2013年10エロパロ356: 新・川原泉作品をエロくしろ! (712) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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新・川原泉作品をエロくしろ!


1 :2010/03/24 〜 最終レス :2013/09/30
白泉社花とゆめコミックス、
ほのぼのな作風でお馴染みの川原泉作品をエロくするスレッドです。


2 :
          _人人人人人人人人人人人人人人人_
         >      ごらんの有様だよ!!!  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______  _____  _______    ___  _____  _______
ヽ、     _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、   ノ    | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ  、  |
  ヽ  r ´           ヽ、ノ     'r ´           ヽ、ノ
   ´/==─-      -─==ヽ   /==─-      -─==ヽ
   /   /   /! i、 iヽ、 ヽ  ヽ / / /,人|  iヽヽ、   ヽ,  、i
  ノ / /   /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、  、 ヽ
/ / /| /(ヒ_]     ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_]     ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '"   ,___,  "' i ヽ|     /ii""  ,___,   "" レ\ ヽ ヽ、
  '´i | |  !    ヽ _ン    ,' |     / 人.   ヽ _ン    | |´/ヽ! ̄
   |/| | ||ヽ、       ,イ|| |    // レヽ、       ,イ| |'V` '
    '"  ''  `ー--一 ´'"  ''   ´    ル` ー--─ ´ レ" |

3 :
何という偶然
つい最近笑う大天使に再ハマリしていろいろググってたら
たまたまエロパロスレ保管庫にたどり着いて萌えまくってたとこだったんだ
感謝します
とはいえ続くのだろうか?

4 :
いくらなんでもこれは無茶

5 :
柚子とロレンスが好きだ
あの微妙な関係がたまらない

6 :
まさか再び かーらスレに遭遇するとは…!結構嬉しい
このところは銀のロマンティックが手放せません

7 :
和音と俊介も好きだ

8 :
ふろいと1/2をこの前読んだな

9 :
○過去スレ
川原泉作品をエロくしろ!6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153839531/
川原泉作品をエロくしろ!5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149654230/
川原泉作品をエロくしろ!4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137226530/l50
川原泉作品をエロくしろ!3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1109168712/l50
川原泉作品をエロくしろ!2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1075465904/l50
川原泉作品をエロくしろ!
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1039827496/l50
親スレ「まさかこのキャラをエロに使うか!?」
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1027604556/l50
これまでに投下されたSSの保管場所
http://kawahara.h.fc2.com/

10 :
>5
どのカップルもいいが私も柚子&ロレンスが一番好き
だけどロレンスはいつ柚子さんに手を出したんでしょうね
一応短大卒業までは我慢したのかな

11 :
>>10
頭良いのに四大行かなかったということは
ロレンスが4年も我慢できないので短大をということを
うまーく口先三寸で丸め込んだ?

12 :
おさげをほどいて妖艶になる柚子さん・・・

13 :
わー新スレできたのね
エロく無いけどちょっと投下させてください

14 :
江藤くんには悩みがある。
クラス替えから一ヶ月余り、そろそろ級友達とのコミュニケーションも円滑になり始めるころになっても、
とある一女子からは未だ名前を覚えてもらえない。
剣道部主将という肩書、濃紺の詰襟に短髪、加えて仏頂面。
女子と話すのも実は苦手だ。
とっつきにくいであろうということには自覚がある。
だがしかし。
名前を覚えてもらえないということは小さなことだが、意外と心に引っかかるものだと
江藤英影(18)は思った。
うすらぼんやりと窓の外を見ている問題の女子、秋好杏子さんは相変わらず眠そうな顔をしている。
春にとある出来事があってから、二人の仲は急接近した、と江藤君は思っていた。
秋好さんは、ぼんやりとしているように見えて実は若竹のように柔軟で折れない心の芯を持っている、
尊敬すべきところのある女性だ。
その証拠に、女装して踊る自分を見ても動じず、受け入れてくれた。
一緒に踊った最後の夜、美しい色のリボンをくれた。
似合うと微笑んでくれた。月夜に輝くリボン、それは自分の宝物である。
そして、そんな秋好さんにいつからか級友以上の好意が芽生えたのだった。
それ以降、江藤君は秋好さんを毎朝迎えに行く。
えっちらおっちらと靴を履きながら
『おはよ〜ございます〜尾藤君』
という、毎日律儀に違う名前で呼ぶ秋好さんに、
『江藤だ、おはよう秋好』
毎朝律儀に訂正する。
わざとやってんじゃないのか…?と疑惑の目を向けるも、のほほんとした笑顔を見ていると
どうでもいいかなと流されそうにもなる。
それに彼は、そういう秋好さんが好きなのだ。

15 :
教室の窓際でぼ〜っと校庭の木をみている秋好さんに、江藤君は声を掛けた。
「秋好」
「…」
無言である。
聞こえなかったのかと思い、真後ろに立ってもう一度声を掛ける。
「秋好」
「…んあ?…あ〜加藤君。何?」
「江藤だ。何?じゃない。今日は部活がないので一緒に帰らないか、と朝言っただろう」
あ〜そうだね〜ごめんごめんと席にもどって帰宅準備を始めた彼女を横目で追い、
それから彼女が見ていたであろう校庭を眺める。
木の下には男女がいる。
秋好さんの妹とその彼だ。
彼は以前、秋好さんと交際していたが、いつしか妹のほうを好きになり、妹も彼を好きになってしまった。
秋好さんにも葛藤はあったろうが、潔く彼に別れを告げ、かつ妹の背中を押して今では公認の仲になっている。
そのいきさつにはからずも関わった江藤君は、二人の姿を見るとちょっとだけ複雑だ。
二人を見ていた秋好さんはぼ〜っとしているように見えて、悲しみに堪えていたのだろうか。
(秋好は今でもやっぱり……なのかな。)
だから俺は名前も覚えてもらえないのかな。
若干しょんぼりとした気持ちになる。
ええい、女々しいぞ俺。
江藤君は心に気合を入れ、秋好さんと共に教室を後にした。
「…おーい待ってくれ志藤くん」
はっと振り向くとやや呼吸を乱した秋好さんがえっちらおっちらとついて来ている。
「…すまん、というか江藤だ」
しまった気合入れすぎた。
彼女の歩調に合わせペースを落とす。
いつの間にか彼女の家の近所にまで来ている。
「ずっと黙ってるし、つかつか歩いていっちゃうし…なんか悩み事〜?」
のんびりとした口調だが、秋好さんはときに鋭い。
「いや、そういうわけでは…」
なんと言っていいやらもたもたと言葉を捜していると、彼女はニヤリと笑った。
「また、踊る〜?一緒に」
「え」
「お茶とお菓子持ってくよ〜?」
「あ」
「じゃあ天気もいいし今晩ね〜。例の公園で〜。ほんじゃお休み〜」
ばいばいと釣られて手を振った江藤君。
「俺の返事は聞かんのか…」
しばし呆然。

16 :
そして夜。
秋好さんの言ったとおり良い天気で、明るい月夜だ。
先に公園に寄ったがまだ来ていなかったので、彼女の家まで歩いて迎えに行った。
寝ているならそれでもいいし、来るのなら夜道は危険だ。
家の門が見えると丁度玄関から秋好さんがそ〜っと出てきた。
「秋好」
小声で呼ぶと、秋好さんはにっこり笑って軽く手を振った。
片手にはお茶とお菓子?が入っていると思われるトートバッグを提げている。
白いTシャツにライトグレーのパーカーを羽織り、ひざ下くらいのデニムパンツという出で立ちだ。
うん、なかなかに可愛らしい。
「こんばんは〜佐藤君、今日はカーテンドレスじゃないの?」
「江藤だ。秋好こそ、パジャマじゃないのか」
「へへへ…」
秋好さんは前を向いたまま、笑った。
ふんわりした髪が揺れて、仄かにシャンプーだかリンスだかの香りがする。
その表情を斜め上横から見た江藤君はちょっとだけ頬が赤くなった。
公園のベンチに並んで腰掛けると、秋好さんはバッグから予想通り水筒とお菓子の包みを取り出した。
ぱかっと開けたタッパーの中に、カップケーキが綺麗に収まっている。
「これさ〜帰ってから焼いたんだけど〜食べてみてよ」
「おお…!これは」
噂に聞く手作り菓子!というものか!眩しさすら感じる…!
部活のとき、同級生や下級生の彼女たちが差し入れている光景を横目で見ては羨ましさと憧れでいっぱいだったものである。
江藤君は甘い香りと『手作り菓子』という言葉に心の中を感嘆符でいっぱいにして、カップケーキを手に取り一口齧る。
(よもや秋好にこんな女子らしい一面があるとは。男らしいとか思っててスマン!)
素朴にして深い味わい…とかなんとか色々思いついたものの言葉にはならず、アウトプットされたのはたった一言だった。
「美味い」
その一言に秋好さんは満足げに二カーと笑う。
もぎゅもぎゅと頬張る江藤君にお茶を差出し
「妹にも手伝ってもらったんだけどね〜あの子はこういうの器用なんだ〜」
私と違って、という言葉を飲み込んだような間が空き、外灯の影を見るその横顔には月明かりが届かず表情はわからない。
江藤君はそんな秋好さんの様子が気になるけれど、なぜか言葉がうまく出てこなくてもどかしい思いをしていた。
(悩みがあるのは俺じゃなくて、秋好のほうじゃないのか?)
カップケーキを一気に三個平らげお茶をずずずと飲み干すと、江藤君は意を決して秋好さんに向き直る。
「あ、秋好」
「ほぇ?」
月を眺めていた秋好さんが視線を江藤君に戻す。
「…あいつのこと、まだ好きなのか?」
(うわ!何言ってるんだ俺!直接表現が過ぎる!)
秋好さんはちょっと目を伏せ、伏せた睫毛が白っぽい頬に影を作った。
その様子に江藤君はがっかりと肩が落ちるような心地で自分のつま先を見た。
やっぱり、そうなのか…そりゃそうだよな。あいつは確かに格好が良いし。性格も満点だ。
こうして夜に会ったり、登下校を一緒に歩いたりしても自分は名前を覚えてもらうこともできない
ただのクラスメイトで、みっともない格好で踊るところも見られてるし、もしかしたらクラスメイト以下かも…
と、江藤君はマイナス思考に陥っていた。
「わかんない…」
秋好さんは月を見上げておもむろに口を開いた。
「わからないんだよ、須藤君」
遠くを見ている秋好さんは、夜のせいか月光のせいか儚げに見える。
ともすれば泣いているようにも見えた。
江藤君は訂正するのも忘れて秋好さんを見つめた。
「桃子と森君が一緒にいるのをみてももう別になんとも思わないし…むしろ微笑ましいというか…」
「…」
「確かに好きだったはずなのに、そんなに素早く気持ちは切り替わっていいのかと…」
「…」
「そういう、自分の気持ちがわからないんだよ…」

17 :
わからない、という秋好さんの横顔はとても透明で、江藤君は思わず手を伸ばして彼女の頭を抱き寄せた。
秋好さんは少し硬直したが、黙ってそのまま江藤君に体を預けた。
夜は静かで、どこか遠くのほうの車の音が聞こえる。目を閉じると江藤君の心臓の音がシャツ越しに聞こえてくる。
それはなかなか心地よい音と温かさだったが、鼓動が少し早いので具合が悪いのではないかと秋好さんはちょっと心配になった。
「伊藤君…?」
見上げると江藤君はこわばった顔で秋好さんを見ていた。
頬に手を添えると、反射的に秋好さんは目を閉じた。
江藤君は2秒躊躇し、それから顔を近づけた。わずか3秒の接触だ。
それでもやわらかい唇を感じるには十分な時間だった。
「俺の名前は江藤だ…それから俺は…」
言うべきか言わざるべきか。ええい、ままよ。
「秋好のことが好きだ」
「え…」
身に振って沸いたキスと告白に驚いてぱちりと目を開く。
「わからなくても良いじゃないか」
江藤君は照れ隠しにぶっきらぼうに言った。
「俺だって、何で、その、好きになったのかとか、説明できないし」
(くはー何をわけのわからぬことを言っているんだ俺は!)
内心頭を抱えて、それでも何とか態勢を立て直す。
「そういうこともあるんだって思ってれば良いじゃないか」
やや頬を赤らめ、あらぬ方向をみる彼を見て、秋好さんはやっと自分の心の動きを自覚した。
そして何だか心がほっこりと温まるのを感じた。
「…そ〜か〜…そうだね〜」
秋好さんはつらかったとき、眠れなかった時のことを思い出した。
夜道を徘徊してるうちに江藤君に出会って、公園で踊る江藤君に付き合ううちに、
だんだんすごくつらい気持ちが少なくなっていったこと。
自分と森君と桃子の事に決着をつける手助けをしてくれたこと。
今、こうして一緒にいてくれること。
心配してくれていること。
江藤君はコワモテだけどなかなか優しい人なのだ。
そしてそんな江藤君のことをいつの間にか…。
秋好さんはあらためて江藤君を見て、名前をちゃんと覚えられなかったことを反省した。
「あのね、ずっと言おうと思ってたんだけど…毎朝、迎えに来てくれて、ありがとう。」
たくさん言わなくちゃいけない事があるんだけど、うまく言葉にならない。
「えっと…」
江藤君はまだ赤い顔のまま隣に座って正面を見ていて、えっと…の続きを待っている。
その肩や横顔はとても男の人らしく見えて、さっきのキスが急に気恥ずかしくなったのでつい、
「えっと……後藤君」
ベンチから盛大にずり落ちた江藤君に手を差し伸べて、秋好さんは満面の笑みで続けた。
「ありがとう、これからも、よろしく。…江藤君」
江藤君はにっこり、秋好さんもにっこり。
お月様もにっこり…
おしまい


18 :
自分がニヤニヤしたいがために書きました。
ご清読ありがとうございました。

19 :
GJ!!!!!
江藤くんwww あれからまだ覚えて貰ってなかった悲哀がイイwwww

20 :
うああwwwにらにらにらしたww
GJ!ありがとう!

21 :
GJ!!
川原作品はどれもほんわかするよ

22 :
江藤おおお!
自分が一番好きな作品が……!
うれしかった GJ!!

23 :
あの子の背中に羽がある より
保科さんちの聡真くん、このごろ少し変ね、どうしたのかな。
そんな替え歌を呟いた。
高校二年生になった遥は机に頬杖をついて、シャーペンをころりと転がした。
高校生になってから、ツインテールをやめて髪を下ろすようにしている。
ちょっとでも大人っぽく見せたいという乙女心である。
以前、聡真くんにお買い物に付き合ってもらったとき、ショーウィンドーに映った自分が
子供っぽくて、何だか聡真くんと釣り合ってない気がしたのだ。
お隣に住む聡真くんは、遥がここに引っ越してきたとき高校三年生で、
今はもう大学を卒業して、社会人になっている。
朝早く出勤して、夜遅く帰ってくる。
この頃はお休みの日だって、めったに会えない。
(聡真くんが学生のときは、いっぱい会えたのにな)
たまーに庭で顔をあわせても、嬉しくてたくさん話しかける遥に対し聡真くんは生返事ばかりで、
あんまり目も合わせずにすぐ家に入ってしまう。
(嫌われちゃったのかなぁ・・・)
でもそんな心当たりはちっともない。
小学6年生のとき、不審者に誘拐されそうになった遥を、聡真くんはそれは見事な一本背負いで
犯人を投げ飛ばして助けてくれた。
あの時からずっと聡真くんは遥のヒーローで、初恋の人。
「聡真くん・・・」
あの時は呼んだら、来てくれた。
でも今は、なんだかすごく遠いところにいる気がする。
(お隣なのにな)
遥は窓を開けて、隣の家を見た。
聡真くんの部屋は明かりがついていない。まだ帰ってないらしい。
遥はしばらく考えて、窓を閉め、それからそーっと家を抜け出した。
保科聡真はくたくただった。
社会人生活には順調に慣れたものの、毎日毎日残業だったりたまに飲み会だったり。
同僚にコンパなぞにも誘われる。
飲み会はともかくコンパは殆ど断っているが、彼女もいないのにコンパに行かないなんて
変だ、と同僚に言われ、変だと思われるのを恐れるあまり参加してしまった。
しかし楽しくない。
若く可愛いお嬢さん方が着飾ってウフフアハハと笑っているのに聡真くんは何にも感じない。
それどころかお隣のうちのお嬢さんを思い出してぼんやりする始末だ。
急用を思い出したと言い訳して、帰途に着いた。
家の前までくるとふと立ち止まり、隣の家を見上げた。
毎日それが日課になっている。
遥の部屋は暗い。
本当は会いたいが、この頃聡真くんは自信がない。
成長するにつれ遥はどんどん可愛くなっていく。
そういう可愛い女の子が、信頼とおそらく多分好意をもって自分を見ている。
好意は『親切で頼もしい隣の家のお兄ちゃん』程度だと思うが。
だけど『お隣んちの女の子』に対していつまでも『お兄ちゃん』でいられるか
自信がないのだ。
話しかけられても眩しくて、まともに目もあわせられない。
あの子の背中に羽がある。
聡真君だけに見える不思議な羽は一目ぼれの象徴で、まだ健在である。
それが見えるということは彼女は彼にとって特別なのである。
初めて会ったときからずっと。
「遥・・・」
小さな声で名前を呼ぶ。

24 :
「聡真くん!おかえり!」
ひょこっと門のかげから遥が飛び出す。
「うわっ!!」
思わず2、3歩後ずさる。
(びびびびっくりした・・・!)
「な・・・何してるんだ、こんな時間に」
「エヘヘ、びっくりした?」
さらっと肩口で髪の毛が揺れる。夜風に乗ってほんのりシャンプーだかリンスだかの香りがする。
重ね着のヒラヒラしたチュニックとその丈と同じくらいのショートパンツからすらりとした生足が覗いている。
聡真くんは動揺した。
「う、こんな夜中に危ないだろ・・・どうかしたのか?」
遥はちょっと憂い顔で聡真君を見る。
「うん・・・この頃聡真くんになかなか逢えないから、逢いに来たんだ」
「・・・」
かーわーいーいー
ちょっとぼーっとして二の句が継げなかった聡真くんを遥が上目遣いに覗き込む。
「聡真くん?元気ない?」
今すぐ抱き締めてキスしてむにゃむにゃむにゃ・・・したい衝動をぐっと耐える。
柔道で培った忍耐力だ。
今だって休みの日には朝から晩まで道場に通っている。煩悩を追い出すためだ。
「仕事とか忙しくてな、その、ちょっと疲れてるけど、元気だよ」
「ほんと?・・・じゃあ、じゃあさ」
遥の目が一瞬下を向いて、それからまたまっすぐに彼を見た。
「私、聡真くんに嫌われてない?」
どきゅーーん
と音がしたような気がした。
しかし聡真くんの理性はまだ耐えていた。
「そ・・・そんなわけないだろ、何言ってるんだ」
遥の顔がぱっと輝き、彼の手を取った。
「よかった!」
心底嬉しそうな笑顔に心を鷲掴みにされ、そのとき聡真くんの理性がぽーんとどこかへ飛んでいってしまった。
「遥」
手を引き寄せ、抱いた。
柔らかくて小さな体から香る甘い匂いを吸い込めば眩暈がするほど、全身の血が逆流する。
「えっ?そうま・・・くん」
その小さな桜色の唇に自分の唇を重ねる。
柔らかく、しっとりと温かい感触に触れた途端に、たまらなくなって何も言えずきつく抱き締める。
驚いた遥は、でも抵抗しないで彼の胸に抱かれていた。
(キス・・・聡真くんと・・・うわあ!)
ほっぺたがかーっと熱くなる。
ちょっと苦しかったけど、その腕の中はとても気持ちよかった。
(聡真くん、大人のにおいがする・・・それに・・・大きくて、あったかい・・・)
遥は胸を高鳴らせ、うっとりと目を閉じた。

25 :
切なそうな溜息が頭上から聞こえて、腕が緩んだ。
「ごめん」
聡真くんはとても後悔していた。
俺の理性はクッキー程度か。これほどまでに脆いとは。
(こんなことをして、俺はロリコンで変態で気持ち悪くて刑で・・・)
ずっと昔に、母たちの変態に対する見解を聞いたときの気持ちが蘇った。
もう、『お兄ちゃん』でいられない。
遥に嫌われてしまう。
一時の衝動で今までのことを全部ぶち壊してしまったような気がした。
でも、この腕の中の女の子をどうしても離したくない。
緩めた腕の中で遥が見上げる。
罵られるのだろうか、泣かれるのだろうか・・・嫌われる事には変わりない。
「・・・遥、ごめんな・・・俺は」
遥は一瞬、聡真くんが泣きそうな顔に見えて胸がぎゅっとなった。
「どうして謝るの?」
聡真くんの広い背中に手を廻して強く抱き締め、胸に額を押し付けた。
「私、聡真くんが好き。ほんとだよ。だから、とっても嬉しい!」
「はる・・・」
「聡真くんもおんなじだよね?」
少し潤んだ瞳がまっすぐに彼を見上げた。
心の中にすとん、と入ってくる。
今まで生きてきた中で一番素直に、心を打ち明けた。
「・・・うん・・・好きだ・・・大好きだ、遥」
あの子の背中に羽がある。
その羽ごともう一度抱き締めて、キスをした。
おしまい

26 :
自分がニヤニヤしたいがためn(ry
GJ頂いて調子に乗りました。えろくないのにごめんなさい。
ご清読ありがとうございました。

27 :
ニヤニヤしてしまったじゃないかGJ!
甘酸っぱい話に転げ回るってのもいいもんなんだぜ。

28 :
真面目な人には裏があるより
塔宮拓斗と日夏晶はクラスメイトだった。
拓斗の兄がゲイで晶の兄と結婚(?)してしまったことによる不思議ななりゆきで今は彼氏彼女の『ふり』をしている。
彼の両親は兄の嗜好が弟にも伝染するのではないかと疑っていて、その疑いを払拭するためにたっくんはタラシになったのだが、
遊びまわるのに疲れたのか、今は晶と付き合っていることにして真面目な小市民生活を取り戻している。
晶は『ふり』ならいいか、と貸しを作ったつもりでいたが、拓斗と歩いていると見知らぬ女子から足を踏まれたり罵倒されたりする。
一度や二度ではない。
その度に拓斗は晶に謝るが、やっぱり理不尽な怒りがこみ上げる。
「自分の尻は自分で拭けよ」
「そういうなよ、悪かったって」
「いい迷惑だまったく・・・」
「今日家に来いよ、母さんがケーキ用意してるってさ」
拓斗の両親は晶をとても気に入っている。
晶のおかげで弟が改心して真面目に戻り、断絶していた兄との関係修復にも一役買ったことになっている。
一抹の罪悪感が胸をよぎった。
「・・・わかった」

「お邪魔します」
礼儀正しく挨拶して家に上がったが、拓斗の母は不在であった。
「急用で出かけたって」
拓斗はメモをひらひらさせながら、ネクタイを緩める。
「ま、座れよ、紅茶ぐらい淹れてやる。ケーキはあるから心配するな」
「・・・うん」
家に二人きりというのはちょっとまずいかな、と思ったけれど、ケーキに釣られて居間のソファに座った。
しばらくしてトレイにカップとケーキを乗せて拓斗がやってくる。
「チョコとフルーツタルトどっちがいい?」
「フルーツタルト」
紅茶を淹れるしぐさもなかなかに決まっている。
ナンパ成功率92%だけあって、見た目はかっこいい。
拓斗を見るとなぜか胸がざわめき落ち着かない。
手や肩が触れ合うとドキドキする。
この頃晶は自分が何か別のものに変化していくような、そんな気持ちをもてあましていた。
この気持ちが何なのか自己分析しなくても分かる。
だけど自分の気持ちの変化を認めたくなかった。
(タラシのたっくんめ)
晶は心の中で毒づいた。
「どーぞ」
「どーも」
しばらくケーキと紅茶に専念する二人。間が持たないなと思いながらケーキを間食してしまった。
紅茶を啜りながら隣に座った拓斗をちらりと見る。
目が合い、慌ててそらした。
「何?」

29 :
「おばさんいつ帰ってくるの?」
正面を向いてつぶやく。
拓斗はニヤリと笑って晶の三つ編みを引っ張り、よろけて肩をぶつけた晶の手からカップを取り上げテーブルに戻すと
腕の中に抱いた。そして素早くキスをする。
初めてのキスに一瞬、反応が遅れた。
「何をする!」
晶は赤くなって抵抗する。
「帰ってこないよ、急用で実家に泊まり」
ニヤニヤと笑いながら晶の三つ編みを解く。ゆるく波打つ髪が肩に広がり拓斗は隠れてしまった耳朶に口を寄せる。
「ちなみに親父も今日は出張」
耳に息を吹きかけるように囁かれ、晶はくすぐったさに首をすくめた。
「やめてってば!急に何を・・・!」
無理やり腕を解いてソファの端に逃げる。拓斗は髪留めのゴムを指でもてあそびながら、真面目な顔で晶を眺める。
「髪下ろしたほうがいいよ。可愛い」
「ば・・・!馬鹿!もう帰る!」
立ち上がる晶の手を拓斗は素早く掴み、脚の間に座らせるような形でもう一度腕の中へ抱き締めた。
「なあ日夏・・・もう『ふり』はやめようよ」
「ああ!もーやめる!別の子探せば!」
拓斗はちょっと傷ついた顔をして暴れる晶を抱き締める。
「そじゃなくて・・・ほんとに付き合おうってこと」
晶の抵抗がはたと止まった。
「はぁ〜?」
「・・・俺、日夏に本気なんだけど」
抵抗がないのをいいことに拓斗は後ろからぐっと抱きしめる。
耳の後ろに吐息があたり、ぞくりとして硬直した。
「・・・タラシの本気なんて信じらんねーよ・・・」
動悸がひどい、布越しに伝わってしまうのが嫌で晶は密着しないように腕で隙間を空けるのに必だ。
俯いて顔の赤さを隠した。
「じゃあ、信じさせてやる」
拓斗は晶を抱き上げ、自室へ向かった。
「わ!何、やめて、下ろして!」
見上げた拓斗の顔は怒っているようだった。
口を一文字に結んで晶を見もせずに階段を上り、ドアを器用に開けて閉めるとベッドの上にやや乱暴に下ろした。
「いて・・・!」
乱れたスカートが捲れ、白い太ももが覗く。

30 :
拓斗はすごい勢いで晶の制服を脱がしにかかる。
「ちょっと!やめて!やめて!嫌だ!」
晶は必で抵抗したが、片手で両腕を掴み脚の上に跨った拓斗は、タラシのたっくん本領発揮で、瞬く間に上着、
スカート、ネクタイ、ブラウスを剥ぎ取った。
実に器用な手際だったが、キャミソールのストラップに手が掛かったとき、晶はついに泣いてしまった。
「・・・嫌だ・・・」
掴まれた手が痛い。
涙がぼろぼろと目尻からこめかみに流れた。
嫌だ、こんなの、キャラ違うし。
掴んだ手が緩むと掌で目を覆って涙を隠した。
「泣いてもやめないぞ」
拓斗は手をどけて晶の目を見た。
真摯な眼差しが晶を射すくめ、身体がこわばって動けない。
「俺は日夏が好きなんだ・・・お前だってそうだろ?」
「ちが・・・!」
反論しようとした口を、唇が塞いだ。
舌が晶の口を犯す。犯すという文字がぴったりな、長く猥褻なキスだった。
やっと開放されたとき、唾液が糸を引くのが見え、下腹部がぞくりとざわめいた。
「は・・・」
熱い息を吐き出し、酸素を求めて喘いでいる間に、拓斗はさっきとは違う優しい手つきで残りの衣服を脱がせ、自分も脱いだ。
なぜか抵抗もせず、目を閉じて胸を隠した。手の下で心臓がはっきりとその場所を示している。
認めたくない、この胸の高鳴りを。
だけど私は確かに恋をしている。
晶は観念して、目を開けた。
男の身体がそこにある。引き締まった細身の身体の下のほうは視界に入れないようにして、言った。
「・・・認める。だから、せめて優しくしてくれよ」
精一杯強がったつもりだったが声が震えた。
この後どうなってしまうのか、怖かった。BL小説で知った知識ではあまり役に立たないような気がする。

31 :
「日夏」
拓斗の唇がまた降りてくる。
優しく唇を挟んで、合わせるだけのキス。
掌が晶の輪郭をなぞるように手を這わせ、小ぶりな乳房を柔らかく掴んだ。
「あっ・・・」
揉みながら手を滑らせ、その頂を指で挟む。
刺激を受けて固く尖っていくその場所を濡れた舌が包んだ。
転がすように舐めながら、もう片方の手が脇腹を撫でる。
肌が粟立つような感覚が全身を奔る。
「ん・・・あっ・・・」
(うわ、変な声がでる・・・)
あわてて口を手で塞いだ。
「くっ・・・んっ・・・ぅぅ・・・」
きゅっと強く乳首を吸われ、電流が走ったように晶は仰け反った。
「ぅあっ!やあっっ・・・!」
「声、聞かせて、可愛いよ・・・」
続けて乳首、その周りにきつく吸い付き、赤い花びらのように跡を残した。
その度にあられもない声をあげ、晶はびくびくと跳ねた。
やがて唇が臍の下へと降りていく。
晶は朦朧としながら膝を閉じ、身を捩る。
「あ・・・?だ、め・・・」
しかし拓斗はかまわず、薄い茂みに隠された花芽を舌先で突付く。
「ひ・・・!やあぁっ!!」
膝を割り、脚の間に顔を埋めると周りからゆっくりと舌でなぞっていった。
「だめ・・・だめ・・・!ああっ!」
濃いピンク色の襞を舐める。その奥からとろりとした液体がこぼれてくるのを啜りあげた。
なまめかしい水音に耳を塞ぎたくなる。
「すごい・・・溢れてくる」
「や・・・あぁっ!んんっ!!」
体験したことのない感覚に、意識が白く霞んでいく。
(なに・・・これ・・・?)
震えて跳ねる腰を押さえつけられ、どろどろと自分が溶けていくような錯覚に襲われた。
(きもち・・・いい・・・!)
「あぁぁっ・・・!!」
快感がびりびりと脳天をつきぬけ、すべてが遠くなる。
一瞬だったのか、長い時間だったのか、薄く目を開くと、拓斗の顔が目の前にあった。
「あ・・・」
脚の間に固くて熱い塊が押し当てられている。
「いいか」
「・・・うん」
身体を割るように塊がぐいぐいと押し入ってくる。
晶は痛みに身構え、固く目を閉じた。
「つかまってろ」
晶は素直に腕を拓斗の首に廻し、どちらともなく唇を合わせる。
押して、引きながら少しずつ先端が埋まっていく。
「は・・・」
息を吐いた瞬間に、一気に奥まで貫かれた。
「う・・・!っつっ!!はあぁっ!」
異物に押し開かれる痛みに晶は泣いた。
「痛い・・・痛いよ・・・塔宮くん・・・」
「日夏・・・」
拓斗はじっと動かず、晶が慣れるのを待った。
その間、何度もキスをする。晶はされるがまま、でもだんだんうっとりとした心地になって溜息をついた。

32 :
合わせた肌が温かい。指を滑らせ首筋と背中に触れてみた。
「・・・動くよ」
「う・・・!あ・・・」
激しい動きに振り落とされそうで、首に廻した手に力を込めてしがみつく。
拓斗は浮いた背中を抱き締め腰を深く挿した。
「ひぁっ!!」
(お腹が・・・破れる・・・!)
挿されるたび、痛みとは違う甘い痺れが下腹部から背筋へと伝わっていく。
拓斗は身体を起こし、晶を膝の上に乗せるように下から貫きながら乳房に吸い付くと、はしたない音を立てて舐めあげた。
「あぁあ!あん・・・っぁああ!」
「う・・・すげ・・・きつい・・・!!」
拓斗は苦しげに眉根を寄せ動きを早め、再び晶を横たえるとそのまま腰を引き寄せ、熱い肌を打ち付ける。
溶け出した蜜が繋がりからこぼれ、シーツに染みを作っていく。
晶は自分を貫く熱い塊が膨張していき、そこから波のようなうねりが押し寄せるのを感じ、拓斗にしがみつく。
「はぁっ・・・!ああぁ〜〜〜っ!」
「く・・・!日夏っ!!」
拓斗は2、3度がくがくと腰を揺さぶると深く挿し、荒ぶる熱を開放した。
身体の中の一番奥でその熱を感じながら、晶は覆いかぶさる男の重さを知った。

「・・・晶って呼んでいい?」
「・・・好きにすれば」
先に衣服を整えた晶はそっぽを向いて言った。
動くたびに身体の奥が痛くて、甘い。
(私は変わってしまったのかな)
まだ仄かに残る身体の熱が頬を赤くした。
拓斗はジーンズに、だらしなくシャツを羽織ってベッドに腰掛け、晶の手を引いて膝の上に座らせた。
「ちょっと・・・!」
「晶」
まだ赤い頬に唇をつけ、せっかく結った三つ編みをまた解く。
「やめてよ、もう!」
「こっちのほうがいいって、絶対」
「知るか!・・・あ」
「ん?」
「そういえば・・・!避妊は・・・」
晶は顔面蒼白になって拓斗を睨む。
「心配しなくても大丈夫、ちゃんとしたから」
避妊具の空袋をひらひらさせて、ゴミ箱に投げ捨てた。
空気が抜けるように脱力して、胸に倒れこむ。
拓斗はにっこり笑って晶を優しく受け止めた。
(タラシめ・・・)
腕の中は思ったよりずっと温かくて気持ちがいいので、まあいいか、と晶は目を閉じた。
おしまい

33 :
自分がn(ry
スレタイにふさわしいでしょうか?お粗末で申し訳ない。
「〜がある」シリーズの続きはいつでるのかなぁ
掲載時に見逃してしまったので単行本を待ってるんですが・・・。

34 :
GJ!
なんつーか文体が川原作品に合ってるなー。
自分は本誌読んでないんで単行本になってない作品は知らないんだが、まだ単行本化されてないのもあるんだな。
人生の先の楽しみが増えたぜw

35 :
GJ〜!エロい。エロいですよw
ぜひ、もっと他のお話でもご披露お願いします

36 :
こんなところに天才が居た!gjgjgj!

37 :
規制が・・・

38 :
規制解除きた。投下します。
中国の壷より
とある夜、志姫は義理の兄の不審な様子を飛竜に相談していた。
「なー、最近変なんだよ、巧兄ちゃん」
壷から出てきた古代中国人は眠そうにあくびをする。
「また女装でも始めたのか?」
まったく興味のなさそうな相槌にちょっと腹を立てて志姫は言った。
「そじゃなくてだな・・・」
義理の兄、仁科巧はこの頃志姫を避けている。
同じ家に住んでいるのだから避けようもないのだが、以前は勉強をみたり
庭仕事を手伝ってくれたり、出張に行けば土産を買ってきてくれたりしたのに
この頃は、仕事仕事で休みの日まで仕事に行っている。
まるで家に居るのを避けるように。
たまに家で顔をあわせると、こわばった顔で白々しい挨拶なんかをして、すぐに部屋に篭ってしまうのだ。
さっきだって部屋をたずねても、仕事がとか疲れてるとか言ってすぐにドアが閉じられる。
そのくせ父や母とは普通に喋っているのだ。
「ふ〜ん・・・」
「な、変だろ?」
飛竜はあくびをかみして志姫の話を聞いていたが、一つ大きな伸びをして、志姫の頭をぽんぽんと叩いた。
「まあ巧は大人なんだから色々あるさ。お前のようなお気楽人間とは違うのだから」
「あんだと?」
「・・・でも、ま、気になるというのなら様子を見てこよう」
飛竜が壁をすいっとすり抜けていった後、志姫はしばらく考えた。
(人任せじゃなくて、やっぱり自分で聞いたほうがいいかな)
志姫は立ち上がって部屋を出た。
巧は部屋に閉じこもってぼーっとしていた。
ベッドに転がり天井の一点をぼんやり見ている。
突然天井からにゅっと人が出てくる。
「!うわあぁ!!」
「よう、巧」
巧は驚いて後ずさり、ベッドボードに頭をぶつけた。
「飛竜!そんなところから出てこないでくれ!心臓に悪い・・・」
「ははは、気にするな。たまには意外性も必要だろう?」
飛竜はニヤリと笑ってベッドに着地する。
体勢を立て直した巧は飛竜の隣に座って溜息をついた。
「どうしたんだ、急に。また壷に何かあったのか?」
飛竜は巧の顔を黙って見つめた。
「・・・な、何?」
「・・・志姫が」
巧の表情が曇る。思わず飛竜の両肩を掴んで揺さぶる。
「・・・志姫がどうかしたのか!?」
飛竜はまたニヤリと笑う。
「必だな」
「あ、いや・・・」
ぱっと手を離し視線を外す。
「志姫が、気にしていたぞ。お前の様子がおかしいとな」
「・・・」
「嫌われたんじゃないかと心を痛めていたぞ」
そんなことは言っていない。だが反応が面白いので適当なことをでっち上げた。
はっと飛竜を見る。
そして長々と嘆息した。
「・・・そうじゃないんだ・・・そうじゃなくて・・・」
額に手をあてて俯く巧の背中に飛竜はのしかかって言った。
「何か悩みでもあるのなら、同じ男同士、相談にのってやらんこともないぞ?」
巧はちらりと飛竜を見る。
ニヤニヤした表情に、あれは絶対面白がっている顔だと思ったが巧は観念して話し始めた。

39 :
「・・・実は一人暮らしを始めようかと思っていて」
「ほほう」
「志姫には悪いけどこの家で一緒に暮らすのはもう・・・耐えられない」
がちゃん
「え?」
いつの間にかドアが開いていて、そこに呆然と志姫が立ちすくんでいた。
足元にトレイと缶ビールとまっぷたつに割れたグラスが転がっている。
志姫はがっくりと肩を落としうなだれている。
「志姫!違うんだ!」
「・・・巧兄ちゃん、疲れてるからビールでもと思って・・・ごめんよ」
志姫はしゃがんで割れたグラスを素早くトレイに乗せ、静かにドアを閉めた。
「志姫・・・」
巧は呆然と閉まるドアを眺めた。
飛竜はいつの間にか消え、部屋には巧一人が残された。
志姫はベッドに突っ伏して微動だにしない。
泣いているのかと思ったがそうではなかった。
(巧兄ちゃんは私のことが嫌いだったのか)
心の中をざっくり斬られたような痛みが走った。
変な壷と共にこの家にやってきたのがいけなかったのか。
壷が壊れたとき色々迷惑かけちゃったからなのか。
(でもあの時、同じバイオリズムの巧兄ちゃんがいて本当に助かったんだ。
だけど、巧兄ちゃんは迷惑だったのか・・・)
「おい志姫」
「・・・」
飛竜は志姫の髪の毛を引っ張る。
「巧の話は途中だったぞ。話は最後まで聞くべきじゃないのか」
「・・・」
扉をノックする音が聞こえる。
「巧だぞ」
志姫は布団をかぶって潜り込んでしまった。
やれやれ、という顔で飛竜がドアを開けた。
青い顔の巧が立ち尽くしていた。
「志姫・・・」
飛竜は巧の背中を押すとベッドの脇まで連れてきた。
「さあ二人で話し合え」
ちらりと巧を見る。
「そうだな、俺は疲れたので今晩はもう壷で休むことにする。起こすなよ」
たちまち、飛竜は壷へ帰っていってしまった。
部屋には巧と志姫だけが残された。
「あの、さっきのことだけど・・・」
「・・・」
人の形に膨らんだ布団がもぞりと動いた。
巧は深呼吸して言った
「嫌いなわけじゃないんだ」
がばと志姫が布団をめくる。
「・・・え?」
赤い顔の巧をまじまじと見つめる。
「一緒にいると・・・色々我慢できなくなりそうで、辛くて家を出ようかと、思ったんだ」
「巧兄ちゃん・・・」
嫌われたわけではなくて志姫はホッとした。
「じゃあ、家出なんてしないんだね?」
「・・・お母さんに申し訳ない」
志姫はうーんと考えた。
お母さん??家を出たら母さんが気を悪くするってことか?
私は巧兄ちゃんはここにいて欲しい。でも我慢できなくなりそうだという。何がだろう?
「俺は、君のことが・・・好きなんだ、だから・・・」

40 :
巧の告白はタイミングが悪く、考え込んでいる志姫の耳には入らなかった。
「あ、そーか」
志姫は起き上がって巧の肩に手を置いた。
「我慢しなけりゃいいんだよ、そしたら兄ちゃんも出て行かなくてすむ。万事解決だ」
「し、志姫・・・」
ごくりと巧が喉を鳴らした。
「本当にいいのか・・・?」
ニカと笑って志姫は聞いた。
「で、巧兄ちゃんは何を我慢してる・・・」
言い終わる前に巧の唇で塞がれた。
(???)
口の中に舌が入り込んで、舌を絡め取られる。
(な、何するだ!?)
志姫は再び布団に押し倒される。
そのままもごもごと口の中をまさぐられる長いキスの途中で我に帰り、巧の身体を押し戻そうとしたが、重くて固くて動かない。
やっと唇が離れ、巧は志姫の耳元に顔を埋め囁いた。
「好きだ・・・志姫」
やめろ、とか待て、とか言うつもりだったが、息を整えるのがせいいいっぱいで、その切なげな熱い声に胸の奥が締め付けられた。
(ほ・・・ほんとかよ!?)
好きだ、という言葉は面映くもあるが、展開が急すぎて思考が追いつかない。
(で、何でこーなる?どうしよう・・・ひ、飛竜!)
真剣な巧の眼差しにどぎまぎと視線をそらし、飛竜に助けを求めるが志姫の位置からは壷は見えない。
それにこんなところを見られるのもちょっとどうだろう、と思っているうちに耳元から首筋に熱い唇が降りていく。
「うわっ!」
肩を掴んで力を込めたが、その腕ごとベッドに押し付けられ、鎖骨を吸われた。
「にーちゃん、待って・・・っんっ・・・!」
今まで体験したことのない感覚が背筋を上った。
性急で情熱的な愛撫に志姫は翻弄され、抵抗の力を失くしていく。
上着が捲り上げられ、白い胸元があらわになりそこにまた唇が降りていく。
控えめなまだ固い胸を覆うブラジャーを乱暴に外すと、その先端にぬるりとした感触が生き物のように這い、
くすぐったさに身を捩るとそこをきゅっと吸い上げられた。
「あ!うっ!!」
びくびくと身体が震え、痛みのような違うもののような刺激がそこから流れてくる。
唇と舌と手のひらで、志姫の乳房を存分に味わいながら巧の手は下半身へ伸びていった。
ジャージに手をかけ、一気にずらして引き抜く。
「え、まて!あっ」
白いショーツの上から指でその形を確かめる。
割れ目に沿って優しく撫でると志姫の口から小さく悲鳴が漏れた。
ショーツの脇から無骨な指が差し込まれ、柔らかな薄い茂みの奥の小さな突起に触れる。
「ひゃ・・・あぁっ」
びりびりと電流のような快感に思わず固く脚を閉じ、恥ずかしさに身体を折って背を向けた。
巧は後ろから抱きかかえるように手を廻し再び下着の中へ手を入れ、クリトリスとその向こうへ指を滑らせると、
そこは少しずつ潤んで指を受け入れ、包むように柔らかい。
跳ねる身体を押さえて胸を揉みながら、柔らかなそこを優しくさすっていくと、志姫の口から喘ぎ声が漏れた。
「ぁあ・・・は、ぅん・・・」
後ろから唇で耳朶を軽く挟み、囁く。
「志姫・・・気持ちいい?」
「あ・・・たく・・・兄ちゃ・・・もぅ・・や・・・」
目尻に涙を光らせ、汗と混ざってこめかみに吸い込まれていく。
巧は愛しさと凶暴な欲望に苛まれ、二本の指でクリトリスを挟み力を入れると志姫はのけぞって痙攣した。
「あっーー!!」
荒い息をつきがくりと力の抜けた身体を受け止め、それから巧は起き上がって服を脱いだ。

41 :
志姫の湿った下着を剥ぎ取ると脚の間に固く張った陰茎を擦りつけゆっくりと愛液をまぶす。
「う・・・あ・・・?」
(何・・・?熱い・・・)
先端を中心に押し当てた。
「・・・愛してる、志姫」
「ぁ・・・あ!」
身体を割って入ってくるその大きさに、痛みに志姫は悲鳴を上げそうになった。
「い・・・いたい・・・!あぁっ」
その口を再び巧が塞いだ。
「んーっ!んーっ!!」
狭まる壁を押しのけて一気に根元まで埋めると、巧は唇を離した。
「志姫・・・」
「ぅ・・・うう・・・」
ゆっくりと巧の腰が動き始める。
合わせた肌はだんだんと汗ばんで、摩擦抵抗が増している。
志姫は固く握ったシーツを離し、巧の背中に手を廻してぎゅっとしがみ付いた。
巧は志姫の肩口に額を当て腰の角度を変えながら奥まで突く。
「あっ・・・はぁっ・・・んうっ」
息遣いと水音が部屋に響く。
切なげに眉をよせた巧の顔から汗がぽたりと志姫の頬に落ちた。うっすら目を開け、目と目が合う。
少しだけ泣きそうなその顔に、志姫は胸の奥がまた締め付けられた。
(巧兄ちゃんは・・・そんなに私のことを)
痛みの中からほんの少しだけ快感が上ってくるのを志姫は感じた。
(知らなかった)
最初は小さな波のようなその気持ちがだんだん広がり、繋がったところから痛みと異物感とぞくぞくするような快感が駆け巡る。
自分から巧の唇を求め、巧がそれに応えた。心ごと熱くおし包むような口づけが切なく、身体が震える。
(愛してるとか分からないけど、こういうの・・・)
深く挿されるたびに嬌声がこぼれ、全身で巧にしがみ付いた。
(・・・いやじゃないよ、にーちゃん)
「あっ・・・あっ・・・あああっ!!」
「・・・くっ!」
だんだん動きが早くなり、やがてひときわ大きな波が押し寄せると同時に巧は腰を引き、志姫の白いお腹の上に精を放った。
(熱い・・・!)
ぐったりと身体を投げ出した志姫のお腹をティッシュで拭って始末すると、巧はぎゅっと志姫を抱き締めた。
喜びと後悔と罪悪感とない交ぜになった表情で巧が呟く。
「志姫・・・ごめん」
「謝るなら最初からやらなきゃ・・・うんにゃ」
(そーじゃなくて・・・)
志姫は背中に手を廻し抱き返すと、緩くぽんぽんと叩いて呟いた。
「好きだよ、巧兄ちゃん」
「えっ?」
「だからいーんだよ・・・」
触れ合った肌は温かくて居心地が良くて、志姫はそのままとろりとした眠気に身をゆだねた。
「おい巧」
つられてうとうとしていた巧は冷や水をかけられたように覚醒した。
恐る恐る振り向くと意地の悪い笑顔の飛竜が立っている。
「ひ・・・飛竜」
「まじめな男が思いつめると危ないねぇ・・・淫行だぞ?」
「み、見てたのか!」
青くなったり赤くなったり忙しい顔色を眺め、不遜な中国人はニヤリと笑う。
「まあ私にはこいつを見守るという役目があるからな・・・次からは見ないでおいてやる、何と言ったかな、武士の情けだ」
狼狽する巧を尻目に飛竜は壷の中に入っていった。
「手を出したからにはちゃーんと責任とれよ」
捨て台詞のような、だが笑いの滲んだ飛竜の言葉に、巧は腕の中で眠る志姫の頭をそっと撫でる。
「勿論、そのつもりだよ・・・」
おしまい

42 :
読んでくださって有難うございます。
私一人が書いててごめんなさい。
GJ頂いて嬉ションしそうな勢いです。

43 :
GJ!
ちょうど中国の壺 読み返してたとこだったよ。

44 :
hosyu

45 :
架空の森 より
かつての少年は大人になって私の前に現れた。
背も随分伸びて見知らぬ男のようだが、私に笑いかけるその顔に少年の面影が残っている。
怪獣の着ぐるみを着た私を呵呵と笑い飛ばした元少年を、清々しく思った。
男はこれくらい度量が広くあったほうがいい。
森へと行く道は昔と変わらぬ景色を残している。織人は私の後を少し遅れてついて来る。
寡黙であった。
もう昔のようにのべつまくなしには喋らない。大人になったのだなと私は感慨深く思った。
祖父母に会いたいというので、父と母、そして祖父母の眠る墓前に連れて行く。
「・・・そうですか、お二人とも・・・」
「ばーさまが亡くなって、その後じーさまも・・・最後まで仲の良い夫婦だったよ」
織人と並んで手を合わせる。
(じーさま、ばーさま、少年がこんなに立派に大きくなりましたよ)
神妙に手を合わせる織人を見て、もう少し長生きしてほしかった、と詮無きことを考えた。
森には白い花が咲いている。
空木(ウツギ)、卯の花だと祖母が教えてくれた。
散るその花を着ぐるみの手のひらに載せしばらく、もう会えぬ人達を偲ぶ。
「苑生さん」
頭上から呼ばれ、私は振り向いた。
被り物を捲られ、頬に手が添えられる。乾いていて温かい。
「…何だ?」
「泣いているのかと…」
織人は寂しげに微笑し私の頬を撫でた。
あまり気安く人に触れるものではない、と思ったがその仕草はあまりにも自然で、拒否する理由も暇もなかった。
「泣いてなどいない…」
私は頭を引いて手から離れ、また花を見た。風が木を揺らし花を散らす。
幼い少年が去った後も、祖父母が逝ってしまった後も、森は変わらず、花は咲いては散り、季節を繰り返す。
この花が散る度に、私はいつも取り残されたような気持ちになる。
どこにも行けず、どこにも行かず。
「…苑生さん」
「何だ」
「私と結婚してください」
風がびょうと吹き、花が幾つも巻き上げ飛ばされた。
私は驚いて答えに詰まる。
「何を…藪から棒に」
大きな手のひらが着ぐるみ越しに私の手を包んだ。
「私は最初から決めてましたよ、苑生さんをお嫁さんにすると」
織人は着ぐるみを着たこんな姿にも動じず、全く真面目に私を見つめている。端から見れば滑稽な、まるで架空の風景だろう。
「お前は…」
お喋りで頓狂な顔をした少年はいつの間にか凛々しく立派な大人になった。眩しいほどに。
「…私には勿体無い、もっと若くて美人の嫁を探せ」
「いいえ、私は苑生さんが良いんです」
織人は私の髪を撫でる。
「苑生さんは私のことが嫌いですか?」
「嫌ってなどいない」
「では、結婚しましょう」
織人はにっこりと笑い、私には断る理由が無くなった。
そして墓前に再び報告をした。

46 :
久々に一人ではない食事を取り、湯を遣った後、仄暗い部屋で布団の上に向かい合って座った。
織人に着せた祖父の浴衣は丈が足らず少し窮屈そうだった。
「苑生さん…」
織人の手は熱く私を抱いた。
生まれてこの方こんなにきつく、異性に抱かれた覚えはない。
これから起こること全て未知の世界だ。少し、怖い。
やがて熱い手が私の顎を捉えた。口づけをする…のであろう。
色事に疎い私にもそのあたりまではわかる。
織人は微苦笑を浮かべ私の額に口づけた。
「…こういうときは、目を閉じて下さい」
言われるまま目を閉じると、柔らかく唇が触れた。
唇を挟み、なぞるように包む。短くない間そうしてかたちを確かめ、それから舌が唇を割った。
差し込まれた舌は私の舌に絡み唾液が混ざり合い、それは甘く感じた。
私はどうしていいのか判らず、為されるがままであった。
ただ先程から背筋を上下する手のひらの動きが、ぞわぞわと私の内側を震わせた。
布団の上に横たわり、浴衣の合わせに手が差し込まれる。素肌に触れられ私は思わず身を硬くした。
「大丈夫ですよ…」
織人は耳元で低く囁く。
ああ本当に、見知らぬ男の声だ。お前は確かにあの少年なのか。
早鐘のような心臓が痛いほど私を打つ。
剥き出しの肌の上を滑る唇も手も止まることなく私を撫で、だんだん熱をもつ呼吸が苦しくなる。
いつのまにか解けた帯が、私と織人の間で絡み合っている。
「あっ…」
胸の先が甘く痺れる。ぬめる舌先で押され、吸われ、私はついぞ出したこともない声をあげてしまう。
「綺麗です…とても」
熱のこもった囁きも私の肌を刺激する。一度許してしまった淫らな声を止めることは出来なかった。
「んんっ…はぁっ」
腿の内側にむずむずと走る衝動に織人の手が触れる。
「や…」
閉じた脚の間に手を滑り込ませ撫でさすりながら中心へと近づいていく。
私は思わず織人の手を掴んだ。

47 :
「ま・・・待ってくれ」
「…待てません」
掴んだ手はあえなく外され、織人は再び私に口づけた。
「私は早く大人になりたかった…貴女より背が高くなって、貴女に相応しい男になって」
織人の瞳が私を映す。
「この時をずっと待ちわびていたんです・・・だからもう、待てません」
虹彩は息をのむほど美しく、私だけを見つめている。
「好きです、苑生さん」
私はその思いに足る人間であろうか?そう思わずにいられない。
だが確かに心が動いた。
私は喜怒哀楽が平坦で、表現に自信がない。
けれど、嬉しい。とても。
私は目を閉じ織人に身を任せ、手が中心に触れるのを感じた。
「あっ…!」
指が何かに触れ、その瞬間電気が走った。
指の動きは筆舌尽くしがたく、感電したようにびくびくと身体が跳ねてしまう。
そうしている間にも私の身体のあちこちに、唇でしるしをつけていく。何と器用なことだろうか。
「う…あぁっ…ん」
為す術もなく、身体は私の意思を離れて勝手に動き反応する。
身体の中心からとろりと何かが溶け出していくのを感じた。
「苑生さん…!」
覆い被さる身体が熱い。その熱に浮かされて、私は彼を抱き締めた。
「お…りと」
声がかすれて上手く名を呼べなかった。
織人は何度も口づけ、私の入り口に熱を押し付けた。
「…いいですか」
頷くかわりに彼に口づけ、それに応えた。
身体を割る熱が体温と混ざり私の温度を上げて行く。痛みに耐えかねしがみつき、背中に爪を立ててしまった。
「あ…ああ…」
どのくらいそうしていただろうか。時間の感覚が曖昧になり、世界に二人だけになったように感じた。
ぴったりと合わせた肌から鼓動を伝え合い、呼吸がひとつになり、充足する幸福感に包まれる。
私の中にいる織人が小さく震え、やがて動き出す。
初めは優しく、だんだん激しく私を掻き回し、ひとつになった呼吸は乱れ、身体が揺れた。
はしたない声をあげ獣のように絡み合い、痛みより強く彼を欲した。
繋がりから沸き上がるざわめきが全身を呑み込み、私を高みへと押し上げていく。
そして織人が私の一番奥へと深く沈む。何度も、何度も。
「…!!」
「あ…ああっ…あぁあっ!!」
震えと共に打ちつけられる熱い迸りを、私もまた震えながら受け止めた。

遠のいた静寂が戻ってくる。
私は泣いていた。
理由はわからない。心はこんなに安らかなのに、涙が止まらない。
織人は私を胸に抱き、子どもをあやすように髪を撫でていた。
「苑生さん」
「…何だ」
「私はずっと、苑生さんのそばにいます」
ふと、祖父母の仲睦まじい姿を思い出した。あんな風になれるだろうか。
そうなりたいと、私は思った。
「そうか・・・・・・そうしてくれ」
私は涙を拭き、笑った。
「よろしく頼む」
夜明けの鳥が鳴くまであと少し、私たちは抱きあって眠った。
おしまい

48 :
妄想が止まらず書いてしまいましたが、まとめにこのカップリングありました。
しかもあちらのほうが数万倍素敵。orz
とりあえず保守かわりに・・・。

49 :
>>48 いえ、こちらもとっても素敵です^^ ありがとう

50 :
hoshu

51 :
架空の森好きすぎます!もっともっとお話が読みたいな〜と思ってました。嬉しい!

