジ天使だった

252 :
ヴィレットで王子か
妄想したいけど、妄想できない自分が悔しい

253 :
かおりとJoelleさん…ゴクリ
とレポを見て思った自分がいる
かおり王子とJoelle王子を一回も見れない自分は確実に負け組

254 :
忙しかったが半休とって無理やり愛知二日目行った自分は勝ち組
キャッキャウフフしてて眼福だった…!

255 :
YUUKが「120%でないけど」と言って、「檻の中の遊戯」を披露してくれた。
これで練習中の妄想ができたら、書けたらいいな〜

256 :
ゆうきの細い首にからみつくかおりの指
ヤンデレおいしい

257 :
檻の中のゆうき…かおゆうと見せかけてゆうかおだな

258 :
もうダメだ
その二人なんかエロい…

259 :
健全な元気系百合もえろい大人系百合も妄想できるのが、かおゆうかおのいいところだと思うの

260 :
中の人の百合と普通のSH二次創作をそれぞれ別サイトでやってるんだけど、中の人サイトの方が訪問者が圧倒的に少ない。
私の文章力の問題なのかもしれんがもうちょっとメジャーにならないものか…

261 :
>>260
中の人サイトってどうやって探していいのかわからん…
行けるものならすぐ飛んで行きたいわ!

262 :
自分はゆうかおスキーというか、かおり受スキーなんだけどゆうかおサイトさんってあんまりないんだよなぁ…かといって自分じゃサイト運営できる自信はないし
SHは歌姫が固定じゃないからなかなかこういう層も増えにくいんだろうね
好きになっても不慣れだと探しにくいみたいだし、不慣れな人が多いみたいだし

263 :
Sound horizon お母さん達
RKKIさん→2008年の冬に出産?
井上あずみさん→結婚してるけど子供情報なし
鈴木結女さん→結婚して、子供もいる
Joelleさん→子供は養子縁組
亀様→まだ子供はおりませぬ

264 :
もうむしろ262が勇気を出してサイト作ればいいと思うの
そしたら毎日通います
>>261
自分はランキングとかから飛んでるよ

265 :
>>262
同じくゆうかお好きだが、かおゆうは多いけどゆうかおはないよね
前スレのゆうかお書きさん戻ってこないかなぁ

266 :
SHFCの会報の絵を描いてる人
一度でいいから、歌姫描いてほしいな

267 :
>>263
あずみさんはツイッターでたまに娘さんの話題出てるよ

268 :
タイトル「それは突然に」
「ありがとうございました!!!」恒例の無茶振りMCタイム。今日は王様が好きな曲と振り付けやってのいいのこと
それならわたしはCeuiちゃんの振り付けと歌をやってみた。今までメルコンのコンサートでは、YUKIさんや、石井ちゃんなど
ほとんどの演奏者達や、歌い手さんなどCeuiちゃんのマネしてきたし、じゃあ私もマネしてみた。そしてら意外と好評。
Ceuiちゃん、ごめんね。首になったら、私ががんばるよ!!。何という冗談は置いといて。
王様が「じゃあ、最後はダンス番長とコーラス番長のKAORI!!!」公演ラストの主役はやっぱりかおちゃん、
王様が最後だからいいし、何よりかおちゃんは何が来るかどきどきしてるもん。 そしたらかおちゃんが私に近づいてきて
「ゆうちゃん、ごめん。これして」と渡された。耳栓と目隠しである。あれ?何でだろう?と思いつつ目隠しと耳栓をした。
「それでは行きますね!!」というかおちゃんが聞こえる。曲が流れる。何の曲なんだろう〜?30秒後私の顔に近づいてくる。
きれいな、匂いとそれとKISS。え?KISS!?私は慌てて耳栓と目隠しを取り除いた。そこにいたのは、私が知ってるかおちゃんである。。
でも、そのかおちゃんはもっとかっこいいKAORI王子である。私は嬉しくてかおちゃんに抱きついたい気持ちは衝動に従いけど、今は公演中だし
終わってから、いっぱいはぐしようと考えた。「ありがとう。かおちゃん。最高」と耳元で呟いた。かおちゃんは「うん」と笑顔で頷いた。
最後に王様が披露したのは、「久方ぶりに吹けるかな」と持ってきたのは、何とバグパイプでした。

以上です。久方ぶりに書きましたが、MCタイムでこんな事があったらいいなと妄想しておりました。
また、時間がありましたら書きます。では

269 :
>>268
GJ!
久し振りの中の人SS投下に歓喜だわ…
しかもかおゆうだなんて俺得過ぎる

270 :
>>268
GJ!!
三角関係が好きなんだが、何かいい組み合わせ無いだろうか
オルヴィオとミシェル、ヘタイラとミーシャ、ソフィア先生とフィリスとミーシャ、ミューフィーとミーシャ、
あとアプアルと野薔薇、アプアルとラフレンツェ、ホレお姉さんとセイ子とちぃちゃん(継母?)、ロベリアとジュリエッタとベアトリーチェ、
雪白と野薔薇と王子ちゃんは既出として…中の人は結構ありそうなんだが

271 :
>>268
GJです!
本当にこんなMCあったら感激と萌えで倒れるw
>>270
キャラならライラとエーニャとトゥリンとかカティアとレナとミーシャとか?
イベリア組、最近ライラと三姉妹の絡みが少なくて寂しい
中の人はどの組み合わせでもいけそうw

272 :
>>271
なるほど…!三姉妹は盲点だった!ライラとエーニャとトゥリン…それをサランダが見ているんですね
レスボス島はミーシャ含めて5人もいるからいろいろ出来るな…
一方通行おいしいです

273 :
しもつきん好きはいないか…?
はるみきはる とか はるみな とか はるせい とか…!
かおゆうと絡むとただのお姉ちゃんだがそんなしもつきんも好きだ!

