2013年10女向ゲー大人160: 選択肢を選んで1000レス目でED@大人板 (149)
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選択肢を選んで1000レス目でED@大人板
- 1 :2007/07/18 〜 最終レス :2012/10/21
- ・リレー形式で話を作れ
・話の最後には主人公の次にとる言動の2択〜4択の選択肢をつけること
・選択肢は1つのみ選ぶこと(複数選択不可)
・次に進める人は選択肢を選んだ後それにあった話を作り、1000レス目でエンディング
・途中にキャラ追加、話まとめなどO.K.
・誰とくっつけさせようが話を作る人の自由
・話を続けるときは名前欄に通し番号を入れること(何レス目かすぐに分かるように)
・流れを読めない人の途中EDは無効
初期設定
吉川 真理(ヨシカワ マリ):主人公
佐久間 洋(サクマ ヨウ):主人公の幼馴染 超ポジティブな思考回路の持ち主
一般版にあったので立ててみる。
落ちなかったら次スレは>>970 か 480MBで
- 2 :
- <OP>
先日、女手一つで私を育ててくれた母がんだ。
母の残した遺産がそれなりにあり、相続税を支払っても卒業まで学校に通い生活することが出来ると、弁護士さんが言っていた。
まだ学生の身だから保護者になってくれる人が必要だけれど、今の所名乗り出てくれる親戚はいない。
「おい真理、大丈夫か?ちゃんとメシ食ってるか?」
ぼんやりとしているといつの間に来たのか、幼馴染の洋が私の顔を覗き込んでいた。
「玄関、鍵あいてるぜ?呼んでもでてこねーし、しっかりしろよ?っていっても、今はまだ無理か」
洋はため息をつきながら、私の隣に座る。
「ここにいるのが辛いなら、しばらく俺んち来いよ?母さんもお前のこと心配してる」
@「大丈夫、心配しないで」
A「そうしようかな…」
B「少し、考えさせて」
- 3 :
- 一般版見てきた、てかすでに向こうは500レスになろうとしてるね。
しかも話が壮大になってるw
こっちはどうなるのかちょっと楽しみだ。
とりあえず
B「少し、考えさせて」
私は洋に少し笑ってみせる。
洋は私の言葉に少し苦笑すると、ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でる。
私を元気付けるときの洋のクセだ。
「それじゃ、今日はメシだけでも俺ん家で食えよ。母さんがお前連れて来いってうるさいんだ…」
顔をしかめて洋が言う。
おばさんにもすっかり心配をかけているみたいだ。
@「それじゃあ、ご飯だけ」
A「今日は遠慮するよ」
B「そんなに心配しなくても大丈夫だって」
- 4 :
- >>1だけど、こっちもちゃんとつながっていけばいいとおもう。
@「それじゃあ、ご飯だけ」
私が頷くと、洋はニッっと笑って勢いをつけて立ち上がった。
「よし!そうと決まったら家いこうぜ!」
私は目を丸くする。
行くといってもまだ昼の3時を過ぎたばかりで晩御飯にはだいぶ早い時間だ。
@「もう行くの?」
A「5時位になったらいくよ」
B「やっぱりやめようかな…」
- 5 :
- @「もう行くの?」
驚く私に、洋は当たり前だという顔で言う。
「思い立ったが吉日っていうだろ?」
「確かにそういうけどさ…」
相変わらず思ったら即行動の幼馴染に私は苦笑するしかない。
「ほら、行くぞ」
洋はまだ座ったままの私の腕を掴むと強引に立たせ、引きずるように引っ張る。
@「痛いって」
A「逃げないからそんなに引っ張らないで」
B「仕方ないなぁ」
- 6 :
- B「仕方ないなぁ」
こうなると洋をとめることは難しい。私は肩をすくめておとなしく洋の後に続く。
「おい鍵どこだ?」
玄関まで引きずられるようについて来たが、洋に言われすっかり鍵のことを忘れていたことに気づく。
こんな事を忘れるなんて自分で思っているほど、大丈夫じゃないのかもしれない。
鍵は確か…
@リビングのキーボックスの中
A玄関の靴箱の上
B自分の部屋の机の上
C玄関の外の植木鉢の下
- 7 :
- @リビングのキーボックスの中
家の鍵はすべてキーボックスの中にまとめてある。
「リビングにあるから取ってくるよ」
「おう、早くしろよ」
洋を玄関に残し、私はリビングへ行く。
キーボックスから、家の鍵を取り玄関へ戻る。
洋はすでに靴を履いて立っていた。
私の姿を見て確認するようにたずねてくる。
「他んとこも戸締りは大丈夫だろうな?」
@「うん、大丈夫」
A「もう一回確認してくる」
- 8 :
- @「うん、大丈夫」
靴を履きながら返事をすると、洋は頷いて外に出た。
続いて私も外に出て、鍵をかける。
洋の家は私の家の左斜め向かいにある。
それこそ小さい頃はお互いの家に良く行き来していて、ご飯を食べたり互いの家に泊まったりしたものだ。
「ただいま」
数歩の距離を移動して、洋は自宅の玄関の戸を開ける。
「おじゃまします」
「おかえり、あ、真理ちゃんもいらっしゃい」
洋の声に奥から顔を出したのは…
@洋の兄
A洋の父
B洋の母
- 9 :
- @洋の兄
洋の兄の海(カイ)が私を見て声をかけてくる。
いつも眠そうな顔でぼんやりした話し方をする人だ。
私とは2つ違いの幼馴染。
「お、兄貴帰ってきてたのか」
「うん、さっき」
そういえば母の葬式でも海の姿を見なかった気がする。
ショックでお葬式のことをほとんど覚えていないから確かなことはいえないけれど。
@「どこに行ってたの?」
A「今は何をしてるの?」
B何も言わない
- 10 :
- @「どこに行ってたの?」
海は誰にも言わずにふらりとどこかに出かけてしまうクセがある。
しばらく姿を見ないな、と思うときは大概どこかへ行っているときだ。
「木を見に」
そう言って、海はほやんと笑った。
「木?そんなもん見て面白いか?我が兄ながら相変わらず変な奴だな」
海の言葉に、洋が理解できないというように肩をすくめる。
歯に絹を着せない洋に私は…
@たしなめる。
A同意する。
B無視して海に話を聞く。
- 11 :
- @たしなめる。
「洋そんな言い方ないでしょ?」
「へいへい」
洋は気分を害したように、ふいっと顔をそらした。
そんな洋にはお構いなしに、マイペースで海はおいでおいでと手招きする。
「お土産があるんだよ」
「…そんなん後でもいいだろ。真理、俺の部屋行こうぜ」
@お土産を見る
A洋の部屋にいく
Bおばさんに挨拶に行く
- 12 :
- ごめん、sageわすれたorz
- 13 :
- つーかこれってエロ入れていいの?
Bおばさんに挨拶に行く
「待って。わたし、おばさんに挨拶してくる」
「それこそ後でもいいだろ。ホラ、行こうぜ」
洋は私の手を掴んだ。意外に痛い。
まったく、こういうとこ昔から変わらないんだから・・・
@「わかったわよ。いきましょ」
A「もう!聞き分けないこと言わないで!」
B「海くん、なんとか言ってよ」
- 14 :
- >>13いいんじゃない?大人版だし。
まあエロなしでも面白ければ私はいいとおもうけど。
A「もう!聞き分けないこと言わないで!」
私は腕の痛みに顔をしかめながら洋をにらんだ。
「おばさんが私に会いたがってるって言ったのは洋だよ?」
「そんなん、メシのときでも会えるだろうが」
「だからって、挨拶しなくて良いってことにはならないでしょ?」
「まあまあ、二人とも喧嘩しないで」
言い合いを始めた私たちを、海がどうでもよさそうに止めてくる。
@「海、もっとビシっといってやってよ」
A「とにかく、挨拶をしてきうるから」
B「なんだってそんなに部屋に行きたがるのよ」
C「はぁ、もう帰ろうかしら…」
- 15 :
- Aの選択肢
挨拶してきうるから×→挨拶してくるから○ です
- 16 :
- >>1だけど、そういう流れになったらエロもおk
A「とにかく、挨拶をしてくるから」
私がそういったとき、台所からおばさんが顔を覗かせた。
玄関先でこれだけ騒いでいれば当たり前といえば当たり前だ。
「あら、真理ちゃん!いらっしゃい」
おばさんはエプロンで手をふきながら、玄関までやってくる。
「こんにちは、おじゃましてます」
「来てくれてうれしいわ!…あら、ちょっと痩せたんじゃない?」
「そうですか?自分ではわからないですけど…」
「お母さんが亡くなってつらいのは分かるけれど、ちゃんと食べないとダメよ?」
「はい…」
「母さん、そんな話後でいいだろ」
話が長くなりそうだと思ったのか、洋が口を挟んでくる。
「あら、洋、真理ちゃんを独り占めする気?ずるいわよ」
「ねえ、真理ちゃんお土産いらない?」
@洋の部屋に行く
Aおばさんと話をする
Bお土産を見る
- 17 :
- @洋の部屋に行く
「おばさん、ごめんなさい…」
洋の不機嫌そうな顔に、ついおばさんに謝ってしまう。
「まったくこの子は…。仕方ないわね、食事のときにでもゆっくり話をしましょう。ね、真理ちゃん」
おばさんはあきれたように肩をすくめると、台所へ戻っていく。
「よし!それじゃ行こうぜ!」
途端、機嫌のよくなる洋に思わず…
@笑う
Aあきれる
B怒る
- 18 :
- Aあきれる
「もう…」
私はため息をついた。だが洋はそんなことまったくおかまいなしで、先に立って歩いていく。
同じ歳のはずなのに、弟みたいだ。私はまた小さくため息をついて、洋についていった。
洋ががちゃりと部屋のドアを開け、中に入る。勝手知ったる幼なじみの部屋、ここは相変わらず
@「ちらかってるわね…いつから掃除してないの?」
A「さすが、いつも綺麗にしてるよね」
B「あれ、模様かえしたの?」
- 19 :
- B「あれ、模様かえしたの?」
「おう!どうよ?」
前回来た時とは様相がすっかり変わっていた。
以前は何が良いのか、どこが気に入っているのかわからないようなものがたくさんおいてあった。
それが今はえりすぐりと思われるものだけが残され、綺麗にすっきりと片付いている。
@「前の部屋のほうが好きだな」
A「居心地よさそうね」
B「なんか心境の変化でもあったの?」
- 20 :
- A「居心地よさそうね」
私は洋の部屋に入りながら、答える。
少なくとも、前のごちゃごちゃした部屋よりは落ち着く。
「そうだろ!?」
洋はうれしそうに笑う。
その笑みはとても洋らしい笑い方だったけれど、変わった部屋は洋らしくない気もして、別の意味で落ち着かない。
私は
@いつもの場所に座る。
A机に近づく。
B動くのをためらう。
- 21 :
- @いつもの場所に座る。
家具の配置が少しかわって物が少なくなっても、ミニテーブルの位置は変わっていなかったため、私はいつものように、その前に腰を下ろす。
洋は部屋のミニ冷蔵庫を開けて、コーヒーとミルクティの缶をとりだすと、ミルクティを私に放ってよこす。
「ほら、いつもんやつ」
「ありがとう」
私はそれをキャッチして…
@すぐに飲む
Aテーブルに置く
- 22 :
- @すぐに飲む
私はすぐに口を開けると、一口、口に含む。
(うわ…)
冷たいミルクティーが体の中を落ちていくのがわかる。
そういえば、今日は朝ごはんを少し食べただけで他は何も口にしていない。
(これじゃ洋やおばさんに心配されてもしかたないか…)
一口だけ飲んだ缶をテーブルに置く。
それにしても、洋はなんでこんなに私を部屋に連れてきたがったのだろう。
@率直に聞く。
A遠まわしに聞く。
B洋が言うまで待つ。
- 23 :
- @率直に聞く
「ねえ、洋」
「なんだ?」
「なんでそんなに部屋に行こうって誘ったの?何か相談事でもあるの?」
私ははっきりと聞いた。
気になることはすぐに確かめないと気がすまない性格は昔から変わらないな
と自分で思う。
「いや・・・まぁ、その・・・なんつーか」
どうも歯切れが悪い洋に内心ちょっとイラつきながら
@「何?私でよければなんでも言って?」
A「あ・・・ごめん。また悪い癖が出ちゃったね。嫌ならいいよ、言わなくて」
B「もしかして恋の悩み?彼女のこと?」
- 24 :
- @「何?私でよければなんでも言って?」
率直に何でも言う洋にしては珍しく、口ごもっている。
「あー、えっと…今こんなこと言うのもなんだっておもうんだけどさ」
「なに?」
私が促すと、洋は一気に話し始める。
「お前、これからあの家に一人だろ?女一人って言うのも不安だし、これから俺ん家で暮らさないか?あの家にお前の思い出とかいっぱいあって離れがたいっていうのは分かるけど、俺心配なんだ」
「洋…」
洋は洋なりに、私のことを考えてくれたらしい。
@「…わかった」
A「考えさせて」
3「せっかくだけど…」
- 25 :
- A考えさせて
私は、この洋の提案に思わず飲んでいた紅茶を噴出しそうになった。
洋はやっぱり子供だ。
よくよく考えもせずに、こういう大切なことを簡単に切り出す。
まあ、心配してくれているのはよく判るんだけど…。
「ねえ、今のこと叔父さんや叔母さんに相談したの?」
「い、いいや」
「洋はいつもそうだね。後先なんてお構いなし」
「そんな言いかたは無いだろ。俺はお前が心配で…。だから…」
洋は顔を真っ赤にして拗ねている。年齢より幼く見える顔がますます幼く見える。
@(ちょっと、言い過ぎたかも…)
A(この顔見ちゃうと虐めたくなっちゃう)
B(お話にならない)
- 26 :
- @(ちょっと、言い過ぎたかも…)
まあ、私を心配してくれているのは良くわかる。
拗ねる洋に思わず苦笑してしまう。
そのとき、洋が良いことを思いついたというように、パッと笑った、
「そうだ!逆なら良いだろ?俺がお前んちに行く!」
「は?」
「お前んちになら何回も泊まってるし、父さんと母さんもダメって言わないだろ。女の子一人で心配だっていうのは母さんも言ってた事だし」
そうだそうしよう、と洋は笑う。
@「ちょっと、勝手に話を進めないでよ」
A「洋、そんなに私と一緒にいたいわけ?」
B「それなら…、いいかな?」
- 27 :
- @「ちょっと、勝手に話を進めないでよ」
私は慌てて洋を止める。
「なんだよ、良い考えだろうが」
「さっきも言ったけど、いま洋が勝手に考えただけでしょ?おじさんやおばさんにちゃんと聞いて…」
「もちろんちゃんと聞くさ。二人が良いっていったら、決定な!」
私の言葉を最後まで聞かず、洋はそう言って、コーヒーを飲み干す。
@「私の意見は聞かないの?」
A「私は嫌よ」
B「おじさんとおばさんが良いって言うなら、いいわ」
- 28 :
- @「私の意見は聞かないの?」
洋の強引さに呆れながら、その無邪気さを羨ましく思った。
そんな気持ちを悟られまいと、ワザと大きな溜息を吐いて見せる。
「じゃあ、お前の意見を言ってみろよ。俺と住むのが嫌なわけ?」
拗ねた声で尋ねる洋は、持っていた缶をゴミ箱に投げつけた。
入り損ねた空き缶が、乾いた音を立てて壁にぶつかる。
「そんな事言って無いじゃない。ただ…」
「ただ何だよ」
「洋は大事な事を忘れてる」
「大切な事って?」
私はそこで言葉に詰った。
(そりゃあ、私たちは幼馴染で、小さい時は一緒に寝たり、お風呂にも入ったけど…)
「洋は男で、私は女だよ!」
自分で言った言葉の恥ずかしさに、体がカッと熱くなる。
洋も見る見る間に顔を真っ赤にしていく。
短い沈黙すら苦しくて、次の言葉を続けようとした時、ノックもなしに部屋の扉が開いた。
そこに居たのは、
@叔母さん
A海
Bねこ
- 29 :
- A海
「兄貴…」
「海…」
「ねえねえ真理ちゃん、これあげるよ」
相変わらずマイペースな海は、一枚の写真を私に差し出した。
「兄貴、入るときはノックくらいしろよ」
我に返ったのか、洋が海に食って掛かる。
「うん、でね、これかわいいでしょ?」
「兄貴…」
洋の言葉を軽くながし、海は私に写真を見せてくれる。
洋はあきらめたのかため息をついて、私の後ろに回ってくると写真をのぞきこんだ。
海が持ってきた写真は、花の写真だった。
木に咲いている花とそのつぼみがアップで収まっている。
その背景は、抜けるような青空でとても綺麗だ。
@「この花は?」
A「これが見に行った木?」
B「わぁ、綺麗」
- 30 :
- A「これが見に行った木?」
白い花はどこかで見たような気もするけれど、何の木なのか分からない。
「そうだよ。丁度花の時期だったからね、実がなる時期には又行きたいな」
海はそう言って目を細める。
「何の木なんだ?」
洋が海から写真を取り上げると、まじまじと眺める。
「りんごだよ」
「へえー」
「りんご、真理ちゃん好きだよね」
@「うん、大好き」
A「良く覚えてるね」
B「まさか、だからわざわざ行ってきたの?」
- 31 :
- B「まさか、だからわざわざ行ってきたの?」
「そうだよ」
海はそういってあっさり頷くと、洋が持ったままの写真を取り返し私の手に移す。
「だからこれは真理ちゃんに。そうだ、実が生る時期になったら今度は真理ちゃんも一緒に行こうね。どう?少しは元気になった?」
海はそういってにっこり笑った。
どうやら海は母がんで元気がなくなった私を慰めようとして、わざわざ写真を撮りに行った様だ。
海は相変わらず他の人が考え付かないような行動をする。
にしても…
@(どこまで写真を撮りにいったんだろう?)
A(他にも好きなものはあるのに何でりんご?)
B(海にはいつもびっくりさせられるな…)
- 32 :
- B(海にはいつもびっくりさせられるな…)
たとえそれが普通の人には理解されない行動でも、一応意味はある。
海はこうやって良く写真を撮ってくる。
今はフリーのカメラマンだ。
もっぱら風景ばかり撮っているが、知り合いに出版社に勤めている人が居るらしく、ちょくちょく使ってもらっているらしい。
今では海の写真のファンからファンレターが届くときもあると、おばさんが話していた。
(ただ、これをもらって元気になるかといわれれば…)
@ならない
A微妙だ
Bなる、かな?
- 33 :
- A微妙だ
わざわざ私のためにというのはうれしいが、うれしい=元気ではない。
確かに、気分は少し上昇するけれど…。
「ありがとう、うれしいよ」
とりあえず、写真を受け取った写真にお礼を言う。
「どういたしまして」
海は立ち上がって扉に手をかけ、ふと思い出したように振り返った。
「真理ちゃん、昔の約束覚えてる?」
唐突に言われた言葉に、私は首を傾げる。
昔とはいつのことだろう…?