52 :
殿様は空のお城に住んでいる より
お国許での一件も解決し、江戸に戻った殿様と鈴姫は、久々に奥向のご寝所で褥の上に向き合って座っておりました。
隣の間に控えている松島は、今夜こそ姫の「はい」が聞けるとそれは期待しておりました。
行灯の明かりは薄暗く、ぼんやりと二人を照らし、鈴姫はにこにこと、殿様ははにかみながら対面しています。
ぽんぽこ山で採れる巨大松茸のお蔭かどうか、はたまた内部の不正を正したからか、秋吉田藩はどうにか財政を立て直したのでございます。
「やっと子作りですね、殿様」
「う・・・まあ、その」
どうしてそうあからさまなんでしょう。殿様は赤面してむにゃむにゃと口ごもります。
「では、ふつつかですが宜しくお願いいたします」
鈴姫は三つ指をついて深々と殿様にお辞儀をしました。
面をあげると、殿様は鈴姫の手をお取りになり優しく引き寄せました。
されるがまま腕の中にもたれ、柔らかく抱き締められながら、鈴姫は婚儀の前に松島から見せてもらった巻物を思い出しました。
それは嫁入りの際の心得書のようなもので、いわゆる床入りの手順と心構えが書いてありました。
一つ、殿方のなさることに逆らわぬこと
一つ、つつしみをもって受け入れるべし
一つ、・・・えーとなんだっけ?
鈴姫はあまり興味がなかったので、流し読んだだけでまったく内容を覚えていませんでした。
しかも読んだのはずいぶん前、それまで殿様は奥向へお渡りになっても清く正しく眠るだけだったので、今宵が正真正銘、本当の初夜でございます。
(まあ、なんとかなるだろう、殿様だし)
なんら根拠のないことを姫が考えているとき、殿様は鈴姫の帯をそっと解きました。
緩んだ着物の合わせから真っ白な素肌がこぼれ、殿様の喉がごくりとお鳴りあそばしました。
その柔肌に触れる指先がちょっとだけ震えているのを鈴姫は感じました。
(殿様、緊張してるのかなぁ)
呑気に構えた鈴姫の身体を横たえ、殿様が覆いかぶさります。
鈴姫はちょっと重いなと感じながら、いつもと違う殿様の真剣な顔つきに、今更ながら胸が高鳴りはじめたのでございました。
「ふ・・・う・・・あ・・・」
殿様の大きな手が肩や背中を確かめるように撫でさすり、やがて控えめな乳房を揉みしだきますと、鈴姫は思わず声を上げてしまいます。
しかし次の間に控えている松島のことを思い出し、あわてて片手で口を塞ぎました。
(と、殿様!待って・・・!)
そんな鈴姫の気持ちなど斟酌せず、殿様はどんどんと先に進みます。
揉みしだきながら乳房の先を舐め、舌で転がすように突起をなぞると、そこは固くなり敏感に感度を上げていきます。
「あ・・・あっ」
塞いだ手の隙間からこらえきれずに声が漏れ、鈴姫は生まれて初めての感覚にその身を翻弄されたのでございます。
柔らかな褥に広がる黒髪が乱れ、全身が軽く汗ばみ身にまとっていた寝間着が纏わりつきます。
鈴姫はもう片方の手で強くそれを掴んでいました。何かを掴んでいないと自分がどこかへ行ってしまいそうだったのでございます。

53 :
蠢く舌が存分に、まだ幼さの残る身体を舐め尽すと、殿様の手が脚を割って滑らかな太腿をさすりました。
鈴姫は、今頃になって心得書と共に見せられた浮世絵を思い出しました。
それは世間では春画、枕絵と呼ばれる男女の睦合いの様子などを描いたものでございます。
現代でいうなれば、18禁画像と申せましょう。
(これから、殿様と、あのようなことを・・・)
あられもない格好で慎みもなく抱きあう男女の姿を、自分と殿様に重ねてみました。
さすがの鈴姫も恥ずかしく、頭に血が上ってくるようでございました。
さて、殿様の手はするりと秘所に辿り着き、おずおずとその裂け目に指を差し入れます。
「ひゃっ・・・」
思わず身を竦める鈴姫を片手で抱き締め、赤らんだ頬に口をお寄せになりました。
無骨な指が鈴姫の一番柔らかいところに侵入したのですから、驚きはごもっとも。
殿様は出来るだけ優しく、まずは指一本で秘裂にそって動かしました。
そこはまだ潤みが足らず、鈴姫は少し痛みを感じ眉を顰めてしまいました。
そんな様子をみて、殿様は指を抜き、口元へ持っていくとご自分の唾液で指を濡らし、再び秘所へと差し込んだのでございます。
「あ・・・」
ぬるり、とどぜうのように指が動き、花芯に触れ、びりりと刺激がはしりました。
「ひ・・・ああっ・・・と、のさま・・・!」
指はそのまま何度も何度もその場所を往復し、その度に魚のように跳ねる身体を殿様の胸にぶつけてしまいます。
声を抑えるのも忘れ、必で殿様にしがみつき、すがっていたのでございました。
秘所はいつしかとろとろと蜜を出し、殿様の指にまとわりつかせていました。
程なく、殿様は着物をお脱ぎになり、硬くそそり立つ逸物を蜜に濡れた花びらへと押し付けになったのです。
「姫、鈴姫・・・」
朦朧としていた鈴姫に殿様は唇を重ね、熱く吸いました。
そのひと時、鈴姫は殿様の気持ちが流れ込んできたように思いました。
それはとても温かく、熱く、鈴姫の心を包んだのでございます。
「殿様・・・」
ぐっと身体を押し開き、殿様自身が侵入して参ります。
鼻からまくわうり?それは出産のときだったか、と若干錯乱しつつとにかく痛みに耐え涙を滲ませながら鈴姫は、
今宵二度目となる、生まれて初めての感覚に翻弄されておりました。
しっかり掴んだ殿様の背に恐れ多くも爪を立ててしまいましたが、鈴姫は無我夢中でございました。

54 :
(は、入った?)
ようやく動きが止まったものの、固い異物は鈴姫の中で脈打ち震えておりました。
薄目を開けて殿様を見ると、ほつれた鬢髪も悩ましく、眉根を寄せてしばし目を閉じておられました。
殿方も痛いのであろうか?と鈴姫は心配になり殿様の頬にそっと触れました。
「痛いのですか・・・?」
殿様は目をお開けになり、少しだけ微笑まれると
「いいえ、気持ちが良すぎて、我慢していたのです」
と仰せになり、おもむろに動き始めました。
最初は距離を測るように優しく、やがて肉襞を捲るように激しく、鈴姫の身体を貪ります。
「あっ・・・ああ・・・う・・・ああっ!」
肌と肌が打ち合い、ぺちぺちと響く音を聞きながら、激しい動きに振り落とされぬように殿様の広い胸にしがみつきました。
鈴姫にとってはこんなに大きなものが入る場所が、自身の中にあったなんて信じられないような気持ちでございました。
お腹の下のほうから淫らに這うようなざわめきが痛みを押しのけて広がっていきます。
ざわめきは緩い波のように身体を伝い、合わせた肌のすべてからまた別の波を広げあっていきました。
「・・・鈴!」
「ああ・・・!!」
大津波のような激しさに朦朧となった鈴姫の中で、熱を持った逸物がより大きく膨らんだようでした。
打ち付けるような腰の動きが早まり、身体ごと押し込むような一刺しが鈴姫の一番奥まで届き、瞼の裏が真っ白になりました。
痙攣のような動きと共にきつく抱き締められ、鈴姫は流れ込む熱を感じながら、気を失ってしまったのでございました。

ふと目覚めると、目の前に殿様のお顔がありました。
鈴姫に腕枕をし、すやすやと眠っておられます。
行灯の火は消され、障子越しの月明かりが淡く青白く部屋を染め、まだ夜更けのようでございました。
殿様のほつれた鬢髪をそーっと直して差し上げて、鈴姫は知らずに微笑んでおりました。
(こーしていると、私達もなかなかに夫婦らしくなったような気がする)
名実共に、夫婦になったというのに暢気なものでございました。
(松島は起きているだろうか?)
松島に「はい」と言おうと口を開いたが、健やかな寝息を聞くうちに殿様の邪魔をするのはやめようと思いなおし、口を閉じました。
だるい身体の奥の熾火のような名残の熱が心地よく、殿様の胸に額を預け、目を瞑ります。
すぐに寝息が重なり、鈴姫は程なく夢の世界へと旅立たれたのでございました。
おしまい


55 :
ご清読ありがとうございました。
自分がニヤニヤ(ry)ですが、誰かに読んでいただけるのは幸いです。
嬉ションしながら書いてます。

56 :
あいかわらずGJです!
職人さん、増えるといいね

57 :
萌えました。このカップルも好き♪

58 :
進駐軍(GHQ)に言うからね! より
おじさん、じゃなくて、志貴さん。
七緒さんはベッドに横たわる志貴さんを見下ろした。
ぐっすりと眠るその顔にそーっと触ってみた。
反応がないので、ぷにぷにしたり軽くつまんでみたりもした。
起きそうにはない。
七緒さんは黙ってベッドに潜り込んだ。
パジャマ越しの体温が暖かく、志貴さんの大きな肩に額をつけて目を閉じた。
今まで何度か、こうして勝手に進入して寝たが、志貴さんは目覚ましがなるまでまったく目を覚まさない。
七緒さんは早朝決まった時間に目覚め、志貴さんより早くベッドを出て行くため、ばれた事は無い。はずだ。
(ごめんね、志貴さん)
ちょっとその温かさを貸してください。
七緒さんは時々眠れなくなる。
いつも明るく前向きな七緒さんだが、そこは人の子、毎日365日いつもそうではいられない。
両親はとうに亡く、祖母も身罷ってしまった身の上の寂しさだろうかと七緒さんは分析する。
一人でいた頃は、なんともなかった。
きっと朝から晩までバイト三昧と食べるに事欠く生活のお蔭で、くたくただったからだと思う。
ここに来てから初めて、眠れなくなるほどの孤独感を知ってしまったのだ。
衣食足りて孤独を知る。などと戯れに言ってみたりする。
そんな時、ふとおじさんの部屋を覗いた。
もし起きてたら、話し相手になってもらおうと思っていた。
でも、ただただ静かに眠るその姿に誘われて、なぜかついふらふらと布団に入ってしまった。
誰かの体温がこんなにも安らかな気持ちにさせてくれることを、七緒さんは初めて知った。
妙齢の女子が男性と同衾するのは道徳的に如何なものかとは思うものの、志貴さんなら、もし万が一間違いが起こっても。
起こっても、いいのだ。
規則正しい呼吸の音を聞きながら、じっと眠くなるのを待つ。
ひとつ深い呼吸が聞こえ、志貴さんが寝返りをうって七緒さんの方へ向いた。
「…あの、七緒さん?」
七緒さんは驚いてぱちっと目を開ける。
「あ。」
目が合って、非常に恥ずかしい。
七緒さんは言い訳しようとして言葉に詰まった。
「どうしました?」
さすがおじさん、大人の余裕だ。小娘程度が一つ布団にいても動揺すらしない。
「あの、えーと」
寂しくて眠れないのです、などと言えるはずも無く。
「あの…」
「…」
何十秒かの沈黙が七緒さんに重くのしかかった。怒られるだろうか。

59 :
志貴さんはおもむろに口を開く。
「夜中にふと目覚めるとですね、君が隣に寝ている、ということが何度かありました」
志貴さんは低音の良い声でぼそぼそと喋った。
そうか気づかないはずなかったか。
「…すみません」
「謝らなくていいです、そりゃあびっくりはしましたけどね」
七緒さんの視界いっぱいの広い胸が、呼吸のたびに上下する。
男性の布団に潜り込むという大胆なことをしているくせに、今更その距離にドキドキと胸が高鳴った。
「ただ僕も男なので…何というか、危険です。できたらこういうことは止したほうがいい」
叱るでもなく、静かに言った。
「…眠れなくて」
そのまま黙ってしまった七緒さんを見て、志貴さんは小さく溜息をつくと、腕を伸ばして七緒さんの頭をのせた。
「…何かお話でもしましょうか。といっても、経済について語っても詰まらないでしょうし…おとぎ話という年齢でもないですし…」
そう言いながら、優しく頭を撫でた。
おじさんにとって私は全然子供で、きっと箸にも棒にも引っかからないんだろうなぁ。
それはちょっと悔しいような、気がする。
七緒さんは少しだけ、おじさんに意地悪をしたくなった。
「あの、志貴さん」
「何ですか?」
「私を、抱いてください」
志貴さんは絶句して、髪を撫でる手が硬直して止まる。
「な…」
「私、婚約者だし、いいですよね?」
志貴さんは固まって、それからガラガラと崩れた何かを必に立て直しているような表情をしていた。
「…こ、婚約といってもそれは世間を欺くための方便というやつじゃないですか」
「私のこと、嫌ですか?」
七緒さんはじっと目を見ながら、動悸の高鳴りを聞かれませんように、と思った。
何とか立て直しに成功したようで、志貴さんはいつもの表情に戻った。
志貴さんは七緒さんに対する気持ちをごまかして、せいいっぱい「落ち着いた大人」のように振舞おうといつも努力している。
そうしないと、咲き始めた花をポッキリ手折ってしまいそうになるからだ。
「…君はまだ若くて、これからいい出会いがあるかもしれないでしょう。自分は大切にしなくちゃいけません」
「答えになってませんよ」
よく見ると、志貴さんの瞳は動揺していた。それが急に可愛く思えて、七緒さんは息が掛かるほど近く、顔を寄せた。
「そ、それに、僕は君よりずいぶん年上で、おじさんです」
「それも答えになってません」
フットライトのわずかな明かりでも分かるほど、志貴さんの顔は赤らんで、まるで少年のようにうろたえている。
「う…」
ここが引き時だと分かっていた。冗談だよ、本気にした?って言えばいい。
志貴さんは怒るかもしれないけど、きっと黙って笑うだけで許してくれるだろう。
「私は好きです、志貴さん」
だけど七緒さんはするりと本心を言ってしまった。

60 :
志貴さんがどんな顔をしたのか分からない。目を閉じてしまったから。
そして、キスをした。
軽く、唇を合わせるだけのキス。
志貴さんの唇が少し開き、途中から息も出来ないほど強く、七緒さんの心ごとぎゅっと抱き締められた。
長い長い大人のキスの後、やっと息継ぎをする七緒さんの耳元で志貴さんが囁いた。
「大人を、からかっちゃいけませんよ」
少し掠れた、耳に掛かるその声にぞくりと甘く身体が震え、身を預けた。
パジャマの上から身体を撫でる手が熱く七緒さんの控えめな胸に触れたとき、思わず声が漏れた。
「あ…」
そのとたんに志貴さんは動きを止め手を離し、目を閉じ、それから七緒さんの額に口づけた。
「?」
志貴さんは嘆息し、身体を離す。
「もうちょっと…大事にしましょう」
「志貴さん…私は」
かまわない、という七緒さんの言葉をさえぎって、志貴さんは強い口調で言った。
「うん、わかってます。だけど、こんなふうに流されて君を抱いたら、きっと後悔する」
「…」
「大事にしたいんです、君の事を」
それは志貴さんの精一杯の告白だった。
七緒さんの頬を撫で、慈しむように見つめる。
大きな手は乾いていて、温かい。
志貴さんはやっぱり大人なんだな。
七緒さんは目を閉じ、自分の行動を恥ずかしく思った。
でも、もう少し傍にいたい。
「でも、じゃあ、今日はここで寝てもいいですか」
志貴さんはもう一度嘆息し、腕枕を差し出す。
「…眠れそうですか?」
優しい声が降りてきて、七緒さんは目蓋の奥がつーんと痛むような、熱いような感じがして額を胸に押し付けた。
「多分…」
少しだけ涙が出て、志貴さんのパジャマを濡らしてしまった。
志貴さんは子供をあやすような手つきで、七緒さんが泣き止むまで髪や背を撫でてくれていた。
「眠れないときは、羊を数えるといい」
真面目な志貴さんの口調に、思わず小さく吹き出した。
「ずいぶん古典的な…数えたことあるの?」
「数えることに集中しすぎて、夜が明けたことはあります」
たまらず、笑った。
「嘘!」
クスクスと笑う七緒さんに、ちょっと安堵の表情で志貴さんも笑った。
ぼそぼそとそうやって話しているうちに、七緒さんの目蓋が重くなり、やがて安らかな寝息が聞こえ始める。
それを確かめてから、志貴さんはそっと頬に触れる。
「おじさんは、今夜も眠れそうにありませんよ…」
それでも目を閉じて、同じ夢を見られるようにと願い、羊を数え始めた。
おしまい

61 :
ご清読ありがとうございます。
この歳の差カップルに
妄想がとまらにゃいのでもう一本書いてしまいました。
エロです。
ええかげんしつこいですが、しばらく投下させてくださいませ。

62 :
(志貴さんとこんなふうになってどれくらいだろう)
七緒は濃厚な口づけの最中にふと考えた。
おじさん、と自分のことを呼ぶけれど決して枯れてるわけではなくて。
むしろ激しく貪欲に七緒を求めている。
身体を求められるのは嫌ではない。繋がっているその間は、彼の総てが自分を向いている。
眼差しも吐息も身体の熱も全部自分のため、と感じるのは嬉しく思う。
ただどうして自分を抱くのか、それだけが聞けなかった。
理由を曖昧にしたまま身体を重ね、そして朝になれば二人とも何事もなかったように振る舞うのだ。
それはとても寂しい。
向き合って座し、七緒を深く貫いたまま、唇を侵す。
「ぅ…んんっ」
混ざり合って零れた唾液が顎を伝い喉を滑っていく。
乳房を握るように揉みしだくその指で赤い突起をきつく摘まれると、悲鳴をあげてのけぞった。
痛みと快感の狭間で身体が揺らぐ。
「あっ…ああっ!」
「くっ…!」
尻を掴んだ両手の指が食い込み激しく上下に揺さぶる。
そのたびに一番奥まで当たる尖端が衝撃と共に痺れる愉楽を送り込む。とめどなく洩れる嬌声が男の血を滾らせ、さらに強く彼女を求める。
下腹部を突き破られるような恐怖すら感じ、七緒は志貴の首にしがみついた。
絡む襞は彼女の意思とは関わりなく彼を捉え、痛いほどに締め付けながら頂点へと導いていく。
「志貴さん…もう…!」
止めて、なのか、駄目、なのか、七緒自身も分からない。髪を振り乱し、涙を流し、譫言のように名を呼びながら身体を擦り寄せた。
それに応えるように律動が早まり、強い衝撃が七緒を刺し貫いた。
「ひ…あああああっ…!!」
弓なりにのけぞった身体の奥がぎゅっと収縮し、迸る彼の精を搾り尽くす。
意識が真っ白に飛び、平衡感覚を無くした七緒はそのまま崩れ落ちた。
抱き止めた志貴は、汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔に口づける。
荒ぶる欲望を出し切ってもなお七緒の中に自身を収めたまま、細く頼りない身体を抱き締めた。
「七緒さん…」

63 :
最初はこんな事になるつもりもなかった。
望まない結婚から逃れるための嘘が、いつの間に真に変わってしまったのだろう。
こんな暴虐を強いても彼女は黙ってそれを受け入れた。
天涯孤独となった七緒には、他に行き場がないと思っているのかもしれない。
そんな境遇に付け込んででも、総てを自分のものにしたかった。
「おじさんは卑怯者なんです…君が断れないと知っててこんな事をしている」
聞き取れないほどの低い呟きが静寂に消える。
心の中に秘めた本当の想いは伝えることができない。
歳の差がそうさせるのかもしれない。何より彼女の口からはっきりと拒絶を聞くのが怖いのだ。
理由も言わず、ただ身体を求める。
彼女の身体に深く刻みつけておきたい。自分なしではいられないほど、欲望と快楽で繋ぎ留めておきたい。
何度も抱いた身体はもう、彼の形を覚え、目覚めた女の体に変化している。
普段の飾らぬ振る舞いと、夜の淫らな姿態のギャップは彼の欲望を、夜毎激しく掻き立てる。
相手なしではいられないのは、果たしてどちらだろうか。
「う…」
七緒が小さく呻き、志貴の背に触れた。
「志貴さん…」
身体を動かすと熱を失った陰茎がずるりと抜けた。奥から混ざり合った体液が零れ、シーツに染みを作る。
七緒は力を込めて志貴を押し倒し、広い胸に凭れ耳をつけ、鼓動を聴いた。
志貴は逆らうでもなく、彼女を抱いたまま沈黙している。
(こうやって、人の気持ちが聞けたらいいのに)
胸は温かく、鼓動は規則正しい。
七緒は志貴の心が知りたかった。

64 :
「志貴さん…私はここに居たくて、いるんです」
「…どうしたんですか、急に」
「こういうことするのも自分の意志です」
「七緒さん…」
心臓が一瞬、大きく脈打つ。
「私は志貴さんが、好きです…だから」
七緒は顔を上げ志貴を真っ直ぐ捉えた。
張り詰めたような切ない表情が僅かに歪み泣き笑いのように変わる。
「おじさんは卑怯者なんかじゃないよ」
志貴は目を閉じ嘆息する。
(いや僕はやっぱり卑怯者だ…君にそんな顔をさせて)
「ごめん、七緒さん。僕は臆病で…ずっと言えなかった」
髪を撫でそれから頬に触れる。
「君のことが好きなんだ」
涙を溜めた瞳からひと粒が零れ、手の甲を伝う。
「…うん、そうだといいなって、思ってた」
七緒は目を覆い、掌で涙を拭いた。
「七緒さん…」
幼気な子供のような仕草に胸が詰まる。
「こんなおじさんで良かったら、ずっと…一緒にいてくれませんか」
コクリと頷き、また涙が零れた。
「還暦だって米寿だって祝ってあげるよ…だから、長生きしてね」
泣き笑いのその表情が清々しく美しい。
抱き締めた腕の温もりを互いに感じながら口づけた。
(やっと始まったんだね、わたしたち)
あの夜明けの寂しさを、もう感じなくて済む。
七緒は安心して目を閉じた。
おしまい

65 :
職人さん、GJ!私の好きな2人です・・ありがとう

66 :
GJありがとうございます
ほかの職人さんもきてほしいなぁ
GHQでは佐藤君×玲子さんとかもつい妄想してしまった。
自分の変態ぶりに泣けます。

67 :
ドングリにもほどがある より

ドングリ仲間(?)の亘理さんと友成君は今日も公園に木の実拾いに来ていた。
この秋は豊作なのか、ドングリや胡桃がたくさん採れる。亘理さんはホクホクであった。
「艶があって形の良い大きなものを選ぶんだ」
「うん」
友成君は亘理さんの指導のもと、せっせと木の実を拾う。
こういう単純作業の間、友成君は執筆中の小説について考えている。
現役高校生で新進気鋭の若手作家という二足のワラジを履いている友成君にとって、精神面のケアはとても大切だ。
執筆に行き詰まったときは木の実拾いに限る。正確には亘理さんに会うに限る。
彼女はクラスメートである。
特殊な精神構造をしているのか、非常に楽天的でユルくてヌルくて、例えて言うなら脱力系女子、精神的な軽業師。
そして、友成君のインスピレーションの素である。
彼女といると、いい具合に肩の力が抜けてリラックスでき、結果ポコポコとアイデアが湧いてくるのだ。
創作を生業とする人々にとってのこういう人を例えて『芸術の女神(ミューズ)』と呼ぶらしいが、言うと調子に乗るので決して言ったりはしない。
頭の中をフル回転させながら黙々と木の実を拾う友成君の頭にポツリと水滴が落ちる。
「あれ?」
空はいつの間にか雨雲に覆われていて、ポツポツと雨が降り出した。
「あー降ってきた、友成君傘持ってる?」
「持ってない、出るときは晴れてたし」
「天気予報で降るって言ってたよ、友成君がきっと傘持ってくると信じてたのに〜」
何だその他力本願。
友成君は呆れてものが言えなかった。
雨はだんだん強まってすぐには止みそうにない。
「とりあえず、あそこで雨宿りしよう」
二人は近くの東屋に駆け込んだ。
屋根と床だけで壁がないが、風が吹かなければ雨はしのげる。
ベンチに座り頭や服の水滴を払っていると、亘理さんがハンカチを差し出した。
「使いなよ、私二枚持ってるから」
「ありがとう…て、ハンカチは用意出来るのに何で傘は持ってこないんだ?」
亘理さんはヘラヘラと笑ってごまかした。

68 :
公園は人気がなく、しとしと降る雨の音で覆われている。
何となく黙って、小説のことなどを考えている彼の傍らで、亘理さんは拾った木の実のチェックに余念が無い。
「これは大きい、これはやや大きい…」
「何やってるんだ?」
「大好評のドングリ数珠のために選別してるんだ」
大好評じゃない。と思ったがあえて何も言わぬが花でしょう。
そのうち胡桃の殻でも数珠とか作りそうだな…
友成君はとりあえず無難に褒めておいた。
「意外に器用なんだな」
「そう!?やっぱりそう思う?私こういうの向いてるのかな〜ハンドクラフト作家とか良いかも」
いやそれにはセンスが致命的ではなかろうか、と思ったが黙っておいた。
(へんなやつ…)
友成君は横目で亘理さんを観察する。
真っ直ぐな栗色の髪が少し濡れて、しっとりと背中にかかる。
柔らかな輪郭を描く頬はなめらかで、小さなえくぼが浮かび、いつも上向きの口角は桜色の唇を形よく見せている。
(黙ってたら可愛い…よな?)
友成君は自信なさげに自分に同意を求めた。
「友成君、友成君!これ、超デカい!」
亘理さんが急に振り向いたので友成君はびっくりして焦った。
「あ、ああ、これは大きい…」
亘理さんが親指大のドングリを差し出し、動揺したせいだろうか受け取ろうとして手が滑った。
「あっ!!」
コンコンと軽い音がして床を転がるドングリを二人は慌てて追いかける。
ベンチの下に転がっていくドングリをつかまえようと立ち上がり、下を覗こうとした友成君と同じ動作をしていた亘理さんの頭が
ゴインとぶつかった。
「いてっ」
「いたた…も〜何やってんの」
お互いに額をさすりながら顔を見合わせる。
「ご、ごめん…」
思わぬ至近距離にドキッとする。
さ、桜色…
友成君は亘理さんの唇から目が離せない。
髪と同じ色の瞳がまばたき、彼を怪訝そうに見ていた。
すこし開いた艶やかな唇に、吸い寄せられるように顔を近づけて、それを重ねた。
ほんの一瞬、すべてが遠ざかる。
顔を離した後、二人は無言で立ち尽くしていた。

69 :
やがて雨は小止みになり空が明るくなってくる。
「あ…ドングリ…」
ふいに亘理さんはしゃがんでベンチの下に手を伸ばし、ドングリを拾い上げた。
元通りにベンチに座り、木の実のザルを抱えて何事もなかったかのようにドングリの選別を続ける。
俯き加減の亘理さんの耳が赤い。
「わ、亘理」
名を呼んだものの、後の言葉が続かない。
何というべきか、いくつも浮かび上がって消える。作家生命の危機を感じるほどボキャブラリーが枯渇していた。
それでも友成君は頑張って何とか言葉を紡ぎ出す。
「…ごめん、つい、魔が差して…」
しかし選択した言葉はよろしくない。
亘理さんは無言である。
「(唇が)可愛いと思って…そうしたらなんかその勝手に体が」
「可愛い?」
亘理さんはピクリと反応し、たちまち明るいオーラがパァァと広がる。
「う、うん(唇が)」
「そーか〜」
亘理さんはにんまりと笑い顔を上げる。
「知らなかった…そんなこと誰にもいわれたことなかったし」
うふふと不気味に笑う彼女を見て、あ、何か余計な事言ったかも、と思ったが、泣いたり怒ったりされるよりはいいかと安堵する。
「それで友成君の劣情に火をつけてしまったわけだね?」
「劣情って…なんだよそれ…」
脱力して肩を落とす。
ボジティブシンキングにもほどがある。
「ま、いいよキスくらい。減るもんじゃなし」
(いいのかよ!)
ぽんと肩を叩かれ、ヘラヘラしている亘理さんを見て、泣いたり怒ったりのほうがマシだったかも、と友成君は思った。
しかし友成君は知る由もない。
髪に隠れた亘理さんの耳がまだ真っ赤なままだということに。
いつの間にか雨は止んでいた。
「雨、止んだみたい。今のうちに帰ろうかな」
「ドングリ拾いはいいのか?」
「濡れちゃってるし、また来週くればいいや。じゃ、また学校でね。あ、ハンカチはいつでもいいよ」
亘理さんは手を振りスタコラと行ってしまった。
その背中がだいぶ遠くなってから、小さく呟く。
「そりゃあ、減るもんじゃないけどさ…」
もーちょっと恥じらいとか、ドキドキする、とか無いんだろうか?
「らしいっちゃ、らしいけど」
柔らかかった唇の感触を思い出し、友成君の頬に血が上る。
(いや、雰囲気に流されただけだ、多分)
その考察には自信が無い。
ベンチの上に特大ドングリがポツンと一つ残されている。
今度は落とさないように手のひらに転がしながら、木の実の色みたいなくりりとした瞳を思い出す。
(…やっぱりちょっと可愛かったかも…いやいや)
その時、あたかも木の実が落ちてくるかのように、インスピレーションがころりと降ってくる。
ここのところずっと悩んでいた、新作のタイトルが決まった。
『ドングリにもほどがある』
うん、これでいこう。
ドングリを握り締め立ち上がる。
友成君はにっこりと口角を上げて、雨上がりの公園を歩き出した。
おしまい

70 :
>67
初々しいカップルもいいですね。GJ!!

71 :
いやっほう!どんぐりカップル大好きなんだぜ
GJ!

72 :
ご清読ありがとうございます。
友成くんの見た目が結構好きです。
ブレーメンあたりから絵柄ちょっと変わりましたよね。

73 :
GJ!!!職人さんありがとう!!!

74 :
hoshu

75 :
レナード現象には理由がある より
「蕨、お前もT大理Vを目指せ」
「えぇっ!?」
そう宣告された蕨さんの驚きは推して知るべしである。
「飛島君も知ってると思うけど…わたしの成績じゃちょっと…無理だと思う」
「俺が特訓してやる、大丈夫だ」
飛島君は懇切丁寧に猿でもわかるように教えてくれる。
彼は、超優秀な頭脳を持っている。おまけに運動神経抜群で、容姿端麗、大病院の一人息子ときたもんだ。
よーするに、なろうと思ったらたぶん何にでも、苦労せずになれる。
きっと教師になっても完璧なんだろうなぁ、と蕨さんは思った。
飛島君に勉強を見てもらうようになってから、蕨さんの成績は劇的に向上したからだ。
向上したのは、優秀な専属教師のおかげだけではなく、蕨さんのたゆまぬ努力の賜物でもあることを彼女自身は気づいていない。
そーしてとりあえず受験は終わった。
試験当日はコンディションも良く、できることは全てやったという充実感をもってやり遂げることが出来た。
後は発表まで、運を天に任せる、という心境である。
飛島君は涼しい顔をして、試験前も試験後も変わりない様子である。
そんなある日の放課後、飛島君のうちに来ないかと誘われ、蕨さんはやってきた。
今までも、勉強のために何度か来た事がある。
高級そうな家具が並ぶ、広くてすっきりとした部屋である。
「ほら、お茶」
「あ〜ありがとう…」
湯のみを両手で持ってずずずと啜り、は〜と溜息をつく。いつもいいお茶を淹れてくれる、とても美味しい。
「やっと受験が終わったね」
「ああ、もし浪人しても、また俺が勉強を見てやる」
「う…まあやれることはやったし…飛島君のおかげで頑張れたよ。ありがとう」
蕨さんは心から感謝して、ぺこりと頭を下げた。
顔を上げたとき、飛島君の表情がやや翳っているのを蕨さんは目ざとく見つけた。
「…どうかしたの?具合でも悪い?背中さすろうか?」
「…いや」
平凡な、と自負している蕨さんは『癒しの手』奇跡のヒーリングパワーの持ち主である。
具合の悪い人に手をかざすと、あーら不思議、痛みやストレスを癒してくれるのだ。
十分非凡だと飛島君は思っているが、本人はいたってのんきである。
飛島君曰く、蕨には医者の適性がある、と判断しての冒頭の宣告である。

76 :
はっと蕨さんは不安そうな顔をしてつぶやく。
「もしかして、私が邪魔してたから試験が…?」
「そうじゃない、そんなことない。俺はいつも完璧です」
飛島君はぬけぬけと、且つはっきりと言い、蕨さんをじっと見た。
「そ、そう?ならよかった」
なんとなくその目つきに気圧されて、こわばった笑顔で答える。
「蕨、誰かと付き合ったことある?もしくは誰かと付き合ってる?」
突然の質問に驚いて、飛島君の顔をまじまじと見た。
「そ…そんなこと…なんで急に言い出すの??」
飛島君は真面目な顔で蕨さんの視線を受け止めた。
「八神と小此木、付き合ってるらしい」
「ええ!?あの二人が…そーかぁへぇ〜」
そういえばいつも一緒にいるなぁ、と気さくな友人達の顔を脳裏に浮かべ蕨さんはのんびり思った。
「で、さっきの質問だが」
「な…ないよ!そんなこと聞いてどうするのさ」
「…いや、単なる個人的興味」
「そ、そうですか」
妙な沈黙が二人を包む。
蕨さんはもぞもぞとクッションに座り直し、お茶を啜る。
「…蕨」
「はい」
「おれは童貞なんだ」
「はい?」
僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る。
「そっちじゃない」
思わず高村光太郎を暗唱した蕨さんに飛島君のツッコミが入る。
蕨さんは鞄から辞書を出しその言葉のページを読んだ。
どうてい【童貞】
(1)男性が、まだ女性と肉体的交渉の経験をもっていないこと。また、その男性。
「―を失う」
(2)カトリック教会における修道女。
(2)じゃないよな…と蕨さんは思い、そして顔を赤らめた。

77 :
「何を…言ってるんだ!へ、変だよ…どーしちゃったの?」
ずい、と飛島君が近づき、蕨さんの手を取る。
「俺は何をするにでもそれほど苦労なく出来てしまうんだ、だけどこれはまだやったことがない。相手がいないと出来ないから」
「そ、それは彼女でもつくってその人と行えばいいのでは…」
飛島君はちょっと泣きそうな顔をして、蕨さんを押し倒す。
「鈍感」
「うわっ」
「俺が、彼女にしたいのは、蕨だ」
真剣な顔が近づいてくる。
「ま…待って!ほら、私らまだ高校生だし、そういうことはまだ早いのではむgy」
喋っている最中に、唇を塞がれる。
もごもごと抵抗するが両腕も身体もがっちりと抑え込まれ身動きが取れない。
首を動かして、やっと唇から逃れると再び説得を試みる。
「そ、それに今の言い方だと、やりたいから彼女にしたい、みたいにしか聞こえないよ」
ちょっとだけ腕の力が緩む。
「…俺は恥をしのんで、童貞だと告白したのに…うまく出来なかったら悪いと思って」
あれ、口説いているつもりだったのか。それにしても順序が違う。
「出来がどうかなんて私だってわからないよ…いや、そうじゃなくて、それ以前にこういうことはお互いの同意がないと…」
「じゃあ、聞かせてくれ。俺は蕨が好きだ、お前と…したい」
(やっぱりやりたいんじゃないか)
飛島君は口をつぐみ、蕨さんを穴が開くほど見つめている。その眼差しに圧され目を逸らした。
動悸が痛いほど胸を打ち続けている。
(そんなこと、考えたこともなかった。お友達じゃないか、わたしたち。そりゃぁ嫌いじゃないけども)
ほんの少し躊躇して、おずおずと飛島君を見る。
「…好き、だと思うけど…それはともだちむgy」
再び熱い唇で塞がれたため、蕨さんは続きをさえぎられてしまった。
(同意したわけじゃない!話は最後まで聞けー!!)

78 :
そんな心の叫びをよそに、飛島君は蕨さんの制服の下に手を入れ、ブラウスを引っ張り出すとブラジャーに手をかけた。
スポーツタイプのハーフトップなのでずり上げればすぐに胸があらわになる。
「!!」
塞がれたままの唇からくぐもった叫びがこぼれ、飛島君はやっとそれを離した。
「やっぱり…見た目より大きいな」
感慨深げに胸を揉みながら、柔らかい頬に吐息をかける。
「ずっとこうしたいって思ってた…」
「ば…馬鹿!やめて、うあっ」
(受験の大事なときに何考えてたんだ!)
触られるたび敏感に固くなっていく胸の先を、コリコリと指で刺激した。
「あっ…やぁっ!」
首筋を吸いながら刺激を続ける飛島君の指や唇の感触にびくびくと身体が震え、もうとっくに腕を開放されているのに抵抗を忘れて
絨毯に爪を立てている。
開かされた脚の間にある飛島君の腰の固いものが服の上から股間を押し、そこからきゅっと甘い何かがこみ上げてくる。
(なに…これ…?)
自分でもわけがわからない。触れられたとたんにぐにゃぐにゃと身体のコントロールが利かなくなってしまう。
「あぁっ」
ぞくぞくと湧き立つ何かが背筋を走り、掌が次にどこへ触れるのか、期待すらしている。
「すごく柔らかい」
耳朶を吸い唇で挟みながら囁く、その吐息も刺激になる。
「は…あぁっ」
制服はたくし上げられ、外気に晒された肌が粟立つ。
その素肌に熱く湿った掌が触れ、胸から腰をなぞり、スカートのホックに手をかけた。
唇で胸を愛撫しながら、器用にスカートを脱がすとショーツの上から指を当てる。
第一関節を曲げ、すこし力を入れると布が滑ってぐにゃりと割れ目へ飲まれた。
「だめっ…」
「濡れてる」
蕨さんは恥ずかしさに顔を覆った。
「いや…」
ぬるむ秘所の形をなぞるように、布ごと指を滑らせる。
「まだ何にもしてないのに」
ぎゅっと奥へ指を差し込む。布に阻まれてそれほど奥には入らないものの、その刺激はびりびりと身体を貫いた。
「ひ…やぁぁっ!!」
「感じ易いんだな…すごくいやらしい体なんだ」
「ち…ちが…ん、くぅっ!」
ショーツをずらして手を入れ、直接指を一本差し込む。
どろどろと溶けているにもかかわらず、そこは受け入れた指をきつく絡め離そうとしない。
「すごい…指を食われそうだ」
「やめ…変なこといわないで…あっああっ」
「なぁ、ほんとに初めて?」
指を二本に増やしてもう少し奥へと差し込むと、柔らかい肉壁が吸い付くように指にまとわりつく。
「あたりまえで…っやぁっ!わたしら、うっ…友達じゃないか!あぁっ、こんなこと、やめて…お願い」
その抵抗を愉しむように抜き差ししていると、息が荒くなり、鼻に掛かる声が甘く響いた。

79 :
「うぅっ…は、ああっ」
理性が快楽に侵食されて、ほろほろと崩れていく。
「やめていいの?こんなになってるのに」
「いや、だめ…んっ…あっ…あっ……ああぁっ!」
軽く痙攣するように身体を震わせると、蕨さんはぐったりと身を投げ出した。
顔を真っ赤に染め、荒い息をつく蕨さんにさっきまで彼女の中をかき回していた指を差し出す。
濡れて光る指をわざと見せ付けるように開いて、粘つくそれを唇へ押し込んだ。
「んっ」
「自分の味、どう?」
「ひや…」
(へんな…あじ…)
顔を背けようとするのを押さえ、指で口の中を犯した。
目を閉じた彼女の泣きそうな、でもどこか陶然とした表情と、指に触る柔らかな舌の感触にぞくぞくと嗜虐心をそそられる。
爆発しそうなほど高まる欲望をこらえられず、飛島君はズボンのファスナーを下ろし自身を取り出した。
蕨さんの腕を取って床に座らせると自分はベッドに腰掛け、朦朧としている蕨さんの目の前に熱く脈打つ自身を差し出す。
「こっちも、同じようにして」
とろりとした目つきがそれを捉え、もはや抵抗もなくゆっくりと彼女の小さな口が開く。
「ん…」
おずおずと咥えこんでいくその表情をみているだけで爆ぜてしまいそうになるのをこらえ、口の中の感触を味わった。
ぎこちない舌がちろちろと小さく茎を舐め、時々歯が当たった。
「う…」
意識と身体は熱に浮かされたようにふらふらと乖離していて、自分が今何をしているのかよくわからなかった。
ただ目の前に差し出されたものを咥え、飴でも舐めているかのように無心に舌を這わせる。
つるつるしたところや、ごつごつしたところや、くびれたところを舌で感じる。
口いっぱいに頬張ったそれは絶えず脈打っていて落ち着かない。
やがて喉の奥に当たる先端から何かがじわりと滲み、その苦味に眉を顰めたとき。
「うっ…!」
小さな呻き声を上げた飛島君の手が頭を掴み激しく前後に揺さぶると、身を折り曲げて小刻みに震え、頭を抱きかかえたまま喉の奥へと精を放った。
飛ぶように喉を打つ液体にむせ、驚いて口を離そうともがく蕨さんを押さえ、全てを出し尽くすとようやく頭を解放した。
「ぶ…げほっげほっ…ううっ」
大部分を飲み込んでしまったが、こみ上げる吐き気に口を押さえ、涙目になりながらむせる蕨さんにあわててティッシュを何枚も
差し出し口に当ててやる。
「げふっ…げほっ…うぅ…」
「わ、悪い…つい」
すっかり冷めたお茶を飲ませてやりながら、飛島君は謝った。
そして蕨さんを抱きかかえると、ベッドへ下ろす。

80 :
「な、なに…」
飛島君は服を脱ぎ捨て、蕨さんの脚に引っかかって残っていたショーツを抜き取ると、両膝を掴んで開き、その中心に顔を埋めた。
「ひゃ…!やぁっ!やだ…!」
まだ濡れそぼっているそこを丁寧に舐める。
薄い皮に包まれた肉芽を剥き、舌で転がすように舐めると、身体が跳ねて震えた。
脳が痺れるような快感に全身が支配され、蕨さんは再び身体のコントロールを失った。
「いや…あっ…ああっ!ああっ!!」
溢れ出す蜜を舐め尽すように啜りながら、肉芽を吸い上げる。
「あ…あぁんっ…あっ…やぁぁっ!!」
痙攣と共に大きく身体が跳ね、硬直し、弛緩する。
飛島君は枕元から小さな袋を取り出すとぴりりと破り、すばやく避妊具を装着した。
「蕨、入れるよ」
「う…あ…?」
舌ではないものが中心にあたっている。
唇は唇で塞がれ、舌が舌を捉える。
今ふたたびの甘い痺れが膜のように思考を覆う。
ず、ず、と侵攻してくる塊が、痛みと共に身体を引き裂いていく。
「は…あぁ…う…」
やがて全てを収めると飛島君は大きく息を吐いた。
「すごく締まって…気持ちいいよ…」
「い…いたい…」
ぎちぎちといっぱいに押し広げられた痛みの奥から、波立つようにさざめく快感にきつく目を閉じる。
(痛いのに…どうして)
動き始めた腰に合わせるように、自分の腰が揺れるのを止められなかった。
「あ…ああっ」
手を伸ばし、縋りつくように飛島君の頭を抱える。そのまま胸に押し付けると唇がきつく乳首を吸い上げ、熱い舌が愛撫する。
「ひ…ああっ!」
(気持ちいい、すごくいい、どうして)
突き上げる快楽にこぼれる嬌声を止められず、夢中で彼を求めて動いていた。
飛島君は挿入したまま蕨さんの片脚を持ちあげその身体をひっくり返すと、内臓が捩れるような感覚に悲鳴を上げる彼女を後ろから貫いた。
「ああぁっ!やだっ!」
「繋がってるところ、よく見える」
きつくシーツを握り締め、恥ずかしさに耐えながらも、心のどこかでうっとりとこの状況を愉しんでいる、そんな自分を感じていた。
獣のような格好で突かれるたび濡れた陰毛がにちゃにちゃと絡み、泡立って白濁した愛液が腿を伝ってシーツにこぼれる。
背中に密着した飛島君の熱い身体が彼女を包み、触れる場所から広がる快楽に白く途切れそうな意識を必で繋ぎとめている。
「ひっ…ああぁ…ああん…!!」
「熱くて…こんなに締め付けて…や…らしいな…蕨の…カラダ!」
「…!ばか…ああっ」
荒々しく打ち込まれる切っ先が一番奥まで届き、そのたびに電流が流れるように全身が痺れる。
何度も何度も角度を変えて執拗に責め抜かれ、息も絶え絶えになりながらもその全てを受け止めた。
「もう…出る…!」
「は…ああっ!あああっ!!やぁっ…!!」
一番深いところで射精の痙攣を感じながら、同時に絶頂を迎える。
お腹の奥がぎゅっと切なく震え、そのまま蕨さんは失神した。

81 :
「蕨、蕨、大丈夫か」
(体がだるい。ここはどこ。)
自分を呼ぶ声にうっすら目を開け、状況を思い出した。
体のどこかしこにまだ快楽の熱が残っている。
飛島君が心配そうに覗き込んでいる。
痴態を晒した恥ずかしさと、無理やりに近い行為に怒りがこみ上げる。
「飛島くんの…馬鹿、変態、これじゃまるで…ご、強姦じゃないか」
「ごめん」
いつもの俺様な態度は鳴りを潜め、殊勝に謝る飛島君の姿に蕨さんはちょっとだけ胸がすっとした。
「でも、好きなんだ、蕨のこと」
真剣な顔で見つめられると、蕨さんも心が動く。
汗で張り付いた額の髪をそっとかきあげる指が、とても優しい。
(飛島君は器用だけど、不器用なんだ)
「…うん」
「付き合おうよ、俺達」
「……うん」
蕨さんは頬を染めて頷く。
「でも、いきなりこういうのは、やだよ」
「わかった。気をつける……だけど気持ちよかっただろ?」
「…うん……あっ!違う!今のナシ!」
ニヤニヤと笑う飛島君に枕を投げつけ、蕨さんは急いで服を着た。
枕のあった場所に、一冊の本が置いてある。黒いカバーに黄色く【成年向け】と書かれた文庫サイズの本だ。
「…何?これ」
手に取ると、タイトルは【女子校生陵辱調教】と見るも猥褻な文字が並んでいる。蕨さんはうわっと放り投げる。
「テキストだよ。予習したんだ。なんせ初めてだったから」
「へ…変態…」
(つーかそのテキスト、何か色々間違ってる…)
飛島君は悪びれもせず、拾い上げ本棚へと仕舞った。よく見るとその手の本がずらっと並んでいた。
(おいおい、普通隠すもんなんじゃないのか?)
「でもやっぱりうまく出来たし、セックスは勉強とかと違って達成感があるなぁ」
飛島君はそう言うと爽やかに笑った。
蕨さんはがっくりと床に手を着く。
(こ、このひとは…。)
天才と何とかは紙一重という言葉が頭をよぎった。
「どうした、蕨」
「なんかめまいが…」
「ハンドパワーは自分自身には効かないのか?」
そういいながら抱き寄せ自分に凭れさせる。蕨さんは逆らわず身体を預けた。
(私の身体どーなっちゃってるんだろう?)
性的な意味で触ったことも触られたこともなかったので、自分の体がこんなに『感じ易い』なんて知らなかった。
さっきまでの自分の行為を反芻する。鳩尾のあたりがきゅんと切なく痺れた。
(気持ちよかった…)
飛島君の掌がするりとまだ熱い頬をすべり、指先で耳朶をなぞる。
「あ…」
ぞくぞくと背筋が震え、小さな溜息を漏らす。
飛島君はニヤリと笑い囁く。
「ところで蕨、次はどんな風が良い?」
蕨さんがなんと答えたかは、飛島君だけの秘密である。
おしまい

82 :
ご清読ありがとうございました。
ムラムラして書いた、後悔はしていn(ry
川原先生ごめんなさい

83 :
エロい高校生、好きです。笑

84 :
飛島くんのありえないぐらいテンパった様子がかわいい。でも乱暴はいくないですじょ

85 :
乱暴狼藉ごめんなさい保守
職人様どなたか降臨されないだろうか

86 :
全部書き上げてから投下予定でしたが、それでは保守代わりに投下します。
後編は2週間後ぐらいの予定です。
原作名:架空の森
カップル:織人×苑生
注意書き:エロなし

87 :
卯の花咲く中、異人さんがやって来た。ゴジラのお嫁さんを貰いにやって来た。
仏壇の前で線香を供え、織人が手を合わせている。
苑生は不思議な気持ちで、黙ってその所作を眺めていた。
「今、道場はどうなさってるんですか?」
仏壇から向き直り、出された茶を一口飲んでから織人が尋ねる。
苑生は何も言えず、その姿をぼーっと見ていた。
「?……苑生さん?」
「あ、ああ、すまぬ」
「どうしたんです?苑生さんらしくもない……」
じっと見つめられ恥ずかしくなり、あわてて茶を飲み込む。居心地が悪い。
折りに触れ、織人の事を思い出す事はあった。しかしその姿は記憶のまま、少年の姿に近かったのだ。まさかこんなに立派になっているとは。
あちらの牛肉をたらふく食べたせいなのか、それとも元々の体質なのか、織人は予想以上にすくすく育っていた。否、育ちすぎだ。
――――昔は守ってやれるくらい小さな子だったのに。
なぜだかそれが無性に悔しかった。
えーと、何の話をしていたのだっけ。
「道場は続けているぞ。じいさまの道場を、私の代で途絶えさせる訳にはいかぬし」
それに毎週やってくる子どもたちは、苑生の生活に彩りを与えてくれていた。
その中に、自分の幼い頃や、織人少年の面影を見ていたのかも知れぬ。
また遠い目になった苑生に、織人が切り出した。
「苑生さん。先程も言いましたが、僕のお嫁さんになって下さい」
「……冗談で言ったのだと思った」
呆然と織人の顔を見つめる。今日はエイプリールフールでは無かったはずだが。
「冗談を言うためだけに、わざわざ日本まで来ませんよ」
破顔一笑。
織人は大きく笑崩れた。苑生の手を取り、じっと見つめるその顔が真剣になる。
「今すぐ返事をくれとは言いませんが……考えていただけませんか?」
アメリカに渡り、御曹司としてなに不自由ない生活をして来た織人の周りには、財産目当ての女がわんさか寄ってきた。
でも織人には判っていた。
あの人達は、ラトレル家が無一文になった途端、僕の前から逃げ出すだろう。
苑生だったらそんな事はない、と信じていた。
今も目ざとい女なら素早くチェックする、時計や靴、仕立られたスーツの生地の良さなど、苑生はちっとも頓着していない。
ただ再開を喜び、立派になったと褒めるだけで、あからさまに媚びたりはして来ないのだ。
そんな苑生だからこそ、共に一生を歩んで欲しいと心から願う。
かたや、苑生の答えはもう出ていた。
ゴジラのまま玄関に出た時、織人が笑い飛ばしてくれた事で、心が決まったのだ。
「……わかった。嫁になる」
余りに早く答えを出したからか、織人が狼狽え出す。
「え?良いんですか、そんなに簡単に決めてしまって」
「簡単に決めた訳ではない……武士の誓詞 金鉄の如しと言うではないか。そんなにすぐ翻したりはせん」
そう、簡単に決めた訳ではない。
織人の心の中にずっと苑生が住んでいたように、苑生の心の中にもずっと織人が住んでいたのだから。
カッコ悪かろうが貧乏人だろうが、織人が織人のままなら、それで良かった。

88 :
「ただし、幾つか我儘を言わせて欲しい。その我儘を叶えてくれるなら、嫁ぐ」
「いいですとも!何でしょう?」
少しでも返事が遅れたら気が変わると思っているのか、織人は急いで尋ねた。
苑生が望むなら月さえ取って来そうな勢いだ。
「一つはこの家で仮祝言を上げたい……ここからお前の元に嫁いで行きたいんだ」
「わかりました、今すぐ手配します!」
そう言って電話をかけに行こうとする織人を、苑生は押しとどめた。
「いや、華々しくなくて良いんだ。幸い、羽織袴はじいさまのがあるし、ばあさまが嫁入りの時に着た着物もある。仏前で……じいさまとばあさまの前で誓うだけで良い」
「でも……」
織人の首が、ビクターの犬のように傾く。
女性と言うものは、結婚式を華やかにしたがるものではなかったか。
いや、相手は苑生さんだ。そんじょそこらの婦女子とは違う人だ。
だからこそ織人は苑生に惹かれたのだ。
あの頃、同級生も近所の人達も、皆が織人と母を動物園のパンダを見るように珍しがり、毎日のようにその噂で持ち切りだった。
そんな中で狩谷家の人たちだけがその輪に加わらず、色眼鏡抜きで織人たちの事を見ていてくれたのだから。
「心から喜んでくれたであろう じいさまばあさまに、一番に花嫁姿を見せたいんだ……」
わかって欲しい、と苑生の点目が訴えた。
「……もちろんですとも。ここで仮祝言を上げましょう」
――――もう、じいさまもばあさまもいないけれど。
ここで式を行う事で、きっと二人は喜んでくれる。そう思いたかった。
「あと……出来れば、なのだが……」
言葉を濁し、苑生はその先を言いよどんだ。
「何ですか?僕が出来る限りの事はします」
「……とても、言い出しにくいのだが…………」
中々切り出さない苑生に、織人の妄想がどんどん膨らんでいく。
『私の夫になるなら陣で100人斬り』か?『居合で唐竹割りを』とか?
もし……もしも、『北海道のヒグマを倒してこい!』とか言われたら。
そう考え、織人の顔が若干青ざめる。
――――いやいや、苑生さんをお嫁さんにするためだ……が、がんばろう。
「言って下さい。……何でも」
ごきゅっと唾を飲み込み、覚悟を決め重々しく尋ねる。
「もし出来れば…………一日で良い。私より、長生きしてはくれまいか」
小さく呟いた言葉に、思いがけず胸を突かれた。
苑生は小さい頃 両親を亡くし、育ててくれたばあさまじいさまにも先立たれ。
誰もいなくなったこの道場を、たった独りで守って来たのだ。
きっと誰に愚痴ひとつ零す事なく、凛と顔上げ歯を食いしばり、何事もなかったように笑って来たのだろう。頑張っていると言う素振りさえ見せずに。
思わずじかっ!と苑生を抱きしめ、織人は立板に水のごとく捲し立てた。
「わかりました。……大丈夫!元々 僕の方が年下なんです、苑生さんを置いて先立つなんて事はしませんよ。僕、普段の食事も日本食ですし、
剣道も続けてますし、健康に気を使ってます。共白髪になるまで添い遂げられますとも!添い遂げるといえば、やはり苑生さんのお祖父さんお祖母
さんがお手本ですよね。あんな風にいつまで経っても仲の良い夫婦になりましょう。そうそう、お祖父さんと言えば……」
腕の中で、苑生がくすくす笑い出す。
「良かった……織人だ」
「え?」
言葉の意味が掴めず、眉間がコイル巻きになった織人の顔を真っ直ぐに見返した。
「あんまり立派で無口になって、私の知ってた少年じゃないような気がしていた」
見上げたまま、苑生が微笑む。
二人の間で凍ったままの年月が解けた。そんな気がした。

89 :
夕方、準備が整い、二人だけの華燭の典が執り行われた。
裾や内揚げを出せるだけ出したが やはり少し寸が足らず、紋付袴が七部丈の新郎がお膳の前にしゃちほこばって座っている。
苑生の祖父の謡う「高砂」が、ラジカセから流れだした。
『いつか苑生の結婚式で謡うんだ』と練習していた録音テープが、残っていたのだ。
うつむいたまま片手を誰かに取られているように掲げ、祖母の婚礼衣装を纏った苑生がゆっくり仏間に入ってくる。
お頭付きの魚はシシャモ。三三九度用に用意した屠蘇器に入っているのは料理酒。
他にも苑生の心づくしの煮物や漬物など、新婦の望み通りの質素な膳が、向かい合わせに4つ並んでいた。
酒器を何度か傾け、盃を交わす。
この世に神様がおられるのなら、きっと、祝福のために祖父と祖母の魂をここに遣わして下さっている。
傍から見たら滑稽かもしれないが、二人ともその事を疑っていなかった。
織人が持参した婚約指輪は少しサイズが大きくて、指に嵌めてもらうと石の重みでクルリと回る。
そのまま苑生の手を握り、織人は仏壇に向かって誓った。
「お祖父さん、お祖母さん。そして、苑生さんのお父さん、お母さん。遠くに攫って行くのは申し訳ありませんが、きっと幸せにします。苑生さんを、僕に下さい」
深々と頭を下げるのを見、慌てて苑生も頭を下げた。目の前がぼやけて霞む。
そのおとがいを上向かせ、唇が優しく重なった。
新婦の頬に零れた涙をキスで吸い取ってから、壊れ物を扱うように静かに離す。
「……ありがとう」
万感の思いを込めた苑生の声が、震えて消えた。
「僕の方こそ……ありがとうございます、苑生さん」
「もう私はお前の妻なのだ、“さん”は要らぬ。苑生と呼ばんか」
「そっ……そ、のお……」
居心地悪そうに、少し赤くなって名を呼ぶ織人に釣られ、苑生の頬まで赤らんだ。
スピーカーから高砂に続き、べんせいしゅくしゅくぅ〜♪と「川中島」が流れ出す。
気まずさを救われ、二人は顔を見合わせて吹き出した。
ささやかな祝宴が終り、順番に入浴をすませた二人は、苑生の部屋で布団の上に向かい合った。
「あの……本当に良いんですか?」
落ち着き払った苑生とは対照的に、織人は夜中のハムスターよりも落ち着きを失っていた。
「かまわん。別に今更、やっぱり結婚するのや〜めた!などとは言い出さんだろうし」
「ええ、それはもちろん!決してそんな事は言いませんけど……」
なぜか心持ち赤くなった織人は、シーツの上にのの字を書き出す。
「大丈夫、覚悟は出来ておる。どこからでもかかってこんか」
果し合いか何かと勘違いしているのか、苑生の目が親の仇を見るように光る。
意を決して織人が肩を抱き寄せた。
「それでは……失礼しますっ!」
気のせいだろうか。旗を持った審判員の『始め!』という号令が掛かった気がした。

90 :
最初は、軽くついばむように何度か唇を合わせ。
苑生の下唇のラインを織人の舌がなぞる。
それでも抵抗がないのを見てとると、織人はにっこり笑ってキスを深め始めた。
下唇を軽く噛んでから強く吸い、強引に唇を開かせると、舌が口腔に潜り込んで来る。
――――ちょっと待て。
と叫びたくても、苑生に声を出す隙は無い。
そのまま織人の舌が苑生の歯列をなぞり、舌を絡ませ、吸い上げ、上顎の内側を擦る。
なんだかとっても、初心者向けを大きく逸脱しているような気が。
「……キスを返してください」
唇を離し、苑生の頬に掛かった髪の毛を耳にかけながら織人が頼んだ。
「かえs……むぐぐぐ……」
どうすれば良いのか判らず、苑生は必に織人のキスを真似た。
が、全然相手にならない。
苑生とて、キスとはどんなものか知識として知っているつもりだった。
しかし苑生が知識として知っているキスが三歳児のチャンバラだとすると、織人が仕掛けるキスは剣道の8段試験並み。格が違いすぎてお話にならない。
単に唇を重ねる、舌を絡ませるだけではない動きに、唇の中も外も犯されているようだ。
いつの間にか織人の膝に乗せられ、逃げないよう抱きすくめられている。
床に横たえられた頃には、どちらの息も上がっていた。
服の合わせ目を寛げようとしたので、苑生は慌てて手で押さえた。
「せ、せめて、電気は消してくれ……」
「僕、出来れば電気は付けたままが良いんですが」
「なっ!……私は初めてなんだ、恥ずかしいではないかっ!」
真っ赤になった苑生が、襟元をかき合わせ叫んだ。
こちらも赤くなった織人が、小さな声で説明する。
「あ〜……えっと、その……実は僕も初めてで……」
「嘘だぁぁぁっっ!!!!!!」
ネオンライトのように派手な声で苑生が叫ぶ。
「ならば、さっきのキスはなんなんだ!JAROに電話したくなるほど、初心者とは思えないじゃないか!!」
あ〜……嘘、大げさ、紛らわしいは、よろしくないれすね。
「いや、最後までした事はありませんが、危うく襲われかかった事が何度も……」
そうなのだ。
酔ってソファに座ってた所を馬乗りで襲いかかられたり、部屋に入ったとたん鍵をかけられ追い詰められたり、パーティー会場で暗がりに引きずり込まれ いきなり唇を奪われたり。
非道い時には残業中のオフィスで、振り向いたら、にっこり笑った個人秘書が裸で立っていた事もあったんである。
さすが肉食の国、アメリカ。
アメリカンドリームと言ったら聞こえは良いが、その実情は群雄割拠の下克上。
本気出して玉の輿狙ったら、やる事がパネエっす。
そこにはジャングルや北極よりも過酷な、弱肉強食の世界が広がっているのである。
全身に練り餌を付けたまま100匹のジョーズから逃げるような当時の状況を苑生に説明し、どれだけ頑張って最後の一線を守ったか力説する織人だった。
「……恐ろしいな、毛唐の国は。一体 何 考えてるんだろうか……」
あなたの知らない世界すぎて呆然とした苑生の顔に、縦線が走る。
「正直、僕も男なので、流されそうになった事もありました」
遠くを見つめ、枯葉を飛ばしながら白目の織人が邂逅していた。大変でした……とその背中が語っている。
「でも、やっぱりそーゆー事は、苑生さん以外とはしたくなくて……」
そこで振り返った織人は、苑生の肩をわしっ!と掴んで畳み掛けた。
「ですから……電気はつけたままにして貰わないと、どうすれば良いのかさっぱりなんですっ!良いですね?!」
気迫のこもった言葉に、苑生はただ頷くしか出来なかった。
(つづく)

91 :
うわぁうわぁ!!ご光臨!!!
素敵GJ!!
つづきwktk!
全裸でまってます!!

92 :
私も全裸で待つ。織人の長年かけた純愛が泣かせるよ。
読みきりの中でも一番切なくて大好きな話なんで、また読めて嬉しい。

93 :
私も好きだ
保守

94 :
私もこの二人が一番好きだ。また読めて嬉しい…続き、待ってます。

95 :
保守

96 :
hoshu

97 :
保守でございます

98 :


99 :


100 :
保守

101 :
わはは…保守

102 :
朝っぱらからですが、>>87->>90の続きを投下します。
原作名:架空の森
カップル:織人×苑生
エロのみ

103 :
織人はほっと息を吐き、苑生の肩を抱きしめたまま布団に横たえた。
夜着の合わせ目に手を入れ、ぐいっと開く。
「ああ……綺麗だ」
目の前に晒された乳白色の肌に指を這わせ、親指で薔薇色の尖りをなぞる。
乳房をそっと撫でていた指先が、徐々に形を確かめるように強くなった。
織人が硬くなった先端に唇を寄せ軽く吸い上げると、固く目を閉じた苑生の体がぴくりと跳ねる。
口一杯に頬張ってから舌をちろちろと這わせ、もう片方の先端を指先で摘むと、耐えきれないように声が漏れた。
慌てて抑えた苑生の手を掴み、口元から遠ざける。
「苑生さん……僕も初めてで勝手が分かりませんが、あなたに少しでも気持ち良くなって欲しい……」
そう言いながら胸の先端を擦ると、苑生の背中が弓なりに反った。
指先で弄ぶようにつねり、一際高い声をあげさせる。
「だから……もっと声、出して下さい。どこをもっと触って欲しいか、どこをどんな風に舌で舐められたいか……僕に、教えて……」
「やぁっ!……そ、そんな恥ずかしい真似は……ああっ!で、でき、ない……」
そう言いながらも胸の先端は硬く勃ちあがり、その興奮を織人に伝えていた。
紐を解き、急いで苑生の夜着を剥ぎとる。
織人は焦るように自分の夜着も脱ぎ捨て、覆いかぶさって肌を合わせた。
その温かさと絹のような触感に、心地良さと劣情を煽られる。
ぎゅっと抱きしめて、滑らかな背中を指で辿ると震えながら反り返り、苑生がしがみついて来た。
「シルクのように滑らかな肌だ……それに柔らかい」
耳朶に唇を落として耳の穴を舌でなぞりながら、夢中になって胸を揉む。
首筋をキスで辿ってから、また胸の先端を強く吸った。
「ああっ!……あっ、あ……はぁっ!!」
唾液で光る乳首の先端を摘み、もう片方の乳首を口で嬲る。
白い肌に浮かぶ青い静脈を舌で辿り、赤い色が濃くなった先端に軽く歯を立てると一際高く苑生が喘いだ。
「そ……れは、ちょっと、痛い……」
「じゃあ、どっちが好き?……これと」
と言いながら、左の先端を指先でこねた。苑生の体がまた跳ねる。
「……こっちと」
右の先端を軽く吸い舌先でぷるぷると弄ぶと、大きく体が震えた。
「さっきから、私の胸、うっ、ばかり、もてあそびおって……あっ、乳離れ、出来て、んっ……いない子どものようだ……んんっ!」
答えずに誤魔化そうとしたら両方の先端を抓られ、いやいやをしながら苑生が涙ぐんだ。
「ええ、1時間ぐらいこうしてても良いんですが……」
そう言いながら織人は苑生の下着に手をかけ、一気に足から引き抜いた。
必に閉じようとするのを腰を入れて阻止し、苑生の足を左右に大きく開く。
「大切な部分を見ていい?……」
「嫌だ!恥ずかしいっ、恥ずかしいから……」
顔を手で隠し、真っ赤になった苑生の息は上がっていた。
「僕も脱ぎますから……」
織人も最後の下着を脱ぎ捨て、抵抗が小さくなった苑生の秘所を指先で広げた。
綺麗な朱鷺色の花びらが開かれ、中心が濡れて光っている。
織人は息を飲んだ。高揚感に襲われ、屹立した物が呼応するように脈打つ。
「ごめんね、苑生さん。見ないと、ちゃんと出来ないかもしれないから……」
恥ずかしさのあまりしゃくり上げる苑生に覆いかぶさり、涙を拭きながら優しい口づけで宥める。
織人の高ぶりが苑生の太ももに当たった。
興奮のあまり、その刺激だけでも達してしまいそうだ。
その大きさに驚いた苑生は思わず手を伸ばし、確かめるように屹立を軽く握った。
不意をつかれ、根元からどくんと大きく脈打つ。
「あっ!……駄目だ、苑生さんっ!」
次の瞬間、熱い白濁が苑生の腹から胸元にかけて飛び散った。
その飛沫の熱さに目を見張り、胸元に散った液体を指先で掬う。栗の花のような匂いがした。
呆然としていると、深い溜息が聞こえる。
そちらに顔を向けると、織人ががっくりとうなだれていた。
「…………すみません……」
「え?」
何が?
苑生にはまったく訳が判らなかった。
「……ティッシュボックスは……どこでしょう」
萎れた花のように元気のなくなった織人にティッシュボックスを指差すと、もそもそと何枚か取り出し、苑生の体を拭い出した。

104 :
「どうした?」
「いや……情けなくて。苑生さんも初めてですから、リードしようと思ってましたが……僕も初めてなので、暴発してしまいました」
片手を顔にあて、呻くように織人が言葉を吐き出した。
「それって、そんなに落ち込むような事……なのか?」
「はい。……男は、射精が早いのは恥ずかしい事なんです。自分が満足するより先に、女を満足させなければ……」
なるほど。男の沽券に関わる、という奴らしい。
苑生は織人の手を取り、そっと口付けた。
「私は気にしないぞ。……むしろ、嬉しい」
「は?」
「私だけが訳わからないのかと思っていた。織人は本当に初めてなのか、実は疑っていた」
そのまま苑生は織人の膝に乗っかり、首に手を回して顎にキスをする。
「織人も一生懸命だったのだな……織人の初めての相手になれるのが、嬉しい」
「……苑生さん……」
そのままぎゅっと抱きしめて、肩にも首にもキスをした。織人の全てがいとおしい。
「失敗したっていいじゃないか。……お互い様なんだ、一緒に進んでいこう」
にっこり笑ったその言葉に、織人が涙ぐんだ。
ああ、やっぱり苑生さん一筋で良かった。
「やっぱり苑生さん大好きだ……愛してる」
「……ずっと気になっていたんだが。さっき言ったではないか、さんは止めんか、さんは」
二人とも笑ったまま、褥に横たわる。
織人の目を見ながら、真顔になった苑生が囁いた。
「私も……織人を愛している。ずっと、お前を忘れた事はなかった……」
ぎゅっと抱きしめ、互いの唇を貪る。重ねた肌に安らぎを覚えた。
もう恥ずかしくない。織人になら、どんな姿も見せられると思った。
「初めては痛いそうだから……苑生に少しでも、気持ち良くなって欲しい……」
体中を優しく手でなぞり、太ももにたどり着くと体を開いた。
「ここにも……キスしたい」
足元にかがみ込み、織人は苑生の秘裂を指先で広げた。
胸元まで赤く染め、小さく頷く。
唇が触れた瞬間、苑生の身体が大きく震えた。
尖った先端を細かく舐められ、その大きい快感に頭の芯がしびれる。
「ああっ!あ、あ……んんっ!はぁっ!」
熱く滴る泉の入り口を啜られ、先端を指先でいじられて、苑生の腰が大きく跳ねた。
織人とするのを想像した事はあったが、こんな事をされるなんて思ってもいなかった。
中に指を1本入れながら、織人が労るように声をかける。
「苑生……痛くない?気持ち良い?」
「ん……気持ち……い……ああっ!あ、はぁっ!!……なんか、変になりそう、だっ!」
そう言って、苑生は織人の髪の毛をかき混ぜた。
その声に後押しされるように、織人の愛撫が一層深まる。
指を大きく抜き差ししながら先端を強く吸われ、苑生は小さな叫びを上げながら達した。
汗だくになってぐったりしながら目を開くと、織人が指に付いた液体を味わっている。
目が合うと、苑生にも指先を差し出した。
開いた唇に指を入れられ、織人の指を舐めながら強く吸う。
「……なんか、変な味がする」
「いや、美味しいよ」
キスをしながら鼻の先端をこすり合わせ、満足そうに織人が微笑む。
「もう待てない……良い?」
腰の位置を合わせ、屹立の先端で入り口を突つきながら、苑生の目をのぞき込んで確認した。
「ん……来てくれ……織人」
腕を背中に絡めながら促され、小さく頷いて、織人は苑生の熱い闇を切り裂いた。
途端に濡れた絹のような内部がきつく巻き付いてくる。痛いほどだ。
「苑生……力抜いて……」
自分の剣で、未開の地を切り開いていく感覚だった。
見ると苑生は、真っ赤な顔で涙ぐんでいる。
一気に全部は収まらず、肘をついたまま深いキスをした。
舌を絡ませると、苑生の緊張が解けていく。
それに合わせて腰を動かし、徐々に自分の屹立を体内に飲み込ませた。
とうとう全部収まり、互いに深い息を吐く。

105 :
「……痛い?」
「うん……織人は?」
「気持ち良い……ごめん、我慢出来ない」
本当は少し動かさずにいた方がいいのかも知れない。だが、もう腰が止まらない。
初めて知る感覚に織人は溺れていた。
硬く狭い苑生の中は、奥の部分がざらざらと粒だっていて、擦り上げる度に刺激される。
突き上げるたびに胸元が揺れるのも、甘い声が漏れるのも、たまらなくそそられた。
何より、自分の下に組み敷いているのは、ずっと想っていた苑生なのだ。
自分の物が出入りするのが見たくなり、苑生の両足を胸元に折り曲げる。
繋がっている根元で、かき回された苑生の泉が薄紅に泡立っていた。初めての証だ。
この世で1番好きな人の初めてと、自分の初めてが混ざり合った証。
織人は、嬉しくて、愛しくて、叫びたくなった。
抽送を繰り返すと、それに合わせて段々内部が締まって来る。
もっと長く楽しみたいのと、奥に吐き出したい気持ちが混ざって、おかしくなりそうだ。
苑生の反応も少しずつ変化していた。
最初は辛そうに眉根を寄せていたが、だんだん慣れて来たのか、織人に合わせて腰を動かす。
背中に回された爪が、肌に食い込んだ。
「織人……おりとっ!……お……ああっ、あ、あっ!」
一際大きく名を呼ばれ、苑生の中が大きく引き絞られた。
「……苑生……そのおっ!」
奥に深く何度も突き刺しながら、織人の欲望が弾けて苑生の中を満たす。
そのまま力尽きたように、織人は苑生の上に倒れ込んだ。
「もう二度と離れないからね……苑生」
横向きに身体の位置を変え、まだ繋がったまま、織人は苑生を抱きしめた。
「うん。……離さないでくれ、織人」
織人の汗を指で拭い、泣きそうになった苑生はその肩に顔をうずめた。
もう離れない。たとえが二人を分かつとも。
しかし実際には出国の際 税関で、備前長船の国外持ち出しに色んな申請が必要な事が判明し、織人の仕事の関係もあって、あっさりと二人の誓いは破られてしまうのであった。
(終り)

106 :
わあぁ!!GJ!GJ!
すごく良かったです!
ありがとう!!
やっぱりこの二人、好きだー
しかし備前長船国外持ち出しは超クレイジーw

107 :
うわああああ…GJ!
二人がやっと結ばれて良かった、幸せになって良かったよ。
離れていた時間を埋めるほどもっと幸せになって欲しい。
オチに吹いたけどw

108 :
わぉ。お宝発見!!ゆっくり読ませていただきます。

109 :
GJ!
切なくもあり、エロエロでもあり、ちょい笑えたりもあり
良かったー!

