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2013年05月エロパロ207: シュタインズゲートのエロパロ6 (178) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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シュタインズゲートのエロパロ6


1 :2013/03/11 〜 最終レス :2013/05/01
・シュタインズゲートの妄想を叩きつける場所です。
・カップリングについては問いません。 ただし、注意書きは忘れずに。
・べ、別にエロが無くたってかまわないんだからねっ
シュタインズゲートのエロパロ5
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1355179107/
シュタインズゲートのエロパロ 4
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1347184330/
シュタインズゲートのエロパロ 3
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1325789848/
シュタインズゲートのエロパロ2
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1304341945/
シュタインズゲートのエロパロ
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257776865/
まとめ
STEINS;GATE 2ch二次創作まとめwiki
http://www1.atwiki.com/reading_steiner/

2 :
>>1
乙・プサイ・コンガリィ

3 :
乙乙

4 :
うおっ、あとがき書こうとしたら容量オーバーになったw
まさかジャストで容量使い切るとは…ww
というわけで、今回で第一章終了、という感じです。
次章からは心機一転、こちらの新スレでやらせてもらう事になるので、
今後ともよろしくお願いします。

5 :

前のスレも確かぴったりでスレ落ちしてた気がwww

6 :
たぎる
あと、結構うっかりさんだな作者wwwwwwwwww

7 :
>>1
>>5
乙・プサイ・コングルゥ

8 :
>>1
乙。
んで全スレでずっと書いてた人完結GJ。
全キャラに愛があるゆえ、あの終わり方はシュタインズゲートの選択だと納得できた。
そして、今投下している方も楽しみにしています。
愛のあるSMっていいものだね。
2スレ連続でSSで容量埋まるのは素晴らしいことだと思う。
エル・プサイ・コングルゥ

9 :
ルカ子と紅莉栖のエロいやつがみたい。

10 :
言い出しっぺの法則というのがあってだな…

11 :
供給げ少ない場合は自給自足が基本
ナエちゃんとかね!

12 :
ブラ×ルカとかダル×萎えとかシド×フェイでもいいや

13 :
クリ×シドと言うのを思いついた

14 :
オカ×シdゲフンゲフン

15 :
こんばんは
半月ぶりの駄文書きでございます
バレンタインをネタにしたお話を書いておいてホワイトデーになにもしないもどうか……
と思いまして完結記念に一本上げていきます
それでは暫しの間失礼をば

16 :
EX−1:2011/02/12 14:25 ブラウン管工房裏手
「ふう……」
岡部倫太郎は己のラボのあるビルの、いつも出入りしている階段のある通りとは反対側にある路地に座り込み、小さくため息をついていた。
ビルとビルの隙間にあるどこぞの裏口付近のようだ。路上よりは一段高い場所である。
路地の出口は秋葉原の裏通りに繋がっており、買い物袋を提げたオタクどもが行き交っていた。
休日の秋葉原である。大通りから一本二本外れているとは言え、客足が途切れることは滅多にない。
そんな中……彼は両膝に肘を乗せ、組んだ両手に顎を乗せて、どこか疲れたような表情でため息をついている。
いや、事実彼は疲れていた。
なにせつい先刻まで彼は全力でミッションを遂行していたのだから。
……漆原るか。
それが、先刻まで彼が相手をしていた女性……もとい男性の名である。
近くの公園で彼女(彼だ)の要望に応え、その告白台詞を全力で演じきって……
そして、歓喜のあまり意識を飛ばしてしまった彼をおぶって柳原神社へゆき、彼の父親に預けて今ここにいる。
だが実はこれで終わりではない。
漆原るかの件はあくまでついでである。
今回の主目的……メインターゲットは明日攻略予定の桐生萌郁なのだから。
漆原るかへのパフォーマンスは、いわば明日の桐生萌郁邸で行われる告白台詞集の実演に向けた最終調整……といったところだ。
もっとも桐生萌郁を堕とすために必要な流れだったとはいえ、毎回毎回漆原るかを攻略する必要はない。
実際前回や前々回は普通にスルーしていた。
ただ桐生萌郁の攻略が難航している現状、何か打開策がないか……と今回初心に戻って途中からではなく最大限の(阿万音鈴羽の協力が得られる)46時間タイムリープして、丹念にイベントの流れを整理していたのである。
そう、彼はこれまで桐生萌郁に七度挑み、その全てに於いて破れていた。
とはいえ決して彼女の反応が悪いわけではない。ただ岡部倫太郎自身が納得できないのである。
彼女をとびっきり幸せにしなければならぬ。 
自分が価値のある人間であると自覚させなければならぬ。
そのためにはもっと、もっともっと彼女を喜ばせ、楽しませる必要があると判断したのだ。
(だが……流石に二日連続での攻略はキツイな。次回からはまたルカ子の流れは省略してもよかろう)
ともかく疲れた。疲れたがここで休むわけにはいかない。
なんとか考えをまとめ、桐生萌郁に対する新たなアプローチを見つけなければ。
喫茶店? 本屋? いっそスポーツジムなどはどうだ?
……いや、どうにもどれもダメな気がする。
予算も無限ではないのだ。限られた範囲内で彼女が最も喜ぶルートは……
「「ふう……」」
岡部倫太郎のため息に……
誰かの溜息が、重なった。

17 :
EX−2:2011/02/12 14:25
「む……?」
「あ……」
二人ともよほど心あらずだったのだろう。
やや離れていたとはいえ、相手の存在に気づいたのは互いにだいぶ己の懊悩に時間を費やした後だった。
「……シスターブラウンか」
「あ、オカリンおじさん……」
岡部倫太郎が視線を向けると、そこにはびくりと怯え肩を丸めて縮こまる天王寺綯の姿があった。
「む、ああ、どうした小動物よ?」
「え? うう、なんでもないです……」
「……そうか」
「……?」
いつもと違う岡部倫太郎の反応に戸惑う天王寺綯。
普段なら「おじさんではない!」などとすごい剣幕で怒鳴られて、彼女は酷く怖い思いをしていたのだが。
(そしてその後大概彼女の父親がやってきて、岡部倫太郎はすごすごと退散することになる)
だのに今日に限って特に叱ってくるでもなくおじさんと呼んでも反応しないのは一体どうしたことだろう。
少女は不思議そうに首を傾げた。
実のところ、岡部倫太郎は桐生萌郁攻略という重大任務のことで頭がいっぱいで、いちいち彼女の言葉などに目くじらを立てている余裕がなかっただけだった。
ついでに言えば現在相棒となっている阿万音鈴羽が彼のことをおじさんおじさん呼ばわりする(それもタイムリープのたびに!)ので、割と呼ばれ慣れてしまっていた、というのもある。
だがそうした事情を知らぬ少女にとって、今日の岡部倫太郎はどことなく砕けた、話しやすい相手のように映ったようだ。
少なくともいつもほどにはに怖くない。
「え、と……オ、オカリンおじさん」
「……なんだ、シスターブラウンよ。あー、いや、どうした、綯」
「ふあ……?!」
突然名前を呼ばれてびっくりする天王寺綯。
これまた岡部倫太郎的には特に深く考えてのことではない。
ただ現在彼はラボメンたる女性たちを全員攻略する、という至上命題があり、そのために女心なるこれまで最も縁遠かった感情を必で学ぼうとしていた。
ゆえにいつもはシスターブラウンなり小動物なりとぞんざいに扱っている少女も一応は女性なのだし……と多少は言葉遣いに気を使ってみたわけだ。
ただ……その効果は当人が考えているよりもずっと大きかった。
びっくりして目を大きく見開いた天王寺綯は、だがやがて少しずつお尻をずらし、いつもは怖がっているその白衣の男にちょこちょこと近づいてゆく。
岡部倫太郎は何やら深く考え込んでいる様子で、少女の挙動には気づかない。
やがて互いの肘と肘、お尻とお尻がくっつきそうなほど密着した天王寺綯は、彼を見ないようにして真っ正面の壁を見つめた。
すぐ隣に……いつもは怖いおじさんがいる。
なのに、怖くない。
なんとも不思議な気分である。
首をゆっくりと傾けて、意を決したように彼を見上げる天王寺綯。
沈思黙考の体で虚空を見上げている彼は珍しく無精髭も剃っていて、普段彼の真面目な顔なぞついぞ見たことのなかった少女の心臓をばくん、と大きく跳ねさせた。

