2013年10レズ・百合萌え486: 頼む!誰か二次元物の百合小説を (447) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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頼む!誰か二次元物の百合小説を


1 :2005/05/30 〜 最終レス :2013/04/09
書いてくれ!

2 :
余裕過ぎるスキップしながらも目に涙をいっぱいためながら自ら2げっと

3 :
>>1

職人再開したいが腕がないyo・・・orz
誰かおながいします。

4 :
二次創作だとなあ――
二次じゃなければあれなんだけど

5 :
二次元物って どんなの?

6 :
エロパロってことになるのかな?

7 :
もう、オリジナル物でもいいんじゃない?
増えてきたなら、改めてスレ分ければいいし

8 :
二次つーてもいろいろあるだろ
二次ならなんでもいいわけ?

9 :
百合カプスレ@エロパロ板 4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108536012/

10 :
つーかよくみたら
二次創作、ではなく、二次元のもの、なんだな
だからオリジナルでも問題ないだろ

11 :
じゃあ明日まで待ってくだちい

12 :
エロはなくてもええのよね?

13 :
ジャズ板で職人してたけど、こっちに引っ越すかどうか迷っている。

14 :
>>13
そ、それは関口だな!!
関口に違いあるまい!!

15 :
山形弁の変換が手間かかる・・・

16 :
そんだず
がんばんず

17 :
 高い位置からお茶を注ぐ。
 おいしくお茶が入るよう。
 注がれた湯はざぷざぷと、硝子の急須にかき混ざる。
 注がれた湯はさらさらと、乾いたお茶をかきまぜる。
 蒸された茶。なんていい色。
 ふわふわ浮く茶葉沈む茶葉。
 ららら、鼻歌。午後の日差し。
「上機嫌だね」と独り言。
 トーストが、今日のお茶請け。
 狐色のトースト、おいしいトースト。素敵なトースト、はいどうぞ。
「焼き立てだ」
 彼女は笑ってかぶりつく。私は微笑んで茶を飲んだ。
 緑の囁く初秋。それはじきに、枯れ葉の歌に変わる。
 世界は浅く入れた、カフェオレの色になる。
 今はさくさくと、トーストを齧る音に、髪をすくようなさらさらという小雨の音。雨粒が緑と囁く微かな音。

18 :

 何事も無いのに、一緒に居るのはいい。
 用が無くても一緒に居られるのは、私が彼女を好きだから。二人で、ただ本を一緒に読む。それだけで良い。特に土曜と祝日の午後は。
「目玉焼きがあったら、もっといいな」
「いやしんぼだねぇ、あんたは。またお腹すかせてるの? 」
 トーストを齧りながら浜崎は、欠食児童ですからなどと、おちゃらけた。だったら、焼いてくるね、サニーサイド? ターンノーバー?
「ううん、そんな、いいよ」
「いいわよ、立っちゃったから、もう」
 私はそんな手間は惜しまない。たった数メートルの距離だから、リビングとキッチンは。
 フライパンを温めて、卵を一つ用意して。
「ねえ、よかったのに、別に」
 そろりと彼女が近寄った。キッチンとリビングは、たった数メートルの距離だから。
 え? なに? 私はわざと聞き返す。よかったのに、別に、わざわざ作ってもらわないでも。あ? あんだって? 聞こえねーな。
「もう! ちょこちゃんったら!! 」
 かまわず私はガスに火をつける。オリーブオイルの蓋あけて、一さじ。煙を立てるフライパンにもう一さじ。ねえ、もう、呼びかける浜崎。無視する私。
「ねぇ。ちょこちゃん、怒ってるの? 」
「なんで?」
 だって、と力ない声で彼女。そんな風にされると困ってしまう。かわいくてかわいくてしかたないから。だから。
「あーあー、あんたのそういう態度、好きじゃねーなー」
「え? ごめん、ごめんなさい」
「あたしの高校のころって、こんなにいじけてたっけか」
「ごめん、あの……」
「気にすんなよ、バーカ。何泣きそうになってんだおまえ」
「だって、卵……」
「目玉焼きくらい、すぐ出来る」
 でも、と彼女は上目遣いに私を見る。大きな瞳が私を見つめる。
 コツコツ、卵の殻を割って中身をお碗に移し、黄身を壊さないようにフライパンへ。
 シャアッと白身のはぜる音。

19 :
「ねえ、チョコちゃん……」
ああ、もう!
なんでわかんないのかなあ、私の気持ち!!
「……嫌いなやつに飯なんか食わせてやんないっつうの――! 」「え? なに? 」
ああ! もう、この鈍感!!
あたしの十代の頃って、こんなんだったっけ?
かりかりしながら、白身のふちをカリカリに焼く。
じゅうじゅう。
かりかり。
「おい、浜崎」
「へ? 」
焼き上げた目玉焼きを皿にのせて、私はすれ違いざま彼女の唇にキスをした。
「わあい」
 そう、それ。
 満面の笑顔。
かわいいじゃねーか。
 茶海の底にひらひら、船が浮かんでいる。
ガラスで出来た、透明なポットの底の底。
金色の茶の海が、ガラスポットの中輝く。
ぼんやりと光った底、優しい香りがする。
君山銀針の滑らかな味。柔らかな燻焙香。
筆の穂先で朱を軽くのせたような黄金色。
白い陶器の中でとろりと溶けていて。

20 :

 リビングの床に二人で座る。
 ねえ、ちょこちゃん、フォーク。自分でとんな。え? だって私、お客様だよ。誰がお客様だよ、あんたが?
 えーそんなぁ、情けない声を鼻先で笑い飛ばして私は。
「指でつまんでさ、トーストに乗せて食ゃあいいじゃないのよ」
 なるほど、そう言って彼女の形よい指は、あちちと目玉やきの端を持ち上げる。塩コショウの味付けで、コショウやや多め。ふちはカリカリ、黄身は芯だけ半熟。
「いっただっきまーす」
 この娘は本当においしそうに食べる。
 空になった碗に、私は次の茶を注ぐ。彼女の碗に茶を注ぐ。パンを噛む音、さくさく。
「おいしい」
「そいつぁよかった」
 二学期が始まって、三週目の土曜日。
 生徒が教師のマンションに、忍んで会いに来る昼下がりにちょうどいい小雨の土曜日。
「夕方からどしゃぶりだって」
「浜崎は、傘持ってるの? 」
「ううん。帰るとき、貸して? 」
「送ってくよ、車で」
「じゃあ、ドライブで、デートだね」
 乾いた口元を茶で潤して、彼女は言って、私はちょっと困って笑った。
「なに困ってるの? 」
「ん? 困ってないよ」

21 :
 私は大人の嘘をつく。
 生徒と関係している教師だから。
 夫を持っている妻だから。
 女と女で、交わる者達だから。
「……なりなりたらざるところに、我がなりなりあまれるぶぶんを」
 浜崎の呟きに、今度は私がなにそれ、と尋ねる。え? 古事記の一説だよ、ちょこちゃん、知らないの? ああ、そう言えばそんな部分があったねぇ。
 私の親指は、彼女の口元をごしごしこする。こびりついたぱん屑が、もろもろと零れる。
 この娘は食べるのはおいしそうに見えるけど、上品な食べ方とはとてもいえない。ぐいぐい親指を押し付けていると、浜崎は目をとろんとさせて、私の手首を握り、親指を吸った。
「浜崎、おめー、その目は止めたほうがいいわ」
「ろーして? 」
 親指を咥えたまま彼女は尋ねる。だって、それ、なんか凄くエロいから。
 ふふふ。
 浜崎は含み笑いして、懸命に親指を吸う。そこから走る電気。私は奥歯を噛んで耐える。
 雨はさあさあと降っている。
 彼女の前歯は私の手首を噛む。
 私のもう片方の手が、彼女の首に絡みつく。
「ちょこちゃんのからだ、もうすっかり反応しちゃって」
「……ったくよ、ぉ」
 私は荒い息をつく。力の抜けている腕を、浜崎は存分に蹂躙する。
 近寄ってきた唇、彼女の頭の重量を、私は自分の頬に感じる。小さな舌が、首筋を這う。私はゆっくり目を閉じる。
「京介さんさぁ、いつ帰るの? 」
「んー、夕方には、帰るかなぁ」
 そうかぁ、呟きはキスの後、濡れた首筋を這っていく。ふふふ、と小さな笑み。子猫のような舌使い下りてくる、私の顎に首に鎖骨に。
「私は、夫を、裏切ってる」
 そう言いながら私の言葉に罪悪感はない。ただの確認だ、今は。罪悪感は、私が一人でいるときの訪問者だから。そんな私の告白に、彼女は優しく目を細め。
「大丈夫だよ。あたし、ちょこちゃんの幸せ、壊さないように気をつけるもの」
「つったってさー、なんかさー」
 肉の喜びに、私は肌をぶるるっと震わせてから、まーいーやいーや仕方ねーやな、もう、と言った。なにがまあいいの? 尋ねる浜崎をぎゅっと抱きしめる。

22 :
「ちょこちゃんの、おっぱい、やぁらかい」
 普段は肩こりの原因にしかならない乳房を、彼女は服の隙間からそっと撫でて、乳首をつまむ。ふ、ふ、と漏れる私の声。調子に乗って、服のボタンをはずす浜崎。
 露わにされた胸、待ち望んでいた胸元。
 その歯と舌が、勃った乳首を愛撫する。
 く、ちゅ、唇の音と無音の甘噛みの音。
「あああ」声が漏れる掠れた声が漏れる。
 ぴりぴりと身体中に電気が走って私の。
 背筋から後頭部までの筋肉が、突っ張った。
                                        (了


23 :
気兼ねせずみんなもっと書けよあげ

24 :
二次創作ありですか?セラムンでもいいですか?さらにみちはるなんですけどありでしょうか?

25 :
フィクションであればなんでもOK

26 :
新作きぼんぬ

27 :
 天井から垂れた雫が湯船にはぜて、済んだ静かさを風呂場に齎した。はるかは豊満な胸に、
水分を多く含んだ酸素を吸い込む。掌で湯を撫でると、たぷりと心地良い音がした。
「はるか、私も入るわよ」
脱衣場からするみちるの声を、はるかはちらりと見やっただけで答えない。衣擦れの音が
響く。はるかは又湯を掻き混ぜ、豊かな乳房は波と一緒に揺れた。
 カラリと扉が開き、髪を頭の上にタオルでまとめたみちるが入ってくる。
「今日、新しいボディソープを買ったの。」
とてもいい香りがするのよ、みちるは上機嫌に言って肩から湯を掛かる。濡れた細い肩が、ライトの
光を反射してきらきらと光る。「貴女を洗ってあげる。」
鈴を転がすような声の波紋が収まった時、再び雫が落ちた。はるかは、その音だけを辿っていた。
「やっぱりいい匂い。」みちるはタオルにボディソープを垂らして感嘆の声を上げた。
「はるか、洗って頂戴」
やはりはるかは無言だ。視線を少し斜めにずらして俯いたまま、湯船から上がった身体はほのかに
赤みを差している。その頃にはみちるも、はるかが不機嫌である事を悟っていた。
 はるかは差し出された細く白い足首や、薄く儚げな肩に泡を塗りつけていく。この美しい肌を、自分以外
の者が触れたのか?みちるはそれを許したのか?自分以外に?そう考えてると、鼻の奥を刺すような
痛みが走り、視界が否応無くぼやけた。
「ちょっと、痛いわ、はるか」
必要以上の力で擦られたみちるは振り向いて瞠目した。彼女の後ろで、はるかは声をして涙を
流していたのだ。「どうしたの、何か辛い事でもあったの?」
 みちるの目を避けてはるかは俯く。顔を拭うと、赤い鼻の頭に泡が載った。

28 :
 強くて逞しいはるかの涙など、共に住んでいてもそう見るものでは無かった。みちるは
椅子から降りてはるかを抱きしめた。「どうしたの?何か辛い事でもあった?」
 慣れぬ涙に自身ですら収拾を着けられなくなりながら、はるかは蚊の鳴くような声で
ずっと気にしていた事を口にする。「あいつは誰だ」
「あいつ?」
みちるははるかの滑らかな背中を撫でてやりながら問う。答えるはるかの声は、みちるの
胸に抱かれてくぐもった。
「昼間の・・・男・・・」
「男?昼間の?」
「俺の単車の近くで何か喋ってただろう。楽しそうだった」
「ああ!」
昼、みちるははるかに飲み物を買いに行かせた。はるかの居ない間、彼女は単車の番を
していたのだが、その磨き上げられた単車に惹かれたのか、それともみちるの匂うような
美しさに惹かれたのか、痩身の男性が一人、彼女に話しかけてきたのである。
 みちるに気に入られようとするだけの者と違い、その男はまず単車の美しさを褒めた。
はるかがいつも指先を油塗れにして整備しているそれを褒められて、みちるが嬉しく無い
訳が無い。それでいつもとは違い、二言三言談笑しただけだったのだが、それでもはるか
にとっては充分過ぎる程ショックだったようだ。
「馬鹿ねえ、そんな事気にしてたの?ずっと?」
額と額を付けて瞳を覗き込む。それでも逃げようとする顎を捉え、みちるは形のいい唇に
自分のそれを重ねた。
「私が愛してるのは貴女だけよ。」
呟いて又唇を重ねる。今度は深く。風呂場の暖かい空気のせいで、絡み合う舌は幾分か
冷たく感じた。

29 :
めちゃくちゃ文章ウマいですね。プロの方?
セラムン興味なかったのに思わずひきこまれちゃったよ。
他にはどんなの書いていらっしゃるんですか?

30 :
「ん・・・」
繋がった口の中で、はるかの声は直接みちるへと響く。舌を擦り合わせ、
口内の全てを確かめながらみちるははるかのしなやかな背をなぞる。
腰まで手を下ろし、下腹を撫でて、期待するように吐息を漏らすはるかに
小さく笑うと、みちるは細く美しい指を彼女の胸へと這わせた。期待が胸で
はぜるような甘苦しい感触に、はるかはみちるの唇を逃れた。
「あぁ・・・」
「はるか、可愛い。」
あなたが私を信じるまで、何度でも言うわ。バスタブに背を預け、与えられ
る快感に素直に声を上げるはるかの小振りの耳に、みちるは噛んで含める
ように囁く。「私が好きなのははるかだけよ」。みちるのほっそりとした首に回
されたはるかの腕に、切ない程力が篭った。
 みちるのなめらかな爪が、色の薄いはるかの乳首を引掻く。俯き加減に喘
ぐはるかの唇は赤く潤んでいて、みちるはまたそこへ唇を落とした。
「はるか」
長い睫毛の筋が振るえ、薄らと開いた濃紺の瞳はみちるを求める。あ、と子
猫のような声を上げて、再び安心したようにそれは閉じられた。
「すき。・・・」
彼女の稚拙に背を撫でる動きは、みちるを破裂する程の幸福で満たした。
ええ、知ってるわ、みちるははるかの乳房を嫋やかに撫で上げた。
 秘め事の吐息を、天井から湯船へ飛び込んだ雫が割った。

>>29
こんな即興の文に、身に余るほめ言葉です。
勿論プロでもありませんしw、文を投稿するのも初めてです。

31 :
訂正 振るえ→震え

 みちるははるかの首に口付けた後、熱く濡れた吐息を繰り返すはるかを見上げた。
形の良い乳房から鳩尾、引き締まった腹を辿り、そして茂みを掻き分けて一際体温の
高いそこへと手を当てた。既に充分潤んでいるそこに、みちるは小さく笑った。
「もうこんなに濡れてるわよ。」
「うるさ・・・あっ、あ・・・」
みちるは中指で粘液を掬うと、それをクリトリスに塗りつける。はるかは浴槽に背を凭れ
させ、幾度も形の良い腿を強張らせた。彼女の開かせた足の間に蹲り、みちるは膝の痛
さを感じながら腿に歯を立てる。怯えたように「痛い」と言うはるかに、最高の愛撫を与え
ながら。
「・・・入れていい?」
穴の入り口を中指で掻き出すように撫でながら秘密を打ち明けるように聞くと、はるかは
小さく頷いた。ゆっくりと指を進めていき、その長い指を全てはるかの中に埋めてしまう。
はあ、はるかはゆっくりと息を吐いた。
「はるかの中、温かい。」
指を入れたままみちるが言うと、「いや」と恥ずかしそうに呟いて、はるかはみちるに顔を
押し付ける。みちるはゆっくりと指を動かし始めた。指の”ひら”で柔らかい、粘液に守ら
れた内壁の形をゆっくりとなぞり上げて行く。

32 :
「あぁ・・・ん、あ・・・」
まるで子犬が鼻を鳴らすような甘い声が、みちるの耳を擽る。この夜の姿を、はるかは
一体私の他の誰に晒す事があるだろう?独占浴や征服欲と言ったものが”愛”に形を
変えて、恐ろしい程の勢いでみちるを満たした。白昼の許、ZZRの化け物のようなエネ
ルギーを捻じ伏せて、何人たりとも自分の視界を遮らせない彼女の腕は、今やバイオ
リンを奏でる為に創られた体にまきつき、縋り付いて震えているのである。みちるは指で
はるかの中の柔らかいところを撫で上げつつ、親指でぬるつくクリトリスを愛撫する。
そして乳首を口に含んで軽く歯を立て、舐めた。
「ああ、あ、んあ、・・・・う・・・」
はるかの腹にぐうっと力が篭り、みちるの指が締め付けられる。みちるはすかさずはる
かの唇を塞ぐ。愛撫する手も止めない。みちるの中で、はるかの余裕の無い声が響く。
苦しさにみちるの唇を逃れ、「ああー・・・」と搾り出すような声を上げると、はるかはぐっ
たりとみちるに凭れかかった。みちるは弛緩しきった彼女の中を、再び掻き混ぜる。
「あっ、あ、あぁっ」
整えようとしていた呼吸が詰まり、はるかは体をがくがくと震えさせてみちるの肩に爪を
立てた。
「何故解らないの?私はあなたをこんなに愛してるのよ」
「あぁ・・・っ、は、あ、あぁぁー・・・ぁ・・・・」
二度目の絶頂は直ぐに訪れ、耐え切れずはるかはバスルームの冷たいタイルの上に
体を横たえた。

33 :
みちるは引き抜いた指を丹念に舐め、はるかを抱え起こす。
「私を守ってくれるでしょう?王子様」
はるかは重い瞼を持ち上げ、潤んだ瞳でみちるを見た。私が愛してるのは誰か、解って
くれたかしら、そう言って笑うみちるにバカ野郎と呟く。キスを躊躇うみちるに、構わないと
首を引き寄せて深く口付けた。
「私はあなたのものなのよ」
「ああ・・・」
「そう言えば、はるかの泣き顔って可愛いのね」
「・・・」
あれが最初で最後だ。美しい眉を寄せてそう言うはるかに、そう?と、みちるは意味深な
笑みを向けた。
「私、美しいものが好きだけど、可愛いものも好きになったわ。」



34 :
乙です。とても文学的ですね。その文体好きです。
誰かきらきらひかる書いて・・・
杉先生が絡んでればなんでもいいです。

35 :
age

36 :
キャピキャピしてなくて、はるかとみちるの雰囲気にすごく合ってる。キレイでした。乙です。

37 :
保守age

38 :
発売されてたらダメなのかな?
宝塚の轟悠と作者の恋愛の実話が下地になっているという噂
『愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ』

39 :
すみません。いちご100%の向井こずえと浦沢舞の話を投下させてください。

40 :
放課後。今日は塾がない日なので、二人は教室でおしゃべりしていた。
今日もこずえは右島の話ばかり。またノロケか、と思って聞いていると、こずえは急にもじもじし始め、昨夜の塾の帰りに右島との間に起こった出来事を話し始めた。
「あのね、右島さんと初めて…キス、しちゃったんだ。。。」
すぐに真っ赤になってうつむくこずえ。
向井の言葉に舞はショックを隠し切れなかった。

41 :

小さい頃から同じ女子校に通い、いつも一緒だったふたり。
ずっと女子の中にいるせいか、いつのまにか男性恐怖症になっていたこずえ。幼い顔の割に色っぽい体付きのせいか痴漢にも狙われ、そのためさらに異性を怖がり、高校生になってからは塾で男子に話し掛けられただけで椅子からころげ落ちる程だった。
そんなこずえを舞は横から守っていた。
しかし高二の秋に真中に出会い、真中に恋したこずえ。
なんとなく嫌な予感はしていたが、ついに初恋を打ち明けられたときは呆然とした。とられてしまうのが怖かった。
しかし高三の秋に泉坂の文化祭に行き、真中の彼女の存在を知ったとき、舞は落ち込むこずえを見ながらも内心はほっとしていた。

42 :
それなのに。
こずえは失恋後右島に助けられ、立ち直ったのだ。そして二人は付き合い始めた。
そして、ついに初の口づけを交わしたのだ。
「…舞ちゃん?」
こずえが何も言わない舞を不思議そうに見る。
舞はすぐにいつものクールなふりをして、笑った。
「なぁんだ。何かと思ったら、まだキス?
…でも、よかったね。」
こずえが照れながら頷く。
本当は全然喜べない。
右島なんかよりあたしを見てほしい。
これから二人はきっとさらに関係を深めるだろう。そしてその話をこずえから聞くのだろう。痛くて苦しいこの時間。
だけどあたしはこずえから離れられない。
こずえが好きだから。
あたしはいつまで苦しむんだろう。

43 :
終了です。かなり自己満なお話ですみません。
共感してくださる方がいたら嬉しいです。
ありがとうございました。

44 :
3/32

45 :
m

46 :
保守!! (´・ω・`)
新作キボン(`・ω・´)b

47 :
保守!! (´・ω・`)
新作キボン(`・ω・´)b

48 :
百合姫最新号読んで。
アタシのイチバン萌え萌えな森永みるく先生の瞳×奈々のお話をどこかで書き
たいなとか思ってるんだけど、ここに描いちゃまずいでしょうかね? 2次元??
おもいきし、エロ職人なのですが…。(*゚∀゚*)

49 :
>>48
個人的には全然OKです。

50 :
>>48
バッチコーイッ!!!
つうか、おながいしまつ

51 :
森永みるく先生の単行本「くちびるからためいきさくらいろ」百合姫Vol3,4参照。
これは、幼馴染にずっと恋をしていた少女と、彼女の切ない気持ちに気づかないま
ま惹かれていく少女たちの甘〜いお話です。よろしければいくつか載せたいなと
思ってます。
エロ推奨ですので、森永先生のふわふわな世界観がお好きな方にはお勧めしません!
では。

52 :
彼女を特別に意識したのは、あの日だった…。
―――夢をみた。
また同じ夢だ。体育館のとまり木の下で、奈々が熱心にマンガを読んでいる。
彼女は、いつもそうして、部活を終えるアタシを待つ。
アタシは、そんな親友をシュート練習の順番待ちをしながら、こっそり眺めるのが
日課だった。
風通しのために開けていたドアの隙間から、ボールがゴロゴロと転がり落ちていった。
階段をトントントンとジャンプして、そのまま奈々の足元で着地する。
奈々が、それに気づいて、そっと顔をあげる。
茶色いボールを持ったまま鉄のドアの傍で立ち尽くすアタシを見つけて、ふわりと
お花のように微笑んだ。
「瞳ぃ!」
――あぁ奈々だ。奈々がアタシに微笑みかけている。アタシのための笑顔。
うれしくなって手を振ると、彼女の顔はサッカー部のユニフォームを着た男子の背
中に立ち塞がって見えなくなった。
「小林、好きだ…。」
カレは、唐突に言ってのけた。
アタシが、ずっと言えなかった言葉をいとも簡単に。
――やめて、やめてったら。奈々はアタシのなのよ。アンタになんか渡さないわ。
「俺と付き合ってほしい……。」

53 :
彼をぶっ叩いてでも、奈々を守りたかった。でも、アタシは、なぜだかその場で動
けなくなって…。
鉄の扉を掴みながら、呆然と立ち尽くすしかなかった。
黄色い背中に隠された奈々の顔が、いま、どんなふうになっているのか見えない。
奈々が、彼になにを言ったのかさえ聞こえなかった。
――お願いやめて。奈々はアタシのものなの。誰にも渡さない。アタシの奈々。
どこへも行かないで奈々。好きよ奈々、奈々を愛してるの…。
「いやよっ、奈々ッ!!!」

54 :

布団を蹴飛ばして、ガバリと跳ね起きた。
ハァハァとマラソンを終えたときのような荒い息を吐く。
呆然と自室の壁に貼ってある子猫のカレンダーと目が合う。そして、夢であったこ
とをようやく知った…。
シーツにまで染み渡るほどぐっしょりと、厭な寝汗をかいていた。
カーテンの隙間から、朝の日差しが差し込んでいる。
ふと壁に掛かる時計をみると午前5時を指していた。新聞屋さんのバイクの音が
やけに大きく響いている。
ガシガシと長い髪を掻き毟って、ギュっと唇を噛みしめた。
頬に冷たさを感じて、眠りながら、泣いていたことに気づかされる。
「…………奈々、もう限界だよ…。」
ブルーのタオルケットに向かって呟いた。

55 :

この胸の気持ちを伝えたら、奈々が傷つくかもしれない。
でも、奈々のことをよく知りもしない男なんかに取られるくらいなら、彼女を
傷つけてでもこの手で奪い取りたかった。
あんな顔だけの男になんか絶対に渡すものか。だって、奈々はアタシのものだ。
負ける気はなかった。奈々の中でアタシが一番なのだと分かっているつもり。
でも、それは、仲のよい親友としての位置づけだった。
どうして、アタシは女の子に生まれちゃったんだろう。
こんなこと思うだけでも罪だ。14年間も大事に育ててくれた両親が知ったら、ひ
どく悲しむと思う。
それでも、アタシが男の子だったら、奈々を恋人にして、奥さんにして、一生宝物
のように大切にするのに…。
そんなことは決して思ってはいけないこと。でも、思わずにはいられなかった。
そんな悪循環に苛まれる。

56 :
それでもアタシはやっぱり奈々が好き。もう、この気持ちを抑えることなんて
出来そうになかった。
好きなんだよ、ねぇ、奈々。アナタのことが好きすぎて、毎日、こんな夢をみるく
らい頭がおかしくなっているんだよ。
ねぇ、奈々。奈々は、アタシのことどう思ってる…?
やっぱり親友? それとも……。 

57 :
それは、3年の夏休みのことだった。
担任から、山ほどの課題を出された。
それをみんなでやっつけようと新築の亜紀の家で、アタシと優と舞とそして奈々の
5人で取り掛かることになったんだ。
夏休みを前に、都大会出場の夢を果たせなかったバスケ部3年は、そのまま引退の
形となった。
あと一歩のところで力が及ばなかった。
雨の中なのに、わざわざ観に来てくれた奈々の寂しそうな顔が、いまも忘れられない。
「あちぃ。つーか、すごいね、ここ。東京なのにセミが鳴いてるわ。」
「…うっさいな。どうせ人里離れた田舎だよ。」
揶揄るように優が言うと、亜紀はつまらなそうに唇を尖らせた。

58 :

アタシたちは南第三中学の3年生。小中とほとんど一緒のクラスで過ごした特に仲
良しの5人組だった。
3年といえば、もう一つの肩書きに『受験生』という文字がつくわけなんだけど。
周りが言うほど、さほど『受験受験…』と目くじらを立てるほどのものでもなかった。
そこそこの高校を出て、そこそこの短大にでも滑り込めればいいかなくらいにみん
な思っている。将来の夢なんて、まだ漠然としすぎていて、いまいちピンとこなかった。
さすがに冬休みにでもなれば、そうも言ってられないんだろうけど、まだ、夏休み
の中間地点のアタシたちは、それはそれは、呑気なものだった。
そんなのんびりしすぎの生徒を見兼ねたのか、担任は、嫌がらせのように膨大な宿
題を出してきたというわけだ…。

59 :
亜紀は、新築の家を構えるためにアタシの住んでいる近くのマンションから2ヶ月
ほど前に引っ越していったばかりだった。本来ならば学区外で、別の中学に転校す
るはずなのだけど、一応は受験生だし、あと一年もしないで卒業だから…という
わけで、彼女は30分ほどの距離を電車通学していた。
都心からちょっと奥地に入った変わりに、広いお庭と12畳にもなる大きなベ
ランダ付きの個室が与えられた。
優は、それにひがんで、いつもこうして亜紀を揶揄っているのだ。
まだ、どこか新築の木の香りが漂う。
家の周りが木々に囲まれているせいか、風が涼しく感じられた。
ガーデニングが趣味らしいおばさんの影響なのか、亜紀の部屋にも女の子らしい
花が見事に咲き誇っていた。

60 :

「でも亜紀ちゃんチ広くていいなぁ〜。アタシの部屋なんて、ベットと机置いたら
いる場所ないからね。」
あははと、隣で奈々が笑う。奈々からふんわりとお菓子のような甘い匂いがする。
でも、確かに奈々と言うとおり、そこそこ成長期の5人が入っても息苦しさは感じ
なかった。
話もそこそこに、とりあえずは手分けして宿題に取り掛かることにする。
それでも、5人は多すぎだったのではないかと、誰が言わなずとも気づいた。
一人が脱線してしまうと、みんなに伝染していって、誰もがシャーペンを投げ出した。
しまいには、なんのために集まったのかもすっかり忘れてしまうくらいたわいもな
い話で盛り上がる。

61 :

「あー、せっかくの夏休みに、女だらけで、こ〜んな人里離れた村に来るなんて
超寂しすぎる〜。」
「ちょっと、優、村は言い過ぎだっつーのッ!」
また、優と亜紀のやりとりが始まった。
アタシタチは、ケタケタと笑いながら傍観する。
「でも、女だらけつーのは、やっぱ寂しいよね。あぁ、アタシも早く彼氏欲しい〜!」
「んな恥ずかしいこと叫ぶな! 近所迷惑になるだろ!」
「えっー。お隣さんなんかぜんぜん見えないじゃんよォ、亜紀ちゃん!」
「うっさい優! つーか、舞も。アンタは、またそれかよ…。もう、だったら、
クラスの男でも誘ってどっか行けばよかったじゃん。」
亜紀が、二人にすかさず突っ込む。
こういうとき、なぜかアタシと奈々は蚊帳の外になるんだ。

62 :

「クラスのなよなよした男は趣味じゃないって言ってるじゃない。じゃなくてさ、
もっと、こう、運命的な出会いが…。」
「出会いね…。はは、ま、頑張れよ。」
テーブルに手を組みだして遠くを見つめ出す舞に、亜紀はポンポンと華奢な肩を叩
いて宥めた。
女の子が5人も集まれば、ファッションの話や、食べ物の話、テレビの誰それの
悪口、それに男の子の話にと話題には事欠かない。
そんなとき、アタシだけはちょっと後ろめたい気分に駆られる。
ふと、隣の奈々を見ると、彼女もアタシの視線に気づいてニコリと微笑む。
胸が、甘酸っぱくきゅんてなった。
可愛い可愛いアタシの奈々。そっと伸ばせば届く距離にある愛らしいちいさな手。
すいと伸ばしかけて、寸前のところでピタリと止めた。
唇を噛み締めて、この胸のドキドキをどうにかやり過ごす。

63 :

「ところで、ねぇ、奈々。3組の菅野くんのことどーするの?」
「…エッ?」
奈々のことなのに、アタシのほうがビクンてなる。
みんな奈々を一斉に注目していたから、アタシのそんな反応には誰も気づいていな
かった。
「ちょっと、なによそれ、菅野くんって、サッカー部の…?」
「それが実はそうなのよ。ちょいと聞いてよ、みなさん、この奈々ちゃんたらね、
こないだサッカー部一押しの菅野くんに告られたんだってー。たく、もー、アン
タも水臭いんだからそれならそうとアタシたちに言ってよねッ!」
「え、ちょ、おばちゃん、亜紀ちゃん? てか、待ってよ。なんでそれ知って
るの…?」
みんなに注目されて、奈々の白い肌が、急激に赤くなる。
アタシの目の前も真っ赤に染まった。

64 :

「はは。実は3組の友達に聞いたんだよ。あの菅野が告ったって、もう有名だっ
て話よ!」
「えっ、ウソー。奈々、菅野くんに告られたの? あのサッカー部でモテモテだっ
ていう?」
「エーっ。すごいじゃん。奈々もついに彼氏持ちかぁ…。先越されちゃったな。
でも、ま、おめでと、奈々。」
みんなに追求されて、顔を真っ赤に染めながら奈々が俯いた。
奈々の膝の上の指が、ギュっと握られているのが見えた。
アタシは、この胸の怒りが爆発してしまうんじゃないかって、それと必に戦って
いた。
「ちょ、ま、待ってよ。そんな、おめでとうって優ちゃん…。アタシ、まだ、
付き合うって決めたわけじゃないしぃ…。」
「エー。……じゃ、断っちゃうの? なによそれ、もったいないよ〜。」
五人の中でも一番面食いな舞が、奈々に詰め寄った。

65 :

「も、もったいない…かな…?」
「うん。菅野くんて言ったら、南三中一のちょうモテ男のイケメンクンよ。菅野く
んが彼氏だったらチョー自慢じゃん…。」
「……そう。そ、だよね? カッコいいとはアタシも思うけどね。でも、アタシ、
菅野くんと同じクラスになったことないし、よく知らないしぃ…。」
「はあぁ? んなの、これから、知ってきゃいいんじゃん!」
「そ、そうだよね…はは。」
どうにも耐え切れなくて、バンてテーブルを叩いた。
ほとんど飲み終えていたみんなのグラスがガタガタに揺れる。
みんなが、一斉にこっちをみる。
アタシは、背中からぎゅうと奈々をかき抱いた。

66 :

ちいさな奈々。アタシの腕の中にすっぽり入っちゃう。いい匂い。サラサラな髪に
顔を埋めてグリグリしたくなる。
「……ちょ、ひ、ひとみったら、急に、どうしたの?」
奈々が、アタシを見上げながら上ずった声を上げた。
アタシは、奈々の渦巻きを見ながら、フッと大きく息を吐いて。
「もうだめよ〜。奈々はまだアタシのなんだから〜。いい、奈々。男はみんなオオ
カミだっていつも言ってるじゃないのォ〜? 野獣よ…男はみんな野蛮なのよ…。
こ〜んなちっちゃい奈々なんてあっという間にぱくっと食べられちゃうんだからね。
そんなのは、まだダメなのよ〜。」
そう言ってグリグリと肩におでこを寄せる。
ふざけておかま口調のアタシに、奈々は笑いながら、アタシの頭をよしよしと撫でた。
「カーっ、またそれかよ! ちょっとちょっと奈々いいの? このまま瞳を野放し
にしといたら、アンタ、ホントに一生彼氏なんかできないって!」
3人の肩が、やれやれと同時に下がった。

67 :

「いいもんね〜。そのときは、アタシが奈々をお嫁さんに貰ってあげるから。」
「もう、瞳ったらっ!」
やだなぁと言いながら、バシッと肩を叩かれた。
それでも、さっきよりもうれしそうに笑う。
アタシはホッとして、奈々をますますぎゅっと抱きしめた。
ねぇ、奈々。
アナタは、ぜんぜん気づいてないかもしれないけどね。
アタシが、こうして冗談のように節々に入れる言葉には、全部本気が含まれて
いるんだよ?
奈々をお嫁さんにしたい。そしたら、一生、傍にいられるのに。
奈々を誰にも渡したくない。
アタシの腕の中に閉じ込めて、こうして閉まっておきたい。
怖いよ、奈々。
奈々が、別の人のモノになっちゃったらと思うと怖くて眠れなくなる。
奈々が、アタシの知らない誰かの腕の中に埋もれるのを想像するだけで嫉妬の
炎で焼ききれそうになる。

68 :

それでも、この気持ちは自分の胸の中に頑丈な鍵を掛けて閉まっておこうと思って
いたんだ。
奈々のあの姿をみるまでは……。
「ねぇ、ちょっと、それよりみんな、実は今日は、すっごい物あるんだ。ふふん。
ジャーン。これ、観たい人ォ〜?」
「ギャー、なによそれ、ヤダー。観たい観たーい!!」
ジャジャーンとドラえもんのような効果音つきで取り出された物にみんなの視線が
一気に釘付けになる。
舞と優の甲高い声が、「ギャォー」と、雄たけびを上げた。
奈々を見ると、アタシの腕にちいさく包まれながら、ぶわって耳たぶまで真っ赤に
なっていた。
そんな奈々を見下ろしながら、アタシは、本気でこの子を手に入れたいと我慢がで
きなくなったんだ。
もう親友でなんかいられないよ。
ごめんね奈々。でも、大好きだよ奈々。

69 :

今日のところはこの辺で。
この先も、ご要望があれば続けていきたいと思ってます。
ずっと大ファンだった森永センセイのシリーズパロです。
シリーズ全部好きだけど、特に大好きな瞳×奈々編でした。
これは、瞳と奈々の中学の頃のお話を妄想してみました。マンガのほうは奈々
ちゃん視点な感じなので、報われない瞳のほうを…。(*^∀^*)
実は、アタシ、リアルな小説しかやったことがなく、創作モノは初めてだった
ので、いまいち勝手が分からず、こんなんでいいのかしらんと。(^o^;)
感想とかいただけたらうれしいです。

70 :
>49さん
>50さん
ありがとうございます。
お言葉に甘えてさっそくやっちゃいました。テヘ(*^-^)b

71 :
(・∀・)イイ!
この調子でおながいしまつ。

72 :
49です。
ハルヒさんGJ!。続編期待してます。

73 :
age age

74 :
みるく作品ャベ━━━━━(・∀・)━━━━━!!
ハルヒさま。
続きを続きを…待ってますゾヨ。(・q・)/ヨダレ。

75 :
センセイ本人?
てくらいヤベー!!!!!!!!!!
神!!!!!!!!!!

