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東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2


1 :2010/02/12 〜 最終レス :2013/09/17
東京マグニチュード8.0のエロSSスレです。
エロくなくても絵でも桶。我こそはという有志のかた、
どしどし投下してください。
前スレ
東京マグニチュード8.0でエロパロ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1253897735/l50
関連スレ
東京マグニチュード8.0 震度52(本スレ)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1264343215/l50
東京マグニチュード8.0の小野沢悠貴は姉思いカワイイ3
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253782495/l50
東京マグニチュード8.0の小野沢未来は弟思いカワイイ3
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253637042/l50

2 :
不謹慎すぎる…

3 :
前スレのSS纏めた保管庫ほしいな

4 :
前スレ多分埋まった。500kまでだったよね?

5 :
>>1
スレ立て乙
>>4
埋め立て乙

6 :
作品が止まったな

7 :
バレンタインSSがもう1、2本くらい来るかと思ったが、
カップルが超限定されてるからやはり難しいか。

8 :
そういえば小野沢両親の話が無いな。。。

9 :
ケンt・・・いやなんでもない

10 :
今、ユカが主人公のをもう一本書いてる。
長い重いエロなしの三重苦で良ければ気長に待ってくれ。

11 :
おお、お待ちしてますので頑張ってください

12 :
彩ちゃんのエロパロキボンヌ

13 :
短めのができたんでいきます

14 :
 9月。あの大地震から一月半ほどが過ぎて小野沢家は後片付けが進み、未来たちの部屋も、もう
すっかり地震の前と変わらぬ姿を取り戻していた。だが、一つだけ以前とは変わってしまったことが…。
 夜、ピンクのパジャマに着替えた未来は、ナイトランプだけを灯したベッドの中で仰向けに横たわって
いた。「悠貴…」未来がそっと目を閉じて弟の名を呟くと、その声に応じるように悠貴の手が彼女の
身体に伸びてきて、パジャマの上からそっと胸に触れた。そして手は、未来のまだ小さな胸を、慈しむ
ようにゆっくりと撫で始めた。
 あの三日間で強まった未来の弟への愛情は、姉弟愛の域を超えるほどにまでになっていた。その想いは
時間が経っても薄まることはなく、むしろますます愛おしさは募っていき、そしていつしか、未来は
夜な夜な、こうして弟との禁断の行為に耽るようになっていた。
 お姉ちゃん――
 悠貴がそう囁き、もう片方の手も未来の胸に乗せ、両手でそのなだらかな膨らみをやわやわと
揉みしだいていく。「あ、悠貴…」うっとりとしたように呟く未来の胸を、悠貴の手はゆっくりと
さすり、そして指を這わせてパジャマ越しに乳首を探り当てると、薄手の布地ごときゅっきゅっと
軽く摘まみ、指先で押し転がす。
「ふぁ…」
 未来の口から甘く熱い吐息が漏れる。愛しい弟に触られる悦びに、胸の蕾は指の中ですぐに固く尖り、
パジャマの上からでもはっきりとわかるまでになる。悠貴はその固くなった乳首を解きほぐすように、
少し力を強めてくりくりと扱いた。
「あ、ふぅん…」
 胸先に感じる甘美な刺激に、未来は再び熱い吐息を漏らし、微かに身じろぎした。身体の奥がほんのり
火照り始めている。だが、まだこれくらいでは全然足りない。未来は胸元に手をやるともどかしげに
ボタンを外し始め、全てのボタンを外すと、さっとパジャマの前を引きはだいた。
 剥き出しの白い胸丘がナイトランプの薄明かりの中に浮かび上がると、一呼吸置いて悠貴の両手が
その二つの白い膨らみに置かれ、直にそこを愛撫し始めた。乳肌の感触を確かめているかのように
円を描いてじっくりとさすり、それからきゅむっ、きゅむっとまだ幼い膨らみをそっと揉みしだく。
そしてまた掌で擦りながら胸先の蕾を転がし、指先でその突起を摘まみ、こね回すように愛撫する。
 やがて右手が乳房を離れ、すべすべとした肌を撫でながら徐々に下の方へと移動していき、未来の
股間をパジャマのズボンの上からさすり始めた。「あぅん…」恥ずかしい部分へのタッチに、未来は
悩ましい声をあげてびくんと片膝を曲げ、それからそっと伸ばしていく。
「はぁ、はぁ…あ…ん…」
 息を荒げ、小さな喘ぎを漏らす未来の股間を、悠貴はパジャマの上からしゅっしゅっとしきりに
さすっていたが、その手はパジャマの中に潜りこみ、そして下着の中にも差し入れられ、直接秘所を
弄り始めた。萌え始めたばかりの薄い茂みをしょりしょりと撫で、その下にあるスリットに指先を
割り入れると、内側の花びらをくすぐるようにゆっくりと上下になぞりたてる。

15 :
「あっ…はっ…」
 指先は肉芽を捉え、皮のカバーの下のこりこりとした突起を転がすように愛撫し、器用に包皮を
捲りあげると、剥き出しになったてクリトリスを指の腹でくすぐるように、優しく刺激していく。
一番敏感な部分への甘やかな愛撫に、下腹部から全身に向けてぞわぞわと快感が込み上げてきて、
未来は悩ましげな声をあげて身じろぎをした。あそこから、じゅわっと熱い蜜が溢れてくるのが
自分でもはっきりとわかる。
(ダメ、パンツが汚れちゃう…)
 未来は快感に溺れかけながらも、なけなしの理性を振り絞り、少し腰を浮かすと、パジャマの下と
下着を一緒に掴み、ずるりと引き下げた。そして膝を折り曲げて両足をじたばたと慌ただしげに動かし、
ズボンと下着から引き抜く。
 未来が脱いだズボンと下着を無造作に横に投げ捨てると、待ち切れなかったようにすぐさま手が
性器に伸び、再びそこを触り始めた。花弁のような襞肉をこね回し、とろとろと蜜の溢れ始めた膣口を
指の腹で擦り回し、細やかに指先を動かして、しこり切ったクリトリスを擦り立てる。同時に左手が
乳房を撫でさすり、先端の突起を転がし、弟の両手は未来を徐々に徐々に高めていった。
 お姉ちゃん、気持ちいい?――
「んっ、いいの悠貴…ふぁ、ん…」
 未来は甘く切ない喘ぎを漏らした。始めてからまだそれほど時間は経っていないが、下腹部の奥は
既に熱く燃え盛り、身悶えしたくなるような疼きが身体中に広がっていた。もう触るだけじゃ我慢
できない…「悠貴、来て…お願い…」
 うん、挿れるよ、お姉ちゃん――
 ねだるように言う未来に、悠貴はペニスを姉の性器に押し当てた。僅かな間、焦らすように膣口を
先端でなぞってから、悠貴はゆっくりと未来の中に肉棒を潜らせていく。
「はぁ…あっ、ん…」
 弟の分身が胎内に侵入してくる感覚に、未来が上ずった声を漏らす。悠貴はずずっ、ずずっと
未来の中に入っていき、ほどなく根元まで挿入してしまうと、緩やかにペニスの抽送を始めた。
最初はゆっくり、優しく、しかし徐々に徐々にその動きは激しくなっていく。
「んっ、あ…はっ、うんっ…」
 高まる官能にうっとりとしたように目を瞑り、喘ぎ声をあげている未来の胸に、悠貴は分身を動かし
ながら手を伸ばし、小さな膨らみをそっと揉みしだいた。
「あっ、悠貴っ、あっ、いいっ、いいのっ、悠貴…」
 胎内を荒々しく掻き回され、そして乳房を愛撫され、未来は嬌声をあげだ。アソコは蜜で溢れ、
ペニスが動くたびにぬちゅっ、ぐちゅっ、じゅぷっ…という淫らな水音が部屋の中に響く。
 お姉ちゃん、大好きだよ――
「わたしも…大好きだよ…悠貴…」
 抜き差しを繰り返しながら囁くように言う悠貴に、未来がやっとのように応えると、それを合図に
したように、ペニスの動きは一段と強まった。弟の分身が根元まで何度も何度も繰り返し突き入れられ、
未来の中で急激に快美感が膨らんでいく。
「はっ、あっ、好きっ、好きだよ悠貴っ! あっ、ふぁっ」
 未来は一段と大きくはしたないよがり声をあげ、ベッドの中で身をよじらせた。弟に激しく突き上げ
られながら、彼女は頂点へ向けて一気に昇りつめていった。
「あっ、はっ、イク…っ、悠貴っ、んんっ…!!」
 そして限界まで高まった快感が爆発して頭の中が真っ白になり、未来はぎゅっと目を瞑ると、一筋の
涙を零しながら甲高い悲鳴をあげた。爪先をぐっと反らして腰を浮かせ、びくびくっと身体を痙攣させる。
「はっ、あっ、あ…ふっ、ん…あっ……」
 やがて未来の痙攣は徐々に鎮まっていき、それにつれて喘ぎ声も静かになっていった。そして、未来は
どっと脱力すると、ベッドに沈みこんだ。

16 :
「はぁ、はぁ、はぁ…はぁ……」
 暫くの間、未来は目を閉じたままベッドにぐったりと横たわり、胸を大きく上下させていたが、
やがて静かに目を開けると、アソコから指をゆっくり引き抜いて、その右手を顔の前に掲げた。
(……また、やっちゃった)
 愛液でべとべとになった指を見つめ、未来はぼんやりと思った。そしてのろのろと身体を起すと、
枕元のティッシュに手を伸ばし、汚してしまった指や股間を丁寧に拭っていった。
(……)
 黙々と後始末をしながら、未来は誰もいないがらんとしたベッドに陰鬱な視線を漂わせた。自分しか
いないベッドは、なんだかやたらと広く見える。それに興奮が冷めてきたせいなのか、まだ9月に入った
ばかりだというのに、やけに寒々と感じられる。
 もう、こんなことやめないと…。未来は後始末の手を止めると、しょげたように肩を落とした。
んでしまった、まだ幼い弟を想って自慰。何重もの意味で罪悪感が込み上げ、未来は猛烈な自己嫌悪と
羞恥心に襲われた。
「はぁ…」
 未来は拭き終えたティッシュを屑かごに捨て、パジャマを整えると、億劫そうにごろんとベッドに
横たわった。そして横目で、いつも弟が寝ていたベッドの上段を見つめる。
「悠貴…」
 小声で弟の名を呼んでみるが、それに応える声はなく、部屋はしんと静まり返っている。未来の瞳が
うるっと潤み、涙がぽろりと零れ落ちた。寂しい…。悠貴の思い出がいっぱい残るこの部屋で、夜中に
独りぼっちでいると、どうしようもないほど悠貴が恋しくなって、イケナイとわかってはいても、
勝手に手が動いてしまうのだ。
 会いたい、悠貴に…。
 胸苦しさを鎮めるかのように、未来は拳をぎゅっと握って胸に押し付けていたが、やがてその拳は
ゆっくりと開かれていき、おずおずと乳房をさすり始めた。「あ、ダメ…」
 そう言いつつも、未来の口からは同時に甘い吐息が漏れる。「はっ、あっ…ダメ…」胸をまさぐる
手の動きはどんどん強まり、彼女の頭の中でその手は再び悠貴の手へと変貌していく。弟のその手は
パジャマの中へと潜り込んで、直に胸の膨らみを揉みしだき、もう片方の手は下半身に伸びて、そこも
さすり始める。「あっ、悠貴そこ…」
 切ない喘ぎ声をあげながら、未来は自分を慰め続けた。こうやって快感に溺れていれば、悠貴がいない
寂しさや悲しさ、苦しさを忘れていられる。だから…「悠貴、いいの…悠貴…」
 未来はごろりと寝がえりをうってうつ伏せになると、枕に頬を押し当てながらヒップを高く突き上げ、
左手で盛んに股間をまさぐった。弟にバックから犯されているところを想像しながら、クリトリスを
擦り、胎内に中指を潜らせて、ぐちゅぐちゅという音がはっきり聞こえるほどに、激しく抜き差しする。
「あっ、悠貴っ、凄いっ、凄いのっ! もっと……!」

 そして今夜もまた、未来は遅くまで幻の弟とのイケナイ遊びに耽っていくのだった。

 おわり

17 :
以上、お粗末様でした。

18 :
リアリティがあるよな。
実際に最終話以降に未来がそんなことをしている可能性がある。
・・・ちょっと悲しいが。

19 :
>>17
GJ。
しかし最終巻の小説、悠貴の望むことなんでも叶えてあげるとか
もう本気で近親相姦まっしぐらだな未来ちゃん(;´Д`)ハァハァ

20 :
おまけ小説読んだが、本当に悠貴想ってオナニーしそうな勢いだ。

21 :
大阪マグニチュード8.0停滞中だな。

22 :
GJ!

23 :
切なくもエッチなのがなんかそそる。

24 :
やっと書き上がりました。ユカ主役話、第二弾です。
今回は本当に難産でした。かなり長いです。
読んでてしんどくなるかもしれません。あらかじめ、ご了承ください。

25 :
ユカ
件 大丈夫!?
東京、すごい揺れた
んでしょ!?
今、静岡のお婆ちゃ
んちに来てて心配に
なって!!
連絡待ってます!!

マユ
件 Re:大丈夫!?
やっと繋がった!私
は大丈夫!家族も全
員無事!ユカも大丈
夫そうで、本当良か
った!!
それと、未来にも会
ったよ!地震のとき
弟君とお台場の方行
ってたみたいで、ず
っと連絡取れなくて
心配だったんだけど
、この前近所の公園
でたまたま見かけて
!本当良かった!!