110 :
hoshu

111 :


112 :
hoshu

113 :
もし書き手さんがいらしゃっていたら、和音さんと俊介をお願いします。
できればネクタイシュルって感じのが入ると嬉しいです。

114 :
hoshu

115 :
保守

116 :
hoshu

117 :
hoshu

118 :
hoshu

119 :
保守

120 :
hoshu

121 :
hoshu

122 :
hoshu

123 :
保守

124 :
hoshu

125 :
保守りすぎわろたw
>>113
「俊介〜、ちょっと来〜い」
「何ですか、和音さん」
「ん、ちょっとだな、試してみたい事があるんだ」
「ちょ、ちょっと、和音さん。あーた、その手にしている物はいったいなんですか」
「ん?これか?これはだな、ネクタイだ」
「それは分かりますが、それで何をしようというのですか?」
「良いから動くな。そこで大人しくしてろ」
シュルシュルシュル
「ちょ、ちょっと和音さん、何をするんですか!
ギュ!
「ぐえ!」
「んー?上手くいかんな」
「か、和音さ・・・ん。……げほっ、いきなり何をするんですか!」
「そんなに怒るなよ俊介。ネクタイを締めるのは新妻の役目だと聞いたんだ。ならば私が挑戦しても問題はあるまい」
「…問題はありませんが、今するべきことではないでしょう。夜ですよ?」
「じゃあ、何時ならいいんだ?」
「明日の朝教えて差し上げます」
「うわ、どうした?俊介。何故ネクタイをはずす?というか、何をする?」
「ネクタイの結び方を教えて差し上げますよ。奥さん」
「あ・・・」

こうですか!分かりません!!><


126 :
そして緊縛プレイになる訳ですね、わかります

127 :
「俊介、お帰り」
「ただいま戻りました。」
俊介は上着を脱ぎ、ハンガーを手に取ると和音がそれを取り上着をかける。
「…めずらしい。ありがとう」
「たまには妻らしいことしないとな。ほれ、下も脱げ脱げ」
「下品ですよ、もう」
俊介は呆れながらネクタイを緩める。
それも横から手を出し外そうとするが、せっかく緩めたネクタイがどんどん締まっていく。
「ちょ、ちょっと!そっちじゃなくてこっちを引くんですよ」
「そーか、よっ…と」
シュルっとネクタイを抜きそれを腕にかけたまま、ワイシャツのボタンを上から外していく。
「それくらい自分でやりますよ」
「だから…妻らしいことしてやるって言ってるだろ」
ベルトに手をかける和音が上目遣いに俊介を見る。
俊介は少し笑ってそれから和音のふわふわの髪を撫でる。
両手で少し赤らんだ頬を挟んで上向かせ、軽く口づけた。
「…ん」
「和音さんから誘って下さるのは嬉しいですが…もうちょっとムードってものを勉強しましょうね?」
「べ、べつに誘ってない」
「素直じゃないですねぇ…」
頬がますます赤くなり目をそらす和音の腕からネクタイを取り、すばやく背中に廻り込む。
腕を交差させ後ろ手に縛りそしてさらにタオルで目隠しをする。
「こ、こら!なにすんだ俊介!きゃ」
突然のことによろけた和音を抱きそのままベッドへ押し倒す。
「あ、可愛い声。もっと聞かせてくださいよ」
「や、やめろ俊介!変態か?」
文句を言わせないようにもう一度口づける。今度は深く、濃厚に。
「ん…ぅんっ」
掴んだ肩から力が抜けていく。

128 :
十分に味わってから唇を離し、とろりとした吐息を聞きながら和音の服を脱がせにかかる。
ハーフパンツとショーツを脱がせ、男物の綿シャツをはだけさせるとブラジャーを着けていなかった。
「すごくそそる格好ですよ、和音さん」
恥ずかしそうに膝を閉じ、身を捩る和音の姿はこの上なく可憐で、淫らに映った。
「…馬鹿…外せよ…!」
「駄目です。このままで…俊介のお願いです」
起き上がろうとするのを押しとどめ、耳元で囁く。耳朶を愛撫するように唇でなぞりながら、柔らかな乳房を揉みしだく。
「あぅ…やっ…」
石鹸の香りの残る首筋と鎖骨に赤く口づけの痕を残しながら、滑らかな双丘に舌を這わせた。
「お風呂に入ったんですか?いい香りです」
「あ…汗、かいたから…んっ」
ふっくらと色づく頂点を唇で挟み、吸う。ちゅ…とわざと音を立てながら片方ずつ丹念に舐め上げると
和音の身体が小刻みに震え俊介の肩に額を押し付ける。
視覚を遮られたせいかいつもより敏感に反応する身体を余すところなく愛撫を続ける。
「は…!あっ、んんっ」
「綺麗ですよ…明るいところで見るのは久しぶりですね」
結婚してからずっと、するときは電気を必ず消されてしまうので俊介は少々不満だった。
「…み、見るな…!電気消して…」
「目隠ししてるんだから、明るくても関係ないでしょう?それに、妻は夫に全てを見せるべきじゃないですか?」
「俊介の、変態!」
答えず、胸を揉む手を離し脇腹へ滑らせる。
「ひゃっ!あっ!やめてっ」
臍を撫で、固く閉じられた太腿の間に割り込ませる。
「力を抜いてください」
「いや…だ」
俊介は割り込ませた手を抜き、優しく臍の下に口づけた。
「将を射んとせば先ず馬を射よ…ちょっと違うか」
「な、何?」

129 :
唇を下ろしていくと顎に柔らかな繊毛が当たりさらにその奥へと舌を差し込む。
「あっ…」
舌の先に小さな突起が触れる。身体がびくりと震えた隙に和音の膝を開き身体を差し入れ大きく開かせた。
「やぁっ…!」
閉じないように脚を押さえながら和音を見下ろす。
はしたなく開かせた脚の間に紅い花びらが濡れて震えている。
結婚しても、結婚する前からも変わらず中性的な風貌の和音の身体の一番女性らしい部分だ。
「見るな…!見ないで…!」
命令から懇願に変わる口ぶりを満足げに聞きながら指で割れ目をなぞり指を埋める。
柔らかく吸い込むように沈んでいく指に圧力が掛かり押し出され、また沈む。
「ん…や、あぁっ…」
「すごく綺麗ですよ。それにすごく…濡れてる」
顔を近づけ息をかけると身を捩って逃れようとずり上がっていく。
腰を持って引き戻し、俊介は花の蜜を吸うようにそこへ顔を埋めた。
「――――!!」
声にならない悲鳴を上げて和音が腰を震わせる。
溢れる蜜にまみれながら俊介は存分に和音を味わった。唾液と蜜が混ざり合いシーツの染みが広がっていく。
「しゅ…しゅんすけぇ…」
押さえつけなくとも抵抗はなくなり、和音の声が甘く変わる。
俊介は服を脱ぎ捨て和音に覆いかぶさり、上気した頬に口づけ額の汗を舐めた。
「和音さん…」
求められるままに口づけながら自身を充分に濡れた中心にあてがい、ゆっくりと埋めていく。
「あ…ああっ…んんっ…!」
熱く濡れた肉の壁がきつく締め付け俊介を包む。
「く…」
眩むような快感に耐え奥へ奥へと貫いていく。
「俊介…っ」
一番奥の壁に届いたとき嬌声と共に名を呼ばれ、俊介はより強く突き上げる。
「ひっや…っああっ!!」
奥がびくびくと震え締め付けがきつくなる。
「もう、イっちゃったんですか?」
「あ…だって…ちがぅ…」
「何が違うんです?」
和音は恥ずかしそうに顔を横に背け荒く息をつくのを追いかけ耳元に口を寄せ囁く。
「目隠しして、縛られて…気持ちいい?」
「ち…ちがう…!」
「そうですか…じゃもうやめときますか?」
そういったと途端にきゅっと締め付けが強くなる。

130 :
「…いじわるいうな、俊介のばか…」
俊介は小さく笑い、和音を抱き起こす。角度が変わり挿入がより深くなり、和音は仰け反って嬌声を上げた。
「あんっ…」
「…やめられるわけないんですけどね…すごく気持ちいいですよ、和音さん」
そのまま小刻みに腰を揺らしながら時々強く突き上げる。
「やぁ…んっ…!」
そのたびに揺れる乳房に口づけ何度も何度も和音の身体を貪る。
「だめ…しゅんすけ…これ…はずして…」
背中に手を廻し腕の拘束を解くと、和音の腕が俊介の首に巻きつきぎゅっと抱き締めた。
「俊介…俊介…!」
幼子のようにしがみつき離れない和音の仕草に俊介が微笑み、こみ上げる愛しさに強く掻き抱く。
再び身体を倒し抱き合ったまま深い抽送を繰り返し、やがて高まる快感が限界を迎え俊介は眉根を寄せ妻の名を低く呟く。
「和音…!」
「俊介…!ああっ…!」
精を求めて収縮する子宮の奥に俊介は勢いよく熱を迸らせ、細い長い悲鳴をあげながら和音もまた絶頂を迎えた。
酸素を求めるように高く顎を上げ荒い呼吸を繰りかえす和音から目隠しを外してやる。
目尻に滲む涙を唇でぬぐってやり、額と額をつける。
「すみません…和音さん」
俊介の眼差しが優しく和音を包み、頬を染めながら夫の名を呼ぶ。
「…俊介…」
「もっと色々やろうと思ってたのに、気持ちよすぎて出来ませんでした」
しれっと言ってのける俊介に和音は頬をさらに紅潮させ、俊介に頭突きをする。
「いたた」
「こんどこんなことしたら許さ…」
言葉の途中で俊介が唇を塞いだ。
「んんっ」
柔らかく唇を挟み、離す。
「…したら?またしてもいいんですか?」
俊介がニヤリと笑う。
和音は握りこぶしを俊介の胸に叩きつけ、叫んだ。
「〜〜〜馬鹿!」
おしまい

131 :
>>125
>>126
のおかげで書けました。
あんまりネクタイしゅる・・・じゃないですけど読んでいただけたら幸いです

132 :
>127
GJ!GJです〜!
ネクタイしゅる…大変美味しくいただきました。
ありがとうございました。

133 :
ちょw鼻血出るw
GJGJ!!!

134 :
>>127
GJ!!俊介に翻弄されてる和音かわいいよ和音

135 :
目隠し&腕を縛られた俊介。
俊介「和音さん、これは一体…?」
和音「こないだの仕返しだ!覚悟しろ!」
俊介「根に持ってたんですね…で、どういう風になさるおつもりで?」
和音「…服をぬがせて…」
俊介「それから?」
和音「えっと…その…///」
俊介「積極的ですねぇ、俊介は大変嬉しいです」
和音(あれ?あんまり仕返しになってない…?)
俊介「さ…和音さん」(にっこり)
和音「///!!」
俊介「お好きなように…」
〜〜〜〜〜〜〜
和音「俊介…動いて…」
俊介「仕返しはもういいんですか?」
和音「あ…だって…も、いい…」
俊介「じゃ、遠慮なく」
ぱらりと自力で戒めを解いて目隠しを外す俊介。
和音「ひゃっ…ああっ!俊介、ずるい…!」
俊介「下から見上げるのもいいですねぇ…すごく可愛い、和音」
和音「や…ああっ」
俊介「ここからは俊介のターンですよ…」


136 :
保守かわりに

137 :
保守

138 :
hoshu

139 :
中国の壷のその後です
マッタリと家族として過ごしていた巧と志姫が、巧のお見合い話でお互いに意識し始めて恋人同士になるという妄想を受信しました
が、このスレ的に巧×志姫はどうなのでしょう?
そして受信しただけで、自分で妄想を形には出来ないのですけれど
もしもありで、どなたか書き手さんいらっしゃいましたら、一つ巧×志姫をお願いします!


140 :
hoshu

141 :
だれもいないのか…

142 :
いるよー
久しぶりに来たら新スレ立ってた上、色々豊作でうはうはしながら読ませていただきました
職人様方GJですありがとう!
架空の森とかGHQとか月夜のドレスとか、読みたかったので特に嬉しかったです
>>139
んにゃ、いけますよ!
ぜひご自身の手でその受信作を綴って、私らにもお裾分けしていただきたいです

143 :
保守

144 :
保守

145 :
そういえば、保管庫は2006年で最後なんですよね〜。
誰かまた今までのをまとめて頂けないでしょうか。
私、やり方がわかんない・・わかればやってもいいんですが・・
お願いします。

146 :
実の父が亡くなってから長い間母と二人暮らしだった私に、父と兄が出来てからもう随分経つ。
最初の頃は色々あったものの、私たちはそれなりに家族らしく暮らしている。
母は口うるさいが私の事を考えてくれているし、父は最初はいばりんぼだったけど今はとても優しい。
兄はストレスが溜まると女装するという奇行に走っちゃったりするけど概ね頼りがいがあり、勉強も教えてくれるし何でも相談できる。
「おい、私はカウントされないのか?」
おっと、飛竜を忘れていた。
代々の安曇家当主を見守る為に(本当に見守るだけで役に立たない)先祖伝来の壺に住み着いている古代中国人、趙飛竜。
実父が亡くなり、幼い私が壺を受け継いだときからの付き合いだ。
彼の姿は私にしか見えないはずが、例外として巧兄ちゃんにも見える。私と兄ちゃんはバイオリズムが同じなので見えるらしい。
そんなふうに家族四人+1で私達はつつがなく日々暮らしている。穏やかな日常。
こんな日がずっと続くのだと思っていた。昨日までは。

珍しく早く帰宅した父が、同じく早く帰宅した兄ちゃんと食前の一杯を飲みながら、おもむろに大きな茶封筒を差し出した。
「お見合い…?」
巧兄ちゃんはビールにむせながら、父に聞き直し、封筒と父の顔を交互に見つめる。
「そうだ。巧、お前もそろそろ人生の伴侶を持っていいんじゃないかと思ってな」
「そんな…僕はまだ結婚なんて考えられません」
私は食事の支度を手伝いながらダイニングの二人の会話に聞き耳をたてていた。
母が酒のつまみを運び、テーブルに置く。
巧兄ちゃんは助けを求めるように母を見たが、母はニコリと笑い、グラスにビールをつぐ。
「逢うだけ逢ってみたらいかが?案外気が合うかもしれませんよ?…それとももう決まった方がいらっしゃるの?」
ズバッと聞きにくい事を聞く。母は父の味方だ。当たり前だが。
巧兄ちゃんは困り顔でビールで口を湿らせた。
「…いません、けど。でも結婚なんてまだ…」
母の援護に気をよくしたのか、父は封筒の中身を取り出し、巧兄ちゃんに開いて見せた。
「母さんの言うとおりだ、あまり堅苦しく考えず逢うだけ逢ってみろ。ほら、美人だろう?」
「まあ、本当、綺麗な方ですわねぇ」
私はちょっと早足で盛り付けた料理を持ってダイニングへ向かい、皿を置くときにさり気なく盗み見た。
写真の女性は細身で綺麗な人だった。

147 :
(兄ちゃんと、結婚)
何故か胸がちくりと痛み、痛みに首を傾げたとき巧兄ちゃんが私を見た。
困りきった表情に、私は何と言っていいかわからなかった。
「志姫ちゃんも見てごらん、未来の兄嫁になるかも知れないぞ」
酒が回ったのか上機嫌になってきた父が私に手招きする。私はなるたけ感情を平坦にして言った。
「…きれーなひとですね」
「そうだろう、懇意にしてる銀行の頭取の娘さんなんだ。美人なのにまだ独身だそうでな、じゃあうちにも息子がいるから是非って話しになったんだ」
「お互い適齢期で丁度いいタイミングでしたわね」
「…」
母と父の会話を上の空で聞きながら、巧兄ちゃんと私はぼんやりと顔を見合わせた。
(兄ちゃんが、結婚…)

食事の後、私は自室にお茶と茶菓子を持ち込んで飛竜に巧兄ちゃんの見合い話の事を話した。
「ほー。ま、いいんじゃないの?巧の人生だし」
壺から出てきたばかりで眠いのか、傲岸不遜の無責任ぶりに私はなぜか腹が立った。
私は腹立ちを無視して、それよりも大きな不安を口にする。
「結婚したら、巧兄ちゃんは家を出るのかな」
「そりゃそうだろう、わざわざ小姑まで居るところに嫁に来るもんか」
こいつはいちいち…。
私は持ち込んだ茶菓子を飛竜の手から取り上げた。
「あっ!栗饅頭返せ!」
「うるさい!誰が小姑だ、居候のくせに!」
「何をぅ?私は居候ではない!先祖代々お前たち一族を見守ってきたスーパーでノーブルでピュアな存在だ!」
「怪しい横文字使ってんじゃねぇ!中国人なら漢字使え」
「我超高貴超純的存在…」
「なんだその偽漢文」
下らない喧嘩をしていると遠慮がちなノックがドアを叩き、私は栗饅頭を一口で食べてしまうとドアを開けた。
「巧兄ちゃん…」
「やあ、賑やかだね…入っていいかい?」
「うん」
「おお巧、お前からも言ってくれ。この食い意地のはった小姑候補にもっと私を敬えと」
巧兄ちゃんはにこりと笑い、それから少し困った顔をした。
「飛竜も聞いたのか、見合いのこと」
「ああ今し方、志姫から。こやつはお前が嫁をもらうのが気に入らんらしいぞ?」
「そんなこと言ってない!」
私は力一杯抗議したが飛竜は涼しい顔で茶を啜っている。

148 :
「志姫」
「ち、違うよ兄ちゃん!私はただ…結婚したら兄ちゃんは出て行っちゃうのかなって…」
言いながら私は、家に誰もいなかった日を思い出した。
飛竜が神仙界に行き、父母は新婚旅行、巧兄ちゃんが出張に出てしまい、私は物心がついてから初めてひとりになった。
ずーっとあると思っていたものが、ある日急に無くなってとぎれてしまう不安と淋しさに、私は戸惑っていた。
巧兄ちゃんが出て行くかも知れないと思ったとき、その心細さが急に蘇った。
「出て行ったりしないよ。お見合いは断るつもりだし」
私はすごく不安そうな顔をしていたのかもしれない。
巧兄ちゃんは私の頭をポンポンと軽く叩き、優しい顔でそう言った。
「え、どうして?あんな美人を勿体無い」
私はつい、反射的に言ってしまう。
「お前は一体どっちなんだ?」
飛竜は呆れ顔で、巧兄ちゃんは苦笑いして私を見ていた。
「とにかく志姫は心配しなくて大丈夫だよ…さぁ勉強をみてあげるよ。昨日の続きから」
「うん…」

巧兄ちゃんは次の日曜日にお見合いに行った。
仕事に着て行くのとは違うスーツはパリッと格好よく似合ってて、何だか別人のように見えてどぎまぎしてしまい、私は玄関のタイルばかり見ていた。
「行ってらっしゃい、巧兄ちゃん…」
「ああ、お土産買ってくるからね」
「まあ巧さん、お見合いなんですよ?…本当にお一人で大丈夫?」
母が呆れて苦笑する。
「ははは…この歳で付き添いなんて、恥ずかしいですよ…では行ってきます」
兄は破顔するとサクサクと家を出た。
車が出ていってしまった後、私はそのまま庭に出て花壇の前にしゃがみこんだ。
何故かしら溜息が出る。
しかし気を取り直し、空いた場所に小さなスコップで穴を掘る。
ここにどんな花を植えようか。
単純作業は思考を妨げない。私はいつの間にか兄の事を考えながら手を動かしていた。

149 :
「体でも埋めるつもりか?」
飛竜の声にハッと気づくと、掘った土が私の膝くらいまでこんもりと積もり、穴は予定よりかなり大きく深くなっていた。
「あ、あれ?」
飛竜はニヤニヤと笑い私の周りを浮遊する。
「お兄ちゃんはぁ今頃ぉどうしているかしらぁ、とか考えていたのだろう」
最近よくないテレビを見たのか、妙な節回しでしなを作ってふよふよしている。
腹立たしいのでスコップの柄で頭を殴った。
「黙れ。お前の壺を埋めるぞ」
「イタタ…乱暴なやつだ。そんなことでは嫁に行けぬぞ」
「嫁になんか行かないし」
つい売り言葉に買い言葉で応酬すると、飛竜はするりと頭上の木の枝に登り私を見下ろした。
「子孫を作らねば私はどうなる?私には代々お前たちを見守る義務があるのだ」
義務、と言った。
その言葉に、いつかの思いが蘇る。
…いつまでも飛竜を壷に縛り付けておく権利なんて、安曇の人間にはないもんな…
私が子孫を作らなければ飛竜は天壌無窮の運命から自由になれるんだ。
「…じゃあ神仙界に行って仙人にでもなりなよ。そのほうが飛竜も…」
私は掘った穴を埋めながら言った。
「志姫よ」
飛竜はまたひらりと舞い降り、真面目な顔で私の頭に袖を載せた。
「私は望んでここにいるのだ。居場所を無くされては困る。妙な事を考えず然るべき時に嫁に行け、そして子孫を作れ」
ポンポンと頭を叩かれ、私はこの間からこんなことをよくされるなあと思いながら、飛竜の言葉に安心を覚えた。
「そうだ、巧はどうだ?奴となら波長も合うしいいんじゃないか?」
「なっ…!た、巧兄ちゃんは兄妹じゃないか!なに言ってるんだ…」
藪から棒な飛竜の言葉と急に高鳴る心臓に驚き、私は狼狽した。
「別に血縁があるわけでもないしよいではないか。この間そのようなてれびを観たぞ?」
やっぱり良くない番組を観ている。
子孫を作る、という言葉が急に生々しくなり頭に血が昇った。
私は飛竜から顔を背けて、せっかく埋めた穴をまたがむしゃらに掘った。

150 :
すいません上のは4です

151 :
(巧兄ちゃんと…結婚…)
私は貧弱なイメージでタキシード姿の巧兄ちゃんとウェディングドレスを着た自分を思い浮かべてみた。
なかなかに面映ゆい光景だ。つい頬が緩む。
(わ、悪くないな…)
しかしブーケを持つべき手には壺。
…ちょっと頭が痛くなった。
私は頭を降り、想像を追い払うと作業に専念した。
でも、もし、そうなったら。
今までみたいにみんな一緒にいられるんだ…
この時初めて私は、兄に対する想いの芽生えを自覚したのだった。

巧兄ちゃんはその日の夕方帰ってきた。
ニコニコと紙袋を提げて、庭にいた私に近寄ってくる。
「ただいま、志姫、飛竜」
「お、おかえり…兄ちゃん」
私は昼間想像した光景にまだどぎまぎしながら兄を迎え、様子を伺った。
「その袋はなんだ?食べ物か?」
飛竜はまったく無遠慮に袋の中を覗き込む。
巧兄ちゃんは笑って、ホテルで食べたデザートが美味しかったから、と公言どおりお土産を買ってきてくれたのだ。
「夕食の後で食べよう…志姫はずっと庭仕事をしてたのか?」
「う、うん。花壇の花を植え替えようと思って…草取りと剪定もあったし」
「そうか、手伝えなくて悪かったね。次の休みには手伝うから」
巧兄ちゃんは私の頭に軽く手を置いて、微笑んだ。
私は今日一日気になって仕方がなかったことを、聞いてみた。
「あ、あの巧兄ちゃん、お見合い…どうだった?」
「…うーん…ま、今日のところはちょっと豪華な昼食会という感じだったかな」
はぐらかされたんだろうか。私はもうちょっと具体的に聞いてみた。
「相手の人…どうだった?」
巧兄ちゃんはぽんぽんとまた私の頭を軽く叩き、にっこり笑った。
「その話は父さんと母さんにも話すから…中に入ろうか」
兄ちゃん…それはもしかして…。
私は目の前が急に暗くなったような気がして立ちすくんだ。
いつの間にか日が暮れてしまっていた。

152 :
夕食の後、お土産のケーキとそれから紅茶を入れて家族四人で食卓を囲んだ。
私はこっそり飛竜の分をダイニングの父母から見えにくい位置において置いた。飛竜は悠然とそこで茶を飲んでいる。
「で、どうだったんだ見合いは」
父が口火を切り、兄に注目が集まる。
「…とても綺麗な方でしたよ。性格も良さそうで、いかにもお嬢様といういでたちで」
「じゃあこのままお話を勧めるんですね?」
母がにこにこと応じる。元有能秘書は仕切りが大好きだ。
(やっぱり…そうなのか…)
断るとか言ってたけど、やっぱり男は美人が好きなんだな…。
私はがっくりとして肩を落とし、もそもそと味のわからないケーキを食べた。
飛竜をちらりと見るともうケーキを食べ終わり、紅茶のお代わりを欲しそうに私を見ていたが私は無視した。
「そうか、ほらやっぱり逢ってみて良かっただろう?あんな美人だ、今まで結婚してなかったのが不思議なくらいだ…さ、そうと決まったら先方に…」
「待ってください、僕は感想を言っただけです」
巧兄ちゃんは腰を浮かしかけた父を制し、はっきりと言った。
「…この話はお断りしてください」
一瞬家族の会話が途絶え、しーんとなる。
父が紅茶を一口のみ、それから言った。
「そんなに即断しなくてもいいだろう」
「いいお話なのに…」
母も残念そうに眉をひそめている。
巧兄ちゃんは以前とは比べ物にならないくらいはきはきと胸を張って喋りだした。
「僕はあの人と結婚する気はありません。まだ仕事も一人前とは言いがたいし、それに…」
視線が私に止まり、私は慌てて俯いてケーキをかきこんだ。
「それに、結婚相手は自分で見つけたいんです。父さんがお母さんと出会ったように」
「まあ…」
「おい、照れるじゃないか」
照れる父に母が寄り添い、頬を赤らめている。
なんだかんだで純愛なのだ、この中年夫婦。
(良かった…結婚、しないんだ…)
私は最後の一口になってやっとケーキの美味しさがわかって、勿体無いことをしたと後悔しながら食べ終えた。
みんなの紅茶のお代わりを入れるついでに飛竜の分も淹れてやった。
飛竜はニヤニヤと笑っている。
巧兄ちゃんは、私を見て黙って微笑んだ。
『何も心配することなかっただろう?』
そういう顔をしていた。
私は顔が赤くなるのを感じて熱い紅茶を啜り、それからやっと心底ほっとしたのだった。

153 :
見合いの話は破談になり、それから平穏な日常が戻ってきた。
私は庭仕事に精を出し、巧兄ちゃんも休みの日には手伝ってくれる。飛竜も邪魔したり無駄口をたたいたりするまったくいつもと変わらない日常だ。
一つだけ変わったのは。
巧兄ちゃんといると、なんだか胸がドキドキして落ち着かなくなることだ。
飛竜は私の変化に気づいているのか、たまにからかったり、
「これで子孫繁栄だ」
などと兄に口走ったりもする。
私はそのたびに慌ててごまかしたり、飛竜を叩いたり、真っ赤になったり、なかなかに落ち着かない。
巧兄ちゃんは…気づいているのか気づかないふりをしているのか。
時々、なんでもないときに目が合ったりする。
そのたびに兄ちゃんは、私に優しく笑うのだ。
今日も庭仕事をしてる時、花壇にせっせと花を植えている巧兄ちゃんと目が合った。
微笑む兄に顔が赤くなり、私はたじろいで庭の敷石に躓いてしまった。
「わわっ!」
兄は飛竜より素早く、私を抱きとめて支えてくれた。
自分より逞しい腕と、広い胸。
「大丈夫?」
心臓は大丈夫じゃないくらい高鳴って、兄ちゃんに聞かれるんじゃないかとそればっかりが気になった。
「だだだだだいじょうぶ、あ、ありがと、巧兄ちゃん…」
そう言ったあとも、兄ちゃんは私を抱きとめたまま、何と言うか…私を抱き締めた。
「に、兄ちゃん…?」
暫くじっとそのまま動けず、すごく長い時間が経った気がした。
ドキドキは治まらないけどそれさえ心地よく、私は目を瞑って兄の広い胸に抱かれていた。

154 :
やがて巧兄ちゃんは私のおでこに軽く唇をつけて、呟いた。
「志姫が大人になったら…」
それから見上げた私と視線を合わせほっぺたに手を当てた。
「プロポーズしたいんだけど、いいかな?」
プロポーズ
プロポーズ
プロポーズ
ゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど、その言葉を反芻する。
それって…つまり、巧兄ちゃんも私のことを…。
カーッとこれ以上ないほど頭に血が上り、手が当てられた場所から燃え上がるように熱くなっていく。
私はなんと言っていいか分からず、ただ精一杯、うんとうなずいた。
巧兄ちゃんは嬉しそうに笑って、それから顔を近づけてきた。
反射的に私は目を閉じて、唇に乗っかる体温をうっとりと感じていた。
「よしよし、これで私の行く先も安泰だ」
どこかで飛竜の声がして、私ははっと目を開けた。すっかり忘れていたがこいつはいつも私を見守っているんだった。
「飛竜!」
飛竜はニヤニヤ笑いながら近くの木の上から私たちを見下ろしていた。
「しかし子作りはもう少し先にしろよ?」
「ば…馬鹿!」
「僕だって順番ぐらい守るさ」
「に、にーちゃんも何言ってんだ…」
そうして
私たちはつつがなく暮らしていく。穏やかな日常。
それはずっと続いていくんだ。
おしまい

155 :
読んでくださってありがとう。
すごく時間が掛かってしまった。
>>139さんいかがでしょう?

156 :
GJ!!!
あの二人らしいほのぼのさが良い!
お相手の情報だけで、さくらいあつこ様と分かるのがすごいわーww
趙飛竜も良い味だしてました

157 :
GJ!
ほのぼの良いですね。

158 :
GJありがとう
保守

159 :
保守。
和音×俊介、レナードの聡真×遥で職人さん降臨してくれないかなぁ。

160 :
久しぶりに覗いてみたら神が降臨なさっていた!!!!
>>146様ありがとうございます!!
受信した妄想を越えておりました。


161 :
保守

162 :
ほす

163 :
どうも、ちょいと妄想が沸いたんで、SS投下していきます。
○○には△△があるシリーズで、不破さんと佐倉さんです。
一応、その後も仲良しさんてな感じで行きます。
あんまエロでは無いので(ぶっちゃけ寸止め)、エロエロがお好みの方はスルー願います。

164 :
1年後…。
不破様と佐倉セバスチャン(もしくはポチ)の仲は、時々くだらない事で喧嘩をするも、直ぐに仲直り
(物に釣られる)を繰り返していた。
3年生になった不破は生徒会長から引退し、目標の大学も余裕圏内だった為、少し暇を持て余す
事もしばしば。
そんな時は、セバスチャンを勉強を見てやる等の名目で呼び出し、一緒に録画した大リーグの試合
何ぞを見たりしていた。
一部前生徒会役員は、2人の仲を知っていたが、アヒルと例える程、女性としての扱いでは無かった為、
健全なオタク友達と認識されていた。
寮長先生にいたっては、1年間詰襟の学生服姿を見続け、普通にそのまま遊びにも行く佐倉の姿に、
周りの学生同様、すっかり慣れ親しんでしまうほどであった。

165 :
しかし、健康な青年である不破としては、男の一人住まいの部屋に、のこのこやってくるアヒルに、時々
性的なリビドーを感じるのは、まあ責められない事だろう。
いくら品行方正で信頼にたる人物とはいえ、所詮は男。狼さんな部分が有る事は、紛れも無い事実だっ
たりする。
この日も、日曜の昼間から勉強会に呼ばれた佐倉は、久々に私服を着て遊びに来ていた。
まあ、詰襟を着て違和感の無いスタイルの上、余りファッションに拘らないマイペースなセバスチャンは、
殆ど普段着に近い色気とは無縁の格好だったのだが、基本的に
制服姿しか見ない不破君としたら、チョット新鮮な感じで、狼さんの眠りを邪魔するモノだったりした。

166 :
「不破様、お邪魔いたします」
いつものようにセバスチャンな佐倉に対し、なんとなく狼さんな気分の不破様は、玄関からかって知ったる
他人の家とばかりに、部屋を歩き回る佐倉の姿を見つめていた。
「不破様、お昼ご飯は、食べられましたか?もしまだでしたら、このセバスチャンめが、何かお作りしますが」
不破の肉食獣な視線に、空腹な為だと誤解した佐倉は、機嫌を取ろうと食事の話を振ったのだが、それは、
はらぺこ狼さんにとっては好都合だった。
「佐倉が食べたいな」
「へ?」
何を言われたか解らなかったセバスチャンもとい佐倉は、脳みそに言葉が届かなかったように、呆けた顔をした。

167 :
不破は、佐倉をおいしくいただく為、さっきから固まったままの体を軽々とお姫様抱っこをすると、
隣の部屋にあるベットへ歩き出した。
抱きかかえられた哀れなアヒルは、訳がわからない状態のまま、狼さんの巣へと運ばれたのでした。
ボフッと、ベットに下ろされ、やっと状況を理解した佐倉は、不破の手から逃れようと、必にもがくが、
食べる気満々の狼さんに敵うはずも無く、しっかりと組み敷かれたのだった。
「あの不破様、ワタクシメの貧弱な体では、ご満足頂けないと思いますので、止めませんか」
逃げられないと解っていても、必にこの状況を打破しようと、佐倉は不破に話しかけるが、ニヤリと
笑った不破はから出た言葉は、
「そうだな…だが断る」
だった。

168 :
「ポチ、この部屋は帰りたくないくらい居心地いいんだろ、俺の家の子になりたいんだろ…だったら、
俺のものになればいい」
一年前、初めてこの部屋を訪れた時に呟いた言葉を繰り返され、まるでプロポーズのような、だが
完全に御主人様の台詞に、佐倉は思わず呆気に取られてしまった。
「どうしたポチ、返事は」
佐倉は、ゆっくりと近づいてくる不破の顔から眼をそらす事が出来ず、気が付いたら眼を閉じて唇を
奪われていた。

169 :
何度も繰り返される優しい口づけに、佐倉の頭の中は、グチャグチャになってしまい、体を押さえて
いた手がゆっくりと、愛撫しながら服を脱がせていくのを、止める事が出来なかった。
いや、止めようとしたつもりだったが、気が付いた時には下着のみの格好で、上半身裸になった不破
の背中に手を回していた。
ブラジャーを上にずらされた時、初めて羞恥の感情が湧き、小さな胸を両腕で隠した。
「こらポチ、隠すな」
不破の力強い手が、両腕を掴むと、アッサリ広げられ、佐倉の顔が首まで赤くなった。
そのままの状態で、不破の口が緩やかな膨らみの頂上にある、小さなピンク色の蕾みに触れると、佐倉
の体がビクンと震えた。

170 :

「んっ…ううん…はぁ」
感じているのを必に我慢する佐倉の口から、時折小さく甘い声が聞こえると、不破の中の狼な部分
がさらに大きくなり、刺激ですっかり大きくなった乳首に、舌で強めに舐めたり、軽く甘噛みしたりして、
その度に体を大きく震えさせるのを楽しんだ。
ひとしきり胸を楽しんだ不破の舌は、ゆっくりと佐倉の下半身へと降りていった。
そして、ヘソの辺りでチョット止めると、最後の下着に指をかけ、慌てる佐倉の手を上半身で防ぐかたち
で、一気に脱がせた。
「嫌っ」
必に足を閉じ、手で隠そうとする佐倉を、不破はうつ伏せに寝かせると、佐倉の性感帯を探すかのよう
に、背後から耳を舐り、背中に舌を這わせて、小さなお尻を撫で回した。
そして、桃のようなお尻の肉に軽く噛り付いては、舌で歯形のついた部分を嘗め回した。
「ポチ」
優しく、しかし絶対的な不破の声を聞いた佐倉は、ゆっくりと仰向けになったが、右腕で胸を、左手で一番
恥ずかしい箇所を隠していた。
しかし、完全に狼となった瞳に見つめられると、オズオズと手をずらしていき、生まれたままの姿を、不破
の前に曝け出した。

171 :
不破の手が、佐倉の膝の辺りに触れると、もはや羞恥で真っ赤な顔を背けながら、ゆっくり足を
開いた。
そんな佐倉の秘所に、不破は顔を埋めると、処女の割れ目を優しく舐めはじめた。
「あっ」
舌が触れたとたん、佐倉は大きく体を跳ねさせ、両手で不破の頭を掴み、太腿で顔をはさんだ。
しかし、舌の動きは止まらず、いっそう激しくなり、佐倉の体を淫らに震えさせた。
割れ目の上の方に、プックリと小さな芽が出てきたのに気付いた不破は、口を大きく開け一気に
齧り付く。
「ヒッ!イヤァー」
その瞬間、余りにも大きな快感に、佐倉の体は今迄より大きく跳ね上がり、意識が弾け飛んだ。

172 :
体を何度も大きく震わせつつ、汗と涙と唾液でグチャグチャになった顔を、幸せそうに呆けさせた
佐倉が、意識を取り戻したのは30分もの後の事で、準備万端だった不破の狼さんは、その間に
すっかり萎えてしまった為、再び襲い掛かる事が出来なかったそうな。
この後、平謝りした不破が、一時的にセバスチャンになったりして、この件は落ち着いたが、佐倉
が不破の部屋に訪れる回数は、以前より増えたそうな。

173 :
以上、駄文書きでした。
このシリーズは妄想するけど、川原作品は最後まで行き難いので、寸止めになっちゃった。
最後までのエロエロを期待されている方、どうもスイマセンでした。
では、ROMと保守に戻ります、サラバです。

174 :
お疲れ様でした。
とってもGJ!でした。
リアルタイムで読めてラッキーです。

175 :
GJ!!
だが断る
ってのがいいなぁ…ROMと保守と言わないで、またお願いします!

176 :


177 :
HOSHU

178 :
保守
都筑貴さん×菜苗さん、レナードの聡真×遥 誰か書いてほしいです…

179 :
保守

180 :
>178
聡真×遥はあの年齢でですか?

181 :
ホシュ
>>180 原作+5年後くらいが希望ですね〜。

182 :
エロの少ない駄文書きだが、聡真×遥の原作+5年後、純愛系?な妄想でよければ挑戦
してみようかと思う。
ていうか、お隣の女子学生に手をつける23歳(多分社会人1〜2年生)は、か〜な〜り勇気
がいると思うんでね。
もしかすると大学院でまだ学生だったり。
ところで、聡真君はヤラハタ君になるのだろうか
うーん、色々制限がかかりそうだが、ちょいと考えてみようかな?

183 :
>>182
是非ともお願いします〜!

184 :
〜には〜がある、のシリーズって単行本化されてるのって1冊だけ?
163の元ネタはを読んだ覚えがない単行本派です。

185 :
たしかあの元ネタは単行本にはなってないはず。

186 :
そうなんだ、残念

187 :
hosyu

188 :
駄文書きです。
遅くなってすいません。
なかなか、設定が難しい…けど頑張って考えてます。
ちょっと保守ついでに、聡馬×遥の思いつき日常設定を落としていきます。
エロ成分激薄(無いのと同じ)なので、エロ希望の方はスルーしてください。


189 :
保科聡馬は苦悩していた。
筆マメで義理堅く、折り目正しい性格だが、柔道馬鹿一直線な青春の影響で、
エトスの方向性に問題が有るように、恋愛についても疎かった。
それどころか、一目惚れした相手が小学6年生のかわいい少女なのだから、
多少の知識程度ではどうにもこうにも…ロリコンの4文字が浮かんでは思考
停止する状態を繰り返すばかり。

190 :
しかし、そんな隣に住む若宮遥ちゃんを、変質者の魔の手から助けてから5年。
今ではユリアナ高校の2年生となり、可愛らしい制服に身を包む愛らしい女の
子となっていた。
そんな彼女が、自分の部屋のベットの上で、無防備な姿を晒して寝ている。
聡馬は、己の煩悩を抑える為、必でベットの方を見ないようにしつつ、部屋
を出ようとしていた…が、なぜか彼女の寝姿が段々近づいている。

191 :
自分の意思とは反対に足が進み、気が付けばベットの横で、子猫のよう体を丸め
て寝ている遥ちゃんを見下ろしていた。
(このままではイケナイ!)
心の中では必に叫んでいても、体はゆっくりと彼女のもとへ。
手を伸ばして、柔らかそうな体に触れる瞬間…
「そ〜お〜ま〜君、御飯出来たよ〜」
遥ちゃんの声で目が覚めた。

192 :
「はぁ…夢か」
聡馬は、ぼやけた頭で状況の把握を試みた。
自分は居間のソファーでうたた寝をしており、遥ちゃんの声で目を覚ました…
ここまではOK。
変質者の事件以来、遥ちゃんのお母さんが仕事で遅くなる時は、保科家で夕食
を一緒に食べ、その後はテレビを見たり、家庭教師の真似事をしたりして過ご
すようになり、今日も遅くなるとの事で、うちで母と夕食を作っていたんだった。

193 :
自分に言い聞かせるように、心で呟いていると、エプロン姿の遥ちゃんが台所
から出てきた。
「へへ、今日はカレーを作ったよ」
遥ちゃんの笑顔に、聡馬もつられて笑顔になると、
「あらまあ、私がカレー作っても、そんな顔見せたことないわよねー」
後から現れた母親の言葉に、聡真の笑顔がやや引きつった。
「聡真、遥ちゃんのお母さん、今日も仕事で遅くなるそうだから、ちゃんと相手
しなさいね」

194 :
お隣の遥ちゃんには優しくなる一方、自分に対する扱いが、さらにぞんざいになって
いるように感じる今日この頃。
特に最近は、まるで自分の娘のように可愛がっている。
夕食のやや甘めなカレーの中には、やや歪なジャガイモやにんじんが入っていたが、
遥ちゃんのジッと見つめる視線に気付いた聡真は、
「遥ちゃん、このカレーおいしいよ」
と答えた。

195 :
キラキラと目を輝かせて喜ぶ遙ちゃんと、聡真を見比べた母親がポツリと一言。
「あー、こんな可愛い女の子が良かったわ、男の子はツマンナイ」
再び自分への愛情に疑念を描くような言葉が聞こえたが、聡馬はあえて無視した。
夕食を食べ終え、これからどうするか考えていると。
「遥ちゃん、お母さん帰ってきたよ」
と母親の声がした。

196 :
「お邪魔しました、聡馬君またね」
「ああ」と帰っていく遥ちゃんの後ろ姿を見送り、自分の部屋に戻ると、聡馬は
ぐったりとベットに倒れこんだ。
(ああ、なんとか良いお兄さんでいられた)
内心ホッとしつつ、いまだに羽が見える彼女に悶々としつつ、夢での自分の行動
を思い返し悶絶した聡馬だった。

197 :
以上、駄文書きでした。
聡馬君を、良いお兄さんから、どうやって脱皮させるかが、私的にこのカップルのネックです。
ほんと、どうしよ。

198 :
ぎゃー俺の馬鹿。
聡馬じゃなくて聡真だ。
なにオオボケかましてんだ。
チョット吊られてきます。

199 :
GJ!
悶々する聡真くんがイイ!

200 :
駄文書きです。
毎度ながらエロくないので先にお詫びしておきます。
聡真×遥ちゃんで、遥ちゃん視線Verの、聡真を半歩程勧めた設定です。

201 :
「遥ちゃん…」
(聡真君、寝言で私を呼んでる…えへへ、どんな夢見てんだろ?)
此処は聡真君の部屋。
夕食の後、勉強を見てもらってたんだけど、仕事で疲れていたのか、
聡真君はベットを背もたれにして、座ったままでうたた寝してる。
私はというと、勉強を一時中断して、聡真君の寝顔を鑑賞中。

202 :
社会人として働く聡真君は、スーツ姿が似合う大人の人。
学生時代からカッコ良かったけど、背が高くて肩幅が広いから、も
っと良くなった。
バレンタインに、チョコを一杯貰うくらい…。
(む〜、聡真君の馬鹿!)
最近、聡真君のことで、直ぐに気分が変わっちゃう、乙女心は複雑だ。
優しくしてくれるとうれしいし、他の女の人と一緒にいると落ち込む。
それが嫉妬だと気付いたのは、少し前で中学3年生の時だった。
カッコ良くて優しい隣のお兄ちゃん、そんな聡真君が初恋の人。

203 :
私が呼んだら、駆けつけてくれて、変質者をやっつけて、「遥、大丈夫か」
って、凄く心配してくれた。
小さかった私を、悪い人から助けてくれたヒーロー。
あの時のことを思い出すとまだ少し怖いけど、直ぐに強い聡真君が助けて
くれた姿が思い出されて嬉しくなる。

204 :
あれから5年、聡真君は成人しちゃって大人の人になったけど、私も高
校生になって、少しは成長したよ。
(まだ胸とかはチョット小さいけど…って私、何考えてるんだろ)
エッチなこと考えそうになってしまった、危ない…危ない。
(でも、聡真君ならそういう風になってもいいかな…まだキスもしたこと
無いけど)
とか思いつつ、小さな声で呟いてみる。
「聡真君も私のこと好きみたいだから、ファーストキスはとっておいてあ
げるからね」
(キャー言っちゃった!)
自分で自分の言葉に恥ずかしがったりして、私何してるんだろ。
って、あれ?聡真君の顔、何か赤くなってない?

205 :
「聡真君…寝てるよね?」
「うん」
「………」(赤)
「…」(苦笑)
「キャー、聡真君の馬鹿ー!」
私は真っ赤になった顔を自覚しつつ、思わず聡真君の体をポカポカと
叩いていた。

206 :
「ごめんごめん、遥ちゃん」
と謝りつつも、聡真君の顔は笑っている。
(あれ?)
気が付くと、叩いていたはずの聡真君の体に、優しく抱きしめられて
いた。
「ソ、ソウマクン」
思いがけない事態に、私の頭はパニック状態で、言葉がオカシクなっ
ちゃってる。

207 :
「遥ちゃん、好きだよ」
「え…」
聡真君の顔が近づいたと思ったら、自然と目を閉じていた。
唇に優しく触れる感触と、聡真君の両腕に体を支えられているのを感
じて、自分が今何をされているのかが解った。
(聡真君と私、キスしてる)
(私のこと、好きだって言ってくれた)
(わー、凄く嬉しいかも)
キスの後も、私は聡真君の腕の中に抱きしめられたまま、お母さんが
帰ってくるまで幸せな気分に浸っていた。

208 :
その後、自分の部屋に戻った私は、小学生の時に聡真君からクリス
マスプレゼントで貰った大きな熊のヌイグルミを抱きしめ、さっきのこ
とを思い出しては、「キャー、どうしよう」とか呟きつつ、ベットの上をゴ
ロゴロと転がるのだった。
後、このクマのヌイグルミに「そうま君」と名前をつけ、何時も抱いて
寝ているのは、誰にも内緒である。

209 :
以上、エロパロなのにエロが無い駄文書きでした。
保守ってますので、エロが旨い書き手さん、カムバックプリーズ!

210 :
>200
可愛い遥ちゃん、GJです!

211 :
GJ
おんなのこだなぁv聡真くんもたいへんだw

212 :
hoshu

213 :
>>200 さんの設定をお借りして聡真×遥です
微エロ…?
勝手にお借りしてゴメンナサイ。

214 :
保科聡真は困っていた。
全体的にパステルカラーや白色で構成された可愛らしい空間に、これまた可愛らしいクッションにもたれて
ふかふかのラグの上に座って、困っていた。
ここは遥の部屋。
聡真の家に遥が来ることは良くあるが(ほぼ毎日だ)、逆はない。せいぜい玄関先だったろうか。
それ以前に、聡真の人生において女の子の部屋に足を踏み入れるという出来事がなかったため、
彼は今非常に身の置き所のないいたたまれなさを感じて困っていた。
(落ち着かない…)
パステルカラーの配色もさることながら、なんというか…いい匂いまでするのだ。
自分の部屋にはない匂いだ、と緊張を新たにする。

215 :
今日は聡真の両親が泊りがけの旅行に行ってしまい、遥の母も帰りが遅くなるらしい。
以前にもまして自分に対するぞんざいぶりを隠そうともしない母から
『遥ちゃんを遅くまで独りぼっちにさせたら承知しないわよ!残業?あんた仕事と遥ちゃんとどっちが大事なの!』
と言いつけられている。
(理不尽な…)
しかし残業をぶっちぎってきた聡真の早い帰宅に喜び、遥は「私が夕食を作る!」と張り切った。
一人で作れる!と言い張る遥の包丁を握る手つきは、経験は調理実習程度の聡真よりも少々危なっかしかったため、
結局二人で食事を作ることになった。
「いつもおばさんに習ってるんだけどな〜」
不服そうな遥をなだめながら出来た料理は肉じゃがだが、テーブルの向かい側に座った遥が極上の微笑みで、
「なんだか、新婚さんみたいだね!」
と言ったせいで、味がよくわからなくなったが残さず食べた。
その後、母が帰るまでいて欲しいという遥の頼みで部屋にこうしているわけだが…。
飲み物を持ってくる、といって遥は席を外し、このファンシーな部屋に一人きりである。
この間はついキスをして抱き締めてしまったが、今日はそんなことないようにしなければ。
聡真は脚を直して正座すると姿勢を正し、深く息を吸う。
これ以上は自制が利かなくなりそうで、遥に対して無体なことをしてしまうのではないかと恐れている。
(淫行だしな…)
それに一番恐いのは、遥に嫌われてしまうことだ。
あの笑顔が見られなくなってしまったら、この先生きていけるか自信がない。


216 :
ふとベッドを見ると巨大な熊のぬいぐるみが枕元においてある。
確か遥がまだ小学生の頃にプレゼントしたものだ。
(まだ持ってたのか)
なんとなく手にとって抱いてみる。
(これを抱いて寝てるとか…?まさかな)
そんな想像をもやもやと浮かべ、さらに遥の抱き心地を反芻してクマを抱く腕に力が入る。
ほんのりと香る部屋のものとは違う匂いが鼻孔に流れ込み、これは、遥の匂い…と思ったところでコンコン、とノックが響きドアが開いた。
「おまたせ…あ、聡真くんがそうま君抱いてる!」
トレイにカップとお菓子を載せ、遥が入ってくる。
(はっ!これじゃ変態だ!)
思わずクマを抱いたまま立ち上がる聡真の心情を知らず、遥は笑いかけながら小さなテーブルにトレイを置いた。
「あ、いや…俺が俺を…なんだって?」
クマをベッドに戻し、頭をかきながらまた座り、斜め横に遥も座った。
「…エヘヘ、なんでもない。ココアだけどいい?砂糖はあんまり入れてないよ」
「ああ…ありがとう」
ちょっと頬を赤らめてカップを差し出す遥のはにかんだ笑顔に、つられてとろけそうになる表情筋をなんとか保ち、言葉どおり甘くないココアを啜った。
「うん、美味しい」
「良かった…だけど、味見したけど苦かったよ…やっぱりココアはあまーくないと」
そういってカップに口をつける仕草はなんとも可愛らしく、おもわず微笑む。
「ふ・・・」

217 :
「あ、今!子ども扱いした!」
ぷっと頬を膨らませる遥にまた顔が緩む。
「してないしてない…」
「してた!私だってもう大人なんだからね!」
「ぬいぐるみを抱いて寝てる大人ねぇ…?」
「えっ!?どうして知ってるの?」
遥の顔がカーッと耳まで赤くなる。
軽くからかうつもりで言ったのに、どうやら図星だったようだ。
「ははは…やっぱりまだまだお子様だな」
「…」
からかいついでに軽口を叩くが遥が急に黙って俯く。
(あ…怒ったか?)
その様子に内心慌てながらもなんと声をかけたものか思案して躊躇しているあいだ、遥はじっと黙ってココアを飲む。
結局なにも話しかけられず、聡真も黙ってココアを啜った。
そのココアの苦味に、ふと聡真はバレンタインデーのことを思い出した。
今までにない量のチョコを貰って帰宅した聡真を見て、こんな風に遥が黙り込んでしまったのだ。
そしてぐっと聡真の胸にチョコを押し付けると髪を翻して自宅へ戻っていった。
その背中にもやっぱり声をかけられず、こんな風に気まずい空気だけが残っていた。
その夜聡真は眠れないほどに悩み煩悶したが、次の日の遥はいつもどおりの態度に戻っていた。
(女の子は難しいな…)

218 :
そんなことを思い出していると、遥がカップを置き、顔を上げる。
「聡真くん…」
瞳がうるうると揺れ、じっと聡真を見つめる。
「う」
心臓が本当に一拍強く打ち、思わず胸を押さえる。
(そんな目で)
聡真はうろたえ、だが目を逸らせずにいた。
(そんな目で見られたら)
遥は膝立ちでずい、と近づき聡真の肩に手を載せる。
そしてじっと聡真の目を覗き込む。
「私…子供じゃ、ないよ」
「はる…」
唇に甘い吐息がかかり、さらさらとした長い髪が頬に触れる。
押し付けられた身体と唇の感触が聡真の理性を吹っ飛ばすまで、ほんのわずかな時間だった。
小さな舌が聡真の唇を割り侵入してくる。
(遥…!)
しなやかな細い身体を抱きすくめ、絡め取った舌をたどって柔らかな唇を割り、差し入れた舌先には甘いココアの味がした。
「んっ…」
おずおずと応える遥のけなげな動きに、愛しさと欲望が増していき腕に力が入る。


219 :

しばらく本能の赴くままに貪った後うっすらと瞼を開けると、ぎゅっと目を瞑った遥の睫毛が震え、目尻に涙が薄く滲んでいた。
はっとして唇を離すと、遥はぐったりと聡真の胸にもたれ荒い息をついた。
「はぁっ…はあっ…」
「…ごめん、遥…」
(俺は…また…無体なことを)
内心頭を抱え、それでも抱いたままの身体は柔らかく、呼吸の度に聡真の色んなところを刺激する。
身を離そうとする動きを止めるように、遥の指がシャツを掴んだ。
遥は顔を上げて、聡真に恥ずかしそうに笑いかける。
「聡真くん、私、ちゃんと大人でしょ…?」
「遥…?」
「大人のキスだってできるし…その先だって、できるよ…?」
涙の滲む瞳のまま、決意の表情で遥が微笑む。
自分の名前を呼ぶ魅惑的な唇の動きに吸い寄せられそうになり、聡真は反射的に目を閉じた。
だがもう既に張り詰めている自分自身が急かすように脈打っている。

220 :
いっそこのまま抱いてしまおうか。
傾いた気持ちに流されそうになりながら、だが飛んでしまった理性を総動員して引っかき集め、なんとか立て直すと遥の髪を撫でる。
「だめだ」
「聡真くん…」
決の表情に落胆の色が浮かぶ。
「やだ!」
「遥」
ぎゅっと首に抱きつき、身体を押し付ける。
「…私、聡真くんのこと、大好き」
「俺だって、好きだよ。だけど…」
服を通して伝わってくる鼓動が遥のものなのか自分のものなのかもうわからない。
ただ早鐘のように胸を打っている。
「私が子供だからいけないの…?聡真くんと釣り合わない…?」
涙交じりの声が耳元で響く。
聡真が遥との年齢差をずっと気にしていたように、遥もまた気にしていたのだろうか。
たった6歳、されど6歳。
「違うよ」
(俺はそんなに大人じゃないよ…遥)
愛しい女の子の涙の前では理性など何の役にも立たないことを聡真は知り、遥の身体を抱き締めた。
「遥…」
どこもかしこも柔らかい。
確かにもう子供ではないのだ。

221 :
もう一度、「大人のキス」をする。
深く深く舌を絡ませながら、抱き締めた腕をそっとずらし、やや小ぶりな胸に触れる。
柔らかく手のひらにおさまるその感触を確かめるように優しく揉むと、唇が外れ、堪えているような吐息が漏れた。
「…んっ」
びくりと震える身体を服ごと出来るだけ優しく撫でる。
「こわいか?」
「ううん、平気…」
けなげにもそう答え、ぎこちなく笑った。
こみ上げる愛しさに、遥をぎゅっと抱き、そのまま押し倒す。
首筋や耳朶の甘いにおいにひきつけられるように口づけながら、Tシャツを捲り上げ、素肌に触れた。
「あっ…!」
「綺麗だ…」
聡真はうわ言のように呟き、滑らかな肌に唇を這わせた。
ブラジャーをずらしてそのふくらみの先を口に含むと、舌で転がすように丹念に舐め、吸い上げる。
「あんっ…あっ…そうま、くん…くすぐったい…よ…」
遥の指が聡真の髪をくしゃりと掴み、びくびくと震える身体から切なげな吐息が上がる。
唇で尖端をつまむように咥えて引っ張り、固く凝ってくるのをまた転がす。
「ん…あっ…あぁっ」
甘い声に脳髄が蕩けるような心地で、乳房を愛撫しながら片手を腹から腰へと滑らせ、スカートをたくし上げるように太腿を撫でた。
すべすべとしたその手触りを思うままに堪能しながらその奥の下着へと手を差し込むと、遥がわずかに抵抗する。
「…ゃ」

222 :
脚を擦り合わせるその仕草に、聡真ははっと我に返り手を抜いた。
(だめだ…これ以上は)
聡真は名残惜しげに白い肌に吸い付くと、きつく吸い上げ赤く痕を残して身体を離した。
「ひ…ぁっ…!」
顔を真っ赤にして涙ぐんでいる遥の頬に手の甲でそっと触れる。
「ごめん、遥」
うっすらと目を開き、聡真の顔を見つめる遥の服を直してやり頭を撫でる。
「…?そうまくん…?」
「これ以上はしないから」
「どうして…?」
起き上がって、潤んだ瞳でまっすぐに聡真を見つめる遥の視線に耐えられず、聡真は苦笑して目を逸らす。
「おばさん帰ってくるだろ…それに」
「それに…?」
やっぱりまだ早い、とは言わず頭をくしゃくしゃと撫でる。
「遥」
「はい」
頬は赤いままだが神妙な顔で遥が居ずまいを正す。
その様子に少しだけ微笑むと自分が乱した髪を整えてやる。
「急がなくていいんだ…俺はずっと」
急に照れくささがやってきて、聡真はちょっと口ごもった。
「?」
涙のせいできらきらと輝く瞳に、まごつきながらなんとか続く言葉を搾り出す。
「ずっと、は…遥のことが好きだから」
「聡真くん…」
目尻からポロリと雫がこぼれ、俯いた遥の頭が胸にもたれる。
シャツを掴んでぎゅっとしがみつく小さな肩ごと抱いて、背中を撫でた。
触れればまだ、さっきまでの余韻が熱く甦り自分自身を硬く脈打たせている。
(やせ我慢だな…)
でも待つと決めたのだ。5年待った。あと少し、遥が卒業するまで待てないはずがない。
(待ってるよ)
そんな想いを込めて、腕の中の柔らかな愛しいものをぎゅっと抱き締めた。
おしまい

223 :
おそまつさまでした

224 :
うおう、GJな作品がきてたー!
と小躍りしてる駄文書きです。
私の設定でなんぞで良ければ、ドンドン使ってくださいまし、というか続編みたいになってる〜。
こうなると、やはり本家?としてはもう一歩踏み込まねばと、ちょっとテンションが上がりました。
まあ、多分エロは薄いけどね…。

225 :
>>213
二人とも可愛い!やっぱり歳の差モノはいいなぁ〜
最近の川原作品だと個人的にこの二人が一番好きだ
内容も良かったけど、文章自体が書きなれてる感じで
とても読みやすかったです
今回と同じく聡真×遥でも他の作品でも
また213さんの書いたお話読ませてもらえると嬉しいです!