18 :
EX−3:2011/02/12 14:32
「ねえねえ、オカリンおじさん」
「む、どうした綯……って近いな!?」
「ひうっ! ご、ごめんなさい……っ!」
「ああいや怒ってない、怒ってないぞ」
彼の大声に思わずびくりと肩を震わせ慌てて距離を空けようとする少女に、岡部倫太郎がなるべく優しく話しかける。
いつもはもっとつっけんどんでぶっきらぼうな物言いなのだが。
(ええい、しっかりせんか岡部倫太郎! このような子供一人懐柔できんようで指圧師が攻略できるか!)
岡部倫太郎的にはこんな心情ではあったのだが、ともかくも常よりはだいぶマシな雰囲気を纏うことができたようだ。
その証拠に逃げ出そうとしていた天王寺綯の動きが途中で止まり、やがてほんの少し怯えた視線をこちらに投げかけてきた。
「……ほんとに怒ってない?」
「ああ本当だとも。勘違いをさせてすまなかったな。この通りだ」
素直に頭を下げる岡部倫太郎に再び驚いて目を丸くする天王寺綯。
今日のこの人は一体どうしたというのだろう。
「それで……一体どうしたのだ。お前の方から話しかけてくるとは珍しいではないか。何か相談ごとでもあるのか?」
「え、え〜っと……」
しばし逡巡した後、やや引き気味な体勢ながら小さくこくんと頷く。
「あのね、あのねオカリンおじさん、おじさんは……その……」
おっかなびっくり、といった様子でおどおどと言葉を紡ぐ少女の言葉に、岡部倫太郎は黙って耳を傾ける。
普段の彼ならすぐに焦れて「ええい! とっとと話なさんか!」などとまくし立て彼女を怖がらせてしまうのが関の山だったが、彼は先述の通り現在女性の心の機微を勉強中である。
さらに今はとりわけ反応のわかりにくい桐生萌郁の攻略中だ。
こんな少女とのやりとりの中でも何か彼女を落とすヒントがあるのかもしれない……などと考えて真剣に応対しているのである。
「……どうした? 別に怒りもしないし笑いもしないぞ。遠慮せず言ってみるがいい」
少女には何やら幼いなりに深く悩んでいる事があるらしい。
だが岡部倫太郎の珍しく優しい言葉に背中を押されるようにして……彼女はやっとその重い口を開いた。
「あのね、オカリンおじさん……キス、したことある?」

19 :
EX−4:2011/02/12 14:37
「なに……?」
眉根を吊り上げて少女を詰問しそうになりながら、岡部倫太郎はすんでのところで己を自制した。
「随分とませているな。どうしてそんな事を聞く」
そしてできる限り声のトーンを落とした岡部倫太郎の問いに、天王寺綯はわたわたと言い訳をはじめた。
「えっとね、あのね、その、この前テレビで大人の人がキスしてるの見て、あの、おとうさんにすぐ消されちゃったからよくわかんなかったんだけど……」
「……まあそうだろうな」
あの過保護なミスターブラウンが少しでも刺激が強そうなものをこの愛娘に見せるはずがない。
きっとあの熊のような巨体からは信じられぬほどの早業でリモコンを操作したことだろう。岡部倫太郎にはその光景がありありと想像できた。
「オカリンおじさんはその……大人、だよね? だからキスのことも知ってるのかなぁ……って」
「ふむ……まあ確かに知っているぞ。俺は大人だからな」
彼の言葉に嘘はない。
これまで椎名まゆりとしたことがあるし、異なる世界線で牧瀬紅莉栖ともキスをした経験がある。
さらにこの世界線でも攻略を名目に阿万音鈴羽やフェイリス・ニャンニャンと浴びるように唇を交わしてもいる。
実際今の彼はキスに関してはちょっとしたエキスパートと言ってもいいくらいなのだ。
「ホント!?」
「なぜ嘘をつく必要がある」
ぱああ、と顔を輝かせる天王寺綯と、どこか苦々しげに返す岡部倫太郎。
「あのねあのね、その『おとなのきす』ってゆうのをね、教えてほしいなって……」
「……あー、子供にはまだ少々早いのではないか、それは」
ぼりぼり、と頭を掻きながら岡部倫太郎がやんわりと少女を窘める。
「……しらないの?」
「失礼な。それくらい知っているとも」
だが少女の無邪気な疑問に、岡部倫太郎はついむきになって言い返してしまった。
顔を向ければきらきらと輝く期待の瞳。これまでこの少女からついぞ自分に対して向けられたことのなかったものである。
「まあ、これはこれである意味成果ではあるな……」
「? なあに、どうしたのおじさん」
天王寺綯はいつも怖がっているそのおじさんに密着しそうなほど身を乗り出して、無邪気な上目遣いで見つめていた。
それは確かにこれまでの彼では為し得なかったことで、彼が女性の扱いになにがしかの上達を見たという証だろう。
ただ問題は……彼女の期待にどう応えるか、だ。
「やれやれ……綯」
「なあに、オカリンおじさん?」
岡部倫太郎は愛らしくくりんと小首を傾げる天王寺綯の右手をそっと取ると、小さく声を上げる少女の目の高さまでそれを持ち上げて……
身を乗り出し、自らかがみこむようにしながら……その手の甲に優しく口づけをした。

20 :
EX−5:2011/02/12 14:44 
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
みるみる頬を染め、腰を引いてもぞもぞとお尻を動かし、岡部倫太郎と距離を取る天王寺綯。
だが彼が掴んだその右手は強引に振り払われることはなく、むしろそっと、まるで割れ物でも扱うかのようにゆっくりと、丁寧に外された。
右手を口元に当て、目を大きく見開いて岡部倫太郎を見つめる天王寺綯。
その甲にまだ感触が残っている。彼の唇の感触が。
それを自覚したとき……彼女の顔は見る間に耳まで朱に染まった。
……なんだろう。
この気持ちは何だろう。
甘くて、ふわふわしていて、暖かくって……でもどこか切なくて、やるせなくって、寂しい余韻を感じるこの気持ちは。
少女……天王寺綯は自分の心を次々と翻弄してゆくその感情の奔流がどういうものなのか殆どわからなかった。
だってこの年で切なさだなんて気持ち普通はわからない。仮に味わったことがあったとして、それがどんな名前の感情だなんて知っているはずもない。
ただ……それらの気持ちをすべてひっくるめた感情だけは……彼女にもなんとか理解できた。

……“きもちいい”だ。

そう、それは驚くほど、びっくりするほど気持ちよかった。
なんでそんな気持ちになるのかわからない。
“おとなのきす”が気持ちいいのだろうか。それとも相手がオカリンおじさんだからなのか。
「これが、これが、おとなのきす……?」
高揚する心と体に戸惑いながら、頬を染めた天王寺綯が熱い眼差しで岡部倫太郎を強く見つめる。
それはいつもの彼女とは打って変わって、彼に何かを期待し、切望する瞳だった。
「……その初歩の初歩だ、こんなものは」
「しょほの、しょほ……」
少女の胸がどぎまぎとする。
つまり“おとなのきす”にはもっと先があるのだ。
もっとすごいドキドキがあるのだ。
(すごい……おとなのきす、すごい……っ)
「だがな……綯よ」
「ふえ……?」
ぽむ、と少女の頭に彼の右手が乗せられる。
そしてたどたどしく、だが優しくその手指で彼女の髪を梳いた。
「あ……っ」
少女は気づいた。
自分は……岡部倫太郎に頭を撫でられているのだ、と。
足下から……いやもう少し上から湧き上がってくる不思議な感覚。
奇妙な浮遊感と風邪でも引いたかのような熱っぽい感じ。
でもイヤじゃない。全然イヤじゃない。
もっとしてほしい。もっともっと撫でてほしい。
父親にされると似た、だがもっと性急で強烈な欲求がわけもわからぬままに天王寺綯の脳髄を支配してゆく。