274 :
みきはる大好き!!
みきさんの気まぐれに振り回される一見片思い気味のちょっと不憫なしもつきんとか好きだわw

275 :
はるみきはるいいよね!!
ヘタイラの時の中良さそうな二人は和む

276 :
みきはるで「沈んだ歌姫」歌ってほしいと思ってるのはきっと私だけじゃないはず

277 :
みきはるで「沈んだ歌姫」聞きたいですね!
最近、はるせい、じょえかな、みきれみきが好きすぎて辛いです。

278 :
Twitterでみなかおみくゆうで女子会やろうよ!ってツイート見て妄想の翼が止まらない

279 :
>>288のメンバーが>>277のCPと1人も被っていないことに気付いた
かおゆうはこのスレではかなり人気CPだから…サウスちゃんとみくにちゃんがくっつけばいいわけか
さてどっちが攻めだ

280 :
すまん、>>278な ちょっと未来に生きちゃった

281 :
みなかお好きって異端もここにいますよ、と

282 :
みくゆう好きなんだが

283 :
>>277,>>281,>>282
コンプリート

284 :
>>283
素晴らしいと思います!
あとこの前の愛知公演で、じょえかなじょえもいいと思ったのですが

285 :
すみません。
かおじょえ でした

286 :
>>285
あれ、自分いつの間に書き込んだ

287 :
>>285
目覚めた

288 :
>>285
やばい最高だ
こんなスレあるだなんて知らなんだ。
中の人で百合萌えがこんなにいるとは嬉しい限り。
自分はじょえるさんとともよちゃんが好きだ。
パンフに、本番前じょえるさんにぎゅーってしてもらってたってともよちゃんが言っててものすごい悶えた。
衣装なら尚更萌える。

289 :
>>288
自分もパンフのじょえるさんがともよちゃんにハグした事実に悶えました!
全公演の本番前に「ともよちゃんなら大丈夫よ!」とじょえるさんが聖女スマイルでぎゅーしていたんだろうな、と勝手に想像しました。
>>286 , >>287
愛知公演2日目のMCでは、じょえるさんがかおちゃんの服の袖を掴んだり、相談している姿は微笑ましかったです。

290 :
http://twitter.com/#!/am_zen01

291 :
自分の中でじょえるさんがすごくいいポジションなんだがw
みきちゃんとの腕もすごく萌える
>>289
なにそれ最高じゃないか

292 :
>>291
じょえるさんは誰とでも絡めますよね。
みきちゃんの腕ってどういうことですか。
詳しく教えてください!


293 :
>>292
前の方で言われてた気がするけど、今回のツアーでみきちゃんが見えざる腕歌って、下パートをじょえるさんが歌ってたって話です
背中合わせがたまらんのです

294 :
>>293
ありがとうございます!
みきじょえで腕は、一気に艶やかさが増しますね。
みきじょえ熱が湧いてきました。

295 :
http://twitter.com/#!/komayuki610

296 :
公演でMIKIさんの衣装タイムを何度も見ているJoelleさん
すきが開いたらぎゅっと抱きつこうとする妄想が出てきた。

297 :
>>296
それおいしい!
+で、個人的にMCのときに、手を繋ぎたいけど出来なくて、じょえるさんがそわそわする→どうしたの?と手を差し出すみきさんとかだといい

298 :
ありがとう大阪
修ちゃんが王子役やってくれました。歌ってる時の顔はものすごく笑顔だった。
後某劇団で10年に一回大運動会やった事があるらしい。それって今でもやってるのかな?

299 :
>>298
肖像でもデュエットだったしかなみく良かったな
陛下が息ふーした時、MIKIさんがママンに倒れ込んでた。ちょうど押し倒す体勢に
ママンは既婚者だと分かってはいるんだが萌えた

300 :
>>299
自分もかなみくとみきりっき萌えた
みきりっき両方しっかり転がっちゃってて本当可愛かったな

301 :
みきりき萌える
なにげにみきさんの方が年上なんだよね、たしか
生で見れた人裏山…

302 :
みきりっきとかなみく素敵すぎる。
みきさんのが年上にびっくりした。ああ、だからあんなに艶やかなんですね。

303 :
>>299があれ?いつ書きこんだっけと真剣に考えたわw
立ち位置うろだが陛下の息ふー→かなあずみく組(特にみくが)真剣にやってて気付かず
陛下「あれっ…気ーづーかーなーいーー」みく「(ハッ!)」
さしゃみきりき組にふーっ→みきがりっき巻き込んで盛大にすってんころりん
みきさんが慌ててりきに小声で「ああっごめんなさい…!」って謝ってて大丈夫と宥めるりきさんに萌えた

304 :
修ちゃんがアプリコーゼに笑顔で耳打ちしてたりあずみさんが何かあるたびに隣にいるみくにちゃんの手をぎゅーって繋いだり
大阪はかつてない萌えに出会えました