226 :
ずっと前に書いたけど
主役じゃないから投下してなかったやつ
保守代わりに。
進駐軍(GHQ)に言うからね の真介と玲子さんです。

227 :
「卒業おめでとう」
父兄のいない彼女の為に志貴さんはわざわざ仕事を抜けて来てくれた。
しかし父兄にしては微妙に若くて、周りから浮いている。
「ありがとうございます」
七緒さんはペコリと頭を下げ、にっこり笑った。
「志貴さん!」
クラスメイトの佐藤真介君が駆け寄って来る。
志貴さんはぼそぼそと、これでもずいぶん明るくなったほうだが、暗い顔で佐藤君を寿いだ。
「佐藤君も卒業おめでとう」
「はい、ありがとうございます。志貴さんもおめでとうございます」
「?」
七緒さんと志貴さんは顔を見合わせ首を傾げた。
「…何が?」
佐藤君はニコニコしながら志貴さんを肘でつつく。
「卒業を待って結婚式なんでしょう?」
コノコノ、みたいにつつかれ、志貴さんは呆然としていた。
七緒さんはうーんとこめかみを押さえ眉間にシワを寄せた。
七緒さんは、ハウスキーパー兼雇われ婚約者として志貴さんの家に住み込んでいる。
「あのねぇ、佐藤君、それは…」
深〜いワケがある、と続けようとして七緒さんは口を噤んだ。
「真介」
仕立ての良い、上品かつセクシーなスーツを纏った玲子さんが登場したからである。
そもそもこの人との結婚話を断る為の方便なのだ。
玲子さんは令嬢で美人でキラキラとゴージャスである。志貴さんより周りから浮いていた。

228 :
「おねーさん!来てくれたんですね、今日もお美しい!」
「余計なことは言わなくていいわ、少年」
玲子さんは若干照れていた。
「い、意外な組み合わせですね」
七緒さんは志貴さんにこっそり囁く。志貴さんも頷き、少しホッとした顔をする。
「そういえば最近イヤミも減りました…」
玲子さんはキッと二人に振り向き、にっこりと笑った。その笑顔がおそろしい。
「ごきげんよう、お二人さん。挙式の日取りは決まりまして?」
「え、え〜と、その〜」
何とか笑って誤魔化せないか、七緒さんは祈った。
志貴さんは冷や汗をかいて、だが無言である。
「おねーさん、それは野暮ってもんですよ」
意外な助け舟が来た。佐藤君は人差し指をチチチと振りながらさりげなく玲子さんの手を取った。
「志貴さんは卒業まで待ってたんですよ、今日のこの日を!きっとこれから二人でデートなんですよ、僕たちみたいにね」
「真介!」
呆気に取られる二人のまえで、玲子さんは顔を真っ赤にして慌てて佐藤君をたしなめる。
「佐藤君、意外に手が早い…」
七緒さんは感心して呟いた。
「では僕らは失礼します、七緒さん、行こう」
志貴さんはこの隙にとばかり七緒さんを促して、スタコラと立ち去った。


229 :
「玲子さん、行きましょうか」
佐藤君は玲子さんの手を取ったままにっこりと微笑みかける。
「…」
この子は…
天然なのかわざとなのか、時々読めないわ、と玲子さんは思った。
駐車場に停めた外車に乗り込む。
「あ、この前と違う車ですね」
「そうだったかしら」
車庫にあった車に適当に乗ってきただけだ。
運転席に座る玲子さんのタイトスカートから伸びる脚を、佐藤君がじっと見ている。
その視線を意識しないように前を向き、玲子さんはなめらかに車を発進させた。
途中昼食をとった後向かった先は、都会から少し離れた海辺のホテル、全室オーシャンビューが売りのさらに豪華なスイートルーム。
「うわー絶景ですねぇ!」
大きな窓辺ではしゃぐ佐藤君を微妙な表情で見つめる。
ベッドに腰掛け、つい溜め息をつく。
(私、何してるのかしら…)
志貴さんの誕生祝いで知り合った佐藤君は、マイペースに玲子さんへ接近し、いつの間にか親しい間柄になってしまった。
子供だと思って油断していたらあっという間に唇を奪われ、高校生らしからぬテクニックで玲子さんを陥落した。
(キスだけ、まだキスだけよ)
その先を欲しがる少年に、『卒業したら』と約束し、守るつもりもなかったのに、どうしてこうしているのかしら。

230 :

「玲子さん、約束、守ってくれるんですね」
ぼんやりしていた玲子さんの前に佐藤君が立っている。
「…ええ」
(志貴さんとは全く違うタイプ)
両手で頬を包まれ、唇が降りてくる。
優しくついばむように唇を挟み、角度を変えながらやがて深く口内に忍び入る。
(年下でまだ子供)
まさぐられる舌と唾液を絡ませ甘く響く口づけを、もっと深く欲しくなる。
(そうよ、ちょっとキスが上手な子供)
身体の奥に火が灯り、何かが蕩けだす。
(なのに…)
ベッドに倒され、彼の手がスカートの裾を太腿を撫でるようにたくしあげていく。
「ん…ダメよ…シャワーを…」
名残惜しくも唇を離し、手を押し留める。
「待てない」
佐藤君はもう一度唇を貪りながら少し手荒に玲子さんの服を脱がせに掛かった。
「んっ…!」
スカートは腰までたくしあげられ、ガーターベルトで吊ったストッキングが露わになる。
繊細な黒いレースで飾られたシルクの下着の横から、手を差し入れ玲子さんのスリットをなぞった。
「や…ダメよ…」
「すごく濡れてる、キスしかしてないのに」
耳元に熱い吐息がかかり、玲子さんは背筋を震わせた。かぁっと頬に血が上る。


231 :
「真介、あなた…どこでこんな事…あんっ!」
真介は小さな肉芽を指先で弄び、片手で上着の釦を外す。シルクのインナーもたくしあげ、下着と揃いの黒いブラジャーごと口に加えた。
「や…ダメ…ああっ…」
布越しに唇で挟まれた乳首が敏感に刺激を伝え、固く凝っていく。
いつの間にか背中に回された手がホックを外し、形の良い乳房が外気に晒された。
「すごくきれいです…」
尖端は赤く色づき、愛撫を待って小さく震えた。
ぬるりとした舌先がそれに触れ、自在に弄ぶ。
空いた手は乳房をきつく揉みしだき、乳首をつまみ上げ、口の中では吸い上げ、同時に陰核も指先で挟み上げる。
屈辱感と快感がせめぎ合い、玲子さんは快楽へと屈した。
「いやっ…真介…ああっ…んっ!」
敏感な部分を一度に三箇所も責められ、玲子さんは軽く達してしまった。
(まだ触られただけなのに…)
息を乱したまま、佐藤君を見上げる。頬はほんの少し上気しているものの、自分ほどには乱れていない。
(悔しい…)
玲子さんは身にまとわりつく衣服を下着を残して脱ぎ捨て、佐藤君をきっと睨んだ。
「ああ、勿体無い…僕、着衣も好きなんですよ」
「あなたも脱ぎなさい」
佐藤君は少し笑って学生服を脱いだ。シャツを取り、ベルトを外す。スラックスを脱いでトランクスも脱いだ。
何の照らいもなく、天を向く逸物を玲子さんの前に晒した。
玲子さんは咄嗟に目を逸らしたが、その大きさに恐怖と期待を覚えた。


232 :
「玲子さん…続けていいですか」
「…ダメよ、ここに横になって」
佐藤君は言われるがままベッドに横たわる。
重力に負けることなくそそり立つ陰茎に、玲子さんは上半身をかがめ唇を寄せた。
「ん…」
亀頭におずおずと舌を伸ばす。ゆっくりと形を確かめて雁首まで口に含む。大きい。
こんなの入るかしら、と思う玲子さんの下腹部がざわめき、蜜が一筋、内股を伝うのを感じた。
「う…玲子さん…」
舌をまとわりつかせながら喉の奥まで咥え込む。
佐藤君の震えと小さな呻き声が陶然と胸に響く。
唾液で濡れた根元に手を添え、ゆっくりと頭を上下させ、口をすぼめて吸いながら舌を陰茎のあちこちに絡ませる。
柔らかな陰毛が頬に触るのを感じながら笛を吹くように横から茎を吸い、つるつるとした亀頭を手のひらで撫でながら扱く。
繰り返し、強弱をつけ吸いながら扱いていく。
「れ、玲子さん…!!すごい…」
やがて鈴口から独特の味が滲み出し、そこに舌をねっとりと這わせながら更に根元を扱くと、佐藤君は耐えきれず、
玲子さんの口から自身を引き抜こうと腰を引いた。
玲子さんは逃さないように追いかけ、奥までくわえ込み喉を絞った。
「駄目…出るっ…!!」
痙攣するように腰が震え、佐藤君の手が玲子さんの頭を抱えて激しく揺さぶった。
喉の奥に勢いよくぶつかる熱い液体を、玲子さんは高揚感と共に飲みこんだ。


233 :
全部吸い出すように飲み干した玲子さんは、荒く息をつく佐藤君を眺め満足げに微笑んだ。
「どうだった?」
「すごく、良かったです…でも」
佐藤君は玲子さんを組み敷き、荒々しく乳房を揉み握った。
「っ!んんっ!」
「まだ足りない」
痛いほど掴まれた乳房の先を軽く噛まれ、のけぞって悲鳴を上げた。
太腿に当たる彼自身はもう復活し、固く大きさを主張している。
「し…真介!乱暴にしないで…きゃっ!!」
両足を抱えこみ下着を剥ぎ取ると、玲子さんの秘裂に舌をねじ込ませ、蜜を啜りながら陰核をきつく吸い上げた。
「いやっ…!ああっ…はぁっ…んっ!!」
淫らな水音が部屋を漂い、舐めても舐めても溢れ出る愛液を佐藤君は飽きずに啜った。
「ダメ…ダメよ…ああ…もう…」
お願い、と喉まで出かかったが唇を噛んで言葉を飲み込む。
ふいに音が止み、口の周りを腕で拭う佐藤君が視界に入る。
整った顔立ちの美少年だが、今は獣欲に煙った瞳で玲子さんを見下ろしている。
凶暴といっていい目つきは妖しく彼女を捉え、近づいてくる。
触れ合うほどに近づき、もうお互いしか目に映っていない。
固く熱い尖端がぴたりと中心にあてがわれている。
「どうして欲しいか、言ってください」
蜜をまぶすようにゆっくりとスライドさせ、陰核を刺激する。
「あ…あ…」

234 :
熱い。
玲子さんは目を閉じ、眩暈がするほどの欲望に屈服した。
彼は子供ではない。男なのだ。
「お…お願い…欲しいの…真介」
「玲子さん…大好きです」
言葉と共に肉を分け押し入ってくる塊の、その大きさに息を呑んだ。
一気に根元まで埋め、さらに奥へと突き出す。
「あ…はぁっ…!!」
身体の中心を電流が走り脳天を突き抜ける。
「…すごい…締め付け…気持ちいい…」
秘肉をいっぱいに押し広げ、脈打つ茎が動き出し、内臓を捲られるような感覚に背筋がぞくぞくと震えた。
しばらく慣らすようにゆっくりと動き、やがて大きなストロークで彼女を貫いた。
「ひっ…!やあぁ!」
雁首ぎりぎりまで抜き、また一気に貫く。繰り返し執拗に佐藤君は彼女を責めた。
衝撃が何度も全身を突きぬけ、悲鳴のような嬌声が部屋に響く。
「あ…だめ…あぁっ!ああっ!」
やがて動きを早め、繋がった部分からこぼれる蜜が白く泡立ち始める。
緩急の律動に玲子さんの一番奥が動きに合わせて収縮しているのが分かる。
「あ…あ…あ……!!」
全身でしがみ付き脚を絡ませ淫らに動く腰を抱えて揺さぶり、何度も何度も奥まで突いた。
「玲子さん…僕、もう…」
「いい…いいの…きて…きて!!」
佐藤君は汗を滴らせ、揺れる乳房にきつく吸い付くと赤く征服の跡を残し、激しく突き上げながら彼女の蠢く膣奥へと精を放った。
身体を痙攣させ白く飛ぶ意識の隅でその迸りを感じながら絶頂をむかえ、玲子さんの視界は暗転した。


235 :

緩く意識を取り戻した玲子さんは、自分の胸に顔を埋めて眠る佐藤君を感じた。
さらさらとした髪が素肌にくすぐったい。
そっと髪を梳いてやる。
こうしていると、やはり彼は子供のようだった。
(好きなタイプじゃないんだけど…な)
こんな子供にいかされるなんて・・・しかもあんなに激しく。
「ん…」
玲子さんは身体の奥からとろりとこぼれる体液を感じ、余韻に少し震えた。
シャワーを浴びようとそっと身を離し、ベッドを抜け出そうとしたとき、腕を掴まれる。
「玲子さん…」
「真介…起こしたの、ごめんなさい」
シーツで胸を隠しながら、寝乱れた佐藤君の髪をまた梳いてやる。
「あとで食事に行きましょう、もう少し寝てていいわよ」
その手を引張られ、再びベッドへと引き込まれる。
「ちょっと…!」
胸に顔を埋め、きつく腰を抱き締められる。
「僕、変じゃなかったですか」
不安げな声に玲子さんは困惑して、佐藤君の背に手を添えた。
(まさか、あれで初めてだったのかしら?)

236 :
「…よかったわよ、とても」
「…ひどいことして、ごめんなさい」
胸に埋めたままの佐藤君の表情はわからない。
セックスの最中はあんなに自信たっぷりだったのに。
今は子供のように自分にしがみ付いている。
(この子は…本当に…)
玲子さんは微笑し佐藤君の頭を撫でた。
(仕方のない子ね)
「好きよ、真介」
がば、と佐藤君は顔を上げた。
「ほんとですか!?」
満面の笑顔を浮かべ、見つめる無邪気な瞳に玲子さんは急に恥ずかしくなり、こみ上げる愛しさを隠してぷいと横を向いた。
「二度は言わないわ、さあ離して。シャワーを浴びたいの」
「嬉しいです!玲子さん!」
「もう、だめったら!」
改めて抱きついた佐藤君に押されながら、太腿に当たる熱い塊にドキリとする。
「大好きなんです…だから、いいでしょう?」
上目遣いの表情に再び妖しい色気が宿る。
下腹部がじんと痺れて胸が高鳴る。
返事を待たずに乳房に吸い付く佐藤君を胸に抱き、玲子さんは再びめくるめく快楽に身を委ねた。
(若いって…いいわね…)

おしまい


237 :
おそまつさまでした。
この人たちだれ?とか言われたらどうしましょ。
年齢差って萌えるよね!

238 :
脇役カップルGJ!
川原作品は、幸せなその後を連想させる終わりかたが多いですが、
この二人も幸せになってもらいたいですね。
私的バットエンドの代表は、美貌の果実の中の、大地の貴族に出
てきたカモメ眉毛男かな?(かもめ〜る)

後、ちょいと聡真×遥の続き書いてみました。
何時もよりエロ増量。(当社比200%くらい?)
でも、元が薄過ぎるから…ね。

239 :
「えへへ、聡真君…好き」
先日の一件以来、夕食後に俺の部屋へ行き、二人っきりになったと
たん、遥が甘えてくるようになった。
今も、床に胡坐を掻いて座っている俺の背中に抱きついてきている。
ポヨポヨと背中に当たる感触から必に意識をそらし、理性を保つ
という荒行を強いられる日々に、保科聡真は頭を痛めていた。
(胸が小さい事を気にしていたが…思ったよりあるよな)
などと、うっかり考えては、必に難解な公式やらを頭に浮かべて
煩悩を祓っていたが、そこは健康な成人男性、我慢にも限界が有る。
気付いた時には、欲望のままに動いていた。

240 :
「遥」
背中から回された腕を掴むと、軽く引っ張っぱる事で、遥の顔を自分
の顔の横迄近づけ、柔らかなホッペに軽くキスをする。
「え、聡真君?」
突然の行動に驚いた様だったが、そのまま柔道で鍛えた体捌きで遥を
後から抱きしめ、細い首筋に唇を這わせた。
「ひゃっ」
くすぐったいのか、首を竦めて逃げ出そうとする遥を、さらに追い詰
めるように耳朶や頬を優しく啄ばみつつ、やや強引に後を向かせて唇
を奪った。

241 :
「んん…ふぁ…はぁ」
唇を離すと、遥の瞳は潤んでおり、何かを期待しているようだった。
「もっとして欲しいの?」
俺のチョット意地悪な質問に、羞恥で耳まで赤くしつつも小さく頷き、
小さな唇の間からチロチロと舌を出して俺を求めてきた。
「遥、そんなエッチな誘いかたして、悪い子だ」
俺は遥の可愛い舌を啄ばむようにキスをすると、一気に舌を絡めて甘
い唾液を貪った。
「ん…んん…はぁ」
チュパチュパ…ジュルと、イヤラシイ音を立てつつお互いを求め合う
行為に、二人とも我を忘れて没頭した。

242 :
そのまま、聡真の手は本能の赴くまま、遥のやや小ぶりな胸をシャツ
の上からヤワヤワと揉み、スカートから伸びる太腿を指でなぞるよう
に撫でまわした。
「あぁ…はぁ…やっ、ぁん」
柔らかな体をピクンピクンと震えさせながら、可愛く声を堪える姿に
更なる劣情を抱き、太腿からお尻に手を移動させて、ムニムニとした
感触を楽しみ、そして最後に一番奥へ指を触れさせた。
「あっ」
遥は、俺に体を預けるように体を大きく反り返らせると、何かに耐え
るように必にしがみついてきた。

243 :
「んっ、んんぅ」
ゆっくり、割れ目にそって指を動かすと、それにあわせるように、腰を
くねらせる。
それを繰り返すうちに、上の方にポッチリとしたものを感じた。
(あ、これはアレか?)
「ンンゥー」
キュッと指で触れた瞬間、遥の体がビクンビクンと跳ね上がり、一気
に脱力した。
「え、もしかしてイッタのか?」
俺のストレートな質問に、顔を真っ赤にした遥はプイと横を向いた。
「ごめん、ごめん」
俺は繰り返し誤りながら、遥を優しく抱きしめた。
少し機嫌が直ったのか、胸に頭を押し付けるようにしてきた遥の頭を
撫でつづけていたところ…

244 :
「遥ちゃん、遥ちゃんのお母さん、大分遅くなるそうだから、今日は
ウチに泊まりなさい。お風呂も沸いてるから先に入っていいわよ」
母の声で一気に素に戻った俺は、同じく固まっている遥としばらく
見つめあうと、バッと勢いよく離れ、お互いに背中を向けて座った。
「遥ちゃん、聞こえた?」
母の問いかけに、「はーい、おばちゃんありがとう」と返事をしてい
たが、まだ動揺は収まっていないようだった。
チョット恥ずかしげに、「お風呂入ってくる」と部屋を出て行く遥に
「ああ」と返事をしたが、部屋の扉が閉まるまで、俺は振り向く事が
出来なかった。
パタンという小さな音が、優しい隣のお兄ちゃんへはもう後戻りが
出来なくなっている事を示すかのように、俺の心に響いた。

245 :
以上、駄文書きでした。
少し>213さんの作品ともつながるようで、パラレルワールドな状態。
しかし、微エロで引っ張りすぎだよね、反省!

246 :
>>239さん〜 続きをぜひ書いて〜
お風呂上がりの、シャンプーの香りのするパジャマ姿の遥を見てますます理性が飛びそうな聡真君が見たい〜

247 :
GJ!
もう絶対飛ぶよね理性w
にやにやする…!ww

248 :
どっちも萌えるw GJ!
GHQは私川原作品の中でも、好きなんだよね。なんか玲子さん好き・・
七緒さんも書いてくれないかな〜

249 :
どうも、駄文書きです。
聡真の理性を飛ばす…やっぱ遥ちゃんの逆夜這いかな?
でも、ヤラセるにはハードル(聡真の両親)が高いなぁ…どうしよう。
ま、それはボチボチ妄想してみるとして、前回のを書いてる段階で、
設定補強みたいなのを考えていたので、何時ものように短くエロ無し
ですが、保守がてら置いていきます。
遥Verで前回の続き見たいなものです。

250 :
パタン
小さく扉の閉まる音、それは何度も聞いている。
でも今日のは何時もと違う、もう今までのように隣のお兄ちゃんとして聡真君を見れなくなった、
そんな気持ちのせいだろうか。
(聡真君…)
引っ越してきて初めて有った時から、ずっと何かを感じていた。
なぜか一緒に居たくて、お母さんには「明日からアニキってよんじゃおーかな」とか言って、残り
の夏休みはずっと追いかけていた。
多分一目惚れしていたんだと思う。
まだ小学生だったから…子供だったから解らなかった。
お隣の優しいお兄ちゃん、悪い人から助けてくれたヒーロー。
本当の兄妹だったら、なんて思うくらい気が有って、そんな楽しい状態が続いていたから、自分の
気持ちに気付くのが遅れた。

251 :
そして中学3年生の時、買い物に行った帰りに、知らない女の人と一緒に歩いている聡真君を見て、
その女の人に嫉妬して自分が聡真君に恋している事に気付いた。
それと同時に、初めて6歳の年の差を自覚し、自分がまだ子供だという事が悲しくなった。
その後も、聡真君は私を妹のように可愛がってくれたけど、私の中ではお兄ちゃんではなく、初恋の
人になっていた。
でも、今の関係が壊れるのが怖くて、告白する事が出来なかった。
この間まで、ずっと優しいお兄ちゃんに甘えることで我慢してきた。

252 :
でも、もう違う。
この前は、私が怖がったから途中で止めてくれた。
今日は、聡真君から私を求めてくれたし、私が…その…お願いしたら応えてくれた。
あのままいけば、最後まで…してたかもしれない。
隣のお兄ちゃんではなく、私の事を好きだと言ってくれた聡真君。
聡真君の腕で抱き寄せられると、優しく包み込まれる感じで、安心できて
とても幸せを感じる。
それに、聡真君の手に触られると、き…気持ち…いいし。
(やっぱ無し、今のは無し(赤))
自分の気持ちにツッコミを入れつつ、今の考えを消そうと大きく首を振った。

253 :
(聡真君、他の人とした事有るのかな…)
(なんだか、キ…キスも上手っぽかったし、触りかたも凄くエッチだったな)
まだ体に残る火照りと指の感触を思い出し、思わず自分の体を抱きしめた。
(止め止め、考えるのヤメー!)
自分の思いとは逆に、さっきの事が鮮明に思い返される。
(あ…ヤダ、パンツが濡れちゃってる)
しっとりとした感触が一気に恥ずかしさを誘い、階段を急いで下りると、自分の部屋へ着替えを取りに
戻った。
「あ…遥ちゃん、一緒に洗濯してあげるから、お風呂に入るとき洗濯物は洗濯機に入れておいてね」
途中、おばちゃんの声が聞こえたので「はい」と答えたけど、こんなの見せられない。
自分の部屋で新しい下着に着替え、その上で寝巻きを持って保科家のお風呂へ向かった。

254 :
その後、お風呂場で再び聡真との事を思い出して、のぼせかける事になった。
何をしていたかは、絶対誰にも言えない。

255 :
以上です。
微エロなオ○ニーシーンを入れるか迷ったけど、何か設定がさらに悪くなりそうだったので、
今回は(今回も?)控えさせていただきました。
理性が飛んで意地悪狼な聡真にするか、もう我慢できない…な遥にするか、書いてみないと
自分でも解りません。
多分、次は聡真視点に戻ると思いますが…過度の期待はしないでください。
私も七緒さん好きだな〜、おじちゃんとゆっくり過ごす仲、プラトニックだけどって感じがいいな。

256 :
GJ!
意地悪に一票ww
つづき待ってますね

257 :
お〜GJです!!
二人の理性も危ういですが、先にこっちの理性が飛びそうだw

258 :
GJです!
私も意地悪に一票w
上のほうでどなたかがリクエストしていた
美貌の果実の貴さんと菜苗さんをかいてみました。
保守代わりに投下します。

259 :
高校を卒業した秋月菜苗さんは都築貴英さんからのプロポーズを受け、思い切りよく彼に嫁いだ。
そのあまりの思い切りの良さに、貴さんは結婚式が始まる直前まで
「ほ、本当にいいのか?菜苗さん」
と何回も確認していたものだ。
菜苗さんはウェディングドレスを着てちょっと艶やかな化粧をしてもらって、でもにかっと笑って
「貴さんてば、もう覚悟を決めなよ、いいに決まってるからこうしてるんでしょ?」
と言い、七実ちゃんを抱き上げた。
貴さんと前妻の子である七実ちゃんは、父一人子一人である境遇にも負けず、まっすぐ素直にすくすくと育ち、菜苗にも良く懐いている。
二人は血縁関係もないのに良く似ていて、並んでいると年の離れた姉妹のようである。
「菜苗しゃん…きれい」
七実ちゃんはちょっと舌足らずに、うっとりと義理の母となるその人を眺めた。
「うへへ…ありがと、七実ちゃん。今日からまたよろしくね!」
「はい!……お、お母しゃん」
ほっぺたを真っ赤にして自分を母と呼ぶ愛らしいその様子に、菜苗さんは胸が熱くなり、七実ちゃんをぎゅっと抱き締めた。
「…」
その光景に貴さんは柄でもなく瞼が熱くなったりして、それを菜苗さんに指摘されて酒も飲んでないのに顔を桜貝のように染めてみたりと
家族三人のスタートはなかなか賑やかな始まりだった。
それから半年。
結婚はしたものの、夫である貴さんは会社のある東京住まいである。
老舗の酒販メーカーであるリーベル社の社長さんなのだからしょうがない。
週末になると中央高速を2時間半かけて車を飛ばし妻と娘のいる甲州のK町へ帰ってくる。
妻の実家である秋月ワイナリーは、不慮のを遂げた父と兄の代わりに母と菜苗で切り盛りしていたが、
リーベル社との提携により安定した品質と生産と販売ラインを得られ、今日ものほほんとワインを造っている。

260 :
ある日のこと。
菜苗さんが葡萄畑で農作業していると、友達の家から戻った七実ちゃんが脚にぎゅっと抱きついてきた。
その小さな衝撃に驚いて、足元を見る。
「おおっと…七実ちゃん、おかえり。どうしたの?」
作業ズボンをしっかと握って、七実ちゃんは菜苗さんを見上げまん丸の瞳をうるうるさせながら、藪から棒に言った。
「お母しゃん、あたし、きょうだいがほしいです」
「な、なに?…どうしたんだ急に…」
たどたどしく理由を話す七実ちゃんの話を要約すると
仲のいい近所の友達たちのなかで、きょうだいがいないのは七実ちゃんだけだったらしく、仲間はずれだーとはやされたのが
とてもショックだったらしい。
「そーかー…それは辛かったね」
七実ちゃんを抱き上げ、ぎゅっと抱いてやる。
「お母しゃん、きょうだいはどうやったらもらえるの?」
「貰うとかじゃなくて…うーん」
菜苗さんは苦笑して、どう説明したものかと考えている。
(おしべとめしべの話はまだ早いか…んじゃ、コウノトリ、いやいやキャベツ畑?)
「そりゃぁ、とーさんとかーさんにお願いしするのさ」
ひょいと葡萄の木陰から菜苗さんの母が顔を出し、真理を告げ、菜苗さんは苦い顔をした。
「何を言うんだ、母さん…」
「お願いしたらいいの?お母しゃん、お願い」
七実ちゃんはなむなむと小さな手を合わせる。
母はからからと笑い、七実の頭を撫でて続けた。
「とーさんとかーさんが仲良くないと赤ちゃんはやってこないんだよ」
「母さん!」
「なにさぁ、本当のことだろう?」
のほほん、と額の汗を手ぬぐいで拭き、母は真顔である。
「おばーしゃん、赤ちゃんがきょうだいなの?」
「ああそうさ、かーさんからこれから産まれる赤ちゃんが七実ちゃんのきょうだい、弟か妹だよ」
七実ちゃんは目をきらきらさせて
「お母しゃん!父しゃんと仲良くして赤ちゃんうんでくだしゃい!」
と言う。
「うう…えっと…」
菜苗さんは溜息をついて母を睨む。
「妙なこと吹き込まないでくれよ母さん!」
「若いうちに産んどいたほうが楽だよ?」
そういうことじゃなくてさぁ…と菜苗さんはちょっと顔を赤らめて、七実ちゃんの頭を撫でた。
「そのうち、きょうだいはできるから…多分…ちょっと待っててね」

261 :
その日の夕食後、「ちょっとはいつ?あと何日くらい?」と聞く七実ちゃんの質問に辟易しながらお風呂に入れ、それから寝かしつけ、
居間でお茶を飲んでいると母がまた唐突に言った。
「菜苗、あんた明日から貴さんとこ行って来たら?」
「え?何で?」
母はずずずと茶を啜ると饅頭を一口食べる。
「そらー仲良くしてきたらってことさね」
ぶぶっとお茶を噴出し、菜苗さんはむせた。
「ぶっ…ぶへっ…」
「ありゃ!汚いねぇ、もう」
「な、何言い出すんだ母さん!?」
ふきんでちゃぶ台を拭きながら菜苗さんは赤くなった顔を必で隠し、母の藪から棒っぷりに呆れていた。
「七実ちゃんが言ってただろ?きょうだいが欲しいって。ここじゃ貴さん帰ってきてもあたしに遠慮して仲良くできないんじゃないかと思ってさ」
「…んなこたぁないけど…って何言わす」
菜苗さんはもう綺麗になってる卓をごしごしと拭いた。
「明日から行って、ほんで週末に貴さんと帰ってくればええでしょ」
「いや、だけど畑があるし…貴さんだって仕事があるし…」
「そーんなん、何日間かくらいあたしだけで平気だよ。リーベルの人らもいるし…それに仕事より嫁が大事に決まってるさ。
そーでなくても嫁より仕事でいっぺん逃げられてるんだから」
母は容赦ない。
だが、結婚の報告をしたとき
『息子と孫がいっぺんに出来た』
と大喜びをした母である。七実ちゃんはともかく、貴さんのことも大事にしている。
「行ってきな」
菜苗さんはちょっと悩んで、居間に飾ってある結婚写真を見て、それから頷いた。
「…う、うん、じゃあ…行く」

262 :
翌日。
昼すぎに東京駅に降りた菜苗さんは、ほへーとした顔でコンコースを見回した。
(人がいっぱい…祭りか?)
「菜苗!」
貴さんがちょっと駆け足で菜苗さんに向かってやってくる。
スーツをびしっと着た貴さんは、この都会の風景にちゃんとなじんでいて、家にいるときの貴さんとは別人のようだった。
「貴さん」
「びっくりしたよ、急に来るって言うから…」
「あー、迷惑だったかな…仕事の邪魔して、ごめんね」
「そんなことないよ、逢えて嬉しい」
貴さんは菜苗さんの頭を撫で、にっこり笑った。
なぜかどぎまぎして菜苗さんは俯き、つま先で床を蹴った。
「昼ごはんは食べた?まだなら、食事に行こう」
「うん、おなかすいた」
じゃあ、と貴さんは荷物を持ち、空いた手で菜苗さんの手を取った。
実は新婚旅行も七実ちゃん同伴だったので、こうして二人で会うのはほとんど初めてと言っていい。
(て、照れるな…)
高そうなホテルの高い場所にあるレストランでちょっと遅めのこれまた高いランチを食べ、菜苗さんは車で貴さんの家に向かった。
「ごめん、ちょっと散らかってるけど…」
「貴さん、まだ仕事でしょ?帰ってくるまで掃除しとくし、あとご飯もなんか作っとくよ」
「冷蔵庫にはロクなもんがないよ、食事はどっか食べに行こう」
「!貴さん、いつもご飯どうしてんの?」
貴さんはばつが悪そうに頭をかいて、笑ってごまかす。
「…七実がいたときは簡単なのを作るか、お手伝いさんに作ってもらってたんだけど…一人だとどうしても外食に…」
菜苗さんは腰に手を当てて仁王立ちになり、貴さんを叱った。
「ちゃんと栄養を考えないとダメでしょ!もう若くないんだから!」
「はい…ごもっとも……あ、そろそろ会社に戻らないと…じゃ、菜苗、後で。なるべく早く帰るから」
妻の剣幕に小さくなって苦笑いしながら、貴さんはそそくさと家を出て会社に戻っていった。
一人になった部屋でふう、と息をつき、菜苗さんはふと気がついた。
(栄養も何も、嫁の私が離れてたんじゃ、だめだよなぁ…)
怒鳴って悪かったとちょっと反省し、罪ほろぼしのような気持ちで、部屋の掃除に取り掛かった。

263 :
「ふう…」
片付いた部屋の中で一人、ベッドに腰掛け溜息をついた。
どさっと仰向けに倒れ、替えたばかりのシーツの匂いをかぐ。
(布団も干したかったなぁ)
でもちょっとだけ貴さんの匂いがして、そんな至近距離で匂いを嗅ぐようなコトを想像してぐぁ!と悶えた。
(子作りのために来たんだしな…それにしても貴さん遅いな…)
陽はとっくに傾き、実家でならそろそろ夕食が終わって七実ちゃんをお風呂に入れる時間だ。
(七実ちゃん、寂しがってないかな…)
貴さんの所に行ってくる、というと七実ちゃんはあたしも行く!と大泣きしていた。
母と自分の二人掛りでなんとかなだめすかし…まあ、とどめは母の
『これで七実ちゃんのお願いがきっとかなうから、かーさんを行かせてあげてちょうだいな』
の一言である。
出掛けの七実ちゃんは母に抱かれて
『お母しゃん、赤ちゃんうんでかえってきてね!』
と、涙のあとも愛らしく手を振っていた。
(まったく母さんには困ったもんだ)
七実ちゃんが言う『仲良く』と母が言う『仲良く』違う意味だということを七実ちゃんが知らないことが救いだろうか。
(母さんに任せると七実ちゃんの教育が心配だ…)
菜苗さんはよっと反動をつけて起き上がり、台所へ行き冷蔵庫を開けた。
調味料と水、それから牛乳とお酒…。
「あーほんとに何にもない…冷凍庫はどうだ?」
こちらも氷と冷凍のピザくらいしかない。
「うーん…」

264 :
考えあぐねていると、貴さんが帰ってきた。
「お帰りなさい」
「ただいま…」
貴さんは、ちょっと無言で菜苗さんを眺めた。
「?どしたの?」
「…いや、帰ってきて、君がいて…良かったなって…こういうの久々だから」
少年のように照れる貴さんにつられ、菜苗さんもはにかむ。
「へへへ…あ、貴さん、本当に冷蔵庫に何にもなくて…」
「ああ、だから、これ」
貴さんは手に提げた紙袋を差し出す。
「今日のところはこれで」
お重のようなお弁当が二人分入っている。
「やっぱり家で、二人で食事したいと思って…いいかな?」
「…うん」
菜苗さんはにっこり笑って、紙袋を受け取った。
豪華なお重のお弁当を二人で差し向かいで食べた後、お茶を淹れ一服する。
(お、こうしてると中々に新婚らしいな…)
お茶を飲みながら、まったりと葡萄畑の話や、七実ちゃんの話をして夜が更けていく。
「あ、お風呂沸いてるよ」
「ああ……あの…」
貴さんはもはや絶滅危惧種のような貴重な純情ぶりで、菜苗さんの手を取ると、そーっと握った。
「その…一緒に入る?」
「え…!」
菜苗さんの頬がかぁーーーっと赤くなり、まごまごしながら、こくりと頷いた。


265 :
先に入った貴さんが使うお湯の音を、脱衣所で聞きながら、菜苗さんはドキドキと高鳴る胸を鎮めようと深呼吸していた。
(い、いざ!)
まるで討ち入りのように気合を入れ、カラカラと引き戸を開けて、前をタオルでしっかり隠し、浴室に入る。
「お…お邪魔します…」
「ははは…」
やや緊張した面持ちの貴さんの視線が自分に釘付けであるのが、とても恥ずかしい。
「た、貴さん、あっちむいて」
「…はい」
壁を向いたのを確認して、手桶の湯で身体を流す。
軽く石鹸で洗ってから流し、つま先からお湯に入ると膝を曲げ、向かい合うように湯船に沈む。
「もうそっち向いていいかい?」
「う…うん」
正面に向いた貴さんとばっちり目が合い、その視線が下に下りるのを感じると手で胸を隠し、菜苗さんは俯いた。
(やっぱり…これは相当恥ずかしいな…)
「菜苗」
「ふわっ…ひゃい」
緊張のあまり声が裏返る。
貴さんは腕を取り引っ張ると、菜苗さんの身体の向きを代え背中から抱くようにすっぽりと包んだ。
「これなら、恥ずかしくないでしょう?」
貴さんの胸と自分の背中が密着している。
(いや、十分に恥ずかしいです)
正面きって見られるよりかはましか、と思い直し、うん、と頷いた。
背中から抱き締められるのは案外心地よく、お互い裸であるのを少し忘れるくらい菜苗さんは安らかな気持ちになった。
(ほへ〜…あったけー…)


266 :
ふと、湯船の縁に、アヒルの玩具が置いてあるのに気づく。
「アヒル…」
少し笑うと、手に取り、湯船に浮かべた。
「七実の忘れ物…週末に行くとき持って行こうっていつも思うんだけど、出かけるときになると忘れるんだ」
「家ではお風呂で玩具で遊ぶなんて言わないよ?」
「じゃ、何してるんだ?」
「数を数えたり、歌を歌ったり…しりとりしたり」
抱き締める腕の力が少し強まる。
「ありがとう…七実を可愛がってくれて。君には本当に感謝してる」
「なんだよあらたまって…最初からさ、なんか他人って気がしなかったんだよね…なんか似てるしね私と七実ちゃんて」
「…」
貴さんの手のひらがするりと菜苗さんのおなかを触りながら上ってくる。
「あ…あの…貴さん?」
首筋に吐息が掛かり、腰の下のほうに硬い棒のような熱いものを感じる。
「年甲斐がなくて申し訳ない…」
やわやわと乳房を揉みながら指の間に乳首を挟み、く、と力を入れる。
「あっ…」
びくり、と菜苗さんの身体が震え、うなだれた首筋に貴さんは口づけを落とした。
「仕事中も君のことばかり考えてた…」
「…だ、だめだよ、しゃちょーさんがそんなことじゃ…」
乳房から片方の手を外し、ゆるゆると下へ伸ばすと菜苗さんの大事な場所に触れた。
「…あっ…んん…」
水草のようにゆらゆらと揺れる柔らかな毛を分けて、無骨な指が割れ目をなぞる。
濡れた髪が張りついたうなじに吸い付き、軽く痕を残しながら、首筋から耳朶へと音をたてて口づけていく。


267 :
ちゅぱちゅぱと吸い付く音が浴室の壁に反響して大きく聞こえ恥ずかしさを煽った。
「ああっ…!」
探り当てた小さな突起を指の腹で押し、リズムを取るように刺激を与えていく。
「あっ…あっ…やぁ…」
湯船の縁を握り締め、片手で口を押さえた菜苗さんの手を外し、頬の上で囁く。
「声…我慢しないで…聞かせてほしい…」
「あ…あぁっ…んんっ…だめ…」
声が高くなるにつれ、指の動きが激しくなり、菜苗さんの身体が震える。
波立ったお湯がバシャバシャと湯船から流れ、一緒に溢れ出たアヒルの玩具が浴室のタイルに転がった。
「あっ…あっ…ああぁーーーっ!!!」
身体の中心を走り脳髄まで達する電気のような快感に、びくびくと震える身体を抱き締められ、やがて脱力した。
「…可愛かったよ」
上気した頬に口づけ、貴さんが呟く。
「はぁ…はぁ…の…のぼせる…」
腰の下のほうに感じる「棒」はますます熱く脈打っている。
「あ…」
「大丈夫?」
そんな熱をはらんでいるとは思えないほど優しく、貴さんが囁く。
「…うん…」
「じゃあ壁に手を突いて…」
「え?」
何を?と戸惑っていると貴さんは菜苗さんの腰を持ち立たせると、自分も立ち上がりそれを宛がった。

268 :
バランスを取るために壁に手をついた菜苗さんは、はしたなくお尻を突き出すような自分の格好に羞恥を覚え、抵抗する。
しかしがっちりと掴まれた腰はくねくねとまるで誘うように動くだけで外せはしない。
「や…こんな格好…貴さん…!」
「すごく素敵だ…綺麗だよ、菜苗」
これがあの絶滅危惧種の純情中年だろうか?
棒の先がぬるぬるとあたり、その場所がお湯とは違うぬめりで濡れていることがわかる。
「あ…」
「入れるよ」
肉を押し分け入ってくるその熱と硬さに、ぞくぞくと先ほどの余韻が背筋を走る。
まだ慣れるほどしていないせいか、菜苗の中は狭い。
「う…」
全部を受け入れた菜苗さんの中で、貴さんが小さく呻き、熱い吐息が背中に掛かる。
「あぁ…ん…」
「菜苗の中…すごく気持ちいい…あったかくて、ぬめぬめしてて、きつくて」
「そ…そんなこと言わなくてい…あんっ……!貴さんのば、ばか!」
のぼせているのか恥ずかしいのかわからないが顔はもうずっと熱いままだ。
慣らすように小刻みに動き、やがて緩急つけた抽送が身体の奥のほうを突き、菜苗さんの身体がまた登りつめていく。
「あんっ…あぁっ…ああっ…や…あぁんっ…!」
「菜苗……」
膝ががくがくと揺れるたび水面が波立ち、それとは違う水音と湿った肌が打ちつけられる音がびちゃびちゃと浴室に響く。
外に音が漏れるのではないかと必で声を抑えたが、貴さんは一番奥へ奥へと腰を突き刺し菜苗に我慢を許さない。
「…んっ…あっ!ああっ…貴さ…んっ…ぅっ…」
仰け反った菜苗さんの身体を抱きすくめ後ろからきつく乳房を掴む。
背中や肩を舐めて吸い付きながら乳首を引っ張るように摘み上げられ、思わず悲鳴を上げた。。
「やっ…ああっ…ああぁんっ…!…もう…や…!」
繋がった場所からぞくぞくとした何かが駆け上がり、貴さん自身が熱く膨張している。
「っ…もう…!」
「貴さん…貴さんっ…!!」
朦朧と白く霞んでいく意識の中で、熱い迸りがお腹の中の一番奥に直撃するのを菜苗さんは感じていた。
「あ…あぁあーー…っ…!」

269 :
壁に手を突いてまだ繋がったまま、菜苗さんは膝の力が抜けそうになり貴さんに抱きとめられる。
その拍子に繋がりが外れ、ぼたぼた、と少なくなったお湯に白い液体が落ちる。
「あ…」
思わず菜苗さんは落ちないように脚の間を手で押さえる。
「…お風呂沸かしなおそうか」
冷えてきた肩を抱き、貴さんが呟く。
「…ううん、シャワーでいいよ…それから…」
「ん?」
菜苗さんは振り向いて正面から貴さんに抱きつく。
互いの背中に手をまわし、ぎゅっと抱く。
「…あのね、七実ちゃんがね………きょうだいがほしい、んだって」
「…そ、そうか…」
貴さんから少し照れた気配がする。
少年みたいだったりすごく大人みたいだったり、不思議な人だ、と菜苗さんは微笑みながら顔を上げる。
「…だから……いっぱい……その…子作りを…して、ください」
「…ほ、ほかに言いようがあるでしょう…」
貴さんはやっぱり照れていて、桜貝のようだった。
貴さんの顔が降りてきて、菜苗さんは微笑んだまま目を閉じた。
「愛してるよ、菜苗…」
くわぁ恥ずかしい…!と内心悶えたが、胸の中いっぱいのあったかいこの気持ちがたぶんそうなんだと思い
「私も…」
あいしてる、と続けた言葉は貴さんの唇の中に吸い込まれてしまった。
次の日から週末まで、貴さんは休暇をとって新妻との半年遅れの蜜月を思う存分堪能した。
その甲斐あって…
それから大体十ヶ月後、七実ちゃんのお願いが叶ったのだった。
おしまい

270 :
読んでくださってありがとう。
おそまつさまでした。

271 :
GJ!
いやあ、おかあさんがイイ味出してますね〜。

272 :
うわぁ〜 GJGJ!
七実ちゃんのきょうだいは弟、妹どっちなんだろう?

273 :
するめのようだ

274 :
するめw

275 :
無茶苦茶GJ!
エロさ、会話、シチュ、完璧!!

276 :
hoshu

277 :
保守

278 :
保守

279 :


280 :
ほしゅ

281 :
hoshu

282 :
ほしゅ★

283 :
メイプル戦記の仁科夫妻の馴れ初めとか見てみたい気がするんだが…
ラスト見る限り夫の方がベタ惚れっぽいな

284 :
私は、記憶喪失社長と貧乏女子高生の絡みが読みたいな
(なんかこう書くと違うなw)
なんだっけ、ヴァンデミエールというのは覚えてるんだけど、名前が出て
来ない。

285 :
フレミングじゃなくて、メンデレーエフじゃなくて、ユングじゃなくて…
あ、フロイト1/2ね!

286 :
>>285 違うっ
それは、成り上がりゲーマー社長と小田原娘

287 :
葡萄月の反動、だっけか

288 :
貴島覚くんと沢登蕗子ちゃんだっけ?

289 :
そうだ、蕗ちゃんだ。思い出した〜。
で、この覚くんと蕗ちゃんのカップルものが読みたい。
弟は出てこなくて良いからw

290 :
hoshu

291 :
捕手

292 :
保守
みなさん良いお年を。

293 :
そうだ、今年SSを書いてくださった方、SSに感想をくださった方、保守してくださった方、
皆さんにありがとうございます。
来年皆さんに、良い事がたくさんありますよう。

294 :
あけおめ保守

295 :
おめでとう★

296 :
保守

297 :
hoshu

298 :
hoshu


299 :
(5分だけ休憩しよう…)
蕗子はたった今お払い箱になった仕事先のビルの玄関の階段に座り込み、目を閉じる。
真冬の夜の風は冷たく、ただでさえ青ざめた頬をさらに冷やしていき、ゆるゆると降り続く雪は融けることなく肌を滑り落ちていく。
(一番時給よかったんだけどな…)
頼みの綱のバイトを切られ、蕗子は途方にくれていた。
生活費、自分と弟の学費。
どんなに切り詰めても高校生のバイトの収入では賄い切れない。
弟も新聞配達をして家計を助けてくれるが、できれば受験勉強に専念させてやりたい。
亡き両親に代わって、弟がちゃんと一人前になれるようもっと自分が頑張らないと…。
責任感が肩に重くのしかかる。
だが自分ひとりで出来ることには限界があるのだ。
寄る辺のない身の上、というものを蕗子は痛感していた。
頑張っても頑張っても、ダメかもしれない。
(…そんでも、そんでも頑張らないとな)
弟も待ってる。
立ち上がって、家に帰って、また明日も学校行って、それからバイト行って…。
しかし思いとは裏腹にかじかんだ手足に力が入らない。
置物のようにじっと固まったまま、蕗子は冷たい風に晒されていた。


300 :
どこかで硬い音がいくつも響き、何かがコロコロと転がってくる。
かすかに目を開けた視界に入ってきたのは、ネオンの光を受けてきらめく丸いガラス玉。
「あ…」
つま先にぶつかったそれを拾い上げ、手のひらに載せる。
楽しかったあの夏休みが甦り、疲れ果てた心を優しく包んだ。
(覚くん…覚くんは元気かな…)
時々新聞なんかで見かける覚くんは、あの記憶喪失だった頃のやんちゃな面影はなく、大人の、それから冷たい容貌で、
蕗子にはそれが少し寂しかった。
日本の経済を支える財閥グループの御曹司、自分とは住む世界が全く違う。
きっともう二度と会うこともない人だ。
記憶が戻った覚くんは、記憶喪失だった間のことは全部忘れてしまっていた。
それでも楽しかったあの夏休みの思い出は自分の中に残っている。
ああいう日もあったこと、自分だけが憶えていればいい。
(楽しかったね、夏休み)
手のひらのビー玉はきらきらと輝き、蕗子の頬に少しだけ赤みが戻ってくる。
コロコロともう一つ、二つとビー玉が転がってきて、蕗子は視線を上げた。
「…」
ビー玉の向こう側で立ち尽くす人影に、蕗子は息を呑んだ。

301 :
(覚くん…?)
信じられない思いで、よろけながら立ち上がる。
久しぶりに会った覚くんは、いつか見た冷たい面影は鳴りを潜め、戸惑ったような、バツの悪そうな顔で立ち尽くしていた。
まるでイタズラをしてばあやに叱られた9歳の覚くんみたいに。
蕗子は足元に転がって散らばるビー玉を一つずつ拾い上げ、手のひらに載せて覚に差し出した。
「…元気だった?」
色んな思いがこみ上げてくるのをこらえ、一言だけ呟く。
他に何が言えるだろう。
にっこり笑ったつもりだったが、寒さでこわばった顔ではうまく笑えなかった。
「…」
覚は無言のまま、少し悲壮な表情でビー玉ごと手を掴み、そのまま抱き締めた。
驚いて硬直した彼女の頭上から、小さな声が降りてくる。
「…蕗ちゃん…」
また記憶喪失になって9歳に戻っちゃったのかな?
懐かしいあの呼び方で呼ばれ、蕗子は深く息を吐いて、硬直した身体の力が抜けるのを感じた。
「うん…覚くん…久しぶりだね…」
広い胸と力強い腕に、彼は確かに大人なのだと思い知る。
だけど今の覚くんは抱き締めるというよりは、まるで子どものように蕗子にしがみついていた。


302 :

高級な肌触りのコートを通して、鼓動が聞こえてくる。
(あったかいな…)
そう思った瞬間、涙がこぼれた。
(…あれ…?なんでだ…?…)
次から次へこぼれ出す涙が冷たい頬を濡らしていく。
嗚咽をこらえ震える蕗子に覚は一瞬戸惑い、しかしすぐまた抱き締めた。
温かい腕に包まれ優しい仕草で髪を撫でられると、蕗子はもう堪えることができなかった。
「…っ…う…」
堰を切ったように涙と感情があふれ出し、止まらなくなる。
彼にしがみついた拍子に持っていたビー玉がまたこぼれ、ばらばらと散らばっていく。
その中心で二人は抱きあい、蕗子が泣き止むまでじっと佇んでいた。
「…」
どのくらいの時間が経ったのか、ようやく泣き止んだ蕗子はおそるおそる顔を上げた。
覚の眼差しはじっと彼女を見詰めている。
「…あ…ご、ごめんね、覚くん。私…ちょっといろいろあって弱ってたというか、みっともないとこ見せちゃって…あはは、何でだろうね、ごめんね…」
気恥ずかしさから饒舌になる蕗子をじっと見つめ、覚は真一文字に結んだ唇を開いた。
「蕗ちゃん…いや、蕗子さん、俺は君にあやまらなくちゃならない」
逢ったときからずっと眉の辺りに悲壮な雰囲気が漂っている。
蕗子は心配になり尋ねた。
「…なにを?」

303 :
少しの沈黙の後、身体を離した覚が姿勢を正す。
「…君の…お父さんの工場への発注打ち切りを推したのは自分だ。数字と効率だけを求めて、それでより良くなると信じてた」
「…」
「…それで結果は出た。だが、その決定の周りで人が、人の人生が変わってしまうことがあるなんて思いもしなかった」
父が倒れた日の記憶が甦る。
打ち切りのショックのせいか父は胸を押さえてうずくまり、そしてそのまま帰らぬ人となった。
「俺のせいで…君の人生は変わってしまった」
父の残した保険金は工場の借金返済へ消え、蕗子は大学進学を諦めた。
「すまなかった…」
蕗子は深々と身体を折り頭を下げる覚をじっと見ていた。
父さんが生きていたら…
擦り切れるような思いで働くことも、毎日を生きていくこともなかった。
先のことを考えて胸がつぶれるような思いもしなくて済んだかもしれない。
そんな想像をしたことがなかったわけじゃない。
だけど、しょうがないじゃないか。
誰かとのかかわりで人生とは変わっていくものだ。いいことも、悪いことも。
変わった人生をどう切り開いていくのかは私次第だ。
だから全部自分のせいだなんて思わないで欲しい。


304 :
「頭を上げてください」
一つ深呼吸をして、はっきりと聞こえるように一言ずつ発音する。
「父のことは…寿命だったのだと思っています。…だから、どうか、気にしないで下さい」
涙の跡が残る頬が少しだけ笑顔の形になった。
覚の脳裏に市村の言葉が甦る。
――― 蕗ちゃんは、無分別に人を恨んだりするような子じゃないでしょう? ―――
辛いことも悲しいことも誰かのせいにしたりしないで、あるがままに受け入れて生きていく。
そんな凛とした彼女の佇まいに、胸を締め付けられるような何かがこみ上げてくる。
「俺は…俺は君に、何ができる…?」
拳を握り締め、祈るように訊いた。
「何にもしなくていいよ…覚くん。私は大丈夫だから、何とかなるから、だから自分のせいだとか思ったりしないで」
健やかなその笑顔にもはや衝動が抑えられず、覚はもう一度蕗子を抱き締めた。
「違う…俺は、君に出来るだけのことをしたいんだ。どうか、そうさせてくれ、頼む」
思い詰めた囁きが胸に痛いくらい突き刺さった。
(そんなふうに思わなくていいんだよ、覚くん)
「…いいってば……ありがとう、覚くん。気持ちだけもらっとく」
背中をぽんぽんと叩き、蕗子は苦笑する。
そう思ってもらえるだけでありがたい。寄る辺がない、わけじゃないって思えるから。
腕により力が込められて、少し息苦しい。
だけど、その温かさは蕗子を心から暖めてくれていた。


305 :
「……うちの子になればいい…」
「は?」
突然呟いた覚の言葉に、面食らって身体を離そうと身じろぎするが腕の力は強く離れられない。
「そうだ、そうすればいい…蕗ちゃん」
がば、と覚は身を離し、肩を掴んで叫んだ。
「もうバイトしなくていい、家に来て一緒に暮らそう!」
「なななな…何言ってんの?覚くん…?暮らすって…」
まるでまた9歳に戻ったかのような口調で覚は喋り始めた。
「ばあやがもう年で、家事が大変だと言ってるんだ、だから君が住み込みで手伝ってくれないか?」
いい考えを思いついた子どもの表情だ。
「住み込みって…いや、それ以前にそういうわけには…」
一転してビジネスマンの表情になった覚が、クライアントの説得にかかる。
「勿論弟さんも一緒に。勉強に専念できる環境をつくってあげられるし、バイト代も出す。衣食住も学費も保証する」
それは、非常に甘い誘惑だ。住んでいるアパートの更新が近いのだ。
しかし蕗子はぶんぶんと頭を振って、誘惑を追い払う。
「…お、お気持ちはありがたいけど、そこまでしてもらう理由はないし…」
「理由ならある」
蕗子の乱れた髪を少し直してやる。
「記憶が戻ったとき、君の事は忘れてしまっていた…だけど」
足元のビー玉を一つ拾い上げ手のひらで転がしながら、遠い目をして呟いた。
「これを見たとき、全部思い出した」
メンコ、ビー玉、三角ベース、缶蹴り、ベーゴマ、昆虫採集…楽しかった夏休み。
実際に9歳だった時の夏よりも楽しく鮮やかな思い出。
楽しかったのは、蕗ちゃんがいたから。
「たくさん遊んで、笑って、そのどの場面にも君がいた」


306 :
同じ思い出を、蕗子も脳裏に描いた。
「思い出してからずっと…蕗ちゃんに会いたくて仕方なかった。だけど君のお父さんのこともあって…会いに行く勇気がなかった」
「覚くん…」
「でもやっと、会えた…」
ビー玉をぎゅっと握り締める。
「君にもう、辛い思いをさせたくないんだ…蕗ちゃん」
子どもの覚くんと、大人の覚くんが一つに重なって見えた。
ドキリ、と胸が鳴り、蕗子は俯いた。
「あ…あの、なにぶん急なお話なので…少しお時間をいただきたいと存じまして…その…」
話している間にどんどん顔が赤くなっていく。
今までまるでもう一人の弟のように思っていた覚が、一人の男性として感じられ、抱き合ったり泣いたりしたことが急に気恥ずかしくなってきた。
「蕗ちゃん」
手のひらに体温で温まったビー玉が載せられ、その手が大きな手のひらで包み込まれる。
「あ、わ…」
ゆっくりと顔が近づき、蕗子は思わず目を瞑り俯くと、その額に温かな気配と感触が触れる。
「君と一緒にいたいんだ…それが理由だ」
おでこの上の柔らかな囁きがくすぐったい。
顔を上げると真剣な眼差しにぶつかり、今度は俯く暇もなく、冷えた唇に覚が触れ、温かな唇が心ごと押し包むように蕗子を抱いた。
(覚くん…)
蕗子は目を閉じたまま、そのぬくもりをずっと感じていた。
それから二度の熱月と果月を越え、葡萄月の始まりの頃、
令名高い財界のホープである貴島覚氏が、9歳年下の一般女性との結婚で世間の話題をさらったことは、また別の話である。
おしまい


307 :
よんでくれてありがとう。
エロいのはまた後日頑張ります。

308 :
上の方で、蕗ちゃんの名前が思い出せなかったモノです。
読めて嬉しかったです。どうもありがとうございます。
GJ!です。続き楽しみにしてます!

309 :
雰囲気が良くてするする読めたよ、GJ!

