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2013年10エロパロ728: 罪を犯した少女の小説 (153) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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罪を犯した少女の小説


1 :2010/10/27 〜 最終レス :2013/04/17
万引き、いじめ、人など罪を犯してしまった少女のSSスレです。
塀の中の囚人少女、外での償いの話などオリジナル・版権問わず進めていきましょう。

2 :
ぬるぽを犯した少女の小説

3 :
>>2
ガッ!!

4 :
いじめっ子の少女といじめられっ子の少年がとある出来事をきっかけに
恋心が芽生えてゆくシチュエーションなんて良いね

5 :
パンを踏もうか

6 :
パンを踏んで沼に沈んだ後の描写がエロいと思う

7 :
「パン 踏む」でググッたらゴスロリ少女に踏みつけられる動画がヒットしたんだが

8 :
人犯桂言葉の刑務所生活ですね。

9 :
不可抗力で罪を犯した少女が罪の意識で自らを追い込む姿って萌えるよね

10 :
>>4>>9
不良少女が実刑の代わりに被害者に仕えるのですね。

11 :
自転車事故の謝罪かな

12 :
スレタイ見た瞬間になんかあらすじ思いついた。
だけど、時間あんまないから本文書けるか微妙なんであらすじのまま貼ってみる

13 :
 中学生時代、クラスメイトたちのいじめに加担していたミヤビは、その行為が非道なこと
だと理解しながらも、その矛先が自分に向かうのを恐れいじめグループから抜けられなかった。
 いじめを辞めることも、いじめられている少女カガミを助けることもできないミヤビは、
後片付けと称していじめが終わった後、虐めグループの仲間たちの目が届かないところで、
カガミに手を差し伸べるようになっていた。
 それから一年、高校に入学したミヤビたち。いじめグループから離れるために遠くの学校
に行くかと思われていたカガミも、ミヤビたちと同じ高校に進学する。
 カガミと違うクラスになったミヤビは、数ヶ月の間中学時代の暗い思い出を忘れるように
高校生活を謳歌していた。
 そんな折、中学時代のいじめグループの一人が自する。
 ミヤビはその葬儀ではじめて、その少女が高校に入ってからいじめを受けていたのだと知
り驚愕する。
 しかし、いじめの首謀者がカガミだと聞いて、中学時代の自分たちの悪行を思い返しカガ
ミを止めることができなかった。
 葬儀から二週間後、ミヤビは元いじめグループの一人から連絡を受ける。
 少女は、自分もカガミに脅されていて先ほどまで暴行を受けていたのだと、怯えた声で助
けを求める。
 ミヤビは見捨てることができず、その少女が指定した場所までいくと、薬を打たれて壊れ
たように男たちと交わる少女の姿があった。
 ミヤビは咄嗟に逃げようとするも、男たちに強引に引きずり込まれてしまう。自分もレイ
プされるのだとミヤビが覚悟を決めたその時、カガミがミヤビに手を差し伸べる。
 カガミは男たちにミヤビに指一本触れるなと命じると、男たちは素直にそれに従った。ど
うやらカガミは違法な薬を男たちに横流しすることによって統制を得ているようだった。
 その晩はそのまま開放されたものの、助けを求めてきた少女が一週間後変わり果てた姿で
発見される。
 ミヤビはそこでようやく警察に駆け込もうと決めるのだが、カガミたちに捕まってしまい
軟禁される。
 地下室に閉じ込められたミヤビに、カガミは
「にたくなかったら、私のいうことにしたがってね」
 そう優しく脅迫した。
 カガミはミヤビを暴行しようともせず、まるで着せ替え人形のように愛でた。どうやらカ
ガミは中学時代の凄惨ないじめの中で、唯一手を差し向けてくれたミヤビを神聖化している
ようだった。
 軟禁生活が一ヶ月も続いたある日、カガミが血だらけの姿で帰ってくる。
 いじめグループの一人が、立て続けにかつての仲間が二人もんだのはカガミのせいだと
いって、されそうになったのを逆にしてやったのだとカガミは笑いながらいった。
 だが、旧友のも今のミヤビにはどうということはなかった。
 ミヤビは軟禁されている間ずっと、壊れてしまったカガミの心を救う手段はないものかと、
それが自分にできる唯一の贖罪なのではないかと考え続けていたのだ。
 ミヤビは血に汚れたカガミの身体を丹念に洗ってやり、そのまま身体を重ねた。カガミは
抵抗すらせず、ミヤビに身体を委ねる。
 女同士の性行為の仕方などミヤビは知らなかったが、それでもカガミを悦ばせ、絶頂に至
らせると、その細い首を掴み締め上げた。
 カガミは行為をおこなっている間と同様に、抵抗せず受け入れた。
 ミヤビにはカガミをすことでしか、カガミの心を救ってやれる手段を考えられなかった。
 カガミが息を引き取ったのを看取り、ミヤビは自らの身体に刃を突き立てた。
 
 
とかいうヤンデる百合もの


14 :
おぅ大一作目GJ
是非本編書いて欲しいか救い無理?

15 :
刑務所で凶悪犯少女が重罰を受けるんだろ
千葉の馬鹿親子や日系ブラジル人などいっぱいいるぞ

16 :
後悔に打ち拉がれるカテジナさんを優しく慰めてあげるスレですね

17 :
同級生の罪ちゃん(♀)をふたなりちんこで犯した少女の小説ですね!

18 :
>>17
偽チンコはいらねぇ!

「ふたなりは邪道!!!百合プレイは異性間セックスの疑似にあらず。
女子が女子を攻める時は――――
棒に頼らず己の技で勝負すべし!」

19 :
本日の労役は性欲処理だ

20 :
罪を犯した少女っていうが広いからな。とりあえずそれっぽいの探した。
@刑務所で償わされる少女か
『とある囚人の一日』小恋凌辱
ttp://yellow.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/d/dc264.html
A精神的に自分を追い込めるor反省して償う少女か
例・・shuffleの楓『神にも魔王にもなる前に鬼畜になってた男の日常。』
ttp://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=18&all=18442&n=1#kiji
B塀の外で償うものか。ただし、自分はやったことが無い
車輪の国 向日葵の少女
車輪の国、悠久の少年少女

21 :
刑務所学校か

22 :
>>13氏GJ
百合に興味無かったのに、余りにドツボな設定で萌えてしまった
是非本編書いて欲しい
それが駄目なら自家発電させてください

23 :
>>14
>>22
直ぐには無理だが年内中でよければいける気がしてきた

24 :
>>23
本当ですか?
楽しみに待ってます
無理はなさらないでくださいね

25 :
だして ここからだして

26 :
アルゼンチンの映画で政変に乗じて逃げた上にのうのうと公務員になってた人犯を、
被害者の遺族が自分で捕まえて農園の馬小屋に監禁して、罪を償わせるのがあったな。

27 :
お前の罪をナズェミテルンディス!

28 :
援交で少年院入りした娘が、刑務官と援交とか

29 :
虐め娘が奉仕奴隷に

30 :
虐め娘への復讐?

31 :
ということで、もう一ヶ月も経過してるのがあれですが。
とりあえず3ぶんの1まで来たので、投下します。
あらすじ>>13
・注意点
暴力的な描写あり、百合あり、飲尿あり、本番なし
 
全8レスです。ていうことで投下します投下します

32 :
 思い返してみれば、始まりはとてもとても単純なことだった。
 その少女が――カガミが海外旅行に行った際にクラスメイト全員におみやげを渡さなかっ
たことが原因だったように思う。
 カガミはクラスの中でも親しい人間や、同じ委員会に属するものにしかおみやげを用意せ
ず、ある少女へのおみやげを用意していなかった。
 それは別に咎められることではないと、今でも/あの頃も――私は思っている。
 だって、私がもし旅行にでかけるとしたら。おみやげを用意するのはいつも遊ぶものたち
のみ、カガミよりも更に狭い範囲の人間にしか渡さないだろう。
 けれど。
 どうにも具合が悪いことに、カガミがおみやげを用意したものと用意しなかったものとが
友人であり、おみやげを用意されなかった少女はそれが癪に障ったのだろう、カガミのおみ
やげを見ながらこう言ったのだ――
 
 
「むかつくんだよ」
  
 
 既に意識が朦朧としてしまっているのであろうカガミに向かって、その少女は更に制裁を
加えた。
 猿ぐつわをかまされ/腕を縛られ/着衣を脱がされ/体のいたる所にイタズラ書きをほど
こされたカガミの華奢な肉体に何発もの蹴りが浴びせられる。
 私はその醜悪な光景を遠巻きに眺めていた。
 暴行を受けているのは久遠路鏡(くおんじかがみ)。
 家が金持ちらしく、鞄の中を漁るといつもいつも中学生の私たちではとても手に入らない
ような高級な化粧品をもっている。
 高級で、質のいい化粧品を使っている、容姿の整ったカガミ。クラスメイトの男子たちの
半数ほどは『彼女に恋していた』のだそうだ。
 だからか私たちは彼女で遊ぶ際には、まずその化粧を剥ぎ落とすところから始めている。
 掃除後の汚水を溜めたバケツに顔を突っ込ませたりとか、男子トイレの洋式便器を顔で洗
わせたりとか、まあ色々だ。
 そうして汚くなったカガミをみて私たちは――いや、その1人/杉山瑛子(すぎやま瑛子)
はとても嬉しそうに笑う。
 今も、
「授業中、テメーが手ェあげなかったせいで、アタシがあてられたじゃねーか。くそがっ」
 罵声を吐きながらカガミの腹部へ何発も蹴りを加えている。
 最初見たときに新雪のように綺麗だったカガミの肌を、青あざだらけに変えたのは瑛子だった。
 このイジメに首謀者がいるかと言われれば、それは瑛子ということになるのだろう。
 最初にカガミをイジメようといったのは、確か瑛子だった。
 だが、だからといって、この罪が瑛子1人のものだとはいわない。私たちも瑛子に賛同し
た上で、このイジメに加わっているのだから。
 夕暮れの教室。
 授業が終わり部活動に勤しむ声がグラウンドから聞こえる中、カガミに対して陰湿なイジ
メを行っているのは私含め4人。
 まずは杉山瑛子。
 生来の天然パーマを嫌って髪にストレートパーマをかけており、髪の手入れに余念がない
少女。
 なんの手入れもせずとも美しく艶やかな黒髪を持つカガミを憎んでいる。
 次に津田紺(つだ こん)。
 母子家庭に生まれた紺は昔からおこづかいが少ないことを嘆いていたが、最近ではそんな
こともなくなっていた、彼女が身体を売っていることを私は知っている。

33 :
 なにもせずとも不自由なく暮らせるカガミを妬んでいる。
 それに大沼椎(おおぬま しい)。
 椎は努力家で勉強なんかでできないことがあると、それを努力で補いできるようになるま
でやる真面目な子だ。
 だからこそ、特に努力しているふうでもないカガミが、試験で常に自分より上にいること
に納得がいっていない。
 そして、私――宇野雅(うの みやび)。
 これといって特徴のない、でも、直ぐに人の目を気にしたり、集団の輪から離れることを
恐れてしまう気の弱いヤツ。
 私にとってカガミは、どんなことをする時でも、それが例え単独であっても物怖じしてい
なかったカガミは羨望の対象だった。
 どうしてあの子は失敗することを恐れず、なんでも自分で決めてしまえるんだろう、と。
 私たち4人はそれぞれが様々にカガミに対しなんらかの思いを抱いていた。
 だが、教室の廊下に力なく横たわりうめき声をあげることしかできないカガミをみている
と、そんな思いはどこかにいってしまう。
 今のカガミには以前のような高貴さも気高さもなにもない、ただいたぶられるだけの存在
でしかない。
 そんなカガミを見ていると、私は少し憐れみを覚えるのだが、瑛子は違うようだった。
「あー、むかつく」
 口ではそう言いながらも瑛子の顔は愉悦で紅潮していた。
 カガミをイジメ始めて約3ヵ月ほど、どうやらこのクラスメイトには嗜虐的な性的嗜好が
あるようだと知った。
 瑛子は上履きでぐりぐりとカガミの腹部を踏みつけながら、まるで邪教の司祭が儀式を行
う時のように一方的に言い始めた。
「おしっこしたくなったけど、トイレいくのたるいからアンタトイレの代わりになって」
 カガミの口から猿ぐつわを外すと、口を閉ざそうとしたカガミの顎を掴んで頭を揺さぶった。
「トイレの癖になに勝手に蓋閉めようとしてんのよ、むかつく。今からアタシのおしっこ飲
めるのよ? トイレだったら喜びなさいよ」
 いうや瑛子は自らのスカートの中に手をいれパンツをずりおろすと、脱いだパンツを机の
上にほうり投げ、カガミの顔の上に跨った。
 瑛子は腰をおとし和式便器でする時のような体勢をとると、スカートをたぐりあげその下
半身を露わにした。
 そうして口を開いたままのカガミの鼻を摘むと、瑛子の尿が勢いよく飛び出しカガミの口
の中を侵していく音が教室中に響いた。
 この行為はもう何回目だろうか?
 瑛子がカガミを虐めるとき、瑛子は決まって自らの尿を瑛子に飲ませる。
 どうしてそんなことをするのかと聞いたら、瑛子はこう答えた。
『だってさ、自分のおしっこを飲まれてるって考えたらゾクゾクしない? 昔飲尿ダイエッ
トしてたことあってね、その時にペットボトルに自分のおしっこ入れて冷蔵庫にいれてたら、
お父さんが間違えて飲んだことがあってさ。その時にさ『ああ、こういうのいいなあ』って
思ったんだ』
 それ以来私は瑛子が持ってきた飲み物に口をつけることはしなくなった。
 瑛子の尿はカガミの口の中だけには収まらず、溢れて床を濡らしていく。瑛子の上履きも
尿で汚れたようだったが、瑛子は気にならないようだった。
 快感を覚えているのか瑛子の顔は更に紅潮し、少し震えているようだった、口からは「あ
っ……んっ……」と甘い吐息を漏らしながら瑛子はカガミに尿を飲ませ続ける。
 私は見ていられなくなり顔を背けると、そこには瑛子の下着を弄ぶ椎がいた。
 椎は私の視線に気がつくと、照れたように笑い、声を出さずに口を動かした。
『ぬれてる』
 その口の動きに、椎の手にある薄い水色のパンツをみると、若干嫌悪感がわいた。

34 :
 だがそんなことは表情には出さず。
 私は呆れたような笑いをこぼしただけにとどめた。
「……んっ、ふぅ」
 瑛子は放尿を終えると、満足げな笑みを浮かべながら立ち上がった。
「全部飲んでない辺りむかつくけど、まあいいわ」
 振り返って私たちのほうを見ると。
「アンタらもたまにはコイツにおしっこ飲ませてやったら、コイツおしっこ飲むと喜ぶのよ、
ほら」
 そう言いながらつま先でカガミの股を開くと、カガミの薄く陰毛を茂らせている陰部に手
を触れ、なにかを指に塗りつけると、私たちに見せた。
 瑛子の指先は確かにカガミの愛液で濡れているようだった。
 だが、カガミがこんな行為で濡れてしまうかは別として、他人の汚い部分を気にせず触れ
る瑛子という女の感性が信じられなかった。
 ふと思った。
 瑛子はトイレに行くとき必ずカガミを連れて行くが、まさかカガミに自らの糞を食わせて
いるんじゃないだろうか?
 そう考えると吐き気を催しそうになったが、なんとか堪えた。
 瑛子は楽しそうにカガミの尿道口を指先で弄っている。
 椎は『どうしようもないね』というように肩を竦めた。
 そこへ紺が瑛子へいった。
「そろそろ塾の時間だから、行かないと」
 言われて瑛子ははっとしたように時計を見た――5時45分。
「あ、ほんとだ。いこいこ」
 瑛子はいうや最後に一発カガミの陰部に蹴りを入れ、自らの鞄を掴むと教室を後にした。
 紺もそれに続いてでていってしまう。
 残された椎は私のほうをみて。
「いつも悪いね」
 そういって教室からでていった。
 私は彼女たちの後には続かず、尿溜まりができた教室内をみて小さくため息をついた。
「さて、始めるか」
 ある時より私はイジメの後の後始末を任せられるようになった。
 それは証拠隠滅したいという私の希望もあるのだが、カガミにおみやげをもらった側であ
る私が彼女たちのことを裏切らないようにとさせられている行為なのだと私は考えている。
 私は尿で汚れたカガミに触りたくもなかったが、カガミの腕に巻かれた靴下を解いてやる
と声をかけた。
「立ち上がれる?」
 その言葉にカガミは微かに頷き、閉じていた目を開くと、床に手をついて立ち上がった。
「シャワーあびよっか」
「……」
 カガミは小さく頷いた。
 この教室の直ぐ傍に宿直用のシャワー室があり、なぜか紺はそこの鍵をもっていて、私た
ちは自由にそこのシャワーを使うことができた。
 私はカガミの衣服や持ち物をかき集めると、それを抱え歩き始めた。
「ん?」
 すると、スカートがなにかにひっぱられるような感覚がして、振り返るとカガミが私のス
カートの裾を掴んでいた。
 一瞬いらっときたが、だが直ぐにそれは呆れに変わり、私はカガミのしたいようにさせた。
 スカートの裾を掴まれたまま私たちはシャワー室へ向かった。
 家の風呂場より手狭なシャワー室は小柄な私たちでも二人もはいると狭くてしょうがない。
 カガミを先に入れると、私も服を脱ぎそれへ続いた。

