2013年10エロパロ324: 【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】 (518) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】


1 :2012/02/11 〜 最終レス :2013/09/19
村井夫妻でちょっこし妄想
もちろん村井夫妻以外もおk
いちごとせんべいネタもおk
前スレ
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ5【いちせん】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1310868011/
まとめ
ttp://www.h01.i-friends.st/?in=llgegegell
こんなサイトもあります。
「花よりエロパロ」ゲゲゲの女房
ttp://2nov.jam3.jp/nov/gegege/

2 :
前スレ落ちてしまって寂しかったので
勝手ながら立てさせてもらいました
スレタイも微妙に変えてます(スイマセン)
ゲゲゲの再放送予定はコチラ
ttp://www.nhk.or.jp/pr/keiei/hensei/pdf/kokunai.pdf
(表紙を除いて数えて10〜11ページ目)
BSプレミアムにて
毎週月曜〜土曜 7:15〜7:30

3 :
すんません
前スレ落ちてなかったです
盛大にやらかしたようですスイマセンッ

4 :
>>1
ドンマイ

5 :
再放送wktk保守

6 :
エアひな祭り保守

7 :
>>6
あれよかったね。ほろっときたわ保守。・゚・(ノ∀`)・゚・。

8 :
>>7
本スレで話題になってたからついw
かわいいし切ないし、ほんと名シーンだったよね保守

9 :

再放送待ち新作期待保守

10 :
再放送まであと1ヶ月!保守!

11 :
「おつかれー!」
ビールで乾杯、といきたいところだが、この後祐一が車で送ってくれることに
なっているので、ふたりは熱いあがりの入った湯飲みををちょっと持ち上げた。
 祭りが終わって店を撤収し、いったん店に帰った後、祐一は綾子をなじみのすし屋に
誘った。のれんをくぐると、清潔な店内にはすし飯のいい香りがぷんとただよい、
おにぎり以外何も食べていないふたりの空腹をあおった。
「・・・おいしい。こんなの初めて。」
玉虫色に光る漬けのマグロや、ツメを塗った見慣れないネタの数々・・・いつも食べ
つけているのとはちょっと違った顔ぶれの寿司を、おそるおそる口に入れた綾子は、
そのおいしさに思わず破顔した。
「俺は小さい頃から寿司って言うとここだったから、やっぱりこれでなくっちゃなんだ。」
「ゆうちゃん、いらっしゃい。」
お吸い物を運んできてくれたのは、白髪をきれいにまとめ、いかにも着慣れた着物が
小粋な老女将だった。
「あ、こんばんは・・・。綾子、この人はね、この辺の生き字引のばあちゃんなんだ。」
「いやだねえ。長老呼ばわりはよしとくれ。だいたいあたしはここの生まれじゃない。
 亭主がすし屋やりたいってんでついて来て、もう60年になるねえ。」
歯切れのいい言葉やたたずまいから、生まれも育ちも下町っ子のように見える
女将がよそから来たと聞いて、綾子は驚いた。
「来たばっかりの頃は西も東もわかんなかったもんだけど・・・下町ってのは案外ふところが
 深いもんだよ。もっとも、あたしは亭主のいる所ならどこでもよかったんだけどね。」
「またばあちゃんのノロケが始まったな。」
ここもまた、祐一を子供の時から知っている人々の場所なのだけれど、綾子は
この老女将にはちっともアウェー感を覚えなかった。
「・・・すてきなお店ね。」
「綾子が気に入ってくれてよかったよ。」
二人は店を出て、祐一の家に向かって歩いた。別れが近づくにつれ、離れがたい
想いがつのってくる。                                
「あ、綾子。今日・・・さ、泊まっていけない?」
「え・・・。」
車のドアを開け、綾子が乗り込もうとした時、祐一が意を決したように切り出した。
「帰らないで・・・ほしいんだ。」
振り向いた綾子の目が、祐一の真剣なまなざしとぶつかった。
「・・・うん。」
綾子が静かにうなずいた。

12 :
「どうぞ・・・先、あがって。」
「うん・・・あっ・・・痛っ!」
勝手口から入り、階段を上ろうとした時、ズキッとした足首の痛みに襲われ、
綾子は思わずしゃがみこんだ。
「どうした・・・大丈夫?!」
「う・・・うん。おとといちょっと、ねんざしちゃって・・・。」
「ねんざ?ダメじゃないか、大事にしてなきゃ。」
「でも・・・今日、来たかったの。」
「ほら・・・乗れよ。」
祐一がしゃがんで背中を差し出した。この間の佐古と同じシチュエーションに、
綾子は一瞬とまどったが、思い切って身体をあずけた。
「しっかりつかまってろよ。」
脚を抱えた腕はたのもしいけれど、高さに怖じて、綾子は祐一の肩にしがみついた。
『・・・ゴツッ!』
「いっ・・・たぁ〜い!もぉ、気をつけてよ、ゆうちゃん。」
「ごめんごめん。」
長身の祐一におぶわれた、やはり長身の綾子は、階段のあがり口の梁に頭をぶつけ、
思わず文句を言った。祐一は笑いながらもう一度綾子をゆすりあげると、
かるがると二階へ運んだ。                              
「ビール、飲む?」
二階のリビングで、祐一が冷蔵庫から取り出した缶ビールを綾子に手渡した。
「んじゃ、もう一回。おつかれー!・・・・・・ぷはぁ、うまい!どうせなら、さっき
 飲みたかったね。」
ビールの清涼感と、ちょっぴりの酔い心地が、二人きりになってまたよみがえって
しまったぎこちない空気をほぐしてくれる。

13 :
「あの・・・さ。今日は、本当に来てくれてありがとう。ギリギリまで迷ってたんだろ?
 ・・・そのカッコ。」
「あ・・・ううん。今日来ることは前から決めてたの。でも、昨日急に部長から、
 他の人の代わりに出て資料作ってくれって言われちゃって・・・。」
「えっ・・・大丈夫なの?仕事・・・。」
「うん。今日いっぱいかかりそうなとこ、ゆうべ徹夜でしあげちゃったんだ。
 だから、この服は昨日のままなの。」
「徹夜してまで・・・来てくれたんだ・・・。」
祐一は言葉を失った。綾子は今日の約束を守るために、ねんざをおして来てくれた
だけでなく、徹夜までしてくれたのだ。
「うん・・・でもね・・・間に合ったのは、佐古さんのおかげなの。私ひとりじゃ、
 今日いっぱいやっても出来なくて、残業になっちゃったかも・・・。」
綾子は、少し意を決したように言った。祐一には、全てを話しておきたい。だが、
急に出てきた佐古の名前に、祐一は表情を曇らせた。
「この間・・・ね。ねんざした日・・・佐古さんに会社の車で送ってもらって・・・。
 あの時、私・・・告白されちゃったんだ。」
今にも触れ合わんばかりに接近していた佐古と綾子・・・。どうしても謝りたくて、
綾子のマンションの前で待ち続けたあげく、見せられた情景が脳裡によみがえり、
祐一の表情を険しくさせる。
「ゆうちゃん、あそこに来てくれてたんでしょ・・・。誤解されたかもって思ったら、
 にたくなっちゃった・・・ふふ。」
哀しげに微笑む綾子の瞳に涙が浮かんだ。
「ばっ・・・にたかったのは、俺の方だよ!俺がバカなことしたせいで、綾子に
 見放されちゃったかもって思ったら・・・。」
「ゆうちゃん・・・。」
どちらからともなく近づいて抱き合い、ふたりは唇を重ね合わせた。綾子の細い身体が
淡雪のように消えてしまいそうで、祐一は思わず両腕に力を込めた。力強い腕に
抱きしめられ、綾子は身も心も溶けていく自分を感じていた。

14 :
すみません>>11です。
『小さい男』中編 おわり
書き忘れです。

15 :
GJです!
仲直りできてよかった〜!
ゆうちゃん、綾子さんを嫁にする気まんまんですねw
佐古さん面白いキャラだなー。
さて、次回は濃厚な濡れ場が…。ゴクリ…。

16 :
職人様GJであります!
正座で待ってましたが 立てなくなる前に投下していただけて、
嬉しいです!
さらに続きを楽しみにしております(ニヤリ)

17 :
ありがとうございます
それにしても綾子も佐古さんの名前を出すなんて罪作りだなあw
後編も楽しみです

18 :
>>11
仲直りできて良かったー!
後編wktkです

19 :
『小さい男』完結編です。
書きたいだけ書かせていただいて、ありがとうございました。
ここまでおつきあいくださった方々、おつかれさまでした。
さて二人の仲直り・・・いろいろ盛って行ったら、自分的に衝撃作に・・・あわわw

20 :
「でも、あいつ・・・意外と器のデカい奴だな。俺んとこ行くってわかってて、
 手伝ってくれたわけか。」
「うん・・・。」
唇が離れた後も、ふたりは身体を寄せ合い、お互いの体温を感じあっていた。
「不本意だけど、あいつには感謝しなくちゃな。・・・綾子より背がちっちゃい奴でも、
 綾子をさらって行く危険性はあるって、気づかせてくれたんだからな。」
「・・・また背のこと言う・・・。私は自分より背が低いひとだって全然いいよ・・・
 内面が大きい人なら。」
祐一が照れ隠しにひねくれた言い方をしているとわかっていても、綾子は背のことを
言われたのが少し気にさわった。
「全然よくない!・・・他の奴のことなんか考えるなよ!」
「た、たとえばの話だよ・・・。」
祐一の意外な気色ばみ方に圧倒されながら、綾子はまんざらでもない気分だった。
「あ・・・でかい声出してごめん。」
祐一は、ちょっと肩を落として声を荒げたことを謝った。
(なんか、今日のゆうちゃん、可愛いな・・・。)
いつも冷静で綾子より大人だと思っていた祐一の揺らぎ方が新鮮で、綾子は
胸の中に新しい感情が芽生えるのを感じた。
「綾子・・・さ。結婚しようって約束・・・イヤになってない?」
「え・・・イ、イヤになんかなってないよ。」
「俺、ヘタレだからさ・・・綾子がそばにいてくれなきゃ、ここで店やってなんか
 いけそうにないよ。アウェー感とか言ってたけど、俺、精一杯綾子のこと
 守るからさ・・・だから、いつか・・・嫁に来てくれる?」
綾子が、目に涙をいっぱいためてうなずいた。ふたりはもう一度、ゆっくりと
口づけあった。
「あ・・・つ、疲れただろ?風呂、入れよ。俺、コンビニで歯ブラシとか買って
 来るからさ。」
そう言って、綾子が風呂に入っている間に、祐一は近所のコンビニで一泊用の
化粧品セットなどを買ってきた。帰ってきてキッチンで待っていると、祐一の
ダンガリーシャツを羽織った綾子が戸口から羞ずかしそうに顔をのぞかせた。

21 :
「ゆうちゃん・・・これ、借りちゃった。」
「あ、ごめ・・・何も用意してやらなか・・・った・・・な。」
立ち上がりかけて祐一は、シャツのすそからスラリと伸びた脚に目を奪われた。
「さ・・・寒いから、ベッド入ってろよ。」
 綾子がここに泊まることを承諾してくれた時から、ずっと意識してきた瞬間が
着実に近づいてきていた。もう数え切れないくらい身体を重ねてきている二人なのに、
まるで初めての時のように心臓が高鳴る。動揺しているのを知られたくなくて、
すごい勢いで綾子を自分の部屋に押し込むと、祐一も浴室に向った。
 大急ぎでシャワーを浴びて戻ってくると、綾子はベッドに入って待っていた。
自分で言ったことなのに、祐一はドギマギして視線をそらし、さっき買ってきた
化粧品のセットが使ってあるのをみつけた。
「あ・・・こ、これでよかった?」
「あ、うん。ありがと・・・。」
いつもの自分の部屋、自分のベッドなのに、そこに綾子がいるだけで身体中の
血管がざわめくほど刺激的だった。近づいてゆっくりとキスを交わす・・・もう一度。
石けんの香りのする温かい身体を遠慮がちに抱きしめる。
「・・・いいの?綾子・・・。」
「いいの?・・・って。なんで、そんなこと聞くの?」
「だっ・・・て。この間俺、綾子がいやがることしちゃったし・・・。」
「・・・・・・もうちょっと優しくしてくれてたら、いやじゃなかった・・・かな?」
「ごめん・・・俺、焦ってたんだ。綾子がなんだか気乗りしてない気がして。
 ・・・あいつに会ったせいかなって思ったら・・・。」
「そんなこと、なかったのに・・・。」
佐古とバッタリ会ったことで生じた気恥ずかしさも、密室での甘い時間の始まりに
霧消しつつあった。今夜だって「泊まってほしい。」という申し出を受けた時から、
綾子はとうに溶けはじめていた。
「今度のことで、綾子より大切なものなんてないって、改めて思い知らされたんだ。
 あんなことして・・・本当に・・・ごめん。」
祐一は、あらたまって頭を下げた。
「・・・そんなに何度も謝らなくても・・・もういいって。」
祐一が本当にすまないと思ってくれていることが伝わってきて、胸が熱くなる。
けれど、祐一がさっきからなんとなく遠慮がちで、綾子に触れるのさえおっかな
びっくりなのが気になった。
(ゆうちゃん、ただ「もういいよ。」って言われても、自分を許せないのかな・・・。

22 :
「それじゃあ・・・と。」
うなだれている祐一を見る綾子の目が、いたずらっぽい光をたたえた。
「今夜は、なんでも私の言うこと聞いてくれる?」
「え・・・?う、うん・・・聞くよ。何でもする!」
綾子が祐一の手を自分の方に引っぱった。されるがままに近づいた祐一の肩に
手を置いて、ゆっくりと押し倒す。
「そのまま、じっとしててね。」
綾子はベッドから降りると、椅子の上に畳んで置いてあった自分のパンツから、
共布のサッシュベルトをするりと引き抜いて戻ってきた。
「・・・?」
怪訝そうな表情の祐一の両手をとって、頭の上に掲げさせる。すぐに両手首に
冷たく滑らかな布の感触を覚えた。
「ちょ・・・綾子?」
「じっとして。『何されてもいい。』って言ったでしょ?」
「な・・・『何でもする。』って言ったんだよ!」
「じゃあ言う通りにして。・・・今夜は、私がいじめてあ・げ・る。」
綾子のしなやかな指が、巧みに手首のまわりにベルトを回して祐一の腕を縛りあげ、
ベッドの支柱にくくりつけた。手と手の間も回してある戒めは意外と強固で、
祐一の上半身は自由を奪われていた。
 予想外の成り行きに固まっている祐一に、綾子がこのうえなく優しく口づけた。
「ふ・・・わっ!」
 綾子に耳たぶをカリッと齧られ、ぞくっとした感覚が背筋を走りぬける。
本能的に身体をかばおうとして、両腕の自由を奪われていることを思い知らされた。
「ふふ・・・ゆうちゃんの匂いがする。」
二の腕の裏側の肌を舌でなぞり下ろしながら、綾子の指はTシャツの上から
祐一の乳首のまわりを円を描くようにさすった。

23 :
「や・・・めろ・・・。」
くすぐったさにうごめく身体に馬乗りになり、綾子がTシャツをまくりあげた。
「ふうん・・・男の人でも、ここ、快いんだ・・・。」
綾子は新しいオモチャを手に入れた子供のように目を輝かせ、ぴんと勃った
男の胸の尖りをくりくりといじり、唇で吸いながら舐めた。
「ふぁっ・・・や、めろって・・・っ!」
小さな突起から発信されるむずがゆいような感覚は、やがて甘だるく全身に拡がり、
一点に集約していった。出口を与えられない麻薬のような快楽は溜まる一方で、
祐一は白くなるほど強くこぶしを握りしめた。腕をいましめられていても、男の
脚の力は強い。悶絶の内に綾子を蹴ってしまわないようにこらえるのに必だった。
「ねぇ・・・ゆうちゃん。私のこと・・・好き?」
綾子がふと愛撫をやめ、真剣な顔でそう問いかけた。
「な・・・なんでそんなこと、聞くんだよ?」
「だって・・・ちゃんと言ってくれたこと、ないんだもん・・・。」
『好き』・・・愛し合っているさ中にそれに類した言葉を囁いてくれることはあっても、
平常時、祐一に真顔でそう言ってもらったことはない気がする。
「ばっ・・こ、こんな格好で言えるか!」
「もぉ・・・答えてくれないんなら、知らないからね!」
綾子が焦れて、両の尖りをきゅっとつねった。祐一が陸に上がった魚のように跳ねる。
「っひゃっ・・・めろっ!!ご・・・拷問して無理やり言わせたって、嬉しくないだろっ?」
「うーーーん。そっか・・・じゃあ、ゴーモンはやめて、イジメるだけにするね。」
「何それ?・・・いいよもぉ・・・綾子の好きなようにしてくれ。」
まな板の上の鯉のような心境で、祐一は天井を見上げてため息をついた。
(綾子って・・・Sッ気もあったのか・・・。)
反応を先回りしては巧みにはぐらかしたり、羞じらいや戸惑いを無視して激しく
責めたり・・・やさしく容赦なく綾子をさいなみ奪いつくすのは、いつも祐一の役回り
だった。だが、今夜の祐一は綾子の意外な一面に驚き、翻弄されるばかりだった。

24 :
「あー、濡れちゃったね・・・。」
綾子が、明らかに前の部分が突っ張っているスウェットパンツを脱がせた。下着の
前の先ばしりが染みをつくっている部分を、嬉しそうにぴん、と指ではじき、下の方の
やわらかい嚢を手で包んで撫でさすりながら、またしても執拗に乳首をなぶった。
 今日は責める側にまわった綾子は、素肌に祐一のシャツを着ただけで、下着は
つけていない。大腿にひたりと押しつけられた秘部の滴りは、祐一の肌を濡らすほどに
潤沢だった。
 綾子だって、欲している・・・そう思うと、情欲はますますつのり、屹立は痛いほど
漲りきった。だが、綾子は意地悪をやめようとしない。一刻も早く熱い肉の中へ
埋没したくて気が狂いそうだ。
「ずっとここ・・・くりくりしてたら、達っちゃうかな?」
「よ、せ・・・っ!」
こみあげる射精感に、祐一は歯をくいしばって耐えた。このまま洩らしたりしたら、
立ち直れそうにない・・・ぎゅっと閉じた目尻に涙がにじみ始めた頃、ようやく綾子が
胸への愛撫をやめ、下へ下がる気配があった。
 綾子が下着のウェストを拡げて一気に下げる。自らの熱気に蒸されて湯気が
立ちそうな剛直がふるん、と頭をもたげた。
「うふふ・・・あったかい。」
雄芯を両手で持ってほおをこすりつける。さらさらの髪が触れるだけで爆発
しそうなくらい過敏になっているそれの裏側の筋を、爪の背でつぅっとなぞられる。
「くぅ・・・っ!!」
食いしばった歯の間からこらえきれない呻きが洩れ、祐一は全身の筋肉を引きつらせて
この責め苦に耐えた。
(ゆうちゃん、かわいそう・・・でも、可愛い!!)
祐一に甘い苦しみを与えているのは自分なのだけれど、それに耐えている祐一が
かわいそうで愛しくて、綾子はきゅんきゅんしてしまう。
(ゆうちゃんも、いつもこんな気持ちなのかな・・・?)
自身も痛いほど疼いているけれど、それを堪えながら祐一を責めることで、さらに
欲望は高まっていく・・・。

25 :
 もっと感じさせてあげたくて、綾子はなすすべもなく天を仰いでいる男根を、
はくっ、と温かい口腔で包み込んだ。
 びくっっと慄くそれを、唇をすぼめてしごきあげ、ぬるぬると上下させる。
「ぃや・・・だっ!・・・射精(だ)したくないっ!!」
口ではいやだと言いながら、祐一は無意識に腰を突き出していた。
「ゃめてくれっ・・・あやこにっ・・・挿入れたぃ・・・んだっ!」
祐一の直截な訴えが、綾子の心臓を直撃する。本当は綾子だって、一刻もはやく
祐一とひとつになりたい・・・強い欲求が身の内で燃えさかっていた。
(でも、もうちょっとお仕置きしてあげないと・・・どうしようかな?)           
「あ・・・そうだ。」
綾子は祐一の身体から下りると、レジ袋をがさがさ言わせて何かを取り出した。
祐一がさっき買ってきた化粧品セットの中の乳液のパック・・・封を切ると、綾子は
祐一の片脚を持ち上げて折り曲げた。
「・・・?・・・ひゃっ・・・!」
脚を持ち上げられてさらされた嚢の後ろあたりに、冷たい液体が垂らされるのを
感じて、祐一は身をすくませた。
(ま、さか・・・?)
周縁をくるりとなぞって乳液をなじませた指が、つぷりと後孔にすべり込んだ。
「ぅわっ・・・なにす・・・!」
綾子はネイルを伸ばしていないので痛みはないが、何かを挿入れられたことなど
ないその場所は、驚いて綾子の指をキュッと締めつけた。
「うふ。これで、お・あ・い・こ、だね♪」
綾子の長くてしなやかな指がゆっくりと深められ、祐一は身体の力が抜けていく
のをどうしようもなかった。
 屈辱感と、それとは裏腹な、どうにでもしてくれと言いたくなるような
気だるい快感を否応なくきざみ込まれながら、祐一はあることに思いいたった。

26 :
(俺が、本当にゆるしてもらえたって実感できるように・・・ってことか?)
もちろん、今日来てくれたこと、ここに泊まることを承諾してくれたことから、
綾子が自分を許してくれていることはわかっていた。それでも、なかなか
いつものように綾子を抱くことができない祐一に、より深い恥辱を与えることで
後ろめたさを払拭してくれようとしている・・・。
 綾子の思いやりに気づき、祐一は力のかぎり綾子を抱きしめたくなった。
「これ、解いて・・・くれっ。あや・・・ぅあっ!?」
綾子がふと角度を変えた指がある箇所に当たり、祐一は思わず腰を浮かせた。
「え・・・ここ?・・・ゆうちゃん、ここが快いの?」
「ちっ・・・ちがっ・・・!」
綾子が知る由もない男の急所が其処にあった。綾子は嬉しそうにそこを擦った。
意思とは正反対に腰が揺れて綾子の指を求める。瞬間、頭の中を白い閃光が貫いた。
「ゃっ・・・だっ・・・!!」
ビュクッ・・・勢いよく飛び出した白い凝りは、祐一の喉元まで届いた。解き放たれた
欲望が、断続的に飛び散るさまを、綾子は珍しげに眺めた。                
「・・・ごめんね。そんなに快いなんて、知らなかったの。」
綾子は指を抜き取り、申し訳なさそうにティッシュで祐一の射精(だ)したものを
ぬぐった。
 祐一はまだ時おり小さく痙攣しながら、言葉もなく目を閉じてそっぽを向いている。
綾子はなだめるように口づけると、耳元でささやいた。
「ゆうちゃん・・・怒っちゃ、やだ・・・。」
「ぁやこに・・・挿入れたいって・・・言っただろ・・・。」
「・・・じゃ・・・ぁ・・・ぃ・・・れて・・・?」
綾子がシャツを脱ぎ捨てて素肌をぴったりと合わせてくる。綾子の欲に染まった
双眸が、まつげが触れ合うほどの近さで祐一の瞳を見つめた。思わず目を閉じた祐一の
唇を舌でなぶり、男をかきたてるようなキス。乾ききった唇に一杯の水を恵まれた
囚われびとのように、祐一は綾子の唇をむさぼった。

27 :
 あてがわれた乳首を吸ってやると、綾子が夢中でぎゅっと頭を抱きしめてくる。
「ん・・・んんーーっ・・・!」
思い切り押しつけられ、息が出来なくて祐一は脚をバタバタさせた。綾子があわてて
頭を離す。ふたりは少し笑みをかわしてから、また深いキス・・・。
 吐息を独占しあい、身をからませあう。綾子の胸の尖りが祐一の胸肌をこすり、
からんだ足のつま先がお互いの足をくすぐりあった。太腿に硬度を取り戻しつつある
雄芯が当たり、下を見やった綾子はためらわず唇を寄せた。
「っ・・・!」
さっきの露をまだ残す鈴口や、先端のくびれに舌を這わされ、一度熱を吐き出した
雄根は、みるみる再び隆々とし始めた。
「・・・っあやっ・・・はやくっ・・・アレ・・・。」
「え・・・あ、どこ?」
祐一に教えられ、綾子はスウェットのポケットからそれを取り出した。
「ゆうちゃん・・・やっぱり今日、するつもりだったんだ・・・。」
封を切りかけて止まり、綾子が意地悪く聞いた。
「あ・・・たりまえだっ・・・!」
あまりにも正直な返答に、綾子はおかしくなって笑いながら、それでも注意深く
屹立に薄い膜をかぶせた。                             
「は・・・ずかしいから、見ない・・・で・・・。」
綾子が、片手で祐一の眼を覆いながら、もう片方の手で隆起したものを秘所に
みちびいた。
「んっ・・・はぁ・・・。ぁあ・・・ん・・・。」
自らの蜜に屹立をなじませ、綾子はあえぎながらそれを少しずつ呑みこみ始めた。
目を覆っている綾子の手肌の色と灯に透ける血の色が、今の祐一に見える全てだった。
羞じらい、身悶えながら祐一を導き挿入れる綾子の、官能に染まった顔を想像しながら、
綾子の生命の色に覆われてつながっていく瞬間を、祐一は深く味わっていた。       
 目の覆いが取り払われ、まぶしさに顔をしかめる。綾子のせつなげな微笑みが
近づいてきた。

28 :
「ゆうちゃ・・・ぁっ・・・んんっ・・・。」
口づけようと上体を前に倒しかけて、綾子はこみあげる快感に身悶えた。
 祐一の身体の横に手をついて必で身体を支え、啼きながら腰を上下させる。
祐一も、両足を立てて腰を浮かせ、綾子の動きに合わせて下から力づよく突き上げた。
「ぁ・・・だ、めっ・・・達っ・・・ちゃ・・・。」
綾子が祐一の胸にすがりついてふるふると身体を震わせた。
「解いて・・・くれぇっ!抱きしめたいっ・・・んだよっ!」
胸の上できれぎれな声を洩らしながら震えている綾子を抱きしめてやりたくて、
祐一は縛られた腕を揺すって大声で懇願した。綾子が震える手を伸ばし、もどかしく
緊縛を解いた。
 ガシッッと音がしたかと思うほど強く、祐一は綾子を抱きしめた。縛られた腕を
強く動かしたせいで紐が手首にくいこみ、しびれた両腕で、それでも祐一は綾子を
抱きしめたまま体を入れ替えた。
「ぁあんっ・・・ぁっ・・・ゃぁあっ・・・。」
綾子の上になり、手首から先がしびれたまま肘で上体を起こしながら、祐一は激しく
腰を上下させた。綾子も祐一の背にしがみつき、夢中で彼の動きに合わせて揺れる。
「・・・あや・・・っ・・・!」
「ゃ・・・ぁあ・・・ぁああ―――――!」
もはやどちらが責めるかなどどうでもよい、ただひとつに溶け合って脈打ち続ける
だけの瞬間が訪れた。つよく抱きしめあい、深く口づけあうこの真っ白なとき、
ふたりはそれぞれに違う個体であることを忘れた。                    
「ごめんね・・・痛い?」
忘我のときが過ぎ、抱きあったまま胸に顔をうずめていた綾子が、ふと祐一の手を
持ち上げて、赤く残るいましめの痕を痛々しそうに見つめた。               
「ん・・・大丈夫。・・・案外、快かったかも・・・な。」
「ホント?・・・じゃあ、また縛ってあげようか?」
「勘弁・・・してくれ・・・。」
「ふふ。ウ・ソ。・・・本当はね、なんだか疲れちゃった。」
「SはサービスのSって言うくらいだからな。相手を悦ばすサービスを考えなくちゃ
 なんないから大変なんだ。」
「でも、ゆうちゃんって本当はMなんじゃない?・・・すっごく、イイ顔してたもん。」
「はっ・・・恥ずかしいこと、言うなっ!!」

29 :
口を押さえた手を、綾子がペロリと舐め、指を取ってからみあわせた。少し内出血さえ
している縛り痕を、癒すように何度も口づけする。
「・・・よ、せっ・・・。それ、なんか・・・クルだろっ!」
「キちゃっても・・・いいよ・・・。」
「バッ・・・これ以上、キたりしたら・・・ぬ!」
祐一は、あわててむすんだ手をグッと枕上に押しつけると、のしかかるようにして
綾子の唇を封じた。
 
「俺もさ・・・器の大きい人間でありたいと、日夜努力してるつもりだけど・・・。
綾子のこととなると・・・ちっちゃい奴になっちゃうんだな。」
唇がほんの少し離れただけの距離で目をのぞきこみ、祐一が真剣な表情で言った。
「・・・そんだけ、好きっ・・・てこと。」
ギュッと抱きしめながら、そう耳にささやいた。
目を見ながら言ってほしいなあ・・・と思いながらも、綾子は何も言わず、つないだ
手をギュッと握った。
(明日・・・服、どうしようかなあ?)
安心したように眠ってしまった祐一の隣りで、綾子は明日会社に着て行く服のことを
考えていた。今日いちにち間が開いているのだから、昨日の服でもいいのだけれど・・・
綾子の視線が、壁のハンガーにかかったモカブラウンのニットに気づいた。
(ゆうちゃん、とっといてくれたんだ・・・。)
このカーディガンを忘れていった日のことを思い出し、綾子の心に感慨があふれた。
(明日、これ着ていこ。下のパンツは同じで・・・ビジューがちょっとデコラ過ぎるから
 ・・・そうだ、ゆうちゃんの黒いジレ借りちゃお!)
明日のコーディネートを考えながら、
(彼氏の服が借りられるって、けっこう便利じゃない?)
綾子はなんだか楽しくなってきた。時計はとっくに明日になっている。一昨日徹夜
したうえに昨日は一日立ちっぱなしで・・・夜は女王様?に変身・・・。この二日間は
ものすごくハードだった。同じように疲れきって、深い眠りに落ちた祐一に寄り添い、
綾子もしあわせそうに目を閉じた。
『小さい男』後編 おわり  

30 :
>>19です。
どうでもいいことですが、タイトルNo.うまく変わらなくて23が3つあります。
あとの二つは24・25ですのでよろしくお願いします。

31 :
>>19
ぐ、ぐ、ぐ、GJ‼
攻めっこな綾ちゃん、素晴らしい
…!
服の貸し借りができる2人に萌えましたw
待ったかいがありましたよ〜。ありがとうございます!


32 :
>>20
ゆうちゃんの嫉妬暴走に始まりまさかの綾子さん攻め…!
男性が攻められるっていうのはゲゲふみだと時代的にも性格的にも想像しづらいから祐綾ならではだなぁ
彼シャツと『私の事、好き?』キター!
長編乙アンドGJでした!

33 :
>>20
GJ!
イロイロ正直なw祐ちゃんかわいいし、攻める綾さんが新鮮だったー
次は是非、幸せな玩具プレイを…!w

34 :
>>19
GJ!
わたしの事好き?はほんと萌えまくったのでネタになってうれしいw

あと、ゲゲさん誕生日おめでとう!
今年も新婚時代にふみちゃんにささやかに祝われたり山小屋時代に家族できゃっきゃ祝ってる妄想

35 :
本スレの
>ケーキを指でペロッとしておかあちゃんに突っ込まれたようです
ってレスをおかあちゃんの口に指をつっこんだのかと思ってしまって
ドラマ夫婦で想像してうひゃあwwと思ってようやくんなわけねぇ!と我にかえったw

36 :
>>35
ちょw
来週、去年ふみちゃんの中の人が出たドラマで弟役だった人がやってる
有名人の好きなスイーツを作る番組の題材がリアルおかあちゃんの作るぼたもちなんだけど
あんこでイチャイチャとかもアリかなと思ったw

37 :
ふみちゃんの中の人のドラマ見て思ったんだけど、ほんっとに白いよなぁ…
顔だけならまだメイクかなと思うけど、首とか胸元も白い
マジ一反木綿

38 :
明日はホワイトデーですよ

39 :
珍しくふみちゃんの買い物についてってふみちゃんの好物を勝手に買い物かごに入れて
一緒に食べるそんな熟年期ゲゲふみホワイトデーを妄想

40 :
>>36
グレーテルはおとうちゃんの中の人の弟や同僚もしてたなあ

41 :
グレーテルのかまどって見たことないんだが、予約した!
ゲゲゲの一場面とかダイジェスト的に出たりするかなwktk
ぼたもちってあれだよな?緑色の…あれ?ずんだ餅だったか?

42 :
>>41
普段も見てるけどなかなか面白いよ
ドラマの映像は…どうかなぁ…
ずんだ作ってるシーンが使われるかどうかくらいじゃないかな
予告ではあんこのぼたもちだった気がする

43 :
かまど、ドラマの映像は無かったけどリアルおとうちゃんのツンデレっぷりが素晴らしかったw
あとぼたもちに酔った発言で妄想しまくってしまったw

44 :
>>43
リアルおかあちゃんのデレも良かったw

45 :
早海さんのふみちゃんの中の人はもうずっと可愛かったなぁ
特に最初のぬいぐるみ劇場と最後の教会でのほのぼのっぷりったらもう
ゲゲさんの中の人の方は結婚しない?がちょっとゆうちゃん変換に使える!と思ったくらいで
あまり収穫が無かった…

46 :
いちせんのささきのロケ地行ってきた!
ほぼそのままだし写真とか綾のラベルとかあるしでほんと萌えた

47 :
>>43
再放送見たー
リアル実家が毎年小豆ともち米送ってくれてたって事で
ゲゲさんが口にあんこつけてふみちゃんにとってもらう新婚期や
ゲゲさんと藍子が口に(ry な貧乏期の妄想が捗ったw

48 :
ふみちゃんの中の人の可愛さは大型犬系というのを見てなんか納得

49 :
ゲゲゲ再放送まであと一週間!

50 :
花よりエロパロのまとめサイトなくなった?

51 :
>>50
自分は普通に見れるぞ?一度移転したんじゃなかったっけか
これで行けないか?
ttp://uzo.in/2nov/

52 :
ゲゲさんの中の人のドラマの最終回とその前の回のゲストのキャラの名前、『あやこ』だったんだな
途中までしか見てないけどずっとあんたって呼んでて、せめてさん付けて呼んでくれてたらなぁと思ったw

53 :
>>51
行けた!だんだん!

54 :
二年前の今日から放送だったんだねー
自分はこのスレを読んでから見はじめたから二年前はまだ全然見てなかったけど感慨深いなぁ

55 :
自分は当時引越しのバタバタで1ヶ月ぐらい見てなかったんだよね。
ゲゲふみの可愛さにやられて、すぐにスレを探しにきましたw
職人さん、本当にいつもありがとう。
再放送始まったらまたよろしく〜。

56 :
明日エイプリルフールなので
ふみちゃんが冗談で嫌いって言って平静を装ってるのにお茶倒したりしてものすごい動揺するゲゲさんを妄想

57 :
>>56
かわゆすぎて萌えたw

58 :
祝!再放送カキコ!改めて初代布美ちゃんの睫毛の長さに感動
>>56のあと実は四月バカだったと知ったゲゲの倍返しにwktk

59 :
ハイビジョンで見るの初めてなんだけど、今日の蒸し芋二人で食べるときに
ふみちゃんの口にほんのちょっこし芋がついてるんだな…
あれがもっと盛大についててしげさんが口で取ってたらお互いの初キスになったんじゃないだろうか!
と妄想してしまったw

60 :
>>58
布団の中からだるい動けないと嘘をついてふみちゃんに心配させて布団にひきこんで…
という仕返しを妄想w
でもゲゲさんならもっといろんな嘘つけそうだよなぁ

61 :
桜の頃になると
自然に近寄ってしげさんの襟を直して鞄に原稿を入れたふみちゃんを思い出してニヤニヤする

62 :
ゆうあやの花見ってどんなだろうな
定休日にお弁当とおせんべもって近所の神社とかかなw

63 :
二週の妄想女将が楽しみすぎる!

64 :
>>63
同意w

65 :
妄想女将もお見合いにわくわくしてるのもふみちゃん超かわいい!
ゲゲゲは見てると幸せな気分になれるよー

66 :
>>65
貴司にお見合いせんことに〜って言ってる時もかわいい

67 :
お見合いクル━━━(゚∀゚)━━━ !

68 :
妄想女将はやっぱりかわいいねぇ
来週お見合いで物語的にもこのスレ的にもw本格始動だね

69 :
お見合い週ktkr!
自転車乗れますか?が楽しみだ
今更録画したお菓子料理番組見たけどリアルゲゲさんのデレがハンパないな
リアル喜子の解説とそれに照れてるリアルふみちゃんに不覚にも萌えた
ドラマキャストで見たい!

70 :
「俺みたいな男でええんかな」とつぶやいたシーン、
「あんたしかおらんけん!」と画面に向かって突っ込んだw
漫画の知識を少しでも頭に入れておこうと努力するふみちゃんもかわええ。

71 :
>>70
予備知識を少しでもってあたり同意!
ゲゲゲの物語自体の良さでもありふみちゃんの良さ・かわいさなんだよね

72 :
DVDで何回も見てるのになんでゲゲふみはこんなに毎回かわいいんだろう
自転車とかさっきの目玉とかほんとたまらん

73 :
娘時代のふみちゃんの声の高さがたまりませんなぁ
吸い物飲むときのしげーさんの手の大きさもたまらん

74 :
あのお椀を上から持つ手ね
ぎちぎちじゃなくある程度余裕があるからさまになる

75 :
本スレ見てたら今回の再放送でゲゲゲ初見って人もまあまあいるようなので、ここの住人が増えることも期待w
個人的には式のあとに村井家に行って、初夜を意識してる布美ちゃんが
どっきどきで階段あがってくとことかもうたまらんw


76 :
どこまで見せるんだろうと妙に緊張したのを思い出すw
結局なんのスキンシップもなかったが逆にドキドキだったなあ

77 :
ずいぶん前に投下した『むすびの神』の続編(と言っても時間的には前)になります。
例によって脇キャラに興味のない方はスルーでお願いします。
再放送に合わせて、横山さん×ユキ姉ちゃんのお話を投下するつもりが、PCの不調と
多忙がかさなり、遅くなってしまいました。
この二人の見合いは、さぞかし源兵衛さんが張り切ったんじゃないか・・・というのが
書きたくなった理由ですw。
ぐぐってみたら、キンモクセイの花言葉は「誠実、初恋、真実の愛」なのだそうで、
この二人にぴったりな感じで、偶然ながらちょっと嬉しかったです。
いよいよゲゲふみのお見合い・・・!で盛り上がってるところ、空気読まずにスミマセン。
今後はタイムリーな投下が出来るとよいのですが・・・。

78 :
 月の明るい夜。澄んだ大気の中にキンモクセイの香りがただよっている。
今日嫁いだばかりの家の、中庭をめぐる廊下を、その甘やかな香りに運ばれるような
思いでユキエは歩いていた。
 夫となったひとのことは、初めて出会ってからまだふた月とたたず、実はそれほど
よく知っているわけではない。それがこの時代のお見合い結婚のふつうのありようでは
あるけれど、以前のユキエならそんな結婚は真っ平御免だったはずだ。
 だが、信夫の待つ部屋へ向かうユキエの心はときめき、湯上りの肌や髪をなでる
風にまじる甘い香りは、今夜のユキエの気持ちに似つかわしいものだった。
「あの・・・失礼します。」
フスマを開けると、窓を開けて外を見ていた信夫がこちらを向いた。
とたんに、心臓がのどまで飛び上がり、足元は霞を踏むように覚束なくなった。
「あ・・・あの、つ、つきが・・・きれいですよ。」
信夫も、緊張しているのか、ぎこちなくユキエを窓辺へさそった。
「ほんと、きれい・・・。」
窓辺に並んで、澄んだ月を見上げる。婚約期間があったとは言え、こんなに接近した
のは初めてのふたりだった。
「さ、寒いけん、閉めましょう。」
信夫が障子を閉めて畳の上に座ると、ユキエは両手をついて頭を下げた。
「・・・ふつつかものですが、末永く、よろしくお願いします。」
「あ・・・は、はい。いや・・・こちらこそ。」
信夫はどぎまぎして、ユキエの手をとって頭を上げさせた。
「よう・・・来てごしなさった。」
ぎこちない手つきで抱きしめる。二人とも自分の心臓の音が聞こえるほど緊張していた。
 少し顔を離すと目が合った。信夫が思い切って口づけする。初めての口づけは、
柔らかくてちょっと湿っていて、初めてお互いの内部に触れた気がした。その感覚が
ふたりの間の壁を取り払ったかのように、口づけは深くなり、止まらなくなった。

79 :
「は・・・ぁ・・・はぁ・・・ふぅっ・・・。」
繰り返し唇をむすびあわせるうち、慣れないふたりは息をつくことも忘れていて、
部屋に響く荒い息遣いがさらに頭を混乱させる。
 信夫があせるあまり眼鏡をはずすのも忘れているものだから、ユキエの顔に冷たい
感触があたる。けれど、それが何か意識することもできず、ただ受けとめるだけで
精いっぱいのユキエだった。                             
「よ・・・横になってもええかね?」
なんだかとんちんかんな誘いだが、ユキエにはそれをおかしいと思う余裕もない。
「え・・・は、はい・・・。」
信夫はユキエを抱きしめたまま押し倒した。ユキエの小さな悲鳴にふと我にかえり、
バツが悪そうに少し身体を離して大きく吐息をついた。
「ごめんな・・・。こわかっただろ?」
「だ、だいじょうぶ・・・です。」
「あんたがいやだったら、今日でなくてもええんだよ・・・。」
繰り返し口づけされて押し倒された時は、惑乱が最高潮に達していたが、信夫の
やさしい気づかいに、ユキエはすこし平静さを取り戻した。
「あ、あの・・・めがね、が・・・こわれますけん。」
そっと両手を上げて信夫の眼鏡をはずしてやった。
「あ・・・これはいけん。・・・だんだん。」
至近距離にある信夫の顔が、照れくさそうな笑顔になる。その目元は意外に涼しくて
目の奥にある光はやさしく、ユキエの心臓を再び落ち着かなくさせる。
 その目がゆっくりと近づくと、今度は落ち着いてユキエに口づけた。唇が離れ、
うっとりと目を開けたユキエに、信夫が意を決したように確かめた。
「ほんなら・・・ええかね?」
「・・・はい・・・。」
この時代としては大胆にも男友達と逢引したこともあるユキエだったが、せいぜい
隣町に映画を見に行ったくらいのもので、何かがあったというわけではなかった。
祝言の晩に花嫁の身に起こることに関する知識は、他の娘とたいして変わりはない。
つい声が震えてしまうのをどうしようもなかった。

80 :
 信夫が、おずおずと帯をとき、浴衣を広げてユキエの肌身をさらした。まっ白な
肌に目を奪われながら、自分もすべてを脱いでユキエの上になった。
 男にしては細すぎることが少し気になっていた信夫の身体は、鍛えぬかれ、鋼のような
筋肉がのって美しかった。すべてにおいて控えめなこの男の、分厚い眼鏡をはずして
裸になった姿は意外に男性的魅力にあふれ、ユキエはさらに心を奪われるのだった。
「ン・・・ふぁ・・・ぅ・・・。」
さくら色の乳首を口に含んで吸うと、ユキエが思わず鼻にかかったあえぎをもらし、
自分の甘い声に驚いて口をおさえた。その可愛さにあおられ、信夫はもう一方の乳首を
指でいじりながらさらに味わい、ユキエのあえかな乱れをたのしんだ。
 ユキエが無意識に秘められた場所を守っている手をとると、自分の肩にまわさせ、
無防備になったそこにそっと指をひそませた。                     
「ぁ・・・。」
とろり、とした感触が、自分を受け入れる準備がすでに出来ていることを教え、信夫は
ぞくぞくするような喜びを覚えた。
 ひざでわずかなすき間を広げながら、少しずつ脚を広げさせる。口づけや、乳房への
愛撫でなだめながら、羞じらいの強い両腿を充分に広げ、つらぬく準備をととのえる。
 身体を硬くしてその瞬間への恐怖と戦っているらしいユキエがいじらしく、攻める手が
鈍りそうな信夫だったが、反面、ひと息につらぬいてしまいたい雄の猛りをも感じていた。
 充分にうるおったそこへ、たかぶったものを押し当て、ぐっと進む。
「・・・・・・ぁあ・・・!」
ユキエが小さく叫んで信夫の肩を手でつかみ、本能的に押し戻そうとした。
「や、やっぱり、痛いかね?・・・今日はもう、やめとくか・・・?」
「・・・い・・・ぃえ・・・やめんで・・・ごしない。」
痛みをこらえ、必でユキエが口にした受容の言葉は、信夫の心に痺れるような
喜びを与えた。
「ほんなら、こらえてごせ・・・ユキエ・・・さん。」
「・・・ユキエで・・・ええですけん・・・。」
「ユキエ・・・ゆき、え・・・。」
耳元で名前を呼ばれながら、力の入りすぎた両手をやさしく解かれる。指と指を
からませて握り合った手に口づけされると、いとしさに痛みも少しうすれる気がした。

81 :
「大丈夫、か・・・?」
「・・・は・・・い。」
 恋した人が今、自分のなかにいる。身体をこじ開けられる痛みすら、このひとと
結ばれたあかしと思えば心地よかった。ユキエの閉じたまぶたから幸せの涙があふれた。
けれどその涙を見て、何も知らない信夫の胸は痛んだ。
(好きでもない男にみさおを奪われるのは、やっぱり悲しいのかもしれんな・・・。)
「痛いか?・・・ごめんな・・・。」
うっすらと汗をかいた額にかかる髪をよけてやり、生え際に小さく口づけながら
信夫はユキエの頭をなでた。
「・・・痛くて泣いとるんじゃないの・・・。あなたが、やさしいけん・・・。」
信夫はその涙を、乙女の時代と訣別し、信夫の妻として生きていく覚悟の涙だと思った。
(少しずつでええ・・・これからわしのことを好きになってくれればええけん。)
涙を唇で吸ってやりながら、信夫はさらに深くユキエの中に入っていった。        
(私は、この人のもの・・・。)
痛みとともに、信夫の存在を全身に刻みつけられる思いで、ユキエは信夫を
受け入れていた。
(ほんのふた月前まで、私はほんとうの恋を知らなかった・・・。)
・・・ユキエの脳裏に、信夫との出会いがうつし出された・・・。
 風に秋の匂いがまじり始めたあの日、ユキエは初めて信夫に会った。それも
最悪の形で。
 父の源兵衛は、見合い話に首を縦に振らないユキエに業を煮やし、無断で勤めを
辞めさせてまで強引に縁談を進めようとした。ユキエは大胆にも妹のフミエを
身代わりに仕立て、夜道を安来の輝子叔母の家まで走った。信夫の写真も釣書も
突っぱねて、見てはいなかった。自分をここまで追い込んだ見合い相手が憎らしくて、
いつしか罪もないその男を、父と同じ敵と見なす幼さだった。
「ユキエ、ユキエ・・・!相手の人、断り入れて来たげな!」
安来で所在無い日々を送っていたユキエは、飯田の家の向いの魚屋がことづかって
来た手紙を読んだ叔母の言葉に、晴れやかな笑顔を見せた。若い娘の現金さで、
翌日さっそく軽い足取りで輝子とともに大塚の家に帰って来た。

82 :
 家の店先に入ると、祖母の登志と妹のフミエがみすぼらしい野良着を着た見知らぬ
若い男と話していた。その男が当人とも知らず、ユキエと叔母は見合い相手の悪口を
声高にしゃべった。
 そもそもこんな縁談が持ち込まれなければ自分が騒動を起こすこともなかった
という思いと、自分がいやがっておきながら、相手が断って来ると、それはそれで
プライドを傷つけられたという、身勝手な気持ちがユキエにはあった。
 だが、フミエから聞いた事実は、そんな思い上がった心を一気に引きおろした。
横山はフミエに頼まれ、何も言わず縁談を断ってくれた。そのうえ、そんないきさつにも
かかわらず、ユキエが家を出ている間に倒れた母を助けてくれたのだった。
 泣きながら謝ったフミエの言葉に、横山が少しつらそうな、でも優しい笑顔を見せた
その時、追いついたユキエが妹の肩を抱いて、横山をまっすぐ見つめ、頭を下げた・・・。   
 その夜。ひさしぶりの自分の布団に入ったものの、ユキエはなかなか寝つけなかった。
自分は今、この家で一番年長の娘なのに、母が危険な時に何の役にもたてなかったこと。
いつも恐くて強権的な父が、今日はなんだか縮んで見えたこと・・・。それにもまして、
ユキエの心をかきむしるのは、今日初めて知った横山のことだった。
(私はあのひとを傷つけてしまった。それなのにお母さんを助けてくれたんだ・・・。)
横山がフミエに向けた、優しいけれどつらそうな笑顔が目にやきついて消えない。
(私、ほんとに子供だった・・・。)
消え入りたいような恥ずかしさと、申し訳なさ、それから名状しがたい胸のとどろきを
かかえ、ユキエはすがるようにあるひとつの考えに到達した。
 翌朝。源兵衛はようやくミヤコの病床のそばを離れ、蜂の世話をしていた。
「・・・お父さん。あの・・・お願いがあるんです。」
「なんだ。」
ユキエの問いかけに、源兵衛はふり返りもせず作業を続けた。
「私・・・あのひとに・・・横山さんにもう一度、会わせてほしいんです。」
源兵衛は、少し驚いたようだったが、相変わらず蜂の巣箱を見つめながら言った。
「それは、見合いをする、言うことになるぞ。」
「それで、かまいません。私・・・どうしても、このままじゃすまされん気がして。」
「今度結婚を申し込まれたら、もう断れんのだぞ。」
「もちろん、そのつもりです。」
源兵衛は、ユキエの真剣な顔を見てうなずくと、また作業に戻った。

83 :
 その日の午後、仲人の家におわびかたがた改めて縁談をすすめてほしい旨を
伝えに言った源兵衛は、上機嫌で帰ってきた。なんと横山家からも再度の
見合いが申し込まれているという。事情を聞いた仲人は、何事も無かったかの様に
いちから世話をするとうけ合ってくれた。                      
 それから数日後。国民服を着た信夫と仲人の橋本は、飯田家の座敷にあった。
「せんだってはほんにお世話になりまして、お礼の申し上げようもございません。」
まだ床をはらえぬミヤコが挨拶に出てきて、丁重に礼を言って奥へ引っ込んだ。
座敷に残ったのは源兵衛と、一度会ったことのある祖母の登志である。ふたりとも、
心配になるほど相好をくずし、信夫の顔を穴が開くほどみつめるものだから、内気な
信夫は伏目がちになり、身体が硬直するのをどうしようもなかった。
「いらっしゃいませ・・・。」
 そこへユキエが茶菓を運んできて、信夫の前に置いた。編みこんで結い上げた髪に
娘らしい銘仙の着物、モンペや国民服を見慣れた目にはことさら華やかに映った。
 食糧難のなか、心づくしのごちそうと、飯田酒店の酒が出される。運んできたのは
手伝いに来た長女の暁子で、こちらにも礼を言われる。当たり前のことをしだけなのに
・・・こう命の恩人扱いをされては居心地が悪かった。
「えー、本日はお日柄も良く・・・まことにめでたい日であります。こちらの横山君と
 飯田家とは浅からぬえにしのある様にうけたまわっております・・・。」
仲人の紹介は、まるで結婚披露宴のようだ。登志はよほど横山が気に入ったと見え、
ほれぼれと顔を見ているし、源兵衛は終始ニコニコしっ放しで饒舌だった。
 一方、二人にはさまれたユキエはうつむいて黙ったままだ。母親、姉・・・会う人ごとに
礼を言われ、父親と祖母はまるで婿扱い・・・それにひきかえ肝心のユキエは静かなまま。
・・・信夫はいたたまれない気持ちになってきた。
 そこへ、おはぎと食後のお茶を大事そうにささげ、フミエが入ってきた。信夫の前に
茶菓を置くと、恥ずかしそうに目くばせした。信夫は今日はじめてホッとした。
「・・・!こげな甘いもん食べたのは、ひさしぶりです。」
おはぎをひと口食べると、ずっと緊張していた信夫が破顔した。
「うちで作っとる蜂蜜でしてな。砂糖不足のおり、重宝しちょります。これの世話を
 しとって、女房がエライ目に合いましたがな。・・・もっとも、おかげでこちらさんと
 ご縁が出来たんですから、人間万事塞翁が馬と言うことですなあ。わっはっはっは。」 

84 :
 上機嫌の源兵衛に、祖母の登志がそちらを見てはしきりに咳ばらいをする。
源兵衛は(わかっとる!)と言うように急に真面目な顔になった。
「あー、おほん。本日は橋本様には仲介のご苦労をいただき、まことに感謝の念に
 たえません。ついては、あちらであらためて一献差しあげたいと思います。えー、
 ・・・若いふたりは、まんざら知らない間柄でもないけん、少し打ち解けて話されたら
 どげですかな?」
何やら段取りが出来ている様子で、仲人をうながして皆いなくなってしまった。      
 ユキエとふたりきりで座敷に残され、どういうことなのか、ますますいたたまれない。
「・・・あのっ!」
ユキエが初めて顔を上げて信夫の顔を正面から見、両手をついて深々と頭を下げた。
「今日は、本当に来てくださるのか、心配しちょーました。あげな失礼なことしといて、
 あのままあなたにお詫びもお礼も言えんだったら、どげしようかと・・・。
 あげなことになるなんて、思ってもみんだった・・・。姉は嫁いで家を出とるし、今、
 私がこの家で一番年長の娘やのに・・・ほんに無責任なことして。妹に恥ずかしいです。
 あなたがおられんだったら、母はどげなっとったか・・・本当にあーがとございました。」
お詫びと、お礼・・・ユキエが自分に会いたかったのは、そのためか・・・。
(わしは、何を期待しちょったんだろう・・・。)
張り詰めていた気持ちがゆるみ、信夫は心の中で苦笑した。
 だが、こうして見合いの場で会ったからには、結論を出さなければならない。
見合いと言うものは、会うまでにほとんど決まってしまっているようなもので、
よほどのことがなければ、見合いのあと男の家が仲人を介して申し込み、女の家が
受けることで結婚まで行ってしまう。当人同士が直接意思を確認しあうことは、
見合いでは許されない。何かあった場合に双方に傷がつくことを避けるためだ。
(このひとは、自分に恩義を感じてその身を差し出そうとしとるのじゃないか?)
外堀を埋められようとしている今、ここで聞かなければ、聞く時がない。
『・・・あんたは、本当にそれでええんですか?このままだと、わしと祝言することに
 なってしまうが・・・?』
全て仲人を通さなければならない作法を破って、ユキエの本当の気持ちを確かめようと
口を開いたその時。

85 :
「おほん!・・・話もはずんどるところ、失礼します。」
先ほどよりさらに少しきこしめしたらしい源兵衛と仲人が座敷に入ってきた。
 これでお開きである。ユキエもまさか見合いの席で想いを告白するわけにもいかず、
信夫はそんなユキエのつのる恋心にはまったく気づかず・・・ふたりはともに心を残したまま、
見合いは終わった。                                  
 翌々日。居間に呼ばれたユキエが行ってみると、父母、祖母に叔母までがそろっていた。
「横山家から、ぜひにと申し込みがあったそうだ。」
見合いのあと、当日の信夫の硬い表情を思い出してはあれやこれやと気をもんでいた
ユキエは、朗報に浮き立つような嬉しさを感じた。
「あげなことがあったけん、会っといて断られたらどげしようと、もう心配で心配で。」
いてもたってもいられず駆けつけてきた叔母の輝子が、大げさに胸をなでおろすと、
「あの人はそげな人じゃなーぞ。器の大けな男だ。」
信夫にすっかり惚れこんでいる源兵衛がこわい顔をしてにらんだ。
「ほんとにええの?ユキエ。あんた、私のことで恩に着とるんじゃ・・・。」
「江戸時代じゃあるまいし、そげなことで人身御供になったりせんよ。あのひと、
 本当にええ人だよ。だけん、心配せんで・・・お母さん。」
心配する母に、ほほ笑んで見せ、ユキエは居ずまいを正して父に頭を下げた。
「お受けします、と仲人さんにお返事してください。よろしくお願いします。」
 またたく間に婚約がととのい、結納がかわされ、婚礼の日が近づいてきた。
夜、ユキエが部屋で縫い物をしていると、フミエがおずおずと顔を出した。
「・・・ユキ姉ちゃん。ほんとにお嫁に行っちゃうの?」
「なあに、フミちゃん。あんた、横山さんのこと気に入らんの?」
「ううん、大好き。でも・・・ユキ姉ちゃん、あげにお嫁になんか行かんって言うとったのに。」
「ふふ・・・それは、好きでもない人のところには、だわ。」
「え・・・?」
「フミちゃんにはいろいろ迷惑かけたけん、あんたにだけは教えてあげる。」
ユキエは、フミエのそばに寄ると、耳に口を近づけてささやいた。

86 :
「あのな・・・私、あの人のことが好きになってしもうたの。だけん、お嫁に行けるのが
 うれしいんだが。」
「えっ?すき・・・?」
あっけにとられているフミエに、ユキエはちょっと照れくさそうに笑った。
「あげにフミちゃんに迷惑かけたのに、困った姉ちゃんだと思っとるだろうね。
 でもな、恋というのはこげな風に、突然おそって来るもんなんだわ。・・・まあ、
 フミちゃんはまだ小さいからわからんだろうけど。」
ユキエはフミエの小指に自分の小指をからめると、
「・・・このことはお父さんとお母さんには内緒だよ。・・・恥ずかしいけんね。」
指切りをして約束させた。母が用意してくれた反物で嬉々として男物の半纏を縫っている
ユキエは、幸せで輝いて見えた。
(恋・・・って、ようわからん!)
大人になったらわかるようになるのだろうか・・・フミエは混乱しながらも、とりあえず
姉が幸せそうなことに安心して、ユキエの部屋を後にした。               
 秋晴れの日。黒引きの花嫁衣裳に身をつつみ、純白のつの隠しをつけた輝くように
美しいユキエは、生まれ育った家をあとにし、横山信夫のもとに嫁いでいった。
 
(思ったとおり優しい人だわ・・・私、ほんに幸せ・・・。)
信夫の存在感を全身で受け止めながら、ユキエは温かい涙を流しつづけた。
(だけど・・・だけど・・・どげしよう・・・!)
新床の花嫁が、あまりまじまじと男の顔を見つめるのははしたないと思い、ユキエは
自分を散らしている男の姿を時おり遠慮がちに盗み見た。
(このひと、こげにええ男だったっけか・・・?)
 あのようないきさつで出会い、急速に話が進んで、戦時中のこととて二人きりで
逢うこともなく今日を迎えた。時おり野菜などを背負って飯田家を訪ねてくれる
信夫は相変わらず野良着姿に分厚い眼鏡という素朴さ…ユキエはユキエでそんな信夫に
好意を覚えながらも家族の手前恥ずかしくて、それほどまじまじとこの男をみつめた
こともなかった。

87 :
『ゲーリー・クーパーみたいにええ男じゃないけどな。』
花嫁姿のユキエは、以前憧れていた映画のパンフレットを妹のフミエに渡し、信夫の
ことをそう言い放った。自分は信夫の人柄を好きになったのだ・・・そう思っていた。
(どげしよう・・・毎日こげにドキドキしとったら、一緒に暮らせんが・・・。)
頬が熱くなり、羞ずかしくてたまらない。祝言もあげ、まさに今自分を貫いている
男の容貌に今さらときめいている自分がおかしくもあり、ユキエはますます
どうしてよいかわからずにいた。                             
 腕の中のユキエが、このように煩悶しているとはまったくあずかり知らぬ信夫は、
初めての痛みにさいなまれるユキエとは逆に、得も言われぬここちよさに我を忘れ
そうだった。
(いけん・・・まだ慣れんもんを・・・。)
欲望のままにユキエをむさぼりたくなる衝動をおさえ、新妻を気づかいながら
快感を追い、終わりに近づいていく。
「ぅ・・・くぅっ・・・ぅ・・・。」
好きな女との情交とはこれほどまでに魂を奪われるものか、と全身が痺れる思いで
咲きそめた花びらのなかにすべてを放った。
 ・・・まっ白な閃光に脳裏を射られる様な絶頂感が次第に去ると、信夫はユキエをいたわる
ようにそっと身体を離した。想いをとげた、という気持ちに満たされ、信夫は荒い息を
ととのえながらユキエの隣りに横たわった。裸身をさらしたままぐったりと動けないでいる
ユキエを見やると、今まで信夫が占めていた部分に、自分の痕跡が残っている。
信夫は枕紙をとって、それをふいてやった。                          
「い、いけん・・・そげなこと・・・自分でやりますけん。」
「いや・・・わしが出したもんだけん、わしがきれいにする。」
できるかぎり優しく指を動かしても、今初めて貫かれたばかりの敏感なそこに触れられ、
恥ずかしさと初めての感覚に、ユキエは耐えかねるように身をよじった。
そんなユキエの様子が、男の本能をあおりたてる。無垢だったユキエに男のしるしを
刻み付けたのは自分だと思うと、やさしい信夫にはそぐわない征服欲がわき起こった。

88 :
 ふと見ると、ユキエを清め終わった紙は夜目にも赤く染まっていた。その純潔のあかしを
目にした瞬間、信夫の身の内がカッと熱くなった。
(わしは・・・あんたを、生涯まもり抜くけん・・・!)
めちゃくちゃに抱いてしまいたい衝動をおさえ、再び横になってそっと肩を抱き寄せた。
至近距離にあるユキエの顔が、恥ずかしそうに微笑みかけてくる。
 生気に溢れた双眸、つんと上を向いた鼻、勝気そうな唇・・・結ばれるまで、朴訥な信夫は
ユキエの溌剌とした美貌に、惹かれながらも少し気後れを感じていたのだが・・・。
(なんだか、少しだけこのひとに近づけたような気がする・・・。)
全てを与え合った今、ユキエのぴんと水を弾くような固く張った肌はしっとりと潤いを
帯び、きゅっと結ばれていた唇は、ただ一人身をゆるした男に向って柔らかくほぐれて
いた。誘い込まれるように紅い唇を奪い、夢中でむさぼった。
「・・・んっ・・・んんっ・・・!」
しゃにむに唇をふさがれ、身体の下でユキエが呼吸を求めて身をよじった。
「あ・・・す、すまん。わし・・・いろいろ下手クソで、いけんな・・・。」
唇をはなすと、照れくさそうに告白した。
「嫁をもらう前に、どっかで練習しとけと言われたんだが・・・あんたに悪いような気が
 して、よう行かんだった。」
「ほんなら、私が・・・初めて?」
ユキエは思わず信夫の顔を見た。
「こげな亭主じゃ、頼りないかな。」
信夫は照れかくしに、ユキエの背に手をまわしてきつく抱きしめた。
(このひとは、私のもの・・・。私だけの、もの・・・。)
信夫も初めてだったことを知り、ユキエの心に言いようのないいとおしさがわき起こった。
 結ばれる前よりも、ぎこちなさが少しほぐれ、ふたりは身体を交わした男女だけが知る
口づけを繰り返しながら、夜にのまれていった・・・。
 キンモクセイの香りが、部屋の中にもただよってくる。愛する人と肌をかさねる歓びを
知りそめたふたりを、甘いけれど清楚な香りがつつみこんだ。
 信夫は、ユキエを深く愛しながら、自分はユキエに愛されていないと思い込んでいた。
身体も心も奪われる恋におちたユキエは、そんな信夫の心の内を知るよしもなかった。
 本当はお互いにつよく愛し合っているふたりが、その想いを確かめ合うまでには、
もう少し時間が必要だった。

89 :
>>77
GJ!です!!匂い立つような金木犀の(脳内)香りと共に読ませていただきました
自分は少女時代の2代目布美ちゃんのエピソードがどれも大好きです
この週があったから、ゲゲゲの女房をより深く愛したと云っても過言ではないくらいに
中でもユキ姉ちゃんと横山さんの瑞々しい物語は、何度見てもキュンとしてしまいます
その二人のキャラクターが上手に再現されていて、お見合いのシーンまで見事ですね
きっとこんな風に花嫁になったのでしょうね>ユキ姉ちゃん

90 :
新作キテターーー!
みんな役者さんでスムーズに再生できる…
第一週から心を掴まれていたことを
あらためて思い出しました
89さんのおっしゃる通り、子供時代がなかったら
こんなにひきこまれなかった
特に横山さんエピは、
2人の麗しさもあいまって本当によかった
さらにこんな素敵に肉付けされて…
情景がリアルに浮かびました
GJです!