76 :
おかわりまーだー?(´・д・`)<マテナイヨ。

77 :
待ってマース

78 :
このごろね、奈々と初めて逢った日のことをよく思い出すんだ……。
奈々と出逢ったのは、ちょうど8年前の春だった。
前の晩に降り続いた雨のせいで、せっかく咲いた桜が散ってしまうんじゃないかっ
てお母さんが、ひどく心配してた。
でも、一夜明けてみればウソみたいな快晴で、それほどの被害も遭わずにすみ、ア
タシは両親に両手を繋がれて、桜満開のピンク色のトンネルを歩いたっけ…。
ちょっとおめかしした囚われの宇宙人のような親子連れがたくさんいるなか、
奈々は、桜の木の下で写真を撮っていたね。
(―――なんかあの子、ずいぶんちっちゃいけど、おんなじ一年生なんだよね…?)
幼稚園のなかでも群を抜いて大きかったアタシは、その愛らしい小動物のような少
女にすっかり釘付けになった。
奈々は、お姫様が着るみたいなふわふわなピンク色のワンピースを着てた。
肌は透き通るように白く、それと対称的に唇はまっ赤だった。
くるくるとよく動く黒い瞳。カメラを構えるお父さんに向かって、ピースサイン
をしながら微笑みかける。まるで自分に笑いかけられたみたいに、胸が変なふう
にドキドキいった。

79 :
衝撃だった…。だって、こんなお人形さんみたいな可愛い女の子をはじめてみたから。
見蕩れるままその場に呆然と立ち尽くすアタシにはまったく気づかずに、彼女は、
お父さんに手を引かれて目の前を通りすぎていった。
真新しい真っ赤なランドセルが重たそうで、ランドセルを背負っているというより
は、ランドセルに背負わされているといったふうだった。
そのとき、突風が吹き荒れた。満開の桜の花びらが紙ふぶきのようにひらひらと舞
い落ちる。光沢のある少女の黒髪もさらっと靡いた。日差しに反射され、てっぺん
には、ドーナツみたいな丸い輪っかが浮かび上がった。
(わぁ、天使さまだ……。)
大好きでよく読んでいた絵本の中に出てくる天使さまは、きっとこんな感じなので
はないかと思った。
彼女の微笑みは、天使のようにやさしくて、背中がなにかとてもキラキラとして
みえた。ふと、その黒髪に映えるようにピンク色の花びらがちょこんと落ちて
いるのに気づいて。
アタシは、思わず声を掛けてしまっていた。
「あっ、ね、ちょっとまって!」
「えっ…?」
少女が、お父さんに手を繋がれたままゆっくりと振り返る。
キョロキョロとあたりを窺ってから、自分以外誰もいないと分かったのか、
「アタシ?」と、自分の顔のほうに人差し指を向ける仕草をする。
アタシは、コクンて頷く。

80 :
とうとう少女の視界の中に入ってしまい、全身が緊張でピキンと硬直した。
真近でみると、ますますその可愛さに圧倒される。
こんな可愛い子みたことないよ。幼稚園にもいなかった…。
勢い余って声を掛けてしまったものの目の前の子のあまりの愛らしさにすっかり
呆気に取られて、アタシは、そのまま言葉を失ってしまっていた。
アタシが呼んだきりなにも言わないものだから、少女は、こてんと首を傾ける
仕草をする。
それがますます可愛らしさに拍車を掛けて、アタシの心臓がこのまま大爆発を
起こすんじゃないかってくらいドクドクと波打っていた。
「……あ、あのォ…なに?」
わーっ!
声も可愛いんだ。
「……あ、あのぉ……。」
「うわっ!!……ご、ごめん。えっ、んと、その、お花が…、頭にね、お花が
ついてるよ…?」
そう言うと、奈々は、シャンプーをし終えた子犬がブルブルするみたいに頭を
振った。でも、ペタリと貼りついたそれは、なかなか落ちることはなく、だか
ら、そっと手を伸ばして取ってあげる。
ホントにちいさいんだ。アタシと頭一つぶんくらい違うよォ…。
なんかいいなぁ〜。ちっちゃいのって…。
アタシも、こんなカワイイ女の子になりたかった。

81 :

ちいさなピンク色の花びらを手のひらにのせた。
「……あ、どうもありがとう。――えっと、ひとみちゃん…?」
「うん。どういたしまして。……って、あれ?」
初めて逢ったのはずなのに、どうしてアタシの名前を知っているの?
問いかける前に、彼女の目線がちょうど自分の胸の高さになるのだと気づいて、
名札を見たからなのだと解釈する。アタシもお返しに、彼女の胸に掛かる長方形
の札をジッとみた。
「えっと、こばやしなな…ちゃん?」
「うんっ♪」
彼女は、うれしそうにちいさな頭を前に倒してコクンて頷いてみせた。
その仕草がいちいち可愛らしくて、胸がきゅんきゅんする。
“ななちゃん”って、名前もすっごく可愛いー。アタシは、こっそりと胸の中
でその名前を繰り返した。
こばやしなな…こばやしなな…って。絶対に忘れないように、何度も……。
お母さんたちは、頭の上で「お天気がよくなってよかったですね〜」みたいな
世間話をしていた。
可愛いなぁと思ってた子に、思いがけずしゃべりかけることができて、アタシは、
すっかり舞い上がっていた。
なんだか急に、顔を見るのが恥ずかしくなって、モジモジと彼女の胸の辺りを
みていたら、その札に、同じ数字が並んでいることに気がついた。

82 :

「わあっ、ななちゃんも、一年一組だ!」
「あっ、ひとみちゃんもだ…。同じクラスだね?」
「そうだね。ねぇ、ななちゃん、お教室まで一緒に行こう?」
「うん。行こう!」
奈々は、目の前に真っ白な手を差し出してきた。五本の指がじゃんけんするとき
みたいに大きく広げられいる。ピンク色でちっちゃくて、なんか紅葉みたいだと思った。
手を繋げることがうれしくて、バッとお母さんの手を離すと、目の前にあるその手
をギュって掴んだ。
奈々の手はやわらかくて、でも、すごく温かった。
「ななちゃんって、かわいいね。」
「……えっ?」
同じクラスになれたうれしさと、手を繋げたうれしさですっかりのぼせきっていた
アタシは、気づいたら頭の中で思っていたことが口からするりと零れてしまっていた。
彼女が、不思議そうな顔でジッと見上げてくる。
アタシは、ハッとしながら慌てて。
「い、いや、その、あの、お洋服が…。ピンク似合うね。すっごくかわいい…。」
「ありがとう。ひとみちゃん。」
「うんっ♪」
それからというもの、奈々のアタシの中でのイメージはピンクだ。
あの日の桜の花びらのピンクと、ふわふわのピンク色のワンピースが、強烈に
インプットされた。

83 :

ねぇ、奈々知ってる?
あれが、アタシの初恋の想い出なんだよ。
あのときの桜の花びらをいまも大切に持っていると知ったら、奈々はどう思うかな?
あれから、8回桜の季節を迎えた。
進級するたびにクラス替えがあったのに、なぜか私たちだけ、毎回とも同じクラス
になれた。
アタシが、初詣に行くたびに“奈々と今年も同じクラスになれますように”と
願掛けているおかげなのかどうかは分からないけど、それも、今年で8年連続だ。
“ここまでくれば運命だよね〜!”
二人で見合って、クラス替えの掲示板の前でいつも笑う。
来年も同じ高校に行って、大人になっても奈々とはずっとずっと一緒にいよう。
それになんの疑問も抱かなかったはずなのに……―――。
◇ ◇ ◇ ◇

84 :

奈々の体は、なんだかお菓子のような甘い匂いがする。
ふざけながら、彼女を後ろからギュっと抱きしめていたときだった―――。
「もう、アンタたちは相変わらずなんだから〜。ねーっ、そんなことより、実は
今日は、すっごくいいものあるんだ。ジャーン。これ観たい人〜!」
本来の目的であったはずの夏休みの宿題もそっちのけで、お菓子を食べながら
雑談しているとき友達の亜紀が、唐突に言ってきた。
舞が食べかけていたポテチを「ごふっ」と喉に詰まらせる。
優は、半開きに口をぽっかりと開けていた。
私たちは、亜紀が右手に大きく掲げるものにすっかり目が釘付けになった。
彼女が持つDVDのパッケージには、見たこともない女の子の写真があった。
着衣はほとんどなく、お淫らなポーズと卑猥なタイトルをひと目見ただけで、その
中身までわかってしまうような代物だった。
宿題の多さにうんざりぎみだった舞と優は、すぐにそれに飛びついた。
「ぎゃーお。なにそれやらし〜。てか、どうしたのよ、亜紀?」
「えへへ。実はさ、昨日、兄貴のベットの下こっそり覗いたら見つけちゃって……。」
見つけちゃってって、わざわざそんなところをそういう目的で探さなければ覗かな
いだろうという突っ込みは、どこからも聞こえてこない。
亜紀には、6つ違いになる大学生のお兄さんがいた。
サークルやら、コンパやらでなにかと忙しいらしいらしく、一度だけ遭ったこと
のある彼は、さわやか系のカッコいいお兄さんだったと記憶してる。
「うっそー。あのお兄さん、こんなの観るんだ…。うわっ、なんかアタシ、超
ショックだよ。亜紀のお兄ちゃんちょっとカッコいいから狙ってたのにぃ……。」 
「…って、人の兄貴狙うなッ!」
舞の相変わらずの反応に、亜紀がすかさず突っ込みをいれる。

85 :

「でも、アタシもちょっとショックかも。てか、亜紀のお兄さんってロリ……。」
「いやぁっ! ち、違うって。なんか、これ、友達に借りたっぽいしぃ……。」
優の呟きを兄の沽券に関わるとでも思ったのか亜紀は慌ててフォローにまわる。
「………やっぱし、男って、誰でもこういうの見るんだねぇ〜…。」
清潔そうだったお兄さんに本気で惚れてたわけじゃないのだろうけれど、舞の呟き
が、部屋に重く響いた。
シーンと静まり返る室内。セミの鳴き声が遠くのほうから聞こえてくる。
「……ていうか、みんな、観たくないわけ〜?」
「いや〜んっ。観たい、観たい!!」
優と舞が両手をバンザイながら、ヒューヒューと変な奇声を上げる。
お兄さんのことを散々非難したわりに、その変わり身の早さにアタシは呆れて、
やれやれとおばあちゃんのように肩をトントンした。
ふと、腕の中の子が無反応なことに気づいて見下ろすと、奈々は、赤い唇をわなわ
なと震わせていた。完熟トマトのように赤く腫れあがった頬。耳たぶまで器用に染
めている。
アタシは、そんな親友の顔を見下ろしながら、なんともいえない気分になった。
だって、いまどきアダルトビデオごときでこの反応…?
あまりの初々しさにこっちのほうが、照れてしまいそう…。

86 :

エッチビデオは、前に一度だけ見たことがあった。
アタシの場合も、やっぱりお兄ちゃんの秘蔵品だった。
兄とは一回り近く離れていたから、彼は、すでに独立していて都内で、リーマン
なんかをしているのだけれど、アタシが小学生のときに、何気なく開けた箪笥の
一番下の引き出しの奥にやっぱり隠してあったのを偶然見つけた。
あのお兄ちゃんがこんなものを観るなんて最低…と、当時思春期でもあったので、
大好きだった兄を軽蔑しそうになったりもしたけど、それよりも好奇心のほうが
格段に上回っていた。
親の居ない隙を狙って、こっそりと観た。
だからというわけじゃないけど、そっち系のものには多少なりの免疫はあった。
でも、奈々は一人っ子だし、そういうのを一度も見たことがないのだろう…。
(生まれて初めてのえっちビデオ鑑賞か…。)
いまの奈々の感情がダイレクトに伝わってくる。
ただでさえ潔癖ぎみなところがある奈々は、こういう類の物が一番苦手だ。
しかも、みんなのいるところで観なくてはいけないなんて……。
でも、友人たちがひどく盛り上がっているところを、「見たくない」なんて、
いまさら水を挿すようなことを引っ込み思案の奈々が言えるはずがなかった。
奈々とは長い付き合いだから、顔を見ただけでも心の内側が読めてしまう。
それにしてもなんだかひどく困ったようにしているから、みんなに「やめようよ!」
「アタシはいいわ」なり、いつものように助け舟を出してあげるつもりが、今日の
アタシは、どこかおかしかった。
おどおどしている彼女の反応があまりに可愛らしくて、悪戯心がムクムクと沸いて
きてしまっていたのだ。
(奈々が、これを観てどうなるか見てみたいかも……。なんて。)
悪趣味だけれど、奈々が恥ずかしがって泣きそうになる顔がみてみたくなった。
あぁ、ごめんね、奈々。

87 :
レンタルビデオ屋で借りてきた映画をみんなで観る時みたいに、部屋を暗くして、
ミルクティもグラスに並々と継ぎ足した。テーブルの上には、ポテチとアタシの好
きな激辛カラムーチョの袋を大きく広げていつでも手が伸ばせるように準備万端に
置いてある。
いつもと違うのは、外部からの侵入をシャットアウトするために、ドアには厳重に
鍵を掛け、窓もカーテンに至るまでビッチリ締め切った点だろう。
今から悪いことをしようとしている自覚は、(一応は)あるらしい。
強めに設定をし直したクーラーのゴウンゴウンという音が、やけに大きく響いていた。
銀盤の丸いドーナツが、亜紀の手によって機械の中に吸い込まれていく。
ほどなくして、「18歳以下はダメよ」という掲示が流れた。
ここにいる全員が、れっきとした18歳以下だけど、もちろんそれに誰も何も言わない。
始まった内容は、さきほどの優の発言のとおり、それが彼の趣味なのかと疑いたく
なるような制服を着た女の子がたくさんでてくる学園ドラマだった。
初めは、たいくつな芝居が永遠と続いた。小学生の演劇発表会みたいに棒読みな
のが映画を観るときと違って、なかなかその世界に入り込ませてくれない。まぁ、
内容なんてあってないようなものだから、そんなのは、誰も求めていないのだろうけど…。
「くく。ちょっと、ねぇ、こんなオヤジがクラスメイトなんてありえなくない?」
「あはは、どうみても30はいってるよね。てか、この胸超すごすぎっ! これっ
てやっぱ、豊胸ォ〜?」
「絶対そうだって。この身体で、こんなおっぱいなんてありえないもんっ!」
演技が下手すぎだとか、男優がオヤジばっかでどこが高校生なんだよとかみんなで
観ている恥ずかしさもあってか、言いたい放題、終始そんな感じで野次ってたけど、
行為が佳境に入るころには、誰もお菓子には目もくれず無言のまま食い入るように
四角い画面に没頭していた。
アタシはというと、テレビには興味がなく、横で泣きそうになりながら必に画面
と戦っている奈々の顔ばかり眺めていた。
(うふふ…。あんなに真っ赤になっちゃって奈々ったら可愛いー。)

88 :

奈々は、画面を見ることに必で、アタシが見てることになんてまったく気づいて
はいない。
『…あっ、あんっ、やんっ、だめ…。いふっ、あんっ……』
わざとらしいくらい大きな喘ぎ声が響く。実際に、半分は演技なんだろうなと思った。
でも、初めてこの手のビデオをみる奈々に、それが演技過剰などとは気づくはずが
なく、女の子が甲高い嬌声をあげるたび、眉間の皺がギュっと捩るのが見て取れた。
そのうち、気分が悪そうに手で口元を覆ったので、アタシは思わず声を掛けてしまっ
ていた。
「……奈々?」
奈々が、大げさなくらいびくっと身体を揺らして、おそるおそるといった感じに
アタシのほうへ振り返った。
ぷくぷくの頬を紅色に染めて、その大きな瞳にはうっすらと水膜ができていた。
(―――だ、だいじょうぶ?)
3人に気づかれないように、口ばくで問いかける。
彼女は、困ったように目を虚ろにさせて、それでも気丈にコクンて頷いてみせた。
その子犬のような可愛らしい反応に、アタシは、奈々のほうへそっと手を伸ばした。
彼女のちいさな紅葉を軽く握り締める。
奈々もきゅっと握り返してきた。5本の指が複雑に絡み合う。
それで心丈夫になったのか、彼女の視線は、アタシから画面のほうへと映っていった。
画面は、ちょうどベタな体育倉庫でのシーンに変わっていた。いかにもな感じで
置いてある跳び箱の横にベット代わりの薄汚いマットを敷いた上で、裸の男女が
激しく絡みあっている。

89 :

荒い息を「ハァハァ」させて、少女の背中のほうから腰を突付く男の姿はやたら
獣じみてみえた。
男の汚いお尻がクローズアップされる。
アングルは、下のほうから卑猥な部分を映し出す。
二人が一つに繋がる部分をカメラが永遠とズームする。
絡まる奈々の指先がピクンと反応したことに気づいた。
奈々は、耐え難い画面から目を逸らしかけて、でも、がんばって戻すを何度か繰り
返した。アタシは、そんな親友がだんだん可哀想に思えてきて、だいじょうぶだよ
と抱きしめてあげたい衝動に何度も駆られた。
別に誰に強制されているわけでもないのだから、厭ならば見なければいいいのに…。
でも彼女は、絶対に目を逸らしちゃけないのだと強迫観念に迫られているかのよう
に必だった。
アタシは、画面とそんな奈々のことを交互に見つめながら、だんだん、画面のなか
で男と絡みあっている少女の姿が、親友とだぶってみえてきた。
そして、彼女の背後に覆いかぶさる30男が、奈々に告白したサッカー部の彼に
思えてきて、咄嗟にギュって目を瞑った。
違う…。なにを考えているのよ。そんなわけが、そんなのあるはずがないじゃない。
違うってば。あれは奈々じゃない。汚れを知らない奈々が、こんなことするはずがない。
でも、一度思い込んでしまった頭が、思うように言うことを聞いてくれなかった。
妄想がますますエスカレートする。

90 :

『…あぁんっ、ひゃん、あぁ、やだっ、だめよっ。いう、ふっ、………。』
男の腰の動きに比例するように、女の声もどんどん大きくなっていった。
そんな甲高い声でさえも奈々の声に思えてきて、アタシは、咄嗟に耳を塞ぎたくなった。
こんな純粋培養で育ったような奈々だって、好きな男が出来れば、いつかはこう
いうことをするんだ。
いや、いや、いやよ。そんなの絶対にいや。
奈々が、アタシの知らない男のものになるなんて、そんなの耐えられない。
奈々は、このアタシが大切に育ててきたバラの蕾なんだ。
そんな大切な子を男の汚い垢にまみれた手で、荒らされたくなんてない。
知らない男に攫われるくらいなら、いっそのこと、このアタシが……。
たったいま、自分の考えたことにハッとして、隣に座る奈々の横顔をジッと見た。
深い霧の張ったモヤモヤのまま、自分の気持ちから目を逸らし続けてきたことが、
明るみになってしまったようだった。
私たちは、友達だから。
私たちは、親友だから。
私たちは、女同士だから。
そんなのはただの言い訳だった。
いま、胸の中にあるこの気持ちに気づいてしまった。
アタシは、そういう意味で奈々が好きなのだって……。
男の子たちといっしょで、そのちいさな身体を丸ごと欲するくらい愛しているのだと。
ギュと目を瞑る。そういえば、前にも似たような思いをしたことがあった。

91 :

いつか一緒にお風呂に入った日のことを思い浮かべる。
お互いの家を泊まりっこするときは、子供の頃からの流れで、一緒にお風呂に入る
のが恒例だった。
そのころの奈々は、自分になかなか第二次性徴が見られないことをひどく悩んでいた。
アタシが、周りより成長が早かったせいか余計に焦ってるみたいだった。
「いいなぁ、瞳は……。」
「えっ?」
洗った髪をシャワーで濯ぎながら、湯船に浸かる彼女を見る。
食後のデザートに食べたリンゴみたいに赤くなったふくふくのほっぺたがなんか可愛い。
「…おっぱい、膨らんでて。毛も…。アタシって、どっかおかしいのかな?」
「奈々、なにを言っているの?」
アタシはアタシで、性器にうっすらと毛が生えてきてしまったことがショックで。
それが、汚らしいと思っていたから。
まだ汚れていない奈々のほうが、うらやましくてしかたがないと思っていたのに。
「だってぇ……。瞳さ、もう生理きたんでしょ?」
「…うん。まぁ…。」
「亜紀ちゃんも……、優ちゃんもこないだ来たって言ってた。――アタシだけだよ?」
そう言って、赤い唇を尖らせる。
あぁ、ホントに可愛いよ。
肩まで浸かったせいか、毛先だけが濡れていて、おもむろに手を伸ばして撫で撫で
してあげたい気分だった。
でも、大人になりたがっている彼女にそれは、逆効果だと分かっているから、
伸ばしかけた手を引っ込めた。

92 :

「そんなの…。そんなの、こないほうがよかったよ。お腹とか痛くなるし……。」
少しだけ濡れた息を漏らして、彼女に笑い掛ける。
「そうなの? そうなんだ……。」
奈々は、それっきり、むっつりと黙り込んでしまう。
アタシは、シャワーで身体にまとわりつく泡をさっと洗い流して。
「奈々、交代しよ?」
「…うん。」
シャワーのコルクをキュと締めると、彼女が湯船から立ち上がった。
胸はまだ膨らんでいないけれど、そこに飾られているピンク色のちいさめな乳首が
奈々によく似合って、すごく可愛いらしかった。
肌の色をした綺麗な性器をこっそり盗み見しながら、アタシは、大きく息を呑んだ。
まったく、なにを言ってるのよ奈々は…。
そんなのぜんぜん気にすることないのに。
奈々は、可愛いすぎる。
奈々のそこも、奈々と一緒ですっごく可愛いのに……。
変なふうに胸がドキドキしてた。胸がドキドキというより、おへその下のあたり
がなんだかムズムズする感じ…。
いつも一緒にお風呂に入るとき、奈々の身体を見てもそんなことなかったのに…。
どうしたんだろうアタシ……。
あのとき、自分の変調に気づいたけど、アタシはそのままにした。
奈々の幼い身体をみて発情してたなんて、知りたくなかったから……。

93 :

初めて出逢ったころの奈々は本当に小さかった。
ずっと、『前習え』は、腰に手をあてる役だったと記憶している。
小学生の頃は、それが原因でよく苛められていたりもしてた。
「チビチビ」と中傷的な言葉で囃し立てる男の子を当時流行ってた戦隊ヒーロー
にでもなったつもりで、やっつけるのがアタシの使命だった。
当時から、ミニバスをやっていたせいで小学生の頃までは、男子よりも大きかった
から、恐れられていたんだ。
奈々は学年が上がっても、相変わらず揶揄られやすい対象だった。
外見は大人しい感じなのに、意外に芯は気の強いところがあって、泣かされても折
れることをしないから男の子は、泣かせたくてムキになってやるのだ。
男の子からの身体を貶す揶揄のイジメは相変わらず続いて、それも、だんだん年を
追うごとに彼らの目つきが変わっていくことをアタシは敏感に気づいていた。
可愛い奈々を揶揄って、自分のほうへ気を惹かせたいという姑息さがありありとみ
て取れた。それが、無性に腹立しかった。
なぜ女のアタシに彼らの気持ちが分かるのかといえば、私も彼らと同じ感情だった
からなのだろうと今なら思える…。
「アタシ、男の子って大キライ。大きくなったら瞳と結婚するっ!」
泣かされるたびに、奈々はそう言ってアタシに抱きついてきた。
そういえば、先にプロポーズしてきたのは奈々だって、きっと彼女は覚えてないよね。
でも、奈々は知らないんだ…。
そのとき、アタシが、本当はどう思っていたかなんて。

94 :

奈々には可哀想だけど、もっとひどいことを言って、奈々を泣かせてしまえばいいと
思ってた。
だって、そうすれば、アタシのところに助けを求めてくる。
アタシは、奈々を抱きしめてあげることができる。アニメのヒーローのようにカッ
コよく思われたい。奈々の見方はアタシだけだよ、って…。
最低だよ。信頼されていた奈々の気持ちを裏切っていた。
身体ばかり大きかったけど、中身は子供と一緒だよ。ていうか、子供だったんだ。
あのときと今とでは、どう違うんだろう…。ほとんど変わっていない。
奈々を苛めていた男の子たちは、ちゃんと成長して、それを恋と呼ぶのだと気づけ
たのにね……。
奈々を苛める男の子はもういない。
身長もとっくに追い越されて、彼らは、知らない間に大人の男になっていった。
なんか、アタシだけ置いてけぼりにされた気分だった…。
最初の頃は、女の子に生まれて本当によかったって思っていた。だって、女の子で
いられたから、奈々の一番の親友になれたんだし、いつだって、彼らより優位に立
つことができたから。
でもいまは、そのことがひどく重くなってきている。
ずっと、奈々の隣を独占していたからその報いなのかな…?
アタシが、もし男の子だったら、この悩みが一気に解消されるなんて皮肉な話だ。
「瞳、……瞳、ねぇ、瞳ったら!!」
「うわっ!!」
少女のどあっぷに目を丸くする。
可愛かった頃の奈々を想像していたから、目の前に大きくなった奈々が現れてアタ
シは大げさに仰け反った。

95 :

「ゴ、ゴメン瞳。なんか驚かせちゃった…?」
「や、だいじょうぶ。…ちょっとぼけっとしてた…。」
ビデオ鑑賞会は、アタシが瞑想している間にとっくに終わってしまっていたようだ。
すっかり明るくなった部屋で、お菓子を摘みながら今度は品評会が始まっている。
奈々だけが、ひどく心配そうにアタシの顔をジッと見つめていた。って、これじゃ、
さっきの逆だよ。
なにも知らない小学生の頃のほうがずっとよかった。
そしたら、ただ奈々と愉しくしていられたのに…。
ずっと、奈々の一番近くにいられたのに……。
大人になんかなりたくなかった。けど、時計の針は、自分たちの思い通りには
止まってはくれない。
「でも、いつかは、アタシタチもするんだって…。」
「えっー。アタシはヤダな。だって、すっごく痛そうじゃない、あれ?」
「……痛そうだったけど、気持ちよさそうでもあったよね…?」
「あれは、AV女優だからだよ。だって、最初のときはぬほど痛いつーじゃない?」
「舞、ぬほど痛いのヤダー。」
「つーか、何回もすれば痛くなくなるものなのかな?」
「わかんない。――てかさてかさ、うちのクラスで、もうした子とかいるのかな?」
「――麻生は? もう童貞じゃないってこないだ自慢してたの聞いたよ?」
「ゲッ、んなの、どーでもいいー。」
3人のあけすけな会話が聞かずとも耳に入ってくる。
奈々は、会話にも入れず困ったように俯いていた。
そこへ、場違いなほど陽気なドラえもんの着メロが鳴り響く。
アタシは、慌てて目の前の携帯を取ってメールボックスを開いた。

96 :

「――――あ、ごめん。お母さんからだ。なんかもう帰って来いってさ。」
「エー、そうなの? な〜んだ、もう一本あるから観ようって言ってたのに〜。」
亜紀の言葉に内心うんざりしながら、左手を目の前に立てた。
「ごめん。また今度ね…。―――アタシは帰るけど、奈々は?」
どうする? と、視線で尋ねると、彼女は、ひどくホッとしたように肩で息をついた。
「……帰る。アタシも夕飯までに帰るって言ってきちゃったから…。」
そう言って、よいしょと立ち上がった。
 
亜紀のウチからの帰り道、奈々は、ずっと無言だった。
アタシは、どうでもいい話を一人でしゃべっていたけど、それもすぐに行き詰った。
最寄の駅で降りて、徐々に電灯のともりはじめる道すがら、ずっと黙ったまま
だった奈々が唐突に言ってきた。
「…あの、あのさ瞳、アタシね…。菅野くんのこと断ろうと思ってるんだ…。」
「そう……。」
頷いたきり、どう言ったらいいのか分からず沈黙が続く。
自転車のおじさんがコキコキ言わせながら私たちの横を通り過ぎていった。
なんでも一番に相談してくる彼女が、告白を受けたことだけは黙っていた。
でもそれは、奈々がアタシに秘密にしようとしていたわけでなく、アタシのほうが、
相談させる隙を与えていなかったせいだった。

97 :

そんな話、奈々の口から聞きたくなかった…。
だいたい、そんなこと聞かされて、アタシはなんて答えればいいわけ?
よかったね、おめでとう、って?
そんなこと口が裂けても言えないよっ。
それに、聞いてしまったあとで、また一人になって悶々と悩むのが厭だった。
全部、アタシの勝手な想いだ。
ようやく親友に言えたと、奈々は、どこかホッとしているようにみえた。
「…菅野くんのことぜんぜん知らないし、男の子のことまだちょっと怖いっていうか、
――なんか、ああいうことしなきゃいけないのかと思ったら、ちょっと…て、思っ
ちゃって…。」
「そうだね…。」
その気持ちよく分かるよ。
アタシが、あのビデオを観ながら、奈々のことを想像したように、きっと奈々も
あの子を自分と置き変えて観ていたのだろう。
奈々の言葉を聞いてひどくホッとしたような、でも、内心はやっぱり複雑だった。
薄暗闇を無言のまま並んで歩く。
真っ直ぐなアスファルトだけれど、なんだか急に足元を掬われるような感覚に
襲われて、そっと手を伸ばした。
奈々の温かい紅葉が当たり前のようにきゅっと握り返してきた。
子供の頃と同じ体温になんだかホッとする。
手を繋いで歩くこの道は、あの頃からなにも変わらないはずなのに風景だけが
違ってみえた。
あの頃と今とでは、身体の大きさも違うんだし、それは、当たり前のことだけど…。
でも、亜紀のおかげで自分だけが、あの頃のままじゃないことを知ってしまった。
いや、あのビデオは気づかされるきっかけだったにすぎない。だって、奈々へのこ
の想いは、もう何年も前からずっと胸の内側にあったことなのだから…。

98 :

アタシだって、あんなふうに。
奈々を抱きしめたいよ。
奈々とキスしたい。
奈々を裸にして、汚してしまいたい。
奈々の初めてを奪いとりたい。
奈々が、どんなに嫌がろうとも……。
奈々も知らないところを暴いて、メチャクチャにしてしまいたい…。
可愛い奈々。アタシの奈々。
アタシが、いまこんなこと思ってるなんて知らないだろう。
こんなのホントの親友なんかじゃないよ…。
でも、奈々が可愛すぎるからいけないんだよ?
たとえ彼とのことがこれで白紙になったとしても、それで安泰でないことぐらい
十分すぎるくらいに分かっていた。
こんなにも可愛い奈々が、次は誰の目に留まるかなんてそんなに遠い話じゃない
だろう……。
そして、そのたびにアタシは、またあの悪夢にうなされ、その人が現れるのをビ
クビク待ち続けるんだ。
そんなの厭だ。アタシの性分に合わないよ。
奈々の隣に居られるだけで十分シアワセだと思っていた自分は、消えていなくなった。
こうして手を繋いで歩けるだけで満足だなんて思えない。えっちなビデオを観ながら、
恥ずかしそうにしていたあの顔を今度は、アタシの腕の中でみてみたいと思っちゃう。
ひどく昂ぶった体の熱は、あのビデオのせいなのか、隣に奈々がいるからなのか分
からなかった。

99 :

アタシの気持ちは、初めて逢った桜の木の下からまっすぐに奈々へと向かっている。
でも、奈々は……?
そんなのわからない。奈々の気持ちなんてわからないよ…。
それでも、アタシは、奈々が欲しいんだ。
でも、この気持ちを伝えるということは、いままでのやさしい関係を壊すというこ
とでもあった。
奈々に後ろを向かれるのがなによりも怖い。アタシは、そうなったらんでしまうか
もしれない。
どうしよう……やっぱりヤメル? 彼女への恋しさと不安で、胸の中がごちゃ混ぜ
になる。
そのとき、ふと足元が明るくなった。
遠くのほうから流れる車のヘッドライトが二人を照らしていた。
アタシは、奈々をガードするように手を引いて、車が通り過ぎるのを待つ。
眩いライト。それが、いまはなんだか希望の光のように思えた。
そんなのやってみなければわからないじゃないか。
きっとだいじょうぶだよ。うん。なんか、だいじょうぶな気がする…。
だから、伝えよう奈々に…。
今まで胸の中に温めていたこの想いを……。アナタが好きだと伝えよう。
奈々が好き。大好き。
心の中でそう決心して、明日、伝えることに決めた。
思わず力んでしまい、奈々にひどく痛がられた。
結局、その日の晩は、興奮しすぎてほとんど眠れなかった――。

100 :

すみません。なかなか纏まらず、思いがけず長くなってしまっています。
もう一回で終わる予定です。
読んでくれた人ありがとうございました。では。

101 :
ハルヒさん
GJ!!!待ちに待ったかいがあった!!
しかし、本当に萌えぬかと思ったwww

102 :
ハルヒさん、GJ過ぎ!!
胸がキュンとしましたよ。
次も楽しみにしています!

103 :

   キタキタキタ──wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜── !!!

104 :
GJ!ほんとGJ!
いいものを魅せてもらったよ

105 :
すごい色々な意味でリアルだな・・
gj

106 :
なんてGJ
もっと感想とか書きたいんだけど
GJとしか言いようがない。
とにかく続き待ってる…

107 :
これはいいものだ

108 :
なんていうか、とんでもなく感情移入してしまったw
ものすごいおもしろいです、続き楽しみにしてます!!

109 :
age

110 :
続くwktk

111 :

みんなでビデオを観た日から、あっという間に2週間が過ぎていた――。
あの次の日。
奈々に告白しようとすっかり息巻いて、奈々の部屋に意気揚々と出向いた。けれど
彼女は、お父さんが遅い盆休みがようやく取れたとかで、急遽、親戚のうちに遊び
に行くことになってしまった…。
慌しくカバンに荷物を詰め込んでいる奈々の後姿を見ていたら、とてもそういうこ
とを云えるような雰囲気じゃなくなっていた。
しかたなく、帰ってきたらということで、その日は諦めた。
奈々の居なくなった休日は、湿気ったカラムーチョのように味気なかった。
旅先から届く奈々からのメールが待ち遠しくて、愉しそうな写メールが、うれしい
反面、ひどく寂しかった。
最初は、一週間くらいという予定だったのに、すっかり延び延びになって、暇をもて
あましたアタシは、奈々のことばかり考えて過ごした。
どうしてこんなに好きになったんだろう…。
なんで、奈々だったんだろう……って……。
アタシって、女の子が好きなのかな?
ていうか、レズ…?
たぶん違うと思う…。
男の子がキライなわけじゃないし…。初めて買ったCDだって、男の子のアイドル
グループのものだった。
かと言って、女の子がスキなわけでもないと思う。
奈々以外の子に対して、こんな気持になったりしないもの…。
男とか女とか関係なく、奈々が奈々だったから、アタシは奈々のことが好きになっ
たんだ。奈々だけは特別なの…。

112 :

自分はどこかおかしいのかとぐだぐだ悩んだわりに、結論はそんなあっけないもの
だった。だって、好きなものは好きなんだからしょうがないじゃない?
この気持ちを早く奈々に伝えたくて…。
だから、早く帰ってきてよ、奈々。待っているのよ…。
奈々から、“家に着いたよ”というメールが届いたとき、アタシはベットの上で
一人バンザイした。
奈々の家に遊びに来て、こんなに敷居が高く感じたことなんてない。
二階の突き当りが彼女の部屋だった。この一枚のドアを隔てた向こうに奈々がいる
んだと思ったら、変なふうに緊張してきた。
扉の向こうに、いままでと違う世界が待っているのかと思うと握りしめた拳が、固ま
ったままなかなかドアを叩けないでいる。
古典的だけど、手を広げて汗ばんだ手のひらに「人の字」を書いてゴクンと飲み込
んでみた。ぜんぜんだめ…。そんなんじゃ気が晴れないよっ!
「スー」「ハー」と何度か大きく深呼吸して。ようやく決心して握り締めた拳で
ドアを叩くと、すぐに返事が返ってきた。
ドアをそろりと開けた瞬間、飛び掛らんばかりに抱きつかれて目を丸くする。―――
抱きつくというより、これは羽交い絞め…?
「瞳ぃぃ〜〜〜〜っ」
「うわぁっ、……ちょ、ど、どうしたのよ、奈々?」
熱烈歓迎はうれしいけど、いったいなにごと?
「うぇ〜ん。終わらないよォ〜…。」
「は、…はぁ?」
終わらない……?
はて? なんのことよ?

113 :

「ねぇ、お願い助けてよ、瞳ぃ〜…。」
「う…うん。――てか、なんの話?」
アナタのタメならたとえ火の中水の中よ…と、頭の中で唱えながら、でも、一体な
にを助ければよいのやらと首を傾げる。アタシの胸に蹲る奈々の顔をやさしく持ち
上げた。
すると彼女は…。
「もうっ、夏休みの宿題だよっ…! いくらやってもぜんぜん終わらないの〜っ。」
そう、なぜか、キレ気味に言われて。
ようやく事情を察したアタシはというと、大げさなくらいガックリとうな垂れた。
ずいぶんと使い古されたような学習机の上には、見開いたノートやら辞書らが散乱
していた。
せっかく旅行に行ってのんびり遊んできたわりにひどくやつれたような顔がどうし
ちゃったのかと思ったけど、すべての納得がいく。
隣の家のチワワのような愛らしい奈々の眸は、真っ赤に充血していた。よくみれば
目の下に隈らしきものがうっすらと浮かんでいる。
もしかして昨日から寝ないで宿題やっていたのかな可哀想に…なんて、思いかけて、
ハタと思い直した。
甘やかしちゃダメよォ〜。だいたい、それ自業自得じゃないの…。
「ていうか奈々、旅先に宿題持っていかなかったの…?」
その前に、ぜんぜんやっていなかったのかって話だけど…。
それは、ひとまず置いといて。
「だ、だってぇ。ホントはもっと早く帰ってくる予定だったんだよ。それなのに、
お父さんが、せっかくだから途中の温泉に寄ってもう一泊でもしていこうって言ってぇ…。」

114 :
「あーはいはい。分かったから、もう、そんな言い訳アタシにしたってしょうがない
でしょ!」
むすっと膨れた顔をしながら涙目になる彼女が可愛くて、胸が変なふうに太鼓を叩
いていた。
でも確かに、奈々の言い分も分かる。今年の宿題は半端な量ではなかったものね…。
受験生なのに、のんびりしすぎていると、各教科の教師陣から戒めのように大量に
出された宿題の山。片付けるのも大変だった。
でも、それだって、40日間もあれば、いくらなんでも終わる量だよ。
アタシの場合は、後半にのんびりしたいからと、早々にやってしまっていた。
でも、奈々は……。
私たちは、いつも一緒にいるけど性格は真逆だった。
好きな食べ物とかでもアタシは、一番先に食べちゃうけど、奈々は、最後まで大事
に取っとくよね?
まあ、それは、いまと関係ないものかもしれないけど…。やれやれと肩をすぼめた。
手が掛かる子ほど可愛いって言うけど、あれホントだわ。
奈々は頭が悪いんじゃなくて、ちょっと要領が悪いだけなんだよね…?
こんなふうに溜め込まなければ、奈々にだって出来ないはずがないのに。
初めからこつこつやっていれば、今頃になって、こんなに慌てなくても済むのよ…
って、喉まで出掛かった声をなんとか押し留める。
そんな正論をいまさら振りかざしところで、また逆ギレされるのがオチだろうから。
ていうか、なんかこういうの前にもあったような気がぁ……。
「ねぇ、奈々…。アタシ、思い出したよ…。去年も奈々、そうやって、アタシに
泣き付いてきたわよね? そう…、被服の宿題のパジャマ製作がぜんぜん終わらない
って言って…。ねぇ、奈々覚えてる? あれ、結局アタシが全部作ってあげたんだよ…。」

115 :

「あ、あれはっ! アタシ、ミシンとか苦手だから…。瞳、そういうの得意でしょ? 
でも、あの瞳が作ってくれたパジャマ今でもだいじに着てるよ? 色違いにしたんだ
よね? 瞳は、着てる?」
「もう、この子は、話逸らさないのォ〜。」
「う〜〜〜っ。」
拗ねた顔をもっと見たくて、ついつい意地悪を言いたくなる。
案の定の可愛い反応に、アタシは喉の奥でくつくつと笑った。
「まったくさ…。奈々って、サザエさんチのカツヲくんみたいよ?」
いつも決まって日曜日の夕飯時には、みていた定番のアニメを思い出す。
イガグリ頭の彼と可愛い奈々とじゃ似ても似つかない感じだけど…。
夏休みの最終日の回は、決まって、宿題を終えていないカツヲを叱りつつも、家族
総出で捩りハチマキしながら、夜なべするというのが恒例だった…。
ちょうど今の奈々のように…。
そう言うと、ますますふぐのように頬膨らませて…。
アタシは、チョンチョンと膨らむそれを爪先で突付いた。プシューと音を立てなが
ら風船みたいに萎んでいく。くくっ。想像通り可愛い反応…。奈々を苛めるのって
なんか愉しい〜。
「あ…そうだ。そんなことよりお土産渡すの忘れてたよ……。はいこれ。」
昔話を持ち返されて決まり悪くなったのか、強引に話を逸らしにかかる。紙袋から
見るからにお饅頭らしき箱を手渡されて、アタシは微苦笑する。

116 :

「そっちは家族用ね。味見したら結構おいしかったの、みんなで食べて。…んで、
瞳にはこっち…。気に入ってくれたらいいんだけどォ〜…」
と、前置き付きで手渡されたのは、家族で箱根のガラス館に寄ったときに体験学習
で作ったという奈々お手製のグラスだって。
かなり飲みにくそうないびつな形が、素人っぽくてなんかいい感じよ。なんか
ちっちゃい金魚鉢みたいだけど…。これ、グラスでいいのよね…?
ミシンは苦手な奈々がわざわざアタシのために作ってくれたのかと思ったらうれしく
なっちゃう。なんか、ちょっと父の日のプレゼントみたいだけど…。
アタシのほうはというと、今年は、お父さんが海外出張中で帰ってこられなかった
から、休み中はどこへも行けなかった…。
だから、奈々に渡せる物なんてなにもない。
お返しは……と考えて、やっぱり彼女が、いま一番喜ぶ物を上げるべきよね…?
「ありがと奈々。大切に使うね。……で、どこまでやったのよ…?」
あんまり甘やかしすぎるのもこの子のためにはならないなと思いつつも、ノートを
覗き込んだ。案の定、待ってましたとばかりに現金な少女は身を乗り出してくる。
たくっ、調子いいんだからー。そういえば、この顔に、毎年騙されているんだった…。
アタシも進歩ないよォ〜…。
「はあぁ…。見事にぜんぜんやってないのね…。」
「…………う〜〜っ。だってお父さんがぁ…。」
また人のせいにしようとする奈々をメッと睨み付けた。
もうっ、それは違うでしょっ!
ほぼ白紙の問題集をパラパラ捲ると、がくうと大げさにうな垂れる。

117 :
確かに、明日までの提出は難しい気がしてきたよ…。
そりゃ、目の下にも隈が現れるはずだってっ!
ていうか、やっぱりアタシが手を貸すからいけないのかな。……教育間違っちゃってる?
「……英語は、まぁだいじょうぶだと思うけど…。国語とかは、字でバレたらヤバ
イから自分でやらなきゃだね…。ってウソ、読書感想文まだやってなかったの?
ちょっと、どうするのよ奈々。いまから本なんて読んでたら、他のものが終わらない
じゃないっ!」
「だってぇ……。」
「もう、だってじゃないっ!」
しゅんと耳を垂らす少女をやさしく睨み付けて、アタシは、熱を測るみたいに額に
手をあてた。
「たくっ、アタシが来なかったらどうする気だったのよっ。もうしょうがないなぁ〜。
じゃ、数学と英語はアタシが引き受けたから…他のは、奈々がやってよ。読書感想
文は、家に忘れてきちゃったとか言えば引き伸ばせるでしょ…。はあぁ…。」
なんで、アタシってこんなに要領がいいのかな。自分で自分が、ときどき厭になる。
「えへへ。ありがと瞳。…瞳〜ぃ、あんもう、だから好きよっ。愛してる。もう、
超大好きっ!」

118 :

背中からぎゅうって抱きつかれて、ちいさな膨らみが背中にあたる。全身がピキン
と硬直した。そんなアタシの状態にもおかまいなしに、奈々は、信州名物のアップ
ルパイがあるはずだと、いそいそとお茶を取りに行ってしまった。
彼女の部屋に一人残されたアタシはというと、女の子特有の甘い残り香を噛み締め
ながら、ココへ来た目的をようやく思い出してすっかり途方に暮れる。
今日こそはと思って気合入れてきたのに、また振り出しに戻っちゃった……。
「でも、これじゃ……。」
とてもじゃないけどそんな雰囲気に持っていけそうにないよ…。
机の上だけでは飽き足らず、ローテーブルやベットの上にまで所狭しと散乱する教
科書類。いろんなものを広げてやってみては、終わらないとパニックに陥っていた
親友の姿が目に浮かんできて、思わず微苦笑する。
大きなため息を一つついて彼女の筆入れから、キティちゃんのシャーペンを拝借す
ると、その大きな猫の頭を二度ほど押した。
「はあぁ。“愛してる、超大好きっ”かぁ……。」
奈々が残していった言葉を甘く噛み締めながら頁をめくる。
告白は明日にお預け…。
さっきの言葉を、彼女の口からもう一度聞けることを願って、アタシは、見覚えの
ある問題集と格闘した。

119 :
◇ ◇ ◇ ◇
やけにテンションが高めなのは、久しぶりに会ったせい…?
ずいぶん日に焼けた友人たちが、夏休みのどこ行った、なにした…なんて話を
ひっきりなしにしていた。
みんなが一斉にしゃべるものだからどんどん声も大きくなっていって、そうして、
とうとう、担任から注意の言葉が飛んできた。
久しぶりに会った担任教師は、「受験生なのに…」と太い眉をギュと顰めている。
朝には始業式があったものの、今日から通常授業。
みんなどこか夏休み気分が抜けきれず浮かれ調子ではあったけど、時間の経過と
共に相変わらずの日常生活が戻ってきているようだった。
いつ言おう…。いつ言おう…。アタシの頭の中はそればかり考えてた。
でも、いざ、そういうことをしようとすると学校でするのはひどく難しいことを思
い知った。
学校の中なんて、どこにでも人がいて、二人きりになれる場所がなかなかない。
移動教室は、大抵5人で行動しているし、かと言って、裏庭にまで呼び出して、
“好きだ”というのもなんかアタシらしくない気がする。
次の時間、次の時間とタイミングを計っているうちにドンドン言えない状況に陥った。
ど、どうしよう……。
ていうか、授業終わっちゃったじゃないの…。

120 :

教室掃除のじゃんけんに負けて、ごみ捨て当番。
大きなゴミ箱を抱えながら、「はう」と、何度目だか分からないため息が零れた。
なんか、今日は、無理っぽいな…。対策を練って、明日改めてしようかなと考えて、
ぶるると首を振る。
ダメよ。そんなの…。だいたいそれじゃぁ、ダイエットを始める前と一緒じゃない。
“明日明日…”なんて言って、時間が経つごとに曖昧に誤魔化していくに決まって
るんだから。自分のことだけによく分かるよ…。
だから、告白するなら今日しかないんだ。
これを逃したら、二度と言えなくなるぞ…と肝に銘じる。
あの日の気持ちをもう一度思い返す。
これで、長かった片想いにピリオドが打てるんだ。明日から違う自分が待っている。
「よしっ!」ともう一度気合を入れて拳を握り締めたら通りがかった男子に変な目で
見られちゃった…。
気まずさに髪を掻き毟りながらふと体育館に視線が向く。磨き上げられた板張りに
ずいぶん古くなった懐かしいボールが転がっていた。
「もう、ちゃんと片付けなきゃダメって言ってるのにぃ……。」
部員が、ボール拾いを怠ったらしかった。
部費が少ないせいで、皮が毛羽立ったようなボロボロのボールを毎日ワックスで磨き
上げて使っている。
ボールを大事に扱うことは、先輩たちからさんざん言われ続けたことだった。
「最近の子は、言うことを聞かなくて…」と思いながらも、懐かしさに釣られてそ
のボールを拾い上げる。誰もいない体育館は、不気味なくらいシーンと静まり返っていた。
でも、もうすぐ後輩たちがやってきて、にぎやかな大合唱が聞けるのだと思いかけ
て首を振る。今日は、式典ごとがあった日だから部活は免除されるはずだった。