35 :
 華奢なカガミの身体は女性的な特徴はまだ殆どなく、胸も申し訳程度に膨らんでいる程度
しかない。
 私が身体をみていることに気がつくと、カガミは顔を真っ赤にして身体を隠し、その場に
うずくまってしまった。
 散々見られているのに、なんで今更恥ずかしがるんだろうこの馬鹿は。
「洗ってやるからさ、立って」
 そういって腕を引くと、カガミは直ぐに立ち上がった。
「じゃあ、とりあえず口から洗うね。口開けて、口」
 私がいうとおとなしくカガミは口を大きく開いた、瑛子の尿の臭いが漂ってきそうだった。
 シャワーホースを掴むと蛇口を捻り、ぬるま湯をだし、それを思い切りカガミの口の中に
放水した。
 するとカガミはびっくりしたのかむせ返り、再びしゃがんでしまった。
「……うぇ……ひどいよ」
 今にも泣きそうな声でいうカガミに苛立ちを感じた。
 今度はその髪を掴んで強引に立ち上がらせると、
「そりゃひどいに決まってるでしょ、あんたは私たちにイジメられてるんだから」
 まるで自分に言い聞かせているようだと思った。
 だがそれでカガミは黙り、再び口を開いた。
 そこへ今度は冷水を放った。
 先ほどよりも大きく反応したカガミだったが、今度は避けずにされるがままに放水を受け
続ける。
 途中何度も何度もカガミは咳き込み、嗚咽を漏らしたが、私がやめるまで耐え続けた。
「よし」
 私はもういいだろうとシャワーホースを元の場所に戻すと、カガミの顎を掴んで引き寄せ、
もう尿の味がしないか自分の口で確かめた。
 カガミはおどいたように私の瞳を覗きこみ、かと思うとうっとりしたように目を閉ざした。
 舌をカガミの口腔の中に滑り込ませ、念入りにカガミの口の中を調べていく。
 水洗いしただけでは、尿の味も臭いも消えていないような気がした。実際、カガミの口は
尿のような臭いがして、気持ち悪かった。
 するとカガミは私の舌に自らの舌を絡ませ始め、気づけば私の乳房を掴んでいた。
 カガミはカガミの小さな手では収まりきらない乳房をもみ続ける、そうされている内に乳
首が勃起したらしく、その堅くなった部分を指先で弄びはじめた。
 気持ちが悪かった。
 なんのつもりなんだろうこいつ。
 そう思いながら私は唇を離すと、カガミの乳首を摘み、ねじ切ってやるつもりで思い切り
捻った。
「ひぐぅっ!?」
 すると、カガミは妙な悲鳴をあげた。
 その声も気持ち悪かった。
「身体洗うから、胸から手を離して」
 そういうとカガミは手を離し、直立不動の姿勢をとった。
 冷水をカガミの身体に浴びせながら、ふと思った。
 一体何をやっているんだろう。
 イジメているはずの相手に対して、こんな行為はまるで彼女たちへの背信行為じゃないん
だろうか?
 実際、カガミは私とのこの行為をイジメの一環とは捉えていないようで、喜んでいるよう
な表情を垣間見せる。
 今もどこかうっとりした様子で冷水を浴びている。
 しゃがんでカガミの陰部をあらおうとして触れたその瞬間、カガミが
「あ……でる」

36 :
 小さく呟いた。
 私がその言葉の意味を理解したのは、カガミの尿が私の顔に浴びせられた後だった。
 しかし私は突然のことに呆然としてしまって、避けることすら満足にできず、カガミの尿
を顔に浴び続けた。
 カガミは放尿を終えると、どこか喜悦を孕んだ表情で私にむかっていった。
「あ、ええと、ごめんね」
 私はカガミのその言葉に、気づくとカガミの膣にシャワーホースのノズルを突っ込むと、
最大まで蛇口を捻っていた。
「あ、あがっ」
「ふざけてんじゃねーよ!」
 私はカガミの下腹部を殴りつけた。
 するとカガミはその場に倒れてしまったが、構わずその顔を踏みつけ。
「お前が私の何か理解してんのか、お前はただのオモチャなんだよ。なに調子にのってんだ!
 あー、くそ、腹立つ。なに人様に尿飲ませようとしてんだ、この変態!」
「ご……ごめんぇ……」
「喋るな! きもいんだよ、うざいんだよ、お前。理解しろよ、いい加減に理解しろよ」
 私はその後10分以上もカガミに暴行を加え続けた。
 よくカガミはななかったと思う、それほど手酷く暴行を加えたというのに、その行為が
終わったあとカガミは私に向かってこういった。
「ミヤビちゃん、身体洗ってくれてありがとね。それと、わたしきもくてごめんね」
 ――こいつはどこまで馬鹿なんだ。
 私はそう思った。
 
 
***
 
 
「……さいあく」
 目が覚めると私は思わずそう呟いてしまっていた。
 普段夢を見ることなんて殆どない私が夢をみて、しかもそれがあの頃のこととなると最悪
だとしか言いようがなかった。
「もう忘れたと思ってたのに……」
 中学校を卒業して私は地元の私立高校に入学し、既に7ヶ月もの月日が経過していた。
 あの頃一緒につるんでいた瑛子や紺とはクラスが別になり、いつの間にか疎遠になってし
まったものの。椎とはクラスが同じだったため今でも友人としての関係は続いている。
 本心としては彼女たちとは完全に縁を切り、新しい気分で高校生活を送りたかった。
 だがその為に、地元から離れた場所にある進学校を受験したのだが落ちてしまい、彼女た
ちとの関係を切ることができなかった。
 だが、それでも。
 私と椎の間であの頃のことが会話に昇ることはないし、別のクラスになった2人のことを
話題にすることはなくなっていった。
 勿論、あの当時イジメられていたカガミのことなど、話したことすら――いや、一度だけ
ある。
 カガミが瑛子や紺と同じクラスになったこと。
 そのことについて話したことがある。
 もしも瑛子たちが再び私たちにイジメに加担するように言ってきたら……というような内
容だった。
 私も椎ももうあの当時のようなことはしたくなかった。
 そう、私にとって、まだ1年と経っていないが。あの頃の記憶は忘れ去りたい過去、そう
ただの過去になっていた。

37 :
 高校にはいったら部活動に所属しようと考えていたのだけれど、気づけばどこにも所属し
ないまま7ヶ月が経過した。
 今更どこかの部活に所属するのも面倒だった。
 それにやりたくなるような部活なんてなかったし。
 だから毎日のように放課後新しいクラスメイトたちと遊びまわる日々を過ごしていた、そ
ういう意味では充実していたのだろう。
 私は夢をみるまであの頃のことを忘れていたのだから。
 だが一度思い出してみると、頭のすみにひっかかり、気づけば一日中そのことを考えてし
まっていた。
 かつて自分のした行為。
 それに今、カガミはどうしているのだろうか?
 瑛子や椎が同じクラスにいるせいで、今もあの2人から酷い仕打ちを受けているのではな
いだろうか。
 そういったことを悶々と考えていると放課後になっていた。
 私は部活動へと向かう椎を渡り廊下で捕まえた。
「ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「ん? どうしたの?」
 5月に陸上部に入部した椎は、邪魔だからといって髪をばっさりと切ってしまった。中学
の頃おとなしそうな優等生っぽい感じだった椎が、今は美少年といっても通じるようなボー
イッシュな姿になってしまっている。
 まだ入学して半年程度しか経っていないのに、人は変わるものだとつくづく思う。
「あのさ、カガミのこと憶えてる?」
「……え」
 薄く笑顔を浮かべていた椎の表情が凍りつく。
 私は自分が地雷を踏んでしまっていることを理解しながらも、話を続けた。
「ほら、あいつさ瑛子たちと一緒のクラスじゃん。どうしてるかなーって」
「知らない」
 私の言葉を遮って椎はいった。
「ねえ、ミヤビ。約束したよね? もうあの頃のことは忘れようってさ」
「そうだけど」
 椎の静かだが激しい拒絶反応に戸惑ってしまった。
 私がなんというべきか迷っていると。
「もう私はあんなことには関わりたくない、だから瑛子たちとは関わらないようにしてる。
ミヤビだってもう関わりたくないんでしょ、それとも――」
 椎は言葉を区切ると、口元に笑みを浮かべていった。
「そんなに女同士でするのがよかったの?」
「え」
 椎は嗜虐的な笑みを浮かべたまま私の胸を制服の上から掴んだ。
「し、椎? ちょっ、なにして」
 周囲を見ると廊下には私と椎以外の誰もいなかった。
 椎に強い力で身体を押され、壁に背中を叩きつけられた。
「ミヤビ、私ね、ミヤビのことは好きだよ」
 逃げることすらできないまま、椎は私に顔を近づけ囁くようにそういった。
「だからさ、そんなに女同士でやりたいんだったら、私としない?」
 椎の言葉が理解できなかった。
 なにより今の状況が理解できなかった。
 私はただカガミたちのことを聞いただけなのに……。
「……え、ちょっと、そこは――あっ」
 椎の手が私のスカートを捲り上げ、パンツの中に入ってきた。
 手は迷うことなく私の陰部に触れると、撫でるように指を動かし始めた。

38 :
「ほら、ねえ? ミヤビ? 別にあの子じゃなくてもいいでしょ。ミヤビ、他の子としたこ
とないからあんなガリガリなのが気になるんだよ」
「う……やめよ、ね、椎……やぁっ」
 椎の手が私の手首を掴んだ。
 その時になって椎のことを手で押しのければよかったことを気がついたが、椎の力は強く
抵抗することはできなかった。
 椎は私の手を自らの制服の中に潜り込ませて、下着の上から乳房を掴ませた。
「あ……」
 下着は小さく、指先には椎の肌の感触。
 椎は驚く私に笑って見せた。
「ほら、女の子の身体ってね、こんなにやわらかいんだよ?」
「それは――んぅっ!?」
 突然、身体全体を電流が走ったかのような錯覚に陥った。
 どうやら椎が私のクリトリスを摘んだらしい。
「ミヤビ、かわいいね」
 椎が私の唇に、自らの唇を重ねた。
 甘い、いちごみたいな匂いがした。
 尿の臭いしかしないようなキスしかしたことなかった私には、それは凄く衝撃的だった。
 椎は直ぐに唇を離すと、イタズラを企む子供のような声でいった。
「瑛子はアブノーマルすぎるし、紺はお金で男に身体売るようなやつだし、やっぱりミヤビ
が――ううん、私が会ってきた中でミヤビが一番かわいいよ」
 そういうと椎は再び私にキスをした。
 ……椎の唇やわらかいな。
 そう思って目を開いた瞬間、椎の姿別人のものにみえた。
 私が椎以外でキスした唯一の相手、――カガミ。
「いやっ!」
 私は椎の身体を突き飛ばすと。
「私、こんなこと……私は……」
 椎は尻餅をついて、少し悔しそうな表情でこちらをみていた。
「ごめん、ミヤビ」
 いつもの優しい声で椎はそういうと。
「でも、本当に私は彼女たちのことをもうなにも知らないし、興味がないんだ。あの時のこ
とはもう記憶のすみに封印して思い出したくすらない」
「それは私も、私だってそうだよ」
 あんな凄惨な記憶、消せるものなら消してしまいたい。
 だけど、あの記憶は確かにあったこと、消せない事実であることに変わりない。
「それでも気になるっていうなら」
 椎は立ち上がりながらいった。
「カガミたちのクラスに直接行ったらいいんじゃない、私に聞くとかじゃなく、ミヤビ自身
が直接」
「――ッ!」
 それは確かにそうだ。
 私と同じように過去との接触を拒んできた椎に聞くよりも、今の瑛子たちに直接会ったほ
うが現状を確認するほうが確実だ。
 でも私にはそれはできなかった。
 その考え自体は浮かんでいたものの、それをしたら自らの過去の行いと正面から向き合わ
なければならない。
「それは……」
 今もカガミが虐められていたらどうしよう。
 カガミが私にあの時のようなことを望んできたらどうしよう。

39 :
さるさけ

40 :
 考えているうちに、口の中にカガミとの間接キスで味わった瑛子の尿の味が蘇ってきた。
「…………ぃ、いや」
 もうあんなことはしたくなかった。
 他人に対して暴力を振るうこと/縛りあげ拘束すること/瑛子の変態趣味に付き合わされ
ること/紺の紹介でカガミの体を男たちに売ること/汚物に塗れさせること/そんなものの
とあんな行為をすること――なにもかもが嫌だった。
「でしょ、だからさ、もう忘れようよ」
 椎の優しい言葉に私は頷いていた。
 
 
***
 
 
――この時、瑛子に会いにいっていたら。
 この後の結末は違ったものになっていたのかもしれない――
 
 
***
 
 
 翌朝、私は連絡網で今日は臨時休校になったことを聞かされた。
 理由は誰も知らないようだったが、なにやら学校でなにかがあったらしく、今日は家から
出ず、誰かに話を聞かれてもなにも答えないようにといわれた。
 なんだろうと思いながら朝食を食べていると、テレビニュースが見覚えのある風景を映し
た。
 どこでみたんだっけなあと考えていると、はっきりとそこがどこか分かる場所が映し出さ
れた。
「あれ? うちの高校じゃん」
 一体何のニュースだろうと思ったその瞬間、携帯電話が鳴った。
 携帯を開くとディスプレイには『紺』と表示されていた。
 慌てて通話ボタンを押し、携帯を耳にあてると、携帯の向こうから切羽つまった紺の声が
飛び込んできた。
『ミヤビ、された、されちゃったよ、どうしようどうしたらどうすればいいの』
「ちょっと落ち着いてよ紺、一体何があったの?」
『瑛子が、瑛子がカガミにされたんだ!』
「――――え?」
 
 
 テレビからアナウンサーが淡々とニュースを読み上げる声が聞こえてきた。
『……校舎から飛び降り自を図ったのは、同校の生徒である杉山瑛子さんとみられ――』
 
つづく

41 :
↑の続きです。全12レス、2/3の部分までです
 
 
***
 
 
 中学生時代、どこの部活にも属していなかった私はクラスの中で少し浮いていた。
 うちの学校特有のものなのかもしれないが、二年になると同じ部活のもの同士が同じクラ
スになる傾向があった。その方が教師たちの仕事上不便が少なかったのだろう。
 だが部活動に属していないものたちは、人数合わせのために放り込まれるためか、一年の
時に仲がよかった子達とは離れ離れにされがちだった。
 私もそんな1人だった。
 進級して1カ月の間は、必要最低限しかクラスメイトたちとは会話せず、段々と孤独を感
じ始めるようになっていた。
 そんなある日のことだ。
「え、と。宇野……さん?」
 1人で弁当を食べていると、いきなり声をかけられた。
「ん? 私?」
 『宇野』なんていう名字はクラスに1人しかいないのに、思わず確認してしまった。そう
してしまうほどに、私はクラスメイトたちと会話する機会がなかったのだ。
「うん、そう」
「なあに?」
 振り返るとそこには美少女といって過言ではない容姿の少女が立っていた。
 会話したことがなくても、その少女の名前はしっていた。別に彼女に興味があったという
わけではない、ただ単に彼女は他人よりも目立つ存在だったというだけだ。
「久遠路さん、だっけ?」
 知ってるくせに、まるで『アナタにはあんまり興味がないから、はっきりと憶えていない
んです』と言いたげに私は言った。
 するとどうしたことか、彼女は嬉しそうに笑った。
「憶えてくれてたんだ、うれしい!」
 そこらへんのアイドルがする営業スマイルなんかでは敵わないほどきらきらと眩しい笑顔
に、私は思わず戸惑ってしまった。
 だが久遠路カガミは構わず話を続けた。
「ねえ一緒に食べない?」
「え?」
 予想外の提案だった。
 私が知る限り久遠路カガミという少女には仲のよいものたちがいて、いつも一緒に行動し
ているはずだ。
「あ、いいけど。いつも一緒にいる……」
 いつもカガミと一緒にいる人たちの名前が思い出せない。
「一緒にいる子たちと食べなくていいの?」
「椎ちゃんたちのこと?」
「ああ、うん」たぶん。「そう」
 カガミは柳眉を八の字にして「それがね」といった。
「椎ちゃんは生徒会の用事があって、瑛子ちゃんは委員会の用事があって、紺ちゃんはヤボ
用があるんだって」
「へー」
 それはそれは皆様大変お忙しそうで。
「だからさ、一緒に食べよ? ね?」
「うん、まあそれは構わないけど」
 ――それが私が覚えている限り私とカガミのはじめての交流だった。
 カガミはお嬢様然とした容貌からは想像ができないほどお喋りが好きなようで、食べてい
る最中次から次に色んな話題を振ってきた。
 それは冷静に考えれば、カガミがお喋りが好きというよりも彼女なりに私のことを探って
いたんだろう。私の趣味、嗜好そういったものを。
 そういえば私はカガミが好きなもののことを知らない。
 ……あの子は一体、なにが好きだったんだろう?
 