マユ
件 悲しいよ
未来の弟君、亡くな
ったんだって……。
さっき、未来のウチ
に行ってきて……。
未来、本当つらそう
で、見てられなかっ
た。私、どうしたら
いいかわからなかっ
た……。
ユカ、学校始まった
ら、私たちで未来の
こと、励ましてあげ
ようね。早く未来に
元気になって欲しい
よ。

26 :
未来
件 Re:大丈夫!?
連絡が遅れてごめん
ね。地震のときに携
帯なくしちゃって、
連絡できなかったん
だ。
でも、そのときすご
くお世話になった人
に、携帯を届けても
らったの。
連絡が遅れたのはそ
ういうわけだから、
私は大丈夫。いろい
ろ大変だったけど、
どこもケガとかして
ないから。
ユカはまだ静岡にい
るの?学校、いつか
ら始まるのかわから
ないけど、早く学校
始まるといいね。
早く学校で会いたい
ね。


 教室に入って最初に目に入ってきたのは、クラスメイトの机の上に置かれた花瓶だった。
今まで机の上の花瓶なんてタチの悪い冗談に使われるものとしか思ってなかったけど、
今はもうそんな風には考えられない。あの地震は、本当にあったことなんだ。あの地震で、
本当にクラスメイトがんじゃったんだ……。あまり話したことのない子だったけど、
それでもクラスメイトが亡くなったことは本当にショックで。地震後の初めての登校日。
長い長い夏休み明けの、ようやくの二学期初日。ユカは教室に入って、改めてそのことを痛感した。

27 :
「ユカ!」
 教室に入ってきたユカに最初に声をかけたのは、未来だった。 
「み、未来!?」
 ああ、本当に未来だ。本当に久しぶりの、未来の声だ。今まで、ずっと未来に会ったら、
最初になんて声をかけようかって悩んでた。何しろ、弟を亡くしてしまったのだ。きっと未来、
すごく落ち込んでる。元気のない未来の顔を見たら自分もつらくなる。ずっと、そう思ってた。
でも、実際に未来の顔を見たら、そんな考えは吹き飛んでしまった。
だって、未来が笑顔だったから。だったら、あたしも笑顔で応えないと。ユカはそう思った。
「ユカ、本当久しぶり! 元気だった!?」
「うん、本当久しぶりだよ〜、未来、学校来るの早いね!? あたしもけっこう早めに出てきたのに」
 一学期の頃の未来は、登校時間はかなり遅い方だった。ときどき遅刻しそうになって、教室に慌てて
駆け込んでくることもあった。「もうちょっと早くウチを出ればいいのに」とマユに言われた未来が、
「だって一分でも長く学校にいたくないんだもん」と嫌そうに答えていたのを思い出す。
「うん、なんかさ……早くみんなの顔を学校で見たいな、って……」
 うわあー。未来が、未来がすごく良いこと言ってる……ユカは感極まって、気がついた時には未来に
抱きついてしまっていた。
「未来! あたし、未来の友達で、本当良かったよ!」
「ちょっ、ユカってば、もう〜」
 ああ、なんだろう。今まで意識してなかったけど、なんだかすごく大切な時間を過ごしている気がする。
「でも、未来が元気そうで良かったよ〜、あたしてっきり、未来すごく落ち込んでるんじゃないかって」
 あ。い、言ってしまった……。その瞬間、未来の顔が曇るのを見逃すほどユカも鈍感というわけではなく。
思わず黙り込んで、恐る恐る未来の表情を覗き込むような形になってしまった。ど、どうしよう……あたしの
バカバカ。
「……うん。弟のことでしょ? 大丈夫。あたしは大丈夫だから、そんなに気を使わないで」
「う、うん……ごめん……」
 未来は大丈夫だって言ってるけど、そんなわけないよね……あたし、本当、無神経だ……せっかく久々に
未来に会えたのに、この後どういう話をしたらいいんだろう……などと後悔の念に苦しむユカを救ったのは、
教室に入ってきたマユの声だった。

28 :
「未来、ユカ、おはよ! 久しぶりー!」
「あ、マユ! おはよ!」
「おはよー! マユも本当久しぶりだよ〜、会いたかったよ、マユ〜」
「あはは、よしよし。良い子良い子。でも、本当久しぶり。ユカが相変わらずで、なんか学校来たな―って
気がするよ」
「えー、何それどういう意味〜」
「べっつにー。そのまんまの意味だから、気にすんなって」
「ぶーぶー」
 ああ、いつものあたし達のノリだ。マユ、ナイスタイミング。マユってこういうとき、いつもあたしを
助けてくれるよね。マユと友達で、本当に良かったよ。ついさっき、未来に言ったことと同じことを、
マユに対しても思うユカだった。
「あはは。でも本当、ユカもマユも、元気そうで良かったよ。なんかホッとした」
「……未来も、元気そうで良かった」
「……うん」
 ああ、マユの気の使い方って、すごく自然で良いなぁ……やっぱり幼馴染だからなのかな。
マユって本当すごいなぁ。
「ところで未来、学校来るの早いね?」
「もうー、マユまでユカと同じこと言うの!?」
「あはは、そうそう、あたしも教室入ってビックリしちゃったよー」
 大丈夫、大丈夫。きっとあたし達は、やっていける。前と同じように、三人でバカなこと言って、
ふざけあって、笑いあって、仲良くやっていける。ユカはこのときは、そう思っていた。

29 :
 あくる日の放課後、三人で一緒に未来の家に行って、仏壇にお線香をあげようということになった。
ユカがずっと静岡に居て連絡が取れなかったので、未来の弟の葬式には出られなかったからだ。
マユは葬式には出席していたのだけれど、ユカが行くのなら自分も、ということでついていくことになった。
こうして、三人で未来の家に向かっている最中のことである。
「この辺りもずいぶん建物が壊れてるんだね……」
 走行中のバスの窓から見える風景を見て、ユカがぽつりとつぶやいた。静岡に居てテレビで震災の映像を
見ていたときもショックを受けたものだけど、東京に戻ってきて自分の目で被災した街並みを眺めると、
言いようのない寂寥感を感じる。まるで自分が生まれ育った街ではないようだった。
「本当、大変だったんだ……」
 地震が起きたとき、ユカはたまたま静岡の祖母の家にいて、難を逃れていた。家族も全員無事だった。
東京に戻ったときも、家の中は倒れた家具や割れた食器などでメチャクチャだったけれど、家自体は無事だった。
おそらく東京在住者の中では、今回の地震で最も幸運だった部類の人間だろう。しかしそのせいか、
地震発生時に東京にいて震災の直撃を受けた人達に対して、ある種の申し訳なさを感じてもいた。
一番大変だった時期に東京にいなかった自分が、多少でも落ち着きを取り戻した頃にのこのこと戻ってきて、
のん気に学校に通っていていいんだろうか……などと考えてしまう。
「大変っていえばさ……トイレが一番大変だったね」
「へ? トイレ?」
 マユの唐突な発言。意外な話の流れに、オウム返しに訊き返すユカ。不幸なことに、このとき未来が露骨に
眉をしかめたことに、ユカもマユも気がついてはいなかった。
「うん、どこの家もトイレが使えなくなっちゃってさ」
「ああそうか、水道とか全部ダメになっちゃったんだもんね」
「そそ、だから近所の人はみんな公園の仮設トイレ使ってたんだけどさ、もう毎日毎日長蛇の列で」
「うへー、それは大変そうだね」
「ほんと大変だったよー。ヤバイと思ってから並んでたんじゃ間に合わないくらい。だから途中から
決まった時間になったらトイレに並ぶ習慣がついちゃってさ、おかげで今でも何もなくてもトイレに
行きたくなっちゃうように……あれ、未来、どったの?」
 全く会話に参加してこない未来の方をふと見ると、あろうことか、未来があからさまに悲痛な
表情を浮かべているではないか。思わずバツの悪い表情をしてしまうマユ。アイコンタクトで
『NG! この話NG!』と訴えるユカ。
「み、未来……ごめん、あたし、なんかまずいこと言っちゃった?」
「いや、ちょっと……嫌なこと思い出しちゃって……」
 ど、どうしよう……未来、すごく嫌そうな顔してる……トイレの話ぐらい大丈夫だと思ってたけど……。
もう未来の前で、地震に少しでも関係のある話はしない方がいいのかな……。
「いいの、もう。気にしないで。とにかく気にしないで」
 ああああああ。未来、すごく気にしちゃってるよおおおお。猛烈な罪悪感に苛まれる、ユカとマユ。
今度から未来の前では、雑談の話題選びは慎重にしようと誓う二人だった。

30 :
 三人がバスを降りて徒歩で未来の家に向かっていると、小学校が見えてくる。未来もマユも、
そして未来の弟の悠貴も通っていた小学校だ。ここも、地震の避難所になってたんだよね。
校舎を眺めつつ思うユカだが、震災直後の凄惨な状況を体験していないユカには、いまいち
実感の伴わない想像しかできない。
 無言で歩き続けて、フェンス越しに植木が茂る校庭が見えてきたところで、未来が自己紹介を
するときのような改まった様子で、提案してきた。
「ちょっと、寄って行っていいかな」
 ユカとマユは顔を見合わせる。特に断る理由はなかった。

 水を汲んだジョウロを手に未来が向かう先は、校庭の一角に植えられた幼木だった。まだ植えて
間もないらしく、根元の土と土の境目がはっきりとわかる。傾けたジョウロから水が注がれると、
水の重みで揺れる掌状の葉から、陽光を反射する水滴が滴った。
「トチノキ……かな」
「ユカ、よく知ってるね。フランス語だとマロニエっていうんだって。弟はそっちの名前で呼んでた」
 幼木の前にしゃがみ込んで、遠くを見るような目をして話す未来。
「夏休みの一日前にね……弟と一緒に植えたんだ」
 夏休みの一日前。つまり、あの地震の一日前だ。
「学校の帰りにね、ここにこうして水をやりに来てるの。なんだかここに来たら、弟に会える
みたいな気がしてさ……。はは、そんなわけないんだけどね」
 そう言って寂しげに笑う未来は、ユカがまだ見たことのない未来だった。どうしてだろう、
未来はこんなに近くにいるのに、どこか別の場所から話しかけてきているみたいに、遠くに感じる。
まるで十年後からタイムスリップしてきた未来と話しているみたいだった。
「優しいんだね、未来」
 そんな未来に、穏やかな口調で話しかけるマユ。ユカは何も言わなかった。頭の中に、未来にかける
言葉が思い浮かばなかったからだ。
「……そうかな」
「そうだよ」
 未来とマユの間には、まるで自分の周りとは違う空気が流れているみたいだった。どうしてマユは、
今の未来にそんなに自然に優しい言葉をかけられるんだろう。ユカには今の未来がどんな感情を堪えてきて
この場所まで辿り着いたのかまるでわからなくて、じっと二人を見守っていることしかできない。
やっぱり幼馴染だからなのかな。それとも、あの地震を一緒に体験しているからなのかな。ユカにはわからない。
「行こっか。ごめんね、付き合わせちゃって」
 立ち上がって、歩き出す未来。ユカは黙って未来の後をついていくことしか、できなかった。

31 :
「ただいま」
「お邪魔します」
「……お邪魔します」
 未来の家は、傾斜地に合わせて建てられたマンションである。地震でもほとんど無傷だった。
弟を亡くした未来だが、住む家まで失わなかったのは、不幸中の幸いと言えるのかもしれない。
帰宅した未来が友達を連れてきているのを見た母親は、顔をほころばせた。
「おかえり、未来。マユちゃんも、いらっしゃい。そちらのお友達は、初めてね」
「ユカだよ、ママ」
 未来が母親に紹介する。ユカは、初めての未来の家の訪問に、すごく緊張していた。
「は、初めまして、お邪魔します」
「いらっしゃい、ユカちゃん。ゆっくりしていってね」
 挨拶した後に、実は未来の母親と会うのがこれが初めてではないことに気がついた。
中学の入学式のとき、入口の前で転んでいた人がいたのを思い出したのだ。それが確か、未来のお母さんだ。
あのときの未来はまだ友達になる前だったけれど、とても大きな声で恥ずかしがっていたので、よく覚えている。
 お母さんも、きっとすごく悲しい思いをしたんだよね……。そう思うと、ユカの会釈はどこか
ぎこちなくなってしまった。
「あの、これ、つまらないものですがっ」
 用意していた菓子折りを差し出す。何しろこういうことは初めてなので、軽いパニック状態である。
「あらあら、そんなに気を使わなくてもいいのに」
「いえ、その、気持ちですからっ」
「ありがとう、ユカちゃんが来てくれて、あの子も喜ぶと思うわ」
 仏壇の前に案内されて、ユカは初めて未来の弟の、悠貴の写真を見た。小学校の入学式のときのものだろうか、
写真の中の悠貴はあどけない笑顔を浮かべている。夏休み前、マユと一緒に一回会ってみたいねって
話してたのにな……。まさか初めて未来の家に来るのが、こんな形になるとは思ってもみなかった。
 ロウソクと線香に火を灯し、線香の火を手であおいで消す。煙の香る線香を香炉に立てて、合掌すること数秒。
こうして、未来の家に来た目的は、ずいぶんあっさりと達成されてしまった。こんな感じで良かったんだろうか。
なんだか形ばかりの弔問になってしまったような気がする。
「じゃあ、あたし達は部屋に行くから」
「うん。マユちゃん、ユカちゃん、今日は来てくれて本当にありがとうね」
 母親に礼を言われはしたものの、それに値するようなことを自分がしたとは思えなかった。
自分は何もしていないのに、作法に任せた半ば自動的な流れで、何もかも終わってしまった。
気持ちが状況に追いつかないまま、未来に促されて、未来の自室に足を踏み入れる。
目に入ってきたのは、二段ベッドと二つ並んだ学習机。その一方を誰が使っていたものなのか、
考えるまでもなかった。
「この机……弟君、のだよね」

32 :
 未来はこの部屋で、ずっと弟君と二人で一緒に、寝たり起きたり、勉強したり遊んだり、お喋りしたり
ケンカしたり、泣いたり笑ったりしてきたんだよね。どんな気持ちなんだろう。同じ家に生まれてきて、
それからずっと一緒に過ごしてきた家族が、突然いなくなったら、どんな気持ちになるんだろう。
「……うん。なんか、片づけられなくってさ」
 寂しげな声で答える未来。ああ、まただ。未来にこういう顔をされたら、きっとまたあたし、
何も言ってあげられない。
「無理に、片づけなくてもいいんじゃないかな……ゆっくり弟君のことを考えてあげればいいと思うよ」
 マユは、すごいと思う。マユは未来の言葉をちゃんと受け止めて、ちゃんと言葉を返してあげられる。
あたしにはなんにもできない。ねえ、マユ。あたし、どうすればマユみたいになれるのかな。
 気がつけば、マユの言葉に、未来の背中は沈黙していた。やがて、鼻をすする音が聞こえてくる。
未来は、泣いていた。ユカには、ようやくわかった。やっぱり、悲しいんだ。当たり前だ。
頭ではわかっていたつもりだった。でも、心ではわかっていなかった。ただの想像でしかなかった。
でも、今、目の前の未来は泣いている。目の当たりにして、ようやくわかった。未来は、弟君がいなくなって、
悲しくて、泣いてるんだ……。
 しばしの間、ユカとマユは肩を震わせる未来の背中を見守っていた。長くはなかったが、決して
短くもない時間が流れた後、未来はゆっくりと振り返った。
「ごめん……もう平気なつもりだったんだけど……弟がいなくなってから、あたしずっとこの部屋に
一人だったから……二人が来てくれて、ホッとしちゃったのかな……。はは、ごめんね」
 涙を拭いながらそう言って笑う未来の顔は、とても儚げで。触れたら崩れてしまいそうなくらい、
頼りなくて。
「……我慢しなくてもいいよ。こういうときはさ」
 それでもやっぱり、あたしはマユみたいに優しい言葉はかけられない。あたし、友達甲斐のない奴なのかな。
あたし、もしかしたら。薄情な人間なのかな……。