310 :
hoshu

311 :
hosyu

312 :


313 :
hoshu

314 :
ほしゅ

315 :
hoshu

316 :
hosyu

317 :
ほしゅ

318 :
hoshu

319 :
hosyu

320 :
hosyu

321 :
ほす

322 :
自分一人で保守している気がする
他の住人さんはご無事だろうか…ご無事ならノシを

323 :
ノシ
ROM専だけど…

324 :
ノシ
同じくROM専ですが・・・

325 :
ノシ
時間がないんでROM専ですが
時間があれば書きたいんだけどねー

326 :
ノシ
生きている。

327 :
ノシ やはりROM専ですが
桜が綺麗なんで最近3月革命を読んでた。時期遅れだが。

328 :
ノシ
ロム専ですが…作家さん待ってます。

329 :
hosyu

330 :
ここ初めて来たけどかーら作品読み返したくなった!w

331 :
ほしゅ

332 :
久しぶりにきたけど、やっぱりいいなぁ。
6月にかーら教授復活だっけか。
コミックも出るし、この板もまたにぎわうといいなあ

333 :
これは良スレ

334 :
とある高級ホテルの一室。
俺、貴島覚は、スーツを着込んだまま疲れてソファに沈んでいた。
それを見た紺色のワンピースを着た沢登蕗子が、心配そうに俺の顔を覗き込む。
「蕗ちゃん、じゃなかった、蕗子、どうした?」
「覚君、大丈夫?」
「覚君、じゃない。覚さん、だろ?」
俺がそう言ってほほ笑むと、蕗子は頬を赤らめた。
「ごめんなさい…。」
「謝らなくてもいい。二人きりの時なら、どう呼んでくれてもかまわない。でも、他人が
いるところでは気をつけてくれ。」
「うん…。」
今日、俺は蕗子と婚約した。一年前、財閥の後継者である俺が何の後ろ盾もない一般人女
性と結婚したいと言い出した時、周りの風当たりは大変なものだった。
しかるべき家の令嬢を選び、貴島家の閨閥を強固にするべきだとの意見が根強く存在し、
何とかその結婚を妨害しようと目論んでいた。
しかし、以前の俺ならともかく、愛のない結婚をするつもりは毛頭ない。
懸命に周囲を説得し、なだめ、時には脅して、蕗子を妻にすることを納得させた。
それに、彼女に余計な係累がいないことも幸いし、時間はかかったが、やっとここまでた
どり着けたのだ。
俺は、自分の望む結果が出せたことに満足していた。

335 :
疲労が回復した俺は、蕗子の体に手を伸ばし、ソファにあおむけになったまま抱き寄せる。
「え?ちょっと…。」
いきなり抱きしめられて驚いている表情を楽しむ暇もなく、俺は下になったままやや性急
に口づけた。
しばし柔らかい唇の感触を楽しむ。
「ん…、んん…、はぁ…」
キスの最中に発する、くぐもった声が耳に楽しい。
思う存分唇を貪っていると、蕗子の方が手を突っ張って体を離そうとする。
「ちょ、ちょっと待って!覚く、じゃない、…覚、さん。」
その声に真剣なものを感じ取った俺は、口づけを解く。
「どうしたんだ?」
「話があるんだけど。」
真剣な表情の蕗子を見た俺は彼女を抱き起し、目で話したいことを続けるよう促した。
「その、いい、のかな?」
「だから、何が?」
「…私なんかと、結婚するの。」
「愚問だ。俺が、わざわざ嫌な女性と結婚するわけがないだろう。それとも、君は、俺が
嫌になったのか?」
「そうじゃないけど、風の噂で聞いたよ。あなたには、大手銀行頭取の御令嬢と縁談が進
んでた。桜の花みたいな、とてもきれいな人だ、って。」
「誰だ、そんなことを君に吹き込んだやつは!ばあやか?市村か?」
思わず語気を荒くした俺に、彼女は不安の色を浮かべる。
「違う…、違うよ。でも、私はあなたにいろいろしてもらうばかりで、ちっともお返しが
できない。いつも与えられるばかりで…。」
俺は、思わず途中で話をさえぎった。
「そんなことはない。俺が記憶をなくした間、君はあんなにも優しくしてくれたじゃない
か。あの時は、本当に楽しかった。
それに、貴島グループの銀行もメガバンクの一角を担っている。今更他の銀行と合併する
と、三大メガバンクのパワーバランスが崩れる。何でもむやみにくっつければいいという
ものじゃない。」
「でも…。」
なおも不安そうにしている蕗子がたまらなく愛おしくて、俺は彼女を抱きしめた。
「俺は、君を愛している。だから、君は君自身を俺に与えてくれ。この期に及んで、ノー
は言わせない。」
腕の中で、蕗子は蚊の鳴くような声で答えた。
「はい…。」

336 :
ベッドの上に、蕗子の体を横たえると、ジャケットを脱ぎ捨てネクタイを解く。
そこでまた、唇を軽くついばむ。
抱きしめながら背中のファスナーに手を伸ばし、スルリと下げてワンピースを脱がせた。
俺も慌ただしくワイシャツのボタンをはずして、お互いの素肌を密着させる。
「君の肌は、陶器のように滑らかだな。」
「恥ずかしい…。」
羞恥心から、身を喘がせているところがまた可愛い。
キスを続けながら自分の衣類をすべて外し、彼女の下着をはぎ取る。
これで、お互いの体温を伝え合うのに、邪魔なものはすべてなくなった。
俺は蕗子を抱きしめる腕に力を込めながら、耳元で囁く。
「他の男と、こういうことをしたことはあるか?」
「ない、です。」
「なら、ちょっと待っていてくれ。」
俺は持参したビジネスバッグの中から、あらかじめ用意してあったローションを取り出す。
未経験の蕗子には、与える苦痛を少しでも和らげるためにこれが必要だ。
俺は今までに二度も、彼女を傷つけた。
今度も傷つけてしまうのを避けられないのならば、せめてその傷を最小限にしたい。
右手の人差指にローションを少しとり、人肌になってから右の乳首に塗りこめると、蕗子
は身をよじらせた。
「…あ!そ、そんな…」
「感じるか?」
「わかん、ないよ、そんなの…」
「じゃあ、これならどうだ?」
右手の愛撫はそのままで、左側の胸を口に含む。乳首を舌で転がしたり、甘噛みするたび
に、甘い声が抑えきれなくなっていく。
「あ…、さ、とる、くん…、はぁ、あん…」
「蕗子、いい声が出てる。感じてきたようだな。」
「やだ、わたし、なんか、ヘン…。」
「それでいい。もっと、君の乱れた姿を見せてくれ。」

337 :
俺は彼女の中心に手を伸ばす。そこはもう、ローションなど必要ないくらいにぬかるんで
いて。
最も敏感なところを探し当て、優しく指でまさぐった。
「あ!やあっ…、そこは…!ダメぇ…、ダメだってばぁ!」
蕗子の声が、少しずつ大きく、切羽詰まったものになっていく。同時に息もかなり荒くな
ってきた。
「ここがクリトリス。女性の体で最も敏感なところだ。君も知っているだろう?」
「知、らない…!」
「だったら、覚えておくように。」
俺は蕗子の中に指を入れようとするが、未経験なだけあって、狭い。
やっぱりこれを持ってきて正解だった。
俺はたっぷりローションを手に取り、温めてから蕗子の中に塗りこめる。
狭い彼女の中を広げ、潤いの足りないところを補足してくれる。
指使いを速めれば、彼女の喘ぎと淫らな水音が室内に響いていく。
「あ!ああ!さ、とる、く…!さと、る…。愛、してる!」
「俺も、愛している、蕗子…。」
きっと、無意識に放ったであろう蕗子の告白に、俺は欲望を募らせる。
年長者の余裕で今までコトを進めてきたが、そろそろ我慢も限界だ。
慣らしがまだ足りない気がするが、もう我慢できない。
俺はこれまた用意してあったゴムを手早く装着した。

338 :
いいか?入れるぞ。」
「うん…。」
俺は脚を開かせて、ゆっくり蕗子の中に入れはじめた。
圧迫感がすさまじいのか、蕗子は声を上げることもできず、歯を食いしばっている。
痛みは訴えないものの、やはり初めての体には負担が大きいのだろう。脂汗をかいてつら
そうな表情を浮かべている。
「すまない、もう少し、だ。」
「う、ん…。」
本当は痛くてたまらないだろうに、我慢して受け入れようとしている蕗子がたまらなく愛
おしい。
激しく動きたい衝動を堪え、少しずつ奥へと侵入する。
全部入ったところで動きを止める。蕗子の体をなじませるために。
「…痛むか?」
「さっき、よりは、だい、じょうぶ…。」
「そうか。」
右手で胸をいじりながら、俺は蕗子に深く口づける。
「ん、んふ…、んん…」
口を開かせ、舌を絡ませると、蕗子の中もうねってくる。
いつしか、蕗子の顔から苦痛の表情は消えていた。
そのかわり、熱に浮かされたような、潤んだ瞳で俺を見上げている。
「いいよ、動いて…。」
「つらくないか?」
「もう、平気、だから…。」
「…わかった。」
俺は、蕗子を小刻みに揺する。そのリズムに従って、嬌声があがる。
蕗子の声は、もう既に快楽のみを訴えるものになっていて。
そんな声を聞かせられては、ゆっくり動くつもりでも、徐々にハイペースになってしまう
のを抑えきれない。
「あぁん…、あん、さとる、くんの…、すごいの…!」
「蕗子、俺も、いいぞ。すごく、いい…。」
「はあっ、あぁ…、あん…」
「…っ、そう、きつく、絞めるな。」
「そんなの…、自分じゃ、わかんないよ…。」
それもそうだ、と納得する。
俺の動きは、ますます激しさを増していき、蕗子を追い詰めていく。
このまま、中を突き破ってしまいそうなくらい、めちゃめちゃに攻め立てる。
「ダメっ、何か…、来る、来るよ…、あぁ、あぁぁぁっ!」
「俺も、もう、…っ!」
蕗子自身に搾りたてられ、俺は欲望を解き放った。
蕗子も初めてながら、何らかの高みに達したようだった。自分だけがいたずらに快楽を貪
ったのではなく、彼女とそれを分かち合えたことで、より深い満足感を味わうことができ
た。

339 :
俺は彼女を抱きしめ、事後の余韻を味わっていた。
「ねえ、一つお願いしていい?」
「何だ?欲しいものがあるのか?」
「違うよ。私といるときは、髪を下ろしてほしいんだ。」
「それは構わないが、何故だ?」
「だって、髪を下ろしているときは、9歳の覚くんの面影が感じられるから。」
「…その、君は今の俺より、子供の俺の方が好きなのか?」
「それこそ愚問でしょう。どっちもあなたであることには間違いないんだから。」
「それは、そうだが…。」
俺はそう言われて言葉に詰まる。確かに、子供の頃の自分に嫉妬するなど、愚かにも程が
ある。
困惑する俺の姿が面白かったのか、蕗子がクスリと笑う。
「…何がおかしい?」
「やっぱり、覚くんって、可愛いよ。」
「…!」
「あなたは忙しい人だから、結婚しても私のために時間を簡単には作れないよね?独占で
きない人だからこそ、私だけのあなたが欲しいんだ。そういう意味では、9歳の覚くんは
私のもの。大人の覚さんを独占できそうなのは、髪型を変えてもらうぐらいしか思いつか
ないからさ。」
わかったような、わからないような説明だが、とりあえず蕗子がそうしてほしいのなら、
俺は髪型を変えることにしよう。
「覚くん…。好きだよ。」
「蕗子、俺も君が好きだ。」
俺と蕗子はキスした後、瞬く間に眠りに落ちて行った。
<終>

340 :
上にあった、t+e7iPwLさんのエロあり部分が読みたくて、
ムシャクシャして書いた。
謝罪はするけど賠償は(ry
t+e7iPwLさん、お気を悪くしたらごめんなさい。
ところで、覚くんの一人称は基本的に「僕」なんだけど、作中に
たった一か所だけ「俺」と言っているところがあるので、
当方としてはそちらを採用しました。

341 :
うお、神乙です

342 :
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
蕗子ちゃんが可愛くて、ハアハアしたよ

343 :
GJ

344 :
思いがけず素晴らしい場を発見、みなさまの文才に思わず帽子を食べてしまいます
そしておのずから妄想シチュ受信w
ドングリカップルです 
高校卒業ちょい後 2人の仲はまだ亘理さんペースでのほほん状態、ただ健康な青年友成君は内心リビドー生じる感もあるものの、精神的な軽業師にそーゆーの向けるのを認め難く複雑で…
そんな中「学生作家と正体割れたし次作は同世代直球の青春恋愛モノで」と編集からテーマ提示
柄に無いテーマに悩んだ末、あんまり認めたくないけど俺の亘理への珍妙な感情は…?って言うか亘理はソノヘンノトコどう思ってる?とか考え出して、作家性を口実に自身のリビドーや純真ラブ的内面を見つめたり亘理さんと進展試みたりする友成君!!
長々失礼しました 残念ながらわたしには具体的な状況画像を受信及び実体化出来ません
親切な書き手の方ご参考にしていただけませんかm(_ _)m

345 :
ここは、斎木家の寝室。
「俊介、お帰り〜、って、おまえ、酒くせえ!」
「仕方ないじゃないですか、今日は接待だったんですから…。」
「で、どうだ、いい酒飲めたのか?」
「残念でした。今日は先方の指定が福富町のキャバクラで、いいものは出ませんでしたよ。」
「…ほう。きれいどころを侍らせて飲む酒は、安酒といえどもさぞうまかろう。」
「そういうものでは…。その、和音さん。」
「何だ?」
有無を言わさず、俊介は和音をベッドに押し倒した。
「何をする!」
「野暮なことを聞きますね。夫が妻をベッドに誘うとなれば、することは一つしかないじ
ゃないですか。結婚してそろそろ半年になるんですから、いい加減慣れていただきたいの
ですが。」
「ちょっ、待てよ、そんないきなり…。」
「待てません。さっきまで、キャバクラでさんざん煽られていたんです。この火を、静め
ていただけますね?」

346 :
返事を待たず、俊介はジャケットを脱ぎ、ネクタイを解く。そして、慌ただしくシャツの
ボタンをはずして、アンダーシャツもろとも脱ぎ捨てた。
往生際悪くジタバタしている和音の両手を左手で抑えて逃げられないようにし、右手でブ
ラウスのボタンをはずす。
上半身が露出したところでブラジャーを上にずらし、和音の胸の頂点に触れる。
「いい、ですか?」
「…っ!そんなこと、な、い…!」
「全く、素直じゃないですねえ。ここはもう、こんなになっているのに…。」
俊介は、赤い茱萸の実を口に含み、舐めたり、舌で転がしはじめた。巧妙な愛撫を受け、
和音の体に力が入り、熱くなっていく。
「…っく、あぁ、イ、イヤ、だぁ…。」
「『いやよいやよも好きのうち』なんて、テンプレどおりのことわざを俊介に言わせないで
下さいよ。感じてるんでしょう?」
「感じて…、なんか、ない…!やめろ、俊介…。」
「喘ぎながらそういうことを言われても、説得力がないですよ、奥さん。うるさい口なら、
閉じてしまいましょうか。」
そう言って、俊介は和音に口づけた。舌を入れられると、つい無意識に絡ませてしまう。
「ん…、…っ、はぁ…、んん…。」
「ちゅっ…、ん…、くぅ…。」
粘膜が接触し、唾液の生み出す水音が部屋に響いていく。

347 :
しばらくキスを続け、和音がおとなしくなったところで、俊介はベルトをくつろげ、下半
身を露出させた。そして、和音の衣類もすべてはぎ取る。
俊介は和音の耳元で囁いた。
「和音さんの体、熱くなってますよ…。」
「お前の、せいだ…。お前が…、イヤらしい、こと、するから…。」
「私が、欲しくなりましたか?」
「欲しく、なんか…、な、…!」
「…わかりました。それでは、もう少し続けますね。」
和音が抵抗すればするほど、俊介の情欲を煽るばかりだというのに。
俊介は、和音の足を開いてその中心にある芽を刺激した。すっかりそこは固くなっていて、
言葉とはうらはらに、和音が感じていることを教えてくれる。
「和音さんは、ここがいいんですよね。」
「そ、こは…!あ…、あん…、あぁ…。」
「すごく濡れてますよ。気持ちいいでしょう?」
「あ…、おかしく、なる…。すごく…、いい…!」
やっと快楽を訴えるようになった和音を、俊介は優しい目で見降ろした。
「とうとう素直になりましたね。可愛いですよ。」
「ぬけぬけと、恥ずかしい、ことを、言うな…。」
「もっとあなたを恥ずかしがらせて、感じさせたいんです。俊介が手塩にかけてお育て申
し上げたあなたが、開花していく様を…。」

348 :
俊介は和音を抱きしめながら、愛撫の手を休めない。
「もう一度聞きますよ。…私が欲しいですか?」
「お……、……い…。」
「聞えませんねえ、はっきりおっしゃっていただかないと。」
「おま、え…、が…、ほ、しい…。」
赤面しながら蚊の鳴くような声で、それだけの言葉をやっと紡ぎだした和音に、俊介は笑
顔になった。
破顔一笑。
「わかりました。『求めよ、さらば与えられん』です。」
すでに臨戦態勢になっていた俊介の分身は、和音の中に割って入った。
体を割られた和音が悲鳴を上げたのも一瞬のこと、すぐ甘い喘ぎに変わっていく。
「あぁ…、あん…、はあっ…。」
「あなたの中、すごく、締め付けてきます…。」
「そんな、こと、自分じゃ、わからない…。」
「あなたが、からみついて、私を離そうとしないんですよ。…気持ちいいですか?」
「言わせるな、バカ…。」
「それじゃ、わかりませんねえ。」
俊介は、腰を振りたてるスピードを速めた。子宮を突き破らんばかりの勢いに、二人して
快楽の淵に落ちていく。
「…どうです?気持ちいい、ですか?」
「あぁ…、すごい、しゅんすけぇ、どうしよう…、気持ち、いい…!」
「俊介が、もっと気持ち良く、して差し上げますよ…。」
「もっと、して…。お願い…!」
「お任せください…。」
俊介の背中にまわされた、和音の腕に力がこもる。強く抱きしめていないと、どうにかな
ってしまうと言わんばかりに。
和音は、切羽詰まってきたことを声高に訴える。
「あぁ…、もう、ダメ…。溶けそう…!」
「私も、です…。」
「しゅんすけぇ、愛してる…。あぁぁっ!」
「和音さん…、私も愛していますよ…。…っ!」
ほぼ同時に二人は臨界点を迎え、俊介は欲望を和音の中に解放した。

349 :
そして訪れた睦言の時間。
「なぜ、いつも抵抗するんです?もちろん、それはそれでそそられますが。」
「気持ちはいいけど…。お前に、作りかえられていくみたいで…、怖いんだ。」
「?」
「…その、自分が快楽で支配される獣になっていく気がして…。」
「そういうツンデレなところも悪くないですね。」
「だっ、誰がツンデレなんだよ!」
「気持ちいいのに素直になれない。ツンデレ以外の何物でもないじゃないですか。」
「ばばば、ばっ…!」
「意地っ張りで20年損した、ご両親の血でしょうかね?でも、私は素直になったあなたも
見たいですよ。」
「…一生言ってろ。」
「私があなたを籠絡するほうが早いと思いますがね。あれだけ体がいい反応をするんです
から。」
「もういい!寝る!」
「はいはい。愛していますよ、和音さん。」
こうして、斎木家の夜は更けていった。
<終>

350 :
>>344さん、部屋を探しまわったんですが、原作が発見できず
ご期待に添えませんでした。
御親切などなたか、よろしくおながいします。
その代わりと言っては何ですが、敬語攻め×意地っ張り受けを受信したので、
俊介×和音で書いてみました。
つまらないものですが、投下しておきます。


351 :
sage忘れすいませんorz

352 :
GJが続く。
今後も期待してます!

353 :
おおう、いつの間にやら良作が…GJ!
この2人が一番妄想しやすいですよね〜。
将来お子さん出来るし、ローレンス先生と柚子さんほど身長差ないし、何より原作
でも一つ布団の上に一緒にいるしw
和音さんの素直になりにくい意地っ張り感が出てて、良かったです。

354 :
「求めよ、さらば与えられん」ww GJですね〜
このカップルも大好きです
すごく原作の味が出ていてニマニマでした!

355 :
うぉ〜一番大好きな俊介×和音!GJです!
朝の電車の中で周りの目を気にしながらニヤニヤして読んでしまいました〜ありがとうです!

356 :
ようやくできたので投下。
ぶっちゃけ書くのに、一日しかかけてない低クオリティ。
それでもよろしければどうぞ。

357 :
西暦2308年11月22日、統一連邦国家の連邦議会において、一つの法律が可決、施
行された。
高所得者の独身を禁止する法律、略して独禁法である。
西暦2302年度の合計特殊出生率が0.95を割り込み、政府としては危機感を露わに
するようになった。
人口再生産に必要な合計特殊出生率は、2.08と言われるが、その半分以下の出生率
とあっては、いくらブレーメンたちが人手不足を補おうとしても限りがある。
そこで、苦肉の策として編み出されたのが前述の法律であった。
相手に事欠かず、育児にかかるコストパフォーマンスを解決しやすい富裕層を対象に、3
0歳以上になっても独身でいる場合は、年収の20%を納税しなくてはならない(通称、
独身税)、という旨が記されている。
つまり、君が30歳以上で一千万以上の高給取りの場合、独身だと言うだけで、二百万は
税金としてさっぴかれるのである。
独身を謳歌するスカイ・アイ社社長ナッシュ・E・レギオンを筆頭に、反対意見は根強か
ったが、時代の趨勢には逆らえず、法律は制定された。
反対派のナッシュの動向に世間の耳目は集まったが、彼はあっさり伴侶を迎えた。
彼が選んだのは名家の令嬢でも有名女優でもなく、自社のイレブン・ナインの異名を持つ
宇宙飛行士だった。


358 :
地球まで百光年と迫った今、二人が結婚後惑星フロリナへと出発した、数か月にわたる航
海がそろそろ終わりを告げようとしている。
「ブレーメンU」のクルーはみんな知っている。
…今回の旅は、事実上二人のハネムーンだと。
ここは、「ブレーメンU」の船長室。
ナッシュとキラらは、ベッドに隣り合わせて座っている。
「ねえ、船長。」
「何だ、社長。」
「もうすぐ、長かった宇宙の遠足も終わるね。」
「地球に近づいたからな。そういえば、前から聞きたかったんだが…。」
「なんだい?」
「なぜ、私を選んだ?おまえなら、いい条件の女性をいくらでも選べただろうに。」
キラが、ナッシュの青い瞳を見つめる。
「今頃、それを聞くのかい?」
「ずっと聞きそびれていたからな。」
ナッシュは端正な顔に薄い笑みを浮かべた。
「僕は君と、二度航海を共にした。たくさん叱られたけど、とても楽しかったよ。だから、
人生という名の航海も、共にしたくなった。」
「…」
「それに、ナッシュ・E・レギオン、という個人を見てくれる女性は君だけだ。みんな、
スカイ・アイ社社長の僕にしか用がないみたいだから。」
「財産を持った独身男性が、ネギしょった鴨にしか見えない女は、いつの時代にも絶えな
いと見える。」
「そうなんだよ。ちょっと付き合っただけで、お前のものは俺のもの、って感じで。」
「美女がジャイアン化するのか…。怖えな。」
こめかみを押さえてため息をついたナッシュの肩を、キラは軽く叩いた。
「そう気を落とすな。大概の女は、お前がおっちょこちょいで、駄菓子好きで、コピーに
雑事を押しつけて遠足するのが好きで、大人げないところもあるっていう面を知らんから
な。でも、広量大度なところは、さすがは大会社のトップだと思わせるものがある。」
「ほめられたんだか、そうでないんだか…。じゃあ僕も聞くけど、君は何で僕のプロポー
ズを受けたのさ?『バカめ!』って、断られることを覚悟してたんだけど。」
「お前が、『ときめきメモリアルGirl‘s Side47』に出てくる、バイナリー・
ヒムロ先生に似てた、髪型が。」
「…それだけ?」
「冗談だ。社長なら知ってるだろう?私も30歳になったら、独禁法に抵触する立場だっ
てこと。今すぐじゃないとはいえ、7年後には独身税を払わないといけないのが面倒くさ
かった。それに、どうしても結婚しなければならないなら、お前となら悪くない、って思
ったんだ。」
「…それって、僕のことが好きだってこと?」
「お前だって、私のことが好きなんだろう?」
どちらからともなく顔を見合わせ、二人はクスクス笑う。
ひとしきり笑いがおさまった後、ナッシュはキラを抱き寄せてキスをした。
好きなだけ唇を貪り満足したナッシュは、キラの耳元で囁く。
「夫婦らしいこと、しようか?」
「…好きにしろ。」

359 :
キラの言葉を肯定ととらえたナッシュは、キラの体をベッドの横たえ、おもむろにパジャ
マを脱がせ、自分も全裸になった。
「恥ずかしいから、暗くしろ…。」
「何を今更。僕と、もう何度もこうしてきたのに。」
「回数を重ねても、恥ずかしいものは、あ…!」
キラの抗議を、ナッシュは、再び唇を重ねて阻止する。
先ほどとは違って、口腔内を蹂躙する勢いで舌を絡ませる。
「ん…、は…、ちゅっ…、んん…。」
「や…、あぁ…、ふ…、ん…。」
深く濃厚な口づけを受けて、キラの体が熱くなりはじめた。
ナッシュは愛撫を開始する。
「君は、ここが感じるんだよね?」
キラの背中に回した腕で、肩甲骨や脊柱を触れる。
電流が走るような刺激を受けたキラは、思わず体をこわばらせる。
そして、上がっていく息を必で食い止めようと、深呼吸を繰り返す。
「煽るな…。火が、ついて、しまう…。」
「つけてるんだよ。燃え上がったキラを見たいから。」
「…!」
こわばったキラの体が、ピクンと跳ねた。声は我慢できても、体は正直に反応してしまう。
「く、ううっ…。」
「ほら、我慢しないで。僕に、君のいい声を聞かせて?」
「恥ず、かしい、んだ…。」
「ここにいるのは、君と僕だけだ。恥ずかしがることなんかないよ。」
「…ぁ、そういう、問題じゃ…、ない…」
必に声をそうと努力するキラを、ナッシュは淡々と追い詰めていく。
横抱きの体勢から仰向けにさせて、右の胸を口に含み、左手で左の胸を刺激する。
一度に二か所の攻撃を受け、とうとうキラは辛抱できなくなった。
「あぁ…、ナッシュ、はぁっ、そ、んな…!」

360 :
「よくなってきた?」
「う、ん…。」
キラは潤んだ目でナッシュを見上げる。
素直に快楽を認めたキラに、満足したナッシュは微笑した。
「キラ、もっともっと、僕がよくしてあげるからね。」
ナッシュはキラの秘密の花園に右手を差し入れる。そこは、もう土砂降りにあったかのよ
うにぬかるんでいて。
ナッシュの指がはい回るたびに、そこははしたない水音を立てる。
「あ…、ん…。…、い…。」
「じゃあ、ここは?」
ナッシュの指が、花園の中心に触れた。刺激を加えるたびにそこは固くなって、存在を主
張している。
「あぁ…!すご…い、いい…!」
調子に乗ったナッシュがそこを強めになぶっていると、キラが叫び声をあげた。
「やめ…、ろ!痛い!」
「…ごめん。」
あまりにも敏感なポイントゆえに、強すぎる刺激は苦痛へと変わりやすいらしい。
それでは、と刺激する場所を変える。
「指、入れるね。」
キラの返事を待たずに、ナッシュは指をキラの中に入れた。
熱く潤ったそこに入れたい衝動を抑えながら、ナッシュは指を前後させた。
「キラのここ、もうグチャグチャになってる…。」
「ナッシュの、せいだ…。あぁ、あぁぁ!」
「どうしたの?」
「奥が…。指が、奥に当たって…!も…う、おかしく、なる…!」
これだけキラが乱れてくれば、当然ナッシュも我慢できなくなってくる。
愛撫の手を止め、キラに尋ねる。
「…僕が欲しい?」
「言わ、せるな…。」
「それだけじゃ、わからないなあ。」
「焦らすな…。お願い、だから、…早く!」
「わかった。じゃあ、入れるよ。」

361 :
ナッシュは既に硬直しきった己の分身を、下になったキラの中に入れて穿つ。
最初はゆっくりした動きから。
「キラ、どう?」
「い、い…!ナッシュ…、気持ち、いい…!」
キラは、声を限りに快楽を叫ぶ。ナッシュの作りだしたリズムに、限りなく同調しつつ。
「ナッシュ…、は?」
「うん。僕も…、いい…。」
二人は、快楽の泉を汲みだすことにのみ夢中になった。ここにいるのは、社長でも船長で
もない。力の限りに愛を交わす、ただの男と女にすぎない。
「ナッシュ、愛してる…。」
「キラ、愛してるよ…。」
お互いの愛を確認したナッシュは、キラを激しく揺さぶりはじめた。しかし、キラの口か
ら出るのは、痛みではなく快感を訴える言葉ばかりで。
「あぁ!ナッシュ、あぁ、あん…!す、ごい…!」
「っ…!まだ、だ…。」
「あぁ…、もう、お前と、別れられない…!ナッシュじゃ、ないと、イヤ、だ…!」
理性を手放し快楽に脳髄をとろけさせたキラが、本心を吐露した。
いつも気丈にふるまう女船長が、ここまで誰かにすがりつく姿など、そうそうめったにお
目にかかれるものではない。
ナッシュの心に、キラに対する愛おしさがこみ上げる。遊びの恋は数あれど、ここまで誰
かを深く愛したことはなかった、と思いながら。
「キラ…、可愛いよ…、中が、うねってる…!」
「ナ…、シュ…、も、う、わ、たし…!」
「いいよ…。僕と、一緒に、イこう?」
「あぁぁぁ…、ナッシュ…、ナ…シュ!もう、も…、ダ、メ…!イ…、ク…!」
「キラ…、あぁ、キラ!僕、も…、っっ!」
絶頂への階段を駆け上がった二人は、臨界点の白い光に包まれた。そして、キラはそのま
ま意識を失った。

362 :
キラが気がついたとき、ベッドに横たわった自分を、ナッシュがニヤニヤしながら見降ろ
していたところだった。
「何だ?」
「知らなかったよ、君がそんなに僕を好きだったなんて。」
「…お前、今から船外清掃な。」
船長権限を持って命令するキラに、哀れっぽくナッシュが懇願する。
「ごめんよごめんよ、もうからかったりしないからさ、今からの船外清掃は勘弁してくれ
よ。」
「私を好きなのは、お前の方だって認めるか?」
「はいはい、認める、認めますから。」
しかし、ナッシュははっきりと覚えている。コトの最中に、自分に甘えすがってきたのは、
キラの方だと。でも、それは伴侶たる自分だけが知っておけばいいことだ。
どっかの婿養子じゃないけど、負けるが勝ち、とも言うし。
ナッシュは、次回キラを誘う時、また甘えてくるよう仕向ける楽しみが増えた、と内心ほ
くそ笑んだ。
そして、徹底的に乱れさせてやる。
そういうナッシュの思惑などどこ吹く風で、身つくろいをしたキラはワープ準備のために
艦橋へと向かった。

後年、スカイ・アイ社社長ナッシュ・E・レギオンは、夫人で宇宙飛行士のキラ・ナルセ・
レギオンとの間に3人の子を成した。
その子たちは、それぞれ経営学部門、宇宙航海部門、惑星開拓部門で活躍することとなる。
ナッシュとキラのその後、そしてその子供たちの活躍を知りたい方は、デイリー・プラネ
ット誌2344年秋の号『華麗なるレギオン家の一族』P114〜130をぜひ参照され
たい。
<終>

363 :
ブレーメンたちやアンブレラも出せたら、もっと面白かったかも…。
力が及ばず、申し訳ない。
公式にならって小ネタを仕込んではいるが、やっつけクオリティにも程がある。
全問正解者には、惑星フロリナへペアで御招待(嘘

364 :
GJ!
萌えはかけた時間じゃないよ!

365 :
GJ!
いつ手を出したんですか、何回手を出したんですか、とハアハアしながら読んだよ

366 :
GJ!
原作で夫婦認定されるペア(俊介×和音さんとか)以外で
「お初」じゃない関係を自然に書かれたのが斬新&ハイクオリティ!

367 :
原作が発見されたので、喜びの投下
>>344さんの妄想を書きおこしてみた、つもり
異なる点があるのはご容赦ください
エロ描写はあっさり目
当SSは、安心と信頼のやっつけクオリティがお送りいたします(イタシマース)



368 :
『カーマスートラ』
『アナンガ・ランガ』
『アルス・アマトリア』
『ファニー・ヒル』
『我が秘密の生涯』
『カサノヴァ回想録』
『金瓶梅』
『袖と袖』
K大学文学部1年生となった、友成真一郎君は悩んでいた。
頭を抱えた彼の前には、冒頭に上げた、多数の本が積まれている。
それは、○○社の編集部を訪ねた、先日のことだった。
「第二作の『ドングリにもほどがある』ですが、非常な好評を持って迎えられ、また売り
上げの方も、前作の10%増しで売れています。
つきましては柚木先生、次回作は現役学生ならではのリリカルな恋愛物でお願いします。
そして、作中にぜひ、ラブシーンを入れてください。瑞々しい男女の恋愛を描くには、き
っとそれが欠かせませんので。
期待していますよ。」
そう編集者に発破をかけられた友成君であったが、経験がないものをどうやって書けとい
うんだ、と途方に暮れた。
とりあえず、帰りに思いつく限りその手の本を買って帰ったが、本によって記述が異なり、
また個人差も激しいことから、読めば読むほど迷いが深くなった。
20年前なら、大御所の森江賢一先生みたいに、編集部持ちでソープに行くということも
可能だったかもしれないが、この出版不況ではそうもいかない。
かといって、友成君が好意を抱く女性とは、何の進展もないままだ。
…俺は、またスランプに陥るのか?
友成君は、薄暗くなった部屋で電気も点けずに、机につっぷしていた。

369 :
そこへ鳴り響くインターホンの音。
「こんにちはー」
お気楽な声であいさつしながら、やってきたのはへらへらウサギ、もとい亘理実咲さんだ。
亘理さんも、友成君と同じK大学の経済学部に進学していた。そして、一人暮らしの友成
君ちに、ときどき遊びに来るようになっている。
のろのろと友成君は立ち上がり、部屋の鍵を開ける。
「…いらっしゃい。」
ちび○○子ちゃんのように、額に何本もの縦線が入っている友成君を見て、思わず亘理さ
んはたずねた。
「どうしたの?」
たずねられるままに、友成君は事情を話す。
事情をすべて聞き終えたへらへらウサギ、もとい亘理さんは笑顔になった。
「亘理、何笑ってんだよ?」
「そんなの簡単だよ友成君。彼女作れば解決する問題じゃない。」
その脱力系回答を聞いた友成君は、思わず床にうずくまった。
そして、亘理さんの方を向いて恨めしげな視線を送る。
「じゃあ何か、亘理は彼氏が欲しいと思ったらすぐ作れるのか?」
「えーと、そのー…。」
盛大に友成君はため息をついた。
…なんで俺は、こんな女が好きなんだよ。
そう、それこそが友成君が高校時代からうすうす気がつきながら、封印してきた本心だっ
た。
友成君は立ちあがり、亘理さんの肩に両手を置いた。
「亘理、今付き合ってるやついるか?」
「いないよ。どうして?」
「…じゃあ、俺と付き合おう。」
「いいよ。」

370 :
精神的軽業師のあっさりした回答に、再び友成君は脱力した。
しかし、OKが出たということは、恋人同士の一連のイベントを行ってもいいということ
だよな?
そう解釈した友成君は、亘理さんを抱きしめる。
服ごしにお互いの体温が伝わるごとに、胸の鼓動が高鳴っていく。
友成君は右手で髪を撫でながら、女子ってこんなにさらさらした髪をしてるんだな、と感
慨を新たにしていた。
さすがにここまで来ると、亘理さんもへらへらはしていられないようで、友成君の腕の中
でおとなしくなっている。
「亘理、顔をあげて?」
「うん。」
「目、閉じて。」
「うん。」
そうして、重ねられる二人の唇。
友成君は、女子の唇ってこんなに温かいんだな、と感慨を新たに(ry
体の内に欲望の火を感じた友成君は、一旦亘理さんを離した。
「俺、ちょっと買い物に行ってくるから、亘理はシャワー浴びててくれ。すぐ戻る。」
「わかったよ。」
はやる気持ちを抑えながら、友成君は近所のコンビニまで例のものを買いに行った。

371 :
十数分後、目当てのものを買って帰ってきた友成君を、亘理さんは風呂上がりの姿で出迎
えた。
「おかえりー」
体にタオルを巻き、洗い髪からシャンプーの香りがする亘理さんがなまめかしい。
「ごめん、ちょっと待ってて。俺もシャワー浴びてくるから。」
「待ってるね。」
シャワーを浴びながら、友成君は必に文献を思い出してシミュレーションしようと試み
た。
しかし、ここでいたずらに時間を消費するより、実践あるのみじゃないか?
そう思った友成君は、不毛な試みを中止し、腰にタオルを巻いて風呂を出た。
亘理さんを寝室に誘い、二人してベッドに倒れこむ。
手間なくお互い全裸となり、抱き合って再びキスを交わす。
友成君は、右手を亘理さんの胸に伸ばし、ぎこちなく揉みしだく。
女子の胸って、こんなにやわらかいんだな、と感慨を(ry
亘理さんが体を強張らせている様子を察した友成君は、胸から手を離した。
「やっぱり、嫌か?」
「嫌じゃないよ。」
「本当か?」
「うん。友成君が好きだから。」
「俺も、亘理が好きだよ。」
この言葉がきっかけとなって、亘理さんの緊張が少しずつほぐれてきた。
文献を頼りに施す、友成君の愛撫も功を奏したらしい。
亘理さんの泉に手を伸ばした友成君は、そこがしっとり潤ってきているのを実感した。

372 :
泉の水量は徐々に増し、ちょっと触れただけで、クチュクチュという音が室内に響く。
亘理さんの息が荒くなってきた。
息に交じって、かすかに喘ぎ声も聞こえるような気がするのは気のせいか。
友成君の筆もすっかりスタンバイOKだが、まだ亘理さんの準備が整ってない気がする。
友成君は、亘理さんの泉の最奥に指を入れた。
女子のここって、こんなに熱いんだな、と(ry
「は…、あ…、う…、あぁ…」
指の動きに従って、とうとう亘理さんが喘ぎはじめた。
さすがに未経験者だけあって、派手な喘ぎではないが、苦痛だけでなく快感を得ていると
いうまぎれもない証拠である。
そろそろいいかと、友成君は先ほどコンビニで購入してきたゴムを悪戦苦闘して装着した。
「いれるよ、亘理。」
「うん…。」
内臓をえぐられる感触に、亘理さんは言葉も出ない。
全部入ったところで、友成君は亘理さんにたずねる。
「痛くないか?」
「痛い、よ…。」
もっと激しく突きたい友成君だが、苦痛を訴えられてはそれもできない。
女子の中って、こんなに締め付けてくるんだな、(ry
友成君の筆が質量を増した。そろそろ終わりが近いのだ。
「ゴメン、亘理、出る…!」
「…っ!」
友成君は、押さえていた欲望を解き放った。

373 :
「ごめん、俺だけ先に…。」
「いいよ。経験がなかったんだから。これから、お互い少しずつ上手くなっていこう、ね?」
さっきまで痛がっていた亘理さんは、もう既に立ち直っている。
精神的軽業師の余裕綽々発現が復活して、友成君は本日三度目の脱力をした。
でも、これぐらい脱力系の方が、俺相手ならうまくいくのかもしれない。
事が終わって落ち着いてくると、友成君は次回作のアイデアが次々と浮かんできた。
面と向かっては調子に乗るから言わないが、へらへらウサギの女神様に内心感謝しながら。
数ヵ月後、柚木真の第三作目「洗い髪には艶がある」が販売され、好評を博したとか。
そして、友成君と亘理さんの交際も、二人して経験値を高めながら順調に続いている。
<終>

374 :
友成君、早打ちマックにしてスマソ
冒頭の本は、全て実在する好色文学です
詳細を知りたい人はggr
ナッシュ×キラにGJくださった方々、ありがとうございました。
即席SSに萌えてくださるとは、筆者冥利に尽きます。
ナッシュは、婚約後即、週一回は必ず(ry
公式CP以外でエロが書きたかったんです。

375 :
344です
私の欲望をGJで具現化していただき、誠にありがとうございます!
すごい、イメージどおりだ…友成君が初発早打ちマックなところまでw
と非常に喜んでおります
森江賢一先生の登場もひそかに望んでたので本当にうれしいです、感謝!

376 :
聡真君がジト目でこっちを見ている画像を受信したので、
遥さんと一線を越えさせてみた
ただし、筆者のほしいままに設定を作り変えているので、
上の職人さん方の続編にはあらず
舞台は原作から六年後
それでもよろしければどうぞ

377 :
保科聡真君は、彰英高校を卒業後、隣県の大学に進学した。医療系の学部が充実している
と名高いP大学である。
P大学では医療衛生学部リハビリテーション学科に進み、理学療法士(PT)の資格を取
った。
『理学療法士とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の
指示の下に「理学療法」を行うことを業とする者をいう。「理学療法」とは、身体に障
害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の
運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをい
う。(理学療法士及び作業療法士法昭和40年6月29日法律第137号第2条)』
これだけじゃ、何が何だか分からないと思うので、簡単に説明しよう。
ある日突然、君が事故にあったと仮定する。
通報を受けて病院に搬送するのが消防士。
病院に搬送されるまでの、応急的な救命措置を行うのが救急救命士。
医療チームのリーダーとして患者の治療方針を決定し、手術し、その後の経過に応じて
コ・メディカルに様々な指示を出すのが医師。
手術の補佐や点滴などの管理、入院生活上の世話をするのが看護師。
そして、命の危険を脱した君が、機能回復訓練でお世話になるのが理学療法士。
一説によれば、二日間寝たきりでいると、筋肉の1%が失われると言われる。十数日間、
あるいは数週間寝たきりだった君をいきなり歩かせるのは、免許取りたての者に『ひこー
きのうんてんしゅ』になれと言っているのに等しい無謀さだ。
理学療法士は、こういった人々の機能回復を目的とした運動療法と、マッサージなどの物
理的刺激を加える物理療法の二つの面からアプローチし、医師や他のコ・メディカルと協
同して再び君が歩けるよう、退院後の生活に支障がないように尽力する。
つまり、地味な役割だが縁の下の力持ちとして、医療チームに欠かせない存在であると言
える。
超・進学校の彰英高校なら、医学部進学も夢ではない。しかし、高一の夏骨折して、親身
にリハビリに取り組む理学療法士にお世話になった聡真君は、この道を選ぶことに決めた。
聡真君は大学卒業後すぐ地元に戻り、飛島総合病院のリハビリテーション部門で働いてい
る。
古武士のように義理堅く、折り目正しい聡真君は、患者さんの間でも評判の人気者だ。
密かに、独身看護師の間でもうわさの種になっているようだ。
一方、若宮遥さんは、この春ユリアナ高校を卒業する。そして、地元の看護学校への入学
が決定している。母子家庭のため進学を断念した彼女は、食いっぱぐれのない職業につい
て早く親を楽させたいらしい。
物語は、遥さんが高校を卒業するひと月前から始まる。

378 :
白衣の上にウインドブレーカーを羽織った姿で仕事から帰ってきた聡真君は、玄関前で遥
さんと顔を合わせた。
遥さんの背中には依然として半透明の羽があるが、聡真君にとってそれは、もはや日常風
景の一つにすぎない。
「お帰り、聡真君。」
「ただいま。あの、遥、よかったら来月、一緒に旅行に行かないか?」
「いいけど、どうしたの?」
「いや、来月高校卒業だろ。どこに行きたいか言ってくれれば、俺がプランを考えておく
から。」
「うん。」
「その…、泊りがけで行くことになってもいいか?」
「…いいよ、聡真君となら。」
「わかった。楽しみにしとけよ。」
聡真君は地元に戻ってすぐ、遥さんのお母さんに「お嬢さんとお付き合いさせてください。」
と申し出た。
快諾を得た聡真君は、以来遥さんとの交際を続けてきたが、依然としてキス止まりのまま
だった。隙を見て手を出した、どっかの社長より忍耐強い。
しかし、聡真君も健全な男性として、いい加減その状態から脱したいと思っている。
そのための、旅行の提案だった。
多分、それは遥さんも気が付いている。
数日後、遥さんは希望を伝えてきた。「某都市の某テーマパークに行きたい。」と。
聡真君は張り切って有給をとり、チケットやホテルの予約など、その他もろもろの手配を
行った。もちろん、遥さんのお母さんへの根回しも抜かりない。
二人は、内心様々な思いを胸に秘めながら、旅行当日を待った。

379 :
そして迎えた当日。
さくさくと移動し、さくさくと某テーマパークで遊び、さくさくと食事して予定をこなし
た二人は、夜になりあらかじめ予約してあった某都市内のプリンセスホテルに向かう。
フロントでキーを受け取り、お互い無言で移動する。
部屋に入った二人の目に入ったのは、大きいダブルベッドだった。
「聡真君、これ…。」
「どうかしたか?」
「ダブルベッド、だよね。」
「嫌、か?」
「嫌じゃない、けど…。」
遥さんは、乙女特有の羞恥心から頬を染めた。旅行の話があった時から覚悟していたとは
いえ、客室の選択に、今夜は必ず自分を抱く、という聡真君の強い意志を感じて恥じらっ
た。
羞恥と緊張で身を固くしている遥さんを、聡真君はそれを解きほぐそうとして抱きしめる。
「好きだよ、遥。」
「私も、聡真君が好き…。」
聡真君は遥さんを抱きしめたまま、右手で頭を撫でた。十八歳となった今ではツインテー
ルはやめ、ごく普通のロングヘアにしている。
背中の羽は相変わらず背中に存在するが、触れた感触は全くない。
…何なんだ、いったいこの羽は。
そういう考えが、聡真君の頭をよぎったのもつかの間。今はもっと大事な問題が控えてい
る。些事に関わっているひまはない。
聡真君は遥さんをお姫様抱っこし、ベッドまで運んでそっと横たえた。

380 :
仰向けになった遥さんに、聡真君は上から覆いかぶさり、様々なところにキスを落とす。
あれから六年経った今でも、ほっぺたはぷにぷにだ。
しかし、昔と違って今はそういう感想が湧いても、媒介変数表示の曲線に於ける面積を求
める必要などない。
小鳥が木の実をついばむような軽いキスから、吐息を奪わんばかりの激しいキスへ。
しばらく唇の感触を楽しんだ後、キスを解いた聡真君は遥さんに尋ねた。
「先に、シャワー使うか?」
「う、うん…。」
「俺も後で使うから。」
「わかった。」
遥さんはおもむろに立ち上がり、のろのろとシャワールームに向かった。
緊張しながらシャワーを使ったため、どこをどう洗ったのか全く覚えていない。
バスローブを羽織って出てきた遥さんと入れ違いに、聡真君はシャワールームに消えた。
…これから、聡真君と、するんだ。
ソファに座りながらそう考えた遥さんは、更に緊張が高まっていくのを感じた。
シャワールームのドアの開閉音がして、聡真君が出てきた。柔道で鍛えたたくましい体躯
を、タオルで覆って。
聡真君は遥さんの手を握り、ベッドへと誘った。

381 :
「もっとそばに来いよ。」
「うん。」
力を込めて、聡真君は遥さんを抱きすくめる。そしてあっという間にバスローブを脱がせ、
素肌と素肌の接触を楽しみ始めた。
小学生時代の遥さんは細くて、小さくて、可愛くて、抱きしめたりすると折れそうな印象
があった。
しかし今となっては、細身なところは変わらないが、つくべき所にきちんと脂肪がつき、
女性らしい体型になっている。
そして、聡真君は、やや小ぶりながらも形のよい遥さんの胸に触れる。
「遥の胸、可愛い…。」
「…!」
遥さんは驚いて身を震わせたが、抵抗するわけではない。本当は未知の行為に対する恐怖
と羞恥で逃げ出したいのだが、相手が六年前から思い続けていた人だからこそ、何とか耐
えている。
胸を揉むのだけでは飽き足らなくなった聡真君は、胸の突起を口に含んで吸い上げた。
「あっ…、は…」
遥さんは自分でも無意識に目をつぶり、声を上げた。
体の中で、今まで眠っていた知らない何かが、目覚めようとしているのを、遥さんは実感
していた。

382 :
一方、聡真君はよく言えば丁寧に、悪く言えば執拗に胸の愛撫を続けていた。すっかり突
起は固くなっているというのに、まだ足りないとばかりに刺激を加える。
遥さんの口から、小さいながらも喘ぐ声が聞こえてくるようになると、聡真君はほくそ笑
んだ。
とうとう遥が俺のものになるんだ、この六年は本当に長かった、と思いながら。
胸から手を離した聡真君は、遥さんの足と足の間に手を入れる。既に、そこはしっとりと
潤っていた。
「遥のここ、濡れてるよ…。」
「そんな…、こと、言わ、ないで!」
「でも、これが感じてる証拠なんだよ。」
「やだぁ…、あぁ…、はっ…、ん…。」
聡真君の指は快楽の芽を捉え、もっと感じさせてやると言わんばかりに擦り始めた。
遥さんの声が大きく、高くなっていく。
聡真君は中心に指を差し入れたくなったが、未経験の遥さんに苦痛を与えるかもしれない。
そこで、あらかじめ枕元に置いてあった、局所麻酔薬のキシロカインゼリーを手に取る。
ゼリーを指にたっぷり塗りこみ、人肌に温めてからゆっくりと中心に入れる。
「な、に…。やぁ…!」
経験したことのない、内臓をかき分けられる感覚に、遥さんは悲鳴を上げた。
「痛いか?」
「ううん…。でも…、変な、感じ…。」
痛みは感じていないことを確認した聡真君は、指を傍若無人に動かす。ぬかるみを増した
感覚に、指を二本に増やしてみたが、やはり痛がらない。
そろそろ…、か。
聡真君は、これまた枕元に用意してあったゴムを取り出し、あわてず騒がずきちんと自身
の分身に装着した。

383 :
「遥、入れるよ。」
「恐い…。」
「ちゃんと、痛くしないようにしてるだろ。だから、俺に任せて?」
「うん…。」
聡真君は遥さんの足を開き、まだ誰にも荒らされていない中へ押し入った。
「キツいな…。」
「うっ…、くぅっ…、あぁぁ…。」
遥さんの中は、不埒な異物を排除しようとやっきになっているが、聡真君の分身は、ここ
は自分の領域であると主張して譲らない。
「大丈夫か?痛くないか?」
「それは、平気…。」
心配した聡真君が遥さんの顔を覗き込むと、心配させまいとして微笑もうと試みる。
しかし、体内に存在する圧迫感のせいで、思うように笑顔を作れない。
遥さんの締め付けに辛抱しきれなくなった聡真君は、小刻みに腰を揺さぶりだす。その動
きに合わせて、遥さんの口からも喘ぐ声が漏れる。
「すごい…。俺のに、吸いついてる。」
「あぁ…、熱い、そう、ま、くん…、熱い…!」
「最高だよ、遥…。」
「あぁ、何か、やだぁ…、わたし、ヘンなの!」
「それは、遥が、感じてるんだよ。もっと、感じて?もっと、乱れて…。」
「あぁん…、はぁ…、好き!聡真君、大好き!」
二人は動きを同調させながら、快楽の糸を紡いでいく。その作業にのみ感覚を集中させて。
時が満ち、春の潮が満ち溢れる時がやってきた。
「…くっ、は、るか、イ、ク…!」
「あぁぁ、そう、まくん…、あぁぁぁぁぁっ!」
堕ちるような感覚に襲われた遥さんは思わず、聡真君をぎゅっと抱きしめる。聡真君もその
抱擁に答える。そして、二人の意識は暗闇に意識を手放していった。。

384 :
遥さんを抱いた次の日、聡真君は彼女の羽がなくなっていることに気がついた。あの羽は、
一体なんだったのか?
まさか、妖精の羽は男性を知ると消えうせる、なんてことはないよな。
そんな考えが聡真君の頭に浮かんだが、妖精だろうと妖怪だろうと、遥さんを抱いたこと
に後悔はない。また、遥さんにも後悔させない。
そう、聡真君は決意した。
その後も二人は、予定通り楽しい旅行を続けた。
旅行から帰った聡真君は、ただちに遥さんのお母さんに「お嬢さんと婚約させてください。」
と頭を下げた。むろん、快諾が得られたのは言うまでもない。
聡真君は、看護学校に進学した遥さんにねだられて、解剖学やボディメカニクスなどの勉
強を教えるようになっている。
遥さんが看護師免許を取り、保科遥となるのには、まだまだ時間がかかりそうである。
しかし、遥となら共通の目標が達成されるまで、機が熟すのを待つのも悪くない。
そういう思いを抱きながら、今日も聡真君は職場でリハビリに取り組んでいる。
<終>

385 :
sage忘れすいません
また、自分ばっかり書いててすいませんorz
正直に言うと、お前らを白衣萌えさせてくてやった
筆者の陰謀にハマったやつは、正直に挙手するように
聡真君には、きっと男性コ・メディカルが来ている白衣がよく似合う
イメージが湧かない輩は、「ケーシー型白衣」でggr
18歳と12歳じゃアレだが、24歳と18歳じゃ全然問題ないと思うんだ


386 :
聡真君×遥ちゃん 好きなカップルです。
でも遥ちゃんの高校が「スカート丈短くてハラハラする(だったっけ?)」「かわいらしい偏差値」のユリアナ高校ってどうなんかな…と前の作家さんの時にもちと気になりましたが

387 :
やあ (´・ω・`)
ようこそ、川原泉エロパロスレへ。
このスニッカーズはサービスだから、まず食べて落ち着いて欲しい。

うん、「またナッシュ×キラ」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このキーワードを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「萌え」みたいなものを感じてくれたと思う。
伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、このSSを書いたんだ。

じゃあ、閲覧してもらおうか。

388 :
航海から戻ったキラは、自宅に帰ってベッドに横になり、お気に入りのパジャマに身を包
んでいぎたなく眠り呆けていた。
うつぶせ寝の姿勢でよだれを垂らしながら、温かい毛布にくるまる至福の一時。
外では、篠突く雨が降り続いている。
宇宙では決して聞くことのない、自然が奏でる音を耳にしながら、まどろみながらふと思
う。
(…雨はいい。いまだにジャパン・エリアが緑に満ちているのも、雨の恩恵だな。)
そんな考えが頭をよぎったのもつかの間、キラの意識は再び眠りの海に落ちていこうとす
る。
しかし、それは息せき切って部屋に入ってきた、突然の闖入者によって妨げられた。
「おかえり、船長。帰ってきてくれて、僕は嬉しいよ。」
「何だ?」
人類の三大欲求である睡眠欲を奪われて、キラはこの上もなく不機嫌になった。
「この、バカ社長が!お前は、いつもいつも、私の休暇を邪魔しやがって…。大体、社長
だったら社員のスケジュールぐらい把握しておくのが筋だろうが!私に文句を言うのはお
門違いだ!」
「ごめんよごめんよ。でも、君が突然予定を変更して帰ってきた、ってさっき聞いたばか
りだから。」
うつぶせになったまま、キラがナッシュに目をやると、タキシードを身に着けていた。
どこかで公式の会合があったようだが、急いで帰ってきたらしい。
一分の隙もない礼装を着たままで、乱れた呼吸を整えている。
三十路を越して落ち着いたはずなのだが、相変わらずこういうところは子供じみている。
「…頼む、ナッシュ。お願いだから寝かせてくれ。」
「僕だって寝たいよ、キラと一緒に。だから、ね?」
そう言って、ナッシュはジャケットを脱いでベッドに入り、背後からキラに抱きついた。
左腕でキラが逃げられないように、しっかりと抱える。慣れた手つきで蝶ネクタイ、カマ
ーバンド、ワイシャツのボタンをはずしたあとスラックスを脱いだ。
「そーゆー意味じゃねえ!」
キラは大声で抗議するが、ナッシュは馬耳東風。
「ずっとしたかったんだ、君と…。」
ナッシュはキラを横抱きにすると、パジャマのボタンをはずしはじめた。前を全てはだけ
たところで腕を抜き、上半身を露出させたところで、お互いの素肌を密着させる。背後を
取られたキラは、いくらあがいたところで反撃しようもなく、下のパジャマもろとも下着
を脱がされる。
「この、バカ!おい、ナッシュ、やめろ…!私は、おまえに、話が…。」
「ダメだよ。話なんか後回し。もうやめられないし止まらない。」
ナッシュはどっかのスナック菓子のキャッチコピーみたいな台詞をつぶやき、本格的な
攻撃を開始した。

389 :
ナッシュはキラの髪をかき上げ、耳朶を甘噛みする。
「う、ぁっ…!」
キラが思わず声を上げると同時に、意図せずして体が跳ねる。
「もう感じてるの?」
後ろからクスクス笑うナッシュを、キラは睨みつけようとするがうまくいかない。
「そんなに、するからだ…。」
「うん。やっぱり可愛いよ、キラ。」
ナッシュは両手で、キラの胸の突起を弄る。瞬く間に固くなったそこは、弄られるたびに
新しい快感を生み出していく。
「ん…、く、はっ…、あぁ!」
「本当に、感じやすい体だね。」
「あ…!そう、仕込んだのは、お前だろう…。」
「だって、全然反応ないのってつまらないし。その点、キラは敏感だから、抱いててすご
く楽しいよ。」
「この、ドSが…。」
「君がドMなのがいけないんだよ?」
微笑みながら、ナッシュはキラを追い上げていく。胸から手が離れたと思うと、ナッシュは
キラの背中に舌を這わせた。軟体動物に、背中を侵食されるような感覚がしたキラは、
つい大声で叫ぶ。
「やめろ…、背中は…!ダ、メ…!お願い、だから…。」
「何言ってんの。僕は知ってるよ、君はここがいいんだって。」
キラの哀願を無視して、ナッシュは唇と舌を使って、背中一面に淫縻な愛撫を繰り返した。
首筋から肩甲骨を経て脇腹へ、そして背骨のくぼみを、腰のあたりから上に向かって執拗
に舐め回す。
「あ…、あぁっ、ヘンな、感じ…。ピリピリする…!」
「ねえ、気持ちいい?」
「うん…。そうされると、あん…、あぁぁ…。」
「ほら、やっぱりいいんじゃないか。」
「そ、そんな…。」
「だって、もうここ溢れてるよ?」

390 :
快感に溺れている隙を狙って、ナッシュはキラの泉に触れる。すでにそこは、洪水警報が
発令されていた。泉のそばにある快楽のスイッチも、準備万端と言わんばかりに肥大して
いる。
「あ…、あぁん…、は…!」
「ここ、大きくなってるね。触って欲しがってる。」
人差し指でスイッチに触れて弄りだすと、キラの喘ぎはいっそう大きく、高くなった。
「あぁ…!ナッシュ!気持ち、いい…!」
「本当に淫乱だなあ、キラは。」
「淫、乱は…、嫌い、か…?」
「ううん、好きだよ。」
「う…、はぁ…、ナッシュ、やめろ、お願い…!」
「どうしたの?」
キラは息を切らし首をねじって、熱を帯びた目で背後のナッシュを見つめてねだった。
「キス、させろ…。」
「わかったよ。」
背後からの拘束を解いたナッシュは、改めてキラを前から抱きしめる。皮膚と皮膚が融合
しそうなほど、固く抱き合い、深く長いキスを交わす。
「ん…。ちゅ…、ふ…、うん…。」
「ちゅっ、ふ…、んん…。」
お互いを食いつくそうとするかのように、激しく唇を貪る。
とうとう辛抱しきれなくなったキラは、己の欲するところを声に出して訴えた。
「ナッシュ…、入れ、て?お前、が、欲しい…!」
「いいよ…。」

391 :
莞爾として笑ったナッシュは、キラの足を開いて上から覆いかぶさり、すっかり充血しき
った己の分身を突きたてた。
程良く潤った泉は、苦もなくそれを受け入れた。それでいて、やんわりと締め付けてくる。
全てそれを飲み込ませたナッシュは、熱い泉の感触に酔いしれる。
「うぅ、あぁぁっ!」
「全部入ったよ、キラ…。」
抽送を開始したナッシュを、キラは自ら腰を揺すって歓待した。お互いの律動によって、
目が眩むほどの愉悦が生み出される。
「あぁ…、…ぁ、はぁ…!すご、い…!」
「すごいよ、君の中…。」
「ナッシュ、のが…、奥に、当たる…。いい…!」
「…いいよ。締まるときの、良さったらないよ…。」
「き…、ち、…、い…!あぁ…!」
もはや、「気持ちいい」と発音したくても言葉にならない。言語中枢が誤作動を起こすほど
の快楽を、キラは大脳辺縁系で感じていた。
キラの中でナッシュの分身が質量を増し、腰を振りたてる速度を速めた。ナッシュは全身
に汗をにじませながら、腰を回してキラを突き続ける。
「ナ…、シュ…。」
「何だい、キラ?」
「私…、には、お前…、だけ、なんだ…。だから…、捨てるな…!」
「わかってる…。」
僕だってキラだけだよ。そう言いたいけど、言葉にできずキラを行動で追い詰めるのみ。
しかし、それももうそろそろ限界にきている。
「ナ…シュ!ナッシュ!わ、たし…、イッて、しまう…!イク!あぁ、イ、クぅぅぅ…!!」
「僕も、だ…。キラ、あ…、出る…!」
ナッシュは眉根を寄せて、キラの中に白い欲望を解き放つ。キラは熱い迸りが自分の最奥を
満たすのを感じ、諸手でナッシュの体を強く抱きしめながら、意識を手放した。

392 :
キラは気がついたとき、ナッシュの腕に抱かれていた。
「大丈夫?」
心配そうにのぞきこむナッシュに、キラは甘い余韻もさておいて毒づく。
「お前というやつは、妊婦に狼藉を働きやがって…。」
「…え?」
ナッシュはそれを聞いて点目になった。妊婦って?どゆこと?どゆこと?
「私が航海に出る三週間前、さんざんやり倒したのはどこのどいつだ!」
「僕…?」
「他に誰かいる、とでも?」
そんなことを言えば、ナッシュの首は飛ぶ。比喩表現ではなく。もちろん命が惜しいナッ
シュは、そんな愚は犯さない。
「先週、アームストロング船医のメディカルチェックを受けた時、尿中hCGが陽性だっ
たんだ。超音波検査でも、二週目の胎芽がいるとの診断だった。それを話そうと思って帰
ってきたのに、お前というやつは…!」
「僕と、キラの子供ができたの?」
「…平たく言えばそうなる。」
キラが手渡した書類は、診断書と超音波画像の写真。まだ受精卵に毛が生えたような存在
にすぎないが、十カ月後には腕に抱けることのできる、愛の結晶となる。
ナッシュの心に、嬉しさがこみ上げてきた。僕と、愛する人との子供。
「キラ、愛してるよ。じゃあ、これは僕からのプレゼント。」
そう言って、ナッシュは一枚の書類を手渡した。何かの納品書らしい。
「?」
そこにはこう書かれていた。
『スカイ・アイ社社長ナッシュ・E・レギオン様。超A級アンドロイド一体を○月○日納
品いたします。期日が遅れてご迷惑をおかけしたことを、深くお詫びいたします。』
「これ…!」
「君のコピーが欲しくて、注文してたんだ。本当は君との結婚までに納品する約束だった
んだけど、惑星ミグダリオンが津波で被災して、工場が稼働できなかったんだよ。それで、
復興する今までかかったって訳。これがあれば、君といつでも宇宙の遠足に行けるよね。」
「…まあ、一応、礼は言っておく。」
大型宇宙船三台分の金をかけてまで、夫に一緒にいたいと思わせるとは、確かに嫁冥利に
尽きるかもしれない。しかし、コピーが二体になるんだぞ?自分までコピーに怒られるよ
うになるのはうんざりだ、ごめんこうむる。
こいつの世話ばかりか、子供の面倒まで見ないといけなくなるのか…。
ニコニコしているナッシュの隣で、キラは内心頭を抱えていた。

レギオン家待望の第一子が誕生するのは、それから約十カ月後のことになる。
<終>

393 :
上にあるナッシュ×キラの続編、のようなもの。
お目汚し失礼いたしました。

394 :
ナッシュ×キラは好きだ!
GJ!