305 :
今日は個人的にみなかおとゆうかおがいい感じだったなぁ
栗の子とゆうきの紹介の時とか

306 :
横浜二日間参加された皆様お疲れ様
いや〜しかしMIKIREMIが一番凄かった。

307 :
思う事は同じか…
みきちゃんれみちゃんは勿論、かなみさんみくにさんも素晴らしかった
今日ほどたぎった日は無い

308 :
天秤は、みきれみすぎましたね。
みきさんがれみさんの顎に手を添えた瞬間から、時間が止まったように思えた。
かなみくは、かなみ王子がかっこよすぎた。

309 :
天秤のみきれみはやばかった。
打ち上げかなんかの時に、れみこに「ちゅーしないの?」ってからかわれて照れるみきたんを受信した

310 :
>>309
それおいしい!
リハのときも、思わず口付けてしまって「…!、ごめんなさい、れみちゃん!」と頬を染めて慌てるみきさんと、微笑むれみさんだといい。

311 :
子役の千夏ちゃんがみくにさんにスキップ教えてという妄想が入りました

312 :
ほんとにしちゃって
「……わぁ。びっくりしたぁ」
ってぱちくりしてるれみこを誰かお願いします

313 :
>>312
書いてみたい…しかし、いいのか、どうか
需要あるなら書きたい

314 :
需要あるよ!

315 :
マジでw緊張するなw
ちょっと待って、一回全部書いたら適当に上げる

316 :
本当に短いし乱文ですが、みきれみと言うか、れみきと言うか。
初めて上げるから緊張するなあ。
一応、>>312みたいな雰囲気をベースにはしたけど、ちょっと趣旨違うかも。
2レス分失礼!


横浜2日目当日リハーサルにて。
アタシは今日はれみちゃんと天秤を歌うのだけど、このれみちゃんの振り付けがまた色っぽい事色っぽい事。
キスの振りをする時、つい、うっかり本当にしてしまいそうになる。
一体どういうつもりでこんな振り付けの指示をしてくるんだか、と少し王様を恨む。
「みきちゃん、順番だよー」
「えっ?ああ、」
れみちゃんに言われて、はっとなる。
じまんぐさんの語りが終わって引っ込むと同時に始まり、一気に緊張。
みんなが舞台袖でみてる中で、あの振りは中々こっ恥ずかしいもので、あの、できたら、みないで欲しいわ。
始まってしまえばすぐにあのシーン。
ねえ、ちょっと、何でみんな見てるのよ!!
せいちゃんやみくにちゃんがきゃーってしてるのが視界の端に見える。
かなみちゃんまでにやにやしないで!
(この間10秒程度)
ええい、ヤケよっ!
あ、やばっ、足が、
「…そっと唇重ねた………んんっ!?」
唇に、柔らかい感触が。
静止するアタシとれみちゃん。
止まない音楽。
瞬間、
「きゃぁぁぁぁぁあああーーーっっっ」
「きゃーーーー!?」
せいちゃんとみくにちゃんの叫び声で、すぐさまれみちゃんから離れる。
「ご、ごごっ、ごめんっっ!!」
それがマイクにも入って、バンメンが気付いてアタシ達の方を見る。
「え、何?どしたの?」
ジェイクさんが不思議そうに聞く。
静まり返ったステージでは、マイクが無くっても声は届く。
他のバンメンにも?が見える。
下を見てニヤニヤしているソンイルは多分見てた。いや、絶対見てた。
後でひっぱたく。
舞台袖で未だにキャーキャー言っている小娘達(そうでもないか)をキッ、と睨みつけるとぴたりと黙った。
「れみちゃん、本当にごめんね、足がもつれて、それでね、」
必に言い訳してみる。
その間もれみちゃんはいつものふわふわした表情。
でも何も言わない。

317 :
っていうか、もしかして呆然としてる?
嫌だったよね、そうに決まってる。
ああ、もう、アタシのバカ!
一人心の中で葛藤していると、不意にれみちゃんが口を開く。
「…びっくりしたぁ」
「え?」
「ううん、すっごいびっくりしちゃった。だってみきちゃんホントにちゅーしちゃうんだもん」
「ちょっ」
まだ、マイク入ってる!
今のれみちゃんの発言にバンメンも事態を把握し、ええっ、と声が上がる。
ソンイルが俺見ちゃいましたー!なんて言っているのが聞こえた。
やっぱり後でひっぱたく。
「ご、ごめんね……。嫌だったよね…」
小さくそう言って、俯く。
れみちゃんの目が見れない。
嫌われちゃったかな。
「みきちゃん」
ゆっくり顔を上げると、れみちゃんがマイクをずらして、
ちゅっ。
「えへっ」
「………」
間。
「きゃーーーーーーーーーーー!!」
「うおおおおお!?」
「うひゃぁぁぁああ!!」
他の歌姫達と、バンメンの絶叫。
え?何?アタシもしかして、
キスされたの?
れみちゃんに?
「な、なんっ、なんっ、え!?はっ!!?」
「れみ別に嫌じゃなかったよ?」
「え?え?」
「みきちゃんと2回もちゅーしちゃったぁ」
そう言って、えへへーと笑うれみちゃん。
アタシはかーっと顔が熱くなって、何も言えなくなってしまった。
その後、楽屋にて。
「れみとちゅーしちゃったんだって?」
王様が唐突に聞いてきた。
「んなっ」
「ソンイルに聞いたよー?」
ニヤニヤしながら、肘で小突いてくる。
「やめい!あんにゃろう…」
何て口の軽い男だ。一番言ってはならない人に真っ先にチクるとは。
しかも王様め、ゲラゲラ笑うとは。実際はアタシの方が全然先輩だってのに。
「…見たかったなぁ」
「は?」
「いや、何でもない」
おわり。

318 :
どっかで見たことあるような話になったなw
乱文で失礼いたしました。
話し方やら呼び方は捏造であることをご承知ください…。

319 :
>>318
執筆お疲れ様です。
みきれみ、素敵すぎました!
読みながらニヤニヤした自分がいます。
みきれみきすぎる。

320 :
>>318
乙!
みきさんもれみこもかわいすぎてにやにやがとまらない
みきさんの「後でひっぱたく」に萌えたのは内緒だw

321 :
>>318に触発されて、公演後のみきれみきが浮かんだのだけど、載せても大丈夫かな…?