121 :
なにげなしにダムダムとボールをついた。
手に張り付くようなひどく懐かしい感触。ワックスの独特の匂い、音。つい2ヶ月
前までこのコートで汗だくになりながらボールを追いかけたのが、ずいぶん遠い話
のように思えた。
小学生の頃からミニバスをしていたから、思えば、バスケをしないのはそれくらい
ぶりのことだった。
アタシがバスケを始めたのは、小学4年生のとき。バスケなんてスポーツ知らない
ような子供だったけど、監督をしていた近所のおじちゃんにスカウトされたのがき
っかけだった。当時からずば抜けて背が高かったから…。そんな感じで好きで始め
たバスケではなかったけれど、試合の日とかには、いつも奈々が応援に来てくれた
から、これまでがんばってこれた。
奈々に褒めてもらいたくて、カッコいいとこ見てもらいたくていっぱい練習した。
おかげで、中学に入ってすぐに、レギュラーにもなれて、エースナンバーももらえた。
それに、夢中でボールを追いかけていれば、余計なことを考えずにすんだ…。
疲れて、夜に妖しい夢をみることもなかった……。
急にヤメテしまったから、無駄な体力が有り余っていて、そのぶんいまは奈々のほ
うへ向いちゃっているのかもしれないと思った…。
なんとはなしにシュートを打つ。
心が乱れていたせいか、枠から大きく外れて板に強く弾かれると、そのまま反対の
方向へ転がっていった…。
それが悔しくてダッシュして拾い上げるとムキになって、何度も打つ。

122 :
「へたくそ…。」
いくら打ってもぜんぜん決まらなかった。
いつもなら簡単に決まるのに。
おかしいな…。
とことんやりたくなる。溜め込んだ鬱憤を晴らすかのようにボール籠を倉庫から取り
出すと、時間も忘れて夢中になって打ちまくった。
徐々にあの感覚を思い出してきて、シュートが決まり始める。
一本打つたびに、アタシは、まるで花占いでもするかのよう胸の中でこう唱えていた。
“告る。告らない。告る。告らない。”って…。
それが、花びらじゃなく、バスケットボールっていうのが、いかにも体育会系のア
タシらしいなぁと苦笑するけど…。
久しぶりの運動に厭でも息が上がってくる。
部活をヤメテからそんなに経っていないはずなのに、すっかり体力が落ちてしまって
いた。
そして、とうとう最後の一球。
これがあの中に入ったら、奈々に告ろう…。好きだと言おう…。胸の中で、そっと呟く。
ゴクンと乾いた生唾を飲み込む。
試合中のタイムアップ五秒前のフリースローのときを想像しながら、神経を集中させる。
大きく息を吐いてポーンと投げはなったボールは、放物線を描いて、見事にリング
内を捉えた。ネットに「シュッ」と吸い込まれる。気持ちいいくらい綺麗に決まった。
アタシは、「よしっ!」と胸の前で拳を握り締める。
それに被さるようにパチパチと手を叩く音に気づいて振り返ると、ずっと心の中に
想い描いていた人が、目の前に立っていた。

123 :
「すごーい瞳。すごいすごいよっ。さっすが、南三中のエースだねっ!」
「………。」
「ていうか、なかなか帰ってこないからどこ行ったのかと思って探しちゃったよォ〜。」
なにか言わなきゃと思うのに、あまりに驚きすぎて、咄嗟に言葉が出てこない。
まさにこれから告白しようと心に決めた人が突然目の前に現れて、どうしていいのか
分からなかった。
シーンと静まりかえった体育館に取り残されたように二人っきり。
なかなか奈々と二人になれるチャンスがなくて、今日一日もどかしい思いに駆られ
ていたけど、まさか、最後の最後にこうくるとはだよ、ホントに。
丸いラインの中で硬直したまま動けずにいるアタシに、奈々のほうが近づいてきた。
「すっごい汗だよっ、瞳。……いったい、何本打ったのよっ…。」
あたりに点在する茶色いボールを見ながら奈々は微苦笑する。
折り目のつくくらいアイロンの掛けられた白いハンカチにそっと額の汗を拭われた。
彼女が僅かに腕を上げた瞬間、ふわんと、汗と制汗スプレーの入り混じった甘酸っ
ぱい匂いが漂った。
アタシは、堪らなくなってその細い腰を自分のほうへと引き寄せた。
唾液が干からびて、うまく言葉が発せられない。
驚いたように黒い眸がくるくる動く。リップでも塗ったような真っ赤な唇が、
「……瞳?」と、アタシの名前を紡いだ。
アタシは、そのまま彼女の息を閉じ込めていた。唇で…。

124 :
得体のしれないやわらかさを感じて、自分のした行動に心底驚いた。
キスは、奈々とじゃなくても生まれた初めての経験だった。
唇って、こんなにやわらかいものなの…?
それとも、奈々が特別…?
ぷにんとしたそこは、ほどよく温かくて、甘い匂いがして、やさしい感触。
まるで奈々そのものだと思った。夢に描いていたとおりの……、いや、これは、
想像以上の肌触りだよ。
奈々とキスしているのだという状況が、遅ればせながら脳に伝わってくる。
その事実をようやく頭の片隅で認識すると、途端に、血液がダッシュしだした。
お父さんのお酒を飲んだときみたいにカーっと顔が異常なくらい熱くなってる。
小刻みに震える指先。感動で、涙腺も緩んできちゃう。
ていうか、どうしよう…アタシ汗くさくないかな?
いろんな思いが、頭の中を走馬灯のように駆け巡る。
あぁ、なんかカッコ悪いよ…。奈々の前では、いつだって、カッコよくありたかった
のにこんなのさ……。
でも、初めてのキスなんだ…。
瞬きも忘れるくらい腕の中の少女を見つめた。
思えば、こんなに至近距離で奈々の顔を見たことなどなかった。
彼女の特徴でもある大きな黒目が全開に見開かれてる。けぶるほど密集する睫。
息をするのも大変そうなちいさな鼻腔。頬は、リンゴのように朱色に染めて…。
ほんとうに可愛い。なんでこんなに可愛いのよ…。

125 :

ずっと赤いそこに触れてみたいと思ってた。
奈々の唇ってどんな感じなんだろうって、想像してた。
いま、そこに触れているんだと思ったら、感動で頭が真っ白になる。
強い視線を感じて、ハッと我に返ると、奈々の大きな眸がジッとアタシをみつめて
いるのに気づいた。
吸い込まれちゃいそうなほど真っ黒な眸のなかに自分の顔が移っていて、でも、間
近すぎて、彼女の表情までは読み取れなかった。
急にこんなことして、そりゃ驚いているよね?
告白するつもりが、いきなりキスだもん…。自分の行動にアタシのほうが驚いている
くらいなんだから…。
ごめんね奈々。……でも、ちゃんと伝わったでしょ、アタシの気持ち…。
言葉にはできなかったけど、ぴたりと繋がる場所から想いの丈を送り込む。
ほら、届いた…?
いま、奈々は感じたはずだ。アタシの気持ちを。ずっと奈々の傍にいながらひた隠し
にしてきたアタシの想い……。
ちいさな身体が小刻みに震えてきていた。
ごめんね奈々…。怖がらせたいわけじゃないの…。ただ、アナタにこの気持ちを
どうしても伝えたくて…。
好きよ奈々。アタシは、アナタのことが、そういう意味でずっと好きだったの…。
いままで、軽い言葉や冗談で誤魔化してきたけど。本当は、トモダチなんかじゃなかった。
ずっとずっと、奈々のことが好きだった…。
愛してた……。ホントだよ。

126 :

だから、お願い、受け取って。
届いて、アタシのこの気持ち……。
長い長いキスだった…。
いや、そう思うのは自分だけで、それほどでないのかもしれない。
触れたままだった場所が、呼吸を求めるように自然と離れた。
肩で大きく息を吐く。
奈々も、思い出したように酸素を求めて喘いだ。
お互いとも初めてのキスで、呼吸の仕方がよく分からなかった。
何度か深呼吸して、ようやく落ち着きを取り戻すと、もう一度、彼女を見下ろした。
まだ焦点がぶれているように思うのは、舞い上がっているせいなのかな…?
キスするにはちょうどいい位置に奈々の顔があって。
いままでくっついていた場所が、てらてらと濡れて光っているのが、やたら扇情を誘う。
これを、アタシが汚したのかと思ったら、身体のいろんなところが熱くなった。
もう一度したいな。あのやわらかい感触を味わいたい。磁石に吸い寄せられるように
首を傾けた瞬間、軽くトンと肩を押し返されて目を見開いた。
「………奈々?」
ようやくお腹の底から出てきた声は、ひどく掠れていた。
ジッと見つめあう二人。
先に視線を外したのは奈々のほうだった…。

127 :

「や、やだな…。もう、瞳ったらスキンシップ過剰なんだから…」
「……えっ?」
「ふ、ふつう、ともだち同士で、ここまでしないよォ……。―――瞳ってば、
冗談きついんだから…。」
「…………。」
「あっ、時間。早く、いかなきゃ、みんな待ってるからぁ……。」
奈々は、アタシを一度も振り返らず床を見たまま慌しくそれだけ言うと、きゅっきゅっ
と上履きを鳴らしながら走り去っていった。
広い体育館にひとりぼっちに残されたアタシは、そんな彼女を追うことも、声を掛
けることさえできずに、その場で呆然と立ち尽くした。
なんだか急激に力が抜ける。引力には逆らえずに、そのままズルズルとしゃがみこんだ。
告白をすれば、「アタシも…」と言われるか、「ゴメン…」と嫌われるかのどち
らかだと勝手に思っていた。
うんん。
アタシは、奈々も「瞳が好き」って言ってくれるものだと思っていた。
こんなふうに、何事もなかったかのようにさらっと流されてしまうなんて想像だに
していなかった…。
どうして? アタシの気持ちちゃんと伝わっていなかった…?
それは、ありえない。狼狽したあの顔を見れば一目瞭然だった。
奈々は、アタシの気持ちに気づいたはずだ。
それなのになぜ…?
アタシの気持ちに気づいて、それでも無視されたってことなの…?
軽い冗談とあっさりと受け流しとけばいいって。なにもなかったことにされた。

128 :

そんな…そんなの……。
ひどいよ奈々。それは、あんまりだよ。
確かに、急にこんなことして、ビックリしただろうし、少しは悪かったかなと思っ
ているけど…。
アタシだって、もう限界だったんだ……。
ずっと奈々が好きだった…。
初めて逢った小学一年生のときから片想いだった。
アタシだって、女の子を好きになって、悩まなかったわけじゃない。
自分は、どこかおかしいのかなと思いながら、それでも、奈々が好きだという気持
ちに曇りはなかった。
全身から溢れ出そうになる想いを堪えるのに必だったんだ。
それさえも耐え切れずにだんだん一方通行の恋が苦しくなってきて、奈々にもこの
気持ちをわかって欲しかった。歪な恋の正体をちゃんと形にしたかった。
“ともだち同士…”
去り際に彼女が強調するように言った言葉が、頭の中をぐるぐると旋回する。
じゃあ、ともだちじゃなかったらよかったの…?
そしたら、アタシのこと好きになってくれた…?

129 :

アタシの告白なんて、なにもなかったようにされたことにひどく傷ついた。
これじゃ、嫌われたほうがはるかに楽だった。
これから、どうすればいいのだろう…。どうやって、奈々と付き合っていけば
いいのかわからない…。
いや、彼女の願いはわかりきっていた。
いままでどおり親友として傍にいること。このさい、アタシの気持ちがどうかなんて
おかまいなしに、すべてを、なかったことにして…。
そしてアタシは、そんな彼女の意思を聞き入れてしまうんだって同時に悟っていた。
奈々と離れ離れになることのほうが今の自分には地獄だから…。
ふと、頬に冷たさを感じて、自分が泣いていることに驚いた。
泣くのなんて久しぶりだった。
奈々のそばにいられれば、いつだって笑っていられたから。シアワセだったから。
いつから、こんなふうになっちゃったんだろう。
もうあの頃には戻りたくても戻れないんだ。
アタシは、もう二度と笑えないかもしれない。表面では笑えても心からは…。
きつく噛み締めた唇は、彼女の味がして、涙が止まらなかった。
◇ ◇ ◇ ◇

130 :
あれから、何事もなかったように変わらない日々を過ごしている。
藤森瞳は、小林奈々のことがずっと好きで、彼女に告白したけど振られちゃった…
なんておくびにも出さないくらい以前と同じように振舞った。いや、そうなるよう
努力した…。二人の間にそんなことがあったなんて、きっと誰も気づいていないだろう。
最初の頃は、奈々のほうが逆にアタシを警戒してて、アタシが、ちょっと触れるだけ
でビクビクしたりしてた。細い針で胸のあたりを刺されたみたいにチクチクしたけど、
それもなんとか我慢した。
そのうち体育祭や学園祭と続けざまに行事が重なって慌しくなり、早くも推薦入試
が始まりだした頃には、アタシの過剰なスキンシップにも、奈々はなにも感じていな
くなっていった。
奈々の中で、あの日のことが、綺麗さっぱり消えてしまったんだと思ったら、心臓を
拳で突かれたみたいに急激に痛み出した。
これまで、自分の気持ちを誤魔化し誤魔化してここまでやってきたけど、そろそろ
限界がきていた……。
アタシは、そんなに打たれ強い人間じゃない。
奈々の前ではどうにか笑っていられたけど、精神はボロボロだった……。
ずっと、奈々のそばにいたいという気持ちは変わらないのに、このままいたら、
きっと心が分離して粉々に壊れてしまうということも分かっていた。
「どうせ高校に行くなら、渋谷とかがいいなぁ〜。」
「エーっ、でも、遠いと通うの大変じゃない? だったら、吉祥寺とかは……。」

131 :

そんな声がちらほらと聞こえ始める季節。
夏から秋を一気に跨いで冬が来てしまったかのように毎日肌寒い日が続いている。
窓際の席で、日差しに当たりながら机に頬杖つきながら真剣な顔で、「制服図鑑」
なんて本を眺めている奈々を遠まきで眺めていた。
屈むだけで白い襟足が覗く。
そこを唇で触れてみたらどんな感じなんだろうと思い浮かべて、慌てて首を振る。
「な〜な。な〜にみてんのォ?」
「ん? なんだ瞳かぁ…。ん〜と、高校どこにしようかなと思って…。」
甘い匂い…。
女の子の香り。
アタシが、こんなにピッタリくっついても、もうなんとも思わないんだね…?
ほぉら、こんなに胸を寄せているのに、奈々なにも感じないのぉ? 逃げなくて
いいのぉ?
あぁ、胸が痛いよ。ズキズキする。急に左胸に鈍痛を感じて、ギュっと押さえ込んだ。
相変わらずざわざわと騒がしい教室。
10分間の休み時間。勉強している人とおしゃべりしている人が半々になっている。
この時期を受験戦争とも言うくらいで、普通ならばもっとピリピリしててもいいはず
なのに、周りもいたってそんな感じだった。

132 :

なぜ当事者の私たちがこれほど「受験」に呑気で構えているのかと云えば、それ
は、私たちの学年が著しく子供が減少した年にあたるらしく、高校の定員数に
ゆとりがあるからだった。
原因がなんなのかはよく分からないけど、極端に少ないらしい…。
なので偏差値が多少くらい届かなくとも、間口は広いので入れる可能性は大きいのだ。
教師たちは、あまりいい顔しないけど、みんなは、ラッキーだったと喜んでいる。
「うわっ、みてみて奈々。ここの制服可愛くない?」
「ん〜?」
「セーラー服だよ。ここの制服ぜったい可愛いっ。奈々に超似合うよ。ねぇ、奈々、
ここの高校にしなよっ!」
彼女を後ろから羽交い絞めにしながら。
アタシは、わざときゃっきゃとはしゃいだような声を出した。
痛い。痛い。痛い。こっちを見てよ奈々。アタシを見て…。
「うげっ、んも、重いよ瞳ぃ…。可愛いけど…。セーラーなんていまどき珍しいね?」
「ぜっーたい奈々にあうって! ねっね!! アタシも受けるからー、そうしよっ?」
「…お、親に聞いてみないとォ……」
桜海女子高等学校のページ。
私たちの住んでいる地区からわりと近くて、中学高校大学までエスカレーター式の
高校だった。

133 :

「桜女のセーラーかぁ…。ぜったい似合うよ、奈々。受かったら、一番にアタシに
見せてよねっ。約束よ!」
「もぉー、なに言ってんのぉー……。」
どうせ一緒に通うんだから見られるでしょって…呆れ顔。
アタシは、動揺をひた隠すように後ろから頬をすり合わせる。
すべすべの肌は、ほんのりと温かくて気持ちいい。
それでも、彼女は、アタシの気持ちになんて気づかないんだ。ぺらぺらと制服姿
の女の子が並ぶ本をぼんやりと眺めている。
奈々、奈々、奈々。
好き。好き。好き。
気づいて。早く。こっちをみて。
届かない…。
本当にこれで終わりなんだと思ったら急に涙がこみ上げてきた。
奈々に気づかれないよう、トイレに行ってくると告げて、彼女の元から走り去った。
奈々、アタシもう限界だよ…。
アタシのゴリ押しが功を奏したのかどうかは知らないけど、私たちは、一緒に桜海
高校を受験した。
その二日後、奈々には風邪をひいたとウソをついて、東峰高校の試験会場に出向いた。
それでも、ずいぶんと自分にはランクの高い高校で、担任には、50/50だぞと念を押さ
れていたけど。
アタシは、この高校に受かったら、奈々とはお別れしようと心に決めていた。
そんな不順な動機で高校を選んで、正直、受かりたくないと思いながら受験に
望んだのに、家に合格通知が届いたときには、もう笑うしかなかった…。
神様が、もう奈々のことは諦めなさい…と、言っているんだと思った。

134 :

『もしもーし、あ、瞳ぃ……、アタシ奈々。明日の桜女の合格発表…何時に行く?』
「………―――。」
携帯越しから聞こえてくるやたら明るい声に反比例するようにアタシの気持ちはどん
どん沈んでいく。
『えと、………ふたりとも受かってるといいね。あはっ。でも、さすがに高校は
クラス離れちゃうかもしれないけどォ……。』
「………奈々。」
奈々は、アタシのおかしな様子にまったく気づいていない。
それに耐え切れなくなったアタシは、彼女の声を遮った…。
『ん〜〜?』
言えば、それが現実になってしまうのを実感するようで、怖かった。
でも、真実を先延ばしにすることはできない。自分で決めたことなんだし、黙って
いたってどうせすぐに分かることなのだから…。
だったら、自分の口から奈々に伝えたかった。
「ごめん、奈々…。」
『ん? どうしたの? あれ、なんか瞳、声、変だよ、また風邪でもひいた?
お腹出して寝てたんでしょう…。ははっ。』
「ごめん……。」
『………瞳?』
「―――アタシ、アタシね、桜海女子に受かっても行けないんだ…。」
『…………。』
息を呑む声がした。いや、それは、気のせいだったかもしれない。

135 :

どうして、こんなに好きなのに離れ離れにならなければいけなかったんだろう…。
まだ心が迷っていた。ホントは行きたくない。奈々のいない学校なんて、いくら
進学校だからって言ったってなんの魅力も感じなかった。
でも、これは、自分で決めたことだから…。もう、決まったことなの…。
「……今日、今日、東峰の発表があってね……受かってたの……だから………。」
『…………えっ。』
今度は、はっきりと聞こえてきた。
彼女になにも言わせないように早口で捲くし立てる。
「だ、だから、アタシね、奈々とは、同じ高校には行けないの……。」
東峰のほうに行くから……。最後の声までちゃんと届いただろうか…。
奈々からの声は聞こえてはこない。
携帯を握り締めながら絶句する彼女の姿が鮮明に頭の中に浮かんでくる。
本当に申し訳なく思った…。結局は、こうして奈々を騙す形になってしまって。
でも、アタシと同じ高校に行くんだと当たり前のように思っている奈々には、
どうしても本当のことが言えなかったんだ。
それに、言えば決心が鈍るの分かっていたから。だって、こう言ってる傍から、
奈々と離れ離れになるのはやっぱり厭だと思っているのだから…。
ごめん、ごめん。本当にごめんね、奈々…。
でもね、アタシだって、いままでぬほど辛かったんだよ…?
アタシの気持ちをなにもなかったようにされて、悔しいというより悲しかった。
ずっと叫んでいた。
奈々、こっちをみてって。アタシをみてって。想いは最後まで届かなかったけど…。

136 :

心の傷は、時間が経てば癒えるのかと思ったけど、膿はますますひどくなるばかりで、
ますますアナタが恋しくなった。
それに、これ以上、奈々のそばにいたら、自分がなにするか分からないのが怖くなった。
キスだけじゃなく、なにか、もっととんでもない過ちを犯してしまいそうで…。
どんどん可愛くなっていく奈々を傍で見ているだけで、アタシの感情の風船は
今にも破裂しそうだったから。――だから、アナタの前から消えていなくなるよ。
『………瞳っ!』
「奈々は、受かってるといいね桜女に…。うん…。………それじゃ、バイバイ。」
溢れてくる涙に堪えきれなくなって、それだけ言うと、携帯の電源を切った。
そのままべットに投げ捨てる。
思い切り投げたせいで携帯はスプリングに弾んで壁に激突した。凄い音。
壊れちゃったかもしれない。壊れちゃったんじゃなく、わざと壊したんだ。
ずっと大事に築き上げてきたやさしい関係をこの手で壊してしまった…。
急激に力が抜けてきて、膝からがくんと崩れ落ちる。
こみ上げてくる涙が、ひっきりなしに溢れ出た。
しまいには、「わー」と大声を張り上げて迷子になった子供のように泣きじゃくった。
ベットに突っ伏して、しゃっくりのように喉をしゃくりあげながら、強く想う。
きっといまごろ、自分を責めているだろう奈々のことを。
泣いているかもしれない…。そういえば、ずいぶんと奈々の涙を見たことがなかった
ことを思い出した。
子供の頃は、奈々を泣かせる男の子から彼女を守るためのナイトだったはずなのに、
とうとう自分が泣かせるようなことをしてしまった。
もう、傍にいる資格なんてないよね。

137 :

でも、彼女は知らない…。
どうしてアタシが、奈々にあそこまで桜女を薦めたのかを…。
制服も可愛かったのもあるけど、桜女は、伝統あるお嬢様高だった。
そこらへんの女子高よりも規律が厳しくて…あそこならば、まだ男の子と出会う
チャンスは少ないだろうと思った。
大学までずっと女の子だけだから、奥手な奈々に彼氏ができないように、男の子
から少しでも遠ざけようと画策したんだ。
そんな勝手な独りよがりな思いで、アタシは奈々を陥れた。
奈々、アタシを許さなくていいよ。アタシを恨んで、嫌っていいから…。
でも、奈々がそんなことをできる子じゃないということは、誰よりもこのアタシが、
一番よく分かっていた。
奈々は、この先、自分のせいだと悔やみ続けるだろう…。
そんなふうに彼女を傷つけるとわかっていて、どうして、アタシはこんな真似をして
しまったのか。いや違う…。アタシは、奈々の心に傷を負わせたかったんだ…。奈々の
真っ白で汚れを知らない純真な彼女にアタシという染みを作りたかった。
好きよ、奈々。こんな不器用な形でしか表現できなかったけど、今でもアタシは、
アナタのことが大好き。

138 :

新しい高校は、たった一人で不安かもしれないけど、アナタならきっと大丈夫よ。
素直で、明るくて、誰にでもやさしい奈々のことだものすぐに友達もできるって。
それに新しい環境に馴染めば、アタシとのことなんて、そのうち忘れちゃうよ…。
アタシの告白を簡単に忘れられたようにね……。
そう思うと悲しくて悔しくて、きつく唇を噛み締めた。ツーと、頬に新しい涙が
零れ落ちる。
そこは、アタシだけの指定席だったはずなのに……。奈々の隣はアタシの……。
その大切な場所が誰かのものになるのかと思ったら、堪らなかった。
壊れてしまった携帯はもう鳴らない。
奈々とももう二度と逢えないかもしれない。
でも両方とも壊したのは自分だ。自分で選んだ結末なのにどうしてだか涙が止ま
らなかった。
この涙を止められるのは奈々だけ…。他には誰もいない。
ねぇ、奈々。視界がぼやけて、明日なんかみえないよ…。
奈々が居ない世界に生きている意味なんてあるのかな…?

139 :
『ともだちじゃなくても。』へ…続くな感じで。
最後まで読んでくれた人ありがとうございます。
微妙な終わり方ですいません…。力不足です…。
瞳×奈々は、特に大好きなカプで、瞳の切ない顔がなんか好きです。いろいろと妄想
しちゃって遊んでます。
次は…、って自分のスレみたいにしちゃってますがぁ、「くすりゆびにキスしたら」
の暗転部分。(よーするに初エッチあたり?)をやってみたいなぁとか思ってるんです
けど、この二人で、どこまでエロをしちゃってよいものかと…。(;´д`)
まぁ、やるからにはガッツリな感じでいきますけどね。(*>_<*)
では、また近いうちに。

140 :
GJGJ!
お疲れ様でした

141 :
GJ!待ってた甲斐がありました!
つ、次はエロですか?!
ガッツりな感じ・・・すごく楽しみだ〜

142 :
乙です!
読みながらマジ泣きしてしまいました・・・
自分の昔とみごとにはまっちゃってw
エロとんでもなく期待してます、頑張ってくださーい

143 :
GJGJGJGJGJGJ!!!!!!個人的に終わり方微妙とは思わん

144 :
GJ!!
クオリティ高ス!!

145 :
うわわ〜っ、すげー良かったです!
GJ!
全米が泣けた

146 :
需要あるかわからないけど、「硝子の艦隊」パロ投下してもよろしいですか?

147 :
是非とも

148 :
ばっち来い

149 :
ここ凄過ぎ!!!

150 :
瞳×奈々の第二弾が出来たので投下します。
>146さん お先に失礼しま−す。(笑

151 :

ほんのりと汗ばむ肌は、透き通るように白く。
さらさらの黒髪に指を通すと、ふわりとシャンプーの甘い香りが漂った。
可愛いつむじにキスをして…恥ずかしそうに俯く顔をそっと持ち上げる。
「………なーな?」
そうして、愛しい子の名を呼ぶ。
彼女は、泣きそうに眸を潤ませながら、ジッとアタシをみた。
吸い込まれてしまいそうな大きな水晶。ちょっと不貞腐れたように唇を尖らせて。
「………いい?」
短い単語だけでも十分に真意が伝わったのか、真っ黒な眸が戸惑うように虚ろに揺れた。
あぁ、だいじょうぶよ。
そんなに怖いことしないわ。
心配しないで…ねっ、奈々?
このままでも十分ドキドキするけど、まだ、物足りなかった。
こんな邪魔なもの脱いじゃいましょうよ。そうしたら、お互いの境目がわからなく
なるまで強く抱きしめられる…。
想いが伝わったのか、こくんて小さく頷いてみせる少女に微笑み掛けながら、華奢な
背中に手をまわした。まるで着ぐるみでも脱がすみたいにじりじりとワンピースの
チャックを下ろしていく。
最後まで行き着く前に、ストンと二人の足元に落ちていった…。
ブラは着けていなかった…。
薄い水色のボーダーのパンツ姿の少女が、落ちつかなそうに立っている。
まだ、膨らみきれていない幼い胸をばってんで隠すように腕を組む。それだけでも
十分に扇情的だけど、もう一つの薄い布が邪魔だった。
目の前でモジモジと脚をクロスしている少女に視線を向ける。

152 :
無言のまま首を傾げて問いかけると、眉間に皺を寄せて、今度こそ泣きそうに
顔を歪ませた。「大丈夫よ…」安心させるようにとびきりの笑顔を向けて、有無
を言わせぬままゴムに手を掛けた。
彼女が怯えないようゆっくりと脱がせるつもりが、感情が抑えきれなくなって
性急になってしまった。
すらりと伸びる二本の脚の間に、うっすらと翳る秘密の場所が現れた。
思わずごくんて、喉がなる。
ほんのりと立ち込める甘酸っぱい匂いを深呼吸でもするように深く吸い込んで。
奈々、そう、いい子ね…。
もう、そんなに怖がらなくていいの…。
怖いことなんてなにもしないわ。
いまから、アタシが、気持ちいことしてあげる。
小刻みに震える手を取って、ベットに座らせてからそっと唇を合わせた。
ゆっくりと舌を差し込んで、怯えるように奥に隠れるそれを絡めとる。
キスで徐々に緊張を解しながら、胸をひた隠そうとする両手をやさしく包んで、
そっと、シーツに横たえさせた。
体重をかけないよう気を使いながら、そのままちいさな身体に覆いかぶさる。
すべすべの肌が自分の肌とよく馴染んで気持ちよかった。
彼女のちいさな胸が、アタシの心臓に当たって二人の鼓動が呼応する。
さっきからドキドキが止まらない。
「奈々、奈々、好き、好きよ。やさしくするから……。」
「……んっ。瞳、瞳っ、あっ、アタシも……好きぃ…。」
「うれしい……。すごく可愛い奈々……。」
彼女の息遣いをもっと感じようと心臓に手をあてた瞬間、頭の上でじりじりと
けたたましい音が鳴り響いた―――

153 :
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

「ハッ!!!…………なっ、うっそぉ、夢〜っ?!!」
ピンク色の薄手のカーテンから眩しい光が差し込んでいる。
チュンチュンとBGMのようにスズメの合唱が始まっている。時折、「カーァ」と、
カラスが間抜けな鳴き声の合いの手を入れる。
アタシは、枕に突っ伏しながらがっくりと大きくうな垂れた。
そんな〜、うそでしょう〜。
いまのが夢オチだなんて…。
そんなのありぃ〜〜っ!!!
あれが、夢だったなんて……。
ていうか、あまりにもリアルすぎよっ!
まるで、奈々がここにいたみたいなさ……。
小学一年生のときに初めて奈々と出逢ったときから、彼女を想い続けてちょうど10年。
長いこと想い続けた初恋だった…。でも、それを彼女に伝えるつもりはなかった。
アタシは女だし、相手も女の子…。それだけで、はなっから恋愛対象に見られて
いないの分かっていたし、いくら好きでも、女の子と普通に恋愛ができるとは
アタシ自身思っていなかった。
それでも、日増しに膨らんでいく奈々への想いに堪えられなくなって…。友達と
して心に偽ってまで一緒にいるのがだんだん息苦しくなってきた。
とうとう中三の夏、その想いが一気に爆発した。
勢いのまま彼女に告白をしたけど、あっさりと玉砕。
それからは絶望の日々を送っていたのだけど……。

154 :

でも、神様はいたんだ。
いったいいままでどこに隠れていたのよ! いるならもうちょっと早く現れて欲しか
った…なんて言ったらバチが当たるかもしれないけれど。バスケで言うなれば、
試合終了時間ぎりぎりのスリーポイントシュートが決まったときみたいに、とに
かくあれは、大逆転勝利だった。
紫陽花の咲き誇る季節、アタシは、「親友」から「恋人」へと格上げされた。
そして、早いものであれから6ヶ月が経つ。
アタシの頭のなかは、毎日、夢でみたことばかりを考えている…。
「……はあぁ…。」
なんだ夢か……。
しかも、超いいところで…。どうせならもう少しくらい待ってくれてもいいのにぃ。
もうっ、夢でもなんでもいいからあの続きを見させてよっ!
もう一度寝れば続きから見れるかなと思い、枕に突っ伏すけれど、そうしたら、
どうせママが叩き起こしに来るに違いないと思い直して早々に諦めた。
だんだん音が大きくなっていく目覚まし時計を恨めしげに叩くと、ベットから
這い出して大きく伸びをした。
関節がポキポキとなる。なんか、また身長が伸びているような気がする…。
パジャマを乱暴に脱ぎ捨てて、その状況にアタシは、カーと赤面した。
下着の大事な部分が、粗相をしてしまったようにぐっしょりと濡れていたから。
想像だけで、こんなになってしまう身体が恥ずかしいよ…。
実際に、奈々とそういう状況になったらアタシはどうなっちゃうんだろうって思う。
そう……。付き合って半年になる私たちは、まだ、キス止まりの関係だった―――。

155 :
◇ ◇ ◇ ◇
「おはよっ、瞳っ!」
ううっ!!! 笑顔が眩しいよ。
お願いだからそんな天使のような顔して、笑いかけないで。
今朝、あんな夢をみてしまった疚しさからか、恋人の顔がまともに見られない。
夢の中の奈々は、やけにリアルで、それは、自分でも感心するくらいのものだった。
はあぁ…。やっぱりこれって願望なんだよね…?
だって、こうしている今も……。
奈々とキスしたくて。
奈々をギュっと抱きしめたくて。
奈々を裸にして、いろんなところを触りたいなんて、不埒なことを朝っぱらから考え
ているんだよ。
人がいなければ、キスくらい軽くチュってしちゃっていたかもしれない。
ちょっとくらい遅刻してもいいから、トイレに付き合ってといってヤッちゃおう
かななんて。
四六時中そんなことばかり考えているアタシって異常者なのかな? 変態??
でも、ここのところ電話もメールも控えていたからフラストレーションが溜まっ
ているんだわ…なんて、そんなの言い訳にすぎないか…。
「おはよっ、奈々。ごめん、ちょっと出るの遅くなっちゃって…。」
高校は別々だけど、同じ路線の電車を利用するので、いつも駅で待ち合わせしていた。
「ゼイゼイ」と走りこんできたアタシに、奈々は、ハンカチでおでこを拭ってくれる。

156 :

すごくよく似合っているセーラー服は、何度見ても可愛い。
ほんとうならば、アタシもそれを着て同じ高校へ行くはずだった。けれど、残念な
がら適わなかった…。もうちょっと早くに二人の気持ちが通じていれば、こんな
ことにはならなかったのに…と思うと、複雑な心境であるけど。
でも、いまは、それでよかったと思っている。
修学旅行に一緒に行けなくても、体育祭も学園祭もお昼の時間も…離れ離れだけど、
ずっと奈々の傍にいたらば、アタシは、一日中、いやらしいことを考えて過ごさな
ければいけなかっただろうから。そんなの精神上にもよくないと思うし…。
うん…。だから、この距離感が、いまのアタシにはちょうどよかったんだよね…?
会えない時間の分だけ、奈々のことを考える時間が長くなる…。それも幸せ。
なーんて、どう考えても負け惜しみか…。
「ところで、奈々。昨日のテストはどうだったの…? 数学はちゃんとできた?」
「うっ…。もう、その話はしないでよっ。数学は捨てたからいいの……。」
自信がないと昨日言ってたことを思い出して尋ねると、バシッと腕を叩かれた。
桜女は、ただいま中間テストの真っ最中で。
東峰は、二期制の高校なので、テストは年に四度しかなくてラッキーだったけど、
奈々たちは大変そうだ。なんか、日に日にやつれていってるような気がするけど…
ホントに大丈夫ぅ?
今日も夜遅くまで勉強してたのかな? 一夜漬けが大得意の彼女のことだから、ちょ
っと心配なんだ。

157 :

「でも、今日で終わりなんだよね? 今日の教科はなんだっけ…?」
「………リーダーと、世界史と、古文……ひどいよ、苦手なのが全部…。」
「あはっ。そりゃ大変だぁ…。」
「もうっ、瞳ったら、そんな人事みたいにぃ〜っ!」
う〜〜ん。でも、所詮人事だからさ…。
アタシも一緒にテスト受けてたらば、なにかしら奈々の手助けできたかもしれない
けど、いまは、なにもできないし。同じ教科書をやっているからって進み具合とか
もぜんぜん違うだろうしね…。こういうとき、ちょっと、疎外感を感じて切なくなる。
でも、それも今日で終わり。
アタシに取ってもこの二週間は長かった…。朝だけしか奈々に逢えないなんて地獄の
ようなものだ。
これで、やっと、通常生活に戻れる。奈々に負けないくらいうれしいよぅ。
滑り込んできた黄色い電車に乗り込みながら、自然と奈々をガードする格好になる。
可愛い恋人が痴漢に遭わないように…というよりも、誰の目にも触れさせないようにだ。
だって、奈々ったら、こんなに可愛いんだもの。
誰にいつ目を付けられるかわからないじゃない。
どさくさに紛れて、奈々の身体をギュと抱きしめると、甘いいい匂いがした。
「ふぅ〜、込んでるね。そうだ、今日って瞳、部活の日だっけ?」
「うんん…。今日は、木曜日だから休みだよ?」
大きな大会が終わったばかりだから、そんなに忙しくはないんだ。
「じゃあさ、駅で待っててもいい? 久しぶりにどこか行こうよ!」
「えっ…。でも、アタシ、授業あるから、2時間くらい待っているようじゃない?」
「いいよー、そのくらい学校で時間潰してるし…。だって、久しぶりに瞳とゆっ
くりしたいんだもんっ。」
「えっーー!!」

158 :

思わず大きい声出しちゃって、奈々のちいさな左手に口元を覆われた。
みんなの視線が痛い。
ご、ごめん…。でも、だって、奈々ったら、急に可愛いこと言うんだもの…。
恥ずかしいこと言ってしまったという自覚があるのか、少女は、耳まで真っ赤に
染めながら、ぷいと顔を背けて車窓を眺めている。
あぁ、どうして、こんなに可愛いのよ。
もともとちいさくて可愛い女の子だったけど、最近、日に日に可愛さが増している
ような気がする。
なんか、こうしている間にも、誰かが奈々に目をつけて狙ってるんじゃないかって
疑心暗鬼にもなる。
だってさ、世の中には半分の男がいて、その中の誰が奈々に目をつけるか分かっ
たものじゃないじゃない?
いや、半分どころじゃないかも…。アタシみたいなのも中にはいるだろうから
女だって、侮れないよ。アタシの知らない学校の中にだって、奈々を好きな子とか
いるかもしれない。
小動物みたいな彼女は、先輩とかに可愛がられるタイプだし、明るくて可愛い少女
は、同級生とかにだって、好かれるだろう…。よく会話に出てくる“安倍ちゃん”
だっけ? 桜女の学祭でお姫様役をやった可愛い子だ。一番の友達になったとか
奈々は言ってたけど妖しいものだよ。奈々に気持ちはなくても、相手は、どう思
っているかなんて分からないじゃない? 奈々、そういうの鈍そうだし…。

159 :

奈々の気持ちを信じてないわけじゃないけど、いつまで経っても不安は拭えない。
いつか誰かが奈々の前に現れて、ひょっこり持ってかれちゃうじゃないかって思う
と夜も眠れなくなるほど怖くなる。
これまでの自分を考えたら、今の関係でも十分にシアワセだけど…。
最近、ちょっと欲張りになってきているのかなぁ…。
だからこそ、二人の間にもっと、確かなものが欲しいのかもしれない。
そのいち早い手段がエッチで、だから奈々としたいのかなと考えて、自分の感情
なのによく分からなくなる―――。
◇ ◇ ◇ ◇

160 :

晴れて、親友から恋人になったアタシたち。
毎朝、駅で待ち合わせして学校に行く。放課後は、大抵部活があるから帰りは
バラバラだけど、週に3日くらいは、奈々のおうちに寄って、一緒に晩御飯を
いただいたりもする。
隔週で部活のない日の日曜日は、おもいきりデートする。
映画に行ったり、街に冷やかしに行ったり、カラオケは…二人のときはあまりしな
いかな?
お互い親からお小遣いをもらっている身分だし、なかなかバイトする時間もなくて、
そんなにお金を掛けた交際はできないけれど、それはそれでうまくいっていた。
友達のだった頃の関係とどう違ってるのかなってときどき思うことあるけど、やっぱ
りこういうとき。
「………っ、」
甘い唇。
なんか、ふわふわのお菓子みたい。
お菓子は辛いほうが好みだけど、奈々は別格。
「大好き奈々。会いたかった…。ずっと会えなくて寂しかった…。」
「………んっ。」
駅ビルの本屋さんで待ち合わせして、家の近くの大きな公園を手を繋ぎながら散歩
した。女の子同士が手を繋いでいても、仲のいい友達同士だという目でしかみられ
ない。これが、男の子同士だったらば、そうはいかなかっただろうとありもしない
ことを考えて一人ほくそ笑んだ。ただの散歩は、仲良くウォーキングする老夫婦と
たいして変わらないようだけど、気持ちがぜんぜん違うからこれもデート。
奈々といると愉しい会話は絶えなくて…。でも、あまりに無邪気に笑顔を振りまく
ものだからとうとう堪えきれなくなって、部屋に誘っちゃった…。
だって、公園じゃさすがに人目があって、こんなことできないものね。

161 :

ドアを閉めたとたん、ギュっと抱きしめた。
唇を交わしながら、背中に腕が回ってくるのがうれしくてなんだか涙が出そうになる。
もっと、もっと…と、自分の中の足りないなにかを埋めるように貪りあっていくうち
に口の中に溜まった唾液が、どちらのものなのか分からなくなった。
息が続かなくなってようやく唇を離すと、彼女を見下ろした。
白い頬が、さーとピンク色に染まっている。耳の中まで真っ赤っかだ。いつまで
も初々しい反応に胸の中がきゅんてする。
ほんとに可愛いなぁ…。いつになったら慣れてくれるのだろう。
もう一歩で零れそうな涙が、寸前で我慢してた。
キスしただけで、いつも泣きそうになってしまうちいさな恋人が愛しかった。
もっといろいろと触れてみたくて、そうなったら奈々がどうなるのか知りたくて。
うっすらと染まるピンク色に頬に手を伸ばした。
でも、アタシの気持ちの変化を敏感に察したのか、彼女は、ふいと視線を逸らせてしまう。
アタシは、バレないように内心大きく息をついて、名残惜しげに彼女から離れた。
今日もおあずけ…。あぁ、なんかアタシって、さかってる犬みたい…?
奈々はそういう気持ちになったりしないのかな。
可愛い顔を見ているとまた襲いたい気分になっちゃうからと、気分を一心させる。
「あーなんか、アタシ、喉渇いちゃった! 奈々は? なにか飲む?」
「あ……うん…。」
一瞬だけ、ひどくがっかりしたように見えたのは気のせいよね?
「なんにする? コーヒー、紅茶、オレンジ、アップル、コーラ、おーいお茶。今日は、
なんでもありますよ?」
「あははっ。喫茶店みたいだね…。ん〜、じゃ、紅茶で…。」
「かしこまりました。――あっ、今日は、レモンあるんだ。レモンティにする?」
「うん。ありがとー。」

162 :