海と洋は幼馴染だ、昔から約束はたくさんしている。
ありすぎて覚えていないものもあるだろう。
@「いつ頃の約束?」
A「どの約束?」
B「覚えてないかも?」
- 34 :
- A「どの約束?」
約束といわれても、すぐに思いつくだけでも3つある。
今のこの状況で当てはまりそうな約束といえば、
『いつでも甘えること』
『つらいときは我慢しないこと』
『何かあったら頼ること』
どれも似たような約束だけれど、甘えるのが苦手で意地っ張りな私に、海は何かあるたびにこんな約束をさせた。
どれだろうと考える私に、海はいつもどおりの眠そうな顔で言う。
「うん、俺のお嫁さんになってくれるって約束」
「あー…」
そういえば、そういう約束もしていた。もちろん小さな子供の頃の話だ。
ガッターン
後で大きな音が聞こえて、振り返ると真っ赤な顔をした洋が海を見ていた。
「兄貴、いつの間にそんな約束…!」
「うーん?いつだっけ?」
本気で答える気がない海に業を煮やしたのか、洋は私に顔を向ける。
えっと…
@「小学校低学年くらい?」
A「なにそんなに真剣になってるのよ」
B「……いつだっけ?」
- 35 :
- B「……いつだっけ?」
かなり昔の話だ。
それこそ私が小学校低学年のあたり。
その頃には2歳年上の海はそれなりに分別もあったはずだが、どんな経緯でそんな約束につながったのかは覚えていない。
むっとしたままの洋に、私は苦笑する。
「良く覚えてないくらい昔の話だよ。子供の頃の」
「なんだ……」
「俺は、本気なんだけど?」
私の言葉に、洋がホッとしたようにため息をつきかけたとき、海が心外だといわんばかりに口を挟む。
「え!?」
思わず驚いた私と洋の声が重なった。
「こ、子供のころの話じゃない!」
「でも、約束は約束だよ?」
海はそういって微笑む。
@「確かにそうだけど…」
A「そんなの無効にきまってるじゃない!」
B「じ、冗談よね…?」
- 36 :
- B「じ、冗談よね…?」
微笑んだ海に恐る恐る尋ねる。
海の表情は動かない。
「え、えーっと…」
そういえば海は冗談をいうタイプではなかった。
口ごもる私をみて、海はふと表情を消す。
いつもの眠そうな顔に戻るとドアノブをまわす。
「今は、そういうことにしておいてあげる」
そういって、何事もなかったかのように出て行った。
パタンと扉の閉まる音が、静まり返った室内に響いた。
「おい」
「…なに」
「兄貴、本気だぞ」
「……」
それはなんとなく分かる。
@「でも、物心付く前のことだし…」
A「まぁ、海だったら良いかな?」
B「何とかあきらめさせよう」
- 37 :
- @「でも、物心付く前のことだし…」
そんな昔のことを今更持ち出されても正直困る。
確かに海のことは好きだ。初恋は海だったような気もする。
だけど、まさか本気で結婚だなんて・・・
嫌なわけではもちろんないけれど。
「まぁそんな昔のこと言われてもな・・・覚えてたの、兄貴だけじゃん」
「そうよね・・・」
黙ったわたしを見て、洋もちょっと真剣な口調で言う。
「とかなんとか言って、真理もまんざらじゃねーんじゃねーの?」
「うーん・・・嫌、ってわけじゃないのよ?でも・・・」
「まさか、お前好きなヤツいるの?」
@「いないわよ、そんなの」
A「いることはいるけど・・・・」
B「洋には関係ないでしょ」
C「・・・洋は?どうなのよ?」
- 38 :
- @「いないわよ、そんなの」
私はため息を付く。
もし好きな人がいたら、いくら幼馴染とはいえ男の家になど来ない。
いらない誤解を生むだけではないか。
「じゃあ、『でも』なんなんだよ」
疑問に顔をしかめる洋をみて、ふといたずら心が芽生える。
@「海と結婚したら、洋が義弟になるのよね…」
A「海と結婚したら、おばさんがお義母さんになるのか…」
B「海と結婚したら、一日中私から離れなさそうだよね」
- 39 :
- @「海と結婚したら、洋が義弟になるのよね…」
わざとらしく見えないように、ため息をついてみせる。
「…嫌なのかよ、………いや、喜ばれても…それは……けど…」
一瞬悲しそうな顔をして、すぐに思い直したようにぶつぶつと言っている。
それからなにか思いついたように顔を上げると、にっと笑う。
「それじゃ、逆はどうだよ?」
「逆?」
「俺と結婚したら、兄貴がそれこそ義兄になるんだぜ?」
海がお義兄さん…
@「…違和感ないような?」
A「…嫌かも」
B「どうと言われても…」
- 40 :
- @「…違和感ないような?」
今も海は兄のようなものだ。
さっきの「でも」の続きもそうおもったからだ。
海と恋人らしい付き合いはまったくしていない。
確かに海は私に甘いけれど、それも恋人に対するものとは違う気がする。
(…彼氏いない暦=年齢だから、実際はどうかわかんないけど…)
自己ツッコミして、少し落ち込む。
「へぇ?」
落ち込む私には気付かず、洋は急に機嫌がよくなる。
「なによ?」
「べつにぃ?」
にやにやと笑う洋は、こたえる気はないらしい。
こういうところは、海に似ている。
@「あ、そう」
A「言いなさいよ」
B「隠してもムダ。考えてることわかってるわよ」
- 41 :
- @「あ、そう」
私はあっさりと引き下がる。
途端、洋が面白くなさそうな顔をする。
海と洋が違うところといえば、こういうところだろう。
海ならばこんな態度をとっても、内心はともかく、表面に現れることはない。
洋は自分の思い通りに物事が進まなければ、途端不満そうな顔になるのだ。
「なに?」
「…なんでもねえよ」
こういう態度がかわいらしいと思ってしまう。
(そう考えてしまうって事は、洋が義弟でもぜんぜん問題ないのかも)
「なんだよ、にやにやして、気持ち悪いな」
考えが表情に出てしまったらしい。
@「なんでもないわよ」
A「気持ち悪いってなによ」
B「かわいいなーとおもって」
- 42 :
- B「かわいいなーとおもって」
「なっ…かわいいってなんだよ!?」
言った途端、案の定真っ赤になって言い返してくる。
「そういうところがかわいいのよ」
「…っ」
洋は思い切り言葉につまり、それからぐっと拳を握り締める。
「それは、男に言うセリフじゃないだろ!?てか、侮辱だ!」
そう言って力説する姿さえかわいい。
(うん、やっぱり弟がいたら、洋みたいな感じかも)
ムキになって向かってくるあたり、同い年とは思えない。
それに…
「洋って、男っていう以前に…」
@「幼馴染なんだよね」
A「犬、みたいな?」
B「うーん、やぱり弟?」
- 43 :
- A「犬、みたいな?」
「そして、海は猫かな」
「はー、何だよそれ。俺達を動物扱いするな!」
ますます怒り心頭の様子だ。
真っ赤な顔で怒る、洋の素直な反応に思わず笑みがこぼれる。
「そうやって、すぐムキになる所が子犬っぽいの」
私は洋のおでこを軽く弾いた。
「やめろよ。そうやって、直ぐ人をバカにする」
「あはは、ごめん」
「ふざけるなよ!人が真剣に話をしているのに」
傷ついたのか、洋は俯いてしまった。
足元を見つめたまま、こちらを見ようともしない。
その時私は
@もう一度でこピン
A言い過ぎたと反省
B冗談だと笑う
- 44 :
- A言い過ぎたと反省
(あ、言い過ぎちゃったかな…?)
言ったことはほぼ間違いなく本心だが、からかいすぎたかもしれない。
「ごめんごめん、バカにしたわけじゃないんだって」
足元を見つめたままの洋を下から覗き込む。
一瞬目が合ったが、洋はその目をそらした。
「…ほら、親しみやすいって意味で言ったのよ?それに私、子犬って大好きだよ」
にっこり笑って言うと、洋が視線を戻してきた。
それから、大きくため息をつくとぎゅっと私に抱きついてくる。
「え!?」
驚く私の肩にあごを乗せて洋がつぶやいた。
「ったく、俺がお前に気を使わせてどーすんだよ…駄目だな」
「…洋?」
「真理が一番つらいときなのに、なんかしてやろうと思っても結局こうなる」
@「どうしたの?いつもの洋らしくないよ」
A「特別何もしなくても、洋たちがいれば大丈夫だよ」
B「今のでも十分元気になったよ」
C「よ、洋、離れてっ」
- 45 :
- C「よ、洋、離れてっ」
段々、抱きしめられていることが恥ずかしくなって思わず体を離してしまった。
「あっ…。わりー」
洋は伸ばした手を所在なさげに引っ込めた。
と、突然、家の呼び鈴が鳴った。
私たちは誰だろうと顔を見合したところでおばさんが一階から私に声をかけてきた。
「真理ちゃん! あなたにお客様よ」
(洋の家にいるのに、私に客?)
不審に思いながら玄関まで下りると、見たことの無いスーツの男性が立っていた。
「あのー。どちらさまでしょうか?」
スーツの男性は一つ咳払いをすると、深々と頭を下げてきた。
「お探ししておりました。吉川真理様」
(は?…)
私は状況がうまく飲み込めず、目を丸くしてしまった。
@「どういった用件ですか?」
A「わ、私?」
B「あなた、もしかして…」
- 46 :
- @「どういった用件ですか?」
思わず警戒してしまう。
きっと不審者を見るような目になっている私に、男はスッと名刺を差し出して来た。
私は、それを受け取って見る。
(清水和明(シミズカズアキ)…)
「弁護士…?」
シンプルな名刺には、この清水という男が弁護士であるということしかかかれていない。
普通、名刺には事務所の住所やら電話番号やらが書かれているものではないのか?
困惑する私に、清水は口を開く。
「私は、ある企業の専属の弁護士をしております」
@「ある企業って?」
A「その弁護士さんがなにか?」
B「企業の名前、名刺に書いてないですけど?本物なの?」
- 47 :
- A「その弁護士さんがなにか?」
私の言葉に、清水と名乗る弁護士の眼が鋭く光る。
「吉川様、冷静に聞いていただきたいのですが…。あなたのお父様が先日亡くなられました。私はお父様である当社会長の遺言執行者として、ご親族に代わり、相続のご相談に上がらせて頂いたのです」
一気にそこまで言うと、清水は私の様子を伺うように中指の腹で眼鏡を上げた。
冷たい視線を受けながら、私の頭が真っ白になる。
(この人何をいっているの?私の父さんは私が生まれる前にんだ筈では…)
私はその疑問を清水にぶつけた。
「私の父は、私が生まれる前に亡くなったって母から聞いていました。だから、人違いではありませんか?」
声が震えるのを止めることが出来ない。
その言葉を予想していたかのように、にやりと清水は薄笑いを浮かべる。
「私共も、今回の遺言書の開封まであなた様のことを知りませんでした。しかし、色々調査をさせて頂いた結果、あなた様は間違いなく会長のご息女であられます。認知はされていませんでしたが…。あなたも何も聞かされていないようだ」
事務口調を崩さず、訳知り顔で話すこの男のことが段々頭にきた。
「バカなことばかり言わないでください。いきなり来て何を言っているんですか!」
感情を止めることが出来ずに、思わず怒鳴ってしまった。
「ですから冷静にと…。まあ、感情的にならず話を聞いてくれませんか?」
@「だって、あなたがヘンなことばかり言うから…」
A「は、はい。事情を説明してください」
B「もう嫌!だれか助けて」
- 48 :
- B「もう嫌!だれか助けて」
(認知されていなかったって…、それを今更!)
淡々と話を進める清水の言葉を冷静に受け止めることなんてできるわけがない。
私は何も聞きたくなくて、そのまま耳をふさいで座り込む。
(お父さんは私が生まれたことを知ったのに、ずっと放って置かれたんだ)
母が妊娠を隠して父に告げなかったのとは違う。
私のために何か援助してくれたという覚えもない。
母はいつも身を粉にして働いていた。
私だって母の負担を軽くしたくて、学校の許可を得て中学のときからバイトをしていた。
でも、母は過労が原因でんだも同然なのだ。
せめて母が生きている間に来てくれれば…!
「…困りましたね」
清水がつぶやくのが聞こえたが、私はもう何も聞きたくなかった。
いつもの私ならばこんなことはなかったかもしれない。
けれど、隠してはいてもやっぱり母ので弱っている心は冷静な思考を奪ってしまう。
そのとき、ふわりと抱きしめられた。
のろのろと顔を上げると、私をいたわる視線とぶつかる。
それは…
@洋
A海
B清水
Cおばさん
- 49 :
- A海
「真理ちゃん、大丈夫?」
「う、うん……。ありがとう」
海は私の肩をやさしく抱きしめると、清水の方に向き直って口を開いた。
「話は全部聞きました。うちの嫁になにをするんですか」
(ちょっ…か、海!)
私の動揺を他所に、海は話を続ける。
「弁護士だか、執行者だか知りませんが…母親が亡くなったばかりの真理ちゃんを追い詰めるのはやめてください」
普段はぼんやりとした海の視線が鋭く弁護士の清水を捕らえている。
「事は急を要しています。ご息女のお気持ちも察しますが、これは真理様だけの問題ではない。それをご理解されるべきだ」
清水と海の視線がぶつかり合い、お互い譲ろうとはしない。
「とにかく……今日のところはお引取りください」
海は弁護士の清水にきっぱりと言い切った。
@「そうです。帰ってください!」
A「海、ありがとう」
B「もう二度と来ないで!」
- 50 :
- @「そうです。帰ってください!」
「父の遺言?そんなの関係ないわ!
認知されてなかったって事は、私を娘と認めてなかったってことでしょう?
それを今更何だって言うの?もうんだ人だからって遺言なんて勝手なワガママに付き合ってあげる義理はないわ。
私はあなたが言う会長とやらを、父を認めませんから!」
言い切って肩で息をする私の背を海が優しくさすってくれる。
「ということで、帰ってください。母さん、塩!」
「はいはい」
「ほら、出て行けよ」
海の言葉に、おばさんが台所へと入っていって、洋が玄関を開けて清水を出て行くように促す。
「…仕方ありませんね、今日のところは帰りましょう」
清水はそういって出て行った。
「はいはい、もう二度とこの家に来るんじゃないよ」
塩をもって戻ってきたおばさんはそういって、塩を盛大にまく。
「真理大丈夫か?」
海に抱きかかえられている私を、洋が覗き込む。
@「大丈夫、ありがとう」
A「…ごめんね」
B「お父さんなんて…いまさらよ」
- 51 :
- B「お父さんなんて…いまさらよ」
呟いた私の頭を、洋がなだめるように撫でる。
「真理ちゃん立てる?ほら、リビングに行こう」
海がはそう言って私を支えてくれる。
リビングのソファに腰を下ろすと右側に海、左側に洋が座る。
「はい、真理ちゃん、お茶をどうぞ」
おばさんがそう言って入れてくれたお茶を受け取り、それを一口飲む。
そうして一口飲むごとに落ち着いていく気がる。
私がそうしてお茶を飲んでいる間、海も洋もおばさんも何も言わずに私を見守ってくれていた。
少し経って大分落ち着いた私は先ほどのことを思い返す。
@清水のこと
Aある企業のこと
B父とその親族のこと
C海の言葉
- 52 :
- @清水のこと
ピシッとスーツを着こなし、いかにも仕事が出来そうな出で立ち。
専属の弁護士と言っていたが、年のころは30半ばに見えた。
けれどどこか人を見下したような態度が言動の端に見え隠れしていて…。
(私は好きになれそうもないな…)
そして、清水の持ってきた話。
相続についてと言っていた。私だけの問題ではないとも。
ということは、きっと私のほかにも相続人が居るということだ。
「遺産の相続って、放棄できるのよね…?」
ぽつりと呟いた私に、洋は首を傾げ、海が頷いた。
「うん、確か三ヶ月以内に家庭所に届けるんじゃなかったかな」
「…兄貴なんでそんな事知ってるんだよ?」
「常識」
「…いや、ぜんぜん常識じゃないから……」
私を挟んで交わされる会話に、少し笑う。
「真理ちゃん、ちゃんと話を聞かないうちに決めてもいいの?」
おばさんが、心配そうに言う。
けれど他に相続人が居るなら、今まで存在すら知らなかった娘がいくらか相続するというだけで不快になるだろう。
@かまわない、放棄する
Aちゃんと聞いてから考える
Bやっぱり貰う
- 53 :
- Aちゃんと聞いてから考える
やっぱり安易に貰うとか放棄するとか決めるべきではないだろう。
私が生まれても認知すらしてくれなかった、存在すら知らぬ父親が
私に遺産を遺そうとしたのは何か理由があるにちがいない。
それに本音を言えば、くれるものは貰いたいという気持ちもある。
わたしはこれから一人で生きていかなければならないのだ。
大学を卒業するまでまだ間はあるし、どんなに綺麗ごとを言っても生きていくのにお金は必要だ。
「やっぱり、ちゃんと話を聞いてみます・・・本当の父というのも気になるし」
「そうよね。これからのこともあるし、ちゃんと話を聞いてから決めたほうがいいわね」
「くれるってもんは貰っとけばいいんじゃねーか?」
「洋!あんたって子は・・・!」
相変わらず無神経な発言をする洋を、おばさんがたしなめる。
「いいんです、おばさん。やっぱり現実問題としてお金は必要ですし。
明日にでもこの清水って人に連絡して、会ってきちんと話を聞いてきます」
「真理ちゃん、俺、ついていこうか?」
海が言った。
「兄貴が行くんなら俺も行く!真理のこと心配だし」
@二人についてきてもらう
A海にだけついてきてもらう
Bやっぱり自分の問題だから、一人で行く
- 54 :
- 注 文 書 注 文 請 書
注文番号 14-108
平成 19年 6月 20日 平成 年 月 日
金 額 ¥ 420,000 ー 金 額 ¥ 420,000 ー
うち消費税を除く金額 ¥ 400,000 ー うち消費税を除く金額 ¥ 400,000 ー
取引にかかる消費税 ¥ 20,000 ー 取引にかかる消費税 ¥ 20,000 ー
会社名 有限会社 伊藤組 御中 工事名称 (仮称)ハイアット台原外装改修工事
住所 登米市米山町字善王寺中新田134-1 注文内容 解体工事
工事名称 (仮称)ハイアット台原外装改修工事 工期 自 平成19年 6月 20日 至 平成19年 8月 25日
注文内容 解体工事 施工場所 仙台市青葉区台原3丁目29-7
工期 自 平成19年 6月 20日 至 平成19年 8月 25日 支払条件 毎月25日締切 出来高90% 翌々月 5日現金払
消費税は最終請求時にまとめて一括請求とする
施工場所 仙台市青葉区台原3丁目29-7
有限会社 コ ー シ ン 御中
支払条件 毎月25日締切 出来高90% 翌々月 5日現金払
消費税は最終請求時にまとめて一括請求とする
有限会社 コーシン 請 負 者 住 所
仙台市青葉区一番町1丁目8-1 氏 名
東菱ビルディング3階
代表取締役 鈴木 博
- 55 :
- ↑素で間違ったorz
スマン こっちで
A海にだけついてきてもらう
こういうことに洋を連れて行くと、感情的になりやすい洋は事態を悪化させる危険がある。
「海だけで大丈夫だよ」
「なんだよ、俺じゃ役にたたないっていうのか?」
「事実でしょ」
私に食って掛かる洋に、おばさんがお茶をすすりながらばっさりと切り捨てる。
「う…」
うなだれる洋。
「あれ、でも真理ちゃんどうやって連絡するの?名刺には連絡先書いてないよ?」
マイペースな海は私が持ったままの名刺を覗き込んで首を傾げる。
そういえば、そうだった。名刺には連絡先は書いていない。
@向こうが連絡してくるまで待つ
Aどう考えても怪しい、信用しない
Bみんなに意見を聞く
- 56 :
- ちょwwwwwwなんなんだよ一体wwwwwwww
- 57 :
- すまん、某板の
「今コピーしてあるものをペーストするスレ」に投下しようと思って間違ったんだ…
- 58 :
- wwwドンマイ
Bみんなに意見を聞く
「どうしましょう…」
困った私は海、洋、おばさんと視線をさまよわせる。
海は名刺を私の手からテーブルの上へと移動させた。
それを洋とおばさんも覗き込む。
「今のヤツ、新手のいやがらせとかじゃないのか?」
洋は胡散臭そうに名刺を見ながら言う。
「嫌がらせうけるような覚えないんだけど?」
私は洋を横目でにらみながらため息をつく。
今日一日で何度目のため息だろう。
「あら…、ここにロゴみたいなのが浮き出しになってるわよ」
おばさんが名刺の隅を指差して言う。
「あ、本当…」
私はそのロゴを良く見ようと名刺を手に取った。
「あれ、このロゴ…よく見るよな?」
洋が私の手元を覗き込み言う。アジサイだろうか花をデフォルメしたロゴだ。
「…都坂グループのマーク」
海が呟く。
「都坂グループ!?」
都坂グループといえばあらゆる方面に進出している日本屈指の企業だ。
そのロゴが入っているということは、父は都坂グループの会長だったということなのか?