21 :
EX−6:2011/02/12 14:51 
少女の変化に気づいていない岡部倫太郎は、丁寧に、諭すように彼女に語りかける。
「そもそもだ、、大人のキスと言うものはだな、そのー、なんだ。本来愛し合う男女や夫婦が行うものなのだ」
「あいしあう……だんじょ?」
ほわほわと浮ついた気分のまま、まるで酩酊したかのような気分で天王寺綯が聞き返す。
もっとも彼女の年齢では酩酊などこれまでしたこともなかったろうが。
「あー、好きな相手とか、恋人同士とか、そういうことだ」
「すきなあいて……こいびと、どうし……!」
ふわあああ、と気分が高揚し、それまで以上にのぼせたような表情となる。
流石に岡部倫太郎も彼女の様子がおかしいことに気づいたが。昨今の子供は随分とませているな……以上の感想は抱かなかった。
「つまりだ。これ以上の大人のキスをしたいなら、お前も好きな男ができてからその男に存分にやってもらうといい。俺のような怖い……あー、おじさんとするようなものではないぞ」
できる限り優しく、わかりやすく、そして真摯に少女に告げる。
お前には大人のキスはまだ早い、と。
そして安心したようにふうとため息をつくと、彼女の頭から手を離して再び思索に戻った。
今の彼に無駄にしている時間などありはしないのだから。
「あぅ……っ」
岡部倫太郎の手が頭から離れるとき……天王寺綯はなんとも寂しげな声を上げてしまった。
もっとなでなでしたほしかった……そんな気持ちがふつふつと湧き上がってきていつまでも消えてくれぬ。
けれど少女は結局をれを口にすることはなかった。
だって彼女の心は、それ以上に“別のこと”で占められていたのだから。
それは先刻の岡部倫太郎の言葉に端を発していた。
その少女……天王寺綯は、彼の言葉を、彼の意図とまるで異なる方向で解釈してしまっていたのだ。
(“おとなのきす”は……すきな相手とか、コイビトどうしで、する……)
のぼせた頭で、まとまらぬ思考で子供なりに必で考える。
確かにそこまでの理解は間違っていない。
(オカリンおじさんは、さっきわたしに“おとなのきす”をしてくれた……)
ほわわわ、とその頬をリンゴのように染め上げて……少女は真っ赤になったほっぺたを両手で押さえ、心の内で叫んでいた。
(じゃあ、じゃあオカリンおじさんは、わたしのこと、すき、なの……?!)
それは彼女にとってなんとも大きな発見であって、少女を大いに驚愕せしめた。
だってそんなことこれまでついぞ心にのぼせたことがなかったのだ。
けれどその考えは、なんというかとても……とても素敵な考えに思えて。
そして……そんな子供じみた理論をどんどん突き詰めていった結果……彼女はとある、とんでもない結論にたどりついてしまった。
(じゃ、じゃあじゃあ……もし私がオカリンおじさんに“おとなのきす”をしたら……)
はぅ、と思わず熱っぽい声が漏れる。
己が手にした真実のあまりの衝撃に頭がくらくらした。
(わたし……わたしが、オカリンおじさんのこと、すき、ってことに、なるのかな……? はぅぅ……っ)

22 :
どうだろう。
どうなんだろう。
わからない。ぜんぜんわからないけれど。
でも試してみないとそれこそわからない。
試したい。
試してみたい。

このひとと……キスが、したい。

(えっと、なんでも“じっけん”と“けんしょー”が大事だって、くりすさんも言ってた……)
どきどき、と胸が高鳴る。
ばくばく、と跳ねる心臓が今にも口から飛び出しそうだ。
オカリンおじさん……岡部倫太郎は壁を睨みながら何かをぶつぶつ呟いている。
でも……怖くない。
今の少女には、その男性は全然怖く感じなかった。
むしろ見れば見るほど胸が高鳴ってきて、どぎまぎして、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「……シスターブラウン?」
すぐ横から放たれる異様な気配にようやく気付き、岡部倫太郎が少女の方に振り返る。
そして……あまりに近くにあった彼女の顔にぎょっと驚き、思わず硬直した瞬間に……

……ちゅっ

天王寺萎は……ぎゅっと目をつぶり、上半身を突き出すようにして、岡部倫太郎の唇に己の唇を押し当てた。
「んなーっ!?」
慌てて尻餅をついたまま後ずさる岡部倫太郎。
とと……っとよろめくように後ろに下がり、真っ赤になって目を見開いて、彼を強い視線で……だがどこか陶然と見つめる天王寺綯。
「な、なんだ!? 機関の陰謀か!? 新兵器の“操り人形の笛(ブレーメン・マリオネット)”でも使われたのか!?」
わけもわからず咄嗟に廚二的な叫びを上げる岡部倫太郎。
だが少女は、口元を押さえながらさらにととと……と後ずさると、そのままきびすを返して走り出した。
「お、おい、待てシスターブラウン! 小動物よ!」
「なえー!」
「うん?」
岡部倫太郎が少女の背中に呼びかけると、彼女は歩幅をわずかに緩め、小走りになりながらくるりと振り向いて、両手を拡声器のよう口に当て大声で叫び返した。
「しょーどーぶつじゃないもん! なえだよ! オカリンおにーちゃん!」
「おに……!?」
岡部倫太郎が少女の叫びに面食らっている間に……
天王寺綯は、真っ赤になった顔を両手で覆いながらその路地裏から消え失せていた。

23 :
EX−7:2011/02/12 15:23 ブラウン管工房
「おとーさんおとーさん!」
天王寺綯がブラウン管工房に飛び込んでくる。やけに興奮した様子だ。
ちなみに桐生萌郁は買い物に出かけているため、現在店内にいるのは店長であるミスターブラウンこと天王寺裕吾のみである。
「んー、どうしたー、綯ー。買ってほしいおやつでもあるのかー?」
デレデレと目尻を下げた天王寺裕吾が愛娘を抱き上げる。
ただいつもならきゃっきゃとはしゃぐ少女は、だが今日に限って様子が違っていた。
「あのねあのね! おとーさん! キスしてほしいの!」
「んー? なんだー、そっかー、キスしてほしいのかー。綯は甘えん坊だなー♪」
娘に好かれている事を心の底から実感し、抱き上げたまま頬ずりをする天王寺裕吾。
だがその少女は焦れてでもいるかのようにそれを嫌がり、なおもキスをせがんだ。
「んー、しょうがないでちゅねー」
愛娘のわがままに鼻の下を伸ばしながら、頬にキスをしてあげる天王寺裕吾。

だが……その直後、娘のあからさまな失意の表情を眼前で見せつけられた彼の心境は、一体いかばかりだったろうか。

「な、綯……?」
娘を地面に下ろし、なんとも情けない声を上げて後ずさる天王寺裕吾。
熊が如き巨漢だというのに見るからに弱々しい。
だがそんな父の様子に気づく余裕もなく、天王寺綯は父に口付けされた頬をそっと押さえ、無表情に撫でていた。
「ちがう……」
「ち、違うって、なにがだい、綯?」
父親の質問を待っていたとばかりに、少女は堰を切ったように喋り始めた。
「あのねあのねおとーさん! 違うの! ぜんぜん違うの! おとーさんにキスしてもらったときとね、オカリンおにーちゃんにしてもらったときとね、ぜんぜん違うんだよ!」
「お、岡部……おにいちゃんだぁ……?」
びきぃ、と天王寺裕吾のスキンヘッドに青筋が走る。
「オカリンおにーちゃんにしてもらったときはね、なんかこうふわふわーって空にうかんだみたいになって、びりびりーって体中しびれちゃってね! なんかね、とにかくぜんぜん違うの!」
興奮した様子でまくしたてる天王寺綯は、父親のことなど見ていない。
ただ己が体験した“素晴らしいこと”を報告するので手一杯である。
「気持ちがね、こうぽわぽわーってなっちゃって、あのね、わたしからおにーちゃんにちゅってね、“おとなのきす”をしたときなんかね、あのねあのね……」
……と、そこまで言いかけたところで、少女はようやく面を上げた。
「……お父さん?」
そう、彼女の父、天王寺裕吾は……既に目の前から消え失せていた。