笑いながら、明らかにホッとしたような顔に、ちょっと傷ついた。
でも、悟られないように作り笑顔を振りまく。奈々は、アタシの感情になんて
気づかない。
同じ過ちは二度と繰り返したくない。衝動でキスをして、あんなことになったのだ
からと自分に自制を掛ける。
後ろ手にドアを閉め、部屋の前で佇みながら、まだ濡れている自分の唇を指先でな
ぞった。
奈々の温もりが残っていた。人差し指についたそれを口に含むと、ほんのりと甘い
味がした。
キスは、だいじょうぶで。
最近は、ちょっとくらいハードなものをしても許してくれる。
でも、それ以上アタシが踏み込もうとすると、奈々は、さっきみたいな虚ろな表情
をする。最初は、未知の世界を体験するのが怖いのかなと思ったけど、なんかそう
でもないみたいで…。
奈々は、アタシとそういうことをするの厭なのかな?
まだ高校一年生だし、関係を持つには早いのかも…とも思うけれど、人と比べるの
とかはなんか違うのはわかってるけど、経験した子なんて周りにいっぱいいる。
相手のことが好きならば、キスしたいと思うし、抱きしめたいと思うのはごく自然
なことだと思う。
大人とか子供とか関係ないよ。じゃあ、どうして奈々はダメなんだろう……。
やっぱり、アタシのことなんて好きじゃないのかな?
それとも、女だからとか?
このことを考え出すと、思考が堂々巡りになっていつも暗く落ち込んでしまう。

163 :

自分には負い目があった。
奈々と再会したあの日、彼女の部屋で二人の写真がまだ飾ってあるのを見たとき、
奈々が、まだアタシのことを忘れていないと確信した。だから、ラストチャンスに掛けた。
アタシの気持ちをもう一度気づかせたかった。
奈々と会えなくなって数ヶ月、一日たりとも奈々のことを忘れた日などなかったから。
『瞳がアタシの知らない子といるのも、アタシの知らないうちに髪が短くなって
いるのも…毎日、瞳のことばかり考えているのに……こんなに長く会えないのは…いや』
だから、彼女の悲痛な叫び声を聞いたとき、泣きたいほどうれしかった。
アタシは、ずっと云えなかったこれまでの気持ちを洗いざらいぶちまけて、出逢っ
て初めて奈々の前で涙をみせた。彼女は、驚いていたけど、うれしそうだった…。
自分の感情を剥き出しにしながら、でも、心のどこかで、アタシは、こうなるように
仕向けたんだ。
“押してもだめなら引いてみな”昔からよく言われる技法を使って。
こんなに見事に成功するとは思っていなかったけど。
涙を流しながら、心の裏側では、そんな疚しい駆け引きがあったなんて奈々は
知らないから…。
好きな人を手に入れるためなら手段を選ばない。アタシは、そういう人間なんだよ。
なんか寂しいよ奈々…。
奈々がこんなに近くにいるのに、ひどく遠く感じるんだ。
◇ ◇ ◇ ◇

164 :

ようやく桜女の試験が終わって、お疲れさま会と称して、遊園地にでも誘おうかな
と、日曜日のデートプランをあれこれ考えていた矢先のことだった。
部活の休憩時間、奈々からメールが入っていたことに気づいて慌てて連絡を入れた。
「ええっ、再試?」
『……うん。来週の水曜日だから、ごめん土日会えなくなっちゃった……。勉強し
なきゃ…。」
「えっ、だったら一緒に勉強すれば……」
英語ならば、ちょっとくらい見て上げれるかもしれない。
だって、土日まで潰れちゃったらさ……。
二週間もお預けをくらって、ずっと、これだけを楽しみにしてきたんだよ。
『ごめん…。一人で勉強したいから…またメールするね?』
どこか落ち込んだような声は追試のせいなのだろうか。
用件だけ言って早々と切ろうとする奈々に、「待って」と慌てて問いかける。
よいしょとかばんから手帳を広げながら。
「あっ、じゃ水曜日がテストだったら次の日の祝日とかは?」
再試終了祝いとかさ。
うん。いい考え。
でも彼女は……どこまでもつれなかった。
『あっ、ごめん電車来ちゃったから、部活の邪魔してごめんね。またね…。』
プツリと電話が切れた。ガーン。
後ろから、アタシを呼ぶチームメイトの声がする。
アタシは、声を発することも、しばらくそこから動くこともできなかった。

165 :

ほんとに再試のせいなのかな…?
もしかして、アタシに会いたくないとか?
最近、いつも奈々に迫ろうとするから怖くて避けられたりとか…?
考え出すと止まらなくなって、どんどんマイナス思考に陥っていく。
せっかく両思いになれたのに、なんでこんなに不安になってばかりいるんだろう。
奈々の気持ちがわからない。
でも、みんなもそうなのかな…?
世の中には、ちゃんとバランスが取れたカップルなんて、もしかしたらいない
のかもしれないね。
子供の頃、よく奈々とシーソーで遊んだことを思い出す。大きかったアタシと
小柄だった奈々とでは、ぜんぜん釣りあっていなかった。
アタシが必にジャンプしてようやく均衡が保てたようなものだった。じゃないと
地面にいつまでもいるのは自分のほうだった。
想いが釣りあっていないから、こんなに不安になるのかな…。
板の上でもがいてた幼少期といまの自分がシンクロして、ひどく悲しくなった。
お風呂上がり。濡れた髪をバスタオルで乾かしながらメールを打つ。
『勉強はかどってる? 奈々に会えない土日は部屋のそうじをすることにしたよ。
会えなくて寂しいけど、テスト頑張ってね! 分からないことあったらメールして。
明日もメールするね。おやすみ。 大好きだよ。』
いつもすぐに返信があるけど、なかなか来ない。
お風呂にでも入っているのかなと思い充電器に携帯を差し込んでベットに入った。
朝起きてみて、一番に携帯を開いたけれど返信は返っていなかった…。

166 :

「……はああぁ…。」
ねぇ奈々、アタシ、奈々のことこのまま好きでいてもいいんだよね?
恋人と思っていいんだよね…?
ここのところ毎晩のように観ていたのに、今日は、奈々が夢にも現れてきてくれ
なかったことが、余計に切なさを募らせていた。
◇ ◇ ◇ ◇
長かった五日間。
邪魔にならない程度にメールを打ったけど、一度も返信はなかった。
一つのことに集中すると周りが見えなくなってしまう奈々のことは誰よりも理解
しているつもり。再試なんて初めての事だし、ショックだったんだろうと思う。
そんなときになにもしてあげられない自分が歯がゆくて、気を紛らわすために
アタシは部活に勤しんだ。それでも、なかなか集中できなくて、頭のなかは常に
奈々のことばかりだった。
好きって、なんなんだろう…。
アタシは奈々が好きで。ずっと好きなのは奈々だけだった。
奈々に会えばキスしたいし、いろいろしてみたくなる。
でも、それは好きだからしたくなるのかな…?
奈々を独占したいから、他の人と自分は違うのだと証明したくて、そんな気持ち
に駆られるのだとしたら…。
奈々がどうしても厭なら、アタシは、そんなことしなくてもいいよ。
それで気まずくなっていまの関係が壊れちゃうくらいなら、我慢できる。
今度会ったときに、それとなく伝えよう。

167 :

今日は、再試の日だって言ってた。
一時間前にメールしたけど、まだ返信はない。
疲れちゃって、もう寝ちゃったのかも…と思いながらそれでも携帯電話とにらめっこ。
来ないメールを待っているほど悲しいことはなかった。
ときどき投げてやりたい衝動に駆られるけど、もう、そんな子供っぽい真似はしない。
明日は祝日だから今夜はもう寝て、朝になったら電話でもしようと心に決めた。
「あ、そうだ。牛乳が切れてるから買っといてって、ママに言われたんだった…」
言い訳がましく誰も聞いていないのにぼそっと呟くと、アタシは、携帯とお財布だけ
持って、玄関を飛び出した。
人通りの少ない夜道をひた走る。
夜遅くでも煌々と明るい店内。とりあえず目的のコンビニで牛乳パックを掴んだ。
このコンビニと奈々の家は反対方向だけど、せっかく出てきたからちょっとだけと、
白々しい言い訳を口先で繰り返しながら脚を進めた。
閑静な住宅街の一角に奈々の家はあった。
この先の国道にときどき車が通るくらいで、この時間はほとんど人通りがない。
コンビニのビニール袋をがさごそさせて走ると、そのたびに犬が、「わおーん」とp
鳴いて、アタシをビクつかせる。
二階の奈々の部屋は、まだ明かりがついていた。
疲れて寝ちゃってるのかと思ったけど、まだ起きてるみたい。
わざわざ遠回りしてここまで来てみたけど、さすがにこの時間じゃ、ピンポンを
押す勇気はなかった。

168 :

もう少しだけ近くで奈々の存在を感じたくて、外壁をよじ登った。
女子高生でも簡単に侵入出来ちゃうのって、ちょっと無用心じゃないの?
深呼吸するようにひんやりとした空気を「スー」と吸い込む。奈々の甘い匂いがした
気がしてうれしくなる。って、これじゃ、アタシ、完璧な変質者だわ…。
しかも、人様の家に家宅侵入だしぃ……。
「一分、あと一分だけね…」と、思いながら時計の針は、どんどん過ぎていった。
奈々は、いまなにをしているのかな…?
すぐそこにいるはずの彼女がひどく遠くて感じて、切なくなった。
なんだか奈々に片思いしていたときを思い出して余計に落ち込みそうになる。
来なければよかったよ…。
寂寥感に耐え切れなくなってもう帰ろうと振り返った瞬間、けたたましく着メロが響いた。
奈々専用のアニソン。驚きすぎて手の中でお手玉しながら、慌てて切ると、勢い
余って電源まで落としてしまう。
と、同時に奈々の部屋の窓ガラスがガラリと開いた。
「――――瞳っ?!!」
植え込みに隠れるようにするけど、バレバレ…。
アタシは、ゆっくりと起き上がって、呆れたような顔で見下ろす奈々に「えへへ」
と愛想笑いを浮かべた。
彼女は、心底呆れたように冷たい目を向けて、長い息をおもいきり吐きだした――。

169 :
◇ ◇ ◇ ◇
奈々の部屋は、なぜだかいつ来ても甘い匂いがする。
それは、奈々の身体が甘いせいなのだろうと思った。
パタンと部屋のドアを閉じると。
「―――もう、瞳ってば、いつからいたの?!!」
ビックリするじゃないのっ! と、すごいの剣幕で怒られた。
「やっ、アタシは、コンビニに買い物に行った帰りにちょっと通りかかっただけで…。」
「そのコンビニうちとは逆方向だし……。」
コンビニの袋を持ち上げて苦しい言い訳をするアタシに、彼女もすかさず反論する。
アタシは、すぐに押し黙った。
アタシって、どうしていつもこうなのかな?
自分で自分のことが恥ずかしいよ。
奈々のことになると周りが見えなくなるんだ…。
目の前に奈々がいた。
お風呂に入ったばかりなのか、ほやほやと頭から煙を立てている。
「もう危ないじゃないのォ…こんな時間に一人で……!」
「………。」
「それに、そんな薄着で…風邪引いちゃうでしょ…?」
ここのところ奈々の気持ちを疑ってばかりいたけど、その態度はいつもと変わり
なかった。それよりも深い愛情が感じられて、ふいに泣きたくなった。
嫌われてないならそれだけでいいよ。多くは望みとバチがあたる。
今の関係でもアタシは、十分シアワセだから…。と、自分の心に言い聞かせた。

170 :

「……ごめんね、アタシってこんなんで…。」
「えっ…?」
「奈々、今日テスト終わるって言ってたし…でもメールこないし…つかれて寝ちゃ
ったかなって思って…明日休みだし、今夜メールしといて、明日、電話掛けよう
かなって……思ったんだけど…なんか我慢できなくって…」
奈々のふかふかのベットに並んで腰掛ながら、自分の愚かさに居た堪れなくなった。
しどろもどろになりながら言い訳を繰り返す。奈々、呆れてるよね?
「ばっかみたいでしょ…みっともなくてホントごめん……。」
アタシって、こんなやつでさ。
でも、部屋にジッとしていられないくらいどうしてもアナタに……。
「会いたくて……。」
会いたくて会いたくて、堪らなかった…。
こんなの奈々には迷惑なだけだよね?
気持ちが重いとか思われたかな? 自分だって思うもん。こんな女、ウザイって。
なんでアタシは、後先考えないで、いつも行動しちゃうんだろう…。奈々に嫌わ
れたくないのに…嫌われるようなことばかりして。
自分の気持ちをすべて言い終えても顔が上げられなかった。
なにを言われるのか怖くて、奈々がアタシをどう思ったのか怖くて。
ほんとにたい気分…。

171 :

膝の上でだらんとしていた左手をふいに取られた。
絡めた指を、そのまま温かい場所へ誘われる。
「ハッ」と驚いて顔をあげると、うつむき加減の奈々が、アタシの手を取って
自分の頬に当てていた。
なっ、奈々……?
けぶるように長い睫がゆっくりと起き上がる。
奈々の綺麗な眸はしっとりと濡れていた――。
「アタシも…アタシも瞳に会いたかった…瞳が好き。だから、瞳にもっと触りた
いし、……さ…っ、さわって欲しいの……」
「……えっ?」
なんか、とんでもなく信じられないようなことを言われた気がした。
頭が真っ白になるとは、こういう状態のことを言うんだと漠然と思った。
でも、耳の中にぐるんぐるんとこだまする声は、確かに奈々のもので。
いい終えてから、恥ずかしそうに俯いてしまった彼女を呆然と見下ろした。
頭の中で、奈々の言葉を反芻しながら、触れちゃいけないと思っていたあのことに
触れてみた。
「な、奈々は、そういうの、い、いやなのかと思っていた…けど……。」
「い、いやじゃないよ…ただアタシは、瞳みたいに綺麗じゃないから……。」
「えっ??」
ていうか、はいっ?
ハテナ?
それは、なんのこと?
頭のなかが、一瞬フリーズする。
奈々が、綺麗じゃないって、いま言った?
はぁあ?? なにそれ。んな、バカな〜っ。

172 :

「や、やだ、なに言ってるの…奈々は、アタシがいままで会ったコのなかで一番
かわいいし、一番きれいだよ?」
誰がそんなこと言ったのよ。
絶対にありあえないわ!!
テレビで歌っているアイドル見てても奈々のほうがぜんぜん勝っているし、雑誌
のモデルなんて目じゃないくらい奈々のほうが綺麗だよ。
そう、あっさりと告げると、彼女は、ぽっかりと口を開いた。
「ていうか、最近すごくかわいくなっちゃって……」
アタシは心配なんだ。
だって、だって…。
「奈々の学校に男の教諭とかいたらどうしようって、体育の先生って男だって
言ってたよね?」
「……お、男って言ったって、50過ぎのおじちゃんだよっ!」
「でも、そんなの分からないじゃない。…ロリコンの男なんてこの世に五万と
いるんだし…。電車の中だって、痴漢のおっさんとかさ…。」
朝はアタシがガードしているからいいけど、帰りは一人じゃない?
夕方に痴漢が現れる確立は少ないだろうけど、こんなに可愛ければわからないじゃない。
最近は、物騒な事件とかも多いし…。
「それにそれに、そんなに可愛かったら女の子にだって……。」
もー、心配で心配で、後をつけて周りたくなるよって言う前にやわらかい手の
ひらに口元を押さえられちゃった。
「もういいから」と恥ずかしそうにする奈々があまりに可愛くて、鼓動が跳ねあがる。

173 :

ずっと、奈々はそういうことするの厭だと思ってたけど、それは、アタシの思い
込みだったんだ。
それに、アタシが一人で勝手に悩んでいたように、奈々もそのことを悩んでいたの…。
自分が綺麗じゃないとか言って、そんなことあるはずないのに…バカね…なんて、
奈々のことを笑えないよ。
だって、アタシも同じだから…。
奈々の気持ちが分からなくて不安になって、夜も眠れなかった。
でも、相手のことを思いすぎていろいろ考えちゃうのは、きっと恋をしているからで。
悶々と悩んだり、一人で勝手に傷ついたり臆病になりながら、そうやって、だん
だんに恋人なっていくものなのかなって、なんか、わかった気がした。
もともと可愛いかったけど、最近、すっかり綺麗になった奈々。
彼女が変わったのは、いま恋をしているせいなのだとしたら…。
それは誰に? アタシに?
こんなうれしいことはないよ。
「アタシも、アタシも、ずっと奈々に触りたかった…。ホントに触ってもいいの?」
心が、体中が、奈々のことを好きだと叫んでいる。
「…ん。触ってほしい…。いっぱい。恥ずかしかっただけだから…。いまも恥ず
かしいけど、瞳にだけなら恥ずかしい姿も見せられるよ……。」
「……もう奈々、奈々…かわいい、だいすきっ。だいすき……奈々、あいしてるよ。」
いままで云えなかったありったけの言葉で伝える。
両手でちいさな身体を引き寄せて、熱を測るときみたいにおでこをつきあわせた。
チュっと軽く口付けを交わす。
彼女は、うれしそうににこりと笑って、それからじわりと涙を浮かべた。
目のふちで溜まっていたそれが、堪えきれなくなったのか、とうとう一滴だけ
頬に零れ落ちた。

174 :

奈々の涙にほんの少し胸が痛くなって、そこが、じわりじわりと熱くなった。
チュっと吸い上げると、赤くなった目元に唇を押し付けた。
親友から恋人の関係になってからも、奈々とはいろんな話をしてきたけど、大事
なことをちゃんと話せていなかったね…。
もっと早くそうしていれば、こんなに遠回りせずにすんだのに…って、後悔するけど。
でも、アタシたちには、この時間が必要だったんだとすぐに思い直した。
見つめあって、自然と口づけを交わしあう。
久しぶりの感触。奈々の唇は砂糖菓子のように甘かった。
樹液を求めるように夢中で舌を吸いながら、あの日、夢でみたときみたいに目配せした。
「奈々、奈々……いい?」
「…っ…ん、瞳っ、瞳ぃ、好き……。」
彼女の返答は答えになっていなかったけど、それだけで蕩けてしまいそうになる。
「アタシも…好きよ奈々。」
「………ん。」
言われるのは恥ずかしいのか、ちいさく頷きながら、アタシの胸に顔を埋めてしまう。
そんな恋人があまりにも可愛いくて、なんだか頭がふわふわしてきた。
あの日、夢でみた状況と現実の世界がごっちゃになった。
でも、手を伸ばせばそこに奈々がいて、確かな温もりに、重みを感じた。
これは、夢なんかじゃないよね?

175 :

思い出深いパジャマのボタンに手を掛ける。全部外し終えると桃の皮を剥くみた
いに肩口からするりと脱がせた。
久しぶりにみる成長した少女の裸体に、胸がバクバクと破裂しそうなほど高鳴った。
恥ずかしそうに俯く奈々は、いくら呼んでも、もうアタシをみようとはしない。
これが、また夢オチだったら本気でシャレにならないぞと思いながら…、ちいさな
身体をそっとシーツに横たえさせた。
身体のあちこちにキスを散らばめながら。
アタシは、奈々を独占したいからこうしたかったのでも、淫らな行為に耽いり
たかったのでもなかったんだなぁと思い直した。
アタシは、奈々のことを…奈々の身体ごと、丸ごとすべて愛したかっただけなんだって。
奈々を抱き締めながらしみじみとそう思ったんだ……。

176 :

ここで終わりでもいい感じがしますが、一応続きがありまして。(^o^;)
短編は、どうも自分にはできないみたいです。
この先は、多少エロ描写が入ると思われ(ノω`*)今度は奈々視点になるかもと。
では、続きは後日。<ドモデシタ。(ゝω・)v

177 :
リアルタイムGJー!
あなたのSS読んだ後はコミック再読したくなる。
奈々視点の続き楽しみにしております。

178 :
おもしれーリンクしまくってんな漫画と
何より違和感が全くない!!!!
更に期待GJ

179 :
藻前凄過ぎ

180 :
GJ!GJ!最高ッス!
百合姫発売までの1ヶ月、ハルヒさんのSSだけで
ご飯3杯はいける。

181 :
神降臨!!!

182 :
一気にupするから
次が待ち遠しくてたまらねぇだろう!!!

183 :
gjすぎる
自分も書きたくなってきた。
ギガドラの結衣×エレンだけどおk?

184 :
もちろんおk

185 :
 三咲重工の本社ビルから眺める千丈の夜景は美しい。
 ヴォルガーラとの闘を生き抜いた千丈。守られた地上の星々。
 その輝きを守ったのは私、月岡結衣。
 まあ残念ながら、地上200メートルのこの本社ビルそのものは、
 何度かヴォルガーラに破壊されて、そのたびに建て替えて今に至るんだけどね。
 
 そして、私が今いるのは四十二階にあるイベントホール。
 なんともけったいなことに、三咲勝の誕生パーティだそうだ。
 最近経営が悪化したとはいえ、財界の中心的存在の三咲重工の跡取りのパーティ。
 コネを売りたいのか、あるいは買いたいのか。
 財界の中心的人物や、大物政治家なども多く招待されていた。
 当然、文明保全財団の理事長でツキオカグループの総帥である私も招待されたんだけど、
 実のところ、三咲勝の加齢を祝う気持ちなんか、さらさらなかった。
 私がここに来た理由は、彼女に会えるから。
 その人は向こうのテーブルで若い男性に囲まれて食事もほどほどに談笑をしていた。
 いや、談笑というよりは男の方が一方的に話しかけてきて彼女はそれに答えているだけだ。
 そこに社交辞令以上の意味はない。……はず。
 っていうかエレンの半径2メートル以内に近づくな! オスブタども!!
 そんなにパイロ・バーナーで焼きブタにされたいの?
 それとも30mm機関砲でミンチになるのがお好みかしら?
 ……貴様ら、許さん!

186 :
 話が逸れた。
 彼女はエレン・ブルノーズ。フランスがブルノーズ重工の一人娘。
 
 そして、私の親友。
 
 エレンはドレスに合わせたのか、いつもはアップにしているブロンドの髪を下ろしていた。
 その髪型を見るのは久しぶりな気がする。
 ヴォルガーラ戦争のときは活動的な避難誘導隊の制服姿ばかりだったから、
 彼女のこういう女の子している格好はけっこう珍しい。
 そのときには、彼女ともいろいろあった。
 彼女がいたから、私はあの逆境のなかを戦ってこられたんだ。
 彼女がいたから、千丈は試練の場所であっても地獄じゃなかった。
 彼女と一緒に戦えることが、とても頼もしかった。

187 :
 エレンは私を見つけると、一瞬その青い瞳を丸くして驚いたしぐさをみせた。
 そして、言い寄る若い男性をやんわりと遮って、グラスを片手に私の方へ近づいてくる。
「お前もきてたのか、月岡」
「やあ、エレン」
「楽しんでるか?」
「あははは、ぼちぼちかな」
 エレンとたわいもない会話を交わす。
 その内容はありきたりだけど、こんなに心が弾むのはなぜだろう。
「フランスに帰るのは後でいい。お前と、もっと一緒にいたいな。
 千丈に骨を埋めるのも悪くはないかもしれない。
 幼少期、お前と過ごした土地だし、
 親に反抗して逃げてきたときは、ここでぬのもやむなしと思っていたからな」
 なんだか、うれしいことを言ってくれるなぁ。
 本当に、この平和は幸せだ。苦労してヴォルガーラを倒して、手に入れた平和。
 もっと長く、ううん、永遠に、この平和がつづけばいい。
 そう思った。

188 :
 そのとき、壇上のほうを見やったエレンが、はっとした表情をした。
 私は理由を尋ねる。
「どうしたの?」
「お父様……、なぜあんなところに。それも三咲勝と一緒に」
 みると確かに、あれはブルノーズの叔父様だ。
 その隣にいる、ホストみたいな雰囲気の軽薄そうな青年。
 軽薄そうとはいったけど、そんな外見とは裏腹に彼はけっこうなやり手だ。
 ヴォルガーラ戦争の被害で経営が傾いた三咲重工をここまで立て直したのは、
 彼の手腕によるところが大きい。
 ただのぼんぼんって訳じゃないらしいのだ。
 そこが結構むかつくんだよね。
『本日は私の誕生を祝って、これだけの方々にご来場いただき、
 誠に感激の極みであり、この場で御礼を申し上げます』
 勝があの鼻についた声でマイクを通して話しだす。
 それを聞いて会場の客はみんな壇上に注目した。


189 :
『実は、この場を借りて、ブルノーズ重工の社長のブルノーズ様から、
 重大なお知らせがあるらしいので、
 ご来場の皆様方には今ひとつご静聴を賜りたく存じます』
「なにか……いやな予感がする」
 うん、エレン。私もそう思ったよ。
 なぜか会場の照明が落とされて、
 一筋のスポットライトがステージ上のスタンドマイクを照らし出した。
 そこに、つかつかと、ブルノーズの叔父様が、歩いていく。
『只今ご紹介に預かりました、ブルノーズです。
 みなさま、本日は三咲勝氏の誕生パーティというめでたい席でございます。
 人間がこの世に生れ落ちた日というのは有史以来すべての人類が祝ってやまない、
 記念日といいますか、人生を彩る行事の一つでありましょう。
 しかし、人生を彩る行事は誕生日だけではございません』

190 :
 私の心に不安が広がる。
 さっきまで、あんなに楽しくエレンと話せてたのに。
 悪い予感が的中しないことを、心のそこから祈っていた。
『人生の終焉、新たな世界への旅立ちという意味でも、
 葬式は外せないところでございましょう。
 まあ、誕生会の席でこのようなことを申し上げるのもなんですが』
 三咲勝さっさとんでくれ。
 この次のことを叔父様が言う前に。私の、私の、私の……!
 となりでエレンが息を飲む音が聞こえた。
『やはり、人生の大きな行事として外せないのは「結婚」でございます。
 本日、誕生日を向かえ、より一層立派になられたこの三咲勝氏。
 恐縮ながら、この三咲勝氏とうちの一人娘エレンが婚約を結んだことを
 この場を借りて皆様にご報告させていただきたいと思います』
 いま、なんて? 
 いや、予測はできてた。でも、認めたくない。
 壇上の叔父様を照らしていたライトが、ふた筋に分かれ、
 部隊袖の三咲勝と、私の隣にいるエレンを照らし出した。
 聴衆の喝采。

191 :
 私の心臓が、一度大きく脈打った。一瞬目の前が真っ白になる。
 でも、ヴォルガーラとの戦いで鍛えた精神力で、意識はなんとか踏みとどまらせた。
「聞いてないぞ! どういうことだ!!」
 エレンの怒声に、会場は再び静まり返った。
「聞いていないはずはなかろう。エレン、これは前々から決まっていたことじゃないか」
「いや、勝との婚約は一旦白紙に戻したはず。三咲とブルノーズの業務提携解消と共に」
『そうです、みなさん! 
 私は一度は三咲勝とエレンとの婚約を白紙に戻しました』
 ブルノーズの叔父様はエレンには答えず、マイクに向かって話しかけた。
『しかし、この青年、三咲勝がエレンを愛する心は本物であり、
 エレンも、気持ちは同じでありました。
 そんななか、この私に、業務提携解消などという俗な理由によって、
 愛し合う二人の中を引き裂くことが出来ましょうか!?
 ですから私は、二人の結婚を許すことにいたしました!』

192 :
 叔父様の宣言に聴衆たちは安心したのか、再び会場一杯の拍手を鳴らす。
 私は、どうしてか今にも砕けそうな思いでエレンにたずねる。
「エレン、これは?」
「確かに言ったよ。三咲勝が好きだと。だが昔の話だ。
 それにそんな意味じゃない。まさかお父様がこんな手に出てくるなんて」
 叔父様が壇上を降りて、勝を連れて私たちのところに近づいてくる。
「エレン、お前は政略結婚に利用されることが気に入らなくて家を出た。
 だが、ヴォルガーラを倒したあとで、戻ってきた。
 ならば、政略結婚ではなく、だ」
「お父様、しかし……!」
 近くで眼を見てわかった。エレンと同じ、海みたいに蒼い眼。
 この人には全部分かってる。だって自分の娘のことだもの。
 分かった上で、やってることなんだ。
 何を企んでるの?


193 :
 そこでエレンははっとした。そして私も。
 ここには政財界の大物が集まっているんだ。
 もし、ここでブルノーズの親子に亀裂があることが分かったら、
 もし、三咲重工に恥をかかせでもしたら、
 それはきっと、ブルノーズにとって大変なことになる。
 エレンだって、親子で対立していても、
 ブルノーズが潰れていいと思っているわけじゃない。
 だから、この場は……。
「すまん、月岡」
 エレンはなぜか、私に謝った。
「後できっとなんとかするから、この場は合わせてくれ」
 エレンのもとに、勝が近づく。
「愛してるよ、エレン」
 手を差し伸べる。
 やめろ、やめろ、やめろ。
 エレンはその手を握って、微笑を見せる。聴衆は大きな喝采を送る。
 叔父さまは笑う。
 私は、とても、なぜだか、痛くて、
 見ていられなかった。
 気がついたら、私はパーティ会場を後にしていた。

194 :
えーと、前編はこれで終わりです。
やっぱりハルヒさんには敵わないな。
逆に恥ずかしいかも・・・orz

あの……あきらめないでください!
まだ、機人がいる!
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195 :
――きっと、なんとかする
 エレンはそう言った。
 でも、後日私の元に届いたのは、結婚式の招待状だった。
 エレンが結婚する。
 その事実は、なぜだか私の心を強く打ちのめした。
 財団に帰っても、仕事が手につかない。
 学校に行っても、ぼーっと、窓の外を見ているだけ。
 なにも、やる気が起きなかった。
「ねぇ、大丈夫なの?」
 奈々穂が心配そうに聞いて来る。
 でも、どう答えればいいんだろう。
 自分でもなぜだか分からないのに、どうして奈々穂に説明できるだろう。


196 :
「ごめん。分からない」
「分からないって?」
「自分でも分からないの」
「自分……でも?」
「ごめんね、奈々穂」
「ううん、気にしないで。整理がついたら話してね。
 私でよければいつでも相談に乗るよ」
「ありがとう」
 彼女には、いくら感謝しても足りない気がした。

197 :
 エレンの結婚式の当日。
 私は財団地下の格納庫にいた。
 ここには私やみんなとともに、ヴォルガーラとの戦いを乗り越え、
 次の出番までその身を休ませている私の分身、機人がいる。
 リモコンを持って、ヴァヴェルたちの前に立つ。
 このリモコンは、ヴォルガーラ戦争で使ったものだ。
 このリモコンで機人と対話して、あの日々を戦い抜いた。
 そうして、頭に思い浮かべる。
 そうすれば、きっと私の心を締め付けるものの正体が分かると思ったから。
 彼らと共に戦った、日々のことを。


198 :
『早く避難するんだ! 
 訓練だからっていいかげんにやってると、ヴォルガーラが来た時に後悔するぞ』
 エレン……?
『ええ、そうです。はい。あいつ……なかなかやります』
 だって、エレンが危なっかしいから。
『生きて帰れたら、お前と話したいことがあったのに。残念だ』
 嫌! 絶対一緒に生き残る。エレンと一緒に。
『最後くらい、一緒に居てもいいだろ?』
 ありがとう

199 :
「これは……?」
 私は目を開けた。ただ眠っているだけに見える機人たちを見やる。
 これは私とエレンと、機人の記憶。
 あのヴォルガーラとの闘の日々の記憶だった。
「私に、これを見せたかったの?」
 機人たちは答えない。
 いや、もともと私たちの間に言葉はいらないんだ。
 でも、分かった。
 この気持ちの正体が。
 わたしのそばには、いつもエレンが居たんだ。
「理事長」
 ウィルツ博士が呼んだので私は振り向いた。
「奈々穂君が、君と話がしたいそうだ」
 博士の後ろからひょこっとお下げ髪がのぞく。
 そしてひょいっと奈々穂が私の前に現れた。

200 :
「答えは見つかった?」
「うん、だけど……」
 どうしようもない。
「好きなんでしょ? エレンさんのことが」
 奈々穂の突然の言葉に私は驚く。
「そりゃあなたの考えてることくらい分かるよ。私たち幼馴染でしょ」
 うん。そうだった。
 やっぱり奈々穂にはすべて最初からお見通しだったらしい。
 そういえば……。
「奈々穂は結婚式行かなくていいの?」
 私が聞くと、奈々穂は微笑みながら言った。
「親友がふさぎこんでるのに、自分だけおいしい思いはできないよ」
 ほんとに……。
「ほんとに奈々穂には、いくら感謝してもしきれないくらい!」
「じゃあ、今度おいしいものでも奢ってよ」
 奈々穂もなかなか上手になった。

201 :
「それで、結局どうするの?」
 奈々穂が尋ねる。
「それは……」
「ねぇ、自分の気持ちに正直になりなよ」
「でも」
「それだけつらいってことは、うまくいえないけどきっとそれだけのことがあるんだよ」
「だって、私は――。それにエレンも」
「そういう思いを抱えちゃうのは、あなただけじゃないよ。だから、大丈夫。
 エレンさんが大企業の令嬢だからって引け目を感じるなら、
 あなたも大企業の令嬢みたいなものでしょ」
「それは、そうだけど」
「思いを伝えられずに、そのまま自分の中に押し込めるのはつらすぎるよ」
 そういって奈々穂は俯いた。
 もしかしたら、奈々穂も私と同じような思いを誰かに抱いているのかもしれない。
「恋は盲目、当たって砕けろ! あなたがつらい思いをするのは私が許さないんだからね。
 悲劇のヒロインはあたしだけで十分。告ってこい!」
 そういって、奈々穂はばしっと私の背中を叩く。
 ちょっとむせた。奈々穂、もしかして前よりアグレッシブになった?

202 :
 そうして私が機人の前でむせていると、
 京野さん、薫子さん、博士、みんなが集まってきた。
 そして博士はいきなり言った。
「くだらんな」
 さっきの話を聞いていたらしいウィルツ博士が、
 そんな言葉をいきなり言ったことに驚くとともに、
 その内容にちょっとむっとする。
 くだらないって、それは余りにもひどいんじゃないか。
 博士は続けた。
「所詮恋愛感情など、粘液の作り出す幻想に過ぎん。
 子孫を繁栄させるために人類にあらかじめプログラムされたことだ。
 その結果が、人類の過剰増加につながり、
 だからこそジェネシスプロジェクトが必要とされた」
 周りのみんなも私と博士の間の張り詰めた空気を感じたのか一言もしゃべらない。
「と、蓬莱博士なら言うだろうな」
 ふう、とため息をつきながら、険しい顔から一転、博士は表情を緩ませる。
 いつもの不敵な笑みだけど、なんだろう、いつもの自信から来るものじゃなくて、
 もっと違うものに感じて、なぜかさっきまでの張り詰めた気持ちがほころんだ。
 冗談だったと分かると、周りのみんなも構えをといたみたいだった。

203 :
「私は、人の想いが、人を愛する心が、ふさがった未来を開けたのだと思っている。
 この封鎖された地球のなかで、ヴォルガーラとの戦いから我々が生き残ったのも、
 最後まであきらめずに、人を信じ機人を信じ、そして愛するもののために行動に移した。
 そのことのお陰だと思っている」
 
 そういわれて、私は思い出す。
 ヴォルガーラとの最終決戦で、アスモダイの圧倒的な戦力に絶望し、
 戦いをあきらめかけたときのことを。
 そのとき、エレンが来てくれた。
 エレンが来て、一緒に戦ってくれた。
 エレンのためなら、まだ自分はがんばれるって、気づかせてくれた。
 そのときにはもう、私は彼女に心を奪われていたのかもしれない。


204 :
「だから私は下らんと言ったのだ。
 同性だから、相手が良家の令嬢だから。それが何だ。まったく下らんな。
 そんな程度の障害が、まさに人類を救った感情をとめられると思うか? 
 自分を信じろ理事長。あのとき機人を信じたように」
「ウィルツ博士……」
 そして、博士は笑った。
 口はいつものように不敵に歪んでいるけれど、
 それは巣立ちをする我が子を見守る親鳥のような喜愛に満ちた表情で。
「覚えておけ理事長。愛とは……ためらわないことだ!」
「はいっ!」
 なぜかその言葉に、すごく勇気付けられた気がする。
 いけそう。
 エレンに気持ちを伝える。
 うん、きっとうまくいくよ。
 もし、その気持ちがエレンに伝わなくても、きっと私たちなら親友のままでいられるよね。
 私、エレンを信じる。

205 :
 っていうかそういうことにしないといけなそうな空気だった。
 カッコつけた台詞をキメて、
 うっとりと自己陶酔に浸っている博士を見ちゃうと、どうもね。
「それって、某宇宙刑事の丸パクりじゃないかしら」
「某機動戦士のOVAにでてくるお兄様の台詞もそのままパクってますね」
 あえて、京野さんたちのツッコミは聞かなかったことにした。
「ああ、もう時間がないよ! いこう!」
 私は決めた。
 頭に想い浮かぶのは、エレンの戸惑った表情。
 一旦は解消した婚約を再びもどすと、社交界で宣言されたときの。
 結局自分が政略結婚に利用されるだけだと絶望し、悲しんでるに違いない顔。
 そして、自分の父親に言い負かされ、社交界の皆が見守る中で、
 勝との結婚を承諾させられたときのあの表情。
 エレンは勝が嫌いなわけじゃない。でも、あの目は違うって言ってた。
 こうなるのは違うって。
 今なら私へのエレンの心の叫びを、ためらわずに聞き入れることができる。
 なによりも、彼女は笑ってなかったから、
 私がヴォルガーラとの戦いで一番守りたかったのは彼女の笑顔だったから。
 だったらこんなところで、もたもたしている暇はない。

206 :
 決心したときには、体が勝手に動いていた。
「薫子さん、ライオールの発進準備を!」
「理事長!?」
 薫子さんが声を上げる。
「やるというのだな。さすがは、我々の理事長だ」
 ウィルツ博士が不敵に笑う。
「ああ、頭痛が胃痛が胸焼けが。
 ついでに腰痛水虫リウマチまで再発してきた気がするわ……」
 京野さんが嘆く。
「がんばってね。私、応援してるから」
 奈々穂が背中を押してくれる。

207 :
「アルケミックドライブ始動! ライオール発進準備」
「風元素転換率ミリタリーレベル! メガモーター、パワーオン!」
「フロートシステム、セット!」
「ライオール発進口へ」
「ライオール、すべての発進準備を完了」
 いつもと何も変わらない。なにも。
 機人と一緒に、また戦うだけ。
「ライオール発進!!」
 エレンの笑顔を守るために。

208 :
「三咲勝。病めるときも健やかなる時も、
 汝はこの者、エレン・ブルノーズを愛し、敬い、
 が二人を永久に分かつまでともに歩むことをここに誓いますか?」
「誓います」
「では、エレン・ブルノーズ。病めるときも健やかなる時も、
 汝はこの者、三咲勝を愛し、敬い、
 が二人を永久に分かつまでともに歩むことをここに誓いますか?」
「私は、私は」
「エレン、この期に及んで、お前のわがままを通すわけにはいかんぞ」
「お父様……。っく、誓い……ま……す」
「では、この結婚に意義のあるものは、この場で名乗り出るか……」
『意義あり!!』
 リモコンのマイクを通して、ライオールの外部スピーカーで音量全開にして叫んでやった。
 このリモコンはヴォルガーラ戦争のときのものから改良されていて、ヌンチャクのように二本に分かれてコードでつながっている。そして、手元にマイクが新しく取り付けられているのだ。
 機人のマイクがスピーカーから来た自分の音を拾ってキィィィンと大音量の悲鳴を上げた。
 それを聞いてしまった神父や教会にいる招待客たちはみな自分の耳を両手でふさぎもだえている。

209 :
 私はためらうことなく、右手のヌンチャクを前に突き出した。
 そのリモコンからの信号を受けて、ライオールの巨大な右腕が教会のステンドグラスを突き破る。
 そして私はその腕を伝って、教会の祭壇前まで突っ込んでいるライオールの手の平まで移動した。
「月岡……」
「エレン」
 私の呼びかけに、いや、突然の進入に彼女は驚いたような表情をして、
 エレンは私が今いるライオールの手の平に近づいてきた。
「なんてことを、無茶をする」
 砕け散ったステンドグラス。
 いまだかろうじて窓枠に残っている分の色ガラスから透けて見える機人、ライオール。
 その五十メートルの巨体を見やって、エレンは困ったようなうれしいような笑顔を見せた。
「結婚しないで、エレン」
 私は心の中から声を絞り出して彼女に呼びかける。
「嫌な結婚をどうしてしようとするの? それなら私と一緒に逃げよう」
 ちがう、こんな子供みたいなことを言いたかったんじゃなくて、
「勝は三咲の跡取りだけど、私だって月岡の総帥だよ。
 そりゃ一時は破産同然まで落ちぶれたけど、ヴォルガーラから地球を守った報酬には、
 まだエレンを養うだけの余裕があるよ!」
 
 確かにそれだけの甲斐性とお金があるなら、いいだろうけど。でもそうじゃなくて。

210 :
「ええと、ええと、、」
「っははははは」
 私が何を言っているのか自分でも分からなくなってきていると、エレンがおなかを抱えて笑っていた。
「いいだろう、月岡。
 私も幼い頃は、こういうときには白馬に乗った王子様が助けに来てくれるものだと、
 そう思っていたが、巨人にのったお姫様が来るというのも悪くない」
 そういって機人の手のひらに乗る。
「あっと」
「あ、足元気をつけて」
 エレンは純白のウェディングドレスの裾を、
 ライオールの指の間接に引っ掛けて転びそうになった。
 彼女を支えようと伸ばした手が、その手を握った。
 もう離したくないから、しっかりと。

211 :
「いくのか、エレン」
「勝!?」
 怪音波(?)攻撃からいち早く立ち直ったらしい。
 三咲勝が、祭壇から機人の手のひらにのった私たちを見ていた。
「三咲勝、すまないが、私はお前とは結婚できない。他を当たってくれ」
 エレンが言った。
「どうしてもか」
「ああ。私は、自分の心に正直であるべきだ。
 いや、正直でありたい」
 エレンははっきりと、ここに宣言した。

212 :
「そうか、なら仕方ないな。月岡!」
 勝は私に向かって呼びかけた。
 私はいやみたっぷりに返してやる。
「なあに?」
「俺は振られたみたいだ」
「いまさら気づいたの?」
「月岡! 俺にはせいぜい会社の経営を立て直すことぐらいしかできない。
 おまえは、エレンを幸せにしてやってくれ」
「当然!」
 私は勝に向かって親指を立てた。
 それを見届けると、勝はまだ耳押さえて苦しんでる他の人たちを置いて、教会の外に出て行った。

213 :
 ステンドグラスに突っ込んだ腕に私とエレンをのせたまま、それをゆっくりと戻す。
 私たちは手のひらから、機人の頭部近くに降りた。
 そして、ヴァーティカルモードから飛行形態のフォートレスモードにライオールを変形させ、
 花嫁をのせて飛び立った。

214 :

「まさか、お前があんなことをするなんてな」
 ライオールに乗って、上空200メートルを千丈に向かいながらエレンと話す。
 エレンにそういわれると、私は苦笑いするしかなかった。
「あはは……」
「教会のステンドグラスを吹き飛ばして、三咲に恥をかかせ、
 ブルノーズの顔に泥を塗ったんだぞ? ただではすまないだろうな」
「まあ、なんとかなるよ。月岡には優秀なスタッフがいるし。
 予算だって、ヴォルガーラ殲滅の報奨の残りがたくさんあるしね」
「博士達も苦労が絶えないだろうな」
「博士はヴォルガーラがいなくなって張り合いがないっていつもいってたから、
 久しぶりに暴れられて喜んでるよきっと。にそうなのは京野さんかな?」
「あの人、こんどこそ入院するんじゃないか?」
 そういって、二人で笑った。

215 :
 千丈上空につく頃には、太陽は傾いて、空の顔を赤く染めていた。
 空の風は気持ちよくて、
 ライオールの上で二人で寝そべったら、あっといまに時間が過ぎてしまった。
 ウェディングドレス姿のエレンをみやる。
 どこか満たされたような表情。パーティのときには絶対見せなかった。
 いや、ヴォルガーラ戦争で彼女と再会してからずっと、
 小さい頃に一緒に遊んだころ以来見てなかった表情だった。
 私は起き上がる。
 エレンもそんな私を見て、頭にはてなマークを浮かべながら、体を起こした。
 見つめあう。
 エレンの青い瞳が私をそのなかに捉える。
 その言葉は、自然に、本当に何気なく、私の口から出ていた。
「好きだよ。エレン」
「知ってる」
「ずっとずっと前から」
「ああ」
「エレン……」
 言っちゃった。
 ムードはばっちり確保したはずなんだけど。
 エレンは、私の方を見られずに、
 ライオールフォートレスモードの機首の先端を見つめている。 
 そして、押し黙っている。私の胸のドキドキは最高潮に達した。

216 :
 私はエレンの横顔をずっと見てた。彼女の長い睫が、何かを決心したように一回瞬く。
「私もだ。月岡」
「えっ?」
「お前が好きだ」
 エレンは白く化粧をした鼻の頭を掻く。照れたときに彼女がよくする仕草だ。
「これだけだ。そんなにたくさんは言わさないでくれ」
 エレンは耳まで赤くして、プイとそっぽを向いた。
 こういうところが、本当にかわいい。

217 :
「実はな、ヴォルガーラを倒してフランスに帰ってから、
 私は、すでにお父様に自分の気持ちを伝えてたんだ。お前へのね。
 そしたら大激怒さ。『ブルノーズの娘が、神を冒涜する気か!?』だと。
 それで、三咲との婚約をもとに戻したんだろうな。勝にも迷惑かけて」
「両想いだったんだね、私たち」
「そういうことに、なるな」
 エレンは頬を染めて、青い瞳で私の方をそっと見つめる。
 それがとてもいとおしくて、
 だからかも、少しだけ意地悪してみたくなった。
「じゃあ、いつまでも月岡〜じゃなくて、『結衣』って呼んで?」
 甘えた声でおねだりしてみた。
 エレンはそっぽを向いたまま、む〜と唸る。ほんとにがんばってるみたいで、微笑ましい。
 すっかり日が落ちて、空には金色の満月が輝いていた。
 月光が、彼女の睫を光らせる。横顔が青く縁取られて、まるで幻を見ているよう。
 でも、彼女は確かにここにいる。私が少し手をのばせば触れられる距離に。

218 :
 そうして、エレンは決心がついたのか、ゆっくりと私のほうを向いて、
 お化粧の上からでも分かるくらいに、真っ赤にした顔で言った。
「好きだよ。結衣」
 ライオールのフォートレスモードから見下ろした千丈の夜景はとても綺麗だった。
 ヴォルガーラとの闘を生き抜いた千丈。守られた地上の星々。
 その輝きを守ったのは私たちだ。
 それを思い浮かべると、なぜだかとても幸せで、安らかな気持ちになった。
 私の傍らで柔らかな笑顔を浮かべながら、一緒に星を眺めている人が、大好きなエレンだからかもしれない。

219 :
以上です。
つたない文章に長らくお付き合いありがとうでしたm(_ _)m
wiiコンなのは、まあ続編希望ということでw
スクエ二さんお願いします

220 :
良作GJ!!