395 :
ここ、雑談おk?
上にあった飛島君×蕨さんの作品が、エロスとユーモアが巧みに融合してて
読んでて飽きなかった。
ああいうのをかける職人さんは、マジで尊敬する。

396 :
395サン同意!
とくに童貞の件りに笑わしてもらい、職人さんに感謝です

397 :
道程を朗読する蕨さんに吹いたwww
今月は新刊も出るし、雑談&SS投下が増えることに期待

398 :
小ネタ
ナッシュ×キラ

「ねえ、船長。」
「何だ、社長。」
「僕のお願い、聞いてくれる?」
「聞くだけなら、聞いてやらんこともないが。」
「ええっ、聞いてくれるの?じゃあ、今すぐバターと生クリームとお菓子を持ってこなきゃ!」
「…何をするつもりだ?」
「キラの体に、バターと生クリームを塗って、お菓子をトッピングするんだよ。バターには辛いお菓子、
生クリームには甘いお菓子。僕の好きなものが一度に味わえるなんて、すごいアイデアだと思わない?」
「この、バカ社長が!今夜の夕食は抜きだ!」
バゴン!
その後ブレーメンUの甲板では、頭にたんこぶを作ったナッシュが、お腹をすかせて掃除をする姿が
見られたとか…。


399 :
保守

400 :
保守

401 :
今頃になってここが復活したの知った
とっても嬉しい

402 :
>>401
月末には新刊も発売になるし、またいろいろと雑談しましょう

403 :
ほしゅ

404 :
新刊発売記念の前倒し投下
ソロモンズリング保持者の二人です
冒頭から約2/3は、二人が株その他について延々語り合っているので、
興味のない方はスルーでドゾー

405 :
月森仁希は無事松葉ヶ丘高校を卒業し、勉強の甲斐あってホニャララ大学の経済学部に入
学した。
大学では基礎科目を学びつつ、マクロ経済学やらミクロ経済学を学んでいる、らしい。
夏休みに入ったある日、仁希は自室のPCモニターの前でため息をついていた。
半袖の白いブラウスにジーンズといったいでたちでモニターを睨んでいる仁希の顔には、
うっすらと汗がにじんでいる。
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の それにつけても 金の欲しさよ」
仁希は、意味不明な和歌のようなものを吟じていた。
そこに、ドアをノックする音が室内に響く。
「入れば?」
仁希が声をかけると入ってきたのは隣家の幼馴染、真船友理だった。水色のワイシャツに、
ベージュのスラックスといった格好が夏を感じさせる。
友理も第一志望のムニャムニャ大学の法学部に進学し、いわゆる六法について学んでいる、
そうだ。
「どしたの、仁希?難しい顔して。」
そういいながら部屋の片隅にあった丸椅子を仁希の隣に運び、そこに陣取る。
仁希は友理の肩に手を回した。
「いや、まあ、どうにもこうにも。」
「おまえが、そんなに困ってるなんて珍しいね。」
「それはなあ、学びたかった項目が大学のカリキュラムにない、となれば落ち込むだろう?」
「へ?」
「経済学部にはないんだよ、私の勉強したかった、金融商品論や、証券市場論が!」
「それは、クラスのみんなと植えたヘチマが実はカボチャだった、ってぐらいのがっかり
感があるね。」
「大枚はたいて買った新種の植物の種が、実はただのパセリだった、っていうとき以上の
がっかりだった。そういう講義は、経営学部や商学部にあったんだ。でも、ただでさえ苦
労してるかーちゃんの手前、今更辞めるわけにはいかん。」
「おばさん、仁希の大学合格をすごく喜んでたもんね。」
「仕方がないから、独学で学ぶことにした。で、パソコンを買ったんだ。」

406 :
「友理は、株の極意を知っているか?。」
「知らない。僕にも教えてよ。」
「いいぞ。『高く売って安く買う』、これだけだ。言うのは簡単だが、実行するのは実に難
しい。」
「ノウハウがわからないとできないよ、そんなの。」
「だから、難しいと言っただろう。時に相場は、予想もできない動き方をする時がある。
一介の素人に読み切れるものではない。投資したいのであれば、なくなっても困らない余
剰資金でするべきなんだ。資金をなくして家庭や人生が崩壊するようなやりかたは投資で
はなく、ただの博打にすぎないからな。」
「人生をかけてまでする投資って、かなりのハイリスクだもんね。」
「もちろんだ。地道に働きながら、貯金で少しづつお目当ての銘柄を買い増していくのが、
最もリスクの少ない投資の仕方といえるだろう。」
「で、どういう風に買ったらいいの?」
「とりあえず、アメリカの株価指数であるダウを確認する。世界の株価は連動しているか
らな。何年か前のリーマンショックは、記憶に新しいところだろう。」
「それで?」
[次に、いわゆる日経平均株価を確認する。これは、1700近い東証一部上場銘柄のう
ち、えりすぐりの225銘柄の平均値を出したものなんだ。」
「全部の銘柄の平均値じゃないの?」
「ああ。ダウなんか、たったの30銘柄だぞ。まだ多い方だ。この225銘柄は見ればわ
かるが、誰もが知っている一流企業ばかりだ。この中から銘柄を選ぶと、新興株を選ぶよ
り、リスクはかなり下げられる。ゼロにはならんが。
そして、買いたい銘柄のチャートを確認する。3か月〜半年の短期と5年〜10年の長期を
両方確認して、それで、下がり気味な時が買い時だ。」
「安く買う、だね。」
「ただ、ライブドアショックやリーマンショックのように、想定外の下落をする場合を考えて、
あくまでも現物投資が基本だぞ。決して信用取引、つまり、借金してまで買うものではない。
そして、買ったコストより上がった場合に売るのがベストだ。」

407 :
仁希は友理に尋ねる。
「ところで友理、資本主義社会のヒエラルキーで、頂点にいるのはどういう存在だと思う?」
「えーと、パイロット?」
「高給取りのパイロットといえども、会社に雇用されている存在にすぎない。会社を辞め
ればただの人、では頂点とは言えまい。」
「自衛官や、海上保安官は?」
「社会に奉仕するべき公僕たるもの、頂点とは程遠い存在だと思うが。」
「ヤクザの組長とか。」
「日陰の者は隠然とした影響力を振るうことはできても、ヒエラルキーの最上位に君臨す
ることはできん。」
「お医者さんはどうかな?」
「確かに、医師は医療系職業の頂点的存在ではあるが、全ての医師が社会全体のヒエラル
キーの最上位にいるかというと疑問が残る。医師といってもピンキリだ。」
「じゃあ、意表をついてミュージシャン。」
「人気が出ないとただの無駄飯食らいで、出たら出たで事務所に搾取されまくる歌い手の
どこに頂点の要素があると?」
腕組みした友理は少し考え、膝を打って答えた。
「わかった、会社の社長!」
「核心に近づいてきたが、まだ正解ではないな。いかなる大会社の社長といえども、利益
を差し出さなければいけない相手がいるんだ。」
「降参。教えてよ、仁希。」
「それは株主だ。」

408 :
我が意を得たり、とばかりに仁希は笑顔になった。
「株主は、株を買って株式会社に出資する代わりに、一定の利益を受け取る権利がある。
いわゆる配当だな。もちろん、会社が赤字の場合はその限りではない。」
「赤字だと配当はもらえない、ってことだね。でも、それじゃその会社の株を、誰も買お
うとしなくなるんじゃない?」
「だから、全ての株式会社の中の人は、利潤を生みだそうとして奔走しているんじゃない
か。材料を仕入れ、物を作り、営業して売るのは、そのためだ。
『会社の売上−コスト=利益』
この利益の中から、それぞれの持ち株分の配当を分配するんだ。この配当はインカムゲイ
ンと呼ばれる。
今時は、5年の定期預金でも利率0.2%が高金利だからな。100万円預けても、一年
に2000円にしかならないが、株式の配当は1パー2パー当たり前の世界だ。」
「100万円の2%かあ、定期預金の10倍だね。同じ100万円でも、株に回した方が
お得なんだね。」
「ところが、世間はそう甘くない。定期預金の場合100万円の元本は保証されるが、株
価は絶えず変動している。100万が120万になることもあるが、50万になったり、
はなはだしくはゼロになる可能性もないとは言えない。」
「こないだのAJA株みたいに?」
友理の問いかけに、仁希は沈鬱な表情を作る。
「あれは、投資家にとって悪夢のような出来事だった。負債の額が約2兆円と史上最大規
模だったのも話題になったが、それ以上に100%減資をして上場廃止になったのが大き
かった。」
「どゆこと?」
「上場廃止になった株は、当然市場で売買できない。ただし、会社そのものが存在する場
合、利益が出れば配当ももらえるし、理論上では個人で買ってくれる人を探して売ること
も可能だ。そんな人はほとんどいないが。
また、再上場した場合は再び市場での取引ができる。その可能性はかなり低いが。
AJAの場合は、100%減資、つまり『お前らの株全部チャラにして、新しい株主から
出資してもらうもんね』というので、約40万人ともいわれる個人投資家は泣きを見たん
だ。AJA株は、株主優待の航空券割引目的で買っていた人も多かったからな。でも、そ
んな銘柄は東証一部上場企業の中のほんのわずかだ。」
「シビアだねえ。」
「投資は自己責任でするもの。失っても困らない資金でするべきで、生活に必要なお金を
突っ込んだり、ましてや借金してまでするものではない。元本割れが嫌ならリスクの低い
定期にでもしておけ。儲けはしれているがな。」

409 :
「じゃあ、株を売ったり買ったりするのは?」
「それはキャピタルゲインだな。友理がリーベル株を1株50円の時に100株買ったと
して、数か月後に100円になった時に売れば、単純に言って5000円の黒字になる。
売買時に手数料は差し引かれるが。」
「前から思ってたんだけど、株って、1株からでも買えるの?」
「それは銘柄による。株は単元といって、それぞれの株ごとに取引単位が決まっていて、
1000株から1株まで様々なんだ。例をあげれば、四菱重工なら1000株、二井墨友
フィナンシャルグループなら100株、MTTドコデモなら1株1単元となる。」
「ふーん。四菱重工の株1株ください、っていうのは無理なんだね。」
「いや、そうでもないぞ。単元未満株を取り扱っている証券会社を使っているなら、そう
いう注文も可能だ。主にネット証券が中心で、会社によってS株だのまめ株だのプチ株だ
の呼び名は異なる。
これのメリットは、少ない金額からの投資ができることだな。例えば、メイプル製菓の株
が一単元100株として、1株2300円なら購入資金が23万円必要だが、1株から買
えるとなればたばこ6箱分の金額から買うことが可能だ。もちろん、少しずつ買い増して
いって、単元株にすることもできる。
ただ、単元株とは異なる点も多い。」
「どういうところが違ってくるの?」
「購入時は必ず成り行き注文になるとか、売買時の手数料が割高になるとか、株主総会に
は出席できないとか、株主優待が受けられないなどだな。配当は、単元未満株でももらえ
るんだ。」
「ちょ、ちょっと待って。他のは分かったけど、成り行き注文って何?」
「すまん、説明が足りなかったな。株の売買の仕方には三種類あるんだ。
まず、成り行き注文はどんな値段でもいいから買いたい、または売りたいというときに使
う。値段の指定はできないが、手っ取り早く売買を成立させたい時に便利だ。
次に指値注文。○○円以下になれば買い、○○円以上になれば売りといった具合に、自分
で値段を指定することができる。成り行きだと価格が割高だったり割安だったりしてしま
うことがあるが、指値だとそういうことは防げる。
最後が逆指値注文。指値とは逆で、○○円以上になれば買い、○○円以下になれば売りと
いった注文方法だ。これは主に、株の価格が下がって含み損が増えた時、それ以上損を拡
大させないようにする時に使う。いわゆる損切りだな。この売買方法は取り扱っている証
券会社とそうでない証券会社があるので、あらかじめリサーチが必要だぞ。
これらの注文方法を検討して、一番その場に適した売買方法を選択するのが、賢い投資の
第一歩だと言えるだろう。」

410 :
「株については多少わかった気がするけど、FXってどうなの?最近、バナーなんかでよ
く見かけるけど。」
「友理、FXをやりたいのか?」
「いや、そうじゃないけど。」
「私は、FXはお勧めしない。機会があったら、2chのドル円スレに行ってみろ。阿鼻
叫喚の嵐だから。
FXの恐怖を、端的に物語る有名なコピペがあるんだ。それを紹介しておく。」
****************コピペ引用*******************
701 名前:名無しさん@お金いっぱい。[] 投稿日:2009/07/06(月) 20:16:04 ID:HnypSwRzQ
今日から参戦することになりました皆さん宜しくです
投資経験はゼロですがFXバ−チャルデモで僅か半年で資金が80〜100倍になりました
デモをやってみた感じこれは行けると思いこの流れのまま先月で会社を退職
運転資金として消費者金融に自宅を担保に1000万借りて定期預金解約して500万
退職金が400万、妻の実家の両親から100万の合計2000万で始めます
35歳第二の人生頑張るぞ
442 名前:701 ◆zn05JVP3P. [] 投稿日:2009/07/19(日) 09:41:36 ID:cDc5PSrrQ
皆さんお久しぶりです
三日連続的にロスカットになり資金が完全に無くなりました
消費者金融の方と話しあいましたが分割返済は認められないみたいなので
昨日話し合って妻とは離婚することにしました
娘は妻が引き取ることになります
我が人生完全に八方塞がりですね
残念です
さようなら
****************引用ここまで******************
「うわあ、二週間で2000万円なくなっちゃったの?」
「そうだ。このコピペに対する真偽は定かでないが、これが絵空事でないところにFXの
恐ろしさがある。彼の場合、無職でしかも資金の半分以上が借金なんだ。これからの長い
人生は、全て借金返済に費やされるものになるだろう。しかも、借りている先が消費者金
融なんだ。30%近くある利子を、返済の計算に入れるとめまいがする。」
「考えたくもないね。」
「ああ。こういう事態にならないためにも、投資するなら現物で、というのが鉄則だ。そ
して、株とFXの最も異なる点は、コピペにあるロスカットの存在なんだ。」
「それって、どういうものなの?」
「ロスカットも損切りとおなじ意味だ。株の場合、含み損が発生しても値段が上がるまで
待つことができるし、ナンピン買いして含み損を下げることができる。
ナンピン買いとは、新日本産業グループの株を1株100円で買ったとして、50円に下
がったとする。含み損が50円発生するわけだが、ここでまた1株買い増すと含み損は2
5円になるんだ。これを延々繰り返すと、含み損はさらに少なくなっていく。
しかし、このやりかたはFXでは通用しない。
1ドル=100円の時に1万円買って、1ドル=105円になったら売ろうと思っていたと
ころ、相場が1ドル=95円まで円高が進んでしまった。すると5000円損したわけで、
そこでロスカットが発生するんだ。会社によっても異なるが、資産の50〜80%を損し
た時点で会社が損失を防ぐために強制決済するのをロスカットという。
損を回復するまで待っていると、それ以上に損をする確率が高いのでそういう措置をとる。
つまり、時間を味方につけることができないわけだ。」

411 :
「今って、結構円高進んでたよね?」
「だいだい、80円台をキープしているな。こないだの震災の時は、史上最高値を更新し
て76円まで円高が進んだが。」
「あれ?災害が起こったら、その国の通貨は安くなるんじゃないの?」
「なかなか鋭いな。通貨はその国の価値を端的に現しているものだから、国に何らかのト
ラブルが発生した場合は安くなるのが普通だ。しかし、日本の場合は海外に投資していた
資金を還流させたため、円高になったと言われている。様々な支払いや、復興資金とする
のに必要だからな。震災後、株が暴落しているのも同じ理由だと考えられる。」
「物資の購入や、保管、輸送にはお金がかかるからねえ。」
「その通り。そういう場では、物資の有る無しが文字通り生を分ける。『金がないのは首
がないのと一緒』とは、まさしく至言だ。」
「きれい事だけでは、食べて行けないもんね。」
「そうだ。夢を見ることも必要だが、現実から目をそむけては、確実に現状を悪化させる
だけだ。理想と現実のバランスをいかに上手にとるか、が、現在置かれた状況を改善
させて行く第一歩だと言えるだろう。」

412 :
そこで、友理はPCモニターを覗き込んだ。
「で、仁希が買ってる株って、何?」
途端に仁希はうつむき、黙ってPC画面を指し示したため、友理は、そこに表示された文
面を読み上げる。
「なになに、『現在お客様の保有する株式はありません』って、これ…。」
「私のバイト代では、パソコンを買ってオンライン環境を整えるのがやっとだった。母ち
ゃんには、ネット証券の未成年口座の同意を得るのが精いっぱいで、無心するわけにもい
かんし。またバイトして金を貯めないとな。しんどいが、全ては夢のためだ。」
仁希は力のない笑いを浮かべる。
その言葉を聞いて、少しの間友理は考え込んでいたが、肩に回された仁希の手を解いて立
ち上がった。
「ごめん、ちょっと席をはずすよ。すぐ戻るから。」
「あ、ああ。」
突然部屋を出て行った友理に首をかしげながらも、仁希はネットの海で遊んでいた。
再びノックの音がするまで、どれくらいの時間が経っただろうか。
「おかえりー」
振り向きもせず仁希は、帰ってきたであろう友理に声をかける。当の友理はというと、急
いで帰ってきたのか息は荒く、太陽光を凝縮したような金髪は少し乱れている。
「これ、よかったら貸そうか?」
友理はズボンのポケットから何か取り出した。よく見ると、それは一通の預金通帳。
友理は仁希に、「桜井銀行 松葉ヶ丘支店 真船友理様」と書かれたその中身を見せた。
そこに記されたのは、実に百万円を超える金額。投資の手はじめとするには十分すぎる額
である。
金に目が眩んで瞳に\マークが浮かんだ仁希は、すぐさま通帳に手を伸ばす。
「友理、それをよこせ、よこすのだ!」
むろん、フェンシングで鍛えた友理の運動神経にかなうべくもなく、仁希の手は通帳にか
すりもしない。
「これがタダでもらえるなんて、甘い考えだと思わない?リアリストのお嬢ちゃま。」
仁希の目に、理性が戻ってくる。
「確かに、国際人のお坊っちゃまの言うとおりだ。で、何が欲しい?」
莞爾として笑った友理は、仁希を抱きしめた。
「君だよ。僕と付き合って欲しい。」

413 :
「ななな、何するだ!」
思わず大声で叫んで飛び退こうとした仁希だったが、友理の両腕にがっちり掴まれてしま
って逃げられない。しかし、つい友理の腕の中でジタバタしてしまう。
そんな仁希を、友理は微笑みながら見下ろす。
「僕たち、バチカンではベッドを共にした仲間じゃないか。今更照れることないだろう?」
「そういう意味じゃないだろう、あの時のことは!」
仁希は友理に抗議するが、その口は唇でふさがれる。幼馴染の国際人から受ける、人生初
めてのキス。
服ごしに伝わる、自分より少し高い友理の体温が、仁希の脈拍を速めていく。
徐々に、仁希の体から力が抜け、されるがままになる。
抵抗が止んだと悟った友理は、唇を離した。
仁希は弱々しい声ながらも、何とか伝えたいことを言葉にする。
「その、私も友理が嫌いじゃない。だから付き合うのはいいが、私は、彼女と二股かけら
れるのは嫌だからな。」
「彼女はいないよ。今、好きなのは仁希だから。だから、お前が欲しいんだ。」
「この、プレイボーイが…。」
「何とでもご自由に。でも、僕と付き合わなければ、さっきの通帳は渡さないからね。さ
あ、どうする?」
余裕たっぷりの友理の問いかけに、仁希は観念の表情を浮かべ、小さくつぶやく。
「・・・友理となら、いい。好きにしろ。」

414 :
好きにするとばかりに、友理は仁希をベッドに横たえた。無意識に体を固くした仁希の耳
元に囁く。
「好きだよ、仁希。優しくするからね。」
「ま、待てよ。こういうことは、しかるべき段階を経てするものだろ?」
「待てないよ。昨日今日知り合ったわけじゃないんだし、今までが遅すぎたぐらいだ。今
更、抵抗したって無駄だよ。」
仁希がどう言葉を返していいか迷っているうちに、友理は仁希のブラウスのボタンを器用
にはずす。すべて外し終わりピンクのブラを露出させると、仁希の喉元に口づけた。
「…!」
仁希は声を出そうとするが言葉にならない。首筋を友理の舌が這い回る感触が、得体のし
れない感覚を呼び覚ましていく。
友理はブラを上にずらし、やや小ぶりな胸を露わにすると、胸の突起を口に含む。そうし
て舌先で吸い、舐め転がした。
「あ…。」
仁希は、かすかな声を漏らし始めた。たちまち突起が固くなっていく。
「感じてきた?」
「わからない。けど、そうされるのは、嫌じゃない…。」
「うん、悪くないみたいだね。もっと、してあげる。」
友理は仁希を抱き起し、上半身の衣類をすべてはぎ取った後再び横たえて、今度はジーン
ズを下着ごと脱がせた。仁希も腰を浮かせて、それに協力する。
全裸になった仁希を前に、友理も慌ただしく自分の服を全て脱ぎ捨てる。
素肌と素肌を密着させながら二人は抱き合い、改めて深いキスを交わした。

415 :
深い口づけが生み出す唾液の音と、二人の吐息が部屋に響く。
友理は満足できるまで、仁希の唇を貪った。
唇を離し、友理が仁希を見つめると、既にその瞳は潤んで熱を帯びている。こんな風に見
つめられて、自制できる男などいるはずがない。
友理は仁希の足を開かせ、その中心に息づく、誰も鑑賞したことのない花園に口づける。
「やっ…、汚い、ダメだ、そんなとこ…。」
「汚くなんかないよ。」
乙女特有の羞恥からもがく仁希の抵抗をあっさり封じ、友理は秘密の花園を自分の舌で探
求する。
溢れる蜜を舐め取りながら、友理はお目当ての物を探し当てた。花園で最も敏感な、例の
小さな花芽を舌で思う存分蹂躙する。
「あっ…、ん…、なんか、ヘン…。」
「いいよ。いっぱい、ヘンになって?」
友理に煽られて、仁希の感覚はますます鋭敏になっていく。友理が舌で愛撫している花芽
も、充血してその刺激に答えている。
「あぁ…、は…、なん、か、こわい…。友理、ゆう、り…!」
仁希の体が痙攣する。全身の筋肉が硬直したかと思うと、脳髄を溶かすような感覚に襲わ
れ、間もなく脱力する。快楽の頂点に達したのだ。
「・・・気持ち良かった?」
「うん。」
友理の問いかけに、快楽の余韻に浸る仁希は素直にうなずいた。

416 :
「じゃあ、今度は僕が気持ち良くしてもらう番だからね。」
「どう、すればいい?」
「体の力を抜いて、僕に全部委ねて。」
友理は人差し指を、仁希の泉の最奥まで入れる。潤っているとはいえ、体内をこじ開けら
れる感触に、思わず仁希は目をつむる。
「くっ、う…、はあ、う、ぐ…。」
「痛くない?」
「痛みは、ない、けど…。」
「じゃあ、指、動かすよ。」
友理は、人差し指をゆっくりと前後させる。指の動きに従って、仁希の口から少しずつ喘
ぎが漏れはじめた。
指を増やして、二本にしてみる。痛がらない。
指の動きを激しくさせてみる。それでも痛がらない。
時は得たりと、友理はゴムを装着する。
仁希の膝を割り、上から覆いかぶさって己の張り詰めたフルーレを泉の最奥まで突き入れ
た。
「いっ…、たぁ…!」
仁希の体を十分に慣らしたつもりだった友理だが、やはり初めての行為に痛みが伴うのは
避けられなかったらしい。
「仁希、ごめん。」
友理は、仁希の痛みを少しでも取り除こうと、体を動かさずに、頬を両手で包みこんでキ
スの雨を降らせた。
「好きだよ、仁希…。」
甘い言葉の囁きに、痛みはほどなくして消えうせる。本能的に、友理の腰が律動を開始し
た時も、仁希はもはや苦痛を訴えなかった。
それどころか、ぎこちないながらも腰をもじつかせて、友理を迎え撃つ有様。
「あぁ…、すごい、友理、いい…!」
「仁希の、中、ドロドロで、熱いよ。」
抽送に伴って、淫靡な水音とベッドのきしむ音が室内に響く。お互いに快楽を味わいつく
そうと、夢中で動きつづける。
友理のフルーレは、仁希の最奥を何度も突く。仁希は奥を突かれるたびに、頭に白い火花
が散るような快感を覚えていた。
「ゆ、うり、気持ち、いい…!もっと!」
「本当に、お前は、欲張りだね。」
言葉とは裏腹に、友理は仁希のねだりに答える。フルーレを突く速度を速め、嵐に翻弄さ
れる木の葉のように仁希を責め苛む。
もみくちゃにされながらも、仁希は友理の背中に両手を回して抱きしめた。無意識に両足
を友理の腰に絡め、結合を深くする。
「も、もう、ダメ…、あっ!」
「イけよ。僕も、そろそろ、ヤバい…。」
「はぁ、あぁっ…!あぁぁぁっ!」
「うぁっ、あぁ…、くっ…!」
汗みどろの二人は、白い光に満ちた空間に飛ばされるような感覚に襲われた。五感を失っ
た今、そこにあるのはただ純粋な快楽のみ。
バビロニアの神々が住まう空中庭園を、垣間見たひとときだった。

417 :
余韻が醒めやらぬ二人は、のろのろと身なりを整える。初めてにもかかわらず深い快感を
得てしまった仁希は、恥ずかしさで友理の顔をまともに見られず、無言で視線をそらす。
それをからかうほど、友理も無粋な男ではない。欲しいものを手中にできた、満足感に浸
りきっていた。
そんな時に唐突に襲う、金の指輪の赤いキラキラ、尻もちドスン。
打ったところをさすりながら目を開けた時、目の前に展開するのは二人にとっておなじみ
の風景。
立派な洋館と、普通の民家が隣り合わせに建っている。そういう、タイプの違う物件が並
んでいるのも珍しい。
「これって、僕んち、だよね?」
「ああ。隣が私んちだからな。」
お互い呆然とするが、そこに一台の車が走ってくる。とっさに二人は、物陰に身を隠した。
車は、洋館へ入って行った。その様子を、玄関から覗き見する。
車から降りてきた人々を見て、二人は思わず息を呑む。
30代後半であろうと推測される金髪の男性は、若かりし頃のような貴公子然としたとこ
ろは失われたが、その代わりキャリアを積み上げてきた男特有の自信を漂わせている。一
国の王といったところか。顔に刻まれたしわが、老いではなく威厳を醸しだしている。
同じく30代後半であろうと思われる、黒髪の女性。が、20代後半ぐらいにしか見えない容貌
を保持している。髪を束ねられるほど長く伸ばし、男性から愛されている女性のみが持つ、
そこはかとない色香を漂わせている。
そして、車が止まるや否や走り出てきた、10歳くらいの利発そうな黒髪の男の子と、7歳
くらいの可愛い女の子。
それぞれ、男の子は母親に、女の子は父親にそっくりだ。
「あれって、僕たち、とその子供たち、だよね?」
「ああ。そうだな。」
仁希は驚きのあまり、おざなりな返事しかできない。思わず、友理の手を握り締めた。
そこでタイムリミット。金の指輪の青いキラキラ。
手を握り合ったまま、元の場所に帰ってきた。そして再び、通常の時間軸で時が流れ始める。
「ねえ、仁希。」
「何だ?」
「僕たち、これからもずっと、仲良くして行こうね。」
「うん。」
二人は、握り合った手に力を込めた。
<終>

418 :
以上です、お目汚し失礼いたしました
幼馴染を現物で釣り上げた展開は批判されても仕方がないのですが、
リアリストと床を共にするには、こういうストーリーしか浮かびませんでした
読んで不快になった方には、伏してお詫び申し上げます
ところで、保管庫の更新が5年前から止まっていますね
新スレに移ってからの数々の良作を、このままdat落ちさせてしまうのは、
あまりにも惜しいのではないでしょうか?
書き手のはしくれといたしましては、どなたか奇特な有志に、
新たな保管庫を作るなりして欲しいと思いますが、皆様はどうお考えでしょうか
ご意見を承りたく存じます


419 :
GJ
バビロン好きだから嬉しかった
自分には技術的に無理だけど、残ってくれたら嬉しいねえ

420 :
GJ
作中の2/3が投資講座になってるのもこの2人ならではかと。
通帳は元本に利子つけた額にして突き返されそう。
そんでそれをお付き合い終了宣言と勘違いして慌てる国際人の坊ちゃまに、
「お前と真っ当に付き合いたいから返すんだろが!借りがあるままなんてやってられっか!」
と、リアリストのお嬢ちゃまが啖呵を切るまでを妄想してニマニマしました。
保管庫を新たに作ることには大賛成。
ただ同じく、技術的&時間的に自分には無理…。orz

421 :
GJ!
んだんだ、投資会話がこのふたりっぽいです。
本日コメットさん購入読了
『その科白には…』でピカピカの守護霊様を持つ先生がペプチドについて熱弁する
科白のボリュームに、こちらの友理×仁希の会話をつい思い出したりww

422 :
コメットさん購入
生徒会長とポチのエロが読みたくて遡ってみた
最後までヤったのが読みたい…ッ

423 :
保守

424 :
本スレで「川原作品にはエロい妄想が働かない」ってレスがあったが、
いろいろと働く俺はやはり異端なのかorz

425 :
大丈夫
ここに来てる人らは、皆カーラ漫画でエロ妄想が出来る猛者たちだww

426 :
カーラ漫画は種だけ蒔いてくれるから、妄想が育つんだ

427 :
おお同志たちよww
今回の新刊は、家に上がりこんだり一緒に飯食ったり、ホテルに連れ込んだりと妄想できる余地が多いよな
あれで何もないって、ねえ?

428 :
プロフェッショナル・エロ妄想
パイオニア・エロ妄想
エベレスト・エロ妄想

さあ、同士達よ。
己の好きな称号を選ぶが良い。

429 :
>>427
書いちまうなんて無体なことをしないからカーラ教授なわけで
書いちまうのは我ら凡才で十分

430 :
>>428
パイオニア・エロ妄想頂いていきますw

431 :
男装女子が、イケメン生徒会長の下僕になる話、って言うとエロい響きしかないと思う。

432 :
殿下が静姫に惚れて静姫は史緒さまにべったり んで殿下の御眼鏡にかなう奥方になれてめでたしめでたし
・・・とゆー妄想なら働いてたよ、本スレ。
ここでエロく料理するもまた一興と思うw

433 :
>>432
それ、おいしいな
NLのみならず、3Pや百合妄想まで働くじゃマイカww

434 :
ここのスレの影響でなんか書きたくなって、森には真理が落ちているの二人で書いてみました
・季節感無しのクリスマスネタ
・ちゅう止まりでまともなエロ無し
・終盤の展開はこれ何て君に届け?
な上、初投下&しかも携帯から、という無謀さで申し訳ないないのですが……
失敗したら生ぬるく笑ってやって下さい

435 :
クリスマスを目前に控えた、終業式の日の事だった。
成績表も渡されて、後は帰るだけという頃合いの時間。人もまばらになった教室で、偶々居合わせたクラスの男子数人でだらだらと喋っていたら、いつの間にか話は好みの女についてになっていた。
まあ、高校三年の野郎連中が寄り集まれば、出てくるのは女の話か、漫画やゲームの話か、はたまた進路の話が定番なのだけど。
アイドルの誰それが良いとかに始まり、やれ顔より胸だとか、それより脚だとか。
好き勝手言う内に話題はより身近な対象、つまり学校内の女子の品定めにと移っていったのだが……。
「雪村さんあたりなんか良くね?」
気になる名前が唐突に飛び出し、それまで話半分に流していた態度をつい改めてしまった。注意して聞いていると、彼女に対しこんな評まで出てきた。
「髪長くて大人しくて、何となく大和撫子な……どっかいいとこのお嬢さんって感じ?」
顔には出さなかったけど、内心で笑ってしまった。
前も似たような事を言ってるのを見かけたけど、アレのどこが大人しい?
よく喋るし、よく食うし、寝るし……カメだったし。合ってるのは髪が長いって処だけじゃないか。
ホントに判ってないと思っていると、一緒に喋っていた山下くんがこっちに振り返った。
「なあ、氷室と雪村さんって、結局付き合ってんの?」

436 :
……は?
ちょっと待て。それ、報告しなきゃいけないのか?
誰が誰と付き合おうがどうでも良い。そう思っていたので、この質問は意外だった。藪から棒に何なんだと呆れると、何を勘違いしたのか、山下くんはこう言った。
「何?付き合ってないの?だったら俺、雪村さんに告ろうかなぁ〜」
思わず絶句するこちらを余所に、更にはお気楽な口調で言い訳じみた事を付け加える。
「だって冬休み過ぎれば直ぐに卒業だよ?終りだよ?せっかくの高校生活、彼女がいたって思い出も欲しいじゃんか〜」
だから、ちょっと待て。
山下、お前やっぱ大学落ちるわ。
思い出って何だよ。そんな下らない理由で雪村さんの名前を出すな。そろそろ、いや、既に受験一色になる今の時期、そんな事ヌカしてる時点で終わってるだろ。
それに第一、誰も付き合ってないなんて言ってない。告白ならこっちが先にしてるっつーの。
しかも相手がカメの時にだぞ?お前にそこまでする気はあるのか?それくらいの本気じゃないなら……
……と。
ここまできて違和感を感じ、思考を停止させた。何か気付くべき事があるようで、想いを告げたあの時の事を反芻する。

カメでもいい
好きだよ
ホ、ホントかよ
好きだよ
好きだよ
好きだよ
ホントかよ
ホントかよ
ホントかよ
ここで雪村さんがカメから人へとメタモルフォーゼ。
わあ、びっくり。
なんか知らんけど人に戻れたぞー。わーいわーい。

……あれ?
おい、ちょっと待て。
よくよく考えればコレだと……

告白の返事、もらってなくね?

437 :
「今日は〜、楽しい〜、ク・リ・ス・マ・ス〜〜っ!」
陽気な調子で歌いあげると、雪村霙さんはマイク変わりのフォークを高く掲げてポーズを決めた。
一人暮らしとはいえ、若い女の子が褞袍(どてら)姿で何をやっているのかという感じだが、本人の気分はニューヨークのタイムズスクエアで聖夜を寿ぐ路上パフォーマー。定番のクリスマスソングを歌って悦に入った顔をする。
「さて、茶でも入れてメインイベントとするかね〜」前座(?)の歌に満足した後は、本日のメインイベント(?)たるケーキを食す。そのケーキの為の飲み物を淹れるべく、うへへ、と笑いを漏らしながら台所に向かった。と、その時。
「楽しそうだね」
「うん、そりゃあクリスマスだしねぇ……ん?」
今の、誰??
つい返事をしてしまったが、答えてから数秒後、自分以外の人間がいる事に雪村さんはようやく気付いた。
「ギャオ!ひ、氷室さん?」
振り向いた先にいたのは、同級生の氷室冬騎くんだ。何だその驚き方はという顔をしながら、幾つかの大きな買物袋を提げて佇んでいる。
「鍵が開いてから勝手に入らせてもらったんだけど、邪魔だった?」
「いや、邪魔っつーかなんつーか、一体いつからいたのかな〜って……」
「君が“ジングルベル”を歌う前に、“もろびとこぞりて”を熱唱してた頃から」
「あ〜、そんな前からいたんですか〜〜」あはははははは……。
いたんなら声くらいさっさと掛けてイタダキタイ。不法侵入者デスカ?
乾いた笑いと共に、雪村さんは内心で毒づいた。
敢えて口に出さなかったのは、鍵を掛け忘れた己の不用心さとか、扉が開閉されても一向に気付かなかった己の迂闊さとか、ワンマンショー状態をばっちり見られた己の恥ずかしさとかがあるからなのだが……。
「聞きたい事もあって来たんだけど、とりあえず入れさせてもらっていいかな?」
そんな雪村さんの乙女心(?)に口を挟む気はないらしい。氷室くんは自らを不法侵入者から真っ当な訪問者に格上げするよう、入室の正式許可を求めてきた。
「あ、ごめんごめん。立たせたまんまだったね。なんにも無い部屋だけど、良かったら上がってくらはいよ」
聞きたい事?と頭に疑問符を浮かべながら招き入れる雪村さんの言葉に、律儀に玄関先で突っ立って待っていた氷室くんはようやく靴を脱いだ。

438 :
渡されたハンガーにコートを掛け、氷室くんは畳に腰を下ろす。
部屋は『なんにも無い』との言葉通りの質素さで、以前、亀だった雪村さんに頼まれて参考書を取りに訪れた時と同じだった。違うのは目の前のちゃぶ台にポツリと置かれたケーキくらい。それらを眺めて少し困ったような、微妙な顔を氷室くんはした。
「お待たせ、氷室さん。紅茶なんだけどいいかな?」
しかも、ただの安売りティーパックで申し訳ないんだけど。
そう言い添えながら雪村さんが出すカップを受け取り、一口飲んだ後でホッと息を吐く。
「暖かいのを飲むと落ち着くよね」
「そだね〜。今日は寒いしね〜」
隣にちょこんと座り込み、雪村さんも自分のカップを口にした。たとえ安物の茶葉でも淹れたての紅茶は香り良く、飲めば暖かさが体に広がる。
ほへ〜、と、まったりモードに突入していた雪村さんに、氷室くんがまた呼びかけてきた。何かと顔を向けると、ちゃぶ台のケーキを指差してくる。
「さっきの歌からして……これも、クリスマスだから?」
「今まであんまりしたこと無かったんだけどね。まあ、やっぱりたまにはお祝いと思ってさ〜」
歌の事は忘れてくれと思いつつ、“誕生日にしかケーキは買って食べない主義”の雪村さんはふと眉根を寄せた。
「あ、でもケーキが一個しかないんだよな〜。……氷室さん、私と半分こで良い?」
氷室くんの来訪は予定にあった訳では無い。よって、ひとりクリスマスをする気満々だった雪村さんが、来客用の余分なケーキなど用意している筈も無い。どうしたものかと思案する雪村さんを氷室くんは制し、持参した買物袋をどさりと置いた。

439 :
「ん?何、この大荷物?」「何って、クリスマス。雪村さんにあげるよ」
「あげるって……おおっ!?」
目の前に差し出された氷室くん持参の買物袋。それを覗き見ると、雪村さんは驚嘆した。
「凄い!箱ごとのケーキだ!それにこっちはケン○ッキー・フラ○ド・チキン!あっ、なんだこのちっちゃいツリーは?!かっわいいなぁ〜!!」
「気に入った?」
「うん!氷室さんはお大尽だねぇ〜」
差し入れに夢中になる雪村さんに、「そっか」と氷室くんは自分でも気づかぬ内に頬を緩ませた。
買物袋から一つずつ取り出しては歓声を上げ、まるで小さな子供のようにはしゃぐ。一人で熱唱している所もだが……こんな雪村さんも、学校での大人しい印象からは程遠い。
学校の連中が知らない彼女。それも自分があげた物で喜ぶ姿に、どことなく胸が暖かくなるのを氷室くんは感じていた。
「でもいいの?こんなに沢山貰っちゃって」
一通りはしゃぎ終わった後、ちょっと申し訳なさそうに見遣ってくる雪村さんを、氷室くんはもう一度制す。
「大丈夫だよ。半分は僕の分のつもりで買ったしね」
第一、自分が勝手に買い込んで、雪村さんの家に押しかけた。だからそんな事を気にする必要は無い。
「だから……一緒にやろうよ、クリスマス」
ふわり、と、氷室くんから、風が吹いたような気がした。柔らかく暖かな、優しい風だ。
風は無論、錯覚に過ぎない。だがこの覚えのある錯覚に、雪村さんはほんわりと目を眇めた。
ああ、“春さん”じゃあないかぁ……。

440 :
「そういや、何だったんだけ?」
クリスマス祝いも終盤に近づいている中。盆と正月が一遍に来たような顔でケーキを食べる雪村さんは、ふと思い出して氷室くんに尋ねてみた。だが、当の氷室くんは、はて?と首を傾げる。
「聞きたいこともあってウチに来たって、氷室さんが言ったんじゃないか」
「あー…」
忘れていたと呟くと、氷室くんにしては珍しくどう言おうかと思案する顔つきになる。
「雪村さん、終業式の日の後あたりに、山下くんとかから何か言われた?」
「ほへ?山下くんって、ウチのクラスの山下くん?」
何の話?意味がワカラナイんですが?
雪村さんは質問に目を瞬かせた。
「いや、いいんだ。何も言われてないなら。アイツ勘違いしてるだけだから」
勘違い?ますます意味がワカラナイんですが?
「何て言うか……なんか雪村さんの事、どこぞの大和撫子なお嬢さんみたいだって言ってたよ」
疑問符を増やす雪村さんに“告白”の件は敢えて伏せ、事実の一部だけを伝える。案の定、聞いた雪村さんは吹き出して笑った。
「何それ?ホント勘違いだねえ〜」
「うん、いないよね。こんな褞袍(どてら)着てクリスマス祝う大和撫子のお嬢さんなんてさ」
などと氷室くんが失礼ながらも的確な事を言うものだから、雪村さんには余計に可笑しかった。その後もクスクス笑いを止めもせず、氷室くんに盗み見るような視線を向ける。
「……何?何かついてる?」
「違う違う。なんか、凄くいいなぁって思ってさ〜」
気付かれて怪訝な顔をされると、雪村さんは上機嫌に呟いた。
「こういうクリスマスって、凄くいいなぁ」

441 :
小さいながらもツリーを飾り、ケーキやチキンをちゃぶ台の真ん中に。シャンパン……は、未成年なので、シャンメリーで乾杯する。
これでプレゼント交換なんかまで加われば、まるで絵に描いたような、典型的なクリスマスの祝い方だ。そんなベタなクリスマスが、いや、ベタだから余計に、何事も一人で過ごしてきた雪村さんには嬉しかった。
「ひとりでケーキ食べてっていうのも良いんだけど……でもやっぱり、誰かが一緒にいるって違うね」
「氷室さん、ありがとうね」
こんな楽しいクリスマス、できるなんて思わなかった。
……世の中には、子豚市場で唐突に恋に落ちたり、はたまた牧場で牛の臭いをプンプンさせながら気持ちを寄せ合う人達もいるらしい。
つまり心揺さぶられる場面というのは突然にやってくるものな訳だが、氷室くんにとってのソレは、今この時のようだった。
場所は古くてボロい木造アパートの一室、相手は何処の民宿の備品かという感じの褞袍(どてら)を着込んだ姿。
ムードとか色気とかには縁遠そうなシチュエーションの筈なのだが、氷室くんには関係無かった。きっと雪村さんが着ぐるみゴジラになっていても、心動かされたに違いない。
『氷室さん、ありがとうね』
そう自分に向けられる感謝の言葉が、嬉しさと親愛を含んだ微笑みが、氷室くんの胸を突く。
直ぐには真っ当に返事が出せず、目線を外すと、氷室くんは誤魔化すように別の事を口にした。
「雪村さん」
「ん?何?」
「ケーキ、顔についてるよ」
「え?どこ?とれた?」
指摘を受けて顔を触るが、検討違いな場所ばかりを拭って中々取れない。
面倒見の良い氷室くんは躊躇した後、雪村さんの頬に手を伸ばし、ついていたケーキの欠片を落とす。
……と、同時に、肌の触感が皮膚感覚から流れてシナプスを通じて脳に伝達され、軽い麻痺症状を氷室くんに起こさせた。

442 :
不味い、と頭のどこかでエマージエンシーが発せられても、柔らかな頬に触れたまま手が戻ってこようとしない。
そんな中、不思議に思った相手から「氷室さん?」などと名前を呼ばれれば、理性の警告など片隅にあっさり追いやられる。脳はリビドーを優先させ、氷室くんは雪村さんの唇に自分の唇を押し当てた。
「…っっ!?」
驚いた雪村さんの手からフォークがぽとりと落ちた。だが氷室くんにはフォークに構う余裕は無く、それ以上に状況を理解できず硬直化している雪村さんはフォークが落ちた事すら気付かない。
頬の柔らかさ、唇の弾力、温かく湿った吐息。指
先だけに触れていた感覚が、唇から唇へとダイレクトに伝わり、氷室くんの思考を酔わせる。
暫くして呼吸の為に唇を離すと、混乱し、半ば放心状態の雪村さんが、じっと此方を見上げてきた。その表情に煽られ、もう一度、先刻よりも強く唇を重ね当てる。
「ん…っ!」
二度目でようやく理解に至り、雪村さんは身を捩った。
合意なく重ねてくる唇も、逃げるのを防ぐように掴んでくる腕の力も、雪村さんの覚えには無いものだ。目の前の相手は自分の知っている人物では無いように感じられ、急に恐くなる。
雪村さんは相手から離れようと本能的に身体を動かした。
「ひ、氷室さん!」
呼び声と共に、氷室くんの身体がぐいっと押し返された。雪村さんに触れていた氷室くんの手が宙を空振る。
はあっと息を吐いて顔を上げる雪村さんと、驚いた顔の氷室くんと目が合ってしまい……反射的に手を伸ばしてくる氷室くんを避けるかの如く、これまた反射的に雪村さんは後ずさってしまった。
「「あ……。」」
しまった、と、双方の心中で呟きが漏れた。気まずさに二人してつい下を向いて口を閉ざす。
外は既に日も落ちて夜となっていたが、今の部屋の雰囲気はそれ以上に暗い。明るく楽しいクリスマスから一変、どよよんと暗いクリスマスになっていた。
「……ごめん」
「……。」
「……。」
氷室くんがぼそりと謝り、重苦しい沈黙がより一層重くなった。
雪村さんは顔を上げられず、両手を膝の上でギュッと握りしめたまま動けない。

443 :
「雪村さん」
氷室くんは居住まいを直し、意を決したように声を掛けた。名を呼ばれ、雪村さんの肩がびくりとする。それでも顔は上がらない。
「あの時言ったように、僕は雪村さんが好きだよ?」
「今日、約束もないのに此処へ来たのも……雪村さんが好きだからだよ?」
「今日だけじゃない。この先のクリスマスとか誕生日とかも、僕は一緒に祝いたいんだ」
ようやく少しだけ、氷室くんにはわからない程度に雪村さんの頭が持ち上がった。こっそりと見える氷室くんの姿は、まるで木枯らしに吹かれて葉を散らす落葉樹。
初めて見るいわば“秋さん”状態の様相に、雪村さんは何気に衝撃を受けた。そんな雪村さんに気付かず、氷室くんは言葉を続ける。
「これから先も……僕は、雪村さんとずっと一緒にいたい」
「……。」
「……。」
なおも返事が出来ないでいる雪村さんのせいで、また沈黙が訪れた。
この沈黙は今まで以上に重く、じっと見つめくる視線が雪村さんに刺さる。氷室くんから感じる木枯らしは強さを増し、氷室くん自身は葉のすっかり落ちた晩秋の枯れ木の有り様で……雪村さんの胸は酷く痛んだ。
何か言わなくては、と思いはしても、焦るほど言葉が出ない。そうこうしている内に、居たたまれなくなった氷室くんが俯いた。
やるせなさに口元を一度引き結んだ後、氷室くんは諦めたように溜め息を吐いた。
「ごめん……ちょっと、頭冷やしてくる」
立ち上がる氷室くんに、流石の雪村さんもハッとした。
顔を仰ぎ上げ、此方を見ようとしない氷室くんを目で追いかける。
氷室くんが謝った……それは氷室くんが悪いから?
氷室くんが離れて行く……それも氷室くんが悪いから?
うんにゃ。
うんにゃ違う。そうじゃない。
困らせたい訳じゃない。
傷つけたい訳じゃない。
行かせたい訳じゃない。
――――待て!待つんだ!!
がしっ! ずでんっっ!

444 :
雪村さんは歩き出そうとする氷室くんの上着を掴み、床へと引き戻す。尻餅を着いた氷室くんに今度は自分が迫る形になってしまったが、そんな事を雪村さんは気にしていられなかった。
「さ、さっきはあんまり突然でちょっとビックリしただけで、
氷室さんが嫌とかなんとかそんなことは全然なくって、
むしろ謝った方がいいのはどっちかというと私の方で、
故に氷室さんがどっかに行く必要はこれまた全然なくって……」
先刻とは打って変わって、雪村さんはまくし立てる。だが、その喋りは段々とトーンダウンし、終いには氷室くんの上着をひっ掴んだままうなだれた。
「ごめん。ごめんよ、氷室さん」
ぼそぼそと、蚊の鳴くような声で謝る姿に、氷室くんは目を丸くした。
謝るような事をしたのはどっちかというと(というか明らかに)自分の方なので、その驚きは余計に強い。掛ける言葉が見つからずにいると、雪村さんが続きを話し出した。
「今日、クリスマスをしてくれて、ホントに嬉しかったよ?」
「今日だけじゃなくカメの時に面倒みてくれたのも、……す、好きって言ってくれたのも」
氷室くんがしてくれた今までの事、全部が自分には嬉しかった。
だけど好意を伝えられて、色々としてもらって、嬉しくて嬉しくて……それだけで満足してしまっていた。
両親を亡くし、それからずっと一人だった自分。それを言い訳にはしたくない。
でも、自分以外の『誰かがいる』という事に不慣れなのは本当で、何事も自己完結で終わらせてしまっていた。
気持ちは伝えるべきものなのだと気づくことなく、まして氷室くんの言う『これから先』の話など、想像すらしなかった。
「だけどこれから先、もしも誰かといるなら、誰かといていいのなら、私は……私も、氷室さんがいい」
私も、氷室さんがいいんだよ。
ようやく喋り切った雪村さんの目は涙目で、上着を掴む両手は震えていた。
力の込めすぎで強張ってしまった雪村さんの両手を、氷室くんは上着から先ず外し。
それからその両の手のひらを、解きほぐすように自分の手のひらで包み込んだ。

445 :
「良かった……」
自分の、自分だけの一方的な想いではない。頭を雪村さんの褞袍(どてら)の肩口に軽く乗せ、安堵の息と共に本心からそう呟く。
暫くして顔を上げると、雪村さんと目が合った。照れくさくなってお互い何となく笑いが出てしまい、それがまた心地良い。
心地良いついでに氷室くんは少し思案し、ダメ元でも良いか、と、一人ごちて呼びかける。
「雪村さん。その……抱きしめても、いい?」
遠慮がちな申し出に、雪村さんは間を空けた後、指先から顔までを真っ赤した。その様子はお湯につけた温度計がぐんぐん赤くなるのに似ていて、氷室くんにはちょっと面白かった。
やがて温度の上がりきった雪村さんがコクリと頷く。おずおずと近づいてくるのを、先刻の口付けよりよっぽど緊張しながらぎこちなく腕の中に収めた。
身体は見たよりも小さく、思ったよりも暖かい。暖かさは幸福感に直結し、氷室くんの気持ちを満たしていく。
同時に、抱きしめる雪村さんの肩越しに部屋の風景が広がり、今日この部屋に到着した時の事を氷室くんは思い出した。
擦れた畳に、年季物のちゃぶ台。
少しの家具と、黄ばみの入った古い漆喰の壁。
質素で風景な部屋の中、一人で歌う雪村さん。
最初は何をしているのかと呆れた。
だけど、これが彼女にとっての“普通”で、繰り返してきた“日常”なのだと気づいたら……胸が詰まり、どうにも直ぐには声が掛けられなかった。
……守りたい。そう思うのは、きっとおこがましい。
誰を恨むでもなく、誰を羨むでもなく。
一人きりの日々を、彼女はずっと生きてきた。
毎日々々、文字通り一人淡々と。
それはある種の強さがなければ出来ない事だ。
……だけど、せめてその傍に自分はいたい。これからはずっと。
カメだった彼女が自分にしてくれたように。
荒んでいた自分を癒やしてくれたように。
一緒にいれて嬉しいと、そう言ってくれた今日の彼女を見続けられるように。

クリスマス。
きよしこの夜、聖なる夜。
奇跡も起こるホーリーナイト。
雪村さんを腕に抱きしめ、氷室くんは祈るように目蓋を閉じた。


高校三年、クリスマス。
氷室冬騎くん、並びに雪村霙さん。
相思相愛ということで、双方のお付き合い目出度く決定。
従って、クラスの山下くん。
冬休み明けのプチ失恋、及び氷室くんによる釘刺し決定。
――――(山下くんに)合掌。

446 :
以上です
改行とか1レスごとの分量とかが、かなりおかしくなってそうですみません
そして全然エロくない上にベタな展開ですみません
取りあえず、書いてて楽しかったです

あ、あと山下くんには謝っておく
ごめん、マジごめん

447 :
リアルタイムで読ませて頂きました
GJ!!!
二人らしいちょっと不器用でほのぼのなSS、とても美味しかったです
一気に進むのが似合わなそうな2人なので、これからゆっくり進んで欲しいですな〜

448 :
すごくいいなあ…
ここがpinkだって(良い意味で)忘れるほど、情感ゆたかだった。
ゆっくり進んだ二人の続きの話をまた読みたい。

ゴジラの着ぐるみ、牛のにおいにも笑った

449 :
GJ!
はじめて書いたですか?
そうは思えない文の運びにとっても妄想楽しませてもらいました。
山下くんの扱いはベストじゃないかとw

450 :
>>434
携帯からの大作GJ
ピュアな話の中に、さりげなくギャグが盛り込まれているのも味わい深い
PCでも書くのは大変なのに、携帯で書くのはなおさらだったと思う
自分も書き手なのでよくわかるけど、書いてて楽しいという気もちを失わないでほしい
そして、いずれはがっつりエロの世界へ(ry
改行については、携帯からだと句点のところで全て改行した方が読みやすかったと思う
そして、行間を開けるのは、もう少し整理した方が良かったのでは?
耳に痛いことばかり言って申し訳ないが、これに懲りず次回作にも挑戦してみてもらいたい

451 :
氷室くん雪村さん話で投下させてもらった者です
家のPC環境が良くないので、今日、ようやく職場見たのですが
予想以上にオーマイガーな表示状態に即決定
もう文章内容以前の問題で、見た途端ブラウザを閉じたくなりました
どんだけ酷いの晒してんだよ、自分orz

>>450
耳が痛いどころか、あーそうだよなー、と納得しながら読んでました
書き手さんは視点が違いますね
どうせ小話落とすなら、焦って携帯からやるもんじゃない
せめて仕上げと投下はPCからすべきだったとしみじみ思いました
ご教示有り難うございます
こんなんにGJ下さった方々、なんだかホントすみません
自己満足で書いたので、反応頂けたのにビックリしました
次があればその時には、もうちょっとマシに読めるよう……せめてちゃんと改行されたものを投下します(汗)
有り難うございました〜

452 :
新刊のコメットさんを読んで、
紗矢さんは、感じてるときだけは表情に物凄く出るのか、あるいは感じてるときでも表情はそのままで、目だけが快楽におぼれているのか
などと妄想した。そこんとこ頑張れ、彬良くん。

453 :
あ、そーか
紗矢ちゃんはもし感じてなくて演技したら
目がダークマターでバレちゃうんだね

454 :
普段鉄面皮でもベッドの上では別人のように激しく乱れまくるという展開なら俺得

455 :
あの目が欲情に潤むんだぜ

456 :
>>451
ちょー泣けた…。・゚・(ノД`)・゚・。ので、これからも頑張って下され。
応援しております。

457 :
いいもの読ませてもらいました〜ありがとう!
また懲りずに書いて下さい!

458 :
>>451
良い文章でした。
他の作品もみたいわ。

459 :
ブレーメンU読んだけど
ダ・シルバさんとジゼル夫婦の二人はもう少し
なれそめというか結婚に到るまでの描写が欲しかったなあ…と思ってしまった
大企業の社長と16歳の炭鉱夫なんて
すっごく萌えるシチュエーションなだけに

460 :
蕗ちゃんととこと似てるよね。
蕗ちゃんのその後かなーと思ってる。
あれもいいとこで妄想にお任せしますエンドだったから
ここで補完させてもらった

461 :
立花社長と流花の妄想が止まらんのだが・・・

462 :
>>461
その妄想を書くんだ

463 :
世界水泳見てて、ダ・シルバって選手が出てきて
「あれ、誰だっけ?」と思ってたけどそうか、ジゼルのだんなか。

464 :
保守
新作妄想が形になった職人さんはいらっしゃいませんか

465 :
保守
某アニメ主題歌だったサンボマスターの、
きみのキレイに気づいておくれって曲を聴いてたら
何故だかバビロン〜の2人が頭ん中でグルグルした

466 :
水音さんと先生のその後が気になって止まらないんです

467 :
>>466
まったりした夫婦みたいだったよね。でも新刊の中では一番気になる。

468 :
>>466
二人で仲良く食事してるところをみると、「もうお前ら結婚しちゃえYO!」って言いたくなる
ご飯を食べ終わった後はお互いを食べ合うのですね、わかりま(ry

469 :
>>466
やはり結ばれるきっかけはタッパーでしょうか。

470 :
東京行きがきっかけになるんじゃないかな。
先生が先輩として履修の相談にのったり、サークル選びの話を聞いたりするうちに、
真面目な進学校の女子高生が、ちょっとずつ化粧やファッションを覚えて花開いていく様子をリアルタイムで見るんだ。
教え子のあの子が綺麗になっていくたびに、先生はやきもきするしかない。夏場の肩出しとかうなじにもやきもき。
同じアパートで近距離やきもきでも、たまにしか水音さんの飯が食べられなくなる中距離やきもきでも美味しい。

471 :
医者が攻略対象の某乙女ゲーをやって思ったのだが、やっぱりツベルクリンの先生はお医者さんごっことかやらんよな…

472 :
では「盆栽ごっこ」は、どうかのう
先生は若い苗木を選んで自分好みに仕立てていくタイプとみた
まだ無垢な恵子ちゃんの隠れた個性を探し、日々鑑賞
真っ直ぐに伸ばすか 幹がくねるように手を加えるか
針金とかで固定し、恥じらう姿と紅葉を楽しむ
注射の反応を確認するのも義務であり趣味
なんか ふつーで いいですねえ 
でも471が何か書いてくれるんなら どんなごっこでも大歓迎だ!

473 :
>>451
おおおおお今来た超超超超超超GGGJJJJJ!!!!!!
「森には〜」一番好きなんだよ頭の中で反芻するだけで泣いてしまうくらいに!
すんんんげえええイメージ通りでなんてお礼を言っていいかわかんねえよ
また書いてくださいお願いします!!!

474 :
俺、彬良×紗矢を書くから、誰か不破×佐倉を……たの……む……^o^

475 :
かけ……た……。
21時に投下します。

476 :
>>475
全裸で待ってる

477 :
少し早いけど投下。
・エロ薄め
・展開が……/^o^\
・(^o^)

478 :
 さて、「ゾンビ・ブルー」という映画が世界的に大ヒットしたのは記憶に新しいことである。
主演の彬良航という人物はそれまで大きな人気は出なかったものの、この映画を発端として瞬く間に売れっ子の俳優となり、大物俳優の岸田薫ですらが認める程となった。
それまで一介の若手俳優に過ぎなかった彼が、突然ハリウッド映画、それもジョージ・メローメ監督というビッグネームに指定されたのは、
彼の代理人のSAYA・MAJIMAが強く推薦したからということであり、スターへの道を三段飛ばしで駆け上がるようなこととなったのである。
……しっかし、彬良航とゆー人間はまーだ高校生の若造。ぽっと出の彗星にも似たるものである。
恒星に近づきすぎ、衝突ってことにならなきゃいーけど。彼の真価がわかるのはこれからだ、っつーことだな。
バラエティ番組とかに出て、ちやほやされて天狗になってるとその内足元をすくわれる。彬良航はまだまだこれからなんだからサ、調子に乗ってはいけんよ。地道に確実にね。
 まぁ、今はそれでもいい。実力が認められ、周囲からは賞賛の嵐。ここで素直に喜ばなくちゃ若者としては不健全だ。
むしろこの時点で己を引き締めていられる高校生は可愛くない。幸い、彼の通う私立彰英高校は県下でも指折りの全国でも有数の超・進学校。
偏差値は目玉が飛び出るほど高く、そして生徒の生活水準も高い。つまりは、セキュリティがこれでもかというほど高いんだな。
下衆な記者がうかうかと入り込めるわけでもなし、無粋なテレビカメラは門前払いされている。
……そんなわけで、校内で女の子と話している分にはフライデーされる心配もないのである。

479 :
「彬良君。テレビ見たよ」
「……真島って、バラエティ見るんだ?」
 長い黒髪の女子が教室に入ってきた彬良に話しかけた。
彼女こそSAYA・MAJIMAの正体、真島紗矢さんである。
ゾンビをこよなく愛す彼女は、普通のテレビ番組には疎く、ゾンビが出ないならドラマなんて見なく、バラエティ番組なんて尚更見ない。
「彬良君が出るって聞いたから。すごいね、大物ばっかりでよくあそこまで話せるよ」
「そんなに話せたわけじゃないよ。緊張してガチガチでさ」
「いやいや、それでも立派だった。芸能人らしい、って感じするよね。あの手の番組出ると。まぁ、あんまり出るのもアレなのかもしれないけど」
「そうじゃなくても、ドラマが増えたからなぁ。ああいうのにはなかなか出れないし、あんまり出たいとも思わないよ。
 うん、仕事が増えるのは俺の腕が周囲から認められてきたっていうわけだし、本当に紗矢には感謝してるよ」
 破顔一笑。楽しそうにそう笑う彬良君に、紗矢さんの胸に何かこみ上げてくるものがあった。

480 :
当然、胸焼けではない。だが、彼女にしてみれば覚えのない体験だ。
「いやいや、感謝する相手は私じゃなくてジョージでしょう。私は推薦してみただけだしね」
 と、そこで話を打ち切った。突如振って沸いた胸の痛みが気になって仕方なく、その原因となった彬良君と長い間話しているつもりにはなれなかったのだろう。
 お昼休み、変な像のある噴水の下で紗矢さんとその親友の山吹さんはご飯にすることにした。
山吹さんは陣内君からもらったお弁当である。今日は松坂牛のハンバーグ。
「……というわけで私の胸に正体不明の疼痛が飛来したわけだけど、なんだろう」
「彬良君が映画の撮影の際にみょうちくりんなウィルスでも抱えたんじゃ?」
 ああ、それなら素敵かもしれないと紗矢さんは頷いた。大好きなゾンビになれるなら、それは本望であるという境地にまで達しているらしい。
「まぁ冗談はおいとくにしても、真島さん。……小さいとき、好きな男の子とかいなかったかな?」
「え? 何それ。急にコイバナですかね山吹さん。いなかったと思ったけどなぁ」
「……よしわかった。真島さん。多分それは初恋だ」
「こ、恋……?」
鯉でも故意でもない。他者に指摘される自身の恋心。往々にしてそれは間違っているものだが、今回ばかりは大正解のストライク。

481 :
「そーか……私は彬良君が好きだったのか」
「そういう症状をしているしね。ま、応援はしてるよ」
「お、応援ねぇ……」
 何故だか応援団風の格好をした山吹さんが脳内で再生された。
「……で、痛みの正体がわかったまではいいけど。どうしよう?」
「……さぁ」
相談相手を間違えたな。
 結局、問題は解決できないまま放課後を迎える。
さっさと帰って、借りたゾンビ映画でも見よう、と教室から出て行こうとした真島さんを、先ほどから話しかけるタイミングをうかがっていたらしい彬良君が捕まえた。
「紗矢。この後大丈夫か?」
「え? 何も無いといえばないけど……?」
「やっぱり、お礼がしたいんだ。俺の部屋にこないか」
「だからお礼なんていいよ。私じゃなくてジョージに……」
「それは聞いた。監督にもお礼はするし、紗矢にもしたいんだ」
「わかった……けど、私なんかが行っていいんだろうか」
「大丈夫だよ」
どこから来る自信なのか、説明もないまま紗矢さんは連れて行かれてしまった。
今や有名人となってしまった彬良君の部屋に、どこの誰とも知れぬ女子生徒が入り込んでいってたら、露見すれば問題が起こりそうなものだ。

482 :
紗矢さんはそのことを危惧していたのだが、本人がそ知らぬ顔で紗矢さんを案内、そして部屋に入れてしまったのでもうどうにもならなくなった。
 ――もうどうにでもなれ、だ。
「お茶もケーキも出すけど……その前に、言いたいことがあるんだ」
「言いたいこと?」
何だろう、そう思う前にすでに身体が緊張していた。胸の痛みが、急に激しさを増す。
これから起こることを予兆しているのか、思考より先に身体が反応し始めたのだ。
(うわ、うわ、何?)
 紗矢さんが自分の身体の変調に戸惑っている間に、彬良君の言葉が続く。
「なぁ、俺、紗矢が好きだ」
 心臓が止まるような言葉だった。これでは、両想いだ。
というか、自分の部屋に連れ込んでから告白する辺りに下心が見え隠れする。男はケダモノとは良く言うけれど、露骨すぎはしないかね彬良君。
「……っ」
 言葉を出せずにいる紗矢さんと、それでも言葉を待つ彬良君。
本人はそんなつもりなかったのかもしれないが、本能の為せる技であろうか。
「私、変でさ。さっきから、ずっと、胸が痛くなってて。……それで、今、そう言われてもっと痛くなった。……思わず、抱きしめてほしいぐらいに」

483 :
――その言葉に、耐え切れるわけもなく。気付けば彬良君は紗矢さんを抱きしめていた。
もう離さない。そんな言葉を孕むかのように。映画のワンシーンのように、堅く、強く。
 そうしている間に、段々と二人の情欲の炎は静かに燃え始めた。自然と、二人は貪るようなキスをしていく。
舌を絡めて、互いの唾液を交換し、歯茎を丁寧になぞる。
 ――抱きしめる力にも力が入る。彬良君はそれとなく場所を移していき、寝室にまで誘導する。
熱病にうなされているように、ただキスをしている紗矢さんからしてみれば、彬良君があたかも、魔法使いであるかのように錯覚していた。
 そうして、ゆっくりと彬良君は紗矢さんをベッドへと押し倒した。
キスを解いて、お互い、熱に浮かされたまま見つめあって、そうして――。
 ブレザーのボタンを、丁寧に外していく。続いて、タイを静かに解き、これも取る。
白いブラウスのボタンを、上から、流れるような手つきで外して、ブラが露になると、それまで沈黙を護っていた紗矢さんから小さく、声があがった。
「……あんまり、大きく、ないから」
「紗矢ぐらいの方が、俺は好きだよ」
 彬良君がそう答えると、紗矢さんは再び押し黙る。行為は再開され、ブラも外された。可愛らしい桜色の蕾が外気に触れ、小さく震える。
 露出された二つのふくらみを、彬良君はゆっくりと愛撫していきながら、スカートのホックを外す。

484 :
先端の、その蕾を舌で舐め、さらに口に含めながら、彼女の最後の衣服であるショーツも、ずり降ろすようにして脱がしてやる。
「……っ。彬良、くん、も」
 とうとう生まれたままになった紗矢さんは、いい加減に恥かしくなったのか、未だ全てを着ている彬良君がズルく思えたらしい。
「わかった……」
 気が急いているのか、少し乱暴に、自らの衣服を脱ぎ捨てていく。
やがて現われる、彼の大きく勃起したソレに、やたら紗矢さんは注目していた。
「……何?」
「想像、より大きいかな」
「恐い?」
「ううん。大丈夫……」
 その言葉と同時に愛撫を再開する。胸を手で掴み、その柔らかさを楽しみつつ、彼女の秘所に指を這わす。
クリトリスの周辺を撫で、そうかと思えば足の付け根辺りをゆっくりと撫でていく。手が滑らされる度に、紗矢さんは小さく震えた。
 やがて、暖かく、白濁とした愛液でソコは溢れていき、彼を受け入れる準備が出来た事を伝え始めた。

485 :
「じゃ、あ……いくよ」
「う、うん。……きて」
ずず、とゆっくりと紗矢さんのソコに、欲望ソノモノを沈めていく。
鈍い音を立てて、何かを突き破る音と同時に、鮮血が彼のソレを伝って垂れてくる。
「痛っ……」
「だい、じょうぶ……?」
「う、うん……続けて?」
 さらに突き進めて、彼のモノが最後まで収まった。
二人とも暫く声が出せないでいたが、じきに彬良君が動き出し、激しくピストン運動を始める。
「あ、彬良くん……激し……っ」
「ごめん……収まりが、つかない……」
「……っ」
 最早、目の前の快楽を享受するしか彼には出来なかった。
紗矢さんにとってみれば、とてつもなく痛いことでしかないように感じていた。
しかし、結ばれているという充足感と、必に腰を動かしている彼を見ていると、暖かなモノが心の中を満たしていくように思えていき。
そうすると、痛みは消え――波のように、快楽が押し寄せてきた。
 程なくして、彼女の声が漏れ始める。
最初は恥かしくて我慢していたが、ついに堪えきれなくなった。
嬌声と、荒い吐息が室内に響く。彼のピストンと、胸への愛撫は激しさを増し、また、彼女のその声も段々と音量を上げていく。

486 :
 ――そうして、両者が達するのは殆ど同時だった。
収縮する膣壁の刺激に耐え切れず、彼は彼女の最奥で精を解き放った。
粘性の高い、白濁とした液体が彼女の子宮を満たし、膣内を埋めていき、彼が息をつきながら抜き取ると、音を立てて漏れ出していく。
「……中で、出したね」
「ご、ごめん……まずい日、だったり?」
「安全日だったハズだから、大丈夫だとは思うけど、万が一があったら、隠れてでもいいから責任、とってよね。
 流石に学生で夫婦は色々とマズイんじゃない?」
「隠れたりするかよ。こんなに、好きなのに。どうして隠すんだ」
「……知識として、イッた直後の男性の言葉を信じるのは」
「っ。紗矢、お前なぁ……」
 ま、あれだ。先のことはわからないし、すでにコメットはプラネットないしサテライトにまで昇格している。
スターへの道は見え隠れしているし、めげずに進み続ければ、何にしたって花はより大きく花弁を開くだろう。

487 :
……以上です/^o^\
エロって、難しいな……。

488 :
>>477
GJ
エロへの道は重き荷を背負いて遠き道を行くがごとし
されどそれ以上に書きたい情念が募りて一つの作品と成りせば、作者にとってこれ以上の喜びはあらず
貴殿の妄想が巧みに結実したSS、実に見事であった

489 :
GJ!
さりげなく紗矢呼び捨てになってる馴れ馴れしい彬良君に
基本淡々としてて最後にも冷静な紗矢さんww
476さんじゃないけど全裸で待ってた甲斐がありました(^o^)

490 :
不破×佐倉はまだか。
そろそろ風邪をひくんだが?

491 :
>>490
台風来るしつらいよね
理人先生×水音さんも希望
はやく服を着させて!

492 :
>>490は服を着たか?
保守しとく

493 :
490ではないけれどまだ全裸です
他にも仲間がいるはずだ……
たすけてください

494 :
未だ服きられず

495 :
自作という発想はないのか?

496 :
自作は冒頭で挫折した

497 :
以前、駄作を綴ってドキドキで投下しようとしたら
長すぎますってエラー出されて投稿できなくて
(他のかたの一投稿とそう変わらない分量では?おかしいな)と
SSじゃない書き込みで量調整して調べてみた結果
自前のパソコン環境では一度に10行足らずほどしか投稿不可能だと判明しました
自作に到底自信ないというのはもちろんあるけど
異様なぐらい細切れ超連投になってしまうため物理的にムリなのもいるんです…
(この投稿もエラーになるかもぐらいだ)

498 :
>>497
今、忍法帳で行数や投下時間、連投回数が決まってる。
毎日1回どこかに書き込むと、レベルが上がるよ。
PINKは別鯖扱いかも知れんので、書き込むのは誤爆スレ辺りがいいかも。

499 :
>>498
横レスすみません
少し前に森には〜話で投下した者です
自分も投下時に同じようなエラーを頻発させて、myチキンハートをビビらせまくりました
(その時のエラーは確か「改行多すぎ」でした)
参考になるレスを有り難うございます
>>497
職人デビュー、お待ちしております(ニヤリ)

500 :
前に和音・俊介のらしくなくてもを書いてくれた職人さんはもうおらんかね。
このスレのネクタイシュルも同じ人じゃないかと思うんだが、
すっごい好みでもう何回も読み直しているよ。
また来てくれないかなぁ。

501 :
>>498
>>499
アドバイスありがとうございます!
そのよーな仕組みになってるとはつゆ知らず…
文章だけでなくサバ上でもレベルアップが必要なんですね、参考なりました
あの笑いと涙腺絶妙刺激な「森には〜」を書き下ろしたかたに
ニヤリとされてはプレッシャーもありつつ…地道にがんばります
笑いと涙腺で思い出したけど
だいぶ前の方で織人×苑生を書いてくれたかたは今いらっしゃるのかな
「私より1日でいいから長く生きてほしい」という苑生さんにマジ泣きでした
もちろんエロもばっちり堪能w
レベル高いところだから、デビューの日など遠そうです…

502 :
>>500
同志がいた〜。自分も大好きなんです、俊介×和音を書いたシリーズ。またあの職人さんに結婚までの二人と結婚後の二人をかいて欲しいと熱望してます。

503 :
500です。おお〜お仲間がいて私もうれしい。
そこに至るまでの心理描写もきちんとできていて、すごく上手だよね。
あの職人さんはもっと評価されていいと思っている。
あ、自分は本人じゃありませんよ・・・
家での二人が多いけど、大人バージョンで外で会ってる二人とか、
結婚に至るあたりとかぜひ読みたい。
自分で想像できたらいいんだけど、あの職人さんの文章で読みたいよ。

504 :
過去作品で好きな作品は数多いなぁ
らしくなくても、葡萄月の二人の初夜とその後、GHQ、唇から媚薬、マリナー、etc…
もちろん、新スレで投下されたSSも、どれも美味しく読んでます

505 :
自分も架空の森は泣けたよ
天国のじーさま、ばーさまに見守られて祝言をあげて結ばれて…
個人的にはピンクでもあんぐらい「なぜ結ばれるかよくわかる」方が好きだ

506 :
読み返したら美貌の果実でした…書いた方申し訳ない…orz

507 :
敦子様にお幸せになってもらう話を読みたくなってしまった

508 :
相手がいない…和音さんの見合い相手辺りなら、幸せになりそだが

509 :
稲垣さんだな>見合い相手
誰か、そのカップルでエロパロを書こうというつわものはいないか?