@「やっぱり、いたずらかも…」
A「都坂グループの会長がんだってニュースになったっけ?」
B「お父さんって、もしかしてすごい人?」
- 59 :
- >>52都坂って、トサカ?ミヤサカ?
A「都坂グループの会長がんだってニュースになったっけ?」
都坂グループほどの大企業の会長が亡くなったなら、ニュースや新聞で取り上げられるはずだ。
少し前まで母の葬式などで忙しかったため、その当りよく覚えていない。
「…記憶にないわね」
おばさんが言いながら、首を傾げる。
「次の会長が決まってから発表するんじゃないかな。決まるまで伏せてるのかも」
海の言葉になるほど、と思う。
「それじゃこの弁護士が言ってた、事は急を要すってのはさ、遺言に次の会長は真理だって指名してたから、とかだったりしてな」
洋はソファに深く腰掛けなおし、冗談交じりに言う。
@「ちょっと、冗談でもやめてよ」
A「あはは、そんなわけないでしょ」
B「だったら今、都坂グループは面白いことになってるかもね」
- 60 :
- スマン 都坂=ミヤサカ のつもり
A「あはは、そんなわけないでしょ」
洋の言葉を笑い飛ばす。
大体まだ学生の小娘に、大企業の会長なんてつとまるわけがない。
それは会長を務めた本人が一番よく分かっているはずだ。
(学生で会社立ち上げる人も居るけど、それとはまた別だしね…)
「まぁ、あの清水ってヤツが都坂グループの弁護士ぽいってのは分かったけど、どうするんだ?」
「また来るって言ってたし、明日にでも来そうだけどね」
洋と海が言う。
「うーん…」
@都坂グループ本社に電話してみる
A清水が接触してくるまで待つ
- 61 :
- そして、通し番号わすれたor2
↑54です
- 62 :
- ミヤサカ了解!
てか、ここ二人しか書き込みしてないんか…?
少し前まで夜に書いてくれてる人も居たけど…寂しいな。ちょっとあげてみよう。
@都坂グループ本社に電話してみる
「本当に清水って人が、専属の弁護士で在籍してるのかも確認したいし」
「そうだね、今の世の中何があるか分からない。用心に越したことはないよ」
「でもさ、さっき出て行ったばっかりだぞ。まだ戻ってないんじゃないか?」
「それもそうね…」
実際清水が本社に戻るか分からない。もしかしたら近場の支店や、関係グループのどこかへ寄る可能性だってあるのだ。
「まあ、電話は明日の朝にでもかければいいよ。その前に都坂グループの事について少し調べてみたらどう?」
「そうだな。戦う前に敵の事を調べるのは基本だぜ!」
「私は別に、都坂グループと戦いたいわけじゃないんだけど…」
洋の軽口に苦笑する。
でも、都坂グループの事を調べるというのはいい考えかもしれない。
@洋にパソコンを貸してもらう
A海にパソコンを貸してもらう
B携帯電話で検索する
C自分の家に戻る
- 63 :
- 私もたまに書いてるお
少なくとも3人はいるねww
てかトサカだと思ってた・・・
C自分の家に戻る
「じゃあ帰ってゆっくり調べることにするわ。
もしかしたら母も何かわたしの出生に関すること、のこしてるかもしれないから
それも探してみようと思って」
「そうね。じゃあとりあえず食事にしましょう。お腹すいてるでしょ?」
おばさんが立ち上がってキッチンに向かう。
「あ、手伝います!」
「いいのいいの。真理ちゃんはお客様なんだから座ってて」
「でも……」
「母さんにまかせとけばいいよ、真理ちゃん」
立ち上がろうとしたわたしの腕を海が掴む。
「それより、ほんとに何も聞いたことないの?自分の父親について」
「うん…母は何も教えてくれなかった。『お父さんはんだ』の一点張りで。
わたしも自分の父親のことはずっと気になってたけど、母はその話題嫌がったから
あまり聞かないようにしていたし」
「そうか…」
そのとき、突然携帯が鳴った。
@わたしの
A海の
B洋の
- 64 :
- 通し番号間違えた・・・orz
56ね
- 65 :
- 少なくとも3人か…
せっかくだからもっと参加して欲しいなw
B洋の
「ん?俺か……げっ」
洋はディスプレイをみて嫌そうに顔をしかめつつ電話に出た。
「もしも……っ」
『おいっおまえ!今どこで何してる!?』
「っ!!!大声で叫ぶな!」
出た瞬間、大音量で声が聞こえてくる。
洋はとっさに耳から携帯電話を離して怒鳴り返している。
こっちまではっきり聞こえるからすごいものだ。
洋はあわてて音量を最小に操作し、携帯を耳に当てなおす。
「はぁ?なに言ってるんだボケ!…………へ?………なんで俺?」
音量を低くしたせいかもう相手の声は聞こえなかったが、洋の様子から急な呼び出しでもかかったのだろうと推測する。
@洋の様子を観察する
A海と話をする
Bやっぱりおばさんを手伝う
- 66 :
- 最低3人か…
ここ参加しにくいかね?
A海と話をする
洋の電話を聞き流しながら、私は海に話しかける。
「ねえ、海は都坂グループのことなんか知ってる?」
「うーん、そうだなぁ…」
海は私の問いに、少し首を傾げる。
「一般的なことだけかな。
もともとは玩具メーカーで子供をターゲットにしてたんだけど、
そのうち大人でも楽しめるものを、って幅広く分野を広げていったって、誰かに聞いた気がするよ」
ぼんやりとした口調で、海は言葉を紡ぐ。
いつも眠そうで、ぼんやりしているように見えるけれど、海は博識だ。
海が一般常識だといった今の情報でさえ、私は知らなかった。
(私がものを知らないだけかもしれないけど…)
「あ、そうそう…この花、アジサイに見えるけど、オオデマリっていう花だよ」
「オオデマリ?」
名刺の浮き出しのマークを指差して海が言う。花に詳しくない私は首を傾げた。
「アジサイに良く似た白色か桃色の花なんだ。アジサイとは種類がまったく別なんだけどね。
きっと、会社を設立した人が、誰かと大切な約束を交わしたんじゃないのかな」
「え?」
時々海は良く分からないことをいう。
「別名、手毬花。英名はリーブススピリア。ヤブデマリを品種改良して出来た花で…」
「ちょ、ちょっと海…」
私の疑問を、どう受け取ったのか、つらつらと説明を始める海に、私はあわてる。
「オオデマリの花言葉は「私は誓います」「約束を守って」「天国」「華やかな恋」」
海を止めようとした私は、続いた言葉に静止の言葉を飲み込む。
「あぁ…だから、大切な約束をしたって…」
「…約束ってなんの話だ?」
その時、電話が終わった洋が私たちの会話にわずかに眉をひそめる。
@「都坂グループの話だよ」
A「電話はもういいの?」
B「花言葉の話よ」
- 67 :
- そうでもないと思うけどね。
まだ話も始まったばっかりで、あんまり伏線とかないし。
A「電話はもういいの?」
何か急ぎのようだったが、洋はどっしりとソファーに座ったままだ。
「ああ、たいした事じゃない。まったくくだらないことでいちいち電話するなっつーの」
文句を言いながら肩をすくめる洋。
けれど、嫌そうな顔をしつつもちゃんと電話に出ていたことを思うと、仲のよい友達なのだろう。
もしかしたら私も知っている人かもしれない。
洋とはずっと同じ学校に通っているから、洋のバイト関係以外の友達は私も知り合いであることが多い。
@誰から電話だったか聞く
A海との会話にもどる
B洋のさっきの疑問に答える
- 68 :
- とりあえず今までの登場人物だけまとめ
【現在までの登場人物】
吉川 真理(ヨシカワマリ):主人公。最近、母を亡くした
佐久間 洋(サクマヨウ) :真理の幼馴染で同い年 超ポジティブな思考回路の持ち主
佐久間 海(サクマカイ) :洋の二歳年上の兄で真理の幼馴染 いつも眠そうでぼんやりしているが博識
子供の頃、真理と結婚の約束をした 現在カメラマン
洋と海の母 :母親を亡くした真理を心配している
清水 和明(シミズカズアキ):真理の父の遺言執行者として真理の前に現れる
都坂グループの専属弁護士らしい
真理の父 :母にはんだと聞かされていたが、実は都坂グループの会長だったらしい
最近亡くなり遺言を残す
真理の母 :真理を女手ひとつで育てた 働きすぎで過労が原因で亡くなった
生前、真理の父はんだと言いつづけ、父親の話を極端に嫌った
- 69 :
- A海との会話にもどる
洋の相手が気にもなったが、本人がたいした事じゃないと言うのなら、それ以上の詮索は止めておくことにした。
それより海が話してくれたオオデマリの花言葉が私の心に引っかかっている。
(小さい頃、お母さんから同じような話を聞いたことがあるわ…)
「海、実は私、オオデマリの花言葉を、お母さんから聞いたことあるの」
「おばさんが?」
「うん。まだ私が小学校一年生の頃よ。どうしてそんな話になったんだっけ…」
古いの記憶を思い出すために、そこで会話が途切れた。
「思い出せないのか?」
我慢出来ずに洋が身を乗り出して尋ねる。私のために必になってくれているのだろう。
海は静かに私の次の言葉を待っている。
(あ、名前…)
「そうよ、名前だわ!確かその頃、自分の名前の由来を話すのが学校で流行ったの」
「そうだ。そんなことあったな」
洋はぱっと顔を明るくして相槌をうつ。私はそれに頷くと話を続けた。
「私もお母さんに聞いたのよ。私をどうして真理と名づけたか。そしたら、お母さんオオデマリの話を始めたの」
「他に何か思い出したことはないのか?」
洋の言葉に真剣さが滲む。
「うん。お父さんから貰った大切な名前よって…。何時も仕事ばかりで地味なお母さんが、とっても華やかに笑っていた」
話している最中、胸に熱いものがこみ上げてきて、あふれ出る涙をどうしても止めることが出来なくなった。
ふと、優しく背中を撫でられた。
振り向くとそこに居たのは
@海
A洋
Bおばさん
- 70 :
- d切って申し訳ないが主人公って高校生?大学生?
やっぱり大人板だし大学生が妥当だろうか・・・
- 71 :
- まだはっきり出てないし、最初に誰かが大学生って明確にしたら大学生になるし、高校生って書いたら高校生になる。
すべては、最初に書いたもの勝ち。と思われる。
- 72 :
- 私>>1だけど設定は書いたもの勝ちで。
@海
海は私と目が合うと優しく笑った。
「泣けるときには泣いたほうが良いよ。真理ちゃんまだちゃんと泣いてないでしょう?」
言いながらあやすように私の背中をぽんぽんと叩く。
だから余計に私は涙が止まらなくなる。
海の言うとおり母がんでから私はちゃんと泣いていなかった。
母がんだことが信じられなくて呆然としている間に、お葬式の準備なんかでバタバタと忙しくなったからだ。
そうしてお葬式の間には、母のを受け入れてはいたけれど持ち前の意地っ張りを発揮して泣かなかった。
「うんうん、真理ちゃん良くがんばったね」
海は私が泣いている間ずっと背中をなでてくれ、洋はだまって隣に居てくれた。
しばらくして落ち着いた私は…
@ありがとうと言う
Aごめんなさいと言う
B何も言わない
- 73 :
- Aごめんなさいと言う
「ごめんなさい…」
「なんで謝るの」
「え…泣いたりして迷惑かけたから…?」
私の言葉に海が深くため息をついた。
「あのね、真理ちゃん。俺が迷惑なんて思うわけないでしょ。
そーゆーときは、謝るよりもありがとうって言ってくれたほうが嬉しいな」
「う…ごめんなさ…」
「ほらまた!違うだろ?」
「あ…ありがとう…」
「よく出来ました」
海がくしゃくしゃと私の頭を撫でる。
目が合うとにっこりと微笑んでくれた。
その優しい微笑みに、胸にあったかいものがこみ上げてきて、私もつられて微笑み返す。
「ごはん出来たわよ〜」
おばさんの声が聞こえ、洋にぱしっと頭をはたかれた。
「ほら、いつまで二人の世界つくってんだよ!メシだってよ。行こうぜ!」
@「痛いなぁもう!聞こえてるわよ。行きましょ」
A「洋、先に行ってて」
B「ふ、二人の世界って何よ!」
- 74 :
- @「痛いなぁもう!聞こえてるわよ。行きましょ」
気恥ずかしさもあって、勢い良く立ち上がる。
そんな私の様子に洋はあきれたようにため息をつき、海はクスッと笑う。
そんな二人を軽くにらむと、洋は肩をすくめ先に歩き出し、海は微笑んで私を促した。
ダイニングに入ると、今日はどうやら中華らしい。
シュウマイに春巻き、チンジャオロースにエビチリまである。
相変わらずおばさんの料理はすごいと思う。
「さあ、座って座って」
促されるまま席に着き、改めてテーブルの上を見る。
あまりのすばらしさにため息しか出ない。
私だって母の助けになるように家事全般はやっていた。
だから料理だって同じ年頃の女の子と比べれば上手だと自負している。
けれどおばさんには絶対にかなわない。
「さあさあ、召し上がれ」
「いただきます」
ニコニコと差し出された茶碗を受け取り、春巻きをつまむ。
揚げたての春巻きにやけどしないように注意しながら、齧る。
サクッっとした皮、中から程よく味付けされた具。
@「おいしい!」
A「熱っ」
B「くやしいな」
- 75 :
- B「くやしいな」
「ん?どうしたんだ?」
シュウマイをつまんでいた洋が私の呟きを耳にして首を傾げる。
「うん、私だって料理はそこそこだと思うけど、おばさんには絶対にかなわなくて、くやしいなって」
「あら、真理ちゃんのご飯だってすごくおいしいわよ?」
おばさんは言いながら微笑む。
「うん、俺は真理ちゃんの作るご飯、母さんのより好きだよ」
海が口に入っていたご飯を飲みこんでにっこり笑う。
「あら、海ったらひどいわ。…でも、そうね、真理ちゃんのためならいくらだってお料理教えちゃうわよ」
「お、それ良い考えだな。真理これから一人で寂しいだろ。
料理の勉強ついでにこれから毎日家で晩飯作って、家で食べていけば良い」
洋が名案とばかりに、言う。
「まあ、洋にしては、良いこというわね。是非そうして」
「俺にしては、ってひでーな…」
洋ががっくりと肩を落とすのを見ながら私は…
@頷く
A断る
B考える
- 76 :
- A断る
「いえ、お気持ちだけで十分です。さすがにそこまでしていただくわけにもいきませんし…」
毎日夕食、とひとことで言うが、一人増えるだけでかかる金額も増える。
もちろん一回の金額は微々たるものだけどそれが毎日積み重なるとなると…考えただけで恐ろしい。
いくら幼なじみとはいえ真っ赤な他人なのだ。そこまでしてもらう道理はない。
かといってお金を払う、なんていうのはいやらしすぎる。
「真理、何遠慮してんだよ」
「そうよ真理ちゃん。一人増えるも二人増えるも一緒じゃない。それにおばさん、娘がほしかったのよ。
娘にお料理教えたりいろいろ一緒に家事やったりするのが夢だったし」
「いえ、ほんとにお気持ちだけで……」
「そう…?残念だわ……」
私の言葉におばさんはしゅんとする。
なんとなく胸が痛んだが、私ももう来年は成人なのだ。いつまでもまわりに甘えてばかりではいけない。
「何をそんなに遠慮すんのかしらねーが、真理だってこれからずっと一人でメシ食うのなんてやだろ?
うちに来りゃ一人で食わずにすむしついでに母さんに料理も教えてもらえるし一石二鳥じゃん」
洋の台詞におばさんも顔をあげた。
「そうよ、真理ちゃん。うちはなんにも気にしなくてもいいのよ?ね?」
――こういうとこ、洋とおばさんはほんとに似てると思う。一度決めたことはなかなか引き下がらない。
別に母が生きていたときだって、仕事が忙しかったり私だってバイトや学校関係で忙しくてあまり食事を一緒にとることはなかったのだけど…
@ここまで言われたら頷くしかない
Aやっぱり断る
B週に一度くらいならいいかな?
- 77 :
- B週に一度くらいならいいかな?
ここまで言われて断るのも気が引ける。
「それじゃあ、週に1回くらいなら…」
おずおずと私が答えると、おばさんはちょっと寂しそうな顔をしてからすぐにいつもの明るい笑顔になった。
「週一でもうれしいわ!真理ちゃんのバイトのない日がいいかしら?」
「そうですね…」
私は答えながら、バイトのシフトを思い浮かべる。
来週は確か火曜日と金曜日が休みだったはずだ。
「火曜日か金曜日ですね」
「確か土曜日は朝からバイトだったわよね?」
私は頷く。土日はフルでバイトに入っている。
「それじゃあ、金曜日はゆっくり休んだほうがいいでしょうから、来週は火曜日にしましょう」
「はい」
おばさんは私の返事に満足したのか、うれしそうに食事を再開する。
その後は取り留めのない会話で食事が進み、テーブルの上のものがきれいに片付いた。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした。あ、そのまま置いておいてちょうだい」
「あ……はい」
食器を流しに運ぼうとした途端、おばさんがそれを止める。
「真理ちゃん向こうに行こうよ」
食器をそのまま置いておくということに、なんとなく抵抗を感じて動きを止めた私を海が促す。
@片づけを手伝う
A海について行く
B家に帰る
- 78 :
- ↑通し番号間違えた
56じゃなく66です
- 79 :
- B家に帰る
「ごめん、そろそろ帰るよ。調べ物ももあるしね」
「そう?それじゃ、すぐそこだけど送るよ。ちょっと行きたいところもあるし」
「真理、もう帰るのか?」
「うん、都坂グループのこと調べたいしね」
「そっか。俺も調べておいてやるよ。なんか面白いことでも分かったら連絡する」
「ありがとう。それじゃあおばさん、今日はありがとうございました」
「いいのよ、来週の火曜日、待ってるからね」
おばさんにお礼を言って玄関で靴を履いていると、なにやら大きなスポーツバッグをもった海がやってきた。
「じゃあ行こうか」
海はそういってサンダルを引っ掛けると、玄関の戸を開ける。
斜め向かいの私の家に向かいながら、海はふと後を振り返る。
それから何事もなかったかのように正面を向いて、私の家の前で止まった。
「それじゃあ真理ちゃん、ちゃんと戸締りするんだよ。女の子一人じゃ危険だし。それから、宅配便なんかもすぐに戸を開けちゃダメだよ。戸を開ける前に、俺か洋に電話して」
「え?」
「取り越し苦労だと良いんだけど、一応ね。それじゃ」
そう言って、海はスポーツバッグを持ち直して歩いていってしまった。
私は海の言葉に…
@(過保護すぎるわ)
A(海の言うことは聞いておこう)
B(何か気になることでもあったのかな?)