221 :
レスがないのは、みんなでせっせとギガドラをプレイ中だからだと予想。
そして奏也とヴァルドルがでてきてコントローラーを二重の意味で投げてるとw

222 :
おぉぉぉぉぉっ!!!神光臨!!!
大量投入だから暫く間、無いのかと思ってましたよ。。。

223 :
神は一人じゃなかった

224 :
http://goshrink.com/nCb

225 :
エレンかわいいよエレン
面白かったです、GJ

226 :
エロ描写が含まれますが、苦手な方はスルーしてください。

227 :

恋愛は先に好きになったほうの負けだって言うけど、あれって嘘だと思う…。
確かにこの恋をはじめたのは瞳のほうで、彼女が気持ちを打ち明けてくれてなか
ったら、たぶんこういう関係にはなっていなかった。
瞳とは小中とずっと一緒に過ごした一番仲のいい親友だった。昔から背が高くて、
美人で、頭がよくて、明るくて、誰にでもやさしくて…いいとこだらけ。
クラス委員長に推薦でなるようなタイプだ。実際に小学生のときには、児童会長
とかやっていたし。
そんな少女に好きだと言われて、毎日のようにカワイイとかキレイだよって甘い
声音で囁かれて…。
ウソよ…。こんなアタシのどこが? アタシなんかを本当に? 
大好きなはずの恋人の言葉が信じられなくて、いつも不安で、胸が苦しくて…。
でも、アタシを見つめる彼女の眼差しは、いつだって真剣だったことを思い出した。
人がどう思うかよりも、恋人がどう見てくれているかのほうが、もっとずっと大切な
ことだった…。地味でなんの取り得もない自分と、いつもキラキラしている瞳とでは、
ぜんぜん釣り合っていないとか、引き立て役になっているとかぐちゃぐちゃと勝手
に思い込んで卑屈になったりしていたけど……。
そんな後ろ向きな性格のアタシでも、彼女は、好きだと言ってくれる。甘やか
してくれる。
瞳が素敵なのは、容姿だけじゃなかった…。
心が澄んでいて、とても温かい人だ。そんな恋人にこんなにも大切に想われているのに
気持ちを疑うようなことをして…本当にごめんね…。
こう言ったら、アナタは、ムキになって反発するだろうけれど心の中だけで云わせて。
いまは、絶対にアタシのほうが瞳のことを大好きだよ…って。

228 :

そんな少女をちいさな頃からずっと見てきて知っているけど、どうしてかな…?
今日の瞳は、なんだか、ものすごくカッコよく見えるんだ…。
こんなの初めてで、なんだか知らない人がいるみたいでちょっとドキドキしちゃう。
「…ふ…っんく…っ…」
灯りをつけたまま唇の境目が分からなくなるまで長いキスをした。
半年もすれば、瞳のやり方もずいぶん覚えた。でも、いつまで経っても恥ずかしさ
は一向に消えなくて、いつになったらこのキスに慣れるのかなって思っちゃう…。
今日のキスはいつものそれとはぜんぜん違う、なんかやらしいキス…。
二人の甘い吐息が籠もって、部屋の酸素が薄くなっていた。
明るい蛍光灯の下で、ギュっと抱き合うように夢中になって口付けを交わす。
何度も何度もスタンプを押すみたいに押し付けられた。強くされて、そこがぐ
にゅりと変形する。瞳の唇は、熱があるみたいに熱かった…。唇がこんなに熱く
て、やわらかいものなんだって、キスを覚えて初めて知った…。
もしかして、アタシもそうなのかなって…。アタシの唇の感触を感じながら、
いま瞳も同じように思っているのかもしれないと思ったら、急に忘れかけていた
羞恥心がこみ上げてくる。
「……あぁ…っん。」
にゅるりと舌が入ってきて、思うままに奪われる。
舌を味わうように捉えられて、激しく絡めあう。息が上がる。
ぼうっとしながら瞼を開いた。
日本人にしては独特な薄茶色の眸は、いまはぴたりと閉じられている。
リップを塗っているみたいに綺麗な色の唇は塞がれて。高い鼻腔。一筆書きで
描いたようなスッとした眉。顔のどのパーツをとってもすべて整っていて、
それが、ピタリと決まった配置に収まっていた。
美人っていうのは、きっと、こういう顔のことを言うんだろうなぁと舌を吸わ
れながらそんなふうに思った。

229 :

上向きの長い睫がピクっと震えて、ふいに瞼が開かれた。至近距離で視線が合う。
キスしながらうっとりと見蕩れていたのをバレたのが恥ずかしくなって、プイと
顔を背けると、ようやく唇を離した彼女は、ふっと色っぽく甘い吐息を漏らした…。
「…な〜な?」
熱くなった唇を押さえるように背を向けてしまったアタシに飼い猫でも呼ぶように。
そういうときの瞳は、大抵恥ずかしいことを言うときで、アタシは背中を固くして
なにを言われるのか身構えた。
「ふふっ。かわいい奈々…。俯いたってだーめ。ほら、耳たぶまで真っ赤だよ?」
「ヤダぁ…。もう、かわいいとか、そんなにたくさん言わないでよっ!」
昔からそうだけど、今日の瞳はなんか言いすぎなんだもんっ。そんなに何回も
言われたら恥かしいって!
なのに彼女は相変わらず動じない。
「エーッ、どうして? これからは、もっといっぱい言うよ。だって、いつも言って
るのにぜんぜん信じてもらえてなかったんだもん、アタシ、ショックだったよ…。」
「う…っ。だから、そのことはもう言わないでよォ〜」
それは、アタシだって反省してるんだから。
「やーだ。ほら怒った顔も超かわいいよ、こっち向いてよ奈々。もっと可愛いい顔
よくみせて?」
「もうっ、意地が悪いよ、瞳っ!!」
キスしているときなら平気で見れていたのに、唇を離したとたん恋人の顔を見る
ことが出来なくなった。

230 :
それよりもギュっと身体を押し付けてくるから背中に胸が圧し掛かって、ツンと
する感触に、ますます顔を赤らめる。
瞳はブラをしていないみたいで、そんな格好で、夜道をウロついていたのかなと
思ったら、なにか一言言ってやりたくなる。
だいたい、なんでアタシだけ裸になってるのよ! 彼女は、シャツの上にパーカー
まで着ているっていうのに…。これじゃ不公平だよっ。
「ねぇ、もう、ねぇってばっ、ヤダよ一人だけ裸は…。瞳も脱いでっ!」
「ん〜〜」
さっきから言ってるのにぜんぜん聞いてくれない。
曖昧に返事しながら、爪先で剥き出しの背中をツーって撫でられた。
釣り上げられたばかりの魚のように、思い切りビクンと反応する。
そんな姿を見下ろしながら、彼女がくすくすと愉しそうに笑う。
なんか、さっきから遊ばれてるみたいで悔しい…。こんな状況なのに、なんでそ
んなに余裕しゃくしゃくなの?
アタシは、緊張と不安と恐怖で吐き気が出そうなほどなのに…。
「ず、ずるいよ。脱いでよっ、脱いでくれないなら、もうしない…」
いじけたように壁のほうをぷいと向いて、身体を丸めた。
ふと、覆いかぶさってくる温もりが薄れて、ベットが大きく軋んだ。
バサリと音がして、ようやく顔を上げると、美術室の石膏像のように均整のとれた
裸体が目の中に飛び込んでくる。

231 :
括れたウエストに縦長のお臍がカッコいい。
肉感のある張りのある胸の上にはピンク色の可愛い乳首がひっそりと飾られていた。
初めて見たわけじゃないのに、まるで初めて見るように胸がドキドキした。
なんで、瞳なのにアタシの心臓こんなになっての…? 
お互いの家に泊まりっこするときには、一緒にお風呂に入ったことだってあるし、
瞳の裸なんて見慣れてたはずなのに…。
自分にそう言い聞かせるけど、最後に目にしたときよりもずいぶんと成長した姿に
だんだん面白くなくなってくる。
勝手に大人になっちゃって、いつだってアタシは置いてきぼりだ。なんかズルイよっ!
「これで、いい?」
上半身を惜しげもなく見せつけながら、堂々と言ってのける少女。そりゃ自慢の
ボディだもんねと拗ねたくなった。
同い年なのにこの差に、自分の貧弱な身体を見せるのが余計に恥ずかしくなる。
でも、もう互いを比べて卑屈になるのはよそうと反省したばかりだから、アタシは、
言いたいことをお腹に収めてコクンと頷いてみせた。
「いいけど…。でもやっぱりズルイよ。自分で脱ぐより、脱がされるほうが絶対
恥ずかしいもんっ…。」
「フッ…。可愛いー、奈々。アタシ、奈々のそういうとこ大好きよ?」
唇を尖らせて恨めしげに睨み付けると、ギュっと抱きつかれて、直にあたる感触に
「ひいっ」と悲鳴を上げそうになるのをなんとか飲み込んだ。
ますます赤く染まる頬を手の甲で執拗なほど撫でられる。
たったそれだけの行為でも、瞳に触れてもらっていると思うだけで陶酔してしまう。
あれ? なんか、さっきから、身体がおかしい。
お臍の下の辺りがジンジンしてるんだ。

232 :
「…なーな?」
瞳の飼い猫を呼ぶみたいに。なんか、ホントに猫になっちゃった気分だよ。
顔を上げると、彼女がにっこりと笑んだ瞬間、ふいに目の前が真っ暗になった。
顔のあちこちに唇が押し当てられる感触に肩を窄める。左の頬、耳の後ろ、こめ
かみ、おでこ、鼻の頭、右の頬、そして唇へと…。
そうされるたびに瞳の長い髪が頬をこすって、それがくすぐったくて…。
でも、そんなのもめちゃくちゃに唇を奪われるうちに気にならなくなった。
顔中を舌で舐められて背筋がゾクゾクした。
アタシが猫というより、瞳が子猫になったみたいだよ…?
ピチャピチャと音を立てて首筋を舐めている少女の様子はミルクを飲んでいる
子猫そのものだった。
夢中になって、瞳の愛撫に応えていると、ミシミシと階段を上る音に身体がぎく
っと竦みあがった。
「………!!!」
なんか瞳の涙と甘いムードに押されてうっかり忘れてたけど、下にはお母さんが
いるんだった。彼女もその音に気づいたのか、アタシの上で腕立て伏せのまま
硬直する。
「わっわっ! ちょ、お、お母さんだよ。ど、どうしよう、瞳、電気、電気消してっ!」
「えっ…う、うん。あれ、ちょ、奈々、か、鍵、閉めてなくない!!?」
「そんなの間に合わないよう! いいから布団、早くっ!!!」
瞳が、手を伸ばして蛍光灯の紐を引張る。
アタシは、慌てて端に避けていた布団を掴んで頭から被った。と、同時にドアの
向こうから母親の声がして、心臓が口から飛び出そうになる。

233 :
「奈々、奈々、もう寝たの?―――ちょっと、アナタたちバタバタとなにしてるのよ?」
「――ご、ごめん…。ええと、その…テレビでヨガやってたんで、ちょっとやっ
てみてた…。うるさった?」
どうかドアを開けないでくれと、両手をすりすり合わせる。こんなことで神頼み
をするなんてバチあたりもいいところだろうけど。
薄い板一枚隔てた先で、娘が裸でいるなんて知ったら、お母さん脳卒中で倒れちゃうよ。
二人の姿を見れば、いくら能天気な母親でもなにをしていたのかなんて一目瞭然だろう…。
「もう、遅いんだからほどほどにしなさいよ!」
「う、うん…。もうヤメルよ。ていうか、アタシたちもう寝るところだからさ…」
「――そう。……あのね奈々、さっき瞳ちゃんのママに電話したら、いま、みんな
で、カラオケしてるんですって…。お母さんも誘われちゃったんだけど、行って
来ていいかな?」
「い、いいよー。今日は瞳もいるし、だいじょうぶだから。アタシのことは気に
しないで愉しんできて?」
瞳とは、小一から中三までずっと同じクラスだったこともあってか、必然的に
お母さん同士も仲良しになった。お父さんたちはゴルフ仲間だし。ずっとそんな
感じだったから、小学生の頃までは、よく両家で旅行に出掛けたりもしてた。
お母さんは専業主婦だけど、瞳のママは、自分の会社を持っているようなバリ
バリのキャリアウーマンで。
まるっきり正反対の性格だけど、娘たち同様、結構気があっているみたい…。
「そうよね…。瞳ちゃんがいれば安心よね。奈々ひとりじゃ心配だもの…」
「なっ、それ、どういう意味っ!」
「ちゃんと戸締りしていくから……それじゃ、瞳ちゃんよろしくね?」
「はーい。おやすみなさーい」
そう言って、遠ざかる足音を聞きながら大きくうな垂れた。
瞳も同じように枕に顔を埋めて息をしている。

234 :
「はあぁ…。焦ったぁー」
「ホント、寿命が縮むかと思ったよ…」
まったくだよ。10年は確実に縮んだね。
すごい心臓の音がする。ふたり同時にげっそりとため息をつく。
しばらくベットに並んで天井を見ながら、早打ちする心臓の鼓動が収まるまで
なにもしゃべれなかった。
「ククッ。……でも、ヨガって、奈々ったら最高っ!」
「だ、だってぇ……。あー、でも、ホント開けられなくてよかったぁー」
思い出したように瞳が笑う。アタシは、ムッと唇を窄ませながら、ベットの下をみた。
脱ぎ散らかした服までは隠せていなくて、あれを見られたらどうなっていたかと思う
と、ゾッとする。
「あれ? そういえば、今日、おじさんは…?」
「今日は、夜勤の日」
「そうなんだ…。うちのママ、奈々のママのこと大好きだから絡みだすとしつ
こいよ。きっと、帰ってくるの午前様だね」
「フフッ。そうかも…」
おでこをつき合わせてクスクス笑う。
でも、お母さんの思わぬ出現でなんだか気が逸れちゃったよ。そう言うと、
彼女は、あからさまにガッカリした顔をした。
それが、スーパーでお菓子を買ってもらえなかった子供みたいで、すごく可愛くて。
すっかり拗ねてしまったちいさな顔を両手で挟むと、そっと顔を引き寄せる。
途中で目を瞑っちゃったからちゃんと唇にあたっていたかどうかは不明だけど…。
まぁ、変なところにあたっていても瞳みたいに慣れてないから許してよね…?
目を開けると、きょとんとしながらその白い肌はサーとピンク色に染まっていった。

235 :
「―――なんで、そんな顔してるの?」
アナタのさっきの科白じゃないけど、耳たぶまで真っ赤っかだよ?
瞳がそんな顔をするの珍しくて、なんだかこっちにまで伝染してきて余計に恥ず
かしくなった。
「だ、だって、奈々からキスされるとは思わなかったから……」
「さっきもアタシからしたじゃない……」
「そ、そうだけどォ……」
赤くなったのを言い訳するようにしどろもどろ。
こういうところは、女の子なんだなぁって思う。カッコいい瞳もドキドキするけど、
なんかこっちのほうが安心するよ。
それに……。
「アタシだって瞳を気持ちよくしてあげたいよ? アタシだけなんて絶対いやだから…」
「うん……。ありがとう奈々。すっごくうれしいよ…」
同じ体。同じ染色体。そして、同じ年に生まれて。
どっちかがどっちかを…なんて関係は絶対に厭だった。瞳とは、いつまでも対等で
いたい。
昔からアタシがイジメっこに揶揄られると、でんと立ちはだかって守ってくれた。
でも、瞳だって、女の子なんだからホントは守ってもらいたいと思っていたかも
しれない。
アタシは瞳よりも腕力もないし、チビだけど…。だからって、彼女に男役を求め
たいわけじゃ決してない。瞳が女の子だったから、アナタを好きになったんだよ?
そう、アタシが思っていることをちゃんと知っていて欲しかった。
それくらい好きなんだよって…言いたかった。
カッコよくて、可愛いアタシの“カノジョ”。
この身体もこの心もすべて丸ごと自分の物だと思うと、眩暈がするように頭が
くらくらした。

236 :
◇ ◇ ◇ ◇
せっかく電気を消したんだから、このままでしようよという提案はあっさりと
却下され。「初めての日だからこそ、ちゃんと奈々の顔をみていたいよ…」逆に、
甘い言葉を耳の中に吹き込まれて、すっかり歯向かう言葉に窮してしまった。
あぁ、どうして、いつも瞳はこうなんだろう…。
照れもなく、腰が砕けてしまいそうなことを簡単に言ってくれる。
先に大人になってしまった恋人のことが、やっぱりちょっとだけ悔しかった…。
10年前に買った使い古しのベットがきしきしとなっている。
無造作に飾られたぬいぐるみにジッと見られているみたいでなんだか落ち着かなかった。
いつも生活している自分の部屋で、こんな淫らな行為に耽っているのが、かえって
いけないことをしているように思えて。
「うあ……ぁ……。」
キスをしながら胸の先端を弄られる。
初めて人に触れられた感触に背中が大きく仰け反った。
上を向いた顎を噛まれて、舐められて、動く喉仏にまで舌を這わせる。
汗なのか涙なのかわからない露が目に入ってきて痛い。
「………ねぇ、奈々、すごい、ここ勃ってきたわよ…?」
「やあぁ……そ、そういうこといちいち言わないでってっ!!」
三本の指でちいさな膨らみをマッサージされながら、残った親指と人差し指で乳首を
グリグリと摘まれた。引張るようにされたり、指の腹で転がされたりして、アタシは、
そのたびにシーツに大きな皺を作った。身体を捩って抵抗すると、「もう、動かない
でよ」って瞳に笑われるけど、そんなのは聞けやしない。
ふいにちりっと痛みが走って思わず視線を向けると、愉しそうに悪戯する少女と視線
がかち合った。
指先でコリコリとアタシのそこを弄んでいる姿は、小学生のとき粘土遊びに夢中にな
っていたちっちゃい瞳の姿を連想させる。

237 :
あの子に、そんなことをされているのかと思ったら余計に恥ずかしさがこみ上げて
くる。
すっかり茹で上がった顔を逸らすようにぷいと背けながらきつく唇を噛みしめた。
そうでもしないと、なんだか恥ずかしい声が出てしまいそうで。
恥ずかしいと告げることさえ、いまはただただ恥ずかしかった…。
「ん〜〜。奈々の身体、石鹸の匂いがする……肌、すべすべで気持ちいいねぇ?」
「お、お風呂入った…ばかりだから…瞳っ、くすぐったっ、…あっ、やだっ…。」
首筋に鼻を押し付けながらクンクンと匂いを嗅ぐ仕草をする。そのまま鎖骨にキス
されて、熱いくらいの唇が徐々に下りてくる。
目的の場所に到達すると、彼女は唇にするみたいにキスをした。
ビクンと跳ねる腰。感じてるって身体で言ってるみたいで、すごく恥ずかしい…。
アタシの胸は、彼女のおもちゃになってしまった。
右手は相変わらず指先で戯れて、左は、くちゅっといやらしい音を立てながら飴玉
を舐めるように舌を転がした。すっかり敏感になってしまったところを両方一辺に
されると、ビリビリと背筋が痺れて、脳みそが一気に蕩けだす。
口を開ければ、自分のとは思えないほどの甘い嬌声に、本気で泣きたくなった。
だって、なんだか、一人だけ舞い上がっているみたいで恥ずかしいよ…。
そんな顔を彼女に見られたくなくて両手で覆う。でも、すぐに手を取られて、そのまま
バンザイの格好にさせられた。
瞳は片手でアタシの両手首を一纏めにしてから、上からジッと覗き込んでくる。
「隠しちゃだめよ、奈々?」
「や、もう、やだよ〜〜」
なんで、アタシばかりこんな恥ずかしい思いをしなくちゃいけないの?
一人はイヤだって言っても、彼女は聞いてくれない。手を伸ばしても触らせて
くれない。ひどい。ズルイ。

238 :

「奈々、恥ずかしくないから、声、出してもいいのよ?」
そうして、わざと声を上げさせるみたいに、胸に悪戯を繰り返す。舌先で周りを
舐めながら、口を窄めながらチューチューと吸い込まれると、もう、どうしていい
のかわからなくなった。
「…ひゃっ、やだっ、やだっ!!」
「もっと…、ねぇ、もっと気持ちよくなって、奈々?」
「んんっ、もう、ひ、とみ……あんっ、やだっ、それ、恥ずかしいよう……」
なんか、すごく変な気分だった。
瞳におっぱいを吸われているなんて…。
大好きな人にそんなことされて恥ずかしくてたまらないよ。皮膚に感じる直接的な
刺激もさることながら、視界から入ってくるビジュアルのほうに全身がカーっと熱
くなった。
あの幼馴染にこんな淫らなことをされていると思うと変なふうに呼吸が乱れて、息が
上手く繋げないんだ。
それに反するように、身体のほうは初めて感じる刺激に敏感に反応していた。唇で
愛撫されたところが、見るまでもなく固くしこっていくのがわかった。
「奈々、奈々、可愛いよ。いっぱいアタシで感じて……」
低く甘く耳元に囁いたと思ったら、そのまま耳の中に舌を差し込まれた。
ぞわっと鳥肌が立つ。
ぴちゃぴちゃと卑猥な音が、鼓膜を揺する。甘い吐息に煽られて、耳たぶを嬲る。
体中のいろんなところを舐められ、上がり続けた熱は体温計を振り切るほどに。

239 :

ふと、愛撫の手が止まったのに気づいた。
喘ぎすぎてぜいぜいになりながら、ぎっちりと瞑っていた瞼をおそるおそる開く。
いつの間にか瞳は、下の方へ移動していた。Vの字に大きく開かれたの二本脚の間に
自分の身体を入れて閉じられないようにしながら、内腿のあたりをさらさらと撫であげる。
熱っぽく細められた彼女の眼差しの先にあるものに気づいて、ハッと目を剥いた。
「……ひ、ひとみッ!!」
彼女が次になにをしようとしているのかが分かって、思わず声を荒げた。
瞳は、意味ありげな視線を向けながら、爪先で内腿の敏感なあたりを擽り続ける。
「ねぇ、脱がせてもいい?」
コテンて、首を傾ける仕草が可愛くて、一瞬だけときめいたけど、言われた言葉に
ぶるぶると音が立つくらい激しく首を振った。
「だ、だ、だめっ! ま、待って、そこは………」
セックスがそういうものだってことは、拙い知識しか持っていないアタシでも
分かっていた。
自分だって、そのつもりで彼女を誘ったのだから、ココまできて、いまさら怖気
づくのもどうかとも思う…。
でも、こんな煌々とした灯りの下で、大好きな彼女の目にそこを晒されるのは、
予想外だし、やっぱり、それは怖かった。
その場所が、まだ触れられてもいないのにどんな状態になっているかわかるだけ余計に…。
「エーッ、どうして…?」
アタシの声に、彼女は可愛い唇をむうと尖らせる。
そういうところは、こんな行為をしていても同じ高校一年生なんだなと思った。

240 :
「やっ、だって、そこは……。」
「ねぇ奈々、パンツすごい染みてるみたいよ…、いっぱい感じてくれたんでしょ?」
「……そ、そんな、言わないでよっ、瞳のバカっ!」
あぁ、恥ずかしくてんじゃいそう…。
なんでも正直で、すぐに言葉に出すところがある彼女だけど、こういうのは、
すっごく嫌。
言われて恥かしいの瞳だって、女の子なんだから分かるでしょうに…もぉ〜!!!
「なんでぇ? いいのォ…。だって、アタシ、すっごくうれしいもん今ぁ…。
ねぇ、奈々、もっともっと気持ちよくしてあげる。――うんん、違うね。アタシ
が奈々のこといっぱい気持ちよくしてあげたいんだぁ…。奈々の全部を愛して
あげたいの…。ねぇ、だから、いやって、言わないでよ、奈々?」
「…………」
もう、ズルイよ瞳は…。
そんなふうに言われたら断れないじゃない。
いつもいつもそうやって、言葉巧みに丸め込もうとする。
アタシのすべてを知り尽くしている彼女には、どうすれば落ちるかなんて簡単な
ことなのだろう。
悔しいけれど、その潤んだ眸は、ウソを言っていないことが分かるから…。
「お願い、瞳……分かったから…電気、電気だけは消してよ…」
か細い声で、そう懇願した。
ここまで来て「恥ずかしいからいやだ」なんて子供みたいなことは言いたくない。
恥ずかしいけど我慢する変わりに、条件を出した。
なのに、子供のような顔で「だーめ」と言われてしまい、遊園地で迷子になった
ときのように「ふえん」と泣きそうになる。

241 :
「どうしても…」と懇願しても、ぜんぜん取り合ってくれないで。
どうしてこんな意地悪をするのかと、ひどく悲しくなった。
でも、巧みな話術と愛撫にすっかり懐柔されて、気づいたときには、ゴムに手が
掛かっていた。
最後の一枚だった布が足首に落ちていったとき、こみ上げてくるいろんな感情で
頭がグラグラした。
手で隠そうとするけど、すばやく取り払われて適わない。隠すことも許されない。
「……奈々?」
呼ばれても返事なんか出来ないよ。目を開けられない。
自分の身体の一部なのにアタシだってよく知らないところを恋人に見られてしまった
ことがショックだった。泣く寸前のときのように唇がへの字に変形しているのがわかる。
なんか、心のどこかで瞳とえっちしても、女同士だからだいじょうぶとか、お風呂
にだって一緒に入ったこともある仲だし恥ずかしくないとか、始まる前までは思っ
ていた気がする。
でも、それは、間違いだったと、いまはっきりと自覚した。
同じ身体を持っていて、でも、実際には大きさも色も形もぜんぜん違くて、相手
が女の子だからこそいろいろ比べて考えちゃったりもして…。
これならば、男の子とするほうがよっぽど恥ずかしくないんじゃないかなとさえ
思えてくる。
すっかり力が抜けてしまいだらんと伸ばしっぱなしだった脚が、九の字に折り畳
まれた。腰をぐいっと引き寄せられて、されるがままに。
「…ねぇ奈々、奈々とは一緒にお風呂に入ったこともあって、奈々の身体は知って
るのに、ここは、まだ見たことなかったね?」
脚の間で、そう独り言のように呟いた。
アタシは、聞いていないフリをしながら、赤く染まる瞼の裏を眺めていた。

242 :
「うわっ…。女の子のって…こんなふうになってるんだぁ…。奈々、もうちょっと
脚の力抜いて、もっとよく見せて?」
彼女の指先が、熱くなったところに触れてくる。
閉まった扉をこじ開けるように両手で、そっと押し広げられた。
間近で息を感じて、たじろいた瞬間、中からなにかどろっとしたものが流れ出す。
彼女の見ている目の前で…。恥ずかしくてにそうになる。
「ううっ、やぁだっ!!!」
「ねぇ奈々、すごい綺麗よ。艶々しているの……それに、いっぱい蜜が溢れてる…」
「やあぁ、言っちゃやだっ、もう、みないでよっ!」
強い口調で言ったつもりが、実際は、蚊の泣くようなか細い声だっだ。
身を捩って、彼女の視線から逃れたいのに、どうしてだか動けない。
かろうじて動いた腕で、その手を這おうとするけど、あっさりと彼女の手に掴ま
って、元通りの位置に戻された。
何度も何度もそれを繰り返しているうちに、だんだん力が入らなくなっていって…。
とうとうされるままになった。
焼け焦げるような熱い視線を感じる。彼女の綺麗な眸に自分の一番汚い場所が
いま映っているのかと思ったら、悲しくてにたくなった。
「や、やだぁ……お願い、みないでぇっ……」
「ん〜? どうして? ずっと見てたいよ、奈々のここ、すごく可愛いー」
その言葉に堪え切れなくて、ツーと涙が零れた。
いつも掛けられている言葉を使われたことがショックだった。
だって、そんなところが可愛いいはずがないもん。瞳が嘘をついたと思ったから…。

243 :
「やだ、奈々、泣かないで? アタシ意地悪なことしてる? 奈々を気持ちよく
してあげたいだけだよ?」
「…………う…ぅぅ」
やさしい声音が小雨のように降ってくる。そうなのかもしれないと思った。
こんなことで恥ずかしがっている自分のほうが、どこかおかしいんだ。
みんなだってやっていることをどうして、アタシは出来ないのだろう…。
涙を拭いて、脚の力を抜く。
それでも泣いた名残で喉がひくひく言っていたけど。
身体を預けることで、瞳はアタシの気持ちを気づいてくれたみたい。
くすりとちいさく笑う声がして、指先がゆっくりと触れてきた。
最初は形を確認するようにやさしく、アタシが怯えないように…。そのうち呼吸に
合わせるように大胆になっていった。
片手でその部分を押し広げるようにしながら、上のほうの粒をやさしく弄られる。
その場所が気持ちいいことは知っていた。人には言えないけれど、たまに自分で
も弄ることがあったから…。
一人ですることを覚えたのは、中学三年の夏休みのときだった。
友達の家で、生まれてはじめてアダルトビデオをというものをみたときに出て
いた女の子がさせられていて、家に帰ってからこっそりやってみたのが最初だった。
瞳にはんでも言えないけど、最近は、恋人を想いながらこっそり触ることもある。
そんなときは、彼女を汚してしまったような気がして、ひどく申し訳ない気持ちで
いっぱいになって、朝に会うときとか、なんとなく気まずくて彼女の顔が見られな
かったり…。
いま、夢のとおりされているんだと思ったら、たまらずに肌が上気した。

244 :

そういえば、あのときのビデオの中で女の子が男の人にされて、すごい声で喘いで
いるのみて、演技なのかなとかちょっと疑ったりしたけど、こういう声って、
ホントに出るんもんなんだと思った。
自分のじゃないみたいなこんなにいやらしい声をどこに隠し持っていたのかと思っちゃう。
もしも、お母さんが下にいたらば、いまごろ卒倒してるよ。
出掛けてくれてよかったと心底思った…。
「……ああぁっ、ゃっ、もっ、だめだよっ……」
何度も何度もその場所を擦り上げる。
爪先で自分でもしないくらい激しくされて、痛いような、むず痒いような感触が
背筋を一気に走りぬけた。
と思ったら、急に緩慢になって…。
さっきから、彼女のペースについていけないでいる。
ハァハァとマラソンを終えたような脱力感が襲った。
「うわっ、奈々、すごいまた溢れてきてるよ? ほら、音…。クチュクチュって
言ってるの聞こえる?」
「…っ…んも、瞳のバカッ……」
そんなことを言わないでよと、朦朧としながら声にならない声で泣いて叫んだ。
彼女の愛撫はとにかく執拗だった。自分でしているときだったらとっくに終わって
自己嫌悪しているところなのに、なかなか終わりにしてくれない。
中途半端に熱を放り投げて、今みたいに、アタシが乱れる様子を楽しそうに眺めている。
意地悪なのか、やさしいのか、わからない愛撫に心がひどく掻き乱れる。
アタシは辛くてしんどいのに。もう、我慢できないよ。早く終わりにしたい……。
もう許してよ瞳…。お願いだから…。いろんな感情が、涙となって溢れ出した。
「アタシ、奈々のこと泣かせてばかりで、なんか苛めてるみたいだね?」
「…………」

245 :

視界が揺れて、はっきりと彼女の顔が確認できない。
瞳の甘い声とクチュクチュと淫らな音が入り混じって、それさえも快感を呼び起こす。
「小学生のとき、奈々を苛めてた男子みたいよね…。でもいま、ちょっとアイツら
の気持ち分かるかも…。奈々の泣き顔可愛いから、もっとしたいって…。奈々の
こと苛めちゃいたいって……ごめんね、奈々…」
手を休めぬまま訥々と語るように言う。
どう聞いても謝っているような口調じゃなかった。
でも口を開けば、妖しい喘ぎ声が洩れちゃうような気がして、非難の声もグッと
飲み込んだ。
「ごめんね…。ちょっと弄りすぎて赤く腫れちゃった…。もう弄るの痛いだろう
から舐めてあげるね?」
「……えっ?!」
なんか、また、とんでもないことを言われた気がした。
でも、頭が混乱していて、急な展開についていけないでいる。
足首を持たれて、ぐいっとさっきよりも大きく開かされる。その場所に彼女の
ちいさな頭が近づいてきたとき、瞳が、なにをしようとしているのかようやく理解した。
「なに、なに、ちょっ、やだって、瞳っ!!」
「だいじょうぶ。きっと気持ちいいよ?」
変なところでにこやかに微笑みかけられても、そんなの聞けないよ。
ちいさな頭を避けようと懸命にもがく。
「そ、そういうことじゃないよ! ちょ嫌っ、そんなことしちゃ、だめっ!!!」
思わず張り上げてしまった声に、彼女は脚の間からぴょこんと顔を上げた。

246 :

「どうしたのよ奈々? だいじょうぶよ。みんなすることよ?」
「…………」
その言葉は、アタシの抵抗を失わせるには十分な効果をもった。
人と同じことができないのは恥ずかしいことだ。瞳に嫌われたくない。
がっかりされたくなかった。こんなことを恥ずかしがって変な子だって思われたく
なかった。
しゅんとしたまま身体の力を抜いて抵抗するのをやめると、彼女は、手を伸ばして
「いい子ね」と赤ちゃんにするみたいにアタシの頭をよしよしと撫でた。
本当に瞳の赤ちゃんになっちゃったみたいに、まるで、おしめを替えるような
卑猥なポーズを取らされて、頭がぐらぐらと煮えたぎる。
このまま、消えちゃいたいくらい恥かしいよ…。
あぁ…。ホントにみんなこんなことしてるのかな?
こんな格好までして、世界で一番好きな人に一番されたくないところをキスされて、
どうして、みんなは、平気でいられるの?
漫画やドラマとかで、こういうシーンときどきあるけど、こんなの一つも描いて
いなかった。恋愛は、ハッピーなことばかりじゃない。みんなこんな辛くて恥ず
かしいことを我慢しながらしているんだ。
それとも、そんなふうに感じるのはアタシだけなのかな?
「……んっ、んんっ、ああぁっ、あんっ、いやっ………」
でも、実際に舌でされてみれば、指でされるのとは比べ物にならないくらい強烈な
ものだった。
綺麗な唇を汚してしまったという罪悪感がスパイスになって。
なんかもう、頭も身体もグチャグチャだった。

247 :

「おいしいよ、奈々?」
「……いや、言っ、言わないでよっ…」
わざとやってるとしか思えないくらいピチャピチャと卑猥な音を立てられて、
なにも見えないようにギュって目を瞑る。
おへその下が引きつって、痙攣みたいなのを起こしていた。腕で顔を覆う。
なのに…。
「なーな、ほらだめよ。顔隠さないで? 見せて?」
「……やだー」
もう、お願いだからそんなところからしゃべりかけないで欲しい。
尋常じゃないほど身体が熱くなっていた。湯あたりしてしまったときのように頭が
ボーっとなった。急にお腹の辺りが苦しくなって、ハッと顔を向けると、あまり
にも間近で瞳と目が合ってギョっとする。
両脚が不自然なほどに折りたたまれていた。おかげでお尻が浮いて、そこに正座
した彼女の膝が埋まると。
「ちょ、なにこれ〜!!!」
「ん〜? 舐めてると奈々の可愛い顔が見れないのが寂しいから……」
なにか言い訳のように告げながら、さっきの体制よりも少し上に向いた性器に
再び顔を近づけた。彼女が顔を寄せる寸前の、あの部分が視界に映る。
二つに裂けた皮膚の間のどぎついピンク色した粘膜がドロドロと蜜を垂れ流していた。
アタシは、唇をわなわなと震わせながら、とうとう堪えきれず涙を零した。
うそ…。アタシのそこって、あんなふうになっているんだ…。
気持ち悪いものを見たというよりは、なにか、ものすごくいやらしいもののように
映った。

248 :

そんな場所を瞳にジッと見られて、舐められているのかと思ったら本気で抵抗した
かったけど、「これなら、舐めているところと、舐められている奈々の顔が同時に
見れて一石二鳥でしょ?」16歳の少女にくったくのない笑顔で言われてしまえば、
これ以上、なにも言い返せやしなかった。
「ううっ、だめ、そんなとこ、す、吸っちゃ…やだぁ………っ。」
なんどもなんども「やだ」と言うのが、実は反対の用語だと聡明な彼女はすぐに気づ
いて、アタシが口走るたびに執拗に続ける。
泣いて叫んで、許しを請うても彼女の愛撫の力は一向に衰えない。まるで、数年分の
想いを取り戻すかのようにやさしく苛められる。
あぁ…こんなのは知らない…。
夢の中の瞳はこんなことまでしなかった。ここにいるのは、本当にあの瞳なの…?
あまりにも彼女の行為が強烈過ぎて、まるで終わらないジェットコースターを乗っ
ている気分だった。
ふいに鈍痛を感じて、目を開けると頬を赤らめた少女と視線がぶつかった。
うっすらと陰る濡れた下生えの下に瞳の長い人差し指が突き刺さっているのを見て、
思わずギョッと目を剥きだす。
「痛い、奈々?」
でも、さっきとは一転、心配そうに尋ねてくる恋人に、思わずうんんとちいさく
首を振った。
痛みは、最初にズキっとしただけで、すぐに感じなくなった。
それよりもアタシの身体の中に、いま瞳の指が入っているのかと思ったら、そっち
のほうが驚きだった。

249 :

「ごめんね奈々…。アタシ、なくて………」
「……え?」
寂しそうな目で、フッと瞳が笑う。一瞬、彼女がなにを言っているのか分からなくて、
でも、すぐに、いつかみたビデオのことをまた思い出した。
フツウのセックスは、男の子とするものだった…。
でも、アタシたちは、両方とも女の子で同じ身体で。あの行為をするには足りない
ものがあった。
だからって、瞳がそんなふうに言うのは意外な気がした。
胸の辺りが、針で刺されたみたいにチクチクと痛くなる。
お願いだからそんな寂しいこと言わないで欲しい…。二人の関係が間違っていると
認めるようなこと言わないでよ。
アタシたちがこうなったのは必然であって、間違いなんかじゃないでしょ?
たまたま好きになったのが女の子だっただけで…。
好きな気持ちが、彼らに劣っているわけでもない。
急にそんなことを言い出す恋人を怒鳴って叱りつけたかったけど、自分が男の子
じゃないことで、ずっと気持ちを伝えられなかったと言っていた言葉を思い出して、
アタシの上で儚げに笑う少女をギュっと抱きしめてあげたい衝動に駆られた。
こっちのほうもいろんな意味で辛い体制だったけど、自由になる両手を伸ばして、
彼女の肩をやさしく掴んだ。
「キスして、瞳?」
「……えっ?」
まっすぐに見つめながら。
一瞬、驚いたような顔をして、でも、すんなりと顔を寄せてくる。
やわらかい唇は、少し生々しい味がしたけど、そこは、目を瞑って我慢した。