33 :
 ユカは一人、走行するバスに揺られて帰路に着いていた。本当はこんなに早い時間に帰る予定ではなかった。
遊びに行くわけではないとはいえ、初めての未来の家なのだし、もう少しゆっくり話をしたいと思っていた。
でも、無理だった。ユカは、未来の悲しみの深さを覗いてしまった。とても直視できなくて、目をそらすことを
選んでしまった。あの部屋で未来と話なんてできる気がしなかった。マユを残して、逃げ出すことを選んでしまった。
別れ際の未来の言葉を思い返すと、心苦しくてたまらない。
 えっ、ユカ、今日ピアノのレッスンだったの? そっか、時間ないのに来てくれてありがとうね。
 帰り道、大丈夫? 送ろうか? 気をつけて帰ってね。じゃあまた明日、学校で。
 本当はピアノのレッスンなんてなかった。ピアノは地震のときに壊れてしまって、修理中だ。
ライフラインの復旧も済んでいない地域もあるこのご時世、ピアノの修理なんて終わるのがいつに
なるのかもわからない。だから地震が起きて以来、ユカはずっとピアノを弾いていなかった。
ユカは初めて、未来に嘘をついた。
 地震が起きる前は、ピアノのレッスンなんて面倒なものだと思っていた。ピアノ自体は嫌いではないけれど、
毎日毎日何時間もピアノを弾いていたら、正直ゲンナリしてくることもある。努力したからといって絶対に
ピアニストになれる保証もないのだし、だったら練習なんてほどほどでもいいんじゃないか、ピアノなんて
楽しんで弾ければいいんじゃないかとも思っていたのだ。
 でもいざピアノから離れてみると、毎日が空虚で退屈で仕方がなかった。ピアノから離れて初めて、
自分が他に頑張っていたことなんて何もないのだということに気がついた。突然自分が無価値な人間になった
ように思えた。
 バスの窓から反対車線を見ると、道路の補修工事が行われていた。地震の爪痕は、人々の努力によって、
徐々にではあるが、消えつつある。危険な建物の解体作業も、街を見回せば見つけるのに苦労しない。
ボランティアの人達も未だに各所で頑張っている。きっと悲しい思いを抱えながら働いている人も、
たくさんいるだろう。そんな人達が、ユカには眩しく思えた。自分は一番大変なときにたまたまこの街にいなくて、
大変が過ぎ去った頃に戻ってきただけだ。自分は何もできない。弟を亡くして悲しむ友達を励ますこともできない。
 ユカは思う。あたし、この街に戻ってきて良かったのかな。この街に居てもいいのかな……。

34 :
 それから数日が経った。学校では三人は、表面上は一学期と変わりなく過ごしているように見えた。
目に見えて変わったところと言えば、せいぜい未来の登校時間が早くなったことぐらいだろうか。
ただ、未来の隣の席のユカから見ると、未来の小さな変化は他にもいろいろと気付くことがあった。
「はぁー、今日も六時限目まであるんだ……毎日毎日やんなるよねー」
 午後の授業前の休み時間、マユは次の授業の教科書を取り出しながら、不満を述べた。二学期の開始が
遅れたおかげで足りなくなった授業日数を補うべく、このところは毎日の授業時間が長くなっていた。
今日も明日も明後日も、授業は六時限目までみっちりである。
「しょうがないよ、きっと先生達も大変なんだしさ、あたし達も我慢しようよ」
 学校の方針をフォローしながら、教科書を取り出す未来。以前の未来だったら、絶対にマユに同調して
不満を言っていたと思う。授業のことに限らず、掃除当番や日直などの雑用でも、未来はほとんど不満を
言わなくなっていた。
「……未来、変わったね」
「……そうかな。変かな?」
「ううん。いいんじゃない」
 マユに言われて、少し照れたような笑みを浮かべる未来。ユカから見ても、未来は以前なら
ないがしろにしていたようないろんなことを、大事にしようとしているように見えた。それはきっと、
好ましい変化なのだと思う。その成長が例え、弟の悠貴を亡くした悲しい思いの結果なのだとしても。
 ただ同時に、ユカには未来が無理をしているように見えて仕方がなかった。泣いている未来を
見てしまったせいというのもあるけれど、教室でも、未来はとてもつらそうな表情を見せることがある。
亡くなったクラスメイトの机を見ているとき。お母さんが亡くなって、まだ学校に出てこられない
メグの机を見ているとき。一人で窓の外の景色を眺めているとき。そんなとき、ユカは未来に
声をかけられない。声をかけようとすると決まって思い出すことは、未来の泣き顔と、未来についた
嘘のことだった。
 どうしてあんな嘘をついちゃったんだろう。どうしてあのとき、未来のそばにいてあげられなかったんだろう。
未来に声をかけるのをためらう度に、後悔は深く静かに、ユカの心に降り積もっていった。

35 :
 ある日の朝。ユカが登校して教室に入ると、未来は今日も先に登校していた。席に座って、窓の外を
眺めている。席が窓際だからなのか、未来は何もしていないときはぼんやりと窓の外を眺めていることが
多かった。それは一学期の頃から変わっていないのだけれど、今の未来の表情はぼんやりと、という様子
ではなかった。なんだか、とてもつらいことを思い出して、それにじっと耐えているような痛ましい表情を
している。ユカは黙って未来の隣の自分の席に座った。挨拶すらためらわれた。
「……あ、ユカ。おはよう」
 ユカに気付いた未来が、パッと表情を変えて挨拶してきた。
 ……未来、本当に大丈夫? 無理してないよね? 頭の中にいろんな言葉を思い浮かべてはみたものの、
結局そのどれも口にすることはできない。短い時間悩んだ結果、実際に口にできたのは、無難な挨拶だった。
「う、うん、おはよう」
 このところ、ユカは未来とうまくいっていない。なんだか、全然自然な会話ができていなかった。
やっぱり、未来に嘘をついたことを引きずっているのだと思う。未来と話そうとすると、申し訳ないという
気持ちが先に立ってしまうのだった。自分でもなんとかしたいと思ってはいるものの、あのときのことを
正直に話すのであれば、泣いている未来から逃げ出したことまで話さなくてはならなくなってしまうため、
なかなか踏ん切りがつかないでいた。おかげでどんどん自己嫌悪に陥る毎日である。
 でも、いつまでもこのままではいられないし、いたくもない。なんとか少しでも話し合わないと。
ユカはとにかく、思いついたことを口にしてみた。
「……未来、最近窓の外、よく見てるよね」
 これだけのことを訊くのにも、かなりの勇気が必要だった。さっきの未来の表情は、本当にそれだけ
つらそうだったから。もしかしたら、余計なことを訊いてしまっているのかもしれない。でも、今は
とにかく未来と話がしたかった。
「……うん。東京タワー……なくなっちゃったんだな、って思ってさ」
 それは、意外な返答だった。以前は教室の窓から、東京タワーが見えていた。それがなくなってしまった
というのは、確かに寂しいことなのかもしれないけれど。でも、それだけであんなにつらそうな顔で外の景色を
眺めるものだろうか。他に何か、理由があるような気がする。しかし、それがなんなのかまでは、怖くて訊けない。
 ああもう! あたしの意気地なし! 未来とちゃんと話がしたいんでしょ!? ユカは自分に言い聞かせて、
さらに話を続けようとする。
「そんなに……ショックだった? 東京タワー、倒れちゃって」
 その瞬間の未来の表情を、ユカはたぶん一生忘れない。まるで涙を流さないで泣いているみたいな、
悲しい顔だった。

36 :
「……そうじゃないけど……」
 ユカは、もう耐えられなかった。未来にこんな顔をさせるつもりじゃなかった。溢れてくる罪悪感を、
止められなかった。
「ごめん……ごめんね、未来……」
 思わずユカは、未来に頭を下げていた。もう、まともに未来の顔を見られない。未来の顔が見られなくて、
ユカはずっと顔を上げられなかった。
「や、やだ、ユカ。どうしたの、なんで謝るの? 顔、上げてよ、ユカ」
 慌てた様子で、ユカに顔を上げるよう促す未来。でも、ユカは顔を上げられなかった。上げられるわけが
なかった。気が付いたら、溜め込んできた汚い思いを、洗いざらいぶちまけていた。
「あたし、未来に嘘ついてたの。未来の家にお線香あげにいったとき、すぐに帰ったのって、ピアノの
レッスンがあったからじゃないの。あたしが、未来の悲しい顔を見てるのがつらくなったからなの。
ピアノなんて、地震で壊れちゃってて、レッスンなんてなかったの。未来、本当にごめんなさい!」
 言ってしまった。言うだけ言ってしまった。何もかも吐き出した頭の中は、真っ白に染まっていた。
今のユカに意識できるのは、見慣れた教室の床と、自分の心臓の鼓動だけだった。長い長い沈黙が続いた。
こんなにも長くて苦しい沈黙を、ユカは経験したことがなかった。やがて、未来がようやく小さな声を発した。
「そう……だったんだ……」
 今、未来はどんな顔をしているんだろう。どんな気持ちでいるんだろう。ユカには全然想像できない。
想像する余裕もない。未来の反応が怖くて、顔を上げられない。
「顔、上げてよ、ユカ」
 しっかりした声で、促す未来。声を聞いただけで、未来が無理をしているのがわかった。ユカはようやく
顔を上げた。このまま頭を下げ続けて未来の顔から目をそらしていたら、未来だけに無理をさせているみたいで、
申し訳なくなったからだった。
「気にしなくていいよ、そんなこと。あたし、ユカが家に来てくれて、嬉しかったよ」
 やだよ、未来。怒ってるなら、怒ってくれてもいいんだよ? 呆れたなら、呆れてくれてもいいんだよ?
そんな優しい言葉をかけないでよ。あたし、嘘をついてたんだから、優しくしてくれなくてもいいんだよ?
お願いだから、そんな悲しい顔で笑わないでよ。

 ねえ、未来。あたし達、まだ、友達だよね?

37 :
「じゃあ、ゴミはあたしが捨ててくるから。みんなは先に帰っていいよ」
「そう、じゃあユカ、お願いね。また明日ねー」
 その日の放課後。ユカは掃除当番だった。同じ班のクラスメイトを先に帰らせて、自分はゴミ箱を持って
ゴミ捨て場へ。授業時間が長くなっているのに加えて、最近は日が暮れるのも早くなってきた。空はすでに
オレンジ色に染まりつつある。
 二学期始まったの、ついこの前なのになぁ……。人気の少なくなった校舎の中、そんなことを思って
ため息をついてしまう。そうして、空のゴミ箱を持って教室に戻ってきたユカを待っていたのは、見知った
人影だった。
「……マユ」
「……帰ろ」
 教室の隅にゴミ箱を戻して、教室の戸に鍵をかけて、退室。職員室に鍵を返して、二人並んで廊下を
歩き出す。廊下の窓から差し込むオレンジ色の光が、二人の影を長く伸ばしていた。
「未来と、何かあった?」
 マユは、遠慮なく訊いてくる。こういうところは、本当にマユには敵わない。今日、ユカと未来は、
朝の一件からずっと口をきいていなかった。ユカから話しかけることもなかったし、未来から話しかける
こともなかった。マユはずっと二人のことを気にかけていたようだったけど、特にそのことで何か
訊いてくるようなことはしなかった。でも今、マユはユカを待ってくれていた。きっと、二人だけで話す
時間を作ってくれたんだと思う。本当、自分には出来過ぎた友達だと、ユカは思った。
「……あのさ……」
「何?」
 マユになら。マユになら、全部話してしまってもいいのかもしれない。友達とケンカして、自分が
悪いようなら謝ればいい。今まで、ユカはそのやり方で友達付き合いを乗り切ってきた。そのやり方で
対処できないケースがあるなんて、全然思わなかった。まさか謝ることで友達を傷つけることがあるなんて、
想像もしてなかった。もう、ユカにはどうすればいいのか、全然わからなかった。
「あたし……未来に、嫌われちゃったかもしれない……」
 自分でもびっくりするぐらい情けない声だった。こんなに参っているつもりはなかった。こんなに
落ち込んでいるつもりはなかった。自分のことは、もっと鈍感な人間だと思っていた。未来の家に
行ったとき、自分は薄情な人間かもしれないと思ったのが嘘のようだった。
「……は? なんで? なんでそんなこと思うの?」
 マユはそんなユカの言葉が不思議でたまらない様子だった。ユカは全部話すことにした。
もう、心のブレーキはとっくに壊れていた。
「この前さ……未来の家に、弟君の仏壇に、お線香あげに行ったでしょ? あのとき、あたし、ピアノの
レッスンあるからって言って、すぐ帰っちゃったよね? あれ……嘘だったんだ。本当は、ピアノの
レッスンなんてなかったの。ピアノは、地震で壊れちゃって、今修理中だから。あのときすぐ帰ったのはね、
未来の悲しい顔を見てるのが……つらかったからからなんだ」
「…………」
「でもあの後ね、学校で未来の顔を見る度に、未来に嘘をついたことを思い出しちゃって。そのせいで、
未来とうまく話が出来なくて。だから、今朝、未来に……嘘をついたことを話して、謝ったの。
でもね、未来、全然怒らないの。すごく無理した顔で……家に来てくれて嬉しかった、って……」

38 :
 話せば話すほど、惨めさが募っていった。自分が酷く卑屈で、矮小な人間に思えていった。
マユは、黙って聞いていた。何か感情を溜め込んでいる気配が伝わってきたけれど、それでも、黙って
聞いてくれていた。
「ねえ、マユ……未来、なんで怒らなかったのかな……。なんで笑って、あたしのこと、許してくれたのかな。
あたしのことなんて、もう、どうでもよくなっちゃったのかな」
「バカじゃないの?」
 唐突に、マユが声をあげた。その声は、怒気を孕んでいた。並んで歩いていたはずなのに、気がつけば
ユカはマユより前に進んでいた。ユカは慌てて振り返った。マユはその場に仁王立ちになって、ユカを
睨みつけていた。
「あんたのことは前からバカだと思ってたけど! もう、本当大バカ! ここまでバカだとは思わなかった!
バカバカバカッ! この、大バカ者!」
 マユの剣幕に、気圧されるユカ。そりゃ、あたしはバカかもしれないけど……マユの言う通りかも
しれないけど……ここまで好き放題言われたら、少しだけ、ほんの少しだけ、反発心の芽が出てくる。
「そ、そんな言い方って」
「あんたなんにもわかってない! 未来のこと、なんにもわかってないっ!」
 ここまで言われたら、ユカも言い返したくなってくる。一気に、反発心が芽を吹いた。
「そりゃ、あたしはバカですよ! 未来のこともなんにもわからないよっ! マユみたいに未来と付き合い
長くないし、マユみたいに未来に優しい言葉もかけられないよっ!」
「あたしだって、なんにも出来なかったよっ!」
 それは、今までユカが聞いた中で、一番大きなマユの声だった。今までで一番悲しくて、一番怒りに満ちた、
マユの声だった。
「あたしだって、お葬式のとき、未来になんにも言ってあげられなかった! 泣いてる未来を、黙って
見てるだけだった! でもね、あんた、知らないでしょ!? あんたが帰った後、未来があんたのこと、
なんて言ってたか、知らないでしょ!? 未来、ユカが来てくれて本当に良かった、ユカが友達で本当に
良かったって、何度も何度も言ってたんだよっ!? あんたそんなこと、全然知らなかったでしょ!?」
 ユカは、返す言葉を失った。言葉を返す気力も失った。ただ、自分が取り返しのつかない間違いを
していたのだということを、マユの言葉を聞いて、悟っただけだった。もう、何も言い返せなかった。
 マユはずっと肩で息をしていて、その場から一歩も動かなかった。ユカはただ俯いて、沈黙を守り続けた。
ようやくユカが言葉を発したのは、息を荒げたマユの呼吸が整い出した頃だった。
「マユ……あたし、どうしたらいいんだろ……」
「……知らないよっ!」
 言い捨てて、マユは歩き出してしまった。容赦なく、ずんずんとユカの横を通り過ぎていく。
ユカはマユを追うどころか、振り返ることもできない。やがてマユの気配も感じられなくなった頃、
ようやくユカは、自分の膝が震えていることに気がついた。ユカは思う。