91 :
>>77
GJ!当然だが美しいほうの横山さんで脳内再生w
あと源兵衛さんの台詞、まんま大杉さんの声で再生された!まさにこんなこと言いそう!
すごすぎです!
本放送のとき、あれは誰だ?と言われてた時間経過著しい横山さんは明日本格的に登場だなw

92 :
>>78
GJ!
横山さんの緊張っぷりがwかわいいww
>>91
自分は源兵衛さんのお葬式まで老け横山さんが横山さんだと認識できてなかったw

93 :
今日の初夜は何度見ても良いなぁ
初々しさとか義手とふみちゃんの絶妙な距離感とか

94 :
>>91
本放送のときは最初のほうは見てなかったが、
91見て「美しい横山さんて何?」と思っていたけど、
昨日の放送でわかった、横山さん。・゚・(ノ∀`)・゚・。
でもユキエが幸せそうだからいいやw
>>78さんもグッジョブ、自分も美しい横山さんでいきましたw

95 :
列車内でみかんを食べるときのハンカチとか車の中でのwktkっぷりとか
ふみちゃんが可愛すぎて毎朝幸せ

96 :
今さらですが、『いちせん』のお花見ネタです。>>62さんネタ提供だんだん。
興味ない方は、例によってスルーでお願いします。
来週はいよいよ『花と自転車』ですね。その後も怒涛のごとく神週が・・・。
遅くなったけどその前に間に合ってよかった。まだ桜の咲いてるところもあるし。

97 :
「『うすずみ』・・・?うーん。聞いたことあるような・・・。」
「・・・小さい蔵元さんなんです・・・。」
 春とは思えない冷え込みが続いたせいか、遅れに遅れた桜もようやく
開き始めたある日。綾子はある銘柄の酒を探して近所の酒店を訪れていた。
 予定よりずいぶん遅くはなったが、今度の定休日にはちょうど見ごろに
なりそうだし、祐一と花見に行く約束を、綾子は心まちにしていた。
(お弁当つくって・・・それから・・・ちょっぴり、お酒・・・。)
綾子は、以前祐一が話していた酒のことを思い出していた。契約している新潟の
米農家の人にもらったもので、とてもおいしかったのだとか。
「なんか・・・近くにある桜の名木にちなんだ名前だったんだよね。本当に、
 満開の桜の下で飲んだら似合いそうな味だったよ。」
名前も定かではないその酒を、桜にちなんだ名の酒と新潟というキーワード
だけで、綾子はネットでつきとめた。
『うすずみ』というその酒は、だが製造元のHPすら無く、取り寄せることは
出来そうになかった。ネットには、酒の好きな人がこの酒を絶賛するブログが
いくつか散見されるだけだった。
「ゆうちゃんに、飲ませてあげたいなあ・・・桜の下で。」
祐一とつきあい始めてからめぐって来たいく度かの春、二人で花見に行ったことは
もちろん何度もあるけれど、去年の花の時期は新婚旅行に行っていて、花見は
できなかった。祐一と結婚してから初めてのお花見・・・夫婦として見る桜は、
果たして今までとひと味違うものかどうか、楽しみだった。
 ダメ元で、綾子は普段前を通るだけのこの店に、思い切って入ってみた。
いろいろな銘柄を書いた紙がガラス戸じゅうに貼られたこの店なら、あの酒の
ことがわかるかもしれないと思ったのだ。
 だが、酒にくわしそうな店主の返事は、芳しいものではなかった。

98 :
「・・・新潟のお酒なんだよね?うちは関西方面のが多くてねえ。よっぽど有名
 じゃないと、わかんないねえ。」
やっぱり、ダメだったか・・・綾子が礼を言って店を出ようとした時、入れ替わる
ようにひとりの初老の男性が狭い店に入って来た。
「あ・・・かがやさん。ちょうどいいとこへ。あんた『うすずみ』ってお酒、
 知ってる?・・・新潟の。」
「・・・ああ、知ってるよ。なに、もしかして入荷したの?それなら是非ウチにも
 まわしてくださいよ。」
「いやいや、そうじゃなくて。こちらのお客さんが探してるって言うんだけど、
 あんたなら知ってるんじゃないかと思ってさ。」
「へえ・・・あなた、渋いのをごぞんじだね。」
「え・・・い、いえ・・・主人が・・・以前にもらっておいしかったと言うもんですから。」
お酒にくわしそうなその人に見つめられ、どぎまぎして答える綾子に、店主が
男性を紹介した。
「奥さん。この人はね、最近この近所に日本じゅうの珍しい酒を集めたバーを
 開店してね。日本酒オタクだから、きっと知ってると思ったんだ。」
「・・・ご近所のひと?お酒が好きなら、ぜひ寄ってやってください。」
男は『銘酒 かがや』と書かれたカードを綾子に手渡した。
「かがやって言っても、別に石川県に関係ないの。加賀谷って苗字なんです。
 ここで生まれ育って、定年後に趣味と実家の建物を生かして、一杯飲み屋を
 始めたってわけ。どうぞ、ごひいきに。」
下町の男性特有の、少し女性的な話し方に嫌味がなく、好感がもてる。綾子は
思い切って聞いてみた。
「・・・今、お店にこのお酒があるんでしょうか?」
「え・・・ああ、ありますよ。」
「あ、あの・・・!お店で飲むのと同じお代を払いますから、少し分けていただけ
 ませんか?・・・どうしても、桜の下で飲んでみたいんです。」
男性はちょっとびっくりしたように綾子の顔を見た。
「あ・・・す、すみません。やっぱり・・・ダメですよね・・・。」
初対面の関係ない人に、図々しいことを言ってしまった・・・綾子は顔から火が出る
ような思いで謝った。

99 :
「ふうん・・・桜の下で・・・ねえ。わかりました。じゃあ、ちょっと着いてきて。」
「え・・・?」
加賀谷は綾子にかまわず、さっさと店を出て行った。綾子は店主に礼を言って
あわててその後を追った。何軒か先の町屋風の小さな家に吸い込まれていった
加賀谷の背をかろうじて目に留め、頭を下げて低いくぐり戸を潜った。
「4合でいいかい?・・・めったに手に入らないから、ちょっと惜しいけど、ウチで
 飲んでくれたと思うことにするよ。」
古い家を上手にリフォームした店内には、綾子が見たこともないほどたくさんの
銘柄の日本酒のびんが立ち並び、やわらかい照明の中で輝いている。
「はい、どうぞ。・・・おまけしとくから、今度はぜひ、ウチで飲んでくださいよ。」
林立する酒びんに圧倒されている綾子に、加賀谷が『うすずみ』を満たした
4合びんを差し出した。
「は・・・はい。ありがとうございます!・・・きっと近いうちに寄らせて頂きます。」
酒びんを入れたエコバッグを大切に胸に抱いて、綾子は帰路に着いた。
「んじゃ、かんぱ〜い!」
数日後の夕暮れ時、祐一と綾子は、川沿いの公園のコンクリートの長堤にもたれ、
花見酒としゃれこんでいた。
「予定外の夜桜になっちゃったけど、これはこれで風情あるね・・・。」
本当は、明日の日中に花見をする予定だったのだけれど、明日はほぼ確実に雨と言う
天気予報に、急きょ夜桜見物に変更したのだ。
「昼酒はきついけど、川風に吹かれて飲むとグイグイいけちゃうなあ・・・。あれ?
 この酒・・・。」
竹製のコップに注がれた酒を味わっていた祐一が、ふと考え込んだ。
「これ、飲んだことあるような・・・。どこで買ったの?・・・びんにラベルもないし。」
「おいしいでしょ?・・・手に入れるの苦労したんだから〜。」
綾子はちょっと得意げに、この酒を手に入れた経緯を語った。

100 :
「へえ・・・そんな店ができたんだ。」
「うん。すごく素敵なお店なの。ご主人も・・・『粋』って、ああいう人のこと
 言うんじゃないかなあ。今度飲みに行こうよ。加賀谷さんにもそう約束しちゃったし。」
一気に話して、綾子はふと祐一の無表情に気づいた。
(ゆうちゃんの前で、他の男の人ほめたのは失敗だったかな・・・。)
結婚する前は、綾子の周囲の男性にかなり神経をとがらせていた祐一だったが、
最近はそんな様子もないので綾子はついつい注意を怠っていた。
「あのね・・・加賀谷さんって、私のお父さんより年上だよ?」
あわててフォローにかかる綾子に、祐一がプッと吹き出した。
「・・・俺が妬いてると思った?・・・自惚れてるなあ。」
からかわれたのだと知って、ホッとしながらも、綾子はちょっとくやしくなった。
「もぉ・・・せっかくゆうちゃんのために苦労してみつけて来たのに・・・真面目に話聞いて
 くれないんなら、私が全部飲んじゃうんだから!」
綾子がふくれて抱え込んだ4合びんを、祐一が笑いながら押さえた。
「こら!綾子は弱いんだから、そんなに飲んじゃダメだよ。ほら、卵焼きア〜ン。」
祐一も少し酔っているのか、普段は家でもやらないことをする。
「・・・ん。おいひい・・・ゆうちゃんのだし巻き。」
綾子がだし巻き卵をほおばりながらぐい呑みの酒をくいっとあおる。
「あ・・・そうだ。これ持ってきたんだった。」
祐一がバッグからわれせんの袋を出した。
「あ・・・おせんべい?」
「うん・・・意外と酒に合うんだよ、これが。」
「わあ。何味にしようかな?」
さすがはせんべい屋の女房、綾子は薄暗い中でも自分の好きなゆず醤油味のわれせんを
一発でみつけ出し、ぽりんとかじって、また酒を飲んだ。
「ほんと、お酒に合うね〜。あ〜、お花もきれいだし、しあわせ・・・。」

101 :
 まだ茜色をとどめている西の空と、紫色から次第に濃い群青色へと移り変わりつつ
ある東の空の真ん中に、見事に並んだ満開の桜・・・。
「ちょっと酔っちゃったみたい・・・。」
綾子は長堤の上にひらりと腰かけると、川風に顔をさらして涼んだ。地上の灯りを
映して揺れる水面からの光が、綾子の横顔を照らし出す。
(きれいだ・・・な・・・。)
「やだ、なに・・・?」
放心したようにみつめる祐一の視線に、綾子が艶なまなざしを返した。
「や・・・酔っ払ってそんなとこに飛び乗ると、川に落っこちるぞ。」
「だ・・・大丈夫だもん!」
綾子はそれでも少しこわくなったのか、足を伸ばして地面につけた。
「ほら、綾子。帰るぞ・・・歩ける?」
「らいじょぶ・・・。」
せんべいと酒の組み合わせが気に入って、普段より多くきこしめしてしまった綾子は、
長堤からゆらりと降りると、壁にもたれかかった。
「調子にのって飲むからだよ。しょうがないなあ・・・。」
祐一は弁当の容器や酒びんなどをまとめると、綾子に手を貸して歩き始めた。
「ん〜ん・・・ゆうひゃん・・・なんかふわふわするよ・・・。」
綾子は雲を踏むような足取りで、祐一が修正してやらなければ、あらぬ方向へ
行ってしまいそうだった。
(まさしく千鳥足ってやつだな。まったく・・・勤め帰りのサラリーマンかよ。)
花見どきとて、そんな人も珍しくはないのだけれど、ゆらゆらと歩く女性とそれを
必で支える男性の組み合わせで、しかも長身のふたりはかなり目立った。
「綾子、がんばれ!・・・あと少しで我が家だ・・・・・・。」
人通りの少ない夜の商店街まで来たところから、祐一は綾子をほとんど肩にかつぐ
ようにして家までたどり着いた。

102 :
「は〜、着いた。着いたぞ〜!」
家に入ってからがまたひと苦労で、正体のない綾子をおぶって三階の寝室まで
運ぶのはかなり骨が折れた。
「しょうがないなあ・・・まったく。」
綾子を畳の上に寝かせ、押入れから布団を出して敷きながら、祐一はぼやいた。
「ほら・・・綾子!ちゃんと布団で寝ろよ。」
抱き起こしてパーカを脱がせてやると、下に着ているブラウスは肩紐だけの
ノースリーブで、むき出しの二の腕とデコルテにちょっと目を奪われる。
(ま、またエロい服着て・・・どういうつもりなんだ。)
祐一の中の雄が、ぴくりと反応する。
(酔っ払って寝てるとこ襲うわけにもいかないし・・・あーもーっ・・・フロはいろ!)
祐一はきざしかけた欲望を振り払うように綾子を寝かせると、掛け布団を着せて、
部屋を後にした。
(綾子・・・まだ寝てるかな?)
風呂からあがり、祐一は夫婦の寝室の引き戸をそっと開けた。
 温かな春の宵、ひと一人が眠る部屋にはすこし温気がこもり、綾子の匂いが
たちこめている。
「あーあ、はだけちゃって・・・風邪ひくぞ。」
「ん〜・・・っ!」
暑いのか布団をはだけて眠っている綾子に、肌掛けだけを掛けてやったが、綾子は
うっとうしそうな声を出してまたそれをはねのけてしまった。
「あつい〜・・・。」
「暑いんなら脱げ!」
目を閉じたまま、綾子がジーンズのボタンに手を掛けるのを見て、祐一はちょっと
驚いた。普段、よほどセクシュアルなシチュエーションでなければ祐一の目の前で
服を脱いだりしない綾子なのだが、今夜はそれだけ酔っているのだろう。
 うす闇の中で、真っ黒に見えるジーンズからむき出された真っ白い脚・・・綾子は
寝たまま臀をあげて足を抜き取った。

103 :
「ほんと・・・暑いな・・・。」
祐一はその脚に口づけしたい衝動をこらえて窓際まで歩き、窓を開けて新鮮な空気を
取り込んでやった。
「のど・・・カラカラ・・・おみず・・・。」
綾子の子供のような訴えに、祐一はやれやれと思いながら階下のキッチンに水を
取りに行った。                                    
「・・・綾子、水・・・。なんだ、また寝ちゃったのか。」
綾子はまた肌掛けをはだけ、チュニックブラウス一枚で長い脚をさらして横たわって
いた。白地に黒い水玉模様で、バストの周りと肩紐と裾に黒いレースをあしらい、
胸の真ん中に黒いリボンのついたチュニックは、パーカを着ている時は別にどうという
こともなかったのに、こうして一枚だけで着ていると、まるで男を誘う娼婦の装いの
ように扇情的だった。
(なんつーエロい服・・・綾子ってなんかちょっとセンスずれてるんだよな。)
デキる女風の外見なのに、中身は乙女で可愛いものが好きな綾子は、祐一とのデート
など、ここぞと言う時にリボンやレースのついた服や下着を身に着けることが多い。
それは時に似合っていないこともあるのだけれど、そのアンバランスな組み合わせが
妙にそそるのだった。
(ま・・・そこがエロくていいんだけどさ。)
「綾子・・・ホラ、みず・・・。」
なんとしても綾子に起きてほしくなった祐一は、冷たいペットボトルを綾子のほおに
押し当てたが、綾子は顔をしかめるだけでいっこうに目を覚まさない。
「しょうがないな・・・。」
祐一はペットボトルの水を口にふくむと、綾子の頭の後ろに手を入れて少し起こし、
口うつしに水を飲ませた。
 こくん、と音がして綾子が水を飲みくだした。・・・けれど、綾子は満足そうな
顔をしただけで、また寝入ってしまった。
「寝るなよ〜・・・!」
ここまで来て、祐一はもう引き返せないほど綾子が欲しくなっていた。幻想的な
夜桜の下で、川面にうつる灯に照らされていた綾子のうつくしい横顔がよみがえり、
祐一の胸を妖しくざわめかせる。

104 :
 祐一は立って行ってさっき開け放った窓を閉めた。綾子の上にそっとかがみこみ、
少し透け感のある水玉模様のチュニックの裾をまくりあげる。ブラのホックを外して
やると、綾子が気持ちよさそうに大きな吐息をついた。                 
「ふうぅ・・・ん・・・んん・・・。」
あらわになった胸乳を大きな手で包み込み、円を描くように揉みはじめると、綾子は
目を閉じたまま、甘えるような鼻声を出した。
「んん・・・んぅ・・・ふぁ・・・ん。」
とがり始めた先端を口に含んで舐めころがすと、両腕を顔の高さに上げて枕をつかみ、
腰をくねらせる。明らかに感じている様子なのに、綾子はまだ目を覚まさない。
 淫らによじれた腰からショーツを抜きとる。シャンパンイエローに黒い小花模様の
小さなそれは、汗で少し湿って、綾子の太腿でくるくると丸くなってしまい、祐一は
脱がせるのに苦労した。
(可愛いんだか、エロいんだか、わかんねえよ・・・!)
酔っ払って正体のない女の下着を一枚一枚脱がしている自分が、相手は妻とはいえ、
なんだか犯罪者のようで、祐一は自嘲的な気分になりつつも、後戻りはできない。
 
(目を覚まさせてやる・・・!)
両足首をつかみ上へと持ち上げる。Mの字型に開かされた脚の中心部は、とろりと
潤んで光っていた。
「ふぁ・・・?」
熱くとろけるそこに口づけると、綾子がぴくりと震えた。両腿を肩にかつぎあげる
ようにして秘部の全容をあらわにし、襞の谷間を舌がさまよい始める。
「ふっ・・・ぅうん・・・ぁ・・・ふ・・・。」
手で押さえている太腿に力が入り、空中に突き出された足がびくびくと震えた。
「・・・ゃっ・・・ぁ・・・あっ・・・んっ・・・。」
腕の中で暴れる綾子の両脚にかまわず、祐一は舌で花芽を吸いたてた。
「・・・ゃあ・・・んっ・・・んやぁあっ―――――!」
ぴんと突っ張った四肢から力が抜け、ぐったりとなった両脚を、祐一はゆっくりと
下ろしてやった。                                  
「え・・・。やっ・・・あっ・・・やだ、ゆうちゃん・・・!」
夢うつつの中で絶頂をきざみ込まれ、朦朧とした綾子の瞳に、自分の下腹部から
顔を上げた祐一が映った。

105 :
「・・・ごめん。ガマンできなくてさ・・・。」
祐一に組み敷かれている身体をよじり、丸くなって祐一を避けようとしている綾子の
顔を唇で追い、頬に口づけながらささやいた。
「・・・ひどい・・・わたし・・・わからなくなってたのに・・・。」
意識のないまま、素裸に剥かれ、達かされてしまった・・・綾子は羞ずかしさで
混乱し、祐一を責めた。
「だって・・・あやが、あんまり可愛いから・・・。」
「そっ・・・!」
綾子が何か言いたげに開いた唇を奪う。綾子自身の蜜を残す舌に舌をとらわれ、
強く吸われると、先ほどの絶頂感がよみがえって綾子の身体をつらぬいた。
「――――っ!」
声も出せず身体を震わせる綾子の手に、祐一が張りつめた剛直を握らせた。
「今日の綾子・・・きれいだし・・・エロいし・・・。」
「あ・・・。」
「綾子のせいなんだからな・・・責任とってよ・・・。」
痺れるような絶頂感で無理やり目覚めさせられて混濁した頭がようやく覚めると、
綾子は、今手の中にあるこの充実に満たされたいと強く求めている自分に気づいた。
「キス・・・して・・・・・・ゆう、ちゃ・・・―――っ!」
大きな瞳に吸い込まれるように口づけながら、祐一は綾子のなかに押し入った。
あまりにも性急な挿入に、綾子が小さな悲鳴をあげる。
「・・・んぁっ・・・ぁっ・・・ゃ・・・ま・・・って・・・!」
綾子を隙間なくいっぱいに埋めつくした祐一の分身が、激しく主張し始める。
 さっき、うつつないまま口淫をほどこされた羞ずかしい姿勢のまま、曲げられ、
大きく広げられた両脚の間に迎え入れられた祐一の腰が、うねるように上下した。      
「・・・ぁっ・・・ゃっ・・・まっ・・・ゆ・・・ちゃ・・・。」
完全にペースについて行けず、きれぎれにあえぎながら祐一の激しい動きに
揺さぶられるばかりの綾子は、それでも足を立て、祐一に合わせようと腰を上げた。
「ぁあっ・・・っや・・・だっ・・・ぁああっ・・・!」
膝の裏を祐一の両手につかまれ、身体を折り畳まれるようにしてさらに深く抉られる。
「だめっ・・・だっ・・・ゅ・・・う、ちゃ・・・ぁああ――――っ!」
脚を拘束されたまま絶頂を刻み込まれ、綾子の宙に浮いた両足がびくびくと痙攣した。

106 :
・・・強くつかまれていた両脚がそっと下ろされる。綾子は次の瞬間、祐一の少し汗ばんだ
逞しい胸がゆっくりと覆いかぶさってくるのを待った。だが・・・。
「・・・ぁ・・・んっ!」
祐一のかたちにぴったりと密着していた肉の襞から、羞ずかしい音とともに剛直が
引き抜かれ、綾子は思わず声を上げて腰をふるわせた。
「・・・ゃ・・・んゃぁあっ・・・。」
身体をひっくり返され、腰を持ち上げられて背後からまたつらぬかれる。酔いと
快感が腕の力を奪い、上体を起こしていられなくなって、綾子は枕に突っ伏した。
「あや・・・このカッコ・・・無理?」
顔を枕に押しつけたままの綾子を心配し、祐一は背後からしっかりと綾子を抱き
かかえると、そのままゆっくりと後ろへ倒れた。
「・・・ゃ・・・ぁ・・・。」
後ろから貫かれながらも自分が上になるという変則的な体勢に、綾子があえいだ。
祐一は上体を起こして半開きの唇を舐め、舌を吸いながら、今度はゆっくりとした
テンポで責めはじめる。
「・・・ぁ・・・ゆ・・・ちゃ・・・ぁっ・・・あ・・・。」
綾子が伸ばした手に指をからめ、祐一がしっかりと握ってやる。
「・・・ぃ・・・くっ・・・ぃき・・・そ・・・ぁあ!」
快を訴えながら必で祐一を振り返る綾子の可愛い舌を甘噛みしてやりながら、
上になった大腿をつかんで挿入をめ、下から激しく揺すぶりたてる。
「・・・達け・・・達けよ・・・!」
祐一に命じられるまでもなく、綾子は啼きながら激しく身体を痙攣させた。
その収縮のなかに、祐一も全てをそそぎ込んだ。                     
 まだ時おりひくついている身体からゆっくりと引き抜くと、綾子がひときわ大きく
息をついた。大切に横たえてやってから、そっと抱きしめる。小さく開いた唇に唇を
重ねる。同じ恍惚を共にした後の口づけはことさらに甘く、やわらかだった。
「・・・綾子・・・大丈夫か?」
唇が離れたあとも、まぶたを開けない綾子のほおを祐一は小さくたたいた。
「・・・快すぎ、た・・・?」
だが、快感のあまり気を失ったのでもなく、綾子は早くもすうすうと寝息を立てて
眠っているのだった。

107 :
「なんだ・・・。」
事後、女は相手と触れ合いたがり、男はさっさと離れたがる・・・とはよく言われる
ことである。もちろん甘えたがりな綾子は、愛し合った後何度もキスしたり、
抱きしめられることをのぞむのが常だが、祐一もそんな綾子を甘やかしてやることが
嫌ではなかった。触れ合ううちに、エロティックな記憶を反芻し、相手を心底
満足させてやれたという達成感に浸るのも悪い気分ではないと思う。
「・・・明日、何にも覚えてなかったりしてな・・・。」
ちょっと拍子抜けして、祐一はつぶやいた。自分を拭くついでに、綾子もきれいに
してやって、ふとその紙を見たりしてみる。
「俺は何をやってんだ・・・。」
すやすやと眠る綾子をしっかりとタオルケットでくるんでやり、上掛け布団を
かけてから、眠る子供にするように額にキスした。
 祐一にすべてを奪いつくされ、眠りにおちた綾子の無邪気な寝顔を見ていると、
この女を誰にも会わせず閉じ込めておきたいような、危ない独占欲にかられる。
「惚れてるから・・・さ。」
自分で自分の台詞に照れて、祐一も綾子の隣にもぐり込むと、目を閉じて眠りについた。  
 数日後。店番をしていた綾子がふと通りを見ると、見たことのある男性と
目があった。
「あ・・・。」
「おや・・・これは。」
それは『うすずみ』を分けてくれた加賀谷だった。綾子はカウンターの後ろから
走り出てきて、先日のお礼を言った。
「どうでした・・・もう飲まれましたか?」
「はい!・・・ちゃんと桜の下で・・・。すごく、おいしかったです。」
美味ゆえに飲み過ぎてしまって、その後のことは・・・とても他人には言えない。        
「・・・おせんべい屋さん、なんですか。」
「はい・・・あ、これをおつまみにして飲んだんです。・・・すごく合うんですよ。」
綾子は自分のお気に入りのゆず醤油味のせんべいを手にとって加賀谷に示した。
「へえ、おいしそうだな。・・・いろんな味があるんですね。」
加賀谷は、綾子お手製の商品の説明書きに目を走らせた。
「あ・・・これなら、いろいろ味見できますよ。・・・どうぞお持ちください。
 この間のお礼です。」
綾子はいろいろな味のわれせんの入った袋を手早く包み、遠慮する加賀谷に渡した。

108 :
 次の定休日の前日。
「ねえ・・・今夜は外で食べない?」
「ん・・・いいよ。どこ行く?明日なら遠くへ行けるけど、今日は近場だぞ。」
「うん。近場も近場。この近所だよ。」
綾子に引っ張られて向かった先は、近所ではあるがあまり馴染みのない一角にある、
よく手入れされた古い町屋ふうの店だった。
「『銘酒 かがや』・・・これって、もしかして・・・。」
「へへ・・・私が開拓したお店だよ。」
普段ふたりが行く店は、ほとんど地元っ子の祐一が知っている店なので、今日は
自分が先に知っている店に案内できて、綾子はちょっと得意げだった。          
「いらっしゃい・・・おや、これはようこそ。」
「こんばんは。今日は主人を連れてきました。」
「どうぞどうぞ・・・あのおいしいおせんべいを焼いてる方ですね。」
白木が清潔なカウンターに案内され、冷酒とつきだしが置かれる。
「あ・・・。」
竹で編んだ小さな箕に乗っているのは、『ささき』で売っているわれせん・・・。
「おっしゃるとおり酒によく合うんで、かわきものに使ってみたら、評判が
 良くってね。・・・今度から卸してもらえませんかね?」
「・・・ほんとですか?」
綾子は思わず祐一と顔を見合わせた。思わぬところで商談成立である。         
 加賀谷の妻という穏やかそうな女性がおいしそうな酒肴を運んでくれる。
自分が商売の役に立ったという嬉しさもあり、綾子は性懲りもなく杯をかさねた。
「おい・・・そのくらいにしとけよ。また歩けなくなるぞ。」
「だって・・・おいしいんだもん・・・お酒もお肴も。」
「・・・ふうん・・・でも、俺はもう嫌だからな・・・。」
「え・・・何が?」  

109 :
「・・・前の晩のこと覚えてない奴とスるのは・・・。」
「え・・・ちょ・・・ゆうちゃん!」
綾子があわてて声をひそめて祐一をたしなめた。
「こ・・・こんな所でそんな話・・・。」
「じゃあ、酒はそのくらいにして、腹減ったからラーメン食いに行こ。」
「もお〜。せっかくいい雰囲気なのに・・・。」
カウンターの上の大きな花瓶に無造作に投げ入れられた桜の下で、ほろ酔い加減の
綾子が恨めしそうに祐一をにらんだ。
「おや・・・もうお帰りですか?」
「楽しかったです・・・また寄らせていただきますね。」
「・・・せんべいの件は、またお店にうかがった時に・・・。」
「はい。ありがとうございます。お待ちしてます。」
涼しい顔で加賀谷と挨拶を交わしている祐一の横で、綾子は顔が火照るのを
どうしようもなかった。
「もぉ・・・ゆうちゃんて意外と根に持つんだから。ちゃんと・・・覚えてるもん。」
店を出て歩き出してから、綾子が小声で言った。
「へえ・・・じゃあ、どんな順番だったか言ってみ?」
「じゅ・・・そんなこと、言えないよ!」
「ほら、やっぱり覚えてない。・・・やっぱり俺ってそれくらいのもん?」
「ち・・・違うって!」
「じゃあ、明日ちゃんと順番覚えてて報告しろよ?」
「え・・・。」
綾子が真っ赤になってうつむいた。祐一はラーメン屋の灯りを目指してさっさと
歩いていく。
「ま、待ってよ・・・ゆうちゃん。」
綾子があわてて後を追う。もうすっかり散ってしまった花びらが道路に散り敷き、
温かい風に舞っている、しあわせな夜だった。

110 :
>>97
GJ!
綾ちゃんの寝姿にモンモンするゆうちゃんがいいw!
綾ちゃんも旦那様の為に奔走して健気で可愛い。
今回もいい味のオリキャラが花を添えて楽しかったです(*´∀`*)

111 :
>>97
あーんしてもらったり酔ったりして甘える綾子さんの可愛らしさとか
一回思い止まったのに結局襲わずにいられなかったゆうちゃんとかw
萌えましたわーGJ!

112 :
グッジョブグッジョブ!!
綾ちゃんの寝姿にムラムラして襲う祐ちゃん最高w「可愛いんだか、エロいんだかわかんねーよ!」って本当に言いそうだあ
貴方の作品では、綾ちゃん23歳誕生日のお話も大好き!(もし違っていたら、ごめんなさい)

ふと思ったんだけど、
ゲゲも幾度となくフミちゃんの無邪気に眠る顔みて襲っていたんじゃないかなー

113 :
>>96
62ですがネタ拾ってくれてだんだん!
おせんべいとお酒の組み合わせとは思いつかなかった…
お酒によってもたらされるエロス最高でした!

114 :
>>112
寝込みを襲っても仕方ないですねぇって受け入れてくれそうでそんなふみちゃんに萌えるし
そのへんに甘えまくるだろうゲゲさんにも萌えるw

115 :
掃除して怒られて初めて意見してからの仲直りの自転車…やっぱたまらん!

116 :
今日も朝からごろごろしまくったぜ…
自分この時期はリアルタイムで見てなかったし、見はじめた後もずっと昼ので見てたから
朝からこんな萌えを補給できる偉大さを初めて知ったよ!

117 :
「ハートですなあ」とかナニどこの学生カップルですかとw
墓場でまったりデートとか意表ついててたまらんわ。

118 :
すいません、綾子さんと祐一さんて誰ですか?

119 :
「いちごとせんべい」でググれ

120 :
割れたせんべいも見るといいよ!
衿直しとか今日の「ないーっ!」とかのイチャイチャがもうほんとたまらん!

121 :
奥さんに原稿料とりに行かせたというのは実話なんだけど、
「払い渋る出版社に、新妻を行かせればガードがゆるむかも。」
と言う作戦だったらしい。お嫁さんもらって嬉しかったんだね。
昔の自伝では奥さんに関しては実にそっけないんだけど、わりと最近の本には
空き瓶に野の花や百面相など、「これも実話?!」なエピが多くてほのぼの。
そしてそれをうま〜く組み合わせる脚本の妙技に脱帽です。

122 :
>>121
「これも実話!?」ってほんと多いよね
本当に丁寧に聞き取って脚本作ったんだろうなぁと思う
ゲゲゲの丁寧さが本当に好きだ
そして今日の手先が器用なんだなぁイチャイチャはやはり至宝w

123 :
>>122
ゲゲに手を取られただけで恥ずかしそうなふみちゃんはかわいいよねぇ。
やっちまってから「あ」と手を離すゲゲもどんだけ照れ屋なのかw

124 :
>>123
他意はなかったんだから堂々としてそうなもんなのに、照れちゃうあたり
いくらゲゲさんでもやっぱり普通に新婚さんなんだなぁと思ってニヤニヤしてしまうw

125 :
あのものすごい喜びようのふみちゃんの頭を撫でてるしげーさんが素晴らしすぎて

126 :
ヤッターダンスのあと「あなた、すごいです!」ってゲゲもちょっと回らされてるなw
あの涙のあと、ぎゅっと抱きしめないのが本編の素晴らしさ
抱きしめたり、そのあともあんなことやこんなこと…と妄想して楽しむのがこのスレの素晴らしさ


127 :
あんな奥さんいたら可愛くて可愛くてしかたないだろうな。

128 :
生姜すりおろす姿とか褒めてるのが聞こえないくらいの集中っぷりとか
アシスタントしてるときもキレイかわいい

129 :
今日イタチが風呂の後着てたのってきっとしげーさんの服だよね
あれ着てた時ってあったっけ?境港の時だっけ?
どれにしろあれもっと着てほしかったなー

130 :
どんどん夫婦になってくなー
あー、ほんと良いなぁゲゲゲは
見てて心地好いし、そして何より萌えるw

131 :
いちせんパロです。
興味のない方はスルーでお願いします。
本編はいよいよ萌えがふかまるばかりなのですが、この辺りはちょっと
書き尽くしてしまっていて・・・。ゲゲふみはもう少しあとになります。
あ、もちろん新しい視点で新婚時代を書いてくださる方があれば大歓迎です。
自分は正直、いちせんは最初なんだか恥ずかしくて書けない!と思っていた
のですが、書いてみたら意外と書けるんですなこれがww
最初に書いたのが綾ちゃん23才の誕生日のお話なんです。
お褒めのレスをくださった方、どうもありがとうございます。
われせんでゆうちゃんが企画していた南国リゾートを実現させてみました。
この二人には、ゲゲふみが出来ないこと(デート、旅行、おしゃれ等)を
存分にしてもらえるので書いてて楽しいです。一方、ゲゲふみには
ゲゲふみにしか醸し出せないせつなさや萌えがあるわけですが・・・。

132 :
「綾子、ちょっと盛り過ぎじゃない?」
「え・・・こ、これは元々こうなってる水着なんだよ!」
ちょっとシーズンオフのビーチリゾート。パラソルの下でサンドレスを脱いだ
綾子の水着姿は、小さなフリルがいっぱいついたフランボワーズ色のトップスと、
白い胸元の対比がまるでおいしそうなお菓子を思わせる。思わず釘付けになった
目をそらし、祐一は照れ隠しに綾子の胸をいつもよりちょっと豊かに見せる
水着に文句を言ってみた。
「・・・俺は内実を知ってるんだから、盛る必要なんかないのにな。」
「な・・・内実ってなによ!」
たしかに、ちょっと寄せて上げる効果のあるものを選んだのは事実だけれど、
お世辞でも少しはほめてくれたっていいのに・・・綾子は少しふくれっ面になる。
「怒るなよ・・・美味そうだなって思っただけだよ。」
「・・・うん。へへ・・・いい色でしょ?マカロンみたいで・・・。」
綾子がすぐ機嫌をなおして微笑んだ。
(そういう意味じゃ、ないんだけどな・・・。)
半年前にハネムーンに行ったきり、せんべい屋を切り盛りする生活に追われ、
結婚してから旅行らしい旅行に行くは今回が初めて・・・。リゾートで着る
新しい水着に心弾ませている綾子を、祐一はほほえましく見つめた。
 祐一と綾子が結婚して二ヶ月ほど経った頃、結婚後初めての夫婦げんかをした。
綾子の父の機転もあって仲直りしたのだけれど、その時、祐一が提案したのが、
この南の島への旅だった。ずっと前から考えてくれていたらしいこの旅行を実現
できたのは、それからまた三ヶ月以上経った今なのだ。
「はあ・・・やっぱり海はいいなあ・・・。」
祐一がデッキチェアに寝転がって気持ちよさそうにのびをした。
「うん・・・新婚旅行は雪国だったもんね・・・。」
「ま〜だ恨んでんの・・・?新婚旅行は海外のスキーリゾート行こうねって言って
 猛練習してたの綾子じゃん。」
「う・・・だって、まさか4月にスキー出来るとこあるなんて思わないし・・・。」
「ところがどっこい、あるんだな〜、これが。」 

133 :
日本とは比べ物にならないくらい広大なゲレンデに『自己責任で』と看板が
立っているカナダのスキーリゾートは、猛練習したとは言えまだまだ初心者の
綾子には厳しいものがあった。
「で・・・でも、カナダも楽しかったよ。景色もきれいだったし・・・。」
スキーはハードだったけれど、大自然の中で思い切りあそぶ昼、雪をかぶった
お城のようなホテルで過ごす温かい夜・・・ハネムーンはやはり甘くしあわせな
思い出だった。
「あ〜・・・でも、こうやって何にもしないでいるのが本当のバカンスだよね〜。」
綾子も祐一の真似をして隣に寝そべる。
「あ・・・そうだ、サンオイル塗ってあげようか?」
「ん〜。サンオイルってか・・・日焼け止めにして。」
「え〜?せっかく南の島なのに、灼かないの?」
「だって、帰ってから真っ黒な顔して店に出らんないだろ?やっぱあんまり
 感じよくないよ。」
「そっか・・・。」
地域社会で商売をしていくというのは、なかなか気を遣うことなのだった。
(大人だなあ・・・ゆうちゃん。)
ちょっとしょぼんとした綾子に、祐一が笑ってサンオイルのびんを手にした。
「綾子はちょっと灼けばいいじゃん。小麦色の綾子ってのも見てみたいよ。」
「い・・・いい!私も日焼け止めにする。・・・もうじきお肌の曲がり角だもん。」
「いいから、塗らせろよ。」
「・・・きゃ・・・やめて、くすぐったいっ!」
大量のサンオイルを垂らされ、祐一の大きな手が背中と言わず二の腕と言わず
這い回る。
「もぉ・・・わざとくすぐったくさせてるでしょ?」
綾子もお返しとばかり日焼け止めを手に逆襲にかかる。・・・いい年をした社会人の
ふたりが、こんなくだらない行為に没頭できると言うのも、南の島の解放感の
なせるわざかもしれなかった。

134 :
「うわー。やっぱり降ってきたね。」
「うん・・・すごい水けむり。スコールってやっぱ迫力が違うね。」
あれから数時間後。ビーチで楽しく過ごすうちに、雲行きが怪しくなってきて、
ふたりは早々にホテル内に引き上げ、早めのランチをとっていた。
「あ・・・いたいた!佐々木サン、さがしましたヨ〜。」
声をかけてきたのは、現地のツアーコンダクターのチャンさんだった。中国系
マレー人の彼女は、小柄だがエネルギーに満ち、常にセカセカしている。
「アナタたち、ハネムーナーなんですネ?なぜ早く言わないカ?」
祐一と綾子は唐突な質問と彼女の迫力に押され、エスニック料理を食べていた
フォークを宙に浮かせたままぽかんと聞いていた。
「ツアーの小林さんから聞いたヨ。そういうことは早く言わなきゃだめヨ!」
綾子たちのツアーの他の参加者は中高年の夫婦や女性のグループが多かったが、
みんな旅慣れているらしく、お互いにプライバシーに踏み込んでくることはなかった。
ツアーとは言ってもフリータイムだけのこの旅行で、他の参加者と接触したのは
空港からホテルまでと、今朝の朝食の時あいさつをしたくらいだった。
「あ・・・そう言えば。あの女の人に『新婚さんですか?』って聞かれたんで
 『いえいえ、もう半年も経ってますから〜。』って答えたんだけど、それかな?」
「一年以内なら、新婚ですヨ!ホテルに言って、ハネムーナー用のお部屋に
 替えてもらいましたからネ!・・・あ、それから、花嫁にはスパのサービスが
 ありますから、後でドウゾ!」
「はあ・・・花嫁・・・。」
チャン嬢は言うだけのことを言って、嵐のように去っていった。後に残された二人は、
半信半疑ながらフロントで聞いてみた。ハネムーナー用の部屋と言っても、静かな
環境にあるだけで別料金ではないと言う。鍵をもらって祐一は新しい部屋へ、
綾子はサービスを受けにスパのある棟へと向かった。
「と・・・遠いな・・・。」
綾子はスパを受けたヴィラを出て、教えてもらった新しい部屋を目指して歩いて
いた。スコールは勢いは弱まったもののまだ止まず、コテージとコテージの間の
回廊に屋根はあっても、水しぶきの飛んでくる道を歩き続けるのはけっこう
大変だった。

135 :
「え・・・ここ?」
替えてもらった部屋は、宿泊エリアの最果てにあるのではないかと思わせるほど
中心部から離れた、入り組んだ入り江の突端に一室だけ設けられたコテージで、
鬱蒼とした木々に囲まれ、ベランダの下はもう海だった。
 鋳鉄の門扉を開け、さらに重厚なマホガニーの扉を開けると、ほんのりイスラム
調のインテリアの室内は白い壁とこげ茶色の木材で統一された落ち着いた色調で、
ベランダへと続く窓からは青い海が望まれた。
 
「わあ・・・素敵。」
ベランダに出て行くと、デッキにしつらえられたソファに祐一が寝ている。
「あ・・・おかえり。スパどうだった?」
「何これ?・・・うわー、動く・・・これ、ブランコになってるの?」
長さは少し足りないが、小さめのシングルベッドほどあるソファと思ったものは、
頑丈な鎖に支えられ、押すと静かにゆらゆら揺れた。厚いマットレスに大小様々の
クッションが置かれ、小さなジャグジープールから涼しい風が吹いてくる、こんな
ブランコでお昼寝したら、最高の夢が見られそうだった。
「ここ、いいねー。ちょっと遠いけど、部屋も広いし、こんなのまであって。」
「まあね・・・ちょっと隔離されてる感じもするけど。」
確かに、孤立した立地、鬱蒼と繁る熱帯の木々に囲まれ中が窺えない建物、扉が
二重になって一戸建てのような玄関・・・ここだけが別世界の趣きだった。
「あ・・・これ、アロマランプなんだ・・・いいにおい。」
テーブルに置かれた素焼きのランプには複雑な透かし彫りが刻まれ、芳香とともに
幻想的な模様を映し出している。部屋の真ん中には天蓋のついた巨大なベッドが
あり、紗のカーテンに覆われている。
「天蓋つきのベッドって、あこがれてたんだよねー。」
部屋中を撮影していた綾子が、紗のカーテンを開けてベッドの端に腰かけた。

136 :
「でも・・・これはこっ恥ずかしいかも・・・。」
キングサイズのダブルベッドには、白やピンクの熱帯の花々でつくった巨大な
ハートマークが描かれている。
「うん・・・俺もちょっと正視できなくて、あそこに避難してた。」
祐一も部屋に入ってきて、シックな部屋でひときわ異彩を放つ花飾りを見下ろした。
「綺麗は綺麗だけど・・・寝たら、こわれちゃうよね?」
綾子がハートマークを写真におさめながら言った。
「きゃ・・・なにす・・・!」
祐一がいきなり綾子を花で出来たハートの上に押し倒してくすぐった。
「ゃめ・・・やめて・・・きゃ・・・ゃめっ・・・!!」
くすぐっていた指が止まり、綾子の腕を押さえつけて唇をかさねる。このまま
行為に雪崩れ込みそうな激しい口づけ・・・綾子はあせった。
「ん・・・ゅう、ちゃん・・・ったら。ま、まだ早いよ・・・。」
じたばたする綾子から祐一が手を離すと、あわてて起き直ってベッドから下りた。
「ウ・・・ウェルカムドリンクあるよ。せっかくだから飲も?」
汗をかいたシャンパンバケットの中のハーフボトルを綾子が取り出すと、ベッドを
出た祐一がそれを受け取って手際よく開けてくれる。酒を満たした細長いグラスを
手に、ふたりは籐のデイベッドに腰かけた。
「乾杯!・・・ハネムーンに。」
泡立つ黄金色の液体は、飲む者を特別な気分にさせてくれる。
「昼間からシャンパンなんか飲んで・・・バカンスっていいよね。」
綾子はすっかりくつろいで、サンダルを脱いで幅広いデイベッドの上に上がり、
クッションにもたれた。バティック柄のマキシドレスの深く切れ込んだスリットから
のぞく長い脚に、祐一の目が吸い寄せられる。
「・・・昼間から、他のこともしよっか?」
祐一はグラスからひと口ぐいと口に含むと、また綾子に口づけた。シュワシュワと
した口あたりと少しの酔い心地が、綾子の官能を呼び覚ます。             
「ど・・・したの?・・・ゆうちゃん。」
「外は雨だし・・・午後はここに籠ろ?」
バカンスのせいなのか、この環境のせいなのか・・・なんだかどんどんエロチックな
方向へ流されていってしまう。綾子も観念して羞ずかしそうにうなずいた。         
目を伏せた綾子の剥き出しの肩に口づけると、エキゾチックな花の香りがした。

137 :
「いい匂いだ・・・。」
「ぁ・・・スパで・・・アロママッサージしてもらったから・・・。」
首筋に顔を埋めて香りを楽しみながら、脚に手を滑らせる。綾子があわててグラスを
テーブルに置いた。  」
「・・・まーたこんなケシカラン服着て・・・。」
身体に布を巻きつけただけのような構造のドレスを剥ぎ取って素裸にする。スパを
受けてきたばかりの肌はいつもにも増してなめらかで艶やかだった。
「・・・ゃ・・・私だけ・・・。」
祐一は笑いながら綾子を抱き上げ、花のしとねの上に下ろすと、自分も服を脱いだ。
「これ・・・一度やってみたかった・・・ような気がしてきた・・・。」
ハートマークを形作っていた花をすくいあげると、綾子の上に降らせる。
「ゃだ・・・はずかし・・・ん・・・。」
照れる綾子を花ごと抱き込んで、深いキス・・・。綾子も甘く応え、ふたりは官能的な
キスを繰り返しながら裸の身体をからみあわせた。
 滝のようなスコールはおさまったが、雨はしとしととした降りに変わっている。
雨に降り込められた二人だけの静かな部屋に、次第にたかまる綾子のあえぎが溶けて
いった。
「あや・・・もうこんなにして・・・。」
「ぁ・・・ゃぁあっ・・・!」
細い足首をつかんで広げ、蜜をこぼす花の中心に口づける。いつもなら焦らすところ
なのに、今日の祐一はなんだか性急だった。
「だめ・・・も・・・きちゃ・・・来ちゃぅうっ・・・。」
花芯を吸いたてると、綾子があっけなく達した。つかんでいた脚を離してやると、
綾子は無意識に背中を丸め、自分の腕で震える身体を抱きしめていた。まだ余韻の
覚めやらぬ身体を抱き起こして這わせ、いきなり後ろから侵入する。
「ぁ・・・あ――――!」
綾子が悲鳴をあげてシーツをつかみ、、かろうじてハート形を保っていた花々を
撒き散らした。祐一は凶暴な衝動にかられ、綾子の腰をつかんで振りまわした。
「・・・ひぁっ・・・ぁあっ!」
啼き声をあげる綾子の汗ばんだ背中におおいかぶさり、花芽に指をあてがう。
「ぃやっ・・・いや・・・あ――。」
わざと指は動かさずに、腰をつよく振りたてる。綾子のなかが祐一を烈しく絞り
あげた。

138 :
「・・・ぁっ・・・あ・・・っ。」
つよく吸着していた肉根を引き抜かれ、綾子が達したばかりの身体をびくびくと
震わせた。腰をつかんで引き寄せられ、熱帯の花々をつかみしめた綾子の指が
それに引きずられた。
「・・・ゃっ・・・まっ・・・て・・・。」
そのままベッドの端まで引きずられ、抱き上げられる。身体中に絶頂感がどよもし
ていて、どこへ運ばれるともわからぬまま、リネンの冷やりとした感覚に気づくと、
そこはあのブランコの上だった。
「・・・やってみたかったこと、その2・・・かな・・・。」
綾子を抱き下ろすと、片方の脚を背もたれに引っかけ、大きく開かれた中心部に
身を沈める。
「だっ・・・だめっ・・・・・・ぁ――――!」
休む間もない攻撃に、綾子は戸外で抱かれる羞ずかしさを感じる暇もなかった。
「ぁっ・・・あっ・・・ふぁっ・・・ちゃ・・・ゅうちゃ・・・ん。」
突き上げられるたび、涙でぼやける視界にうつるプルメリアの白い花が、ゆらゆらと
揺れる。祐一は片足を地面に着け、綾子を責めるリズムに合わせてブランコを
揺らしていた。
「・・・キス・・・して・・・ゆうちゃ・・・。」
祐一が綾子を抱き起こし、ふたりはぴったりと抱きあってキスを深めた。
「・・・ぁあっ・・・・・・また・・・っちゃ・・・。」
あえいで唇を離した綾子が泣きそうな声で再びの到達を告げる。祐一は地面に
つけた足を離した。揺れるブランコの上で、ふたりの激しい動きが早まり、やがて
がくりと止まった。
 愛しいリズムを刻みつづける綾子のなかへ、祐一は永遠とも思えるエクスタシー
の証しを注ぎつづけた。

139 :
「・・・なんか、ダメになっちゃいそう・・・。」
紗のとばり越しに、もの憂げにまわるシーリングファンをみつめながら、綾子が
つぶやいた。この甘い香りの垂れ込める部屋で、午後じゅうを祐一と裸で過ごした。
こんな自堕落な一日の過ごし方はバカンスでなければできないだろう。          
「このカーテンに籠ってると、際限なく出来ちゃいそうな気がするんだよな・・・。」
「・・・ぁん。」
祐一の指が、弄られつくして過敏になっているピンク色の突起をつまむと、綾子が
甘い鼻声をあげた。
 あれからシャワーを浴びて、ベッドで惰眠をむさぼった後、目覚めたふたりは
またどちらからともなく求めあい、悦楽のかぎりをつくした。
「で、でも、もう夜だよ?・・・ご飯食べに行こ!」
甘い余韻を振り払うように、綾子がいたずらなゆびを払いのけた。
「うん・・・何か食べないとにそうだ。・・・綾子に全部吸い取られちゃったからな。」
「もぉ〜・・・すぐそういうこと言う・・・。」
激しく愛された後の気だるい身体を引き起こして、綾子が身支度を始めた。さっき
剥ぎ落とされたドレスを身に着ける綾子を、祐一は寝たまま見守っている。
「・・・あやこ・・・。」
「・・・ん?」
目顔で呼ばれ、綾子が祐一の上にかがみ込んだ。目と目があってキス・・・。
「・・・愛してる。」
唇が離れた後、じっと目を見ながら祐一が言った。突然の告白に、綾子は胸が
苦しくなってただ大きな瞳で祐一をみつめた。祐一は真剣な表情だ。
「うん・・・私も・・・愛してる・・・。」
やっとそれだけ言うと、綾子はまた口づけた。日はとっぷりと暮れ、空には
満点の星がまたたいている。ふたりは空腹も忘れ、長いこと唇を重ねたまま
お互いの鼓動を感じていた。

140 :
「ふたりっきりで南の島かぁ・・・いいなぁ〜。」
綾子に見せられた旅行の写真に、遥香がため息をついた。
「いいっすよねぇ〜。」
紗絵も、ほおづえをついて遠くを見るような瞳をした。
 旅行から帰って来てしばらく経ったある夜。綾子はアルバイト時代の友達ふたりと
居酒屋で会っていた。
「ふ・・・ふたりっきりって言っても、パックツアーだよ。」
「でも、オプショナルツアーとか取らなきゃ、ずっとフリーで、団体行動なんて
 しなくていいんでしょ?」
「うん・・・クルーズで小島に行ったくらいで、あとは基本ビーチやホテルで
 まったりしてたね。」
「うわ〜、素敵・・・これならどこへも行かずにずっとホテルにいてもいいよね。」
青い海、松明に照らされたテラスレストラン、シックでエキゾチックな客室・・・。
「ん・・・何これ?」
小さなフォトアルバムのページをめくっていた遥香が、素っ頓狂な声をあげる。
「え・・・どれ?・・・う・・・。」
天蓋から垂れる透けるカーテンに囲まれたベッドの上に、ピンクと白の花で描かれた
大きなハートの写真。
「こ・・・これは照れるっす・・・佐々木さんからのプレゼントっすか?」
「ち・・・違うよ・・・。ツアーの人たちに、結婚半年だって言ったら、ガイドさんが
 『ハネムーンならそう言ってくれなきゃ困る!』って、部屋替えられちゃって・・・。」
「で、行ってみたらこうなってた、と・・・。」
「き・・・きれいだから撮っといたんだけど、写真抜いとくの忘れた・・・。」
「乱しちゃう前に、写真に撮っておいた、と・・・。」
「もぉ〜・・・すぐそっちに持ってくんだから・・・。」
実際、これらの花々はその後すぐ祐一と綾子のしとねとなってしまったわけだから、
このふたりの言うことは図星なわけだけれど、図星なだけに羞ずかしくてたまらない
綾子だった。

141 :
「あ・・・お、お土産あるよ、おみやげ!」
綾子は、慌ててバッグから小さな精油のびんを二つ取り出してふたりに渡した。
「『セント・オブ・ラブ』・・・これ、アロマオイル?」
「うん・・・お部屋に焚いてあったの。すごくいい香りなんだよ。」
「・・・へえ・・・なんか癒されるっす・・・。」
さっそくフタを開けて匂いをかいでみた紗絵が、うっとりと目を閉じた。
「ふうん・・・イランイラン、ベルガモット、ローズ、ネロリ・・・ね。」
難しい顔をして成分表を読んでいた遥香が、ちょっと意地悪な顔で聞いた。
「綾子・・・さあ、これ他にも誰かにあげた?」
「え?あ・・・うん、ルームメイトだった子と・・・会社の子達と・・・。」
「・・・そんなに?」
「ごめん・・・でも、本当にいい香りだからみんなにも、と思って・・・。」
みんな同じお土産と言うのが気に入らなかったのかと、綾子はあせった。
「あ・・・そういう意味じゃなくって・・・ただこれ・・・。」
遥香が瓶に貼られた花の絵を指さしてニヤリとする。
「媚薬っていうか・・・催淫効果のあるアロマなんだよね・・・。」
「・・・え!?」
「インドネシアじゃ、これの花びらを新婚カップルのベッドに撒くそうだよ。
 ハネムーナー用の部屋に焚いてあったんでしょ?。」
「・・・うん。」
「綾子ったら、毎日この香りぷんぷんさせて歩いてたわけだ。・・・わかる人には
 わかったと思うよ〜。」
「うわ〜ん、どうしよう・・・これ、親にもあげちゃったよ。」
そう言えば、あの時のふたりはちょっと異常だった・・・。思い当たることが
あり過ぎて、綾子は顔から火が出る思いだった。

142 :
「・・・そう言われてみると、なんかエロい気分になってきたっす。」
紗絵がほんのり上気した頬を両手ではさんだ。
 綾子は真っ赤になってしょげている。遥香はちょっと気の毒になって
フォローにまわった。
「ま、まあ・・・便利だよね。これ寝室に焚いとけば、サインになるもんね。」
「イエスorノー 枕っすか?」
「・・・サエ、あんたオヤジすぎ・・・。」
どんどん下世話になる話題に、綾子はますますいたたまれない。
「あたし・・・今、あんま彼氏と会えなくて・・・。」
いつも独特の世界を生きている紗絵が、ちょっとしみじみ言い出した。
「ウチの彼、今長野なんすよ・・・農業やりたいって言い出して。」
「あのマジシャンの彼?」
「遥香さん・・・ミュージシャンっす・・・。いや、それはやめて、逆にやたらと
 地に足が着いたこと言い出して・・・。アイツが落ち着いたら、あたしも
 いずれ田舎暮らししようかなと思って、製パン習い始めたんすけど。」
「へえ〜・・・えらいねえ。」
「めったに会えないんでつらいんすけど・・・今度会う時、コレ使ってみるっす。
 お土産ありがとう、綾子さん。」
とぼけた紗絵の口から出たド直球の発言に、年嵩のふたりはなんだか毒気を
抜かれてしまった。
「・・・はぁあ・・・いいなあ、二人とも。使うアテがあってさ。」
前の彼氏と別れて一年以上相手がいない遥香が、大きなため息をついた。
「あ・・・ごめんごめん、綾子。別にそーいう目的ばっかりじゃなくて、リラックス
 するのにもいいみたいだし、私も使ってみるよ。」
「そうっすね・・・他にもらった人たちも、そんなに深く考えないっすよ、きっと。」
「そうそう。いい雰囲気になるくらいで、それ以上の効果なんて、ねぇ。」
二人は綾子を慰めようと、かわるがわるフォローした。しかしそれはそれで、
綾子を凹ませた。
(でも・・・すっごい効いちゃった人たちもいるんですけど・・・。)
綾子は複雑な気持ちが顔に出ないよう、努力して微笑をうかべた。
「・・・飲み物、空になってるよ。たのもっか?」
次々に脳裏によみがえってくる官能の記憶を必で封じ込めながら、綾子は
冷静さをよそおってドリンクメニューを開いた。

143 :
>>132
ハート形の花びらとかブランコとか新婚が過ぎる!w
だがそれがいいww
媚薬に南の島の開放感で大胆な二人に萌えでGJでした

144 :
>>132
夏の島ktkr!GJです!
リゾートの開放感いっぱいのHにドッキドキでした♡
ハネムーンベビー出来ちゃうんじゃないのか、これはw

145 :
>>132
愛する二人のリゾートGJ!
シャワーもいちゃいちゃしながら浴びたんだろうなぁ…w
内実に不覚にもワロタw
今日のゲゲゲはえいやっがかわいすぎた…
狐耳狐しっぽふみちゃんハァハァ

146 :
132です。
われせん見直してきたら・・・orz orz orz
南国リゾートは結婚一周年の旅行だったのですね・・・。
いちせんとわれせん、服装や、短い期間に放送されたので
一ヵ月後くらいに思ってました。
保存とかしてなくてウロで書いたもので、大間違いしてしまいました。
申し訳ありません。

147 :
われせんはウェブで見れるんだね、今日オープンのスカイツリーもまだ建設中だ(懐)
ドンマイ!>>146

148 :
小判に変えてください!ケンカとキャンディーなんて!ケンカの翌日の違いを見ると
小判のあとは本当に二人の間に特殊な交渉があったんだろうなぁと思えてしまう…w

149 :
ガリ版いちゃいちゃと爪切りいちゃいちゃが同居してる今日は神回でしたな…

150 :
ガリ版の原稿を取ろうとしたゲゲの長い腕が
ふみちゃんに伸びたときはドキムネでした。
そうはならないとわかってるけど、あそこで二人して倒れこまないかとか・・・。

151 :
今更、店に入り損ねたペアルックのカップルが気になったw
同じ毛糸とか布を使ったペアルックなゲゲふみとかあっても良かったんじゃないかな!w

152 :
「結婚して一年になります」な二人がまぶしすぎる…

153 :
「うーーーーん・・・。」
薬局の店頭でクリームのびんを手にとって、フミエは考え込んでいた。
(100円あれば・・・。ちくわがいっぱい買えるなあ・・・お肉だって・・・。)
このクリームの値段で買える食品が次々と頭に浮かんでフミエを悩ませる。
 フミエは安来の実家で暮らしていた独身時代も、そんなに贅沢な暮らしを
していたわけではなかった。酒屋の商売はうまくいっていても、父の源兵衛の
市会議員選挙にお金もかかる。何より戦争中のことをよく覚えている人々の
暮らしは、戦後十何年経った今も質素だった。
 それでも娘時代は化粧水や口紅くらいはつけたものだ。けれど、茂と結婚して
東京に来てから、フミエは化粧品と言うものをいっさい買ったことがなかった。
 月に一本漫画を描いて出版社に持って行けば三万円、大卒のサラリーマンより
恵まれた収入・・・それが見合いの時の触れ込みだった。けれど現実はそれとは
ほど遠く、原稿料は時に半額になったり、一円ももらえなかったり・・・。
『金が入ったときくらいはぜいたくをせんといかん。』
いくら爪に火をともすように倹約しても、フミエと全く経済観念がちがう茂は
せっかくもらった原稿料で嗜好品を買ってしまったりする。
 貯金というものは一切なく、フミエが嫁入り道具を揃えるために実家から
持たせてもらった金もみんな生活費に消えた。米屋や公共料金の支払いもたまり、
その日その日をどう食べていくかで精一杯の暮らしでは、化粧品など買う余裕は
とてもなかった。
(チヨちゃん・・・私が100円のクリームひとつ買うのにさえ、こげに悩むなんて
 思っとらんのだろうなあ・・・。)
つい先日、懐かしい人がフミエを訪ねて来てくれた。幼馴染のチヨ子に会うのは
結婚式の前日に、大塚の尼子姫のお堂で別れて以来だった。