24 :
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! どこ行きやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ラボを、周囲の店舗を、荒ぶる天王寺裕吾が闊歩する。
それは熊やライオンもかくや、という迫力で、彼の姿を見た者は例外なく恐れ、怯え、震え上がったという。
「岡部ぇ……いつまでも隠れてねえで出てこいよ……出てこなかったらす! 大人しくて出てくれば苦しまずにしてやる……!」
目を炯々と輝かせ、口から紫色の瘴気を吐き散らしながら路地裏をぎぬろと覗き込み去ってゆく。
路地の裏の裏、壁の隙間に入り込み九に一生を得た岡部倫太郎は……震える声で小さな叫びを上げた。


「クリスティーナ……クリスティーナ! タイムリープマシンはまだできないのかああああああ!!」


彼がミスターブラウンに捕らえられる直前になんとかタイムリープに成功するのは……今から凡そ7時間ほど後のこととなる。


×        ×        ×

「ん……オカリンおにーちゃん……にゅー、岡部お兄ちゃん? うーんなんかちがうー。ただのお兄ちゃん、だとまぎらわしいし……」
岡部倫太郎の隣にいるあのふっちょの男を思い出し、天王寺綯はふるふると首を振った。
「岡部さん……はなんかいいかも。あ、そうだ、なんだっけ。ほーおーいん、って呼び方のが喜ぶんでくれるのかな。ほーおーいんさん? じゃなくってええっと……きょーまおにーちゃん! きゃー!」

ちなみにその日ちょっぴり大人になった天王寺綯は……
その夜、布団の中で一人シーツをぎゅっと抱き締めて、岡部倫太郎の横顔を思い浮かべながらごろごろ転げ回り、なかなか寝付けなかったという。

25 :
というわけで第六章で脇道に逸れたら案外受けがよかった綯ちゃん用のミニルートをば
あの時綯ちゃんにフラグらしきものが立っていたのは実は別のタイムリープの時のこんな気持ちがちょっぴりRSで残っていたからかも……みたいなw
いや綯ちゃんまでハーレム殿堂入りしてほしいとか思っているわけではないのですが、それでも彼女の初恋がオカリンだったら素敵だなーなんて思うわけですよ。
さて……これにて大体書きたいことは一通り書いたような気がします。
読み返せば誤字脱字や同じ言い回しの繰り返しなど、恥ずかしくて読むに耐えない箇所も多々ありますが、そのあたりは当方の多忙を言い訳にお許し下さいませ。
それでは今日まで本当にありがとうございました。
いずれ機会がありましたらまたお会いしましょう。
それでは広大なネットの海のどこかで…… m(_ _)m

26 :
>>25
お疲れ様でした。
定期的にうpを続けれた貴方はすごい。
途中で間があいたりするものですが書き溜めつつだったのですかね。
最後まで楽しく読ませていただきました。

27 :
まさかの番外編ww
いいものが読めた。

28 :
綯ちゃんカワユスw

29 :


30 :
あかん…リアルにハァハァしてしまった…綯ちゃん可愛いよ綯ちゃん

31 :
合法なのにエロい・・・だと・・・

32 :
綯ちゃんかわいいよ綯ちゃんw
でも一ヶ所萎さんになってるよ怖いよ萎さん
乙です
ちゅーだけなのにエロいってなんなのw

33 :
だって普通に萎えって打つとこっち変換しちゃうもの……
ハッ
つまり萎えちゃんも攻略すれば……!

34 :
萎え様はアンダーリンで攻略されております。

35 :
ワロタww

36 :
綯さんは目が笑っていないって言われるのがコンプレックスなんだぞやめたげてよお!

37 :
前スレ755まで取得していた

38 :
テスト

39 :
めっきり流れが遅くなったな…
と思ったけど
考えてみればここしばらくが異常だっぢけか

40 :
→だっただけか
…ちょっと吊ってくる

41 :
なかったことに

42 :
しては

43 :
どうか

44 :
いけない

45 :
ルナ先生

46 :
おまかせくださいMMQ

47 :
>>45
>>44から更新してなくて俺もまさにその単語を今入力しようとして
時間経ち過ぎてる事に気付き再リロしたら同じ事考えてるアンタがいて
瞬俺いつ書いたんだろ?ってマジに俺は電話レンジで世界線を移動したのか!?ってな
気分を味わったぜ・・・・
それ以前におっさんほいほいな単語だったわけだがそこは流してくれ

48 :
お久しぶりです、間が空いてしまってごめんなさい orz
というわけで、『背徳狂乱のヒュプノシス』第二章、スタートです。

49 :
 
「……ぅう…ん………?」
気がつくと、そこはラボの研究室だった。
「……夢オチ……だと……?」
しかし。
自分の頭部に取り付けられたままのヘッドセット、そこから伸びるケーブル、パソコンのディスプレイに映し出されている画面。
すべてを思いだし、まだぼうっとしていた脳が一瞬で覚醒する。
「違う、そうじゃなくてっ……せ、成功……したんだ……!」
思わず笑みがこぼれ、小さくガッツポーズをとる。
ビジュアル・リビルディング技術と研究中の脳科学、そして催眠術を応用した、新しい未来ガジェット。
平たく言ってしまえば、究極のVR……ヴァーチャル・リアリティマシンである。

50 :
 
一般的に催眠術というと、どうもうさんくさいイメージがあったりするが、それはちょっと違う。
確かに、日本においてはカウンセラーの仕事自体が無免許でも開業できてしまうような無秩序状態であり、事実いい加減な事をしている人間も多い。
しかし、本来はちゃんとした理論の元に成り立っているものであり、人間の肉体的・精神的な反応を利用したれっきとした技術である。
事実、アメリカでは催眠療法には保険が適用されるほどなのだ。
人によってかかりやすさに差はあるものの、決していかがわしい手品の類いではない。
催眠術にはかかり方にいくつかの段階があり、肉体的な操作を可能とする段階、味覚や聴覚を操作できる段階、記憶を操作できる段階、そして最終的には幻覚を見せることすらできるようになる。
しかし、ここで問題なのは、幻覚が見えるほど深く催眠に誘導するのは非常に難しいという事だ。
それどころか、人によってはここまではどんなに頑張ってもそこまで深い催眠状態に導けない場合もある。
そこで、今回の未来ガジェットだ。
まず、ヘッドセットから脳波への干渉を行い、深い催眠状態を人為的に作り出す。
この段階で、夢を見ているのと同レベルの体験はできる状態になる。
つまり、明晰夢を見せることができるようになるわけだ。
さらに、催眠ではなかなか難しい、幻覚を見せるという部分をビジュアル・リビルディング技術によって補完する。
それによって、被験者が普通に起きている状態であっても、幻覚を見せることができるようになるのだ。
 

51 :
 
例えば、このマシンでなにか高級料理を食べる経験をしてみたいとしよう。
まず、ビジュアル・リビルディングによって幻覚を作り出す。
そして催眠術の力によって、それを食べるという事で生じる味覚、触覚を感じさせる。
ビジュアル・リビルディングと催眠術のいいとこ取りをすることによって、片方だけでは不可能な体験をすることができるのだ。
理論上では、かなりリアル仮想体験ができる。
今回は、その実験として自分が被験者になり、実際に使用してみたのだ。
実験自体は、余計な先入観をもたないですむように、『これがマシンによる仮想体験である』という部分は意図的に意識からシャットアウトされるようにしておいた。
そして、具体的な内容の設定ではなく、自分の深層心理から望んでいる状況を引き出し、それを仮想体験できる……そんな設定をしていたのだ。
「うん、間違いなく成功ね……! あんなに現実感のある体験だったんだから……」
……ん?
……ストップ。ちょっと待って。
え〜と、私は、『自分が望んでいる状況を経験できるよう』にマシンを設定していた……のよね。
その内容が……?
 