322 :
むしろのっけてくださいお願いします

323 :
それじゃあ、載せます。
期待違い&口調が違ったらごめんなさい。
===
「夢想的(Romantic)な月灯りに そっと唇重ね 息を潜めた…」
そっと唇、のタイミングでれみの顎に手を添え、唇を寄せるみきちゃん。
綺麗な顔が、れみに近づいてきて思わず見惚れてしまう。
離れた後に、人差し指を自身の唇に当て、艶やかに笑うみきちゃんにれみは名残惜しさと同時に愛しさが溢れる。
たとえ、今が演技であってもれみのことだけを見て、微笑むみきちゃんが目の前にいる。
それが少し嬉しい。

======
「緊張したわねぇ、れみちゃん。アタシはああいうシーン、向いてないのかも」
「ふふ、そう?みきちゃん綺麗だったわよ?それにれみはあのままみきちゃんにちゅーされても良かったわ。」
「れみちゃんは随分と余裕があるのねぇ。アタシはドキドキして大変だったのよ?」
苦笑しながら、ほらね?とれみの手を胸に当てるみきちゃん。
ドクドク、と通常より早い速度で動く心臓。

「ねぇ、みきちゃん」
微笑みながら、みきちゃんの胸に当てていた手を彼女の頬へと移動させる。
なにが起こるか理解していないみきちゃんの頭上にはハテナマークが浮かんでいた。
「なにかしら、れみちゃ…!」
言葉を遮るように、ちゅ、とリップ音を響かせた後にみきちゃんの唇をふにふにと親指で遊ぶ。
「うふふ、いただいちゃったわ」
「れみちゃ…っ!またちゅー…!誰かに見られたら大変よ?」
「あら。れみは目撃されてもいいわ。だって…みきちゃんたら公演で素敵な姿ばかり見せるんですもの。やっぱり牽制は必要でしょう?」
「それだったら、れみちゃんだって可愛い姿を見せすぎよ。…もっとれみちゃんのことを好きな人が増えちゃうじゃない」
「みきちゃん妬いてくれていたの?」
言葉を紡ぎながらも、自身が大胆な行動をしていることくらい解っている。
だけど、目の前で艶やかな雰囲気を持つにも関わらず初々しい反応をみせるみきちゃんが悪いのだ。
そう、すべてはみきちゃんが悪いんだわ。

「いただきます、みきちゃん」
「あっ…れみちゃ!?んっ…」
天秤のときとは反対に、今度はれみがみきちゃんを頂くわ。
壁にもたれ掛かるみきちゃんに微笑んで、唇を寄せた。

======
おまけ
「見て、かなみちゃん。みきちゃんが押し倒されてる」
「本当ね。…れみちゃん積極的」
「公演であんな艶やかに誘われたら誰だってああなるでしょう。…ね?かなみちゃん」
「え?そう、ですね。みくにちゃん」
「私たちもどうですか?」

324 :
乱文失礼致しました。
>>318には、素敵なみきれみ妄想のキッカケを頂きました、だんけしぇん!

325 :
>>319 >>320
ありがとうございますー。
みきちゃんのホレお姉さんのときの「ひっぱたくわよ?」がツボでつい使ってしまったw
>>324
れみちゃんが積極的で悶えました…
こちらこそだんけしぇーん!

326 :
>>318>>324
GJです!
陛下があの演出やらせたのかな?もっとそういうの増えたらいいのに

327 :
>>323
GJ!文中最後のさり気ないみくかなに萌えた

328 :
しもかおは需要あるかな?

329 :
>>328
あるよ!すごいマイナーだと思ってたから嬉しい…

330 :
えんまり受けってマイナーなの?取り扱ってるサイトみたことなくて涙目なんだがw
みきまりとかいいと思うんだけどなぁ

331 :
えんちゃん受けの素敵サイト様、みたことあるよ。
探したらみつかる!

332 :
えんちゃんに関してはれみまりが人気みたいな印象を受ける。
私はゆうまりゆうという受け受けっぽいお花畑CPが好きだけどw

333 :
生誕祭DVD二日目アンコールMCは最高だな
色んな意味で

334 :
幼稚園児歌姫という電波を某呟きサイトでいただいたので投下。
注意書き
幼稚園パラレルです。
ゆう→かお←みな。
地雷だったらIDでNGしてください。
では投下。

おもしろくないおもしろくないっ!
いっつもみなみちゃんばっかり!
ダンダン!とゆうきは小さな体で足踏みする。
身長まだ1m未満。体重は乙女の秘密。
最近の悩み事は大好きなかおり先生がなかなか構ってくれないこと。
転入生のみなみちゃんにかかりっきりで、ゆうきのことなんか見てくれない!とご立腹だ。
小さくても女子は女子なのだ。大好きな人とは一緒にいたい。
と園内を歩いていると、にっくき敵を見つけた。都合のいいことに1人である。
ここはSH幼稚園の先輩として、ちょっとガツンと言ってやらねばなるまい。
「ちょっと!」
「ふぇ……。」
みなみちゃんは柱の陰に隠れてしまった。これではゆうきがいじめているみたいだ。
またそんなときに限って大好きなかおり先生が通りかかってしまう。
運が悪い。