 最低だ。あたし。

39 :
「あ……メグ、おはよー……久しぶり……」
 翌朝。学校の玄関口で顔を合わせたのは、二学期に入ってずっと学校に来ていなかった、クラスメイトの
メグだった。メグのお母さんが亡くなったことは、ユカも知っていた。メグとはそれほど仲が良いわけでは
ないけれど、それでも学校に来られないクラスメイトのことが心配だったことには変わりはない。
 二学期に入ってすっかり様変わりしてしまった自分のクラスが、メグが戻ってきたことで少しだけ一学期の
頃に戻ったみたいで、ユカは小さな安心感を覚えた。
「あ、おはよう……ってユカ、どうしたの、その顔!? 目の下に隈出来てるよ!?」
 げっそりしたユカの様子に、驚くメグ。あ……やっぱりそう見えちゃうんだ……と、他人事のように考えるユカ。
ピアノのレッスンがなくなったおかげで、後悔する時間だけはたっぷりあった。昨日の夜は、後悔と罪悪感で一睡も
出来なかった。朝は親にも驚かれて、具合悪いなら学校休んでもいいのよ!?と心配された。でも、今日休んで
しまったら、どんどん未来やマユとの距離が離れていってしまうような気がした。どんなに二人と顔を合わせ
づらかったとしても、そうなることだけは絶対に嫌だった。今なら、どんな罰にも耐えられるような気がした。
「だいじょーぶ……ちょっと夜更かししちゃっただけだから……」
 言いながら、見当違いの方向に向かって歩いていくユカ。メグは慌ててユカの手を取った。
「ユカ、そっち二年生の教室だよ!? ああもう、こっちこっち!」
 ユカの手を引いて、自分達の教室に向かって歩いていくメグ。ああ、あたし、メグに心配かけさせちゃった……
メグの方がずっと大変なのに……ほんとダメダメだなぁ……などと、ダメ人間まっしぐらな思考に耽るユカ。
「メグ……」
「何?」
「いろいろ大変だと思うけど……元気出してね……」
 手を引かれながら、蚊の鳴くような声でつぶやくユカ。思いがけない言葉でも聞いたかのように、
目をパチクリさせるメグ。
「何言ってんの? 今元気が必要なのはユカの方じゃないの?」
 そうだろうか。言われてみれば、そうかもしれない。ユカは妙に納得した。
「……ナイスツッコミ……」
 相も変わらないげっそりした表情のまま、グッと親指を立てておどけてみせるユカ。それを見たメグは
数秒固まった後、堪え切れなくなったように、ぷっと吹き出した。そのまま、メグはしばらく笑い続けた。
 はて……あたし、なんか面白いこと言ったっけ……? いかんせん現在の精神状態が酷過ぎて、三秒前の
自分の言動すら全く記憶に残っていない。我ながら、よくこんな状態で学校まで辿り着けたものだと思う。
 まあ、いいや。メグ、笑ってるし。いろいろ大変だと思うけど、元気出してね。リサも心配してたよ。
朦朧とする意識の中、そんなことを考えるユカだった。

40 :
 意識が朦朧としていたのは、かえって幸いだったのかもしれない。教室で未来やマユと顔を合わせるときに、
それほど抵抗や緊張感を感じなかったからだ。というよりも、単にそんなものを感じる余裕すらなかったという
ことなのだが。もちろん未来の方は、ユカの顔を見た途端びっくりした。心配して、声をかけてきてくれた。
「ユカ、どうしたの!? 目の下に隈出来てるよ!? すっごい顔色悪いよ、大丈夫? 保健室行こうか?」
「だいじょーぶい……」
 自分の席に突っ伏したまま、Vサインを出すユカ。もう自分で何を言っているのかすらわからない。
未来はおろおろした様子で、マユの方を見る。しかし、マユの態度はそっけないものだった。
「どうせ、夜更かしでもしてたんでしょ。ほっとけば」
 ああ、やっぱりマユ、まだ怒ってるよね。そりゃそうだよね。あれだけ怒ってたんだもん、そんな簡単に
許してもらえないよね。でも、それでもいいんだ。怒ってるってことは、気にしてくれてるってことだから。
まだあたしのことを、どうでもいい人間とは思ってないってことだから。未来を傷つけたあたしに怒ってるって
ことは、それだけマユが未来を大事な友達だと思ってるってことだから。だから、マユが怒ってくれてるのは、
今のあたしにはとても嬉しいんだ。
 その後、ホームルームが始まるまでの記憶は、ほとんどない。メグは、リサや未来と何か話をしていたような
気がする。マユは自分の席で腕組みをして、ふくれっ面をしたままだ。そのうち予鈴が鳴って、先生が来て、
今日の授業の予定などを話していたのだけれど、ほとんど何も覚えていない。隣の席の未来と、斜め後ろの席の
マユが、ずっと心配そうな顔で自分を見守っていたことにも、ユカは気付いていなかった。


 中学の入学式が終わって、初めて自分の教室の、自分の席に座っていたときのことだ。この中学には小学校の
頃の友達は誰もいなくて、ユカはとても心細い思いをしていた。周りを見回しても、みんな自分よりこのクラスに
馴染んでいるように見える。本当に大丈夫かな。あたし、このクラスで、友達作って、ちゃんとやっていけるのかな。
不安と緊張で、息苦しくてたまらない。しばらくの間、机の上に張られた自分の名前をじっと見つめていたけど、
それもだんだん苦しくなってきた。ど、どうしよう……。そうだ。隣の席の子、どんな子なんだろう。
 あ、この子、入学式のとき、入口で見かけた子だ。確か、お母さんが転んじゃって、すごく恥ずかしそうな
顔してたんだよね。でも、本当はお母さんのこと、心配してたんじゃないのかな。うん、きっとそうだよね。
あんなに大きな声でお母さんの心配してたんだもん、きっと悪い子じゃないよね。名前、なんていうんだろう。
 小野沢、未来。おのざわ、みらい。
 へえ、この子、未来っていうんだ。いい名前だね。
 話しかけてみようかな。話しかけたら、友達になってくれるかな。

41 :
「……ユカ。ユカってば!」
 声に起こされて、夢から覚めた。顔を上げると、目の前に、未来の顔があった。
「……ふえ?」
 寝ぼけ眼で、虚ろな返事をするユカ。どうやらホームルームの間に、寝てしまっていたらしい。反射的に
時計を見ると、もうすぐ一時限目の授業が始まる時間だった。
「一時限目、視聴覚室に移動だよ? 早く行かないと、遅れちゃうよ?」
 そういえば、ホームルームで先生がそんなことを言っていたような気がする。なんでも、被災した生徒の
心のケアだとかで、ヒーリング系のビデオを上映するのだとか何とか。教室を見回すと、すでに他のクラスメイトは
視聴覚室に移動しているようだった。残っているのは、ユカと未来、それに教室の出口で腕組みをしてむっつり
した顔をしているマユだけだ。マユ、待っててくれたんだ……。
「行こう?」
 優しい顔で、手を差し出してくる未来。昨日から、ずっと考えてた。どうして未来は、弟君がいなくなって、
悲しくて苦しくてたまらないはずなのに、こんなにあたしに優しくしてくれるんだろう。未来は、ずっと無理を
してるんだと思ってた。学校に来るのも、授業を受けるのも、あたしと話をするのも、全部無理をしてるんだと
思ってた。
 でも、少し違っていたのかもしれない。無理はしているのかもしれないけれど、未来が優しいのは、未来が
そうしたいからなのかもしれない。未来は、弟君がいなくなって、悲しくて、つらくて、あたしには想像も
出来ないぐらい、苦しい思いを抱えてきて。もう弟君と、話をすることも、触れることも出来なくて。
 だからきっと、今の未来には、傍にいる人が生きているってだけで、かけがえのないことなんだ。
話しかけたら返事をしてくれて、手を握ったら握り返してくれて。今の未来には、そんなことが、すごく
嬉しいことなんだ。それがあたしみたいな、出来の悪い友達でも。だから、未来はこんなに優しくしてくれるんだ。
 今、やっとわかったような気がする。やっぱり、あたしには未来にしてあげられることなんて何もない。
 きっと、思い違いをしてたんだ。寂しいのは、あたしの方だったんだ。
 未来が、あたしには見えない、ずっと遠くの景色を見ているような気がして、それがあたしは寂しかったんだ。
 未来が、あたしにはわからない、深くて暗い悲しみを抱えているような気がして、それがあたしは寂しかったんだ。
 あたしに出来ることなんて、最初から、なんにもなかったんだ。

 違う、そうじゃない。
 そうじゃなくて、あたしは未来に――。

42 :
「未来!」
 ユカは突然勢いよく跳ね起きて、未来の手を取った。
「な、何?」
「ちょっと、あたしに付き合って!」
 言い放って、そのままずんずんと教室の出口に向かって歩いていく。未来はびっくりして、引きずられて
いくようにして、ユカについていった。教室を出て、ユカは視聴覚室とは反対方向に歩いていく。
「ち、ちょっと、待ちなさいよ! そっち、視聴覚室じゃないよ!?」
 マユも、驚いてユカを呼び止める。しかし、ユカは止まるどころか、歩くペースを速めつつ、言い放った。
「マユも来て!」
「え……ええーっ!?」
「待ってよ、ユカ! どこ行くの!?」
 さすがに疑問をぶつけてくる未来。ユカは声を張り上げて答えた。迷いはなかった。
「音楽室!」
「授業はどうするの!?」
「サボリ!」
 ユカの頭は、妙なところで冴え始めていた。確かこの時間、どこのクラスも音楽室は使っていないはず。

43 :
「待ちなよ、ユカ! いったいどういうつもりなの!?」
 未来の手を引いて音楽室に向かうユカについていきながら、苦情を唱えるマユ。何の説明もなく、
未来も自分も巻き込んで授業をサボろうと言っているのだから、文句が出てくるのは当然である。
「だいたい、なんで音楽室なの? あんた、まさかとは思うけど」
「うん。これからピアノを弾くから、未来とマユに、あたしの演奏を聞いてほしい」
 ユカのストレートな回答に、しばし絶句するマユ。ちょうど、音楽室の前に辿り着いたときのことだった。
 三人とも立ち止まり、ユカはマユに向き直る。マユは心底呆れたような顔で、つぶやいた。
「……何考えてんの? 授業サボってこんなことして、未来が喜ぶとでも思ってんの?」
「ちょ、ちょっと、マユ」
 容赦なくユカを糾弾するマユに、うろたえる未来。でも、ユカは引かなかった。マユから目をそらさず、
ユカは答えた。
「未来のためじゃない」
 それは、決定的な一言だったのかもしれない。こんなことを言ってしまったら、もう二人とは友達には
戻れないかもしれない。でも、もう嘘をつくわけにはいかなかった。ここで自分の気持ちを誤魔化すような
ことを言ってしまったら、今度こそ本当に、二人とは笑い合えなくなるような気がした。
 頑張れあたし。負けるなあたし。ユカは、自分に言い聞かせる。
「これは、あたしのただのワガママなの。今、急にピアノが弾きたくなったの。でも、誰も聞いてくれないと
寂しいから、未来とマユに付き合ってもらいたいだけなの。だから、あたしなんかほっといて、授業に行って
くれても構わないよ。ううん、きっとその方がいいと思う」
 嘘は言っていない。自分は全部、本当の気持ちを言っている。これは全部、今自分が考えていることだ。
本当は、とても怖かった。こんなことを言ってしまったら、未来とマユに嫌われて、もう友達ではいられなく
なるような気がして、とても怖かった。ここで二人が自分から離れて行ってしまったら、自分はもう
立ち直れないかもしれない。
 でも、そうなっても仕方がないと思う。たぶん、後悔はしないと思う。今の自分が未来とマユに自分の
気持ちを伝えられる方法は、きっとこれだけだから。一度嘘をついてしまった自分の言葉には、
何の説得力もないと思うから。自分の気持ちを誤魔化しながら二人と友達で居続けるなんて、絶対に嫌だから。
「……行くよ、未来」
 未来の手を掴んで、この場を立ち去ろうとするマユ。ああ、やっぱりこうなっちゃうのか……でも、
悪いのは全部あたしなんだから、しょうがないよね……マユの方が、正しいよね……。
 そんなことを考えて諦めかけたユカだったが、次の瞬間には、マユの足が止まっていることに気がついた。
未来が、この場から動こうとはしなかったからだった。
「……ごめん、マユ。あたしも、サボりたくなっちゃった」
 弱々しくも、意地の悪い笑みを浮かべる未来。マユはまた絶句して、やがて心底呆れたような表情をして、
ガリガリと頭をかいた。そして、開き直ったように二人を非難する。
「あー、もう! 後で怒られるのは三人一緒なんだからね!」
 ありがとう。ユカは、心の底から、そう思った。

44 :
「それはいいんだけどさ……音楽室、鍵、閉まってるんじゃないの?」
「あ、それなら大丈夫」
 マユの冷静な指摘にも、ユカは慌てない。ポケットをゴソゴソと探り、一本の鍵を取り出した。
誇らしげに頭上に掲げて、言い放つ。
「こんなこともあろうかとぉー!」
 どこからか、冷たい風が吹きつけてきたような気がした。未来もマユも、口をあんぐりと開けて、
固まっている。さ、寒い……。ああああ、だってだって、一回言ってみたかったんだよおおおお。
 でも、今はこんなことでへこたれてはいられない。ドン引きされたって、構うもんか。
 ユカは音楽室の防音扉に鍵を差し込んで、解錠する。練習に使っているピアノが地震で壊れたと
先生に話したら、いつでも学校のピアノを使っていいからね、と言って預けてくれた鍵だった。
 いつでも、というのはもちろん授業中でも、という意味ではないのだけれど、ここは都合の
良いように拡大解釈することにする。
 先生、せっかく貸してくれた鍵なのに、授業のサボリなんかに使っちゃってごめんなさい。