52 :
 
その瞬間、ついさっき自分が体験した内容が脳の中を駆け巡る。
「……な、な、な、な、な、なッッ……!?」
瞬時に脳内が沸騰し、全身がかっと熱くなる。
「う、う、嘘よ、嘘ッ!! あ、あんな事……か、考えるわけない、考えるわけないッッッ!! 大事なことだから二回言いましたっ!!」
顔どころか、全身が真っ赤になっていそうだ。
思わず椅子を蹴り飛ばし、恥ずかしさのあまりラボの中を転げ回る。
誰が? 私が!? 誰と? 岡部と!?
よりによってあんな事を望んでたって!?!?
ありえないありえないありえないありえないッッ……!!
そりゃいい加減、一応そのこ、こ、こ、恋人どうし……なんだから、少しくらい進展してもいいんじゃないかとかは思わないわけでもないけどいくらなんでもあんな事までされたいとかは思ってない……ハズ!!
というか、あんなの一体どこのエロゲなのよッッ!?
しかし、自分は確かに設定したのだ。
『自分が望んでいる状況を経験できるよう』に、と。
実験が成功したという事は、自分の理論は間違っていなかったという事であり、マシンに不具合はなかった、という事だ。
つまり、私は……実はあんなコトを望んでた、という結論に達するわけで……。
 

53 :
認めたくない自分の欲望に気付かされ、思わずうめき声を上げながらラボの中を転げ回る。
ひとしきり暴れ回り、息が上がってきたところでふと違和感に気付いた。
……なんかスースーする。
……股間が……冷たい……ような……?
実験が成功した事とその体験内容に気をとられ、意識の隅に追いやられていた冷たさが、認めたくない現実を否が応でも思い知らせてくる。
「え……嘘……でしょ……?」
恐る恐る自分の股間に手を伸ばす。
……冷たい。
意を決して自分のホットパンツを見ると……濡れたシミが広がっていた。
「ーーーーーーーーーっっっっ!!!!???」
ありえないありえないありえないありえないッッッ……!!!
あんな妄想を繰り広げたあげく、こんな事になるなんて……!!
こ、こ、この歳になって、その、お漏らししちゃうとか……絶対にありえないッッ!!
……いや、コレはお漏らしなんかじゃない!
橋田の同人誌を盗み読んだ時に見たことがある、アレだ。
潮吹き……とか言う、そういうヤツだ。それなら仕方ないね!!
あんなに気持ちよかったんだから、そうなっても仕方ない、多分。
だから恥ずかしいことなんじゃない!
無理矢理自分に言い聞かせようとするも、あの体験を『気持ちよかった』と認めてしまう事の恥ずかしさに気付き、また一人でうめきながらラボの中を転げ回る事になった。

54 :
というわけで、今日はここまで。
催眠術については、一応自分がかじってる事もあって、
事実に即した描写になってます。
さすがにここまでやるのは難しいですが、
感度を上げたり手を動かなくしたりくらいなら
ホントにできたりしますよw
それと、wikiにこんな駄文をまとめてくれた方、
本当にありがとうございました!!

55 :
例によって、文章書きは勉強中の身分なので、
おかしな描写、設定の矛盾とかがあれば
教えてもらえるとありがたいです。
一応推敲はしてるつもりなんですが、どうも見落としが多くて orz
当然、指摘だけじゃなく普通の感想も待ってますよ!!w

56 :
twst

57 :
文章の良し悪しはわからんが、特別読みづらくも無いし展開もGJ。
続きをお待ちしております。
切実です。

58 :
いいよいいよ

59 :
今日も更新できそうなので、投下!

60 :
 
「………うぅぅ〜〜……一体何の罰ゲームなのよ、コレ……」
自分が作ったガジェットの実験です、本当にありがとうございました。
身悶えする恥ずかしさに精神を焼かれながら、大きく深呼吸をする。
そう、やってしまったものは仕方ない。
それに、これが意味するのは実験の成功なのだから……。
そうやって無理矢理ポジティブシンキングに切り替え、まずはこの事態を打開する事を最優先に考える。
ラボメンにバレるような事があれば、それこそ首を釣らねばならないような事態なのだ。
「……まずは、いろいろと後始末をしないと……」
ホットパンツの状態から考えれば当然の事であったが、自分が座っていた椅子を見てみると、そちらにもシミができてしまっている。
濡れたままのホットパンツが気持ち悪かったが、ラボの共有物である以上、まずはここからの処理を優先しなければ。
ウエットティッシュで拭き取った後、ごまかしのために薄く入れたインスタントコーヒーを椅子の上にぶちまける。
それを改めてウエットティッシュで念入りに拭き取った。
椅子の色は濃いグレーだったから、これくらいならシミが残る事もないはずだ。
多少湿っている事についても、コーヒーをこぼしてしまったと言い訳すれば、ラボメンに対して事実の隠蔽はできるだろう。
 

61 :
 
「とりあえず、椅子はこれでよし、かな」
次は、汚してしまった服である。
シャワーを浴びつつ、ついでに汚した服も軽く洗ってしまおう。
シャワールームへ行き、汚してしまった服を脱ぐ。
脱ぐときも身体に張り付いて、ものすごく気持ち悪い。
さっさとシャワーを浴びてしまおう……。
シャワールームへ入り、身体を洗い、汚した服も洗う。
パンツを洗っている最中に、今の自分がどういう状態なのか、ふと考えてしまった。
とんでもない妄想に潮を吹いて、汚してしまったパンツを全裸で洗っている脳科学者。
……鬱だのう。
「うぅぅ〜……もう、なんなのよッ!?」
あまりの情けなさに、思わず持っていたパンツをシャワールームの壁に投げつけてうめき声を上げる。
そして、投げつけたパンツをすすぐため、おずおずと拾う私。
全裸で。
……泣きそうだ、ホントに。
 

62 :
 
泣きそうになりながら、というかほとんど泣きながらシャワーを浴び終え、シャワールームを出る。
身体と絞った衣類の水気をできるだけ拭き取りながら、ひとつの重要な問題に気がついてしまった。
「……着替えどうするのよ、私……」
着替えはホテルに置きっ放し。
下着も含め、下半身に身につけていた物はすべて洗ってしまった。
いくらタオルで水気を拭き取ったとはいえ、このまま履くのはあんまりだ。
不測の事態に動転していたとはいえ、そんな簡単な事に気がつかないなんて……恨むぞ、15分前の私。
いくらラボに自分しか居ないとはいえ、さすがに全裸で歩き回る訳にもいかない。
しばらく逡巡した後……ノーパンで白衣を着ている脳科学者がそこにいた。
……というか、私だ。
 

63 :
 
「どんだけマニアックな格好なのよっっ……!」
橋田の持っているエロ同人誌でも見たことないぞ、こんなシチュエーション。
白衣のボタンをとめた上、上半身はブラとシャツを着ているとはいっても、下には何も履いていない。
HENTAIの中でも、かなり上位に食い込みそうなマニアックぶりだ。
白衣の丈が長いのがまだ不幸中の幸いだが、下半身に直接触れてくる空気が、自分の置かれた危機的な状況を物語っている。
そのままの格好で開発室へ行き、未来ガジェット5号、『またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門』を取り出す。
初めて見た時はあまりの意味のなさに呆れたものだったが、今この瞬間は私の救世主である。
一刻も早く、洗った服を乾かしてしまわないと。
でないと……恥ずかしさでにそうだ。
ガジェットに電源をつないでスイッチを入れると、ぶおぉー、という騒がしい掃除機の音とともに、温風が吹き出す。
そこに洗った服をかざし、少しでも早く乾燥させるのだ。
かなり念入りに水気を拭き取ったおかげか、洗った服は洗濯機の脱水が終わったくらいにはなっている。
これなら、意外と早く乾かせるかもしれない。
ストッキングは後回しにするとして、下着とホットパンツが乾いたらさっさとホテルに着替えを取りに行ってしまおう。
温風にかざしている下着が、徐々に乾きはじめた事を確認しながらそう考え、この危機的な状況からの打開が見えはじめた……そう思った瞬間だった。
「……なにをやっているのだ、助手よ?」
 

64 :
ちょっと短めですが、今日はここまで。
恥ずかしがってる助手って最高だよね!
というか、それが書きたかっただけだったりw

65 :
> 白衣のボタンをとめた上、上半身はブラとシャツを着ているとはいっても、下には何も履いていない。
> HENTAIの中でも、かなり上位に食い込みそうなマニアックぶりだ。
普通の露出狂だよ。気にすんな。
それにしても、二人でプレイにふけっているのかと思えば、助手の妄想だったとは。
そしてマーフィーの法則へ。

66 :
乙乙
後から我に返って恥ずかしがる女の子
いいよね……

67 :
裸白衣…ハァハァたまらんぉ…

68 :
このスレクオリティ高杉ww

69 :
表板の人はあまり知らないんだろうな…
前作なんかフェイリスファンとかもえいくさん好きにはぜひ読んでほしいもんだが
あと鈴羽ルート

70 :
というわけで、本日も更新させて頂きます!