510 :
本スレにあった意見と被ってすまないが、
敦子は小狡いところがあるから、マラソン中の和音さんを見初める稲垣氏の好みからは外れる気がする
あるとしたら…あの歳でこの純朴さってどーよ!と、敦子様が稲垣氏にマジ惚れするとか?
これも本スレにあった意見だけど、個人的には大地の貴族のカモメ眉毛を推奨したい
そんでダメな旦那の尻を叩いて敦子様の細腕繁盛記!これがむちゃくちゃ読みたい!

511 :
小狡いところがあるまで言うのは少々かわいそうな気がする。
見合い相手に対して、と思えばありゃ兄ちゃん殿下のがひどいもんww
本スレ意見から選ぶならキラキラスケートリンク兄のがいいな、
兄妹でフィギアしてたんだから意外と裕福な家の出だよ。
影浦×更紗と絡めたりで、どうにかできんだろうか?

512 :
不破×佐倉は現れんのかな
>>474さんが息絶え絶えに託してからひと月以上たちます・・・だれかー

513 :
>>512
息絶え絶えに…なんか萌えたじゃんか

514 :
>>513
そんなに飢えてるのw

515 :
試験前の現実逃避でコメットさん買ってきた。
チョット妄想中…書けたらうpする(予定)。
保守SS程度のエロ薄なので、期待はしないようヨロシコ。

516 :
>>515
おう!気長にまっちょるけんね

517 :
>>515
頑張れ〜待っとるぞ。

518 :
>>515
エロ薄でもいい、好きだよ
ありがとー軽い気持ちで待ってます〜

519 :
おお!楽しみに待ってますw

520 :
>>518
あなたは氷室さんかい?

521 :
お父様は人格者なのでしょうなぁ

522 :
もう母さんとも和解した
雪村さんのおかげだ!

523 :
↑そんな感じの話を書けるかもわからんのに妄想してる自分が通りますよっと

524 :
氷室さんの製造過程ってどんなだったんだろう?お母さんと氷室さんの生物学上のお父さんの間には何があったんだ?不倫??

525 :
>>524
氷室さんの製造過程、何故か
「緋の稜線」マルシー佐伯かよの先生
で想像してしまう
氷室母にずっと想いを寄せていた、身体の弱い幼馴染の本父が、むりやり…的な

526 :
緋の稜線は読んだことないけど
私もそんなような状況だったんだろうと思ってた。

527 :
氷室父母と本父で、ちょっとお話考えてみるね
緋の稜線にならないよう、がんばってみる〜

528 :
>>527
なんだかスピンオフっぽくて良いですね。楽しみにしてます。

529 :
考えてみると主キャラの親世代まで気になる作品が他にもあるかもね。
和音さんちが代表格だが・・・家族をよく描く傾向からか。
由良さんのとーちゃんとMy better halfの在りし日とか熱そうだ。

530 :
自分には書けそうもないので、保守がてらに不破×佐倉のプロット置いておく。
相変わらず不破の家をよく訪問している佐倉。
進級した後もそれは変わらない。
ある時佐倉は、幻のソフト「レックス・レギス」はコンシューマー機の移植版で、オリジナルはPC版であることを知る。
不破に持っているかどうか聞くが、歯切れの悪い返事しか帰ってこない。
散々尋ねたあげく、不破は持っていることをしぶしぶ白状する。
だが、いくら不破に奉仕しようと、佐倉はお目当てのソフトを貸してもらえない。
とうとう堪忍袋の緒が切れた佐倉に、根負けした不破は貸すことにするが、「この家から持ち出さないこと」と条件をつける。
wktkしながらゲームを開始する佐倉。気まずそうにそれを見守る不破。
実はPC版の「レックス・レギス」は、キラキラシールのついた、18禁表現のあるソフトだった。
ゲームは佳境へとさしかかり、男女が床を共にするシーンに佐倉は動揺するが、ゲームをやめることができない。
室内に響きわたる男女の喘ぎに、辛抱できなくなった不破は佐倉を抱きしめキスをする…。
以下略。

書きたいという奇特な職人がいれば書いて下さってよし、雑談のネタに使ってもよ

531 :
途中で切れたorz
雑談のネタに使ってもよし。
メモ帳に埋もれてさせておくよりは、プロットも浮かばれると思われ。

532 :
佐倉さんはまだ花村の学生服着てるのかな
服を脱がせる場面でそれはちょっとなあ

533 :
不破×佐倉で一レスSS。

534 :
(ギシッ)
「あの…不破さま?」
「何だ、セバスチャン?」
ベッドのきしむ音が響くマンションの寝室。
セバスチャンこと佐倉水樹は、不破一晟に押し倒されていた。
「ナンダじゃなくって、ンンッ!」
哀れなアヒルが逃げようとするのを巧みに押さえ、唇を奪った。
「ン…ン、ハァ…ヤメッ…アァ…ンン…」
何度もキスを繰り返し、服の上からゆっくりと身体を撫で回す事で、徐々に佐倉の抵抗が弱くなるのを感じた。
「佐倉…」
「ヤメ…アアァ…」
…暗転
ガバッ×2
「「…夢?」」
顔が真っ赤にすると同時に夢の内容に、自室のベッドで身悶える二人だった。

535 :
ホントは、この設定で書こうと思ったんだけど、佐倉さんのキャラにムリが出て頓挫しました。
試験も終わったので、別設定でボチボチ書いてます。

親世代の物語とは、wktkして待っています。

536 :
>>533
乙です
こういう寸止めもなかなか悪くないですな

537 :
佐倉さんの私服は体をしめつけないロングワンピで
佐倉さん的には「ラクだから」着てる
でも不破君は、学ランからのギャップもあり女の子ぽさにキュン
…ってーな妄想しつつ通ります

538 :
自分は佐倉の学ランを脱がして欲しい
「やっぱり中味を確かめないと」って言って

539 :
>>530
>だが、いくら不破に奉仕しようと
もう既に・・・!!と思ってしまいましたww

540 :
流れ読めなくてスミマセン。ちょっと伺いたいのですが。
以前、7月頃に、森には〜で投下させてもらった者です。
あの時頂いたGJ有り難すぎて、その後の二人の妄想が脳内に垂れ流されてしまいました。
このままではその妄想の脳内浸食で日常生活に差し障りが出そうだったので、
数ヶ月かけて何とか話として頭ん中から吐き出したのですが、
文字数が前回の軽く2倍を越えました……orz

おまけに書いた話も入れると、文字数は約3倍弱。
同じ川原キャラばかりを何で妄想してんだか、と自分でも思うのですが、
取り敢えず書き切れたので個人的にはホッとしてますです。
でも、前回も長かったのにその2倍以上(当社比)だと……
人様にお見せするのはどーよ?って感じでいます。
このスレ的にはそんなんでも投下して大丈夫でしょうか?
因みに自分も佐倉さんは学ランに一票。

541 :
>>540
全然構わないと思います。
エロパロ板の投下で荒れやすいのは、
・リアルタイムで書きながら投下
・連日1レス細切れ連載
・自分語りてんこ盛りの前書き&後書き 〜誘い受け添え〜
・オリジナルキャラがほぼ主役
・特殊過ぎる嗜好性癖 〜注意書きなし〜
だから、それをやってなければ無問題。
誘い受けが判らない時はググるといいよ。

542 :
>>541
長いのも大丈夫ですか。良かった。じゃあ折を見て投下します。
>〜誘い受け添え〜
オマール海老のなんちゃら添えとかそんな感じに空目しました。
そういや川原さんの単行本柱ネタに、元担当さん結婚披露宴の素敵メニューリストがあったなぁ。

543 :
>>540
おk、全裸で待ってる
それと、投下した作品について自虐はしない方がいいと思われ
SSは書き手の生み出した子供みたいなものだから、親にけなされるのはカワイソス
評価は素直に受け取るのが吉

544 :
長編?
おう、バッチコイ!
裸で正座して待機しています。

545 :
hosyu

546 :
遅くなりましたが542です。
森には〜の二人で長い捏造未来話を投下させて貰います。

547 :
私、雪村霙が氷室さん家に再び滞在する事になったのは、桜も散った4月下旬の頃だった。
それは遡ること少し前。大学入学と前後して前からあったアパートの雨漏りが、いよいよと酷
くなっていた。古い木造の漏水は厄介で、一度の修繕で終わるとは限らないらしい。直しても
らうも束の間、雨漏りはあっちこっちと場所を変え、ついにはある雨の夜中に突然、
バリッ!バリバリバリッ!ドサーンッッ!
……と、天井板の一部が大きな音を立てて破け落ちた。
これには流石に驚き、状況を見た大家さんからも、屋根と天井の修理の他に建物診断もしたい
から少しの間部屋を空けてくれないか?と頼まれた。移転期間は10日間。住む場所や引越し
も手配してくれる、とのこと。そしてそれを氷室さんに話したところ……何故だか家財は移転
先に、私自身は氷室さん家で暮らす事になったのだ。
一度目は偶然、二度目は必然。そんな言葉もあるが、この氷室さん家行きが必然かどうかはよ
く判らない。最初は勿論、移転先で生活するつもりだった。だけどそこに荷物を運んだ後、
「短い間だけだし、必要な物だけ出しておきなよ。その方がアパートに戻る時も楽だよ?」
と、氷室さん持参のトランクに当面の必需品と貴重品を詰め込む事になり、それが終わると、
「終わった?じゃあ、行こうか」
と、氷室さんは私の手を引いて外に出るや部屋の鍵を閉め、唐突な展開に何が何やらという
状態の私を、
「あれ?言わなかったっけ?」
などとすっとぼけつつ、氷室さん家まで連れてきたのだ。
「だって10日とはいえ、こんな離れた場所は遠過ぎるでしょ?」
などと氷室さんはヌカしてたけど、その言い分も確かに一理あった。なにせ移転先はアパート
から電車で行くような立地だった。大学やらアルバイトやらを考えたら、より近場の氷室さん
家の方が断然楽だ。
でもだからって……。
氷室さん、これは突然すぎるんじゃね?いや、私は有り難いけどね?でも氷室さんのお父さん
お母さん、カメの私は知ってても人間の私は知らないよ?つまり息子が見ず知らずの女の子を
連れてきて、短い間とはいえ一緒に暮らさてくれと頼む事となるんだけど……。

548 :
「……め、迷惑じゃね?」
通された客間での待機中、口を開いた間抜けな様相でつい呟く。そしたら突然、部屋の扉がノ
ックされた。慌てて返事をしたものの、ビックリした私の声が裏返る。しかも入って来たのが
氷室さんだけでなく、氷室さんのお母さんもだったので更にビックリだ。
「貴方が雪村さん?」
「ハ、ハイ……」
「どうも初めまして。冬騎の母です」
「ハ、ハジメマシテ……」
うわー!どーしよーお母さんだよおぉぉー!
ドキドキしながら会釈して対峙すると、お母さんがニッコリと笑った。すると途端、張ってい
た緊張の糸が、良い方向にぷっつり切れた。この笑顔には覚えがある。“春さん”な氷室さん
に良く似た雰囲気の笑顔だ。
「冬騎から聞きましたよ。本当に大変だったわね」
「ここにいる間は遠慮せず、自分の家だと思って過ごしてね」
笑顔と同じ優しいお母さんの声に、不安な気持ちがすぐさま消えていく。
ああ、そうだ。そうだった。不安になることなんて全然無い。私は知っていたじゃないか。
氷室さん家の人達は、みんな本当に良い人達だって。

549 :
氷室さんの家での生活は快適で、その居心地の良さに恐縮するほどだった。
カメの時とは視線が違うせいか、家の中は何だか新鮮な感じで面白い。部屋は(流石に氷室さ
んの部屋では無く)客間そのままを使わせてもらい、氷室さん家族に混ぜて貰って囲む食卓は、
美味しくて楽しくて……何だか、いつもこそばゆかった。
お父さんは穏やかで、人の悪口どころか何かを悪く言う事すら全然なくて。そんなお父さんを
氷室さんは相変わらず好きなようだった。
「去年、冬騎がカメを飼っていたんだけどね?今でもいたら見せてあげたかったよ」
ちょっと君に似てたから。そうお父さんに言われた時は焦ったけれど、「似てるどころかその
カメは私なんです」とも言えず、取り敢えず笑ってごまかした。
お父さんも良くしてくれたけど、お母さんには本当にお世話になった。それこそもう、カメだ
った時以上に。日頃の食事の他にも、大学に行く私にお弁当を持たせてくれたり、アルバイト
で遅くなると夜食を作っておいてくれたりした。
申し訳なくてせめて掃除とか洗い物とかを手伝うと、お母さんは凄く嬉しそうだった。
「やっぱり女の子は良いわね」なんて言ってくれて、何だか私まで嬉しくなった。
強く印象に残っているのは、そんな感じで少しばかりのお手伝いをしたある時の事だ。
「冬騎には内緒よ?」
と言いながら、お母さんが私にアルバムを見せてきてくれた。
これは七五三、これは小学校に入った時。一枚一枚指差しながら、今より小さい氷室さんと、
今より若いお父さんお母さんの写真を私に見せてくる。
「冬騎は昔からお父さん子でね、お父さんの言う事ならちゃんと聞くの」
私の話なんかちっとも聞かないのに。氷室さんとお父さんが写っているのを眺めながら、クス
クスとお母さんが笑う。それから私を改めて見て、唐突に御礼を言ってきた。
「最近の冬騎が何だか優しくなったのは、きっと貴方のお陰ね」
正直、氷室さんに何かをしてもらった事はあっても、何かをしてあげた覚えはない。随分な買
い被りなのだが、お母さんはそうは思ってないらしい。
「だってあの子、貴方がいると私にまで笑ってくれるのだもの」
買い被りの理由をお母さんがそう言い、それから、寂しそうな顔をした。
「私は前に冬騎を傷つけてしまって……あの子と、ちょっと上手くいってなかったから」
だから家族で一緒に、普通に笑い合えるのが嬉しい。幸せであることをかみしめるように、ア
ルバムの表紙を撫でるお母さん。お喋りが過ぎたと思ったのかもしれない。やがて少し照れく
さそうな顔でお母さんは立ち上がり、買物に行くと言ってそそくさとその場を離れていった。
いってらっしゃいと手を振り見送ると、残された私は何とはなしに家の中を眺め遣る。
頭によぎるのは、去年の冬。自分がカメだった時の頃。
お母さんに冷たくあたる氷室さん。氷室さんを知らない病院に連れて行くお父さんお母さん。
そしてその病院で臨終の床にあった、氷室さんに良く似た男の人。
……ああ、良かった。
部屋の中で一人ボンヤリと思いながら、私はつい頬を緩ませた。
あれから、ちゃんと笑えるようになったんだね。
良かったね、お母さん。良かったね、氷室さん。
ホントに、本当に良かったね……。

550 :
僕、氷室冬騎が雪村さんを家に再び滞在させたのは、桜も散った4月下旬の頃だった。
きっかけは雪村さんのアパートの漏水事故で、彼女の一時退去先が不便な立地だった為、両親
に了承を得て家に呼んだのだ。(まあ、僕がうっかり説明しなかったせいで、雪村さんにすれ
ば“呼んだ”というより“連れてこられた”というのが近いのだろうけど。)
雪村さんのこの一件は、僕の両親を結構驚かせたらしい。といっても父母が一番驚いたのは、
雪村さんの状況とか彼女と付き合い云々とかより、僕が頭を下げて頼んできた事だった。
そういえば今まで親に頼み込む程の要望を持った覚えがなく、頭を下げる事も当然無かった。
そういえばそうだったか、と思っていたら、何だか含み笑いをしながら父が僕を見てきていた。
「冬騎はペットに、好きな子の名前を付けるタイプだったんだな」
冬に居候したカメの雪村さんを父は思い出したのだろう。頬をにまつかせながら言ってくる。
しかし事実は逆で、ペットに見えたカメが元々雪村さんで、好きになったのは更に後からだ。
違いますよ、と、一応の説明を父にしたのだが、案の定理解はされず、「ああ、わかったよ」
と、軽く流されて終わった。
雪村さんの滞在中は楽しかった。
一つ屋根の下とはいえ、親もいる中で“彼氏彼女”的な進展は皆無だったけど。でも日頃より
も家族の笑う声が増え、家中が何だか明るい気がした。お陰で雪村さんが滞在を終えた時は父
も母も残念がり、その後暫くはどことなく詰まらなそうな顔していたくらいだ。
残念といえば雪村さんのアパートだろう。予想以上の老朽化に、取り壊しを家主が決めたのだ。
これは僕としては事態は悪い方へ転がったと思ったのだが……当の雪村さんは、意外にのほほ
んと事実を受け止めていた。
「まあ仕方ないしね〜。だけど大家さん、すごい良い人さ〜?ホント助かったよ〜」
取り壊しにあたり敷金は全額返金、それに礼金とか引越の初期費用も貸主負担となるらしい。
今回は家主事情の立ち退きなので当たり前の対応だと思うんだけど、でもそれを『良い人』と
言っちゃうのが雪村さんなんだろう。
引越に金銭的心配が無いとはいえ、大学と掛け持ちバイトの合間に部屋探しをするのは大変そ
うで気の毒だった。忙しい中に一緒に不動産屋を回り、条件に合う物件をようやく見つけて契
約等諸々の手続きを済ませ、後は引っ越すだけまでに漕ぎ着けたのは8月後半。長いと言われ
る僕等大学生の夏休みも、そろそろ終わりを意識する頃だ。
そして、僕の方にちょっとした“出来事”が起きたのも、雪村さんの引越しと時同じ頃だった。

551 :
おかしな天気が続いていた。
風が強く、終わりに近いとはいえ夏とは思えない肌寒さで、どうにも落ち着かない。空は雨雲
に覆われ、景色は灰色めいていて。夕方ともなれば暗さはより翳りを強め、まるで街ごと水底
へ落としたようだ。道往く人も口数少なく、安堵の場所を求めて足早に歩を進めている。僕も
時折降る鬱陶しい雨を相手にしながら家路を歩いていた。
帰宅して見つけたのは、不在通知を入れる寸前の宅配業者だった。そのまま荷物を受け取って
家に入り、ダイニングへと向かう。宅配便は両親宛の新盆返しの品だった。海苔とかの食物だ
ったら雪村さんにあげよう。そう思って届いた包みを開き始めたのだが……こういうのも虫の
知らせと言うのだろうか?何となく違和感を感じて手を止め、送り主を確認する。
あったのは女性の名前だ。誰だったかと記憶を手繰るが、頭に浮かんではこない。親の付き合
いなど一々知らないし、今の時期に盆返しが届いても別におかしくないだろう。だが、何か引
っ掛かる感じが拭えない。それでも包みを開く手を再び進めると、今度は封の閉じてない手紙
が出てきた。親宛のを見るのもどうかと一瞬迷ったが……目を通して、僕は表情を硬くした。
「これ、何だよ……?」
それは去年の冬、僕が病院まで見舞いに行かされた男の身内、僕にその男に会ってくれと懇願
してきた男の姉からだった。
墓を参ってくれて有り難かった。
弟もきっと喜んでいることだろう。
願わくば、いつか息子さんも来てくれたなら。
……気分が悪くなった。
冬に棄却し、胸の奥底に沈めた仮説。それが夏の今頃になって亡霊のように蘇り、僕にあの頃
の冷たい怒りを思い出させる。
男がんだのは聞いた。
逝ったからには墓に収まり、この夏に新盆を迎えるのも当然だろう。
だけど……だけどそれはもう、僕には関係無いことじゃなかったのか??
リリリリリン……ッッ。
突然に電話が鳴り、つい肩がビクリとした。手紙を片手に、もう片手で受話器を取りに行く。
『ああ、冬騎?』
出たのは母だった。聞き慣れた声に、すうっと気持ちが凍てついていくのが自分でもわかった。
『私は今から帰るけれど、お父さんは遅く』
「墓参りはどうでした?」
母の話を遮って言うと、えっ?と戸惑う声が聞こえる。唐突に言われれば当たり前の反応だが、
それがやけに癇に障る。
「新盆返しが来ましたよ。去年の冬、僕が病院まで会いに行かされた男の身内から」
「あの後亡くなったとは聞きましたけど、母さんと父さんは墓参りに行ってたんですね?僕に
は何も言わずに」
『……。』
戸惑いを狼狽えに変え、母が黙り込む。僕は語気を強めて再度尋ねた。
「行ってたんですね??」
『あ、あのね冬騎、聞いて頂戴?黙っていたのは悪かったけれど、でも、お父さんと話し合っ』
ガチャンッッ!

552 :
耳障りな言い訳に、僕は荒げた音を立てて電話を切った。気を落ち着けたくて、戻ったダイニ
ングで椅子に座り込む。いつの間にか握り締めてたらしい。持っていた手紙がグシャグシャだ。
その潰れた手紙をテーブルの上に投げ捨て、家の中をぼんやりと眺め遣る。
灯りが点いているにも拘わらず、家の中は暗かった。天候の悪さだけでない暗さが、部屋に充
満している。
……というより、この家が明るいことがあったか?
自問しながら直ぐに答えを見つけ、僕は思わず嗤った。
明るかったのは、雪村さんがいた時だ。
父も、母も、僕も。彼女がいた間は家の誰もが笑っていた。家族も悪くはないと思えていた。
あれから大した月日は経っていない筈なのに、ここは本当に同じ家なんだろうか?
リリリリリン……ッッ。
再び電話が鳴った。また母かと思うと鬱陶しく、取らずに捨て置いた。だが何度も鳴り続ける
音に根負けし、仕方無しに受話器を上げる。すると予想外に、掛けてきたのは雪村さんだった。
彼女らしい、のんびりとした声が電話越しに聞こえる。
『中々出ないから留守かと思ったよ〜……って、おーい?氷室さん、聞いてる?』
タイミングが良過ぎる電話に言葉を詰まらせていると、雪村さんが尋ねてきた。その声がやけ
に胸に染み込む。
うん、聞いてる。聞こえてるよ。
そう返すだけなのに、何だかちょっと泣きそうになった。
雪村さんの用件は、時間の確認だった。言われて僕も、明日が雪村さんの引越だと思い出す。
そういえばそうだった。
引越業者が来るのは午後だと言ってたから、僕も行く時間を答えなきゃ。
ああ、でも、だけどそれよりも……。
「……あのさ、雪村さん?」
『ん?どしたの?』
こうして君の声が聞けたのが、何故だか無性に嬉しくて。
そして、声を聞けばどうしても、
「今から、そっちに行ってもいいかなぁ……?」
どうしても、君に会いたくなるんだ。

553 :
冷蔵庫の白い扉を開けたら、そこは虚無の世界だった。
……いやまあ、ファンタジーな別次元に繋がってるとかじゃなく。引越の為に冷蔵庫の中身を
使い切ってただけなんだけどさ。それでも空っぽな冷蔵庫を見た時の虚しさときたら格別だ。
世の中でガッカリさせられるものを数えた時、そこに空の冷蔵庫もランクインすると私は思う。
しかも帰り道に夕飯用のお弁当を買おうと思いつつ、すっかり忘れていた。これは我ながら間
抜けな事この上なく、より一層のショックを受けても仕方ないだろう。
「どうすっかな〜」
唯一残っていたのは作り置きの麦茶くらい。でも空は既には暗く、不規則な雨も降るような天
候で外には出たくない。迷った私は、取り敢えず氷室さんに電話した。にそうなほど空腹な
訳でも無かったので、明日の引越を手伝いで氷室さんが来る時間の確認をするのを優先させた
……つまり、悩むのが面倒になって、晩飯の事は後回しにした訳さ。
だけどこれは電話を先にして正解だった。これからウチに来たいと、なんか知らんけど氷室さ
んは渡りに船な事を言い出したのだ。
「じゃあ、お弁当買ってきてくんない?」
よろしく〜と電話を切り、待つ事暫し。予告通り晩御飯……じゃない、氷室さんがやってきた。
氷室さんも夕食はまだだったらしく、早速に麦茶を入れて、二人でお弁当を食べ始める。
あったかいお弁当は野菜ジュース付きで、栄養バランスまで配慮しているのが心憎い。さすが
氷室さんは良く出来た人だな〜と、感心しながらお弁当食べて、しあわせな気分になって……。
……あれ?
なんか氷室さんが、いつもと違うような感じがする。なんというか、表情が暗い。どんよりし
た顔のままお弁当をもぎゅもぎゅ食べてる。
氷室さん、このお弁当不味くないよ?むしろ美味しいよ?なんか黙々と箸だけ進んでるけど、
そんな面で食ってて味わかんの?つーか氷室さん、今日なんか一度も笑ってなくね?ちょっと
ホッとした顔はしてたけど……全然笑ってないっスよね??
「あの〜氷室さん?大丈夫?どっか具合悪いの?」
たまらずに声をかけると、氷室さんがこっちを見た。何でそんな事聞くんだって顔をしてる。
いや、元気だったら良いんだけどさ。それなら一緒に食ってる人間もいんだし、もう食べ終わ
るかもしんないけどご飯はもっと旨そうにしよーぜ。
そう思いつつ沈黙の中で食べていたら、先に食べ終えた氷室さんが箸を置いた。氷室さんは一
つ息を吐くと、その後でぐるりと辺りを見回した。
「今日は、静かだね」
「あ〜、みんな引っ越しちゃったからね〜」
そうなのだ。元々部屋数が多くもなく、しかも幾つか空き部屋もあったから、退去する住人も
それ程いた訳じゃない。退去期限にはまだ間があるのだけど、他の部屋はもう出ていってしま
っていた。毎日子供がギャースカ騒いでいた隣の部屋も、昨日には引っ越しを済ませている。
「だからじゃないけど、氷室さんが来てくれて有り難かったよ。正直、ちょっと寂しかったし」
「……そっか」
あ、笑った。“春さん”ってまではいかないけど、氷室さんがちょっと笑った。
それだけの事なんだけど、なんだか嬉しくなる。
「といっても私も明日だしね。引越終えたら氷室さん家にもお礼に行かせてもらうよ。沢山お
世話になったしさ〜」
……あれ?
なんか氷室さん、ビクッとしなかった?私、気に障る事言ったっけ?氷室さんまた暗くなって
るよ?オーラが一気にどよっとしたよ?いや、こっち向くのは良いんだけどさ、何そんな薄ぼ
んやりな面してんのさ?つーか、その虚ろな目には覚えがあるんだけど、えーとえーと……。

554 :
みっなっみっのっ〜しっまっのっ〜パー○タウン〜〜♪
何だっけ?などと考えてたら唐突に耳慣れした曲が頭に流れ、私はハッとした。
あ!そうだ!あん時だ!私のカメ時代、メープルタ○ン物語・パームタ○ン編を見ていた氷室
さんだ!『この番組和むよね』なんて言いながら全然和んでねーよって顔してて……何だって
今更、そんな面してんのさ??
「さ〜て、麦茶のお代わりでも注いでこようかな〜。あ、氷室さんもいる?」
お弁当も食べ終わったし、場が持たない感じがして言い訳するように立ち上がる。いや、立ち上がろうとしたけど急に腕
を掴まれて、立つことが出来なかった。
「えーと……な、何かな?」
「……いや、何でもない」
掴む私の腕を離し、氷室さんが言う。
うんにゃあ、『何でもない』は無いだろー。どう見ても『何かあった』って感じだよ?その証
拠に目は虚ろなまんまでこっち見るし、お陰で……。
みっなっみっのっ〜しっまっのっ〜パー○タウン〜〜♪
みっなっみっのっ〜しっまっのっ〜パームタ○ン〜〜♪
ほらー!またあの主題歌がリピート(しかもサビだけ)して頭に流れ出したじゃないかー!
『何でもない』なんて言うなら、何時までもメー○ルタウン物語・○ームタウン編(を見てた
時の顔)なんてしてんじゃねーよぉぉー!
「氷室さん、平気?やっぱどっか具合でも悪いんでないかい?」
心配する私に氷室さんが少しだけ笑う。それからまた私の腕を掴み、自分の元に引き寄せた。
「んっっ!」
抱きしめられるのも、キスされるのも初めてじゃない。だけど、なんちゅーか、触り方がベタ
ベタしてるっていうか……ちょっ、おーい!氷室さん?!ど、どこに手ェやってんですか?!
胸とか腰とか触りすぎじゃね?しかもキスとかもなんか舌とか入れようとしてね??
「ひ、氷室さん?!」 ホントどうしたの?
らしくない態度にぐいっと身体を剥がして見上げる。するとそこには……なんだか、泣きそう
な顔をした氷室さんがいた。
私はビックリした。ちょっと言葉が出ないでいると、氷室さんは足を体育座りにさせてきた。
片手でその両膝を抱え、もう片手を私の手に繋ぐ。
「……墓参り」
氷室さんがぼそりと言った。私は思わず、えっ?と聞き返す。
「父さんと母さん、墓参りに行ってたらしいんだ。僕が知らない内に」
私の方を見ず、氷室さんが口を開いていく。言葉は紡ぐというより吐き出すという感じで、見
ていてなんだか痛々しい。
「僕等が見舞いに行って、そのあとんだってのは聞いてたよ?だけど……なんで今更?」
お父さんとお母さんが誰のお墓参りに行ったのか、ここまでくると嫌でもわかった。
同時に、氷室さんが何で変だったのかも……何で、メープ○タウン物語・パームタ○ン編(を
見てた時の顔)になっていたのかも。
「ねえ、雪村さん?なんかもう、僕は家に居たくないよ。あれはあの時で、もう終わったんじゃ
なかったのかな?父さんと母さんは、あれ以上僕にどうさせたいのかな?」
「僕にはもう、関係無いんじゃなかったのかよ……」
私を見ない氷室さんは、顔をうつ伏せた。片手は繋がる私の手を、ギュッと握り締めてくる。
……ああ。ああ、そうか。そうだったのか。
氷室さんに付いた傷は、氷室さんの中にまだあったんだ。傷口が瘡蓋(かさぶた)で被われて、
日頃は血や痛みを感じなかっただけ。決して傷そのものが治った訳じゃなかったんだ。
心臓が痛い。なんだか、ズキズキする。
まるで繋がる手から氷室さんの痛みが流れ込み、それが私の胸にまで届いているみたいだ。
『あんな母親で良かったら、アンタにあげるよ』
私がカメで氷室さんが文字通り“冬さん”だった頃、氷室さんは私にそう言い捨てた。それは
もう冷たく、さも憎々しげに。そんな感情を実の母親に持つくらい、氷室さんは傷ついていた。
だけどいつかは、もっと時が過ぎれば、きっと氷室さんの傷も癒えただろう。
こんな風に、治りかけの傷を開くような事をされなければ。
でも……でもね、氷室さん?私、知ってるよ?
お父さんお母さんが、どれだけ氷室さんを大事にしているか。
それはきっと、今の氷室さん以上に知っているよ?

555 :
「……何?」
近寄る私に気づいて氷室さんが顔を上げた。泣いてんのかと思ったら違くって、それを言った
ら氷室さんが「泣いてないよ」って、やっぱり泣きそうな顔で言う。それからもう一度、今度
はふんわりと私を抱きかかえ、暫くそのままじっとして……やがて身体を離したと思ったら、
今度はお弁当殻を纏めたり、唐突に帰り支度を始め出した。
「やっぱり、帰る」
「えっ?なんで??」
「なんでって……今日はホントに、雪村さんの顔が見たかっただけだったから」
「で、でも氷室さん、家に居たくないんでしょ?だったらウチに居ればいいんじゃね?」
すると氷室さんはちょっと困った顔をした。
「帰ってどうしても我慢出来なくなったら、最悪ファミレスとかコンビニとかあるし」
何とかなるから大丈夫。
とかなんとか言ってくるんだけど、でも外でお店なんて入ったらお金かかるし、それになんだ
か雨も強くなってきている。私は氷室さんの服の裾を掴み、雨音のする屋外を指で差して
帰らないよう引き留めた。だけど氷室さんは、ウンとは言わず、それどころかますます困った
ような顔をする。
「悪いけど、雪村さん家にもこれ以上居たくないんだ」
「えっ……?」
な、なんで?私、氷室さんになんかやっちゃった?あっ!雨降ってるから雨漏りが気になる?
そりゃ雨漏りのする部屋に居たくはないだろうけど、でも最近は結構大丈夫なんだけど?!
焦る私にそうじゃないと氷室さんが首を振る。お陰で一層氷室さんの態度が私にはわからない。
「じゃあなんで??」
「……抱きたくなるから」
「……へ?」
「ここにいたら雪村さんの事、最後まで抱きたくなるから」
「うっっ……!」
そ、そうくるかぁっ!
言われて思わず怯み、言い淀んでしまった。そんな私を『ほらその顔、言わんこっちゃない』
と諭す目線で見る氷室さん。そのうち一つ息を吐き出して、じゃあ帰るからと服を掴む私の手
を外そうとする。だけど私は、私は……その手を、どうしても離せなかった。
むしろより強く握って引き寄せ、自分の唇を氷室さんの口元にエイッと押し当てる。
「!?」
氷室さんが珍しく心底驚いた表情で目を丸くした。まあ、そらーそーだろー。私からキスした
事なんて今まで無いんだから。
でも、こうでもしないと氷室さん、このままウチから出てっちゃうんでしょ?
そんでその泣きそうな顔のまんま、今夜は一人ぼっちでいるんでしょ?
それが私にはホントに、本気で嫌なんだよ、氷室さん。
「もういいよ。無理すんなよ、氷室さん」
……ただの高校の同級生だった頃、私にとって氷室さんは別世界の人だった。
生まれながらに優秀で、育ちも良くて、その言葉は常に周囲には絶対で。
何でも出来る、何でも持ってる。そんな人だと思ってた。
でも……ホントは違ってた。
本当の氷室さんは、そんなんじゃなかった。
驚いたまんまの氷室さんの背中に手を回し、いつも氷室さんがしてくれるみたいに、私は氷室
さんを両腕で抱きしめた。
「今夜は、一緒にいようよ……?」

556 :
……雨音がする。
刻々と強くなった雨が、屋根や庇を打ちつけている。だけどそれ以外は静かなものだ。僕等の
他に人の気配はまるで無い。
ああ、そういえば今このアパートにいるのは、僕等だけなんだっけ。
「あっ…あぁ……んっっ」
二人きり、雨に閉じ込められたまま、裸の雪村さんが僕に組み敷かれて艶めいた声を上げる。
互いの息が互いの肌にかかり、その肌の感じそうな所を撫で上げればひくつく身体が僕に絡む。
初めて雪村さんからキスされて、『一緒にいよう』などと言われて、優しく抱き締められて。
気づいたら畳に雪村さんを押し倒していた。唇を重ね、舌を差し込み、貪るように口腔を犯す。
時折ガチリと歯が当たったけど、それを気にする余裕なんて僕には無かった。
ようやく我に返ったのは、息をするのに顔を上げた時だ。唾液が糸となって垂れる口元を拭い、
上から雪村さんを眺めやる。
紅潮した頬に潤んだ目、長い髪は床で流れてうねりを作る。
視線が逸らせずにいると、雪村さんの手が伸びてきた。その手には軽い擦り傷があり、皮膚が
掠れて血が薄く滲んでいる。抑えつけていた畳で出来たのは直ぐ分かった。
抱きたい。大事にしたい。傷つけたくない。でも触れたい。犯したい。
たかだか擦り傷一つに、僕の中で思いが勝手に交差する。でも、それを破ってくれたのも雪村
さんだった。雪村さんは傷のある手で、僕の顔をふわりと撫でた。それはまるで、触れても良
いと言ってるかのようであり、僕の中の戸惑いとか理性とかを消すには十分だった。伸びてき
た手を頬に寄せ、それから「ごめん」と届かない位の声で呟く。
ここから僕は、後戻りするのをやめた。
何処かに行ってしまうとは思えないけど、でもどうしても離したくなくて。僕は雪村さんの手
を掴んだまま、もう片手で部屋の隅に畳んであった布団を引きずり敷いた。そこへ再び雪村さ
んを押し倒し、覆い被さっる。服の上から身体中を撫で回し、体勢を変えるのに身体を離すと
一筋の黒い線が僕と雪村さんを結んでいた。何かと思ったら雪村さんの長い髪が、僕のシャツ
の釦に引っ掛かっていた。髪を痛まないよう外し、ついでに着ていたシャツも脱ぎ捨てる。
「……どうしたの?」
ふと見ると、雪村さんが僕をまじまじと見てきていた。尻込みしている雪村さんに、僕はわざ
とにじり寄っていく。
「その、やっぱり脱ぐんだなぁって思って……」
うん、脱ぐよ。それで君の事ももっと脱がすから。
答える代わりに既に着崩れた服に手を掛ける。触れた先で雪村さんがビクリと肩を揺らした。
もう遅いよ、雪村さん。怖じ気づくなら僕になんか構わなきゃ良かったのに。
情をかけず、さっさと僕を帰らせりゃ良かったのに。
無言のまま上着の前を開き、下ろすように剥ぐ。現れた肌は白く、何の跡も無いその胸元に食
らいつこうとしたら、雪村さんから待ったが入った。

557 :
「あ、あの、電気!電気消そうよ!」
「……嫌だ」
「えっ?け、消さないの?」
真っ赤な顔でワタワタする雪村さんの提案を却下すると、雪村さんは更にワタワタし始めた。
「あ、あれ?氷室さん、明るくして顔見るよりも、暗い所で体楽しむ派じゃなかったっけ??
あ、別に私、顔にも胸や腰にも自信がある訳でもないけどさっっ」
何だソレ?雪村さんは抜群にスタイルが良い訳じゃないけど、卑下する程悪くないよ。それに
他の女とするなら顔より体だろとか思うけど、雪村さんに限っては正直どうでも良いんだ。
「いいよ、別に。雪村さんなら」
「え……?」
「雪村さんの胸が真っ平らでも、くびれの無い寸胴でも、大根以上に太い足でも、ゾウみたい
に足首が無くても。それこそ、カメに戻ったっていい」
それくらい僕は雪村さんが好きなんだけど、伝わってないのかなぁ?
「いやぁ……カメに性欲覚えたら変態ですよ?それより電気……んっ!」
返事が面倒になり、不服そうな雪村さんの口を一方的に塞いで言葉を奪う。
もういいよ。変態だろうが変人だろうが、君が傍にいてくれるなら。
ブラジャーのホックを外し、さっきは辿り着け無かった胸元に舌を這わす。気のせいかもしれ
ないけど、その肌からは甘い匂いがした。
「あっ、んん……っっ」
柔らかい乳房を掴み揉むと、先端の突起が指にあたる。その突起を舌で転がし、軽く噛み、は
たまた指で摘んだりして執拗に弄くる。
一通り胸を堪能した後、僕は雪村さんをひっくり返し背後からかかえ抱いた。布団から浮いた
身体の下の、グシャグシャになったスカートを捲くし上げ、秘所へと手を添える。そこは布の
上からも湿っており、手を入れて直に触ると雪村さんの身体が跳ねた。
「あっ……!」
濡れたそこは指でかき回すと、ぐちゅぐちゅといやらしい感触がした。刺激に震える雪村さん
の身体が徐々に沈む。僕は首筋やうなじに唇を落としながら、差し込んだ指の数を一本から二
本へと無理矢理増やしていく。熱い肉壁は指にねっとりと絡みつき、中々広がらない。
ああ、そういえば雪村さん、処女だもんな。
沸騰しそうな、まともじゃない脳味噌でぼんやりとそう考える。それから力の抜けた雪村さん
から、服も下着も剥ぎ取った。僕も着ていた物を全部脱ぎ、雪村さんを引き寄せ直す。
裸で抱き合うのは邪魔な布切れがある時とはまた違う感覚だ。足と足が絡み合い、勃起した僕
の熱の塊が雪村さんの肌に直接当たる。それが気になる雪村さんが不安げな顔を向けたけど、
そんなものは無視した。最初に布団に押し倒した時のように身体のそこかしこに手を伸ばし、
雪村さんが感じそうな所を撫で上げる。
ざああっと強い雨音がふいに耳につき、我慢できずに漏れる雪村さんの嬌声と混ざり合った。
雨は僕等を隔離し、世界に二人だけしかいないような気にさせる。それが倒錯感を呼び、僕を
益々高ぶらせる。
まだだ。まだ、足りない。
「やっ!ひ、氷室さん、そこ……っっ!」
汚いからやめて。そう嫌がられると余計に見せつけたくなる。僕は雪村さんの両脚を持ち上げ、
目に入る位置でその蜜壺を舐め始めた。クリストスに吸いつき、膣の中の愛液滴る肉を味わう。
止めさせようと僕を力の無い手で必に抑えるけど、それすらも僕を煽っているのだと雪村さ
んは気づかない。やがて僕の頭に引っ掛かっていた雪村さんの手がずり落ちた。見れば目は恍
惚と潤み、開いた脚の間はぐっしょりと濡れ、纏う物の無い肌は色欲で上気している。
背中がぞくりとした。
普段の雪村さんからは一番遠い、“淫猥”って言葉が浮かぶ。血液が下半身に一挙に集まり、
膨れた僕の物から先走りの精液が染み出した。どこの盛った猿だよと自嘲が出たけど、もう、
早くに繋がる事しか頭に無くて、雪村さんの陰部に当てて中へと挿れる。
途端に雪村さんの身体が硬直した。
眉をひそめ、苦しく声を漏らし、僕からの痛みに耐えようとしている。
酷い事をしてる自覚はある。
ここまでしておいて何だけど、本当はもっと大事にしたかった。こんな風になし崩しに抱くな
んて、考えてはいなかった。だけど今は、身体が先へ進みたがるのを止められない。先端に続
いてくびれの部分まで挿れ、更には初めてを経験中の相手に根元まで押し込める。
雪村さんの中は案の定狭かった。
きつくて、熱くて、挿れただけなのに意識も何も持っていかれそうでヤバい。

558 :
「あ…、あの、終わった……の?」
挿入したまま暫くじっとしていたら、雪村さんが声を掛けてきた。終了と勘違いした声色には
ちょっと安堵が混ざっている。一方の僕から出たのは苦笑いだ。
ごめん、雪村さん。これからなんだ。
「っっ!あっ、んぁっっ!」
最初はゆっくり、徐々に早く。腰を使って中をかき回し、突っ込んだ肉棒を抜き挿しする。
「やぁっ……あぁっ、あぁんっ」
喘ぎ出る声は痛みよりも快楽が勝り始めた。無意識に揺らす雪村さんの腰の動きが、僕の雄を
締め付ける。口からは途切れ途切れに僕の名前が零れ落ち、こちらは僕の心を締め付けた。
興奮と歓喜と背徳感とで身体中が痺れる。こんな快感を僕は知らない。
セックスって、こんなに気持ち良かったっけ?
離したくない。もっと、もっと近くにいたい。
夢中になって唇を合わせ、今まで以上に強く腰を引き寄せた。
「ひぁっ、あっ!あぁぁ……っっ!!」
引き寄せた勢いで中が一層に締まる。甲高い嬌声と共に痙攣し、雪村さんがイッた。同時に僕
も、雪村さんの奥で射精して果てる。

559 :
「……。」
繋がったままの雪村さんを腕に収め、僕は動くどころか暫く声も出せなかった。ようやく身体
を離し、雪村さんから物を抜き、僕は思わず眉をしかめた。雪村さんの腿に流れた血が布団を
汚し、膣から出た精液にも同じ朱色が混ざっていたからだ。
受け入れてくれた喜びに、傷つけた罪悪感が覆い被さる。ティッシュで軽く後始末をし、重く
なった胸の内を吐き出すように息をすると、雪村さんが意識を戻してもぞりと動いた。
「……平気?」
汗で顔に張り付いた髪を払ってあげると、雪村さんはこくりと頷いた。それからハッとして一
気に顔を赤くし、何か掛ける物をくれと要求してきた。電気が煌々と付いているのに全裸のま
まなのは、流石に正気だと耐えられないらしい。余りの慌てっぷりに何だかこっちまで恥ずか
しくなり、落ちていたタオルケットを拾って急いで掛ける。
「雪村さん、その……ホントに平気?」
もう一度聞くと雪村さんがまた頷いた。タオルケットをグルグル巻き、真っ赤な顔でコクコク
頷く姿は滑稽で、ついクスリと笑って……何だか無性に切なくなって、もういいやって思った。
雪村さんさえいれば、僕はもうそれでいいや。
そう本音をぼそりと漏らしたら、今度は雪村さんが切なそうな顔をした。戸惑いがちに沈黙し、
その後で僕に尋ね返す。
「氷室さんこそ、もう平気……?」
神妙に訊く雪村さんに、僕はドキリとした。返事を言い淀んでいると、「あのさ氷室さん?」
と、言葉を続けてくる。
「私は、氷室さんが好きだよ?他の誰でもない、今ここにいる氷室さんが私は好きだよ?」
「そんでそれはお父さんお母さんも同じで……だから、放っとけなかったんじゃないのかな?
あの男の人がお墓で安らかに眠っているか、確かめたかったんじゃないのかな?」
言葉を選びながら、雪村さんが僕の親の話を蒸し返す。やめてくれと言いたかったけど、何故
だか出来なかった。黙るだけの僕に、雪村さんは意を決したような表情で口を開く。
「だってあの人は……氷室さんをくれた人だから」
お父さんとお母さんに、大事な大事な氷室さんをくれた人だから。
話を終えた雪村さんを前に、僕は堪らず顔を俯かせた。引き結ぶ唇が震え、喉の奥が熱くなる。
ダメだ。我慢しろ。
そう自分に言い聞かせるけど上手くいかず、やがてぼたりと涙が落ちた。嗚咽こそは出なかっ
たけど、みっともなく鼻水をすする音は雪村さんにも聞こえたに違いない。
ホントは、わかっていたんだ。
父も母も、僕を裏切った訳でも、傷つけたかった訳でもない。
なのにたかが墓参り一つで、何故僕は憤りを覚えたのか?それは結局、父や母の性じゃない。
誰でもない僕の問題だ。僕が僕自身を認められず、目を背けていたからだ。
……だけど、雪村さんは違った。
雪村さんは、僕が好きだと言ってくれた。
今ここにいる、この僕が好きだと言ってくれた。
それには僕の忌避する部分も当然に含み、そして、その思いは……父と母も、同じなのだと。
ふと気がつくと、頭の上に柔らかい何かが乗っていた。それは雪村さんの手だった。畳に押し
倒した時の掠り傷が、僕の目の端に入る。
「泣くなよ、氷室さん。頼むから……泣かないでくれよ」
じゃないと、私まで泣きたくなるじゃないか。
そう言って雪村さんは、僕の頭を撫でてきた。傷のある手で、子供をあやすような仕草で、泣くなと僕を宥めてくる。
その雪村さんの手は優しくて、本当に優しくて。お陰で僕は、もう、本当に……。

560 :
私、雪村霙が再びあのアパートへ行ったのは、引越から半月程経った頃だった。
新しい部屋にも大分慣れてきて、時間的にも気持ち的にもなんとなく余裕が出来ていたんだな。
なので氷室さんと、『どうなったかな?』という話になり、軽い気分で足を運んできた訳だ。
私が立ち退いてから直ぐに取り壊しがされたらしい。私の前のアパート……正確にはアパート
があった場所は既に更地になっていて、次に何が建てられるかを示す建築標識が立っていた。
それを見て私は思わず声を上げた。次に建つのは一戸建の、名前に覚えのない個人宅で、アパ
ートなどの共同住宅じゃなかったからだ。
「大家さん、売っちゃったのかぁ」
勿論、ここは私の土地じゃないし、持ち主だった大家さんがどうしようと自由だ。だけど売ら
れるなんて知らなくて、少し前まで住んでいた身としては……なんだか、ちょっとやるせない。
ぼんやりと空き地を眺めながら、氷室さんと繋いでいた手を無意識に握り締める。すると氷室
さんが繋がるその手を、それから私の横顔をちらりと見て、何やら話掛けてきた。
「やっぱり寂しい?」
「う〜ん、そりゃあ結構長く住んでたしね〜」
「出来たら戻りたい?」
「う〜ん、でもせっかく今のアパート借りたしなぁ〜」
「ところで生理は来た?」
「う〜ん、お陰で昨日から腹痛くってさ〜………は?」
何となく流れで答えてしまったけど、訊かれた事をようやく理解して私は目を点にした。思わず
振り返ると、氷室さんは「そうか、生理来たかぁ」と呟いていた。
「えーと……氷室さん?」
「何?雪村さん?」
いや、「何?」はこっちのセリフなんですけど。何を唐突に聞いてくんのさ。ここ、普通に人
の通る、普通の道端ですよ?そこで生理があったかどうかなんて女の子に聞くかね?
失礼なヤツだ抗議をしたら、氷室さんはなんだかしれっと返してきた。
「だってあの時、避妊しなかったから」
「えっ、あの時って……えっ?」
「だから、ここで雪村さんを抱いた時」
「……。」
「あの時の雪村さん、すごく卑猥でいやらしかったよね」
「……。」
うっひゃあぁぁぁああ〜〜っっ!!

561 :
アパート跡地を指差され、ぐわぁあっっ!と、一気に顔が火照るのが自分でも判った。
ひ、ひ、氷室さん??アンタ突然何言ってんの?
あ、あの時の事なんて今まで全然、それこそおくびにも出さなかったよね?お陰で最近は結構
忘れてたのに!なのに、なしてここで、しかもそんなサラッと言う?そりゃあの部屋はもう無
いけどその跡地で、当の本人がそんな風に言ったらもう……っ!!
肌の感触とか声とか熱さとか我を忘れた取り乱しっぷりだとか!自分だけど自分じゃないよう
な有り様が、ハッキリクッキリ脳裏に蘇る。それがもう、ねるくらいに恥ずかしい。
そりゃあ確かにエッチして子供が出来たら大変だけど、その確認も大事だけど、でもなんか残
念そうに『生理来たかぁ』とか言っちゃってるし、つーか、つーか……。
そもそも避妊しなかったのかよ?!!
……いかん。
なんだかパニクってしまって、脳みその中がグルグルいってる。
でもそんな私を気遣うなんて事はまるでなく、むしろ氷室さんは追い討ちを掛けてきた。
「あ、でも結婚はしようよ」
「……。」
「学生結婚も捨てがたいけど、やっぱり大学卒業してからかな」
「……。」
「まあ、これで子供が出来てたら直ぐにだったんだけどね」
「……。」
何ソレ?日本語の文法おかしいよ?接続詞がなってないよ?
『“でも”結婚“は”しようよ』って、今までそんな話してたっけ?
もうダメだ。許容量限界突破。ついて行けん。
……ぐらり。
「わっ……雪村さん?」
唐突過ぎる展開にヘタれてしまい、繋いだままの手に氷室さんが引きずられて少しよろけた。
座り込む私を覗き込み、大丈夫?と声をかけてくる。
うんまあ、大丈夫。あまりにも予想しなかった事を突如言われて、ビックラこいただけだから。
別に具合が悪いとか、そういうんじゃないから。ていうか、ていうか……。
「ていうか、ホ、本気かよ?氷室さん?!」
ホンキかよ?ホンキかよ?ホンキかよ??
自分で言ったフレーズが、頭の中でエコーする。
あれ?少し言葉は違うけど、こんな反応、私は前にもしたような?しなかったような?
氷室さんが同じように思ったのかどうかは私は知らない。けれど聞いた氷室さんはちょっと目
を丸くし、それから「本気だよ」って私に笑った。
それもとびきりの“春さん”の顔で、本当に嬉しそうに笑ったんだ。

562 :
―――数年後。
リリリリリン……ッッ。
ガチャッ。
「はい、氷室です」
『あ、もしもし氷室くん?久しぶり〜!高校の時一緒だった山下だけど、覚えてる?』
「ああ、久しぶり。急にどうしたの?」
『あのさ、氷室んとこには高校の同窓会の葉書来た?俺、それの幹事なんだよね』
「葉書ならこの前受け取ったよ。僕も行こうと思ってる」
『あ、ホント?じゃあ参加決定で〜』
「他のヤツとか今何してる?もう連絡きた?」
『いや、これから。でも大抵は俺みたいに就職して働いてんじゃね?流石に結婚とかはまだ早
すぎるだろうけど』
「へえ。山下くん、就職出来たんだ。それはおめでとう」
『出来たんだって……何その酷い言い方、全然嬉しくないんだけど。あ、そうだ。そういや氷
室、雪村さんが今どうしてるか知らね?』
「雪村さん?」
『うん、葉書出しても宛先不明で戻ってくんだよ。お前、高校の時付き合ってただろ?』
「山下……」
『え?何?』
「残念ながら“雪村”さんは、もういないんだ」
『……へ?い、いない?どういうこと?』
「だから“雪村霙”という人物自体が存在しないんだ……もう、この世の何処にも」
『……。』
「……。」
『何言ってんだよ……う、嘘だろ氷室?マジで信じらんないんだけど。まさか雪村さんがん』
「あ、そうだ山下くん」
『えっ?』
「宛先不明のその葉書、ウチの住所で出し直しといて」
『……は?』
「今度は“氷室霙”の名前で。それなら届くから」
『えっ?…………えええっっ?!!ちょっ、お前、何時??!』
「じゃ、それで宜しく」
ガチャンッ。
ツー、ツー、ツー。
『……。』
『ひ〜む〜ろ〜く〜〜ん?!!』


とりあえず、おしまい。

563 :

――――森の主とは、ましろのカメ。
未だ冬の気配の濃い常緑樹の森を、氷室冬騎くんは歩いていた。幾分か歩いた後で立ち止まり、
下を向いて声をかける。
「主様、こんにちは」
久しぶりだね、と氷室くんが挨拶をしたのは、年老いた白いカメだった。但し、普通のカメで
はない。人語を解し、幾百の歳月を生き、多くを見聞きし……少しを語る。そういう不思議な
カメだった。
「あ〜お前様か〜〜久しいの〜〜〜」
主様は一つまばたきをし、くわえていた煙管を外してそう声を上げた。それからその首を老い
たカメらしく、ゆっくりと氷室くんの方へと伸ばし向ける。
「今日は〜どうした〜〜?嬢ちゃんも〜おらんようじゃが〜〜?」
「ちょっと学校に用があってね。雪村さんももうすぐ来るよ。今日はこの森で待ち合わせで、
僕は早めに着いただけから」
そうか〜〜と返事をすると、再び煙管をくゆらせ始める。その主様を氷室くんは、ちょっと面
白い物でもでも見つけたような目で眺めやる。
「ん〜〜?ワシの顔に〜何かついとるかの〜〜?」
視線に気づいた主様が言うと、氷室くんはクスリと笑った。別に何もついてないよ、と、なる
べく主様に目線を合わせるように、荷物を抱えてしゃがみ込んだ。
「僕一人でも主様が見えるんだと思ってさ。雪村さんがカメになる前なんて、主様の存在すら
もわからなかったのに」
「そら〜〜あの頃のお前様は〜荒んどったからの〜〜」
指摘されて氷室くんはつい声を出して笑った。『荒んでいた』など言われても、笑って肯定出
来てしまう自分がいる。それがとても心地良くて、機嫌良く頬を綻ばせる。
「あのね主様、話があるんだ」
改まって何かと視線を向ける主様に、氷室くんはずっと言いたかった事を切り出した。
「僕達、結婚するんだ」
なんと?!と、主様が驚嘆して目を見張った。この白いカメらしくない反応の早さに、どれだ
け驚いたかが伝わってくる。
「ついにの〜〜嬢ちゃんと〜祝言をの〜〜」
主様の姿が見える人間は滅多にいない。何十年、時には百年単位でいるかいないかだ。
なので、見える人間がいるのは嬉しい事で、それがここ近年は二人もいる。しかもその二人が
晴れて夫婦になるとなれば、感慨もひとしおだ。
「うん。大学も卒業するし、就職も決まったしね。今日はその報告を校長先生にしにきたんだ。
でもその前に、主様には先に伝えたくてさ」
ホントは雪村さんと一緒に言いたかったんだけど、待ちきれなくなっちゃったよ。
そう嬉しそうに告げる氷室くんに、主様もまた嬉しそうに目を眇めた。
「婚儀の式は〜どうする〜〜?何時やるんじゃ〜〜?」
「式は検討中で、どうするかまだ決めてない。でも籍の方は、直ぐにでも入れるつもりなんだ。
雪村さんは“雪村霙”から“氷室霙”になるんだよ」
「あ〜〜なんとまあ〜〜どっちも寒そうな名前じゃの〜〜」
悪気無く言う主様に、氷室くんは思わず吹き出した。大して面白くもない冗談なのにツボに入
ってしまい、中々笑いが引かない。引かないどころかそれは思い出し笑いに繋がり、益々愉快
そうな顔を氷室くんはした。

564 :
「そういえば改めてプロポーズした時、雪村さんに頼んだんだ。心変わりだけはしないでくれ
って。そしたら、雪村さんも僕に言うんだよ。自分を置いて先に逝かないでくれって」
「それでもうグッと来ちゃったんだけどね?でも僕としては、雪村さんが僕より先に逝くのも
嫌だなぁって思ってさ。そしたら……雪村さん、何て言ったと思う?」
はて?という表情の主様に、氷室くんは楽しげに笑う。
「じゃあ、イチニのサンで一緒にのうって。それも自とかは嫌だから老衰で、孫や子供に
囲まれて、畳の上で一緒に逝こうって。そんなの出来る訳ないのにね」
「そりゃあ〜嬢ちゃんらしいの〜〜」
主様は微笑ましさを感じながらも、少し呆れ気味に笑った。話の人物をよく知る主様には、ど
んな様子だったかが容易に想像出来た。
「うん。もう、参っちゃうよ。可愛いすぎてさ」
終始機嫌良く、頬が赤らむ程楽しそうに笑っていた氷室くんだが、暫くするとふいに黙り込ん
だ。機嫌の良さを越えて、少しばかり感極まった表情で抱える自分の膝にうつ伏せる。
「……主様、ありがとう」
「僕と雪村さんを引き合わせてくれて、本当にありがとう」
くぐもり、もしかしたら泣いているんじゃないと思える声が聞こえた。主様は片眉を僅かにひ
そめ、氷室くんをじっと見た。やがて口元をむにりとさせ、コンッと煙管を鳴らして灰を落とす。
「なぁに〜〜ワシはな〜んもしとらんよ〜〜」
なぁ〜んもな〜〜。
のんびりと答える主様に、氷室くんは照れくさそうに顔をもたげた。それから何かに気づき、
ひょいと背筋を伸ばして遠くを眺める。
「雪村さんが来たみたいだ」
言うと同時に氷室くんは立ち上がろうとした。と、その時。
ガタタッ!
「うおぉう?!」
「あ……」
足元に注意を向けてなかった氷室くんは主様に足を引っ掛け、更には危うく躓くところだった。
「ご、ごめん主様!大丈夫?」
「あ、危なかったの〜〜けりつまづいたら〜どうするんじゃ〜〜〜」
カメになるとこじゃったぞ〜〜。
流石に氷室くんも焦ったが、それ以上に焦った主様が額にかいた汗を拭う。
「ふい〜っ!間一髪じゃった〜〜……ん〜ん?」
「こりゃ〜なぁにを笑っておるんじゃ〜〜?」
こんな時にニヤニヤと笑う氷室くんを見つけ、主様は非難めいた声で言った。カメになるか、
人のままか。さっきはその瀬戸際だったのだ。誰のせいでこんな心の臓に悪い思いをしている
かと、文句も出したくなるのも当然だろう。だけど氷室くんは、変わらずににやけるばかりだ。
「いや……僕がカメになったら、今度は雪村さんが助けてくれるのかなって」
予想外の返答に主様の目がしばたき、その後で心底呆れたように鼻を鳴らす。
惚気おって。言外に伝える主様に氷室くんはしたり顔を浮かべ、意味深な、口角を引き上げた
だけの笑いを作った。
「ほれ〜〜嬢ちゃんが〜来たんじゃろ〜〜?」
とっとと立て。せっつく主様に頷き、氷室くんがようやく立ち上がる。
「雪村さん!」
……待ち人、来たれり。
白い息をしながら嬉しそうに近づいてくるのを、氷室くんは手を振って迎えた。その後は見知
り馴染んだ顔を並べ、暫し話を弾ませる。やがて人である二人は頷き合い、老いたカメ一匹に
別れを告げた。それから穏やかな笑みを浮かべて手に手を取り、冬の森を進んでいく。
――――森の主とは、ましろのカメ。
冬も深き常緑樹の森の中、二つの影が並び歩く。
寄り添い、微笑み、ゆらりゆらりと道を往く。
遠く離れるその人影を眺め遣り……主様、にっこり笑うだけ。


ホントに、おしまい。

565 :
以上です。
やっぱり2ch投下は、改行とかレスの文章量とかが難しい。

566 :
。・゚・(ノД`)・゚・。
ありがとーございます!
大好きな話で…たまたま久し振りに覗いたらちょうど投下直後なんて感激だー。
長い長い素敵なお話乙でした!