250 :
いつもアタシの前に立ちはだかって悪者から守ってくれたやさしい背中を思い出す。
でも、初めてみるこんな弱々しくて寂しそうな顔もすごく綺麗で愛しいと思った。
アタシが知らなかっただけで、瞳は瞳でいろいろ苦しんでいたんだよね?
あのときは、二人の関係が壊れるのがただ怖くて、瞳から目を背けたアタシは
許されないことをした。
償いきれない罪を犯したアタシを彼女は、泣きながら笑って許してくれた。
だからって、彼女の傷が癒えたわけじゃないんだ。
すっかり甘い関係にそんな気になっていたけど…。
また、アタシに裏切られるんじゃないかってビクビクと怯えている瞳の気持ちが
痛いほどに伝わってきて、そんな彼女が可哀想で不憫で…。
いつも甘えてばかりで、ごめんね。怖いのは瞳も同じだったのにね……。
唇を離しながら彼女は、ひどく戸惑ったようにおろおろしている。
そんな彼女が、さっきの狂喜じみた少女とあまりにも掛け離れすぎていて、ちょっと
笑ってしまった。
「ねぇ、瞳、アタシさ、こういうことするの瞳が初めてなんだよ?」
「えっ、うん…」
知っているというような顔を向けてくる。
そりゃそうだとアタシも笑う。
「初めては瞳でさ……最後の相手も瞳だよ…?」
「えっ??」
急に恥ずかしくなって最後のほうは小さくなってしまったけど、驚いたように
大きな目を丸くする彼女になんだかどっと力が抜けてきた。
ねぇ、さっきの強引で意地悪なアナタはどこへ行ってしまったの?
しかも、アタシなんか瞳にプロポーズしているみたいじゃないのよ、いま…。
勢い余って、女の子にプロポーズしちゃったよ…。でも、これも本当のキモチだから。

251 :

「好き…」
「…奈々?」
「もうっ、どうして、瞳は言ってくれないの、いつも言うのにぃ…」
拗ねたように口を尖らせる。
自分がひどく恥ずかしいことをしている自覚があって、体温が一気に上昇しだした。
「大好きよ、奈々…」
ふわりと優しい笑み。彼女の言葉が胸に迫って、そこがジンジンと熱くなる。
ホッとしたのと同時に力が抜けてしまい、途中で止まっていた瞳の指が奥まで
迫ってきた。
「ううっ」と顎を逸らして唸ると、彼女は心配そうにおろおろする。
もう、自分でこんなにしといて、いまさら、一人だけそっちの世界に戻らないでよ。
彼女の不安が少しでも取り除けるならば、なんでもしてあげたいと思った。
「……瞳が欲しいよ?」
茶色い眸の奥を祈るように強く見据える。
喉の奥から出てきたのは自分じゃないみたいな甘ったるい声だった。
でも、まだ分からないのか、きょとんと子供みたいな顔を向ける。
もうっ、とジリジリと焦れながら…。
「瞳が欲しい…。瞳の指が…。ねぇ、このままじゃ辛いよォ〜。ちゃんと最後まで
して欲しい……」
恥かしいところに埋まる彼女の手首を取る。
自分でも予想外の大胆な行動に頭からぶわっと湯気が立ちそうになった。
でも、瞳のほうが先に瞬間沸騰していた。顔も身体も日に焼けた人みたいに
すごい真っ赤っか。肌が白いから、余計に際立ってみえた。

252 :

「……な、な、な、奈々?」
「好きなの、瞳が…。こんな格好だって恥ずかしくてんじゃいそうだけど、
瞳にだけは見せられるの…。ねぇ、瞳にだけなんだよ……?」
ちゃんと分かってる?
こんなこと誰にでもさせるわけじゃない。
アナタだから、ぬほど恥かしいことでも我慢できるんだ。
だから、気持ちを疑うような寂しい目をしないで欲しい…。
「…うん。ごめん。変なこと言ったね…。奈々、お願いだから泣かないで?」
「だって、好きなんだもん。瞳のことこんなに好きだっていますごく実感して……」
「うん。ありがとう…。うれしい…。………でも、アタシのほうが奈々のこと
好きなんだけどね…」
「うんん…。いまは、アタシのほうがだよ…」
濡れた目をゴシゴシと擦って彼女を見上げる。
「いや、違うアタシが…」「違うよ、あたしのほうだよ…」なんて言い争って、
二人でプッと噴出した。なんかおもちゃを取り合いしている子供みたい……。
人が見てたら、かなり恥ずかしいよね、これ。
いままで瞳にばかり言わせてきた。
なんか恥ずかしいとか、いまさらかとか思って、あまり言葉にできなかったけど。
こんなにも喜んでくれるならば、もっといっぱい言ってあげれたらよかったのにと
後悔した。
それに、何度も何度も彼女がくれた言葉の裏には、アナタからも言って欲しいと
いう想いが込められていたような気がして、気づいてあげられなくてひどく申し
訳なく思った。
「痛くない、奈々?」
「だ、だいじょうぶ……」

253 :

恐々と指が奥のほうに入ってくる。
彼女が言うほどの痛みはそれほど感じなかった。
ただ、されている格好が恥ずかしくて、それだけが辛かった。
奥のほうまで到達すると、「はう」と一仕事を終えたみたいにお互い同時に息を
吐いて、おでこをこすり付けあいながらクスクスと笑いあった。
もちろんこれで終わりなわけじゃない。
ぜんぜん足りない。無意識なのか、腿の際どいところを撫でる手つきにざわざわと
肌が粟立った。
強く、彼女の愛撫を欲している。飢えていた。
ジッとしたままの彼女に耐え切れなくなって腰を揺らめかすと、くすっと笑った
声が聞こえた気がした。
指がゆっくりと動いてくる。中を傷つけないように慎重に…。
最初は、そろそろと上下に。だんだん左右にちいさな穴を広げるようにグリグリ
しながら…。
彼女の指に慣らされて、その場所がどんどん柔らかくなっていくのを感じた。
「気持ちいいの、奈々?」
「う…ん…っ。」
「アタシが抜こうとするたびに、腰が追ってきてるの分かる?」
「なっ、言わないでっ!」
唇を噛み締めると、そこをぺロッと舐められてキスされた。
涙を滲ませた目を開けると、彼女が悪戯小僧のように「えへっ」と笑って、もう
一度チュってキスしてくる。
甘やかされているみたいでくすぐったい…。

254 :

「すごいね。火傷しちゃいそうなくらい熱いよ、奈々の中?」
「だから、もうっ、どうしてっ……」
「すごいエッチだね、奈々。可愛いー。すごく可愛いよっ……」
「……っ、もっ、黙ってっ……」
手を伸ばして、恥かしいことばかり言う口を押さえようと思ったけど、先に手首を
取られしまう。どうして、そんな意地の悪いことばかり言うのかと睨むけど、瞳は
もともとこういう子だったと思いなおした。
彼女の言葉に煽られているうちに、身体がドンドン熱くなっていって…。
「…ひゃうっ…」
指が上の壁のほうを突付いて、思わず甘い声を上げてしまう。
彼女が、それに気づいて、そこばかりを集中的に押してきた。
急に怖くなって、繋いだままの手をギュって握った。汗ばんだそれが、きつく握り
返してくる。
初めてこの手に触れたのは、忘れもしない小学校の入学式のときだった。
家を新築にしたせいで幼稚園の友達とは離れ離れになってしまって。
今よりも輪をかけて引っ込み思案だったアタシは、新しい学校に馴染めるかどうか
ひどく不安でしかたがなかった。
でも、友達は向こうからやって来てくれた。しかもとびきり可愛い女の子が。そう、
それが、瞳だった…。
可愛い女の子と手を繋げるのがうれしくて、お母さんのともぜんぜん違う、ちっ
ちゃいけど綺麗で、温かい手をいつまでも繋いでいたかった…。
あれから、成長と共にその手も大きくなっているけど、温もりはあの頃と変わら
ないような気がした。
この手をこれから先もずっと繋いでいけるんだということが、ただただうれしい。

255 :
「……あぁっ、そんなにしたら、ダメっ……」
長い指を求めるように腰が勝手に動いている。
器用に親指でちいさな粒を同時に弄られて、大きく背中が仰け反った。
「もうダメなの? 奈々、イキたいならイってもいいのよ?」
「う……うん。も、苦しいよっ…」
ようやくお赦しを得たように、長い息を吐きだした。
その言葉に合わせるように中を探る瞳の指の動きが早くなって、親指で相変わらず
悪戯しながら、忘れられていた乳首に吸い付かれると、いろんなところからくる刺激
に感覚がバラバラになる。なんか、もう頭がおかしくなりそう…。
細かい波が絶えず襲ってきて、それは、唐突に訪れた。
「あっ! だめっ、いっ、やっ、 あうっ、やあぁんっ!!!」
ざぶんと大波に飲み込まれたみたいに。
頭が真っ白になって、ふわんと身体が宙に浮く。
いままで感じたこともないほどのひどく長い絶頂感。
スタッカートのリズムで心臓が早鐘を打っていた。
これが、「イク」という行為なのかと、あのときビデオでみた光景を漠然と思い
出しながら湿ったシーツに身を預けた。
ふわっと、毛布のように彼女がアタシを包んだ。心で身体で、恋人を感じる…。
アタシの身体は、瞳に出逢うために生まれたんじゃないかって思うくらいこれは、
素敵なことなんだって、遠のく意識のなかで、なぜだか、そんなふうに思ったんだ。

256 :

◇ ◇ ◇ ◇
肌寒さにぶるっと肩が震えた。
どれくらいそうしていたのか分からなかったけれど、汗はすっかり引いていた。
痛いほどきつく抱きしめられて、ようやくその存在を思い出してハッとする。
どちらのなのか、まだ少しだけ乱れている鼓動の音がした。
「だいじょうぶ、奈々?」
「……う、うん」
甘い身体にずっと寄りかかっていたかったけど、寝たふりはすぐに気づかれて、
恐々と瞼を開けた。
恋人の顔が、あまりにも近くにあって、「うわっ」と、思わず顎を仰け反った。
大げさなくらいのその反応に、目に掛かったアタシの前髪を払いながらクスクスと
笑われる。
「……あの、アタシ、寝てた?」
喉もガラガラだった。なんか、最後のほうですごい叫んでいたの覚えてる…。
目を見ぬまま恋人に問いかけると、彼女がちいさく首を振った瞬間、ふわんと
甘い匂いが漂った。
「うんん。ちょっとだけ意識失ってたみたい…。だいじょうぶそうでよかった…。」
ホッとしたような声。
って、うそ、アタシ、気を失っていたの?
「すごく可愛かったよ、奈々?」
「う…。もうっ、そういう感想とか言わなくていいから……」

257 :

不貞腐れたように言いながら、それとは逆に身体はぴたりと寄せ付けた。
しっとりと汗ばむ瞳の身体は、ぜんぜん不快じゃなくて、むしろ、やわらかい肌が
気持ちよかった。
って、ああぁー!!
「ア、アタシもするよ、瞳に……」
自分だけ勝手にイって、なんかすっかり終わった気でいたけど。
瞳になにもしてあげてないことを思い出してくるっと起き上がろうと思ったのに、
なぜだか出来ない。
金縛りにでもあったみたいに動けなかった。
あれ? なにこれ…。
「あ、ウソ…力が抜けちゃった……」
腕に力を込めて起き上がろうとするけど、そのたびに、バタンとシーツに崩れた。
初めての快感に立ち上がることさえ出来ないほど感じてしまったらしい。
腰も抜けてしまっている。これじゃ、瞳を気持ちよくさせるどころではなかった。
「対等でいたい」と自分から言っときながら、さっそく公約も果たせないのかと
情けない自分に涙が出た。
「ごめん、瞳……」
アタシってば、最低。
恋人としては、失格?
「どうして謝ってるの? 奈々は悪いことなんてしてないでしょ…?」
「だって、アタシだけなんて……」
ホントごめん…。
こんなときまで、不甲斐ない自分に悔しくなる。

258 :

「あん、いいのー。触られなくたって感じてたよ? 奈々の可愛い顔みてるだけで、
気持ちよくなってよアタシ…。先にこっちがヤバくなりそうだったくらいよ……。」
だから、そんな顔しなくていいのーと、あやされても、なにも言い返せない。
唇を噛んだままやわらかい胸に顔を埋めた。
彼女が言っていることが分からないわけじゃなかった。確かに、そういうのも
あるのかもしれないと、あのとき、アタシ以上に上気していた彼女の顔を思い
浮かべれば頭では理解できた。
でも、アタシも瞳に気持ちいいことしてあげたかった。
アタシの腕の中で可愛い恋人の感じる姿をみたかった…。
でも、出来ない。動けない。だから悔しい。悲しい。そんなアタシの頬を悪戯に
チョンチョンと突付きながら…。
「奈々って、意外に負けず嫌いよね?」
彼女は、鼻に皺を寄せてくすっと笑う。
うっ…。でも、たしかにそうかも…。
アタシって、結構、負けず嫌い?
「ねぇ、初めてはアタシで、最後もアタシって奈々が言ったのよ? まさか、
二回しかさせてくれないわけじゃないんでしょう?」
「……うっ…」
さっきのことを思い返せば、それだけで顔に火が点きそうだ。

259 :

「アタシたちにはたっぷり時間があるじゃない? アタシは、奈々のいまの気持
ちがすっごくうれしいよ。それだけで、幸せで眠れちゃいそうなほどにね…」
「瞳……」
「それに、今日は、アタシ、いいものもらっちゃったし…?」
「えっ?」
彼女のどこか浮かれるような声に怪訝そうに顔を上げると、人差し指をピンと目の
前に差し出してきた。
赤く染まった指紋に恋人がなにを言いたいのか分かって、カーっと顔を赤らめる。
「ほら、奈々の……初めていただいちゃった…」
「言わないでよっ、瞳のバカッ!!」
トンて胸をつく。
思いがけずやわらかい跳ね返りに、逆にビクッって慌てて手を引っ込めた。
瞳のことは大好きだけど、ちょっとこういうあけっぴろげなところは直して欲しいかも。
でも、ギュって抱きしめらて彼女のふくよかな胸に窒息しそうになりながら、
耳元に甘く吹き込まれた言葉にまた顔がぶわっと熱くなる。
「奈々のことずっとずっと大切にするからね…」
瞳は、なんでもオープンなんじゃなくて、感情をそのまま言葉にできる人なんだ
って改めて思った。
だから、彼女のことが憎めなくて、こんなにも愛しく思えるんだ。

260 :

ベットに並んで寝転びながら、見慣れた天井を見上げた。
ジェットコースターが終点したときのように、ひどい疲労感は残るけど、思い
返せば、すごく気持ちよかったなって、瞳には絶対に言えないことを胸の中で呟いた。
えっちする前までは、この関係が違うものになってしまうのが怖いとか思っていた
けど、頭も身体も瞳でいっぱいになったとき、これ以上ないくらい幸せを感じた。
裸で抱き合って、二人が一つに溶けた喜びは、それまでの時間を惜しむくらい大きい
ものだった。皮膚から、鼓動から、アタシを求めてくる瞳を強く感じれた。
「あーあー、知らなかったな。瞳が、あんなにえっちだったなんて…。だいたい
そんなことどこで覚えたのよ…こんなの想像以上だよ…」
さすがにやりたい放題されちゃったのが悔しくて、しかも初めてなのに失神して
しまうほどに感じさせられたのかと思うとバツが悪くて、悪態をついてみせると、
瞳は大きな目を丸くする。
でも、彼女が引っかかったのは別のところだった。
「エッ! 想像って? もしかして、奈々もアタシとするの想像とかしたりしたの…?」
「――も、って、瞳も…?」
驚いて思わず聞き返すと、少女は、子供みたいにコクンて頷いてみせた。
「うん…。アタシは、すっごい想像したよ。毎晩、奈々が夢に出てくるくらいね。
だから、さっきも現実なのか妄想なのかよく分からなくって、なんかいろいろし
ちゃった…。だって、夢の中の奈々より、すごく可愛くてさ、暴走が止まらなか
ったよ。――いっぱいしちゃって、ごめんね?」
「なっ!! だから、それ、ぜんぜん謝ってないからっ!!」
瞳の想像の中でアタシがどんなことをしていたのか考えると急に恥かしくなって、
大声を張り上げた。もっと怒りたかったけど、アタシも夢のなかでいろいろと想像
しちゃってたから、これで、おあいこだろう。

261 :

彼女は、クスリと笑みながらアタシの肩を抱き寄せる。
胸と胸が重なり合って、くすぐったい。
こういうやさしい感触も女の子同士ならではなんだろうなって、なんか、そん
なふうに思った。
私たちは、薬指に同じリングを嵌めることはできない。
誓いを立てる紙切れなんかで、一生、彼女を縛れない。
将来のことを考えるとひどく不安で、怖いことばかりだけれど…。
瞳を愛するこの気持ちは永遠だと思った…。
ずっと握り締めたままだった左手を取って、くすりゆびに軽くキスをした。
「……予約…」
キラキラと輝くとびきり素敵なダイヤのリングを思い浮かべながら。
細い指にはめ込むシーンを頭の中で想像する。
「えっ? どうしたの奈々?」
「うんん…なんでもない…」
アタシは、首をふるると振って、そのピンク色の唇にチュってキスをした。
「うっ、奈々?」
攻めるときはあんなに大胆なのに、受身になった途端、急にしおらしくなっちゃう
恋人が愛しい。
わーって体中の血液走り出すような感覚を鎮めるのに苦労した。

262 :

「はふーっ。なんか、急に眠くなっちゃった…」
「じゃ、そろそろ寝ようか?」
言いながらつられたように今度は瞳が、あわわとちいさなあくびをする。
確かに今日はちょっと疲れた。テストで一夜漬けだったし、それからは……。
思い返してみても、10年分くらいのハードな一日だったよ。
「うん…。枕ちいさいから、もっとくっついて寝よ?」
「うんっ♪」
ちいさな枕の上で、頬と頬がピタリとくっついた。
なんか瞳って、すごく温かい。心も身体もポカポカだよ?
あんな激しいことをしたあとなのにウソみたいに甘ったるい空気で。
そんな時間をひどく惜しむように、そっと瞼を閉じると、「あぁっ!」と思い出し
たように声を荒げた。
瞳は、枕から頭を外して、大げさに飛び起きる。
「そうだ…。今度はアタシが瞳にするよ。絶対、“仕返し”してやるんだからっ!!」
次は、アタシの番だ。絶対に瞳をめちゃくちゃに気持ちよくさせちゃうんだ。
瞳みたいに技とかないけど、愛情だけはたっぷりあるから大丈夫よ。
拳を握り締めながら、「よしっ」と、鼻を荒げると。
「ちょ、ちょっと待ってよ奈々、それ“仕返し”じゃなくて“お返し”って言ってぇ〜。
それじゃ、アタシが奈々にひどいことしたみたいじゃないのよォ〜〜……」
アタシの拳を手のひらでやさしく包み込むようにしながら、ひどく焦った様子に
クスクスと笑って、またキスをした。

263 :

そういえば、今日、何回この唇にキスをしただろう。
指折り数えていると、羊じゃないのに急に眠気が襲ってきて、ちいさくあくびを
かみした。
抱き枕のようにギュっとされて、すっかり身動きが取れない。
これじゃ、眠れないよと思ったけれど、二人分の子供体温で、疲れきっていた
身体はあっさりと眠りにつかせた。
瞼を開けたら大好きな人が隣にいる幸せを噛み締めながらまどろみの中を泳いだ。
この恋にじゃぶじゃぶと溺れる夢をみる―――。

264 :
なんだか無駄に長くなってしまって、この二人には思い入れがありすぎて、描き
ながら、いつも頭の中がヒートアップしてしまいます。
エロを想像すると止まらなくなるって話もありますがぁ…。(-∀-*)
ずっと瞳視点だったのに、急に奈々視点に変えてみました。単に、受身側からしか
エロが描けないだけだったり…。(;・∀・)
次とかも考えてまして、瞳×奈々の社会人編ー同棲生活の話なんて、どうかなとか。
別カプとかもやってみたいし。エロももっと描きたいし。
では、文章に起こせたらまた遊びにきますね。
最後まで読んでくれた方ありがとうございます。(・A・)!!

265 :
ハルヒさん最高です(づω≦*`)♪〃
私も彼女とこんな事したくなりました!!!!
また次回待ってます(^θ^)ノお疲れさまでした★

266 :
>>ハルヒさん
朝から良いものが読めて最高です。次回作も期待して待ってます。

267 :
てかあの薬指にキスしてるとこ、行為後だったのか?
ただのエロに終始しない心理描写超GJ!!

268 :
首を長くして待ってたかいがありました。
ハルヒさん、超絶GJ!!!!!
次回もめちゃくちゃ楽しみです。
同棲生活、いいですね。
別カプもいいなぁ。ちはると絵里ちんとか・・・。
とにかく、これからも期待してます!

269 :
>ハルヒさん
萌ぬ・・・マジでGJ!

270 :
age

271 :
あの…
前に「頼む!誰か有名人百合小説を」(?)ってスレあったじゃん…?
それの前スレ知らないですか?

272 :
>ハルヒさん
神は本当にいたんですね。
とても丁寧に書かれていて
最後まで目が離せませんでした。GJ!

273 :
何度も読み返したくなるような作品ばかりで感動しました!
上手い!上手すぎる!

274 :
流れ断ち切ってすみません。お邪魔します、はじめまして。
『少女せくと』の鳩子、紀、秋で小説を書いたんですけど、
うpしてもいいですか?(非エロ)
(((;゚д゚)他の皆様には足元にも及びませんが(ガクブル

275 :
ワクワク

276 :
超wktk

277 :
  一
 金曜日の物憂い午後に、ある女の子を見かけた。私はその子を以前も見たことがあるような気がしたのに、まるでデジャヴみたいにいつみたのか思い出せなかった。
「あっ、鳩子先輩」
女の子が言った。そのとたん、私は彼女が誰なのか思い出して、どうしてすぐにわからなかったのだろうと不思議に思った。見たことがあるどころではなくて、昨日も一昨日も会っているのに。
「こんにちわ。これから帰るところ? あなたは秋ちゃん? 紀ちゃん?」
私には二人の区別がつかないので、最近はまず名前を尋ねることにしている。わかった風なふりをしても、間違えるだけで、当たった試しがない。だけどこのとき不思議なことに、私は、彼女が二人のどちらでもないような気がした。
「秋です」彼女は短く答えた。
「一人なんて珍しいね。紀ちゃんは?」
「トイレですよ。すぐにきます」
秋ちゃんが言ったとき、紀ちゃんがやってきた。「あっ、鳩子先輩」と同じようなことを言って、秋ちゃんの隣に並んだ。
「先輩、これから帰るところですか? 一緒に行きましょうよ」
「え? いいけど、寮の向き逆じゃなかったっけ?」
「ちょっと付き合ってほしいところがあるんです」
そう言うと二人は、私の両腕それぞれに抱きついた。

278 :
  二
「いいですか、先輩。これはお仕置きなんですからね」
私の右腕をつかんでいる紀ちゃん――秋ちゃんかもしれない。
さっきコンビニに立ち寄った時に、どちらかわからなくなって
しまった――に話しかけた。
「え? 私、何か悪い事したかな?」
私が頓狂な声を上げると、紀ちゃんと秋ちゃんは顔をつき合わ
せて、眼と眼でお喋りを始めた。会話はすぐに終わったけれど、
この間に、私達がいつも行う会話の何倍もの言葉が交わされた
ような気がした。
「先輩、私達をよく見ていてくださいね」
左側から声がして、両腕の重みが急になくなった。二人は私の
前に立つと、トランプの束をシャッフルするみたいに立ってい
る位置を換えていった。紀ちゃんが秋ちゃんになって、秋ちゃ
んが紀チャンになって、紀ちゃんが、秋ちゃんが、紀チャンに
秋ちゃんに……ああ、わからないよ。ちょうど私が混乱した頃
に二人はシャッフルをやめて、
「さぁ、どっちがどっちでしょう?」
とどちらかが言った。もしかすると二人同時に喋ったのかもし
れない。それがあまりにも重なり合っているものだから、ひと
つの声に聞こえただけかもしれない。私はさっき右側にいたの
が紀ちゃんだったと信じて
「右側が秋ちゃんで、左側が紀ちゃん」と言った。
「さすが鳩子先輩」
「絶対間違えるんですよね」
「ごめん」

279 :
私は情けなくなった。彼女達と知り合ってから一年くらいたつ
のに、全然違いがわからないのだ。世界一難しい間違い探しは、
一年くらいで解ける代物ではないらしい。
 私は二人を見ていると、しばしば昔読んだ小説を思い出して
しまう。それは双子の女の子の話だった。女の子達は背丈も服
装も髪の長さも同じで、いつも一緒にすごしていた。何かを買
うときは必ず二つずつ買うし、プレゼントも同じものばかり。
完全にそっくりだから化粧をするときは、鏡を使わずにもう一
人と向かい合って一緒にする。誰の本だったっけ。レイ=ブラ
ッドベリだったかな。サン=テグジュペリかも。
「鳩子先輩、そろそろ区別がつけられてもいいと思いますよ」
秋ちゃんが言った。私は小さくなって、ごめんと繰り返した。
「どうしてお仕置きされるか、わかりましたか?」
私は驚いて顔を上げた。二人も私を見ている。今度の目のお喋
りは、私にもわかった。私達、これからあなたに悪戯するわ。
「そのことなの?」
「そうですよ」紀ちゃんは言った。「それで私達考えたんです
けど……」
「一緒にいる時間が少ないと思うんですよね」
秋ちゃんが続ける。悪戯好きの少女達は、不思議の国のアリス
のキャシャ猫のように笑っていた。
「え?」
私の目は丸くなる一方だ。
「学校でもあんまり会えないじゃないですか。塔も違うし」
学校には校舎が三つあって、それぞれ北塔、中塔、南塔と呼ば
れている。私のクラスは南塔にあるけど、二人のクラスは北塔
だから、普通に過ごしている分にはめったに会わない。二人は

280 :
時々会いに来るけど、私は面映くて行けない。
「だから今日から三日間、私達の部屋に泊まってください」
今のはどちらが言ったのだろう。ずいぶん遠くのほうから聞こ
えた気がした。紀ちゃんかな? 秋ちゃんかな? もうどっち
が喋っているのかわからない。いいや、何を話しているのかも
わからない。どうして私は囚人みたいに両腕をつかまれている
のだろう。私はどこへ連れて行かれるのだろう。今日から……
なんだって?
「ええっ! そんな、いきなり!」
私の狼狽は大変なものだった。地震が起こってもこれほどうろ
たえないだろう。いや、まさに今、私の心にマグニチュード7.0
の地震が観測されたのだ。テレビのレポーターの声が聞こえる。
皆さん、見てください、ビルが倒れています。ここはかつてお
調子者という会社だったようですが、面影を感じさせません。
こちらの冷静という建物にもひびが入っています。お分かりに
なりますか、皆さん!この地区の復旧には時間がかかることで
しょう。佃島放送局ではボランティアを募集していますので、
皆さんもぜひ……
「あら? 嫌なんですか?」
秋ちゃんはわざとのように落ち着いた口ぶりだった。
「そうじゃないけど……」
もちろん行きたいんだけど突然だし着替えもないしでも泊まっ
てくれって言ってるんだし土日は予定もないしだけど今の下着
は安物だし……。ああ、ボランティアの人! 冷静という建物
の復旧を最優先にお願いします!
「嫌なんですか?」
今度は紀ちゃんが言う。キャシャ猫が二匹。捕らえられたネズ

281 :
ミが一匹。キャシャ猫はネズミに自分達の望むことを言わせた
がっている。だけど実は、誰よりもネズミ自身がそのことを言
いたいのだ。
「とっ……」私は声を振り絞る。乾いた唇は剥がれるように開
かれた。「泊めてください」
再びレポーターの声が聞こえた。ああ、テレビの前の皆さん、
見えますか! かろうじてそびえていた冷静という建物が、倒
れようとしています。私達のカメラは衝撃的な瞬間を捕らえる
ことになるかもしれません!(ここでCM)
「ありがとう、鳩子先輩」
どちらかが言った。いや、きっと二人同時に言ったんだ。私は
建物の崩れていく音を聞いた。ばらばらとコンクリートが落ち
ていく。その音はどこか心地よい。しだいに地震現場が遠のい
ていって、私の耳には、心臓の重低音だけが残った。
 二匹の猫はネズミを巣へ持ち帰っていく。たぶん二匹で仲良
く分け合うのだろう。

282 :
あとがき
ご拝読ありがとうございました。お眼汚し失礼します。
鳩子ちゃんのテンションがおかしいorz
なんだか百合っぽさが足りない感じがしますが、お許しください。

283 :
ホスト部の双子(♂)を思い出した
アニメオリジナル話でチェシャ猫役やってたからか
ってなことは百合にはかんけーないからどーでもいいね
感想は双子に翻弄されて分けわかんなくなっちゃってる鳩子キャワってことで

284 :
なんかいいね。改めてこの双子は中々掘り下げがいがありそうだな
独特の描写も良い、というか続きを是非ともお頼みしたい所

285 :
元ネタを読んだことがないのが悔やまれるな・・・
でも面白かったです!

286 :
ご返信いただきありがとうございますm(_ _)m
『少女セクト』の女の子達はとても読みきりだけでは満足できないので、
創造欲を書き立てられます。
三巻でも四巻でも出してくれよよよぉぉ……(血涙
えーと……、続編は執筆中です。というか今回のは
前編なのでまだ途中だったり。
後半は明日か明後日にはうpできそうです。
少女セクトをお持ちでない方のために、一応基本設定をば。
・佃島 鳩子(つくだじま はとこ)
今回の主人公。ドラムリスト。
人懐っこい性格で行き過ぎた愛想を振りまいているが、
ちやほやされるのは苦手なのでファンの対応には苦慮している模様。
・笠置 秋(かさぎ あき)
・笠置 紀(かさぎ のり)
分数の割り算よりも先にセックスを覚えて以来、
片時も離れずに暮らしている双子(一卵性)
鳩子のファンで後輩。

287 :
イイヨー(・∀・)GJ!
えれーおもしろかったです
続きwktk

288 :
後編がなんとか書けたのでうpさせてもらいます。
少々やらしいシーンがあります。苦手な方はごめんなさい。
それと前回の発言の修正を少し。
ドラムリスト→ドラムニスト

289 :

  三
「ここまでの放送は笠置株式会社の提供でお送りいたしました――…」
私の口からレポーターの声がもれた。ようやく番組終了だ。三日ぶりに帰ってき
た私の部屋。いつもはがらくた呼ばわりしているエレキドラムが女神に見えた。
ステレオ、ウーファー、音源のコードがジャングルの蔦みたいに部屋中を占領し
ている。せんべい蒲団にもぐりこんで、夢を見ることもなく眠り込んだ。
 眼が覚めても、寝入ったはついさっきのような気がして、カーテンの閉められ
ていない窓の向こうがかすかに青味を帯びているのを見て驚いた。眼鏡をとろう
と思って枕元に手を伸ばしたけれど、私の右手は何も捕まえられなくて、代わり
に時計を顔まで寄せた時、眼鏡をかけたまま寝ていたことに気づいた。こんなこ
とをしたのは初めてだ。体を持ち上げると、背骨がぽきぽき鳴った。やけに頭が
ぼんやりする。時間は五時前だった。昨日は部活をせずに帰ってきたから、眠っ
たのは六時くらいだと思う。眠りすぎた後の不快感に苛まれている。私は蒲団の
上に座ったまま、何かを考えることも出来ずに、ぼおっと、薄暗い部屋の中を見
ていた。蒲団、音楽雑誌、コード、ペットボトル……。再び寝る気にもなれなく
て、私はシャワーを浴びようと思って立ち上がった。なんだか、汗臭い。しわく
ちゃになってしまったワイシャツを洗濯機の中へ放り込んで、浴槽の中に座った。
シャワーから、少し熱めの湯が出ている。普段は面倒くさいからお湯をためない
のだけれど、今日は湯船に浸かっていたかった。水嵩が増すにつれて、私の意識
も冴えていく。湯気に向かって細長く息を吐いて、眼下の水で顔を洗って、水面
が胸元まできたとき水を止めた。
 私はあらためて自分の体を見てみた。ところどころにさくらんぼくらいの大き
さの赤い斑点がついている。ここには紀ちゃんや秋ちゃんの唇がふれていたのだ。
何の気なしに指でなでてみたら、すごく恥かしくなってしまった。今の顔だけは、
誰にも見られたくない。三日分の夜が幻のように思い浮かんでしまう。だけど少
しだけ気がかりなことがあった。

290 :
  三日目の夜夜中のこと、私は体を伝う熱に目を覚ました。ベッドの中では、
 二人が私を挟み込むようにして眠っている。彼女達の一人が私の胸に顔をうず
 めていた。
 「起きちゃった」
 彼女は独り言みたいにつぶやいて私の髪をなでて、虚ろな瞳で私を見た。一糸
 もまとっていない素肌が、シーツの中で輝いている。おそらく私の瞳も同じよ
 うにがらんどうの妖しい光に満ちていた。三人の女達はそれぞれの体が生み出
 す麻薬に酔っていたから、寝ても覚めても夢の中にいたのだ。
 「紀ちゃん?」
 私は何か予感みたいなものがして、彼女が秋ちゃんではないとわかった。
 「うん。先輩、私達の区別がつくようになりましたか?」
 紀ちゃんは昼間よりもずっとゆるやかなものいいで、この声があればいつまで
 も眠っていられるような気がした。
 「どうかな。まだよくわからない」
 私の声もまどろんでいる。紀ちゃんは私の唇に触れるだけのキスをして、
 「先輩、綺麗ですよ」
 と言った。もう一度キスされた。今度のは、いやらしいやつ。小さな右手が背
 中から腰、太腿へ動いていく。
 「紀ちゃん、だめ」
 私は彼女の手の甲に、私の手の平を乗せた。
 「なんで?」
 「だって、秋ちゃんが起きちゃうでしょう」
 「起きませんよ。私達、生まれる前からずっと一緒なんですよ。お互いのこと
 は何でも知ってるんです。秋も私も、眠りは深いんですよ」
 紀ちゃんの指が私の骨盤をなぞるようにして近づいてくる。少し体が震えた。
 「だけどもし起きたら、後でけんかするんじゃないの?」
 私の声に彼女は驚いたような顔をして、何も言わずに眼を細めた。しばらくす
 ると紀ちゃんは、手を裏返して私の手を彼女の胸元に寄せて、両手を包むよう
 に重ねた。
 「怒らせればいいですよ」紀ちゃんは笑ってみせた。瞳は私を見ている。月明

291 :
 かりが彼女の栗色の髪を通り抜けて、笑窪の影をさらに暗くした。「私、先輩
 を独り占めしてみたいな」
 紀ちゃんは私に抱きついて、肩の端にキスをすると、唇で鎖骨を探り当てて、
 そのまま鎖骨の上で舌を這わせながら、私の喉元を喰らうようにしてキスマー
 クをつけた。
 「んっ……。だめだってば」
 「そんなに起こしたくないなら、声を出すのを我慢すればいいじゃないですか」
 彼女の唇が私の耳に触れて、軽く噛んだ。
 「あっ……んん……」
 犬歯で耳たぶを甘噛みされて、耳の裏の少しくぼんだところを舌先が伝っていく。
 「はぁっ…!」
 私は口に手を当てようとしたけれど、いつの間にか両手とも彼女に抑えられて
 いた。
 「はっ……離してよ。声ぇ……んっ……も、漏れちゃうじゃない」
 私が喋るいとまも与えてくれない。
 「もうギブアップですか、先輩。そんなんじゃ、すぐに秋が起きちゃいますよ」
 「離してぇー……むぐっ」
 私の口に紀ちゃんの唇が押し付けられて舌が入ってきた。私の歯茎をまさぐっ
 てる。
  私は彼女のキスに応えるのに夢中で、心の反対側で全く別の感情が芽生えて
 いることに気がつかなかった。その感情は、私が二人といるときに芽生えたこ
 とのないもので、どちらかといえば、お引取り願いたいものであった。おそら
 く、このような時分には最も不適切なものであると思われる。彼女の唇が離れ
 る頃、これは私にも自覚できるほど大きなものとなっていたけれど、なぜその
 ように感じるのかわからなくて、私は平静な風を装いながら気にしないように
 努めた。
 「鳩子先輩。まだ秋のこと気にしてるんですか? 声ぇ、出してもいんですよ」
 紀ちゃんは私の両手を離して胸をつかんだ。指先で乳首をいじくりながらも、
 口を使うのを忘れない。右手は背中に回って、背骨をピアノの鍵盤みたいにた
 たいている。私の琴線に触れる仕草は、ことさらやさしい。それなのにあの感

292 :
 情は、大きくなっていくばかりなのだ。
 「紀ちゃん、やめて。やだっ……やなの」
 「先輩、ずるいですよ。もうそんなに色っぽい声してるのに、私に聞かせてく
 れないなんて」
 「ちがっ……違うの。ちょっと……」
 ろれつが回らない。今言わないといけないのに。私の心の中はあの感情で支配
 されてしまった。海のそこみたいに暗くところへ落ちていく。秋ちゃん! 秋
 ちゃん! そんな風に叫びたくなる。不安で仕方がない。体がすくんで、目を
 強く閉じた。少し震えてる。心臓の音やけに大きく聞こえているけれど、それ
 はこの感情の爆発する音みたいだ。
 「先輩?」
 紀ちゃんは私の異変に気づいたらしかった。
 「先輩。震えてるの? 泣いてるの?」
 紀ちゃんは心配そうな顔をしている。私は震えを押さえようとして頭を抱え込
 んだけれど、全然どうにもならない。
 「私、そんなにひどいこと言った?」
 私には返事をする余力さえなくなっていた。だけど混乱している私とは別の、
 いつも以上に冷静な私がいて、それは紀ちゃんがうろたえているのを何とかし
 てあげたいと思っているのだけれど、傍観者のように何もしない。
  突然、私の体は引き寄せられた。紀ちゃんが私を抱きしめている。
 「ごめんね。ごめんなさい。私、先輩が嫌がってるのに……怖がってるのに」
  紀ちゃんの胸からトコトコと小さな音がする。ぬくもりのある音だった。
 大丈夫と、私自身に言い聞かせた。大丈夫、目の前にいるのは紀ちゃんだから。
 怖がらなくてもなくても大丈夫だから。私はだんだん落ち着いてきた。こうや
 って抱きしめられていると彼女の血液が私の中にも流れ込んでくるようで、そ
 れがこの上もなく心地よくて、不安や恐怖がどこかへ吹き飛んでしまった。
 「紀ちゃん」私は言った。まだ息を整えないとうまく話せないけれど。「ごめ
 ん……もう、大丈夫」
 「先輩……」
 彼女の腕が緩んでいくのがわかって、私は咄嗟にしがみついた。

293 :
 「先輩?」
 「もうちょっと抱きしめてて」
 「うん」
 再び紀ちゃんの音が聞こえてきた。
 「ごめんね。心配させちゃった。なんだか、訳わからなくなって……」
 「気にしないで」紀ちゃんは言った。「誤るのは私だから。私、気づいてたの
 に。先輩が怖がってるの」
 今度は紀ちゃんのほうが泣き出してしまいそうだった。それどころか私には、
 涙を流さずに泣いているように見えた。
 「ううん。そうじゃないよ。私がこんな風になっちゃったから、そんな風に思
 えるだけだって。紀ちゃんは悪くないの」
 私は紀ちゃんの髪をなでて、ほほえんでみせた。
 「先輩、ごめんなさい」
 「謝らないで、もういいの。寝よう、疲れちゃった」
 「……うん」
 紀ちゃんはまだ何か言いたげだったけれど、私はこれ以上彼女に自分を責めて
 ほしくなかった。普段は大人ぶっているけれど、体はこんなに小さいのだ。私
 達の心はまだざわついていたけれど、瞳を閉じると間もなく眠りに落ちた。 

 なんであの時、あんなに怖かったんだろう。これまで私は、紀ちゃんと秋ちゃ
んに嬌声を上げさせられはしたけれど、一度として身のすくむ思いをしたことは
なかった。初めて触られたときでさえ、私は安堵の中にいたのだ。だけどあの時
は全然そうではなかった。私はこみ上げてくる恐怖を、どうしようもなく持てあ
まして、何にも出来なくなってしまっていた。
 少し気になることがある。私の目が覚めた時、目の前にいる女の子が秋ちゃん
でないような気がして紀ちゃんだと思ったけれど、こうやって落ち着いて考えて
みると、紀ちゃんでもなかったような気がしてくる。私の全然知らない人だった
ようにさえ思えてしまう。
(秋ちゃん! 秋ちゃん!)