154 :
「フミちゃん、いつもこげに洒落た店でコーヒー飲んどるの?一月に三万円も
 収入があって夫婦二人なら、ようけお金貯まるねえ。」
フミエはすずらん商店街にある喫茶『再会』にチヨ子を案内し、コーヒーを
飲みながらおしゃべりをした。喫茶店でコーヒーを飲むなど、今のフミエにとっては
とんでもない贅沢で、この店に入るのも初めてだった。
「私なんか世間並みの年齢で結婚したのはいいけど、結局平凡な勤め人の
 おかみさん・・・はずれくじ引いたかなぁ。」
仲良し4人組みのひとり、節子が未来の大学教授夫人、フミエだって売れっ子
漫画家と結婚して花の東京暮らし・・・羨ましそうに語るチヨ子を、フミエは
複雑な思いでみつめた。
 フミエは結婚する前、チヨ子の夫が勤める会社の新製品の販促会の手伝いを
したことがあった。チヨ子の夫は優しそうだったし、縁談もダメ、仕事もダメで
行き詰っていたフミエには、夫の役に立てるチヨ子が心底うらやましかった。
「よく言う・・・。でも、ええだんな様じゃないの。東京にも連れて来てくれて。」
まあね・・・と苦笑いしたチヨ子は、多少垢抜けない感じではあるけれど、きれいに
パーマをかけ、精一杯おしゃれをしている。フミエも一張羅のワンピースを着て
髪を巻いているけれど、これは昨夜カーラーで巻いたもので、パーマをかける
お金などなかった。
(毎月決まった日に決まったお給料をもらえる生活って、どげな感じなんだろう?)
三海社と言う出版社の社長が茂の漫画を気に入り、本を出してくれることになった。
だが、せっかく前借りできた原稿料の内かなりの額を、茂は高価なカレーの缶詰や
チョコレートなどに使ってしまった。骨身を削って漫画を描き、お金を稼いでいる
のは茂なのだから、好きなものくらい食べてほしいとは思うけれど・・・。

155 :
「・・・なあ、そろそろ行こうや。」
チヨ子が急にそう言ってバッグを取り上げた。フミエは何のことやらわからなかった。
「・・・どこに?」
「お宅拝見だが。フミちゃんの新居。新居も見んで帰っては、松ちゃんにも節子にも
 怒られるわ。」
ウチに来る・・・?あのボロ家に?フミエはパニックになった。考えてみればチヨ子が
そう考えるのは当たり前のことなのだが、フミエはとっさに嘘をついて断った。
「ご・・・ごめん。今日は、ちょっと・・・。うちのひとが、家で仕事しとるの。い、今
 ようけ注文が来とって、大忙しなのよ。人が来たら集中できんて、嫌がるけん。」
茂が家で仕事をしているのは本当だが、彼は別に神経質ではない。仕事に没頭すると
話しかけても気づかないほどなのだ。
「ふうん・・・残念だなあ。」
チヨ子は少々不満そうだったが、納得したようだ。主婦歴も長くなると、亭主にも
いろいろなのがいるということを知っているからだろうか。
 はるばる安来から出て来て、せっかくの旅行中、時間を割いて来てくれたのに、
家にも寄ってもらえなかった・・・。フミエは申し訳なさでいっぱいだった。        
「コーヒーおごってもらった上に、お土産までいただいて、悪かったね。」
「・・・そのケーキすっごくおいしいけん、早めに食べてね。」
せめてものお詫びに、フミエは自分では食べたこともない洋菓子を買ってチヨ子に
持たせた。コーヒーにケーキ・・・痛い出費だ。
 駅まで来ると、チヨ子は向き直って礼を言った。
「ほんなら帰るわ。・・・今日は忙しいとこ、あーがとね。」
「チヨちゃんこそ・・・遠いとこわざわざ来てくれて・・・だんだん。」
チヨ子はフミエの手をとって握手しようとして、その荒れ加減にちょっと驚いた。
「あれ・・・フミちゃん、こげに手ぇ荒らして。」
フミエがびくりとして引っ込めようとした手を、チヨ子はやさしく包んだ。

156 :
「だんな様においしい物いっぱい作っとるけんでしょう?・・・尽くすのもええけど、
 おさんどんばっかりしとらんで、ちっとはおしゃれもせんといけんよ。」
「え・・・う、うん。」
フミエはちょっとホッとした。同い年でももう子供のいるチヨ子の手は柔らかくて
あったかく、実家の母を思い出して涙が出そうになる。
「ほれ・・・ささくれが引っかかって伝線しとる・・・。」
チヨ子が目ざとくフミエのストッキングの伝線を見つけた。
「あら・・・いやだ。」
今気づいたように言ったが、フミエは本当は家を出る前から知っていた。伝線して
いても、これしか履いていけるものがなかったのだ。
「そうだ、ええものがあるよ・・・ももの花、言うハンドクリーム。昔から、桃の葉が
 おむつかぶれやあせもにええと言うでしょう?そのエキスが入っとるけん、
 お肌にええのよ。薬屋さんで売っとるけん、そげに高いもんでもないし。」
「へえ・・・ももの花・・・。」
フミエはなぜだか、チヨ子がフミエの嘘を見抜いているような気がした。
「安来に帰った時は、連絡してね。・・・赤ちゃんできたら、なかなか来られんよ。」
なぜわかってしまったのだろう・・・そればかりを考えていたフミエは、急に出て来た
『赤ちゃん』という言葉に、過剰反応してしまった。                 
「ぅ・・・わ、私、まだそげなこと・・・。」
言葉につまって真っ赤になったフミエを、チヨ子はあきれて見つめている。
 ひとつに溶けあい、気が遠くなるほど愛されるたび、フミエの中に残される痕跡。
注がれているのを感じながら(いつ実を結んでもおかしくないなあ・・・。)と、
まだしびれている意識の中でフミエは時おりぼんやりと考えていた。
 世間の人が気やすく口にする『赤ちゃん』という言葉に、あの甘く激しい秘め事が
直結しているなど、結婚前はあまり考えたこともなかった。

157 :
「やぁだ、フミちゃん!そげに赤うなって・・・こっちまで恥ずかしくなるが。」
チヨ子に思い切り背中をどつかれ、フミエはたたらを踏んだ。
「可愛いねー、新婚さんは。そうかそうか、そげにだんな様のこと好きなんだね。
 フミちゃんはオクテだけん心配しとったけど、良かったわ・・・。」
しどろもどろに言い訳するフミエを後に、チヨ子は手を振って改札口に消えて行った。
(チヨちゃん、相変わらずぽんぽん言うけど、私のこと心配してくれとる・・・。)
小学生時代、ろくに言い返すことも出来ないフミエに代わっていじめっ子に
立ち向かってくれた頃と、チヨ子は全く変わっていない。
(それなのに、私・・・嘘言うてしもうて・・・。)
悄然と歩く姿を、こみち書房のキヨに呼び止められ、入ってお茶をごちそうになる。
「なんだい・・・女ってのはね、昔の友達に会ったら誰だってちょっとは見栄を張る
 もんだよ。」
キヨのいつもながら歯切れのいい言い切りに、少しは救われたものの、フミエの
後悔はそれだけではなかった。
(遠いところ来てくれたチヨちゃんに、家にも寄ってもらえんだった。それに・・・。)
フミエの胸がチクリと痛んだ。
(私・・・はずれくじ引いたと思っとるんだろうか?)
ふと思い出したチヨ子の言葉を振り払うように、フミエは頭をふるふると振った。
汗だくで漫画を描く茂の鬼気迫る背中にうたれ、声もかけられなかったあの暑い日。
あの時、フミエはちょうど訪れた戌井に
『あげに精魂込めて描いたものが、人の心を打たんはずないんです。売れても売れん
 でも、もうかまわんような気がします。』
そうしみじみと語った。しかし、貧乏のふた文字は、時として人を迷わせる。
フミエは、お金がないばかりに茂への想いすら揺れ動く自分が情けなかった。      
 ・・・だが、その後フミエを待ち受けていた嵐は、フミエのそんな小さな感傷をふき
飛ばすくらい激しいものだった。

158 :
「この家はどげなっとるーーーっ!!」
フミエが家に戻ると、小さなボロ家の中には、突如襲来した人間の形をした台風が
吹き荒れていた。酒屋組合の視察旅行で上京した父の源兵衛が、何の予告もなく
調布の村井家を急襲したのだ。
 貧しい家、下宿人、風呂を借りに来る兄一家・・・それに質屋通い。フミエが手紙では
おくびにも出さなかった夫婦の暮らしぶりに、源兵衛は驚愕した。
「手紙には体裁のええことばっかり書いてよこしおって・・・。」
父の怒りの前に、フミエは源兵衛の上京を知らせに来てくれた姉の暁子とふたり、
ただただ縮こまって頭を下げるのみだった。
「土曜日、帰る前にもういっぺん来るけんな。お前やちがどげな考えでやっとるのか、
 本当のところをちゃんと聞かせてもらう。村井さんにも家にいてもらえ。ええな?」
三日後の再来襲を予告し、源兵衛は去って行った。
「土曜日の再上陸に向けて、万全の備えをせねばならんな。」
茂は新しく三海社から出た新刊を前に上機嫌で、今日の源兵衛の怒りっぷりを
聞かされても、くよくよと嘆くフミエと違ってどこかのんきだった。
「始めのうちにみっともないとこ見られたら、それ以上印象悪くはならん。
 ありのままを見てもらえばええ。」
「・・・ほんなら、境港のご両親にも、ホントのところを話してくださいね。」
自分がどんな気持ちでやりくりし、実家への手紙に愚痴さえ書かないでいるか・・・
この人は全然わかってくれとらん・・・。フミエは腹が立ってきた。
「キャンディーなんか送って。よっぽど儲かっとるみたいに・・・。」
「たかがキャンディーで、何言っちょる!」
やっと前借りできた原稿料で高価な食品を買い込み、あまつさえその一部を
境港に送れと言った茂。・・・先日の憤りがよみがえり、フミエはつい言わなくて
いいことまで言ってしまった。

159 :
 次の朝。昨夜のいさかいが尾を引いて、二人の間にはぎこちない空気が流れていた。
そこへ戌井に連れられてこみち書房のみち子が村井家を訪れた。
 手ひどい失恋以来、全く来なくなってしまった太一を呼ぶために、茂に店に来て
会ってやってほしい、と言う。戌井の提案で、それなら読者のつどいとしてサイン会を
開こうと言う話になった。
「お父さんに、水木さんの活躍ぶりをアピールできる、太一君も無理なく来られる、
 しかも、新刊の宣伝にもなって・・・一石二鳥どころか、一石三鳥ですよ!」
土曜日は父が来るから・・・と言う夫婦に、戌井は読者に囲まれた茂を見せれば
源兵衛も安心するからと力説した。茂もフミエも半信半疑ながら賛成し、それぞれが
準備にかかった。
 サイン会開催のビラを茂がガリ版できり、フミエが印刷し・・・源兵衛再上陸への
備えという共通目標のためにに忙されるうち、いつの間にか気まずい空気は消え、
ふたりはいつものように笑い合っていた。
 サイン会当日。茂の前に行列が出来るほど人が集まり、フミエもビラ配りや甘酒の
サービスなどに奮闘し、会は大成功に思えた。しかし・・・。
「さっきの客の行列は、サクラでなーか!つまらん小細工しおって。」
客を集めようと、みち子が景品の貸本の無料券を配ったことがばれ、源兵衛は怒りを
爆発させた。
「一生懸命働いて、それでも貧乏なら、堂々と貧乏しとったらええんだ。それを
 まわりの人まで巻き込んで、ええ風に見せようとする、お前やちの考えが
 わしは気にいらん!」
茂夫婦のせいではないと、口ぐちに謝るみち子や戌井にかまわず、源兵衛は婿に
矛先を向けた。
「茂さん・・・あんたはもっと堂々とした男だと思っとった。娘が何を頼んだかしらんが、
 こげな小細工に手を貸すとは・・・。」
それまで黙っていた茂はなんの言い訳もせず、頭を下げた。
「どうも、すまんことしまして・・・。」
源兵衛は、それでもまだ茂をなじり続けた。
「ええ男に嫁がせたと思っとったが、わしの間違いだったかのう。」
シンとしずまり返る店内。さっき無料券を手に店を訪れたアベックも、ただならぬ
雰囲気に恐れをなして帰って行った。

160 :
「・・・そげなこと、言わんで。」
皆が押し黙る中、フミエの静かな声がひびいた。
「お父さんは何も知らんけん、そげな風に思うんだわ。うちの人は小細工なんか
 せんですよ・・・。」
茂のマンガは、確かに売れない。恐ろしすぎて子供が熱を出すと苦情が来るし、
版元も原稿料の支払いを渋る。おかげで夫婦の生活は、いつも風前のともしびだ。
けれど、フミエは知っている。左肩で原稿を押さえ身体を曲げて、熱気がたち
のぼって見えるほど集中して漫画を描いている茂の背中・・・。
「夫婦ですけん。うちの人が精魂込めて描いとるとこ、一番近くで見とるけん。」
フミエはいつしか、父から守るように茂に寄り添っていた。
「・・・うちのひとは、本物の漫画家ですけん!」
おとなしくて言いたいこともろくに言えなかった娘の、思いがけない反撃・・・。
夫の腕を取って父と対峙したフミエの顔は、悲壮でありながらも美しかった。
 季節外れの台風は小さな見栄や思惑を吹き飛ばし、あとにはすべての枯葉を
落としてすっくりと立った大木のような真実だけが残った。
 貧乏ではあるけれど、精一杯生きていて、周囲の人々にも恵まれている娘夫婦の
暮らしぶりに得心し、源兵衛は帰途についた。フミエは久しぶりに父と連れ立って
駅まで歩いた。
「化粧品でも、買えやい。」
源兵衛が、ちり紙に包んだ小さな四角いものを渡した。紙幣が透けて見えている。
「・・・だんだん。」
フミエはじんわりと嬉しかった。あの厳格な父が『お母さんには内緒だぞ。』
と言ってこづかいをくれるなんて・・・。
「なあお父さん・・・お金はないけど、私、毎日笑って暮らしとるよ。」
「・・・そげか。」
台風一過の晴天のような静かな晴れやかさで、源兵衛は安来に帰って行った・・・。

161 :
(エイッ・・・買おう!)
フミエはがま口を開いて百円札を取り出した。
 父がくれた小遣いは、千円札が二枚・・・。けれど、それは公共料金の支払いや
食費にたちまち消えるだろう。
「これ・・・ください。」
「はいよ・・・ああ、ももの花。これ、発売以来すごい人気でねえ。これからの季節、
 乾燥するから、手荒れにゃもってこいですよ。」
薬局の主人は、愛想よく笑いながら商品を紙袋に入れた。
 数日経ったある夜。
「・・・ん?なんか、手がスベスベしとる・・・。」
口づけられ、ゆかたの襟元から肌をさぐられ・・・これから二人たかまっていこうと
しているさ中にふと手を取られ、フミエはドキリとした。
「気持ち、ええな・・・。」
その手をほおにこすりつけ、唇を這わせる。くすぐったく、もどかしく、フミエは
火がつき始めたのに放ったらかされた身体をもじもじと悶えさせた。
「ええ匂いもするな・・・。」
こうなっては、しかたもない。フミエは少し息をはずませながら謝罪した。
「・・・すんません。あの・・・私、いらんもの買うてしもうて・・・。」
「ん・・・なんだ?出し抜けに。」
茂は何事かと手を離した。フミエは乱れた襟元を直しながら立ち上がると、
姫鏡台の引き出しに入れてあった白いガラスびんを取り出した。
「これ・・・です。」
女の化粧品などに全く興味のない茂は、けげんな顔でフミエを見ている。
「父が・・・この間、帰り際に、その・・・お小遣いをくれまして・・・。」
父から小遣いをもらって、それを黙っていたのもちょっと心ぐるしい。
「『化粧品でも買え。』と言うて・・・。それであの・・・生活費に使わんといけんと
 思いながら、手が荒れとったもんで、これ買うてしもうたんです。」        
なんでもよく観察する茂は、白いびんにピンクのふたの容器をためつすがめつ
見ている。

162 :
「ふうん・・・いくらするもんだ?」
「・・・百円、です。」
「・・・ひゃくえん?」
茂は拍子抜けしたように素っ頓狂な声で聞き返した。                
「仰々しく謝るけん、どげに高価いもんかと身構えとったら・・・たった百円か?」
「あ・・・あなたは、二百円もするカレーやお菓子平気で買うけんそう言われるけど、
 百円あったら豚コマがいっぱい買えるんですよ!ちくわだって・・・。」
謝っていたはずなのに、なぜか矛先は茂に向かっていた。
「またそれか・・・。なしてそげにみみっちいことばっかり言うんだ!」
これではこの間のけんかの続きになってしまう。茂は黙ってフミエを抱き寄せた。
「・・・続きをしてほしいのか、してほしくないのか、どっちだ?」
「・・・っ・・・つづき、って・・・んん・・・。」
返事を待たず唇を奪い、前で結んだ帯を解く。首筋を舌でなぶりながら手を取り、
てのひらを指でくすぐる。
「親父さんがくれた小遣いなら、あんたが好きに使ったらええ。」
「・・・んは・・・ぁ・・・ん」
くすぐったさと快感に身をよじるフミエの裸身が、脱げかけの浴衣の上で踊った。
「俺も、使ってみてもええか?」
茂はびんのふたを器用に片手で開けると、白いクリームを指先に取った。
「・・・ひゃっ・・・!」
冷たい感触にフミエは思わず小さく叫んだ。下着の前からしのび込んだ指が、
熱くうずき始めた花芽にひたりとクリームをなすりつけたのだ。
「脱げ。」
手を差し入れられたまま、フミエは下着に手をかけた。脱ごうとするたび
腰が動いて、ぴっとりと指を当てられた部分が勝手に感じてしまう。フミエは
快感に耐えながら、腰をよじってなんとか下着を脱ぎ終えた。                   
「こげに熱くしとるけん、溶けてしもうたな・・・。」 
「・・・ぁあっ!」
ぬるり、と指が動かされ、フミエが声をあげて腕にしがみついた。

163 :
「ちょっこし、手伝え・・・。」
しがみついた手を放させ、指をとって花芽に押し当てる。
「ぃや・・・。」
いやがる指を親指で押さえつけ、一番長い指をフミエの奥に挿し入れる。      
「・・・ゃっ・・・ぁあ・・・。」
「離すな・・・よ・・・。」
前の部分はフミエにまかせ、挿入れた指を深める。のけぞったフミエの乳の
先端を口に含んでつよく吸った。
「ひぁ・・・だっ・・・だめっ・・・!」
「自分で、快うしてみい。」
「・・・ぃや・・・おねがい・・・あなたが・・・。」
自分で弄ることには忌避感があるらしく、フミエは泣きそうな声で懇願した。
「しょうがないな・・・。」
茂は深めた指を少し浅くし、フミエの指を親指で押しながら動かした。
「ゃ・・・っ!ぁ・・・ぁあ―――――!」
いつしかフミエの指もともに動き、本能のままに腰が揺れた。悲鳴とともに、
フミエの内部が茂の指を断続的にしめつけた。愛らしい反応を楽しんでから
そっと指を抜く。フミエは前を手で覆ったまま、身体を丸めて余韻に震えた。
「ええ匂いだ・・・。」
蜜にまみれた指を、悲鳴の形に開いたままの唇に差し込んで、舌をなぶる。
「女が、ええ匂いをさせとるのは、ええもんだ・・・。」
口づけながら、大きく開かせた両脚の中心をぐいと侵す。
「んぁっ・・・ぁ―――――っ!」
フミエは腰を弓なりに反らせ、枕から頭を落として髪を振り乱した。茂が
手を伸ばして枕を拾いあげ、ぐっと突き上げてフミエの腰を上げたままにすると、
その下にあてがった。
「ぃや・・・ぃ、ぃゃあ・・・っ!」
腰が上がったままになり、より茂を受け入れやすくなった蜜壷を、逞しい肉根が
容赦なく出入りする。
 快いところに引っかかるのか、フミエは半狂乱で茂の背に爪を立てた。
「―――――!」
名を呼ぶことはおろか、叫ぶことさえ出来ぬほど急激に追い上げられ、フミエは
水を求める魚のように大きく口を開いたまま、ただびくびくと身を震わせた。

164 :
「・・・ん。」
開けっ放しでカラカラになった口に、濡れた舌がしのびこんで渇きを湿した。
しびれるような絶頂感は少しおさまったが、そのまま唇をむさぼりあっている
と、まだしっかりと楔を打ち込まれたままの結合部からとめどなく快感が
湧き上がってくる。
「んは・・・ぁ・・・はぁ・・・ゃ・・・ぁあっ・・・!」
つながったままの腰を引き上げられ、臀の下には枕の代わりに茂の大腿が差し
込まれた。右手をつかまれ、膝の上に引き起こされる。
「・・・はぁ・・・は・・・ぁ・・・だめ・・・。」
今きざまれたばかりの絶頂が、身体じゅうに鳴り響いている。震えながら涙を
こぼすフミエのおとがいを優しくあげて、唇を重ねた。
「んっ・・・ふ・・・ぁ・・・ぃ、や・・・。」
茂がまた手を取り、ふたりが繋がっている部分に指で触れさせる。張りつめた
雄根に押し広げられた狭い入り口を指でぐるりとなぞらせ、蜜に濡れた真珠を
ぐっと押しつぶす。
「・・・ひゃっ・・・ゃ―――っ!」
フミエの内部が茂をきゅううっと締めつける。
「なあ・・・挿入れられるって、どげな感じだ?」
耳に囁かれた唐突な質問にフミエは戸惑った。
「・・・ど、げな・・・って・・・。」
口で言うなんて、出来そうにない。たまらなく埋めてほしくなっている空隙を、
愛する人にすき間なく満たされる瞬間の、たとえようもない幸福・・・。
 黙っているフミエに焦れたように、臀をつかまれて引き寄せられる。より深く
うがたれ、奥を突かれて、もう何も考えられなくなる。
「だめ・・・だめぇっ・・・そんなに、しちゃ・・・。」
ぞくぞくと身体をわななかせ、フミエは必で茂の肩にすがりついた。
「だけん・・・今、どげなっとるか、聞かせえ・・・。」
「・・・きもち・・・よくて・・・。」
「快えのは、わかっとる。」
フミエの内部のなまめかしい運動が、頂きが近いことを直接教えている。

165 :
「・・・も・・・いっぱいで・・・しあ・・・わ・・・せ・・・。」
身も心も苦しいほど満たされていることを、フミエはやっとの思いで伝えた。
「そげか・・・。なら、もっといっぱいにしてやる。」
茂は少し微笑んでフミエの唇を唇でふさぐと、つかんだ腰をがしがしと自分に
打ちつけた。
 くぐもった歓喜の叫びが茂の中に吸い取られていく。フミエは自分の中に噴きあがる
熱情の滾りを感じていた。                       
「ぁ・・・。」
強くいだき合っていた腕を解かれ、そっと横たえられる。茂が自分の中から
出て行く感覚に総毛だちながら、たまらなく寂しく思ったとたん、汗ばんだ
胸に抱きこまれる。
「・・・今日は『好きだ。』と言わんのだ、な・・・。」
まだ少し息を切らせながら、茂がそんなことを聞いた。、
「この間は、すき好きと熱に浮かされたように言うとったのに。」
「・・・!」
絶句したフミエの顔が、みるみる紅潮した。
『この間』とは、こみち書房での読者のつどいで茂をなじった父の源兵衛に、
フミエが立ち向かった日のことだ。
 自分の夢に向かって一心不乱に漫画を描いている茂・・・その努力を否定された。
そう思ったとたん、言葉が出ていた。その一喝に家中のものがすくみあがるほど
怖い父に向かって懸命に訴えるうち、自然と身体が動いて茂に並び、守るように
腕を取り寄り添っていた。
 生活の苦しさゆえに見えなくなっていた想いが、源兵衛の来襲によって
鮮明によみがえった。それは台風一過の朝、風雨に洗われた木々の緑が目に
まぶしく輝いているのに似ていた。
 その夜、ふたりは想いを確かめ合うように激しく愛し合った。剥き出しになった
心ごと抱かれ、フミエは涙を流しつづけた。身体の底からこみあげてくる想いを
どうしてよいかわからず、それを『すき』と言う言葉に託さざるを得なかった。
満たされれば満たされるほどせつなくて、フミエは何度も『好き』と繰り返した・・・。
「そ・・・そげに軽々しく言うとっては、真実味がないですけん。」
あまりしょっちゅう口に出しては、意味がうすれるような気がする。まして
情交のさ中の睦言では・・・。
「ほーぉ、真実味、とな・・・。」
「もぉ・・・。あ、あなたこそ・・・そげなこと一度も言うてくれたことないじゃ
 ありませんか!」
「む・・・。」
思わぬ反撃に、茂はたじたじとなった。フミエはなおも言いつのる。
「私にばっかり言わせて・・・。いっぺんくらい言うてくれたって・・・。」         
その時、下の方で間の抜けた音が鳴り響いた。

166 :
「ま・・・。人が真剣に怒っとるのに・・・!」
フミエは腕の中から抜け出すと、下敷きになった浴衣を引っ張り出して着直し、
自分の布団に戻って掛け布団を引っかぶる。                   
「まあまあ、そげに怒るな・・・。」
茂は悪びれもせずにフミエの布団にもぐり込んだ。フミエが背を向ける。
「・・・匂いが移るけん、こっちに来んでごしない!」
実のところ、茂の屁は音は派手だがあまりくさくはない。
「女房ならこのくらい我慢せえ。」
笑いながら、そっぽを向いたフミエの肩を抱いて振り向かせ、無理やり口づける。
「あんたがいじめるけん、せつのうて屁が出たぞ・・・。」
本当に、このひとは・・・。力が抜けてフミエも笑うしかなかった。茂は絶対に
口に出しては言わないつもりらしい。
(でも、本当は、わかっとるの・・・。)
言葉にせずとも通じ合う気持ち・・・。こうして肌と肌をかさね、唇を合わせるだけで
お互いの想いが流れ込みまじり合う気がする。身体がつながると、快感の大波に
押し流されて、ただ茂を感じること以外どうでもよくなってしまうのはちょっと
問題のような気もするけれど・・・。
(けど、それでもええの・・・。夫婦って、だけんうまくいくんだわ。)
ケンカをしても、仲直りのあと愛される時はすべてを許してしまう。何も問題が
解決したわけではないのだから、そんな茂をちょっとずるいと思うけれど。
 先に眠ってしまった茂に浴衣を着せかけ、掛け布団で肩を包んでやってから、
また腕の中に戻った。ここが自分の居場所だと思える場所があるのは、なんて
素晴らしいことだろう。
(今度もしチヨちゃんに会えたら、本当のこと言おう。・・・貧乏しとることも。
 そして・・・お金はないけど、私しあわせだよって・・・。)
あたたかい腕の中で、そんなことを考えながら、フミエも眠りにおちていった。

167 :
>>153
ゲゲさんのSっぷりがたまらんGJ!
ふみちゃんの中の人と握手したけど、あんなに細いのに暖かくて柔らかくて、
それ以来ちょいちょい手に関する妄想してたので個人的にはそれもツボでした
ペアルックカップルとか好きだって言いたい時に屁をするって本スレのネタにニヤリとしたw

168 :
>>153
GJ!
新婚時代はやっぱりたまらん!
100円のクリームを買ったのを謝るフミちゃん、健気で可愛いよー。
Sの茂さん、素敵ー。
最後の屁のくだりは茂さんらしくて、笑ってキュン萌えしました(*´∀`*)

169 :
>>153
ハンドクリーム謝っちゃうふみちゃんかわいい
『女がええ匂いをさせとるのはええもんだ』からしげーさんらしい愛の告白の雰囲気が漂っててものすごいツボw
GJでしたー

170 :
ふみちゃんのはるこへの嫉妬から安堵
フライング眼鏡w
渋々ながらも信頼して原稿を渡すしげぇさん
悔し泣きといちゃいちゃコーヒーw
もうこの夫婦ほんと神すぎる

171 :
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l   l
ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> ヽ_,,ノ
     l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l l   l
     ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>ノヽ_,,ノ
         l   l  γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ l   l
         ヽ_,,ノ  l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>_,,ノ
               l   l l   l  l   l
               ヽ_,,ノ γ⌒ヽ  ヽ_,,ノ
                   l <`Д´>
                   l   l
                   ヽ_,,ノ
     な〜まぽ〜  な〜まぽ〜  た〜っぷり〜  な〜まぽ〜
 な〜まぽ〜 なま〜ぽ たっぷり な〜まぽ〜が や〜ってく〜る

172 :
御懐妊キター!
来週は映画デートもあるし楽しみすぎる

173 :
>>153
GJ!
新婚はやっぱりええもんだ

174 :
妊娠がわかった時のふみちゃん、ほんとかわいいんだよなぁ

175 :
あんなにイヤがってたのに生まれたらデレデレなんだもんなぁ…w
ふみちゃんが嫁に来たときも似たようなもんだったし、マジツンデレ

176 :
抱っこしてたなあ、あれは良かった。
ええシーンや。

177 :
(寒いな・・・。)
フスマを開けると、小さな寝間の空気は、二人の人間が寝ているとは思えないほど
冷え切っていた。薄闇の中、布団に座って藍子に乳をやっているフミエの後ろ姿の
肩の細さに、茂は胸をつかれた。
「・・・藍子、起きたのか。」
生まれたばかりの赤子の泣き声はまだ弱々しく、階下で仕事に没頭していた茂の耳には
届かなかったらしい。
 振り向いたフミエは少し微笑んで、口に人差し指を当てた。茂は入り口に一番近い
自分の布団にそっともぐり込むと、手枕をして母子の姿を眺めた。
 んっく、んっく・・・時おり泣きしゃっくりに身体を震わせながら、赤子は貪欲に乳を
むさぼっている。恐ろしいほど小さな存在でも、その身体は生命そのもののような
エネルギーを発しているようだった。身を刺すように寒く貧しいこの部屋の中で、
つつましい母子のいる場所だけがほんの少し温かだった。
(・・・にしても、寒すぎる・・・。)
茂は手枕をしていた手を引っ込め、肩まで布団にもぐった。藍子を寝かしつける時に
つけてあったストーブの暖気は、年の瀬の冷え込みにとっくに消え去っていた。
 フミエが子供を抱いて退院して来た昨日。茂は、普段は夜しか焚かないストーブを
つけ、部屋をぽかぽかに暖めて母子を迎えてくれた。茂の思いがけない思いやりに、
フミエは驚きながらも幸福そうに微笑んだ。
・・・だが現実は、そんなに毎日灯油を景気良く焚くわけにはいかなかった。
 お腹がいっぱいになった藍子が、乳首から口を離した。小さな頭を肩に乗せて
げっぷをさせてから、フミエは赤ん坊をそっと小さな布団に寝かせ、寝息をたて
始めるのを確認してから静かに自分の布団に戻った。
「・・・!」
眠っているとばかり思った茂がむくりと起き上がってフミエの後ろに入り込み、
自分の掛け布団を合わせ目に重ねた。フミエがちょっとドキッとして身を固くする。

178 :
「何をモジモジしとる・・・お前が考えとるようなことはせんぞ。」
後ろからフミエを包み込みながら、脚に脚をからめ、大きな足でフミエの冷えた
足先をこすった。                                  
「こげに冷えて・・・夜中に起きる時はなんぞ羽織っとれ。赤ん坊っちゅうのは
 夜中でも腹を減らすけん、たまったもんではないな。」
「もうちょっこし大きうなったら、夜中もミルクを作ってやらんといけんでしょうね。
 うるさくするかもしれませんが、堪忍してごしない。」
「そげなことはええが・・・台所に立つんなら、なおのこと冷えるな。」
大晦日の冷気は、貧しい家の羽目板の隙間やささくれた畳の間からもしみこんでくる
ようだった。茂はフミエを抱く腕に力をこめた。
「俺がここに寝とる時は、遠慮なく入ってきたらええぞ。」
「え・・・。でも、起こしたら悪いですけん。」
「そげなことで起きる俺ではなーわ。・・・まあ、時々は別の気を起こすかも
 知れんけどな。」
「ぁ・・・。」
茂の手が浴衣の襟の合わせ目からすべりこんで、なめらかな胸肌を温かく包み込んだ。
フミエは小さな声を上げて少し身じろいだが、大きくて温かい手はそれ以上何もせず、
ただフミエの冷えた肌を温めつづけた。
「あったかい・・・だんだん、お父ちゃん。」
フミエは安心したようにその手に自分の手を重ねて、しあわせそうに目を閉じた。
(やっとこれで元通り・・・いや、元通り以上・・・か。)
フミエが赤ん坊を抱いてこの家に帰ってきたのはつい昨日のことだった。茂は腕の中で
やすらぐ妻と、傍らの小さな布団ですやすやと眠る娘をみつめた。
(戻ってきた・・・俺の手の中に。)
半年と少し前、同じようにフミエを腕に抱き、失いかけたものの大きさに慄然とした
夜のことを、茂は思い出していた。

179 :
『シバラク コチラデ スゴス』
子供のお祝いに招いてくれた姉の家に出かけたフミエから届いた電報は、角の立たない
表現ながら、当分帰って来ない・・・つまりは『家出します。』という意味だった。
「なんだこれは・・・あいつ・・・帰って来んつもりか?」
茂はいまいましげに舌打ちして、紙片を放り投げた。
「勝手にせえ!」
心あたりがないわけではない。昨日『子供ができました。』と伝えた時の、フミエの
思いつめたような表情・・・。それは、普通の暮らしができている夫婦だったら、妻が
夫に妊娠を告げる時の表情ではなかった。フミエも、今の村井家が子供の誕生を
手放しで祝える状況になどないことは重々わかっているのだろう。
『子供は、大変だぞ・・・。』
それでも、喜んでくれるかもしれないと言う一縷の望みをかけていただろうフミエに、
茂が困惑顔で発した言葉は、あまりに冷たかった。
「あげな身体で家出して・・・どげするつもりだ?」
行き先は姉の家とわかってはいるものの、フミエは普通の身体ではない。その身を
案じると共に、別の不安も頭をもたげてくる。
(まさか・・・ここを出て行くつもりじゃなかろうな?)
フミエは元来、おとなしくて引っ込み思案で、茂には従順な妻だ。けれど、
一年半近く一緒に暮らしてみて、ここぞと言う時には自分の意思をつらぬく強さが
あることに茂は気づいていた。
(あの親父さんに、啖呵きったりしたんだもんなあ・・・。)
今までどんな貧乏暮らしでも、驚くべき忍耐力で茂について来たフミエが、いきなり
家出と言う手段に出たのは、姉にそそのかされたにしても、よほどの覚悟と
思わざるを得なかった。
(あいつは、俺に・・・惚れとる。)
自分で言うのも面映いが、茂にはそう言い切れる自信があった。日々の暮らしの中で、
フミエが捧げてくれる献身、信頼・・・そして夜、ひとつに溶けあうたび、言葉では
言わずともその身体がフミエの深い想いをあますところなく語っていた。

180 :
(だが、子供の命のためなら、ためらわず俺を捨てるかもしれん。)
そんな予感があった。茂を愛していないのではない。せっかく授かった命を
すようなまねが出来るフミエではないのだ。茂と別れることがどんなに苦しくても、
命がけで子供を守ろうとするに違いない。
(いざとなれば、安来に帰ってでも・・・。)
いったん嫁した女が、実家に帰るのは恥・・・フミエも安来の両親もそう思っているだろう。
だが、孫の命がかかっているとなれば、母親は元より、あの頑固そうな父親も進んで
救いの手を差しのべるだろう。
 故郷を離れる日、茂にすがりつかんばかりにしてフミエのことを頼んだ母親。
こみち書房での読者のつどいで、人気があるように見せかけたと茂をなじる父に
立ち向かってくれたフミエ・・・。あの時、フミエの真剣さに納得し、もう一度茂を
信じてくれた岳父は、身ごもった娘を突き放した自分のことをどう思うだろうか・・・。
「俺は、何をしとるんだ?・・・仕事なぞしとる場合ではないぞ!」
茂はがばと立ち上がると、なけなしの銭を数えた。
「・・・足りん!」
部屋を見回し、目についたものをかき集めて風呂敷に投げ入れた。
 茂は包みを引っつかむと玄関を飛び出した。下駄を鳴らし、商店街のはずれの
質屋を目指して走った。
・・・今にも手からすりぬけようとしている女房を奪還するために。
「はぁい。」
てっきり義姉の暁子が応対に出て来るものと思っていたのに、茂が押した呼び鈴に
応えて玄関のドアを開けたのは、フミエだった。
「あなた・・・・・・。」
フミエはかなり驚いたようで、それ以上言葉も出ずに茂をみつめている。電報を打った
のはつい数時間前・・・文面からただならぬものを感じたとしても、茂のような男がこうも
早く迎えに来るとは、思いも寄らなかったに違いない。

181 :
「あら・・・村井さん・・・。」
義姉の暁子が遅れて玄関に出てきた。茂はこのひとが苦手だった。可愛い妹を、
茂があまり大事にしていないと思っているのは明らかで、フミエに代わって村井家の
生活のおかしな点をぐいぐい突っ込んでくる義姉なのだ。
(・・・これじゃあまるで、若気のあやまちとかそげな感じだが。)
茂とフミエはれっきとした夫婦なのに、まるで十代の若者が他家の娘を孕ませて
謝罪に来たかのような後ろめたさだ。 
「どうも・・・お世話になりまして。」
茂は暁子に向かってぼそぼそとつぶやくと、袋にも入れない裸のまま、バナナを
にゅっと突き出した。
「これ、土産です。」
そして、これで用が済んだと言わんばかりにフミエの方に向き直り、
「おい、帰ろう。」
と、言った。
「村井さん、あのねえ・・・。」
暁子が何か言いたげに話しかけてきた。
「帰るぞ。」
暁子に一礼だけして、茂はせつなげな顔で立ちつくしているフミエをうながした。
 フミエが慌ててまとめて来た風呂敷包みを、茂はひったくるように受け取ると、
さっさと歩き出した。
「姉ちゃん、ごめんね。また連絡するけん・・・。」
フミエがすまなそうに姉に謝る声を後ろに聞きながら、茂は振り返りもせずに歩いていく。
フミエが小走りに追いついて、並んで歩き始めた。ふたりとも、何か言わなければと
思いつつ、歩きながらする話題でもない気がしていた。
 子供たちの歓声がにぎやかな公園に入り、すわり心地のよさそうなブランコに
並んで腰かける。先に口を開いたのは、フミエだった。
「勝手して、すんません。・・・迎えに来てくれるとは、思わんだった。」
俺を、どれほど非情な男と思っとるんだ・・・そう思いながら茂は、ただうん、うんと
うなずくばかりだった。

182 :
「バナナなんて買う余裕、よくありましたね。」
茂はポケットを探ると質札をつまみ出し、ひらひらと振った。
「一六銀行から借りてきた。つきあいも長いけん、多めに貸してくれたぞ。」
フミエが苦笑する。固かった二人の間の空気が、少しゆるんだ。
「・・・大変なのは、わかっとります。今でも苦しいし・・・不安ですけど。」
フミエが意を決したように話し出した。落ち着いた口調だ。
「なんとかなると思うんです。・・・あなたも私も、遅い結婚でしたけど、こげして
 子供を授かりましたけん・・・せっかく授かったんですけん、大事にしたいんです。」
一呼吸置いて、フミエははっきりと口にした。
「私・・・産みます。」
『産ませてください。』ではなく『産みます。』・・・そう言いきったフミエには、
フレアースカートの細い腰のどこにも、お腹に子供を宿している様子など見えなくても、
もう母親になる女の強さがにじんでいた。
 この女にはかなわない・・・いや、女全般にかなわないというべきか・・・。茂は
思わず微苦笑した。
「・・・映画でも見て帰るか?」
真剣な話をしているのに、またこのひとは・・・強い意志をやどしたフミエの表情が、
少しくもる。
「せっかく二人で出てきたんだけん、まっすぐ帰ったらもったいない。今のうちだけんな。
 ・・・子供が生まれたら、二人で外には出られんぞ。まあ、今までもそろって出かけた
 ことなぞなかったか・・・ははは。」
照れ隠しなのか何なのか、茂の一風変わった表現方法には慣れているはずのフミエが、
あきれ顔で茂を見ていた。

183 :
「いきなり聞いたんで、びっくりした・・・子供のこと。男には心の準備がないけんなあ。」
それは、半分本当で、半分言い訳だった。
 茂がいくら変人と言っても、男と女が交われば子が出来ることくらいは承知している。
ましてや二人は夫婦で、一年半にわたって濃密な愛を交わしてきているのだ。
(ありていに言うと、忘れとった・・・。)
手を伸ばせばいつもそこにいるフミエを愛で、悦楽をつくしたのち精を放つ・・・その度に
子供が出来るかもしれない・・・などと考えることはなかった。
(だけどこいつは、ちゃんと子供のことも考えとったんだな・・・。)
生きることに精一杯で、子供のことなど念頭になかった。出版社の倒産に原稿料の不払い、
貸本漫画業界はお先真っ暗という現実が茂の頭上に重くのしかかっていた。
『子供は、大変だぞ・・・。』
だからどうしろ、とまでは言っていない。だが、子供の父親である男からこう言われたら、
それはお腹の子をなきものにしろと言われたのと同じなのではないか。
『心の準備がなかった。』茂はそう言い訳することしかできなかった。
「金がないところに子供が出来て、これからどげなるか俺にもわからんが・・・。」
フミエとちゃんと向き合って話している内に、茂はだんだん本当になんとかなるような
気がしてきていた。
「まあ・・・なんとかなるだろ。」
ちょっと勢いをつけてブランコを後ろへこぐと、子供のように飛び降りた。
「・・・はい!」
フミエが嬉しそうにうなずいた。
「ほれ・・・食うか?」
茂がポケットから、黄色いバナナを取り出した。フミエが微笑んで受け取ると、
魔法のようにもう一本を取り出し、ブランコに二人ならんで座って食べた。暁子に
手渡した土産から、ちゃっかり二人分抜いておいたのだ。

184 :
 商店街にある名画座には、男性好みの映画の二本立てがかかっている。
「あっちで、ヘップバーンの映画やっとりますよ。」
恋愛ものを見たいフミエの意見など全く意に介さず、さっさと入っていく茂の後を、
フミエはブツブツ言いながらついて行った。
 ところが『戦争映画なんて、胎教にわるい。』と気乗りしていなかったのに、いったん
見始めるとフミエは、主人公たちが苦境に陥るたび手に汗を握り、ついに任務を遂行する
ラストシーンでは茂の肩を揺すり、拍手せんばかりの熱狂ぶりを見せた。
(こいつが戦争映画でこげにコーフンするとはな・・・。)
茂はあっけにとられ、肝心な場面を見るのも忘れて、となりで画面に見入っている
フミエの生き生きとした顔を眺めた。
(産む、と決まってホッとしたのかもしれんな・・・。)
茂に妊娠を告げた時の、思いつめたような顔・・・投げつけられた冷たい言葉・・・そして家出
・・・妊娠がわかってからのこの数日間、身重の身体でどんなに不安だっただろうか。
 なんとなくいとしい思いで、茂は無邪気に喜ぶフミエの横顔をみつめた。
 その日の夕食。フミエはせめてもの祝いのしるしに赤飯を炊いた。
「・・・なんだこれ?普通の飯じゃなーか。」
「もち米は、ぜいたくですけん。節約お赤飯です。」
「まぁ・・・こういうもんは、祝う気持ちが大事だけんな。」
赤飯まで、節約か・・・。子供を産めることになって心を弾ませているようでも、
やはり締まり屋だ・・・いや、子供を産むからこそ、今まで以上にしっかりしないと
いけないのだろう。経済状況は何も好転したわけではないのだから。
「おい・・・大事にしぇよ。」
フミエが心からうれしそうに微笑んだ。茂はちょっと情けなかった。こんな時男は、
『大事にしろよ。』
と言ってやるくらいしか能がない。
(あとは俺が、どげな仕事でもして稼ぐけんな・・・。)
こみあげるものを紛らすように、茂は赤飯をかきこみ、勢いあまってちょっとこぼした。

185 :
 その夜。つわりもひどくないし大丈夫だと遠慮するフミエを早々に寝かせ、茂は
また仕事部屋にこもっていた。ただでさえ〆切りがせまっていたのに、フミエを迎えに
行くために半日つぶしてしまったのだ。
「・・・これからは、今まで以上に働かねばならん!」
生まれてくる子のため、一円でも多く稼ごうと、鬼気迫る勢いでペンをはしらせた。
 描き疲れ、ふと気になって、ポイと捨てたフミエからの電報を拾い上げた。
『シバラク コチラデ スゴス』
『しばらく』という表現に、これを打った時のフミエの逡巡が表れている。茂と暮らす
家を出るなど、今まで考えてみたこともないフミエだろうに、そうせざるを得ないほど
絶望させてしまったのは茂だった。
(もう戻って来んかもしれん・・・。)
そう考えると居ても立ってもいられなくなって、男の沽券も何もなくフミエを取り戻しに
家を飛び出した。そのくせ義姉の家の玄関で『帰るぞ。』と言ったきり、フミエが話し
出すまで黙っていた。本当は、フミエが素直について来なければ、さらってでも連れ戻し
たいほど焦りを感じていたのだが。
 ふと自分の右手を広げて見た。フミエがこの指のすきまからするりと抜け出した気が
したあの時の喪失感・・・。その手をぎゅっと握ると、茂は立ち上がって仕事部屋を出た。
「もう、寝たか・・・?」
うす暗い寝間に敷かれたふた組のせんべい布団のうちひと組に、フミエが眠っている。
その寝顔が少しやつれて見えるのは、つわりのせいか、ここ数日の心労のせいか・・・。
いとおしい思いで乱れた髪をすいてやると、何事かつぶやきながらフミエが横を向いた。
粗末な布団は幅も小さく、現れた背中に茂はそっと身を寄せてかたわらに横になった。
「ん・・・ぁ・・・あ・・・なた?」
フミエが目を覚まして身じろいだ。茂は何も言わず後ろから包み込む。波打つ髪に
顔を差し入れ、首筋に口づける。フミエがすこし身体を固くした。

186 :
「わ・・・私・・・あの・・・。」
「わかっとる・・・何にもせんよ。」
ふたりの夜はいつもこんな風にして始まることが多かった。ふかい眠りから起こされ
ても、フミエは嫌な顔をしたことがなかった。はじめの内は夢うつつながら、次第に
とろかされ、たかまり・・・最後は一緒に果て、ともに夢に落ちるしあわせを、これまで
あたり前のように享受してきたのだ。
 だが、今フミエのお腹の中には新しい命がやどっている。今までのように激しく
抱いたり、つよい快感を与えることが母体と胎児にとって好ましいとは思えない。
どんなに欲しくても、フミエの身体が元通りになるまでは我慢しなければなるまい。
 フミエがくるりと寝返って茂の方を向き、くるおしげにしがみついて来た。
たった二日だけれど、ふたりの心が離れ、ひと晩を別々に過ごした。茂がこんなに
早く連れ戻してくれるとは、フミエは予想もしていなかったのだろう。わだかまりは
解け、こうしてフミエはまた茂の腕の中にいる。自分の身体とお腹の子によくないと
理屈ではわかっていても、フミエもひとつになることを求めているのかもしれない。
「・・・そげにしがみついたら、くるしいが・・・。」
「ぁ・・・す、すんません。」
あわてて腕の力をゆるめ、顔をあげたフミエの唇を、茂の唇が求めた。深く口づけて
から唇を離すと、フミエが大きく呼吸をして、身をふるわせた。涙でいっぱいの瞳に
吸い寄せられるように重ねる口づけは、次第に深く激しくなり、フミエが熱っぽい身体を
妖しくこすりつけてくる。
「いけん・・・お腹の子に障る。」
茂もはちきれそうな想いを抑えながら、柔らかいフミエの身体をそっと押しやった。
「でも・・・。」
しなやかな手が、隠しようもなく欲望を顕している前をそっと包み込む。
「う・・・。」
『何もしない。』と言いながら、離れがたく抱擁しあううち、身体は素直にフミエを
つよく求め、硬く張りつめていた。                          
「駄目だ・・・止まらんようになってしまうけん。」
こみあげる欲望を抑えながら、フミエの手をそっとはずさせる。

187 :
「でも、私・・・。」
フミエのうるんだ瞳が近づいて、また唇をふさいだ。
「せめて、あなたに・・・ふれたいんです。」
唇を離し、真剣なまなざしで請われると、茂もたじろぎながらもうなずいた。
 フミエは浴衣の襟を割ると、胸に顔をうずめた。そのまま手を下へ伸ばし、下着の
上から怒張をそっと撫でる。
「見んで、ね・・・。」
起き直り、はらりと垂れた長い髪の間から羞ずかしそうにそう言うと、下着に手をかけた。
くっ、と勃ちあがったものを手で包み、いとおしげに口づける。
 根元からはじめて、すみずみまでを唇が這い、時おり舌がちろちろと舐める。
熱い口の中へ呑みこまれ、上下にしごかれる。やわらかく嚢を揉まれると、快感に
腰が自然に突き上がった。
「お・・・まえは・・・感じたらいけんぞ・・・。」
身体を心配する言葉も耳に入らぬように、フミエは夢中で口の運動に集中している。
「もう・・・離せ。・・・射精(で)る・・・っ。」
熱いものがせり上がって来る感覚におそわれ、起き上がってフミエを制した。
「・・・こら・・・はな、せっ・・・。」
これまで、放たれたものを当たり前のように受け入れてきたフミエは、肩を押され、
いぶかしげに口を離した・・・とたん、その顔に白濁がぱっと散った。
「早こと・・・離せと言うたのに!」
茂はあわてて枕紙をひっつかみ、自らの熱情の凝りにまみれたフミエの頬や頤を
ごしごしと拭いた。
「いた・・・そ、そげにこすったら、痛いですが・・・。」
「のんだら、いけん。今は・・・だめだ。」
腹の子を汚してしまうようで、常のようにその口の中に放つことができなかった。
 フミエはゴシゴシこすられて紅くなった頬を手で庇っている。その手をつかみのけて
唇を奪い、めちゃめちゃに貪った。フミエも激しく応えながら、下からぎゅっと抱き
しめてくる。
 月もない夜。今のふたりの暮らしのように先が見えない暗闇の中で、いちどは
失いかけ、やっとの思いで取り戻したぬくもりを、ふたりはいつまでも確かめ
あっていた・・・。

188 :
(あれから、半年あまりか・・・。)
あの時と同じようにその腕の中にフミエを抱き、感慨にふけっていた茂は、ふと手の中の
丸みがわずかに変化していることに気づいた。
 赤子を持った今限定なのかもしれないが、フミエの薄い胸もそれなりの量感をたたえ、
乳を与えたあとなので柔らかく、しっとりと茂の手に馴染んでいる。
さわりごこちの良さに、思わず指に力が入った。フミエが身じろぐのがわかる。甘い髪の
匂いに誘われるようにうなじに鼻を寄せて息を吸い込んだ。
「あ・・・あなた・・・あの・・・。」
フミエがもじもじと身をよじり、後ろから抱いている茂の腰から自分の腰を離した。
「こら・・・なして離れる?」
言いながら茂は、自分が極大になった雄根をフミエの腰に押しつけていたことに気づいた。
フミエが妊娠してからは身体を気遣って一度も交合していない。フミエのお腹が大きく
なり始めてからは、口淫もさせなかった。
(相当、たまっとるな・・・。)
ご無沙汰のうえに、フミエを取り戻したという安心感のなせるわざだろう。もちろん、
もっと完全に取り戻したいという欲求もある。                     
 腕の中のフミエも、心なしか熱を帯びたように肌が熱くなり、少し乱れた呼吸を
落ち着かせようと大きな吐息をついた。
「す・・・すみません。私・・・まだ、ちょっこし・・・。」
フミエが、震える声で言った。産後間もない身体で交接することが、産褥婦にとって
とても危険であることは、もちろん茂だって理解している。
「わかっとるよ・・・お産したばっかりだけんな。ここまで我慢したんだけん、あと
 もうちっとぐらい辛抱できーだが。」
フミエはもじもじと向き直り、うるんだ瞳で茂をみつめた。自然に唇がかさなり、
ぎゅっと抱きしめあう。
 ややあって、茂がさも『いいことを教えてやろう。』という感じで言った。
「あのな・・・あんた、ちょっこしだけ、立派になったぞ。」
「え・・・何がですか?」
茂は黙って浴衣の身八ツ口から手を入れ、少し量感を増した乳房を掌でつつんだ。
「まあ、今だけだろうけどな。」
「・・・ぃやだ・・・もぅ!」
ちょっと怒ってにらむ顔に、茂は笑いながらまた口づけた。
「さあ・・・もう寝れ。また藍子に起こされるかもしれんけん、今のうちに寝とけ。」
フミエは微笑んでうなずくと、茂の胸に顔を寄せた。
「ゴーーーーン。」
どこか遠くで、鐘の音がする。新しい年がもうすぐそこまでやって来ていた。
「お・・・除夜の鐘か・・・。」
「ほんと・・・。何もお年とりらしいことできんでも、新しい年は来るんですね・・・。」
「除夜の鐘は、百八の煩悩を払ってくれると言うな・・・。」
フミエが、身体を震わせて笑いをこらえた。今まさに煩悩の塊とも言うべきものを
もてあましている茂の口から『煩悩』と言う言葉を聞こうとは・・・。
「なんだ・・・何がおかしい?・・・・・・ま、ええか。初笑いだ。」
何がツボにはまったのか、腕の中で身体を震わせつづけるフミエがたまらなく
いとおしくて、ギュッと抱きしめながら、なんだか泣きそうになる。
「ええ年になると、ええですねえ・・・。」
ようやく笑いやんだフミエの目にも涙が浮かんでいる。
 年があらたまる時、ひとは新しい年への希望をいだかずにはいられない。新しい
命を迎え、貧しくさむざむしいこの小さな家にも、温かな灯がともったようだった。

189 :
妊娠を告げられた時の態度には、本放送時も再放送時も『しげるヒドス 』の声多数。
でも、光の速さで迎えに来たのは、フミちゃんに家出されてかなり焦ったんでしょうね。
家出から戻った時と退院した時の2度とも、その夜はフミちゃんを腕の中に取り戻して
茂はさぞかしホッとしたのでは・・・と言うお話ですが、二重構造でわかりにくかったら、
ごめんなさい。
ふたりで見た映画は、ググったら放送当時専スレがあって、
『フミちゃんが大ウケしている場面は、BGMによると主人公側が窮地に陥る場面。』
と言うレスがあって、マニアってすごいと思いました。
でも、DVDだとちゃんと大団円のシーンの効果音になってる・・・補正したのかな?

190 :
>>177
おお、ナイスタイミング投下乙!GJ!
ご奉仕の後でしげーさんがふみちゃんの顔を力任せに拭くの、萌えましたw
映画デートシーンにそんな裏があったなんて…w

191 :
>>177
GJです!
フミちゃんの身体を思って、我慢する茂さんに萌えました。
勝手にせぇからのバナナまでに至る描写も補完されてて良かった!
あんなに焦って…、フミちゃんの事大好きなんですねw

192 :
集金脱走デートとか青海波を預けるとかクリスマスの朝とか、今週も萌えぬと思ったよ…
藍子誕生おめでとう!
>>177
GJ!
我慢するしげぇさんももちろん萌えだけど、我慢できないふみちゃんがエロい!

193 :
梅雨入りしたので、ずぶ濡れの綾子さんをタオルでごしごし拭いて身体で暖めるゆうあやを妄想
ずぶ濡れなゲゲさんは来週だっけか

194 :
家計簿の方ではふみちゃんがずぶ濡れでした

195 :
>>194
家計簿、そんなオイシイ出来事があったのか!
ついつい読み逃してしまう…
今日のひなたぼっこは家族萌え的にも夫婦萌え的にも最高だった

196 :
一昨日は帰宅いちゃいちゃ
昨日はひなたぼっこいちゃいちゃ
今日はエアひな祭りで怒涛すぎる

197 :
眠り込んだ布美枝を足元からゆっくり写すカメラワークがエロちっくだった

198 :
>>194
その後コーヒー飲んでシミジミ語り合ったのは本当なのに(原作にあり)
なぜかふみちゃんがおねだり(性的な意味じゃないよw)した話になってて
肩透かしでした。テレ臭いのかな?