567 :
>>565
大作GJ
エロのみならず、話の整合性をきちんとつけているところが素晴らしい
寒々とした名前の二人だが、きっと地中海性気候のような家庭を営んでいるのであろう
読み手にとって、その様子が手に取るように想像できる、心温まるSSであった
そして、今回もそういう役回りの山下君に乙と言いたいw

568 :
>>565
GJ! GJ!
良かったよ〜、ちょっと泣いちゃった
特に、雪村さんと結ばれた後に、泣いちゃった氷室くんのくだりが好きだ
山下くんが相変わらずなのも良かった
良いSS読ませてくれて、どうもありがとう

569 :
待ってたよーGJ!
雪村さんにも家族ができてよかったね。おめでとう!
私も泣けちゃった。
長いとかなんて気にならないよ。
文体も原作に忠実で雰囲気でてるし、とても読みやすかったです。


570 :
GJ!
いいお話ありがとう〜!私も泣きました
山下くんの再登場には吹きましたww彼はいい奴だよね

571 :
GJありがとうございます。皆さん優しいなぁ(つд`)
山下くんの意外な人気(?)にビックリ。ついノリで書いたのですが、出して良かったw
一人称にしたせいか、氷室くんの雪村さん愛に拍車がかかったような気がします。
でも、原作でもラストで連日ケーキ攻撃とかその後の告り方とか……
氷室くんは川原キャラでも抜きん出たでろ甘っぷりだと思うので、あれくらいで良いのかなと。
スレも半分を過ぎたのにレスを大量消費してすみません。
取りあえず、書き上げて投下できてスッキリしました。
次の職人さんを切望しつつ、ロムに戻ります。ありがとうございました。

572 :
ロムに戻りますと言ったそばからすみません。
言い忘れましたが、前に少し話題に出たまとめサイト、やっぱり難しいのでしょうか?
このスレの他の職人さん方のが本当に良作揃いで、残さないのは誠に勿体ないなと。
自分じゃ出来ないくせにすみません。
あと自分の投下に話を戻して恐縮ですが、冒頭の雪村さんのアパートの漏水事故。
アレはリアルでもマジであります。ソースは自分。

573 :
ホシュ

574 :
探り探りな感じでも良いならまとめサイト作ってみたいです。
サイトは作ったことありますがSSのまとめは作ったことないので、時間かかるかもしれませんが。
素敵な作品ばかりなので、まとめで簡単に読み返せたら良いなと思います。

575 :
>>574
全裸待機してます

576 :
>>574
おながいします

577 :
>>574
ありがとうございます。
雪が降っても全裸で待ちます。

578 :
>>574
勇者現る!と思いました。
ありがとうございます。お願いします。

579 :
>>574です。
だいぶ遅くなってしまいましたが、取りあえずサイトは立ち上げました。
まだ過去スレの作品を納め始めたばかりの段階ですので、もうしばらくお待ちください。
時間がかかると思うので、どうか全裸の方は服を着てコタツにでも入って下さいw
http://kwhr.x.fc2.com/
6スレ目を977レスまでしか探し出せなかったのですが、
978〜1000のログをお持ちの方いらっしゃいますか?
保管不要な内容でしたら、977までで放っておくつもりですが、
もし作品があったらと思い、少し心配です。
まとめ方やサイトの構成についても何かありましたら教えてください。

580 :
>>579
超乙です!

581 :
>>579
保管庫、乙です。楽しみにしています。
6スレ目の978〜1000には作品はUPされていませんが、一応ログを。
http://houka5.com/yuukan/kawahara/threk/1153839531-2.html
そしてサイトにも、710までしかUPされていないみたいですが、
容量の関係でしょうか?
あと、このスレも収録してもらえると嬉しいです。
元スレにあたるスレで、194で川原スレが立っていますし、
途中に川原作品もUPされているので。
http://houka5.com/yuukan/kawahara/threk/kawa00.html

582 :
>>581
710までしかUPされていなかったのは、単に私のミスのようです。
失礼しました。
元スレにあたるスレもせっかくログを頂けたので収録しますね。
ご協力ありがとうございます!

583 :
大天使様のご降臨だ!
ありがとうありがとう超乙です!

584 :
ラオウ様より強いケンシロウ様です!
アンシャン・レジームの終焉ですわ!皆様皆様皆様……!!
サイト拝見しました。
まさか過去スレのものまで収集して頂けるとは感無量です。
お陰で正月休みの楽しみが増えました。本当にありがとうございます。
では保管庫管理人様はじめスレの方々、良いお年をお迎え下さい。

585 :
新年の挨拶と保守を兼ねまして、「あけおめ、ことよろ」。

586 :
「この『かぼちゃおもち』ほんとにおいしいね。お汁粉に入れても焼いてもいいし、もぎゅもぎゅ……
いつもこうして贈って下さったり、もぎゅ、柚子ちゃんのご家族には本当にもぎゅもぎゅ」
「……でも5つ目は食いすぎだろ先生。いくら正月だからって毎日食べるばっかりで、もぎゅ、太るよ?」
「こんな風にのんびりと過ごすのが日本のお正月の良いところでしょう。それに」
エセルバート・ロレンスの手がふいに、柚子のみつあみの後ろに伸びた。
「忘れてはならない慣習に『姫はじめ』もありますね。食べすぎで身体がなまりがちな折に、
愛する事でそれを解消も出来るなんて、素晴らしい」
「一体何回目の『はじめ』だ……単なる口実じゃないか。とゆーかほんとに日本文化が好きだね、ん」
「勿論。大好きな柚子ちゃんの国だしね」
すべすべのうなじを優しく撫でつつキスをする。舌をゆっくり絡ませ、一度軽く顔を離す。もう柚子は上気して
頬を桃色に染めていた。
「お正月休みは今日までだね、エセル……ね、寝室に」
長身の夫は小柄な妻をひょいと抱え上げて、ベッドルームに向かった。

587 :
以上、お年賀と保守を兼ねたような小ネタでした
寸止めですみません

588 :
乙です
餅は餅でも、ロレンス先生の好きな餅は柚子さんの餅肌なのだなと納得

589 :
hoshyu

590 :
まだSSになってないカップルいるかな、と言いつつ保守

591 :
陸の食欲魔人カップルは、ご本人たちのSSがないね

592 :
ゲートボールはどうだっけ

593 :
確かあったよ
まとめにも載ってた

594 :
まとめサイトを覗いたら作品数が増えててビックリした
管理人さん、ありがとうございます〜

595 :
ゲートボールは誰になるんだ。女子高生とヤクザ?
まとめに見当たらなかったですが。。。

596 :
ごめんなさい…orz
確認したら、貴船さんと貴島さんを間違えて記憶していました

597 :
貴島さんって葡萄月のさとるくんかぁ
ゲートボールならば、黒木と祐子もありだね
っつか確認にまとめサイト見に行ったら、本当すごく増えてる!
ありがとうございます〜〜〜

598 :
おおおこんなスレがあるとはw
きんしんそーかんになっちまうが
一臣殿下と史緒さんのCPが好きだ
一臣殿下の愛情表現って原作でもかなり斜め上っていうか
シスコンの域超えてると思うんだ
だがエロがかけねー
誰か書いてくれw

599 :
>>598
まとめ読めやドアホが。

600 :
>>590
かぼちゃ計画も無いね、篁くんと羽ちゃん

601 :
ほしゅ

602 :
hosyu

603 :
気づけばまとめサイトに更に作品が!
管理人さん本当にありがとおー

604 :
俺、不破×佐倉を書くから、誰か陣内×山吹を書いてくれ……^o^

605 :
かなり時間かかりそうだけど…陣内×山吹やってみようかな

606 :
保守

607 :
保守しとく

608 :
ホシュホシュシュシュ

609 :
ほする

610 :
甲子園の空に笑えの中に収録されてた、
メロウイエローバナナムーンだったか、
お月様が笑っただかいう短編の主人公カップル結構好きなんだよな
ユーベル・クラインとエリアだたっけ
ヌートリアム人とかメルルーサとか、いろいろ覚えてるのに、タイトルだけが出てこない

611 :
メロウ・イエロー・バナナムーンで合ってるよ。
まだ少女漫画さが濃いめというか初々しくて、結構いいよね。
こん位の初期カップルSSはまだあまり無いんだな。

612 :
おお。
うろ覚えだったのに合ってたのかw
その初々しさが可愛くてなんだか気に入ってるんだ。
コンピューターに育てられてソーセージと間違えてたらこに齧り付くユーベルさんとか
思い込み激しくて行動力ありすぎるエリアさんとかいろいろ美味しいw
この二人は無事に初夜を迎えられるのかしらとニヤニヤしちゃうんだよね
最近のだけじゃなくて、初期カプのSSも増えてくれると、このスレの幅も広がって良いよねぇ
ちなみに自分はエロがかけなくて形にするのを挫折したorz


613 :
>>612
エロが無くても二人がイチャコラできゃっきゃウフフな話でも良いから読みたいなー。
個人的には『花に〜』も増えて欲しいよ、花乃子ちゃんカワユス


614 :
今更ながらに自分のIDがUFOだったことに気付いた
浮いたレスにならんでよかったw
>>613
じゃあ投下できるものが出来るかどうかわからないけど、頑張って形にしてみるよ
出来たら投下してみる

615 :
>>614
紅白まんじゅうもぎゅもぎゅしながら楽しみに待ってるよ、応援してる〜(・ω・)ノシ

616 :
>>614
楽しみにまってますw

ところで最近、pixivモバイルという携帯サイトで投稿された同人小説漁ってるのだけど、
何気に「川原泉」で検索かけたら飛島くんと蕨さんを扱ったのがあった。
どーせないよな〜とか投げやりな気持ちだったので凄いビックリ。
しかも作品が短いながらもクスリと笑える自分好みのもので、なんだか大変嬉しくなりましたですよ。
ここのスレでも気に入る人多いんじゃないかな?
2ちゃんからのリンクでサイトが上手く見れるかわからないからurlは貼らないけど、
興味があったら是非探してみて下され。オススメです。

617 :
2chましてやエロパロ板でそういう話は、宣伝に見えかねないし相手に迷惑かも…。

618 :
>>617
あ、そうか。
嬉しかったので宣伝とか迷惑とかまで気が回らず考えず、勢いでつい…。
以後は気をつけます。言ってくれてありがとう。

619 :
ほす

620 :
hosyu

621 :
捕手

622 :
ほしゅ

623 :
ホシュ
敦子様、エロパロでは原作以上に登場&お断りされとる。

624 :
ho

625 :
捕手の嵐だね

626 :
hosyu

627 :
こんなスレがあったとは…
書き手さんは複数いるの?メイプルの監督コンビ話が面白かった。
川原キャラが乙女モードになってるのにドキドキしてしまう

628 :
てす

629 :
おお書き込めた!上げてしまってごめんなさい。


630 :
ho

631 :
てす

632 :
不破先輩と佐倉さん投下します。
エロなしです。

633 :

 佐倉さんは困っていた。
 秋にダメになってしまった自分の制服が、もう師走だってのに未だに新調出来て
いないのだ。
 これというのもすべては制服を注文した洋裁店の手落ちである。
 何でも注文を3週間も忘れていたんだと。
 いやそれを責めようというのではない。
 向こうはすべて非を認めて謝ってくれたし、お詫びに割引もしてくれた。
 冬休み前には完成するというし、それはそれでいい。
 しかし困った。困ってしまった。
 この切羽詰まった問題に、佐倉さんの背は、思わず丸まってしまうのである。
「佐倉!」
 猫背でとぼとぼと登校していた佐倉さんは、その声にギクっとした。
 一瞬気づかないフリして行ってしまおうかと思ったが、しかしそれでは
下僕としていかがなものか。
「お、おはようございます、不破先輩」
 思い直した佐倉さんがへらへらと愛想笑いを浮かべながら挨拶を返すと、
なんと先輩は不審げにこちらを見ているではないか。
「…… お前、最近元気ないか?」
「え?」
「歩き方に覇気がない」
「い…… いえいえ、そのようなことは決して〜」
「それにお前、俺を避けてるだろ」
「ままま! まっさか!!!!!」

634 :

 冷や汗を垂らしながら否定してみたものの、実はその通りである。
 ここしばらく、佐倉さんは不破先輩を避けている。
 もちろん『ピンポーン!』なんて言えるはずもないので、佐倉さんはジタバタと
全力で否定した。
 そんな佐倉さんに、不破君の態度は少々軟化したようだ。
「ま、いい。ところでこれ……」
「ぅおう!」
 思わず佐倉さんは我を忘れて感嘆の呻り声をあげた。
 不破先輩が取り出したのは、佐倉さんがもう半年前から楽しみに楽しみに
していたPCゲームではないか。
 そーか、もう発売されたのか!
「か、貸して下さるんですか!?」
「フン、喰い付きがいいな」
 ニヤニヤして見せびらかしながら、不破君の機嫌は満足の域に近づきつつある。
「借りたいなら、今日俺のうちに来い」
「…… ええ?」
「なんだ、嫌なのか?」
「いいい、いえいえ、滅相もない! 是非!! お伺いさせていただきますです……」
「じゃ、待ってるぞ」
 そう言ってスタスタと行ってしまう不破先輩の背を見ながら、佐倉さんはまた
思わずため息をついてしまうのだった。

635 :

 困ったなあと思いつつ、あっという間に放課後である。今日は金曜日だった。
 寮監から許可をもらい、佐倉さんは女子でありつつ学ランを来て不破先輩の
家へ行く。
 学ラン姿なら寮監の許可が下りやすいのである。
「こんばんわ。おじゃましまーす」
 佐倉さんが背を丸めて入っていくと、また不破先輩は不審がった。
「お前、どっか悪いのか?」
「いやいやー、そんなことないですよー」
「目が泳いでるぞ」
「気のせいです、ええ、気のせい気のせい」
 へらへらしつつ少々挙動不審な佐倉さんは、早く話を終わらせたかった。
「あのーこれ、うちの実家から」
「お、悪いな」
 海産物問屋の佐倉さん家から届いたのは、またしても明太子だった。
 明太子パスタは不破先輩の好物でもある。
「でも俺作れないんだよなー。明太子パスタ美味いんだよなー」
 わざとらしい先輩の独り言を、今日の佐倉さんは作り笑いでスルーした。
 なんとなく、気まずい『間』が空いてしまう。
「…… ま、いっか。ほれ、これ」
「おお、ありがとうございます!」
 何度もお礼を言いながら、佐倉さんはそそくさと後ずさりで玄関に向かう。

636 :

「佐倉…… お前、本当に大丈夫か?」
「な、何がでしょう」
「何がじゃないだろ。いっつも背丸めてトボトボ歩いてるし、俺のことだって
 避けてる。誤魔化すな」
「…………」
 口調が、マジだ。佐倉さんは背を丸めたまま、上目使いに先輩を見る。
「俺、何かしたか?」
「いえ、違います!」
「じゃ心配事かなんかあるのか?」
「…… え、ええ、まあ……」
「それは、俺には言えないことか?」
 問い詰められて、佐倉さんは押し黙るしかない。
「俺は…… そんなに頼りにならないか?」
 うっ、と思って、佐倉さんは思わず不破先輩を見上げた。
 その表情も、マジだ。
(先輩、本当に心配してくれてるんだ)
 いつもは俺様な不破先輩の不安混じりの視線が、佐倉さんの心にスカッと刺る。
 思わず、必で訴えた。
「違います、そんなことないです! 私、先輩のこと本当に頼れる人だって、
 いつでもそう思ってます!!」
「…………」
 その言葉と勢いに、今度は不破君が絶句してしまった。少々顔も赤くなって
しまったかもしれない。
 しかし必な佐倉さんがそこまで気づくことはなかったが。

637 :

「あの、ご心配かけてすみません。制服さえ出来てくれば……」
 つい口を滑らして、佐倉さんはしまったという顔をした。
「制服? 男の制服着てることで、誰かからなんか言われてんのか」
「いえ、そういうことではないんですが…… と、とにかく、来週にはもう
 解決することですし……」
 モゴモゴ言いながら、佐倉さんは気のせいか顔が赤いようにも見える。
「そうか。わかった」
「はい?」
「来週には、佐倉は元の佐倉に戻るってことでいいんだな?」
「…… はい! そういうことです!」
 ようやく先輩が納得してくれたようである。なんだが口元もほほえんでいる
ようである。
 そんな不破先輩の様子に、佐倉さんも思わずほほえんだ。
「じゃ、これで。どうもありがとうございました」
「待て」
「?」
 もう玄関で靴を半分履いていた佐倉さんを、不破先輩は呼び止めた。
「お前、冬休み帰るの、いつだ?」
「あ、えーと…… 24日ですけど」
「じゃ、23日に、一緒に映画見に行くか?」
 そういいながら不破先輩が取り出したのは、この冬公開の『ゾンビ・ブルー』の
チケットではないか!

638 :

「初日だ。舞台挨拶もあるぞ。監督、来日するらしいな」
「な、なんだってーーーーーー!?」
 あ、あの監督を生で見れるなんて!!!!!
 おおおおおおおおおおお…………
「いやったぁああああああ!!!!」
 
 興奮のあまり、思わずバンザイしてしまったのがいけなかった。

 ぶちっっっっ!!!!!!

 学ランの胸元のボタンが音を立てて弾け飛んでいくのが、佐倉さんの目に
スローモーションのように映っている。
 その向こうには、目を丸くしいる不破先輩の姿が見えた。

「……きゃぁっ」
 変な間を置いて思わず両腕で胸を隠したが、その仕草もあげてしまった叫び声も
ミョーに女っぽいと思い当たって、佐倉さんはもう何が何やら、耳まで真っ赤である。
 いや、そりゃ佐倉さんだって、学ランの下にシャツくらい着ている。
 着ているんだが、この際それはあまり問題ではないのではなかろうか。
「……………………………… しっ、失礼しますっ!!!」
 そのまんまバタバタと、真っ赤な佐倉さんは逃げ出してしまった。
 後には、同じく耳まで真っ赤にした不破先輩が、硬直したまま取り残されている。

639 :

 そう、佐倉さんの困り事とは、これだったのだ。
 当初は花村君の制服がぴったりだった佐倉さんだが、そんでそれ故つい卒業まで
学ランでいよっかなーなんて思っていた佐倉さんだが、ここんとこ、そんな
佐倉さんの身体に『第二次第二次性徴』と言うべき変化が起きていた。
 腰回りは緩いのにお尻がきついとか、胸のボタンを留めるのが少々苦しいとか、
いろいろ悩まされていたのである。
 そんなわけで背を丸めてとぼとぼ歩いたり、お尻や胸元がキツキツなのを
見られたくなくて不破先輩を避けてみたりと、佐倉さんもいろいろ大変だったんで
ある。
 今回の件で佐倉さんが学んだこと。
 いくら身長体重が同じであろうと、男女にはやっぱり、性差がある。

 週が明け、月曜日である。
 佐倉さんはひさかた振りに女生徒の制服で登校していたが、その姿は先週と変わらず、
背が丸まっていたりする。
 ちなみに花村君の制服は、修理し洗濯し、昨日のうちに返却済みだ。
(うおおおおお…… 不破先輩に合わす顔がねぇ……)
 その一念である。今日も学校に来たくなかったくらいだ。
 忘れようとしても忘れようとしても、あの一幕が脳裏に浮かぶ。恥ずかしい。
 なんとゆーか、今まで先輩と築き上げてきた『ご主人様とポチの関係』って
いうのと、違うだろアレ。
 まるでワタシがオンナノコみたいで不破先輩がオトコノヒトみたいで、いやいや
いやいやだからつまりその、先輩と会ってしまったら、そんなことを意識して
しまいそうで困る。

640 :

(キモいとか思われたかなー)
 そんな心配もしている。
 佐倉さんの唯一の心の頼みは、今日自分が女子の制服を着ていることであった。
 確か不破先輩は自分の女生徒姿を見たことがないはずだ。
 今日一日くらいなら、気づかれずに過ごすことができるかも――
「佐倉」
「うあっ」
 淡い期待が見事に外れて、佐倉さんはマヌケな声をあげてしまった。
「おーやっぱり佐倉だった。初めて見るな、その姿」
「いや〜、やっと昨日完成しまして〜」
 へらへらしながら退散しようかと様子を伺ったが、なんと先輩はニコニコしている
…… とまでは言えないが、明らかに上機嫌ではないか。
(と…… とにかく、キモいとは思われてなさそうだ)
 そう思ってホッとして、退散するのはやめにする。
 とりあえず、並んで歩いてみた。
「今日はいい天気だな」
「え? …… ええ、はい」
「空気も爽やかだ」
「はぁ」
 なんとゆーか、この人こんなにフレンドリーだったかなー?
 頭の隅でそんなことを思いつつ、佐倉さんはちょっと嬉しかった。
(どーやらご主人様はまだ私をポチにしてくださるよーだ)
 そのご主人様に遅れぬよう、佐倉さんはせっせと歩いている。

641 :

 ややあって、不破君がポチに話しかけてきた。
「お前、今日昼飯どーする?」
「え? はい、あの、購買で買おっかなって」
「じゃ一緒に喰おう。俺がおごってやる」
「やった!!」
 
 やっぱり不破先輩がご主人様で良かった!
 小躍りして喜ぶ佐倉さんである。

 昼休み。
 目の前に積まれた総菜パン菓子パン、お菓子にジュースに、佐倉さんは思わず
感嘆の声をあげていた。
「うわぁ〜〜…… 先輩、これ……」
「遠慮しないで、好きなもん食べろ」
「ありがとうございますご主人様!!」
 人気で普段は手に入らないメロンパンとイチゴミルクに、佐倉さんはもうニコニコ
である。
 そんな佐倉さんに、不破先輩も機嫌が良さそうだ。
「で、お前映画どーすんだ?」
「はい、行きます行きます!」
「そーか…… 楽しみだな」
「え?」
 先輩の『楽しみだな』の言い方が、なんだか優しく響いて胸にキュッと来て、
佐倉さんは思わず聞き返してしまった。
 きょとんとしたその視線に気づいて、不破君がそっけなく付け加える。
「映画が、だ」
「あ、あ〜、そうですよね」
 なんだか恥ずかしくなって、頬を赤らめながら下を向く。

642 :

(ワタシ…… ナニ考えて……)
 気まずさから、必に話題を逸らしてみた。
「そ、そう、先輩、今日はずいぶん気前がいいっすね〜〜」
「俺はいつでも気前がいいぞ」
「え、いや、そんな意味じゃなくって!…… お昼一緒に食べるのも初めてですよね?」
「ああ、そう言やそうだな」
「えーと、どうして……っすか?」
 佐倉さんの問いに、不破先輩は腕組みをして少々考えた。
「ご褒美、だな」
「へ? な、何が?」
 しかし先輩は今度の問いには答えてくれず、焼きそばパンをもぐもぐ食べている。
「ん? なんだ、もういらないのか」
「いえ、まだ食べます食べます!」
「そーか、いっぱい食え。持って帰ってもいいぞ」
「やった!」
 なんだかんだ言って、食べ物には釣られる佐倉さんである。
 デザートに○アラのマーチをもぎゅもぎゅ食べられる幸せに満足して、それ以上
深くは考えなかったのだった。

643 :

 佐倉さんは知らない。
 今日の『ご褒美』は、不破先輩の脳内フォルダに以下の永久保存映像を提供した
ことに対してである、ということを。
 やったーと無邪気に喜んだ佐倉さん。
 その瞬間学ランの(←意外に重要であるらしい)胸元がぷちっと弾けた佐倉さん。
 弾けた瞬間にソコがぷるんっと揺れたような気がしないでもない(←ここは
残念な点ではあるが、再生時に『ぷるんぷるん』に修正することが可能である)
佐倉さん。
『きゃぁっ』とカワイイ声を出して真っ赤になって両手で胸をかばう佐倉さん。
 じたばたと帰っていく後姿の、耳まで赤い佐倉さん。
 これらの映像はいつだって不破君の脳内で再生可能で、この週末に既に数回
実用化されている、ということも知らない。

「おお! 先輩、かくしコアラ発見!!」
「へえ、良かったな」
「やったー! 今日はまだまだ、いいことあるぞー」
 ぽかぽかと日の当たるベンチにて、のん気に笑う佐倉さんであった。
<おわり>

644 :
以上です。
細かいことは気にしないでください。

645 :
おっ久しぶりにSSが!GJ!
佐倉さんかわいいよ佐倉さん
ちゃっかり実用化してる先輩もかわいいw

646 :
GJ
ほのぼのも良いですね

647 :
かわいーっ 今日はまだまだいいことが…あるワケですね!

648 :
ほのぼのとして楽しませてもらいました。

649 :
ほのぼのしたー
かわいいなあ佐倉さん

650 :
ho

651 :
保守る

652 :
hoho

653 :
hosyu

654 :
hosyu hoshu

655 :
ほのぼのほのほしゅ

656 :
hosyu

657 :
文通してた野球監督の2人が可愛い
原作でも珍しくこいつらの場合は「2人の物語」では無いんだよな〜
他の作品なら男女のお付き合いでなくてもメイン2人の関係に落としどころがあるんだけども。
ああでも「書かれてないこと」にときめいてしまうのかな。

658 :
この2人でエロパロ妄想しようと試みたけど難しいな
メイプルには流花と食堂のおばさん、仁科夫妻、瑠璃子ちゃんと小早川君など
ほかの人達に恋愛模様が描かれてるから主人公はそういう役割ないのかも
あ、でも甲子園のころも既にそういう空気がないな

659 :
本人達にとってはだけ自然な流れで結婚してほしい
周りからしたら「いつそんなことになったの!?
というかそこに恋愛感情はあるの!?」という。

660 :
hoho

661 :
hoshyu

662 :
星ゅ

663 :
てす

664 :
おお、書き込めた。
たっくんと日夏さんいきます。
エロなしっす。

665 :
 日夏晶さんが、隣の席のたっくんと奇縁に導かれて付き合う“フリ”をするようになってから、
ひと月ほどたった。
 まあ付き合うフリったって、受験の控えている高校3年生である。一緒に出掛けると言っても、
その先は図書館だったり兄達が同棲しているマンションに夕食をごちそうになりに行ったり、
その程度だ。
 あとは…… そうだな、学校で喋ったり、一緒にお昼を食べてみたり、そんくらいだ。
 まあこれくらいなら楽勝だと日夏さんは思っていたりする。
 気の毒なたっくんの御両親のためにボランティア精神で自己犠牲をしてる自分、えらいなー。
 自虐半分、心の中で呟いたりしていたのである。

 そんなある日の夕方に、二人は並んで歩いていた。
 秋の日はつるべ落とし、辺りはすっかり暗くなり、西の空がかろうじて明るい。
「ったく、こっちは受験生だってのに、メシくらいで呼び出しやがって」
「まあまあ。葵兄ちゃんのメシは美味いぞ」
 そう、二人は毎度のことながら、兄達から晩御飯に呼ばれていた。
 ブーたれながらもたっくんが応じるのは、自分のいないところで兄・まーくんと日夏さんが
結託されては困るからである。元来が小市民なたっくんは、そういうことを特に気にする。
 一度たっくんはこの夕べをすっぽかしたが、結果、日夏さんのたっくんおちょくりレベルが
数段アップして、エラい目に遭ったことがあるのだ。

666 :
 ふう、とため息をついて、たっくんが言った。
「ま、確かに葵さんのメシは美味いな」
「お、たっくんもそこは認めてくれるのね」
「まーな。俺も葵さんみたいな人が兄さんだったらなー」
 葵兄ちゃんがたっくんの兄ちゃんだったら、ホモは許せたのか?おまえん家は平和だったのか?
 脳裏に浮かぶ突っ込みは、もちろん口にしない日夏さんである。
「ていうかさ、葵兄ちゃんはもうたっくんの兄ちゃんみたいなもんでしょ」
 代わりにそんなことを言ってみたが、返事はない。その辺りをハッキリ認めるのは、未だに
少々抵抗があるようだ。
 しゃーない、話題を変えようかと日夏さんが脳内で検討しているところへ、たっくんが
ぽつりと言った。
「…… 日夏がいてくれて良かった」
「へ?」
 いきなりそう言われて、日夏さんは戸惑った。話の流れが読めないんですが。
 しかしそんな日夏さんをおいてけぼりにして、たっくんはスタスタと歩いていく。

667 :
「ねー」
「……」
「ねーー!!」
 日夏さんは、公園の入口のところでたっくんに呼びかけた。
 一回無視して、二回目でたっくんはようやく振り返る。
「なんだよ」
「こっちのが近いって」
 日夏さんは、公園を指した。ここを通り抜けて行こうと提案しているのだ。
 以前から思っていたのだが、このルートが断然近い。
 またこれがかなり広い公園で、これを迂回すると相当歩かなくてはいけないというのに、
いつもたっくんがものすごい勢いで通り過ぎてしまうので、今までこの近道を試す機会が
なかったのだ。
 しかしたっくんは、この提案を即座に、完全に却下した。
「ダメだよ」
「なんでよ?」
「ダメって言ってるだろ!」
 はあ?
 ちょっと思いついて提案しただけなのに、ここまで否定される意味がわからん。
 日夏さんはムッとして、つい声が尖ってしまった。
「だから、なんでって聞いてるじゃん!」
「なんだっていーだろ、いいから、ほら、行くぞ!」
「あーもー、じゃいいよ、私こっち行くから」
「ちょ……!」
 意地になった日夏さんは、構わずにずんずんと公園へと入っていった。
 そこへ、追いついたたっくんにガシっと腕を掴まれる。

668 :
「わっ、何すんのよ!」
「しっ、静かに!」
「???」
 自分を止めようとするその勢いに押され、思わず口を閉じた日夏さんである。
 次の瞬間、闇に慣れてきた日夏さんの目に、公園のあちらこちらで蠢く人々が見えてしまった。
「………… え??」
 そして日夏さんは納得した。
 あーあーあー、そういうトコロでしたか。
 真面目な進学校の生徒である日夏さんにはとんと縁がなく、だから全く知らなかったのだが、
この公園は夜となれば紳士淑女の社交場と化する、そんな場所であったのだ。
「ほら、出るぞ」
 たっくんがグイッと腕を引っ張った―― が、しかし日夏さんは抵抗した。
「何やってんだバカッ」
「バカって何だよ。絶対こっちのが近いって」
「は?」
 …… あくまで近道を行こうとする日夏さんである。
「あのな、いくら近いからって、通っていい場所と悪い場所があるだろ?」
「大丈夫だって。どうせ暗くてよく見えないんだしさ、通り抜けるくらい」
「ここは強引なナンパする奴がよく出るんだぞ。危ないって」
 ははーん、なるほど。
 本気で止めにかかっているたっくんの様子に、日夏さんは合点した。

669 :
「―― やけに詳しいね、たっくん」
 この一言で、たっくんはウッと唸る。
 よしこのまま反撃だ。日夏さんはニヤニヤしながらたっくんをツツいた。
「ここ、タラシだった頃に常連だったんじゃないのー?」
「か、関係ないだろっ」
「そのアセり様は、図星とみた」
 優位に立ったと判断し、日夏さんは強引に話をすすめる。
「まーいいからいいから。たっくんが詳しいなら道案内に丁度いい。さ、行こ」
 そう言いながら歩き出す日夏さんに呆れながらも、たっくんは付いていくより他はない。

670 :
 さて、このように自分の主張を通した日夏さんであるが、間もなく、少々後悔した。
 “社交中”の紳士淑女は日夏さんの想像していた以上に存在していたし、またこれが見ようと
思っていなくても否応なしに目に飛び込んでくるのである。
 おまけに、先をずんずん歩いている日夏さんに、男がすっと近寄って来たではないか。
 さらに、男の腕は日夏さんを抱こうと伸びてくるではないか。
(ひっ!)
 ヤバい!と思ったが、その時たっくんが、すっと日夏さんと男の間に割り込んだ。
 僅かの間、男とたっくんが睨み合い、次の瞬間男は別の方向へと歩いて行く。
「あ、ありがと……」
「だから言ったろ」
 さすがに、日夏さんも折れた。
「ごめん。やっぱ、今から引き返して――」
「いや、このまま突っ切った方が、早く出られる」
 言いながら、たっくんが日夏さんの肩を抱く。
 日夏さんはおとなしく、たっくんに歩調を合わせて歩き出した。

671 :
「―― ここまで来れば、大丈夫だな」
 かなり歩いて、たっくんが言った。ようやく出口である。
「いやー…… ホント、助かったよ。ありがとう」
「ったく、世話やけるよな」
「ごめんごめん」
 ほっとして、つい笑みがこぼれる。
 まー無事に通り抜けられて、ほんとうに良かった。
 安堵のあまり、日夏さんはつい言ってしまった。
「ほんと、たっくんのような小市民ばっかなら、世の中平和なのにねー」
「……!」
 たっくんの“空気”が変わった。やば、これはさすがに失礼だった。
 気づいた日夏さんは、慌てて言い訳を並べる。
「いや、これはその、悪い意味じゃなくって、いい意味で小市民ってことで……」
「へー、俺って、いい小市民なんだ?」
 え。
 たっくん、なんか雰囲気おかしいんだけど。
 そしてその時、日夏さんは自分が未だたっくんに肩を抱かれたままだと気付いた。
 思わず離れようと動いたとき、たっくんが腕に力を入れる。
「きゃ!」
 
 ―― 気づけば、立木を背にしている。たっくんの腕が、日夏さんをの両脇を封じていた。
 日夏さんは、大いに焦った。
(こ、これじゃまるで……)
 まるで、私たちまで“社交”しているみたいではないか。

672 :
「お前さ、俺のことよく、そーやってからかうよな」
 もう辺りはすっかり暗い。
 街灯の明かりで陰影のついた彼の表情が、なんか、切なけだ。
「俺は確かに小市民かも知れないけど」
「た、たっくん……?」
 逃げ出そうとしても、彼の腕がそれを阻む。
 少々揉み合ううちにただでさえ近い距離が更に狭まり、程なく男の身体の温かさが日夏さんの
抵抗する気力を奪った。
 彼の手が、日夏さんの頬を撫でる。ドキッとした瞬間に間合いを詰められ、彼の顔が
もうすぐそこだ。
 ここに至って、日夏さんは自らの不覚を認めた。
 たっくんは確かにその本質は小市民だが、仮の姿とはいえ、二年間の女タラシの実績があるのだ。
「ね、ねぇ……」
 やめて、と言おうとしてようやく振り絞ったその声がまるで蚊の鳴くような頼りなさで、
これではまるで誘わんばかりではないかと、日夏さんは自分でも思う。
 やだ、頬が熱い。ていうか、体が熱い。
 その様子をくっくと喉で笑われて、日夏さんはたっくんを何とか睨んだ。
 しかし、効かない。
「かわいー」
 そう囁かれて不覚にもクラクラする。ああ、これがタラシの手腕というやつなのか。
 ―― なんか、泣きそう。

673 :
 その時。
「好きだよ」
 たっくんの甘い声がした。
 そして、唇に柔かくて温かい感触が。
 う、うわあ。
(こここここここここここ、これがわたしの、ふぁーすときっ………………)
「ひっ、日夏?」
 さっきまでタラシのたっくんだった彼が、一瞬でまた小市民に戻る。
 日夏さんが、ぼろぼろぼろぼろと、泣いてしまったからだった。

 そのあとの顛末が、ちょっと大変だったかもしれない。
 たっくんが日夏さんを一生懸命なだめているところへ、弟/妹が遅いと様子を見に来た
まーくんと葵さんが、来てしまったのである。
『拓斗!お前―― 』
 何やってるんだ!! とまーくんが怒鳴り終わる前に、葵兄ちゃんがたっくんの襟首を掴んで
いたという。
 視線だけですことが出来るんならば、葵兄ちゃんはあの時、カクジツにたっくんをあの世に
送っていただろう。
 その日の晩餐がどうだったかは――
 まーくんがその日『俺は絶対に葵を本気で怒らせるようなことはすまい』と秘かに誓いを
立てたこととか、たっくんが後に『あの時寿命が10年縮んだ』と語ったこととかから、
察してほしい。

 ともあれ、日夏さんとたっくんは、それからもずっとまじめに、そして仲良く、付き合っている
“フリ”をし続けているのであった。
<おわり>

674 :
乙です
葵兄ちゃんもバジリスクなんだw

675 :
乙ー!
かわいいのう、日夏さん

676 :
葵兄ちゃん最強伝説ww
乙であります
すっごい楽しかったです!

677 :
乙!
たっくんの善良な小市民っぷりがかわいいのう
まーくんが最も影が薄いトコもおもろいww

678 :
用あって古いデータを整理していたら、懐かしいものを発掘して、云年ぶりにこちらに来ました。
今日までスレが続いていたとは、いろんな意味で、胸熱。
かつてSSを投下していた者ですが、色々あって、当時取り掛かっていた話も半端なところでスレから離脱しておりました。
今更、とも思ったのですが、保管庫見たら、どうも大好きなメイプルで、高柳さんが黒高柳なまま作品を中断していたみたいなんで
それはやっぱり心残りなのと、今になってデータが見つかるというのも何かの啓示?かと思うので
当時リアルタイムで萌え談義した方も今や少ないでしょうが
唇から媚薬、という古い作品の続きを数回に分けて投下させてください。
(前半部は保管庫にあります。管理人様、ありがとうございます)
ただ清書版はどうも当時に消してしまったようで、今回見つけたのは下書版のバックアップなこともあり
ところどころ情景描写が浅いんですが…
可能な限り、アップの際に足していこうと思いますが、もはや筆力は枯れているので(あくまでも過去の遺産)そのへんはご容赦ください。
時をかけている話ですし、メイプルは今は旬じゃないとか、私の「媚薬」はもうあれ(←黒高柳)でいいやwという方は、サラリとスルーでお願いします。
高柳×広岡好きさんに、少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです。

679 :
焦らしに焦らされたせいか、たて続けに何度も昇りつめて果てた彼女は、もう自分の知ってる彼女ではないように見えた。
投げ出された腕。まだ乱れた息に上下する胸。僅かに開かれた脚。潤んで視点の定まらない瞳。
そんな、匂いたつような「女」の姿の彼女に、これ以上自分の我慢もきかない気がした。
(だめだ。もう、俺が・・・欲しい)
ふ、と天井を仰ぎ見て、一度大きく息を吐く。
「――降参。結局、俺の負け、かな・・・」
「・・・・・・?」
荒い息の中から彼女の視線がゆっくりと上ってくるのを待って、少しおどけて笑う。けれど自分の囁きも今は驚くほど熱っぽく、欲情にかすれていた。
「もう・・・俺が、貴女を、欲しいってこと・・・」
「・・・え・・・・」
逸る気持ちを抑えながら、唇の輪郭をゆっくりと親指でなぞる。
「ん、ぅ」
ついに彼女の舌は――おそらく無意識下であろうが、今にも指を咥えこみそうに従順に反応するようになっていた。
ぼんやりとした上目使いは眩暈を覚えるほど色っぽくて・・・危うくこのまま唇を奪ってしまいそうになるのを、ぐっとこらえ
そっと額に口づけをしながら、もう一度柔らかく彼女の身体を抱く。
「・・・・!?・・・・っ、ぁ、はっ・・・・待っ…」
しかし返事は待たず、くぷ、と、その泉の奥に無骨な指で侵入した。
早く…早く、彼女の熟しきった芯へとたどりつきたいと。
だが意外なことに、熱く濡れた入り口が指を容易く食むのは最初だけで…すぐに抵抗する厚い内壁に行き先を阻まれてしまった。
(・・・狭い、な)
これもまた媚薬の効果というものだろうか、と考える。
「ん・・・?」
けれど、ここにきて、一度は溶けてしまったかのような彼女の柔らかな肢体が、再び端々まで緊張をたたえていくことに違和感を感じた。
(いや・・・まて、それ以前に)
「・・・・・ん、・・・ぅ」
眉をひそめて浅く息を吐く表情。ゆっくりと引き抜くと、ホッとした顔が見えた。
(・・・まさか)
「え・・・もしかして・・・・・・・・・初めて・・・?」
「・・・・・。」
間近で顔を覗き込むと、もの憂げな瞳が一度だけ瞬いて、その拍子に溜まっていた涙がホロと一滴だけ零れた。

680 :
「・・・だっ・・・たら、悪いか、よ・・・」
けだるげな、表情のない視線のままで、喧嘩腰の告白。思わず、固まってしまう。
「悪いわけな・・・いです・・けど・・・っ・・・なんでそれをもっと早く・・・」
(迂闊だった。なんでもっと早く思いつかなかったんだ)
情けなくも、夢中になりすぎていて。そんな単純なことに気づかなかった。
(・・・だから、こんなにかたくなだったのか)
「いいさ・・・もう、別に。・・・好きにすれば・・・?」
なんだか投げやりなようでもある台詞は、言葉とは裏腹に少しおびえた、けれど覚悟の響き。
「・・・・あのね・・・初めてだったら、そんな・・・話は違うでしょう」
「・・・・・・てめーの責任大ってか・・・?・・・だから、言うのヤだったんだ」
荒い息の中、それでも今までよりは幾分強い語気でそう言って、プイ、と横を向いてしまう。
「違いますよ・・・っ。問題は俺じゃなくてっ。・・・貴女が・・・」
続かない言葉に、思わずふぅ、とため息をつく。
「・・・・・・だってこんな状況で―――俺が相手で」
汗で頬に張り付いた髪をといてやる。そのままサラサラした髪に指を差し入れ・・・そっと梳く。
「女のコは・・・もっとそういうの、大切にしたいものなんでしょ?」
なんというか、うまく言えないところに、広岡さんの瞳が少しだけ面白そうに細まる。
「も・・・オンナノコとか言う歳でもないって・・・」
今日この部屋で初めて見せる微笑った顔は、だけどどこか泣きそうに見えた。
「・・・別に・・・スポーツの一種だと思えば・・・なんてこた・・・」
天井を見上げるようにつぶやく唇を、指先でそっとふさぐ。
「そんな、強がり言ってもダメですよ」
「・・・・・」
両手で頬を挟み、至近距離で「お見通し」ってな顔をすると、初めて広岡さんはその腕を俺の首に回して・・・ぎゅっとすがりついた。
(まいったな・・・)

681 :
ここにきて、急に「オンナノコ」な反応に、年甲斐もなく自分も切なくなってしまって。
よっこいせ、と下にひいてたシーツ毎彼女の身体を起して、座ったなりにもう一度抱きしめ、よしよしと頭を撫でてやる。
「・・・俺相手に、無理することないんですよ。俺は・・・経緯はともかく、好きな女性が相手なんだから…いいですけど」
そして、ハッとする。
(しまった・・・どさくさにまぎれて、言ってしまった・・・あーあ、本当はもっと格好良く)
それから次の沈黙に、時が止まったように感じたのは何秒くらいのことだったろう。
腕の中の身体がもぞりと動いたのは、随分たってからのようにも感じた。
「・・・今・・・なんて・・・?」
(・・・おいおい)
「・・・やっぱり。知らなかったんですか。まぁそうかなとは思ってたけど・・・。なんで数十人のチームをまとめる名将が、隣の男一人の思惑に気づかないかな?」
「・・・・・・」
「あのね・・・このコーチ職だって・・・幾ら高給待遇でも、自分で選んだ職業の、しかも安定性を捨ててまでフツー、ぽっと話に乗りませんよ」
苦笑する私を、相変わらず、ぽかんとした顔で見つめている。
「私は貴女を支えたかった。その気持ちには嘘はないけれど・・・だからって、全く下心がなかったわけじゃない」
彼女の柔らかな髪を一房すくいあげて、その先端に、己の想いの丈をこめるように、口づける。
「まぁ、貴女はどうしても俺を男に見てくれないし・・・もうあきらめてますけどね」

682 :
「とにかく、だったら・・・」
(あー・・・でもこの昂ぶってしまった身体をどうしてくれよう・・・罪作りな人だなぁ)
とりあえず、なけなしの理性を総動員し、腕だけで彼女のパジャマを探して着せてやろうとする。
すると唐突に彼女は俺の手を払いのけて、胸にすがりついてきた。
「あ・・・・ぃ、いやだ・・・」
「え」
「あ、だ、だから・・・」
密着した裸身の上体から、心臓の音が伝わる。鼓動が早い・・・のは俺の心臓か、それとも彼女の心臓か。
「わ、私だって・・・だ、だだだ誰でもよかったんじゃ、ない、ぞ・・・」
「・・・え・・・」
「だ、だから、高柳さんだったら、助けてくれると思ったから・・・っ。た、高柳さんだから・・・」
触れた頬が熱い。俺の胸に押し付けているからよくわからないが、もしかしたら必に言葉を探しているその顔は、真っ赤になっているのだろうか。
「それって・・・僕のこと少しは好きってこと?コーチだからじゃなくて?」
高校生みたいな不器用な表現をする彼女に、思わず自分も不器用に問いかけてしまう。
頬にそって髪に手を差し入れ、ゆっくりと彼女の顔を上向かせる。
「・・・・・す、少しとかたくさんとか、って、そ、そーいうのは、わかんないけどさ・・・」
相変わらず、視線は逃げているけれど。
「コーチだから・・・頼りきってるんじゃないよ・・・」
けれど、腕の中のか細い声は、俺の胸を満たしていくのに充分。これまでの、ただの相棒としての苦労も、全て報われる気がした。
「それじゃあ・・・」
震える唇に、もう一度指で触れる。柔らかい、唇。
「・・・キスしても、いいですか?」
一瞬、驚きととまどいの色をのせて見上げた瞳が、次の瞬間には力いっぱいギュッと閉じられる。
その随分奥手な反応にクスリ、と笑みをもらしながら、これはYesという答えにとっていいのかな・・・と思った。

683 :
媚薬、まだ続くんですが、少しまとまった加筆がいるかと思うので、また後日に。
なるだけ早く来たいと思ってます。
スレの流れぶったぎってすみませんでした。
ちょっと時間に余裕が無かったもんで…
自分の知らないカプもいつの間にかたくさん増えているみたいですが
改めてスレ全体読みに来ます。楽しみです!

684 :
うおー!実はずっと待ってた!
GJ、続き楽しみにしてるっ

685 :
きゃーっGJ!純情監督にキュンキュンしてしまいました
次を楽しみにおまちしてます!

686 :
全裸待機中!

687 :
おおお!まさかアレの続きが読めるなんて!
ありがとうございますありがとうございます。
楽しみに待っております!

688 :
wktk wktk

689 :
ずっと読みたかったよー!GJ!
全裸待機してます

690 :
一番きゅんきゅんなところじゃあないですかあー!
GJGJGJ!!!

691 :
うわーーー!!!!
続きキテター*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
ずっと待ってました。
全裸待機します。

692 :
すみません…季節外れのインフルエンザと胃腸風邪で立て続けに寝込んでしまい、媚薬、加筆する体力の無いまま今日に至ります…
待ってくださってた(orる)方、本当に申し訳ないです。

お詫びと言ってはなんですけど、これもまた昔、こちらに捧げようと思った話を1つ置いていきます。
唯一?媚薬以前にきっちり書き上げていたぶんでしたので、清書版が残っていました。
カプはミカエルの俊介×和音です。

ただし、最初におことわり
設定としては、二人は既に主従関係のそれではなく、婚姻前ではありますが、もはや男と女としてできあがっています。
そしてかなりなエロ具合です…(逃)
俊介さんが後半、黒俊介、
和音さんはちょっと一途過ぎるかもしれません。
人目を盗んで家の中ムニャというのが苦手な方は、スルーが良いかと思われます。
清純(?)な心の持ち主は、覚悟して。
そもそもそんなんミカエルじゃないし、とか思う方も、スルーで…。

693 :
斉木家のお風呂は、贅沢にも総ひのき造りである。
そして、母屋にある其処に入るのが許される者の中で、「斉木家」の血族でないのは、唯一人。
ここ数週間のハードワークの、蓄積した疲れを全て吐き出すかのように、若月俊介は湯船に浸かるやいなや大きく息を吐いた。
(この風呂につかるのも久しぶりだな・・・最近はシャワーあびる時間も惜しいくらいだったから・・・)
ざぶん、と掌でお湯を救って顔を洗う。
すると次の瞬間、風呂場の明かりが急に落ちたことに気づいた。
天井のランプが消えて、床の四隅に点るフットライトに切り替わっている。
「―――?」
不思議に思っていると、その時まさにガラリと入り口の引き戸が開いて、そこに見知った裸身の女性が一人。
「か・・・」
和音さん!?とその名を叫ぼうとして、場所が場所だということに気づいて、慌てて言葉を呑み込む。
そのまま驚いて二の句がつげないでいる私を尻目に、彼女は無言でスタスタと浴槽に近づき、掛け湯をし・・・
「う、わっ」
突然、私の顔に、身体を隠していたタオルをぱふっと投げかけたと思うと、その隙に湯船に入ってきた。
そうして私にそろりと近づく。
「おかえり・・・俊介」そういって、スリスリと頬を寄せる。
「な、何考えてるんですか貴女は。誰かに見られたら・・・!」
「ちゃんと『使用中』の札かけてんだ。今までだって誰かに入られたことなんかないだろ?」
「そ、それはそうですけど」
「だ・・・だけど、今日は会長も奥様もいらっしゃるんですよ!?」
ヒソヒソ声が段々大きくなっていくのを和音さんが「しー」と口に人差し指をたてて制止する。
「それは大丈夫だと思うぞ。とーちゃんらさっきまで晩酌してて・・・二人してホロ酔いでイチャイチャしながら部屋に戻ったからさ。
時間も時間だし、もう今頃は夢の中だよ」
「しかし・・・」
そしてなおも抗議する私の顔をじっと見つめていたかと思うと、急にしなだれかかるようにして私の鎖骨あたりに頬を寄せ、首に手を回した。
少し、様子が変かなとも思う。
「・・・どうしたんです?」
「べつに・・・」

694 :
こういう関係になってから、和音さんは甘え上手になった気がする。
いやもしかしたら、今までも甘えたかったのを我慢していたのかもしれないが。
仕方ないな、とため息をひとつついて湯船に浸かりきっていない寒そうな背に、ちゃぷん、と湯をかけてやる。
そのまま、肌理の細かい肌にお湯が玉になって滑っていくのを、面白くていつまでもちゃぷちゃぷ遊んでいると
「な。俊介。・・・しよ?」
和音さんは囁くように、唐突に、私を見上げた。
ここに入ってきた時点で、こういう展開を予想しないわけではなかったが
彼女の口からそういうことを言わせたのは、初めてかもしれない。
(まさに据え膳食わぬはなんとやら、そうしたいのはヤマヤマですけどね・・・)
「・・・風呂場は音が響くんですよ。万が一声が漏れたら」
胸を甘くしめつけるような、彼女の率直な愛の表現を受け止めながら、
なるだけ声のトーンを落とし、大人らしく余裕ぶって、ギリギリ判断力を保つ。
慰めるように、濡れた髪の襟足をもてあそんでやると
「だって・・・今月は俊介、家にちっとも居なかったじゃないか・・・。約束の日だって・・・会えなかったし」
と小さい声ながらも、責めるように和音さんは続けた。
こういう関係になってからも、まさか家でイチャつくわけにはいかないので、時間のとれる週末は
2週間に1回ほどの割合で、とあるホテルで落ち合うことに決めていた。
簡単に髪型や格好を変えて、人目を忍んで・・・まるで不倫のようだが、仕方が無い。
自分達のことを会長と奥様に切り出すには、彼女の年齢や学生という身分、
そして自分の抱えている仕事を考えても、まだ時期尚早ともいえた。
それにしても、同業界で働いている私では都内のホテル界隈では顔が割れているので、わざわざ他県である某所まで出向かねばならない。
なのでどうしても、仕事が詰まってきた時は、約束を反故にするしかなかったのだ。
「外で会えないのは・・・我慢できるけど、さ。でも・・・俊介、最近・・・私と視線を合わせもしてないような気がしてさ」
「それは・・・」
「・・・もう、俊介、私に飽きた・・・?」
「何馬鹿な」
呆れて反論するところを和音さんの唇が私の口をふさぐ。
「ん・・・」
拙いが、一生懸命にからめとろうとするところがいじらしく、柔らかな髪に手を差し入れてその緩やかな遊戯につきあう。
顔を離した時、随分、色っぽい表情をするようになったんだなとドキリとしながら。
「あのね・・・飽きるまで、まだ、抱いてません」
「・・・だって、さ・・・」
小首をかしげて、少し、むくれるような顔をすると、先ほどから密かに張り詰めている私の下半身を、ちょい、と触る。
「かず・・・」
もしかして、即、私がヤル気にならなかったのを不安に思ったのだろうか。
そりゃあね、10代の少年ならともかく、この歳になって裸ぐらいでは動揺しない。
しない、が。そんな、恥らう表情を残したまま、女性らしい柔らかな細い指で・・・触れられたりなどしたら。
「・・・あ」
「・・・・・こら」
さすがに理性などものともせず、みるみるまに固く立ち上がっていく様は・・・正直なものである。
すると、その様子と私の顔を代わる代わる不思議そうに眺めていた和音さんはおもむろにそれを自分にあてがい、
ゆっくりと腰を落とした。
「か・・・・。」
静止の声も間に合わないほどの性急な行為に、思わず息をのむ。
「!」
「・・・ぅ・・・・・・ぁ、ふ」
「和音さん・・・」
驚いたことに、和音さんの身体はもう俺を受け入れるように、熱く、濡れていた。
「・・・すごいな。まだどこも触ってないのに・・・」
少し意地悪な気持ちで、耳元で低く囁く。
「―――そんなに俺が欲しかったんですか?」
「・・・・・・。・・・そー、だよ・・・」
赤い顔をしながらも強気に挑む、その情熱的な視線に中てられて。
なんとも甘い気持ちが胸に広がって照れくさく、ふ、と天井を向いて一息ついた。
「まいった・・・若さって凶悪だな」
「ん、だよ・・・ワタシをこんな身体にしたのは・・・俊介なんだから・・・責任、とれ」
そんなふうに憎まれ口をたたきながらも、和音さんはそのしなやかな腕を私の首にからませ・・・口づけをねだった。

695 :
ちゃぷん、ちゃぷん、と湯が揺れる。
ゆるやかに動く腰と・・・洩れる熱い呼吸。
和音さんも主導権を握って余裕があるのか、快楽に眉をひそませてはいるが、いつものように溺れきってはいないようだ。
「ん・・・は・・・っ」
会えなかった淋しさを埋めるつもりでもあるかのように、浅く深くキスに夢中になっている。
だが熱気の篭る部屋での息苦しさからかふと離れた瞬間に、濡れた唇をそっと親指でなぞってやると、
その指を和音さんが薄く舌を出してチロリ、と舐めた。
その様子があまりに扇情的で、思わず指を増やしそのまま口内を侵すと、切なげに眉を寄せ熱く息をもらしながらも懸命に指先をしゃぶりだす。
「・・・和・・・」
(っ…これは…たまんないな・・・)
あまりの痴態に、ザワザワと自分の背筋が粟立つのがわかる。ごくりと息をのむ。
やがて瞳を伏せ、彼女は私の手をとって指の谷間にゆっくりと舌を這わせた。
その一途にも夢中になっている様はため息がもれるほど・・・
「すごく、やらしいカオしてますよ・・・」
そう言ってもう一方の手で顎をつと上向かせると、指を咥えたままの上目づかいの視線が小悪魔のように、いや、娼婦のように私の中の「男」を射抜いた。
「ん・・・ぁ」
「しかも、かなり、俺好みに・・・」
だがずっと見つめていたいにもかかわらず、段々自分の余裕もなくなってきて、自然と眉がひそめられる。
指を咥えた唇のそそる絵ととゆるやかな腰の動きとの相乗効果で・・・精気を吸い取られるってのはこんな感じか?と思うほどクラクラする。
「・・・・・く・・」
「気持ち、い・・・?俊介・・・」
「・・・・・ええ・・・・・」
ひとしきり掌を愛撫していたかと思うと、やがてそれもやめ、私の胸に両手をつき少し強く腰をゆさぶりだした。
もうどこまでがお湯の熱さで、どこからが和音さんの愛液の熱さなのかわからない。
「随分・・・今日は積極的なんですね・・・」
「・・・・・。いつ、も・・・・俊介に・・・いじめられ、て、ばかり・・だから・・・今日は、しかえ、し・・・」
なるほど。と一応は納得するが、どこでそんなことを覚えたのか、
緩急と高低をつけながら私を翻弄する様には驚きを隠せない。
「・・・っ・・・。ん・・・」
情けなくも、息がもれる。頭をそらせて額に手の甲をあてると
「だめだって・・・俊介」
和音さんの手がそれを許さず、上から私の顔を覗き込んで、妖艶に微笑んだ。
・・・このままやられっぱなしでは身がもたないな。
身を溶かすような彼女の誘惑をもっとずっと堪能していたいとは思いつつも
反撃とばかりに、不意に上半身を真っ直ぐに起こして数回下から強く突き上げた。

696 :
??? ちょっとPCの調子が悪い?です。
コピペがスムーズにいかない…あと少しなんですけど。
日付またがない内に書き込めるかな…
それはそうと、容量って大丈夫ですかね? 

697 :
「・・・・・あっ、俊・・・!」
慌てて掌で口をふさぐ。
「ああほら・・・危ない、声が出てしまうとこだったでしょう」
囁くようにたしなめると、少し責めるような視線が、しかし欲情に濡れた様で・・・私を見下ろす。
「我慢しないと・・・ね?」
そう言いながら掌をはずし、目の前に揺れる、美しく張りのある乳房に触れ・・・弄びながら、もう片方に吸い付く。
「・・・っ!・・・ん・・・」
和音さんが声を押しすように私の首筋に甘く噛み付く。
「形勢逆転・・・かな?」
和音さんのリズムより少し早く、擦りあげる。
座って絡み合うこの姿勢は、思った以上に深くつながる。自分の突き上げと和音さんの腰の動きに加速度的に快感は高まり・・・
だけどこのままイってしまうのは、勿体無いなと思った。やはり、主導権は自分が握りたい。
「このままじゃ二人とも・・・ゆだっちゃいますね・・・」
そう言って、和音さんを貫いたまま、抱え上げ、ザバッと湯からあがり、浴槽の淵から出窓までまっ平に続いている腰掛の部分に
彼女の身体をゆっくり組み敷いた。
「そっち・・・手をついて。・・・そう」
そして、くるりと裏返し。
「え・・・あ・・・?しゅ、俊介、こ、−ゆー格好は・・・やめ、」
「・・・今更・・・?誘ったのは貴女ですよ」
そういって、再度、背後から抱きしめ、浅くつながっていた部分を改めて勢いよく深く貫いた。

698 :
「!!」
(あ)という反り返る甘い悲鳴を手で封じ込める。
掌に熱く和音さんの舌の動きを感じながら、
肩甲骨の窪みに吸い付き、背筋を嬲り、空いた手で乳房をこねる。
腰の動きはゆっくりとしたものにもかかわらず、和音さんの内部はみるみる潤み、締めては、からみつく。
「イヤだって言った割には・・・もう、こんなに・・・」
「・・・んっ・・・んーっ」
「案外・・・不自由なのが、いいのかな?」
さっきの仕返しとばかりに、緩い速度でいたぶるようにかきまわす。
羞恥心がそうさせるのか、いつもより格段に、反応が過敏だ。どんなに軽い口づけにも身体は小刻みに震える。
「・・・・ふ・・・ぅ・・・・ん・・・ぁ」
「さっき・・・貴女は私に・・・もう自分に飽きたのか、と聞きましたね・・・そんなこと、あるわけないでしょう・・・?」
重力に呼応して揺れる胸のふくらみを楽しむ。時折その先端を摘み、はじくと、弓なりに身体が反る。
「この数週間・・・触れられなくて・・・何度夢で貴女を抱いたことか・・・」
濡れて光るなめらかなその背は美しい獣のようだ。
その白い肌に、まるで自分の所有物だと誇示するように、印をつける。
「貴女をあえて見なかったのも・・・隙あらばこうやって・・・どこででも・・・犯してしまいそうだからですよ・・・」
「!・・・んんんっ」
女は耳で感じるというのは本当だな、と思う。卑猥な言葉には敏感に、内部が反応する。
焦れてきたのか、やがて自分から動き出す女の腰に、満足しながら
「・・・すごいな・・・もう・・・ぐちゃぐちゃだ・・・」
クスリ、と笑う。
「んっ・・・ぅ・・んっ・・・っ」
空いた手で、溢れて滴る部分をなぞり、捲れて淫靡に形を変えた突起を押し潰す。
「んんっ・・・!」
「・・・和音・・・?」
顎をのけぞらせ、ねじって唇を吸った。
「ん・・・っ、ふ、ぁ・・・」

699 :
だが自分にしても、片手を取られたまま行為に没頭するには、体勢にやや無理があった。
視界の端に、さっき和音さんが投げつけたタオルが目に入った。それをパサリ、と和音さんの手元に投げる。
「最後まで・・・大きな声・・・出しちゃだめですよ。中庭の向こうは、男性の使用人さん達の部屋だってあるんだから・・・」
襟足の髪をかきあげ、うなじを舐めると、彼女が逃れるように首をタオルに埋めた。
「ウチのお嬢様のこんな痴態・・・知られるわけにはいきませんよね・・・」
「っ!―――はっ・・・・・・ん・・・っ・・・ぅ・・・」
ビクビクと収縮する刺激を感じながら、ついに自分も我慢できなくなり、腰をとって強く、激しく、打ち付ける。
声をしているだけに、結合部分からの淫猥な粘着音だけが浴室全体に響き
それが尚一層二人の性感を高めていくような気がした。
「・・・ん、んぁ、わ、わた・・・し、も・・ぅ・・ダメ、だ・・・」
最後は、ほとんどすすり泣くような声が漏れ。
「く・・・俺、も・・・」
「―――ひ、ぁ、っ・・・!!!!!」
そして私達は・・・この秘密の部屋で・・・ほとんど同時に達した。


「俊介のサド。色魔。変態。助兵衛。んーと、それから・・・」
「はいはい。もうわかったからね」
和音さんの部屋のベッドで、腕に彼女を抱きながら、
「全く・・・自分で誘っておきながら、なんなんでしょうねぇ」
「う・・・五月蝿い!」
「しーっ」
シーツをかぶせ、未だ文句を言い足りぬ様子の尖った口を封じる。
家人が多い中、それでもどうしても寄り添っていたい時は、こっそり添い寝をしたりする。
それも俊介のベッドだったら、翌朝皆が起きてくる時間前に和音さんが素早く自分の部屋に戻るというのも不可能に等しいので
大体逆のパターンが多い。
「でも・・・ヨカッたくせに」
「ぐ…」
「いつもより・・・感じてたと思ったけど?」
にやりと笑っておでこを軽くピンとはじくと、お嬢様は口をへの字にしてもぞもぞと深くシーツに潜ってしまった。
「・・・・・声・・・大丈夫・・・だったよなぁ?」
「ああ、そういえば、ウチのお風呂場」
「あん?」
「その昔、和音さん小さい時浴槽で頭を打って、ワぁワぁ泣いたことあったでしょう」
「・・・うん・・・?」
「あの時ねー、一緒に入ってた私が慌てて連れ出して手当てしたけど、あれ、しばらくの間、家族の誰も気づいてなかったんですよね」
「・・・は?それってどういう・・・」
「いやぁさすがに斉木家のお屋敷は、高品質・高気密♪」
チッチッチッチッ・・・と考えること数秒、
「しゅ、しゅんム、ムガ@×△■☆!〜〜〜〜〜〜〜!!!」

哀れ、囚われの子羊の叫びは、再度、狼の掌の中に。

おしまい

700 :
ちょっとマウス?の具合が悪いのか変な行間で区切ってしまったりして、読みにくかったかもしれません…ご容赦を!
これも時をかけているので、改めて読み返すと自分でも恥ずかしい出来ですね…
出すもの無くてつい出してしまったんですが。
俊×和ファンの世界観を壊さないといいんですけど(すみません欲望のまま書いてしまry
が、この話、某SSを投下した後でしたか、確か、
「(場面が)お風呂場スタートだから、お風呂場エッチと思いました」って素敵なw感想を言ってくれた方がいて
それではお風呂エッチなるものミカの三者三様でで書いてみよう、という 本当に当時のスレの盛り上がりあってこそ書けた作品です。
アイディアくれた人今もここ来ておられるかな…いつか、目にしてくれるといいけれど。
今は昔ほど、ただのエロ談義というのは無い感じですね。残念。
媚薬のほうが投下途中ですが、ちょっと次回がいつになるかお約束できない感じになってきたので
スレの皆さん、気にせずにどうか各々のかーらネタで盛り上がってくださいね。

701 :
大好きな和音&俊介で新作が読めるなんて!
ありがとうございます。
媚薬も全裸のままいつまでも待ってますのでよろしくです。

702 :
媚薬を真っ裸で待っていたら思わぬ不意討ち!(無論いい意味で!)
俊介さんはSが似合っててすごくイイですねw
わたしは最近ここを知ったものですがエロ萌え雑談が盛んだった時期もあったのでしょうか
それもうらやましいです
どうも有難うございました、メイプルの続きが来るときも楽しみしております

703 :
仕事に追われていたら、こんなことに…
改めて全裸正座で待ってます。

704 :
何人もが全裸で媚薬を待ってるんだなあw大変だww
自分もその一人だけどさ

705 :
hoho

706 :
hosyuuuuuu

707 :
hohohooho

708 :
hosyuuuuu

709 :
そろそろ服着るか?
秋だぞ

710 :
んにゃ、真裸でちょうどよい
もうちょい寒くなったら考える

711 :
スカート履くか?

712 :2013/09/30
hohoho
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