335 :
「どうしたのゆうちゃん。
あーほら、みなみちゃんこっちおいで。泣かないで。」
とてとてとみなみちゃんがかおり先生に駆け寄る。
これみよがしに抱きつくその姿勢がゆうきの心を逆なでする。
「もぉー!かおちゃんなぁんにもわかってない!」
「こら、先生でしょ。」
「はなれてよー。」
「いゃ…。ゃだー。」
何をいってもみなみちゃんはかおり先生の服をつかんで離さない。
どころか頭をうずめてイヤイヤまでしている。
あたまがカーッとなって、ゆうきは弾け飛ぶようにみなみちゃんにつかみかかろうとしたところを捕獲された。
かおり先生に首根っこつかまれて身動きができないゆうき。
せめてもの抵抗でじたばたしてみるも、大人と子どもでは力の差は歴然。
「ゆーうちゃん。ケンカしちゃダメでしょう?」
「だってみなみちゃんばっかりずるい!」
「ずるくないもん!」
むむむ…とゆうきとみなみはにらみ合う。
「はいはい。2人ともそこまで。」
「そもそも……!かおちゃんがわるい!」
「わるい!」
「……へ?いや。何が?」
「とぅっ。」
「えぃっ。」
「わぁっ!」

「いてて…。」
「まだまだねぇ。お子ちゃまに押し倒されて怪我するなんて。」
「すみません、みき先生」
「子どもだと思って軽くあしらってると、いつかもっと痛い目に遭うわよ。」
「はい、肝に命じておきます。」
「ふふ、気をつけて。」
fin

336 :
Ceui子「zzz…」
ほっぺたつんつんつん(*▼∀▼)σ
Ceui子「(ピクッ)zzz…」
つんつん(*▼∀▼)σ
Ceui子「ふっ、ふぇぇぇぇぇ。゚(゚´Д`゚)゚。」
Joelle先生「あっ!もう!さっきやっと寝たのに!」
王様「なんかこの子つつきたくならない?」
Joelle先生「なーりーまーせーん!」ダッコ
Ceui子「ふぇぇぇぇ…(ノД`)」


以上!
また電波が飛んできたら書くかもしれません。乱文失礼。

337 :
>>336
GJ!! Ceui子カワユスwww

338 :
ちびれみとみき先生のお話はまだですか…!

339 :
ちびれみとみき先生ならまかせろ!
======
最近のれみは、とっても毎日が充実している。
なぜかと問われると、それは"恋"をしているから。
「みきせんせい!」
朝一番に園へと来ると、れみは大好きなみき先生へと走りよる。
「おはよう、れみちゃん」
毎日優しい笑顔で抱き締めてくれるみき先生に淡い恋心を抱いていた。
「れみね。みきせんせいが大好きなのよ」
「あら、嬉しいわぁ。私もれみちゃんが大好きよ」
「…みきせんせいのすきと、れみのすきは違うわっ!」
そういって、みき先生のお膝に座って拗ねてしまうれみ。
困ったわねぇ、なんて言いながらもれみの柔らかな髪を撫でて微笑むみき先生。
「本当にれみちゃんが好きよ?」
「じゃあ、証をちょうだいっ!」
体を反転させ、向かい合わせになるとれみはみき先生を見上げながら微笑む。
「証…なにがいいかしら?」
真剣に悩み出すみき先生に未だ笑顔を絶やさず抱きついていたれみ。
痺れを切らしたのか、立ち上がるとみき先生の頬に手を添えた。
ちゅ、っと音がなり、みき先生は固まり、れみは照れながらも満足そうに微笑んでいた。
「れみが大きくなったら、みき先生けっこんしてね!やくそくよ!」


340 :

「け、結婚?」
「ええ!れみ、ぜったいかわいい大人になるから、みき先生待っていてね?」
「…れみちゃん。いまは、女の子同士は結婚できないのよ」
困ったように眉を下げ微笑むみき先生の言葉に、それまでの嬉しそうな顔が一瞬で悲しい顔へと変わる。
ぱっちりとしたかわいらしい瞳から、次第に涙が溢れてくる。
「…れみとみきせんせ…けっこん、できないの?
いや、れみはみき先生とずっといたいわ」
ぎゅっとみき先生の胸に抱きつくれみに、みき先生は慌てて言葉を返しながら背中をさする。
「あああ、ごめんなさい。れみちゃん。もしかしたら結婚できるかもしれないわ。だから、泣かないで」
いつもは冷静に判断できるみき先生であっても、相手がれみの場合はオロオロと狼狽えてしまう。
「れみはみき先生とずっといっしょがいいのよ…」
ぽろぽろと涙を流すれみに、どうにか笑顔になってほしいのにみき先生はその術が解らないでいた。
いや、本当は1つだけ思い付いたのだがそれは相手がれみちゃんであることと園児だということで消去していたのだった。
しかし、もはやそんな状況ではないと判断すると、みき先生はれみのぷっくりとした唇にキスをした。
「これで約束。アタシとれみちゃんは一緒よ」
ぽかん、と惚けるれみを抱き締めて微笑むみき先生。
そして、泣いていたれみの涙はぴたり、と止まりいつものれみの笑顔へと戻っていく。
「みき先生大好き!」
「アタシも大好きよ、れみちゃん」