199 :
会社で「名代ささきのせんべい」と書かれた箱をハケーン!
残念ながら空箱だった…そりゃそうだな、ゴミ箱にあったんだしorz 
けど一瞬でも血が滾った自分はやっぱりゲゲゲ・いちせんにまだどっぷり漬かってるんだと自覚w
ググってみると、東北のほうのせんべい屋さんみたいだた

200 :
>>199
すごい!同じひらがなで同じせんべい屋なのか!
それは思わず反応してしまうなw

201 :
>>197
あのカメラワークは自分も大好きだw

202 :
ふみちゃんの中の人が某お昼の長寿番組にゲストで出てて
ちょっと天然なドジして顔真っ赤にしてて
ふみちゃんや綾子さんでいろいろ妄想してしまった

203 :
昨日今日と萌え成分低めでおあずけくらってる気分…

204 :
「やれやれ・・・えらい本降りになってきたな・・・。」
梅雨の晴れ間、茂はお気に入りの小さな神社までスケッチに来ていた。ぽつりと落ちて
きた雨は、最初はたいしたことはなかったのに激しくなるばかりで、そろそろ夕暮れ時
というのにいっこうにやむ気配がない。
「おー、いっぱいおるおる・・・。」
座っていた階段から腰をあげ、お堂の下に避難したものの、所在無さにヤツデの葉に
這うカタツムリをみつめて時を過ごしていた。
「ああ良かった・・・おられて。」
聞きなれた声に顔をあげると、そこにはフミエがたたずんでいた。傘の下から微笑んで、
茂に畳んだ傘を差し出す。
(迎えに来てくれたのか・・・。)
茂はちょっと嬉しかったけれど、照れくさくて何も言わずまたヤツデに目を戻した。
「あら・・・でんでん虫。」
フミエはそんな茂に慣れているのか、一緒にうれしそうにカタツムリを眺めた。
「腹へったなぁ。・・・帰るか。」
「はい。・・・あ、あら?」
フミエは茂のために持ってきた傘を差そうとしたが、黒い色も褪せ、骨もまがった傘は
なかなか開こうとしない。
「あ・・・。」
バリッと音がしてやっと開いた傘は、少なくとも三箇所が縦に布が裂け、とても傘の
用を足さないものだった。
「・・・こっちは使い物にならんのだ。」
雨降りに二人で外出したこともないので、もう一本の傘がすっかりダメになっている
ことに、フミエは気づいていなかった。

205 :
「困ったわ・・・。」
途方にくれているフミエが手に持っている傘を、茂がついと手に取った。
「・・・帰るぞ。」
「は・・・はい。」
フミエはあわてて使い物にならない傘をくるくるとまとめると、茂が差す傘に入った。
「ま、待って・・・もうちょっこし、ゆっくり歩いてごしない。」
「お・・・すまんすまん。」
そう言いながらも、すぐまた早足になってしまう茂に、しかたなくフミエはプラプラ
揺れている袖口をつかんで、小走りについていく。
「あ・・・卯の花、咲いとる・・・。」
雨に打たれてしなっている白いつぶつぶの花に、フミエが足を止めた。行き過ぎそうに
なって、茂が歩を止め、傘を差しかける。
「そう言や、おからの炊いたの食いたいな・・・。」
「もぉ・・・食べることばっかり・・・。」
そう言いながら、サンダルばきで出てきてしまったフミエは、足元に目を移した。
「あら・・・夏椿も。」
「ん・・・?どこだ?」
水たまりに、たくさんの白い花が椿と同じように花の形のまま落ちている。フミエは
どこに咲いているのかと上を見上げるが、なかなかみつからない。
「あ・・・あそこ・・・。でも、よう見えませんねえ。」
さまざまな雑木が重なって繁っているなかに、高いところにぽつぽつと白い椿に
似た花が、夢の中のようにけむって見えた。
「シャラの花って、せっかくきれいに咲いとるのに、落ちてみんと咲いとることが
 わからんのですよねえ。」
フミエは地面に落ちている花の中から、まだきれいなものをいくつか拾ってエプロンに
とった。
(落ちてみんと咲いとることがわからん花・・・か。)
普段は花のことなど気にも留めない男だが、雨に濡れた緑一色の中に浮かぶように
咲いている白い花は、明け方の夢のようなさびしさを茂の心にのこした。

206 :
「あの・・・お茶、はいりました。」
夜。仕事をしていると、フスマが開いて浴衣姿のフミエが入ってきた。
「ちょっと蒸し暑いですね・・・窓、開けましょうか?」
茶碗を置いて立ち上がろうとするフミエの手を、茂はつと手をのばしてつかんだ。
「え・・・。」
引っ張られてぐらりと茂の方に傾いた身体を胸で受け止め、首筋に顔を埋める。
湯上りのフミエの匂いと、たちのぼる茶の香り・・・ふたつの異なる香りを鼻腔いっぱいに
吸い込むと、腕の中のフミエがふるっと身体をふるわせた。
「・・・・・・。」
しばらくそのまま香りをたのしんでいた茂は、溶けていいのか固まっていいのか
わからぬというようにすくんでいるフミエに気づいてふっと笑った。
「・・・近所じゅうに聞かせてもええんなら、窓を開けてもええけどな。」
声をあげさせるようなことを、これからあんたにする・・・そう予告されて、フミエの
細い身体がさっと熱を帯びる。はだけた浴衣の襟元を顔で割って、唇を胸肌に
這わせると、肌理のこまかい肌には小さな汗の粒が浮かび始めていた。
「・・・っふ・・・ぁ、あっ・・・。」
脇に手を入れてうながし、膝立ちさせると、目の前にある紅く色づいた実をつよく
吸った。帯を解いて浴衣を剥ぎ、フミエの手を導いて下着を落とさせる。
「・・・んふぅ・・・っあ・・・んん・・・。」
唇を強く吸いあいながら、立てた膝の間を割る。フミエの手をつかんで内腿をつたい
落ちる愛液を自らの手に確かめさせ、指先をつまんでぐっと花蕾を押させた。
「ふぁうっ・・・ん・・・だめっ・・・。」
「手を・・・とったらいけんぞ。」
そう言いおいて、後ろにまわした手で臀をつかみ、いちばん長い指を蜜壷にしずめる。
「んぁぅっ・・・だ、め・・・もぅっ・・・。」
フミエが腰をよじらせてもう片方の手で茂の肩にすがった。荒い息が肩口に当たり、
あふれ出す涙が茂の胸を濡らす。立て膝をしていられないほど感じている女の様子に、
男の中心が痛いほど張りつめた。

207 :
「カチャ・・・カチャ・・・。」
ベルトをはずす音、衣ずれの音・・・やがてフミエは自らの蜜にまみれた手をとられ、
熱く息づく屹立を握らされた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・っは・・・。」
これから迎え入れるものの大きさ、硬さ・・・与えられる狂乱の予感につらぬかれ、
フミエは少し怖じたように腰を引いた。
「んん・・・っふ・・・んむ・・・んぅ・・・。」
口づけながら腰を抱き寄せ、手を添えて定めた目標に、フミエの濡れそぼった秘口を
あてがうように腰を持ち上げさせる。
「・・・っは・・・ぁ・・・はぁ・・・ぃや・・・い、やぁっ・・・。」
切迫した息遣いに、泣きそうな調子が加わり始めた。先端が少しもぐったところで大腿を
つかんだ手がぐっと引き下ろされ、フミエの狭い入り口に漲りきった雄芯がめりこんだ。
「っあ・・・しげ・・・さ・・・ぁ・・・ぁあ―――――!」
初めて結ばれてから半年・・・何度受け入れさせたかわからないほどなのに、最初に
挿入れられる時、フミエはいつも少し苦しそうにする。そんなフミエをいたましく思う
気持ちと、欲望のままに突き進みたい気持ちとが相半ばするのもいつものことだった。
「・・・はぁ・・・ぁあ・・・ぅン・・・。」
根元までずっくりと突き入れ、フミエの濡れた貝がぴったりと雄芯を包み込む感触を、
目を閉じて心ゆくまで味わった。あぐらをかいたひざの上に、大きく脚を開いて座る形で
下からつらぬかれているフミエは、茂の肩に顔をうずめて抱きつき、身体を固くして
きつく目を閉じている。
「とって喰われるわけじゃないんだ・・・もうちっと気ぃ楽にしろ。どっちかっつーと、
 あんたの方が喰っとるんだけんな。」
そんな軽口をたたきながら、必要以上に力の入っている指をはがし、顔をあげさせる。
下がり眉になりながら無理して微笑んだ唇に、ふかく口づける。

208 :
「・・・ふぁ・・・ぅ・・・ん・・・。」
緊張していた身体がゆるみ、フミエの舌が甘く応えてきた。羞ずかしそうに茂を
見あげてくる瞳も、とろけそうに甘い。                        
「・・・っん・・・っふ・・・ゃ・・・くすぐっ・・・たいっ・・・!」
茂の大きな手にひざこぞうを撫で回され、フミエが身体を揺らした。
「・・・!・・・ぁあんっ・・・!」
動いた途端に深く感じてしまい、腰を揺らしてまた身悶える・・・快楽の連鎖におちいり、
フミエの腰はわれ知らずみだらな運動に踊った。
「・・・っふ・・・も・・・ぁっ・・・ぁああ―――――!」
絶頂につらぬかれるフミエを抱きとめてやると、細い身体は腕の中でゆらりと溶けて
ぐったりとのけぞった。
「・・・っだ・・・め・・・おねがい・・・。」
フミエの脚を肩にかつぐようにしてのしかかり、ぐっと結合を深めなおす。顔の横に
伸びた長い脚がこきざみに震え、その間にあるフミエの顔が涙でぐしゃぐしゃに
なっているのが見える。
「おねがい・・・だめ・・・だめぇっ・・・。」
何がお願いで何が駄目なのか・・・フミエにももうわからないのかもしれない。涙声の
懇願にかまわずさらに深く穿ち、えぐり、奥に叩きつけた。
「・・・ゃっ・・・ぁっ・・・ぁあっ・・・!」
身体の隅々までを侵す快美に、高く掲げられた足の指がなまめかしく折り曲げられる。
やがて解き放たれた二本の脚は茂の脚にからみつき、ゆさゆさと揺さぶりをかける
強腰の動きにみだらに寄り添った。
「・・・っ・・・っぁあ、あ―――――!」
耳に注ぎ込まれる啼き声とともに、茂を押しつつむ秘肉もが幻の悲鳴をあげているかの
ようにくるおしく締めつけた。柔らかくきつく、雄をからめ取る花園の中へ思うさま
ぶち撒けると、茂ももろ共に真っ白な陶酔へと堕ちていった。

209 :
 ややあって、茂は身体を起こした。見下ろせば脱がされた浴衣や帯が広がる中に、
フミエの白い身体がぐったりと横たわっている。
(こげな風情を、どっかで見たような・・・?)
茂の脳裡に、水たまりに散らばった白い花の哀しい美しさがふと浮かんだ。
(こいつも・・・こげなとこで咲いとるんで、ええんかな・・・?)
 愛され、満たされることを知って、フミエは娘の頃からは想像もつかないほど
艶冶な表情を見せるようになっていた。人の訪ねてくることもあまりない、この陋屋の
小さな部屋で、愛されるたびつつましい美しさを増していくフミエは、高い木の上に
目立たない清楚な花をつけるあの夏椿に似ていた。             
(俺しか見とらん、こげな寂しい場所で・・・。)
自分だけが知っている、誰にも気づかれぬ場所でひっそりと咲いている花・・・。      
「きれいだ・・・な。」
うす闇の中でぼうと浮かび上がるような白い肌に、思わず口に出ていた。
「・・・?」
フミエがまだ夢うつつのようなまなざしを向けた。茂はあわててつけ加えた。
「・・・花、飾ったんか・・・。」
仕事机の上に、深めの小皿に水を張ってシャラの花がいくつか浮かべてあった。
「ええ・・・。」
フミエが気だるげに起き上がり、ゆっくりとした動作で散らされた浴衣を羽織った。
情交のあとのなまめいた肌にかかる黒髪がぬれぬれとして、精を吐いたばかりの男に
再び息を呑ませるほど艶めかしかった。
「なんだかかわいそうで・・・。せっかく咲いても雨にうたれて散ってしまうなんて。
 他の季節に咲けばええものを。」
雨に落ちたシャラの花を、せめてこうして飾ってやる心根がいじらしい。しどけなく
すそを乱したまま横ずわりに座り、花をみつめるフミエの清艶な美しさが、うす暗い中で
かすかに白い光を放つ花にかさなる。

210 :
「そげかな・・・。」
この花が雨の中咲いていたこと、フミエに拾われて今ここにあること・・・それを
『かわいそう。』と言う言葉でかたづけたくない気持ちが、茂の中に急にわき起こって来た。
「・・・雨の季節に咲く花は、雨の中で咲くようにできとるんだ。だけん、雨の中でも
 あげにきれいに咲ける・・・。」
およそ花などに興味のなさそうな茂が、予想外に熱心に語るのを、フミエは不思議
そうに、でも嬉しそうに聞いていた。
「そげですね・・・。卯の花腐(くた)しの雨と言うけれど・・・ご本人たちは、雨が好き
 なんですよね、きっと・・・。」
花に目を留めたまま、フミエがたった今愉悦をきざまれたばかりの身体をあずけてくる。
茂は背中ごと抱きしめて、幼子をあやすように少し身体を揺すった。浴衣の布いちまいを
通して伝わりあう愛の記憶がふたりを満たした。
 互いのぬくもりを味わいながら、ふたりはしばらく何も言わないでいた。フミエは
身体にまわされた大きな手に自分の手を重ね、幸せそうに瞳を閉じている。
「・・・また降ってきたな・・・。」
重ねた手を弄びながら、耳に囁く。熱い息に身じろぎながら、フミエがつぶやいた。
「でも、誰にも見てもらえんのはやっぱりかわいそうかもしれん・・・雨の中で上を向いて
 歩いとる人はおらんですもん。」
「誰も気づかんからこそ、みつけた人間の心にはつよくのこるんじゃないかな。
 ・・・そげ思わんか?」
ほほえんで半ば身体を返して振り向いてきたフミエの、やわらかい唇をつつみこむ。
次第につよくなる雨の音に閉ざされたこの小さな家で、想いあう二人の小さなしあわせを、
白い花はしずかに見守っていた。

211 :
素晴らしい…
放送終了して時間が開いてもこんなに良いSSが見られるなんて、
本当にこの作品はみんなに愛されているんだなあ

212 :
>>204
この季節にぴったりな、しっとりして艶かしいSS、GJです!
いつも良質な作品をありがとうございます、職人様。

213 :
黒ずんだバナナを咥えるフミちゃん

214 :
>>204
GJ!
相合い傘に萌え、自慰的な二人の行為に悶えました
得に相合い傘なのにうっかり自分のペースで歩くゲゲさんとそれに小走りについてくふみちゃんがツボでした…

215 :
今日はあらゆる方面で神回だった…
自分的に気になるのはあの美尻についてたパーツw

216 :
風邪ひいたフミちゃん色っぽい

217 :
境港にはちょっと顔を出せばいいはイカルの性格の強烈さからくるしげーさんの優しさ説が目から鱗ですごいきゅんとした

218 :
>>215-216
あの色っぽさで尻に触ったんだから、模型の後は間違いなく…だよな!

219 :
本放送のこの頃はやきもきしてた人多かったんだろうなぁ…
自分は見はじめたの遅かったけど、そういう心配をしないで見れて良かったw

220 :
今日、実家で藍ちゃんに添い寝する姿が無駄に色っぽかった〜

221 :
フミちゃんて、綺麗な瞳が印象的だけど
あのポッテリした唇が、かなり色っぽい…
本人は全然意識してないところで、ゲゲをムラムラさせてそうw

222 :
>>221
ゲゲさんは冬に乾燥してるからって理由でちゅーすればいいな!
自分はふみちゃんは脚が好きですw

223 :
ゲゲふみ共に手が好きだ

224 :
うなじペロペロ

225 :
>>221
ゲゲふみだと化粧もあんまりできないけど、
ゆうあやだったらグロスとかつけたらゆうちゃんが大変な事になっちゃうわけですねw

226 :
アシスタントの相沢君?の仲人の時だったか
黒い留め袖に髪を結ってお化粧したフミちゃん…
めちゃくちゃ色っぽい〜

227 :
「お父ちゃん・・・境港から、またお手紙が来とりますよ。」
「また、藍子を見せに来いと矢の催促か・・・。」
フミエが手渡した実家からのハガキをよく読みもせず、茂は机の上に放り投げた。
『藍子の成長はいかがですか?気候も良くなったことだし、一度里帰りして孫の顔を
 見せてください。そちらが来るのが無理ならこちらから行ってもかまいません・・・』
 元々筆マメな絹代だが、藍子がお腹にやどった時からは妊婦の心得、生まれてからは
育児の知恵と、降るようにハガキが来るようになった。
「孫なんぞ兄貴のところにも光男のところにもようけおる。珍しくもないだろうに。」
茂はそんな風に言うが、フミエには義父母の気持ちもわかる。
(しげぇさんのこと、人一倍心配してごしなさるんだわ・・・。)
婚礼の日の夜、酔いつぶれて寝てしまった茂のいない食卓で、義母の絹代は茂が
復員して来た時のハガキを見せてくれた。
『茂を、よろしくたのみますね。あげな息子だけど、仲良くやってごしなさいね。』
姑に深々と頭を下げられて、フミエは恐縮して頭を畳にこすりつけ、絹代はそれを
見てさらに頭を下げ・・・舅の修平に笑われたものだ。
 茂を心配するあまり、絹代が嫁にかけてくる重圧には閉口するが、それだけ情の
深い人なのだと思う。親が子を思う気持ちは、変人ぞろいの茂の両親も、フミエの
実家の両親も同じなのだ。
「俺だって、親に孫の顔くらい見せてやりたいが・・・先立つモノがない。」
本当のことを言うと、フミエだって里帰りしたくてたまらなかった。父の源兵衛には
藍子が出来る前、視察旅行のついでに寄ってくれたので会えたけれど、なつかしい
母や兄弟にはもう三年以上も会っていないのだ。
「それに・・・ヘタにゆっくり話でもして、うちの経済状態がつぶさにわかってみろ。
 とたんに『灯台もりになれ!』が始まるけんな。」
飄々としてひとの思惑など意に介さない風に見える茂だが、こと両親に対してだけは
よく見せようとするところがある。それもこれも、兄弟の中で自分が一番両親に
心配をかけてしまったと言う自覚があるからだろう。『身体髪膚コレヲ父母ニ受ク。
敢ヘテ毀傷セザルハ孝ノ始メナリ』と言う教育を受けてきた世代である。

228 :
『灯台もりになれと言われたら困るから、貧乏していることを親に知られては
 ならない。』
結婚以来、茂の口から何度この話を聞かされただろう。境港からの便りに返事を書くのは
フミエの仕事だが、貧窮生活のことは絶対に漏らしてはならないから、当たり障りのない
話題をそのつど搾り出すのに骨が折れることこのうえなかった。
「いつもそう言われますけど、灯台もりってそげに簡単になれるもんなんですか?」
フミエはずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。結婚する前、実在の灯台もりの
妻が書いた手記を元にした映画を見たことがある。
(身体も使う仕事だけど、機械もいっぱい出て来たし、機械オンチのお父ちゃんに
 出来るのかなあ・・・?)
茂の才能と努力を尊敬しているけれど、彼の得意分野は芸術にあり、科学には
ないことくらいフミエにもわかる。茂にベタ惚れのフミエでも、そこらへんの眼は
冷静なのだった。
「・・・わからん。だが、イトツというのは妙に世渡りが上手でな、どこにどういうツテが
あるかわからん。だけん、油断は禁物だ。」
なれるかどうかも何も、なりたくないのだ。
『灯台もりは大変な仕事だぞ。寝たいときに寝ることもできん。』
この世の中、寝たいときに寝ることが出来る仕事の方が少ないのだけれど、茂にとって
睡眠は人生における最重要項目のひとつなのだ。
「とにかく!境港にはいつもどおり適当なことを言ってのらりくらりと逃げておけば
 ええ。くれぐれもよろしくたのんだぞ。」
またしても無事息災のたよりをでっちあげなければならない。出るのはため息ばかりの
フミエだった。
「しげるーーっ!おるか?!邪魔するぞ!」
そんなある日。まだ早朝というのに、茂の兄の雄一が血相を変えて飛び込んできた。
 何度手紙を出してもさっぱり里帰りしてこない茂一家に業を煮やし、境港の義父母が
上京して来るという。茂と雄一は手を取り合わんばかりに嘆きあった。冗談ではなく、
イカルの上京と言うのは、この兄弟にとって会社の倒産よりも恐ろしい災いらしかった。

229 :
 どこに泊めるか、誰がもてなすか、芝居くらいは見せなくては・・・突然の襲来の
布告に、兄弟はしぶい顔を寄せ合って頭を抱えた。この義兄も、会社勤めをしている
とはいえ、二人の子を抱えて茂に負けず劣らずいつもピーピーしているのだ。
「二人で出て来られたら、被害は甚大だぞ・・・。」
両親が出て来たら気も遣うし金も使う・・・腕組みして考え込んでいた雄一が、ハタと
ひざをたたいた。
「藍子とフミエさんだけでも、境港に送り込め。・・・ええな!」
雄一はいい厄介払いが出来たとばかりに腰を上げ、さっさと家に帰ってしまった。
あとには、里帰りしようにも旅費の工面などまったくつかない茂とフミエが、困惑顔で
残された。
「お米買うお金にも不自由しとるのに、汽車賃なんて無理だわ・・・。」
またしても米びつの底が見えている。フミエは米に指を入れてのの字を書きながら
ため息をついた。
 数日後。夕暮れ時に帰ってきた茂を、フミエはろうそくの灯りで出迎えた。
「なんだ、また、通電止められたのか?」
「すんません・・・。さっき電気代の集金の人がみえたんです。」
フミエは覚束ない足取りで歩くようになった藍子の手の届かないところにろうそくを
置き、暗い中で夕食の支度をつづけながら話した。
「お米が無うなってしもうて・・・これ以上ツケでは買えんけん、お支払いして帰って
 きたとこで、電気屋さんにバッタリ会ってしもうて・・・。」
「しょうがないな・・・明日一六銀行に行って来るか。」
世間と言う名の荒海をわたるオンボロ船のようなふたりの暮らしは、小さな藍子が
加わった後も相変わらず凪ぐ日の方が少なくて、こんな会話は日常となっていた。
「なあ・・・考えてみるか?灯台もり・・・。」
「ええっ・・・?」
ろうそくの灯りだけで摂る夕食。黒いひじきがますます黒く、うまいまずいどころか
何を食べているのかさえわからなくなりそうな侘しさだった。もそもそと食べていた
茂が、箸を置いて急に意外なことを言い出した。                     
「だ、だって、あなた・・・あげにいやがっておられたのに。」
「だがな・・・このままここで飢えにすることを考えれば、贅沢は言っとられん。」

230 :
(飢えに・・・。)
フミエはぞっとした。日本はとうに敗戦の痛手から立ち直り、世の中はオリンピック
景気に湧いているというのに、この家では平和な現代にはほとんど聞かれなくなった
この言葉がりっぱに現実感をともなって存在していた。
「・・・俺たちはええ。だが、藍子がかわいそうでな。」
茂の仕事の妨げになるのではと心配していた藍子は、いつも機嫌よくひとりで遊び、
何でも食べ、よく眠る、まったく手のかからない子だった。
『家貧しうして孝子出(い)づ。』とは良く言ったものだ。まだ頑是無い幼子ながら、
(まるで私たちが苦労しとるのを知っとるみたい・・・。)
フミエは嬉しいようなせつないような気持ちで、眠る藍子を見やることもしばしば
だった。
「灯台員ならば、食いっぱぐれることはないだろう。」
「昔、灯台もりの映画がありましたねえ。」
「ああ・・・デコちゃんの出たやつか。俺も見たな。」
茂が主演女優を愛称で呼んだのがちょっと気になり、フミエは目を見張った。
「あら、珍しい・・・あなたが女優さんをアダ名で呼ぶなんて。でも、灯台もり役の
 俳優さんもステキでしたよね・・・。」
「なんだ、あげな長い顔が好きか。」
「あなたこそ・・・本当は、あげな小柄でグラマーな人がええんですね。」
いつも、お前ぐらいがちょうどええ、と言ってくれるのは優しい嘘だったのかしら
・・・フミエはちょっと悲しくなる。
「な、何を言っとる・・・俺は真面目な話をしとるんだぞ。」
生きるかぬかの話をしていると言うのに、なんとなくのんきな方向へ話がそれて
いくのはこの夫婦によくあることではあるけれど、『灯台もり』と言う言葉の持つ、
漠然としたロマンチックな響きのせいもあるかもしれなかった。
「そう言えば・・・戦争中でもまったく食べ物には事欠いておらんようでしたね。」
「海のそばで魚には不自由せんし、ましてや今は戦時中ではないけん、給料さえ
 もらえば食うに困ることはないからな。」
「でも・・・漫画はもうええんですか?」
「うむ・・・。」                                     
このひとに漫画をあきらめることなど出来るのだろうか・・・?去年の冬、フミエが風邪を
引いて鼻紙を買うお金さえなかった時、一度だけ『漫画やめて、映画の看板描きにでも
なるか?』と茂が弱音を吐いたことを思い出す。
(あの時のお父ちゃんの寂しそうな顔・・・。)
映画の看板描きならまだしも絵を描く仕事だが、灯台もりは全然お門ちがいではないか。

231 :
「ええんだ・・・。非番の日もあるけん、ヒマな時に絵を描けばええ。元々俺は、好きな絵で
 手っ取り早く金になるけん紙芝居や貸本漫画を描くようになったんだからな。」
「あなたがそう言われるんなら、私はどこへでもついて行きますけど・・・。」
「まあもうしばらく食っていく手立てを考えてみて・・・どうにもいけんとなったら、
 イカルに手紙書いてみるか。」
二人はそれぞれ千々に乱れる想いを抱えながらぼそぼそと夕食を終えた。
「おーい、ろうそく持ってきてくれ!」
食後もろうそくの灯で漫画を描いていた茂は、ろうそくが尽きそうになっているのに
気づいて大声でフミエを呼んだ。
「もう、これしかないんです・・・。」
二階で藍子を寝かしつけていたフミエが、燭台を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「なして買い置きしておかんのだ・・・。」
不平を言ってはみたけれど、買い置きしてない理由はわかっている。
「しかたない。明日早起きして描くことにして、今夜はもう寝ちまうか・・・。」
最後の灯りが消える前に、ふたりは二階に上がった。
「灯台いうのは、みんな最果てにありますねえ・・・。」
「まあ、灯台が町なかにあっても意味ないからな。」
布団に並んで横たわり、ふたりはまた灯台もりの話をしていた。
「どこへやられるかわからんのは、かなわんなあ・・・。」
映画では、北海道の原野の果てから、九州の離れ小島まで、主人公夫婦は日本中の
辺境をたらいまわしにされていた。過酷な自然と闘いながら灯台を守る暮らしの中で、
台員とその家族たちはさまざまな辛酸を舐める。
 けれど、世間から忘れ去られたような場所だからこそ、そこに暮らす夫婦はみな、
助け合って仲睦まじく暮らしていた。
『世間の人は、私たちがこんな所で苦労をしていることなんか知らないでしょうね。』
『お前の苦労は俺が知っている。俺の苦労はお前が知ってくれているじゃないか。』
病の床に臥し、遠くの町にいる子供のことを思いながらんでいく妻に、夫がかけた
セリフが印象に残っていた。
(どげな苦労しても、一番近くにいる人がわかってくれたらそれでええんじゃない
 かしら・・・。)
そんなことを考えながら、フミエはいつしか眠りに落ちていった。

232 :
(こげなことなら、もっと早ことなっとったらよかったなあ・・・。)
夢の中で、茂は灯台もりになっていた。
 どこか知らないが、温かい南国の海辺の陽光の中で、茂は満ち足りた気分でのびをした。
絶海の孤島に立つ灯台に波しぶきが寄せる風景をキャンバスに描きながら、フミエの作る
夕食を待っているところだ。
(しかし、海と灯台ばっかり描くのにも飽きたなあ・・・。今度本土に帰ったら、
 用紙を買うて、また漫画描いてみるのもええかもしれん。)
趣味で漫画を描こうなどと思えるのも、衣食住ともに足りている余裕からだった。
「お・・・荒れてきたな。」
西の方から黒い雲が湧き出し、ぽつりぽつりと降り出した雨が次第に激しさを増してくる。
茂はあわてて油絵の道具をしまい、官舎へと歩き出した。
(今日の晩メシは何だろうな・・・朝釣った魚かな?)
のんきなことを考えながら官舎の玄関を入って、茂は凍りついた。
「・・・フミエ!おい、どげした?!」
通り土間に、フミエが倒れている。大きなお腹を守るように両手で抱えてぐったりと
横たわる姿に血の気がひいた。
「しっかりせえ・・・産み月はまだ二ヶ月も先でなーか!」
油絵の道具を放り出し、フミエを板の間に担ぎ上げる。
「いた・・・急にお腹が痛うなって・・・。」
風雨が古い官舎の下見板の壁に叩きつけている。無線で助けを呼んだけれど、この嵐
では来てもらえそうにない。
「こうなったら、俺がとりあげてやるけん!」
茂は覚悟を決め、痛みにうめくフミエの腰をさすってやった。ずっとつきっきりで
励まし、陣痛が遠のいた隙に湯を沸かし、出産の準備を整える。
「がんばれよ・・・何も心配せんでええからな。映画でも雪で産婆が間に合わんで、
 ダンナがとりあげとったんだけん。」
 けれど、陣痛は次第に弱まり、いっこうに子供が生まれてくる気配はなかった。
「あなた・・・私、なんだかもうダメなような気がするんです・・・。」
長びくお産に、フミエの体力はもう限界に来ていた。
「何を言うとる?気をしっかり持て!」
手を握ってやったが、痛みの強い時に万力のような力でにぎり返してきたその手には、
もう力がこもっていなかった。

233 :
「おい、しっかりしろ!フミエ・・・!」
茂は絶望的な気持ちで、次第に蒼ざめていくフミエの顔をみつめた。
「んだらいけん!お産でぬと産女(うぶめ)という妖怪になるぞ!」
だが、何を言っても、もう冥界のふちに足を踏み入れているようなフミエには届かない。
「・・・藍子は!藍子はどげするんだ?お腹の子は?・・・ぬな!」
茂は声を嗄らして叫んだ。
「ぬなーーーーーっ!!」
 とたんに目が覚めた。あまりに現実感を伴う夢に、一瞬今自分がどこにいるかわから
なかった。飛び起きて見回すと、隣りにはフミエ、その向こうには藍子が眠っている。
「夢・・・か。」
大きく安堵のため息をつく。心臓はまだドキドキしていて、いやな汗をかいていた。
 今の大声で起こしてしまったのではと、フミエの寝顔を見る。暗くてよくわからないが、
なんだかうなされているようだった。
「ぃゃ・・・ぅ・・・ぃゃ・・・。」
近づいてよく見ると、フミエは悲しそうに顔をゆがめ、いやいやをするように首を横に
振っている。
(悪い夢でも見とるのか?・・・まさか俺と同じ夢か?)
「おい・・・どげした?おい・・・。」
肩を揺すり、声をかける。フミエがうなされるのをやめ、ゆっくりと目を開けた。
「・・・ぁ・・・あなた・・・タコは?」
「・・・タコぉ?」
意表をつく言葉に、茂はかなりずっこけた。
「どげな夢見とるんだ、お前は・・・。」
あきれている茂の顔を、フミエが下からガッチリと掴んで生存を確かめるように
まじまじと見た。
「な・・・何をそげに見とる?」
「あんまり本当のような夢で・・・あなたがタコに食べられてしまったとばっかり・・・。」
フミエは安心したように、ちゃんと生きている茂の頭を胸に抱きしめた。
「よ、よせ・・・くるしいが。勝手に俺をさんでくれ!」
茂は苦しがって、手を放させようとフミエの胸の先端をきゅっとつまんだ。

234 :
「ゃ・・・ん。」
甘い声を漏らした唇を奪い、深くむさぼる。口腔内を愛撫しながら乳首をさらに弄ぶと、
鼻にかかった声をあげ、甘く応えてきた。
「・・・目ぇ、覚めたか?」
「・・・はぁ・・・は、はい・・・。」
唇を離すと、フミエはもう少し火が点いた身体を小刻みに震わせながらうなずいた。
「化けダコの夢でも見たか?」
フミエの溶けかけた表情がびくりと締まって、真剣な顔でみつめ返す。
 本人にとっては現実と紛うばかりの恐ろしい夢だったのだろう。茂は笑いをこらえ
ながらフミエの夢の話を聞いた。
「あなたが灯台もりになられて・・・最初はよかったんです。お給料はもらえるし、
 食べるものには事欠かんし・・・。赴任地も暖かい南国の海辺でした・・・。」
俺の夢と同じだ・・・茂は不思議に思い、次第に話に引き込まれていった。
 灯台の灯をまもり、非番の日は絵を描くおだやかな暮らし・・・。茂の釣ってきた魚が
食卓をにぎわし、庭に生えている夏みかんの木にたわわに実がみのる。
「藍子、お手伝いできる?・・・ほぉら。」
フミエがはさみで切り取った夏みかんを渡すと、藍子が真剣な表情で小さな両手に
余る大きな果実を大切そうにかごに入れる。幸せなひととき。ぽつり、と雨のしずくが
小さなほおに落ちた。
「あら、降ってきた・・・大変、シーツ干しっぱなし!藍子、おうちに入ってなさい。」
藍子を官舎の中に入れると、フミエは大急ぎで洗濯物を取り込んだ。大きなシーツを
取り払った向こうに、灯台に迫り来る真っ黒な雨雲が見えた。
 官舎の中では茂がゴム引きの雨合羽を着て出かけようとしている。
「ガイな嵐だ・・・灯を守らんといけん!」
「で、でも・・・大丈夫なんですか?」
「この嵐に灯が見えんだったら船が座礁してしまう。そうしたら俺もクビだ!」
雨が下から降ってくるような暴風雨の中、茂は岬の突端にある灯台に向かった。 

235 :
『はははははは・・・。』
フミエは自分の目を疑った。荒れ狂う海の上に、着物姿で背に琵琶の袋を背負い、
杖をついた巨大な座頭が現れたのだ。
「おと、お父ちゃん・・・行っちゃダメ!!」
茂が灯台に向かって走っていく突堤に大波が叩きつける。滝のような雨と波しぶきで、
茂にはこの怪異は見えていないのだろうか。
巨大な座頭はその手を突堤の上の茂に近づけた。どこからともなくべんべんと鳴り出した
琵琶の音が不吉に響いている。
「お父ちゃん!あぶない!!」
座頭の手が一歩及ばないところで、茂は海中から伸びてきた触手に巻き取られて宙に
浮かんだ。
「きゃあああ―――――!!」
 嵐の中に走り出て叫び続ける母親の様子のただならなさに恐れて、官舎に取り残された
藍子も泣き叫んでいる。
『あとから来といてなんじゃ・・・その人間はわしのじゃぁ!』
座頭が触手を打とうとして振り下ろした杖に、別の触手が巻きついて引っ張り合いに
なる。座頭は杖を放り出して化け蛸に組みつき、蛸はありったけの触手で座頭を締めつけた。
巨大な怪物二体の組んずほぐれつの格闘に巻き上がる水しぶきは灯台よりも高く、
フミエにはもう何も見えなくなった。
「・・・お父ちゃん?・・・お父ちゃんは?!。」
わずかの間気を失っていたのか、気づけばもう妖怪の姿は無く、波は静かになり、
黒雲さえはるか遠くに去り始めていた。だが、茂の姿はどこにもない。化け蛸に
つかまったまま海底に引きずり込まてしまったのだろう。
 フミエは海に走り込み、何事も無かったかのように青く凪いでいる水面をたたいた。
「・・・いや!・・・いや!・・・いやあああ!!」

236 :
そこで茂に揺り起こされたのだ。
「お前、よう海座頭なんぞ知っとるな。」
「・・・海座頭と言うんですか?あれ・・・。」
「俺の本で見たのか?」
「いいえ・・・あなたの本棚にある本は、あなたの漫画しか読んだことありません。
 古い本の妖怪の絵は、おどろおどろしくて怖いんですもの。」
「ふうむ・・・なら、なんで知っとるんだろうな?」
「わかりません・・・昔、おばばに聞いたのかも・・・。」
そう言ったものの、おばばからそんな話を聞いた覚えはなかった。フミエはちょっと
身の毛がよだつような気がして、茂にしがみついた。
「ようわからんが、またおばばがお前を助けてくれたのかも知れんな。いくら貧乏
 しとるからと言って、今更よう知りもせん灯台もりなんぞになってもうまくいかんぞ、
 と教えてくれたのかもしれん。」
腕の中で震えるフミエの細い身体をぎゅっと抱きしめる。抱き返してくるフミエの
唇を舌でなぶりながら浴衣のすそを割り、下着の中に手をしのばせる。
「・・・な・・・なしてそげなるんですか?」
「こわい夢見たと言うけん、慰めてやっとるんじゃないか。」
文句を言いながらも、先ほどの口づけでフミエの花はとうに蜜をたたえていた。
「んは・・・ぁ・・・ゃ・・・。」
蜜にまみれた指をぬるりと前に滑らせる。いたずらな指を核心からずらそうとフミエが
大きく腰をよじった。
「ん・・・?こっちの方がええのか?」
後ろの方にずらされた指を、わざと意地悪く秘裂の中へ挿し入れる。
「ち、ちが・・・ぁあ・・・っや・・・ぁっ・・・だめ―――――!」
指をふかめ、他の指を花蕾に押し当てる。特に動かさなくても、責め具を呑みこまされた
腰は勝手に踊り、いとも簡単に達してしまう。
 指を抜き取って弛緩した身体をそっと自分の上に抱き上げる。上になったフミエが、
涙に濡れた目を閉じて唇を重ねてきた。
「んっ・・・ふぅ・・・ん・・・。」
むさぼりあいながら下着を引きおろすと、フミエはもどかしそうにすっかり脱ぎ去った。
手をつかんで硬起した雄芯を握らせ、臀をつかんで引き寄せる。フミエはあえぎながら
握らされたものを自らへと導いた。                             
「見たら、だめ・・・。」
手でつかんで挿入れるさまを見られぬよう、茂の目を片手で覆う。笑ってその手をつかみ
のけ、早くしろと言いたげに腕を引っ張った。
 羞恥と欲望に目のふちを紅く染めながら、自らを責める凶器を迎え入れていくフミエを
見ないでおく手はない。

237 :
「は・・・っぁ・・・ん・・・ぁあ――――。」
甘くせつなく啼きながらすべてをおさめると、フミエはほぉっとひとつ息をついた。
(熱い・・・な・・・。)
茂を包む肉身も柔肌も、吐息をもらす唇も、全てが熱く息づいている。
(当たり前、か・・・。)
バカな夢を見たものだ、と苦笑しながら、それでも腕の中で刻々と体温を失っていった
身体の感触を思い出して心が冷える。目を閉じて、熱くてきついフミエの内部に自身が
押しつつまれている感覚だけに身をまかせた。
 フミエの手が帯を解いて襟の合わせをくつろげ、素肌に手を滑らせてくる。
「ぁあ・・・しげぇ・・・さん・・・。」
今、自分をつらぬいている器官の力強さを思えば、さっき見た悲劇は悪夢にすぎないと
確信出来そうなものなのに、フミエは裸の胸にほおを押しつけ、体温と鼓動を確かめず
にはいられなかった。
(よかった・・・夢で・・・。)
生命の匂いを嗅ぐようにすうっとふかく息を吸い込み、愛する人のぬくもりを味わう。
「・・・っゃ・・・ぁんっ・・・!」
いつまでたっても動かないフミエに焦れて、茂が下から突き上げた。フミエはびくりと
頭をあげて跳ね起きた。追い討ちをかけるようにいく度か打ち込まれ、走りぬける快感に
身悶える。あえぎながら身体を前に傾け、懸命に茂の上で腰を波打たせ始めた。
「ぁ・・・ぃ・・・っぁ・・・あんっ・・・!」
フミエの動きと絶妙にずらされた突きが下からうねるように加えられる。嵌まりあった
部分が上下するたび導き出されるしたたりが、茂の下腹を濡らした。
「・・・っも・・・だ・・・ぁあ・・・――はぁ――は・・・。」
小さな到達がいくつも訪れながら、全き解放にはいたらず、フミエは広い胸に倒れ込んで
荒い息を吐いた。                              
 ぐんなりと緩んだ身体を抱いたまま、茂が起き上がった。立てた左膝にフミエを
もたせかけると、お互いの脚を交差させ、腰を入れて斜めの結合を深める。
「・・・っ!っ――――ぁあ・・・!」
深すぎる繋がりにあえいで、膝にもたれたフミエが身体をよじった。のがさぬように
大腿で押さえこみ、浮かせた腰を何度か突き入れる。

238 :
「ぁ・・・ぁっ・・・っあ・・・ぁあ―――――!」
茂の膝の上にのけぞり、突き出した腰をけいれんさせてフミエが達した。そっと胸の上に
抱き取って休ませる。ぴったりとくっついた胸の鼓動がじかに伝わってくる。
「・・・ゃ・・・ぁあ・・・。」
つながったまま起き直り、肩につかまらせたフミエを支えながら覆いかぶさる。まだ
脈うっている内部にぐっと深く押し入られて、フミエが弱々しく啼いた。
「・・・ぁっ・・・ゃっ・・・あっ・・・あんっ・・・。」
大きく拡げさせた両腿の中心を穿つ音が深夜の閨にひびき、切迫したフミエの
あえぎがそれに重なった。
「・・・んぁんっ・・・ゃっ・・・それだめっ・・・ぁあっ・・・!」
フミエの片脚をつかんで抱え上げ、松葉が絡んだように脚を組み合わせて腰を入れる。
「だめっ・・・それ・・・ぃっちゃうからっ・・・。」
「・・・イったら、いけんのか・・・?」
苦笑しながら脚を折り曲げてのしかかると、フミエはのたうってシーツをつかみしめた。
「・・・ぃっちゃ・・・ぅうっ―――――!」
貞淑なフミエとは別の生き物のように貪婪な肉の襞に吸いつかれ、搾り取られる。
「・・・く・・・っ・・・。」
歯を食いしばって身体を硬直させ、いとしい脈動の中にすべてを注ぎ込んだ。
「・・・ゃ・・・はなれん、で・・・。」
息をおさめ、身体を離そうとした刹那、フミエの両腕がからみついた。
「・・・なんだ、まだ足らんか・・・?」
「ち、ちがいます・・・けど、もう少し・・・。」
フミエが下から柔らかい唇を押しつけてくる。共にのぼりつめた後の、気だるい
しびれの中でつながりあっていると、上も下も溶けていきそうに心地よい。         
「・・・ウチにもタコが一匹おるぞ。」
満ち足りてうっとりと見上げてくるフミエに、わざとそんなことを言ってからかう。
「・・・だ、誰のことですか?」
「さっきは吸いされるかと思うた・・・。」
「もぉ・・・いっつも私ばっかり好キモノみたいに言うて・・・・・・んぁん・・・っ!」
ふくれて横を向いた途端、ずるりと引き抜かれ、フミエが大きくあえいだ。
 まだ尖っている乳の先端を挨拶代わりにきゅっと吸ってやり、ごろんと横になると
頭の下に腕をかった。

239 :
「ふうむ・・・大ダコと海座頭が、人間を取り合って大たちまわり・・・か。もう少し
 肉づけすれば漫画になるな。食い詰めて灯台もりになった男・・・灯台を仲間だと思って
 年に一度もののけ達が集まってくる・・・いやいや、そげな話は前に本で読んだな・・・。」
今聞いたばかりのフミエの夢の話を、もう漫画に生かそうとブツブツ言い始めた。
「ふ・・・ふふふふ・・・。」
目を閉じて甘だるい余韻の中にたゆたっていたフミエが、おかしそうに笑った。
「なんだ・・・何がおかしい?」
「だって・・・あなた、もう漫画のスジを考えとられる・・・。」
「ああ・・・そげだ。やっぱり漫画はやめられん。」
「・・・よかった・・・。」
フミエは茂の裸の胸に寄り添った。
(私は、漫画描いとるしげぇさんが好き・・・。貧乏してもええの・・・漫画をやめたりして
 ほしくないけん・・・。)
「・・・知っとるか?海の底には化けハマグリがおって、蜃気楼というのはそいつが
 吐き出す怪しの瘴気なんだぞ・・・。」
フミエは幸せそうに目を閉じた。茂が熱心に海の底に住む妖怪について語る声がだんだん
遠くなる。
「・・・おい、聞いとるのか?・・・なんだ、寝てしまいおって。」
返事がないので顔をあげて見ると、フミエはもう眠っていた。茂はちょっと不満げな顔を
したが、寝顔をしばらくみつめた後、やすらかな寝息をたてる唇にそっと口づけた。
 結核で入院していた三海社の深沢が復活してまた出版社を立ち上げ、村井家を訪れて
来たのはそれから間もなくのことだった。
 深沢が払ってくれた原稿料のおかげで、フミエは藍子を連れて里帰り出来ることになった。
未払いの原稿料を払ってくれただけでなく、深沢は新しい仕事をくれ、さらにいずれ
創刊する漫画雑誌の連載をも依頼してくれた。
 先の見えない暗闇のような貧乏生活に、ようやく明るい陽射しが射し込んで来始めた。
「・・・ひさしぶりに安来に帰れる・・・ウチのみんな、元気にしとるかなあ?東京みやげ・・・
 何がええかしら?そうだ、靖代さん達に聞いてみよう!」
三年半ぶりに会う家族の顔が目に浮かぶ。フミエは飛び立つような気持ちで、いそいそと
里帰りの準備をはじめた。

240 :
>>227
GJです!
if灯台守ストーリーな夫婦良かったです!
茂さんの見た夢は悲劇的なのに、フミちゃんの見た夢は妖怪VS大怪獣みたいで、可笑しかったw
おばばが見せてくれた夢なら素敵ですね。
エロは相変わらず素晴らしいですわ〜。
どっちも好きモ(ry

241 :
>>227
GJ!
夫婦やエロももちろんだけど、藍子とふみちゃんと夏みかんに一番萌えたw

242 :
>>227
GJ!
ちなみに、デコちゃんの自伝面白いですよ〜
子役の時からの大スターでものすごくひねたガキだったようですね

243 :
>>227
GJです!
投下された文をざっと見た時にタコの文字にやたら注目してしまって
もしやあの有名な春画から着想を得た触手攻めが!?と思ってしまったw

244 :
明日の、風邪ひき以来の寝巻と髪ほどきしたふみちゃんが楽しみすぎる

245 :
今日の財布を開いて「( ´゚д゚`)アチャー」って顔が可愛いかった

246 :
>>245
アチャーの顔可愛いよね
しっぱいっとかも可愛い

247 :
もう貧乏終わりなんだなぁ…
あっという間すぎる…

248 :
あまりいつまでも貧乏してると、そのうちフミちゃんが集金の人に
「もうちょっとだけ待ってください。何でもしますけん…」
とかいって身体で払うはめに……

249 :
今日の東京は蒸し暑かったけど豊川さんもこんな日に来たのかな。
村井家は扇風機もないから、こんな日は行水で涼をとってたんだろうか。
もしも行水中のふみちゃんのところに豊川さんが来たら...

250 :
>>249
藍子と行水しますねーとしげーさんに言ったのに生返事されてもうっと思いつつ行水して
出てきたところでしげーさんと鉢合わせてなんてかっこしとるんだ!と言われる展開を妄想
新婚時代にやったらもっと大変な事になっちゃうなw

251 :
外から藍子とふみちゃんのキャッキャッウフフを聴きながら、汗を拭き拭き原稿に向かうシゲーさん。
暫くして部屋に戻って来たびしょ濡れふみちゃん、ブラウスがスケスケ…
其処へ編集者が

252 :
>>250
生返事したくせに、フミちゃんのせくすぃな姿見て
「なんてかっこしとるんだ!」
ゲゲさん、絶対言いそう!勝手にプンスカしちゃうゲゲが大好きだ〜w


253 :
>>251
親子のキャッキャウフフいいなぁ
今の藍子もいいけど里帰り藍子と初代布美ちゃん藍子も捨て難い

254 :
>>251
藍子は、行水の姿のまま豊川さんの前に飛び出してくる展開希望

255 :
豊川さんに貸本の金回りの話しちゃってる時とか電話番してる時とか
なんであんなかわいいんだ

256 :
ひさしぶりにネタをいただきました。
「行水、豊川さん、スケスケ」の三題噺というだけで、皆さんのレスのような
ほのぼの系にはなりませんでしたが・・・。
フミエの着ている『シュミーズ』というのは、キャミソールとペチコートが一体に
なった、昔は一般的だった女性用下着です。昭和っぽいかなと思いまして・・・。

257 :
「おかあちゃん、きんぎょ、きんぎょさん!」
「はいはい。きんぎょさんにお水いれましょうね。」
夏の日の昼下がり。フミエは庭に出したたらいに水を張り、藍子を行水させていた。
 眠いのに暑くて眠れずぐずっていた藍子は、すっかり機嫌が直って大はしゃぎ。
お気に入りの金魚型のブリキのじょうろに水を入れては、たらいに注ぐことを飽くこと
なく繰り返し、きゃっきゃと歓声をあげている。
「ぱしゃーん!ぱしゃーん!!」」
「・・・わっぷ、藍子、やめて!」
思い切り水面をたたくと水が派手に跳ね飛ぶのを発見した藍子は、フミエが止めるのも
聞かず、今度はそれに夢中になった。
「もぉ・・・びしょぬれになってしもうたじゃないの・・・。」
濡れることはわかっていたので、ブラウスは脱いでシュミーズ姿になっている。
姉の暁子にもらったそれは、化繊で胸元に少しだけレースと小さなリボンがついた、
へんてつもないものだが、フミエが以前よく来ていた木綿のものと違って、濡れると
途端に肌にくっつき、中身が透けて見えた。
『ゴロゴロゴロ・・・。』
どこかで雷が鳴り出した。真っ白な入道雲とまぶしい陽射しが、ふいに翳った。
「いけん・・・夕立がくるわ。藍子、おうちに入ろう。」
「いやーーー!もっとあそぶのー!」
バスタオルでくるもうとすると、もっと遊んでいたい藍子は身体を水の中に沈めて
抵抗した。
「藍子・・・。言うこと聞かんと、雷様におへそ取られちゃうよ!」
そういっている間にも、あたりは夏の昼間とは思えないほど暗くなり、冷たい風が
吹き始めた。おへその脅しが効いたのか、しぶしぶ立ち上がった藍子をバスタオルで
くるんで抱き上げ、フミエは縁側へと運んだ。

258 :
「こげに冷えてしもうて・・・さあ、よーく拭かんと。」
「いやーー!」
逃げようとする藍子をつかまえ、縁側に立たせてごしごし拭いてやるうちに、
外は大粒の雨が激しい勢いで地面を叩き始めた。
「・・・いやー、まいった。大変な雨ですね。」
男の声に振り返ると、雄玄社の豊川がかばんを傘代わりに頭の上にかざして縁側に
走り込んできた。
「豊川さん・・・。」
フミエは思わず居ずまいをただして頭を下げたが、自分がどんなかっこうをしている
のかはすっかり忘れていた。
「・・・玄関で声をおかけしたんですが、お返事がないものですから、庭へまわらせて
 いただきました・・・。」
言いながら、豊川の目がフミエの胸元に釘付けになるのを感じ、フミエがあわてて
手で隠そうとしたその時。
『ガラガラガラ・・・バッッシャーーーン!!』
あたりの空気が変わるような衝撃と、夕方のような薄暗さをつん裂く閃光と共に、
明らかに近くに落ちたと思われる雷鳴がとどろいた。
「きゃぁっっっ・・・!!」
恐ろしさに、フミエは思わず豊川の胸に飛び込んでいた。反射的に、その細い身体に
腕をまわしてしまった豊川は、理性では離さなくてはと考えながら、動くことが
できなかった。
(なんて華奢なんだ・・・このひとは。)
腕の中の身体は折れそうに細く、濡れた肌は冷たくしっとりとしてかぐわしかった。
その肌に唇を這わせたい衝動を必で抑える時間は、ほんの一瞬であるはずなのに
永劫のように長く感じられた。
「あ・・・す、すみません。私、雷がほんに苦手で・・・。」
フミエがハッと我に返って、豊川の胸から顔を離した。豊川も腕を解こうとして
ゆるめた瞬間、うす暗い家の中に立っているこの家の主人と目が合った。

259 :
「・・・何をやっとる。」
静かだが、明らかに不機嫌な声だった。フミエは弾かれたように豊川から身体を離した。
「あ・・・お、お父ちゃん。お帰りなさい。」
茂のシャツが濡れている。散歩に出かけ、帰りがけに夕立にあったものとみえる。
「お留守にあがりこんで失礼しました。玄関でお返事がないので、庭にまわらせて
 いただいたのですが、近くに雷が落ちて・・・。」
豊川は、今の今まで自身を襲っていた妖しい衝動を意識から払い落とし、いつもの
端正な編集者の顔に戻った。あわてる風でもなく、人妻を腕に抱いていたことの言い訳を
さりげなく挨拶に混ぜる豊川を、茂はじろりと睨んだが、後は何も言わなかった。
「あらあら・・・藍子、おねむね。すんません、ちょっこし寝かしつけてきます。」
フミエは縁側に脱ぎ捨ててあったブラウスを羽織ると、バスタオルにくるまって
おとなしく待っていた藍子を抱き上げた。水遊びで疲れたらしく目が閉じそうになって
いる藍子を二階へ連れて行って寝かしつけ、階下へ降りてくると、茂と豊川は何事も
なかったかのように仕事の打ち合わせをしていた。フミエは気まずい思いでお茶を淹れ、
茂の後ろに控えていた。
「それでは、その線でお願いします。何かあったらご連絡ください。」
いつもなら茂の仕事場を興味深く眺めたり、なにかと世間話をしていく豊川だが、
さすがに今日は気が引けるのか、早々に帰って行った。
(お父ちゃん・・・怒っとるのかしら、さっきのこと・・・。)
豊川が帰るやいなや仕事部屋に引っ込み、茂は机に向かって仕事を始めた。
「お父ちゃん・・・お茶淹れかえましたよ。」
茂は豊川のみやげの大判焼きにもお茶にも手をつけていなかった。フミエは香ばしく
淹れかえたお茶と、菓子の皿を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「・・・・・・。」
茂は返事をするどころか、こちらを向きもしない。
「あの・・・さっきのこと、ですけど・・・。藍子を行水させとったら、急に豊川さんが
 見えられたけん、服着るヒマも無くて・・・。そしたら近くに雷が落ちて・・・。」
勇気を振り絞って釈明をし始めたのに、茂が何も反応してくれないため、フミエの
声はだんだんと先細りになっていった。

260 :
「す・・・すみません!私・・・子供の頃から、雷様がほんに怖くて・・・。豊川さんにも
 失礼なことしてしもうて・・・。」
必で声をはげまして謝り、フミエは手をついて頭を下げた。そのままじっとして
いると、目の前にある手をつかまれてぐいと引かれた。
「・・・?」
手をついたまま下から見上げると、茂がブラウスのボタンに手をかけて命じた。
「・・・脱げ。」
「え・・・。」
「さっきと同じようにしてみせえ。」
フミエはしかたなく身体を起こすとブラウスを脱いだ。化繊のシュミーズはとうに
乾いて、透けてはいなかったが薄い生地をとおして乳首のありかはわかる。
 茂は茶碗をとりあげて茶を口に含むと、そのまま口を寄せてフミエの乳首を
包み込んだ。
「・・・ゃ・・・。」
あたたかく、濡れた感触に思わず総毛だつ。もう片方にも同じことをすると、
生地が胸肌に張り付いて、ふたつの尖りはその色さえも生地の表面に表し出した。
「んや・・・な、なにを・・・。」
横座りのまま後ずさりするフミエを本棚まで追い詰め、茂はシュミーズの生地に
透けて見える紅い実を指で弄り、唇で舐め吸って責め始めた。
「・・・っは・・・はぁあっ・・・んんっ・・・。」
いつもなら、肌をかさね、口づけを深め、舌や指が身体をとろかし・・・繋がりあう
前にさまざまにフミエをほぐしてくれるのに、今日は胸の尖りばかりを苛めてくる。
「なし・・・て・・・。」
ふたつの先端からじんじんと伝わってくる快感は、下腹部にたまる一方で、あえぎ
っぱなしのフミエの喉は乾き、目は涙でいっぱいになった。
 罰されている・・・痺れる頭で、そう感じていた。フミエが豊川に見せてしまった、
生地ごしの胸の粒・・・。それは本来、茂のものなのだ。頭のてっぺんから足の先まで、
外からはうかがい知れない内部までも、自分が茂に所有し尽されているという感覚が、
フミエにはあった。茂のものである身体を、他の男に見せてしまったのだから、
こうして罰され、所有者の印を捺しなおされるのも当たり前のような気がしてくる。

261 :
「・・・ぁあ!・・・あっ・・・は・・・。」
でも・・・苦しすぎる。寂しすぎる。フミエはいつまでも胸に顔を埋めて尖りばかりを
責め続ける茂の頭を抱きしめ、腰をあげて茂にすり寄せた。 
 ふっ・・・と茂が唇を離し、起き直った。本棚に寄りかかったまま、フミエは荒い息を
つきながら、涙でにじんだ目で茂を見つめた。
 ずいと近寄られ、口づけを期待したが、脇をかかえて膝立ちにさせられただけだった。
スカートのホックを外して落とし、シュミーズの裾をまくりあげて下着をも下ろした。
くるりと後ろを向かされ、腰をつかんで引き寄せられる。身体を支えるために、
自然と手を前につき、振り返ろうとした瞬間、潤いも確かめずに剛直が突き立てられた。
「・・・ひゃっ・・・ん・・・ゃめっ・・・!!」
執拗に胸をなぶられたせいで、フミエの秘裂は羞ずかしいほど蜜をあふれさせている。
けれど、口づけも甘い触れ合いもなくいきなり挿入れられたことに、フミエの心は
傷ついていた。
(狭い・・・な。)
濡れてはいるけれど、茂の前進を拒むようなフミエの肉襞のきつさは、一方的に乳首
ばかりを責め、口づけも指の戯れとて無い強引な交わりに抵抗を示すフミエの心を
表しているかのようだった。
 何度抱いても、フミエは後ろからの挿入に少し戸惑いを見せる。けれど、いつもなら
肩に口づけたり、不安げに振り返る唇を吸ってやったりして宥めるのが常だった。
「・・・は・・・ぁ・・・ぁ、あ・・・!」
口づけを求めて振り返りもせず、挿入の瞬間に耐えているのは、この仕打ちに対する
ささやかな抗議なのか・・・。挿入れる方も歯を食いしばり、じりじりと進んだ。
(どこまで、我慢できるかな・・・。)
 圧倒的な異物感も、やがては空恐ろしいほどの快感に変わる。数え切れないほど
いとしまれる内に、フミエはそういう身体に作り変えられてしまっているのだ。

262 :
「・・・っく・・・ぁ・・・。」
根元まで押し込んで、やわやわと食い締めてくる内部の感触に身をゆだねる。フミエの
四肢も心なしか緊張がゆるんだけれど、今度は代わりに快感に襲われ始めているらしく、
甘い吐息と共に、妖しくうごめく内部がそれを直接茂に伝えてくる。
「ぁあ・・・ゆるして・・・達かせて・・・。」
身体の中心に、絶えず毒のような快感を注ぎ続ける肉塊を打ち込まれたまま、それ以上
何もしてもらえない苦しさに絶えかねて、フミエが懇願した。
「も・・・もぅ、あげなことせんように・・・気をつけますけん・・・。」
先ほどの失態を謝りながら、フミエは半ば無意識に臀をあげ、結合部をこすりつけて
自ら快感を追い求めはじめた。
「・・・ぁあ・・・っあぅ・・・んぁあっ・・・!」
ずい、と意地悪に引き抜かれて身悶え、次の瞬間また突き入れられて悲鳴をあげる。
抽送はしだいになめらかに、速く激しくなり、フミエもくるおしく腰を揺らして
快感を追った。
「・・・ぁあ・・・ぁ・・・ぁああ―――――!」
前に指をからめられることも、胸を揉まれることさえなく、ただ打ち込まれた雄根に
侵されることだけで追い上げられていく。
 豊川が帰った時は少し小止みになっていた雨がまた激しくなっている。屋根のどこかに
打ちつけるうるさいほどの雨だれの音に、フミエの悲鳴がかき消されていった。
 吸いつき、絞りあげようとする性の唇から己が分身を引きはがすようにして抜き取り、
ひくついているフミエの身体を返してまた身を沈めた。
「・・・ぁあ・・・ん。」
さっきのせつないばかりのあえぎよりは随分甘い声でフミエが啼いた。まつげに
いっぱい涙の玉をぶらさげた瞳がゆっくりと開き、茂を見つめてくる。半開きの唇が、
すぐに奪ってほしいと訴えかけてくる。
「・・・ふ・・・んっ・・・ふ・・・。」
艶めいて柔らかく、甘い唇の誘惑に勝てるはずもなく、ふかく奪って存分にむさぼった。

263 :
「まだ・・・怒っとられるの?」
唇を離すと、フミエがこのうえなく甘い瞳で問いかけた。
「さあ、どうかな・・・。」
茂はそらとぼけてシュミーズを胸の上までたくし上げ、乳首に歯をたてた。フミエが
身体を震わせて締めつけて来る。
「・・・ぁあ・・・また、達きそう・・・。」
フミエは組み伏せられた身体を、泳ぐ人のように揺らし始めた。
「ぁあ・・・ぃ・・・く・・・あなたも・・・―――――!」
一度目の、苦しいような絶頂と異なり、フミエは溶けきった身体を茂にからみつかせ、
甘く口づけ合いながら幸せそうにのぼりつめた。
「く・・・!」
伐とした抱き方をしてやろうと思っていたのに、最後はまたフミエに持っていかれて
しまった。自分で自分を嘲いながら、茂もどこまでも甘いフミエの花の中に放縦にはなった。
「もう・・・怒っとらん?」
つながりあったまま、まだ息も整わぬうちにフミエが聞いた。
「ふ・・・ふふふ・・・。」
茂はおかしくなって笑った。精魂尽き果てるほど愛しあって、苦しい息を整えている
今、まだそれを聞くか・・・?
「別に怒ってなんかおらんぞ・・・俺は。」
「うそ・・・!」
フミエがたちまち目に涙を溜める。自分は茂を怒らせても仕方ないことをしたと
思えばこそ、あのような理不尽な抱き方をされても耐えたというのに・・・。
「あ・・・あなたが許してくれんだったらと思うたら・・・私・・・。」
ぽろり、と涙がこぼれる。
「あー、わかったわかった。もうええけん、泣くな。」
茂があわてて頭を抱きかかえる。フミエは胸に顔を埋めて思う存分泣いた。さっき
後ろから抱かれていた時の寂しさに、今頃になって耐え切れなくなったのだ。
「よしよし・・・わかっとるよ・・・だけん、泣くな。」
茂は困って泣きじゃくるフミエの頭を撫でつづけた。思い切り泣いて、涙が次第に
おさまっても胸に顔をうずめたままのフミエの顔を上げさせ、ゆっくりと口づける。     
 唇が離れ、フミエが愛しさにあふれたまなざしで下から見上げてきた。首筋にも口づけ、
今度は露わになった乳首を口に含んで舐めころがした。

264 :
「ぁあ・・・だめ・・・。」
たった今、激しく愛しあったばかりというのに、またも火を点じられそうになって
フミエは抵抗した。
「き・・・気持ちよく・・・なっちゃうから・・・っ!」
フミエの可愛い狼狽を楽しむように、茂は胸への愛撫をやめない。
「ぁあん・・・く、くすぐったい・・・!」
頭を押し返そうとした腕をつかまれ、二の腕の内側の柔らかい肌をつよく吸われた。
熱い唇がはなれた後には、白い肌に紅い花が散っていた。
「あ・・・藍子が泣いとる・・・目が覚めたんだわ!」
茂が二階の泣き声に耳をすました隙に、フミエは茂の下から滑り出て、はしたなく
まくり上がったシュミーズを整えた。
「ちょっと見てきますけん・・・。」
脱がされたスカートと下着を拾い上げ、手早く身に着けると慌てて階段をあがって
行った。
(・・・見とって飽きん奴だ。)
苦笑しながら起き上がって、茂も身支度を整えた。
 仕事机に向かって、ふと振り返る。古い本棚には、いつもどおり茂が集めた資料や
本が所狭しと並んでいる。ほんの今まで、そこになまめかしい下着姿の女が這わされ、
組み伏せられて責めさいなまれ、快感に啼いていた痕跡の片鱗すらない。
 豊川の腕の中にいるフミエを見た瞬間、茂の中に湧き上がった怒りは、フミエを
奪いつくしてその最奥に自らのしるしを刻み直すことでようやく少しおさまっていた。
(それにしても、あいつは・・・どこまで寛容なんだ・・・。)
そもそもフミエが寛容でなくては、これまでの貧乏暮らしに耐えては来られなかった
だろう。意地悪な抱き方をしても全てを受け入れてくれるフミエ・・・。うぬぼれている
のかもしれないが、それもこれも茂を愛しているからだろうとは思う。           
(だが、ひとが好すぎるというのも考えもんだ・・・。)
相手が豊川だからよかったようなものの、他の男だったら・・・。過ちや災難という
ものは、昔から日常のちょっとした油断をついて起こるものなのだ。・・・フミエが
他の男に穢されることを考えただけで、血が煮える。

265 :
 あの時、下着姿のフミエを腕に抱いていた豊川・・・。胸に飛び込まれて、とっさに
腕をまわしてしまったのだろうが、ひとの女房を、あんなにしっかりと抱かなくても
よさそうなものだ・・・。                                 
(俺なんぞ、あの娘に泣きつかれても、手もまわさんだったのに・・・。)
以前、茂を尊敬していた漫画家の卵の河合はる子が、最後の勝負をかけた漫画の原稿が
雑誌社に受け入れられなかったことを告げに来て、感極まって茂の胸で泣いたことが
あった。茂は慮外のなりゆきに固まってしまい、棒のように抱きつかれるままになっていた。
(女というのは、なんとも思っとらん相手でも、思わず誰かの胸に飛び込んでしまう
 こともあるんだろう・・・それに、フミエはこわがりだけんな。)
フミエが豊川に抱きついてしまったのは、あくまで雷のせい・・・そう信じて疑わない
茂であった。
(だが、あれがイタチだったら胸に飛び込んだりしたかな・・・?)
豊川の顔が浮かぶと、まだ少し胸がざわついた。爽やかで慇懃な態度の陰から、やり手の
編集者らしい野心と頭の良さが隠しようもなく表れてしまう豊川。冷たいエリートではなく、
漫画にかける情熱は深沢や戌井に勝るとも劣らない、魅力のある男だ。茂も好感を
持っているだけに、彼がフミエに時おり向ける好意的な視線が気になった。
(まさか・・・あげな奴がフミエに懸想なんぞ・・・。)
フミエは田舎出の、引っ込み思案のおとなしい女だ。高すぎる背のせいで嫁き遅れ
かけていたのが、縁あって茂に嫁いできた。それから厳しい人生の荒波をかぶりながら
四年の月日を暮らすうち、身も心も深い絆で結ばれてきた二人だった。
(あいつに惚れてやっとるのは、俺ぐらいなもんだと思っとったが・・・。)
他の男から見ても、フミエには意外に魅力があるのかもしれない。夜ごと愛し合うたび、
茂にだけ見せる媚態・・・。あえぎ、表情、肌ざわり・・・茂の名を呼び続け、時には
こみあげる胸の裡をせつなげに告白する声・・・。自分だけがそれらを知っているから
フミエに魅かれるのだと思っていたけれど・・・。
(なんか醸し出しとるもんがあるのかもしれん・・・浦木のような未熟もんにはわからん
 ような何かがな・・・。)
愛されてフミエの魅力が開花したのだとすれば、そうさせたのは自分だと思うとちょっと
嬉しくもあるのだが、複雑な思いで茂はそばにあった大判焼きを取り上げた。

266 :
(とにかく・・・あいつは油断ならん!)
あの傷のある猫に似た、不適な笑いが見えるような気がして、茂は豊川のくれた大判焼きに
がぶりと喰らいついた。
 すっかり雨はあがって、夕暮れの近い空が不思議な蒼色をしている。どこか遠くで
鳴っている雷が、かくされた妬心のようにいつまでも消え残っていた。
 翌日。豊川は何度も躊躇しながらも、村井家を訪れるため再び調布駅に降り立った。
昨日来たばかりで、打ち合わせは済んでいるし、特にこれと言った用事もないのに訪れる
のは、ひとえにフミエのことが心配だからだった。
(先生に誤解されるようなことをしたまま、失礼してしまった・・・。)
いつも冷静沈着な豊川ともあろう者が、あの場面にあってもっと効果的な言い訳を
することはできなかったのだろうか・・・?あの後の打ち合わせの気まずさ、夫人と
抱きあっている自分を見た時の、暗がりで厳しく光っていた茂の目・・・。
(まさか、奥さんに当たったりしてないだろうな・・・?)
茂は、妻に暴力を振るうような男には見えない。彼の作品しか知らなかった頃は、
どんなに暗く不気味な男だろうと思っていたものだが、実際に会ってみると茂は
飄々としておおらかで、妻のフミエと暮らす家は、貧しいながらものんきな明るさに
満ちていた。
(だが、夫婦の間のことは他人にはあずかり知らんことがあるしな・・・。)
はた目には仲睦まじく見える夫婦が、実は妻の忍耐のみのうえに成り立っているなどと
いうことは、よくある話だ。それでも、妻がそれでいいと思っているならば、それで
成り立ってしまうのが夫婦と言うものでもあるのだけれど。
(なんで俺は、あの奥さんのことを、こんなに心配してるんだろう・・・?)
自分が夫婦の間にさざ波を立ててしまったのかもしれない・・・という自責の念だけではない。
豊川は、前からフミエのことが気になっていた。単なる担当漫画家の妻と言う存在を
超えて、フミエというひとりの女性に興味がわいたのだ。

267 :
 赤貧洗うがごとしとはこのことか、と言いたくなるような暮らしの中で、たぶん
生来のものと思われる清潔感と無自覚なユーモアを失っていないフミエ。茂のような
変わった男に寄り添い、身も心も捧げきっている様子は、自分のような部外者にも見て取れた。
(たぶんあのひとは、自分を平凡な女だと思っているだろうが、そうじゃない。)
そもそも夫の茂が非凡な人間なのだが、ひたすら彼を信じ、尽くしているらしいフミエも
また、なんとなく浮世ばなれがしていて、あまりどこにでもいる主婦とは言い切れない。
そんな二人がひっそりと暮らす家を初めて訪ねた時から、豊川はまさに茂の描く不思議な
短編に出てくる、この世ならぬ空間に存在する家に足を踏み入れたような錯覚にとらわれ、
つよく惹きつけられずにはいられなかった。
 かの夫婦について、あれこれ考察しているうちに、いつもは駅からずいぶん遠いと
思っている村井家に着いてしまっていた。
「はぁい。・・・あ・・・豊川さん。」
玄関で声をかけると、出てきたのはフミエだった。昨日の今日なので、豊川の顔を見ると
少し顔を赤らめたが、何事もなかったように中へ招きいれ、茂を呼びに行った。その後ろ姿の、
細すぎる腰からすらりとした脚に向かう曲線が、昨日腕に抱いた身体の感触を思い出させる。
(な・・・俺は何を思い出してるんだ・・・。)
豊川は独り者だが、それは思う存分仕事をしたいからであり、別に女に不自由している
わけでも飢えているわけでもない。自分より年上の人妻に、なぜこうも劣情を
かきたてられるのか、自分にもわからなかった。
(この様子だと、特に波風もたたなかったかな・・・。)
フミエはいつものように明るい声で仕事部屋にいる茂を呼び、茶を淹れてすすめた。
夫婦の間に介在する空気はいつもどおり飄々として明るく、豊川はなんとなく拍子抜けした。
「や・・・先生。たびたびお邪魔してすみません。実は昨日、社に戻ってから先生の漫画に
 参考になるのではないかと思われる資料を手に入れまして・・・。」
茂と目を合わせる時こそ、ひるんではいけない・・・。今日ここに向かう間中考えていた
とおり、豊川はなんら後ろめたいところのなさそうな涼しい顔で茂に対峙した。

268 :
「ほぉ・・・これはどうも・・・わざわざ。」
「それでですね・・・先生が迷っておられた序盤の部分、少し変えられるのではないかと・・・。」
「ふぅむ・・・。これはええ。これで解決できますな。」
最初、何の用だと言わんばかりだった茂が、豊川の適確な提案にたちまち惹きつけられた。
あとはもう、漫画家と編集者に戻って、仕事の話に没頭した。
「それでは、また締め切りの日にうかがいます。長居してすみませんでした、奥さん。」
「少し暗くなってきましたねえ。降らんとええんですけど。」
玄関先まで送ってくれたフミエが、空を見上げて心配そうな顔をした。
「大丈夫です。折りたたみ傘がありますから・・・。おや?」
かばんをポンと叩いて傘の所在を知らせた豊川が、ふと耳をすませた。
「・・・遠くで雷が鳴ってますね。・・・家に入られていた方がいい。」
「え・・・ぁ。」
豊川の言わんとすることを覚って、フミエが真っ赤になった。激しい夕立が叩きつけ、
雷鳴がとどろいたあの時、ほんの一瞬身体を寄せ合った・・・。あの記憶は、ふたり
だけのもの・・・少しぐらいは、フミエにも覚えておいてほしかった。
「それでは、失礼します。」
想いを断ち切るように、豊川は一礼して向きを変え、帰路についた。ついさっき、彼は
気づいてしまった。ブラウスのフレンチスリーブの袖から垣間見えるフミエの二の腕の
内側に、つけられたばかりの鮮やかな紅い花・・・。
(手ひどく奪い返されたな・・・。)
あの後、いつかは知らないがふたりは愛し合い、茂はフミエの肌に所有のしるしを
残したのだろう。フミエの様子が暗くないことから、その交わりが彼女にとって辛いもの
ではなかったことがわかる。
(まあいいか・・・あのひとが幸せなら。)
またこの家を訪れるのが辛いようなたのしみのような・・・自分でもよくわからない感情を
抱えながら、豊川は足早に駅へと向かった。

269 :
>>257
豊×フミ×ゲゲktkr!
GJです!
皆の萌え語りを素晴らしいSSにしてくれる職人様、大好きです!!