- 80 :
- A(海の言うことは聞いておこう)
ぼんやりしていても的確な答えをくれることの多い、海。
すこし過保護すぎだとは思いつつも私のことを心配してくれてのことだと思うし、忠告は素直に受けておくことにした。
「待って、海。連絡は必ず入れるよ。それと、送ってくれてありがとう」
「言い忘れていたけど…今日のことはあまり気にしちゃ駄目だからね」
さりげない気遣いの言葉が、今の私には何よりうれしいくてもう一度「うん。ありがとう」とお礼を言った。
「ところで…海、スポーツバッグを持って何処に行くの?」
気になった私は、立ち止まったままの海に向かって尋ねた。
「ええっと……ないしょ、かな」
「教えて。気になるよ」
「ダメ。ミステリアスな男のほうが惹かれるでしょ?」
海は眉をひそめながら顎に手を当てて、ミステリアスな男の真似をしてみせた。
(悲しいほど、似合ってないし)
「幼馴染に今更、ミステリアスも無いでしょ。まあいいわ。引き止めて、ゴメンね」
「いい写真が撮れたら、すぐにプレゼントするからね」
そう言って、海はスポーツバッグを掲げあげた。
「海。今の海を見たら、誰だってこれから写真を撮りに行くってわかってしまうよ。
せっかくのミステリアスが台無しだね」
海は瞳をさまよわせて、「あっ」と呟く。
「それもそうか…。今、気付いたよ」
やっぱりどこか抜けいてる海がおかしくて、ついつい笑ってしまう。
頭を掻きながら残念そうにする海に、笑顔で手振りながら扉を閉めた。
さて…
@自室で都坂グループのことを調べる
A寝る
Bお風呂に入る
- 81 :
- @自室で都坂グループのことを調べる
玄関の鍵を閉めて、私は自分の部屋に直行する。
とりあえず机の上のノートパソコンに電源を入れて、一度部屋を出た。
鍵をキーボックスに戻し、キッチンで紅茶を入れて部屋に戻る。
「さて、と」
紅茶を一口飲んで、パソコンを操作する。
とりあえず、都坂グループのHPを検索して、会社の概要を読む。
(結構古い企業なんだな…)
会社の設立はおよそ百年前、小さな玩具メーカーから始まっている。
それが三十年くらい前から各種方面へ進出を始め、今では町を歩けば必ず都坂グループ系列の店にぶつかるほど業種を広げている。
会社概要を読んでも分かることはこれくらいしかなかった。
(うーん、まあ公式のHPなんてこんなものかな?)
これ以上HPを調べても、あまり意味がないような気もする。
どうしよう…?
@それでも、隅々まで公式HPを見る
A都坂グループに関する掲示板を探してみる
B都坂グループの会長の名前で検索してみる
Cネットはやめてテレビをつける
- 82 :
- A都坂グループに関する掲示板を探してみる
ネット上にある巨大掲示板サイトを見てみることにする。
色々な方面に進出していて、系列会社もたくさんあるから検索をかけたら膨大なスレが引っかかった。
「うわ〜……」
思わず驚きの声が漏れる。
「多すぎだって」
私はため息をついて、パソコンの電源を落とした。
今ので一気に調べる気力がなくなってしまった。
机から離れて、ベッドに倒れこむ。
「……お父さん、か」
さっきHPで見た都坂グループの会長の写真をみても、何の感慨も浮かんではこなかった。
(以外に若く見えたけど……)
いつ取られた写真なのか分からないが、都坂グループの会長はまだ50代くらいに見えた。
組織の会長というイメージから、かなり年のいった男性をイメージしていたのでその点は純粋におどろいたが。
「ま、明日本社に電話して、清水ってひとに詳しく話を聞く!」
私は勢いをつけて、ベッドから起き上がる。
さて…なにをしよう
@着替えて寝る
A風呂に入る
Bテレビを見る
- 83 :
- 忘れ去られたスレ発見
話の流れだと、暴力方向でも18禁になりそうだなw
そしてageついでに、続けてみる
A風呂に入る
「お風呂入ってさっぱりしよう」
私は着替えをもって、バスルームへ向かった。
真っ先に浴槽にお湯を入れる。
(20分くらいかな〜)
お湯がたまるまでもう少し時間がかかる。
脱衣所に着替えを置いて、キッチンへ向かう。
冷蔵庫を開け、いつも飲んでいるミネラルウォーターを取り出そうとして、それがないことに気づいた。
「あれ、切れてるか」
そういえば、最近なにもやる気が起きなくてあまり買い物にもいっていなかった事を思い出す。
近くのコンビニなら行って帰ってくるのに15分かからない。
お風呂のお湯も溜まってちょうどいい頃になるだろう。
うーん、どうしよう
@コンビニにいく
Aコンビニに行かない
- 84 :
- @コンビニにいく
(ちょっとそこまで、という距離だし……)
私はサイフを握ると家をでた。
コンビニへは家を出て左へ歩いて5分かからない。
(水と……)
コンビニで目的の水を真っ先にカゴに入れる。
それから、あしたの朝ご飯にパンを買う。
会計を済ませコンビニを出ようとしたところで、見知った顔を見て思わず足を止めた。
それは……
@バイト先の後輩
A清水和明
B同級生の女の子
- 85 :
- @バイト先の後輩
「藤くん…」
そこに立っていたのは、バイト先の後輩である、藤 草太郎くんだった。
後輩と言っても、彼は1つ歳上の大学生だ。
今のバイトを高校時代から3年は続けている私に対して、彼はまだ勤め始めた
ばかりということで、彼は私を「先輩」と呼んでたててくれている。
しかし、大柄な割に小器用で、どんな仕事でも教えた端からそつなくこなす彼に
まつりあげられるのはキツくもある。
学校での成績も悪くはないみたいだし、嫌味なほど「できるヤツ」すぎる上に、
愛想笑いという言葉からも程遠いし、はっきり言って、仕事以外の部分では
関わりたくないタイプだ。
もちろん、表向きはいつもニコヤカに良き先輩で居られるよう努めているケド。
「吉川先輩…こんな時間に、何やってんすか」
「そ、それはこっちのセリフよ! …もしかして、バイトの帰り?」
「はぁ、まあ、そぉっすけど…」
彼のシフトからすると、だいたい仕事終りの時間だったので、そう聞き返してみる。
でも、確か家はこっちの方角じゃなかったような…?
「あ、あの、私、お風呂の水貯めてる途中で出てきたから、急いで帰らないと。
じゃ、また、バイトでね」
「はぁ…」
そそくさとコンビニから離れようとする私に、藤くんは返事なんだか相槌なんだか
分からない声をだしながら、横に並んで歩き出す。
「藤くん…?」
「…途中まで、送らせてもらっていいですか」
「え? だって、コンビニに寄ったんじゃなかったの?」
「いや…」
さすがに目的が分からず、怪訝そうな表情が顔に現われてしまったんだろう。
彼も足を止めて、一度大きく息を吐き出す。
- 86 :
- ごめんなさい、長くなりすぎたorz
(ため息つきたいのはこっちよ)
そう思っていると、彼は顔をそらしたまま、いつものように低い声でぽつりぽつりと
しゃべり始めた。
「最近、先輩がバイト休み続けてた理由…今日、初めて聞いて…」
「…ああ」
そういえば。
母が倒れてから、葬儀に事後処理などで過ぎた怒涛のような数日間、バイトは
休み続けていた。藤くんとは、まだ母が元気な内にバイトで会って以来だ。
「お焼香だけでもと思ったんですけど、ただのバイトの後輩がこんな時間に伺っても、
と思って、引き返そうとしてたトコロなんです。
だから、コンビニに用があるわけじゃ、ありません」
「え…」
「でも、先輩がこのままバイト辞めるわけじゃない、ってことが判っただけでも良かった」
そう言うと彼は一瞬、常にない柔らかい表情でほほ笑んだ。
(うわ…っ)
その笑顔を見た途端に、今まで彼に対して(嫌味なヤツ〜)と抱き続けていた嫌悪感
や対抗心が氷解した。
その無表情から誤解していただけで、本心から先輩として慕ってくれていたのかも。
つられるように私も顔をほころばせて、言葉をつぐ。
「うん、週末からは復帰するから! 辞めないわよ」
「…やっぱり、先輩くらいの天然ボケが居ないと、安らがないっすよ。あの職場」
「…言ったわね〜」
もうっ、ちょっと気を許すとコレだ。
@じゃ、またバイトでね
Aこれから、お焼香にきてくれるの?
Bそうだ、都坂グループ、って知ってる?
- 87 :
- 度々すみません… 訂正してたらレス番抜けましたorz
- 88 :
- Bそうだ、都坂グループ、って知ってる?
唐突な私の質問に、表情も変えずに藤君は頷いた。
「……バイト先の隣のレンタル屋がそうですね」
「あー……」
言われてそういえばさっき調べた関連会社の一覧に名前が載っていたことを思い出す。
(本当に身近なんだな、都坂グリープって……)
「都坂グループがどうかしましたか?」
「あ、ううん、なんでもないよ、ふと思っただけ」
「そうですか……ところで戻らないんですか? お風呂にお湯……」
「あ!」
「送っていきます。先輩も一応女性ですから」
「……一応って」
すぐそこだし大丈夫と言おうとしたが、軽く背中を押されて口を噤む。
行きと同じく帰りも5分かからずに、家の前に着いた。
「家ここだから……」
「……」
「藤くん?」
「ここまできたし、お焼香もいいですか?」
そういえば最初は、お焼香目的で家に向かってるって言ってたっけ。
@頷く
A断る
- 89 :
- @頷く
「……うん、いいよ、入って」
私は鍵を開けて、藤くんを招き入れた。
「ちょっとまっててね、お湯止めてくるから」
「……」
私は急いで靴を脱ぐと、真っ先に風呂場へ向かう。
覗くとお湯は丁度いい具合に溜まっていた。
(よかった)
お湯を止めて蓋を閉め保温ボタンを押して玄関に戻ると、所在無げに藤くんが立っている。
「おまたせ、こっちだよ」
仏壇の置いてある部屋まで案内する。
「ごめん、私ここに入ると浮上するのに時間かかっちゃうから適当にやってきて」
こんなこと失礼だとは思うけれど、今はこの部屋に入りたくない。
明日からはちゃんとしなくてはいけない。
今入ったら、きっとまたぼんやりと過ごしてしまって、明日しなくてはいけないことも手につかないだろう。
「……」
藤くんは私をしばらく見つめたあと、頷いて部屋に入っていった。
私は無意識のうちに止めていた息を吐き出す。
(ちゃんと、しなくちゃ……)
私は、内心気合いを入れる。
(そうだ、わざわざ様子見に来てくれたみたいだし、お茶くらい出したほうがいいかな?)
@お茶の準備をする
Aお茶の準備をする
B藤くんに聞いてからにする
- 90 :
- たぶん@かAがしないだとおもうから、Aをしないで話をすすめる
Aお茶の準備をしない
(うーん、でも、引き止めるのもなんだし、やめとこう)
そう思いなおして、私は部屋から少し離れた場所で待つことにした。
しばらくして、藤くんが部屋から出てくる。
「ありがとうございました」
「ううん、こっちこそわざわざありがとう」
藤くんを玄関まで送る。
ぼんやりと藤くんが靴を履くのを見ていると、不意に藤くんが振り返った。
「吉川先輩」
「え?」
「………」
「なに?」
呼ばれたものの、そのまま沈黙してしまった藤くんを見上げる。
「……いえ、週末からバイト出るんですね?」
「うん、そのつもり」
「そうですか」
小さく頷いた藤くんの手が、不意に伸びてくる。
「え?」
あわてて身を引こうとしたが、藤くんのほうが早かった。
両脇に手を差し込まれ、まるで子供が高い高いをされるように持ち上げられる。
「ちょ、ちょっと!?」
「やっぱり……」
小さく呟いて、藤くんは私を降ろす。
「な!?」
「先輩、かなり痩せたみたいです」
「え?」
「以前より軽いです。ちゃんと食べてますか?」
「え、あ、うん、今日はちゃんと食べたよ……」
「そうですか、なら良いですけど。うちのバイト体力勝負なんですから、ちゃんと食べないと駄目です」
「う、うん」
「………」
「?」
「……では、失礼します。次はバイトで」
「うん、週末に」
突然のことに呆然としたままの私に静かに会釈をして藤くんは出て行った。
藤くんが出て行って、どれくらい時間がたったのか、やっと立ち直った私はため息をつく。
(急に持ち上げられたら驚くって……。でも体力落ちてるかなぁ?前の私ならさっきのも避けられたよね……)
体力が落ちて、反射神経も鈍くなっていたら目もあてられない。
(まぁ、前にも不可抗力で持ち上げられたことはあるけれど……)
あの時は……
@バイトの時
A飲み会の時
B偶然会った時
- 91 :
- @バイトの時
あの時は在庫が切れたものを取りに倉庫へ行った。
いつもの場所に脚立が無くて、皆で探し回ったけれど結局見つからずどうするか悩んでいたのだ。
その時のメンバーで一番背の高い藤くんですら、もう少しと言う所で手が届かない場所だった。
困り果てた私たちを藤くんは見回すと、すっと私の前に立ち、そのまま屈み込んで、私の膝の当りに手を回して固定すると一気に持ち上げた。
「きゃぁぁ」
急に高くなった視界に驚いて、とっさに藤くんの頭にしがみつくと藤くんのぼそぼそとした声が、聞こえた。
「先輩、これで届きませんか?」
(結局、藤くんの機転のおかげで、無事にものは取れたけど……)
その時一番早くて確実な方法を取ったのだと分かるけれど、口数が少ないくて必要なことも一言で済ませてしまったりするため、何を言っているのか理解するのに時間がかかったりする。
(まぁあんなに何でも器用にこなして、愛想まで良かったら嫌味だよね)
あれで更に愛想が良い藤くんに先輩と呼ばれたら、本当にいたたまれない。
「さて、お風呂にはいろうかな」
玄関を離れて脱衣所に向かう。
服を脱ぎ、浴室へ移動してざっとシャワーで汗を流してから浴槽へ。
「ふぅ……」
お湯に浸かるとホッとする。
お湯につかりながらぼんやりしていると、ふいにガタンと音がした。
「え?」
外からではない、家の中からだ。
家の中には当然誰もいない。そのはずだ。
(あ……、私、藤くんが帰ってから玄関の鍵……かけてない!?)
泥棒だろうか? それとも、海か洋が来たのだろうか?
どうしよう……
@風呂からでて確認する
A怖いからじっとしている
- 92 :
- たまに(´∀`∩)↑age↑
@風呂からでて確認する
音を立てないようにそっと湯船からあがり、手早くバスタオルを手に取る。
そこで足音が聞こえた。
あわてて、手に取ったバスタオルを身体に巻く。
(なにか、武器になりそうなもの……)
もし泥棒なら相手の隙をついて逃げなければならない。
私は当りを見回す。
けれど当然脱衣室には、武器になりそうなものなんてない。
(ないよりマシか……)
わたしは、バスタオルをもう一枚手に取る。
(泥棒ならこれを投げつけて、海の家に逃げよう)
私は息を潜める。
足音はだんだんこちらに近づいてきた。
時々止まるのは、部屋を確認しているからかもしれない。
(もうすぐここまで来る……)
足音はピタリと脱衣所の前で止まった。
戸がゆっくりと開く。
顔を出したのは……
@知らない男
A海
B藤くん
- 93 :
- A海
「か、海?!」
「うわっ、ゴメン!!」
タオルを投げつけようと腕を振り上げたところで目が合ったのは、なんと海だった。
私の姿を見ると、すぐさま戸を閉め、そのまま寄りかかったようだった。
「な…なんで…?」
緊張が解けた反動と混乱で、気の抜けたような声を絞り出すのがやっとだ。
「洋のヤツが、ちゃんと俺が真理のコト送り届けたか確認するつもりで電話してみたら、
真理が居ない、って携帯で怒鳴りつけてきたんだよ。
俺もすぐかけ直してみたら、やっぱり出なかったから、心配で戻ってきたんだ」
「あ…」
もしかしたら、さっきコンビニへ出掛けていた間の話かもしれない。
「そしたら…ドアの見えるトコまできたら、こんな時間なのに知らない男が部屋から
出て行くところだし、部屋の明かりは着いてるのに、声かけても応えないし」
だんだんと海の声が低くなってきた、と思ったら、戸と服がこすれる音がして
声が聞こえてくる位置も低くなる。
「何か…悪い考えが頭をよぎったら気が気じゃなくなっちゃって。
冷静に考えたらわかったかもしれないけど… 驚かせて、ゴメンね」
言い終えると、深いため息が聞こえた。
普通に振舞っていたつもりだけど、そんなに心配かけてしまうほど、今の私は
頼りなく見えているのだろうか。
本当に、頑張らなくては。
「…私の方こそ、ごめんね。…ありがとう」
「………うん」
「ところで、さっきの男は、何」
@ただのバイトの後輩
A藤くんという知り合い
Bえ〜と…
- 94 :
- @ただのバイトの後輩
「バイトの後輩がなんでこんな時間に?」
「お母さんの事を聞いて、お線香あげにきてくれたの。私がバイト休んでる理由知ったみたいで」
「そっか……ところで真理ちゃん、まだお風呂途中だった?」
「え、あ、うん……」
言われて、自分の格好を思い出す。
(うわっ!)