=====
駄文失礼しました。
おかしい…みき先生が園児に手をだしてしまってる。

341 :
女性版コスモポリタンナポリタン
陽気になるのか真面目路線になるのかちょっと難しいな

342 :
仙台行った人いないのかな…?
百合な場面はあったんだろうか…

343 :
>>339
GJ!!
泣き出すちびれみこも思わずちゅーしちゃうみき先生もかわいいなww

344 :
今日れみみき2人でコーラス録りだったみたいね。
最近みきと一緒の仕事多いよね。
「れみ、みきちゃんとうたうー」
とか言ってたらいいと思う。

345 :
どれもこれも旨すぎて辛い
元極度の人見知りな栗が最近きてるんで
人見知り栗が右側でみきとかじょえとかかおとかが色々してくれる話を密かに期待


346 :
人見知りな栗の子がもじもじしてるところをゆーきが「みなみちゃんかわいいんだから笑って笑って!」とか言いながら抱きつく、とかいいな。
えんまりとかもそうだけど新規と仲良くなるスピードはゆーきがダントツな気がする。

347 :
ゆうちゃんは素晴らしい才能を持っていたんだな。
ゆうまり、でもおいしく頂ける。
ありがちネタだけど
みきみなだと
「みなみちゃん寒いの?」
「あ、えっと…大丈夫」
「そう…?(無理しているように見えるけど)えいっ」←手を掴むみきさん
「…えっ?みきちゃんっ!?」
「アタシが寒いの。だめだった?」
「ううん。…ありがとう、みきちゃん」と照れ笑いみなみちゃん
が浮かんだ。

348 :
KAORIがソロラジオをやると聞いて
いつかゲストに出てかおちゃんのらぶらぶっぷりを全国にしらしめている妄想中のゆうきさん
どなたか書いてくださいまし

349 :
>>348
こういうことですか、わかりません

「え、かおちゃんラジオやるの!?」
「そうなんだよ〜、うぅ…緊張する…」
「おめでとう!大丈夫だよかおちゃんなら。
…それって全国放送?」
「全国っていうか…ネットで動画が」
「動画なの!?じゃ、じゃあ私がゲストに呼んでもらえたらかおちゃんの隣に一緒に映るってこと?」
「う、うん…それはまぁ…で、でも!ゆうちゃn」
「じゃあ!隣で手なんか繋いじゃって、ちょっとくっついちゃって、仲良しアピールすれば…」
「だからね、ゆうちゃん聞いt」
「かおちゃん可愛いしカッコイイからモテるんだもん…やっぱりかおちゃんは私のだってわかってもらわないと。」
「いやゆうちゃんの方が可愛いしカッコイイしモテモテだよ!
…って違う。ゆうちゃん、ラジオ10分だから…ゲスト呼べないから…」
「えっ…」
「なんか…ごめん…」

なんかギャグだしゆうきがあほの子っぽくなってしまった…ごめんw
誰かが神SS書いてくれるの期待しつつちょっと夜子と戯れてくる

350 :
かおりのラジオ名とゆうきのブログ名がリンクしてるのは
全日本に見せつけようということですね。

351 :
木曜はお姉さん系か
つまり、妹になる人はゆうちゃんとさうすちゃんとCeuiでいいか

352 :
勢いで書いた不健全ゆうかおゆう。2レスいただきます。

暗い部屋。もやがかったような薄闇の中、寝息を立てるかおりを、ゆうきは見下ろした。
乱れた髪、半開きの口、薄く上下する胸。
触れたい、と思った。
右手の指を下唇に当てた。感触が柔らかい。
首筋に左手を滑らせ、血管に触れると、馬乗りになり、喉元のパジャマのボタンに手をかける。
1つ、2つ、3つ。
ボタンを外して乳房に触れる。
「っ?……?」
小さく声をあげたかおりの唇を、己の唇で塞ぐ。
かおりは、驚いたように体を跳ねさせると、ゆうきの背をかき抱いた。

353 :
「……はぁっ。ゆうちゃん…」
「……ん。」
もう一度、深く口づけを。
抱きしめ合い、見つめ合いながら、少女は少女にキスをしていた。
唾液の音が響いて聞こえる。
「……好きだよ。かおちゃん」
「……おいで」
上下逆転。
ゆうきはかおりの下に収まり、かおりはゆうきを組み敷いた。
かおりは自身のパジャマを脱ぎ捨てると、丁寧にゆうきのボタンをはずす。
額、頬、首筋、鎖骨、乳房。あらゆるところに唇を落としながら、かおりはゆうきを愛でた。
絡み合う腕。絡み合う脚。
響く嬌声と睦言。
「ぁっ……かおちゃん大好き」
「……大好き。愛してる。」
「うん、…愛してるよ。」
ゆうきは一際大きく喘ぐと、しがみつくようにかおりを抱きしめる。
ゆうきの髪を撫で、背をあやすように叩き、かおりは行為を続行した。
薄闇が白みはじめ、夜が開けるまで。
少女たちの嬌態は続く。
おわれ

354 :
みきれみお揃いブーツとか仲良過ぎだろ可愛い

355 :
なんとなくみきさんだけブログで報告ってことが多い気がして、最近れみきがきてる。
ただ単にみきさんのブログ更新率が高いだけだろうけど。

356 :
れみこは歌姫についてブログで書かなくなったね。
みきさんがれみこの話題や画像載せるとニマニマする。
みきれみでもれみみきでも萌えるわー。

357 :
みきれみはブログに載せないだけで、デートはたくさんしてそう。
劇伴終わったあととか、寄り添って歩きながらショッピングとかしてたらいいな。
みきれみ、れみき素敵だ