270 :
おお!凄いわ、GJ!

271 :
豊川イイネー
それ以上にドSゲゲイイネイイネー!

272 :
いつも投下だんだん!
ゲゲの嫉妬からSモードにスイッチ入ってお仕置き
この流れ大好きですw
貴方の描くフミちゃんは本当に可愛い〜

273 :
>>257
GJでした!
大好物にすら手を付けないしげさんの怒りに萌えましたw

274 :
>>257
GJ!
ドSなゲゲさん最高だ
今日の放送分くらいにはもうよっちゃんがお腹に居たんだろうか…

275 :
今日のふみちゃんの「…だれ?」が超可愛かった
ほんっとにふみちゃんはデカ可愛い

276 :
よっちゃん発覚キター!

277 :
アシスタントの若い男たちがひしめき合う前に仕込んでおいて良かったね
あんな環境では子作りできん

278 :
フミちゃんは「器量はソコソコ」ってイカルに言われたけど
いかんせん、松下奈緒だし
実際の水木夫人も、とても可愛くて上品、女性としての魅力たっぷりな方なのになあ
あの台詞は今でも疑問だわあw

279 :
「人並みの容姿」って設定でも実際には美男美女なのは創作物での定番でしょw

280 :
ふみちゃんの妊娠のタイミングは絶妙だなぁ

281 :
「山茱萸・・・今年も咲いとる。」
ある夜。二階の手洗い所の窓から外を見て、フミエは思わず微笑んだ。
 まだ時おり肌さむい日もある春三月。隣りの空き地の山茱萸(さんしゅゆ)の木が
今年もまた黄色い小さな花をいっぱいつけている。フミエが子供の頃からおなじみの
この木は、春もまだ浅いうちから黄色いほわほわとした花を咲かせ、花の後には真っ赤な
実をいっぱいにつける。
 嫁いで来て間もない春。見知らぬ土地の風景な早春の風景の中で、この花が咲いて
いるのを見つけた時の嬉しさを思い出し、なんだかせつなくなる。
 結婚してふた月と経たなかったあの頃。まだケンカするほど打ち解けてさえいなくて、
よくわからない中、手さぐりで心も身体も少しずつ馴染んでいった日々・・・。
 葉を落とした木々の中に、春を待ちきれぬ山茱萸が花をつけるたび、フミエはあの
淡い日々を懐かしく思い出すのだった。
(あれから・・・いろんなことがあった・・・。)
この先食べていけるのかいつも不安につきまとわれていた日々。月賦が払えず家を
追い出される危機にみまわれたことも、せっかく藍子がお腹にやどっても手放しで
喜べなかったつらい思い出もあった。そんな中で、フミエは茂の努力を信じ、ふたりは
様々な出来事の中で絆を深めてきた。
(今は、お仕事にも恵まれて、貧乏とは縁が切れたけど・・・。)
雄玄社から振り込まれた『人並みの』金額の原稿料に驚いた日を皮切りに、漫画賞の
受賞、少年ランドでの連載開始、プロダクションの旗揚げ・・・。あれよあれよと言う間に、
貧乏だけれど静かでのんびりしていたふたりの生活は、たくさんの人と、途切れなく
迫り来る締め切りの山によって、忙されるようになっていった。
(これから、どげなってしまうんだろう・・・?)
仕事が大きくなればなるほど、雇用主としても作家としてもいろいろな人に対する茂の
責任は重くなるばかりだ。夫の成功を心から喜んでいるけれど、以前とはまったく
違ってしまった生活に戸惑いを覚えずにはいられないフミエだった。
 心細い思いを、ふるさとの花に慰められていた頃とはまた違った寂しさを抱きながら、
フミエは黄色い花をみつめた。

282 :
「・・・あら?あげな所に窓があったかしら?」
山茱萸から横に目を転じたところ、我が家の二階の壁にある窓を、なぜだかフミエは
初めて見た気がした。
 漫画の仕事が増えて手狭になった家を改築したのを皮切りに、何度も増改築を
繰り返し、この家は原型をとどめないほど変貌を遂げている。茂の改築熱が生み出した
謎の扉、不思議な階段・・・家の者でさえ全容がつかめない魔改築の家となりはてたのだ。
 フミエは精一杯顔を近づけて見たが、窓の外につけられた格子のせいで、斜め横に
位置する窓は、格子のすき間に切れ切れにしか見えない。
「うーん・・・よう見えんけど・・・。」
あそこは、納戸じゃなかったかしら・・・?そう思った時、窓が開いた。
「・・・・・・私?!」
窓から顔を出したのは、フミエ自身だった。浴衣を着て長い髪を下ろしているところを
見ると、寝るところだろうか。
(わた、わたし・・・ぬんだろうか?)
もうひとりの自分の姿を見た者は近いうちにぬ・・・ドッペルゲンガーと言う言葉を、
以前茂に教えられてフミエも知っていた。洋の東西を問わずこの伝承は伝えられていて、
日本の怪異をおさめた本にも載っていると言う。
(そんな・・・まだ子供たちも小さいのに・・・。)
脚がガクガクと震え、心臓がのどから飛び出しそうになる。必で恐怖と闘いながら、
幻の自分をもっとよく見ようと格子に顔を押しつけた。
(でも・・・なんか違う・・・。)
勇気を振り絞って観察したおかげで、フミエはあることに気づいた。あそこいにる
フミエは、わずかだけれど今のフミエと違う感じがする。髪型、浴衣の柄・・・。それに、
よく見るとその窓は、枠が木製でガラスも傷んだ、改築前の古いものだった。
(あれは、ちょっと昔の私なんじゃ・・・?)
窓辺に寄ったフミエは、よく見ると浴衣を羽織っただけらしくて、あらわになった胸肌が
瑞々しく、遠目にも白く光っている。髪はほつれ、頬は紅潮して、双眸は情事の余韻に
ぼうと霞んでいる。首もとに紅い痕さえ散見されるその姿は、どう見てもさんざん茂に
愛しぬかれた直後である。

283 :
(や、やだ・・・なして・・・。)
初めて見る事後の自分のしどけない姿に、カッと頬が熱くなる。の予兆と言われる
怪現象なのに、なぜこの姿なのか・・・。
(あれ、何か話しとる・・・お父ちゃんと?)
あちらのフミエが振り返って後ろ、おそらくは茂に話しかけている。茂まで出て来るの
ではないかと身構えたが、フミエはそれからまた外に顔を向けた。そしてふと夜空を見上げ
たかと思うとパッと顔を輝かせ、両手を組み合わせて何事かを祈った。
(・・・知っとる・・・私・・・あれがいつのことか、覚えとる・・・。)
 後ろから大きな手が伸びて来て、浴衣のフミエの肩を抱いた。暗くて家の中までは
よく見えないが、手の持ち主はもちろん茂だろう。フミエが微笑みながら後ろを
振り返ると、大きな手が背を抱きしめた。フミエの後頭部が少し後ろに反っている。
ふたりは唇を合わせ、情交の後の幸福感に身を委ねているのだろう・・・。
(あれは・・・3年前の今ごろ・・・。)
仲睦まじいふたりの姿が、涙でぼやけた。
「藍子、寝とるか・・・?」
暗くした寝室のフスマを開け、茂が小声でささやいた。
「ええ。いつも布団に入るとすぐですけん・・・。」
フミエは起き上がって浴衣の乱れを直した。茂は中へ入ってきて藍子の布団の
そばに座ると、寝顔をのぞきこんでにっこり笑った。
「昼間は編集者が見張っとるけん、ロクに子供の顔見ることも出来ん。」
昨年の暮れに雄玄社の漫画賞を受賞して以来、茂のもとには漫画誌からの仕事の依頼が
引きもきらなくなった。その全てを引き受けた茂は、まだアシスタントも確保できないため、
孤軍奮闘を続けている。
 茂は藍子の上にかがみこんで顔を鼻を近づけ、鼻いっぱいにその匂いを嗅いだ。
「・・・まだ赤ん坊の匂いがするな、よしよし・・・。」
フミエはそんな茂の子煩悩ぶりをうれしげに見守っていた。

284 :
「・・・ン・・・ふっ・・・。」
身体を起こした茂が、振り向きざまにいきなりフミエを抱きすくめ、唇を奪った。
舌を深められ、歯列をなぞられ・・・むさぼられる内にたちまち硬く尖った乳首に指を
這わされ、フミエは羞ずかしげに身をよじった。
「ゃ・・・まっ・・・て。おと・・・ちゃ・・・。」
「おかあちゃんは、反応が早くてええ。」
二指でつまんでこりこりと揉まれ、フミエはその手を押さえながら背を丸めて必で
快感に耐えようとする。
「藍子の寝顔も見たかったんだが、ホントのところは・・・。」
うつむいて身をこわばらせるフミエの耳に熱くささやいた。
「こっちが欲しくて来た・・・脱げ。」
直截なもの言いに、腰が砕ける。興奮に震える指でのろのろと帯を解き、下着をとる。
とうに衣服を脱ぎ捨てた茂が、細い裸身を拉するように抱きすくめ、唇を奪った。
 手をとって早くも天を衝いている男性を握らせながら口中を責めていく。手指に、
反り返る分身のたしかな質感と角度を感じて、フミエは茂の口の中で引き攣るような
呼吸をした。
 唇を離すと、懇願するような瞳で見あげてくる。フミエはそのまま手にした屹立へと
口唇を寄せて、下腹部に顔を埋めた。咥えやすいように膝立ちしてやると、フミエは
両手をついて身体を支え、口唇だけで中心にそそり立つものをほお張った。
 讃美するかのように、角度に沿ってゆっくりとしごきあげる。再び呑みこんで、
唾液にまみれた刀身を、唇をすぼめながらまた吐き出す・・・。数回繰り返したところで、
茂が額に手を当てて押しとどめた。
「もうええけん・・・来い。」
フミエは惜しむようにゆっくりと口から出すと、手の甲で口の端をぬぐった。そのしぐさが
妖婦のようで、早くつらぬきたくてたまらなくなる。
 同じように膝立ちさせて向かい合ったフミエをくるりと回転させ、後ろから伸ばした
指で秘部をひらいた。                                 
「・・・ぁ・・・っゃ・・・。」
とろける裂け目に挿し入れられた指が前後にすべり、フミエが四肢を震わせる。
「・・・おねが・・・い・・・はやく・・・。」
フミエが情欲に濡れた目で見返りながら懇願する。立てた片足でフミエの膝を割って
開かせ、待ち焦がれる秘裂に亀頭を突き立てた。

285 :
「ひぁっ・・・ぁ・・・ぅ・・・。」
膝立ちしていることで、いつもより硬く、抵抗感のつよい肉の扉を、男根でじりじりと
こじ開けていく。
「きついな・・・。」
半分ほどめり込ませたところで、フミエの手をとって結合部に導いた。手指にぬめりを
とらせ、おさまりきっていない肉の柱に塗りつけさせる。
「・・・っや・・・ぁあ・・・!」
指で触れたことで、自分が今呑みこみかけているものの量感と硬度を思い知らされ、
フミエは羞恥と恍惚の入り混じった悲鳴をあげた。
「・・・は・・・ぁあ――――!」
いっきに引き下ろされ、奥までつらぬかれる。震える肩に口づけ、唇を首筋にまで
這わせると、フミエが甘い吐息をはいた。大腿を大きく拡げ、茂の両腿の上にぺたりと
くずれた正座をしたかっこうのフミエはなぜか童女のように頑是無く見える。
(可愛い、な・・・。)
思い切り感じさせたくて、すっかり剥きだされたさねに指を押し当てる。
「・・・ゃんっ・・・ぃやっ・・・!」
残酷な指を、なんとかして少しでも核心からずらそうとフミエは身をよじったが、硬い
芯棒を埋め込まれた腰はさほど動かすことができない。
「だめ・・・だっ・・・ぁ・・・んぁあ―――――!」
つらぬいたものを動かされもしないのに、フミエはあっけなく達かされてしまった。
ひくひくと自身を締めつける運動から気をそらすように、茂はしなだれる女体を
前に押しやった。                                   
「・・・ふ・・・ぁ・・・まっ・・・。」         
とろとろに溶けた蜜の孔を、剛直が勢いよく出入りする。ずるりと引き抜くと、複雑な
襞が逃さぬようにまとわりつき、再び押し入ると肉の壁がきつく押し包んでくる。      
「ひぁ・・・ぁ・・・だめっ・・・また・・・。」
「また・・・なんだ?」
フミエに再び襲い来るものを、わかっているくせに茂は言葉にさせようとする。

286 :
「言えよ・・・ほら。」
フミエの内部が雄弁に物語っているだけでは足りない、とばかりに茂は深くつらぬいて
容赦なく揺すぶった。
「・・・ぃ・・・く・・・ぃくぅぅっ―――――!」
身も世もなく到達を訴える声は、鷲づかみにした敷布に吸い込まれ、眼前の白い背中と
臀はしっとりと汗ばんで絶頂に震えていた。
「・・・ぁ・・・。」
真っ白な世界からふと戻ると、いつの間にか仰向けに寝かされていた。やさしく髪を
撫でられ、なんだか泣きそうになる。絶頂をきざまれて、少しの間気を失っていたらしい。
茂の顔が近づいて、唇がかさなる。フミエは両手で茂の頭を抱いて甘く口づけを返した。
「・・・ん・・・っふ・・・。」
ゆっくりと、もう自分のものとも思えないほど痺れている中心をまた満たされる。
 フミエは腰を突き上げ、より深い接合をのぞむように茂の臀を両手でつかんで自らに
押しつけた。くるおしげに自らを求めてくれるフミエの、ひとつひとつの仕草が
たまらなくそそる。
「そげに、欲しいか・・・。」
囁かれてフミエは、ぞくぞくと総毛だちながら何度もうなずいた。
「まぁ・・・今度は、ゆっくり達け。」
ねっとりと口づけられ、下唇を噛まれ・・・上から差し出された舌を吸う。舌を吸いあい、
しずかに身体を繋げているだけで、叫びだしたいほど気持ちがいい。            
「すごく・・・快いの・・・ぁ・・・。」
下へとおりていった唇が、紅い実をつまんだ。舌で舐めころがされ、唇で吸われ・・・
ふたつの突起から沁みてゆく快楽が、加速度的に下腹にたまっていく。
「も・・・きて・・・あなたも・・・。」
「言われんでも、もう限界だ・・・。」
ゆっくりとうねるような腰使いが、フミエを再びの頂きへと押し上げていった。フミエの
耳元にせつなげな息を吐きながら、茂も種子を爆ぜさせた。

287 :
 ぐったりと折り重なり、息を整えていた茂が身体を離した。今まで密着していた部分が、
汗と体液にまみれて冷やりとする。まだ動けないでいるフミエを満足げに見やり、どさりと
布団の上に大の字になった。
「暑いな・・・。」
「・・・ちょっこし・・・窓、開けましょうか。」
フミエはようやっと起き上がって身をぬぐい、素肌の上に浴衣を羽織った。ゆっくりと
立っていって窓辺に膝をつくと、ぎしぎしときしむ古い窓枠をすべらせた。
「・・・ええ風。」
窓辺に寄りかかり、春の夜風を胸いっぱいに吸いこむ。すみずみまで愉悦をきざまれた身体が
浴衣の中でふわふわと浮かぶような心地で、フミエは窓べりに肘をついて、隣りの
空き地の木に咲く黄色い花に目をやった。
「あ・・・山茱萸咲いとる。・・・また春が来たんですねえ。」
フミエは嬉しそうに後ろを振り返って茂に話しかけた。
「今に紅い実がいっぱい生って・・・鳥が食べに来ますけん。」
その光景を思い浮かべるようにほおづえをついて、フミエはまた窓の外をながめた。
 その時、花の向こうの夜空に、星がひとつ流れた。
「あ・・・ながれ星!」
思わず目を閉じて手を合わせ、願いをかける。
「・・・何を祈ったんだ?」
声といっしょに手が伸びて来て、後ろから抱きすくめた。しどけなく乱れた襟の間から
まだ尖っている乳首を圧され、ふたつの突起からはしる刺激に、少し身を震わせながら
振り返る。
「・・・ないしょ、です。」
茂はそれ以上聞かずに唇をかさねた。裸の胸に両の尖りがぶつかり、まだ昂ぶっている
フミエの興奮が感じられる。茂はいっそう力を込めて柔らかい身体を抱きしめた。
(赤ちゃんが、出来ますように・・・って。)
口づけを深めながら、フミエは願い事を思い浮かべていた。種子をそそがれた身体が、
茂の腕の中であたたかく息づくのを感じながら、やがて全てを奪い去られていった。 

288 :
 時は経って五月のある日。アシスタント志望者に編集者、果てはテレビプロデューサー
まで、このところ千客万来の村井家に、おいしい匂いを嗅ぎつけたのか浦木までがやって
来ていた。自分もおこぼれに預かろうとしているのに、まずは茂のマンガをくさす、
相変わらずの浦木にうんざりしながら聞いていたフミエは、急にのどにすっぱいものが
こみあげ、必要以上に迫ってきた浦木の顔に向かって、思わず言ってしまった。
「き・・・気持ちわるい!!」
固まる浦木にかまわず、フミエは手で口を押さえて洗面所に駆け込んだ。
「えっ・・・?この顔の・・・ど、どこが気持ち悪いと言うんだ?」
いつも人のことはボロクソに言うくせに、浦木は少し傷ついたような表情で手鏡を
のぞきこんだ。
 フミエは洗面所で口をすすぎ、手の甲で濡れた唇をぬぐった。鏡の中に、後を追って
きた茂の心配そうな顔が映っている。
「どげした?・・・なんか悪いもんでも食ったか?」
「・・・もしかして、出来とるのかもしれん・・・。」
「出来とるって・・・えっ!赤ん坊?」
予期せぬ答えに、茂は驚いたが、藍子のときのような悲壮感はなかった。
(きっとそう・・・流れ星にお願いした、あの時の・・・。)
女にしかわからない身体のうつろい・・・そして漠然とではあるが、あの時種子を受け取った
と言う予感のようなものを感じていた。まだふくらんでもいないお腹を撫で、フミエは
幸福な想いを噛みしめた。
(あれから、喜子が生まれて・・・。)
家はすっかりきれいに改築され、今フミエが見ている幻の窓が、あそこのみすぼらしい
小さな寝間にあったことすら忘れ去られていた。茂は自らのプロダクションを立ち上げ、
相変わらず仕事の依頼はいっさい断らず、あの頃より更に忙しく働いている。
(でもこのごろは、お父ちゃんとゆっくり話すこともできんようになってしまった・・・。)
この春小学校へあがる藍子と2才の喜子、境港から引き取った茂の父母の家族六人に加え、
朝早くから夜遅くまで仕事場に詰めているアシスタント達、ひっきりなしに出入りする
編集者や関係者・・・増築したとは言えさほど広くない家の中はいつも人の気配に満ちている。
(思えば、しげぇさんと心からゆっくり出来たのって、あの頃が最後だったかも・・・。)
幻の窓に見えた昔の自分の姿に、幸せな記憶がよみがえり、ちょっと悲しくなる。

289 :
「・・・おい!さっさと出てくれ。」
そんな感慨を打ち破るような大声とノックの音。フミエは慌ててドアを開けた。
「なんだ、もう済んどるんなら、早こと出んか!」
「・・・お父ちゃん、なしてわざわざ二階のトイレに?」
「今日はスガちゃんが腹具合が悪いとかで、便所を独占してちっとも出てこんのだ。」
きれいとは言えない話に、フミエは甘い記憶もどこかへ消し飛んでしまったが、ふと
思いついて茂に聞いてみた。
「あなた、あそこ見てください。・・・あの山茱萸のこっち側・・・窓が見えますか?」
「ん・・・なんだ藪から棒に。」
茂はここへ来た目的を忘れたかのように、窓の格子に顔を押しつけて熱心にフミエの
言うとおりの場所を見た。
「・・・ん〜?・・・ああ、あの窓か。あれは嵌めごろしだな。」
「はめごろし、ですか?」
「ああ・・・あそこは今納戸になっとるけん、タンスが置いてあって、窓はあっても
 開けられん。」
「・・・あそこに、何か見えませんか?」
「・・・?なんにも見えんぞ。見えるわけもないしな。」
自分だけに見えるのだろうか・・・フミエは茂とくっつくようにして窓を覗き込んだ。
「あ・・・もうおらん。」
そこにはもうあの浴衣姿のフミエはいなかった。ばかりか、窓はすっかり近代的な
サッシに変わっていた。
「お前・・・何かあやかしの者でも見たのか?」
「ちょ、ちょっこし・・・女のひとの姿が、あの窓に・・・。」
もうひとりの自分の姿を見た、とは何故か言えなかった。過去の姿、というところが
の予兆と言われるドッペルゲンガーとは違う気がするし、なぜ過去とわかったか、
と説明しようとすればあの夜のことを話さないわけにはいかないからだ。

290 :
「・・・『影女』か!物の怪のおる家には、月夜に障子に女の影が映ると言う・・・。
 迷路のような家だけん、そげな怪しの者も出るのかも知れん。こげな風に、見えにくい
 ところをわざわざ透かして見ると、この世ならぬものが見えるとか言うしな・・・。」
家に妖怪が出たというのに、茂はなんだか嬉しそうである。
「・・・ン・・・。」
いつになく接近していた顔を寄せて、茂が口づけた。不意討ちをくらって、フミエの
無防備な官能が直撃される。
「ふぁ・・・ん・・・ぅ・・・。」
ただの口づけではない、行為の始まりのような口唇への愛撫・・・。まさかこんな所で
始めるつもりなのかと、じたばたするフミエを壁に押しつけてさらに奪いながら、茂は
パジャマの上からもわかる尖りをつまんでこすった。
「・・・ぁ・・・ゃぁ・・・っは・・・。」
「・・・とかなんとか言って、チューしてほしかっただけじゃないのか?」
たったこれだけのことで、たちまち官能にからめとらてしまうフミエの感じやすさ・・・
わかっていながら茂はわざとそんなことを言ってからかった。
「ち、ちが・・・!」
ふかい口づけと、胸の一点からはしった快感が身体をつらぬき、茂が抱いていて
くれなければ膝がくず折れそうだった。フミエは茂にしがみついて身をふるわせた。
「なんだ・・・怖いのか?・・・本当に何か見たのか?」
フミエは何も言わず胸に顔をうずめた。
「部屋までついてってやるけん・・・用を足す間ちょっこし待っとれよ。」
フミエはあわててドアを閉めて廊下で茂を待った。
「おお、よう寝とる・・・。」
茂は本当に寝室までついて来てくれて、フミエが布団に入るのを見守ってくれた。
それから子供部屋の二段ベッドですやすやと眠る藍子と喜子に目を細め、夫婦の寝室に
戻ってくる。 

291 :
「お前もええ年齢してこわがりだなあ・・・。」
誤解にしろ、茂がやさしいのが嬉しくて、フミエは布団から手を伸ばして茂の手を
握った。
「いっしょに寝てやりたいけど、今日は仕事せんと間に合わん・・・。」
握ったフミエの手を布団の中に入れると、子供にするように額に口づけた。
「早こと寝ろよ・・・。」
茂はそう言い残し、部屋を出てフスマを閉め、行ってしまった。その姿をすがるように
目で追ったフミエは、力なく目を伏せ、掛け布団を引きかぶった。
(もう・・・どげしてくれるの・・・。)
さっきの口づけで呼び覚まされた官能に、フミエの身体はとろりと内側からとろけている。
フミエの快いところを知り尽くしている指の動きがよみがえり、勃ったままの乳首が
じんじんと疼いた。
「・・・はぁ・・・。」
せつなさに、指を噛んで太いため息を吐いた。寝返りをうって脚を曲げると、女の部分が
熱くぬめっているのがわかる。たったあれだけの愛撫でこうまで高まってしまう自分が
情けない。
(お父ちゃんの、いじわる・・・!)
意地悪なのか鈍感なのか、フミエを昂らせておきながら放ったらかし、さっさと仕事に
戻ってしまった茂がうらめしい。けれど、フミエが怖がっているのだと勘違いして部屋まで
送ってくれた優しさは、ちょっと寂しいこのごろのフミエの心をじんわりと温めてくれた。
(・・・まぁ、ええか・・・。)
こんな時、自分で自分を慰めるのも羞ずかしい。フミエは冷たいシーツに頬をあてた。
中途半端な刺激でかきたてられた熾き火のような欲望は、こんなことで鎮まるようなもの
ではないけれど、今夜はこの火を抱えて寝よう、そう思っていた。この身体に刻まれた、
さまざまな幸せの記憶を思い出しながら・・・。

292 :
GJ!
火照った体を持て余すふみちゃんがエロいです

293 :
GJ!
ゲゲの優しい所、フミちゃんの健気な所、良かったです〜

294 :
>>281
窓のふしぎな感じも致してるエロさも持て余してるふみちゃんのエロさもGJでした!

295 :
「しげぇさん」とノロケキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!

296 :
頭におむねのあたりそうな肩もみムッハー(;°∀°)=3
ナチュラルないちゃいちゃが多い週でたまりませんな

297 :
今日は良い話だった
肩ポンは燃え的にも萌え的にも最高だった

298 :
車が来るときのゲゲさんがかわいすぎる
火傷した藍子の手を包むふみちゃんの手と動作が美しすぎる

299 :
超暑い中原稿頑張って手が離せないゲゲさんに氷を口移しするふみちゃんを妄想

300 :
鍋蓋で練習をゲゲに見られたふみちゃんかわいい
>>299
せんべい焼く機械の前もきっとすごく暑いと思うんだ

301 :
この時期の夫婦ももちろんたまらんのですけど、回想で新婚時代見るとやっぱり別格だなー
貧乏なのに二人ともキラキラしてる

302 :
「そのつもりですっ」のふみちゃんかわいすぎる

303 :
来週から萌えが減って辛いな…

304 :
>>303
いやいや、冷た〜い茂とか、山小屋でキャッキャウフフとか、おかゆアーンとか、
おやおやあららとか、よっちゃんとかよっちゃんとか・・・まだまだ萌えどころ
いっぱいですぞ。
唐突に出てくる新婚時代の回想がすごく輝いて見えるし。
イトツイカルの若い頃も好き。

305 :
>>304
山小屋はロケ記念写真もいいよ

306 :
自分は藍子の就職問題でのゲゲが大好き!
フミパパの案に乗って、勝手に見合い話を進めたり
あれだけ変人なくせに、ただの娘手放したくない父親なところとか
板挟みになって、でもやっぱりゲゲの言いなりになっちゃうフミちゃんも好き

307 :
冷たいしげーさん良いよねー
藍子にあの手この手で妨害しようとするのもヒドイけどかわいいしw

308 :
書き込みがちょっこし遅くなったけど、
倉田さんといずみも萌えたーw
結末知ってても「再放送では結ばれないか?」と思ってしまう倉田好きであります

309 :
今週はまだよっちゃんいじったりおかあちゃんと会話したり余裕があるな
冷たいゲゲさんは萌えるけどやっぱり切ない

310 :
>>308
くっつかないからこそ切なくて美しい青春萌えなカップルだよね
実話の、何年も後に会った時に抱擁したって話が大好きだ
見たかったなぁ

311 :
一家で別荘は何度見ても萌えねる
姉妹も夫婦も超かわいい

312 :
藍子がおとうちゃんに同意しそうな喜子に何回もしーっ ってやってるのがかわいい
よっちゃんにコロッケ?をあげるおとうちゃんとか、必で止めようとするふみちゃんとか
村井家が憩いすぎる

313 :
南方ボケでイッちゃってるゲゲさんが好きだ

314 :
南方に行った事で左腕が生き霊としてついてきちゃって
ふみちゃんを誘惑したら萌える

315 :
>>314
ゲゲふみゲゲ…だと…!?

316 :
親子四人線香花火に癒され、予告のお粥で悶えた
お粥楽しみすぎる!

317 :
お粥シーンでのフミちゃんのゲゲを見つめる目が
恋する少女のように初々しいー

318 :
作中最もドSな時期キター!

319 :
お粥たまらんかった…
萌えぬ

320 :
>>319
おかゆはほんと、何度見てもすごい萌える!
たかし…。・°・(ノд`)・°・。

321 :
「・・・私にだって、気持ちはあるんですよ!」
ある夜。とうとう心の中の何かがぷつりと切れて、フミエは夕食後の洗い物を
そのままに、エプロンを外し、つっかけを引っかけて外に飛び出した。
「あ・・・ここ・・・。」
夢中で歩きつづけ、ふと気がつくと深大寺のそばのお堂まで来ていた。ここは、
昔こみち書房のみち子が、店のことも夫婦のことももう終わりだと言って家を出て、
とぼとぼと歩いていたのをみつけた所だった。
 お堂の軒下に腰を下ろした時、自転車のライトが近づいて来た。茂が迎えに来て
くれたのかと一瞬だけ思ったけれど、まったく知らない人の乗った自転車は、フミエの
前をすうっと通り過ぎて行った。
(迎えに来てくれるわけない・・・か・・・。)
フミエは膝をかかえてため息をついた。
 最近の茂の言動は、フミエには理解できないことだらけだった。ふたことめには
『引っ込んどれ。』『お前は家の事だけやっとればええ。』・・・。
茂は家と仕事場を切り離し、フミエが仕事に関係することを極度に嫌うようになった。
経営上の危機すらもフミエの耳にだけ入れようとしない。心配で聞き出そうとすると
『仕事のことに口をはさむな!』
(なして・・・?ずっと一緒にやってきたのに。今までどおり、少しでもお父ちゃんの
 役に立ちたいだけなのに・・・。)
夜、布団の中でふと気がつくと、今日いちにち、一度も茂と視線をかわしていない
という日も少なくなかった。
(いつからこげな風になってしまったんだろう・・・?)
茂の亭主関白は今に始まったことではない。苦しい生活の中で、理不尽なことで
怒鳴られたり、ケンカだっていっぱいした。けれど、あの頃はそれを上回る数の笑いと
温かい気持ちの通いあいがあった。
(前はお父ちゃん、よう笑っとったなぁ。私も楽しいこといっぱい教えてもらった・・・。)
 茂が売れっ子になり、仕事漬けの日々を送るようになっても、喜子が生まれた頃くらい
まではまだよかった。茂はテレビ番組の主題歌の歌詞を真っ先にフミエに見せてくれたし、
漫画の手伝いをすることはなくなった代わりに、若いアシスタント達の世話をやくことで
茂の仕事に貢献することもできた。
 けれど最近では、アシスタント達の顔ぶれも変わり、以前のように家庭的な雰囲気
ではなくなってきた。お茶も夜食もいらないと言われては、後はもう仕事部屋のそうじ
くらいしかフミエにできることはなかった。

322 :
 あの頃みたいにいつも一緒に笑っていたい。なんとかして茂の役に立ちたい・・・。
(そげ思ったらいけんの・・・?お父ちゃんにはうっとうしいだけなの・・・?)
今の成功は、全て茂自身の努力によるものだ。自分はただそれを側で見て来ただけ。
・・・支えたなんておこがましい事は夢にも思っていない。
 茂にはもう、自分なんて必要ないのかもしれない・・・そう考えると、抑えようもない
虚しさと悲しみが湧き上がり、頬を涙がつたった。月のない夜で、街灯の灯すら届かない
小さなお堂の軒下は真っ暗だった。フミエは声を押しして泣いた。涙は強い鎮痛薬の
ように憤りや悲しみを痺れさせ、やがてフミエは賽銭箱にもたれて眠り込んでしまった。
「・・・お米は買ってあるし、乾物や缶詰は流しの下に入っとります。あと下着はタンスの
 ひきだしの下から二番めです。くつしたは・・・。」
「あーあーあー、もうわかっとる!それより早こと行かんと、汽車に乗り遅れーぞ。」
夢の中で、フミエは初めての里帰りに出発するところだった。藍子を背負い、玄関の
三和土におり立ってもまだ、後に残していく茂の暮らしに心配がつきないフミエを、
茂は笑ってせきたてた。
 東京駅から一昼夜の列車の旅。
 陽はとっぷりと暮れ、車窓からの景色を珍しそうに見ていた藍子は、今はフミエの
膝を枕にすやすやと眠っている。
「・・・よう寝とる。」
三年半前、この列車に乗った時は、茂と二人きりだった。出会ってからわずか五日で
祝言を挙げたばかりの二人はまだぎこちなかった。なんとか話題をみつけて話をしても
すぐ途切れ、気まずい思いのうちにいつしか眠りに落ちた。ふと目覚めて隣に眠る
ひとに気づき、生涯の伴侶となった男の寝顔を不思議な思いで見つめたあの夜・・・。
 そんな二人が東京の片隅で一緒に暮らし始め、厳しい人生の雨風に立ち向かう内、
身も心も深い絆で結ばれていった。・・・そして今、膝に伝わってくるこの小さな
ぬくもりがある。
(お父さん、お母さん・・・私、しげぇさんと二人で、なんとかやっとるよ。
 こげに遅うなってしまったけど、もうじき会えるね・・・。)
特急列車は闇を裂いて西へ西へと走って行く。三年半の時を遡るような気持ちで
そんなことを想いながら、フミエもいつしか眠りに落ちて行った。

323 :
 ひさしぶりの実家は、子供たちが少し大きくなったこと以外はそれほど
変わりもなく、昔のままに磨きぬかれた店、にぎやかな食卓・・・調布の我が家とは
まるで違う時間が流れているような大塚の暮らしが繰り返されていた。
 だが、変わっていないように見えて、やはり人々の暮らしにはそれぞれ転機が
訪れているものだ。
 なかでも一番大きな変化は、弟の貴史に訪れていた。父の源兵衛は、三十歳になる
貴史に、縁談と支店を出すという二つの大きな進路を、家族にも本人にも何の相談もなく
すすめようとしていた。だが、貴史には相愛の恋人がいる。ひとり娘である彼女と結婚
するためには、貴史が婿に行かなければならない。父と恋人の板ばさみとなって、気のいい
弟は家業のために自らの幸せをあきらめようとしていた。
 貴史が恋人に別れを告げる場面を見てしまったフミエは、その夜、遅くまで店にいる
弟としみじみと話をした。ふたりで店を手伝っていた頃の思い出話から、今の自分の
暮らしのこと、貧乏しても漫画にうちこんでいる茂のこと、自分も茂には好きな漫画を
描き続けてほしいと思っていること・・・。
「何があっても、いちばん大事と思っとることはあきらめたらいけんよ。」
苦労して続けてきた店を放り出すわけにはいかないと言っていた貴史だが、それを聞いて
何か思うことがあるようだった。
 貴史の結婚問題は、一世一代の勇気を振り絞って父の源兵衛と対峙した事で急転直下の
解決を見ることになった。源兵衛が、子供たちもいつまでも子供ではないという、
当たり前のことを悟り、とにもかくにも相手に会ってみると言い出したのには、藍子の
ビー玉事件もひと役かっていた。
(・・・あの時は肝が冷えたけど、お父さんが貴史の話を聞く気になってごしなって
 よかった・・・。怪我の功名ってこのことやね。)
調布の家を離れて五日目の夜。藍子を寝かしつけながらフミエはあらためて今度の里帰り
のことを振り返っていた。
(この部屋で寝るのも今夜で最後か・・・。)
娘時代を過ごした部屋は、婚礼の前の晩とほとんど変わらずフミエを迎えてくれた。
姉たちからフミエへと使い継いだ机、ランプ、たんす・・・。とりわけ懐かしいのは、
得意な裁縫で家族じゅうの服を縫ったミシンだった。

324 :
(ここに住んどった頃は、東京にお嫁に行くなんて思ってもみんだった・・・。)
少女時代の夢、あこがれ、劣等感・・・嫁きおくれと言われる年齢になってからの
(自分は将来、どうなってしまうのか・・・?)と言う焦り、不安・・・。この部屋は
嫁ぐ前のフミエの全てを見て来たと言っても過言ではない。
 隣の布団では、小さな藍子がすやすやと眠っている。
(あの頃は、とても思えんだった・・・こげな日が来るなんて。)
女性にしては高過ぎる身長が災いして、最初の縁談を断られてから、なにかケチが
ついたかのようにご縁に恵まれなかった。家業や家事の手伝いにやりがいを見出して
はいたけれど、適齢期はとうに過ぎ、そろそろ限界を感じていた。そんな時、父が
不思議と気に入って勧めてくれたのが茂との縁談だったのだ。
(よかったのかな・・・やっぱり・・・しげぇさんと結婚して。)
初めて会った時の第一印象は、健康そうで、健啖家で、気さくな感じのひと。
ストーブがつかない騒ぎで、うっかり立ち上がって背の高いところを露見させて
しまったフミエに皆が驚く中、茂は泰然自若とストーブをつけてくれた。
 結婚してからわかったことだが、茂はおおらかで独創的な言動で、時にその場の
空気を救うことがよくある。本人にそんなつもりはないのかもしれないが、フミエは
茂のそんなところがとても好ましいと思っているのだ。
(会いたいな・・・しげぇさんに。)
ふいに茂の笑顔が浮かんできて、さびしくてたまらなくなる。たった五日、それも
嬉しい里帰りで離れているだけだというのに、もう茂が恋しいなんて、いい年齢して
恥ずかしくなる。
 人は誰かを好きになって、その人を守りたいと思った時大人になるのかもしれない。
・・・おとなしい男と思われていた弟の貴史が、好きな女性を守るため、初めて父に
刃向かった。その姿は、二年前の秋、茂をなじった父に立ち向かっていった自分の姿に
重なった。
『何があっても、いちばん大事と思っとることはあきらめたらいけん。』
貴史に諭しながら、図らずも自分の想いを吐露することになったその言葉・・・。いちばん
大事と思っていること、フミエにとってそれは、漫画にうちこんでいる茂のそばに、
ずっと寄り添って生きていきたいということだった。

325 :
(私も、もう昔の私と違うけん・・・。)
いっしょに生きたい人がいる・・・身も心もひとつに・・・。
 娘時代に使っていた、紅い銘仙の布団の下で、女の身体が息づいている。太い吐息を
ついて自分の身体を抱きしめると、浴衣の下で乳首が硬くなり始めているのがわかる。
 えりの合わせ目から手を差し入れて、そっと尖りをこする。じわじわと沁みてくる
痺れに、いとしいひとの指の感触を重ねる。快感は電流のような速さで中心へと奔り、
熱と潤いを呼び覚ました。 
 合わせ目がとろりと割れて、たたえられたぬめりがフミエの指を濡らす。わずかな
刺激にこれほどまで溢れさせている自分に驚きながら、指はさらに奥をさぐっていった。
(知らんだった・・・こげに、きついなんて・・・。)
茂を受け入れる場所に指を沈ませて、押し返してくる肉の壁の圧迫感に驚く。初めて
ここを開かれてから、数え切れないほど挿入れられ、馴染まされてきた。子供もひとり
産んでいるというのに、フミエは女体の柔軟さ、不思議さに今さらながら感心した。
 熱く柔らかく、それでいてきつく、侵入者を締めつける性の唇・・・。自分の肉体が
いつもこんな感触で茂をもてなしているのかと思うと、たまらなくなって、フミエは
もう片方の手を下着にすべりこませ、花芽に指をからめた。
「・・・ん、ふっ・・・。」
自分でも驚くほどの快感がはしり、思わず唇を噛みしめた。隣りには幼な子が寝ている。
親兄弟の住む家で自らを涜(けが)すことに罪悪感を覚えながら、指を抜くことができない。
「・・・は・・・ぁあ・・・。」
細い指では比べ物にならないけれど、いつもここを満たしてくれる充実を思い浮かべる
だけでまた身体が燃える。いつからだろう・・・自分が心にも身体にも、茂でなければ
満たせない空隙を抱いて生きている、と自覚するようになったのは。娘の頃は小さかった
隙間にいつしか茂が住み着いて、その居場所はずいぶん大きくなってしまった。
 いつも与えられる責めに似せて、花蕾をいたぶる指の動きが速まった。
「・・・ァッ・・・・・・!」
来る・・・と思った次の瞬間、しなやかな肉身が断続的に脈打ちながらフミエの指を
食い締めた。ときん、ときん・・・指に刻まれる脈動に、自分の身体がいつもこうして
絶頂の瞬間を、声や表情だけでなく、つながった部分でも茂に直接伝えていることを知った。
(気持ちええと、思ってくれとるのかな・・・。)
ゆっくりと指を抜き去り、やるせない身体を投げ出す。愛し合った後と違って、口づけも
抱擁もない。当たり前のことがたまらなくさびしかった。

326 :
「ただいま戻りましたー!」
明るい声で帰りを告げると、待ち構えた茂が玄関先で迎えてくれた。一週間たらずの
留守で、これほどこの家が懐かしく感じるとは思ってもみなかった。
「・・・それほど散らかっとりませんねえ。」
脱ぎ散らかした衣類や、溜まりに溜まった皿や茶碗・・・そんなものを想像していた
フミエは、意外とこざっぱりと片付いている室内に、ちょっと拍子抜けしていた。
「留守にしたら、少しは困るかと心配しとったのに・・・。」
心配していたと言いながら、フミエは茂が留守中特に困りもしなかったことに、むしろ
がっかりした様子だった。
「何を言っとる。炊事でも洗濯でも、その気になれば俺は何でもできるんだ。・・・けどな、
 ひとりではあんまり笑えんな。せっかくええ音を響かせても、聞く者がおらんでは
 おかしくもなんともないわ。」
長いこと独りで暮らしてきて完結していただろう茂の暮らしも、いつしかフミエという
伴侶がいないでは成り立たなくなっていたのだ。茂らしく屁にかこつけてそんな想いを
伝えた後、照れ隠しのように茂は実際にひとつ放ってみせた。
「うーん・・・空に輪をえがく、トンビの声でしょうか?」
「うん、そのとおり!」
フミエの風流な見立てに、茂が満足そうに笑った。
「あ〜、やっぱりうちはええなあ・・・の〜んびりする・・・。」
「なんだ、実家でのんびりしたんじゃなかったのか?」
「それはそうですけど・・・私のうちは、ここですけん。」
フミエは大きくひとつ伸びをした。フミエにとっても、茂がいるこの家が、今や他の
どこでも代えようがない自分の居場所なのだと改めてつよく感じていた。
「風呂入って早こと寝え。・・・汽車に乗りっぱなしで鼻の穴まで真っ黒だぞ。」
夕食の後、茂はいつものように仕事部屋に引き上げながらそう言った。
「や・・・やだ。本当ですか?」
フミエは思わず鼻を押さえた。茂がしてやったりと言う顔で吹き出す。
「もぉ・・・そげなことばっかり言って。」
かつがれたことに怒ってみせながら、フミエも笑っていた。けれど、胸の中では
『早こと寝え。』という言葉がひっかかっていた。

327 :
「藍子、寝たか・・・?」
風呂上りのフミエが、藍子を布団に入れて寝かしつけていると、茂がフスマをそっと
開けて部屋に入ってきた。
「ちょっこし見んうちにも大きうなったような気がするなあ・・・。」
見る者の心をひきつけずにはおかない幼子の寝顔・・・ましてやそれがわが娘であって
みれば、茂の視線が一週間ぶりで会う藍子にばかりそそがれるのも無理はない。
「イカルもイトツも骨抜きだったろう・・・?」
「はい・・・それはもう、可愛がってごしなさって。お義父さんが抱こうとされても、
 お義母さんが離されんだったんですよ。」
茂は満足げにうなずくと、藍子の額に口づけた。
「さてと・・・。お前も疲れただろう。早よう寝えよ。」
茂は立ち上がってフスマを開けかけた。行ってしまう・・・!平静を装おうとしたのに、
フミエの視線はすがるようにその姿を追ってしまった。
「・・・ん?なんか用か?」
「ぇ・・・い、いえ・・・何でも。」
フミエはハッとして座りなおした。茂のような男が、たとえ『屁を聞かせる相手が
いなくてつまらなかった。』と言う表現にせよフミエの不在を惜しんだ・・・それだけでも
十分なはずなのに、自分はこれ以上何を求めているのだろう?そう思ってもフミエには
もう自分の心がこう叫ぶのを止められなかった。
(離れとる間、自分で自分を慰めるほど寂しかったのは、私だけだったの・・・?)と。
「なんだ・・・?言いたいことがあるんならはっきりせえ。」
茂は戸口に立ったまま、じれたように聞いた。
「・・・あなたは・・・その・・・。」
この場面でこんなことを言ったら、誘っていると思われてもしかたない。頬が燃える
ように熱くなるのが自分でもわかったが、フミエは声を振りしぼった。

328 :
「・・・さびしく・・・なかったんですか・・・私が、おらんでも・・・?」
茂が口をポカンと開けている。その口が閉じ、いつもの少し意地悪な笑いが浮かんだ。    
「シてほしいなら欲しいと、はっきり言うたらええのに。」
相変わらずの身もふたもない言い方に、フミエは真っ赤になった。            
「ち、ちがいます・・・ただ・・・。」
「ただ・・・なんだ?」
「あの・・・ちょっこし、くらい・・・。」
「ちょっこしって、どげなことして欲しいんだ?」
茂はいつの間にか布団に戻ってきて、フミエの顔をのぞきこんでいる。
「・・・ンッ・・・は・・・。」
困り果てて横を向いたフミエを抱きすくめて、いきなり唇を奪う。
「・・・ふぅ・・・こげなもんでええか?」
舌と舌が出会い、フミエの細い身体が腕の中で力を失いかける・・・だが茂は絶妙な
間合いで唇を離し、涼しい顔で聞いた。
 ちがう・・・そんな風にしてほしいわけじゃないのに・・・。抱きしめられ、口内を舌で
探られただけで早くも身体の芯が溶けかけていても、フミエの心は焦燥にかられた。
「・・・いかないで・・・ここに・・・いてほしいんです・・・。」
茂が破顔し、よく言ったとばかりに今度は息がつまるほど強く抱きしめた。
「疲れとるだろうから、寝かしてやろうと思ったけど・・・。」
身体を離すと、身八ツ口から差し入れた指で乳首をきゅっとつまんだ。
「・・・!」
「・・・覚悟せえよ。」
その言葉と、乳首からはしる電流のような快感が、フミエの身体をつらぬいた。
 掛け布団を剥いで表れた真っ白なしとねの上を示されるままに、フミエは全てを
脱いでそこに横たわった。目を閉じて待っていると、茂が衣服を脱ぐ音がする。
無防備な肌に視線を感じてうっすらと目を開けると、猛々しく反り返る男性が目に
入った。解き放たれた雄は茂の中心で揺れながら、フミエを食い尽くす瞬間を
待っている。ふたつの目が欲望に煮えるような心地がして目を閉じると、熱い身体が
覆いかぶさってきた。

329 :
「・・・ん・・・ふっ・・・。」
唇を結び合わせ、肌を重ねる。腰に押しつけられた硬い感触をいやがうえにも
意識させられざるを得ない。閉じたまぶたの下で、さっき目に焼きついた獰猛な生き物の
残像が熱を発し、早くフミエを食べたいと訴えかけてくる。                 
「・・・っは・・・ぁあ!」
身の内から煎られるような欲望が、フミエの肌をいつにも増して過敏にさせている。
口づけを解いて下がり始めた唇が首筋を這っただけで、自分でも驚くような色めかしい
声が洩れ、フミエは必で両手で口をおさえた。
「んふぅ・・・ぁ・・・っや・・・。」
左の乳輪にさわさわと指を這わせながら、右の尖りをやさしく舐める。右手は
次第に乳房全体を揉みしだき、口に含まれた乳首は強く吸われてフミエの下腹部に
叫びだしたいほどの快感を送り込んだ。フミエは瘧(おこり)のように震え、声を
押さえようと口に当てた手の甲を思い切り噛んだ。
「んゃ・・・だめ・・・っっ!!」
胸をなぶっていた舌がだんだんと下がっていき、臍を舐め、腰骨の上の薄い皮膚に
歯をあてた。フミエはぞくぞくと身を震わせ、腰を波打たせた。自然と広がった膝を
つかんで脚を拡げ、濡れそぼつ中心部に口づける。
「・・・はぁっっ・・・や、やめ・・・ぁ・・・やっ・・・。」
狭い口にすべり込ませた指で性の花の全容をあばき出すように持ち上げ、露わになった
襞のあいだを舌が動きまわる。
 顔を横に傾けて、感じすぎる核をそっと歯ではさむ。跳ね上がった足が、思わずこの
狼藉者を蹴りそうになり、フミエは必で手で押さえた。                 
「我慢できんだったら、そのまんま押さえとけ。」
そう命じると、再び股間に顔を埋めた。さっき歯ではさんだ花芽を、今度は同じ角度で
唇ではさみ込み、つよく吸った。

330 :
「・・・だめっ・・・だめぇぇ・・・っ!」
両腿を押さえるフミエの指が、白くなるほどつかみしめる。秘裂に沈めた指でなかを
解すようにかき混ぜ、舌で上下左右自在に蕾を舐めてやると、喉から漏れる嬌声は
啜り泣くように尾を引いた。
「・・・っひ・・・あ・・・ぁ・・・ああ―――――っ!」
なおも容赦なく責めると、フミエは狂ったように腰をうごめかせ、茂の指を締めつけて
果てた。                                      
 指を抜き取って起き直り、ひくひくと震える身体を見下ろす。脚を閉じる気力もない
フミエの膝の裏に手を入れて片脚を寄せてやると、フミエは力の入らない手で身体を
庇いながら横向きになった。その上にかがみ込んで腰の下に手を入れ、身体を返す。
「・・・ゃっ・・・!」
腰を持ち上げられ、足で膝を割られて、フミエはあわてて手で身体を支えた。
「・・・まっ・・・て、まだ・・・ぁあ――――!」
休む間もあたえず、すっかりほとびた裂け目を肉塊が埋めていく。
「ぁ・・・っぅ・・・ぅうん・・・。」
繋がった部分を小刻みに揺すぶりながら、二指で乳首をつまんで弄る。甘だるい波が
胸からじわりと拡がり、雄根を呑みこまされた中心と呼応してフミエの全身をつらぬいた。
背で茂を押し返すようにのけぞり、いたずらな手を払いのけようとして、逆に手首を
つかまれる。振り返った唇を食まれ、夢中で舌をからみあわせた。
「・・・んは・・・ん・・・ぁう・・・っ!」
無理な姿勢で少し浅くなった繋がりをぐいっと深められ、フミエは悲鳴をあげて
口づけを振り切った。腰をつかんで引き寄せられ、激しい抽送がはじまる。
「・・・っは・・・ぅ・・・っぁ・・・ぁっ・・・。」
責める腰が、臀の肉にぶつかる音に合わせるように切れぎれの啼き声があがる。より深く
沈め、抉り、揺すぶると、その声はせつなげにかすれ、次第に切迫していった。         
「・・・ぁっ・・・ぁーっ・・・ぁぐぅうっ―――――!」
腰を抱きしめ、全存在を埋め込むようにひときわ深く突き入れる。鷲づかみにした
敷布に吸われた悲鳴の代わりに、フミエのきつい肉の花が茂自身を絞りあげて到達を
伝えた。

331 :
 引き抜かれ、余韻に震えている身体を返される。やさしい口づけが落ちてくるのと
同時に、また満たされる――――。
「ぁあ・・・。」
思わず満足のため息を漏らしてしまう。しがみつく背が汗に濡れているのすら愛しくて、
唇を寄せて肩の汗を吸った。温かい唇の感触に、茂が少し笑ってその唇を奪った。
「一週間離れただけで、そげに寂しかったか?」
夢見るような瞳で、フミエは汗に濡れた茂の髪をかき上げ、いとしげに頬を包んだ。    
「・・・ひとりで寂しくて、こげなことでもしたか?」
頬を包む手をとられ、繋がっている場所へと導かれる。
「・・・ぇ・・・。」
何故わかってしまったのだろう・・・茂の言わんとすることを覚って、フミエは真っ赤に
なった。
 図星のようだ。カマをかけただけなのに、閨のこととなると相変わらず初心の妻に、
茂は思わず会心の笑みをもらした。覆いかぶさった身体を少し空けて、敏感になりっぱなし
の芽にフミエの指を置く。その手を下腹で押さえつけ、フミエの脚を閉じさせて、膝立ち
した両脚で挟み込んだ。
「・・・ぁン・・・だ・・・め・・・。」
「・・・したのか、せんのか、白状せえ。」
フミエの指をはさんだまま、狭い入り口を剛直が出入りする。
「ぁあっ・・・ゃっ・・・だめ・・・だっ・・・!」
茂に嘘をつくことなんて出来ない。ましてや身体をつなげている時には・・・。
「・・・しま・・・した・・・っあ・・・おねが・・・ぁ・・・!」
身も世もなく悶えながらフミエが告白した。二人の間に挟みこまれたフミエの手が
引き抜かれ、蜜にほとびた指が茂の口に含まれる。

332 :
「ぁあ・・・っぁ・・・く・・・あ―――――!!」
口から指を抜き、口づけを降らせながら茂がのしかかってくる。後はもう、気がとおく
なるほど突かれ、こすられ・・・フミエはまっすぐに伸びた脚をぴんと突っ張らせ、閉じ合わ
された唇の中に何度も甘い絶叫を吐いた。うすれゆく意識の中で、身体の奥にあたたかく
注がれる生の証を感じていた。
「・・・少し間が空いただけで、そげに寂しくなるとは・・・。」
ぐったりと横たわるフミエの胸の尖りを口に含んで舐め転がしながら、茂が言葉で弄る。
「ずいぶんと欲しがりになったもんだな・・・。」
「ゃ・・・めて・・・ちがっ・・・ぁあ・・・っ!」
もう片方の乳首をぎゅっとひねられ、まだ脈打っているような核心まで衝撃がはしる。
フミエはびくびくとと身をよじって嗄れた悲鳴をあげた。                 
「はぁ〜・・・さて・・・これで当分保(も)つか?」
嬲られても、奪いつくされて動けないフミエを満足げに見やると、茂は唇を離し、傍らに
ごろんとひっくり返って大げさにため息をついた。
「・・・また・・・そげなこと言って・・・。」
(私ばっかり欲しがっとるみたいに・・・。)
フミエはにらむ気力さえなくて、涙にうるんだ目でただぼんやりと茂を見ていた。
「腕をなくした後・・・重心がとれんでうまく歩けんようになってな。何度も転びながら
 練習して、やっとまっすぐ歩けるようになったんだ。」
茂が唐突な話題をふるのはいつものこと・・・フミエは気怠げに脱ぎ捨てた浴衣を拾い上げ、
裸の身体に引きかけながら聞いていた。
「脚じゃのうて腕なのに歩けんとはおかしな話だと思うだろ?人間は自分じゃ気づかんが、
 絶妙なバランスのうえに生きとるんだなあ・・・。」
初めて聞く話に、フミエは思わず茂の顔をみつめた。
「家族いうもんも、独り身の時は別におらんでも構わんと思っとっても、出来てみると
 自分の手や足と同じで、あるのが当たり前になる。それがおらんようになると、
 やっぱりなんかこう、調子が狂う、言うかな・・・。」

333 :
茂はそれだけ言うとう〜んとひとつ伸びをして、起き上がって服を着はじめた。フミエも
起き直ってそれを手伝ったが、いつもはいやがる茂が今日はされるがままになっていた。
「・・・ほんなら、よう休めよ。」
茂はなぜかそっぽを向いてそう言い残すと、仕事部屋に戻っていった。
 フミエはしばらくポカンとしていたが、浴衣をきちんと着なおして布団に横になり、
茂の言葉を反芻してみた。
(い、今・・・わかりにくいけど、なんか私が必要みたいなこと言うたよね・・・?)
『俺にはお前が必要だ。』なんて間違っても言う男ではないことは、重々承知している
フミエだった。けれど今の唐突な話は、簡潔にまとめるとそういうことではないのか?
こみあげる笑みを抑えるように両手で顔を押し包むと、頬が熱い。
「もっとわかりやすく言うてほしいなあ・・・。けど、ええか・・・。」
腕をのばして茂の布団を撫でる。そっと掛け布団をあげて彼の布団にもぐり込んだ。
(しげぇさん・・・。)
火照った肌にひんやりと冷たい布団に顔を埋め、茂の匂いに包まれる。一昼夜藍子の
守りをしながら汽車に揺られてきた疲れに、愛された後の気だるさと幸福感が加わって、
たちまちまぶたが重くなる。
(なして俺の布団で寝とる・・・って言われるかなあ・・・。)
そう思いながらも、もう眠くて身動きもとれず、フミエは幸せそうに夢の中へと落ちて
いった・・・。                                     
「ぇ〜ん・・・ゃだよ〜・・・。」
どこかで子供の泣く声がする。フミエはハッと目を覚まして顔をあげた。
「言うこと聞かないと、置いていきますよ。」
「まってぇ・・・おかあちゃ〜ん・・・。」
ぐずる幼い女の子と、怒りながら先へ歩いていく母親・・・それはよくある風景だったけれど、
泣いている女の子の姿に喜子がかさなった。

334 :
「喜子、泣いとるだろうな・・・。藍子も困っとるかもしれん。ふたりの目の前でケンカして
 飛び出してきてしもうたりして、どげに心細い思いでいるか・・・。」
フミエは矢も盾もたまらずお堂を出て家の方向へ歩き出した。
(私ったらあげな所で寝込んでしまうなんて・・・。でも、なんかええ夢を見とったような
 気がするんだけど・・・。)
子供の泣き声で目を覚ましたため、夢の内容はすっかり忘れてしまっていた。けれど、
フミエの心の中は、何か温かい思いで満たされていた。
「帰ろう・・・私の大切なものは、みんなあの家にあるんだから・・・。」
思い切り泣いてぐっすり眠ったせいか、頭も心もスッキリとして、フミエは夜気の中を
足早に家路をたどった。
「・・・行きましたね。」
さっき泣きながらフミエの前を通り過ぎていった女の子が、物陰でぽん、と男の子の
姿に変じてお堂に戻って来た。一緒に歩いていた母親はどこにもいない。男の子は
祭りでもないのに狐の面をかぶっている。彼は遠ざかってゆくフミエの後ろ姿を見送り
ながら、誰もいないはずのお堂の中に呼びかけた。
「ああ・・・あんなものでよかったのか?あの女の無意識の底に沈んどる記憶のひとつを
 適当に選んで見せてやったんだが・・・。」
男の子が話しかけた相手の姿は見えない。ただ厳かな声だけが堂内にひびいた。
「はい・・・。人間なんて気の毒なもんですね。やっと貧乏から抜け出したと思ったら、
 忙しすぎて今度は心が離れちまうなんて。いつだってとばっちり喰らうのは子供なのに。
 あのひとも、昔のこと思い出して自信を取り戻してくれるといいけど。」」 
「ふん・・・親切なことだな。放っておいても、あの女に他に行く所などないだろうに。」
「それでも、早く帰ってやってほしかったんです。あのひとの娘たちがどんなに心細い
思いをしてるかと思うと・・・。」
「ほほぉ・・・。」
「や・・・やだな、そんなんじゃありませんよ。ただ・・・あの娘たちのことは、赤ん坊の頃
 から見て来たから・・・。」
もう家に着いただろうか・・・小さな妹をなだめながら、母の帰りを信じて精一杯気づよく
待っているだろう小さな姉娘のことを思いながら、狐面の男の子はいつまでも暗い夜道を
見透かすように目をこらして立ちつくしていた。

335 :
>>321
GJ!
実家で一人でしちゃうふみちゃんかわいい
最後の不思議な感じもすきです

336 :
超大作キタ――(゚∀゚)――!!
リアルタイム(再放送だけど)なネタで良いですな

337 :
>>321
茂さんの最後の告白がすっごく素敵〜。
GJです!