「じゃあ、鍵も開きっぱなしだったし出るまでリビングにいるよ」
「ご、ごめんね。いつもの場所に鍵あるし、鍵かけたらそのままポストに入れてくれれば……」
「心配だからだめ。あれだけ注意してって言ったのに、ぜんぜん言う事きけてないし」
「う……」
そういわれると、反論出来ない。
「す、すぐ上がるから」
「ゆっくりでいいよ。風邪ひかないようにちゃんと100数えてでてくるんだよ」
「ちょっと……海……」
海の物言いに私は思わず脱力する。
@「わたしそんなに子供っぽい?」
A「子供扱いしないで」
B「もう子供じゃないんだから……」
- 95 :
- B「もう子供じゃないんだから……」
思わずすねた口調になってしまう。
案の定、それを聞いた海が笑う気配がする。
「そうだね、もう子供じゃない。だからこそもっと気を付けてほしいな」
結局はそこに話が戻ってしまう。
「は〜い。それじゃあ100数えて来ます!」
私はわざと子供っぽく返事をして、浴室に戻る。
暖かい湯船に再度浸かり、なんとなく頭の中で数を数え始める。
(いーち、にー、さーん)
小さい頃はこうして海と洋と三人で数を数えていた。
のぼせやすい洋が、真っ先に我慢出来なくなって上がっていた。
(きゅじゅうはち、きゅうじゅうく、ひゃーく)
なんとなく頭の中で数を数えて、風呂から上がる。
海を待たせているので、手早く着替えてリビングに向かった。
「海、ごめんね……あれ?」
声をかけながらリビングに入るが、海の姿が見えない。
キッチンだろうかとそちらも見に行くが、やはりいない。
玄関を確認すると、靴はきちんとあった。
(トイレかな? ……あ)
リビングに戻ってソファへと回ると待っている間に眠ってしまったのだろう、座ったまま体制が崩れた状態の海がすやすやと寝息を立てていた。
(なんか、寝違えそうなんだけど……それに風邪ひいちゃうよ)
どうしよう
@起こす
A毛布を持ってくる
B観察する
- 96 :
- A毛布を持ってくる
(起こすのもかわいそうかな?)
私は毛布を持ってくると、そっと海にかける。
一瞬顔を顰めた海に目が覚めるかなと思ったけれど、すぐにまた穏やかな寝息を立て始めた。
(疲れてるのかなあ?)
なんとなくソファの横に座りこみ、海の寝顔を観察してしまう。
子供の頃から見慣れている顔。
海も洋も結構整った顔をしているのは知っている。
海と洋と幼馴染だと言ったら、うらやましがる子もいたくらいだ。
(それにしても寝てたほうが、起きてるときよりキリッとしてるって変だなあ)
普通逆じゃないだろうか、と思わず苦笑してしまう。
とりあえず海はしばらく起きそうにない。
そうえいば、海は洋に私が見つかったことを連絡したのだろうか?
@洋に電話する
Aもう少し海を観察する
B部屋に戻る
- 97 :
- @洋に電話する
部屋に戻り、置きっぱなしの携帯を取ると、ずらっと洋と海の着信履歴が残っていた。
「二人とも心配性なんだから……」
思わず苦笑する。
確かに最近の私は普通の状態とは違ったけれど、ここまで心配されるほどひどかったのだろうか?
(ひどかったんだろうな……)
私はボタンを押して洋に電話をする。
と、1コールもしないうちに繋がった。
「おい、真理! おまえ今どこにいるんだ!?」
途端、洋の怒っているような声が携帯から流れる。
「どこって……、家にいるけど」
「なんだって? さっきはいなかっただろ!」
「コンビニ行ってただけだよ。 その後お風呂入ってたから、携帯なってるのに気付かなかったの。 海も心配して家に来てくれたよ」
「兄貴がそこにいるのか?」
「リビングで寝てるよ。 私がお風呂から上がるのまってたら、寝ちゃったみたい」
「はぁ? なんだそりゃ?」
あきれたような洋の言葉の後の方で、車が行きかう音がする。
「ところで洋、いま外なの?」
「お前を探してたんだよ。とりあえず、今そっち行く。兄貴も引き取らないといけないしな」
そう言って洋の電話は切れた。
私は、切れた携帯電話を持ってリビングに戻った。
海は熟睡しているようだ。
洋はどのくらいの時間でここに来るのか分からない。
さて、どうしよう……
@リビングにいる
A部屋に戻る
B髪を乾かすために洗面室へ行く
- 98 :
- コレ18禁BLダタラアットユーマニEDナキガス
- 99 :
- 止まってるので初投下しつつageてみるわ。
@リビングにいる
なんとなく手持ちぶさたになって部屋を見渡してみる。
目に入ったのは小さなテーブルと二つだけの椅子。
(これ選ぶ時、お母さんと意見が分かれちゃって大変だったなぁ)
あれがいい、これがいいって二人でケンカして…結局じゃんけんで決めたんだよね。
じゃんけんに負けた私はしばらく文句言ってたけど、段々愛着が湧いちゃった。
恥ずかしくて言い出せなかったけど。
椅子に腰掛けて膝を抱えてみる。
お母さんが見たらだらしないって怒るような格好。
(ほらお母さん、いつもみたいに叱ってよ…)
でも、どれだけ耳をすませてもお母さんの声は聞こえない。
時計の針が刻む音だけがやけに大きく感じられて、胸が詰まる。
(お母さん…私まだお母さんに色々教えてもらいたかったよ…)
私は込み上げてくる涙をこらえ切れず、膝に顔をふせた。
しばらく泣き続けていると、ふと目の前に人の気配を感じる。
そこにいたのは…
@洋
A海
Bそれ以外の人
- 100 :
- 久しぶりに見たな、このスレ
@洋
「洋……いつの間に来たの?」
あわてて涙を拭いて、笑ってみせる。
洋は少し顔をしかめてなにか言いたげに口を開きかけ、けれど何も言わずに小さなため息をついてあたりを見渡した。
よほど急いできたのか、額には汗が浮いている。
「たった今、で、兄貴は?」
「うん、そこのソファで寝てるよ」
私が指差したほうを向いて、洋はつかつかとソファに近づく。
「熟睡してやがる……なかなか起きないんだよなぁ。おい、兄貴!」
「……ん〜」
「起きろって、家にもどるぞ!」
「………あと5分」
「あと5分じゃないっつーの、家に戻ってから寝ろよな」
「………すー」
洋の怒鳴り声に一度は反応したものの、その後いくら怒鳴っても、ゆさぶっても起きる気配はない。
「……はぁ、ダメか」
しばらく洋は海を起こそうと躍起になっていたが、全く反応のない海に疲れたように座りこんだ。
「相変わらずだね」
思わず笑ってしまう。
でも、どうしよう……?
@このまま寝かせておく
A洋に担いで連れ帰ってもらう
B自分も起こしてみる
- 101 :
- 書き手少ないみたいなんで参加させていただきますぜ
皆さんなんとなく海ルートっぽい?w
@このまま寝かせておく
「しょうがないな。このまま寝かせておくよ」
起きたときに困るだろうからメモ書きを残すために、ペンと紙を持ってこよう。
苦笑しながら立ち上がろうとする私に、洋が非難がましい目を向ける。
「俺は駄目で兄貴は良いの?」
突然投げつけられた質問の意図が分からず、きょとんとしてしまった私を拗ねるような目つきで見ながらぼやく。
「俺はそんなに頼りないかなぁ……さっきだってお前泣いてたのに俺が来たらごまかすし」
ようやく質問の意図は分かったが、その子供っぽい言い方に思わず笑みがこぼれてしまう。
「……なに笑ってんだよ」
更にふてくされた表情になっていく洋を見て、慌てて手と首を横に振る。
「ごめん。なんか子供っぽい言い方だったからつい。
あと、心配ばかりかけちゃってごめんね」
表情は和らいだけど、まだ少し憮然としている洋に対して私は言葉を続ける。
「……頼りにしてないってわけじゃないの。だけどまだ……」
「まだ?」
「……ん……うう〜ん……ん?」
少し重くなりかけた空気を破るように海ののんきな声がリビングに響く。
「あれっ? 真理ちゃんなんで……? あ、いやここ真理ちゃん家か。
じゃあ、洋なんでここにいるんだ? が正解か……」
まだ寝ぼけているのか独り言のように海が呟く。
「兄貴が寝てるっつーから、迎えに来たんだよ」
海ののんびりさに毒気を抜かれてしまったのか、あきれたように洋がため息をつく。
「起きたんなら帰るぞ。真理、悪かったな」
「ごめんね、真理ちゃん。毛布ありがとう」
玄関に向かう二人を見送るために、私も立ち上がる。
「じゃあ、ちゃんと鍵閉めろよ」
家に帰る洋と、写真を撮りに行くという海はそれぞれ別の方向へ歩いていく。
二人を見送って、私は今度こそ玄関の鍵を閉める。
「……ふう」
色々なことがあった一日だった。
お母さんがいなくなってから、初めてじゃないだろうか。ちゃんと実のある一日を過ごしたのは。
もっとしっかりしないといけないな、と自分に渇を入れてベッドに向かう。
それにしても、今日一番驚いたのは……
@お父さんのこと
A洋のこと
B海のこと
C藤くんのこと
- 102 :
- 久々にすすんでらー
海自体が謎な人だから、ついつい書いちゃうんだよね。
洋はわかりやすくてなんとなく扱いが雑に……w
@お父さんのこと
やっぱりお父さんのことだ。
結局生きて会うことはなかった人だが、冷静になってみれば疑問ばかりがわいてくる。
(なぜ、今頃……)
つらつらと取りとめもなく考えていると、時期に睡魔が襲ってくる。
それに身をゆだねて、明日は清水に連絡を取らなくてはと途切れる意識の端で思った。
目覚めは以外にすっきりとしていた。
大きく伸びをして、ベッドから起きる。
(今日は清水って人に連絡をとって……、それから……)
手早く着替えて、今日やることを考えながら勢い良くカーテンを開く。
まぶしい光が部屋へ入り込んでくる。今日はとても良い天気だ。
再度伸びをして、ふと下を見る。
(?)
違和感を感じて、もう一度良く下を見るとそこに人の影があった。
人の姿は横に伸びた木の枝が邪魔で見えないが、地面にはくっきりと人の形の影がある。
犬の散歩かなにかしている人かと思ったが、いつまで経っても影は動く気配がない。
まるで監視されているようで、急に怖くなった。
どうしよう……。
@気にしない事にする
A海に連絡する
B洋に連絡する
C自分で確かめに行く
- 103 :
- ここは書き手さんが少ないのだろうか
- 104 :
- ほしゅ
- 105 :
- ここまだ残ってたのね。
てか、一般の方はいつの間にかスレなくなってるな。
でもwikiは更新されてるんだよな……どこで続いてるのやら?
B洋に連絡する
急いで、洋の携帯に電話を入れる。
けれどなかなか繋がらない。
(まだ寝てるの?)
切ろうかと思った瞬間、眠たげな声と共に洋の声が聞こえてきた。
「真理? なんだよこんな朝早く……」
「洋! ねえ、私の部屋の前に誰か居るの!
最初は散歩の人か何かだとおもったけど、ぜんぜん動かないのよ!」
「……なんだそれ?」
「もぅ! いいから見てきてよ、ちょっと怖いじゃない」
「わーった、わーった。 ったく、人使いが荒い奴だよな」
寝起きで、少し機嫌が悪いのかブツブツと言いながらごそごそを動く音がする。
すぐに戸が開く音がし、トントンと階段を降りる音に続く。
それから玄関が開く音がして、向かいの部屋から洋が出てくるのが見える。
「ねえ、誰か居るでしょ?」
「ん? ……あぁ、たしかに居るな。 ……おい!あんた、そこで何してるんだ?」
携帯と外から、洋の声がする。
「あっ」
洋に驚いたのか、影が逃げていくのが見えた。
「おい、待てよ!」
「洋!」
わたしは逃げる影を追いかける洋を
@止めた
A応援した
B追いかけた
- 106 :
- B追いかけた
私も靴を履いて、急いで外へ飛び出す。
まぶしい朝日に目が慣れず、思わず顔をしかめる。
ようやく目が慣れた頃には、怪しい人影も洋の姿も見えなくなっていた。
「洋! 返事して洋!」
繋がったままの携帯に何度も呼びかける。
けれど、衣擦れのようなガサガサという雑音しか聞こえない。
「洋! もういいよ、戻ってきて!」
洋に助けを求めたまでは良かったけれど、まさか追いかけていくなんて思っていなかった。
万一、良くない事に洋が巻き込まれたら大変だ。
探す当てなんて全く無かったけれど、居ても立っても居られなくてとりあえず走り出す。
じっとしていると、どんどん悪い方に考えてしまいそうだった。
「ねぇ、洋。返事をしてよ」
「追い払ってくれただけで、……もう十分なんだから」
雑音しか聞こえない携帯に、私は必で話しかけた。
走りながら話しているせいで、息が上がってくる。
「……洋! どこにいるのよ、洋!」
「悪い、真理。見失ったみたいだ」
ようやく洋の声が返ってきて、私はホッと胸をなでおろす。
「洋! 無事だったんだね」
「当たり前だろ。くそっ、俺としたことが完全に取り逃がしちまったな」
不審な人影を捕らえられなかった悔しさを抑えられない、そんな声色だった。
@「よかった。洋、今どこにいるの?」
A「馬鹿! 心配したんだから!」
B「私、本当に心配で……」
- 107 :
- @「よかった。洋、今どこにいるの?」
走ったために荒い呼吸を整えながらあたりを見回す。
慌てて追いかけてきたが、洋の姿は見えない。
まだ朝も早い為か近くには人の気配もない。
「俺は二丁目の公園に…ってか真理、お前まさか外にいるか?」
「え? あ、うん……」
「ばかっ、目的は分からないけど狙いはお前だろ?なんで外に出たんだ!
はぁ……まあ良い。で、お前はどこに居るんだよ?」
あきれたような洋の声に、私は自分の居る場所を告げる。
幸い洋の居る公園と私が居る場所は、一本道路をはさんでいるだけでそんなに離れては居ない。
「なるべく人の居る場所……あ、近くにコンビニあるだろ?そこに居ろよ、すぐ行くから」
「わかった」
電話を切って、すぐ近くに見えているコンビニの看板に向かう。
昨日行ったコンビニとは逆方向にある、昨日とは別系列のそこへ入ろうとしてガラスに映った自分の姿に慌てる。
(慌ててたけど、寝起きだったぁぁぁ!)
とりあえず着替えは済んでいるが、髪にはしっかり寝癖が付いている。
そういえば顔だって洗って居ない。
このままコンビニに入るのは……いや、家の外に居ることが恥かしい。
けれど洋が言うように人が居る場所に居たほうが安全なのは確かなのだ……。
どうしよう?
@コンビニに入る
Aコンビニの外で待つ
B走って家に帰る
- 108 :
- @コンビニに入る
こんな恥ずかしい姿、できることなら誰にも見られたくない。
今すぐに家へ帰りたいけど、一人じゃ不安だ。
それに少しでも人が居る場所の方がいいと、洋から言われたばかりだ。
(仕方が無い。やっぱりコンビニへ入ろう)
なるべく顔を隠すようにして、私はコンビニの中へ入っていく。
とりあえず本や雑誌の置いてある窓際へと一直線に進み、目に入ったファッション誌を急いで手に取った。
そして、すっぽりと顔が隠れるように読むフリを始める。
(これなら顔が隠れるし、外の様子も確認できるもんね。けど、このはねた髪が……)
さっきから気になってしょうがない後頭部の寝癖を、手ぐしだけで少しはマシになるように何度も触ってみる。
けれど形状記憶合金並みに頑丈なのか、すぐに元の形に戻ってしまう。
(もうっ。私の髪なら大人しくしなさい!)
そんな風に寝癖と格闘しながら本を見ていると、私のすぐ後ろで誰かが立ち止まった。
その背後の気配は物音ひとつ立てず、この場から動く様子すら無い。
ただ真後ろから、痛いくらいの視線だけが背中に刺さるのを感じる。
(洋かな。だったら声を掛けてくれるはずだ。もしかして、さっきの人影……?)