 

42 :
 ――でも、もうそんな話題はできないな。
 私は現実逃避の回想から現実へ意識を戻すと、目の前で繰り広げられている光景に思わず
顔をしかめた。
「あ……あっ……あっ……あっ……」
 一定のリズムで叩きつけられる腰の動きに合わせて、カガミの口から細い声が漏れる。
 放課後の教室、聞こえるのはカガミのあえぎ声、紺が携帯をいじる音、そして1回400
0円でカガミの身体を買ったクラスメイトの男子の荒い息遣い。
 私たちはカガミへのイジメの一環として、カガミの身体をクラスにいるモテなさそうな男
子たちに売ることにした。
 言い出したのは紺だった。
 携帯料金が払えなくて困っているときに思いついたのだという。
 1回4000円というのが高いのか安いのかよく分からないが、その値段設定は私たち4
人――瑛子、紺、椎、私――に1000円ずつ入るようにするためそうした。
 売りを始めた最初のうちは紺がクラスメイトたちに話を持ちかけていたのだが、今では他
のクラスからも客が来ている。どうやら秘密厳守のはずだったのに、いつのまにか公然の噂
になっているのかもしれない。
 ……ということは、私が、私たちがこうしてカガミの肉体を売り物にしているのも、公然
の秘密というわけだ。
 どうりで最近クラスメイトたちから浮いているわけだ。
 私がそんなことを考えながら売春の様子を眺めていると、男子――名前は忘れた――と目
があった。
 男子は荒い息遣いで言った。
「ミヤビ、ミヤビはこういうことしてないのか」
「……は?」
 男子はカガミのことを突きながら、更にいった。
「お前らみんなこういうことしてんだろ」
「誰がそんなこと」
「みんないってるぜ」
「みんなって……」
 カガミの身体を売っていても、私自身は身体を売ったことはなかったし、まだ一度も男と
そういう関係になったことすらなかった。
「な、なあ」男子は顔を真っ赤に紅潮させ。「ミヤビはいくら払ったらヤらせてくれるんだ?」
「――ッ!」
 なにを言い出すんだこの馬鹿は。
 私がいつ売りをしてるなんていったんだ、しかも値段教えたらその金額を払って私の身体
を買う気か、こいつは。
 絶句してしまっていると、横から紺が口を挟んだ。
「あー、ミヤビはやめたほうがいいよ」
「え、なんでだよ。俺ミヤビのこと好きだぜ」
 別な女とセックスしながら、しかも金払ってヤラせてもらいながらいう言葉か。
「好きって」
 紺が苦笑した。
「だったら1回10万払える? しかもそれプラスホテル代とか全部アンタもちだよ」
「ちょっと紺なにいってるの」
 紺は私の身体まで売る気なのかと本気で心配したが、違うようだった。
「1回10万は流石にはらえねーわ」
 男子はあっさり引き下がってしまった。
 まあそれはそうだろう、中学生に10万円ぽんと出せといって出せるようなヤツはほとん
どいないと思う。

43 :
「でも」と男子は話を続けた。
 そうしている間もカガミは涎を垂らしながら、ひぃひぃとあえぎ声を漏らし続けている。
「こうやって俺みたいに久遠路のこと買った連中の中にさ、久遠路のこと前から好きだった
連中いたんだけど、そいつらなら最初だったら1回10万払ったんじゃねーかな」
「中学生が10万も払えるっての?」
「うーん、きついけどまあ、連中にとったらアイドルみたいなもんだったからなあ」
 男子の言葉は意外とすんなり受け入れられた。
 カガミは今でこそこんな感じだが、以前のカガミはクラスのアイドルのような存在で、男
子からも女子からも好かれていた。
「だった、ね」
 紺がにやにやと笑いながら応えた。
「ああ」と男子は頷き。
「でも今じゃ無理だろうなあ。こんな何人も何十人もちんこ突っ込んだあとじゃ、もう便所
みたいなもんだし。汚くて彼女とかにしたくねーや」
「でしょうね」
 そういって同意する紺の笑みに、私は背筋が冷たくなった。
 瑛子にしても、紺にしても、いつもはどこにでもいそうな少女なのに、人をいたぶる時だ
けどうしてこうまで残酷な表情ができるんだろう。
 私は不意にカガミの笑顔を思い出した。
 まるで太陽のようだった眩しい笑顔を。
 でも、もうカガミにはそんな表情はできないのかと思うと、私は胸が締め付けられたかの
ような痛みを覚えた。
 
 
***
 
 
 祭壇に飾られている遺影は生徒手帳のものらしく、瑛子は面倒くさげな表情をしている。
なにもあんな写真を使わずとも、もっといい写真があるんじゃないかと思った。
 私は焼香を上げながら、曲がりなりにも友達だったはずなのに涙を流せない自分の薄情さ
に呆れていた。
 だが参列している瑛子のクラスメイトたちにしても、沈うつな表情を浮かべているものは
いても、泣いているものはいないように見えた。
 交友関係を広げることを好む瑛子のことだから、こういう時はわんわん泣いてくれる女の
子とかも友達にいてもおかしくないと思ったのだが。
 それに顔ぶれをみていると中学時代のクラスメイトは多々見受けられるというのに、瑛子
の今のクラスメイトはそれほどいないような気がした。
 いや、気のせいだろうが。
 隅のほうの席に母さんと並んで座ると、怪しまれない程度に周囲を見回した。
 参列者のほとんどは高校生で、親同伴で来ているのは私くらいなのかもしれない。私自身
もそうみえたんだろうけど、焼香を上げるときそわそわと落ち着きがなく、いかにも『見様
見真似です』といった感じだった。
 悲しんでる子もいるようだけれど、大半の参列者はそうではないようにみえた。なんとい
うか『なんで自したんだろう?』と不思議がっているいるようにみえる。
 それもそうだ。
 だって中学生時代の瑛子といえば、自信に満ち溢れていて性格は図太く自なんてするタ
イプではなかった。むしろ――誰かを自に追込みかねない側の人間だった。
 高校に入学してから彼女になにがあったんだろう。
 誰もがそう考えているようにみえるのは、おそらく私自身が強くそう考えているからとい
うだけではないはず。

44 :
 斎場にはお経の声に掻き消されて何を言っているかまでは聞こえないが、それでもひそひ
そと言葉を交わす声がそこかしこから聞こえてくる。
 注意深く聞いていると『中学時代』『イジメ』『久遠路』といった言葉がよく耳に入って
くる。
 話をしている人たちの所へいって、根掘り葉掘り相手の知っていること全てを聞き出した
い気分だったけれど、この場であまり目立つ行動は取りたくなかった。
 それに自した人間の理由について探ってるヤツがいると聞いたら、みんな不審がるだろ
うし。なにより遺された家族の人たちがいい気がしないだろう。
 だからそういったことを自然と聞ける相手、紺がこの場にいてくれたらよかったのだが。
紺の姿はどこにも見当たらなかった。
 紺はこういう堅苦しい式を嫌うタイプだったとはいえ、曲がりなりにも友達だった相手の
葬式をすっぽかすだろうか?
 しかも昨日の朝、電話で言葉を交わして以来、紺と連絡がとれなかった。
 電話をかけても繋がらず、メールを送ってみても返信は一切ない。
 まさか、とは思うが不安が鎌首をもたげる。
 中学時代、カガミをいじめていた4人のうち1人が自した。その2日後にもう1人が連
絡がつかなくなった。
 ただの偶然だっていうのは分かっているが、それでも、ただの偶然というにはあまりにも
タイミングがよすぎるような気がした。
 私の脳裏にはかつての記憶が、焦げ痕のようにこびりついて取れなかった。
 そんなことを考えていた時だった。
「――っと、えと、宇野……さん?」
 声を聞いた瞬間、背筋に凍りつくような冷たさの電流が流れた。
 いつの間にいたのか分からなかった、だが気づけば私の前に久遠路カガミが立っていた。
「か、カガミ……」
 あの頃と変わらない、いや、あの頃――イジメられていた頃絶えず彼女が放っていた怯え
は消え去り、代わりに余裕に満ちた笑みが彼女の顔に浮かんでいた。
「久しぶりね」
「え、ええ、お久しぶり。元気にしてた?」
 カガミの言葉に反射的にそう応えていた。
「ええ、『あの頃』よりも元気よ」
 ――あの頃。
「そう、それは……よかった」
 隣に座っている母さんが私のわき腹をこづいた。
「お友達? 綺麗な子ねー」
 そう素直に感想を口にする母さんに、カガミは口元に手を当て密やかに笑ってみせた。
「中学時代、宇野さんにはよく遊んでもらってました」
「あらそうなの、この子あんまり学校のこと話したがらないから。友達とかちゃんと作れて
るのか不安だったのよ」
「そうなんですか」
 笑みを交わす母さんとカガミの会話に、私は生きた心地がせず。できるのであれば大きな
声をあげて、この場から逃げてしまいたかった。
 カガミはちらりと私のほうをみると、わずかに笑みを深めた。まるで私の内心が見透かさ
れているかのようだ。
「ねえ、宇野さんわたしたち友達よね」
「――ッ」
 私が、私たちがしたことを忘れたとでもいうの?
 それとも、この笑顔や言動の裏には何かが潜んでいるというのだろうか。
 かつてのように暴力を用いてでも、カガミに真相を吐かせたかったが、周囲の目がある中
でそんなことはできない。

45 :
 私は欺瞞に満ちた笑みを浮かべると、
「そうに決まってるじゃない」
 窮めて明るい声でそういった。
「だよね」
 カガミは嬉しそうにうんうんと頷く。
 私は立ち上がるとカガミの腕を掴んだ。
「久遠路さん、向こうでちょっと話しましょう。ここだと邪魔だと思うし」
「うん、いいよ」
 カガミはにこにこと笑いながら掴まれた腕をたくみに動かし、腕を組んだ。
「じゃあ行ってくるね、母さん」
 そういって斎場を後にした。
 振り返ると幾人もの他人の目が突き刺すように私たちに向けられていた。
 
 
 斎場をでて外で話そうかと思ったが、外には報道陣が詰め掛けていてどうも落ち着いて話
せそうになかったので、控え室にあるテーブルに向き合って座った。
 カガミは口を開かず、にこにこと私のほうをみて笑っている。
 その笑顔からは邪悪なものは感じない、あくまでも嬉しそうに楽しそうにカガミは笑って
いる。その笑みは葬儀中の今は不謹慎にすら感じられるほど眩しく、華やかなものだった。
『瑛子がんでそんなにうれしいの?』
 そうと言い放ってやりたかったが、私の臆病な口はそう発することを許してくれず。私は
ただ黙してカガミの笑顔を睨みつけていることしかできなくなっていた。
 なんと言葉を切り出したらいいのか分からなかった。
 すると、
「高校に入ってからミヤビちゃんと会うの、これがはじめて、だね」
 えへへと笑いながらカガミがそういった。
「そうなるね、でもできればあんたとはもう会いたくなかったけど」
「なんで」
 驚いたようにカガミが聞き返してくる。
 私は制服の襟元に窮屈さを感じて、少し弛めた。
「あんただってそうじゃないの」
「そう?」
「私たちともう会いたくなかった、ってこと」
 カガミは小さく「え」ともらすと。
「そんなことないよミヤビちゃん。わたしはミヤビちゃんに会いたかったよ」
 会いたかった……?
 信じられない、私が、私たちがカガミにしたことを考えるとそんな言葉信じられなかった。
 カガミは笑顔のまま言葉を続ける。
「わたしミヤビちゃんのこと好きだよ。1人でね、えっちなことする時、いつもいつもミヤ
ビちゃんのこと考えてる。それくらい好き。愛してるっていってもいいくらいだよ」
「……なにいってんのよ」
 私は頭を振った。
 唐突にカガミが言い出した言葉に思考が追いついていなかった。
「だからねミヤビちゃんに会いたくて会いたくて、ずーっと会いたいって思ってたんだ」
「……ああ、そう」
 カガミはずいっと身体を乗り出してくると、キスできそうなほどの至近距離で、まるで愛
の言葉を囁くようにいった。
「これからも会えない?」
「え?」
 カガミから柑橘系の香水の匂いがした。

46 :
「昔のことは忘れて、お友達からはじめれないかなって」
 駄目だ、本気で理解できない、なにもかも。
「昔のこと忘れてって、そんなことできるのあんた」
「できるよ」
 こともなげにカガミは答えた。
「でも、私、あんたに酷いこと一杯したでしょ。蹴ったり殴ったり、酷いこといったり」
 カガミはにやりと笑うと、私の言葉を遮っていった。
「えっちなことしたり、ね」
「――ッ!」
 絶句する私を見てカガミが笑みを深める。
 カガミは立ち上がると私の隣の椅子に座り、まるで抱きつくようにもたれかかってきた。
「忘れることはできるけど、でもね、今はまだ忘れてないよ。瑛子にされたこと、紺にされ
たこと、椎にされたこと、それにミヤビちゃんにされたこと。全部全部憶えてるよ」
「な、なら、無理でしょ。友達になるなんて」
「ふふ、そうだね」
 カガミは笑いながら私の手をとった。
 私は抵抗することすらできず、カガミのされるがままになってしまっていた。
 掴まれた手はカガミのスカートの中に導かれ、そしてカガミの陰部にあてがわれたのが」
分かった。
「イジメられてたのなんて、半年くらいの期間でしかなかったけどね。でも、それでも、そ
の間されたことのせいで、ほら」
 カガミは私の指を自らの陰部の中に押し込んだ。
「こんな簡単に入っちゃうようになった」
「や……」
 指先にカガミの温かさを感じる、きゅうきゅうと締め付けてくるその穴の感触。引き抜け、
逃げろと私の本能がいっているが、なぜかできなかった。
 逃げないといけないのはわかっていた。カガミの言動は、行動は、なにもかもがおかしか
った――いや、私たちがおかしくしてしまったんだ。そんなヤツに関わっていたらろくなこ
とがない。
 分かっている。
 分かっているはずなのに、私は抵抗すらできなかった。
 あの頃のように暴力で突き飛ばし、酷い言葉でカガミを傷つけ、この場から立ち去ったほ
うがいい。
 分かっている。
 分かっているのに、何故か私はあの頃のカガミのように、与えられる嗜虐的な行為に身を
任せることしかできなかった。
「ミヤビちゃんの触っていい? いいよね」
 カガミはそういうと、私の返事など聞かずスカートの中に手を入れた。
 カガミの手は最初下着の上から私の陰部を撫でまわし、愛でるように緩やかに、自然な動
きでパンツをずらすと直接触れた。
「ふふ、まだ生えてきてないんだ」
 笑い声。
 私は今にも泣きそうな顔でうつむいていることしかできない。
「あの頃から気になってたんだ、ミヤビちゃん陰毛はえてないよね。剃ってるのかとおもっ
たけど、こんなパイパンにはしないだろうし。ふふふ、子供みたいにつるつるだね」
「やだ、そんなこといわないで……」
 誰か、誰かこの控え室に来てくれないだろうか。そうすればこの頭のおかしい変態女も行
為をやめるはずだ。
 私の期待とは裏腹に誰かが来る気配は一向になかった。
 カガミの指は割れ目をゆっくりと何度もなぞるように擦り続けている。