338 :
>>321
GJ!

339 :
>>321
ふみちゃんは実家でひとりなぐさめちゃうくらい、
ゲゲさんも着替えの手伝いを受け入れちゃうくらい寂しかったのか…!
濃密でかわいい夫婦GJでした!

340 :
熟年ゲゲふみもたまらん
イカルのくれた鰻で…って本スレの書き込みにニヤニヤしてしまったw

341 :
今日の最後の楽園の間でのいちゃつきっぷりがもう
かわいすぎる

342 :
今週のイチャイチャは質の高いイチャイチャだったよね
かわいいけど、かわいいだけじゃない深いものだったと思う

343 :
前にも書いたかもだけど
(お互いが)結婚した相手に初恋するって凄いな
しかも一途だし

344 :
今朝のイタチの「俺が信用できんのか?(ウロ)」に
ゲゲが「信用できん!」と答えた後ろで大きくうなずくフミちゃんワロタw
かわいいったらないわw

345 :
>>344
あれ即答っぷりに笑えるし、頷くふみちゃんかわいいし、良いシーンだよね
今日のおやおやあららとかその後の知らんよとか、夫婦っぷりがたまらん

346 :
新婚のどぎまぎも熟年の安定感も楽しめる
ゲゲふみは本当に神夫婦だわ

347 :
>>345
夫婦っぷりといえば今日の仲人に行く前の二人は最高だった!
ふみちゃんが和服なのもポイント高い

348 :
イトツとイカル、良かったなぁ
>>347
和服ふみちゃんの美しさは異常

349 :
あんなに美しいフミちゃん見たら…あの晩はやはり…でしょうね

350 :
>>349
しげぇさん、あの時はぐでんぐでんに酔っ払っていたけど
奇跡の復活を果たすんですね、わかりますw

351 :
かなり前になりますが、2編ほどイトツとイカルの若かりし頃の話を書きました。
一応その続編、になります。
脇キャラに興味のない方はスルーでお願いします。
終盤はつまらない、と言う書き込みを見るたびに「『人生は活動写真のように』が
あるじゃないか!」と思っていたくらい、この週が好きでした。
再放送で、終盤の他の週も十分面白いと思えたけど、やっぱりこの週は特別です。
・・・序盤・中盤が面白すぎるせいで終盤は減速して見えるんでしょうかね。

352 :
「ねえ、お父さんまだ帰って来ないの?」
「・・・さあ。今夜もお仕事の話で遅うなるんでしょ。あんたはさっさと寝なはい。」
ある夜。茂は父の修平の帰りを待っていた。手には毎晩夜遅くまで勉強のべの字も
せず没頭して仕上げた、何十ページにも渡る絵物語が握られている。
「でも、約束したんだよ!絵を見てくれるって。」
「早こと寝んとまた明日寝坊しますよ!それよりあんた、宿題はやったの?」
しまった、母は虫の居所がわるかったらしい。イカルの名のとおりよく怒る母の
こめかみに青筋が立ち始めたのを見て、茂は早々に部屋に引き上げた。
「ちぇっ・・・最近イカルの奴、いっつも機嫌がわるうてかなわん。」
茂は子供部屋に戻って机の上に大作を放り投げた。兄の雄一が何事かと問いかける。
「・・・不景気な面して、どげした?」
「イトツまだ帰って来んのかって、イカルに聞いたら怒られた・・・。」
雄一は布団の上に寝転んだままおかしそうに笑った。
「ははは・・・よりによって一番聞いたらいけんことを聞いたな。」
「イカルは、イトツが大阪から帰って来るとたいてい機嫌がようなるのになあ・・・。」
「帰って来たってちっとも家におらんのだけん、イカルが怒るのも無理ないが。」
「どこで何しとるんだ?・・・イトツは。」
「ふふん・・・まあ子供にはわからんよ。」
「オラァもう子供じゃねえぞ!仲間やちからも将来はガキ大将に推されとる。」
「お前のそういうところが子供だというんだ。・・・まあええ、宿題はやったのか?」
「う・・・。」
雄一も母と同じことを言う。同じようにコロコロと育っても、雄一はさすがに長男だけ
あってやるべきことはやっている。茂と違って遅刻もなく、教師の覚えもめでたくて
旧制中学校への進学を勧められていた。
「お前もなー・・・せめて中学くらいは出とかんと上の学校に行けんぞ。」
「わかっちょーわ!」 

353 :
「俺は長男だけん、今からちゃ〜んと将来のことを考えとる。・・・今、ウチはイトツが
 珍しく仕事が長続きしとるけん余裕があるが、あげに芸者遊びばっかりしとったら、
 どうせまたピーピーするじゃろ。兵学校なら学費がいらんけん、俺は海軍兵学校に
 行って将校になーだ。」
「兄ちゃん、オラも!オラも海軍さんになる!」
茂は興奮して大声をあげた。茂ぐらいの少年で海軍さんに憧れない者はいない。        
「ダラ!お前のような阿呆が兵学校に行けるもんか。だいいち、軍隊は規律がきびしい。
 お前みたいな寝ぼすけの屁こき野郎にはとうてい勤まらんわ。」
「な、なんだと?!もういっぺん言ってみれ!」
茂は雄一につかみかかったが、そこは小学校五年生と三年生の違いで、とうてい腕力で
かなうものではなかった。たちまち押さえ込まれ、ぽかりとひとつくらった。
「お前は絵しか取り得がないんだけん、その道に励めばええ。これからの世の中、
 それで食っていけるかどうかはわからんがな。」
茂は悔しかったが、兄の言うことにも一理ある。海軍さんにはもちろん憧れるが、
寝坊できないのはたまらないし、絵の道も捨てがたかった。
 芸術が好きな父の修平は、茂が勉強ができなくとも一度も怒ったことがなかった。
絵を見せるとうまいうまいと誉めてくれ、絵の道具も買い与えてくれる。茂はそんな
父が大好きだった。
 だが、父の修平は、映画館を経営に乗り出すも映写機を盗まれて失敗し、時をほぼ
同じくして勤め先の銀行もクビになって、今は単身大阪に働きに行っていた。母の絹代は
夫の留守を気丈に守っているが、腕白ざかりの三人の男の子を抑え込むためには、イカル
の名のとおり、怒るばかりの毎日にならざるを得なかった。
(イトツがおらんと家が静かだな・・・時計の音がやかましく聞こえるわ。)
誰も口には出さないけれど、父の不在をそれぞれが強く感じていた。けれど、その父は
せっかく境港に帰ってきても、営業だ寄り合いだと言って出かけては遊興し、朝まで
帰って来ない日もしばしばだった。

354 :
(芸者あそび・・・鬼ごっこでもするんだろうか?ええ大人なのに、そげなことして
 面白いんかな?)
芸者という者を茂は見たことがないが、境港にもいる女郎をもう少し高級にしたもの
らしい。髪を高く結い上げてこってりと厚化粧し、びらびらの着物を着た女とイトツが
座敷で追いかけっこをしている光景が目に浮かび、少年はますます怪訝な顔になった。    
「なして女なんぞと遊ぶんだろう?弱さが伝染るだけなのに・・・。」
女とは弱くてつまらないものとしか認識していない軍国少年の茂には、芸者あそびなど
という物はまったく理解の外だった。
「早こと帰って来い、イトツ・・・。イカルが機嫌わるうてかなわん。」
茂は乱雑に放り出した絵を拾い上げて丁寧に並べなおした。真っ先に父に見せようと、
懸命に描きあげた絵は、まだ乾ききっていない部分が前のページにくっついてはがれて
しまっていた。茂はため息をついてそのページを描き直しはじめた。            
 その夜おそく。一滴の酒も入っていないのにご機嫌の修平が、艶っぽい小唄など
歌いながら村井家に帰ってきた。
「お〜い、ご帰館だぞ〜。」
玄関の鍵をようとして、鍵がかかっているのに気づく。
「おい、開けてくれ・・・誰かおらんのか?おい、絹代・・・雄一!茂か光男でもいい。
 誰か開けんか、こら!」
戸をガタガタと鳴らし、妻はおろか子供全員の名を呼ぶが、玄関も窓々も真っ暗で、
誰も起きてくる気配もない。
「あいつらはいったん寝込むと雷が鳴っても起きんからな・・・。おい、ばあやか誰か
 おらんのか?」
ぼやきながらしかたなく勝手口にまわるがやはり鍵がかかっており、こんな時間では
通いのばあやもいない。

355 :
「弱ったな・・・。こげなことなら米子に泊まってしまえばよかった。」
単身赴任先の大阪から帰るたび、修平は営業のためだの何だのと理由をつけて、
境港よりも大きな町の米子まで繰り出しては遊んでいた。まだ深い仲ではないものの、
染香という芸者に入れあげて、金はあまりない代わりに持ち前の調子のよさで、
なんとか懇ろになろうとて足しげく通っているのだった。
「だがまあ・・・妓(おんな)に色よい返事ももらえんのにひとりで茶屋に泊まるなぞ
 阿呆の骨頂だけんな。・・・掛かりだって高うつくし。」
修平は家の者を起こすのをあきらめて踵を返した。                   
「この時間では知り合いの家に頼るのも外聞がわるい・・・しかたない、雨露のしのげる
 ところへ行くか。」
家の門を出ると、朧月夜にぽつりぽつりと雨が落ちて来た。
「春雨じゃないが、濡れてまいろうか・・・。」
得意のセリフを言いながら歩き始めたものの、雨はみるみる激しくなって、修平は
あわてて走り出した。
「やれやれ・・・えらいこと濡れてしもうた。」
軒下に走りこむと、背広を脱いで水滴を払い、ハンケチを取り出して濡れた頭を拭いた。
 修平が着いたたところは、彼が一昨年まで経営していた映画館の建物だった。元々あった
芝居小屋を、芝居の公演のない時だけ借りていたのだが、この不況で田舎廻りの一座も
来ぬ小屋は閑散として、傾いた『境港キネマ』の金文字があわれを誘った。 
         
「カギはあったかな・・・おや、開いとる。無用心だな・・・。」
きしむドアを押して中へ入ると、うら寂れた木戸口に古い映画のチラシが落ちている。
修平はなんの気なしにそれを拾い上げてからホールのドアを開けた。
(ん・・・?灯りがともっとる・・・も、もしやお化け・・・?)
客席の一番前、ステージに近いところにぼんやりと灯りが見える。修平はあわてて
スイングドアを開けて逃げようとして、ドア下部の金属の板にしたたか足をぶつけた。
「痛っ・・・いたたたた・・・!」
「・・・!誰っ・・・?!」
女の声がし、洋燈の光がさしつけられた。

356 :
「あなた・・・?!」
暗くてよくわからないが、声の主はなんと妻の絹代だった。
「な、なしてお前がここにおる・・・。」
まぶしさに顔をしかめ、両手で頭を庇った情けない姿の男は、今の今まで彼女の胸を
悩ませていた夫に他ならなかった。
「お前がおらんけん、家に入れんだったんだぞ。」                   
恨みがましくそう言う修平に、絹代はぴしゃりと言い返した。
「帰ってくるか来んかわからん人をそげにいつまでも待っとれません!」
「む・・・。それなら家で寝とればええ。こげな時間に女ひとりで、物騒でなーか!」    
ちゃらっと音がして、絹代が修平の手に鍵の束を押しつけた。
「勝手口の鍵です・・・あなたは帰って寝てごしない。私は朝までここにおーますけん。」
「そげなわけにいくか・・・!」                             
「放っといてごしない!私はひとりになりたいの!」
絹代は渾身の力で修平の身体をぐいぐいと出口のほうへ押し戻そうとした。
「何を意地はっとるんだ。一緒に帰ろう。」
小柄だけれど絹代の気性はおそろしく激しい。その気迫にはたじたじとなるけれど、
そこはか弱い女の力、いくら押されても修平は一歩も動くことはなかった。
(俺がよその女にかまけとるけん、ヤキモチ妬いとるのか・・・。)
そう思うとなんだか可愛く思えて、修平は押されるがままになっていた。
「ええけん帰ってごしなさい!家に入れればそれでええでしょ?」
動こうとしない修平に焦れて、絹代はズボンのポケットに無理やり鍵を押しこもうとした。
それを突っぱねようと伸ばした修平の手に握られたチラシがクシャクシャと音をたてた。
「・・・ほれ見い。くしゃくしゃになってしもうた。」
修平はしわになったチラシを膝の上で丁寧に伸ばして、絹代に渡した。
「・・・何ですか?これ・・・。」
絹代が紙片に洋燈の灯りを差しつけ、メガネを直して渡されたものをよく見た。

357 :
「・・・映写機が盗まれる前、最後にかけた映画を覚えとるか?」
「ええ・・・。」
「あれは受けんだったなあ・・・。田舎もんには、まだ洋画は早すぎたかもしれん。」
「でも・・・私は好きでした。」
絹代は先ほどまでの激昂ぶりはどこへやら、座席に座りなおして、洋燈の灯りの下で
懐かしそうにチラシをみつめた。危なっかしい夫が始めた映画館の経営を、文句を
言いながらも手伝っていた絹代だった。口に出しては言わないけれど、絹代にとっても
この映画館は、修平とふたりで築いた大切な思い出なのだ。
「主人公の女がお前そっくりのジャジャ馬だけんな。・・・まあ、俺はこげな狆がクシャミ
 したような顔より、お前の方がええけどな。」
修平は絹代の隣りに腰を下ろすと、ネクタイをゆるめながら絹代の顔をのぞき込んだ。
絹代はプイと横を向いた。
「おあいにくさま。私は、あなたがゲヱブルより美え男だなんて言いませんよ。」
「お前はリヤリストだのう。」
「・・・顔で人を好きになるわけだありませんけんね。」
そっぽを向いたままの絹代の顔がみるみる赤くなる。修平はニヤリと笑うと、腕を
伸ばして絹代の肩を抱き寄せた。
「意地っ張りめ・・・。」
修平の手を突き放そうとする手を座席のひじ掛けに縫いとめて唇を奪う。
「ぃや・・・んっ・・・。」
細い手首を押さえつけ、頑なに閉じた唇を舐めると、震えながら開いて修平の舌を
迎え入れる。じたばたと暴れる脚の間に膝を割り込ませてのしかかり、抱きすくめて
口中を責める。ひじ掛けをつかんでいた絹代の両手が、いつしか夢中で修平の背に
回され、つよく抱きしめた。
「は・・・ゃ・・・こげ、な・・・ところで・・・ぁあっ・・・。」
唇をむさぼりつつ、修平は早くも襟元から手を差し込んで柔らかな乳房を揉みしだいた。
深夜、閉館されたとは言え、こんな公共の場所での行為に抵抗を覚えながらも、絹代の
唇からは甘いあえぎが漏れてしまう。

358 :
「いけ、ん・・・やめ・・・てっ・・・!」
修平がもどかしそうに着物の襟をつかんで帯から引っ張り出した。はだけた胸元から
こぼれ出る両の乳房は夜目にも白く、いつぞや修平が与えた香水と入り混じった
絹代の肌の香がたちのぼり、官能の記憶を呼び覚ます。
「は・・・ぁあん・・・ぁっ・・・や・・・。」
紅い実を口に含んで舐め転がしながら、もう片方をこねるように揉みあげてやる。
 甘い責め苦からのがれようと次第に座席の上へとずり上がっていく絹代の片脚を、
ひじ掛けに引っかけるようにして裾を開かせると、地味な水色の蹴出しの下の紅い
湯文字がちらりと目を射る。その下の秘所に手を差し込むと、予想どおり豊潤な蜜が
指を濡らした。
「ゃっ・・・こげな、ところで・・・野合なんて・・・いや・・・っ!」
潤いを確かめられ、この後に待っている行為を予測して、絹代が激しく抗った。
「こげに濡らしとるくせして・・・ほんなら、挿入れてほしい言うまでおあずけに
 してやらか?」
修平が意地悪く耳に注ぎ込む淫らな言葉が、毒のように絹代の自尊心を蝕む。
「・・・ぃや・・・いや・・・ぁあ・・・。」
絹代の身体を知り尽くしている修平の手管の前には、絹代の意気地も風前の灯だった。
たまにはこんな所で情交に及ぶのもおつなものだ・・・。紳士にあるまじき場所での
行為に劣情を刺激され、修平の中心にも力が漲りわたっていた。
(昼間はおっかないが、こいつもこうなれば可愛いばっかりだけん・・・。)
明治生まれの夫婦としては珍しく、絹代は修平にポンポンものを言い、修平はそれを
甘受していた。絹代の気の強さに辟易し、少しでも隙があればよその女に目が行く修平
ではあるが、彼は彼なりにこの妻を存外愛しているのだ。
 娘時代から度外れて気が強く、修平と祝言を挙げてからも結ばれるまでひと悶着
あった絹代だが、閨の中ではうって変わって従順でかわいらしく、修平の思うままに
染められていった。絹代の気性の激しさは、名家の生まれと没落の憂き目という
生い立ちから来る矜持と負けん気によるもので、初めてその堅固な障壁をやぶって
柔らかな内部へと侵入を果たしたのが修平であった。
 それから十年あまり、ただでさえ移り気な修平が、絹代に愛想をつかしもせず
三人も子を生したのは、昼間の猛妻ぶりと閨での可愛さの落差のせいかもしれなかった。

359 :
(もう、ひと息だな・・・。)
修平は床に膝をついて絹代の両脚の間に身体を割り込ませた。ひじ掛けに掛けた方の
脚を押さえ、長い指を蜜壷にゆっくりと沈ませる。
「ひぁあっ・・・だめ・・・っだめぇっ・・・!」
絹代は腰をよじって抵抗するが、修平はかまわずに指を折り曲げ、別の指で核心を
やわらかく圧した。
「ゃめ・・・て・・・おねがい・・・。」
よわよわしい声で絹代が懇願する。口ではやめてほしいと言いながら、修平の指を
締めつける肉の花は熱くふくよかに充血して、もっと大きな充足を欲していることを
修平に告げていた。
「ここは欲しい、と言うとるぞ・・・挿入れて、とひとこと言えばええのに。」
「・・・そ、そげなふしだらなこと、言えません!」
「・・・ほうか。ほんなら、おあずけだな。」
修平はつぷり、と指を抜くと、乳首に蜜を塗りつけ、こすり合わせて苛みはじめた。
「・・・は・・・ぁあ・・・ン―――――!」
開かされたままの秘口は放ったらかしにされ、ずきずきと疼いて涙をこぼし続けている。
絹代はたまらずに腰をよじりたて、声を漏らすまいと奥歯を噛みしめた。
「そげに歯を食いしばっとると、奥歯がすり減ってしまうぞ。」
修平は絹代の柔らかい頬をつかんで口を開けさせると、唇を舐め、何度もはげしく舌を
出し入れした。淫らな口づけはいやでも他の行為を連想させ、爆発的にせりあがって
くる情欲の前に絹代の自制心はもろくも崩れ去った。
「・・・挿入れて・・・ほしいか?」
先ほどからの絹代の痴態を見るうちに、修平もこれ以上我慢できなくなっていた。
「・・・は・・・ぃ・・・。」
目に涙をいっぱい溜め、荒い息をつきながら絹代が蚊の鳴くような声でこたえた。
「早こと言えばええのに・・・まあ、お前のそういう素直じゃないとこがええんだけどな。」
修平は立ち上がって絹代を見下ろした。映画館という公共の場所で、胸乳をあらわに
髪を乱し、両脚を大きく開いて肌蹴た湯文字の間から秘部をさらしている妻は、何者かに
陵辱された後のようで、修平の劣情を激しくあおった。

360 :
「・・・立てるか?」
ひじ掛けに引っかけられたままの脚を下ろしてやり、肩につかまらせて立たせてやる。
足に力が入らない絹代をなかば抱きかかえるようにしてステージの方を向かせる。
「・・・ぃ、いやです・・・こげな恰好・・・!」
ステージに腹ばいにさせ、裾をまくりあげる。立たせたまま後ろから貫く心づもりと
気づいた絹代が憤慨して振り返る。修平はズボンの前を開けて硬起したものを解放し、
誇示するように突きつけた。
「ええけん、黙って前を向いとれ。」
しとどに濡れた裂け目を、押し当てられた屹立で前後にこすられ、絹代がへなへなと
くず折れそうになる。修平は両手で双の内腿をつかんで拡げ、ずくりと埋め込んだ。
「・・・ぁ・・・ぁあああっ―――――!」
焦らされ、充足を切望していた肉身が歓喜に慄える。絹代の両脚は完全に床から離れ、
小柄な肢体がぴんと張りつめた。つかんだ手の中でわななく細い腿が痛々しくて、一瞬
胸を衝かれたが、力をゆるめずにぐい、と押し挿入れる。
「・・・はぁ・・・ぁ・・・やっ・・・ぁあ・・・!」
完全に繋がると、ステージの床に押しつけられた乳房を揉みしだきながら、より深く
えぐった。啼きながら前へと逃れようとする腰をつかんで容赦なく剛直を出し入れする。
絹代の指が、すがるものを求めて木の床に爪を立てた。
「よせ・・・爪が剥がれるが。」
修平が手をつかんで上から指をからませてやると、震えながら握り締めてくる小さな手に、
いたいけなさと同時に嗜虐心をあおられる。そのまま後ろから口づけながら結合部を
揺すぶると、絹代は小さくてかたちのよい臀をよじらせ、もう身も世もなく嗚咽した。
「もぅ・・・も・・・達きます・・・け・・・。」
修平の脚に藤蔓のようにからまった脚が更にきつくからみついてくる。ステージの縁に
つかまらせてやった手の甲を噛んで嬌声をこらえた分、絹代の秘唇はよりつよく修平を
締めつけて絶頂をつたえた。

361 :
「ぁ・・・っあ・・・ぁあ・・・。」
まだうち慄えている身体からぐいと引き抜く。がくりと膝をつきそうになった小さな
身体を支えて、ひょいと抱き上げた。
「ひゃっ・・・や、やめて・・・。」
ほんの二、三歩・・・絹代を抱いたまま歩いて、座席に腰を下ろした。
「二回戦だが・・・。」
こちらを向かせて自分の上にまたがらせると、有無を言わさず男と女の部分をつき合わせ、
絹代の腰をつかんで押し下げる。
「だっ・・・だめぇっ・・・んぁ―――――!」
今さっきまでぴったりと一つになっていた雌雄は、いとも簡単に再び溶け合った。
「く・・・。」
修平も眉根を寄せ、小さく声を漏らして強い快感をやり過ごした。雨に濡れた髪が額に
垂れて、端正な顔に男の色気を添えている。絹代は涙にかすむ目をうすく開け、自分を
貫いている男の官能的な表情をいとおしげに見つめた。
「なぁ・・・知っとるか・・・?」
ゆっくりとひとつ、深い口づけをくれてから修平が尋ねた。ただ繋がっているだけで
ずくずくと湧きあがる快感に苛まれる絹代は返事をすることもできない。
「・・・おい、聞いとるのか・・・?」
息も絶え絶えに涙に咽んでいる絹代に、答える余裕などないことをわかっていながら
修平は、意地悪く下からつきあげて返事を催促した。
「ひぁっ・・・な・・・にを?・・・ぁあっ・・・!」
何の問いかわからぬままに責められて、絹代はのけぞった。辛うじて修平の腕をつかみ、
身体を支えて荒い息をついている絹代の乳首を、ぎゅっとひねってやる。強い快楽に
支配された身体には、痛いくらいの刺激ががちょうど良い。
 もう片方の乳首も捻り上げ、絹代が苦痛にも似た快感に身悶える様を満足げに観察
しながら、修平はいつもの薀蓄ばなしのような調子で唐突に話し出した。          
「・・・くろうとの女はな、客は取っても唇はゆるさんと言う。間夫(まぶ)ともなれば
話は別だが。別に客もそんなことは望んでおらんしな・・・。」

362 :
「・・・・・・?」                                  
あえぎ果て、啼きつかれた絹代はわけが分からず呆然としている。激しい行為のために
はずれかけて曲がっている絹代のメガネを、修平がすっと取って隣の座席へ置いた。
涙に濡れた頬を両手でそっと包んでやさしく口づける。
「ふぁ・・・ぅ・・・。」
「・・・口を吸いあうのは本気の相手だけ、いうことだ。」
ぴくり、と絹代の小づくりな肢体がふるえた。ざわざわと総毛だつような感覚に見舞われ、
修平の胸に顔をうずめて必で耐える。
「ふ・・・お前は、ここは素直なんだなあ。」
「・・・な・・・にが、です・・・?」
「嬉しいことを言われて、なかがきゅうっと締まったが。」
「そ・・・そげなこと・・・!」
羞ずかしさに、絹代はキッと顔をあげて怒りの眼で修平を見返した。
「ほぅ・・・そげな威勢が残っとったか。」
修平は絹代のぷっくりとした下唇を歯ではさみ、何度も甘く噛んだ。
「・・・ぁ・・・ン・・・っは・・・。」
たちまち快感に蕩けてくる舌をもとらえて噛み吸ってやると、絹代の手ははもう修平の
腕をつかむ力も失くしてだらりと垂れ下がった。
「・・・ぁあ・・・もぅ・・・達く・・・あなた・・・。」
ぐったりと身体をもたせかけた絹代の双丘をつかんで己が腰に引きつけ、小刻みに揺すぶる。
絹代は修平の肩に顔を押しつけ、せつない声で耳に到達を囁きつづけた。
「そげな小声でのうて、もっとええ声で啼け。」
絹代の腋に腕を入れて起こし、二度三度と強腰で下から突き上げる。
「ぁっ・・・ゃあっ・・・だめぇっ・・・あ―――っ!」
修平の腕の中で痛々しいほど背を反らせ、絹代ががくがくと全身をけいれんさせた。
「外に・・・出すか?」
つよい射精感をこらえながら、修平が尋ねた。
「・・・・・・なか・・・に・・・。」
ふるえて掠れる声で、絹代が答えた。
「子が出来ても、ええのか・・・?」
「・・・はい・・・。」
佳境にさまよいながら、絹代がしあわせそうに微笑んだ。次の瞬間、勢いよく迸る種子を
最奥に浴びせかけられ、幸福感の中で絹代の意識が遠のいた。

363 :
 ふと気づくと、絹代は座席にひとり座らせられていた。そばでは修平が立って
ネクタイを結んでいる。絹代を抱く間も、修平はワイシャツと、サスペンダーで吊った
ズボンを身に着けたままだった。こんな場所で自分をさいなみ、なかば気を失うほど蹂躙
しておいて、自分だけさっさと紳士の装いを取り戻している夫を勝手な男だと思いながら、
その姿から目を離すことが出来ない。
(・・・芸者に会いに行くからって、あげにお洒落して・・・。)
ぴんと糊のきいた白いシャツにネクタイ、仕立てのよい背広に、伊達なサスペンダーで
吊ったズボンの折り線にはピシッと火のしが当てられている・・・。お目当ての妓のところへ
行くとて修平がするこうしたお洒落も、結局のところ絹代が用意したものなのだ。
(たまに優しうしてくれても、また他の女の所へ行ってしまうんだろうか・・・。)
 ひさしぶりに濃密に愛され、嬉しいことを囁かれた幸福感が、すぅっと醒めていく。
重だるい腕で散らされつくした我が身を庇いながら、絹代は甘い夢から覚めた物哀しさに
身をゆだねていた。
「外で待っとるけん、ゆっくりでええぞ。」
まだ身動きできぬまま、あられもない姿をさらす絹代の襟と裾をあわせてやり、襟の間に
懐紙をしのばせてやる。洋燈を残し、真っ暗な中をホールから出て行く修平を、絹代は
座席の背に身体をもたげたままぼんやりと見送った。
(ゆっくりでええなんて言うて、せっかちのくせに・・・。)
待たされることが嫌いな修平のために、絹代は重い身体を引き起こして身支度にかかった。
帯を解いてしまうと面倒なので、引っ張り出された襟と裾をなんとか帯に押し込んで直す。
髪の乱れを撫でつけてメガネをかけると、落ちていたチラシを拾い上げて大事そうに帯に
しまい、洋燈を手に外へ出た。
「あなた・・・?」
映画館の入り口に、タバコを吸っている男のシルエットが見える。雨上がりの空は雲が
切れて月が顔を出し、つよい光を修平に射しつけていた。
「・・・おう。」
修平が気がついてこちらを振り向いた。ちょっとまぶしげに目を伏せ、ゆっくりと近づいて
来る絹代は、心なしか足取りが覚束なく、いつものきびきびとした彼女とも思えなかった。  
(・・・ちょっこし、苛めすぎたかな・・・?)
自らの男の力に征服されつくして弱っている女というものは、いやがうえにも男の自尊心を
くすぐるものだ。

364 :
「・・・おぶってやらか。」
修平はタバコを映画館の足つきの灰皿にこすりつけて消すと、背広を脱いで絹代に渡し、
しゃがんで背を向けた。
「え・・・ええですよ。ちゃんと・・・歩けますけん。」
情交の名残でうまく歩を運べないと思われるのが羞ずかしく、絹代はことわった。
「ええけん、おぶされと言うんだ。」
修平は強引に絹代を背負いあげると、月明かりの中を歩き始めた。
 外はかまびすしいほど虫が鳴きすだいている。
「もぉ・・・鞄より重いもの持ったこともないくせに・・・。」
絹代はそう言ったけれど、いつも『静養第一』で、身体を使う仕事など決してしない
修平でもさすがに男だけあって、広い背中の乗り心地は悪くなかった。
「・・・これが、美女を盗み出して嬉しい道行(みちゆき)とかならええんだがな・・・。」
「また芝居の話ですか・・・ええかげんにしてごしない。」
「芝居じゃあない。伊勢物語だ。・・・お前はほんに情趣を解さん女だのう。」
「ほんなら私は鬼に喰われるんですか・・・。私だって物語は好きだけど、あなたのように
 情趣だの風流だの言うとる余裕がなーだけですが。」
修平はすこし胸が痛んだ。絹代は少女の頃才媛であったと聞くが、家の没落が彼女に
女学校以上の教育を許さなかったのだ。今でも本や物語が好きではあるが、三人の
育ち盛りの男の子の世話や、決して豊かではない家政の切り盛りに追われ、絹代には
修平のように芸術をたのしむ暇などないのだった。                  
「物語といえば・・・茂は今夜ずっとあなたのお帰りを待っとったんですよ。お父さんに
 絵物語を見てもらうんだ、言うて・・・。」
「おお、忘れとった・・・茂に悪いことしたなあ。」
「茂だけじゃあーませんよ。雄一だって光男だって、あなたが大阪に行かれとると、
 時計の音ばっかり響いて家の中が静かでつまらんって・・・。」
「・・・これからは、なるべくあいつらと遊んでやるかな。」

365 :
「ええ・・・大阪から帰っていらした時くらい、よそへはいらっしゃらないで・・・。」
修平がいなくて一番寂しいのは自分なのだけれど、絹代は子供にかこつけて修平が
境港にいる間、紅燈の巷へと浮かれ出ることを禁じたのだ。
「お・・・おう。わかった。」
絹代の声に混じる、必な想いにほだされ、修平はついそう答えてしまった。
「本当に・・・?約束ですよ。」
絹代が、自分の脚を支える修平の手をさぐって、小指に指をからませた。
(南無三・・・染香ともこれまでか・・・。まあええ、脈があるようでもなかったしな。)
修平は少し残念に思ったが、日頃離れて暮らしているのに、帰って来た時まで遊び
歩いて妻子を放ったらかしにしていた自分を反省する気持ちにもなった。
 立ち止まり、安心させるように絹代の小指をぎゅっと握ってやってから肩へ戻して、
修平はまた歩き続けた。
 温かくて広い背中に身をゆだねているうち、幸福感と愛された疲れで眠くなって
しまったらしく、肩につかまる絹代の手の力がゆるんだ。
「・・・こら、寝るな!寝ると重くなるけんな。」
「きゃあ!」
揺すり上げられ、絹代は悲鳴をあげて修平の肩にしがみついた。ワイシャツの肩に
食い込む細い指の感触に、修平はふと微笑んだ。このちょっと変わった、けれど
可愛い女と歩んできた人生と、二人の間に生した子供たちがいとおしくてならない。
「茂の奴はほんに絵が好きだなあ・・・。んだ昇三おじさんの生まれ変わりかもしれん。
 絵だけでのうて、それに物語をつけるのも得意だな。そこは俺に似とる。」
「そげですねえ・・・。勉強はちーっともしませんが。」
「まあ、嫌いなもんは無理にやらんでもええ。好きな道で生きられたら、それが
 一番しあわせだが。」
「・・・そげに上手くいきますかねえ。」
「絵と物語両方の才能が生かせる仕事・・・そげなものがあるとええがなあ。」
 ふたりはいつになく穏やかに子供たちのことを話しつづけた。背負い背負われた
身体の重なりから、情を交わしたばかりのお互いの肌のぬくみが伝わってくる。
 いろいろ悩みはつきないけれど、ふたりでひとつの影は、今はこのうえない幸せに
浸りながら月夜の道を歩いていった。

366 :
>>352
イトツとイカル!GJ!
思い出の、でも朽ちかけてる劇場で…というのがたまらんでした!

367 :
おかあちゃんをいじめるなに萌え転がった
>>352
イトツのSさがゲゲさんに通じるものでなんかいいなと思ってしまったw
GJでした!

368 :
>>367
あのセリフはヤバイ
さらっと言ってるのがより妄想を掻き立てる

369 :
妄想
「おかあちゃんをいじめていいのは俺だけだ」とか?

370 :
静かに言ってるのが無意識な独占欲の表れみたいでなんかいいよね!
熟年期のデレは濃くて深くて、リアル夫婦の今のデレにつながってる感じで良いよね

371 :
うん
ゲゲはフミちゃんに対して独占欲強いと思う
貧乏どん底でも働きに出さなかったし
基本的には自分の仕事にも関わらせたくないタイプ
フミちゃんには自分の奥さんって部分だけでいて欲しかったんじゃないかな
ある意味、男らしいんだけどねw

372 :
もう今週で終わりとか信じられない…
再放送でもがっつり萌えさせてもらった

373 :
「着物作れ」からの「お、ええな」
そして明日の最大のデレ
ほんともう!ゲゲふみかわいい!

374 :
>>373
花束を渡す動のデレと、涙をながしてるところへの肩ポンの静のデレ
二度美味しかったね

375 :
手がふれ合うところが萌えすぎてヤバかった

376 :
ああ終わっちゃった…
ありがとうゲゲふみ

377 :
次の朝ドラ、キスシーンがあるらしい
その上、宣伝ポスターはヒロインが相手役に思いっきり抱きついてる写真だた…
何故ゲゲふみはないのかと・・・

378 :
>>377
抱きあうくらいは見たかったかもなぁ
ゲゲふみがだめならゆうあや…!

379 :
本スレのいろんな考察にじたばたごろごろしたくなる
ゲゲさんやっぱふみちゃん大好きなんだな!

380 :
>>379
再放送になっていちだんと考察が深くなって感心することしきり>本スレ
本当に愛されているんだな…
フミちゃんの定員は1名って、なんかエロいww

381 :
定員一名も萌えたけど、
目玉には魂が、魂がこもってるものは宝物
だからふみちゃんは宝物ってのが、もう

382 :
うんうん、今ごろつなげてきたかって感じw
リアル先生の発言で
「出雲の人は誠実で品がよくて特別の感じがする。」
「家内は出雲の出」
と言う発言もあります。どうせならつなげて言ってあげてごしないw

383 :
水木プロの某つぶやきサイトでの投稿にたまーに奥さんネタが出てくるんだけど
ドラマ夫婦で変換しては妄想している…
ゲゲさんに桃をむいてあげるふみちゃんとかおいしすぎる

384 :
本スレの天井舐めの流れ見てたら、
天井を見たくないと怖がるふみちゃんに騎乗位にしたらいいと提案するゲゲさん
という妄想がとまらなくてやばい

385 :
職人さんの投下が最近なくて寂しい
自分は妄想あっても文才ないからなあ

386 :
自分も妄想しかできないw
けど何回かここのネタを職人さんが昇華させてるのが微笑ましくて嬉しくて
しがない妄想をたまに書き込んでる

387 :
ハチミツぺろぺろプレイするなら是非ふみちゃんに自分の身体に垂らさせる羞恥プレイ込みを…と
本スレを見て思う

388 :
夫婦共演はないですかね?
篤姫、龍馬、シャルウイダンスやら映画やCMで再共演してるけど

389 :
他のを準備中でしたが、>>384さんのレス見たらなんだか放っておけなくてww
結婚した年の秋、音松親方が現れる少し前くらいの話と思ってごしない。

390 :
 ぽとん。畳の上に、一滴の水が落ちてきて吸い込まれた。
「・・・あれ?なんの水だろ・・・?」
ちゃぶ台で家計簿をつけていたフミエは思わず上を見上げた。
 ぽとん、ぽとん・・・天井の羽目板に出来た水のシミからぶら下がった水滴がみるみる
膨らんで、つぎつぎに落ちてくる。
「やだ・・・雨漏り?」
あわてて新聞紙と茶碗を持ってきて、畳に水染みをつくり始めた水滴の下にあてがった。
 夕方から吹き始めた風がいつの間にか雨を連れて来て、枯れ葉まじりの時雨が
窓ガラスを叩いている。 
 たかが一滴の水なのに、ぴちょん、ぴちょんという水音は静かな家の中にけっこう
大きく響く。フミエは今つけていた家計簿と、雨漏りを交互にながめてため息をついた。
「いつか来るかもしれんとは思っとったけど・・・。」
茂には悪いが安普請のこの家で、雨漏りがしても不思議はないのだが、梅雨どきも
台風の季節も乗り切ったこの時期に来るとは・・・やっぱりちょっと心が沈んだ。
(修繕するお金なんてないしなあ・・・。)
安来の家も古いから、雨漏りは珍しいことではなかったが、すぐさま出入りの大工が
呼ばれて直してくれたものだ。雨漏りを放置しておいて家全体が傷んでは、ご先祖に
申し訳がたたないというのが父の源兵衛の口ぐせだった。
「ああ・・・また出とる・・・。」
フミエは上目遣いに眼球だけを動かして天井のシミを見た。それは以前からフミエが
(人の顔みたい・・・。)と不気味に思っていたものだ。
 男とも女ともつかない不気味な顔が、空洞のような目でフミエをみつめ、ぽっかりと
黒く開いた口から呪いの言葉を吐いているように見えるそのシミが目に入らないよう、
フミエは普段からあまり天井を見上げないようにしていた。

391 :
 水分を得たシミはくっきりと輪郭を際立たせ、心なしか前よりも活き活きとして
さえ見える。
「あのひと・・・どげしたんだろう?もうこげに暗いのに。」
戌井の家を訪ねると言って午後から出かけた茂は、そろそろ夕食どきと言うのに
まだ帰って来ない。窓に映ったフミエの心細げな顔に雨粒が吹きつけ、ガラスが
ガタガタと鳴った。
「しげぇさん・・・早く帰ってきて・・・!」
フミエは急に寒気を覚え、両手で自分の肩を抱いた。
「ああ・・・雨漏りか。ボロ家だけんしかたないな。」
急に雨が降ってきたので戌井のところで待たせてもらったとかで、茂は八時を
まわってからようやく帰ってきた。フミエの訴えを聞いて天井を見上げたが、茂は
慣れっこという感じで特に深刻にとらえる様子もなかった。
「木目が顔に見えるのは、ようあることだ。・・・障子を張り替えても張り替えても
 同じ場所に現れる顔、と言うのなら怪談だけどな。」
江戸時代の怖い話の聞き書き集にあるとかで、茂は夕食を食べながら嬉しそうに
その怪異についてこと細かに教えてくれた。
(聞かんだったらよかった・・・ますます怖くなってしもうた。)
茂に妖怪の相談をしたのは失敗だった。ますます怖い気持ちがふくらんでしまって、
フミエは泣きたくなる。
「また読み返してみたくなったな。・・・戌井さんとこで思いついた話もあるし、
 これ食ったらさっそく仕事だ。」
雨宿りの間、戌井と漫画談義に花が咲いて新しい着想を得たらしく、南瓜の
煮たのと大根漬けでモリモリとご飯をたいらげると、茂はさっさと仕事部屋に
こもってしまった。

392 :
 その日の夜。布団に入ってからずいぶん時間が経っても、フミエはなかなか
寝つけないでいた。天井を見ないようにしていても、目を閉じるとまな裏に
あの顔が浮かんでくる。茂に聞いた怖い話も思い出されて、眠るどころでは
なくなってしまったのだ。 
 宵のうちの時雨はとうに止み、顔を出した月の光が差し込んで部屋はうす明るい。
相変わらず風はつよく、雲がどんどん流れて不気味な陰を部屋の中に投げかけている。
つめたく湿った布団の中で、フミエはまんじりとも出来ずに、無理やり目をつぶって
怖いのを我慢していた。
 深夜になって、茂が仕事部屋のフスマを開けて部屋に入ってきた。フミエは
心からホッとして、思わず起き上がってしまった。
「・・・なんだ、あんたまだ寝とらんだったのか?」
寝巻きに着替えながら、茂が驚いたように聞いた。
「眠れんようになってしもうて・・・あなたが怖い話されるけん。」
「怖い話・・・?そげなもんしたっけか?」
茂はさっきの話などすっかり忘れてしまったようで、さっさと自分の布団に
もぐり込んだ。
「うう、布団がつめたい・・・。ちょっこしあっためてごせ。」
ようやく少しだけ温まってきたフミエの布団に、茂の冷たい身体が入ってくる。
広げられた腕の中に包み込まれ、フミエはホッと安堵のため息をついた。
(あったかい・・・。)
同じように冷たい身体なのに、ふたり寄り添うとなぜ温かくなるのだろう・・・
フミエは今度こそ眠れそうな気がして、茂の胸に顔をうずめた。
「そう言えば、シミがどうとか言うとったな・・・。天井のシミは天井舐めと言う
 妖怪が舐めた痕だと言うが、妖怪いうのは舐めるのが好きだなあ・・・。」
よせばいいのに、茂がまた怖い話を始める。
「もぉ・・・やめてください!・・・せっかく眠れそうなのに・・・。」
「なんだ・・・あんたも、夜更かししとるとお化けが足の裏べろ〜んと舐めーぞ、
 とおばばに脅かされた言うとったじゃなーか。」
茂がふざけて足の指でフミエの足の裏をすぅっと引っかいた。

393 :
「ひゃっ・・・!!」
ぞくっとして反射的に足を引っ込め、フミエは思わず茂にぎゅっと抱きついた。
「こ、こら・・・そげにしがみつかれたら、別のところが起きてしまうが・・・。」
「え・・・?」
ふと力をゆるめたフミエの下腹に、覚えのある硬さが押しつけられる。息をのんだ
フミエの唇を、茂の唇が押しつつんだ。
「ン・・・んん・・・っふ・・・ぅ・・・。」
自分を欲している証しをつきつけられながら、口中を激しく責められる。フミエの
はだかの脚を、茂の足先がからかうように何度もこすり上げる。いつしか大きく
拡げられた脚のあいだが、とろとろに蕩けていくのがわかった。
「・・・あんた、こげしてほしくて、怖い怖い言うとるんじゃないのか?」
唇を離した茂が、少し息をはずませながらからかった。
「ち・・・ちがいます!」
「なんだ・・・違うのか。」
「え・・・?」
ちょっとがっかりしたような言い方にきょとんとしたフミエの唇が、また塞がれる。
「・・・ン・・・はぁ・・・ぁ・・・っん・・・。」
唇と唇が溶け合い、冷えていた肌に茂の大きな手が這わされる。さらしあった素肌と
素肌のふれ合いがたまらなく心地よくて、フミエは幸せそうに茂の背に腕をまわし、
甘い声であえぎ続けた。
「ぁあ・・・ぁん・・・っん・・・ぁあ・・・!」
胸乳を舐め吸いながら、潤いを確かめた手が膝を押し上げた。いつもより性急な
ことの運びが、茂につよく欲されていることを実感させて、歓びがじわりと拡がる。

394 :
 快をこらえながら少しずつ身を沈めていく時の、ちょっと苦しげないとしい顔を
少しだけ垣間見たくて、フミエはうっすらと目を開けた・・・そのとたん、茂の肩ごしに
あの天井のシミが目に入った。
「ぃ、いや・・・!こわい・・・。」
フミエは天井を見たくなくて、茂の胸に顔をうずめた。
「ん・・・?どげした。・・・今さら『こわい。』って・・・。」
結婚してから1年たらずとは言え、もう数え切れないほど抱き合って、身も心も
馴染んでいるはずのフミエの言葉に、茂は一瞬勘違いをして手を止めた。
「だ、だって・・・見とる・・・。」
フミエの指さす方を見ると、さっき見せられた天井のシミがフミエを見下ろしている。
「ははは・・・子供みたいだな、あんたは。」
「だって・・・目が合ってしまうんですもん。」
フミエは抱きついた胸から顔も上げずに、くぐもった声で反論した。
「ふーーーん・・・俺が一生懸命はげんどる時にも、あんたは天井見て『あのシミ、
 人の顔に見える・・・。』とか考えとる余裕があるんだな・・・。」
茂は今にも貫こうとしていた体勢を元に戻し、わざと傷ついたような声で言った。
「・・・えっ・・・そ、そげなことありません!」
思っても見ない茂の反応に、フミエは驚いて胸から顔をあげた。
 愛される時、フミエに周りの景色を気にしている余裕などほとんどなかった。
ただひとつ、超至近距離にある茂の端正な顔が、汗を浮かべ、快感に歪み、
のどぼとけがゴクリと動く・・・そんな官能的な表情に目を奪われることはあっても・・・。
「あげにひいひい言うとったのは、芝居だったんかな・・・。」
舌に指に、そして茂自身に・・・蕩かされ、占められ、奪いつくされる時のフミエの、
啼き声、涙、蜜、内部の収縮・・・それらが演技などではないことは、茂が一番よく
知っているはずなのに・・・。

395 :
「・・・そげな・・・芝居・・・だなんて、私・・・。」
「本当に、よがっとるふりをしとるんじゃないんだな?」
言葉でなぶりながら、指は紅く色づいた実をつまんでこじっている。フミエは
もじもじと身体をうごめかせてなんとか逃れようとするが、重い身体に押さえつけ
られていて動けず、息を荒くして目に涙をため、震える声で答えた。
「・・・ぁ、ゃめっ・・・ほ・・・ほんと・・・ですけん・・・っ!」
「まあ・・・あんたにそげな演技力があるとも思えんが・・・。」
「だ、だけん・・・ほんとに・・・!」
乳首からじんじんと送り込まれる痺れが、フミエの思考能力を奪い去る。信じて
ほしいあまり何かすごく羞ずかしいことを口ばしりそうになって言いよどむ。
「わかった、わかった・・・。ほんなら、もっと見せてみれ。」
頭を撫でられてホッとしたのも束の間、さらけ出されたままの、蜜にまみれた花を
指でなぞられ、悲鳴をあげて身悶えた。
「・・・ひぁああっ・・・だめっ・・・だめぇ・・・。」
指で、言葉で・・・弄られ、責められて、ずきずき疼いている女陰から、情けないほど
温かい水があふれてきてしまう。
「まあ、演技じゃこげにぐしょぐしょには出来んだろうな・・・。」
引き抜いた指をわざと灯りにすかして、淫らに糸をひく粘液をフミエに見せつける。
「んっ・・・ぐ・・・ぅ・・・。」
蜜に濡れた指を口に挿し入れられ、舌や口蓋をくすぐられる。フミエはその手を
両手でつかみ、なぶる指に舌をからめて夢中で舐め吸った。
「だが・・・シミと目が合うと気が散るかもしれん・・・。」
フミエは頭がぼうっとして、もうシミのことなどさほど気にならなくなっていた。
けれど茂は、うるんだ瞳を霞ませて溶けた身体を横たえているフミエを見下ろし、
「ほんなら今日は、あんたが上になれ。」
と言った。
「・・・え・・・?」
「上を見んようにすれば、怖くないだろ?」
ごろんと横になると、フミエの手をぐいと引っぱった。

396 :
(これ・・・羞ずかしいけん、いや・・・。)
何度もさせられているけれど、フミエはこのかたちが正直あまり好きではなかった。
そもそも男女の交わりに、さまざまな体位などと言うものがあると言うことさえ、
結婚するまでは知らなかったフミエだった。
 正面から抱きあうだけでなく、後ろから、横から、座ったまま向かい合ったり、
茂のあぐらの上に子供のように抱かれたり・・・。なかでも、上になるかたちでは、
自らをつらぬく凶器を自分でなかにおさめなければならないのだ。
 閨のことでは、男性に全てをまかせていればいいと思っていたフミエは、最初
このかたちにとても抵抗があったし、今でも慣れてはいなかった。
 手を引かれるままに起き上がって、しぶしぶ上になる。大きく開いた両脚の
中心が、痛いほど高ぶってフミエに充足を求めているけれど、すぐにその行為に
うつることはためらわれた。
 せめてもの触れ合いが欲しくて、前のめりになって茂に口づける。いとおしげに
頬を手で包み、伸ばされた舌を茂の分身にするように唇をすぼめて愛撫した。
「・・・っふ・・・ぅん・・・んふぅ・・・はぁっ・・・。」
茂が手をまわして抱き寄せ、下から奪う。激しくなる口づけの間にも、いっぱいに
開いた秘裂はだらだらと涙を流しつづけていた。
「・・・んふぁ・・・っは・・・ぁあ!!・・・っ。」
口づけに夢中になっているフミエの、後ろに向けてさらされていた秘裂を、茂が
持ち上げた膝でぐっと衝いた。フミエは悲鳴をあげて頭を上げ、身をよじった。
「・・・ゃっ・・・ぁ・・・ダメッ・・・だ・・・。」
再び唇を奪われて後頭部を押さえつけられ、更に持ち上げた膝で女陰をぐりぐりと
なぶられる。前にも後ろにも逃げようがなくて、フミエはほとんど達きそうなほど
感じていた。

397 :
「っ・・・く・・・はぁっ・・・はぁ・・・。」
唇が離れ、茂の胸を涙で濡らして伏せたまま荒い息をついていると、無防備な
秘裂に硬起した男性が押し当てられた。
「ゃっ・・・ぁああ・・・!!」
茂が手で持った自身を、とろとろに溶けたフミエのなかに挿し入れている。フミエの
複雑な花の一片一片が、歓喜にざわつきながら最愛のひとの一部を迎え入れた。
「・・・んっ・・・で、でも・・・うえに・・・なれって・・・。」
それなりに覚悟を決めて上に乗ったのに・・・。フミエがもたもたしていたとは言え、
不意打ちされて、勝手に歓喜に沸く身体をどうすることもできない。
「あんたが、とろくさいけんだ。」
大きな手が臀の肉をつかみ、下に向かってぐいっと押しつけた。
「ゃあっ・・・ダメ・・・そげにしたらっ―――――!」
フミエを押し拡げている剛直が、さらに深いところをえぐる。フミエは自分の涙で
しょっぱい胸肌に唇を押しつけ、のどを絞り上げるような喜悦の叫びを塞いだ。
「ぃく・・・も・・・ぃっちゃ・・・う・・・。」
フミエは茂の肩に爪をたて、胸に顔を伏せたまま悦びに身体をふるわせている。
「・・・あんた、そこはとろくさくないんだがな・・・。」
フミエの到達の早さに少し驚きながら、茂はその身体を上に乗せたまま上体を起こし、
背中を抱いて支えてやりながら向かい合った。
「は・・・っん・・・だめっ・・・まだ、なかが・・・。」
斜めに脚を組み合わせたかたちになって、新たな刺激につらぬかれ、まだうごめいて
いるフミエの内部がどよめいた。
「ぃやっ・・・あた・・・っちゃ・・・。」
茂の先端の突き当たるところに、フミエがことのほか歓ぶ場所がある。
「ん・・・?ここか・・・?」
腰をつかまれてぐっと押し当てたまま、がくがくと揺すぶられる。

398 :
「んぁぅ・・・だめっ・・・しんじゃ・・・ん・・・じゃうぅっ・・・!」
フミエが身悶えてのどを反らし、そのまま後ろにくずおれそうになる。
「こら、まだぬな・・・。」
茂が少し笑って、右手でフミエの右手を握った。フミエは左手を後ろにつき、
茂の手をたよりに弓なりに背をそらせた。もはや羞じらいも何もなくなり、腰を
浮かせ、長い髪を振り乱して甘く啼きつづける。
「・・・ゃっ・・・ぁあ・・・!・・・ぁあ・・・んっ・・・!!」
律動的な動きに突き上げられ、フミエも必で腰を波打たせた。
「んんっ・・・ぁあっ・・・あ・・・ぃ・・・い・・・。」
素直に快感を追って腰を躍らせる妻を、茂はいとおしそうに眺めた。
「んぁっ・・・っく・・・ぃく・・・ぁあ―――――!」
後ろに倒れそうになったフミエを、茂は腕で支えてそっと横たえた。びくびくと
ふるえる身体に、いとしい重さがのしかかってくる・・・。その時、フミエの脳裡に、
忘れていたはずのあの顔がよみがえった。
「いやっ・・・!天井が・・・!」
「だら・・・俺の顔だけ見とれ!」
伏せていた目をあげると、フミエをまっすぐにみつめる視線とぶつかった。
「ゃ・・・羞ずか・・・し・・・。」
自分を貫いている男の顔をまじまじと見、見られるのはたまらなく羞ずかしくて、
フミエは目を伏せ、顎をあげようとする茂の手に抗った。
「んんっ・・・ぐ・・・。」
しのごの言わせず唇で唇をふさがれ、舌がしのびこんで来る。上の口も下の口も
とろとろに溶けて、茂にいっぱいに占領されている。自分が、ただ茂を容れるため
だけの器になってしまったような感覚にとらわれる。
「ん・・・んふぅ・・・ぅ・・・んぅ―――――!!」
茂の中に絶頂のすべてを吐き出し、フミエは真っ白な世界に旅立った。ひとつに
溶け合った身体のなかに、茂もすべてを解き放って果てた。

399 :
「・・・はぁあ・・・。」
法悦のあとの気だるさの中で、フミエは温かい腕の中でたゆたっていた。
「なんだ、大けなため息なんぞついて。」
「こげしとると、安心だなあ・・・って。」
さっきまでの寂しい独り寝とは比べ物にならない、幸福感と安堵感・・・。それなのに、
茂に意外なことを言われて、フミエはギクッとした。
「・・・俺が、お化けだったらどげするんだ?」
自分を抱いている男は、茂の声で話すけれど、その顔は窓のうすあかりからは逆光に
なっていて、全く判別がつかない。茂さえ隣りにいてくれれば、闇を怖いと思ったこと
などなかったフミエなのに・・・。
 急に怖くなって、フミエは目の前の真っ黒な顔を両手でさわった。すっと伸びた鼻筋、
男らしい眉毛、滑らかなほお、くすぐったそうにまつ毛が震え、しのび笑いがもれる。
顔が見えなくたって、このひとはこのひとだ。
「・・・そしたら、私もお化けになりますけん。」
フミエはそう言うと、茂の両頬を包んで口づけた。下から伸びてきた腕にぎゅっと
抱きしめられる。肌の下の甘い痺れはいともたやすくよみがえり、フミエは息苦しく
なって茂の胸に頬を寄せた。
「そげだな・・・自分もお化けになってしまえば、こわくなくなるけん。」
フミエがふふふと笑った。暗闇の中で茂とふたり、お化けの夫婦になった気になると、
なんだか楽しくさえなってくる。
「そう言やあんた、さっき『しぬぬ』言うとったなあ・・・。」
ふいに茂がそんなことを言い出した。
「そ、そげに何度も言うとりません!いっかいだけ・・・です。」
行為のさ中に見せた反応や、夢中で口走ったことを、後から言われるのはたまらなく
恥ずかしくて、フミエの頬が熱くなる。
 自分がどうなってしまうのかわからない不安と恍惚を表すのには『ぬ』と言う言葉
しかなかったのだけれど、愛し合う時にそれはふさわしくない言葉だったのだろうか?

400 :
「ぁ・・・でも、こげな時に言うたら、いけんだったでしょうか?」
「・・・いや?達く時に『ぬ』言う女は多いらしいぞ。なるほど、ぬほど快ければ、
 本当になんでも魂だけは常世(とこよ)の国に行けるかもしれんな。」
茂がふとそう口にした。それがこのいとしいぬくもりに包まれて沈んでいる闇の底の
ことならば、フミエもそんな気がしてくる。
「常世・・・って、十万億土のことですか?」
「うん・・・そうとも言うな。海の彼方にある理想郷とも言われとるが・・・。」
「子供の頃、お盆にはご先祖様がキュウリの馬に乗って帰ってきて、また十万億土と
 いう所に戻っていく・・・とおばばに教わりました。」
「ああ・・・昔はもっと、が身近なものだったもんだ。」
普通は縁起でもないとされるの話題だが、茂にとっては妖怪とならんで重要な
研究テーマだった。懐かしそうに、時に嬉しそうにについて語る茂に、フミエも
最初は面食らったものだが、次第に慣れてしまっていた。
「自分とつながる人達がおる所と思えば、なんだか懐かしい気もしますね・・・。」
おばばが教えてくれたあの世の世界に、今はそのおばばもいる・・・いつかは誰もが
行く場所が、やすらかで幸せな世界であるのなら、人は安心してねるだろう。
 真っ暗な中でについてあれこれ考えている自分に気づいて、フミエは
(私はほんとに、このひとの女房になったんだなあ・・・。)
と、嬉しいようなおかしいような気持ちで微笑んだ。
「『ぬ』ことを『逝く』とも言うな・・・。だけん、気がいく時に『ぬ』と
 言うのかもしれん。」
また話がそこに戻って、フミエはまた頬を赤らめた。だが、どうにもならないほど
責め上げられ、追い落とされた瞬間に魂がふわりと浮かぶようなあの感覚・・・
あれはやはり小さなに似ているかも知れない・・・とフミエは実感した。
「あんた、今日は二度・・・いや三度、んだな・・・。」
「・・・ゃだ、もう・・・。」
そんなこと、数えないでほしい・・・フミエは燃えるように熱い頬を、冷えだした茂の
胸肌に押しつけて冷やした。
「熱っつい頬べただな。ええ行火(あんか)になるが・・・。」
茂がフミエの頭をぎゅっと抱いて胸に押しつけた。そのこころよい束縛をたのしむ
ように、フミエは目を閉じて深く息を吸い込んだ。

401 :
いつも素敵な作品ありがd!!
自分も、フミちゃんって怖がりなイメージあったから
何か良かった
抱きつかれてムラムラしちゃうゲゲも最高でしたw

402 :
>>390
GJ!
わざとを期待するゲゲさんがかわいいw

403 :
>>390
GJ!!
次の作品も心待ちしておりますです

404 :
>>389
384ですが、ほんにだんだん!
こんなに嬉しいことは無いです
GJでした!

405 :
家計簿も終わっちゃったんだね
さびしいなあ…

406 :
本スレにあった脚もみ、イイけど妊娠中なんだよなあ、惜しいww

407 :
>>405
家計簿、おとうちゃんがドラマよりやさしい時があってニヤニヤしたw
単行本楽しみだわ

408 :
フミちゃん中の人のエアコンCM
キレイ可愛い〜
あんな瞳をウルウルさせるゲゲは幸せ杉

409 :
いい夫婦の日記念カキコ
>>408
かわいいよねぇ
ゆうちゃんになって綾子さんとイチャイチャしたいと本気で思う事が多々あります…

410 :
コーセー、JAバンク
新作続けてみれた!
とくにJAはフミちゃんをモチーフにした作りだね
ちょっとどんくさい、でも可愛さMAXな感じ

411 :
>>409
ハゲドウ
あんな可愛い奥さん(彼女)と目いっぱいイチャイチャ出来たら
どんな事でも頑張れるよなあ…

412 :
未放送のエア食事会を観たかった
保守。

413 :
>>412
ふみちゃんがエア食事会でエアあんこでも服に落としてぺろぺろ舐められれば良いよね
エア生クリームが思い浮かんだけど時代的に厳しいっつーw

414 :
もうじきクリスマス…
寒くなるといろんなあったまるシーンを思い出す

415 :
>>414
出産当日の送ってくときとかねー
もうほんとにほんとにかわいい
ああもうまた見たくなってきた!
CS見れない自分が憎い!