「適当に座って」
 ユカは音楽室に入るなり、未来とマユに促した。まるで自分のテリトリーであるかのような
振る舞いである。
「何偉そうにしてんのよ」
 言いながら、適当な席に座る未来とマユ。三人だけの音楽室は、なんだかすごく新鮮だった。
見慣れている教室のはずなのに、普段は味わえない授業中の静寂に包まれた室内はまるで特別な
空間になったみたいで、ちょっとわくわくする。
 ユカはぺこりとお辞儀をすると、ピアノの蓋を開いて席につき、軽く音階を奏でて久しぶりの
鍵盤の感触を確かめた。
 大丈夫。ずいぶんと久しぶりだけど、絶対弾ける。弾いてみせる。ユカは、演奏を開始した。

45 :
 未来。本当にごめんね。あたしね、酷いこと考えてたんだ。
 あたしね、未来の頭の中から、弟君なんていなくなっちゃえばいいと思ってたんだよ。
 だって、未来の悲しい顔を見たくないんだもん。悲しくてつらいのを我慢して平気そうにしてる、
未来の顔を見たくないんだもん。そんな未来に、なんて話しかけたらいいのか、わからないんだもん。
 本当、自分勝手で、酷い友達だよね。はっきり言って、友達失格だよね。こんなあたしに、
未来にしてあげられることなんて、あるわけないよね。
 だから、この曲は未来のための曲じゃない。この曲は、あたしが自分の気持ちを伝えるための曲。
わがままで一方的で、空気を読まないただの自己主張。未来の悲しい気持ちは、あたしにはわからない。
本当の悲しみを知らないあたしには、未来の気持ちはわかってあげられない。
 だからこの曲は、悲しい曲じゃない。これは、嬉しい気持ちを伝える曲。未来とマユがあたしの
友達でいてくれたことへの、感謝の気持ちを伝える曲。
 あたしね、静岡から東京に戻ってきてから、ずっと引け目を感じてたんだ。地震があったときに
東京にいた人はみんな大変な思いをしてたのに、あたしだけ何事もなかったみたいに平気だったから。
亡くなった人がいっぱいいて、ケガをした人がいっぱいいて、家が壊れちゃった人がいっぱいいて。
そんな中で、あたしだけこんなにラッキーで、ずっと申し訳ないと思ってた。
 でも、もうそんな風に考えるのはやめようと思う。あたしは、もっと素直に、家族が無事だったことを、
家が壊れなかったことを、友達が無事だったことを、喜ぼうと思う。引け目を感じて後ろめたく思うのは、
もうやめようと思う。
 その代わりに、いろんな人にありがとうって伝えようと思う。
 壊れちゃった街を直そうとしている人たちに、ケガをしたり悲しい思いをしたりしても頑張っている人たちに、
地震でも壊れなかった頑丈な家を建ててくれた人たちに、ありがとうって伝えようと思う。
 未来とマユにも、たくさんたくさん、ありがとうって伝えようと思う。
 未来、マユ。初めて二人と話をしたときのこと、覚えてるかな? あのときあたし、初めて入った
教室の中で誰も友達がいなくて、本当に心細くて、すっごく寂しかったんだよ。だから、未来とマユが
あたしに話しかけてきてくれて、本当に嬉しかったんだよ。未来とマユにとっては、たまたま席が近かった
だけのことなのかもしれないけれど。未来とマユにとっては、あたしじゃない誰かでも良かったのかもしれないけれど。
でも、あたしは未来とマユがあたしの近くの席でいてくれて、本当に良かったって思ってる。
未来とマユが友達になってくれたから、あたし、この学校でもやっていけそうだって思ったんだよ。
だから、地震があった後、未来とマユが無事だってわかったときは、本当に嬉しかったんだよ。
 未来。悲しくて苦しくてたまらないはずなのに、毎日学校に来てくれて、ありがとう。
 マユ。未来を傷つけちゃったあたしを、ちゃんと怒ってくれて、ありがとう。
 未来。マユ。あたしの前から、いなくならないでいてくれて、ありがとう。

46 :
 終わっちゃった……。最後の一音まで、弾き終わってしまった。曲の余韻に浸るのも、束の間のことだった。
だんだん、頭の中が冷静さを取り戻してくる。静寂の中、心臓の鼓動が、やけにうるさく感じられた。
 あたし、もしかして、今、とんでもないことしてるんじゃ……授業サボっちゃったし、音楽室無断使用してるし、
未来とマユも巻き込んじゃったし……ああああ、何これ、すっごい恥ずかしい。穴があったら入りたいよおおお。
 拍手が聞こえた。最初は一人分の拍手だった。それがすぐに二人分の拍手に変わる。未来とマユが、
演奏を終えたユカに、拍手をしてくれていた。
 ああ、そうだよね……あたしが二人を巻き込んだんだもん、ちゃんと二人と向き合わなきゃ……。
なかなか鳴り止まない拍手の中、ユカは意を決して立ち上がる。まだ二人の顔を直視する勇気が持てなくて、
すぐにぺこりとお辞儀する。拍手は鳴り止まない。ユカは、なかなか顔を上げられない。まずい。
泣いてしまいそうだ。
 ようやく拍手が鳴り止んで、最初に声をかけてくれたのは、マユだった。
「……良い演奏だったよ。ユカのこと、ちょっとすごいと思ったかも」
 はは。マユ、ありがとう。お世辞でも嬉しいよ。久しぶりだったからあんまり上手く弾けなかったと
思うけど、それでも二人が最後まで聞いてくれただけで、嬉しかったよ。ああもう、あたし何やってんだろ。
そろそろ顔を上げないと。未来とマユの顔を見るのは怖いけど、それでも前に進まないと。
 そう思ってようやく顔を上げたユカは、未来の表情に目をやって、目を疑った。
 み、未来……なんで……なんで、ダダ泣きしてんの!?
 ウソ、だって、今弾いた曲って、悲しい曲じゃないはずだよね?
 どっちかって言ったら、明るい曲のはずだよね?
 たぶん、泣くような曲じゃないはずだよね!?
 も、もしかして……あたし、また、やらかしちゃった……?
 ああああ、ど、どうしよう、未来、ごめんね、ごめんね、こんなつもりじゃなかったんだよおおお。
 やっぱり、やっぱり、未来に嫌われるのは、嫌だよおおおお。
「み、未来……あ、あのね……」
 恐る恐る、未来に歩み寄っていくユカ。ど、どうすればいいんだろう。ああもう、未来の顔、涙と鼻水で
グシャグシャだよ。とにかく、顔を拭いてあげないと。ハンカチ、ハンカチ。ユカはポケットの中を
探ろうとする。そのとき、思いがけないことが起こった。未来は、ユカに抱きついていた。
 え、えええええ!? こ、こんなの、全然どうすればいいのかわからないよ!
ああもう、マユ、何かフォローしてよ。なんで微笑ましいものでも見るみたいな目で見守ってんの!?
ああ、未来、そろそろ泣き止んでよ。あたしこういうとき、どうすればいいのか、全然わからないよ!
 ねえ、未来。もしかして、今、未来が泣いてる理由ってさ。
 あはは、そんなわけないよね。危ない危ない、すごい勘違いするところだったよ。
 ねえ未来、いい加減泣き止んでよ。
 これ以上こんな状態が続いたら、あたしバカだから、本当に勘違いしちゃうよ?
 未来が小さな子供みたいになかなか泣き止まないので、頭の後ろを、そっと撫でてあげた。
 なんだか、ちょっとお母さんみたいになった気分。
 あたし、知らなかったよ。未来って、意外と涙もろかったんだね。


 音楽室の扉が勢いよく開いたのは、そのときだった。
「あなた達、こんなところでいったい何やってるの!?」

47 :
 三人はもちろん職員室に連行されて、説教された。未来が泣き腫らした顔をしていたせいか、
そんなにきついお咎めは受けなかったのだけれど、それでもユカは心の底から反省した。
 先生、授業サボって、本当にごめんなさい。音楽室を無断使用して、本当にごめんなさい。
 もう二度とこのようなことは致しません。本当に、すいませんでした。
 当然、音楽室の鍵は没収された。こりゃもう、ピアニストになるのは無理かもね。
 お母さん、小さい頃からピアノを弾かせてくれたのに、本当にごめんなさい。

「……まったく、信じらんないよね。今どき先生に説教されて廊下に立たされるとか、
あり得ないから。全部ユカのせいなんだからね!」
 廊下で反省中の身なので小声ではあったが、これでもかと言わんばかりにユカを罵倒するマユ。
先生の説教よりも、よっぽどこたえる。本当に、なんでこんなことしちゃったんだろう……。
ああ、あたしって、こんなにもバカだったんだなぁ。知らなかったよ。
「……ごめん……」
 マユに謝りながら、ちらりと未来の顔を窺ってみる。精神的にそれなりにへこんでいたので、
思わず「未来はあたしの味方だよね?」などと、厚かましいことを言ってしまいそうになった。
でも、さすがにもうそんなことが言えるほど無神経ではいられない。あたしも、少しは空気を
読めるようにならないと。
「……ほんと、しょうがないよね、ユカは」
 ああ。未来が、ジト目であたしを睨んでる。
「だいたいさ、どう考えても主犯はユカなのに、あたしらと同じ扱いってのが納得いかないよね。
ユカは立たされるついでに、水の入ったバケツでも持つべきなんじゃないのー?」
 未来のジト目。未来の皮肉。未来の呆れた顔。
 あれ、おかしいな。なんでこんな気持ちになるんだろう。
 別に優しくされてるわけじゃないのに、どっちかって言えば冷たくされてるのに、
なんでこんなにあったかい気持ちになるんだろう。あたし、変になっちゃったのかな。
「え、えー……ヒドイよ、未来〜」
「あはは、いいねそれ。ユカ、今すぐバケツに水汲んできなよ」
 マユも未来に同調する。うう、なによもう、二人してよってたかって。
「やだよぉ、バケツ持つなんて。クラスのみんなに笑われるよぉー」
「反論は認めない! 被告を、バケツ持ちの刑に処す! 酌量の余地はないと思え!」
「しゃ、酌量って……マユ、そんな難しい言葉、よく知ってるね……」
「えー、このぐらいキホンでしょー?」
「……ぷっ。くっくっく」
 あ。未来、笑ってる。
「……ぷっ。あっはっは」
 つられて、マユも笑い出す。未来とマユは、むくれた様子のユカを挟んで、声をあげて笑い始めた。
 ユカだけは最後まで、むーと唸りながら抵抗していたものの、やがて我慢できなくなってくる。
 とうとう観念したように、ユカも加わって、三人で笑い始めた。

48 :
 たぶん、地震の前と同じようにはいかないと思う。
 未来はきっと、弟君がいなくなった悲しい気持ちを抱えたまま、笑ってる。
 あたしは、未来を傷つけて後悔した気持ちを引きずったまま、笑ってる。
 マユのことは、あたしはバカだからよくわからないけれど、何も悩んでないわけはないよね。
 いつか、マユのこともわかってあげられるようになれたらいいなと思う。
 きっと三人とも、地震の前と同じようには笑えない。
 でも、それでも、今、三人で一緒に笑ってる。
 前と同じではないけれど。何もかも元通りというわけにはいかないけれど。
 それでも、また、三人で、一緒に笑えたんだ。


 職員室の戸が勢いよく開いたのは、そのときだった。
「あなた達、静かにしなさい! どうやら全然反省が足りないようね!?」
「「「ご、ごめんなさいっ!」」」


 未来。マユ。先に謝っておくよ。こんな友達で、本当にごめんね。
 あたしは空気の読めないおバカさんだから、これから先もきっとたくさん迷惑をかけると思う。
 困らせちゃったり、呆れさせたり、下手をしたら愛想を尽かされちゃったりするかもしれない。
 でも、あたしはバカで鈍感だから、ゼッタイめげない、へこたれないよ。
 この先どんなことがあったって、二人から親友の認定を取り消したりはしないから。
 二人がなんて言ったって、困ったときは頼りにするし、悩んだときは相談するよ。
 だから、未来、マユ。これから先も、覚悟してよね。

おわり

49 :
鯖復活早々の長編投下乙です。
切なく優しい話ですなー。

50 :
GJ!
最終回のEDの絵とリンクしてるのがいいね

51 :
そろそろ保管庫欲しいな。
エロパロ保管庫に頼むにはどうすればいいのかな?

52 :
EDとリンクしてんな・・・
なかなかの良作。関係者かと思うほどだ。

53 :
さあ早く延期している小説版を書く作業に戻るんだ!
ってのは冗談で、GJです。最終回EDもっかい見てくる。

54 :
エンディングを元にしてるからこそ簡単に書けると思うんだが…

55 :
>>24
えーとメグ降臨は何月何日で?最終回でマロニエに水やってる日はまだメグ
は一時転校中?不登校中?で、空席でしたしね・・・。あの日10月5日で
っせ。
まあでも長編お疲れさま。

56 :
今回はクソ長い上に途中鬱展開なので反応が不安だったのですが、
わりと好評だったようで良かったです。
こんな長いのを最後まで読んでくれてありがとうございました。
>>55
日付については曖昧にぼかしています。
一応10月5日以降の話のつもりで書きました。
メグは冷静に考えると、EDでリサと街中で会っていることから考えて
転校してしまった可能性もありますが、演出の都合で(ry