たとえ私を付け狙っている人影だったとしても、こんな場所で手荒な真似は出来ないはずだ。
私は意を決して、その背後に居る人物を確認しようと振り向いた。
するとそこに居たのは……
@海
A昨日の弁護士
B藤くん
- 109 :
- A昨日の弁護士
「っ!」
「おはようございます、真理様」
驚きで声の出ない私に、昨日と同じ淡々とした口調で清水があいさつをしてくる。
「お、おはようございます」
挨拶をされて無視するのもおかしい気がしてとりあえず返すと、清水は口の端を少しだけ持ち上げた。
顔は笑っているのに、眼鏡の奥の目が冷たくて逃げ出したくなる。
「丁度お宅へ伺うところでした。すれ違いにならず良かったです。が……」
そう言って、清水は私の格好を上から下まで眺める。
慌てて寝癖のついた髪を押さえるが、先ほどまで後ろに立っていたのだから今更だろう。
羞恥で顔が熱くなる。
「真理!」
そのとき、洋の声が聞こえた。
「洋!」
私を見つけた洋が安心したように笑い、こちらにやってくる、けれど清水の姿に洋の表情が硬くなった。
「おまえ、昨日の……真理に近づくなっ」
洋は清水を見て敵意をむき出しにすると、私の腕を引きかばうように前に出た。
洋の声にコンビニの店員が何事かと、こちらを見ている。
私は洋に…
@清水と話しをしたいと言う
A清水を無視して帰ろうと言う
B落ち着くように言う
- 110 :
- まとめがあると便利だと思ったので、勝手ながらまとめwikiつくりました。
よければ使ってください。
ttp://1000ed.wiki.fc2.com/
- 111 :
- >>110 乙です
読み方早見表はうれしいかも
- 112 :
- B落ち着くように言う
「洋おちついてっ」
声を抑えて洋をたしなめる。
「たまたまここで会っただけだよ、ほら、どうせ今日連絡するつもりだったし丁度いいじゃない」
「そりゃ、そうだけど……」
どこか腑に落ちないといった感じに眉根を寄せた。
「だからって、なんでこんな朝早くにこんな所にいるんだよ。
人の家を訪ねる時間じゃないだろ」
清水は私の家に来る途中だと言ったけれど、指摘されれば確かに早すぎる時間だ。
疑問に思い清水を見るが、相変わらず口元だけに笑みを浮かべてこちらを見ている。
何を考えているのかさっぱり読み取れない。
私は…
@気にしないことにする
A清水に問いただす
B場所を移す
- 113 :
- B場所を移す
「とりあえず、場所を移そうよ」
コンビニの店員の視線が痛い。
私が何か気にしていることに気づいたのか、洋も私の視線をたどる。
「……あ、そうだな場所移すか」
店員に気づいた洋が頷いた。
「えっと、……清水…さん、もいいですか?」
「はい」
私の言葉に、清水も頷く。
三人でコンビニを出て自然と家に向かって歩き出したが、
このまま家に清水を家に招いていいものかわからない。
なんとなく、清水の思う壺という気がする。
24時間営業ファミレスもそれほど離れていない場所にあるけれど、
私は携帯以外持ってきていないし、寝癖も気になる。
おそらく洋も財布は持ってきていないだろう。
どうしよう…
@清水だけ先にファミレスに行くように言う
A清水と洋に先にファミレスに行くように言う
Bこのまま三人で家まで行く
- 114 :
- Bこのまま三人で家まで行く
ちょっと考えて、どうせ清水は私の家を知っているのだし今更だろうと思い直す。
結局三人で私の家に戻ってきた。
「こちらの部屋で待っていてください」
私は清水を客間に通して、キッチンへ向かう。
その後を、洋が付いてきた。
「俺コーヒーな」
「はいはいわかってますよ」
私はヤカンに水を入れ火にかける。
「洋、これ見ててね」
私は洋に言い置いて、洗面所へ向かう。
そして、さっきから気になっていた寝癖を直して顔を洗った。
手早く身支度を整えてキッチンに戻ると、丁度お湯が沸いた所だった。
「ナイスタイミング」
洋はすでにコーヒーを入れる準備をしている。
勝手知ったるなんとやらだ。
けれど、私が戻ってきたのを見るとさっさと作業を中断して私に場所を譲ってきた。
いつもの事なので、私も豆をフィルターに入れお湯を入れる。
ゆっくりとお湯が落ちてくるのを見ながら、ふと思い出して洋を見る。
「ねぇ洋、海は家に居るの?」
「兄貴?さぁ?居るんじゃないか?」
昨日の夜はどこかに出かけるように荷物をもって行ったが、結局私を心配して戻ってきていた。
あの後眠そうにしていたから昨日は家に戻ったのかもしれないが、海の事だ、夜中に再度出かけた可能性もある。
出来るなら、清水と話をするときには海が居てくれたほうが心強いけれど……。
私は
@洋に海を呼んできてもらう
A海に電話してみる
B海には頼らない
- 115 :
- @洋に海を呼んできてもらう
「ね、洋、海も呼んできてくれる?」
「ん?……あぁ、いいけど起きるかわからねーぞ?」
「起きるかもしれないでしょ?」
「まーな。んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
「お願いね」
ヒョイと手をあげて、了解の意思を示して洋が出て行く。
それを見送ってから、入れたコーヒーを盆にのせて客間へ向かう。
「お待たせしました」
「ありがとうございます、お気遣い無く」
言葉遣いは丁寧だが、それだけという感じが拭えない。
とりあえず清水の正面に座り、昨日の事を詫びる。
「昨日は取り乱してしまって、すみませんでした」
私の言葉に、清水は器用に片眉だけ上げた。
「いいえ、こちらこそ真理様の事情も考慮せず、申し訳ございませんでした」
若干口調が軟らかくなったような気がしたが、相変わらず冷たい目をしている。
「昨日のお話ですが、私に遺言状を見せていただけますか?」
まずその遺言がどういうものか確認しないことには、なんの対処も出来ない。
私の言葉に、清水は頷き持っていた鞄から封筒を取り出す。
「こちらです」
「ありがとうございます」
慎重に中を取り出しその遺言を読む。
『遺言者・都坂光則(ミツノリ)は、この遺言書により次の通り遺言する』という文面で始まった遺言書を読み進める。
そして三条に目が止まった。
三 遺言者・都坂光則と吉川美希(○年○月○日生)との間に生れた左記の子を自分の子供として認知する
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 吉川 真理
生年月日 ○年○月○日
本籍 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
戸籍筆頭者 吉川美希
確かに遺言書には、母の名と私の名、そして誕生日に住所までしっかりと書かれている。
そして次の四条には私が相続する分の目録が書かれていた。
そこまで呼んで、もう一度最初から読み直し、今度は二条に目を止める。
二条には長男への相続について書かれている。ということは、私には腹違いの兄がいるということだ。
兄の名前は都坂由則(ヨシノリ)、年は私と7つ違いの26歳だ。
遺言状を見る限り、相続人は私を含めて3人。
都坂光則の妻、幸子。その子、由則。そして私だ。
@自分の相続の事について聞く
A兄、由則の事を聞く
B本妻、幸子の事を聞く
C父、光則の事を聞く
- 116 :
- C父、光則の事を聞く
「父はなぜ亡くなったのですか? というかまだニュースにはなって居ませんよね?」
「会長の因は心臓発作でした。会長が亡くなった事はまだ公にはしておりません。奥様のご希望で家族で静かに見送りたいとのことでしたので」
そう言って、清水はコーヒーを一口飲む。
「ですが、明日公表する事になっております」
「え?」
「親族会議で決まった事のようですので、なぜ今このタイミングかは私には分かりかねます」
清水はそう言ってまた一口コーヒーを飲む。
「遺書についてですが、5日ほど前に四十九日が終わりまして、形見分けのために会長の私物を整理しておりましたら発見されました」
「四十九日が終わってる……」
形見分けをするのは確かに四十九日が終わった後に行うのが一般的だと、葬儀屋さんが言っていた気がする。
ということは、父は母よりも少し早く亡くなっていたのだ。
母は父が亡くなった事を知っていただろうか…?
ぼんやり考えていると、清水が口を開いた。
「真理様はまだ未成年ですので、認知につきましてはすでに手続きを致しました」
「は?」
「認知する対象、つまり今回は真理様ですが……未成年の場合本人の同意は不要なのです」
「そ、うなんですか……」
そういう事なら私が文句を言っても仕方ないが、すっきりしない。
短い沈黙が落ちる。
そのとき、玄関が開く音がして二人分の足音が近づいてきた。
ノックの音と、海の声。洋はキッチンへ行ったのかもう一つの足音は奥へ向かった。
「失礼します」
「海」
「ごめん真理ちゃん、おそくなっちゃって」
ほやんとした顔の海が入ってきて、私の隣に座る。
「昨日はどうも、佐久間海です。俺は彼女のアドバイザー的な者なので、気にせず話を続けてください」
海はそう言って、目を瞑ってしまう。
清水さんは私に伺うように視線をよこしてきたが、私も頷くだけで返す。
次は何を聞こう。
@自分の相続の事について聞く
A兄、由則の事を聞く
B本妻、幸子の事を聞く
Cもっと父の事を聞く
- 117 :
- A兄、由則の事を聞く
「私には兄がいるんですね?」
「はい、由則様ですね」
「どういう人ですか?」
「由則様は上に立つために生まれた方です。会長の下、ずっと経営者としての教育を受けてこられました」
清水は言いながら、人差し指で眼鏡の位置を直す。
「会長が亡くなるまではご身分を隠し普通の社員として、地方の支店にお勤めでしたが、現在は呼び戻されております。
明日会長が亡くなった事を公表すると同時に、新たな会長として起たれる事になります」
「兄が会長になるんですか? まだ若いのに?」
「年齢は関係ございません。会長にはご兄弟が二人おりますが、経営者には向かない方々で、会長就任は辞退しておられます」
清水の言葉に、兄である由則のイメージが出来ていく。
(すごくお堅い融通の利かない、完璧主義者って感じ?)
とりあえず、自分とは合いそうにない。
「由則様は勤勉で、何事も手を抜かない傾向にあります。ですが柔軟に物事に対処する能力に優れて居ます」
私が持つイメージとそんなに変わらないらしい。
(お堅い、ってわけではないみたいだけど…)
@自分の相続の事について聞く
A父の兄弟について聞く
B本妻、幸子の事を聞く
- 118 :
- B本妻、幸子の事を聞く
「ここに書いてある奥さんは、納得しているんですか?」
遺言の1条に書いてある、父の配偶者。
「幸子様はとてもお優しい方です。
遺言が見つかり真理さまの事をお調べし、あなたのお母様がお亡くなりになっている事をお伝えしましたら、大変心を痛めておりました。
私が調べたところ、真理さまには近しい親族は居られないことも分かりましたので、それも報告いたしましたら、真理さまを引き取っても良いとまでおっしゃっていましたよ」
「え!?」
驚く私に、清水は淡々と言葉を続ける。
「どちらにしても、真理さまは未成年ですから、親権者か後見人が必要です。
ところで……、真理さまのお母様、美希さまは遺言は残されなかったのでしょうか?」
「母の遺言書、ですか……?」
そんなこと考えてもみなかった。
「はい、真理さまの最終親権者は美希さまです。美希さまが遺言で未成年後見人を指定している可能性もあります」
「……すぐに探したほうが良いですか?」
「そうですね、なるべく早くに……美希さまが大事なものをしまう場所など心当たりはありますか?」
私は少し考える。
そんな私の様子を見ながら清水は言葉を続けた。
「後は、そうですね。大切なものを預けるご友人などに心当たりがありましたらそちらの方にも連絡をしたほうが良いかもしれません」
母の交友関係は良く分からない。しいて言えば、海たちの家だけれど……。
@海に聞いてみる
A母が使っていた部屋を調べる
B母の遺書探しは後にして話を続ける
- 119 :
- B母の遺書探しは後にして話を続ける
「すぐに見つかるか分からないので、後で探してみます」
「よろしくお願いいたします、もし…」
清水はそこで言葉を切って名刺を取り出すと、裏にさらさらと何かを書く。
「見つかりましたら、こちらへ連絡を下さい。私の携帯番号です」
「あ、はい……」
確認すると、右上がりのかっちりした字で11桁の番号が並んでいる。
それから視線をはずして清水を見ると、相変わらず冷たい視線が帰ってきた。
「とりあえず、話を戻します。幸子様が真理様の相続を納得されているか?という事でしたが、納得されております。もちろん由則様もです」
「そうですか……」
どうやら遺産相続に関してはぱっと出の私がいても、ごたごたしないで済みそうではある。
「真理様が相続される分ですが、遺書に書いてあるとおり、賃貸マンション5棟とその土地、東北の別荘2つとその土地、九州の別荘1つとその土地、×○銀行の定期預金となります」
「は、はぁ……」
そう言われても、それがどういったものなのか分からない。
遺書には詳しく土地の広さやら建物の面積なんかが書いてあるが、その数字がどのくらいの広さになるのか、とパッと想像出来ない。
困惑する私を助けるかのように、海が口を開いた。
「それは、嫡子の由則氏が相続する分のどれくらいの割合になりますか?」
海の言葉に清水はちらりと海を見て、視線を私に戻した後に口を開いた。
「真理様が相続するのは、由則さまが相続する分の半分の割合になります」
「そうですか、なら、良いです」
「?」
「次に相続税についてですが、×○銀行の定期預金の4分の3ほどになりますので、こちらからお支払する事になると思います。
尚、真理さまのお母様が遺言を残していて、後見人を指定していた場合はその後見人が真理様が成人なさる来年の誕生日まで、この財産を管理する事になります」
「残して居なかった場合は?」
「真理様に選んでいただくことになりますが、幸子様の養子に入るか、家庭所に依頼して後見人を選んでもらう事になります。
もし幸子様の養子になりますと幸子様が親権者となりますので、財産の管理は幸子様が行います。
所が選んだ後見人は任期が明けた後、謝礼を払う事になります。ここまでで質問はありますか?」
清水はそう言って言葉を切った。
はっきり言って分からない事が多すぎる。
けれど海の様子から、海にはどういうことか分かっているようなので後で海に確認すれば、大丈夫そうではある。
どうしよう……
@分からない所を聞く
A話を進める
- 120 :
- A話を進める
「いいえ、とりあえずはないです」
「そうですか」
「……良いですか?」
そこで、海が口を開いた。
「なんでしょうか?」
「彼女が自分で財産管理できる方法を教えても?」
「……かまいませんが、それは相手の方に」
「それは問題ありません、彼女が同意しないなら関係のない話ですから」
清水の言葉をさえぎるようにして海が言葉をつなげた。
「私が財産管理できる方法なんてあるの?」
不思議に思って海を見ると、海は頷いたが「後でね」と微笑んだ。
清水はそんな私たちを見ていたが、鞄から紙を取り出す。
「こちらは遺書のコピーになります。こちらの原本はもうよろしいでしょうか?」
「あ、ちょっとまってください」
私はコピーを受け取り、原本と見比べる。
「はい、大丈夫です」
内容が同じ事を確認して、私は原本を返した。
「しっかりしていらっしゃいますね」
清水は、口元に小さく笑みを浮かべて原本を受け取った。
「では今日はこれで引き上げます。美希さまの遺書が見つかりましたらすぐにご連絡ください」
「はい」
「遺産の相続については受け取る方法で進めてよろしいでしょうか?」
@頷く
A明日まで待ってもらう
- 121 :
- A明日まで待ってもらう
「明日まで待ってもらえますか? ゆっくり考えたいので……母の遺書のこともあります
し」
「……そうですか、では明日までお待ちします」
「すみません」
「では、明日もこちらにお伺いします。時間は……そうですね夕方5時でいかがでしょうか
?」
「明日なら大丈夫です」
母が亡くなり、バイト先に出した休みは明日までだ。
「では、その時間に。今日は朝早くから失礼しました」
清水はそういって、鞄を持つと立ち上がった。
玄関まで見送って、扉が閉まるとついつい大きなため息がでる。
「終わったか?」
リビングに居たのだろう、洋がカップをてに持ったまま玄関にやってきた。
「うん、一応ね」
私は頷いて応接間に戻る。
海は清水の置いて行った遺言書のコピーを見ている。
@海に財産管理の話を聞く
A母の遺言書を捜す
Bおばさんに母から何か預っていないか聞く
- 122 :
- A母の遺言書を捜す
「私、ちょっとお母さんの部屋に行ってくるね」
「遺言書があるかどうか探してみるの?」
「うん」
「遺言書?」
私達の会話に、洋が首をかしげる。
「清水さんにお母さんが遺言書を残している可能性はないかって聞かれたの。
そのなかで私が成人するまでの後見人を指定してる可能性があるから探してみてって」
「それで、指定してあったらどうなるんだ?」
「真理ちゃんが二十歳になるまでの間、法定代理人になるんだよ」
「……法定代理人ってなんだよ?」
「財産の管理や、契約の代理とかだね。まぁ、やる事は親とほぼ変わらないよ」
「ふーん?」
分かったのかそうでないのか、生返事をして今度は私に顔を向ける。
「手伝うか?」
「ううん、一人で大丈夫」
「洋、母さんにちょっと聞いてきてもらいたい事があるんだけど」
「なんだ?」
「おばさんから何かあずかっている物がないか、おばさんが親しくしていた友人に心当たりがないかの二つ」
「わかった」
洋は返事をして、持っていたカップを台所に戻した後、家を出て行った。
「私も探してくるよ」
「うん」
海はまだ遺言書を眺めている。
私は海をそこに残したまま、母の部屋へと向かった。
部屋の中をぐるりと見回して、大事な物をしまって置きそうな場所を探す。
とりあえず……
@化粧台の中
A押し入れの中
B鞄の中
- 123 :
- ↑番号104でした
- 124 :
- 一般の方からこちらに移動してきました
書き込みは少ないようですがどうぞよろしく
@化粧台の中
部屋の中を見回して、最初に入ってきたのはお母さんの化粧台だった。
大切に使われていた化粧台の前に、私は静かに腰を下ろす。
そういえば化粧台の中の遺品整理は、ほとんど手付かずだった。
長年使い込まれた化粧台の引き出しを、私はゆっくり開ける。
(あっ、お母さんの匂い……)
引き出しの中のこもった匂いに、思わず懐かしさがこみ上げてくる。
化粧品独特の甘い香料が混ざり合った匂いが、お母さんそのものだったからだ。
どんなに仕事が忙しくても、必ず薄化粧だけはしていた。
厳しくて優しくて、地味だったけどいつも身綺麗にしている人だった。
鏡の前には、お母さんによく似た姿が映っている。
薄いお化粧をするようになってから、ますますお母さんに似てきた気がする。
(お母さん。私、都坂って人達の相続に巻き込まれちゃったの)
鏡の中にいるお母さんによく似た姿にそっと呟く。
(都坂光則って人の事、初めて知ったよ)
(その人、私の父親だったんだね)
(大切な事なのに、どうして私に隠し続けていたの?)
(ねぇ、なぜ黙っているの? 私には言えないような過去でもあったの?)
(答えて。ちゃんと説明して……)
どれだけ問いかけても、返事なんてかえってくるはず無い。
ただ鏡には泣きそうな顔をした私が映っていた。
(駄目だ。こんな不安そうな顔してちゃ海が心配する)
折れそうな気持ちを振り払うように、首を強く左右に振った。
そして私は目的だった母の遺言書を探しを始める。
仕舞われた使いかけの化粧道具を、一つ一つを化粧台に乗せていく。
すべて化粧品を出し終えたところで、引き出しの一番奥に何かあるのを発見する。
取り出すと、細長い茶色の封筒だった。
(まさか、これが遺言書?)
どうしよう
@海を呼ぶ
A中身を見る
- 125 :
- A中身を見る
手に取った茶色の封筒には、封はされていなかった。
ただ紙が劣化したように色あせ、幾年かの時の経過を伺わせている。
中を覗き込むと、縦書きの便箋が三つ折で丁寧に収められていた。
少し迷いながら、私はその便箋を取り出す。
(遺言書というより……手紙?)