416 :
投下がないなあ…
職人さんいつでも待ってるよ!

417 :
藍子よっちゃんおめでとう!

418 :
>>416
祐綾のクリスマスを書いてたんだけど、なんか時間がとれなくて
とうとう間に合わず・・・。
『待ってるよ!』なんて言われたらがんばっちゃうかもw
いつ完成するかわからないけど、時期はずれでも良ければ投下します。

419 :
職人さん!
時期とか気にしないで
是非とも首を長くして待ってまーす♪

420 :
保守

421 :
JAの新しいCMが髪型のおかげでふみちゃんと綾子さんにしか見えないw
綾子さんはポニテってイメージあるけどこれは多分自分が携帯に保存してて
ちらちら見てるいちせん夫婦の画像がポニテだからなんだろうな…w
おろしてる方が多いもんな

422 :
>>421
リス更新編が神すぎた…
波照間っ♪も可愛いけど

423 :
ゲゲがプロダクション立ち上げる時
いそいそと簿記?の本で勉強しようと帰ってきたのに
すっかり置いてきぼりをくらうフミちゃん
可哀想なんだけど、あのシーン好きだったな〜
いじらしくて健気で可愛い
鈍感てか
お前は家の事だけやっとればええモードなゲゲも何か好きだw
夜はちょっとだけ拗ねてるフミちゃんと
何の事だかサッパリわかってないゲゲの
お布団の中を妄想してみたりする自分…

424 :
ふみちゃんお誕生日おめでとう!
釣書に書いてあったとは…気づかなかった…
>>423
家の事だけやっとればいいモードいいよね
自分も好きだ
ちょっと拗ねるふみちゃんとわからないゲゲとか…超かわいいww

425 :
昨日はいちごの日

426 :
つぶやきサイトでリアル喜子がつぶやいてるリアルおとうちゃんの様子がかわいすぎる
聞いてるのはリアルおかあちゃんなのにうれしそうなのはおとうちゃんってのがもう

427 :
ゲゲさんの中の人が今度でる映画に結構なシーンがあるらしいね
いつか見れたらゲゲふみで脳内変換しよう…

428 :
お見合い日記念カキコ!
一目惚れ記念日でもあるよねw

429 :
お見合いシーン好きだ
初めてお互いの顔をみるところ
おずおずと見上げるフミちゃん可愛い
ちょっとピントのズレてるゲゲも一瞬フミちゃんをチラミする辺り
初々しい二人だw

430 :
結婚記念日おめでとう!
>>429
かわいいし面白いし、ほんといいよね

431 :
おめ!

432 :
最近ある対談で読んだんだけど、先生とほぼ同世代・島根出身の絵本作家さん。
やはり東京からとんぼがえりで見合いして、帰りの電車内でどんどん相手を
美化しちゃって、次に会ったらアレ・・・?なんて言ってたけど、本当は
一度で気に入っちゃったってことの、この世代的照れ隠し表現なんだろうなあ…
なんて、ちょっとゲゲふみに応用できないかななんて考えてみたりw

433 :
>>432
先生もそうだけどあの時代の男性の照れ隠しってほんとかわいいよねw

434 :
そろそろ深大寺デートあたりだったのね
ようやく名実ともに夫婦に…w

435 :
ふみちゃんはきっとバレンタインにチョを、ホワイトデーにはキャンディーをどっちもゲゲさんにあげるんだろうなとニヤニヤする
もし万が一ホワイトデーにゲゲさんから貰ったとしても二人で食べるんだろうな

436 :
クリスマスのお話描いてくれてる職人さーん
投下待ってま〜す♪

437 :
クリア朝日で晩酌する佐々木夫婦

438 :
かわいい〜〜ひと〜

439 :
走れー!とかするゆうあや良いなあ…
ゲゲふみはふみちゃんが足ひねったらおんぶしてもらえるかも!とおもったけど
よく考えたら肩を貸すくらいが限界か…
ゲゲさんの性格でおんぶするってすごいオイシイんだけどなー

440 :
あのCMここ見て作ったとしか思えないw

441 :
あのCM、「えっちしよ?」に思えて仕方ないんだが!
聞こえるというより思ってしまうというかw

442 :
>>441


443 :
CM皆いいね
ただ自分はフミちゃんにしろ綾子ちゃんにしろ「えちは受け身」の方が好きかな!
キャラの性格がおっとりとか若干天然ぽいからイメージだけどw
ゲゲや祐ちゃんに、ちょっと強引に…のが最高!!(あくまでも好みですサーセン)

444 :
自分もそう思う、同意
だが
その超受け身なふみちゃん綾子さんが
超恥ずかしがって超もじもじしながら
小声で耳元にこっそり言ったら…
超萌えると思った

445 :
あの…えっち…しよ?

446 :
>>444
もう一晩中寝かせてもらえないだろうなw

447 :
>>446
萌えぬww
その後綾ちゃんは夕方まで寝ちゃうけど、
祐ちゃんは昼くらいに目が覚めて色々反省しつつも綾ちゃんの寝顔見てニヤニヤして二度寝すればいいよw
ゲゲふみは逆になるかなー

448 :
リアルゲゲさんの虫歯疑惑で
今まで虫歯になった事がなかったふみちゃんが結婚後はじめて虫歯になったらとか
つい妄想してしまう

449 :
>>448
実話では、質屋さん、米屋さん、歯医者さんが3大恩人のようですね。
ふむふむ、あらゆる菌を伝染しあう夫婦…いいかも。
 さて、遅くなってスミマセン…。今さらですが祐綾。
クリスマスのお話のはずが、書いてるうちに前後のお話もどんどん増殖しちゃって
収拾とれなくなってましたw
 あまりにも長いので季節で適当に区切りましたが、つきあい始めてから1年未満の
秋〜冬の、綾ちゃんの揺れる想い…というテーマの4連作として投下予定です。
 以前に、このふたりの初めて…を書いてくださった作品。
共感できる設定が多くて、いくつかそのまま使わせていただいてる部分があります。
綾ちゃんが見かけによらず可愛い服が好き、とか、綾ちゃんは初めてで、デートの
別れ際、離れたくなくて…みたいなところです。
 最初ゆうちゃん呼びじゃなかったとことか、違う設定もありますが、いろいろな
解釈ということでご了承ください。
 
 読んでくださる方がまだいることを祈りつつ…。
あ、言うまでもなく『いちせん』に興味ない方はスルーでお願いします。

450 :
「…ぁ…ぁっ…はぁ…っ!」
何かすがるものが欲しくて伸ばした指が、まだ乱れていないシーツをむなしく引っかいた。
「っぁ…あ…っ!…ンンッ…ん…。」
激しく首を振って初めてその存在に気づいた枕の端を握り締める。涙に霞む両目には、
自らの白い大腿を押し拡げてその中心を口唇で愛している恋人が映っていた。
「ゆ…いちく…っ…も…っ…!」
名前を呼ばれて、綾子の中心に顔を埋めている祐一がふと顔をあげ、また愛撫に戻った。
 この部屋に入ってすぐ、立ったまま唇を奪われ、口づけあいながら服を脱がされた。
ふわりと持ち上げられ、すとんとベッドに下ろされて、息がつまるほど抱きしめられる。
深いキス、素肌と素肌の触れ合い…祐一の指が、唇が触れる場所に熱が生まれ、ただ
祐一だけが綾子の世界のすべてになってしまう…。
 そしてふと気づくと、いつしか最も羞ずかしい体勢をとらされ、最も感じる部分に
祐一の舌が分け入っていた。
「ダメ…ぉねがっ…ぁ…ぁああ―――――!」
ダメ、ダメと言いながらも、綾子が思わずその部分を突き出してしまうほどソフトに
責めていた舌が、ころあいとばかりぐっと押しつけられた。綾子はせつない悲鳴を
あげて達した。快楽にゆがむ顔を見られない代わりに、祐一は締めつけてくる綾子の
長い脚の慄えをたのしんだ。
 端整な顔が近づいてきて、ゆっくりと唇を奪われる。全身の血管がドキドキ脈打って、
シーツの上の身体が持ち上がりそうな錯覚に襲われる。
 …ここまで許しているのに、綾子の心臓は片思いの頃のままだ。こんな日が本当に
来るなんて、思ってもみなかった。お互いの視界を独占しあうほどの至近距離で
見つめあい、全てを溶かしあう…その時間が、二年の間仕事中にこっそりと彼を
盗み見て来た時間を超えたなら、もうドキドキしなくても済むようになるのだろうか?
 唇が離れ、綾子の目尻ににじんだ涙を祐一の指がすくいとった。もう一度深く口づけ
ながら、祐一が身を沈めてくる。
 祐一の存在に身体のすみずみまでも埋め尽くされるこの瞬間、綾子はいつも至福と
恐れと期待の入り混じった圧倒的な感覚に襲われる。そして、その後は胸のドキドキと
いれ代わりに、激流のような快楽にさらわれて、ただ押し流されるがままになって
しまうのだった。

451 :
(私…しあわせ…だよね?…今…たぶん…。)
自分の部屋のベッドに横たわり、綾子は甘苦しい愛の記憶をよみがえらせていた。
 自分の身体が今どうなっているのかわからなくなるほど交わり方を変えられ、
そのつど激しい悦びを刻みつけられた。全てが終わった後、眠りに落ちた綾子を、
祐一は目覚めるまで胸に抱いていてくれた。
 …ほんの数時間前、ホテルの素っ気無い真っ白なシーツの上で祐一に愛され、
悦楽に痺れていた身体…今は慣れ親しんだ自分のベッドでひとり、綾子はなかなか
寝つかれず、その身を抱きしめてちいさなため息を吐いた。
 二年もの長い間、ずっとずっと好きだった祐一に告白出来たのは、二人がバイトを
止めるその日の、まさに別れ際だった。
 出会いはむしろ悪印象。けれど彼の仕事ぶりや隠れた優しさに触れて、次第に
彼のことが気になるようになっていった。スタッフのみならず、客の女性からも秋波を
送られるほどモテる祐一を、時々視界の端でとらえることでせつない胸を慰めていた
日々…。
 祐一は大学を、綾子は専門学校を卒業すると同時にアルバイトを止めることになり、
仲間が開いてくれたささやかな送別会。
(もう二度と会えなくなってしまう…!)
明日も仕事だからとさっさと別れて行った祐一を、小雨の中夢中で追いかけた。
 振られてもいい、今ここで言わなければ一生後悔する…服や髪が濡れるのもかまわず、
必で追いついて、これっきりもう会えないなんていやだと言った綾子に、祐一は
「じゃあ、俺たちつきあおっか?」
と明るく言い放った。
 あれから半年…。二年間の片思いがウソのように濃密な関係に、綾子は夢のような
幸せと同時に少し戸惑いも感じていた。
(なんか、大人のつきあい過ぎるっていうか…。)
初めて深い関係になったのはつきあい始めて三ヶ月ほど経ったころ。デートの帰り際、
『帰りたくない、帰したくない。』ふたりの気持ちが、口に出さなくても伝わりあって、
なんの心の準備もなくホテルに入った。
 意識しすぎて変なテンションの綾子を、祐一はごく自然に、けれど最大限に大切に
導いてくれた。

452 :
 それから五ヶ月が過ぎ、今は秋。まだまだ社会人見習いのようなふたりは、仕事を
覚えるのが精一杯の毎日だ。そんな中、なんとか時間をみつけてはデートを重ねて
来たけれど…。
(私は…そんなに毎回、ホテル行かなくってもいいんだけどなぁ…。)
平日、仕事の後の夕食だけのデートでも、最後は必ずベッド…というのがお決まりの
コースのようになってしまっている。
(最近、自分で自分がわからないっていうか…。)
最初の頃は、緊張と幸福感で、自分が何をされているのかすら正確にはわからないと
言う感じだった。けれど最近では、祐一に次々と仕掛けられる初めての愛の行為が、
羞ずかしすぎるのと…
(き、気持ち…快すぎて…。)
最初の頃とは違う意味で、自分で自分を制御できない。綾子がまだ慣れていない頃は
手加減してくれていたのだろうけれど、今はもう、抱かれるたび啼かされつくし、
奪いつくされずには済まないのだった。
 普通にデートしている分には、3歳の年の差もあまり感じずにつきあえている。
というか、つきあい始めの頃バイトの時の延長で『佐々木さん』と呼んでいたら、
祐一に『恋人どうしって感じがしない。』と文句を言われて『祐一くん』に変えた
くらいで、普段は全然対等な感じなのだけれど…。
(ベッドだと、全面降伏…って感じになっちゃうんだよね…。)
最初のときから、祐一は一貫して優しくて、自然で、戸惑いがちな綾子を上手にリード
してくれている。でもそれは、いつも彼のペースに乗せられて、何がなんだかわからない
うちにかなり羞ずかしい姿態をさらさせられることにもなるわけで…。
(特に…あの…なんかもぅ…羞ずかしすぎ…。)
祐一が口唇で綾子を愛するあの行為…思い出すだけで、うなじをざわりとしたものが
奔り抜ける。
(私…主体性なさすぎっていうか…いいのかな?こんなんで…。)
普通、恋愛において男性がうまくリードしてくれるというのは理想的なことのはずだ。
けれど、自分の場合、祐一に主導権を握られすぎなのではないか…特にベッドにおいて。
 なんだか祐一に会っている時間の半分以上は裸で過ごしているような気がする
今日このごろ…半年前までは無垢だった綾子が思い乱れるのも無理はないことだった。
(もぉ…こんなことばっかり考えてないで、眠らなきゃ…明日も会社だもん。)
綾子は考え事を頭から振り払うようにベッドの中で体勢を変えた。甘くせつない記憶に
うっとりしたり胸苦しくなったり、かと思えば、祐一との蜜愛にただ翻弄されるばかりの
自分が不安でたまらなくなったり…まことに忙しい独りのときの綾子だった。

453 :
「わあ、これ可愛い…!」
会社帰りにふと立ち寄ったファッションビルの下着売り場。綾子が思わず手にとった
のは、サーモンピンクの地にココアブラウンのレースとリボンがついたキャミソール。
(うわ…でも、下、これかぁ…。)
それとセットになったショーツは、腰の横でひもで結ぶようになっている、最低限の
部分しか隠せない布切れのような代物だった。
(ちょっと…これはね。あはは…。)
綾子はそのセットのかかったハンガーを戻すと、別の下着を手に取った。
(いい色…これも素敵。)
青みの強いラベンダー色の揃いのブラジャーとショーツ。試着してみると、綾子の
肌のいろによく映えて体型をひきたて、着けるだけで優雅な気分になった。うっとり
するような手触りの生地に、品よくあしらわれたレースもかなり上質のものらしい。
(これイイ!けど…た、高価いな…。)
値段も上質だ…。綾子の頭の中で計算が始まる。
「え〜い。買っちゃお!」
綾子は意を決したようにレジへと向かった。
 日ごろ堅実な綾子だけれど、仕事がハードになるにつれてこんなささやかな贅沢が
ストレス解消になっていた。
 あるプロジェクトが、納期を直前にして全面的に見直しとなったおかげで、この
一週間というもの残業につづく残業だった。しまいには土日連続で休日出勤を余儀
なくされ、やっと間に合わせることができた。さすがに関わった全員が交代で代休を
とることになり、綾子は迷わず祐一の店の定休日を選んだ。
 ハードなこの一週間の代償は、残業手当と休出手当…それに思わぬ休日。ぽっかりと
空いたその1日に、祐一を誘った。
 そして…この優美な蒼い下着を着けて祐一の前に立つ時のことを思うと、綾子の胸は
妖しくときめいた。
「あ〜…いいお天気!」
展覧会を見終わった後、綾子と祐一は、美術館の敷地内の広い芝生の上に座って、
買ってきたランチボックスでお昼にしていた。
 今日のデートは綾子が企画したもので、気になるアーティストの作品を見た後は、
都心とは思えないこの庭でランチを食べようと決めていた。

454 :
「あ…でも祐一くん、退屈じゃなかった?ごめんね。日本画なんて興味なかったかも。」
図版でしか見たことのなかった作品の大群に出会ううち、綾子はつい祐一の存在を
忘れてしまうほど見入っていた。
「え…そんなことない、すごく見ごたえあったよ。綾子は前からこのヒト知ってたの?」
「うん…。わりと商業ベースにのってる人だし、仕事がらね。」
「そっか。綾子は広告会社だもんな。仕事にも役立てられるよね。」
「いや〜、ウチは弱小だから、こんなすごい仕事には縁がないよ。でも、いつでも
 アンテナは張っておきたいもんね。」
「俺もさ…せんべいなんて昔からあるもんだけど、だからって何もしないでいるのは
 いやなんだ。だからいいモノ見れてよかったよ…ありがとな、綾子。」
今日は綾子の趣味につきあってくれただけだと思っていたのに…。
(祐一くんって、めったに誉めてくれないけど、誉める時はすごく的確に誉めて
 くれるんだよね…。)
ここのところずっと仕事が忙しくて、慌しいデートが続いていた。のぼせあがったり、
落ち込んだり、彼のよさを落ち着いて思い出しもせず、ひとりできりきり舞いしていた
自分が恥ずかしくなる。
「綾子、ピクニックする気まんまんだったみたいだね。」
今日の綾子は、座りやすいコットンのロングスカートに暖かそうなケープをまとい、
かごバッグからはビニールシートまで出てくる周到さだった。
「えへへ…先週、仕事で大変だったから、お日様の下でのんびりしたかったんだ。」
レモネードをひと口飲んですっぱい顔をする綾子を、祐一はまぶしげにみつめた。
「じゃあ、今日は健康的に過ごしますか…。」
「ぇ…。」
ストローをくわえたまま、綾子が固まった。思わずまわりを気にして見回す。
場所を選ばずにセクシャルな言葉をささやいて綾子をあわてさせるのは、いつもの
意地悪…そう思ったのに、祐一は意外や少し不安げで真剣なまなざしで綾子を見ていた。
「ど、どういう意味…?」
「この後、買い物でもして、お茶飲んで…明日も仕事だから早く帰る、とか。
 もし綾子が…その、疲れてるんなら…。」
この1週間がいかにハードだったか、綾子はさんざん祐一にこぼしてしまっていた。
会うたびにホテルに行かなくてもいいのに、と思っていたくせに、綾子は急に
さびしくなる。
「…そんなに早く帰らなくても、いいよ…。」
思わず言ってしまって、目を伏せる。眼球を冷たく感じるほどまぶたが熱くなっていた。
 祐一が、何も言わずにぎゅっと綾子の手を握った。

455 :
「いい…お天気だね。」
さっきの芝生の上とはうってかわった調子で綾子が窓の外を見た。昨日の雨に洗われた
緑が、群青色の空に映えてまぶしい。
「…いいお天気すぎる?」
祐一がペリエの壜に口をつけながら隣りに立った。先ほどの会話から一時間も経って
いないのに、ふたりはもう美術館からさほど離れていないホテルの一室にいた。
「あ…明る過ぎるよ。」
綾子が遮光カーテンの紐に伸ばした手を、祐一がさえぎった。
「ダメ。明るいところで綾子を見てみたいから。」
ペリエをぐっとあおって綾子に口づける。シュワシュワとした水が流れ込んでくる。
こくんと飲み下す可愛い喉の動きにかきたてられるように深くむさぼる。
「んんっ…ゃ…だ…はずか…し…。」
くず折れてしまいそうなキスをされながら、着ているものが剥ぎ落とされていく。
「まっ…って、あ、汗、かいたからっ…。」
ベッドへ直行されそうになって、綾子は必でシャワーを浴びることを求めた。
ようやく離してもらって、祐一が服を脱ぐ間にバスルームに飛び込んだ。祐一が遅れて
入ってきて、しかたなく一緒にシャワーを浴びる。
「もうきれいになっただろ?だいたい綾子なんて洗わなくたってきれいなんだから!」
キュッとシャワーを止め、さっさと身体を拭いた祐一が、もたもたしている綾子の
身体をゴシゴシ拭いて、拉するようにしてベッドへ戻った。
「ん…っふ…んゃんっ…!」
ベッドに座るか座らないかのうちに唇を奪われ、抱き倒される。仰向けになった綾子の
瞳に、どこまでも蒼い空が映っていた。
「ン…ぁ…はぁ…んん…っ。」
肩をギュッと抱き寄せられ、感覚の狭まった双つの尖りを祐一の長い指がとらえて
弄っている。むずがゆいような心地よさにあえぐ唇をふさがれて、深くむさぼられる。
もう片方の手が両脚の間に差し込まれ、いちばん長い指がいきなり核心をとらえた。
 息を呑んで身を硬くした綾子が、思わずいたずらな指を止めようとした手を
とらえられ、硬度を増しつつある雄根に導かれた。
「はぁ…は…ぁあ…ぁ…。」
なんだかもう、急所を全部押さえられ、後は祐一の思いのまま、あえぎ続けるしか
ないという感じだ。またこのまま達かされて、今この手の中で勢いを増しつつある
凶器に貫かれ、何もかもわからなくなってしまうのか…。

456 :
「ゃはぁっ…んっ…!」
秘蕾を苛んでいた指が急に引き抜かれ、綾子は小さな悲鳴をあげて慄いた。足首を
つかまれて、ズキズキと疼くように熱くなっている秘所がさらされる。
「ま…待って…!!」
今にもその中心に口づけようと顔を寄せていた祐一が、いぶかしげに顔を上げた。
「き…聞きたいことがあるの…。」
「フツー、このタイミングで聞くかぁ?」
祐一はあきれ顔で、綾子の足首をつかんで押し拡げたままだ。
「は、離して…。」
「あ、ごめん。」
祐一が手を離すと、綾子はあわてて脚を閉じた。
「聞きたいことって…なに?っていうか、綾子…もしかしてコレいやだった?」
祐一が心配そうに顔を近づけてくる。綾子は安心させるように彼の背に腕を回した。
「私がいたくないように…なの?」
彼の顔を見なくて済むのをありがたく思いながら、綾子は祐一の耳にささやいた。
「え…?」
「最初の時…も、してくれたよね?その…。」
その名を知らないわけではないけれど、口に出すのは羞ずかしくて口ごもった。
「ああ…。前はそれも大きかったかな。綾子のことも快くしてあげたかったし。
 女の人って、最初から快いってわけにいかないみたいだから。でも今は、自分の
 ためってのが大きいよ。」
祐一は綾子と向かい合いになって、頭の下に腕を入れて腕枕をしてくれた。
いったん行為を中断して、綾子の言い分をしっかり聞いてくれようと言う態度だった。
「え…だって、祐一くんが気持ちいいわけじゃないでしょ?」
「…バッカだな〜。綾子って、男なんて自分が挿入れて射精せば気持ちいいんでしょ
 とか思ってんの?」
真っ赤になって絶句した綾子にかまわず、祐一はすごいことを言い続ける。
「使えるとこ全部使って、あやのこと感じつくしたいんだよ…。これ、すっげ興奮
 するって知らないの?」
綾子を蕩かせ、達きやすくさせるため…それくらいにしか思っていなかった行為を、
祐一が純粋に楽しんでいたなんて…意外な答えに、綾子はどう返していいかわからない。
「あやが感じてるの見るのもうれしいしさ…。で、ものは相談だけど、俺の気持ち、
 わかってみない?」 

457 :
「…は?」
祐一はポカンとしている綾子にかまわず一人起き上がってベッドのふちに腰掛けた。
「…こっち来て。」
綾子はわけもわからず起き上がって祐一の横に座った。祐一は綾子を抱きしめて
ひとつキスをすると、肩を押してベッドを降りるようにうながした。導かれるまま
祐一の前に立つと、肩を押し下げられてひざまずいた。
「……キスしてみる?」
少し拡げられた両脚の間に、祐一の分身が少し角度を持って揺れている。綾子は、
こういう行為が存在することを頭では知っていても、自分がそれをするなんて考えて
みたことも無かった。
「あ…ごめん。イヤだったらもちろんしなくていいんだよ。」
ヘビに睨まれた蛙のように硬直してしまった綾子に、祐一はしまったという顔をして、
肩を抱いて立ち上がらせようとした。
「ううん…そうじゃないの。ただ私…くやしかったの。」
「え…何が?」
「これが、自分が思いついたんじゃないってことが…。なんで気がつかなかったんだろ?
 私でも祐一くんのためにしてあげられることがあるって。」
綾子は脚の間にしっかりと座り直すと、祐一を見上げた。
「どう…すればいいの?」
「や…あの…そだな…俺がいつもあやにしてるみたいに、してみたら?」
 綾子は祐一の両脚の間にもっと深く身体を入れ、その真ん中に勃ちあがっている
ものを両手で包んで口づけた…けれど、そこから先、どうしたらいいかわからない。
 いつもしているみたいに…と言われても、男と女では構造が違う。
『使えるとこ全部使って、あやのこと感じつくしたいんだよ…。』
祐一の言葉がよみがえる。綾子は両手で包んだものに、そっと頬を押し当てた。
 温かくて、すべすべしていて、綾子の手の中で息づいている小さな生き物のような
それは、見ようによっては可愛くて、綾子が欲しくてこんなに大きくなっているのだ
と思うと、ざわりとこみあげる情欲に、胸が灼けてしまいそうなほど愛しい。

458 :
 頬から離したそれを正面に据えて、手を離した。根元から始めて、竿全体を
ところかまわず口づける。支えを失った屹立が、綾子の顔にぶつかりながら揺れた。
 先端まで到達してしまうと、縫い目が集結したような面白い形をした部分を、
突き出した舌でちょん、とつついた。
「…っ!」
祐一がちょっと身じろいだのが、気配でわかる。
 手を添えて、もう少し大胆に舌を拡げ、筒の部分を舐めあげる。先端のくびれまで
達すると、カリの下に沿ってぐるりと舌を這わせた。
「舐めるのはそれくらいにして…くわえて。」
指示する声が、少しうわずっている気がして、ドキドキする。綾子は舌の動きを
止めると、おそるおそる口を開けて先端をちょっとだけふくんだ。
「…もっと、深く。」
祐一が励ますように綾子の髪を撫でる。水に飛び込む前のように深呼吸してから、
大きく口を開けて、思い切り奥まで呑み込んだ。
「…んぐっ…ぇは…ぅ…っ!!」
上口蓋の奥のほうに先端があたって、えずきそうになる。
 あわてて口から出し、むせている綾子を、祐一が心配そうにのぞきこんだ。
「大丈夫…?苦しかったら、やめていいんだよ?」
ちょっと涙目になりながら、綾子は首を横に振って、再び屹立を包みこんだ。
 苦しくならずに深く呑み込める角度を、ゆっくりとさぐっていく。もうこれ以上
無理というところまで深めてから、途中まで引き出して、また挿入れていく…。
 逞しく張りつめた雄根は口径をいっぱいに占め、唇が表皮をずらしながら上下した。
「ん…きもち…い…。」
祐一が、綾子の髪に指を差し入れて、いとおしむように何度も梳いた。
 引き出してはまた呑み込む動きが、綾子を愛してくれる時の祐一の動きにかさなる。
ひとつの淫らな器官になり果てた感覚に理性は痺れ、綾子はくるおしい反復運動を
繰り返した。

459 :
「あ…や。ちょっと、ストップ。」
夢中になっていた綾子が、ハッとして動きを止めた。何かまちがっていたのだろうか…?
「あんまり刺激されると、射精(で)ちゃうからさ。…もう、にじんでるだろ?」
おずおずと口から出してみると、たしかに先端の切れ目に透明なしずくが浮かんでいる。
(男の人でも、感じると濡れるんだ…。)
自分の行為で祐一が昂ぶっている、その事実だけで綾子も蕩けていく。
「で…ちゃっても、いいよ。祐一くんだって、私のこと…い、達かせてくれるじゃない?」
「バッ…射精(で)たやつ、どうすんだよ!あやにそんなこと、させられないだろ?」
祐一がうろたえて、少し赤くなった。
(可愛い…!)
いつも綾子より冷静で、ちょっと意地悪な時もある祐一が、ごくたまに狼狽した表情を
見せてくれると、綾子はちょっと安心して、より深く彼が好きになれる気がした。
もっと感じさせて、慌てる彼を見てみたい。そう思ったけれど…、
「これはあくまでも前戯!男は一度達っちゃうと、すぐもう一度ってわけには
 いかないんだからさ。」
祐一はもうそれ以上はさせてくれないらしく、両膝の間に座ったままの綾子の肩を
抱いて引き上げようとした。綾子は名残惜しそうに、露をたたえた先端に口づけてから
ベッドに戻った。
「…俺の気持ち、少しはわかった?」
抱きしめながら、祐一がささやく。
「うん…。」
好きなひとのことを、身体の一部だけではなくて、全身で感じたい。そして、相手も
感じてくれていることを知るよろこび…。
「ふふ…祐一くん、可愛かったなあ…。」
「バ…おま、何言って…!」
祐一がまた赤くなった。綾子は笑いをこらえることが出来なかった。

460 :
「いいよ。じゃあ、お返ししてやる!」
「きゃあ…!」
綾子を押し倒し、両脚をぐいと拡げて顔を寄せたのに、祐一はなかなか愛撫を始めよう
としなかった。
「あや…すっご、びしょびしょ…そんなに興奮した?」
自分で確かめさせられ、羞ずかしがって引っ込めようとした手をのがさず見せつける。
糸を引く粘液を塗りつけた乳首を、祐一が弄りはじめた。
「挿入れてほしい…?でも、今挿入れるとすぐ達っちゃいそうだ…。」
両の乳房を包んだ手の、親指だけが突端の紅い実をくりくりと転がしている。開かれた
まま放置された秘裂が、熱を持って涙を流しつづける。
「…ゃ…ぁあっ…ぁ…あ――――っ!」
膝の裏側を押されて赤ちゃんのように臀を持ち上げられ、疼いている核そのものに
唇が押しつけられた。ずちゅ、ちゅ、と音を立てて啜られ、何も考えられなくなる。
舌が信じられないほどの深みへ分け入ってきた。
「ひゃあ。」とか「んはぅ。」とか、ヘンな声が出てしまう。気まぐれな舌を追って
持ち上がる腰を、下からささげるようにして、祐一が食らいついた。
「ひ…ゃ…っぁ…ぁああ――――!」
自分で自分の悲鳴が聞こえないほどの惑溺にたたき落とされ、綾子は真っ白な世界に
墜ちていった。
「…あや!…あや、大丈夫?」
ふと目を開けると、祐一が顔をのぞきこんでいる。心配そうなそのまなざしが、泣きたい
ほどいとおしい。
 深い眸のいろに吸い寄せられるように祐一の唇がかさなる。きつく抱きしめあいながら、
ふたりは想いを伝えあうような口づけを繰り返した。
「あや…いい?」
「ん…。」
羞ずかしそうに綾子がうなずいた。このままの体勢で綾子の中に沈んできてくれれば
いいのに、抱き起こされて背を向けさせられる。

461 :
「ゆ…ういち…くん?」
ひざ立ちするようにうながされ、その膝の間に足を差し入れて割り拡げられる。
「…ゃっ…ぁ、あっ…!」
後ろから秘裂に先端が含ませられ、内腿をつかんで押し下げられた。
「ぁあ…ぁ…あ…んはぁっ…!」
ぬく…くっときしみながら挿入っていく祐一のかたちを、強烈に意識させられながら
占められていく。
「あやが好きな体位じゃないって、知ってるけどさ…。」
「ゃっ…んぁっ…ん…。」
つらぬいたまま、内腿に手を添えて腰を上げると、綾子は押し出される格好で前に
手をついて四つん這いになった。
「これはこれで、利点もあるんだよ。」
祐一の指が乳首をさいなみ、とろとろの花びらをかきまわして、ぬるんと前にすべった。
「ひぁんっ…ダ、ダメッ…!!」
綾子の指が、すがるものを求めてシーツをかきむしる。
「両手が使えるし、ね…。」
そう言いながら、両手で綾子の腰骨をつかんで、思い切り腰をひく。複雑な内部を
こすりながら引き抜き、収縮する肉襞をまた容赦なく貫く。
 何度か繰り返すうち、甘美な責め苦のリズムに合わせて綾子の腰はせつなく揺れ、
喉からはかすれた嗚咽が漏れ始めた。
「すごく…いい声だよ。もっと聞かせて…。」
囁きながら、綾子の背にぴったりと覆いかぶさり、前に手をまわして熱くとろける
花芯に指をからめた。開かせてあった綾子の脚を、自分の両膝ではさんで閉じさせ、
ゆっくりと揺らし始める。
「ぁあ…ん…ゃぁっ…ぃく…ぃっちゃうっ――!」
いっぱいに満たされた秘口がずくずくと疼き、逃れられない喜悦が絶え間なく
流れ込んで、綾子を袋小路に追いつめる。腰から下が溶け落ちるような快美に、
綾子はただ『いく、いく。』と繰り返すことしか出来なかった。
「いいよ…いっちゃって…。」
ベッドカバーを探しあててつかみしめている綾子の手に手を重ね、指をからめてやる。
花唇に沈めた指をやさしく前後させながら、つよく腰を震わせると、綾子はのどを
絞るような声をあげ、祐一の指を締めつけて果てた。

462 :
「はっ…はぁ…っん…。」
びくびくと慄える身体を持ち上げて、最初の体勢に戻る。ぐったりと背をもたせ
かける綾子の、しっとり潤った肌を心地よく感じながら、息がととのうのを待つ。
「あやってさ…素質、あるんじゃないかな?」
「?…はぁ…は…っん…はぁ…。」
返事も出来ない綾子の髪をかき分けて口づけ、甘い汗の香りを吸いこんだ。
「後ろからイけるようになれば、どんなカッコでもイけるらしいよ。」
素質…って、何の素質なのかわからないまま、綾子は、それが祐一の恋人として
ふさわしい素質ならいいな、と痺れる頭で考えていた。
「俺もイきたくなってきた…。あや、いっしょにイこ。」
一緒に達こう、と耳に囁かれただけで、背筋をぞくぞくと戦慄が走り抜ける。
振り向いて求める唇を甘くとらえられ、深いキスに溺れていると、
「ゃ…はなれ…ないで…っ!」
唇を離し、後ろに倒れてしまった祐一に、綾子が抗議の声をあげた。
「俺のために何かしてあげたいって、言ってただろ?」
片手をついて少し上体を起こし、もう片方の手で綾子の大腿に手を添えてやりながら、
腰を持ちあげてすとん、と落とす。
「んぁっ…っは…ぁんっ…!」
つらぬかれたまま、祐一の上にしゃがんでいるような格好が羞ずかしくて、綾子は
膝をついて崩れた正座のような体勢になった。
「そうそう…膝ついて、自分で動いてみ。」
綾子の体勢が安定したのを見て、祐一は両手を後ろについて大きく腰を上下した。
荒馬に乗せられたように上げては落とされ、綾子は次第に自らの腰でそのリズムを
なぞり始めた。
「…んくぅ…ンッ…っはぁんっ…。」
綾子の左手を右手でつかんで、祐一が何度も下から強く突き上げる。
「ゆう…ち、くんっ…!」
綾子が涙でいっぱいの目で振り返る。抱きとめて、綾子の指に指をからめる。
「いっしょに…いこ。」
からめた指を、蜜まみれの花蕾に押し当て、ふたり一緒に揺れる。
「ゃはぁっ…っん…も…ぃく―――――!」
祐一を呑みこんでいる蜜壷が、歓喜の脈動を伝える。綾子を守る膜の内側に、祐一も
熱い精を放った。

463 :
「あやって、さ…。」
なかば気を失っていたのか、綾子がふと気づくと後ろから祐一に抱かれたまま、
ベッドに横になっていた。
「いつまで経っても『祐一くん』なのな…。」
綾子の髪をいじりながら、祐一が何か言っている。綾子が彼を呼ぶ時の呼び名のこと
らしい…絶頂に痺れた感覚が、徐々に戻ってくる。
(男のひとって…終わったらすぐ平常に戻っちゃうのかな…。)
たいして時間は経っていないらしく、まだ勢いを失っていない祐一が内部に留まった
ままなのを感じる。祐一が膜のなかに放ったものが、たぷんと動く感覚さえ覚えて、
綾子はぞくぞくと肌を粟立たせた。
「もっとくだけた言い方ないの?『ゆういち』とか『ゆうちゃん』とかさ…。」
祐一はかまわず話し続けている。
「え…だって、『祐一くん』って言うのにやっと慣れたとこなのに…。」
綾子は甘い余韻にふるえる声をなんとか励まして答えた。
「綾子って割と古風なのな…『佐々木さん』とか、どんだけ他人行儀なんだっつーの。」
バイト時代の延長の呼び方は、つきあい出した当初から早速ダメ出しされていた。
「よ、呼び捨てとか…なんか抵抗ある…。」
「ふぅん…じゃ『ゆうちゃん』一択で決まりな!」
「ぇ…ぇえっ?」
「だって、イく時名前呼んでほしいじゃん。」
びくり…綾子の中の何かが強烈に反応した。
「ぅお…なんか、今…絞まった?」
「ち、ちがっ…んっ…!」
うろたえて振り向こうとする綾子の脚に脚をからめ、唇をかさねる。深く奪われながら
ずるりと引き抜かれ、合わさった口の中に綾子が小さな悲鳴をあげた。            
「…あやが励ましてくれたら、2回目いけるかもしんないよ?」
自分の後始末をしている祐一から羞ずかしそうに目をそらしていた綾子を、祐一が
後ろから抱きしめてささやいた。
「まだ時間あるし…またしばらく会えないから、さ。」
驚く綾子の膝の裏側に手を回し、後ろ向きのまま自分の上に乗せて横になってしまう。
やさしくうながされ、綾子は自然に目の前の雄根に口づけた。              
 今の今まで綾子の中で暴れていたのが嘘のようにやわらかく頭を下げているそれを、
綾子はいとおしい想いで指で支え、口に含んで舌でねぶった。

464 :
「んん…。」
寝そべって綾子に身をまかせていた祐一が、身じろいで大腿に力を入れた。口の中の
ものが少し芯を持ち、さっきより質量を増す。                     
「…んゃんっ…!」
祐一に向けている双丘を持ち上げられ、綾子が思わず愛していたものを口から出した。
「ひどいよ、あや…途中でやめるなんて。」
少し笑いを含んだ祐一の抗議の声に、綾子は愛撫に戻ったが、
「んはぁ…っゃあん…っ!」
いきなり長い指が差し込まれ、我慢できなくてまた吐き出してしまった。
「こっちにも、欲しそうだったからさ…。」
もう一方の指が秘蕾を弄りはじめる。祐一の顔のすぐ前に秘所をさらしてしまって
いるのがわかっていても、腰が揺れるのをどうすることもできない。
「んゃっ…ぅあん…っんん…っ!」
なかに挿入れた指が折られ、腹側に近い奥を探られる。もどかしさに、つい自ら快い
場所を指にこすりつけてしまう。
「ここ…?」
「んふぁ…んぁ…っふ…ぁあ…。」
目の前の屹立は、もう口におさめられる自信がないほど張り詰めている。綾子は
熱く息づくそれを、夢中で舐めしゃぶった。
「…ん…っゃは…ぁあ―――――っ!」
祐一の指が、綾子の最弱の部分を同時にふたつ、容赦なく責めつくす。到達の予感に、
綾子は大切なものを傷つけるのを恐れて口から離し、全身をつらぬく絶頂感に身を委ねた。  
「…ん…ふぁ……ぁんっ…。」
真っ白い世界から、ふっと戻ると、祐一が見下ろしている。いとおしげに綾子を
みつめる瞳に射抜かれていると、身体の中心を驚くほどスムーズに貫かれた。
「なんていうか、しっくりくる…。あやのなか…すごくイイよ。」
ゆっくりと時間をかけて愛し合ったおかげで、身体がやわらかくほぐれているの
だろうか。祐一の言うとおり、いつものようなくるおしい感覚に見舞われずに彼を
迎え入れている内部が、しっくりとひとつに溶け合って…。
(本当に、おたがいのために在るふたりって感じがする…。)
あまりに強い悦楽に、まだ痺れているせいなのか…。綾子は、まだ鋭い快感の襲って
こない、緩慢な幸福感のなかにただよっていた。
「ゆうい…ぁ、ゆう…ちゃん。」
しあわせそうに彼の背に腕をまわし、思い切り抱きついた。
「あやはやっぱり、このかたちが好きなんだな…。」
祐一がゆっくりと腰を回転させる。綾子のなかのものが、存在を主張しはじめる。

465 :
「…ぁ…ぃ、い…ぁあ…ゆう、ちゃん…。」
甘くせつなく、祐一の名を呼ぶ声が、次第に切迫してくる。背中からはずれて、
ピローをつかんだ手を頭上に縫いとめ、激しく突き上げ、揺さぶる。
「…ぃ…ぁあ…ぃく…ぃ…っちゃ…ぁあ―――――!」」
軽い束縛を解かれ、しがみついてくる綾子の、びくびくと震える身体をぎゅっと
抱きしめながら、祐一も情熱をほとばしらせた。
「やだ…返して。」
ようやく起き上がった綾子が、シーツで身体を覆いながら下着を拾おうとして、
横からひょいと祐一に取りあげられた。
「綾子って、いつも可愛いのしてるよな。」
祐一が、ラベンダー色のセットを感心したように両手で拡げて観察している。
「もぉ…そんなにしげしげと見ないで。」
そう言いながら、綾子はちょっと嬉しかった。
「こういうのって高価いんじゃないの?」
「う、うん…仕事が忙しすぎると、反動でつい買っちゃうんだよね。」
「なぁんだ…俺のためじゃないんだ。ストレス解消ってわけか。」
「え…そ、それだけじゃないよ。もちろん、ゆうい…ぇと、ゆうちゃんに、
 綺麗だなって思って欲しいから…。」
いつもはとても羞ずかしくて言えないことも、身も心もしっくりと溶けあった後は、
なぜかすらりと口をついて出てしまう。
「じゃあさ…次はもっとエロいのにしてよ。…ガーターとか、ひもパンとかさ。」
祐一がニヤッと笑ってセットを手渡した。綾子は真っ赤になる。              
「そ…そんなの、羞ずかしいよ!」
「いいじゃん。見るの俺だけだし。それに…。」
ブラのひもに腕をとおした綾子をの胸を、また後ろから掌で包み、耳元で囁く。
「俺も毎日いっぱいいっぱいだからさ…綾子に会えるのだけが楽しみなんだ。」     
「ゆうちゃん…。」
「ま、綾子がどんな下着つけてるかなんて、気づく余裕ない時も多いけどさ。」
身に着けているものも目に入らないほど性急に剥ぎ取られ、求められる時もある…
そんな記憶がよみがえり、綾子はますます赤くなった。                    
「綾子、なんか身体が熱いよ…。またエロい気分になっちゃった?」
ふくらみを包んだ両手の、ひとさし指だけが尖りをくりくりと弄る。

466 :
「や…めて。ゅうちゃっ…ゆうちゃんってば…!」
「いいな…それ。もっと呼んで。」
祐一の舌が耳殻に差し込まれ、熱い息がかかる。綾子は甘い痺れに身をまかせ
ながら、せつない声で恋人の名を呼びつづけた。
「冬になったらさ、スキー行かない?…泊まりで。」
白いシーツにしどけなく横たわる、蒼い下着だけを身に着けた綾子を、祐一は
夢見るようなまなざしで見つめている。
「え…う、うん。」
「泊まりって…やっぱ無理かな?」
「ううん、大丈夫…。てか楽しみ…!」
祐一はうれしそうに綾子の細い身体を抱きしめた。激しい愛を交わしあった後、
乱れた褥の上で甘だるい身体を寄せ合う幸せに綾子は酔った。
 祐一と雪山で過ごす一夜…その頃には、いちいちドギマギしなくてもすむように
なっているだろうか?綾子はふと考える。
 今夜、いつものようにただ与えられ、そして奪われるだけではなくて、自分の頭で
考えて祐一に悦びを与えることができたことに、綾子は小さな満足を覚えていた。
(私だって、ゆうちゃんをドキドキさせることが出来る…!)
どうしたって綾子のほうが翻弄されてしまう立場なのはしかたないけれど、あの時に
名前を呼んでほしいとか、エロい下着をつけてほしいとか…。
(もぉ…可愛いすぎ…!)
大人と子供くらいの差だったのが、少し縮まったようで嬉しくなる。
(でも、やっぱりこっちがドキドキさせられることの方が多いんだろうなあ…。)
それでもいい、いやその方がいいと思った。いつまでも祐一にドキドキしていたい。
そして、祐一はこれからも期待にたがわず綾子をドキドキさせ続けるだろう…
そんな予感がしていた。
「なに綾子、ニヤニヤして…。やらしいこと考えてただろ?」
「なっ…!も、もぉ、ゆうちゃんったら!」
あわてふためいて伸ばした手で、綾子はとっさに祐一の目を覆ってしまった。
その手をとってやさしく指をからめた祐一が、ゆっくりと口づけてくる。
 秋の陽射しは早くも傾き、空の色が深まっていた。カーテンを開け放した部屋の
中に、日の翳りがしのびこんで来る。
 別れの時間が迫るまでのつかのま、ふたりは深い愛の淵にとろりと沈んだ。

467 :
ずっと待っていました♪
職人さんありがとうございます!!
あなたの描く綾ちゃんもフミちゃんも、とにかく可愛くて健気で
自分の中のイメージとぴったりなんだよね
毎日スレ覗いてたわ
嬉しい〜
また時間ある時、投下宜しくお願いいたします
待ってます!!

468 :
>>450
乙&GJ!
ゆうあやの濃厚なイチャラブたまらんです
綾子さんかわいいよ綾子さん

469 :
いつも長〜い話を、読んでくださってありがとう。
前回の続きです。ふたりが過ごす初めてのクリスマス
ちょっと尻切れですが、つづきはまた後日・・・
いちせんパロですので、興味のない方はスルーよろしくです。

470 :
 クリスマスには、まだ少し間がある12月のある土曜日。祐一は綾子のマンションを
訪れた。本来なら、イヴの夜を一緒に過ごしたいのだけれど、綾子はクリスマス本番には
イベントの仕事があり、祐一は年末年始に向かっての大量注文をこなさなくてはならず、
クリスマスデートはやむなくこの日になったのだ。
「いらっしゃい・・・すぐわかった?」
夜七時。祐一はマンションの入り口のオートロックを開けてもらって、綾子の部屋の
ある階まで上がった。玄関のインタホンを押すと、料理中らしくエプロンをつけた綾子が
出迎えてくれた。
「うん。ケータイ見ながらだけど。ほい、ケーキと・・・それからワイン。」
「ありがと・・・どうぞあがって。」
いつもの笑顔だけれど、ちょっと羞じらいを含んでいるのは、部屋に祐一をあげるのは
今日が初めてだから、だろうか。高校時代の親友のサチとシェアしているこの部屋は、
原則男子禁制。サチの父親の所有の物件に安く住まわせてもらうのは有り難いけれど、
綾子はていのいいお目付け役のようなものだ。
「冬休み彼と旅行行くから、クリスマスここ使ってもいいよ?」
親の心配もなんのその、サチは自由な女子大生生活を楽しんでいた。家にあげない
というだけで、彼氏とは外で会うし旅行にも行くのだから、せっかくのお目付け役も
意味が無い。綾子はサチのご両親にちょっと罪悪感を覚えながらも、サチの申し出は
有り難く受けることにした。
「綾子、大変じゃない?掃除して、料理つくってなんてさ・・・せっかくクリスマス
 なのに。」
「掃除は・・・いつもちゃんとしてるもん!・・・料理だって、たまにはゆうちゃんに
 私の手料理食べてもらいたいと思って・・・。」
家業見習い中の祐一の収入はあまり高くはない。口には出さないけれど、綾子は
高級レストランに行ってシティホテルに泊まって・・・なんてバブル時代みたいなことを
するために祐一に無理をさせたくなかった。
「大丈夫?何か手伝おっか?」
「大丈夫だから・・・ゆうちゃんはお茶でも飲んで待ってて。」
祐一にお茶を出すのもそこそこ、綾子はまたキッチンでディナーの準備に戻った。

471 :
「おいしい・・・これ、甘いのにお料理にも合うね。」
祐一のワインのセレクトは、そんなにお酒に強くない綾子にもぴったりの、甘口で
ありながら料理にも合う、一本で満足できるものだった。綾子はエプロンをはずして
ゆっくり料理とワインを楽しんだ。
「手際いいじゃん・・・腕あげた?」
居酒屋のアルバイトで長いこと厨房をまかされていた祐一は、綾子があまり料理が
得意ではないことをよく知っていた。
「へへ・・・サチにアドバイスしてもらったんだ。」
ディナーのメニューは、昨日から用意しておける煮込み料理以外はサラダや前菜など
あまり手のかからないものだった。これなら万一当日失敗しても、間に合わないと
いうことはない。
「綾子がパニクってたら手伝おうかと思ってたけど・・・じゃ、俺皿洗うよ。」
祐一がごく自然に片づけを申し出た。その間に綾子はコーヒーを淹れ、ケーキを切った。
「このケーキ、懐かしい味がする・・・。」
ケーキとコーヒーを持って移動し、ふたりは綾子の部屋でくつろいでいた。
「うん、俺が小さい頃から変わらないな。」
祐一が買ってきたのは、祐一の実家の近所の商店街のケーキ屋のものだ。決して
お洒落ではない包装紙やケーキのデザインは、ひと回りしてレトロな味わいを持って
いる。スポンジも生クリームも果物もごくまっとうで安心できる味だった。
「あ、そうだ。はい、プレゼント。」
綾子が渡された小箱を開けると、ブルートパーズのプチネックレスが入っていた。
祐一がそれを箱から取り出して、綾子の首の後ろにチェーンをまわした。
「・・・似合う?」
祐一がチェストの上からスタンドミラーをとって綾子の前に置いた。蒼い色の石と
冷たすぎないホワイトゴールドが綾子の肌にしっくりとなじんでいる。
「素敵・・・ありがとう、ゆうちゃん。」
綾子は大切そうに鎖骨の上の小さな宝石を掌でつつんだ。円形の鏡の中で、その手に
祐一の大きな手が重なった。まわされた腕に、いとしげに頬をすり寄せる綾子を
振り向かせて、今日はじめてのキスをする。

472 :
「・・・ン・・・っふ・・・。」
キスは次第に深くなり、テーブルの上の鏡は、ごく自然に甘い愛の時間に入っていく
ふたりを映し出している。
「・・・ぁ・・・はぁ・・・っ。」
祐一が唇からあご、首筋と唇を滑らせると、腕の中の身体が慄えながらしなった。
 オフショルダーのロングニットがずれて、片方の肩がむき出しになっている。背中の
リボンを解いてずり落とし、タンクトップの背中に手を入れる。ブラジャーのホックを
はずしてずらすと、つるんとした布の下で可愛い実がぽちりと存在を主張した。
「ぁっ・・・あん・・・。」
ベッドの側面に押しつけられ、布越しにふたつの実を弄られる。中心に向かって
円を描くようにこすったり、引っ張ったり押しつぶしたり・・・。可愛いあえぎを
洩らす唇をふさがれ、体内にどよめく快感が綾子を蕩かしていった。
「ゃ・・・っは・・・ぁ・・・っ!」
ショートパンツの前を開けて手を入れると、そこはもう甘い蜜がしとどにあふれて
いた。いたずらな指から逃れるように思わず腰を浮かせると、その動きを利用して
祐一がパンツを下着ごとくるりと脱がせ、綾子をベッドの上に押し上げた。
「脱いで・・・。」
綾子がゆっくりと起き上がってタンクトップを脱ぐ間に、祐一は着ているものを
全て脱ぎ去って覆いかぶさってきた。
「ゃっ・・・ま、まだ・・・っ!」
全裸なのに脚にだけ白いニーソックスを履いたままの足をばたつかせ、綾子は
ベッドの上に押し倒された。
「・・・ぁあ・・・。」
肌と肌の触れ合った箇所から熱が生まれ、いとしい重みに理性が解き放たれていく。
「んふ・・・ぅ・・・んゃ・・・っぁあ!!」
口づけに夢中になっていた綾子は、溶け崩れそうな秘唇を指でとらえられ、悲鳴を
あげて腰をよじりたてた。
「またそんなにしっかり閉じて・・・それじゃ快くしてやれないだろ?」
綾子から身体を離して膝立ちになった祐一が、揃えられた膝を優しくつかんで左右に
押し拡げる。
「ん〜…なんか、マニアな感じ…?」
白い素朴なソックスに包まれた両脚とその間の隠微な風景のコントラストが、不思議な
エロスを醸し出している。祐一はざっくりとした木綿の感触を掌に感じながら、綾子の
長い脚を肩にかつぐようにして折り返し、中心部に顔を寄せた。

473 :
「・・・ひぁ・・・!」
熱く疼く花芯にひたりと口づけられ、反射的に閉じようとした脚が祐一の頭を締めつけた。
 祐一に愛される時、必ずと言っていいほど施されるこの行為に、わかっていても綾子は
つい脚を閉じ、逃れようとしてしまう。
「・・・くるしいよ・・・あや。」
「あ・・・ご、ごめん。」
綾子が慌てて力をゆるめた脚から解放されて、祐一はやれやれという風に上体を起こした。
「しょうがないなあ・・・。」
かたくなに両腿を閉ざし、前を隠す綾子を見下ろして、祐一は苦笑しながら閉ざされた
膝頭をとらえてくすぐった。
「ひゃ・・・ゃんっ!」
くすぐったくて、思わず力の抜けた内腿を、苦もなく再び押し拡げてしまう。
「・・・ゃあっ・・・ゃめっ・・・!」
くすぐる祐一の手を止めようとしていた手をとられ、拡げた両腿を押さえさせられる。
「やめて・・・あげない。」
少し意地悪にそう言って両脚の間に顔を寄せると、三角形のしげみに口をつけ、ふうっと
熱い息を吹きかけた。
「ふ・・・ゎっ・・・!」
思いもよらぬ刺激に驚き、綾子は一瞬、泣きたいほど羞ずかしい気持ちを忘れた。
「ほら・・・力、ぬいて・・・ひらいてられないなら、自分で押さえてて。」
「・・・そん・・・な・・・羞ずかしいよ・・・。」
羞恥心のつよい綾子に新しいことを試す時、祐一はこんな風に緊張と緩和の両方を巧みに
織り交ぜ、いつの間にか思い通りにしてしまう。やさしく辛抱づよい導きのままに、また
ひとつ、綾子は淫らな行為を受け入れ、馴らされていくのか・・・。
「離しちゃ、ダメだよ・・・。」
さらけ出された秘所に、祐一の視線が食い込むのを感じる。自由を奪われているわけでも
ないのに、彼の視線と言葉に縛られたように動けないまま、皮膚の下の血が熱く滾っていく。
(な・・・に?・・・この感じ・・・。) 
これ以上ないほど羞ずかしい自らの姿態と、それを凝視している祐一を正視できずに
目を閉じる。視線に犯され、昂ぶった女陰が、さらなる充足を期待して蜜をこぼし、
それが後孔の方へと流れ落ちていくのがわかる。

474 :
「でん・・・き・・・消して・・・。」
普通にお茶を飲んでいての流れなので、天井の蛍光灯はあかあかと点いたままだ。
ホテルでは、真っ暗にはしないまでも、間接的なうす灯りにしてくれていたのに・・・。
「・・・ダメ。」
「なんで・・・?こんなに明るくちゃ・・・やだ・・・。」
愛しあう時、祐一は綾子にかなり羞ずかしいことはさせても、苦痛や侮辱を与えるような
ことは決してしない・・・と信じているけれど、その境界が時々自分でもわからなくなる。
 流されてしまうことを恐れる自分と、蕩かされるままにどんな羞ずかしいことも
受け入れてしまいそうな自分とが綾子のなかでせめぎあっていた。
「前にも言ったじゃん。綾子が快くなるとこ、全部感じたいんだよ。顔とか、声だけ
 じゃなくって、ここも変わるんだよ・・・。」
「いやっ・・・羞ずかしいこと、言わないで!」
「ほら・・・すごく、可愛くなってる・・・。」
「やめて・・・やめて、見ないで・・・っ!」
祐一が顔を寄せたとたん、魔法が解けたかのように綾子は手を放すことが出来た。だが、
祐一はすかさずその手を押さえ、さらに大きな角度で開かせてしまった。
「・・・ひぁ・・・ぁあ――っ!」
熱くふくらんだ陰核をぺろり、と舐められて、綾子の手は思わず激しく祐一の手を振り
払った。脚を閉じて抱え込み、子供のように身を庇う姿がいたいたしい。
「だめ・・・ムリ・・・もう・・・。」
祐一がこわいのではなく、祐一のなすがままに、どうなってしまうのかわからない自分が
こわくて、綾子は泣き出してしまった。
「ごめん・・・そんなにイヤだった?」
祐一があわてて顔をのぞき込んだ。やさしい口づけが落ちてくる。綾子は祐一の首に
かじりついて子供のように泣きじゃくった。
「こわ、いの・・・。どうにか・・・なっちゃい、ヒック、そうで。」
祐一の心配そうな顔が、パッと明るくなる。
「それって・・・快くって・・・ってこと?」
「わか、ヒック、らない・・・。」
「・・・泣かないで。もう、させないから。」
祐一は起き上がって天井のライトを消し、代わりに淡いルームランプを点けた。

475 :
「ごめん・・・俺、ちょっと急ぎすぎたかな・・・ホントごめん。」
心やすらぐ淡い光の中でやさしく抱かれ、顔じゅうにキスが降ってくる。泣きじゃくりが
次第におさまっても、祐一はゆっくりと綾子を甘やかした。
「・・・ふ・・・ぅふ・・・っう・・・。」
下唇や舌をやわらかく噛まれ、綾子の息遣いが次第にあえぎに変わっていく。ひたすら
謝っていたはずの祐一の手は早くも乳房を揉みしだき、脚は綾子の膝を割って腿の
内側をこすりあげていた。
「・・・ん・・・ぁあ・・・っは・・・ん・・・。」
何度も何度も口づけあい、溶け合った唇を甘く噛みながら、肩をぎゅっと抱き寄せて
寄せられた双の尖りを長い指で同時に苛む。
「ぁあ・・・ゆうちゃん・・・も、もう・・・。」
「もう・・・なに?」
「も・・・ダメ・・・お願い、だから・・・。」
唇や胸乳に執拗な愛撫をほどこしながら、中心部には触れようとしない。秘部の疼きは
さっきとは比べ物にならないほど激しく、ズキズキと脈うって綾子をくるしめた。
「ふぅん・・・何して欲しいの?・・・ちゃんと言って。」
片肘をついて頭を乗せ、綾子の腰骨のあたりをくすぐりながら、祐一が意地悪く聞く。
綾子は祐一にぎゅっと抱きついて、ふるえる声で耳にささやいた。
「さわっ・・・て・・・おねがい・・・。」
「・・・どこに?」
「・・・いじわる!」
綾子はすがっていた腕を放し、祐一の胸板を押すようにして身体を離した。
「ごめんごめん・・・。さっき拒否られたから、ちょっと仕返し・・・。」
祐一は起き上がると、そっぽを向いている綾子の膝をつかんで脚を上に折りあげた。
「いや・・・見ない・・・でって・・・!」
これではさっきと同じだ・・・綾子が手を伸ばして祐一の目を隠そうとした。

476 :
「見せたくないもん・・・ゆうちゃんに、こんなとこ・・・。」
「ケチ・・・こんなに綺麗なのに。」
祐一は顔の前で邪魔している綾子の手をとると、その指を口に含んだ。
「あやのゆび・・・綺麗だな。この粒も、ピンク色ですっごく綺麗だ。綺麗なゆびで、
 綺麗な粒をいじってみ・・・ほら。」
唾液に濡れた綾子の指を、露をふくんで輝く真珠にそっと置く。
「ゃ・・・だめ・・・んんっ・・・。」
逃げようとする綾子の手をつよく押さえながらも、祐一は敏感な部分に触れる指には
決して力を加えないよう加減している。
「すごく湧いてきてる・・・ほら、ゆびにつけて・・・くるくるって・・・。」
何もされていないのに湯のようにあふれてくる蜜液を指にとらされ、その指を蕾の上で
踊らさせられる。
「んゃっ・・・ぁ・・・あ、も・・・ぁあっ・・・!」
綾子の指が抵抗をやめたのを見計らい、手を放さないまま背中から包み込むように抱く。
綾子の足に足をからめて、拡げたまま拘束しながら耳にささやいた。
「気持ちいい?・・・俺のこと考えながらなら、ひとりでしてもいいよ。あやが欲しい
 時、いつでもそばにいてあげられるわけじゃないから。」
「そ・・・んな・・・こと・・・っ!」
手と足はつよい力で拘束しながら、核心を責める指はあくまでもソフトに苛んでいる。
花蕾のまわり一帯がぴりぴりと痺れるように昂ぶっているのに、むずがゆいような
刺激を与えるだけの指を追って、綾子の腰がもどかしげに揺れた。
「ああ・・・だめだ。やっぱり、俺がしたいよ。」
歯がゆい刺激も徐々に溜まって、解放まで後もう少し、と言うところで、祐一が急に
ガバッと起き上がった。
「ほら、こうして・・・指に力いれてて。」
突然放り出され、しどけなく開いた両脚の間に置いたままの綾子の手をとり、二本の
ゆびで秘粒のうえの皮膚を引きあげさせる。
「・・・ゃ・・・ダメッ・・・そんなのっ・・・んぁあっ・・・!!」
綾子の指で剥き出しにさせた秘珠の上に、熱くざらりとした舌が押しつけられた。
つよ過ぎる快感におびえ、激しく暴れる両腿を押さえつけながら、蜜液をからめた舌が
核の上で踊りまわる。