71 :
 
「ひぅっっっ!? ちょ、ちょ、ちょ、お、お、お、岡部ぇぇッッッ!?!?」
心臓が止まりそうになりながらも、温風にかざしていた下着を白衣のポケットにねじ込み、振り返った。
「あ、あ、あんたっ、きょ、今日は、まゆりの買い物に一日つきあうって……言ってたじゃないっ……!!」
な、な、なんで、岡部がっ!?
岡部とまゆりは買い物、橋田はメークイン・ニャンニャンで雷ネットのイベント、予定通りなら今日は丸一日、ラボにいるのは私一人のはず。
だから心置きなく実験ができると思ってたのに……!
そう思って、余裕ぶっこいて後片付けをしていたのにっ……!!
というか、いつの間に入ってきた!?
ドアを開ける音なんて聞こえなかったわよ!?
そこまで考えたところで、騒音を発し続ける未来ガジェット5号に思い当たった。
……そうか、これの騒音のせいで気付かなかったのか……。
何という不覚っ……!
「うむ、その予定だった……のだがな。まゆりがコスプレ仲間から緊急の修繕を頼まれたらしく、買い物は途中でお開きになったのだ」
私の置かれている状況を知らない岡部は、何事もなかったように……当然のように、そう告げる。
 

72 :
 
「そ、そ、そ、そう、だったんだ」
私は、岡部に気付かれないよう、一瞬だけ自分の下半身に目をやる。
だ、だ、大丈夫……よね!?
透けたりしてないわよねっっ!?
さりげなく手を股間のあたりで組み、万が一に備えておく。
今の状況を悟られたら、それこそラボの窓から飛び降りざるをえないような状況なのだ。
後はどうにかして岡部をラボから遠ざけ、さっさとミッションを完遂してしまわなければならない。
「ところで、なんで未来ガジェット5号などを動かしていたのだ?」
「そっ、そっ、それはっっ……! え、えーと……うん、そう! さ、さっき、コーヒーを椅子にこぼしちゃって……それで、こ、これで乾かそうかな、なんて思ってたわけなのよ!」
わざとコーヒーをぶちまけておいてホントによかった……!!
「そうか。……火傷とかは、していないな?」
「えっっ……、う、うん……だ、大丈夫……」
岡部と目が合う。
人を心配する時に見せる、優しい目。
コイツはたまに、ホントにたまにだけど……こんな顔で、こういうことを言う。
私が岡部を好きになった理由のひとつ……だったり。
そう意識してしまった瞬間。
仮想体験の中にいた岡部と、今目の前にいる岡部が重なった。
確かに、私は、その……、岡部の事、す、す、好き、だけど。
わ、私は……コイツに、あんなコト……されたかったんだ……。
 

73 :
 
脳裏にさっきの仮想体験がフラッシュバックする。
動けない状態で、乳首とクリトリスを責められて、悶えている私。
さっきの体験からそれほど時間が経っていないせいなのか、催眠のトランス状態から抜けきっていないのか、ぼんやりとだが、その感覚までもが蘇ってくる。
口の中を舌で犯されている時のぴちゃぴちゃという音。
胸に張り付いたオモチャで、乳首をねぶられる感覚。
ローターの振動で強制的に与えられる、痺れるような快感。
下腹部から突き上げてくるような、絶頂に達する前のあの感覚。
「くうぅッ………んっ、ゲホッ、ゴホォッッ!!」
あまりにもリアルに蘇ってきた感覚に危うく喘ぎ声を上げてしまいそうになり、無理矢理咳き込んでごまかす。
岡部の目の前で下着を着けていないという恥ずかしさと、その下着を乾かしている途中であったという気まずさと、一瞬蘇ってきたあの感覚とがごちゃ混ぜになって、私を責め苛む。
顔が熱い。
なんか、下腹部も熱い。
その下のほう、とかが……その、もっと熱い。
岡部が目の前にいるって言うのに、何考えてんのよ、私っ!?
しかも、こんな格好でっ!!
今濡れたりしちゃったら、それこそ誤魔化しようがないのにっっ!!
……ぬ、濡れるって?
誰の!? どこが!? どうしてっ!?!?
心の中で勝手に自問自答が繰り広げられ、その内容の恥ずかしさでさらに顔が赤くなる。
もしここに岡部がいなければ、先ほどのようにラボの中を転げ回りたい気分だ。
 

74 :
 
「えー、えっと、その、お、岡部……、あ、あのね……」
何とか取り繕わねば。
とりあえず、この状況をどうにかして、一刻も早く岡部をラボから引き離さなければならない。
「……顔が赤いぞ? 咳も出ていたようだし、風邪でもひいたのか?」
そう言って岡部は一歩近づき、私の額に手を伸ばしてくる。
「ひぅッッ!? だっ、だっ、だいじょうびゅだから!! 近づかないでッッ!!」
……噛んだ。
ほんと、なんでコイツはこんな時に限って優しくしてくるのよッ!?
普段の扱いはヒドいくせに……!!
……いや、それは違う。
ホントはわかってるんだ。
岡部は、私が困ってる時にはちゃんと助けてくれる。
誰よりも、優しく接してくれる。
そういうヤツだって事くらい、知ってる。
だから、私も岡部の事を、好きになったんだ。
わかってる、わかってるの。
でも……今は、今この瞬間は、逆効果なのよっ!!
確かに困ってるんだけど、それはこの状況でアンタがラボに帰ってきたからであって、私に近づかれると、その、いろいろと困る!
「紅莉栖……?」
訳がわからないという表情で、岡部が私の顔をのぞき込んでくる。
そりゃそうだ。というか、なんで私がこうなってるのかを悟られたら困るのだ。
貴方との性行為を妄想して潮を吹いてしまって、現在パンツは洗濯中なのでただいま白衣の中はノーパンです……って!!
さ、最悪だ、最悪すぎる・・・致命的にもほどがある!!
「えーと、そのっ……ほ、ほ、ほんと、大丈夫、だからっ! 気にしないでっ!」
「……そうか。新たなガジェットの開発もいいが、くれぐれも無理はするなよ?」
「えっ……あ……う、うん……あ、ありがと……」
さっきとは違う意味で、顔が紅くなる。
もうっ、ほんとになんでコイツは……こんなに優しいんだ。
その上、大抵の場合、その優しさは不意打ちでくる。
その度にしどろもどろになる私の気持ちも考えろっ!
……そ、そりゃ、別に、イヤなわけじゃ、ないんだけど……。
岡部は……ずるい。
 

75 :
とりあえず、今日はここまで!
コンスタントに、一日2000文字くらいは書いていきたいところですね…。
駄文書きではありますが、できるかぎり頑張っていきたいと思うので
今後もお付き合い頂ければ幸いです。
それにしても、『恋歌鴛鴦のミルキーウェイ』の作者さんって、
書き込みと文章書きがリアルタイムだったのだろうか……。
もしそうなら、恐るべしと言わざるをえない orz
即興SS書ける人は、ホント凄いとおもいます、マジで。

76 :
おおおお!gj!
続きが気になる!