47 :
「ほら、全然指はいらないでしょ。っていうか、ほんと全然開いてくれないなあ」
 カガミは苦笑すると「ああ、もしかして」と呟いた。
「ミヤビちゃんてまだ処女なの?」
「――ッ!」
 その言葉に顔がどんどんと紅潮していくのがわかった。
 視界の隅に見えるカガミの口端が、愉悦に満ちた笑みをこぼすのがみえて、私は思わず目
を閉じてしまった。
 もう、なにもかも見ていたくなかった。
「そうなんだ」
 カガミの嬉しそうな声が聞こえた。
「だったら優しくしてあげるね。うん、ほら指いれるよ」
 その言葉の直後、私は股間に今まで感じたことのない感覚を憶えた。
 自分の中に何かがはいってきている感覚、背筋を寒気にも似た電流がほとばしった。
「ひ……ぃやぁ……」
「大丈夫だよ、私なんて最初は、ふふ、憶えてる? ミヤビちゃんたちわたしのマンコにさ、
モップの柄入れたよね。あれすっごい痛かったんだよ」
 そんなことしただろうか。
 記憶にない、ただ私たちは確かにカガミの身体をオモチャのように扱っていた。
「ミヤビちゃんも、そうされたい?」
「いやっ!」
 即座に応えた。
 あんな、自分たちがしたことだというのに、カガミが受けた仕打ちを受けなければならな
くなったら、私は気が狂ってしまう。
「だよね、じゃあやさしくしてあげる」
 そういってカガミは私の頬にキスをした。
 カガミの指は私の膣を内側から撫で続けていた。
 このままカガミに犯されてしまうんだろうか、そう思った時だった。
「悪いけど、ミヤビはあんたには関わりたくないそうだよ」
 斎場の方から椎がやってきてそういった。
「椎……」
 カガミは小さい声で相手の名前を呼ぶと、私から離れた。
「邪魔しないでよ、いいところだったのに」
「いいから喋ってないで消えろ」
 椎はいつになく厳しい言葉でそういうと、カガミの近くまできてその胸倉を掴み、強引に
立たせた。
「うざいんだよ。いつまでも私とミヤビの前、うろうろすんな」
 そういうとかつてのようにカガミのお腹に蹴りをいれた。
「ぐっ……けほっ、くっ、変わらないのね。あなたは」
「喋るなっていったろ」
 再度カガミのお腹に蹴りをいれた。
 カガミは椎の手を強引に振りほどくと、
「ミヤビちゃん、また会おうね」
 そういって逃げるように立ち去っていった。
 カガミの姿が見えなくなってはじめて、私は頬に熱いものを感じた。
 最初それがなにか分からなかったが、指で触ってみると、それはどうやら涙のようだった。
「ミヤビ? 大丈夫? あいつになにされたの?」
 椎が私の身体を庇うように抱いてくれた。
 私はそれにすがるように抱きつき、声を押しして泣いてしまった。
 私に泣く資格なんてないのかもしれない、私が今までカガミにしてきたことを考えれば、
これは報いだといえるのかもしれない。
 なのに、涙が止まらなかった。

48 :
 怖かった。
 された行為のせいではなく、私がおかしくしてしまった少女のあの変わりようが怖かった。
 イジメられていた時のカガミはいつも怯えていた。
 それ以前のカガミは明るかった。
 今のカガミはそのどちらでもないおかしさが声に、行動に滲んでいた。
 カガミを狂わせてしまったのが自分かと思うと、涙がでた。理由は分からなかった、カガ
ミが可哀想だと思ったのかもしれない、自分たちのかつての行いの恐ろしさに今更恐怖して
しまったのかもしれない。
 ただ、何故か、涙はとまってくれなかった。
 
 
***
 
 
 瑛子のから1週間が経過していた。
 あの日から、瑛子の葬儀から私は一度も学校に行っていなかった。
 ニュースをみれば瑛子のについて、偉い人がなにか語っていた。どうやら瑛子は高校で
はイジメられる側だったようだ。
 それも私たちがカガミをイジメていた時と違い、クラス全体から酷い目にあわされていた
らしい。
 瑛子のクラスメイトの誰かが、すりガラス越しにテレビ出演して語っていた。
『まあこういったらなんですけど、暇つぶしですよね。からかい半分というか、だって杉山
のヤツなんでかわかんないけど、なにされても抵抗しなかったし。……え? 性的なこと、
ですか? ああ、まあそういうこともしてるヤツもいたんじゃないんですかね。自習のとき
とか裸にされてましたから』
 そこまで聞いて、私はテレビを消した。
 あの気が強い瑛子が抵抗しなかったっていうのは考えられなかった――いや、考えたくな
かった。瑛子が無抵抗になってしまう理由は心当たりがあった。
 瑛子はカガミと同じクラスだった。
 イジメる側とイジメられる側。
 それがどういうことか逆転してしまったんだ。
 そして瑛子はかつて自分がしていた行為を思い出して抵抗できなくなっていたんだ、自分
の罪に気づかされて。
 だけど、イジメに罪はあっても、罰はあるんだろうか?
 イジメている最中にしてしまったら人罪が適用されるだろうし、イジメられていた側
がしたらなんらかの罰は与えられるのかもしれない。
 だけど、瑛子みたいにそういったことをされていても、黙したまま自を選んでしまった
ら、瑛子をイジメていた連中の罪は、罰は、責任はどうなってしまうんだろう。
 消えてしまうんだろうか?
 なくなってしまうんだろうか?
 被害者がんでしまったら、その罪はどこにいくのだろう。
 でも、私の場合、被害者であるカガミは生きている。
 彼女がかつて私にされたことを告白したら、私はどんな報いを受けるのだろう。
 いや、もしかしたらカガミはもう考えているのかもしれない、私に対して与える報いを。
残酷なまでに/酷薄なまでに/無邪気なまでにカガミのことを弄んだ私への罰を、カガミは
既に考えているのかもしれない。
 もしタイムマシンがあったとしたら、あの暗黒のようだった中学時代に帰りたい。帰って、
そしてカガミへのイジメをやめさせたい。
 私は、本当は、あんなことしたくなかった。そう、瑛子たちからはぶられるのが怖かった
から。こんなこと辞めようといって、そのせいで自分がイジメられる側にまわったらやだっ
たからやっていただけで。そう、私は、あんなこと……。

49 :
「……さいてい」
 自分の思考に呆れてしまった。
 こうなってまで、今更あの頃の自分を弁護しようとするなんて。くだらない、ほんと、最
低だ。
 なんで自分はこうなんだろう。
 もっと自分の意思が強ければ、今とは違った今があったかもしれないのに。
 なんで自分はこうなんだろう。
 終わってしまってから後悔する、手遅れになってから悔やんでしまう。もう瑛子はんで
しまった、生き返ることなんてありえないのに。
 なんで自分はこうなんだろう。
 今更後悔するくらいなら/やらなければよかったと思うくらいなら/やらなかったと思う
くらいなら。
 繰り返す。繰り返す。くるくると堂々巡りを繰り返す。
 後悔している自分/ああすればよかったという自分/冷静に過去を評価する――でも、今
更だ、手遅れだ、どうしようもない、もう瑛子はんだんだ。
 瑛子はんだ。
 もう戻ってこない。
 イジメられていた瑛子はを選んだ。
「ああ、そうか……」
 あの頃、カガミがんでいた可能性だってあったんだ。
 私たちにイジメられるのが苦痛で、自を選んでいた可能性だってあったんだ。
 それに私たちの行為のせいでんでいた可能性だってあるんだ。
 ワールドカップがやっていた、熱中していた私たちはサッカーの練習だといって、カガミ
を裸にしてボール代わりにした。
 フリーキックの練習としてカガミの股に何発も蹴りを叩き込んだ。
 蹴るたびに悲鳴をあげるカガミが面白かった、うざかった、だからパンツとか靴下を詰め
込んでガムテープで封をした。
「……ひどい」
 公園の男子トイレに裸のカガミをM字開脚で縛りつけ、その体中に「1回100円」とか
「犯してください」とか「人間便所」とか書いて放置した。
 5時間暮らして見に行ったら、本当に犯されたみたいで男の精液にまみれてて笑ってしま
った。解いてやったら、尻の穴から100円玉を何個も排泄した瞬間爆笑した。
「……」
 これだけじゃない。
 もっといろんなことをした、もっと酷いこともした。
「そりゃおかしくなるよ、だって、だって、そんなことされたらおかしくなるよ。当然だ、
おかしくしたんだ、私たちが……」
 思考の海はただただ広く、後悔という暗黒で埋め尽くされていた。私はその中にどんどん
と埋没していき深度を増していっていた。
 その時だった。
 携帯電話の着信音が鳴った。
 またクラスの誰かが不登校になった私を心配してかけてくれたのだろう、そう思って開い
てみると、そこには――。
「紺」
 瑛子がんだ日に少し話しただけで、それ以来連絡をとっていなかった紺からの電話だっ
た。
 私は慌てて着信ボタンを押していた。
「紺、どうしたの?」
 すると荒れた息遣いが電話の向こうから聞こえてきた。
『あ、ミヤビ、よかった出てくれて』

50 :
「え、うん」
『それでさ困ってることあるんだけど、助けて欲しいんだ』
「うん、うんうん。なに」
『今ね、ちょっと追われてて』
「追われてる? 誰に」
『よく分かんないけどカガミの仲間っぽい』
「どういうこと?」
 カガミの仲間って、クラスメイトのことだろうか。
『あたしもよく知んないんだけど、アイツ今やばい連中とつるんでるみたいでさ。ほんと、
おかしいよアイツら。地下鉄乗ってたら囲まれてさ、その場で犯されそうになった。周りの
人に助けてもらわなかったらやばかったわ』
「そんな……」
『だからさ、めーわくだろうけど。ちょっと匿って欲しいんだ、こんなことお願いできるの。
あの頃つるんでたアンタくらいしかいないし。お願い』
「それはいいけど、うちまで来れる?」
 紺が私の家にまで来たことは一度もなかった。
 紺はしばらく考えると、
『じゃあ、中学の近くにあった公園あるっしょ、あそこのトイレに隠れてるから。そこまで
来てくれる?』
「うん、分かった。いま直ぐ行くね」
 そういうと紺は安心したのか。
「あんがと」
 ぶっきらぼうに礼を言った。
 電話を切ると私は直ぐに行動に移っていた。
 
 
***
 
 
 家から指定された場所までは10分とかからないのだが、寝巻きから着替えたせいで、指
定された場所についたのは電話があってから15分ほど経過していた。
 私は紺が待っているトイレまで行って、なにか嫌な予感がした。
 いや、予感などではなく、聞こえたのだ、声が――。
「……紺?」
 その声はトイレから10メートルも離れていてもはっきりと聞こえた。
 それは男たちががやがやと何かをいう声であり、それらの中に混ざって聞き覚えのある少
女の叫び声が聞こえた。
 それは声というにはあまりにも意味を成していなくて、まるで獣の慟哭のようですらあっ
た。
『逃げろ』と本能が言っていた。
 冷静に考えても逃げるべきだと分かっていた。
 だけれど、私は確かめたかった――紺がどんな目にあわされているか、を。
 私はゆっくりとゆっくりとトイレに近寄っていくと、女子トイレの中に幾人もの男たちが
いるのが見えた。
 男たちは衣服はきていたが、その下半身、陰茎だけは外に出していた。男の性器、その醜
悪さに嫌悪感を感じた。
 男たちは口々に「早くしろよ」「気持ちいい」「よがりすぎだろコイツ」とか言っていた。
 私は中で何が行われているか、もう理解できたというのに、その場から離れず、逃げずに。
それどころか自分から声をかけた。
「なに、してるんですか?」

51 :
 すると、男たちの視線が私に集まった。
「なにって……へへっ」
 男の1人が笑って答えた。
「みせてやりゃいいよ」
 別な誰かがいった。
「そうだ、見せて。まぜてあげようぜ」
 また別な誰かがいった。
「だってよ、ほらはいれ」
 最初の男に手を引かれトイレの中に引き込まれた。
 その中に紺はいて、私の予想したとおりの状態になっていた。
 紺は衣服を着ておらず、あちこちに擦り傷や打撲ができていた。顔も殴られたのか頬が青
黒く変色していた。
 紺は2人の男に挟まれていた。
 前の穴、後ろの穴、両方が塞がれていた。
 紺の足は地面についておらず、挟まれた状態で、何度も何度も突き上げられていた。
 その顔は涙だろうか精液だろうか、よく分からないが酷く濡れていたし。紺の口はだらし
なく開けられていて、嗚咽と一緒に涎がだらだらとたれていた。目は焦点を失っているよう
だった。
 私は、紺を見た瞬間「汚いな」って冷静に思ってしまった。
 友達だというのに、私は、
「へへへ、いい状態だろ。一発でこれだからな」
 振り返ると、男の手に注射器が握られていた。
 改めて紺の腕をみると、注射を射したあとなのだろう傷ができていて、そこから血がこぼ
れていた。
 男たちは私の身体をまさぐり始めた。
 だが私の目は紺に注目したまま、動かなかった。
 挟んでいた2人が果てたのか、両方の穴から白濁した液体が溢れた。
 2人は陰茎を抜くと、紺は床に落下した「ぐぎゃっ」と紺は変な声をだした。
「ニンシンしねーよーにしねーとなー」
 先ほどまで突いていた男はそういうと、ブーツの踵で紺の下腹部を思い切り踏みつけた。
 そのたび紺は蛙のような悲鳴をあげ、陰部から精液が溢れた。
 白目をむき床の上で痙攣する紺の姿に、私は私もこうされるのかと妙に冷静な気分でそう
思った。
 だが――