477 :
「ぁ・・・ゃぁあ・・・っぁ・・・あ―――――っ!」
両手で口を押さえて悲鳴をふさぎ、綾子が登りつめた。びくびくと引き攣る両脚の
中心で、ぷっくりと充血した花唇が蜜に濡れて光っている。それを満足げに見下ろし、
祐一はゆっくりと綾子の上に覆いかぶさった。
「・・・ふ・・・ぅん・・・ん・・・。」
力いっぱい口を塞いでいた手がそっとのけられ、代わりに熱い唇に包まれる。今の
今まで秘所をなぶっていた舌が綾子の舌をとらえ、口腔内を動き回った。 
「あやが可愛いから・・・ほら・・・。」
握らされた充実は硬く大きく反り返り、綾子の手を圧している。これからこれで祐一と
繋がりあう至福を思うと、頭も身体も芯がバターのように溶けてしまう。
「・・・ゃ・・・まっ・・・・・・ぁあ!!」
力の抜けた腰を引き上げられ、うつ伏せにされて膝を大きく割られる。
「・・・ゃっ・・・ぁ・・・ぁあ――――!」
まだ脈うっている秘孔に、ぐいと押しつけられた剛直が、めりめりとくい込んで来る。
 柔らかいのにきつい肉の壁がやさしい抵抗を見せながら、祐一のかたちに押し拡げ
られるのを感じる。綾子のなかを占領し尽くしているそれが、なおも膨張をやめない
気がして、綾子はうめいた。
「んぁっ・・・ぉ・・・っきくしちゃ・・・だめっ・・・!」
綾子の口から出た意外な言葉に、祐一はぞくぞくするほどそそられた。綾子の
初々しさが可愛いすぎて、本当にもう一段大きくなるような気さえしたが、懸命に
余裕を取りつくろって平静な声を出した。
「・・・べつに、いつもと変わらないと思うけど・・・。ぁあ、こっちからだと大きく
 感じるんだ。」
「・・・え・・・。」
「ふぅん・・・なんだかんだ言っても、これが一番快いってことか・・・。」
「ち、ちがうもん・・・!」
バックスタイルが好き、なんて思われてはたまらない。必で振り返る綾子の唇に、
祐一が笑いながら口づける。

478 :
「別に恥ずかしいことじゃないよ?・・・あやが一番気持ちいいようにしてあげたいしさ。
 ま、『おっきい。』なんて言われたら俺もうれしいけどw。」
低くて心地いい祐一の声が、とびきり羞ずかしい言葉を耳に注ぎ込んでくる。けれど
綾子は、その囁きをじっと聞いてなどいられない。熱くとろけた蜜壷に祐一を呑みこんで
いるだけで、たまらなく感じてしまう。焦らさないで、早くなんとかして欲しい・・・
綾子は落ち着かなげに身をよじり、切ない目で祐一を見返った。
「どうしたの?・・・ひとの話はちゃんと聞かなきゃダメだろ?」
わざとらしく落ち着き払った声音で祐一が焦らす。綾子は耐え切れずにまた顔を背けた。
「・・・見せて。あやのイイ顔・・・。」
綾子の目の前に、さっきネックレスをつけた時に使ったスタンドミラーが差し出された。
「・・・っゃ・・・んぁ・・・っっ!」
祐一がテーブルの上のミラーに手を伸ばしたせいで繋がった部分が動いて、鏡の中の
綾子の顔が快感にゆがんだ。
「・・・あ・・・っゃ・・・ぁっ・・・ぁあっ!!」
そのまま激しい律動が始まった。腰をつかまれ、打ちつけられるたび臀がたてる音が
淫らに響く。祐一の先端のくびれが、綾子の複雑なひだの中をかきわけて突き込まれ、
引っかかりながら引き抜かれる・・・。それを何度も繰り返されて、綾子はもう羞じらいも
忘れ、腰を振りたてて啼きつづけた。
「ほら・・・ちゃんと持ってて・・・。」
祐一が綾子の手を取ってミラーの脚を握らせた。涙に霞む目を開けると、鏡の中には
今まさに男につらぬかれ、上気した肌に淫らな表情を浮かべた自分の顔が映っている。
「ぃやっ・・・!」
手を離すと、不安定なベッドの上で、鏡はパタリと倒れた。
「ちゃんと持っててって言ったのに・・・。まあいいか。ここに置いとくよ。」
後ろから激しく責められながら、綾子がミラーを保持するなど不可能だろう。祐一は
ベッドの頭に付いている棚の上にミラーを置いて綾子の顔が映るように角度を調節した。
「ほら・・・顔あげて・・・あや、すごく、エロいよ・・・。」
脇から入れた手で胸乳をつかみ、綾子の上体を起こさせる。そのまま揉みしだかれて
あえぐ顔が、裏返された凹面鏡の中に離れていてもはっきりと映し出された。
「ぁあ・・・あ・・・っや・・・・・・ン・・・ぁあっ・・・!!」
必で振り返る綾子の唇を痛いほど吸ってやる。びくりと感じて思わず振りほどくと、
離れた唇と唇の間に、妄りがわしい唾液が離れがたく糸をひいた。

479 :
「・・・ぁあ・・・っあ・・・も・・・ィく・・・もぉ・・・!」
ともすれば突っ伏しそうになる綾子の二の腕をつかみあげる。引き寄せて深く腰を入れ、
何度も突きあげると、鏡の中の可愛らしいピンク色の唇がいっぱいに開いて、淫らな
叫びをあふれさせた。
「ゃっ・・・ィく・・・イクのぉっっ――――!」
ちょっと怒ったように到達を告げると、綾子は美しい背中をこわばらせてびくびくと
けいれんした。そっと手の力を抜いてやると、綾子はぐったりと前に倒れ、鏡の中には
つよい射精感に耐えて唇を噛む祐一の顔が映った。
「可愛いかったよ・・・あや。」
祐一がいたわるように汗ばんだ肩甲骨の辺りに口づける。そのまま横に滑らせた唇が、
荒い息に上下するわき腹を這い、腕を持ち上げて下をくぐり、ぴんと勃った乳首を
含んでころがした。
「ゃ・・・ぁん。」
綾子がいとおしそうに腕をまわして身体をひねり、祐一の方を振り返った。
「・・・っゃ・・・ゃあっ・・・!」
身体をつなげたまま、祐一が綾子の腰をつかんで自らの腰の上に引き上げた。
「・・・ゃっ・・・だめ・・・こんなの・・・。」
後ろから貫かれたままの両脚をひらいて晒されたような形がたまらなく羞ずかしく、
綾子は身をくねらせて抵抗する。
「ほら・・・暴れると抜けちゃうぞ。」
祐一は上体だけを起こして綾子を後ろから横抱きにし、腰骨をぐっとつかんで繋がりを
深めた。足をからませて綾子の動きを封じると、後ろから耳をなぶったり腋を責めたり、
好き勝手に弄びはじめた。
「ぁ・・・あっ・・・だめ・・・だめっ・・・またィッ・・・ちゃ・・・。」
嵌めこまれた雄根が、また少し大きさを増したような気がした。またも脈うつ寸前に
なった女陰に、さらに男の指がひたりと押し当てられる。
「・・・っんゃ・・・ぁ・・・ぁああ――――――!」
剥き出しになった核を、ぬるりぬるりと撫でられ、祐一の刀身を呑みこんでいる
肉の鞘がひくひくと脈打ち、からみつかれたままの足先がぴいんと突っ張った。
責める腕に爪を立て、胸の中で思い切りのけ反る綾子の裸身のなかに、祐一も熱を
吐き出した。

480 :
「・・・ぁ・・・れ・・・?」
ふと気づくと、綾子はベッドにひとりで横たわっていた。素肌にタオルケットが
掛けられ、祐一は見当たらない。
 カチャ、カチャという音がして、祐一がトレイを手に部屋に入ってきた。
「あ・・・起きた?なんか腹へっちゃって・・・綾子も食べる?」
紅茶が載ったトレイとリボンで結んだケーキの箱を、祐一がテーブルの上に置いた。
「ん・・・お茶だけ・・・。」
時計を見ると十一時ちかい。祐一はちゃんとTシャツとショーツを身に着けているのに、
全裸でいる自分が恥ずかしい。でも起き上がるのも気だるくて、綾子はお茶に手を
伸ばすこともせず、タオルケットにくるまったままぼんやりと祐一をみつめていた。
(なんだかんだ言いながら、結局好きなようにしちゃうんだから・・・。)
羞ずかしい体勢に泣き出した綾子をなだめながら、さらに淫らな行為をゆるさせて
しまった祐一・・・。
(好きなようにされちゃう私も、いけないんだろうけど・・・。)
とんでもない要求を、つよく羞じらいながらも綾子が結局はゆるしてしまうのは、
祐一の、強引なのに強引と感じさせないやさしさと、一生懸命さを拒みきれないから
・・・そして、その結果与えられるのは、魂がはじけ飛ぶような激しい悦びと、身体の
すみずみまで祐一に愛された充足感・・・。
(惚れた弱み・・・ってやつ?)
そんなことを考えながら、ケーキをぱくつく祐一の健康そうな頬のあたりに見惚れた。
「何、とろんとした顔してんの?・・・なんかイイこと思い出してた?」
「ばっ・・・何言って・・・!」
慌てて目をそらし、タオルケットに肩までくるまる。
「ほら、イチゴやるよ・・・好きだろ?」
横になったままの唇に冷たいイチゴが押しつけられ、綾子は素直に口を開いた。
「んん・・・・・・ぁ・・・ゃんっ。」
口いっぱいのイチゴに綾子が気をとられている隙に、祐一がタオルケットを剥いだ。
「・・・ゃ・・・なに、するの・・・?」
取り戻そうと伸ばした手をつかまえられ、ケーキの箱からとった紅いリボンが
手早く綾子の手首のまわりにまわされた。
「ちょ・・・ゆうちゃん!こういうの、ダメ・・・!」
片方の手首のいましめを解こうと近づけた手をもからめとり、頭の上に掲げさせて
ベッドの支柱にゆるく巻きつけてしまう。

481 :
「ぃや・・・んんっ・・・ぅふ・・・。」
その腕をやさしく押さえながらキスでなだめる。愛されたばかりの裸身はしっとりと
柔らかく、祐一は誘われるままに二の腕の内側から腋に唇を這わせ、乳房を愛撫
しながら指先で突端を刺激した。
「ダメ・・・ふぁ・・・ん・・・ぁんっ!」
かるい束縛が、快感をさらに増幅させる。じんじんとしびれるような感覚がみるみる
下腹部に溜まり始め、それはすぐに濃い蜜になってあふれ出した。激しく首を振って
離れた唇からせつないあえぎを洩らしながらも、綾子の胸は無意識に突き出され、
無情な指を追った。
「・・・っふゃ・・・!」
胸肌に冷たい感触を覚えたと思ったとたん、祐一の温かい唇が乳首を包んだ。
「・・・んゃんっ・・・なに・・・?」
乳首を包んだクリームをぺろりと舐め取ると、祐一はまた新しいクリームをフォークで
すくって乳房に塗りたくる。時おりフォークが胸肌に触れ、綾子はくすぐったくて
思わず小さな声を上げて身じろいだ。
「動いちゃダメだよ・・こぼれるから。」
綾子の分のケーキも総動員して、もうひとつのふくらみにもたっぷりと盛る。
「つめ・・・たいっ・・・やめてっ・・・!」
白くてふわふわのクリームの先端に飾ろうとしたイチゴがころげ落ち、わき腹を
滑り落ちていった。綾子は冷たくてぶるっと身震いした。
「ふぁ・・・んっ・・・ゃ・・・。」
世にも甘美なスイーツに祐一がむしゃぶりつく。
「あは・・・ゅうちゃん、鼻のあたま・・・っゃ・・・ぁん!」
鼻の先にクリームをくっつけた祐一を笑ったとたん、果実をつよく吸われてあえいだ。
「・・・ぁ・・・ぁ、あん・・・。」
双つの苺を味わいながら、祐一がとろりと蜜をこぼすもうひとつの果実に手を伸ばす。
「んぁんっ・・・ゃ・・・っ!」
熱い蜜の中に沈んだ指に快いところをさぐられ、綾子が腰をうごめかせた。クリームで
滑りがよくなっている尖りを何度も何度も唇から出し入れしながらねぶられ、しびれる
ような快感が綾子の全身に溜まっていく。綾子の指が、必で届くところにあるピローの
端をつかみしめた。

482 :
「ぁあ・・・ぁ・・・ゅうちゃ・・・ゆうちゃんっ・・・!」
吸いつづけられて、何倍にも腫れてしまっているような錯覚を起こす両の乳首から
注ぎ込まれる毒のような快感と、祐一の巧緻な指が繊細な襞に与える責めが結びつき、
自由を奪われた綾子の身体の中で荒れ狂った。
「・・・も・・・だっ・・・ぁぐ・・・んぁあっ―――!」
祐一の指を可愛らしく締めつけながら、綾子の内部が脈をきざんだ。祐一はようやく
甘い菓子から唇を離し、絶頂に震える綾子の顔を満足げにみつめた。
「・・・っふ・・・。」
ぐったりした綾子の、ぴんと勃ったままの尖端に口づけると、ひくんと小さく慄えて
祐一の唇を際限なく誘う。リボンを解いてやっても、掲げさせられた腕をそのままに
うごけないでいる綾子の、少し開いた唇から垣間見える象牙のような二本の前歯が、
祐一の中の雄を突き動かした。下半身に再び欲望がチャージされるのを感じながら、
祐一は努めてなにげない感じで綾子をシャワーに誘った。
「ベタベタして気持ち悪いだろ・・・シャワー浴びよ?。」
挙げたままの腕をおろしてやりながら、透明な歯を舐めるように口づける。
「・・・ゆうちゃんが、ベタベタにしたくせに・・・。」
思いがけないプレイで自分だけ達かされてしまった綾子が、恨めしげに祐一をにらんだ。
「や、普通にケーキ食べようと思ってたんだけどさ・・・。綾子にのっけて食ったら、
 よけい美味いかな?って思いついて・・・。」
「・・・あっち、向いてて。」
綾子はなんとか身体を起こしたが、クリームでべたつく肌を、タオルケットで隠す
わけにもいかず、祐一の頬を軽く押して向こうを向かせようとした。
「なんだよ・・・今さら羞ずかしがるなんて。」
祐一が立ち上がってTシャツを脱ぎ、綾子の手を引っ張って立たせた。
「・・・ゃっ・・・ん。」
素裸の綾子をえいやっと抱えあげて歩き出す。素肌と素肌の触れ合いが心地よくて、
綾子は夢見心地で浴室まで運ばれていった。

483 :
 バスタブの中にザアザアと降り注ぐ熱いシャワーを浴びながらふたりは抱き合った。
深く唇をむすび合わせながら熱い湯に打たれていると、この世界に祐一しか存在しない
ような錯覚に陥ってしまう。
 また足元が危なっかしくなった綾子を支えながら、浅く湯が溜まり始めた中に腰を
下ろす。祐一がバスバブルのボトルを取って、シャワーの落ちる部分に液体を注ぐと、
たちまちホワホワと白い泡が立ち始めた。
(やっぱりゆうちゃんって、要領良すぎかも・・・。)
プレゼントのネックレスをつけた後から怒涛のように与えられ続けた悦楽がすこし醒め、
綾子の胸にまたお馴染みのもやもやが現れた。
「髪、濡れちゃうよ・・・。」
洗い場に忘れてあったバレッタを取り上げ、祐一が綾子の髪をくるりとひと巻きして、
泡につからないようにまとめてくれる。
(他のひとにもこんなこと・・・してあげたことあるのかな・・・。)
気だるげにバスタブの縁にもたれている綾子の首すじに、祐一が唇を寄せる。かるく
吸いながらうなじへと移動する柔らかい感触に、官能の記憶がたちまちよみがえる。
(ゆうちゃんにああして、こうしてって言われると、なんか拒みきれなくて・・・結局
 最後はぬほど・・・イかされちゃうんだもん・・・。)
とんでもなく淫らなことを仕掛けてきては、綾子の反応を見てなだめたり一気に攻めたり
・・・自分をこんなに思いのままにしてしまう祐一は、やっぱり恋の手練れ(てだれ)なの
かも・・・なんて考えてしまい、悲しくなって揺れる泡を眺めていると、
「どしたの?あや・・・ぼんやりして。」
顔をのぞきこんだ祐一がプッと吹き出した。
「鼻に泡つけて・・・ピエロみたいだ。」
「もー・・・。」
熱心に泡を見つめすぎて、鼻に泡をくっつけてしまったらしい。笑われたお返しとばかり、
綾子が両手にすくった泡を祐一の顔に吹きかけた。ふたりは子供のように泡を投げあい、
笑いつかれて、また抱き合って唇をかさねた。

484 :
「・・・ん・・・ふゃ・・・ぁん・・・。」
 泡をすくった手が綾子の胸肌から首、腋やわき腹を這い回る。今夜これまでに何度も
刻まれた悦楽の記憶がたやすく引き出され、綾子はまた息遣いを荒くした。
「そ・・・んなに洗わなくても、もう大丈夫だから・・・。」
「んじゃ、今度は綾子が洗って・・・。」
綾子は泡をすくって祐一の胸や肩に手を這わせた。洗うのに一生懸命で無防備になった
身体に、祐一がまた手を伸ばす。泡にまみれた両手が双つのふくらみを、円を描くように
さすり、両の尖りをつまんで弄る。
「っゃ・・・ん・・・洗えなくなっちゃうじゃん・・・っ。」
綾子は身をよじり、いたずらを阻止しようと祐一の手をつかんだが、逆に手をとらえられ、
祐一の膝の上に抱きとられてしまう。
「綾子がイイ反応するから・・・またキちゃってるよ。」
つかんだ手をそのまま股間にみちびかれ、確かめさせられる。再び猛りはじめた凶器を、
泡にまみれた綾子の手がおずおずとなぞった。
「・・・ぁっ・・・ん・・・ん。」
いきなり抱きしめられ、唇を奪われる。ぬるつく身体の中心が、今すぐ満たされたいと
訴えてくる。
 祐一の大腿の上に脚を拡げて座っている綾子の秘裂が、湯の中でもそれとわかるほど
潤沢にあふれさせている。大腿でこすってやると、綾子は祐一の肩にすがりついて、
身も世も無く腰を前後させた。
「・・・ゃっ・・・ぁん・・・ぁあ・・・!」
あえぐ唇をとらえられて激しく奪われながら、両の尖りを弄られる。ただあふれ出す
蜜の中心を貫かれることだけに支配され、理性が消し飛びそうな頭の片隅に、ある躊躇が
浮かび、綾子は必で声を振り絞った。
「・・・っここ・・・じゃ・・・だめ!」
ルームメイトと共用のバスルームで行為に耽るのは・・・そんな気持ちを察してくれたのか、
「ん・・・そだな・・・ベッド行こ。」
綾子と同じく理性が崖っぷちにありそうな声で祐一がささやいた。泡まみれのふたりは
ざっとシャワーを浴びると、バスタオルにくるまり、もつれあいながらまた綾子の
部屋へ戻った。
 ベッドにたどり着くと、祐一はもう焦らす余裕も無く、温かい綾子のなかに身を沈めた。
耳にそそぎ込まれる綾子のかすれ声が、今夜の激しさを物語る。
 あとはただ、言葉のない時間をふたり共に分かち合い、冬の夜は静かに更けていった。

485 :
やっちまいました。スミマセン
『深まりゆく日々』連作のUの『ふたりのクリスマス』なんですが、
長すぎて入りませんでした。
それと、2番目の2とその次の3は、正しくは3と4です。
内容はちゃんと続いてますのでおわかりかとは思いますが…

486 :
>>470
GJー
ゆうちゃんの綾子さん愛が変態の領域(褒め言葉)にww
綾子さんマジでかかわいい

487 :
しまったsage忘れてしまった…すみません

488 :
職人さん、いつもありがとう♪
このクリスマスバージョンの後に、スキー旅行(祐ちゃんの大学時代のサークル仲間が出てくる)が続くのかな!?
綾ちゃんの取り越し苦労で安心したいので、また宜しくお願いいたします

489 :
>>470
生クリームプレイに萌えました!
GJでした

490 :
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>489さん、"生クリームプレイ"はずいぶん以前にここでふられたネタでして。
その時は無理だ〜と思うネタでも、後になって突然書けるということもよくあって…。
書け過ぎて、女体盛りまで行ってしまいました…やっぱりHentaiの域ですね、>>486さん
当時、書けない代わりにゲゲふみでハンドクリームプレイを書いたりしましたw
>>488さん。そうです。覚えててくださってうれしいです。この後ヴァレンタインデー
の話もあるんですが(しつこい)スキーの話をはさんで整合性をとるのに苦労しました。
さて、綾ちゃんの揺れる日々第三弾、いちせんパロに興味ない方はスルーでお願いします。

491 :
「ゆうちゃん、起きて・・・ごはんよ。」
エプロン姿の綾子が、カーテンをサッと開けながら祐一に声をかける。
「ん〜・・・眠いよ・・・。」
祐一は窓から射し込む朝日のまぶしさに顔をしかめ、布団にもぐり込んだ。
「起きてってば・・・。仕事に遅れちゃうよ?・・・きゃ・・・っ!」
布団をめくってのぞきこんだ手を引っ張られ、綾子はバランスを崩して祐一の
胸の中に倒れこんだ。
「ゃあ・・・ん、はなして・・・っ。」
抱き込まれて綾子がじたばたともがく。
「キスしてくんなきゃ、起きない・・・。」
ようやく手を離されて身体を起こすと、祐一はまだ目をつぶったままだ。綾子は
しかたなく祐一の唇に唇をそっと重ねた。
「・・・ちょ・・・っん・・・。」
すぐに身を起こそうとした綾子の後頭部と肩に手をまわし、祐一が離すまいとする。
朝としてはちょっと深すぎるキスに、綾子の膝から力が抜けていく・・・。
「ふぁ・・・っ!・・・んっ?」
軽く鼻をつままれて、綾子は甘い夢から覚めた。
「あーやーこ、そろそろ起きろよ。」
優しい声に目覚めると、部屋はすっかり明るくなっていた。
「やだっ!・・・会社!ち、遅刻しちゃう!」
綾子はガバッと起き上がってベッドから飛びおりようとした。
「綾子・・・。」
祐一が、黙って綾子の胸の辺りを指さす。
「ゃっ・・・!」
自分だけが素裸なのに気づいて、綾子は慌ててシーツをかき寄せた。
「まったく・・・今日は綾子、休みだろ?仕事に行かなくちゃなんないのは俺だよ。
 早く来いよ・・・メシ出来てるから。」
祐一はすこし呆れ気味にそう言うと、台所へ戻って行ってしまった。

492 :
「・・・ごめん。」
大急ぎで服を着た綾子がダイニングに行くと、テーブルの上にはおいしそうな朝食が
湯気をたてていた。祐一がタイミングよくコーヒーを手渡す。
「よく寝てたから起こすのもかわいそうかと思ったけどさ・・・疲れさせたの、俺だし。」
綾子の頬がボッと赤くなる。
「でも、何も言わずに帰っちゃうのもアレかな、と思って。」
「うん。へへ・・・。」
綾子が嬉しそうに相好をくずす。ふたりは幸せな気分で朝食を食べ、祐一は
朝もやの中を帰って行った。
(あ〜あ、お正月まで会えないのかあ・・・。)
祐一がドアを出るまで見送ってから、急いで窓に走り寄り、駅へと続く道を見守る。
背の高い後ろ姿が人気のない街角に消えるのを見送ってから、テーブルに戻り、
コーヒーをひと口飲んでため息をついた。
(それにしても、ゆうちゃんってやることにそつがないって言うか、いつも余裕が
 あるんだよね・・・。)
テーブルの上の食器をトレイに集めながら、綾子はあらためて感心していた。ゆうべ
あれだけ何度も愛しあい、疲れているのはお互い様のはずなのに、祐一はちゃんと
綾子より早く起きて、これだけのものを他人の台所でサッと作ってしまった・・・。
(性格もあるかもだけど、なんていうか・・・同世代なのに、経験豊富って感じなんだよね。)
経験・・・という言葉が、否応なしにいつも綾子の胸を暗くよぎるある不安を呼び起こした。
(ゆうちゃんって・・・いろいろ経験・・・あるんだろうなあ。)
いつもにも増して濃密に過ごした一夜のあと・・・。ことが済んだら出てしまうホテルと
違って、甘い空気が残るこの部屋にいると、心より先に身体が昨夜の感触を思い出す。
つよい幸福感と裏腹に、これほどまでの悦びを綾子に与えられる祐一には、かなりの
女性経験があるのではと邪推してしまう。
(お・・・大人なんだから、当たり前だよね。ゆうちゃん、カッコいいし・・・。)
綾子が知っているのは、バイト先で初めて会った大学2年の時からの祐一に過ぎないの
だけれど、当時の祐一は、スタッフの女の子たちはおろか、客の中にも彼目当てで
通ってくる子も多いほどの人気ぶりだった。

493 :
(私なんかがつきあっちゃってて、いいのかなあ・・・?)
綾子は、同性の友達からあきれられるほど自己評価が低い。女友達はそのスタイルを
羨ましがるけれど、大概の男性と同じかそれ以上高い身長は、綾子にとって災難以外の
何者でもなかった。
 高校時代、告白されて一応おつきあいも経験したけれど、生来真面目でおっとりの
綾子はそれ以上発展もせず、その彼とは自然消滅。美術系の専門学校時代は、課題と
その画材の費用を稼ぐためのアルバイトに明け暮れ・・・。
(あの頃は、ゆうちゃんに会えるのだけが楽しみだったなあ・・・。)
片思いはつらいけれど、かなうはずもないと割り切ってしまえば、彼の横顔をぬすみ
見るだけで満足だった。
(あの頃にくらべたら、今のこの状況は夢みたいなのに、つらいなんて・・・。)
ベッドでの祐一は、やさしくて、いつも綾子のことを第一にことを運んでくれる。
決して無理強いはしないのに、いつの間にか思い通りにしてしまう祐一に、綾子は
ためらいのベールを一枚一枚剥ぎ取られ、かなり羞ずかしいことも許してしまっていた。
(まだつきあって1年も経ってないのに、こんなにいろいろ・・・た、試されちゃって、
 結婚する気がなくなっちゃったりしないかなあ・・・。)
ふとそんな疑念が湧いて、動揺した手から滑り落ちたカップがガチャンと音をたてた。
「ぁーあ・・・やっちゃった。」
(そういえば、今までつきあった人達って、どうして別れることになったんだろ?)
そんな考えてもどうしようもないことを考えながら、カップの破片を拾う。祐一のあの
指や唇が、他の女性を愛したことを思うだけで胸が痛くなる。
「あ、痛っ・・・。」
カップの破片で手を切ってしまい、とっさに指を口に入れた。口中にひろがる鉄の味に、
ますます憂鬱な気分になる。
「ネガッてちゃ、だめだよね・・・。」
傷に絆創膏をはってゴム手袋をはめ、気を取り直してテキパキと食器をかたづけ終わり、
キュッと蛇口をしめた。
「いいお天気・・・さて、今日は何をしようかな。」
祐一は今日も仕事。ぽっかりと空いた一日を、何か有意義なことをして過ごして
憂愁を忘れたかった。
 祐一と二人きりのこの部屋で、十分すぎるほど愛され、満たされた昨夜のことを思うと
身体が震えるほど幸せを感じた。けれど、悦びが深ければ深いほど、綾子の胸に小さく
芽生えた哀しみも深く根を張っていくのだった。

494 :
「あ〜や〜こ!彼氏とはその後どぉ?」
「ゃ・・・そんな、ご報告するほどのことは・・・。」
暮れも押しつまってから、バイト時代の仲間との忘年会。乾杯もそこそこに遥香に
恋愛話を切り出され、綾子はたじろいだ。
「聞いたッスよ〜。綾子さんもとうとうコッチ側に来たって。」
「や・・・ゃだ、遥香ったら、私のいない所でそんなことサエちゃんに・・・!」
遥香と紗絵は、綾子が祐一と知り合ったバイト先の居酒屋で一緒だったバイト仲間で、
今でも時々会ってはおしゃべりに興じる友達だ。
「いいじゃ〜ん、綾子もやっと当事者として話に加われるんだよ〜?」
紗絵の言う『コッチ側』とは、すなわち『経験者』と言うことで、二ヶ月ほど前に
遥香に会った時、彼女の誘導尋問に乗せられて、彼氏とそういう仲になったことを
つい告白させられてしまったのだった。
「んで、どうなの?・・・かな〜り幸せみたいだけど?」
「いやぁ、いいッスね、新婚さんは〜。」
綾子が真っ赤になって黙り込んでしまったので、悪ノリしてさらにたたみかけてくる。
 実質的に彼氏いない歴=年齢だった綾子がついに初体験!という新鮮な話題に、
ふたりはかなり盛り上がっているようだが、その『彼氏』というのが、彼女たちも
よく知っている祐一だとわかったら、騒ぎはさらに大きくなるに違いない。
「や、やめてよ・・・ぁ、そうだ。みんなは元気?」
綾子は苦し紛れに話題を変えた。専門学校を2年で卒業して就職した綾子と違って、
同い年の遥香はまだ大学生、ひとつ下の紗絵はフリーターで、ふたりともまだ
あの店でバイトしているのだ。
「相変わらずっスよ。・・・あ、ひとりやめたけど・・・意外なヒトがね。」
「え・・・だれ?」
「祥子さん。佐々木さんがやめた後、な〜んか元気無くなっちゃってね・・・。」
 それは、大学4年間ずっといた祐一よりさらに古株で、学生アルバイトが多い
あの店で、ひとりだけフルタイムで働いていたベテランの女性だった。

495 :
「ごたぶんにもれず、佐々木さんにホの字だったんだよね〜。バツイチのくせに、
 図々しいよね。」
遥香はちょっと口が悪すぎるけれど、祐一以外のバイトには露骨に態度が悪い
彼女のことを嫌っているスタッフは多かった。けれど彼女がそうなってしまうのも、
学生バイトの中で自分だけ浮いていると自覚しているからだろうし、そんな中
分け隔てなく接してくれる祐一に好意を抱いてしまうのも無理はないかもしれない
・・・そう思うと、綾子は少し気の毒な気もした。
「佐々木さんも悪いんスよ〜。あんなのにでさえフレンドリーだから。」
「ま〜でも、店長以外じゃ他の誰よりもつきあい長かったしね。何かあったりして?」
「年上だけど、美人だし・・・佐々木さんって、年上キラーって感じッスよね。」
 綾子はちょっとギクリとした。自分の知らない祐一の過去のことばかり気にして
いたけれど、綾子が彼を目で追っていたころ、現在進行形だった関係だってあったの
かもしれない。祐一の相手が、顔も知らない女性より、よく知っている女性の方が
よりイヤなのは言わずもがなだ。
「佐々木さん、男女問わずモテモテだったもんね〜。今はおせんべい屋さんかあ。
 どうしてるんだろね〜、綾子?」
「・・・え?さ、さあ・・・。」
さっきから祐一の噂ばかりで綾子はいたたまれなくなってきた。
遥香は「佐々木さん?・・・面倒くさそー。あたしは言いなりになってくれる男でなきゃ。」
紗絵は「佐々木さんスかぁ?ウチみたいなゆるいの、耐えられないんじゃないスかぁ?」
というわけで、ふたりとも祐一は対象外と言うことがわかっているので、綾子は
このふたりに対して後ろめたい思いはないのだが、こういう時は困ってしまう。
「綾子さんもモテモテでしたよね〜・・・主に女性に。」
空気が読めるのか読めないのか、よくわからないキャラの紗絵が急に矛先を変えた。

496 :
「・・・もぉ、サエちゃん!」
「今でも、あのハンサムなお姉さまはもういないの?って聞かれるんスよ。」
綾子がバイトしていた店は、居酒屋と言ってもビストロ風のしゃれた店だった。
 白いシャツに黒いジレとエプロンというギャルソンスタイルがぬほど似合う
綾子は、一部の女性たちから大人気で、バレンタインデーに届くチョコレートは
祐一のものより高級品が多かったりしたものだ。
「綾子〜、なに不景気な顔してんの?・・・そんな暗い過去のことはもう忘れて!
 今ではあんたも立派に彼氏いる歴もうじき一周年のオンナでしょ?」
「あ〜サーセン。つい綾子さんのモテ武勇伝が忘れらんなくて・・・。そうそう、
 そんな昔のことより、今が大事っスよね。ってことで、どうなんスか?彼氏とは・・・。」
話が最初に戻ってしまった。
(いつかは白状させられちゃうのかなあ・・・。)
悩んでいないわけではないのだけれど、深まり方が急速過ぎて戸惑っているとか、
彼がベッドでそつが無さ過ぎて経験豊富なんじゃないかと気になるとか・・・。
(そんなこと言ったら、ただじゃすまないよね…。)
完全に綾子をサカナにするつもりのふたりの質問攻撃を、どうやってかわそうか・・・
綾子はぎこちなく笑いながら、次の話題を探していた。
  
 しかし、結局遥香の誘導尋問に負けて『彼が経験豊富かもしれなくて気になる。』と
ひと言言っただけなのに・・・。
「うわぉ、そんなにイイんだ〜!綾子がそんな大胆発言するようになるなんてね〜。」
「綾子さん、悩んでるフリして、ノロケてますね〜。うらやまッス〜。」
大騒ぎになってしまった。
「ちょ、やめて。店員さんに聞こえるじゃない。わ、私ほんとに悩んでるんだから・・・。」
ふたりはさらに巧みにいろいろ聞き出してしまい、ウブな綾子をさんざんからかって
楽しんでから、それでも一応アドバイスはしてくれた。
「彼が経験を生かしてうまくリードしてくれてるんなら、何の問題もないんじゃない?
 過去なんて気にしないで、彼の今を見てあげなよ。」
「そうそう。今が大事ッスよ。何にも過去が無い男なんて、かえって怖いですって。」
なんだかんだ言っても友達がいのある二人の言葉は、意外に胸に残った。

497 :
(あ・・・もう、着いちゃった・・・。)
ヘッドライトの光の中に、見慣れた街並みが浮かび上がる。祐一と一緒にいられる
時間が、終わりを告げる。
「あ、Uターンしなくて、ここで大丈夫だよ。」
実家の前に横づけするのはなんとなくためらわれて、道路の向かい側に停めてもらう。
「じゃ、またメールするね。」
「うん・・・。送ってくれてありがとう。」
ふたりとも仕事が忙しいため、前倒ししたクリスマスから一週間。年末に実家に帰る
綾子を、祐一が車で送ってくれた。一緒に初詣に行く約束をした元旦まで会えないはず
だったけれど、祐一が急に車で送っていくとメールで連絡があり、わずかな時間でも
一緒に過ごすことができたのだった。
「おやすみなさい・・・。」
車から降りた綾子が運転席の方に回っておやすみを言った。祐一が窓を開ける。
「・・・んん・・・。」
離れがたい思いは祐一も同じらしく、どちらからともなく顔を近づけて唇を結び合わせる。
祐一がもどかしげに腕を伸ばして綾子の頭を抱き寄せた。
「・・・っふ・・・ぅ・・・ん・・・。」
今日は何の触れ合いもなかっただけに、深いキスと抱擁が、ふたりの共有する
愛の記憶を鮮烈によみがえらせた。深夜とは言え、こんな公道でキスを交わすような
ことは普段ならしないのだけれど、離れがたい想いがふたりを結びつけていた。
「おやすみ・・・。」
なごり惜しそうに唇が離れ、祐一が綾子の瞳をみつめて言った。車を発信させるため
綾子がすこし身を引いたその時。
「・・・カシャン。」
乾いた音がして、道の向こう側の綾子の家の門扉が開けられた。門灯に照らし出された
男性は、こちらに背中を向けているがまぎれもなく綾子の父の源治だった。       
「お・・・とうさん!・・・い、今帰り?」
綾子はあわてて車から飛び離れ、会社帰りらしくスーツを着た父に駆け寄ってそう尋ねた。

498 :
「ああ・・・。」
源治は綾子の顔も見ず短く答えた。祐一が慌てて車を降りてきて頭をさげる。
「あ、あの・・・はじめまして。佐々木祐一です。綾子さんと・・・その、おつきあいさせて
 ・・・いただいてます。」
「綾子から、お名前は聞いてますよ。」
綾子につきあっている男性がいることを、源治も知らないわけではなかった。実家に
帰るたび祐一の焼いたせんべいを土産にし、綾子は祐一の存在を小出しに匂わせ、
徐々に認識させてきたのだ。
「あ・・・立ち話もなんだし、ちょっと寄ってってもらおっか?」
綾子は、なんとかこの場の気まずい空気を取り繕おうとそう提案した。
「いや・・・もう母さんも寝てるだろうし、またの機会にしなさい。・・・それじゃ、」
祐一に向かって軽くうなずいて見せ、源治はさっさと門を入っていった。
「ご、ごめんね。いつもはあんな素っ気無い人じゃないんだけど・・・。」
源治の軽いうなずきに対して深く下げた頭をようやくあげた祐一に、綾子はすまなそうに
言い訳した。
「いや、こんな時間だし・・・お父さんの言うとおりだよ。」
祐一はそう言って微笑んでみせた。
(まずったなあ・・・。)
車で走り去る祐一を見送った後、家に入った綾子は、誰もいないリビングのソファに
力なく座った。
「おかえりなさい。遅かったわね。」
父はああ言ったけれど、母は綾子が帰ってくる日にはよほど遅くない限り起きて待って
いてくれる。
「ただいま・・・お父さんは?今そこで会ったんだけど。」
「ああ、なんかお風呂に直行したわ。よっぽど疲れてるのかしら。」
いつもなら、綾子が帰ってくると必ずお茶になり、父と母が争って話を聞きたがるのに・・・。
(私と顔合わせたくないんだろうなあ・・・。)
綾子は思わず暗い顔になった。
「ねえ・・・お父さん、キゲン悪かった?」
「?・・・そうねえ、キゲン悪いと言うよりは、打ちひしがれてるって感じだったわね。」
「あちゃー・・・。」
父が怒っていたというより、打ちひしがれていたという方がより申し訳なさがつのった。

499 :
綾子は目を閉じて小さくため息をついた。
「何があったか知らないけど・・・これ食べて、元気だしなさい。」
母が差し出したカフェオレボウルいっぱいの新鮮なイチゴを見て、綾子は一瞬目を輝かせて
フォークでイチゴを突き刺したが、またうなだれてフォークを置いてしまった。
「ゆうちゃんに車で送ってきてもらったんだけど・・・。」
「寄っていただけばよかったのに。」
「それが・・・、お父さんいるのに気づかないで・・・その、キス・・・してるとこ見られちゃった
 んだよね・・・。」
母はわりと物に動じなくて話がわかるタイプなので、綾子は正直に話すことで味方に
なってもらおうと思った。
「あらあら・・・。」
「彼のおせんべいは気に入ってたみたいだし、ちゃんと予告して紹介したかったのにな・・・。
 最悪の出会いになっちゃった・・・。」
「うーーん。そうね・・・でも、日曜日の昼間にスーツ着てくればよかったかと言えば、
 そうでもないかもよ。」
「今日みたいな出会いじゃなくても、お父さん、ゆうちゃんのこと気に入らなかったって
 言うの?」
「お母さんはいい青年だと思うけど・・・イケメンなのにチャラチャラしてなくて、
 真面目そうで。」
「へへ・・・そう思う?」
以前、やはり車で送ってきてもらった時に挨拶をした程度だけれど、母の方は祐一に
会ったことがあった。
「でもね、男親って、娘がどんなに素晴らしい男の人を連れて来ようと、いいえ、
 素晴らしければ素晴らしいでやっぱり面白くないんじゃないかしら。」
「何それ・・・じゃあ私、どうすればいいの?」
「すんじゃったことはしかたないわ。大事なのはこれから。ふたりが社会人として
 ちゃんと成長しつつ、既成事実を積み上げていくしかないわね。」
綾子は既成事実の意味を勘違いして慌てた。
「既成事実って・・・あ、赤ちゃんとか?」
「何言ってるの!もし結婚前提なら、ちゃんと将来のことも考えた真面目なおつきあい
 だってことを、時間をかけてわかってもらうってことじゃない。」 

500 :
「あ・・・そ、そうだよね。ぁあ、びっくりした。」
「びっくりしたのは私の方よ。・・・あなたまさか・・・。」
「や、やだなぁお母さん。ちょっと勘違いしただけだよ!あ・・・イチゴ食べよっと。」
綾子は照れ隠しに大きなイチゴをほお張って無理やり咀嚼した。冷たいイチゴを
押しつけて冷やしたいほど頬が紅潮している。
(お母さんが意外とやわらかいんで、言わなくていいこと言っちゃった・・・!)
親とこんな会話をするなんて、綾子には初めてのことだった。
 祐一はいつもきちんと気をつけてくれるし、綾子もそんな彼をとても信頼している。
けれど、いつか夫婦となってふたりを隔てるものがなくなり、自分のお腹の中に
新しい生命がやどる・・・そんな日が本当に来るのだろうか。
(前途遼遠、だなあ・・・。)
まだまだ半人前の仕事、めくるめき過ぎの恋・・・そのふたつだけで手一杯の綾子には、
将来に向けて着実に布石をうつ、なんて出来るのか不安だった。             
「さっきは、ほんとごめんね。」
部屋に戻ってから、綾子は祐一に電話で謝った。
「いや・・・当然の反応だと思うよ。俺だって可愛い娘がこの男と・・・とか思ったら正気じゃ
 いられないと思うもん。」
「ゆうちゃん、まだ結婚もしてないのに父親の気持ちになってるの?」
「だっていつかはそうなるだろ?まあ、息子しか生まれないかもしれないけどさ。
 そうなったらうるさいのはむしろ綾子の方かもな。」
「え・・・。」
初めて結ばれたあの日、それらしきことを言われた以外には、祐一が具体的にふたりの
将来について話したことはなかった。綾子は彼にプレッシャーをかけたくなくて、
その話題を避けてきたけれど、案外祐一は何も気にしていないだけかもしれない。
 いろいろ回りくどく考えてしまう綾子と違って、祐一の描く未来図はシンプルで
それゆえに幸せに満ちたものだった。綾子はなんとなく胸に迫るものがあった。

501 :
「・・・いらっしゃい。道混んでなかった?」
大晦日の午後6時。祐一が押したインターホンに応えて、綾子が玄関のドアを開けた。
「うん…早く出てきてよかったよ。でも逆方向は大丈夫だと思うよ。」
祐一はダウンの下にジャケットなんか着て、着物で行くと言った綾子に合わせたのか、
それとも綾子の両親に会うことを少し意識してきたものか・・・。
「まあ、今日はお世話になります。どうぞおあがりになって。」
母も出てきて、にこやかにあいさつする。
「それじゃ、ちょっとだけ、お邪魔します。」
今日、ふたりは祐一の車で都心の神社に二年詣りに行く予定で、夕食は途中で軽く
済まそうと思っていたのだけれど、父の熱心な勧めで家で食べていくことになった。
 この間のことがあるので綾子は祐一の反応を心配したけれど、電話でその旨を
伝えられた祐一は快く招待を受けてくれた。
「やあ、いらっしゃい。よく来てくれたね。」
リビングダイニングのドアを開け、源治が顔を出した。
「あの、これ・・・つまんないもんですけど。」
祐一は緊張したおももちで、例の実家の近所の洋菓子店の焼き菓子の箱を差し出した。
「やあ…こりゃすまないね。ほう・・・今はこういう知る人ぞ知る地元の味ってのが
 来てるんだよねえ。」
スイーツに関する情報には常にアンテナを張り巡らせている源治が相好をくずす。
「さあ、何もないけどどんどん召しあがって。今どき、おせちなんて作ったって
 余るだけなんだけど、作らないとなんか落ち着かなくってね。食べてくださると
 助かるのよ。」
「はい、遠慮なくいただきます。」
おせちとは言いながら、お重の中にはそんなに伝統的でもないご馳走が色とりどりに
並んでいる。綾子の母は、綾子よりずっと料理上手のようだ。
「これから車じゃ、飲めなくて残念だなあ。」
源治がそう言いながらノンアルコールビールを祐一のコップに注いだ。

502 :
「あ、すみません・・・。」
綾子は、祐一と父のやりとりをハラハラしながら見守っている。
「お店は浅草の方?私は仕事でよくあの近くへ行くんだよ。今度、直帰にしちゃうから、
 一緒に飲まないか?地元のいい店紹介してよ。」
この間とうって変わってにこやかな父に、綾子はびっくりしてまじまじと父の顔を
見てしまった。
「・・・ええ、ぜひ。でも、お父さんは甘いものがお好きと聞いてましたが・・・。」
「いやいや、辛いのもグイグイいけるよー。」
源治は、自分だけ本物のビールを飲んで絶好調になっている。綾子が思わず母の顔を
見ると、母もやれやれという顔で微笑んだ。
「・・・じゃあ、行ってきます。」
「あったかくして行きなさいよ・・・。祐一さん、よろしくお願いしますね。」
このまま宴会になだれこみたそうな源治を、母がなんとかうまくあしらって、ふたりは
やっと二年参りに行くべく、家を出ようとしていた。
「お父さん、酔いつぶれちゃったね。自分だけ・・・。」
「まあ、いいご機嫌なんだからいいじゃない。」
「あ、あの・・・すっごく混むと思うから、帰りは明日の午後になるかも・・・。先に
 お雑煮食べちゃっていいからね。」
綾子がすこし後ろめたそうに今日の予定を説明した。生まれてこの方、綾子は父と母と
元日の雑煮を一緒に味わわなかった日などなかったのに、今年は初めてその慣習を破る
ことになる。
「いいからゆっくりしてらっしゃい。お正月だからって、特別することなんか何も
 ないんだから。」
母のこだわりのない言葉に少しホッとして、綾子は祐一の車に乗り込んだ。

503 :
「着物・・・かわいいね。」
車の中でやっと二人きりになれて、祐一が綾子の装いの感想を言った。
「あ・・・うん。振袖もいいけど、こういうのも渋いでしょ?長い時間だから、振袖より
 この方が楽だってお母さんが・・・。」
今日の綾子は、母譲りのアンサンブルの着物を着ている。落ち着いた黒っぽい紬だけれど、
裾まわしや羽織り紐を赤いものに変えてあるのでとても可愛く、かえって綾子の若さを
引き立てていた。
「綾子ってさ・・・着付け、出来るの?」
「ううん・・・全然ダメ。今日もお母さんに着せてもらったの。」
「ふーーーん・・・。」
「な、なんか残念そうだね?」
明らかに残念そうな顔の祐一を見れば、彼が何を考えているかは容易にわかる。
「だって、今日は初詣に行くんでしょ?・・・すごーく並ぶだろうし・・・。」
ホテルに行っている暇などない・・・口には出さないけれど、綾子はちょっと呆れたような
表情で祐一をにらんだ。
「あれ・・・雪、降ってない?」
「あー・・・ほんとだ。これはちょっと・・・。」
白い羽虫のようなものが、真っ暗なゆくてから吹きつけてくる。フロントガラスや
窓のふちにたまり始めたそれが雪と気づき、ふたりは驚きの声をあげた。どんよりと
曇った空から際限なく落ちてくる雪は、道路をも白く染めつつあった。
 綾子を車の中に待たせ、祐一は手慣れた感じでタイヤにチェーンを装着した。
「仕事で新潟行くこともあるから、チェーン積んでてよかったよ・・・。でも、これじゃ
 神社行くのは無理っぽいかな・・・。」
時ならぬ大雪に、さしもメジャーな初詣の名所も混んではいないかもしれないけれど、
積もり始めた雪の中、和服姿の綾子が広い境内を歩くのはちょっと酷に思われた。
「そのカッコじゃあ、雪の中歩くわけにはいかないな。・・・帰る?」

504 :
「え・・・。」
綾子が祐一をみつめた。その瞳が、もっと一緒にいたいと切実に訴えかけている。
「でもなあ・・・着物だし。」
祐一の言わんとすることがわかって、綾子は真っ赤になった。一緒にいたいと言っても、
必ずしもそういうこととは限らないのに・・・綾子はあわてて提案した。
「ウ・・・ウチ来る?サチも実家帰ってて、いないし。」
「待ってて。コーヒー淹れるから。」
綾子は羽織を脱いで台所に立った。数日前から無人だった部屋は冷え切っていて、
ファンヒーターをつけてもすぐには温まらず、電気ストーブをつけたした。
「うわ・・・すごい積もってる。明日は交通大混乱だね。」
カーテンをすこし開けて外を見ている祐一に、綾子がコーヒーを渡した。
「うん・・・大変だけど・・・きれいだよね。」
慣れない雪に、都民はずいぶん難儀するだろうけれど、いとしい人のとなりで
降りしきる雪を眺めながらコーヒーを飲んでいるのは幸せ以外の何物でもなかった。
 うす蒼い雪明りに照らされた綾子の横顔を、祐一がじっとみつめていることに
気づいて、綾子が少し照れて笑った。
「まず、コーヒー置いて・・・。」
「・・・?」
祐一が綾子の手からコーヒーカップを受け取って、リビングのテーブルの上に置いた。
「ン・・・ッ。」
戸惑う綾子を抱きしめて、唇を奪う。キスだけならいいよねとか、でももっと先に
進まれたらどうしようとか、下手なこと言うとまたはぐらかされるかもとか…
じたばたする綾子が考えていることが、手に取るようにわかる。
「・・・ゅう・・・ちゃ・・・っ。」
つかの間離れた唇から祐一の名がもれる。戸惑う唇をつかまえてまた深める。綾子が
身じろぐたびさらさらとした衣ずれの音、えり元からいつもとは違う香り・・・。快い冷たさを
伝えてくる絹の手ざわりが祐一をかきたてた。                     」
「は・・・ぁあ・・・っん・・・。」

505 :
行為の時のように深く激しくなるキスに、腕の中の綾子の身体が力を失い、やわらかく
祐一にゆだねられる。いとしい重みを抱きかかえるようにしてソファに座らせる。
「・・・ん・・・ゃ・・・ゃめっ・・・。」
背中から抱いて、身八ツ口から手をさしいれ、胸乳をまさぐる。外側の紬とは違った
滑らかでやはり冷たい布地が心地よい。
「・・・っゃ・・・だめ・・・だって・・・!」
尖りを弄られ、綾子が身をよじる。なんとかやめさせようと両手をじたばたさせるが、
きっちり着付けられた胸元はきつくて、手がそこまでまわらない。
「ほら・・・あばれると着くずれちゃうよ?」
自分が暴れさせたくせに、祐一はしれっとそんなことを言っていたずらな手を止めようと
しない。二指でつままれて苛まれ続ける尖端から送り込まれる快感が、綾子を痺れさせる。
「ゃめ・・・ゃ・・・ぁあ・・・ダメ・・・ッ。」
みるみる朱に染まる白い襟足に唇を押しつけると、綾子がぞくぞくと身体を慄かせた。
脱ぐことの出来ない着物の下の肌が熱くほてり、合わせ目がとろりとほぐれるのがわかる。
「・・・ふ・・・ぁあ・・・っは・・・ぁ・・・。」
気が遠くなるほどいじられてから、やっと解放される。脱力のあまり綾子はずるずると
ソファからずり落ちてしまい、荒い息を吐いている。
「んふ・・・ぅ・・・ん・・・っ。」
祐一に抱き起こされ、また深いキス。かがんで唇をむさぼりながら、祐一が綾子の手を
盛り上がったジーンズの前に触れさせた。生地の中から押し返してくる存在が、綾子の
官能を直撃する。
「出して・・・。」
ささやかれ、綾子は唇を合わせたまま手さぐりでジッパーを下ろし、下着を突き上げている
勃起をたしかめた。力づよい硬さに感動してそっと撫でる手を、祐一の手が抑えた。

506 :
「だから、出してって。」
少し笑って、祐一が唇を離す。祐一の脚の間に座ったまま、綾子はジーンズのホックを
はずして下着を下げ、そそり勃つ男性を解き放った。
 祐一が立ち上がり、ボトムをすとんと落としてまた座った。そり返る屹立を正視でき
なくて顔をそむける綾子のほおを、祐一が両手で包んで自らの股間に近づける。
「・・・口で、して・・・?」
祐一がほおを包んだ手を離すと、綾子は素直に顔を寄せてそれに口づけた。
 この行為をするのはまだ二回目の綾子だけれど、まったく抵抗感を覚えなかった。
今夜は祐一を受け入れることができない代わりに精一杯心をこめて愛し、彼の熱情を
受け止めてあげたい、そう思いながら丁寧にくまなく舌を這わせる。
 大切に舌に乗せて頬ばり、熱い口の中で愛すると、祐一がほぅとため息を吐いた。
「あや・・・すげー・・・エロい・・・。」
抜いた襟から、綾子の背中がかなり下の方まで見えている。触れ合うことも出来ない
その肌のなめらかさが、よけいに祐一をかきたてた。
「・・・っふ・・・ぅ・・・んゃあっ!」
せめてどこかに触れたくて、祐一は綾子の袂の切れ目から手を入れ、二の腕から腋に
手を這わした。綾子はくすぐったがって口の中の屹立を吐き出した。
「もぉ・・・くすぐったい・・・っ!」
「ごめんごめん・・・髪の毛も結ってあるし、せめてどっかに触りたくてさ・・・。」
祐一が手をさしのべて、やさしく綾子をソファに引き上げた。膝の上に乗せて甘い
口づけを交わす。
「どう・・・するの・・・?」
口でして、と言ったのに、祐一は綾子を抱き上げて、元に戻す様子もない。綾子に
一方的に奉仕されるだけでは満足できなくなったのだろうか?
「さ・・・最後まで、してあげるよ?」
「プッ・・・あやには、まだムリだよ。」

507 :
「わ・・・私が、ヘタだってこと?・・・しょうがないじゃん、まだ二回目なんだもん。」
綾子はちょっとムッとして言い返した。
「上手いとかヘタとかじゃなくってさ・・・。」
頬に口づけた唇を、耳にまでずらしてささやく。
「綾子の口ん中、汚したくないんだ。ホントは、一生懸命ほおばってる顔見てるだけで
 たまんなくなるんだけどさ。」
綾子がつま先までぞくぞくと慄えたのは、耳に吹き込まれた熱い吐息のせいばかり
ではなかった。
「それに、あやも気持ちよくならなきゃ・・・つまんないよ。」
綾子を膝から下ろして立たせ、すそから手をさしこんで脚を割った。
「・・・ひゃんっ・・・ゃめ・・・てっ・・・!」
綾子が慌てて腰をひき、乱れたすそを直して手で押さえ、身がまえた。
「もう観念しろよ・・・着たままだって出来るよ?」
「ど・・・どうやって?」
祐一は紬のすそをまくり上げてきれいに裏返し、綾子に持たせた。さらに長襦袢の
すそも同じように裏返してまくり上げ、現れた下着をするりと剥ぎ落とした。
「ちゃんと、裾もってて・・・。」
「ダメ・・・こんなの・・・ムリだよ・・・。」
立たされたままの両腿の間に指が差し込まれる。つぅっとなぞられて、綾子の引けた
腰が落ち、祐一がとっさに身体を支えた。
「んゃっ・・・だ・・・めぇっ!」
「こんなになっちゃってるんだから、ちゃんとしなきゃダメだろ?」
なだめるように口づけてから、また綾子をソファの脇に膝まづかせ、腰を持ち上げて
高く臀を突き出させる。黒っぽい紬から突き出た白く形の良い臀の間の紅色の肉が、
とっぷりと露をふくんで祐一に充たされることを待ちわびていた。
「・・・ゃっ・・・ぁっ・・・ぁあ・・・。」
膜をかぶせた屹立を、ぬるぬるの割れ目に押し当て、焦らすように往復させる。

508 :
 綾子の腰がじれったそうに揺れる。じりじりと呑みこませ、腰をつかんで根元まで
押し挿入れると、熱くせまい肉が待ちかねたように祐一を食いしめてくる。溶け落ち
そうな快感をなんとかやりすごし、祐一が攻撃をはじめた。
「ぁっ・・・ゃあんっ・・・ぁっ・・・ぁあっ・・・。」
引き抜いては深く穿ち、責めるたび綾子が啼き、髪に挿した飾りがシャラシャラと
揺れる。その動きに幻惑されるかのように、祐一は目の前の和服の女を容赦なく
責めつづけた。
「ゅ・・・ちゃ・・・そんっ…はげし・・・ぁんっ…!」
綾子はソファについた両手に顔を埋めてしまい、激しく顔を振りつづけている。
アップにした髪がゆるみ、おくれ毛がうなじや頬に散りはじめていた。
「ぁっ・・・ゃ・・・んぁあ――――!」
祐一を包み込む肉襞がつよく収縮し、綾子が顔を埋めている両手の間からくぐもった
嗚咽が洩れた。祐一ははっと我に返り、震える身体をやさしく抱きしめた。
「・・・ん・・・っふ・・・ぁぅ・・・。」
そっと抜き取り、くず折れる身体を膝の上に抱え上げてソファに座る。己が刻みつけた
絶頂の余韻に、こきざみに身体を震わす綾子がいとしくてたまらなかった。
「ごめん・・・きつかった?あやが・・・エロすぎて・・・止まんなくなった。」
頬につたわる涙の痕にそっと唇を這わせ、あごで顔を押し上げて深く口づける。
「・・・んふ・・・ぅ・・・ン・・・。」
目を閉じたまま、綾子が深く応え、祐一の背に腕をまわしてきた。
「ン・・・んふ・・・ぅ・・・。」
綾子の下唇を甘く噛み、歯列に舌を這わせる。淫らなキスに夢中になっている綾子の
大腿を自分の両膝で大きく開かせる。
「・・・んゃ・・・ぁ・・・ぁあんっ・・・!」
祐一の両腿の上にまたがらせられ、開かされた女陰に、また剛直の先端がふくませ
られた。啼き声をあげて祐一にしがみつきながらも、綾子の腰は無意識に受け挿入れ
やすい角度をつくって祐一を呑みこんでいった。

509 :
 はっ、はっと荒い息をつく唇を舐め、舌を吸ってやりながら、そんな綾子の腰を
つかんで押し下げ、奥まで突き入れる。
「っはぁ・・・ぁんぅっ・・・。」
祐一の唇を振り切り、のけぞって綾子があえいだ。両腋をつかんで反らせた身体を支え、
胸の帯の上、ちょうど乳首があると思われるあたりを親指で円を描くようにこする。
「んゃっ・・・やめ・・・ちょっ、と待っ・・・!」
このままたたみかけられる快楽に身をまかせてしまえばいいのに、綾子はなぜか唇を
噛んでこみあげる快感に耐えていた。
「・・・なんで待つわけ?・・・早くイッちゃえよ。」
襲い来る絶頂感と闘いながら話そうとする綾子の声は、どうしようもなく乱れて
揺れて・・・。それにまた煽られ、祐一が下から責める腰を揺すり上げた。
「・・・ひぁ・・・っん・・・うちゃ・・・ゆ、ぅちゃん・・・って・・・。」
「・・・ん?俺が、なんだって?」
何か言いたそうな綾子の様子に、祐一はしばし動きを止めてのぞき込んだ。
「ど・・・どのくらい、経験・・・あるの?」
綾子が見返す大きな瞳は快楽のための涙をいっぱいに溜め、目元が紅く染まっている。
「な・・・なんで最中にそんなこと言い出すんだよ?」
「・・・きもの着てる時・・・どうするか、とか・・・普通知らないでしょ?」
「俺だって知らないけど、一生懸命着崩れないようにって考えたんだろ?!」
「いつだって、私より余裕あるし・・・う、上手いっていうか・・・。」
あまりにも率直な綾子の言葉に、祐一は面食らいながらもふきだしそうになった
「へぇ・・・そんなに快(い)いんだ?・・・そう言われると俄然やる気出ちゃうな。」
これ以上やる気を出されては困る。綾子はあわてて話を元に戻した。
「そっ・・・んなこと言いたいんじゃなくて・・・。わ、私の前にどんなひとと・・・とか、
 何人くらい・・・って思っちゃうんだもんっ・・・。」

510 :
「・・・はぁ?」
綾子って、そんなこと考えてたのか・・・。祐一は半泣きの綾子の顔をみつめた。
「ふぅん・・・妬いてくれてんだ?」
ちょっと意地悪な声とともに、いっぱいに充たされた女陰のすぐ上の可愛い蕾を
指でそっとこすった。
「っゃ・・・めてっ・・・!」
綾子が悲鳴をあげて祐一の肩にしがみついた。
「俺、特別に上手いとか経験豊富とかじゃ、ないと思うよ。」
綾子から少し上体を離し、秘蕾にあてた指の腹をそっと動かす。
「あやを、もっと気持ちよくさせたくて、がんばってるだけ・・・。」
「・・・っぁ・・・ダメッ・・・ぁあ――――。」
綾子のなかがまた収縮する。祐一も終わりが近いことを感じていた。あえぎ続けて
すこしゆるんだ襟元をつかみ、ぐっと引き開ける。ああ、着つけが乱れてしまう・・・
そう思いながらも、子供のように嬉しそうに胸乳に顔を埋める祐一の頭を、綾子は
いとおしそうに抱きしめた。
「だからさ・・・今は、こっちに集中しろよ。」
言うなり綾子の臀を両手でつかみ、ぐりぐりと結合部に押しつける。
「・・・・ふぁ・・・っぁ・・・ぁあっ・・・っく・・・。」
綾子は責める腕をつかみしめてのけ反り、祐一の手の動きに連動して腰を揺すった。
白足袋を履いたままの足がなまめかしくつま先立ちになる。
「・・・ぃぃ・・・ぁ・・・あ・・・っ。」
髪飾りがしゃらりと落ちるのもかまわず、綾子が激しく頭を振る。さらされた
白いのどが、絶頂感に慄えている。のけ反ったまま張りつめた身体がくず折れる
間一髪、臀から離した手で祐一が抱きとめた。
「・・・ぁや・・・!!」
綾子の花が祐一を甘く噛む。慄えつづける身体をきつく抱きしめ、つよい収縮を
繰り返す綾子のなかに、祐一も愛おしさを思い切り解き放った。

511 :
書き忘れ。
綾ちゃんのお父さんの名前ですが、他のどこにも書いてないのに、なぜか中の人のwikiに
「綾子の父 源治」って書いてあるので使わせていただきました。
偶然ですが、平泉…源治…うーん、北国の方の歴史を髣髴とさせる名前になりましたw

512 :
>>491
着物着衣プレイきたこれ!
今中の人がやってるドラマあんまりちゃんと見てないけどふみちゃんの時から相変わらず着物似合うもんなぁ
そりゃ脱がせたくないでしょうwGJでした

513 :
ゲゲふみゆうあやはやっぱりいいなぁ

514 :
ほしゅ

515 :
再放送も終わりに近づいて寂しい
けど萌え的にはとてもオイシイw

516 :
今でもゲゲゲの女房が大好きです

517 :
保守ついでに・・・
>>512
今更すぎるが、あのドラマはいただけなかったorz

518 :2013/09/19
職人さん、新作待ってます。
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