294 :
あの時の心中の叫び声を思い返してみた。私は混乱していたけれど、あれは秋ち
ゃんを呼んでいたのだ。私の初めて付き合った人が秋ちゃんと紀ちゃんで、初体
験も秋ちゃんと紀ちゃんなのだ。そういえば三人でしか、したことがなかった。
私は二人が居てくれるから安心できるのかもしれない。あの時は紀ちゃんだけだ
ったから、あんな風に錯乱してしまったんだ。私にとっては、紀ちゃんと秋ちゃ
んが揃って、ようやく私の恋人になるのかもしれない。
「ごめんね、紀ちゃん。私を独り占めしてもらうには、私がもうちょっと強くな
らなきゃだめみたい」
  四
 風呂から出たら七時くらいになっていた。両手だけでなくて、足の指までおば
あちゃんみたいによぼよぼになっている。急がないといけない。私は鞄の中から、
小さな弁当箱を二つ取り出した。これは紀ちゃんと秋ちゃんの弁当箱だ。
「先輩、お弁当交換しましょうよ」
二人の口調を真似ながら一人でつぶやいた。土曜日か日曜日の朝にそんな話をし
たのだ。月曜日は時間がないということで、火曜日の昼休みに中庭に集まること
になった。すると二人は、食べる量が違うからといって弁当箱を貸してくれたの
である。二人の弁当箱は私の半分くらいしかなくて、私が大食いに思えて赤面し
た。彼女達のところへ置いてきた私の弁当箱は、今頃二人の女の子にご馳走を詰
め込まれていることだろう。
「さて、何をつくろうかな?」
私はフライパンを取り出した。
  五
「やっと来た」
「遅刻ですよ」
中庭の木陰のベンチに座って、紀ちゃんと秋ちゃんは待っていた。
「ごめん、ごめん。授業が長引いちゃって」

295 :
私も彼女達の隣に腰を下ろそうとしたら、
「あっ、待って。先輩は真ん中」
と言われて、挟みうちにされてしまった。
「はい、紀ちゃんの分、こっちは秋ちゃんの」
私は鞄から弁当を取り出して言った。
「先輩、逆です」
「え?」
「私は秋で、あっちが紀です」
「あれ?」
二人とも呆れた顔をしている。私はごまかすように笑った。
「あーあ。やっぱりカチューシャに名前書いとかないとわかんないんですかねえ」
「……ごめん」
三日間の特訓は意味がなかったらしいよ。私は情けなく思いながらも、彼女達の
頭上のカチューシャを見て、そこに『あき』とか『のり』などと書かれている様
子を想像して、笑い出してしまった。
「どうしたんですか?」
秋ちゃんが聞いてきた。
「ううん……なんでもない」
「へんなの。はい、先輩のお弁当」
秋ちゃんが弁当を渡してくれた。
「ありがと。じゃ、食べようか」
私は包みを解いてふたを開けた。使い慣れた弁当箱だけど、中身は全然違ってい
た。食材が色合いよく詰め込まれていて一枚の絵画みたいだった。一つ一つの食
べ物が小さく整えられているから点描のように見える。これらの細かい食べ物は、
彼女達の弁当箱の中だと程よい大きさなのだろう。根が無精の私には到底真似出
来そうにないほど緻密で、女の子らしい可愛さにあふれていた。
 特におにぎりの形が……
「ねえ、これってまさか鳩?」
私は笑いながら尋ねた。
「うん。可愛いでしょう」

296 :
「上手に作るね」
「クッキーの型に押し込んだんですよ」
二人は得意げだった。
「私弁当、変じゃない?」
「うん。おいしいですよ。やっぱり鳩子先輩のほうが料理上手じゃないですか」
私は嬉しかったけれど、あんな芸術作品みたいな弁当を食べた後だと、素直にな
れない。
「そんなことないよ。秋ちゃんと紀ちゃんのほうが上手だって」
「私今度、先輩に料理教えてほしいなぁー」
紀ちゃんが言った。
「私もぉー。先輩の部屋で教えてほしい」
あれ? 私、またはめられてる?
「いつかお伺いしますから」
不適な微笑をうかべながら、二人のどちらかが言った。たぶん二人とも言ったん
だ。ああ、こんな風に思えるのも、私が彼女達をひとつのものとして考えたがっ
ているからかもしれない。私は秋ちゃんだけでも紀ちゃんだけでもなくて、二人
一緒が好きなんだ。不意に私は双子の少女達の小説を思い出した。お年頃になっ
た彼女達は恋人を探し始める。だけどどんなに格好いい男の人に声をかけられて
も断ってしまう。その人は双子でないからだ。二人は何もかも同じものを持って
いるから、恋人も同じ物がよかったのだ。一人っ子の私が二人の恋人でいられる
のは、私が二人分の役割をしているからではなくて、彼女達が一人分の役割をし
ているからなのだ。私は左右に腕を広げて秋ちゃんと紀ちゃんを私のほうへ抱き
寄せた。
「先輩?」「いきなりどうしたんですか?」
私からこういうことをするのは滅多にない。普段、悪ふざけで誰彼ともなくスキ
ンシップをしているから、その裏返しで、好きな人に接するのが恥かしくて、面
映くて、真剣になれないのだ。だけど今は、二人の髪キスしてやった。
「好き。二人ともが、大好き」
彼女達の髪はほんのりと甘い香りがした。

297 :
あとがき。
最後の部分が書き込めたかどうか少々不安です。。。
ちょっと今、回線の状態が悪いので、重複書き込みとかしている
かも知れません。そんなふうになってたらごめんなさい。
なんだか書くのにやたらと時間がかかってしまった。三、四回書き直したし。
ちなみに鳩子ちゃんの気にしている小説は本当にあります。
レイ=ブラッドベリの『バビロン行きの夜行列車』という短編集の
中に書かれていたはず。(うろ覚え)
別段百合というわけでもありませんが、秋&紀に似ているような気がして。

298 :
無事に書き込めてる。よかった(・∀・)

299 :
素晴らしい

300 :
お久しぶりです。
瞳×奈々を投下したいと思います。

301 :

ぶわっと風が吹いて、桜の花びらが紙ふぶきみたいに舞い散った。
公園のジョギングコースはピンク色の絨毯を敷き詰めたみたいになっている。
見上げれば、雲ひとつ無い青空。おまけに今日は大安吉日。これって、絶好の
引越し日和…?
一年の始まりは一月だけど、学生生活が長かったせいか、どうも四月のイメージが
強かった。今日から始まる新生活を温かい日で迎えられて本当によかった。
脚立から飛び降りると、取り付けたばかりのカーテンをしげしげと眺める。
レモンイエローは、最近、風水に凝っている恋人の強い要望で、さすがに買うとき
はどうなのかなって思ったけど…部屋がパッと明るくなるし、結構いいかもしれない。
すっごい派手だけどね…。
金運が上がるんでも、幸運を呼ぶんでもなんでもいいんだけど、あまり、それに
拘りすぎて部屋の色彩がめちゃくちゃになるのは困るからそこそこに妥協してもらった。
そんなに奇抜なリビングにならずにすんでホッとする。
両手をぐいんと伸ばして思い切り背筋を伸ばした。あいたたた…。
肩に人が乗っかっているみたいに重かった。
これぐらいで筋肉痛だなんて、最近ちょっと運動不足なのかもしれない。
……ていうか、もう年…?

302 :
「あのー、すみません、このソファは、どちらに置きますか…?」
休む暇もなく追い立てられる。
「はいはーい」と陽気に返事しながら、スリッパを履いてパタパタとコアラマーク
の帽子を被ったおじさんの元まで足早に急いだ。
引越し屋さんに、電気屋さん、ガス会社の人に、新聞の勧誘が3件…。
朝から続いたピンポンラッシュもどうにか治まったようだ。
次々に運ばれてくる家具や家電製品をパズルのように埋め込んでいく作業もどう
にか終え、がらんとしていたはずの2LDKは、あっという間に物で埋め尽くさ
れていった。
からっぽだった空間が、着実に自分たちの家に生まれ変わろうとしているのを感
じられるのが、堪らなくうれしかった。
近くの小学校から間延びしたチャイムの音が鳴る。釣られるように壁掛けの時計を
みると、ずいぶんと経っていたことに気づいた。
「ええっ、もうこんな時間…?! うわっ大変…。ちょ、ちょっと、ななっ?
あれ、ななー、どこォ〜?」
夢中になっていたからぜんぜん気づかなかった。
さっきまでそこらへんで雑巾を掛けていたはずの恋人の名を呼ぶと、自室の部屋
にあてがわれた玄関脇の扉のほうから声がした。

303 :
「なーにー、どうしたの、瞳ぃ?」
カチャリと言う音とともに、出てきた鼻の頭は煤だらけ。なんか悪戯小僧みたいよ。
恋人の可愛い顔にアタシは、クスリと苦笑を洩らした。
汗と汚れで、薄くしていたお化粧はすっかり剥がれてしまっている。メイクして
ないと、ホント幼くなっちゃうのよね…?
童顔なことを気にしている恋人の耳に入ったら怒られそうなことをこっそりと胸
の中で呟きながら、アタシは時計のほうを指差した。
「ねぇ、もう二時半だよ、そろそろお昼にしない?」
「……そういえば忘れてた。――わっ、ホントだ。もう、こんな時間?!」
さっきのアタシと同じ科白を吐くと、彼女も、時計を見て驚いた顔をする。
「朝からバタバタと忙しかったもんねぇ……」
しょうがないよ…。
追い立てられるように次から次へとやることでいっぱいだった。
業者の人たちは、自分たちの仕事を終えると、そそくさと帰っていった。
残されたコアラのマーク入りのダンボールが山積みになっている。仕事も山積み。
リビングはどうにか終えたけど、寝室はまだ手付かずだ。
あぁー、これを今日中に片付けなくちゃ寝るところもないよ…。

304 :
「―――ところで、あの二人は?」
奈々の声に、アタシは、親指をくいっと下に向ける仕草をする。
「ひと段落ついたから一服してくるって…」
「お腹空かしてるだろうね……早く、呼ばなくちゃ…」
慌てたようにアタシ横を通り過ぎると、ほんわりと汗と埃の匂いがした。
無印で一緒に買った色違いのエプロンも埃まみれになっている。
奈々の背中を見送りながら、ふと、さっき冷蔵庫を配達してくれたお兄さんに言わ
れた言葉を思い出して、ひとりほくそ笑んだ。
『あれ? 今日は、旦那さんはお仕事なんですか…?』
アタシが、てきぱきと仕切っていたからそう思えたのだろう…。
どうみても新婚さんの住まいなのにって…。
ま、実際、そうなんだから正解でいいんだけどね。

305 :

『いいえー、いまそこで雑巾絞ってます。ちなみに旦那じゃなくて奥さんなん
ですよー』
アタシはアタシで、喉まで出掛かったそんな言葉をグッて飲み込むのに苦労したり?
だって、みんなに自慢したいくらい可愛い奥さんなんだもん。拡声器持って、
ご近所中に吹聴して周りたいくらいよ。
髪はボサボサ。顔も真っ黒の煤だらけ、なのに可愛いって、どういうことなの?
ガラガラと網戸を開けると、取り付けたばかりの明るいカーテンが風に凪いて
ふわんと膨らんだ。
築十年の味わい深いレンガ造りの五階建てマンションの外観はだいぶくたびれている。
でも、中はリフォーム済みだからわりと小綺麗で。全部ホワイトで統一された壁紙の
おかげで部屋の中は明るかった。
十二畳のリビングルームのほかに六畳のフローリングの部屋が二つある。三畳ほどの
キッチンは対面式になっていて、元々家族向けのマンションなのか全体的に広々と
した造りになっていた。

306 :
奈々の後姿を追ってテラスに出ると鬱蒼と緑が生い茂った大きな公園が目に入る。
森林公園は最寄の駅に繋がっているから、いつも、いろんな人で溢れ返っていた。
ゆったりと仔犬の散歩をしているおじいちゃん。その横をピチピチのパンツを穿き
ながらジョギングする大学生くらいの男の子。現役はとっくに引退したので、
残念ながらアタシたちにはもう不必要なものだけど、全て木で造られたアスレチ
ックで遊ぶ子供たちのはしゃぎ声も大きく響いた。
噴水のある大きな広場では、ヨガをやっている人がわらわらと集まっている。
日曜日の午後の平和な風景。ここからボーと眺めているだけで不思議と心が和らいだ。
二人でこの物件を見に来た日は、ちょうど雨が降っていて公園の中はカラフルな
傘でいっぱいだった。
しっとりと漂う土の匂い。さらさらと風に木々が凪ぎいたやさしい音色。
都心から少し離れたアタシたちが生まれ育った街にどこか似ていると思った。
便利ではあるけど、高層ビルやコンクリートだらけに囲まれた生活にうんざりして
いるところだったからせめて住むところくらいは、四季を感じれる場所にしたかった。

307 :

隣にいた奈々がアタシの肩をポンポンと叩いて、「瞳、ほら虹だよっ」って、
はしゃいだ声を上げる。その指を追って視線を向けると、白い背景に掛かる七色
の橋にすっかり目を奪われた。
あれをみたとき、絶対にここに住みたいって思ったんだ。
ちょうどいい物件がなくて、なかなか決められずにいたけど、なんだか、運命の
恋人を見つけたときみたいになんかビビビときた。直感で二人の明るい未来が
見えた気がした。
気持ちいい春の風が頬を撫でつける。
わりと広めのバルコニー。ここに、ハーブや、ちょっとした野菜を育てられたら
いいかも…と、どんどん夢が広がる。
「おーーい、上がってきて、お昼にしようよー!」
奈々が、道路に向かって手を振っている。
隣に立って下を覗き込むと、酒屋のロゴが描かれたよれよれの白タオルをマフラー
のように首に巻き付けながらトラックの前で、一服している二人の姿がみえた。
奈々の声に、二人は、「おー」と低い声を上げながら野太い手を振り返した。
隅に避けてあったガラステーブルを取り出して、早起きして作ったお弁当を広げた。
奈々は、クーラーボックスから汗を掻いたウーロン茶を四本取り出している。

308 :

「あっ、ね、お父さんたちビールのほうがよかったかな? コンビニで買って来る?」
「あ、いい、いいって。どうせ帰りは車なんだし…」
「そっか、そだね…。うわっ、おいしそー、いただきまーす!」
「って、コラっ、もう、みんな揃ってからよっ!」
そんな注意もお構いなしに、黄色い玉子焼きを一口で胃の中に収めてしまう。
「おいしー」と感激されて、まんざらでもない笑顔を向けた。そりゃ、アナタの
好みに合わせて甘めにしたんだもの当たり前よって。
「―――あ、そうだ。ねえ、瞳、夕ご飯はどうするの?」
「んも、なによー、今からやっとお昼だっていうのに、奈々ったら、もう夕飯の心配
なの…?」
食べることが趣味でもある相変わらずの恋人の反応に苦笑しながら、紙皿と割り箸
をてきぱきと並べた。
シャケと梅のおにぎりに、おかずは、からあげ、グリーンアスパラのベーコン巻き、
半熟のゆでたまご。奈々の大好物の甘い卵焼きに、パンプキンサラダのヨーグルト掛け。
恋人の好きなものをとりあえずがんばって作ってみたんだけど、黒いクリクリの瞳を
思い切り輝かせているのをみて、早起きして作った甲斐があったとうれしくなっちゃう。
ふわんとおいしそうな香りに釣られて、グ〜とちいさくお腹がなった。
奈々は、アタシの声に焦ったように唇を尖らせながら…。

309 :

「なっ、違うよー! だって、冷蔵庫いま届いたばっかだし中空っぽじゃない…。
ねぇ、どうする? どこか食べに行こうか? それとも、一緒に買い物してくる?
でも、アタシ、なんか疲れちゃったな…。もう動くのだるいよう……そうだ、じゃ、
ピザでいいよね。……あぁ、でも、まだ宅配の番号なんて分からないよねぇ〜…」
コロコロと変わる表情を見ているだけでもなんか楽しい。
顎に手をあてて、真剣に晩御飯をどうしよう悩んでいる姿に思わず噴出しそうになった。
普段、仕事に出るときは、スーツなんて着ちゃうと、年相応に見えるのになんで
家だと、こうなっちゃうのかな…? 
高校生みたいな口調に苦笑しながら、懐かしさに目尻を下げた。
出逢いは小学校の入学式だけど、付き合い始めたのは高校生になってからだった。
二人とも女の子同士だったけど、アタシたちは、ちゃんと恋をしてた―――。
でも、今思えば、あの頃の恋愛なんて、ホントに可愛いものだったと思う。
高校が離れ離れになってしまったせいで、一緒にいられる時間は本当に少なかった。
朝は、最寄りのバス停で待ち合わせして、同じバスに乗って途中まで一緒に学校へ行く。
帰りは、部活があったから別々だったけど、部活を終えて家に帰る道すがら奈々
の家にわざわざ寄り道して、公園でたわいもない話をするのがなによりも楽しみだった。
それをアタシたちは“月夜のデート”と呼んでいた。文字通りお月様しかみていない
秘密のデートだったから…。
部活のない日曜日は一日デートの日。映画に行ったり、買い物したり。たまーに、
どっちかの家にお泊りデートしたりして…。
それでも、両親がいたから疚しいことはなかなか出来ないし、えっちするのは
ホントに苦労したな…。

310 :

今になって思うのは、子供と大人とでは時間の流れの感じ方が違うのかもしれない
ということ。
いまは、仕事やなにかで数日会えなくても、仕方がないことだと我慢できるけど。
あの頃は、一日のうちのちょっとの時間だけしか奈々と会えないのが、ひどく辛く
て苦しかった。
だから、アタシは、早く大人になりたかった…。
大人になれば自由だと思ったから…。お金さえあれば、二人でいっしょに住める。
誰にも迷惑を掛けずに二人でいられるんだ。思う存分奈々を抱きしめることが出来る。
明日になったら会えるんだと分かっていても奈々の背中を見送るのが悲しかった。
どうして、アタシたちは離れ離れにならなくちゃいけないんだろう。
こんなに大好きなのに…。
―――大人になったら一緒に暮らそうよ。
「おはよう」「おやすみ」「ただいま」「おかえり」を奈々のために言いたいんだ。
そして、奈々にも言ってもらいたい。
月夜のデート中そんな正直な気持ちを口にすると、恋人は、可愛い夢だね、って
笑ったけど、後で、アタシも同じ気持ちだよって、恥かしそうに言ってくれた。
『でもさ、大人って、いくつのことを言うの?』彼女の無邪気な問いかけにアタシ
は言葉に詰まった。えっちしたらば大人になれるのなら、すでに大人なんだけど…。
成人になればさすがに大人かと思うけど、大学生の身分じゃそうとも言えないのか
もしれない。だからって、就職したら…なんて言ってしまったら、ずいぶんと
先のことになってしまう…。

311 :

『自分が、大人だと思ったときでいいんじゃないかな?』
曖昧なアタシの答えに、奈々は納得したようなしないような顔で頷いた。
そうして、なんのご利益があるのかは分からなかったけど、ちょうど頭の上に
出ていた黄色いお月様に向かって、パンパンて手を合わせて二人でお祈りしったっけ…。
早く大人になれますようにって。
――いつか、いっしょに暮らそうよ。
高校生の子供だったアタシのかわいいプロポーズ。
そんなの遥か遠い未来の話だと思っていたのに、いま、こうして現実になっている。
二人の夢のお城が、目の前で着々と仕上がってく。
朝からバタバタしていて、なんかぜんぜん実感する暇もなかったけど…。
これから、奈々とずっーと一緒にいられるんだよね? もう、バイバイって言わな
くてもいいんだ。なんかすごいよね。夢って、願えばホントに叶うものなんだ…。
アタシが、こんなにも感激に打ち震えているっていうのに、奈々は相変わらず呑気
な様子に調子が狂ってしまう。
もう、こんなときにご飯の心配なんかしないでくれるかな…。
そういうところもマイペースな奈々らしいんだけどね。
でも、もしかして、一人で舞い上がっているんじゃないのかなって、だんだん
不安になってきたりして…。
「そんな心配しなくてもだいじょうぶよ。ていうか、もう用意してあるし…」
そう言って、脇に寄せてあったダンボールの中からガサゴソと信州名物を取り出した。

312 :

「―――お蕎麦?…それって、もしかして、ご近所さんに配った残りとか?」
「うん…。多めに買っておいたからね。それに、引越しには“引越し蕎麦”を
食べるってよく言うじゃない…?」
「ハァ…。瞳って、意外にそういうとこ古風だよね? ご近所に配るとかっていう
のも今はしないのかと思ってたけど…。都会のこういうとこのマンションって、
ご近所付き合いとかあんまりしないものなんじゃないのォ?」
「まーね。でも、そういう関係ってアタシは好きじゃないな。せめて、同じ階に
住んでいる人がどんな人なのかくらい知っておきたいじゃない…? ほら、なにか
遭ったときに助けたり、助けられたりってしたいしさ。……あっ、アタシ、なんか
ババ臭い?」
彼女が、「ハー」と大きな息を吐いたのが気になって、恋人の顔を下から覗き込んだ。
「うんん…その逆。瞳のそういうとこいいなぁ〜って思ったの…」
「そぉ?」
「うん…。お隣さん、やさしそうな老夫婦でよかったよね? アタシたちのこと
最後まで姉妹だと思ったみたいだけどォ…」
「あはは…。ぜんぜん似てないのにね。ま、いいじゃない…」
アタシは、別に言っちゃってもよかったんだけどね…と胸の中で呟く。
敢えてわざわざ言う必要もないと思ったから黙っていただけで。
それにウソをついたわけじゃないし。まぁ、否定しないせいで、そう思われたって
いうのはあるけど…。

313 :

お隣のやさしそうなおばあちゃんに、ごみ出しの仕方や、近所の安いお店などを
いろいろと教えてもらった。世話好きな人らしくて、結構賑やかな新生活になりそうだ。
奈々とこれから二人で生きていくって決めたけど、ずっと二人だけで、この部屋に
閉じこもっていられるわけじゃないのだから…。
奈々とここで暮らすのならば、そういう交流とかも一緒に大事にしていきたいって、
なんか素直にそう思えたんだ。
「でも、なんでお蕎麦なんだろうね…。引越しとか、大晦日とかって、明日から
新しい未来が始まるってワクワクする感じなのに、お蕎麦でお祝いって、なんか
ちょっと地味じゃない…?」
眉間に皺を寄せて腕を組む。
「ん〜」と唸るその顔を見ながらさすがに堪えきれずにプッと噴出した。
彼女も二人の新生活にワクワクしているんだと分かって、さっきの不安だった気持
ちが胸の中からスッと消えていく。
「ん〜それ確かに。…アタシもよくは分かんないけど、確か、お蕎麦を食べて、
“これからも末永くアナタのお傍にいられますように”とかって意味があるんじゃ
なかった?」
「えー、なにそれ、そんなのただの語呂合わせじゃない…。ていうか、駄洒落なのォ〜?」
「って、あっ、コラっ!」
目を離している隙にひょいと手が伸びてくる。お行儀悪く、手掴みでから揚げを
摘む彼女の手を今度はピシャリと叩いた。

314 :
でも、そういうところだけすばしっこい恋人は、あっという間に口の中に投げ込
んでしまう。
アタシがメッて睨むと、ふふんとしてやったりの得意そうな顔。
もう、奈々ったら、そういうとこ悪戯好きの猫みたいよ?
「もうっ! 奈々、お行儀悪いよッ!」
「ふふっ。わっ、瞳、このからあげ生姜が利いてて、チョーおいしーよ。瞳の
料理はサイコーだねっ!!」
うれしさを現しているのか、語尾が妙に弾んで聞こえる。
はしゃいだ笑顔がひどく眩しくて。怒った顔を作っていたはずなのについつられて、
いつの間にか笑顔になっちゃってた。
「サイコーはいいけど、小学校の先生が“チョー”とか使ってもいいのかなぁ?」
「いいのいいのー。ここは家の中だし、生徒も見てないしね…。あーもうなんか、
アタシ、チョー幸せ者だよね? 可愛くて美人な恋人だけじゃなく、こーんなに
しっかりもので料理上手な奥さんまで貰えちゃってさー…」
わざと“チョー”を誇張するのに眉を顰めてみせがら、「ふふん」と、まんざら
でもない笑みを浮かべた。
奈々の口から零れた“奥さん”って言葉に、お尻がむずむずしてくる。
奈々の奥さんかぁ…。なんか、照れくさい響きだ。でも、女の子同士なんだから、
二人とも奥さんなんだよね…?

315 :
「はは…。それは、こっちの科白よ。ていうか、奈々ったら、料理作る気ぜんぜん
ないのね…?」
「うっ……。そ、そんなことはないけどォ〜、でも、アタシ、料理下手だからさ…」
目を細めて痛いところをつく、みたいな目で睨んでくる。でも、ぜんぜん怖くないし。
「そんなことないでしょ。こないだ作ってくれたお好み焼きおいしく出来てたよ…?」
「あんなの料理って言えるのかなぁ…」
「アタシ、料理好きだし、奈々に食べてもらえるのうれしいから別にそれはいいん
だけどね。……でも、たまには、奈々の手料理が食べたいなぁ…」
そういうのにちょっと憧れる。
疲れて仕事から帰って来たら、奈々がキッチンで、アタシのために料理してるのと
かってベタなシチュエーション…だけど。
ま、エプロン姿の奈々が可愛いからみたいっていうのもあるんだけどね…。と、
邪な気持ちはひとまず隅っこに置いといて…。
「そういうことならがんばるけど…。う〜ん分かった。じゃ、日曜日はアタシが
作るでいい…?」
「うんっ♪ ふふ。なに作ってくれるのか楽しみ。期待してるよ? あーでも、
それ、なんだか日曜日のお父さんみたいだよね…?」
日曜日だけなんて…。うちのパパも家族サービスだとか言って、焼きそばとかラー
メンとか作ってくれたのを思い出す。
こんなに可愛い顔した女の子が、お父さんだなんて…。可哀想すぎるかな…?
一瞬の間のあと、二人は見つめあって、プッと噴出した。
奈々といるとなんだか笑ってばかりいる気がする。ずっとこんなふうに笑っていら
れたらいいね。

316 :
「あっ、そうそう。カーテン付けながら思ったんだけど、今度の日曜日さ、公園
でお花見しようよ!」
「あー、いいね。それ賛成! お花見弁当持って。うん、行こっ行こっ♪」
ここのところお互いバタバタしてて、デートらしいことなんて出来なかった。
満開のさくらが見放題のこんなおいしい物件に引っ越してきたっていうのに、
あれを見ないで春を過ごすなんて損だ。
それに、天気予報では来週あたりが一番見ごろらしいし…?
「あ、それと、クーリングオフ期間は一週間にしておくね…」
付け加えるように言いながら、いまさら、返品されても困るけど…と胸の中でこっ
そっと呟いた。
そうならないようにホントがんばらなくちゃだよ…。
彼女とは、それこそ小学生の頃からずっといるからなんでも知っている感じだけど、
さすがに一緒に住むことは初めてなので結構ドキドキしていたりする。
ちゃんと上手くやっていけるかって、実は、ここ最近、不安になっていたりもしてた。
それは、つい先日会った友人の言葉が効いているのかも知れない。
高校時代からずっと付き合っていた彼氏と大学を卒業してしばらくして、二人は
結婚を前提にアパートを借りて同棲生活を始めたのだけど、一ヵ月もしないで別
れてしまったのだ。
彼女曰く、一緒に住んでみて、彼の嫌な部分が目に付いて許せなくなったらしい。
あんなにベッタリで、誰もがそのままゴールインするものだと思ってたから意外な
理由に驚いた。そんなの付き合っているときに分からないものなのかなって。
『やっぱりそういうのは、一緒に暮らさなきゃ分からないものだよ。もう、厭だ
と思ったらとことん厭でさ…。あぁ、同棲なんかやめとけばよかったかなぁ…』

317 :

投げ捨てるように言った友人の言葉に、「結婚する前に分かってよかったじゃない」
とか、みんなで笑いながら慰めたけど、アタシは一つも笑えなかった。
いくら幼馴染だからといったって、うまくいく保障なんてどこにもないんだと
分かってしまったから。
もしも、一緒に住んでみて、二人の関係が変わってしまったらどうしよう…と
考えるだけで怖くなった。
アタシには、嫌な自信があった。
奈々と一緒に暮らしたら、アタシは、ますます奈々にべったり依存するだろう…。
うざがられたり、飽きられたりしたらどうしよう…と真剣に悩んでいる。
いままでは帰る場所があったからなんとか自制することが出来たけど、一緒に
暮らすとなったらそこがなくなってしまうのだ。
奈々に嫌われたり、それで、二人の関係がぎくしゃくしたり、あげく、彼女たち
みたいに別れたりしなくちゃならなくなるかも…と思うと本気で怖くなった。
だったら今までどおり、ほどよい距離感のスタンスでいいんじゃないかって、
毎晩のようにぐだぐだと考えたりもして…。
「もう、なーに言ってるのよう! いらないよそんなの…。心配しなくてもだいじょうぶだよ。
アタシたちならきっと上手くやっていけるって…」
どこからくる自信なのか、彼女は、今日のお天気のようにからっと晴れた笑顔を
向けてくる。
お隣のお婆ちゃんが姉妹と見間違えるほどに顔は、似ているとは思えないけど、
二人の性格は間違いなく正反対だと思う。
しっかり者で慎重派なアタシと、おっとりしているけど、意外に楽天的な奈々。
見た目ではよく反対に思われがちだけど、実は、奈々のほうが行動力があったりする。
就職して自信がついたのか、さらに磨きが掛かったみたい。
いいなぁ〜、奈々のそういうところ。

318 :

「そ、そうだよね。――あのね奈々、実は、料理だけじゃなくて、アタシと暮ら
すと、もう一個すごい特典があるんだよ?」
こういうとき、奈々にはいつも救われているんだ。彼女の言葉で、あんなに一人で
悶々していたのがだんだんバカらしく思えてくる。
最初から、やりもしないで悩むのは、アタシの悪い癖だと彼女にも言われるけど。
ホントにそうだよね。彼女を見習って楽天的に行こう。
嬉々としたアタシの声に、“特別”とか、“バーゲン”とか言う響きに弱い恋人は、
ちいさな身体を前に倒してテーブルに身を乗り出してきた。
見えないけれど、お尻にある架空の尻尾がプルプルと振っている感じ…?
「えー、なになに?」
うれしそうな顔。お菓子をねだる子供みたい。
アタシは煤けた子供の頬を親指で払って、「にい」っと歯並びのいい白い歯を見せ付けた。
「――虫歯になったらみてあげられる…っていうね?」
「…ゲッ。なによそれ、期待してたのにぃ〜。ていうか、そんなのいらないよ〜…」
すっごくがっかりした顔をして、そのままプイと怒ったように視線を逸らした。
思ったとおりの反応に、アタシはクスクスと笑みを深める。
東峰を卒業して、アタシは、御茶ノ水にある歯科大学に進んだ。
特に歯医者さんになりたかったというわけではなかったけれど、漠然と進路を思った
とき、女でも一生職に困らない技術職に就きたいと考えた。
それが、歯科医だった――。

319 :

そんな自分の選択が意外なような、でも、どこか合っているような気がした。
細々した作業は昔から得意なほうだし、医者のように時間に縛られるほどのもの
でもない。そこそこの収入を得られて、結婚退職をしなくてもすむような技術職
がなによりも魅力的だった。
奈々と一生を共に生きることを考えたら、男の人のようにバリバリと働かなければ
いけないと考えた。奈々にお金の面で苦労を掛けるのだけは絶対に嫌だったから…。
いや、――というよりは、男じゃない自分でも奈々のことを幸せに出来るって思い
たかったからなのかもしれない…。アタシを選んだことを後悔させたくないという
意地があった。
この細腕でも奈々を一生守れるような強い大人になりたい。
医大並みに難関だと言われた歯科大にもなんとか一発で合格できた。
最初の二年間は千葉の校舎なので、一人暮らしをしながら、週末だけ奈々に会うと
いう過酷な生活を強いられた。電車で約一時間の距離を“遠距離恋愛”と呼ぶには
忍びなく、アタシたちは、“中距離恋愛”だねと呼んで笑っていた。
高校時代だって離れ離れの時間が多かったのに、すぐ隣の県でも、奈々が近くに
いないのかと思うと難しい勉強よりもそっちの気持ちを保つほうがずっと大変だった…。
二年間、離れ離れでもなんとかがんばってこれたのは、泣き言を言うたびに奈々が、
メールや電話で励ましてくれたおかげかもしれない。
そうして、六年間の大学生活を充実して過ごし、この春から就職先も決まって、街の
ちいさなデンダルクリニックだけど、働かせてもらっている。
ゼミの教授には研究員として大学に残らないかと何度も誘われたけど、アタシは、
一日でも早く社会に出たかった。
奈々と暮らすという夢を実現するためには、少しでもお金が欲しかったから…。

320 :

ゆくゆくは、自分たちの家を構えて、そこで開業とかできたらいいな。
夢はみるものじゃなく叶えるものだって、知ったから。そして、それには努力なし
では叶わない。
アタシもまだまだ奈々のためにがんばるからね、と思わず拳に気合が入る。
「そういえば、こないだ奈々、歯が染みるって言ってたよね? ちょっとアーンて
してみて、みてあげるから…」
「い、いらないよー。歯医者はぬほど大嫌いって言ったでしょっ!」
ベーって、今度は、健康そうな色の舌を出してくる。
ホントにコロコロ変わる表情。ホントに24歳なの…?
「でもね。ちゃんと虫歯の治療しとかないと…。痛くなってからじゃ遅いんだよ?
虫歯の進行しだいでは、神経まで抜かなきゃならなくなって…そしたらもっと痛い目に…」
「知らないっ、瞳のバカッ!! そんな話聞かせないでよッ!!!」
子供の患者に言い聞かせるようにやさしく言ったのに。
大きなその子供は、プイと顔を背けて、スタスタと自分の部屋に逃げてしまった。
「あっ、ちょっと…奈々……」
六年間も奈々との将来のことだけを考えて、難しい勉強を必でがんばってきたのに。
アタシが、奈々がこの世でいちばん大嫌いな歯医者さんになったことで、彼女に
ひどく嫌な顔をされるのだけは、まったくの思い込み違いだった…。

321 :
◇ ◇ ◇ 
今日は、八年目のプロポーズを実らせた特別な日。
でも、奈々の言うとおり、食卓が地味すぎだったかもしれない…。
お蕎麦はおいしくいただいたけど、ずずずと啜るのは、やっぱりちょっと気分がね。
せめて、ケーキとか用意しとけばよかったかなって後悔した。
じゃなかったら、ワインで乾杯とか…?
ん〜、でも、お蕎麦にケーキもワインも合わないしぃ…。
ドレッサーの前で、ガーガー言わせながらドライヤーを掛けていると、ほんのりと
頬を紅色に染めた恋人が、てくてくと寝室に入ってくる。
しっとりと濡れた黒髪がちょっと色っぽい。アタシは、ドキッと胸を高鳴らせた。
何年も付き合っていても、ずっとドキドキを与えてくれるのってすごいことだと思う。
一応は、二部屋をそれぞれの個室と割り当てたけど、寝るときは同じベットでっと
初めから決めていた。ていうか、アタシがこれだけは絶対と押し通した。
奈々と一緒に暮らしているのに同じベットで寝ないなんてあり得ないと思ったから…。
そうして、ベットの大きさの関係上、それは、必然的にアタシの部屋になった。
鏡越しにちらりと視線を向けると、頭からほわほわと湯気を立たせながら、そのまま
ベットに向かってダイブした。
「ふう〜気持ちいいー」
羽毛布団が、奈々の重みにビックリして羽を立たせる。
それだけならまだしも、バタアシまで始めて、もう!!
「ちょ、ちょっとォ、奈々ダメよっ、ベットで泳がないでっ。高いんだからね、
その布団っ!」
アタシの声に大の字のまま、水面にぷかっと浮かんだ体のように動かなくなった。

322 :

いつも子供と一緒にいるせいなのかな?
ときどき、ホントにまだ小学生なんじゃないかって思えるときがあるのは内緒だ。
奈々は、桜女からエスカレーター式でそのまま上の大学に進んだ。
学生時代から勉強と折り合いが悪く、なにかと言っては「大人になったら勉強しな
くてすむー」が口癖だったはずの彼女が、数あるなかから選んだのは教育学部だった。
まさか、二人とも将来“先生”と呼ばれる職業に就くことになるとは、付き合い
始めの頃は思いもしなかったことだ。
恋人の思いきった選択を周囲の人間はかなり驚いていたけど、アタシは、手放しで
喜んだ。だって、奈々みたいにやさしくて可愛い先生に教えられる子供はとてもは
幸せだと思うから…。
もともと引っ込み思案なところがあるし、最初だけは、ホントにだいじょうぶなの
かなって本気で心配したりもしてたけど、毎日、楽しそうに学校に行っている姿を
みるにつれいつの間にかそんなふうに思うこともなくなった。
六年生なんかに混じると、先生なのか生徒なのか分からなくなっちゃうところも
なんか可愛くて面白いと思う…。
母校でもある武蔵野の小学校で二年間勤め上げ、この四月から、区立の小学校に
転属になったのと、アタシが大学を卒業して歯医者勤めをすることになったのを
機に、どうやら二人とも大人になれたみたいだからいい加減そろそろいんじゃない…?
月夜の下で誓いを交わした“大人になったら一緒に住もう”をようやく実現すること
になったのだった。

323 :

はあぁ…。
どうでもいいけど、奈々、ぜんぜん緊張してないよね?
夕飯はあいにく失敗に終わったけど、こっちは、名誉挽回で、ロマンチックに
したいって、いろいろ考えていたのに…クロールなんてしないでくれる?
お気に入りのアロマを焚いてムードを高めようとしているのにもぜんぜん気づいてない。
もともとそういう子ではあるけど…はあぁ…。
まだ気持ちのすれ違いがあるようで、ちょっとがっかりだよ…。
ベットに大の字に突っ伏して、そのまま目を瞑ってしまった彼女に慌てて声を掛けた。
「あん、もう、ちょっと、寝ちゃだめよ奈々、後ろ、髪っ、まだ濡れてるでしょ?
ほらー、ちゃんと拭かないとまた風邪引いちゃうってばーっ!」
「…う〜ん」
「う〜んじゃないよ。奈々、もう聞いてるのォ?」
「だぁって、いま、瞳が使ってるじゃなぁい…」
甘えた声。
ふにゃふにゃの身体。まったく、もう…。
眠気に勝てないときの恋人は、いつもこうなる。困った子…。
「もう終わるからっ。ほら、奈々ってば、ベットに横になったらすぐ寝ちゃうん
だからちゃんと起きててよっ!」
「……寝てないって。目を瞑りながら起き…て……る…ぅ…」
語尾があやふやになってるしー。
「ウソばっかり…。そんなこと言ってすぐ寝ちゃうくせにぃ…。ダメよっ! 
あぁん、もう、まったく世話が焼けるんだからこの子は…。ほらぁ、起きて、
奈々っ、いい加減に!……って、なに笑ってるのよ…奈々?」
鏡越しの薄い背中が僅かに震えているのに気づいて、くるりと振り返る。
こっちを見ながら、「にぃ」と、悪戯っ子みたいな顔をした。

324 :

「なによっ!」
「――フッ。だって、瞳のそういうところなんかお母さんみたいなんだもーんっ。」
もーんて…。はは、ホントに子供だよ。ま、可愛いからいいけど…。
いったい、どんな顔で教壇に立っているのかな〜? 一度、見てみたい。
「あぁーもーさ、ビジンでこーんなにカワイイ自慢の恋人の仕事が、どうして
アタシの大嫌いな歯医者さんなのかと思うけど、瞳ったら、ママにもなっちゃう
のね…? 奥さんもやって、彼女もやって、ママもって? もう、いったいいく
つの顔を持っているのよォ、まだなにかに変身したりしてね………ふふふっ、
でもー、いろんな面を持った彼女が持てて、退屈しなくていいんだけど〜」
ケタケタと謳うように節をつけて言う。
はは…。退屈されていないのならよかったよ。
ていうか、それ、褒めてくれているのかなんなのかわかんないんだけど…。
もしかして、奈々、さっきの乾杯のビールで酔ってる…?
奈々がそんなんだから、心配しちゃうのよと出てきそうになった言葉をグッと
飲み込んだ。
昔からしっかりしているようで、大事なところが抜けているような子だったから。
そういえば、今度の学校では、四年生の担任を任されることになったと言っていた。
自分のクラスを受け持つなんて初めてのことだし、低学年を教えていた頃と違って、
四年生なんて一番子供が成長する難しい年頃だと思う…。担任となれば、今までの
ようにはいかないだろうし…。
それに、明日は、配属になった小学校の入学式で新任の先生は、全校生徒の前で
スピーチをやらされると聞いている。――ねぇ、ホントにだいじょうぶなの?
仕事休んで、保護者に混じって覗きにいきたい気分だよ。

325 :

「ホントのママに会いたくなったら、たまには会いに行ってきてもいいのよ…?」
ベットの中央で軟体動物みたいにふにゃふにゃしていた身体がピキンと硬直して、
陽気な笑い声がぴたりと止まる。
甘ったるいピンク色だった部屋の空気がサッと変わったのを感じた。背中越しの不穏
な気配。今のは失言だったかと気づいたときにはすでに遅かった…。
「―――なんで?」
「えっ……?」
「なんで? なんでよッ、なんで、いまそんなこと言うのよっ!!」
「………えっ、あっ…」
お昼のときも、拗ねられて宥めるのに苦労したけど、また怒らせてしまったみたい。
なんなんだろう…。一日に二回もなんて、もしかして、アタシ、今日ダメダメな日?
あのときの二の舞で、また自分の部屋に逃げて行ってしまうのかと思ったけど、
彼女は、アタシの背中をジッと睨みつけたまま動かなかった。
それが、余計に怖くて…。
「もう知らないっ。瞳のバカッ!!」
「って、うわっ!!!」
低く響くような声に、振り返ろうとした瞬間、胸のあたりになにかが飛んできた。
咄嗟に掴んだのは…枕? しかも続けざまに二個も。それも、なんなく受け止める。
次になんかちょっと固いものが…って、ネピアのテッシュ?
ちょうど角が胸に当たってちょっと痛かったけど、なんとか阻止した。
だてに長いことバスケをしてきたわけじゃなかった。多少は、年を食っても反射
神経は衰えていないらしい…。
ふと顔を上げると、ちいさな手が目覚まし時計を掴んでいるのに気づいて、
「ワー」と両手を前に広げて、ベットに駆け寄った。

326 :

「ちょっ、ちょっと、待ってよっ。さすがにそれは、怪我するからー!!」
そのまま、今にもスローインしそうなその手を時計ごと掴んだ。
バカでもアホでもなにを言われてもいいけど、お願いだから手当たり次第物を投げ
るのだけはヤメテ。痛いし、壊れたら明日起きられなくなっちゃうでしょ…?
それにしても、アタシ、そんなに奈々を怒らせるようなこと言ったかな?
ていうか、いまの発言がよくなかったんだよね? 奈々を子ども扱いしたから…。
これで、何度か喧嘩してきたから分かっているんだ。なのに、また言っちゃった…。
今日は、大安だと思ったけど見間違えたかな?  
でも、同い年なんだし、子供扱いなんてしているつもりはないんだけど…。
そう、喧嘩するたび思うんだけど小学生の頃から知っているから、つもりはな
くても、そういう態度に出ちゃっているのかもしれない。
あぁ、感情を言葉にするのって難しいよ…。
「ちょっと、なに、へらへら笑っているのよ〜!」
「へっ? 笑ってないよ…。ごめんね奈々、アタシが悪かったからそんなに怒らないで…」
赤い顔をしながらなかなか怒りの収まらない彼女の肩にやさしく手を回して、
もう一度、ベットに座らせた。
「アタシ、もう、子供じゃないよっ!!!」
バンて、癇癪を起こした子供みたいに両手でシーツを叩いた。
アタシは、なにも言わずに「うん、うん」と頷く。
さっきは、アタシをお母さんみたいって言って、うれしそうにしていたのとなんか
矛盾していると思ったけど、彼女の気持ちは、痛いほど分かっている。
オレンジ色の夕日の下でみた寂しそうな恋人の横顔がふと頭の隅をよぎった。

327 :

『あんまり、瞳ちゃんに迷惑掛けるんじゃないぞ!』
『……うん。わかってるよ…運転気をつけてね?』
『あぁ、じゃあな……』
短い親子のやり取り。奈々は、車が見えなくなるまで手を振っていた。
その睫が僅かに濡れていたことをアタシは、見て見ぬふりをした。
ウチは、両親とも共働きだったから放任で育った感じだけど、奈々のところは違う。
アタシと暮らすのを喜んでいる反面、べったりだった家族から離れるのは、寂しか
ったんじゃないかなって思った。
そのことを揶揄るつもりで言ったわけじゃなかったけど、奈々の複雑な気持ちを
ちゃんと汲み取ってあげれなかった。
家族と離れて寂しいけど、アタシの手前、そんな気持ちをずっと押ししていた
んだよね?
アタシに気を使って笑顔を見せてくれていたけど、ホントは寂しくてしょうがなか
った…。だからこそ、いまの発言は、奈々の傷ついた心に痛く突いてしまった…。
奈々をこんなふうに怒らせてもしかたがなかった…。アタシが無神経だったよ。
子供に言い聞かせるようにゆっくりと、今度は、一言の間違いのないように目を
ジッと見つめながら…。
「ごめんね奈々…。アタシ、言い方間違えちゃったね? たまには顔を見せに
行っておいでよ…だった…。きっと、おじさんもおばさんも奈々が出て行っちゃ
って寂しがってると思うよ…? だから、たまには会いに行っておいでよ、きっ
と喜ぶからさー…。――なーんて、アタシが、奈々のこと奪っちゃったから、
ちょっと罪悪感なんだけどね…」
「………バカぁ…」

328 :

言いながらヘラと笑うと、拳でトンて肩の辺りを叩かれた。
そのまま同じところにおでこをぶつけてくる。
腕の中で崩れるちいさな恋人が堪らなく愛しかった。
腕を背中に回して、アタシは、その細い身体をギュって抱きしめた。
湯上りの恋人はほんわかと温かくて。奈々は、ジッとしたままアタシに体重を
預けてくる。
ぷるぷると震える身体。赤ん坊が母親の背中にしがみつくような爪の感触。
呼吸に合わせて、トントンと背中を叩いた。
アタシがいるから、もう泣かないで…?
お父さんの代わりもお母さんの代わりも出来ないけど、奈々が、寂しいときには
こうして抱きしめてあげるから…。
同じシャンプーの香りをスッと吸い込んで、おでこにチュってキスをした。
まだ濡れた前髪を払うと、彼女が気まずそうに視線を上げた。
もう、怒ってないね? いつもの奈々の顔に戻って、ようやくホッとする。
「ごめんね? もう泣かないでよ、奈々…」
もう一度、ちゃんと謝った。
「泣いてなんかないっ…ねぇ、アタシ、もう24歳なんだよ…?」
高校生じゃないよと、涙声で言われて「うん」て頷く。
「……知ってるよ。こないだ誕生日ケーキ食べたばかり…」
「そうだよ…」

329 :

それでも、目のふちが赤くなっている。
奈々を、こんなふうに寂しがらせないようにいっぱいいっぱいギュってしてあげるから。
お願いだからそんなうさぎのような目をしないで? その顔みていると胸のあたりが
キュンてして、なんだかものすごく苦しくなるんだ。
しばらくそうしていると、彼女はトントンとアタシの背中をやさしく叩いた。
「瞳、瞳、ちょ、ちょっと離れて。―――あの、あのね……」
胸の辺りから低い声がして、アタシは、声にならない声で「ん?」と首を傾けた。
どれだけそうしていたのか、パジャマは二人の熱でぐっしょりと湿っていた。
抱きしめていた腕をほどくと、彼女は、崩していた足を正座に変える。えっ?
急に、改まって、一体なにが始まるの…?
「あのォ…。ちゃんと言っておきたいことがあって…」
「………うん…?」
ゴホンと咳払いをする。
恋人のただならない様子に、アタシも崩していた脚を正座に組み直した。
ダブルベットの中央で、お互いを見合う格好になる。
長い沈黙が、ひどく居心地が悪くて…。なにを言われるのかドキドキしてくる。
心臓に悪いからどうせなら早いこと言って欲しいのに、彼女は、池の鯉みたいに
口をパクパクさせながら緊張した面持ちで瞳を泳がし続けた。
耐え切れなくなって「どうしたの?」って聞こうとしたとき、「ハー」と大きく
息を吐いたと思ったらどどど…と捲くし立てるように…。

330 :

「あっ、あのさ、あのね、あのー、こ、こんなアタシだけど、いや、ですけどだ。
ええっとォ…瞳、“フツツカモノ”ですが…これから、どうぞよろしくお願いします…」
シーツに手をついて、ちいさな頭をペコリと下げてくる。
可愛い渦巻きを凝視しながら、カーっと強いお酒を飲んだときみたいに胸のあた
りが熱くなった。
こ、これって、もしかして…。
でも、アタシが知っている正式なヤツは指は三本で五本ではないんだけど、別に
土下座されてるわけじゃないよね…?
てことは、やっぱりそういうこと…? 
昔の映画でみたことあるあの儀式を頭の中で映像化する。
敬語なんて、今まで一度も使われたことなんてなかったのに…。
改まって、急になにを言い出すのかと思えば…。
でも、彼女の言葉が、ズシリと胸に大きく響いてきた。
今の言葉で、これから二人でやっていくんだって、なんだかものすごく実感した。
これじゃ、ホントに結婚するみたいじゃない。いや、奈々もそういう気持ちなんだ
って思ってもいいんだよね…?
ごめん…。奈々から言わせちゃった。こういうかしこまったのなによりも苦手なのに…。
でも、ありがとう…。すごくうれしいよ。うれしすぎて、うっかり涙が出ちゃいそ
うなくらいに…。

331 :

「…うん。ていうか、こちらこそ、よろしくお願いしま……ッ、たぁ!!!」
焦って、勢いよく頭を下げると、ゴチンと鈍い音とともに目の前にパラパラと
火花が散った。
力いっぱい奈々の頭におでこをぶつけてしまい、あまりの痛さにおでこに手を当て
ながらぎゅっと目を瞑る。
痛みがなかなか治まらずそこだけジンジンしてる。――ひどく気まずい沈黙。
すぐに奈々のクスクス笑い聞こえてきた。恋人の笑顔にホッとしながら釣られる
ように声を上げて笑った。
「ううっ…。アタシってなんでいつもこうなんだろ…。一番いい所でお笑いに
なっちゃう…。…ていうか、奈々、石頭なんだもん…ちょっと痛いよォ…」
「うん。ごめんね……」
よしよしと子供にするみたいに頭を撫でられた。
いろんな意味の含んでいそうな謝罪の言葉にアタシは首を振って笑顔で応える。
はあぁぁ…。
それにしても、初日から大喧嘩って…。
なんか、先が思いやられるよね?
私たち、これからも、もっと大きな喧嘩とかいっぱいしそうじゃない?
……って、大抵、怒らせてるのアタシなんだけど…。
でも、そういうときは、いまの奈々の言葉をもう一度思い出そうと思った。
こんなふうに相手の気持ちを思いやって素直になれれば、きっと大丈夫だよね?