開くと、お母さんの筆跡で何か書かれている。
私はごくりと唾を飲み込んで、その文字を目で追っていった。
『拝啓 秋風が立ちはじめ、過ごしやすい季節となりましたが旦那様はいかがお過ごしでしょうか。
長らくご奉公させて頂いていたにもかかわらず体調を崩してしまい、皆様には大変なご迷惑をお掛けし
本当に申し訳なく思っています。
出奔同然でお屋敷を去ってしまった事、どうかお許しください。
冬のあの日の出来事は、すべて私の弱さがまねいた過ちです。
あの日以来、旦那様だけでなくお優しい奥様にも、どのような顔でお会いしてよいのか分かりませんでした。
特にまだお小さい坊ちゃんが私を慕ってくれるたび、犯した罪に身を焼かれる思いでした。
どれだけお詫びしてもしきれないほど、後悔が募るばかりです。
ですから旦那様にも奥様にもお坊ちゃんにもこれ以上迷惑をおかけする訳には参りません。
勝手な願いとは承知の上ですが、私の事は一切お忘れになって欲しいのです。
私はこの罪を一生隠しながら生きていく事になると思います。
けれどこの身に宿っている命には何の罪も無い、そう感じ始めています。
それどころかこの子がお腹の中で少しずつ大きくなる様子を確認する度、勇気さえもらえるのです。
旦那様と過ごした日々は私の心の中でかけがえの無いものです。
思い返すと後悔ばかりですが、お慕いする気持ちだけは裏切ることはできません。
この想いを胸に、この子と二人で生きていきたいと思います。
この子が無事生まれ体調が回復し次第、一から出直していく覚悟です。
いままで大変お世話になりました。
最後になりましたが、皆様のご健勝を心からお祈り申し上げます。 敬具』
息をするのも忘れ、母の手紙を読み終える。
私は
@考える
A海を呼ぶ
B見なかったことにする
- 126 :
- A海を呼ぶ
「海……」
お母さんの書いた手紙を握り締めたまま、私は海を呼ぶ。
きちんと声を出したつもりだったのに、語尾が震える。
「どうしたの、真理ちゃん」
「海、ちょっと来て」
「もしかして、おばさんの遺言書がみつかった?」
私の声を聞きつけ、海がこちらへやって来る。
さっき読み終えたばかりの母の手紙を、黙って海に差し出す。
「これ、おばさんの字だね。拝啓ってことは手紙かな?」
海は子供をあやすような優しい口調で私に問いかけてくる。
きっと私の動揺を見透かしたのだろう。
「真理ちゃん、これ読んでもいいかな」
「……うん、お願い」
「じゃあ、読ませてもらうね」
そう言うと、海は母の字を目で追い始める。
私はそれを黙って見ていた。
「これは……」
読み終えた海が静かに呟く。
「お母さんは都坂家で使用人として働いていたんだね」
「そうだね。この内容からも、まず間違いないと思う。
出奔同然と書いてあるし、おばさんはこの屋敷を突然辞めたんだろうね」
「どうしてお母さん辞めたのかな……」
「それは……」
「どうしてお母さんは、屋敷を逃げるように辞めなくちゃいけなかったんだろうね」
自分でも意地悪な質問だとは理解している。
けれど私は問いかけずにはいられなかった。
「やっぱり……私がお腹の中にいることが分ったから?」
「それは……」
「屋敷の主人と使用人が不倫して、その果てに出来た不義の子。それが私なんだね」
「………………」
「誰からも祝福されることのない子供を生むなんて、お母さんどうかしてるよ」
「真理ちゃん。それは違うよ」
「どうして違うの? お母さんはずっと本当の事を言えず、私に嘘をつき続けていたんだよ。
それって、後ろめたい気持ちがあったからじゃないの?」
お母さんの手紙には、何度も後悔という言葉を使っていた。
後悔しなければならないような恋なら、しなければいいのに。
期を早めるまで働かなくてはならないなら、私なんて生まなければ良かったのに。
@「ごめん、今は独りになりたいんだ」
A「ごめん、海に八つ当りしてるね」
B「私、もう財産なんて要らないよ」
- 127 :
- A「ごめん、海に八つ当りしてるね」
海の悲しそうな顔を見て、興奮していた自分自身に気づく。
つい海を責めるような口調で話していた。
こんなのはただの八つ当たりでしかない。
「いいよ。俺は全然気にしてないから」
海は私の頭にポンと手を乗せて、眉をへの字にしたまま困ったように微笑む。
(海……)
いつもと変わらないそのふわふわした動きに、気持ちが落ち着いていく。
海のマイペースぶりは、私の波立った気持ちまで凪いだものに変えてしまう。
「でもね、真理ちゃん」
「どうしたの?」
「真理ちゃんに一言だけ文句があるんだ」
そう言って、海は覗き込む。
こんな真面目な顔をするなんて、寝ている時以外ほとんど見ることは無かった。
「さっき真理ちゃんは祝福されない子供だと言っていたけど、それはやっぱり間違いだよ」
「でも私は……」
「聞いて真理ちゃん。おばさんがずっと頑張っていたのは真理ちゃんが居たからだよね?」
「……うん」
「そんなおばさんにとって一番の宝物は、一体誰だったと思う?」
「私……だと思う」
「だよね。それに俺だって洋だって、うちの両親も真理ちゃんが大好きだよ」
「………あ、ありがとう」
「だから二度とそんな悲しい事を言っちゃ駄目だ」
「うん」
「真理ちゃんは自分自身を一番好きな位でいなくちゃ。それが天国にいるおばさんへの親孝行だよ」
「そうだね。わかったよ」
「よし! やっぱり真理ちゃんはいい子だね」
海はまたいつもの調子に戻って「よしよし」と私を撫でくれる。
普段なら対応に困ってしまう子ども扱いも、今だけは素直に嬉しかった。
@父について話す
A母について話す
- 128 :
- A母について話す
少し冷静になった頭で、母の手紙にもう一度目を通す。
海も私と肩を並べ、その手紙を読み返しているようだった。
「この手紙、だいぶ古いものだよね」
「たぶん19年前、つまり真理ちゃんがまだおばさんのお腹の中に居た頃に書いたものだと思うよ」
「19年前に書いた父宛の手紙なのに、どうしてお母さんが持っていたんだろう」
「ペンで綺麗に書いてあるから下書きという感じではないね」
「じゃあ、出し忘れ?」
「出し忘れよりも……出そうとしたけど出せなかった手紙、と考えるのが一番自然な気はするけど」
「出せなかった手紙?」
海に向かって、私は問いかける。
海は私に向かって頷くと、畳に置いたままの封筒を持った。
「うん。こんな大事な内容なのに、単なる出し忘れるとは考えづらいよ」
「確かにお母さんは几帳面だし、忘れる事も少なかったけど……」
「おばさんはこの手紙を出すことも捨てることも出来なかったんだとしたら……。ずっと仕舞っていた事も納得できるよね」
(出すことも捨てることもできなかった手紙、か)
私はもう一度、母が若い頃に書いた手紙を見る。
逆算していくと、お母さんはこの手紙を二十歳の時に書いた事になる。
もし一年後の私が同じ状況になってしまったらと想像する。
好きになってはいけない人を好きになって、その人との子供を身ごもってしまう。
だから逃げるようにして屋敷を出て行った。
冷静に考えると、もっと違う器用な生き方があるのかもしれない。
だけど親戚らしい親戚も居ないお母さんが誰に相談できただろう。
そしてうまれてきた子供に真実をいう事が出来るのか。
(わからない……)
お母さんは不倫をしたという後ろめたさで、私に父親の事を隠していたのだろうか。
だったら、この手紙をずっと大事に持っておく必要なんて無いはずだ。
むしろ私に知られる可能性があるものだったら処分した方がいい。
「真理ちゃん、まだ何か入ってるよ」
海の言葉で私は思考を中断する。
「どうしたの? 海」
「この封筒の中に、まだ何か入っているみたいなんだ」
海が茶色の封筒を傾けると、大きな手の平に何かが落ちる。
入っていたものは
@花びら
A写真
Bペンダント
- 129 :
- A写真
古ぼけた写真には、5人の人物が並んで写っていた。
一人は若い頃の母。
一人はインターネットで調べたときに見たものよりさらに若い都坂グループの会長、私の父。
一人はとても優しそうで綺麗な女の人。おそらくは幸子さん。
一人は、小学生にあがるかあがらないかというくらいの男の子。幸子さんの手を握っていることからたぶんは兄の由則さん。
最後にまだ学生に見える少年が一人。この人はまったく見覚えが無いため誰かはわからない。
けれど服装から、この人も使用人の一人なのだろうと推測できる。
5人はとても幸せそうに微笑んで写真に納まっている。
「おばさんと宮坂の会長、そしてその奥さんに子供……かな?もう一人は誰だろう?」
海も私と同じ推測をしたようだ。
5人の様子からして、とても仲がよかったのだろう。
「おばさんは都坂とは全ての接点を消そうとしたけれど、写真を捨てたり燃やしたりすることができなかったんだね。だから、手紙を書いて写真を返そうとしたのかも」
「でも、それも結局手放すことはできなかった……」
幸せそうに微笑むお母さんの姿に胸が痛くなる。
「この写真が大体20年前に撮られたものとして、当時15,6歳にみえるから今この男の人は30歳半ばくらいか」
私の様子に気づいているのかいないのか、海はそういって写真を封筒に戻した。
「とりあえず、遺書とは関係ないようだね」
「あ、うん……」
「でももしかしたらこの男の人、都坂の使用人でおばさんとも仲がよかったみたいだから、遺書とかそういうものを預かってるかもしれない。
家を探して遺書が見つからなかったら、明日清水さんにこの人のことを聞いてみるといいかもしれないね」
「うん、そうする」
私はとても幸せそうな写真を頭の中から消すように軽く頭を振る。
ああいうものが見つかって、探す気力が激減してしまった。
@それでも遺書探し再開
A一休みする
B海に話しかける
- 130 :
- A一休みする
(とりあえず一休みしようかな)
そういえば朝ごはんすら食べていなかったことを思い出す。
時計を見るといつの間にかお昼前になっていた。
色々あって食欲は湧かないけれど、食事抜きという訳にもいかないだろう。
「もうこんな時間なんだ。海、朝昼兼用で何か作ろうかと思うんだけど一緒に食べるでしょ?」
「……あ、うん」
海はまだお母さんの手紙を見ている。
もしかしたら、海にとって何かまだ気になる点でも残っているのかもしれない。
「海は一体何が食べたいの?」
「……なんでもいいよ」
「焼きそば? オムライス? それくらいなら食材あるしすぐに作れるよ」
「………どっちでもいい。真理ちゃんに任せる」
海は手紙から目を離すことなく、独り言のように呟いている。
一応会話としては成立しているけど、ほとんど生返事だ。
(もう……)
「決められないから聞いてるのに」
こういう時洋だったら、すぐに食べたいものを答えてくれる。
海は洋とは違って、出された献立ならどんな物でも文句一つ言わずにニコニコと食べる。
好き嫌いも無いから反応がいつも一緒で、洋との食事よりもなぜか物足りなく感じてしまう。
「えっと……ごめん。なんだっけ」
私が呆れていると、海はようやく手紙から目を離した。
「焼きそばとオムライスだったらどっちが食べたいか尋ねていたのに、聞いてなかったの?」
「聞いていたよ。どっちにしようか迷っていたんだ」
「じゃあどっちが食べたいか決まった?」
「うーん。真理ちゃんが作ってくれる料理は全部美味しいからね、何でも喜んで食べるよ」
ニコッと微笑み、海はいつものように答えた。
全部美味しいなんて言われたら、これ以上どっちが良いかなんて聞き辛くなる。
素なのか計算なのか分らないけど、いつも海にはこうやって誤魔化されてきた気がする。
私は…
@焼きそばを作る
Aオムライスを作る
B海を驚かせるようなものを作る
- 131 :
- Aオムライスを作る
(とりあえずいつも喜んでくれるからいいけどね)
私はキッチンに向かい、手早くオムライスを作った。
ケチャップライスの上に半熟のオムレツを乗せたシンプルなものだ。
「海ー! ご飯できたよ」
私に呼ばれて、海はダイニングの椅子に腰を下ろす。
私も海は向かい合って、朝昼兼用の食事を取り始めた。
「どう? 美味しい」
「うん」
海はニコニコと微笑むながら食べている。
海の場合いつもと同じ笑顔だから、ある意味ポーカーフェイスとも言える。
「本当に?」
「うん、もちろん」
「どういう風に美味しい?」
「このケチャップが美味しい」
「それ、市販のケチャップだよ」
「あっ、そうなんだ。この上に乗ってる卵もふわふわで美味しいよ」
「その卵の中に入れたものがあるんだけど、何かわかる?」
「なんだろう……。塩?」
「確かに少し入れたけど……他にも入ってるでしょ? すぐにわかるはずなんだけどな」
「うーん」
開いたオムレツの中を見て首をかしげた。
「正解はチーズだよ。溶けたチーズが入ってるの」
「ああ、そういえば」
「気がつかなかった?」
「うん」
スプーンを入れるたび溶けたチーズが糸をひいていたはずなのに、全く気がつかなかったようだ。
(やっぱり海って……)
@味オンチかも
A食事に関する興味が薄いなぁ
B天然だな
- 132 :
- @味オンチかも
確信は無いけれど、思い当たるフシは前からあった。
つかみどころが無いのはいつもの事だけど。
「もしかして海って――」
私が言いかけところで、玄関のドアを勢いよく開く音がした。
「おい、真理! 捕まえたぞ!」
大声で私に呼びかけているのは、洋の声だ。
「洋の声だね。どうしたんだろう」
「確か母さんに遺言書を預かってないか聞きに行ってたはずだけど……」
私と海は顔を見合わせて首をかしげる。
すると今度は洋ではない高い声が玄関の方から聞こえてくる。
「離せ! 離せって言ってるだろう、馬鹿!」
「コラ! 不審者のくせに大人しくしてろよ」
「うるさい! いいから離せよ!」
「いててっ! 噛んだなこの悪ガキ!」
(洋と……もう一人は子供?)
「行ってみようか」
「そうだね」
私と海は食事を中断して、玄関に向かう。
玄関には洋と首根っこを掴まれて暴れている少年が居た。
「よう、真理。やっと捕まえたぜ、朝の不審者」
洋は少年の首根っこを掴んだまま私に突き出す。
中学生になるかならないかくらいの少年は憮然とした顔で私を見ている。
@「朝の不審者?」
A「洋、子供に乱暴しちゃ駄目だよ」
B「キミ、お名前は?」
- 133 :
- @「朝の不審者?」
私の言葉に、洋は大きなため息を漏らした。
「お前、もう忘れたのか? 今朝見ただろう、怪しい人影。あれがコイツだよ」
「もちろん覚えてるよ。だけどまだ子供じゃない」
「コイツ、懲りずにまたお前の家を見張ってたんだよ。だから捕まえてやったんだ」
私は困惑する。
朝早くに見かけた人影が、まさか子供だったなんて。
私が言葉を出せずにいると、隣に居た海が洋を止めていた。
「洋、相手は子供だ。離してあげようじゃないか」
「でも兄貴、こいつ朝一から真理の家を覗いていたんだぜ」
「何か理由があっての事かもしれないよ。もしかしたら迷子という可能性もあるしね」
「迷子って歳かよ。もしかしたら下着泥棒かもしれないじゃないか」
「こんな子供が?」
「兄貴だって記憶があるだろう。これくらいの歳からが一番異性に興味持つんだよ」
確かに小学校の高学年くらいの子なら家に帰る方法くらい自分で見つけるだろう。
下着泥棒かどうかは置いといても、海の言う通り理由があるのかもしれない。
冷静になってきた私は、なめべく優しい声で少年に話しかける。
「ねぇ、キミのお名前は? どうして私の家を朝見ていたのかな」
少年は相変わらず憮然とした顔で私を見ている。
私達の注目が謎の少年に注がれる。
少年は物怖じすることなく、首根っこを掴まれたままで一歩前に出た。
「どうでもいいけど。人に名前を尋ねるなら、まず自分から名乗るのが常識じゃない?」
「なっ、コイツ……」
「いいよ、洋。ごめん気がつかなかったね。私は吉川真理です」
「知ってるよ。吉川真理、19歳の学生。天涯孤独の可哀想な人なんでしょ?」
「おいおい……。このガキ、一発シバいていいか?」
「洋、いいからこの子を離してあげて」
洋が首元のTシャツを仕方なく離すと、男の子は咳き込んだ。
悔しそうに洋を睨み付けて、私に向き直った。
「僕の名前は藤林也(ふじりんや)。尋ねてきた客人に暴力を働くなんて、おねーさんの彼氏は最低だよ。
という事はおねーさんの程度もたかが知れてるって事だよね」
そういうと、林也と名乗った少年はフンと鼻を鳴らした。
私は……
@「藤? 藤って……」
A「ところでキミは何か用があって私に会いに来たの?」
B「えっ、洋は彼氏じゃないよ」
- 134 :
- @「藤? 藤って……」
私が呟いていると、隣にいる海が不思議そうに覗き込んでくる。
「真理ちゃん、どうかした?」
「……うん。藤って苗字にすごく聞き覚えがあるから」
「この界隈では珍しい苗字だけど、知り合いだったの?」
「ううん、この子は初めて見るよ。だけどなぜか気になるのよね」
私と海の会話が聞こえたのか、林也くんが口を開く。
歳に似合わず、挑発的な態度だった。
「おねーさんさ。今、草太郎の顔を思い浮かべたんでしょ?」
「えっ、どうして林也くんが藤くんの事を知っているの!?」
「だって僕、草太郎の弟だし」
「やっぱり……」
最初に見たときから、どこか誰かに似ているとは思っていたのだ。
言われてみると顔だけじゃなく、隙が無い雰囲気も似ている。
弟だとわかった瞬間、妙に納得してしまったくらいだ。
「で、コイツは何者なんだ? それにその草太郎って奴は誰だよ」
玄関で立ちっぱなしの洋が不機嫌な声で尋ねてくる。
「立ち話もなんだし、説明は家の中でするよ。林也くんも上がって」
「おいっ、不審者のコイツもかよ」
「当たり前でしょ。林也くんがもう不審者じゃないって分ったからね」
「そうなのか? おいガキ、さっきみたいに騒ぐなよ」
「さんざん騒いだのは、アンタの方でしょうが………」
林也くんはそう言うと、洋を睨み付けて靴を脱ぐ。
洋も子供に馬鹿にされたのが面白くないのか、乱暴に靴を脱ぎ捨てた。
隣に立っている海だけは、いつもと変わらずのぼんやりしている。
私は食べかけの食器を簡単に片付け、お茶を入れる。
リビングのドアを開けると、三人は一斉に私に視線を向けてきた。
@黙ってお茶を出す
Aとりあえず藤君の説明を始める
B林也くんになぜ家に来たのか尋ねる
- 135 :
- Aとりあえず藤君の説明を始める
私は海と洋に藤くんの説明を始めた。
バイトの後輩で二十歳の大学生だということ。
少し無愛想だけど真面目だし仕事もそつなくこなすこと。
母が亡くなってからバイト先に来ない私を心配してくれていたこと。
昨日は偶然会って、お焼香をあげてくれたことなどを話した。
「バイト先でも特に親しい訳じゃなくて。だから私が知っている事は少ないんだ」
そう言って説明を終える。
実際、藤くんの携帯番号もどこに住んでいるのかさえ知らない。
「なるほど。真理ちゃんの話を聞く限り、悪い人物ではなさそうだね」
海は話を聞き終えて納得したように呟く。
その言葉が気に入らないのか、林也くんが頬を膨らませる。
「当たり前だろ!にぃちゃんが悪人なもんか!」
「あっ、君のお兄さんを悪く言うつもりは無かったんだ」
「けど疑ってたよね?」
「うん、君のいう通りだ。気に障ったのなら謝る。ごめんね、林也くん」
「別に僕はムカついてた訳じゃ……」
「いや、俺だって洋が疑われていたら我慢できないかもしれない」
「洋?」
「君を捕まえたこの男は俺の弟なんだ。俺は佐久間海、弟は洋だ。二人とも真理ちゃんとは幼馴染でね」
「ふーん。二人ともおねーさんの彼氏じゃないんだ」
(二人とも彼氏って……林也くんは私を何だと思っているんだろう)
「で、ガキ。バイト仲間の弟がどうして真理を見張ってたんだ?」
なかなか本題に入らない海を見かねて、洋はぶっきらぼうに言った。
「僕より年上のくせに人にものを聞く態度がなってないね」
「なっ、このガキ言わせておけば……」
「先に誤解だから言っておくけど。僕は覗きなんかじゃないから」
「嘘つけ。だったら俺が追いかけた時どうして逃げた?見つかったらマズイからじゃないのか?」
「違う!」
「逃げておいて、どう違うってんだよ」
「僕はただ頼みに来ただけだ。なのにいきなり追いかけられたから……別に逃げたわけじゃない!」
私は……
@(頼み?)
A「洋、ちょっと冷静になって」
B「もしかして、私にお願いがあったから来たの?」
- 136 :
- @(頼み?)
林也くんが私の家に来ていたのは、私に対して何か頼み事があるらしい。
もしかして藤くんに何かあったのかもしれない。
「頼みって私にお願いがあったから来たんだよね。もしかして藤くんに何かあった?」
「ううん、違うけど」
「じゃあ、何? 弟のキミがわざわざ来るって、相当な事よね」
「にぃちゃんと僕がここに来たこととは……直接は関係ないよ」
「えっ、でもキミ、藤くんの弟なんだよね」
「そうだけど? この場所を教えてくれたのもにぃちゃんだし」
「昨日はお焼香をあげに来てくれたから、うちの場所は知っているはずだけど……」
「でも僕は、にぃちゃんの事で頼みに来たんじゃないんだ」
(訳が分らない……)
林也くんと私は初対面だ。
接点といえばバイト先の藤くん一人だけ。
なのに林也くんは藤くんの頼み事では無いと言う。
「なら何のお願いで私に会いに来たの?」
「それは……幸子先生の事でおねーさんに頼みに来たんだよ」
(幸子、先生?)