52 :
「ちょっとストップ、その子には手を出したら駄目よ」
 男たちの輪の外から少女の声がした。
 その声には聞き覚えがあった。
「……カガミ」
 すると男たちはいっせいに私から手を引いていった。
 カガミは私に近づいてくると、乱れた着衣を直しながら私にいった。
「よかったミヤビちゃん家にいないから探したんだよ」
「カガミ、これ……紺が……」
 カガミは天使のような笑みで答えた。
「ああ、このビッチのこと? こいつお金もらって体売ってるでしょ、なんでかと思ったら
母親の入院費払うためなんだってね。かわいそー。だから、一気にそれ払えるように、この
人たちに売ってあげたの」
 すると男の1人が笑った。
「売ったつわれても、俺たちもあんたにかわれてるだけなんだがな」
「まあいいじゃない、あなたたちにも、惨めな家庭にもお金はいるんだし」
 そういうと下卑た笑いが起きた。
 何故笑うんだろう、そんなにおかしいことなんだろうか。
 カガミは直し終わったのか満足げに頷くと、私から手を離し、紺のそばに寄った。
「かわいそうなかわいそうな紺、本当にかわいそうよね。お母さんの身体のために、自分の
身体売ってるんだから、健気でかわいそう」
 そういってカガミは紺の下腹部を踏みつけた。
「だからがんばって稼がないとね。がんばって、がんばって、お金稼がないと。ふふふ、あ
んた貧乏なんだから。がんばって体売らないとんじゃうもんね。ほんと――」
 カガミの顔には狂気にも似た笑顔が浮かんでいた。
「かわいそう」
 カガミは紺の顔を蹴りつけると、満足したように息をはいた。
 そして私のほうを振り返ると、
「さあ、いこっかミヤビちゃん」
「いくって、どこに?」
 カガミは笑って言った。
「わたしとミヤビちゃん、2人だけの場所」
 
 
つづく
 
 
 
***
 
次の投稿で終わりになります

53 :
マヂで怖くてチンコ起たない俺がいる…

54 :
俺は結構好きだぞw

55 :
なんちゅうもんを見せてくれたんや…(AA略
鬼畜百合とか俺得すぎるわ

56 :
チンコは立たないし怖いのに読みふけってしまった

57 :
>>52からの続きとなります。
改めて注意書き。
百合、暴力的な描写あり、血の描写あり
後半、クランチ文体で書いた部分が多く、若干読みにくいかもしれません。
 
ということで全20レスです。投下します

58 :
 ――まさか、あんなにも簡単に壊れてしまうものだと思っていなかった。
 その日、教室では断髪式が執り行われていた。――行われていたなんて白々しい、行って
いた、だ。わたしが計画し、実行に移した。
 そうわたしが主催で行われた杉山瑛子の断髪式は、今現在つつがなく進行していた。
 制服を脱がされた瑛子は、並べられた机の上に仰向けで寝かされて縛り付けられている。
 本当なら一切の抵抗もなく進行したかったのだが、髪を切るといったら瑛子は狂ったかの
ように抵抗を始めたのだ。だから仕方なく縛り上げた。
 鍵がかけられた教室の中、クラスメイト34名が粛々と瑛子の髪にハサミをいれていく様
子は、なかなかに壮観だった。
 腰ほどまで髪を伸ばしてあった髪も、既にボブカット程度の短さになっている。
 最初の内は半狂乱になって泣き喚いて、みんなを愉しませてくれた瑛子だというのに。今
ではぐったりとしてめそめそと涙をこぼすばかりでつまらなかった。
 女子たちは飽きてしまったらしくそれぞれで輪を作ってひそひそと話している。
 男子たちはわたしの許可が下りたのをいいことに、瑛子の使い古されたマンコに突っ込ん
で喜んでいる。
 わたしはそんな様子を眺めた後、主賓である瑛子に声をかけた。
「瑛子、生きてる?」
 わたしの声に瑛子の目が意思を取り戻し、はっきりと焦点を結ぶと、わたしのことを睨み
つけた。
 そして掠れ掠れの気色悪い声でいった。
「……ゆる、ざない……カガミ……おまえ、ね……」
「はいはい、聞き飽きたよそんな言葉はさ」
 許さない。
 なんていわれても、わたしは許しを請おうなんて思ってないのだけれど。瑛子にはわたし
がかつてのままの姿で見えているんだろうか。臆病で弱弱しくどうにもされるがままだった
わたしに。
 それに大体これは復讐であって、別にわたしから始めたことじゃない。
 わたしはすっかり短くなった瑛子の髪を弄りながら、話を続けた。
「瑛子、髪の毛大事だったんだよね。うん、大事なもの傷つけられたら嫌だよね、分かるよ
その気持ち。だってわたしも大事なものいっぱいいっぱい傷つけられたし、奪われたもの。
もうわたしに残ってるものなんてないんじゃないかって思うくらいにさ、そこまでやられた
んだよ、やったんだよ、瑛子たちは。酷いと思わない?」
 わたしが瑛子に行っているイジメはクラス全体で行っているものだったが、瑛子たち四人
にやられたことに比べたらまだまだ甘く感じられた。
 というか、瑛子たちみたく人の性器にモップ突っ込んだり/公園のトイレに縛り付けて放
置したり/地下鉄の車内でおしっこしろとか要求したり/身体を売ったり/足縛った状態で
プールに放り込んだり/口の中に虫を放り込んでガムテープで封をしたり/尿を飲ませたり
――正直、ああいったことを思いつける瑛子たちは、頭が狂っていたとしか思えない。ああ、
そういえば瑛子のうんこを直で食べさせられたこともあった。
 あれと同じことを瑛子にやったら、瑛子はどうなるんだろう、とても興味深かった。
 でもわたしはあんなことはしたくなかった。
 できれば、できることならば瑛子たちには正気を保ち続けて欲しかった。ずっとずっと冷
静でまともな思考を、判断力を失わないで欲しかった。
 だってそうじゃなかったら、こういった仕打ちを受けたときに泣いてくれない、叫んでく
れない、抵抗してくれない。
 だからわたしは瑛子を狂わせない。
 狂わせないまま犯していく、瑛子の肉体を/精神を/瑛子の全てを/杉山瑛子という存在
全てを犯し/侵し/冒し/陵辱し尽してやることに決めていた。
「瑛子、安心していいよ。今日はもうこれ以上ひどいことしないから、今日はもう男子たち
が飽きるまで肉便器になってるだけでいいからね。よかったね瑛子、うんことかおしっこ大
好きな瑛子だったら嬉しいよね、便器になれたこと。今度わたしのうんこ食べさせてあげる
から、待っててね」

59 :
 わたしがそういっても瑛子はもうなにも答えてくれなかった。
 つまらない。
 わたしが見たいのは狂ったように泣き喚いて、わたしに許しを乞う姿だっていうのに、こ
んなのつまらない。
 これはまだ瑛子には余裕があるということだろうか、こんな反抗的な態度。だとしたらもっ
と酷い仕打ちを、気が狂うんじゃないかと思えるような仕打ちを、瑛子に与えてもいいんじ
ゃないだろうか?
 ――だけれど、試すことはできなかった。
 瑛子は断髪式が行われたその日、わたしたちが帰った後、瑛子は学校の屋上から飛び降り
てんでしまった。
 つまらない。
 んだときいてわたしは直ぐに学校へ向かったが、瑛子の体はどこにもなく、警察官や
マスコミがうろうろしているだけで、校舎に入ることすらできなかった。
 葬儀にいけば瑛子の体がみれるんじゃないかと思っていったが、棺の中が空だと聞いて
がっかりした。
 一応塩を持参していたのだが、瑛子の体に投げつけて。
『中学時代、あんたにイジメられてたけど、んでくれてせいせいしたわ!』
 と決め台詞を言おうと思っていたのに、ほんとつまらない。
 しかし、葬儀に参列した意味はあった。
 ミヤビちゃん。
 彼女と再会できたことは僥倖だった。
 本当は紺と椎をしてから、再会しようと思っていたのだけれど、偶然とはいえ会ってし
まった。
 ミヤビちゃんはあの頃と変わっていなかった。
 いつも何かに怯えていて、強い力に従属してしまう無垢な子羊。
 それが確認できただけでよかった、それにミヤビちゃんの膣のきつさは毎夜毎夜思い出し
てしまうほどに鮮烈で初々しく好意を抱いてしまえるほどだった。
 早くミヤビちゃんが欲しかった。
 ミヤビちゃんと2人だけの世界に逃げ込みたかった。
 だけれど、まだやることがある――邪魔者の排除。
 紺と椎の2人を瑛子と同じ場所に送り込んでからじゃないと、安心して眠ることはできな
かった。
 紺をす計画は容易く建てることができた。
 女に飢えていて暴力を振るうことに餓えている男たちを雇い、彼らにレイプさせ、して
もらう。
 そういった暴力装置ともいうべき男たちの存在は、幼い頃から父のそばをよくうろうろし
ていたから知っていた。
 父のことをただの会社の社長だと思っていたが、その会社がなんらかの会社のダミー企業
で、実体がなく。当然、父は社長でもなんでもなく、ただ名義を貸しているだけの暴力団の
構成員だと知った時、驚きはしたが利用はできると思った。
 父の部下たちには暴力でしか物事の解決手段を知らず、常に暴力を振るいたがっているも
のたちと交流があるものがいた。
 そこから依頼をし、紺を侵し尽くした上でしてもらうことにした。
 男たちは刑務所に入ることを勲章だと思い、厭わないような男たちだった。
 そうして紺をす手段と計画が出来上がったところで、ひとつの懸念があった。
 ミヤビちゃんのことだ。
 彼女は弱い、ひどく弱い。弱いからこそ、瑛子のについて警察に口添えしにいってしま
うんじゃないだろうか、そうなってはわたしの行動範囲が狭まってしまう。
 手を打たなければと思い、計画を前倒ししてミヤビちゃんを拉致することにした――のだ
が、ミヤビちゃんは家にも学校にもおらず、どこを探したものかと困ってしまった。

60 :
 椎の家かと思ったがそこにもおらず、もしやどこかへと逃げてしまったんじゃないだろう
かとも思ったが、意外な場所で発見することができた。
 
 
「ちょっとストップ、その子には手を出したら駄目よ」
 紺をレイプする男たちの輪の中にミヤビちゃんはいた。
「……カガミ」
 か細い声でわたしの名前を呼んだ。
 わたしは男たちを掻き分け、ミヤビちゃんの傍までいくと乱れた着衣を直してあげた。
「よかったミヤビちゃん家にいないから探したんだよ」
「カガミ、これ……紺が……」
 震えるような声、なんて弱弱しく儚いんだろう。今この場でミヤビちゃんのことを侵した
かったが、男たちの前でミヤビちゃんの柔肌を晒したくなかったから堪えた。
「ああ、このビッチのこと? こいつお金もらって体売ってるでしょ、なんでかと思ったら
母親の入院費払うためなんだってね。かわいそー。だから、一気にそれ払えるように、この
人たちに売ってあげたの」
 すると男の1人が笑った。
「売ったつわれても、俺たちもあんたにかわれてるだけなんだがな」
「まあいいじゃない、あなたたちにも、惨めな家庭にもお金はいるんだし」
 そういうと下卑た笑いが起きた。
 衣服を整え終わると、わたしは紺に別れの挨拶をすることにした。
 もう、これで生きている紺とあうことはない。
「かわいそうなかわいそうな紺、本当にかわいそうよね。お母さんの身体のために、自分の
身体売ってるんだから、健気でかわいそう」
 そういって紺の下腹部を踏みつけてあげた。
「だからがんばって稼がないとね。がんばって、がんばって、お金稼がないと。ふふふ、あ
んた貧乏なんだから。がんばって体売らないとんじゃうもんね。ほんとかわいそう」
 紺の顔を蹴りつけると、紺は豚のように鳴いた。
 それが可笑しくて可笑しくて、もっといっぱい蹴りたかったけど我慢した。
「さあ、いこっかミヤビちゃん」
「いくって、どこに?」
 不思議そうに聞き返すミヤビちゃんに、わたしは応えた。
「わたしとミヤビちゃん、2人だけの場所」
 
 
***
 
 
 ――私に与えられたのは白い部屋と白い服と白いベッド。
 家具はほとんどなく、四方を白い壁に囲われた部屋のなかにあるのは、私と粗末なつくり
のベッドだけだった。
 時計はなく窓もない、どこからも音が聞こえてこないせいで時間が進んでいるのかどうか
分からなくなってくる・
 心臓に手をあて、その鼓動を聞いて確認してみる。
 規則正しく一定のリズムを刻む、まるでカウントダウンのような私の音。
 その音で私は私がまだ生きているのだということが分かる、だけれどそうして自分の音を
聞いていると、それはそれで頭が狂ってしまいそうだと思った。
 一日のうちこの部屋から出られるのは一度だけ、お風呂でカガミに身体を洗われる時だけ
で、それ以外の時間はずっとずっとこの部屋に閉じ込められたまま。
 トイレがしたくなったらカガミを呼んで、おまるを持ってきてもらってそこでさせられる。
排泄した後の汚れた部分はカガミが丁寧に拭く。

61 :
 おかしくなりそうだった。
 基本的にカガミは一日中いてくれるのだが、時折どこかへでかけ、険しい顔をして帰って
くる。
 だがカガミは私をみると笑顔をみせる。
 カガミは私といる間、私と触れ合っていることを望む。肩を寄せ合って座ったり、手を繋
いでいたり、膝枕を要求してきたり、ただ触れていることを望む。監禁されはじめてから今
日まで、いかがわしい行為をされたことはなかった。
 それに紺のように複数の男たちに囲ませ蹂躙させるようなこともなかった。
 カガミにとって私はなんなんだろう、この行為の意味はなんなんだろう。聞いてみたくは
あったが、聞いてしまったら一生この白い部屋から抜け出すことができなくなりそうで、恐
ろしくて聞けなかった。
 閉じ込められた最初のうちは、絶望と恐怖だけがあったが。こうして幾重も無為な日々を
繰り返していくうちに、私の心は少しずつ鈍化していっているような気がする。
 まず時間の感覚が失われ、次に外への興味が薄くなっていき、そしてあれほど恐ろしく憎
く思っていたはずのカガミへの感情が変わってきていた。
 今ではこうしておとなしくしていたら、いつかはカガミが私のことを許してくれて、ここ
から出してくれるんじゃないか、そう思えた。
 その日もカガミはやさしかった。
 どこかへと外出していたカガミは、トレーに2人分の食事を載せてもってきた。
「ただいま」
 笑顔でいうカガミ。
「おかえりなさい」
 私も笑顔で応える。
 この真っ白い空間での日々はとても静かで落ち着いていて優しいものだ。
 怖いことは起きないし/痛い思いをしなくてすむ/誰かを憎むことも/誰かから嫌われる
こともない/なにもないへや。
 今日のごはんは温かいシチューと切り分けられたフランスパンだった。
「お口あーんして」
 カガミの言葉に、私は素直に従う。
 カガミは木製のスプーンでシチューをすくい、ふーふーと息で冷ましてから、私に食べさ
せてくれた。
 ぬるくなったシチューが私の舌に乗り、その濃厚な味を口いっぱいに広げていく。私は少
しの間その味を堪能してから、嚥下した。
 するとカガミがくすくすと笑った。
 どうしたんだろう?
「やだ、ミヤビちゃんたら、こぼしちゃって」
 そういってカガミは身を乗り出してくると、舌先で私の口はしについたシチューを舐め取
った。
「……ごめん」
 なんとなく謝ってしまう。
 カガミは「気にしないで」と笑みをみせた。
 そうしてゆっくりと食事は進み、食べ終わる頃にはシチューは冷めてしまっていたが、そ
れでも2人で食べる食事は楽しかった。
 食事のあと食器を片付けてきたカガミは、私のためにドレスを買ってきたといった。
 そのドレスはこの部屋のように純白で、なににも汚されておらず、まるでウエディングド
レスのようだ。
「着てみて」
 カガミの要求に、私は
「着せて」
 と短く要求した。