57 :
新しいのちょっとできたんでいきます

58 :
「ふわ〜〜〜ぁ」
 セーラー服姿でリビングのソファーに寝っ転がり、携帯をいじっていた未来が、大きく伸びをした。
帰宅した彼女と入れ替わるように母が出かけた後、いいつけられた洗濯物の取り込みや荷物の受け取りを
した他は、ずっと携帯をいじりながらだらだらと過ごしていたが、いかに彼女が携帯依存気味とはいえ、
さすがに少々飽きてくる。
 しかし時間はまだ4時前で、テレビをつけても面白い番組をやっているでもなし、今すぐ片付け
なければならない宿題も用事もない。なにせ明日から夏休みだ、時間はたっぷりとある。
「ん…?」
 その時、未来の鼻がぴくぴくと蠢いた。そうだ、一つやっておきたい事があったんだと、未来は
思い出した。シャワーを浴びることだ。ただでさえ暑かったのに、途中でマロニエを植える手伝いを
させられて汗だくになってしまっていた。クーラーの効いた部屋で過ごしていたおかげで、今はもう
すっかり汗はひいているが、まだなんかべたべたした感じがするし、臭いだって消えていない。
「悠貴のやつ、早く帰ってこないかしら」
 未来は眉をしかめてひとりごちた。シャワーを浴びようにも、今家にいるのは自分一人だけで、もし
シャワーの最中に来客や電話があったら困ってしまう。まだ子供の弟だが、シャワーを浴びている間
くらいなら来客や電話の応対くらい任せられるし、退屈しのぎの相手にもなるのだが、悠貴はマロニエを
植えた後、友達とサッカーをしに行ってしまい、まだ帰ってこない。
(まったく、今日は一緒に留守番してなさいって言われてたのに…)
「ただいまー」
 と、未来がまさにそんな事を考えている最中、玄関のドアの開く音と共に、その悠貴の元気な声が
聞こえてきた。ようやく帰って来たかと、未来はソファーの上で身体を起こすと、しかめっ面を作って
弟がリビングに姿を現すのを待った。
「あ、お姉ちゃん、ただいま」
「まったく、いつまで遊んで…」
 悪びれる様子もなくリビングに現れた弟に、未来は間髪なしに小言を言いかけたが、その言葉が途中で
途切れた。悠貴の後ろからもう一人、サッカーボールを抱えた男の子が現れたのだ。
「あ、お邪魔します…」
 彼女の怒気を含んだ声と表情に飲まれ、おどおどと小さく会釈をするその子に、未来は慌てて
愛想笑いを浮かべた。「あ、イツキ君…だよね。来てたんだ?」
「うん、一緒にゲームしようと思って」
 けろりとした顔で言う弟に、なんで早くそれを言わないのよとばかりに未来は睨みつけたが、悠貴は
彼女の怒りにはまるで気付かないようで、すたすたと彼女の前を横切ってテレビの前へと歩いていった。
その後ろを、未来の顔色を気にしながらイツキもついていく。
「さ、ゲームしよ」
「う、うん…」
 二人がテレビの前のテーブルを横にどけて座り、ゲームの準備を始めると、未来はふぅっと深い溜息を
漏らし、悠貴の背中に声をかけた。
「ま、いいわ。お姉ちゃんこれからちょっとシャワー浴びるから、もしお客さんが来たり電話が鳴ったら
あんたが出てよ」
「はーい」
 テレビ画面を向いたままおざなりな返事をする悠貴に、本当に大丈夫かしらと未来は少し心配そうな
顔をしていたが、シャワーを浴びてる間だけだしと、諦めたようにもう一度溜息をついてソファーを
降りると、彼女はリビングを出ていった。

59 :
「あ〜、さっぱりした」
 それから十分ほどして、上機嫌な顔をした未来が、白いバスタオルを巻いただけの姿でバスルーム
から現れた。彼女は服を着ようとバスルームの隣にある自分の部屋へ向かいかけたが、反対側に
あるリビングから、悠貴とイツキが言い争っているような声が聞こえてきて、足を止めた。
「いい加減に交代しろよ悠貴」
「ダメだよ、やられたら交代だって決めたじゃない」
「そんなこと言って、お前が遊んでばっかじゃん」
 漏れ聞こえる声からすると、どうやらゲームの順番を巡っての喧嘩らしい。そんなことで喧嘩なんて
まったく子供なんだからと、未来は呆れ顔になると向きを変えてリビングのほうへ歩いていった。
「ちょっとあんたたち!」
「あ…」
 未来がドアを開けて声を張り上げると、コントローラーの奪い合いをしていた二人がさっと振り向く。
「仲良くしてないとテレビ消しちゃうわよ?」
 腰に手を当てて怒り顔をしてみせる未来に、悠貴が『えーっ』という顔になるが、自分ばかりが
遊んでいるという自覚もあったので、大人しくコントローラーをイツキへと差し出した。
「はい」
「え、あ…い、いいよ。悠貴がやってて」
 だが、イツキはどこか上の空でそれを断った。バスタオルを巻いただけの未来にどぎまぎとなって、
ゲームのことなどどこかへ吹き飛んでしまっていた。
「いいの?」
「う、うん…」
 イツキは頬を赤らめて視線を落とし、こくんと小さく肯いた。悠貴は不思議そうな顔をしながらも、
そう言うならとゲームに顔を戻し、プレイを再開した。そしてすぐにイツキの奇妙な態度のことも忘れ、
ゲームに集中していく。その横で、イツキもテレビに顔を向けるが、未来のセミヌードが気になって
しょうがなく、ちらちらと肩越しに未来の方を盗み見ていた。
 未来は二人が諍いをやめると、やれやれといったふうに息をつき、せっかくだからアイスでも食べるか
と、キッチンカウンターの後ろを通って冷蔵庫へと向かった。ドアを開けて中からラムネ味のアイス
キャンディーを取り出し、袋から出して口に咥える。そして未来は後戻りをして出入口に向かったが、
リビングを出ずに、カウンターをまわってイツキたちのほうへと近寄っていった。
(あ……)
 未来の様子を伺っていたイツキは、バスタオルからのぞく太股や剥き出しの肩に、目のやり場に困って
慌ててゲーム画面へと視線を戻した。だが、やっぱり気になって、また未来のほうをちらちらと見やる。
「はい、交代だよイツキ君」
「え…」
 と、彼が未来に気を取られているうちに、いつの間にかやられてしまった悠貴が、コントローラーを
渡してきて、イツキは慌てて未来から視線を外した。一瞬、断ろうかと考えたが、未来の裸を気にして
いるとバレてしまったらバツが悪いので、イツキは気が乗らないながらもコントローラーを受け取り、
ゲームを始めた。
 未来はその二人の後ろにある三人掛けのソファーにいくと、その真ん中、ちょうど悠貴の真後ろに
どさりと腰を下ろし、三頭身のコミカルなキャラが跳ねまわるゲーム画面を退屈そうに眺めながら、
アイスをぺろぺろとやり始めた。

60 :
「そこ、ジャンプするんだよ…○を押すの! あっ、そこ危ない!」
 初めてやるゲーム、しかも未来の事が気になってしかたがないイツキは、ロクにゲームに集中できず、
みるみるうちにプレイヤーキャラのライフが減っていく。彼のぎこちない操作を見かね、悠貴が横から
口を出すが、それもまともにイツキの耳には届かず、あっという間にライフは0になってしまった。
画面の中でプレイヤーのキャラがきりきり舞いして倒れ、天使の輪っかと羽を生やして昇天していく
アニメーションが表示される。
「あーあ、もうやられちゃった」悠貴が少し呆れたように言い、それからイツキに向けて手を出した。
「やられちゃったから交代だよ」
「ああ、うん…」
 イツキはぼんやりと応えておとなしく悠貴にコントローラーを渡した。そしてそのまましばらく、
気もそぞろに悠貴のプレイを見ていたが、やがて後ろの未来が気になって、そっと首を巡らせた。
(!?)
 途端に、イツキは目を丸くした。後ろのソファーで、未来は両脚をぞんざいに前に投げ出して、
気だるそうに腰を浅くソファーに腰かけていた。その脚は軽く広げられ、しかも無造作に座ったせいで、
短く巻いたバスタオルの裾は捲れていて、床に座っているイツキからは、未来の太股の奥が丸見えだった。
(うわぁ…)
 イツキはごくりと生唾を飲み込んだ。股の間に、黒い一本のスジが見える。その奥に、薄桃色の襞肉が
ちらりと見え隠れし、割れ目の上部にはうっすらと毛が生えているのもわかった。喉がからからになって
いき、心臓が早鐘のように打ち始める。イツキは息を飲んで、未来の秘密の部分を食い入るように
見つめた。
(ん…?)
 だが、そんなにじっと見入っていれば、未来も気付かないわけがない。熱心にこちらを見るイツキに、
ぼーっとゲーム画面を眺めていた未来は、訝しげに視線を彼に移した。「なに?」
 どこか不機嫌そうな顔で彼女が訊くと、イツキは慌てて視線を逸らし、恥ずかしげにうなだれる。
挙動不審なイツキに、未来はますます眉根を寄せた。(なんなのよ、いったい…)
 未来は、イツキが見ていた自分の身体へと視線を落とした。もしかして、バスタオル一枚なのを
気にしてるんだろうか? 子供のくせにませてるわね…(……ん?)
 そこで未来は、自分が股を広げていたことにはっと気がつき、慌てて脚を閉じると、背筋をしゃんと
伸ばして深く腰かけ直した。まさかアソコを見てた…!? 未来はきっと顔をあげて、恥ずかしげに
縮こまっているイツキの背中を睨みつけた。
「……!」
 未来はイツキを叱りつけようと口を開きかけたが、気を取り直すとぐっと言葉を飲み込み、そのまま
何も言わずに口を閉じた。落ち着け…と自分に言い聞かせる。相手はまだ悠貴と同じ三年だ。そんな
子供に見られたからって、騒いだりしたらみっともない。
 未来は頬を赤らめながら憮然とした表情を浮かべ、背もたれにどかっと背中を預けると、苛立ちを
ぶつけるようにアイスをがりがりと齧った。(まったく、ませてんだから…)未来は内心でイツキに
悪態をついていたが、冷たく甘いアイスのおかげか、すぐに怒りと気恥ずかしさは引いていく。
 そうよね、こんな子供に見られたからって別に平気だし…。

61 :
(……)
 未来はちらっとイツキに目をやった。彼女が見られていたのに気付いたとは知らないのか、イツキは
まだ盛んにちらちらとこちらを盗み見ていて、未来が目を向けるとさっと視線をそらし、そわそわと
身体を揺する。焦りうろたえるイツキの姿に、未来は怒りどころか可笑しささえ覚え、くすっと笑みを
こぼした。
 そんなに女のコの裸に…わたしの裸に興味があるんだろうか? 未来はバスタオルを巻いた自分の
身体を再び見下ろし、思った。クラスメイトと比べて胸は小さく茂みも薄い貧相な身体に、未来は
密かにコンプレックスを感じていたが、そんな自分の身体に男のコが興味を示しているのだと思うと、
なんだか嬉しくすらある。
(ふふ…)
 それからしばらく、未来はアイスを齧りながらゲームを眺めているフリをし、視界の端でイツキを
眺めていた。イツキは閉じてしまった脚の間がなんとか見えないかと、しきりに背中を曲げ伸ばしし、
首を伸ばしたり頭を上下させたりしている。そして時折、はっと我に返ったようにゲーム画面に顔を
戻すが、すぐに未来のほうへ視線を向けてくる。
 未来はやがてアイスを齧りつくしてしまうと、手持ち無沙汰にバーを咥えてぴょこぴょこと揺らして
いたが、ほどなくそれをぴたりと止めると、ニヤリとほくそ笑んだ。
(…!)
 そわそわと身体を揺らして未来の方をチラ見していたイツキは、彼女の脚がわずかに開くのを見て
ピタリと動きを止めた。そして彼はぐっと首を伸ばすと、脚の間を覗きこもうとしたが、脚はすぐに
閉じ合わされてしまい、あからさまにガッカリした表情になって頭を垂れた。
(おっもしろーい)
 イツキに気取られないよう、視界の端だけでその様子を伺っていた未来は、口許をほころばせた。
もう一度、ちょっとだけ脚を広げてみる。ガッカリしていたイツキがはっと顔をあげ、また股間を
覗こうと首を伸ばす。そこで未来がまた脚を閉じ…ると見せかけてまた広げると、イツキは残念そうな
顔になったりさっと頬を紅潮させたり、ころころと表情を変える。未来は吹き出しそうになるのを
必で堪え、脚をもそもそと動かしていたが、最後に一度だけ、サービスのつもりで大きく脚を広げた。
 未来の性器が完全に露わになり、一瞬、イツキはぽかんとした表情を浮かべたが、すぐに身を乗り出し、
食い入るように彼女の股間を凝視した。最初に見えた時よりもずっと大きく広げられているおかげで、
ちらりとしか見えなかった内部の花びらのような襞肉も、今度ははっきりと見える。
 凄いや、女の人のアソコの中って、こんな綺麗な色をしてるんだ…。イツキが感動に浸っている間に、
未来の足はすぐに閉じられてしまったが、彼の目には彼女の秘密の部分がはっきりと焼き付いていた。
「ぷっ…」
(えっ?)
 だがその時、あまりにも感激している様子のイツキに、未来がとうとう堪え切れずに笑いを漏らし、
彼はぎょっとして彼女の顔を見つめた。あーあ、バレちゃったかと、未来はニヤリと笑みを浮かべると、
いかにも蔑んだような目つきでイツキを見つめ、咥えていたアイスの棒を引き抜いて、べーっと舌を
突き出した。
「エッチ」
「う…」
 からかわれていたのに気付いたイツキが、ほっぺを真っ赤に染めて顔を落とした。その横で、ゲームに
熱中していた悠貴が姉の声に振り向いたが、何があったのかまったくわからず、にやにやしている姉と、
真っ赤になって気まずそうにうなだれているイツキを、不思議そうに見比べるだけだった。

 ひとまずおしまい

62 :
ホントはまだ前半部分だけですが、後半がいまいちまとまらないので、
筆が進んだら後半も貼るかもしれませんがいちおうここで終わりと思ってください。
それではお粗末様でした。

63 :
ショタを弄ぶ未来ちゃん(;´Д`)ハァハァ

64 :
本スレ亡

65 :
優貴sm小説欲しです。

66 :
>>58-61のイメージイラスト(嘘)
ttp://toone.sakura.ne.jp/file/cg/top/top55.jpg

67 :
誘ってやがる・・・ゴクリ

68 :
今日は暇だったから保管庫作ってみた。

69 :
http://www21.atwiki.jp/tm80matome/pages/1.html
まだ全部できてないけどこんな感じで

70 :
作業完了。
1+1とクリスマスの約束は、作者さんがご自分でブログを作られたようなので外してあります。
また、出だしだけ投下されていたSSが二作ありましたがそれも入れてません。
外部掲示板へのリンクという形のスカトロSSとくすぐりSSも除外。
なんかミスとかこうしたほうがいいんじゃないかという要望があったらよろしく。

71 :
>>69,70
とりあえずGJ

72 :
>>69-70
おお、なんというGJ

73 :
GJすぎるね!