私の頭の中で保育園から今までの先生の顔と名前が一斉に思い浮かぶ。
もう顔や名前さえもはっきり思い出せない先生も何人か居た。
その覚えている中でも、幸子先生なんて名前の教師は一人も出てこない。
「ごめん、林也くん。幸子先生って……誰のことかな」
「っ……!! 」
私が尋ねた瞬間、林也くんの顔がカッと赤くなる。
つぎの瞬間、唇をかみ締めて私を射るように睨み付けた。
その目には、うっすら涙さえ浮かんでいる。
「……それ、本気で言ってるの?」
「えっ」
「やっと元気になってきた幸子先生がまた悲しそうになっちゃったのは、アンタのせいなのに……」
「私のせい?」
「そうだよ! それなのにまだ知らないって言うのかよ!?」
私は……
@「どういう事?」
A「本気も何も、訳がわからないよ」
B「幸子先生ってもしかして……」
- 137 :
- A「本気も何も、訳がわからないよ」
「わからないはずないだろ!」
「だって本当に知らないから」
「嘘だ! にぃちゃんと先生がアンタの話してるの、僕はちゃんと聞いたんだ!」
「聞いたって……何を」
「もう話は進んでるって言ってた。先生が寝込んだのも全部アンタのせいなんだ!」
「私のせいって言われても、本当にわからないのよ」
「そんなはずないだろ!」
「あ、あのね、林也くん」
「僕が子供だからって……馬鹿にするな!!」
責められて、怒鳴られて。
あまりの剣幕に言葉がでない。
一方的に感情をぶつけてくる林也くんをなだめる術すら分らない。
「おいガキ! なに一人でキレてんだ! 真理もとぼけてないで言い返せよ!」
洋が私と林也くんの間に入って、止めようとする。
「とにかく、林也くん。少し落ち着こう」
海も会話にすらなってない状況を見かねたように、仲裁に入った。
「頼めば少しは話ができそうな人だと思ってたけど、やっぱり無理だった!
わかった。アンタたちはグルになって、幸子先生を困らせようとしてるんだな!」
「だからその幸子先生って……」
「……にぃちゃんがいいって言っても、僕は絶対に許さないから!」
「林也くん、少しは私の話も……」
「こんな人、本当の子供にする必要なんてないって先生に言ってやる!」
「えっ、それはどういう意味なの」
「もういいっ! 黙って抜け出してきたのにバカみたいだ!!」
そんな台詞を残して、林也くんは乱暴に立ち上がるとリビングを出て行った。
私はその姿を呆然と見送ることしか出来ない。
海は私を心配そうに見ている。
「おい! 待てって」
林也くんを追いかけに行った洋の声と同時に、玄関の扉が閉まる音がする。
私は……
@洋と一緒に玄関まで追いかける
Aその場から動けない
B海を見る
- 138 :
- @洋と一緒に玄関まで追いかける
「待って、林也くん!」
訳がわからないまま、林也くんと洋の出て行った玄関の扉を開ける。
だけど家の前には、手の甲を押さえた洋だけが立っていた。
「洋……! 林也くんは?」
「駄目だ。あのガキ、俺を噛んで逃げやがった」
「洋の手、赤くなってる」
「アイツ……今回は本気で俺を噛みやがったからな」
「痛そう。とにかく入って消毒するから」
玄関には海も居たけれど、私は首をふって二人にリビングに入るように促す。
リビングに戻ると、救急箱を出して洋の手にガーゼを張った。
「あのガキ、一体何しに来たんだよ。いきなりキレて帰っちまうし」
「私にも全く分らないよ」
「ったく。これだからガキは」
「何度も幸子先生って言ってたけど、私にはそんな知り合い居ないんだよね」
「きっと勘違いしたんだろ。にして今度あったらタダじゃおかないからな」
「洋、手は動く?」
「ああ、痛いけど平気だ」
私と洋の会話を聞いていた海が私達を交互に見て、ポツりと呟く。
「真理ちゃん、洋。ちょっといいかな」
「ん? 何だよ兄貴」
「どうしたの? 海」
「あの子が言っていた幸子先生って……もしかして、この書類に書いてある都坂幸子氏のことじゃないかと思って」
「都坂幸子?」
洋は誰だそれ? という顔で首を傾げる。
私は海が指を刺していた、遺言書のコピーに目を落とした。
@「確かに、父の奥さんは同じ幸子って名前だけど……」
A「こんなの、よくある名前だよ」
B「その都坂幸子さんと林也くんが関係あるってこと?」
- 139 :
- 久々に書いてみる
@「確かに、父の奥さんは同じ幸子って名前だけど……」
幸子なんてごくありふれた名前だ。
それに父の正妻の都坂幸子さんと藤くんの弟とが私の中で上手く繋がらない。
きっと書類上で名前を確認しただけの人だから余計にそう感じるのだろう。
「だけど何だい? 真理ちゃん」
「幸子なんてよくある名前だよ」
「そうだね。真理ちゃんの言うとおりよくある名前だ」
「それに藤くんの弟と都坂幸子さんが知り合いなんて……」
「唐突すぎると思ってる?」
「うん」
「でも偶然で済ますには、少しタイミングが良すぎるよね」
(確かに……)
思わず私は黙り込んでしまう。
海は私の様子を見ると、今度は洋に話しかけた。
「そういえば洋」
「何だよ兄貴」
「母さん、おばさんの遺言書を預かっていた?」
「おっ、そうだった。やっぱ何も預かってないってさ」
「そうか……」
「あのさ、兄貴。おばさんの遺言書って無いとそんなにマズいのか?」
「いや。ただ遺言書に真理ちゃんの後見人を指定してる可能性があるんだ。
もし指定されたいたのなら、その後見人が相続に関する管理を真理ちゃんに代わってすることになる」
「へぇ……でもまだおばさんの遺言書は見つかってないんだよな」
「そうだね」
「じゃあ、このまま見つからなかった場合はどうなるんだよ」
「真理ちゃん自身が後見人を選ぶ事になるかな。まぁ他にも方法を提案されたけど」
「他の方法って?」
「弁護士の清水って人が言うには、この都坂幸子氏が真理ちゃんを養子にしてもいいと言っているらしいんだ」
「……それってこの幸子って人が真理の親になるって事か?」
「そうだね。もし養子になったら都坂幸子氏が真理ちゃんの親権者になるからね」
「ふーん。でもこの人、真理の顔も見たことないんだろ?」
「多分」
「ヘンな話だな」
「何がヘンなんだ?」
「だってさ。今まで何の関わりも無いヤツがいきなり親になれるなんて……やっぱヘンだよ」
洋はそう言終えると、納得できない顔をしていた。
私は……
@考える
A洋に話しかける
B海に話しかける
- 140 :
- 1000は無理そうだな
- 141 :
- 初参加させていただきます
A洋に話しかける
「たしかに、そうだよね」
私は少し考えたあと洋の言葉を肯定した。
母は私がお腹にいると分かってから父や幸子さんの元から離れた。
生前の母の様子を見ると、それから一切関わっていない。
そこまで考えたところで海が口を開いた。
「本当にそうかな?」
「え……どういう意味?」
「兄貴? なんか知ってんのか?」
私と洋の視線にいつもと変わらない表情で海は立っていた。
@「思い当たることがあるなら教えて」
A「まぁそういう意見もあるよね」
B「もうこの話やめよう」
- 142 :
- @「思い当たることがあるなら教えて」
私の言葉に海はうなずくと口を開いた。
「さっき真理ちゃんがご飯を作っていたときに携帯で『都坂幸子』を調べてみたんだ。
そうしたらこんなホームページを見つけてね」
海のスマートフォンを覗き込むと『児童養護施設 手毬花の家』と映し出されていた。
施設の園長が都坂幸子となっている。
品が良い初老の女性が写真で載っていた。
「さっきのガキ、幸子先生と言っていたよな」
「児童養護施設って……」
「いろいろな理由で親と一緒に居られない子供たちを保護者に代わって養護する施設かな」
「手毬花ってどこかで聞いたような……」
「手毬花はオオデマリ、都坂グループの社章にもなっているね」
「じゃあ……」
「さっきの林也くんはこの施設の子かもしれないね。それにこれを見て欲しい」
海が画面を動かしていくと最新のお知らせに『閉園について』と書かれていた。
「もうすぐ閉園するみたいだね」
「あのガキがお願いがどうのって言ってたのはコレのことか」
「だろうね。これを見たら真理ちゃんを引き取ろうとする事もさっきの男の子の言葉も納得できないかい?」
@できる
Aできない
B別の話を振る
- 143 :
- @できる
「できるよ……だから林也くん、私のせいだって言ってきたのね」
と私は全く気がつかなかったことに恥じながらつぶやいた。
「そーいや先生が寝込んだとか言ってたな」
「あとお兄さんだっけ? あの子に真理ちゃんのことを言ったのは」
「え?」
「あの言い振りでは彼は普通に話してたようだけど歪めて捕らえたみたいだね」
その後も都坂幸子と林也くんについての話をポツリポツリとした後、お茶を飲んだ。
お茶を飲みながら考える。私を受け入れるって話だけど、誰も彼も両手を広げて迎えてくれている様子はなさそうだ。
アチラに行くつもりもなかったのに、胸に重苦しい何かがズシンと落ちてくる。
そもそもだ。私は母の話も録に理解できていない。実際に会って母に対して都坂幸子がどう思っているのかを聞いたわけでもない。
勝手に周りが騒いで、勝手に周りが動いていっている。
自分のことなのに、自分じゃない何かが事を運ぼうとしているような感覚におちた。
「……なんか怖いなぁ」
急に変に不安になった私は
@母のことを頭に思い浮かべた
A洋のことを頭に思い浮かべた
B海のことを頭に思い浮かべた
- 144 :
- B海のことを頭に思い浮かべた
いつも海は冷静に状況を見ている気がする。
もし海が居なかったら、私は訳がわからないまま流されていたかもしれない。
(今、考えていたことを話してみようかな……)
「あのね海」
「何かな? 真理ちゃん」
「都坂幸子さんが私を受け入れるって言うけど、不安で。
周りばかり騒いで……自分じゃない何かが事を運ぼうとしているような感覚がするよ」
「うん。真理ちゃんが不安がるのも無理はないね」
海は私の言葉に大きく頷く。
こうして話を聞いてもらうだけでも不安が和らいだ気がした。
海も洋も私にとって心強い味方だ。
「真理は誰かが糸を引いてるみたいに感じているんだよな?」
「そうだね。だけどそれがどうしたの、洋」
「糸を引いてる人物ってあの弁護士じやないか?」
「そうかな……」
「あのスーツ野郎、最初からいけ好かなかったからな」
冷たい表情の堅物そうな弁護士の顔を思い浮かべる。
事務的に装っているけど、洋の言うとおり裏に違う目的があるのかもしれない。
「まだそう決め付けるのは早いな、洋。
弁護士が画策して真理ちゃんを都坂の養子にさせたとしても、今のところメリットは見当たらない。
それよりもなぜ面識も無い幸子が養子に迎えようとしているのかが重要だろう」
海も洋もそれぞれの意見を話し合っていた。
でも結局、色々話してみても情報量が少なすぎて予測の域を出ない。
やはり何か行動を起こさなくてはいけないだろう。
@施設に行ってみる
A明日弁護士が来るのを待つ
Bバイト先に行ってみる
- 145 :
- Bバイト先に行ってみる
「買い物ついでにバイト先に顔を出してみるよ」
この期に及んで私は自分から積極的な行動を取りたくなかった。
情報が少ない今、何かを知ってそうな弁護士を待ったり施設に足を運んだほうがいいとは思ったけど、それだけだった。
「冷蔵庫すっかり空だったもんなー。俺でよければ荷物持ちでついていこうか?」
俺結構食べたしなーなんて言いながら洋が言う。
「いや、いいよ。そんなに買ったら一人暮らしじゃ腐らせちゃいそうだし……」
「俺と兄貴が食べに来るからいいんじゃねーの?」
「いつもだったら反対だけど、俺も賛成かな。真理だけしかいない時に弁護士やここの場所を覚えた彼が来るかもしれないしね」
「海……私は子どもじゃないよ」
「一人で対処できるの?」
「うっ……」
自分ひとりの実力じゃ到底捌ききれない。3人でいた時だって林也くん一人にたじたじだったんだから。
結局買い物に2人はついて来て、一緒に食料品を見た後バイト先に行くことになった。
「いらっしゃいま……あ、先輩」
「藤くん、と……」
後輩の隣に知らない人がいた。
その人は……
@か細い女性
A車椅子に乗った青年
B近所の工事現場で働く肉体労働者
- 146 :
- B近所の工事現場で働く肉体労働者
(あの人、たまに来るお客さんだ)
以前藤くんとシフトが一緒になった時も、二人が話しているのを見かけたことがあった。
その時、ここの近くの工事現場で働いていると教えてもらった気がする。
「草太郎、この話はまた今度」
「あぁ……」
私が来たことに気付いたのか、汚れた作業服を着た客は話を切り上げて帰るようだ。
「ありがとうございました」
店の制服こそ着ていないものの、顔見知りのお客さんに一店員として挨拶する。
「チッ」
大柄な影とすれ違う瞬間、舌打ちのような音が耳に届いた。
聞き違いかと思って振り返ったけど、作業服の客はすでに店を出た後だった。
(失礼があった訳ではないよね。ただの聞き違いかな)
私は気持ちを切り替えて藤くんに向き直った。
「お客さんと話の途中だったみたいだね。邪魔だったかな」
「あいつのことなら構いません。それより先輩、今日は休みのはずですけど」
「買い物帰りでね。藤くんに少し聞きたいこともあって顔を出してみたんだ」
「……俺に聞きたい事、ですか?」
「うん。終わるまで裏で待たせてもらうね」
「構いませんけど、そちらの人達は?」
「一緒に話に参加してもらうつもりだけどいいかな」
「この人達もですか?」
「幼馴染で兄弟みたいな間柄なんだ。色々助けてもらってるの」
「どんな話か知りませんけど奥で待っていてください。あと20分で上がりますから」
私達は奥のロッカールームで仕事を終えるのを待つ。
しばらくすると藤くんが仕事を終わらせてやって来た。
海と洋がそれぞれ簡単な自己紹介を済ませて本題に入る。
何を話そうかな…
@施設の話
A弟の林也くんが来たこと
B作業服の客について
- 147 :
- A弟の林也くんが来たこと
「藤君弟いたよね? その子の話なんだけど……」
「林也が何か?」
いきなり弟の話をしてきた私に対する不信感を隠そうともしないで、藤君は続きを促してくる。
「実は私の家でちょっと話し合ったんだ」
あれを話し合いといえるかどうかは別として。
「その話、詳しい説明お願いできますか」
「あ、うん。それでね……」
話を続けるたびに眉間にしわを寄せていく藤君を見て冷や汗が出てくる。
いつもの無愛想な顔とは違う藤君が怖くて、途中で話を逸らして世間話をして家に帰ることにした。
「洋、海。おまたせ」
「お疲れ様。なにかわかったことある?」
「ぐっ……何もなかったよ」
途中で探りを入れることすら諦めた後ろめたさから、私は海から目を逸らした。
「マジかよー……まぁ、真理に何にも無くてよかったってことにしとくか」
洋は私を気遣うような口調で私に言った。
「うん……ありがとう」
なんとかく胸のモヤが解けないまま私は道路を歩いた。
途中会話が途切れながらも、ポツリポツリと3人で会話していた私達は自宅近所の工事現場の横を通りがかった。
「おい! そこの嬢ちゃん」
その時に先ほど会った小汚い作業服を着た男に話しかけられた。
「あ、あの時の……」
あの時の舌打ちを思い出して思わず顔をしかめる。
私の表情を気にする様子もなく男は私を上から下まで値踏みするような眼で見てくる。
「こんな時間に男2人はべらせて、草太郎も仲間にしたいのか?」
「……え?」
訳もわからず混乱する私を尻目に、男は吐き捨てるように続けた。
「はっ、本当にそっくりだな」
「テメェ!!」
洋は私を罵倒する男の胸倉を掴んで洋が怒鳴った。
「いい加減にしろテル! 仕事中だぞ」
その洋の声よりひときわ大きい声で他の作業員が男を怒鳴りつけた。
「それにしてもあいつ、感じ悪ぃな!」
洋がイラついた様子で立ち去ってゆく肉体労働者の背中を睨みつけた。
「……」
対して海は何かを考え込んでいるみたいだ。
「どうしたの、海?」
「ああ、実は……
@そっくりって言葉が気にかかるんだ。
A怒鳴ってた人、最近行方不明になってた俺の知り合いだに似ているんだ
Bさっきの人とどこかで会ったことがあるような……
- 148 :
- @そっくりって言葉が気にかかるんだ。
「そっくりって私とそっくりってことだよね。
それってやっぱり……」
不安な気持ちがそのまま声になって出てしまう。
そんな私の様子を見て、洋が私の背中をバシッと叩いてきた。
「そんな顔すんなよ。アイツが絡んできたらまた俺が助けてやるから」
「イタタ。うん……ありがとう」
「ったく真理が何したって言うんだ。まさかテルって奴もあの件の関係者なのか?」
「まず間違いないだろうな」
「どうしてそう思うんだよ、兄貴」
「あの男がそっくりと言っていたのは、おそらく真理ちゃんの亡くなったお母さんの事だろうから」
「そりゃ親子なんだからそっくりだろうさ」
「違うんだ、洋。あの男はそういう意味で言っていたんじゃないんだ」
「じゃあどういう意味だよ。真理のおばさんってすっごく優しい人だったじゃないか。
まさかおばさんが恨まれてたって言うつもりじゃないだろうな」
(そっか、まだ洋には手紙の事を言っていなかったっけ)
「洋。さっきのテルって人、私に男をはべらしてって言っていたよね」
「あぁ、そんな事言ってたっけ」
「きっと男の人にだらしないって言いたかったんだよ」
「わかんねぇ。男っ気ゼロの真理がどうしてそんな言われようされなきゃなんないんだよ!」
怒りと困惑の入り混じった洋に、私は偶然見つけた手紙について洋に話した。
母が都坂家の使用人として働いていていたこと。
屋敷の主と不倫の末、私ができた事。
すべて話していたらいつの間にか家の前だった。
@「今日はありがとう。二人とも明日もよろしくね」
A「洋がかばってくれたのは嬉しかったけど、男っ気ゼロはさすがに酷いと思う」
B「あの時は海が居てくれて本当によかったな」
- 149 :2012/10/21
- @「今日はありがとう。二人とも明日もよろしくね」
「今日はありがとう。二人とも明日もよろしくね」
「気にすんな。真理は何にも悪くないんだからな」
「元気でね」
「うん。ありがとう」
そう言った後2人は私の家を出た。
今日は色々なことがあって疲れた。もうシャワーを浴びたらすぐに寝たい。
その気持ちとは裏腹に、きれいに洗った髪の毛は乾いてなくそのあっま寝るわけにもいかなかった。
濡れた髪をタオルで覆って興味の無いニュースを見た。
『冤罪が判明……』
『今日の○○市の大通りで人事件が……』
『虐待事件が……』
どのニュースも陰気なもので、すぐにテレビを消した。
「碌なニュース……ないなぁ」
最近私に知らされた話も碌なものがなかった。
バイトの後輩の弟と知り合いは私に敵意を抱いている。
新しく家族になりにこいと言ってくる不透明な家。
母親の過去。いずれも良い話は聞かない。
「……」
一人で考えているとドツボに嵌まりそうだ。
@「お母さん……」
A明日から都坂について調べてみよう
B明日から家で清水を待とう
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