332 :

「もう、瞳ったらー、あー、でも、“フツツカモノ”ってどういう意味なのかなぁ?」
自分でも照れくさかったのか、急にそんなことを言ってくる。
奈々のほうからはじめておきながら、分からないと首を傾ける仕草に自然と口元も
緩んだ。
そして、そんな彼女の様子にアタシは、またしても気づいてしまう。
お風呂から上がったときに、いつになくベットに上がってふざけていたのは、奈々も
緊張していたからなんじゃないのかなって…。
この状況に、ひどく戸惑っていたのは、アタシよりもむしろ、奈々のほうなんじゃ…って。
それはたぶん正解。そんな不器用な表現しか出来ない恋人が愛しくて堪らなかった……。
「ん〜、わからないけど、たしか、至らないとか、そんな意味じゃなかった?」
「至らないかぁ…。エー、でも、そんなの知ってるよね? 瞳のいいところも悪い
ところも全部いまさらって感じじゃない? だって、アタシたち、いったい何年
一緒にいると思ってるのよ。…小一からずっとだよ?」
いつもより早口なのもきっとね……。
「あははっ。そうだよねぇ…。奈々のことなんて、知らないところがないって
くらい知ってるしぃ…じゃあ、どれどれ…」
ふざけながら、パジャマのボタンを外しかけると、彼女は慌てて止めに入った。
ていうか、アタシの悪いところってなんなんだろう…。そんなのは初耳だ。
すごく気になるよ〜。後で忘れずに聞かなくちゃ…。でも、今はこっちのほうが
先決だから。

333 :

「どれどれって、ちょっ、瞳っ、なにしてるのよ、もう、だめっ!!」
「エー、どうして、確認でしょ? ホントに知らないところはないのかどうか
ちゃんと調べてみないと分からないしさー…」
「あー、もう、瞳のそういうところすっごいヤダよっ。アタシ、悪いけど、オヤジ
だけはノーサンキューだからねっ!」
後で聞くまでもなくすぐに答えが返ってきた。これだったかと、アタシは、苦笑
しながら、それでも指だけは動かした。
アタシのこういうところを彼女は、オヤジっぽいと言って怒る。そうかなぁ?
素直な気持ちをそのまま表しているだけなんだけど…?
オヤジと言うより、自分はまだまだ子供なんだと思う。どうしても欲しくなると、
我慢なんて出来ないし…。
高校生のときは、大人になりたがっていたけど、いざそうなってみるとやっぱり
子供のときのほうがよかったかも…って思っている。お肌はそろそろ曲がり角に
差し掛かってきているし、体力もずいぶんと衰えた。
だからさ、二人ともまだまだ子供のままでもいいんじゃない…?
なんにも考えずに裸になっちゃおうよ。
無防備な首筋に顔を埋める。
奈々の身体からすごく甘い匂いがする…。アタシの一番大好きなフルーツの香りが…。
「あぁ…。奈々、桃のすっごくいい匂いするよ…」
「えっ、もう、なに言ってるの…。そんなの…同じボディシャンプー使ってるのにぃ……」
犬みたいにクンクン嗅ぐ真似をするとくすぐったそうに悶えた。
ピーチ風味のボディシャンプーを買ったのはアタシ。でも、こんなに強く匂うのは、
アタシとこうするために隅々まで洗ってきたのかなって、変な妄想をする。

334 :

「ねぇ、この身体、すごくおいしそうだから、食べちゃってもいい?」
「なっ、もっ、ばかっ!!」
奈々は、恥かしそうに目の下を赤く染めながら、アタシの前髪をギュっと引張った。
こういう発言がオヤジ扱いされるのかと改めて気づいたけど、でも、これもすべて
アタシだし…?
ていうか、アタシがこうなっちゃうのは、奈々が可愛いすぎるからいけないんだよ。
と、こっそりと胸の中で責任を転嫁する。
何度も身体を重ねているけど、いまだにこういうことをするのが苦手で。
最初はいつも恥かしそうにするところが、いくつになっても変わらない。
腕の中でじたばたと逃げようとする小さな身体をギュと閉じ込める。
視線を向けると、生まれたての雛鳥みたいにぶるぶると震えていた…。
「あぁ、ほらー、もう、いじめてるわけじゃないんだから泣かないでよ?」
「だから、泣いてないっ!」
カタカタと震える唇を噛みながら、とうとう堪えきれなかったのかはらりと涙が
白い頬に零れ落ちた。
それが、すごく綺麗で、見蕩れてしまう。
目は真っ赤で、鼻水まみれ。それを、アタシがさせているんだと思ったら、お腹の
辺りで変な優越感みたいなものが広がった。
小学生のときの奈々。中学、高校、大学…一番近くでずっと見守ってきた。
可愛かった少女が、大人になるにつれて、どんどん綺麗になっていった。
これから年を重ねて、どんな奈々になっていくのだろう…。
皺くちゃのおばあちゃんになった彼女を見ていたい。その隣でアタシも一緒に年を
重ねていきたい。

335 :

「あぁなんか、心臓が変なの…。アタシね、さっきからドキドキが止まらなくて…
どうしよう……」
芝居の台詞みたいに大げさにそう言って、子供の頃から変わらないちいさな手
を膨らみの上に押さえつけた。
ほら、こんなに心臓がバクンバクンと跳ね上がっているの、奈々、聞こえる?
「……ひっ、ひとみっ?!!」
「アタシのなんだよね? これからは、ずっと、そばにいてくれるんだよね?」
胸の中に巣食うこの愛が大きすぎて、ときどき怖くなる。
ホントは、この腕のなかにずっと閉じ込めて、アタシだけのものにしておきたい。
一生誰にも会わせずに、アタシだけをみてくれるように……。 
自分の知らない悪魔のアタシが、ときどきひょっこり顔を出しきて、そんなふう
に思わせるんだ。
物分りのいい大人の振りをしているけど、頭の隅では、そんなことばかり考えて
いるんだよ?
ちいさく頷く彼女に、ギュって、隙間がなくなるほどきつく抱きしめた。
ごめんね…。
自由に飛べる羽を毟るなんてそんな可哀想なこと出来るはずがない…。
でも、その反動なのか、ときどきどうしようもなく子供に戻りたくなるのを止めら
れない。恋人に甘えて欲しいと思いながら、自分が甘えたくなってる。奈々に依存
してる。
「どうしよう…。なんかウソみたいだよ…」
「ウソなんかじゃないよ…」
胸の中で、恋人の声が甘く震えた。
でも、日に日に奈々のことが好きになるんだよ。この気持ちが治まらなくて、
もうどうしましょうって感じなくらいに。人が聞いたらかなり恥かしい悩みだけど…。

336 :

「だって、いまもまだ夢見てるみたいなんだもん…。これから毎日奈々に会える。
奈々と毎日こういうことできるなんて…なんか、幸せすぎて、ポックリんじゃいそう…」
「やだ。簡単にぬとか言わないでよ。アタシより先にんだら許さないからねっ!」
「アタシだって奈々が先に逝くのなんてヤダよ。よかった…。じゃ二人で長生きで
きるね? ダブルの棺桶って売ってるのかなぁ…?」
「あぁ、もっ、瞳、いいからー、黙ってっ!」
むぎゅと音がして、そのまま唇を奪われていた。
ギョッとしたままアタシは彼女を見下ろした。そして、にんまりと微笑む。
そんなに真っ赤な顔してキスしないでよ? こんなにドキドキばっかさせてアタシ
を心臓発作です気なの…?
ちいさな少女だった恋人は、ちいさなまま大人になった。
その華奢な背中を掻き抱きながら、アタシは、こっそりと胸のなかで呟く。
奈々が寂しくないように、大切にするから…。アタシが一生幸せにするから…。
ずっとずっと、アタシの隣にいてください……って。
月夜に願った夢が本当に叶った。
星が願い事を聞いてくれるのは世界中で有名だけど、月もだったなんて、もしかし
て、私たち、世紀の大発見しちゃった?

337 :

でも、これは、まだ一つ目の夢だ。
アタシは欲張りだから、もっといろんなものが欲しくなる。
これからも二人で、同じ夢を見つけていこうよ。こうして手を繋いで一緒にさ…。
「ねぇ、奈々、……今日は、いっぱいエッチしてもいい? アタシ、ちょっと治ま
りそうになくて…」
唇を離すと、「ヤバイんだ…」と、甘い匂いのする首筋に顔を埋めながら囁いた。
奈々からのキスで、頭の中のネジが吹っ飛んじゃったみたい…。
いや、もともと、そんなの外れていたか。
こんな魅力的な身体を前にしたら、そんな屁理屈なんていらないよね?
「……なっ! なんで、瞳は、そうなのよォ!…そ、そういうのは、オブラート
に包んでって、いつも言ってるでしょーっ!!」
「まーまー、いいじゃない。誰も見てないんだからさ……」
まだ続きそうな非難の声もへらっと笑って聞き流す。尖った唇にすばやく口付けて、
声を塞いだ。もう、言葉なんていらないよ。
器用に片手で最後のボタンを外すと、白い肢体が露になる。
なめらかな肌が、ちょっとだけ見えるのがやけに扇情的だった。
見た目だけじゃなく触り心地も抜群なのは、もう知っている。
ゴクンと生唾を飲み込みながら、つるんと剥くように着たばかりのパジャマを肩か
らやさしく脱がせた。
そうして、アタシを誘うようにぷっくりと膨らむ桃色の果実を口いっぱいに頬張った…。
甘い声で、くんくん鳴くのを聞きながら、すっかり無防備になった身体を好き放題
堪能する。
誰もみていないから…と奈々には言ったけど、前言撤回。
二人の夢を叶えてくれた丸いお月様が、窓の外でこっそり覗き見してた――。

338 :
大人になった瞳×奈々編でした。
ぜんぜん高校生のままって感じもしますが…。
二人の職種については、どうなのよ?って感じられるかもしれませんが、あくま
でも二次小説なので、苦情は一切受け付けません。ニガw
アタシのイメージの中ではこれでした。単に、話を膨らませられるかなってだけ
だったり。((´∀`*))ヶラヶラ
瞳×奈々は、高校生編、大学生編、社会人編と並行してやっていけたらなと思っ
ています。最後まで読んでくれた人ありがとうございました。ではまた。

339 :
読むのめっちゃ時間かかっちゃいましたよww
本当にG Jですた!

340 :
長いけどなんだかサクッと読めた。
これ好きだぁ〜(*´д`*)ハルヒさんGJ!

341 :
まってましたよ!
やっぱいいな、最高!GJ!!!
2LDKってのがナイスでしたよね。
2人の存在を感じられるベストな広さ。
ハルヒさんうまい、うますぎるよ。
何かまた続編的なものを書いてもらえませんか?
ずっとまってますので♪

342 :
瞳と奈々の読みたいお

343 :
ハルヒさんの投稿ないな・・・。
待ってる間、何かつなぎで駄作でも落とそうかな・・・。

344 :
あげちゃったよ…すまぬ。

345 :
>>343
投下キボンヌ

346 :
瞳と奈々最高です!!
ハルヒさん続きを〜m(_ _)m

347 :
ハルヒさんキボンヌ

348 :
瞳と奈々が、はげしくすばらしすぎる
俺の夢が完璧以上に再現されてる
しかし、瞳が姉と同じ名前

349 :
某有名百合小説サイトにハルヒさんの新作が来てましたよ。

350 :
kwsk

351 :
こちらでは、お久しぶりです。
>>349さんありがとうございます。
スレ違いになるかもしれませんが、私事の報告をさせてください。
実は、有名百合小説サイト「創作館ふれちせ」さんの「てぃーぽっと小説館」のほうで、
二次小説を描かせていただくことになりました。
ここをチラ見される多くの方はたぶんご存知かと思うのですが、あの話題になった
「MI・KU・MI」という作品です。
痴漢(痴女?)と女子校生のちょっと笑えるハードエロ百合小説なんですけど。(ニガ
私が、エロ百合小説を描くきっかけになった作品でもあります。
ホントはここに載せようとしたんですけど、北原さんとやまねさんのご厚意により、
あちらの掲載させてもらえることになりました。
興味があるかたはぜひぜひ検索かけてください。読んだことがないかたもオススメです!
感想とかいただけたらうれしいです。
そんな感じで浮気中だったので、瞳×奈々がなかなか上げられてないんですが、
この「MI・KU・MI」が終わり次第こちらに上げたいと思います。次は大学生編に
なるかと。。
以上、ご報告まで。

352 :
北原さんところなら安心だ。
期待してます。

353 :
待ってます

354 :
wktk

355 :
大学生編!!

356 :
┌―――――――――――──┐┌―――――――――――──┐
|      r-( (()ー、          │|   彡ミミ  / ⌒~⌒゙ヽ痴漢対策.│
|     //'"""" ヽ)       女 │|利;´ 〉`} //{{{、{{{{,}}}}}}};、      │
|     {{{ミ ,__` ',__ |"、     性 │|用、 - ノ {{{ ィニ・ <=・ {} }     │
|    , '{}  ,c、,ュ、 )゙、      客 │|者:::::::::} {{{{  ,イ、,ト、 }{{ミ   . : :│
|    , 'イ! トエエア ノ゙、       は │|は  / !!!ヽ t〜ナノ}}})、_   : │
|   ,---( ヽ、 二 イ`)、        │|| /    ゙ミ二二彡'   :::ヽ   │
|   (女性だけというのは)  . :|| 夜だけあったでしょ今まで::}  │
|    なんとなく心強い       │| 朝もあったらいいなと思ってたi│
└―――――――――――──┘└―――――――――――──┘

357 :
┌―――――――――――──┐┌―――――――――――──┐
|     /彡彡彡彡ノミ、     女│|      ////イミミヾヽ.      │
|    /彡彡彡ナ.ノ))-tリリ + 性│|  @  ({((_( 、__ ヾ川|      │
|    川 彡  -=、 {,=.iリ    専│|         〉┃ ┃ ミ川   @ │
|+   川川⌒  ,ィ 。_。)、 ) * : 用│|        ( (     iぅll|      │
|   川川  (ー=エアノノハ   車│|       ヽ ヾア ノQii|      │
|   川川ヽ  、 __,ノ川i、  両│|@   __川 ゙ー ' .||川|     │
| / ̄川川 {{ミ三彡/ニノ川i ̄ヽ │|   /   川ー-- イ||川リ`ー、  │
|    男性がいないと安心!   .│| 私は特にどこでもいいです   │
└―――――――――――──┘└―――――――――――──┘

358 :
MI・KU・MI」は名作だよね。楽しみだ。

359 :
みくみはよかったよ おもしろい

360 :
面白かったから、上げますね。

361 :
ハルヒさん、瞳x奈々の大学生編、早く読みたいよ〜帰ってきて〜

362 :
AGE

363 :
AKEOME

364 :
もうダメか

365 :
巫女モノで投下しようと思うが、どうか?

366 :
ageてもうたorz ごめんなさい。



367 :
どんとこい超常現象!

368 :
キミは520歳のレズばばあを見たことがあるか?

369 :
俺が小説にしようと思って考えたネタでも良ければどうぞ。嫌ならスルーで
【作品属性】二次、ファンタジー・戦闘、ヒロイン2人が微妙に百合
【舞台背景】中世っぽいヨーロッパ
【ストーリー設定】旅先で2人の女戦士が出会う。性格の違いなどから最初は打ち解け
合わないが、襲ってきた竜を協力して倒し意気投合して旅を共にする。共に宝を探したり
未開の村や秘境などを探索したりモンスターを討伐したりして絆を深め合う。
 ある程度旅が進むと7人の強力な敵集団がストーリーのボス敵として登場し彼らとの戦い
が中心の話になる。
【人物設定】
【ヒロインその1】・・・両手剣を使いこなす主に接近戦担当。美人だが男勝りで少々
荒っぽいが基本的に仲間(その2)思いのいい娘。いつも荒っぽいがいつもヒロイン2の
事を思いやっている。
【ヒロインその2】・・・魔法使いで主に遠距離戦担当。ヒロインその1の妹分的な存在
で控えめで優しい少女。普段は大人しいが内に強い熱意を秘めている。

【敵1】・・・大剣使いの青年。剣の腕も然ることながら魔法にも長けている万能の戦士。
7人衆の首領で他の6人を問題にしないほどの強さを誇る物語のラスボス的な存在。比類無き
戦闘力能力のみならず、常人では手に負えない荒くれ者達6人を統率するリーダーとしての
素質も兼ね備えている。当初は自身の腕を鍛えるため各地を放浪して強い相手を求め、見つけては
戦闘で勝利し、勝利した仲間は全て部下にしている。彼の配下の6人も全てこの様にして彼の側に
ついた。その反面で1度部下にした仲間達は思いやっており、部下の多くも彼に反感を持つよりも
支持する者の方が多い。

370 :
【敵2】・・・弓と短剣を用いた戦いと回復魔法を用いる女のダークエルフ。リーダーで
ある敵1を慕っており恋愛感情の様な好意も抱いている。7人の副首領で参謀的な役割を担う。
外見は美貌を持つ20代前半〜半ば程度の若い女性の姿だが、エルフなので実年齢は数100歳と7人
では最年長。女だてらに副首領の地位も伊達ではない高い戦闘能力を誇る。またエルフ特有の高い
生命力に加え高度な回復魔法も兼ね備えている為、大ダメージや重症を負わせて倒したつもりでも
すぐに回復してきて、なかなか倒れない。基本的に冷静で敵に対しても落ち着いた態度を取るが、
リーダーである敵1を侮辱されると酷く怒る。
【敵3】・・・火薬や毒等の化学兵器を用いた戦闘をする錬金術師。頭脳戦が得意で炎や爆発物や、
毒ガス、毒液等を使って敵を攻める。敵1と出会って仲間になる直前に戦場で戦えない姿となった敵4
を発見し、彼の脳を取り出してサイボーグにした男。敵4からは戦士生命を救った恩人として尊敬
されている。
【敵4】・・・かつては優秀な戦士だったが、戦いに敗れてに掛けた過去を持つ男。その際
に体は無残にも破壊され脳だけが生き残っている状態のところを錬金術師の3に発見され、
「再び戦えるように」と、脳だけを取り出して貰い、3の作った機械の体に入れられた。
サイボーグといっても巨大な塔を思わせる筒の様な体で7人中で唯一人間の姿をとどめていない
が、改造してくれた敵3の事はかなり尊敬している。塔の先端から炎を噴き出したり大砲の様に
金属片を発射したりして戦う。ロボットの様な機械的な音声で喋る。
 手足は無く移動は筒の下に取り付けられた車輪で行う。その姿はさながら「動く砲台」や
「生きた攻城兵器」を思わせる。その姿や戦闘方法などからも想像が付く様に、戦闘では主に遠距離から
建物や城壁を破壊する事を担当する。またメインの大砲の他にも脇に多数の小銃が取り付けられており、
建物でない人間に対しては小銃で攻撃する。地下からポンプの様に鉱石を汲み出して自動的に弾として
重鎮する機能があり、そのため弾切れになることは無い。

371 :
【敵5】神に仕える身でありながらも平然と生を行う邪悪な武装修道士。武器は法衣の
内側に隠し持っている、剣の様な長い刃の付いた鎖鎌。鎖を投げて標的の身体に巻き付かせ手繰り
寄せて刃で斬り付ける他に、鎖で相手を締めたり鎖を鞭の様にして相手を殴りつける等の攻撃方法がある。
鎖鎌は攻撃以外にも使い道があり、長い鎖の余った部分を法衣の下の身体に巻きつけて鎧(鎖かたびら)
として用いたり、刃の部分を投げて壁などに刺し込み、鎖を使って壁面を垂直方向に登るなど、防御や
移動に用いたりもする。修道士なので薬草や毒草等の研究も行っており、それらから摘出した毒は鎖鎌
の刃の部分に塗りつけたり、敵3に支給したりしている。また薬を体力回復に用いる事もある。
【敵6】白兵戦に特化した三刀流の使い手。2本の長剣を左右の手に1本ずつ持ち、3本目を
口に銜えて装備する。表では武器商を営む柄の悪い青年。能力は攻撃力と素早さが高い。
【敵7】敵4を除けば圧倒的な巨躯を持つ筋肉質な体の大男。オーガの様にも見えるがれっきと
した人間。鎖を付けた鉄球や金属製の棍棒などを用いた力押しの戦い方をするが、素早さや
機動性は低く攻撃のスキも大きい。単細胞で乱暴な性格、頭脳戦は苦手としている。イカツイ
外見に反して7人中で最も弱い事とされている。

372 :
マンコからサリンガス噴出

373 :
MI/KU/MIがすごい好きです
今でもたまに読み返してます。ぜひ新作書いてもらいたい・・・

374 :
age

375 :
ロボットモノを書いてる。
「レッドオクトーバーを追え」とか「茨の城」クラスのを書きたいが、作風が特救指令ソルブレインになってしまうな。

376 :
sageのふりしてあちこちあげんな豚ババア

377 :
2chでしかも根釜の多いこの板でw

378 :
あげ

379 :


380 :
ほいどうぞ
http://adultbody.info/

381 :


382 :
某投稿サイトで未来の日本を舞台にした魔法学園もの書いてる
最底辺だけど

383 :
>>382
タイトルよろ

384 :
あんまり見せられたものじゃないが、それでもいいのか?

385 :
>>384
亀すぎだけどいいよ

386 :
>>385
じゃあタイトル貼ってみる
期待外れだったらごめんよ
「金木犀の見守る下で」

387 :
>>386
亀すぎてさすがにレスないかとおもったら
ありがとう、見てくるわ

388 :
>>386
折角だし感想書く
文章はもう少し地の文の割合が多いほうがいいと思う
少し説明不足が目に付くけど、
なろうで掲載するならこれでいいのかもしれない
キャラクターについては特に問題はないと思うけど
三人称だし主人公いない場面ももう少しあってもいいかも

気になった点をいくつかあげるなら
主人公が魔法をすぐに使えなかった理由とかは用意してたほうが良かったと思う
魔法は誰でも使えるのかな、魔力がない人も覚醒できるみたいだし、
その割りに覚えてる村人はすくなそう
それと年月がたってるとはいえ国が日本なせいか
文明機器がないわけでもないのに主人公がケーキなど食べるたことがないってのは不自然で、
異世界のほうがよかったかもしれない

百合については
個人的には梨恵×智観に一番萌えた
多分作者の狙いからはずれるんだろうけどw
やっぱ一番初めに出てくるってのがでかいのかな
掲載してる分最後まで読めたし良かったと思うよ
上から目線っぽくてスマン

389 :
>>387-388
ちょっとリアルでいろいろあって家を空けていて、さっき帰ってきました
読んでくれてありがとう!
>文章はもう少し地の文の割合が多いほうがいいと思う
>少し説明不足が目に付くけど、
>なろうで掲載するならこれでいいのかもしれない
一応全体の20〜30%が会話文になるくらいを目安にして書いてます
別所では一から十まで書き過ぎだとか言われたこともありまして……まぁその辺りは色々と模索中です
>魔法は誰でも使えるのかな、魔力がない人も覚醒できるみたいだし、その割りに覚えてる村人はすくなそう
あ、やべ……
その辺の整合性取るの忘れてた;
とりあえず今後は
・人為的に魔力を植え付けてもらうこと自体は可能
・ただし特殊な設備やら専門の技術者やらが必要なので金がかかる
・富裕層以外が魔力を得るには、学園に入るかくらいしか道が無い(遺伝は別)
という設定で行く方針です
>文明機器がないわけでもないのに主人公がケーキなど食べるたことがないってのは不自然で
えーっとその辺は、過去に色々あって道路やら鉄道も軒並み使えなくなってしまい(ついでに幾つかの大都市も)まして、
200年くらいのうちに復興は進んだけれど、都市部と農村部(特に内陸部)での格差が凄まじいことになっているという設定です
(この辺の設定さっさと作中で語っておいた方が良いかもしれない)
>百合については個人的には梨恵×智観に一番萌えた
>多分作者の狙いからはずれるんだろうけどw
これはちょっと予想外かもしれないw
まぁ彼女は貴重なお姉さんポジションのヒロイン(のはず)なので、もしよろしければお付き合い下さい

390 :
読んだ
地の文は説明が多くて描写があんまないんだな
特に10話まで説明しておきたいと思ってることが多すぎるっぽい
それ以降はだいぶ落ちついてるし
ようやく舞台が整ってこれから、ってとこかな

391 :
個人的には説明はこれぐらいあってもいいのだけど多く思える人もいるかな
戦闘に関しては描写はこれぐらいでもいいとは思うけど
景色など普段の描写がすくないかな
説明に関しては元の日本の人口→現在の日本人口とか書けば
文章をあまり増やさなくても
読み手に世界観が想像しやすくなるし、復興具合も分かりやすくなるかなと思う

392 :
小説家になろう
もう少し当たりが欲しい
タグでガールズラヴとか百合とか書いてあっても前々ちがったりするのはせめて辞めて欲しい

393 :
もう反応無いだろうと思っていたのに、見てみたらレスが来てた!
ありがとうございます
>>390
>地の文は説明が多くて描写があんまないんだな
結構痛いところを…
それなりには描写してるつもりだったんですが不十分ですかね
少しずつ増やすように意識はしてます
>ようやく舞台が整ってこれから
今では方向性も定まってきました
具体的には百合方面に
>>391
好きに書きつつですが、描写を増やそうと(少しだけ)意識しています
>>392
俺のってやっぱり薄いのかな…

394 :
>>393
いや百合以前に男主人公だったり、
女主人公だけど相手は男だったりすることがある

395 :
>>394
うわぁ…
それはひどい

396 :
>>395
読者を釣る為に入れてる節があるからな。ガチなのが欲しいなら同性愛、レズで検索すると良い

397 :
>>396
完全な百合百合詐欺じゃないか
今のところそういうのは踏んだ経験ないけど…
それとツールで自キャラのイメージ画像とか作ってみたんだが、やっぱ自分のキャラは愛着が違うね

398 :
一応、百合要素はあっても当て馬とか一発ネタなのが殆どだからな
禁断禁断騒いでワタシニソンナシュミハナイってやれば百合になると思ってる奴は多い

399 :
>>398
ほんとマジでそんなんばっかな気がする
それなら出すなよって思うわ

400 :
>>398
百合が当て馬なのって俺にしてみれば「男の良さを(ry」に次ぐレベルの地雷
>>399
百合書きの母数が増えれば状況も変わるかもしれないけど……
見込めそうにはないわなぁ

401 :
>>400
百合って個人サイトで書いてる人が多いし個人サイトのほうで読んだほうがいいね

402 :
>>401
「」確かにな

403 :
さて困った
主人公と友達2人が互いに良い関係なんだが
ここから恋愛に発展させると必ず誰かがあぶれてしまう
かと言ってハーレム展開にだけはしたくない
一応、今の関係も崩れずに恋愛に発展させる流れを考えたには考えたが…
投稿したらお気に入りがガッサリ減りそうな気もする

404 :
>>403
読んでないからなんとも言えないけど
基本的に最初に登場したほうとくっつけたほうがいいと思う

405 :
あぁクソ
周囲の風景とかの描写むずい
どうしても少なくなりがちだ…
>>404
402だけど、書き進めてたら結局そうなったわ
主人公の周りの人間の方が、主人公よりも百合ってるような状態になってきてるけど

406 :
もう見てる人はいないかもしれないが、
どんな百合が好き?現代物とかファンタジー物とか

407 :
>>406
百合物は現代物が多いし
たまにはファンタジー物がよんでみたくなるな

408 :
女騎士と姫の百合見たいなあ
魔女とか悪魔っ娘との三角関係があると尚良い

409 :
>407、408
意見ありがとう、参考にさせてもらいます。
でも三角関係は力量が追いつかなくて無理そう…(´・ω・`)
その内駄文を落とそうと思うので、読んで貰えたら嬉しいです。
攻め視点と受け視点とどっちがいいのかなとか色々悩みつつ、考えてきますノシ

410 :
>>406
俺は現代でもファンタジーでも近未来ものでもいけるよ
でも
・過去のトラウマで男嫌いになって百合
・思春期の一過性の遊びみたいな扱いの百合
・百合百合詐欺
こういうのは勘弁
>>408
なろうでお気に入り登録してる小説に、まさに女騎士と姫の百合がある
ただ、一話の分量が少な目な上に更新停滞気味なんだよな…
(最近更新してない俺が言うのもどうかとは思うがw)

411 :
百合小説久しぶりにかきたいなーって気もするけど
またサイト立ち上げるのがおっくうでやっぱり断念してしまう

412 :
>411
此処に 落とせば 手軽で いい じゃないっ! (`・ω・´)+




だめ?

413 :
>>412
だめというかサイトつくれば
どれだけ人見に来てるかわかるし知り合いが出来たりするからね
モチベが2ch投下よりもあがる
ただし感想数は2chと大差がないという、寧ろ出来によっては2chのほうが反応あるときも…

414 :
>>411
なろうにおいで

415 :
サイト作るのが面倒なら、
・2chに投下(こことか、百合カップルスレ@エロパロ&文章創作板7とか)
・SS速報VIPにスレ立てて投下
・Arcadiaに投稿
・小説家になろうに投稿
あたりのどれかかな。
ああ、あとカプが女子高生×女子小学生とか、母娘・姉妹とか、ヤンデレ百合だったら
この板に専用スレあるのでそこに投下すると確実に感想レスもらえると思う。

416 :
Arcadiaで思い出したけど
百合は薄めだけどドラゴンテイルが面白いと思う
とりあえず自分で書くかどうかは保留しておきます
落ちが思いつかないので…

417 :
もう誰もここみてないのかな

418 :
見てるよ

419 :
ドラゴンテイルついにキスシーンきたな
まさかそこまでやってくれるとは思わなかったからうれしい誤算だ

420 :
かこかな。エロokなのかな?

421 :
ネタいうから小説かいて。エロあり

422 :
テス

423 :
え、書くんじゃなくて書いてなの?

424 :
半年くらい書く気そのものが起きなくなってたけど、先月あたりからまたやる気出てきた
遅くとも2週間に1回のペースでは更新したい
やっぱり百合は書いてて楽しい

425 :
リレー小説でやらないか?自分的には、魔法の力で透明人間になれる
ようにしてもらった女の子が、好きな先輩や女の子たちにHなことし
ていくのしたいなと

426 :
あまり変わったシチュエーションだと走る人少なくなるかも
本当にやるつもりならオーソドックスな現代学園ものとかの方がいいんじゃね?

俺はやるとは言ってないよ

427 :
とりあえず書いてみる。下手糞なんで、下手でいいから続きおねがい(^−^)b
題名いるかな?題名しょぼいけど、
「魔法少女ルリちゃん」
私、立花真由美16歳高校2年生。通学中、わけのわからん小学生みたいな
こに、魔法のステッキをもらったの。
私立百合百合女学園・・
(この魔法のステッキは、なんかいろいろな魔法を使えるらしいわ
もちろん私は世界で一番大好きな、生徒会長の高屋敷静香様に
つかうわ)
(これで静香様と、ラブラブでHで百合百合な生活を送れるわ!)
真由美は、三年の麗しの静香様の教室にいき、入り口でステッキを
出す。
「時間よ止まれ!」
「!?」
(す、すごい・・教室の時間というか、学校中の時間が止まったわ!)
おそるおそる想い人にちかづく。そして、座っている静香にキスをした。
誰か続きたのむー!<(_ _)>

428 :
補足
この生徒会長は、成績優秀で美人で全校生徒のあこがれ

429 :
誰もかかないしリレーはおわり。俺一人で書くわ

430 :
でもかこうとするとめんどくさくなるな。反応ないと萎えるし。
やっぱリレー小説にして誰もかかないときは俺がかくて感じにしよかな。
それがいいよね。だからやっぱリレー小説で。>>427の続きでおねがい

431 :
友達の少ないゲイとレズに親しげに近づいてくる
ダウン症顔のぶすオナベの
りゅうちん こいつには本当に気を付けろ!
ぼったくりバーと裏で組んでいて、そこに連れていかれたり、
違法ハーブやクスリ等も売りつけてくる。
本人もクスリのやり過ぎで意識が朦朧としてる事多いので、
ヤバイ人物だと気が付くが、たまに気が付かない人がいて
そういう人は徹底的に金をむしられる。
金をむしられて、クスリ漬けになった人も
りゅうちんの仲間となって、また別の誰かを闇社会に引きづり込んでる。
この書き込みが警察の目に付くか、誰か警察に通報してくれればいいのに。
一人でも被害者が減ることを願うのみです。

432 :
去年から連載してたやつがようやく節目に差し掛かってきた
これが終わったら一旦完結扱いにして別の作品書き始めようかな

433 :
リレー小説もだめか・・

434 :
>>427 の続き
そのとき
「カシャッ☆」
携帯カメラのシャッター音がした。
不吉な音に硬直しながらも、恐る恐る振り向く真由美。
そこには
「ゲットおおおお! ベスト百合チュウショット、ゲットですううう!」
今朝、通学路で会った魔法少女ルリちゃんが
歓喜の雄叫びを上げていた。
「え、あの、その」
呆然自失、よろめきながらも、ルリちゃんに近づく真由美。
「その、携帯を、よこ、しな、さ・・・」
「よこしませーん!!」
ゾンビの如き真由美をヒラリとかわすと、
ルリちゃんは、携帯の液晶画面を印籠のように突きつけて叫んだ。
「この写真をバラまかれたくなかったら、
私に協力していただきます!」
「ま、詳しくは後ほど」
素っ気なく言い捨て、廊下に出て行くルリちゃん。
と、魔法のバトンからけたたましいアラーム音が鳴り響く。
「それ、魔力限界です。もうすぐ時間が動き出しますよ」
我に返った真由美は急いで教室を飛び出した。
廊下に居たはずのルリちゃんの姿は既に無かった。

435 :
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120601/crm12060111230006-n1.htm
元交際相手の兄に暴行したとして、千葉県警木更津署は6月1日、暴行の現行犯で
福島市南沢又、刑務官、高野舞容疑者(21)
を逮捕した。同署によると、高野容疑者は戸籍上は女性だが、男として千葉県木更津市に住む女性(19)と交際。
性別を打ち明けられた女性が別れ話を切り出し、こじれていたという。同署の調べに対し、高野容疑者は
「女性と会わせてくれず、もみあいになった」と供述しているという。逮捕容疑は、1日午前3時20分ごろ、
女性宅を訪問したが面会を拒否され、対応した女性の兄(23)のシャツをつかむなどしたとしている。
通報を受けて駆け付けた同署員が現行犯逮捕した。
女性はいとこから男性として高野容疑者を紹介され、昨年2月から交際。
同年12月ごろに高野容疑者は自身が女性であることを打ち明けた。
女性は交際をやめようとしたが、高野容疑者は認めなかったという。

436 :
なろうのI wanna be happy読んでるけど結構面白いな
下手にキャラ増やしまくったりもせずこのまま行ってほしいものだ

437 :
蒼海のアルティールって誰か読んだ?
これ百合なのかな
長編だからそこのとこ調べて読みたいが

438 :
>>437
感想見る限り百合っぽいらしいけど
感想はネタバレオンパレードなので見るなら自己責任で
作者曰く百合ははじめて書いたからよくわからないらしいけど

439 :
過疎すぎる

440 :
百合もので修行要素や戦闘重ねていって強くなっていくような話が読みたい
自分で書くしか無いのか

441 :
>>434の続き
真由美は憂鬱な気分で下校した。
家に帰りベッドの上で寝転がり天井を眺めていた。
あんな写真がばらまかれたらもう学園にはいられない。
突然「やっほーー!」
耳元で大きな声がした。
ルリちゃんだった。
「どこから入ってきたの!」
「いいから、いいから。お願い事があるんですよー。
かなえてくれたら写真をお返しします。」
ルリちゃんは真由美の耳元でささやいた。
「小学生のくせにそんな事がしたいの!」
「だってお姉様方は気持ちいい事なさってるじゃないですかぁ。
小学校じゃ、相手になってくれる子がいませんわ!」
「で、私に気持ちいい事をしてくれと」
ルリちゃんはポッと顔を赤らめた。耳まで赤くなっていた。
真由美は女子とそういう経験は無かったが、
写真の事を考えると、やってみるしかなかった。
「じゃぁ、裸になってくれる?」
「お願い・・・電気を消して」
「あんた、変なドラマの見すぎよ!女同士だからいいじゃない!」
ルリちゃんも真由美もはだかになった。

442 :
d

443 :
女の子に銃撃戦でもさせるか
そう思って書き始めたが未だ連載にまで至っていない……

444 :
wktk

445 :
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYwLuGCAw.jpg
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYqvWFCAw.jpg

446 :
連載開始
早く百合ん百合んなシーンにまで進めたい

447 :2013/04/09
楽しみにしてた女騎士とお姫様の物語がもう半年も更新されてない…
もう自分で書くしかないのか…
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