74 :
乙カレー

75 :
保管庫作成、ありがとね。


76 :
GJ!こうして見ると壮観ですな。あらすじも乙。
ただ、2列表示は狭い画面だと見づらいかも。
それと、>>708は作品名も「初挑戦」でOKです。
未来の編み物初挑戦とかけてみたんですが、紛らわしい名前つけてすいません。
なんにしろ、お疲れ様でした。

77 :
>>70
保管庫作成乙です。あ姉ちゃん直しといてくれてありがとうw
ついでと言ってはなんですが、「夕暮れ前のひと時」をサブタイふうに
「夕暮れ前の、ひと時」にしてもらえるとありがたい。それから
夕暮れ前後編の一番初め、「未来はソファーから立ち上がると」を
「未来がソファーから立ち上がると」に訂正お願いします。

そしてちょっと早いけどホワイトデーSSいきます

78 :
「ただいまー」
 三月半ばの夕刻。未来がリビングの床に寝転がって憂鬱そうな顔で漫画雑誌をぱらぱらめくっていると、
悠貴が帰って来た声が聞こえてきた。未来は一瞬顔を輝かせて漫画から顔をあげたが、すぐにむっつりと
した表情になると、再び雑誌に顔を向けた。卒業式間近の短縮授業で未来は昼過ぎには帰宅していたが、
母の仕事のせいで留守番を頼まれてしまい外へ遊びに行くことができず、彼女は今日は…というか今日も、
少々虫の居所が悪かった。
 まったく、悠貴はいいわよね…。未来は雑誌に目を落としたまま、胸の中で恨めしげに呟いた。悠貴も
今日は早めに授業が終わっていたが、一度帰宅したあとすぐにまたどこかへと遊びにいってしまっていた。
まだ小二の悠貴に留守番はさせられないから、悠貴がいれば未来は留守番をしないで済むというわけでは
ないが、自分だけが留守番で、悠貴は自由に遊びに行けるというのはどうにも恨めしい。
 それに、恨めしい理由がもう一つ…。未来は独りで留守番をするのが少々寂しく、心細かったのだ。
なんといってもまだ12歳の少女なのだから、それも無理からぬ話だろう。しかし、心細いから
一緒にいて、などと弟に言うこともできず、自分独りだけを残して出かけてしまった悠貴に、未来は
八つ当たりぎみに腹を立てていた。
「ただいま、お姉ちゃん」
「お帰り」
 息を弾ませてリビングに入って来た弟に、未来は寂しがってたのを悟られないよう、漫画雑誌に目を
向けたまま無愛想に挨拶を返す。その彼女の方へ悠貴はとことことやってくると、横で立ち止まった。
「ねぇお姉ちゃん」
「ん〜?」
 声を掛けてくる弟に、未来は鬱陶しそうに彼の方を向いた。むっつりとした表情の未来とは対照的に、
悠貴はにこにこと嬉しそうな顔をし、両手を後ろに回して何かを背中に隠しているようだ。
「何か用なの?」
 何か見せたい物でもあるのかと、未来は面倒臭そうに身体を起こして床に座り直した。悠貴はえへへ…
と悪戯っぽい笑みを浮かべると、後ろに隠していた物を彼女に差し出した。「はい、これお姉ちゃんに
あげる!」
 悠貴が持っていたのは、4、50cmほどある青と白のチェック柄の紙袋に入った品物だった。口の
ところがリボンで縛って閉じられていて、いかにもプレゼントといった見かけだ。中身は分からないが、
容器には入っていないようで、ところどころ袋がでこぼこしている。
「な、なに?」
 突然のプレゼントに戸惑う未来に悠貴はにこにこと言った。「バレンタインのお返しだよ」
「ああ…」
 そこで未来ははたと気がついた。今日は三月の十四日、ホワイトデーだ。元々バレンタインにたいして
関心がなく、今年は悠貴にチョコをあげただけだったこともあって、そんなことすっかり忘れていた。
もっとも、例え覚えていたところで、まさか小二の悠貴がホワイトデーにお返しのプレゼントをくれる
なんて思いもしなかっただろうが。

79 :
「あんた子供のくせに気ぃ遣いすぎ」
 出かけてたのはこれを買うためだったのかと、悠貴を恨めしく思っていた自分を反省しつつ、しかし
素直に感謝の言葉が言えず、未来は憎まれ口をききながら腕を差し出し、そのプレゼントを受け取った。
「開けてみて、お姉ちゃん」
 子供のくせにと言われたものの、それが悪意からではないのをわかっている悠貴は、にこにこと
笑顔を崩さず未来に言う。
「はいはい、何が入ってるのかな?」
 弟にせかされ、未来は床に座ったままリボンをほどき始めた。見た目はけっこう大きいが、思ったほど
重くなく、包装紙の下には少し柔らかな感触がする。
「わぁ…」
 包装紙を広げ、中の品物が姿を見せると、未来は顔をほころばせた。そこに入っていたのは、緑色の
カエルのぬいぐるみだった。二人の部屋の窓際のチェストの上に置いてある物そっくりだが、それよりも
一回りか二回りほど小さい。
「窓のところのカエル、一人で寂しそうだったから。一緒に置いてあげてね」
 悠貴の言葉に、ぬいぐるみに寂しいも何もないだろうと未来は微苦笑を浮かべた。だが、いくら
未来でも、さすがにこれ以上憎まれ口をきくほどヒネくれてはおらず、素直に感謝の言葉を口にした。
「ありがとう、悠貴」
「小さいからこっちは弟だよ」
「へぇ、弟なんだ」
 ぬいぐるみを抱き上げるようにして眺めながら、未来は笑みをこぼした。どうして妹とか子供じゃ
なくて弟なんだろう? 悠貴の頭の中でなにか物語ができているらしいのがどうにも可笑しい。
「うん。それで、大きい方はお姉ちゃん」
 えっ? と未来は弟を見た。そしてふっと暖かい眼差しになると、もう一度ぬいぐるみに目を移す。
そっか、お姉ちゃんが寂しくないように、か。
 弟の優しさに、未来は胸の奥から暖かいものが込み上げてくるのを感じずにはいられなかった。
「ありがとう」
 未来はもう一度、心の底から悠貴にお礼を言うと、ぬいぐるみを抱いて立ち上がった。「それじゃ、
さっそくお姉ちゃんの隣に座らせてあげよ」
「うん」
 二人は揃って子供部屋へといくと、置いてあったぬいぐるみを少し横にずらし、右側に小さい方の
ぬいぐるみを置いてみた。少し座りが悪く、二体のぬいぐるみは互いにもたれかかってしまうが、却って
それが寄り添っているかのように見える。悠貴が言ったように、まるで仲の良い姉弟か、あるいは
恋人同士のように…。
「これでお姉ちゃんカエルも寂しくないね」
「うん、そうだね」
 寄り添うぬいぐるみをにこにこと見つめて言う悠貴に、未来もぬいぐるみを見つめながら肯き、半ば
無意識のうちに弟の肩に手を廻すと、そっと抱き寄せる。悠貴も甘えるように姉に身体を預け、二人は
ぬいぐるみと同じように仲良く寄り添った。

80 :
 それにしても…。しばらく嬉しそうにぬいぐるみを眺めていた未来が、ふと口を開いた。「あんた、
これ高かったんじゃない?」
 そんなに大きなぬいぐるみではないが、数百円で買えるようなものでもないはず。小二のお小遣いでは
大変だっただろう。
「大丈夫だよ、僕、お年玉がまだ少し残ってたから」
「無理しなくてもいいのに…」
 お年玉なんかとっくに使い果たしていた未来は、しっかり者の弟に苦笑しながら言った。しかし、いくら
余裕があったにしても、食べかけのチョコのお返しに貰っては、ちょっと申し訳ないくらいだ。他にも
ちょっぴり特別なプレゼントをあげたとはいえ…。
(少しお返ししてあげないとね)
「ね、悠貴…」
「なに?」
「今日も、一緒にお風呂入ろうか?」
 悠貴はさっと頬を赤らめると視線を落とし、恥ずかしげに小さくこくっと頷いた。「うん…」

 今日も両親の帰りは遅い。このプレゼントのお礼をたっぷりとしてあげられそうだった。

81 :
以上、お粗末さまでした。前スレ最後の方の「特別な日」の後日談ということで。

82 :
この先が気になるw

83 :
小6で全裸ならそれなりに発育してんだろうに

84 :
あの、続きが気になって眠れないのですが

85 :
>>78-80
また最後で(ノ∀`) GJです!w
しかし考えてみると二人っきりで過ごす時間が多かったろうに、
未来ちゃんさぞかし寂しかろうなぁ・・・。
あ、保管庫のほう少し手直ししておきました。

86 :
イラストがいくつかHDDに残ってたんで残ってたのだけ保管庫に追加。
イラスト描いたかた、外してほしければ言ってください。

ところで、残暑後編の容量がぎりぎりすぎて貼れねぇ、どうしよ。

87 :
皆さんは規制大丈夫?

88 :
>>84
「悠貴、背中洗って」
「うん」
「あ、ダメ、そこは背中じゃない・・・なに、背中みたいでわからなかった!?」
つー感じですか?

89 :
週アスのハニカムって漫画がツンデレ姉に弟がホワイトデーにぬいぐるみのプレゼント
ってネタだったんでちょっと笑った。こっちのお姉ちゃんの反応は「はん、高校生にもなって
ぬいぐるみで喜ぶわけないでしょ!」(と言いつつ奪い取る)だったが、そういうのも全然ありだな

90 :
>>84
お姉ちゃん、石鹸つけてないのに凄くぬるぬるしてる

91 :
>>88
んなこと言ったら悠貴キュンの命日が3月14日になってしまうw

92 :
短めのいきます

93 :
「ただいまぁ〜」
 晩春の宵の口、パジャマ姿でリビングの床に腹ばいになって携帯をいじっていた未来の耳に、父親の
誠司の呂律の回らない声が聞こえてきた。
(パパ、また酔っ払ってる…)
 玄関の方へ首を巡らせ、未来は眉をひそめた。ここのところ、父は酔って帰って来ることが多くなった。
その原因が、最近増えた母との口論にあることは、未来にはなんとなく察しがついていた。お酒を飲めば
気分が良くなるらしいが、父はそれで母への不満を紛らわせているに違いない。
(ふん…)
 未来は不満げに小さく鼻を鳴らすと携帯に向き直った。酔っ払いは嫌いだ。お酒臭くて顔は真っ赤、
呂律は回らず足元はおぼつかないしで、父がそんなみっともない姿で外を歩いてたかと思うと、未来は
恥ずかしくてしょうがない。母も彼女同様に嫌っているようで、そのことで嫌味を言って余計父と険悪に
なるのだ。まったく、ママに不満があるなら、お酒を飲むんじゃなくてちゃんと言えばいいのに…。
(あれ…?)
 未来は携帯をいじりながら心の中で不満を並べていたが、一向にリビングに来ようとしない父に、
玄関の方へ再度首を巡らせた。両親の部屋はリビングの手前にあるが、そっちのドアが開いた気配も
感じない。(まったくもう…)
 未来が渋々起き上がって様子を確かめに廊下に出ていくと、案の定、誠司は玄関に腰を下ろして壁に
もたれかかっている。どうやら靴を脱ごうとして座り、そのまま眠りこんでしまったようだ。
「ちょっとパパ…」
 未来が肩を掴んでゆさゆさ揺すると、誠司ははっと顔をあげ、しょぼついた眼を未来へ向けた。
「ん…? おお、なんだ帰ってたのか、ママ」
「わたしだってば」
 母と間違えられた未来は、ムカっとしながら父に言った。いくら酔っているとはいえ、あんな
オバサンと間違えないでほしい。
「ん〜……?」
 未来の言葉に誠司は何度か瞬きしてから目を細めて彼女をじっと見つめ、ようやくそれが妻ではなく
娘なのだと気がついたようで、少し照れくさそうに微笑した。「ああ、なんだ未来か…」
「もう、そんなとこで寝ないでよ」
「お? ああ…」
 不満顔の未来に促されて父はふらふらと立ち上がったが、よろけて倒れそうになり、壁に手をついて
しまう。
「ちょっと、大丈夫?」
 見かねて未来が支えると、誠司はどこか嬉しそうな顔をする。「おっとっと、すまんなママ」
「だからママじゃないってば」
「ああ…」娘に怒られ、誠司は苦笑した。「お前、最近ママに似てきたなぁ」
「え〜…」
 自分と母を間違えるほどに酔い、足元すらおぼつかない父にムクれながらも、未来はふらつく彼を
放っておくこともできず、脇から支えて廊下を歩き始めた。
「しっかりしてよね、ホントに…」

94 :

 ぶつくさ言いながら、未来はなんとかかんとか両親の寝室の前まで父を連れていったが、父は寝室には
入ろうとせず、先へいこうとする。
「パパ、部屋にいかないの?」
「ちょっと水を飲みたくてな」
 はぁ…と溜息をつきつつ、未来はそのまま父を支え、リビングまで一緒に歩いていった。部屋に入ると
すぐのところに食卓とイスがあるが、そんなところに座らせたら床に転げ落ちそうなので、もう少し
頑張って、奥にある三人掛けのソファーまで連れていく。
「ふぃ〜…」
 未来が手を離すと、父はソファーにどさりと腰を下ろした。ネクタイを外して横に置くと、ぐったりと
背もたれに頭を預ける。どこか疲れきったような姿に、未来は気を利かせると、キッチンへ水を取りに
向かった。
「はい、お水」
「おお、ありがとうママ」
 また母親と自分を間違えている父に、未来は半分呆れつつコップを手渡した。誠司はそれを受け取る
と、ごくごくと美味そうにあおったが、口の端から水が溢れて顎を伝い落ち、ワイシャツの胸元を
濡らしてしまう。
「ちょっと、こぼれてるって」
「ん〜?」
 未来は慌ててそばにあったティッシュを取ると、父の顎にあてた。
「今日は妙に優しいじゃないか、ママ」
 未来はもう父の勘違いを訂正する気も起きず、黙々と父の顎から首筋に垂れた水を拭き取っていった。
そして濡れてしまったワイシャツの胸元にもタオルを当て、水気を取り除く。誠司は目を細めて、
甲斐甲斐しく世話を焼く未来を見つめていたが、やがて、そぉっと右腕を動かした。
「きゃっ!?」
 身を屈めてワイシャツを拭っていた未来が、小さな悲鳴をあげて身体を跳ね起こした。父の手が
彼女のお尻をすっと撫でたのだ。「へ、変なことしないでよっ!」
「なあママ…」
「へ?」
 顔を赤くして文句を言う未来に、父は彼女の腰に手を回すとぐっと抱き寄せた。
「な、なに?」
「久しぶりに…いいかい?」
「へっ? えっ?」
 なんの話なのか理解できずに戸惑う彼女を、誠司はなおも抱き寄せ、未来はバランスを崩して父の
胸の中へと倒れ込んだ。誠司は未来を抱きとめ、両腕を彼女の背中に回すと顔を近寄せていった。
「ちょっと、パパ…?」