77 :

ニヤニヤ

78 :
うわあああああああああああああなんかもうヤバい!!
普段こういうのってオカリンに移入していくのが、
なぜか紅莉栖に移入してなんかもうヤバい!!
このままじゃ世界線移動して女になってしまう!!
…キモくてごめんなさい

79 :
>貴方との性行為を妄想して潮を吹いてしまって、現在パンツは洗濯中なのでただいま白衣の中はノーパンです
事実を列挙すると吹いてしまうなwww

80 :
ヒロイン側の心情を違和感なく書くのって大変ですよね

81 :
万一の場合でも、服にもコーヒーをぶちまけたと言えば済む事が全く頭に浮かばないとこに萌える

82 :
今日はちょっと早めに更新できそうです。
>>80
今回は助手が右往左往するところを書きたかったので、
ある意味挑戦として助手の一人称にしてみました。
でも、@ちゃんねらーだったり、隠れオタクっぽかったり、
ある意味では自分に近い部分もあるので女性の割には意外と書きやすいですw
他のヒロインだとこうはいかないでしょうが……w

83 :
 
……って、そんな事を考えてる場合じゃない!
早く現状を打破しないとっ…!
「ね、ねぇ、岡部っ!? あのさ、さっき、私がコーヒーこぼしちゃった、って話、したじゃないっ?」
さっきの雰囲気も捨てがたいところだが、話題を変えるべく岡部に話をふる。
「だから、開発室の椅子が使えないし、これから私はちょっと調べ物でこっちのパソコン使いたいから、その、お、岡部がラボに居ても、しょうがないんじゃないかなぁっ、とか、思ったりもするんだけどっ、どう、かな!?」
「うむ? ソファーが空いているのではないか?」
「えっ、あっ……まあ……そう、なんだけどっ……! ちょっと集中したいから、その、一人にしてもらえると……嬉しいかな、なんて……」
「ふむ……? ……ははぁ、なるほど。くっくっくっ……フゥーーハハハハ!!! わかった、わかったぞ、クリスティーーナよっ!! 一人でゆっくりと@ちゃんねるを楽しみたいわけだなっ!?」
「違うわッッ!!」
唇をわざと歪め、いきなり厨二病モードになった岡部に、思わずツッコミを入れる。
さっきまでのイイ感じの雰囲気は何処にいった!?
ホントにコイツは……落差が激しすぎるのよっ!!
だから、一緒にいて飽きない……楽しい、とも言えるんだけど。
「別に俺はかまわんのだぞぉ〜? お前がたとえエロパロ板でHENTAIなSSを読み耽り、妄想に浸っていたとしてもっっ!! それがお前の意思ならば、俺はそれを尊重してやろうではないくぁっっ!!」
「だっ、だっ、だっ、誰がHENTAIよッッッ!! そんな想像するアンタがHENTAIなんだろーがっっ!!」
そんな事をするつもりがあったわけではないが、思い当たるフシがないわけでもない。
というか、SSを読んで妄想に耽るよりある意味ヒドい。
やってしまった行為的にも、妄想してしまった内容的にも。そして、白衣の中の今の現状も。
どう考えてもHENTAIです、本当にありがとうございました。
それを気取られないよう、できる限りのオーバーアクションで岡部に指を突きつけ、全力でツッコミを返す。
 

84 :
 
「ほほぉ〜う? エロパロ板を知っている事は否定しないのだなッッ!? ずいぶんとマニアックなところまで知っているようではないくぁ〜??」
「えっ、うあっ………ぐっ、そ、それはッッ・・・!!」
…………。
……確かに興味本位で見に行ったことあるわよっ!!
軽い気持ちで見に行ったら、すっごく面白い長編を発見して、徹夜で読破しちゃったりしたこともあるわよ!
だって面白かったんだもん、何か文句でもあるのっ!?!?
「くっくっく、正直になればいいではないかぁ!『私は、エロパロでHENTAI的なSSを読んで妄想に耽る、PINKちゃんねらーな天才少女です』……と!」
「そっ、そっ、そっ、そんなコト、す、す、するわけ、ないじゃないッッ!! お願いだからPINKちゃんねらーはやめてッッ!!」
「ならばぁ、SSを投稿する職人だった、とでもいうのかぁ〜?? サイエンス誌に論文が掲載された女脳科学者が、実はエロパロでSSを投稿していた……Vipでスレが立つどころか、祭りでも起こりそうな大事件っっ……!! 胸が熱くなるではないかッッ!!」
「ーーーーーッッッ!!?? そ、そ、そ、そんな、ことっ……す、す、するわけ、ない、ないッッ! ありえないッッ!!」
………。
………………。
………………………。
……えーと、その、なんだ。
……だって、あんな面白いSS読んじゃったら、誰だってちょっと書いてみたくなるじゃない?
それで試しにやってみたら、意外とみんなが褒めてくれてっ……そしたら、調子に乗って結構長々と書いちゃったりするじゃないっ!?
まとめサイトに載った時とか、サイエンスに論文が載ったときと同じくらい嬉しかったりしたのよッッ!!
悪かったわね!!!!
……………ほんとにごめんなさい。
アレは私の黒歴史なんです。
お願いだから傷口に塩をすり込まないでっ……… orz
コテハンは使っていなかったからよかったようなものの、もし栗悟飯の名前で書き込んでたら……岡部にもコテハンがバレている今となっては、恥ずかしさのあまり七孔噴血していたかもしれない。
ホントにコテハン使ってなくてよかった、うん。
 

85 :
「とにかぁくっ!! ラボは俺の居場所であり、約束の地なのだッッ!! 俺を差し置いてこの地を占拠しようなど、百年早いのだ------このPINKちゃんねらー変態SS職人少女よッッ!!」
「だぁぁれが変態SS職人少女だッッ!? ねぇ、お願いだからその呼び方やめてっ!!」
岡部はさも当然のように、ソファへ向けて歩き出す。
しかし、数歩踏み出したところで……突然岡部の脚が止まった。
ゆっくりと私の方を振り返る。
「……えーと、その、なんだ、助手よ。お前はコーヒーをこぼした、とか……言っていたな?」
「……えっ…? うん、まあ、そ、そう、だけど……」
振り返った岡部の目が泳ぎだす。
……泳いでいる、というより、私の足下あたりを見ているような……。
大丈夫、さっき白衣の外側から、中が透けたりしていない事は確認済みだ。
それについては問題ない……はずっ……!
「うおっほん……それは、その、なんというか、……結構盛大にこぼした、のか……?」
「……はぁっ? ええと、まあ……、うん! そう! そうよ! 派手にこぼしちゃって、それで椅子も使えなくなっちゃったし、だから、ラボにいても岡部の居場所がないかなぁ、なんて……」
「そ、そ、そうか。う、うむ……ゴホンっ……ふ、ふ、ふ、フゥーーハハハハッッ!!! おーっと、お、お、俺としたことがー、今日はこの後急用があったのだっとぅぁー! こんな大事なコトを忘れているとは、俺もまだまだ未熟者というコトだなぁー!!」
「……ふぇ? なに? 急にどうしたの??」
「おぉーっと、も、もう約束の、時間がー、迫ってきているぞぉー!? というわけで、お、俺はお先に失礼するぅ!! 俺は今日はもう帰らないから、ちゃんと戸締まりはするのだぞぉー、助手よぉ!!」
「あっ、えっ、ちょっと……」
「そ、それでは、さ、さぁらばだっっ!!」
そう言い残し、岡部は風のようにラボから立ち去っていった。
がちゃん、という音ともに玄関のドアが閉まる。

86 :
 
「……一体、なんなのよ、もうっ……!」
岡部のわざとらしい態度は気になるけど、とりあえず状況は好転した……のかもしれない。
そう思った瞬間、一気に脱力感に襲われる。
それも仕方ない。まさに薄氷を踏むような、緊迫した状況だったのだ。
岡部は今日は帰らない、と言っていたし……疲れ切った身体をひきずって、ソファーへ座ろうとした瞬間。
ソファーに引っかけたままの、ストッキングとホットパンツが目に入った。
「えっ……うあぁっ……!?」
思わず、自分の足下に目をやる。
下半身は何も身につけていないのだから、白衣の裾から見えている私の脚は、当然生足だ。
岡部がソファーへ向かおうとした直後、態度が豹変した事。
コーヒーをこぼした事を、何度も確認してきた事。
私の足下あたりで視線が泳いでいた事。
突然思い出したようにラボを出て行った事。
それらの事象が、私にひとつの事実を突きつけてくる。
ば、ば、ば、バレ……てたッッ!?
……いや、でもっっ……さ、さすがにこの状況で、ノーパンだとまでは思わないハズよねっ……!?
今の状況から岡部が推測すると思われる事態は、コーヒーを盛大にこぼしてホットパンツとストッキングを汚してしまった私が、それらを乾かそうとしていたところに帰ってきてしまった、というところか。
さすがに下着がソファーに引っかけてあったらいろいろアウトだったろうが、それがないこの状況下で、ノーパンであるところまでは想定しないだろう。
私がしどろもどろで一人になりたいと言っていた言動も、そういう認識にたどり着けば納得できるものであるはずだ。
普段からスカートなんて滅多にはかない私からしてみれば、白衣の中がそのまま下着であると思われるだけで十分に恥ずかしいところだが、本当の事実に比べればだいぶマシだ。
 