62 :
 するとカガミは困ったように頬をかき、しかし、決意したように頷くと「わかった」とい
った。
 カガミはまず私の衣服を脱がしはじめた。
 この部屋に入ったときに与えられたこの純白のワンピースは、とても着心地がよかった。
 下着も、今まで私が着けていたようなものとは比べられないような質感のもので、窮屈さ
も履き心地の悪さも感じない。
 カガミは下着姿になった私の身体をみて、すこし息を吐いた。
「どうしたの?」
「え」
 カガミは照れたように笑い。
「いや、その、いつみてもミヤビちゃんはスタイルいいなあって思って」
 そうだろうか?
 この部屋にはいって幾分か体重と筋肉が落ちたのは間違いないだろうが。
 カガミは更に言葉を続けた。
「わたしはさ、ガリガリで貧相だけど。ミヤビちゃんの身体ってほんと女の子って感じで、
みててうらやましくて」
 それへ私は、
「でも、この身体ももうあなたのモノでしょ、カガミ」
 淡々と応えた。
 それは喩えでも冗談でも嫌味でもなく、紛れもなく事実だった。もう既に私の身体はカガ
ミの所有物でしかない。
 しかしカガミはその答えをどう受け取ったのか、嬉しそうに顔を紅潮させた。
「な、なにいってるの。そんな、いきなり、恥ずかしいこといわないで」
 言いながらもカガミの表情や声は不快そうではなく、楽しそうだった。だから私はなにも
いわず、ただ微笑んだ。
 カガミはその後は黙々と私の身体にそのドレスをまとわせていくことに執心し、10分ほ
どだろうか――時間の感覚がわからない――悪戦苦闘しながらも着せてくれた。
 それはまさしくウエディングドレスのようだった。
 白く穢れのない生地、幾多のフリルで飾り付けられたドレス。
 カガミはしばらく私の姿を惚けたように眺めていた。
 私はふと思いついたことを口走った。
「結婚式しようか」
「え、結婚式?」
「うん、私とカガミの、2人の結婚式」
 自分でいって馬鹿みたいだと思ったけれど、カガミの食いつきはよかった。
「そんな、わたしもミヤビちゃんも女の子だよ。女の子同士なのに」
「別にそんなこといいじゃない」
「でも、でも、だってどっちが花嫁でどっちが花婿になるんだろ、とか」
 そこまで考えてなかった。
 普通に考えたらウエディングドレスを着ている私のほうが花嫁なんだろうが。
「2人とも花嫁。ってことでいいんじゃないかな」
 そういって笑ってみせた。
 カガミは一瞬だけ驚いたような表情をしたが、直ぐに相好を崩し、笑って頷いた。その目
元には涙が溜まっているようにみえた。
 その涙を見ていたら、自然と私の目からも涙がこぼれていた。
「あ、あれ……変だな……」
 手の甲でぐしぐしと涙を拭いた。
 カガミが不安そうにこちらを見ていたから、私は涙をこぼしながらも笑顔でカガミに向か
っていった。
「嬉しかったから……ごめん」

63 :
「謝らなくていいよ。でも、そんな喜んでくれるなんて、わたしも嬉しい」
 そういってカガミが抱きついてきた。
 私の目からは更に涙が溢れ出していく、止める方法が分からなかった。
 ――思った。
 私はいつになったらこの部屋から出れるんだろう。果たして出られる日は来るんだろうか。
もしかしたらそんな日は一生来ないんじゃないだろうか。
 この、カガミが作り上げたこの白く何もない部屋の中に、居続けなければならないんだろ
う……?
 この作り物の空間の中で、作り物の笑顔を浮かべて、偽りの言葉を並べて、いつまでカガ
ミの人形で居続けないといけないんだろう?
 そう思うと、涙が溢れ。一向に止まらなかった。
 
 
***
 
 
 その日は瑛子が風邪で休み、昼休みが終わる頃には紺は学校から姿を消していた。
 私と椎は瑛子から送られてきた1通のメールに、どうすべきか少し困ってしまっていた。
『アタシがいなくても ちゃんとカガミのことヨロシク』
「これって、私たち2人でカガミになんかしろってことよね?」
 メールの文章を見ながらいい、椎のほうをみた。
 椎は唇を尖らせ、「んー」と唸ってから、苦笑した。
「めんどくさいなぁ、もう」
「だよね」
 私と椎はあまりカガミをイジメることに乗り気ではなかった。
 瑛子や紺はそれぞれ元からカガミに対して思うところがあったようだが、私はただ瑛子た
ちに巻き込まれただけでしかない。
 そういえば椎はどうなんだろう?
 瑛子はカガミの整った容姿や、真っ直ぐな黒髪を羨んでいて。それを当然のように享受し
ていて、鼻にかける様子もないのが、逆に気に食わないのだといっていた。
 紺はカガミの家が裕福であることと、紺の家が貧しいことの差を妬んでいた。身体を売っ
て金を稼いでも、それ以上の金を親から小遣いとして与えられているのがむかつくと言って
いた。
 だが、椎には彼女たちのような理由がないように思えた。
「ん、私がカガミイジメに加わってる理由?」
 私の質問に椎は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの突然」
「いや、なんとなく気になってさ」
 椎は「ふうん」と気のない返事をすると、唇に指をあて少し唸ってから答えた。
「私がどれだけ勉強してもカガミに勝てないことがむかつく――まあ、瑛子たちと同じよう
なものよ。私が欲しいものを彼女は当然のような顔をして享受している。『なんで?』って
思っちゃうのよね、私が手に入れるためにこんなに努力しているのに、彼女はなんの努力も
せず手に入れることができるんだろーってさ」
「へー」
 少し意外だった。
 普段から苛立った様子を隠そうともしない瑛子たちと違って、温厚で落ち着いているよう
にみえる椎がそんな感情を抱えているだなんて。
 私がそんなことを考えていると。
「それをいうなら、貴女はどうなの」
「え」

64 :
「ミヤビのほうこそカガミイジメに加わる理由なくない?」
「それは……」
 私は本当のことを話すべきか悩み、とりあえず当たり障りのないことをいった。
「カガミのやつ、椎の分だけおみやげ買ってこなかったとか、むかつくじゃん。まあ、そう
いう」
「へえ」
 椎は口端を吊り上げて笑った。
 そうするとまるで獲物を見つけた肉食獣かのような獰猛さが、温厚な椎の横顔に宿るから
不思議だった。
「ミヤビってそんな友達思いだったんだ」
「え、あ、うん。そうだよ」
 自分から切り出した質問だというのに、椎の反応に居心地の悪さを感じてしまう。
 前から思っていたけど、椎は私たちに何かを隠しているような気がする。それはおそらく
ただの気のせいなんだろうけど、でもそう思ってしまう。
 椎は机を挟んだ向こう側から私の目を真っ直ぐに見続けたかと思うと、ふっと口端に笑み
を浮かべた。
「じゃあ、今日も元気にカガミのことイジメますか」
「え」
「ん、いやなの?」
「いやってわけじゃないけど……」
 そんな明るい調子でいうような事柄なのだろうか。
 椎はとても楽しそうに笑いながら言った。
「だってミヤビは友達思いなんでしょ? だったら、おみやげもらえなくて可哀想な私のた
めに、一緒にカガミのことイジメようよ」
 そういうのは友達思いというんだろうか?
 そもそも私にとって、私たちにとって、椎たちにとって、カガミは友達だったんじゃない
のか?
 だが私は一切なにも言葉にせず。
 椎の言葉に頷いてしまった。
 
 
「……うっ」
 まぶたを開くと、白い天井がみえた。
 その白さが眩しくて視線をそらすと、カガミの顔が横にあって驚いてしまった。
 だが直ぐに、ここに来てから毎晩カガミと寝ていることを思い出し、身体から緊張を解い
た。
 しかし、
「また、か……」
 カガミに捕らえられてからというもの、私は毎晩のように夢をみるようになった。
 それがもし幸福な夢だったとしたら、私はどれだけ救われただろうか。それが眠りの中だ
けの虚構の救いだったとしても、今の私には十分すぎる救いとなってくれただろう。
 ――だが、実際には、私がみる夢はかつてカガミをイジメていた頃の記憶。
 カガミに与えた暴力や罵詈雑言の数々が、私の夢の中で再生される。
 その行為の酷薄さに目を背けたくなっても、そうすることができなかった。まるで私の無
意識が、カガミをイジメていたことを悔いるように求めているかのようだった。
 もし本当にそうなのだとしたら、もうこんな夢みせないでほしい。
 私は後悔している。
 私は懺悔している。
 私はかつての自らの行為が酷いものだったと理解しているし、謝罪や償いはいくらだって
するつもりでいる。

65 :
さるさけ

66 :
 だから、だから、もうこんな夢みせないで欲しい――。
「……どうしたのミヤビちゃん」
 不意に声をかけられて気がついた。
 寝ていたはずのカガミが、いつ起きたのか目を開き、不安そうな表情で私のことをみてい
た。
 私は穏やかな、そうこの部屋に相応しい、不快なことも/苦しいことも/悲しいことも/
嫌なことも/辛いことも――そうした全ての感情から隔絶されたこの部屋に相応しい虚無の
笑みを浮かべ。
「なんでもないよ」
 そうやさしくいった。その声が掠れていたことに、自分で驚いてしまった。
「ほんと、なんでもないから」
 繰り返しそういった。
「うそ」
 カガミは私の言葉に被せるようにいった。
「うそだよ」
「うそじゃない、なんでもない、なんでもないの」
「……だってミヤビちゃん、泣いてる」
「え?」
 カガミの細い指先が伸びてきて、私の目じりに触れた。
 触れられたことで、私の目じりに涙が溜まっていたことに気がついた。
「なんで、泣いてるの?」
 カガミはとても優しい声音でそういってくれているが、私にはその声が地獄の閻魔による
断罪の声に聞こえる。
 カガミはやさしい子で、悪い子ではなかった。
 それなのに私はカガミの精神がおかしくなってしまうほどに追い詰めてしまった。
 それなのに私は瑛子たちと一緒にカガミをイジメてしまった。
 それなのにそれなのに私はカガミのことを忘れてしまおうと考えていた。
「私……わたし……最低だ」
「……ミヤビちゃん?」
 私は後悔してる。
 かつての自分の行為を、止められる立場にいたはずなのに止めずに加担してしまった罪を、
後悔している。
 でも、それはもう手遅れなんだ。
 どれだけ後悔しても、もう取り戻せない、時間は戻らない。戻ってくれない。
 今更――カガミをイジメていた事実は消せない/自した瑛子は甦らない/強姦された紺
の傷跡は消せない――そういえば、紺はどうしたんだろう? 私がカガミに連れられあの場
を離れたあと、紺はどうなってしまったんだろう?
 嫌な予感/確信ともいえるものが私の脳裏に過ぎった。
 それは一度考えてしまうと、それが事実のように感じられて、脳裏にコゲつき離れなかっ
た。
 私はカガミに聞いた。
 聞いて、事実を知ってしまえば、妄想せずに済む。
「ねえ、カガミ。紺はあのあとどうなったの?」
 その言葉にカガミは分かりやすいくらいに反応を示した。
 顔から表情が消えうせ、目つきは鋭く私の思考を読み取ようにみえる。
「え、……突然どうしたの?」
「紺、あの男たちに酷いことされてたよね、あの後どうなったのかなって。紺、……生きて
るよね?」
 私の問いに、カガミが答えるまで僅かに間が開いた。
 カガミは笑って応えた。

67 :
「当然だよ、生きてるよ」
「……そう、よかった」
 私はそういうと目蓋を閉ざした。
 ――見ていられなかった。
 今の生活を、今の私を壊したくがないために、あからさまな嘘をついたカガミの顔はみて
いられなかった。
 カガミは笑ってみせたけど、その頬は強張っていたし、瞳は落ち着きなく揺れ動いてしま
っていた。
 そんな表情をみせられてしまったら、それ以上追求することはできなかった。これ以上、
カガミのことを追い詰めたくなかった。
 カガミを傷つけ壊した私がカガミにできる唯一の贖罪が、カガミと共にいることだという
ことを今ようやく納得できた。
 私を籠の中に閉じ込め、人形のようにしておく行為が、カガミにとってどんな意味がある
のかは分からないが。
 それに最後まで付き合う義務がある――。
「ミヤビちゃん、寝ちゃったの?」
 私は無言でカガミに手を伸ばし、その細い身体を引き寄せ、抱きしめた。
「え、えぇと、え、どうしたの?」
 驚くカガミ。
 私はできるだけやさしい、彼女にとって救いになるような、そんな笑顔を浮かべられるよ
う精一杯やさしく微笑むと。間近にあるカガミの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ひとりだと……独りだと寂しいでしょ、だから……ずっと一緒だよ、カガミ」
 そういってカガミの言葉を待たず、その口唇を塞いだ。
 カガミとはこれまで何度も何度も唇を重ねたことがあった。そうするとイジメられている
というのに、カガミは少し嬉しそうな表情を浮かべるのだ。
 今考えてみると、私はそうやって彼女が喜ぶ行為をして、少しでも自分の罪が軽くなるよ
うに、カガミの精神的な負担が軽減されるようにしていたのかもしれない。
 カガミの舌は私の口の中に入ろうとして、でも、そうすることが怖いというように宙ぶら
りんな場所で震えていた。
 だから私は彼女の舌に自らの舌を重ね、絡め、そして私の中へと招き入れた。
 カガミの口からは以前のような尿の臭いはしなかった。
 気づくとカガミの腕も私を引き寄せるようにして、抱きついていた。
 私は思った。
 このままひとつになってしまえたらどれほど楽か。
 カガミのことを抱きしめた。強く強く抱きしめた。
 カガミの身体は細すぎて、こうして力をかけ続けていると壊れてしまうんじゃないかと思
ってしまう。
 だが強く抱きしめるほど。
 力を強くかけるほど、触れ合った胸から聞こえるカガミの鼓動が高鳴っていくのが、カガ
ミの唇の激しさが、どんどんと増していくのが分かる。
「カガミ」
 私は一旦唇を離して、その名を呼んだ。
 それへカガミは即応した。
「ミヤビちゃん、好き、だよ」
 その言葉に私は泣きそうになってしまった。いや、涙はこぼれているのかもしれないが、
分からない。身体中の神経が痺れてしまったかのように、その感覚がほとんどなく、あるの
はただカガミと触れ合っているという感触。カガミの感触しかわからなくなってしまってい
た。
「私で……いいの……?」
 私はこれまで幾度も幾度もカガミに対して酷いことをしてきた、非道な仕打ちをカガミに
してきた。

68 :
 本来なら私は処罰されるべき存在だ。
 すべからくされてしかるべし存在なんだ。。
 私はいつカガミにされてもおかしくない存在のはずなんだ。
 それなのに、カガミは――、
「うん。ううん、ミヤビちゃんだからいいの。わたしは、わたし、ミヤビちゃんのことが好
きなの」
 そういって私の頬を舐めた。
「でも、私カガミにひどいこといっぱいしたよ」
 カガミの体を最初に見たとき、スタイルがいいと思ったのを憶えてる。肉つきはあまりよ
くないかもしれないけど、スレンダーでスタイルいいなあって思った。けれど、私たちがカ
ガミを追込んでいくうちにカガミの肉体はやせ細っていき、気づけば骨と皮のような状態に
なってしまっていた。
 そこまでの仕打ちをしたのが私たちなんだ、いや、それが私のした行為なんだ。
「イジメられてる時、ミヤビちゃんは、ミヤビちゃんだけは優しくしてくれた。わたしのこ
とちゃんと人間として扱ってくれた。ミヤビちゃんがいてくれなかったら、わたし、きっと
んでたよ」
「そんなの――そんな、そんなの、ただの欺瞞だったの! 私、カガミが壊れていくのみて、
それで、そういうことしてる自分が怖くなって。だから、少しでも自分の罪が軽くなるよう
にって思ったの。ただそれだけなんだよ、カガミ……」
「そうかもしれない……でも」
 カガミは笑った。
「わたしはミヤビちゃんのことが好き」
 その笑顔にはなにもなかった。
 策謀も虚栄も欺瞞も、なにひとつとしてなかった――あったのはただひとつ――、
「こんな私でも、好きでいてくれる……?」
「うん」
 私への純粋な好意。
 ただそれだけしかなかった。
 ただそれだけしか、もうカガミには残されていないんだ。
 そう思うと私は涙がこぼれた。
 カガミはもっと色んなものを持っていた。クラス中の男子から好かれる美貌/スタイルの
いい身体/学校でもトップクラスの頭脳/沢山の友達/明るく誰にでも分け隔てなく接する
ことができる性格――そんな色々なものをもっていたはずなのに、今のカガミにあるのはた
だ――私を好きだという感情だけ。
「……カガミ」
 私は再び彼女の名前を呼び、唇を重ねた。
 唇を重ねながら私は誓った。
 この少女が私を必要としている限り/カガミが私への好意以外の何かをみつけるまで、私
はカガミの傍にい続けよう、カガミが望む限り傍にい続けてあげよう。
 それが私にできる、たったひとつの――贖罪。
 