95 :
 未来はまだはっきりとは父の思惑を掴みかねていたが、酒臭い息を漂わせ、どこかいやらしい
しまりのない笑みを浮かべて赤ら顔を近寄せてくる彼に、漠然と警戒心を抱き、父の胸から逃げ出そうと
した。しかし、背中に回された父の腕の力は思いの外強く、警戒心よりも戸惑いが先にたってまだ本気で
逃げようとはしていないこともあり、未来は父から逃れることはできなかった。そうこうしているうちに
父の赤ら顔はどんどん近寄ってくる。
「ちょっと…」
「ママ…」
 未来は頭をのけ反らせ、両手で父の胸を押しやった。と、未来の背中に回されていた父の右の手が
彼女の胸へと伸びてきて、その密やかな膨らみをきゅっと握る。「ひっ!?」背中をぎくんと反らして
硬直している未来の乳房を、誠司はやわやわとまさぐった。
「ちょっと痩せたんじゃないか、ママ?」
(どこ触りながら言ってんのよっ!?)
 未来のこめかみにびきっと青筋が浮かんだ。怒りが身体の硬直を解き、彼女は胸を触る父の腕を掴み、
そこから引き離した。
「やめてパパ、わたしだってば!」
「仕事、大変なんじゃないか? 身体には気をつけろよ」
「え…?」
 だが、父の言葉に未来ははっとなって、腕を掴んだ手の力を抜いた。パパ、ママのこと…「…ん!?」
 その一瞬の隙を突いたように、誠司は未来の手を振りほどいて彼女の肩をがっしりと掴むと、未来の
唇に自分の唇を重ねた。もわっとした酒臭い息が、未来の口内に流れ込んでくる。「やっ、やめんん…」
 母を気遣う父に胸を打たれた未来だったが、今はそんなことを考えている場合ではないと、俄然もがき
始めた。父の胸を押し、頭を引いて父親の唇から逃れるが、誠司は右の手を未来の肩から離して彼女の
首の後ろを掴み、頭を引き寄せて再び唇を押し付けてくる。
「むっ、んん〜〜っ!」
 重なった唇の間から、未来のくぐもった悲鳴が漏れる。左手で肩を、右手で首の後ろをしっかりと
押さえつけられていて、今度は顔を離す事ができない。「んんっ!?」
 もがいていた未来の両眼がかっと見開かれた。父の舌がぬるりと口の中に入り込んできたのだ。
「んっ、むっ、ん…!」父親の舌は未来の口腔をぬらぬらと這い廻り、舌と舌とを擦り合わせてきた。
父の舌は未来の舌を絡め取って強く吸いたて、しゃぶり、そして酒臭い唾液を未来の口内に送り込んで
くる。誠司の右の手はなおも未来の小さな胸を盛んに撫で回し、パジャマの上から先っぽのちっちゃな
突起を探り当てて指先で転がす。
「ん〜〜〜っ、んん〜〜〜〜っ、んっ、む…ん……」
 長く強烈なキスで未来の頭はぼーっと霞み、やがてもがく気力も体力も萎えていき、父の腕の中の
その小さな身体からは、徐々に力が抜けていった。誠司は大人しくなった彼女をゆっくりとソファーに
押し倒していき、完全に横たわらせてしまうと、ようやくキスをやめて顔を離した。

96 :

「はぁ、はぁ、はぁ……」
 ソファーに横たえられた未来は、軽く口を開いてわずかに舌を突き出したまま、ぼーっとした表情を
浮かべて、逃げようともせずに、ただ肩で荒い息をついていた。誠司はソファーに足をあげて未来に
馬乗りになると、彼女パジャマの裾を掴んで荒々しく引き上げ、小さな二つの膨らみを露わにさせる。
「あっ?」
 そこで我に返った未来が小さな悲鳴をあげ、父の下から逃れようと再びもがき始めるが、既に完全に
組み敷かれてしまったあとでは、酔っているとはいえ大の大人相手では、中一の少女の力で逃げ出す
ことは叶わなかった。
「嫌ーっ、やめてパパっ!」
 父が乳房をまさぐり始めると、未来は半泣きになって必にもがいた。脚をばたばたさせ、胸を触る
腕を掴んで引き離そうとする。と、誠司が未来に顔を近寄せ、小声で言った。
「ほら、大きな声を出すと子供たちが起きちゃうだろ」
「!?」
 未来ははっとしてリビングのドアの方へ首を巡らせた。悠貴! 悠貴が来てくれれば…「悠…」
 だが、その声は途中で途切れた。もし悠貴がこんな自分たちの…父が姉を犯そうとしている姿を
見たらどうなるだろう? 自分と違って弟は両親の事を慕っている。もしそんな弟がこれを見たら…。
 ダメだ、悠貴を呼ぶわけにはいかない。未来は思い直して口をつぐんだ。いや、それどころか下手に
騒いで、もし悠貴が目を覚ましてこっちへ来たら大変だ。
 弟を気にして未来は抵抗を弱めたが、父の酔眼にはそれがOKのサインに映る。誠司は娘の胸を
愛撫しながら、再度彼女に唇を押し付けた。
「む…んっ…」
 誠司は未来に舌を絡めつつ、彼女のまだ固く薄い胸を優しく撫で、きゅっきゅと軽く揉みにじり、
時折指先でちっちゃな乳首を転がした。「んむ、む…むぅん…」塞がれた未来の唇の隙間からくぐもった
嫌悪の悲鳴が漏れ、目尻に涙が光る。(いや…やめて…やめてよっ!)
 未来は胸を触る父の腕を握るが、誠司はまるで意に介さず、唇を重ねたまま娘の乳房を弄り続ける。
掌が乳肉を押さえつけ、擦り立て、指が乳蕾を摘まみ、くすぐり、舌がくねくねとくねって未来の舌に
絡みつく。
「ふはっ! はぁ、はぁ、はぁ…」
 やがて誠司の唇がようやく離れ、未来は大きく喘いだ。父の唇は彼女の口端に再度つけられ、そして
頬、首筋へと、何度もつけたり離したりを繰り返しながら進んでいく。
「お願い、もうやめてパパ…!」
 首筋にキスを受けながら、未来は頭をのけ反らせて父に懇願するが、誠司の耳にはそれは嬌声に
聞こえていた。彼はちゅっ、ちゅっと強く吸いついて、未来のほっそりとした白い首筋にキスマークを
残していき、乳房を揉みにじっている手が先端の蕾を扱いて尖らせ、指先で摘まんでくりくりと挫いて
そこを弄んだ。
「いや、やめて…お願い…」
 完全に泣き声となって弱々しく哀願する未来に、誠司は盛んにキスを繰り返しながら、徐々に愛撫の
手を下のほうへ移していった。誠司は娘の滑らかなお腹やほっそりしたウエストを愛しそうに撫でさすり、
そしてその手をパジャマのズボンの中へと差し込んだ。

97 :
「やっ!?」
 下着の上から秘密の部分を弄られ、未来が嫌悪の悲鳴をあげる。しかし、悠貴を起こしてしまうのを
恐れ、その声は小さく抑えられている。「いっ、嫌っ、そんなとこ触らないで…」
 必にもがく未来の秘所をすっすっと何度か下着の上から擦ってから、父は下着の中に手先を潜らせ、
直接性器に指を這わせ始めた。「嫌、やめて、やめてよぉ…」
 未来が弱々しい声で言うが、誠司は構わずにスリットに指を割り入れて内側の襞肉をくにくにと弄び、
皮のカバーに覆われた小さな突起をちょんちょんと突き、くすぐった。敏感な肉芽を触られ、未来の肩が
びくっびくっと跳ね、目尻からぽろぽろと涙がこぼれていく。脚をぎゅっと閉じ合せて父の手を押さえ
ようとするが、手は股間のわずかな隙間に無理矢理入り込んでそこを弄り回す。さらに頬や首筋に盛んに
キスを繰り返していた唇が未来の胸へと移り、乳房や先端の蕾をちゅっちゅと吸う。
「ひっ、あっ、やだ、やめて、やめてぇ…」
 誠司は乳首を吸い立て、舌先で転がしながら、右の指でクリトリスをしきりに撫で擦り、秘花を
こね回し、やがて処女口を探り当てると、しばらくの間入口の周りを焦らすようになぞってから、
ゆっくりと未来の胎内に潜りこませた。
「ひぃっ!?」
 父の野太い指の侵入に、未来はぎくんと背中をのけ反らせ、目をかっと見開いた。父の指は膣壁を
優しく擦りたてながら何度か抜き差しを繰り返し、くいっと曲げて柔らかな粘膜を押し広げ、掻き回す。
同時に掌でクリトリスをすりすりと刺激し、胸につけた口は盛んに乳肉や乳首を舐め回し、吸い立てて
いる。
「ひ…あ…」
 父の丹念な愛撫に、未来の嫌悪の声はだんだんと途切れ途切れになっていった。たっぷり飲まされた
唾液に含まれていたアルコールの影響もあるのだろう、身体の奥が徐々に熱くなり、頭がぼーっと霞が
かかったようになってくる。ぎゅっと閉じていた太股からは力が抜け、父の手の邪魔をやめてしまい、
父を押し戻そうとして肩を掴んでいた手は、今はまるですがりついているようだ。そして、父の指が
弄る膣は、じっとりと蜜を湛え始めていた。
「やだ、やだよぉ…」
 胎内の最奥部分をくすぐられ、未来はうわ言のように呟きながら秘肉をひくひくと蠢かす。誠司は
絡みついてくる襞肉をかき分けながら指を抽送し、一度完全に引き抜くと、クリトリスの皮を剥いて
しこり始めた肉突起を指先でこりこりと軽く引っ掻いて刺激し、そしてまた膣に指を潜らせて胎内を
掻き回す。胸を愛撫する唇は、ぷっくりと尖った乳首を咥えて引っ張り、軽く歯を立てたり舌先で
ころころと転がすように舐め回していく。執拗なまでの愛撫に愛蜜はますます溢れ、未来の股間からは
父の指の動きにあわせ、くちゅくちゅという水音が響き始めていた。
「あ…ひ…」
 昂り始めている自分に、未来が怯えたような声を漏らす。「やめて、やめてってば、やめて…」
「愛してるよ、ママ…」
「!?」
 だが、父が愛撫の合間に漏らした言葉に、未来ははっとなって胸元の父親を見やった。愛してる。
確かにそう言った。最近喧嘩ばかりしていたが、それでも父は母を愛しているのだろうか?
「あっ、やだ…」
 強く乳首を吸われて未来は一瞬肩をびくんと跳ねさせたが、すぐに父へ視線を戻した。胸や股間を
弄る父の手は、大きくてごつごつとしていていかにも恐ろしげだが、決して乱暴にはしないで、優しさに
満ちた動きだった。そうだ、嫌いだったら、こんなことしようなんてきっと思わない。好きだから、
愛してるから、エッチしたいと思うんだ…。
「あ、ん…」
 蜜壺をぐちゅぐちゅと掻き回され、未来は切なく喘ぎながらぼんやりと思った。いっそこのまま…。
未来は口内に溢れた唾液をぐびりと飲み込んだ。いっそこのまま、ママのフリをしてパパとセックス
しちゃおうか…?
 そうすれば、パパはきっと喜んで、ママと少しは仲良くなってくれるかもしれない。そしたらまた
以前のように、両親と悠貴と自分と、家族そろってどこかへ行って、美味しい物を食べて写真を撮って、
みんなで楽しく…

98 :
「ママ…」
「ふぁ、あ、パパ…あ…ん…」
 愛を囁きながら身体を弄られ、未来は身体をくねくねとくねらせた。下腹部の奥が熱く火照り、全身に
甘い汗がじっとりと浮かびあがる。胸を舐め回している父の首に、未来はすがりつくように両手を回し、
脚を軽く広げて父の手を動き易くする。
「ママ、好きだよママ…」
 未来が父を受け入れる気になったのを感じ取ったのか、誠司もうわ言のように愛を囁きながら、一段と
愛撫を激しくしていく。ちゅぱちゅぱと音をたてながらちっちゃな乳首を吸い立て、ぐちゅぐちゅ、
ぬちゅぬちゅと未来の胎内を激しく掻き回す。うねり始めた秘肉を掻き分けながら激しく指を抜き差しし、
最奥まで突き入れてまた掻き回し、クリトリスを擦り、爪弾く。
「ママ…」
「あ、凄い…凄いのパパ…」
 誠司は股間を愛撫していた手を胸へやると、高まる官能に打ち震える未来の胸を両手でさすりだした。
はぁはぁと息を荒げながら乳肉を撫で、乳首を摘まみ、唇をつけてキスをし、吸い立て、ふっくらとした
乳房に頬を押し当て…。だが、熱のこもっていたその愛撫は、徐々に弱く、ぎこちないものになっていく。
「はぁっ、あっ、あ……あ…?」
 天井をぼんやりと見上げて喘ぎを漏らしていた未来は、いつのまにか父の愛撫が止まり、胸に手と顔を
乗せたまま動かなくなっているのに気付いて、訝しげに頭を起した。「パパ…?」
 グーグーという軽いいびきが聞こえてきて、未来の全身からどっと力が抜けた。(寝てる…!?)
昂奮しすぎてアルコールが回ったのか、誠司は未来の胸を枕にして、眠りこんでしまっていた。一瞬の
脱力ののち、ムカムカと無性に腹が立ってきて、未来はぼこぼこと父の頭をゲンコで叩き、それから
じたばたともがいて、ずっしりと重くなった父の身体の下から抜け出してソファーの脇に降り立った。
 はぁ、はぁと荒い息をつきながら、未来はソファーにだらしなく横たわる父を半ば呆然と見つめた。
もし父が眠ってしまわなかったら、自分はどうしていただろう? 本当にこのまま、父とセックスして
しまうつもりだったんだろうか? でも、それで両親が仲良くなってくれるんなら自分は…
「お姉ちゃん?」
「!?」
 その時背後から弟の声が聞こえ、未来の心臓は凍りついた。「ゆ、悠貴…!?」慌てて振り返ると、
リビングの入口に弟の悠貴が立っている。「あ、あんたいつからそこにいたの?」
「ん…?」姉の問いかけに、悠貴は眠そうに目を擦りながら口を開いた。「今来たとこだよ…」
それから、ちょっと心配そうな顔になって訊ねる。「どうかしたの?」
「な、なんでもないわよっ!」
 未来は顔を真っ赤にしてパジャマの乱れを直しながら、ぶんぶんと首を横に振った。「パ、パパが
酔っ払ってちょっと…その…大変だっただけ!」そして未来は急いで弟のところにいくと、肩を掴んで
くるりと後ろを向かせた。「ほ、ほら、いいからベッドに帰りな」
 未来は訝しげな悠貴をそのまま部屋まで追い立てていき、ベッドにあがらせると、自分もベッドに
潜り込み、頭から毛布を被った。
 もし父が寝てしまわなかったら、悠貴に見られてた…。安堵と共に、激しい羞恥の気持ちに襲われ、
未来は毛布の下で唇を震わせ、目の端に涙を浮べた。悠貴に見られたくないことを、見られて恥ずかしい
ことを、自分はしようとしていたのだと、彼女は今になってようやく思い至った。仲良くして欲しかった
からといって、パパとセックスしようだなんてわたし、なんてことを…。
(〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
 未来は自分の身体をぎゅっと抱きしめると、胎児のように丸くなった。自分にあんなことをした父が
嫌いだった。その原因となった母も嫌いだった。そしてなにより、安易に父に抱かれようとした自分が
一番嫌いだった。この家も、この世界も、もうなにもかもが嫌で嫌でたまらなくなってきて、未来は
ポロリと涙をこぼした。
 イッソノコト、コンナセカイ、コワレチャエバイイノニ
 未来がそう思い始めたのは、この夜からだったのかもしれない。


 おわり

99 :
以上、お粗末さまでした。最後までやっちゃってから後悔させようかなとか思ったけど、
まあほどほどのとこでやめときました。

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