358 :
IDめっちゃ照れてる

359 :
みきれみはるで花鳥園!
てゆかみきさん可愛すぎワロタwww
シモツキンの笑い声と「みきちゃんすごーい!」も可愛かった

360 :
みき動画の最後の「こっちも撮って〜」は、れみこ?
最後は3人とも鳥まみれになったのか。可愛いな

361 :
「すごーい、みきちゃん!」
「こっちもとってー!」はれみこだと思う。
みきれみはるが可愛すぎる。
仲良しすぎて本当に和むわ

362 :
しもつきんのゲストラジオでかおりん呼ばれたけど、めっちゃにやにやしてしまった

363 :
みきさん、れみことお揃いで買ったブーツはいてるな。もしやれみこも…

364 :
はるかちゃんかわいそうです

365 :
みきれみデートの撮影係…
ところでれみこさんブログ更新しないんですか

366 :
会報やばい

367 :
会報歌姫いっぱいやばい

368 :
会報のレポ、韓国公演の方の薔薇の写真やばすぎる…
ヴィオ王子やばいやばいよあれ!
韓国公演行けた人裏山だわ…

369 :
今日来なかった…楽しみだ!

370 :
かおりとしもつきんはほんとに仲いいな

371 :
>>370
ラジオほんとに可愛かった

372 :
スウー

373 :
ハロウィンなのにネタが思いつかない
一応こんな感じ
ピンポン
か「はーい。どちら様?」
ゆ「トリック・オア トリート。お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
か「はい。これ」
ゆ「ありがとう・・・・ねえ、何か足んないよ?」
か「あっそか、じゃあ、ゆうちゃん目を閉じて」
ゆ「ん」
か「ちゅ」
か「はい、これで満足?」
ゆ「うん、ありがと。じゃあ、またね」
すまん。

374 :
>>373
可愛いな、萌えた
ありがとう

375 :
みきれみ人気みたいだけどみきはるとか書いてもいいかな…

「あ、みきちゃんみきちゃん!とりっくおあとりーと!」
「来ると思ったわ…はい、これ」
「…飴一個?」
「あら不満?」
「そんなことないですいただきますー。ん、この飴おいしいー!ありがと!じゃあわたし次じょえるちゃんのとこに…」
「あ、はるかちゃん?」
「うん?」
「trick or treat」
「…………あ、はは」
「trick、or、treat」
「………えっと…」
「trick、ね」
「笑顔が怖いよみきちゃん…!あああごめんなさい許してくださ………ん、ぅっ…!?」
「ん…この飴、返してもらうわね?」
「…っは…え、あ、…!」
「じょえるちゃんのところに行くときはちゃんとお菓子用意して行きなさい?」
「う、うん…!」

…反省してる
サイトとかやってないからここでしか荒ぶれないんだ許してくれ
ちなみにはるかちゃん呼びは俺の趣味
実際ははるちゃんなのかね

376 :
KAORIがメガネをするとYUUKIに見える

377 :
>>375
みきはるだいすき!GJ!

378 :
みきはるごちそうさま!
そして、公式でかおゆう、かなゆうで悶えた。
歌姫かわいいな…

379 :
前スレ見たいんだけど、どっかサイトない?

380 :
モバイルの待ち受けがいい雰囲気過ぎて悶えた
五女イケメンすぎだろ…

381 :
歌姫みんなでシモツキンのライブに行ったのかな?
ほんと仲良くて可愛いなー

382 :
>>381
行ったけど歌姫はみんな来てるしシモツキンとかおりは可愛くて萌えるしで最高だったw
歌姫達はほんとに仲良いよな

383 :
こんなにシモツキンは愛されてるのに何故シモツキンを扱うサイトさんは少ないんだろう…

384 :
しもつきんには不憫が似合うから仕方ない

385 :
不憫なシモツキンも愛してる。むしろ愛ゆえの不憫。

386 :
幸せなしもつきん話を書きたいけど文章力ないから無理だな…。
不憫ながらもがんばるしもつきんが好きだ。

387 :
イシュー届いたけど歌姫いっぱいで眼福だわ
かおり王子とか天秤みきれみとかおいしいw

388 :
詩女神三女が長女に何か耳打ちしてる写真がすげー可愛い。楽しそうな妹に付き合ってあげてるお姉ちゃん、みたいな。

389 :
イシューも歌姫いっぱいで嬉しかったが
ツイッターではみくせいがキャッキャッウフフしてて堪らないな。
ペアルックしちゃえばいいと思うよ

390 :
YUUKIクエスチョンでウイスキーと泡盛が駄目か
KAORIとはちょっと違う?