 
 
 
  
 ――しかし、私たちの生活は長く続かなかった。
 
 
 
 

69 :
***
 
 
 カガミとの生活が始まって1カ月。
 私は白い部屋の中、カガミ以外の誰とも会わず、ただただ静かなこの空間の中で穏やかに
暮らしていた。
 最初の内は、こんななにもない場所に放り込まれて絶望してしまったが。カガミと共に在
ろうと決めた今となっては、私とカガミしかないこのシンプルな空間は、私の思考を単純化
してくれた。麻痺していったといってもいいかもしれない。
 なにもないこと、なにもしていなくても、退屈だと感じなくなった。
 ――そんなある日のことだった。
 朝からカガミがでかけていて、私は白い部屋の中ひとりぼっちにされていた。
 うつらうつらと薄い睡眠とまどろむような目覚めを繰り返しながら、カガミの帰りを待っ
ていると、勢いよく扉が開かれた。
 私はその音で起床すると、扉のほうへ顔を向け、微笑み――言葉を失った。
「……え?」
 現れたのはカガミではなかった。
 突然の侵入者は私の顔をみると口元に笑みを浮かべ、
「ミヤビ!」
 私の名を呼んだ。
 それへ私も彼女の名前を呼んで応えようとしたのだが、直ぐに名前が思い出せず、それに
カガミ以外の人間と会うのは久しぶりだったから驚いてしまって。まともに頭が働かなかっ
た。
「よかった、無事で……」
「え、と。その、どうやってここに?」
 少女の言葉に私はなんとかそれだけ応えると、侵入者は自信に満ちた笑みで答えた。
「調べた」
 こともなげにいってのける侵入者。
 私はそれでようやく思い出した。
「……椎」
「ん? なあに、ミヤビ」
 名前を呼ばれて嬉しそうに笑う椎は、私の手を掴むと。
「さて、あんまりぐずぐずしているとタイミング失っちゃいそうだし、とっとと逃げちゃお
っか、ミヤビ」
 そういった。
 ――にげる?
 椎はなにをいっているんだろう?
「にげる?」
「そう、ほら、早く逃げよ」
 椎はいい、強い力で私の手を引いたが。私はその場から動かなかった。
「逃げるって、なにいってるの? 逃げないよ」
 逃げれない。いや、逃げたらいけない。
 私は望んでここにいる。自分の罪を償うために、カガミに贖罪するためにここにいるんだ
から。カガミの赦しがなくここから離れることはできない。
 それに、私がいなくなったらきっとカガミは悲しむ。
 だってカガミにはもう私しか残っていない。
 だから私がカガミの手の届く場所から離れたら、きっとカガミは傷つき、絶望し、もしか
したら自らんでしまうかもしれない。

70 :
 そう考えるとこの場から離れることはできなかった。
 それに――私にももうカガミしか残っていない。
「……なにいって、ミヤビ。どうしたの、こんな、こんなところで監禁されておかしくなっ
ちゃったの。しっかりしてよ」
「ううん、監禁じゃない。私は望んでここにいいるの」
「うそだ」
 信じられないというように、何度も何度も首を振る椎。
 私はその椎の様子が憐れでしょうがなかった。
「椎もさ、一緒にカガミに謝ろう、謝って一緒に償おう」
 そういって椎の身体を抱きしめた。
 そうすると、段々と椎の身体から無駄な力が抜けていくのが分かった。
「謝るって、なにを、アイツに謝ることなんて」
「だってカガミがおかしくなったのは、カガミをおかしくしちゃったのはわたしたちなんだ
よ。だからね、謝ろう。ごめんて謝ろうよ、椎」
「いやだ……ッ」
 椎は私の身体を強く抱き返してくると、引き絞るような声でいった。
「アイツは私からミヤビを奪った。しかも、こんな所に閉じ込めて、ほんと……むかつく」
 椎の言葉からは怒りしか感じなかった。
 でも私はなんとか説得しようとしたのだが、ふと、気がついた。
「カガミに謝るなんてできるわけない。だって、だって、アイツが瑛子のこと自に追込ん
だんだし、紺がされたのだってどうせアイツが噛んでるんでしょ。それに、それに……ミ
ヤビを、ミヤビのことを独り占めにしようとしたのが、なにより赦せない」
「……椎」
「だって、だって……アイツ知ってるはずなんだ、分かってたはずなのに……私がミヤビの
こと好きだって。なのに、独り占めにしようとするなんて、赦せない」
「そう」
 激昂し叫ぶ椎、その言葉に答えたのは――私ではなかった。
「それは、ごめんなさい」
「え――」
 椎の背後にカガミが立っていた。
 カガミは椎が喋っている途中からいたが、私はそのことを口にはしなかった。だってカガ
ミが口元に手をあて、喋るなというように口を動かしたから。
 カガミは椎の背後に立っている。
 椎の目が大きく見開かれ、顔が硬直していた。
 カガミは椎の肩を掴むと、強引に私から引き剥がした。
 その勢いで椎は床に投げ出されると、真っ白い床に赤い染みを作り始めた。
「え?」
 理解できなかった。
 椎の身体から拡がっていく真っ赤な液体、それがなんなのか。
「うそ……なにこっ――ゲホッ、ゲホッ」
 椎が咳をすると、口からもその液体は飛び散った。
 私は椎になにをしたのかカガミに聞こうと、カガミのほうをみて絶句した。
「ふ……」
 カガミの顔は酷く強張っていた。
 目じりは吊り上り、床に倒れ赤い液体を撒き散らす椎を凝視し。口元に笑みににた表情を
浮かべていたが、それを笑みと呼ぶには抵抗があった。
「ははっ、ははははははははは」
 カガミはいきなり笑い出すと、なにを思ったのか椎のお腹を踏みつけた。
「椎、椎! 余計なことしようとするからこうなるんだ、何もしなければなずにすんだか
もしれないのに」

71 :
 そう言いながら椎の身体を踏みつけ、蹴り飛ばすカガミの姿に、私は恐怖を覚えた。
「だ、だいたいっ。気持ち悪いんだよ、女なのに女が好きなんて! ひ、ひひっ。それに、
わたしのミヤビちゃんに手を出そうとしたのも、ほんときもいんだよ」
 椎の身体から溢れる赤。
 その赤はまるで炎のようだった。
 椎の炎が、虚無だった白い部屋を燃やしていく。
「……してやる」
 だがそれ以上に強い炎が、炎のように怒り、燃え盛るカガミはその椎の身体にまたがると、
その手に握った包丁を振り下ろした。
「……か、カガミ?」
 私は旧友を痛めつけるカガミを止めようと思ったが、声をかけることはできても、その狂
気に満ちた姿に触れることはできなかった。
 こんなカガミ、知らなかった。
 カガミはやさしくて穏やかでやさしい子のはずなのに。
 これじゃあまるで変わらない、罪を犯した私となにも変わらない。
 椎の見開かれた両目は白目を剥き、既に悲鳴を上げることも、抵抗することもできないで
いる。
 そんな椎を、カガミは何度も何度も刺し続けた。
 カガミが燃えている、燃えていく、椎から噴出する赤で、カガミの姿が赤に染まっていく。
 純白で、他に何もなかった部屋が、私とカガミの世界が燃えていく。
 私は気づくと、その場に座り込み、泣いていた。泣くことしかできなかった。
 
 
 カガミが椎をし続ける行為を止める頃には、私の涙も枯れていた。
 カガミは真っ赤になった部屋と、真っ赤に染まった自分の姿をみて、頭を振った。
 その姿は狂気に満ちていて怖いもののはずなのに、どこか滑稽で、どうしようもなく哀れ
だった。
 私はカガミになんて声をかけようか考えたが、なにも思い浮かばなかった。するとカガミ
のほうから、私へ向かって声をかけてきた。
「ミヤビちゃん」
「ん、なあに?」
 私はできるだけ平静を保って応えたつもりだったが、その声は裏返っていたし、顔は笑顔
を浮かべようとしてひきつってしまっていた。
 カガミは窮めて自然な笑顔を浮かべ。
「椎の、椎ちゃんのこと、しちゃった」
「……うん」
「わたし、人しになっちゃった」
 その言葉に、私の中でわだかまっていた感情が『瑛子を自に追込んだくせに』という言
葉を吐き捨てたが。私は違うことをいった。
「そうだね。でも、しょうがないよ。だって、椎はカガミのこと傷つけたんだし。だからし
ょうがないよ」
 カガミは一瞬驚いたような表情をみせたが、短く頷くと。
「そうだよね」
 小さい声で呟いた。
「みんなあいつらが悪いんだ。みんな、みんな、あいつらのせいなんだ」
 いいながらカガミは近づいてくると、私のことを抱きしめた。その身体は震えていて、憐
れでちっぽけで、つい先ほどまで狂気に満ちた姿で人をしていた少女と同一人物だとは思
えないほどだった。
 しかし――その『あいつら』の中に『私』が含まれているのを、カガミは理解しているん
だろうか?

72 :
 聞いてみたかったが、怖くて聞くことができなかった。
「ミヤビちゃん……」
 カガミはそうとだけいうと、まだ血に濡れていない床に私を押し倒すと、赤く濡れた指先
で私の衣服を脱がし始めた。
 突然の行為に驚いたが、抵抗できなかった。カガミの手にはまだ包丁が握られている。
「ミヤビちゃん、これで、わたしたち2人きりだね」
 なにを言っているんだろう。
 元からこの部屋の中には私とカガミしかいなかったのに。
 カガミは私の裸身をみて満足げに微笑むと、
「あの頃の、あの忌まわしい記憶を持っているのはわたしとミヤビちゃんだけ、2人だけの
記憶、2人だけの秘密……ふふ」
 いいながらカガミは私の乳房に顔を埋めた。
「ああ、そういう……そうだね、もう2人きりだ」
 中学生時代、私が仲がよかった相手はもうカガミしかのこっていない。
 瑛子は自に追込まれ。
 紺はどうやらあの強姦の果てにされ。
 椎は今さっきカガミの手でされた。
 生き残っているのは私とカガミの2人だけ……いや、違う。あの頃、カガミをイジメてい
た人間で生き残っているのは、もう私しかいない、そういうことだ。
「……寂しい?」
 カガミがそう聞いてきた。
 私は僅かに考え、答えた。
「別に、だってあいつらとは反り合わなくなってたし、だから寂しくはない、かな。んだ
のが悲しいけど」
「そっか」
 カガミはそういうと包丁を握っていないほうの手で、私の乳房を掴むと、ゆっくりと手を
動かしもみ始めた。
 椎の血で私の乳房が赤くなっていく。
 そうされると椎に穢されていってるようで、少し不快だった。
「今になって思うんだ」
 私はカガミの髪を1房掴むと、それを指で弄びながらいった。
「私にとって、本当に友達だっていえるのは、カガミだけだったんだと思う」
「――え」
 驚いたようにカガミが行為をやめ、こちらを見た。
 私は薄く笑い。
「カガミ、今だからいえるけどね。カガミをイジメようって言い出したの、本当は私なんだ。
椎がね、おみやげもらえなかったって言ったら。瑛子たちがカガミのこと空気読めないとか
むかつくとかいって、だから私『だったらイジメちゃおう』って」
「…………」
 カガミの両目が見開かれ、私をみていた。
 その瞳はまるで虚無を見つめているかのように、感情が消えうせていた。
「……それ、ほんと?」
 ようやく搾り出された声は掠れていた。
 私はカガミの腰に手を回すと、その華奢な肢体を抱きしめた。
「うん、私が言い出したことなの」
 カガミの顔からどんどん色が失せていく、それほど衝撃的な事実だったんだろう。
 だってそれはそうだろう、カガミにとって私は『イジメている連中の中で唯一やさしくし
てくれる相手』で『おそらく渋々イジメに付き合っていただけ』だったんだろうから。
 だけれど、本当は違う。
「……なん、なんで」

73 :
「なんで?」
「なんで、そんなこと……ウソでしょ、ウソだよね……ッ!」
 私は首を左右に振った。
「ウソじゃないよ、カガミ。私が提案したの、カガミをイジメること」
「でたらめいうな!!」
 カガミは私の頬を殴りつけると、私の腕を振りほどいて飛びのいた。
 口の中が切れたようだった。
 私は身体を起こすと、ゆっくりと立ち上がった。
「……痛いよ、カガミ。でも、カガミはもっと酷いことされたもんね。ごめんね」
 そういいながら、肌にまとわりついていた下着を脱いで、素裸になると両手を大きく広げ
てみせた。
「だから、いいよ、私のことしても」
「……す? わたしがミヤビちゃんのこと、ころす……?」
 カガミは理解できないというように、何度も何度も頭を振り、包丁を手から落とすと両手
で顔を覆ってさらに頭を振った。
「そんなの……いやだ」
「ならそれでもいいよ、私はもうカガミのモノだから。だからさ、憶えておいて欲しいんだ、
カガミには私をころす理由がある。私がカガミをいじめようっていったってこと」
「……いやだ」
 カガミは駆け寄ってくると、そのまま全身で私にぶつかってきた。
 私は抵抗せず、しかしカガミの身体を抱きしめると、そのまま床に倒れた。
「わたし、イジメるって、なんで、そんなの。そんなの、うそだよ、ミヤビちゃんがそんな
こというわけないもん」
 カガミの瞳からぼろぼろと涙がこぼれていた。
 カガミは酷く脆い、こんな言葉だけで崩れてしまうほど、弱い少女だったんだ。それを私
が、私の醜い嫉妬が壊してしまった。
「あの当時、みんな、カガミに対して、わだかまってた想いがあったんだ」
「……わだか――ぐすっ、おもい……?」
「うん。瑛子はね、自分がどれだけがんばっても、カガミくらい綺麗になれないっていって
たし。紺は自分が身体売ってまでお金稼いでるのに、カガミはなにもせず金もってるからず
るいっていってた。それに椎は勉強が――ううん」
 特に努力しているふうでもないカガミが、試験で常に自分より上にいることに納得がいっ
ていない。
 そういってたけど、おそらく違う。
「椎は、カガミが私と仲がよかったこと。私がカガミとばかり喋って、椎とあんまり喋らな
かったから。だから、カガミのこと憎んだんだと思う。だってあの子、私のこと好きだった
から」
 確信はない。
 でも今思えばそうとしか思えなかった。
 そもそもそうでなければ、こんなところまで助けにきてくれるはずがない。
「それって」
 カガミが震える声でいった。
「……わたしが、わるかったの?」
「ううん」
 私は首を横に振った。
「私のせい。私がそういうみんなの想いを吐き出すきっかけを与えたから、だから私が悪かっ
たんだ」
 カガミは「ぐすっ、ぐすっ」と鼻をすすりながらいった。
「ねえ、教えて」
「うん」