87 :
 
そこまで考えたところで、窓の外から声が聞こえてくる。
「……お、お、俺だッッ! 今っ……機関から強烈な精神攻撃を受けているッッ!! こ、こ、このままではっ……し、至急、援護を頼むっ……」
「……回復を図るためにも、俺は一刻も早く現地を一時退避し、後続に任せる事にする……あぁ、健闘を祈る……エル・プサイ・コングルゥ」
いつもの『報告』だった。
「……聞こえてるわよ、あのバカ………」
思わず、ため息とともに独りごちる。
……はぁ。
ホントに、なんでこんなヤツの事、好きになっちゃったんだろう。
でも、岡部は何も言わず、自分からラボから離れてくれた。
多分だけど、アイツなりに気付かないフリをして……まあ、それもバレてるんだけど……私の顔を立ててくれたのだろう。
そういうところは……まあ、優しいかな、うん。
「さて……と」
それなりの犠牲はあったとは言え、ひとまず岡部をラボから遠ざけることには成功した。
後は、さっさと洗い物を乾かして、ホテルに帰って着替えてこよう。
まだ、ミッション・コンプリートではないのだ。
 

88 :
 
白衣のポケットにつっこんだ下着を取り出し、改めて乾かそうとする。
……………。
「……えっ………!?」
ない。
ポケットの中に。
下着が。
イヤな汗が、全身から吹き出すのがわかる。
なんでっっ……!?
だって、岡部があらわれた時に、白衣のポケットにねじ込んだハズじゃ……!?
う……うろたえるんじゃあないッ! 脳科学者はうろたえないッ!
クールだ、クールになれ。
わずかな希望にすがって、必にポケットの中をまさぐる。
……そして、気付いてしまった。
白衣のポケットの縫製がほつれ、穴が空いていた事に……!!
全身から血の気が引いていく。
脳が認識を拒否している。
見てはいけないと、危険信号を発している。
それでも、私は。
さっきまで私が立っていた場所のあたりに視線を動かす。
なにもないことを祈りながら。

……そこには、私の下着が落ちていた。

「……う……うぁっ……あぁっ…………」

「い……い……イヤァァァあああぁああああぁあぁぁあぁぁあああああああああああああああああッッッッッ!?!?!!!!!!!!」
 

89 :
今日はここまで。
アタフタする助手は可愛いですね、ほんと。
自分としては、今日の分はちょっと表現として冒険的なところがあったりします。
違和感がなければよいのですが……。
例によって、文章への指摘や、表現としてわかりにくいところがあれば
ご指摘頂けるととっても嬉しいです!!

90 :
全裸白衣PINK少女なら見ました!

91 :
栗悟飯がここを見てるとか胸熱

92 :
>>91
匿名でオカクリ物投稿してオネイニーしてたとか股間熱

93 :
エロ要素よりギャグ要素に引き込まれるんだがw

94 :
よし栗悟飯のコテハンからip突き止めて過去ログ倉庫をあさるんだっ!

95 :
ちょっと間が空いてしまってごめんなさい。
というわけで、今日は更新できそうです!
>>93
いまはギャグパートなので、そういってもらえるとありがたいですw
それでは、しばしお付き合いを。

96 :
 
「鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう鬱だのう…………」
ソファーの隅に丸くなるようにしてへたり込み、ブツブツと呪いのような言葉を呟く。
あれ、絶対ノーパンだって気付かれたよね…… orz
さすがに理由まではバレてはいないのが幸いだが、私だって一応は年頃の女の子なのだ。
好きな人の前で、自分がノーパンでいたことがバレたなんていうのは、まさに活問題。
思い出すだけで赤面どころか、恥ずかしさでねる。
これで理由までバレたら、ホントにぬ。マジで。
というか、吊る。自分で。
「あぁ、もう!! 次に岡部に会うとき、どんな顔して会えばいいのよっ!?」
頭を抱えたままソファーに座り込み、いつの間にかそう叫んでいた。
恥ずかしさと情けなさとわけのわからない怒りがないまぜになって、心をじくじくと浸食してくる。
 

97 :
 
はぁ、なんでこんな事になっちゃんたんだろ。
できることなら、タイムマシンでも作って過去の自分に言ってやりたい。
迂闊なことをするなと、軽率なことをするなと!
……でも、それは絶対にしないだろう。
たとえどんな失敗があったとしても、それを含めて今の私がいるのだから。
なにより、岡部と約束したから。
タイムマシンは、作らないって。
私たちが出会ってから、少し経った頃だった。
岡部から聞かされた、別の世界線での話。
最初は当然信じられなかったし、いつもの『設定』なんだ、と思ってた。
でも、その話の内容は……私の記憶の中にも残っている話だったのだ。
『夢で見たことがあった』から。
私の命の恩人として、岡部を捜し回っていた頃だった。
毎晩のように、夢を見た。
その夢の中で、私はいつも、誰かと一緒にいた。
口論し、笑いあい、その誰かが辛そうにしているところを励ましている自分。
その誰かが、私ではわかってあげられない、何か辛い思いをしているのがものすごく悲しくて。
とっても辛くて、切なくて……でも愛おしい、そんな夢の記憶。
 

98 :
 
岡部から別の世界線での話を聞いた時、その夢のおぼろげな記憶が------まるでパズルが組み上がるように------急にリアルな形で蘇ってきたのだ。
論理的じゃないことはわかっている。
でも、岡部が真実を言っているという事だけは、なぜか疑うことができなかった。
それに、私がラボに初めて来たとき、初対面であるはずのまゆりや橋田とすぐに仲良くなれた事。
出会ってまもないはずの岡部を……その、なんだ。
……好きになってしまった事。
普段の自分なら、絶対にあり得ないと断言できる。
いくら同世代の人間とは言え、私が、他人とこんなに早く打ち解ける事なんてできない、と。
ただでさえ、研究所では仮面をかぶっているのだ。
そんな私が、この短期間に、これほど多くの人に心を開くことなんて、あり得ない。
それらの事を鑑みて考えると、岡部の話の非現実的さよりも、話の内容が事実であることの方が、よほど論理的といってもいいのだ。
だから、私は岡部の話を信じた。
そして、約束した。
タイムマシンは作らない、と。
もとよりタイムマシンなんか使う気もなかったけれど。
それが岡部との約束であるなら。
それは、私にとっては絶対なのだ。
岡部との約束は、守りたい。
自分が初めて好きになった人との、約束だから。
 

99 :
 
しかし。
そうはいっても。

「この状況を考えると、その決意さえも揺らぎそうよね……」
いくらそれっぽいモノローグで状況から目を背けようとしても、残念ながら現実は変わらない。
ホントに、これが夢だったらどんなに気が楽か。
  『ところがどっこい‥‥‥‥夢じゃありません‥‥‥‥!』
  『現実です‥‥‥! これが現実‥!』
そんな声がどこからか聞こえてくる気がした。
お願いだから一条さんは黙ってて。ざわざわすんな。
「はぁ………」
深いため息をつき、のそのそと立ち上がる。
あまりのショックに忘れていたが、未だに私はノーパンなのだ。
とりあえず、乾かす物を乾かし、さっさとホテルに着替えを取りに行かなければ。
再び5号機の電源を入れ、吹き出してくる温風に下着をかざす。
その行為……今の自分の姿の情けなさに、改めてやり場のない怒りがこみ上げてくる。
 

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