391 :
>>390
KAORIは焼酎が駄目なんだって
日本酒はイケるそうな

昨日ともよちゃんがツイッターでれみちゃんに貰ったリップが〜って言ってて、色んな妄想が駆け巡った

392 :
ツイッターのみな実ちゃんとせいちゃんはいちゃいちゃしすぎだと思うww

393 :
みな実ちゃん、Ceuiちゃんを彼女認定

394 :
みなみちゃんとせいちゃんはもはや夫婦の域
餅のやりとりは悶えた

395 :
栗の子も百合好きの噂

396 :
ツイッターのみなせいがおいしすぎる件

397 :
何も考えず かおゆう
ゆ「みくにちゃん、結婚するんだってね」
か「うん、聞いた。驚いた。」
ゆ「私たちも、いつかは結婚するだろうな〜」
か「うん、いつかはするよね」
ゆ「ねえ、かおちゃんは、どんな人と結婚したい?」
か「そりゃあ、ゆうちゃんみたいな優しくて話しかけてる男性がいいな〜ゆうちゃんは?」
ゆ「私はかおちゃんみたいな、背が高くて優しくて歌がうまくて男性がいいな〜」
かゆ「・・・・・」
かゆ「「あのね」」
ゆ「かおちゃんからどうぞ。」
か「あ・・・うん、ありがとう。あの・・・・キスしてもいい?」
ゆ「かおちゃん、ありがとう・・・・嬉しいよ・・・あれ?何で泣いてるんだろう?」
か「大丈夫だよ。ゆうちゃん。私がいるから」
ゆ「ねえ、かおちゃん。たとえ結婚しても私たちは友達だよね?ずっと一緒にいようね?」
か「うん、大丈夫だよ。だから安心してね。」
以上ここまで書いて恥ずかしくなった。色々すいません。

398 :
みくにちゃん結婚おめでとう。みなせいみく投下します。止まったら忍法帖のせい。
―――
「みくにちゃん、そろそろ帰ったら?」
「えー、いいじゃん。ねー、せぃ。」
「え、あの、その、」
何故かわたしは、みくにちゃんにむぎゅうと抱きつかれている。抱き枕を抱くように、無造作だが身動きが取れないほど、ガッチリとホールドされている。

399 :
「とりあえず放してほしいなー、なんて。」
「せぃ細いよねー。ちゃんと食べてる?」
「わたしたち、これから夕飯なんだけど」
「みくのはー?」
「新妻が作らないで、誰が新婚家庭の夕飯を作るの?」
「えー。みな実ちゃんつめたーい」
そう。ここはみな実ちゃんのおうち。晩ご飯に呼ばれてやってきたら、なぜかみくにちゃんが乱入してきた。
それからみな実ちゃんはとても機嫌が悪い。

400 :
でもね、みくにちゃん、そんなみな実ちゃんを見るのが楽しいみたいで。どんどん火に油注ぐような真似するんだ。
わたしに抱きついてるのも、多分、そのせいだと思う。
「みな実ちゃんのおいしーご飯が食べれて、可愛いせぃで遊べるとか幸せー。」
「作らないよ?」
「なんでっ!?」
「いや……2人分しか材料ないし。」
「えー。」
ぶーぶーと文句を言うみくにちゃん。なんか、みな実ちゃんの目がとっても冷ややかなのは、気のCeuiだよね…?

401 :
「とにかく、そろそろ帰ったら?旦那さん帰ってくるでしょ」
「で、邪魔者帰していちゃいちゃしようってー?ずるいー!1人で誰もいない部屋で待ってるよりここにいたほーがずぇったい楽しい!」
「いや、新婚さんなんだからさ……。やばいんじゃない?」
「別にいーもん。ワタシがいない間は2人でベタベタ引っ付いてんでしょ。ちょっとくらい分けてよ」
「…………。」
無言。
あぁぁぁ みな実ちゃん、間違いなくイライラしてる。

402 :
「みくもみな実ちゃんのご飯食べたーい。」
「……みくにちゃん。いい加減にしないと、あの事、旦那さんにバラすよ」
「……へーぇ。脅すんだ。」
「あわ。あわわ。」
「いいの?」
「んー。まぁ良いこたないねー。……にしし。みな実ちゃんがこんなに感情表にだすの珍しー」
「……は?」
「なんかちょっと安心した。せぃ子愛されてるねー。」
「……ふへ?」
変な声出しちゃった。なんでわたしがここに出てくるの?

403 :
「よしよし。せぃの体も堪能したし、みな実ちゃんからかうのも楽しかったし、今日は帰るとしよーかなー。」
「……当分来なくていいよ。」
「にひ。それじゃー今度は呼ぶねー?愛の巣に」
「行かないから。」
「じゃあせぃだけ呼んで、あんなことやこんなことしちゃおーかなー。」
「行かせないよ?」
「にしし。まったねー、せぃ。今度は2人であおー」
「あはは。みくにちゃん…またね…」
すくっと立ち上がり、来たときと同じく性急に帰っていくみくにちゃん。
……呆然と見送るしか、できなかった。

404 :
「せいちゃん、シャワーいこ」
「ふぇ!?」
「シャワー。早く洗わなきゃ」
「え、え、ぇ?」
「行こ?わたし、じらされるのも待たされるのも嫌いなんだ。」
「えええええ」

「……今日は帰さないからね」
言われた言葉に、つかまれた腕に、プレッシャーを感じる。これは、わたし、今日は寝かせてもらえないかも。
「お、お手柔らかにお願いしませい…」
「ふふふ」


(おしまい)
時間かかってごめんなせい

405 :
かおみなを書きたいという妄想が出てこない

406 :
みな実ちゃんとせいちゃんの公式の暴走はいつまで続くのか
もっとやってください

407 :
さて、かおり×栗林×YUUKIの3各関係を書ける猛者はいませんか

408 :
某アニメのOPからハマリました
えんまり可愛いよえんまり
前スレにアップされてたれみ→まり←彩イラストが気になってしかたないんだが、pixivの垢消されててみれないんだよな…

409 :2013/09/29
さて今日はJoellleさん誕生会だ
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