74 :
「ミヤビちゃんは、わたしのどこがゆるせなかったの?」
「それはね」
 私は瑛子たちには、カガミのことはただむかつくとしかいってなかった、それだけでも瑛
子たちは納得してくれた。
 でももう今更そんな欺瞞はしないし。
 カガミに対してウソはつきたくなかった。
「友達がいっぱいるカガミがうらやましかったの」
「……え?」
 そう、思い返せばそれが理由だった。
「クラスのみんなから慕われて、いつも中心にいたカガミがうらやましくてしょうがなかっ
たの、だって、私、友達いなかったから」
 カガミは黙って私の話を聞いてくれていた。
 だから洗いざらい全て話す気になれた。
「私ね、昔から友達作るのが苦手で。だから中学のときも孤立してて、カガミが話しかけて
くれるまで、そういうこともなかった。だから、話しかけられたときすっごい嬉しくて、嬉
しくて。カガミが私のこと『友達』っていってくれたとき、本当に嬉しかったの。それにカ
ガミと一緒にいたら、瑛子たちとも仲良くなって、友達が増えていって……失うのが怖くな
ったんだ。だから、瑛子たちから嫌われないように、瑛子たちと一緒になってカガミのこと
いじめたの」
「……友達失いたくなかった、から?」
 頷いた。
 カガミの表情に感情が戻ってきたが、その表情は怒りではないようだった。
「なんで、そんな……そんなことのために、わたしは……」
「友達がいたカガミには分からないよ、友達がいなかった私の気持ちなんて」
 そういうとカガミは黙ってしまった。
 私もいうべき言葉が見つからず、ただ、カガミの肩越しに天井を眺め続けた。
 そうしていると椎の血のにおいに気づいた。
 まるで今まで鼻がつまっていたかのように気づけなかったそのにおい、気づけば鼻腔がそ
のにおいに支配され、酔いそうになってしまう。そのにおいはまるで、そのものなように
感じられた。
 この部屋に囚われた私は、もうんでいるも同然だ。
 ただ、重なった肉体、触れ合っている胸から伝わってくる心臓のリズム、一定で刻まれる
その鼓動。それだけが私が、私たちが生きているという証明だった。
 突然、カガミは笑みを浮かべた。
 それは笑みなのだろうが、ひきつっていてとても笑顔とは呼べそうにない悲痛なものだっ
た。
「ミヤビちゃんはさ、友達がほしかったの?」
「うん、欲しかった」
 私は頷いた。
 正直な気持ちだった。
 友達が欲しかった。一度手に入れたら失いたくなかった。
「なら、さ。わたし、ずっと、ミヤビちゃんの友達だから。ずっと離れないで、いつまでも
一緒にいよ……」
 掠れた声でそういうカガミ。
 私は再び頷いた。
「私はいいけど、でも、カガミはいいの? 私のこと、さなくて」
「せない」
 カガミは直ぐに答えた。
「もう、わたし、ミヤビちゃんしかいないから。だから、ミヤビちゃんのことせない」
「違うよ。それは違う。カガミなら、手に入れることできるよ。カガミなら、がんばればま
た手に入れることできるよ」

75 :
 だって、カガミから全てを奪い、壊したのは私なんだ。
 壊されなければ、奪われなければ、カガミは新しい友達を、新しい生活を、新しい人生を
歩んでいくことだってできる。
 こんな忌まわしい記憶から脱却して、新しい記憶を創っていくことができる。
 だから――、
「私に罪を全部被せて、カガミは新しい人生を始めたらいいよ。だから、私のことしてい
いんだよ。カガミ」
 しかし、カガミは首を左右に振った。
「無理だよ、そんなの……だって、瑛子も紺も椎もわたしがした、わたしがしたんだ。
瑛子たちひどいことしたって思うよ、だって辛かったもん、何度も自しようって思ったも
ん。でも、でも、されるほどのことじゃなかったって思うんだ」
「そんなことない、カガミに復讐する理由はある」
「でも……」
 カガミはしばらく沈黙すると、ふいにいった。
「それなら、尚更もうせない、ミヤビちゃんのことはせない」
「……カガミ」
「ミヤビちゃんはわたしのそばにいて、それがわたしの、ミヤビちゃんに対する復讐だから。
だから、ずっとそばにいて」
 そういうとカガミは私の唇を奪った。
 カガミのキスは以前に比べたら格段にうまくなっていた。
 2人きりのなにもない空間、私たちはこうした遊びをすることが多かった。
「カガミ、っ、ん、……うまくなったね」
 褒めてあげると、カガミは嬉しそうに笑った。
 もうちょっとカガミの上手になったキスを味わっていたかったが、カガミは身体を離すと、
私の股を開いた。
 みると私の身体も、カガミと重なっていた部分は赤く染まっていた。
「いつみても、ミヤビちゃんのここきれい」
 カガミはそういいながら私の陰部に舌を這わせ、ゆっくりと閉じられた部分を開いていく。
 手は使わないし、激しさもない、でもその緩慢な攻め方が心地よかった。身もだえして求
めたくなってしまう。
「そんなこと……はずかしいよ……」
「ふふ……じゃあ、指いれるよ」
「……うん」
 返事をかえすと、カガミの細い指先が私の膣に入ってきて、内部の肉壁をこすりはじめた。
「ん……ふぅ……カガミ、カガミ……あっ……ぅんっ」
「気持ちいい? ミヤビちゃん」
「……うん、いいよ……きもちいいよ……カガミ」
 ふと、思った。
 カガミは男の身体を知ってるけど、私は一度も男とそうしたことはない。こうして女同士
でするのと、男とするのとだと、どちらが気持ちがいいものなんだろう。
 カガミに聞こうかと思ったが、やめた。
 したことがあるといっても、カガミは一方的に犯されていたに過ぎないし、もうあの頃の
ことなんて思い出したくないだろうし。
 私が果てると、カガミは指を抜き、愛液で濡れた指を舐めた。
「じゃ、今度はわたしにして」
「わかった」
 私はそう応えると、カガミを床に組み伏した。
 椎の血が私たちのところにまで届いていた。
 だが、他人の血にまみれることくらい、もう気にならなかった。

76 :
 私はカガミの平らな乳房を舌で舐めると、カガミは敏感に反応した。胸に脂肪がほとんど
ないカガミだけれど、その感度はよかった。
 既にカガミの乳首は勃起していたが、それは責めず、あくまでその周囲を愛撫し続ける。
「……っ、くっ」
 カガミはイジメられていたときの癖か、自分の手を噛んであえぎ声を押ししていた。
 私はカガミの胸に自分の乳房を重ねると、自分の乳房を掴んで、カガミの胸にこすりつけ
た。
 乳首で乳首を刺激すると、カガミはたまらず。
「く……ああっ」
 あられもない声をあげた。
 そうしながらもカガミの股の間に膝を入れ、陰部を膝頭で刺激してやる。少々強引なやり
かただったが、カガミはこうしたされかたのほうが好きだった。
 私は、カガミの手を掴むと口から離し、無防備になった唇に軽くキスしてあげると――、
「ごめんね」
 ――そう、囁いた。
 私はカガミに応える間も与えず、カガミの細い首を掴むと、床に押し付けるようにして締
め上げた。
「ん――――ッ!?」
 紅潮していくカガミの顔。
 じたばたと両手足が暴れる。
「ごめんね、ごめんね、ごめんね」
 私は呪詛のように繰り返した。
 カガミには悪いが、もう無理だった。
 カガミはこれからも私と生きていくつもりだった/でも/私はもう生きていくつもりはな
かった。
 カガミの細い手足が私のことを叩くが、でも脆弱な女の子の力では引き離すことはできな
いようだ。
「カガミ好きだよ、ごめんね、いつまでも友達でいようね、ごめんね、ごめんね」
 もう、無理だった。
 瑛子が自し、紺が陵辱されてに、椎を目の前で惨されて。それで次は私の番かと思
いながら、したやつの隣になんていられない。無理だ。
 だいたい、この気が狂ったかのように白いだけの部屋はなんなんだ。こんな所にいたらお
かしくなる/おかしくなってる/おかしくなってしまった。無理だ。
 そもそも、中学時代のイジメをしている段階で無理だった。
 友達だった子を暴行する/その身体を蹴る/その衣服を切り刻む/その肉体を男たちに売
る/その膣に異物を押し込んでいく/妊娠しないようにと下腹部を蹴り上げる/その口に蟲
を詰めていく/何度もする/何度もなんどもくりかえしていく/なんどもなんども、カガミ
の顔から笑顔が消え去っても/カガミが壊れていくのを冷静に俯瞰する/私のせいではない
と思う/私はやりたくなかった、けど、友達がやってるからと言い訳する/無理だ。
 カガミ。
 カガミ、カガミ。なんで耐え続けたんだ、なんでなずに復讐しようなんて考えたんだ。
そんなに私たちのことが憎かったのか。
 カガミ。
 なんで私だけ生かそうとする/私だけさない/私と一緒に生きていこうなんていう。そ
れが私の罪への罰だとしたら、カガミ、お前は私に狂えと/自分と同じように壊れてしまえ、
そう言いたいのか、カガミ。

77 :
 視界が真っ赤に染まっていく=椎の血/カガミがした少女の血=私と友達だった少女の
/カガミは友達をした。
 でも、私はカガミを責めれない。
 私はカガミを壊した。
 そして今、そうとしてる。
 私はカガミを責めれない。
 してくれたらよかったのに――臆病な自己欺瞞の心が叫ぶ/楽な道に逃げようとする想
い泣いてる/自分の行動を正当化しようと喚いてる/cry/私の慟哭が部屋の中に満ちて
いた。
 私はカガミの悲鳴を聞きたくなかった、だから力の限り叫び続けた、カガミの声が聞こえ
ないように、叫んだ。
 だが、ふと私は気がついた。
 カガミはもう抵抗していなかった。
「……え?」
 カガミの顔は苦しげだったが、どこかおだやかで、その口元には笑みがうかんでいた。
 カガミは私がみていることに気がついたのか、唇をゆっくりとうごかし。
 
 す
 
 
  き
 
 
   だ
 
 
    よ
 
 その瞬間、カガミの全身から力が抜けていった。
 私は慌てて手を離したが、カガミはなんの反応も示さず。全身から力が抜けたせいで、汚
物が排泄されだしていた。
 ――ころした。
 椎の返り血で染まった両手を見て、横たわり動かないカガミを見て、私の中で
 
 ぷつんっ
 
 という音がした。
 
 
***

78 :
 シャワールームは部屋をでて直ぐそこにあった。
 私はタオルを抱えて部屋へもどると、床に横たわるカガミの身体をタオルで拭いた。カガ
ミの身体を汚す血を拭いてあげたかった。
 でも、拭いても拭いてもカガミの身体についた血は拭えなかった。
 しょうがなく諦めて、カガミの身体を担ぐと、ベッドまで運んで寝かせてあげた。
 カガミはとても安らかな顔をしていた。
 私はカガミに抱きついて、その瞬間を待った、でもそれはもう与えられるものではなくなっ
ていた。私が選び、行動しなければならない。
 私はまだ温かいカガミの身体に触れると、その股を開き、尿と糞で汚れる局部を舌で舐め
た。臭いのかもしれないが、においがわからない。
 でも、久々のカガミの尿はおいしかった。
 そう思える自分がおかしくて、わらってしまった。
 私は一人で果てると、カガミの隣に横になった。
「ねえ、カガミ」
 カガミは答えない。
「カガミはさどんなものが好きだったの? 本当はどんなことが好きだったの?」
 カガミは答えてくれない。
「カガミと私友達にだったのかな、友達になれたのかな」
 カガミはもうんでいる。
「分かってるよ、カガミ。もう遅いって、もう今更なことだって、でも思うんだ」
 私は拾いあげた包丁をしっかりと握りなおした。
「今度、カガミに会えたら。今度こそ、友達になろうって、そう決めた」
 私は震える手を、怯える心をし、そして――
「好きだよ」
 突き刺した。
 
 
 
 もう一度カガミと話したい、そう思った。それだけを思った。
 
 
 
   了

79 :
以上で終わりです。
>>13のあらすじから展開がかなり変わっていますが、大筋の所は変えないようにしました。
なんか書いた本人としては、この子たちもう少し幸せになれたんじゃないか?少なくともカガミとミヤビ生き残ってもよかったんじゃないか?
とかおもったんですが。
書いてるうちに、ミヤビが「もうやだお。にたいお。生きてたくないお」っていってる気がしたので、こうなりました。
もう少し補足で書きたいんですが、長々あとがき書くとうざいと思うんでこの辺で
 
最後に
>>53-56
読んでいただきありがとうございました。
2nd分投下した段階では、一切レスがつかず、スレが落ちるのも覚悟のうえでやってましたので
励みになりました。
またどこかで見かけた際には、お暇でしたら読んでいただけると嬉しいです
 
それでは、失礼します。

80 :


81 :
>>81乙でした!
非常に好みな話です。一切救いが無いのもたまには良いよね!このまま退廃的にダラダラとイチャイチャするのも見てみたい気もするけど!

82 :
美しければそれでいい乙

83 :
途中までの展開は好きだったけど
セックスにを混ぜるのは嫌いだなぁ。

84 :
抜けないけど面白かった
あんたみたいな作風の人のハッピーエンド物も
書けるなら読んでみたい

85 :
人未遂で逮捕する

86 :
>>85
桂言葉は人罪でっせ

87 :
少女達よ、今年も苦悩にまみれて下さい

88 :
誰か刑罰もの書いてくだせエ

89 :
ヤベェ
ヌキもしてねぇのに賢者モード
イイハナシダッタナァ

90 :
福田和子が少年院時代にレイプされてたときき驚いた

91 :
昨日の特番でやってましたな

92 :
あの子供も捕まったのか

93 :
書いてみたけどアイデアが尽きた

94 :
あの日、私はすつもりなどなかった。
ただ軽く聡美の手を払っただけのつもりだったのだ。
だけど聡美は呆気なく階段から足を滑らして……
私と聡美は親友だった。
ちょっとしたふざけあいのはずだったのに。
聡美の脳漿が飛び散る様が忘れられない。
あたしは階段が怖い。高いところが怖い。
だけど何より聡美のご家族に申し訳ない。
なぜなら私は無罪になってしまったから。
大好きな聡美をしてしまったのに、私は償う術を見失ってしまった。
だから私はたった一人で直接聡美のご家族に謝罪しに行った。
聡美の家族はお父様が一人だけ、お母様は亡くなったのだそうだ。
だから私はお父様のいる玄関の前で、水たまりに顔をつけて土下座したのだ。
お父様は私の頭を踏みつけ、横腹を蹴って罵倒した。
ぬかと思ったけどそれは私の罪なのだ。
聡美をなせてしまった苦しみに比べたら何ほどのことでもない。
そのうちお父様は私の襟首を掴んで家の中に連れ込んだ。
向かった先は聡美の部屋だった。
それはまさしく聡美が使ったままの部屋。
カーディガンのかけられた椅子に流行りのアイドルのCD。
まるでちょっと出かけただけのような何気なさがそこにあった。
お父様は私を叩きつけるようにベッドに投げ出した。
あの子の匂いのするかのようなベッドで泣き出そうとした私。
だけどそれは叶わなかった。
お父様が私の服を脱がし始めたのだ。
私は怯えた。まさに親子ほども歳の離れた人から今から犯される。
そう思っても抵抗する気にはなれなかった。
抵抗は贖罪にはならないと思ったから、下着を脱がされても耐えた。
愛娘の部屋でこの人は事を始めようかという違和感はあったが、身体を隠すことすらしなかった。
聡美のお父様は裸になると、私の乳首を捻りあげなからディープキスをしてきた。
ベチャベチャと音を立てながら唾液を飲まれ飲まされ、ギリギリと痛むほど乳首を引っ張られた。
不意に体位を変えられ、私は四つん這いにされて大陰唇を割り開かれ
お父様の節くれだったオチンチンで呆気なく処女を奪われた。
それは痛みでしかなかった。
腰を掴まれ激しく犯され、血は飛び散って意識は千々に乱れた。
終わりは呆気なく訪れた。
お父様は急に腰を止めてオチンチンを一番奥に押しつけた。
ほどなくしてお腹の中にジンワリと何か温かいものが広がる。
膣内射精というものが何であるか、無理やり分からされている気分だった。

95 :
>>94
GJです
女の子の心情が切ないです
このスレのテーマだと、刑罰を受けるパターンと、精神的に負い目を持っているが故に、って2パターンあるけど、
この作品は後者の方で、心情描写がエロ分を強化しますね
ちょっとお父様、DQNすぎますがw
このパターンなら、男役は妹(友人)を溺愛していた兄、とかでもいいかなと妄想が膨らみました

96 :
看守「親からの手紙が欲しければ分かっているな」
看守「ここで脱がなかったら反抗したということにして刑期を伸ばしてやろう」

97 :
ほしゅ

98 :
保守

99 :
振袖大火の時、牢奉行石出帯刀は炎近づく牢獄から刑囚を含めて一時釈放し、帰ってきたものには減刑をしたらしい。
どんどん焼けの際、六角獄舎の囚人は炎近づく中、皆処刑されたらしい

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